IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲーの特許一覧

特表2024-546428バイポーラプレート、およびチャネル構造のエンボス加工方法
<>
  • 特表-バイポーラプレート、およびチャネル構造のエンボス加工方法 図1
  • 特表-バイポーラプレート、およびチャネル構造のエンボス加工方法 図2
  • 特表-バイポーラプレート、およびチャネル構造のエンボス加工方法 図3
  • 特表-バイポーラプレート、およびチャネル構造のエンボス加工方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】バイポーラプレート、およびチャネル構造のエンボス加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/02 20060101AFI20241217BHJP
   B21D 13/02 20060101ALI20241217BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20241217BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20241217BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20241217BHJP
【FI】
B21D22/02 B
B21D13/02
H01M8/0206
H01M8/0258
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527583
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 DE2022100876
(87)【国際公開番号】W WO2023104239
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】102021132658.3
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン ツヴァー
(72)【発明者】
【氏名】リヒャート バイアー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ポップ
(72)【発明者】
【氏名】トアステン ケラー
(72)【発明者】
【氏名】ハリー シュマイコ
(72)【発明者】
【氏名】ドリス シュミットガル
(72)【発明者】
【氏名】ヤン クレーマー
【テーマコード(参考)】
4E137
5H126
【Fターム(参考)】
4E137AA10
4E137AA18
4E137BB01
4E137CA03
4E137EA01
4E137GA15
4E137GB10
5H126AA12
5H126BB06
5H126DD05
5H126EE06
5H126EE11
5H126GG02
5H126HH02
5H126JJ03
(57)【要約】
本発明は、特に電気化学セルのバイポーラプレート(1)のためのハーフプレート(2、2´)を形成するために、平面金属シート(11)において複数の平行なチャネル部分(5)を備えたチャネル構造(3)をエンボス加工する方法に関し、本方法は以下の工程を有する。均一な初期肉厚(d5)を有する平面金属シート(11)を提供する工程と、金属シート(11)を成形ツール(12)に挿入する工程であって、未変形の平面金属シート(11)によって画定されるシート(11)のベース面(BE)が、成形ツール(12)のツール部分(13)によって画定されるツール平面に載るように提供される、工程と、複数のチャネル部分(5)を形成する工程であって、側面の外側に位置し、かつ、成形プロセス全体にわたってベース面(BE)および/またはベース面(BE)に平行な面内に残留する、金属シート(11)のエンボス加工部分(9、10)からの材料が、側面(7、8)に変位することを可能にするように、各チャネル部分(5)が、2つの非平行側面(7、8)を有するように設計されており、各側面(7、8)が、ベース面(BE)から隣接する平行な平面まで延在する、工程。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーフプレート(2、2´)を形成するために、平面金属シート(11)において、複数の平行なチャネル部分(5)を備えたチャネル構造(3)をエンボス加工する方法であって、
均一な初期肉厚(d5)を有する前記平面金属シート(11)を提供する工程と、
前記金属シート(11)を成形ツール(12)に挿入する工程であって、未変形の前記平面金属シート(11)によって画定される前記シート(11)のベース面(BE)が、前記成形ツール(12)のツール部分(13)によって画定されるツール平面(WE)に載るように提供される、工程と、
