IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特表-積層体用の薄板を製造する方法 図1
  • 特表-積層体用の薄板を製造する方法 図2
  • 特表-積層体用の薄板を製造する方法 図3
  • 特表-積層体用の薄板を製造する方法 図4
  • 特表-積層体用の薄板を製造する方法 図5
  • 特表-積層体用の薄板を製造する方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-20
(54)【発明の名称】積層体用の薄板を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20241213BHJP
【FI】
H02K15/02 E
H02K15/02 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539585
(86)(22)【出願日】2022-12-27
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 EP2022025598
(87)【国際公開番号】W WO2023126073
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】2030371
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト ファン デン ヘーフェル
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ナウス
(72)【発明者】
【氏名】ゲアト ヤンセン
(72)【発明者】
【氏名】アリエン ブランツマ
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615PP01
5H615PP02
5H615PP06
5H615SS03
5H615SS05
(57)【要約】
本発明は、シートメタル(30)からスタック、つまり、積層体、例えば変圧器のコアまたは電気機械のロータもしくはステータのコア用の薄板(20)を製造する方法に関する。本発明によれば、第1の製造ステップ(A)では、個々の薄板(20)が、シート材料(30)から部分的にのみ切り離される一方、接続タブ(32)は、薄板(20)とシート材料(30)の残りの枠部分(31)との間に残される。その結果、有利には、薄板(20)を個別にかつ/または直接的に取り扱う必要なしに、薄板(20)を別個に後続処理(SP)することができる。その後にのみ、本発明による第2の製造ステップ(B)において、薄板(20)が、薄板(20)同士の間の前記接続タブ(32)を切断することによってシート材料(30)の枠部分(31)から完全に切り離される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材料(30)から積層スタック、例えば変圧器コアまたは電気モータのステータ積層体もしくはロータ積層体用の薄板(1;10;20;50)を製造する方法であって、
前記薄板(1;10;20;50)が、第1のプロセスステップ(A)で前記シート材料(30)から部分的に切り離され、
前記薄板(1;10;20;50)が、第2のプロセスステップ(B)で前記シート材料(30)から完全に切り離される、
薄板(1;10;20;50)を製造する方法。
【請求項2】
前記第1のプロセスステップ(A)では、各々の薄板(1;10;20;50)が、その外側輪郭に沿って多数の長孔(23;15;25)を孔あけすることによって部分的に切り離される一方、対応する数の接続ブリッジ(32)が、前記各々の薄板(1;10;20;50)と前記シート材料(30)の枠部分(31)または隣り合う薄板(1;10;20;50)との間に残され、前記第2のプロセスステップ(B)では、前記各々の薄板(1;10;20;50)が、その外側輪郭に沿って前記ブリッジ(32)を切断することによって完全に切り離されることを特徴とする、請求項1記載の、薄板(1;10;20;50)を製造する方法。
【請求項3】
