(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-20
(54)【発明の名称】放射性同位元素源によるユニバーサル化学プロセス装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/12 20060101AFI20241213BHJP
B01J 8/42 20060101ALI20241213BHJP
G21F 1/08 20060101ALI20241213BHJP
C01B 15/027 20060101ALI20241213BHJP
C01F 11/46 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
B01J19/12 C
B01J8/42
G21F1/08
C01B15/027
C01F11/46 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523871
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 US2022046749
(87)【国際公開番号】W WO2023069324
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522296413
【氏名又は名称】アドバンスド フュージョン システムズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】バーンバッハ,カーティス
(72)【発明者】
【氏名】ジョイス,ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4G070
4G075
4G076
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AA03
4G070AB06
4G070BB32
4G070CA06
4G070CB07
4G070CB13
4G070CC01
4G075AA02
4G075AA42
4G075AA61
4G075BA05
4G075BA08
4G075BA10
4G075BB10
4G075CA38
4G075DA02
4G075DA18
4G075EA01
4G075EB01
4G075EC01
4G076AA14
4G076AB05
4G076AB10
4G076AB21
4G076BA24
4G076BE20
4G076BG04
4G076BH01
(57)【要約】
縦方向の中心軸及び主室を有する反応容器を備えるユニバーサル化学プロセス装置(UCP)であって、このUCPは、主原料のための第1の入口ポートと、流動化媒体のための第2の入口ポートと、1つ以上の反応物のための第3の入口ポートとを備える。このUCPはまた、反応性放射性化学プロセス装置(R
2CP)も備え、このR
2CPは、主室内の縦軸に沿って延在する放射性元素を含む。作業では、流動化媒体及び原料が、第1及び第2の入口ポートを介して主室に供給されるときに、流動床は、主室内で支持され得、R
2CPの放射性元素は、原料及び反応物をイオン化し、化学反応を誘発し、放射ゾーン内のすべての有機材料を無菌化し分解させることが可能な電離放射線を照射する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向の中心軸及び主室を有する反応容器を備えるユニバーサル化学プロセス装置(UCP)であって、前記UCPは、
前記主室に通ずる主原料のための第1の入口ポートと、
前記主室に通ずる流動化媒体のための第2の入口ポートと、
前記主反応器室に通ずる1つ以上の反応物のための第3の入口ポートと、
反応性放射性化学プロセス装置(R
2CP)と、を備え、前記R
2CPは、
前記主室内の前記縦軸に沿って延在する放射性元素と、
前記UCP内で生成された生成物のための出力と、を含み、
作業では、流動化媒体及び原料が、前記第1及び第2の入口ポートを介して前記主室に供給されるときに、流動床は、前記主室内で支持され得、及び
前記R
2CPの前記放射性元素は、原料及び反応物をイオン化し、化学反応を誘発し、放射ゾーン内のすべての有機材料を無菌化し分解させることが可能な電離放射線を照射する、前記UCP。
【請求項2】
前記放射性元素が、前記主室の中央に位置し、流線型の形をしている、請求項1に記載のUCP。
【請求項3】
前記放射性元素が、原子力施設から得た使用済み燃料棒を含む、請求項1に記載のUCP。
【請求項4】
中央に位置し、流線型の円筒形の放射性元素を前記主室から除去し、その中で交換することを可能にする前記主室の壁に結合された取り外し可能な遮蔽蓋をさらに含む、請求項2に記載のUCP。
【請求項5】
前記放射性元素が、前記主室の壁の薄い縦セクションを周方向に囲む外被として形成される、請求項1に記載のUCP。
【請求項6】
前記主室内に配置される触媒材料をさらに含む、請求項1に記載のUCP。
【請求項7】
前記触媒が、前記主室内のスクリーン、プレート及び容器のうちの1つに配設される、請求項5に記載のUCP。
【請求項8】
作業では、前記R
2CPが電離放射線を照射する間、前記流動床が支持され得る、請求項1に記載のUCP。
【請求項9】
前記第1、第2及び第3の入口ポートが、前記電離放射線に対して遮蔽されている、請求項1に記載のUCP。
【請求項10】
前記第1の原料入口ポート及び第2の流動化媒体入口ポートが、原料及び流動化媒体を、前記放射ゾーンの上流で前記反応容器の底部に送達する、請求項1に記載のUCP。
【請求項11】
前記第1の原料入口ポート及び第2の流動化媒体入口ポートから下流の前記反応器の前記底部に配置された拡散器をさらに備え、前記流動化媒体及び原料を、前記主室に均一に分散させることを助けるよう作動する、請求項10に記載のUCP。
【請求項12】
前記主室から前記外被を単離する前記壁の前記縦セクションの厚さが、前記外被から照射されるガンマ線照射のエネルギーレベルを、前記中央パイプの直径及び処理される前記材料の密度に適した所定のエネルギーに低減するよう操作される、請求項5に記載のUCP。
【請求項13】
前記壁の前記縦セクションの前記厚さが、照射されたガンマ線のエネルギーが1.2MeV未満となるように操作される、請求項12に記載のUCP。
【請求項14】
化学処理の方法であって、
原料、流動化媒体及び反応物を受け取り、流動床を支持するための反応容器を構成すること、及び
前記容器内の放射ゾーンに電離放射線を放射するよう作動する、前記容器内に放射性元素を配置することを含む、前記方法。
【請求項15】
前記放射性元素が、前記反応容器の中央に位置し、流線型の形をしている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記放射性元素が、原子力施設から得た使用済み燃料棒を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記電離放射線が、閾値レベルを下回る場合に、前記燃料棒を前記容器から取り外し可能な遮蔽蓋を介して除去することと、
前記取り外し可能な遮蔽蓋を通じて前記容器に新しい燃料棒を配置することと、を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記反応容器が、室内側を囲む壁を備え、前記放射性元素が、前記室内側の前記壁の薄い縦セクションを周方向に囲む外被として形成される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記放射性元素が、前記放射ゾーン内で原料及び反応物をイオン化するよう作動する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記放射性元素が電離放射線を照射する間、前記流動床が支持される、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記反応容器が、地球圏外の自然物に配設される、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記地球圏外の自然物に見られる鉱物物質を前記反応容器に投入することと、
前記鉱物物質を、反応物及び前記放射性元素により生成された電離放射線に暴露することによる化学反応に供することと、を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記主室から前記外被を単離する前記壁の前記縦セクションの厚さが、前記外被から照射されるガンマ線照射のエネルギーレベルを、前記中央パイプの直径及び処理される前記材料の密度に適した所定のエネルギーに低減するよう操作される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
縦方向の中心軸及び主室を有する反応容器を備える、化学反応、分解及びその他の改変を誘発するための反応性放射性化学プロセス装置(R
2CP)であって、前記装置は、
前記主室に通ずる主原料のための第1の入口ポートと、
前記主室に通ずる流動化媒体のための第2の入口ポートと、
前記主室内の前記縦軸に沿って延在する放射性元素と、を含み、
前記R
2CPの前記放射性元素は、原料及び反応物をイオン化し、化学反応を誘発し、放射ゾーン内のすべての有機材料を無菌化し分解させることが可能な電離放射線を照射する、前記R
2CP。
【請求項25】
前記放射性元素が、前記反応容器の中央に位置し、流線型の形をしている、請求項24に記載のR
2CP。
【請求項26】
前記放射性元素が、原子力施設から得た使用済み燃料棒を含む、請求項24に記載のR
2CP。
【請求項27】
前記中央に位置し、流線型の円筒形の放射性元素を前記主室から除去し、その中で交換することを可能にする前記主室の壁に結合された取り外し可能な遮蔽蓋をさらに含む、請求項25に記載のR
2CP。
【請求項28】
前記放射性元素が、前記室内の壁の薄い縦セクションを周方向に囲む外被として形成される、請求項24に記載のR
2CP。
【請求項29】
前記主室から前記外被を単離する前記壁の前記縦セクションの厚さが、前記外被から照射されるガンマ線照射のエネルギーレベルを、前記中央パイプの直径及び処理される前記材料の密度に適した所定のエネルギーに低減するよう操作される、請求項24に記載のR
2CP。
【請求項30】
前記壁の前記縦セクションの前記厚さが、前記照射されたガンマ線のエネルギーが1.2 MeV未満となるように操作される、請求項29に記載のR
2CP。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は化学工学に関し、特に、多種多様な化学反応を誘発させる方法及び装置、ならびにより低コストかつ汚染を低減、または排除するプロセスに関する。
【0002】
定義
酸性鉱山廃棄物:酸性鉱山水とも呼ばれ、どちらの場合もAMWと略される。これは、鉱山からの流出または採鉱作業における酸性選鉱プロセスによって汚染された地下水である。この液体は、多種多様な化学物質によって高度に汚染されており、重大な汚染源となっている。
【0003】
アクチニド:周期表の原子番号89~103の位置を占め、さまざまな程度に天然放射性である化学元素。この文書の目的において、原子番号88のラジウム、及び理論的にはランタニドであるが、原子番号61の天然放射性元素でもあるプロメチウムは、アクチニドに含める。多くの場合、これらの元素はさまざまな比率で一緒に見出されることから、その後の分離プロセスを複雑にすることに留意されたい。
【0004】
選鉱:鉱物資源または冶金資源の特性を、商業及び工業目的に適した生成物に高めるプロセスまたは一連のプロセス。
【0005】
濃縮:媒体内の他の望ましくない元素または化合物を除去することによって、媒体内の元素または化合物の割合を増やす化学的または機械的なプロセス。
【0006】
乾燥機:この文書の文脈において、「乾燥機」という専門用語は、化学プロセスに熱エネルギーを適用して、当該化学物質から水またはその他の望ましくない液体成分を除去する手段を指す。適切な作業のために適切な配慮がなされている限り、乾燥機の物理的コンポーネントは、所定のシステム内で他の機能も持つことに留意されたい。
【0007】
ドライケミストリー:本明細書で使用される「ドライケミストリー」という用語は、溶液ではなくプラズマが発生するプロセスを指す。これらは、排出される汚染物質が少なく、修復もはるかに簡単である。これはまた、粉砕、研削、スクリーニング、選別などの他の鉱物選鉱プロセスを指す場合にも使用することができるが、これらのプロセスは液体浴で実行されることもなく、その作業によって大量の汚染物質が生成されることもない。
【0008】
電磁界:説明を簡単にするために、本明細書で「電磁界」という用語が単独で使用されている場合、それは電界のみ(E)、磁界のみ(H)、静電界、またはこれらの組み合わせのいずれかを意味する。
【0009】
抽出:特定の元素または化合物を周囲のマトリックスから分離するように設計された化学プロセスまたは一連のプロセス。
【0010】
原料:システムによって実行されるプロセスによって変更(分離、化学的改変、分解、滅菌など)されることが意図されている、システムに投入される出発物質。原料は、粒状固体、液体、気体、またはプラズマを含み得る。
【0011】
フィールド強化:この文書の文脈において、「フィールド強化」という専門用語及びその派生語は、そのようなフィールドの存在が、意図的に印加された電界及び磁界の存在下で発生する、特定の装置内で行われる反応のいくつかの側面を強化することを指す。
【0012】
フラッシュX線照射装置:内部の反応ゾーン内で、物質を分解、無菌化、または反応させる目的で、極めて高い放射線レベルを発生できる円筒形の大面積X線源。フラッシュX線照射装置は、RXCPの前身となる技術であり、米国特許第8,019,047号「Flash X-ray Irradiator」(以下、’047特許またはFXI)に記載されている。’047特許は、いかなる目的においてもその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
