(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-20
(54)【発明の名称】皮膚由来幹細胞の培養方法及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 5/074 20100101AFI20241213BHJP
A61K 35/36 20150101ALI20241213BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20241213BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20241213BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20241213BHJP
A61Q 90/00 20090101ALI20241213BHJP
【FI】
C12N5/074
A61K35/36
A61P17/02
A61K8/02
A61K8/98
A61Q90/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538424
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 KR2022021212
(87)【国際公開番号】W WO2023121399
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0187681
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518357128
【氏名又は名称】イファ ユニバーシティ-インダストリー コラボレーション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】EWHA UNIVERSITY - INDUSTRY COLLABORATION FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】52, Ewhayeodae-gil Seodaemun-gu Seoul 03760, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】521129141
【氏名又は名称】ヒエラバイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ,ソン チン
(72)【発明者】
【氏名】シン,チ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,チョン ファ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒチョン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BC46
4B065BD50
4B065CA44
4C083AA071
4C083AA072
4C083CC02
4C083DD39
4C083EE13
4C083FF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB48
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA23
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA89
(57)【要約】
本発明は、皮膚由来幹細胞の培養方法及びその用途に関し、皮膚由来幹細胞の培養方法;前記方法で製造された皮膚由来幹細胞;前記製造された皮膚由来幹細胞、その培養物または前記皮膚由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、皮膚再生または創傷治療用薬学組成物;医薬部外品組成物;及び化粧料組成物に関する。
本発明の培養方法によると、皮膚組織から効果的に幹細胞を分離及び得ることができ、前記得られた皮膚由来幹細胞は、多分化能と自己複製能に優れ、皮膚再生効果及び創傷治療効果に優れるため、皮膚再生及び創傷治療または改善用途として有用に活用できるものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)皮膚組織をハイドロゲル内に取り込んで培養して培養物を得る段階;及び
(b)前記で得られた培養物においてハイドロゲルを分解して前記皮膚組織からハイドロゲル内に移動及び増殖した幹細胞を回収する段階を含む、皮膚由来幹細胞の培養方法。
【請求項2】
前記(a)段階で皮膚組織の培養は、皮膚切片をハイドロゲル内に3日~20日間取り込み培養するものである、請求項1に記載の皮膚由来幹細胞の培養方法。
【請求項3】
前記(a)段階の以前に皮膚組織の前処理段階として、皮膚組織の試料を50~70℃の温度で30秒~90秒間皮膚組織を処理する段階;アルコール(alcohol)または界面活性剤に1分~10分間浸漬する段階;及び洗浄段階を含む皮膚組織の前処理段階を含むものである、請求項1に記載の皮膚由来幹細胞の培養方法。
【請求項4】
前記皮膚由来幹細胞は、GAS1、OSR2、DMKN及びSBSNから選択されるいずれか一つ以上の遺伝子発現が増加したものである、請求項1に記載の皮膚由来幹細胞の培養方法。
【請求項5】
前記皮膚由来幹細胞は、CD29、CD44、CD73、CD90及びCD105は発現し、
CD14、CD34及びCD45は発現しない免疫学的特性を有するものである、請求項1に記載の皮膚由来幹細胞の培養方法。
【請求項6】
前記皮膚由来幹細胞は、組織培養及び細胞分離後、継代培養9回目まで細胞の形態及び大きさが維持されるものである、請求項1に記載の皮膚由来幹細胞の培養方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法で製造された皮膚由来幹細胞。
【請求項8】
前記皮膚由来幹細胞は、GAS1、OSR2、DMKN及びSBSNから選択されるいずれか一つ以上の遺伝子発現が増加したものである、請求項7に記載の皮膚由来幹細胞。
【請求項9】
前記皮膚由来幹細胞は、CD29、CD44、CD73、CD90及びCD105は発現し、
CD14、CD34及びCD45は発現しない免疫学的特性を有するものである、請求項7に記載の皮膚由来幹細胞。
