IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャンハイ ジャオ トン ユニバーシティの特許一覧 ▶ フォンヤン エル-エス ライト アロイ プリシジョン フォーミング カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2024-546404非熱処理で強化された高強度高靭性のダイカストアルミニウムシリコン合金及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】非熱処理で強化された高強度高靭性のダイカストアルミニウムシリコン合金及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/02 20060101AFI20241217BHJP
   C22C 1/02 20060101ALI20241217BHJP
   B22D 17/00 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
C22C21/02
C22C1/02 503J
B22D17/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023581091
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 CN2022118853
(87)【国際公開番号】W WO2023134190
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】202210038413.3
(32)【優先日】2022-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508332634
【氏名又は名称】シャンハイ ジャオ トン ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】523180665
【氏名又は名称】フォンヤン エル-エス ライト アロイ プリシジョン フォーミング カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Fengyang L-S Light Alloy Precision Forming Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Mentai Industrial Park, Fengyang County, Chuzhou City, Anhui Province, 233121 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ポン リーミン
(72)【発明者】
【氏名】ユェ リンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン レイ
(72)【発明者】
【氏名】シァォ ガン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チャオ
(57)【要約】
本発明は非熱処理で強化された高強度高靭性のダイカストアルミニウムシリコン合金及びその製造方法である。当該合金における各成分の重量百分率は、Si8.0-10.0wt.%、Mg0.1-0.5wt.%、Mn0.5-0.8wt.%、Cu0.05-0.5wt.%、Ti0.05-0.2wt.%、Sr0.01-0.05wt.%、V0.01-0.1wt.%、RE0.01-0.15wt.%、Fe<0.2wt.%であり、その他の不純物の総量≦0.4%、残部はAlである。Srは共晶Siを変質微細化させる上で、製造する時にVとRE元素を導入し、さらに共晶Si組織を顕著に微細化し、合金が比較的高いSi含有量を含む場合に高強度・高靭性の特性を取得させ、それにより大型車体構造部材がダイカストアルミニウム合金材料の流動性・強度・塑性に対する要求を満たす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項3】
請求項1に記載の非熱処理で強化された高強度高靭性のダイカストアルミニウムシリコン合金の製造方法であって、
前記製造方法は、
乾燥であって、準備された原料の純Al、純Si、純Mg、Al-Mn中間合金、Al-Ti中間合金、Al-Cu中間合金、Al-RE中間合金、Al-V中間合金を予熱し、乾燥処理を行う工程S1と、
製錬であって、初回昇温で純Alを溶融した後にAl-Ti中間合金、Al-Cu中間合金、Al-Mn中間合金、Al-V中間合金、純Siを添加し、中間合金が溶融した後に降温し、純Mgを溶融物の底部に圧入して溶融し、完全に溶融した後に合金溶融物を第二回昇温して精錬し、さらに、Al-RE中間合金を溶融物の底部に圧入して溶融し、完全に溶融した後に静置することにより、非熱処理で強化された高強度高靭性ダイカストアルミニウムシリコン合金を得ることができる工程S2と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の非熱処理で強化された高強度高靭性のダイカストアルミニウムシリコン合金の製造方法。
【請求項10】
