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特表2024-546381毛包由来幹細胞の培養方法及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-20
(54)【発明の名称】毛包由来幹細胞の培養方法及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/074 20100101AFI20241213BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20241213BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20241213BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20241213BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20241213BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20241213BHJP
【FI】
C12N5/074
A61K35/28
A61P17/14
A61K8/98
A61Q7/00
A61K35/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538423
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 KR2022021214
(87)【国際公開番号】W WO2023121400
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0187682
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518357128
【氏名又は名称】イファ ユニバーシティ-インダストリー コラボレーション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】EWHA UNIVERSITY - INDUSTRY COLLABORATION FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】52, Ewhayeodae-gil Seodaemun-gu Seoul 03760, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】521129141
【氏名又は名称】ヒエラバイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ,ソン チン
(72)【発明者】
【氏名】シン,チ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,チョン ファ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒチョン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065BC03
4B065BC46
4B065CA44
4B065CA50
4C083AA071
4C083CC37
4C083EE22
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB48
4C087NA14
4C087ZA89
(57)【要約】
本発明は、毛包由来幹細胞の培養方法及びその用途に関し、毛包由来幹細胞の培養方法;前記方法で製造された毛包由来幹細胞;前記製造された毛包由来幹細胞、その培養物または前記毛包由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、脱毛治療または発毛促進用薬学組成物;医薬部外品組成物;及び化粧料組成物に関する。
本発明の培養方法によると、毛包組織から効果的に幹細胞を分離及び得ることができ、前記得られた毛包由来幹細胞は、多分化能と自己複製能に優れ、脱毛治療及び発毛促進効果に優れるため、脱毛改善、予防または治療用途として有用に活用できるものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)毛包組織をハイドロゲル内に取り込んで培養して培養物を得る段階;及び
(b)前記で得られた培養物においてハイドロゲルを分解して前記毛包組織からハイドロゲル内に移動及び増殖した幹細胞を回収する段階を含む、毛包由来幹細胞の培養方法。
【請求項2】
前記(a)段階は、毛包組織をハイドロゲル二重層の間に取り込んで培養するものである、請求項1に記載の毛包由来幹細胞の培養方法。
【請求項3】
前記毛包組織は、表皮(epidermal)から毛包漏斗部(follicular infundibulum)に該当する部位を除去した切片を用いるものである、請求項1に記載の毛包由来幹細胞の培養方法。
【請求項4】
前記(a)段階で毛包組織の培養は、3日~20日である、請求項1に記載の毛包由来幹細胞の培養方法。
【請求項5】
前記(a)段階で毛包組織の培養は、組織間の間隔が1mm以上50mm以下で播種されるものである、請求項1に記載の毛包由来幹細胞の培養方法。
【請求項6】
前記毛包由来幹細胞は、SANP25、COL10A1、TMEM119、AQP1、PLCB4及びITGA8から選択されるいずれか一つ以上の遺伝子発現が増加したものである、請求項1に記載の毛包由来幹細胞の培養方法。
【請求項7】
前記毛包由来幹細胞は、CD73、CD90、CD105、Nestin及びLgr5が発現し、
CD34、CD45及びHLA-DRは発現しない免疫学的特性を有するものである、請求項1に記載の毛包由来幹細胞の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法で製造された毛包由来幹細胞。
【請求項9】
前記毛包由来幹細胞は、SANP25、COL10A1、TMEM119、AQP1、PLCB4及びITGA8から選択されるいずれか一つ以上の遺伝子発現が増加したものである、請求項8に記載の毛包由来幹細胞。
【請求項10】
前記毛包由来幹細胞は、CD73、CD90、CD105、Nestin及びLgr5が発現し、
CD34、CD45及びHLA-DRは発現しない免疫学的特性を有するものである、請求項8に記載の毛包由来幹細胞。
【請求項11】