【請求項10】
請求項1に記載の方法で製造された皮膚由来幹細胞、その培養物または前記皮膚由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、皮膚再生または創傷治療用薬学組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の方法で製造された皮膚由来幹細胞、その培養物または前記皮膚由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、皮膚再生または創傷改善用医薬部外品組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の方法で製造された皮膚由来幹細胞、その培養物または前記皮膚由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、皮膚再生または創傷改善用化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚由来幹細胞の培養方法及びその用途に関し、皮膚由来幹細胞の培養方法;前記方法で製造された皮膚由来幹細胞;前記製造された皮膚由来幹細胞、その培養物または前記皮膚由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、皮膚再生または創傷治療用薬学組成物;医薬部外品組成物;及び化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞(stem cell)とは、組織を構成する各細胞に分化する前段階の細胞であり、未分化状態で無限増殖が可能であり、特定分化刺激により多様な組織の細胞に分化し得る潜在的可能性を有する細胞をいう。
【0003】
幹細胞は、分化の可能性に応じて大きく胚性幹細胞(embryonic stem cell:ES cell)と成体幹細胞(adult stem cell(組織特異的幹細胞(tissue specific stem cell))に分けられる。胚性幹細胞は、受精卵が形成された後、子宮内膜に着床する前の初期段階である胚盤胞(blastocyst)胚中の胎児になる細胞塊(inner cell mass:ICM)から分離した幹細胞であり、全ての組織の細胞に分化し得る潜在力を有している細胞である。
【0004】
一方、組織特異的幹細胞は、胚発生過程が進行されて胚の各臓器が形成される段階で現れる各臓器に特異的な幹細胞であり、その分化能が一般にその組織を構成する細胞のみに限定(multipotent)される。代表的な組織特異的幹細胞は、骨髄(bone-marrow)に存在する造血幹細胞(hematopoietic stem cell)と血球細胞以外の結合組織(connective tissue)細胞に分化する間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)がある。造血幹細胞は赤血球、白血球などの各種血球細胞に分化され、間葉系幹細胞は骨芽細胞(osteoblast)、軟骨芽細胞(chondroblast)、脂肪細胞(adipocyte)及び筋芽細胞(myoblast)などに分化する。
【0005】
近来、ヒトから胚性幹細胞の分離が成功した後、その臨床的適用に関心が高まっている。幹細胞の適用分野として最も注目されているのは細胞代替療法のための細胞供給源としての利用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許公報10-2014-0075469 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既存の皮膚幹細胞の分離方法は、コラゲナーゼ(collagenase)などを利用した酵素的分離方法(韓国公開特許公報10-2014-0075469 A)であり、細胞表面のタンパク質損傷が避けられないため、細胞性能に影響を及ぼす短所があり、皮膚幹細胞の分離及び培養方法に関する研究が必要なのが現状である。
【0008】
このような背景下で、本発明者らは、新たな幹細胞を開発するために多様な研究を行った結果、本発明の培養方法により製造された皮膚由来幹細胞が体外増殖力、細胞性能、分化能に優れ、皮膚再生及び創傷治療用途として使用できることを確認し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの目的は、皮膚組織及びハイドロゲルを用いて皮膚由来幹細胞を培養する方法を提供することにある。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、前記方法で製造された皮膚由来幹細胞を提供することにある。
【0011】
本発明の他の一つの目的は、前記皮膚由来幹細胞、その培養物または前記皮膚由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、皮膚再生または創傷治療用薬学組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の他の一つの目的は、前記皮膚由来幹細胞、その培養物または前記皮膚由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、皮膚再生または創傷改善用医薬部外品組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の他の一つの目的は、前記皮膚由来幹細胞、その培養物または前記皮膚由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、皮膚再生または創傷改善用化粧料組成物を提供することにある。
【0014】
本発明の他の一つの目的は、皮膚組織及びハイドロゲルを含む皮膚由来幹細胞培養用組成物を提供することにある。
【0015】
本発明の他の一つの目的は、前記幹細胞培養用組成物を含む皮膚由来幹細胞培養用キットを提供することにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の培養方法によると、皮膚組織から効果的に幹細胞を分離及び得ることができ、前記得られた皮膚由来幹細胞は、多分化能と自己複製能に優れ、皮膚再生効果及び創傷治療効果に優れるため、皮膚再生及び創傷治療または改善用途として有用に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のHB-皮膚由来幹細胞の組織培養結果(
