IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グリーン リチウム-イオン プライベート リミテッドの特許一覧

特表2024-546406リチウムイオン電池からリチウムを回収するためのプロセスおよびシステム
<>
  • 特表-リチウムイオン電池からリチウムを回収するためのプロセスおよびシステム 図1
  • 特表-リチウムイオン電池からリチウムを回収するためのプロセスおよびシステム 図2
  • 特表-リチウムイオン電池からリチウムを回収するためのプロセスおよびシステム 図3
  • 特表-リチウムイオン電池からリチウムを回収するためのプロセスおよびシステム 図4
  • 特表-リチウムイオン電池からリチウムを回収するためのプロセスおよびシステム 図5
  • 特表-リチウムイオン電池からリチウムを回収するためのプロセスおよびシステム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池からリチウムを回収するためのプロセスおよびシステム
(51)【国際特許分類】
   C01D 15/08 20060101AFI20241217BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20241217BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20241217BHJP
   C22B 26/12 20060101ALI20241217BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C01D15/08
C22B7/00 C
C22B3/44 101Z
C22B26/12
H01M10/54
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513842
(86)(22)【出願日】2023-04-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 SG2023050257
(87)【国際公開番号】W WO2023204761
(87)【国際公開日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】63/332,025
(32)【優先日】2022-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.SWIFT
2.MATLAB
3.SIMULINK
(71)【出願人】
【識別番号】523202602
【氏名又は名称】グリーン リチウム-イオン プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】カタル,レザ
(72)【発明者】
【氏名】アコンディ,エブラヒム
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4K001AA34
4K001BA22
4K001DB22
5H031RR02
(57)【要約】
硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含むリチウムイオン電池廃棄物流れから、リチウム(Li)を回収するためのシステムおよび方法が提供される。前記システムは、任意選択的な加熱システムを有する蒸発器ユニットと、前記蒸発器ユニットの下流または上流にある、硫酸ナトリウム(NaSO)を冷却および固体化させるための晶析器ユニットと、を含んでもよい。前記晶析器ユニットまたは前記蒸発器ユニットの下流には、炭酸リチウム(LiCO)生成物を生成するリチウム回収ユニットが配置されている。方法には、当該廃棄物流れから水の一部を蒸発させて、水蒸気と流出物流れとを生成する工程が含まれる。次いで、当該流出物流れは冷却され、晶析器容器において硫酸ナトリウム(NaSO)が固体化される。固体硫酸ナトリウム(NaSO)は除去され、流出物流れが加熱され、続いて、炭酸ナトリウム(NaCO)が導入され、炭酸リチウム(LiCO)生成物が生成され、次いで、炭酸リチウム(LiCO)生成物が回収される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するためのシステムであって、
入口、第1出口、および第2出口を有する蒸発器と、
(i)少なくとも1つの冷却器と、
(ii)入口、第1出口、および第2出口を備える晶析器容器と、
を備える晶析器ユニットと、
前記晶析器ユニットまたは前記蒸発器の下流にあるリチウム回収ユニットであって、
(i)前記晶析器ユニットからの第2流出物流れまたは前記蒸発器からの第4流出物流れを受け取る第1入口と、炭酸ナトリウム(NaCO)を受け取る第2入口と、出口と、攪拌機と、を備える反応器と、
(ii)前記反応器と熱連通する熱源と、
(iii)前記反応器の前記出口と流体連通する固液分離器であって、生成物流れが当該固液分離器を通過して、炭酸リチウム(LiCO)生成物を含む濃縮液と廃棄物流れとに分離される固液分離器と、
を備えるリチウム回収ユニットと、
前記蒸発器と前記晶析器ユニットと前記リチウム回収ユニットとの間に流体連通を確立するための流体導管と、
前記流体導管内で流体を循環させるための少なくとも1つのポンプと、
を備えるシステムであって、
(i)
硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む液体流れを前記蒸発器の前記入口が受け取り、前記蒸発器において前記液体流れからの前記水の少なくとも一部が蒸発して、前記第2出口を通過する水蒸気と前記第1出口を通過する流出物流れとが生成し、前記流出物流れを前記蒸発器の下流にある前記晶析器ユニットが受け取って、固体硫酸ナトリウム(NaSO)が形成されるように当該流出物流れを冷却し、前記蒸発器の前記第1出口からの前記流出物流れを前記晶析器容器の前記入口が受け取り、前記晶析器容器の前記第1出口を介して前記固体硫酸ナトリウム(NaSO)を含む副生成物が除去され、前記晶析器容器の前記第2出口を介して前記第2流出物流れが除去されるか、
または、
(ii)
前記液体流れを前記晶析器ユニットが受け取って、固体硫酸ナトリウム(NaSO)が形成されるように当該液体流れを冷却し、前記液体流れを前記晶析器容器の前記入口が受け取り、前記晶析器容器の前記第1出口を介して前記固体硫酸ナトリウム(NaSO)を含む副生成物が除去され、前記晶析器容器の前記第2出口を介して第3流出物流れが除去され、硫酸リチウム(LiSO)および水(HO)を含む前記第3流出物流れを前記蒸発器の前記入口が受け取り、前記蒸発器において前記第3流出物流れからの前記水の少なくとも一部が蒸発して、前記第2出口を通過する水蒸気と前記第1出口を通過する前記第4流出物流れとが生成するか、
のいずれかであるシステム。
【請求項2】
前記蒸発器の上流に加熱システムをさらに備え、
前記加熱システムは、前記液体流れを前記蒸発器に入るよりも前に加熱するための少なくとも1つの加熱器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
少なくとも1つの前記加熱器は、予熱器であり、
前記加熱システムは、前記予熱器の下流に熱交換器をさらに備え、
前記熱交換器は、前記蒸発器からの水蒸気と前記液体流れとを熱交換関係において受け取って、前記液体流れの温度を増大させる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記加熱システムは、前記蒸発器と前記熱交換器との間に配置された圧縮器であって、前記水蒸気の圧力および温度のうちの少なくとも一方を前記熱交換器に入るよりも前に増大させる圧縮器をさらに備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
少なくとも1つの前記冷却器は、熱交換器を含み、
前記熱交換器は、前記液体流れと前記第3とを熱交換関係において受け取って、当該液体流れの温度を低減させ、かつ前記第3流出物の温度を前記蒸発器に入るよりも前に増大させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記晶析器ユニットは、前記晶析器容器の上流に複数の冷却器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
複数の前記冷却器のうちの少なくとも1つの冷却器は、前記晶析器容器からの流れと前記液体流れとを熱交換関係において受け取り、当該液体流れの温度を低減させる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記晶析器ユニットは、前記晶析器容器の前記第1出口の下流に遠心分離機をさらに備え、
前記遠心分離機は、前記固体硫酸ナトリウム(NaSO)を含む副生成物を受け取り、硫酸ナトリウム(NaSO)固体から液体を分離する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記晶析器ユニットは、前記晶析器容器の上流に複数の冷却器をさらに備え、
複数の前記冷却器のうちの少なくとも1つの冷却器は、前記液体流れとの熱交換関係にある前記遠心分離機からの液体を受け取り、当該液体流れの温度を低減させる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記固液分離器は、空気圧フィルタおよび遠心分離機からなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
リチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するための方法であって、
硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む液体流れから硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させる工程であって、
(i)
水蒸気と流出物流れとが生成されるように、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む前記液体流れ内の水の一部を蒸発させ、第2流出物流れが生成されるように、前記流出物流れを冷却して晶析器容器内で当該流出物流れから硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させることによって、硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させる工程、
または、
(ii)
第3流出物流れが生成されるように、前記液体流れを冷却して晶析器容器内で当該液体流れから硫酸ナトリウム(NaSO)固体を固体化させ、水蒸気と第4流出物流れとが生成されるように、前記第3流出物流れ内の水の一部を蒸発させることによって、硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させる工程と、
前記第2流出物流れまたは前記第3流出物流れから前記硫酸ナトリウム(NaSO)固体を除去する工程と、
炭酸リチウム(LiCO)生成物流れが生成されるように、前記第2流出物流れまたは前記第4流出物流れを加熱して当該第2流出物流れまたは当該第4流出物流れに炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する工程と、
前記炭酸リチウム(LiCO)生成物流れから炭酸リチウム(LiCO)を分離する工程と、
を含む、プロセス。
【請求項12】
前記液体流れを蒸発させる前に、約90℃以上の温度に当該液体流れを加熱する工程
または、
前記第3流出物を蒸発させる前に、約90℃以上の温度に当該第3流出物を加熱する工程をさらに含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記液体流れを加熱する前記工程は、蒸発させる間に生成された前記水蒸気と熱を交換させる工程をさらに含み、
または、
前記第3流出物流れを加熱する前記工程は、前記液体流れと熱を交換させる工程をさらに含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記液体流れと熱を交換させる前記工程よりも前に、前記水蒸気を圧縮する工程をさらに含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記第2流出物流れまたは前記第4流出物流れを加熱する前記工程は、約80℃以上約100℃未満の温度に前記第2流出物流れまたは前記第4流出物流れを加熱し、炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する前記工程の間に前記温度を維持する工程である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項16】
炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する前記工程は、化学量論的に約10%以上約15%以下過剰の炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する工程である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項17】
前記流出物流れまたは前記液体流れを冷却する前記工程は、約0℃以下の温度に前記流出物流れまたは前記液体流れを冷却する工程である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項18】
冷却する前記工程は、複数の冷却段階において行われ、
第1冷却段階では、前記流出物流れまたは前記液体流れの温度が約40℃以下の温度に低減され、
第2冷却段階では、前記流出物流れまたは前記液体流れの温度が約30℃以下の温度に低減され、
第3冷却段階では、前記流出物流れまたは前記液体流れの温度が約-2℃以下の温度に低減される、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記液体流れを冷却する前記工程は、前記晶析器容器内で生成された前記第3流出物と熱を交換させる工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記第2流出物流れまたは第3流出物流れから前記硫酸ナトリウム(NaSO)固体を除去する前記工程は、前記硫酸ナトリウム(NaSO)固体を含む副生成物流れを遠心分離して、液体を分離し、前記硫酸ナトリウム(NaSO)固体を収集することによって行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記炭酸リチウム(LiCO)生成物は、約80重量%以上の純度を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記第4流出物流れの一部を前記液体流れと組み合わせる工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
(関連出願の相互参照)
本出願は、2022年4月18日に出願された米国仮出願第63/332,025号の利益を主張するものである。上記出願の全開示は、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、リチウムイオン電池廃棄物流れから炭酸リチウム(LiCO)生成物としてリチウム(Li)を回収するためのシステムおよびプロセスに関する。
〔背景技術〕
【0003】
このセクションには、本開示に関連する背景技術が提供される。当該背景技術は、必ずしも従来技術であるとは限らない。
【0004】
電気化学セル(例えば、充電式二次リチウムイオン電池等)は、エネルギー貯蔵ユニットとして、消費者製品および車両を含む様々な用途で広く使用されている。リチウムイオン電池は、エネルギー密度および電池電圧が大きく、貯蔵寿命および放電率が小さく、使用温度範囲が広い。しかしながら、かかるリチウムイオン電池の推定寿命は、およそ3~10年であると推定され、使用済み電池はその後、廃棄される。リチウムイオン電池(lithium-ion batteries:LIB)にはしばしば、価値のある金属(リチウムが含まれるため、当該リチウムが無駄になり得る)が含まれるため、リサイクルすることが重要である。
【0005】
米国の地質調査所によれば、リチウム市場は、電池のみならず、特にセラミクス、ガラス、潤滑等の、様々な産業からの需要によって牽引されている。リチウムは通常、ブラインおよび鉱石から抽出され、世界の粗リチウム産出量は、年間約40,000トンに達する。しかしながら、リチウムの需要は毎年増大しており、このため、リチウムイオン電池のリチウムおよび関連する成分をリサイクルすることが必要となっている。リチウムを含むリチウムイオン電池をリサイクルすることで、世界中で減少しつつある貴重金属鉱石が節約され、また、電子廃棄物処理に関連する環境課題が低減されるだろう。
【0006】
湿式精錬および精製処理の際、リチウムは通常、炭酸リチウム(LiCO)の形態で得られる。炭酸リチウムは、リチウムイオン電池において正極/カソード材料を形成する前駆体として使用されるだけでなく、その他の化合物(例えば、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、および酸化リチウム(LiO)等)を生成するためにも使用される。LiCl、LiBr、およびLiOは、他の産業のための原料になり得る。例えば、LiBrは、吸収剤および冷媒として使用することができる。また、医療産業において、炭酸リチウムは、双極性障害の治療における活性成分として使用することができる。有益に再利用される生成物(炭酸リチウム(LiCO)生成物が含まれる)の形成のために、リチウムイオン電池由来の廃棄物流れをリサイクルできることが望ましい。
〔発明の概要〕
【0007】
このセクションは、本開示の全般的概要を提供するものであり、その全範囲またはその構成の全てを包括的に開示するものではない。
【0008】
或る態様では、本開示は、リチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するためのシステムに関する。或る態様では、前記システムは、入口、第1出口、および第2出口を有する蒸発器と、晶析器ユニットであって、(i)少なくとも1つの冷却器と、(ii)入口、第1出口、および第2出口を備える晶析器容器と、を備える晶析器ユニットと、を備える。一変形形態では、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む液体流れを前記蒸発器の前記入口が受け取る。前記蒸発器において前記液体流れからの前記水の少なくとも一部が蒸発して、前記第2出口を通過する水蒸気と前記第1出口を通過する流出物流れとが生成する。前記流出物流れを前記蒸発器の下流にある前記晶析器ユニットが受け取って、固体硫酸ナトリウム(NaSO)が形成されるように当該流出物流れを冷却する。前記蒸発器の前記第1出口からの前記流出物流れを前記晶析器容器の前記入口が受け取り、前記晶析器容器の前記第1出口を介して前記固体硫酸ナトリウム(NaSO)を含む副生成物が除去され、前記晶析器容器の前記第2出口を介して第2流出物流れが除去される。代替的な一変形形態では、前記液体流れを前記晶析器ユニットが受け取って、固体硫酸ナトリウム(NaSO)が形成されるように当該液体流れを冷却する。前記液体流れを前記晶析器容器の前記入口が受け取り、前記晶析器容器の前記第1出口を介して前記固体硫酸ナトリウム(NaSO)を含む副生成物が除去され、前記晶析器容器の前記第2出口を介して第3流出物流れが除去される。硫酸リチウム(LiSO)および水(HO)を含む前記第3流出物流れを前記蒸発器の前記入口が受け取り、前記蒸発器において前記第3流出物流れからの前記水の少なくとも一部が蒸発して、前記第2出口を通過する水蒸気と前記第1出口を通過する第4流出物流れとが生成する。前記システムは、前記晶析器ユニットまたは前記蒸発器の下流にあるリチウム回収ユニットをさらに備える。前記リチウム回収ユニットは、(i)前記晶析器ユニットからの前記第2流出物流れまたは前記蒸発器からの前記第4流出物流れを受け取る第1入口と、炭酸ナトリウム(NaCO)を受け取る第2入口と、出口と、攪拌機と、を備える反応器と、(ii)前記反応器と熱連通する熱源と、(iii)前記反応器の前記出口と流体連通する固液分離器であって、生成物流れが当該固液分離器を通過して、炭酸リチウム(LiCO)生成物を含む濃縮液と廃棄物流れとに分離される固液分離器と、を備える。前記システムは、前記蒸発器と前記晶析器ユニットと前記リチウム回収ユニットとの間に流体連通を確立するための流体導管と、前記流体導管内で流体を循環させるための少なくとも1つのポンプと、をさらに備える。
【0009】
一態様では、前記システムは、前記蒸発器の上流に加熱システムをさらに備え、前記加熱システムは、前記液体流れを前記蒸発器に入るよりも前に加熱するための少なくとも1つの加熱器を備える。
【0010】
さらなる一態様では、前記加熱器は、予熱器であり、前記加熱システムは、前記予熱器の下流に熱交換器をさらに備え、前記熱交換器は、前記蒸発器からの水蒸気と前記液体流れとを熱交換関係において受け取って、前記液体流れの温度を増大させる。
【0011】
さらなる一態様では、前記加熱システムは、前記蒸発器と前記熱交換器との間に配置された圧縮器であって、前記水蒸気の圧力および温度のうちの少なくとも一方を前記熱交換器に入るよりも前に増大させる圧縮器をさらに備える。
【0012】
さらなる一態様では、少なくとも1つの前記冷却器は、熱交換器を含み、前記熱交換器は、前記液体流れと前記第3流出物流れとを熱交換関係において受け取って、当該液体流れの温度を低減させ、かつ前記第3流出物の温度を前記蒸発器に入るよりも前に増大させる。
【0013】
一態様では、前記晶析器ユニットは、前記晶析器容器の上流に複数の冷却器をさらに備える。
【0014】
さらなる一態様では、複数の前記冷却器のうちの少なくとも1つの冷却器は、互いに熱交換関係にある前記晶析器容器からの流れと前記液体流れとを受け取り、当該液体流れの温度を低減させる。
【0015】
一態様では、前記晶析器ユニットは、前記晶析器容器の前記第1出口の下流に遠心分離機をさらに備え、前記遠心分離機は、前記固体硫酸ナトリウム(NaSO)を含む副生成物を受け取り、硫酸ナトリウム(NaSO)固体から液体を分離する。
【0016】
さらなる一態様では、前記晶析器ユニットは、前記晶析器容器の上流に複数の冷却器をさらに備え、複数の前記冷却器のうちの少なくとも1つの冷却器は、前記液体流れとの熱交換関係にある前記遠心分離機からの液体を受け取り、当該液体流れの温度を低減させる。
【0017】
一態様では、前記固液分離器は、空気圧フィルタおよび遠心分離機からなる群から選択される。
【0018】
その他の或る態様では、本開示は、リチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するためのプロセスに関する。或る態様では、前記プロセスは、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む液体流れから硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させる(solidify)工程を含む。一変形形態では、硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させる前記工程は、水蒸気と流出物流れとが生成されるように、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む前記液体流れ内の水の一部を蒸発させる工程を含む。前記プロセスは、第2流出物流れが生成されるように、前記流出物流れを冷却して晶析器容器内で当該流出物流れから硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させる工程をさらに含む。代替的な一変形形態では、硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させる工程は、第3流出物流れが生成されるように、前記液体流れを冷却して晶析器容器内で当該液体流れから硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させ、水蒸気と第4流出物流れとが生成されるように、前記第3流出物流れ内の水の一部を蒸発させる工程を含む。次いで、前記プロセスは、前記第2流出物流れまたは前記第3流出物流れから前記硫酸ナトリウム(NaSO)固体を除去する工程と、続いて、炭酸リチウム(LiCO)生成物流れが生成されるように、前記第2流出物流れまたは前記第4流出物流れを加熱して当該第2流出物流れまたは当該第4流出物流れに炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する工程を含む。最後に、前記プロセスは、前記炭酸リチウム(LiCO)生成物流れから炭酸リチウム(LiCO)を分離する工程を含む。
【0019】
一態様では、前記プロセスは、前記液体流れを蒸発させる前に、約90℃以上の温度に当該液体流れを加熱する工程をさらに含む。
【0020】
一態様では、前記プロセスは、前記第3流出物流れを蒸発させる前に、約90℃以上の温度に当該第3流出物流れを加熱する工程をさらに含む。
【0021】
さらなる一態様では、前記液体流れを加熱する前記工程は、蒸発させる間に生成された前記水蒸気と熱を交換させる工程をさらに含む。
【0022】
さらなる一態様では、前記第3流出物流れを加熱する前記工程は、前記液体流れと熱を交換させる工程をさらに含む。
【0023】
さらなる一態様では、前記プロセスは、前記液体流れと熱を交換させる前記工程よりも前に、前記水蒸気を圧縮する工程をさらに含む。
【0024】
一態様では、前記第2流出物流れまたは前記第4流出物流れを加熱する前記工程は、約80℃以上約100℃未満の温度に前記第2流出物流れまたは前記第4流出物流れを加熱する工程であり、前記プロセスは、炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する前記工程の間に前記温度を維持する工程を含む。
【0025】
一態様では、炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する前記工程は、化学量論的に約10%以上約15%以下過剰の炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する工程である。
【0026】
一態様では、前記流出物流れまたは前記液体流れを冷却する前記工程は、約0℃以下の温度に前記流出物流れまたは前記液体流れを冷却する工程である。
【0027】
さらなる一態様では、冷却する前記工程は、複数の冷却段階において行われる。第1冷却段階では、前記流出物流れまたは前記液体流れの温度が約40℃以下の温度に低減される。第2冷却段階では、前記流出物流れまたは前記液体流れの温度が約30℃以下の温度に低減される。第3冷却段階では、前記流出物流れまたは前記液体流れの温度が約-2℃以下の温度に低減される。
【0028】
一態様では、前記液体流れを冷却する前記工程は、前記晶析器容器内で生成された前記第3流出物と熱を交換させる工程を含む。
【0029】
