(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】疾患を処置するための細菌株
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20241217BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20241217BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241217BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241217BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241217BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241217BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241217BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20241217BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20241217BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241217BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20241217BHJP
A61K 31/606 20060101ALI20241217BHJP
A61K 31/52 20060101ALI20241217BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241217BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241217BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20241217BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241217BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20241217BHJP
C12P 1/04 20060101ALI20241217BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20241217BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20241217BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A61K35/744 ZNA
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P1/04
A61P29/00
A61P43/00 105
A61P1/16
A61P11/06
A61P9/14
A61P17/00
A61K31/573
A61K31/606
A61K31/52
A61K39/395 U
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
A61K9/16
C12P1/04 Z
A23L33/135
C12N15/31
C07K16/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024527852
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 AU2022051354
(87)【国際公開番号】W WO2023081980
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520494851
【氏名又は名称】マイクローバ アイピー ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROBA IP PTY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】パライク オー.クイブ
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ クラウス
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B018LB03
4B018LB07
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE04
4B018LE05
4B018MD85
4B018ME07
4B018ME11
4B018ME14
4B018MF13
4B064AD04
4B064AD05
4B064AD33
4B064AE28
4B064AE63
4B064AG01
4B064CA02
4B064CC01
4B064DA01
4B064DA10
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AC14
4B065CA41
4B065CA44
4C076AA30
4C076AA31
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4C076AA53
4C076BB01
4C076BB05
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4C076FF01
4C084AA19
4C084AA22
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4C084ZA681
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4C084ZA752
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB211
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4C085AA14
4C085BB36
4C085CC23
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4C085GG04
4C086AA01
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4C086DA10
4C086DA17
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA05
4C086ZA44
4C086ZA59
4C086ZA68
4C086ZA75
4C086ZA89
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087CA09
4C087CA10
4C087MA02
4C087MA34
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA41
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4C087ZA44
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4C087ZA68
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4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
細菌株を含む治療用組成物及び疾患の処置又は予防のための方法が開示される。より詳細には、本発明はまた、ヒト消化管から単離された細菌株を含む組成物、並びに炎症性及び自己免疫障害の処置又は予防におけるそれらの使用を開示する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号V21/015887若しくはV21/015888の下に寄託されたIntestinicoccus colisanans株又はその派生株の、細胞。
【請求項2】
前記細胞が少なくとも部分的に単離されている、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
受託番号V21/015887若しくはV21/015888の下に寄託されたIntestinicoccus colisanans株又はその派生株の、生物学的に純粋な培養物。
【請求項4】
請求項1若しくは2に記載の細胞又は請求項3に記載の培養物を含む、組成物。
【請求項5】
配列番号1、2若しくは7~10のいずれか1つと少なくとも約99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列、又は配列番号1、2若しくは7~10のいずれか1つにより示される16S rRNA遺伝子配列を有する、細菌株を含む、組成物。
【請求項6】
薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体を更に含む、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに、Intestinicoccus colisanans種の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する細菌株を含む、医薬組成物。
【請求項8】
薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である細菌株を含む、医薬組成物。
【請求項9】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記細菌株が少なくとも部分的に単離されている、請求項5~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記細菌株が、生存能力があるか、又は生存能力がない、請求項4~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が乾燥形態である、請求項4~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、カプセル、錠剤、丸剤、トローチ、ロゼンジ、粉末、又は顆粒に製剤化されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥されている、請求項12又は請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が腸管への送達のために製剤化されている、請求項4~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
プレバイオティクスを更に含む、請求項4~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
1つ以上の追加の細菌株を更に含む、請求項4~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記1つ以上の追加の細菌株が少なくとも部分的に単離されている、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、Clostridium属の細菌を含まない、請求項4~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記細菌株が、細胞におけるシグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)のシグナル伝達を減弱又は障害する作用物質を産生する、請求項1~19のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項21】
前記作用物質が小分子、ペプチド、又はヌクレオチドである、請求項20に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項22】
前記作用物質が前記細菌によって放出される、請求項20又は請求項21に記載の細胞、培養物又は組成物。
【請求項23】
前記作用物質が、STAT3、JAK2、TYK、又はIL-23のいずれか1つに特異的に結合する、請求項20~22のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項24】
前記細菌株が、シクロ(-Phe-Pro)、インドール-3-乳酸、アロプリノール、プロピオニルカルニチン、ピロガロール、3-(2-ヒドロキシエチル)インドール、N-アセチル-システイン、トリプトホール、インドール-3-プロピオン酸、オルニチン、酢酸及び/又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の代謝産物を産生する、請求項1~23のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項25】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項1~24のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項26】
請求項4~25のいずれか一項に記載の組成物を含む、食品又は飲料製品。
【請求項27】
対象において腸管バリア機能を回復又は改善する方法であって、Intestinicoccus属の細菌株を前記対象に投与し、それによって腸管バリア機能を回復又は改善することを含む、方法。
【請求項28】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項28に記載の製品。
【請求項30】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
腸管バリア機能の回復又は改善が、(i)ムチンの質及び/又は量の増加;(ii)タイトジャンクションタンパク質の完全性の改善;(iii)管腔内容物の全身循環への移行の減少;又は(iv)腸潰瘍及び/若しくは腸創傷の減少のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記管腔内容物がリポ多糖類(LPS)を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記腸管バリア機能不全の回復又は改善が、前記対象において全身性炎症の減少をもたらす、請求項27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象由来の試料中の炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-8、IL-6、及びTNF)のレベルが所定の閾値を超える場合に、前記対象において全身性炎症が同定される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
対象において粘膜治癒を誘導又は増強する方法であって、上皮細胞の遊走及び/又は増殖を誘導するのに十分な量のIntestinicoccus属の細菌株を前記対象に投与し、それによって前記対象において粘膜治癒を誘導することを含む、方法。
【請求項36】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項36に記載の製品。
【請求項38】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項35~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
粘膜治癒が、1つ以上の糞便又は血清マーカーを使用して測定される、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
1つ以上の糞便マーカーが、カルプロテクチン、ラクトフェリン、メタロプロテイナーゼ(MMP)-9、及びリポカリン-2を含む群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
粘膜治癒が、内視鏡スコアを使用して測定される、請求項35~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
対象において炎症を軽減する方法であって、治療有効量のIntestinicoccus属の細菌株を前記対象に投与し、それによって前記対象において炎症を軽減することを含む、方法。
【請求項43】
前記細菌種が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項43に記載の製品。
【請求項45】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記炎症が腸管環境に局所的であるか又は全身性炎症である、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記細菌株が、(例えば、NFκBを減少又は阻害することによって)NFκB経路を減弱する、請求項42~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
標的細胞においてSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか又は阻害する方法であって、前記標的細胞をIntestinicoccus属の細菌細胞調製物の少なくとも可溶性成分と接触させて、前記標的細胞において前記STAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか又は阻害することを含む、方法。
【請求項49】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項49に記載の製品。
【請求項51】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項48~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記標的細胞が、レポーター細胞(例えば、HEK細胞)、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、及び内皮細胞を含む群から選択される、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記細菌細胞調製物が細菌細胞培養物を含む、請求項48~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記可溶性成分が前記細菌細胞培養物の上清を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記可溶性成分が、細菌細胞を実質的に枯渇している、請求項48~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記細菌細胞調製物が細菌細胞ペレットを含む、請求項48~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記可溶性成分が溶解細胞の可溶性画分を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記可溶性画分が、遠心分離によって不溶性細胞画分から実質的に分離される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記方法がインビトロで実施される、請求項48~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
対象の腸管環境においてSTAT3シグナル伝達を遮断するか又は阻害する方法であって、Intestinicoccus属の細菌株を前記対象に投与し、前記対象の腸管環境においてSTAT3シグナル伝達を遮断するか又は阻害することを含む、方法。
【請求項61】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項61に記載の製品。
