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特表2024-546412ポリマー組成物及びポリマー組成物により木製パレットをコーティングするための方法
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  • 特表-ポリマー組成物及びポリマー組成物により木製パレットをコーティングするための方法 図1
  • 特表-ポリマー組成物及びポリマー組成物により木製パレットをコーティングするための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ポリマー組成物及びポリマー組成物により木製パレットをコーティングするための方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/02 20060101AFI20241217BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20241217BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20241217BHJP
   B65D 19/31 20060101ALI20241217BHJP
   C08L 75/00 20060101ALI20241217BHJP
   C08L 83/00 20060101ALI20241217BHJP
   B05D 7/06 20060101ALI20241217BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C09D175/02
C09D175/04
C09D183/04
B65D19/31
C08L75/00
C08L83/00
B05D7/06 G
B05D7/24 302T
B05D7/24 302Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525587
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 US2022078834
(87)【国際公開番号】W WO2023077039
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202123049643
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524154393
【氏名又は名称】ヴェルテ テクノロジーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ワラウォーカー ディナール シャシカント
【テーマコード(参考)】
3E063
4D075
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
3E063AA01
3E063BA08
3E063CA30
3E063GG05
3E063GG10
4D075AA01
4D075AA17
4D075AA37
4D075AA82
4D075AA86
4D075BB29X
4D075BB60Z
4D075CA03
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB21
4D075DB22
4D075EA09
4D075EA15
4D075EB38
4D075EB42
4D075EB56
4J002CK011
4J002CK022
4J002CP033
4J002GH00
4J002GN00
4J038DG031
4J038DG061
4J038DG102
4J038DG262
4J038DL032
4J038NA10
4J038NA11
4J038NA20
4J038PB07
4J038PC06
(57)【要約】
木製パレットをコーティングするためのポリマー組成物が提供される。ポリマー組成物は、ポリウレア、ポリウレタン、シリコンエラストマー、及びそれらの組合せのうち少なくとも1種の所定の比率での混合物を含む。ポリマー組成物は、木製パレットに、曲げ強度と共に、高い耐衝撃性及び耐摩耗性、伸び強度、並びに帯電防止特性などの望ましい特性を付与する。本発明は、また、ポリマー組成物を木製パレット上にコーティングするための方法も提供する。マトリックスコーティングプロセスは、木製パレットの側面上でポリマー組成物のコーティングが重なり合うため、はるかにより強い接着をもたらし、木製パレットコーティング中のポリマー組成物の損耗量を削減する。本発明は、また、ポリマー組成物によりコーティングされた木製パレットも提供する。ポリマー組成物によりコーティングされた木製パレットは、高い耐衝撃性、耐摩耗性、及び帯電防止特性などの特性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製パレットをコーティングするためのポリマー組成物であって、
