(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-20
(54)【発明の名称】バッテリセル組立体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/489 20210101AFI20241213BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20241213BHJP
H01M 10/654 20140101ALI20241213BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20241213BHJP
H01M 50/486 20210101ALI20241213BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20241213BHJP
H01M 10/0583 20100101ALI20241213BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20241213BHJP
【FI】
H01M50/489
H01M10/658
H01M10/654
H01M50/474
H01M50/486
H01M10/0585
H01M10/0583
H01M10/04 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538741
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 KR2022016846
(87)【国際公開番号】W WO2023128207
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0187982
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】キュテ・パク
(72)【発明者】
【氏名】サン・スン・オー
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンスン・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】シュルキ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヘヒョン・キム
【テーマコード(参考)】
5H021
5H028
5H029
5H031
【Fターム(参考)】
5H021AA02
5H021CC17
5H021EE02
5H021HH03
5H028AA08
5H028CC15
5H028EE06
5H028HH05
5H029AJ12
5H029BJ25
5H029EJ12
5H029HJ04
5H031EE04
5H031HH08
5H031KK02
(57)【要約】
本発明は、バッテリセル組立体及びその製造方法を開示する。本発明のバッテリセル組立体は、カソードと、分離膜と、アノードと、からなる単位セルを複数個積層してなるバッテリセル;及びバッテリセルの外周を1回以上囲む断熱カバー;を含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードと、分離膜と、アノードを備える単位セルを複数個積層したバッテリセル;及び
前記バッテリセルの外周を1回以上囲む断熱カバー;を含む、
バッテリセル組立体。
【請求項2】
前記断熱カバーの厚さは、10μm以上20μm以下である、
請求項1に記載のバッテリセル組立体。
【請求項3】
前記断熱カバーは、耐熱性フィルムからなる、
請求項1に記載のバッテリセル組立体。
【請求項4】
前記断熱カバーは、ポリイミドフィルム(PI film)である、
請求項3に記載のバッテリセル組立体。
【請求項5】
前記ポリイミドフィルムの厚さは、5μm以上10μm以下である、
請求項4に記載のバッテリセル組立体。
【請求項6】
前記断熱カバーは、前記バッテリセルに密着して巻き取られている、
請求項1に記載のバッテリセル組立体。
【請求項7】
前記バッテリセルは、カソード-分離膜-アノード-分離膜型、又はアノード-分離膜-カソード-分離膜型の単位セルを複数個積層した構造を含む、
請求項1に記載のバッテリセル組立体。
【請求項8】
前記バッテリセルは、カソード-分離膜-アノード-分離膜-カソード型、又はアノード-分離膜-カソード-分離膜-アノード型の単位セルを長い分離膜に付着した後、折り畳み積層した構造を含む、
請求項1に記載のバッテリセル組立体。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか一項のバッテリセル組立体の製造方法であって、
単位セルを複数個積層してバッテリセルを製作するステップと、