フロキュレーション:化学凝固剤を浴槽に加え、粒子間の結合を促進して、分離しやすい大きな凝集体を作成する化学プロセス。粒子は、フロックまたはフレーク(同義の専門用語)の形で懸濁液から取り出される。この作用は、沈殿とは異なり、フロキュレーション前には、粒子は液体中に安定した分散液の形で単に懸濁しているだけで、溶液中に完全に溶解しているわけではない。
【0014】
浮選:1つ以上の目的の化合物または元素を含む溶液を、特定のpH及び組成の化学浴と混合し、目的の化合物または元素を表面に浮かび上がらせ、スキマーまたは同様の装置で除去できるようにする化学プロセス。浮選後、目的の化合物または元素は洗浄され、乾燥されるか、場合によっては、追加の湿式処理に供され、所望の化合物または元素が抽出される。
【0015】
流動床:適切な条件下で、流体(液体、気体、またはプラズマ)が一定量の粒状固体媒体(通常は保持容器内に存在する)を巻き込み、流体として挙動する粒状固体/流体混合物を生成するときに発生する物理現象であり、これを粒子媒体の流動化と称する。これは通常、加圧された流体、気体、またはプラズマを、粒子媒体を介して導入することによって達成される。この得られた固体/流体混合物は、重力下で自由に流れる能力や、流体タイプの技術を使用してポンプで送ることができる能力など、通常の流体の多くの特性と特徴を備えている。流動床は、化学反応を促進するために使用され、密度及び粒度に基づいて物質を分離するためにも使用することができる。
【0016】
流動床濃縮器:流動床技術の側面を利用して、粒度、密度、または流動化媒体の圧力に基づいて原料の物理的な分離を達成する機械装置。FB濃縮器またはFB分離器とも称される。
【0017】
流動化媒体:流動床に注入され、床媒体の流動化を行う粒状固体、液体、気体、またはプラズマ。
【0018】
フッ化アパタイト:一部の肥料、リン酸、フッ化水素酸、及びリン酸石膏が生成される鉱石。その化学式は、Ca5F(PO4)3である。これは、通常は、ヒドロキシアパタイト[Ca5(PO4)3OH]との組み合わせで見受けられる。
【0019】
電離放射線:放射線が通過する媒体中でイオン化させる十分なエネルギーを有する粒子、X線、またはガンマ線からなる放射線。
【0020】
ランタニド:希土類元素として知られ、周期表の原子番号57~71の位置を占める化学元素、ならびにスカンジウム(原子番号21)、及びイットリウム(原子番号39)。
【0021】
浸出:原料を別の化学物質(通常は強酸、塩基、バクテリア、または塩であるが、必ずしもそうとは限らない)と混合して、目的の化学物質を動員する化学プロセス。目的の化学物質が溶液に入り、その後の処理ステップで使用できるようになる。
【0022】
配位子:配位子は、中心原子に結合して配位錯体を形成するイオンまたは分子である。錯体中の配位子は、配位子の置換速度、配位子自体の反応性、及び酸化還元など、中心原子の反応性を決定する。配位子選択は、配位子が関与するほとんどの反応において重要な考慮事項である。
【0023】
動員:鉱物資源内の複合体から目的の元素または化合物を遊離させ、さらなる選鉱を可能にする化学プロセス。
【0024】
変調:アナログ弁などのアナログ機器の設定を連続的に調整する(つまり、完全に閉じた状態から部分的に閉じた状態/開いた状態から完全に開いた状態へ)。
【0025】
リン酸石膏:肥料、リン酸、及びフッ化水素酸の製造におけるフッ化アパタイトの精製時に生じる副産物。化学的には、これは硫酸カルシウム(CaSO4・2H2O))の水和物である。この物質には、回収可能な量の希土類元素(ランタニド)及び一部の放射性元素(アクチニド)も含まれている。
【0026】
リン酸:化学物質H3PO4は、一部の肥料の製造に使用され、また多くの化学反応、ならびに一部の食品、化粧品、及び歯磨き粉の製造にも使用される。
【0027】
プラズマ:プラズマは、(固体、液体、気体以外の)第4の物質の状態である。これは、1つ以上の電子が除去されているのが特徴で、液体及び気体の両方の性質を示す。プラズマは、DC励起、RF(及びマイクロ波)励起、ならびにX線、ガンマ線、及び高エネルギー二次電子による励起を含むが、これらに限定されないさまざまな手段によって生成される。本発明は、主にイオン化の手段としてのX線の使用に関する。X線はエネルギーが非常に高いため特に有用であり、単一の光子を特定の反応で複数回使用することができ、これには高エネルギー二次電子の生成も含まれ、二次電子自体も、エネルギーが十分に高ければ反応を刺激するのに役立つ。これは、本発明が企図する多くの反応に必要な条件である、全イオン化を達成するための最も単純な手段でもある。
【0028】
沈殿:1つ以上の目的の化合物または元素を含む溶液を、容器内で特定のpH及び組成の化学浴と混合し、目的の化合物または元素を容器の底に沈め、そこからいくつかの周知の手段のいずれかで除去できるようにする化学プロセス。
【0029】
希土類元素:ランタニド、原子番号21のスカンジウム、及び原子番号39のイットリウムを含む元素群(原子番号57~71)。
【0030】
反応性X線化学プロセス装置:X線放射を使用して存在する種をイオン化し、プラズマ環境での反応を促進することで反応条件を強化するように設計された化学プロセス装置の一種。このプロセス装置は、「Method and Apparatus for Inducing Chemical Reactions by X-ray Irradiation」と題された米国特許第9,406,478号に開示されている(以下、’478特許及び/またはRXCP)。’478特許は、いかなる目的においてもその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
スクリーニング:スクリーンを使用して、粒状物質を、粒度別に複数の等級に機械的に分離する方法。スクリーンは、穴のサイズよりも小さい粒子が通過できる、均一な密集した穴のパターンを持つ表面である。スクリーニングは、重力、振動、密度、または静電技術を使用して実行することができる。
【0032】
分離:化学的に類似した化合物を分離するために設計された、化学的もしくは機械的なプロセス、または一連のプロセス。
【0033】
沈降(堆積):目的の化合物または元素が、時間の経過とともに容器内の混合物から(通常は重力により)沈んでいき、追加の化学物質を使用しない、沈殿に似たプロセス。目的の化合物または元素は、その後、周知の手段によって容器から収集することができる。
【0034】
ふるい分け:精密スクリーンを使用して粒度に基づいて物質を分類する実験室手順であるスクリーニングのサブセット。American Society for the Testing of Materials(ASTM)が画面サイズを定義している。これらは通常「メッシュ」で表され、つまり、200メッシュ、50メッシュなど。
【0035】
スタック:リン酸石膏は、通常、「スタック」と呼ばれる非常に大きな山にして屋外に保管される。スタックの大きさは数十エーカーに及ぶことが多く、高さは数百フィートになる場合もある。
【0036】
尾鉱:鉱山採鉱作業の選鉱プロセスから残った物質。
【0037】
増粘:名前が示すように、増粘とは溶液、液体、スラリーなどの粘度を増加させるプロセスである。低粘度でもうまく機能する化学プロセスもあれば、高粘度を必要とする化学プロセスもある。増粘は、処理のさまざまな段階で物質の粘度を制御する信頼性の高い方法を提供する。
【0038】
湿式化学:本明細書で使用される「湿式化学」という用語は、液体の媒体及び状態で実行される化学プロセスを指す。鉱物鉱石、尾鉱、廃棄物、及び副産物の処理に使用される場合、一般的には、大量の強酸、強塩基、アミン、及び生物製剤を利用するプロセスを指す。湿式プロセスは、一般に汚染がひどく、修復には費用がかかる。
【背景技術】
【0039】
多くの工業用途では、異なる化学物質を反応させること、時には、それらを化学、粒度または密度に基づいて分離させることを必要とする。これらのプロセスは、慣行的には湿式化学を使用して実行され、多くの場合、有毒かつ公害な化学物質を伴い、所望の最終生成物に加えて、汚染された廃棄物ストリーム及び副産物を生成する。
【0040】
例えば、鉱業では、鉱石から有用な鉱物資源を抽出するために、採鉱作業は多様な選鉱プロセスを用いて鉱石中に存在する他の鉱物や元素から化学的かつ機械的に所望の鉱物及び元素を分離させる。これらのプロセスには、限定されないが、浸出、剥離、沈殿、沈降、浮選、堆積、フロキュレーション、濃縮、動員、スクリーニング、及び増粘が伴う。これらのプロセスは、しばし「湿式」プロセスと称される。
【0041】
多くの場合、これらのプロセスは、強酸(硫酸、硝酸、塩酸、フッ化水素酸など)、強アルカリ(苛性ソーダ(NaOH)、生石灰(CaO)、アンモニア(NH3)、ソーダ灰(Na2CO3)、石灰石(CaCO3)など)、濃縮塩(塩化カリウムなど)、さまざまなアミン他、有毒で汚染度の高い化学物質を使用する大規模な液体化学作業(大型の液体槽、タンク、または池など)に基づいている。これらの化学物質は、所望の化学反応を効率的に生成することができるが、選鉱プロセス中に液体が高度に汚染され、環境に配慮した方法で処分することが非常に困難である。
【0042】
湿式化学プロセスに関連する環境問題のため、米国では希土類処理などの特定の処理活動は、もはや実施されていないか、または、ほとんど実施されていない。希土類鉱物はハイテク製造業にとって極めて重要であるにもかかわらず、環境規制を遵守しながら希土類元素を含む物質を選鉱することが困難で費用がかかりすぎることが判明したため、米国は1980年代に採掘及び希土類処理における世界的な支配的地位をほぼ放棄した。希土類鉱物の鉱床が多く、環境規制も少ない中国は、その後、希土類元素の最大処理国となった。世界的に、重要な希土類資源を保有する多くの企業は、国内での物質処理及びその活動による有毒な副産物の取り扱いを避けるために、採掘した鉱石を中国やその他1~2ヶ国に処理のために送っている。
【0043】
米国がこの市場において自給自足の立場に戻る必要があるという認識は、ごく近年のことである。しかし、希土類選鉱における最先端の技術は、依然として同じ環境問題を抱えた湿式化学プロセスのままである。したがって、特に希土類鉱物のための、プロセス技術の改善が大いに必要とされている。
【発明の概要】
【0044】
第1の態様では、本開示は、縦方向の中心軸及び主室を有する反応容器を備えるユニバーサル化学プロセス装置(UCP)を提供し、主原料のための第1の入口ポート、流動化媒体のための第2の入口ポート、1つ以上の反応物のための第3の入口ポートを備える。UCPはまた、主室内の縦軸に沿って延在して配置される放射性元素を含む反応性放射性化学プロセス装置(R2CP)を含む。作業では、流動化媒体及び原料が、第1及び第2の入口ポートを介して主室に供給されたときに、流動床は、主室内で支持され、R2CPの放射性元素は、原料及び反応物をイオン化し、化学反応を誘発し、放射ゾーン内の有機材料を無菌化し分解させることが可能な電離放射線を照射し、当該プロセスは、個別、またはさまざまな組み合わせで使用することができる。
【0045】
別の態様では、本開示は、原料、流動化媒体及び反応物を受け取るための反応容器を構成するステップ、及び流動床を支持するため、及び容器内の放射ゾーンに電離放射線を放射するよう作動する容器内に放射性元素を配置するためのステップを含む化学処理の方法を提供する。
【0046】
流動床は、典型的な流動床反応化学処理及び分離プロセスの両方に使用することができる。流動床は、RXCPとは別に、またはそれと組み合わせて使用することができ、RXCPは、流動床とは別に、またはそれと組み合わせて使用することができる。
【0047】
本開示の多数の追加の発明の態様が、以下の詳細な説明に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本開示によるユニバーサル化学プロセス装置(UCP)の実施形態の断面図である。
【
図2】本開示の実施形態によるUCPの簡略化された概略断面図であり、X線を使用しないプラズマ強化流動床用の例示的な電極構成を示している。
【
図3】本開示の実施形態によるUCPプランの簡略化された概略断面図であり、流動床作業用の原料インジェクターとして使用するために改造された例示的な反応物インジェクターを示している。
【
図4】本開示の実施形態によるUCPの簡略化された概略断面図であり、UCP内の触媒の例示的な配置を示している。
【
図5】本開示によるUCP及び制御システムを含むシステムの実施形態を示す概略図である。
【
図6】本開示の実施形態によるUCPの断面図であり、UCP内で生成されたプラズマが、静電界強化を使用して閉じ込められている。
【
図7】本開示の実施形態によるUCPの断面図であり、UCP内で生成されたプラズマが、電磁界強化を使用して閉じ込められている。
【
図8】UCPの流動床作業を用いた本開示による分離プロセスの第1段階を示す概略断面図である。
【
図9】UCPの流動床作業を用いた本開示による分離プロセスの第2段階を示す概略断面図である。
【
図10】UCPの流動床作業を用いた本開示による分離プロセスの第3段階を示す概略断面図である。
【
図11】加熱/電極素子を有する本開示の実施形態によるUCPの概略断面図である。
【
図12】R
2CPと称される、UCPのRXCP/FXI部分の別の実施形態の縦断面図であり、R
2CPでは、中央に位置した放射性同位元素が、電動の電子銃の代わりに電離放射線源として使用される。
【
図13】R
2CPの別の縦断面図であり、生物学的放射線遮蔽の取り外し可能な部分が、放射性中心元素の交換が必要の際に、その取り換えを可能にするよう取り外し可能であることを示す。
【
図14】R
