(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】板状の多孔性シリカを含む燃料電池用膜電極アセンブリ及びそれを含む燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/86 20060101AFI20241217BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20241217BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527270
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 KR2022017755
(87)【国際公開番号】W WO2023096230
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0165956
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソン カヨン
(72)【発明者】
【氏名】コン ナコン
(72)【発明者】
【氏名】イ ユンス
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンス
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュソン
(72)【発明者】
【氏名】ナム キョンシク
(72)【発明者】
【氏名】パク チャンミ
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018AS02
5H018AS03
5H018BB08
5H018BB16
5H018DD06
5H018EE03
5H018EE05
5H018EE07
5H018EE08
5H018EE10
5H018EE11
5H018EE17
5H018EE18
5H018EE19
5H018HH03
5H018HH04
5H018HH05
5H126BB06
5H126FF05
5H126GG18
(57)【要約】
本発明は、燃料電池用膜電極アセンブリ及びそれを含む燃料電池に関し、より具体的に、触媒層に板状の多孔性シリカを含めて低加湿環境での燃料電池性能が向上した燃料電池用膜電極アセンブリ及びそれを含む燃料電池に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の多孔性シリカを含む第1触媒層;及び
高分子電解質膜;を含む燃料電池用膜電極アセンブリ。
【請求項2】
前記板状の多孔性シリカは、前記板状の形態に垂直な形態のメソ細孔を含む、請求項1に記載の燃料電池用膜電極アセンブリ。
【請求項3】
前記板状の多孔性シリカは、直径2ないし40nmの細孔を有する、請求項1に記載の燃料電池用膜電極アセンブリ。
【請求項4】
前記板状の多孔性シリカは、サイズが50ないし2,000nmである、請求項1に記載の燃料電池用膜電極アセンブリ。
【請求項5】
前記板状の多孔性シリカは、厚さが30ないし300nmである、請求項1に記載の燃料電池用膜電極アセンブリ。
【請求項6】
前記第1触媒層において、前記板状の多孔性シリカは、第1触媒層全体重量に対して1ないし20重量%で含まれた、請求項1に記載の燃料電池用膜電極アセンブリ。
【請求項7】
前記第1触媒層のイオノマー含量は、第1触媒層全体重量に対して34ないし40重量%である、請求項1に記載の燃料電池用膜電極アセンブリ。
【請求項8】
前記第1触媒層の厚さは0.2ないし5μmである、請求項1に記載の燃料電池用膜電極アセンブリ。
【請求項9】
前記第1触媒層は、板状の多孔性シリカを含まないかより少ない量で含む第2触媒層と前記高分子電解質膜の間に位置する、請求項1に記載の燃料電池用膜電極アセンブリ。
【請求項10】
前記第1触媒層のイオノマー含量が前記第2触媒層のイオノマー含量より多い、請求項9に記載の燃料電池用膜電極アセンブリ。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項の燃料電池用膜電極アセンブリを含む燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低加湿環境での性能が向上した燃料電池用膜電極アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、メタノール、エタノール、天然ガスのような炭化水素系列の燃料物質内に含まれている水素と酸素の酸化/還元反応のような化学反応エネルギーを直接電気エネルギーに変換させる発電システムを備えた電池であり、高いエネルギー効率性と汚染物排出が少ない環境にやさしい特徴により化石エネルギーに代わる次世代クリーンエネルギー源として脚光を浴びている。
【0003】
このような燃料電池は、単位電池の積層によるスタック構成により多様な範囲の出力を出せる長所を有し、小型リチウム電池に比べて4ないし10倍のエネルギー密度を示すため、小型及び移動用携帯電源として注目されている。
【0004】