ポリウレア、ポリウレタン、シリコンエラストマー、及びそれらの組合せのうち少なくとも1種の所定の比率での混合物を含み、
混合物が、ポリウレア及びポリウレタンを60:40~80:20の所定の比率で、又はポリウレア、ポリウレタン、及びシリコンエラストマーを60:37:03~78:19:03の所定の比率で、のいずれか一方を含む、ポリマー組成物。
【請求項2】
木製パレットが、合板、燃料用木材及び木製単板シートからなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
混合物が、ポリウレア及びポリウレタンを65:35の所定の比率で含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
混合物が、ポリウレア、ポリウレタン及びシリコンエラストマーを65:32:03の所定の比率で含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
ポリウレア及びポリウレタンの混合物が、木製パレットに曲げ強度及び伸び強度を付与するように構成されている、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
ポリウレア、ポリウレタン及びシリコンエラストマーの混合物が、木製パレットに曲げ強度及び伸び強度と共に帯電防止特性を付与するように構成されている、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
ポリマー組成物を木製パレット上にコーティングするための方法であって、
ポリウレア、ポリウレタン、シリコンエラストマー、及びそれらの組合せのうち少なくとも1種の所定の比率での混合物を、70℃~85℃で加熱して、溶融状態のポリマー組成物を得るステップであって、
混合物が、ポリウレア及びポリウレタンを60:40~80:20の所定の比率で、又はポリウレア、ポリウレタン、及びシリコンエラストマーを60:37:03~78:19:03の所定の比率で、のいずれか一方を含む、ステップ、
溶融ポリマー組成物により木製パレットをコーティングして、木製パレットの表面上に所定の厚みの層を形成するステップであって、
溶融ポリマー組成物のコーティングがマトリックスコーティングプロセスを使用して行われる、ステップ、並びに
木製パレットの表面上のコーティングを室温で乾燥させるステップ
を含む、方法。
【請求項8】
木製パレットが、合板、燃料用木材及び木製単板シートからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
混合物が、ポリウレア及びポリウレタンを65:35の所定の比率で含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
混合物が、ポリウレア、ポリウレタン及びシリコンエラストマーを65:32:03の所定の比率で含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
ポリウレア及びポリウレタンの混合物によって形成された所定の厚みの層が、木製パレットに曲げ強度及び伸び強度を付与するように構成されている、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
ポリウレア、ポリウレタン及びシリコンエラストマーの混合物によって形成された所定の厚みの層が、木製パレットに曲げ強度及び伸び強度と共に帯電防止特性を付与するように構成されている、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
木製パレットの表面上の溶融ポリマー組成物のコーティングが、手動噴霧法又はロボットアームの一方によって制御されるガンを使用して行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
ポリマー組成物の層の所定の厚みが、木製パレットの表面にわたって均一である、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