図1a)、細胞分離及び培養した結果(
図1b)である。
【
図2】本発明のHB-皮膚由来幹細胞の免疫表現型を確認した結果である。
【
図3】本発明のHB-皮膚由来幹細胞の継代培養による増殖能を確認した結果である。
【
図4】本発明のHB-皮膚由来幹細胞(HB-SSC)のコロニー形成能を確認した結果である。
【
図5a】本発明のHB-皮膚由来幹細胞の脂肪細胞への分化能を確認した結果である。
【
図5b】本発明のHB-皮膚由来幹細胞の骨細胞への分化能を確認した結果である。
【
図6a】DB基盤皮膚再生機能に関連する遺伝子String Network分析結果及びHB-皮膚由来幹細胞(HB-SSC)の特異皮膚再生機能性遺伝子を確認した結果である。
【
図6b】本発明のHB-皮膚由来幹細胞(HB-SSC)の特異的発現皮膚再生機能性遺伝子を脂肪由来幹細胞(ASC)に比べた発現量を比較分析した結果である。
【
図6c】本発明の皮膚由来幹細胞(HB-SSC)の特異的発現皮膚再生機能性遺伝子を脂肪由来幹細胞(ASC)に比べた発現量を比較分析した結果である。
【
図7a】マウスモデルにおいて本発明のHB-皮膚由来幹細胞(HB-SSC)の創傷治癒効果を確認した結果である。
【
図7b】マウスモデルにおいて本発明のHB-皮膚由来幹細胞(HB-SSC)の創傷治癒効果を確認した結果である。
【
図8】マウス創傷モデルにおいて本発明のHB-皮膚由来幹細胞(HB-SSC)の皮膚及び皮膚構造物の再生能を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
これを具体的に説明すると、次の通りである。一方、本発明で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの異なる説明及び実施形態にも適用することができる。即ち、本発明で開示された多様な要素の全ての組合せが本発明の範疇に属する。また、下記の具体的な記述により本発明の範疇が制限されるとは見られない。
【0019】
前記目的を達成するための本発明の一態様は、皮膚組織及びハイドロゲルを用いた皮膚由来幹細胞の培養方法及び前記方法で培養された皮膚由来幹細胞を提供する。
【0020】
本発明の用語、皮膚由来幹細胞は、皮膚組織に由来する全ての幹細胞を含むことができ、一例として、脂肪幹細胞(adipose stem cells)、表皮幹細胞(epidermal stem cells)、真皮幹細胞(dermal stem cells)などを含めてもよいが、これに制限されるものではない。
【0021】
具体的には、皮膚組織由来幹細胞の培養方法は、(a)皮膚組織をハイドロゲル内に取り込んで培養して培養物を得る段階;及び(b)前記で得られた培養物においてハイドロゲルを分解して前記皮膚組織からハイドロゲル内に移動及び増殖した幹細胞を回収する段階を含む。
【0022】
本発明において、前記ハイドロゲルは、親水性高分子が共有または非共有結合で架橋されて作られた3次元網状構造物を意味するものであり、皮膚組織をハイドロゲル内に3次元的に取り込むことにより、ハイドロゲルは皮膚組織の物理的支持を提供すると共に皮膚組織内に存在する皮膚由来幹細胞をハイドロゲル内に移動し、増殖できる細胞外基質機能を同時に提供することができる。
【0023】
また、本発明のハイドロゲルは、ハイドロゲル支持3次元培養のために溶液状態で存在し、ゾルとゲルに変換できる相転移(phase transitional)性ハイドロゲルが好ましく、具体的には、コラーゲン(collagen)、ゼラチン(gelatin)、コンドロイチン(chondroitin)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、アルギニン(alginic acid)、マトリゲル(MatrigelTM)、キトサン(chitosan)、ペプチド(peptide)、フィブリン(fibrin)、PGA(polyglycolic acid)、PLA(polylactic acid)及びPEG(polyethylene glycol)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)からなる群から選択されたいずれか一つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。また、前記(a)段階は、毛包組織をハイドロゲル多重層の間に取り込んで培養することであってもよい。具体的には、ハイドロゲル二重層の間に毛包組織を取り込んで培養することであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0024】
前記(a)段階において、皮膚組織が取り込んだハイドロゲルの培養は、当業界において幹細胞培養に適することが知られている通常の培地に皮膚組織が取り込んだハイドロゲルを浸漬した後に行われてもよい。
【0025】
また、前記(a)段階で皮膚組織の培養は、皮膚切片をハイドロゲル内に3日~20日、3日~18日、3日~16日間取り込み培養することであってもよい。具体的には、3日~14日間培養してもよいが、これに制限されるものではない。
【0026】
本発明の一具体例では、健康な成人の皮膚を採取して皮膚の切片を形成し、ハイドロゲルに9日間取り込み培養した。
【0027】
また、前記(a)段階の以前に皮膚組織の前処理段階として、皮膚組織の試料を50~70℃の温度で30秒~90秒間皮膚組織を処理する段階;アルコール(alcohol)または界面活性剤に1分~10分間浸漬する段階;及び洗浄段階を含むことができる。
【0028】
その時、前記皮膚組織処理段階の温度は、50~70℃、52~68℃、54~66℃、56~64℃、58~62℃、または60℃であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0029】
また、前記皮膚組織処理段階は、30秒~90秒、40秒~80秒、50秒~70秒、55秒~65秒、58~62秒、59、60、または61秒であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0030】
