(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】顔面肩甲上腕筋ジストロフィーを処置するための筋標的化複合体およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20241217BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241217BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241217BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241217BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20241217BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20241217BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20241217BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20241217BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241217BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241217BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
C12N15/113 Z
C07K16/28 ZNA
A61K48/00
A61K31/7088
A61P21/04
A61K31/713
A61K31/7125
A61K31/712
A61K47/68
A61K39/395 C
A61K39/395 D
A61K39/395 Y
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527763
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 US2022079604
(87)【国際公開番号】W WO2023086864
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521048956
【氏名又は名称】ダイン セラピューティクス,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】DYNE THERAPEUTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】1560 Trapelo Road,Waltham,MA 02451,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】サブラマニアン,ロメシュ,アール.
(72)【発明者】
【氏名】カタナニ,モハマド,ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィーデン,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】クイン,ブレンダン
(72)【発明者】
【氏名】デジャルダン,コディ,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ナジム,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スプリング,シーン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC09
4C076CC41
4C076EE41
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4C084AA13
4C084MA05
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4C084NA10
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4C084ZA941
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4C085AA13
4C085CC22
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4C085GG01
4C085GG02
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA10
4C086NA13
4C086ZA94
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA54
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示の側面は、DUX4 RNAを標的にするよう設計されたオリゴヌクレオチド、およびそのオリゴヌクレオチドを細胞(例として、筋細胞)へ送達するための標的化複合体、ならびにそれらの使用、具体的には疾患(例として、FSHD)の処置に関する使用に関する。ここで複合体は、DUX4の発現または活性を低減させるよう構成されているオリゴヌクレオチドへ共有結合的に連結された抗トランスフェリン受容体1(TfR1)抗体を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DUX4の発現または活性を低減させるよう構成されているオリゴヌクレオチドへ共有結合的に連結された抗トランスフェリン受容体1(TfR1)抗体を含む複合体であって、ここで抗TfR1抗体は、表2~7に列挙される抗TfR1抗体のいずれかの、重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含み、およびここでオリゴヌクレオチドは、配列番号160または配列番号365で表されるとおりのDUX4配列との相補性の領域を含むアンチセンス鎖を含む、前記複合体。
【請求項2】
抗TfR1抗体は、表3に列挙される抗TfR1抗体のいずれかの重鎖可変領域(VH)よび軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
抗TfR1抗体は、配列番号76と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号75と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、任意にここで抗TfR1抗体が、配列番号76のアミノ酸配列からなるVHおよび配列番号75のアミノ酸配列からなるVLを含む、請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項4】
抗TfR1抗体が、Fabであり、任意にここでFabが、表5に列挙される抗TfR1 Fabのいずれかの重鎖および軽鎖を含む、請求項1または請求項2に記載の複合体。
【請求項5】
Fabが、配列番号101と少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む重鎖および/または配列番号90と少なくとも85%同一のアミノ酸配列を不意組む軽鎖を含み、任意にここでFabが、配列番号101のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号90のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
オリゴヌクレオチドが、長さが20~30ヌクレオチドである、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項7】
オリゴヌクレオチドが、配列番号160または配列番号365で表されるとおりのDUX4配列に対し、少なくとも15の連続したヌクレオチドの相補性の領域を含み、任意にここでオリゴヌクレオチドが、配列番号161~168または213~288のいずれか1つで表されるとおりのDUX4配列に対し、少なくとも15の連続したヌクレオチドの相補性の領域を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項8】
オリゴヌクレオチドが、配列番号169~176または289~364のいずれか1つの少なくとも15の連続したヌクレオチドを含み、ここで各チミン塩基(T)が、独立してかつ任意に、ウラシル塩基(U)に置き換えられていてもよく、および各Uが、独立してかつ任意に、Tに置き換えられていてもよく、任意にここでオリゴヌクレオチドが、配列番号169~176または289~364のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項9】
オリゴヌクレオチドが、配列番号151のヌクレオチド配列を含まない、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項10】
オリゴヌクレオチドがさらに、アンチセンス鎖へハイブリダイズすることで二本鎖siRNAを形成するセンス鎖を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項11】
オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間連結を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項12】
オリゴヌクレオチドが、1以上の修飾ヌクレオシドを含み、任意にここで1以上の修飾ヌクレオシドは、2'-修飾ヌクレオシドである、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項13】
抗体およびオリゴヌクレオチドが、リンカーを介して共有結合的に連結されており、任意にここでリンカーが、切断可能なリンカーであり、さらに任意にここでリンカーが、バリン-シトルリン配列を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項14】
筋細胞中のDUX4発現を低減させる方法であって、方法が、筋細胞を、オリゴヌクレオチドの筋細胞への内在化を促進するのに有効な量の、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合体と接触させることを含む、前記方法。
【請求項15】
細胞が、in vitroにある、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
細胞が対象中にあり、任意にここで対象がヒトである、請求項14記載の方法。
【請求項17】
顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHD)を処置する方法であって、方法が、請求項1~13のいずれか一項に記載の有効量の複合体を、これを必要とする対象へ投与することを含み、ここで対象が、DUX4タンパク質の異常な産生を有し、任意にここで対象がヒトである、前記方法。
【請求項18】
対象が、第4染色体中D4Z4反復の1以上の欠失を有する、請求項16~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
対象が、10、9、8、7、6、5、4、3、2、もしくは1のD4Z4反復を有するか、または一切D4Z4反復を有さない、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
配列番号169~176または289~364のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、オリゴヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35U.S.C.§119(e)の下、2021年11月1日に出願された“MUSCLE TARGETING COMPLEXES AND USES THEREOF FOR TREATING FACIOSCAPULOHUMERAL MUSCULAR DYSTROPHY”と題する米国仮出願第63/278,882号;2021年11月12日に出願された“TARGETING COMPLEXES AND USES THEREOF FOR TREATING FACIOSCAPULOHUMERAL MUSCULAR DYSTROPHY”と題する米国仮出願第63/278,993号;2022年2月22日に出願された“MUSCLE TARGETING COMPLEXES AND USES THEREOF FOR TREATING FACIOSCAPULOHUMERAL MUSCULAR DYSTROPHY”と題する米国仮出願第63/312,617号;および2022年2月22日に出願された“TARGETING COMPLEXES AND USES THEREOF FOR TREATING FACIOSCAPULOHUMERAL MUSCULAR DYSTROPHY”と題する米国仮出願第63/312,633号に対し利益を主張するものであるが、これら各々の内容はそれら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の分野
本出願は、分子ペイロード(molecular payloads)(例として、オリゴヌクレオチド)を細胞へ送達するための標的化複合体、およびその使用、具体的には疾患の処置に関する使用に関する。
【0003】
電子配列表への参照
電子配列表(D082470074WO00-SEQ-CBD.xml;サイズ:467,675バイト;および作成日2022年11月3日)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
筋ジストロフィー(MD)は、進行性の衰弱および筋肉量の減少を特徴とする一群の疾患である。これらの疾患は、健康な筋組織を形成するのに必要とされるタンパク質をコードする遺伝子における突然変異によって引き起こされる。顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)は、主に顔、肩甲骨、上腕の筋肉に影響を及ぼす優性遺伝型のMDである。FSHDの他の症状は、腹筋の衰弱、網膜の異常、難聴、ならびに関節の痛みおよび炎症を包含する。FSHDは、成人と子どもとの両方に影響を及ぼす9タイプのMDの中で最も多く見られ、世界中での発生率は8,300人に約1人である。FSHDは、機能が知られていないタンパク質であるダブルホメオボックス4(DUX4)の異常な産生によって引き起こされる。DUX4タンパク質をコードするDUX4遺伝子は、4番染色体上D4Z4反復領域に位置付けられており、典型的には胎児の発生においてのみ発現され、その後それは、DUX4遺伝子を取り囲んでコンパクトにする(compact)D4Z4反復の過剰メチル化によって抑えられる。FSHDの2つのタイプ(types)、1型(Type 1)および2型(Type 2)が記載されている。約95%のケースを占める1型は、4番染色体上D4Z4反復の欠失に関連する。罹患していない個体は一般に、4番染色体のサブテロメア領域中に並んだ10より多くの反復を有するのに対し、FSHDの最も一般的な形態(FSHD1)は、アレイの10より少ない反復への収縮(contraction)によって引き起こされ、骨格筋中のDUX4のエピジェネティックな抑止の減少および変化に富んだ発現に関連する。4q染色体の2つのアレルバリアント(4qAおよび4qB)が、D4Z4の遠位領域に存在する。4qAは、機能的ポリアデニル化コンセンサス部位とシスにある。4qAアレル上の収縮は、DUX4転写産物がポリアデニル化されて翻訳されることで安定なタンパク質になるので、病原性がある。約5%のケースを占める2型FSHDは、18番染色体上SMCHD1遺伝子の突然変異に関連する。対症療法と疾患の症状に対処する処置との他に、FSHDへの有効な治療はない。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
いくつかの側面において、本開示は、DUX4 RNAを標的にするよう設計されたオリゴヌクレオチドを提供する。いくつかの態様において、本開示は、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHD)の病的状態(筋萎縮症、炎症、ならびに減少した分化能および酸化ストレスを包含する)の特色に関連するDUX4 mRNAおよび/またはタンパク質のレベルを低減するのに有用である、DUX4 RNAと相補的なオリゴヌクレオチドを提供する。いくつかの態様において、本明細書に提供されるオリゴヌクレオチドは、DUX4 RNAの3'UTRを標的にする。いくつかの態様において、本明細書に提供されるオリゴヌクレオチドは、DUX4 RNAの分解に向かうように設計されている。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、DUX4タンパク質を産生するDUX4 RNAの翻訳を遮断するように設計されている。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、所望のバイオアベイラビリティおよび/または血清安定性という特性を有するよう設計されている。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、所望の結合親和性という特性を有するよう設計されている。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、所望される毒性および/または免疫原性のプロファイルを有するよう設計されている。
【0006】
いくつかの側面に従うと、本開示は、分子ペイロード(例として、本明細書に記載のDUX4-標的化オリゴヌクレオチド)を筋細胞(例として、初代筋芽細胞)へ送達することを目的として、それら細胞を標的にする複合体を提供する。いくつかの態様において、本明細書に提供される複合体は、例として顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)を有するかまたはこれを有すると疑われる対象において、DUX4の発現または活性を阻害する分子ペイロードを送達するのに殊更有用である。結果的に、いくつかの態様において、本明細書に提供される複合体は、分子ペイロードを筋細胞へ送達することを目的として、筋細胞表面上の受容体へ特異的に結合する筋標的化剤(muscle-targeting agents)(例として、筋標的化抗体(muscle targeting antibodies))を含む。いくつかの態様において、複合体は、受容体に媒介される内在化を介して細胞中へ取り入れられ、これを受け分子ペイロードは放出されて、細胞内部で機能を果たしてもよい。例えば、オリゴヌクレオチドを送達するように改変された複合体は、オリゴヌクレオチドが筋細胞中DUX4遺伝子発現を阻害し得るように、オリゴヌクレオチドを放出してもよい。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、複合体のオリゴヌクレオチドと筋標的化剤とを接続する共有結合性リンカーのエンドソーム切断によって放出される。
【0007】
本開示のいくつかの態様は、DUX4の発現または活性を低減させるよう構成されているオリゴヌクレオチドへ共有結合的に連結された抗トランスフェリン受容体1(TfR1)抗体を含む複合体を提供し、ここで抗TfR1抗体は、表2~7に列挙される抗TfR1抗体のいずれかの、重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含み、およびここでオリゴヌクレオチドは、配列番号160または配列番号365で表されるとおりのDUX4配列との相補性の領域を含むアンチセンス鎖を含む。
【0008】
いくつかの態様において、抗TfR1抗体は、表3に列挙される抗TfR1抗体のいずれかの重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの態様において、抗TfR1抗体は、配列番号76と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号75と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの態様において、抗TfR1抗体は、配列番号76のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号75のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの態様において、抗TfR1抗体はFabであり、任意にここでFabは、表5に列挙される抗TfR1 Fabのいずれかの重鎖および軽鎖を含む。いくつかの態様において、Fabは、配列番号101と少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む重鎖および/または配列番号90と少なくとも85%同一のアミノ酸配列を不意組む軽鎖を含む。いくつかの態様において、Fabは、配列番号101のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号90のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0009】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、長さが20~30ヌクレオチドである。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、配列番号160または配列番号365で表されるとおりのDUX4配列に対して少なくとも15の連続した(consecutive)ヌクレオチドの相補性の領域を含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、配列番号161~168または213~288のいずれか1つで表されるとおりのDUX4配列に対して少なくとも15の連続したヌクレオチドの相補性の領域を含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、配列番号169~176または289~364のいずれか1つの少なくとも15の連続したヌクレオチドを含み、ここで各チミン塩基(T)は、独立してかつ任意に、ウラシル塩基(U)に置き換えられていてもよく、および各Uは、独立してかつ任意に、Tに置き換えられていてもよい。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、配列番号151のヌクレオチド配列を含まない。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、配列番号169~176または289~364のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。
【0010】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドはさらに、アンチセンス鎖へハイブリダイズすることで二本鎖siRNAを形成するセンス鎖を含む。
【0011】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間連結を含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、1以上の修飾ヌクレオシドを含む。いくつかの態様において、1以上の修飾ヌクレオシドは、2'-修飾ヌクレオシドである。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)である。
【0012】
いくつかの態様において、抗体およびオリゴヌクレオチドは、リンカーを介して共有結合的に連結されている。いくつかの態様において、リンカーは、切断可能なリンカーである。いくつかの態様において、リンカーは、バリン-シトルリン配列を含む。
【0013】
本開示の他の側面は、筋細胞中DUX4発現を低減させる方法を提供するが、方法は、筋細胞を、オリゴヌクレオチドの筋細胞への内在化を促進するのに有効な量の本明細書に記載の複合体と接触させることを含む。いくつかの態様において、細胞は、in vitroにある。いくつかの態様において、細胞は、対象中にある。いくつかの態様において、対象は、ヒトである。
【0014】
さらに本明細書に提供されるのは、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHD)を処置する方法であって、方法は、本明細書に記載の有効量の複合体を、これを必要とする対象へ投与することを含み、ここで対象は、DUX4タンパク質の異常な産生を有する。いくつかの態様において、対象は、第4染色体中D4Z4反復の1以上の欠失を有する。いくつかの態様において、対象は、10以下のD4Z4反復を有する。いくつかの態様において、対象は、9、8、7、6、5、4、3、2、または1のD4Z4反復を有する。いくつかの態様において、対象は、D4Z4反復を一切有さない。
【0015】
さらに本明細書に提供されるのは、配列番号169~176または289~364のいずれか1つのヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドである。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面の簡単な記載
【
図1】
図1は、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(配列番号151)へ抱合された抗TfR Fab 3M12 VH4/Vk3を含有する抱合体が、MDB3L2、TRIM43、およびZSCAN4の減少したmRNA発現によって指し示されるとおり、C6(AB1080)不死化FSHD1細胞においてDUX4トランスクリプトームを阻害したことを示す。抱合体は、未抱合DUX4標的化オリゴヌクレオチドと比べ、DUX4トランスクリプトームの阻害において秀でた活性を示した。
【0017】
【
図2】
図2A_2Bは、遺伝子ノックダウンに係る用量応答曲線を示す。
図2Aは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(配列番号151)へ抱合された抗TfR Fab 3M12 VH4/Vk3を含有する抱合体で処置されたC6(AB1080)不死化FSHD1細胞におけるMBD3L2ノックダウンを示す。
図2Bは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(配列番号151)へ抱合された抗TfR Fab 3M12 VH4/Vk3を含有する抱合体で処置されたFSHDペイシェントの筋管におけるMBD3L2、TRIM43、およびZSCAN4のノックダウンを示す。
図2Bは、
図2Aに示されるMBD3L2データを包含する。
【0018】
【
図3】
図3は、30mg/kg未抱合(「裸の」)オリゴヌクレオチド、またはDUX4標的化オリゴヌクレオチドへ共有結合的に連結された抗TfR1 Fab 3M12 VH4/Vk3を含む抱合体(「Fab-オリゴヌクレオチド抱合体」)と同等の3、10、もしくは30mg/kgオリゴヌクレオチドの投与後の経時的な、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(配列番号151)の霊長目非ヒト動物(non-human primate)の血漿レベルを示す。
【0019】
【
図4】
図4は、30mg/kg未抱合(「裸の」)オリゴヌクレオチド、またはDUX4標的化オリゴヌクレオチドへ共有結合的に連結された抗TfR1 Fab 3M12 VH4/Vk3を含む抱合体(「Fab-オリゴヌクレオチド抱合体」)と同等の3、10、もしくは30mg/kgオリゴヌクレオチドの投与から2週間後に霊長目非ヒト動物筋組織試料において測定された、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(配列番号151)の組織レベルを示す。
【0020】
【
図5】
図5は、30mg/kg未抱合オリゴヌクレオチド(「オリゴ」)、またはDUX4標的化オリゴヌクレオチドへ共有結合的に連結された抗TfR1 Fab 3M12 VH4/Vk3を含む抱合体(「抱合体」)と同等の3、10、もしくは30mg/kgオリゴヌクレオチドの投与から、1週間後に生検によって(左5つのバー)、あるいは2週間に剖検によって(右5つのバー)、採取された霊長目非ヒト動物筋組織試料において測定された、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(配列番号151)の組織レベルを示す。
【0021】
【
図6】
図6は、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(表8中#8、#1、または#2、夫々配列番号176、169、170に対応する)へ抱合された抗TfR Fab 3M12 VH4/Vk3を含有する抱合体と、対照DUX4標的化オリゴヌクレオチド(配列番号151に対応する)とが、DUX4トランスクリプトームマーカー(MBD3L2、TRIM43、ZSCAN4)の発現レベルを低減させたことを示し、このことは抱合体がFSHDペイシェント細胞のDUX4発現レベルをin vitroで低減させたことを指し示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な記載
いくつかの側面において、本開示は、DUX4 RNAを標的にするよう設計されたオリゴヌクレオチドを提供する。いくつかの態様において、本開示は、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHD)の病的状態(筋萎縮症、炎症、ならびに減少した分化能および酸化ストレスを包含する)の特色に関連するDUX4 mRNAおよび/またはタンパク質のレベルを低減するのに有用である、DUX4 RNAと相補的なオリゴヌクレオチドを提供する。いくつかの態様において、本明細書に提供されるオリゴヌクレオチドは、DUX4 RNAの3'UTRを標的にする。いくつかの態様において、本明細書に提供されるオリゴヌクレオチドは、DUX4 RNAの分解に向かうように設計されている。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、DUX4タンパク質を産生するDUX4 RNAの翻訳を遮断するように設計されている。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、所望のバイオアベイラビリティおよび/または血清安定性という特性を有するよう設計されている。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、所望の結合親和性という特性を有するよう設計されている。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、所望される毒性および/または免疫原性のプロファイルを有するよう設計されている。
【0023】
いくつかの側面において、本開示は、オリゴヌクレオチドの筋細胞への有効な送達のためのDUX4標的化オリゴヌクレオチドへ共有結合的に連結された筋標的化剤を含む複合体を提供する。いくつかの態様において、複合体は、例として希少な筋疾患を有するかまたはこれを有すると疑われる対象において、筋細胞における標的遺伝子の発現または活性を阻害する分子ペイロードを送達するのに殊更有用である。例えば、いくつかの態様において、DUX4を標的にするための複合体が、FSHDを有する対象を処置するために提供される。いくつかの態様において、本明細書に提供される複合体は、4番染色体上1以上のD4Z4反復の欠失を有する対象においてDUX4の発現を阻害するオリゴヌクレオチドを含む。
【0024】
定義された用語の記載を包含する本開示のさらなる側面は、下に提供される。
【0025】
I.定義
投与すること:本明細書に使用されるとき、用語「投与すること」または「投与」は、生理学的におよび/または(例として、および)薬理学的に有用な様式で対象へ複合体を提供すること(例として、対象の疾病を処置すること)を意味する。
【0026】
およそ:本明細書に使用されるとき、用語「およそ」または「約」は、着目した1以上の値へ適用されるとき、規定された参照値と同様の値を指す。ある態様において、用語「およそ」または「約」は、別様に述べられない限りまたは文脈から明らかでない限り(かかる数字が実行可能な値の100%を超えるであろう場合を除く)、規定された参照値のプラスマイナス(超または未満)の15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはこれ未満に収まる広範な値を指す。
【0027】
抗体:本明細書に使用されるとき、用語「抗体」は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメインまたは少なくとも1つの抗原決定基、例として抗原へ特異的に結合するパラトープ、を包含するポリペプチドを指す。いくつかの態様において、抗体は、完全長の抗体である。いくつかの態様において、抗体は、キメラ抗体である。いくつかの態様において、抗体は、ヒト化抗体である。しかしながら、いくつかの態様において、抗体は、Fabフラグメント、Fab'フラグメント、F(ab')2フラグメント、Fvフラグメント、またはscFvフラグメントである。いくつかの態様において、抗体は、ラクダ科動物の抗体に由来するナノボディー、またはサメ抗体に由来するナノボディーである。いくつかの態様において、抗体は、二重特異性抗体である。いくつかの態様において、抗体は、ヒト生殖細胞系配列を有するフレームワークを含む。別の態様において、抗体は、IgG、IgG1、IgG2、IgG2A、IgG2B、IgG2C、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgM、およびIgEの定常領域からなる群から選択される重鎖定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体は、重(H)鎖可変領域(本明細書中VHと略される)、および/または(例として、および)軽(L)鎖可変領域(本明細書中VLと略される)を含む。いくつかの態様において、抗体は、定常領域、例としてFc領域を含む。免疫グロブリン定常領域は、重鎖または軽鎖の定常領域を指す。ヒトIgG重鎖および軽鎖の定常領域アミノ酸配列およびそれらの機能的バリエーションは知られている。重鎖に関し、いくつかの態様において、本明細書に記載の抗体の重鎖は、アルファ(α)、デルタ(Δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、またはミュー(μ)重鎖であり得る。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗体の重鎖は、ヒトのアルファ(α)、デルタ(Δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、またはミュー(μ)重鎖を含み得る。具体的な態様において、本明細書に記載の抗体は、ヒトのガンマ1 CH1ドメイン、CH2ドメイン、および/または(例として、および)CH3ドメインを含む。いくつかの態様において、VHドメインのアミノ酸配列は、ヒトガンマ(γ)重鎖定常領域のアミノ酸配列、たとえば当該技術分野において知られているいずれも含む。ヒト定常領域配列の非限定例は当該技術分野において記載されており、例として米国特許第5,693,780号および上記のKabat E A et al.,(1991)を見よ。いくつかの態様において、VHドメインは、本明細書に提供される可変鎖定常領域のいずれかと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、抗体は修飾されており、例としてグリコシル化、リン酸化、SUMO化、および/または(例として、および)メチル化を介して修飾されている。いくつかの態様において、抗体は、1以上の糖または炭水化物分子へ抱合されたグリコシル化抗体である。いくつかの態様において、1以上の糖または炭水化物分子は、N-グリコシル化、O-グリコシル化、C-グリコシル化、グリピエーション(GPIアンカー付着)、および/または(例として、および)ホスホグリコシル化を介し、抗体へ抱合されている。いくつかの態様において、1以上の糖または炭水化物分子は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、またはグリカンである。いくつかの態様において、1以上の糖または炭水化物分子は、分枝オリゴ糖類または分枝グリカンである。いくつかの態様において、1以上の糖または炭水化物分子は、マンノース単位、グルコース単位、N-アセチルグルコサミン単位、N-アセチルガラクトサミン単位、ガラクトース単位、フコース単位、またはホスホ脂質単位を包含する。いくつかの態様において、抗体は、リンカーポリペプチドまたは免疫グロブリン定常領域へ連結された本開示の1以上の抗原結合性フラグメントを含むポリペプチドを含む構築物である。リンカーポリペプチドは、ペプチド結合によって結び合わされた2以上のアミノ酸残基を含み、かつ1以上の抗原結合部と連結させるために使用される。リンカーポリペプチドの例は報告されている(例としてHolliger,P.,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448;Poljak,R.J.,et al.(1994)Structure 2:1121-1123を見よ)。なおもさらに、抗体は、抗体もしくは抗体部分の、1以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合または非共有結合の結び付きによって形成される、より大きな免疫接着分子の一部であってもよい。かかる免疫接着分子の例は、四量体scFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov,S.M.,et al.(1995)Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101)、ならびに二価のかつビオチン化されたscFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチド、およびC末ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov,S.M.,et al.(1994)Mol.Immunol.31:1047-1058)を包含する。
【0028】
CDR:本明細書に使用されるとき、用語「CDR」は、抗体可変配列内の相補性決定領域を指す。典型的な抗体分子は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、これらは大抵、抗原結合に関与する。VH領域およびVL領域は、「フレームワーク領域」(「FR」)として知られているより保存された領域が散在する、「相補性決定領域」(「CDR」)としてもまた知られている超可変領域にさらに細分され得る。各VHおよびVLは、典型的には、アミノ末端(terminus)からカルボキシ末端へ以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された3つのCDRおよび4つのFRから構成されている。フレームワーク領域およびCDRの範囲は、当該技術分野において知られている方法論を使用し、例えばKabat定義、IMGT定義、Chothia定義、AbM定義、および/または(例として、および)contact定義によって正確に同定され得、これらはすべて当該当技術分野において周知である。例として、Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242;IMGT(登録商標),the international ImMunoGeneTics information system(登録商標)http://www.imgt.org,Lefranc,M.-P.et al.,Nucleic Acids Res.,27:209-212(1999);Ruiz,M.et al.,Nucleic Acids Res.,28:219-221(2000);Lefranc,M.-P.,Nucleic Acids Res.,29:207-209(2001);Lefranc,M.-P.,Nucleic Acids Res.,31:307-310(2003);Lefranc,M.-P.et al.,In Silico Biol.,5,0006(2004)[Epub],5:45-60(2005);Lefranc,M.-P.et al.,Nucleic Acids Res.,33:D593-597(2005);Lefranc,M.-P.et al.,Nucleic Acids Res.,37:D1006-1012(2009);Lefranc,M.-P.et al.,Nucleic Acids Res.,43:D413-422(2015);Chothia et al.,(1989)Nature 342:877;Chothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901-917,Al-lazikani et al(1997)J.Molec.Biol.273:927-948;およびAlmagro,J.Mol.Recognit.17:132-143(2004)を見よ。またhgmp.mrc.ac.ukおよびbioinf.org.uk/absも見よ。本明細書に使用されるとき、CDRは、当該技術分野において知られているいずれかの方法によって定義されるCDRを指してもよい。同じCDRを有する2つの抗体は、同じ方法、例えばIMGT定義によって決定されるとき、2つの抗体がそのCDRの同じアミノ酸配列を有することを意味する。
【0029】
重鎖および軽鎖の可変領域の各々には3つのCDRがあり、これらは可変領域の各々につきCDR1、CDR2、およびCDR3と指定される。用語「CDRセット」は、本明細書に使用されるとき、抗原に結合することが可能な単一の可変領域に生じる3つのCDRの一群を指す。これらのCDRの厳密な境界は、種々の系に従い異なって定義されている。Kabat(Kabat et al.,Sequence of Proteins of Immunological Interest(国立衛生研究所,Bethesda,Md.(1987)および(1991))によって記載される系は、抗体のいずれかの可変領域へ適用可能な一義的な残基ナンバリング系を提供するのみならず、3つのCDRを定義する正確な残基境界をも提供する。これらのCDRは、Kabat CDRと称されることもある。CDRの下位部(sub-portion)は、L1、L2、およびL3、またはH1、H2、およびH3と指定されることもあり、ここで「L」および「H」は夫々、軽鎖領域および重鎖領域を指定する。これらの領域は、Kabat CDRと重複する境界を有するChothia CDRと称されることもある。Kabat CDRと重複するCDRを定義する他の境界は、Padlan(FASEB J.9:133-139(1995))およびMacCallum(J Mol Biol 262(5):732-45(1996))によって記載されている。なおも他のCDR境界定義は、上の系の1つに厳重に倣わなくてもよいが、それでもなおKabat CDRと重複することがあり、具体的な残基もしくは残基の群またはCDR全体でさえも抗原結合に有意に影響するものではないという予測あるいは実験的知見を踏まえ、それらは短縮または伸長されてもよい。本明細書に使用される方法は、これらの系のいずれかに従って定義されたCDRを利用してもよい。CDR定義系の例が表1に提供される。
表1. CDRの定義
【表1】
1 IMGT(登録商標),the international ImMunoGeneTics information system(登録商標),imgt.org,Lefranc,M.-P.et al.,Nucleic Acids Res.,27:209-212(1999)
2 Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242
3 Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))
【0030】
CDR接合(CDR-grafted)抗体:用語「CDR接合抗体」は、マウス重鎖および軽鎖可変領域を有するがマウスCDRの1以上(例として、CDR3)がヒトCDR配列に置き換えられている抗体などの、ある種からの重鎖および軽鎖可変領域配列を含むがそのVHおよび/またはVLのCDR領域の1以上の配列が別の種のCDR配列に置き換えられている抗体を指す。
【0031】
キメラ抗体:用語「キメラ抗体」は、ヒト定常領域へ連結されたマウス重鎖および軽鎖可変領域を有する抗体などの、ある種からの重鎖および軽鎖可変領域配列と別の種からの定常領域配列を含む抗体を指す。
【0032】
相補的(な):本明細書に使用されるとき、用語「相補的(な)」は、2ヌクレオチド間または2組のヌクレオチド間の正確な対形成のための能力を指す。とりわけ、相補的(な)は、2ヌクレオシド間または2組のヌクレオシド間に結合をもたらす水素結合対形成の程度を特徴付ける用語である。例えば、ある位置のオリゴヌクレオチドの塩基が、対応する位置の標的核酸(例として、mRNA)の塩基と水素結合することが可能である場合、そのとき塩基は、その位置にて互いに相補的であると見なされる。塩基対合は、標準的な(canonical)Watson-Crick塩基対合と非Watson-Crick塩基対合(例として、Wobble塩基対合およびHoogsteen塩基対合)との両方を包含してもよい。例えば、いくつかの態様において、相補的な塩基対合として、アデノシン型塩基(A)は、チミジン型塩基(T)またはウラシル型塩基(U)に相補的であり、シトシン型塩基(C)は、グアノシン型塩基(G)に相補的であり、3-ニトロピロールまたは5-ニトロインドールなどのユニバーサル塩基は、いずれのA、C、U、またはTへハイブリダイズし得、これらに相補的であると見なされる。イノシン(I)はまた、当該技術分野においてユニバーサル塩基であるとも見なされており、いずれのA、C、U、またはTに相補的であると見なされる。
【0033】
保存アミノ酸置換:本明細書に使用されるとき、「保存アミノ酸置換」は、アミノ酸置換がなされたタンパク質の相対的な電荷またはサイズの特徴を変更しないアミノ酸置換を指す。バリアントは、当業者に知られているポリペプチド配列を変更するための方法に従って調製され得、たとえば、かかる方法をまとめた参考文献、例としてMolecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook,et al.,eds.,Fourth Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,2012、またはCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel,et al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkから見出される。アミノ酸の保存的置換は、以下の群:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;および(g)E、D内のアミノ酸に対してなされる置換を包含する。
【0034】
共有結合的に連結された:本明細書に使用されるとき、用語「共有結合的に連結された」は、少なくとも1つの共有結合を介して一緒に連結されている2以上の分子の特徴を指す。いくつかの態様において、2つの分子は一緒に、分子間リンカーとして働く単結合(例として、ジスルフィド結合またはジスルフィド架橋)によって共有結合的に連結され得る。しかしながら、いくつかの態様において、複数の共有結合を通して2以上の分子を一緒に結び合わせるリンカーとして働く分子を介して、2以上の分子は一緒に、共有結合的に連結され得る。いくつかの態様において、リンカーは、切断可能なリンカーであってもよい。しかしながら、いくつかの態様において、リンカーは、切断不能なリンカーであってもよい。
【0035】
交差反応すること:本明細書に使用されるとき、および標的化剤(例として、抗体)の文脈において、用語「交差反応すること」は、同様のタイプまたはクラスの1より多くの抗原(例として、複数のホモログ、パラログ、もしくはオルソログの抗原)へ、同様の親和性または結合活性で特異的に結合することが可能な剤の特性を指す。例えば、いくつかの態様において、同様のタイプまたはクラスのヒトおよび霊長目非ヒト動物の抗原(例として、ヒトトランスフェリン受容体および霊長目非ヒト動物のトランスフェリン受容体)に対して交差反応する抗体は、ヒト抗原および霊長目非ヒト動物の抗原へ、同様の親和性または結合活性で結合することが可能である。いくつかの態様において、抗体は、同様のタイプまたはクラスのヒト抗原および齧歯類動物(rodent)抗原に対して交差反応する。いくつかの態様において、抗体は、同様のタイプまたはクラスの齧歯類動物の抗原および霊長目非ヒト動物の抗原に対して交差反応する。いくつかの態様において、抗体は、同様のタイプまたはクラスのヒト抗原、霊長目非ヒト動物の抗原、および齧歯類動物の抗原に対して交差反応する。
【0036】
DUX4:本明細書に使用されるとき、用語「DUX4」は、胎児発生最中および成体オス(男性)の精巣において一般に発現されるタンパク質であるダブルホメオボックス4をコードする遺伝子を指す。いくつかの態様において、DUX4は、ヒト(Gene ID:100288687)、霊長目非ヒト動物(例として、Gene ID:750891、Gene ID:100405864)、または齧歯類動物の遺伝子(例として、Gene ID:306226)であってもよい。ヒトにおいて、胎児発生および精巣以外でのDUX4遺伝子の発現は、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーに関連する。加えて、異なるタンパク質アイソフォームをコードする複数のヒト転写産物バリアント(例として、GenBank RefSeq受託番号:NM_001293798.2、NM_001306068.2、NM_001363820.1の下に注釈が付されるとおり)が特徴付けられている。
【0037】
