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特表2024-5463974’-置換ヌクレオシドの結晶、その製造方法、組成物及び使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-23
(54)【発明の名称】4’-置換ヌクレオシドの結晶、その製造方法、組成物及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/173 20060101AFI20241216BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20241216BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
C07H19/173 CSP
A61P31/18
A61K31/7076
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541204
(86)(22)【出願日】2023-01-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 CN2023072479
(87)【国際公開番号】W WO2023134770
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】202210051832.0
(32)【優先日】2022-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521425261
【氏名又は名称】河南真実生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】杜 錦発
【テーマコード(参考)】
4C057
4C086
【Fターム(参考)】
4C057AA09
4C057AA14
4C057AA15
4C057CC02
4C057DD01
4C057LL34
4C057LL42
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086EA18
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZC55
(57)【要約】
化合物(3)のXVIII型結晶、その製造方法、前記結晶を含む組成物、及びその使用を提供する。前記XVIII型結晶は、例えば、製造が容易で、結晶型が安定であるなどの優れた物理的特性を示し、医薬品の大量生産と品質管理に便利である。化合物(3)の医薬品製造での結晶形として適する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(3)のXVIII型結晶であって、Cu-Kα線を用いて、前記XVIII型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=9.325°、15.787°、16.55°の回折角に特徴的なピークを有し、ただし、2θ値の誤差範囲での変化が許容される、化合物(3)のXVIII型結晶。
【化1】
【請求項2】
下表に示された回折ピークを有する、請求項1に記載の化合物(3)のXVIII型結晶。
【表1】
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物(3)のXVIII型結晶を製造する方法であって、
XVI型又はXVII型結晶を、40~160℃、好ましくは60~90℃、より好ましくは60℃で、1日間ないし10日間、好ましくは5~10日間、より好ましくは1日間放置して、XVIII型結晶を得ることを含む、方法。
【請求項4】
前記XVI型結晶の製造工程は、化合物(3)を、体積比が10:1~90、好ましくは10:1~50、より好ましくは10:1~20であるエタノール/水混合溶媒において、1~72時間、好ましくは1~50時間、より好ましくは10~40時間、より好ましくは24時間懸濁撹拌し、ろ過して、XVI型結晶を得ることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記XVII型結晶は、XVI型結晶を、窒素雰囲気で、40~58℃、好ましくは55℃に加熱して適宜な時間で保温することで得られるか、或いは、XVI型結晶を、常温で5~72時間、好ましくは10~50時間、より好ましくは24時間真空乾燥することで得られる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の化合物(3)のXVIII型結晶と、任意の医薬補助剤とを含む、医薬組成物。