【請求項63】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項60~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記細胞が、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、又は内皮細胞である、請求項60~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記細胞が上皮細胞であり、前記細菌株又は分子が前記対象においてIL-22の産生を増加させる、請求項60~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記細菌株が、STAT3の直接阻害因子又は間接阻害因子である分子を産生する、請求項60~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記細菌株が、IL-23ポリペプチド、JAK2ポリペプチド、TYK2ポリペプチド、又はSTAT3ポリペプチドのうちの少なくとも1つを直接阻害する分子を産生する、請求項60~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記細菌株が、シクロ(-Phe-Pro)、インドール-3-乳酸、アロプリノール、プロピオニルカルニチン、ピロガロール、3-(2-ヒドロキシエチル)インドール、N-アセチル-システイン、トリプトホール、インドール-3-プロピオン酸、オルニチン、酢酸及び/又はそれらの組み合わせから選択される代謝産物を産生する、請求項27~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記細菌株が、I.colisanans種の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか;又は前記細菌株が、I.colisanansの細菌株の16S rRNA遺伝子配列を有する、請求項27~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記細菌株が、配列番号1、2若しくは7~10のいずれか1つと少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は前記細菌株が、配列番号1、2若しくは7~10のいずれか1つによって示される16S rRNA遺伝子配列を有する、請求項27~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記細菌株が、受託番号V21/015887若しくはV21/015888の下に寄託されたI.colisanans株又はその派生株である、請求項27~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記細菌株が少なくとも部分的に単離される、請求項27~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記細菌株が、医薬組成物として製剤化され、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を更に含む、請求項27~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記組成物が乾燥形態である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記乾燥形態が、粒子、顆粒、及び粉末を含む群から選択される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項74又は請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記医薬組成物が経口投与用に製剤化される、請求項73~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
対象において炎症性又は自己免疫障害を処置又は予防する方法であって、有効量のIntestinicoccus属の細菌株を前記対象に投与し、それによって前記炎症性又は自己免疫障害を処置又は予防することを含む、方法。
【請求項79】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項79に記載の製品。
【請求項81】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項78~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など);喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など);強直性脊椎炎;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;及び血管炎を含む群から選択される、請求項78~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記炎症性又は自己免疫障害が炎症性腸疾患(IBD)である、請求項78~82に記載の方法。
【請求項84】
対象に投与された場合、前記細菌株が、前記対象の少なくとも細胞においてSTAT3シグナル伝達を遮断するか又は阻害する、請求項78~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記細胞が、上皮細胞、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、又は内皮細胞である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記細菌株が、シクロ(-Phe-Pro)、インドール-3-乳酸、アロプリノール、プロピオニルカルニチン、ピロガロール、3-(2-ヒドロキシエチル)インドール、N-アセチル-システイン、トリプトホール、インドール-3-プロピオン酸、オルニチン、酢酸及び/又はそれらの組み合わせを含む群から選択される1つ以上の代謝産物を産生する、請求項78~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記細菌株が、Intestinicoccus属の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%同一である16S rRNA配列を有する、請求項78~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記細菌株が、配列番号1、2若しくは7~10のいずれか1つと少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は前記細菌株が、配列番号1、2若しくは7~10のいずれか1つによって示される16S rRNA遺伝子配列を有する、請求項78~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記細菌株が少なくとも部分的に単離される、請求項78~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記細菌株が、薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤とともに、医薬組成物として製剤化される、請求項78~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記組成物が乾燥形態である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記乾燥形態が、粒子、顆粒、及び粉末を含む群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項91又は請求項92に記載の方法。
【請求項94】
抗炎症剤が前記対象に同時投与される、請求項78~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記抗炎症剤が、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群から選択される、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
処置することが、前記組成物を前記対象に投与する前に、前記対象がI.colisanans腸内細菌の欠損を有することを同定することを含む、請求項27~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記対象において前記欠損を同定することが、16S rRNA配列決定及び/又は全ゲノム配列決定による、前記対象の糞便中のI.colisanans細菌の測定を含む、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記細菌株が生きているか又は死んでいる、請求項27~97のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項99】
プレバイオティクスを更に含む、請求項27~98のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項100】
1つ以上の追加の細菌株を更に含む、請求項27~99のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項101】
前記対象が哺乳動物対象である、請求項27~100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記対象がヒト対象である、請求項27~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
治療に使用するためのIntestinicoccus属の細菌株を含む、組成物。
【請求項104】
治療に使用するためのIntestinicoccus colisanansの細菌株を含む、組成物。
【請求項105】
炎症性又は自己免疫障害の処置又は予防に使用するためのIntestinicoccus属の細菌株を含む、組成物。
【請求項106】
炎症性又は自己免疫障害の処置又は予防に使用するためのIntestinicoccus colisanansの細菌株を含む、組成物。
【請求項107】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項103~106のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項108】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項106に記載の製品。
【請求項109】
炎症性又は自己免疫障害を処置するための医薬の製造における、Intestinicoccus属の細菌株の使用。
【請求項110】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項109に記載の使用。
【請求項111】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項110に記載の製品。
【請求項112】
炎症性又は自己免疫障害を処置するための医薬の製造における、I.colisanansの細菌株の使用。
【請求項113】
前記炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など)喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など);強直性脊椎炎;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;及び血管炎から選択される、請求項103~112のいずれか1項に記載の組成物又は使用。
【請求項114】
前記炎症性又は自己免疫障害が炎症性腸疾患(例えば、クローン病又は潰瘍性大腸炎)である、請求項103~113のいずれか一項に記載の組成物又は使用。
【請求項115】
前記細菌株が、受託番号V21/015887若しくはV21/015888の下に寄託されたI.colisanans株又はその派生株である、請求項103~114のいずれか一項に記載の組成物又は使用。
【請求項116】
炎症性又は自己免疫障害の処置に使用するための組成物であって、Intestinicoccus属の細菌株及び抗炎症剤を含む、組成物。
【請求項117】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項116に記載の組成物。
【請求項118】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項117に記載の組成物。
【請求項119】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項116~118のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項120】
前記抗炎症剤が、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群から選択される、請求項116~119のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項121】
炎症性又は自己免疫障害の処置に使用するための組成物であって、Intestinicoccus属の細菌株及び栄養補助剤を含む、組成物。
【請求項122】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項121に記載の組成物。
【請求項123】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項122に記載の製品。
【請求項124】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項121~123のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項125】
対象において健康を改善又は維持する方法であって、I.colisanansの細菌株を含む組成物を前記対象に投与し、それによって前記対象において健康を維持又は改善することを含む、方法。
【請求項126】
前記対象に栄養補助剤を投与することを更に含む、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
Intestinicoccus属の細菌株及び栄養補助剤を含む、食用又は飲料用製品。
【請求項128】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項127に記載の製品。
【請求項129】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項128に記載の製品。
【請求項130】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項127~129のいずれか一項に記載の製品。
【請求項131】
前記栄養補助剤がプレバイオティクスである、請求項127~130のいずれか一項に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、細菌株を含む治療用組成物及び疾患の処置又は予防のための方法の分野に関する。より詳細には、本発明は、ヒト消化管から単離された細菌株を含む組成物、並びに炎症性及び自己免疫障害の処置又は予防におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト腸内微生物叢は、Firmicutes、Bacteroidetes、Proteobacteria、Fusobacteria、及びVerrucomicrobiaを含むいくつかの細菌門に属する500~1000を超える異なる系統型を含む。2つの主要門、BacteroidetesとFirmicutesは、概して腸内微生物叢の90%超を占める(Arumugam et al.,2011)。ヒト腸管の細菌コロニー形成から生じる良好な共生関係は、代謝、構造、防御、及び他の有益な機能を多種多様に生み出している。腸内細菌は胃腸管(GI)に沿った消化の重要な調節因子であり、胆汁酸、脂質、アミノ酸、ビタミン、及び短鎖脂肪酸(SCFA)を含む多くの栄養素及び代謝産物の抽出、合成、及び吸収において共生細菌が重要な役割を果たしている。より最近では、自然免疫細胞及び適応免疫細胞の発生、ホメオスタシス、及び機能の調節における腸内微生物叢及びその産物の免疫学的重要性が認識されている(Brestoff and Atris,2013)。
【0003】
腸内マイクロバイオームが宿主の腸粘膜免疫及び炎症に対する素因を調節することがますます認識されており(Geva-Zatorsky et al.,2017;Kabat et al.,2014)、新規な治療介入への新たな道を開いている。
【0004】
炎症性腸疾患(IBD)を含む多くの炎症性及び自己免疫障害において微生物叢組成の劇的な変化が報告されている。ある種の細菌株が動物の腸管に及ぼし得る潜在的な正の効果を認識して、種々の疾患の処置に使用するために種々の株が提案されている。Lactobacillus及びBifidobacterium株を含むある種の株は、種々の腸管外炎症性及び自己免疫障害の処置に使用することが提案されている(Goldin & Gorbach,2008;Azad et al.,2013を参照)。しかし、特定の細菌株が消化管で局所的に、及び全身的に及ぼす正確な影響は解明されていない。結果として、ヒト消化管における異なる疾患と異なる細菌株との関係は、まだ明確に解明されていない。
【0005】
IBD(クローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)の2つの主要な疾患サブタイプを含む)は、消化管の反復性及び生活に支障をきたす炎症を特徴とする。2017年には、世界で680万人がIBDに罹患していると推定されており、米国とヨーロッパで有病率が最も高い(GBD 2017;Inflammatory Bowel Disease Collaborators,2019)。患者の最大20%が16歳未満で診断され、小児発症IBD(PIBD)は、より複雑で活動的な疾患と関連しており、成長及び心理社会的発達に悪影響を及ぼす。
【0006】
現在のところIBDの治療法はなく、長期の臨床管理には優れた安全性プロファイルを有する有効な治療薬が必要である。しかし、既存の処置には様々な欠陥があり、寛解は一般に短い。更に、IBD治療薬は、早期発症とより活動的な疾患とが相まって、進行性の腸損傷を引き起こし、手術が必要となる場合には効果がない。患者の生活の質を改善し、長期間にわたって寛解を維持し、手術を減らし、個人及び公衆衛生コストを削減するために、より効果的で安全な治療法を開発することが緊急に必要である。
【0007】
IBDに対する既存の処置は、強い有害作用、低いコンプライアンス(平均不遵守率50%(Chan et al.,2017参照))、及び高い費用を伴い、最適ではない。更に、長期間の無病寛解を維持する有効な解決法はない。メサルミンは、軽度から中等度の潰瘍性大腸炎の再燃及び寛解維持に最も広く使用されている第一選択療法のひとつであり、奏効率は40~70%であり、寛解率は15~20%である(Karagozian & Burakoff,2007)。
【0008】
当技術分野において、炎症性及び自己免疫障害を処置する新しい方法が必要とされている。また、腸内細菌を用いた新しい治療法を開発するためには、腸内細菌の潜在的な効果を特徴づける必要もある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、一部には、Intestinicoccus colisanansの細菌株が腸管バリア機能を増強又は改善するという発明者らの同定に基づいている。この考察に基づいて、I.colisanans株は、後述するように、炎症性及び自己免疫障害の処置及び予防のための治療用途に特に適していることが提唱されている。
【0010】
本発明者らは、炎症性及び自己免疫障害の処置及び予防に用いることができる、Intestinicoccus colisanans種の生菌株を含む新しい組成物を開発した。
【0011】
したがって、一態様では、本発明は、受託番号V21/015887若しくはV21/015888の下に寄託されたIntestinicoccus colisanans株又はその派生株の、細胞を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、細胞は少なくとも部分的に単離されている。
【0013】
別の態様では、本発明は、受託番号V21/015887若しくはV21/015888の下に寄託されたIntestinicoccus colisanans株又はその派生株の、生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0014】
別の態様では、本発明は、上記及び本明細書の他の箇所に記載される細胞又は培養物を含む、組成物を提供する。
【0015】
