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特表2024-546371偽造防止視覚効果を有するセラミックプレートの製造方法
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  • 特表-偽造防止視覚効果を有するセラミックプレートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-20
(54)【発明の名称】偽造防止視覚効果を有するセラミックプレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/89 20060101AFI20241213BHJP
   C04B 41/86 20060101ALI20241213BHJP
   C04B 33/34 20060101ALI20241213BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20241213BHJP
   C03C 8/20 20060101ALI20241213BHJP
   C03C 8/04 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
C04B41/89 A
C04B41/86 A
C04B33/34
E04F13/14 103A
C03C8/20
C03C8/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533893
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 CN2022139206
(87)【国際公開番号】W WO2023130932
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】202210013753.0
(32)【優先日】2022-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266393
【氏名又は名称】蒙娜麗莎集団股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 一軍
(72)【発明者】
【氏名】呉 洋
(72)【発明者】
【氏名】汪 慶剛
(72)【発明者】
【氏名】黄 玲艷
(72)【発明者】
【氏名】陳 鵬程
【テーマコード(参考)】
2E110
4G062
【Fターム(参考)】
2E110AA64
2E110EA09
2E110GA34W
2E110GB28W
4G062AA09
4G062AA10
4G062BB01
4G062DA06
4G062DB04
4G062DC01
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4G062KK07
4G062KK10
4G062PP04
4G062PP11
(57)【要約】
本発明は、偽造防止視覚効果を有するセラミックプレート及びその製造方法を提供する。前記製造方法は、ブランク粉末を使用して素地を製造するステップと、素地の表面に上釉を施すステップと、上釉を施した素地の表面にインクジェットでパターンを印刷するステップと、インクジェットでパターンを印刷した素地の表面に保護釉薬を施すステップと、保護釉薬を施した素地の表面に偽造防止材料を施し、前記偽造防止材料の原料組成は、質量百分率で、チタン石20~30%、高屈折率酸化物3~5%、低温釉薬粉末60~80%を含むステップと、偽造防止材を施した素地を焼成し、チタン石と高屈折率酸化物が、焼成環境下で低温釉薬粉の溶融により発生した溶融液に濡れて包まれ、保護釉薬に沈んだが乳濁を発生させず、その後研磨して偽造防止視覚効果を有するセラミックプレートを得るステップと、を含み、偽造防止視覚効果とは、視線方向が反射光の経路と一致している場合には高い屈折効果があり、視線方向が反射光の経路からずれている場合には屈折効果がないことである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランク粉末を使用して素地を製造するステップと、