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD):本明細書に使用されるとき、用語「顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)」は、主に顔、肩甲骨、および上腕の筋肉における筋肉量の減少および筋萎縮を特徴とする、DUX4遺伝子またはSMCHD1遺伝子における突然変異によって引き起こされる遺伝的疾患を指す。疾患の2つのタイプ、1型および2型が記載されている。1型は、DUX4遺伝子を含有する4番染色体アレルのバリアント4qA上のD4Z4反復領域中の欠失に関連する。2型は、SMCHD1遺伝子における突然変異に関連する。1型と2型との両方のFSHDとも、胎児発生後、精巣以外でのDUX4タンパク質の異常な産生によって特徴付けられる。顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、疾患の遺伝的根拠、および関連する症状は、当該技術分野において記載されている(例として、Campbell,A.E.,et al.,"Facioscapulohumeral dystrophy:Activating an early embryonic transcriptional program in human skeletal muscle" Human Mol Genet.(2018);およびTawil,R."Facioscapulohumeral muscular dystrophy"Handbook Clin.Neurol.(2018),148:541-548を見よ。)FSHD1型は、Online Mendelian Inheritance in Man(OMIM)Entry #158900に関連する。FSHD2型は、OMIM Entry #158901に関連する。
【0038】
フレームワーク:本明細書に使用されるとき、用語「フレームワーク」または「フレームワーク配列」は、CDRを差し引いた可変領域の残りの配列を指す。CDR配列の厳密な定義が種々の系によって決定され得ることから、フレームワーク配列の意味は、相応に異なる解釈へ供される。6つのCDR(軽鎖のCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3、ならびに重鎖のCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)もまた、軽鎖および重鎖上のフレームワーク領域を各鎖上の4つの下位領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)に分け、ここでCDR1はFR1とFR2との間に、CDR2はFR2とFR3との間に、CDR3はFR3とFR4との間に位置付けられる。具体的な下位領域をFR1、FR2、FR3、またはFR4と特定しないフレームワーク領域は、他によって言及されるとき、天然に存在する単一の免疫グロブリン鎖の可変領域内の組み合わされたFR(複数)を表す。本明細書に使用されるとき、FRは4つの下位領域のうち1つを表し、FR(複数)はフレームワーク領域を含有する4つの下位領域のうち2つ以上を表す。ヒト重鎖および軽鎖のアクセプター配列は、当該技術分野において知られている。一態様において、当該技術分野において知られているアクセプター配列は、本明細書に開示の抗体に使用されていてもよい。
【0039】
ヒト抗体:用語「ヒト抗体」は、本明細書に使用されるとき、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を包含することが意図される。本開示のヒト抗体は、例えばCDR、とりわけCDR3において、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例として、in vitroでのランダム突然変異誘発もしくは部位特異的変異誘発によって、またはin vivoでの体細胞突然変異によって導入された突然変異)を包含していてもよい。しかしながら、用語「ヒト抗体」は、本明細書に使用されるとき、別の哺乳動物種、たとえばマウスの生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上へ接合された抗体を包含することは意図されない。
【0040】
ヒト化抗体:用語「ヒト化抗体」は、非ヒト種(例として、マウス)からの重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列を含むが、VH配列および/または(例として、および)VL配列の少なくとも一部がより「ヒト様」に、すなわち、よりヒト生殖細胞系列可変配列と同様になるように変更されている抗体を指す。ヒト化抗体のあるタイプは、ヒトCDR配列が、非ヒトのVH配列およびVL配列中へ導入されることで対応する非ヒトCDR配列と置き換えられたCDR接合抗体である。一態様において、ヒト化抗TfR1受容体抗体および抗原結合部分が提供される。かかる抗体は、既存のハイブリドーマ技術、これに続きin vitroの遺伝子工学を使用するヒト化(KasaianらのPCT刊行物第WO 2005/123126 A2号に開示されたものなど)を使用し、マウス抗TfR1抗体を得ることによって生成されてもよい。
【0041】
内在化する細胞表面受容体:本明細書に使用されるとき、用語「内在化する細胞表面受容体」は、例として外部刺激の際(例としてリガンドが受容体へ結合する)、細胞によって内在化される細胞表面受容体を指す。いくつかの態様において、内在化する細胞表面受容体は、エンドサイトーシスによって内在化される。いくつかの態様において、内在化する細胞表面受容体は、クラスリン媒介エンドサイトーシスによって内在化される。しかしながら、いくつかの態様において、内在化する細胞表面受容体は、クラスリンに依存しない経路、例えば、食作用、マクロピノサイトーシス、カベオラ-およびラフト-媒介取り込み、またはクラスリンに依存しない構成的エンドサイトーシスなどによって内在化される。いくつかの態様において、内在化する細胞表面受容体は、細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、および/または(例として、および)細胞外ドメインを含み、これらは任意にリガンド結合ドメインをさらに含んでいてもよい。いくつかの態様において、細胞表面受容体は、リガンド結合後に細胞によって内在化されるようになる。いくつかの態様において、リガンドは、筋標的化剤または筋標的化抗体であってもよい。いくつかの態様において、内在化する細胞表面受容体は、トランスフェリン受容体である。
【0042】
単離された抗体:「単離された抗体」は、本明細書に使用されるとき、異なる抗原特異性を有する他の抗体が実質的にない抗体を指すことが意図される(例として、トランスフェリン受容体に特異的に結合する単離された抗体は、トランスフェリン受容体以外の抗原に特異的に結合する抗体が実質的にない)。しかしながら、トランスフェリン受容体複合体に特異的に結合する単離された抗体は、他の種からのトランスフェリン受容体分子などの他の抗原への交差反応性を有していてもよい。その上、単離された抗体は、他の細胞の材料および/または(例として、および)化学物質が実質的になくてもよい。
【0043】
Kabatナンバリング:用語「Kabatナンバリング」、「Kabat定義」、および「Kabat標識化」は、本明細書において互換的に使用される。これらの用語は、当該技術分野において認識されているが、抗体またはその抗原結合部分の重鎖および軽鎖の可変領域中の他のアミノ酸残基より可変(すなわち、高可変)であるアミノ酸残基をナンバリングする系を指す(Kabat et al.(1971)Ann.NY Acad,Sci.190:382-391およびKabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242)。重鎖可変領域において、超可変領域は、CDR1につきアミノ酸位置31から35まで、CDR2につきアミノ酸位置50から65まで、およびCDR3につきアミノ酸位置95から102まで及ぶ。軽鎖可変領域において、超可変領域は、CDR1につきアミノ酸位置24から34まで、CDR2につきアミノ酸位置50から56まで、およびCDR3につきアミノ酸位置89から97まで及ぶ。
【0044】
分子ペイロード:本明細書に使用されるとき、用語「分子ペイロード」は、生物学的結果(biological outcome)をモジュレートするよう機能する分子または種を指す。いくつかの態様において、分子ペイロードは、筋標的化剤へ連結されているか、または別様に結び付けられている。いくつかの態様において、分子ペイロードは、小分子、タンパク質、ペプチド、核酸、またはオリゴヌクレオチドである。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DNA配列の転写をモジュレートするよう、タンパク質の発現をモジュレートするよう、またはタンパク質の活性をモジュレートするよう、機能する。いくつかの態様において、分子ペイロードは、標的遺伝子との相補性の領域を有する鎖を含むオリゴヌクレオチドである。
【0045】
筋標的化剤:本明細書に使用されるとき、用語「筋標的化剤」は、筋細胞上に発現されている抗原へ特異的に結合する分子を指す。筋細胞中または筋細胞上の抗原は、膜タンパク質、例えば内在性膜タンパク質または表在性膜タンパク質であってもよい。典型的には、筋標的化剤は、筋細胞中への筋標的化剤(および結び付けられたいずれかの分子ペイロード)の内在化を容易にさせる筋細胞上の抗原へ特異的に結合する。いくつかの態様において、筋標的化剤は、筋肉上の内在化する細胞表面受容体へ特異的に結合し、受容体媒介内在化を通して筋細胞中へ内在化されることが可能である。いくつかの態様において、筋標的化剤は、小分子、タンパク質、ペプチド、核酸(例として、アプタマー)、または抗体である。いくつかの態様において、筋標的化剤は、分子ペイロードへ連結されている。
【0046】
筋標的化抗体:本明細書に使用されるとき、用語「筋標的化抗体」は、筋細胞中または筋細胞上から見出される抗原へ特異的に結合する抗体である筋標的化剤を指す。いくつかの態様において、筋標的化抗体は、筋細胞中への筋標的化抗体(および結び付けられたいずれかの分子ペイロード)の内在化を容易にする筋細胞上の抗原へ特異的に結合する。いくつかの態様において、筋標的化抗体は、筋細胞上に存在する、内在化する細胞表面受容体へ特異的に結合する。いくつかの態様において、筋標的化抗体は、トランスフェリン受容体へ特異的に結合する抗体である。
【0047】
オリゴヌクレオチド:本明細書に使用されるとき、用語「オリゴヌクレオチド」は、長さが最大200ヌクレオチドのオリゴマー核酸化合物を指す。オリゴヌクレオチドの例は、これらに限定されないが、RNAiオリゴヌクレオチド(例として、siRNA、shRNA)、マイクロRNA、ギャップマー(gapmers)、ミックスマー(mixmers)、ホスホロジアミダートモルホリノ、ペプチド核酸、アプタマー、ガイド核酸(例として、Cas9ガイドRNA)等々を包含する。オリゴヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であってもよい。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、1以上の修飾ヌクレオシド(例として、2'-O-メチル糖修飾、プリン修飾、またはピリミジン修飾)を含んでいてもよい。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、1以上の修飾ヌクレオシド間連結を含んでいてもよい。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、RpまたはSpの立体化学配置にあってもよい1以上のホスホロチオアート連結を含んでいてもよい。
【0048】
組換え抗体:用語「組換えヒト抗体」は、本明細書に使用されるとき、組換え手段によって調製、発現、創出、もしくは単離されたすべてのヒト抗体、たとえば、宿主細胞中へトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体(本開示により詳細に記載される)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体(Hoogenboom H.R.,(1997)TIB Tech.15:62-70;Azzazy H.,and Highsmith W.E.,(2002)Clin.Biochem.35:425-445;Gavilondo J.V.,and Larrick J.W.(2002)BioTechniques 29:128-145;Hoogenboom H.,and Chames P.(2000)Immunology Today 21:371-378)、ヒト免疫グロブリン遺伝子トランスジェニック動物(例としてマウス)から単離された抗体(例として、Taylor,L.D.,et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295;Kellermann S-A.,and Green L.L.(2002)Current Opinion in Biotechnology 13:593-597;Little M.et al(2000)Immunology Today 21:364-370を見よ)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列とのスプライシングを伴ういずれか他の手段によって調製、発現、創出、もしくは単離された抗体を包含することが意図される。かかる組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する。しかしながら、ある態様において、かかる組換えヒト抗体は、in vitroでの変異誘発(または、ヒトIg配列トランスジェニック動物が使用されるとき、in vivoでの体細胞変異誘発)へ供され、よって、組換え抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列のVH配列およびVL配列に由来しかつこれに関するとはいえ、in vivoでのヒト抗体の生殖細胞系列レパートリー内には天然に存在しないこともある配列である。本開示の一態様は、当該技術分野において周知である技法を使用し、たとえば、これらに限定されないが、ヒトIgファージライブラリ(たとえば、JermutusらのPCT刊行物第WO 2005/007699 A2号に開示されたもの)を使用する技法を使用し、生成され得るヒトトランスフェリン受容体に結合することが可能な完全ヒト抗体を提供する。
【0049】
相補性の領域:本明細書に使用されるとき、用語「相補性の領域」は、2つのヌクレオチド配列が生理学的条件下(例として細胞中)で相互にアニーリングすることが可能となるように、同族ヌクレオチド配列(cognate nucleotide sequence)(例として標的核酸のもの)と充分に相補的であるヌクレオチド配列(例としてオリゴヌクレオチドのもの)を指す。いくつかの態様において、相補性の領域は、標的核酸の同族のヌクレオチド配列と完全に相補的である。しかしながら、いくつかの態様において、相補性の領域は、標的核酸の同族のヌクレオチド配列と部分的に相補的である(例として、少なくとも80%、90%、95%、または99%相補性)。いくつかの態様において、相補性の領域は、標的核酸の同族のヌクレオチド配列と比較して1、2、3、または4つのミスマッチを含有する。
【0050】
特異的に結合する:本明細書に使用されるとき、用語「特異的に結合する」は、ある分子が、結合アッセイまたは他の結合状況(binding context)において適切な対照から結合パートナーを区別するために使用され得るようにする程度の親和性または結合活性での、その分子の結合パートナーへの結合能を指す。抗体に関して用語「特異的に結合する」は、適切な参照抗原(単数もしくは複数)と比較して、抗体が他の抗原から特定抗原を区別するために使用され得る親和性または結合活性の程度での(例として、本明細書に記載のとおり、抗原への結合を通してある細胞(例として、筋細胞)への優先的な標的化を許容する程度までの)、抗体の特定抗原への結合能を指す。いくつかの態様において、抗体が、標的に結合するのに少なくとも約10-4M、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、10-13M、またはこれ未満のKDを有する場合、抗体は標的へ特異的に結合する。いくつかの態様において、抗体は、トランスフェリン受容体、例としてトランスフェリン受容体の先端ドメインのエピトープへ特異的に結合する。
【0051】
対象:本明細書に使用されるとき、用語「対象」は、哺乳動物を指す。いくつかの態様において、対象は、霊長目非ヒト動物または齧歯類動物である。いくつかの態様において、対象は、ヒトである。いくつかの態様において、対象は、疾患を有するかまたは疾患を有すると疑われるペイシェント(patient)、例としてヒトペイシェントである。いくつかの態様において、対象は、FSHDを有するかまたはこれを有すると疑われるヒトペイシェントである。
【0052】
トランスフェリン受容体:本明細書に使用されるとき、用語「トランスフェリン受容体」(またTFRC、CD71、p90、またはTFR1としても知られている)は、エンドサイトーシスによる鉄取込みを容易にするためにトランスフェリンに結合する、内在化する細胞表面受容体を指す。いくつかの態様において、トランスフェリン受容体は、ヒト(NCBI Gene ID 7037)、霊長目非ヒト動物(例として、NCBI Gene ID 711568もしくはNCBI Gene ID 102136007)、または齧歯類動物(例として、NCBI Gene ID 22042)から成るものであってもよい。加えて、受容体の種々のアイソフォームをコードした複数のヒト転写産物バリアントが(例として、GenBank RefSeq受託番号:NP_001121620.1、NP_003225.2、NP_001300894.1、およびNP_001300895.1の下に注釈が付されるとおり)特徴付けられている。
【0053】
2'-修飾ヌクレオシド:本明細書に使用されるとき、用語「2'-修飾ヌクレオシド」および「2'-修飾リボヌクレオシド」は互換的に使用され、2'位にて修飾された糖部分を有するヌクレオシドを指す。いくつかの態様において、2'-修飾ヌクレオシドは、2'-4'二環式ヌクレオシドであるが、ここで糖の2'位および4'位は、(例として、メチレン、エチレン、または(S)-拘束エチル架橋を介して)架橋されている。いくつかの態様において、2'-修飾ヌクレオシドは、非二環式2'-修飾ヌクレオシドであるが、例としてここで糖部分の2'位は置換されている。2'-修飾ヌクレオシドの非限定例は、次:2'-デオキシ、2'-フルオロ(2'-F)、2'-O-メチル(2'-O-Me)、2'-O-メトキシエチル(2'-MOE)、2'-O-アミノプロピル(2'-O-AP)、2'-O-ジメチルアミノエチル(2'-O-DMAOE)、2'-O-ジメチルアミノプロピル(2'-O-DMAP)、2'-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2'-O-DMAEOE)、2'-O-N-メチルアセトアミド(2'-O-NMA)、ロックド核酸(LNA、メチレン架橋核酸)、エチレン架橋核酸(ENA)、および(S)-拘束エチル架橋核酸(cEt)を包含する。いくつかの態様において、本明細書に記載の2'-修飾ヌクレオシドは、高親和性修飾ヌクレオシドであり、2'-修飾ヌクレオシドを含むオリゴヌクレオチドは、未修飾のオリゴヌクレオチドと比べて標的配列に対する増大した親和性を有する。2'-修飾ヌクレオシドの構造の例は下に提供される:
【化1】
【0054】
II.複合体
さらに本明細書に提供されるのは、標的化剤、例として分子ペイロードへ共有結合的に連結された抗体を含む複合体である。いくつかの態様において、複合体は、オリゴヌクレオチドへ共有結合的に連結された筋標的化抗体を含む。複合体は、単一の抗原部位に特異的に結合する抗体、または同じ抗原上もしくは異なる抗原上に存在していてもよい少なくとも2つの抗原部位へ結合する抗体を含んでいてもよい。
【0055】
複合体は、少なくとも1つの遺伝子、タンパク質、および/または(例として、および)核酸の活性あるいは機能をモジュレートするために使用されてもよい。いくつかの態様において、複合体とともに存在する分子ペイロードは、遺伝子、タンパク質、および/または(例として、および)核酸のモジュレーションを担う。分子ペイロードは、細胞中の遺伝子、タンパク質、および/または(例として、および)核酸の活性あるいは機能をモジュレートすることが可能な、小分子、タンパク質、核酸、オリゴヌクレオチド、あるいはいずれかの分子実体であってもよい。いくつかの態様において、分子ペイロードは、筋細胞またはCNS細胞におけるDUX4を標的にするオリゴヌクレオチドである。
【0056】
いくつかの態様において、複合体は、分子ペイロード(例として、DUX4を標的にするアンチセンスオリゴヌクレオチド)へ共有結合的に連結された、筋標的化剤(例として、抗TfR1抗体)を含む。
【0057】
A.筋標的化剤
本開示のいくつかの側面は、筋標的化剤、例として分子ペイロードを筋細胞へ送達するための筋標的化剤を提供する。いくつかの態様において、かかる筋標的化剤は、例として筋細胞上の抗原への特異的な結合を介し、筋細胞へ結合すること、および結び付けられた分子ペイロードを筋細胞へ送達することが可能である。いくつかの態様において、分子ペイロードは、筋標的化剤へ結合されて(例として、共有結合的に結合されて)おり、筋標的化剤が筋細胞上の抗原へ結合した際、例としてエンドサイトーシスを介して、筋細胞中へ内在化される。様々なタイプの筋標的化剤が、本開示に従って使用されてもよいこと、およびいずれの筋標的(例として、筋表面タンパク質)も、本明細書に記載のいずれかのタイプの筋標的化剤によって標的にされ得ることは、解されるはずである。例えば、筋標的化剤は、小分子、核酸(例として、DNAもしくはRNA)、ペプチド(例として、抗体)、脂質(例として、マイクロベシクル)、または糖部(例として、多糖類)を含んでいてもよく、あるいはこれらからなっていてもよい。例示の筋標的化剤は本明細書中さらに詳細に記載されているが、しかしながら、本明細書に提供される例示の筋標的化剤が限定されることを意図していないことは解されるはずである。
【0058】
本開示のいくつかの側面は、骨格筋、平滑筋、または心筋などの筋肉上の抗原へ特異的に結合する筋標的化剤を提供する。いくつかの態様において、本明細書に提供される筋標的化剤のいずれも、骨格筋細胞、平滑筋細胞、および/または(例として、および)心筋細胞上の抗原へ結合する(例として、特異的に結合する)。
【0059】
筋特異的細胞表面認識要素(例として、細胞膜タンパク質)との相互作用によって、組織局在化と筋細胞への選択的取り込みとの両方が達成され得る。いくつかの態様において、筋取り込みトランスポーターの基質である分子は、分子ペイロードを筋組織中へ送達するのに有用である。筋表面認識要素への結合、これに続くエンドサイトーシスは、抗体などの巨大分子さえも筋細胞へ侵入できるようにし得る。別の例として、トランスフェリンまたは抗TfR1抗体へ抱合された分子ペイロードは、トランスフェリン受容体への結合を介し筋細胞によって取り入れられ得、次いで、例としてクラスリン媒介エンドサイトーシスを介し、形質膜陥入され(endocytosed)てもよい。
【0060】
筋標的化剤の使用は、筋肉中の分子ペイロード(例として、オリゴヌクレオチド)を、他の組織において効果に関連する毒性を低減しつつ、濃縮するのに有用なこともある。いくつかの態様において、筋標的化剤は、筋細胞中の結合された分子ペイロードを、対象内の別の細胞型と比較して濃縮させている。いくつかの態様において、筋標的化剤は、筋細胞(例として、骨格筋細胞、平滑筋細胞、もしくは心筋細胞)中の結合された分子ペイロードを、非筋細胞(例として、肝臓細胞、神経細胞、血液細胞、もしくは脂肪細胞)中の量より、少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、または100倍多い量で濃縮させる。いくつかの態様において、分子ペイロードの対象における毒性は、それが筋標的化剤へ結合されているときに対象へ送達されたとき、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、または95%低減されている。
【0061】
いくつかの態様において、筋選択性を獲得するために、筋認識要素(例として、筋細胞抗原)が要されることもある。一例として、筋標的化剤は、筋特異的取り込みトランスポーターの基質である小分子であってもよい。別の例として、筋標的化剤は、トランスポーター媒介エンドサイトーシスを介して筋細胞へ侵入する抗体であってもよい。別の例として、筋標的化剤は、筋細胞上の細胞表面受容体へ結合するリガンドであってもよい。トランスポーターをベースとしたアプローチが、細胞侵入への直通路を提供するのに対し、受容体をベースとした標的化が、所望の作用部位に達するために刺激されたエンドサイトーシスを伴うこともあることは、解されるはずである。
【0062】
i.筋標的抗体
いくつかの態様において、筋標的化剤は抗体である。一般に、それらの標的抗原への抗体の高い特異性は、筋細胞(例として、骨格筋細胞、平滑筋細胞、および/または(例として、および)心筋細胞)を選択的に標的にする潜在力を提供する。この特異性はまた、オフターゲット毒性(off-target toxicity)を制限することもある。筋細胞の表面抗原を標的にすることが可能である抗体の例は報告されており、かつ本開示の範囲内にある。例えば、筋細胞の表面を標的にする抗体は、Arahata K.,et al."Immunostaining of skeletal and cardiac muscle surface membrane with antibody against Duchenne muscular dystrophy peptide"Nature 1988;333:861-3;Song K.S.,et al."Expression of caveolin-3 in skeletal,cardiac,and smooth muscle cells.Caveolin-3 is a component of the sarcolemma and co-fractionates with dystrophin and dystrophin-associated glycoproteins"J Biol Chem 1996;271:15160-5;およびWeisbart R.H.et al.,"Cell type specific targeted intracellular delivery into muscle of a monoclonal antibody that binds myosin IIb"Mol Immunol.2003 Mar,39(13):78309に記載されている;これら各々の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
a.抗トランスフェリン受容体(TfR)抗体
本開示のいくつかの側面は、トランスフェリン受容体へ結合する剤、例として抗トランスフェリン受容体抗体は筋細胞を標的にすることが可能であるという認識に基づく。トランスフェリン受容体は、細胞膜を越えてトランスフェリンを輸送して細胞内鉄レベルの調節およびホメオスタシスに加わる、内在化する細胞表面受容体である。本開示のいくつかの側面は、トランスフェリン受容体へ結合することが可能なトランスフェリン受容体結合タンパク質を提供する。結果的に、本開示の側面は、トランスフェリン受容体へ結合する結合タンパク質(例として、抗体)を提供する。いくつかの態様において、トランスフェリン受容体へ結合する結合タンパク質は、結合されたいずれかの分子ペイロードと共に、筋細胞中へ内在化される。本明細書に使用されるとき、トランスフェリン受容体へ結合する抗体は、トランスフェリン受容体抗体、抗トランスフェリン受容体抗体、または抗TfR1抗体と互換的に称されてもよい。トランスフェリン受容体へ結合する、例として特異的に結合する抗体は、トランスフェリン受容体へ結合した際、例として受容体媒介エンドサイトーシスを通して、細胞中へ内在化されてもよい。
【0064】
抗TfR1抗体が、知られている数種の方法論、例としてファージディスプレーを使用するライブラリ設計を使用して、産生、合成、および/または(例として、および)誘導体化されてもよいことは、解されるはずである。例示の方法論は当該技術分野において特徴付けられており、参照により組み込まれる(Diez,P.et al."High-throughput phage-display screening in array format",Enzyme and microbial technology,2015,79,34-41.;Christoph M.H. and Stanley,J.R."Antibody Phage Display:Technique and Applications"J Invest Dermatol.2014,134:2.;Engleman,Edgar(Ed.)"Human Hybridomas and Monoclonal Antibodies."1985,Springer)。他の態様において、抗TfR1抗体はこれまでに特徴付けられているかまたは開示されている。トランスフェリン受容体へ特異的に結合する抗体は当該技術分野において知られている(例として、米国特許第4,364,934号、12/4/1979出願、"Monoclonal antibody to a human early thymocyte antigen and methods for preparing same";米国特許第8,409,573号、6/14/2006出願、"Anti-CD71 monoclonal antibodies and uses thereof for treating malignant tumor cells";米国特許第9,708,406号、5/20/2014出願、"Anti-transferrin receptor antibodies and methods of use";米国特許第9,611,323号、12/19/2014出願、"Low affinity blood brain barrier receptor antibodies and uses therefor";WO 2015/098989、12/24/2014出願、"Novel anti-Transferrin receptor antibody that passes through blood-brain barrier";Schneider C.et al."Structural features of the cell surface receptor for transferrin that is recognized by the monoclonal antibody OKT9."J Biol Chem.1982,257:14,8516-8522.;Lee et al."Targeting Rat Anti-Mouse Transferrin Receptor Monoclonal Antibodies through Blood-Brain Barrier in Mouse"2000,J Pharmacol.Exp.Ther.,292:1048-1052を見よ)。
【0065】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、高い特異性および親和性でトランスフェリン受容体に結合する。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、トランスフェリン受容体のいずれかの細胞外エピトープまたは抗体に対して暴露されるようになるエピトープへ特異的に結合する。いくつかの態様において、本明細書に提供される抗TfR1抗体は、ヒト、霊長目非ヒト動物、マウス、ラット等々からのトランスフェリン受容体へ特異的に結合する。いくつかの態様において、本明細書に提供される抗TfR1抗体は、ヒトトランスフェリン受容体へ結合する。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、配列番号105~108で提供されるとおりの、ヒトまたは霊長目非ヒト動物のトランスフェリン受容体のアミノ酸セグメントへ結合する。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、トランスフェリン受容体の先端ドメインにはない、配列番号105で表されるとおりのヒトトランスフェリン受容体のアミノ酸90~96に対応するアミノ酸セグメントへ結合する。
【0066】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体(例として、下の表2中の抗TfRクローン8)は、TfR1中のエピトープに結合するが、ここでエピトープは、配列番号105のアミノ酸214~241および/またはアミノ酸354~381における残基を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、配列番号105のアミノ酸214~241およびアミノ酸354~381における残基を含むエピトープに結合する。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、配列番号105で表されるとおりのヒトTfR1の残基Y222、T227、K231、H234、T367、S368、S370、T376、およびS378の1以上を含むエピトープに結合する。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、配列番号105で表されるとおりのヒトTfR1の残基Y222、T227、K231、H234、T367、S368、S370、T376、およびS378を含むエピトープに結合する。
【0067】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体(例として、下の表2中の3M12およびそのバリアント)は、TfR1中のエピトープに結合するが、ここでエピトープは、配列番号105のアミノ酸258~291および/またはアミノ酸358~381における残基を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体(例として、下の表2中の3M12およびそのバリアント)は、配列番号105のアミノ酸258~291およびアミノ酸358~381のアミノ酸における残基を含むエピトープに結合する。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体(例として、下の表2中の3M12およびそのバリアント)は、配列番号105で表されるとおりのヒトTfR1の残基K261、S273、Y282、T362、S368、S370、およびK371の1以上を含むエピトープに結合する。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体(例として、下の表2中の3M12およびそのバリアント)は、配列番号105で表されるとおりのヒトTfR1の残基K261、S273、Y282、T362、S368、S370、およびK371を含むエピトープに結合する。
【0068】
NCBI配列NP_003225.2(トランスフェリン受容体タンパク質1アイソフォーム1、homo sapiens)に対応するヒトトランスフェリン受容体アミノ酸配列の例は、以下のとおりである:
MMDQARSAFSNLFGGEPLSYTRFSLARQVDGDNSHVEMKLAVDEEENADNNTKANVTKPKRCSGSICYGTIAVIVFFLIGFMIGYLGYCKGVEPKTECERLAGTESPVREEPGEDFPAARRLYWDDLKRKLSEKLDSTDFTGTIKLLNENSYVPREAGSQKDENLALYVENQFREFKLSKVWRDQHFVKIQVKDSAQNSVIIVDKNGRLVYLVENPGGYVAYSKAATVTGKLVHANFGTKKDFEDLYTPVNGSIVIVRAGKITFAEKVANAESLNAIGVLIYMDQTKFPIVNAELSFFGHAHLGTGDPYTPGFPSFNHTQFPPSRSSGLPNIPVQTISRAAAEKLFGNMEGDCPSDWKTDSTCRMVTSESKNVKLTVSNVLKEIKILNIFGVIKGFVEPDHYVVVGAQRDAWGPGAAKSGVGTALLLKLAQMFSDMVLKDGFQPSRSIIFASWSAGDFGSVGATEWLEGYLSSLHLKAFTYINLDKAVLGTSNFKVSASPLLYTLIEKTMQNVKHPVTGQFLYQDSNWASKVEKLTLDNAAFPFLAYSGIPAVSFCFCEDTDYPYLGTTMDTYKELIERIPELNKVARAAAEVAGQFVIKLTHDVELNLDYERYNSQLLSFVRDLNQYRADIKEMGLSLQWLYSARGDFFRATSRLTTDFGNAEKTDRFVMKKLNDRVMRVEYHFLSPYVSPKESPFRHVFWGSGSHTLPALLENLKLRKQNNGAFNETLFRNQLALATWTIQGAANALSGDVWDIDNEF(配列番号105)。
【0069】
NCBI配列NP_001244232.1(トランスフェリン受容体タンパク質1、Macaca mulatta)に対応する、霊長目の非ヒト動物トランスフェリン受容体アミノ酸配列の例は、以下のとおりである:
MMDQARSAFSNLFGGEPLSYTRFSLARQVDGDNSHVEMKLGVDEEENTDNNTKPNGTKPKRCGGNICYGTIAVIIFFLIGFMIGYLGYCKGVEPKTECERLAGTESPAREEPEEDFPAAPRLYWDDLKRKLSEKLDTTDFTSTIKLLNENLYVPREAGSQKDENLALYIENQFREFKLSKVWRDQHFVKIQVKDSAQNSVIIVDKNGGLVYLVENPGGYVAYSKAATVTGKLVHANFGTKKDFEDLDSPVNGSIVIVRAGKITFAEKVANAESLNAIGVLIYMDQTKFPIVKADLSFFGHAHLGTGDPYTPGFPSFNHTQFPPSQSSGLPNIPVQTISRAAAEKLFGNMEGDCPSDWKTDSTCKMVTSENKSVKLTVSNVLKETKILNIFGVIKGFVEPDHYVVVGAQRDAWGPGAAKSSVGTALLLKLAQMFSDMVLKDGFQPSRSIIFASWSAGDFGSVGATEWLEGYLSSLHLKAFTYINLDKAVLGTSNFKVSASPLLYTLIEKTMQDVKHPVTGRSLYQDSNWASKVEKLTLDNAAFPFLAYSGIPAVSFCFCEDTDYPYLGTTMDTYKELVERIPELNKVARAAAEVAGQFVIKLTHDTELNLDYERYNSQLLLFLRDLNQYRADVKEMGLSLQWLYSARGDFFRATSRLTTDFRNAEKRDKFVMKKLNDRVMRVEYYFLSPYVSPKESPFRHVFWGSGSHTLSALLESLKLRRQNNSAFNETLFRNQLALATWTIQGAANALSGDVWDIDNEF
(配列番号106)
【0070】
NCBI配列XP_005545315.1(トランスフェリン受容体タンパク質1、Macaca fascicularis)に対応する霊長目非ヒト動物トランスフェリン受容体アミノ酸配列の例は、以下のとおりである:
MMDQARSAFSNLFGGEPLSYTRFSLARQVDGDNSHVEMKLGVDEEENTDNNTKANGTKPKRCGGNICYGTIAVIIFFLIGFMIGYLGYCKGVEPKTECERLAGTESPAREEPEEDFPAAPRLYWDDLKRKLSEKLDTTDFTSTIKLLNENLYVPREAGSQKDENLALYIENQFREFKLSKVWRDQHFVKIQVKDSAQNSVIIVDKNGGLVYLVENPGGYVAYSKAATVTGKLVHANFGTKKDFEDLDSPVNGSIVIVRAGKITFAEKVANAESLNAIGVLIYMDQTKFPIVKADLSFFGHAHLGTGDPYTPGFPSFNHTQFPPSQSSGLPNIPVQTISRAAAEKLFGNMEGDCPSDWKTDSTCKMVTSENKSVKLTVSNVLKETKILNIFGVIKGFVEPDHYVVVGAQRDAWGPGAAKSSVGTALLLKLAQMFSDMVLKDGFQPSRSIIFASWSAGDFGSVGATEWLEGYLSSLHLKAFTYINLDKAVLGTSNFKVSASPLLYTLIEKTMQDVKHPVTGRSLYQDSNWASKVEKLTLDNAAFPFLAYSGIPAVSFCFCEDTDYPYLGTTMDTYKELVERIPELNKVARAAAEVAGQFVIKLTHDTELNLDYERYNSQLLLFLRDLNQYRADVKEMGLSLQWLYSARGDFFRATSRLTTDFRNAEKRDKFVMKKLNDRVMRVEYYFLSPYVSPKESPFRHVFWGSGSHTLSALLESLKLRRQNNSAFNETLFRNQLALATWTIQGAANALSGDVWDIDNEF(配列番号107)。
【0071】
NCBI配列NP_001344227.1(トランスフェリン受容体タンパク質1、mus musculus)に対応するマウストランスフェリン受容体アミノ酸配列の例は、以下のとおりである:
MMDQARSAFSNLFGGEPLSYTRFSLARQVDGDNSHVEMKLAADEEENADNNMKASVRKPKRFNGRLCFAAIALVIFFLIGFMSGYLGYCKRVEQKEECVKLAETEETDKSETMETEDVPTSSRLYWADLKTLLSEKLNSIEFADTIKQLSQNTYTPREAGSQKDESLAYYIENQFHEFKFSKVWRDEHYVKIQVKSSIGQNMVTIVQSNGNLDPVESPEGYVAFSKPTEVSGKLVHANFGTKKDFEELSYSVNGSLVIVRAGEITFAEKVANAQSFNAIGVLIYMDKNKFPVVEADLALFGHAHLGTGDPYTPGFPSFNHTQFPPSQSSGLPNIPVQTISRAAAEKLFGKMEGSCPARWNIDSSCKLELSQNQNVKLIVKNVLKERRILNIFGVIKGYEEPDRYVVVGAQRDALGAGVAAKSSVGTGLLLKLAQVFSDMISKDGFRPSRSIIFASWTAGDFGAVGATEWLEGYLSSLHLKAFTYINLDKVVLGTSNFKVSASPLLYTLMGKIMQDVKHPVDGKSLYRDSNWISKVEKLSFDNAAYPFLAYSGIPAVSFCFCEDADYPYLGTRLDTYEALTQKVPQLNQMVRTAAEVAGQLIIKLTHDVELNLDYEMYNSKLLSFMKDLNQFKTDIRDMGLSLQWLYSARGDYFRATSRLTTDFHNAEKTNRFVMREINDRIMKVEYHFLSPYVSPRESPFRHIFWGSGSHTLSALVENLKLRQKNITAFNETLFRNQLALATWTIQGVANALSGDIWNIDNEF
(配列番号108)
【0072】
いくつかの態様において、抗TfR1抗体は、以下のとおりの受容体のアミノ酸セグメント:FVKIQVKDSAQNSVIIVDKNGRLVYLVENPGGYVAYSKAATVTGKLVHANFGTKKDFEDLYTPVNGSIVIVRAGKITFAEKVANAESLNAIGVLIYMDQTKFPIVNAELSFFGHAHLGTGDPYTPGFPSFNHTQFPPSRSSGLPNIPVQTISRAAAEKLFGNMEGDCPSDWKTDSTCRMVTSESKNVKLTVSNVLKE(配列番号109)へ結合し、トランスフェリン受容体とトランスフェリンおよび/または(例として、および)ヒトヘモクロマトーシスタンパク質(またHFEとしても知られている)との間の結合相互作用を阻害しない。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、配列番号109のエピトープには結合しない。
【0073】
適切な方法論は、例として組換えDNAプロトコルの使用を通して、抗体、抗体フラグメント、もしくは抗原結合剤を得るためか、および/または(例として、および)産生するために使用されてもよい。いくつかの態様において、抗体はまた、ハイブリドーマの生成を通しても産生されてよい(例として、Kohler, G and Milstein,C."Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity"Nature,1975,256:495-497を見よ)。着目した抗原は、いずれかの型または実体の、例として組換え型もしくは天然に存在する型または実体の、免疫原として使用されてもよい。ハイブリドーマは、標準の(standard)方法、例としてELISAスクリーニングを使用してスクリーニングされることで、具体的な抗原を標的にする抗体を産生する少なくとも1つのハイブリドーマが見出される。抗体はまた、抗体を発現するタンパク質発現ライブラリ(例として、ファージディスプレーライブラリ)のスクリーニングを通しても産生されてよい。ファージディスプレーライブラリ設計はまた、いくつかの態様において使用されてもよい(例として、米国特許第5,223,409号、3/1/1991出願、"Directed evolution of novel binding proteins";WO 1992/18619、4/10/1992出願、"Heterodimeric receptor libraries using phagemids";WO 1991/17271、5/1/1991出願、"Recombinant library screening methods";WO 1992/20791、5/15/1992出願、"Methods for producing members of specific binding pairs";およびWO 1992/15679、2/28/1992出願、"Improved epitope displaying phage"を見よ)。いくつかの態様において、着目した抗原は、非ヒト動物、例として齧歯類動物またはヤギを免疫するために使用されてもよい。いくつかの態様において、次いで抗体が非ヒト動物から得られたら、数多の方法論を使用し、例として組換えDNA技法を使用し、任意に修飾されてもよい。抗体産生および方法論の追加の例も当該技術分野において知られている(例として、Harlow et al."Antibodies:A Laboratory Manual",Cold Spring Harbor Laboratory,1988を見よ)。
【0074】
いくつかの態様において、抗体は修飾されており、例としてグリコシル化、リン酸化、SUMO化、および/または(例として、および)メチル化を介して修飾されている。いくつかの態様において、抗体は、1以上の糖または炭水化物分子へ抱合されたグリコシル化抗体である。いくつかの態様において、1以上の糖または炭水化物分子は、N-グリコシル化、O-グリコシル化、C-グリコシル化、グリピエーション(GPIアンカー付着)、および/または(例として、および)ホスホグリコシル化を介し、抗体へ抱合されている。いくつかの態様において、1以上の糖または炭水化物分子は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、またはグリカンである。いくつかの態様において、1以上の糖または炭水化物分子は、分枝オリゴ糖類または分枝グリカンである。いくつかの態様において、1以上の糖または炭水化物分子は、マンノース単位、グルコース単位、N-アセチルグルコサミン単位、N-アセチルガラクトサミン単位、ガラクトース単位、フコース単位、またはホスホ脂質単位を包含する。いくつかの態様において、約1~10、約1~5、約5~10、約1~4、約1~3、または約2つの糖分子が存在する。いくつかの態様において、グリコシル化抗体は、完全にまたは部分的にグリコシル化されている。いくつかの態様において、抗体は、化学反応によってまたは酵素的な手段によってグリコシル化されている。いくつかの態様において、抗体は、in vitroでまたは細胞内部でグリコシル化されるが、前記細胞は任意に、N-またはO-グリコシル化経路中の酵素(例として、グリコシルトランスフェラーゼ)が欠乏していることもある。いくつかの態様において、抗体は、2014年5月1日に公開され“Modified antibody, antibody-conjugate and process for the preparation thereof”と題する国際特許出願刊行物WO2014065661に記載のとおりの糖分子または炭水化物分子で官能化されている。
【0075】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、表2~7のいずれか1つから選択される抗TfR1抗体のいずれか1つのVLドメインおよび/または(例として、および)VHドメインを含み、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、またはIgY免疫グロブリン分子、いずれかのクラス(例として、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはいずれかのサブクラス(例として、IgG2aおよびIgG2b)の免疫グロブリン分子の定常領域のアミノ酸配列を含む定常領域を含む。ヒト定常領域の非限定例は当該技術分野において記載されており、例として上記のKabat E A et al.,(1991)を見よ。
【0076】
いくつかの態様において、トランスフェリン受容体に結合する薬剤、例として抗TfR1抗体は、筋細胞を標的とすることができ、および/または(例として、および)血液脳関門を通過する薬剤の(例としてCNS細胞への)輸送を媒介する。トランスフェリン受容体は、細胞膜を越えてトランスフェリンを輸送して細胞内鉄レベルの調節およびホメオスタシスに加わる、内在化する細胞表面受容体である。本開示のいくつかの側面は、トランスフェリン受容体へ結合することが可能なトランスフェリン受容体結合タンパク質を提供する。トランスフェリン受容体へ結合する、例として特異的に結合する抗体は、トランスフェリン受容体へ結合した際、例として受容体媒介エンドサイトーシスを通して、細胞中へ内在化されてもよい。
【0077】
本明細書に提供されるのは、いくつかの側面において、トランスフェリン受容体へ高い特異性および親和性で結合するヒト化抗体である。いくつかの態様において、本明細書に記載のヒト化抗TfR1抗体は、トランスフェリン受容体のいずれかの細胞外エピトープまたは抗体に対して暴露されるようになるエピトープへ特異的に結合する。いくつかの態様において、本明細書に提供されるヒト化抗TfR1抗体は、ヒト、霊長目非ヒト動物、マウス、ラット等々からのトランスフェリン受容体へ特異的に結合する。いくつかの態様において、本明細書に提供されるヒト化抗TfR1抗体は、ヒトトランスフェリン受容体へ結合する。いくつかの態様において、本明細書に記載のヒト化抗TfR1抗体は、配列番号105~108で提供されるとおりの、ヒトまたは霊長目非ヒト動物のトランスフェリン受容体のアミノ酸セグメントへ結合する。いくつかの態様において、本明細書に記載のヒト化抗TfR1抗体は、トランスフェリン受容体の先端ドメインにはない、配列番号105で表されるとおりのヒトトランスフェリン受容体のアミノ酸90~96に対応するアミノ酸セグメントへ結合する。いくつかの態様において、本明細書に記載のヒト化抗TfR1抗体は、TfR1へ結合するが、TfR2へは結合しない。
【0078】
