(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】磁場ゼロ化における及び磁場ゼロ化に関する改良
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20241217BHJP
A61B 5/245 20210101ALN20241217BHJP
【FI】
G01R33/02 X
G01R33/02 R
A61B5/245
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524758
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2022080827
(87)【国際公開番号】W WO2023079081
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/080826
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロック アンジェイエフスキ
【テーマコード(参考)】
2G017
4C127
【Fターム(参考)】
2G017AB02
2G017AC02
4C127AA10
4C127CC01
(57)【要約】
外部周辺磁場内にあるゼロ化領域内の磁場をゼロ化するための装置において、前記ゼロ化領域の内部へ延在する各々のゼロ化磁場を発生させるため、前記ゼロ化領域を囲む別個の各々の場所に複数の別個の磁場発生素子102が配置されている。前記ゼロ化領域内の磁場の各々の値を感知するため、前記ゼロ化領域内の複数の各々の別個の場所に複数の磁場感知素子103が配置されている。フィードバック制御部150が、前記複数の磁場感知素子により感知される前記磁場の値に応じて、各々の磁場感知素子により検出される前記磁場の値を前記ゼロ化領域内の磁場の予め設定されたゼロ化に対応する予め設定された閾値を超えない値まで低減させるような各々の電流で前記磁場発生素子を駆動することにより、前記複数の磁場発生素子の各々により生成される前記各々のゼロ化磁場の値を制御する。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(例えば外部の)周辺磁場内にあるゼロ化領域内の磁場をゼロ化するための装置であって、
前記ゼロ化領域の内部へ延在する各々のゼロ化磁場を発生させるために、前記ゼロ化領域を囲む別個の各々の場所に配置された複数の別個の磁場発生素子と、
前記ゼロ化領域内の磁場の各々の値を感知するために、前記ゼロ化領域内の複数の各々の別個の場所に配置された複数の磁場感知素子と、
前記複数の磁場感知素子により感知される前記磁場の値に応じて、各々の磁場感知素子により検出される前記磁場の値を前記ゼロ化領域内の磁場の予め設定されたゼロ化に対応する予め設定された閾値を超えない値まで低減させるような各々の電流で前記磁場発生素子を駆動することにより、前記複数の磁場発生素子の各々により生成される前記各々のゼロ化磁場の値を制御するためのフィードバック制御部と
を備える装置。
【請求項2】
前記磁場発生素子が前記電流を伝送するように適合化された導電性コイルを備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記複数の磁場発生素子が、前記ゼロ化領域を囲む3次元参照面に沿って形成された第1の配列で前記別個の各々の場所に配置されている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記複数の磁場感知素子が、3次元参照面に沿って形成された第2の配列を定める前記別個の各々の場所に配置されている、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記第2の配列が前記第1の配列と略同心になるように構成されている、請求項3及び4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の配列における前記別個の各々の場所が規則的な格子に従って定まっている、請求項3~5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記第2の配列における前記別個の各々の場所が規則的な格子に従って定まっている、請求項1~6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記複数の磁場発生素子が前記ゼロ化領域の中心から略等距離にある前記別個の各々の場所に配置されており、それにより前記ゼロ化領域を囲む略球状の配列を定めている、請求項1~7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記複数の磁場感知素子が前記ゼロ化領域の中心から略等距離にある前記別個の各々の場所に配置されており、それにより前記ゼロ化領域内に略球状の配列を定めている、請求項1~8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記磁場感知素子の配列の直径の大きさが、前記磁場発生素子の配列の直径の大きさの少なくとも30%である、請求項1~9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記複数の磁場発生素子が少なくとも10個の別個の磁場発生素子を備えている、請求項1~10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記複数の磁場発生素子が少なくとも50個の別個の磁場発生素子を備えている、請求項1~11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記複数の磁場発生素子が少なくとも200個の別個の磁場発生素子を備えている、請求項1~12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記フィードバック制御部が、前記磁場感知素子の出力に接続された入力端子を備えており、且つ、関連する磁場発生素子の入力端子に接続された出力端子を備えている、請求項1~13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記閾値が5×10
-9テスラ以下である、請求項1~14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記閾値が5×10
-10テスラ以下である、請求項1~15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
(例えば外部の)周辺磁場内にあるゼロ化領域内の磁場をゼロ化するための方法であって、
前記ゼロ化領域の内部へ延在する各々のゼロ化磁場を発生させるために、前記ゼロ化領域を囲む別個の各々の場所に配置された複数の別個の磁場発生素子を設けること、
前記ゼロ化領域内の磁場の各々の値を感知するために、前記ゼロ化領域内の複数の各々の別個の場所に配置された複数の磁場感知素子を設けること、
前記複数の磁場感知素子により感知される前記磁場の値に応じて、各々の磁場感知素子により検出される前記磁場の値を前記ゼロ化領域内の磁場の予め設定されたゼロ化に対応する予め設定された閾値を超えない値まで低減させるような各々の電流で前記磁場発生素子を駆動することにより、前記複数の磁場発生素子の各々により生成される前記各々のゼロ化磁場の値を制御すること
を備える方法。
【請求項18】
前記磁場発生素子が導電性コイルを備え、本方法が各々の前記コイルを通じて前記電流を伝送することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の磁場発生素子を、前記ゼロ化領域を囲む3次元参照面に沿って形成された第1の配列で前記別個の各々の場所に配置されたものとして設けることを含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の磁場感知素子を、3次元参照面に沿って形成された第2の配列を定める前記別個の各々の場所に配置されたものとして設けることを含む、請求項17~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記第2の配列を前記第1の配列と略同心に設けることを含む、請求項19及び20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の配列における前記別個の各々の場所が規則的な格子に従って定まっている、請求項19~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記第2の配列における前記別個の各々の場所が規則的な格子に従って定まっている、請求項19~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記複数の磁場発生素子を、前記ゼロ化領域の中心から略等距離にある前記別個の各々の場所に配置されたものとして設け、それにより前記ゼロ化領域を囲む略球状の配列を定めることを含む、請求項17~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記複数の磁場感知素子を、前記ゼロ化領域の中心から略等距離にある前記別個の各々の場所に配置されたものとして設け、それにより前記ゼロ化領域内に略球状の配列を定めることを含む、請求項17~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記磁場感知素子の配列の直径の大きさが、前記磁場発生素子の配列の直径の大きさの少なくとも30%である、請求項17~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記複数の磁場発生素子を、少なくとも10個の別個の磁場発生素子を備えるように設けることを含む、請求項17~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記複数の磁場発生素子を、少なくとも50個の別個の磁場発生素子を備えるように設けることを含む、請求項17~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記複数の磁場発生素子を、少なくとも200個の別個の磁場発生素子を備えるように設けることを含む、請求項17~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
フィードバック制御部において前記磁場感知素子からの出力に対応する入力を受け取ること、及び、該フィードバック制御部から、関連付けられた磁場発生素子に入力される制御信号を含む出力を供給することを含む、請求項17~29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記閾値が5×10
-9テスラ以下である、請求項17~30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記閾値が5×10
-10テスラ以下である、請求項17~31のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2021年11月5日に出願された国際出願第PCT/EP2021/080826号に基づく優先権を主張するものであり、該出願の内容及び要素はあらゆる目的で参照により本願に取り込まれる。
本発明は磁場ゼロ化のための方法及び装置に関し、より詳しくは、脳磁図(Magnetoencephalography: MEG)の利用における磁場ゼロ化のための方法及び装置に関するが、これに限られない。
【背景技術】
【0002】
脳磁図(MEG)は脳の電気的な活動を該活動が作り出す磁場を記録することによってマッピングするための十分に確立された医療技術である。脳により作り出される磁場は非常に弱く、それを検出可能にするには周辺磁場環境が実質的にない(又は無視できる)環境が必要である。MEGで用いられる磁場検出センサには超伝導量子干渉素子(superconducting quantum interference device: SQUID)を基礎とするものが多い。この素子は液体ヘリウムでの冷却を必要とするが、これは非常にコストが高い。代替となるセンサ技術の一つに、冷却が不要であるためMEG装置のコストを低減させる光ポンプ磁力計(optically pumped magnetometer: OPM)がある。
【0003】
通常、(例えばMEGを利用するための)周辺磁場が実質的にない(又は無視できる)環境は大型で非常に高価な磁気シールドルーム(magnetically shielded room: MSR)を用いて生み出される。この部屋は典型的には磁気遮蔽材料から成る壁、床及び天井を備えている。更に、MSRには、該MSRの限界から又は該室内の設備から生じることがある該MRS内に存在する残存磁場を打ち消すための追加システムが備えられていることがある。MSRのコストは非常に高いためMEG装置を持つ余裕がある施設はほとんどない。
【0004】
MEG測定の際、MEG装置をMSRと一緒に患者のところまで移動させることはできないから、患者がMSRまで来なければならない。MSR内では、室内の余計な周辺磁場を低減するため、好ましくは非磁性の物だけを用いるべきである。その上、MSRの空間は非常に限られており、且つ窓がない。そのため、脳の反応を確認するために重要である患者とのやり取りに利用できるツールを持ち込める可能性は限られている。MSRは固定された性質のものであるため、異なる環境、例えば建物の外や精神的な快適さを与える環境で患者を調べることはできない。これは、MSR環境が閉所恐怖症の患者にとって快適でなかったり子どもに恐怖を感じさせたりする場合、特に重大である。
【0005】
例えば睡眠中等、長時間にわたる患者の監視はMSR内では非常に難しい。その上、MSRでは、MEG測定と、別の技術のための大型の装置を必要とする他の同時並行的な測定とを組み合わせることはできない。例えば、MSRを用いる必要がなくなれば、MEGと低磁場MRIを同時に測定することができる。
【0006】
更に、MSR内では、脈を打つ患者の心臓やMSR内のMEG設備(例えばコンピュータ等)に電力を供給している給電線等、時間変化する何らかの磁場発生源が避けられない。MSR自身がこのような残存する内部磁場の追加的な補償を必要とする箇所においては、MSR内に配置されたヘルムホルツコイルや二平面コイルを用いてその補償を行うことができる。
【0007】
本発明は以上の事柄に鑑みて成されたものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は超反磁性の分野から知られている諸概念を理解した。超反磁性はある種の超伝導体中に生じ、その結果、内部領域、つまり内部磁場から外部磁場が排除される。超伝導体は外部磁場中に置かれるとほぼ完全な反磁性体として振る舞うことが知られている。それは外部磁場を排除して該外部磁場の磁束線が超伝導体の占める空間領域を避けるようにする。これが起きるのは、外部磁場が超伝導体の表面に電流を発生させ、この電流が今度は逆の磁場を発生させるからである。外部磁場と表面発生磁場が打ち消し合う。
【0009】
本発明者は、表面の外部磁場の情報があれば、その表面により囲まれた立体空間内の磁場を打ち消すこと、又は非常に小さい値若しくは無視しうる値に抑えることを可能にするのに十分であるということを理解した。これはストークスの定理により裏付けられる。