燃料電池から電気を実質的に発生させるスタックは、膜電極アセンブリ(Membrane Electrode Assembly、MEA)と分離板(Separator)(または、バイポーラプレート(Bipolar Plate)ともいう)からなる単位セルが数個から数十個が積層された構造を有し、膜電極アセンブリは一般的に電解質膜を挟んでその両側に酸化極(アノードまたは燃料極)と還元極(カソードまたは空気極)がそれぞれ形成された構造をなす。
【0005】
燃料電池は、電解質の状態及び種類に応じてアルカリ電解質燃料電池、高分子電解質燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell、PEMFC)などに区分できるが、そのうち高分子電解質燃料電池は100℃未満の低い作動温度、速い始動と応答特性及び優れた耐久性などの長所により携帯用、車両用及び家庭用電源装置として脚光を浴びている。
【0006】
高分子電解質燃料電池の代表的な例としては、水素ガスを燃料として使用する水素イオン交換膜燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell、PEMFC)、液状のメタノールを燃料として使用する直接メタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell、DMFC)などが挙げられる。
【0007】
高分子電解質燃料電池において起こる反応を要約すると、まず、水素ガスのような燃料が酸化極に供給されると、酸化極では水素の酸化反応により水素イオン(H+)と電子(e-)が生成される。生成された水素イオンは高分子電解質膜を介して還元極に伝達され、生成された電子は外部回路を介して還元極に伝達される。還元極では酸素が供給され、酸素が水素イオン及び電子と結合して酸素の還元反応により水が生成される。
【0008】
一方、燃料電池をFCV(Fuel Cell Vehicle)に適用するためには燃料電池システムの小型化が必須であり、そのためには単位面積当たり優れた出力密度を示すことができる膜電極アセンブリ(Membrane Electrode Assembly、MEA)の開発が要求され、特に、FCVの実際的な運行のためにはMEA触媒層の耐久性向上が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ナノ構造の多孔性シリカを電極層の一部に導入することにより、物質伝達効率及び低加湿環境での性能及び耐久性が改善された膜電極アセンブリを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、前記膜電極アセンブリ構造が適用されて低加湿環境での性能及び耐久性が改善された燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の一実施例による燃料電池用膜電極アセンブリは、板状の多孔性シリカを含む第1触媒層及び高分子電解質膜を含む。
【0012】
前記板状の多孔性シリカは、前記板状の形態に垂直な形態のメソ細孔を含んでもよい。
【0013】
前記板状の多孔性シリカは、2ないし40nm直径の細孔を有してもよい。
【0014】
前記板状の多孔性シリカは、サイズが50ないし2000nmであってもよく、厚さが30ないし300nmであってもよい。
【0015】
前記第1触媒層において、前記板状の多孔性シリカは、第1触媒層全体重量に対して1ないし20重量%で含まれてもよい。
【0016】
前記第1触媒層のイオノマー含量は、第1触媒層全体重量に対して34ないし40重量%であってもよい。
【0017】
前記第1触媒層の厚さは0.2ないし5μmであってもよい。
【0018】
前記第1触媒層は、板状の多孔性シリカを含まないかより少ない量で含む第2触媒層と前記高分子電解質膜の間に位置してもよい。
【0019】
前記第1触媒層のイオノマー含量が前記第2触媒層のイオノマー含量より多くてもよい。
【0020】
本発明の他の実施例による燃料電池は、前記燃料電池用膜電極アセンブリを含むものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の膜電極アセンブリは、板状の多孔性シリカの細孔を介して、電解質膜から排出される水分を触媒層が効果的に含有できるため、低加湿環境で電解質膜が乾燥することにより発生するイオン伝導性減少問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】板状の多孔性シリカの一形状を示した図である。
【0023】
【
図2】板状の多孔性シリカが第1触媒層に含まれた構造を概略的に示した図である。
【0024】
【
図3】前記燃料電池の全体的な構成を示した模式図である。
【0025】
【
図4】本発明の一実施例において使用された板状の多孔性シリカを透過電子顕微鏡(TEM)で撮った写真である。
【0026】
【
図5】本発明の一実施例により製造された第1電極層と第2電極層の表面の光学顕微鏡写真である。
【0027】
【