更に別の態様では、本発明は、配列番号1と少なくとも約97.5%、98%、98.5%99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNAを有するか;又は配列番号1によって示される16S rRNA配列を有する細菌株を含む、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、細菌株は、そのゲノム中に16S rRNA配列の2つ以上のコピー(例えば、2コピー、3コピー、4コピー、5コピー、6コピー、7コピー、8コピー)を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体を更に含む。
【0017】
更に別の態様では、本発明は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに、Intestinicoccus colisanans種の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する細菌株を含む、医薬組成物を提供する。
【0018】
典型的には、細菌株は少なくとも部分的に単離されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、細菌株は生きている。いくつかの代替的な実施形態では、細菌株は死んでいる。
【0020】
いくつかの実施形態では、組成物はプレバイオティクスを更に含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、組成物は乾燥形態で製剤化される。典型的には、組成物は、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせから選択される技術を用いて乾燥される。
【0022】
いくつかの実施形態では、組成物は、経口投与のために製剤化される。
【0023】
いくつかの実施形態では、細菌株は、細胞におけるシグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)のシグナル伝達を減弱又は障害する作用物質を産生する。
【0024】
このタイプのいくつかの実施形態では、作用物質は、小分子、ペプチド、又はヌクレオチドである。典型的には、作用物質は細菌株によって放出される。
【0025】
いくつかの実施形態では、作用物質は、STAT3、JAK2、TYK2、又はIL-23のいずれか1つに特異的に結合する。
【0026】
いくつかの実施形態では、I.colisanansは、デンプン、グルコース、フルクトース、グルコン酸、ラクトース、トレハロース、及びラクトアルデヒドを炭素供給源として含むか、又はそれらからなる群から選択される1つ以上の作用物質を代謝する。
【0027】
別の態様では、本発明は、対象において腸管バリア機能を回復又は改善する方法であって、I.colisanans種の細菌株を対象に投与し、それによって腸管バリア機能を回復又は改善することを含む、方法を提供する。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態では、腸管バリア機能の回復又は改善は、(i)ムチンの質及び/又は量の増加;(ii)タイトジャンクションタンパク質の完全性の改善;(iii)管腔内容物の全身循環への移行の減少;又は(iv)腸潰瘍及び/又は腸創傷の減少のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0029】
いくつかの実施形態では、管腔内容物はリポ多糖類(LPS)を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、腸管バリア機能の回復又は改善は、対象において全身性炎症の軽減をもたらす。このタイプのいくつかの実施形態では、全身性炎症は、健常対象における炎症性サイトカインのレベルと比較して、対象における炎症性サイトカイン(例えば、IL-1βIL-8、IL-6、及びTNF)のレベルの上昇を特徴とする。
【0031】
いくつかの実施形態では、I.colisanans細菌株は、PBMCを刺激して、サイトカインIL-10及びIL-12を5以上の比で産生する。例えば、I.colisanans細菌株は、PBMCを刺激して、サイトカインIL-10及びIL-12を10、15、20、25、又は30以上の比で産生し得る。
【0032】
更に別の態様では、本発明は、対象において腸管バリア機能を維持する方法であって、I.colisanans種の細菌株を対象に投与し、それによって、対象において腸管バリア機能を維持することを含む、方法を提供する。
【0033】
更に別の態様では、本発明は、対象において炎症を軽減する方法であって、I.colisanans株の細菌株を対象に投与し、それによって、対象において炎症を軽減することを含む、方法を提供する。
【0034】
いくつかの実施形態では、炎症は、腸管環境に局所的であるか、又は全身性炎症である。
【0035】
別の態様では、本発明は、対象において粘膜治癒を誘導又は増強する方法であって、上皮細胞の遊走、増殖、及び/又は分化を誘導するのに十分な量のI.colisanans種の細菌株を対象に投与し、それによって対象において粘膜治癒を誘導することを含む、方法を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態では、対象における粘膜治癒は、1つ以上の糞便又は血清マーカーを使用して測定することができる。例示的な例として、1つ以上の糞便マーカーは、カルプロテクチン、ラクトフェリン、メタロプロテイナーゼ(MMP)-9、及びリポカリン-2を含む群から選択され得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、細菌株は、NFκB経路を減弱させることによって炎症を軽減する。このタイプのいくつかの実施形態では、細菌株は、NFκB、TNF、IFN-γ、IL-1β、IL-8、及びMCP-1を含む群から選択される1つ以上の転写因子、サイトカイン、又はケモカインの産生を阻害する。
【0038】
更に別の態様では、本発明は、標的細胞においてSTAT3シグナル伝達を遮断するか又は阻害する方法であって、該細胞をI.colisanans種の細菌細胞調製物の少なくとも可溶性成分と接触させて、該細胞においてSTAT3シグナル伝達を遮断するか又は阻害することを含む、方法を提供する。典型的には、この態様の方法は、インビトロで実施される。
【0039】
いくつかの実施形態では、標的細胞は、レポーター細胞(例えば、HEK細胞)、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、又は内皮細胞から選択される。いくつかの実施形態では、標的細胞は、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞である。
【0040】
いくつかの実施形態では、細菌細胞調製物は細菌細胞培養物である。したがって、可溶性成分は、細菌細胞培養物の可溶性画分(例えば、細胞培養上清)を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になり得る。可溶性成分は、細菌細胞培養物のいくつかの不溶性成分を更に含んでもよい。例えば、可溶性成分は、細菌培養物の実質的に全てを含んでもよい。好ましくは、可溶性成分は、細菌細胞を実質的に枯渇している。
【0041】
いくつかの代替的な実施形態では、細菌細胞調製物は細菌細胞溶解物である。このタイプの例示的な実施形態では、可溶性成分は、細胞溶解物の可溶性画分に関連し得る。可溶性画分は、遠心分離を含め、任意の方法によって適切に得ることができる。
【0042】
なお更に別の態様では、本発明は、細胞においてSTAT3シグナル伝達を遮断するか又は阻害する方法であって、I.colisanans種の細菌株を対象に投与し、それによって、該細胞においてSTAT3シグナル伝達を遮断するか又は阻害することを含む、方法を提供する。典型的には、この態様の方法は、インビボで実施される。
【0043】
いくつかの実施形態では、細胞は、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)又は上皮細胞である。
【0044】
いくつかの実施形態では、細胞は上皮細胞であり、細菌株又は該細菌株によって産生された代謝産物は、対象においてIL-22の産生を増加させる。
【0045】
いくつかの実施形態では、細菌株は、STAT3の直接阻害因子又は間接阻害因子である分子を産生する。例えば、細菌株は、IL-23ポリペプチド、JAK2ポリペプチド、TYK2ポリペプチド、又はSTAT3ポリペプチドのうちの少なくとも1つを直接阻害する代謝産物を産生し得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、上記及び本明細書の他の箇所に記載される方法で使用される細菌株は、代謝産物である酢酸を産生する。
【0047】
いくつかの実施形態では、細菌株は、I.colisanansの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有する。
【0048】
いくつかの代替的な実施形態では、細菌株は、配列番号1と少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は細菌株は、配列番号1によって示される16S rRNA遺伝子配列を有する。いくつかの実施形態では、細菌株は、配列番号1に記載される16S rRNA配列から独立して選択される2つ以上のコピー(例えば、2コピー、3コピー、4コピー、5コピー、6コピー、7コピー、8コピー)を含む。いくつかの代替的な実施形態では、細菌株は、配列番号2と少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は細菌株は、配列番号2によって示される16S rRNA遺伝子配列を有する。いくつかの実施形態では、細菌株は、配列番号2に記載される16S rRNA配列から独立して選択される2つ以上のコピー(例えば、2コピー、3コピー、4コピー、5コピー、6コピー、7コピー、8コピー)を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、細菌株は、受託番号V21/015887若しくはV21/015888、又はその派生株の下に寄託されたI.colisanans株である。
【0050】
好ましくは、細菌株は少なくとも部分的に単離されている。
【0051】
いくつかの実施形態では、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を更に含む、医薬組成物として製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、乾燥組成物である。いくつかの実施形態では、乾燥組成物は、粒子、顆粒、及び粉末からなる群から選択される。例示的な例として、医薬組成物は、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、経口投与のために製剤化される。
【0053】
なお更に他の態様では、本発明は、対象において炎症性又は自己免疫障害を処置する方法であって、有効量のI.colisanansの細菌株を対象に投与し、それによって炎症性又は自己免疫障害を処置又は予防することを含む、方法を提供する。
【0054】
いくつかの実施形態では、炎症性又は自己免疫障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など);喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など);強直性脊椎炎;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;及び血管炎を含む群から選択される。好ましくは、炎症性又は自己免疫障害は炎症性腸疾患(IBD)である。
【0055】
いくつかの実施形態では、細菌株は、対象の少なくとも細胞においてSTAT3シグナル伝達を遮断するか又は阻害する。典型的には、細胞は、上皮細胞、内皮細胞、又は免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)である。
【0056】
いくつかの実施形態では、細菌株は、I.colisanansの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約98%、98.5、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。
【0057】
あるいは、いくつかの実施形態では、細菌株は、配列番号1と少なくとも約98%、98.5、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は細菌株は、配列番号1によって示される16S rRNA遺伝子配列を有する。あるいは、細菌株は、配列番号2と少なくとも約98%、98.5、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有し得るか、又は細菌株は、配列番号2によって示される16S rRNA遺伝子配列を有する。
【0058】
いくつかの代替的な実施形態では、細菌株は、配列番号7~10のいずれか1つと少なくとも約98%、98.5、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有し得るか、又は細菌株は、配列番号7~10のいずれか1つによって示される16S rRNA遺伝子配列を有する。
【0059】
好ましくは、細菌株は少なくとも部分的に単離されている。
【0060】
いくつかの実施形態では、細菌株は、薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤とともに、医薬組成物として製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、粒子、顆粒、及び粉末からなる群から選択される乾燥組成物である。例えば、組成物は凍結乾燥されてもよい。あるいは、組成物は、スプレー乾燥、流動層乾燥、又は真空乾燥されてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、組成物は、経口投与のために製剤化される。
【0062】
一態様では、本発明は、治療に使用するためのIntestinicoccus属の細菌株を含む、組成物を提供する。
【0063】
別の態様では、本発明は、治療に使用するためのI.colisanansの細菌株を含む、組成物を提供する。同じ実施形態のいくつか及びいくつかの他の実施形態では、細菌株は、I.colisanansの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約98%、98.5、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。
【0064】
あるいは、細菌株は、配列番号1と少なくとも約98%、98.5、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有し得るか、又は細菌株は、配列番号1によって示される16S rRNA遺伝子配列を有する。
【0065】
あるいは、細菌株は、配列番号2と少なくとも約98%、98.5、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有し得るか、又は細菌株は、配列番号2によって示される16S rRNA遺伝子配列を有する。
【0066】
あるいは、細菌株は、配列番号7~10のいずれか1つと少なくとも約98%、98.5、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列を有し得るか、又は細菌株は、配列番号7~10のいずれか1つによって示される16S rRNA遺伝子配列を有する。
【0067】
更に別の態様では、本発明は、炎症性又は自己免疫障害の処置又は予防に使用するためのIntestinicoccus属の細菌株を含む、組成物を提供する。
【0068】
なお更に別の態様では、本発明は、炎症性又は自己免疫障害の処置又は予防に使用するためのI.colisanansの細菌株を含む、組成物を提供する。
【0069】
いくつかの実施形態では、細菌株は、I.colisanans株又はその派生株である。
【0070】
いくつかの実施形態では、炎症性又は自己免疫障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など);喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);関節炎(関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など);強直性脊椎炎;乾癬;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;及び1型糖尿病から選択される。いくつかの好ましい実施形態では、炎症性又は自己免疫障害は炎症性腸疾患(IBD)である。
【0071】
一態様では、本発明は、炎症性又は自己免疫障害の処置に使用するための組成物であって、I.colisanansの細菌株及び補助的処置剤を含む、組成物を提供する。
【0072】
いくつかの実施形態では、補助的処置剤は、抗炎症剤である。例示的な例として、抗炎症剤は、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、又はそれらの組み合わせを含む群から選択される。いくつかの他の実施形態では、補助的処置は抗体(例えば、モノクローナル抗体)である。例示的な例として、抗体は、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブペゴル、ナタリズマブ、及びベドリズマブから選択され得る。
【0073】
別の態様では、本発明は、炎症性又は自己免疫障害の処置に使用するための組成物であって、I.colisanansの細菌株及び栄養補助剤を含む、組成物を提供する。このタイプの実施形態では、栄養補助剤は、細菌株の生着を改善する。
【0074】
いくつかの関連する態様では、本明細書に記載される技術は、プロバイオティクスの形態で細菌種及びそれらを含む組成物を提供する。好ましくは、このようなプロバイオティクスは、腸内微生物生態系を改善し、微生物ディスバイオシスの症状を緩和し、ウェルネスを促進し、並びに/又は炎症性及び/若しくは自己免疫障害を処置若しくは予防するのに効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
以下の図は、本明細書の一部を構成し、本開示の特定の態様を更に示すために含まれる。本開示は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図の1つ以上を参照することによって、より良く理解され得る。
【0076】
【
図1】I.colisanansと代表的な炎症及び/又は自己免疫障害との関連をグラフで表したものを提供する。(A)6,020人の対象の高解像度の腸管メタゲノムデータ(MDD)を使用して、本発明者らは、I.colisanansが、健常な個体(黒色バー)と比較して、様々な炎症性及び自己免疫障害(斜線バー)において有意に優勢でないと同定した(P<0.05、Fisherの正確確率検定)。(B)主要なサブタイプであるクローン病(CD)及び潰瘍性大腸炎(UC)の両方を含むIBDについて、最も強い減少が観察された。これらの観察は、Harvard(Franzosa et al.,2019)によって以前に公開された独立したIBDコホートにおいて検証された。
【0077】
【
図2】I.colisanansの形態及び系統を写真及びグラフで表したものを提供する。(A)形態を示すグラム染色I.colisanans分離株。(B)高品質の参照ゲノム(GTDB r89)からの120個の細菌特異的単一コピーマーカー遺伝子のアラインメントで構築された系統樹。1000回の反復から計算されたノンパラメトリックブートストラップ値。Intestinococcusは以前にUBA1417と命名された。
【0078】
【
図3】I.colisanansが未処置C57Bl/6マウスにおける健康な腸管機能に影響を及ぼさないことをグラフで表したものを提供する。(A)未処置C57Bl/6マウスに対するI.colisanansの効果を評価するために使用したモデルの概要。(B)I.colisanansによる処置は、未処置動物の体重にほとんど影響を及ぼさない。(C)~(D)I.colisanansによる処置は、未処置動物におけるビヒクル処置対照と比較して、結腸長さ又は結腸重量/長さ比に影響を及ぼさない。(E)~(F)I.colisanansによる処置は、未処置動物におけるビヒクル処置対照と比較して、上皮損傷、炎症、過剰血管新生に影響を及ぼさない。(G)I.colisanansによる処置は、未処置動物におけるビヒクル処置対照と比較して、腸管組織構造に影響を及ぼさない。全てのデータは平均及び標準偏差として報告した。nsは有意でない。
【0079】
【