一態様では、前記第2流出物流れまたは第3流出物流れから前記硫酸ナトリウム(NaSO)固体を除去する前記工程は、前記硫酸ナトリウム(NaSO)固体を含む副生成物流れを遠心分離して、液体を分離し、前記硫酸ナトリウム(NaSO)固体を収集することによって行われる。
【0030】
一態様では、前記炭酸リチウム(LiCO)生成物は、約80重量%以上の純度を有する。
【0031】
さらなる一態様では、前記第4流出物流れの一部は、前記液体流れと組み合わせられる。
【0032】
適用可能性のさらなる範囲は、本明細書に提供される記載から明らかになることであろう。この概要における説明および特定の具体例は、例示のみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
〔図面の簡単な説明〕
【0033】
ここに説明される図面は、選択された実施形態の例示のみを目的とするものであって可能な実施形態の全てではなく、また、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0034】
図1は、本開示の或る変形形態による、リチウムイオン電池に由来する廃棄物流れからリチウムを回収するためのシステムを示す。
【0035】
図2は、蒸発システムの上流に加熱器システムを含む、本開示の或る代替的な変形形態によるリチウムを回収するためのシステムの部分図を示す。
【0036】
図3は、晶析ユニット内において晶析器容器の上流に多段階冷却器システムを含む、本開示の或る代替的な変形形態によるリチウムを回収するためのシステムの部分図を示す。
【0037】
図4は、本開示の或る変形形態による、リチウムを回収するためのプロセスの一例を示す。
【0038】
図5は、蒸発器の上流に晶析ユニットを含む、本開示の或る変形形態による、リチウムイオン電池に由来する廃棄物流れからリチウムを回収するための代替的なシステムを示す。
【0039】
図6は、蒸発器の上流に晶析ユニットを含み、さらにシステムに還流流れが含まれる、本開示の或る変形形態による、リチウムイオン電池に由来する廃棄物流れからリチウムを回収するための代替的なシステムを示す。
【0040】
図面における複数の図の全体を通して、対応する参照番号は対応する部分を示す。
〔詳細な説明〕
【0041】
例示的な実施形態は、本開示が十分なものとなり、かつその範囲が当業者に十分に伝えられるように提供されている。本開示の実施形態の十分な理解が提供されるように、特定の組成物、構成要素、装置および方法の例等の、多数の特定の詳細が記載される。特定の詳細を採用する必要がないこと、例示的な実施形態が種々の多くの形態で実施され得ること、および、いずれも本開示の範囲を限定するように解釈されるべきものではないことは、当業者には明らかであろう。一部の例示的な実施形態において、周知のプロセス、周知の装置構造、および周知の技術は、詳細には説明しない。
【0042】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的な実施形態の説明のみを目的とするものであり、限定を意図するものではない。本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、別段の定めのない限り、複数形も含むことが意図され得る。用語「備える(含む)(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(備える)(including)」、および「有する(having)」は、包含的であり、それゆえ、記載された特徴、要素、組成物、工程、整数、動作、および/または構成要素の存在を特定するが、1または複数の他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、および/またはこれらの群の存在または追加を排除するものではない。「備える(含む)(comprising)」というオープンエンドの用語は、本明細書に記載された様々な実施形態を説明および特許請求するために使用される非限定的な用語として解されるべきであるが、或る態様では、当該用語は代替的に、「からなる(consisting of)」または「から実質的になる(consisting essentially of)」等の、むしろより限定的かつ制限的な用語であると解され得る。したがって、組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、および/または処理工程を列挙する任意の所与の実施形態について、本開示には、列挙された組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、および/または処理工程等からなり、またはから実質的になる実施形態が具体的に含まれる。「からなる」の場合にあっては、この代替的な実施形態は、任意の追加の組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、および/または処理工程を除外し、一方、「から実質的になる」の場合にあっては、基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼす任意の追加の組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、および/または処理工程はかかる一実施形態から除外されるものの、基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼさない任意の組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、および/または処理工程は、当該実施形態に含まれ得る。
【0043】
本明細書で説明される任意の方法工程、プロセス、および動作は、実行の順序について具体的に特定されない限り、説明または図示された特定の順序でそれらを実行することが必ず求められるものとは解釈されるべきではない。また、別段の指示がない限り、追加的または代替的な工程が採用されてもよいことを理解されたい。
【0044】
構成要素、要素または層が別の要素または層の「の上にある(on)」、「に係合される(engaged to)」、「に接続される(connected to)」、または「に結合される(coupled to)」と言及されるとき、当該構成要素、要素、または層は、当該別の構成要素、要素もしくは層の直接的に上にあり、係合され、接続され、もしくは結合されていてもよく、または、介在する要素もしくは層が存在していてもよい。対照的に、要素が別の要素または層の「の直接的に上にある(directly on)」、「に直接的に係合される(directly engaged to)」、「に直接的に接続される(directly connected to)」、または「に直接的に結合される(directly coupled to)」と言及される場合、介在する要素または層は存在しなくてもよい。要素間の関係を説明するために使用されるその他の語は、同様に解釈されるべきである(例えば、「間に(between)」と「直接的に間に(directly between)」、「隣接する(adjacent)」と「直接的に隣接する(directly adjacent)」等)。本明細書で使用される場合、用語「および/または(and/or)」は、関連する列挙された項目のうちの1または複数の項目の任意かつ全ての組み合わせを含む。
【0045】
第1、第2、第3等の用語は、様々な工程、要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションを説明するために本明細書で使用され得るが、これらの工程、要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションは、特に明記しない限り、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある工程、要素、構成要素、領域、層、またはセクションを、別の工程、要素、構成要素、領域、層、またはセクションと区別するためにのみ使用され得る。本明細書で使用されるときの「第1」、「第2」等の用語、およびその他の数に関する用語は、別段の定めのない限り、配列または順序を含意するものではない。したがって、後述する第1の工程、要素、構成要素、領域、層、またはセクションは、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2の工程、要素、構成要素、領域、層、またはセクションと称することもできる。
【0046】
本明細書において、「前」、「後」、「内」、「外」、「下」、「下方」、「下側」、「上方」、「上側」等の空間的または時間的に相対的な用語は、図に示すある要素または特徴に対する別の(1以上の)要素または特徴との関係性を説明して説明を容易にするために、使用され得る。空間的または時間的に相対的な用語は、図に示される向きに加えて、使用中または動作中の装置またはシステムの種々の向きを包含するよう意図され得る。
【0047】
本開示全体を通して、数値は、所与の値からのわずかな偏差、概ね言及された値を有する実施形態、および正確に言及された値を有する実施形態を包含する範囲に対する近似的な測定結果または限界を表す。詳細な説明の最後に提供される実施例以外にも、付属の特許請求の範囲を含めて本明細書におけるパラメータ(例えば、量または条件のパラメータ)の全ての数値は、数値の前に「約」が実際に出現するか否かにかかわらず、全ての場合において、用語「約」によって修飾されているものと理解されるべきである。「約」は、記載された数値がいくらかのわずかな不正確さ(正確な値にいくらか接近している;値に近似的または合理的に近い;近傍にある)を許容することを示す。「約」によってもたらされる不正確さが、当技術分野においてこの通常の意味でそれ以外の方法で理解されない場合、本明細書で使用される「約」は、かかるパラメータを測定および使用する通常の方法から起こり得る最低限の変動を示す。例えば、「約」は、5%以下の変動、任意選択的に4%以下の変動、任意選択的に3%以下の変動、任意選択的に2%以下の変動、任意選択的に1%以下の変動、任意選択的に0.5%以下の変動を含み得、或る態様では、任意選択的に0.1%以下の変動を含み得る。
【0048】
加えて、範囲の開示には、範囲について与えられた端点および部分範囲を含めて、範囲全体内における全ての値およびさらなる分割された範囲の開示が含まれる。したがって、別段の定めがない限り、範囲には端点が含まれ、また、範囲全体内における全ての別個の値およびさらなる分割された範囲の開示が含まれる。特定のパラメータ(例えば、温度、分子量、重量パーセント)についての値および値の範囲の開示は、本明細書で有用な他の値および値の範囲を除外するものではない。所与のパラメータについての2つ以上の特定の例示された値によって、そのパラメータについて特許請求され得る値の範囲に関する端点が定められ得ることが企図される。例えば、本明細書において、パラメータXが値Aを有するように例示され、さらに、パラメータXが値Zを有するように例示される場合、パラメータXは、約Aから約Zまでの値の範囲を有し得ることが企図される。同様に、あるパラメータの2つ以上の値の範囲(かかる範囲がネストされているか、重なり合っているか、または別々であるかにかかわらず)の開示は、開示された範囲の端点を使用して特許請求され得る値の範囲の全ての可能な組み合わせを包含することが企図される。例えば、パラメータXが1~10、または2~9、または3~8の範囲の値を有すると本明細書で例示される場合、パラメータXは、1~9、1~8、1~3、1~2、2~10、2~8、2~3、3~10、および3~9を含むその他の範囲の値を有し得ることも企図される。
【0049】
特に明記しない限り、組成量は、質量基準である。さらに、ある量が重量として表される場合、それは質量と互換的に使用され得るが、所与の構成要素の質量を反映しているものと解されるべきである。
【0050】
本明細書で使用するとき、用語「組成物」および「材料」は、別段の指示がない限り、好ましい化学成分、元素、または化合物を少なくとも含有する物質であって、微量の不純物を含め、追加の元素、化合物、または物質も含み得る物質を広く指すために、互換的に使用される。
【0051】
図では、矢じりで示される矢印の方向は、概して、図示に関わる材料または情報(例えば、データまたは命令)のフローを示す。例えば、要素Aおよび要素Bが様々な情報を交換しているものの要素Aから要素Bへ送信される情報が図示に関連している場合、矢印は、要素Aから要素Bへと指向し得る。この単方向の矢印は、その他の情報が要素Bから要素Aへ送信されないことを含意するものではない。さらに、要素Aから要素Bへ送られる情報について、要素Bは、要素Aに対して情報のリクエストまたは受信確認を送り得る。
【0052】
本出願では、以下の説明を含めて、用語「モジュール」または用語「コントローラ」は、例えば、コンピューティングデバイスまたはコンピューティングモジュール等の文脈で使用される場合、用語「回路」と置き換えられ得る。「モジュール」および/または「コントローラ」という用語は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC);デジタルディスクリート回路、アナログディスクリート回路、もしくは混合アナログ/デジタルディスクリート回路;デジタル集積回路、アナログ集積回路、もしくは混合アナログ/デジタル集積回路;組合せ論理回路;フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA);コードを実行するプロセッサ回路(共用、専用、またはグループ);プロセッサ回路によって実行されるコードを記憶するメモリ回路(共用、専用、またはグループ);記載された機能性を提供する他の適切なハードウェアコンポーネント;または、例えばシステムオンチップにおける、上記の一部もしくは全ての組合せを指すか、それらの一部であるか、またはそれらを含み得る。
【0053】
モジュールおよび/またはコントローラは、1または複数のインターフェース回路を含み得る。一部の実施例では、インターフェース回路は、ローカルエリアネットワーク(local area network:LAN)、インターネット、ワイドエリアネットワーク(wide area network:WAN)、またはこれらの組合せに接続されるワイヤードインターフェースまたはワイヤレスインターフェースを含み得る。本開示の任意の所与のモジュールおよび/またはコントローラの機能性は、インターフェース回路を介して接続される複数のモジュールおよび/またはコントローラの間で分散され得る。例えば、複数のモジュールおよび/またはコントローラによって、負荷分散が可能になり得る。さらなる実施例では、サーバ(遠隔、またはクラウドとしても知られる)モジュールおよび/またはサーバコントローラが、クライアントモジュールおよび/またはクライアントコントローラに代わって、一部の機能性を達成し得る。
【0054】
上記で使用されるコードという用語は、ソフトウェア、ファームウェア、および/またはマイクロコードを含み得、プログラム、ルーチン、関数、クラス、データ構造、および/またはオブジェクトを指し得る。共用プロセッサ回路という用語には、複数のモジュールおよび/またはコントローラからの一部または全部のコードを実行する単一のプロセッサ回路が包含される。グループプロセッサ回路という用語には、追加のプロセッサ回路と組み合わせて、1または複数のモジュールおよび/またはコントローラからの一部または全部のコードを実行するプロセッサ回路が包含される。複数のプロセッサ回路への言及には、ディスクリートダイ上の複数のプロセッサ回路、単一ダイ上の複数のプロセッサ回路、単一のプロセッサ回路の複数のコア、単一のプロセッサ回路の複数のスレッド、または上記の組合せが包含される。共用メモリ回路という用語には、複数のモジュールおよび/またはコントローラからの一部または全部のコードを記憶する単一のメモリ回路が包含される。グループメモリ回路という用語には、追加のメモリと組み合わせて、1または複数のモジュールおよび/またはコントローラからの一部または全部のコードを記憶するメモリ回路が包含される。
【0055】
メモリ回路という用語は、コンピュータ可読媒体という用語のサブセットである。本明細書で使用されるコンピュータ可読媒体という用語には、媒体を通って(例えば、搬送波上を)伝播する一時的な電気信号または電磁信号が包含されない;したがって、コンピュータ可読媒体という用語は、有形かつ非一時的であると見なされ得る。非一時的で有形のコンピュータ可読媒体の非限定的な例として、不揮発性メモリ回路(例えば、フラッシュメモリ回路、消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ回路、またはマスクリードオンリーメモリ回路等)、揮発性メモリ回路(例えば、スタティックランダムアクセスメモリ回路またはダイナミックランダムアクセスメモリ回路等)、磁気記憶媒体(例えば、アナログ磁気テープもしくはデジタル磁気テープ、またはハードディスクドライブ等)、および光記憶媒体(例えば、CD、DVD、またはブルーレイディスク等)がある。
【0056】
本出願で説明される装置および方法は、コンピュータプログラムにおいて実施される1または複数の特定の機能を実行するように汎用コンピュータを構成することによって作成される専用コンピュータによって部分的または完全に実装され得る。上述した機能ブロック、フローチャートコンポーネント、およびその他の要素は、ソフトウェア仕様として機能し、熟練した技術者またはプログラマの日常業務によって、これをコンピュータプログラムに変換することができる。
【0057】
コンピュータプログラムは、少なくとも1つの非一時的で有形のコンピュータ可読媒体に記憶されるプロセッサ実行可能命令を含む。また、コンピュータプログラムは、記憶されたデータを含み、または記憶されたデータに依存し得る。コンピュータプログラムは、専用コンピュータのハードウェアと対話する基本入出力システム(basic input/output system:BIOS)、専用コンピュータの特定のデバイスと対話するデバイスドライバ、1または複数のオペレーティングシステム、ユーザアプリケーション、バックグラウンドサービス、バックグラウンドアプリケーション等を包含してもよい。
【0058】
コンピュータプログラムには、(i)HTML(hypertext markup language)、XML(extensible markup language)、またはJSON(JavaScript Object Notation)等のパースされる記述テキスト、(ii)アセンブリコード、(iii)コンパイラによってソースコードから生成されるオブジェクトコード、(iv)インタプリタによって実行されるソースコード、(v)ジャストインタイムコンパイラによってコンパイルおよび実行されるソースコードが含まれ得る。単なる例にすぎないが、ソースコードは、C、C++、C#、Objective-C、Swift、Haskell、Go、SQL、R、Lisp、Java(登録商標)、Fortran、Perl、Pascal、Curl、OCaml、Javascript(登録商標)、HTML5(Hypertext Markup Language 5th revision)、Ada、ASP(Active Server Pages)、PHP(PHP:Hypertext Preprocessor)、Scala、Eiffel、Smalltalk、Erlang、Ruby、Flash(登録商標)、Visual Basic(登録商標)、Lua、MATLAB、SIMULINK、およびPython(登録商標)を含む言語によるシンタクスを用いて書かれてもよい。
【0059】
特許請求の範囲に記載された要素のうちのいずれについても、「のための手段」という語句を使用してある要素が明示的に記載されない限り、または「のための動作」もしくは「のための工程」という語句を使用する方法請求項の場合を除き、米国特許法第112条(f)の趣旨の範囲内で、ミーンズプラスファンクション要素であることは意図されない。
【0060】
さて、例示的な実施形態を、添付の図面を参照してより十分に説明する。
【0061】
様々な態様において、本開示では、リチウムイオン電池廃棄物流れから1または複数のリサイクル生成物を形成することが企図される。ここで、前記リサイクル生成物のうちの少なくとも1つのリサイクル生成物には、リチウム(Li)が含まれる。或る変形形態では、リチウム(Li)を含むリサイクル生成物には、炭酸リチウム(LiCO)が含まれてもよい。また、本開示では、或る変形形態において、有益に再利用される副生成物として硫酸ナトリウム(NaSO)を形成することが企図される。さらに、本開示では、リチウムイオン電池廃棄物流れからリサイクルされたリチウム含有生成物を回収するためのシステムが企図される。
【0062】
リチウムイオン電池廃棄物流れは、リチウムイオン電池が分解、破砕、および/または細断された後に、リチウムイオン電池から形成される。かかる廃棄物流れは、リサイクルすることが意図されるブラックマス(黒色塊:black mass)として知られる材料であり得る。集合的に、ブラックマスには、種々の種類の(例えば、種々の活物質を有する)リチウムイオン電池からの部分を含め、1または複数の使用済みリチウムイオン電池の部分が含まれ得る。ブラックマスには通常、全ての活物質が含まれる。そのため、ブラックマスには、アノード活物質と、カソード活物質と混合された電解質成分と、が含まれ得る。一部の実施例では、使用済みリチウムイオン電池には、コバルト酸リチウム(lithium cobalt oxide:LCO)、リチウムマンガン酸化物(lithium manganese oxide:LMO)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(lithium nickel manganese cobalt oxides:NMC)、リン酸鉄リチウム(lithium iron phosphate:LFP)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(lithium nickel cobalt aluminum oxide:NCA)、チタン酸リチウム(lithium titanate:LTO)等から作製される正極/カソードが含まれ得る。例えば、表1を参照されたい。表1は、一般的な市販の電池の活物質の組合せの一覧を示す。使用済みリチウムイオン電池には、グラファイト、チタン酸リチウム酸化物(lithium titanate oxide:LiTiO-LTO)、リチウム金属等から作製される負極/アノードが含まれ得る。
【0063】
【表1】
【0064】
さらに、ブラックマスには、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)等の、フッ素を含み得る、リチウム塩を含む電解質成分が含まれ得る。結果として、ブラックマスには、例えばリチウム(Li)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)等の、回収対象となる関心のある金属(例えば、貴重金属)、および、例えば鉄(Fe)、銅(Cu)、フッ素(F)、リン(P)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)等の不純物が含まれ得る。ブラックマス組成物は、リチウムイオン電池の種類に応じてバッチ間で変動し得ることを理解されたい。
【0065】
様々な態様において、本明細書に開示されたシステムおよびプロセスでは、使用済みリチウムイオン電池をリサイクルして、リチウムを、ブラックマスに含まれるその他の成分/不純物から回収および分離し、リチウム含有種を回収することができる。例として、本開示によって提供される方法およびシステムでは、リチウムイオン電池廃棄物流れを処理して、リチウム(Li)を、その他の様々な元素から分離および回収することができる。当該その他の様々な元素には、フッ素(F)、リン(P)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、(例えば、グラファイトの形態の)炭素(C)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、およびこれらの組み合わせが含まれる。或る態様では、浸出によって硫酸リチウム(LiSO)を形成し、次いで、炭酸リチウム(LiCO)としてリチウムが回収できるように当該硫酸リチウム(LiSO)を反応させることによって、使用済みのリチウムイオン電池(lithium-ion batteries:LIB)からリチウムが抽出される。
【0066】
或る態様では、リチウムイオン電池廃棄物流れに由来する廃棄物流れが形成されるように、1または複数の分離プロセスおよび/または精製プロセスが、リチウムを回収するための本システムおよび本プロセス(方法)の上流工程として実施されてもよい。したがって、廃棄物流れは、リチウム(Li)を含む(例えば、1または複数のリチウム含有化合物を含む)液体流れであってもよい。或る変形形態では、リチウムイオン電池廃棄物流れに由来する液体流れには、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)が含まれる。非限定的な例として、2023年2月22日に出願された「PROCESSES AND SYSTEMS FOR PURIFYING AND RECYCLING LITHIUM-ION BATTERY WASTE STREAMS」という名称の共同所有の米国特許出願第18/112,676号、2022年3月3日にWO2022/045973として公開された「PROCESS FOR REMOVING IMPURITIES IN THE RECYCLING OF LITHIUM-ION BATTERIES」という名称のPCT出願PCT/SG2021/050496、および2022年1月17日に出願された「PROCESS FOR RECYCLING LITHIUM IRON PHOSPHATE BATTERIES」という名称のPCT出願PCT/SG2022/050014に記載されたプロセスおよびシステムにおいて、かかる廃棄物流れが形成されてもよい。これらの各出願の関連する部分は、参照によって本明細書に援用される。様々なプロセスには、リチウムイオン電池由来の廃棄物流れのリサイクルにおける様々な湿式精錬プロセスの間に、水酸化ナトリウム(NaOH)をアルカリ塩基として用いてpHを変化させて、貴重金属の沈殿を達成する工程が含まれてもよい。上述したかかるプロセスのうちの或るプロセスでは、硫酸ニッケル、硫酸マンガン、および硫酸コバルト等の様々な金属の硫酸塩が、硫酸ナトリウムおよび硫酸リチウムと混合および溶解させられ得る。ニッケル、マンガン、およびコバルトの硫酸塩は、硫酸リチウムおよび硫酸ナトリウムよりも上流で、分離(析出)され、またはそれ以外の方法で(例えば、沈殿生成物として)回収され得る。本技術は、ナトリウム含有化合物からリチウム含有化合物を回収および精製する(例えば硫酸ナトリウムから硫酸リチウムを分離する)ための、改善された方法およびシステムに関する。
【0067】
