(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ポリエステル系離型フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241212BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540601
(86)(22)【出願日】2023-01-11
(85)【翻訳文提出日】2024-07-03
(86)【国際出願番号】 KR2023000473
(87)【国際公開番号】W WO2023140556
(87)【国際公開日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0007886
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソルキョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ハンス
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
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(57)【要約】
本発明は、ポリエステル系離型フィルムに関する。具体的には、本発明は、互いに異なる形態の粒度分布を有するそれぞれの表面層が複数積層されたポリエステル離型フィルムを提供することによって、ロールに対する巻取性およびスリップ性に優れ、セラミックスラリーを塗布して薄膜のセラミックシートを製造する時、ピンホールの発生が少ないポリエステル系離型フィルムを提供するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルベースフィルムと、その一面にてバイモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含むポリエステル表面層と、他面にてユニモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含むポリエステル表面層とが積層されたポリエステル系離型フィルム。
【請求項2】
前記バイモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含む表面層の表面粗さ(Ra)が0.010~0.030μmである、請求項1に記載のポリエステル系離型フィルム。
【請求項3】
前記ユニモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含む表面層の表面粗さ(Ra)が0.001~0.015μmである、請求項1に記載のポリエステル系離型フィルム。
【請求項4】
前記バイモーダル形態の粒子を含む表面層の粒子の平均粒径は0.05~2μmである、請求項2に記載のポリエステル系離型フィルム。
【請求項5】
前記ユニモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含む表面層の粒子の平均粒径は0.03~1μmである、請求項3に記載のポリエステル系離型フィルム。
【請求項6】
前記表面層の粒子の含有量はそれぞれ300~5,000ppmである、請求項1に記載のポリエステル系離型フィルム。
【請求項7】
前記粒子は、無機粒子および有機粒子の中から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を混合した混合物である、請求項1に記載のポリエステル系離型フィルム。
【請求項8】
前記無機粒子は、金属酸化物、金属炭化物、金属硫化物、金属炭窒化物などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上である、請求項7に記載のポリエステル系離型フィルム。
【請求項9】
前記有機粒子は、シリコーン樹脂、架橋アクリル粒子、架橋ポリスチレン粒子、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド樹脂およびメラミン-ホルムアルデヒド樹脂などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上の混合物である、請求項7に記載のポリエステル系離型フィルム。
【請求項10】
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート樹脂である、請求項1に記載のポリエステル系離型フィルム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の離型フィルムが共押出により製造されるものであるポリエステル系離型フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記共押出した後、延伸して製造するものである、請求項11に記載のポリエステル系離型フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系離型フィルムに関する。例えば、セラミック積層コンデンサ(Multi-layer Ceramic condenser、以下、MLCC)、偏光板保護用およびOCA用などの電子材料に使用される表面保護用積層ポリエステル系離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルム(Polyester film)は、熱安定性、耐薬品性、機械的強度、表面特性、厚さの均一性が良好で多様な用途や工程条件への適用が可能である。
【0003】
前記特性により、ポリエステルフィルムは、コンデンサ用、写真フィルム用、ラベル用、減圧テープ、装飾用ラミネート、トランスファーテープ、偏光板およびセラミック離型用グリーンシートなどに適用されている。
【0004】