また、前記前処理段階中、アルコールまたは界面活性剤に浸漬する段階で使用されるアルコールは、炭素数1~4のアルコールを含んでもよく、具体的には、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなどであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0031】
また、前記界面活性剤は、両性界面活性剤または非イオン性界面活性剤を含むことができる。
【0032】
前記両性界面活性剤は、phosphatidylserine、phosphatidylethanolamine、phosphatidylcholineなどを含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0033】
前記非イオン性界面活性剤は、Fatty acid esters of glycerol、Fatty acid esters of sorbitol SpansまたはTweensなどを含んでもよく、具体的には、Glycerol monostearate、Glycerol monolaurate、Sorbitan monolaurate、Sorbitan monostearate、Sorbitan tristearate、Tween 20、Tween 40、Tween 60、Tween 80などであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0034】
また、前記アルコールまたは界面活性剤に浸漬する段階は、皮膚組織の脂肪層の除去のためのものであるため、浸漬、噴霧、コーティングなどの本技術分野において使用される方法でアルコールまたは界面活性剤に組織を接触させる方法であれば、全部含まれることであり、特に制限されるものではない。
【0035】
また、前記アルコールまたは界面活性剤に浸漬する段階は、1分~10分、2分~9分、3分~8分、4分~7分、4分30秒~6分30秒、5分~5分30秒、または5分であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0036】
また、前記前処理段階の洗浄段階は、本技術分野において洗浄剤として用いられることであれば十分であり、特別な制限があるものではない。
【0037】
一具体例においてPBSであってもよく、洗浄回数は1回~10回、2回~8回、3回、4回、5回、6回、または7回であってもよく、これに制限されるものではない。
【0038】
また、前記皮膚組織の試料は、動物から摘出またはヒトから供与された皮膚組織を試料とすることができるが、これに制限されるものではない。
【0039】
本発明の一実施例では、皮膚組織を試料として約60℃、約1分間皮膚組織を処理して角質層を分離し、イソプロピルアルコールに5分間浸漬して皮膚の脂肪層を除去した後、洗浄段階の前処理段階を経た。
【0040】
前記(b)段階は、(a)段階のハイドロゲル-支持3次元培養段階後、ハイドロゲル内に移動/増殖した皮膚由来幹細胞を回収するために、ハイドロゲルのみを選択的に分解させることができる。
【0041】
前記ハイドロゲルの分解は、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、TPA(tissue plasminogen activator)、プラスミン(plasmin)及びヒアルロニダーゼからなる群から選択された一つ以上の酵素を通じて分解することができる。
【0042】
本発明の皮膚幹細胞の分離/培養技術は、ハイドロゲル基盤のニッチ保存自己複製誘導分離技術として幹細胞を分離する技術であり、皮膚組織が体外生存/培養され、酵素処理なしに組織から直接純度の高い細胞を分離できる新技術に該当する。
【0043】
既存の方法とは異なり、本分離方法は、現存する方式と差別化された方式で体外増殖力及び細胞性能の側面で優れるという長所がある。
【0044】
既存の方法で分離した細胞は、2-3継代(最大5継代)までのみ体外増幅が可能であるが、本発明の方法で分離した細胞は、8継代以上継代培養しても細胞老化が起きないなど性能に優れ、長期間継代培養が可能であるため、大量生産が可能である。
【0045】
また、前記方法により製造された皮膚由来幹細胞は、組織培養及び細胞分離後の継代培養9回目まで細胞の形態及び大きさが維持されることを確認した。
【0046】
一方、本発明で提供する皮膚由来幹細胞を製造する方法により製造された皮膚由来幹細胞は、その細胞表面にCD29、CD44、CD73、CD90またはCD105が発現し、CD14、CD34またはCD45は発現しない免疫学的特性を示し、脂肪細胞または骨細胞などに分化し得る多分化特性を示すが、これに制限されるものではない。
【0047】
前記皮膚由来幹細胞は、本発明で提供する皮膚由来幹細胞を製造する方法により製造された皮膚由来幹細胞、本発明の皮膚由来幹細胞、皮膚由来幹細胞、HB-皮膚由来幹細胞、本発明のHB-皮膚由来幹細胞、HB-SSCと混用され得る。
【0048】
本発明の一実施例では、本発明の皮膚由来幹細胞製造方法により製造した皮膚由来幹細胞の増殖能、分化能、コロニー形成能を確認することができた。
【0049】
本発明のまた他の実施例では、本発明の皮膚由来幹細胞製造方法により製造した皮膚由来幹細胞の皮膚創傷治療効果を確認することができた。
【0050】
本発明のまた他の実施例では、さらに、継代培養による細胞成長能/細胞老化(体外増殖力)及び初代細胞の純度評価の遂行を通じて体外で生存期間が長く、生存能が優れていることを確認することができた。
【0051】
本発明で提供する皮膚由来幹細胞を製造する方法により製造された皮膚由来幹細胞は、特異的皮膚再生機能性遺伝子を発現することができる。
【0052】
その時、前記皮膚再生機能性遺伝子は、具体的には、OSR2(odd-skipped-related 2)、DMKN(Dermokine)、SBSN(Suprabasin)及びGAS1(Growth Arrest Specific 1)から選択されるいずれか一つ以上の遺伝子であってもよいが、これに制限されるものではなく、皮膚再生機能性遺伝子として知られた遺伝子であれば、これに含まれ得る。
【0053】