シート材料(30)から、電気モータのステータ積層体およびロータ積層体用にそれぞれ想定されるステータリング(10)およびロータディスク(20)から構成された薄板の対(10,20;50)を製造する方法であって、第1のプロセスステップ(A)では、少なくとも各々の薄板の対(10,20;50)の前記ステータリング(10)が、その外側輪郭に沿って多数の長孔(15)を孔あけすることによって前記シート材料(30)から部分的に切り離される一方、対応する数の接続ブリッジ(32;32-2)が、前記各々の薄板の対(10,20;50)と前記シート材料(30)の枠部分(31)または隣り合う薄板(1;10;20;50)との間に残され、第2のプロセスステップ(B)では、前記ブリッジ(32;32-2)が、前記ステータリング(10)の前記外側輪郭に沿って切断される、薄板の対(10,20;50)を製造する方法。
【請求項4】
前記第2のプロセスステップ(B)で前記ブリッジ(32;32-2)を前記ステータリング(10)の前記外側輪郭に沿って切断する前に、まず、前記ロータディスク(20)が前記シート材料(30)から切断され、続いて、スクラップ材料のリングも前記ステータリング(10)の内側輪郭で前記シート材料(30)から切断されることを特徴とする、請求項3記載の、薄板の対(10,20;50)を製造する方法。
【請求項5】
前記第1のプロセスステップ(A)では、各々の薄板の対(10,20;50)の前記ロータディスク(20)も、その前記外側輪郭に沿って多数の長孔(15)を孔あけすることによって前記シート材料(30)から部分的に切り離される一方、対応する数の接続ブリッジ(32;32-1)は、前記各々の薄板の対(10,20;50)の前記ロータディスク(20)と前記ステータリング(10)との間に残されることを特徴とする、請求項3または4記載の、薄板の対(10,20;50)を製造する方法。
【請求項6】
前記第2のプロセスステップ(B)で前記ブリッジ(32;32-2)を前記ステータリング(10)の前記外側輪郭に沿って切断する前に、まず、前記ブリッジ(32;32-1)が前記ロータディスク(20)の前記外側輪郭に沿って切断され、続いて、これらの同じブリッジ(32;32-1)も前記ステータリング(10)の内側輪郭に沿って切断されることを特徴とする、請求項5記載の、薄板の対(10,20;50)を製造する方法。
【請求項7】
前記ロータディスク(20)と前記ステータリング(10)との間の前記ブリッジが、前記ステータリング(10)の内側輪郭で半径方向外向きに延在するスロット(13)の位置において前記ステータリング(10)にのみ結合していることを特徴とする、請求項5または6記載の、薄板の対(10,20;50)を製造する方法。
【請求項8】
前記ブリッジ(32)の数は少なくとも4個、多くとも20個であることを特徴とする、請求項2から7までのいずれか1項記載の、薄板(1;10;20;50)または薄板の対(10,20;50)を製造する方法。
【請求項9】
各々の薄板(1;10;20;50)はR回の回転対称性を有し、前記ブリッジ(32)の前記数は、前記Rの(数)値の1/2倍、1倍または2倍であることを特徴とする、請求項8記載の、薄板(1;10;20;50)または薄板の対(10,20;50)を製造する方法。
【請求項10】
前記第1のプロセスステップ(A)では、前記シート材料(30)の長手方向で見て、少なくとも2つの前記ブリッジ(32)が、各々の薄板(1;10;20;50)の両側に設けられていて、前記各々の薄板(1;10;20;50)と前記枠部分(31)との間で前記長手方向に部分的に延在してもいることを特徴とする、請求項2から9までのいずれか1項記載の、薄板(1;10;20;50)または薄板の対(10,20;50)を製造する方法。
【請求項11】
前記第1のプロセスステップ(A)では、前記ブリッジ(32)が、各々の薄板(1;10;20;50)の周に沿って実質的に等間隔に配置されていることを特徴とする、請求項2から10までのいずれか1項記載の、薄板(1;10;20;50)または薄板の対(10,20;50)を製造する方法。
【請求項12】
前記ブリッジ(32)は、各々の薄板(1;10;20;50)にその全体的な周の窪みの位置で接続していることを特徴とする、請求項2から11までのいずれか1項記載の、薄板(1;10;20;50)または薄板の対(10,20;50)を製造する方法。
【請求項13】