請求項1に記載の方法で製造された毛包由来幹細胞、その培養物または前記毛包由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、脱毛治療または発毛促進用薬学組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の方法で製造された毛包由来幹細胞、その培養物または前記毛包由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、脱毛改善または発毛促進用医薬部外品組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の方法で製造された毛包由来幹細胞、その培養物または前記毛包由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、脱毛改善または発毛促進用化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛包由来幹細胞の培養方法及びその用途に関し、毛包由来幹細胞の培養方法;前記方法で製造された毛包由来幹細胞;前記製造された毛包由来幹細胞、その培養物または前記毛包由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、脱毛治療または発毛促進用薬学組成物;医薬部外品組成物;及び化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞(stem cell)とは、組織を構成する各細胞に分化する前段階の細胞であり、未分化状態で無限増殖が可能であり、特定の分化刺激により多様な組織の細胞に分化し得る潜在的可能性を有する細胞をいう。
【0003】
幹細胞は、分化の可能性に応じて大きく胚性幹細胞(embryonic stem cell:ES cell)と成体幹細胞(adult stem cell(組織特異的幹細胞(tissue specific stem cell))に分けられる。胚性幹細胞は、受精卵が形成された後、子宮内膜に着床する前の初期段階である胚盤胞(blastocyst)胚中の胎児になる細胞塊(inner cell mass:ICM)から分離した幹細胞であり、全ての組織の細胞に分化し得る潜在力を有している細胞である。
【0004】
一方、組織特異的幹細胞は、胚発生過程が進行されて胚の各臓器が形成される段階で現れる各臓器に特異的な幹細胞であり、その分化能が一般にその組織を構成する細胞のみに限定(multipotent)される。代表的な組織特異的幹細胞は、骨髄(bone-marrow)に存在する造血幹細胞(hematopoietic stem cell)と血球細胞以外の結合組織(connective tissue)細胞に分化する間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)がある。造血幹細胞は、赤血球、白血球など各種血球細胞に分化され、間葉系幹細胞は、骨芽細胞(osteoblast)、軟骨芽細胞(chondroblast)、脂肪細胞(adipocyte)及び筋芽細胞(myoblast)などに分化する。
【0005】
近来、ヒトから胚性幹細胞分離が成功した後、その臨床的適用に関心が高まっている。幹細胞の適用分野として最も注目されているのは細胞代替療法のための細胞供給源としての利用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許公報10-2014-0075469 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既存の毛包幹細胞分離方法は、コラゲナーゼ(collagenase)などを利用した酵素的分離方法(韓国公開特許公報10-2014-0075469 A)であり、細胞表面のタンパク質損傷が避けられないため、細胞性能に影響を及ぼす短所があり、皮膚幹細胞の分離及び培養方法に関する研究が必要なのが現状である。
【0008】
このような背景下で、本発明者らは、新たな幹細胞を開発するために多様な研究を行った結果、本発明の培養方法により製造された毛包由来幹細胞が体外増殖力、細胞性能、分化能に優れ、脱毛治療及び発毛促進用途として使用できることを確認し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの目的は、毛包組織及びハイドロゲルを用いて毛包由来幹細胞を培養する方法を提供することにある。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、前記方法で製造された毛包由来幹細胞を提供することにある。
【0011】
本発明の他の一つの目的は、前記毛包由来幹細胞、その培養物または前記毛包由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、脱毛治療または発毛促進用薬学組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の他の一つの目的は、前記毛包由来幹細胞、その培養物または前記毛包由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、脱毛改善または発毛促進用医薬部外品組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の他の一つの目的は、前記毛包由来幹細胞、その培養物または前記毛包由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、脱毛改善または発毛促進用化粧料組成物を提供することにある。
【0014】
本発明の他の一つの目的は、毛包組織及びハイドロゲルを含む毛包由来幹細胞培養用組成物を提供することにある。
【0015】
本発明の他の一つの目的は、前記幹細胞培養用組成物を含む毛包由来幹細胞培養用キットを提供することにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の培養方法によると、毛包組織から効果的に幹細胞を分離及び得ることができ、前記得られた毛包由来幹細胞は、多分化能と自己複製能に優れ、脱毛治療及び発毛促進効果に優れるため、脱毛改善、予防または治療用途として有用に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】毛包組織の切片形成結果(a)、毛包組織のハイドロゲル取り込み培養模式図(b)、培養期間別のハイドロゲル内への細胞移動及び増殖結果(c)である。