一般に、液体流れの溶液中のリチウムの初期濃度は、リチウムを効果的にリサイクルするには低すぎる。さらに、リチウム(Li)およびナトリウム(Na)を効果的に互いから分離することの達成にあたっては、特定の課題がある。両者とも、IUPAC周期表のI族元素であるからである。例えば、ナトリウムおよびリチウムは、多くの液体媒体において、極めて溶解度が大きい。リチウム回収の困難さを悪化させているのは、ナトリウム塩およびリチウム塩の双方の溶解度積が非常に近く、その結果、多くの溶媒系において、ナトリウムおよびリチウムが同時に固体化することである。或る態様では、本技術において、液体廃棄物流れから相当量のリチウムを回収することが企図される。例えば、本明細書において企図される方法およびシステムでは、硫酸ナトリウム(NaSO)および水を含む液体流れから、相当量の硫酸リチウム(LiSO)が抽出される。
【0068】
リチウムイオン電池廃棄物流れに最初にリチウム(Li)が含まれる或る態様では、約75%以上の分離効率で、または以下に特定される値のうちのいずれかの値の分離効率でリチウムが除去され得る。処理前の流れ中に存在するリチウムの初期量と、処理後または分離後の生成物中に存在するリチウムの最終量とを比較することによって、分離効率が計算され得る。或る態様では、リチウム等の所与の成分についての分離効率(η)は、次の式によって表すことができる。
【0069】
【数1】
【0070】
ここで、xは、リチウムの初期量(質量または体積量のいずれか)であり、xは、分離プロセスが完了した後のリチウムの最終量である。より詳細に後述される通り、或る変形形態では、リチウムを回収するための本発明のシステムおよび方法を使用する分離の効率は、リチウムに関して、約75%以上であってもよく、任意選択的に約80%以上であってもよく、任意選択的に約85%以上であってもよく、任意選択的に約90%以上であってもよく、任意選択的に約95%以上であってもよく、任意選択的に約96%以上であってもよく、任意選択的に約97%以上であってもよく、任意選択的に約98%以上であってもよく、或る変形形態では、任意選択的に約99%以上であってもよい。
【0071】
概して、本開示では、存在するリチウム種を濃縮するための水回収プロセスを設けることによってリチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを含む生成物(例えば、炭酸リチウム(LiCO))を回収するための経済的な方法およびシステム/プラントであって、生成物として炭酸リチウム(LiCO)を生成して回収し、任意選択的に、副生成物として硫酸ナトリウム(NaSO)を生成する方法およびシステム/プラントが企図される。炭酸リチウム(LiCO)は、様々な産業(例えば、リチウム電池産業、コンクリート産業、セラミクス、クリンカおよびタイルの製造等であるが、これらに限定されるものではない)において、経済的に再利用され得る。
【0072】
概して、本開示では、液体流れ中のリチウム含有種を濃縮してリチウムの回収を促進するためのシステムおよびプロセスの両方が提供される。或る変形形態では、リチウム含有種を濃縮するこのプロセスは、エネルギー効率の良い方法で行われる。一変形形態では、リチウムイオン電池廃棄物に由来する加熱された液体廃棄物流れ(例えば、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、および水が含まれる)から、水が分離され得る。
【0073】
或る変形形態では、本開示では、チウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するためのプロセスであって、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む液体流れから硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化する工程を含むプロセスが企図される。
【0074】
任意の実施形態において、液体流れから硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化する工程は、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む液体流れから水の一部を分離する工程を含む。水の一部を分離する工程は、液体流れ中の水の一部を気化または蒸発させて、水蒸気と、濃縮液体流れまたは流出物流れとを生成する工程を含んでもよい。或る変形形態では、分離/蒸発の間に除去される水の量(廃棄物流れ中の水の初期濃度を気化後の最終濃度と比較)は、約70重量%以上約90重量%以下であってもよい。分離する工程の後における流出物流れ中の硫酸リチウム(LiSO)の濃度は、約8g/L以上約14g/L以下であってもよく、流出物流れ中の硫酸ナトリウム(NaSO)の濃度は、約50g/L以上約100g/L以下であってもよい。このとき、初期量の水の約10重量%以上約20重量%以下の水が、当該流出物流れ中に残っている。
【0075】
一変形形態では、分離は、蒸発器において行われる。当該蒸発器において、水の少なくとも一部が液体流れから蒸発して、濃縮液体流れと水蒸気またはスチームとが生成する。単一の蒸発器があってもよく、または、並列構成もしくは直列構成における複数の蒸発器もしくは凝縮器があってもよい。
【0076】
任意の実施形態において、液体流れは、例えば当該液体流れを1または複数の加熱器(例えば、予熱器)に通すことによって、蒸発させる工程より前に加熱されてもよい。或る態様では、1または複数の予熱器または熱交換器を使用して、当該液体流れを蒸発器に入るよりも前に加熱してもよい。例えば、当該方法には、水を蒸発させる工程よりも前に、例えば約90℃以上の温度に液体を加熱する工程が含まれてもよい。或る態様では、流出物流れ(加熱された液体流れ)は、加熱する工程の後に、NaSO濃度が飽和レベル付近となるような温度を有する。
【0077】
加熱器は、熱交換媒体もしくは熱交換流体(例えば、水蒸気/スチームまたは空気等)を循環させる熱交換器であってもよく、または、到来する液体流れを蒸発器に入る前に所定温度に加熱するための発熱体(例えば、電気的発熱体、燃料に基づく発熱体)を有してもよい。熱交換器には、フィンドチューブ熱交換器、ブレージングプレート熱交換器、プレートアンドフレーム熱交換器、同心熱交換器、マイクロチャネル熱交換器、またはその他の熱交換器が含まれてもよい。液体流れは、第1方向に進行してもよく、第2流れにおける熱交換媒体は、第2方向に進行してもよい。当該第2方向は、第1方向に対して並流、向流、または交差流の関係にあってもよい。
【0078】
或る態様では、当該プロセスは、連続プロセスであり、下流の蒸発工程の間に生成される水蒸気/スチームは、液体流れと熱を交換するように、熱交換器装置を通して再循環または循環されてもよい。或る変形形態では、当該プロセスにはさらに、水蒸気を圧縮器において処理することによって当該水蒸気が蒸発器を出た後に当該水蒸気を圧縮する工程が、液体流れと熱を交換させる工程よりも前に含まれてもよい。
【0079】
この変形形態では、予熱器によって液体が予熱されてもよく、加熱源は、少なくとも部分的に、蒸発器において生成される当該システムの二次スチーム凝縮物であってもよい。予熱工程後、液体流れは、蒸発システムに入る。液体流れに含まれる材料の複雑さのゆえに、スケーリングによって引き起こされ得るシャットダウンを回避してシステムの安定性を高めるために、或る態様では、供給フローが自動的に調整されてもよく、分離器/蒸発器の液位が維持される。当業者ならば理解するであろう通り、供給フローは、蒸発システムのサイズまたはスケールに依存することとなる。
【0080】
或る変形形態では、蒸発システムには、強制循環プロセスが採用され、任意選択的な強制循環ポンプが設けられる。強制循環ポンプは、(1以上の)熱交換器内(例えば、その管内)において材料が高速に流れることが保証され、液体流れ中の材料がスケーリングして内部流導管(例えば、管)がブロックされることが防止されるように、圧縮器またはその他のポンプの形態であってもよい。或る変形形態では、任意選択的な強制循環ポンプは、処理される流れの圧力を約0.2MPa以上約0.25MPa以下に増大させてもよい。或る態様では、本開示の或る態様によって提供される蒸発システムのための強制循環プロセスによって、以下の利点のうちの1または複数の利点が提供される:(1)強制循環蒸発器は、伝熱面上で沸騰してファウリングまたは晶析の形成が起こることを回避するために使用され得る;(2)装置内の蒸発液体の循環は、主に、循環ポンプの強制流による;(3)液体流れ中の材料は加熱器内において蒸発せず、熱交換器内で濃度は変化しない。代わりに、分離晶析器(晶析器容器、遠心分離機等の任意の分離装置が含まれ得る)内におけるフラッシング後、またはこれらの装置のうちの全ての装置内におけるフラッシング後に、濃度が増大することとなる。そのため、材料は、熱交換面に付着することがなく、当該熱交換面上にファウリングを生じさせない;(4)分離晶析器の本体は、十分な液体/気体分離領域および分離高さを有し、これによって、長期的な蒸発および安定的な排出濃度を保証することができる。一変形形態において、分離晶析器は、約1,000mm(1m)×約2,000mm(2m)の内寸(Φ)を有する容器を含んでもよい。
【0081】
蒸発器内で生成された水蒸気/スチームから液体流れへの熱交換を促すための熱交換器が設けられる或る態様では、当該方法によって或る利点が提供される。例えば、或る態様では、加熱システムを有する本開示のシステムおよび方法の利点は、システムの通常状態/定常状態の運転の際の熱損失を補うために少量の原料スチームのみが必要とされ、一部の原料スチームが始動のために必要とされ得ることである。図2に示すように、液体流れの蒸発によって生成された二次スチームは、蒸気圧縮器に入り、当該圧縮器が作用した後に主熱交換器に戻り、材料蒸発のためのエネルギー源として、温度および圧力を増大させる。
【0082】
さらに、蒸発器からの二次スチームが液体流れ材料を加熱した後、水蒸気/スチームは、液体水へと凝縮する。当該液体水は、凝縮物タンク(図示せず)において収集されてもよい。次いで、当該凝縮物は、原料液体が予熱されるように凝縮物予熱器へ圧送され得る。次いで、冷却された凝縮物は、システムから排出され得る。
【0083】
図示されていないが、さらなる或る態様では、システムによって生成された非凝縮性気体が(熱交換器の形態の)非凝縮性凝縮器によって冷却され、凝縮水が凝縮物水タンクに入った後、非凝縮性気体が収集され、排出前に、例えば活性炭を用いてさらに処理されてもよい。
【0084】
当該方法は、硫酸リチウム(LiSO)および硫酸ナトリウム(NaSO)が液体流れ中で濃縮されるように、システムの蒸発部分において当該液体流れから水の一部を除去した後に、流出物流れを冷却する工程と、晶析器容器中で流出物流れから硫酸ナトリウム(NaSO)固体を固体化させる工程と、をさらに含む。
【0085】
或る態様では、流出物流れは、約20℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約10℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約5℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約3℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約0℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約-2℃以下の温度に冷却され、或る変形形態では、任意選択的に約-5℃以下の温度に冷却される。冷却工程は、複数の冷却段階で行われてもよい。一例では、冷却段階には、3つの冷却フェーズが含まれてもよく、例えば、第1冷却段階では、流出物流れの温度が約40℃以下の温度に低減されてもよく、第2冷却段階では、流出物流れの温度が約30℃以下の温度に低減されてもよく、第3冷却段階では、流出物流れの温度が約-2℃以下の温度に低減されてもよい。
【0086】
所定温度において、硫酸リチウム(LiSO)は、濃縮液体流れ中の水に可溶のままである一方、硫酸ナトリウム(NaSO)は、固体(固体)として溶液の外へ固体化される。次いで、冷却された濃縮液体流出物流れは、下流の晶析器/晶析ユニットへ送られ、当該晶析器/晶析ユニットが濃縮液体流れを受け取り、そこで硫酸ナトリウム(NaSO)固体が生成されてもよい。或る態様では、晶析器ユニットは、晶析器/晶析反応器または晶析器/晶析容器と、冷却工程(または、上述した複数の段階の冷却工程)を行うための少なくとも1つの上流の冷却器と、を備える。他の変形形態では、晶析ユニットは、冷却ジャケットまたはその他の冷却メカニズムを備える晶析容器を有してもよい。当該少なくとも1つの冷却器は、到来する濃縮液体流れが晶析器容器に入る前に所定温度に冷却されるように、熱交換流体(例えば、液体水または空気)等の熱交換媒体を循環させてもよい。冷却器は、液体流れを加熱するための熱交換器の文脈において上述した熱交換設計のような熱交換設計を有してもよく、または熱電冷却器、もしくは当業者に知られるその他の設計を含んでもよい。このようにして、硫酸ナトリウム(NaSO)は、晶析器容器において、硫酸ナトリウム(NaSO)固体として流出物流れから除去され得る。これらの所定温度における水中での硫酸ナトリウム(NaSO)の溶解度は、溶液中に留まる硫酸リチウム(LiSO)と比べて小さい。当業者ならば理解するであろうように、晶析および沈殿は、類似の固体化プロセスである。任意の特定の理論に拘束されるものではないが、硫酸ナトリウム(NaSO)は、例えば状態の物理的な変化(例えば、本開示の或る態様によるプロセスおよびシステムにおいて生じる温度または圧力の低減等)を通じて、晶析プロセスを介して固体化し得るものと考えられる。かかる晶析プロセスにおいて、溶解物質(例えば、NaSO)は固体構造物を形成できる。当該固体構造物は、結晶構造であってもよく、例えば、規則的、反復的な配列の原子または分子を有してもよい。結晶形成がゆっくりと起こり得、結晶が成長して固体塊として出現し得る。したがって、硫酸ナトリウム(NaSO)固体には、結晶性硫酸ナトリウム(NaSO)が含まれ得る。他の態様では、固体化プロセスは、例えば、材料が液体(例えば、冷却された液体)への溶解度よりも多い量の材料が存在する場合に液体溶液から固体材料(例えば、沈殿物としてのNaSO)の沈降が生じる等、沈殿プロセスであるとより普通に理解されているプロセスを含んでもよい。かかるプロセスによって生成される固体生成物(例えば、NaSO)は、完全には結晶性でないことがあり得る。メカニズムにかかわらず、本開示によって企図される固体化プロセスによって、液体流出物流れから、固相の硫酸ナトリウム(NaSO)が除去される。
【0087】
或る態様では、硫酸ナトリウム(NaSO)副生成物の純度は、約95重量%以上未満である。例えば、分離工程後に収集される硫酸ナトリウム副生成物は、収集される材料の総重量の乾量基準で約95重量%以上、収集される副生成物の総重量の約99重量%以下を構成し得る。或る変形形態では、初期量の硫酸ナトリウム(NaSO)の約60重量%以上約80重量%以下の硫酸ナトリウム(NaSO)が、流出物流れから除去される。したがって、或る変形形態では、約50g/L以上約80g/L以下の硫酸ナトリウム(NaSO)が、分離工程後に流出物流れ中に残存し得る。
【0088】
晶析器容器において、硫酸ナトリウム(NaSO)は、濃縮液体流出物流れから分離され得る固体である。或る変形形態では、母液に硫酸ナトリウム(NaSO)、および水の一部が含まれるように、母液および上清の流れが晶析器容器または下流の分離ユニット内で生成されてもよい。或る態様では、上清(第2流出物流れ)には、硫酸リチウム(LiSO)、濃度が低減した硫酸ナトリウム(NaSO)、および水の一部が含まれる。晶析器ユニットは、追加の分離装置(例えば、固体硫酸ナトリウム(NaSO)を分離するための遠心分離機および/またはフィルタ等)を含んでもよい。当該固体硫酸ナトリウム(NaSO)は、或る変形形態において、副生成物として有益に再利用され得る。したがって、或る変形形態において、当該プロセスでは、流出物流れ(第2流出物流れおよび/または母液)から硫酸ナトリウム(NaSO)固体を除去することが企図される。このことは、硫酸ナトリウム(NaSO)固体を含む副生成物流れを遠心分離し、液体を分離して硫酸ナトリウム(NaSO)固体を収集することによって行われ得る。或る変形形態では、硫酸ナトリウム(NaSO)固体から分離され、またはそれ以外の方法で晶析器容器から収集される液体(例えば、水)は、システムの種々の部分へ再循環されてもよい。例えば、分離された液体(例えば、水)は、まず、晶析器容器に入る前の流出物液体流れを冷却するためのシステムにおいて使用されてもよく、次いで、下流にあるリチウム回収ユニットにおいて使用されてもよい。また、分離された液体(例えば、水)は、任意選択的に、晶析器容器内で生成された第2流出物流れ(上清)と組み合わせられてもよく、この組み合わせられた流れは、下流にあるリチウム回収ユニットへ送られてもよいことが、本明細書において企図される。あるいは、分離された液体(例えば、水)は、第2流出物流れと組み合わせられることなく、下流にあるリチウム回収ユニットへ送られてもよい。
【0089】
代替的な実施形態では、液体流れから硫酸ナトリウム(NaSO)固体を固体化する工程は、当該液体流れを冷却する工程と、本明細書に記載された晶析器容器において、冷却された液体流れから硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化して、第3流出物流れを生成する工程と、を含む。例えば、液体流れは、約20℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約10℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約5℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約3℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約0℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約-2℃以下の温度に冷却され、或る変形形態では、任意選択的に約-5℃以下の温度に冷却される。液体流れを冷却する工程は、本明細書に記載されるように、複数の冷却段階で行われてもよい。冷却された濃縮液体流出物は、次いで、下流にある晶析器ユニット内へ送られる。当該晶析器ユニットは、液体流れを受け取り、当該晶析器ユニットにおいて、固体硫酸ナトリウム(NaSO)が上述したように生成される。上述したように、晶析器ユニットは、本明細書に記載された晶析器反応器または晶析器容器と、冷却工程(または、上述した複数の段階の冷却工程)を行うための、本明細書に記載された上流にある少なくとも1つの冷却器とを備える。他の変形形態では、晶析ユニットは、冷却ジャケットまたはその他の冷却メカニズムを備える晶析容器を有してもよい。固体硫酸ナトリウム(NaSO)は、上述した第3流出物および/または母液から分離または除去され得る。追加的または代替的に、硫酸ナトリウム(NaSO)固体から分離された液体(例えば、水)は、任意選択的に、晶析器容器内で生成された第3流出物流れ(上清)と組み合わせられてもよく、この組み合わせられた流れは、下流にある蒸発器へ送られてもよい。あるいは、分離された液体(例えば、水)は、第3流出物流れと組み合わせられることなく、蒸発器へ送られてもよい。任意の実施形態において、液体流れを冷却する工程は、少なくとも1つの冷却器(例えば、熱交換器)において、晶析器容器内で生成された第3流出物と熱を交換させる工程を含んでもよい。本明細書において提供される様々な構成のうちの任意の構成が、液体流れ中に存在する任意の濃度のリチウムに適し得ることが、本明細書において企図される。また、液体流れを冷却する工程が、蒸発を介した濃縮工程等のその他のプロセスよりも前に起こる一変形形態は、ナトリウム塩およびリチウム塩の両者の溶解度積が非常に近いゆえにリチウムの回収が困難であることを考慮すると、より低い濃度のリチウムが存在する場合に特に有利であり得ることが理解される。
【0090】
次いで、可溶性硫酸リチウム(LiSO)を有する液体流れ(第3流出物)を、本明細書に記載された蒸発器/蒸発器システムへ送ることができる。当該蒸発器/蒸発器システムによって、第3流出物流れ中の水の一部が蒸発させられて、水蒸気と、第4流出物流れ中で可溶性硫酸リチウム(LiSO)が濃縮された当該第4流出物流れとが生成される。追加的または代替的に、第3流出物は、蒸発する前に/蒸発器/蒸発器システムに入る前に、例えば約90℃以上の温度に加熱されてもよい。例えば、第3流出物流れを加熱する工程は、少なくとも1つの冷却器(例えば、熱交換器)において液体流れと熱を交換させる工程を含んでもよく、または第3流出物流れは、上述した予熱器において加熱されてもよい。追加的または代替的に、第4流出物流れの一部は、還流流れとして機能し、晶析器に入る前の液体流れと組み合わせられてもよい。
【0091】
次いで、可溶性硫酸リチウム(LiSO)を有する濃縮液体流れ(第2流出物流れまたは第4流出物流れ)は、晶析器ユニットまたは蒸発器から、下流にあるリチウム回収ユニット内へ送られる。リチウム回収ユニットには、反応器、熱源、および固液分離器コンポーネント(例えば、フィルタを含む濾過ユニット、または遠心分離機等)が含まれてもよい。
【0092】
また、このプロセスは、流出物流れ(第2流出物流れまたは第4流出物流れ)を加熱する工程と、炭酸ナトリウム(NaCO)を導入して炭酸リチウム(LiCO)生成物を生成する工程と、を含む。或る変形形態では、流出物流れは、約80℃以上約100℃未満の温度に加熱され、任意選択的に、約80℃以上約90℃以下の温度に加熱される。炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する工程の間、反応器中における混合および反応を通じて、流出物流れの温度が維持される。
【0093】
例えば、本明細書に記載された溶液中の硫酸リチウム(LiSO)から炭酸リチウム(LiCO)を沈殿させるためのプロセスは、一般に、本教示による或る状態を示し得る。炭酸リチウム(LiCO)の沈殿では、硫酸リチウム(LiSO)とソーダ灰(NaCO)との間で、反応が溶液中で起こる。これによって、良好な沈降特性、濾過特性、および洗浄特性を有する濃密な沈殿物の形成が促進され、低含水量のウェットケーキが形成される。起こると考えられる水溶液中の化学反応は、以下の通りである。
【0094】
【化1】
【0095】
或る態様では、炭酸リチウム(LiCO)が、特に母液/液体流出物流れにおいて、かなりの溶解度を有するため、処理されている母液/液体流れの量が最小化されるように、濃縮溶液をつくることが望ましい。水または塩溶液への炭酸リチウム(LiCO)の溶解度は、温度の増大とともに低下する。したがって、溶解度損失を最小化するために、高温、例えば約80℃以上約100℃以下の温度において、周囲圧力条件(例えば、1気圧)で、リチウム沈殿、特に遠心分離を行うことが有利である。
【0096】
或る態様では、化学量論的に過剰の炭酸ナトリウム(NaCO)が導入される。例えば、或る変形形態では、当該プロセスは、化学量論的に約10%以上約15%以下過剰の炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する工程をさらに含む。例えば、或る変形形態では、NaCOは、LiSOと等量であるより化学量論的におよそ10%~約15%過剰であることが望ましい。増大した炭酸イオン濃度が、母液/液体流れへのLiCOの溶解度を低減させ得るからである。これらの条件下では、開始時のLiSO溶液中に存在するリチウムの約15%が、可溶性LiCOとして母液/液体流れ中に沈殿せずに残るものと計算される。この可溶性リチウムはフッ化物、リン酸塩、またはケイ酸塩としての沈殿によってほぼ完全に回収され得るが、これらの回収手順のいずれも、様々な理由で経済的ではない。
【0097】
或る変形形態では、リチウム沈殿反応器内の温度は、約50℃以上約70℃以下であってもよく、反応器内の滞留時間は、約1時間以上約2時間以下であってもよく、流量は、処理されているバッチサイズ(および、上記の滞留時間)に依存することとなる。
【0098】
したがって、本方法および本システムでは、
(i)
(a)まず、液体流れ中で蒸発を介して硫酸リチウム(LiSO)を濃縮させ、続いて、晶析器ユニット中で硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化し、または、
(b)まず、晶析器ユニット中で硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化し、続いて、液体流れ中で蒸発を介して硫酸リチウム(LiSO)を濃縮させ、
次いで、
(ii)
有益に再利用可能な生成物としての炭酸リチウム(LiCO)の回収率が最大化されるように上述した残る硫酸リチウム(LiSO)を処理することによって、より高レベルのリチウムを炭酸リチウム(LiCO)として回収することができる。
【0099】
最後に、当該プロセスは、流出物流れから炭酸リチウム(LiCO)生成物を分離する工程を含む。反応器は、炭酸ナトリウム(NaCO)の源と共に、晶析器ユニットまたは蒸発器から濃縮液体流れ(第2流出物流れまたは第4流出物流れ)を受け取る。このようにして、炭酸リチウム(LiCO)を含む生成物流れを形成する反応が、反応器中で起こる。濾過ユニットまたはその他の固液分離ユニットを介して、残る液体流れ(炭酸リチウム(LiCO)生成物流れ)から炭酸リチウム(LiCO)が分離されてもよい。このようにして、生成物流れが生成し、次いで、フィルタを通過し、炭酸リチウム(LiCO)生成物を含む濃縮液と廃棄物流れとに分離される。或る態様では、炭酸リチウム(LiCO)生成物は、約80重量%以上の純度を有する。例えば、流出物流れから分離し、水を除去して乾燥させた後の収集された炭酸リチウム生成物は、収集される材料の総重量の乾量基準で、約80重量%以上を構成し得る。或る変形形態では、炭酸リチウム(LiCO)生成物の純度は、収集される生成物の総重量の約80重量%以上約90重量%以下であってもよい。
【0100】
このように、本開示の様々な態様によれば、炭酸リチウム(LiCO)は、リチウムイオン電池廃棄物流れからリサイクル生成物として回収し、有益に再利用することができる。さらに、或る態様では、硫酸ナトリウム(NaSO)も、それぞれ副生成物として回収され得る。回収された硫酸ナトリウムは、洗剤産業等の様々な産業において、リサイクル生成物として利用できる。
【0101】
様々な態様では、供給材料としてのリチウムイオン電池廃棄物流れからのリサイクル生成物としてのリチウムの回収は、バッチ処理もしくは連続処理によるシステム、またはこれらの組み合わせによるシステムにおいて行われてもよい。当該システムにおいて、材料流れは、連続して反応をする。様々な段階またはユニットは、中間的な処理された流れを次の段階のユニットへ連続的に提供するように配列(構成)される。以下でさらに説明するように、かかる段階には、例えば、蒸発段階または蒸発ユニット(加熱システムが含まれ得る)と、晶析段階または晶析ユニット(冷却システムが含まれ得る)と、リチウム回収段階またはリチウム回収ユニットと、が含まれてもよい。所与の回収段階または回収ユニットからの或る流れを、処理されている他の流れと熱を交換するように利用して、加熱プロセスまたは冷却プロセスが行われるときのシステムのエネルギー効率を向上させてもよい。限定するものではないが、500kgのブラックマス廃棄物流れが処理される一例では、当該方法および当該システムでは、約1,000kg/hrまたは1m/hrの流量で材料が処理され得る。しかしながら、当業者ならば理解するであろうように、流量は、処理される総量に依存するものであり、適切に変更され得る。