前記第1のプロセスステップ(A)では、前記ブリッジ(32)が、前記シート材料(30)の長手方向に配向された各々の薄板(1;10;20;50)の仮想中心線に対して鏡像対称に設けられていて、好ましくは、前記長手方向に対して垂直に配向された前記薄板(1;10;20;50)の仮想中心線に対しても鏡像対称に設けられていることを特徴とする、請求項2から12までのいずれか1項記載の、薄板(1;10;20;50)または薄板の対(10,20;50)を製造する方法。
【請求項14】
前記第1のプロセスステップ(A)と前記第2のプロセスステップ(B)との間で、前記薄板(1;10;20;50)が処理され、特に熱処理に供され、かつ/またはコーティングまたは接着剤を備えることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の、薄板(1;10;20;50)または薄板の対(10,20;50)を製造する方法。
【請求項15】
前記薄板(1;10;20;50)は、0.05mm~0.5mmの範囲の厚さを有し、より具体的には、前記薄板(1;10;20;50)の最大寸法または主寸法は、前記薄板(1;10;20;50)の厚さの500~2500倍であることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の、薄板(1;10;20;50)または薄板の対(10,20;50)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材料、特に金属、例えば電磁鋼板からスタック、つまり、積層体、例えば変圧器のコアまたは電気機械のロータもしくはステータのコア用の薄板を製造する方法に関する。後者の場合、薄板は、典型的に(必ずしも必要ではないが)、ディスク形状(ロータコア)またはリング形状(ステータコア)のいずれかである。少なくとも後者の積層スタックの電気的な用途では、積層スタックの個々の薄板は、典型的に、他の寸法に比べて小さな厚さを有しており、多くの場合、0.05~0.5mmの範囲の厚さの絶対値を有している。本発明は、特に、厚さ寸法の少なくとも500倍から多くとも2500倍の最大寸法を有する薄板に関する。
【0002】
積層スタックの薄板は、シート材料からスタンピング、すなわち、打抜きによって個別に得られる。この薄板打抜きのプロセスステップの前に、典型的に、1回以上の連続的なパンチングステップ、すなわち、孔あけステップが実施され、シャフト、ボルト、磁石もしくはワイヤ巻線を収容するための孔および/または軽量化もしくは冷却用の孔がシート材料に形成される。これらの個別に打抜きされた薄板は、所望の量だけ相互に積み重ねられて、薄板のスタックが形成される。この後者の点では、積層スタックを形成すること、すなわち、薄板打抜きのプロセスステップの一部としてその薄板を相互に積み重ねることは、周知の手法である。すなわち、薄板は、連続的に供給されるシート材料の帯材から連続的に打抜きされ、その後に打抜きされた薄板は、シート材料から切断されるのと同じ打抜きパンチの動作によって、先に打抜きされた薄板の上に積み重ねられる。特開2005-191031号公報は、そのような周知の実施の例を示しており、これは打抜きされた薄板を個別に(かつ繊細に)取り扱う必要がないという利点を有している。それにもかかわらず、特開2005-191031号公報の明らかな欠点は、薄板を別個に加工することができないこと、特に薄板の個々の主面(すなわち、上面および下面)を局所的に加工することができないことである。
【0003】
上記の周知の技術的な背景に対して、本発明の目的は、一方では、積層スタックの薄板の主面の加工を可能にし、他方では、薄板の個別の取扱いに関する問題を回避する、積層スタックを製造する方法を提供することである。
【0004】
本発明によれば、前記新規の製造法の第1のステップでは、個々の薄板が、シート材料から部分的にのみ切り離される一方、接続タブ、すなわち、ブリッジは、薄板とシート材料の残りの枠部分との間(または直接的に隣り合う2つの薄板の間、すなわち、そのような直接的に隣り合う薄板の間にはシート材料が残らない)に残される。これらのブリッジによって、薄板は、そのような枠部分に接続されたままであり、特に一体のままである。その結果、有利には、薄板を個別にかつ/または直接的に取り扱う必要なしに、薄板、特に薄板の主面を別個に後続処理することができる。代わりに、薄板は、有利には、シート材料の前記枠部分を介して間接的に取り扱われる。例えば、枠部分は、好適に引っ張る(または同時に押し引きする)ことができ、後続のプロセスステップへ、後続のプロセスステップから、または後続のプロセスステップで薄板が搬送される。さらに、そのような搬送、後続処理を容易かつ/または経済的にするかまたは保管および/またはバッファリングを可能にするために、部分的に切断された薄板を備えた枠部分は、コイル状に好適に巻き取ることができる。