ポリマー組成物の層の所定の厚みが、木製パレットの表面にわたって可変である、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
木製パレットの表面上にコーティングされたポリマー組成物の層の所定の厚みが、0.5mm~1mmの範囲である、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
木製パレット(200)の表面上にコーティングされたポリマー組成物の所定の厚みの層(202)を含む木製パレット(200)であって、
ポリマー組成物が、ポリウレア、ポリウレタン、シリコンエラストマー、及びそれらの組合せのうち少なくとも1種の所定の比率での混合物を含み、
混合物が、ポリウレア及びポリウレタンを60:40~80:20の所定の比率で、又はポリウレア、ポリウレタン、及びシリコンエラストマーを60:37:03~78:19:03の所定の比率で、のいずれか一方を含む、木製パレット(200)。
【請求項18】
合板、燃料用木材及び木製単板シートからなる群から選択される、請求項17に記載の木製パレット(200)。
【請求項19】
混合物が、ポリウレア、ポリウレタン及びシリコンエラストマーを65:32:03の所定の比率で含む、請求項17に記載の木製パレット(200)。
【請求項20】
ポリウレア及びポリウレタンの混合物によって形成された所定の厚みの層(202)が、木製パレットに曲げ強度及び伸び強度を付与するように構成されている、請求項17に記載の木製パレット(200)。
【請求項21】
ポリウレア、ポリウレタン及びシリコンエラストマーの混合物によって形成された所定の厚みの層(202)が、木製パレットに曲げ強度及び伸び強度と共に帯電防止特性を付与するように構成されている、請求項17に記載の木製パレット(200)。
【請求項22】
木製パレットの表面上にコーティングされたポリマー組成物の層の所定の厚みが、0.5mm~1mmの範囲である、請求項17に記載の木製パレット(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月29日に提出された「ポリマー組成物及びポリマー組成物により木製パレットをコーティングするための方法」と題するインドで提出された特許出願である特許出願第202123049643号の優先権を主張する。
本開示の実施形態は、木製パレットをコーティングすること、より具体的には、ポリマー組成物及びポリマー組成物により木製パレットをコーティングするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パレットは、平らな輸送用構造物であり、フォークリフト、フロントローダー、パレットジャッキ、エレクトクレーン、又はジャッキデバイスにより持ち上げられた状態で、物品を安定的に支える。パレットは、ユニットロードの構造的基盤であり、取扱いと保管の効率化を可能とする。木製パレットは、典型的には数枚のデッキボードを支える3枚又は4枚のケタ板からなり、その上に物品が配置される。
パレットは、様々な素材から製造される。木製パレットは市場の主流であり、価格と性能に関して優れた価値を提供する。木材は硬い素材であり、安価で簡便に、必要に応じた様々な寸法に加工される。木製複合材パレットは、また、硬くて価格競争力のある製品を提供し、容易にリサイクルすることができ、典型的には積み重ねることができ、輸送及び保管における空間利用を改善する。
しかし、木製パレットは耐水性ではなく、湿りやすく腐りやすい。木製パレットは、1回限りの輸出用梱包材であっても燻蒸又は熱処理を必要とするため、追加のコストが上昇し、通関手続きの時間も長くなる。これらの問題を克服するため、サンディング及び塗装の技法が水蒸気及びシロアリから木製パレットを保護するために使用される。
サンディングは化学物質を回避するには役立つが、木材粉塵に曝露することは人の健康に有害となり得る。いずれにしても、サンディング及び塗装の技法は信頼性に劣り、耐久性が低くかつ時間を要する。
【0003】
最近の研究では、木製パレットの表面上の脂肪族ポリマーのコーティングも記述されている。そのような脂肪族ポリマーのコーティングには、木製パレットの表面上のポリウレア又はポリウレタンのコーティングが含まれる。しかし、木製パレットのコーティングにポリウレアを使用すると、製品が高価になり、ポリウレタンは湿度条件に非常に敏感である。
