(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料及びその調製方法並びに使用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/505 20100101AFI20241217BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241217BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20241217BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20241217BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20241217BHJP
【FI】
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/054
C01G53/00 A
H01M4/485
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527281
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 CN2022100733
(87)【国際公開番号】W WO2023216377
(87)【国際公開日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】202210524985.2
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518289715
【氏名又は名称】上海恩捷新材料科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI ENERGY NEW MATERIALS TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.155,Nanlu Road,Pudong New District,Shanghai 201399,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】庄 志
(72)【発明者】
【氏名】▲とう▼ 城
(72)【発明者】
【氏名】呉 恵康
(72)【発明者】
【氏名】袁 遠
(72)【発明者】
【氏名】鄭 田瑞
(72)【発明者】
【氏名】盧 鵬
(72)【発明者】
【氏名】崔 如玉
(72)【発明者】
【氏名】程 躍
【テーマコード(参考)】
4G048
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA04
4G048AB01
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ14
5H029AK03
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029DJ17
5H029HJ00
5H029HJ02
5H029HJ10
5H029HJ14
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA15
5H050CA08
5H050CA09
5H050FA19
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050HA02
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料であって、正極材料がO3相であり、空間群がR-3mであり、その化学式がNa
αM
aLi
bCu
cTi
dO
2+βであり、そのうち、MはNi、Co、Mn、Cr、V、Al、Fe、B、Si、Mg、Znのうちの少なくとも1種であり、且つ0.5≦α≦1、-0.1≦β≦0.1、0<a<0.95、0<b<0.25、0<c<0.3、0<d<0.6、a+b+c+d=1であり、且つ電気的中性を満たす、ことを特徴とする多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料を提案する。本発明はまた、上記多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料の調製方法及び使用を提案する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料であって、
前記正極材料がO3相であり、空間群がR-3mであり、その化学式がNa
αM
aLi
bCu
cTi
dO
2+βであり、そのうち、MはNi、Co、Mn、Cr、V、Al、Fe、B、Si、Mg、Znのうちの少なくとも1種であり、且つ0.5≦α≦1、-0.1≦β≦0.1、0<a<0.95、0<b<0.25、0<c<0.3、0<d<0.6、a+b+c+d=1であり、且つ電気的中性を満たす、ことを特徴とする多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料。
【請求項2】
Mは、Ni、Mn、Feのうちの1種、2種又は3種である、ことを特徴とする請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
0.05≦a+b+c<1である、ことを特徴とする請求項1に記載の正極材料。
【請求項4】
請求項1に記載の正極材料の調製方法であって、前記方法は、
化学式Na
αM
aLi
bCu
cTi
dO
2+βにおけるNa元素、M元素、Li元素、Cu元素、Ti元素の原子数比に応じてNa元素含有化合物、M元素含有化合物、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物及びTi元素含有化合物を適量秤取し、混合して混合物を得ることと、
前記混合物を焼成して前記多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料を得ることと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の正極材料の調製方法。