素地の表面に上釉を施すステップと、
上釉を施した素地の表面にインクジェットでパターンを印刷するステップと、
インクジェットでパターンを印刷した素地の表面に保護釉薬を施すステップと、
保護釉薬を施した素地の表面に偽造防止材料を施し、前記偽造防止材料の原料組成は、質量百分率で、チタン石20~30%、高屈折率酸化物3~5%、低温釉薬粉末60~80%を含み、前記低温釉薬粉末の化学組成は、質量百分率で、SiO:62~70%、Al:16~18%、アルカリ土類金属酸化物:5.5~8.5%、アルカリ金属酸化物:2.7~4.5%、ZnO:1~3%を含み、前記高屈折率酸化物は、酸化セリウム及び/又は酸化スズであり、高屈折率酸化物及びチタン石の粒径はそれぞれ独立して1~2μmから選択されるステップと、
前記偽造防止材料を施した素地を焼成し、チタン石と高屈折率酸化物が、焼成環境下で低温釉薬粉の溶融により発生した溶融液に濡れて包まれ、保護釉薬に沈んだが乳濁を発生させず、その後研磨して偽造防止視覚効果を有するセラミックプレートを得るステップと、を含み、偽造防止視覚効果とは、視線方向が反射光の経路と一致している場合には高い屈折効果があり、視線方向が反射光の経路からずれている場合には屈折効果がないことである、偽造防止視覚効果を有するセラミックプレートの製造方法。
【請求項2】
前記低温釉薬粉末の溶融開始温度は1080~1130℃である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記保護釉薬は、擬古釉薬であり、化学組成は、質量百分率で、SiO:62~66%、Al:18~20%、アルカリ土類金属酸化物:10~14%、アルカリ金属酸化物:2.7~4.5%、ZnO:1~3%を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記保護釉薬は、研磨釉薬であり、化学組成は、質量百分率で、SiO:62~68%、Al:16~19%、アルカリ土類金属酸化物:6~11.5%、アルカリ金属酸化物:3.3~5.4%、ZnO:2~5%を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記保護釉薬の施釉方法は、吹き掛けであり、前記保護釉薬の比重は1.4~1.6g/cmであり、施釉量は160~250g/mである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記偽造防止材料を施す方法は、前記偽造防止材料をスクリーン印刷すること、または前記偽造防止材料をフリット状にして散布することである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の製造方法により得られた偽造防止視覚効果を有するセラミックプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用陶磁器の分野に属し、具体的に偽造防止視覚効果を有するセラミックプレート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陶磁器製品の模倣は、陶磁器企業の創作意欲に打撃を与え、革新的な陶磁器企業のイメージを破壊し、正常な陶磁器市場を混乱させるだけでなく、ブランド陶磁器企業の名誉を毀損し、陶磁器業界の持続可能な発展を深刻に脅かす可能性がある。そのため、偽造防止機能を持つ陶磁器製品の開発に力を入れることは陶磁器企業の現在の研究の主要な方向の一つである。偽造防止陶磁器製品は標準化陶磁器製品に一定の識別標識を与えることができ、この識別標識によって陶磁器製品に柔軟な識別授権と保護を与えることができる。
【0003】
現在、市場では通常蛍光又は変色偽造防止材料を使用して偽造防止を行っている。例えば、特殊な構造を持つ高分子偽造防止材料は、外部環境の影響を受けて変色して、偽造防止を実現する。又は、室温下で無色、臨界温度で色を示す熱変色材を使用する。現在、このタイプの熱変色材は日常用陶磁器に比較的よく見られる。また、無機変色材料、例えばタングステン酸塩系や酸化ネオジムなどは変色効果を得ることができるが、このような無機変色材料はそれ自体に色があるため、陶磁器製品の表面装飾に影響を与える可能性がある。光輝インキは装飾色として擬古面によく使用され、且つタイル面に明らかな光輝効果を呈し、偽造防止作用を発揮できない。