図1を参照すると、外部磁場1aが反磁性体1bを避けて通っているが、貫通してはいない。この効果の理由は、ある表面上でのベクトル場の回転の積分を該表面の境界の周辺でのベクトル場の線積分と関係づけるストークスの定理にある。言い換えれば、あるループ上でのベクトル場の線積分は該ループにより囲まれた表面を通る該ベクトル場の回転の束に等しい。
図1は完全に導電性の2次元表面1cを囲むループCを概略的に示している。この表面は、それぞれが自身の局所的な囲みループ(この例では四角形のループ)を画定している連続的な表面要素又はファセット(ΔS
i)の配列を有しているものとしてイメージすることができる。この表面1cを(例えばチューインガムで風船を作るように)球状の表面に沿って引き伸ばして境界ループCにより画定された開口を持つ「気泡」を作ったとし、それから開口Cの大きさを直径ゼロまで縮めたとする。その結果は、ストークスの定理によれば、内部に磁場のない球面である。本発明者は、この考えを、隣接する別個の磁場発生素子(例えば導電性ループ)の配列を有する概念上の参照面に適用しようと考えた。前記磁場発生素子はそれぞれ、周辺磁場をゼロ化すべき空間領域を囲む又は包む前記概念上の参照面(例えば前述した球状の気泡)の表面要素又はファセット(ΔS
i)の各個に対応している。この概念上の参照面は前記空間領域を完全に包むものとすることができ、該概念上の面の全体又は少なくとも大部分を覆う複数の連続的な表面ファセットに概念上分割することができ、前記別個の磁場発生素子はそれぞれ前記複数の連続的な表面ファセットの各々の中又は上にあるように配置することができる。これにより、
図1の表面1cから成る「気泡」構造の一部又は全体を近似する構造体が得られる。
【0010】
最も概括的に言うと、本発明は、超反磁気学の基礎を成す原理と同様にして立体空間内の磁場の打ち消し(又はゼロ化)を達成するという考え方である。ある立体空間を囲む磁場発生素子の配列を設け、これらのセンサと前記立体空間内の磁場感知素子の配列との間にフィードバック制御を適用することにより、必要に応じて磁場発生素子への供給電流を制御することで前記立体空間内の磁場の打ち消し(又は「ゼロ化」)を実質的に達成することができる。言い換えれば、本発明者は、表面の全面に磁場発生素子の配列を配置した立体空間内の磁場の打ち消し(又は「ゼロ化」)を達成することにより、該立体空間の表面における磁場の間接的な情報を有効に得ることができるということを見出した。ひとたびゼロ化が達成されれば、それは前記立体空間の表面における磁場が、該表面上にある磁場発生素子の配列により、前記表面にわたって略等しい量で対抗されていることを意味する。
【0011】
本発明は、例えば、MEGシステムにおいてMSRを不要にし、より安価でコンパクトな解決策を提供することができる。本発明は時間的に変化する磁場勾配を持つ磁場のゼロ化/打ち消しに応用することができる。本発明は、地球磁場と、周辺の磁気発生源並びに時間的に変化する及び/又は空間的に移動する磁気発生源から生じる傾斜磁場との両方を同時にゼロ化する/打ち消すことができる。
【0012】
第1の態様において、本発明は、(例えば外部の)周辺磁場内にあるゼロ化領域内の磁場をゼロ化するための装置であって、
前記ゼロ化領域の内部へ延在する各々のゼロ化磁場を発生させるために、前記ゼロ化領域を囲む別個の各々の場所に配置された複数の別個の磁場発生素子と、
前記ゼロ化領域内の磁場の各々の値を感知するために、前記ゼロ化領域内の複数の各々の別個の場所に配置された複数の磁場感知素子と、
前記複数の磁場感知素子により感知される前記磁場の値に応じて、各々の磁場感知素子により検出される前記磁場の値を前記ゼロ化領域内の磁場の予め設定されたゼロ化に対応する予め設定された閾値を超えない値まで低減させるような各々の電流で前記磁場発生素子を駆動することにより、前記複数の磁場発生素子の各々により生成される前記各々のゼロ化磁場の値を制御するためのフィードバック制御部と
を備える装置を提供することができる。
【0013】
前記フィードバック制御部は、前記複数の対応する磁場発生素子を駆動するために用いる複数の最適な各々の電流の一組を、直交射影アルゴリズムを適用することにより決定するように設計することができる。該フィードバック制御部は、前記最適な各々の電流を用いることにより、前記複数の磁場発生素子の各々により生成される各々のゼロ化磁場の値を制御する際に用いられる一組の基底ベクトルを生成するように構成することができる。該フィードバック制御部は、装置の磁場発生素子を駆動するために用いる各々の最適な電流を計算する際に前記一組の基底ベクトルを用いるように構成することができる。前記一組の基底ベクトルは、予め設定された較正電流により駆動されたときに(例えば別々に且つ前記複数の磁場感知素子により測定される)前記複数の磁場発生素子の各々により個別に前記ゼロ化領域内に生成される磁場の複数の測定値に基づくものとすることができる。前記直交射影アルゴリズムは、予め設定された較正電流により駆動されたときに前記複数の磁場発生素子の各々により個別に前記ゼロ化領域内に生成される磁場の前記複数の測定値に基づいて直交基底系を生成するように設計することができる。
【0014】
本発明者は、磁場の効果的なゼロ化/打ち消しを行うために磁場を発生させるための適切な駆動電流を計算する際に直交射影法が非常に効率的且つ精確であり得ることを見出した。驚くべきことに、この技法は駆動電流の値の計算を1回しか必要としない。駆動電流の計算には例えば250μs未満の時間しかかからない。これは、駆動電流のより良い値を見出そうとする反復的な最適化プロセス(即ちゼロ化の反復的な改良)において駆動電流の値を何度も繰り返し計算するという繰り返し計算を数回(ときに多数回)行う必要がある他の技法とは対照的である。これらの反復的なプロセスは直交射影法よりもはるかに低速であることが分かっている。
【0015】
こうして外部磁場(例えば地球磁場)をゼロ化する又は打ち消すことができる。外部の傾斜磁場をゼロ化する又は打ち消すこと、あるいは外部の時間変化する磁場をゼロ化する又は打ち消すことができる。本発明は実質的に磁場のない条件(又は適切に無視できる磁場の条件)をシステムサイズに対して大きな体積で作り出すことができるシステムを提供する。フィードバックセンサが(例えばコイル中の電流を制御することにより)磁場発生素子を制御することで、ゼロ化空間内の磁場が何桁も低減されるようにすることができる。本発明は複雑な傾斜磁場を有するゼロ化領域に応用することができる。このように、本発明は、脳磁図(MEG)の使用中に磁気シールドルーム(MSR)を用いる必要性を回避するために応用すること、及び/又は、追加の能動的なゼロ化をもたらすことができる。磁場発生素子の配列により囲まれた立体空間に対するゼロ化された空間の相対的な体積を、MSRやヘルムホルツコイルを利用する他の方法に比べて大きくすることができる。ゼロ化された領域内の磁場を、高い磁場均一性を持つ非常に低い磁場レベルまで低減することができる。高い磁場均一性を持つ非常に低い磁場レベルについては、配列内の磁場発生素子の数を増やすだけで一層の改善が得られることが分かった。
【0016】
望ましくは、前記フィードバック制御部は、磁場感知素子の(例えば磁場測定信号出力用の)各々の出力端子に接続された(例えばフィードバック信号受信用の)入力端子を備えるとともに、関連付けられた磁場発生素子の入力端子に接続された(例えば制御信号又は駆動電流出力用の)1又は複数の信号出力端子を備えている。例えば、前記フィードバック制御部の前記1又は複数の出力端子は関連付けられた磁場発生素子の各々の入力端子に直接接続することができる。例えば、1つの関連付けられた磁場発生素子の各入力端子は、前記フィードバック制御部の1つの関連付けられた(例えば専用の)出力端子に直接、例えば該磁場発生素子がフィードバック制御部の当該特定の出力端子に接続された唯一の磁場発生素子であるように、接続することができる。フィードバック制御部の所与の出力端子と1つの関連付けられた磁場発生素子の入力端子とのこの接続を通じて、各々の磁場感知素子により検出される磁場の値を低減させるために必要な磁場を発生させる際に前記関連付けられた磁場発生素子により直接利用される各々の電流を伝送することができる。あるいは、フィードバック制御部から電流供給制御信号を受信するとともにその電流制御信号の受信に応じて指定の電流を1又は複数(又は各々)の指定の磁場発生素子に供給するように構成された(1又は複数の)中間の電流供給部を介して、フィードバック制御部の前記1又は複数の出力端子を、関連付けられた磁場発生素子の各々の入力端子に間接的に接続してもよい。前記指定の電流及び指定の磁場発生素子は前記電流供給制御信号中で指定することができる。
【0017】
望ましくは、前記フィードバック制御部は、各磁場感知素子からの各信号を分析することで、関連付けられた磁場発生素子への供給電流を前記磁場感知素子からの感知磁場読取値が小さくなる方向へどのように調節又は調整するかを決定するように構成されている。
【0018】
前記フィードバック制御部は、前記ゼロ化空間内の前記磁場感知素子により供給される前記磁場値を連続的に(例えば所与の継続時間途切れることなく、又は間欠的に)監視し、補正用の磁場発生素子への各々の供給電流を連続的に制御するように構成されていることが好ましい。このようにすれば能動的な磁場ゼロ化を提供することができる。
【0019】
好ましくは、前記複数の磁場発生素子は少なくとも10個の別個の磁場発生素子、より好ましくは少なくとも50個の別個の磁場発生素子、更により好ましくは少なくとも200個の別個の磁場発生素子を備えている。好ましくは、前記複数の磁場発生素子は少なくとも約100個の素子であって約4000個以下の素子又は約3000個以下の素子又は約2000個以下の素子を備えている。
【0020】
好ましくは、前記磁場発生素子は前記電流を伝送するように適合化された導電性コイルを備えている。各磁場発生素子が1つの導電性コイルを備えるものとすることができる。1つの磁場発生素子の1つのコイルは円形のコイル又は他の形状のコイル、例えば多角形のコイル(六角形等)を備えるものとすることができる。1つの磁場発生素子の1つのコイルは、該コイルの全ての巻きが略同一平面内にあるような略平坦又は平面状とすることができる。前記磁場発生素子の配列の各コイルの直径(例えばコイルのループ又は巻きの直径)は、該磁場発生素子の配列の複数の他のコイルの直径と略同一とすること、又は該磁場発生素子の配列の1つおきのコイルの直径と同一とすることができる。二重測地線二十面体格子(Dual Geodesic Icosahedron lattice)の場合、格子の六角形の部分/ファセットに位置するコイルは格子の五角形の部分/ファセットに位置するコイルよりも大きくすることができる。好ましくは、前記磁場発生素子の配列は直径の異なるコイルの混在を含むものとすることができる。これは測地線格子を用いる場合に好適に当てはまる。これはより良好な格子被覆の実現を助ける。前記磁場発生コイルの配列を定める格子がプラトンの立体に基づいて定まっている場合、互いに直径が同じコイルを用いて良好な格子被覆を達成することができる。
【0021】
あるいは、1つの磁場発生素子の1つのコイルは、該コイルの全ての巻きが略平面状且つ面平行であるが、該コイルの連続的な巻きが該巻きの平面に垂直な方向に縦に分散している、というように該コイルの巻きが積層状(例えば螺旋渦巻き状)に配置された構成とすることができる。縦の分散の程度は各コイルの横寸法の広がりに比べて小さいことが好ましい。言い換えれば、各コイルは空間を節約するために「薄い」ことが好ましい。コイルの巻きの横寸法(例えば直径)は、該横寸法に垂直なコイルの縦寸法の少なくとも4倍(例えば厚みに対して幅が4倍)、より好ましくは少なくとも5倍、更により好ましくは少なくとも7倍、なお一層好ましくは少なくとも10倍大きいものとする。
【0022】
1つのコイルは、導電性のワイヤ、トラック若しくはストリップから成る1本の巻線若しくはループ、又は、導電性のワイヤ、トラック若しくはストリップから成る複数本の巻線若しくはループを備えるものとすることができる。1つのコイルは、1つの電流入力端子、1つの電流出力端子、及び、これら2つの端子を電気的に接続する1本又は複数本の巻線又はループを備え、前記入力端子を介した電流入力が前記巻線又はループを流れた後、前記電流出力端子に至るものとすることができる。1つのコイルの複数本の巻線又はループは共通のループ形状又は巻線形状を繰り返すことで複数本のループ又は巻線が互いに略同一の形状、寸法及び向きを共有するものとすることができる。あるいは、1つのコイルの複数の巻線又はループは渦巻き半径が徐々に増大又は減少する渦巻き形状(例えば平たい渦巻き)を定めるものとすることができる。
【0023】
好ましくは、各コイルが前記磁場発生素子の配列の中心又は重心に向かう方向を向くように構成されている。コイルが「向く」方向は、該コイルの直径を含む平面に垂直な方向とみなすことができる。コイルが「向く」方向は、該コイルの巻線軸(即ち、コイルの巻線が巻き付く中心軸、例えばコイルの対称軸)に平行な方向とみなすことができる。こうして、コイルが「向く」方向が、電流で駆動されたときに該コイルの中心を通って生成される磁場と平行な向きを定めるものとすることができる。その磁場の方向は、コイルを流れる所与の電流の流れ方向を制御することにより制御することができる。コイルを流れる電流の方向は、例えば、該コイルを前記磁場発生素子の配列の中心に向かう方向に見たときに該電流の流れが時計回りか反時計回りかで定義することができる。例えば、所与のコイル内の所与の電流を該コイルの一方の側から見たときを「正」、他方の側から見たとき(即ち、見る方向の逆転)又は該コイルを180度回転させて静止した視認者に反対側を提示したとき(即ち、コイルの「面」の反転)を「負」と定義することができる。
【0024】
前記別個の磁場発生素子の配列内での各コイルの向きは、該配列内での当該コイルの位置に応じて、該配列内の他のコイルと異なっていることが最も好ましい。言い換えれば、前記配列内でのコイルの位置により、該配列の重心に対する該コイルの向き(即ち、そのコイルが「向く」方向)も決まる。個々のコイルを駆動するために用いる電流の方向は、前記配列内での当該コイルの位置に応じて、該配列内の他のコイルと異なっていることが最も好ましい。言い換えれば、前記配列内でのコイルの位置により、該コイルに流される電流の方向も決まる。コイル内の電流の方向は当該コイルの局所座標系に対して定義することができる。個々のコイル局所座標系は、コイルの配列内でそれに隣接するコイル(又は全コイル)のコイル局所座標系に対して回転させた向き又は位置になるように配置することができる。
【0025】
好ましくは、前記磁場発生素子の配列の各コイルが該磁場発生素子の配列の他のいずれのコイルからも電気的に分離(例えば絶縁)されている。これにより、各コイルを他のどのコイルからも独立して駆動することができ、ゼロ化を達成するために磁場発生素子の配列の制御を非常に柔軟に行うことができる。磁場発生素子の配列内で隣接するコイルは少なくとも部分的に重なっていてもよいし、該配列のどのコイルも該配列の他の隣接コイルと重ならないような配置でもよい。
【0026】
任意選択で、前記磁場発生素子の配列のコイル群は、互いに垂直な3方向をそれぞれ向いた3つのコイルを備える複数の下位グループを備えるものとすることができる。例えば、下位グループの各コイルが向く各方向は局所的な直交三軸(即ち、該下位グループの真ん中に中心があるxyz座標方向)に対応するものとすることができる。好ましくは、前記下位グループのコイル群のどのコイルが向く方向も、該下位グループの他のコイルの各々が向く方向と略垂直な方向であるため、該下位グループのコイル群のどの2つのコイルも同じ方向を向いていない、というようにする。下位グループのコイル群のこの配置により、各々の下位グループのコイル群により占められる領域の内部及び周辺の局所磁場の一部のベクトル方向に対する追加制御が可能になる。各下位グループのコイル群の1つのコイルは前記磁場発生素子の配列の中心又は重心に向かう方向を向くように構成することができる。