【請求項7】
抗HIV若しくはエイズ治療の医薬品又は医薬品製剤を製造するための、請求項1又は2に記載の化合物(3)のXVIII型結晶、又は請求項6に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品化学分野に関し、詳しくは、4’-置換ヌクレオシドの結晶、その製造方法、組成物及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
HIV感染は、エイズの発作を引き起こし、1981年に米国で初めてのエイズ患者が発見されてから現在に至るまで、世界には約3900万人のエイズ患者がいる。エイズは既に、人類の健康を脅かす重大な脅威となっている。エイズウイルス(HIV)の複製は、吸着、侵入と脱殻、逆転写、ウイルスRNAの組込みとタンパク質の合成、組立、放出と成熟などの過程を経て完成される。そのうち、各段階はいずれも、HIV抑制薬の標的になり得る。30年あまりの研究を経て、併用投与を含めて、40個のエイズ治療薬が米国FDAによって臨床使用が承認された。これらの医薬品の作用機序によれば、主に、ヌクレオシドと非ヌクレオシド類逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、侵入阻害剤、及びインテグラーゼ阻害剤などのいくつかの大類に分けられる。これらの医薬品は、HIVの複製を効果的に抑制できるが、いずれもエイズを治癒できず、そして、これらの医薬品を用いて一定の期間治療した後、ウイルスの薬剤耐性が生じつつあり、現在の医薬品治療が効果を失ってしまう。したがって、異なる作用機序のHIV阻害剤を組み合わせてエイズを治療することは、標準的な治療戦略となっている。しかしながら、併用投与でエイズを治療しても、新たな薬剤耐性は依然として生じつつある。そのため、やはり引き続き新しい作用機序を有するエイズ治療薬を見つける必要がある。なお、今のところ、エイズ治療薬はいずれも、1日あたり少なくとも1回服薬する必要があり、長期に亘る服薬は患者への負担になるため、長期作用型エイズ治療薬の開発が非常に必要である。
【0003】
2’-デオキシヌクレオシドは、臨床に用いる主なHIV阻害剤であり、それらは逆転写酵素を阻害することで医薬品の作用を発揮する。現在、臨床用ヌクレオシド類HIV阻害剤は全部3’-デオキシヌクレオシドである。3’-OHがないため、医薬品がHIVのDNAへ組み込まれた後、HIVのDNAの伸長を停止させることで、HIVのDNA合成停止剤となり、それによってHIV複製の抑制効果を達成する。近年、3’-OHを有するヌクレオシド、例えば、化合物(I)(C.A.Stoddart et al Antimicrob.Agents Chemother.2015,59,4190)、及び化合物(II)(Q.Wang et al Eur.J.Med.Chem.2011,46,4178)は相次いで、顕著なHIV抑制活性を有すると報道された。その構造特徴はともに、4’-サイトに大きな置換基を有し、例えば、化合物(I)におけるエチニル基、及び化合物(2)におけるアジド基である。これらの大きな置換基の導入によって、これらのヌクレオシドリン酸エステルは結合されてウイルスDNAに入った後、その立体効果によって、ウイルスのDNAの伸長を遅くし又は停止させ、HIV複製の抑制目的を達成する。
【0004】
アデニンヌクレオチドのうち、2-フルオロの導入によって、4’-エチニル-2’-デオキシアデノシンのHIV抑制活性(EdAのEC50=11nM)が2200倍向上した(化合物1、EFdAのEC50=0.05nM)(E.Michailidis et al J.Biol.Chem.2009,284,35681)。
【0005】
米国特許(J.Chang US8835615,2014)には、化合物(3)(2R,3R,4S,5R)-5-(6-アミノ-2-フルオロ-9H-プリン-9-イル)-2-エチニル-4-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3-オールの化学構造が開示され、後続の中国特許(常俊標 CN109893536 B,2021)には、化合物(3)の抗HIV活性(EC50=0.9nM)及び安全性(測定された使用量範囲内に明らかな細胞毒性がなく、CC50>8000nM)が開示され、同時に化合物(3)の結晶型Aが開示された。DSC及びTGA研究によれば、化合物分子量が311.24であり、結晶型Aは110℃で9.0%減量したことを見出し、結晶型Aが一分子のメタノールを含む溶媒和結晶であり(理論的メタノール含有量9.33%)、加熱時にメタノールを失うことが分かった。