【請求項5】
前記M元素含有化合物、前記Li元素含有化合物、前記Cu元素含有化合物及び前記Ti元素含有化合物は、独立的に金属酸化物、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩及び金属塩化物のうちの少なくとも1種であり、且つ/又は
前記Na元素含有化合物は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムのうちの少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項6】
前記Na元素含有化合物の秤取量は、Na元素、M元素、Li元素、Cu元素、Ti元素の原子数比に応じて計算して得られた理論量の100%~110%であり、且つ/又は
前記Li元素含有化合物の秤取量は理論量の100%~110%である、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の調製方法。
【請求項7】
前記混合ステップは、前記Na元素含有化合物、前記M元素含有化合物、前記Li元素含有化合物、前記Cu元素含有化合物及び前記Ti元素含有化合物を混合してメカニカルミリングして前記混合物を得ることを含み、ここで、メカニカルミリングの速度は100rpm~1000rpmであり、時間は1時間~48時間である、ことを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項8】
焼成温度は700℃~1050℃であり、時間は6時間~36時間であり、昇温速度は1℃/分~20℃/分である、ことを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項9】
請求項1に記載の正極材料の調製方法であって、前記方法は、
化学式MCO
3又はM(OH)
2におけるM元素の原子数比に応じて適量のM元素含有硝酸塩又はM元素含有硫酸塩を秤取して水に溶解し、沈殿剤及び錯化剤でpHを調節して均一に沈殿させ、乾燥後に前駆体MCO
3又はM(OH)
2を得ることと、
化学式Na
αM
aLi
bCu
cTi
dO
2+βにおけるNa元素、M元素、Li元素、Cu元素、Ti元素の原子数比に応じてNa元素含有化合物、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物、Ti元素含有化合物、及び前記前駆体MCO
3又はM(OH)
2を適量秤取し、混合して混合物を得ることと、
前記混合物を焼成して前記多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料を得ることと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の正極材料の調製方法。
【請求項10】
前記Li元素含有化合物、前記Cu元素含有化合物及び前記Ti元素含有化合物は、独立的に金属酸化物、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩及び金属塩化物のうちの少なくとも1種であり、且つ/又は
前記Na元素含有化合物は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムのうちの少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項9に記載の調製方法。
【請求項11】
前記Na元素含有化合物の秤取量は、Na元素、M元素、Li元素、Cu元素、Ti元素の原子数比に応じて計算して得られた理論量の100%~110%であり、且つ/又は
前記Li元素含有化合物の秤取量は理論量の100%~110%である、ことを特徴とする請求項9又は10に記載の調製方法。
【請求項12】
前記前駆体取得ステップのpHは7.5~13であり、前記沈殿剤は水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウムであり、前記錯化剤はアンモニア水であり、前記乾燥温度は80℃~150℃であり、且つ/又は前記乾燥時間は6時間~48時間である、ことを特徴とする請求項9に記載の調製方法。
【請求項13】
前記混合ステップは、前記Na元素含有化合物、前記M元素含有化合物、前記Li元素含有化合物、前記Cu元素含有化合物及び前記Ti元素含有化合物を混合してメカニカルミリングして前記混合物を得ることを含み、ここで、メカニカルミリングの速度は100rpm~1000rpmであり、時間は1時間~48時間である、ことを特徴とする請求項9に記載の調製方法。
【請求項14】
焼成温度は700℃~1050℃であり、時間は6時間~36時間であり、昇温速度は1℃/分~20℃/分である、ことを特徴とする請求項9に記載の調製方法。
【請求項15】
ナトリウムイオン電池であって、前記電池は、請求項1に記載の正極材料を含む、ことを特徴とするナトリウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料技術の分野に関し、且つ特に多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料及びその調製方法並びに使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池は爆発的に成長しており、3C、エネルギー貯蔵及び動力分野の需要が日々増加している。しかしながら、リチウムイオン電池は、リチウム資源及びニッケル、コバルト鉱石の枯渇などの問題に直面しており、特にリチウム鉱石の価格が年々上昇しており、世界中で探査された全てのリチウム資源を全部採掘しても爆発的に成長するリチウムイオン電池の需要を満たすには不十分である。また、世界的にリチウム資源の分布が非常に不均一であり、中国のリチウム鉱石の80%は南米から輸入する必要があり、国家エネルギー安全に深刻なリスクをもたらす。そのため、資源の存在度が大きく、分布が広く、価格が低く、電気化学性能が高い他のアルカリ金属電池を探し始める。ナトリウムイオン電池は、上記利点を有することに加えて、リチウムイオン電池と完全に互換性があり、補助材料及びプロセスのほとんどは同じであるか又は類似している。