【0005】
特に、本発明によれば、薄板は、薄板の外側輪郭に沿って、かつ前記接続ブリッジ同士の間にシート材料を孔あけすることによってシート材料から部分的に切り離される。この場合、互いに間隔を置いた複数の長孔が、薄板の外側輪郭に沿ってシート材料に形成される。したがって、そのような長孔同士の間に残されたシート材料は、薄板とシート材料の前記枠部分との間の前記接続ブリッジまたは直接的に隣り合う2つの薄板の間の前記接続ブリッジを形成している。
【0006】
新規の製造法の前記第1のステップは、原理的には、薄板の本体(すなわち、薄板の外側輪郭の内側)に孔を形成するための前記1回以上の連続する孔あけステップと同時に実施されてよいことに留意されたい。それにもかかわらず、これらの後者の孔あけステップは、好ましくは、新規の製造法の前記第1のステップが実施される前に完了される。さらに、前記第1のステップ自体は、複数回の、すなわち、別個の連続する孔あけ(サブ)ステップで実施されてもよい。
【0007】
さらに、本発明によれば、各々の薄板とシート材料の枠部分との間に4つ以上のブリッジが残されており、これらのブリッジは、好ましくは、薄板の外側輪郭に沿って実質的に等間隔に配置されている。さらに、ブリッジのうち少なくとも4つは、好ましくは、シート材料が供給される方向で薄板と前記枠部分(または直接的に隣り合う薄板)との間に少なくとも部分的に配向されており、2つのブリッジは、そのような供給方向で見て薄板の両側に位置している。これらの特徴によって、枠部分が引っ張られてかつ/または押圧されて薄板が前記供給方向に搬送されるときに発生する可能性のある薄板の変形を有利に回避することができる。同じ理由から、ブリッジは、好ましくは、前記供給方向に配向された薄板の仮想中心線に対して鏡像対称に配置されており、また、場合によっては、前記供給方向に対して垂直に配向された薄板の仮想中心線に対しても鏡像対称に配置されている。
【0008】
薄板1つ当たりのブリッジの数は、好ましくは制限されており、積層スタックの製造法後のプロセスでブリッジの除去が容易になる。この後者の点では、薄板1つ当たり20個を超えるブリッジを適用しても典型的には利点が加わらないことが判明している。
【0009】
具体的には、厚さが前記0.05~0.5mmの範囲にある実質的に円形状の直径Dの薄板の場合、ブリッジの数NBは、好ましくは、
(π・D)/85mm<NB<(π・D)/45mm (1)
[ただし、少なくとも4個、多くとも20個のブリッジという前記制約の範囲内]
によって定義される範囲から選択される。
【0010】
代替的に、薄板の設計がR回の回転対称性を示す場合、ブリッジの数NBは、好ましくは、Rの1/2倍、1倍または2倍に設定されており、好ましくは、同様に少なくとも4個、多くとも20個のブリッジという前記制約の範囲内である。
【0011】
新規の製造法の前記第1のステップ後のある時点、特に枠部分内の薄板の後続処理が完了した後(すなわち、薄板が前記ブリッジを介して枠部分に接続されている間)、薄板は、新規の製造法の第2のステップで薄板の外側輪郭でブリッジを剪断あるいは切断することによってシート材料の枠部分から分離される、すなわち、完全に切り離される。例えば、この目的のためにレーザ切断プロセスまたは機械的切断プロセスが適用されてもよい。特に、薄板は、それのような周知の打抜きによって切り離されてもよい。しかしながら、この場合、薄板の輪郭全体ではなく、ブリッジが切断されさえすればよく、その結果、要求される切断力は従来の打抜きと比較して有利に低くなる。打抜きによって、高い切断精度を実現することができ、さらに、連続的に打抜きされた薄板は、周知の手法によって互いに好適に積み重ねることができる。
【0012】