いくつかの態様において、抗TFR1抗体は、少なくとも約10-4M、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、10-13M、またはこれ未満の結合親和性(例として、Kdによって指し示されるとおり)によってTfR1(例として、ヒトまたは霊長目非ヒト動物のTfR1)に特異的に結合する。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、サブナノモル濃度(sub-nanomolar)範囲のKDでTfR1へ結合する。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、トランスフェリン受容体1(TfR1)へ選択的に結合するが、トランスフェリン受容体2(TfR2)へは結合しない。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、ヒトTfR1およびカニクイ(cyno)TfR1へ(例として、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、10-13M、またはこれ未満のKdで)結合するが、マウスTfR1へは結合しない。抗TfR1抗体の親和性および結合速度論は、バイオセンサ技術(例として、OCTETまたはBIACORE)を包含するがこれらに限定されないいずれか好適な方法を使用して試験され得る。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体のいずれか1つの結合は、TfR1へのトランスフェリン結合と、競合も阻害もしない。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体のいずれか1つの結合は、TfR1へのHFE-ベータ-2-ミクログロブリン結合と、競合も阻害もしない。
【0079】
抗TfR1抗体の非限定例が表2に提供される。
表2. 抗TfR1抗体の例
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
*突然変異の位置は、突然変異を含有する夫々のVH配列のKabatナンバリングに従う。
【0080】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、表2において提供される抗TfR1抗体のいずれか1つのヒト化バリアントである。いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、表2において提供される抗TfR1抗体のいずれか1つにおけるCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3と同じであるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含み、かつヒト化重鎖可変領域および/または(例として、および)ヒト化軽鎖可変領域を含む。
【0081】
本明細書に記載のヒト化抗TfR1抗体のアミノ酸配列の例は表3に提供される。
表3. 抗TfR1抗体の可変領域
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
*突然変異の位置は、突然変異を含有する夫々のVH配列のKabatナンバリングに従う。
**Kabatナンバリング系に従うCDRは太字である。
【0082】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、表3に提供される抗TfR1抗体のいずれか1つのCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含むVHを含み、かつ表3に提供される夫々のVHと比較したときフレームワーク領域中に1以上の(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の)アミノ酸バリエーションを含む。代替的にまたは加えて(例として、加えて)、本開示の抗TfR1抗体は、表3に提供される抗TfR1抗体のいずれか1つのCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含むVLを含み、かつ表3に提供される夫々のVLと比較したときフレームワーク領域中に1以上の(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の)アミノ酸バリエーションを含む。
【0083】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、表3に提供される抗TfR1抗体のいずれか1つのCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含むVHを含み、かつ表3に提供される夫々のVHと比較したときフレームワーク領域中に少なくとも70%(例として、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含む。代替的にまたは加えて(例として、加えて)、本開示の抗TfR1抗体は、表3に提供される抗TfR1抗体のいずれか1つのCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含むVLを含み、かつ表3に提供される夫々のVLと比較したときフレームワーク領域中に少なくとも70%(例として、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%)同一のアミノ酸配列を含む。
【0084】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号69のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号70のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0085】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号71のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号70のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0086】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号72のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号70のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0087】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号73のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号74のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0088】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号73のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号75のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0089】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号76のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号74のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0090】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号76のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号75のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0091】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号78のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0092】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号79のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号80のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0093】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号77のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号80のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0094】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号154のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号155のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0095】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、完全長IgGであり、これはヒト抗体からの重鎖定常領域および軽鎖定常領域を包含し得る。いくつかの態様において、本明細書に記載のとおりの抗TfR1抗体のいずれの重鎖も、重鎖定常領域(CH)またはこの一部(例として、CH1、CH2、CH3、もしくはそれらの組み合わせ)を含んでいてもよい。重鎖定常領域は、いずれか好適な起源、例として、ヒト、マウス、ラット、またはウサギから成り得る。特定の一例において、重鎖定常領域は、ヒトIgG(ガンマ重鎖)、例として、IgG1、IgG2、またはIgG4からのものである。ヒトIgG1定常領域の例は下に与えられる:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号81)。
【0096】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体のいずれかの重鎖は、突然変異体ヒトIgG1定常領域を含む。例えば、ヒトIgG1のCH2ドメインにおけるLALA突然変異の導入(より低い(lower)ヒンジ残基Leu234 Leu235をAla234およびAla235と置き換えるように突然変異させられたmAb b12に由来する突然変異体)は、Fcγ受容体結合を低減することが知られている(Bruhns,P.,et al.(2009)およびXu,D.et al.(2000))。突然変異体ヒトIgG1定常領域は下に提供される(突然変異は太字かつ下線付き):
【化2】
(配列番号82)
【0097】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体のいずれの軽鎖も、軽鎖定常領域(CL)をさらに含んでいてもよいが、これは当該技術分野において知られているいずれのCLでもあり得る。いくつかの例において、CLは、カッパ軽鎖である。他の例において、CLは、ラムダ軽鎖である。いくつかの態様において、CLはカッパ軽鎖であって、その配列は下に与えられる:
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号83)。
【0098】
他の抗体の重鎖および軽鎖の定常領域は当該技術分野において周知であり、例として、IMGTデータベース(www.imgt.org)において、またはwww.vbase2.org/vbstat.php.にて提供されるものがあるが、これら両方とも参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、表3に列挙されるとおりのVHまたはそれらいずれかのバリアントのいずれか1つ、および配列番号81もしくは配列番号82と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一である重鎖定常領域を含む重鎖を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、表3に列挙されるとおりのVHまたはそれらいずれかのバリアントのいずれか1つ、および配列番号81もしくは配列番号82と比較したとき25以下のアミノ酸バリエーション(例として、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1以下のアミノ酸バリエーション)を含有する重鎖定常領域を含む重鎖を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、表3に列挙されるとおりのVHまたはそれらいずれかのバリアントのいずれか1つ、および配列番号81で表されるとおりの重鎖定常領域を含む重鎖を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、表3に列挙されるとおりのVHまたはそれらいずれかのバリアントのいずれか1つ、および配列番号82で表されるとおりの重鎖定常領域を含む重鎖を含む。
【0100】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、表3に列挙されるとおりのVLまたはそれらいずれかのバリアントのいずれか1つ、および配列番号83と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一の軽鎖定常領域を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、表3に列挙されるとおりのVLまたはそれらいずれかのバリアントのいずれか1つ、および配列番号83と比較したとき25以下のアミノ酸バリエーション(例として、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1以下のアミノ酸バリエーション)を含有する軽鎖定常領域を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、表3に列挙されるとおりのVLまたはそれらいずれかのバリアントのいずれか1つ、および配列番号83で表される軽鎖定常領域を含む軽鎖を含む。
【0101】
記載される抗TfR1抗体のIgG重鎖および軽鎖のアミノ酸配列の例は、下の表4に提供される。
表4. 抗TfR1 IgGの例の重鎖および軽鎖の配列
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
*突然変異の位置は、突然変異を含有する夫々のVH配列のKabatナンバリングに従う。
**Kabatナンバリング系に従うCDRは太字である;VH/VL配列は下線が付される。
【0102】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号84、86、87、88、91、92、94、および156のいずれか1つで表されるとおりの重鎖と比較したとき、25以下のアミノ酸バリエーション(例として、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1以下のアミノ酸バリエーション)を含有する重鎖を含む。代替的にまたは加えて(例として、加えて)、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号85、89、90、93、95、および157のいずれか1つで表されるとおりの軽鎖と比較したとき25以下のアミノ酸バリエーション(例として、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1以下のアミノ酸バリエーション)を含有する軽鎖を含む。
【0103】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、配列番号84、86、87、88、91、92、94、および156のいずれか1つと少なくとも75%(例として、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%)同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む。代替的にまたは加えて(例として、加えて)、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、配列番号85、89、90、93、95、および157のいずれか1つと少なくとも75%(例として、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%)同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、配列番号84、86、87、88、91、92、94、および156のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖を含む。代替的にまたは加えて(例として、加えて)、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、配列番号85、89、90、93、95、および157のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0104】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号84のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0105】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号86のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0106】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0107】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号89のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0108】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号88のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号90のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0109】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号89のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0110】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号90のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0111】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号92のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号93のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0112】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号94のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号95のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0113】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号92のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号95のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0114】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号156のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0115】
いくつかの態様において、抗TfR1抗体は、無傷の(intact)抗体(完全長抗体)のFabフラグメント、Fab'フラグメント、またはF(ab')2フラグメントである。無傷の抗体(完全長抗体)の抗原結合フラグメントは、定型的な方法によって(例として、組換えで、または完全長IgGの重鎖定常領域をパパインなどの酵素を使用して消化することによって)調製され得る。例えば、F(ab')2フラグメントは、抗体分子のペプシンまたはパパイン消化によって産生され得、Fabフラグメントは、F(ab')2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって生成され得る。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体のFabフラグメント上の重鎖定常領域は、次:ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHT(配列番号96)のアミノ酸配列を含む。
【0116】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、表3に列挙されるとおりのVHまたはそれらいずれかのバリアントのいずれか1つ、および配列番号96と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一である重鎖定常領域を含む重鎖を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、表3に列挙されるとおりのVHまたはそれらいずれかのバリアントのいずれか1つ、および配列番号96と比較したとき25以下のアミノ酸バリエーション(例として、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1以下のアミノ酸バリエーション)を含有する重鎖定常領域を含む重鎖を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、表3に列挙されるとおりのVHまたはそれらいずれかのバリアントのいずれか1つ、および配列番号96で表されるとおりの重鎖定常領域を含む重鎖を含む。
【0117】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、表3に列挙されるとおりのVLまたはそれらいずれかのバリアントのいずれか1つ、および配列番号83と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一の軽鎖定常領域を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、表3に列挙されるとおりのVLまたはそれらいずれかのバリアントのいずれか1つ、および配列番号83と比較したとき25以下のアミノ酸バリエーション(例として、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1以下のアミノ酸バリエーション)を含有する軽鎖定常領域を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、表3に列挙されるとおりのVLまたはそれらいずれかのバリアントのいずれか1つ、および配列番号83で表される軽鎖定常領域を含む軽鎖を含む。
【0118】
記載される抗TfR1抗体のFab重鎖および軽鎖のアミノ酸配列の例は、下の表5に提供される。
表5. 抗TfR1 Fabの例の重鎖および軽鎖の配列
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
*突然変異の位置は、突然変異を含有する夫々のVH配列のKabatナンバリングに従う。
**Kabatナンバリング系に従うCDRは太字である;VH/VL配列は下線が付される。
【0119】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号97~103、158、および159のいずれか1つで表されるとおりの重鎖と比較したとき、25以下のアミノ酸バリエーション(例として、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1以下のアミノ酸バリエーション)を含有する重鎖を含む。代替的にまたは加えて(例として、加えて)、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号85、89、90、93、95、および157のいずれか1つで表されるとおりの軽鎖と比較したとき25以下のアミノ酸バリエーション(例として、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1以下のアミノ酸バリエーション)を含有する軽鎖を含む。
【0120】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、配列番号97~103、158、および159のいずれか1つと少なくとも75%(例として、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%)同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む。代替的にまたは加えて(例として、加えて)、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、配列番号85、89、90、93、95、および157のいずれか1つと少なくとも75%(例として、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%)同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、配列番号97~103、158、および159のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖を含む。代替的にまたは加えて(例として、加えて)、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、配列番号85、89、90、93、95、および157のいずれか1つのアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0121】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号97のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0122】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号98のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0123】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号99のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0124】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号100のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号89のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0125】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号100のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号90のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0126】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号101のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号89のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0127】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号101のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号90のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0128】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号102のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号93のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0129】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号103のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号95のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0130】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号102のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号95のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0131】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号158のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0132】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号159のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0133】
他の知られている抗TfR1抗体
当該技術分野において知られているいずれか他の適切な抗TfR1抗体は、本明細書に開示の複合体において筋標的化剤として使用され得る。知られている抗TfR1抗体(関連する参考文献および結合エピトープを包含する)の例は、表6に列挙される。いくつかの態様において、抗TfR1抗体は、本明細書に提供される抗TfR1抗体、例として表6に列挙される抗TfR1抗体、のいずれかの相補性決定領域(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3)を含む。
表6 - 関連する参考文献および結合エピトープ情報を包含する、抗TfR1抗体クローンのリスト
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【0134】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、表6から選択される抗TfR1抗体のいずれか1つからのCDR-H(例として、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)アミノ酸配列の1以上を包含する。いくつかの態様において、抗TfR1抗体は、表6から選択される抗TfR1抗体のいずれか1つについて提供されるとおりのCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を包含する。いくつかの態様において、抗TfR1抗体は、表6から選択される抗TfR1抗体のいずれか1つについて提供されるとおりのCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を包含する。
【0135】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、表6から選択される抗TfR1抗体のいずれか1つなどの、いずれかの抗TfR抗体の重鎖可変ドメインおよび/または(例として、および)軽鎖可変ドメインを包含するいずれかの抗体を包含する。いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、表6から選択される抗TfR1抗体のいずれか1つなどのいずれかの抗TfR1抗体の重鎖可変および軽鎖可変ペアを包含するいずれかの抗体を包含する。
【0136】
本開示の側面は、本明細書に記載の抗TfR1抗体のいずれかと相同な重鎖可変(VH)および/または(例として、および)軽鎖可変(VL)ドメインアミノ酸配列を有する抗TfR1抗体を提供する。いくつかの態様において、抗TfR1抗体は、表6から選択される抗TfR1抗体のいずれか1つなどのいずれかの抗TfR1抗体の重鎖可変配列および/またはいずれかの軽鎖可変配列と少なくとも75%(例として、80%、85%、90%、95%、98%、または99%)同一である重鎖可変配列または軽鎖可変配列を含む。いくつかの態様において、相同な重鎖可変および/または(例として、および)軽鎖可変アミノ酸配列は、本明細書に提供されるCDR配列のいずれかにおいては変動しない。例えば、いくつかの態様において、配列バリエーションの程度(例として、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%)は、本明細書に提供されるCDR配列のいずれかを排除する重鎖可変および/または(例として、および)軽鎖可変配列内において生じ得る。いくつかの態様において、本明細書に提供される抗TfR1抗体のいずれかは、表6から選択される抗TfR1抗体のいずれか1つなどのいずれかの抗TfR1抗体のフレームワーク配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一であるフレームワーク配列を含む重鎖可変配列および軽鎖可変配列を含む。
【0137】
本開示に従い使用されてもよいトランスフェリン受容体抗体の例は、国際出願刊行物WO 2016/081643(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。この抗体のアミノ酸配列は表7に提供される。
表7. 知られている抗TfR1抗体の例の重鎖および軽鎖のCDR
【表7-1】
【表7-2】
【0138】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、表7に示されるCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3と同じであるCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含む。代替的にまたは加えて(例として、加えて)、本開示の抗TfR1抗体は、表7に示されるCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3と同じであるCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含む。
【0139】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体はCDR-L3を含むが、これは表7に示されるとおりのCDR-L3と比較したとき3以下のアミノ酸バリエーション(例として、3、2、または1以下のアミノ酸バリエーション)を含有する。いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、表7に示されるとおりのCDR-L3と比較したとき1アミノ酸バリエーションを含有するCDR-L3を含む。いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、QHFAGTPLT(配列番号126)(KabatおよびChothia定義系に従う)またはQHFAGTPL(配列番号127)(Contact定義系に従う)のCDR-L3を含む。いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、表7に示されるCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3と同じであるCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、およびCDR-L2を含み、QHFAGTPLT(配列番号126)(KabatおよびChothia定義系に従う)またはQHFAGTPL(配列番号127)(Contact定義系に従う)のCDR-L3を含む。
【0140】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、表7に示されるとおりの重鎖CDRと、合わせて少なくとも80%(例として、80%、85%、90%、95%、または98%)同一である重鎖CDRを含む。代替的にまたは加えて(例として、加えて)、本開示の抗TfR1抗体は、表7に示されるとおりの軽鎖CDRと、合わせて少なくとも80%(例として、80%、85%、90%、95%、または98%)同一である軽鎖CDRを含む。
【0141】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号124のアミノ酸配列を含むVHを含む。代替的にまたは加えて(例として、加えて)、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号125のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0142】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号128のアミノ酸配列を含むVHを含む。代替的にまたは加えて(例として、加えて)、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号129のアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0143】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号128で表されるとおりのVHと比較したとき、25以下のアミノ酸バリエーション(例として、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1以下のアミノ酸バリエーション)を含有するVHを含む。代替的にまたは加えて(例として、加えて)、本開示の抗TfR1抗体は、配列番号129で表されるとおりのVLと比較したとき、15以下のアミノ酸バリエーション(例として、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、9、8、7、6、5、4、3、2、または1以下のアミノ酸バリエーション)を含有するVLを含む。
【0144】
いくつかの態様において、本開示の抗TfR1抗体は、ヒト抗体からの重鎖定常領域および軽鎖定常領域を包含し得る完全長IgG1抗体である。いくつかの態様において、本明細書に記載のとおりの抗TfR1抗体のいずれの重鎖も、重鎖定常領域(CH)またはこの一部(例として、CH1、CH2、CH3、またはそれらの組み合わせ)を含んでいてもよい。重鎖定常領域は、いずれか好適な起源、例として、ヒト、マウス、ラット、またはウサギから成り得る。特定の一例において、重鎖定常領域は、ヒトIgG(ガンマ重鎖)、例として、IgG1、IgG2、またはIgG4からのものである。ヒトIgG1定常領域の例は下に与えられる:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号81)。
【0145】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体のいずれの軽鎖も、軽鎖定常領域(CL)をさらに含んでいてもよいが、これは当該技術分野において知られているいずれのCLでもあり得る。いくつかの例において、CLは、カッパ軽鎖である。他の例において、CLは、ラムダ軽鎖である。いくつかの態様において、CLはカッパ軽鎖であって、その配列は下に与えられる:
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号83)。
【0146】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、配列番号132のアミノ酸配列を含む重鎖を含むキメラ抗体である。代替的にまたは加えて(例として、加えて)、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、配列番号133のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0147】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、配列番号134のアミノ酸配列を含む重鎖を含む完全ヒト抗体である。代替的にまたは加えて(例として、加えて)、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、配列番号135のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0148】
いくつかの態様において、抗TfR1抗体は、無傷の抗体(完全長抗体)の抗原結合性フラグメント(Fab)である。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1 Fabは、配列番号136のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。代替的にまたは加えて(例として、加えて)、本明細書に記載の抗TfR1 Fabは、配列番号133のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1 Fabは、配列番号137のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。代替的にまたは加えて(例として、加えて)、本明細書に記載の抗TfR1 Fabは、配列番号135のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0149】
本明細書に記載の抗TfR1抗体は、これらに限定されないが、無傷の(すなわち、完全長)抗体、それらの抗原結合性フラグメント(Fab、Fab'、F(ab')2、Fvなどの)、単一鎖抗体、二重特異性抗体、またはナノボディーを包含する、いずれの抗体の形態でもあり得る。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、scFvである。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、scFv-Fab(例として、一部の定常領域と縮合されたscFv)である。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、定常領域(例として、配列番号81で表されるとおりのヒトIgG1定常領域)と縮合されたscFvである。
【0150】
いくつかの態様において、保存的突然変異は、例えば結晶構造に基づき決定されるとき、その残基が標的抗原(例として、トランスフェリン受容体)との相互作用に関与しそうにない位置にて、抗体配列(例として、CDRまたはフレームワーク配列)中へ導入され得る。いくつかの態様において、1、2以上の突然変異(例として、アミノ酸置換)は、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、および/または(例として、および)細胞への抗原依存的細胞傷害性などの、抗体の1以上の機能特性を変更させるために、本明細書に記載の抗TfR1抗体のFc領域中(例として、Kabatナンバリング系(例として、KabatのEUインデックス)に従うナンバリングで、CH2ドメイン(ヒトIgG1の残基231~340)中、および/または(例として、および)CH3ドメイン(ヒトIgG1の残基341~447)中、および/または(例として、および)ヒンジ領域中)へ導入される。
【0151】
いくつかの態様において、1、2以上の突然変異(例として、アミノ酸置換)は、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が、例として米国特許第5,677,425号に記載のとおり変動(例として、増大または減少)され得るように、Fc領域(CH1ドメイン)のヒンジ領域中へ導入される。CH1ドメインのヒンジ領域中のシステイン残基の数は、例として、軽鎖および重鎖の会合(assembly)を容易にさせるため、または抗体の安定性を変更(例として、増大もしくは減少)するため、またはリンカー抱合を容易にさせるため、変更され得る。
【0152】
いくつかの態様において、1、2以上の突然変異(例として、アミノ酸置換)は、抗体の、エフェクター細胞表面上のFc受容体(例として、活性化されたFc受容体)への親和性を増加または減少させるため、本明細書に記載の筋標的化抗体のFc領域中(例として、Kabatナンバリング系(例として、KabatのEUインデックス)に従うナンバリングで、CH2ドメイン(ヒトIgG1の残基231~340)中、および/または(例として、および)CH3ドメイン(ヒトIgG1の残基341~447)中、および/または(例として、および)ヒンジ領域中)へ導入される。抗体のFc受容体への親和性を増大または減少させる抗体のFc領域中の突然変異、およびかかる突然変異をFc受容体中またはそのフラグメント中へ導入するための技法は、当業者に知られている。抗体のFc受容体への親和性を変更するためになされ得る、抗体のFc受容体中の突然変異の例は、例として、Smith P et al.,(2012)PNAS 109:6181-6186、米国特許第6,737,056号、ならびに国際刊行物第WO 02/060919号;第WO 98/23289号;および第WO 97/34631号(これらは参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0153】
いくつかの態様において、1、2以上のアミノ酸突然変異(すなわち、置換、挿入、または欠失)は、in vivoでの抗体の半減期を変更(例として、増加または減少)させるため、IgG定常領域またはそのFcRn-結合フラグメント(好ましくは、Fcまたはヒンジ-Fcドメインフラグメント)中へ導入される。例えば、in vivoでの抗体の半減期を変更(例として、増加または減少)させるであろう突然変異について、例として、国際刊行物第WO 02/060919号;第WO 98/23289号;および第WO 97/34631号;ならびに米国特許第5,869,046号、第6,121,022号、第6,277,375号、および第6,165,745号を見よ。
【0154】
いくつかの態様において、1、2以上のアミノ酸突然変異(すなわち、置換、挿入、または欠失)は、in vivoでの抗TfR1抗体の半減期を減少させるため、IgG定常領域またはそのFcRn-結合フラグメント(好ましくは、Fcまたはヒンジ-Fcドメインフラグメント)中へ導入される。いくつかの態様において、1、2以上のアミノ酸突然変異(すなわち、置換、挿入、または欠失)は、in vivoでの抗体の半減期を増加させるため、IgG定常領域またはそのFcRn-結合フラグメント(好ましくは、Fcまたはヒンジ-Fcドメインフラグメント)中へ導入される。いくつかの態様において、抗体は、KabatのEUインデックス(上記のKabat E A et al.,(1991))に従うナンバリングで第2定常(CH2)ドメイン(ヒトIgG1の残基231~340)中および/または(例として、および)第3定常(CH3)ドメイン(ヒトIgG1の残基341~447)中に、1以上のアミノ酸突然変異(例として、置換)を有し得る。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗体のIgG1定常領域は、KabatにあるようなEUインデックスに従ってナンバリングされた位置252におけるメチオニン(M)からチロシン(Y)への置換、位置254におけるセリン(S)からトレオニン(T)への置換、および位置256におけるトレオニン(T)からグルタミン酸(E)への置換を含む。米国特許第7,658,921(これは、参照により本明細書に組み込まれる)を見よ。「YTE突然変異体」と称されるこのタイプの突然変異IgGは、同じ抗体の野生型バージョンと比較したとき4倍増大した半減期を発揮したことが示されている(Dall'Acqua W F et al.,(2006)J Biol Chem 281:23514-24を見よ)。いくつかの態様において、抗体は、KabatにあるようなEUインデックスに従ってナンバリングされた位置251~257、285~290、308~314、385~389、および428~436でのアミノ酸残基の、1、2、3以上のアミノ酸置換を含むIgG定常領域を含む。
【0155】
いくつかの態様において、1、2以上のアミノ酸置換は、抗TfR1抗体のエフェクター機能(単数または複数)を変更するため、IgG定常領域Fc領域中へ導入される。自身への親和性が変更されたエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1構成要素であり得る。このアプローチは、米国特許第5,624,821号および第5,648,260号においてさらに詳細に記載される。いくつかの態様において、定常領域ドメインの欠失または不活化(点突然変異または他の手段を通して)は、循環抗体のFc受容体への結合を低減し、それによって腫瘍局在化を増大し得る。定常領域を欠失または不活化し、それによって腫瘍局在化を増大させる突然変異の記載については、例として、米国特許第5,585,097号および第8,591,886号を見よ。いくつかの態様において、1以上のアミノ酸置換は、Fc領域上の潜在的なグリコシル化部位を除去するため(これによってFc受容体への結合が低減されることもある)、本明細書に記載の抗体のFc領域中へ導入されてもよい(例として、Shields R L et al.,(2001)J Biol Chem 276:6591-604を見よ)。
【0156】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体の定常領域中の1以上のアミノ酸残基は、抗体が変更されたC1q結合および/または(例として、および)低減もしくは消失された補体依存性細胞傷害性(CDC)を有し得るように、異なるアミノ酸残基と置き換えられ得る。このアプローチは、米国特許第6,194,551号(Idusogie et al)においてさらに詳細に記載されている。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗体のCH2ドメインのN末領域中の1以上のアミノ酸残基は変更されると、それによって抗体の補体結合能が変更される。このアプローチは、国際刊行物第WO 94/29351号においてさらに記載されている。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗体のFc領域は、抗体の、細胞への抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の媒介能を増大させるため、および/または(例として、および)抗体のFcγ受容体への親和性を増大させるため、修飾されている。このアプローチは、国際刊行物第WO 00/42072号においてさらに記載されている。