【0027】
望ましくは、前記複数の磁場発生素子は、前記ゼロ化領域を囲む3次元参照面に沿って形成された第1の配列で前記別個の各々の場所に配置されている。望ましくは、前記複数の磁場感知素子は、3次元参照面に沿って形成された第2の配列を定める前記別個の各々の場所に配置されている。前記参照面は物理的な面であってもなくてもよいということを理解すべきである。参照面が物理的な面である(即ち、それがある物理的な面と一致している)場合、その面は、その上に磁場発生素子を配置する(例えば取り付ける)ことで該磁場発生素子の位置を所望の配列パターンに従うように制約し且つ保持する支持面の機能を提供することができる。この支持面は連続的な面でもよいし、骨組みでもよく、後者の場合、骨組みのうち概念上の参照面の場所と一致する場所に磁場発生素子が取り付けられる。例えば、前記支持面は概念上の球状の参照面と一致する球状シェル面とすることができる。あるいは、前記支持面は各頂点が球の表面上の各点と一致する3次元多面体状骨組みを備えるものとすることができる。磁場発生素子はこの支持面の各々の頂点若しくは各々の頂点グループに、又は、頂点間に延在する骨組みの辺(例えば、多面体の概念上のファセットを成す多角形の辺)に取り付けることができる。
【0028】
前記支持面(例えば連続的な面又は骨組み)は、少なくとも1本の空間軸、又は少なくとも2本の直交する空間軸、又は3本の直交する空間軸の全てを中心として該支持面の回転を可能にする回転式支持アセンブリ上に搭載することができる。該回転式支持アセンブリは前記支持面の方位指示位置と高度指示位置を独立して調節できる経緯台(Alt-Azマウント)を備えるものとすることができる。これにより、支持面(例えば骨組み)を(その上にある全ての磁場発生コイル及び磁場感知素子の配列とともに)地球磁場ベクトルの方向と逆方向に向けることができる。これにより、より良好なゼロ化の達成を支援することができる。
【0029】
好ましくは、前記第2の配列(即ち、前記複数の磁場感知素子により定まる配列)は前記第1の配列(即ち、前記磁場発生素子の配列)と略同心になるように構成されている。本発明者は、この配置によりゼロ化領域内で特に精確且つ効果的なゼロ化が可能になることを見出した。前記第1の配列における前記別個の各々の場所は規則的な格子に従って定めることができる。それらの場所は多面体の概念上の頂点又はファセットと一致する(又はそれらにより定まる)ものとすることができる。前記第2の配列における前記別個の各々の場所は規則的な格子に従って定めることができる。好ましくは、前記複数の磁場発生素子は前記ゼロ化領域の中心から略等距離にある前記別個の各々の場所に配置されており、それにより前記ゼロ化領域を囲む略球状の配列を定めている。
【0030】
好ましくは、前記複数の磁場感知素子は前記ゼロ化領域の中心から略等距離にある前記別個の各々の場所に配置されており、それにより前記ゼロ化領域内に略球状の配列を定めている。
【0031】
望ましくは、前記磁場感知素子の配列の直径の大きさは前記磁場発生素子の配列の直径の大きさの少なくとも約40%である。本発明者は、この条件を適用したときに特に効果的な磁場ゼロ化が達成できることを見出した。望ましくは、前記磁場感知素子の配列の直径の大きさは前記磁場発生素子の配列の直径の大きさの約40%と約90%の間である。より好ましくは、前記磁場感知素子の配列の直径の大きさは前記磁場発生素子の配列の直径の大きさの約40%と約80%の間である。好ましくは、前記磁場感知素子の配列の直径の大きさは前記磁場発生素子の配列の直径の大きさの約40%と約90%の間であり、且つ、前記磁場発生素子の配列は少なくとも約200個の素子であって約2000個以下の素子を備えている。本発明者は、これらの条件の1つ以上を適用したときに特に効果的な磁場ゼロ化が達成できることを見出した。
【0032】
好ましくは、前記閾値は5×10-9テスラ以下、又はより好ましくは5×10-10テスラ以下である。
【0033】
前記磁場感知素子は、ホール効果センサ(例えばμT磁場用)、磁気インピーダンスセンサ(例えばμTからnTの範囲をカバーするため)、フラックスゲートセンサ(例えばμTからnTの範囲をカバーするため)、光ポンプ磁力計(Optically Pumped Magnetometer: OPM)センサ(例えばnT~fTの範囲をカバーするため)のうち1つ又は複数を備えるものとすることができる。このようなセンサ3個を感知範囲が広い1つのセンサフィードバック群として用いることができる。
【0034】
前記磁場感知素子の数は前記磁場発生素子の数よりも少ないものとすることができる。前記フィードバック制御部は、前記磁場感知素子の配列のうち複数の磁場感知素子により感知された複数の磁場値の間の内挿により前記ゼロ化領域内の1又は複数の場所と関連付けられた磁場値を生成するように構成することができる。該制御部は、磁場値を内挿すべき前記ゼロ化領域内の対象点(座標)からの半径により決まる概念上の内挿球を定めるように構成することができる。該制御部は、前記磁場感知素子のいずれが前記概念上の球内に位置しているか判定するように構成すること(そして少なくとも2つのセンサが該球内にあるようになるまで該球の半径を増大させること)ができる。該制御部は、前記内挿球内の前記複数のセンサから受け取った磁場値の3次元内挿により前記対象位置における磁場の内挿値を計算するように構成することができる。
【0035】
前記フィードバック制御部は、前記複数の磁場発生素子の各々により生成される各々のゼロ化磁場の値を制御する際に用いられる一組の基底ベクトルを生成するように構成することができる。該フィードバック制御部は、装置の磁場発生素子を駆動するために用いる各々の電流を計算する際に前記一組の基底ベクトルを用いるように構成することができる。該フィードバック制御部は、各磁場発生素子に順番に単独で電流を供給する一方、他の全ての磁場発生素子は該制御部から電流を受け取らない、というように構成することができる。該フィードバック制御部は、前記磁場感知素子から、前記ゼロ化領域内の各々の固定された場所において前記磁場感知素子の各々により感知される装置内の磁場の測定値を取得するように構成することができる。該フィードバック制御部は、これらの測定された磁場の値を、電流を供給された磁場発生素子に対応する基底ベクトルを定めるための較正値として用いるように構成することができる。該制御部は、このプロセスを前記コイルの配列の磁場発生素子毎に別々に繰り返し、それにより各磁場発生素子が別々に、電流を供給される単独の磁場発生素子になる役割を担うように構成することができる。m個の磁場発生素子の配列の素子毎に、前記制御部は、n個の全センサから受け取った較正磁場値に基づいて各々の基底ベクトルを作成するように構成することができる。例えば、1番目のコイルに対応する基底ベクトルは、
【数1】
とすることができる。
【0036】
前記m個のコイルの配列、前記フィードバック制御部は、m個の磁場発生素子の全てに対応する各々の基底ベクトルを用いて構成された基底ベクトル行列
【数2】
を生成するように設計することができる。
【0037】
前記フィードバック制御部は、これらの単位ベクトルに基づいて、各々の磁場感知素子に供給すべき駆動電流の値と方向の計算を行うことにより周辺磁場の能動的な打ち消しを実行するように設計することができる。該フィードバック制御部は、全ての感知素子がその後で能動的打ち消し機能において動作している状態での1つの磁場感知素子からの磁場の各測定値を
【数3】
という擬ベクトル型の行列構造体として定めるように設計することができる。
【数4】
とすると、直交射影の方程式は
【数5】
である。項α
jはj番目の磁場発生素子の電流を含む項である。打ち消しを達成するため、前記制御部は、それを用いて各磁場発生コイルを駆動しなければならない電流の「負の」値を、次の最適化方程式
【数6】
を解くことにより計算するように構成することができる。
【0038】
前記フィードバック制御部は、前記磁場感知素子により測定される磁場の値を全体として(例えばそれらの間の平均として)又は個別に低減させて磁場打ち消し/ゼロ化の適切なレベルに対応する所望の予め設定された閾値を超えないようにするために、上記方程式のαjの値を変化させることによって各磁場発生素子に印加される電流の値を変化させるように構成することができる。
【0039】
前記フィードバック制御部は、次の最適化方程式をパラメータα
jについて解くことにより、それを用いて各磁場発生素子を駆動しなければならない電流α
jの値を計算するように設計することができる。
【数7】
【0040】
前記直交射影アルゴリズムは、磁場ゼロ化/打ち消し電流のための適切な「最適な」駆動電流を、上記方程式をパラメータαjについて解いた(例えば反転させた)結果として直接計算してもよいことに注意が必要である。この意味で、「最適化」という言葉は、上記方程式の性質により本来的に最適であるとみなされるパラメータαjの値を計算することを指すものと理解すべきである。これは、はるかに効率の低い反復的な磁場最小化の技法に含まれしばしば多数回の反復を要する従来技術の「最適化」の技法と同じではない。言い換えると、それに比べて、本願で論じている直交射影の技法は、パラメータαjを1回計算するだけで必要なものが直ちに得られ、これらのパラメータの「より良い」値を見出すために続けて「反復」計算を行う必要は全くないものと考えることができる。
【0041】
前記フィードバック制御部は前記磁気感知素子からの読取値V
kを用いるように設計することができる。これらの読取値は該制御部により読取値行列内に配置することができる(例えば[V
1,V
2,V
3,…,V
N])。磁場の測定値は前記磁気感知素子の各々による3つの直交場成分の測定値(Sx,Sy,Sz)を含むものとすることができる。前記フィードバック制御部は、前記読取値行列と前記磁場発生素子の前記直交基底ベクトルのドット積を次のように計算するように設計することができる。
【数8】
ここで、センサ読取値と該センサ読取値の行列の行列要素とは次のように関連付けられている。
【数9】
【0042】
このように、複数(例えば3つ)のセンサ読取値をセンサ位置毎に生成することができ、それらは複数の直交磁場方向(例えばx、y、z)に対応する。前記直交基底ベクトルの要素は前記磁場発生素子により生成される(例えばx、y、zという3つの直交成分方向の)磁場成分と次のように関連付けられている。
【数10】
これにより、要素X
ikは、電流α
jにより表される駆動電流による駆動に応じて3つの直交方向に個々の磁場発生素子により生成される磁場成分(Bx,By,Bz)に対応するものとすることができる。
【0043】
前記フィードバック制御部は得られたドット積を用いて前記最適化方程式を反転させるように設計することができる。該制御部は、前記磁場発生素子を個別に駆動するために用いる電流に対応する個々の値αjを含む行列を生成するように設計することができる。これはとりわけ時間効率の良い処理方法であることが分かった。
【0044】
通常、外部磁場のゼロ化/打ち消しのための最良の電流解を得るには数回(典型的には1回のみ)の反復しか必要ない。直交射影法のための直交基底は上記較正プロセスにおいて生成することが好ましい。該直交基底は1度生成すればよく、その後は前記制御部がそれを、能動的な打ち消し/ゼロ化操作の間に前記磁場センサ配列から受け取るセンサデータを用いた全ての能動的な打ち消し/ゼロ化のために用いることができる。上記較正プロセス(即ち、較正磁場の決定、直交基底の生成)は環境磁場又は周辺磁場を実質的に含まない環境(即ち、磁気シールドルーム(MSR)内)で(例えば1回)行うものとすることができる。これは装置の製造時に又は装置の寿命を通じて定期的に必要に応じて適当な場合に行う(即ち再較正)ことができる。ひとたび較正すれば、本装置はその後、磁気シールドルーム(MSR)の外で使用できる。
【0045】
代わりに、地球磁気及び局所環境(例えば電気部品、電子機器等)からの磁場勾配を含む標準的な環境(即ち、MSR内以外)で較正を行うことができる。このような環境で較正を行うには、装置を以下のように設計すればよい。
【0046】
前記フィードバック制御部は、
(a)前記磁場発生素子のいずれにも駆動電流が供給されていない(即ち、そのため測定値が環境/地磁気の値に相当する)とき、又は、
(b)予め設定された駆動電流が前記磁場発生素子の各々に供給されているとき、
のいずれかに、前記ゼロ化領域内の各々の固定された場所において前記磁場感知素子の各々により感知される装置内の磁場の測定値に対応する補正値を取得すること、及び、
各磁場発生素子に(先に述べたように)順番に単独で電流を供給する一方、他の全ての磁場発生素子は該制御部から電流を受け取らないようにすることにより生成された較正値から前記補正値を減算すること
により、前記一組の基底ベクトルを生成するように構成することができる。
【0047】
これにより、基底ベクトルを定めるために用いられる補正された較正値が得られる。このようにすれば、磁場感知素子(フィードバックセンサ)の読取値を較正プロセス中に事実上ゼロに設定することができる(即ち、読取値が内部磁場に対してゼロ化される)。
【0048】
前記フィードバック制御部は、較正プロセスが終了した後(即ち終了後すぐに)、各磁場発生素子により生成される測定値から前記補正値を減算することを止めるように構成することができる。これは、磁場発生素子の現在の読取値を真の読取値に戻す(即ち前記「ゼロ化」を行わない)ことを意味し、その後は直交射影のプロセスを行ってもよい。その結果、直交射影の基底ベクトルは、前記(a)又は(b)の条件下で存在する内部磁場を内在的に減算したものとなる。
図27(a)、(b)及び(c)に示した実験結果はMSRを用いずに上記のようにして行った較正の結果として生成されたものである。
【0049】
前記予め定められた駆動電流(上記点(b)で述べたもの)は前記磁場発生素子の各々に対して同一であってもよいし、異なる各々の磁場発生素子の間で異なっていてもよい。予め定められた駆動電流の利点は、環境/地球磁場の強度を磁場感知素子のダイナミックレンジの範囲に含まれる値まで低減させるのに十分な程度に該磁場を部分的にゼロ化することができる磁場を磁場感知素子の周辺に生成することである。磁場感知素子によっては環境/地球磁場の典型的な強度が該素子のダイナミックレンジをはるかに超え、予め定められた駆動電流を用いなければ該素子は飽和してしまうということに注意されたい。これにより、任意の所望のダイナミックレンジを有する磁場発生素子を用いて基底ベクトルの生成(較正)とその後の直交射影を進めることができる。
【0050】
従って、MSRが利用でき且つ簡便であるならMSR内で装置を較正することが有利であり得るものの、本発明はMRSがないときに較正を行う手段を提供することができる。実は、これは装置を使用する度に較正を行うことができるとことも意味している。これの利点は、磁場発生素子及び/又は磁場感知素子の位置決めの機械的な変化が除去されるということである。また、装置の温度変化が磁場感知素子の性能に影響し得るが、この変化も較正プロセスにより考慮されるであろう。
【0051】
第2の態様において、本発明は、(例えば外部の)周辺磁場内にあるゼロ化領域内の磁場をゼロ化するための方法であって、
前記ゼロ化領域の内部へ延在する各々のゼロ化磁場を発生させるために、前記ゼロ化領域を囲む別個の各々の場所に配置された複数の別個の磁場発生素子を設けること、
前記ゼロ化領域内の磁場の各々の値を感知するために、前記ゼロ化領域内の複数の各々の別個の場所に配置された複数の磁場感知素子を設けること、
