(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20241217BHJP
A61L 15/28 20060101ALI20241217BHJP
A61L 15/20 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C08J5/18 CEP
A61L15/28 100
A61L15/20 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555294
(86)(22)【出願日】2023-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 CN2023076701
(87)【国際公開番号】W WO2024087417
(87)【国際公開日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】202211317770.X
(32)【優先日】2022-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陳龍
(72)【発明者】
【氏名】徐昊
(72)【発明者】
【氏名】金征宇
(72)【発明者】
【氏名】田耀旗
(72)【発明者】
【氏名】繆銘
(72)【発明者】
【氏名】徐振林
(72)【発明者】
【氏名】孟▲まん▼
(72)【発明者】
【氏名】彭新文
(72)【発明者】
【氏名】趙建偉
(72)【発明者】
【氏名】謝正軍
(72)【発明者】
【氏名】鄒益東
(72)【発明者】
【氏名】陳冠雄
【テーマコード(参考)】
4C081
4F071
【Fターム(参考)】
4C081AA01
4C081AA12
4C081BB03
4C081CD031
4C081CE11
4C081DA02
4C081DB01
4C081EA06
4F071AB03
4F071AB07
4F071AC12
4F071AE22
4F071AF52
4F071AG34
4F071AH04
4F071AH19
4F071BA03
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
(57)【要約】
本発明は、近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルム及びその製造方法を開示し、包装材料加工の技術分野に属する。本発明の近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムの製造方法は、4-メチルカテコールアミン系物質とグラフェンにin-situ自己組織化を行ってグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料を形成し、そして、金属イオンを用いてグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料を変性し、金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料の溶液と澱粉糊化溶液とを混合し、流延法を用いて製膜して澱粉ベースフィルムを得ることである。該澱粉ベースフィルムは、欠陥がなくかつ連続的であり、近赤外光照射下で、30sで25℃から103℃に昇温することができ、1minで109℃に昇温することができ、機械的引張強度が62MPaに達し、優れた光熱変換性能及び機械的引張強度を有し、食品、医薬品、医療機器、農産物の包装の分野に用いることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-メチルカテコールアミン系物質溶液とグラフェン分散液とを混合して反応させてグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料を得て、その後、グラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料と金属イオン溶液とを反応させて、金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料を得て、金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料を分散させた後、澱粉糊化溶液と均一に混合してフィルム形成液を得て、フィルム形成液を製膜して、近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムを得るステップを含む、近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記グラフェンと4-メチルカテコールアミン系物質との質量比は、1:3~3:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料と金属イオン溶液との質量比は、1:4~4:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属イオン溶液は、硫酸銅溶液、塩化鉄溶液、硝酸銀溶液又は硝酸亜鉛溶液のうちの一種又は複数種を含み、金属イオン溶液の濃度は、0.5~8mg/mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記澱粉と、金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末との質量比は、60:1~600:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記澱粉と、金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末との質量比は、100:1~300:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
(1)グラフェン界面において4-メチルカテコールアミン系物質のin-situ自己組織化を行うステップであって、4-メチルカテコールアミン系物質溶液とグラフェン分散液とを混合して反応させ、反応終了後、遠心分離で洗浄し、凍結乾燥させて、グラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末を得る、ステップと、
(2)金属イオンによりグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料を変性するステップであって、グラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末を水に分散させた後、金属イオン溶液を加えて反応させ、反応終了後、遠心分離で洗浄し、凍結乾燥させて、金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末を得る、ステップと、
(3)フィルム形成液を調製するステップであって、金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末を水に分散させて、分散液を得てから、分散液と澱粉糊化溶液とを均一に混合して、フィルム形成液を得る、ステップと、
(4)製膜するステップであって、フィルム形成液を流延法で製膜して前記近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムを得るステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法で得られる、近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルム。