図2】HB-毛包由来幹細胞の免疫表現型を確認した結果である。
図3】HB-毛包由来幹細胞の継代培養による増殖能を確認した結果である。
図4】HB-毛包由来幹細胞のコロニー形成能を確認した結果である。
図5a】HB-毛包由来幹細胞の脂肪細胞への分化能を確認した結果である。
図5b】HB-毛包由来幹細胞の骨細胞への分化能を確認した結果である。
図6a】DB基盤の発毛機能に関連する遺伝子String Network分析結果及びHB-毛包由来幹細胞の特異発毛促進機能性遺伝子を確認した結果である。
図6b】HB-毛包由来幹細胞の主な発毛機能に関連する遺伝子の発現量を比較分析した結果である。
図6c】HB-毛包由来幹細胞の特異的発現発毛促進機能性遺伝子を脂肪由来幹細胞に比べた発現量を比較分析した結果である。
図6d】HB-毛包由来幹細胞の特異的発現発毛促進機能性遺伝子を脂肪由来幹細胞に比べた発現量を比較分析した結果である。
図6e】HB-毛包由来幹細胞の特異的発現発毛促進機能性遺伝子を既存の毛包由来幹細胞に比べた発現量を比較分析した結果である。
図7a】マウスモデルにおいてHB-毛包由来幹細胞の発毛促進効果を確認した結果である。
図7b】マウスモデルにおいてHB-毛包由来幹細胞の発毛促進効果を確認した結果である。
図8a】マウスモデルにおいてHB-毛包由来幹細胞の毛包形成能を確認した結果である。
図8b】マウスモデルにおいてHB-毛包由来幹細胞の毛包形成能を確認した結果である。
図8c】マウスモデルにおいてHB-毛包由来幹細胞の毛包形成能を確認した結果である。
図8d】マウスモデルにおいてHB-毛包由来幹細胞の毛包形成能を確認した結果である。
図9a】マウスモデルにおいてHB-毛包由来幹細胞のWnt signaling作用機序を確認した結果である。
図9b】マウスモデルにおいてHB-毛包由来幹細胞のWnt signaling作用機序を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
これを具体的に説明すると、次の通りである。一方、本発明で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの異なる説明及び実施形態にも適用することができる。即ち、本発明で開示された多様な要素の全ての組合せが本発明の範疇に属する。また、下記の具体的な記述により本発明の範疇が制限されるとは見られない。
【0019】
前記目的を達成するための本発明の一態様は、毛包組織及びハイドロゲルを用いた毛包由来幹細胞の培養方法及び前記方法で培養された毛包由来幹細胞を提供する。
【0020】
具体的には、毛包組織由来幹細胞の培養方法は、(a)毛包組織をハイドロゲル内に取り込んで培養して培養物を得る段階;及び(b)前記で得られた培養物においてハイドロゲルを分解して前記毛包組織からハイドロゲル内に移動及び増殖した幹細胞を回収する段階を含む。
【0021】
本発明において、前記ハイドロゲルは、親水性高分子が共有または非共有結合で架橋されて作られた3次元網状構造物を意味するものであり、毛包組織をハイドロゲル内に3次元的に取り込むことにより、ハイドロゲルは毛包組織の物理的支持を提供すると共に毛包組織内に存在する毛包由来幹細胞をハイドロゲル内に移動し、増殖できる細胞外基質機能を同時に提供することができる。
【0022】
また、本発明のハイドロゲルは、ハイドロゲル支持3次元培養のために溶液状態で存在し、ゾルとゲルに変換できる相転移(phase transitional)性ハイドロゲルが好ましく、具体的には、コラーゲン(collagen)、ゼラチン(gelatin)、コンドロイチン(chondroitin)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、アルギニン(alginic acid)、マトリゲル(MatrigelTM)、キトサン(chitosan)、ペプチド(peptide)、フィブリン(fibrin)、PGA(polyglycolic acid)、PLA(polylactic acid)及びPEG(polyethylene glycol)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)からなる群から選択されたいずれか一つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0023】
前記(a)段階において、毛包組織が取り込んだハイドロゲルの培養は、当業界において幹細胞の培養に適することが知られている通常の培地に毛包組織が取り込まれたハイドロゲルを浸漬した後に行われてもよい。
【0024】
また、前記(a)段階は、毛包組織をハイドロゲル多重層の間に取り込んで培養するものであってもよい。具体的には、ハイドロゲル二重層の間に毛包組織を取り込んで培養するものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0025】
本発明の一実施例では、毛包組織をハイドロゲルに取り込み時に2段階に分けてハイドロゲルを添加し、サンドイッチ型ハイドロゲル二重層の間に毛包組織が取り込まれるように培養した。
【0026】
前記のように、ハイドロゲル多重層の間に毛包組織を取り込む場合、毛包組織の切片に残っているhairのキューティクルの表層の疎水性により組織切片が水和されずに浮遊することを防止することができ、前記2段階ハイドロゲル処理をしてハイドロゲル二重層の間で毛包組織が十分にハイドロゲルに取り込みできるという長所がある。
【0027】
また、前記(a)段階において、前記毛包組織は、表皮(epidermal)から毛包漏斗部(follicular infundibulum)に該当する部位を除去した切片を用いることであってもよい。前記切片は、0.01~10mm、0.05~5mm、0.1~3mmであってもよいが、前記切片のサイズが制限されるものではない。
【0028】
本発明の一実施例では、毛包組織切片の形成時に表皮(epidermal)領域の漏斗部(infundibulum)に該当する部位を除去した1~3mmの毛包組織切片を用いて培養に用いた。
【0029】
また、前記(a)段階において、毛包組織の培養期間は、3日~20日、3日~18日、3日~16日、3日~14日または4日~12日間であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0030】