【0102】
図1は、リチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するための、本開示の或る態様によるリチウムリサイクルプラントまたはリチウムリサイクルシステム50の一例である。これは、上述したプロセスの様々な態様を実施するために使用され得る。硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む液体流れ52は、ポンプ54を介して流体導管56内を圧送される。流体導管56によって、システム50内の様々な構成要素間に流体連通が確立されている。本明細書に開示されるポンプのうちの任意のポンプには、任意の適切な種類のポンプが含まれてもよい。例えば、ポンプは、遠心ポンプ、容積式ポンプ、軸流ポンプ等であってもよい。液体流れ52は、入口62を介して、気液分離器(例えば、蒸発器60)に入る。蒸発器60は、第1出口64および第2出口66を有する。図1には示されていないが、液体流れ52は、蒸発器60に入るときに加熱されてもよい。蒸発器60において、液体流れ52からの水の少なくとも一部が揮発または蒸発されて、濃縮液体流れまたは流出物流れと、水蒸気またはスチームの流れとが生成される。濃縮液体流れは、第1出口64を通過し、水蒸気は、第2出口66を通って蒸発器60から出ていく。
【0103】
次に、濃縮液体流出物流れは、蒸発器60の下流にある晶析器ユニット70に入る。晶析器ユニット70には、例えば熱交換器として、濃縮液体流れを受け取って冷却する1または複数の冷却器(概して72で示す)が含まれてもよい。(1以上の)冷却器72を通過した後、濃縮液体流れは、入口76を介して、晶析器反応器または晶析器容器74に入る。晶析器容器74内において、冷却された濃縮液体流れは、上述した硫酸ナトリウム(NaSO)固体の形成を促進する所定温度を有する。固体硫酸ナトリウム(ならびに、任意選択的に、母液および/または上清)は、第1出口78を介して除去され、固液分離器装置80に通され得る。なお、図1には示されていないが、当業者によって理解されるように、システムには、固液分離器装置80および/または晶析器反応器もしくは晶析器容器74のいずれかと流体連通する母液貯蔵容器/タンク(および、上清貯蔵容器/タンク)がさらに含まれ得ることに留意されたい。図1に示すように、固液分離器装置80は、濃縮リチウム含有生成物(例えば、硫酸リチウム(LiSO))を含む上清および/または母液から硫酸ナトリウム(NaSO)固体を分離する、遠心分離機であってもよい。一変形形態において、以下の表2に、晶析容器74を含む晶析ユニット70の好適な条件の概略を示す。
【0104】
【表2】
【0105】
次いで、晶析器ユニット70の晶析器容器74内の可溶性硫酸リチウム(LiSO)を有する濃縮液体流出物流れ(例えば、上清)(第2流出物流れ)は、第2出口82を介して除去され得、下流にあるリチウム回収ユニット90へ送られる。任意選択的に、硫酸ナトリウム(NaSO)固体から分離された液体(例えば、水)は、第3出口83を介して除去され、任意選択的に、第2流出物流れと組み合わせられてもよく、次いで、この組み合わせられた流れが、下流にあるリチウム回収ユニット90へ送られてもよい。あるいは、分離された液体(例えば、水)は、第3出口83を介して除去され、第2流出物流れと組み合わせられることなく、下流にあるリチウム回収ユニット90へ送られてもよい。リチウム回収ユニット90は、(i)反応器92、(ii)熱源110(例えば、スチームで加熱され得る熱ジャケット、または当技術分野で知られるその他の加熱器)、および(iii)固液分離器(例えば、反応器92の下流における、1または複数のフィルタを備える濾過ユニット120)を備えてもよい。特に、固液分離器は、遠心分離機、または当業者に知られるその他の固液分離ユニットであってもよい。反応器92は、入口94を介して、晶析器ユニット70からの濃縮液体流れを受け取る。炭酸ナトリウム(NaCO)の供給源96は、炭酸ナトリウム(NaCO)が反応器92へ送出されるように、反応器92への第2入口98と連通している。反応器92は、攪拌機100をさらに含む。
【0106】
したがって、反応器92は、濃縮液体流出物流れ(第2流出物)および炭酸ナトリウム(NaCO)の両方を受け取る。濃縮液体流れおよび炭酸ナトリウムは、同時に、または異なる段階で、反応器92に導入され得る。或る変形形態では、溶液からの炭酸リチウム(LiCO)の回収は、まず、反応器92内の硫酸リチウム(LiSO)を含む溶液を、熱源110を介して約80℃以上約90℃以下の温度に加熱することによって行われる。温度は、当該プロセスを通じて維持されてもよい。反応器92内の加熱された当該溶液に炭酸ナトリウム(NaCO)が加えられてもよく、これによって、固体炭酸リチウム(LiCO)が沈殿し得る。
【0107】
反応器92内へ延びる攪拌機100によって、本明細書に説明された内容物が混合されてもよい。様々な実施形態では、本明細書に開示された攪拌機100のうちの任意の攪拌機には、反応器92内へ延びるシャフト102と、シャフト102に取り付けられた1または複数のインペラ104と、シャフト102およびインペラ104を回転させるためのモータ106と、が含まれてもよい。一部の実施形態では、各インペラ104は、反応器内の内容物をかき混ぜるための1または複数のブレード(または、フィン)を含んでもよい。例えば、1つの撹拌機は、所定距離だけ隔てられた2つのインペラ(各インペラは、3つのブレードを有する)を含んでもよい。特に、攪拌機100には、反応器のためのその他の形態のミキサまたは攪拌機(例えば、超音波処理、バブラ等)が含まれてもよい。
【0108】
反応器92は、所定時間(例えば、約30分以上約45分以下)の間、攪拌機100を用いて撹拌されてもよく、温度は、熱源110を用いて、所望の温度に維持されてもよい。攪拌時間が完了した後、硫酸リチウム(LiSO)は、上記の例示的な定式化に示されるように、炭酸リチウム(LiCO)として沈殿することとなる。
【0109】
リチウム回収ユニット90は、第2ポンプ112をさらに含んでもよい。第2ポンプ112によって、反応器92を出る炭酸リチウム(LiCO)を含む濃縮液体流れが、1または複数のフィルタを含む濾過ユニット120内へ圧送される。濾過ユニット120は、反応器92の出口96と流体連通している。液体流出物流れは、濾過ユニット120における当該1または複数のフィルタを通過し、リサイクルされた炭酸リチウム(LiCO)固体生成物を含む濃縮液と、水および濾過ユニットを出るその他の不純物を含む液体廃棄物流れ124と、に分離される。リサイクルされた当該炭酸リチウム(LiCO)固体生成物は、ケーキまたは固体として、貯蔵容器122内に貯蔵され得る。濾過ユニット120を通過する不純物は、所望に応じて処理されてもよく、例えば、廃水処理へ送られてもよく、かつ/または反応器へ再循環されてもよい。
【0110】
様々な実施形態において、本明細書に開示されたフィルタのうちの任意のフィルタには、任意の適切な種類のフィルタが含まれ得る。例えば、フィルタは、加圧(または、プレス)フィルタ、油圧フィルタ、重力フィルタ等であってもよい。
【0111】
このように、本開示は、当該方法を使用して炭酸リチウムが回収されるシステムを企図するものである。本技術は、リチウムイオン電池から炭酸リチウム(LiCO)を回収するための新しい方法を提供するものであり、硫酸リチウムおよび硫酸ナトリウムを廃棄物生成物として環境へ排出することに関する現在の課題を低減しつつ、良好な純度を有するリサイクル生成物として、経済的に魅力的な炭酸リチウム(LiCO)を市場に提供するものである。
【0112】
図2は、図1に示すものと似たリチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するためのリチウムリサイクルプラントまたはリチウムリサイクルシステムの部分図を示す。ただし、図2のリチウムリサイクルプラントまたはリチウムリサイクルシステムには、蒸発器システムの一部として組み込まれた加熱システムがさらに含まれる。図2に示すように、システムの代替的な変形形態150には、本開示の或る変形形態による、液体流れ52を蒸発器60に入る前に処理する加熱システム152が含まれる。簡潔にするために、構成要素が図1に示すものと同じである限り同じ参照番号が使用され、それらの構成要素は、顕著な特徴または機能が図2に示す変形形態に関連していない限り、ここで再び導入または説明されることはない。図2では、液体流れ52は、予熱器160を含む加熱システム152に入り得る。液体流れ52は、第1入口162において入り、第1出口164を介して出うる。予熱器160は、液体流れ52を第1所定温度に加熱する役割を果たす。上述したように、予熱器160は、加熱器であってもよく、または図示のように熱交換器を含んでもよい。当該熱交換器はさらに、液体流れ52と熱交換するように、別の流体流れに当該熱交換器を通過させ得る。この変形形態では、予熱器160は、第2入口166および第2出口168を含み、これらを通って別個の熱交換流体流れが流れ、当該液体流れと熱を交換する。
【0113】
次いで、液体流れ52は、第1入口182において熱交換器180に入り、第1出口184を介して熱交換器180を出る。熱交換器180は、液体流れ52を第2所定温度に加熱する役割を果たす。以下でさらに説明するように、熱交換器180はさらに、液体流れ52と熱交換するように、別の流体流れに当該熱交換器180を通過させる。この変形形態では、熱交換器180は、第2入口186および第2出口188を含み、これらを通って別個の熱交換流体流れが流れる。より具体的には、第2入口186は、圧縮スチーム流れを受け取る。当該圧縮蒸気流れは、第2出口66において、蒸発器60を出て、次いで、圧縮器190に入り、当該圧縮器190において、スチームが圧縮されて、圧力および温度が増大したものである。圧縮器190は、当技術分野で知られている種々の圧縮器であってもよい。当該種々の圧縮器には、遠心圧縮器、往復動圧縮器、回転圧縮器(回転翼圧縮器、転動圧縮器、シングルスクリュー圧縮器、ツインスクリュー圧縮器)、および軌道圧縮器(スクロール圧縮器またはトロコイド圧縮器)が含まれる。圧縮された当該スチームは、圧縮器190を出て、熱交換器180の第2入口186に入り、第2出口188を介して出ていく。
【0114】
一変形形態において、以下の表3に、加熱システム152の好適な条件の概略を示す。
【0115】
【表3】
【0116】
或る変形形態では、圧縮流れは、予熱器160の下流にありかつ蒸発器60の上流にある流体導管56に再注入されてもよい。これは、到来する液体流れ52と混合して、その温度および圧力が増大し、これによって、蒸発がより効率的になる。例えば、およそ83~85%のスチームが再循環され得、温度が約92℃以上約110℃以下に増大され得、これによって、システムの効率が向上され得る。
【0117】
次に、熱交換器180を出る水を含む流れは、スチームから少なくとも部分的に凝縮され(したがって、水の凝縮物が含まれている)、予熱器160の第2入口166に入り、第2出口168へ通過する。予熱器160において、当該流れは、通過する液体流れ52と熱交換する。このようにして、熱交換器180は、第2流れのための凝縮器として機能し得る。蒸発器60において処理された後、濃縮液体流出物流れは次いで、上述した処理のために晶析器ユニット70へ導かれ得る。
【0118】
図3は、図1に示すシステム50と似たリチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するためのリチウムリサイクルプラントまたはリチウムリサイクルシステム200の部分図を示す。ただし、リチウムリサイクルプラントまたはリチウムリサイクルシステム200には、本開示の或る変形形態による、晶析器ユニット70Aの一部として、複数の冷却器がさらに含まれる。簡潔にするために、構成要素が図1および図2に示すものと同じである限り同じ参照番号が使用され、それらの構成要素は、顕著な特徴または機能が図3に示す変形形態に関連していない限り、ここで再び導入または説明されることはない。
【0119】
図3は、システムの別の変形形態200を示す。システムの別の変形形態200には、本開示の或る変形形態による、蒸発器60の前の液体流れ52のための加熱装置と、晶析器ユニット70Aに含まれる複数の冷却器72Aと、が含まれる。簡潔にするために、構成要素が図1および図2に示すものと同じである限り同じ参照番号が使用され、それらの構成要素は、顕著な特徴または機能が図3に示す変形形態に関連していない限り、ここで再び導入または説明されることはない。
【0120】
液体流れ52は、蒸発器60に入り、そこで濃縮された液体流出物流れは、第1出口64から出て、複数の冷却器72Aを含む晶析器ユニット70Aへ送られる。特に、晶析器ユニット70Aは、1つの冷却器のみを備えてもよいものの、図示のように、複数の別個の冷却器72Aまたは冷却熱交換器を有する。図示のように、第1冷却器240は、濃縮液体流れ242を受け取り、当該濃縮液体流れ242は、当該第1冷却器240を第1方向に通過する。冷却熱交換媒体の第1流れ244は、濃縮液体流れ242との熱交換関係において、第1冷却器240を第2方向に通過する。当該第2方向は、第1方向に対して並流、向流、または交差流の関係にあってもよい。熱交換器は、図2の熱交換器180の文脈において上述した設計のうちのいずれかの設計を有してもよい。一例では、冷却熱交換媒体は、第1冷却器240内の水であってもよい。第1冷却器240によって、本開示の或る態様によって提供されるプロセスの文脈において上述した第1冷却段階が達成され得る。
【0121】
第2冷却器250は、第1冷却器240の下流にあり、濃縮液体流れ242を受け取る。当該濃縮液体流れ242は、第2冷却器250を第1方向に通過する。冷却熱交換媒体の第2流れ254は、濃縮液体流れ242との熱交換関係において、第2冷却器250を通過する。第2流れ254は、晶析器反応器74から生成される流れ(例えば、上清流れの一部分から分かれた液体流れ)であってもよい。第2冷却器250内の流体流れの第2方向は、第1方向に対して並流、向流、または交差流の関係にあってもよい。第2冷却器250によって、本開示の或る態様によって提供されるプロセスの文脈において上述した第2冷却段階が達成され得る。
【0122】
第3冷却器260は、第2冷却器250の下流にあり、濃縮液体流れ242を受け取り、濃縮液体流れ242をさらに冷却する。或る変形形態では、第3冷却器260を通る流量は、1m/hrであってもよく、約92℃の温度を有してもよい。冷却熱交換媒体の第3流れ264は、濃縮液体流れ242との熱交換関係において、第3冷却器260を第2方向に通過する。当該第2方向は、第1方向に対して並流、向流、または交差流の関係にあってもよい。一例では、冷却熱交換媒体は、第3冷却器260内の水であってもよい。第3冷却器260によって、本開示の或る態様によって提供されるプロセスの文脈において上述した第3冷却段階が達成され得る。
【0123】
晶析器ユニット70Aには、晶析容器74内の母液/液体流れからの硫酸ナトリウム(NaSO)固体の分離を促す遠心分離機80Aが含まれる。次いで、当該液体流れは再循環されてもよく、例えば、冷却器システム内へ(例えば、上述した第2冷却器250内へ)第2流れ254として送られてもよい。次いで、硫酸ナトリウム(NaSO)が除去された流出物流れ(第2流出物流れ)は、晶析容器74の出口82から出て、リチウム回収ユニット(図3には示されていないが、図1にリチウム回収ユニット90として示される)へ入り得る。
【0124】
図3は、システムの別の変形形態200を示す。システムの別の変形形態200には、本開示の或る変形形態による、蒸発器60の前の液体流れ52のための加熱装置と、晶析器ユニット70Aに含まれる複数の冷却器72Aと、が含まれる。簡潔にするために、構成要素が図1および図2に示すものと同じである限り同じ参照番号が使用され、それらの構成要素は、顕著な特徴または機能が図3に示す変形形態に関連していない限り、ここで再び導入または説明されることはない。
【0125】
液体流れ52は、ポンプ54を介して圧送され、蒸発器60に入り、そこで濃縮された液体流れは、第1出口64から出て、スチーム流れは、第2出口66から出る。第1出口64から出る濃縮液体流れは、次に、少なくとも1つの冷却器72Aを含む晶析器ユニット70Aへ進む。特に、晶析器ユニット70Aは、1つの冷却器のみを備えてもよいものの、図示のように、複数の別個の冷却熱交換器を有する。図示のように、第1冷却器240は、濃縮液体流れ242を受け取り、当該濃縮液体流れ242は、第1冷却器240を第1方向に通過する。冷却熱交換媒体の第1流れ244は、濃縮液体流れ242との熱交換関係において、第1冷却器240を第2方向に通過する。当該第2方向は、第1方向に対して並流、向流、または交差流の関係にあってもよい。一例では、冷却熱交換媒体は、第1冷却器240内の水であってもよい。
【0126】
第2冷却器250は、第1冷却器240の下流にあり、濃縮液体流れ242を受け取る。当該濃縮液体流れ242は、第2冷却器250を第1方向に通過する。冷却熱交換媒体の第2流れ254は、濃縮液体流れ242との熱交換関係において、第2冷却器250を通過する。第2流れ254は、晶析器反応器74から生成される流れ(例えば、上清流れの一部分から分かれた液体流れ)であってもよい。第2冷却器250内の流体流れの第2方向は、第1方向に対して並流、向流、または交差流の関係にあってもよい。
【0127】
第3冷却器260は、第2冷却器250の下流にあり、濃縮液体流れ242を受け取り、濃縮液体流れ242をさらに冷却する。冷却熱交換媒体の第3流れ264は、濃縮液体流れ242との熱交換関係において、第3冷却器260を第2方向に通過する。当該第2方向は、第1方向に対して並流、向流、または交差流の関係にあってもよい。一例では、冷却熱交換媒体は、第3冷却器260内の水であってもよい。
【0128】
晶析器ユニット70Aには、晶析容器74内の母液/液体流れからの硫酸ナトリウム(NaSO)固体の分離を促す遠心分離機80Aが含まれる。次いで、当該液体流れは、冷却器システム内へ(例えば、上述した第2冷却器250内へ)送られてもよい。上記のように、図示されていないものの、晶析器ユニット70Aは、母液、上清等を貯蔵するための1または複数のタンクを含んでもよい。
【0129】
このようにして、液体流れ52は、予熱器(例えば、図2の予熱器160)によって予熱され得る。或る変形形態では、図2と同様に、予熱器160の加熱源は、システムの二次スチーム凝縮物である。液体流れ52の複雑さのゆえに、スケーリングによって引き起こされ得るシャットダウンを回避してシステムの安定性を高めるために、供給フローが自動的に調整され得る。図示されていないものの、或る変形形態では、濃縮液体流れおよびスチーム流れが受け取られて蒸気と液体とがさらに分離されるように、蒸気-液体分離器が蒸発器の下流に配置されてもよい。当該分離器によって、濃縮液体流れおよび蒸気/スチーム流れが生成される。或る態様では、分離器液位は、所定点に維持される。
【0130】
或る態様では、蒸発システムでは、圧縮器を含めることによる強制循環プロセスが採用される。(1以上の)熱交換器の管内において材料が高速に流れることが保証され、材料がスケーリングして熱交換器管がブロックされるおそれを防止する助けとなるように、当該蒸発システムは、強制循環ポンプ(例えば、図1のポンプ84)を含んでもよい。或る態様では、強制循環プロセスの特性は、以下の通りである。第一に、強制循環蒸発器が使用され、伝熱面上で沸騰してファウリングの形成または晶析が起こることが回避される。第二に、装置内で蒸発した液体の循環は、主に、当該循環ポンプの強制流によるものである。さらに、材料は加熱器内(例えば、図1の予熱器160内)において蒸発せず、熱交換器内で濃度は変化しない。分離晶析器内におけるフラッシング後に濃度が増大することとなるため、材料は、熱交換面に付着することがなく、当該熱交換面上にファウリングを生じさせない。最後に、当該分離晶析器の本体は、十分な液体/気体分離領域および分離高さを有し、これによって、長期的な蒸発および安定的な排出濃度を保証することができる。一変形形態において、以下の表4に、図1に示すもののような加熱器システム152の好適な条件の概略を示す。
【0131】
【表4】
【0132】
図4は、図1および図2の文脈で記載されたものと同様のシステムにおいて実施される、本開示の或る変形形態による、リチウムを回収するためのプロセス300の非限定的な一例を示す。プロセス300では、330において、液体廃棄物流れ302が予熱器に導入される。液体廃棄物流れ302は、概ね約13%以上約17%以下の固形分、約60℃の温度を有し得、約1,000kg/hrの流量でシステムに導入され得る。予熱器330を出た後、液体廃棄物流れ302は、310で示されるポイントで、約80℃の温度を有する。次に、液体廃棄物流れ302は、熱交換器332に入る。そして、312で示されるポイントで、その温度が約92℃に増大される。また、熱交換器332は、ポイント314において、約110℃の温度の圧縮スチーム流れを受け取る。熱交換器332を通過した後、スチームは、発熱性の相転移をし、液体の水へ凝縮され、ポイント316において約110℃の温度を有し得る。次いで、この凝縮水流れはさらに、予熱器330に入り、到来する液体廃棄物流れ302と熱を交換し得る。ポイント318において、冷却された凝縮物は、約50℃の温度を有し得る。
【0133】
次に、液体廃棄物流れ302は、分離器/蒸発器334に入る。当該分離器/蒸発器334において、水の一部が除去されて、上述したように、水蒸気/スチームの流れと、硫酸リチウムおよび硫酸ナトリウムを有する濃縮液体流れとが形成される。蒸発器334を出るスチーム流れは、ポイント320において、約92℃の温度を有してもよく、圧縮器336内で処理されてもよい。スチームが圧縮および加熱された後、スチームは、ポイント314において上述した状態を有し、次いで、熱交換器332に入る。液体廃棄物流れ302は、蒸発器334を出た後、ポイント322において約92℃の温度を有し、次に、冷却ユニット338に入る。
【0134】
冷却ユニット338内で冷却された後、液体廃棄物流れ302は、ポイント324において、約3℃以上約20℃以下の温度を有する。晶析ユニット340(固液分離器および反応器容器(例えば、デカンタ)を含み得る)を通過した後、晶析ユニット340内で固体化した硫酸ナトリウム塩を含む副生成物流れ350が除去される。
【0135】
晶析ユニット340を出るとき、液体廃棄物流れ302は、ポイント326において、約20℃の温度を有し得る。最後に、液体廃棄物流れ302は、リチウム回収プロセス342に入る。炭酸ナトリウム(NaCO)の流れ352が、リチウム回収プロセス342の間に加えられる。次いで、炭酸リチウム(LiCO)生成物354(およそ80~90%の純度を有し得る)が生成される。残留物溶液の廃棄物流れ356も生成される。
【0136】
かかるプロセスの計算された濃度は、以下の表5の通りである。炭酸塩沈殿物に対する出口は、図4の流れ326の(炭酸ナトリウムによる)リチウム沈殿のための供給物特性を示す。
【0137】
【表5】
【0138】
図5は、リチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するための、本開示の或る態様によるリチウムリサイクルプラントまたはリチウムリサイクルシステムの代替例50Bである。これは、上述した様々な態様のプロセスを実行するために用いられ得る。簡潔にするために、構成要素が図1に示すものと同じである限り同じ参照番号が使用され、それらの構成要素は、顕著な特徴または機能が図5に示す変形形態に関連していない限り、ここで再び導入または説明されることはない。液体流れ52は、流体導管56内でポンプ54を介して晶析器ユニット70内へ圧送される。晶析器ユニット70には、1または複数の冷却器(概して72Aで示す)と、液体流れ52を冷却して硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化する晶析器容器74と、が含まれる。流体導管56によって、システム50a内の様々な構成要素間に流体連通が確立されている。次いで、晶析器ユニット70の晶析器容器74内の可溶性硫酸リチウム(LiSO)を有する液体流出物流れ(例えば、上清)(第3流出物流れ)は、第2出口82を介して除去され得る。そして、当該第3流出物流れは、入口62を介して蒸発器60に入る。任意選択的に、硫酸ナトリウム(NaSO)固体から分離された液体(例えば、水)は、第3出口83を介して除去され、任意選択的に、第3流出物流れと組み合わせられてもよく、次いで、この組み合わせられた流れが、下流にある蒸発器60へ送られてもよい。あるいは、分離された液体(例えば、水)は、第3出口83を介して除去され、第3流出物流れと組み合わせられることなく、蒸発器60へ送られてもよい。
【0139】
蒸発器60において、第3流出物流れからの水の少なくとも一部が揮発または蒸発されて、濃縮液体流れまたは第4流出物流れと、水蒸気またはスチームの流れとが生成される。濃縮液体流れ(第4流出物流れ)は、第1出口64を通過し、水蒸気は、第2出口66を通って蒸発器60から出ていく。或る変形形態では、第3流出物流れは、例えば、加熱システム152(図示せず)において、または、1もしくは複数の冷却器(概して72Aで示す)において液体流れ52と熱を交換させることによって、蒸発器60に入る前に加熱されてもよい。次いで、可溶性硫酸リチウム(LiSO)を有する濃縮液体流れ(第4流出物流れ)は、下流にあるリチウム回収ユニット90へ送られる。
【0140】
図6は、リチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するための、本開示の或る態様によるリチウムリサイクルプラントまたはリチウムリサイクルプラントシステムの代替例50Bである。これは、上述した様々な態様のプロセスを実行するために用いられ得る。構成要素が図1に示すものと同じである限り同じ参照番号が使用され、それらの構成要素は、顕著な特徴または機能が図6に示す変形形態に関連していない限り、ここで再び導入または説明されることはない。図6に示すように、濃縮液体流れ(第4流出物流れ)の一部は、還流流れ140として容器142へ送られ、当該容器142内に貯蔵されてもよい。還流流れ140は、例えば、液体流れ52を晶析ユニット52に導入する前に一定温度に制御して加熱するために、液体流れ52と組み合わせられてもよい。
【0141】
特に、上に示された様々な実施形態における構成のうちのいずれの構成も、たとえ明示的に図示されていない場合でも、その他の構成と組み合わせられてもよい。さらに、当業者であれば理解するように、バルブ、流量モニタ、温度モニタ、および圧力モニタ、アクチュエータ、コントローラ、乾燥器、従来のアキュムレータ等を含む、システム内で使用される従来の構成要素は、図示されていない場合がある。
【0142】