好ましくは、ブリッジは、各々の薄板にその全体的な周の窪みの位置で一致、すなわち、接続している。したがって、薄板を切り離した後、不正確な切断または切断後に残ったバリなどによって不利に薄板に接続されたままになっているブリッジのいずれの部分も、有利には、薄板の全体的な周を越えて即座に突出していない。
【0013】
以下では、本発明による積層スタックの製造法について、図面を参照しながら、実施形態の例によってさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】周知の薄板の2つの典型的な例、すなわち、電気モータのステータコアの積層スタックのためのステータリングと、ロータコアの積層スタックのためのロータディスクとを示す図である。
図2】周知の積層スタックの製造法の現在関連する部分の基本的な構成を概略的に示す図である。
図3】本発明による新規の積層スタックの製造法の第1の詳細を概略的に示す図である。
図4】本発明による新規の積層スタックの製造法の2つの特定の態様を概略的に示す図である。
図5】本発明による新規の積層スタックの製造法の第2の詳細を概略的に示す図である。
図6】本発明による新規の積層スタックの製造法の第3の詳細を概略的に示す図である。
【0015】
図1は、本明細書で説明する金属薄板スタックを製造する方法によって適切に製造することができる薄板1の2つの例を示す。
【0016】
図1の左側に示された例では、薄板1は、電気モータ用のステータリング10の形状をしている。電気モータでは、そのような多数のステータリング10が軸線方向に積み重ねられて、ステータコアの積層スタックが形成されている。図示のステータリング10の非限定的な例では、ステータリング10の円形状の外側輪郭の内側に、ステータリング10の周に沿って等間隔に配置された複数の孔11を含むことが示されており、これらの孔11は、例えば、組立てボルトを収容するか、または冷却液を導く役割を果たす。さらに、ステータリング10の内側輪郭は、半径方向内向きに延在する多数の磁極歯12と、磁極歯12同士の間の同数の半径方向のスロット13とによって成形されており、これらのスロット13は、電気モータの電気的なワイヤの巻線を収容する役割を果たす。
【0017】
図1の右側に示されている他の例では、薄板1は、電気モータのロータディスク20の形状をしている。電気モータでは、多数のロータディスク20が積み重ねられて、ロータコアの積層スタックが形成されている。図示のロータディスク20の非限定的な例では、中央の孔21を含むことが示されている。この中央の孔21であって、ロータディスク20の内側輪郭を画定し、ロータシャフトを収容する役割を果たす。このロータシャフトは、電気モータ内でロータコアの積層スタックに固定された状態で、軸線方向にロータコアの積層スタックの全体を通って延在している。さらに、ロータディスク20の円形状の外側輪郭内には、電気モータ内で永久磁石を収容する役割を果たす8組の4つの孔22が設けられている。これらの磁石用の4つの孔22の組はそれぞれ、ロータディスク20の周に沿って等間隔に配置されており、すなわち、そのような隣り合う2つの組は、互いに45°の角度で配置されている。
【0018】
図2には、周知の積層スタックの製造法の関係する部分の基本的な構成が、図1に示すロータディスク20に関連して、シート材料30の帯材の平面図で概略的に図示されている。この図2および以下の図面では、各々のプロセスステップでシート材料30から切断されて除去されている、すなわち、孔あけまたは打抜きされているシート材料30の1つ以上の部分に陰影が付けられている。シート材料30は、矢印Sの方向、すなわち、図2の左から右に、典型的に、コイルから引き出される連続帯材の形態で、いわゆる順送りスタンピング装置(図示せず)に供給される。
【0019】
周知の方法の第1のステップIでは、パイロット孔40の組が、順送りスタンピング装置の孔あけパンチとダイとの対によって、シート材料30の両側に孔あけされる。これらのパイロット孔40は、のちに順送りスタンピング装置内で(すなわち、図2の右に向かって)位置決めピン(図示せず)を収容するために使用され、装置内でシート材料30を整列させる役割を果たす。周知の方法の第2のステップIIでは、更なる(組の)孔21,22が、更なる孔あけパンチとダイとの対によって、シート材料30に孔あけされ、これらの更なる孔21,22は、まだ切断されていないロータディスク20のシャフト孔21および磁石孔22に対応している。典型的に、薄板1の幾何学的な複雑さに応じて、周知の積層スタックの製造法の前記第1のステップIおよび前記第2のステップIIは、単一のプロセスステップに統合されてもよいし、複数のプロセスステップに分割されてもよいし、組み合わせてもよいことに留意されたい。例えば、この点で、パイロット孔40の孔あけは、第1のステップでシャフト孔21の孔あけと組み合わせてもよく、磁石孔22は第2のステップで孔あけされる。