図4-1】I.colisanansが腸管バリア機能を回復させることをグラフで表したものを提供する。(A)I.colisanansの治療効力を評価するために使用したDSSマウスモデルの概要。(B)健常マウス及びDSS処置マウスにおけるビヒクル、プレドニゾン及びI.colisanansの毎日の処置の効果。全ての処置群を、DSS+ビヒクル群と比較した。二元配置分散分析と、多重比較のためのTukey検定を使用して有意差を決定した。(C)1、2及び6日目に評価した大腸炎の内視鏡評価。全ての群を個々の日ごとに、Kruskal-Wallis検定と、多重比較のためのDunn補正(1日目)又は一元配置分散分析と、多重比較のためのダネット補正(2日目、6日目)を適宜使用して、DSS+ビヒクル群と比較した。全てのデータは平均及び標準偏差として提示した。(D)ビヒクル、プレドニゾン、又はI.colisanansで処置したC57Bl/6マウスの代表的な腸管組織構造の画像。(E)DSS処置により病理組織学的スコアが増加し、これはプレドニゾン、F.prausnitzii A2-165、及びI.colisanansによる処置によって改善される。全てのデータは平均及び標準偏差として提示した。全ての群をDSS+ビヒクル群と比較し、一元配置分散分析と、多重比較のためのダネット検定を使用して有意差を決定した。(F)DSS処置により上皮損傷が増加し、これはプレドニゾン及びI.colisanansによる処置によって改善される。全てのデータは平均及び標準偏差として提示した。全ての群は、Kruskal-Wallis検定と、多重比較のためのDunn補正を使用して、DSS+ビヒクル群と比較した。(G)マウスの総病理組織学的スコア、(H)全てのマウスの総病理組織学的スコアの上皮サブスコア、(I)全てのマウスの総病理組織学的スコアの炎症サブスコア。通常の一元配置分散分析とダネットの多重比較検定を用いて、全ての群をDSS対照群と比較した。ダゴスティーノ・ピアソンオムニバス検定を全てのデータに適用して正規分布について検定し、全てのデータがこの検定に合格した。Brown-Forsyth検定を全てのデータに適用して、群間標準偏差における有意差について検定し、全てのデータがこの検定に合格した。全ての群は、点が個々のマウスを表すものとして視覚的に示され、列及びエラーバーは各群の平均及び標準偏差を表す。多重比較のための補正後、統計的有意性について次の注釈を使用する。
*はp<0.05;
**はp<0.01;
***はp<0.001;
****はp<0.0001。(J)健常マウス、又は示された用量及び製剤でI.colisanans MH27-2を投与された、若しくは対照薬物ミノサイクリン及びプレドニゾンを投与されたDSS処置マウスの疾患活動性指数スコア。I.colisanans MH27-2又は対照薬物で処置した全ての群は、Brown-Forsythe及びWelch分散分析とダネットのT3多重比較検定を使用して、DSS-ビヒクル対照と比較した。(K)健常マウス、又は示された用量及び製剤でI.colisanans MH27-2を投与された、若しくは対照薬物ミノサイクリン及びプレドニゾンを投与されたDSS処置マウスの元の体重に対する百分率で表したマウス体重。I.colisanans MH27-2又は対照薬物で処置した全ての群は、通常の一元配置分散分析とダネットの多重比較検定を使用して、DSS-ビヒクル対照と比較した。(L)健常マウス、又は示された用量及び製剤でI.colisanans MH27-2を投与された、若しくは対照薬物ミノサイクリン及びプレドニゾンを投与されたDSS処置マウスの便潜血スコア。I.colisanans MH27-2又は対照薬物で処置した全ての群は、Brown-Forsythe及びWelch分散分析とダネットの多重比較検定を使用して、DSS-ビヒクル対照と比較した。(M~P)健常マウス、又は示された用量及び製剤でI.colisanans MH27-2を投与された、若しくは対照薬物ミノサイクリン及びプレドニゾンを投与されたDSS処置マウスの病理組織学的総スコア及びサブスコア。I.colisanans MH27-2又は対照薬物で処置した全ての群は、通常の一元配置分散分析とダネットの多重比較検定を使用して、DSS-ビヒクル対照と比較した。全ての群は、点が個々のマウスを表すものとして視覚的に示され、列及びエラーバーは各群の平均及び標準偏差を表す。全ての統計分析について、ダゴスティーノ・ピアソンオムニバス検定を使用して、データが正規分布しているかどうかを決定し、全てのデータがこの検定に合格した。Brown-Forsyth検定を使用して、標準偏差が群間で有意に異なるかどうかを決定し、この検定が有意であった場合、通常の一元配置分散分析の代わりにBrown-Forsyth及びWelch分散分析検定を使用した。この場合、ダネット検定の代わりにダネットのT3多重比較検定を使用した。多重比較のための補正後、統計的有意性について次の注釈を使用する。
*はp<0.05;
**はp<0.01;
***はp<0.001;
****はp<0.0001。
【
図4-2】I.colisanansが腸管バリア機能を回復させることをグラフで表したものを提供する。(A)I.colisanansの治療効力を評価するために使用したDSSマウスモデルの概要。(B)健常マウス及びDSS処置マウスにおけるビヒクル、プレドニゾン及びI.colisanansの毎日の処置の効果。全ての処置群を、DSS+ビヒクル群と比較した。二元配置分散分析と、多重比較のためのTukey検定を使用して有意差を決定した。(C)1、2及び6日目に評価した大腸炎の内視鏡評価。全ての群を個々の日ごとに、Kruskal-Wallis検定と、多重比較のためのDunn補正(1日目)又は一元配置分散分析と、多重比較のためのダネット補正(2日目、6日目)を適宜使用して、DSS+ビヒクル群と比較した。全てのデータは平均及び標準偏差として提示した。(D)ビヒクル、プレドニゾン、又はI.colisanansで処置したC57Bl/6マウスの代表的な腸管組織構造の画像。(E)DSS処置により病理組織学的スコアが増加し、これはプレドニゾン、F.prausnitzii A2-165、及びI.colisanansによる処置によって改善される。全てのデータは平均及び標準偏差として提示した。全ての群をDSS+ビヒクル群と比較し、一元配置分散分析と、多重比較のためのダネット検定を使用して有意差を決定した。(F)DSS処置により上皮損傷が増加し、これはプレドニゾン及びI.colisanansによる処置によって改善される。全てのデータは平均及び標準偏差として提示した。全ての群は、Kruskal-Wallis検定と、多重比較のためのDunn補正を使用して、DSS+ビヒクル群と比較した。(G)マウスの総病理組織学的スコア、(H)全てのマウスの総病理組織学的スコアの上皮サブスコア、(I)全てのマウスの総病理組織学的スコアの炎症サブスコア。通常の一元配置分散分析とダネットの多重比較検定を用いて、全ての群をDSS対照群と比較した。ダゴスティーノ・ピアソンオムニバス検定を全てのデータに適用して正規分布について検定し、全てのデータがこの検定に合格した。Brown-Forsyth検定を全てのデータに適用して、群間標準偏差における有意差について検定し、全てのデータがこの検定に合格した。全ての群は、点が個々のマウスを表すものとして視覚的に示され、列及びエラーバーは各群の平均及び標準偏差を表す。多重比較のための補正後、統計的有意性について次の注釈を使用する。
*はp<0.05;
**はp<0.01;
***はp<0.001;
****はp<0.0001。(J)健常マウス、又は示された用量及び製剤でI.colisanans MH27-2を投与された、若しくは対照薬物ミノサイクリン及びプレドニゾンを投与されたDSS処置マウスの疾患活動性指数スコア。I.colisanans MH27-2又は対照薬物で処置した全ての群は、Brown-Forsythe及びWelch分散分析とダネットのT3多重比較検定を使用して、DSS-ビヒクル対照と比較した。(K)健常マウス、又は示された用量及び製剤でI.colisanans MH27-2を投与された、若しくは対照薬物ミノサイクリン及びプレドニゾンを投与されたDSS処置マウスの元の体重に対する百分率で表したマウス体重。I.colisanans MH27-2又は対照薬物で処置した全ての群は、通常の一元配置分散分析とダネットの多重比較検定を使用して、DSS-ビヒクル対照と比較した。(L)健常マウス、又は示された用量及び製剤でI.colisanans MH27-2を投与された、若しくは対照薬物ミノサイクリン及びプレドニゾンを投与されたDSS処置マウスの便潜血スコア。I.colisanans MH27-2又は対照薬物で処置した全ての群は、Brown-Forsythe及びWelch分散分析とダネットの多重比較検定を使用して、DSS-ビヒクル対照と比較した。(M~P)健常マウス、又は示された用量及び製剤でI.colisanans MH27-2を投与された、若しくは対照薬物ミノサイクリン及びプレドニゾンを投与されたDSS処置マウスの病理組織学的総スコア及びサブスコア。I.colisanans MH27-2又は対照薬物で処置した全ての群は、通常の一元配置分散分析とダネットの多重比較検定を使用して、DSS-ビヒクル対照と比較した。全ての群は、点が個々のマウスを表すものとして視覚的に示され、列及びエラーバーは各群の平均及び標準偏差を表す。全ての統計分析について、ダゴスティーノ・ピアソンオムニバス検定を使用して、データが正規分布しているかどうかを決定し、全てのデータがこの検定に合格した。Brown-Forsyth検定を使用して、標準偏差が群間で有意に異なるかどうかを決定し、この検定が有意であった場合、通常の一元配置分散分析の代わりにBrown-Forsyth及びWelch分散分析検定を使用した。この場合、ダネット検定の代わりにダネットのT3多重比較検定を使用した。多重比較のための補正後、統計的有意性について次の注釈を使用する。
*はp<0.05;
**はp<0.01;
***はp<0.001;
****はp<0.0001。
【0080】
【
図5-1】(A)I.colisanansの治療効力を評価するために使用したSKGモデルの概要。(B)カードラン処置により病理組織学的スコアが増加し、これは抗IL-23抗体及びI.colisanansによる処置によって改善される。全てのデータは平均及び標準偏差として提示した。全ての群は、分散分析と、多重比較のためのダネット検定を使用して、カードラン+ビヒクル群と比較した。(C)カードラン処置によりIL-6及びIL-12p70が増加し、これはI.colisanansによる処置によって改善される。全てのデータは平均及び標準偏差として提示した。IL-6について、全ての群は、通常の一元配置分散分析と、多重比較のためのダネット検定を使用して、カードラン+ビヒクル群と比較した。IL-12p70について、全ての群は、Kruskal-Wallis検定と、多重比較のためのDunn補正を使用して、DSS+ビヒクル群と比較した。IL-6について、全ての群は、通常の一元配置分散分析と、多重比較のためのダネット検定を使用して、カードラン+ビヒクル群と比較した。全てのデータについて、nsは有意でない;
*はp<0.05;
**はp<0.01;
***はp<0.001、
****はp<0.0001である。(E)I.colisanans MH27-2の治療効力を評価するために使用したTNBSマウスモデルの概要。(F)TNBS処置により肉眼的損傷組織病理学スコアが増加し、これはI.colisanans MH27-2及びシクロスポリンAによる処置によって改善される。TNBS+ビヒクル群を、通常の一元配置分散分析検定とシダックの多重比較補正を使用して、I.colisanans MH27-2及びシクロスポリンA処置群と比較した。(G)I.colisanans MH27-2による処置は、潰瘍/炎症スコアの有意な改善をもたらす。TNBS+ビヒクル群を、I.colisanans MH27-2及びシクロスポリンA処置と比較した。(H)TNBS処置により総組織病理学スコアが増加し、これはI.colisanans MH27-2及びシクロスポリンAによる処置によって改善される。TNBS+ビヒクル群を、Brown-Forsyth及びWelch分散分析検定とダネットのT3の多重比較補正を使用して、I.colisanans MH27-2及びシクロスポリンA処置群と比較した。(I~L)I.colisanans MH27-2による処置は、炎症の程度、びらん又は潰瘍形成、上皮再生及び病変スコアパーセントの有意な改善をもたらす。TNBS+ビヒクル群は、Kruskal-Wallis検定とDunnの多重比較検定を使用して、I.colisanans MH27-2及びシクロスポリンA処置群と比較した。(M)I.colisanans MH27-2による処置は、IL-6濃度の有意な低下をもたらす。TNBS+ビヒクル群を、I.colisanans MH27-2及びシクロスポリンA処置群と比較した。データを対数変換し、Kruskal-Wallis検定とDunnの多重比較検定、通常の一元配置分散分析検定とシダックの多重比較補正を用いて分析した。(nsは有意でない;
*はp<0.05;
**はp<0.01;
***はp<0.001;
****はp<0.0001)。
【
図5-2】(A)I.colisanansの治療効力を評価するために使用したSKGモデルの概要。(B)カードラン処置により病理組織学的スコアが増加し、これは抗IL-23抗体及びI.colisanansによる処置によって改善される。全てのデータは平均及び標準偏差として提示した。全ての群は、分散分析と、多重比較のためのダネット検定を使用して、カードラン+ビヒクル群と比較した。(C)カードラン処置によりIL-6及びIL-12p70が増加し、これはI.colisanansによる処置によって改善される。全てのデータは平均及び標準偏差として提示した。IL-6について、全ての群は、通常の一元配置分散分析と、多重比較のためのダネット検定を使用して、カードラン+ビヒクル群と比較した。IL-12p70について、全ての群は、Kruskal-Wallis検定と、多重比較のためのDunn補正を使用して、DSS+ビヒクル群と比較した。IL-6について、全ての群は、通常の一元配置分散分析と、多重比較のためのダネット検定を使用して、カードラン+ビヒクル群と比較した。全てのデータについて、nsは有意でない;
*はp<0.05;
**はp<0.01;
***はp<0.001、
****はp<0.0001である。(E)I.colisanans MH27-2の治療効力を評価するために使用したTNBSマウスモデルの概要。(F)TNBS処置により肉眼的損傷組織病理学スコアが増加し、これはI.colisanans MH27-2及びシクロスポリンAによる処置によって改善される。TNBS+ビヒクル群を、通常の一元配置分散分析検定とシダックの多重比較補正を使用して、I.colisanans MH27-2及びシクロスポリンA処置群と比較した。(G)I.colisanans MH27-2による処置は、潰瘍/炎症スコアの有意な改善をもたらす。TNBS+ビヒクル群を、I.colisanans MH27-2及びシクロスポリンA処置と比較した。(H)TNBS処置により総組織病理学スコアが増加し、これはI.colisanans MH27-2及びシクロスポリンAによる処置によって改善される。TNBS+ビヒクル群を、Brown-Forsyth及びWelch分散分析検定とダネットのT3の多重比較補正を使用して、I.colisanans MH27-2及びシクロスポリンA処置群と比較した。(I~L)I.colisanans MH27-2による処置は、炎症の程度、びらん又は潰瘍形成、上皮再生及び病変スコアパーセントの有意な改善をもたらす。TNBS+ビヒクル群は、Kruskal-Wallis検定とDunnの多重比較検定を使用して、I.colisanans MH27-2及びシクロスポリンA処置群と比較した。(M)I.colisanans MH27-2による処置は、IL-6濃度の有意な低下をもたらす。TNBS+ビヒクル群を、I.colisanans MH27-2及びシクロスポリンA処置群と比較した。データを対数変換し、Kruskal-Wallis検定とDunnの多重比較検定、通常の一元配置分散分析検定とシダックの多重比較補正を用いて分析した。(nsは有意でない;
*はp<0.05;
**はp<0.01;
***はp<0.001;
****はp<0.0001)。
【0081】
【
図6】I.colisanans MH27-1及びMH27-2がインビトロでのIL-6媒介性STAT3活性化を抑制することをグラフで表したものを提供する。HEKBlue IL-6レポーター細胞を、(A)I.colisanans MH27-1及び(B)10%v/vのMH27-2(対応のないt検定、n=18)、(C)MH27-3(対応のないt検定、n=18)、(D)MH27-4 v(対応のないt検定、n=18)、(E)MH27-5 v(対応のないt検定、n=18)、及び(F)R.bromii MCB950(対応のないt検定、n=12)の生の無細胞上清又は3kDa未満の分画された培養上清で処置すると、STAT3シグナル伝達が阻害される。IL-6トランスシグナル伝達によるSTAT3活性化は、I.colisanans MH27-2の生の無細胞上清で阻害される。
【0082】
【
図7】I.colisanansがヒト腸管上皮細胞の遊走を促進することを示すグラフを提供する。(A)トランスウェル遊走アッセイを用いて、HCT116結腸癌細胞の遊走に対するI.colisanansからの滅菌培養上清抽出物の効果について研究した。血清飢餓条件(0.5%FBS)において、チャンバーの底部へのI.colisanans0.5倍抽出物の添加は、培地抽出物対照と比較して、基底側へのHCT116細胞の移動を有意に増加させた。(各々3つの生物学的レプリケートについて、未処理及び培地対照はn=6のテクニカルレプリケート、I.colisanansはn=4のテクニカルレプリケート;対応のないt検定、両側P>0.0001)。(B)細胞遊走についての第2のリードアウトとして、Incucyteスクラッチ創傷アッセイを行った。相対的な創傷コンフルエンスを、HCT116細胞単層をスクラッチした後2時間ごとに測定した。スクラッチの24時間後、I.colisanans株MH27-2からの0.3倍抽出物中でインキュベートした血清飢餓HCT116細胞は、培地抽出物で処置した細胞と比較して、有意に高い創傷コンフルエンスを示した。(一元配置分散分析とダネットの多重比較検定、
*はp<0.05)。
【0083】
【
図8】IL-23媒介性のSTAT3活性化を抑制するMH27をグラフで表したものを提供する。STAT3シグナル伝達は、HEK-Blue(商標)IL 23レポーター細胞株が25%無細胞上清又は<3kDaサイズ分画されたI.colisanansで処置された場合に阻害されるが、R.bromii上清及び同様に調製したYG/P培地では阻害されない。試料を対応のないt検定を使用して比較した(
***はp<0.001;nsは有意でない)。示されたこれらのデータは、3つの独立した実験を組み合わせた結果である。生及び<3kDa画分のテクニカル及び生物学的レプリケートを一緒にプールした。
【0084】
【
図9】IFNγによる処理(48時間処理(灰色領域))後、I.colisanans MH27-2からの培養上清は、168、192、216、240、288、312及び336時間目においてYG/V培地対照と比較してTEERの減少を改善した(二元配置分散分析検定によりp<0.05)。(▲)未処理、(◆)IFNγ+I.colisanans MH27-2抽出物、(・)IFNγ+培地抽出物、(四角)IFNγ。
【0085】
【
図10】I.colisanans MH27-2培養上清抽出物による処置は、IL-6を増強し(96時間処理(灰色領域))、培地対照と比較して用量依存的にTEERの減少を媒介した。統計的有意性は、対応のないt検定によって決定した。(▲)未処理、(◆)IL-6+I.colisanans MH27-2抽出物、(・)IL-6+培地抽出物、(四角)IL-6。
【0086】
【
図11】I.colisanans MH27抽出物による再処理が、T84細胞におけるIFNγ誘導性ZO1発現の減少を改善することを示すグラフを提供する。(A)T84細胞を、YG/V培地対照又はI.colisanans MH27-1、MH27-2、若しくはMH27-3(1倍)の抽出物で前処理するか、又は未処理のまま18時間放置した。次いで、細胞を組換えIFNγで48時間刺激し、ZO1について染色し、共焦点顕微鏡法によってイメージングした。スケールバーは10μmを表す。(B)非刺激細胞に対して正規化されたZO1の相対輝度の定量化により、I.colisanans MH27抽出物による前処理が、T84細胞におけるIFNγ誘導性ZO1発現の減少を有意に軽減することが明らかとなる。データは、1回の実験及び4回のレプリケートの平均±SDである。一元配置分散分析と、多重比較のためのダネット補正、
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001。