【0004】
特許文献1は、金属光沢装飾効果を有する陶磁器タイル及びその製造方法を開示している。前記製造方法は、マットな研磨釉薬を施したタイル素地に高比重・高屈折率釉薬を施して焼成することで陶磁器タイルを得ることを含み、前記高比重・高屈折率釉薬の溶融温度と比重が前記マットな研磨釉薬よりも高いことにより、前記高比重・高屈折率釉薬の少なくとも一部が、焼成プロセスにおいて、前記マットな研磨釉薬により形成された溶融液相中に沈み、前記溶融液相により全体的に又は部分的に包み込まれるようにする。前記方法は、屈折率の高い物質を使用し、更に研磨して金属光沢装飾効果を有する釉薬を得る。しかし、この方法で使用した高屈折率物質は含量が高く、粒径が小さいため、タイル面に乳濁が発生してタイル面に金属光沢装飾として現れる白い線が形成しやすくなる。よって、この方法は偽造防止陶磁器製品の製造には適用されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開公報第111732453号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記課題に対して、本発明は、偽造防止視覚効果を有するセラミックプレート及びその製造方法を提供している。セラミックプレートの表面に光が当たると、高強度の反射光が目に入り、明るい視覚的な印象を与える。しかし、視線が反射光の経路から外れると、反射効果は肉眼では見えない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の局面において、本発明は、偽造防止視覚効果を有するセラミックプレートの製造方法を提供している。前記製造方法は、
ブランク粉末を使用して素地を製造するステップと、
素地の表面に上釉を施すステップと、
上釉を施した素地の表面にインクジェットでパターンを印刷するステップと、
インクジェットでパターンを印刷した素地の表面に保護釉薬を施すステップと、
保護釉薬を施した素地の表面に偽造防止材料を施し、前記偽造防止材料の原料組成は、質量百分率で、チタン石(titanite)20~30%、高屈折率酸化物3~5%、低温釉薬粉末60~80%を含むステップと、
前記偽造防止材料を施した素地を焼成し、チタン石と高屈折率酸化物が、焼成環境下で低温釉薬粉の溶融により発生した溶融液に濡れて包まれ、保護釉薬に沈んだが乳濁を発生させず、その後研磨して偽造防止視覚効果を有するセラミックプレートを得るステップと、を含み、偽造防止視覚効果とは、視線方向が反射光の経路と一致している場合には高い屈折効果があり、視線方向が反射光の経路からずれている場合には屈折効果がないことである。
【0008】
好ましくは、前記低温釉薬粉末の溶融開始温度が1080~1130℃である。
【0009】
好ましくは、前記低温釉薬粉末の化学組成は、質量百分率で、SiO:62~70%、Al:16~18%、アルカリ土類金属酸化物:5.5~8.5%、アルカリ金属酸化物:2.7~4.5%、ZnO:1~3%を含む。
【0010】
好ましくは、高屈折率酸化物及びチタン石の粒径は、それぞれ独立して1~2μmから選択される。
【0011】
好ましくは、前記保護釉薬は、擬古釉薬であり、化学組成が、質量百分率で、SiO:62~66%、Al:18~20%、アルカリ土類金属酸化物:10~14%、アルカリ金属酸化物:2.7~4.5%、ZnO:1~3%を含む。
【0012】
好ましくは、前記保護釉薬は、研磨釉薬であり、化学組成が、質量百分率で、SiO:62~68%、Al:16~19%、アルカリ土類金属、酸化物:6~11.5%、アルカリ金属酸化物:3.3~5.4%、ZnO:2~5%を含む。
【0013】
好ましくは、前記保護釉薬の施釉方法は、吹き掛けであり、前記保護釉薬の比重は1.4~1.6g/cmであり、施釉量は160~250g/mである。
【0014】
好ましくは、偽造防止材料を施す方法は、偽造防止材料をスクリーン印刷すること、又は偽造防止材料をフリット状にして散布することである。