図6】本発明の実施例及び比較例により製造された膜電極アセンブリ(MEA)の低加湿性能評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように図面を参照して本発明の実施例について詳しく説明する。しかしながら、本発明は様々な形態で実現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0029】
本発明の一側面による燃料電池膜電極アセンブリは、触媒層に板状の多孔性シリカを含むことを特徴とする。高分子電解質膜を基準に一面にのみ板状の多孔性シリカを含む触媒層が形成されてもよいが、両面とも板状の多孔性シリカを含む触媒層が形成されてもよい。
【0030】
図1は、板状の多孔性シリカの一形状を示した図である。
図1を参照すると、板状の多孔性シリカを含む触媒層は電解質膜と接するように位置してシリカの細孔を介して水分を効果的に含有できるため、高分子電解質膜の水分蒸発を抑制することができ、低加湿環境で高分子電解質膜と触媒層が適切な湿度を維持してイオン伝導性が優秀に維持されるのに役立つ。
【0031】
板状の多孔性シリカのメソ細孔は、板状の形態に垂直な形態(厚さ方向と同じ方向)を有してもよい。板状の形態に垂直な細孔形態を有する場合、電解質膜に垂直な気孔配置を有するため物質伝達が容易になり、性能がさらに向上する。板状の形態に水平な形態を有する場合、既存のメソ多孔性シリカと同一形態で電極形成時に電解質膜に平行な細孔配置を有するため、物質伝達が阻害されて性能が減少する。
【0032】
板状の多孔性シリカはメソ多孔性シリカであってもよく、具体的に、2ないし40nm、4ないし30nm、6ないし20nm直径の細孔を有する板状の多孔性シリカであってもよい。シリカの細孔直径が2nmより小さい場合、過度に小さい細孔により水分が浸透しにくくなり、細孔を介するイオン伝達が制限され、多孔性シリカによる水分含有特性がむしろ低下する可能性があり、シリカの細孔直径が40nmより大きい場合、細孔内にに浸透した水分が細孔内に長く留まらずに蒸発しやすくなるため、多孔性シリカによる低加湿環境での性能向上が微々たる可能性がある。
【0033】
板状の多孔性シリカのサイズは、好ましく、50ないし2000nm、100ないし1500nm、150ないし1000nm、200ないし800nmであってもよい。ここで、多孔性シリカのサイズは板状の広さの最大長さを意味する。多孔性シリカのサイズが前記範囲より大きい場合、触媒層において化学反応に参加しないシリカにより触媒層の触媒とイオノマーが均等に分散されて配置されず、含量が減るため、触媒層の化学反応効率が低下する問題が発生する。また、多孔性シリカのサイズが前記範囲より小さい場合、細孔が電解質膜に垂直な方向に配列が容易でないため、物質伝達が阻害される問題が発生する。
【0034】
板状の多孔性シリカの厚さは、好ましく、30ないし300nm、40ないし250nm、50ないし200nmであってもよく、板状の多孔性シリカの厚さが前記範囲に比べて薄い場合、多孔性シリカ構造が弱い物理的外部衝撃によっても簡単に損傷するため、分散中に損傷して無定形シリカを入れたことと差がない可能性があり、板状の多孔性シリカの厚さが前記範囲に比べて厚い場合、細孔に水分が浸透できる深さに比べて細孔の深さが不要に深くなり、多孔性シリカが触媒層内において体積を不必要に多く占めることにより、触媒層の効率のみを低下させる可能性がある。
【0035】
板状の多孔性シリカは、加水分解及び縮合反応と焼成処理による通常の多孔性シリカ製造方法を利用して製造できる。ただし、板状の形状になるようにするための鋳型、例えば、水性ブロック及び親水性ブロックからなるブロック共重合体を使用し、前記鋳型をシリカ前駆体及び酸性触媒と共に加水分解反応することができる。前記ブロック共重合体としては、例えば、Pluronic P123、Pluronic F127などを使用することができる。前記シリカ前駆体としては、テトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、テトラプロピルオルトシリケート、テトラブチルオルトシリケート又はこれらの混合物を使用することができ、これに限定されるものではない。前記酸性触媒としては、HCl、酢酸、硝酸、硫酸などを使用することができる。前記加水分解、縮合、及び焼成条件は、通常の条件から当業者が反応条件や状態などを考慮して適切に選択することができる。
【0036】
図2は、本発明の燃料電池用膜電極アセンブリ100の一実施例構造を簡単に示した図である。
図2を参照すると、板状の多孔性シリカ1の細孔は、シリカ1を含む第1触媒層11内において電解質膜20の平面に垂直な方向に細孔が形成されることが好ましく、板状の多孔性シリカ1の細孔が電解質膜20の平面に垂直になるように多孔性シリカ1が配置された場合、細孔が電解質膜20から排出された水分を効果的に含有し、物質伝達が容易になるため、電解質膜20の湿潤環境をより効果的に維持することができる。
【0037】
