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特表2024-546369亜鉛被覆Mn含有先進高強度鋼及びその製造方法
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  • 特表-亜鉛被覆Mn含有先進高強度鋼及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-20
(54)【発明の名称】亜鉛被覆Mn含有先進高強度鋼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20241213BHJP
   C23C 2/06 20060101ALI20241213BHJP
   C22C 38/38 20060101ALI20241213BHJP
   B23K 11/16 20060101ALI20241213BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
C22C38/00 301T
C23C2/06
C22C38/38
C22C38/00 302A
B23K11/16 311
C21D9/46 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531074
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 IB2022059926
(87)【国際公開番号】W WO2023094909
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2021/060917
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペルラド,アストリッド
(72)【発明者】
【氏名】ジュウ,カンイン
(72)【発明者】
【氏名】マテーニュ,ジャン-ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】シュタウテ,ジョナ
【テーマコード(参考)】
4K027
4K037
【Fターム(参考)】
4K027AA05
4K027AA23
4K027AB13
4K027AB42
4K027AC01
4K037EA01
4K037EA02
4K037EA05
4K037EA06
4K037EA11
4K037EA16
4K037EA17
4K037EA18
4K037EA19
4K037EA23
4K037EA25
4K037EA27
4K037EA28
4K037EA31
4K037EB05
4K037EB08
4K037EB09
4K037EB12
4K037FH01
4K037FH07
4K037FJ02
4K037FJ05
4K037GA05
(57)【要約】
本発明は、マンガンを3.0~6.0重量%含有する鋼板であって、液体亜鉛による良好な被覆性及び良好なLME耐性を両立する鋼板に関する。本発明はまた、前記鋼板を得るための実施が容易な方法、及びスポット溶接後にLME問題を有さないアセンブリを利用可能にすることを目的とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛めっき鋼板であって、重量%で、以下、すなわち、
0.08≦C≦0.3%
3.0≦Mn≦6.0%
0.5≦Si≦2.5%
0.003≦Al≦2.0%
0.01≦Mo≦0.5%
0.01≦Ti≦0.1%
0.01≦Nb≦0.08%
0.0002≦B≦0.005
Cr≦1.0%
S≦0.010%
P≦0.025%
N≦0.008%
及び製造プロセスからの不可避の不純物を含み、残余は鉄である組成を有する鋼母材から作製され、
前記鋼板は、前記母材(20)と亜鉛めっき層(22)との界面から測定して、
a) 前記めっき層との界面から始まり、炭素含有量が20μmの深さで0.1重量パーセント未満である脱炭層(21)を含み、
b) 前記脱炭層は、前記めっき層との界面から始まり、3μm以上の深さを有するフェライト副層(211)を含み、フェライト含有量は断面積分率で70%を超え、
c) 前記フェライト副層は、前記めっき層との界面から始まり、少なくとも2.5μmの深さを有し、酸化マンガン、酸化ケイ素、及び任意選択で酸化アルミニウムを含有する内部酸化選択ゾーン(212)を含む
亜鉛めっき鋼板。
【請求項2】
亜鉛めっき鋼の製造方法であって、亜鉛めっき鋼は、重量%で、以下、すなわち、
0.08≦C≦0.3%
3.0≦Mn≦6.0%
0.5≦Si≦2.5%
0.003≦Al≦2.0%