前記培養期間が増加するほど組織重量当たり分離した細胞数が増加するため、細胞の分離効率の側面で有利であるが、培養を持続するほど組織周辺のハイドロゲル内のcell confluencyが増加してcontact inhibitionによる細胞増殖の抑制、幹細胞分化誘導の可能性があり、Cell/Hydrogelの比率が増加、cell aggregationが発生することにより、細胞分離時にhydrogel選択的な分解によるcell releaseが阻害される。
したがって、組織周辺で細胞過密による凝集(aggregation)及び組織周辺の混濁が観察されるため、組織培養時の適切な培養期間は、細胞outgrowthと観察される期間内に適切に調節することが重要である。
【0031】
本発明の一実施例では、毛包組織を4日~12日間培養して使用した。
【0032】
また、前記(a)段階において毛包組織の培養は、組織間の間隔が1mm以上、2mm以上、3mm以上、4mm以上、5mm以上、50mm以下、40mm以下、30mm以下、20mm以下、または10mm以下で播種することができるが、これに制限されるものではない。
【0033】
前記培養時の組織播種において組織間の間隔は、Outgrown distanceを考慮して組織一つから移動/増殖した細胞の距離を考慮して播種が必要である。
【0034】
本発明の一実施例では、組織切片播種時の組織間の間隔は5mm以上で播種して培養した。
【0035】
前記(b)段階は、(a)段階のハイドロゲル-支持3次元培養段階後、ハイドロゲル内に移動/増殖した毛包由来幹細胞を回収するために、ハイドロゲルのみを選択的に分解させることができる。
【0036】
前記ハイドロゲルの分解は、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、TPA(tissue plasminogen activator)、プラスミン(plasmin)及びヒアルロニダーゼからなる群から選択された一つ以上の酵素を通じて分解することができる。
【0037】
本発明の毛包幹細胞の分離/培養技術は、ハイドロゲル基盤のニッチ保存自己複製誘導分離技術で幹細胞を分離する技術であり、毛包組織が体外生存/培養され、酵素処理なしに組織から直接純度の高い細胞を分離できる新技術に該当する。
【0038】
既存の方法とは異なり、本分離方法は、現存する方式と差別化した方式で体外増殖力及び細胞性能の側面で優れるという長所がある。
【0039】
既存の方法で分離した細胞は、2-3継代(最大5継代)までのみ体外増幅が可能であるが、本発明の方法で分離した細胞は、8継代以上継代培養しても細胞老化が起きないなど性能が優れ、長期間の継代培養が可能であるため、大量生産が可能である。
【0040】
一方、本発明で提供する毛包由来幹細胞を製造する方法により製造された毛包由来幹細胞は、その細胞の表面にCD73、CD90、CD105、NestinまたはLgr5が発現し、CD34、CD45またはHLA-DRは発現しない免疫学的特性を示し、脂肪細胞または骨細胞などに分化できる多分化特性を示すが、これに制限されるものではない。
【0041】
前記毛包由来幹細胞は、本発明で提供する毛包由来幹細胞を製造する方法により製造された毛包由来幹細胞、本発明の毛包由来幹細胞、毛包由来幹細胞、HB-毛包由来幹細胞、本発明のHB-毛包由来幹細胞、HB-HFSCと混用され得る。
【0042】
本発明の一実施例では、本発明の毛包由来幹細胞の製造方法により製造した毛包由来幹細胞の増殖能、分化能、コロニー形成能を確認することができた。
【0043】
本発明のまた他の実施例では、本発明の毛包由来幹細胞の製造方法により製造した毛包由来幹細胞の発毛促進効果を確認することができた。
【0044】
本発明のまた他の実施例では、さらに、継代培養による細胞成長能/細胞老化(体外増殖力)及び初代細胞の純度評価の遂行を通じて体外で生存期間が長く、生存能が優れていることを確認することができた。
【0045】
本発明で提供する毛包由来幹細胞を製造する方法により製造された毛包由来幹細胞は、特異的発毛促進機能性遺伝子を発現することができる。
【0046】
その時、前記発毛促進機能性遺伝子は、具体的には、SANP25(Synaptosome Associated Protein 25)、COL10A1(Collagen Type X Alpha 1 Chain)、TMEM119 (Transmembrane Protein 119)、AQP1(Aquaporin 1)、PLCB4(1-Phosphatidylinositol-4,5-bisphosphate phosphodiesterase beta-4)及びITGA8(Integrin Subunit Alpha 8)から選択されるいずれか一つ以上の遺伝子であってもよいが、これに制限されるのではなく、発毛促進機能性遺伝子として知られた遺伝子であれば、これに含まれ得る。
【0047】
本発明の一実施例では、前記毛包由来幹細胞の製造方法により製造された毛包由来幹細胞において脂肪由来幹細胞に比べて前記7個の発毛促進機能性遺伝子が10倍以上の顕著な発現量を示すことを確認し、本願方法により製造された毛包由来幹細胞が特異的発毛促進機能性遺伝子を発揮することを確認することができた。
【0048】
本発明の他の一態様は、前記毛包由来幹細胞、その培養物または前記毛包由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、脱毛治療または発毛促進用薬学組成物を提供する。
【0049】
本発明の用語、「培養物」または「培養液」は、毛包由来幹細胞を培地で培養する過程中または培養した後に得られた培養物またはその上澄液、その濃縮物またはその凍結乾燥物であってもよい。
【0050】
本発明の用語、「発毛」または「発毛促進」は、毛髪の成長促進、毛髪本数の増加、毛髪の太さが太くなる効果だけでなく、毛包再生または毛包細胞の増殖を含む概念であり、前記毛包細胞の増殖は、毛包細胞が休止期から増殖期への変換が促進されることを含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0051】
本発明の用語、「薬学組成物」とは、疾病の予防または治療を目的として製造されたものを意味し、実際の臨床投与時に経口及び非経口の種々の剤形で投与されてもよいが、製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調剤することができる。
【0052】