前記複数の磁場感知素子により感知される前記磁場の値に応じて、各々の磁場感知素子により検出される前記磁場の値を前記ゼロ化領域内の磁場の予め設定されたゼロ化に対応する予め設定された閾値を超えない値まで低減させるような各々の電流で前記磁場発生素子を駆動することにより、前記複数の磁場発生素子の各々により生成される前記各々のゼロ化磁場の値を制御すること
を備える方法を提供することができる。
【0052】
好ましくは、本発明では、前記磁場発生素子が導電性コイルを備え、本方法が各々の前記コイルを通じて前記電流を伝送することを含む。
【0053】
本方法は、前記複数の磁場発生素子を、前記ゼロ化領域を囲む3次元参照面に沿って形成された第1の配列で前記別個の各々の場所に配置されたものとして設けることを含むことができる。
【0054】
本発明は、前記複数の磁場感知素子を、3次元参照面に沿って形成された第2の配列を定める前記別個の各々の場所に配置されたものとして設けることを含むことができる。
【0055】
本方法は、前記第2の配列を前記第1の配列と略同心になるように設けることを含むことができる。
【0056】
望ましくは、本方法において、前記第1の配列における前記別個の各々の場所は規則的な格子に従って定められている。望ましくは、本方法では、前記第2の配列における前記別個の各々の場所は規則的な格子に従って定められている。
【0057】
本方法は、前記複数の磁場発生素子を、前記ゼロ化領域の中心から略等距離にある前記別個の各々の場所に配置されたものとして設け、それにより前記ゼロ化領域を囲む略球状の配列を定めることを含むことができる。
【0058】
本方法は、前記複数の磁場感知素子を、前記ゼロ化領域の中心から略等距離にある前記別個の各々の場所に配置されたものとして設け、それにより前記ゼロ化領域内に略球状の配列を定めることを含むことができる。
【0059】
望ましくは、本方法において、前記磁場感知素子の配列の直径の大きさは前記磁場発生素子の配列の直径の大きさの少なくとも40%である。
【0060】
本方法は、前記複数の磁場発生素子を、少なくとも10個の別個の磁場発生素子、より好ましくは少なくとも50個の別個の磁場発生素子、更により好ましくは少なくとも200個の別個の磁場発生素子を備えるように設けることを含むことができる。
【0061】
ある方法では、フィードバック制御部において前記磁場感知素子からの出力に対応する入力を受け取ること、及び、該フィードバック制御部から、関連付けられた磁場発生素子に入力される制御信号を含む出力を供給することを含めることができる。
【0062】
好ましくは、前記閾値は5×10-9テスラ以下、又はより好ましくは5×10-10テスラ以下である。
【0063】
本方法は、前記磁場感知素子の配列のうち複数の磁場感知素子により感知された複数の磁場値の間の内挿により前記ゼロ化領域内の1又は複数の場所と関連付けられた磁場値を生成するように構成することを備えるものとすることができる。本方法は、磁場値を内挿すべき前記ゼロ化領域内の対象点(座標)からの半径により決まる概念上の内挿球を定めることを含むことができる。本方法は、前記磁場感知素子のいずれが前記概念上の球内に位置しているか判定すること(そして少なくとも2つのセンサが該球内にあるようになるまで該球の半径を増大させること)を含むことができる。本方法は、前記内挿球内の前記複数のセンサにより感知された磁場値の3次元内挿により前記対象位置における磁場の内挿値を計算することを含むことができる。
【0064】
別の態様において、本発明は、患者の頭部の周囲に配置されるように構成された1又は複数の脳磁図(MEG)センサと、前記患者の頭部を収容できるように寸法が決められたゼロ化領域内の磁場をゼロ化するための本発明の第1の態様に係る装置とを備える脳磁図装置を提供することができる。本発明の第1の態様に係る装置は、該装置の磁場感知素子と患者の頭部とを含む前記ゼロ化領域内の周辺磁場(例えば地球磁場及び周囲の物体から生じる磁場)を打ち消すように構成することができる。更なる態様において、本発明は、上述の脳磁図装置を備える医用画像装置、及び/又は、上述の脳磁図装置を備える脳活動マッピング装置、及び/又は、上述の脳磁図装置を備える生体磁気感知装置、及び/又は、上述の脳磁図装置を備えるニューロフィードバック装置、及び/又は、上述の脳磁図装置を備えるブレイン・コンピュータ・インターフェイス装置を提供することができる。
【0065】
例えば、MEGアプリケーションで用いる場合、本提案の発明を用いた磁場ゼロ化はMSR内で行うことができる。この方法はMSR内の(例えば装置から発する)残存磁場を打ち消すために用いることができる。MEGアプリケーション又は別の医療用アプリケーションで用いる場合、前記磁場発生素子の配列は患者の全身又は患者の頭部以外の身体部位を収容するのに十分な空間領域(例えば立体空間)を囲むように寸法を決めて構成することができる。前記磁場感知素子の配列も同様に寸法を決定して構成することができる。
【0066】
本発明は、いずれの態様においても、心電図(magnetocardiography: MCG)用又は筋磁図(magnetomyography: MMG)用又は神経磁図(magnetoneurography: MNG)用の遮蔽を提供することができる。本発明は、いずれの態様においても、脊磁図(magnetospinography : MSG)のために腰椎内の神経信号伝搬用の遮蔽を提供することができる。本発明は、いずれの態様においても、頸髄誘発磁界(cervical spinal cord evoked field: SCEF)測定用の遮蔽を提供することができる。本発明は、いずれの態様においても、脳磁図に基づくブレイン・コンピュータ・インターフェイス(BCI)用の遮蔽を提供することができる。
【0067】
これらの応用のいくつかにおいては、本提案の発明を用いた遮蔽を人間若しくは動物の身体全体又は異なる身体部位を覆うように生じさせることができる。
【0068】
更に別の態様において、本発明は、1又は複数の脳磁図(MEG)センサを患者の頭部の周囲に配置すること、及び、本発明の第2の態様に従って、前記患者の頭部を収容できるように寸法が決められたゼロ化領域内の磁場をゼロ化すること、を備える脳磁図の方法を提供することができる。
【0069】
記載された態様及び好ましい特徴の組み合わせは、そのような組み合わせが明らかに容認できないか明示的に回避されている場合を除き、本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
本発明の原理を例示する実施形態及び実験について添付図面を参照しながら以下に議論する。
【0071】
【
図1】2次元での反磁性効果とストークスの定理の原理の概略的な表現を示す図。
【
図2】(a)及び(b)磁場ゼロ化装置の素子と該装置の断面をそれぞれ示す図。
【
図3】(a)及び(b)磁場ゼロ化装置の素子と該装置の断面をそれぞれ示す図。
【
図4】磁場ゼロ化装置の素子を該装置の断面図で示す図。
【
図5】(a)及び(b)磁場ゼロ化装置の素子と該装置の断面をそれぞれ示す図。
【
図6】(a)及び(b)周辺外部磁場を表す磁力線及び磁場ゼロ化装置により生成されたゼロ化領域と、反磁性効果の概略的な表現とをそれぞれ示す図。
【
図7】周辺外部磁場と磁場ゼロ化装置により生成されたゼロ化領域とを表す磁場強度空間プロットを示す図。
【
図8】(a)、(b)、(c)及び(d)磁場ゼロ化装置により生成されたゼロ化領域内の磁場強度を示す図。
【
図9】磁場ゼロ化装置の磁場発生素子の配列と該配列内のゼロ化された領域を、該ゼロ化された領域を実現するために磁場ゼロ化装置の磁場発生素子に印加した電流値のプロットとともに示す図。
【
図10】磁場ゼロ化装置の磁場発生素子の配列と該配列内のゼロ化された領域を、該ゼロ化された領域を実現するために磁場ゼロ化装置の磁場発生素子に印加した電流値のプロットとともに示す図。
【
図11】(a)~(d)ゼロ化された領域を実現するために磁場ゼロ化装置の磁場発生素子に印加した電流値のプロットを示す図。
【
図12】磁場ゼロ化装置により該装置のゼロ化領域内に生成される磁場強度と磁場勾配のプロットを、該磁場ゼロ化装置内に設けられた磁場発生素子の数を変数とする関数として示す図。
【
図13】(a)~(d)磁場ゼロ化装置により該装置のゼロ化領域内に生成される平均磁場強度及び最大磁場強度のプロット並びに平均磁場勾配及び最大磁場勾配のプロットを、該磁場ゼロ化装置内に設けられた磁場発生素子の数を変数とする関数として、異なる格子型について示す図。
【
図14】(a)、(b)磁場ゼロ化装置の磁場感知素子の2つの異なる配列のうちそれぞれ1つを備える磁場ゼロ化装置の磁場発生素子の配列の断面図。
【
図15】(a)磁場ゼロ化装置の磁場発生素子の球状配列のゼロ化領域内で実現される磁場勾配のプロットを、該磁場発生素子の配列内にある磁場感知素子の同心の球状配列の直径を変数とする関数として示す図、及び、(b)前記磁場感知素子の同心の球状配列の最適な直径のプロットを、
図16(a)が関係する磁場発生素子の球状配列内の磁場発生素子の数の関数として示す図。
【
図16】(a)~(d)磁場ゼロ化装置により該装置のゼロ化領域内に生成される平均磁場強度及び最大磁場強度のプロット並びに平均磁場勾配及び最大磁場勾配のプロットを、該磁場ゼロ化装置の磁場発生素子の配列内にある磁場感知素子の同心の球状配列の直径を変数とする関数として示す図。
【
図17】前記磁場感知素子の同心の球状配列の最適な直径のプロットを、
図16(a)~(d)が関係する磁場発生素子の球状配列内の磁場発生素子の数の関数として示す図。
【
図18】磁場感知素子の配列からの測定値を用いて磁場発生素子の配列に印加する電流を計算するプロセスを概略的に示す図。
【
図19】磁場ゼロ化装置の構成要素を概略的に示す図。
【
図20】磁場ゼロ化装置の構成要素を制御するプロセスを概略的に示す図。
【
図21】(a)~(c)
図18のプロセスにより生成された磁場ゼロ化のプロットを示す図。
【
図22】(a)、(b)磁場ゼロ化装置の現実の磁場感知素子の下位配列を用いて生成された仮想的な磁場感知素子の配列の概略的なイメージを示す図。
【
図23】(a)、(b)及び(c)それぞれ異なる個数の磁場発生素子を有する磁場ゼロ化装置を、該装置のゼロ化領域内の磁場の断面図とともに示す図。
【
図27】(a)、(b)及び(c)
図26の磁場ゼロ化装置のセンサにより生成されるセンサ信号のいくつかの例をグラフで示す図。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本発明の態様及び実施形態について添付図面を参照しながら以下に議論する。更なる態様及び実施形態は当業者には自明であろう。本稿で言及する全ての文書は参照により本明細書に援用される。
【0073】
図2(a)は外部周辺磁場内にあるゼロ化領域内の磁場をゼロ化するための装置を示している。
図2(b)は該装置を断面で示している。本装置は複数の別個の磁場発生コイル素子8を備えている。各素子は互いに共通の直径を持つ円形ループを備えており、前記ゼロ化領域の内部へ延在する各々のゼロ化磁場を発生させるために、ゼロ化領域を囲む第1の概念上の球状シェル参照面上の別個の各々の場所に配置されている。磁場発生コイル素子8はそれぞれ、当該コイルへの駆動電流の入力及び出力のための電流入力端子(図示せず)及び電流出力端子(図示せず)を備えている。
【0074】
複数の磁場感知素子6、例えばOPMセンサが、ゼロ化領域内の磁場の各々の値を感知するために、ゼロ化領域内の複数の各々の別個の場所に配置されている。磁場感知素子も、ゼロ化領域を囲む第2の概念上の球状シェル参照面上の別個の各々の場所に配置されている。第1及び第2の球状シェル参照面は同心であり、第1の基準球状シェル面の直径は第2の基準球状シェル面の直径の約2.5倍である。
【0075】
患者の頭部2が、磁場感知素子6の球状のシェル配列内のゼロ化領域内に、第1及び第2の基準球状シェルの中心と一致するように配置されている。
【0076】
フィードバック制御部(図示せず。
図19の符号150を参照)が、複数の磁場感知素子6により感知される磁場の値に応じて、各々の磁場感知素子により検出される前記磁場の値を前記ゼロ化領域内の磁場の予め設定されたゼロ化に対応する予め設定された閾値を超えない値まで低減させるような各々の電流で前記磁場発生素子を駆動することにより、複数の磁場発生素子8の各々により生成される各々のゼロ化磁場の値を制御するように設計されている。
【0077】
各磁場発生コイル8は磁場発生素子の配列の中心又は重心に向かう方向を向くように構成されている。言い換えれば、各コイルは該コイルの直径を含む平面に垂直な方向を「向いて」いる。コイルが「向く」方向は、該コイルの巻線軸(即ち、コイルの巻線が巻き付く中心軸、例えばコイルの対称軸)に平行な方向である。こうして、コイルが「向く」方向は、電流で駆動されたときに該コイルの中心を通って生成される磁場と平行な向きを定める。その磁場の方向は、コイルを流れる所与の電流の流れ方向を制御することにより制御される。
【0078】
磁場発生素子の配列の各コイル8は、該磁場発生素子の配列の他のいずれのコイルからも電気的に分離され、絶縁されており、各コイルは他のいずれのコイルからも独立して駆動される。磁場発生素子の配列内で隣接するコイルは該配列のどのコイルも該配列の他の隣接コイルと重ならないように配置されている。他の例では隣接コイルが少なくとも部分的に重なっていてもよい。
【0079】
図では患者2がMEGセンサキャップ4を被っており、本事例ではOPMセンサが患者の頭部を覆っている。磁場センサ6は安全な距離でMEGセンサキャップ4の周囲に配置されている。患者の脳磁場は磁場センサ6では見ることができない。磁場センサ6とコイル8はそれぞれ、患者の頭部2を収容するための開口を底部に有する球状の格子を形成している。なお、本発明は、磁場発生素子の格子配列の範囲が球状シェル参照面形状の全体を覆う必要はないという意味で柔軟性があり、様々な概念上の参照面形状を用いることができるということに注意されたい。例えば、概念上の参照面は回転楕円面又は円柱状であってもよい。打ち消し/ゼロ化は磁場発生素子8中の電流の電子制御により達成されるため、磁場発生素子の様々な配置が利用できる。これにより、磁場発生素子の配列を柔軟に 形作ることができる。
【0080】
図3(a)及び(b)は(例えばOPMセンサを備える脳磁図キャップ4を装着した)患者の頭部2を入れるための開口11を有するコイル配列の図を示している。開口11は、該開口周辺の磁束を弱めることにより一層良好な打ち消しを達成することを支援する大型の補助コイルの開口により画定されている。コイル配列はこのような補助コイルなしでも性能を発揮できる。なお、磁場発生コイルの配列が、最大コイル径18aから最小コイル径18bまでの異なるコイル径のコイル素子を備えていることに注意されたい。様々な直径のコイルを用いることにより、概念上の基準球状シェル面を覆ってコイルをより密に詰め込むことができる。
【0081】
図4は
図3(b)の例の断面図である。同図には、内部の全ての点が5nT未満の磁場値を有する立体空間の境界を画定する面22(計算/シミュレーションにより生成)が示されている。従って、5nTという値の磁場強度がOPMセンサ6の周囲に存在しており、該センサのダイナミックレンジに入っている。
【0082】
本発明のより複雑なバージョンが
図5(a)及び(b)に提示されている。
図5(b)は