2CPの異なる構成の断面図を示し、放射性元素が反応ゾーンの外表面の周りに不均一に配置されている、放射線が反応ゾーンの壁を貫通する際、FXI、RXCP、及びUCPと同じように追加のX線及び二次電子を生成する。
【発明を実施するための形態】
【0049】
前述のように、鉱業の現在の慣行では、浸出、浮選、沈殿、フロキュレーション、及び沈降などの「湿式」プロセスを使用して選鉱が実施される。これらのプロセスは、典型的には、大量の強酸(典型的には、硫酸(H2SO4)、硝酸(HNO3)、塩酸(HCl)、フッ化水素酸(HF)など)、強アルカリ(苛性ソーダ(NaOH)、生石灰(CaO)、アンモニア(NH3)、ソーダ灰(Na2CO3)、石灰石(CaCO3)など)、バクテリア、またはその他の塩溶液を必要とする。これらのプロセスの最後には、多種多様な有毒化学物質に汚染された大量のこれらの化学物質が残り、重大な汚染の脅威となる。この廃棄物を修復するにはコストがかかり、得られる生成物の総コストが増加する。さらに、選鉱作業では、大量の汚染された処理水が生成されることが多く、これらは相当量の処理を行わなければ照射することができない。要するに、鉱業で行われる分離及び関連プロセスは、鉱業で生成される有毒廃棄物の相当な部分の発生の原因であり、無公害の代替品に置き換えることで、念願の課題は解決されるだろう。
【0050】
本開示は、化学処理のための方法及び装置を提供する。好ましい実施形態では、ユニバーサル化学プロセス装置(UCP)と称される、化学処理のための装置は、反応性X線化学プロセス装置(RXCP)に統合された流動床反応器を含む。RXCPは、いくつかの作動的構成において、フラッシュX線照射装置(FXI)として動作し得る。UCPは、乾燥及び電磁界強化のための追加の構成要素を含み得る。電磁界強化は、電界、静電界及び磁界を使用して多種多様な運転モードを介してUCP内で化学反応を起こすことを含む。したがって、UCPは、流動床、X線またはガンマ照射の両方の側面と、他の技術を組み合わせてより大きな結果を達成し、以前は使用することのできなかったプラズマベースの処理計画を可能にする。流動床は、反応性化学プロセス装置として運転することが可能である他に、作業的な制御パラメータを変更することによって純粋に機械的ベースで分離を実行することができる。個別には、各構成要素は、特定の範囲の作業が可能である。組み合わせた場合に、個別の作業に加えて、本開示の方法及び装置は、以下に記載されるように、複数の個別の段階及び作業を組み合わせたことの直接の結果として、プロセスステップ及び物理的工場設備を想定外に減少させることができる。本開示はUCPと実施することができる、いくつかの例示的なプロセスを提供し、それらのすべては、UCPの一意的構造により、従来のアプローチよりも強化したものを直接構成する。さらなる実施形態では、本開示は、放射性同位元素源を使用する化学処理、分解、及び無菌化のための装置を提供する。
【0051】
図1は、本開示によるUCPの実施形態の断面図である。UCP100は、この場合、垂直な縦方向の中心軸を有する、略円筒形または円柱形の容器105を備える。UCPはさまざまな方向に配置でき、水平または傾斜した縦軸を有し得るが、流動床での作業のほとんどの場合において、垂直方向が好ましい。
図1に示される容器105の下部である底部108には、当該技術分野で周知のように、容器105に溶接、成形、または取り付けることができる複数の入口ポートが配置されている。図示の実施形態では、原料入口ポート110が容器の底部108に結合され、原料が容器内に送り込まれる導管を提供する。原料は、典型的には他の導入物質よりも直径が大きいため、原料入口ポート110の直径は原料生成物を収容できるように対応するサイズとなっている。原料は、容器内で何らかの方法で処理されることを意図した粒状固体、液体、気体、またはプラズマ材料を含む。例えば、原料は、反応化学プロセス、接触分解、燃焼、熱もしくは物質移動、生成物の分離、または界面の改質(例えば、固体物品へのコーティングの適用)のために、1つ以上の化学反応を起こして、原料流体の成分を分離するために容器に導入され得る。有利な一実施形態では、原料は廃棄物貯蔵スタックからのリン酸石膏であり、これは肥料製造の副産物であり、希土類元素及び放射性元素などの多数の汚染物質を含む可能性がある。原料は、原料入口ポート110に連続的にまたはバッチで(バッチモードと称される)送達することができ、汚染物質は、分離させてさらに処理することも、そのまま使用することもできる。原料は、反応物インジェクターポートなどの他のポートを使用して供給することもできる。
【0052】
底部108の原料入口ポートに隣接して、流動化媒体入口ポート112が配置される。流動化媒体は、典型的には大気圧よりも高い圧力で、流動化媒体入口ポート112を介して容器105内に送達される。流動化媒体は、反応器の底部に圧力をかけて導入される。流動化媒体は、圧縮空気などの均一な気体、または水などの均一な液体を含むことができる。あるいは、流動化媒体は、気体、プラズマ、または液体の混合物を含み得る。目的のプロセスに応じて、広範な液体及び気体を使用することができる。一例として、処理(例えば、分離)される物質が酸素の存在によって悪影響を受ける可能性がある場合、圧縮空気の代わりに窒素またはアルゴンを流動化媒体として使用することができる。追加の反応を引き起こす効果があるさまざまなプラズマも使用することができる。流動化媒体の選択は、所望の最終生成物によって異なる。好ましくは、流動化媒体ポート及びインジェクターは、X線照射から遮蔽することが望ましい。遮蔽は、少なくとも部分的に鉛などのX線放射線に耐性のある材料で構成された充填材で層状にされた同心パイプを使用して入口ポートを形成することによって実施することができる。遮断弁(明確にするため
図1には示さず)を、流動化媒体入口ポート112に結合して、必要のないときに流動化媒体の流れを開閉または調整することができる。
【0053】
原料及び流動化媒体に加えて、1つ以上の化学反応、熱伝達、触媒作用などを促進するための追加の反応物を、底部108に配置された1つ以上の反応物入口ポート114を介して容器内に導入することができる。流動化媒体ポートと同様に、反応物入口ポート114は、X線照射に対して遮蔽されていることが好ましい。一実施形態では、反応物入口ポートは、少なくとも部分的に鉛などのX線放射線に耐性のある材料で構成された同心パイプ間の充填材を備えた同心パイプで形成され得るシールド117によって囲まれている。外側のパイプは、316鋼またはチタンなど、反応ゾーンに存在する他の材料と反応しない材料で作られている必要がある。図示の実施形態では、原料及び流動化媒体入口ポート110、112とは異なり、反応物入口ポートは、反応物を容器の底部に送達するのではなく、容器内のさまざまな高さに配置された複数の出口ノズル(例えば、127)を備えた反応物インジェクター125に通じている。シールド117により、反応物は反応室135に入るまでイオン化されることなく導入され、均一に反応ゾーンに導入される。いくつかの実施形態では(図示せず)、原料入口ポート112は、反応物入口ポートと同様に構成され、物質を室135の中央に導入することができ、好ましくは、それはより少ないノズルを備え、各ノズルの直径は、反応物入口ノズルの直径よりも大きい。
【0054】
図2は、UCPの実施形態の概略断面図であり、絶縁反応物入口インジェクター205を示しており、これは、セラミック材料から作られ得る絶縁フィードスルー208によってUCPの筐体に連結することができる。インジェクター205は、UCPの主室215内に縦方向に延びる遮蔽された導管である。反応物インジェクターを介して輸送された反応物は、複数のノズル(例えば、212、214、216)を介して主室内の反応ゾーンに排出される。
図3は、これもUCPの主室315内に縦方向に延びる、原料供給用に適合された遮蔽されたインジェクター305を含む、実施形態の概略断面図である。
図2に示す実施形態とは対照的に、遮蔽されたインジェクター305を介して輸送された物質は、単一の大きなノズル320を介してUCPの主室内の反応ゾーンに排出される。
【0055】
いくつかの実施形態では、UCPは、主室135内に電極を含み、この電極は、主室内にプラズマもしくは電磁界を生成するか、または容器に投入されたプラズマを維持するように適合されている。プラズマは、流動床での化学反応及びプラズマのその他の効果や用途を誘発するために使用することができる。
図2には、主室135内の反応ゾーンを通って延びる棒状の電極220が示されている。電極は、セラミック材料からも作られ得る絶縁フィードスルー225を介して電源(図示せず)に接続される。電源は、所望のプラズマ、電磁界、及びバイアスの特定の種類に応じて、AC、DC、またはRFであり得る。電極の電圧は、プラズマの密度、反応ゾーン内の原料及び反応物の組成及び密度、ならびにプラズマの圧力など、さまざまな要因に応じて、2~20ボルトから最大数キロボルトまでの範囲であり得る。プラズマまたはフィールド強化をうまく実施するためには、絶縁体の電圧定格、ならびに電極構造の形状及び壁または触媒などの他の接地物体からの間隔に注意を払うことが重要である。
【0056】
プラズマがUCP反応ゾーンの壁に触れないようにすることが望ましく、これを「封じ込め」と称する。これは、静電的または電磁気的手段のいずれかを使用して達成され得る。好ましい静電的実施形態では、
図6(後述)に示すように、
図2に示す電極220と同様の電極が使用される内部静電界によって、X線を使用せずにプラズマを生成することができる。他の実施形態では、
図7(後述)に示すように、外部電磁コイルを使用してRXCP反応ゾーン領域内に磁界を生成することができる。室壁からプラズマを所望のように分離させる静電界構成及び電磁界構成は両方とも多数存在する。これらは、当該技術分野における当業者には明らかであろう。
【0057】
図1に戻ると、UCPの入口端及び出口端のポート118、180は、質量分析計につながっている。これにより、UCPによる処理前と処理後の両方で、原料物質をリアルタイムで分析できるようになる。容器内に供給された流動化媒体と原料とは混合され、容器の底部の上方であるが近傍に配置された拡散プレート120を通って流される。拡散プレート120は、適切な多孔性を有する限り、さまざまな耐放射線性材料から作ることができる。あるいは、拡散プレートに均一な穴のパターンを持たせることで、同じ効果を達成することができる。拡散プレート120は、流動化媒体が、分離及び/またはその他のプロセスが行われる容器の主室135(流動床が原料物質を分離するために運転されている場合は「分離領域」と称される)に入るときに、それを分散させ、均一性を高める効果がある。再循環パイプ138は、室の上部からの流動化媒体を受け取り、再循環ポンプを介してそれを実行し、再循環ループを介して室の底部に再印加し(
図1には示さず)、それを入ってくる流動化媒体と混合する。
【0058】
いくつかの実施態様では、触媒が、拡散プレートの上に配置され得る。ただし、より一般的には、触媒は、反応ゾーン内のさまざまな場所に配置することができ、異なる場所は異なる化学的結果をもたらす。例えば、
図4に示すように、触媒を反応ゾーンの先頭に有することが望ましい場合もあるが、触媒は、中央、反応ゾーンの上端近く、または反応ゾーンの外側全体にも配置され得る。位置は、所望の触媒作用の程度によって異なる。触媒にはさまざまな形態があるが、わかりやすくするために、1つ以上のスクリーンとして実装したものを
図4に示す。この例示的な実施形態では、2つの触媒スクリーン404、408が、拡散プレート410の上、及びUCPの主室内の反応ゾーン414の下限の下に配置されている(反応ゾーンについては、以下のUCPのRXCPセクションを参照して説明されている)。2つのスクリーン404、408が描かれているが、単一のスクリーン、または多数の同様のスクリーンが存在する場合もあることに留意されたい。スクリーン実装は、UCPで生成された反応に触媒を導入する一般的な方法の1つである。触媒を導入する他の形態としては、プレート、トレイ、メッシュ、ならびにさまざまな種類の多孔質容器が挙げられる。いくつかの実施態様では、拡散プレート410は、触媒を運ぶために使用することができる。他の形態の触媒の導入は、本分野の当業者には明らかであろう。
【0059】
いくつかの実施形態では、電気触媒として知られる特定のカテゴリーの触媒を、選鉱プロセスで使用することができる。電気触媒は、電極表面で機能するが、最も一般的には、電極表面自体に組み込むことができる。電気触媒は、白金めっき電極などの不均一なものであってもよい。これは、触媒を、電気絶縁構造(図示せず)に取り付け、電圧または信号が触媒にバイアスをかけることを可能にする電気絶縁電気フィードスルーを提供し、その結果、電気触媒が作成されることで達成される。溶解性の均質な電気触媒は、電極と反応物との間で電子を移動させるのを助け、及び/または全体的な半反応によって記述される中間化学変換を促進する。均質な電気触媒は、特定の種類の反応に使用することができるが、物理的に不安定でかつ溶解性である可能性があるため、すべての反応に適しているわけではない。電気触媒作用は、直接の電気接続、または反応容器内の電界との相互作用のいずれかによって刺激することができる。
【0060】
原料物質は、主室135内の流動化媒体に取り込まれ、その結果生じる粒状固体と流体(気体及びプラズマを含む)との組み合わせは、特定の制御された条件下で流体として挙動する(つまり、流動化する)。流動化は、容器の寸法、床全体の圧力降下、平均粒子密度、原料、及び反応物の流量、ならびにその他の要因(後述)などのさまざまな要因及びパラメータが、原料と流体との混合物を流体として挙動させるように設計された大きさを有するときに発生する。図示の実施形態では、適切な直径の容器の底部にある粒子媒体を介して、加圧流動媒体を導入することによってこれが達成される。流動床と称される、粒状固体/流体の複合媒体は、懸濁液であり、重力下で自由に流れる能力、または流体型技術を使用してポンプで送ることができる能力など、通常の流体の多くの特性を有する。流動床のこの特徴により、水平作業が可能になる。再循環パイプ138は、室の上部で加圧された流動化媒体を受け取り、ポンプ161媒体を介して流動化媒体に圧力を印加し、再入口ポート163で室の底部の流動化媒体に再印加し、それを入ってくる流動化媒体と混合する。上述のように、入口ポート112から流入する追加の流動化媒体は、必要に応じて遮断弁(