0.01≦Mo≦0.5%
0.01≦Ti≦0.1%
0.01≦Nb≦0.08%
0.0002≦B≦0.005
Cr≦1.0%
S≦0.010%
P≦0.025%
N≦0.008%
及び製造プロセスからの不可避の不純物を含み、残余は鉄である組成を有する鋼母材から作製され、
前記方法は、亜鉛めっきの前に焼鈍熱処理サイクルの以下の工程、すなわち、
i. 直火炉(DFF)セクション(11)における予熱工程であって、酸化剤/燃料比が1.00以上である予熱工程、
ii. 少なくとも1体積%の水素を含有し、残部が窒素である還元雰囲気下で、少なくとも0℃の露点を有する、少なくともAe3-10℃の均熱温度までの放射管加熱(RTH)セクション(12)における加熱工程、ここで、Ae3は膨張率測定によって決定される、
iii. 少なくとも1体積%の水素を含有し、残部が窒素である還元雰囲気下で、少なくとも0℃の露点を有する、均熱温度での放射管均熱(RTS)セクション(13)における均熱工程、
iv. 少なくとも1体積%の水素を含有し、残余は窒素である還元雰囲気下で、-20℃未満の露点を有する冷却工程(14)
v. 過時効又は炭素濃化工程(15)
vi. 亜鉛めっき工程(16)
を含む方法。
【請求項3】
少なくとも請求項1に記載の鋼板を含む少なくとも2枚の金属板のスポット溶接継手であって、前記継手は、スポット溶接によって100μmを超える長さを有する平均で0.5個未満の亀裂を含み、最長亀裂は300μm未満の長さを有するスポット溶接継手。
【請求項4】
第2の金属板が鋼板又はアルミニウム板である、請求項3に記載のスポット溶接継手。
【請求項5】
第2の金属板が、請求項1の鋼板又は請求項2の方法から得られる鋼板である、請求項4に記載のスポット溶接継手。
【請求項6】
鋼板又はアルミニウム板である第3の金属板を含む、請求項3~5のいずれか一項に記載のスポット溶接継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体亜鉛による被覆性が良好で、溶接時の特性が良好なマンガン含有亜鉛めっき高強度鋼板に関する。本発明はまた、そのような鋼板を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的特性を改善するためになされた開発の1つは、鋼中のマンガンの含有量を増加させることである。マンガンの存在は、オーステナイトの安定化のおかげで鋼の延性を高めるのに役立つ。
【0003】
機械的要件に加えて、鋼板は、亜鉛又は亜鉛合金亜鉛めっき浴に浸漬されたときに良好な被覆能力を必要とする。この被覆能力は、表面、特に酸化物の存在に依存する。鋼中のマンガンは、酸化しやすい元素であるため、焼鈍炉内で酸素及び水蒸気と反応して鋼板表面に酸化物を形成する。酸化マンガンは、液体亜鉛内の鋼板の被覆性及び後の亜鉛被覆の付着を低下させる。
【0004】
このような鋼板はまた、液体金属脆化(LME)に対して良好な耐性を示す必要がある。亜鉛又は亜鉛合金被覆鋼板は耐食性に非常に有効であり、このため自動車産業において広く使用されている。しかし、特定の鋼のアーク溶接又は抵抗溶接は、液体金属脆化(「LME」)又は液体金属助長割れ(「LMAC」)と呼ばれる現象により亀裂の発生を引き起こし得ることが経験されている。この現象は、拘束、熱膨張又は相変態から生じる印加応力又は内部応力下での、下にある鋼基材の粒界に沿った液体亜鉛の浸透を特徴とする。炭素又はケイ素のような元素を添加することは、LME耐性に悪影響であることが知られている。
【0005】
特許EP3396005号は、3~8重量%のマンガンを含有する亜鉛めっき鋼板の製造を開示している。これは、不均一な合金化を排除するためのマンガンの表面選択酸化の制御を扱う。この特許には、空気比1.00~1.20の燃焼ガスを用いて、直火型焼成炉(DFF)で、鋼板を550℃~700℃で加熱し、鋼板温度550℃~700℃で30秒以下保持する工程B、及び鋼板を水素濃度が1~50体積%の還元性雰囲気中で550℃~700℃で10~300秒間保持する工程Cが開示されている。しかし、このような熱処理は、鋼板を完全に再結晶化させることができず、LME耐性に好ましくない。
【0006】
特許EP3020842号は、2~4重量%のマンガンを含有する亜鉛めっき鋼板の製造を開示している。これは、-30℃~-60℃に制御された露点を有する還元雰囲気中で板がAc3より上に均熱される前に、酸化ゾーンにおいて0.9~1.4の空燃比で行われる酸化を記載する。酸化時には、表面に酸化鉄膜を形成することができ、めっき性に有害なケイ素とマンガンとの複合酸化物膜の形成を低減することができる。また、脱炭も起こり、所望の軟質層が形成され、曲げ加工性が向上する。さらに、内部酸化物層は、そのような軟質層に含まれ、水素脆化を改善するための水素トラップとして使用することができる。