用いられる精錬剤は塩化マグネシウム、及び塩化カルシウムのうちの一種を含むことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属材料技術分野に関し、具体的には非熱処理で強化された高強度高靭性のダイカストアルミニウムシリコン合金及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「ダブルカーボン」目標の下、国の環境保護に対する要求はますます高まっている。「省エネ・新エネルギー車技術ロードマップ」の発表に伴い、新エネルギー車の軽量化が高い関心を集める発展方向となった。アルミニウム合金は車体の一般的な金属構造材料として、密度が小さく、比強度が高く、制振効果に優れ、自動車の制振塔、自動車のリヤサイドメンバ等の部材に適用し、その軽量化の優位性が明らかで、良好な強度と剛性を実現することができ、耐疲労性が高い。集積化設計、一体化ダイカスト成形は加工過程の減少に有利であり、環境に対する繰り返し汚染を減少することができ、同時に鋳物構造の設計が柔軟であり、異なる製品の要求を満たすことができる。
【0003】
新エネルギー自動車の車体構造部材は一般的にダイカストアルミニウム合金を用いて主にSilafont-36合金(米国特許第6364970号明細書)に代表される熱処理型高強度高靭性ダイカストアルミニウム合金材料である。当該材料は「高真空ダイカスト+熱処理」を採用して鋳物を降伏強度100-120MPa、引張強度180-220MPa、伸び率10-15%に達成させる。しかしながら、薄肉のダイカスト鋳物では、この技術の使用には、以下の二つの欠点がある。(1)高真空ダイカストはプロセス難度及び製造コストを大幅に増加させる。(2)熱処理プロセスを採用して鋳物に一定量の変形と気泡が発生し、製品の良品率に影響し、コストが高くなる。そのため、各国の研究機関は積極的に非熱処理で高強度高靭性ダイカストアルミニウム合金材料を開発し、それにより大型で複雑なダイカスト構造部材の量産に適用する。特に、テスラに代表される新エネルギー自動車メーカーは非熱処理合金を採用して大型一体化車体構造部材を製造し、且つ使用された合金本体成分はAl7SiMgMn合金(米国特許出願公開第2005/0167012号明細書)である。当該合金は高真空ひいては超高真空ダイカストと協力して部品の製造を行い、当該技術経路を採用して従来の熱処理合金による部品変形問題を緩和することができる。しかしながら、以下の二つの主要な問題がある。(1)合金におけるSiの含有量が比較的低く(~7wt.%)、材料の伸び率を10-15%まで向上させることができる。しかし、低Siは、非熱処理合金の流動性を制限し、大型鋳物の充填不足のリスクがある。(2)従来のAl7SiMgMn合金は合金強度が比較的低く(典型的な降伏強度110-120MPa、引張強度180-220MPa)、大型鋳物は構造設計において全体の肉厚が比較的厚く且つ比較的多くの肉厚領域が存在する。そのため材料伸び率を変更しない又はわずかに低下させる場合(伸び率>10%を保証し、車体構造部材のリベット要件を満たす)、合金におけるSi含有量を向上させることによって材料流動性を向上させ、同時に材料の強度を向上させ、大型車体鋳物構造の最適化に重要な意味を有する。
【0004】
そのため、非熱処理で高強度高靭性のダイカストアルミニウムシリコン合金を開発し、且つその製造とダイカストプロセスを研究し、自動車業界が益々向上する良質高性能アルミニウム合金ダイカスト部品の実際の使用要求を満たし、ダイカスト分野が求める目標の一つとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6364970号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0167012号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は上記従来技術の背景において、非熱処理で強化された高強度高靭性のダイカストアルミニウムシリコン合金及びその製造方法を提供することである。合金が良好な鋳造性能を備えることを保証する前提で、非熱処理型の鋳物は優れた総合力学的性能を有し、それにより車体構造部材の性能要求を満たし、特に大型薄肉車体構造部材である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明はダイカストアルミニウム合金の長期研究において、ダイカストアルミニウムシリコン合金におけるSi含有量が合金の鋳造性能、強度、塑性に顕著な影響を有することを発見した。一般に、Si含有量が増加するにつれて、合金の強度は増加し、流動性は増加し、塑性は低下する。Sr元素は合金中の共晶Siに変質微細化作用を及ぼすが、Si含有量が増加するにつれて塑性が低下する傾向を示し、10%の塑性を達成することが困難となる。本発明は主にSi含有量が増加した後ダイカスト条件下でAl-Si合金の塑性が低下するという問題を解決するためである。合金におけるSi含有量の増加に伴い、組織における共晶Si含有量が増加し、共晶Siのサイズ及び形状もそれに伴って変化し、且つ合金の塑性に影響を与える重要な要素となる。合金におけるSi含有量の増加による材料塑性の低下を解決するために、本発明はV元素を創造的に導入し、共晶Siを微細化し、それにより微細な共晶Siの組織を得る。また、前期大量の実験検証により希土類元素におけるLa、Er、Ce等の希土類元素はV元素と複合作用し、合金における共晶Si組織をさらに微細化し、それにより共晶Siのサイズ及び形状を変化させることを発見した。V+REの複合添加はアズキャスト組織(as-cast structure)に微細な共晶Si粒子を生成させ、それによりSi含有量が多いダイカストアルミニウム合金材料が依然として高い塑性を有することを確保する。一方、Siの添加量が多いほど、強度および流動性に優れた合金となる。一方、V+REの複合添加は、共晶Siを微細分散状態に保ち、合金の塑性を向上させる。さらに本発明は優れた鋳造性能を保証する前提で、ダイカストアルミニウムシリコン合金の機械的性能を大幅に向上させることができ、強度と成形が両立する高強度・高靭性の総合力学的性能を取得する。
これにより、本発明の目的は以下の技術的解決手段により実現される。