さらに、上述したシステムのうちのいずれのシステムも、自動制御システムを含んでもよい。例えば、各システムは、PLC自動制御システム(例えば、ジーメンスによって市販されているもの)を含んでもよい。これによって、設定された(所定の)値、主タンク装置内の液位の自動調整、スチームフローを調整するためのスチームパイプライン圧力信号のフィードバック、システム故障自動警報等による、到来する材料流れおよび去っていく材料流れの自動的な調整および制御が可能となる。かかる自動化システムによって、運転中の労働力の割当てを大幅に削減することができ、運転プロセスの精度および安全性を向上させることができる。
【0143】
これまで述べてきた実施形態の説明は、例示および説明の目的のために提供されたものである。網羅的であることは意図されておらず、または、本開示を限定することは意図されていない。特定の実施形態の個々の要素または構成は、概して、その特定の実施形態に限定されるものではなく、具体的に図示または説明されていない場合であっても、妥当である場合には、交換可能であり、かつ、選択された一実施形態において用いることができるものである。当該特定の実施形態の個々の要素または構成は、多くの方法で変更されてもよい。かかる変形は、本開示からの逸脱とみなされるべきものではなく、かかる全ての修正が本開示の範囲内に含まれることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0144】
図1】本開示の或る変形形態による、リチウムイオン電池に由来する廃棄物流れからリチウムを回収するためのシステムを示す。
図2】蒸発システムの上流に加熱器システムを含む、本開示の或る代替的な変形形態によるリチウムを回収するためのシステムの部分図を示す。
図3】晶析ユニット内において晶析器容器の上流に多段階冷却器システムを含む、本開示の或る代替的な変形形態によるリチウムを回収するためのシステムの部分図を示す。
図4】本開示の或る変形形態による、リチウムを回収するためのプロセスの一例を示す。
図5】蒸発器の上流に晶析ユニットを含む、本開示の或る変形形態による、リチウムイオン電池に由来する廃棄物流れからリチウムを回収するための代替的なシステムを示す。
図6】蒸発器の上流に晶析ユニットを含み、さらにシステムに還流流れが含まれる、本開示の或る変形形態による、リチウムイオン電池に由来する廃棄物流れからリチウムを回収するための代替的なシステムを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
(関連出願の相互参照)
本出願は、2022年4月18日に出願された米国仮出願第63/332,025号の利益を主張するものである。上記出願の全開示は、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、リチウムイオン電池廃棄物流れから炭酸リチウム(LiCO)生成物としてリチウム(Li)を回収するためのシステムおよびプロセスに関する。
〔背景技術〕
【0003】
このセクションには、本開示に関連する背景技術が提供される。当該背景技術は、必ずしも従来技術であるとは限らない。
【0004】
電気化学セル(例えば、充電式二次リチウムイオン電池等)は、エネルギー貯蔵ユニットとして、消費者製品および車両を含む様々な用途で広く使用されている。リチウムイオン電池は、エネルギー密度および電池電圧が大きく、貯蔵寿命および放電率が小さく、使用温度範囲が広い。しかしながら、かかるリチウムイオン電池の推定寿命は、およそ3~10年であると推定され、使用済み電池はその後、廃棄される。リチウムイオン電池(lithium-ion batteries:LIB)にはしばしば、価値のある金属(リチウムが含まれるため、当該リチウムが無駄になり得る)が含まれるため、リサイクルすることが重要である。
【0005】
米国の地質調査所によれば、リチウム市場は、電池のみならず、特にセラミクス、ガラス、潤滑等の、様々な産業からの需要によって牽引されている。リチウムは通常、ブラインおよび鉱石から抽出され、世界の粗リチウム産出量は、年間約40,000トンに達する。しかしながら、リチウムの需要は毎年増大しており、このため、リチウムイオン電池のリチウムおよび関連する成分をリサイクルすることが必要となっている。リチウムを含むリチウムイオン電池をリサイクルすることで、世界中で減少しつつある貴重金属鉱石が節約され、また、電子廃棄物処理に関連する環境課題が低減されるだろう。
【0006】
湿式精錬および精製処理の際、リチウムは通常、炭酸リチウム(LiCO)の形態で得られる。炭酸リチウムは、リチウムイオン電池において正極/カソード材料を形成する前駆体として使用されるだけでなく、その他の化合物(例えば、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、および酸化リチウム(LiO)等)を生成するためにも使用される。LiCl、LiBr、およびLiOは、他の産業のための原料になり得る。例えば、LiBrは、吸収剤および冷媒として使用することができる。また、医療産業において、炭酸リチウムは、双極性障害の治療における活性成分として使用することができる。有益に再利用される生成物(炭酸リチウム(LiCO)生成物が含まれる)の形成のために、リチウムイオン電池由来の廃棄物流れをリサイクルできることが望ましい。
〔発明の概要〕
【0007】
このセクションは、本開示の全般的概要を提供するものであり、その全範囲またはその構成の全てを包括的に開示するものではない。
【0008】
或る態様では、本開示は、リチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するためのシステムに関する。或る態様では、前記システムは、入口、第1出口、および第2出口を有する蒸発器と、晶析器ユニットであって、(i)少なくとも1つの冷却器と、(ii)入口、第1出口、および第2出口を備える晶析器容器と、を備える晶析器ユニットと、を備える。一変形形態では、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む液体流れを前記蒸発器の前記入口が受け取る。前記蒸発器において前記液体流れからの前記水の少なくとも一部が蒸発して、前記第2出口を通過する水蒸気と前記第1出口を通過する流出物流れとが生成する。前記流出物流れを前記蒸発器の下流にある前記晶析器ユニットが受け取って、固体硫酸ナトリウム(NaSO)が形成されるように当該流出物流れを冷却する。前記蒸発器の前記第1出口からの前記流出物流れを前記晶析器容器の前記入口が受け取り、前記晶析器容器の前記第1出口を介して前記固体硫酸ナトリウム(NaSO)を含む副生成物が除去され、前記晶析器容器の前記第2出口を介して第2流出物流れが除去される。代替的な一変形形態では、前記液体流れを前記晶析器ユニットが受け取って、固体硫酸ナトリウム(NaSO)が形成されるように当該液体流れを冷却する。前記液体流れを前記晶析器容器の前記入口が受け取り、前記晶析器容器の前記第1出口を介して前記固体硫酸ナトリウム(NaSO)を含む副生成物が除去され、前記晶析器容器の前記第2出口を介して第3流出物流れが除去される。硫酸リチウム(LiSO)および水(HO)を含む前記第3流出物流れを前記蒸発器の前記入口が受け取り、前記蒸発器において前記第3流出物流れからの前記水の少なくとも一部が蒸発して、前記第2出口を通過する水蒸気と前記第1出口を通過する第4流出物流れとが生成する。前記システムは、前記晶析器ユニットまたは前記蒸発器の下流にあるリチウム回収ユニットをさらに備える。前記リチウム回収ユニットは、(i)前記晶析器ユニットからの前記第2流出物流れまたは前記蒸発器からの前記第4流出物流れを受け取る第1入口と、炭酸ナトリウム(NaCO)を受け取る第2入口と、出口と、攪拌機と、を備える反応器と、(ii)前記反応器と熱連通する熱源と、(iii)前記反応器の前記出口と流体連通する固液分離器であって、生成物流れが当該固液分離器を通過して、炭酸リチウム(LiCO)生成物を含む濃縮液と廃棄物流れとに分離される固液分離器と、を備える。前記システムは、前記蒸発器と前記晶析器ユニットと前記リチウム回収ユニットとの間に流体連通を確立するための流体導管と、前記流体導管内で流体を循環させるための少なくとも1つのポンプと、をさらに備える。
【0009】
一態様では、前記システムは、前記蒸発器の上流に加熱システムをさらに備え、前記加熱システムは、前記液体流れを前記蒸発器に入るよりも前に加熱するための少なくとも1つの加熱器を備える。
【0010】
さらなる一態様では、前記加熱器は、予熱器であり、前記加熱システムは、前記予熱器の下流に熱交換器をさらに備え、前記熱交換器は、前記蒸発器からの水蒸気と前記液体流れとを熱交換関係において受け取って、前記液体流れの温度を増大させる。
【0011】
さらなる一態様では、前記加熱システムは、前記蒸発器と前記熱交換器との間に配置された圧縮器であって、前記水蒸気の圧力および温度のうちの少なくとも一方を前記熱交換器に入るよりも前に増大させる圧縮器をさらに備える。
【0012】
さらなる一態様では、少なくとも1つの前記冷却器は、熱交換器を含み、前記熱交換器は、前記液体流れと前記第3流出物流れとを熱交換関係において受け取って、当該液体流れの温度を低減させ、かつ前記第3流出物の温度を前記蒸発器に入るよりも前に増大させる。
【0013】
一態様では、前記晶析器ユニットは、前記晶析器容器の上流に複数の冷却器をさらに備える。
【0014】
さらなる一態様では、複数の前記冷却器のうちの少なくとも1つの冷却器は、互いに熱交換関係にある前記晶析器容器からの流れと前記液体流れとを受け取り、当該液体流れの温度を低減させる。
【0015】
一態様では、前記晶析器ユニットは、前記晶析器容器の前記第1出口の下流に遠心分離機をさらに備え、前記遠心分離機は、前記固体硫酸ナトリウム(NaSO)を含む副生成物を受け取り、硫酸ナトリウム(NaSO)固体から液体を分離する。
【0016】
さらなる一態様では、前記晶析器ユニットは、前記晶析器容器の上流に複数の冷却器をさらに備え、複数の前記冷却器のうちの少なくとも1つの冷却器は、前記液体流れとの熱交換関係にある前記遠心分離機からの液体を受け取り、当該液体流れの温度を低減させる。
【0017】
一態様では、前記固液分離器は、空気圧フィルタおよび遠心分離機からなる群から選択される。
【0018】
その他の或る態様では、本開示は、リチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するためのプロセスに関する。或る態様では、前記プロセスは、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む液体流れから硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させる(solidify)工程を含む。一変形形態では、硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させる前記工程は、水蒸気と流出物流れとが生成されるように、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む前記液体流れ内の水の一部を蒸発させる工程を含む。前記プロセスは、第2流出物流れが生成されるように、前記流出物流れを冷却して晶析器容器内で当該流出物流れから硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させる工程をさらに含む。代替的な一変形形態では、硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させる工程は、第3流出物流れが生成されるように、前記液体流れを冷却して晶析器容器内で当該液体流れから硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させ、水蒸気と第4流出物流れとが生成されるように、前記第3流出物流れ内の水の一部を蒸発させる工程を含む。次いで、前記プロセスは、前記第2流出物流れまたは前記第3流出物流れから前記硫酸ナトリウム(NaSO)固体を除去する工程と、続いて、炭酸リチウム(LiCO)生成物流れが生成されるように、前記第2流出物流れまたは前記第4流出物流れを加熱して当該第2流出物流れまたは当該第4流出物流れに炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する工程を含む。最後に、前記プロセスは、前記炭酸リチウム(LiCO)生成物流れから炭酸リチウム(LiCO)を分離する工程を含む。
【0019】
一態様では、前記プロセスは、前記液体流れ内の水の一部を蒸発させるよりも前に、約90℃以上の温度に当該液体流れを加熱する工程をさらに含む。
【0020】
一態様では、前記プロセスは、前記第3流出物流れ内の水の一部を蒸発させるよりも前に、約90℃以上の温度に当該第3流出物流れを加熱する工程をさらに含む。
【0021】
さらなる一態様では、前記液体流れを加熱する前記工程は、蒸発させる間に生成された前記水蒸気と熱を交換させる工程をさらに含む。
【0022】
さらなる一態様では、前記第3流出物流れを加熱する前記工程は、前記液体流れと熱を交換させる工程をさらに含む。
【0023】
さらなる一態様では、前記プロセスは、前記液体流れと熱を交換させる前記工程よりも前に、前記水蒸気を圧縮する工程をさらに含む。
【0024】
一態様では、前記第2流出物流れまたは前記第4流出物流れを加熱する前記工程は、約80℃以上約100℃未満の温度に前記第2流出物流れまたは前記第4流出物流れを加熱する工程であり、前記プロセスは、炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する前記工程の間に前記温度を維持する工程を含む。
【0025】
一態様では、炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する前記工程は、化学量論的に約10%以上約15%以下過剰の炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する工程である。
【0026】
一態様では、前記流出物流れまたは前記液体流れを冷却する前記工程は、約0℃以下の温度に前記流出物流れまたは前記液体流れを冷却する工程である。
【0027】
さらなる一態様では、冷却する前記工程は、複数の冷却段階において行われる。第1冷却段階では、前記流出物流れまたは前記液体流れの温度が約40℃以下の温度に低減される。第2冷却段階では、前記流出物流れまたは前記液体流れの温度が約30℃以下の温度に低減される。第3冷却段階では、前記流出物流れまたは前記液体流れの温度が約-2℃以下の温度に低減される。
【0028】
一態様では、前記液体流れを冷却する前記工程は、前記晶析器容器内で生成された前記第3流出物と熱を交換させる工程を含む。
【0029】
一態様では、前記第2流出物流れまたは第3流出物流れから前記硫酸ナトリウム(NaSO)固体を除去する前記工程は、前記硫酸ナトリウム(NaSO)固体を含む副生成物流れを遠心分離して、液体を分離し、前記硫酸ナトリウム(NaSO)固体を収集することによって行われる。
【0030】
一態様では、前記炭酸リチウム(LiCO)生成物は、約80重量%以上の純度を有する。
【0031】
さらなる一態様では、前記第4流出物流れの一部は、前記液体流れと組み合わせられる。
【0032】
適用可能性のさらなる範囲は、本明細書に提供される記載から明らかになることであろう。この概要における説明および特定の具体例は、例示のみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
〔図面の簡単な説明〕
【0033】
ここに説明される図面は、選択された実施形態の例示のみを目的とするものであって可能な実施形態の全てではなく、また、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0034】
図1は、本開示の或る変形形態による、リチウムイオン電池に由来する廃棄物流れからリチウムを回収するためのシステムを示す。
【0035】
図2は、蒸発システムの上流に加熱器システムを含む、本開示の或る代替的な変形形態によるリチウムを回収するためのシステムの部分図を示す。
【0036】
図3は、晶析ユニット内において晶析器容器の上流に多段階冷却器システムを含む、本開示の或る代替的な変形形態によるリチウムを回収するためのシステムの部分図を示す。
【0037】
図4は、本開示の或る変形形態による、リチウムを回収するためのプロセスの一例を示す。
【0038】
図5は、蒸発器の上流に晶析ユニットを含む、本開示の或る変形形態による、リチウムイオン電池に由来する廃棄物流れからリチウムを回収するための代替的なシステムを示す。
【0039】
図6は、蒸発器の上流に晶析ユニットを含み、さらにシステムに還流流れが含まれる、本開示の或る変形形態による、リチウムイオン電池に由来する廃棄物流れからリチウムを回収するための代替的なシステムを示す。
【0040】
図面における複数の図の全体を通して、対応する参照番号は対応する部分を示す。
〔詳細な説明〕
【0041】
例示的な実施形態は、本開示が十分なものとなり、かつその範囲が当業者に十分に伝えられるように提供されている。本開示の実施形態の十分な理解が提供されるように、特定の組成物、構成要素、装置および方法の例等の、多数の特定の詳細が記載される。特定の詳細を採用する必要がないこと、例示的な実施形態が種々の多くの形態で実施され得ること、および、いずれも本開示の範囲を限定するように解釈されるべきものではないことは、当業者には明らかであろう。一部の例示的な実施形態において、周知のプロセス、周知の装置構造、および周知の技術は、詳細には説明しない。
【0042】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的な実施形態の説明のみを目的とするものであり、限定を意図するものではない。本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、別段の定めのない限り、複数形も含むことが意図され得る。用語「備える(含む)(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(備える)(including)」、および「有する(having)」は、包含的であり、それゆえ、記載された特徴、要素、組成物、工程、整数、動作、および/または構成要素の存在を特定するが、1または複数の他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、および/またはこれらの群の存在または追加を排除するものではない。「備える(含む)(comprising)」というオープンエンドの用語は、本明細書に記載された様々な実施形態を説明および特許請求するために使用される非限定的な用語として解されるべきであるが、或る態様では、当該用語は代替的に、「からなる(consisting of)」または「から実質的になる(consisting essentially of)」等の、むしろより限定的かつ制限的な用語であると解され得る。したがって、組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、および/または処理工程を列挙する任意の所与の実施形態について、本開示には、列挙された組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、および/または処理工程等からなり、またはから実質的になる実施形態が具体的に含まれる。「からなる」の場合にあっては、この代替的な実施形態は、任意の追加の組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、および/または処理工程を除外し、一方、「から実質的になる」の場合にあっては、基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼす任意の追加の組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、および/または処理工程はかかる一実施形態から除外されるものの、基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼさない任意の組成物、材料、構成要素、要素、特徴、整数、動作、および/または処理工程は、当該実施形態に含まれ得る。
【0043】
本明細書で説明される任意の方法工程、プロセス、および動作は、実行の順序について具体的に特定されない限り、説明または図示された特定の順序でそれらを実行することが必ず求められるものとは解釈されるべきではない。また、別段の指示がない限り、追加的または代替的な工程が採用されてもよいことを理解されたい。
【0044】
構成要素、要素または層が別の要素または層の「の上にある(on)」、「に係合される(engaged to)」、「に接続される(connected to)」、または「に結合される(coupled to)」と言及されるとき、当該構成要素、要素、または層は、当該別の構成要素、要素もしくは層の直接的に上にあり、係合され、接続され、もしくは結合されていてもよく、または、介在する要素もしくは層が存在していてもよい。対照的に、要素が別の要素または層の「の直接的に上にある(directly on)」、「に直接的に係合される(directly engaged to)」、「に直接的に接続される(directly connected to)」、または「に直接的に結合される(directly coupled to)」と言及される場合、介在する要素または層は存在しなくてもよい。要素間の関係を説明するために使用されるその他の語は、同様に解釈されるべきである(例えば、「間に(between)」と「直接的に間に(directly between)」、「隣接する(adjacent)」と「直接的に隣接する(directly adjacent)」等)。本明細書で使用される場合、用語「および/または(and/or)」は、関連する列挙された項目のうちの1または複数の項目の任意かつ全ての組み合わせを含む。
【0045】
第1、第2、第3等の用語は、様々な工程、要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションを説明するために本明細書で使用され得るが、これらの工程、要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションは、特に明記しない限り、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある工程、要素、構成要素、領域、層、またはセクションを、別の工程、要素、構成要素、領域、層、またはセクションと区別するためにのみ使用され得る。本明細書で使用されるときの「第1」、「第2」等の用語、およびその他の数に関する用語は、別段の定めのない限り、配列または順序を含意するものではない。したがって、後述する第1の工程、要素、構成要素、領域、層、またはセクションは、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2の工程、要素、構成要素、領域、層、またはセクションと称することもできる。
【0046】
本明細書において、「前」、「後」、「内」、「外」、「下」、「下方」、「下側」、「上方」、「上側」等の空間的または時間的に相対的な用語は、図に示すある要素または特徴に対する別の(1以上の)要素または特徴との関係性を説明して説明を容易にするために、使用され得る。空間的または時間的に相対的な用語は、図に示される向きに加えて、使用中または動作中の装置またはシステムの種々の向きを包含するよう意図され得る。
【0047】
本開示全体を通して、数値は、所与の値からのわずかな偏差、概ね言及された値を有する実施形態、および正確に言及された値を有する実施形態を包含する範囲に対する近似的な測定結果または限界を表す。詳細な説明の最後に提供される実施例以外にも、付属の特許請求の範囲を含めて本明細書におけるパラメータ(例えば、量または条件のパラメータ)の全ての数値は、数値の前に「約」が実際に出現するか否かにかかわらず、全ての場合において、用語「約」によって修飾されているものと理解されるべきである。「約」は、記載された数値がいくらかのわずかな不正確さ(正確な値にいくらか接近している;値に近似的または合理的に近い;近傍にある)を許容することを示す。「約」によってもたらされる不正確さが、当技術分野においてこの通常の意味でそれ以外の方法で理解されない場合、本明細書で使用される「約」は、かかるパラメータを測定および使用する通常の方法から起こり得る最低限の変動を示す。例えば、「約」は、5%以下の変動、任意選択的に4%以下の変動、任意選択的に3%以下の変動、任意選択的に2%以下の変動、任意選択的に1%以下の変動、任意選択的に0.5%以下の変動を含み得、或る態様では、任意選択的に0.1%以下の変動を含み得る。
【0048】
加えて、範囲の開示には、範囲について与えられた端点および部分範囲を含めて、範囲全体内における全ての値およびさらなる分割された範囲の開示が含まれる。したがって、別段の定めがない限り、範囲には端点が含まれ、また、範囲全体内における全ての別個の値およびさらなる分割された範囲の開示が含まれる。特定のパラメータ(例えば、温度、分子量、重量パーセント)についての値および値の範囲の開示は、本明細書で有用な他の値および値の範囲を除外するものではない。所与のパラメータについての2つ以上の特定の例示された値によって、そのパラメータについて特許請求され得る値の範囲に関する端点が定められ得ることが企図される。例えば、本明細書において、パラメータXが値Aを有するように例示され、さらに、パラメータXが値Zを有するように例示される場合、パラメータXは、約Aから約Zまでの値の範囲を有し得ることが企図される。同様に、あるパラメータの2つ以上の値の範囲(かかる範囲がネストされているか、重なり合っているか、または別々であるかにかかわらず)の開示は、開示された範囲の端点を使用して特許請求され得る値の範囲の全ての可能な組み合わせを包含することが企図される。例えば、パラメータXが1~10、または2~9、または3~8の範囲の値を有すると本明細書で例示される場合、パラメータXは、1~9、1~8、1~3、1~2、2~10、2~8、2~3、3~10、および3~9を含むその他の範囲の値を有し得ることも企図される。
【0049】
特に明記しない限り、組成量は、質量基準である。さらに、ある量が重量として表される場合、それは質量と互換的に使用され得るが、所与の構成要素の質量を反映しているものと解されるべきである。
【0050】
本明細書で使用するとき、用語「組成物」および「材料」は、別段の指示がない限り、好ましい化学成分、元素、または化合物を少なくとも含有する物質であって、微量の不純物を含め、追加の元素、化合物、または物質も含み得る物質を広く指すために、互換的に使用される。
【0051】
図では、矢じりで示される矢印の方向は、概して、図示に関わる材料または情報(例えば、データまたは命令)のフローを示す。例えば、要素Aおよび要素Bが様々な情報を交換しているものの要素Aから要素Bへ送信される情報が図示に関連している場合、矢印は、要素Aから要素Bへと指向し得る。この単方向の矢印は、その他の情報が要素Bから要素Aへ送信されないことを含意するものではない。さらに、要素Aから要素Bへ送られる情報について、要素Bは、要素Aに対して情報のリクエストまたは受信確認を送り得る。
【0052】