【0003】
ナトリウムイオン電池は、主に正極、負極、セパレータ電解液及び他の補助材料からなる。正極の性能は電池の性能を決定する。一般的なナトリウムイオン正極材料は通常、比容量が低く(135mAh/g未満)、構造安定性及び空気安定性が低いなどの欠点がある。より高い容量を得るための経路として、主に電圧区間の拡大、活性格子酸素の導入、電気化学的に活性な元素のドープ(主にNi含有量を増加させる)が挙げられる。前者の2つは、材料のサイクル寿命を犠牲にし、且つ構造安定性と高容量を兼ねることが困難な傾向があり、放電均圧の低下を引き起こす可能性があり、後者は、原料コストを大幅に増加させ、ナトリウムイオン正極材料の低コスト理念に反する。最も一般的に使用される解決案は、ドープによって構造を最適化することであるが、単一元素のドープ効果は常に限られており、構造及び性能などの点で向上することができない。即ち、長いサイクル寿命を得るために、元素のドープによって構造を安定化させることができるが、単一元素のドープは、高い容量及び長いサイクルの設計要件を兼ねることができない。
【0004】
一般的なナトリウムイオン正極は、主に酸化物、プルシアンブルー、ポリアニオンなどの3つのタイプがある。酸化物は、比容量が高く、コストが低く、電圧が高く、原料の供給源が広く、環境に優しいなどの利点を有するため、次第に学術界及び産業界の技術的ホットスポットとなっている。しかしながら、酸化物正極材料は、相変化によって構造安定性が低く、容量減衰が速く、空気安定性が低いなどの問題に直面することにより、大規模な商業化の進行が遅くなる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、多元素共ドープ方法によって、多元素の相乗作用を実現し、正極材料の構造及び電気化学性能を共に改善する目的を達成することである。
【0006】
そのため、本発明は、多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料であって、正極材料がO3相であり、空間群がR-3mであり、その化学式がNaαMaLibCucTidO2+βであり、そのうち、MはNi、Co、Mn、Cr、V、Al、Fe、B、Si、Mg、Znのうちの少なくとも1種であり、且つ0.5≦α≦1、-0.1≦β≦0.1、0<a<0.95、0<b<0.25、0<c<0.3、0<d<0.6、a+b+c+d=1であり、且つ電気的中性を満たす、ことを特徴とする多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料を提案する。
【0007】
好ましくは、Mは、Ni、Mn、Feのうちの1種、2種又は3種である。
【0008】
好ましくは、0.05≦a+b+c<1である。
【0009】
本発明はまた、上記多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料の調製方法であって、上記方法は、化学式NaαMaLibCucTidO2+βにおけるNa元素、M元素、Li元素、Cu元素、Ti元素の原子数比に応じてNa元素含有化合物、M元素含有化合物、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物及びTi元素含有化合物を適量秤取し、混合して混合物を得ることと、混合物を焼成して多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料を得ることと、を含むことを特徴とする上記多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料の調製方法を提案する。
【0010】
好ましくは、M元素含有化合物、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物及びTi元素含有化合物は、独立的に金属酸化物、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩及び金属塩化物のうちの少なくとも1種である。
【0011】
好ましくは、Na元素含有化合物は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムのうちの少なくとも1種である。
【0012】
好ましくは、Na元素含有化合物の秤取量は、Na元素、M元素、Li元素、Cu元素、Ti元素の原子数比に応じて計算して得られた理論量の100%~110%である。
【0013】
好ましくは、Na元素含有化合物の秤取量は理論量の102%~106%である。
【0014】
好ましくは、Li元素含有化合物の秤取量は理論量の100%~110%である。
【0015】
好ましくは、Li元素含有化合物の秤取量は理論量の102%~106%である。
【0016】
好ましくは、混合ステップは、Na元素含有化合物、M元素含有化合物、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物及びTi元素含有化合物を混合してメカニカルミリングして混合物を得ることを含む。
【0017】
好ましくは、メカニカルミリングの速度は100rpm~1000rpmであり、時間は1時間~48時間である。
【0018】
好ましくは、焼成温度は700℃~1050℃であり、時間は6時間~36時間であり、昇温速度は1℃/分~20℃/分である。
【0019】
本発明はまた、上記多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料の調製方法であって、上記方法は、化学式MCO3又はM(OH)2におけるM元素の原子数比に応じて適量のM元素含有硝酸塩又はM元素含有硫酸塩を秤取して水に溶解し、沈殿剤及び錯化剤でpHを調節して均一に沈殿させ、乾燥後に前駆体MCO3又はM(OH)2を得ることと、化学式NaαMaLibCucTidO2+βにおけるNa元素、M元素、Li元素、Cu元素、Ti元素の原子数比に応じてNa元素含有化合物、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物、Ti元素含有化合物及び前駆体MCO3又はM(OH)2を適量秤取し、混合して混合物を得ることと、混合物を焼成して多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料を得ることと、を含むことを特徴とする上記多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料の調製方法を提案する。