【0157】
いくつかの態様において、本明細書に提供される抗体の重鎖および/または(例として、および)軽鎖可変ドメイン(単数もしくは複数)配列(単数もしくは複数)は、本明細書の他のどこかに記載されるとおり、例えば、CDR接合抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、もしくは複合ヒト抗体、または抗原結合性フラグメントを生成するために使用され得る。当業者によって理解されるとおり、本明細書に提供される抗体のいずれかに由来するいずれのバリアント、CDR接合抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または複合抗体は、本明細書に記載の組成物および方法に有用であってもよく、バリアント、CDR接合抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または複合抗体が、これが由来する元の抗体と比べて、トランスフェリン受容体への少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%以上の結合を有し得るように、トランスフェリン受容体への特異的結合能を維持するであろう。
【0158】
いくつかの態様において、本明細書に提供される抗体は、所望の特性を抗体へ付与する突然変異を含む。例えば、ネイティブなIgG4 mAbに生じることが知られているFabアーム交換(Fab-arm exchange)に起因する潜在的合併症を回避するため、本明細書に提供される抗体は、安定化「Adair」突然変異を含んでいてもよく(Angal S.,et al.,"A single amino acid substitution abolishes the heterogeneity of chimeric mouse/human (IgG4) antibody",Mol Immunol 30,105-108;1993)、ここでセリン228(EUナンバリング;残基241 Kabatナンバリング)は、IgG1様ヒンジ配列をもたらすプロリンへ変換されている。結果的に、抗体のいずれも、安定化「Adair」突然変異を包含していてもよい。
【0159】
いくつかの態様において、抗体は修飾されており、例としてグリコシル化、リン酸化、SUMO化、および/または(例として、および)メチル化を介して修飾されている。いくつかの態様において、抗体は、1以上の糖または炭水化物分子へ抱合されたグリコシル化抗体である。いくつかの態様において、1以上の糖または炭水化物分子は、N-グリコシル化、O-グリコシル化、C-グリコシル化、グリピエーション(GPIアンカー付着)、および/または(例として、および)ホスホグリコシル化を介し、抗体へ抱合されている。いくつかの態様において、1以上の糖または炭水化物分子は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、またはグリカンである。いくつかの態様において、1以上の糖または炭水化物分子は、分枝オリゴ糖類または分枝グリカンである。いくつかの態様において、1以上の糖または炭水化物分子は、マンノース単位、グルコース単位、N-アセチルグルコサミン単位、N-アセチルガラクトサミン単位、ガラクトース単位、フコース単位、またはホスホ脂質単位を包含する。いくつかの態様において、約1~10、約1~5、約5~10、約1~4、約1~3、または約2つの糖分子が存在する。いくつかの態様において、グリコシル化抗体は、完全にまたは部分的にグリコシル化されている。いくつかの態様において、抗体は、化学反応によってまたは酵素的な手段によってグリコシル化されている。いくつかの態様において、抗体は、in vitroでまたは細胞内部でグリコシル化されるが、前記細胞は任意に、N-またはO-グリコシル化経路中の酵素(例として、グリコシルトランスフェラーゼ)が欠乏していることもある。いくつかの態様において、抗体は、2014年5月1日に公開され“Modified antibody, antibody-conjugate and process for the preparation thereof”と題する国際特許出願刊行物WO2014065661に記載のとおりの糖または炭水化物分子で官能化されている。
【0160】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体のいずれか1つは、重鎖および/または(例として、および)軽鎖配列上にシグナルペプチド(例として、N末シグナルペプチド)を含み得る。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗TfR1抗体は、VHおよびVL配列のいずれか1つ、IgG重鎖および軽鎖配列のいずれか1つ、または本明細書に記載のF(ab')重鎖および軽鎖配列のいずれか1つを含み、さらにシグナルペプチド(例として、N末シグナルペプチド)を含む。いくつかの態様において、シグナルペプチドは、MGWSCIILFLVATATGVHS(配列番号104)のアミノ酸配列を含む。
【0161】
いくつかの態様において、本明細書に提供される抗体は、1以上の翻訳後修飾を有していてもよい。いくつかの態様において、またピログルタミン酸形成(ピロ-Glu)とも呼ばれる、N末環化が、抗体において、産生最中にN末端のグルタミン酸(Glu)および/またはグルタミン(Gln)残基にて生じてもよい。そのため、N末端のグルタミン酸残基またはグルタミン残基を含む配列を有すると特定される抗体は、翻訳後修飾の結果生じるピログルタミン酸形成を経た抗体を網羅すると解されるはずである。いくつかの態様において、ピログルタミン酸形成は、重鎖配列に生じる。いくつかの態様において、ピログルタミン酸形成は、軽鎖配列に生じる。
【0162】
b.他の筋標的抗体
いくつかの態様において、筋標的化抗体は、ヘモジュベリン(hemojuvelin)、カベオリン-3、デュシェンヌ型筋ジストロフィーペプチド、ミオシンIIb、またはCD63に特異的に結合する抗体である。いくつかの態様において、筋標的化抗体は、筋原性前駆体タンパク質に特異的に結合する抗体である。例示の筋原性前駆体タンパク質は、限定せずに、ABCG2、M-カドヘリン/カドヘリン-15、カベオリン-1、CD34、FoxK1、インテグリンアルファ7、インテグリンアルファ7ベータ1、MYF-5、MyoD、ミオゲニン、NCAM-1/CD56、Pax3、Pax7、およびPax9を包含する。いくつかの態様において、筋標的化抗体は、骨格筋タンパク質に特異的に結合する抗体である。例示の骨格筋タンパク質は、限定せずに、アルファ-サルコグリカン、ベータ-サルコグリカン、カルパインインヒビター、クレアチンキナーゼMM/CKMM、eIF5A、エノラーゼ2/ニューロン特異的エノラーゼ、イプシロン-サルコグリカン、FABP3/H-FABP、GDF-8/ミオスタチン、GDF-11/GDF-8、インテグリンアルファ7、インテグリンアルファ7ベータ1、インテグリンベータ1/CD29、MCAM/CD146、MyoD、ミオゲニン、ミオシン軽鎖キナーゼインヒビター、NCAM-1/CD56、およびトロポニンIを包含する。いくつかの態様において、筋標的化抗体は、平滑筋タンパク質に特異的に結合する抗体である。例示の平滑筋タンパク質は、限定せずに、アルファ-平滑筋アクチン、VE-カドヘリン、カルデスモン/CALD1、カルポニン1、デスミン、ヒスタミンH2 R、モチリンR/GPR38、トランスジェリン(Transgelin)/TAGLN、およびビメンチンを包含する。しかしながら、追加の標的への抗体が本開示の範囲内であること、および本明細書に提供される標的の例示のリストが限定することを意図していないことは解されるはずである。
【0163】
c.抗体の特色/変更
いくつかの態様において、保存的突然変異は、例えば結晶構造に基づき決定されるとき、その残基が標的抗原(例として、トランスフェリン受容体)との相互作用に関与しそうにない位置にて、抗体配列(例として、CDRまたはフレームワーク配列)中へ導入され得る。いくつかの態様において、1、2以上の突然変異(例として、アミノ酸置換)は、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、および/または(例として、および)細胞への抗原依存的細胞傷害性などの、抗体の1以上の機能特性を変更させるために、本明細書に記載の筋標的化抗体のFc領域中(例として、Kabatナンバリング系(例として、KabatのEUインデックス)に従うナンバリングで、CH2ドメイン(ヒトIgG1の残基231~340)中、および/または(例として、および)CH3ドメイン(ヒトIgG1の残基341~447)中、および/または(例として、および)ヒンジ領域中)へ導入される。
【0164】
いくつかの態様において、1、2以上の突然変異(例として、アミノ酸置換)は、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が、例として米国特許第5,677,425号に記載のとおり変動(例として、増大または減少)され得るように、Fc領域(CH1ドメイン)のヒンジ領域中へ導入される。CH1ドメインのヒンジ領域中のシステイン残基の数は、例として、軽鎖および重鎖の会合(assembly)を容易にさせるため、または抗体の安定性を変更(例として、増大もしくは減少)するため、またはリンカー抱合を容易にさせるため、変更され得る。
【0165】
いくつかの態様において、1、2以上の突然変異(例として、アミノ酸置換)は、抗体の、エフェクター細胞表面上のFc受容体(例として、活性化されたFc受容体)への親和性を増加または減少させるため、本明細書に記載の筋標的化抗体のFc領域中(例として、Kabatナンバリング系(例として、KabatのEUインデックス)に従うナンバリングで、CH2ドメイン(ヒトIgG1の残基231~340)中、および/または(例として、および)CH3ドメイン(ヒトIgG1の残基341~447)中、および/または(例として、および)ヒンジ領域中)へ導入される。抗体のFc受容体への親和性を増大または減少させる抗体のFc領域中の突然変異、およびかかる突然変異をFc受容体中またはそのフラグメント中へ導入するための技法は、当業者に知られている。抗体のFc受容体への親和性を変更するためになされ得る、抗体のFc受容体中の突然変異の例は、例として、Smith P et al.,(2012)PNAS 109:6181-6186、米国特許第6,737,056号、ならびに国際刊行物第WO 02/060919号;第WO 98/23289号;および第WO 97/34631号(これらは参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0166】
いくつかの態様において、1、2以上のアミノ酸突然変異(すなわち、置換、挿入、または欠失)は、in vivoでの抗体の半減期を変更(例として、増加または減少)させるため、IgG定常領域またはそのFcRn-結合フラグメント(好ましくは、Fcまたはヒンジ-Fcドメインフラグメント)中へ導入される。例えば、in vivoでの抗体の半減期を変更(例として、増加または減少)させるであろう突然変異について、例として、国際刊行物第WO 02/060919号;第WO 98/23289号;および第WO 97/34631号;ならびに米国特許第5,869,046号、第6,121,022号、第6,277,375号、および第6,165,745号を見よ。
【0167】
いくつかの態様において、1、2以上のアミノ酸突然変異(すなわち、置換、挿入、または欠失)は、in vivoでの抗トランスフェリン受容体抗体の半減期を減少させるため、IgG定常領域またはそのFcRn-結合フラグメント(好ましくは、Fcまたはヒンジ-Fcドメインフラグメント)中へ導入される。いくつかの態様において、1、2以上のアミノ酸突然変異(すなわち、置換、挿入、または欠失)は、in vivoでの抗体の半減期を増加させるため、IgG定常領域またはそのFcRn-結合フラグメント(好ましくは、Fcまたはヒンジ-Fcドメインフラグメント)中へ導入される。いくつかの態様において、抗体は、KabatのEUインデックス(上記のKabat E A et al.,(1991))に従うナンバリングで第2定常(CH2)ドメイン(ヒトIgG1の残基231~340)中および/または(例として、および)第3定常(CH3)ドメイン(ヒトIgG1の残基341~447)中に、1以上のアミノ酸突然変異(例として、置換)を有し得る。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗体のIgG1定常領域は、KabatにあるようなEUインデックスに従ってナンバリングされた位置252におけるメチオニン(M)からチロシン(Y)への置換、位置254におけるセリン(S)からトレオニン(T)への置換、および位置256におけるトレオニン(T)からグルタミン酸(E)への置換を含む。米国特許第7,658,921(これは、参照により本明細書に組み込まれる)を見よ。「YTE突然変異体」と称されるこのタイプの突然変異IgGは、同じ抗体の野生型バージョンと比較したとき4倍増大した半減期を発揮したことが示されている(Dall'Acqua W F et al.,(2006)J Biol Chem 281:23514-24を見よ)。いくつかの態様において、抗体は、KabatにあるようなEUインデックスに従ってナンバリングされた位置251~257、285~290、308~314、385~389、および428~436でのアミノ酸残基の、1、2、3以上のアミノ酸置換を含むIgG定常領域を含む。
【0168】
いくつかの態様において、1、2以上のアミノ酸置換は、抗トランスフェリン受容体抗体のエフェクター機能(単数または複数)を変更するため、IgG定常領域Fc領域中へ導入される。自身への親和性が変更されたエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1構成要素であり得る。このアプローチは、米国特許第5,624,821号および第5,648,260号においてさらに詳細に記載される。いくつかの態様において、定常領域ドメインの欠失または不活化(点突然変異または他の手段を通して)は、循環抗体のFc受容体への結合を低減し、それによって腫瘍局在化を増大し得る。定常領域を欠失または不活化し、それによって腫瘍局在化を増大させる突然変異の記載については、例として、米国特許第5,585,097号および第8,591,886号を見よ。いくつかの態様において、1以上のアミノ酸置換は、Fc領域上の潜在的なグリコシル化部位を除去するため(これによってFc受容体への結合が低減されることもある)、本明細書に記載の抗体のFc領域中へ導入されてもよい(例として、Shields R L et al.,(2001)J Biol Chem 276:6591-604を見よ)。
【0169】
いくつかの態様において、本明細書に記載の筋標的化抗体の定常領域中の1以上のアミノ酸残基は、抗体が変更されたClq結合および/または(例として、および)低減もしくは消失された補体依存性細胞傷害性(CDC)を有し得るように、異なるアミノ酸残基と置き換えられ得る。このアプローチは、米国特許第6,194,551号(Idusogie et al)においてさらに詳細に記載されている。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗体のCH2ドメインのN末領域中の1以上のアミノ酸残基は変更されると、それによって抗体の補体結合能が変更される。このアプローチは、国際刊行物第WO 94/29351号においてさらに記載されている。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗体のFc領域は、抗体の、細胞への抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の媒介能を増大させるため、および/または(例として、および)抗体のFcγ受容体への親和性を増大させるため、修飾されている。このアプローチは、国際刊行物第WO 00/42072号においてさらに記載されている。
【0170】
いくつかの態様において、本明細書に提供される抗体の重鎖および/または(例として、および)軽鎖可変ドメイン(単数もしくは複数)配列(単数もしくは複数)は、本明細書の他のどこかに記載されるとおり、例えば、CDR接合抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、もしくは複合ヒト抗体、または抗原結合性フラグメントを生成するために使用され得る。当業者によって理解されるとおり、本明細書に提供される抗体のいずれかに由来するいずれのバリアント、CDR接合抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または複合抗体は、本明細書に記載の組成物および方法に有用であってもよく、バリアント、CDR接合抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または複合抗体が、これが由来する元の抗体と比べて、トランスフェリン受容体への少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%以上の結合を有し得るように、トランスフェリン受容体への特異的結合能を維持するであろう。
【0171】
いくつかの態様において、本明細書に提供される抗体は、所望の特性を抗体へ付与する突然変異を含む。例えば、ネイティブなIgG4 mAbに生じることが知られているFabアーム交換(Fab-arm exchange)に起因する潜在的合併症を回避するため、本明細書に提供される抗体は、安定化「Adair」突然変異を含んでいてもよく(Angal S.,et al.,"A single amino acid substitution abolishes the heterogeneity of chimeric mouse/human (IgG4) antibody",Mol Immunol 30,105-108;1993)、ここでセリン228(EUナンバリング;残基241 Kabatナンバリング)は、IgG1様ヒンジ配列をもたらすプロリンへ変換されている。結果的に、抗体のいずれも、安定化「Adair」突然変異を包含していてもよい。
【0172】
本明細書に提供されるとおり、本開示の抗体は、任意に、定常領域またはその一部を含んでいてもよい。例えば、VLドメインは、そのC末端側終端(C-terminal end)にて、CκまたはCλといった軽鎖定常領域へ付着されていてもよい。同様に、VHドメインまたはその一部は、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMといった重鎖のすべてまたはその一部と、いずれのアイソタイプのサブクラスとへ付着されていてもよい。抗体は、好適な定常領域を包含していてもよい(例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,No.91-3242,National Institutes of Health Publications,Bethesda,Md.(1991)を見よ)。したがって、本開示の範囲内の抗体は、VHおよびVLドメイン、またはその抗原結合部を、いずれの好適な定常領域とも組み合わされて包含していてもよい。
【0173】
ii.筋標的化ペプチド
本開示のいくつかの側面は、筋標的化ペプチドを筋標的化剤として提供する。特定の細胞型へ結合する短いペプチド配列(例として、長さが5~20アミノ酸のペプチド配列)は記載されている。例えば、細胞標的化ペプチドは、Vines e.,et al.,A."Cell-penetrating and cell-targeting peptides in drug delivery"Biochim Biophys Acta 2008,1786:126-38;Jarver P.,et al.,"In vivo biodistribution and efficacy of peptide mediated delivery"Trends Pharmacol Sci 2010;31:528-35;Samoylova T.I.,et al.,"Elucidation of muscle-binding peptides by phage display screening"Muscle Nerve 1999;22:460-6;2001年12月11日発行され"METHODS AND COMPOSITIONS FOR TARGETING COMPOUNDS TO MUSCLE"と題する米国特許第6,329,501号;およびSamoylov A.M.,et al.,"Recognition of cell-specific binding of phage display derived peptides using an acoustic wave sensor."Biomol Eng 2002;18:269-72に記載されている;これら各々の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。特定の細胞表面抗原(例として、受容体)と相互作用するようにペプチドを設計することによって、所望される組織(例として、筋肉)への選択性が獲得され得る。骨格筋標的化が調査されており、広範な分子ペイロードが送達されることができる。巨大な抗体またはウイルス粒子についての実際上の不利な点の多くが存在しないこれらのアプローチは、筋組織への高選択性を有していてもよい。結果的に、いくつかの態様において、筋標的化剤は、長さが4アミノ酸から50アミノ酸までの筋標的化ペプチドである。いくつかの態様において、筋標的化ペプチドは、長さが4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50アミノ酸である。筋標的化ペプチドは、ファージディスプレーなどの数種の方法のいずれかを使用して生成され得る。
【0174】
いくつかの態様において、筋標的化ペプチドは、他のある細胞と比較して、筋細胞において過剰発現されているかまたは相対的に高度に発現されている、内在化する細胞表面受容体(例として、トランスフェリン受容体)へ結合してもよい。いくつかの態様において、筋標的化ペプチドは、トランスフェリン受容体を標的にしてもよい(例として、トランスフェリン受容体へ結合してもよい)。いくつかの態様において、トランスフェリン受容体を標的にするペプチドは、天然に存在するリガンド、例としてトランスフェリンのセグメントを含んでいてもよい。いくつかの態様において、トランスフェリン受容体を標的にするペプチドは、米国特許第6,743,893号、11/30/2000出願、「RECEPTOR-MEDIATED UPTAKE OF PEPTIDES THAT BIND THE HUMAN TRANSFERRIN RECEPTOR」に記載されるとおりである。いくつかの態様において、トランスフェリン受容体を標的にするペプチドは、Kawamoto,M.et al,"A novel transferrin receptor-targeted hybrid peptide disintegrates cancer cell membrane to induce rapid killing of cancer cells."BMC Cancer.2011 Aug 18;11:359に記載のとおりである。いくつかの態様において、トランスフェリン受容体を標的にするペプチドは、米国特許第8,399,653号、5/20/2011出願、「TRANSFERRIN/TRANSFERRIN RECEPTOR-MEDIATED SIRNA DELIVERY」に記載のとおりである。
【0175】
上に考察されたとおり、筋標的化ペプチドの例は報告されている。例えば、筋特異的ペプチドは、表面へプタペプチドを提示するファージディスプレーライブラリを使用して同定された。一例として、アミノ酸配列ASSLNIA(配列番号184)を有するペプチドは、in vitroでC2C12マウス筋管へ結合し、かつin vivoでマウス筋組織へ結合した。結果的に、いくつかの態様において、筋標的化剤は、アミノ酸配列ASSLNIA(配列番号184)を含む。このペプチドは、肝臓、腎臓、および脳への結合が低減された、マウスへの静脈内注射後の心筋組織および骨格筋組織への結合について改善された特異性を見せた。追加の筋特異的ペプチドも、ファージディスプレーを使用して同定されている。例えば、DMDへの処置という文脈において、12アミノ酸ペプチドが、筋標的化のためのファージディスプレーライブラリによって同定された。Yoshida D.,et al.,"Targeting of salicylate to skin and muscle following topical injections in rats."Int J Pharm 2002;231:177-84を見よ;この内容全体はこれによって参照により組み込まれる。ここで、配列SKTFNTHPQSTP(配列番号185)を有する12アミノ酸ペプチドが同定され、この筋標的化ペプチドは、ASSLNIA(配列番号184)ペプチドと比べてC2C12細胞への改善された結合を示した。
【0176】
他の細胞型よりも筋肉(例として、骨格筋)に対して選択的であるペプチドを同定するための追加の方法も、in vitroでの選択を包含し、これはGhosh D.,et al.,"Selection of muscle-binding peptides from context-specific peptide-presenting phage libraries for adenoviral vector targeting"J Virol 2005;79:13667-72に記載されている;この内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。ランダム12マー(-12mer)ペプチドファージディスプレーライブラリを非筋細胞型の混合物と予めインキュベートすることによって、非特異的細胞バインダーが選択された。選択ラウンド(rounds of selection)を受け、12アミノ酸ペプチドTARGEHKEEELI(配列番号177)が最も頻繁に現れた。結果的に、いくつかの態様において、筋標的化剤は、アミノ酸配列TARGEHKEEELI(配列番号177)を含む。
【0177】
筋標的化剤は、アミノ酸を含有する分子またはペプチドであってもよい。筋標的化ペプチドは、筋細胞から見出されたタンパク質受容体へ優先的に結合するタンパク質の配列に対応していてもよい。いくつかの態様において、筋標的化ペプチドは、ペプチドが筋細胞を優先的に標的にし得るように、疎水性アミノ酸(例として、バリン)の性質を多く(a high propensity)含有する。いくつかの態様において、筋標的化ペプチドは、これまでに特徴付けも開示もされていない。これらのペプチドは、数種の方法論のいずれか、例としてファージディスプレード(displayed)ペプチドライブラリ、1ビーズ・1化合物(one-bead one-compound)ペプチドライブラリ、または位置走査性(positional scanning)合成ペプチドコンビナトリアルライブラリを使用して、想起、産生、合成、および/または(例として、および)誘導体化されてもよい。例示の方法論は当該技術分野において特徴付けられており、参照により組み込まれる(Gray,B.P.and Brown,K.C."Combinatorial Peptide Libraries:Mining for Cell-Binding Peptides"Chem Rev.2014,114:2,1020-1081.;Samoylova,T.I.and Smith,B.F."Elucidation of muscle-binding peptides by phage display screening."Muscle Nerve,1999,22:4.460-6)。いくつかの態様において、筋標的化ペプチドはこれまでに開示されている(例として、Writer M.J.et al."Targeted gene delivery to human airway epithelial cells with synthetic vectors incorporating novel targeting peptides selected by phage display."J.Drug Targeting.2004;12:185;Cai,D."BDNF-mediated enhancement of inflammation and injury in the aging heart."Physiol Genomics.2006,24:3,191-7.;Zhang,L."Molecular profiling of heart endothelial cells."Circulation,2005,112:11,1601-11.;McGuire,M.J.et al."In vitro selection of a peptide with high selectivity for cardiomyocytes in vivo."J Mol Biol.2004,342:1,171-82を見よ)。例示の筋標的化ペプチドは、以下の群:CQAQGQLVC(配列番号178)、CSERSMNFC(配列番号179)、CPKTRRVPC(配列番号180)、WLSEAGPVVTVRALRGTGSW(配列番号181)、ASSLNIA(配列番号184)、CMQHSMRVC(配列番号182)、およびDDTRHWG(配列番号183)のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、筋標的化ペプチドは、約2~25アミノ酸、約2~20アミノ酸、約2~15アミノ酸、約2~10アミノ酸、または約2~5アミノ酸を含んでいてもよい。筋標的化ペプチドは、天然に存在するアミノ酸、例としてシステイン、アラニン、もしくは天然に存在しないアミノ酸、または修飾アミノ酸を含んでいてもよい。天然に存在しないアミノ酸は、β-アミノ酸、ホモ-アミノ酸、プロリン誘導体、3-置換アラニン誘導体、線形コアアミノ酸(linear core amino acids)、N-メチルアミノ酸、および当該技術分野において知られている他のアミノ酸を包含する。いくつかの態様において、筋標的化ペプチドは線状であってもよい;他の態様において、筋標的化ペプチドは環状(例として、二環式)であってもよい(例として、Silvana,M.G.et al.Mol.Therapy,2018,26:1,132-147を見よ)。
【0178】
iii.筋標的化受容体リガンド
筋標的化剤は、リガンド、例として受容体タンパク質へ結合するリガンドであってもよい。筋標的化リガンドは、筋細胞によって発現される、内在化する細胞表面受容体へ結合するタンパク質、例としてトランスフェリンであってもよい。結果的に、いくつかの態様において、筋標的化剤は、トランスフェリン、またはトランスフェリン受容体へ結合するその誘導体である。筋標的化リガンドは、代替的に、小分子、例として他の細胞型と比べて優先的に筋細胞を標的にする親油性小分子であってもよい。筋細胞を標的にしてもよい例示の親油性小分子は、コレステロール、コレステリル、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、オレイル、リノレン酸、リノール酸、ミリスチン酸、ステロール、ジヒドロテストステロン、テストステロン誘導体、グリセリン、アルキル鎖、トリチル基、およびアルコキシ酸を含む化合物を包含する。
【0179】
iv.筋標的化アプタマー
筋標的化剤は、他の細胞型と比べて優先的に筋細胞を標的にするアプタマー、例としてRNAアプタマーであってもよい。いくつかの態様において、筋標的化アプタマーはこれまでに特徴付けも開示もされていない。これらのアプタマーは、数種の方法論のいずれか、例として指数関数的濃縮によるリガンドの体系的進化(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)を使用して、想起、産生、合成、および/または(例として、および)誘導体化されてもよい。例示の方法論は当該技術分野において特徴付けられており、参照により組み込まれる(Yan,A.C. and Levy,M."Aptamers and aptamer targeted delivery" RNA biology,2009,6:3,316-20.;Germer,K.et al."RNA aptamers and their therapeutic and diagnostic applications."Int.J.Biochem.Mol.Biol.2013;4:27-40)。いくつかの態様において、筋標的化アプタマーはこれまでに開示されている(例として、Phillippou,S.et al."Selection and Identification of Skeletal-Muscle-Targeted RNA Aptamers."Mol Ther Nucleic Acids.2018,10:199-214.;Thiel,W.H.et al."Smooth Muscle Cell-targeted RNA Aptamer Inhibits Neointimal Formation."Mol Ther.2016,24:4,779-87を見よ)。例示の筋標的化アプタマーは、A01B RNAアプタマーおよびRNA Apt 14を包含する。いくつかの態様において、アプタマーは、核酸をベースとしたアプタマー、オリゴヌクレオチドアプタマー、またはペプチドアプタマーである。いくつかの態様において、アプタマーは、約5~15kDa、約5~10kDa、約10~15kDa、約1~5Da、約1~3kDa、またはより小さいものであってもよい。
【0180】
v.他の筋標的化剤
筋細胞(例として、骨格筋細胞)を標的にするための1つのストラテジーは、筋線維鞘上に発現されたトランスポータータンパク質などの筋肉トランスポータータンパク質の基質を使用することである。いくつかの態様において、筋標的化剤は、筋組織に特異的な流入トランスポーターの基質である。いくつかの態様において、流入トランスポーターは、骨格筋組織に特異的である。骨格筋の筋線維鞘上に発現されるトランスポーターの二大クラスは、(1)骨格筋組織からの流出を容易にさせる、アデノシン三リン酸(ATP)結合カセット(ABC)スーパーファミリー、および(2)基質の骨格筋中への流入を容易にし得る、溶質輸送体(solute carrier)(SLC)スーパーファミリーである。いくつかの態様において、筋標的化剤は、トランスポーターのABCスーパーファミリーまたはSLCスーパーファミリーへ結合する基質である。いくつかの態様において、トランスポーターのABCまたはSLCスーパーファミリーへ結合する基質は、天然に存在する基質である。いくつかの態様において、トランスポーターのABCまたはSLCスーパーファミリーへ結合する基質は、天然に存在しない基質、例えばトランスポーターのABCまたはSLCスーパーファミリーへ結合するその合成誘導体である。
【0181】
いくつかの態様において、筋標的化剤は、トランスポーターのSLCスーパーファミリーを標的にする本明細書に記載のいずれかの筋標的化剤(例として、抗体、核酸、小分子、ペプチド、アプタマー、脂質、糖部)である。いくつかの態様において、筋標的化剤は、トランスポーターのSLCスーパーファミリーの基質である。SLCトランスポーターは、平衡型であるか、または膜を横断して創出されたプロトンもしくはナトリウムのイオン勾配を使用して基質の輸送を推進するかのいずれかである。骨格筋への高発現を有する例示のSLCトランスポーターは、限定せずに、SATTトランスポーター(ASCT1;SLC1A4)、GLUT4トランスポーター(SLC2A4)、GLUT7トランスポーター(GLUT7;SLC2A7)、ATRC2トランスポーター(CAT-2;SLC7A2)、LAT3トランスポーター(KIAA0245;SLC7A6)、PHT1トランスポーター(PTR4;SLC15A4)、OATP-Jトランスポーター(OATP5A1;SLC21A15)、OCT3トランスポーター(EMT;SLC22A3)、OCTN2トランスポーター(FLJ46769;SLC22A5)、ENTトランスポーター(ENT1;SLC29A1およびENT2;SLC29A2)、PAT2トランスポーター(SLC36A2)、およびSAT2トランスポーター(KIAA1382;SLC38A2)を包含する。これらのトランスポーターは、基質の骨格筋中への流入を容易にさせることで、筋標的化のための好機を提供し得る。
【0182】
いくつかの態様において、筋標的化剤は、平衡型ヌクレオシドトランスポーター2(ENT2)トランスポーターの基質である。他のトランスポーターと比べて、ENT2は、骨格筋において最高発現するmRNAの1つを有する。ヒトENT2(hENT2)は、脳、心臓、胎盤、胸腺、膵臓、前立腺、および腎臓などのほとんどの体器官に発現されるものの、とくに骨格筋に豊富である。ヒトENT2は、その基質の取り込みを、それらの濃度勾配に依存して容易にさせる。ENT2は、広範なプリンおよびピリミジン核酸塩基を輸送することによってヌクレオシドホメオスタシスを維持する役割を果たす。hENT2トランスポーターは、イノシンを除くすべてのヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、チミジン、およびシチジン)に対して低親和性を有する。結果的に、いくつかの態様において、筋標的化剤は、ENT2基質である。例示のENT2基質は、限定せずに、イノシン、2',3'-ジデオキシイノシン、およびクロファラビンを包含する。いくつかの態様において、本明細書に提供される筋標的化剤のいずれも、分子ペイロード(例として、オリゴヌクレオチドペイロード)と結び付けられている。いくつかの態様において、筋標的化剤は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている。いくつかの態様において、筋標的化剤は、分子ペイロードへ非共有結合的に連結されている。
【0183】
いくつかの態様において、筋標的化剤は、ナトリウムイオン依存性の高親和性カルニチントランスポーターである有機カチオン/カルニチントランスポーター(OCTN2)の基質である。いくつかの態様において、筋標的化剤は、カルニチン、ミルドロネート、アセチルカルニチン、またはOCTN2へ結合するそのいずれかの誘導体である。いくつかの態様において、カルニチン、ミルドロネート、アセチルカルニチン、またはそれらの誘導体は、分子ペイロード(例として、オリゴヌクレオチドペイロード)へ共有結合的に連結されている。
【0184】
筋標的化剤は、筋細胞を標的にする少なくとも1つの可溶性形態で存在するタンパク質であるタンパク質であってもよい。いくつかの態様において、筋標的化タンパク質は、鉄過剰およびホメオスタシスに関与するタンパク質ヘモジュベリン(また反発性ガイダンス分子(repulsive guidance molecule)Cまたはヘモクロマトーシスタイプ2タンパク質としても知られている)であってもよい。いくつかの態様において、ヘモジュベリンは、完全長もしくはフラグメントであっても、または機能的ヘモジュベリンタンパク質と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%配列同一性をもつ突然変異体であってもよい。いくつかの態様において、ヘモジュベリン突然変異体は、可溶性フラグメントであってもよく、N末シグナリングを欠いていてもよく、および/または(例として、および)C末アンカードメイン(anchoring domain)を欠いていてもよい。いくつかの態様において、ヘモジュベリンは、GenBank RefSeq受託番号NM_001316767.1、NM_145277.4、NM_202004.3、NM_213652.3、またはNM_213653.3の下に注釈が付されるものであってもよい。ヘモジュベリンが、ヒト、霊長目非ヒト動物、または齧歯類動物を起源とするものであってもよいことは解されるはずである。
【0185】
B.分子ペイロード
本開示のいくつかの側面は、分子ペイロード、例としてDUX4の発現または活性をモジュレートするためにDUX4 RNAを標的にするよう設計されたオリゴヌクレオチドを提供する。いくつかの態様において、DUX4の発現またモジュレートすることは、DUX4 RNAおよび/または(例として、および)タンパク質のレベルを低減させることを含む。いくつかの態様において、DUX4標的化オリゴヌクレオチドは、本明細書に記載の筋標的化剤へ連結されるか、または別様にこれと結び付けられている。いくつかの態様において、かかるオリゴヌクレオチドは、例として結び付けられた筋標的化剤による筋細胞への送達を受けて筋細胞中のDUX4配列へ特異的に結合することを介し、筋細胞中のDUX4を標的にすることが可能である。様々なタイプの筋標的化剤が本開示に従って使用されてもよいことは解されるはずである。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、DUX4配列に対する相補性の領域を有する鎖を含む。DUX4 RNAを標的にする例示のオリゴヌクレオチドは、本明細書にさらに詳細に記載されているが、しかしながら、本明細書に提供される例示の分子ペイロードが限定されることを意図していないことは解されるはずである。
【0186】
i.オリゴヌクレオチド
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、mRNAの分解を引き起こすように設計されてもよい(例として、オリゴヌクレオチドは、分解を引き起こすギャップマー、siRNA、リボザイム、またはアプタマーであってもよい)。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、mRNAの翻訳を遮断するように設計されていてもよい。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、mRNAの分解および翻訳を遮断するように設計されていてもよい。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、DUX4 RNAの低減された発現をもたらすように設計されていてもよい。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、DUX4タンパク質の低減された発現をもたらすように設計されていてもよい。オリゴヌクレオチドの他の例は本明細書に提供される。いくつかの態様において、一方のフォーマット(format)からの機能的配列(例として、アンチセンス鎖配列)を他方のフォーマットへ組み込むことによって、あるフォーマットのオリゴヌクレオチド(例として、アンチセンスオリゴヌクレオチド)が、別のフォーマット(例として、siRNAオリゴヌクレオチド)へ好適に適応されてもよいことは解されるはずである。
【0187】
いずれか好適なオリゴヌクレオチドが、分子ペイロードとして、本明細書に記載のとおり使用されてもよい。DUX4を標的にするために有用なオリゴヌクレオチドの例は、2017年2月2日に公開され“AGENTS USEFUL IN TREATING FACIOSCAPULOHUMERAL MUSCULAR DYSTROPHY”と題する米国特許番号9,988,628号;2014年10月30日に公開され“RECOMBINANT VIRUS PRODUCTS AND METHODS FOR INHIBITING EXPRESSION OF DUX4”と題する米国特許番号9,469,851号;2012年9月6日に公開され“AGENTS USEFUL IN TREATING FACIOSCAPULOHUMERAL MUSCULAR DYSTROPHY”と題する米国特許出願刊行物20120225034号;2013年8月15日に公開され“MORPHOLINO TARGETING DUX4 FOR TREATING FSHD”と題するPCT特許出願刊行物番号WO 2013/120038号;Chen et al.,“Morpholino-mediated Knockdown of DUX4 Toward Facioscapulohumeral Muscular Dystrophy Therapeutics,”Molecular Therapy, 2016,24:8,1405-1411.;およびAnsseau et al.,“Antisense Oligonucleotides Used to Target the DUX4 mRNA as Therapeutic Approaches in Facioscapulohumeral Muscular Dystrophy (FSHD),”Genes, 2017,8,93.に提供され、これら各々の内容は全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、標的DUX4遺伝子もしくはmRNAとハイブリダイズする、アンチセンスオリゴヌクレオチド、モルホリノ、siRNA、shRNA、または別のオリゴヌクレオチドである。
【0188】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは次のとおりに表されるとおりの配列に対する相補性の領域を有していてもよい:下のとおり:NCBI配列NM_001293798.1(配列番号186)、NCBI配列:NM_001293798.2(配列番号187)、および/または(例として、および)NM_001306068.3(配列番号188)に対応するヒトDUX4、および/または(例として、および)下のとおりのNCBI配列NM_001081954.1(配列番号189)に対応するマウスDUX4。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、2015年にCurr Opin Genet Devで公開されたDaxinger,et al.,"Genetic and Epigenetic Contributors to FSHD,"Lim J-W,et al.,DICER/AGO-dependent epigenetic silencing of D4Z4 repeats enhanced by exogenous siRNA suggests mechanisms and therapies for FSHD Hum Mol Genet.2015 Sep 1;24(17):4817-4828(これら各々の内容全体は本明細書に組み込まれる)におけるとおり、低メチル化され縮小されたD4Z4反復に対する相補性の領域を有してもよい。
【0189】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、ヒトDUX4遺伝子配列の例(NM_001293798.1)(配列番号186)である以下のとおり表される配列に対する相補性の領域を有してもよい:ATGGCCCTCCCGACACCCTCGGACAGCACCCTCCCCGCGGAAGCCCGGGGACGAGGACGGCGACGGAGACTCGTTTGGACCCCGAGCCAAAGCGAGGCCCTGCGAGCCTGCTTTGAGCGGAACCCGTACCCGGGCATCGCCACCAGAGAACGGCTGGCCCAGGCCATCGGCATTCCGGAGCCCAGGGTCCAGATTTGGTTTCAGAATGAGAGGTCACGCCAGCTGAGGCAGCACCGGCGGGAATCTCGGCCCTGGCCCGGGAGACGCGGCCCGCCAGAAGGCCGGCGAAAGCGGACCGCCGTCACCGGATCCCAGACCGCCCTGCTCCTCCGAGCCTTTGAGAAGGATCGCTTTCCAGGCATCGCCGCCCGGGAGGAGCTGGCCAGAGAGACGGGCCTCCCGGAGTCCAGGATTCAGATCTGGTTTCAGAATCGAAGGGCCAGGCACCCGGGACAGGGTGGCAGGGCGCCCGCGCAGGCAGGCGGCCTGTGCAGCGCGGCCCCCGGCGGGGGTCACCCTGCTCCCTCGTGGGTCGCCTTCGCCCACACCGGCGCGTGGGGAACGGGGCTTCCCGCACCCCACGTGCCCTGCGCGCCTGGGGCTCTCCCACAGGGGGCTTTCGTGAGCCAGGCAGCGAGGGCCGCCCCCGCGCTGCAGCCCAGCCAGGCCGCGCCGGCAGAGGGGATCTCCCAACCTGCCCCGGCGCGCGGGGATTTCGCCTACGCCGCCCCGGCTCCTCCGGACGGGGCGCTCTCCCACCCTCAGGCTCCTCGGTGGCCTCCGCACCCGGGCAAAAGCCGGGAGGACCGGGACCCGCAGCGCGACGGCCTGCCGGGCCCCTGCGCGGTGGCACAGCCTGGGCCCGCTCAAGCGGGGCCGCAGGGCCAAGGGGTGCTTGCGCCACCCACGTCCCAGGGGAGTCCGTGGTGGGGCTGGGGCCGGGGTCCCCAGGTCGCCGGGGCGGCGTGGGAACCCCAAGCCGGGGCAGCTCCACCTCCCCAGCCCGCGCCCCCGGACGCCTCCGCCTCCGCGCGGCAGGGGCAGATGCAAGGCATCCCGGCGCCCTCCCAGGCGCTCCAGGAGCCGGCGCCCTGGTCTGCACTCCCCTGCGGCCTGCTGCTGGATGAGCTCCTGGCGAGCCCGGAGTTTCTGCAGCAGGCGCAACCTCTCCTAGAAACGGAGGCCCCGGGGGAGCTGGAGGCCTCGGAAGAGGCCGCCTCGCTGGAAGCACCCCTCAGCGAGGAAGAATACCGGGCTCTGCTGGAGGAGCTTTAG
【0190】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、ヒトDUX4遺伝子配列の例(NM_001293798.2)(配列番号187)である、以下のとおりに表される配列に対する相補性の領域を有してもよい:
ATGGCCCTCCCGACACCCTCGGACAGCACCCTCCCCGCGGAAGCCCGGGGACGAGGACGGCGACGGAGACTCGTTTGGACCCCGAGCCAAAGCGAGGCCCTGCGAGCCTGCTTTGAGCGGAACCCGTACCCGGGCATCGCCACCAGAGAACGGCTGGCCCAGGCCATCGGCATTCCGGAGCCCAGGGTCCAGATTTGGTTTCAGAATGAGAGGTCACGCCAGCTGAGGCAGCACCGGCGGGAATCTCGGCCCTGGCCCGGGAGACGCGGCCCGCCAGAAGGCCGGCGAAAGCGGACCGCCGTCACCGGATCCCAGACCGCCCTGCTCCTCCGAGCCTTTGAGAAGGATCGCTTTCCAGGCATCGCCGCCCGGGAGGAGCTGGCCAGAGAGACGGGCCTCCCGGAGTCCAGGATTCAGATCTGGTTTCAGAATCGAAGGGCCAGGCACCCGGGACAGGGTGGCAGGGCGCCCGCGCAGGCAGGCGGCCTGTGCAGCGCGGCCCCCGGCGGGGGTCACCCTGCTCCCTCGTGGGTCGCCTTCGCCCACACCGGCGCGTGGGGAACGGGGCTTCCCGCACCCCACGTGCCCTGCGCGCCTGGGGCTCTCCCACAGGGGGCTTTCGTGAGCCAGGCAGCGAGGGCCGCCCCCGCGCTGCAGCCCAGCCAGGCCGCGCCGGCAGAGGGGATCTCCCAACCTGCCCCGGCGCGCGGGGATTTCGCCTACGCCGCCCCGGCTCCTCCGGACGGGGCGCTCTCCCACCCTCAGGCTCCTCGCTGGCCTCCGCACCCGGGCAAAAGCCGGGAGGACCGGGACCCGCAGCGCGACGGCCTGCCGGGCCCCTGCGCGGTGGCACAGCCTGGGCCCGCTCAAGCGGGGCCGCAGGGCCAAGGGGTGCTTGCGCCACCCACGTCCCAGGGGAGTCCGTGGTGGGGCTGGGGCCGGGGTCCCCAGGTCGCCGGGGCGGCGTGGGAACCCCAAGCCGGGGCAGCTCCACCTCCCCAGCCCGCGCCCCCGGACGCCTCCGCCTCCGCGCGGCAGGGGCAGATGCAAGGCATCCCGGCGCCCTCCCAGGCGCTCCAGGAGCCGGCGCCCTGGTCTGCACTCCCCTGCGGCCTGCTGCTGGATGAGCTCCTGGCGAGCCCGGAGTTTCTGCAGCAGGCGCAACCTCTCCTAGAAACGGAGGCCCCGGGGGAGCTGGAGGCCTCGGAAGAGGCCGCCTCGCTGGAAGCACCCCTCAGCGAGGAAGAATACCGGGCTCTGCTGGAGGAGCTTTAGGACGCGGGGTCTAGGCCCGGTGAGAGACTCCACACCGCGGAGAACTGCCATTCTTTCCTGGGCATCCCGGGGATCCCAGAGCCGGCCCAGGTACCAGCAGACCTGCGCGCAGTGCGCACCCCGGCTGACGTGCAAGGGAGCTCGCTGGCCTCTCTGTGCCCTTGTTCTTCCGTGAAATTCTGGCTGAATGTCTCCCCCCACCTTCCGACGCTGTCTAGGCAAACCTGGATTAGAGTTACATCTCCTGGATGATTAGTTCAGAGATATATTAAAATGCCCCCTCCCTGTGGATCCTATAG
【0191】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、ヒトDUX4遺伝子配列の例(NM_001306068.3)(配列番号188)である、以下のとおりに表される配列に対する相補性の領域を有してもよい:
【0192】
ATGGCCCTCCCGACACCCTCGGACAGCACCCTCCCCGCGGAAGCCCGGGGACGAGGACGGCGACGGAGACTCGTTTGGACCCCGAGCCAAAGCGAGGCCCTGCGAGCCTGCTTTGAGCGGAACCCGTACCCGGGCATCGCCACCAGAGAACGGCTGGCCCAGGCCATCGGCATTCCGGAGCCCAGGGTCCAGATTTGGTTTCAGAATGAGAGGTCACGCCAGCTGAGGCAGCACCGGCGGGAATCTCGGCCCTGGCCCGGGAGACGCGGCCCGCCAGAAGGCCGGCGAAAGCGGACCGCCGTCACCGGATCCCAGACCGCCCTGCTCCTCCGAGCCTTTGAGAAGGATCGCTTTCCAGGCATCGCCGCCCGGGAGGAGCTGGCCAGAGAGACGGGCCTCCCGGAGTCCAGGATTCAGATCTGGTTTCAGAATCGAAGGGCCAGGCACCCGGGACAGGGTGGCAGGGCGCCCGCGCAGGCAGGCGGCCTGTGCAGCGCGGCCCCCGGCGGGGGTCACCCTGCTCCCTCGTGGGTCGCCTTCGCCCACACCGGCGCGTGGGGAACGGGGCTTCCCGCACCCCACGTGCCCTGCGCGCCTGGGGCTCTCCCACAGGGGGCTTTCGTGAGCCAGGCAGCGAGGGCCGCCCCCGCGCTGCAGCCCAGCCAGGCCGCGCCGGCAGAGGGGATCTCCCAACCTGCCCCGGCGCGCGGGGATTTCGCCTACGCCGCCCCGGCTCCTCCGGACGGGGCGCTCTCCCACCCTCAGGCTCCTCGGTGGCCTCCGCACCCGGGCAAAAGCCGGGAGGACCGGGACCCGCAGCGCGACGGCCTGCCGGGCCCCTGCGCGGTGGCACAGCCTGGGCCCGCTCAAGCGGGGCCGCAGGGCCAAGGGGTGCTTGCGCCACCCACGTCCCAGGGGAGTCCGTGGTGGGGCTGGGGCCGGGGTCCCCAGGTCGCCGGGGCGGCGTGGGAACCCCAAGCCGGGGCAGCTCCACCTCCCCAGCCCGCGCCCCCGGACGCCTCCGCCTCCGCGCGGCAGGGGCAGATGCAAGGCATCCCGGCGCCCTCCCAGGCGCTCCAGGAGCCGGCGCCCTGGTCTGCACTCCCCTGCGGCCTGCTGCTGGATGAGCTCCTGGCGAGCCCGGAGTTTCTGCAGCAGGCGCAACCTCTCCTAGAAACGGAGGCCCCGGGGGAGCTGGAGGCCTCGGAAGAGGCCGCCTCGCTGGAAGCACCCCTCAGCGAGGAAGAATACCGGGCTCTGCTGGAGGAGCTTTAGGACGCGGGGTTGGGACGGGGTCGGGTGGTTCGGGGCAGGGCGGTGGCCTCTCTTTCGCGGGGAACACCTGGCTGGCTACGGAGGGGCGTGTCTCCGCCCCGCCCCCTCCACCGGGCTGACCGGCCTGGGATTCCTGCCTTCTAGGTCTAGGCCCGGTGAGAGACTCCACTCCGCGGAGAACTGCCTTTCTTTCCTGGGCATCCCGGGGATCCCAGAGCCGGCCCAGGTACCAGCAGACCTGCGCGCAGTGCGCACCCCGGCTGACGTGCAAGGGAGCTCGCTGGCCTCTCTGTGCCCTTGTTCTTCCGTGAAATTCTGGCTGAATGTCTCCCCCCACCTTCCGACGCTGTCTAGGCAAACCTGGATTAGAGTTACATCTCCTGGATGATTAGTTCAGAGATATATTAAAATGCCCCCTCCCTGTGGATCCTATAG
【0193】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、マウスDUX4遺伝子配列の例(配列番号189)(NM_001081954.1)である、以下のとおりに表される配列に対する相補性の領域を有してもよい:ATGGCAGAAGCTGGCAGCCCTGTTGGTGGCAGTGGTGTGGCACGGGAATCCCGGCGGCGCAGGAAGACGGTTTGGCAGGCCTGGCAAGAGCAGGCCCTGCTATCAACTTTCAAGAAGAAGAGATACCTGAGCTTCAAGGAGAGGAAGGAGCTGGCCAAGCGAATGGGGGTCTCAGATTGCCGCATCCGCGTGTGGTTTCAGAACCGCAGGAATCGCAGTGGAGAGGAGGGGCATGCCTCAAAGAGGTCCATCAGAGGCTCCAGGCGGCTAGCCTCGCCACAGCTCCAGGAAGAGCTTGGATCCAGGCCACAGGGTAGAGGCATGCGCTCATCTGGCAGAAGGCCTCGCACTCGACTCACCTCGCTACAGCTCAGGATCCTAGGGCAAGCCTTTGAGAGGAACCCACGACCAGGCTTTGCTACCAGGGAGGAGCTGGCGCGTGACACAGGGTTGCCCGAGGACACGATCCACATATGGTTTCAAAACCGAAGAGCTCGGCGGCGCCACAGGAGGGGCAGGCCCACAGCTCAAGATCAAGACTTGCTGGCGTCACAAGGGTCGGATGGGGCCCCTGCAGGTCCGGAAGGCAGAGAGCGTGAAGGTGCCCAGGAGAACTTGTTGCCACAGGAAGAAGCAGGAAGTACGGGCATGGATACCTCGAGCCCTAGCGACTTGCCCTCCTTCTGCGGAGAGTCCCAGCCTTTCCAAGTGGCACAGCCCCGTGGAGCAGGCCAACAAGAGGCCCCCACTCGAGCAGGCAACGCAGGCTCTCTGGAACCCCTCCTTGATCAGCTGCTGGATGAAGTCCAAGTAGAAGAGCCTGCTCCAGCCCCTCTGAATTTGGATGGAGACCCTGGTGGCAGGGTGCATGAAGGTTCCCAGGAGAGCTTTTGGCCACAGGAAGAAGCAGGAAGTACAGGCATGGATACTTCTAGCCCCAGCGACTCAAACTCCTTCTGCAGAGAGTCCCAGCCTTCCCAAGTGGCACAGCCCTGTGGAGCGGGCCAAGAAGATGCCCGCACTCAAGCAGACAGCACAGGCCCTCTGGAACTCCTCCTCCTTGATCAACTGCTGGACGAAGTCCAAAAGGAAGAGCATGTGCCAGTCCCACTGGATTGGGGTAGAAATCCTGGCAGCAGGGAGCATGAAGGTTCCCAGGACAGCTTACTGCCCCTGGAGGAAGCAGTAAATTCGGGCATGGATACCTCGATCCCTAGCATCTGGCCAACCTTCTGCAGAGAATCCCAGCCTCCCCAAGTGGCACAGCCCTCTGGACCAGGCCAAGCACAGGCCCCCACTCAAGGTGGGAACACGGACCCCCTGGAGCTCTTCCTCTATCAACTGTTGGATGAAGTCCAAGTAGAAGAGCATGCTCCAGCCCCTCTGAATTGGGATGTAGATCCTGGTGGCAGGGTGCATGAAGGTTCGTGGGAGAGCTTTTGGCCACAGGAAGAAGCAGGAAGTACAGGCCTGGATACTTCAAGCCCCAGCGACTCAAACTCCTTCTTCAGAGAGTCCAAGCCTTCCCAAGTGGCACAGCGCCGTGGAGCGGGCCAAGAAGATGCCCGCACTCAAGCAGACAGCACAGGCCCTCTGGAACTCCTCCTCTTTGATCAACTGCTGGACGAAGTCCAAAAGGAAGAGCATGTGCCAGCCCCACTGGATTGGGGTAGAAATCCTGGCAGCATGGAGCATGAAGGTTCCCAGGACAGCTTACTGCCCCTGGAGGAAGCAGCAAATTCGGGCAGGGATACCTCGATCCCTAGCATCTGGCCAGCCTTCTGCAGAAAATCCCAGCCTCCCCAAGTGGCACAGCCCTCTGGACCAGGCCAAGCACAGGCCCCCATTCAAGGTGGGAACACGGACCCCCTGGAGCTCTTCCTTGATCAACTGCTGACCGAAGTCCAACTTGAGGAGCAGGGGCCTGCCCCTGTGAATGTGGAGGAAACATGGGAGCAAATGGACACAACACCTATCTGCCTCTCACTTCAGAAGAATATCAGACTCTTCTAGATATGCTCTGA
【0194】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、例としてヒト、マウス、および非ヒト種から選択される、複数種のDUX4遺伝子配列に対する相補性の領域を有していてもよい。
【0195】
いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、配列番号186~189のいずれか1つで表されるDUX4配列に対し、少なくとも12の連続したヌクレオチド(例として、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、またはより多くの連続したヌクレオチド)の相補的な領域を含むヌクレオチド配列を含む。
【0196】
いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、配列番号187におけるヌクレオチド1519~1553に対応するDUX4配列に相補的な領域を含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、配列番号187におけるヌクレオチド1519~1553に対応するDUX4配列に対し、少なくとも12の連続したヌクレオチド(例として、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、またはより多くの連続したヌクレオチド)の相補的な領域を含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、長さが15~30ヌクレオチド(例として、15~30、18~28、20~26、22~27、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド)であって、配列番号187におけるヌクレオチド1519~1553に対応するDUX4配列に対し、少なくとも15の連続したヌクレオチド(例として、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、またはより多くの連続したヌクレオチド)の相補的な領域を含むヌクレオチド配列を含む。
【0197】
いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、配列番号160:CCTGGATGATTAGTTCAGAGATATATTAAAATGCC(配列番号160)で表されるとおりのDUX4配列に相補的な領域を含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、配列番号160で表されるDUX4配列に対し、少なくとも12の連続したヌクレオチド(例として、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、またはより多くの連続したヌクレオチド)の相補的な領域を含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、長さが15~30ヌクレオチド(例として、15~30、18~28、20~26、22~27、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド)であって、配列番号160で表されるDUX4配列に対し、少なくとも15の連続したヌクレオチド(例として、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、またはより多くの連続したヌクレオチド)の相補的な領域を含むヌクレオチド配列を含む。
【0198】
DUX4標的化オリゴヌクレオチドの非限定例は表8に提供される。
表8. DUX4標的化オリゴヌクレオチドの非限定例†
【表8】
【0199】
いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、配列番号161~168のいずれか1つの、少なくとも15の連続したヌクレオチド(例として、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、またはより多くの連続したヌクレオチド)に対して相補性の領域を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、長さが15~30ヌクレオチド(例として、15~20、20~30、22~27、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド)であって、配列番号161~168のいずれか1つの、少なくとも15の連続したヌクレオチド(例として、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、またはより多くの連続したヌクレオチド)の相補的な領域を含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、AGTTCAGAGATATATTAAAATGCCC(配列番号150)のDUX4標的配列に対し、25ヌクレオチドの相補性の領域を含まない。
【0200】
いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、配列番号169~176のいずれか1つのヌクレオチド配列の、少なくとも15の連続したヌクレオシド(例として、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、またはより多くの連続したヌクレオシド)を含み、ここで各チミン塩基(T)は、独立してかつ任意に、ウラシル塩基(U)と置き換えられていてもよく、および各Uは、独立してかつ任意に、Tと置き換えられていてもよい。いくつかの態様において、DUX4標的化オリゴヌクレオチドは、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)である。いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド配列GGGCATTTTAATATATCTCTGAACT(配列番号151)を含まない。
【0201】
いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、配列番号169~176のいずれか1つのヌクレオチド配列を含み、ここで各チミン塩基(T)は、独立してかつ任意に、ウラシル塩基(U)と置き換えられていてもよく、および各Uは、独立してかつ任意に、Tと置き換えられていてもよい。
【0202】
いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドのいずれか1つは、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)である。
【0203】
いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、配列番号187におけるヌクレオチド1474~1574に対応するDUX4配列に相補的な領域を含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、配列番号187におけるヌクレオチド1474~1574に対応するDUX4配列に対し、少なくとも12の連続したヌクレオチド(例として、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、またはより多くの連続したヌクレオチド)の相補的な領域を含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、長さが15~30ヌクレオチド(例として、15~30、18~28、20~26、22~27、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド)であって、配列番号187におけるヌクレオチド1474~1574に対応するDUX4配列に対し、少なくとも15の連続したヌクレオチド(例として、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、またはより多くの連続したヌクレオチド)の相補的な領域を含むヌクレオチド配列を含む。
【0204】
いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、配列番号365:CACCTTCCGACGCTGTCTAGGCAAACCTGGATTAGAGTTACATCTCCTGGATGATTAGTTCAGAGATATATTAAAATGCCCCCTCCCTGTGGATCCTATAG(配列番号365)で表されるとおりのDUX4配列に相補的な領域を含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、配列番号365で表されるDUX4配列に対し、少なくとも12の連続したヌクレオチド(例として、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、またはより多くの連続したヌクレオチド)の相補的な領域を含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、長さが15~30ヌクレオチド(例として、15~30、18~28、20~26、22~27、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド)であって、配列番号365で表されるDUX4配列に対し、少なくとも15の連続したヌクレオチド(例として、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、またはより多くの連続したヌクレオチド)の相補的な領域を含むヌクレオチド配列を含む。
【0205】
DUX4標的化オリゴヌクレオチドの非限定例は表9に提供される。
表9. DUX4標的化オリゴヌクレオチドの非限定例†
【表9-1】
【表9-2】
【0206】
いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、配列番号213~288のいずれか1つの、少なくとも15の連続したヌクレオチド(例として、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、またはより多くの連続したヌクレオチド)に対して相補性の領域を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、長さが15~30ヌクレオチド(例として、15~20、20~30、22~27、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド)であって、配列番号213~288のいずれか1つの、少なくとも15の連続したヌクレオチド(例として、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、またはより多くの連続したヌクレオチド)の相補的な領域を含むヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、AGTTCAGAGATATATTAAAATGCCC(配列番号150)のDUX4標的配列に対し、25ヌクレオチドの相補性の領域を含まない。
【0207】
いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、配列番号289~364のいずれか1つのヌクレオチド配列の、少なくとも15の連続したヌクレオシド(例として、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、またはより多くの連続したヌクレオシド)を含み、ここで各チミン塩基(T)は、独立してかつ任意に、ウラシル塩基(U)と置き換えられていてもよく、および各Uは、独立してかつ任意に、Tと置き換えられていてもよい。いくつかの態様において、DUX4標的化オリゴヌクレオチドは、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)である。いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド配列GGGCATTTTAATATATCTCTGAACT(配列番号151)を含まない。
【0208】
いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドは、配列番号289~364のいずれか1つのヌクレオチド配列を含み、ここで各チミン塩基(T)は、独立してかつ任意に、ウラシル塩基(U)と置き換えられていてもよく、および各Uは、独立してかつ任意に、Tと置き換えられていてもよい。
【0209】
いくつかの態様において、本明細書に記載のDUX4標的化オリゴヌクレオチドのいずれか1つは、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)である。
【0210】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドのいずれか1つは、塩形態、例としてナトリウム塩、カリウム塩、またはマグネシウム塩にあり得る。
【0211】
いくつかの態様において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドのいずれか1つの5'または3'ヌクレオシド(例として、末端ヌクレオシド)は、任意にスペーサーを介して、アミン基へ抱合されている。いくつかの態様において、スペーサーは、脂肪族部分を含む。いくつかの態様において、スペーサーは、ポリエチレングリコール部分を含む。いくつかの態様において、ホスホジエステル連結は、オリゴヌクレオチドのスペーサーと5'または3'ヌクレオシドとの間に存在する。いくつかの態様において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドのいずれかの5'または3'ヌクレオシド(例として、末端ヌクレオシド)は、スペーサーへ抱合されているが、前記スペーサーは、置換もしくは非置換の脂肪族、置換もしくは非置換のヘテロ脂肪族、置換もしくは非置換のカルボシクリレン、置換もしくは非置換のヘテロシクリレン、置換もしくは非置換のアリーレン、置換もしくは非置換のヘテロアリーレン、-O-、-N(RA)-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NRA-、-NRAC(=O)-、-NRAC(=O)RA-、-C(=O)RA-、-NRAC(=O)O-、-NRAC(=O)N(RA)-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-OC(=O)N(RA)-、-S(O)2NRA-、-NRAS(O)2-、またはそれらの組み合わせである;各RAは、独立して、水素、または置換もしくは非置換のアルキルである。ある態様において、スペーサーは、置換もしくは非置換のアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロシクリレン、置換もしくは非置換のヘテロアリーレン、-O-、-N(RA)-、または-C(=O)N(RA)2、あるいはそれらの組み合わせである。
【0212】
いくつかの態様において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドのいずれか1つの5'または3'ヌクレオシドは、式-NH2-(CH2)n-(式中nは、1から12までの整数である)で表される化合物へ抱合されている。いくつかの態様において、nは、6、7、8、9、10、11、または12である。いくつかの態様において、ホスホジエステル連結は、式NH2-(CH2)n-で表される化合物とオリゴヌクレオチドの5'または3'ヌクレオシドとの間に存在する。いくつかの態様において、式NH2-(CH2)6-で表される化合物は、6-アミノ-1-ヘキサノール(NH2-(CH2)6-OH)とオリゴヌクレオチドの5'ホスファートとの間の反応を介してオリゴヌクレオチドへ抱合されている。
【0213】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、例としてアミン基を介し、標的化剤、例として抗TfR抗体などの筋標的化剤へ抱合されている。
【0214】
a.オリゴヌクレオチドのサイズ/配列
オリゴヌクレオチドは、例としてフォーマットに依存し、様々な異なる長さから成っていてもよい。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、長さが7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75ヌクレオチドであるか、またはより長い。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、長さが8~50ヌクレオチド、長さが8~40ヌクレオチド、長さが8~30ヌクレオチド、長さが10~15ヌクレオチド、長さが10~20ヌクレオチド、長さが15~25ヌクレオチド、長さが21~23ヌクレオチド、長さが15~20ヌクレオチド、長さが20~25ヌクレオチド、長さが20~30ヌクレオチド等々である。
【0215】
いくつかの態様において、本開示の目的のためのオリゴヌクレオチドの核酸配列は、標的核酸へ特異的にハイブリダイズ可能であるとき、標的核酸に対して「相補的」である。いくつかの態様において、標的核酸(例として、mRNAまたはpre-mRNA分子)へハイブリダイズするオリゴヌクレオチドは、標的の活性または発現のモジュレーション(例として、減少したmRNA翻訳、変更されたpre-mRNAスプライシング、エキソンスキッピング、標的mRNA分解等々)をもたらす。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの核酸配列は、それが非特異的結合の回避が所望される条件下(例として、生理学的条件下)で非標的配列とハイブリダイズしないように、その標的核酸に対して充分な程度の相補性を有する。よって、いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、標的核酸の連続したヌクレオチドに少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%相補的であってもよい。いくつかの態様において、相補的なヌクレオチド配列は、標的核酸に特異的にハイブリダイズ可能であるか、または標的核酸に特異的であるその標的の配列に100%相補的である必要はない。ある態様において、オリゴヌクレオチドは、標的核酸と比べて1以上のミスマッチ核酸塩基を含む。ある態様において、標的に関する活性は、かかるミスマッチによって低減されるが、非標的に関する活性は、より大きく(by a greater amount)低減される(すなわち、標的核酸に対する選択性は増大し、かつオフターゲット効果は減少する)。
【0216】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、長さが8~15、8~30、8~40、または10~50、または5~50、15~20、20~25、または5~40ヌクレオチドの範囲にある標的核酸に対する相補性の領域を含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドの、標的核酸に対する相補性の領域は、長さが5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50ヌクレオチドである。いくつかの態様において、相補性の領域は、標的核酸の少なくとも12の連続したヌクレオチドと相補的である。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、標的核酸の一部の連続したヌクレオチドと比較して1、2、または3塩基ミスマッチを含有していてもよい。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、15塩基にわたり最大3ミスマッチまで、または10塩基にわたり最大2ミスマッチまで有していてもよい。
【0217】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、配列番号169~176または289~364のいずれか1つを含む配列の少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27の連続したヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、配列番号169~176または289~364のいずれか1つを含む配列を含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、配列番号169~176または289~364のいずれか1つの、少なくとも12(例として、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26)の連続したヌクレオチドと、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、または97%の配列同一性を共有する配列を含む。いくつかの態様において、DUX4を標的にするオリゴヌクレオチドは、配列GGGCATTTTAATATATCTCTGAACT(配列番号151)を含まない。
【0218】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、配列番号161~168または213~288のいずれか1つで表されるヌクレオチド配列に対して相補性の領域を含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、配列番号161~168または213~288のいずれか1つで表されるヌクレオチド配列に相補的である、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27のヌクレオチド(例として、連続したヌクレオチド)を含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、配列番号161~168または213~288のいずれか1つの少なくとも12または少なくとも15の連続したヌクレオチドに、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または100%相補的である配列を含む。いくつかの態様において、DUX4を標的にするオリゴヌクレオチドは、AGTTCAGAGATATATTAAAATGCCC(配列番号150)のDUX4標的配列に対して25ヌクレオチドの相補性の領域を含まない。
【0219】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、本明細書に提供されるオリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるオリゴヌクレオチド)のいずれか1つの標的配列に対し(例として、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%)相補的である。いくつかの態様において、かかる標的配列は、表8または表9に列挙されるオリゴヌクレオチド配列に100%相補的である。
【0220】
いくつかの態様において、核酸塩基ウラシルのC5位置でのメチル化がチミンを形成することは解されるはずである。よって、いくつかの態様において、C5メチル化ウラシル(もしくは5-メチル-ウラシル)を有するヌクレオチドまたはヌクレオシドは、チミンヌクレオチドまたはチミンヌクレオシドとして同等に同定されてもよい。
【0221】
いくつかの態様において、本明細書に提供されるオリゴヌクレオチド(表8または表9に列挙されるオリゴヌクレオチド)のいずれか1つにおけるチミン塩基(T)のいずれか1以上は、独立してかつ任意に、ウラシル塩基(U)であってもよく、および/またはUのいずれか1以上は、独立してかつ任意に、Tであってもよい。
【0222】
b.オリゴヌクレオチド修飾:
本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、修飾されていてもよく、例として、修飾された糖部、修飾されたヌクレオシド間連結、修飾ヌクレオチドもしくはヌクレオシド、および/またはそれらの組み合わせを含む。加えて、いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、以下の特性の1以上を呈してもよい:選択的スプライシングを媒介しない;免疫刺激性ではない;ヌクレアーゼ抵抗性である;非修飾オリゴヌクレオチドと比較して改善された細胞取り込みを有する;細胞または哺乳動物への毒性がない;改善されたエンドソームの内部への出口(exit)を細胞中に有する;TLR刺激を最小限に抑える;または、パターン認識受容体を回避する。本明細書に記載のオリゴヌクレオチドの修飾された化学的性質またはフォーマットのいずれも、互いに組み合わせられ得る。例えば、1、2、3、4、5、またはより多くの異なるタイプの修飾が、同じオリゴヌクレオチド内に包含され得る。
【0223】
いくつかの態様において、修飾が組み込まれるオリゴヌクレオチドを、ネイティブなオリゴデオキシヌクレオチド分子またはオリゴリボヌクレオチド分子よりヌクレアーゼ消化に耐性があるようにさせる、特定のヌクレオチドまたはヌクレオシド修飾が使用されてもよい;これらの修飾されたオリゴヌクレオチドは、非修飾オリゴヌクレオチドより長時間無傷で存続する。修飾されたオリゴヌクレオチドの特定例は、修飾された主鎖、例えば、ホスホロチオアート、ホスホトリエステル、メチルホスホナート、短鎖アルキルもしくはシクロアルキル糖間連結、または短鎖ヘテロ原子のもしくは複素環式の糖間連結などの修飾されたヌクレオシド間連結を含むものを包含する。結果的に、本開示のオリゴヌクレオチドは、修飾、例としてヌクレオチド修飾またはヌクレオシド修飾の組み込みなどによる核酸分解に対して安定化され得る。
【0224】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの2~10、2~15、2~16、2~17、2~18、2~19、2~20、2~25、2~30、2~40、2~45、またはより多くのヌクレオチドまたはヌクレオシドが修飾ヌクレオチド/ヌクレオシドである、最大50または最大100ヌクレオチドの長さであり得る。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの2~10、2~15、2~16、2~17、2~18、2~19、2~20、2~25、2~30ヌクレオチドまたはヌクレオシドが修飾ヌクレオチド/ヌクレオシドである、長さが8~30ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの2~4、2~5、2~6、2~7、2~8、2~9、2~10、2~11、2~12、2~13、2~14ヌクレオチドが修飾ヌクレオチド/ヌクレオシドである、長さが8~15ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドであってもよい。任意に、オリゴヌクレオチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチド/ヌクレオシドを除く、どのヌクレオチドまたはヌクレオシドも修飾されていてもよい。オリゴヌクレオチド修飾は本明細書においてさらに記載されている。
【0225】
c.修飾ヌクレオシド
いくつかの態様において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、糖の2'位において修飾された少なくとも1つのヌクレオシドを含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの2'-修飾ヌクレオシドを含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドにおけるヌクレオシドのすべてが、2'-修飾ヌクレオシドである。
【0226】
いくつかの態様において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、1以上の非二環式2'-修飾ヌクレオチド、例として、2'-デオキシ、2'-フルオロ(2'-F)、2'-O-メチル(2'-O-Me)、2'-O-メトキシエチル(2'-O-MOE)、2'-O-アミノプロピル(2'-O-AP)、2'-O-ジメチルアミノエチル(2'-O-DMAOE)、2'-O-ジメチルアミノプロピル(2'-O-DMAP)、2'-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2'-O-DMAEOE)、または2'-O--N-メチルアセトアミド(2'-O-NMA)の修飾ヌクレオシドを包含する。
【0227】
いくつかの態様において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、1以上の2'-4'二環式ヌクレオシドを含むが、前記ヌクレオシド中リボース環は、その環中2個の原子を接続する(例として、メチレン(LNA)架橋、エチレン(ENA)架橋、または(S)-拘束エチル(cEt)架橋を介して、2'-O原子を4'-C原子へ接続する)架橋部分を含む。LNAの例は、2008年4月17日に公開され“RNA Antagonist Compounds For The Modulation Of PCSK9”と題する国際特許出願刊行物WO/2008/043753(この内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。ENAの例は、2005年5月12日に公開され“APP/ENA Antisense”と題する国際特許刊行物第WO 2005/042777号;Morita et al.,Nucleic Acid Res.,Suppl 1:241-242,2001;Surono et al.,Hum.Gene Ther.,15:749-757,2004;Koizumi,Curr.Opin.Mol.Ther.,8:144-149,2006;およびHorie et al.,Nucleic Acids Symp.Ser(Oxf),49:171-172,2005に提供されており、これらの開示はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。cEtの例は、米国特許7,101,993;7,399,845および7,569,686に提供されており、これら各々はそれら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0228】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、以下の米国特許または特許出願刊行物のうち1つに開示された修飾ヌクレオシドを含む:米国特許7,399,845、2008年7月15日発行、表題「6-Modified Bicyclic Nucleic Acid Analogs」;米国特許7,741,457、2010年6月22日発行、表題「6-Modified Bicyclic Nucleic Acid Analogs」;米国特許8,022,193、2011年9月20日発行、表題「6-Modified Bicyclic Nucleic Acid Analogs」;米国特許7,569,686、2009年8月4日発行、表題「Compounds And Methods For Synthesis Of Bicyclic Nucleic Acid Analogs」;米国特許7,335,765、2008年2月26日発行、表題「Novel Nucleoside And Oligonucleotide Analogues」;米国特許7,314,923、2008年1月1日発行、表題「Novel Nucleoside And Oligonucleotide Analogues」;米国特許7,816,333、2010年10月19日発行、表題「Oligonucleotide Analogues And Methods Utilizing The Same」および米国刊行物第2011/0009471号、現在米国特許8,957,201、2015年2月17日発行、表題「Oligonucleotide Analogues And Methods Utilizing The Same」、すべての用途としては(for all purposes)これら各々の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0229】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオシドも有さないオリゴヌクレオチドと比較して、1℃、2℃、3℃、4℃、または5℃の範囲にあるオリゴヌクレオチドのTmの増大をもたらす少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを含む。オリゴヌクレオチドは、修飾ヌクレオシドを有さないオリゴヌクレオチドと比較して、合計で2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、またはこれを超える温度の範囲にあるオリゴヌクレオチドのTmの増大をもたらす複数の修飾ヌクレオシドを有していてもよい。
【0230】
オリゴヌクレオチドは、異なる種類のヌクレオシドのミックスを含んでいてもよい。例えば、オリゴヌクレオチドは、2'-デオキシリボヌクレオシドまたはリボヌクレオシドと2'-フルオロ修飾ヌクレオシドとのミックスを含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオシドまたはリボヌクレオシドと2'-O-Me修飾ヌクレオシドとのミックスを含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドは、2'-フルオロ修飾ヌクレオシドと2'-O-Me修飾ヌクレオシドとのミックスを含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドは、架橋ヌクレオシドと2'-フルオロまたは2'-O-メチル修飾ヌクレオシドとのミックスを含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドは、非二環式2'-修飾ヌクレオシド(例として、2'-O-MOE)と2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNA、ENA、cEt)とのミックスを含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドは、2'-フルオロ修飾ヌクレオシドと2'-O-Me修飾ヌクレオシドとのミックスを含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドは、2'-4'二環式ヌクレオシドと2'MOE、2'-フルオロ、または2'-O-Me修飾ヌクレオシドとのミックスを含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドは、非二環式2'修飾ヌクレオシド(例として、2'-MOE、2'-フルオロ、または2'-O-Me)と2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNA、ENA、cEt)とのミックスを含んでいてもよい。
【0231】
オリゴヌクレオチドは、異なる種類の交互のヌクレオシドを含んでいてもよい。例えば、オリゴヌクレオチドは、交互の2'-デオキシリボヌクレオシドまたはリボヌクレオシドと2'-フルオロ修飾ヌクレオシドとを含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドは、交互のデオキシリボヌクレオシドまたはリボヌクレオシドと2'-O-Me修飾ヌクレオシドとを含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドは、交互の2'-フルオロ修飾ヌクレオシドと2'-O-Me修飾ヌクレオシドとを含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドは、交互の架橋ヌクレオシドと2'-フルオロまたは2'-O-メチル修飾ヌクレオシドとを含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドは、交互の非二環式2'-修飾ヌクレオシド(例として、2'-O-MOE)と2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNA、ENA、cEt)とを含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドは、交互の2'-4'二環式ヌクレオシドと2'-MOE、2'-フルオロ、または2'-O-Me修飾ヌクレオシドとを含んでいてもよい。オリゴヌクレオチドは、交互の非二環式2'修飾ヌクレオシド(例として、2'-MOE、2'-フルオロ、または2'-O-Me)と2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNA、ENA、cEt)とを含んでいてもよい。
【0232】
いくつかの態様においては、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、5'-ビニルホスホナート修飾、1以上の脱塩基(abasic)残基、および/または1以上の逆向きの(inverted)脱塩基残基を含む。
【0233】
d.ヌクレオシド間連結/主鎖
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオアートまたは他の修飾ヌクレオシド間連結を含有していてもよい。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオアートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオアートヌクレオシド間連結を、少なくとも2ヌクレオシドの間に含む。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオアートヌクレオシド間連結を、すべてのヌクレオシド間に含む。例えば、いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、修飾ヌクレオシド間連結を、ヌクレオチド配列の5'端(end)または3'端の、第1の、第2の、および/または(例として、および)、第3のヌクレオシド間連結にて含む。
【0234】
使用されてもよい、リンを含有する連結は、これらに限定されないが、通常の3'-5'連結、これらの2'-5'連結類似体を有する、ホスホロチオアート、キラルのホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルおよび他のアルキルホスホナート(3'アルキレンホスホナートおよびキラルのホスホナートを含む)、ホスフィナート、ホスホロアミダート(3'-アミノホスホロアミダートおよびアミノアルキルホスホロアミダートを含む)、チオノホスホロアミダート、チオノアルキルホスホナート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびにボラノホスファートと、逆方向の極性を有するこれら(ここでヌクレオシド単位の隣接する(adjacent)対は3'-5'から5'-3'へまたは2'-5'から5'-2'へ連結されている)とを包含する;米国特許第3,687,808号;第4,469,863号;第4,476,301号;第5,023,243号;第5,177,196号;第5,188,897号;第5,264,423号;第5,276,019号;第5,278,302号;第5,286,717号;第5,321,131号;第5,399,676号;第5,405,939号;第5,453,496号;第5,455,233号;第5,466,677号;第5,476,925号;第5,519,126号;第5,536,821号;第5,541,306号;第5,550,111号;第5,563,253号;第5,571,799号;第5,587,361号;および第5,625,050号を見よ。