【化1】
研究中の一部のヌクレオシド類化合物の構造
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、化合物(3)の結晶型について鋭意研究し、化合物(3)が異なる条件で数多くの結晶型を形成することを見出した。しかしながら、ほとんどの結晶型が不安定である。発明者らは意外にも、XVIII型結晶は、例えば、製造が容易で、結晶型が安定であるなどの非常に優れた物理的特性を示し、医薬品の大量生産と品質管理に便利であり、化合物(3)の医薬品製造での結晶形として非常に適する。
【0007】
【化2】
このことに鑑みて、本発明は、化合物(3)のXVIII型結晶であって、Cu-Kα線を用いて、前記XVIII型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=9.325°、15.787°、16.55°の回折角に特徴的なピークを有し、ただし、2θ値の誤差範囲内での変化が許容される、化合物(3)のXVIII型結晶を提供する。
【0008】
化合物(3)のXVIII型結晶の回折ピークデータは、下記の表1に示されたとおりである。
【0009】
【表1】
【0010】
XVIII型結晶のXRPD図を図3に示した。
【0011】
別の局面では、本発明は、化合物(3)のXVIII型結晶の製造方法であって、XVI型又はXVII型結晶を、40~160℃、好ましくは60~90℃、より好ましくは60℃で、1日間ないし10日間、好ましくは5~10日間、より好ましくは1日間放置して、XVIII型結晶を得ることを含む、方法を提供する。好ましくは、前記XVI型結晶の製造工程は、化合物(3)を、体積比が10:1~90、好ましくは10:1~50、より好ましくは10:1~20であるエタノール/水混合溶媒において、1~72時間、好ましくは1~50時間、より好ましくは10~40時間、より好ましくは24時間懸濁撹拌し、ろ過して、XVI型結晶を得ることを含む。好ましくは、前記XVII型結晶は、XVI型結晶を、窒素雰囲気で、40~58℃、好ましくは55℃に加熱して適宜な時間で保温することで得られるか、或いは、XVI型結晶を、常温で5~72時間、好ましくは10~50時間、より好ましくは24時間真空乾燥することで得られる。
【0012】
別の局面では、本発明は更に、上記化合物(3)のXVIII型結晶と、任意の医薬補助剤とを含む、医薬組成物を提供する。
【0013】
別の局面では、本発明は更に、抗HIV若しくはエイズ治療の医薬品又は医薬品製剤を製造するための、化合物(3)のXVIII型結晶、又は上記の前記化合物(3)のXVIII型結晶と任意の医薬補助剤とを含む医薬組成物の、使用。
【0014】
本発明は更に、患者に対して、抗HIV若しくは治療に有効量の化合物(3)のXVIII型結晶、又は上記の化合物(3)のXVIII型結晶と任意の医薬補助剤とを含む医薬組成物を投与することを含む、抗HIV若しくはエイズ治療の方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
発明者は、大量の化合物(3)の結晶形を製造し、そのほとんどが不安定な固体状である。しかしながら、化合物(3)のXVIII型結晶は、例えば、製造が容易で、結晶型が安定であるなどの優れた物理的特性を示し、医薬品の大量生産と品質管理に便利であり、化合物(3)の医薬品製造での結晶形として適する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1(1)】XVI型結晶のXRPD図である。
図1(2)】XVI型結晶のTGA/DSC図である。
図1(3)】XVI型結晶の単結晶X線回折分子の3次元ビューである。
図2(1)】XVII型結晶のXRPD図である。
図2(2)】XVII型結晶のDCS-TGA図である。
図3】XVIII型結晶のXRPD図である。
図4】I型結晶のXRPD図である。
図5】I型結晶のTGA/DSC図である。
図6】I型結晶の55℃に加熱された前後のXRPD比較図である。
図7】I型結晶の100℃に加熱されたXRPD図である。
図8】II型結晶のXRPD図である。