【0015】
好ましくは、前記高屈折率酸化物が酸化セリウム及び/又は酸化スズである。
【0016】
第2の局面において、本発明は、上記のいずれかに記載の製造方法により得られる偽造防止視覚効果を有するセラミックプレートを提供している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例1に係る陶磁器製品のタイル面効果図であり、その左側は視線方向が反射光の経路からずれている場合のタイル面効果図であり、右側は視線方向が反射光の経路と一致している場合のタイル面効果図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明について下記の実施形態を通じて更に説明する。なお、下記の実施形態は本発明を説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。また、各「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。以下、本発明の偽造防止視覚効果を有するセラミックプレート(偽造防止セラミックプレート)の製造方法を例示して説明する。
【0019】
ブランク粉末を使用して素地を製造する。当該ブランク粉末の化学組成は、質量百分率で、SiO:60~67%、Al:20~23%、CaO:0.3~0.5%、MgO:0.4~0.6%、KO:2.5~3.5%、NaO:2.0~2.8%、Fe:0.3~0.5%、TiO:0.15~0.3%を含む。素地の製造方法は、乾式プレス成形を含むが、これらに限定されない。
【0020】
素地を乾燥させる。乾燥温度は150~250℃、乾燥時間は30~40minである。乾燥後の素地の水分を0.35~0.5wt%以内に制御する。
【0021】
乾燥させた素地の表面に上釉を施釉する。その作用は素地の下地色や欠陥をカバーし、インクジェットパターンの発色を促進するためである。前記上釉薬の化学組成は、質量百分率で、SiO:60~65%、Al:19~25%、アルカリ土類金属酸化物:2.2~4.0%、アルカリ金属酸化物:5.3~7.1%、ZnO:3~5%を含む。一例として、前記上釉の化学組成は、質量百分率で、SiO:60~65%、Al:19~25%、CaO:0.4~0.8%、MgO:0.3~0.7%、KO:2.8~3.6%、NaO:2.5~3.5%、BaO:1.5~2.5%、ZnO:3~5%を含む。
【0022】
前記上釉の施釉方法は、吹き(スプレー)掛けである。前記上釉の比重は1.45~1.55g/cmであり、施釉量は200~230g/mである。
【0023】
上釉を施した素地の表面にインクジェットでパターンを印刷する。パターンのテクスチャと色はレイアウトの設計効果に応じて適応的に調整できる。当該パターンは偽造防止標識であってもよい。
【0024】
インクジェットでパターンを印刷した素地の表面に保護釉薬を施す。前記保護釉薬は、研磨釉薬又はアンティーク調釉薬であってもよい。
【0025】
アンティーク調釉薬の化学組成は、質量百分率で、SiO:62~66%、Al:18~20%、アルカリ土類金属酸化物:10~14%、アルカリ金属酸化物:2.7~4.5%、ZnO:1~3%を含む。一例として、前記アンティーク調釉薬の化学組成は、質量百分率で、SiO:62~66%、Al:18~20%、CaO:4.5~5.5%、MgO:1.5~2.5%、KO:2.5~3.5%、NaO:0.2~1.0%、BaO:3~6%、ZnO:1~3%を含む。
【0026】
研磨釉薬の化学組成は、質量百分率で、SiO:62~68%、Al:16~19%、アルカリ土類金属酸化物:6~11.5%、アルカリ金属酸化物:3.3~5.4%、ZnO:2~5%を含む。一例として、前記研磨釉薬の化学組成は、質量百分率で、SiO:62~68%、Al:16~19%、CaO:3.5~5.5%、MgO:0.5~1%、KO:2.8~3.9%、NaO:0.5~1.5%、BaO:2~5%、ZnO:2~5%を含む。
【0027】