図1には示さず)を介して遮断することができる。しかしながら、生成物を除去する際にFB濃縮器内の容積損失を相殺し、圧力を一定に保つために、追加の流動化媒体が典型的には必要になる。
【0061】
室135内では、床の上部表面は比較的水平であるが、本質的に波様であり得、これは静水圧挙動に類似している。床は、単一の嵩密度で表すことができる流体と粒状固体との不均一な混合物であると考えられ得る。流動床内では、より大きくかつ高密度の粒子は、床内を下方に移動する傾向があり、より小さく、より軽い緻密粒子は、上方に移動する傾向があり、アルキメデスの原理に従った流体挙動を示している。流体の割合を変えることで床の密度(より正確には、懸濁液の固体体積分率)を変えることができるため、床の平均密度と比較して異なる密度を持つ物体を沈めたり浮かせたりすることができる。流動化媒体の上向きの力は、粒子の上向きの動きに大きく寄与する。
【0062】
流動床では、充填床に比べて固体粒子と流動化媒体との接触が大幅に強化される。流動化燃焼床におけるこの動作により、システム内部での高度な熱輸送と、粒子と流動化媒体間の熱伝達が可能になる。熱伝達の向上により、よく混合された気体と類似した熱均一性が実現され、流動床は、均一な温度場を維持しながら大きな熱容量を持つことができる。上で述べたように、流動床では、高密度の物質がFBの底に沈む傾向がある。非常に小さな高密度粒子は、FBの上部に移動する可能性があることに留意されたい。これにより、さらなる分離作業が必要になる。これは単純な重力誘起プロセスによるものである。例えば、流動化媒体として空気が使用される場合、物質の床を通る上向きの流れにより、床内の物質は基本的に流動化媒体上に浮かぶことになる。物質が浮いているときは、カラム全体を流動化させ、軽い物質をカラムの上部に押し上げ、物質の高密度の部分はカラム内の低い位置に留まるか、低い位置に移動させるのに十分な圧力があることを意味する。
【0063】
流動化の条件は、以下の式(1)で表すことができ、見かけの圧力降下と床の断面積の積は、粒状固体粒子の重量の力(流体中の粒状固体の浮力を差し引いたもの)に等しい。
【数1】
式中、Δp
wは床の圧力降下、H
wは床の高さ、ε
wは床の空隙率(つまり、粒子間の流体空間が占める床容積の割合)、ρ
sはベッド粒子の見かけ密度、ρ
fは流動化流体の密度、gは重力加速度、M
sは床内の固体の総質量、Aは床の断面積である。
【0064】
さらに、流動化媒体を主室135に導入すると、原料物質の粒子との物理的相互作用及び圧力差の結果として形成される気泡が生成される効果がある。物理的に小さい床では、形成される気泡は小さく、時には微細である。直径が10フィートから15フィートにもなる大規模な工業用床では、気泡はかなり大きくなり得る。泡により流動床内の化学物質の混合が増加する。容器の上部には圧力を逃がす手段(例えば、リリーフ弁)138が設けられ、床内で一定の差圧環境を維持できるようにしている。圧力照射は、特に流動化媒体が再利用される場合、再循環配管手段によって達成されることが好ましい。特定の気泡または空気分子が床の上部領域に到達すると、床の直径が増加するため、空気の速度が突然10倍近く低下する。これは、より軽い(密度が低い)粒子が乱流領域に戻って再循環し、最終的に、粒度、密度、及び流動化媒体の圧力に基づいて安定した床の高さに到達することを意味する。流動床は、大気圧、正圧、または部分真空下で稼働できることに留意されたい。
【0065】
流動床を使用することで、さまざまな物質の混合物を分離することができる。そして、前述のように、流動化媒体として気体、液体、粒状固体または混合ガスを利用することができる。特定の物質及び流動化手段は、特定のタスクに応じて適切に選択される。バッチによる処理を意図している場合、流動床法では、プロセスを長時間実行することで高いレベルの分離を達成することができる。しかし、工業規模の用途で典型的に見られるような連続プロセスが望まれる場合、流動床は、処理される物質を連続的に導入する手段、及び密度の異なる分離された物質を除去する手段を含むように変更され得る。所望の程度の処理及び/または分離を達成するには、別々の容器内の複数の流動床を含む複数の段階が必要になり得る。
【0066】
流動床によって実施された分離プロセスは、工業、鉱業、及び実験用薬品プロセスで典型的に見られる浮選、沈降、一部の沈殿、及び堆積プロセスの代替となることを意図している。最も重要な利点は、大量の有毒で環境に有害な化学物質を使用せずに分離が行われることである。分離は流動床の特性により進行し、成分原料物質を完全に混合し、一定期間にわたって密度によって物質が効果的に分離する。下部出力124及び上部出力128には質量分析計またはその他の分析機器を接続することができるため、FB濃縮器の運転中に分離ストリームのオンライン分析を実行することができる。
【0067】
図8~
図10は、UCPのFB濃縮器機能を用いた本開示による分離プロセスの例示的なシーケンスの段階を示す。
図8では、主に密度の異なる第1の成分及び第2の成分(成分Aと成分B)を含む原料が、原料入口810からUCPの主室835(分離ゾーン)に入り、流動化媒体入口812を介して流動化媒体が供給されることで流動床が維持される。図示の例では、成分Aは、成分Bよりも高密度である。
図8に示すように、原料物質が主室835に入ると、原料物質は、最初に室の容積内に略ランダム仕様に拡散する。
【0068】
図9に示す第2段階までに、原料物質は流動床の容積全体に広がり、高密度の成分(A)が原料に対してより高いレベルで濃縮される主室の底部方向に位置する第1の部分的に分離された混合物820と、低密度の成分(B)が原料に対してより高いレベルで濃縮される主室の上部方向に位置する第2の領域825に分離し始める。
図9に示す第2段階では、分離プロセスは初期または中間段階にある。濃度勾配が形成され始めているが、成分は完全に分離されていない。
【0069】
図10に示す第3段階では、成分Aと成分Bはより完全に分離しており、領域820及び領域825には、実質的にどちらか一方の成分が含まれている(つまり、領域925には成分Aがほとんどなく、領域920には成分Bがほとんどない)。この時点で、下部出口ポート140及び上部出口ポート142が開き、分離出力が可能になる。成分Aの濃度が高い流体は、下部出力840を通って容器から流出し、成分Bの濃度が高い流体は、上部出力842を通って容器から流出する。上述のように、出口ポート840、842の出力ストリームは、投入原料に比べて大幅に濃縮されているものの、所望の目的には十分に濃縮されていない可能性があり、出力物は、成分をさらに分離する、さもなければ処理するために、さらなるUCP、流動床濃縮器または処理装置に投入され得る。さらに、上述のように、流動化媒体は、流動床内の流動化媒体の容積及び圧力を維持するために、再循環パイプ838及びポンプ846を介して再循環される。
【0070】
一実施例では、UCPが、鉱物原料物質からアクチニド元素を除去するために使用され得る。UCPは、ウラン、ラジウム、トリウム等などの原料からアクチニドを相対的に分離するために(1つ以上の段階において)流動床モードで運転することができる。この濃縮された出力物質は、マイクロ波オーブンまたは他の乾燥装置を使用して乾燥され得る。流動床から排出される、より軽い物質は、RXCPモードで運転されるUCPに供給され得、そこで物質はアンモニア(NH3)の存在下で化学反応を起こす。このステップは、酸化マンガン(MnO2)の存在下での従来の湿式浸出に代わるものである。RXCPモードでの反応生成物は、さらなる流動床段階に出力され、ここで再び密度に応じて生成物が分離される。第2の流動床段階からの高密度の出力には、典型的には、ラジウムなどの残留アクチニドが濃縮されている。この追加の出力は、従来の非汚染的除去のために乾燥され得る。
【0071】
流動床分離プロセスは、流動床作業の前後の両方でスクリーニングを使用することによって強化することができる。スクリーニングは、スクリーンを使用して、粒状物質を、粒度別に複数の等級に機械的に分離することを含む。スクリーニングにより流動床の段階数を削減でき、コスト、フットプリント、安全性、スループットをさらに向上させる。
【0072】
重要な用途の1つとして、流動床は、ランタニド及びアクチニドの選鉱において、それらの密度に基づいて物質を分離する手段として使用することができる。基本的な流動床分離には化学反応が関与しないため、流動床は、例えば、ポリエチレンの製造に使用される流動床など、化学業界で通常見られるものよりも簡単な方法で実装することができる。
【0073】
歴史的に、流動床は、粒状固体、液体、及び気体を使用して動作されてきた。本発明者らは、床内の流動化媒体としてプラズマを使用するか、または床内に別の流動化媒体が存在する状態でプラズマを有することによっても、流動床を動作させることが可能であることに思いが至った。所望の最終結果を得るためのある速度でプラズマを室内に流し込む他のプラズマプロセスの例もある。その一例は、プラズマ風洞であり、これは衛星の大気圏への再突入とその状況下で衛星が受けるプラズマ状態をシミュレートし、再突入時に衛星が燃え尽きるかどうかを検証するために使用される。本発明は、気体として多くの点で挙動するプラズマを、適切な入口ポート114を介して室内に導入させ、プラズマを地面から隔離する絶縁手段を設けることにより、プラズマの電荷が接地しないよう注意を払う。プラズマは、一度反応器内に入ると、気体と同様に挙動するが、RXCPモードと同様にも挙動する。この影響により、反応速度が大幅に向上し、反応器内の滞留時間が短縮される。
【0074】
X線が存在しない場合に流動床内のプラズマまたは電磁界を維持するために、バイアス電圧を印加できる絶縁電極を含めることが望ましい場合がある。これは、反応ゾーン170に別の電極を配置するか、反応物インジェクターの外殻を電極として使用し、反応物インジェクターが反応器に入る場所に絶縁手段を設けて、反応物インジェクターを分離し、接地電位より上に維持することによって実現することができる。さまざまな電極構成を
図5に示す。
【0075】
再度
図1に戻り、原料物質が密度によって分離されると、軽い成分は、主室135の上部またはその近くに配置された上部出力ポート140(または複数のそのようなポート)を介して除去され、重い成分は、拡散プレート120の上の主室の底部に向かって配置された下部出力ポート142(または複数のそのようなポート)から除去される。ポートの高さと粒度と密度とによって、除去される物質の密度が決定される。分離された物質は、床内の内部圧力によって出力ポート140、142を介して流動床から押し出される。出力ポート140、142は、処理される物質に応じて大きく異なり得るプロセスの後続部分に接続される。さらに、反応器の上部には、化学製造などの非FBプロセスのためのメイン出力ポート145が配置されている。
【0076】
本開示の流動床は、工業、鉱業、及び実験用薬品プロセスで典型的に見られる浮選、沈降、一部の沈殿、及び堆積プロセスの代替となることを意図している。最も重要な利点は、大量の有毒で環境に有害な化学物質を使用せずに分離が行われることである。分離は流動床の特性により進行し、成分原料物質を完全に混合し、その後、経時的に密度によって物質が効果的に分離する。
【0077】
UCPは、流動床として単独で動作することも、または反応性X線化学プロセス装置(RXCP)プラズマ生成プロセス、フィールド強化及び乾燥と組み合わせて動作することもできることに留意されたい。流動床、プラズマ生成、フィールド強化は、バッチ処理環境の同じユニットまたは連続処理環境の別のユニットで、さまざまな組み合わせで、UCP容器内で同時にまたは順番に使用することができる。
【0078】
図1では、UCPの中央部分に、容器内に導入された化学反応物を完全にまたは部分的にイオン化(任意の所望の状態に)できる、反応性X線化学プロセス装置(RXCP)の要素が含まれている。スタンドアロン反応性X線化学プロセス装置(RXCP)は、「Method and Apparatus for Inducing Chemical Reactions by X-ray Irradiation」と題された共同所有及び譲渡された米国特許第9,406,478に開示されている。これらの機能は、電磁界及び静電界の両方のソースを追加することでさらに強化され、このソースはこれらのフィールドの影響下で反応を行う能力を提供し、特定の反応を強化する。さらに、UCPは、投入物または反応生成物から水または他の不所望な液体含有物を除去するための乾燥機を含むことができる。
【0079】
RXCPセクションの基本的なプロセスは、原料入口110から投入される原料反応物の全部または一部、及び1つ以上の放射線遮蔽反応物インジェクター114、116から投入される他のすべての反応物を、完全または部分的にイオン化することから始まる。これにより、原料及び反応物がプラズマ化される。次いで、結果として得られた原子種の混合物の最低エネルギー状態への組み換えが続く。反応器内のイオン化された原料及び反応物は、プラズマ状態となる。結果として生じる原子種の混合物が、出力フローを生成する。RXCPセクションは、円筒形の冷電界照射中空カソード150、中空グリッド155、及び中空アノード160透過型X線源を、装置の中央領域に位置する反応物測定、制御、及び注入システム(