【0087】
【
図12】I.colisanans MH27画分による前処理が、T84細胞におけるIFNγ誘導性ZO1発現の減少を改善することを示すグラフを提供する。分画された(A)YG/V及び(B)I.colisanans MH27-2抽出物のZO1発現に対する効果。スケールバーは40μmを表す。(C)非刺激細胞に対して正規化されたZO1の相対輝度の定量化により、I.colisanans MH27-2抽出物の15%画分及び30%画分による前処理が、T84細胞におけるIFNγ誘導性ZO1発現の減少を有意に軽減することが明らかとなる。データは、1回の実験及び4回のレプリケートの平均±SDである。一元配置分散分析と、多重比較のためのダネット補正、
***p<0.001、
****p<0.0001。
【0088】
【
図13】I.colisanans MH27産生代謝産物が、T84細胞におけるIFNγ誘導性ZO1発現の減少を改善することを示すグラフを提供する。(A)T84細胞を、オルニチン、インドール-3-アクリル酸(IAyA)、若しくはインドール-3-プロピオン酸(IPA)で前処理するか、又は未処理のまま18時間放置した。次いで、細胞を組換えIFNγで48時間刺激し、ZO1について染色し、共焦点顕微鏡法によってイメージングした。スケールバーは10μmを表す。(B)非刺激細胞に対して正規化されたZO1の相対輝度の定量化により、全ての調査した代謝産物による前処理が、T84細胞におけるIFNγ誘導性ZO1発現の減少を有意に軽減することが明らかとなる。)データは、1回の実験及び4回のレプリケートの平均±SDである。一元配置分散分析と、多重比較のためのダネット補正、
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001。(C)シクロ(-Phe-Pro)(CPP)は、ビヒクル対照と比較してIL-23媒介性STAT3活性化を抑制する。データは、3回の実験の平均±SDである。データは、対応のないt検定を用いて分析した。
****はp<0.0001。
【0089】
【
図14】I.colisanansで刺激されたPBMCのIL-10/IL-12比。データは、単一実験の平均及びSDである。
【0090】
【
図15】LS174T-NF-κB細胞株を25%無細胞又は<3kDaサイズ分画I.colisanans上清で処理すると、同様に調製した培地と比較してNF-κB活性化が抑制され(A~C)、R.bromii MCB950無細胞上清はNF-κB活性化を抑制しない(D)。試料は、対応のないt検定を使用して比較した(
*はp<0.05;
**はp<0.01;
***はp<0.001;
****はp<0.0001 nsは有意でない)。示されたデータは、3つの独立した実験を組み合わせた結果である。
【0091】
【
図16-1】CytoFLEX SRT Benchtopセルソーターのゲーティング戦略を使用して、I.colisanans MH27-4(A)、MH27-5(B)、MH27-6(C)及びR.bromiiMCB950(D)を単離した。
【
図16-2】CytoFLEX SRT Benchtopセルソーターのゲーティング戦略を使用して、I.colisanans MH27-4(A)、MH27-5(B)、MH27-6(C)及びR.bromiiMCB950(D)を単離した。
【
図16-3】CytoFLEX SRT Benchtopセルソーターのゲーティング戦略を使用して、I.colisanans MH27-4(A)、MH27-5(B)、MH27-6(C)及びR.bromiiMCB950(D)を単離した。
【
図16-4】CytoFLEX SRT Benchtopセルソーターのゲーティング戦略を使用して、I.colisanans MH27-4(A)、MH27-5(B)、MH27-6(C)及びR.bromiiMCB950(D)を単離した。
【表1】
【発明を実施するための形態】
【0092】
1.定義
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料を本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料を記載する。本発明の目的のために、以下の用語を下記で定義する。
【0093】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的目的語の1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0094】
本明細書で使用される「約」という用語は、この技術分野の当業者に容易に知られているそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値又はパラメーターへの言及は、その値又はパラメーター自体を対象とする実施形態を含む(及び記載する)。
【0095】
本明細書で使用される場合、「投与する」という用語は、所望の部位での作用物質の少なくとも部分的な送達をもたらす方法又は経路による、本明細書に開示される作用物質(例えば、細菌)の対象への配置を指す。本明細書に開示される化合物を含む組成物は、対象において有効な生物活性又は治療効果をもたらす任意の適切な経路によって投与することができる。いくつかの実施形態では、投与は、ヒトの身体活動(例えば、注射、摂取行為、適用行為、及び/又は送達装置若しくは機械の操作)を含む。そのような活動は、(例えば、医療専門家及び/又は処置される対象によって)実施され得る。
【0096】
具体的には、本明細書で使用される場合、「投与する」及び「投与」は、ある人が別の人に、生菌、死菌、細菌由来の使用済み培地、細菌の細胞ペレット、細菌によって産生された精製代謝産物、細菌によって産生された精製タンパク質、プレバイオティクス、小分子、又はそれらの組み合わせを、ある特定の様式で、及び/又はある特定の目的のために、第2の人から受けた任意の指示とは無関係に、又はそれとは異なって摂取するように指示する実施形態を包含する。実施形態の非限定的な例には、ある人が別の人に、生菌、死菌、細菌由来の使用済み培地、細菌の細胞ペレット、細菌によって産生された精製代謝産物、細菌によって産生された精製タンパク質、プレバイオティクス、小分子、又はそれらの組み合わせを、ある特定の様式で、及び/又はある特定の目的のために、摂取するように指示する状況が含まれ、これには、医師が患者に一連の行為及び/若しくは処置を指示する場合、親が未成年のユーザー(子供など)にそのような製品を摂取するよう指示する場合、トレーナーがユーザー(アスリートなど)に特定の一連の行為及び/若しくは処置に従うように助言する場合、又は製造業者、流通業者、若しくはマーケティング業者が、例えば、製品の販売若しくはマーケティングに関連して提供される包装若しくはその他の材料への広告若しくはラベル表示を通じて、エンドユーザーに使用条件を推奨する場合が含まれる。いくつかの実施形態では、開示された組成物は、経口、静脈内、筋肉内、髄腔内、皮下、舌下、頬側、直腸、経膣、眼経路、視覚経路、経鼻、吸入、噴霧、皮膚、経皮、又はそれらの組み合わせによって投与することができ、薬学的に許容される賦形剤、担体、又は希釈剤とともに送達するために製剤化することができる。注目すべきことに、開示された組成物は、ディスバイオシス及びその続発症を改善するための処置のための複数の製剤及び送達様式を包含するが、プロバイオティクスなどの生菌製剤は、典型的には、静脈内、筋肉内、又は腹腔内に投与されないことに留意されたい。これらの送達様式は、細菌代謝の小分子製品のために留保される可能性が高い。
【0097】
「同時に投与」又は「同時に投与すること」又は「同時投与」などの用語は、2つ以上の活性物を含有する単一組成物の投与、又は別々の組成物として、及び/若しくは有効な結果が全てのそのような活性物が単一の組成物として投与される場合に得られるものと同等である十分に短い期間内で同時期に若しくは同時に若しくは逐次的に別々の経路によって送達される各活性物の投与を指す。「同時に」とは、活性物質が実質的に同時に、望ましくは同じ製剤中で一緒に投与されることを意味する。「同時的に」とは、活性物質が時間的に近接して投与されることを意味し、例えば、ある作用物質は、別の作用物質の前又は後に約1分以内から約1日以内に投与される。任意の同時期が有用である。しかし、同時に投与されない場合には、作用物質は、約1分以内から約8時間以内に、好適には約1時間未満から約4時間以内に投与されることが多い。同時的に投与される場合、作用物質は、対象の同じ部位で好適に投与される。用語「同じ部位」は、まったく同じ位置を含むが、約0.5~約15センチメートル以内、好ましくは約0.5~約5センチメートル以内であってよい。本明細書で使用される「別々に」という用語は、作用物質が、ある間隔で、例えば、約1日~数週間又は数ヶ月の間隔で投与されることを意味する。活性物質は、いずれの順序で投与してもよい。本明細書で使用される「逐次的に」という用語は、作用物質が連続して、例えば、数分、数時間、数日、又は数週間の間隔で投与されることを意味する。適宜、活性物質は、規則的な反復サイクルで投与され得る。
【0098】
「作用物質」という用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を誘導する化合物を含む。この用語はまた、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝産物、類似体などを含むがこれらに限定されない、本明細書で具体的に言及される化合物の薬学的に許容され、薬理学的に有効な成分を包含する。上記の用語が使用される場合、これは、活性物質自体、及び薬学的に許容され、薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロドラッグ、代謝産物、類似体などを含むことが理解されるべきである。「作用物質」という用語は、狭く解釈されるべきではなく、小分子、タンパク質性分子、例えばペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質、並びにそれらを含む組成物、並びに遺伝子分子、例えばRNA、DNA、及びそれらの模倣体及び化学的類似体、並びに細胞作用物質に及ぶ。「作用物質」という用語は、本明細書で言及されるポリペプチド、並びにそのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを産生及び分泌することができる細胞を含む。したがって、「作用物質」という用語は、様々な細胞における発現及び分泌のためのウイルス又は非ウイルスベクター、発現ベクター及びプラスミドなどのベクターを含む核酸構築物に及ぶ。
【0099】
バイオマーカーの「量」又は「レベル」は、試料中の検出可能なレベルである。これらは、当業者に公知であり、本明細書にも開示されている方法によって測定することができる。評価されたバイオマーカーの発現レベル又は量を用いて、処置に対する反応を判定することができる。
【0100】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のありとあらゆる可能な組み合わせ、及び選択肢(又は)で解釈される場合の組み合わせの欠如を指し、包含する。
【0101】
「嫌気性」という用語は、増殖のために酸素を必要としないことを意味する。嫌気性細菌株は、偏性嫌気性菌(すなわち、酸素の存在によって害を受けるもの)、耐気性嫌気性菌(すなわち、増殖に酸素を使用することができないが、その存在に耐えるもの)、及び通性嫌気性菌(すなわち、酸素なしで増殖することができるが、存在すれば酸素を使用することができるもの)である細菌株を含む。
【0102】
「嫌気性条件」とは、発酵培地中の酸素濃度が、微生物が末端電子受容体として使用するには低すぎる条件と定義される。「嫌気性条件」は、更に、3mmol/L/h未満、好ましくは2.5mmol/L/h未満、より好ましくは2mmol/L/h未満、最も好ましくは1.5mmol/L/h未満の速度で、培地に酸素が添加されないか、又は少量添加される条件として定義することができる。「嫌気性条件」とは、特に、完全に酸素を含まない(=0mmol/L/h酸素)又は少量の酸素を例えば0.5未満から1mmol/L/h未満の速度で培地に添加することを意味する。「嫌気性代謝」とは、酸素がNADHに含まれる電子の最終受容体ではない生化学的プロセスを指す。嫌気性代謝は、酸素以外の化合物が最終電子受容体となる嫌気的呼吸と、NADHからの電子を利用して発酵経路を介して還元産物を生成する基質レベルのリン酸化とに分けることができる。
【0103】
「炭素源」という用語は、一般に、微生物の増殖を維持するのに好適な基質又は化合物を指す。炭素源は、ポリマー、炭水化物、アルコール、酸、アルデヒド、ケトン、アミノ酸、ペプチドなどを含むがこれらに限定されない、種々の形態であり得る。例えば、これらは、単糖類(グルコース、フルクトース、キシロースなど)、オリゴ糖類(すなわち、スクロース、ラクトース)、多糖類(すなわち、デンプン、セルロース、ヘミセルロース)、リグノセルロース系材料、脂肪酸(すなわち、コハク酸、乳酸、酢酸)、グリセロールなど、又はそれらの混合物を含み得る。炭素源は、グルコース又はセルロースなどの光合成産物であってもよい。
【0104】
炭素源として使用される単糖類は、セルロース、デンプン及びペクチンの酸又は酵素加水分解物などの多糖類の加水分解産物であってもよい。化学有機栄養代謝において、炭素源は異化の際の電子供与体として、及び細胞増殖の際の炭素源として使用されるため、「エネルギー源」という用語は、本明細書では炭素源と互換的に使用され得る。
【0105】
本明細書全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」という語は、記載されたステップ若しくは要素又はステップ若しくは要素の群を含むが、任意の他のステップ若しくは要素又はステップ若しくは要素の群を除外しないことを意味すると理解される。したがって、「含む(comprising)」などの用語の使用は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、存在してもしなくてもよいことを示す。「からなる(consisting of)」とは、「からなる(consisting of)」という語句の後に続くものを含み、それに限定されることを意味する。したがって、「からなる(consisting of)」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在しなくてもよいことを示す。「から本質的になる(consisting essentially of)」とは、この語句の後に列挙された任意の要素を含み、他の要素は列挙された要素について本開示で明記された活性又は作用に干渉又は寄与しないものに限定されることを意味する。したがって、「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意選択であり、列挙された要素の活性又は作用に影響を及ぼすか否かに応じて存在してもしなくてもよいことを示す。
【0106】
本明細書で使用される場合、「培養する」、「培養」などは、細胞の集団(又は単一の細胞)がインビトロで細胞の増殖又は維持を支持することが示されている条件下でインキュベートされる、インビトロで使用される一連の手順を指す。当技術分野では、培養系において規定される必要がある多数のフォーマット、培地、温度範囲、ガス濃度などが認識されている。パラメーターは、選択されたフォーマット、及び本明細書に開示された方法を実施する個人の特定のニーズに基づいて変化する。しかし、培養パラメーターの決定は本質的にルーチンであることが認識されている。
【0107】
「低下」、「減少」、「低減」、「阻害」、「抑制」、「減弱」などという用語は、全て、本明細書において、統計的に有意な量の低下を意味するために使用される。いくつかの実施形態では、これらの用語は、典型的には、参照レベル(例えば、所与の処置又は作用物質の不存在)と比較して少なくとも10%の低下を意味し、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又はそれ以上の低下を含むことができる。本明細書で使用される場合、「減少」、「抑制」、及び「阻害」は、参照レベルと比較して完全な阻害又は減少を必要としない。「完全阻害」などは、参照レベルと比較して100%の阻害である。低下は、正常範囲内として容認されるレベル(例えば、所与の障害を有さない個体の場合)まで下がることが好ましい。
【0108】
「増加した」、「増加」、「増強」、又は「活性化」という用語は全て、統計的に有意な量の増加を意味するために、本明細書で使用される。いくつかの実施形態では、「増加した」、「増加」、「増強」、又は「活性化」という用語は、参照レベル(例えば、所与の処置又は作用物質の不存在)と比較して少なくとも10%の増加を意味し得、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約10%、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、若しくは100%まで及びそれを含む増加、又は参照レベルと比較して10~100%の間の任意の増加、又は参照レベルと比較して少なくとも約2倍、若しくは少なくとも約3倍、若しくは少なくとも約3倍、若しくは少なくとも約4倍、若しくは少なくとも約5倍、若しくは少なくとも約10倍の増加、又は参照レベルと比較して2倍~10倍の間の任意の増加を含むことができる。マーカー又は症状の文脈において、「増加」は、そのようなレベルにおける統計的に有意な増加である。
【0109】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、(1)最初に産生されたときに関連していた成分の少なくとも一部から分離されている(ヒトの糞便などの自然界であっても、人工増殖培地からなるペトリプレート皿などの実験環境であっても)、及び/又は(2)ヒトの手によって産生、調製、精製、及び/若しくは製造されている、細菌又は他の実体又は物質を包含する。単離された細菌、タンパク質、代謝産物、又はそれらの組み合わせは、それらが最初に関連していた他の成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又はそれ以上から分離され得る。いくつかの実施形態では、単離された細菌、タンパク質、代謝産物、又はそれらの組み合わせは、約80%超、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約99%超純粋である。本明細書で使用される場合、物質は、他の成分(他の細菌種など)を実質的に含まない場合、「純粋」である。「精製する」、「精製している」及び「精製された」という用語は、細菌又は他の物質が、細菌培養又は関連する技術(例えば、化学)の当業者により認識されるように、最初に産生若しくは生成されたとき(例えば、天然の場合又は実験環境の場合)、又は最初に産生された後のいずれかの時点で、それが関連していた成分の少なくとも一部から分離されていることを指す。細菌又は細菌集団は、それが産生時又は産生後に、例えば細菌又は細菌集団を含む材料又は環境から単離される場合、精製されているとみなすことができ、精製された細菌又は細菌集団は、最大約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約90%超の他の材料を含有してもよく、それでも「単離されている」とみなすことができる。いくつかの実施形態では、精製された細菌及び細菌集団は、約80%超、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約99%超純粋である。本明細書で提供される細菌組成物の場合、組成物中に存在する1つ以上の細菌型は、細菌型を含む材料又は環境中で産生及び/又は存在する1つ以上の他の細菌から独立して精製され得る。いくつかの実施形態では、細菌又は細菌集団は、それが細菌の単一株を含む場合、「単離されている」。いくつかの実施形態では、そのような単離された細菌は、他の単離された細菌とともに混合又は投与することができる(例えば、単離された細菌の定義されたコンソーシアムにおいて)。細菌組成物及びその細菌成分は、一般に、残留する生息環境産物から精製される。
【0110】
本明細書で使用される「ゲノム」という用語は、微生物の遺伝子(コード核酸配列)及び非コード核酸配列を含むDNAを含み、したがって、例えば、微生物のコード及び非コードDNAへの核酸の導入を含む。
【0111】
「グラム不定」という用語は、グラム染色試験において陽性結果及び/又は陰性結果を与えること(すなわち、クリスタルバイオレット染色試薬の色を保持すること)を意味する。細菌によるクリスタルバイオレット染色の保持は、細菌細胞壁のペプチドグリカン層の厚さと関連している。グラム陽性菌は、より厚いペプチドグリカン層を有する。グラム染色は、微生物学の分野における細菌株の分類を助けるために一般的に用いられている。
【0112】