本発明は非熱処理で強化された高強度高靭性のダイカストアルミニウムシリコン合金を提供し、前述のダイカストアルミニウムシリコン合金における各成分の重量百分率はSi8.0-10.0wt.%、Mg0.1-0.5wt.%、Mn0.5-0.8wt.%、Cu0.05-0.5wt.%、Ti0.05-0.2wt.%、Sr0.01-0.05wt.%、V0.01-0.1wt.%、RE0.01-0.15wt.%、Fe<0.2wt.%である。その他の不純物は総量で≦0.4wt%、残部はAlである。
本発明の一実施形態として、前述のRE元素はLa、Ce、Er元素のうちの一種または数種を含む。
【0008】
本発明はさらに非熱処理で強化された高強度高靭性のダイカストアルミニウムシリコン合金の製造方法に関し、前述の製造方法は以下の工程を含む。
S1、乾燥:準備された原料の純Al、純Si、純Mg、Al-Mn中間合金、Al-Ti中間合金、Al-Cu中間合金、Al-RE中間合金、Al-V中間合金を予熱し、乾燥処理を行う。
S2、製錬:初回昇温で純Alを溶融した後にAl-Ti中間合金、Al-Cu中間合金、Al-Mn中間合金、Al-V中間合金、純Siを添加し、中間合金が溶融した後に降温する。純Mgを溶融物の底部に圧入して溶融し、完全に溶融した後に合金溶融物を第二回昇温して精錬する。さらに、Al-RE中間合金を溶融物の底部に圧入して溶融し、完全に溶融した後に静置することにより、非熱処理で強化された高強度高靭性ダイカストアルミニウムシリコン合金を得ることができる。
【0009】
本発明の一実施形態として、工程S1における予熱の温度は、190~210℃である。
本発明の一実施形態として、工程S2における初回昇温の温度は、750℃~760℃である。
本発明の一実施形態として、工程S2における降温の温度は、680℃~700℃である。
本発明の一実施形態として、工程S2において純Mg、Al-RE中間合金を溶融物に圧入した後に3~5分間撹拌して完全に溶融させる。
本発明の一実施形態として、工程S2における第二回昇温の温度は、720~730℃である。REは変質元素であり、アルミニウム合金の製錬過程において、変質元素が最後に添加される。
本発明の一実施形態として、工程S2における精錬は具体的に以下のとおりである。回転吹き付け装置を用いて溶融物に精錬剤粉末付きの窒素ガスを流して粉末吹き付け精錬、スラグ除去、ガス除去処理を行い、続いて10~15分間静置し、スラグ除去処理を完了し、精錬後の溶融物を得る。
本発明の一実施形態として、回転吹き付け装置のプロセスパラメータは、ガス除去の回転数300~350r/min、ガス除去時間5~10min、ガス除去時のガス源の圧力0.35±0.05MPa、ガス流量0.2~0.8sccmである。
本発明の一実施形態として、用いられる精錬剤は塩化マグネシウム、塩化カルシウムのうちの一種を含む。精錬剤の添加量は、溶融物重量の0.2~0.5%である。
本発明の一実施形態として、工程S2における静置時間は10~15分間である。
本発明の一実施形態として、工程S2における前述の非熱処理で強化された高強度高靭性ダイカストアルミニウムシリコン合金は鋳造又は注湯した後にさらにダイカスト成形された合金インゴットである。
本発明の一実施形態として、鋳造温度は690~710℃である。
本発明の一実施形態として、前述のダイカスト成形の具体的なパラメータは以下のとおりである。射出速度は3~6m/sであり、離型剤と水の比率は1:80~1:120であり、金型温度は200~250℃であり、鋳造圧力は30~100MPaである。
【発明の効果】
【0010】
従来技術に比べ、本発明は以下の有益な効果を有する。
1、本発明の製造する非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金は重要な工業応用価値を有する。当該ダイカストアルミニウムシリコン合金はダイカスト状態の条件下で降伏強度120~160MPa、引張強度260~320MPa、伸び率10~15%の優れた性能を得る(AlSi10MnMg合金、アズキャスト引張強度200~220MPa、伸び率5~8%)。且つ良好なダイカスト性能を実現することができ、自動車業界の大型薄肉車体構造部材の応用需要を大幅に満たす。
2、当該合金はアズキャストで降伏強度120~160MPa、引張強度260~320MPa、伸び率10~15%の優れた性能を達成する。従来の熱処理型合金に比べ、部品の熱処理工程を減少させ、それにより鋳物の良品率を向上させ、鋳物のコストを低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、以下の図面を参照して非限定的な実施例の詳細な説明を読むことによって、より明らかになる。
図1】実施例及び比較例の鋳物のSEM組織観察模式図である。aはA1鋳物のSEM組織観察模式図を示す。bはA2鋳物のSEM組織観察模式図を示す。cはA3鋳物のSEM組織観察模式図を示す。dはA4鋳物のSEM組織観察模式図を示す。eはA5鋳物のSEM組織観察模式図を示す。fはA6鋳物のSEM組織観察模式図を示す。gはA7鋳物のSEM組織観察模式図を示す。hはA8鋳物のSEM組織観察模式図を示す。iはA9鋳物のSEM組織観察模式図を示す。jはA10鋳物のSEM組織観察模式図を示す。kはA11鋳物のSEM組織観察模式図を示す。lはA12鋳物のSEM組織観察模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明の利点および特徴を当業者に理解しやすくするために、本発明の適用範囲を限定するものではないが、本発明が提供する非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金およびその製造方法について、例を交えてさらに説明する。
【0013】
実施例1