【0020】
好ましくは、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物及びTi元素含有化合物は、独立的に金属酸化物、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩及び金属塩化物のうちの少なくとも1種である。
【0021】
好ましくは、Na元素含有化合物は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムのうちの少なくとも1種である。
【0022】
好ましくは、Na元素含有化合物の秤取量は、Na元素、M元素、Li元素、Cu元素、Ti元素の原子数比に応じて計算して得られた理論量の100%~110%である。
【0023】
好ましくは、Na元素含有化合物の秤取量は理論量の102%~106%である。
【0024】
好ましくは、Li元素含有化合物の秤取量は理論量の100%~110%である。
【0025】
好ましくは、Li元素含有化合物の秤取量は理論量の102%~106%である。
【0026】
好ましくは、前駆体取得ステップのpHは7.5~13であり、沈殿剤は水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウムであり、錯化剤はアンモニア水であり、乾燥温度は80℃~150℃であり、乾燥時間は6時間~48時間である。
【0027】
好ましくは、混合ステップは、Na元素含有化合物、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物、Ti元素含有化合物及び前駆体MCO3又はM(OH)2化合物を混合してメカニカルミリングして混合物を得ることを含む。
【0028】
好ましくは、メカニカルミリングの速度は100rpm~1000rpmであり、時間は1時間~48時間である。
【0029】
好ましくは、焼成温度は700℃~1050℃であり、時間は6時間~36時間であり、昇温速度は1℃/分~20℃/分である。
【0030】
本発明はまた、上記多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料を含むことを特徴とするナトリウムイオン電池を提供する。
【0031】
好ましくは、ナトリウムイオン電池は、低速二輪車、電気自動車、風力発電、スマートグリッドのピーク調整、太陽光発電、家庭用電源、又は通信基地局の大規模エネルギー貯蔵機器に用いられる。
【0032】
本発明によれば、Li+は、より大きなイオン半径及びより強いLi-O結合エネルギーを有するため、高電圧で格子酸素を活性化させることができ、O2-/On-電気対に可逆容量を実現させ、Ti4+は、Ni2+/Ti4+-O2-共有結合特性を改善し、構造をより安定化させ、且つカチオンミキシングを低減し、多相転移を抑制し、材料の層状構造を安定化させることができ、Cu2+は、材料の空気安定性を明らかに向上させることができ、且つCu2+/Cu3+が部分容量を提供することもできる。これにより、本発明の正極材料に高い構造安定性及び高い電気化学性能を付与する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図3】実施例3及び実施例4のXRDスペクトルである。
【
図4】実施例4及び実施例5の1サイクル目の電気化学性能図である。
【
図5】実施例1、実施例4及び実施例5の最初の100サイクルの性能図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。ここで記載される具体的な実施形態は、単に本発明を説明し解釈するためのものであり、本発明を限定するものではないと理解すべきである。
【0035】
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、いずれもこの精確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値は、これらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲について、個々の範囲の端点値の間、個々の範囲の端点値と単独の点値の間、及び単独の点値の間は、互いに組み合わせて1つ又は複数の新たな数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書に具体的に開示されるものと見なされるべきである。
【0036】
本発明の第1の実施形態は、多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料であって、O3相であり、空間群がR-3mであり、化学式がNaαMaLibCucTidO2+βであり、電気的中性を満たす、多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料を提案する。式中、MはNi、Co、Mn、Cr、V、Al、Fe、B、Si、Mg、Znのうちの少なくとも1種であり、具体的には、Ni、Mn、Feのうちの1種、2種又は3種であってもよいが、これらに限定されず、αは正極材料1個あたりのNa元素の原子数で、0.5≦α≦1であり、2+βは正極材料1個あたりのO元素の原子数で、ー0.1≦β≦0.1であり、aは正極材料1個あたりのM元素の原子数で、0<a<0.95であり、bは正極材料1個あたりのLi元素の原子数で、0<b<0.25であり、cは正極材料1個あたりのCu元素の原子数で、0<c<0.3であり、dは正極材料1個あたりのTi元素の原子数で、0<d<0.6であり、a+b+c+d=1である。また、a+b+cは、0.05≦a+b+c<1の条件を満たすことができるが、これに限定されない。