特に、セラミック積層コンデンサの場合、前記コンテンサの小型化が進むにつれ、グリーンシート(離型フィルム)の厚さも、なおさら薄膜化されており、このため、グリーンシートの物性がセラミックコンデンサに及ぼす影響がさらに増大するしかない。
【0005】
例えば、グリーンシートの表面粗さが高い場合は、突出形状がセラミックシートに転写されるという問題が発生する。また、前記グリーンシートを移送ロールと接触させて高速で移送した際、粒子が脱離し、切削粉になって、接触するロールにくっ付いて汚染が発生してキズが発生するという問題が発生する。また、前記切削粉や脱離した粒子は、移送ロールに付着してグリーンシートの表面にキズを発生させる原因になり、後工程で異物になる。
【0006】
逆に、グリーンシートの表面粗さが過度に低い場合は、セラミックスラリー塗布時の塗布安定性、フィルムの走行性とスリップ性が低下する。また、グリーンシートをロールに巻取る際、スクラッチなどが発生しうる。
【0007】
したがって、前記のように、表面特性に優れたグリーンシート(離型フィルム)を開発することによって、スリップ特性を改善し、ロールに対する巻取性を改善し、切削粉およびスクラッチの発生を防止できる効果を提供可能であるため、グリーンシートの表面特性の改善は、依然として改善されるべき余地が多く、また、その必要性が、セラミックコンデンサの小型化および薄膜化によってさらに増大しているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一実施形態は、セラミック積層コンデンサ(MLCC)、偏光板保護用およびOCA用などの電子材料に使用される表面保護用ポリエステル系離型フィルムを提供する。
【0009】
一実施形態として、前記離型フィルムは、薄膜のセラミック積層コンデンサ(MLCC)の離型フィルムへの適用が可能なように、厚さ50μm以下の薄膜のフィルムでありながらも、ロールに対する巻取性およびスリップ性に優れたポリエステル系離型フィルムを提供する。
【0010】
一実施形態として、前記離型フィルムは、セラミックスラリーを塗布して薄膜のセラミックシートを製造する時、ピンホールの発生が少ないポリエステル系離型フィルムを提供する。
【0011】
また、フィルムの製造時に高速移送をしても切削粉が少なく、フィルム切削時の粉塵の発生が少なく、かつ、巻取時にスクラッチが発生しないポリエステル系離型フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の問題点を解決するために、本発明は、ポリエステルベースフィルムと、その一面にてバイモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含むポリエステル表面層と、他面にてユニモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含むポリエステル表面層とが積層されたポリエステル系離型フィルムを提供することができる。
【0013】
本発明の一態様により、前記バイモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含む表面層の表面粗さ(Ra)が0.010~0.030μmであることを含むのでありうる。
【0014】
本発明の一態様により、前記ユニモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含む表面層の表面粗さ(Ra)が0.001~0.015μmであることを含むのでありうる。
【0015】
本発明の一態様により、前記バイモーダル形態の粒子を含む表面層の粒子の平均粒径は0.05~2μmであることを含むのでありうる。
【0016】
本発明の一態様により、前記ユニモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含む表面層の粒子の平均粒径は0.03~1μmであることを含むのでありうる。
【0017】
本発明の一態様により、前記表面層の粒子の含有量は、それぞれ300~5,000ppmであることを含むのでありうる。
【0018】
本発明の一態様により、前記粒子は、無機粒子および有機粒子の中から選択されるいずれか1または2以上を混合した混合物を含むのでありうる。
【0019】
本発明の一態様により、前記無機粒子は、金属酸化物、金属炭化物、金属硫化物、金属炭窒化物などから選択されるいずれか1または2以上であることを含むのでありうる。
【0020】
本発明の一態様により、前記有機粒子は、シリコーン樹脂、架橋アクリル粒子、架橋ポリスチレン粒子、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド樹脂およびメラミン-ホルムアルデヒド樹脂などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上の混合物を含むのでありうる。
【0021】
本発明の一態様により、前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート樹脂であるものを含むことができる。
【0022】
本発明の一態様による、離型フィルムが共押出により製造されるものであるポリエステル系離型フィルムを提供することができる。
【0023】
本発明の一態様により、前記共押出した後、延伸して製造することを含むのでありうる。
【発明の効果】
【0024】
一実施形態による本発明のポリエステル系離型フィルムは、薄膜のフィルムでありながらもロールに対する巻取性およびスリップ性に優れ、セラミックスラリーを塗布して薄膜のセラミックシートを製造する際、ピンホールの発生が少ないという効果を提供することができる。
【0025】