本実施例は非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金に関し、各成分の重量百分率は、Si:8.0wt.%、Mg:0.25wt.%、Mn:0.6wt.%、Ti:0.15wt.%、Cu:0.15wt.%、V:0.02wt.%、Sr:0.025wt.%、Fe:0.12wt.%であり、他の不純物の総量は0.3wt.%であり、残部はAlである。
【0014】
本実施例の非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金の製造及びそのダイカストプロセスは以下の工程を含む。
1)乾燥:準備された原料の純アルミニウム、純Si、純Mg、Al-10Mn中間合金、Al-10Ti中間合金、Al-50Cu中間合金、Al-5V中間合金を、200℃まで予熱し、乾燥処理を行う。
2)製錬:炉は755℃まで昇温して純アルミニウムを溶融し、次いで、Al-10Ti、Al-50Cu、Al-10Mn、Al-5V、純Si合金を添加し、中間合金が溶融した後、炉は690℃まで降温し、ベルジャーを用いて純Mgを坩堝の底部領域に押し込んで溶融し、次いで5分間撹拌する。続いて溶融物を720℃まで昇温し、0.4MPaの圧力を有する窒素ガスを溶融物に導入し、0.4%の溶融物総重量の精錬剤粉末を導入し、300r/min、0.5sccmのガス流量で10min通気してスラグを除去し、ガスを除去する。続いて12分間静置し、スラグ除去処理を完了し、且つオンサイトでの迅速な成分分析試験を行う。成分合格後、690℃で高圧鋳造を行う。射出速度は3m/sであり、鋳造圧力は80MPaであり、離型剤(離型剤は溶媒であり、使用する際には水で割る必要があり、ここでは離型剤と水の割合を示す)比率は1:100であり、金型温度は230℃であった。生産過程に使用される金型はダイカストのテストバー金型であり、得られた鋳物はA1と記す。
【0015】
実施例2
本実施例は非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金に関し、各成分の重量百分率は、Si:8.0wt.%、Mg:0.25wt.%、Mn:0.6wt.%、Ti:0.15wt.%、Cu:0.15wt.%、Er:0.05wt.%、Sr:0.025wt.%、Fe:0.12wt.%であり、他の不純物の総量は0.3wt.%であり、残部はAlである。
【0016】
本実施例の非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金の製造及びそのダイカストプロセスは以下の工程を含む。
1)乾燥:準備された原料の純アルミニウム、純Si、純Mg、Al-10Mn中間合金、Al-10Ti中間合金、Al-50Cu中間合金、Al-10Er中間合金を、200℃まで予熱し、乾燥処理を行う。
2)製錬:炉は755℃まで昇温して純アルミニウムを溶融し、次いで、Al-10Ti、Al-50Cu、Al-10Mn、純Si合金を添加し、中間合金が溶融した後、炉は690℃まで降温し、ベルジャーを用いて純Mgを坩堝の底部領域に押し込んで溶融し、次いで5分間撹拌する。続いて溶融物を720℃まで昇温し、0.4MPaの圧力を有する窒素ガスを溶融物に導入し、0.4%の溶融物総重量の精錬剤粉末を導入し、300r/min、0.5sccmのガス流量で10min通気してスラグを除去し、ガスを除去する。続いて12分間静置し、且つスラグ除去処理を完了する。精錬が完了した後、ベルジャーを用いてAl-10Er中間合金を坩堝の底部領域に圧入して溶融し、完全に溶融するまで5分間撹拌し、続いて12分間静置し、且つオンサイトでの迅速な成分分析試験を行う。成分合格後、690℃で高圧鋳造を行う。射出速度は3m/sであり、鋳造圧力は80MPaであり、離型剤比率は1:100であり、金型温度は230℃であった。生産過程に使用される金型はダイカストのテストバー金型であり、得られた鋳物はA2と記す。
【0017】
実施例3
本実施例は非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金に関し、各成分の重量百分率は、Si:8.0wt.%、Mg:0.25wt.%、Mn:0.6wt.%、Ti:0.15wt.%、Cu:0.15wt.%、V:0.02wt.%、Er:0.05wt.%、Sr:0.025wt.%、Fe:0.12wt.%であり、他の不純物の総量は0.3wt.%であり、残部はAlである。
【0018】
本実施例の非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金の製造及びそのダイカストプロセスは以下の工程を含む。
1)乾燥:準備された原料の純アルミニウム、純Si、純Mg、Al-10Mn中間合金、Al-10Ti中間合金、Al-50Cu中間合金、Al-10Er中間合金、Al-5V中間合金を、200℃まで予熱し、乾燥処理を行う。
2)製錬:炉は755℃まで昇温して純アルミニウムを溶融し、次いで、Al-10Ti、Al-50Cu、Al-10Mn、Al-5V、純Si合金を添加し、中間合金が溶融した後、炉は690℃まで降温し、ベルジャーを用いて純Mgを坩堝の底部領域に押し込んで溶融し、次いで5分間撹拌する。続いて溶融物を720℃まで昇温し、0.4MPaの圧力を有する窒素ガスを溶融物に導入し、0.4%の溶融物総重量の精錬剤粉末を導入し、300r/min、0.5sccmのガス流量で10min通気してスラグを除去し、ガスを除去する。続いて12分間静置し、且つスラグ除去処理を完了する。精錬が完了した後、ベルジャーを用いてAl-10Er中間合金を坩堝の底部領域に圧入して溶融し、完全に溶融するまで5分間撹拌し、続いて12分間静置し、且つオンサイトでの迅速な成分分析試験を行う。成分合格後、690℃で高圧鋳造を行う。射出速度は3m/sであり、鋳造圧力は80MPaであり、離型剤比率は1:100であり、金型温度は230℃であった。生産過程に使用される金型はダイカストのテストバー金型であり、得られた鋳物はA3と記す。