【請求項9】
請求項8に記載の近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムの食品、医薬品、医療機器、農産物又は織物の分野における使用。
【請求項10】
請求項8に記載の近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムを含む、包装材料。
【請求項11】
請求項8に記載の近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムを含む、分解性材料。
【請求項12】
請求項8に記載の近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムを含む、医療用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルム及びその製造方法に関し、包装材料加工の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来の包装材料に用いられる滅菌方法としては、ほとんどの場合、外部加熱、紫外線照射、放射線照射などの技術が用いられるが、これらの滅菌方法は、外部加熱のエネルギー損失が大きく、紫外線照射に時間がかかり、放射線照射に必要な設備が複雑で、コストが高く、操作しにくいという問題がある。
【0003】
近赤外光熱効果とは、材料が近赤外光エネルギーを吸収し、表面プラズモン共鳴により光エネルギーを電子共鳴若しくは正孔共鳴の運動エネルギーに変換するか、又は電子遷移によりエネルギーを生成し、周囲環境に伝達することにより、環境温度を上昇させる現象を指す。近赤外光熱効果を有する材料は、近赤外光の励起によって発熱することにより、細菌、ウイルス及び他の微生物を死滅させる効果を達成することができる。これにより、上記従来の包装材料の滅菌問題を解決することができる。
【0004】
グラフェンは、優れた光熱変換効率、高熱伝導性などの性能を有するため、食品、医薬品又は医療機器の包装に適用される可能性が極めて大きい。
【0005】
現在、グラフェンを包装に用いることが報告されている。例えば、以下のとおりである。
【0006】
(1)CN113372593Aには、分解性グラフェンベースの食品包装フィルム及びその製造方法が開示されており、該発明では、加工条件を厳密に制御することにより、分解性グラフェンベースの食品包装フィルムが得られ、添加したグラフェン粉末が包装フィルムの分解率を向上可能なものの、得られた食品包装フィルムの引張強度はわずか5.14Mpaであることが判明している。
【0007】
(2)CN112876710Bは、生分解性抗菌グラフェンin-situ重合の共重合ポリエステル包装フィルム及びその製造プロセスに関し、該発明は、衛生材料包装の静菌問題を解決するためのものであり、主にグラフェンの静菌性能を利用しており、該フィルムは、ヒドロキシ型酸化グラフェンin-situ重合の生分解性共重合ポリエステル70~85部、ポリ乳酸5~20部、無機充填材3~5部、酸化防止剤0.1~1部、光安定剤0.1~1部、潤滑剤0.1~1部を含み、引張強さが最大35.25Mpaである。
【0008】
(3)CN113604011Aは、結晶性が低く、溶融張力が低く、価格が高いなどのPBATに存在する問題に対して、完全生分解性グラフェンベースのPBAT包装袋の製造方法を提供し、該包装袋は、主に日常生活のプラスチック製買い物袋などに用いられる。
【0009】
(4)CN110343293Aには、セルロースナノファイバー/ドーパミン還元酸化グラフェン強化澱粉フィルム及びその製造方法が開示されており、主にドーパミン還元酸化グラフェンとセルロースナノファイバーとの相乗効果により澱粉フィルムの機械的特性を向上させ、得られた澱粉フィルムの強度は8.14MPaに達する。
【0010】
(5)また、いくつかの文献には、グラフェンの包装材料への使用が報告されており、単に混合するか又は酸化改質後に混合して使用され、主にバイオベースポリマー包装材料の機械的強度とバリア性能の問題を解決するためのものであり、ここで報告された改質方法は、改質方法の条件が過酷で、エネルギーを消費するか又は危険な化学薬品を使用して製造する必要があり、例えば、グラフェンの酸化改質には、高熱などの過酷な条件又は濃硫酸による酸化(安全な方法ではない)が必要であるという問題があり、光熱変換を包装材料に導入することなく、機械的特性とバリア性の改善のみに焦点を当てると、グラフェンを利用して静菌性能を付与しても、その静菌性能は極めて弱い。
【0011】
要するに、これらの報告は、いずれもグラフェンの光熱変換効率、高熱伝導性などの性能の利用に関するものではなく、得られた包装フィルムの機械的特性も向上させる必要がある。したがって、グラフェンを含む、近赤外光熱効果を有する機械強化型生分解性フィルム材料の開発が急務となっており、これは、包装滅菌技術の拡大、食品及び医薬品の有効期間の延長、微生物汚染の防止、食品及び医薬品の安全品質の向上、並びに食品浪費の削減にとって重要な経済的及び社会的意義がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
グラフェンを含む生分解性フィルムは、機械的強度が不十分であり、光熱性能が欠けるか又は光熱性能が不安定であるという課題があり、その適用が制限されている。
【0013】
グラフェンは、疎水性材料であり、このような特性により、水性包装材料、特に生分解性の天然ポリマーマトリックスに均一に分散しにくく、本発明が見出したように、それにより、このような包装フィルム材料の光熱効果が不安定になり、局所的な高熱を引き起こしやすく、フィルムの局所的な構造の破壊、溶融、破裂などの状況をもたらすため、包装材料に実際に適用することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、グラフェン界面におけるin-situ自己組織化と金属ポリフェノール配位反応を組み合わせた二重コーティング方法を用いて、近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムを製造する。本発明の方法は、簡単で、環境に優しく、汚染がなく、エネルギー消費が低い。純澱粉ベースフィルムに比べて、本発明により製造された澱粉ベースフィルムは、優れた光熱変換性能を有し、近赤外光照射下で、30s(秒)で25℃から103℃まで昇温することができ、1min(分)で109℃まで昇温することができ、優れた機械的特性を有し、引張強度が42MPaから62MPaに向上する。本発明により製造された、近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムは、包装滅菌技術の拡大、食品及び医薬品の有効期間の延長、微生物汚染の防止、食品及び医薬品の安全品質の向上、並びに食品浪費の削減などに用いることができ、特に食品、医薬品又は医療機器の包装に用いることができる。
【0015】