また、MLCCなどのフィルムの製造時に高速移送をしても切削粉が少なく、フィルムの切削時に粉塵の発生が少ないポリエステル系離型フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をより詳しく説明する。ただし、下記の具体例または実施例は本発明を詳しく説明するための一つの参照に過ぎず、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な形態で実現可能である。
【0027】
また、他に定義されない限り、すべての技術的用語および科学的用語は、本発明の属する当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。本発明において、説明に使用される用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限すると意図されない。
【0028】
また、明細書および添付した特許請求の範囲で使用される単数の形態は、文脈で特別な指示がない限り、複数の形態も含むと意図することができる。
【0029】
さらに、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0030】
なお、本発明において、「バイモーダル(Bimodal)」の意味は、粒度分布を測定する時、2つのピークを有するか、または粒度分布がショルダー(shoulder)ピークを有する場合、または、互いに異なる平均粒径を有する無機粒子を混合した場合を、すべて含むことができる。
【0031】
以下、本発明の各構成についてより具体的に説明する。
【0032】
一実施形態による本発明の離型フィルムは、ポリエステルベースフィルムの一面にバイモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含むポリエステル表面層と、他面にはユニモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含むポリエステル表面層とが積層されたポリエステル積層フィルムを製造することによって、本発明を完成した。
【0033】
一実施形態として、前記離型フィルムは、次のような積層ポリエステル系積層フィルムである場合、前記目的をより良く達成できるのでさらに好まれうる。すなわち、ポリエステルベースフィルムの一面におけるバイモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含むポリエステル表面層は、表面粗さ(Ra)が0.010~0.030μmであってもよいのであり、前記ベースフィルムの他面に、ユニモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含むポリエステル表面層として、表面粗さ(Ra)が0.001~0.015μmの表面層が積層された、積層ポリエステル系積層フィルムである場合、前記目的をより良く達成できるのでさらに好まれうる。
【0034】
一実施形態により、前記離型フィルムは、ポリエステルベースフィルムの一面に平均粒径が異なる2種の無機粒子や有機粒子を混合して、本質的にバイモーダル分布を有するポリエステル表面層を採用し、他面には1つの粒度分布を有する粒子を用いたポリエステル表面層を有することによって、フィルムの表面が平坦でありながらも、後加工時のハンドリング性およびフィルムの巻取性を向上させることができる有効突起を含み、切削時の粉塵の発生が少なく、巻取時にスクラッチが発生しないグリーンシートである離型フィルムを提供できることを見出して、本発明を完成した。
【0035】
一実施形態として、前記離型フィルムにおいて、前記ポリエステルベースフィルムの一面にバイモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含む表面粗さ(Ra)が0.010~0.030μmの表面層と、前記ベースフィルムの他面にユニモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含む表面粗さ(Ra)が0.001~0.015μmの表面層とが積層された積層ポリエステル積層フィルムを提供するために、積層フィルムの一表面層のユニモーダル粒子は、平均粒径(Dmean)が0.03μm~1μmの粒子が前記表面層に対して300~5,000ppmの含有量で添加される場合、より優れた物性を示すのでさらに好まれる。
【0036】
一実施形態において、前記ベースフィルムおよび両表面層に使用されるポリエステル樹脂は特に制限されず、通常のポリエステル樹脂を使用するものであってもよい。具体的には、例えば、ジカルボン酸を主成分とする酸成分と、アルキレングリコールを主成分とするグリコール成分とを縮重合して得られたものである。
【0037】
前記ジカルボン酸は制限されないが、テレフタル酸またはそのアルキルエステルやフェニルエステルなどを使用することができるのであって、一部は、イソフタル酸、オキシエトキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸および5-ナトリウムスルホイソフタル酸などの二官能性カルボン酸またはそのエステル形成誘導体で置換して使用することができる。
【0038】
また、グリコール成分には制限されないが、エチレングリコールを主に使用するのであって、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ビスオキシエトキシベンゼン、ビスフェノールおよびポリオキシエチレングリコールなどを混合して使用することができ、一官能性化合物または三官能性化合物を一部併用することができる。
【0039】
その他にも、ポリエステル樹脂の重合時に通常使用される添加剤、つまり、ピニング剤(pinning)、帯電防止剤、紫外線安定剤、防水剤、スリップ剤および熱安定剤の中から選択される1種または2種以上の成分を含むことができ、これに制限されるわけではない。
【0040】