【0019】
実施例4
本実施例は非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金に関し、各成分の重量百分率は、Si:9.5wt.%、Mg:0.25wt.%、Mn:0.6wt.%、Ti:0.15wt.%、Cu:0.15wt.%、V:0.02wt.%、Er:0.05wt.%、Sr:0.025wt.%、Fe:0.12wt.%であり、他の不純物の総量は0.3wt.%であり、残部はAlである。
【0020】
本実施例の非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金の製造及びそのダイカストプロセスは以下の工程を含む。
1)乾燥:準備された原料の純アルミニウム、純Si、純Mg、Al-10Mn中間合金、Al-10Ti中間合金、Al-50Cu中間合金、Al-10Er中間合金、Al-5V中間合金を、200℃まで予熱し、乾燥処理を行う。
2)製錬:炉は755℃まで昇温して純アルミニウムを溶融し、次いで、Al-10Ti、Al-50Cu、Al-10Mn、Al-5V、純Si合金を添加し、中間合金が溶融した後、炉は690℃まで降温し、ベルジャーを用いて純Mgを坩堝の底部領域に押し込んで溶融し、次いで5分間撹拌する。続いて溶融物を720℃まで昇温し、0.4MPaの圧力を有する窒素ガスを溶融物に導入し、0.4%の溶融物総重量の精錬剤粉末を導入し、300r/min、0.5sccmのガス流量で10min通気してスラグを除去し、ガスを除去する。続いて12分間静置し、且つスラグ除去処理を完了する。精錬が完了した後、ベルジャーを用いてAl-10Er中間合金を坩堝の底部領域に圧入して溶融し、完全に溶融するまで5分間撹拌し、続いて12分間静置し、且つオンサイトでの迅速な成分分析試験を行う。成分合格後、690℃で高圧鋳造を行う。射出速度は3m/sであり、鋳造圧力は80MPaであり、離型剤比率は1:100であり、金型温度は230℃であった。生産過程に使用される金型はダイカストのテストバー金型であり、得られた鋳物はA4と記す。
【0021】
実施例5
本実施例は非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金に関し、各成分の重量百分率は、Si:9.5wt.%、Mg:0.25wt.%、Mn:0.6wt.%、Ti:0.15wt.%、Cu:0.15wt.%、V:0.02wt.%、La:0.05wt.%、Sr:0.025wt.%、Fe:0.12wt.%であり、他の不純物の総量は0.3wt.%であり、残部はAlである。
【0022】
本実施例の非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金の製造及びそのダイカストプロセスは以下の工程を含む。
1)乾燥:準備された原料の純アルミニウム、純Si、純Mg、Al-10Mn中間合金、Al-10Ti中間合金、Al-50Cu中間合金、Al-10La中間合金、Al-5V中間合金を、200℃まで予熱し、乾燥処理を行う。
2)製錬:炉は720℃まで昇温して純アルミニウムを溶融し、その後、755℃まで昇温してAl-10Ti、Al-50Cu、Al-10Mn、Al-5V、純Si合金を添加し、中間合金が溶融した後、炉は690℃まで降温し、ベルジャーを用いて純Mgを坩堝の底部領域に押し込んで溶融し、次いで5分間撹拌する。続いて溶融物を720℃まで昇温し、0.4MPaの圧力を有する窒素ガスを溶融物に導入し、0.4%の溶融物総重量の精錬剤粉末を導入し、300r/min、0.5sccmのガス流量で10min通気してスラグを除去し、ガスを除去する。続いて12分間静置し、且つスラグ除去処理を完了する。精錬が完了した後、ベルジャーを用いてAl-10La中間合金を坩堝の底部領域に圧入して溶融し、完全に溶融するまで5分間撹拌し、続いて12分間静置し、且つオンサイトでの迅速な成分分析試験を行う。成分合格後、690℃で高圧鋳造を行う。射出速度は3m/sであり、鋳造圧力は80MPaであり、離型剤比率は1:100であり、金型温度は230℃であった。生産過程に使用される金型はダイカストのテストバー金型であり、得られた鋳物はA5と記す。
【0023】
実施例6
本実施例は非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金に関し、各成分の重量百分率は、Si:9.5wt.%、Mg:0.25wt.%、Mn:0.6wt.%、Ti:0.15wt.%、Cu:0.15wt.%、V:0.02wt.%、Ce:0.05wt.%、Sr:0.025wt.%、Fe:0.12wt.%であり、他の不純物の総量は0.3wt.%であり、残部はAlである。
【0024】
本実施例の非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金の製造及びそのダイカストプロセスは以下の工程を含む。
1)乾燥:準備された原料の純アルミニウム、純Si、純Mg、Al-10Mn中間合金、Al-10Ti中間合金、Al-50Cu中間合金、Al-10Ce中間合金、Al-5V中間合金を、200℃まで予熱し、乾燥処理を行う。