前記バッテリセルまわりに1回以上巻き取られて、前記バッテリセルの周囲に断熱カバーを形成するステップとを含む、
バッテリセル組立体の製造方法。
【請求項10】
前記断熱カバーは、ポリイミドフィルムである、
請求項9に記載のバッテリセル組立体の製造方法。
【請求項11】
前記ポリイミドフィルムを巻き取る回数によって、前記断熱カバーの厚さを決定する、
請求項10に記載のバッテリセル組立体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月27日付韓国特許出願第10-2021-0187982号に基づく優先権の利益を主張し、同韓国特許出願に開示のすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、バッテリセル組立体及びその製造方法に関し、より詳細は、隣接するバッテリセルで熱の伝達を遮断し、発火時間を遅延させ、使用者の待避時間を確保することができる、バッテリセル組立体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
通常、モバイル機器や電気車両に関する技術の開発と需要が増加するにつれて、エネルギー源としての二次電池の需要は、急激に増加する。それによって、様々な要求に応える二次電池に関する数多くの研究が行われている。
【0004】
代表的に、二次電池の形状面からは、薄厚であり、携帯電話などのような製品に適用できる角型二次電池とパウチ型二次電池に対する需要が高く、材料面からは、高いエネルギー密度、放電電圧、出力が安定的なリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池などのようなリチウム二次電池に対する需要が高い。
【0005】
図1は、従来のバッテリセル組立体を概略的に示した平面図であり、
図2は、
図1のバッテリセル組立体が100~120℃程に加熱されたとき、分離膜が収縮する状態を概略的に示した平面図である。
【0006】
図1及び
図2を参照すると、二次電池は、複数のバッテリセル10が積層されてなる。バッテリセル10は、カソード11、分離膜13及びアノード15が積層されてなる。
【0007】
バッテリセル10は、ラミネーション&スタッキング工程(Lamination & Stacking Process)によって製造することができる。この工程では、分離膜13、カソード11、分離膜13、アノード15を積層した後に、切断してモノセルを製造し、複数のモノセルを積層する。
【0008】
これらバッテリセル10は、構造が単純であり、電解液の含浸度が高い反面、生産速度が遅くて、整列度が低下する問題がある。これらバッテリセル10では、積層されたカソード11、分離膜13及びアノード15の整列度を確保するために、テーピング工程が行われる。これらテーピング工程では、バッテリセル10の両側面及び上下面の一部に複数のテープ17が付着する。
【0009】
しかしながら、従来のバッテリセル10は、
図2のように、略100~120℃程に過熱されると、分離膜13が収縮しつつ、分離膜13とカソード11がラウンドに変形するが、特に、分離膜13の周囲において、分離膜13のテープ17が付着した部分は収縮せず、テープ17が付着していない部分が収縮する。これによって、テープ17が付着していない部分が収縮して、カソード11とアノード15が互いに露出するため、カソード11とアノード15がショート(short)しつつ発火が生じる問題があった。
【0010】
また、複数のバッテリセル10は、バッテリモジュールに内装されるため、特定のバッテリセル10が過熱されるか発火するとき、隣接するバッテリセル10に発火伝播(theremal propagation)しやすい。よって、バッテリセル10の熱の伝逹を遮断して、隣接するバッテリセル10で発火伝播を遅延することができる技術の開発が求められている。
【0011】
本発明の背景技術は、韓国公開特許公報第2021-0053570号(2021年5月12日付公開)に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述した問題点を解決するために案出されたものであって、隣接するバッテリセルで熱の伝達を遮断し、発火時間を遅延させ、搭乗者の待避時間を確保することができる、バッテリセル組立体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために本発明は、カソードと、分離膜と、アノードと、からなる単位セルを複数個積層(stacking)してなるバッテリセル;及び前記バッテリセルの外周を1回以上囲む断熱カバー;を含むことができる。
【0014】
前記断熱カバーの厚さは、10μm以上20μm以下であってもよい。
【0015】
前記断熱カバーは、耐熱性フィルムからなっていてもよい。
【0016】