本発明の第1目的は、4-メチルカテコールアミン系物質溶液とグラフェン分散液とを混合して反応させてグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料を得て、その後、グラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料と金属イオン溶液とを反応させて、金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料を得て、金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料を分散させた後、澱粉糊化溶液と均一に混合してフィルム形成液を得て、フィルム形成液を製膜して、近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムを得るステップを含む、近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムの製造方法を提供することである。
【0016】
一実施形態では、前記方法は、具体的には、
(1)グラフェン界面において4-メチルカテコールアミン系物質のin-situ自己組織化を行うステップであって、4-メチルカテコールアミン系物質溶液とグラフェン分散液とを混合して反応させ、反応終了後、遠心分離で洗浄し、凍結乾燥させて、グラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末を得る、ステップと、
(2)金属イオンによりグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料を変性するステップであって、グラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末を水に分散させた後、金属イオン溶液を加えて反応させ、反応終了後、遠心分離で洗浄し、凍結乾燥させて、金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末を得る、ステップと、
(3)フィルム形成液を調製するステップであって、金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末を水に分散させて、分散液を得て、その後、分散液と澱粉糊化溶液とを均一に混合して、フィルム形成液を得る、ステップと、
(4)製膜するステップであって、フィルム形成液を流延法で製膜して前記近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムを得る、ステップと、
を含む。
【0017】
本発明の一実施形態では、ステップ(1)に記載の4-メチルカテコールアミン系物質溶液は、4-メチルカテコールアミン系物質を水に溶解して得られ、濃度が1~10mg/mLである。
【0018】
本発明の一実施形態では、ステップ(1)に記載のグラフェン分散液は、グラフェンをアルカリ性緩衝液に超音波分散させて得られ、濃度が1~10mg/mLであり、アルカリ性緩衝液は、pHが7.5~10のPBS緩衝液を含み、超音波出力は、90W~120Wであり、超音波時間は、20~60minである。
【0019】
本発明の一実施形態では、ステップ(1)に記載のグラフェンと4-メチルカテコールアミン系物質との質量比は、1:3~3:1である。
【0020】
本発明の一実施形態では、ステップ(1)に記載の4-メチルカテコールアミン系物質は、3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸、5,6-ジヒドロキシインドール、L-ドーパミン、カテコールアミン、塩酸ドーパミン又はドーパミンのうちの一種又は複数種を含む。
【0021】
本発明の一実施形態では、ステップ(1)に記載の反応は、600~900rpm、20~25℃で6~24h(時間)反応させることである。
【0022】
本発明の一実施形態では、ステップ(1)に記載の遠心分離は、回転速度が8000~10000rpmであり、時間が30minであり、遠心分離して沈殿を取り、洗浄し、洗浄は、水による洗浄である。
【0023】
本発明の一実施形態では、ステップ(2)に記載のグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末と水との質量比は、1:2である。
【0024】
本発明の一実施形態では、ステップ(2)に記載の金属イオン溶液は、硫酸銅溶液、塩化鉄溶液、硝酸銀溶液又は硝酸亜鉛溶液のうちの一種又は複数種を含み、金属イオン溶液の濃度は、0.5~8mg/mLである。
【0025】
本発明の一実施形態では、ステップ(2)に記載のグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料と金属イオン溶液との質量比は、1:4~4:1である。
【0026】
本発明の一実施形態では、ステップ(2)に記載の反応は、pH7.5~9.5、400~600rpm、20~25℃で50~80min反応させることである。
【0027】
本発明の一実施形態では、ステップ(2)に記載の遠心分離は、回転速度が8000~10000rpmであり、時間が30minであり、遠心分離して沈殿を取り、洗浄し、洗浄は、水による洗浄である。
【0028】
本発明の一実施形態では、ステップ(3)に記載の金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末と水との質量比は、1:1である。
【0029】
本発明の一実施形態では、ステップ(3)に記載の分散は、超音波分散であり、超音波出力は、90W~120Wであり、超音波時間は、20~60minである。
【0030】
本発明の一実施形態では、ステップ(3)に記載の澱粉糊化溶液の調製方法は、
澱粉と水とを均一に混合した後、糊化させて、澱粉糊化溶液を得ることであり、澱粉と水の用量比は、3g:80mLであり、糊化は、95℃で10min糊化させることである。
【0031】
本発明の一実施形態では、ステップ(3)に記載の澱粉は、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、小麦澱粉又はサイザル麻澱粉のうちの一種又は複数種である。
【0032】
本発明の一実施形態では、ステップ(3)に記載の澱粉と金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末との質量比は、60:1~600:1である。
【0033】
本発明の一実施形態では、ステップ(3)に記載の澱粉と金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末との質量比は、100:1~300:1である。
【0034】
本発明の一実施形態では、ステップ(3)に記載の均一に混合することは、均一に撹拌して混合することであり、撹拌速度は、600~900rpmである。
【0035】
本発明の一実施形態では、ステップ(4)に記載の流延法は、フィルム形成液を金型に注入し、乾燥させて製膜し、その後、フィルムを取り外して安定させることであり、乾燥の方式は、熱風乾燥又は真空乾燥であり、乾燥温度は、25~60℃であり、乾燥時間は、4~48hであり、安定条件は、温度が22~37℃であり、相対湿度が50~80%RHであり、安定時間は、12~72hである。
【0036】
本発明の第2目的は、本発明に記載の方法により製造された近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムを提供することである。
【0037】
本発明の第3目的は、本発明に記載の近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムの食品、医薬品、医療機器、農産物又は織物の分野における使用である。