板状の多孔性シリカは低加湿環境で膜電極アセンブリ内の湿潤環境を維持するのに役立てるが、触媒層の酸化還元反応に直接的に関与したり、水素イオン伝導に直接的に関与したりすることではないので、触媒層内において適切な比率で含まれることが重要である。具体的には、第1触媒層において板状の多孔性シリカは、第1触媒層の全体重量に対して1ないし20重量%で含まれることが好ましく、第1触媒層内において板状の多孔性シリカが1重量%未満で含まれた場合、板状の多孔性シリカによる湿潤環境維持効果が微々たる可能性があり、第1触媒層内において板状の多孔性シリカが20重量%より多く含まれた場合、触媒層の触媒による酸化還元反応が十分に起こらない起きられないため、燃料電池効率を低下させる可能性がある。
【0038】
板状の多孔性シリカを含む第1触媒層はイオノマーを含み、一般的な多孔性シリカを含まない触媒層の場合よりイオノマーが多く含まれることが水素イオンの円滑な伝導のために好ましい。具体的に、第1触媒層のイオノマー含量は、第1触媒層の全体重量に対して34ないし40重量%で含まれることが好ましい。第1触媒層内のイオノマー含量が前記範囲に比べて高い場合、白金触媒活性サイトへの燃料供給を阻害し、第1触媒層内のイオノマー含量が低すぎると触媒層のイオン伝達能力が阻害される恐れがある。
【0039】
イオノマーはフッ素系イオノマー及び炭化水素系イオノマーからなる群から選択される1種以上のイオノマーを含んでもよい。前記炭化水素系イオノマーは、公知の炭化水素系ポリマーをいずれも使用することができ、例えば、sulfonated derivatives of poly(arylene ether)s(SPAEs)、poly(arylene sulfide)s(SPASs)、polyimides(SPIs)、polybenzimidazoles(PBIs)、polyphenylenes(PPs)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)であってもよい。また、前記フッ素系高分子は、公知のフッ素系高分子をいずれも使用することができ、例えば、過フッ素系スルホン酸、ポリビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレンまたはこれらの共重合体の1つであってもよい。
【0040】
しかしながら、板状の多孔性シリカと共に触媒層に含まれたイオノマーは触媒層の効果的なイオン伝導性のために当量重量(EW)が600ないし1200であるイオノマーを含むことが好ましい。
【0041】
板状の多孔性シリカを含む第1触媒層の厚さは、具体的に0.2ないし5μmであることが好ましい。第1触媒層の厚さが0.2μmより薄い場合、板状の多孔性シリカが触媒層内部に十分に含まれないほど触媒層が薄い可能性があり、板状の多孔性シリカが触媒層内部に含まれても、触媒層の化学反応が十分に起きない恐れがある。逆に、第1触媒層の厚さが5μmより厚い場合、板状の多孔性シリカが含まれることにより湿潤環境が造成されて向上する燃料電池の効率より、多孔性シリカが占める体積により触媒の化学反応が起きないことによる効率低下がさらに大きくなる問題が発生する恐れがある。
【0042】
従って、触媒層の効率をさらに向上させるために、板状の多孔性シリカを含む第1触媒層は高分子電解質膜と接する部分にのみ形成されるようにし、多孔性シリカが含まれないかより少ない量で含む触媒層が追加的に積層された構造を適用することができる。
【0043】
第1触媒層は、第2触媒層と高分子電解質膜の間に位置してもよい。ここで、前記第2触媒層は板状の多孔性シリカを含まないかより少ない量で含むものであり、前記板状の多孔性シリカを含まないかほとんど含まないことが電池性能の側面からより好ましい。もし、第2触媒層が板状の多孔性シリカを含む場合、その含量は第1触媒層より少なくなければならず、第1触媒層に比べて1重量%以上、例えば、1ないし20重量%、具体的に5重量%以上、さらに具体的に10重量%以上少なくてもよい。
図2は、本発明の一実施例として、高分子電解質膜20の一面に第1触媒層11が形成され、第1触媒層11上に板状の多孔性シリカが含まれていないかより少ない量で含む第2触媒層12が積層された多層構造の触媒層10が形成された膜電極アセンブリ100を簡略に示したものである。
図2は、第1触媒層11が含まれた触媒層10が一面に形成されたものだけを開示しているが、高分子電解質膜の両面ともに複数の触媒層が形成されてもよく、第1触媒層11が含まれた触媒層10がカソード極であってもよく、アノード極であってもよく、特に限定されるものではない。
【0044】
板状の多孔性シリカにより触媒層内において水素イオン伝導経路がさらに長くなるが、シリカの多孔性構造によりシリカの細孔内にイオノマーが貫通する場合、水素イオン伝導がさらに円滑になることができる。従って、触媒層と電解質膜間の接合力増大と共にシリカ細孔内にイオノマーが容易に位置できるように、触媒層10において第1触媒層11のイオノマー含量が第2触媒層12のイオノマー含量より多いことが好ましいが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0045】
触媒層は触媒を含み、触媒としては電池の反応に参加して、通常燃料電池の触媒として使用可能なものはいずれでも使用できる。具体的には、好ましくは白金系金属を使用することができる。