本明細書で使用される場合、「腸管」という用語は、消化管としても知られるヒト胃腸管を指すと理解される。腸管には、口腔、咽頭、食道、胃、小腸(十二指腸、空腸、回腸)、大腸(盲腸及び結腸)及び直腸が含まれる。消化管全体は様々な種の微生物によってコロニー形成され得るが、腸内マイクロバイオームの大部分は、種数とバイオマスの両面で、腸(小腸及び大腸)に存在する。
【0113】
「マーカー」、「バイオマーカー」などの用語は、生物系の生理学的状態の指標として測定することができる任意の化合物を指す。マーカーは、アミノ酸配列、核酸配列及びその断片を含むバイオマーカーであり得る。例示的なバイオマーカーとしては、サイトカイン、ケモカイン、成長因子及び血管新生因子、転移関連分子、癌抗原、アポトーシス関連タンパク質、酵素、プロテアーゼ、接着分子、細胞シグナル伝達分子及びホルモンが挙げられるが、これらに限定されない。マーカーはまた、いくつかの実施形態では、生物系において有意に代謝され得ない糖であり得る。糖は、例えば、マンニトール、ラクツロース、スクロース、スクラロース、及び前述のいずれかの組み合わせであり得る。
【0114】
「測定する」又は「測定」とは、試料内の所与の物質の存在、非存在、数量又は量(有効量であり得る)を評価することを意味し、そのような物質の定性的若しくは定量的濃度レベルの導出、又はそうでなければ対象の臨床パラメーターの値若しくは分類を評価することを含む。あるいは、「アッセイする」、「検出する」又は「検出」という用語は、本明細書に記載される全ての測定すること又は測定を指すために使用され得る。
【0115】
本明細書で使用される「粘膜治癒」という用語は、粘膜層の損傷を示す1つ以上の特徴の改善を意味する。このような特徴は、通常、結腸内視鏡検査によって決定され、発赤、血管像の消失、脆弱性、出血、びらん及び潰瘍を含むが、これらに限定されない。状況によっては、粘膜治癒とは、粘膜層の損傷を特徴づける有害な影響の完全な改善を指す。あるいは、粘膜治癒は、粘膜層の損傷を特徴づける1つ以上の負の影響の減少又は改善を指し得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、薬学的に許容される担体(例えば、製薬業界で一般的に使用される担体)と組み合わせた活性物質を指す。「薬学的に許容される」という語句は、本明細書において、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴わずに、妥当な利益/リスク比に見合っている、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに適した化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために使用される。いずれかの態様のいくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、水以外の担体であり得る。いずれかの態様のいくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、クリーム、エマルジョン、ゲル、リポソーム、ナノ粒子、及び/又は軟膏であり得る。いずれかの態様のいくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、人工又は操作された担体(例えば、活性成分が天然に又は天然内に存在することが見出されない担体)であり得る。
【0117】
「系統樹」という用語は、定義された一連の系統樹再構築アルゴリズム(例えば、節約法、最尤法、ベイズ法)を用いて生成される、ある遺伝子配列と別の遺伝子配列との進化的関係を図式で表したものを指す。系統樹中のノードは異なる祖先配列を表しており、いずれのノードの信頼性もブートストラップ又はベイズ事後確率によって提供され、これが枝の不確実性を測定する。
【0118】
いくつかの実施形態では、「株」という用語は、系統樹における末端葉を指し、特定の遺伝子配列によって定義される。特定の遺伝子配列は、GTDB-tk(Chaumeil et al.2020)又は当技術分野において公知の他のツールを用いてゲノムアセンブリから抽出された120のユビキタスなシングルコピータンパク質の連結アラインメント(Parks et al.2018)であり得る。
【0119】
「クレード」という用語は、系統樹における安定ノード(ブートストラップ値>90%)の下流の系統樹のメンバーのセットを指す。クレードは、共通の祖先の全ての系統発生的子孫を表す関連した生物の群である。クレードは、系統樹において別個の単系統進化単位である末端葉のセットを含む。
【0120】
本明細書で使用される場合、「プレバイオティクス」は、宿主に利益を与え得る(又は与え得ない)胃腸微生物叢における組成及び/又は活性の両方において特定の変化を可能にする成分を意味すると理解される。好ましいプレバイオティクスは、プロバイオティクス組成物の増殖又はその有益な機能を促進するが、病原体の増殖も病原性に関連する遺伝子(例えば、毒素)の増殖も促進しないものである。
【0121】
本明細書で使用される場合、「プロバイオティクス」は、現在、世界保健機関によって定義されるように、「適切な量で投与された場合に宿主に健康上有益な効果をもたらす生きた微生物」を意味すると理解される。
【0122】
「種」という用語は、97%を超える16SリボソームRNA(rRNA)配列相同性及び70%を超えるゲノムハイブリダイゼーションを有し、別個の単位として認識されるように他の全ての生物と十分に異なる、密接に関連した生物の集合として定義される。種及び他の系統学的同定は、微生物学の当業者に公知の分類に従う。
【0123】
本明細書で使用される場合、「対象」は、ヒト又は動物を意味する。通常、動物は、霊長類、げっ歯類、家畜又は狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類には、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びマカク(例えば、アカゲザル)が含まれる。げっ歯類には、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、及びハムスターが含まれる。家畜及び狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ種(例えば、家猫)、イヌ種(例えば、イヌ、キツネ、オオカミ)、トリ種(例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ)、及び魚(例えば、マス、ナマズ、及びサケ)が含まれる。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物(例えば、霊長類(例えば、ヒト))である。「個体」、「患者」及び「対象」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0124】
好ましくは、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ又はウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、炎症性及び自己免疫障害の動物モデル(例えば、腸管バリア機能のモデル)を代表する対象として有利に使用することができる。対象は、雄であっても雌であってもよい。
【0125】
本明細書で使用される場合、「処置する」、「処置」、「処置すること」などという用語は、その目的が、疾患又は障害(例えば、炎症性又は自己免疫障害)に関連する病態の進行又は重症度を逆転、緩和、改善、阻害、減速、又は停止することである治療的処置を指す。「処置すること」という用語は、炎症性又は自己免疫障害に関連する病態、疾患又は障害の少なくとも1つの有害作用又は症状を軽減又は緩和することを含む。1つ以上の症状又は臨床マーカーが減少する場合、処置は一般に「有効」である。あるいは、疾患の進行が減少又は停止する場合、処置は「有効」である。すなわち、「処置」には、症状又はマーカーの改善だけでなく、処置を行わない場合に予想されるものと比較して、症状の進行又は悪化を停止又は少なくとも遅らせることも含まれる。有益な又は望ましい臨床結果としては、1つ以上の症状の緩和、疾患の程度の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化させない)、疾患進行の遅延若しくは緩徐化、疾患状態の改善若しくは緩和、寛解(部分的又は全体的であるかを問わず)、及び/又は死亡率の低下(検出可能であるか検出不可能であるかを問わず)が挙げられるが、これらに限定されない。疾患の「処置」という用語には、疾患の症状又は副作用の緩和(緩和処置を含む)を提供することも含まれる。処置は、有効であるとみなされるために、障害を治癒する(すなわち、疾患の完全な逆転又は非存在)必要はない。
【0126】
いくつかの実施形態では、配列決定は、16S rRNA遺伝子配列決定を含み、これはまた「16SリボソームRNA配列決定」、「16S rDNA配列決定」又は「16S rRNA配列決定」とも称され得る。16S rRNA遺伝子の配列決定は、それが異なる細菌種間で高度に保存されているが、真核生物種には存在しないので、遺伝子研究に用いることができる。高度に保存された領域に加えて、16S rRNA遺伝子はまた、種間で異なる9つの超可変領域(V1~V9)を含む。16S rRNA遺伝子配列決定は、典型的には、16S rRNA遺伝子の保存された領域に結合する複数のユニバーサルプライマーを使用し、細菌16S rRNA遺伝子領域(超可変領域を含む)をPCT増幅し、増幅された16S rRNA遺伝子を、本明細書に記載される次世代配列決定技術で配列決定することを含む(例えば、米国特許第5,654,418号、同第6,344,316号、及び同第8,889,358号、並びに米国特許公開第2013/157,265号及び同第2018/195,111号(各々参照によりその全体が組み込まれる)も参照)。
【0127】
本明細書に記載される各実施形態は、特に明記しない限り、あらゆる実施形態に準用される。
【0128】
2.細菌株
本発明の組成物は、Intestinicoccus属の細菌株を含む。実施例は、この属の細菌が腸管バリア機能の損傷に関連する疾患の処置又は予防に有用であることを示す。好ましい細菌株は、I.colisanans種のものである。
【0129】
Intestinicoccusは、firmicutes綱の細菌属である。科学的分類は、細菌(界);Firmicutes(門);Clostridia(綱);Oscillospirales(目);Acutalibacteraceae(科);Intestinicoccus(属)である。Intestinicoccus属内の細菌は、グラム不定性で、球菌様形状を有しており、偏性嫌気性菌である。これらの基準は、細菌株の系統学的分類を知らせることができるため、重要である。
【0130】
I.colisanans種はこれまでに記載されていない。これは、以下の実施例に記載されている方法を用いて、ヒトの糞便試料から単離された。
【0131】
Intestinicoccus属及びI.colisanans種の範囲は、Parks et al.,2018に記載されている分類体系であるGenome Taxonomy Database参照木によって定義され得る。
【0132】
受託番号V21/015887の下に寄託されたI.colisanans細菌(すなわち、I.colisanans MH27-1)は、実施例において試験され、本発明の好ましい株の1つである。I.colisanans株MH27-1は、Microba IP Pty Ltd(388 Queen Street,Brisbane,Queensland 4000,Australia)によって2021年8月6日に「Intestinicoccus colisanans MH27-1」として国際寄託当局National Measurement Institute(NMI,1/153 Bertie Street,Port Melbourne,Victoria,3207,Australia)に寄託され、受託番号V21/015887の下に寄託された受託番号が割り当てられた。
【0133】
試験されたI.colisanans MH27-1株についての例示的な16S rRNA配列は、配列番号1に記載される。I.colisanans種の細菌株は、そのゲノム内に単一の16S rRNA配列を含んでもよく、あるいは、そのゲノム内に2つ以上の16S rRNA配列(例えば、2コピー、3コピー、4コピー、5コピー、6コピー、7コピー、8コピー、又は8コピー超)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法により、その株が配列番号1に対応する16S rRNA配列を含むかどうかを決定することによって、I.colisanans MH27-1株であると同定され得る。I.colisanans株MH27-1の染色体配列は、配列番号3及び4に提供される。これらの配列は、Illumina NovSeq6000プラットフォームを使用して生成された。
【0134】
MH27-1株と密接に関連する細菌株はまた、腸管バリア機能の回復に対するそれらの有益な効果を通じて、炎症性及び自己免疫障害の処置又は予防に有効であることが実施例において示される。
【0135】
例えば、受託番号V21/015888の下に寄託されたI.colisanans細菌(すなわち、I.colisanans MH27-2)は、実施例において試験され、本発明の好ましい株の別の1つである。試験されたI.colisanans MH27-2株についての例示的な16S rRNA配列は、配列番号2に記載される。いくつかの実施形態では、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法により、その株が配列番号2に対応する16S rRNA配列を含むかどうかを決定することによって、I.colisanans MH27-2株であると同定され得る。I.colisanans株MH27-2は、Microba IP Pty Ltd(388 Queen Street,Brisbane,QLD 4000,Australia)によって2021年8月6日に「Intestinicoccus colisanans MH27-2」として国際寄託当局National Measurement Institute(NMI,1/153 Bertie Street,Port Melbourne,Victoria,3207,Australia)に寄託され、受託番号V21/015888が割り当てられた。I.colisanans株MH27-2のゲノムは、配列番号5又は6の一方又は両方に記載の配列を有する染色体を含む。
【0136】
他の例において、実施例において試験されたI.colisanans株MH27-3、MH27-4、MH27-5、及びMH27-6についての例示的な16S rRNA配列は、配列番号7~10に記載される。いくつかの実施形態では、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法により、その株が配列番号7に対応する16S rRNA配列を含むかどうかを決定することによって、I.colisanans MH27-3株であると同定され得る。いくつかの実施形態では、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法により、その株が配列番号8に対応する16S rRNA配列を含むかどうかを決定することによって、I.colisanans MH27-4株であると同定され得る。いくつかの実施形態では、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法により、その株が配列番号9に対応する16S rRNA配列を含むかどうかを決定することによって、I.colisanans MH27-5株であると同定され得る。いくつかの実施形態では、細菌株は、当技術分野で公知の任意の方法により、その株が配列番号10に対応する16S rRNA配列を含むかどうかを決定することによって、I.colisanans MH27-6株であると同定され得る。
【0137】
I.colisanans株MH27-3のゲノムは、配列番号11~14の1つ以上に記載の配列を有する染色体を含む。I.colisanans株MH27-4のゲノムは、配列番号15~18の1つ以上に記載の配列を有する染色体を含む。I.colisanans株MH27-5のゲノムは、配列番号19~22の1つ以上に記載の配列を有する染色体を含む。
【0138】
特定の実施形態では、本発明の細菌株は、I.colisanansの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。好ましくは、本発明の細菌株は、配列番号1、2、又は7~10のいずれか1つと少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。いくつかの好ましい、本発明の細菌株は、配列番号1、2、又は7~10のいずれか1つによって示される16S rRNA配列を有する。
【0139】
細菌株のゲノムは、配列番号1、2、又は7~10のいずれか1つに記載の16S rRNA配列を含み得る。
【0140】
特定の実施形態では、本発明の細菌株は、配列番号3又は4に記載の配列の一方又は両方と配列同一性を有する染色体を有する。好ましい実施形態では、本発明の細菌株は、配列番号3又は4の少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)にわたって、配列番号3又は4の一方又は両方と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%又は100%の配列同一性)を有する染色体を有する。例えば、本発明の細菌株は、配列番号3若しくは4の70%にわたって配列番号3若しくは4の一方若しくは両方と少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の80%にわたって配列番号3若しくは4の一方若しくは両方と少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の90%にわたって配列番号3若しくは4の一方若しくは両方と少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の100%にわたって配列番号3若しくは4の一方若しくは両方と少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の70%にわたって配列番号3若しくは4の一方若しくは両方と少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の80%にわたって配列番号3若しくは4の一方若しくは両方と少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の90%にわたって配列番号3若しくは4の一方若しくは両方と少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の100%にわたって配列番号3若しくは4の一方若しくは両方と少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の70%にわたって配列番号3若しくは4の一方若しくは両方と少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の80%にわたって配列番号3若しくは4の一方若しくは両方と少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の90%にわたって配列番号3若しくは4の一方若しくは両方と少なくとも98%の配列同一性又は配列番号3若しくは4の100%にわたって配列番号3若しくは4の一方若しくは両方と少なくとも98%の配列同一性を有する染色体を有し得る。本発明の特に好ましい株は、受託番号V21/015887の下に寄託されたI.colisanans株である。これは、実施例に示されるDSSマウスモデルにおいて試験された例示的なMH27-1株であり、疾患を処置するのに有効であることが示されている。したがって、本発明は、受託番号V21/015887の下に寄託されたI.colisanans株又はその派生株の、細胞、例えば、単離された細胞を提供する。本発明はまた、受託番号V21/015887の下に寄託されたI.colisanans株又はその派生株の細胞を含む、組成物を提供する。本発明はまた、受託番号V21/015887の下に寄託されたI.colisanans MH27-1株の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0141】