図9】IV型結晶のXRPD図である。
図10】V型結晶のXRPD図である。
図11】VI型結晶のXRPD図である。
図12】VII型結晶のXRPD図である。
図13】VIII型結晶のXRPD図である。
図14】IX型結晶のXRPD図である。
図15】X型結晶のXRPD図である。
図16】XI型結晶のXRPD図である。
図17】XII型結晶のXRPD図である。
図18】XIII型結晶のXRPD図である。
図19】XIII型結晶のフィルムコーティング及び乾燥前後のXRPD比較図である。
図20】XIV型結晶のXRPD図である。
図21】XV型結晶のXRPD図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体的な実験を挙げて、本発明について更に説明する。これらの実験は、本発明を例示的に説明するためのものに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではないと理解すべきである。下記の実験において具体的な条件が明記されていない実験方法については、通常、一般的な条件に従うか、或いは、メーカー推奨条件に従う。別段の定義がない限り、明細書に使用されたすべての専門と科学用語は、当業者が熟知している意味と同じである。なお、記載内容と近似又は均等な如何なる方法及び材料も、本発明の方法に適用可能である。明細書に記載の好適な実施方法と材料は、例示のためのものに過ぎない。
【0018】
本発明の実験における出発原料起は、既知で市販から入手可能なものであるか、或いは、当業界の既知の方法で合成するものである。
【0019】
実験1
XVI型結晶及びXVII型結晶
化合物(3)を、エタノール/水(体積比8:2)混合溶媒において24時間懸濁撹拌し、ろ過してXVI型結晶を得、そのXRPDパターンを図1-1に、DSC-TGA図を図1-2に示した。
【0020】
XVI型結晶の単結晶データは、表2に示されたとおりである。
【0021】
【表2】
【0022】
XVI型結晶の単結晶X線回折分子の3次元ビューを図1-3に示し、1つのXVI型結晶あたりに、4分子の結晶水が含まれていることが分かる。
【0023】
XVI型結晶は、真空・室温で24時間乾燥された後、明らかな脱水現象が見られ(14.39%減量)、三分子の水を失った後に一水和物結晶型のXVII型結晶に変化し、そのXRPDパターンを図2-1に、DCS-TGA図を図2-2に示した。
【0024】
XVI型結晶を、窒素雰囲気で55℃に加熱し、2~24時間保温し、XRPDパターンによれば、同様にXVII型結晶が得られた。
【0025】
XVII型結晶は、90℃で1~24時間乾燥されて、一分子の水を失い(5.47%減量)、XVIII型結晶を得た。
【0026】
実験2
XVIII型結晶
XVI型結晶を、60℃環境において5日間放置して、XVIII型結晶を得、無水結晶であった。LC-MS測定分析したところ、結晶に化学変化が生じなかった。
【0027】
Cu-Kα線を用いて、前記XVIII型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=9.325°、15.787°、16.55°の回折角に特徴的なピークを有し、ただし、2θ値の誤差範囲内での変化は許容される。
【0028】
化合物(3)のXVIII型結晶の回折ピークデータは、上記表1に示されたとおりである。
【0029】
XVIII型結晶のXRPD図を図3に示した。
【0030】
実験3
XVI型結晶、XVII型結晶及びXVIII型結晶の安定性
XVI型結晶、XVII型結晶をそれぞれ、60±5℃で5日間放置し、XRPDパターンによれば、いずれもXVIII型結晶に転化した。
【0031】
XVII結晶を、25℃、湿度92.5±5%の条件で5日間放置し、XRPDパターンによれば、XVI型結晶が得られた。
【0032】
XVIII型結晶を、150℃に加熱するか、或いは25℃、湿度92.5±5%の条件で24時間放置し、XRPDパターンの結晶型が変化しなかった。
【0033】
実験4
I型結晶
化合物(3)固体を、2-MeTHFに溶解して、室温でn-ヘプタンを滴下し、4時間撹拌し、結晶を析出させ、ろ過し、真空乾燥して、化合物(3)I型結晶を得、XRPD図を図4に示した。
【0034】
Cu-Kα線を用いて、化合物(3)I型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=7.94°、8.79°、9.68°、11.56°、13.74°、14.37°、15.98°、17.78°、19.39°、23.85°の回折角に特徴的なピークを有した。