図1には示さず)と組み合わせて使用する。冷電界照射カソード150とグリッド155が一緒になって電子銃を構成する。透過型X線管の構造は、中空カソード150から始まり、その中に同軸に配向された中空グリッド155があり、その中に同軸に配向された中空アノード160があり、すべての中心軸が一致するように配置されている。RXCPの電子銃は、パルスモードで理論上の最大電流密度約80,000アンペア/cm
2を達成することができ、これにより、X線ビームを生成するために使用される多数の電子によって生成される高いフルエンスにより、最終的に高レベルの照射が可能になる。実際の用途では、カソード150は理論上の最大値まで負荷されるのではなく、むしろそれより小さい値で負荷される。例えば、UCPのRXCPセクションは、典型的には0.025~5MeVの高いX線光子エネルギー、及び典型的にはキロアンペア~数メガアンペアの範囲の高いビーム電流を達成することができる。RXCPセクションは、特定の反応のフルエンス要件に応じて、より低い電流レベルで動作可能である。以下に記載される放射線源(R
2CP)を利用する実施形態は、同様の電流密度、光子エネルギー、ビーム電流及びフルエンスを達成することができることに留意されたい。
【0080】
作業中、カソード150は、電圧、電流、及びパルスモードで使用される場合は、立ち上がり時間及びパルス繰り返し率の要件を満たす電源(
図1には示さず)を使用して充電される。バイアス抵抗器(これも図示せず)は、カソード150とグリッド155の間に接続され、グリッド155に電圧を生成するために使用され、これにより、管は通常、スタンドオフ状態(非導通状態)になる。グリッド155に接地電位の制御信号が印加されると、グリッドはカソード160の制御を解除し、カソードは放電する。次に、電子は、カソード150からアノード160へと移動する。これらがアノード160に衝突すると、X線及び二次電子が発生する。X線及び二次電子は、アノード160のX線放射(内側)面から等方的に照射される。中空アノード160の壁が比較的薄いため、生成されたX線及び二次電子の相当な部分(約50%)が中空アノードの中央領域に伝播する。入射電子の浸透深さは、カソード電圧とアノード160の厚さのバランスによって制御される。アノード160は、所望の透過照射をある程度制御するために、通常、照射容積の領域に薄壁セクションを備えている。アノード壁セクションの厚さは、内部空間の直径、カソード電圧、及びアノードの原子番号(Z)の関数である。アノードから照射される二次電子は、潜在的な反応の数を劇的に増加させるため、重要な役割を果たす。解放された各二次電子は、今度はアノード内の原子に衝突し、さらなるX線の放射、及び追加の二次電子の照射を引き起こすことができる。この二次電子のカスケード効果は、現実的なエネルギーバランスが確実に達成可能となるのに役立つ。カソード電圧は、カソード電気絶縁真空フィードスルー162を介して供給され、グリッド電圧は、グリッド電気絶縁真空フィードスルー164を介して供給される。フィードスルー162及び164は両方とも電気絶縁され、高真空で密封されており、生物学的放射線遮蔽165及び容器筐体を貫通する。
【0081】
冷カソード電界照射X線源の代わりに、他の放射線源を使用することもできる。代替案としては、従来のX線源を複数使用することである。適切なガンマ線出力、及び半減期を持つ核放射性同位元素源を使用することも可能である。UCP装置全体は、生成されるX線(またはガンマ線)エネルギーに比例した厚さの放射線遮蔽365で囲まれている。
【0082】
RXCPセクションによって生成されたX線は、容器内で下限185と上限187によって空間的に区切られた、放射線ゾーン170と呼ばれる主室135の中央部分に入る。放射線ゾーン内では、プリセットされた化合物及び原子は、X線光子と、銃によって形成された二次電子との混合、及び反応ゾーン内のその他の衝突相互作用によって、存在する原子種のイオンに構成分子に部分的に、または完全にイオン化される。これと同時かつ同期して、二次、三次、及び追加の反応物を反応空間に注入し、同時または順次完全にイオン化することができる。放射線ゾーンには、意図的な大きな乱流があり、確実に、あらゆるイオン、電子、原子、及び分子を完全に混合させ相互作用させる。反応の特定の特性を高めるために、放射線ゾーンに触媒を含めることが可能であり、また、多くの場合必要とする。ほとんどの場合、これを変更するための特別な措置が講じられない限り、これが最もエネルギーの低い状態の化合物になる。このシステムの自然な傾向は、最も低いエネルギー状態の化合物を生成することである。さまざまなパラメータを調整することで、組み換えがされると(X線フラックスが停止することで)どのような分子が出現するかを正確に判断することが可能である。反応の種類及び発生する化学反応の速度を制御するために、調整可能ないくつかのパラメータが使用される。調整可能なパラメータには、1)X線電圧;X線電流;X線パルス持続時間(パルスまたは連続モードのいずれかで);第1及び第2(及び存在する場合、それ以降)の反応物の比率;反応器を通過する反応物の流量、ならびに反応物として選択された特定の化学物質;触媒の使用等が挙げられる。
【0083】
反応物は、遮蔽された反応物インジェクター(複数可)125を介して主室に導入され、遮蔽された反応物インジェクター(複数可)125を介して主室135の反応ゾーンに入る。複数の反応物インジェクターを使用することもできるが、1つの反応物インジェクターから複数の反応物種を導入することもできる。一部の流動床の適用では望ましいように、注入ポートを大きくして、放射ゾーン170に大量の反応物を流入させることができる点に留意されたい(
図3を参照)。注入ポートの数は、必要に応じて少なくすることができる。
【0084】
注入前に反応物の分子構造を保存するには、X線を遮蔽した注入手段を用意する必要がある。これにより、照射容積170への原料物質の導入及び反応物の導入のいずれかまたは両方の前に、注入された反応物の早期解離、または早期の部分的または完全なイオン化が防止される。遮蔽された注入手段の要件は、典型的には鉛または他の高原子番号元素であるX線放射線遮蔽物質117を設けた同心パイプを使用して反応物導管125を実装することによって、同心パイプ間の隙間を埋めることによって満たされることが好ましい。パイプは、ステンレス鋼または、原料及び入口110、114を介して投入される反応物、または照射容積170内の放射線環境と互換性があり、影響を受けないその他の非反応性物質である。反応物入口ポート114は遮蔽された反応物インジェクター125に通じており、これは、ノズル(例えば、127)を備えた略円筒形の導管である。
図1には、別の遮蔽された反応物インジェクター(UCPは、1つ、2つ、またはそれ以上の遮蔽された反応物インジェクターを含むことができる)の平面図(非切断図)も含まれており、インジェクター導管の周囲に配置されたノズルの分布を示しており、反応物インジェクターの数は、意図された反応の要件に依存する。
【0085】
プラズマのサポート及びフィールド強化のために、個別の電極の形態もしくは電気絶縁遮蔽された反応物インジェクターの形態のいずれかの追加電極をここに含めるか、またはプラズマの閉じ込め、またはフィールド生成のために外部磁気コイルを提供することができる。両方の条件をサポートすることも可能であるが、そのような構成は、機能的に余分である。
【0086】
原料物質及び反応物の両方が主室135に入り、X線及び二次電子に暴露される。流動床が同時に存在する場合、流動床の流体相も存在し、X線に暴露される。反応物は、液体、気体、プラズマ、及び場合によっては、粒状固体など、広範囲に異なり得る。各反応物及び主要原料の量は、半導体業界により開発されたマスフローコントローラを使用して計測される。これらのコントローラは、文字通り原子レベルの精度で非常に正確な量の物質を送達することを可能にする。これにより、反応の化学量論を非常に正確に制御することができる。
【0087】
流動床の作業は、UCP内のいくつかの手段のうちの1つによって強化することができる。1つ目は、流動床内でプラズマを発生させることである。これは、いくつかの手段のうちの1つで達成することができる。1つは、RXCPのX線エミッターをオンにすることである。これにより、高エネルギー放射線がイオン化され、反応特性が向上する。2つ目の方法は、絶縁電極(ヒーターまたは乾燥機としても機能し得る)に高電圧DC信号を印加することである。これにより、X線を使用して生成されるものよりもエネルギーの低いプラズマが生成される。3つ目の方法は、これも絶縁電極を介してRF信号を適用することである。これにより、X線によって生成されるエネルギーとDCによって生成されるエネルギーとの中間のエネルギーを持つプラズマが生成される。イオン化手段の選択は、結果として生じる反応から得られる所望する最終結果に依存する。この点に関して、反応室内で生成されるプラズマの高温は、焙煎プロセスによってもさまざまな反応を引き起こすのに十分であり得ることに留意されたい。
【0088】
本発明で企図されるプラズマの反応性が非常に高いため、プラズマを、壁及びインジェクターから遠ざける手段を提供することが望ましい。これを達成するための主な手段は3つある:(1)好ましい実施形態である、静電気的(
図6に示される);(2)電磁気的(
図7に示される):これは状況によっては使用できる;及び(3)物理的な絶縁バリアを使用する(図示せず)。後者から始めると、物理的な絶縁バリアは、プラズマを特定の領域に閉じ込めながら、さまざまな反応物の注入と、X線と二次電子の両方による照射とを可能にする、反応ゾーンに絶縁体非反応性の誘電体インサートを配置することを伴う。
【0089】
図6は、フィールド閉じ込めまたはフィールド強化ともしばし称される静電プラズマ閉じ込めを採用した、UCPの実施形態の簡略化された断面図であり、好ましい実施形態である。図示の実施形態では、3つの等距離電極602、604、606が、RXCPの内壁610の内側の主室の作業ゾーン内、ただし反応ゾーンのすぐ外側に配置されている。電極602、604、606は、プラズマ反応が発生する均一な、略円筒形または球形のフィールドを生成するように構成されており、これをプラズマ閉じ込め領域615と称する。他のフィールド構成も可能であることに留意されたい。さらに、1つ以上の反応物インジェクターを静電界生成用の電極として利用することが可能であることに留意されたい。
【0090】
図7は、電磁プラズマ閉じ込めを採用したUCPの実施形態の簡略化された断面図である。図示の実施形態では、4つの電磁石コイル702、704、706、708が反応ゾーンの周囲に配置されている。活性化電圧/電流は、直流(DC)または交流(AC)のいずれかであり得る。電磁石コイル702、704、706、708は、作動すると、力線712で示される磁界を生成する。磁界は、閉じ込め領域から移動する荷電粒子(すなわち、電流)を偏向させて閉じ込めゾーン715に戻すことにより、反応ゾーン内で生成されたプラズマを閉じ込める。他のコイル及び電磁界構成も可能であることに留意されたい。
【0091】
UCP内で物質を乾燥することができることも望ましい。
図11は、乾燥機要素を有するUCPの実施形態の断面図である。示されている軸方向の断面図には、最も外側から最も内側の順に、シールドハウジング165、カソード150、グリッド155、アノード160、及び乾燥機要素910の同心円筒形要素がいくつか示されている。乾燥機要素は、中空アノード160の内壁のすぐ内側の電気絶縁体914、918上に取り付けられた、略円筒形の蛇行抵抗加熱要素を含むことができる。乾燥機要素910は、乾燥機要素をUCPの内部容積の外部にあるスイッチング手段に接続することにより、プラズマの開始及び維持のための電極として使用することもできる。
【0092】
処理前に、質量分析計入口ポート118を介して原料のオンライン分析が実行される。反応器を通過した後、反応物が所望の状態に反応したことを確認するために、室の上端にある第2の質量分析計入口180で排出物をサンプリングすることによって第2のオンライン化学分析が得られる。望ましい反応及び濃度を達成するために、追加の反応物を正しい比率で追加できることに留意されたい。質量流量計(
図1には示さず)は、システムに供給される反応物の正確な量を制御するための計装された分配及びフィードバックシステムを提供する。これらの要因を、X線電圧及び電流と一緒に制御することで、システムを調整し、幅広い化学出力を生成することが可能になる。好適な処理、メモリ、及び通信リソースを備えたホストコンピュータ(図示せず)が供給口、流量計、及び質量分析計に接続され、すべての情報ソースを組み合わせ、人工知能ベースの作業を利用して、反応器パラメータが常に目的の出力生成物に対して最適化されることを確実にする。マスフローコントローラの作業は、システムの入出力を監視するシステムに接続された残留ガス分析装置及びその他の分析機器からの入力を使用して、ホストコンピュータによって制御される。
【0093】
ホストコンピュータは、データ源の中でも特に、原料投入及び出力から生成された質量分析計データを他のデータソースと比較し、出力データを所望の最終生成物の基準スペクトルと比較するよう構成される。この分析に基づいて、ホストコンピュータは、反応物の流量を増やすか、減らすか、または同じ流量を維持するかを決定する。これらの調整が行われると、ホストコンピュータは追加の分析を反復し、行われた調整によって最終生成物が所望の最終結果生成物に近づいたかまたは遠ざかったかを判断する。これらの反復に基づいて、さらなる調整を行うことができる。ホストコンピュータは、出力が設定された下限及び上限の範囲内で安定するまで反復を続ける。結果として得られた出力生成物がホストコンピュータで修正できないほど仕様から大きく外れていると判断された場合、化学プロセスを停止し、オペレーターに通知を発行する。ホストコンピュータは、安全上の目的で他の重要な機能も監視し、監視対象のパラメータのいずれかが所定の範囲外となり安全上の問題を示す場合は、システムをシャットダウンする。
【0094】