前記断熱カバーは、ポリイミドフィルム(PI film)であってもよい。
【0017】
前記ポリイミドフィルムの厚さは、5μm以上10μm以下であってもよい。
【0018】
前記断熱カバーは、前記バッテリセルに密着して巻き取ることができる。
【0019】
前記バッテリセルは、カソード-分離膜-アノード-分離膜型、又はアノード-分離膜-カソード-分離膜型の単位セルを複数個積層した構造を含むことができる。
【0020】
前記バッテリセルは、カソード-分離膜-アノード-分離膜-カソード型、又はアノード-分離膜-カソード-分離膜-アノード型の単位セルを長い分離膜に付着した後、折り畳み積層した構造を含むことができる。
【0021】
前記バッテリセル組立体の製造方法は、単位セルを複数個積層してバッテリセルを製作するステップ;及び前記バッテリセルまわりに1回以上巻き取って、前記バッテリセルの周囲に断熱カバーを形成するステップ;を含むことができる。
【0022】
前記断熱カバーは、ポリイミドフィルムであってもよい。
【0023】
前記ポリイミドフィルムを巻き取る回数によって、前記断熱カバーの厚さを決定することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、断熱カバーは、バッテリセルの周りを囲むように設置されるため、バッテリセルが、隣接するセルの火炎によって加熱されても、熱伝播時間及び発火時間を遅延させることができる。
【0025】
本発明によれば、断熱カバーの厚さが5~10μmである場合、熱伝播遅延性能を極大化しながらも、バッテリセル組立体の厚さ増加や体積増加を最小化することができる。
【0026】
本発明によれば、ポリイミドフィルムを巻き取る回数を調節して、断熱カバーの厚さを決定することができる。
【0027】
上述した効果並びに本発明の具体的な効果は、以下の発明を実施するための形態を説明すると共に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】従来のバッテリセル組立体を概略的に示した平面図である。
【
図2】
図1のバッテリセル組立体が100~120℃程加熱されたとき、分離膜が収縮する状態を概略的に示した平面図である。
【
図3】本発明によるバッテリセル組立体を概略的に示した平面図である。
【
図4】
図3のバッテリセル組立体を概略的に示した断面図である。
【
図5】
図3のバッテリセル組立体におけるポリイミドフィルムを1回巻き取って、断熱カバーを形成した状態を概略的に示した図面である。
【
図6】
図3のバッテリセル組立体におけるポリイミドフィルムを2回巻き取って、断熱カバーを形成した状態を概略的に示した図面である。
【
図7】本発明によるセル組立体の熱伝播実験装置を概略的に示した図面である。
【
図8】本発明によるセル組立体が110℃程に加熱されたとき、断熱カバーが収縮する方向を概略的に示した図面である。
【
図9】
図7の熱伝播実験装置におけるポリイミドフィルムの厚さに対する熱伝播遅延時間及び電圧降下時間を概略的に示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付の図面を参照して詳説する。
【0030】
本発明は、以下で開示の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更を加えることができ、相異なる様々な形態に具現することができる。但し、本実施形態は、本発明の開示を完全なものにして、通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。よって、本発明は、以下で開示の実施形態に限定されるものではなく、いずれか実施形態の構成と、他の実施形態の構成とを互いに置換するか付加することはもちろん、本発明の技術思想と範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むものと理解しなければならない。
【0031】
添付の図面は、本明細書で開示の実施形態を理解しやすくするためのものであり、添付の図面によって、本明細書で開示の技術思想が制限されるものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変更、均等物乃至代替物を含むものと理解しなければならない。図面における構成要素は、理解の便宜などを考慮して、大きさや厚さを誇張して大きく或いは小さく表現することができるものの、これにより、本発明の保護範囲が制限的に解釈されてはならない。
【0032】