【0020】
周知の方法の第3のステップIIIでは、ロータディスク20は、周知の形式で順送りスタンピング装置の打抜きパンチとダイとの対によって、シート材料30から切断される。打抜きされたロータディスク20は、矢印Eで概略的に示されているように順送りスタンピング装置から排出され、それによって、ロータディスクの積層スタックの上に直接的に配置されるか、またはそのような積層が実施される前に、矢印SPで概略的に示されているように、後続処理のために個別に搬送される。周知の方法の第4のステップIVでは、シート材料30の残りの枠部分31が、順送りスタンピング装置から出る。
【0021】
本発明は、周知の積層スタックの製造法を改良することを目的としている。本発明によれば、そのような改良は、図3にその第1の詳細として概略的に示されている新規の積層スタックの製造法によって実現される。
【0022】
図3に示す第1のステップおよび第2のステップIIは、図2に示すそれらのステップに対応している。しかしながら、その後、この新規の方法の第1のステップAでは、互いに離間させられた複数の長孔23が、ロータディスク20の外側輪郭に沿ってシート材料30に孔あけされ、その結果、ロータディスク20はシート材料30の一体の部材を維持している。換言すれば、この第1の新規のステップAでは、接続ブリッジ32がロータディスク20とシート材料30の枠部分31との間に残され、この接続ブリッジ32は、前記長孔23によってかつ前記長孔23の間に画定されている。そのような第1の新規のステップA後、ロータディスク20は、順送りスタンピング装置から出る一方、ロータディスク20の好適な搬送Tおよび後続処理SPのために、前記ブリッジ32を介してシート材料30の枠部分31に依然として接続されている。そのような後続処理SPは、ロータディスク20の焼鈍し熱処理、ロータディスク20への接着剤の塗布、および/またはロータディスク20のコーティング、特に電気絶縁コーティングなど(図示せず)を含んでよい。
【0023】
図3に示す本発明の実施形態では、4つのブリッジ32が各ロータディスク20とシート材料30の枠部分31との間に残されている。この実施形態では、ロータディスク20は8回の回転対称性Rを有するので、このブリッジの数は、1/2Rに等しいことが好ましい。さらに、この実施形態では、4つのブリッジ32はロータディスク20の外側輪郭に沿って等間隔に配置されており、2つのブリッジ32は、同様に好ましくは、ロータディスク20の両側に、供給方向Sと、それに対する垂直方向との両方に対して鏡像対称に存在している。付加的に、4つのブリッジ32は、ロータディスク20と前記枠部分31との間で、シート材料30の供給方向Sに対して(専ら)垂直にではなく、供給方向Sに少なくとも部分的に配向されていることが有利である。ブリッジ32の配置の特徴によって、シート材料30を搬送するために、特に巻き取るために前記枠部分31が供給方向Sに引っ張られるときに発生する可能性のあるロータディスク20の変形を、有利に回避することができる。
【0024】
新規の製造法での前記第1のステップA後のある時点、特に、その前記後続処理SP後、枠部分31内のロータディスク20は、新規の製造法の第2のステップBで、切断装置に搬送Tされ、互いに分離される。したがって、そのような第2のステップBでは、ロータディスク20は、ブリッジ32を剪断あるいは切断することによって、シート材料30の枠部分31から完全に切り離される。図示の実施形態では、ロータディスク20は切り離される、すなわち、ブリッジ32は、打抜きによってロータディスク20の外側輪郭から切断される。切り離された後、ロータディスク20は、好ましくは、ロータディスクの積層スタックの上に直接的に配置Pされる。また、ロータディスク20が切り離された後、シート材料30の残りの枠部分31は、周知の方法の前記第4のステップIVに対応して切断装置から出る。