【0035】
【表3】
【0036】
化合物(3)I型結晶のTGA/DSC図を図5に示した。結晶は、110℃に加熱されて13.2%減量し、引き続き200℃に加熱されて3.5%減量した。80~140℃の範囲内で3つの吸熱信号が見られた。窒素保護下で、I型結晶を、55℃に加熱してから室温に降温し、サンプルを取り出して空気に曝してXRPD測定を行い、結果を図6に示した。図中、上の曲線は結晶型Iの原図であり、真ん中の曲線は加熱前のXRPD図であり、下の曲線は55℃に加熱した後のXRPD図であり、図によれば、サンプルの回折ピークの強度が低下し、NMR結果によれば、加熱後、2-MeTHFとAPIとのモル比が0.25:1.00(6.5wt%)であり、加熱前と比べて、2-MeTHFが約3.5wt%減少した。同様な窒素保護条件で、I型結晶を、100℃に加熱した後、XRPD結果を図7に示し、図によれば、結晶が既に非晶質に転化し、NMR結果によれば、加熱後、2-MeTHFとAPIとのモル比が0.09:1.00(2.4wt%)であり、加熱前と比べて、2-MeTHFが約7.6wt%減少した。
【0037】
実験5
II型結晶
化合物(3)固体を、1,4-ジオキサン/DCM(1~5/10)に溶解して、溶液にn-ヘプタンを滴下し、4時間撹拌し、結晶を析出させ、ろ過して、化合物(3)II型結晶を得、XRPD図を図8に示した。
【0038】
Cu-Kα線を用いて、前記II型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=6.39°、7.84°、10.58°、12.57°、14.88°、15.71°、16.12°、19.6°、22.57°、23.91°、30.62°の回折角に固有のピークを有する。
【0039】
【表4】
【0040】
II型結晶は、室温で半時間真空乾燥された後、結晶型が変化し、III型結晶に転化した。II型結晶が不安定であり、短時間の乾燥を経た後に結晶が既に転化したため、II型結晶についてさらなる研究を展開しなかった。
【0041】
実験6
IV型結晶
化合物(3)固体を、EtOHにおいて室温で48時間懸濁撹拌し、ろ過してIV型結晶を得、XRPD図を図9に示した。
【0042】
Cu-Kα線を用いて、前記IV型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=4.28°、6.03°、8.50°、9.53°、12.76°、13.58°、14.84°、15.45°、17.02°、17.61°、18.17°、19.12°、19.60°、20.97°、21.38°、22.66°、24.99°、25.99°、28.47°、28.82°、29.80°、31.24°、32.66°、36.78°の回折角に特徴的なピークを有した。
【0043】
【表5】
【0044】
IV型結晶を室温で15分間真空乾燥した後、回折ピークの相対強度の低下が観察され、乾燥後の結晶を室温で約5日間密閉放置した後、回折ピークの相対強度の向上、回折ピークの数の増加が観察され、分析では、IV型結晶は真空乾燥で溶媒又は水の脱去が生じて、空気と接触した後に空気中の水分を吸収して、結晶化度が向上した可能性があると考える。
【0045】
TGAによれば、IV型結晶は、120℃で不安定であり、10.6%減量し、一水和物結晶型である。窒素保護条件下で、IV型結晶を、141℃に加熱してからXRPD測定を行い、結果によれば、IV型結晶は141℃で安定したIII型結晶に転化した。
【0046】
実験7
V型結晶
化合物(3)固体を、EtOAcにおいて室温で48時間懸濁撹拌し、ろ過し、室温で15分間真空乾燥して、V型結晶を得、XRPDを図10に示した。
【0047】
Cu-Kα線を用いて、前記V型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=4.73°、9.12°、11.27°、13.22°、15.58°、17.69°、18.95°、21.13°、22.10°、24.29°、26.72°、27.09°、28.34°、29.25°、31.76°の回折角に特徴的なピークを有した。
【0048】
【表6】
【0049】
TGA/DSCの測定結果によれば、V型結晶は、140℃に加熱されて15.4%減量し、引き続き240℃に加熱されて2.8%減量し、77~203℃の範囲内で複数の熱痕跡が見られた。NMR結果によれば、EtOAcとAPIとのモル比が、0.40:1.00(10.2wt%)であった。