本発明の一実施例では、前記皮膚由来幹細胞製造方法により製造された皮膚由来幹細胞において脂肪由来幹細胞に比べて前記4個の皮膚再生機能性遺伝子が10倍以上の顕著な発現量を示すことを確認し、本願方法により製造された皮膚由来幹細胞が特異的皮膚再生機能性遺伝子を発揮することを確認することができた。
【0054】
本発明の他の一態様は、前記皮膚由来幹細胞、その培養物または前記皮膚由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、皮膚再生または創傷治療用薬学組成物を提供する。
【0055】
本発明の用語、「皮膚再生」とは、皮膚の外部及び内部の原因による損傷に対し、皮膚組織の回復過程を意味し、外部の原因による損傷は、紫外線、汚染物質、創傷、外傷などであり、内部の原因としては、遺伝的、心理的原因などを全部含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0056】
また、前記皮膚再生は、毛包再生または毛包細胞の増殖を含むことができる概念であり、前記毛包細胞の増殖は、毛包細胞が休止期から増殖期への変換が促進されることを含めてもよいが、これに制限されるものではない。
【0057】
本発明の用語、「培養物」または「培養液」は、皮膚由来幹細胞を培地で培養する過程中または培養した後に得られた培養物またはその上澄液、その濃縮物またはその凍結乾燥物であってもよい。
【0058】
本発明の用語、「薬学組成物」とは、疾病の予防または治療を目的として製造されたものを意味し、実際の臨床投与時に経口及び非経口の種々の剤形で投与されてもよいが、製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調剤することができる。
【0059】
また、それぞれの剤形により薬学的に許容可能な添加剤をさらに含むことができ、その時、薬学的に許容可能な添加剤としては、デンプン、ゼラチン化デンプン、微結晶セルロース、乳糖、ポビドン、コロイダルシリコーンジオキシド、リン酸水素カルシウム、ラクトース、マンニトール、飴、アラビアゴム、前糊化デンプン、コーンスターチ、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、オパドライ、デンプングリコール酸ナトリウム、カルナウバロウ、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、白糖、デキストロース、ソルビトール及びタルクなどが用いられる。本発明による薬学的に許容可能な添加剤は、前記組成物に対して0.1~90重量部が含まれ得る。
【0060】
前記薬学組成物には、前記皮膚由来間葉系幹細胞以外にも一つまたはそれ以上の薬学的に許容可能な通常の不活性担体、例えば、注射剤の場合には、保存剤、無痛化剤、可溶化剤または安定化剤などを、局所投与用製剤の場合には、基剤(base)、賦形剤、潤滑剤または保存剤などをさらに含むことができる。
【0061】
本発明の薬学組成物は、個別治療剤で投与しても、他の治療剤と併用して投与してもよく、従来の治療剤とは順次または同時に投与することができる。そして、単一または多重投与することができる。前記要素を全て考慮し、副作用を誘発せず最小限の量で最大の効果を得る量を投与することが重要であり、当業者により容易に決定することができる。
【0062】
それだけでなく、本発明で提供する薬学組成物は、前記皮膚由来幹細胞以外にも皮膚再生または創傷の治療を補助したり、前記皮膚由来幹細胞の活性を維持したり、前記皮膚由来幹細胞の分化を促進する多様な成分をさらに含むことができるが、一例として、抗炎症製剤、幹細胞動員因子、成長誘導因子などをさらに含むことができる。
【0063】
本発明で使用される用語、「改善」とは、本発明による組成物を個体に投与して皮膚損傷の進行を遅延させたり症状を軽減させるあらゆる行為を意味する。
【0064】
本発明で使用される用語、「予防」とは、本発明による組成物を個体に投与して皮膚損傷の発生を抑制したり遅延させるあらゆる行為を意味する。
【0065】
本発明で使用される用語、「治療」とは、本発明の前記組成物を皮膚損傷発生の疑いのある個体に投与して皮膚損傷症状が好転又は有益にするあらゆる行為を意味する。
【0066】
本発明の他の一つの目的は、前記皮膚由来幹細胞、その培養物または前記皮膚由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む組成物を個体に投与する段階を含む、皮膚再生または創傷改善または治療方法を提供する。
【0067】
前記皮膚由来幹細胞、その培養物または前記皮膚由来幹細胞から分化した細胞、皮膚再生、創傷改善、治療は、前述した通りである。
【0068】
本発明で使用される用語、「投与」とは、適切な方法で個体に前記組成物を導入することを意味する。具体的には、本発明の前記皮膚由来幹細胞、その培養物または前記皮膚由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む組成物、またはそれを含む前記薬学的組成物を局所部位、例えば、皮膚損傷または創傷部位に塗布または注射剤として投与することができるが、これに制限されるものではない。
【0069】
また、前記組成物は、皮膚損傷または創傷治療に用いられる他の薬学的組成物と併用されてもよい。
【0070】
本発明の用語、「個体」とは、皮膚損傷または創傷が発症又は発症し得るヒトを含むマウス、ラット、家畜などのあらゆる動物を意味する。前記動物は、ヒトだけでなくこれと類似の症状の予防または治療を必要とするウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラクダ、カモシカ、イヌ、ネコなどの哺乳動物であってもよいが、これに制限されない。
【0071】
本発明の組成物は、薬学的に有効な量で投与することができる。
【0072】
前記用語、「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/リスクの比率で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量の水準は、個体の種類及び重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野によく知られている要素により決定することができる。
【0073】