主室135内で反応が発生すると、特定の化合物が沈殿し、出力ポートのうちの1つを介してシステムの出力から除去される。このプロセスを1回以上繰り返すと、排出物は、不要な化学成分及びあらゆる生物学的成分を含まなくなる。例えば、UCPを水処理に使用すると、存在する医薬品または農薬などの複雑な有機化合物が分解される。
【0095】
UCPのRXCPセクションは、フラッシュX線照射装置(FXI)として動作することができる。FXIモードでは、典型的には、反応物の供給がオフになっている状態で、高強度X線が反応ゾーンに印加される。このモードでは、一般的に、原料は原料入口ポートから投入され、残りのポートはオフのままである。ただし、状況によっては、他の入口ポートを使用してFXIモードで物質を供給することも可能である。ただし、状況によっては、他の入口ポートを使用してFXIモードで物質を供給することも可能である。反応(放射)ゾーンに存在する物質に応じて、分解と架橋がこのモードで起こり得る典型的な反応である。この文脈では、分解とは、X線が、関係する個々の元素のK端結合エネルギーを実質的に大幅に超える強力なX線照射を受けたときに複雑な分子に何が起こるかを指す。この特定のプロセスは、有機成分が存在し、それを除去したい場合に役立つ。FXIモードでの強力なX線照射は、あらゆる有機物を破壊し、それを構成元素に分解し、その後、最低エネルギー状態の形態に組み換える。さらに、電離放射線(X線)が、ポリマー等において架橋反応を開始できることはよく知られている。正しい運転パラメータを設定することで、FXIはこの運転環境を簡単に達成する。これらのプロセス及びその他のプロセスの詳細な説明は、共同所有及び譲渡された米国特許第8,019,047号に記載されている。参照しやすいように、本出願では、RXCPモードまたはFXIのいずれかでX線を生成するために使用されるコンポーネントをRXCPと称する。
【0096】
流動床とRXCPとを組み合わせるには、RXCPには典型的に円筒形のプロセスセクションが組み込まれているという事実を利用して、特定の変更を加える。可能な変更点の1つは、UCPが垂直に取り付けられている場合は、流動化手段用の供給接続部と、反応領域の側面の入口ポート及び出口ポートとを備えた穴あき底板を追加すること、または、水平の場合は、穴あき底板を追加することである。分離する材料の仕様組成に応じて、分離効率を高めるために、流動床ステップの前または後のいずれかに、UCPの外部でスクリーニングステップを組み込むことが望ましくあり得る。入口ポート及び出口ポートの位置は、UCPをバッチモードもしくは連続モードで使用するか、または水平もしくは垂直で使用するかに依存することに留意されたい。UCPを水平位置で流動床として操作する場合、流動床を動作させるには拡散器を流動床の底部に配置する必要があるため、この向きに合わせて拡散器及び触媒を再配置する必要がある。FXI機能は、反応物注入手段をオフにし、UCPのX線発生セクション(すなわち、カソード、グリッド、アノード)のみを運転することによって達成される。この用途の目的においては、バッチ処理での垂直モードが好ましい実施形態であるが、連続モードでの水平作業が実用的であり、工業規模のプロセスで使用することができる。
【0097】
UCPがどのモードで使用されるかに関係なく、複数の連続モードで動作する機能など、特定の共通点が確認されており、限定されないが、i)流動床(FB)のみ;ii)RXCPのみ;iii)フラッシュX線のみ;(iv)FB+RXCP、v)FB+RXCP+FXI、vi)FB+乾燥、vii)FB+RXCP+乾燥、viii)FB+RXCP+フィールド強化、ix)RXCP+乾燥、及びx)RXCP+フィールド強化のいずれかを含むフルUCが挙げられる。上記のすべての運転モードは、連続モードまたはバッチモードのいずれかで実行することができる。上記のモードはすべて、電磁界強化、静電界強化の両方の強化技術を使用して実行可能であり、上記のいずれも、必要に応じてプラズマ環境または非プラズマ環境で実行することができる。UCPモードには、反応物をオフにするだけでFXI機能を含むということに、再度留意されたい。このモード中は他のFXI作業も発生する。達成可能なプロセスのさまざまな組み合わせは、当業者には明らかであろう。以下に記載されるR2CPは、上述の組み合わせにおいて、RXCPの代わりに使用することができる。
【0098】
触媒は、化学反応を促進するために反応物供給を介してUCPに導入することも、反応ゾーンに恒久的に取り付けることも可能である。触媒は、触媒反応では消費されないため、反応後も変化しない。多くの種類の反応では、ごく少量の触媒しか必要とされないことがよくある。さらに、いくつかの反応は触媒の存在下でのみ起こり得る。流動床及びRXCP(及びFXI)の作業は、両方とも特定の状況下での触媒の使用によって強化され得る。一般に、触媒が存在すると化学反応はより速く起こるが、これは、触媒が非触媒メカニズムよりも低い活性化エネルギーで代替の反応経路またはメカニズムを提供するためである。触媒メカニズムでは、通常、触媒が反応して中間体を形成し、次いで、プロセス内で元の触媒が再生される。チタニア(二酸化チタン(TiO2))または二酸化マンガン(MnO2)などの無機化合物から、ウィルキンソン触媒、RhCl(PPh3)3などの複雑な有機化合物に至るまで、多くの物質が触媒として機能することができる。例証的な例として、ウィルキンソン触媒は、真の触媒サイクルに入る前に、1つのトリフェニルホスフィン配位子を失う。一般的に、配位子は、電子供与体、金属は、電子受容体(すなわち、それぞれルイス塩基及びルイス酸)とみなされる。プラズマ化学では、余剰電子が生成される可能性があるため、配位子の使用が不要になる場合がある。これはすべての反応に当てはまるわけではないが、一部では大きなコスト削減要因となり得る。
【0099】
UCPの流動床部分の場合、触媒の使用が研究されており、流動床で行われる多数の反応プロセスが、触媒の存在によって可能となっている。UCPのRXCPセクションの場合、触媒の導入は、反応を可能にする上で極めて重要な追加要素となり得る。RXCP(及びFXI)の運転原理は、これらのプロセスにおけるイオン化ステップに続いて、存在するイオンが、上記のようにすぐにそれらの最低エネルギー状態に組み換えられようとするものである。触媒を導入することで、このプロセスを変更し、ある化合物を他の化合物よりも優先して形成させることができる。
【0100】
UCPの使用によっては、プロセス結果を改善するために、原料及び反応物の反応前濾過を行い、できるだけ多くの粒子状反応物を除去して、反応器が処理しなければならない物質の量を最小限に抑え、かつ、後濾過を行い、沈殿物を除去することがしばしば有用である。これは、本開示による流動床分離、スクリーニング、ハイドロサイクロン分離、遠心分離、バスケット型フィルター、またはその他いくつかの方法を含むがこれらに限定されない、多数の周知の方法のいずれかによって行うことができる。ハイドロサイクロン法は、連続的に大量の分離を行う方法であり、ハードウェアの供給業者が多数存在し、ハイドロサイクロン分離器は、バスケット型フィルターよりもメンテナンスの必要性が少ないため適している。ハイドロサイクロン分離の大きな欠点は、バスケット型フィルターまたは他のプロセスほど細かく微細な汚染物質を除去する効果がないことである。UCPプロセスのRXCPセクションの前にできるだけ多くの材料を除去すると、プロセスの実行に必要なエネルギーの量が削減されることに留意されたい。
【0101】
同様に、UCPのRXCPセクションは、出力ストリームでいくつかの化合物の沈殿物を生成するように設計されているため、これらを分離して他の目的に使用できるようにすることができる。他の多くの手段も可能であるが、段階的に細かな孔径を持つ多段バスケットフィルターは、望ましい清浄度を達成するのに優れた方法である。
【0102】
図5は、本開示によるUCP及び制御システムを含むシステムの実施形態を示す概略図である。システム500では、多数の制御された投入がUCPに供給され、投入と出力の両方が監視され、ホストコンピュータ550によって制御される。タンクまたはその他の容器などの原料供給502は、供給ラインを介して原料物質を送達し、この供給ラインは、原料供給ラインを介して投入される原料物質の質量流量を測定する、原料流量計504によって監視される。原料流量計からの出力は、ホストコンピュータ550に配信される(有線または無線接続経由)。原料供給制御弁508は、流量計504とUCP100の原料入口ポート110との間の原料供給ライン上に配置される。原料制御弁は、ホストコンピュータに通信可能に接続されており、ホストコンピュータ550によって実行されるアルゴリズムによって決定されるUCPの作業に応じてバルブを開閉または調整するための制御信号を受信する。
【0103】
同様に、流動化媒体供給512は、流動化媒体供給ラインを通る流動化媒体の質量流量を測定する流動化媒体流量計514によって監視される供給ラインを介して流動化媒体を送達する。流動化媒体供給は、加圧された液体及び/または気体タンクを含み得る。流動化媒体制御弁518は、流動化媒体流量計514とUCP100の流動化媒体入口ポート112との間に配置されている。流動化媒体流量計514及び流動化媒体制御弁518は、両方ともホストコンピュータ550に通信可能に接続されており、流動化媒体流量計514は、ホストコンピュータ550に測定信号を提供し、反応物供給制御弁528は、ホストコンピュータからコマンド信号を受信し、UCPの運転条件に応じて反応物の供給を調整する。同様に、反応物供給522もタンクまたは他の容器を含み得、投入反応物の質量流量を測定する、反応物流量計524によって監視される供給ラインを通じて反応物を送達する。反応物供給制御弁528は、反応物流量計524とUCP100の反応物入口ポート114との間に配置されている。反応物流量計524及び反応物供給制御弁528は、両方ともホストコンピュータ550に通信可能に接続されており、反応物流量計524は、ホストコンピュータ550に反応物の質量流量を示す信号を提供し、反応物供給制御弁528は、ホストコンピュータからコマンド信号を受信し、UCPの動作条件に応じて反応物の供給を調整する。いくつかの実施態様では、追加の反応物供給532は、さらなる反応物(反応物供給522からの反応物とは異なり得る)を、原料制御弁504を介して原料供給ラインにつながる二次反応物供給ラインに供給する。原料及び二次反応物は、したがって、原料投入ライン110を介してUCP100に供給される。二次反応物流量計534は、二次反応物供給ラインを通る質量流量を測定し、測定信号をホストコンピュータ550に送信する。原料、流動化媒体及び反応物供給502、512、522、532は、連続モードでは、タンクではなくパイプを備えることができる。
【0104】
流量計と制御弁との対である504/508、514/518、及び524/528は、別々の装置に実装することができるが、必ずしもそうである必要はない。いくつかの実施形態では、計量機能及び流体調節機能の両方を、当該技術分野で周知の半導体技術を使用した単一の装置によって実行することができる。UCPもまた、流動化媒体のための再循環ループを備え(
図5には示さず)、それを介してポンプは、反応器/濃縮器の主室の上部から液体を底部へ再循環させる。
【0105】
UCP 100には、UCP 100の近位端に供給される投入物質のサンプルを、第1の質量分析計(
図2には示さず)に供給する、第1の分析出力118が含まれる。第1の質量分析計からの出力は、ホストコンピュータ250に供給される。UCPの遠位端には、出力生成物のサンプルを、第2の質量分析計(これも図示せず)に供給する、第2の分析出力180がある。第2の質量分析計からの出力も、ホストコンピュータ550に供給される。UCPの遠位端は、UCP、及び圧力照射ベント138内で発生する反応及びその他のプロセスの生成物のためのメイン出力ポート145も含む。出力流量計540は、出力生成物の流量を測定し、測定信号をホストコンピュータ550に送信する。メイン出力ポート145から排出される物質は、RXCPまたはFXI操作によって誘発される反応の目的の生成物であり得、タンク、パイプ、または追加のプロセスコンポーネントにつながり得る。バッチモードで使用する場合、単一の反応器を使用し、さまざまな供給物及び電気パラメータを変更することによって、さまざまなプロセスステップを順番に実行することができる。連続モードで操作する場合、同時操作が少なくなり、複数のUCPを順番に結合するか、または他の方法で結合して特定のプロセスを実装することができる。
【0106】
ホストコンピュータ550も、UCP内の圧力を調整するために、圧力照射138に通信可能に接続されている。ホストコンピュータ550は、流量計から受信した流量情報、ならびに質量分析計から受信した投入反応物(原料を含むすべての反応物)及び出力生成物の組成に関する情報を評価し、制御弁504、514、524を介するUCPへの材料の流れを制御するように構成されている。例えば、ホストコンピュータは、反応の進行が速すぎると判断し、投入材料の流れを制限するコマンドを実行して反応速度を遅くすることができる。
【0107】
電力供給545は、UCP 100のカソード及びグリッドに電力を供給する。ホストコンピュータ550はまた、UCP 100のRXCPセクションのさまざまなコンポーネントを動作させるための制御信号を提供し、UCPの状態を監視するための電気信号を受信する。例えば、ホストコンピュータ550は、RXCPのグリッド155の作業を制御して、電子銃のオン/オフを切り替える。放射性同位元素源が、以下に記載の実施形態(R2CP)のように使用される場合、電離源が電動である必要がないため、電力供給は、実質的に簡略化することができる。
【0108】
UCPが原料物質の分離に使用される場合、典型的には流動床作業で行われるが、必ずしもそうである必要はなく、比較的重い成分は、下部出力ポート140から排出され、軽い成分は、上部出力ポート142から排出される(