【0038】
本発明の第4目的は、本発明に記載の近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムを含む包装材料を提供することである。
【0039】
本発明の第5目的は、本発明に記載の近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムを含む分解性材料を提供することである。
【0040】
本発明の第6目的は、本発明に記載の近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムを含む医療用材料を提供することである。
【0041】
医療用材料は、医療用包装材料、医療用傷口被覆材を含むが、これらに限定されない。
【0042】
[発明の効果]
本発明は、グラフェン界面におけるin-situ自己組織化と金属ポリフェノール配位反応とを組み合わせた二重コーティング方法に基づくものであり、温和な条件下で、4-メチルカテコールアミン系物質をπ-π共役効果によりグラフェン界面に吸着させ、アルカリ性自己重合反応によって4-メチルカテコールアミン系物質のグラフェン界面におけるin-situ層自己組織化を実現し、そして、金属ポリフェノール配位反応と組み合わせて、金属イオンと4-メチルカテコールアミン系ポリマーが金属ポリフェノールネットワークを形成するとともに、in-situでナノ粒子を形成して、グラフェン界面に親水基を分布させることにより、凝集を回避し、グラフェンの水性マトリックスでの分散性を向上させるとともに、該新規な複合澱粉ベースフィルムに安定かつ効率的な光熱変換性能と強化された機械的強度をもたらす。
【0043】
本発明により製造された複合澱粉ベースフィルムは、欠陥がなく連続的であり、近赤外光照射下で、0.5~1.5min以内で常温から100℃以上に昇温することができ、安定かつ効率的な光熱変換性能を有するとともに、引張強度が55~67MPaであり、純澱粉フィルムに比べて、顕著に強化された機械的強度を有する。また、データによると、銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料により製造された複合澱粉ベースフィルムは、昇温速度が鉄イオンで変性されたものより速く、かつ銅イオンで変性された複合フィルムが顕著な抗菌性能を有する。最速30sで25℃から103℃に昇温することができ、1minで109℃に昇温することができ、対応する複合フィルムの機械的引張強度は、62MPaに達する。該複合澱粉ベースフィルムは、優れた光熱変換性能及び機械的引張強度を有し、食品、医薬品、医療機器、農産物の包装の分野に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】実施例1で製造された光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムにおける、銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料の走査型電子顕微鏡写真であり、左の写真は、10μmのスケールバーであり、右の写真は、1μmのスケールバーである。
【
図2】実施例1で製造された光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムのサーモグラフィー写真である。
【
図3】実施例1~4及び比較例1~4で製造された複合澱粉ベースフィルムの近赤外光照射下での温度-時間曲線である。
【
図4】本発明の実施例1~4及び比較例1~4で製造された複合澱粉ベースフィルムの機械的引張強度である。
【
図5】本発明の実施例1~4及び比較例1~4で製造された複合澱粉ベースフィルムの静菌性能である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の好ましい実施例を説明するが、実施例は、本発明をよりよく説明するためのものであり、本発明を限定するものではないと理解すべきである。
【0046】
測定方法は、以下のとおりである。
【0047】
1、光熱効果の測定:サーモグラフィー装置による分析法を用いて複合澱粉ベースフィルムの近赤外光の励起下での温度変化を測定して、その光熱効果を評価する。
【0048】
具体的な操作手順は、以下のとおりである:まず、フィルムサンプルを長さ35mm、幅8mmの長方形のフィルムに切断し、次に、製造された長方形のフィルムを近赤外光源から10cm離れた箇所に置き、サーモグラフィー装置を利用して該長方形のフィルムの温度の経時変化を測定する。
【0049】
2、機械的特性の測定:TAテクスチャーアナライザーを用いて、フィルム引張方法を設定して、複合澱粉ベースフィルムの引張強度と引張破断伸度(同じ澱粉の質量で測定した引張強度)を評価する。
【0050】
具体的な測定方法は、以下のとおりである:まず、フィルムサンプルを湿度53%、温度25℃の恒温恒湿中に24h(時間)放置し、次に、該フィルムサンプルを長さ80mm、幅15mmの長尺状フィルムに切断し、A/TGフィルム引張治具を選択し、引張試験の速度を100mm/minに設定し、ゲージ長を40mmに設定し、最後に、長尺状フィルムをA/TGフィルム引張治具に固定し、長尺状フィルムの引張強度を測定して記録する。
【0051】
引張強度を、以下の式により算出する。
σt=p/(bd)
式中、pは最大荷重、破断荷重(N)であり、bはサンプル幅(mm)であり、dはサンプル厚さ(mm)であり、σtは引張強度(MPa)である。
【0052】
3、静菌性能の測定:紫外可視分光光度計を用いて、菌液の600nmでの吸光度値を基準として複合澱粉ベースフィルムの静菌性能を評価する。
【0053】
具体的な測定方法は、以下のとおりである:106CFUを含有する大腸菌液体培地を調製し、0.25gの複合澱粉ベースフィルムを10mLの大腸菌液体培地に加え、該培地を37℃で24hインキュベートした後、紫外可視分光光度計を用いて600nmのスペクトルでの細菌増殖に対応する培地の光学濃度を記録する。
【0054】
実施例1
近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムの製造方法は、以下のステップを含む。
ステップ(1)、ドーパミンのグラフェン界面におけるin-situ自己組織化:
40mgのグラフェンを95mLのpHが8.5のPBS緩衝溶液に超音波(100W、30min)分散させて、グラフェン分散液を得て、40mgのドーパミンを5mLの水に溶解して、ドーパミン溶液を得て、その後、ドーパミン溶液とグラフェン分散液とを混合し、660rpm、25℃で24h反応させて、グラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を得て、その後、グラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を8000rpmで30min遠心分離し、沈殿を取り、水を加えて遠心分離で洗浄し、3回繰り返して、凍結乾燥させて、上記グラフェン-ドーパミン複合材料粉末を得る。
【0055】
ステップ(2)、銅イオンによるグラフェン-ドーパミン複合材料の変性:
40mgの硫酸銅を20mLの水に加えて、硫酸銅溶液を得て、40mgのグラフェン-ドーパミン複合材料粉末を80mLの水に分散させた後、硫酸銅溶液を加え、pHを8に調整し、550rpm、25℃で1h反応させて、銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を得て、その後、銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を8000rpmで30min遠心分離し、沈殿を取り、水を加えて遠心分離で洗浄し、3回繰り返して、凍結乾燥させて、上記銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料粉末を得る。
【0056】
ステップ(3)、フィルム形成液の調製:
20mgの銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料粉末を20mLの水に超音波(100W、30min)分散させて、分散液を得て、3gのトウモロコシ澱粉を秤量して80mLの水溶液に加え、95℃で10min糊化させて、澱粉糊化溶液を得て、分散液と澱粉糊化溶液とを600rpmで均一に撹拌し混合して、フィルム形成液を得る。
【0057】
ステップ(4)、製膜:
流延法を用いて、フィルム形成液をポリテトラフルオロエチレン板に注入し、40℃のオーブンに置いて12h乾燥させて製膜した後、フィルムを剥がして53%の湿度で24h安定させて、上記光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルム(厚さが0.098mmである)を得る。
【0058】
図1は、銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料の走査型電子顕微鏡写真であり、
図1から分かるように、グラフェン界面に複合材料層が被覆され、in-situで自己組織化してナノ粒子層が形成されることに成功した。
【0059】
図2は、光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムのサーモグラフィー写真であり、
図2から分かるように、近赤外光照射下で、澱粉ベースフィルムのサーモグラフィー温度は110℃であり、澱粉ベースフィルムが光熱効果を有することを証明する。
【0060】
実施例2:(NMS-GFe20)
近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムの製造方法は、以下のステップを含む。
【0061】
ステップ(1)、ドーパミンのグラフェン界面におけるin-situ自己組織化:
40mgのグラフェンを95mLのpHが8.5のPBS緩衝溶液に超音波(100W、30min)分散させて、グラフェン分散液を得て、40mgのドーパミンを5mLの水に溶解して、ドーパミン溶液を得て、その後、ドーパミン溶液とグラフェン分散液とを混合し、660rpm、25℃で24h反応させて、グラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を得て、その後、グラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を8000rpmで30min遠心分離し、沈殿を取り、水を加えて遠心分離で洗浄し、3回繰り返して、凍結乾燥させて、上記グラフェン-ドーパミン複合材料粉末を得る。
【0062】
ステップ(2)、鉄イオンによるグラフェン-ドーパミン複合材料の変性:
40mgの塩化鉄六水和物を20mLの水に加えて、塩化鉄溶液を得て、40mgのグラフェン-ドーパミン複合材料粉末を80mLの水に分散させた後、塩化鉄溶液を加え、pHを8に調整し、550rpm、25℃で1h反応させて、鉄イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を得て、その後、鉄イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を8000rpmで30min遠心分離し、沈殿を取り、水を加えて遠心分離で洗浄し、3回繰り返して、凍結乾燥させて、上記鉄イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料粉末を得る。
【0063】
ステップ(3)、フィルム形成液の調製:
20mgの鉄イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料粉末を20mLの水に超音波(100W、30min)分散させて、分散液を得て、3gのトウモロコシ澱粉を秤量して80mLの水溶液に加え、95℃で10min糊化させて、澱粉糊化溶液を得て、分散液と澱粉糊化溶液とを600rpmで均一に撹拌し混合して、フィルム形成液を得る。
【0064】
ステップ(4)、製膜:
流延法を用いて、フィルム形成液をポリテトラフルオロエチレン板に注入し、40℃のオーブンに置いて12h乾燥させて製膜した後、フィルムを剥がして53%の湿度で24h安定させて、上記光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルム(厚さが0.098mmである)を得る。
【0065】
実施例3
近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムの製造方法は、以下のステップを含む。
【0066】
ステップ(1)、ドーパミンのグラフェン界面におけるin-situ自己組織化:
40mgのグラフェンを95mLのpHが8.5のPBS緩衝溶液に超音波(100W、30min)分散させて、グラフェン分散液を得て、40mgのドーパミンを5mLの水に溶解して、ドーパミン溶液を得て、その後、ドーパミン溶液とグラフェン分散液とを混合し、660rpm、25℃で24h反応させて、グラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を得て、その後、グラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を8000rpmで30min遠心分離し、沈殿を取り、水を加えて遠心分離で洗浄し、3回繰り返して、凍結乾燥させて、上記グラフェン-ドーパミン複合材料粉末を得る。
【0067】
ステップ(2)、銅イオンによるグラフェン-ドーパミン複合材料の変性:
40mgの硫酸銅を20mLの水に加えて、硫酸銅溶液を得て、40mgのグラフェン-ドーパミン複合材料粉末を80mLの水に分散させた後、硫酸銅溶液を加え、pHを8に調整し、550rpm、25℃で1h反応させて、銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を得て、その後、銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を8000rpmで30min遠心分離し、沈殿を取り、水を加えて遠心分離で洗浄し、3回繰り返して、凍結乾燥させて、上記銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料粉末を得る。
【0068】
ステップ(3)、フィルム形成液の調製:
10mgの銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料粉末を20mLの水に超音波(100W、30min)分散させて、分散液を得て、3gのトウモロコシ澱粉を秤量して80mLの水溶液に加え、95℃で10min糊化させて、澱粉糊化溶液を得て、分散液と澱粉糊化溶液とを600rpmで均一に撹拌し混合して、フィルム形成液を得る。
【0069】
ステップ(4)、製膜:
流延法を用いて、フィルム形成液をポリテトラフルオロエチレン板に注入し、40℃のオーブンに置いて12h乾燥させて製膜した後、フィルムを剥がして53%の湿度で24h安定させて、上記光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルム(厚さが0.089mmである)を得る。
【0070】
実施例4
近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムの製造方法は、以下のステップを含む。
【0071】
ステップ(1)、ドーパミンのグラフェン界面におけるin-situ自己組織化:
40mgのグラフェンを95mLのpHが8.5のPBS緩衝溶液に超音波(100W、30min)分散させて、グラフェン分散液を得て、40mgのドーパミンを5mLの水に溶解して、ドーパミン溶液を得て、その後、ドーパミン溶液とグラフェン分散液とを混合し、660rpm、25℃で24h反応させて、グラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を得て、その後、グラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を8000rpmで30min遠心分離し、沈殿を取り、水を加えて遠心分離で洗浄し、3回繰り返して、凍結乾燥させて、上記グラフェン-ドーパミン複合材料粉末を得る。
【0072】
ステップ(2)、銅イオンによるグラフェン-ドーパミン複合材料の変性:
40mgの硫酸銅を20mLの水に加えて、硫酸銅溶液を得て、40mgのグラフェン-ドーパミン複合材料粉末を80mLの水に分散させた後、硫酸銅溶液を加え、pHを8に調整し、550rpm、25℃で1h反応させて、銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を得て、その後、銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を8000rpmで30min遠心分離し、沈殿を取り、水を加えて遠心分離で洗浄し、3回繰り返して、凍結乾燥させて、上記銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料粉末を得る。
【0073】
ステップ(3)、フィルム形成液の調製:
30mgの銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料粉末を20mLの水に超音波(100W、30min)分散させて、分散液を得て、3gのトウモロコシ澱粉を秤量して80mLの水溶液に加え、95℃で10min糊化させて、澱粉糊化溶液を得て、分散液と澱粉糊化溶液とを600rpmで均一に撹拌し混合して、フィルム形成液を得る。
【0074】
ステップ(4)、製膜:
流延法を用いて、フィルム形成液をポリテトラフルオロエチレン板に注入し、40℃のオーブンに置いて12h乾燥させて製膜した後、フィルムを剥がして53%の湿度で24h安定させて、上記光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルム(厚さが0.105mmである)を得る。
【0075】
比較例1:(NMS-G)
澱粉ベースフィルムの製造方法は、以下のステップを含む。
【0076】
ステップ(1)、グラフェン分散液の調製:
5mgのグラフェンを秤量して20mLの脱イオン水に加え、均一に分散させるまで100Wで30min超音波処理して、グラフェン分散液を得る。
【0077】
ステップ(2)、澱粉糊化溶液の調製:
3gのトウモロコシ澱粉を秤量して80mLの水溶液に入れ、95℃で10min糊化させて、澱粉糊化溶液を得る。
【0078】
ステップ(3)、フィルム形成液の調製:
グラフェン分散液と澱粉糊化溶液とを600rpmで均一に撹拌し混合して、フィルム形成液を得る。
【0079】
ステップ(4)、製膜:
流延法を用いて、フィルム形成液をポリテトラフルオロエチレン板に注入し、40℃のオーブンに置いて12h乾燥させてフィルムを形成した後、フィルムを剥がして53%の湿度で24h安定させて、上記澱粉ベースフィルム(厚さが0.085mmである)を得る。
【0080】
比較例2
近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムの製造方法は、以下のステップを含む。
【0081】
ステップ(1)、酸化グラフェン分散液の調製:
20mgの酸化グラフェンを20mLのpHが8.5のPBS緩衝溶液に超音波(100W、30min)分散させて、酸化グラフェン分散液を得る。
【0082】
ステップ(2)、フィルム形成液の調製:
3gのトウモロコシ澱粉を秤量して80mLの水溶液に加え、95℃で10min糊化させて、澱粉糊化溶液を得て、20mlの酸化グラフェン分散液と澱粉糊化溶液とを600rpmで均一に撹拌し混合して、フィルム形成液を得る。
【0083】
ステップ(3)、製膜:
流延法を用いて、フィルム形成液をポリテトラフルオロエチレン板に注入し、40℃のオーブンに置いて12h乾燥させてフィルムを形成した後、フィルムを剥がして53%の湿度で24h安定させて、上記光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルム(厚さが0.098mmである)を得る。
【0084】
比較例3:(NMS-GCu5)
近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムの製造方法は、以下のステップを含む。
【0085】
ステップ(1)、ドーパミンのグラフェン界面におけるin-situ自己組織化:
40mgのグラフェンを95mLのpHが8.5のPBS緩衝溶液に超音波(100W、30min)分散させて、グラフェン分散液を得て、40mgのドーパミンを5mLの水に溶解して、ドーパミン溶液を得て、その後、ドーパミン溶液とグラフェン分散液とを混合し、660rpm、25℃で24h反応させて、グラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を得て、その後、グラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を8000rpmで30min遠心分離し、沈殿を取り、水を加えて遠心分離で洗浄し、3回繰り返して、凍結乾燥させて、上記グラフェン-ドーパミン複合材料粉末を得る。
【0086】
ステップ(2)、銅イオンによるグラフェン-ドーパミン複合材料の変性:
40mgの硫酸銅を20mLの水に加えて、硫酸銅溶液を得て、40mgのグラフェン-ドーパミン複合材料粉末を80mLの水に分散させた後、硫酸銅溶液を加え、pHを8に調整し、550rpm、25℃で1h反応させて、銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を得て、その後、銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を8000rpmで30min遠心分離し、沈殿を取り、水を加えて遠心分離で洗浄し、3回繰り返して、凍結乾燥させて、上記銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料粉末を得る。
【0087】
ステップ(3)、フィルム形成液の調製:
5mgの銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料粉末を20mLの水に超音波(100W、30min)分散させて、分散液を得て、3gのトウモロコシ澱粉を秤量して80mLの水溶液に加え、95℃で10min糊化させて、澱粉糊化溶液を得て、分散液と澱粉糊化溶液とを600rpmで均一に撹拌し混合して、フィルム形成液を得る。
【0088】
ステップ(4)、製膜:
流延法を用いて、フィルム形成液をポリテトラフルオロエチレン板に注入し、40℃のオーブンに置いて12h乾燥させて製膜した後、フィルムを剥がして53%の湿度で24h安定させて、上記光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルム(厚さが0.081mmである)を得る。
【0089】
比較例4
近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムの製造方法は、以下のステップを含む。
【0090】
ステップ(1)、ドーパミンのグラフェン界面におけるin-situ自己組織化:
40mgのグラフェンを95mLのpHが8.5のPBS緩衝溶液に超音波(100W、30min)分散させて、グラフェン分散液を得て、40mgのドーパミンを5mLの水に溶解して、ドーパミン溶液を得て、その後、ドーパミン溶液とグラフェン分散液とを混合し、660rpm、25℃で24h反応させて、グラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を得て、その後、グラフェン-ドーパミン複合材料の粗分散液を8000rpmで30min遠心分離し、沈殿を取り、水を加えて遠心分離で洗浄し、3回繰り返して、凍結乾燥させて、上記グラフェン-ドーパミン複合材料粉末を得る。
【0091】
ステップ(2)、フィルム形成液の調製:
20mgのグラフェン-ドーパミン複合材料粉末を20mLの水に超音波(100W、30min)分散させて、分散液を得て、3gのトウモロコシ澱粉を秤量して80mLの水溶液に加え、95℃で10min糊化させて、澱粉糊化溶液を得て、分散液と澱粉糊化溶液とを600rpmで均一に撹拌し混合して、フィルム形成液を得る。
【0092】
ステップ(3)、製膜:
流延法を用いて、フィルム形成液をポリテトラフルオロエチレン板に注入し、40℃のオーブンに置いて12h乾燥させて製膜した後、フィルムを剥がして53%の湿度で24h安定させて、上記光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルム(厚さが0.094mmである)を得る。
【0093】
実施例1~4で得られた光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルム、及び、比較例1~4で得られた澱粉ベースフィルムに対して性能測定を行い、測定結果を
図3~5及び表1~3に示し、具体的には、以下のとおりである。
【0094】
図3及び表1は、各澱粉ベースフィルムの近赤外光照射下での温度-時間変化の状況を示す。
図3及び表1から分かるように、実施例1では、近赤外光で30s刺激された後、フィルムの温度が100℃以上に達し、該添加量の銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料が澱粉ベースフィルムの光熱効果の向上に顕著な作用を果たすことが証明される。実施例2は、近赤外光で1min刺激された後、室温から100℃まで昇温することができ、該添加量の鉄イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料が澱粉ベースフィルムの光熱効果の向上にも一定の作用を果たすことが証明されるが、実施例1に比べて、実施例2の昇温速度が遅い。実施例3の澱粉ベースフィルムは、室温から100℃まで昇温するのに1minかかり、該添加量の銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料が澱粉ベースフィルムの光熱効果の向上に一定の作用を果たすことが証明されるが、実施例1に比べて、実施例3の銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料は、添加量が減少するため、昇温速度が遅くなる。実施例4の澱粉ベースフィルムは、室温から100℃まで昇温するのに30sかかり、該添加量の銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料が澱粉ベースフィルムの光熱効果の向上に一定の作用を果たすことが証明されるが、実施例1に比べて、実施例4の昇温速度が遅く、添加された銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料は、含有量が多く、近赤外光で刺激され続けると、高温になってフィルムが溶融する現象が発生する。比較例1の澱粉ベースフィルムは、室温から100℃まで昇温するのに1.5minかかり、グラフェンの添加は、澱粉ベースフィルムの光熱効果の向上に一定の作用を果たすことが証明されるが、実施例1に比べて、その光熱効果が低く、かつ100℃に達した後、フィルムが溶融して曲げられ、測定し続けることができず、これは、主にグラフェンの体系での分散効果が悪いためである。比較例2の澱粉ベースフィルムは、近赤外光で照射されるについて、徐々に昇温したが、1.5min経過しても依然として100℃に達しておらず、酸化グラフェンの添加が澱粉ベースフィルムの光熱効果の向上に一定の作用を果たすことが証明されるが、実施例1に比べて、その光熱効果が低い。比較例3の澱粉ベースフィルムは、近赤外光で照射されるについて、1.5min後、温度が徐々に上昇したが、依然として100℃に達しておらず、該添加量の銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料が澱粉ベースフィルムの光熱効果の向上に一定の作用を果たすことが証明されるが、実施例1に比べて、その光熱効果が依然として低い。比較例4の澱粉ベースフィルムは、近赤外光で照射されるについて、1.5min後、温度が徐々に上昇したが、依然として100℃に達しておらず、グラフェン-ドーパミン複合材料の添加が澱粉ベースフィルムの光熱効果の向上に一定の作用を果たすことが証明されるが、実施例1に比べて、その光熱効果が依然として低い。
【0095】
図4及び表2は、各澱粉ベースフィルムの機械的特性を示す。
図4及び表2から分かるように、比較例1~4に比べて、実施例1の澱粉ベースフィルムの強度は62MPaであり、該フィルムが強い機械的引張強度を有することが証明される。実施例2の澱粉ベースフィルムの引張強度は、56MPaであり、鉄イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料の添加が澱粉ベースフィルムの引張強度の強化に大きな作用を果たすことが証明されるが、その強度は、実施例1のものよりも顕著に低い。実施例3の澱粉ベースフィルムの引張強度は、55MPaであり、10mgの銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料の添加が澱粉ベースフィルムの引張強度の向上に大きな作用を果たすことが証明される。実施例4の澱粉ベースフィルムの引張強度は、67MPaであり、30mgの銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料の添加が澱粉ベースフィルムの引張強度の強化に大きな作用を果たすことが証明される。比較例1の澱粉ベースフィルムの引張強度は、42MPaであり、グラフェンの添加が澱粉ベースフィルムの引張強度の強化に一定の作用を果たすことが証明されるが、実施例1に比べて、その引張強度は、依然として低い。比較例2の澱粉ベースフィルムの引張強度は、49MPaであり、酸化グラフェンの添加が澱粉ベースフィルムの引張強度の強化に一定の作用を果たすことが証明されるが、実施例1に比べて、その引張強度は、依然として低い。比較例3の引張強度は、52MPaであり、該フィルムの引張強度がある程度向上することが証明されるが、実施例1のものよりも低い。比較例4の澱粉ベースフィルムの引張強度は、55MPaであり、グラフェン-ドーパミン複合材料の添加が澱粉ベースフィルムの引張強度の強化に一定の作用を果たすことが証明されるが、実施例1に比べて、その引張強度は、依然として低い。