【0037】
本発明の第2の実施形態は、多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料の調製方法を提案し、多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料は上述の通りであり、ここでその説明を省略する。本方法は高温固相法であり、詳細なステップは以下の通りである:
まず、化学式NaαMaLibCucTidO2+βにおけるNa元素、M元素、Li元素、Cu元素、Ti元素の原子数比に応じてNa元素含有化合物、M元素含有化合物、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物及びTi元素含有化合物を適量秤取し、混合して混合物を得る。具体的には、M元素含有化合物、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物及びTi元素含有化合物は、独立的に金属酸化物、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩及び金属塩化物のうちの少なくとも1種であってもよいが、これらに限定されない。例えば、M元素含有化合物は、M元素含有酸化物、M元素含有硝酸塩、M元素含有硫酸塩、M元素含有炭酸塩及びM元素含有塩化物のうちの少なくとも1種であり、Li元素含有化合物は、Li元素含有酸化物、Li元素含有硝酸塩、Li元素含有硫酸塩、Li元素含有炭酸塩及びLi元素含有塩化物のうちの少なくとも1種であり、Cu元素含有化合物は、Cu元素含有酸化物、Cu元素含有硝酸塩、Cu元素含有硫酸塩、Cu元素含有炭酸塩及びCu元素含有塩化物のうちの少なくとも1種であり、Ti元素含有化合物は、Ti元素含有酸化物、Ti元素含有硝酸塩、Ti元素含有硫酸塩、Ti元素含有炭酸塩及びTi元素含有塩化物のうちの少なくとも1種である。具体的には、Na元素含有化合物は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムのうちの少なくとも1種であってもよいが、これらに限定されない。混合する場合、Na元素含有化合物、M元素含有化合物、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物及びTi元素含有化合物を混合してメカニカルミリングして混合物を得ることができ、メカニカルミリングの速度は100rpm~1000rpmであってもよいが、これに限定されず、メカニカルミリングの時間は1時間~48時間であってもよいが、これに限定されない。
【0038】
Na元素含有化合物、M元素含有化合物、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物及びTi元素含有化合物の秤取量は、Na元素、M元素、Li元素、Cu元素、Ti元素の原子数比に応じて計算して得られた理論量に基づいて調整することができ、理論量はそれぞれ下記式で表すことができる:
Na元素含有化合物の理論量=(α)x(Na元素含有化合物の分子量)x任意の定数/(Na元素含有化合物1個あたりのNa元素の原子数)
M元素含有化合物の理論量=(a)x(M元素含有化合物の分子量)x任意の定数/(M元素含有化合物1個あたりのM元素の原子数)
Li元素含有化合物の理論量=(b)x(Li元素含有化合物の分子量)x任意の定数/(Li元素含有化合物1個あたりのLi元素の原子数)
Cu元素含有化合物の理論量=(c)x(Cu元素含有化合物の分子量)x任意の定数/(Cu元素含有化合物1個あたりのCu元素の原子数)
Ti元素含有化合物の理論量=(d)x(Ti元素含有化合物の分子量)x任意の定数/(Ti元素含有化合物1個あたりのTi元素の原子数)
そのうち、任意の定数は全て同じである。
【0039】
Na元素含有化合物、M元素含有化合物、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物及びTi元素含有化合物の秤取量は理論量の100%~110%であってもよいが、これに限定されず、好ましくは102%~106%、より好ましくは103%である。好ましい一例において、M元素含有化合物、Cu元素含有化合物及びTi元素含有化合物の秤取量は理論量の100%であってもよく、Na元素含有化合物及びLi元素含有化合物の秤取量は理論量の100%~110%であってもよく、好ましくは102%~106%、より好ましくは103%である。
【0040】
続いて、混合物を焼成して多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料を得る。具体的には、焼成温度は700℃~1050℃であってもよいが、これに限定されず、焼成時間は6時間~36時間であってもよいが、これに限定されず、昇温速度は1℃/分~20℃/分であってもよいが、これに限定されない。また、正極材料を適当な粒径にするために、焼成後に更に冷却し、粉砕し、300メッシュの篩をかけることができる。
【0041】
本発明の第3の実施形態は、多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料の調製方法を提案し、多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料は上述の通りであり、ここでその説明を省略する。本方法は共沈法であり、詳細なステップは以下の通りである:
まず、化学式MCO3又はM(OH)2におけるM元素の原子数比に応じて適量のM元素含有硝酸塩又はM元素含有硫酸塩を秤取して水に溶解し、沈殿剤及び錯化剤でpHを調節して均一に沈殿させ、乾燥後に前駆体MCO3又はM(OH)2を得る。具体的には、沈殿剤及び錯化剤で調節されたpHは7.5~13であってもよいが、これに限定されず、沈殿剤の実例は水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウムであってもよいが、これに限定されず、錯化剤の実例はアンモニア水であってもよいが、これに限定されず、乾燥温度は80℃~150℃であってもよいが、これに限定されず、乾燥時間は6時間~48時間であってもよいが、これに限定されない。