【0050】
V型結晶に対して可変温度XRPD測定を行った。サンプルを、約20分間窒素ガスパージした後、結晶化度の明らかな低下が観察された。窒素保護下で、90及び130℃に加熱した後、ほぼ非晶質に転化し、引き続き154℃に加熱した後、また別の結晶に転化し、NMR及びTGAの結果を合わせて分析すれば、V型結晶は溶媒和物であると考える。
【0051】
実験8
VI型結晶
室温で、化合物(3)固体を、MIBK(メチルイソブチルケトン)において48時間懸濁撹拌し、ろ過し、室温で15分間真空乾燥して、VI型結晶を得、XRPDを図11に示した。
【0052】
Cu-Kα線を用いて、前記VI型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=5.01°、5.62°、7.62°、8.98°、9.67°、9.99°、11.11°、12.12°、14.22°、15.02°、15.79°、18.01°、19.37°、22.55°、24.18°、25.15°、26.22°、29.21°、30.29°、31.74°、34.00°の回折角に特徴的なピークを有した。
【0053】
【表7】
【0054】
TGA/DSCの結果によれば、VI型結晶は、70℃に加熱されて4.9%減量し、引き続き130℃に加熱されて5.9%減量し、98~210℃の範囲内で複数の熱痕跡が観察された。
【0055】
窒素保護下で、VI型結晶を、160℃に加熱し、XRPD結果によれば、結晶型が変化した。
【0056】
実験9
VII型結晶
室温で、化合物(3)固体を、IPA/トルエン(v/v、1:1)混合溶媒において48時間懸濁撹拌し、ろ過し、室温で15分間真空乾燥して、VII型結晶を得、そのXRPD結果を図12に示した。
【0057】
Cu-Kα線を用いて、前記VII型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=6.80°、8.59°、12.36°、12.77°、13.68°、17.24°、18.30、19.32°、20.77°、22.20°、24.47°、27.81°、29.32°、31.67°の回折角に特徴的なピークを有した。
【0058】
【表8】
【0059】
TGA/DSCの測定結果によれば、VII型結晶は、130℃に加熱されて11.2%減量し、88~215℃の範囲内で複数の熱痕跡が観察された。窒素保護下で、VII型結晶を、130℃に加熱してから室温に降温し、サンプルを取り出して空気に曝してXRPD測定を行い、結果によれば、結晶型が変化した。
【0060】
実験10
VIII型結晶
混合物(3)固体を、THF/n-ヘプタン(v/v、1:1)混合溶媒において、50℃で48時間懸濁撹拌し、ろ過し、室温で15分間真空乾燥して、VIII型結晶を得、そのXRPD図を図13に示した。
【0061】
Cu-Kα線を用いて、前記VIII型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=5.24°、7.98°、8.20°、10.51°、10.77°、12.55°13.40°、14.27°、15.28°、16.29°、16.69°、17.25°、18.94°、19.72°、21.19°、23.23°、24.63°、26.09°、26.60°、30.05°、31.77°の回折角に特徴的なピークを有した。
【0062】
【表9】
【0063】
TGA/DSCの結果によれば、VIII型結晶は、160℃に加熱されて10.6%減量し、120~220℃の範囲内で複数の熱痕跡が観察された。窒素保護下で、VIII型結晶を、160℃に加熱してから室温に降温し、サンプルを取り出して空気に曝してXRPD測定を行い、結果によれば、結晶型が既に変化した。
【0064】
実験11
IX型結晶
室温で、化合物(3)を、THF/CHCl混合溶媒に溶解して、室温で揮発させて、IX型結晶を得、そのXRPD図を図14に示した。
【0065】
Cu-Kα線を用いて、前記IX型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=6.47°、9.57°、13.56°、16.84°、17.61°、19.36°、20.06°、22.45°、28.32°の回折角に特徴的なピークを有した。
【0066】
【表10】
【0067】