【0235】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、メチレン(メチルイミノ)またはMMI主鎖;アミド主鎖(De Mesmaeker et al.Ace.Chem.Res.1995,28:366-374を見よ);モルホリノ主鎖(SummertonおよびWeller、米国特許第5,034,506号を見よ);またはペプチド核酸(PNA)主鎖(ここでオリゴヌクレオチドのホスホジエステル主鎖がポリアミド主鎖と置き換えられており、ヌクレオチドがポリアミド主鎖のアザ窒素原子へ直接的または間接的に結合されている、Nielsen et al.,Science 1991,254,1497を見よ)などのヘテロ原子主鎖を有していてもよい。
【0236】
e.立体特異的オリゴヌクレオチド
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドのヌクレオチド間のリン原子はキラルであって、オリゴヌクレオチドの特性は、キラルのリン原子の立体配置に基づき調整される(adjusted)。いくつかの態様において、適切な方法は、立体制御された様式(例として、Oka N, Wada T, Stereocontrolled synthesis of oligonucleotide analogs containing chiral internucleotidic phosphorus atoms.Chem Soc Rev.2011 Dec;40(12):5829-43に記載のとおりの)でP-キラルオリゴヌクレオチド類似体を合成するために使用されてもよい。いくつかの態様において、実質的にすべてのSpホスホロチオアート糖間連結または実質的にすべてのRpホスホロチオアート糖間連結のいずれかによって一緒に結び合わされたヌクレオシド単位を含む、ホスホロチオアート含有オリゴヌクレオチドが提供される。いくつかの態様において、実質的にキラル純粋な糖間連結を有するかかるホスホロチオアートオリゴヌクレオチドは、例えば、1996年12月12日に発行された米国特許5,587,261(この内容は全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる)に記載されるとおり、酵素合成または化学合成によって調製される。いくつかの態様において、キラル制御されたオリゴヌクレオチドは、標的核酸の選択的切断パターンを提供する。例えば、いくつかの態様において、キラル制御されたオリゴヌクレオチドは、例えば、2017年2月2日に公開され“CHIRAL DESIGN”と題する米国特許出願刊行物20170037399 A1(この内容は全体が参照されることによって本明細書に組み込まれる)に記載のとおり、核酸の相補的な配列内に単一の切断部位を提供する。
【0237】
f.モルホリノ
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、モルホリノをベースとした化合物であってもよい。モルホリノをベースとしたオリゴマー化合物は、Dwaine A.Braasch and David R.Corey,Biochemistry,2002,41(14),4503-4510);Genesis,volume 30,issue 3,2001;Heasman,J.,Dev.Biol.,2002,243,209-214;Nasevicius et al.,Nat.Genet.,2000,26,216-220;Lacerra et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,2000,97,9591-9596;および1991年7月23日発行の米国特許第5,034,506号に記載されている。いくつかの態様において、モルホリノをベースとしたオリゴマー化合物は、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)(例として、Iverson,Curr.Opin.Mol.Ther.,3:235-238,2001;およびWang et al.,J.Gene Med.,12:354-364,2010に記載のとおりである;これらの開示はそれら全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0238】
g.ペプチド核酸(PNA)
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドのヌクレオチド単位の糖とヌクレオシド間連結(骨格)との両方とも、新規の基と置き換えられている。いくつかの態様において、塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。かかるオリゴマー化合物の1つであるオリゴヌクレオチド模倣体は、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されており、ペプチド核酸(PNA)と称される。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖主鎖は、アミド含有主鎖、例えばアミノエチルグリシン主鎖と置き換えられている。核酸塩基は保持されており、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子へ直接的または間接的に結合されている。PNA化合物の調製を報告する代表的な刊行物は、これらに限定されないが、米国特許第5,539,082号;第5,714,331号;および第5,719,262号を包含し、これら各々は参照により本明細書に組み込まれる。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsen et al.,Science,1991,254,1497-1500から見出され得る。
【0239】
h.ギャップマー
いくつかの態様において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、ギャップマーである。ギャップマーオリゴヌクレオチドは一般に、ギャップ領域Yを囲むフランキング(flanking)領域としてXおよびZをもつ式5'-X-Y-Z-3'を有する。いくつかの態様において、式5'-X-Y-Z-3'のフランキング領域Xはまた、X領域、フランキング配列X、5'ウイング領域X、または5'ウイングセグメントとも称される。いくつかの態様において、式5'-X-Y-Z-3'のフランキング領域Zはまた、Z領域、フランキング配列Z、3'ウイング領域Z、または3'ウイングセグメントとも称される。いくつかの態様において、式5'-X-Y-Z-3'のギャップ領域Yはまた、Y領域、Yセグメント、またはギャップセグメントYとも称される。いくつかの態様において、ギャップ領域Yの各ヌクレオシドは、2'-デオキシリボヌクレオシドであり、5'ウイング領域Xも3'ウイング領域Zも、いずれの2'-デオキシリボヌクレオシドも含有しない。
【0240】
いくつかの態様において、Y領域は、RNase HなどのRNaseを動員することが可能である、近接した(contiguous)一続きのヌクレオチド、例として6以上DNAヌクレオチドの領域である。いくつかの態様において、ギャップマーは標的核酸へ結合し、その点においてRNaseが動員され、次いで標的核酸が切断され得る。いくつかの態様において、Y領域は、高親和性修飾ヌクレオシド、例として1~6つの高親和性修飾ヌクレオシドを含む領域XおよびZによって、5'と3との'両方がフランキングされる。高親和性修飾ヌクレオシドの例は、2'-修飾ヌクレオシド(例として、2'-MOE、2'O-Me、2'-F)、または2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNA、cEt、ENA)を包含するが、これらに限定されない。いくつかの態様において、フランキング配列XおよびZは、長さが1~20ヌクレオチド、1~8ヌクレオチド、または1~5ヌクレオチドから成っていてもよい。フランキング配列XおよびZは、同様の長さまたは同様ではない長さから成っていてもよい。いくつかの態様において、ギャップセグメントYは、長さが5~20ヌクレオチド、5~15ヌクレオチド、5~12ヌクレオチド、または6~10ヌクレオチドのヌクレオチド配列であってもよい。
【0241】
いくつかの態様において、ギャップマーオリゴヌクレオチドのギャップ領域は、DNAヌクレオシドに加えて、効率的なRNase H作用にとって許容し得ることが知られている修飾ヌクレオチド、たとえばC4'-置換ヌクレオシド、非環状ヌクレオシド、およびアラビノ構成型(arabino-configured)ヌクレオシドを含有していてもよい。いくつかの態様において、ギャップ領域は、1以上の未修飾ヌクレオシド間を含む。いくつかの態様において、一方または両方のフランキング領域は、各々独立して、1以上のホスホロチオアートヌクレオシド間連結(例として、ホスホロチオアートヌクレオシド間連結または他の連結)を少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、またはより多くのヌクレオチド間に含む。いくつかの態様において、ギャップ領域および2つのフランキング領域は、各々が独立して、修飾されたヌクレオシド間連結(例として、ホスホロチオアートヌクレオシド間連結または他の連結)を少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、またはより多くのヌクレオチド間に含む。
【0242】
ギャップマーは、適切な方法を使用して産生され得る。ギャップマーの調製を教示する代表的な米国特許、米国特許公開、およびPCT公開は、米国特許第5,013,830号;第5,149,797号;第5,220,007号;第5,256,775号;第5,366.878号;第5,403,711号;第5,491,133号;第5,565,350号;第5,623,065号;第5,652,355号;第5,652,356号;第5,700,922号;第5,898,031号;第7,015,315号;第7,101,993号;第7,399,845号;第7.432,250号;第7,569,686号;第7,683,036号;第7,750,131号;第8,580,756号;第9,045,754号;第9,428.534号;第9,695,418号;第10,017,764号;第10,260,069号;第9.428,534号;第8,580,756号;米国特許公開第US20050074801号、第US20090221685号;第US20090286969号、第US20100197762号、および第US20110112170号;PCT公開第W02004069991号;第W02005023825号;第W02008049085号および第W02009090182号;ならびに欧州特許第EP2,149,605号を包含するが、これらに限定されない。これら各々はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0243】
いくつかの態様において、ギャップマーは、長さが10~40ヌクレオシドである。例えば、ギャップマーは、長さが10~40、10~35、10~30、10~25、10~20、10~15、15~40、15~35、15~30、15~25、15~20、20~40、20~35、20~30、20~25、25~40、25~35、25~30、30~40、30~35、または35~40ヌクレオシドであり得る。いくつかの態様において、ギャップマーは、長さが10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40ヌクレオシドである。
【0244】
いくつかの態様において、ギャップマー中のギャップ領域Yは、長さが5~20ヌクレオシドである。例えば、ギャップ領域Yは、長さが5~20、5~15、5~10、10~20、10~15、または15~20ヌクレオシドであってもよい。いくつかの態様において、ギャップ領域Yは、長さが5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20ヌクレオシドである。いくつかの態様において、ギャップ領域Y中の各ヌクレオシドは、2'-デオキシリボヌクレオシドである。いくつかの態様において、ギャップ領域Y中のすべてのヌクレオシドが、2'-デオキシリボヌクレオシドである。いくつかの態様において、ギャップ領域Y中のヌクレオシドの1以上は、修飾ヌクレオシド(例として、2'修飾ヌクレオシド、たとえば本明細書に記載のもの)である。いくつかの態様において、ギャップ領域Y中の1以上のシトシンは任意に、5-メチルシトシンである。いくつかの態様において、ギャップ領域Y中の各シトシンは、5-メチルシトシンである。
【0245】
いくつかの態様において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)およびギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)は、独立して、1~20ヌクレオシド長である。例えば、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)およびギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)は、独立して、1~20、1~15、1~10、1~7、1~5、1~3、1~2、2~5、2~7、3~5、3~7、5~20、5~15、5~10、10~20、10~15、または15~20ヌクレオシド長さであってもよい。いくつかの態様において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)およびギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)は、独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20ヌクレオシド長である。いくつかの態様において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)およびギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)は、同じ長さから成る。いくつかの態様において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)およびギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)は、異なる長さから成る。いくつかの態様において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)は、ギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)より長い。いくつかの態様において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)は、ギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)より短い。
【0246】
いくつかの態様において、ギャップマーは、5-10-5、4-12-4、3-14-3、2-16-2、1-18-1、3-10-3、2-10-2、1-10-1、2-8-2、4-6-4、3-6-3、2-6-2、4-7-4、3-7-3、2-7-2、4-8-4、3-8-3、2-8-2、1-8-1、2-9-2、1-9-1、2-10-2、1-10-1、1-12-1、1-16-1、2-15-1、1-15-2、1-14-3、3-14-1、2-14-2、1-13-4、4-13-1、2-13-3、3-13-2、1-12-5、5-12-1、2-12-4、4-12-2、3-12-3、1-11-6、6-11-1、2-11-5、5-11-2、3-11-4、4-11-3、1-17-1、2-16-1、1-16-2、1-15-3、3-15-1、2-15-2、1-14-4、4-14-1、2-14-3、3-14-2、1-13-5、5-13-1、2-13-4、4-13-2、3-13-3、1-12-6、6-12-1、2-12-5、5-12-2、3-12-4、4-12-3、1-11-7、7-11-1、2-11-6、6-11-2、3-11-5、5-11-3、4-11-4、1-18-1、1-17-2、2-17-1、1-16-3、1-16-3、2-16-2、1-15-4、4-15-1、2-15-3、3-15-2、1-14-5、5-14-1、2-14-4、4-14-2、3-14-3、1-13-6、6-13-1、2-13-5、5-13-2、3-13-4、4-13-3、1-12-7、7-12-1、2-12-6、6-12-2、3-12-5、5-12-3、1-11-8、8-11-1、2-11-7、7-11-2、3-11-6、6-11-3、4-11-5、5-11-4、1-18-1、1-17-2、2-17-1、1-16-3、3-16-1、2-16-2、1-15-4、4-15-1、2-15-3、3-15-2、1-14-5、2-14-4、4-14-2、3-14-3、1-13-6、6-13-1、2-13-5、5-13-2、3-13-4、4-13-3、1-12-7、7-12-1、2-12-6、6-12-2、3-12-5、5-12-3、1-11-8、8-11-1、2-11-7、7-11-2、3-11-6、6-11-3、4-11-5、5-11-4、1-19-1、1-18-2、2-18-1、1-17-3、3-17-1、2-17-2、1-16-4、4-16-1、2-16-3、3-16-2、1-15-5、2-15-4、4-15-2、3-15-3、1-14-6、6-14-1、2-14-5、5-14-2、3-14-4、4-14-3、1-13-7、7-13-1、2-13-6、6-13-2、3-13-5、5-13-3、4-13-4、1-12-8、8-12-1、2-12-7、7-12-2、3-12-6、6-12-3、4-12-5、5-12-4、2-11-8、8-11-2、3-11-7、7-11-3、4-11-6、6-11-4、5-11-5、1-20-1、1-19-2、2-19-1、1-18-3、3-18-1、2-18-2、1-17-4、4-17-1、2-17-3、3-17-2、1-16-5、2-16-4、4-16-2、3-16-3、1-15-6、6-15-1、2-15-5、5-15-2、3-15-4、4-15-3、1-14-7、7-14-1、2-14-6、6-14-2、3-14-5、5-14-3、4-14-4、1-13-8、8-13-1、2-13-7、7-13-2、3-13-6、6-13-3、4-13-5、5-13-4、2-12-8、8-12-2、3-12-7、7-12-3、4-12-6、6-12-4、5-12-5、3-11-8、8-11-3、4-11-7、7-11-4、5-11-6、6-11-5、1-21-1、1-20-2、2-20-1、1-20-3、3-19-1、2-19-2、1-18-4、4-18-1、2-18-3、3-18-2、1-17-5、2-17-4、4-17-2、3-17-3、1-16-6、6-16-1、2-16-5、5-16-2、3-16-4、4-16-3、1-15-7、7-15-1、2-15-6、6-15-2、3-15-5、5-15-3、4-15-4、1-14-8、8-14-1、2-14-7、7-14-2、3-14-6、6-14-3、4-14-5、5-14-4、2-13-8、8-13-2、3-13-7、7-13-3、4-13-6、6-13-4、5-13-5、1-12-10、10-12-1、2-12-9、9-12-2、3-12-8、8-12-3、4-12-7、7-12-4、5-12-6、6-12-5、4-11-8、8-11-4、5-11-7、7-11-5、6-11-6、1-22-1、1-21-2、2-21-1、1-21-3、3-20-1、2-20-2、1-19-4、4-19-1、2-19-3、3-19-2、1-18-5、2-18-4、4-18-2、3-18-3、1-17-6、6-17-1、2-17-5、5-17-2、3-17-4、4-17-3、1-16-7、7-16-1、2-16-6、6-16-2、3-16-5、5-16-3、4-16-4、1-15-8、8-15-1、2-15-7、7-15-2、3-15-6、6-15-3、4-15-5、5-15-4、2-14-8、8-14-2、3-14-7、7-14-3、4-14-6、6-14-4、5-14-5、3-13-8、8-13-3、4-13-7、7-13-4、5-13-6、6-13-5、4-12-8、8-12-4、5-12-7、7-12-5、6-12-6、5-11-8、8-11-5、6-11-7、または7-11-6の5'-X-Y-Z-3'を含む。数は、5'-X-Y-Z-3'ギャップマーのX領域、Y領域、およびZ領域のヌクレオシド数を指し示す。
【0247】
いくつかの態様において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)またはギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)における1以上のヌクレオシドは、修飾ヌクレオシド(例として、高親和性修飾ヌクレオシド)である。いくつかの態様において、修飾ヌクレオシド(例として、高親和性修飾ヌクレオシド)は、2'-修飾ヌクレオシドである。いくつかの態様において、2'-修飾ヌクレオシドは、2'-4'二環式ヌクレオシドまたは非二環式2'修飾ヌクレオシドである。いくつかの態様において、高親和性修飾ヌクレオシドは、2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNA、cEt、またはENA)または非二環式2'-修飾ヌクレオシド(例として、2'-フルオロ(2'-F)、2'-O-メチル(2'-O-Me)、2'-O-メトキシエチル(2'-MOE)、2'-O-アミノプロピル(2'-O-AP)、2'-O-ジメチルアミノエチル(2'-O-DMAOE)、2'-O-ジメチルアミノプロピル(2'-ODMAP)、2'-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2'-O-DMAEOE)、または2'-O-N-メチルアセトアミド(2'-O-NMA))である。
【0248】
いくつかの態様において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)の1以上のヌクレオシドは、高親和性修飾ヌクレオシドである。いくつかの態様において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)の各ヌクレオシドは、高親和性修飾ヌクレオシドである。いくつかの態様において、ギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)の1以上のヌクレオシドは、高親和性修飾ヌクレオシドである。いくつかの態様において、ギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)の各ヌクレオシドは、高親和性修飾ヌクレオシドである。いくつかの態様において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)の1以上のヌクレオシドは、高親和性修飾ヌクレオシドであり、ギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)の1以上のヌクレオシドは、高親和性修飾ヌクレオシドである。いくつかの態様において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)の各ヌクレオシドは、高親和性修飾ヌクレオシドであり、ギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)の各ヌクレオシドは、高親和性修飾ヌクレオシドである。
【0249】
いくつかの態様において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)は、ギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)と同じ高親和性ヌクレオシドを含む。例えば、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)およびギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)は、1以上の非二環式2'-修飾ヌクレオシド(例として、2'-MOEまたは2'-O-Me)を含んでいてもよい。別の例において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)およびギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)は、1以上の2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNAまたはcEt)を含んでいてもよい。いくつかの態様において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)およびギャップマーの3'ウイング領域(5'-XY-Z-3'式におけるZ)の各ヌクレオシドは、非二環式2'-修飾ヌクレオシド(例として、2'-MOEまたは2'-O-Me)である。いくつかの態様において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)およびギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)における各ヌクレオシドは、2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNAまたはcEt)である。
【0250】
いくつかの態様において、ギャップマーは、5'-X-Y-Z-3'立体配置を含み、ここでXおよびZは、独立して、長さが1~7(例として、1、2、3、4、5、6、または7)ヌクレオシドであり、Yは、長さが6~10(例として、6、7、8、9、または10)ヌクレオシドであり、ここでXおよびZにおける各ヌクレオシドは、非二環式2'-修飾ヌクレオシド(例として、2'-MOEまたは2'-O-Me)であり、Yにおける各ヌクレオシドは、2'-デオキシリボヌクレオシドである。いくつかの態様において、ギャップマーは、5'-X-Y-Z-3'立体配置を含み、ここでXおよびZは、独立して、長さが1~7(例として、1、2、3、4、5、6、または7)ヌクレオシドであり、Yは、長さが6~10(例として、6、7、8、9、または10)ヌクレオシドであり、ここでXおよびZにおける各ヌクレオシドは、2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNAまたはcEt)であり、Yにおける各ヌクレオシドは、2'-デオキシリボヌクレオシドである。いくつかの態様において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)は、ギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)とは異なる高親和性ヌクレオシドを含む。例えば、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)は、1以上の非二環式2'-修飾ヌクレオシド(例として、2'-MOEまたは2'-O-Me)を含んでいてもよく、ギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)は、1以上の2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNAまたはcEt)を含んでいてもよい。別の例において、ギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)は、1以上の非二環式2'-修飾ヌクレオシド(例として、2'-MOEまたは2'-O-Me)を含んでいてもよく、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)は、1以上の2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNAまたはcEt)を含んでいてもよい。
【0251】
いくつかの態様において、ギャップマーは、5'-X-Y-Z-3'立体配置を含み、ここでXおよびZは、独立して、長さが1~7(例として、1、2、3、4、5、6、または7)ヌクレオシドであり、Yは、長さが6~10(例として、6、7、8、9、または10)ヌクレオシドであり、ここでXにおける各ヌクレオシドは、非二環式2'-修飾ヌクレオシド(例として、2'MOEまたは2'-O-Me)であり、Zにおける各ヌクレオシドは、2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNAまたはcEt)であり、Yにおける各ヌクレオシドは、2'-デオキシリボヌクレオシドである。いくつかの態様において、ギャップマーは、5'-X-Y-Z-3'立体配置を含み、ここでXおよびZは、独立して、長さが1~7(例として、1、2、3、4、5、6、または7)ヌクレオシドであり、Yは、長さが6~10(例として、6、7、8、9、または10)ヌクレオシドであり、ここでXにおける各ヌクレオシドは、2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNAまたはcEt)であり、Zにおける各ヌクレオシドは、非二環式2'修飾ヌクレオシド(例として、2'MOEまたは2'-O-Me)であり、Yにおける各ヌクレオシドは、2'-デオキシリボヌクレオシドである。
【0252】
いくつかの態様において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)は、1以上の非二環式2'-修飾ヌクレオシド(例として、2'-MOEまたは2'-O-Me)および1以上の2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNAまたはcEt)を含む。いくつかの態様において、ギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)は、1以上の非二環式2'-修飾ヌクレオシド(例として、2'-MOEまたは2'-O-Me)および1以上の2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNAまたはcEt)を含む。いくつかの態様において、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)とギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)との両方とも、1以上の非二環式2'-修飾ヌクレオシド(例として、2'-MOEまたは2'-OMe)および1以上の2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNAまたはcEt)を含む。
【0253】
いくつかの態様において、ギャップマーは、5'-X-Y-Z-3'立体配置を含み、ここでXおよびZは、独立して、長さが2~7(例として、2、3、4、5、6、または7)ヌクレオシドであり、Yは、長さが6~10(例として、6、7、8、9、または10)ヌクレオシドであり、ここでXにおける位置1、2、3、4、5、6、または7のうち(最も5'の位置は位置1である)、すべてではないが少なくとも1つ(例として、1、2、3、4、5、または6つ)は、非二環式2'-修飾ヌクレオシド(例として、2'-MOEまたは2'-O-Me)であり、ここでXとZとの両方におけるヌクレオシドの残りは、2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNAまたはcEt)であり、ここでYにおける各ヌクレオシドは、2'デオキシリボヌクレオシドである。いくつかの態様において、ギャップマーは、5'-X-Y-Z-3'立体配置を含み、ここでXおよびZは、独立して、長さが2~7(例として、2、3、4、5、6、または7)ヌクレオシドであり、Yは、長さが6~10(例として、6、7、8、9、または10)ヌクレオシドであり、ここでZにおける位置1、2、3、4、5、6、または7のうち(最も5'の位置は位置1である)、すべてではないが少なくとも1つ(例として、1、2、3、4、5、または6つ)は、非二環式2'-修飾ヌクレオシド(例として、2'-MOEまたは2'-O-Me)であり、ここでXとZとの両方におけるヌクレオシドの残りは、2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNAまたはcEt)であり、ここでYにおける各ヌクレオシドは、2'デオキシリボヌクレオシドである。いくつかの態様において、ギャップマーは、5'-X-Y-Z-3'立体配置を含み、ここでXおよびZは、独立して、長さが2~7(例として、2、3、4、5、6、または7)ヌクレオシドであり、Yは、長さが6~10(例として、6、7、8、9、または10)ヌクレオシドであり、ここでXにおける位置1、2、3、4、5、6、または7のうち、すべてではないが少なくとも1つ(例として、1、2、3、4、5、または6つ)と、Zにおける位置1、2、3、4、5、6、または7のうち(最も5'の位置は位置1である)、すべてではないが少なくとも1つ(例として、1、2、3、4、5、または6つ)の位置とは、非二環式2'-修飾ヌクレオシド(例として、2'-MOEまたは2'-O-Me)であり、ここでXとZとの両方におけるヌクレオシドの残りは、2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNAまたはcEt)であり、ここでYにおける各ヌクレオシドは、2'デオキシリボヌクレオシドである。
【0254】
非二環式2'-修飾ヌクレオシド(例として、2'-MOEまたは2'-O-Me)と2'-4'二環式ヌクレオシド(例として、LNAまたはcEt)とのミックスを、ギャップマーの5'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるX)および/またはギャップマーの3'ウイング領域(5'-X-Y-Z-3'式におけるZ)にもつギャップマー立体配置の非限定例は、次:BBB-(D)n-BBBAA;KKK-(D)n-KKKAA;LLL-(D)n-LLLAA;BBB-(D)n-BBBEE;KKK-(D)n-KKKEE;LLL-(D)n-LLLEE;BBB-(D)n-BBBAA;KKK-(D)n-KKKAA;LLL-(D)n-LLLAA;BBB-(D)n-BBBEE;KKK-(D)n-KKKEE;LLL-(D)n-LLLEE;BBB-(D)n-BBBAAA;KKK-(D)n-KKKAAA;LLL-(D)n-LLLAAA;BBB-(D)n-BBBEEE;KKK-(D)n-KKKEEE;LLL-(D)n-LLLEEE;BBB-(D)n-BBBAAA;KKK-(D)n-KKKAAA;LLL-(D)n-LLLAAA;BBB-(D)n-BBBEEE;KKK-(D)n-KKKEEE;LLL-(D)n-LLLEEE;BABA-(D)n-ABAB;KAKA-(D)n-AKAK;LALA-(D)n-ALAL;BEBE-(D)n-EBEB;KEKE-(D)n-EKEK;LELE-(D)n-ELEL;BABA-(D)n-ABAB;KAKA-(D)n-AKAK;LALA-(D)n-ALAL;BEBE-(D)n-EBEB;KEKE-(D)n-EKEK;LELE-(D)n-ELEL;ABAB-(D)n-ABAB;AKAK-(D)n-AKAK;ALAL-(D)n-ALAL;EBEB-(D)n-EBEB;EKEK-(D)n-EKEK;ELEL-(D)n-ELEL;ABAB-(D)n-ABAB;AKAK-(D)n-AKAK;ALAL-(D)n-ALAL;EBEB-(D)n-EBEB;EKEK-(D)n-EKEK;ELEL-(D)n-ELEL;AABB-(D)n-BBAA;BBAA-(D)n-AABB;AAKK-(D)n-KKAA;AALL-(D)n-LLAA;EEBB-(D)n-BBEE;EEKK-(D)n-KKEE;EELL-(D)n-LLEE;AABB-(D)n-BBAA;AAKK-(D)n-KKAA;AALL-(D)n-LLAA;EEBB-(D)n-BBEE;EEKK-(D)n-KKEE;EELL-(D)n-LLEE;BBB-(D)n-BBA;KKK-(D)n-KKA;LLL-(D)n-LLA;BBB-(D)n-BBE;KKK-(D)n-KKE;LLL-(D)n-LLE;BBB-(D)n-BBA;KKK-(D)n-KKA;LLL-(D)n-LLA;BBB-(D)n-BBE;KKK-(D)n-KKE;LLL-(D)n-LLE;BBB-(D)n-BBA;KKK-(D)n-KKA;LLL-(D)n-LLA;BBB-(D)n-BBE;KKK-(D)n-KKE;LLL-(D)n-LLE;ABBB-(D)n-BBBA;AKKK-(D)n-KKKA;ALLL-(D)n-LLLA;EBBB-(D)n-BBBE;EKKK-(D)n-KKKE;ELLL-(D)n-LLLE;ABBB-(D)n-BBBA;AKKK-(D)n-KKKA;ALLL-(D)n-LLLA;EBBB-(D)n-BBBE;EKKK-(D)n-KKKE;ELLL-(D)n-LLLE;ABBB-(D)n-BBBAA;AKKK-(D)n-KKKAA;ALLL-(D)n-LLLAA;EBBB-(D)n-BBBEE;EKKK-(D)n-KKKEE;ELLL-(D)n-LLLEE;ABBB-(D)n-BBBAA;AKKK-(D)n-KKKAA;ALLL-(D)n-LLLAA;EBBB-(D)n-BBBEE;EKKK-(D)n-KKKEE;ELLL-(D)n-LLLEE;AABBB-(D)n-BBB;AAKKK-(D)n-KKK;AALLL-(D)n-LLL;EEBBB-(D)n-BBB;EEKKK-(D)n-KKK;EELLL-(D)n-LLL;AABBB-(D)n-BBB;AAKKK-(D)n-KKK;AALLL-(D)n-LLL;EEBBB-(D)n-BBB;EEKKK-(D)n-KKK;EELLL-(D)n-LLL;AABBB-(D)n-BBBA;AAKKK-(D)n-KKKA;AALLL-(D)n-LLLA;EEBBB-(D)n-BBBE;EEKKK-(D)n-KKKE;EELLL-(D)n-LLLE;AABBB-(D)n-BBBA;AAKKK-(D)n-KKKA;AALLL-(D)n-LLLA;EEBBB-(D)n-BBBE;EEKKK-(D)n-KKKE;EELLL-(D)n-LLLE;ABBAABB-(D)n-BB;AKKAAKK-(D)n-KK;ALLAALLL-(D)n-LL;EBBEEBB-(D)n-BB;EKKEEKK-(D)n-KK;ELLEELL-(D)n-LL;ABBAABB-(D)n-BB;AKKAAKK-(D)n-KK;ALLAALL-(D)n-LL;EBBEEBB-(D)n-BB;EKKEEKK-(D)n-KK;ELLEELL-(D)n-LL;ABBABB-(D)n-BBB;AKKAKK-(D)n-KKK;ALLALLL-(D)n-LLL;EBBEBB-(D)n-BBB;EKKEKK-(D)n-KKK;ELLELL-(D)n-LLL;ABBABB-(D)n-BBB;AKKAKK-(D)n-KKK;ALLALL-(D)n-LLL;EBBEBB-(D)n-BBB;EKKEKK-(D)n-KKK;ELLELL-(D)n-LLL;EEEK-(D)n-EEEEEEEE;EEK-(D)n-EEEEEEEEE;EK-(D)n-EEEEEEEEEE;EK-(D)n-EEEKK;K-(D)n-EEEKEKE;K-(D)n-EEEKEKEE;K-(D)n-EEKEK;EK-(D)n-EEEEKEKE;EK-(D)n-EEEKEK;EEK-(D)n-KEEKE;EK-(D)n-EEKEK;EK-(D)n-KEEK;EEK-(D)n-EEEKEK;EK-(D)n-KEEEKEE;EK-(D)n-EEKEKE;EK-(D)n-EEEKEKE;およびEK-(D)n-EEEEKEKを包含する;ここで「A」は、2'-修飾ヌクレオシドを表す;「B」は、2'-4'二環式ヌクレオシドを表す;「K」は、拘束エチルヌクレオシド(cEt)を表す;「L」は、LNAヌクレオシドを表す;「E」は、2'-MOE修飾リボヌクレオシドを表す;「D」は、2'-デオキシリボヌクレオシドを表す;「n」は、ギャップセグメント(5'-X-Y-Z-3'構成のY)の長さを表し、かつ1~20の間の整数である。
【0255】
いくつかの態様において、本明細書に記載のギャップマーのいずれか1つは、1以上の修飾されたヌクレオシド連結(例として、ホスホロチオアート連結)を、X領域、Y領域、およびZ領域の各々に含む。いくつかの態様において、本明細書に記載のギャップマーのいずれか1つにおける各ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオアート連結である。いくつかの態様において、X領域、Y領域、およびZ領域の各々は、独立して、ホスホロチオアート連結とホスホジエステル連結とのミックスを含む。いくつかの態様において、ギャップ領域Yの各ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオアート連結であり、5'ウイング領域Xは、ホスホロチオアート連結とホスホジエステル連結とのミックスを含み、3'ウイング領域Zは、ホスホロチオアート連結とホスホジエステル連結とのミックスを含む。
【0256】
i.ミックスマー
いくつかの態様において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドは、ミックスマーであっても、またはミックスマー配列パターンを含んでいてもよい。一般に、ミックスマーは、天然に存在するヌクレオシドと天然には存在しないヌクレオシドとの両方を含むか、または天然には存在しない2つの異なるタイプのヌクレオシドを典型的には交互パターンで含む、オリゴヌクレオチドである。ミックスマーは一般に、未修飾オリゴヌクレオチドより高い結合親和性を有し、標的分子に特異的に結合するために、例として標的分子上の結合部位を遮断するために使用されてもよい。一般に、ミックスマーは、標的分子へRNaseを動員せず、ひいては標的分子の切断を促進しない。RNase Hを動員することが不可能なかかるオリゴヌクレオチドは記載されており、例えばWO2007/112754またはWO2007/112753を見よ。
【0257】
いくつかの態様において、ミックスマーは、ヌクレオシド類似体と天然に存在するヌクレオシドとの、もしくは1つのタイプのヌクレオシド類似体ともう1つのタイプのヌクレオシド類似体との、反復パターンを含むかまたはこれからなる。しかしながら、ミックスマーは、反復パターンを含む必要はなく、代わりに修飾ヌクレオシドと天然に存在するヌクレオシドとのいずれかの配置、または1つのタイプの修飾ヌクレオシドともう1つのタイプの修飾ヌクレオシドとのいずれかの配置を含んでいてもよい。反復パターンは、実例として、2番目ごとまたは3番目ごとのヌクレオシドが、LNAなどの修飾ヌクレオシドであり、かつ残りのヌクレオシドが、DNAなどの天然に存在するヌクレオシドであるか、あるいは2'-MOE類似体もしくは2'フルオロ類似体のなどの2'置換ヌクレオシド類似体、または本明細書に記載のいずれか他の修飾ヌクレオシドである、パターンであってもよい。LNA単位などの修飾ヌクレオシドの反復ターンが、固定された位置にて―例として5'末端または3'末端にて、修飾ヌクレオシドと組み合わせられてもよいことは認識されている。
【0258】
いくつかの態様において、ミックスマーは、DNAヌクレオシドなどの、5より多く、4より多く、3より多く、または2より多く連続した、天然に存在するヌクレオシドの領域を含まない。いくつかの態様において、ミックスマーは、少なくとも2つの連続したLNAなどの、少なくとも2つの連続した修飾ヌクレオシドからなる領域を少なくとも含む。いくつかの態様において、ミックスマーは、少なくとも3つの連続したLNAなどの、少なくとも3つの連続した修飾ヌクレオシド単位からなる領域を少なくとも含む。
【0259】
いくつかの態様において、ミックスマーは、LNAなどの、7より多く、6より多く、5より多く、4より多く、3より多く、または2より多く連続したヌクレオシド類似体の領域を含まない。いくつかの態様において、LNA単位は、他のヌクレオシド類似体、たとえば本明細書に言及されるものと置き換えられていてもよい。
【0260】
ミックスマーは、親和性を増強する修飾ヌクレオシド(非限定例において、LNAヌクレオシドおよび2'-O-Meヌクレオシドなど)の混合物を含むように設計されていてもよい。いくつかの態様において、ミックスマーは、修飾されたヌクレオシド間連結(例として、ホスホロチオアートヌクレオシド間連結または他の連結)を、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、またはより多くのヌクレオシド間に含む。
【0261】
ミックスマーは、いずれか好適な方法を使用して産生されてもよい。ミックスマーの調製を教示する代表的な米国特許、米国特許刊行物、PCT刊行物は、米国特許刊行物第US20060128646号、第US20090209748号、第US20090298916号、第US20110077288号、および第US20120322851号、ならびに米国特許第7687617号を包含する。
【0262】
いくつかの態様において、ミックスマーは、1以上のモルホリノヌクレオシドを含む。例えば、いくつかの態様において、ミックスマーは、モルホリノヌクレオシドを、1以上の他のヌクレオシド(例として、DNAヌクレオシド、RNAヌクレオシド)、または修飾ヌクレオシド(例として、LNAヌクレオシド、2'-O-Meヌクレオシド)と(例として、交互様式で)混合されて含んでいてもよい。
いくつかの態様において、ミックスマーは、スプライス修正またはエキソンスキッピングに有用であり、例えば、Touznik A.,et al.,LNA/DNA mixmer-based antisense oligonucleotides correct alternative splicing of the SMN2 gene and restore SMN protein expression in type 1 SMA fibroblasts Scientific Reports,volume 7,Article number:3672(2017)、Chen S. et al.,Synthesis of a Morpholino Nucleic Acid(MNA)-Uridine Phosphoramidite, and Exon Skipping Using MNA/2'-O-Methyl Mixmer Antisense Oligonucleotide,Molecules 2016,21,1582において報告されたとおりである(これら各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0263】
j.RNA干渉(RNAi)
いくつかの態様において、本明細書に提供されるオリゴヌクレオチドは、小分子(small)干渉RNA(siRNA)(また低分子(short)干渉RNAもしくはサイレンシングRNAとしても知られている)の形態であっていてもよい。SiRNAは、細胞中のRNA干渉(RNAi)経路を介する分解のために核酸(例として、mRNA)を標的にする、二本鎖RNA分子の類であって、典型的には長さが約20~25塩基対である。siRNA分子の特異性は、アンチセンス鎖分子のその標的RNAへの結合によって決定されてもよい。有効なsiRNA分子は一般に、より長いsiRNAもまた有効ではあり得るが、細胞中の非特異的RNA干渉経路の引き金を、インターフェロン応答を介して引くことを防止するため、長さが30~35未満の塩基対である。いくつかの態様において、siRNA分子は、長さが7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、またはより多い塩基対である。いくつかの態様において、siRNA分子は、長さが8~30塩基対、長さが10~15塩基対、長さが10~20塩基対、長さが15~25塩基対、長さが19~21塩基対、長さが21~23塩基対である。
【0264】
適切な標的RNA配列の選択を受け、すべてのまたは一部の標的配列に相補的なヌクレオチド配列、すなわちアンチセンス配列を含むsiRNA分子は、適切な方法(例として、PCT刊行物第WO2004/016735号;および米国特許刊行物第2004/0077574号および第2008/0081791号を見よ)を使用して設計および調製され得る。siRNA分子は、二本鎖(すなわち、アンチセンス鎖と、ハイブリダイズしてdsRNAを形成する相補的なセンス鎖とを含むdsRNA分子)または一本鎖(すなわち、アンチセンス鎖だけを含むssRNA分子)であり得る。siRNA分子は、自己相補的センス鎖とアンチセンス鎖とを有する、二重鎖、非対称二重鎖、ヘアピン、または非対称ヘアピンの2次構造を含み得る。
【0265】
いくつかの態様において、siRNA分子のアンチセンス鎖は、長さが7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、またはより多いヌクレオシドである。いくつかの態様において、アンチセンス鎖は、長さが8~50ヌクレオチド、長さが8~40ヌクレオチド、長さが8~30ヌクレオチド、長さが10~15ヌクレオチド、長さが10~20ヌクレオチド、長さが15~25ヌクレオチド、長さが19~21ヌクレオチド、長さが21~23ヌクレオチドである。
【0266】
いくつかの態様において、siRNA分子のセンス鎖は、長さが7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、またはより多いヌクレオチドである。いくつかの態様において、センス鎖は、長さが8~50ヌクレオチド、長さが8~40ヌクレオチド、長さが8~30ヌクレオチド、長さが10~15ヌクレオチド、長さが10~20ヌクレオチド、長さが15~25ヌクレオチド、長さが19~21ヌクレオチド、長さが21~23ヌクレオチドである。
【0267】
いくつかの態様において、siRNA分子は、標的mRNA中の標的領域に対する相補性の領域を含むアンチセンス鎖を含む。いくつかの態様において、相補性の領域は、標的mRNA中の標的領域に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%相補的である。いくつかの態様において、標的領域は、標的mRNA中の連続したヌクレオチドの領域である。いくつかの態様において、相補的なヌクレオチド配列は、標的RNA配列に対して特異的にハイブリダイズ可能であるかまたは特異的であるために、その標的の配列に対して100%相補的である必要がない。
【0268】