前記保護釉薬の施釉方法は、吹き掛けであってもよい。前記保護釉薬の比重は1.4~1.6g/cmであり、施釉量は160~250g/mである。上記施釉工程は、高屈折率酸化物及びチタン石の沈下に有利であり、偽造防止効果の形成を促進する。
【0028】
保護釉薬を施した素地の表面に偽造防止材料を施す。前記偽造防止材料は、チタン石、高屈折率酸化物及び低温釉薬粉末を含む。いくつかの実施形態において、前記偽造防止材料の原料組成は、質量百分率で、チタン石20~30%、高屈折率酸化物3~5%、低温釉薬粉末60~80%を含む。高屈折率酸化物の屈折率は約2.3~2.5である。高屈折率酸化物のみを屈折効果の形成に使用した場合、高屈折率酸化物の融点が高いため、研磨された釉薬表面に多数の気孔が発生しやすくなる。同様に、チタン石のみを屈折効果の形成に使用すれば、チタン石の屈折率が相対的に低いため、チタン石が少量であると乳濁の発生を避けることができるが、屈折効果が明らかでないから偽造防止に影響し、チタン石が過量であると乳濁を起こしやすく、視線方向が反射光の経路と一致するとき、及び視線方向が反射光の経路からずれるときに、屈折効果に大きく異ならない。研究の結果、本発明の偽造防止材料は、チタン石と高屈折率酸化物を同時に導入し、屈折率が相対的に低いチタン石と屈折率が相対的に高い高屈折率酸化物の質量比を制御することにより、乳濁を極力回避するとともに、陶磁器製品表面に適切な視線方向に高強度の屈折効果を与えられることを見出した。一例として、前記チタン石と高屈折率酸化物との質量比は(5~10):1である。それだけでなく、チタン石は融点が低いため、低温釉薬粉末とよく結合して、気泡の発生を抑えることができる。
【0029】
前記低温釉薬粉の溶融開始温度は1080~1130℃である。低温釉薬粉末の最も主要な機能は、高融点の高屈折率物質を釉薬に溶解させて、気孔の発生を避けることである。低温釉薬粉末の溶融開始温度が低いと、高温下で低温釉薬粉末が先に溶融し、排気に悪い。低温釉薬粉末の溶融開始温度が高いと、良好なフラックス効果が得られず、同様に気孔が発生しやすい。
【0030】
特許文献1の低温釉薬粉末の化学組成は、質量百分率で、強熱減量:0.43~0.53%、SiO:44.67~46.52%、Al:8.33~9.72%、Fe:0.18~0.23%、TiO:0.09~0.14%、CaO:3.43~4.98%、MgO:0.88~1.98%、KO:1.74~2.57%、NaO:2.05~2.94%、ZrO:3.89~4.98%、ZnO:10.02~11.70%、PbO:5.87~6.92%、CeO:6.51~7.03%、BaO:1.98~2.50%を含む。本発明に記載の低温釉薬粉末の化学組成は、質量百分率で、SiO:62~70%、Al:16~18%、アルカリ土類金属酸化物:5.5~8.5%、アルカリ金属酸化物:2.7~4.5%、ZnO:1~3%を含む。一例として、低温釉薬粉の化学組成は、質量百分率で、SiO:62~70%、Al:16~18%、CaO:2.0~2.5%、MgO:0.5~1%、KO:2.5~3.5%、NaO:0.2~1.0%、BaO:3~5%、ZnO:1~3%を含む。これより、本発明の低温釉薬粉末は、釉薬表面の乳濁による偽造防止の不能を回避するために、酸化ジルコニウムなどの乳濁成分を含んでいないことが分かる。そして、本発明は、釉薬が適切な高温粘度及び高温流動性を有するように、シリコンアルミニウム含有量及びフラックス含有量を制御する。前述した特許に係る発明では、酸化ジルコニウムと酸化セリウムが大量添加されており、これらの物質の融点は共に1800℃を超えるため、フラックスを大量添加することで焼成温度を下げる必要がある。
【0031】