前記組成物は、個別治療剤として投与したり他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次または同時に投与することができる。また、単一または多重投与することができる。前記要素を全て考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、当業者により容易に決定することができる。
【0074】
また、前記組成物は、目的とする方法により経口投与しても非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)してもよく、投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び時間に応じて異なるが、当業者により適切に選択されることができる。具体的な例として、前記組成物は、一般に、1日1回~数回に分けて投与することができるが、好ましい投与量は、個体の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び期間に応じて当業者により適切に選択することができる。
【0075】
本発明の他の一つの目的は、前記皮膚由来幹細胞、その培養物または前記皮膚由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、皮膚再生または創傷改善用医薬部外品組成物を提供することにある。
【0076】
本発明の用語、「医薬部外品組成物」とは、ヒトや動物の疾病を治療、軽減、処置または予防する目的として使用される繊維、ゴム製品またはそれと類似したもの、人体に対する作用が弱かったり人体に直接作用せず、器具または機械ではないものとそれと類似したもの、感染予防のために、殺菌、殺虫及びそれと類似した用途で使用される製剤の一つに該当する物品であり、ヒトや動物の疾病を診断、治療、軽減、処置または予防する目的で使用する物品中、器具、機械または装置ではないもの及びヒトや動物の構造と機能に薬理学的影響を与える目的として使用する物品中、器具、機械または装置ではないものを除いた物品を意味し、具体的には、皮膚外用剤または個人衛生用品であってもよい。
【0077】
本発明の他の一つの目的は、前記皮膚由来幹細胞、その培養物または前記皮膚由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む、皮膚再生または創傷改善用化粧料組成物を提供することにある。
【0078】
本発明の用語、「化粧料組成物」は、通常製造される如何なる剤形にも製造することができ、例えば、溶液、乳濁液、懸濁液、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、パウダー、スプレー、界面活性剤含有クレンジング、オイル、石鹸、液体洗浄料、入浴剤、ファンデーション、メイクアップベース、エッセンス、化粧水、フォーム、パック、柔軟水、サンスクリーンクリームまたはサンオイルなどに剤形化することができる。
【0079】
本発明の他の一つの目的は、皮膚組織及びハイドロゲルを含む皮膚由来幹細胞培養用組成物及び前記組成物を含む皮膚由来幹細胞培養用キットを提供することにある。
【0080】
併せて、皮膚由来幹細胞培養用キットは、前記幹細胞培養用組成物と前記幹細胞の培養に必要な溶液、装置などの多様な構成要素を含むことができる。
【0081】
本発明の他の一つの目的は、前記皮膚由来幹細胞、その培養物または前記皮膚由来幹細胞から分化した細胞を有効成分として含む組成物の皮膚再生または創傷改善用途を提供する。
【0082】
以下、本発明を実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これら実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【0083】
実施例1.フィブリンハイドロゲル-支持皮膚組織の3次元培養
動物から摘出またはヒトから供与された皮膚組織を試料にして60℃、1分間皮膚組織を処理して角質層を分離し、isopropyl alcoholに5分間浸漬して皮膚の脂肪層を除去した後、PBS(Gibco)で三回洗浄して皮膚組織を前処理した。Forcepを用いて処理された組織を固定した後、razor bladeを用いて1-3mm2の大きさで切断し、PBSで三回洗浄した。DMEM(low glucose,Gibco)で1回洗浄した後、上澄液を除去し、fibrinogen solution(0.25% w/v fibrinogen (緑十字)、200μg/mL tranexamic acid(シンプン製薬)in DMEM)5mLを入れた。Thrombin solution(0.5 IU/mL thrombin(緑十字)in DMEM)を同量添加し、直ちに100mmの培養容器に移して穏やかに転がして組織切片及びハイドロゲルが均一に広がるようにした。必要に応じてforcepを用いて組織切片の間隔を確保した。常温で5分間、37℃で2時間培養して十分にゲル化させた。Tranexamic acid 100μg/mLが添加された成長培地10mL(90% low DMEM:F12=1:1,10% Fetal bovine serum、20ng/mL epidermal growth factor、5ng/mL basic fibroblast growth factor、10ng/mL insulin-like growth factor,and 10mg/mL gentamicin)を入れて3時間の間、1時間ごとに培養液を交換した。その後、2~3日に一回ずつ成長培地を交換した。
【0084】
実施例2.フィブリンハイドロゲル内に移動成長したHB-皮膚由来幹細胞の回収及び増幅培養
実施例1で記述した方法で約10日間毛包組織を培養した。ハイドロゲルをwarm PBSで3分間三回洗浄した後、30% FBS/DMEMを入れてorbital shakerで撹拌した(30rpm)。1時間後に上澄液を除去した後、3,000unit urokinase(緑十字)が添加された10mL 30% FBS/low DMEMを入れてgelを分解させた。Gelが十分に分解されると、static conditionでovernight培養した後、上澄液を除去し、成長培地を添加して常法で培養した。2~3日ごとに成長培地を交換し、4~6日ごとに継代培養した。
【0085】