TGA/DSCの結果によれば、IX型結晶は、160℃に加熱されて20.3%減量し、130~215℃の範囲内で複数の熱痕跡が観察された。IX型結晶を、室温で約3日間密閉放置した後、結晶化度の低下が観察され、窒素保護下で、95℃に加熱してから室温に降温し、取り出したサンプルを空気に曝して、XRPD測定を行い、結果によれば、結晶化度が引き続き低下した。同様な窒素保護の条件で、160℃に加熱してから室温に降温し、取り出したサンプルを空気に曝して、XRPD測定を行い、結果によれば、その結晶型が変化した。NMR及びTGAの結果を合わせて分析すれば、加熱後の結晶型の変化は脱溶媒に起因し、IX型結晶は溶媒和物であると考える。
【0068】
実験12
X型結晶
化合物(3)固体を、IPAc(酢酸イソプロピル)において50℃で48時間懸濁撹拌し、ろ過して、X型結晶を得、XRPD図を図15に示した。
【0069】
Cu-Kα線を用いて、前記X型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=7.72°、8.91°、14.10°、14.79°、16.95°、18.39°、19.53°、22.06°、22.53°、29.81°、31.51°の回折角に特徴的なピークを有した。
【0070】
【表11】
【0071】
TGA/DSCの結果によれば、X型結晶は、130℃に加熱されて7.9%減量し、引き続き160℃に加熱されて4.5%減量し、126~210℃の範囲内で複数の熱痕跡が観察された。
【0072】
X型結晶に対して可変温度XRPD測定を行った。結果によれば、X型結晶は、窒素ガスパージにおいて120℃に加熱された後に、衍射ピークに位置ずれが生じ、引き続き130℃に加熱された後に、回折ピークの強度が明らかに低下し、引き続き145℃に加熱された後に、結晶型が変化した。
【0073】
実験13
XI型結晶
化合物(3)固体を、メチルt-ブチルエーテルにおいて48時間懸濁撹拌し、ろ過して、XI型結晶を得、そのXRPD図を図16に示した。
【0074】
Cu-Kα線を用いて、前記XI型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=8.42°、11.29°、13.02°、14.72°、15.01°、16.55°、17.23°、18.49°、18.90°、19.67°、21.37°、22.42°、22.67°、24.14°、25.08°、25.44°、26.02°、26.44°、27.63°、28.14°、29.67°、30.32°、32.95°、35.96°、36.59°、39.03°の回折角に特徴的なピークを有し、ただし、2θ値の誤差範囲が±0.2である。
【0075】
【表12】
【0076】
TGA/DSC試験結果によれば、XI型結晶は、120℃に加熱された時に19.3%減量し、95~210℃付近で複数の熱痕跡が見られた。
【0077】
実験14
XII型結晶
化合物(3)III型結晶又はXI型結晶を、純水において室温で約24時間懸濁撹拌し、ろ過し、室温で一晩開放乾燥して、XII型結晶を得、そのXRPD図を図17に示した。
【0078】
Cu-Kα線を用いて、前記XII型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=8.52°、11.25°、14.78°、15.45°、17.10°、19.58°、22.74°、23.94°、26.36°、30.28°、31.17°、33.11°の回折角に特徴的なピークを有した。
【0079】
【表13】
【0080】
XII型結晶を、室温で10分間真空乾燥した後、非晶質に転化した。室温で開放乾燥したサンプルに対してTGA/DSC特性評価を行い、結果によれば、サンプルは、120℃に加熱されて59.6%減量し、50~240℃の範囲内に複数の熱痕跡が見られた。
【0081】
実験15
XIII型結晶
III型結晶又はXII型結晶を、メタノールにおいて室温で約24時間懸濁撹拌し、ろ過して、XIII型結晶を得、そのXRPD図を図18に示した。
【0082】
Cu-Kα線を用いて、前記XIII型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=6.15°、7.81°、9.46°、13.92°、14.39°、14.72°、15.56°、17.13°、17.71°、18.99°、23.59°、25.01°、25.79°、26.70°、28.65°、30.56°の回折角に特徴的なピークを有した。