本発明の低温釉薬粉末は、溶融温度の範囲が広くて、気泡排出に有利であるとともに、フラックス効果を発揮する。また、前記低温釉薬粉が高温溶融時に生成した溶融液は適度な粘度を有し、焼成プロセスにおいて保護釉薬に対するチタン石や高屈折率酸化物の沈下に寄与し、研磨時の脱落を回避することができる。当該低温釉薬粉末は、焼成プロセスにおいて良好な流動性を有するので、チタン石と高屈折率酸化物とを十分に包み込んで透明な高屈折率の輝線を形成することができる。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記偽造防止材料の原料組成は、質量百分率で、チタン石20~30%、酸化セリウム2~3%、酸化スズ1~1.8%、釉薬粉60~80%を含む。チタン石、酸化セリウムと酸化スズはいずれも特定の色を持っており、この三者が過剰になると、陶磁器表面に色が現れ、偽造防止に影響を与える。酸化セリウム又はチタン石の含有量が高すぎると釉薬表面が黄色くなり、酸化スズの含有量が高すぎると釉薬表面が赤くなる。また前述したように、チタン石、酸化セリウム及び酸化スズはいずれも特定の屈折率を持っており、適切に制御されていないと乳濁が発生しやすく、この場合、タイル面に白線があり、この白線は閃光効果を示すことができるが、偽造防止を実現することができない。原因としては、偽造防止陶磁器製品と普通の陶磁器製品の表面は、特定の状況においてのみ偽造防止標識又は偽造防止視覚効果が現れるからである。
【0033】
偽造防止材料における低温釉薬粉末の質量分率を60~80%とする目的は、溶融を容易にするためである。偽造防止材料における低温釉薬粉末の含量が低すぎると、気孔が発生しやすい。偽造防止材料における低温釉薬粉末の含量が高すぎると、閃光効果が明らかでなく、釉薬表面の屈折率が低くなり、明らかな光輝効果が見られない。
【0034】
特筆すべきは、偽造防止材料に低温釉薬粉末を省略した場合、チタン石と高屈折率物質は依然として保護釉薬に沈み込むことができるが、チタン石と高屈折率物質を包み込んで濡らすための低温釉薬粉末がないため、釉薬表面には排気が悪いのでピンホールが発生しやすくなり、その結果、釉薬表面は平らではない。
【0035】
酸化セリウム、酸化スズ及びチタン石の粒径は1~2μmの範囲内にある。酸化セリウム、酸化スズ、チタン石の粒径が小さすぎると、釉薬表面の乳濁を起こしやすい。酸化セリウム、酸化スズ、チタン石の粒径が大きすぎると、釉薬表面が高温になり、気孔の排出に不利である。
【0036】
偽造防止材料を施す方法は、偽造防止材料をスクリーン印刷すること、または偽造防止材料をフリット状にして散布することである。いくつかの実施形態において、偽造防止材料の施用量は20~30g/mである。
【0037】
窯に入れて焼成する。例えば、最高焼成温度は1150~1180℃であり、焼成時間は55~65minである。
【0038】
研磨する。研磨に適切なモジュールの組み合わせを使用することで、偽造防止視覚効果の差異化をより顕著にすることができる。
【0039】
アンティーク調釉面に対しては、研磨用モジュールは、2000メッシュ程度のモジュールが2組、3000メッシュ程度のモジュールが2組である。アンティーク調釉面は、フリックするだけで閃光の差異がはっきりと見える。
【0040】
研磨釉面に対して、研磨用モジュールは粗いものから細かいものまで配置される。モジュール構成は、200メッシュのモジュールが2組、800メッシュのモジュールが4組、1000メッシュのモジュールが2組、2000メッシュのモジュールが2組、3000メッシュのモジュールが2組である。深く研磨すると偽造防止パターンを傷つけやすく、浅く研磨すると適切な光輝に達成できない。
【0041】
本発明は、光の屈折に基づいて偽造防止視覚効果を有するセラミックプレートを製造する。セラミックプレートの仕様は、限定されるものではなく、本発明の改良点でもない。本発明は、チタン石、高屈折率酸化物及び低温釉薬粉末を含む偽造防止材料を、保護釉薬を施したタイル面に施し、高温焼成プロセスにおいて、偽造防止材料は比重が高いため保護釉薬に沈み込み、研磨後に光の照射方向にしか見えない光輝を呈する。すなわち、視線方向が反射光の経路からずれている場合には、陶磁器製品表面に明らかな光沢度の差異がないが、視線方向が反射光の経路と一致している(光線の方向に沿う)場合には、明らかな光沢度の差異が観察される。
【0042】
以下、実施例を通じて、本発明をさらに詳しく説明する。同様に、以下の実施例は、本発明をさらに説明するためのものであり、本発明の特許範囲を制限するものではない。当業者が本発明の上記内容により行う非本質的な改良及び調整は、共に本発明の特許範囲に属する。下記の例における具体的な工程変量なども適合範囲内の一例に過ぎず、即ち、当業者が本発明の説明に基づいて適当な範囲内で選択できるものであり、下記例の具体的な数値に限定されるものではない。