図5(a)の断面図であり、ここでは患者2がMEGセンサキャップを装着している。磁場感知素子212(例えばOPMセンサ)が患者の脳磁場を検出しないように十分安全な距離に配置されている。この例ではこれらセンサの数を減らしている。それは、それらセンサが磁場発生素子216及び214のより大きなグループの電流制御と関連しているからである。具体的には、磁場発生素子(コイル)の配列は2組の同心の磁場発生素子の下位配列を備えており、そのうち内側の磁場発生素子の下位配列214は外側の磁場発生素子の下位配列216と同心であり、それに囲まれている。内側及び外側の下位配列はどちらもそれぞれ物理的な球状のシェル支持面218a、218bの表面に搭載されている。内側及び外側の下位配列はどちらも、各々の概念上の球状シェル参照面上に規則的に配置された磁場発生素子を備えている。ここでは、磁場発生素子の各下位配列214、216のコイル群は複数の下位グループ210を備えている。各下位配列内の各下位グループは、互いに垂直な3方向をそれぞれ向いた3つのコイルを備えている。下位グループの各コイルが向く各方向は局所的な直交三軸(即ち、該下位グループの真ん中を中心とするxyz座標方向)に対応している。下位グループのコイル群のどのコイルが向く方向も、該下位グループの他のコイルの各々が向く方向と略垂直な方向であるため、該下位グループのコイル群のどの2つのコイルも同じ方向を向いていない。各下位グループのコイル群のこのような配置を用いて、所与の下位グループのコイル群により占められる領域の内部及び周辺の局所磁場の一部のベクトル方向を制御することができる。各下位グループのコイル群の1つのコイルは、該コイルがその一部を成す磁場発生素子の下位配列の中心又は重心に向かう方向を向くように構成されている。
【0083】
図6(b)は、先に
図1を参照して論じた、反磁性体1bを避けて通っているが貫通してはいない外部磁場1aを示している。比較のため、
図6(a)は、本発明の実施形態による磁場発生コイルの配列を避けて通る外部磁場40(計算/シミュレーションにより生成)の断面図を示している。コイル配列のうちの2つの磁場発生コイルにより生成される磁場の分解図が示されており、その中で前記2つのコイルがコイル配列の重心を挟んで直径方向に対向している。2つの選択されたコイルのうち上側のコイルは正のy座標にあり、単位ベクトル(a
1,b
1)を持つ局所座標系を有しており、他方で下側のコイルは正のy座標にあり、単位ベクトル(a
2,b
2)を持つ局所座標系を有している。下側のコイルの局所座標系は上側のコイルの局所座標系をz軸中心に180度回転させることでa
2=-a
1及びb
2=-b
1としたものに相当することが分かる。電流の方向はコイル毎に、負のz方向の(即ち、ページの面に入ってゆく)電流を示す記号(X)(41、43)と、正のz方向の(即ち、ページの面から出てくる)電流を示す記号(+)(42、44)で示されている。2つのコイル局所座標系の各々において座標原点に最も近い電流の方向が逆になっており、各々の電流が逆の符号を持つことを示していることが分かる。
【0084】
本発明の実施形態による同様のコイル配列ゼロ化操作を3次元的に視覚化したもの(計算/シミュレーションにより生成)を
図7に示す。
図7において表面高さは磁束密度を表している。
図7では252個のコイルを有する直径1mのコイル配列を用いた。50μTの均一な磁場がコイル内で打ち消され、無視しうる値になった。磁場のベクトルはY軸に平行であった。
図6(a)及び
図7の両方において、コイル配列の中心を通ってz=0におけるxy平面を含む断面を取った。ゼロ化された領域53が明瞭に見て取れる。ゼロ化された領域の周縁に沿った数個の凹部の1つである「凹部」51は、磁場発生コイルが位置する表面上の場所に対応している。これを見ると、ゼロ化された領域がコイル配列の直径に対していかに大きいかが分かる。周辺外部磁場50は乱れのない磁場強度50μTの表面部分で示されている。コイル配列の各側でy軸に沿って整列した磁場の窪み52は、同じくy軸の正方向を向いた均一な磁場の作用を打ち消したことの反応である。
【0085】
図8(a)、(b)、(c)及び(d)は本発明の実施形態の傾斜磁場打ち消し性能の例(計算/シミュレーションにより生成)を示している。
図8(a)及び(c)のグレースケールは
図8(b)及び(d)のグレースケールをそれぞれ1万倍したものである。
図8(a)の結果は、同図のx軸の正方向を向いた磁場を持つ周辺外部磁場勾配発生源に対応している。
図8(b)は
図8(a)の磁場のゼロ化/打ち消しを行った結果である。白色が無いことは前記発生源からの磁場が1万分の1未満に低減されたことを示している。
図8(c)の結果は同図のy軸の正方向を向いた磁場を持つ周辺外部磁場勾配発生源に対応している。
図8(d)は
図8(c)の磁場のゼロ化/打ち消しを行った結果である。白色が無いことは前記発生源からの磁場が1万分の1未満に低減されたことを示している。
【0086】
図9は各コイルの場所がフィボナッチ格子の形を成す磁場発生コイル配列60を示している。この配列は直径1mの配列を成す252個のコイルを備えている。コイル配列内の3次元形状61(計算/シミュレーションにより生成)は5nT未満の磁場の領域を示しており、図中を左から右へ横切るy軸に沿う方向を向いた50μTの均一な外部周辺磁場(例えば地球磁場)に対するゼロ化/打ち消し作用をもたらしている。このコイル配列の各コイルに印加される駆動電流62の大きさと相対的な方向(正負)が各コイルのy座標の値に対して示されている。ここではy軸が図中を左から右へ横切っており、座標原点がコイル配列の中心に対応している。
【0087】
図10は各コイルの場所が二重測地線二十面体格子の形を成す磁場発生コイル配列70を示している。この配列は直径1mの配列を成す252個のコイルを備えている。コイル配列内の3次元形状71(計算/シミュレーションにより生成)は5nT未満の磁場の領域を示しており、図中を左から右へ横切るy軸に沿う方向を向いた50μTの均一な外部周辺磁場(例えば地球磁場)に対するゼロ化/打ち消し作用をもたらしている。このコイル配列の各コイルに印加される駆動電流72の大きさと相対的な方向(正負)が各コイルのy座標の値に対して示されている。ここではy軸が図中で左から右へ横切っており、座標原点がコイル配列の中心に対応している。なお、二重測地線二十面体格子ではフィボナッチ格子に比べて約50%低い電流が必要とされる。表1はこれら2つのコイル配列について性能パラメータの比較を示している。
【表1】
【0088】
図11(a)、(b)、(c)及び(d)は磁場発生コイルの球状配列に印加する駆動電流の他の例(計算/シミュレーションにより生成)を、所与のコイルの座標値をy軸に取った関数として示している。いずれの場合もコイル配列の格子(81、83、85、88)は212個のコイルを持つ二重測地線二十面体配列である。矢印82、84、86及び87は異なる磁場分布/発生源を表している。打ち消すべき磁場ベクトルはy軸に平行である。
図11(a)は均一な磁場(3本の矢印82)に対応する。ゼロ化を達成するために配列の各コイルに供給される駆動電流は所与のコイルのy軸位置座標とほぼ完全に線形的に比例している。
図11(b)は負のy軸上にある点磁場(1本の矢印84)に対応する。
図11(a)の駆動電流とコイルのy座標の間の線形性が今や湾曲したものに置き換わっている。
図11(c)は正のx軸上に位置するが正のy軸と平行な方向を向いた点磁場86に対応している。
図11(d)は正のx座標及び負のy座標に位置するが正のy軸と平行な方向を向いた点磁場87に対応している。
【0089】
図12は本発明の各例のゼロ化領域内で実現される磁場値及び磁場勾配の典型的な値(計算/シミュレーションにより生成)を、当該フィボナッチ格子配列の磁場発生コイルの数の関数として示している。
図13(a)、(b)、(c)及び(d)はこれの更に別の例をフィボナッチ格子(
図13(a)が磁場値、
図13(c)が磁場勾配)と二重測地線二十面体格子(
図13(b)が磁場値、
図13(d)が磁場勾配)について示している。いずれの場合も磁場値又は磁場勾配の最大値と平均値の両方を示している。これらの図は、コイルの数を増やすとコイル配列の性能がどのように向上するかを示すとともに、格子の型が大きく影響することも示している。コイル配列の径は1mであり、均一な50μTの磁場に抗して作用していた。評価した領域は直径0.35の球であった。
【0090】
フィボナッチ格子を用いるよりも二重測地線二十面体格子を用いる方が性能が良いことが分かる。
【0091】
図14(a)及び(b)は、磁場感知素子(91、94)の球状のシェル配列を囲む磁場発生コイル(90、92)の球状のシェル配列の切り取り図を示している。前者はそれを囲む磁場発生コイルの球状のシェル配列と略同心となるように構成されている。患者の頭部2が磁場感知素子の配列の中心に位置している。本発明者はこの同心の配置によりゼロ化領域内で特に精確且つ効果的なゼロ化が可能になることを見出した。コイル配列のコイル(91、92)の別個の各々の場所とセンサ配列(91、94)内のセンサの別個の各々の場所はそれぞれ規則的な格子により定まっており、当該場所は多面体の概念上の頂点若しくはファセット又は球面上の点と一致している(又はそれらにより定まっている)。2つの物理的な多面体状又は球状の支持構造(図示せず)がそれぞれ各配列の素子を前記場所において支えている。前記複数の磁場発生コイル(90、92)はゼロ化領域の中心から略等距離にある前記別個の各々の場所に配置されており、それによりゼロ化領域を囲む略球状の配列を定めている。同様に、前記複数の磁場感知素子(91、94)もゼロ化領域の中心から略等距離にある別個の各々の場所に配置されており、それによりゼロ化領域内にある略球状の配列を定めている。
【0092】
図14(a)は、磁場発生コイルの配列90の直径(コイルの球状配列の直径1.0m)に対する磁場感知素子91の配列の直径(センサの球状配列の直径0.35m)が、
図14(b)に断面を示した装置の磁場発生コイルの配列92の直径(コイルの球状配列の直径1.0m)に対する磁場感知素子94の配列の直径(センサの球状配列の直径0.61m)よりも小さい装置の断面図を示している。本発明者は、周りを囲むコイル配列内に配置されるセンサには、性能が劇的に向上するような最適位置(例えば配列の直径)が存在することを見出した。その最適位置は、コイル配列の直径、コイル配列中のコイルの数、コイル配列を定める格子の型、及びコイルの形状に依存することが分かっている。例えば、
図14(a)及び(b)に示したような1200個のコイルを持つフィボナッチ格子の場合、センサ配列のセンサの最適位置は、センサ配列が球状のシェル配列である場合、
図14(b)に示したように、周りを囲むコイル配列の直径の0.61倍の同心の直径を持つ配列に対応することが分かった。
【0093】
一般に、最適なセンサ位置は、周りを囲む磁場発生コイルの配列の直径の少なくとも約30%から約90%までの範囲内の値を持つセンサ配列の同心の直径に対応する。
図15(a)及び(b)は、外部周辺磁場のゼロ化された領域内の磁場勾配の値(
図15(a))がどのように変化するかを磁場センサの配列の直径の関数(コイル配列の直径を固定した)として、また、最適なセンサ配列直径の変化(
図15(b))を配列内のコイルの数の関数(コイル配列の直径を変化させた)として、それぞれ示している。ここで、コイル配列はフィボナッチ格子である。例えば、2000個のコイルを用いた場合、センサ配列の直径がコイル配列の直径の約68%であれば、ゼロ化された磁場はゼロ化された立体空間内で1.6pT未満であり、このゼロ化された磁場の値はセンサ球の直径をコイル配列の直径の約0.81%まで大きくしても0.95nTまでしか上がらない。この例は、直径1mのコイル配列球を用いればセンサ配列球の直径は0.81mであることを意味している。
図15(b)は、センサ配列球の最適な直径の値が、コイルの球状フィボナッチ配列中で用いられている磁場発生コイルの数を変数とする関数としてどのように変化するかを示している。その関係は2次で良好に近似され、センサ配列の直径がコイル配列中のコイルの数の2次関数として変化する。
【0094】
図16(a)及び(c)は、コイル配列が直径1.0m固定のフィボナッチ格子であり、ゼロ化される周辺磁場が均一な50μTの磁場である場合に、外部周辺磁場内にある200個のコイルを持つ配列のゼロ化された領域内の磁場の値(
図16(a))及び磁場勾配(
図16(c))が磁場センサの配列の直径の関数としてどのように変化するかという別の例を示している。磁場の最大値95と平均値96の両方、並びに磁場勾配の最大値95と平均値100が示されている。
図16(b)及び(d)は、コイル配列が直径1.0m固定の二重測地線二十面体格子であり、ゼロ化される周辺磁場が均一な50μTの磁場である場合に、外部周辺磁場内にある600個のコイルを持つ配列のゼロ化された領域内の磁場の値(
図16(b))と磁場勾配(
図16(d))が磁場センサの配列の直径の関数としてどのように変化するかという別の例を示している。磁場の最大値98と平均値97の両方、並びに磁場勾配の最大値102と平均値101が示されている。いずれの場合も、最小の磁場値と磁場勾配値に対応する最適なセンサ配列の直径が存在することが明瞭に見て取れる。
図17は、
図16(a)~(d)から識別された最適なセンサ配列球の直径の値が、コイルの球状フィボナッチ配列中で用いられる磁場発生コイルの数を変数とする関数としてどのように変化するかを示している。その関係は2次で良好に近似され、センサ配列の直径がコイル配列中のコイルの数の2次関数として変化する。
【0095】
結果として、本発明者は、ゼロ化領域内の磁場の最適なゼロ化を達成するために必要な磁場発生素子の配列の直径と磁場感知素子の配列の直径との間の強い相乗作用を発見した。言い換えれば、本発明のフィードバック系のセンサを最適に配置することにより、磁場の最適なフィードバック値が制御系に供給され、ゼロ化領域内の磁場を低減する際に磁場発生素子を駆動するために用いられる電流が最適に制御される。磁場感知素子の配列の直径の大きさは磁場発生素子の配列の直径の大きさの約40%と約80%の間であることが好ましい。例えば、磁場感知素子の配列の直径の大きさは磁場発生素子の配列の直径の大きさの約40%と約90%の間とし、磁場発生素子の配列は少なくとも約200個の素子であって約2000個以下の素子を含むものとすることができる。本発明者は、これらの条件の1つ以上を適用したときに特に効果的な磁場ゼロ化が達成できることを見出した。
【0096】
図18はコイル配列の磁場発生コイルに供給すべき電流の値を決定するプロセスを示している。
図19は外部周辺磁場内にあるゼロ化領域内の磁場をゼロ化するための装置であって、前記ゼロ化領域の内部へ延在する各々のゼロ化磁場を発生させるために、前記ゼロ化領域を囲む別個の各々の場所に配置された複数の別個の磁場発生素子102を備えている装置を示している。ゼロ化領域内の磁場の各々の値を感知するために、該ゼロ化領域内の複数の各々の別個の場所に複数の磁場感知素子103が配置されている。フィードバック制御部150が、前記複数の磁場感知素子により感知される磁場の値に応じて、前記複数の磁場発生素子の各々により生成される各々のゼロ化磁場の値を制御するように構成されている。フィードバック制御部は、各々の磁場感知素子103により検出される磁場の値をゼロ化領域内の磁場の予め設定されたゼロ化に対応する予め設定された閾値を超えない値まで低減させるような各々の電流で磁場発生素子102を駆動するように設計されている。
【0097】
フィードバック制御部は以下のようにして適当な駆動電流を計算するように設計されている。以下の項目を考える。
・各センサ103の磁場読取値の最小化が、対象となるゼロ化空間の内側の磁場を打ち消すのに十分である。
・1つのセンサ103の磁場読取値が、全ての磁場発生素子102からの全磁場と外部周辺磁場とを合わせた合計である。