【0046】
白金系金属は、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、白金-M合金(前記Mはパラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ガリウム(Ga)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ランタン(La)及びロジウム(Rh)からなる群から選択されるいずれか1つ以上)、非白金合金及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つを含んでもよく、より好ましくは、前記白金系触媒金属群から選択された2種以上の金属を組み合わせたものを使用してもよいが、これに限定されるものではなく、本技術分野で使用可能な白金系触媒金属であれば制限なく使用できる。
【0047】
具体的に、白金合金は、Pt-Pd、Pt-Sn、Pt-Mo、Pt-Cr、Pt-W、Pt-Ru、Pt-Ru-W、Pt-Ru-Mo、Pt-Ru-Rh-Ni、Pt-Ru-Sn-W、PT-Co、Pt-Co-Ni、Pt-Co-Fe、Pt-Co-Ir、Pt-Co-S、Pt-Co-P、Pt-Fe、 Pt-Fe-Ir、Pt-Fe-S、Pt-Fe-P、Pt-Au-Co、Pt-Au-Fe、Pt-Au-Ni、Pt-Ni、Pt-Ni-Ir、Pt-Cr、Pt-Cr-Ir及びこれらの組み合わせからなる群から選択される単独または2種以上を混合して使用してもよい。
【0048】
また、非白金合金は、Ir-Fe、Ir-Ru、Ir-Os、Co-Fe、Co-Ru、Co-Os、Rh-Fe、Rh-Ru、Rh-Os、Ir-Ru-Fe、Ir-Ru-Os、Rh-Ru-Fe、Rh-Ru-Os及びこれらの組み合わせからなる群から選択される単独または2種以上を混合して使用できる。
【0049】
このような触媒は触媒自体(black)として使用することもでき、担体に担持させて使用することもできる。
【0050】
担体は、炭素系担体、ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、セリアなどの多孔性無機酸化物、ゼオライトなどから選択できる。前記炭素系担体は、黒鉛、スーパーピー(super P)、炭素繊維(carbon fiber)、炭素シート(carbon sheet)、カーボンブラック(carbon black)、ケッチェンブラック(Ketjen Black)、デンカブラック(Denka black)、アセチレンブラック(acetylene black)、カーボンナノチューブ(carbon nanou tube、CNT)、炭素球体(carbon sphere)、炭素リボン(carbon ribbon)、フラーレン(fullerene)、活性炭素、カーボンナノファイバ、カーボンナノワイヤ、カーボンナノボール、カーボンナノホーン、カーボンナノケージ、カーボンナノリング、規則性ナノ多孔性炭素(ordered nano-/meso-porous carbon)、カーボンエアロゲル、メソポーラスカーボン(mesoporous carbon)、グラフェン、安定化カーボン、活性化カーボン、及びこれらの1つ以上の組み合わせから選択できるが、これに限定されるものではなく、本技術分野で使用可能な担体は制限なく使用できる。
【0051】
触媒粒子は担体の表面の上に位置してもよく、担体の内部気孔(pore)を満たしながら担体内部に浸透してもよい。
【0052】
担体に担持された貴金属を触媒として使用する場合には商用化された市販のものを使用してもよく、また、担体に貴金属を担持させて製造して使用してもよい。担体に貴金属を担持させる工程は当該分野において広く知られている内容であるので、本明細書において詳しい説明は省略しても、当該分野に従事する人々に簡単に理解できる内容である。
【0053】
触媒粒子は、触媒層10、30の全体重量対比20重量%ないし80重量%で含有されてもよく、20重量%未満で含有される場合は活性低下の問題があり、80重量%を超過する場合は触媒粒子の凝集により活性面積が減少して触媒活性が逆に低下する問題がある。
【0054】
また、触媒層10、30は、接着力向上及び水素イオンの伝達のためにバインダを含んでもよい。バインダとしてはイオン伝導性を有するイオノマーを使用することが好ましく、イオノマーに関する説明は前述の通りであるため、反復的な説明は省略する。
【0055】
ただし、イオノマーは、単一物または混合物の形態で使用可能であり、また、選択的に高分子電解質膜50との接着力をより向上させる目的で非導電性化合物と共に使用されることもできる。その使用量は、使用目的に適合するように調節して使用することが好ましい。
【0056】
非導電性化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン/テトラフルオロエチレン(ethylene/tetrafluoroethylene(ETFE))、エチレンクロロトリフルオロ-エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンのコポリマー(pVdF-HFP)、ドデシルベンゼンスルホン酸及びソルビトール(sorbitol)からなる群から選択された1種以上のものが使用されてもよい。