【0042】
次に、化学式NaαMaLibCucTidO2+βにおけるNa元素、M元素、Li元素、Cu元素、Ti元素の原子数比に応じてNa元素含有化合物、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物、Ti元素含有化合物及び前駆体MCO3又はM(OH)2を適量秤取し、混合して混合物を得る。具体的には、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物及びTi元素含有化合物は、独立的に金属酸化物、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属炭酸塩及び金属塩化物のうちの少なくとも1種であってもよいが、これらに限定されない。例えば、Li元素含有化合物は、Li元素含有酸化物、Li元素含有硝酸塩、Li元素含有硫酸塩、Li元素含有炭酸塩及びLi元素含有塩化物のうちの少なくとも1種であり、Cu元素含有化合物は、Cu元素含有酸化物、Cu元素含有硝酸塩、Cu元素含有硫酸塩、Cu元素含有炭酸塩及びCu元素含有塩化物のうちの少なくとも1種であり、Ti元素含有化合物は、Ti元素含有酸化物、Ti元素含有硝酸塩、Ti元素含有硫酸塩、Ti元素含有炭酸塩及びTi元素含有塩化物のうちの少なくとも1種である。具体的には、Na元素含有化合物は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムのうちの少なくとも1種である。混合する場合、Na元素含有化合物、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物、Ti元素含有化合物及び前駆体MCO3又はM(OH)2を混合してメカニカルミリングして混合物を得ることができ、メカニカルミリングの速度は100rpm~1000rpmであってもよいが、これに限定されず、メカニカルミリングの時間は1時間~48時間であってもよいが、これに限定されない。
【0043】
Na元素含有化合物、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物、Ti元素含有化合物及び前駆体MCO3又はM(OH)2の秤取量は、Na元素、M元素、Li元素、Cu元素、Ti元素の原子数比に応じて計算して得られた理論量に基づいて調整することができ、理論量はそれぞれ下記式で表すことができる:
Na元素含有化合物の理論量=(α)x(Na元素含有化合物の分子量)x任意の定数/(Na元素含有化合物1個あたりのNa元素の原子数)
Li元素含有化合物の理論量=(b)x(Li元素含有化合物の分子量)x任意の定数/(Li元素含有化合物1個あたりのLi元素の原子数)
Cu元素含有化合物の理論量=(c)x(Cu元素含有化合物の分子量)x任意の定数/(Cu元素含有化合物1個あたりのCu元素の原子数)
Ti元素含有化合物の理論量=(d)x(Ti元素含有化合物の分子量)x任意の定数/(Ti元素含有化合物1個あたりのTi元素の原子数)
前駆体MCO3又はM(OH)2の理論量=(a)x(前駆体MCO3又はM(OH)2の分子量)x任意の定数
そのうち、任意の定数は全て同じである。
【0044】
Na元素含有化合物、Li元素含有化合物、Cu元素含有化合物、Ti元素含有化合物及び前駆体MCO3又はM(OH)2の秤取量は理論量の100%~110%であってもよく、好ましくは102%~106%、より好ましくは103%である。好ましい一例において、Cu元素含有化合物、Ti元素含有化合物及び前駆体MCO3又はM(OH)2の秤取量は理論量の100%であってもよく、Na元素含有化合物及びLi元素含有化合物の秤取量は理論量の100%~110%であってもよく、好ましくは102%~106%、より好ましくは103%である。
【0045】
続いて、混合物を焼成して多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料を得る。具体的には、焼成温度は700℃~1050℃であってもよいが、これに限定されず、焼成時間は6時間~36時間であってもよいが、これに限定されず、昇温速度は1℃/分~20℃/分であってもよいが、これに限定されない。また、正極材料を適当な粒径にするために、焼成後に更に冷却し、粉砕し、300メッシュの篩をかけることができる。
【0046】
本発明の第4の実施形態は、上述のような多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料を含むナトリウムイオン電池を提案する。具体的には、多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料を粘着剤と混合して電池の正極を形成することができる。具体的には、粘着剤の実例は、SP、PVDFのうちの少なくとも1種であってもよいが、これらに限定されない。また、多元素共ドープによるナトリウムイオン正極材料と粘着剤との質量比は(70~95):(5~30)であってもよいが、これに限定されず、好ましくは90:10である。更に、ナトリウムイオン電池は、低速二輪車、電気自動車、風力発電、スマートグリッドのピーク調整、太陽光発電、家庭用電源、又は通信基地局の大規模エネルギー貯蔵機器に用いられてもよいが、これらに限定されない。
【0047】
本発明を以下の実施例によって例示的に説明する:
実施例1
【0048】
本実施例において、正極材料NaMn0.5Ni0.25Li0.05Cu0.1Ti0.1O2を調製し、説明は以下の通りである:
化学式NaMn0.5Ni0.25Li0.05Cu0.1Ti0.1O2の化学量論比に応じて炭酸ナトリウム、三酸化二マンガン、酸化ニッケル、炭酸リチウム、酸化銅及び二酸化チタンを適量秤取し、そのうち、炭酸ナトリウム及び炭酸リチウムは理論添加量の103%であり、上記原料をボールミルに入れてボールミルの回転速度350rpmで6時間メカニカルミリングした。
【0049】
ボールミル後の混合物を高温炉に入れて875℃で焼成し、焼成時間が12時間であり、昇温速度が5℃/分であり、冷却し、粉砕し、300メッシュの篩をかけて正極材料が得られた(
図1に示す)。