【0025】
図4の左側に、隣り合う2つのロータディスク20-1および20-2に関して示されているように、各々の輪郭に沿う前記長孔23-1および23-2の幾つかは、原則として少なくとも部分的に重畳してもよいことに留意されたい。そのような重畳は、前記供給方向Sにあってもよく、また、2列以上の平行なロータディスク20が十分に幅広のシート材料30から同時に切断される場合には、前記供給方向Sに対して垂直であってもよい。この場合、シート材料30が極めて効率的に使用される。なぜならば、前記枠部分31のサイズが縮小されるからである。特に、図4の右側に示されているように、各々のブリッジ32の両側の長孔23-1および23-2は重畳するように配置されてもよく、それによって、そのような各々のブリッジ32は、枠部分31を介さずに、前記隣り合う2つのロータディスク20-1および20-2を直接的に接続している。
【0026】
明らかに、本発明の後者のこれら2つの特定の態様は、特定の薄板形状から独立しており、したがって、本発明の文脈内で、ロータディスク20に関してだけでなく、全体的に適用することができる。
【0027】
本発明による新規の積層スタックの製造法の第2の詳細が、図5に概略的に示されている。この第2の詳細は、電気モータのステータ積層体とロータ積層体との両方を同時に製造するのに特に適している。特に、この第2の詳細では、各々のロータディスク20は、各々のステータリング10の内側輪郭の内側で同心円状にシート材料30から切断され、ステータリング10は、同様にシート材料30から切断される(ことになっている)。これによって、シート材料30が効率的に使用される。なぜならば、ステータリング10の半径方向内側の材料は完全にスクラップになるのではなく、代わりに、ロータディスク20の製造に大部分使用されるからである。また、本発明による新規の積層スタックの製造法のこの第2の詳細は、必要なステータ孔14とロータ孔24とが準備されたシート材料30から開始され、それらの孔の配置は、切断されるステータリング10とロータディスク20との前記相互に同心状の配置によって決定される。
【0028】
図5に示す本発明の実施形態の第1のステップAでは、2組の互いに間隔を置いた8つの長孔15,25がシート材料30に孔あけされる。第1の組の孔15は、切断されるステータリング10の外側輪郭に沿っており、第2の組の孔25は、ステータリング10の内周とロータディスク20の外側輪郭との両方に沿っている。したがって、8つのブリッジ32が、各組の長孔15,25の間に残され、8つのブリッジ32はそれぞれ、ステータリング10をシート材料30の枠部分31に接続しており、ロータディスク20をステータリング10に接続している。そのような第1の新規のステップA後、ステータリング10およびロータディスク20は、順送りスタンピング装置から出る一方、ステータリング10およびロータディスク20の好適な搬送Tおよび後続処理SPのために、前記ブリッジ32を介してシート材料30の枠部分31に依然として接続されている。
【0029】
新規の製造法での前記第1のステップA後のある時点、特に、その前記後続処理SP後、枠部分31内のステータリング10およびロータディスク20は、新規の製造法の第2のステップBで切断装置に搬送Tされ、互いに分離される。したがって、そのような第2のステップBでは、ステータリング10およびロータディスク20は、ブリッジ32を剪断あるいは切断することによってシート材料30の枠部分31および相互から完全に切り離される。図5に示す本発明の実施形態では、この第2のステップBは、3つの段階B1,B2およびB3を含む。
【0030】