【0057】
バインダは、触媒層10、30全体重量に対して20重量%ないし80重量%で含まれてもよい。バインダの含量が20重量%未満である場合は生成されたイオンがうまく伝達されない可能性があり、80重量%を超過する場合は気孔が不足して水素または酸素(空気)の供給が難しく、反応できる活性面積が減少する可能性がある。
【0058】
電極基材は、水素または酸素の供給が円滑に行われるように多孔性の導電性基材を使用することができる。その代表的な例として、炭素ペーパー(carbon paper)、炭素布(carbon cloth)、炭素フェルト(carbon felt)または金属布(繊維状態の金属布で構成された多孔性のフィルムまたは高分子繊維で形成された布の表面に金属フィルムが形成されたものをいう)が使用できるが、これに限定されるものではない。また、 電極基材40、40’はフッ素系樹脂で撥水処理したものを使用することが燃料電池の駆動時に発生する水による反応物拡散効率の低下を防止できるため好ましい。フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリパーフルオロスルホニルフルオライドアルコキシビニルエーテル、フルオリネイテッドエチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene)、ポリクロロトリフルオロエチレンまたはこれらのコポリマーを使用することができる。
【0059】
また、電極基材での反応物拡散効果を増進させるための微細気孔層(microporous layer)をさらに含んでもよい。この微細気孔層は、一般的に粒径の小さい導電性粉末、例えば、炭素粉末、カーボンブラック、アセチレンブラック、活性炭素、カーボンファイバ、フラーレン(fullerene)、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤ、カーボンナノホーン(carbon nano-horn)またはカーボンナノリング(carbon nano ring)を含んでもよい。
【0060】
微細気孔層は、導電性粉末、バインダー樹脂及び溶媒を含む組成物を電極基材にコーティングして製造される。バインダー樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオロイド、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリパーフルオロスルホニルフルオロイド、アルコキシビニルエーテル、ポリビニルアルコール、セルロースアセテートまたはこれらのコポリマーなどが好ましく使用できる。溶媒としてはエタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール、水、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフランなどが好ましく使用できる。
【0061】
コーティング工程は、組成物の粘性に応じてスクリーンプリンティング法、スプレーコーティング法またはドクターブレードを利用したコーティング法などが使用されてもよく、これに限定されるものではない。
【0062】
本発明の他の一実施例による燃料電池は、本発明の一実施例による膜電極アセンブリを含んでもよい。
【0063】
図3は、前記燃料電池の全体的な構成を示した模式図である。
【0064】
図3を参照すると、燃料電池200は、燃料と水が混合された混合燃料を供給する燃料供給部210、混合燃料を改質して水素ガスを含む改質ガスを発生させる改質部220、改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスが酸化剤と電気化学的反応を起こして電気エネルギーを発生させるスタック230、並びに酸化剤を改質部220及びスタック230に供給する酸化剤供給部240を含む。
【0065】
スタック230は、改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスと酸化剤供給部240から供給される酸化剤の酸化/還元反応を誘導して電気エネルギーを発生させる複数の単位セルを備える。
【0066】
それぞれの単位セルは電気を発生させる単位のセルを意味し、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤中の酸素を酸化/還元させる膜電極アセンブリと、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤を膜電極アセンブリに供給するための分離板(またはバイポーラプレート(bipolar plate)ともいい、以下、「分離板」という。)を含む。分離板は膜電極アセンブリを中心に置き、その両側に配置される。このとき、スタックの最外側にそれぞれ位置する分離板を特にエンドプレートと称することもある。
【0067】