【0050】
上記で調製した正極材料及びSP、PVDFを質量比90:5:5でスラリーにし、塗布、乾燥、裁断後に正極とすると共に、コイン型電池に組み立ててその電気化学性能を評価した。
実施例2
【0051】
本実施例において、正極材料NaMn0.5Ni0.25Li0.05Cu0.15Ti0.05O2を調製し、説明は以下の通りである:
化学式NaMn0.5Ni0.25Li0.05Cu0.15Ti0.05O2の化学量論比に応じて炭酸ナトリウム、三酸化二マンガン、酸化ニッケル、炭酸リチウム、酸化銅及び二酸化チタンを適量秤取し、そのうち、炭酸ナトリウム及び炭酸リチウムは理論添加量の103%であり、上記原料をボールミルに入れてボールミルの回転速度350rpmで6時間メカニカルミリングした。
【0052】
ボールミル後の混合物を高温炉に入れて875℃で焼成し、焼成時間が12時間であり、昇温速度が5℃/分であり、冷却し、粉砕し、300メッシュの篩をかけて正極材料が得られた。
【0053】
上記で調製した正極材料及びSP、PVDFを質量比90:5:5でスラリーにし、塗布、乾燥、裁断後に正極とすると共に、コイン型電池に組み立ててその電気化学性能を評価した。
実施例3
【0054】
本実施例において、正極材料NaMn0.5Ni0.25Li0.075Cu0.1Ti0.075O2を調製し、説明は以下の通りである:
化学式NaMn0.5Ni0.25Li0.075Cu0.1Ti0.075O2の化学量論比に応じて炭酸ナトリウム、三酸化二マンガン、酸化ニッケル、炭酸リチウム、酸化銅及び二酸化チタンを適量秤取し、そのうち、炭酸ナトリウム及び炭酸リチウムは理論添加量の103%であり、上記原料をボールミルに入れてボールミルの回転速度350rpmで6時間メカニカルミリングした。
【0055】
ボールミル後の混合物を高温炉に入れて875℃で焼成し、焼成時間が12時間であり、昇温速度が5℃/分であり、冷却し、粉砕し、300メッシュの篩をかけて正極材料が得られた(
図2に示す)。
【0056】
上記で調製した正極材料及びSP、PVDFを質量比90:5:5でスラリーにし、塗布、乾燥、裁断後に正極とすると共に、コイン型電池に組み立ててその電気化学性能を評価した。
実施例4
【0057】
本実施例において、正極材料NaMn0.5Ni0.25Li0.075Cu0.1Ti0.075O2を調製し、説明は以下の通りである:
化学式Mn0.667Ni0.333(OH)2の化学量論比に応じて硫酸ニッケル及び硫酸マンガンを適量秤取して一定量の水に溶解し、水酸化ナトリウム及びアンモニア水でpHを調節して均一に沈殿させ、100℃で乾燥した後に前駆体Mn0.667Ni0.333(OH)2が得られた。
【0058】
化学式NaMn0.5Ni0.25Li0.075Cu0.1Ti0.075O2の化学量論比に応じて上記の前駆体、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、酸化銅、及び二酸化チタンを適量秤取し、ミルに入れてボールミル速度200rpmで8時間メカニカルミリングした後に混合物が得られた。
【0059】
ボールミル後の混合物を高温炉に入れて850℃で焼成し、焼成時間が15時間であり、昇温速度が5℃/分であり、冷却し、粉砕し、300メッシュの篩をかけて正極材料が得られた。
【0060】
上記で調製した正極材料及びSP、PVDFを質量比90:5:5でスラリーにし、塗布、乾燥、裁断後に正極とすると共に、コイン型電池に組み立ててその電気化学性能を評価した。
実施例5
【0061】
本実施例において、正極材料NaMn0.4Ni0.2Fe0.15Li0.075Cu0.1Ti0.075O2を調製し、説明は以下の通りである:
化学式NaMn0.4Ni0.2Fe0.15Li0.075Cu0.1Ti0.075O2の化学量論比に応じて炭酸ナトリウム、三酸化二マンガン、酸化ニッケル、三酸化二鉄、炭酸リチウム、酸化銅及び二酸化チタンを適量秤取し、そのうち、炭酸ナトリウム及び炭酸リチウムは理論添加量の103%であり、上記原料をボールミルに入れてボールミルの回転速度350rpmで6時間メカニカルミリングした。
【0062】
ボールミル後の混合物を高温炉に入れて875℃で焼成し、焼成時間が12時間であり、昇温速度が5℃/分であり、冷却し、粉砕し、300メッシュの篩をかけて正極材料が得られた。
【0063】
上記で調製した正極材料及びSP、PVDFを質量比90:5:5でスラリーにし、塗布、乾燥、裁断後に正極とすると共に、コイン型電池に組み立ててその電気化学性能を評価した。
比較例1
【0064】
本比較例において、正極材料NaMn0.5Ni0.25Li0.25O2を調製し、説明は以下の通りである:
化学式NaMn0.5Ni0.25Li0.25O2の化学量論比に応じて炭酸ナトリウム、三酸化二マンガン、酸化ニッケル、炭酸リチウムを適量秤取し、そのうち、炭酸ナトリウム及び炭酸リチウムは理論添加量の103%であり、上記原料をボールミルに入れてボールミルの回転速度350rpmで6時間メカニカルミリングした。
【0065】
ボールミル後の混合物を高温炉に入れて875℃で焼成し、焼成時間が12時間であり、昇温速度が5℃/分であり、冷却し、粉砕し、300メッシュの篩をかけて正極材料が得られた。
【0066】
上記で調製した正極材料及びSP、PVDFを質量比90:5:5でスラリーにし、塗布、乾燥、裁断後に正極とすると共に、コイン型電池に組み立ててその電気化学性能を評価した。
比較例2
【0067】
本比較例において、正極材料NaMn0.5Ni0.25Cu0.25O2を調製し、説明は以下の通りである:
化学式NaMn0.5Ni0.25Cu0.25O2の化学量論比に応じて炭酸ナトリウム、三酸化二マンガン、酸化ニッケル、酸化銅を適量秤取し、そのうち、炭酸ナトリウムは理論添加量の103%であり、上記原料をボールミルに入れてボールミルの回転速度350rpmで6時間メカニカルミリングした。
【0068】
ボールミル後の混合物を高温炉に入れて875℃で焼成し、焼成時間が12時間であり、昇温速度が5℃/分であり、冷却し、粉砕し、300メッシュの篩をかけて正極材料が得られた。
【0069】