【0007】
しかし、この特許は、加熱工程を記載しておらず、均熱工程の前の加熱工程の加熱速度も開示していない。さらに、この特許は液体金属脆化に対する耐性の問題を解決しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第3396005号明細書
【特許文献2】欧州特許第3020842号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、マンガンを3.0~6.0重量%含有する鋼板であって、液体亜鉛による被覆性及び耐LME性を両立する鋼板を提供することにある。本発明はまた、前記鋼板を得るための実施が容易な方法、及びスポット溶接後にLME問題を有さないアセンブリを利用可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板を提供することによって達成される。別の目的は、請求項2に記載の焼鈍処理方法を提供することによって達成される。最終目的は、請求項3に記載のスポット溶接継手を提供することによって達成される。スポット溶接継手はまた、請求項5~6の特徴を有することができる。
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の以下の詳細な説明から明らかになる。
【0012】
「鋼」又は「鋼板」という名称は、鋼板、コイル、プレートを意味し、これらの組成は、部品が2500MPaまで、より好ましくは2000MPaまでの引張強さを達成することを可能にする。例えば、引張強さは、980MPa以上、好ましくは1270MPa以上、さらには1470MPa以上である。
【0013】
本発明を説明するために、非限定的な例の様々な実施形態及び試行を、特に以下の図を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】炉内の各工程を有する本発明による焼鈍熱サイクルを示す。
図2】母材と亜鉛めっき層との界面の層を示す。
図3】第2の加熱工程及び均熱工程における露点の関数としてめっき層との界面から測定された20μmの深さにおける炭素含有量を示す。ダークゾーンは本発明によるものである。
図4】鋼板のLME耐性を検証するために使用されるスポット溶接アセンブリを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、亜鉛めっき鋼板であって、重量%で、以下、すなわち、
0.08≦C≦0.3%
3.0≦Mn≦6.0%
0.5≦Si≦2.5%
0.003≦Al≦2.0%
0.01≦Mo≦0.5%
0.01≦Ti≦0.1%
0.01≦Nb≦0.08%
0.0002≦B≦0.005
Cr≦1.0%
S≦0.010%
P≦0.025%
N≦0.008%
を含む、亜鉛メッキめっき鋼板に関する。
【0016】
好ましくは、マンガンの重量パーセントは、3.5%を超える。
【0017】
好ましくは、ケイ素の重量パーセントは0.7%を超え、有利には10%を超える。
【0018】
また、本発明は、図2の母材(20)と亜鉛めっき層(22)との界面から測定して、
a) めっき層との界面から始まり、炭素含有量が20μmの深さで0.1重量パーセント未満である脱炭層(21)、
b) 前記脱炭層は、めっき層との界面から始まるフェライト副層(211)を含み、フェライト含有量は、少なくとも3μmの深さでの断面積分率で70%を超え、
c) 前記フェライト副層は、めっき層との界面から始まり、少なくとも2.5μmの深さを有し、酸化マンガン、酸化ケイ素、及び任意選択で酸化アルミニウムを含有する内部酸化選択ゾーン(212)を含む
亜鉛メッキめっき鋼板に関する。
【0019】
本発明者らは、鋼板が、亜鉛めっき層と接する界面層の炭素量を低減することによるLMEに対するより良好な耐性を有することを見出した。実際、炭素はLMEに対して高感受性な元素であるようである。理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、良好なLME耐性をもたらすために、めっき層との界面から20μmの深さにおける炭素含有量が0.1重量パーセント未満でなければならないことを見出した。好ましくは、めっき層との界面から20μmの深さにおける炭素含有量は、0.08重量%未満又は0.06重量%未満でさえある。
【0020】