本明細書で使用する用語は、単に特定の具現例や実施形態を説明するために使われるものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。そして、単数の表現は、文脈上、明らかに他に意味しない限り、複数の表現を含む。明細書における「~含む」、「~なる」等の用語は、明細書上に記載の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためのものである。すなわち、明細書における「~含む」、「~なる」等の用語は、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品、又はこれらを組み合わせたものの存在或いは付加可能性を予め排除するものではないと理解しなければならない。
【0033】
第1、第2などのように序数を含む用語は、様々な構成要素を説明するために使われてもよいものの、上記構成要素は、上記用語によって限定されない。上記用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にだけ使われる。
【0034】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いるか「接続されて」いると言及されている場合は、他の構成要素に直接連結されているか或いは接続されていてもよいものの、その間にさらに他の構成要素が存在し得ると理解しなければならない。他方、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いるか「直接接続されて」いると言及されている場合は、その間にさらに他の構成要素が存在しないものと理解しなければならない。
【0035】
ある構成要素が他の構成要素の「上部にある」か「下部にある」と言及されている場合は、他の構成要素の真上に配されているだけでなく、その間に他の構成要素が存在し得ると理解しなければならない。
【0036】
他に定義しない限り、技術的或いは科学的用語を含み、ここで使われるあらゆる用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって一般的に理解するのと同様の意味を有する。一般に使われる、辞書に定義されているのと同様の用語は、関連技術の文脈上に有する意味と一致する意味を有するものと解釈しなければならず、本出願において、明らかに定義しない限り、理想的或いは過度に形式的な意味に解釈されない。
【0037】
以下、本発明の実施形態によるバッテリセル組立体について説明することとする。
【0038】
図3は、本発明によるバッテリセル組立体を概略的に示した平面図であり、
図4は、
図3のバッテリセル組立体を概略的に示した断面図であり、
図5は、
図3のバッテリセル組立体におけるポリイミドフィルムを1回巻き取って、断熱カバーを形成した状態を概略的に示した図面であり、
図6は、
図3のバッテリセル組立体におけるポリイミドフィルムを2回巻き取って、断熱カバーを形成した状態を概略的に示した図面である。
【0039】
図3~
図6を参照すると、本発明の実施形態によるバッテリセル組立体100は、バッテリセル110及び断熱カバー120を含む。
【0040】
バッテリセル110は、カソード111と、分離膜113と、アノード115と、からなる単位セル110aを複数個積層(stacking)してなる。カソード111にはカソードリード112が連結されて、アノード115にはアノードリード116が連結される。カソード111とアノード115との間には、分離膜113が介在される。
【0041】
本発明によるバッテリセル110は、モノセル(mono-cell)を積層するか、バイセル(bi-cell)を積層し、最上端部にハーフセル118を積層して製造することができる。ハーフセル118(half-cell)は、分離膜113にカソード111やアノード115のいずれかのみ積層する構造を有する。
【0042】
モノセルは、最上端部に配置された電極と、最下端部に配置された電極とが互いに逆極性を有する単位セル110aを意味する。例えば、カソード111-分離膜113-アノード115-分離膜113が順次積層された形態の単位セル110aをC型モノセル(mono-cell)と言い、アノード115-分離膜113-カソード111-分離膜113が順次積層された形態の単位セル110aをA型モノセルと言う。
【0043】
バイセルは、同一極性の電極が単位セル110aの最外郭両面に配置される構造を有する。例えば、カソード111-分離膜113-アノード115-分離膜113-カソード111が順次積層された形態の単位セル110aをC型バイセル(bi-cell)と言い、アノード115-分離膜113-カソード111-分離膜113-アノード115が順次積層された形態の単位セル110aをA型バイセルと言う。
【0044】
先ず、モノセルを積層してバッテリセル110を製造する工程について説明することとする。
【0045】