2)製錬:炉は720℃まで昇温して純アルミニウムを溶融し、その後、755℃まで昇温してAl-10Ti、Al-50Cu、Al-10Mn、Al-5V、純Si合金を添加し、中間合金が溶融した後、炉は690℃まで降温し、ベルジャーを用いて純Mgを坩堝の底部領域に押し込んで溶融し、次いで5分間撹拌する。続いて溶融物を720℃まで昇温し、0.4MPaの圧力を有する窒素ガスを溶融物に導入し、0.4%の溶融物総重量の精錬剤粉末を導入し、300r/min、0.5sccmのガス流量で10min通気してスラグを除去し、ガスを除去する。続いて12分間静置し、且つスラグ除去処理を完了する。精錬が完了した後、ベルジャーを用いてAl-10Ce中間合金を坩堝の底部領域に圧入して溶融し、完全に溶融するまで5分間撹拌し、続いて12分間静置し、且つオンサイトでの迅速な成分分析試験を行う。成分合格後、690℃で高圧鋳造を行う。射出速度は3m/sであり、鋳造圧力は80MPaであり、離型剤比率は1:100であり、金型温度は230℃であった。生産過程に使用される金型はダイカストのテストバー金型であり、得られた鋳物はA6と記す。
【0025】
実施例7
本実施例は非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金に関し、各成分の重量百分率は、Si:10wt.%、Mg:0.5wt.%、Mn:0.8wt.%、Ti:0.2wt.%、Cu:0.5wt.%、V:0.1wt.%、La:0.15wt.%、Sr:0.05wt.%、Fe:0.12wt.%であり、他の不純物の総量は0.3wt.%であり、残部はAlである。
【0026】
本実施例の非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金の製造及びそのダイカストプロセスは以下の工程を含む。
1)乾燥:準備された原料の純アルミニウム、純Si、純Mg、Al-10Mn中間合金、Al-10Ti中間合金、Al-50Cu中間合金、Al-10La中間合金、Al-5V中間合金を、200℃まで予熱し、乾燥処理を行う。
2)製錬:炉は755℃まで昇温して純アルミニウムを溶融し、続いてAl-10Ti、Al-50Cu、Al-10Mn、Al-5V、純Si合金を添加し、中間合金が溶融した後、炉は690℃まで降温し、ベルジャーを用いて純Mgを坩堝の底部領域に押し込んで溶融し、次いで5分間撹拌する。続いて溶融物を720℃まで昇温し、0.4MPaの圧力を有する窒素ガスを溶融物に導入し、0.4%の溶融物総重量の精錬剤粉末を導入し、300r/min、0.5sccmのガス流量で10min通気してスラグを除去し、ガスを除去する。続いて12分間静置し、且つスラグ除去処理を完了する。精錬が完了した後、ベルジャーを用いてAl-10La中間合金を坩堝の底部領域に圧入して溶融し、完全に溶融するまで5分間撹拌し、続いて12分間静置し、且つオンサイトでの迅速な成分分析試験を行う。成分合格後、690℃で高圧鋳造を行う。射出速度は3m/sであり、鋳造圧力は80MPaであり、離型剤比率は1:100であり、金型温度は230℃であった。生産過程に使用される金型はダイカストのテストバー金型であり、得られた鋳物はA7と記す。
【0027】
実施例8
本実施例は非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金に関し、各成分の重量百分率は、Si:8wt.%、Mg:0.1wt.%、Mn:0.5wt.%、Ti:0.05wt.%、Cu:0.05wt.%、V:0.01wt.%、La:0.01wt.%、Sr:0.01wt.%、Fe:0.12wt.%であり、他の不純物の総量は0.3wt.%であり、残部はAlである。
【0028】
本実施例の非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金の製造及びそのダイカストプロセスは以下の工程を含む。
1)乾燥:準備された原料の純アルミニウム、純Si、純Mg、Al-10Mn中間合金、Al-10Ti中間合金、Al-50Cu中間合金、Al-10La中間合金、Al-5V中間合金を、200℃まで予熱し、乾燥処理を行う。
2)製錬:炉は755℃まで昇温して純アルミニウムを溶融し、続いてAl-10Ti、Al-50Cu、Al-10Mn、Al-5V、純Si合金を添加し、中間合金が溶融した後、炉は690℃まで降温し、ベルジャーを用いて純Mgを坩堝の底部領域に押し込んで溶融し、次いで5分間撹拌する。続いて溶融物を720℃まで昇温し、0.4MPaの圧力を有する窒素ガスを溶融物に導入し、0.4%の溶融物総重量の精錬剤粉末を導入し、300r/min、0.5sccmのガス流量で10min通気してスラグを除去し、ガスを除去する。続いて12分間静置し、且つスラグ除去処理を完了する。精錬が完了した後、ベルジャーを用いてAl-10La中間合金を坩堝の底部領域に圧入して溶融し、完全に溶融するまで5分間撹拌し、続いて12分間静置し、且つオンサイトでの迅速な成分分析試験を行う。成分合格後、690℃で高圧鋳造を行う。射出速度は3m/sであり、鋳造圧力は80MPaであり、離型剤比率は1:100であり、金型温度は230℃であった。生産過程に使用される金型はダイカストのテストバー金型であり、得られた鋳物はA8と記す。
【0029】
比較例1
本比較例は非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金に関し、各成分の重量百分率は、Si:8.0wt.%、Mg:0.25wt.%、Mn:0.6wt.%、Ti:0.15wt.%、Cu:0.15wt.%、Sr:0.025wt.%、Fe:0.12wt.%であり、他の不純物の総量は0.3wt.%であり、残部はAlである。
【0030】
本比較例の非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金の製造及びそのダイカストプロセスは以下の工程を含む。
1)乾燥:準備された原料の純アルミニウム、純Si、純Mg、Al-10Mn中間合金、Al-10Ti中間合金、Al-50Cu中間合金を、200℃まで予熱し、乾燥処理を行う。