本発明者らはまた、フェライト微細組織が、他の相からなる層よりも良好なLME耐性を有することも見出した。他の相と比較してフェライトに含まれる少量の炭素は、LME耐性に有益であるようである。フェライト含有量が断面積分率で70%を超える層は、少なくとも3μm、好ましくは4μm又はさらには5μmの深さを有することが必要とされる。
【0021】
本発明者らは、選択的内部酸化ゾーンが液体金属脆化(LME)耐性に有益な効果を有することを見出した。理論に拘束されるものではないが、ケイ素、マンガン及びアルミニウムなどの内部酸化ゾーンに含まれる元素は、亜鉛めっき層との直接界面において固溶体中でより少ない量で存在すると考えられる。実際、ケイ素はLMEに敏感な元素であるようである。本発明者らは、良好なLME耐性を提供するために、内部選択酸化ゾーンが少なくとも2.5μmでなければならないことを見出した。好ましくは、めっき層との界面から始まる内部酸化選択ゾーンは、少なくとも3.5μm又はさらには4.5μmの深さを有する。
【0022】
本発明は前記亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、以下の工程(図1を参照されたい)、すなわち、
i. 直火炉(DFF)セクション11における予熱工程であって、酸化剤/燃料比が1.00以上である予熱工程、
ii. 少なくとも1体積%の水素を含有し、残部が窒素である還元雰囲気下で、少なくとも0℃の露点を有する、少なくともAe3-10℃の均熱温度までの放射管加熱(RTH)セクション12における加熱工程、ここで、Ae3は膨張率測定によって決定される、
iii. 少なくとも1体積%の水素を含有し、残部が窒素である還元雰囲気下で、少なくとも0℃の露点を有する、均熱温度での放射管均熱(RTS)セクション13における均熱工程、
iv. 少なくとも1体積%の水素を含有し、残余は窒素である還元雰囲気下で、-20℃未満の露点を有する冷却工程14
v. 過時効又は炭素濃化工程15
vi. 亜鉛めっき工程16
を含む方法に関する。
【0023】
本発明によるこのような焼鈍処理は、図1に示すように、良好な被覆能力及び良好なLME耐性を可能にする。
【0024】
DFFにおける予熱工程の間、ラムダ値(λ)によって表面の酸化を制御することが必須である。この値は、通常、炉の雰囲気中の燃料に対する酸化剤の量比として定義される。良好な被覆能力を確保するために、ラムダは、少なくとも1.00、好ましくは少なくとも1.02又は1.04でなければならない。
【0025】
DFFにおける加熱に続く工程は、表面の脱炭及び内部選択酸化にとって重要であり、両方とも鋼板のその後のLME耐性と関連する。雰囲気は管理されなければならない。放射管炉における露点は、図3に示すように、非常に重要である。いかなる理論にも拘束されるものではないが、母材とめっき層との間の界面において目的の層、副層及びゾーンa)、b)及びc)を達成するためには、工程iiのRTH及び工程iiiのRTSの両方において0℃を超える露点が必要であると考えられる。好ましくは、RTH及びRTS中の雰囲気は、少なくとも3℃、有利には少なくとも5℃又はさらには7℃の露点を有する。
【0026】
EP3396005号に開示されるものなどの先行技術の方法とは対照的に、本発明の焼鈍サイクルは、鋼板の完全な再結晶化を確実にするために800℃以上の均熱工程を含む。好ましくは、工程iii.における均熱工程は、少なくとも820℃又は840℃の温度で実施することができる。
【0027】
RTSでの均熱に続く工程では、表面の再酸化を回避するために非常に乾燥した雰囲気が必要とされる。表面の酸化は、実際、液体亜鉛内の鋼板の被覆性を低下させるであろう。これらの工程における雰囲気の露点は-20℃未満でなければならない。好ましくは、冷却及び最終工程中の雰囲気は、-25℃未満、有利には-40℃未満の露点を有する。
【0028】
焼鈍及び亜鉛めっきの後、鋼板はブランクに切断される。次いで、ブランクは、例えばプレススタンピングによって変形させて部品を得る。部品は、溶接によって、例えば抵抗スポット溶接によって他の鋼部品に組み立てられる。スポット溶接継手における亀裂は、それらの耐性に悪影響である。
【0029】
また、本発明は、スポット溶接によって100μmを超える長さを有する平均で0.5個未満の亀裂を含み、最長亀裂は300μm未満の長さを有するスポット溶接継手に関する。
【0030】
好ましくは、スポット溶接継手は、スポット溶接によって80μmを超える長さを有する平均で0.5個未満の亀裂、又はスポット溶接によって60μmを超える長さを有する0.5個未満の亀裂を含む。
【0031】