【0096】
図5及び表3は、各澱粉ベースフィルムの静菌性能を示す。
図5及び表3から分かるように、ブランク群、純澱粉フィルム群及び比較例1~3に比べて、実施例1の大腸菌培養液の吸光度が0.8であり、該フィルムが大腸菌に対して顕著な静菌性能を有することが証明される。実施例2の澱粉ベースフィルムの大腸菌培養溶液の吸光度は、1.09であり、該フィルムが一定の静菌活性を有することが証明されるが、弱い。実施例3の澱粉ベースフィルムの大腸菌培養溶液の吸光度は、0.88であり、該フィルムが静菌活性を有することが証明されるが、実施例1に比べて依然として弱い。一方、実施例4の澱粉ベースフィルムの大腸菌培養溶液の吸光度は、0.78であり、該フィルムが静菌活性を有することが証明される。比較例1~4は、静菌活性がない。
【0097】
要するに、実施例1~4の方法は、水性マトリックスでのグラフェンの分散性を効果的に向上させ、複合澱粉ベースフィルムに安定かつ効率的な光熱変換性能と強化された機械的強度を与え、昇温速度を速くし、具体的には、実施例1~4で製造された複合澱粉ベースフィルムは、近赤外光照射下で0.5~1.5min以内で常温から100℃以上に昇温することができ、安定かつ効率的な光熱変換性能を有するとともに、引張強度が55-67MPaであり、純澱粉フィルムに比べて、顕著に強化された機械的強度を有する。また、データによると、銅イオンで変性されたグラフェン-ドーパミン複合材料により製造された複合澱粉ベースフィルムは、昇温速度が鉄イオンで変性されたものよりも速く、銅イオンで変性された複合フィルムが顕著な抗菌性能を有する。
【0098】
また、複合材料において、澱粉と金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末との質量比を100:1~300:1の範囲内に制御することが好適であり、例えば、金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料の添加量が低すぎると、光熱変換性能及び強化された機械的強度が依然としてあるが、昇温速度が遅くなる。
表1:澱粉ベースフィルムの近赤外光照射下での温度-時間変化
表2:澱粉ベースフィルムの機械的引張強度
【0099】
純澱粉フィルムの製造方法は、以下のステップを含む。
【0100】
ステップ(1)、澱粉糊化溶液の調製:
3gのトウモロコシ澱粉を秤量して100mLの水溶液に加え、95℃で10min糊化させて、澱粉糊化溶液を得る。
【0101】
ステップ(2)、製膜:
流延法を用いて、フィルム形成液をポリテトラフルオロエチレン板に注入し、40℃のオーブンに置いて12h乾燥させて製膜した後、フィルムを剥がして53%の湿度で24h安定させて、上記澱粉ベースフィルム(厚さが0.072mmである)を得る。
表3:澱粉ベースフィルムの抗菌性能
【手続補正書】
【提出日】2024-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムの製造方法
であって、
(1)グラフェン界面において、4-メチルカテコールアミン系物質のin-situ自己組織化を行うステップであって、4-メチルカテコールアミン系物質溶液とグラフェン分散液とを混合して反応させ、反応終了後、遠心分離で洗浄し、凍結乾燥させて、グラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末を得、4-メチルカテコールアミン系物質がドーパミンである、ステップと、
(2)金属イオンによりグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料を変性するステップであって、グラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末を水に分散させた後、金属イオン溶液を加えて反応させ、反応終了後、遠心分離で洗浄し、凍結乾燥させて、金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末を得、金属イオン溶液が硫酸銅溶液である、ステップと、
(3)フィルム形成液を調製するステップであって、金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末を水に分散させて、分散液を得てから、分散液と澱粉糊化溶液とを均一に混合して、フィルム形成液を得る、ステップと、
(4)製膜するステップであって、フィルム形成液を流延法で製膜して前記近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムを得るステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(1)において、前記グラフェンと4-メチルカテコールアミン系物質との質量比は、1:3~3:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(2)において、前記グラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料と金属イオン溶液との質量比は、1:4~4:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(2)において、金属イオン溶液の濃度は、0.5~8mg/mLである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(3)において、前記澱粉と、金属イオンで変性されたグラフェン-4-メチルカテコールアミン系複合材料粉末との質量比は、60:1~600:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法で得られる、近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルム。
【請求項7】
請求項
6に記載の近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムの食品
製造、医薬品、医療機器、農産物又は織物の分野における使用。
【請求項8】
請求項
6に記載の近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムを含む、包装材料。
【請求項9】
請求項
6に記載の近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムを含む、分解性材料。
【請求項10】
請求項
6に記載の近赤外光熱効果を有する機械強化型澱粉ベースフィルムを含む、医療用材料。
【国際調査報告】