本出願では、以下の説明を含めて、用語「モジュール」または用語「コントローラ」は、例えば、コンピューティングデバイスまたはコンピューティングモジュール等の文脈で使用される場合、用語「回路」と置き換えられ得る。「モジュール」および/または「コントローラ」という用語は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC);デジタルディスクリート回路、アナログディスクリート回路、もしくは混合アナログ/デジタルディスクリート回路;デジタル集積回路、アナログ集積回路、もしくは混合アナログ/デジタル集積回路;組合せ論理回路;フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA);コードを実行するプロセッサ回路(共用、専用、またはグループ);プロセッサ回路によって実行されるコードを記憶するメモリ回路(共用、専用、またはグループ);記載された機能性を提供する他の適切なハードウェアコンポーネント;または、例えばシステムオンチップにおける、上記の一部もしくは全ての組合せを指すか、それらの一部であるか、またはそれらを含み得る。
【0053】
モジュールおよび/またはコントローラは、1または複数のインターフェース回路を含み得る。一部の実施例では、インターフェース回路は、ローカルエリアネットワーク(local area network:LAN)、インターネット、ワイドエリアネットワーク(wide area network:WAN)、またはこれらの組合せに接続されるワイヤードインターフェースまたはワイヤレスインターフェースを含み得る。本開示の任意の所与のモジュールおよび/またはコントローラの機能性は、インターフェース回路を介して接続される複数のモジュールおよび/またはコントローラの間で分散され得る。例えば、複数のモジュールおよび/またはコントローラによって、負荷分散が可能になり得る。さらなる実施例では、サーバ(遠隔、またはクラウドとしても知られる)モジュールおよび/またはサーバコントローラが、クライアントモジュールおよび/またはクライアントコントローラに代わって、一部の機能性を達成し得る。
【0054】
上記で使用されるコードという用語は、ソフトウェア、ファームウェア、および/またはマイクロコードを含み得、プログラム、ルーチン、関数、クラス、データ構造、および/またはオブジェクトを指し得る。共用プロセッサ回路という用語には、複数のモジュールおよび/またはコントローラからの一部または全部のコードを実行する単一のプロセッサ回路が包含される。グループプロセッサ回路という用語には、追加のプロセッサ回路と組み合わせて、1または複数のモジュールおよび/またはコントローラからの一部または全部のコードを実行するプロセッサ回路が包含される。複数のプロセッサ回路への言及には、ディスクリートダイ上の複数のプロセッサ回路、単一ダイ上の複数のプロセッサ回路、単一のプロセッサ回路の複数のコア、単一のプロセッサ回路の複数のスレッド、または上記の組合せが包含される。共用メモリ回路という用語には、複数のモジュールおよび/またはコントローラからの一部または全部のコードを記憶する単一のメモリ回路が包含される。グループメモリ回路という用語には、追加のメモリと組み合わせて、1または複数のモジュールおよび/またはコントローラからの一部または全部のコードを記憶するメモリ回路が包含される。
【0055】
メモリ回路という用語は、コンピュータ可読媒体という用語のサブセットである。本明細書で使用されるコンピュータ可読媒体という用語には、媒体を通って(例えば、搬送波上を)伝播する一時的な電気信号または電磁信号が包含されない;したがって、コンピュータ可読媒体という用語は、有形かつ非一時的であると見なされ得る。非一時的で有形のコンピュータ可読媒体の非限定的な例として、不揮発性メモリ回路(例えば、フラッシュメモリ回路、消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ回路、またはマスクリードオンリーメモリ回路等)、揮発性メモリ回路(例えば、スタティックランダムアクセスメモリ回路またはダイナミックランダムアクセスメモリ回路等)、磁気記憶媒体(例えば、アナログ磁気テープもしくはデジタル磁気テープ、またはハードディスクドライブ等)、および光記憶媒体(例えば、CD、DVD、またはブルーレイディスク等)がある。
【0056】
本出願で説明される装置および方法は、コンピュータプログラムにおいて実施される1または複数の特定の機能を実行するように汎用コンピュータを構成することによって作成される専用コンピュータによって部分的または完全に実装され得る。上述した機能ブロック、フローチャートコンポーネント、およびその他の要素は、ソフトウェア仕様として機能し、熟練した技術者またはプログラマの日常業務によって、これをコンピュータプログラムに変換することができる。
【0057】
コンピュータプログラムは、少なくとも1つの非一時的で有形のコンピュータ可読媒体に記憶されるプロセッサ実行可能命令を含む。また、コンピュータプログラムは、記憶されたデータを含み、または記憶されたデータに依存し得る。コンピュータプログラムは、専用コンピュータのハードウェアと対話する基本入出力システム(basic input/output system:BIOS)、専用コンピュータの特定のデバイスと対話するデバイスドライバ、1または複数のオペレーティングシステム、ユーザアプリケーション、バックグラウンドサービス、バックグラウンドアプリケーション等を包含してもよい。
【0058】
コンピュータプログラムには、(i)HTML(hypertext markup language)、XML(extensible markup language)、またはJSON(JavaScript Object Notation)等のパースされる記述テキスト、(ii)アセンブリコード、(iii)コンパイラによってソースコードから生成されるオブジェクトコード、(iv)インタプリタによって実行されるソースコード、(v)ジャストインタイムコンパイラによってコンパイルおよび実行されるソースコードが含まれ得る。単なる例にすぎないが、ソースコードは、C、C++、C#、Objective-C、Swift、Haskell、Go、SQL、R、Lisp、Java(登録商標)、Fortran、Perl、Pascal、Curl、OCaml、Javascript(登録商標)、HTML5(Hypertext Markup Language 5th revision)、Ada、ASP(Active Server Pages)、PHP(PHP:Hypertext Preprocessor)、Scala、Eiffel、Smalltalk、Erlang、Ruby、Flash(登録商標)、Visual Basic(登録商標)、Lua、MATLAB、SIMULINK、およびPython(登録商標)を含む言語によるシンタクスを用いて書かれてもよい。
【0059】
特許請求の範囲に記載された要素のうちのいずれについても、「のための手段」という語句を使用してある要素が明示的に記載されない限り、または「のための動作」もしくは「のための工程」という語句を使用する方法請求項の場合を除き、米国特許法第112条(f)の趣旨の範囲内で、ミーンズプラスファンクション要素であることは意図されない。
【0060】
さて、例示的な実施形態を、添付の図面を参照してより十分に説明する。
【0061】
様々な態様において、本開示では、リチウムイオン電池廃棄物流れから1または複数のリサイクル生成物を形成することが企図される。ここで、前記リサイクル生成物のうちの少なくとも1つのリサイクル生成物には、リチウム(Li)が含まれる。或る変形形態では、リチウム(Li)を含むリサイクル生成物には、炭酸リチウム(LiCO)が含まれてもよい。また、本開示では、或る変形形態において、有益に再利用される副生成物として硫酸ナトリウム(NaSO)を形成することが企図される。さらに、本開示では、リチウムイオン電池廃棄物流れからリサイクルされたリチウム含有生成物を回収するためのシステムが企図される。
【0062】
リチウムイオン電池廃棄物流れは、リチウムイオン電池が分解、破砕、および/または細断された後に、リチウムイオン電池から形成される。かかる廃棄物流れは、リサイクルすることが意図されるブラックマス(黒色塊:black mass)として知られる材料であり得る。集合的に、ブラックマスには、種々の種類の(例えば、種々の活物質を有する)リチウムイオン電池からの部分を含め、1または複数の使用済みリチウムイオン電池の部分が含まれ得る。ブラックマスには通常、全ての活物質が含まれる。そのため、ブラックマスには、アノード活物質と、カソード活物質と混合された電解質成分と、が含まれ得る。一部の実施例では、使用済みリチウムイオン電池には、コバルト酸リチウム(lithium cobalt oxide:LCO)、リチウムマンガン酸化物(lithium manganese oxide:LMO)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(lithium nickel manganese cobalt oxides:NMC)、リン酸鉄リチウム(lithium iron phosphate:LFP)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(lithium nickel cobalt aluminum oxide:NCA)、チタン酸リチウム(lithium titanate:LTO)等から作製される正極/カソードが含まれ得る。例えば、表1を参照されたい。表1は、一般的な市販の電池の活物質の組合せの一覧を示す。使用済みリチウムイオン電池には、グラファイト、チタン酸リチウム酸化物(lithium titanate oxide:LiTiO-LTO)、リチウム金属等から作製される負極/アノードが含まれ得る。
【0063】
【表1】
【0064】
さらに、ブラックマスには、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)等の、フッ素を含み得る、リチウム塩を含む電解質成分が含まれ得る。結果として、ブラックマスには、例えばリチウム(Li)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)等の、回収対象となる関心のある金属(例えば、貴重金属)、および、例えば鉄(Fe)、銅(Cu)、フッ素(F)、リン(P)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)等の不純物が含まれ得る。ブラックマス組成物は、リチウムイオン電池の種類に応じてバッチ間で変動し得ることを理解されたい。
【0065】
様々な態様において、本明細書に開示されたシステムおよびプロセスでは、使用済みリチウムイオン電池をリサイクルして、リチウムを、ブラックマスに含まれるその他の成分/不純物から回収および分離し、リチウム含有種を回収することができる。例として、本開示によって提供される方法およびシステムでは、リチウムイオン電池廃棄物流れを処理して、リチウム(Li)を、その他の様々な元素から分離および回収することができる。当該その他の様々な元素には、フッ素(F)、リン(P)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、(例えば、グラファイトの形態の)炭素(C)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、およびこれらの組み合わせが含まれる。或る態様では、浸出によって硫酸リチウム(LiSO)を形成し、次いで、炭酸リチウム(LiCO)としてリチウムが回収できるように当該硫酸リチウム(LiSO)を反応させることによって、使用済みのリチウムイオン電池(lithium-ion batteries:LIB)からリチウムが抽出される。
【0066】
或る態様では、リチウムイオン電池廃棄物流れに由来する廃棄物流れが形成されるように、1または複数の分離プロセスおよび/または精製プロセスが、リチウムを回収するための本システムおよび本プロセス(方法)の上流工程として実施されてもよい。したがって、廃棄物流れは、リチウム(Li)を含む(例えば、1または複数のリチウム含有化合物を含む)液体流れであってもよい。或る変形形態では、リチウムイオン電池廃棄物流れに由来する液体流れには、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)が含まれる。非限定的な例として、2023年2月22日に出願された「PROCESSES AND SYSTEMS FOR PURIFYING
AND RECYCLING LITHIUM-ION BATTERY WASTE
STREAMS」という名称の共同所有の米国特許出願第18/112,676号、2022年3月3日にWO2022/045973として公開された「PROCESS FOR REMOVING IMPURITIES IN THE RECYCLING OF LITHIUM-ION BATTERIES」という名称のPCT出願PCT/SG2021/050496、および2022年1月17日に出願された「PROCESS FOR RECYCLING LITHIUM IRON PHOSPHATE BATTERIES」という名称のPCT出願PCT/SG2022/050014に記載されたプロセスおよびシステムにおいて、かかる廃棄物流れが形成されてもよい。これらの各出願の関連する部分は、参照によって本明細書に援用される。様々なプロセスには、リチウムイオン電池由来の廃棄物流れのリサイクルにおける様々な湿式精錬プロセスの間に、水酸化ナトリウム(NaOH)をアルカリ塩基として用いてpHを変化させて、貴重金属の沈殿を達成する工程が含まれてもよい。上述したかかるプロセスのうちの或るプロセスでは、硫酸ニッケル、硫酸マンガン、および硫酸コバルト等の様々な金属の硫酸塩が、硫酸ナトリウムおよび硫酸リチウムと混合および溶解させられ得る。ニッケル、マンガン、およびコバルトの硫酸塩は、硫酸リチウムおよび硫酸ナトリウムよりも上流で、分離(析出)され、またはそれ以外の方法で(例えば、沈殿生成物として)回収され得る。本技術は、ナトリウム含有化合物からリチウム含有化合物を回収および精製する(例えば硫酸ナトリウムから硫酸リチウムを分離する)ための、改善された方法およびシステムに関する。
【0067】
一般に、液体流れの溶液中のリチウムの初期濃度は、リチウムを効果的にリサイクルするには低すぎる。さらに、リチウム(Li)およびナトリウム(Na)を効果的に互いから分離することの達成にあたっては、特定の課題がある。両者とも、IUPAC周期表のI族元素であるからである。例えば、ナトリウムおよびリチウムは、多くの液体媒体において、極めて溶解度が大きい。リチウム回収の困難さを悪化させているのは、ナトリウム塩およびリチウム塩の双方の溶解度積が非常に近く、その結果、多くの溶媒系において、ナトリウムおよびリチウムが同時に固体化することである。或る態様では、本技術において、液体廃棄物流れから相当量のリチウムを回収することが企図される。例えば、本明細書において企図される方法およびシステムでは、硫酸ナトリウム(NaSO)および水を含む液体流れから、相当量の硫酸リチウム(LiSO)が抽出される。
【0068】
リチウムイオン電池廃棄物流れに最初にリチウム(Li)が含まれる或る態様では、約75%以上の分離効率で、または以下に特定される値のうちのいずれかの値の分離効率でリチウムが除去され得る。処理前の流れ中に存在するリチウムの初期量と、処理後または分離後の生成物中に存在するリチウムの最終量とを比較することによって、分離効率が計算され得る。或る態様では、リチウム等の所与の成分についての分離効率(η)は、次の式によって表すことができる。
【0069】
【数1】
【0070】
ここで、xは、リチウムの初期量(質量または体積量のいずれか)であり、xは、分離プロセスが完了した後のリチウムの最終量である。より詳細に後述される通り、或る変形形態では、リチウムを回収するための本発明のシステムおよび方法を使用する分離の効率は、リチウムに関して、約75%以上であってもよく、任意選択的に約80%以上であってもよく、任意選択的に約85%以上であってもよく、任意選択的に約90%以上であってもよく、任意選択的に約95%以上であってもよく、任意選択的に約96%以上であってもよく、任意選択的に約97%以上であってもよく、任意選択的に約98%以上であってもよく、或る変形形態では、任意選択的に約99%以上であってもよい。
【0071】
概して、本開示では、存在するリチウム種を濃縮するための水回収プロセスを設けることによってリチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを含む生成物(例えば、炭酸リチウム(LiCO))を回収するための経済的な方法およびシステム/プラントであって、生成物として炭酸リチウム(LiCO)を生成して回収し、任意選択的に、副生成物として硫酸ナトリウム(NaSO)を生成する方法およびシステム/プラントが企図される。炭酸リチウム(LiCO)は、様々な産業(例えば、リチウム電池産業、コンクリート産業、セラミクス、クリンカおよびタイルの製造等であるが、これらに限定されるものではない)において、経済的に再利用され得る。
【0072】
概して、本開示では、液体流れ中のリチウム含有種を濃縮してリチウムの回収を促進するためのシステムおよびプロセスの両方が提供される。或る変形形態では、リチウム含有種を濃縮するこのプロセスは、エネルギー効率の良い方法で行われる。一変形形態では、リチウムイオン電池廃棄物に由来する加熱された液体廃棄物流れ(例えば、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、および水が含まれる)から、水が分離され得る。
【0073】
或る変形形態では、本開示では、チウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するためのプロセスであって、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む液体流れから硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化する工程を含むプロセスが企図される。
【0074】
任意の実施形態において、液体流れから硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化する工程は、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む液体流れから水の一部を分離する工程を含む。水の一部を分離する工程は、液体流れ中の水の一部を気化または蒸発させて、水蒸気と、濃縮液体流れまたは流出物流れとを生成する工程を含んでもよい。或る変形形態では、分離/蒸発の間に除去される水の量(廃棄物流れ中の水の初期濃度を気化後の最終濃度と比較)は、約70重量%以上約90重量%以下であってもよい。分離する工程の後における流出物流れ中の硫酸リチウム(LiSO)の濃度は、約8g/L以上約14g/L以下であってもよく、流出物流れ中の硫酸ナトリウム(NaSO)の濃度は、約50g/L以上約100g/L以下であってもよい。このとき、初期量の水の約10重量%以上約20重量%以下の水が、当該流出物流れ中に残っている。
【0075】
一変形形態では、分離は、蒸発器において行われる。当該蒸発器において、水の少なくとも一部が液体流れから蒸発して、濃縮液体流れと水蒸気またはスチームとが生成する。単一の蒸発器があってもよく、または、並列構成もしくは直列構成における複数の蒸発器もしくは凝縮器があってもよい。
【0076】
任意の実施形態において、液体流れは、例えば当該液体流れを1または複数の加熱器(例えば、予熱器)に通すことによって、蒸発させる工程より前に加熱されてもよい。或る態様では、1または複数の予熱器または熱交換器を使用して、当該液体流れを蒸発器に入るよりも前に加熱してもよい。例えば、当該方法には、水を蒸発させる工程よりも前に、例えば約90℃以上の温度に液体を加熱する工程が含まれてもよい。或る態様では、流出物流れ(加熱された液体流れ)は、加熱する工程の後に、NaSO濃度が飽和レベル付近となるような温度を有する。
【0077】
加熱器は、熱交換媒体もしくは熱交換流体(例えば、水蒸気/スチームまたは空気等)を循環させる熱交換器であってもよく、または、到来する液体流れを蒸発器に入る前に所定温度に加熱するための発熱体(例えば、電気的発熱体、燃料に基づく発熱体)を有してもよい。熱交換器には、フィンドチューブ熱交換器、ブレージングプレート熱交換器、プレートアンドフレーム熱交換器、同心熱交換器、マイクロチャネル熱交換器、またはその他の熱交換器が含まれてもよい。液体流れは、第1方向に進行してもよく、第2流れにおける熱交換媒体は、第2方向に進行してもよい。当該第2方向は、第1方向に対して並流、向流、または交差流の関係にあってもよい。
【0078】
或る態様では、当該プロセスは、連続プロセスであり、下流の蒸発工程の間に生成される水蒸気/スチームは、液体流れと熱を交換するように、熱交換器装置を通して再循環または循環されてもよい。或る変形形態では、当該プロセスにはさらに、水蒸気を圧縮器において処理することによって当該水蒸気が蒸発器を出た後に当該水蒸気を圧縮する工程が、液体流れと熱を交換させる工程よりも前に含まれてもよい。
【0079】
この変形形態では、予熱器によって液体が予熱されてもよく、加熱源は、少なくとも部分的に、蒸発器において生成される当該システムの二次スチーム凝縮物であってもよい。予熱工程後、液体流れは、蒸発システムに入る。液体流れに含まれる材料の複雑さのゆえに、スケーリングによって引き起こされ得るシャットダウンを回避してシステムの安定性を高めるために、或る態様では、供給フローが自動的に調整されてもよく、分離器/蒸発器の液位が維持される。当業者ならば理解するであろう通り、供給フローは、蒸発システムのサイズまたはスケールに依存することとなる。
【0080】
或る変形形態では、蒸発システムには、強制循環プロセスが採用され、任意選択的な強制循環ポンプが設けられる。強制循環ポンプは、(1以上の)熱交換器内(例えば、その管内)において材料が高速に流れることが保証され、液体流れ中の材料がスケーリングして内部流導管(例えば、管)がブロックされることが防止されるように、圧縮器またはその他のポンプの形態であってもよい。或る変形形態では、任意選択的な強制循環ポンプは、処理される流れの圧力を約0.2MPa以上約0.25MPa以下に増大させてもよい。或る態様では、本開示の或る態様によって提供される蒸発システムのための強制循環プロセスによって、以下の利点のうちの1または複数の利点が提供される:(1)強制循環蒸発器は、伝熱面上で沸騰してファウリングまたは晶析の形成が起こることを回避するために使用され得る;(2)装置内の蒸発液体の循環は、主に、循環ポンプの強制流による;(3)液体流れ中の材料は加熱器内において蒸発せず、熱交換器内で濃度は変化しない。代わりに、分離晶析器(晶析器容器、遠心分離機等の任意の分離装置、またはこれらの装置のうちの全ての装置内が含まれ得る)内におけるフラッシング後に、濃度が増大することとなる。そのため、材料は、熱交換面に付着することがなく、当該熱交換面上にファウリングを生じさせない;(4)分離晶析器の本体は、十分な液体/気体分離領域および分離高さを有し、これによって、長期的な蒸発および安定的な排出濃度を保証することができる。一変形形態において、分離晶析器は、約1,000mm(1m)×約2,000mm(2m)の内寸(Φ)を有する容器を含んでもよい。
【0081】
蒸発器内で生成された水蒸気/スチームから液体流れへの熱交換を促すための熱交換器が設けられる或る態様では、当該方法によって或る利点が提供される。例えば、或る態様では、加熱システムを有する本開示のシステムおよび方法の利点は、システムの通常状態/定常状態の運転の際の熱損失を補うために少量の原料スチームのみが必要とされ、一部の原料スチームが始動のために必要とされ得ることである。図2に示すように、液体流れの蒸発によって生成された二次スチームは、蒸気圧縮器に入り、当該圧縮器が作用した後に主熱交換器に戻り、材料蒸発のためのエネルギー源として、温度および圧力を増大させる。
【0082】
さらに、蒸発器からの二次スチームが液体流れ材料を加熱した後、水蒸気/スチームは、液体水へと凝縮する。当該液体水は、凝縮物タンク(図示せず)において収集されてもよい。次いで、当該凝縮物は、原料液体が予熱されるように凝縮物予熱器へ圧送され得る。次いで、冷却された凝縮物は、システムから排出され得る。
【0083】
図示されていないが、さらなる或る態様では、システムによって生成された非凝縮性気体が(熱交換器の形態の)非凝縮性凝縮器によって冷却され、凝縮水が凝縮物水タンクに入った後、非凝縮性気体が収集され、排出前に、例えば活性炭を用いてさらに処理されてもよい。
【0084】
当該方法は、硫酸リチウム(LiSO)および硫酸ナトリウム(NaSO)が液体流れ中で濃縮されるように、システムの蒸発部分において当該液体流れから水の一部を除去した後に、流出物流れを冷却する工程と、晶析器容器中で流出物流れから硫酸ナトリウム(NaSO)固体を固体化させる工程と、をさらに含む。
【0085】
或る態様では、流出物流れは、約20℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約10℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約5℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約3℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約0℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約-2℃以下の温度に冷却され、或る変形形態では、任意選択的に約-5℃以下の温度に冷却される。冷却工程は、複数の冷却段階で行われてもよい。一例では、冷却段階には、3つの冷却フェーズが含まれてもよく、例えば、第1冷却段階では、流出物流れの温度が約40℃以下の温度に低減されてもよく、第2冷却段階では、流出物流れの温度が約30℃以下の温度に低減されてもよく、第3冷却段階では、流出物流れの温度が約-2℃以下の温度に低減されてもよい。
【0086】