好ましくは、最長亀裂は200μm未満、又は100μm未満である。
【0032】
以下、本発明について、情報のためにのみ行った試行において説明する。これらは限定的ではない。
【実施例
【0033】
本実施例では、表1に重量パーセントで表した以下の組成を有するMn含有鋼を使用した。
【0034】
【表1】
【0035】
そのような組成を有する冷間圧延鋼コイルは、連続焼鈍及び亜鉛めっきラインを経た。
【0036】
焼鈍炉は、いくつかのセクションを有していた。
DFF11と呼ばれる直火による第1の加熱セクション、
RTH12と呼ばれる放射管による第2の加熱セクション、
RTS13と呼ばれる放射管による均熱セクション、
徐冷14と呼ばれる第1の冷却セクション、
焼き入れと呼ばれる第2の冷却セクション、
炭素濃化セクション15、
亜鉛めっきセクション16。
【0037】
焼鈍中のプロセスパラメータを表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
次いで、コイルを、さらなる分析のために試料に切断した。試料は、依然として元の試行番号によって指定され、各試行番号は、表2に強調された特定のプロセスパラメータに対応する。
【0040】
内部酸化深さ及び脱炭層の深さを得るために、分析のために切断された1組の試料を調査した。
【0041】
亜鉛めっき鋼板の内部酸化深さは、鋼板表面近傍の走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した画像上で測定した。めっき層との界面近傍には、母材鋼板の粒界及び内部粒子に内部酸化物が現れる。内部酸化深さは、めっき層と酸化物が観察された最も深い位置との界面からの最小深さを測定することによって定義した。観察は、平面RD-ND(圧延方向-法線方向)において、5000倍より高い倍率で行った。
【0042】
フェライトを体積分率で少なくとも70%含む副層の厚さは、内部酸化の深さと同じ方法で求めた。
【0043】
フェライトの体積分率は、RD-ND(圧延方向-法線方向)平面における画像上で測定されたフェライト面積分率の平均値として決定する。めっき層との界面から測定した鋼板中の深さ20μmの炭素含有量について、グロー放電発光分析(GDOES)定性及び定量分析を行った。GDOES測定前の被覆めっき層の電位差滴定溶解から開始して、試料の両側における3回のGDOES分析。次いで、全ての深さを鉄当量(μm(e,q,Fe))で表す。結果を表3にまとめる。
【0044】
【表3】
【0045】
内部酸化ゾーン、フェライト副層及び脱炭層に関する本発明による試行1及び2は、RTHセクション及びRTSセクションの両方において正の露点を有する雰囲気を経た。
【0046】
内部酸化ゾーン、フェライト副層及び脱炭層に関して本発明に従わない試行3及び4は、RTH又はRTSにおいて、少なくとも1つの負の露点を有する雰囲気を経た。
【0047】
1つの別の組の試料を、スポット溶接によってLME耐性試験に供した。
【0048】
LME亀裂耐性挙動は、図4に示す3層の積層条件を用いて評価した。各試行について、3枚の被覆鋼板を抵抗スポット溶接により溶接した。試験される板(41)は上部にあり、2枚の軟鋼板(42)及び(43)は下部にある。スポット溶接アセンブリは、500daNのクランプ力で半径8mmの電極を用いて行った。溶接サイクルは、それぞれ0.2秒の間の3つのパルスから成り、各パルス間の冷却時間は0.04秒であった。
【0049】
溶接後、全ての溶接部を、最初に染料浸透試験(DPI)を使用して、次いで金属組織学的分析を使用して注意深く検査する。DPIは、亜鉛めっきZn層を化学的に除去した後に実施し、これは、外側の亀裂の位置決めを助ける。金属組織学的分析は、DPI観察に基づいて溶接部の中央断面で実施する。金属組織学的試料をエポキシ樹脂に入れ、1ミクロンの研磨布まで機械的に研磨し、次いでピクリン酸溶液中でエッチングする。次いで、亀裂の分布を観察し、光学顕微鏡で分類し、全ての目に見えるLME亀裂の長さを測定し、亀裂カテゴリー当たりのそれらの数を記録する。
【0050】
次に、光学顕微鏡を用いて、100μm以上の長さを有する亀裂の数、及び最大亀裂長を評価した。
【0051】
結果を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
本発明による試行1及び試行2は、試行3及び4と比較して、LMEに対する優れた耐性を示す。実際、試行1及び2については、100μmより長い亀裂は存在しない。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】