そのため、堅牢さ及び可撓性を付与するために、改善された費用対効果の高いポリマー組成物及びポリマー組成物により木製パレットをコーティングするための方法への必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明のある実施形態によれば、木製パレットをコーティングするためのポリマー組成物が提供される。ポリマー組成物は、ポリウレア、ポリウレタン、シリコンエラストマー(silicon elastomer)、及びそれらの組合せのうち少なくとも1種の所定の比率での混合物を含む。混合物は、ポリウレア及びポリウレタンを60:40~80:20の所定の比率で、又はポリウレア、ポリウレタン、及びシリコンエラストマーを60:37:03~78:19:03の所定の比率で、のいずれか一方を含む。ポリマー組成物は、木製パレットに、曲げ強度と共に、高い耐衝撃性及び耐摩耗性、伸び強度(elongation strength)、並びに帯電防止特性などの望ましい特性を付与する。
本発明の別の実施形態によれば、ポリマー組成物を木製パレット上にコーティングするための方法が提供される。方法は、ポリウレア、ポリウレタン、シリコンエラストマー、及びそれらの組合せのうち少なくとも1種の所定の比率での混合物を、70℃~85℃で加熱して、溶融状態のポリマー組成物を得るステップを含む。混合物は、ポリウレア及びポリウレタンを60:40~80:20の所定の比率で、又はポリウレア、ポリウレタン、及びシリコンエラストマーを60:37:03~78:19:03の所定の比率で、のいずれか一方を含む。方法は、また、溶融ポリマー組成物により木製パレットをコーティングして、木製パレットの表面上に所定の厚みの層を形成するステップも含む。溶融ポリマー組成物のコーティングは、マトリックスコーティングプロセスを使用して行われる。方法は、木製パレットの表面上のコーティングを室温で乾燥させるステップをさらに含む。
【0005】
本発明のさらに別の実施形態によれば、木製パレットが提供される。木製パレットは、木製パレットの表面上にコーティングされたポリマー組成物の所定の厚みの層を含む。ポリマー組成物は、ポリウレア、ポリウレタン、シリコンエラストマー、及びそれらの組合せのうち少なくとも1種の所定の比率での混合物を含む。混合物は、ポリウレア及びポリウレタンを60:40~80:20の所定の比率で、又はポリウレア、ポリウレタン、及びシリコンエラストマーを60:37:03~78:19:03の所定の比率で、のいずれか一方を含む。
本発明の利点及び特徴をさらに明らかにするため、本発明のより詳細な記載がその具体的な実施形態への参照によって続き、添付の図において例示される。これらの図は、本発明の典型的な実施形態のみを示し、よって範囲を限定すると考えられないことを理解されたい。本発明は、添付の図によって、さらなる具体性及び詳細をもって記載され、説明される。
本発明は、付随する図によって、さらなる具体性及び詳細をもって記載され、説明される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明のある実施形態に従って、ポリマー組成物を木製パレット上にコーティングするための方法に関与するステップを表すフローチャートである。
図2】本発明のある実施形態に従って、ポリマー組成物によりコーティングされた木製パレットを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
さらに、当業者は、図中の要素は単純化のために例示されており、一定の縮尺で描かれているとは限らない可能性があることを理解するであろう。さらに、方法のステップに関して、本明細書で使用される化学化合物及びパラメーターは、従来の記号によって図において表されている場合があり、本明細書における記載の利益を有する当業者には容易に明らかとなるであろう詳細によって図を不明瞭なものとしないよう、図は本開示の実施形態を理解するのに適切な特定の詳細のみを示す場合がある。
本開示の原則の理解を促進する目的で、図に例示された実施形態について以下に参照を行い、それらを記載するために具体的な言葉を使用する。それにもかかわらず、それによって本開示の範囲を限定することは意図されていないことが理解されよう。例示されたシステムにおけるそのような変更及びさらなる修正、並びに当業者に通常生じるような本開示の原則のそのようなさらなる適用は、本開示の範囲内にあるものと解釈されるべきである。