本発明の一態様において、前記ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートであってもよい。つまり、前記ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸としてテレフタル酸(Terephthalic acid)を使用し、グリコールとしてエチレングリコール(Ethylene glycol)を使用して製造したポリエチレンテレフタレートであってもよい。また、ポリエチレンテレフタレート共重合体であってもよい。前記ポリエステル樹脂は、当該技術分野における通常の重合方法であるTPA(Terephthalic acid)重合法またはDMT(dimethyl terephthalate)重合法などで製造することができ、これに制限されるわけではない。
【0041】
一実施形態として、前記離型フィルムは、前記ポリエステルベースフィルムの両面に互いに異なる表面特性の積層構造を有するものであって、互いに異なる特性の粒子を用いて特定の表面粗さを調節することによって、フィルムの切削時に粉塵が発生せず、両表面の表面粗さの転写によって、離型層に塗布される層に、ピンホールや厚さ不均衡などが発生するのを防止し、かつ、同時にロール走行性、巻取性などのハンドリング(Handling)性が改善されて生産性を大きく向上させることができる。
【0042】
一実施形態において、離型フィルムの一面に形成されたバイモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含む表面層の表面粗さ(Ra)が0.010~0.030μmでありうるのであって、また、ユニモーダル形態の粒度分布を有する粒子を含む表面層の表面粗さ(Ra)が0.001~0.015μmを有するようにするために、前記ユニモーダル形態の粒度分布を有する粒子は平均粒径が0.03~1μmでありうるのであり、具体的には0.05~0.8μmでありうるのであり、表面層に対して300~5,000ppmの含有量で添加された表面層でありうるのであって、バイモーダル形態の粒度分布を有する粒子は平均粒径が0.05~2μmでありうるのであり、具体的には0.1~1μmでありうるのであり、表面層に対して300~5,000ppmの含有量で添加された表面層であってもよいが、本発明の目的を達成する限り、これに限定しない。また、前記バイモーダル形態の粒度分布を有する表面層が2つの異なる粒子を混合する場合、前記平均粒径および含有量の範囲内で大きい粒子と小さい粒子との比が3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、10以上であってもよいし、例えば、3~30の範囲でありうるのであり、その含有量比は本発明の目的を達成する限りでは制限しないが、大きい粒子と小さい粒子との重量比が0.1~10であってもよいが、これに限定するものではない。
【0043】
また、前記特性の両表面層を有する前記一実施形態による離型フィルムは、巻取時にスクラッチが発生せず、薄膜のフィルムでありながらも、ロールに対する巻取性およびスリップ性に優れ、平滑性に優れて、セラミックスラリーを塗布して薄膜のセラミックシートを製造する時、ピンホールの発生が少ないポリエステル系離型フィルムを提供することができる。
【0044】
さらに、前記離型フィルムは、表面粗さの転写によるピンホールの発生およびMLCC(セラミック積層コンデンサ)のShort不良率を減少させることができるフィルムを提供可能である。
【0045】
また、フィルムの製造時に高速移送をしても切削粉が少なく、フィルムの切削時に粉塵の発生が少ないポリエステル系離型フィルムを提供することができる。
【0046】
一実施形態において、前記表面層の粒子は、無機粒子および有機粒子の中から選択されるいずれか1または2以上を混合した混合物であってもよい。
【0047】
一実施形態において、前記無機粒子は、金属酸化物、金属炭化物、金属硫化物、金属炭窒化物などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上のものであってもよい。制限しないが、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、シリカ、カオリンおよび硫酸バリウムなどが挙げられるが、この分野で使用する無機粒子であれば制限しない。前記有機粒子の例を挙げると、シリコーン樹脂、架橋アクリル粒子、架橋ポリスチレン粒子、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂粒子、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド樹脂粒子およびメラミン-ホルムアルデヒド樹脂粒子などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上の混合物であってもよいが、これに限定するものではない。
【0048】
一実施形態において、前記粒子は、ポリエステル樹脂の合成時、グリコール成分に分散させた粒子スラリー状に添加することが、分散性に優れ、粒子間の再凝集を防止可能なために効果的であるが、これに制限されるわけではない。つまり、エステル化交換反応に、または、前記エステル交換反応の終了後で重縮合反応の開始前にも添加するのでありうるが、これに制限されない。
【0049】
一実施形態として、前記離型フィルムは、前記のように、重合時に粒子を製造してペレットを得て、これを共押出してベースフィルムの両面に積層し、必要によって、延伸して製造することができる。
【0050】
また、ポリエステルベース樹脂と前記粒子を用いて別途のマスターバッチを製造し、これを再びポリエステル樹脂と混合して溶融混練し、共押出してベースフィルムの両面に積層して製造することができ、必要によって、積層した後、延伸過程をさらに経ることができる。
【0051】
本発明の一態様による離型フィルムは、二軸延伸ポリエステルフィルムであってもよいが、必ずしもこれに限定するものではない。