分離板のうちエンドプレートは、改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスを注入するためのパイプ状の第1供給管231と、酸素ガスを注入するためのパイプ状の第2供給管232とを備え、他の1つのエンドプレートは、複数の単位セルにおいて最終的に未反応して残った水素ガスを含む改質ガスを外部に排出するための第1排出管233と、前記単位セルにおいて最終的に未反応して残った酸化剤を外部に排出するための第2排出管234とを備える。
【0068】
前記燃料電池において、本発明の一実施例による膜電極アセンブリ100が使用されることを除いては電気発生部を構成するセパレータ、燃料供給部及び酸化剤供給部は通常の燃料電池において使用されるものであるため、本明細書において詳細な説明は省略する。
【0069】
以下、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳しく説明する。しかしながら、本発明は様々な異なる形態で実現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0070】
【0071】
[実施例1]
【0072】
ZrOCl2・8HOを0.32gとPluronic P123を2.0g、2.0のMHCl水溶液に溶かした後、TEOS(tetraethylorthosilicate)4.2gを添加して35℃で30分間加水分解を行った。また、前記混合溶液にTMB(trimethylbenzene)1.0gを添加して35℃で12時間加水分解及び縮合重合し、以後、90℃で5時間水熱処理した後、550℃で5時間焼成して板状のメソポリス多孔性シリカSBAを製造した。
【0073】
前記板状の多孔性シリカを5重量%含有する第1触媒層及びシリカを含有しない第2触媒層を使用してカソードを構成することを除いては、通常の製造方式に従って膜電極アセンブリを製造した。この時、触媒層の総厚さは15μmであり、第1触媒層の厚さは3μmであった。イオノマーはナフィオン(Nafion)を使用し、白金触媒を使用した。
【0074】
図5は、実施例1の第1電極層の形成後(a)と第1電極層上に第2電極層を形成した表面(b)の光学顕微鏡イメージである。
図1を参照すると、第1電極層の形成後(a)に板状の多孔性シリカのサイズが大きい場合、第1電極層表面が凹凸形態になる。凹凸形態の第1電極層表面において多孔性シリカを含む部分が高く、含まない部分が相対的に低く、このような凹凸形態は膜電極アセンブリの性能及び耐久向上に役立つ。
【0075】
【0076】
[実施例2]
【0077】
第2触媒層を使用していないことを除いては、実施例1と同じ方式で膜電極アセンブリを製造した。
【0078】
【0079】
[比較例1]
【0080】
第1触媒層に球形シリカ(50nm)を使用したことを除いては、実施例1と同じ方式で膜電極アセンブリを製造した。
【0081】
【0082】
[比較例2]
【0083】
Pluronic P123を2.0g、2.0MのHCl水溶液に溶かした後、TEOS(tetraethylorthosilicate)4.2gを添加して35℃で12時間加水分解及び縮合重合を行った後、550℃で5時間焼成して通常のメソポリスシリカ(板状ではない)を製造した。
【0084】
第1触媒層に前記製造した通常のメソフォラスシリカを使用したことを除いては、実施例1と同じ方式で膜電極アセンブリを製造した。
【0085】
【0086】
[比較例3]
【0087】
第2触媒層に板状のメソポーラスシリカを20重量%含ませたものを除いては、実施例1と同じ方式で膜電極アセンブリを製造した。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
[実験例:膜電極アセンブリの性能比較]
【0092】
前記表1の構成による膜電極アセンブリの低加湿環境(温度:80℃、湿度:RH30%)での性能を評価して
図6に示す。
図6を参照すると、低加湿環境において比較例1、2、3に比べて実施例1、2の電流密度による電圧が有意に高く測定され、特に、第2電極層を含む実施例1の場合、同じ電流密度でも優れた電圧を示し、膜電極アセンブリの優れた効果上昇があることが確認できる。
【0093】
【0094】
以上で本発明の好ましい実施例について詳しく説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、以下の請求範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【0095】
【0096】
【符号の説明】
【0097】
100:膜電極アセンブリ
【0098】
1:板状の多孔性シリカ
【0099】
10、30:電極
【0100】
11:第1触媒層 12:第2触媒層
【0101】
20:高分子電解質膜
【0102】
200:燃料電池 210:燃料供給部
【0103】
220:改質部 230:スタック
【0104】
231:第1供給管 232:第2供給管
【0105】
233:第1排出管 234:第2排出管
【0106】
240:酸化剤供給部
【国際調査報告】