また、それぞれの剤形に応じて薬学的に許容可能な添加剤をさらに含むことができ、その時、薬学的に許容可能な添加剤としては、デンプン、ゼラチン化デンプン、微結晶セルロース、乳糖、ポビドン、コロイダルシリコーンジオキシド、リン酸水素カルシウム、ラクトース、マンニトール、飴、アラビアゴム、前糊化デンプン、コーンスターチ、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、オパドライ、デンプングリコール酸ナトリウム、カルナウバロウ、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、白糖、デキストロース、ソルビトール及びタルクなどが用いられる。本発明による薬学的に許容可能な添加剤は、前記組成物に対して0.1~90重量部が含まれ得る。
【0053】
前記薬学組成物には、前記毛包由来間葉系幹細胞以外にも一つまたはそれ以上の薬学的に許容可能ある通常の不活性担体、例えば、注射剤の場合には保存剤、無痛化剤、可溶化剤または安定化剤などを、局所投与用製剤の場合には基剤(base)、賦形剤、潤滑剤または保存剤などをさらに含むことができる。
【0054】
本発明の薬学組成物は、個別治療剤で投与しても、他の治療剤と併用して投与してもよく、従来の治療剤とは順次または同時に投与することができる。そして、単一または多重投与することができる。前記要素を全て考慮し、副作用を誘発せず最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、当業者により容易に決定することができる。
【0055】
それだけでなく、本発明で提供する薬学組成物は、前記毛包由来幹細胞以外にも脱毛の治療または発毛の促進を補助したり、前記毛包由来幹細胞の活性を維持したり、前記毛包由来幹細胞の分化を促進する多様な成分をさらに含むことができるが、一例として、抗炎症製剤、幹細胞動員因子、成長誘導因子などをさらに含むことができる。
【0056】
本発明の薬学組成物は、脱毛の改善、予防または治療の目的で使用することができる。
【0057】
本発明の脱毛には一時的な脱毛である非瘢痕性脱毛と毛包や毛根が永久的に破壊されて現れる瘢痕性脱毛をいずれも含み、非瘢痕性脱毛には感染性脱毛、外傷性脱毛、炎症性脱毛、先天性脱毛、内分泌性脱毛、腫瘍性脱毛、栄養不足性脱毛、薬物による脱毛、そして毛髪の構造異常による脱毛を含み、男性型脱毛、女性型脱毛、円形脱毛も含む。
【0058】
本発明で使用される用語、「改善」とは、本発明による組成物を個体に投与して脱毛の進行を遅延又は脱毛の症状を軽減させるあらゆる行為を意味する。
【0059】
本発明で使用される用語、「予防」とは、本発明による組成物を個体に投与して脱毛の発生を抑制又は遅延させるあらゆる行為を意味する。
【0060】
本発明で使用される用語、「治療」とは、本発明の前記組成物を脱毛発生の疑いのある個体に投与して脱毛症状を好転又は有益にするあらゆる行為を意味する。
【0061】
本発明の他の一つの目的は、前記毛包由来幹細胞、その培養物または前記毛包由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む組成物を個体に投与する段階を含む、発毛促進または脱毛の予防または治療方法を提供する。
【0062】
前記毛包由来幹細胞、その培養物または前記毛包由来幹細胞から分化した細胞、発毛促進、脱毛、予防、治療は、前述した通りである。
【0063】
本発明で使用される用語、「投与」とは、適切な方法で個体に前記組成物を導入することを意味する。具体的には、本発明の前記毛包由来幹細胞、その培養物または前記皮膚由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む組成物、またはそれを含む前記薬学的組成物を局所部位、例えば、脱毛部位に塗布または注射剤として投与することができるが、これに制限されるものではない。
【0064】
また、前記組成物は、発毛促進または脱毛の予防または治療に用いられる他の薬学的組成物と併用されてもよい。
【0065】
本発明の用語、「個体」とは、脱毛が発症又は発症し得るヒトを含むマウス、ラット、家畜などのあらゆる動物を意味する。前記動物は、ヒトだけでなく、これと類似の症状の予防または治療を必要とするウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラクダ、カモシカ、イヌ、ネコなどの哺乳動物であってもよいが、これに制限されない。
【0066】
本発明の組成物は、薬学的に有効な量で投与することができる。
【0067】
前記用語、「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/リスクの比率で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量の水準は、個体の種類及び重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野においてよく知られている要素により決定することができる。
【0068】
前記組成物は、個別治療剤として投与したり他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次または同時に投与することができる。また、単一または多重投与することができる。前記要素を全て考慮し、副作用なしに最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、当業者により容易に決定することができる。
【0069】
また、前記組成物は、目的とする方法により経口投与しても非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)してもよく、投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び時間に応じて異なるが、当業者により適切に選択することができる。具体的な例として、前記組成物は、一般に、1日1回~数回に分けて投与することができるが、好ましい投与量は、個体の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び期間に応じて当業者により適切に選択することができる。
【0070】
本発明の他の一つの目的は、前記毛包由来幹細胞、その培養物または前記毛包由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、脱毛改善または発毛促進用医薬部外品組成物を提供することにある。
【0071】