第2のステップBの第1の段階B1では、ロータディスク20が、ロータディスク20の外側輪郭で第1の組のブリッジ32-1を切断することによって、ステータリング10から完全に切り離される。切り離された後、ロータディスク20は、好ましくは、矢印P20で概略的に示すように、ロータディスクの積層スタックの上に直接的に配置される。第2のステップBの第2の段階B2では、同じ第1の組のブリッジ32-1が、ステータリング10の内周から切り離され、これによって、そのステータリング10の内側輪郭形状が完成される一方、前記第1の組のブリッジ32-1は、切断装置からスクラップとして排出される。第2のステップBの第3の最終段階B3では、ステータリング10が、第2の組のブリッジ32-2を外側輪郭で切断することによってシート材料30の枠部分31から完全に切り離される。切り離された後、ステータリング10は、好ましくは、矢印P10で概略的に示すように、ステータリング積層スタックの上に直接的に配置される。また、ステータリング10が切り離された後、シート材料30の残りの枠部分31は、周知の方法の前記第4のステップIVに対応して切断装置から出る。
【0031】
本発明によれば、第1の組のブリッジ32-1の配置および切離しは、最終製品の電気モータの動作性能、特にその最適な磁気抵抗の点で特に重要である。したがって、好ましくは、第2のステップBの前記第1の段階B1および第2の段階B2での切断は、高い精度で、特に第2の組のブリッジ32-2の切断と比較して高い精度で実施される。理想的には、ロータディスク20の外側輪郭とステータリング10の内周との間の第1の組のブリッジ32-1は、打抜きパンチとダイとの対によって切断される。さらに、前記第1の組のブリッジ32-1の配置は、好ましくは、図5の拡大された挿入図に詳細に示されているように、以下の2つの特徴:
- ブリッジ32-1が、ロータディスク20の外側輪郭の窪みでロータディスク20に接続されており、その結果、切断されるロータディスク20の外周が、局所的に仮想円から半径方向内向きにずれている;
- ブリッジ32-1が、2つの磁極歯12の間に、つまり、2つの磁極歯12の間の半径方向スロット13に沿ってステータリング10に接続されており、したがって、この各々の磁極歯12が、各々のブリッジ32-1によって接線方向に相互に接続されている。理想的には、この点において、各々のブリッジ32-1は、各々の磁極歯12に接線方向で専ら接続されていて、半径方向(内向き)には接続されておらず、その結果、磁極歯12の半径方向の内面が、新規の製造法の前記第1のステップAで(完全に)切断される;
の一方または両方を満たす。
【0032】
これらのブリッジの配置によって、例えば、最終製品の電気モータ内のロータ/ステータの干渉を確実に回避することができ、かつ/またはそのような最終製品の電気モータでの磁気抵抗を最大化することができる。
【0033】
さらに、前記第1の組の各々のブリッジ32-1は、好ましくは、各々の磁石孔22がロータディスク20の外側輪郭(図示せず)に近づくようにロータディスク20に接続して、ブリッジ32-1を切断する際の加工硬化によるロータディスク20の機械的強度を向上させる。
【0034】
本発明による新規の積層スタックの製造法の第3の詳細は、図6に概略的に示されている。この第3の詳細は、上述の第2の詳細と類似しているが、第3の詳細の第1のステップAでは、1組の互いに間隔を置いた8つの長孔15、すなわち、切断されるステータリング10の外側輪郭に沿った孔15のみがシート材料30にあけられる点で異なる。したがって、この第3の詳細では、ステータリング10およびロータディスク20は、新規の製造法の第1のステップA後、一体の部材50のままである。
【0035】
その後、この第3の詳細の第2のステップBの第1の段階B1では、ロータディスク20が、従来の形式でシート材料30から打抜きされ、すなわち、ロータディスク20の外側輪郭全体に沿って切断される。これは、そのような外側輪郭を、その全体に沿って影響を与える前記加工硬化によって高精度に形成することができるという利点を有する。次に、この第2のステップBの第2の段階B2では、薄いリングが、ステータリング10の内周の内側から切断30され、それによって、従来のプロセスの第1のステップIまたは第2のステップIIでステータ孔14として予め形成された半径方向スロット13まで開放が生じ、ひいては、ステータリング10の内側輪郭が完成する。このように切断されたリングは、切断装置からスクラップとして排出される。最後に、第2のステップBの第3の段階B3では、ステータリング10が、前記長孔15同士の間のステータリング10の外側輪郭に画定されるブリッジ32を切断することによって、シート材料30の枠部分31から完全に切り離される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】