前記複数のチャネル部分(5)を形成する工程であって、側面(7、8)の外側に位置し、かつ、成形プロセス全体にわたって前記ベース面(BE)および/または前記ベース面(BE)に平行な面内に残留する、前記金属シート(11)のエンボス加工部分(9、10)の材料が、前記側面(7、8)に変位するように、各チャネル部分(5)が、2つの互いに平行でない側面(7、8)を有するように形成され、各側面(7、8)が、前記ベース面(BE)から隣接する平行な面まで延在する、工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記チャネル部分(5)の外側に位置し、かつベース面(BE)内にある少なくとも1つのエンボス加工部分(10)の材料が、隣接する前記側面(7、8)の少なくとも1つに押し込まれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ベース面(BE)に平行であり、かつ、2つの側面(7、8)の間に位置しており前記ベース面(BE)に平行であるチャネル部分(5)の底部を構成している平面内の少なくとも1つのエンボス加工部分(9)の材料が、前記少なくとも1つのエンボス加工部分(9)に隣接する前記側面(7、8)の1つに変位することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記形成する工程の結果、前記側面(7、8)の肉厚(d3)が、前記初期肉厚(d5)の70%以上に減少することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記側面(7、8)への材料の前記強制流入の結果、前記ベース面(BE)の法線方向において測定される前記側面(7、8)の投影肉厚(PW)が、前記初期肉厚(d5)の少なくとも105%、最大で150%まで増加することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記チャネル構造(5)のエンボス加工深さ(PT)が、前記金属シート(11)の前記初期肉厚(d5)の少なくとも2倍、最大で10倍であるように選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
電気化学セルのバイポーラプレート(1、1´)であって、前記電気化学セルを流れる媒体のための、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法に従って製造されるチャネル構造(3)を有する少なくとも1つのハーフプレート(2、2´)を有する、バイポーラプレート(1、1´)。
【請求項8】
前記ハーフプレート(2、2´)が、前記ハーフプレート(2、2´)の最大肉厚の2/3以上である最小肉厚(d2)を有することを特徴とする、請求項7に記載のバイポーラプレート(1、1´)。
【請求項9】
前記最小肉厚(d2)が、前記チャネル構造(5)の前記側面(7、8)の外側に画定されることを特徴とする、請求項8に記載のバイポーラプレート(1、1´)。
【請求項10】
前記最大肉厚(d3)が、前記チャネル構造(5)の前記側面(7、8)の領域内に画定されることを特徴とする、請求項9に記載のバイポーラプレート(1、1´)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーフプレートまたは金属シートを形成するために、平面金属シートにおいて複数の平行なチャネル部分を備えたチャネル構造をエンボス加工する方法に関する。本発明はさらに、このような方法を使用して製造される、電気化学セル、特に燃料電池のバイポーラプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
板状ブランクの成形方法は、例えば特許文献1から公知である。この公知の成形方法を使用して製造できる製品は、厚みが減少した壁部を有する。成形前に、製品が製造されるブランクは、成形プロセス中にブランク材料が流れる領域に溶接経路を備え、成形プロセスは、ブランクの肉厚に比べて減少した肉厚をもたらし、この溶接経路は、成形プロセス中に生じる材料流れの方向に延びる。
【0003】
特許文献2に開示されている成形方法は、平坦な材料からポット状の金属部品を製造するように設計されている。この成形方法は、深絞り加工とプレス加工を組み合わせたもので、偏心部分あるいは材料厚の小さい領域を有する非常に複雑な形状の部品を製造するのに特に適していると述べられている。特に、特許文献2による成形方法を利用すれば、溶接継ぎ目をなくすことができるはずである。
【0004】
特許文献3には、電池カバーに所定の過圧破断点を形成するための成形方法が記載されている。ここで、電池カバーからの材料は、残りの距離が所定の過圧破断点における最小の肉厚に対応するように、成形ツールのスタンプ部を成形凹部に近づけることによって、成形凹部に流入する必要がある。
【0005】
特許文献4には、寸法安定性の高いハーフシェルの製造を目的とした圧縮ツールが開示されている。ハーフシェルを成形するとき、ツールの側壁は、スタンプの移動方向に対して垂直に移動される。このように、成形中、複数のツール部品が、相互に直交する方向に調整運動を行う。