【0052】
一実施形態として、前記二軸延伸は、同時二軸延伸または順次の二軸延伸であってもよいし、順次の二軸延伸の場合は、長手方向(縦方向)に延伸した後、幅方向(横方向)に延伸する工程を行うことによって達成できる。このように二軸延伸することによって、長手方向および幅方向の強度および結晶化状態を均一にし、各方向での裁断を効率的に行うことができる。
【0053】
一実施形態として、前記離型フィルムは、機械方向に3~5倍および幅方向に4~6倍の二軸延伸がされたものであってもよいし、前記延伸比において高分子構造の熱的寸法安定性がさらに増加して熱収縮を低減できるので好ましいが、これに制限されるわけではない。
【0054】
本発明の一態様において、前記離型フィルムは、二軸延伸後、200~250℃で熱処理および1~10%弛緩したものであってもよい。具体的には、熱処理と同時に弛緩を付与してもよいし、さらに具体的には、幅方向に1~10%、より具体的には2~4%弛緩を行うものであってもよい。前記範囲でフィルムが幅方向に緊張した状態を維持して高分子構造の緻密性が高くなり、熱による変形を低減できるので好ましいが、これに制限されるわけではない。
【0055】
本発明の一実施形態による前記離型フィルムは、JIS B-0601を基準として、3次元表面粗さ測定器(Tokyoseimitsu、Surfcom 590A-3DF-12)を用いて測定された巨大突起の個数が2.0個/mm2以下の場合、より具体的には0.1~2個/mm2以下の場合、巻取性および走行性を満足するので、生産性が向上するフィルムを提供できるので好ましいが、これに制限されるわけではない。
【0056】
一実施形態として、前記離型フィルムの総厚さが10~50μm、より具体的には20~40μmであってもよい。MLCC用離型フィルムの基材フィルムとして用いられるポリエステルフィルムは、持続的に、その使用厚さが薄膜化されていく傾向にあるので、前記範囲での適用に好適である。
【0057】
また、一実施形態として、前記離型フィルムにおいて、ベースフィルムと、両面の表面層との厚さの比が、50%:50%~90%:10%より好適には60%:40%~80%:20%であってもよい。前記範囲にて、走行性に優れ、スリップ性に優れ、ロールに対する巻取性が向上し、切削粉が少なく発生するフィルムを提供できるので好ましい。
【0058】
さらに、本発明において、両面の表面層の厚さは特に制限しないが、厚さ比が1:0.8~1.2の厚さとする場合、本発明の効果をより良く達成できるので、より好まれるのであるが、これに限定するものではない。
【0059】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより詳しく説明する。ただし、下記の実施例および比較例は、本発明をより詳しく説明するための一つの例に過ぎず、本発明が下記の実施例および比較例によって制限されるわけではない。
【0060】
以下、物性を次のように評価した。
【0061】
[平均粒径]
粒度分布測定器(Beckman社のLS13 320)を用いて測定した。
【0062】
[表面粗さ(Ra)]
JIS B-0601を基準として、ポリエステルフィルムを左/中/右の3個所に切片した後、3次元表面粗さ測定器(Tokyoseimitsu、Surfcom 590A-3DF-12)を用いて、測定速度0.03mm/sec、触針半径2μm、荷重0.7mm/N、測定面積1.0mm2、カットオフ値0.08mmの条件下で測定した。
【0063】
中心線をx軸、垂直方向をy軸として粗さ曲線をy=f(x)で表した時、下記の式で計算した。
【0064】
【0065】
(L:基準長さ(Cut-Off))
【0066】
[巻取収率]
実施例および比較例で製造されたポリエステルフィルムを、製造時における投入量に対する製品生産量を計算して、次のように評価した。
【0067】
巻取収率(%)=製品生産量/投入量×100
【0068】
◎:収率が65%以上の時
○:収率が55以上65%未満の時
△:収率が55%未満の時
【0069】
[切削粉の発生程度]
製造されたフィルムを300m/minの速度で500mmの幅にスリットし、スリットした後の、500mmのフィルムロールにおけるPET切削粉による粒子の有無を、フィルムロールの表面から確認し、1m2あたりの粒の数が、0点の場合は1級、1点~3点の場合は2級、4点~6点の場合は3級、7点~9点の場合は4級、10~12点の場合は5級、13点以上を6級とした。
【0070】
[実施例1]
1)ポリエステル樹脂チップ(1)の製造
ジメチルテレフタレート100重量部に対して、エチレングリコール50重量部と、静電ピニング剤としてのマグネシウムアセテートを400ppm及びカルシウムアセテート200ppmと、重合触媒としての三酸化アンチモン150ppmとを、エステル化反応器に投入した後、常温から230℃までの4時間のエステル交換反応を進行させて、予備重合物BHET(bis-βterephthalate)を製造した。反応中に発生した副生成物であるメタノールは、反応器外に流出させて蒸留塔を通して分離し、エステル化反応終了後に追加的に発生するエチレングリコールも蒸留塔を通して分離した。この際、熱安定剤としてトリメチルホスフェート200ppmを添加した後、285℃まで徐々に昇温すると同時に、圧力を0.3torrまで減圧した。高真空下にて重縮合反応を4時間行って、固有粘度0.630dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂チップを製造した。
【0071】
2)ユニモーダル表面層(離型面)ポリエステルチップ(2)の製造
前記ポリエステルチップ(1)に、平均粒径が0.3μmのシリカ(粒子A)を0.3重量%添加して、二軸混練機を用いて溶融押出することでポリエステルチップ(2)を製造した。
【0072】
3)バイモーダル表面層(背面)ポリエステルチップ(3)の製造