図2には示さず)。流量計(図示せず)を、下部及び上部の分離出力ポート140、142に配置して、分離された流れの質量流量データをホストコンピュータ550に提供することもできる。制御システムの独立した性質により、いかなる特徴、または特徴の組み合わせがUCPでは可能であるが、FXI及びRXCP機能は相互排他的であり除外される。
【0109】
本明細書で説明するUCPは、スタンドアロンのコンポーネント、及び他のタイプの化学プロセス装置に比べ、多くの相乗効果及び利点を提供する。強化流動床の存在により、反応物、触媒、及び原料の混合及び接触が増加するため、従来の個別の反応器及びプロセス装置に比べ、段階あたりのスループットが向上し、反応がより完全になる。これは、UCPでは単一のシステムで複数のプロセスを実施できるという汎用性が向上したためである。さらに、大規模な変更作業なしでプロセスを変更することが可能である(例えば、流動床モードのみからRXCPによる流動床モードへの作業の変更)。言い換えれば、単一の装置で複数の運転モードをサポートできるということは、単一の工場で複数の生成物を生産したり、個別の段階よりも簡単にプロセスパラメータ及び構成を変更したりできることを意味する。
【0110】
UCPはまた、同様の機能を持つ従来の反応器よりもコンパクトな設計で、設置面積も小さい。このコンパクトな設計により、調整に優れたよりシンプルな電気システムが可能になる。前述の利点により、バリエーションが少なくて済む、よりユニバーサルなデザインとなることで、製造コストが削減され、より大きな規模の経済性の達成につながり得る。本明細書で提示するUCPコンセプトは、従来の化学処理プラントではこれまで実現できなかったプロセスの柔軟性を達成する予期せぬ手段を表している。
【0111】
鉱業、ならびに、特に希土類元素採鉱及び回収に関しては、本開示のUCPは、長年求められてきたニーズを満たす。UCPが実行できる操作の種類は、何百年も使用されてきた有毒で汚染の多い湿式化学プロセスの必要性を排除することができる。これらの採鉱作業の近隣地域に住む環境及び民間人への影響は即時かつ甚大である。流動床を使用した効果的な物質分離、環境毒素の除去、及び危険な副産物を改質または分解するRXCPの能力を使用した排除の組み合わせにより、希土類処理は、大量の有毒液体廃棄物の生成による環境に有害な活動である必要がなくなり、以前は実行不可能だった場所や管轄区域でもコスト効率よく実行が可能である。UCPが、小さな国の集団が希土類処理を持続する独占に近い状況を壊すため、米国にとって、これは国家の安全保障への恩恵を表す。
【0112】
本発明の技術は、他の鉱業にも利益をもたらし得ることに留意されたい。例えば、石油・ガス生産産業は、放射性の廃棄副産物を大量に生み出していることから、深刻な環境問題を引き起こしている。本明細書に記載のリン酸石膏廃棄物から放射性物質を除去するためのプロセス(以下の実施例2を参照)と本質的に同じプロセスを、石油及びガス産業で本質的に同じ要件において(すなわち、プロセスストリームからの放射性物質の除去(以下の実施例3を参照))有利に利用することができる。リン酸石膏の気体と同様に、ラジウム及びラドンは、修復する必要がある2つの主要な放射性成分であるためである。
【0113】
放射性同位元素の実施形態(R2CP)
上述のように、UCPのRXCP/FXIセクションは、電子銃に動力を供給するためにエネルギーを供給するための電力供給を必要とし、それは最終的に電離放射線を生成させる。利用できる電力が限られているまたは存在さえしない場所でUCPを動作することが有益であろう状況がある。そのような状況では、放射性同位元素は、電力駆動の電子銃の代わりに、電離放射線を既知の速度で自然に照射するため、放射性同位元素源を、電離放射線のエネルギー源として使用することができる。一部の放射性同位元素は、直接電離ガンマ放射線を生成するだけでなく、他のエネルギー粒子(例えば、アルファ及びベータ)も生成し、これらは、X線及び二次電子などの他の形態の電離放射線の二次生成を誘発することができる。以下のセクションでは、放射性同位元素ベースの反応性化学プロセス装置(以降「R2CP」と称し、これはReactive Radioactive Chemical Processor(2は上付き文字であり「R二乗CP」を表す))の実施形態を記載する。
【0114】
R2CPは、電離放射線も生成するという点でFXI/RXCP/UCPと同様の機能を有し、この場合、電子銃ではなく、化学反応を促進する、分解及び無菌化を誘発するため、ならびに他の用途ために使用することができる放射性同位元素源を使用する。より具体的には、R2CPは、RXCPモード(化学反応を促進するための反応物を含む)、FXIモード(反応物を含まず、より分解及び無菌化に使用される)に類似したモードで使用することができ、かつ、他のモードを含むだけでなく流動床を支持する能力を備えたUCPで使用することができる。したがって、R2CPは、RXCP及びFXIに関して記載される下記の化学反応のいずれか及び全てにおいて使用することができる。
【0115】
図12は、本開示に記載のR
2CPの実施形態の縦断面図である。R
2CPは、中央パイプ1010を含み、そこを介して媒体及び反応物が流れる。中央パイプ1010内に、中央に位置し、放射性物質を含有する流線型の円筒形の放射性元素1020を備える。中央に位置し、流線型の円筒形の放射性元素1020は、固体であるか、または中空円筒として形成することができる。有利には、この用途については、原子炉からの使用済み原子燃料棒を、中央に位置し、流線型の円筒形の放射性元素1020として使用することができる。したがって、この用途はは、原子力電気エネルギー発電、危険な核廃棄物の廃棄に対する主要な課題に解決策を提供する。原子力を生成するにはもう適していない燃料棒は、UCPの目的としては十分な放射性物質を依然として含有している。燃料棒1020(新しいまたは使用済みのいずれか)は、元の状態でも、または刻まれいる、粉砕されている、または酸に溶解(酸はその後中和される)されていてもよい。これは、所望のように材料を鋳造するのを容易にする。中央に位置し、流線型の円筒形の放射性元素1020は、ステンレスまたはジルコニウム容器のいずれかの内側に密閉されている。中央に位置し、流線型の円筒形の放射性元素1020の容器は、流れを安定化するのを助けるためにとがっていてよい。中央に位置し、流線型の円筒形の放射性元素は、中央パイプ1010に結合され、そこから3点サスペンションフィン1024、1028(この2つが図示される)の対を使用して支持されており、そのフィンの形をした断面により流れに安定性も提供する。支持フィン1024、1028は、照射の時間を増加させる効果を有する乱流状態を導入するために傾斜させることができることに留意されたい。生物学的放射線遮蔽1030が中央パイプ1010を囲み、装置の外側に放射線が漏れ出ることを防ぐ。遮蔽1030は、鉛製であることが好ましいが、コンクリート、鋼、天然石、またはその他の適切いずれの適切な原子密度の材料などの、任意の遮蔽材料を使用することができる。フランジ1034、1038は、中央パイプの縦方向両端部に配置され、反応器から材料を送達及び除去するパイプ系への漏れ防止接続のためのプラットフォームを提供する。
【0116】
中央に位置し、流線型の円筒形の放射性元素がどのように形成されたか、中身が詰まっているか中空か、中心に位置しているか、反応物の周りを一周しているかに関わらず、顕著な要因は、それが生成する放射性物質及び電離照射の量が、必要な電離の程度を生成するため及び十分なレベルの電離放射線を提供するための複数の電離イベントのために十分に高エネルギーであることである。いくつかの実施形態では、燃料棒1020は、コバルト-60、トリウム232、ウラン233、プルトニウム239、セシウム137等の粒子を組み込むことができる。他の放射性同位元素も、R2CPプロセスが必要とする多くの電離イベントを達成するために、十分に長い半減期を有し、かつ十分に高いエネルギー粒子を生成することができる限り使用することができる。
【0117】
図13は、
図12で示される実施形態の変化形を例証する。この実施形態では、R
2CP1100は、取り外し可能な遮蔽蓋1110を含み、閉じている時は、放射線が密封された環境を提供する。この蓋は、ソースアセンブリの構成要素に結合され、吊輪部1115を含み、これは、中央に位置し、流線型の円筒形の放射性元素1120を含むアセンブリを除去し、新しい燃料棒と交換することを可能にする。R
2CP1100から除去された使用済みの燃料は、次いで、遮蔽容器に配置され、これは、今度は、トラック、鉄道車両または船などの輸送機関上に確実に装着され、現場から廃棄物処理場へと移送される。
【0118】
好ましい実施形態では、R2CP中の燃料棒を結合、除去及び交換するのにはロボット装置が使用されることに留意されたい。この目的において、ロボット装置は、吊輪部かみ合わせる特徴及びR2CPを維持するために有用な追加の特徴を含むことができる。ロボット装置の使用は、放射性物質を扱う際の安全性への懸念のためだけではなく、R2CPは、人々が存在しない遠隔地またはさらには月などの地球圏外の場所において使用することも意図しているために重要である。
【0119】
図14は、本開示によるR
2CPの別の実施形態の縦断面図である。
図14では、R
2CP1200は、FXI、RXCP及びUCPと同様であり、かつ同じ設計式に準拠した薄い壁セクションを有する中央パイプ1210を備える。この実施形態では、放射性物質は、中央パイプ1210の中に含まれていない。むしろ、中央パイプ1210の薄い壁セクションは、放射性物質の外被1220によって周方向に囲まれている。放射性外被1220に含まれる放射性物質は、鋳造、加工されるか、または粉末形態であり得る。放射性外被1220は、今度は、生物学的放射線遮蔽1230によって囲まれ、これは、他の実施形態にあるように、鉛製または別の適切な遮蔽材料でできている。
【0120】
すべての実施形態では、遮蔽は、R2CP中に含まれる放射線源が、環境(NRC規則に従って)から密閉されるように構築され、照射される放射線を、背景放射レベルに限定するように設計される。
【0121】
中央に位置した放射性同位元素源または周方向に配置された放射性同位元素源のどちらであっても、処理されている材料からの放射性同位元素源を単離している材料の壁の厚さは、該放射性同位元素源ガンマ線照射のレベルを、中央パイプの直径及び処理されている材料の密度に適した所定のエネルギーに低減するよう操作されることに留意されたい。これは、通常よりエネルギーが高いガンマ線源が、FXI/RXCP/UCP装置の電子銃と同じエネルギー範囲で動作することを可能にする。また一般的に、単離の壁のためにはより厚い壁セクションを必要とし、これは、FXI/RXCP/UCP装置では非常に薄い壁であることがあるため機械加工がより容易である。この調整性により、使用する同位元素源の範囲を広げることが可能になる。周方向に配置された放射性同位元素源の場合では、壁厚さパラメータは、製造する前に特定の事前選択された放射性同位元素源の使用に基づいて決定される。
図4に示される実施形態では、源は除去可能であり、異なる源を配設することができるため、照射のためのエネルギーの種類の範囲がより広くなり、または以前に配設された源を取り換える際に、異なる同位元素源が利用できる場合にそれを設置することができる。ほとんどの用途の場合、主室に届く照射されたガンマ線のエネルギーを、対生成閾値で知られる1.2 MeV未満に維持することが重要である。このレベルを超えた照射は放射能を誘発する可能性があり、それはほとんどの用途において回避すべき結果である。
【0122】
R2CPの可能な実施形態は、その宇宙探査での使用である。本明細書では、以前に記載したものと同様の使用のみならず、地球圏外の自然物の鉱物を、より有用な化学物質または化合物に変換するための使用を見出す。これはそのような地球圏外の自然物に構造を建設するため、または商業的実施のためになり得る。
【0123】
本発明の技術は、他の鉱業にも利益をもたらし得ることに留意されたい。例えば、石油・ガス生産産業は、放射性の廃棄副産物を大量に生み出していることから、深刻な環境問題を引き起こしている。本明細書に記載のリン酸石膏廃棄物から放射性物質を除去するためのプロセス(以下の実施例2を参照)と本質的に同じプロセスを、石油及びガス産業で本質的に同じ要件において(すなわち、プロセスストリームからの放射性物質の除去(以下の実施例3を参照))有利に利用することができる。リン酸石膏の気体と同様に、ラジウム及びラドンは、修復する必要がある2つの主要な放射性成分であるためである。
【0124】
例示的反応:UCP作業を例証するために、いくつかの例示的反応を示す:
1.過酸化水素の製造:UCP内で過酸化水素(H
2O
2)を製造するために、主原料として精製水を使用した。RXCPモードで、これがイオン化され、精製された酸素と反応して、次の反応でH
2O
2を生成する:
【数2】
{X線またはガンマ線の存在下で}
【0125】
この反応は、所望の任意の濃度のH2O2を生成するように調整することができる。濃度が20%を超えると、H2O2は、爆発する可能性があるほどにだんだん不安定になることに留意されたい。10%を超えるほとんどの濃度の場合、この問題を軽減するために安定剤化学物質が添加される。
【0126】
従来のH2O2の製造方法は、大量のアンモニア、硫酸、2-エチルアントラキノン、過硫酸アンモニウム等の使用を伴うが、これらはすべて有毒であり、環境汚染物質とみなされる。UCP/RXCPプロセスは、これらすべての物質、及びそれらが生成する下流の汚染物質を除去する。H2O2を作るのに、水、酸素、及び電気のみを必要とする。必要に応じて、エネルギーが利用可能であれば、入ってくる廃棄物ストリームを電気分解して、副産物が水素のみの、必要な量の酸素を生成することができる。
【0127】