【0006】
例えば、特許文献5、特許文献6、および特許文献7には、温度の影響下で金属シートを成形する様々な成形方法が記載されている。
【0007】
特許文献8および特許文献9には、電気油圧式または電磁式の金属シート成形のためのさまざまな装置が開示されている。
【0008】
特許文献10には、プレス成形によって平坦な金属シートを成形するプレス成形方法が記載されている。材料が湾曲部に向かって流れる剪断変形工程が行われる。
【0009】
特許文献11には、深絞りされた金属シート部品を製造するための成形ツールおよび方法が開示されている。深絞り成形に加えて、特に押出成形の形で、第2の製造工程が行われる。
【0010】
特許文献12には、金属シートから車両部品を連続的に製造する方法が記載されている。この目的のために、金属シートは、金属シートが分離および/または成形される前に加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許発明第19755964号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102008031421号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102019103606号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102013103612号明細書
【特許文献5】欧州特許第3485992号明細書
【特許文献6】欧州特許第0946311号明細書
【特許文献7】独国特許発明第19529429号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第2292343号明細書
【特許文献9】独国特許発明第102007013017号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2016/158821号明細書
【特許文献11】独国特許出願公開第102010044788号明細書
【特許文献12】独国特許出願公開第102017124724号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、電気化学セル、特に燃料電池のバイポーラプレートのチャネル構造の製造に特に適している、前述の先行技術に関してさらに開発され、最終製品内での肉厚の変動を可能にする金属シート成形オプションを指定することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、本発明によれば、請求項1による工程を含む、チャネル構造をエンボス加工する方法によって達成される。請求項1によるエンボス加工方法は、請求項7によるバイポーラプレート用の少なくとも1つの金属シートまたはハーフプレートを製造するのに特に適している。デバイス、すなわちバイポーラプレート、またはバイポーラプレートの一部である特にハーフプレートの形態のバイポーラプレート部品に関連して以下に説明する本発明の実施形態および利点は、必要な変更を加えて、エンボス加工方法、すなわち成形方法にも適用され、その逆も同様である。
【0014】
特にバイポーラプレートのためのハーフプレートまたは金属シートを形成するために、平面金属シートにおいて複数の平行なチャネル部分を備えたチャネル構造をエンボス加工する方法は、
均一な初期肉厚を有する平面金属シートを提供する工程と、
金属シートを成形ツールに挿入する工程であって、未変形の平面金属シートによって画定される金属シートのベース面が、成形ツールのツール部分によって画定されるツール平面上に載るように提供される、工程と、
複数のチャネル部分を形成する工程であって、側面の外側に位置し、かつ、成形プロセス全体にわたってベース面および/またはベース面に平行な面内に残留する、金属シートのエンボス加工部分の材料が、側面に変位するように、各チャネル部分が、2つの互いに平行でない側面を有するように形成され、各側面が、ベース面から隣接する平行な面まで延在する、工程と、を含む。
【0015】
本発明は、金属シートの深絞り加工中に、出発製品の平坦な構造、すなわち当初は平面であった金属シートが基本的に保持され、異なる金属シート部分の金属シートの肉厚は変化しないか、または成形によって減少するという発想に基づいている。
【0016】
肉厚の減少は、特に、出発製品として使用される金属シートが元々あるベース面から材料が変位させられる領域において、ベース面に対して傾斜した壁部、極端な場合にはベース面に垂直な壁部を生成するための、深絞り加工中に生じる。傾斜部分の外側に位置する出発製品の部分が、成形プロセス全体を通して変化しない位置にある条件では、元々表面部分にあった材料のみが、傾斜部分を形成するために利用可能であり、この表面部分は、ベース面に対する傾斜部分の垂直投影に対応する。