所定温度において、硫酸リチウム(LiSO)は、濃縮液体流れ中の水に可溶のままである一方、硫酸ナトリウム(NaSO)は、固体(固体)として溶液の外へ固体化される。次いで、冷却された濃縮液体流出物流れは、下流の晶析器/晶析ユニットへ送られ、当該晶析器/晶析ユニットが濃縮液体流れを受け取り、そこで硫酸ナトリウム(NaSO)固体が生成されてもよい。或る態様では、晶析器ユニットは、晶析器/晶析反応器または晶析器/晶析容器と、冷却工程(または、上述した複数の段階の冷却工程)を行うための少なくとも1つの上流の冷却器と、を備える。他の変形形態では、晶析ユニットは、冷却ジャケットまたはその他の冷却メカニズムを備える晶析容器を有してもよい。当該少なくとも1つの冷却器は、到来する濃縮液体流れが晶析器容器に入る前に所定温度に冷却されるように、熱交換流体(例えば、液体水または空気)等の熱交換媒体を循環させてもよい。冷却器は、液体流れを加熱するための熱交換器の文脈において上述した熱交換設計のような熱交換設計を有してもよく、または熱電冷却器、もしくは当業者に知られるその他の設計を含んでもよい。このようにして、硫酸ナトリウム(NaSO)は、晶析器容器において、硫酸ナトリウム(NaSO)固体として流出物流れから除去され得る。これらの所定温度における水中での硫酸ナトリウム(NaSO)の溶解度は、溶液中に留まる硫酸リチウム(LiSO)と比べて小さい。当業者ならば理解するであろうように、晶析および沈殿は、類似の固体化プロセスである。任意の特定の理論に拘束されるものではないが、硫酸ナトリウム(NaSO)は、例えば状態の物理的な変化(例えば、本開示の或る態様によるプロセスおよびシステムにおいて生じる温度または圧力の低減等)を通じて、晶析プロセスを介して固体化し得るものと考えられる。かかる晶析プロセスにおいて、溶解物質(例えば、NaSO)は固体構造物を形成できる。当該固体構造物は、結晶構造であってもよく、例えば、規則的、反復的な配列の原子または分子を有してもよい。結晶形成がゆっくりと起こり得、結晶が成長して固体塊として出現し得る。したがって、硫酸ナトリウム(NaSO)固体には、結晶性硫酸ナトリウム(NaSO)が含まれ得る。他の態様では、固体化プロセスは、例えば、材料が液体(例えば、冷却された液体)への溶解度よりも多い量の材料が存在する場合に液体溶液から固体材料(例えば、沈殿物としてのNaSO)の沈降が生じる等、沈殿プロセスであるとより普通に理解されているプロセスを含んでもよい。かかるプロセスによって生成される固体生成物(例えば、NaSO)は、完全には結晶性でないことがあり得る。メカニズムにかかわらず、本開示によって企図される固体化プロセスによって、液体流出物流れから、固相の硫酸ナトリウム(NaSO)が除去される。
【0087】
或る態様では、硫酸ナトリウム(NaSO)副生成物の純度は、約95重量%以上未満である。例えば、分離工程後に収集される硫酸ナトリウム副生成物は、収集される材料の総重量の乾量基準で約95重量%以上、収集される副生成物の総重量の約99重量%以下を構成し得る。或る変形形態では、初期量の硫酸ナトリウム(NaSO)の約60重量%以上約80重量%以下の硫酸ナトリウム(NaSO)が、流出物流れから除去される。したがって、或る変形形態では、約50g/L以上約80g/L以下の硫酸ナトリウム(NaSO)が、分離工程後に流出物流れ中に残存し得る。
【0088】
晶析器容器において、硫酸ナトリウム(NaSO)は、濃縮液体流出物流れから分離され得る固体である。或る変形形態では、母液に硫酸ナトリウム(NaSO)、および水の一部が含まれるように、母液および上清の流れが晶析器容器または下流の分離ユニット内で生成されてもよい。或る態様では、上清(第2流出物流れ)には、硫酸リチウム(LiSO)、濃度が低減した硫酸ナトリウム(NaSO)、および水の一部が含まれる。晶析器ユニットは、追加の分離装置(例えば、固体硫酸ナトリウム(NaSO)を分離するための遠心分離機および/またはフィルタ等)を含んでもよい。当該固体硫酸ナトリウム(NaSO)は、或る変形形態において、副生成物として有益に再利用され得る。したがって、或る変形形態において、当該プロセスでは、流出物流れ(第2流出物流れおよび/または母液)から硫酸ナトリウム(NaSO)固体を除去することが企図される。このことは、硫酸ナトリウム(NaSO)固体を含む副生成物流れを遠心分離し、液体を分離して硫酸ナトリウム(NaSO)固体を収集することによって行われ得る。或る変形形態では、硫酸ナトリウム(NaSO)固体から分離され、またはそれ以外の方法で晶析器容器から収集される液体(例えば、水)は、システムの種々の部分へ再循環されてもよい。例えば、分離された液体(例えば、水)は、まず、晶析器容器に入る前の流出物液体流れを冷却するためのシステムにおいて使用されてもよく、次いで、下流にあるリチウム回収ユニットにおいて使用されてもよい。また、分離された液体(例えば、水)は、任意選択的に、晶析器容器内で生成された第2流出物流れ(上清)と組み合わせられてもよく、この組み合わせられた流れは、下流にあるリチウム回収ユニットへ送られてもよいことが、本明細書において企図される。あるいは、分離された液体(例えば、水)は、第2流出物流れと組み合わせられることなく、下流にあるリチウム回収ユニットへ送られてもよい。
【0089】
代替的な実施形態では、液体流れから硫酸ナトリウム(NaSO)固体を固体化する工程は、当該液体流れを冷却する工程と、本明細書に記載された晶析器容器において、冷却された液体流れから硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化して、第3流出物流れを生成する工程と、を含む。例えば、液体流れは、約20℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約10℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約5℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約3℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約0℃以下の温度に冷却され、任意選択的に約-2℃以下の温度に冷却され、或る変形形態では、任意選択的に約-5℃以下の温度に冷却される。液体流れを冷却する工程は、本明細書に記載されるように、複数の冷却段階で行われてもよい。冷却された濃縮液体流出物は、次いで、下流にある晶析器ユニット内へ送られる。当該晶析器ユニットは、液体流れを受け取り、当該晶析器ユニットにおいて、固体硫酸ナトリウム(NaSO)が上述したように生成される。上述したように、晶析器ユニットは、本明細書に記載された晶析器反応器または晶析器容器と、冷却工程(または、上述した複数の段階の冷却工程)を行うための、本明細書に記載された上流にある少なくとも1つの冷却器とを備える。他の変形形態では、晶析ユニットは、冷却ジャケットまたはその他の冷却メカニズムを備える晶析容器を有してもよい。固体硫酸ナトリウム(NaSO)は、上述した第3流出物および/または母液から分離または除去され得る。追加的または代替的に、硫酸ナトリウム(NaSO)固体から分離された液体(例えば、水)は、任意選択的に、晶析器容器内で生成された第3流出物流れ(上清)と組み合わせられてもよく、この組み合わせられた流れは、下流にある蒸発器へ送られてもよい。あるいは、分離された液体(例えば、水)は、第3流出物流れと組み合わせられることなく、蒸発器へ送られてもよい。任意の実施形態において、液体流れを冷却する工程は、少なくとも1つの冷却器(例えば、熱交換器)において、晶析器容器内で生成された第3流出物と熱を交換させる工程を含んでもよい。本明細書において提供される様々な構成のうちの任意の構成が、液体流れ中に存在する任意の濃度のリチウムに適し得ることが、本明細書において企図される。また、液体流れを冷却する工程が、蒸発を介した濃縮工程等のその他のプロセスよりも前に起こる一変形形態は、ナトリウム塩およびリチウム塩の両者の溶解度積が非常に近いゆえにリチウムの回収が困難であることを考慮すると、より低い濃度のリチウムが存在する場合に特に有利であり得ることが理解される。
【0090】
次いで、可溶性硫酸リチウム(LiSO)を有する液体流れ(第3流出物)を、本明細書に記載された蒸発器/蒸発器システムへ送ることができる。当該蒸発器/蒸発器システムによって、第3流出物流れ中の水の一部が蒸発させられて、水蒸気と、第4流出物流れ中で可溶性硫酸リチウム(LiSO)が濃縮された当該第4流出物流れとが生成される。追加的または代替的に、第3流出物は、蒸発する前に/蒸発器/蒸発器システムに入る前に、例えば約90℃以上の温度に加熱されてもよい。例えば、第3流出物流れを加熱する工程は、少なくとも1つの冷却器(例えば、熱交換器)において液体流れと熱を交換させる工程を含んでもよく、または第3流出物流れは、上述した予熱器において加熱されてもよい。追加的または代替的に、第4流出物流れの一部は、還流流れとして機能し、晶析器に入る前の液体流れと組み合わせられてもよい。
【0091】
次いで、可溶性硫酸リチウム(LiSO)を有する濃縮液体流れ(第2流出物流れまたは第4流出物流れ)は、晶析器ユニットまたは蒸発器から、下流にあるリチウム回収ユニット内へ送られる。リチウム回収ユニットには、反応器、熱源、および固液分離器コンポーネント(例えば、フィルタを含む濾過ユニット、または遠心分離機等)が含まれてもよい。
【0092】
また、このプロセスは、流出物流れ(第2流出物流れまたは第4流出物流れ)を加熱する工程と、炭酸ナトリウム(NaCO)を導入して炭酸リチウム(LiCO)生成物を生成する工程と、を含む。或る変形形態では、流出物流れは、約80℃以上約100℃未満の温度に加熱され、任意選択的に、約80℃以上約90℃以下の温度に加熱される。炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する工程の間、反応器中における混合および反応を通じて、流出物流れの温度が維持される。
【0093】
例えば、本明細書に記載された硫酸リチウム(LiSO溶液から炭酸リチウム(LiCO)を沈殿させるためのプロセスは、一般に、本教示による或る状態を示し得る。炭酸リチウム(LiCO)の沈殿では、硫酸リチウム(LiSO)とソーダ灰(NaCO)との間で、反応が溶液中で起こる。これによって、良好な沈降特性、濾過特性、および洗浄特性を有する濃密な沈殿物の形成が促進され、低含水量のウェットケーキが形成される。起こると考えられる水溶液中の化学反応は、以下の通りである。
【0094】
【化1】
【0095】
或る態様では、炭酸リチウム(LiCO)が、特に母液/液体流出物流れにおいて、かなりの溶解度を有するため、処理されている母液/液体流れの量が最小化されるように、濃縮溶液をつくることが望ましい。水または塩溶液への炭酸リチウム(LiCO)の溶解度は、温度の増大とともに低下する。したがって、溶解度損失を最小化するために、高温、例えば約80℃以上約100℃以下の温度において、周囲圧力条件(例えば、1気圧)で、リチウム沈殿、特に遠心分離を行うことが有利である。
【0096】
或る態様では、化学量論的に過剰の炭酸ナトリウム(NaCO)が導入される。例えば、或る変形形態では、当該プロセスは、化学量論的に約10%以上約15%以下過剰の炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する工程をさらに含む。例えば、或る変形形態では、NaCOは、LiSOと等量であるより化学量論的におよそ10%~約15%過剰であることが望ましい。増大した炭酸イオン濃度が、母液/液体流れへのLiCOの溶解度を低減させ得るからである。これらの条件下では、開始時のLiSO溶液中に存在するリチウムの約15%が、可溶性LiCOとして母液/液体流れ中に沈殿せずに残るものと計算される。この可溶性リチウムはフッ化物、リン酸塩、またはケイ酸塩としての沈殿によってほぼ完全に回収され得るが、これらの回収手順のいずれも、様々な理由で経済的ではない。
【0097】
或る変形形態では、リチウム沈殿反応器内の温度は、約50℃以上約70℃以下であってもよく、反応器内の滞留時間は、約1時間以上約2時間以下であってもよく、流量は、処理されているバッチサイズ(および、上記の滞留時間)に依存することとなる。
【0098】
したがって、本方法および本システムでは、
(i)
(a)まず、液体流れ中で蒸発を介して硫酸リチウム(LiSO)を濃縮させ、続いて、晶析器ユニット中で硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化し、または、
(b)まず、晶析器ユニット中で硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化し、続いて、液体流れ中で蒸発を介して硫酸リチウム(LiSO)を濃縮させ、
次いで、
(ii)
有益に再利用可能な生成物としての炭酸リチウム(LiCO)の回収率が最大化されるように上述した残る硫酸リチウム(LiSO)を処理することによって、より高レベルのリチウムを炭酸リチウム(LiCO)として回収することができる。
【0099】
最後に、当該プロセスは、流出物流れから炭酸リチウム(LiCO)生成物を分離する工程を含む。反応器は、炭酸ナトリウム(NaCO)の源と共に、晶析器ユニットまたは蒸発器から濃縮液体流れ(第2流出物流れまたは第4流出物流れ)を受け取る。このようにして、炭酸リチウム(LiCO)を含む生成物流れを形成する反応が、反応器中で起こる。濾過ユニットまたはその他の固液分離ユニットを介して、残る液体流れ(炭酸リチウム(LiCO)生成物流れ)から炭酸リチウム(LiCO)が分離されてもよい。このようにして、生成物流れが生成し、次いで、フィルタを通過し、炭酸リチウム(LiCO)生成物を含む濃縮液と廃棄物流れとに分離される。或る態様では、炭酸リチウム(LiCO)生成物は、約80重量%以上の純度を有する。例えば、流出物流れから分離し、水を除去して乾燥させた後の収集された炭酸リチウム生成物は、収集される材料の総重量の乾量基準で、約80重量%以上を構成し得る。或る変形形態では、炭酸リチウム(LiCO)生成物の純度は、収集される生成物の総重量の約80重量%以上約90重量%以下であってもよい。
【0100】
このように、本開示の様々な態様によれば、炭酸リチウム(LiCO)は、リチウムイオン電池廃棄物流れからリサイクル生成物として回収し、有益に再利用することができる。さらに、或る態様では、硫酸ナトリウム(NaSO)も、それぞれ副生成物として回収され得る。回収された硫酸ナトリウムは、洗剤産業等の様々な産業において、リサイクル生成物として利用できる。
【0101】
様々な態様では、供給材料としてのリチウムイオン電池廃棄物流れからのリサイクル生成物としてのリチウムの回収は、バッチ処理もしくは連続処理によるシステム、またはこれらの組み合わせによるシステムにおいて行われてもよい。当該システムにおいて、材料流れは、連続して反応をする。様々な段階またはユニットは、中間的な処理された流れを次の段階のユニットへ連続的に提供するように配列(構成)される。以下でさらに説明するように、かかる段階には、例えば、蒸発段階または蒸発ユニット(加熱システムが含まれ得る)と、晶析段階または晶析ユニット(冷却システムが含まれ得る)と、リチウム回収段階またはリチウム回収ユニットと、が含まれてもよい。所与の回収段階または回収ユニットからの或る流れを、処理されている他の流れと熱を交換するように利用して、加熱プロセスまたは冷却プロセスが行われるときのシステムのエネルギー効率を向上させてもよい。限定するものではないが、500kgのブラックマス廃棄物流れが処理される一例では、当該方法および当該システムでは、約1,000kg/hrまたは1m/hrの流量で材料が処理され得る。しかしながら、当業者ならば理解するであろうように、流量は、処理される総量に依存するものであり、適切に変更され得る。
【0102】
図1は、リチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するための、本開示の或る態様によるリチウムリサイクルプラントまたはリチウムリサイクルシステム50の一例である。これは、上述したプロセスの様々な態様を実施するために使用され得る。硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む液体流れ52は、ポンプ54を介して流体導管56内を圧送される。流体導管56によって、システム50内の様々な構成要素間に流体連通が確立されている。本明細書に開示されるポンプのうちの任意のポンプには、任意の適切な種類のポンプが含まれてもよい。例えば、ポンプは、遠心ポンプ、容積式ポンプ、軸流ポンプ等であってもよい。液体流れ52は、入口62を介して、気液分離器(例えば、蒸発器60)に入る。蒸発器60は、第1出口64および第2出口66を有する。図1には示されていないが、液体流れ52は、蒸発器60に入るときに加熱されてもよい。蒸発器60において、液体流れ52からの水の少なくとも一部が揮発または蒸発されて、濃縮液体流れまたは流出物流れと、水蒸気またはスチームの流れとが生成される。濃縮液体流れは、第1出口64を通過し、水蒸気は、第2出口66を通って蒸発器60から出ていく。
【0103】
次に、濃縮液体流出物流れは、蒸発器60の下流にある晶析器ユニット70に入る。晶析器ユニット70には、例えば熱交換器として、濃縮液体流れを受け取って冷却する1または複数の冷却器(概して72で示す)が含まれてもよい。(1以上の)冷却器72を通過した後、濃縮液体流れは、入口76を介して、晶析器反応器または晶析器容器74に入る。晶析器容器74内において、冷却された濃縮液体流れは、上述した硫酸ナトリウム(NaSO)固体の形成を促進する所定温度を有する。固体硫酸ナトリウム(ならびに、任意選択的に、母液および/または上清)は、第1出口78を介して除去され、固液分離器装置80に通され得る。なお、図1には示されていないが、当業者によって理解されるように、システムには、固液分離器装置80および/または晶析器反応器もしくは晶析器容器74のいずれかと流体連通する母液貯蔵容器/タンク(および、上清貯蔵容器/タンク)がさらに含まれ得ることに留意されたい。図1に示すように、固液分離器装置80は、濃縮リチウム含有生成物(例えば、硫酸リチウム(LiSO))を含む上清および/または母液から硫酸ナトリウム(NaSO)固体を分離する、遠心分離機であってもよい。一変形形態において、以下の表2に、晶析容器74を含む晶析ユニット70の好適な条件の概略を示す。
【0104】
【表2】
【0105】
次いで、晶析器ユニット70の晶析器容器74内の可溶性硫酸リチウム(LiSO)を有する濃縮液体流出物流れ(例えば、上清)(第2流出物流れ)は、第2出口82を介して除去され得、下流にあるリチウム回収ユニット90へ送られる。任意選択的に、硫酸ナトリウム(NaSO)固体から分離された液体(例えば、水)は、第3出口83を介して除去され、任意選択的に、第2流出物流れと組み合わせられてもよく、次いで、この組み合わせられた流れが、下流にあるリチウム回収ユニット90へ送られてもよい。あるいは、分離された液体(例えば、水)は、第3出口83を介して除去され、第2流出物流れと組み合わせられることなく、下流にあるリチウム回収ユニット90へ送られてもよい。リチウム回収ユニット90は、(i)反応器92、(ii)熱源110(例えば、スチームで加熱され得る熱ジャケット、または当技術分野で知られるその他の加熱器)、および(iii)固液分離器(例えば、反応器92の下流における、1または複数のフィルタを備える濾過ユニット120)を備えてもよい。特に、固液分離器は、遠心分離機、または当業者に知られるその他の固液分離ユニットであってもよい。反応器92は、入口94を介して、晶析器ユニット70からの濃縮液体流れを受け取る。炭酸ナトリウム(NaCO)の供給源96は、炭酸ナトリウム(NaCO)が反応器92へ送出されるように、反応器92への第2入口98と連通している。反応器92は、攪拌機100をさらに含む。
【0106】
したがって、反応器92は、濃縮液体流出物流れ(第2流出物)および炭酸ナトリウム(NaCO)の両方を受け取る。濃縮液体流れおよび炭酸ナトリウムは、同時に、または異なる段階で、反応器92に導入され得る。或る変形形態では、溶液からの炭酸リチウム(LiCO)の回収は、まず、反応器92内の硫酸リチウム(LiSO)を含む溶液を、熱源110を介して約80℃以上約90℃以下の温度に加熱することによって行われる。温度は、当該プロセスを通じて維持されてもよい。反応器92内の加熱された当該溶液に炭酸ナトリウム(NaCO)が加えられてもよく、これによって、固体炭酸リチウム(LiCO)が沈殿し得る。
【0107】
反応器92内へ延びる攪拌機100によって、本明細書に説明された内容物が混合されてもよい。様々な実施形態では、本明細書に開示された攪拌機100のうちの任意の攪拌機には、反応器92内へ延びるシャフト102と、シャフト102に取り付けられた1または複数のインペラ104と、シャフト102およびインペラ104を回転させるためのモータ106と、が含まれてもよい。一部の実施形態では、各インペラ104は、反応器内の内容物をかき混ぜるための1または複数のブレード(または、フィン)を含んでもよい。例えば、1つの撹拌機は、所定距離だけ隔てられた2つのインペラ(各インペラは、3つのブレードを有する)を含んでもよい。特に、攪拌機100には、反応器のためのその他の形態のミキサまたは攪拌機(例えば、超音波処理、バブラ等)が含まれてもよい。
【0108】
反応器92は、所定時間(例えば、約30分以上約45分以下)の間、攪拌機100を用いて撹拌されてもよく、温度は、熱源110を用いて、所望の温度に維持されてもよい。攪拌時間が完了した後、硫酸リチウム(LiSO)は、上記の例示的な定式化に示されるように、炭酸リチウム(LiCO)として沈殿することとなる。
【0109】
リチウム回収ユニット90は、第2ポンプ112をさらに含んでもよい。第2ポンプ112によって、反応器92を出る炭酸リチウム(LiCO)を含む濃縮液体流れが、1または複数のフィルタを含む濾過ユニット120内へ圧送される。濾過ユニット120は、反応器92の出口97と流体連通している。液体流出物流れは、濾過ユニット120における当該1または複数のフィルタを通過し、リサイクルされた炭酸リチウム(LiCO)固体生成物を含む濃縮液と、水および濾過ユニットを出るその他の不純物を含む液体廃棄物流れ124と、に分離される。リサイクルされた当該炭酸リチウム(LiCO)固体生成物は、ケーキまたは固体として、貯蔵容器122内に貯蔵され得る。濾過ユニット120を通過する不純物は、所望に応じて処理されてもよく、例えば、廃水処理へ送られてもよく、かつ/または反応器へ再循環されてもよい。
【0110】
様々な実施形態において、本明細書に開示されたフィルタのうちの任意のフィルタには、任意の適切な種類のフィルタが含まれ得る。例えば、フィルタは、加圧(または、プレス)フィルタ、油圧フィルタ、重力フィルタ等であってもよい。
【0111】
このように、本開示は、当該方法を使用して炭酸リチウムが回収されるシステムを企図するものである。本技術は、リチウムイオン電池から炭酸リチウム(LiCO)を回収するための新しい方法を提供するものであり、硫酸リチウムおよび硫酸ナトリウムを廃棄物生成物として環境へ排出することに関する現在の課題を低減しつつ、良好な純度を有するリサイクル生成物として、経済的に魅力的な炭酸リチウム(LiCO)を市場に提供するものである。
【0112】
図2は、図1に示すものと似たリチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するためのリチウムリサイクルプラントまたはリチウムリサイクルシステムの部分図を示す。ただし、図2のリチウムリサイクルプラントまたはリチウムリサイクルシステムには、蒸発器システムの一部として組み込まれた加熱システムがさらに含まれる。図2に示すように、システムの代替的な変形形態150には、本開示の或る変形形態による、液体流れ52を蒸発器60に入る前に処理する加熱システム152が含まれる。簡潔にするために、構成要素が図1に示すものと同じである限り同じ参照番号が使用され、それらの構成要素は、顕著な特徴または機能が図2に示す変形形態に関連していない限り、ここで再び導入または説明されることはない。図2では、液体流れ52は、予熱器160を含む加熱システム152に入り得る。液体流れ52は、第1入口162において入り、第1出口164を介して出うる。予熱器160は、液体流れ52を第1所定温度に加熱する役割を果たす。上述したように、予熱器160は、加熱器であってもよく、または図示のように熱交換器を含んでもよい。当該熱交換器はさらに、液体流れ52と熱交換するように、別の流体流れに当該熱交換器を通過させ得る。この変形形態では、予熱器160は、第2入口166および第2出口168を含み、これらを通って別個の熱交換流体流れが流れ、当該液体流れと熱を交換する。
【0113】
次いで、液体流れ52は、第1入口182において熱交換器180に入り、第1出口184を介して熱交換器180を出る。熱交換器180は、液体流れ52を第2所定温度に加熱する役割を果たす。以下でさらに説明するように、熱交換器180はさらに、液体流れ52と熱交換するように、別の流体流れに当該熱交換器180を通過させる。この変形形態では、熱交換器180は、第2入口186および第2出口188を含み、これらを通って別個の熱交換流体流れが流れる。より具体的には、第2入口186は、圧縮スチーム流れを受け取る。当該圧縮蒸気流れは、第2出口66において、蒸発器60を出て、次いで、圧縮器190に入り、当該圧縮器190において、スチームが圧縮されて、圧力および温度が増大したものである。圧縮器190は、当技術分野で知られている種々の圧縮器であってもよい。当該種々の圧縮器には、遠心圧縮器、往復動圧縮器、回転圧縮器(回転翼圧縮器、転動圧縮器、シングルスクリュー圧縮器、ツインスクリュー圧縮器)、および軌道圧縮器(スクロール圧縮器またはトロコイド圧縮器)が含まれる。圧縮された当該スチームは、圧縮器190を出て、熱交換器180の第2入口186に入り、第2出口188を介して出ていく。
【0114】
一変形形態において、以下の表3に、加熱システム152の好適な条件の概略を示す。
【0115】
【表3】
【0116】
或る変形形態では、圧縮流れは、予熱器160の下流にありかつ蒸発器60の上流にある流体導管56に再注入されてもよい。これは、到来する液体流れ52と混合して、その温度および圧力が増大し、これによって、蒸発がより効率的になる。例えば、およそ83~85%のスチームが再循環され得、温度が約92℃以上約110℃以下に増大され得、これによって、システムの効率が向上され得る。
【0117】
次に、熱交換器180を出る水を含む流れは、スチームから少なくとも部分的に凝縮され(したがって、水の凝縮物が含まれている)、予熱器160の第2入口166に入り、第2出口168へ通過する。予熱器160において、当該流れは、通過する液体流れ52と熱交換する。このようにして、熱交換器180は、第2流れのための凝縮器として機能し得る。蒸発器60において処理された後、濃縮液体流出物流れは次いで、上述した処理のために晶析器ユニット70へ導かれ得る。
【0118】
図3は、図1に示すシステム50と似たリチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するためのリチウムリサイクルプラントまたはリチウムリサイクルシステム200の部分図を示す。ただし、リチウムリサイクルプラントまたはリチウムリサイクルシステム200には、本開示の或る変形形態による、晶析器ユニット70Aの一部として、複数の冷却器がさらに含まれる。簡潔にするために、構成要素が図1および図2に示すものと同じである限り同じ参照番号が使用され、それらの構成要素は、顕著な特徴または機能が図3に示す変形形態に関連していない限り、ここで再び導入または説明されることはない。
【0119】
図3は、システムの別の変形形態200を示す。システムの別の変形形態200には、本開示の或る変形形態による、蒸発器60の前の液体流れ52のための加熱装置と、晶析器ユニット70Aに含まれる複数の冷却器72Aと、が含まれる。簡潔にするために、構成要素が図1および図2に示すものと同じである限り同じ参照番号が使用され、それらの構成要素は、顕著な特徴または機能が図3に示す変形形態に関連していない限り、ここで再び導入または説明されることはない。