2)製錬:炉は755℃まで昇温して純アルミニウムを溶融し、続いてAl-10Ti、Al-50Cu、Al-10Mn、純Si合金を添加し、中間合金が溶融した後、炉は690℃まで降温し、ベルジャーを用いて純Mgを坩堝の底部領域に押し込んで溶融し、次いで5分間撹拌する。続いて溶融物を720℃まで昇温し、0.4MPaの圧力を有する窒素ガスを溶融物に導入し、0.4%の溶融物総重量の精錬剤粉末を導入し、300r/min、0.5sccmのガス流量で10min通気してスラグを除去し、ガスを除去する。続いて12分間静置し、且つスラグ除去処理を完了する。且つオンサイトでの迅速な成分分析試験を行う。成分合格後、690℃で高圧鋳造を行う。ダイカストプロセスのパラメータとダイカスト用の金型は実施例1と同じとし、鋳物A9を得た。
【0031】
比較例2
本比較例は非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金に関し、各成分の重量百分率は、Si:9.5wt.%、Mg:0.25wt.%、Mn:0.6wt.%、Ti:0.15wt.%、Cu:0.15wt.%、Sr:0.025wt.%、Fe:0.12wt.%であり、他の不純物の総量は0.3wt.%であり、残部はAlである。
【0032】
本比較例の非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金の製造及びそのダイカストプロセスは以下の工程を含む。
1)乾燥:準備された原料の純アルミニウム、純Si、純Mg、Al-10Mn中間合金、Al-10Ti中間合金、Al-50Cu中間合金を、200℃まで予熱し、乾燥処理を行う。
2)製錬:炉は755℃まで昇温して純アルミニウムを溶融し、続いてAl-10Ti、Al-50Cu、Al-10Mn、純Si合金を添加し、中間合金が溶融した後、炉は690℃まで降温し、ベルジャーを用いて純Mgを坩堝の底部領域に押し込んで溶融し、次いで5分間撹拌する。続いて溶融物を720℃まで昇温し、0.4MPaの圧力を有する窒素ガスを溶融物に導入し、0.4%の溶融物総重量の精錬剤粉末を導入し、300r/min、0.5sccmのガス流量で10min通気してスラグを除去し、ガスを除去する。続いて12分間静置し、且つスラグ除去処理を完了する。且つオンサイトでの迅速な成分分析試験を行う。成分合格後、690℃で高圧鋳造を行う。ダイカストプロセスのパラメータとダイカスト用の金型は実施例1と同じとし、鋳物A10を得た。
【0033】
比較例3
本比較例は非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金に関し、各成分の重量百分率は、Si:9.5wt.%、Mg:0.25wt.%、Mn:0.6wt.%、Ti:0.15wt.%、Cu:0.15wt.%、V:0.15wt.%、La:0.05wt.%、Sr:0.025wt.%、Fe:0.12wt.%であり、他の不純物の総量は0.3wt.%であり、残部はAlである。
【0034】
本比較例の非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金の製造及びそのダイカストプロセスは以下の工程を含む。
1)乾燥:準備された原料の純アルミニウム、純Si、純Mg、Al-10Mn中間合金、Al-10Ti中間合金、Al-50Cu中間合金、Al-10La中間合金、Al-5V中間合金を、200℃まで予熱し、乾燥処理を行う。
2)製錬:炉は755℃まで昇温して純アルミニウムを溶融し、続いてAl-10Ti、Al-50Cu、Al-10Mn、Al-5V、純Si合金を添加し、中間合金が溶融した後、炉は690℃まで降温し、ベルジャーを用いて純Mgを坩堝の底部領域に押し込んで溶融し、次いで5分間撹拌する。続いて溶融物を720℃まで昇温し、0.4MPaの圧力を有する窒素ガスを溶融物に導入し、0.4%の溶融物総重量の精錬剤粉末を導入し、300r/min、0.5sccmのガス流量で10min通気してスラグを除去し、ガスを除去する。続いて12分間静置し、且つスラグ除去処理を完了する。精錬が完了した後、ベルジャーを用いてAl-10La中間合金を坩堝の底部領域に圧入して溶融し、完全に溶融するまで5分間撹拌し、続いて12分間静置し、且つオンサイトでの迅速な成分分析試験を行う。成分合格後、690℃で高圧鋳造を行う。ダイカストプロセスのパラメータとダイカスト用の金型は実施例1と同じとし、鋳物A11を得た。
【0035】
比較例4
本比較例は非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金に関し、各成分の重量百分率は、Si:9.5wt.%、Mg:0.25wt.%、Mn:0.6wt.%、Ti:0.15wt.%、Cu:0.15wt.%、V:0.02wt.%、La:0.2wt.%、Sr:0.025wt.%、Fe:0.12wt.%であり、他の不純物の総量は0.3wt.%であり、残部はAlである。
【0036】
本比較例の非熱処理で強化された高強靭なダイカストアルミニウムシリコン合金の製造及びそのダイカストプロセスは以下の工程を含む。
1)乾燥:準備された原料の純アルミニウム、純Si、純Mg、Al-10Mn中間合金、Al-10Ti中間合金、Al-50Cu中間合金、Al-10La中間合金、Al-5V中間合金を、200℃まで予熱し、乾燥処理を行う。
2)製錬:炉は755℃まで昇温して純アルミニウムを溶融し、続いてAl-10Ti、Al-50Cu、Al-10Mn、Al-5V、純Si合金を添加し、中間合金が溶融した後、炉は690℃まで降温し、ベルジャーを用いて純Mgを坩堝の底部領域に押し込んで溶融し、次いで5分間撹拌する。続いて溶融物を720℃まで昇温し、0.4MPaの圧力を有する窒素ガスを溶融物に導入し、0.4%の溶融物総重量の精錬剤粉末を導入し、300r/min、0.5sccmのガス流量で10min通気してスラグを除去し、ガスを除去する。続いて12分間静置し、且つスラグ除去処理を完了する。精錬が完了した後、ベルジャーを用いてAl-10La中間合金を坩堝の底部領域に圧入して溶融し、完全に溶融するまで5分間撹拌し、続いて12分間静置し、且つオンサイトでの迅速な成分分析試験を行う。成分合格後、690℃で高圧鋳造を行う。ダイカストプロセスのパラメータとダイカスト用の金型は実施例1と同じとし、鋳物A12を得た。