【0017】
このことは、ベース面から突出する最終製品の対応する部分の傾斜が顕著であるほど、深絞り成形を使用して材料を成形するために利用可能な材料が少なくなることを意味する。また、使用される材料によっては、高い成形度が加工硬化を招き、製品に亀裂が入りやすくなることも念頭に置く必要がある。このようなリスクは、従来の方法では、エンボス構造の急峻な側面を避けることで対抗できるが、エンボス構造が液体および/または気体流体のチャネルを制限する場合、これは流体最適性を損なうことを意味し得る。
【0018】
本出願に係るエンボス加工方法は、各場合において基準面としてのベース面との関係において、金属シートが異なる傾斜の領域間に位置する面内を材料がかなりの程度流れるという点で、成形面と流動面との間の目的の矛盾に効率的に対処する。従来の深絞り加工法と比較して、エンボス加工法は押し出しの特徴を多く含む。材料が側面に流れ込む部分、すなわちエンボス加工部分は、エンボス加工プロセスの間、元の位置のままである。すなわち、成形中に部分全体が側面に引き込まれることはない。
【0019】
特に、エンボス加工部分はベース面に位置することができる。同様に、各々がチャネル部分の底部を構成するエンボス加工部分が存在し得る。チャネル部分の外側に位置し、ベース面にある少なくとも1つのエンボス加工部分からの材料は、好ましくは、それに隣接する側面の少なくとも1つに押し込まれる。さらに、2つの側面の間に位置し、ベース面に平行なチャネル部分の底部を構成する、ベース面に平行な面内にある少なくとも1つのエンボス加工部分からの材料は、好ましくは、それに隣接する側面の1つに変位される。チャネル部分は、その側面がベース面および/またはベース面に平行な面からの材料で補強されており、特に、台形の基本形状を有する断面を有することができる。チャネル部分の側面は、ベース面に対して、例えば、少なくとも45°、最大で78°の角度で傾斜しているが、必ずしも両方の側面が同じ傾斜角度である必要はない。側面の形状が完全にまたは部分的に円弧状、例えば円弧形状または楕円形状である実施形態も実現可能である。同様に、側面の間に形成されるチャネル底部の完全な平面形状は要求されない。広い(extensive)チャネル底部を排除することも可能であり、この場合、チャネルは特にU字形状またはV字形状を有することができる。
【0020】
本方法の様々な可能な変形形態によれば、元々平面であった金属シートを成形することにより、金属シートの肉厚を、例えば初期肉厚の最小70%まで減少させることができる。材料分布に影響する他の値は、投影がベース面に対して考慮されるときに生じる。この点で、側面の領域に材料が蓄積される可能性があり、これは、初期肉厚の105%から150%の投影肉厚として表すことができる。
【0021】
平面領域のエンボス加工によって特に多量の材料が変位する場合、出発製品として使用される平面金属シートからチャネル構造の側面への材料の流れは、最終製品の最大肉厚が平面領域ではなく、側面の領域に見られるほど顕著になることさえある。
【0022】
側面領域に材料を蓄積するために実施される平面領域のエンボス加工により、エンボス加工領域の肉厚は、例えば、金属シートの初期肉厚の50%~95%、特に60%~90%となる。エンボス加工はまた、1枚の同じ金属シート内の品質変動によって肉厚が大きく変動する金属シートを使用しても、異なる表面部における肉厚の公差が比較的狭い最終製品を製造できるという利点もある。
【0023】
金属シートの成形によって作製されるチャネル構造のエンボス加工深さは、例えば金属シートの初期肉厚の2倍から最大10倍である。金属シートのすべての平面領域がエンボス加工部分と同様に加工されれば、理論的には最終製品の肉厚を均一にすることができる。他方、成形プロセスにより、表面部分ごとに変化する肉厚が得られ、言及された部分が、特に、構造化されたプレート、すなわち成形された金属シートの平面視において線形状を有し得る場合、ハーフプレートの最小肉厚は、例えば、最終製品のハーフプレートの最大肉厚の2/3以上である。ハーフプレートの最小肉厚は、特に、チャネル構造の側面の外側の平面領域、すなわちエンボス加工された領域に存在し得る。最大肉厚は、構造化されたハーフプレートの平面領域にも存在し得るが、代わりに、すでに述べたように、ハーフプレートの側面領域にも存在し得る。
【0024】
この成形方法は、すでにコーティングされた金属シートでも、コーティングされていない金属シートでも実施することができる。金属シートは特に鋼板である。チャネル構造を備えた成形された金属シートは、特に、燃料電池システムまたは水素を製造するための電解システムのバイポーラプレートに使用することができる。バイポーラプレートは、本発明に従ってエンボス加工された少なくとも1枚の金属シートを備えることができる。しかしながら、特に、バイポーラプレートは、本発明に従ってエンボス加工された2枚の金属シートを備え、1枚はバイポーラプレートのアノード側用であり、1枚はバイポーラプレートのカソード側用である。エンボス加工された2つのハーフプレートは、通常、溶接によって互いに結合され、バイポーラプレートを形成する。