・コイル位置の各センサは、磁場方程式のこの空間成分が一定になるように固定される。
・変化している唯一の変数は磁場に比例的に依存する駆動電流である。
【0098】
全センサ103に対する各磁場発生素子102(例えばコイル)の寄与は較正することができる。磁場が打ち消されたら、センサ群により囲まれた立体空間について該センサ群により感知される磁場のフィードバック値もゼロになる。電流と磁場の間には比例的な依存関係がある。以下の方程式は、円筒座標で表現されたセンサ毎の固定位置である所与の場所における磁場の値を記述している。
【数11】
ここで、
a=円筒座標系の軸からの半径方向の距離
z=円筒座標系の軸に沿った距離
ρ=コイルの巻き半径
μ
0=自由空間の透磁率
K(k)=第1種楕円積分
E(k)=第2種楕円積分
である。
【0099】
言い換えれば、各コイルは順番に単独で電流により駆動される一方、他の全ての磁場発生素子は該制御部から電流を受け取らない。単独のコイルにより生成された磁場は、ゼロ化領域内のそれぞれ固定された場所にある磁場感知素子103の各々により感知される。これらの測定された電場の値は較正値であり、対象となっている単独コイルのための基底ベクトルを定める。それらの値は各磁場感知素子103から制御部150に入力され、該制御部がそれを保存する。制御部はこのプロセスを前記コイルの配列の磁場発生素子102毎に別々に繰り返すように構成されており、それにより各磁場発生素子102が別々に、電流を供給される単独の磁場発生素子になる役割を担う。コイル102毎に制御部150は全n個のセンサ103に対する較正磁場値を含む基底ベクトルを生成する。それは1番目のコイルに対しては
【数12】
となる。
【0100】
m個のコイルの配列は、結果的に、全m個のコイルに対応する各々の基底ベクトルを用いて構成されたこれら基底ベクトルの配列になる。
【数13】
全てのセンサがその後で能動的打ち消しサイクルにおいて動作している状態での磁場の各測定値は
【数14】
という擬ベクトル型の構造体として記述することができる。
【数15】
とすると、直交射影の方程式を以下のように適用することができる。
【数16】
項α
jはj番目のコイルの電流を含む項である。制御部は、磁場感知素子により測定されるであろう磁場の値を全体として(例えばそれらの間の平均として)又は個別に低減させて磁場打ち消し/ゼロ化の適切なレベルに対応する所望の予め設定された閾値を超えないようにするために、α
jの値を変化させることによって各コイルに印加される電流の値を変化させるように構成されている。打ち消しを達成するため、制御部150は、それを用いて各磁場発生コイルを駆動しなければならない電流の「負の」値を、次の最適化方程式
【数17】
を解くことにより計算するように構成されている(この方程式の右辺に現れている負号に注意されたい)。
【0101】
通例、外部磁場のゼロ化/打ち消しのための最良の電流解を得るには数回(典型的には1回のみ)の反復しか必要ない。直交射影法のための直交基底は較正プロセスにおいて生成される。直交基底は1度生成すればよく、その後は前記制御部がそれを、能動的な打ち消し/ゼロ化操作の間に前記磁場センサ配列から受け取るセンサデータを用いた全ての能動的な打ち消し/ゼロ化のために用いることができる。これは非常に高速且つ簡単なプロセスである。そのため、それらの間の差、不正確さから来るあらゆる磁場の歪みが除去される。
図20はこのプロセスを、以下のステップを含むものとして要約したものである。
ステップ160:制御部150により、個々の駆動電流を磁場発生コイル102へ順番に出力する一方、他のコイルは電流を受け取らない。
ステップ161:磁場感知センサ配列103によりゼロ化領域内の磁場を測定する。
ステップ162:制御部150により、最適化方程式を解くことによって各コイル102に印加する個々の駆動電流を計算し、そうして計算された駆動電流で各コイルを駆動する。
【0102】
図19(a)、(b)及び(c)は、磁場フィードバックセンサ103の配列を囲む二重測地線二十面体状に配列された32個の磁場発生素子を備える直径0.5mの規則的な球状配列102の磁場発生素子として用いられる2つの非常に異なる磁気発生源の例を示している。
図19(b)に示した配列のゼロ化領域内の磁場は、各磁場発生素子がその局所磁場を円形電流(例えば、直径14cmの円形コイル)により発生させるように構成された場合に対応している。これに対し、
図19(c)に示した配列のゼロ化領域内の磁場は、各磁場発生素子がその局所磁場を磁気双極子場として発生させるように構成された場合に対応している。どちらの場合も直径8cmのゼロ化領域全体にわたってゼロ化が得られ、50nTを超える外部周辺磁場が、約0.5nTの平均磁場と0.027nT/cmの平均磁場勾配(
図19(b))、又は約1.0nTの平均磁場と0.044nT/cmの平均磁場勾配ま(
図19(c))にまで低減された。このことは、磁場発生素子はコイルである必要はなく、例えば、代わりに双極子磁場を発生させるように構成された適宜の磁場発生源でもよい、という点を強める。
【0103】
図22は、上述した直交射影法でどのようにして磁場発生コイル102の数よりも少ない数の磁場感知素子(フィードバックセンサ)103を用いることができるかという例を示している。具体的には、もしセンサ103の数を磁場発生コイル102の数の約40%に減らしたとすると、前記方法の性能が低下し始める可能性がある。この問題を克服するため、制御部150は、センサ配列の物理的なセンサ103により実際に受け取られた較正磁場値を内挿することにより、ゼロ化領域内の任意の点に位置する概念上の「仮想的な」磁場センサ105に関連付けられた磁場較正値を生成するように構成することができる。制御部150は、仮想的なセンサ較正磁場値を内挿すべきゼロ化領域内の対象点(座標:x,y,z)からの半径により定まる概念上の内挿球106(
図22(b)参照)を定めるように構成することができる。制御部150は、どの現実の磁場センサ103が前記概念上の球内に位置しているかを判定し、少なくとも2つの現実のセンサがその球内に入るまで球の半径を増大させることができる。制御部により内挿球内に複数の現実のセンサが識別されたら、制御部は、内挿球内にある前記複数の現実のセンサから受け取った現実の較正磁場値の3次元内挿により対象位置(x,y,z)における較正磁場の仮想的な値を計算する。そしてこれが
図20を参照して前述したプロセスに用いられる。例えば、概念上の球面108(
図22(a)参照)上にある何らかの配列に対応する位置等、任意の個数の別々の対象位置(座標:x,y,z)を選択することができ、それと共に任意の個数の仮想的な(即ち内挿された)較正磁場値を生成することができる。内挿は、内挿球内の現実のセンサにより供給される較正磁場値の和(即ち、各々の場の適宜のx、y、z成分の和)を求めてその結果を(場の成分毎に)内挿球内の現実のセンサの数で除するというような簡単なものでもよい。コイル102とフィードバックセンサ103の間の数の差が大きい場合は、このように現実のフィードバックセンサからの読取値を利用して作り出される仮想的なフィードバックセンサを導入することにより直交射影法を改善することができる。フィードバックセンサ(仮想的な及び現実の)が配置された概念上の球面を覆うヒートマップ108は磁場の磁束密度の大きさを表すグレースケールのマップを示している。
【0104】
図23(a)、(b)及び(c)はこの方法の実装例を示している。そのうち
図23(a)は32個のコイルと16個の現実のセンサを備えるコイル配列を有する装置30を示している。磁場ゼロ化の結果31が4cmの球状ゼロ化領域について示してある。1.35nTの平均磁場が平均勾配0.0043nT/cmで得られている。
図23(b)は92個のコイルと16個の現実のセンサと76個の仮想センサを備えるコイル配列を有する装置32を示している。磁場ゼロ化の結果33が4cmの球状ゼロ化領域について示してある。0.04nTの平均磁場が平均勾配0.001nT/cmで得られている。
図23(c)は212個のコイルと16個の現実のセンサと196個の仮想センサを備えるコイル配列を有する装置34を示している。磁場ゼロ化の結果35が4cmの球状ゼロ化領域について示してある。0.02nTの平均磁場が平均勾配0.001nT/cmで得られている。
【0105】
図24は磁場発生コイル102の配列と磁場感知素子103の配列を支持するための支持骨組み110を示している。センサの搭載部はボルトで押すことにより配列の中心までの距離を調整できる。支持骨組みは非磁性の多面体状の枠を備えている。これはどのようにコイルとフィードバックセンサを搭載できるかという単なる一例である。格子の型は32面の二重測地線二十面体である。フィードバックセンサ103はそれぞれ、該フィードバックセンサが搭載された格子の局所的なファセットの中心に固定端を持ち、該格子により囲まれた立体空間内に自由端を持つ、複数の調節可能な搭載ロッド111の1つに搭載されている。各搭載ロッドは前記配列により囲まれた立体空間の内部に向かって半径方向を指している。最適な性能を得るための調節を行うため、所与のセンサからコイル格子中心までの近さは搭載ロッドの長さを調節することにより調節可能である。例えば、本例では各搭載ロッドは、該搭載ロッドの長さを望遠鏡のように伸縮させるため、該搭載ロッドの軸に沿って前後に移動できる円筒状センサを含む円筒管を備えている。格子支持骨組みはこうしてコイルとセンサを適切な位置に保持する。各コイルは、接着剤、ロックシステム、把持体等、様々な方法で固定することができる。
【0106】
図25は本発明に係る装置をOPMに基づくキャップを用いる脳磁図遮蔽用装置に用いた別の例を示している。患者の頭部2が、非磁性材料から成る透明な半球状の支持面115上に搭載された平たいコイル114の半球状配列内にある。例えば、各コイル線は蒸着、印刷、金属箔エッチング等により形成することができる。受動的な磁場遮蔽体113、例えばミューメタルとアルミニウムの層が、磁場発生コイル配列を覆っている。電気ケーブル用の支持アーム及びハウジング116が設けられている。
【0107】
本発明により、弱い磁場を打ち消し/ゼロ化してμT~nTの範囲又はnT~fTの範囲内にゼロ化された領域を実現するためのセンサのコストを低減することができる。
【0108】
図26は、
図24を参照して上述した設計に従って支持骨組みを用いて構成された磁場ゼロ化装置の例を示している。本装置は磁場発生コイル102の配列と磁場感知素子103の配列を支持した。この装置では32個の磁場発生コイル102を使用し、16個の磁場感知素子103を使用している。磁場発生コイルは直径0.5mの測地線二十面体を覆うように配置した。磁場感知素子は直径8cmの球状のゼロ化空間が得られるように適切に調整された位置に配置され、このゼロ化空間全体にわたりゼロ磁場が得られるように本磁場ゼロ化装置が設計されている。この磁場ゼロ化装置を約50μTの地球磁場に曝された通常の建物環境に設置した。加えて、磁場ゼロ化装置はその近くにある電気的な主電源ソケット及びケーブルのノイズを含む磁性物で囲まれていた。これらの磁性物が地球磁場と組み合わされて球状のゼロ化空間内に磁場を生成し、それが磁場ゼロ化装置の作用により実質的にゼロ化された。
【0109】
図26は前記磁場ゼロ化装置の近接図を示したものであり、該ゼロ化装置内の磁場感知素子103の配列が見える。各磁気感知素子103は3個の磁気インピーダンスセンサを備えており、その各々はx、y及びz軸方向のSx、Sy及びSzといった3本の直交軸方向の磁場成分の1つをそれぞれ測定するように配置されている。好適な磁気インピーダンスセンサの一例は愛知製鋼株式会社製のナノテスラセンサであり、型番MI-CB-1DHで入手可能である。これらのセンサを、愛知製鋼株式会社により提供されている説明書(これは当業者には容易に利用可能である)に従って(交流モードではなく)直流モードで動作するように変更した。この磁気インピーダンスセンサをDC動作モードで動作させ、低磁場環境内で較正した。磁場感知素子の配列の中心にフラックスゲート式の磁気感知素子123(米国Bartington Instruments社製、製品名「MAG-13」)を追加の参照センサとして配置した。
【0110】
本例で用いた磁気インピーダンスセンサはダイナミックレンジが狭いため、最初にゼロ化装置の磁場発生コイル102の配列と磁場感知素子103の配列を全体として適切な向きにすることにより地磁気の打ち消しを行った。これは、支持骨組み(及びそれに搭載された磁場発生コイル102の配列と磁場感知素子103の配列)を地球磁場ベクトルと反対の方向に向け、
図11(a)に示した構成を参照しながら上述したように磁場発生コイル102の配列のコイルに電流を供給することにより行った。これにより、球状のゼロ化空間内の初期磁場が磁気インピーダンスセンサのダイナミックレンジ内に入った。
【0111】
その後、磁場ゼロ化装置に対して
図18及び
図19を参照して上述した較正プロセスを実行することで、上述したように直交基底行列を得た。それからスカラー積を計算し、その積から逆行列を計算して、これを能動的打ち消しプロセスで用いるために保存した。
【0112】
制御部(
図19の符号150)が、それを用いて各磁場発生コイルを駆動しなければならない電流α
jの「負の」値を、次の「直交射影」最適化方程式
【数18】
を解くことにより計算した(この方程式の右辺に現れている負号に注意されたい)。
【0113】
各能動的な打ち消しループにおいてコイル電流の「負の」値を計算するため、磁気感知素子からの読取値を[V
1,V
2,V
3,…,V
N]という測定値行列内に配置した。磁場の測定値は前記センサの各々による3つの直交場成分の測定値(Sx,Sy,Sz)を含んでおり、これらは測定値行列の要素内で次のように表される。
【数19】
【0114】
前記行列と直交基底とのドット積を次のように計算した。
【数20】
ここで、要素X
ikは、電流αにより表される駆動電流による駆動に応じて個々のコイルにより3つの直交方向に生成されるであろうことが(所与の駆動電流に対する各コイルの応答に関する知識に基づいて)分かっているコイル磁場成分(Bx,By,Bz)に対応しており、それらは、上記最適化方程式において、
【数21】
により表されている。
【0115】
得られたドット積を用いて、制御部は上記「直交射影」最適化方程式を反転させるように構成されている。その結果は、コイル102を個別に駆動するために用いる電流に対応する個別の値αjを含む行列から成る。
【0116】
本例では、National Instruments社から得た製品コード「PXIe-8861」の2.8GHzクアッドコアコントローラを用いた。磁気感知素子を読み出すため、この製品に2つのPXI-6349同時アナログデジタル変換器(ADC)を装備した。これらはNational Instruments社から得た製品コード「PXI-6349」のものである。磁場発生コイル用の駆動電流を供給するための電流源を用意するため、同じくNational Instruments社から得た製品コード「PXIe-6739」のデジタルアナログ変換器(DAC)を配置した。磁場(Sx,Sy,Sz)等を測定し、「負の」電流αjを見出し、これらの電流をコイルに印加するというプロセスにかかる時間は250μs未満であった。このプロセスはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を用いることでより高速化することが容易にできる。
【0117】
図27(a)は16個の磁気感知素子103から得た読取値(Sx,Sy,Sz)を示している。これは、48個(即ち16×3=48)の単独の磁気インピーダンス磁気センサに対応しており、不均一な磁場により乱されている。
【0118】