2.フッ化アパタイト鉱石からのリン酸及びフッ化水素酸の製造:これらの生成物を製造するための従来の湿式化学プロセスは以下である:
【数3】
【0128】
この式から、Ca5F(PO4)3(フッ化アパタイト)が硫酸(H2SO4)及び水と反応して、リン酸、フッ化水素酸、及びリン酸石膏が生成されることがわかる。リン酸石膏((CaSO4・2H2O)はこのプロセスの副産物であり、硫酸カルシウムの水和物である)。この反応の最終生成物は、その後、個々の化合物を単離するためのさらなる分離ステップに供される。プラズマベースのプロセスを使用して同じ最終生成物を得るには、Ca5F(PO4)3を水と混合し、RXCPまたはUCP反応器に流す。そこでこれはイオン化され、硫化水素ガス及び酸素と反応して同じ最終生成物が生成される。プロセスの化学量論性を維持するために、反応器の運転パラメータを設定する際には注意が必要である。反応は次のようになる:UCPを使用して同じ最終生成物を得るには、Ca
5F(PO
4)
3を水と混合し、UCP反応器に流す。そこでこれはイオン化され、硫化水素ガスと反応して同じ最終生成物が生成される。プロセスの化学量論性を維持するために、UCP反応器の運転パラメータを設定する際には注意が必要である。反応は次のようになる:
【数4】
【0129】
液体反応物としてH2SO4を使用するのに対し(従来のプロセス)、プラズマプロセスは、プラズマプロセスにより適した気体状反応物として硫化水素及び酸素を使用することに留意されたい。好ましい実施形態では、運転条件を正しく選択することで、リン酸を液体として、リン酸石膏を固体(沈殿物)として、HFを気体として除去することが可能になる。これにより、さらなるプロセスステップが不要になる。UCPがこのプロセスにもたらす利点は、不要な副産物が気体として照射され、プロセスポンプの排気口にある熱分解ユニットの汚染制御装置によって破壊できるため、有毒な液体廃棄物がないことである。これは、プロセスポンプの排気と建物からの大気への排気と直列に配置された焼却炉である。プラズマ技術の使用は、現代の半導体処理では標準である。同じ最終生成物を達成するための他のプラズマベースのアプローチがあることに留意されたい。
【0130】
3.フッ化アパタイトまたはリン酸石膏からのアクチニドの分離:
フッ化アパタイトが単独で存在することは稀である。通常、ヒドロキシアパタイト[Ca5(PO4)3OH]、さまざまな希土類元素(ランタニド)、放射性鉱物(アクチニド)、典型的にはウラン、ラジウム、及びトリウムと組み合わせて存在する。他のアクチニドも少量ながら頻繁に発見されている。したがって、ある時点で、アクチニドをフッ化アパタイト(またはリン酸石膏)及びランタニドから分離する必要がある。採掘場の現地の状況や規制に応じて、この分離は#2(上記)で説明したフッ化アパタイト反応の前または後に行うことができるが、通常は、大量の放射性廃棄物を生成しないように、反応の前に行われる。フッ化アパタイトまたはリン酸石膏(肥料、フッ化水素酸、及びリン酸製造の副産物)から放射性物質(アクチニド)を除去し、これらの生成物及び残留リン酸石膏を他の目的に安全に使用できるようにすることが望ましい。既存の湿式化学プロセスでは、大量の有毒汚染物質が発生する。いくつかの場合では、アクチニドがリン酸石膏に化学的に結合していない場合は、UCPを使用することで湿式化学及びそれに伴う汚染物質を完全に除くことができる。この場合、UCPは流動床モードで使用される。フッ化アパタイトまたはリン酸石膏(この特定の場合では、原料)は乾燥粉末として導入され、(通常は)空気で流動化される。これにより、原料の一部がカラムの上部に上昇し、アクチニドがカラムの底に沈み、リン酸石膏の場合は出口ポート140、アクチニドの場合は出口ポート142からカラムからそれぞれ排出される。UCPをこのモードで使用すると、粒子の密度に基づいて分離が行われる。化合物が化学的に結合している場合、原料から放射性物質を完全に分離するために、物理的分離ステップの前に反応性プラズマステップを使用することが適切である。
【0131】
UCPを使用してアクチニド及びランタニドをリン酸石膏またはフッ化アパタイトから分離する方法は他にもある。典型的には、ウラン、トリウム、及びラジウムは、フッ化アパタイト、したがってリン酸石膏に含まれる主要なアクチニドである。そのような方法の1つは、アクチニド(水和物として)を、水及びNO(一酸化窒素、気体として)、またはHCL(気体として)と反応させて次の物質を生成することを伴い:
【数5-6】
式中、ACTは、特定のアクチニド化合物を表す。あるいは、商業的に販売可能な副産物として、ウランまたはトリウムを、アンモニア及び二酸化炭素ガスを水酸化アンモニウム(アンモニア水)とともに使用して分離させることができる。
【数7】
【0132】
選択される特定の反応は利用可能な原料に依存し、原料はそのまま使用されるか、またはこれらの材料の機械的特性と電気的特性の両方を調整するためにある程度の前処理を施して使用される。
【0133】
4.医薬汚染物質ならびに他の有機的及び生物学的汚染物質の除去:
多くの国が直面している主な汚染問題は、水中の医薬汚染物質及び他の有機的化学汚染物質の存在である。このプロセスでは、例えば、汚染している化学製品(または有機汚染物)を有する水では、UCPはFXIモードで運転される。ここで、汚染された水は、高線量のX線に暴露される。これは、水をイオン化すると同時に有機汚染物(医薬汚染物を含む)のすべての結合を壊す両方の効果を有する。すべての結果として得られるイオンを、その後、米国特許第8,019,047号「Flash X-ray Irradiator」で以前に記載されているプロセスに従って、その最小エネルギー状態へ再結合される。水素及び酸素イオンもまた再結合され水へと戻る。結果として得られる水は、この時点で長鎖有機汚染を含まず、無菌化もされている。(FXIまたはRXCPモードでの)UCPシステムがこのレベルのイオン化とそれに伴う分解を達成できる理由は、X線(またはR2CPの場合ガンマ線)及び生成される二次電子の両方からの入射エネルギーが多くの場合、Kシェル電子(及び他すべて)が原子から落とされるエネルギーレベルであるK-シェルエネルギーレベルの何倍もあることによる。このことは、すべての有機化合物、生物製剤、石油化学製品及び医薬製品に当てはまる。さらに汚染を修復するために、UCPは、以前に記載されているように、RXCPモードで運転し、過酸化水素(H2O2)を汚染された水に追加するために使用することができることに留意されたい。
【0134】
十分な量のX線またはガンマ線は、生物学的生物にとっていくつかの手段、例えば、限定されないが、分子結合が壊れることによるDNAの崩壊、遺伝障害の誘発、及び主要生体高分子の化学変化において致命的であり、これらのいずれも生物の死につながる。無菌化処理中、目的のサンプルは、十分なフルエンスで高エネルギーX線、電子、またはガンマ線で照射され、非常に不安定なフリーラジカル、分子イオン、及び二次電子の他に、X線の形成につながる。これらの放射線は、次いで、近くの分子と反応して断裂し化学結合を変化させる。特にDNAは放射線の損傷効果に非常に敏感であり、イオン化放射線に暴露されると、破壊、脱重合、変異及び構造が変化する。DNAの損傷を完全に修復しないと遺伝子情報を損失し、細胞死につながる。所与の生物学的生物の放射線への感受性は、D値(D10値)、微生物の個体数を1/10に減少させる線量によって与えられる。
【0135】
5.油及び化学薬品漏出、細菌及び藻類過剰繁殖などの海の汚染物質の除去:
本出願では、システムは、ボート、ホバークラフトまたは他のタイプの海上車両、好ましくは、カタマランに搭載され、舳先の間に大きなしゅんせつ機が配置され、船が動いている間に海中に下げることができる。しゅんせつ機が、汚染水をパイプを介して、FXIモード(最も単純な形態)または酸素を加えて過酸化水素を形成するRXCPモードのいずれかで動作されるUCPに導く。FXIモードでは。放射だけを使用して有機物を分解し、存在し得る細菌または他の藻類を殺す。RXCPモードでは、放射及び酸化の両方を使用して汚染物を修復または除去する。いずれのプロセスモードにおいても、反応器を通過する魚はすべて死んでしまう可能性が高いことに留意されたい。これは、入口をメッシュで覆い、ユニットへの魚の侵入を遮ることで防ぐことができる。これを実施するには、メッシュに捕まった魚及び他の物質を除去するために定期的な清掃を行うか、または水中に、船が進行する前方に向けて信号を送り、魚を散らすことを必要とし得ることに留意されたい。さらに、本用途で使用できる添加物は酸素だけではないことに留意されたい。その他の、塩素などの気体をうまく使用して同様の結果を得ることができる。
【0136】
本出願を実装するには、UPCまたは派生物に加えて、発電機及び高圧電源がボートに搭載されている必要がある。さらに、ボートのスピードが所定の制限を超えない場合は、UCPまたは派生物に確実に十分な水が通過するようにポンプを備える必要があるであろう。照射装置を通過したら、処理した水を船尾後方から引き揚げた水の元へと破棄する。この藻類生長物の除去方法は、表面に浮かぶものに限定されないことに留意されたい。水を通る船舶のスピード、及び、水中の障害物と絡まることを防ぐために適切な注意を十分に考慮し、しゅんせつ機は所望の深さに配置することができる。しゅんせつ機が水中の障害物と絡まることを防ぐために船内搭載型ソナーを使用することができる。
【0137】
同様に、油及び化学薬品漏出の場合において、同じ装置が使用される。有毒ガスまたは可燃物が関与する場合は、船のオペレーターを守るために注意を払うべきである。
【0138】
典型的には、海、湾、大きな湾または海峡等における、大量の漏出の場合は、より高速な小型船舶を必要とし得る。これもまた、照射システムがより高い照射レベルで実施される必要があるため、電力需要を増加する。この場合は、電気産業がピーク時の発電に使用するものなどの発電機に結合された小型ジェットエンジン(典型的には大型商用ジェットに使用されるサイズ)を使用することができる。排気が推力を発生させてボートを高速で動かし、発電機はメガワットの範囲の電力を生成することができる。このタイプのモーター発電機はいくつかの供給業者から市販される。より小型の従来のモーター及びプロペラシステムもまた低速操縦に含まれる。操縦システムプロペラは、高速運転のためにフェザリングが可能である必要がある。
【0139】
照射船舶のオペレーターのための放射線防護を提供する必要がある。これはリードまたはその他の高い原子番号シールド材が配置された形態であり得、照射システムからの放射線がオペレーターに当たるのを防ぐ。システムが運転されていないときは、オペレーター及びクルーに放射線の危険性はないことに留意されたい。代替的に、海上車両を遠隔操作し、UCPによって発生する放射線から安全な距離にオペレーターを置くことができる。
【0140】
R2CP実施形態が海用途で使用される場合、電子銃鵜、発電機及び燃料供給機を排除することによる重量は、人間オペレーターのために船を安全にするために要する、追加される必要な生体遮蔽の重量によって一般的にオフセットされる。ジェット推進を失うことは、低速運転及び近接操縦であったであろうエンジンよりも大きな従来のエンジンを含むことにより補償される。
【0141】
本明細書に開示される構造的及び機能的詳細は、システム及び方法を限定するものとして解釈されるべきではなく、当業者に本法を実装するための1つ以上の方法を教示するための代表的な実施形態または構成として提供されることを理解されたい。
【0142】
図面における同様の数字は、いくつかの図面にわたる同様の要素を表すものであり、図面を参照して説明及び例示されるすべてのコンポーネントまたはステップがすべての実施形態または構成に対して必要とされるわけではないことをさらに理解すべきである。
【0143】
本明細書に使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみであり、制限するように意図するものではない。本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明らかに示さない限り、複数形も含むことを意図する。用語「含む(comprise)」または「含んでいる(comprising)」のいずれかは、本明細書で使用されるとき、述べられる特徴、要素、ステップ、動作、要因、及び/または構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、要素、ステップ、動作、要因、構成要素、及び/またはそれらのグループの存在または追加を排除しないことがさらに理解されよう。
【0144】
方位の用語は、慣例及び参照の目的でのみ本明細書で使用され、限定と解釈されるべきではない。ただし、これらの用語は観察者に対して使用できることが認識されている。したがって、いかなる制限も暗示されず、または推測されない。
【0145】
また、本明細書で使用される表現及び用語は、説明を目的としており、限定的なものとみなされるべきではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」または「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」及びこれらの変形の使用は、その後に列挙される項目及びそれらの均等物ならびに追加の項目を包含することを意味する。
【0146】
上記の主題は、例示としてのみ提供されており、限定的なものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載されている主題に対するさまざまな改変及び変更は、例示及び記載されている実施形態及び適用の例に従うことなく、また以下の特許請求の範囲における一連の記述、及びこれらの記述と等価である構造及び機能またはステップによって定義される、本開示に包含される本発明の真の趣旨及び範囲を逸脱することなく、行うことができる。
【国際調査報告】