【0043】
実施例1
アンティーク調釉面の偽造防止セラミックプレートの製造方法は、以下のステップを含む。
ステップ1.:ブランク粉末を使用して素地を製造した。素地を乾燥させた。
ステップ2.:タイル面に上釉を施した。前記上釉の化学組成は、質量百分率で、SiO:60%、Al:25%、CaO:0.4%、MgO:0.6%、KO:3.6%、NaO:3.4%、BaO:2.5%、ZnO:4.5%を含む。前記上釉の施釉方法は吹き掛けであり、比重は1.45g/cm、施釉量は200g/mである。
ステップ3.:上釉を施した素地の表面にインクジェットでパターンを印刷した。
ステップ4.:インクジェットでパターンを印刷した素地の表面にアンティーク調釉薬を施した。前記アンティーク調釉薬の化学組成は、質量百分率で、SiO:62~66%、Al:18~20%、CaO:4.5~5.5%、MgO:1.5~2.5%、KO:2.5~3.5%、NaO:0.2~1.0%、BaO:3~6%、ZnO:1~3%を含む。前記アンティーク調釉薬の施釉方法は吹き掛けであり、比重は1.55g/cm、施釉量は230g/mである。
ステップ5:アンティーク調釉薬を施した素地の表面に偽造防止材料をスクリーン印刷した。前記偽造防止材料の原料組成は、質量百分率で、チタン石20%、酸化セリウム2%、酸化スズ1%、低温釉薬粉77%を含む。前記低温釉薬粉の化学組成は、質量百分率で、SiO:62~70%、Al:16~18%、CaO:2.0~2.5%、MgO:0.5~1%、KO:2.5~3.5%、NaO:0.2~1.0%、BaO:3~5%、ZnO:1~3%を含む。前記偽造防止材料の施用量は20g/mである。
ステップ6.:偽造防止材料を施した素地を焼成した。最高焼成温度は1180℃、焼成時間は55minである。
ステップ7.:研磨した。研磨用モジュールは、2000メッシュのモジュールを2組、3000メッシュのモジュールを2組含む。
【0044】
図1から分かるように、視線方向が反射光の経路と一致している場合、前記セラミックプレートの表面は明らかな閃光の差異を示し、高強度の屈折効果を有し、且つタイル面の偽造防止標識が観察される。視線方向が反射光の経路からずれている場合は、屈折効果がなく、タイル面にも偽造防止標識が観察されない。
【0045】
実施例2
研磨釉面の偽造防止セラミックプレートの製造方法は、以下のステップを含む。
ステップ1.:ブランク粉末を使用して素地を製造した。素地を乾燥させた。
ステップ2.:タイル面に上釉を施した。前記上釉の化学組成は、質量百分率で、SiO:65%、Al:23%、CaO:0.8%、MgO:0.7%、KO:2.8%、NaO:3.2%、BaO:1.5%、ZnO:3%を含む。前記上釉の施釉方法は吹き掛けであり、比重は1.55g/cm、施釉量は210g/mである。
ステップ3.:上釉を施した素地の表面にインクジェットでパターンを印刷した。
ステップ4.:インクジェットでパターンを印刷した素地の表面に研磨釉薬を施した。前記研磨釉薬の化学組成は、質量百分率で、SiO:62~68%、Al:16~19%、CaO:3.5~5.5%、MgO:0.5~1%、KO:2.8~3.9%、NaO:0.5~1.5%、BaO:2~5%、ZnO:2~5%を含む。前記研磨釉薬の施釉方法は吹き掛けであり、比重は1.55g/cm、施釉量は200g/mである。
ステップ5.:研磨釉薬を施した素地の表面に偽造防止材料をスクリーン印刷した。前記偽造防止材料の原料組成は、質量百分率で、チタン石30%、酸化セリウム3%、酸化スズ1.8%、低温釉薬粉65.2%を含む。前記低温釉薬粉末の化学組成は、質量百分率で、SiO:62~70%、Al:16~18%、CaO:2.0~2.5%、MgO:0.5~1%、KO:2.5~3.5%、NaO:0.2~1.0%、BaO:3~5%、ZnO:1~3%を含む。前記偽造防止材料の施用量は30g/mである。
ステップ6.:偽造防止の研磨釉薬を施した素地を焼成した。最高焼成温度は1160℃、焼成時間は60minである。