【0025】
以下では、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。ここでは、簡略化された形態であり、一部は誇張された形態である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】金属シートまたはハーフプレートのエンボス構造を示す。
図2】金属シートまたはハーフプレートをエンボス加工するためのツールの特徴を示す。
図3】バイポーラプレートを示す。
図4】複数の燃料電池を備えた燃料電池システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、参照符号2が付されたハーフプレート2を示している。このような2枚のハーフプレート2、2´は、例えば溶接によって互いに結合され、バイポーラプレート1(図3を参照)を形成することができる。燃料電池システム100(図4を参照)内で、バイポーラプレート1は、第1の燃料電池のハーフセルと、さらなる燃料電池のハーフセルとを分離している。バイポーラプレート1の基本的な機能に関しては、冒頭で引用した先行技術を参照されたい。
【0028】
ハーフプレート2は、エンボス構造3を有し、エンボス構造3は、このケースでは、後の燃料電池システム100のアクティブフィールドに位置する、複数の平行なチャネル部分5を備えたチャネル構造である。燃料電池システム100を流れる流体のためのチャネルは、バイポーラプレート1の外面に、互いに重なる2枚のハーフプレート2、2´の間に形成することができる。流体は、燃料電池システム100の冷却剤および作動材料である。
【0029】
エンボス構造3によって形成されるチャネル部分5は、全体を4で示した壁を有する。壁4は、2つの側面7、8および底部9によって構成される。6で示した、ベース面BEに位置するハーフプレート2の平面主領域は、チャネル部分5の外側に位置する。平面主領域6の肉厚は、特に減少しない限りd1で示されているが、これについては以下でさらに詳細に説明する。
【0030】
チャネル部分5は台形の断面形状を有し、主領域6に対する、したがってベース面BEに対する側面7、8の傾斜角度はαで示されている。概説した例示的な実施形態から逸脱して、様々な側面7、8を、ベース面BEに対して異なる角度に傾斜させることも可能である。いずれの場合も、底部9は、ここでは、ベース面BEに平行なエンボス加工面PEに位置している。ベース面BEとエンボス加工面PEとの間の距離は、エンボス構造3のPTで示されるエンボス加工深さを構成する。
【0031】
エンボス構造3を形成するときには、最初に、変形していない平面金属シート11を、成形ツール12に挿入する。成形ツール12のツール下部は13で示され、ツール上部は14で示されている。ツール下部13は、金属シート11から形成されるハーフプレート2のベース面BEが載るツール平面WEを提供する。ハーフプレート2のエンボス構造3の基本形状は、この目的のためにツール輪郭16、17を有するツール部分13、14の断面形状によって予め決定される。
【0032】
さらに、図2に示した例では、ツール上部14のエンボス輪郭15が見られ、このエンボス輪郭15は、チャネル構造3が形成される部分の真横に位置している。このエンボス輪郭15により、エンボス加工部分10と呼ばれるハーフプレート2の対応する領域において減少した肉厚d2が確実に生じ、材料が変位する。減少した肉厚d2は、成形によって生じる最小の肉厚である。材料の変位は、材料がハーフプレート2の横方向、特に側面7、8に流れることを意味する。この結果、側面7、8の領域で肉厚d3が生じ、この肉厚は、エンボス加工プロセスなしで生じる想像上の肉厚よりも大きい。PWは、側面7、8の投影肉厚を示し、これはベース面BEに対する投影を意味する。
【0033】
さらに、このケースでは、底部9の領域でもエンボス加工が行われるため、ここではエンボス加工部分を構成する底部9からの材料が側面7、8に流れ込む。底部9の肉厚はd4で示される。成形中に起こる材料の流れは、主領域6から側面7、8と、底部9から側面7、8への両方が起こり、閉じた成形ツール12内のツール輪郭16、17の間に形成される空洞が、確実に完全に充填される。材料は、平面領域に隣接する湾曲領域だけでなく、形成された側面7、8の長さ全体にも流入する。未変形の金属シート11のd5で示される初期肉厚は、例示的な実施形態では50μmから100μmの範囲内である。
【0034】
図3は、本発明による方法によって形成され、溶接によって互いに結合された、ステンレス鋼製の2つのハーフプレート2、2´を備えたバイポーラプレート1を示す。バイポーラプレート1は、開口部40を有する、流体のための流入領域30aと、開口部40´を有する、流体のための流出領域30bとを有する。チャネル構造3を有するガス分配構造50がその間に配置され、チャネル部分5(図1参照)を備える。