前記方法により培養した組織培養結果及び細胞分離及び培養結果は、
図1に示した。
具体的には、組織培養後、細胞を分離して継代培養した時、継代培養の9回目まで細胞の形態及び大きさが維持されることを確認することができた。
【0086】
実施例3.分離及び培養されたHB-皮膚由来幹細胞の免疫表現型の確認
実施例2の方法により分離及び培養されたHB-皮膚由来幹細胞の免疫表現型を確認するために、T75フラスコで培養中であった細胞をPBSで1回洗浄した後、TrypleExpress(Gibco)3mLを3分間処理して細胞を剥離した。剥離した細胞は10% calf serum/PBS 6mLを入れてタンパク質分解反応を抑制させた。遠心分離(300g、5min)した後、上澄液を除去し、3% bovine serum albumin(sigma)/PBSに懸濁した。
【0087】
細胞懸濁液は9等分して次の抗体と4℃で1時間反応させた:FITC-conjugated CD29(Bio-rad、1:10)、CD44(Invitrogen、1:100)、CD90(Invitrogen、1:20)、CD14(Invitrogen、1:20) antibody,AlexaFluor488-conjugated CD105(abcam、1:25)、PE-conjugated CD73(Invitrogen、1:20) antibody,PerCP-conjugated CD34(Santacruz、1:5)抗体、またはAlexaFluor594-conjugated CD45(Novus、1:20) antibody.反応後300g、5minで遠心分離して洗浄後、3% BSA/PBSに懸濁した後、フローサイトメトリー(BD)で測定した(
図2)。
【0088】
その結果、
図2で見られるように、分離及び培養されたHB-皮膚由来幹細胞の表面にはCD29、CD44、CD73、CD90及びCD105が発現し、CD14、CD34及びCD45は発現しないことを確認することができた。
【0089】
具体的には、間葉系幹細胞のマーカーであるCD29、CD44、CD90、CD73及びCD105を陽性発現(95%以上)しており、造血系細胞のマーカーであるCD34、CD45及びHLA-DRは陰性発現(5%未満)を示すことを確認した。
【0090】
実施例4.分離及び培養されたHB-皮膚由来幹細胞の増殖能及びコロニー形成能の確認
実施例2で得られた分離及び培養されたHB-皮膚由来幹細胞の増殖能を確認するために、最初培養時に4000個/cm2の密度で細胞を播種し、4日ごとに継代し、得られた細胞数を通じて継代培養回数による群集の倍加時間を測定した。
【0091】
また、細胞数はtrypan blue染色法で染色されていない細胞の個数をカウントし、群集の倍加時間(PDTs,population doubling time)は、次の式から計算して
図3に示した:PDT=[days/(logN2-logN1)]/log2,(N1=4,000cells,N2=4日後の細胞数)。
【0092】
また、実施例2で得られた分離及び培養されたHB-皮膚由来幹細胞のコロニー形成能を確認するために、ヒト皮膚由来幹細胞(4 passages)を6-well plateに20個/wellで播種した。3日ごとに成長培地で交換しながら14日間培養した。PBSで洗浄した後、4% paraformaldehyde(4% PFA,sigma)で15分間常温で放置して固定した。固定された細胞はPBSで三回洗浄した後、0.5% crystal violet/Methanolで15分間常温で放置して染色させた。残余溶液を全部除去した後、蒸溜水で三回洗浄し、染色されたコロニーを観察した結果を
図4に示した。
【0093】
前記
図3及び4の結果のように、本実施例2の方法により得られたHB-皮膚由来幹細胞はHB-皮膚由来幹細胞を継代培養7回目まで培養してpopulation doubling time(PDT)を求めた結果、PDTは平均35時間±6時間で観察され、継代培養による増殖能が維持されることが認められ、コロニー形成能も、一定レベル以上であることを確認することができた。
【0094】
実施例5.HB-皮膚由来幹細胞の分化能の確認
得られたHB-皮膚由来幹細胞の脂肪細胞への分化能力を評価するために、細胞を1×104個/cm2の濃度で播種し、80% confluencyに到達するまで成長培地で培養した後、StemProTM Adipogenesis differentiation kit(Gibco,cat.A1007001)で培地を交換し、3日ごとに培地を交換しながら14日間培養した。4% PFAで15分間固定し、60% isopropanolで15分間反応させた後、全ての溶液を除去して十分に乾燥させた。60% Oil Red O(sigma)/ethanolを常温で15分間染色して細胞質内における脂肪蓄積の有無を確認した(
図5a)。
【0095】
また、前記HB-皮膚由来幹細胞の骨細胞への分化能力を評価するために、細胞を1×104個/cm2の濃度で播種して80% confluencyに到達するまで成長培地で培養した後、StemProTM Osteogenesis differentiation kit(Gibco,cat.A1007201)で培地を交換し、3日ごとに培地を交換しながら14日間培養した。4% PFAで60秒間固定し、BCIP/NBT substrate solution(Sigma)処理した後、遮光条件で10分間染色して塩基性リン酸分解酵素(Alkaline phosphatase,ALP)の活性を確認した(
図5b)。
【0096】
即ち、前記のような結果として本願培養方法により得られたHB-皮膚由来幹細胞は、多分化能を有していることを確認することができた。
【0097】
実施例6.HB-皮膚由来幹細胞の差異発現遺伝子の確認