【0083】
【表14】
【0084】
XIII型結晶が不安定であり、室温で約2時間開放乾燥した後に結晶型が変化した。また、XIII型結晶に対してフィルムコーティングしXRPD測定を行い、新たなXIV型結晶が観察され、XIV型結晶が不安定な中間状態にあり、溶媒から離脱した場合にXIII型結晶に転化することになると推測され、XRPD比較図を図19に示した。XIII型結晶は、室温条件で速やかな結晶型変換が観察された。
【0085】
実験16
XIV型結晶
XIII型結晶を、室温溶媒環境において放置して、XIV型結晶に転化し、そのXRPD図を図20に示した。溶媒環境を離脱した後、XIII型結晶に転化した。
【0086】
Cu-Kα線を用いて、前記XIV型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=6.94°、8.75°、9.21°、11.16°、12.82°、13.82°15.56°、17.59°、19.67°、20.93°、22.51°、24.35°、29.58°、31.37°の回折角に特徴的なピークを有した。
【0087】
【表15】
【0088】
実験17
XV型結晶
XII型結晶を、40~90℃環境において、3~12日間放置して、XV型結晶を得、そのXRPD図を、図21に示した。
【0089】
Cu-Kα線を用いて、前記XV型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=9.247°、9.982°、13.4°、15.781°、16.55°、16.929°、18.704°、20.14°、20.78°、21.1°、22.497°、23.654°、25.013°、25.667°、27.026°、28.186°、22.715°、28.822°、29.265°、29.762°の回折角に特徴的なピークを有した。
【0090】
【表16】
【0091】
XV型結晶は、120℃に加熱されて2.2%減量し、結晶型変換が生じた。
図1(1)】
図1(2)】
図1(3)】
図2(1)】
図2(2)】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2024-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(3)のXVIII型結晶であって、Cu-Kα線を用いて、前記XVIII型結晶は、粉末X線回折パターンにおいて、2θ値=9.325°、15.787°、16.55°の回折角に特徴的なピークを有し、ただし、2θ値の誤差範囲での変化が許容される、化合物(3)のXVIII型結晶。
【化1】
【請求項2】
下表に示された回折ピークを有する、請求項1に記載の化合物(3)のXVIII型結晶。
【表1】
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物(3)のXVIII型結晶を製造する方法であって、
XVI型又はXVII型結晶を、40~160℃、好ましくは60~90℃、より好ましくは60℃で、1日間ないし10日間、好ましくは5~10日間、より好ましくは1日間放置して、XVIII型結晶を得ることを含む、方法。
【請求項4】
前記XVI型結晶の製造工程は、化合物(3)を、体積比が10:1~90、好ましくは10:1~50、より好ましくは10:1~20であるエタノール/水混合溶媒において、1~72時間、好ましくは1~50時間、より好ましくは10~40時間、より好ましくは24時間懸濁撹拌し、ろ過して、XVI型結晶を得ることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記XVII型結晶は、XVI型結晶を、窒素雰囲気で、40~58℃、好ましくは55℃に加熱して適宜な時間で保温することで得られるか、或いは、XVI型結晶を、常温で5~72時間、好ましくは10~50時間、より好ましくは24時間真空乾燥することで得られる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の化合物(3)のXVIII型結晶と、任意の医薬補助剤とを含む、医薬組成物。
【請求項7】
抗HIV若しくはエイズ治療の医薬品又は医薬品製剤を製造するための、請求項1又は2に記載の化合物(3)のXVIII型結晶の使用。
【請求項8】
抗HIV若しくはエイズ治療の医薬品又は医薬品製剤を製造するための、請求項6に記載の医薬組成物の使用。
【国際調査報告】