【0035】
図4は、電気化学セルの一例として、複数の燃料電池20を備えた燃料電池システム100を示している。図3と同じ参照符号は、同一の要素を示す。燃料電池20は、2枚のバイポーラプレート1、1´を備え、それらの間に配置され、通常ではガス拡散層で両面が覆われた高分子電解質膜70または膜電極ユニット(MEA)を有する。
【符号の説明】
【0036】
1、1´ バイポーラプレート
2、2´ ハーフプレート
3 エンボス構造、チャネル構造
4 壁
5 チャネル部分
6 平面主領域
7 側面
8 側面
9 底部
10 エンボス加工部分
11 未変形の金属シート
12 成形ツール
13 ツール下部
14 ツール上部
15 エンボス輪郭
16 ツール上部のツール輪郭
17 ツール下部のツール輪郭
20 燃料電池
30a 流入領域
30b 出口領域
40、40´ 開口部
50 ガス分配構造
70 高分子電解質膜
100 燃料電池システム
α 角度
BE ベース面
d1、d2、d3、d4、d5 肉厚
PE エンボス加工面
PT エンボス加工深さ
PW 投影肉厚
WE ツール平面
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーフプレート(2、2´)を形成するために、平面金属シート(11)において、複数の平行なチャネル部分(5)を備えたチャネル構造(3)をエンボス加工する方法であって、
均一な初期肉厚(d5)を有する前記平面金属シート(11)を提供する工程と、
前記金属シート(11)を成形ツール(12)に挿入する工程であって、未変形の前記平面金属シート(11)によって画定される前記シート(11)のベース面(BE)が、前記成形ツール(12)のツール部分(13)によって画定されるツール平面(WE)に載るように提供される、工程と、
前記複数のチャネル部分(5)を形成する工程であって、側面(7、8)の外側に位置し、かつ、成形プロセス全体にわたって前記ベース面(BE)および/または前記ベース面(BE)に平行な面内に残留する、前記金属シート(11)のエンボス加工部分(9、10)の材料が、前記側面(7、8)に変位するように、各チャネル部分(5)が、2つの互いに平行でない側面(7、8)を有するように形成され、各側面(7、8)が、前記ベース面(BE)から隣接する平行な面まで延在する、工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記チャネル部分(5)の外側に位置し、かつベース面(BE)内にある少なくとも1つのエンボス加工部分(10)の材料が、隣接する前記側面(7、8)の少なくとも1つに押し込まれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ベース面(BE)に平行であり、かつ、2つの側面(7、8)の間に位置しており前記ベース面(BE)に平行であるチャネル部分(5)の底部を構成している平面内の少なくとも1つのエンボス加工部分(9)の材料が、前記少なくとも1つのエンボス加工部分(9)に隣接する前記側面(7、8)の1つに変位することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記形成する工程の結果、前記側面(7、8)の肉厚(d3)が、前記初期肉厚(d5)の70%以上に減少することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記側面(7、8)への材料の前記強制流入の結果、前記ベース面(BE)の法線方向において測定される前記側面(7、8)の投影肉厚(PW)が、前記初期肉厚(d5)の少なくとも105%、最大で150%まで増加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記チャネル構造(5)のエンボス加工深さ(PT)が、前記金属シート(11)の前記初期肉厚(d5)の少なくとも2倍、最大で10倍であるように選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
電気化学セルのバイポーラプレート(1、1´)であって、前記電気化学セルを流れる媒体のための、請求項1に記載の方法に従って製造されるチャネル構造(3)を有する少なくとも1つのハーフプレート(2、2´)を有する、バイポーラプレート(1、1´)。
【請求項8】
前記ハーフプレート(2、2´)が、前記ハーフプレート(2、2´)の最大肉厚の2/3以上である最小肉厚(d2)を有することを特徴とする、請求項7に記載のバイポーラプレート(1、1´)。
【請求項9】
前記最小肉厚(d2)が、前記チャネル構造(5)の前記側面(7、8)の外側に画定されることを特徴とする、請求項8に記載のバイポーラプレート(1、1´)。
【請求項10】
前記最大肉厚(d3)が、前記チャネル構造(5)の前記側面(7、8)の領域内に画定されることを特徴とする、請求項9に記載のバイポーラプレート(1、1´)。
【国際調査報告】