アノード115、分離膜113、カソード111、分離膜113がロール状に巻き取られた状態で、連続して繰り出しつつ供給され、アノード115とカソード111を切断して、分離膜113にロードさせる。アノード115とカソード111がロードされた分離膜113は、ラミネート装置に供給され、ラミネート装置を通る間に熱と圧力によってアノード115、分離膜113、カソード111、分離膜113が接着される。接着したアノード115、分離膜113、カソード111、分離膜113が移送される状態で、隣合うアノード115とアノード115(隣合うカソード111とカソード111)の間を切断して、モノセルを連続して製造する。このように製造された複数の単位セル110a(モノセル)をスタッキング工程において、カソード111-分離膜113-アノード115-分離膜113型、又はアノード115-分離膜113-カソード111-分離膜113型に積層し、最上端部の単位セル110aの上側にハーフセル118(half-cell)を積層することによって、バッテリセル110を製造することができる。これらバッテリセル110の製造方式をラミネーション&スタッキング方式(Laminanation and Stacking)と言う。
【0046】
次に、バイセルを積層してバッテリセルを製造する工程について説明することとする。
【0047】
カソード111-分離膜113-アノード115-分離膜113-カソード111型、又はアノード115-分離膜113-カソード111-分離膜113-アノード115型の単位セル110aを長い分離膜113に連続して付着する。分離膜113積層体を一方向に回転させつつ、折り畳み積層する。そして、最上端部の単位セル110aの上部には、ハーフセル118が積層される。これらバッテリセル110の製造方式をスタッキング&フォールディング方式(Stacking and Folding)と言う。
【0048】
上記したバッテリセル110におけるカソード111、分離膜113及びアノード115は、様々な形態に積層することができる。また、積層されたバッテリセル110の周囲は、
図1のように、複数のテープ(不図示)を付着していてもよい。
【0049】
断熱カバー120は、バッテリセル110の外周を耐熱性フィルムで1回以上囲むように設置される。断熱カバー120は、断熱性と耐熱性に優れる材質のフィルムで製造することができる。例えば、断熱カバー120として、ポリイミドフィルム121(Polyimide film)など、様々な形態のフィルムを適用することができる。
【0050】
断熱カバー120の厚さは、10μm以上20μm以下であってもよい。断熱カバー120の厚さが10μm未満である場合、断熱カバー120の断熱性能と耐熱性能が低下して、発火伝播を充分遅延させることが困難になる場合がある。また、断熱カバー120の厚さが20μm超である場合、それ以上厚さが増加しても、発火遅延時間は、ほぼ増加しないことが確認できた。これについては、下記で詳説することとする。
【0051】
ポリイミドフィルム121の厚さは、5μm以上10μm以下であってもよい。ポリイミドフィルム121の厚さが5μm未満である場合、ポリイミドフィルム121をバッテリセル110に巻き取る回数が増加して、セル組立体の生産性が低下し得る。また、ポリイミドフィルム121の厚さが10μm超である場合、ポリイミドフィルム121をバッテリセル110に密着して巻き取りにくいことがある。また、厚さが5μm以上10μm以下のポリイミドフィルム121を用いると、ポリイミドフィルム121を巻き取る回数に応じで、断熱カバー120の厚さを5μmの倍数単位に容易に調節することもできる。
【0052】
上記のように、断熱カバー120がバッテリセル110まわりを囲むように設置されるため、バッテリセル110が隣接するセルの火炎によって加熱されても、断熱カバー120、アノード115、カソード111、及び分離膜113が熱伝播遅延時間の間に、あらゆる方向に収縮しつつポリイミドバリア(PI barrier)を生成することができる。また、アノード115、カソード111及び分離膜113は、同じ方向に収縮するため、カソード111とアノード115がショート(short)しつつ発火が発生する時間を遅延させることができる。
【0053】
上記のように構成される、本発明によるバッテリセル組立体の製造方法について説明することとする。
【0054】
単位セル110aを複数個積層してバッテリセル110を製作する。このとき、モノセルを複数個積層してバッテリセル110を製作するか、バイセルを複数個積層してバッテリセル110を製作することができる。これらバッテリセル110は、ラミネーション&スタッキング方式(Laminanation and Stacking)又はスタッキング&フォールディング方式(Stacking and Folding)によって製作することができる。
【0055】