いくつかの態様において、siRNA分子は、標的RNA配列に対する相補性の領域を含むアンチセンス鎖を含み、相補性の領域は、長さが8~15、8~30、8~40、または10~50、または5~50、または5~40ヌクレオチドの範囲にある。いくつかの態様において、相補性の領域は、長さが5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50ヌクレオチドである。いくつかの態様において、相補性の領域は、標的RNA配列の少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、またはより多くの連続したヌクレオチドと相補的である。いくつかの態様において、siRNA分子は、標的RNA配列の連続したヌクレオチドの一部と比較して1、2、3、4、または5塩基以下のミスマッチを含有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、siRNA分子は、15塩基にわたり最大3までのミスマッチまたは10塩基にわたり最大2までのミスマッチを有するヌクレオチド配列を含む。
【0269】
いくつかの態様において、siRNA分子は、本明細書に提供されるオリゴヌクレオチドの標的RNA配列に対し(例として、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%)相補的であるヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖を含む。いくつかの態様において、siRNA分子は、本明細書に提供されるオリゴヌクレオチドと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%同一のヌクレオチド配列を含むアンチセンス鎖を含む。いくつかの態様において、siRNA分子は、本明細書に提供されるオリゴヌクレオチドの、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、またはより多くの連続したヌクレオチドを含むアンチセンス鎖を含む。
【0270】
二本鎖siRNAは、同じ長さまたは異なる長さのセンスRNA鎖およびアンチセンスRNA鎖を含んでいてもよい。二本鎖siRNA分子はまた、ステムループ構造の単一オリゴヌクレオチド(ここでsiRNA分子の自己相補的センスおよびアンチセンス領域は、核酸ベースのまたは非核酸ベースのリンカー(単数または複数)を用いて連結されている)、ならびに2以上のループ構造と自己相補的センスおよびアンチセンス鎖を含むステムとを有する環状一本鎖RNA(ここで環状RNAは、in vivoまたはin vitroのいずれかで処理されてRNAiを媒介することが可能な活性siRNA分子を生成し得る)からも会合され得る。よって、小分子(Small)ヘアピンRNA(shRNA)分子もまた、本明細書に企図される。これらの分子は、逆相補的(センス)配列に加えて、特定のアンチセンス配列を含み、典型的にはスペーサー配列またはループ配列によって分離されている。スペーサーまたはループの切断は、(任意に、片鎖または両鎖の3'端および/または(例として、および)5'端から1、2、3以上のヌクレオチドの付加または除去をもたらすこともある追加のプロセシングステップで)一本鎖RNA分子およびその逆相補体を、それらがアニールしてdsRNA分子を形成し得るように提供する。スペーサーは、スペーサーの切断(および任意に、これに続く、片鎖または両鎖の3'端および/または(例として、および)5'端から1、2、3、4、もしくはより多いヌクレオチドの付加または除去をもたらすこともあるプロセシングステップ)に先立ちアンチセンス配列とセンス配列とをアニールさせて二本鎖構造体(またはステム)を形成させるのに充分な長さから成り得る。スペーサー配列は、2つの相補的ヌクレオチド配列領域間に置かれた無関係なヌクレオチド配列であってもよく、前記領域はアニールして二本鎖核酸になったらshRNAを含むことになる。
【0271】
siRNA分子の全体的な長さは、設計されているsiRNA分子のタイプに依存して、約14ヌクレオチドから約100ヌクレオチドまで変動し得る。一般に、約14と約50との間のこれらヌクレオチドは、RNA標的配列に相補的である、すなわちsiRNA分子の特定のアンチセンス配列を構成する。例えば、siRNAが二本鎖siRNAまたは一本鎖siRNAであるとき、長さは約14ヌクレオチドから約50ヌクレオチドまで変動し得るが一方、siRNAがshRNAまたは環状分子であるとき、長さは約40ヌクレオチドから約100ヌクレオチドまで変動し得る。
【0272】
siRNA分子は、分子の一端にて3'突出を含んでいてもよい。他端は、平滑端であってもよく、または突出(5'または3')もまた有していてよい。siRNA分子が分子の両端にて突出を含むとき、突出の長さは、同じであってもまたは異なっていてもよい。一態様において、本開示のsiRNA分子は、分子の両端上に約1~約3ヌクレオチドの3'突出を含む。いくつかの態様において、siRNA分子は、センス鎖上に約1~約3ヌクレオチドの3'突出を含む。いくつかの態様において、siRNA分子は、アンチセンス鎖上に約1~約3ヌクレオチドの3'突出を含む。いくつかの態様において、siRNA分子は、センスとアンチセンスとの両鎖上に約1~約3ヌクレオチドの3'突出を含む。
【0273】
いくつかの態様において、siRNA分子は、1以上の修飾ヌクレオチド(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)を含む。いくつかの態様において、siRNA分子は、1以上の修飾ヌクレオチドおよび/または(例として、および)1以上の修飾ヌクレオシド間連結を含む。いくつかの態様において、修飾ヌクレオチドは、修飾された糖部(例として、2'-修飾ヌクレオチド)を含む。いくつかの態様において、siRNA分子は、1以上の2'修飾ヌクレオチド、例として、2'-デオキシ、2'-フルオロ(2'-F)、2'-O-メチル(2'-O-Me)、2'-O-メトキシエチル(2'-MOE)、2'-O-アミノプロピル(2'-O-AP)、2'-O-ジメチルアミノエチル(2'-O-DMAOE)、2'-O-ジメチルアミノプロピル(2'-O-DMAP)、2'-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2'-O-DMAEOE)、または2'-O-N-メチルアセトアミド(2'-O--NMA)を含む。いくつかの態様において、siRNA分子の各ヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド(例として、2'-修飾ヌクレオチド)である。いくつかの態様において、siRNA分子は、1以上のホスホロジアミダートモルホリノを含む。いくつかの態様において、siRNA分子の各ヌクレオチドは、ホスホロジアミダートモルホリノである。
【0274】
いくつかの態様において、siRNA分子は、ホスホロチオアートまたは他の修飾ヌクレオチド間連結を含有する。いくつかの態様において、siRNA分子は、ホスホロチオアートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの態様において、siRNA分子は、ホスホロチオアートヌクレオシド間連結を少なくとも2つのヌクレオチド間に含む。いくつかの態様において、siRNA分子は、ホスホロチオアートヌクレオシド間連結をすべてのヌクレオチド間に含む。例えば、いくつかの態様において、siRNA分子は、修飾ヌクレオチド間連結を、siRNA分子の5'端または3'端にて、第1、第2、および/または(例として、および)第3のヌクレオシド間連結にて含む。
【0275】
いくつかの態様において、修飾されたヌクレオチド間連結は、リン含有連結である。いくつかの態様において、使用されてもよいリン含有連結は、これらに限定されないが、通常の3'-5'連結を有するホスホロチオアート、キラルホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3'アルキレンホスホナートおよびキラルホスホナートを含むメチルおよび他のアルキルホスホナート、ホスフィナート、3'-アミノホスホロアミダートおよびアミノアルキルホスホロアミダートを含むホスホロアミダート、チオノホスホロアミダート、チオノアルキルホスホナート、チオノアルキルホスホトリエステル、およびボラノホスファート、これらの2'-5'連結アナログ、ならびにヌクレオシド単位の隣接するペアが3'-5'対5'-3'または2'-5'対5'-2'で連結される逆向きの極性を有するものを包含する;米国特許第3,687,808号;第4,469,863号;第4,476,301号;第5,023,243号;第5,177,196号;第5,188,897号;第5,264,423号;第5,276,019号;第5,278,302号;第5,286,717号;第5,321,131号;第5,399,676号;第5,405,939号;第5,453,496号;第5,455,233号;第5,466,677号;第5,476,925号;第5,519,126号;第5,536,821号;第5,541,306号;第5,550,111号;第5,563,253号;第5,571,799号;第5,587,361号;および第5,625,050号を見よ。
【0276】
本明細書に記載のsiRNA分子の修飾されたケミストリーまたはフォーマットのいずれかは、互いと組み合わせられ得る。例えば、1、2、3、4、5、またはより多くの異なるタイプの修飾が、同じsiRNA分子内に包含され得る。
【0277】
いくつかの態様において、アンチセンス鎖は、1以上の修飾ヌクレオチド(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)を含む。いくつかの態様において、アンチセンス鎖は、1以上の修飾ヌクレオチドおよび/または(例として、および)1以上の修飾ヌクレオチド間連結を含む。いくつかの態様において、修飾ヌクレオチドは、修飾された糖部(例として、2'-修飾ヌクレオチド)を含む。いくつかの態様において、アンチセンス鎖は、1以上の2'修飾ヌクレオチド、例として、2'-デオキシ、2'-フルオロ(2'-F)、2'-O-メチル(2'-O-Me)、2'-O-メトキシエチル(2'-MOE)、2'-O-アミノプロピル(2'-O-AP)、2'-O-ジメチルアミノエチル(2'-O-DMAOE)、2'-O-ジメチルアミノプロピル(2'-O-DMAP)、2'-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2'-O-DMAE0E)、または2'-O-N--メチルアセトアミド(2'-O--NMA)を含む。いくつかの態様において、アンチセンス鎖の各ヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド(例として、2'-修飾ヌクレオチド)である。いくつかの態様において、アンチセンス鎖は、1以上のホスホロジアミダートモルホリノを含む。いくつかの態様において、アンチセンス鎖は、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)である。
【0278】
いくつかの態様において、アンチセンス鎖は、ホスホロチオアートまたは他の修飾ヌクレオチド間連結を含有する。いくつかの態様において、アンチセンス鎖は、ホスホロチオアートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの態様において、アンチセンス鎖は、ホスホロチオアートヌクレオシド間連結を少なくとも2つのヌクレオチド間に含む。いくつかの態様において、アンチセンス鎖は、ホスホロチオアートヌクレオシド間連結をすべてのヌクレオチド間に含む。例えば、いくつかの態様において、アンチセンス鎖は、修飾ヌクレオチド間連結を、siRNA分子の5'端または3'端にて、第1、第2、および/または(例として、および)第3のヌクレオシド間連結にて含む。いくつかの態様において、修飾されたヌクレオチド間連結は、リン含有連結である。いくつかの態様において、使用されてもよいリン含有連結は、これらに限定されないが、通常の3'-5'連結を有するホスホロチオアート、キラルホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3'アルキレンホスホナートおよびキラルホスホナートを含むメチルおよび他のアルキルホスホナート、ホスフィナート、3'-アミノホスホロアミダートおよびアミノアルキルホスホロアミダートを含むホスホロアミダート、チオノホスホロアミダート、チオノアルキルホスホナート、チオノアルキルホスホトリエステル、およびボラノホスファート、これらの2'-5'連結アナログ、ならびにヌクレオシド単位の隣接するペアが3'-5'対5'-3'または2'-5'対5'-2'で連結される逆向きの極性を有するものを包含する;米国特許第3,687,808号;第4,469,863号;第4,476,301号;第5,023,243号;第5,177,196号;第5,188,897号;第5,264,423号;第5,276,019号;第5,278,302号;第5,286,717号;第5,321,131号;第5,399,676号;第5,405,939号;第5,453,496号;第5,455,233号;第5,466,677号;第5,476,925号;第5,519,126号;第5,536,821号;第5,541,306号;第5,550,111号;第5,563,253号;第5,571,799号;第5,587,361号;および第5,625,050号を見よ。
【0279】
本明細書に記載のアンチセンス鎖の修飾されたケミストリーまたはフォーマットのいずれかは、互いと組み合わせられ得る。例えば、1、2、3、4、5、またはより多くの異なるタイプの修飾が、同じアンチセンス鎖内に包含され得る。
【0280】
いくつかの態様において、センス鎖は、1以上の修飾ヌクレオチド(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)を含む。いくつかの態様において、センス鎖は、1以上の修飾ヌクレオチドおよび/または(例として、および)1以上の修飾ヌクレオチド間連結を含む。いくつかの態様において、修飾ヌクレオチドは、修飾された糖部(例として、2'-修飾ヌクレオチド)を含む。いくつかの態様において、センス鎖は、1以上の2'修飾ヌクレオチド、例として、2'-デオキシ、2'-フルオロ(2'-F)、2'-O-メチル(2'-O-Me)、2'-O-メトキシエチル(2'-MOE)、2'-O-アミノプロピル(2'-O-AP)、2'-O-ジメチルアミノエチル(2'-O-DMAOE)、2'-O-ジメチルアミノプロピル(2'-O-DMAP)、2'-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2'-O-DMAE0E)、または2'-O-N--メチルアセトアミド(2'-O--NMA)を含む。いくつかの態様において、センス鎖の各ヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド(例として、2'-修飾ヌクレオチド)である。いくつかの態様において、センス鎖は、1以上のホスホロジアミダートモルホリノを含む。いくつかの態様において、アンチセンス鎖は、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)である。いくつかの態様において、センス鎖は、ホスホロチオアートまたは他の修飾ヌクレオチド間連結を含有する。いくつかの態様において、センス鎖は、ホスホロチオアートヌクレオシド間連結を含む。いくつかの態様において、センス鎖は、ホスホロチオアートヌクレオシド間連結を少なくとも2つのヌクレオチド間に含む。いくつかの態様において、センス鎖は、ホスホロチオアートヌクレオシド間連結をすべてのヌクレオチド間に含む。例えば、いくつかの態様において、センス鎖は、修飾ヌクレオチド間連結を、siRNA分子の5'端もしくは3'端にて、第1、第2、および/または(例として、および)第3のヌクレオシド間連結にて含む。
【0281】
いくつかの態様において、修飾されたヌクレオチド間連結は、リン含有連結である。いくつかの態様において、使用されてもよいリン含有連結は、これらに限定されないが、通常の3'-5'連結を有するホスホロチオアート、キラルホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3'アルキレンホスホナートおよびキラルホスホナートを含むメチルおよび他のアルキルホスホナート、ホスフィナート、3'-アミノホスホロアミダートおよびアミノアルキルホスホロアミダートを含むホスホロアミダート、チオノホスホロアミダート、チオノアルキルホスホナート、チオノアルキルホスホトリエステル、およびボラノホスファート、これらの2'-5'連結アナログ、ならびにヌクレオシド単位の隣接するペアが3'-5'対5'-3'または2'-5'対5'-2'で連結される逆向きの極性を有するものを包含する;米国特許第3,687,808号;第4,469,863号;第4,476,301号;第5,023,243号;第5,177,196号;第5,188,897号;第5,264,423号;第5,276,019号;第5,278,302号;第5,286,717号;第5,321,131号;第5,399,676号;第5,405,939号;第5,453,496号;第5,455,233号;第5,466,677号;第5,476,925号;第5,519,126号;第5,536,821号;第5,541,306号;第5,550,111号;第5,563,253号;第5,571,799号;第5,587,361号;および第5,625,050号を見よ。
【0282】
本明細書に記載のセンス鎖の修飾されたケミストリーまたはフォーマットのいずれかは、互いと組み合わせられ得る。例えば、1、2、3、4、5、またはより多くの異なるタイプの修飾が、同じセンス鎖内に包含され得る。
【0283】
いくつかの態様において、siRNA分子のアンチセンス鎖またはセンス鎖は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)ローディング(loading)を増強または低減する修飾を含む。いくつかの態様において、siRNA分子のアンチセンス鎖は、RISCローディングを増強する修飾を含む。いくつかの態様において、siRNA分子のセンス鎖は、RISCローディングを低減してオフターゲット効果も低減する修飾を含む。いくつかの態様において、siRNA分子のアンチセンス鎖は、2'-O-メトキシエチル(2'-MOE)修飾を含む。Song et al.,(2017)Mol Ther Nucleic Acids 9:242-250(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のとおり、切断部位での2'-O-メトキシエチル(2'-MOE)基の追加は、修飾鎖の指向的(oriented)RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)ローディングを容易にすることによって、siRNAの特異性とサイレンシング活性との両方を改善する。いくつかの態様において、siRNA分子のアンチセンス鎖は、2'-OMe-ホスホロジチオアート修飾を含むが、これはWu et al.,(2014)Nat Commun 5:3459(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のとおりRISCローディングを増大させる。
【0284】
いくつかの態様において、siRNA分子のセンス鎖は、5'-モルホリノを含むが、これはKumar et al.,(2019)Chem Commun(Camb)55(35):5139-5142(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のとおりセンス鎖のRISCローディングを低減して、アンチセンス鎖選択およびRNAi活性を改善する。いくつかの態様において、siRNA分子のセンス鎖は、合成RNA様高親和性ヌクレオチド類似体であるロックド核酸(LNA)で修飾されているが、これはElman et al.,(2005)Nucleic Acids Res.33(1):439-447(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のとおりセンス鎖のRISCローディングを低減して、RISC中へのアンチセンス鎖の組み込みをさらに増強する。いくつかの態様において、siRNA分子のセンス鎖は、5'アンロックド核酸(UNA)修飾を含むが、これはSnead et al.,(2013)Mol Ther Nucleic Acids 2(7):e103(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のとおりセンス鎖のRISCローディングを低減し、アンチセンス鎖のサイレンシング力を改善する。いくつかの態様において、siRNA分子のセンス鎖は、5-ニトロインドール修飾を含むが、これは、Zhang et al.,(2012)Chembiochem 13(13):1940-1945(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のとおりセンス鎖のRNAi力を減少させてオフターゲット効果を低減させる。いくつかの態様において、センス鎖は、2'-O'メチル(2'-O-Me)修飾を含むが、これは、Zheng et al.,FASEB (2013)27(10):4017-4026(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のとおり、センス鎖のRISCローディングおよびオフターゲット効果を低減する。いくつかの態様において、siRNA分子のセンス鎖は、モルホリノ残基、2'-MOE残基、または2'-O-Me残基と完全に置換されており、Kole et al.,(2012)Nature reviews.Drug Discovery 11(2):125-140(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のとおりRISCによって認識されない。いくつかの態様において、siRNA分子のアンチセンス鎖は、2'-MOE修飾を含み、センス鎖は、2'-O-Me修飾を含む(例として、Song et al.,(2017)Mol Ther Nucleic Acids 9:242-250を見よ)。いくつかの態様においては、少なくとも1つ(例として、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10)のsiRNA分子は、筋標的化剤へ(例として、共有結合的に)連結されている。いくつかの態様において、筋標的化剤は、核酸(例として、DNAもしくはRNA)、ペプチド(例として、抗体)、脂質(例として、マイクロベシクル)、または糖部(例として、多糖)を含んでいてもよく、またはそれからなっていてもよい。いくつかの態様において、筋標的化剤は抗体である。いくつかの態様において、筋標的化剤は、抗トランスフェリン受容体抗体(例として、本明細書に提供される抗TfR抗体のいずれか1つ)である。いくつかの態様において、筋標的化剤は、siRNA分子のセンス鎖の5'端へ連結されていてもよい。いくつかの態様において、筋標的化剤は、siRNA分子のセンス鎖の3'端へ連結されていてもよい。いくつかの態様において、筋標的化剤は、siRNA分子のセンス鎖へその内部に連結されていてもよい。いくつかの態様において、筋標的化剤は、siRNA分子のアンチセンス鎖の5'端へ連結されていてもよい。いくつかの態様において、筋標的化剤は、siRNA分子のアンチセンス鎖の3'端へ連結されていてもよい。いくつかの態様において、筋標的化剤は、siRNA分子のアンチセンス鎖へその内部に連結されていてもよい。
【0285】
k.マイクロRNA(miRNA)
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、マイクロRNA(miRNA)であってもよい。マイクロRNA(「miRNA」と称される)は、小分子(small)ノンコーディングRNAであって、標的RNA転写産物上の相補的部位へ結合することによって遺伝子発現を制御する調節性分子の類に属する。典型的には、miRNAは、大きなRNA前駆体(pri-miRNAと名付けられる)から生成されるが、これは核においてプロセシングされておよそ70ヌクレオチドのpre-miRNAになり、これが折り畳まれて不完全なステムループ構造になる。これらのpre-miRNAは典型的には、細胞質内で追加のプロセシングステップを経るが、前記細胞質において長さが18~25ヌクレオチドの成熟miRNAが、RNase III酵素であるダイサー(Dicer)によってpre-miRNAヘアピンの片側から切除される。
【0286】
本明細書に使用されるとき、miRNAは、pri-miRNA、pre-miRNA、成熟miRNA、または成熟miRNAの生物学的活性を保持するそれらバリアントのフラグメントを包含する。一態様において、miRNAのサイズ範囲は、21ヌクレオチドから170ヌクレオチドまでであり得る。一態様において、miRNAのサイズ範囲は、長さが70ヌクレオチドから170ヌクレオチドまである。別の態様において、長さが21ヌクレオチドから25ヌクレオチドまでの成熟miRNAが使用され得る。
【0287】
l.アプタマー
いくつかの態様において、本明細書に提供されるオリゴヌクレオチドは、アプタマーの形態であってもよい。一般に、分子ペイロードという文脈において、アプタマーは、細胞中の小分子、タンパク質、核酸などの標的へ特異的に結合するいずれかの核酸である。いくつかの態様において、アプタマーは、DNAアプタマーまたはRNAアプタマーである。いくつかの態様において、核酸アプタマーは、一本鎖のDNAまたはRNA(ssDNAまたはssRNA)である。一本鎖核酸アプタマーが、ヘリックス構造および/または(例として、および)ループ構造を形成していてもよいことは理解されるべきである。核酸アプタマーを形成する核酸は、天然に存在するヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、1以上のヌクレオチド間に挿入された炭化水素リンカー(例として、アルキレン)もしくはポリエーテル-リンカー(例として、PEGリンカー)をもつ天然に存在するヌクレオチド、1以上のヌクレオチド間に挿入された炭化水素リンカーもしくはPEGリンカーをもつ修飾ヌクレオチド、またはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。アプタマーおよびアプタマーを産生する方法を記載する例示の刊行物および特許は、例として、Lorsch and Szostak,1996;Jayasena,1999;米国特許第5,270,163号;5,567,588号;第5,650,275号;第5,670,637号;第5,683,867号;第5,696,249号;第5,789,157号;第5,843,653号;第5,864,026号;第5,989,823号;第6,569,630号;第8,318,438号、およびPCT出願WO 99/31275を包含し、各々参照により本明細書に組み込まれる。
【0288】
m.マルチマー
いくつかの態様において、分子ペイロードは、リンカーによって接続された2以上のオリゴヌクレオチドのマルチマー(例として、コンカテマー)を含んでいてもよい。このように、いくつかの態様において、複合体/抱合体のオリゴヌクレオチドローディングは、標的化剤上の利用可能な連結部位(例として、抗体上の利用可能なチオール部位)を超えて増加させられ得るか、または具体的なペイロードローディング含量を達成するために別様に調整され(tuned)得る。マルチマー中のオリゴヌクレオチドは、同じものかまたは異なるものであり得る(例として、異なる遺伝子、または同じ遺伝子上の異なる部位、またはその産物を標的とする)。
【0289】
いくつかの態様において、マルチマーは、切断可能なリンカーによって連結された2以上のオリゴヌクレオチドを含む。しかしながら、いくつかの態様において、マルチマーは、切断不能なリンカーによって一緒に連結された2以上のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、マルチマーは、一緒に連結された2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、マルチマーは、一緒に連結された2~5、2~10、または4~20オリゴヌクレオチドを含む。
【0290】
いくつかの態様において、マルチマーは、端から端まで(end-to-end)(線状の配置で)連結された2以上のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、マルチマーは、オリゴヌクレオチドベースのリンカー(例として、脱塩基リンカーであるポリ-dTリンカー)を介して端から端まで連結された2以上のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、マルチマーは、あるオリゴヌクレオチドの3'端へ連結された別のオリゴヌクレオチドの5'端を含む。いくつかの態様において、マルチマーは、あるオリゴヌクレオチドの3'端へ連結された別のオリゴヌクレオチドの3'端を含む。いくつかの態様において、マルチマーは、あるオリゴヌクレオチドの5'端へ連結された別のオリゴヌクレオチドの5'端を含む。なおも、いくつかの態様において、マルチマーは、分岐リンカーによって一緒に連結された複数のオリゴヌクレオチドを含む分岐構造を含み得る。
【0291】
本明細書に提供される複合体において使用されてもよいマルチマーのさらなる例は、例えば、2015年11月5日に公開され、Methods of delivering multiple targeting oligonucleotides to a cell using cleavable linkersと題する、米国特許出願第2015/0315588 A1号;2015年9月3日に公開され、Multimeric Oligonucleotide Compoundsと題する、US米国特許出願第2015/0247141 A1号、2011年6月30日に公開され、Immunostimulatory Oligonucleotide Multimersと題する、米国特許出願第US 2011/0158937 A1号;および1997年12月2日に公表され、Triplex-Forming Antisense Oligonucleotides Having Abasic Linkers Targeting Nucleic Acids Comprising Mixed Sequences Of Purines And Pyrimidinesと題する、米国特許第5,693,773号において開示されており、これら各々の内容はそれら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0292】
C.リンカー
本明細書に記載の複合体は一般に、本明細書に記載の抗TfR1抗体のいずれか1つを分子ペイロードへ共有結合的に連結するリンカーを含む。リンカーは、少なくとも1つの共有結合を含む。いくつかの態様において、リンカーは、抗TfR1抗体を分子ペイロードへ共有結合的に連結する単結合、例としてジスルフィド結合またはジスルフィド架橋であってもよい。しかしながら、いくつかの態様において、リンカーは、複数の共有結合を通して、本明細書に記載の抗TfR1抗体のいずれか1つを分子ペイロードへ共有結合的に連結していてもよい。いくつかの態様において、リンカーは、切断可能なリンカーであってもよい。しかしながら、いくつかの態様において、リンカーは、切断不能なリンカーであってもよい。リンカーは典型的には、in vitroおよびin vivoで安定しており、ある細胞環境において安定していてもよい。加えて、典型的には、リンカーは、抗TfR、1抗体または分子ペイロードのいずれかの機能特性に負の影響を及ぼさない。リンカー合成の例および方法は、当該技術分野において知られている(例として、Kline,T.et al."Methods to Make Homogenous Antibody Drug Conjugates."Pharmaceutical Research,2015,32:11,3480-3493.;Jain,N.et al."Current ADC Linker Chemistry"Pharm Res.2015,32:11,3526-3540.;McCombs,J.R. and Owen,S.C."Antibody Drug Conjugates:Design and Selection of Linker,Payload and Conjugation Chemistry"AAPS J.2015,17:2,339-351.を見よ)。
【0293】
リンカーは典型的には、抗TfR1抗体と分子ペイロードとの両方へ付着できる2つの異なる反応性の高い種を含有しているであろう。いくつかの態様において、2つの異なる反応性の高い種は、求核試薬および/または求電子試薬であってもよい。いくつかの態様において、リンカーは、2つの異なる求核試薬または求電子試薬に特異的である、2つの異なる求電子試薬または求核試薬を含有している。いくつかの態様において、リンカーは、抗TfR1抗体のリシン残基またはシステイン残基への抱合を介して、抗TfR1抗体へ共有結合的に連結されている。いくつかの態様において、リンカーは、マレイミド含有リンカーを介して抗TfR1抗体のシステイン残基へ共有結合的に連結されており、ここで任意にマレイミド含有リンカーは、マレイミドカプロイル基またはマレイミドメチルシクロヘキサン-1-カルボキシラート基を含む。いくつかの態様において、リンカーは、3-アリールプロピオニトリル官能基を介して、抗TfR1抗体のシステイン残基またはチオール官能化分子ペイロードへ共有結合的に連結されている。いくつかの態様において、リンカーは、抗TfR1抗体のリシン残基へ共有結合的に連結されている。いくつかの態様において、リンカーは、独立して、アミド結合、カルバマート結合、ヒドラジド、トリアゾール、チオエーテル、および/またはジスルフィド結合を介し、抗TfR1抗体および/または(例として、および)分子ペイロードへ共有結合的に連結されている。
【0294】
i.切断可能なリンカー
切断可能なリンカーは、プロテアーゼ感受性リンカー、pH感受性リンカー、またはグルタチオン感受性リンカーであってもよい。これらのリンカーは典型的には、細胞内のみで切断可能であって、好ましくは、細胞外環境において、例として筋細胞またはCNS細胞の細胞外において安定している。
【0295】
プロテアーゼ感受性リンカーは、プロテアーゼ酵素活性によって切断可能である。これらのリンカーは典型的には、ペプチド配列を含んでおり、長さが2~10アミノ酸、約2~5アミノ酸、約5~10アミノ酸、約10アミノ酸、約5アミノ酸、約3アミノ酸、または約2アミノ酸であってもよい。いくつかの態様において、ペプチド配列は、天然に存在するアミノ酸、例としてシステイン、アラニン、または天然に存在しないかもしくは修飾されたアミノ酸を含んでいてもよい。天然に存在しないアミノ酸は、β-アミノ酸、ホモ-アミノ酸、プロリン誘導体、3-置換アラニン誘導体、線形コアアミノ酸(linear core amino acids)、N-メチルアミノ酸、および当該技術分野において知られている他のアミノ酸を包含する。いくつかの態様において、プロテアーゼ感受性リンカーは、バリン-シトルリン配列またはアラニン-シトルリン配列を含む。いくつかの態様において、プロテアーゼ感受性リンカーは、リソソームのプロテアーゼ、例としてカテプシンB、および/またはエンドソームのプロテアーゼによって切断され得る。
【0296】
pH感受性リンカーは、高または低pH環境において容易に分解される共有結合性連結である。いくつかの態様において、pH感受性リンカーは、4~6の範囲にあるpHにて切断されてもよい。いくつかの態様において、pH感受性リンカーは、ヒドラゾンまたは環状アセタールを含む。いくつかの態様において、pH感受性リンカーは、エンドソームまたはリソソーム内で切断される。
【0297】
いくつかの態様において、グルタチオン感受性リンカーは、ジスルフィド部を含む。いくつかの態様において、グルタチオン感受性リンカーは、細胞内部でのグルタチオン種とのジスルフィド交換反応によって切断される。いくつかの態様において、ジスルフィド部はさらに、少なくとも1アミノ酸、例としてシステイン残基を含む。
【0298】
いくつかの態様において、リンカーは、バリン-シトルリン配列(例として、米国特許第6,214,345号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載のとおり)を含む。いくつかの態様において、抱合前のリンカーは、次の構造を含む:
【化3】
【0299】
いくつかの態様において、抱合後のリンカーは、次の構造を含む:
【化4】
【0300】
いくつかの態様において、抱合前のリンカーは、式(A)で表される構造を含む:
【化5】
式中nは、0から10のいずれかの数である。いくつかの態様において、nは3である。
【0301】
いくつかの態様において、リンカーは、式(H)で表される構造を含む:
【化6】
式中nは、0から10のいずれかの数であり、ここでmは、0から10のいずれかの数である。いくつかの態様において、nは3であり、および/または(例として、および)mは4である。
【0302】
いくつかの態様において、リンカーは、式(I)で表される構造を含む:
【化7】
式中nは、0から10のいずれかの数であり、ここでmは、0から10のいずれかの数である。いくつかの態様において、nは3であり、および/または(例として、および)mは4である。
【0303】
ii.切断不能なリンカー
いくつかの態様において、切断不能なリンカーが使用されてもよい。一般に、切断不能なリンカーは、細胞環境または生理環境において容易に分解され得ない。いくつかの態様において、切断不能なリンカーは、任意に置換されていてもよいアルキル基を含むが、ここで置換は、ハロゲン、ヒドロキシル基、酸素種、および他の一般的な置換を包含していてもよい。いくつかの態様において、リンカーは、任意に置換されていてもよいアルキル、任意に置換されていてもよいアルキレン、任意に置換されていてもよいアリーレン、ヘテロアリーレン、少なくとも1つの非天然アミノ酸を含むペプチド配列、トランケートされたグリカン、酵素的に分解され得ない糖(単数もしくは複数)、アジド、アルキン-アジド、LPXT配列を含むペプチド配列、チオエーテル、ビオチン、ビフェニル、反復単位のポリエチレングリコールもしくは等価な化合物、酸エステル、酸アミド、スルファミド、および/またはアルコキシ-アミンリンカーを含んでいてもよい。いくつかの態様において、ソルターゼ媒介ライゲーションは、LPXT配列を含む抗TfR1抗体を、(G)n配列を含む分子ペイロードへ共有結合的に連結するために利用され得る(例として、Proft T.Sortase-mediated protein ligation:an emerging biotechnology tool for protein modification and immobilization.Biotechnol Lett.2010,32(1):1-10を見よ)。
【0304】
いくつかの態様において、リンカーは、置換されたアルキレン、任意に置換されていてもよいアルケニレン、任意に置換されていてもよいアルキニレン、任意に置換されていてもよいシクロアルキレン、任意に置換されていてもよいシクロアルケニレン、任意に置換されていてもよいアリーレン、N、O、およびSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子をさらに含む任意に置換されていてもよいヘテロアリーレン;N、O、およびSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子をさらに含む任意に置換されていてもよいヘテロシクリレン、イミノ、任意に置換されていてもよい窒素種、任意に置換されていてもよい酸素種O、任意に置換されていてもよい硫黄種、またはポリ(アルキレンオキシド)、例として、ポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシドを含んでいてもよい。いくつかの態様において、リンカーは、切断不能なN-ガンマ-マレイミドブチリル-オキシスクシンイミドエステル(GMBS)リンカーであってもよい。
【0305】
iii.リンカー抱合
いくつかの態様において、リンカーは、ホスファート、チオエーテル、エーテル、炭素-炭素、カルバマート、もしくはアミドの結合を介し、抗TfR1抗体および/または(例として、および)分子ペイロードへ共有結合的に連結されている。いくつかの態様において、リンカーは、ホスファート基またはホスホロチオアート基、例としてオリゴヌクレオチド主鎖の末端ホスファートを通して、オリゴヌクレオチドへ共有結合的に連結されている。いくつかの態様において、リンカーは、抗TfR1抗体上に存在するリシン残基またはシステイン残基を通して、抗TfR1抗体へ共有結合的に連結されている。
【0306】
いくつかの態様において、リンカーまたはこの一部は、トリアゾールを形成するアジドとアルキンとの間のシクロ付加反応によって、抗TfR1抗体および/または(例として、および)分子ペイロードへ共有結合的に連結されており、ここでアジドまたはアルキンは、抗TfR1抗体、分子ペイロード、またはリンカー上に位置付けられていてもよい。いくつかの態様において、アルキンは、環状アルキン、例としてシクロオクチンであってもよい。いくつかの態様において、アルキンは、ビシクロノニン(またビシクロ[6.1.0]ノニンもしくはBCNとしても知られている)または置換ビシクロノニンであってもよい。いくつかの態様において、シクロオクチンは、2011年11月3日に公開され“Fused Cyclooctyne Compounds And Their Use In Metal-free Click Reactions”と題する国際特許出願刊行物WO2011136645に記載のとおりである。いくつかの態様において、アジドは、アジドを含む糖または炭水化物分子であってもよい。いくつかの態様において、アジドは、6-アジド-6-デオキシガラクトースまたは6-アジド-N-アセチルガラクトサミンであってもよい。いくつかの態様において、アジドを含む糖または炭水化物分子は、2016年10月27日に公開され“Process For The Modification Of A Glycoprotein Using A Glycosyltransferase That Is Or Is Derived From A β(1,4)-N-Acetylgalactosaminyltransferase”と題する国際特許出願刊行物WO2016170186に記載のとおりである。いくつかの態様において、トリアゾールを形成するアジドとアルキンとの間のシクロ付加反応(ここでアジドまたはアルキンは、抗TfR1抗体、分子ペイロード、またはリンカー上に位置付けられていてもよい)は、2014年5月1日に公開され“Modified antibody, antibody-conjugate and process for the preparation thereof”と題する国際特許出願刊行物WO2014065661;または2016年10月27日に公開され“Process For The Modification Of A Glycoprotein Using A Glycosyltransferase That Is Or Is Derived From A β(1,4)-N-Acetylgalactosaminyltransferase”と題する国際特許出願刊行物WO2016170186に記載のとおりである。
【0307】
いくつかの態様において、リンカーは、スペーサー、例としてポリエチレングリコールスペーサーまたはアシル/カルバモイルスルファミドスペーサー、例としてHydraSpace(商標)スペーサーを含む。いくつかの態様において、スペーサーは、Verkade,J.M.M.et al.,"A Polar Sulfamide Spacer Significantly Enhances the Manufacturability, Stability, and Therapeutic Index of Antibody-Drug Conjugates",Antibodies,2018,7,12に記載のとおりである。
【0308】
いくつかの態様において、リンカーは、求ジエン体とジエン/ヘテロ-ジエンとの間のディールス・アルダー反応によって、抗TfR1抗体および/または(例として、および)分子ペイロードへ共有結合的に連結されているが、ここで求ジエン体またはジエン/ヘテロ-ジエンは、抗TfR1抗体、分子ペイロード、またはリンカー上に位置付けられていてもよい。いくつかの態様において、リンカーは、他のペリ環状反応、たとえばエン反応によって、抗TfR1抗体および/または(例として、および)分子ペイロードへ共有結合的に連結されている。いくつかの態様において、リンカーは、アミド、チオアミド、またはスルホンアミド結合反応によって、抗TfR1抗体および/または(例として、および)分子ペイロードへ共有結合的に連結されている。いくつかの態様において、リンカーは、リンカーと抗TfR1抗体および/または(例として、および)分子ペイロードとの間に存在するオキシム基、ヒドラゾン基、またはセミカルバジド基を形成する縮合反応によって、抗TfR1抗体および/または(例として、および)分子ペイロードへ共有結合的に連結されている。
【0309】
いくつかの態様において、リンカーは、求核試薬(例として、アミン基またはヒドロキシル基)と求電子試薬(例として、カルボン酸、カーボナート、またはアルデヒド)との間の抱合体付加反応によって、抗TfR1抗体および/または(例として、および)分子ペイロードへ共有結合的に連結されている。いくつかの態様において、リンカーと抗TfR1抗体または分子ペイロードとの間の反応に先立ち、求核試薬はリンカー上に存在していてもよく、求電子試薬は抗TfR1抗体または分子ペイロード上に存在していてもよい。いくつかの態様において、リンカーと抗TfR1抗体または分子ペイロードとの間の反応に先立ち、求電子試薬はリンカー上に存在していてもよく、求核試薬は抗TfR1抗体または分子ペイロード上に存在していてもよい。いくつかの態様において、求電子試薬は、アジド、ペンタフルオロフェニル、ケイ素中心、カルボニル、カルボン酸、無水物、イソシアナート、チオイソシアナート、スクシニミジルエステル、スルホスクシニミジルエステル、マレイミド、アルキルハロゲン化物、アルキル擬ハロゲン化物、エポキシド、エピスルフィド、アジリジン、アリール、活性化リン中心、および/または活性化硫黄中心であってもよい。いくつかの態様において、求核試薬は、任意に置換されていてもよいアルケン、任意に置換されていてもよいアルキン、任意に置換されていてもよいアリール、任意に置換されていてもよいヘテロシクリル、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリド基、および/またはチオール基であってもよい。
【0310】
いくつかの態様において、リンカーは、反応性化学物質部分(例として、クリックケミストリーのためのアジド部分またはBCN部分)へ共有結合的に連結されたバリン-シトルリン配列を含む。いくつかの態様において、反応性化学物質部分(例として、クリックケミストリーのためのアジド部分)へ共有結合的に連結されたバリン-シトルリン配列を含むリンカーは、式(A)で表される構造を含む:
【化8】
式中nは、0から10のいずれかの数である。いくつかの態様において、nは3である。
【0311】
いくつかの態様において、式(A)で表される構造を含むリンカーは、分子ペイロード(例として、オリゴヌクレオチド)へ(例として、任意に、追加の化学物質部分を介して)共有結合的に連結されている。いくつかの態様において、式(A)で表される構造を含むリンカーは、例としてカルバメート結合を形成するアミン-L1-オリゴヌクレオチドとの求核置換を介して、オリゴヌクレオチドへ共有結合的に連結されて、式(B)で表される構造を含む化合物が生産される:
【化9】
式中nは、0から10のいずれかの数である。いくつかの態様において、nは3である。
【0312】
いくつかの態様において、式(B)で表される化合物はさらに、トリアゾールを介して追加の部分へ共有結合的に連結されており、ここでトリアゾールは、式(A)または式(B)のアジドとビシクロノニン上に提供されるアルキンとの間のクリック反応によって形成される。いくつかの態様において、ビシクロノニンを含む化合物は、式(C)で表される構造を含む:
【化10】
式中mは、0から10のいずれかの数である。いくつかの態様において、mは4である。
【0313】
いくつかの態様において、構造(B)で表される化合物のアジドは、構造(C)で表される化合物のアルキンとのクリック反応を介してトリアゾールを形成し、式(D)で表される構造を含む化合物が形成される:
【化11】
式中nは、0から10のいずれかの数であり、および式中mは、0から10のいずれかの数である。いくつかの態様において、nは3であり、およびmは4である。
【0314】
いくつかの態様において、構造(D)で表される化合物はさらに、抗TfR1抗体のリシンへ共有結合的に連結され、式(E)で表される構造を含む複合体が形成される:
【化12】
式中nは、0から10のいずれかの数であり、ここでmは、0から10のいずれかの数である。いくつかの態様において、nは3であり、および/または(例として、および)mは4である。式(E)中の抗TfR1抗体に隣接して示されているアミドが、リシンイプシロンアミンなどの抗TfR1抗体のアミンとの反応の結果生じることは理解されるはずである。
【0315】
いくつかの態様において、構造(C)で表される化合物はさらに、抗TfR1抗体のリシンへ共有結合的に連結され、(式F)で表される構造を含む化合物が形成される:
【化13】
式中mは、0~15(例として、4)である。式(F)中の抗TfR1抗体に隣接して示されているアミドが、リシンイプシロンアミンなどのアミンとの抗TfR1抗体のアミンとの反応の結果生じることは理解されるはずである。
【0316】
いくつかの態様において、構造(B)で表される化合物のアジドは、構造(F)で表される化合物のアルキンとのクリック反応を介してトリアゾールを形成し、式(E)で表される構造を含む複合体が形成される:
【化14】
式中nは、0から10のいずれかの数であり、ここでmは、0から10のいずれかの数である。いくつかの態様において、nは3であり、および/または(例として、および)mは4である。式(E)中の抗TfR1抗体に隣接して示されているアミドが、リシンイプシロンアミンなどの抗TfR1抗体のアミンとの反応の結果生じることは理解されるはずである。
【0317】
いくつかの態様において、構造(A)で表される化合物のアジドは、構造(F)で表される化合物のアルキンとのクリック反応を介してトリアゾールを形成し、式(G)で表される構造を含む化合物が形成される:
【化15】
式中nは、0から10のいずれかの数であり、ここでmは、0から10のいずれかの数である。いくつかの態様において、nは3であり、および/または(例として、および)mは4である。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、式(G)で表される構造を含む化合物へ共有結合的に連結され、それによって式(E)で表される構造を含む複合体が形成される。式(G)中の抗TfR1抗体に隣接して示されるアミドが、リシンイプシロンアミンなどのアミンとの抗TfR1抗体の反応の結果生じることは理解されるはずである。
【0318】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体のいずれか1つにおいて、抗TfR1抗体は、抗TfR1抗体のリシンを介して分子ペイロード(例として、オリゴヌクレオチド)へ、式(H)で表される構造を含むリンカーを介して共有結合的に連結されている:
【化16】
式中nは、0から10のいずれかの数であり、ここでmは、0から10のいずれかの数である。いくつかの態様において、nは3であり、および/または(例として、および)mは4である。
【0319】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体のいずれか1つにおいて、抗TfR1抗体は、抗TfR1抗体のリシンを介して分子ペイロード(例として、オリゴヌクレオチド)へ、式(I)で表される構造を含むリンカーを介して共有結合的に連結されている:
【化17】
式中nは、0から10のいずれかの数であり、ここでmは、0から10のいずれかの数である。いくつかの態様において、nは3であり、および/または(例として、および)mは4である。
【0320】
いくつかの態様において、構造式(B)、(D)、(E)、および(I)中L1は、置換もしくは非置換の脂肪族、置換もしくは非置換のヘテロ脂肪族、置換もしくは非置換のカルボシクリレン、置換もしくは非置換のヘテロシクリレン、置換もしくは非置換のアリーレン、置換もしくは非置換のヘテロアリーレン、-O-、-N(RA)-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NRA-、-NRAC(=O)-、-NRAC(=O)RA-、-C(=O)RA-、-NRAC(=O)O-、-NRAC(=O)N(RA)-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-OC(=O)N(RA)-、-S(O)
2NRA-、-NRAS(O)
2-、またはそれらの組み合わせであるスペーサーであり、ここで各R
Aは、独立して、水素、または置換もしくは非置換のアルキルである。いくつかの態様において、L1は、
【化18】
であり、ここでL2は、
【化19】
である;ここでaは、式(B)、(D)、(E)、および(I)で表されるカルバマート部分へ直接連結されている部位を標識する;およびbは、オリゴヌクレオチドへ共有結合的に(直接的にまたは追加の化学物質部分を介して)連結されている部位を標識する。
【0321】
いくつかの態様において、L1は、次:
【化20】
であり、ここでaは、式(B)、(D)、(E)、および(I)で表されるカルバマート部分へ直接連結されている部位を標識する;およびbは、オリゴヌクレオチドへ共有結合的に(直接的にまたは追加の化学物質部分を介して)連結されている部位を標識する。
【0322】
いくつかの態様において、L1は、
【化21】
である。
【0323】
いくつかの態様において、L1は、オリゴヌクレオチドの5'ホスファートへ連結されている。
【0324】
いくつかの態様において、L1は、任意である(例として、存在する必要がない)。
【0325】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体のいずれか1つは、式(J)で表される構造:
【化22】
を有し、式中nは、0~15(例として、3)であり、およびmは、0~15(例として、4)である。式(J)中の抗TfR1抗体に隣接して示されているアミドが、リシンイプシロンアミンなどの抗TfR1抗体のアミンとの反応の結果生じることは理解されるはずである。
【0326】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体のいずれか1つは、式(K)で表される構造:
【化23】
を有し、式中nは、0~15(例として、3)であり、およびmは、0~15(例として、4)である。
【0327】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、化合物、例として式(A)または式(G)で表される化合物への連結に先立ち、5'端にて、3'端にて、または内部に(例として、アミン官能基化核酸塩基として)アミン基を含むように修飾されている。
【0328】
リンカー抱合は、抗TfR1抗体およびオリゴヌクレオチド分子ペイロードという文脈において記載されているが、他の筋標的化抗体などの他の筋標的化剤上のおよび/または他の分子ペイロード上のかかるリンカー抱合の使用が企図されていることは理解されるはずである。
【0329】
D.抗体-分子ペイロード複合体の例
さらに本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の分子ペイロード(例として、オリゴヌクレオチド)のいずれかへ共有結合的に連結されている本明細書に記載のいずれか1つの抗TfR1抗体を含む複合体の非限定例である。いくつかの態様において、抗TfR1抗体(例として、表2~7に提供される抗TfR1抗体のいずれか1つ)は、リンカーを介して分子ペイロード(例として、表8または表9に提供されるオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチド)へ共有結合的に連結されている。本明細書に記載のリンカーのいずれも使用されてよい。いくつかの態様において、分子ペイロードがオリゴヌクレオチドである場合、リンカーは、オリゴヌクレオチドの5'端、オリゴヌクレオチドの3'端へ、またはオリゴヌクレオチドの内部部位へ連結される。いくつかの態様において、リンカーは、抗TfR1抗体へ、チオール反応性連結を介して(例として、抗TfR1抗体中のシステインを介して)連結されている。いくつかの態様において、リンカー(例として、バリン-シトルリン配列を含むリンカー)は、抗体(例として、本明細書に記載の抗TfR1抗体)へ、アミン基を介して(例として、抗体中のリシンを介して)連結されている。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0330】
リンカーを介して分子ペイロードへ共有結合的に連結された抗TfR1抗体を含む複合体の構造の例は、下に提供される:
【化24】
ここでリンカーは、抗体へ、チオール反応性連結を介して(例として、抗体中のシステインを介して)連結されている。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0331】
リンカーを介して分子ペイロードへ共有結合的に連結された抗TfR1抗体を含む複合体の構造の別の例は、下に提供される:
【化25】
ここでnは、0~10の間の数字であり、ここでmは、0~10の間の数字であり、ここでリンカーは、抗体へ、(例として、リシン残基上の)アミン基を介して連結されており、および/または(例として、および)、ここでリンカーは、オリゴヌクレオチドへ(例として、5'端、3'端にて、もしくは内部で)連結されている。いくつかの態様において、リンカーは、抗体へリシンを介して連結されており、リンカーは、オリゴヌクレオチドへ5'端にて連結されており、nは、3であり、およびmは、4である。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。式(E)中の抗TfR1抗体に隣接して示されているアミドが、リシンイプシロンアミンなどの抗TfR1抗体のアミンとの反応の結果生じることは理解されるはずである。
【0332】
抗体は、種々の化学量論で分子ペイロードへ連結され得ることが解されるはずであって、前記特性は薬物抗体比(DAR)と称されることもあり、ここで「薬物」は分子ペイロードである。いくつかの態様において、1つの分子ペイロードが抗体へ連結されている(DAR=1)。いくつかの態様において、2つの分子ペイロードが抗体へ連結されている(DAR=2)。いくつかの態様において、3つの分子ペイロードが抗体へ連結されている(DAR=3)。いくつかの態様において、4つの分子ペイロードが抗体へ連結されている(DAR=4)。いくつかの態様において、各々が異なるDARを有する異なる複合体の混合物が提供される。いくつかの態様において、かかる混合物中の複合体の平均DARは、1~3、1~4、1~5以上の範囲にあってもよい。DARは、分子ペイロードを抗体上の種々の部位へ抱合させることによって、および/または(例として、および)マルチマーを抗体上の1以上の部位へ抱合させることによって、増大されてもよい。例えば、2のDARは、単一分子ペイロードを抗体上の2つの異なる部位へ抱合させることによって、または二量体分子ペイロードを抗体の単一部位へ抱合させることによって、達成されてもよい。
【0333】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている本明細書に記載の抗TfR1抗体(例として、表2~7に提供される抗体)を含む。いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへリンカー(例として、バリン-シトルリン配列を含むリンカー)を介して共有結合的に連結されている本明細書に記載の抗TfR1抗体(例として、表2~7に提供される抗体)を含む。いくつかの態様において、リンカー(例として、バリン-シトルリン配列を含むリンカー)は、抗体(例として、本明細書に記載の抗TfR1抗体)へ、チオール反応性連結を介して(例として、抗体中のシステインを介して)連結されている。いくつかの態様において、リンカー(例として、バリン-シトルリン配列を含むリンカー)は、抗体(例として、本明細書に記載の抗TfR1抗体)へ、アミン基を介して(例として、抗体中のリシンを介して)連結されている。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0334】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、表2に列挙される抗体のいずれか1つのCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0335】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号69、配列番号71、または配列番号72のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号70のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0336】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号73または配列番号76のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号74のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0337】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号73または配列番号76のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号75のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0338】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号77のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号78のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0339】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号77または配列番号79のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号80のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0340】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号154のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号155のアミノ酸配列を含むVLを含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0341】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号84、配列番号86、または配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0342】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号88または配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号89のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0343】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号88または配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号90のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0344】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号92または配列番号94のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号95のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0345】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号92のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号93のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0346】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号156のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0347】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号97、配列番号98、または配列番号99のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0348】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号100または配列番号101のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号89のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0349】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号100または配列番号101のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号90のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0350】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号102のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号93のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0351】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号102または配列番号103のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号95のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0352】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、分子ペイロードへ共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、配列番号158または配列番号159のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号157のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの態様において、分子ペイロードは、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)である。
【0353】
本明細書に記載の複合体の例のいずれかにおいて、いくつかの態様において、抗TfR1抗体は、式(I)で表される構造を含むリンカーを介して分子ペイロードへ共有結合的に連結されている:
【化26】
式中nは3であり、mは4である。
【0354】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)の5'端へ抗TfR1抗体中のリシンを介して共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、表2に列挙される抗体のいずれか1つのCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含み、ここで複合体は、式(E)で表される構造を有する:
【化27】
式中nは3であり、およびmは4である。式(E)中の抗TfR1抗体に隣接して示されているアミドが、リシンイプシロンアミンなどの抗TfR1抗体のアミンとの反応の結果生じることは理解されるはずである。
【0355】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)の5'端へ抗TfR1抗体中のリシンを介して共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、表3に列挙される抗体のいずれか1つのVHおよびVLを含み、ここで複合体は、式(E)で表される構造を有する:
【化28】
式中nは3であり、およびmは4である。式(E)中の抗TfR1抗体に隣接して示されているアミドが、リシンイプシロンアミンなどの抗TfR1抗体のアミンとの反応の結果生じることは理解されるはずである。
【0356】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)の5'端へ抗TfR1抗体中のリシンを介して共有結合的に連結されている抗TfR1抗体を含み、ここで抗TfR1抗体は、表4に列挙される抗体のいずれか1つの重鎖および軽鎖を含み、ここで複合体は、式(E)で表される構造を有する:
【化29】
式中nは3であり、およびmは4である。式(E)中の抗TfR1抗体に隣接して示されているアミドが、リシンイプシロンアミンなどの抗TfR1抗体のアミンとの反応の結果生じることは理解されるはずである。
【0357】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体は、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(例として、表8または表9に列挙されるDUX4標的化オリゴヌクレオチド)の5'端へ抗TfR1抗体中のリシンを介して共有結合的に連結されている抗TfR1 Fabを含み、ここで抗TfR1 Fabは、表5に列挙される抗体のいずれか1つの重鎖および軽鎖を含み、ここで複合体は、式(E)で表される構造を有する:
【化30】
式中nは3であり、およびmは4である。式(E)中の抗TfR1抗体に隣接して示されているアミドが、リシンイプシロンアミンなどの抗TfR1抗体のアミンとの反応の結果生じることは理解されるはずである。
【0358】
いくつかの態様において、本明細書に記載の複合体の例のいずれか1つにおけるL1は、置換もしくは非置換の脂肪族、置換もしくは非置換のヘテロ脂肪族、置換もしくは非置換のカルボシクリレン、置換もしくは非置換のヘテロシクリレン、置換もしくは非置換のアリーレン、置換もしくは非置換のヘテロアリーレン、-O-、-N(RA)-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NRA-、-NRAC(=O)-、-NRAC(=O)RA-、-C(=O)RA-、-NRAC(=O)O-、-NRAC(=O)N(RA)-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-OC(=O)N(RA)-、-S(O)
2NRA-、-NRAS(O)
2-、またはそれらの組み合わせであるスペーサーであり、ここで各R
Aは、独立して、水素、または置換もしくは非置換のアルキルである。いくつかの態様において、L1は、
【化31】
であり、ここでL2は、
【化32】
である;ここでaは、式(E)で表されるカルバマート部分へ直接連結されている部位を標識する;およびbは、オリゴヌクレオチドへ共有結合的に(直接的にまたは追加の化学部分を介して)連結されている部位を標識する。
【0359】
いくつかの態様において、L1は、次:
【化33】
であり、ここでaは、式(E)で表されるカルバマート部分へ直接連結されている部位を標識する;およびbは、オリゴヌクレオチドへ共有結合的に(直接的にまたは追加の化学部分を介して)連結されている部位を標識する。
【0360】
いくつかの態様において、L1は、
【化34】
である。
【0361】
いくつかの態様において、L1は、オリゴヌクレオチドの5'ホスファートへ連結されている。
【0362】
いくつかの態様において、L1は、任意である(例として、存在する必要がない)。
【0363】
III.製剤
本明細書に提供される複合体は、いずれか好適な様式で製剤化されていてもよい。一般に、本明細書に提供される複合体は、医薬への使用に好適な様式で製剤化されている。例えば、複合体は、分解を最小限に抑え、送達および/または(例として、および)取り込みを容易にする製剤を使用して、対象へ送達され得るか、あるいは製剤中の複合体へ別の有益な特性を提供する。いくつかの態様において、本明細書に提供されるのは、複合体および薬学的に許容し得る担体を含む組成物である。かかる組成物は、対象の標的細胞周囲の環境中または対象の全身のいずれかへ投与されたとき充分量の複合体が標的細胞(例として、筋細胞もしくはCNS細胞)に侵入できるように、好適に製剤化され得る。いくつかの態様において、複合体は、リン酸緩衝生理食塩溶液などの緩衝溶液中、リポソーム中、ミセル構造体中、およびカプシド中に製剤化される。
【0364】
いくつかの態様において、組成物が、本明細書に提供される複合体の1以上の構成要素(例として、筋標的化剤、リンカー、分子ペイロード、またはこれらのいずれか1つの前駆体分子)を個別に包含していてもよいことは解されるはずである。
【0365】
いくつかの態様において、複合体は、水中または水性溶液(例として、pH調整された水)中に製剤化される。いくつかの態様において、複合体は、塩基性緩衝水性溶液(例として、PBS)中に製剤化される。いくつかの態様において、本明細書に開示のとおりの製剤は、賦形剤を含む。いくつかの態様において、賦形剤は、組成物へ、改善された安定性、改善された吸収、改善された可溶性、および/または(例として、および)活性成分の治療増強を付与する。いくつかの態様において、賦形剤は、緩衝剤(例として、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、トリス塩基、もしくは水酸化ナトリウム)、またはビヒクル(例として、緩衝溶液、ワセリン、ジメチルスルホキシド、もしくは鉱油)である。
【0366】
いくつかの態様において、複合体またはその構成要素(例として、オリゴヌクレオチドまたは抗体)は、その貯蔵寿命を延長するため凍結乾燥され、次いで使用(例として、対象への投与)前に溶液にさせられる。結果的に、本明細書に記載の複合体またはその構成要素を含む組成物中の賦形剤は、凍結保護剤(lyoprotectant)(例として、マンニトール、ラクトース、ポリエチレングリコール、もしくはポリビニルピロリドン)、または崩壊温度修飾因子(例として、デキストラン、フィコール、もしくはゼラチン)であってもよい。
【0367】
いくつかの態様において、医薬組成物は、その意図された投与ルートに適合するよう製剤化されている。投与ルートの例は、非経口、例として、静脈内、皮内与、皮下を包含する。典型的には、投与ルートは、静脈内または皮下である。
【0368】
注射剤への使用に好適な医薬組成物は、滅菌水性溶液(ここで水に可溶性である)または分散溶液、および滅菌注射剤溶液または分散溶液の即時調製のための滅菌粉末を包含する。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、および好適なそれらの混合物を含有する溶媒または分散媒体であり得る。いくつかの態様において、製剤は、組成物中に等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、および塩化ナトリウムを包含する。滅菌注射剤溶液は、要求量の複合体を、上に挙げられた成分の1つまたはそれらの組み合わせとともに、選択された溶媒に組み込むこと、要求に応じ、これに続き濾過滅菌することによって調製され得る。
【0369】
いくつかの態様において、組成物は、活性成分(単数または複数)のパーセンテージが組成物全体の重量または体積の約1%と約80%以上との間であってもよいが、少なくとも約0.1%の複合体もしくはその構成要素を含有していてもよい。可溶性、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与ルート、産物の貯蔵寿命などの因子、ならびに他の薬理学的留意事項は、かかる医薬製剤を調製する当業者によって企図されるであろう。そのため様々な投薬量および処置計画が所望されることもある。
【0370】
IV.使用の方法/処置
本明細書に記載のとおりの分子ペイロードへ共有結合的に連結された筋標的化剤を含む複合体は、FSHDを処置するのに有効である。いくつかの態様において、複合体は、1型FSHDを処置するのに有効である。いくつかの態様において、複合体は、2型FSHDを処置するのに有効である。いくつかの態様において、FSHDは、DUX4遺伝子を含有する4番染色体上のD4Z4反復の欠失に関連する。いくつかの態様において、FSHDは、SMCHD1遺伝子における突然変異に関連する。
【0371】
いくつかの態様において、対象は、ヒト対象、霊長目非ヒト動物対象、齧歯類動物対象、またはいずれの好適な哺乳動物対象であってもよい。いくつかの態様において、対象は、筋強直性ジストロフィーを有してもよい。いくつかの態様において、対象は、胎児の発生および精巣以外でのDUX4遺伝子の上昇した発現を有する。いくつかの態様において、対象は、1型または2型の顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーを有する。いくつかの態様において、FSHDを有する対象は、SMCHD1遺伝子における突然変異を有する。いくつかの態様において、FSHDを有する対象は、4番染色体上のD4Z4反復領域における欠失突然変異を有する。
【0372】
本開示の側面は、本明細書に記載のとおりの有効量の複合体を対象へ投与することを伴う方法を包含する。いくつかの態様において、分子ペイロードへ共有結合的に連結された筋標的化剤を含む複合体を含む有効量の医薬組成物は、処置を必要とする対象へ投与され得る。いくつかの態様において、本明細書に記載のとおりの複合体を含む医薬組成物は、静脈内投与を包含してもよい好適なルートによって、例としてボーラスとしてまたはある期間にわたる連続注入によって、投与されてもよい。いくつかの態様において、静脈内投与は、筋肉内の、腹腔内の、脳脊髄内の(intracerebrospinal)、皮下の、関節内の、滑液嚢内の、または髄腔内のルートによって実施されてもよい。いくつかの態様において、医薬組成物は、固体形態、水性形態、または液体形態であってもよい。いくつかの態様において、水性形態または液体形態は、噴霧されてもよく、または凍結乾燥されてもよい。いくつかの態様において、噴霧形態または凍結乾燥形態は、水性溶液または液体溶液で再構成されてもよい。
【0373】
静脈内投与のための組成物は、植物油、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、およびポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)などの様々な担体を含有していてもよい。静脈内注射のための水可溶性抗体は点滴法によって投与され得、これによって抗体および薬学的に許容し得る賦形剤を含有する医薬製剤が注入される。薬学的に許容し得る賦形剤は、例えば、5%デキストロース、0.9%生理食塩水、リンガー溶液、または他の好適な賦形剤を包含していてもよい。筋肉内用調製物、例として、抗体の好適な可溶性の塩形態の滅菌製剤は、注射用水、0.9%生理食塩水、または5%グルコース溶液などの医薬賦形剤に溶解されて投与され得る。
【0374】
いくつかの態様において、分子ペイロードへ共有結合的に連結されたた筋標的化剤を含む複合体を含む医薬組成物は、部位特異的または局部的な送達技法を介して投与される。これらの技法の例は、複合体の埋め込み型デポー供給源、局部送達カテーテル、部位特異的担体、直接注射、または直塗り(direct application)を包含する。
【0375】
いくつかの態様において、分子ペイロードへ共有結合的に連結された筋標的化剤を含む複合体を含む医薬組成物は、治療効果を対象に付与する有効濃度にて投与される。有効量は、当業者によって認識されるとおり、疾患の重症度、処置される対象の特有な特徴、例として、齢(age)、体調、健康状態、または重量、処置時間、いずれの併用治療の性質、投与ルート、および関連因子に依存して変動する。これらの関連因子は当業者に知られており、わずかな定型的実験法で対処され得る。いくつかの態様において、有効濃度は、ペイシェントにとって安全であるとみなされる最大用量である。いくつかの態様において、有効濃度は、最大限の効き目を提供する、実行可能な最低濃度であろう。
【0376】
経験的考察、例として対象における複合体の半減期は一般に、処置のために使用される医薬組成物の濃度の決定に寄与するであろう。投与頻度は、処置の効き目を最大化するために経験的に決定かつ調整されてもよい。
【0377】
処置の効き目は、いずれの好適な方法を使用しても査定されてよい。いくつかの態様において、処置の効き目は、主に顔、肩甲骨、および上腕の筋肉における筋肉量の減少および筋萎縮を包含する、FSHDに関連する症状の所見の評価によって査定されてもよい。
【0378】
いくつかの態様において、本明細書に記載の分子ペイロードへ共有結合的に連結された筋標的化剤を含む複合体を含む医薬組成物は、対照(例として、処置に先立つ遺伝子発現のベースラインレベル)と比べて、標的遺伝子の活性または発現を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%阻害するのに充分な有効濃度にて、対象へ投与される。
【0379】
例
例1. FSHDペイシェント由来不死化筋芽細胞における、DUX4標的化オリゴヌクレオチドへ抱合された抗TfR Fabを含有する抱合体の効果
抗TfR Fab 3M12 VH4/VK3を、切断可能なVal-Citリンカーを介してDUX4標的化オリゴヌクレオチド(配列番号151)へ抱合させて、オリゴヌクレオチドの増強された筋送達を達成した。オリゴヌクレオチドは、PMOであって、DUX4転写産物のポリアデニル化シグナルを標的にする。抱合体の活性をC6(AB1080)不死化FSHD1細胞株において評価したが、前記細胞株は、有意なレベルの表面TfR1発現およびDUX4のトランスクリプトームマーカー(MBD3L2、TRIM43、ZSCAN4)の活性化を有する。抗TfR FabによるPMO(配列番号151)の筋細胞中への受容体媒介送達は、8nM PMO濃度にてDUX4トランスクリプトームバイオマーカーの~75%低減をもたらした一方、同等の未抱合PMOは、ビヒクル処理細胞と比較して有意なバイオマーカー低減を示さないことが実証されている(
図1)。結果は、抗TfR Fabとの抱合が、FSHDの処置のためのオリゴヌクレオチドの筋細胞への送達を増強することを示す。
【0380】
用語「未抱合」は、この例に使用されるとき、オリゴヌクレオチドが抗体へ抱合されなかったことを指し示す。
【0381】
加えて、MBD3L2 mRNAの低減に係る用量応答曲線を
図2Aに示す。抱合体に係る阻害に要される半数濃度(half maximal concentration)(IC50)値は189pMであった。MBD3L2、TRIM43、およびZSCAN4 mRNAの低減に係る用量応答曲線を
図2Bに示す。MBD3L2、TRIM43、およびZSCAN4を阻害する抱合体のIC50値は夫々、200pM、50pM、および200pMであった。
【0382】
例1の実験手順
細胞培養および試験物(test article)処置
C6(AB1080)不死化FSHD筋芽細胞を、Supplementary mix(C-39365、Promocell)および1% Penstrep(15140-122、Gibco)ありのSkeletal Growth Media(CAT#C-23060、Promocell)中、96ウェルプレート(ThermoFisher Scientific)上に45,000細胞/ウェルの密度まで播種した。成長培地を24時間後に分化培地、NbActiv4(Brainbits)および1%Pen/Strep(Gibco)と置き換えた。細胞を、技術的再現(technical replicates)において、未抱合DUX4標的化オリゴヌクレオチド、8nMのPMO濃度での抱合体、またはビヒクルで、1XPBS(10010023、Gibco)で洗い流すのに先立ち4時間処置した。馴化(Conditioned)分化培地を即時ウェルへ戻し入れ(added back)、終了時点での分析(downstream analyses)のために細胞を5日後に回収した。
【0383】
MBD3L2、TRIM43、およびZSCAN4ノックダウンに係る用量応答曲線については、C6(AB1080)不死化FSHD筋芽細胞を上に記載のとおりに処置したが、抱合体の濃度は変化させた。
【0384】
RNA抽出およびqPCR
全RNAを、RNeasy 96 Kit(Qiagen)で製造業者の指示に従い細胞単層から抽出した。RNAをBiotek Plate Readerで定量化し、Nuclease-Free Water(Qiagen)で試料あたり50ngまで希釈し、qScript cDNA SuperMix(QuantaBio)で逆転写した。遺伝子発現を、特定のTaqManアッセイ(ThermoFisher)でのqPCRによって、TRIM43(Hs00299174_m1)、MBD3L2(Hs00544743_m1)、ZSCAN4(Hs00537549_m1)、およびRPL13A(Hs04194366_g1)の転写産物レベルを測定することによって分析した。2ステップ増幅反応およびCt決定のための蛍光測定を、QuantStudio 7器械(Thermo Scientific)上で行った。着目した転写産物の発現におけるLog倍率変化を、参照遺伝子としてRPL13Aを、対照群としてビヒクルへ暴露された細胞を使用し、2-ΔΔCT方法に従い算出した。データを平均値±S.D.として表現した。
【0385】
例2. 霊長目非ヒト動物における抗体-オリゴヌクレオチド抱合体の薬物動態特性
DUX4標化オリゴヌクレオチド(配列番号151)を、裸かまたは抗TfR1抗体(3M12 VH4/Vk3 Fab)への抱合かのいずれかで、霊長目非ヒト動物へ静脈内投与した。裸のオリゴヌクレオチドを30mg/kgの用量にて投与し、抱合体を3mg/kg、10mg/kg、または30mg/kgオリゴヌクレオチド相当の用量にて投与した。経時的に測定されたオリゴヌクレオチドの血漿中レベルを
図3に示す。結果は、抗体-オリゴヌクレオチド抱合体の全身曝露により、用量依存的な薬物動態特性が示され、裸のオリゴヌクレオチドと比べてより高い曝露が達成されることを実証している。血漿中の測定値はまた、抗体-オリゴヌクレオチド抱合体が、約60時間という長い血清中半減期を有することも実証している。さらにまた、抗体-オリゴヌクレオチド抱合体は、30mg/kgのオリゴヌクレオチド相当用量での裸のオリゴヌクレオチドと比較して、曲線下面積(AUC)の58倍増加、C
maxの3倍増加を実証している。これらの結果を表16にまとめる。
表16. 血漿中濃度測定値から算出される薬物動態値
【表16】
【0386】
オリゴヌクレオチドまたは抗体-オリゴヌクレオチド抱合体の投与から2週間後、剖検を実施して霊長目非ヒト動物から筋組織を採取し、オリゴヌクレオチドレベルを測定した。試験された各筋組織(心臓、口輪筋、大頬骨筋、横隔膜、僧帽筋、三角筋、腓腹筋、二頭筋、四頭筋、および前脛骨筋)において、組織オリゴヌクレオチドレベルは、裸のオリゴヌクレオチド(30mg/kg)と比較し、抗体-オリゴヌクレオチド抱合体(3、10、または30mg/kgオリゴヌクレオチド相当)の各用量でより高かった(
図4)。対照として、組織オリゴヌクレオチドレベルもまた、ビヒクル処置動物から採取された組織において測定し、試験された筋組織のいずれにおいてもオリゴヌクレオチドは一切検出されなかった。これらの結果は、抗体-オリゴヌクレオチド抱合体が、DUX4標的化オリゴヌクレオチドの筋組織への高い曝露を達成し、裸で投与されたオリゴヌクレオチドより著しく高いことを実証している。30mg/kgのオリゴヌクレオチド相当用量にて、試験された各筋肉中のオリゴヌクレオチド濃度は、抗体-オリゴヌクレオチド抱合体で処置された動物において、裸のオリゴヌクレオチドに比べて26-~139-倍高かった。
【0387】
経時的なDUX4標的化オリゴヌクレオチドの組織蓄積を評価するため、組織オリゴヌクレオチドレベルを、投与から1週間後に採取された腓腹筋生検試料において測定し、投与から2週間後に採取された剖検試料において測定された値と比較した。オリゴヌクレオチドレベルは、抗体-オリゴヌクレオチド抱合体の3、10、または30mg/kgオリゴヌクレオチド相当が投与された動物から採取された腓腹筋生検試料において、30mg/kg裸のオリゴヌクレオチドが投与された動物から採取された生検試料より著しく高く、投与から2週間後に採取された組織においてはなお一層高かった(
図5)。ビヒクル処置動物からの組織試料において、オリゴヌクレオチドは一切検出されなかった。これらの結果は、抗体-オリゴヌクレオチド抱合体が、裸のオリゴヌクレオチドと比較するとDUX4標的化オリゴヌクレオチドの筋組織への高い曝露を達成し、抱合体が経時的に蓄積し続けることを実証している。
【0388】
例3. FSHDペイシェント由来不死化筋芽細胞における、DUX4標的化オリゴヌクレオチドへ抱合された抗TfR Fabを含有する抱合体の効果
抗TfR Fab 3M12 VH4/VK3を、切断可能なVal-Citリンカーを介してDUX4標的化オリゴヌクレオチド(表8に列挙されるとおりのオリゴヌクレオチド#8、#1、または#2、夫々配列番号176、169、170に対応)へ抱合させて、オリゴヌクレオチドの増強された筋送達を達成した。また対照抱合体も、抗TfR Fab 3M12 VH4/VK3を、同じ切断可能なVal-Citリンカーを介し、対照DUX4標的化オリゴヌクレオチド(配列番号151)へ抱合させることによって産生した。抱合体の活性をC6(AB1080)不死化FSHD1細胞株において評価したが、前記細胞株は、有意なレベルの表面TfR1発現およびDUX4のトランスクリプトームマーカー(MBD3L2、TRIM43、ZSCAN4)の活性化を有する。
【0389】
C6(AB1080)不死化FSHD筋芽細胞を、Supplementary mix(C-39365、Promocell)および1% Penstrep(15140-122、Gibco)ありのSkeletal Growth Media(CAT#C-23060、Promocell)中、384ウェルプレート(ThermoFisher Scientific)上に410,000細胞/ウェルの密度まで播種した。成長培地を24時間後に分化培地、NbActiv4(Brainbits)および1%Pen/Strep(Gibco)と置き換えた。細胞を、抱合体で、オリゴヌクレオチドの10pM、1nM、または100nMに相当する濃度にて10日間処置し、終了時点での分析のために後に回収した。
【0390】
図6に示されるとおり、DUX4標的化オリゴヌクレオチド(表8中#8、#1、または#2、夫々配列番号176、169、170に対応)へ抱合された抗TfR Fab 3M12 VH4/Vk3を含有する抱合体、および対照抱合体は、FSHDペイシェント細胞において、DUX4トランスクリプトームマーカーの発現レベルを低減させた。これらの結果は、抱合体がin vitroでFSHDペイシェント細胞におけるDUX4発現レベルを低減させたことを指し示している。
追加の態様
1. DUX4の発現または活性を低減させるよう構成されているオリゴヌクレオチドへ共有結合的に連結された抗トランスフェリン受容体1(TfR1)抗体を含む複合体であって、ここで抗TfR1抗体は、表2~7に列挙される抗TfR1抗体のいずれかの、重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)、軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含み、およびここでオリゴヌクレオチドは、配列番号160または配列番号365で表されるとおりのDUX4配列との相補性の領域を含むアンチセンス鎖を含む。
2. 抗TfR1抗体は、表3に列挙される抗TfR1抗体のいずれかの重鎖可変領域(VH)よび軽鎖可変領域(VL)を含む、態様1の複合体。
3. 抗TfR1抗体は、配列番号76と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)および/または配列番号75と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、任意にここで抗TfR1抗体は、配列番号76のアミノ酸配列を含むVH、および配列番号75のアミノ酸配列を含むVLを含む、態様1または態様2のいずれか1つの複合体。
4. 抗TfR1抗体は、Fabであり、任意にここでFabは、表5に列挙される抗TfR1 Fabのいずれかの重鎖および軽鎖を含む、態様1または態様2の複合体。
5. Fabは、配列番号101と少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む重鎖および/または配列番号90と少なくとも85%同一のアミノ酸配列を不意組む軽鎖を含み、任意にここでFabは、配列番号101のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号90のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、態様4の複合体。
6. オリゴヌクレオチドは、長さが20~30ヌクレオチドである、態様1~5のいずれか1つの複合体。
7. オリゴヌクレオチドは、配列番号160または配列番号365で表されるとおりのDUX4配列に対して少なくとも15の連続したヌクレオチドの相補性の領域を含む、態様1~6のいずれか1つの複合体。
8. オリゴヌクレオチドは、配列番号161~168または213~288のいずれか1つで表されるとおりのDUX4配列に対して少なくとも15の連続したヌクレオチドの相補性の領域を含む、態様1~7のいずれか1つの複合体。
9. オリゴヌクレオチドは、配列番号169~176または289~364のいずれか1つの少なくとも15の連続したヌクレオチドを含み、ここで各チミン塩基(T)は、独立してかつ任意に、ウラシル塩基(U)に置き換えられていてもよく、および各Uは、独立してかつ任意に、Tに置き換えられていてもよい、態様1~8のいずれか1つの複合体。
10. オリゴヌクレオチドは、配列番号151のヌクレオチド配列を含まない、態様1~9のいずれか1つの複合体。
11. オリゴヌクレオチドは、配列番号169~176または289~364のいずれか1つのヌクレオチド配列を含む、態様1~9のいずれか1つの複合体。
12. オリゴヌクレオチドはさらに、アンチセンス鎖へハイブリダイズすることで二本鎖siRNAを形成するセンス鎖を含む、態様1~11のいずれか1つの複合体。
13. オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオシド間連結を含む、態様1~12のいずれか1つの複合体。
14. オリゴヌクレオチドは、1以上の修飾ヌクレオシドを含み、任意にここで1以上の修飾ヌクレオシドは、2'-修飾ヌクレオシドである、態様1~13のいずれか1つの複合体。
15. オリゴヌクレオチドは、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)である、態様1~12のいずれか1つの複合体。
16. 抗体とオリゴヌクレオチドとは、リンカーを介して共有結合的に連結されている、態様1~15のいずれか1つの複合体。
17. リンカーは、切断可能なリンカーであり、任意にここでリンカーは、バリン-シトルリン配列を含む、請求項16の複合体。
18. 筋細胞においてDUX4発現を低減させる方法であって、方法は、筋細胞を、オリゴヌクレオチドの筋細胞への内在化を促進するのに有効な量の、態様1~17のいずれか1つの複合体と接触させることを含む。
19. 細胞は、in vitroにある、態様18の方法。
20. 細胞は、対象中にある、態様18の方法。
21. 対象はヒトである、態様20の方法。
22. 顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHD)を処置する方法であって、方法は、態様1~17のいずれか1つの有効量の複合体を、これを必要とする対象へ投与することを含み、ここで対象は、DUX4タンパク質の異常な産生を有する。
23. 対象は、第4染色体中D4Z4反復の1以上の欠失を有する、態様20~22のいずれか1つの方法。
24. 対象は、10以下のD4Z4反復を有する、態様23の方法。
25. 対象は、9、8、7、6、5、4、3、2、または1のD4Z4反復を有する、態様24の方法。
26. 対象は、D4Z4反復を一切有さない、態様20~22のいずれか1つの方法。
27. 配列番号169~176または289~364のいずれか1つのヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドであって、任意にここでオリゴヌクレオチドは、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)である。
【0391】
等価物および専門用語
例証的に本明細書に記載された開示は、好適には、本明細書に具体的には開示されないいずれかの要素(単数または複数)、限定(単数または複数)の非存在下において実施され得る。それゆえに、例えば、本出願の各事例において、用語「含む」、「から本質的になる」、および「からなる」のいずれかは、他の2つの用語のどちらかによって置き換えられ得る。採用された用語および表現は、限定ではなく記載の用語として使用され、かかる用語および表現の使用には(that in)、示されるおよび記載される特徴のいずれかの等価物またはそれらの部分を排除する意図はなく、種々の改変が本開示の範囲内で可能であることが認識される。それゆえに、本開示は好ましい態様によって具体的に開示されたが、本明細書に開示される概念の任意の特徴、改変、および変形が当業者によって頼られ得ることと、かかる改変および変形は本開示の範囲内であると考慮されることとは理解されるべきである。
【0392】
加えて、本開示の特徴または側面がマーカッシュ群または代替物の他の群分けとして記載されるところでは、当業者は、本開示がそれによってマーカッシュ群または他の群のいずれかの個々の構成員または構成員のサブグループとしてもまた記載されることを認識するであろう。
【0393】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドまたは他の核酸の構造を記載する際には、配列表で提示される配列が参照され得ることは了解されるべきである。かかる態様において、実際のオリゴヌクレオチドまたは他の核酸は、指定された配列と本質的に同じかまたは類似の相補的な特性を保持しながら、指定された配列と比較して、1以上の代替的なヌクレオチド(例として、DNAヌクレオチドのRNAカウンターパート、またはRNAヌクレオチドのDNAカウンターパート)および/または(例として、および)1以上の修飾ヌクレオチドおよび/または(例として、および)1以上の修飾されたヌクレオチド間連結および/または(例として、および)1以上の他の改変を有し得る。
【0394】
本発明を記載する文脈における(特に次の請求項の文脈における)用語「a」および「an」および「the」ならびに類似のレファレントの使用は、本明細書に別様に指し示されないかまたは文脈によって明瞭に否定されない限り、単数および複数両方をカバーすると解釈されるべきである。用語「含む」、「有する」、「包含する」、および「含有する」は、別様に指摘されない限り、開放型の用語として解釈されるべきである(すなわち、「包含するが、これらに限定されない」を意味する)。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書に別様に指し示されない限り、単に、範囲内に収まる各別個の値を個々に参照する簡略な方法として働くことを意図され、各別個の値は、それが本明細書に個々に記載される場合のように本明細書に組み込まれる。本明細書に別様に指し示されないかまたは別様には文脈によって明瞭に否定されない限り、本明細書に記載のすべての方法はいずれかの好適な順序で行われ得る。別様に請求されない限り、本明細書に提供されるいずれかのおよびすべての例または例示的な文言(例として、「などの」)の使用は、単に本発明をより良く解き明かすことを意図され、本発明の範囲に限定を課さない。本明細書のいかなる文言も、いずれかの請求されない要素を本発明の実施にとって必須であると指し示すものと解釈されるべきではない。
【0395】
本発明の態様が本明細書に記載されている。それらの態様の変形は、先述の記載を読むことによって当業者には明らかになり得る。
【0396】
本発明者は当業者がかかる変形を適当に採用することを予期し、本発明者は本発明が本明細書に具体的に記載されるとおりとは別様に実施されることを意図する。したがって、本発明は、然るべき法律によって許可される本明細書に添付される請求項に記載される主題のすべての改変および等価物を包含する。その上、それらのすべての可能な変形における上に記載された要素のいずれかの組み合わせは、本明細書に別様に指し示されないかまたは別様に文脈によって明瞭に否定されない限り、本発明によって網羅される。当業者は、本明細書に記載の本発明の具体的な態様の多くの等価物を認識するか、またはせいぜい定型的な実験作業によって確かめる能力があるであろう。かかる等価物は以下の請求項によって網羅されることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】