【0037】
前述の実施例1、2、3、4、5、6、7、8と比較例1、2、3、4でそれぞれ製造された鋳物A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12に力学的性能試験を行い、試験結果は表1に示す。A1、A2、A3、A9鋳物の力学的性能を比較すると、V元素又は希土類Er元素を単独で添加し、合金の強度及び伸び率が明らかに向上し、引張強度が最大27MPa向上し、伸び率の向上幅が24.1%に達する。VとEr元素を同時に添加することによる合金の塑性向上はより顕著であり、鋳物の伸び率は、8.7%(A9)から、14.9%(A3)まで顕著に向上し、増幅率は71.2%である。A4、A10鋳物の力学的性能を比較すると同様に以上の規則を見出すことができる。VとEr元素を複合添加することにより高Si含有量(9.5wt.%)のダイカストアルミニウム合金の塑性を顕著に向上させ、それにより伸び率が6.5%(A10鋳物)から12.9%(A4鋳物)に達し、合金の高強度・高靭性の特性を満たす。A4、A5、A6、A10鋳物の力学的性能を比較すると、VとEr、La、Ce希土類元素の複合添加はいずれもダイカストアルミニウム合金の塑性と引張強度を顕著に向上させることができる。そのうちA4-A6鋳物の引張強度は~281MPa(この記号の意味するところは、281MPa程度である)、伸び率は~12.8%であり、A10鋳物の引張強度及び伸び率よりそれぞれ16.5%及び97%向上する。このように本特許に含まれる三種類のRE希土類が合金に対していずれも顕著な作用を有することを説明する。A5、A7、A8、A11、A12鋳物の力学的性能を比較すると、本特許の合金成分範囲において、Vと希土類元素を複合添加することによっていずれもダイカストアルミニウム合金の降伏強度が120MPaより大きく、引張強度が260MPaより大きく、伸び率が10%より大きく(A5、A7、A8鋳物)、本特許の成分範囲における合金の優れた力学的性能を体現する。合金においてVが0.15(鋳物A11)に達する又は希土類元素が0.2(鋳物A12)に達して特許範囲を超えた後、合金の伸び率と引張強度が著しく低下し、特に伸び率が8%未満に低下し、高強度・高靭性ダイカストアルミニウム合金材料を得ることができない。以上のように、本発明に係る合金成分範囲において、V元素及びRE元素(La、Er、Ce)を添加することによりダイカストAl-Si合金は非熱処理状態で高強度・高靭性の特徴を有する。
【表1】
【0038】
上記実施例1-8と比較例1-4でそれぞれ製造された鋳物A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12に対してミクロ組織観察を行い、ミクロ組織は図1に示すようにA1(a)、A2(b)、A3(c)、A9(i)の組織を比較すると、Vと希土類元素Erの導入に伴い、共晶Si組織が顕著に微細化される。合金中にVおよびErが存在しない場合、鋳物組織中の共晶Siは、図1(i)のような層状構造を呈し、粒子サイズは約4μmである。V又はEr元素の導入に伴い、共晶Si組織は層状から粒子状に変換し、且つ粒子サイズは1μmまで顕著に低下し、図1(a)及び(b)に示す。VおよびErの複合添加に伴い、組織中の共晶Siのサイズはさらに低下し、共晶Siは、図1(c)のように、より微細な蠕虫状組織を示す。組織特徴の変化は機械的特性の変化と密接に関連する。明らかに、VとEr元素を導入することにより共晶Si組織を顕著に微細化でき、且つその形状を変化させ、合金の性能を顕著に変化させる。A4組織とA10組織との比較により、VとEr元素の複合作用は高Si含有量の合金組織に対しても同様に有効であることが分かる。Si含有量が9.5wt%であり、VおよびEr元素を添加しない合金の場合、組織における共晶Si組織は粗大な折れ線状を呈し、折れ線状組織のサイズは最大10μmに達することができる(図1(j))。一方、V元素とEr元素の導入に伴い、合金の共晶Si組織は蠕虫状に著しく微細化したが(図1(d)に示す)、四角い塊状の共晶Si組織が局在し、合金の塑性に一定の影響を与えた。したがって、A3合金の塑性はA4合金の塑性よりも優れている。A4、A5、A6、A7、A8、A10鋳物組織を比較することにより、本特許の合金範囲において、VとEr、La、Ce希土類元素を複合添加することによりいずれもダイカストアルミニウム合金における粗大な折れ線状組織を消失させることができ、それにより合金の性能を保証する。A5、A11、A12鋳物組織を比較すると分かるように、多すぎるV元素の添加は合金組織にAlVの第二相を発生させ、多すぎる希土類元素の添加は合金にAlLaの第二相を発生させ、これらの第二相は合金の塑性を大幅に低下させる。一般的に、本特許合金に導入されたVとRE元素の複合作用は、組織における共晶Si粒子を更に微細に分散させ、形態も非常に改善され、この組織特徴が合金に優れた力学的性能を持たせた。
【0039】
上記は本発明の実施例にすぎず、本発明の特許範囲を限定するものではなく、本発明の明細書を利用してなされた等価構造若しくは等価フローの変換、又は他の関連する技術分野での直接的若しくは間接的な使用は、本発明の特許保護範囲に含まれることも同様である。
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図1(e)】
図1(f)】
図1(g)】
図1(h)】
図1(i)】
図1(j)】
図1(k)】
図1(l)】
【国際調査報告】