ステップ7.:研磨した。研磨用モジュールは、200メッシュのモジュールを2組、800メッシュのモジュールを4組、1000メッシュのモジュールを2組、2000メッシュのモジュールを2組、3000メッシュのモジュールを2組含む。
【0046】
比較例1
実施例1と基本的に同じであり、前記偽造防止材料の原料組成が、質量百分率で、酸化セリウム3%、酸化スズ2%、低温釉薬粉末95%を含むという点だけで異なっている。
【0047】
当該比較例は、高屈折率酸化物のみを使用し、タイル面に乳濁が発生じやすく、タイル面に白線が現れて、偽造防止視覚効果がなくなる。
【0048】
比較例2
実施例1と基本的に同じであり、前記偽造防止材料の原料組成が、質量百分率で、チタン石30%、低温釉薬粉末70%を含むという点だけで異なっている。
【0049】
当該比較例は、チタン石のみを使用し、チタン石の使用量が高いと乳濁が発生しやすく、使用量が低いと屈折効果が弱い。
【0050】
比較例3
実施例1と基本的に同じであり、前記偽造防止材料の原料組成が、質量百分率で、チタン石40%、酸化セリウム3%、酸化スズ3%、低温釉薬粉末54%を含むという点だけで異なっている。
【0051】
高屈折率物質の使用量が多すぎると、釉薬表面に乳濁が発生するようになる。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-06-05
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランク粉末を使用して素地を製造するステップと、
素地の表面に上釉を施すステップと、
上釉を施した素地の表面にインクジェットでパターンを印刷するステップと、
インクジェットでパターンを印刷した素地の表面に保護釉薬を施すステップと、
保護釉薬を施した素地の表面に偽造防止材料を施し、前記偽造防止材料の原料組成は、質量百分率で、チタン石20~30%、高屈折率酸化物3~5%、低温釉薬粉末60~80%を含み、前記低温釉薬粉末の化学組成は、質量百分率で、SiO:62~70%、Al:16~18%、アルカリ土類金属酸化物:5.5~8.5%、アルカリ金属酸化物:2.7~4.5%、ZnO:1~3%を含み、前記高屈折率酸化物は、酸化セリウム及び/又は酸化スズであり、高屈折率酸化物及びチタン石の粒径はそれぞれ独立して1~2μmから選択されるステップと、
前記偽造防止材料を施した素地を焼成し、チタン石と高屈折率酸化物が、焼成環境下で低温釉薬粉の溶融により発生した溶融液に濡れて包まれ、保護釉薬に沈んだが乳濁を発生させず、その後研磨して偽造防止視覚効果を有するセラミックプレートを得るステップと、を含み、偽造防止視覚効果とは、視線方向が反射光の経路と一致している場合には高い屈折効果があり、視線方向が反射光の経路からずれている場合には屈折効果がないことである、偽造防止視覚効果を有するセラミックプレートの製造方法。
【請求項2】
前記低温釉薬粉末の溶融開始温度は1080~1130℃である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記保護釉薬は、擬古釉薬であり、化学組成は、質量百分率で、SiO:62~66%、Al:18~20%、アルカリ土類金属酸化物:10~14%、アルカリ金属酸化物:2.7~4.5%、ZnO:1~3%を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記保護釉薬は、研磨釉薬であり、化学組成は、質量百分率で、SiO:62~68%、Al:16~19%、アルカリ土類金属酸化物:6~11.5%、アルカリ金属酸化物:3.3~5.4%、ZnO:2~5%を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記保護釉薬の施釉方法は、吹き掛けであり、前記保護釉薬の比重は1.4~1.6g/cmであり、施釉量は160~250g/mである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記偽造防止材料を施す方法は、前記偽造防止材料をスクリーン印刷すること、または前記偽造防止材料をフリット状にして散布することである、請求項1に記載の製造方法。
【国際調査報告】