「含む(comprise)」、「含む(comprising)」という用語、又はそれらのあらゆる他のバリエーションは、排他的でない包含を網羅することを意図しており、ステップの列挙を含むプロセス又は方法が、それらのステップのみを含むのではなく、明示的に列挙されてはいない、又はそのようなプロセス若しくは方法に固有な他のステップも含み得る。同様に、「~を含む」に続く1種又は複数の成分、化合物及び原料は、それ以上の制約がなければ、他の成分又は化合部又は原料又は追加的な成分の存在を除外しない。本明細書を通して、「ある実施形態では」、「別の実施形態では」という語句及び同様の言葉の出現は、必ずではないが、全てが同一の実施形態を指している場合がある。
【0008】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び学術用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書において提供されるシステム、方法及び例は、例示的なものに過ぎず、限定的であることを意図されていない。
以下の明細書及び特許請求の範囲では、いくつかの用語が言及され、それらは以下の意味を有すると定義される。単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈が明確に他を示さない限り、複数についての言及も含む。
本発明の実施形態は、木製パレットをコーティングするためのポリマー組成物に関する。本発明は主に、木製パレットに伸び強度、及び曲げ強度を付与するハイブリッドポリマー組成物に焦点を当てる。本発明は、また、木製パレットをコーティングするための方法も提供する。方法は主に、木製パレットをコーティングするためのマトリックスコーティングプロセスを含む。さらに本発明は、ポリマー組成物によりコーティングされた木製パレットにも関する。
【0009】
本明細書で使用される場合、「マトリックスコーティングプロセス」という用語は、剥離性及び低摩擦性を改善するために硬化したコーティングに仕上げる方法に関する。
本発明は、改善された曲げ強度及び伸び強度を有する木製パレットを提供する。木製パレットは、ポリマー組成物の所定の数の層によりコーティングされる。
ある実施形態では、ポリマー組成物は、ポリウレア、ポリウレタン、シリコンエラストマー、及びそれらの組合せのうち少なくとも1種の所定の比率での混合物を含む。混合物は、ポリウレア及びポリウレタンを60:40~80:20の所定の比率で、又はポリウレア、ポリウレタン、及びシリコンエラストマーを60:37:03~78:19:03の所定の比率で、のいずれか一方を含む。混合物は、ポリウレア及びポリウレタンを65:35の所定の比率で含む。混合物は、ポリウレア、ポリウレタン及びシリコンエラストマーを、65:32:03の所定の比率で含む。
【0010】
木製パレットは、合板、燃料用木材及び木製単板シートからなる群から選択される。一実施形態では、木製パレットは合板から作製される。別の実施形態では、木製パレットは燃料用木材から作製される。
ポリウレア及びポリウレタンの混合物は、木製パレットに曲げ強度及び伸び強度を付与するように構成されている。ポリウレア、ポリウレタン及びシリコンエラストマーの混合物は、木製パレットに曲げ強度及び伸び強度と共に帯電防止特性を付与するように構成されている。
ポリウレア及びポリウレタンを含むポリマー組成物では、イソシアネートと、ポリオール及びエナミンのブレンドとの間で反応が生じる。エナミン含有は感湿性を低減する上で役に立ち、ポリオール含有は曲げ強度を与える。ポリウレタン及びポリウレアの混合物は、木製パレットに伸び強度を付与する。
シリコンエラストマーは、帯電防止性化合物である。ポリウレア、ポリウレタン及びシリコンエラストマーを含むポリマー組成物は、木製パレットに高い曲げ強度及び伸び強度と共に帯電防止特性を提供する。
本明細書で使用される場合、「ポリウレア」という用語は、イソシアネート成分及び合成樹脂ブレンド成分の段階成長重合を通じた反応生成物に由来するエラストマーの1種を指す。
【0011】
本明細書で使用される場合、「ポリウレタン」という用語は、カルバメート(ウレタン)結合により繋がった有機単位から構成されるポリマーを指す。
本明細書で使用される場合、「シリコンエラストマー」という用語は、シリコンを炭素、水素及び酸素などの他の分子と共に含有するシリコーン(ポリマー)から構成される耐久性かつ高度に耐性のエラストマー(ゴム様の素材)を指す。シリコンエラストマーの構造は、常にシロキサン主鎖(シリコン-酸素鎖)及びシリコンに結合した有機部分を含む。
本発明の別の実施形態では、ポリマー組成物を木製パレット上にコーティングするための方法が提供される。方法は主に、木製パレットをコーティングするためのマトリックスコーティングプロセスに焦点を当てる。