前記ポリエステルチップ(1)に、平均粒径が0.8μmの炭酸カルシウム(粒子B)を0.1重量%、および、200nmの炭酸カルシウム0.2μmの炭酸カルシウム粒子0.4重量%を添加して、二軸混練機を用いて溶融押出することでポリエステルチップ(3)を製造した。
【0073】
4)フィルムの製造
コア層にはポリエステルチップ(1)を使用し、離型面に相当する表面層には前記チップ(2)を、背面に相当する表面層にチップ(3)を使用して、離型面/コア層/背面で積層された3層フィルムに共押出し、冷却ロールにキャスティングして未延伸シートを製造した。この際、前記コア層は全体のフィルム重量の80重量%、表面層は全体のフィルム重量の20重量%で、それぞれの表面層は同一重量で共押出した。
【0074】
押出機を介して溶融押出した後、表面温度20℃のキャスティングドラムで急冷、固化させてシートを製造した。製造されたシートを95℃で、機械方向に3.5倍、横方向に4.0倍延伸し、230℃で熱処理して、厚さ30μmの二軸延伸フィルムを製造した。製造されたフィルムの物性を測定して、下記表2に示した。
【0075】
[実施例2]
実施例1において、チップ(2)とチップ(3)との重量比を1:2とし、コア層と表面層との重量比を70:30の重量比で共押出したことを除けば、同様に実施した。製造されたフィルムの物性を測定して、下記表2に示した。
【0076】
[実施例3]
実施例1において、チップ(2)における粒子の大きさを0.6μmにしたことを除けば、同様に実施した。その結果、複合フィルムの物性を測定して、下記表2に示した。
【0077】
[実施例4]
実施例1において、チップ(3)における大きい粒子の大きさを1.4μmに変更したことを除けば、同様に実施した。その結果、複合フィルムの物性を測定して、下記表2に示した。
【0078】
[比較例1]
実施例1において、チップ(3)における粒子を0.7μmの単一粒子を用いたことを除けば、同様に実施した。その結果、複合フィルムの物性を測定して、下記表2に示した。
【0079】
【0080】
前記表1に示すように、2種の粒子を使用しても粒子間の粒子の大きさの比およびバイモーダル粒度分布が本発明の範囲を超える場合、生産収率が不良であることが分かった。また、切削粉の発生が増加し、巻取収率が低下し、表面粗さが増加することを確認した。
【0081】
以上、本発明では、特定の事項と限定された実施例によって説明されたが、これは本発明の、より全般的な理解のために提供されたものに過ぎず、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0082】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限って定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形があるすべてのものは、本発明の思想の範疇に属する。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項8
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項8】
前記無機粒子は、金属酸化物、金属炭化物、金属硫化物、金属炭窒化物
から選択されるいずれか1つまたは2つ以上である、請求項7に記載のポリエステル系離型フィルム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項9
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項9】
前記有機粒子は、シリコーン樹脂、架橋アクリル粒子、架橋ポリスチレン粒子、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド樹脂およびメラミン-ホルムアルデヒド樹脂
から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の混合物である、請求項7に記載のポリエステル系離型フィルム。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
押出機を介して溶融押出した後、表面温度20℃のキャスティングドラムで急冷、固化させてシートを製造した。製造されたシートを95℃で、機械方向に3.5倍、横方向に4.0倍延伸し、230℃で熱処理して、厚さ30μmの二軸延伸フィルムを製造した。製造されたフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
[実施例2]
実施例1において、チップ(2)とチップ(3)との重量比を1:2とし、コア層と表面層との重量比を70:30の重量比で共押出したことを除けば、同様に実施した。製造されたフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
[実施例3]
実施例1において、チップ(2)における粒子の大きさを0.6μmにしたことを除けば、同様に実施した。その結果、複合フィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
[実施例4]
実施例1において、チップ(3)における大きい粒子の大きさを1.4μmに変更したことを除けば、同様に実施した。その結果、複合フィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0078
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0078】
[比較例1]
実施例1において、チップ(3)における粒子を0.7μmの単一粒子を用いたことを除けば、同様に実施した。その結果、複合フィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【国際調査報告】