【0120】
液体流れ52は、蒸発器60に入り、そこで濃縮された液体流出物流れは、第1出口64から出て、複数の冷却器72Aを含む晶析器ユニット70Aへ送られる。特に、晶析器ユニット70Aは、1つの冷却器のみを備えてもよいものの、図示のように、複数の別個の冷却器72Aまたは冷却熱交換器を有する。図示のように、第1冷却器240は、濃縮液体流れ242を受け取り、当該濃縮液体流れ242は、当該第1冷却器240を第1方向に通過する。冷却熱交換媒体の第1流れ244は、濃縮液体流れ242との熱交換関係において、第1冷却器240を第2方向に通過する。当該第2方向は、第1方向に対して並流、向流、または交差流の関係にあってもよい。熱交換器は、図2の熱交換器180の文脈において上述した設計のうちのいずれかの設計を有してもよい。一例では、冷却熱交換媒体は、第1冷却器240内の水であってもよい。第1冷却器240によって、本開示の或る態様によって提供されるプロセスの文脈において上述した第1冷却段階が達成され得る。
【0121】
第2冷却器250は、第1冷却器240の下流にあり、濃縮液体流れ242を受け取る。当該濃縮液体流れ242は、第2冷却器250を第1方向に通過する。冷却熱交換媒体の第2流れ254は、濃縮液体流れ242との熱交換関係において、第2冷却器250を通過する。第2流れ254は、晶析器反応器74から生成される流れ(例えば、上清流れの一部分から分かれた液体流れ)であってもよい。第2冷却器250内の流体流れの第2方向は、第1方向に対して並流、向流、または交差流の関係にあってもよい。第2冷却器250によって、本開示の或る態様によって提供されるプロセスの文脈において上述した第2冷却段階が達成され得る。
【0122】
第3冷却器260は、第2冷却器250の下流にあり、濃縮液体流れ242を受け取り、濃縮液体流れ242をさらに冷却する。或る変形形態では、第3冷却器260を通る流量は、1m/hrであってもよく、約92℃の温度を有してもよい。冷却熱交換媒体の第3流れ264は、濃縮液体流れ242との熱交換関係において、第3冷却器260を第2方向に通過する。当該第2方向は、第1方向に対して並流、向流、または交差流の関係にあってもよい。一例では、冷却熱交換媒体は、第3冷却器260内の水であってもよい。第3冷却器260によって、本開示の或る態様によって提供されるプロセスの文脈において上述した第3冷却段階が達成され得る。
【0123】
晶析器ユニット70Aには、晶析容器74内の母液/液体流れからの硫酸ナトリウム(NaSO)固体の分離を促す遠心分離機80Aが含まれる。次いで、当該液体流れは再循環されてもよく、例えば、冷却器システム内へ(例えば、上述した第2冷却器250内へ)第2流れ254として送られてもよい。次いで、硫酸ナトリウム(NaSO)が除去された流出物流れ(第2流出物流れ)は、晶析容器74の出口82から出て、リチウム回収ユニット(図3には示されていないが、図1にリチウム回収ユニット90として示される)へ入り得る。
【0124】
図3は、システムの別の変形形態200を示す。システムの別の変形形態200には、本開示の或る変形形態による、蒸発器60の前の液体流れ52のための加熱装置と、晶析器ユニット70Aに含まれる複数の冷却器72Aと、が含まれる。簡潔にするために、構成要素が図1および図2に示すものと同じである限り同じ参照番号が使用され、それらの構成要素は、顕著な特徴または機能が図3に示す変形形態に関連していない限り、ここで再び導入または説明されることはない。
【0125】
液体流れ52は、ポンプ54を介して圧送され、蒸発器60に入り、そこで濃縮された液体流れは、第1出口64から出て、スチーム流れは、第2出口66から出る。第1出口64から出る濃縮液体流れは、次に、少なくとも1つの冷却器72Aを含む晶析器ユニット70Aへ進む。特に、晶析器ユニット70Aは、1つの冷却器のみを備えてもよいものの、図示のように、複数の別個の冷却熱交換器を有する。図示のように、第1冷却器240は、濃縮液体流れ242を受け取り、当該濃縮液体流れ242は、第1冷却器240を第1方向に通過する。冷却熱交換媒体の第1流れ244は、濃縮液体流れ242との熱交換関係において、第1冷却器240を第2方向に通過する。当該第2方向は、第1方向に対して並流、向流、または交差流の関係にあってもよい。一例では、冷却熱交換媒体は、第1冷却器240内の水であってもよい。
【0126】
第2冷却器250は、第1冷却器240の下流にあり、濃縮液体流れ242を受け取る。当該濃縮液体流れ242は、第2冷却器250を第1方向に通過する。冷却熱交換媒体の第2流れ254は、濃縮液体流れ242との熱交換関係において、第2冷却器250を通過する。第2流れ254は、晶析器反応器74から生成される流れ(例えば、上清流れの一部分から分かれた液体流れ)であってもよい。第2冷却器250内の流体流れの第2方向は、第1方向に対して並流、向流、または交差流の関係にあってもよい。
【0127】
第3冷却器260は、第2冷却器250の下流にあり、濃縮液体流れ242を受け取り、濃縮液体流れ242をさらに冷却する。冷却熱交換媒体の第3流れ264は、濃縮液体流れ242との熱交換関係において、第3冷却器260を第2方向に通過する。当該第2方向は、第1方向に対して並流、向流、または交差流の関係にあってもよい。一例では、冷却熱交換媒体は、第3冷却器260内の水であってもよい。
【0128】
晶析器ユニット70Aには、晶析容器74内の母液/液体流れからの硫酸ナトリウム(NaSO)固体の分離を促す遠心分離機80Aが含まれる。次いで、当該液体流れは、冷却器システム内へ(例えば、上述した第2冷却器250内へ)送られてもよい。上記のように、図示されていないものの、晶析器ユニット70Aは、母液、上清等を貯蔵するための1または複数のタンクを含んでもよい。
【0129】
このようにして、液体流れ52は、予熱器(例えば、図2の予熱器160)によって予熱され得る。或る変形形態では、図2と同様に、予熱器160の加熱源は、システムの二次スチーム凝縮物である。液体流れ52の複雑さのゆえに、スケーリングによって引き起こされ得るシャットダウンを回避してシステムの安定性を高めるために、供給フローが自動的に調整され得る。図示されていないものの、或る変形形態では、濃縮液体流れおよびスチーム流れが受け取られて蒸気と液体とがさらに分離されるように、蒸気-液体分離器が蒸発器の下流に配置されてもよい。当該分離器によって、濃縮液体流れおよび蒸気/スチーム流れが生成される。或る態様では、分離器液位は、所定点に維持される。
【0130】
或る態様では、蒸発システムでは、圧縮器を含めることによる強制循環プロセスが採用される。(1以上の)熱交換器の管内において材料が高速に流れることが保証され、材料がスケーリングして熱交換器管がブロックされるおそれを防止する助けとなるように、当該蒸発システムは、強制循環ポンプ(例えば、図1のポンプ84)を含んでもよい。或る態様では、強制循環プロセスの特性は、以下の通りである。第一に、強制循環蒸発器が使用され、伝熱面上で沸騰してファウリングの形成または晶析が起こることが回避される。第二に、装置内で蒸発した液体の循環は、主に、当該循環ポンプの強制流によるものである。さらに、材料は加熱器内(例えば、図1の予熱器160内)において蒸発せず、熱交換器内で濃度は変化しない。分離晶析器内におけるフラッシング後に濃度が増大することとなるため、材料は、熱交換面に付着することがなく、当該熱交換面上にファウリングを生じさせない。最後に、当該分離晶析器の本体は、十分な液体/気体分離領域および分離高さを有し、これによって、長期的な蒸発および安定的な排出濃度を保証することができる。一変形形態において、以下の表4に、図1に示すもののような加熱器システム152の好適な条件の概略を示す。
【0131】
【表4】
【0132】
図4は、図1および図2の文脈で記載されたものと同様のシステムにおいて実施される、本開示の或る変形形態による、リチウムを回収するためのプロセス300の非限定的な一例を示す。プロセス300では、330において、液体廃棄物流れ302が予熱器に導入される。液体廃棄物流れ302は、概ね約13%以上約17%以下の固形分、約60℃の温度を有し得、約1,000kg/hrの流量でシステムに導入され得る。予熱器330を出た後、液体廃棄物流れ302は、310で示されるポイントで、約80℃の温度を有する。次に、液体廃棄物流れ302は、熱交換器332に入る。そして、312で示されるポイントで、その温度が約92℃に増大される。また、熱交換器332は、ポイント314において、約110℃の温度の圧縮スチーム流れを受け取る。熱交換器332を通過した後、スチームは、発熱性の相転移をし、液体の水へ凝縮され、ポイント316において約110℃の温度を有し得る。次いで、この凝縮水流れはさらに、予熱器330に入り、到来する液体廃棄物流れ302と熱を交換し得る。ポイント318において、冷却された凝縮物は、約50℃の温度を有し得る。
【0133】
次に、液体廃棄物流れ302は、分離器/蒸発器334に入る。当該分離器/蒸発器334において、水の一部が除去されて、上述したように、水蒸気/スチームの流れと、硫酸リチウムおよび硫酸ナトリウムを有する濃縮液体流れとが形成される。蒸発器334を出るスチーム流れは、ポイント320において、約92℃の温度を有してもよく、圧縮器336内で処理されてもよい。スチームが圧縮および加熱された後、スチームは、ポイント314において上述した状態を有し、次いで、熱交換器332に入る。液体廃棄物流れ302は、蒸発器334を出た後、ポイント322において約92℃の温度を有し、次に、冷却ユニット338に入る。
【0134】
冷却ユニット338内で冷却された後、液体廃棄物流れ302は、ポイント324において、約3℃以上約20℃以下の温度を有する。晶析ユニット340(固液分離器および反応器容器(例えば、デカンタ)を含み得る)を通過した後、晶析ユニット340内で固体化した硫酸ナトリウム塩を含む副生成物流れ350が除去される。
【0135】
晶析ユニット340を出るとき、液体廃棄物流れ302は、ポイント326において、約20℃の温度を有し得る。最後に、液体廃棄物流れ302は、リチウム回収プロセス342に入る。炭酸ナトリウム(NaCO)の流れ352が、リチウム回収プロセス342の間に加えられる。次いで、炭酸リチウム(LiCO)生成物354(およそ80~90%の純度を有し得る)が生成される。残留物溶液の廃棄物流れ356も生成される。
【0136】
かかるプロセスの計算された濃度は、以下の表5の通りである。炭酸塩沈殿物に対する出口は、図4(流れ352の炭酸ナトリウムによる)リチウム沈殿のための流れ326の供給物特性を示す。
【0137】
【表5】
【0138】
図5は、リチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するための、本開示の或る態様によるリチウムリサイクルプラントまたはリチウムリサイクルシステムの代替例50Aである。これは、上述した様々な態様のプロセスを実行するために用いられ得る。簡潔にするために、構成要素が図1に示すものと同じである限り同じ参照番号が使用され、それらの構成要素は、顕著な特徴または機能が図5に示す変形形態に関連していない限り、ここで再び導入または説明されることはない。液体流れ52は、流体導管56内でポンプ54を介して晶析器ユニット70内へ圧送される。晶析器ユニット70には、1または複数の冷却器(概して72Aで示す)と、液体流れ52を冷却して硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化する晶析器容器74と、が含まれる。流体導管56によって、システム50A内の様々な構成要素間に流体連通が確立されている。次いで、晶析器ユニット70の晶析器容器74内の可溶性硫酸リチウム(LiSO)を有する液体流出物流れ(例えば、上清)(第3流出物流れ)は、第2出口82を介して除去され得る。そして、当該第3流出物流れは、入口62を介して蒸発器60に入る。任意選択的に、硫酸ナトリウム(NaSO)固体から分離された液体(例えば、水)は、第3出口83を介して除去され、任意選択的に、第3流出物流れと組み合わせられてもよく、次いで、この組み合わせられた流れが、下流にある蒸発器60へ送られてもよい。あるいは、分離された液体(例えば、水)は、第3出口83を介して除去され、第3流出物流れと組み合わせられることなく、蒸発器60へ送られてもよい。
【0139】
蒸発器60において、第3流出物流れからの水の少なくとも一部が揮発または蒸発されて、濃縮液体流れまたは第4流出物流れと、水蒸気またはスチームの流れとが生成される。濃縮液体流れ(第4流出物流れ)は、第1出口64を通過し、水蒸気は、第2出口66を通って蒸発器60から出ていく。或る変形形態では、第3流出物流れは、例えば、加熱システム152(図示せず)において、または、1もしくは複数の冷却器(概して72Aで示す)において液体流れ52と熱を交換させることによって、蒸発器60に入る前に加熱されてもよい。次いで、可溶性硫酸リチウム(LiSO)を有する濃縮液体流れ(第4流出物流れ)は、下流にあるリチウム回収ユニット90へ送られる。
【0140】
図6は、リチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するための、本開示の或る態様によるリチウムリサイクルプラントまたはリチウムリサイクルプラントシステムの代替例50Bである。これは、上述した様々な態様のプロセスを実行するために用いられ得る。構成要素が図1に示すものと同じである限り同じ参照番号が使用され、それらの構成要素は、顕著な特徴または機能が図6に示す変形形態に関連していない限り、ここで再び導入または説明されることはない。図6に示すように、濃縮液体流れ(第4流出物流れ)の一部は、還流流れ140として容器142へ送られ、当該容器142内に貯蔵されてもよい。還流流れ140は、例えば、液体流れ52を晶析ユニット70に導入する前に一定温度に制御して加熱するために、液体流れ52と組み合わせられてもよい。
【0141】
特に、上に示された様々な実施形態における構成のうちのいずれの構成も、たとえ明示的に図示されていない場合でも、その他の構成と組み合わせられてもよい。さらに、当業者であれば理解するように、バルブ、流量モニタ、温度モニタ、および圧力モニタ、アクチュエータ、コントローラ、乾燥器、従来のアキュムレータ等を含む、システム内で使用される従来の構成要素は、図示されていない場合がある。
【0142】
さらに、上述したシステムのうちのいずれのシステムも、自動制御システムを含んでもよい。例えば、各システムは、PLC自動制御システム(例えば、ジーメンスによって市販されているもの)を含んでもよい。これによって、設定された(所定の)値、主タンク装置内の液位の自動調整、スチームフローを調整するためのスチームパイプライン圧力信号のフィードバック、システム故障自動警報等による、到来する材料流れおよび去っていく材料流れの自動的な調整および制御が可能となる。かかる自動化システムによって、運転中の労働力の割当てを大幅に削減することができ、運転プロセスの精度および安全性を向上させることができる。
【0143】
これまで述べてきた実施形態の説明は、例示および説明の目的のために提供されたものである。網羅的であることは意図されておらず、または、本開示を限定することは意図されていない。特定の実施形態の個々の要素または構成は、概して、その特定の実施形態に限定されるものではなく、具体的に図示または説明されていない場合であっても、妥当である場合には、交換可能であり、かつ、選択された一実施形態において用いることができるものである。当該特定の実施形態の個々の要素または構成は、多くの方法で変更されてもよい。かかる変形は、本開示からの逸脱とみなされるべきものではなく、かかる全ての修正が本開示の範囲内に含まれることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0144】
図1】本開示の或る変形形態による、リチウムイオン電池に由来する廃棄物流れからリチウムを回収するためのシステムを示す。
図2】蒸発システムの上流に加熱器システムを含む、本開示の或る代替的な変形形態によるリチウムを回収するためのシステムの部分図を示す。
図3】晶析ユニット内において晶析器容器の上流に多段階冷却器システムを含む、本開示の或る代替的な変形形態によるリチウムを回収するためのシステムの部分図を示す。
図4】本開示の或る変形形態による、リチウムを回収するためのプロセスの一例を示す。
図5】蒸発器の上流に晶析ユニットを含む、本開示の或る変形形態による、リチウムイオン電池に由来する廃棄物流れからリチウムを回収するための代替的なシステムを示す。
図6】蒸発器の上流に晶析ユニットを含み、さらにシステムに還流流れが含まれる、本開示の或る変形形態による、リチウムイオン電池に由来する廃棄物流れからリチウムを回収するための代替的なシステムを示す。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するためのシステムであって、
入口、第1出口、および第2出口を有する蒸発器と、
(i)少なくとも1つの冷却器と、
(ii)入口、第1出口、および第2出口を備える晶析器容器と、
を備える晶析器ユニットと、
前記晶析器ユニットまたは前記蒸発器の下流にあるリチウム回収ユニットであって、
(i)前記晶析器ユニットからの第2流出物流れまたは前記蒸発器からの第4流出物流れを受け取る第1入口と、炭酸ナトリウム(NaCO)を受け取る第2入口と、出口と、攪拌機と、を備える反応器と、
(ii)前記反応器と熱連通する熱源と、
(iii)前記反応器の前記出口と流体連通する固液分離器であって、生成物流れが当該固液分離器を通過して、炭酸リチウム(LiCO)生成物を含む濃縮液と廃棄物流れとに分離される固液分離器と、
を備えるリチウム回収ユニットと、
前記蒸発器と前記晶析器ユニットと前記リチウム回収ユニットとの間に流体連通を確立するための流体導管と、
前記流体導管内で流体を循環させるための少なくとも1つのポンプと、
を備えるシステムであって、
(i)
硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む液体流れを前記蒸発器の前記入口が受け取り、前記蒸発器において前記液体流れからの前記水の少なくとも一部が蒸発して、前記第2出口を通過する水蒸気と前記第1出口を通過する流出物流れとが生成し、前記流出物流れを前記蒸発器の下流にある前記晶析器ユニットが受け取って、固体硫酸ナトリウム(NaSO)が形成されるように当該流出物流れを冷却し、前記蒸発器の前記第1出口からの前記流出物流れを前記晶析器容器の前記入口が受け取り、前記晶析器容器の前記第1出口を介して前記固体硫酸ナトリウム(NaSO)を含む副生成物が除去され、前記晶析器容器の前記第2出口を介して前記第2流出物流れが除去されるか、
または、
(ii)
前記液体流れを前記晶析器ユニットが受け取って、固体硫酸ナトリウム(NaSO)が形成されるように当該液体流れを冷却し、前記液体流れを前記晶析器容器の前記入口が受け取り、前記晶析器容器の前記第1出口を介して前記固体硫酸ナトリウム(NaSO)を含む副生成物が除去され、前記晶析器容器の前記第2出口を介して第3流出物流れが除去され、硫酸リチウム(LiSO)および水(HO)を含む前記第3流出物流れを前記蒸発器の前記入口が受け取り、前記蒸発器において前記第3流出物流れからの前記水の少なくとも一部が蒸発して、前記第2出口を通過する水蒸気と前記第1出口を通過する前記第4流出物流れとが生成するか、
のいずれかであるシステム。
【請求項2】
前記蒸発器の上流に加熱システムをさらに備え、
前記加熱システムは、前記液体流れを前記蒸発器に入るよりも前に加熱するための少なくとも1つの加熱器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
少なくとも1つの前記加熱器は、予熱器であり、
前記加熱システムは、前記予熱器の下流に熱交換器をさらに備え、
前記熱交換器は、前記蒸発器からの水蒸気と前記液体流れとを熱交換関係において受け取って、前記液体流れの温度を増大させる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記加熱システムは、前記蒸発器と前記熱交換器との間に配置された圧縮器であって、前記水蒸気の圧力および温度のうちの少なくとも一方を前記熱交換器に入るよりも前に増大させる圧縮器をさらに備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
少なくとも1つの前記冷却器は、熱交換器を含み、
前記熱交換器は、前記液体流れと前記第3流出物流れとを熱交換関係において受け取って、当該液体流れの温度を低減させ、かつ前記第3流出物流れの温度を前記蒸発器に入るよりも前に増大させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記晶析器ユニットは、前記晶析器容器の上流に複数の冷却器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
複数の前記冷却器のうちの少なくとも1つの冷却器は、前記晶析器容器からの流れと前記液体流れとを熱交換関係において受け取り、当該液体流れの温度を低減させる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記晶析器ユニットは、前記晶析器容器の前記第1出口の下流に遠心分離機をさらに備え、
前記遠心分離機は、前記固体硫酸ナトリウム(NaSO)を含む副生成物を受け取り、硫酸ナトリウム(NaSO)固体から液体を分離する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記晶析器ユニットは、前記晶析器容器の上流に複数の冷却器をさらに備え、
複数の前記冷却器のうちの少なくとも1つの冷却器は、前記液体流れとの熱交換関係にある前記遠心分離機からの液体を受け取り、当該液体流れの温度を低減させる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記固液分離器は、空気圧フィルタおよび遠心分離機からなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
リチウムイオン電池廃棄物流れからリチウムを回収するためのプロセスであって、
硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む液体流れから硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させる工程であって、
(i)
水蒸気と流出物流れとが生成されるように、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、および水(HO)を含む前記液体流れ内の水の一部を蒸発させ、第2流出物流れが生成されるように、前記流出物流れを冷却して晶析器容器内で当該流出物流れから硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させることによって、硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させる工程、
または、
(ii)
第3流出物流れが生成されるように、前記液体流れを冷却して晶析器容器内で当該液体流れから硫酸ナトリウム(NaSO )を固体化させ、水蒸気と第4流出物流れとが生成されるように、前記第3流出物流れ内の水の一部を蒸発させることによって、硫酸ナトリウム(NaSO)を固体化させる工程と、
前記第2流出物流れまたは前記第3流出物流れから前記硫酸ナトリウム(NaSO)固体を除去する工程と、
炭酸リチウム(LiCO)生成物流れが生成されるように、前記第2流出物流れまたは前記第4流出物流れを加熱して当該第2流出物流れまたは当該第4流出物流れに炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する工程と、
前記炭酸リチウム(LiCO)生成物流れから炭酸リチウム(LiCO)を分離する工程と、
を含む、プロセス。
【請求項12】
前記液体流れ内の水の一部を蒸発させるよりも前、または前記第3流出物流れ内の水の一部を蒸発させるよりも前に、当該液体流れまたは当該第3流出物流れをそれぞれ約90℃以上の温度に加熱する工程をさらに含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記液体流れを加熱する前記工程は、蒸発させる間に生成された前記水蒸気と熱を交換させる工程をさらに含み、
または、
前記第3流出物流れを加熱する前記工程は、前記液体流れと熱を交換させる工程をさらに含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記液体流れと熱を交換させる前記工程よりも前に、前記水蒸気を圧縮する工程をさらに含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記第2流出物流れまたは前記第4流出物流れを加熱する前記工程は、約80℃以上約100℃未満の温度に前記第2流出物流れまたは前記第4流出物流れを加熱し、炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する前記工程の間に前記温度を維持する工程である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項16】
炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する前記工程は、化学量論的に約10%以上約15%以下過剰の炭酸ナトリウム(NaCO)を導入する工程である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項17】
前記流出物流れまたは前記液体流れを冷却する前記工程は、約0℃以下の温度に前記流出物流れまたは前記液体流れを冷却する工程である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項18】
冷却する前記工程は、複数の冷却段階において行われ、
第1冷却段階では、前記流出物流れまたは前記液体流れの温度が約40℃以下の温度に低減され、
第2冷却段階では、前記流出物流れまたは前記液体流れの温度が約30℃以下の温度に低減され、
第3冷却段階では、前記流出物流れまたは前記液体流れの温度が約-2℃以下の温度に低減される、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記液体流れを冷却する前記工程は、前記晶析器容器内で生成された前記第3流出物流れと熱を交換させる工程を含む、請求項11に記載のプロセス
【請求項20】
前記第2流出物流れまたは第3流出物流れから前記硫酸ナトリウム(NaSO)固体を除去する前記工程は、前記硫酸ナトリウム(NaSO)固体を含む副生成物流れを遠心分離して、液体を分離し、前記硫酸ナトリウム(NaSO)固体を収集することによって行われる、請求項11に記載のプロセス
【請求項21】
前記炭酸リチウム(LiCO)生成物は、約80重量%以上の純度を有する、請求項11に記載のプロセス
【請求項22】
前記第4流出物流れの一部を前記液体流れと組み合わせる工程をさらに含む、請求項11に記載のプロセス
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【国際調査報告】