本発明の用語、「医薬部外品組成物」とは、ヒトや動物の疾病を治療、軽減、処置または予防する目的として使用される繊維、ゴム製品またはそれと類似したもの、人体に対する作用が弱かったり人体に直接作用せず、器具または機械ではないものとそれと類似したもの、感染予防のために、殺菌、殺虫及びそれと類似した用途で使用される製剤の一つに該当する物品であり、ヒトや動物の疾病を診断、治療、軽減、処置または予防する目的で使用する物品中、器具、機械または装置ではないもの及びヒトや動物の構造と機能に薬理学的影響を与える目的として使用する物品中、器具、機械または装置ではないものを除いた物品を意味し、具体的には、皮膚外用剤または個人衛生用品であってもよい。
【0072】
本発明の他の一つの目的は、前記毛包由来幹細胞、その培養物または前記毛包由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、脱毛改善または発毛促進用化粧料組成物を提供することにある。
【0073】
本発明の用語、「化粧料組成物」は、通常製造される如何なる剤形にも製造することができ、例えば、溶液、乳濁液、懸濁液、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、パウダー、スプレー、界面活性剤含有クレンジング、オイル、石鹸、液体洗浄料、入浴剤、ファンデーション、メイクアップベース、エッセンス、化粧水、フォーム、パック、柔軟水、サンスクリーンクリームまたはサンオイルなどに剤形化することができる。
【0074】
本発明の他の一つの目的は、毛包組織及びハイドロゲルを含む毛包由来幹細胞培養用組成物及び前記組成物を含む毛包由来幹細胞培養用キットを提供することにある。
【0075】
併せて、毛包由来幹細胞培養用キットは、前記幹細胞培養用組成物と前記幹細胞の培養に必要な溶液、装置などの多様な構成要素を含むことができる。
【0076】
本発明の他の一つの目的は、前記毛包由来幹細胞、その培養物または前記毛包由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む組成物の発毛促進または脱毛予防または治療用途を提供する。
【0077】
以下、本発明を実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これら実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【0078】
実施例1.多層ハイドロゲル-支持毛包組織の3次元培養
供与された生理食塩水に浸漬して冷蔵保管された毛包組織を試料としてPBS(Gibco)で三回洗浄した。洗浄した毛包組織のhair shaft部分を切断した後、切断された側から0.5mm~1mmのinfundibulum部分を除去して毛包組織切片を形成した。DMEM(low glucose,Gibco)で1回洗浄した後、上澄液を除去し、fibrinogen solution(0.25% w/v fibrinogen(緑十字)、200μg/mL tranexamic acid(シンプン製薬)in DMEM)5mLを入れた。Thrombin solution(0.5 IU/mL thrombin(緑十字) in DMEM)を同量添加した100mmの培養容器に移して毛包切片及びハイドロゲルが均一に広がるようにした後、常温に10分以内で放置して毛包組織をハイドロゲルに固定させた。さらに、fibrinogen solution(0.25% w/v fibrinogen、200μg/mL tranexamic acid in DMEM)とThrombin solution(0.5IU/mL thrombin in DMEM)を各5mLずつ添加し、10分以内放置して2次ハイドロゲルを形成した後、37℃で2時間培養して十分にゲル化させた(図1b)。Tranexamic acid 100μg/mLが添加された成長培地10mL(90% low DMEM:F12=1:1,10% Fetal bovine serum、20ng/mL epidermal growth factor、5ng/mL basic fibroblast growth factor、10ng/mL insulin-like growth factor,and 10 mg/mL gentamicin)を入れて10~30rpmの速度で撹拌しながら1時間培養した。その後、2~3日に一回ずつ成長培地を交換した。
【0079】
実施例2.多層ハイドロゲル内に移動成長したHB-毛包由来幹細胞の回収及び増幅培養
実施例1で記述した方法で10日または14日間毛包組織を培養した。ハイドロゲルをwarm PBSで3分間三回洗浄した後、30% FBS/DMEMを入れてorbital shakerで10~30rpmの速度で撹拌した。1時間後に上澄液を除去した後、1μg/mL alteplaseが添加された10mL 30% FBS/DMEMを入れてgelを分解させた。Gelが十分に分解されると、static conditionでovernight培養した後、上澄液を除去し、成長培地を添加して常法で培養した。2~3日ごとに成長培地を交換しながら4~6日ごとに継代培養した。
【0080】
前記方法により培養した組織培養結果及び細胞分離及び培養結果は、図1に示した。
【0081】
実施例3.分離及び培養されたHB-毛包由来幹細胞の免疫表現型の確認
実施例2の方法により分離及び培養されたHB-毛包由来幹細胞の免疫表現型を確認するために、T75フラスコで培養中であった細胞を得て3% bovine serum albumin(sigma)/PBSに懸濁した。細胞懸濁液は、9等分して次の抗体と4℃で1時間反応させた:FITC-conjugated CD73(Abcam、1:25) antibody,APC-conjugated CD90(Invitrogen、1:40)、FITC-conjugated CD105(Abcam、1:50)、FITC-conjugated CD34(Abcam、1:10) antibody,FITC-conjugated HLA-DR(Novusbiologicals、1:20) antibody,Nestin(Novusbiologicals、1:100) antibody,FITC-conjugated Lgr5(Origene、1:100) antibody,FITC-conjugated mouse IgG Isotype control(Novusbiologicals、1:5)。 抗体、またはAlexaFluor594-conjugated CD45 (Novus、1:20) antibody.反応後、300g、5minで遠心分離して洗浄した後、3% BSA/PBSに懸濁した後、フローサイトメトリー(BD)で測定した(図2)。