バッテリセル110まわりに1回以上巻き取って、バッテリセル110の周囲に断熱カバー120を形成する。断熱カバー120は、ポリイミドフィルム121であってもよい。このとき、ポリイミドフィルム121を巻き取る回数によって、断熱カバー120の厚さを決定する。例えば、バッテリセル110まわりに5μmのポリイミドフィルム121を1回巻き取って、5μmの断熱カバー120を形成するか、バッテリセル110まわりに5μmのポリイミドフィルム121を2回巻き取るか、10μmのポリイミドフィルム121を1回巻き取って、10μmの断熱カバー120を形成することができる。
【0056】
上記したバッテリセル組立体の熱伝播実験(Thermal Propagation Test)について説明することとする。
【0057】
図7は、本発明によるセル組立体の熱伝播実験装置を概略的に示した図面であり、
図8は、本発明によるセル組立体が110℃程に加熱されたとき、断熱カバーが収縮する方向を概略的に示した図面であり、
図9は、
図7の熱伝播実験装置におけるポリイミドフィルムの厚さに対する熱伝播遅延時間及び電圧降下時間を概略的に示したグラフである。
【0058】
図7~
図9を参照すると、断熱カバー120が巻き取られていないトリガーセル210(trigger cell)と、断熱カバー120が巻き取られているバッテリセル110(adjacent)を準備する。トリガーセル210とバッテリセル110を一対のアルミニウムプレート221,222の間に配置し、トリガーセル210と1つのアルミニウムプレート221との間に、ヒートパッド230が介在される。また、トリガーセル210とヒートパッド230との間に第1温度センサ241が介在され、トリガーセル210とバッテリセル110との間に第2温度センサ242が介在され、バッテリセル110と他の1つのアルミニウムプレート222との間に第3温度センサ243が介在される。ヒートパッド230に電源が供給されると、ヒートパッド230がトリガーセル210を加熱する。
【0059】
断熱カバー120のない基準トリガーセル210から断熱カバー120のないバッテリセル110への熱伝播時間(TP Time)は、5秒程かかり(L1,L11)、トリガーセル210から断熱カバー120の厚さが5μmであるバッテリセル110への熱伝播時間(TP Time)は、略40%程増加し(L2,L12)、トリガーセル210から断熱カバー120の厚さが10μmであるバッテリセル110への熱伝播時間は、略110%程増加することが確認できた(L3,L13)。しかし、断熱カバー120の厚さが15μmであるバッテリセル110への熱伝播時間(TP Time)は、略100%程と、却って減少することが分かった(L4,L14)。
【0060】
また、断熱カバー120のないバッテリセル110の場合、4Vから0Vに降下する電圧降下時間は、2秒程かかり(L1,L11)、断熱カバー120の厚さが5μmであるバッテリセル110の電圧降下時間(Cell Voltage Drop Time)は、略100%程増加し(L2,L12)、断熱カバー120の厚さが10μmであるバッテリセル110の電圧降下時間は、略150%程増加することが確認できた(L3,L13)。しかし、断熱カバー120の厚さが15μmであるバッテリセル110の電圧降下時間は、略50%程と、却って減少することが分かった(L4,L14)。
【0061】
上記のように、断熱カバー120の厚さが5~10μmである区間では、断熱カバー120の厚さが増加するほど、熱伝播遅延時間と電圧降下時間が急激に増加するものの、断熱カバー120の厚さが10~15μmである区間では、断熱カバー120の厚さが増加しても、熱伝播遅延時間と電圧降下時間が却って減少することが分かる。よって、本実験によって、断熱カバー120の厚さが5~10μmである区間は、熱伝播遅延性能を極大化しながらも、バッテリセル組立体100の厚さ増加や体積増加を最小化する区間であることが確認できた。
【0062】
以上のように、本発明について例示の図面を参照して説明したが、本発明は、本明細書で開示の実施形態と図面によって限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内における通常の技術者であれば様々な変形を行えることは自明である。なお、本発明の実施形態を前述しながら、本発明の構成による作用効果を明示的に記載して説明しなかったとしても、当該構成によって予測可能な効果も認めるべきであることは当然である。
【符号の説明】
【0063】
10 バッテリセル
11 カソード
13 分離膜
15 アノード
17 テープ
100 バッテリセル組立体
110 バッテリセル
110a 単位セル
111 カソード
112 カソードリード
113 分離膜
115 アノード
116 アノードリード
118 ハーフセル
120 断熱カバー
121 ポリイミドフィルム
210 トリガーセル
221,222 アルミニウムプレート
230 ヒートパッド
241 第1温度センサ
242 第2温度センサ
243 第3温度センサ
【国際調査報告】