特定の実施形態では、本発明の細菌株は、配列番号5又は6と配列同一性を有する染色体を有する。好ましい実施形態では、本発明の細菌株は、配列番号5又は6の少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)にわたって、配列番号5又は6の一方又は両方と少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%又は100%の配列同一性)を有する染色体を有する。例えば、本発明の細菌株は、配列番号5若しくは6の70%にわたって配列番号5若しくは6の一方若しくは両方と少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の80%にわたって配列番号5若しくは6の一方若しくは両方と少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の90%にわたって配列番号5若しくは6の一方若しくは両方と少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の100%にわたって配列番号5若しくは6の一方若しくは両方と少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の70%にわたって配列番号5若しくは6の一方若しくは両方と少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の80%にわたって配列番号5若しくは6の一方若しくは両方と少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の90%にわたって配列番号5若しくは6の一方若しくは両方と少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の100%にわたって配列番号5若しくは6の一方若しくは両方と少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の70%にわたって配列番号5若しくは6の一方若しくは両方と少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の80%にわたって配列番号5若しくは6の一方若しくは両方と少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の90%にわたって配列番号5若しくは6の一方若しくは両方と少なくとも98%の配列同一性又は配列番号5若しくは6の100%にわたって配列番号5若しくは6の一方若しくは両方と少なくとも98%の配列同一性を有する染色体を有し得る。本発明の特に好ましい株は、受託番号V21/015888の下に寄託されたI.colisanans株である。これは、実施例に示されるDSSマウスモデルにおいて試験された例示的なMH27-2株であり、疾患を処置するのに有効であることが示されている。したがって、本発明は、受託番号V21/015888の下に寄託されたI.colisanans株又はその派生株の、細胞、例えば、単離された細胞を提供する。本発明はまた、受託番号V21/015888の下に寄託されたI.colisanans株又はその派生株の細胞を含む、組成物を提供する。本発明はまた、受託番号V21/015888の下に寄託されたI.colisanans MH27-2株の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0142】
受託番号V21/015887又はV21/015888の下に寄託された株の派生株は、娘株(子孫)又は元の株から培養(サブクローニング)された株であり得る。本発明の株の派生株は、生物学的活性を除去することなく、例えば遺伝子レベルで改変されてもよい。特に、本発明の派生株は治療的に活性である。派生株は、それが由来する元の株(すなわち、受託番号V21/015887又はV21/015888の下に寄託された株)と同等の活性を有する。特に、派生株は、実施例に示されるように、少なくとも1つの疾患モデル(例えば、大腸炎)において同等の効果を発揮し、これは、実施例に記載される培養及び投与プロトコルを使用することによって同定され得る。V21/015887株又はV21/015888株のいずれか1つの派生株は、概して、それぞれV21/015887株又はV21/015888株の生物型である。
【0143】
受託番号V21/015887の下に寄託されたI.colisanans株の細胞への言及は、受託番号V21/015887又はV21/015888のいずれか1つの下に寄託された株と同じ安全性及び治療効力特性を有する任意の細胞を含み、そのような細胞は本発明に包含される。
【0144】
2.1 細菌の生物型
受託番号V21/015887又はV21/015888の下に寄託された細菌の生物型である細菌株はまた、炎症性及び自己免疫障害の処置又は予防に有効であることが期待される。生物型は、生理学的及び生化学的特性が同一又は非常に類似している、密接に関連した株である。
【0145】
受託番号V21/015887又はV21/015888の下に寄託された細菌の生物型であり、本発明での使用に好適な株は、受託番号V21/015887又はV21/015888の下に寄託された細菌の他のヌクレオチド配列を配列決定することによって同定され得る。例えば、実質的に全ゲノムを配列決定することができ、本発明の生物型株は、その全ゲノムの少なくとも80%にわたって(例えば、少なくとも85%、90%、95%若しくは99%にわたって、又はその全ゲノムにわたって)、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%の配列同一性を有し得る。生物型株を同定するのに用いるのに好適な他の配列としては、hsp60、又は反復配列、例えばBOX、ERIC、(GTG)5、若しくはREPが挙げられ得る(Masco et al.,2003;Kim et al.,2019)。生物型株は、受託番号V21/015887又はV21/015888の下に寄託された細菌の対応する配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は99.9%の配列同一性を有する配列を有し得る。
【0146】
あるいは、受託番号V21/015887又はV21/015888の下に寄託された細菌の生物型である株、並びに制限断片分析及び/又はPCR分析、例えば、蛍光増幅断片長多型(FAFLP)及び反復DNAエレメント(rep)-PCRフィンガープリンティング、又はタンパク質プロファイリング、又は部分16S若しくは23s rRNA配列決定を用いることによる。いくつかの好ましい実施形態では、そのような技術を使用して、他の好適なI.colisanans株を同定することができる。
【0147】
特定の実施形態では、受託番号V21/015887又はV21/015888の下に寄託された細菌の生物型であり、本発明での使用に好適である株は、増幅リボソームDNA制限分析(ARDRA)によって分析した場合に、例えば、Sau3AI制限酵素を使用する場合に(例示的な方法及びガイダンスについては、Srutkovaet al.,2011を参照のこと)、受託番号V21/015887又はV21/015888の下に寄託された細菌と同じパターンを提供する株である。あるいは、生物型株は、受託番号V21/015887又はV21/015888の下で寄託された細菌と同じ炭水化物発酵パターンを有する株として同定される。
【0148】
いくつかの実施形態では、本発明において有用な細菌株は、細菌株による代謝産物の産生及び消費を日常的にプロファイリングすることによって同定され得る。上記及び本明細書の他の箇所に記載される細菌株は、酢酸の産生をもたらすことが予測される。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の細菌株は、代謝産物である酢酸のインビボでの産生を誘導する。更に、いくつかの実施形態では、本発明の細菌株は酪酸を産生しない。
【0149】
本発明の組成物及び方法において有用な他のIntestinicoccus株、例えば受託番号V21/015887又はV21/015888の下に寄託された細菌の生物型は、実施例に記載されたアッセイを含め、任意の適切な方法又は戦略を用いて同定され得る。例えば、本発明で使用する株は、実施例に記載されているように、嫌気性TY又はPYG培地中で培養すること、及び/又はDSS誘導性腸管バリア機能モデルに細菌を投与し、次いでサイトカイン/ケモカインレベルを評価することによって同定され得る。特に、受託番号V21/015887又はV21/015888の下に寄託された細菌に対して、同様の増殖パターン、代謝型及び/又は表面抗原を有する細菌株が、本発明において有用であり得る。有用な株は、V21/015887株又はV21/015888株と同等の免疫調節活性を有する。特に、生物型株は宿主の腸管機能に対して同等の効果を発揮する。更に、生物型は、疾患モデル(例えば、大腸炎、喘息、関節炎、多発性硬化症及びぶどう膜炎疾患モデル)において同様の効果を有し、サイトカイン/ケモカインレベルに対して、実施例に示された効果と同等の効果を有することが予想され、これは、実施例に記載された培養及び投与プロトコルを使用することによって同定され得る。
【0150】
2.2 細菌株の生存率。
好ましい実施形態では、本発明の組成物中の細菌株は生存能力がある。好ましい実施形態では、本発明の組成物中の細菌株は生存能力があり、腸に部分的又は全体的にコロニー形成することができる。いくつかの好ましい実施形態では、本発明の組成物中の細菌株は生きている。一例として、本発明の組成物中の細菌株は加熱殺菌されていない。本発明の細菌は、非生存細菌によって示され得ない免疫調節効果を有し得、これは、例えば、非生存細菌が代謝産物を産生することができず、異なる様式で免疫系と相互作用するためである。生存能力のある細菌の細胞表面はまた、死滅細菌、特に加熱殺菌された細菌と著しく異なる可能性が高い。
【0151】
いくつかの代替的な実施形態では、その細菌は生存能力がない。例えば、いくつかの実施形態では、細菌は加熱殺菌される。
【0152】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明で使用する細菌株は、天然に存在する。例えば、細菌株は哺乳動物の消化管から単離されている。
【0153】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明で使用する細菌株は、遺伝子操作されていない。例えば、細菌株は、組換えDNAで形質転換されていない。
【0154】
3.組成物
治療有効量の上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載された細菌株(複数可)を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる組成物が、本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、組成物中の細菌は、株、種、操作的分類単位(OTU)、全ゲノム配列、16S rRNA配列、又は異なる種類の細菌を定義するための当技術分野において公知の他の方法によって同定され得る。
【0155】
3.1 最も近い共通祖先(MRCA)
いくつかの実施形態では、組成物は、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である細菌株の有効量を含む(
図1Bを参照)。好ましくは、系統学的分類はGTDB(Parks et al.,2018)によって定義されている通りである。いくつかの実施形態では、系統学的分類は、GTDBのリリース89(r89)において定義されている通りである。
【0156】
いくつかの実施形態では、細菌株がI.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの子孫であるかどうかの判定は、当技術分野で公知の系統学的グループ化手順を用いて行うことができる。いくつかの実施形態では、I.colisanans及びI.sp002305575、並びに第3の目的の分類群(例えば、分類されるべき分類群)を含む有根系統樹が使用され得、目的の分類群が本発明の組成物に有用であるかどうかを判断するために、以下の解析パッケージが適用される:Analyses of Phylogenetics and Evolution(「ape」;https://cran.r-project.org/web/packages/ape/index)及びPhylogenetic Tool for Comparative Biology(「phytools」;http://cran.r-project.org/web/packages/phytools/index.html)。ape及びphytoolsは両方とも、分子進化及び系統学の研究に使用されるR言語で書かれたパッケージである。ape及びphytoolsパッケージは、系統学的及び進化学的分析のための方法を提供し、それらの使用は当業者に公知である。いくつかの実施形態では、以下のスクリプトが使用され得る。
library(“ape”)
library(“phytools”)
input.tree = read.tree(file=”tree_file”)
intest = c(“s__Intestinicoccus colisanans”, “s__Intestinicoccus sp002305575”)
intest.node = getMRCA(input.tree, intest)
intest.tree = extract.clade(input.tree, intest.node)
print(intest.tree$tip.label)
【0157】
いくつかの実施形態では、このスクリプトを実行した後、目的の分類群が印刷されたリストにある場合、それは2つの種のMRCAの子孫である。
【0158】
他の実施形態では、細菌株がI.colisanans及び(
図1B参照)のMRCAの子孫であるかどうかを判定するために、異なる解析パッケージを使用し、異なるプログラミング言語に基づく方法を含む、当技術分野で公知の様々な系統学的グループ化方法が使用され得る。
【0159】
いくつかの他の実施形態では、細菌株は、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫であり、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤をともに含む。好適には、MRCAは、GTDBからのbac120系統樹のノード23596で定義される。いくつかの実施形態では、系統樹はGTDBのリリース89によって作成されるが、任意の好適なその後のリリースも同様に適用可能な結果をもたらすと考えられる。
【0160】
3.2 16S rRNAの配列同一性。
いくつかの実施形態では、16S rRNA配列は、分類される細菌種について得られるか又は決定される。このクエリ16S rRNA配列は、Intestinicoccus属のメンバーとして既に分類されている細菌種由来の16S rRNA配列と比較される。いくつかの実施形態では、クエリ16S rRNA配列は、配列番号1に記載の16S rRNA配列と比較される。いくつかの実施形態では、クエリ16S rRNA配列は、Intestinicoccus属のメンバーとして既に分類されている細菌種についての全ての既知の16S rRNA配列と比較される。他の実施形態では、クエリ16S rRNA配列は、Intestinicoccus属のメンバーとして既に分類されている細菌種についての全ての既知の16S rRNA配列のサブセットと比較される。クエリ配列と比較配列との間の同一性パーセントが決定される。クエリ配列の同一性パーセントが、規定された閾値を超えていると判定される場合、分類される細菌種は、Intestinicoccus属のメンバーとして分類される。
【0161】
いくつかの実施形態では、閾値配列同一性は95%である。いくつかの他の実施形態では、閾値配列同一性は97.5%である。いくつかの他の実施形態では、閾値配列同一性は99.0%である。いくつかの実施形態では、閾値配列同一性は、94.5%、94.6%、94.7%、94.8%、94.9%、95.0%、95.1%、95.2%、95.3%、95.4%、95.5%、95.6%、95.7%、95.8%、95.9%、96.0%、96.1%、96.2%、96.3%、96.4%、96.5%、96.6%、96.7%、96.8%、96.9%、97.0%、97.1%、97.2%、97.3%、97.4%、97.5%、97.6%、97.7%、97.8%、97.9%、98.0%、98.1%、98.2%、98.3%、98.4%、98.5%、98.6%、98.7%、98.8%、98.9%99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%.99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%である。
【0162】
いくつかの実施形態では、16S rRNA配列は、分類される細菌種について得られるか又は決定される。このクエリ16S rRNA配列は、Acutalibacteraceae科のメンバーとして既に分類されている細菌種由来の16S rRNA配列と比較される(配列番号1、2、又は7~10のいずれか1つに記載のものを含む)。いくつかの実施形態では、クエリ16S rRNA配列は、Acutalibacteraceae科のメンバーとして既に分類されている細菌種についての全ての既知の16S rRNA配列と比較される。他の実施形態では、クエリ16S rRNA配列は、Acutalibacteraceae科のメンバーとして既に分類されている細菌種についての全ての既知の16S rRNA配列のサブセットと比較される。クエリ配列と比較配列との間の同一性パーセントが決定される。クエリ配列の同一性パーセントが、規定された閾値を超えていると判定される場合、分類される細菌種は、その科のメンバーとして分類される。
【0163】
いくつかの実施形態では、閾値配列同一性は95%である。いくつかの実施形態では、閾値配列同一性は98.7%である。いくつかの実施形態では、閾値配列同一性は94.8%である。いくつかの実施形態では、閾値配列同一性は、94.5%、94.6%、94.7%、94.8%、94.9%、95.0%、95.1%、95.2%、95.3%、95.4%、95.5%、95.6%、95.7%、95.8%、95.9%、96.0%、96.1%、96.2%、96.3%、96.4%、96.5%、96.6%、96.7%、96.8%、96.9%、97.0%、97.1%、97.2%、97.3%、97.4%、97.5%、97.6%、97.7%、97.8%、97.9%、98.0%、98.1%、98.2%、98.3%、98.4%、98.5%、98.6%、98.7%、98.8%、98.9%99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%又は100%である。
【0164】
いくつかの実施形態では、組成物は、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載されるI.colisanansの少なくとも部分的に単離された細菌株を含む。
【0165】
特定の実施形態では、本発明の細菌株は、I.colisanansの細菌株の16S rRNA配列と少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。好ましくは、本発明の細菌株は、配列番号1又は2のいずれか1つと少なくとも97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する。いくつかの好ましい実施形態では、本発明の細菌株は、配列番号1又は2のいずれか1つによって示される16S rRNA配列を有する。いくつかの他の好ましい実施形態では、本発明の細菌株は、配列番号7~10のいずれか1つによって示される16S rRNA配列を有する。
【0166】
細菌株のゲノムは、配列番号1、2、又は7~10のいずれか1つに記載の16S rRNA配列を含み得る。
【0167】
3.3 ゲノムの配列同一性。