【0082】
その結果、図2で見られるように、分離及び培養されたHB-毛包由来幹細胞はCD73、CD90、CD105、Nestin及びLgr5が発現し、CD34、CD45及びHLA-DRは発現しないことを確認することができた。
【0083】
実施例4.分離及び培養されたHB-毛包由来幹細胞の増殖能及びコロニー形成能の確認
実施例2で得られた分離及び培養されたHB-毛包由来幹細胞の増殖能を確認するために、最初培養時に4000個/cmの密度で細胞を播種し、4日ごとに継代し、得られた細胞数を通じて継代培養回数による群集の倍加時間を測定した。
【0084】
また、細胞数は、trypan blue染色法で染色されていない細胞の個数をカウントし、群集の倍加時間(PDTs,population doubling time)は、次の式から計算して図3に示した:PDT=[days/(logN-logN)]/log2,(N=4,000 cells,N=4日後の細胞数)。
【0085】
また、実施例2で得られた分離及び培養されたHB-毛包由来幹細胞のコロニー形成能を確認するために、ヒト毛包由来幹細胞(4 passages)を6-well plateに20個/wellで播種した。3日ごとに成長培地で交換しながら14日間培養した。PBSで洗浄した後、4% paraformaldehyde/PBS (sigma)で15分間常温で放置して固定した。固定された細胞はPBSで三回洗浄した後、0.5% crystal violet/Methanolで15分間常温で放置して染色させた。残余溶液を全部除去した後、蒸溜水で三回洗浄し、染色されたコロニーを観察した結果を図4に示した。
【0086】
前記図3及び4の結果のように、本実施例2の方法により得られたHB-毛包由来幹細胞は継代培養による増殖能が維持され、コロニー形成能も、一定レベル以上であることを確認することができた。
【0087】
即ち、毛包由来幹細胞を継代培養6回目まで培養してpopulation doubling time(PDT)を求めた結果、PDTは平均32時間±7時間と観察され、継代培養による増殖能が維持されることを確認することができた。
【0088】
実施例5.HB-毛包由来幹細胞の分化能の確認
得られたHB-毛包由来幹細胞の脂肪細胞への分化能力を評価するために、細胞を1×10個/cmの濃度で播種し、80% confluencyに到達するまで成長培地で培養した後、StemProTM Adipogenesis differentiation kit(Gibco,cat.A1007001)で培地を交換し、3日ごとに培地を交換しながら14日間培養した。4% PFAで15分間固定し、60% isopropanolで15分間反応させた後、全ての溶液を除去して十分に乾燥させた。60% Oil Red O(sigma)/ethanolを常温で15分間染色して細胞質内における脂肪蓄積の有無を確認した(図5a)。
【0089】
また、前記HB-毛包由来幹細胞の骨細胞への分化能力を評価するために、細胞を1×10個/cmの濃度で播種し、80% confluencyに到達するまで成長培地で培養した後、StemProTM Osteogenesis differentiation kit(Gibco,cat.A1007201)で培地を交換し、3日ごとに培地を交換しながら14日間培養した。4% PFAで60秒間固定し、BCIP/NBT substrate solution(Sigma)処理後、遮光条件で10分間染色して塩基性リン酸分解酵素(Alkaline phosphatase,ALP)の活性を確認した(図5b)。
【0090】
即ち、前記のような結果として本願培養方法により得られたHB-毛包由来幹細胞は、多分化能を有していることを確認することができた。
【0091】
実施例6.HB-毛包由来幹細胞の脂肪由来幹細胞に比べた差異発現遺伝子の確認
脂肪由来幹細胞(ASC-1.ASC-2.ASC-3)、HB-毛包由来幹細胞(HB-HFSC-1,HB-HFSC-2,HB-HFSC-3)を各3lotのサンプルをTruSeq Stranded mRNA Library Prep Kitを用いてメーカーのプロトコルによりペアエンドRNAライブラリーを構築し、マクロジェン社(ソウル、大韓民国)でシーケンシングを行った。前処理過程後、HISAT2プログラム(バージョン2.1.0,https://ccb.jhu.edu/software/hisat2/index.shtml)でリファレンスゲノム(バージョンGRCh38)にマッピングし、StringTieプログラム(バージョン2.1.3b、https://ccb.jhu.edu/software/stringtie/)で転写体別の発現量プロファイルを得た(図6a)。遺伝子発現量は、TPM(Transcripts Per Kiobase Million)値にログを取って扱った(図6a)。対照群と比較群間の差異発現遺伝子は、Rプログラム(バージョン4.0)のedgeRパッケージ[1]を用いて得た(1.SZKLARCZYK,Damian,et al.STRING v11:protein-protein association networks with increased coverage,supporting functional discovery in genome-wide experimental datasets.Nucleic acids research、2019,47.D1:D607-D613.)。幹細胞で差異発現する遺伝子の発現パターンを関連疾患転写体データと比較のために、公開された転写体データをGEO(Gene Expression Omnibus)データベースで収集した。各公開データの差異遺伝子発現量分析は、Rプログラム(バージョン4.0)のlimmaパッケージ[2]を用いた(2.ROBINSON,Mark D.;MCCARTHY,Davis J.;SMYTH,Gordon K.edgeR:a Bioconductor package for differential expression analysis of digital gene expression data.bioinformatics、2010,26.1:139-140.)。分析プログラムにより自主的に提供する統計的検定結果はそのまま使用し、有意な水準は0.05未満を有意なことと見なした。P valueが0.05超の結果を表記する場合、P valueを別途に表記した。