図27(b)は直交射影(ゼロ化)アルゴリズムの計算を1回行ったあとの同じ読取値を示している。フラックスゲート式の磁気感知素子123(「MAG-13」)からの参照磁気センサの読取値(Sx,Sy,Sz)を
図27(c)に示している。これらの図の縦軸の目盛はボルト(V)で測定したものであり、読取値の2.5Vが測定値の5μTに相当する。
【0119】
磁場ゼロ化装置内で能動的な打ち消しが実行されているとき、支持骨組みを地球磁気に対して任意の位置に回転させることができるが、磁性物又は交流磁気発生源があっても質の劣化なくゼロ化領域内の磁場環境のゼロ化に近付くことができることが分かった。更に、本装置の電子部品の特性が変化したり物理的寸法に許容性がなかったりすることによる誤差が外部磁場の変動と等価な作用を及ぼすことが分かったが、本装置は、そうでなければそれらの誤差が磁場環境のゼロ化に及ぼしたであろう影響を打ち消すように応答することが分かった。
【0120】
ここまでの記述、後述の請求項、又は添付図面に開示された各特徴は、必要に応じて、その具体的な形態で表現されるか、開示された機能を実行するための手段又は開示された結果を得るための方法若しくはプロセスの観点から表現されているが、それらの特徴は、個別に又はいくつかの特徴を任意に組み合わせて、本発明をその多様な形態で実現するために利用することができる。
【0121】
上記では本発明を模範的な実施形態と結びつけて説明してきたが、多くの同等の修正や変形は本願の開示があれば当業者にとって自明であろう。従って、前述した本発明の模範的な実施形態は例証的なものであって限定的なものではないとみなされるべきである。前記実施形態には本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更を加えることができる。
【0122】
疑義を避けるために述べておくと、本明細書で行われた理論的な説明はいずれも読者の理解を深めることを目的としたものである。本発明者らはこれらの理論的な説明のいずれによっても束縛されることを望まない。
【0123】
本明細書で用いた見出しは整理を目的とするものに過ぎず、記載された主題を限定するものと解釈すべきではない。
【0124】
後続の特許請求の範囲を含め、本明細書を通じて、「備える(comprise)」及び「含む(include)」という語、並びにそれらの変化形(comprises、comprising、including等)は、文脈上異なる解釈が必要な場合を除き、述べられた整数若しくはステップ又は整数若しくはステップのグループを含むことを意味する一方、他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップのグループを排除することを意味してはいないと解釈すべきものである。
【0125】
なお、本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる単数形は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、指示対象が複数ある場合を含む。本明細書で範囲を表すとき、始点となる或る特定の数値及び/又は終点となる別の特定の数値に「約」を付すことがある。そのように範囲が表されているとき、前記或る特定の数値がまさに始点である及び/又は前記別の特定の数値がまさに終点であるような形態は別の実施形態となる。同様に、「約」という先行詞の使用により値が近似値として表されている場合、当該特定の値は別の実施形態を成すということを理解すべきである。「約」という用語と数値との関係は任意であり、例えば±10%を意味する。
【0126】
本願において「直径(diameter)」と言う場合、それはある構造物、配列、本体又は図形、特に円又は球(ただしこれらに限らない)の中心を通って横断する直線を指す。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺磁場内にあるゼロ化領域内の磁場をゼロ化するための装置であって、
前記ゼロ化領域の内部へ延在する各々のゼロ化磁場を発生させるために、前記ゼロ化領域を囲む別個の各々の場所に配置された複数の別個の磁場発生素子と、
前記ゼロ化領域内の磁場の各々の値を感知するために、前記ゼロ化領域内の複数の各々の別個の場所に配置された複数の磁場感知素子
であって、該磁場感知素子の配列の直径の大きさが前記磁場発生素子の配列の直径の大きさの少なくとも30%である、複数の磁場感知素子と、
前記複数の磁場感知素子により感知される前記磁場の値に応じて、各々の磁場感知素子により検出される前記磁場の値を前記ゼロ化領域内の磁場の予め設定されたゼロ化に対応する予め設定された閾値を超えない値まで低減させるような各々の電流で前記磁場発生素子を駆動することにより、前記複数の磁場発生素子の各々により生成される前記各々のゼロ化磁場の値を制御するためのフィードバック制御部と
を備える装置。
【請求項2】
前記フィードバック制御部が、前記複数の対応する磁場発生素子を駆動するために用いる複数の最適な各々の電流の一組を、直交射影アルゴリズムを適用することにより決定するように設計されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記磁場発生素子が前記電流を伝送するように適合化された導電性コイルを備えている、請求項
1に記載の装置。
【請求項4】
前記複数の磁場発生素子が、前記ゼロ化領域を囲む3次元参照面に沿って形成された第1の配列で前記別個の各々の場所に配置されている、請求項
1に記載の装置。
【請求項5】
前記複数の磁場感知素子が、3次元参照面に沿って形成された第2の配列を定める前記別個の各々の場所に配置されている、請求項
1に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の配列が前記第1の配列と略同心になるように構成されている、請求項
4及び
5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の配列における前記別個の各々の場所が規則的な格子に従って定まっている、請求項
4に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の配列における前記別個の各々の場所が測地線格子に従って定まっている、請求項4に記載の装置。
【請求項9】
前記第2の配列における前記別個の各々の場所が規則的な格子に従って定まっている、請求項
5に記載の装置。
【請求項10】
前記複数の磁場発生素子が前記ゼロ化領域の中心から略等距離にある前記別個の各々の場所に配置されており、それにより前記ゼロ化領域を囲む略球状の配列を定めている、請求項
1に記載の装置。
【請求項11】
前記複数の磁場感知素子が前記ゼロ化領域の中心から略等距離にある前記別個の各々の場所に配置されており、それにより前記ゼロ化領域内に略球状の配列を定めている、請求項
1に記載の装置。
【請求項12】
前記磁場感知素子の配列の直径の大きさが、前記磁場発生素子の配列の直径の大きさの
約30%から約90%までの範囲内である、請求項
1に記載の装置。
【請求項13】
前記磁場感知素子の配列の直径の大きさが、前記磁場発生素子の配列の直径の大きさの約40%と約90%の間である、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記複数の磁場発生素子が少なくとも10個の別個の磁場発生素子を備えている、請求項
1に記載の装置。
【請求項15】
前記複数の磁場発生素子が少なくとも50個の別個の磁場発生素子を備えている、請求項
1に記載の装置。
【請求項16】
前記複数の磁場発生素子が少なくとも200個の別個の磁場発生素子を備えている、請求項
1に記載の装置。
【請求項17】
前記フィードバック制御部が、前記磁場感知素子の出力に接続された入力端子を備えており、且つ、関連する磁場発生素子の入力端子に接続された出力端子を備えている、請求項
1に記載の装置。
【請求項18】
前記閾値が5×10
-9テスラ以下である、請求項
1に記載の装置。
【請求項19】
前記閾値が5×10
-10テスラ以下である、請求項
1に記載の装置。
【請求項20】
前記フィードバック制御部が、前記複数の磁場感知素子により感知される前記磁場の値に応じて、各々の磁場感知素子により検出される前記磁場の値を前記ゼロ化領域内で約10nT/cmを超えない平均磁場勾配に対応する値まで低減させるような各々の電流で前記磁場発生素子を駆動することにより、前記複数の磁場発生素子の各々により生成される前記各々のゼロ化磁場の値を制御するように設計されている、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
周辺磁場内にあるゼロ化領域内の磁場をゼロ化するための方法であって、
前記ゼロ化領域の内部へ延在する各々のゼロ化磁場を発生させるために、前記ゼロ化領域を囲む別個の各々の場所に配置された複数の別個の磁場発生素子を設けること、
前記ゼロ化領域内の磁場の各々の値を感知するために、前記ゼロ化領域内の複数の各々の別個の場所に配置された複数の磁場感知素子
であって、該磁場感知素子の配列の直径の大きさが前記磁場発生素子の配列の直径の大きさの少なくとも30%である、複数の磁場感知素子を設けること、
前記複数の磁場感知素子により感知される前記磁場の値に応じて、各々の磁場感知素子により検出される前記磁場の値を前記ゼロ化領域内の磁場の予め設定されたゼロ化に対応する予め設定された閾値を超えない値まで低減させるような各々の電流で前記磁場発生素子を駆動することにより、前記複数の磁場発生素子の各々により生成される前記各々のゼロ化磁場の値を制御すること
を備える方法。
【請求項22】
前記複数の対応する磁場発生素子を駆動するために用いる複数の最適な各々の電流の一組を、直交射影アルゴリズムを適用することにより決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記磁場発生素子が導電性コイルを備え、本方法が各々の前記コイルを通じて前記電流を伝送することを含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項24】
前記複数の磁場発生素子を、前記ゼロ化領域を囲む3次元参照面に沿って形成された第1の配列で前記別個の各々の場所に配置されたものとして設けることを含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の磁場感知素子を、3次元参照面に沿って形成された第2の配列を定める前記別個の各々の場所に配置されたものとして設けることを含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の配列を前記第1の配列と略同心に設けることを含む、請求項
24及び
25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の配列における前記別個の各々の場所が規則的な格子に従って定まっている、請求項
24に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の配列における前記別個の各々の場所が測地線格子に従って定まっている、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の配列における前記別個の各々の場所が規則的な格子に従って定まっている、請求項
25に記載の方法。
【請求項30】
前記複数の磁場発生素子を、前記ゼロ化領域の中心から略等距離にある前記別個の各々の場所に配置されたものとして設け、それにより前記ゼロ化領域を囲む略球状の配列を定めることを含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項31】
前記複数の磁場感知素子を、前記ゼロ化領域の中心から略等距離にある前記別個の各々の場所に配置されたものとして設け、それにより前記ゼロ化領域内に略球状の配列を定めることを含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項32】
前記磁場感知素子の配列の直径の大きさが、前記磁場発生素子の配列の直径の大きさの
約30%から約90%までの範囲内である、請求項
21に記載の方法。
【請求項33】
前記磁場感知素子の配列の直径の大きさが、前記磁場発生素子の配列の直径の大きさの約40%と約90%の間である、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
前記複数の磁場発生素子を、少なくとも10個の別個の磁場発生素子を備えるように設けることを含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項35】
前記複数の磁場発生素子を、少なくとも50個の別個の磁場発生素子を備えるように設けることを含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項36】
前記複数の磁場発生素子を、少なくとも200個の別個の磁場発生素子を備えるように設けることを含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項37】
フィードバック制御部において前記磁場感知素子からの出力に対応する入力を受け取ること、及び、該フィードバック制御部から、関連付けられた磁場発生素子に入力される制御信号を含む出力を供給することを含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項38】
前記閾値が5×10
-9テスラ以下である、請求項
21に記載の方法。
【請求項39】
前記閾値が5×10
-10テスラ以下である、請求項
21に記載の方法。
【請求項40】
前記複数の磁場感知素子により感知される前記磁場の値に応じて、各々の磁場感知素子により検出される前記磁場の値を前記ゼロ化領域内で約10nT/cmを超えない平均磁場勾配に対応する値まで低減させるような各々の電流で前記磁場発生素子を駆動することにより、前記複数の磁場発生素子の各々により生成される前記各々のゼロ化磁場の値を制御する、請求項21に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
通常、(例えばMEGを利用するための)周辺磁場が実質的にない(又は無視できる)環境は大型で非常に高価な磁気シールドルーム(magnetically shielded room: MSR)を用いて生み出される。この部屋は典型的には磁気遮蔽材料から成る壁、床及び天井を備えている。更に、MSRには、該MSRの限界から又は該室内の設備から生じることがある該MSR内に存在する残存磁場を打ち消すための追加システムが備えられていることがある。MSRのコストは非常に高いためMEG装置を持つ余裕がある施設はほとんどない。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
最も概括的に言うと、本発明は、超反磁気学の基礎を成す原理と同様にして立体空間内の磁場の打ち消し(又はゼロ化)を達成するという考え方である。ある立体空間を囲む磁場発生素子の配列を設け、これらの磁場発生素子と前記立体空間内の磁場感知素子の配列との間にフィードバック制御を適用することにより、必要に応じて磁場発生素子への供給電流を制御することで前記立体空間内の磁場の打ち消し(又は「ゼロ化」)を実質的に達成することができる。言い換えれば、本発明者は、表面の全面に磁場発生素子の配列を配置した立体空間内の磁場の打ち消し(又は「ゼロ化」)を達成することにより、該立体空間の表面における磁場の間接的な情報を有効に得ることができるということを見出した。ひとたびゼロ化が達成されれば、それは前記立体空間の表面における磁場が、該表面上にある磁場発生素子の配列により、前記表面にわたって略等しい量で対抗されていることを意味する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