図1は、本発明のある実施形態に従って、ポリマー組成物を木製パレット上にコーティングするための方法に関与するステップを表すフローチャートである。
【0012】
ポリマー組成物を木製パレット上にコーティングするための方法は、ステップ102で、ポリウレア、ポリウレタン、シリコンエラストマー、及びそれらの組合せのうち少なくとも1種の所定の比率での混合物を、70℃~85℃で加熱して、溶融状態のポリマー組成物を得ることから開始する。混合物は、ポリウレア及びポリウレタンを60:40~80:20の所定の比率で、又はポリウレア、ポリウレタン、及びシリコンエラストマーを60:37:03~78:19:03の所定の比率で、のいずれか一方を含む。
木製パレットは、合板、燃料用木材及び木製単板シートからなる群から選択される。混合物は、ポリウレア及びポリウレタンを65:35の所定の比率で含む。混合物は、ポリウレア、ポリウレタン及びシリコンエラストマーを65:32:03の所定の比率で含む。そのような実施形態では、ポリウレア、ポリウレタン及びシリコンエラストマーが熱硬化性であるため、均一な液体稠度のポリマー組成物を得る目的で、混合物を70℃~85℃の範囲の温度に加熱して混合物を溶融させる。例示的な実施形態では、ポリマー組成物を木製パレット上にコーティングするための望ましい混合物の粘度を得るため、混合物の加熱は80℃で行われる。
ある実施形態では、ステップ104で、溶融ポリマー組成物により木製パレットをコーティングして、木製パレットの表面上に所定の厚みの層を形成する。溶融ポリマー組成物のコーティングは、マトリックスコーティングプロセスを使用して行われる。木製パレットの表面上の溶融ポリマー組成物のコーティングは、手動噴霧法又はロボットアームの一方によって制御されるガンを使用して行われる。木製パレットの表面上の溶融ポリマー組成物の所定の厚みの層のコーティングは、噴霧コーティングチャンバーで行われる。木製パレットの表面上にコーティングされたポリマー組成物の層の所定の厚みは、0.5mm~1mmの範囲である。
【0013】
一実施形態では、ポリマー組成物の層の所定の厚みは、木製パレットの表面にわたって均一である。そのような実施形態では、ポリマー組成物の層は、均一に木製パレットの表面上にコーティングされる。
一実施形態では、ポリマー組成物の層の所定の厚みは、木製パレットの表面にわたって可変である。そのような実施形態では、ポリマー組成物の層は、要求に応じて木製パレットの表面上にコーティングされる。
一実施形態では、木製パレットの表面上へ溶融ポリマー組成物を噴霧することは、溶融ポリマー組成物の温度を70℃~85℃に維持することを含み得る。そのような実施形態では、適正なコーティングのために溶融ポリマー組成物の粘度を一定に維持する目的で、溶融ポリマー組成物の温度は70℃~85℃に維持される。
そのようなある実施形態では、ステップ106で、木製パレットの表面上のコーティングを室温で乾燥させる。コーティングされた木製パレットを、室温で約30分の間、自然乾燥させる。ポリウレア及びポリウレタンの混合物によって形成された所定の厚みの層は、木製パレットに曲げ強度及び伸び強度を付与するように構成されている。ポリウレア、ポリウレタン及びシリコンエラストマーの混合物によって形成された所定の厚みの層は、木製パレットに曲げ強度及び伸び強度と共に帯電防止特性を付与するように構成されている。
【0014】
マトリックスコーティングプロセスは、少なくとも4つの木製パレットのマトリックスを形成すること、及び特定の方式で噴霧コーティングすることを含む。本明細書で使用される場合、「木製パレット」という用語は、所定の寸法及び形状を含む木材の構造物を指す。先ず、土台部分の平らな表面上に噴霧コーティングを行い、約30分間乾燥させ、さらに、平らな表面の反対側を、木製パレットの同じマトリックス形態で噴霧コーティングする。このような実施形態では、固定具を作製し、少なくとも4つの木製パレットを押さえるように構成してもよい。さらに、固定具を、コンベヤーを介して噴霧コーティングチャンバーへと移してもよい。噴霧コーティングチャンバーは、少なくとも4つの木製パレットのコーティングに使用することができる、側面の入口及び出口部分を備えることができる。一実施形態では、チャンバーは、4つの木製パレットマトリックスを収容するように設計してもよい。コーティングした木製パレットは、続いて乾燥される。この目的のために、少なくとも4つの木製パレットのそれぞれの木製パレットベースの側面の最大面積にコーティングが噴霧されるように、固定具は少なくとも4つの木製パレットを縁部及び中心を外れて押さえるように設計される。このプロセスには、半分コーティングされた少なくとも4つの木製パレットを押さえる固定具を、乾燥のために噴霧コーティングチャンバーの外へコンベヤーによって移動させることが含まれる。