【0092】
マーカー遺伝子が参加する生物学的ネットワーク構築は、String Database(バージョン11.5)[3]を用いて(3.SMYTH,Gordon K.,et al.LIMMA:linear models for microarray data.In Bioinformatics and Computational Biology Solutions Using R and Bioconductor.Statistics for Biology and Health.2005.)タンパク質-タンパク質相互作用(PPI)ネットワークを構築した(図7a、b)。PPIネットワーク構築に使用した有機体レファレンスはHomo sapiensとした。ネットワーク構築のための設定でタンパク質を示すノード(node)を互いに連結するエッジ(edge)は、実験の結果、生物学的データベース及び文献、遺伝子フュージョンなどの根拠基盤で連結するようにし、エッジ点数は0.4以上であることを有意なこととした。ネットワーク構築後、他のノード間の連結性がない孤児ノードは除去した。ノードグループが属する生物学的機能は、KEGGデータベース[4]を基準として統計的に有意なことのみを抽出した(False Discovery Rate<0.05)(4.KANEHISA,Minoru;GOTO,Susumu.KEGG:kyoto encyclopedia of genes and genomes.Nucleic acids research、2000,28.1:27-30.)。両グループ間の有意な差の検定はT-Testを行って得、P value<0.05未満を有意なことと見なした。分析プログラムにより自主的に提供する統計的検定結果はそのまま使用し、有意な水準は0.05未満を有意なことと見なした。P valueが0.05超の結果を表記する場合、P valueを別途に表記した。
【0093】
String DBを用いてHB-毛包由来幹細胞で発現した遺伝子を発毛促進関連遺伝子networkと分析し、既知の発毛促進pathwayとの関連性を確認し、7個の発毛促進機能性遺伝子(SNAP25,ITGA8,PLCB4,COL10A1,GPNMB,TMEM119,AQP1)を導出した(図6a)。また、HB-毛包由来幹細胞が脂肪由来幹細胞に比べて主要発毛機能に関連する遺伝子(TCF3,PRDM1,WNT5A、WNT5B、WNT9A、FGFR2など)を高い水準で発現することを確認した(図6b)。HB-毛包由来幹細胞においてFold change>10で脂肪由来幹細胞に比べて発現した遺伝子80個を確認し、そのうち、図6aで導出した発毛促進機能性遺伝子7個(SNAP25,ITGA8,PLCB4,COL10A1,GPNMB,TMEM119,AQP1)が脂肪由来幹細胞に比べて差異発現が現れた(図6c及び6d)。既存の毛包または毛包由来幹細胞とHB-毛包由来幹細胞の遺伝子発現量を比較した時、発毛促進機能性遺伝子7個(SNAP25,ITGA8,PLCB4,COL10A1,GPNMB,TMEM119,AQP1)が10倍以上の発現が増加し、有意に差異発現されることを確認した(図6e)。
【0094】
前記発毛促進機能性遺伝子7種は、毛包形成と生長と関連して知られたシグナリングであるWnt signaling及びPI3K signalingと関連性のある遺伝子として知られているところ、これに基づいて本発明の毛包由来幹細胞製造方法により製造された毛包由来幹細胞の発毛促進効果を類推することができる。
【0095】
さらに、毛包の退行期を誘導する遺伝子として知られたCCN2、TGFB1遺伝子の場合、発現の減少を確認することができた(図6b)。
【0096】
実施例7.ヌードマウスにおける発毛促進効果の確認
実験動物である7~12週齢のBALB/c nude mouse(中央実験動物)を3% Isoflurane(ハナ製薬)を通じて吸入麻酔させた。麻酔が完了したことを確認した後、HB-毛包由来幹細胞1×10個の細胞をNormal saline(NS)100μlに懸濁して背側部(Dorsal part)に4ヶ所(2×2cm)の角にInsulin syringe(30 gauge)を用いて皮内注射(Intradermal injection)した。HB-毛包由来幹細胞投与後14日、31日間追跡観察し、投与直後(0日)、投与後3日、7日、14日、28日、31日にデジタルカメラで投与部位を撮影した。投与部位(2×2cm、4cm)を百分率を基準として毛が生えた部分の広さをImage J (NIH)を通じて測定した(図7a及び図7b)。前記結果として本HB-毛包由来幹細胞の発毛促進効果を確認することができた。
【0097】
実施例8.ヌードマウスにおける毛包形成能及び皮膚の厚さ増加の確認
組織学的分析のために、皮膚組織を固定液(4% formaldehyde,sigma)に24時間固定した後、組織をパラフィン包埋(Paraffin embedding)して薄切りした後、H&E(Hematoxylin & Eosin)染色を行った。光学顕微鏡を通じて毛包及び皮膚層厚さの形態学的変化を確認した。形成された毛包数及びEpidermis、Dermis、Hypodermisの厚さはImage Jを通じて測定した(図8)。HB-毛包由来幹細胞投与14日及び31日後、毛包形成及び皮膚の厚さ増加を確認した。
【0098】
実施例9.ヌードマウスにおけるWnt信号伝達作用機序の確認
前記H&E染色と同様に、各群の組織を固定し、パラフィン包埋後に薄切りして組織スライドを製作した。Beta-catenin antibody(Invitrogen,MA1-2001)に2次抗体を付けて組織免疫化学染色(Immunofluorescence,IF)を進め(図9a)、プレハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、4XSSC、50mM DDT、4XDenhart’s soln,’XTED、100ug/ml denatured salmon sperm DNA、250ug/ml yeast RNA) 42℃で1時間反応させてCD34 mRNAに結合するようにした(図9b)。HB-毛包由来幹細胞投与31日後β-catenin発現が増加し、CD34遺伝子発現が増加することを確認した。
【0099】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図7a
図7b
図8a
図8b
図8c
図8d
図9a
図9b
【国際調査報告】