脂肪幹細胞(ASC-1.ASC-2.ASC-3)、HB-皮膚由来幹細胞(HB-SSC-1,HB-SSC-2,HB-SSC-3)サンプルのために、TruSeq Stranded mRNA Library Prep Kitを用いてメーカーのプロトコルによりペアエンドRNAライブラリーを構築し、マクロジェン社(ソウル、大韓民国)でシーケンシングを行った。前処理過程後、HISAT2プログラム(バージョン2.1.0,https://ccb.jhu.edu/software/hisat2/index.shtml)でリファレンスゲノム(バージョンGRCh38)にマッピングし、StringTieプログラム(バージョン2.1.3b、https://ccb.jhu.edu/software/stringtie/)で転写体別の発現量プロファイルを得た。遺伝子発現量は、TPM(Transcripts Per Kiobase Million)値にログを取って扱った。対照群と比較群間の差異発現遺伝子は、Rプログラム(バージョン4.0)のedgeRパッケージ[1]を用いて得た(1.ROBINSON,Mark D.;MCCARTHY,Davis J.;SMYTH,Gordon K.edgeR:a Bioconductor package for differential expression analysis of digital gene expression data.bioinformatics、2010,26.1:139-140.)(
図6b及び6c)。マーカー遺伝子が参加する生物学的ネットワーク構築は、String Database(バージョン11.5)[2]を用いてタンパク質-タンパク質相互作用(PPI)ネットワークを構築した(2.SZKLARCZYK,Damian,et al.STRING v11:protein-protein association networks with increased coverage,supporting functional discovery in genome-wide experimental datasets.Nucleic acids research、2019,47.D1:D607-D613)。PPIネットワーク構築に使用した有機体レファレンスはHomo sapiensとした。ネットワーク構築のための設定でタンパク質を示すノード(node)を互いに連結するエッジ(edge)は、実験の結果、生物学的データベース及び文献、遺伝子フュージョンなどの根拠基盤で連結するようにし、エッジ点数は0.4以上であることを有意なこととした。ネットワーク構築後、他のノード間の連結性がない孤児ノードは除去した。ノードグループが属する生物学的機能は、KEGGデータベース[3]を基準として統計的に有意なことだけ抽出した(3.KANEHISA,Minoru;GOTO,Susumu.KEGG:kyoto encyclopedia of genes and genomes.Nucleic acids research、2000,28.1:27-30)(False Discovery Rate < 0.05)(
図6a)。両グループ間の有意な差の検定はT-Testを行って得、P value<0.05未満を有意なことと見なした。分析プログラムにより自主的に提供する統計的検定結果はそのまま使用し、有意の水準は0.05未満を有意なことと見なした。P valueが0.05を超過した結果を表記する場合、P valueを別途に表記した。
【0098】
String DBを用いてHB-皮膚由来幹細胞で発現した遺伝子を皮膚再生関連遺伝子networkと分析して関連性のある信号伝達経路を確認し、4個の皮膚再生機能性遺伝子(GAS1,OSR2,DMKN,SBSN)を高い水準で発現することを確認した(
図6a)。HB-皮膚由来幹細胞においてFold change>10で脂肪由来幹細胞に比べて発現した遺伝子73個を確認し、このうち、
図6aで導出した皮膚再生機能性遺伝子4個(GAS1,OSR2,DMKN,SBSN)が脂肪由来幹細胞に比べて10倍以上の差異発現を確認した(
図6b及び6c)。
【0099】
前記皮膚再生機能性遺伝子4種は、皮膚再生、創傷治癒と関連して免疫調節及び細胞増殖に関連した遺伝子として知られているところ、これに基づいて本発明の皮膚由来幹細胞製造方法により製造された皮膚由来幹細胞の皮膚再生、創傷治癒効果を類推することができる。
【0100】
実施例7.全層皮膚欠損傷(Full-thickness skin wound)マウスモデル及び創傷治癒効果の確認
実験動物である12週齢のBALB/c nude mouse(中央実験動物)を3% Isoflurane(ハナ製薬)を通じて吸入麻酔させ、手術部位をAlcohol swab(メディトップ)で消毒した。目盛り付きステッカーを背中に貼付した後、皮膚を正方形(5mmx5mm、25mm2)状に滅菌された手術用はさみで皮下層まで切開した後、皮下組織を分離して全層皮膚欠損傷を誘発した。創傷収縮を防止するために、創傷周辺部位をSuture(ProleneTM,EHICON,cat.W8566)で固定した。創傷周辺部位に5×105個の細胞をNormal saline(NS)100μlに懸濁して25μl/site(4site)で皮下注射(Insulin syringe、31gauge)した。創傷誘発後、感染防止のために、周囲をAlcohol swabで消毒し、実験群は全部分離して観察した。創傷誘発後、0、1、3、5、7、12、14日目に同時間にデジタルカメラを用いて各群の創傷部位を撮影し、Image J Software(US National Institute of Health Program,USA)で創傷面積を測定した。Wound areaは、創傷誘導直後の創傷面積を基準として測定日別の創傷面積を百分率で計算した(
図7a及び
図7b)。
【0101】
前記結果として本発明の製造方法により製造されたHB-皮膚由来幹細胞の創傷治癒効果を確認することができた。
【0102】
実施例8.全層皮膚欠損傷(Full-thickness skin wound)マウスモデルにおける皮膚及び皮膚構造物の再生能の確認
組織学的分析のために、皮膚組織を固定液(4% formaldehyde,sigma,USA)に24時間固定した。その後、組織をパラフィン包埋(Paraffin embedding)してブロックを6μmで薄切りした後、H&E(Hematoxylin & Eosin)染色を行った。光学顕微鏡を通じて実験群別に組織を観察及び比較した(
図8)。
【0103】
前記結果として本発明の製造方法により製造されたHB-皮膚由来幹細胞の皮膚及び皮膚構造物の再生効果を確認することができた。
【0104】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【国際調査報告】