前記フィードバック制御部は、これらの単位ベクトルに基づいて、各々の磁場
発生素子に供給すべき駆動電流の値と方向の計算を行うことにより周辺磁場の能動的な打ち消しを実行するように設計することができる。該フィードバック制御部は、全ての感知素子がその後で能動的打ち消し機能において動作している状態での1つの磁場感知素子からの磁場の各測定値を
【数3】
という擬ベクトル型の行列構造体として定めるように設計することができる。
【数4】
とすると、直交射影の方程式は
【数5】
である。項α
jはj番目の磁場発生素子の電流を含む項である。打ち消しを達成するため、前記制御部は、それを用いて各磁場発生コイルを駆動しなければならない電流の「負の」値を、次の最適化方程式
【数6】
を解くことにより計算するように構成することができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
前記直交射影アルゴリズムは、磁場ゼロ化/打ち消しのための適切な「最適な」駆動電流を、上記方程式をパラメータαjについて解いた(例えば反転させた)結果として直接計算してもよいことに注意が必要である。この意味で、「最適化」という言葉は、上記方程式の性質により本来的に最適であるとみなされるパラメータαjの値を計算することを指すものと理解すべきである。これは、はるかに効率の低い反復的な磁場最小化の技法に含まれしばしば多数回の反復を要する従来技術の「最適化」の技法と同じではない。言い換えると、それに比べて、本願で論じている直交射影の技法は、パラメータαjを1回計算するだけで必要なものが直ちに得られ、これらのパラメータの「より良い」値を見出すために続けて「反復」計算を行う必要は全くないものと考えることができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
前記フィードバック制御部は前記
磁場感知素子からの読取値V
kを用いるように設計することができる。これらの読取値は該制御部により読取値行列内に配置することができる(例えば[V
1,V
2,V
3,…,V
N])。磁場の測定値は前記
磁場感知素子の各々による3つの直交場成分の測定値(Sx,Sy,Sz)を含むものとすることができる。前記フィードバック制御部は、前記読取値行列と前記磁場発生素子の前記直交基底ベクトルのドット積を次のように計算するように設計することができる。
【数8】
ここで、センサ読取値と該センサ読取値の行列の行列要素とは次のように関連付けられている。
【数9】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
前記フィードバック制御部は、較正プロセスが終了した後(即ち終了後すぐに)、各磁場
感知素子により生成される測定値から前記補正値を減算することを止めるように構成することができる。これは、磁場
感知素子の現在の読取値を真の読取値に戻す(即ち前記「ゼロ化」を行わない)ことを意味し、その後は直交射影のプロセスを行ってもよい。その結果、直交射影の基底ベクトルは、前記(a)又は(b)の条件下で存在する内部磁場を内在的に減算したものとなる。
図27(a)、(b)及び(c)に示した実験結果はMSRを用いずに上記のようにして行った較正の結果として生成されたものである。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
従って、MSRが利用でき且つ簡便であるならMSR内で装置を較正することが有利であり得るものの、本発明はMSRがないときに較正を行う手段を提供することができる。実は、これは装置を使用する度に較正を行うことができるとことも意味している。これの利点は、磁場発生素子及び/又は磁場感知素子の位置決めの機械的な変化が除去されるということである。また、装置の温度変化が磁場感知素子の性能に影響し得るが、この変化も較正プロセスにより考慮されるであろう。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0083
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0083】
図6(b)は、先に
図1を参照して論じた、反磁性体1bを避けて通っているが貫通してはいない外部磁場1aを示している。比較のため、
図6(a)は、本発明の実施形態による磁場発生コイルの配列を避けて通る外部磁場40(計算/シミュレーションにより生成)の断面図を示している。コイル配列のうちの2つの磁場発生コイルにより生成される磁場の分解図が示されており、その中で前記2つのコイルがコイル配列の重心を挟んで直径方向に対向している。2つの選択されたコイルのうち上側のコイルは正のy座標にあり、単位ベクトル(a
1,b
1)を持つ局所座標系を有しており、他方で下側のコイルは
負のy座標にあり、単位ベクトル(a
2,b
2)を持つ局所座標系を有している。下側のコイルの局所座標系は上側のコイルの局所座標系をz軸中心に180度回転させることでa
2=-a
1及びb
2=-b
1としたものに相当することが分かる。電流の方向はコイル毎に、負のz方向の(即ち、ページの面に入ってゆく)電流を示す記号(X)(41、43)と、正のz方向の(即ち、ページの面から出てくる)電流を示す記号(+)(42、44)で示されている。2つのコイル局所座標系の各々において座標原点に最も近い電流の方向が逆になっており、各々の電流が逆の符号を持つことを示していることが分かる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0091
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0091】
図14(a)及び(b)は、磁場感知素子(91、94)の球状のシェル配列を囲む磁場発生コイル(90、92)の球状のシェル配列の切り取り図を示している。前者はそれを囲む磁場発生コイルの球状のシェル配列と略同心となるように構成されている。患者の頭部2が磁場感知素子の配列の中心に位置している。本発明者はこの同心の配置によりゼロ化領域内で特に精確且つ効果的なゼロ化が可能になることを見出した。コイル配列のコイル(
90、92)の別個の各々の場所とセンサ配列(91、94)内のセンサの別個の各々の場所はそれぞれ規則的な格子により定まっており、当該場所は多面体の概念上の頂点若しくはファセット又は球面上の点と一致している(又はそれらにより定まっている)。2つの物理的な多面体状又は球状の支持構造(図示せず)がそれぞれ各配列の素子を前記場所において支えている。前記複数の磁場発生コイル(90、92)はゼロ化領域の中心から略等距離にある前記別個の各々の場所に配置されており、それによりゼロ化領域を囲む略球状の配列を定めている。同様に、前記複数の磁場感知素子(91、94)もゼロ化領域の中心から略等距離にある別個の各々の場所に配置されており、それによりゼロ化領域内にある略球状の配列を定めている。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0093
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0093】
一般に、最適なセンサ位置は、周りを囲む磁場発生コイルの配列の直径の少なくとも約30%から約90%までの範囲内の値を持つセンサ配列の同心の直径に対応する。
図15(a)及び(b)は、外部周辺磁場のゼロ化された領域内の磁場勾配の値(
図15(a))がどのように変化するかを磁場センサの配列の直径の関数(コイル配列の直径を固定した)として、また、最適なセンサ配列直径の変化(
図15(b))を配列内のコイルの数の関数(コイル配列の直径を変化させた)として、それぞれ示している。ここで、コイル配列はフィボナッチ格子である。例えば、2000個のコイルを用いた場合、センサ配列の直径がコイル配列の直径の約68%であれば、ゼロ化された磁場はゼロ化された立体空間内で1.6pT未満であり、このゼロ化された磁場の値はセンサ球の直径をコイル配列の直径の約
81%まで大きくしても0.95nTまでしか上がらない。この例は、直径1mのコイル配列球を用いればセンサ配列球の直径は0.81mであることを意味している。
図15(b)は、センサ配列球の最適な直径の値が、コイルの球状フィボナッチ配列中で用いられている磁場発生コイルの数を変数とする関数としてどのように変化するかを示している。その関係は2次で良好に近似され、センサ配列の直径がコイル配列中のコイルの数の2次関数として変化する。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
図16(a)及び(c)は、コイル配列が直径1.0m固定のフィボナッチ格子であり、ゼロ化される周辺磁場が均一な50μTの磁場である場合に、外部周辺磁場内にある200個のコイルを持つ配列のゼロ化された領域内の磁場の値(
図16(a))及び磁場勾配(
図16(c))が磁場センサの配列の直径の関数としてどのように変化するかという別の例を示している。磁場の最大値95と平均値96の両方、並びに磁場勾配の最大値
99と平均値100が示されている。
図16(b)及び(d)は、コイル配列が直径1.0m固定の二重測地線二十面体格子であり、ゼロ化される周辺磁場が均一な50μTの磁場である場合に、外部周辺磁場内にある600個のコイルを持つ配列のゼロ化された領域内の磁場の値(
図16(b))と磁場勾配(
図16(d))が磁場センサの配列の直径の関数としてどのように変化するかという別の例を示している。磁場の最大値98と平均値97の両方、並びに磁場勾配の最大値102と平均値101が示されている。いずれの場合も、最小の磁場値と磁場勾配値に対応する最適なセンサ配列の直径が存在することが明瞭に見て取れる。
図17は、
図16(a)~(d)から識別された最適なセンサ配列球の直径の値が、コイルの球状フィボナッチ配列中で用いられる磁場発生コイルの数を変数とする関数としてどのように変化するかを示している。その関係は2次で良好に近似され、センサ配列の直径がコイル配列中のコイルの数の2次関数として変化する。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
図21(a)、(b)及び(c)は、磁場フィードバックセンサ103の配列を囲む二重測地線二十面体状に配列された32個の磁場発生素子を備える直径0.5mの規則的な球状配列102の磁場発生素子として用いられる2つの非常に異なる磁気発生源の例を示している。図21(b)に示した配列のゼロ化領域内の磁場は、各磁場発生素子がその局所磁場を円形電流(例えば、直径14cmの円形コイル)により発生させるように構成された場合に対応している。これに対し、図21(c)に示した配列のゼロ化領域内の磁場は、各磁場発生素子がその局所磁場を磁気双極子場として発生させるように構成された場合に対応している。どちらの場合も直径8cmのゼロ化領域全体にわたってゼロ化が得られ、50μTを超える外部周辺磁場が、約0.5nTの平均磁場と0.027nT/cmの平均磁場勾配(図21(b))、又は約1.0nTの平均磁場と0.044nT/cmの平均磁場勾配ま(図21(c))にまで低減された。このことは、磁場発生素子はコイルである必要はなく、例えば、代わりに双極子磁場を発生させるように構成された適宜の磁場発生源でもよい、という点を強める。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0109
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0109】
図26は前記磁場ゼロ化装置の近接図を示したものであり、該ゼロ化装置内の磁場感知素子103の配列が見える。各
磁場感知素子103は3個の磁気インピーダンスセンサを備えており、その各々はx、y及びz軸方向のSx、Sy及びSzといった3本の直交軸方向の磁場成分の1つをそれぞれ測定するように配置されている。好適な磁気インピーダンスセンサの一例は愛知製鋼株式会社製のナノテスラセンサであり、型番MI-CB-1DHで入手可能である。これらのセンサを、愛知製鋼株式会社により提供されている説明書(これは当業者には容易に利用可能である)に従って(交流モードではなく)直流モードで動作するように変更した。この磁気インピーダンスセンサをDC動作モードで動作させ、低磁場環境内で較正した。磁場感知素子の配列の中心にフラックスゲート式の
磁場感知素子123(米国Bartington Instruments社製、製品名「MAG-13」)を追加の参照センサとして配置した。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0113
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0113】
各能動的な打ち消しループにおいてコイル電流の「負の」値を計算するため、
磁場感知素子からの読取値を[V
1,V
2,V
3,…,V
N]という測定値行列内に配置した。磁場の測定値は前記センサの各々による3つの直交場成分の測定値(Sx,Sy,Sz)を含んでおり、これらは測定値行列の要素内で次のように表される。
【数19】
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0116
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0116】
本例では、National Instruments社から得た製品コード「PXIe-8861」の2.8GHzクアッドコアコントローラを用いた。磁場感知素子を読み出すため、この製品に2つのPXI-6349同時アナログデジタル変換器(ADC)を装備した。これらはNational Instruments社から得た製品コード「PXI-6349」のものである。磁場発生コイル用の駆動電流を供給するための電流源を用意するため、同じくNational Instruments社から得た製品コード「PXIe-6739」のデジタルアナログ変換器(DAC)を配置した。磁場(Sx,Sy,Sz)等を測定し、「負の」電流αjを見出し、これらの電流をコイルに印加するというプロセスにかかる時間は250μs未満であった。このプロセスはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を用いることでより高速化することが容易にできる。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0117
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0117】
図27(a)は16個の
磁場感知素子103から得た読取値(Sx,Sy,Sz)を示している。これは、48個(即ち16×3=48)の単独の磁気インピーダンス磁気センサに対応しており、不均一な磁場により乱されている。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
図27(b)は直交射影(ゼロ化)アルゴリズムの計算を1回行ったあとの同じ読取値を示している。フラックスゲート式の
磁場感知素子123(「MAG-13」)からの参照磁気センサの読取値(Sx,Sy,Sz)を
図27(c)に示している。これらの図の縦軸の目盛はボルト(V)で測定したものであり、読取値の2.5Vが測定値の5μTに相当する。
【国際調査報告】