【0015】
半分コーティングされた少なくとも4つの木製パレットが乾燥のために保持されている間、次の木製パレットの1組を噴霧のために噴霧コーティングチャンバーへと持ち込むことができる。同様にして、このサイクルは木製パレット1つにつき平均1.5分で約30分の間、繰り返される。さらに、先にコーティングされた少なくとも4つの木製パレットが、パレットの残りの側面のコーティングされた表面をさらなるコーティングに曝露するよう、固定具上に配置されてもよい。これにより、側面からの重なり合いが与えられ、より強い接着が得られる。再び、木製パレットのもう一方の側面上で噴霧プロセスが繰り返され、次いで完全にコーティングされた木製パレットの1組が自然乾燥に移される。
本発明のさらに別の実施形態では、木製パレット200が提供される。
図2は、本発明のある実施形態に従って、ポリマー組成物によりコーティングされた木製パレット200を表す。
【0016】
木製パレット200は、木製パレット200の表面上にコーティングされたポリマー組成物の所定の厚みの層202を含む。ポリマー組成物は、ポリウレア、ポリウレタン、シリコンエラストマー、及びそれらの組合せのうち少なくとも1種の所定の比率での混合物を含む。混合物は、ポリウレア及びポリウレタンを60:40~80:20の所定の比率で、又はポリウレア、ポリウレタン、及びシリコンエラストマーを60:37:03~78:19:03の所定の比率で、のいずれか一方を含む。木製パレット200は、合板、燃料用木材及び木製単板シートからなる群から選択される。
混合物は、ポリウレア、ポリウレタン及びシリコンエラストマーを、65:32:03の所定の比率で含む。ポリウレア及びポリウレタンの混合物によって形成された所定の厚みの層202は、木製パレット200に曲げ強度及び伸び強度を付与するように構成されている。ポリウレア、ポリウレタン及びシリコンエラストマーの混合物によって形成された所定の厚みの層202は、木製パレット200に曲げ強度及び伸び強度と共に帯電防止特性を付与するように構成されている。木製パレット200の表面上にコーティングされたポリマー組成物の層202の所定の厚みは、0.5mm~1mmの範囲である。
【0017】
本発明は、木製パレット200のポリマーコーティングを可能にする。本発明によって提供されるポリマー組成物は、木製パレット200に、曲げ強度と共に、高い耐衝撃性及び耐摩耗性、伸び強度、並びに帯電防止特性などの望ましい特性を付与する。ポリマー組成物において脂肪族化合物を使用することで、木製パレット上の錆じみを防止することが可能となる。本発明は、また、ポリマー組成物を木製パレット200上へコーティングするための方法も提供する。方法は、木製パレット200上へポリマー組成物をコーティングするために、木製パレット200の側面上でポリマー組成物のコーティングが重なり合うため、はるかにより強い接着をもたらし、コーティング素材、すなわちポリマー組成物の損耗量を削減する、マトリックスコーティングプロセスを含む。本発明は、また、ポリマー組成物によりコーティングされた木製パレット200も提供する。ポリマー組成物によりコーティングされた木製パレット200は、高い耐衝撃性、耐摩耗性、伸び強度、曲げ強度、及び帯電防止特性などの特性を有する。
【0018】
本発明を記載するために特定の言葉が使用されているが、これにより生じるいかなる制限も意図されない。当業者には明らかであろう通り、本明細書で教示される発明的概念を実行する目的で、方法に対して様々な作業上の修正がなされ得る。
図及び上記の明細書において実施形態の例を示す。当業者であれば、1つ又は複数の記載された要素が単一の機能的要素に良好に組み合わされ得ることを理解するであろう。代替的に、ある特定の要素は複数の機能的要素に分割することができる。一実施形態からの要素は、別の実施形態に加えることができる。例えば、本明細書に記載される方法の順番は、変更することができ、本明細書に記載される方式には限定されない。さらに、あらゆるフロー図の動作は、示された順番で実行する必要はなく、全ての動作が必ずしも実施される必要もない。また、他の動作に依存しない動作は、他の動作と並行して実施することができる。実施形態の範囲は、これらの具体的な例に限定されることは決してない。
図1
図2
【国際調査報告】