上記で調製した正極材料及びSP、PVDFを質量比90:5:5でスラリーにし、塗布、乾燥、裁断後に正極とすると共に、コイン型電池に組み立ててその電気化学性能を評価した。
比較例3
【0070】
本比較例において、正極材料NaMn0.5Ni0.25Ti0.25O2を調製し、説明は以下の通りである:
化学式NaMn0.5Ni0.25Ti0.25O2の化学量論比に応じて炭酸ナトリウム、三酸化二マンガン、酸化ニッケル、二酸化チタンを適量秤取し、そのうち、炭酸ナトリウムは理論添加量の103%であり、上記原料をボールミルに入れてボールミルの回転速度350rpmで6時間メカニカルミリングした。
【0071】
ボールミル後の混合物を高温炉に入れて875℃で焼成し、焼成時間が12時間であり、昇温速度が5℃/分であり、冷却し、粉砕し、300メッシュの篩をかけて正極材料が得られた。
【0072】
上記で調製した正極材料及びSP、PVDFを質量比90:5:5でスラリーにし、塗布、乾燥、裁断後に正極とすると共に、コイン型電池に組み立ててその電気化学性能を評価した。
比較例4
【0073】
本比較例において、正極材料NaMn0.5Ni0.25Li0.125Cu0.125O2を調製し、説明は以下の通りである:
化学式NaMn0.5Ni0.25Li0.125Cu0.125O2の化学量論比に応じて炭酸ナトリウム、三酸化二マンガン、酸化ニッケル、炭酸リチウム、酸化銅を適量秤取し、そのうち、炭酸ナトリウム及び炭酸リチウムは理論添加量の103%であり、上記原料をボールミルに入れてボールミルの回転速度350rpmで6時間メカニカルミリングした。
【0074】
ボールミル後の混合物を高温炉に入れて875℃で焼成し、焼成時間が12時間であり、昇温速度が5℃/分であり、冷却し、粉砕し、300メッシュの篩をかけて正極材料が得られた。
【0075】
上記で調製した正極材料及びSP、PVDFを質量比90:5:5でスラリーにし、塗布、乾燥、裁断後に正極とすると共に、コイン型電池に組み立ててその電気化学性能を評価した。
比較例5
【0076】
本比較例において、正極材料NaMn0.5Ni0.25Li0.125Ti0.125O2を調製し、説明は以下の通りである:
化学式NaMn0.5Ni0.25Li0.125Ti0.125O2の化学量論比に応じて炭酸ナトリウム、三酸化二マンガン、酸化ニッケル、炭酸リチウム、二酸化チタンを適量秤取し、そのうち、炭酸ナトリウム及び炭酸リチウムは理論添加量の103%であり、上記原料をボールミルに入れてボールミルの回転速度350rpmで6時間メカニカルミリングした。
【0077】
ボールミル後の混合物を高温炉に入れて875℃で焼成し、焼成時間が12時間であり、昇温速度が5℃/分であり、冷却し、粉砕し、300メッシュの篩をかけて正極材料が得られた。
【0078】
上記で調製した正極材料及びSP、PVDFを質量比90:5:5でスラリーにし、塗布、乾燥、裁断後に正極とすると共に、コイン型電池に組み立ててその電気化学性能を評価した。
比較例6
【0079】
本比較例において、正極材料NaMn0.5Ni0.25Cu0.125Ti0.125O2を調製し、説明は以下の通りである:
化学式NaMn0.5Ni0.25Cu0.125Ti0.125O2の化学量論比に応じて炭酸ナトリウム、三酸化二マンガン、酸化ニッケル、酸化銅、二酸化チタンを適量秤取し、そのうち、炭酸ナトリウムは理論添加量の103%であり、上記原料をボールミルに入れてボールミルの回転速度350rpmで6時間メカニカルミリングした。
【0080】
ボールミル後の混合物を高温炉に入れて875℃で焼成し、焼成時間が12時間であり、昇温速度が5℃/分であり、冷却し、粉砕し、300メッシュの篩をかけて正極材料が得られた。
【0081】
上記で調製した正極材料及びSP、PVDFを質量比90:5:5でスラリーにし、塗布、乾燥、裁断後に正極とすると共に、コイン型電池に組み立ててその電気化学性能を評価した。
【0082】
図3を参照されたく、標準品JCPDS 54-0887と比べたところ、これらの実施例で得られた正極材料は、R3-mの空間群を有することが分かった。
図4を参照されたく、これらの実施例は、いずれも電池に即時の充放電効果を付与できることが分かった。
図5を参照されたく、これらの実施例は、100回の充放電サイクル後にも高い容量維持を電池に付与することが分かった。
【0083】
表1を参照されたく、実施例1~3は、調製プロセスがほぼ同じであり、且つ正極材料のMn元素及びNi元素の原子数比が同じであり、その結果、正極材料のLi元素、Cu元素及びTi元素の適当な原子数比が得られた。実施例3及び5は、調製プロセスがほぼ同じであり、正極材料のLi元素、Cu元素及びTi元素の原子数比が同じであり、その結果、正極材料がFe元素を含有する場合に電池の性能を低下させることが分かった。
【0084】
引き続き表1を参照されたく、比較例1~3は、実施例1の調製プロセスとほぼ同じであり、且つ正極材料のMn元素及びNi元素の原子数比が同じであり、その結果、Li元素、Cu元素及びTi元素が共に電池に対してもたらす性能は、Li元素、Cu元素及びTi元素のうちのいずれかよりも優れ、Li元素、Cu元素及びTi元素は、電池の性能に対して相乗作用を果たすことができることを示した。
【0085】
引き続き表1を参照されたく、比較例4~6は、実施例1の調製プロセスとほぼ同じであり、且つ正極材料のMn元素及びNi元素の原子数比が同じであり、その結果、Li元素、Cu元素及びTi元素が共に電池に対してもたらす性能は、Li元素、Cu元素及びTi元素のうちのいずれか二者よりも優れ、Li元素、Cu元素及びTi元素は、電池の性能に対して相乗作用を果たすことができることを示した。
【0086】
【0087】
公知の常識に関する以上の内容は、詳細に説明されず、当業者にとって理解できるものである。
【0088】
以上の説明は単に本発明の幾つかの具体的な実施例であり、本発明を制限するためのものではなく、本発明の精神と原則においてなされた任意の修正、等価置換、改良などは、いずれも本発明の請求範囲に含まれるべきである。この発明の技術的範囲は、明細書における内容に限定されず、特許請求の範囲によってその技術的範囲を決定しなければならない。
【国際調査報告】