特定の実施形態では、本発明の細菌株は、配列番号3又は4のいずれか1つと配列同一性を有する染色体を有する。好ましい実施形態では、本発明の細菌株は、配列番号3又は4の少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)にわたって、配列番号3又は4のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%又は100%の配列同一性)を有する染色体を有する。例えば、本発明の細菌株は、配列番号3若しくは4の70%にわたって配列番号3若しくは4のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の80%にわたって配列番号3若しくは4のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の90%にわたって配列番号3若しくは4のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の100%にわたって配列番号3若しくは4のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の70%にわたって配列番号3若しくは4のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の80%にわたって配列番号3若しくは4のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の90%にわたって配列番号3若しくは4のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の100%にわたって配列番号3若しくは4のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の70%にわたって配列番号3若しくは4のいずれか1つと少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の80%にわたって配列番号3若しくは4のいずれか1つと少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号3若しくは4の90%にわたって配列番号3若しくは4のいずれか1つと少なくとも98%の配列同一性又は配列番号3若しくは4の100%にわたって配列番号3若しくは4のいずれか1つと少なくとも98%の配列同一性を有する染色体を有し得る。本発明の特に好ましい株は、受託番号V21/015887の下に寄託されたI.colisanans株である。これは、実施例に示されるDSSマウスモデルにおいて試験された例示的なI.colisanansMH27-1株であり、疾患を処置するのに有効であることが示されている。したがって、本発明は、受託番号V21/015887の下に寄託されたI.colisanans株又はその派生株の、細胞、例えば、単離された細胞を提供する。本発明はまた、受託番号V21/015887の下に寄託されたI.colisanans株又はその派生株の細胞を含む、組成物を提供する。本発明はまた、受託番号V21/015887の下に寄託されたI.colisanans MH27-1株の生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0168】
特定の実施形態では、本発明の細菌株は、配列番号5又は6のいずれか1つと配列同一性を有する染色体を有する。好ましい実施形態では、本発明の細菌株は、配列番号5又は6の少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)にわたって、配列番号5又は6のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも92%、94%、95%、96%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%又は100%の配列同一性)を有する染色体を有する。例えば、本発明の細菌株は、配列番号5若しくは6の70%にわたって配列番号5若しくは6のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の80%にわたって配列番号5若しくは6のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の90%にわたって配列番号5若しくは6のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の100%にわたって配列番号5若しくは6のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の70%にわたって配列番号5若しくは6のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の80%にわたって配列番号5若しくは6のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の90%にわたって配列番号5若しくは6のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の100%にわたって配列番号5若しくは6のいずれか1つと少なくとも95%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の70%にわたって配列番号5若しくは6のいずれか1つと少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の80%にわたって配列番号5若しくは6のいずれか1つと少なくとも98%の配列同一性、又は配列番号5若しくは6の90%にわたって配列番号5若しくは6のいずれか1つと少なくとも98%の配列同一性又は配列番号5若しくは6の100%にわたって配列番号5若しくは6のいずれか1つと少なくとも98%の配列同一性を有する染色体を有し得る。本発明の特に好ましい株は、受託番号V21/015887の下に寄託されたI.colisanans株である。これは、実施例に示されるDSSマウスモデルにおいて試験された例示的なI.colisanansMH27-1株であり、疾患を処置するのに有効であることが示されている。したがって、本発明は、受託番号V21/015888の下に寄託されたI.colisanans株又はその派生株の、細胞、例えば、単離された細胞を提供する。本発明はまた、受託番号V21/015888の下に寄託されたI.colisanans株又はその派生株の細胞を含む、組成物を提供する。本発明はまた、受託番号V21/015888の下に寄託されたI.colisanans MH27-2株の、生物学的に純粋な培養物を提供する。
【0169】
4.細菌株の機能的特徴
腸管バリア調節異常は、全身性炎症に至る重要な経路である。実施例で示されるように、本発明の細菌株、及び該株を含む組成物は、腸管バリア機能を増強するのに有効である。
【0170】
対象において全身性炎症を引き起こす腸管バリア調節異常によって媒介される全ての炎症性又は自己免疫障害は、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載される細菌株による処置に適用可能である。
【0171】
4.1 腸管バリア機能。
腸管バリア(腸内バリアとしても知られる)機能は、外界との粘膜界面で輸送及び宿主防御機構を調節する。経細胞及び傍細胞フラックスは、膜ポンプ、イオンチャネル及びタイトジャンクションによって厳密に制御されており、生理学的必要性に応じて透過性を適応させる。
【0172】
リポ多糖(LPS)及び他の炎症性化合物などの外来(すなわち、非宿主)物質の腸の管腔側から循環系への移行は、上皮バリアによって阻害される。この上皮バリアの機能の1つはタイトジャンクションによって行われる。タイトジャンクション、又は閉鎖帯は、2つの上皮細胞の密接に関連した領域であり、その膜は一緒に結合して、流体に対して実質的に不透過性のバリアを形成し、それによって、血管系を消化管の管腔から分離する。いかなるレベルでの障害であれ、特に、透過性増加によるバクテリアルトランスロケーション、並びに上皮及びT細胞の相互作用が損なわれることによる経口免疫寛容の崩壊は、炎症及び組織損傷をもたらし得る。したがって、タイトジャンクションバリア機能の減少は、LPSなどの望ましくない物質の腸管腔から循環系への移行を増加させることが示されている。
【0173】
本発明は、対象において腸管バリア機能を回復又は改善する方法であって、I.colisanansの細菌株を含む組成物を対象に投与し、それによって対象において腸管バリア機能を回復又は改善することを含む、方法を提供する。本明細書で使用される場合、腸管バリア完全性とは腸管バリア機能の尺度を指す。高い腸管バリア完全性は、腸管又は腸透過性の欠如と関連付けることができ、高レベルの腸管透過性は、低い腸管バリア完全性を示す。関連する実施形態では、本発明はまた、健康な又は正常な腸管バリア機能を維持する方法を提供する。このような方法は、腸管バリア調節異常のリスクが高いと考えられる対象(例えば、IBDの寛解期の対象)において腸管バリア調節異常を予防するために使用され得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、試料(特に、生体試料)において測定される少なくとも1つのバイオマーカーは、対象の腸管バリア完全性における変化、特に、改善を評価するために使用される。
【0175】
本明細書で提供される方法及び使用のいくつかの実施形態では、I.colisanansの細菌株を含む組成物は、対象由来の試料中の腸管バリア完全性の1つ以上のバイオマーカーのレベルを増加又は低下させ得る。いくつかの実施形態では、特定のバイオマーカーに応じて、マーカーのレベルの増加又は低下のいずれかは、腸管バリア完全性の増加及び/又は腸管透過性の低下を示す。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、血管新生因子、酵素、プロテアーゼ、接着分子、細胞シグナル伝達分子、ホルモン又は糖から選択される。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、サイトカインを含む。いくつかの実施形態では、マーカーは、ケモカインを含む。いくつかの実施形態では、マーカーは、成長因子を含む。いくつかの実施形態では、マーカーは、血管新生因子を含む。いくつかの実施形態では、マーカーは、酵素を含む。いくつかの実施形態では、マーカーは、プロテアーゼを含む。いくつかの実施形態では、マーカーは、接着分子を含む。いくつかの実施形態では、マーカーは、細胞シグナル伝達分子を含む。いくつかの実施形態では、マーカーは、ホルモンを含む。いくつかの実施形態では、マーカーは、糖を含む。
【0176】
本明細書は、腸透過性のバイオマーカーのアッセイを提供する。血液(血漿又は血清)又は組織などの対象由来の生体試料を用いて、LPS、リポ多糖結合タンパク質(LPSBP)、腸型脂肪酸結合タンパク質(IFABP)、ゾヌリン、細菌及び/又は16S rRNAの1つ以上を含むが、これらのマーカーに限定されない任意の好適なバイオマーカーのレベルを測定することができる。LPS、I-FABP及びゾヌリンは、酵素結合免疫吸着アッセイ(「ELISA」)によって測定され得る。ELISAのための技術及びキットは、当業者に周知である。いくつかの実施形態では、血液、血清、唾液、尿及び/又は血漿中の対照と比較した場合のLPS、I-FABP及び/又はゾヌリンの上昇は、腸透過性の増加、したがって、腸管バリア完全性の低下の指標として使用される。
【0177】
LPSBPは、ELISAによって測定することもできる。いくつかの実施形態では、対照と比較した場合に、より高いか又はより低いLPSBPにおける有意な変化は、腸透過性の増加の指標として使用され得、減少した腸管バリア完全性を確認することができる。
【0178】
いくつかの実施形態では、細菌16S rRNAの増加は、腸透過性の増加、したがって、腸管バリア完全性の減少の指標として使用される。細菌16S rRNAは、標準的な核酸単離プロトコルを使用して、血液、血清、器官組織又は尿から精製され得る。これらは、例えば、市販されている。単離された核酸は、細菌16S rRNA配列に特異的なプライマーを使用するqPCR増幅、又は細菌16S rRNAに特異的なプライマーを使用する増幅、及び得られたアンプリコンの配列決定によって検出され得る。
【0179】
腸上皮細胞によって発現され、腸透過性を調節するタイトジャンクションタンパク質はまた、腸透過性のバイオマーカーとしても使用され得る。いくつかの実施形態では、タイトジャンクションタンパク質をアッセイして、腸透過性及び腸管バリア完全性の変化を決定する。いくつかの実施形態では、測定されるタンパク質は、クローディン、オクルディン、ZO-1、及びE-カドヘリン(接着結合)タンパク質を含み得るが、これらに限定されない。他のタイトジャンクションタンパク質もアッセイすることができる。いくつかの実施形態では、タイトジャンクションタンパク質は、免疫組織化学的染色を使用して測定される。いくつかの実施形態では、タイトジャンクションタンパク質は、ELISAを使用して測定される。
【0180】
いくつかの実施形態では、血漿シトルリンをアッセイして、腸透過性及び腸管バリア完全性の変化を決定する。血漿シトルリンレベルの減少は、上皮細胞量の低下に対応し、腸管バリア透過性の増加を示している。
【0181】
いくつかの実施形態では、本方法は、スクラロースなどの不溶性糖の経口投与、1以上の規定された期間後の尿又は血液などの体液の採取、及び標準的な臨床分析技術による体液中に含まれる不溶性糖の測定を含む。不溶性糖としては、マンニトール、ラクツロース、スクロース、スクラロース及び前述のいずれかの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0182】
いくつかの実施形態では、腸管バリア完全性は、インビトロアッセイを使用して測定される。腸管バリア機能を測定するのに好適な特に好ましいインビトロアッセイは、経上皮電気抵抗(TEER)によるものである。このようなアッセイは、当該分野で周知である(例えば、Srinivasan,2015;及びLea,2015)。
【0183】
4.2 粘膜治癒
粘膜治癒は、炎症性及び自己免疫障害における治療効果を評価するための重要なエンドポイントとなっている。IBD(例えば、CD及びUC)臨床試験において現在使用されている完全な粘膜治癒の定義は、「全ての炎症性及び潰瘍性病変の完全な非存在」であるが、この定義は、検証を欠いており、粘膜の改善及び粘膜治癒の等級付けを含まない。
【0184】
粘膜治癒は、腸炎症の内視鏡評価によって主に定義される。内視鏡検査における粘膜治癒の有無を評価するために、様々な内視鏡スコアリングシステムが開発されている。これらの指標は、粘膜治癒と、それによる全ての粘膜潰瘍の完全な消失というかなり厳格なエンドポイントが達成されない場合でも、内視鏡的病変の改善を判定することを可能にする。1987年に導入された臨床Mayoスコアの内視鏡的要素は、現在、臨床現場で最も使用されている粘膜層のスコアである(Schroeder et al.,1987参照)。これには、発赤、血管像の消失、脆弱性、出血、びらん及び潰瘍の変数が含まれ、0~3の範囲である。粘膜治癒は、古典的に、0(正常粘膜)又は1(粘膜の発赤、血管像の消失、軽度脆弱)のスコアであると考えられている(D’Haens,2007)。
【0185】
いくつかの他の実施形態では、粘膜治癒は、患者が軟性S状結腸鏡検査によって評価される内視鏡サブスコアが0又は1であると判定される場合に、生じたと判定される。特定のそのような実施形態では、粘膜治癒を経験する患者は、内視鏡サブスコアが0であると判定される。
【0186】
コルチコステロイド及びアミノサリチル酸塩はいずれも数十年にわたって使用されており、粘膜層を修復するために最も一般的に処方される薬物の1つである(例えば、UC患者において)(Carvalho and Cotter,2017)。それらが粘膜炎症を減少させるメカニズムには、核因子(NF)-kB発現及び炎症性サイトカインの制御(上皮細胞株の細胞遊走及び増殖を直接調節する)が含まれる。抗TNF薬(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、及びゴリムマブ)は、粘膜損傷のいくつかの段階で作用し、粘膜固有層内の炎症性浸潤及びT細胞増殖を制限し(Baert,1999)、メタロプロテアーゼ及び炎症誘発性分子の発現を下方制御する(Baert,1999)。それらはまた、再生プロセスにも作用し、腸透過性及び粘膜分泌を強化することによって粘膜の保護能力を回復させ、線維芽細胞を活性化し、上皮再生を維持する(Suenaert,2002)。
【0187】
粘膜治癒を評価する他の尺度は、バイオマーカーC反応性タンパク質及びカルプロテクチンの測定を含め、当技術分野で周知である。粘膜治癒の評価のためにインビトロバイオマーカーアッセイを使用する利点は、そのようなアッセイが、典型的には、対象にとってはるかに侵襲性が低いことである。病理組織構造は、炎症の別の尺度であり、粘膜治癒に特に有益であるとして挙げられている。
【0188】
4.3 STAT3のシグナル伝達経路
サイトカイン経路は、炎症及び免疫の多くの側面を含む、広範な生物学的機能を媒介する。JAK1、JAK2、JAK3及びチロシンキナーゼ2(TYK2)を含むヤヌスキナーゼ(JAK)は、I型及びII型サイトカイン受容体と会合し、サイトカインシグナル伝達を調節する細胞質チロシンキナーゼである。同族受容体とのサイトカインの結合は、受容体関連JAKの活性化を引き起こし、これは、JAKが媒介するシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)タンパク質のチロシンリン酸化、及び最終的には特定の遺伝子セットの転写活性化をもたらす(Schindler et al.,2007,J.Biol.Chem.282:20059-63)。サイトカイン受容体は、典型的にはヘテロ二量体として機能し、その結果、2種類以上のJAKキナーゼが、通常、サイトカイン受容体複合体と会合する。異なるサイトカイン受容体複合体に会合する特異的JAKは、多くの場合、遺伝子研究によって決定されており、他の実験的証拠によって裏付けられている。
【0189】
STAT3は、IBDを含むいくつかの自己免疫及び炎症性障害の活性化において重要な役割を果たしている。本発明の細菌株は、IL-23媒介性STAT3活性化を有意に抑制する。したがって、本発明は、対象においてSTAT3シグナル伝達(すなわち、IL-23媒介性STAT3シグナル伝達)を抑制するか又は阻害する方法であって、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載される細菌株を含む組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される細菌株は、STAT3活性を直接的又は間接的に抑制する。いくつかの実施形態では、I.colisanansの株は、STAT3ポリペプチドに直接結合する生物活性分子を産生する。いくつかの代替的な実施形態では、細菌株は、例えば、IL-23媒介性STAT3シグナル伝達経路におけるSTAT3の上流の分子に結合することによる、又はSTAT3活性を調節する分子に結合することによる(例えば、ユビキチン化)、STAT3活性化の間接的阻害因子である。例示的な例として、生物活性物質は、IL-23媒介性STAT3シグナル伝達経路を抑制するために、IL23、JAK2、又はTYK2のいずれか1つに直接結合又は拮抗し得る。
【0190】
I.colisanans株は、IL-6などの炎症性サイトカインの活性化を減少させる。IL-6によって誘導される慢性炎症は、最終的に細胞死をもたらし得る。したがって、本発明の細菌株は、炎症性又は自己免疫障害の処置又は予防において特に有用である。いくつかの実施形態では、細菌株は、IL-6の活性化の増強を特徴とする炎症性又は自己免疫障害の処置に有用である。
【0191】
4.4 Th17炎症反応
本発明のいくつかの細菌組成物は、Th17炎症反応を減少させるのに有効である。特に、上記及び本明細書の他の箇所に記載される組成物による処置は、Th17経路サイトカイン(TNF、IL-22、IL-21、及びIL-17を含む)を調節し得、Th17経路によって媒介される病態の動物モデルにおいて臨床的改善をもたらし得る。したがって、本発明の組成物は、炎症性及び自己免疫障害、並びにいくつかの実施形態では、Th17によって媒介される疾患又は病態を処置又は予防するために有用であり得る。特に、本発明の組成物は、Th17炎症反応の減少又は上昇の予防に有用であり得る。
【0192】
Th17細胞は、他のサイトカインの中でも、IL17A、IL17F、IL-21及びIL-22を産生するTヘルパー細胞のサブセットである。Th17細胞分化は、IL23によって駆動され得る。これらのサイトカイン及び他のものは、多くの炎症性及び自己免疫障害に寄与し、その根底にある十分に確立された炎症性シグナル伝達経路であるTh17経路の重要な部分を形成する(例えば、Ye,2015;Fabro,2015;Yin,2014;Cheluvappa,2014;Schieck,2014;Balato,2014に記載される)。Th17によって媒介されるいくつかの疾患は、Th17経路を抑制することによって改善又は緩和することができ、これは、Th17細胞の分化の低下、又はそれらの活性の低減、又はTh17経路サイトカインのレベルの低減によるものであり得る。Th17経路によって媒介される疾患は、IL-17A、IL-17F、IL-21、IL-22、IL-26、IL-9などのTh17細胞によって産生されるサイトカインのレベルの増加を特徴とし得る(Monteleone,2011において概説される)。Th17経路によって媒介される疾患は、STAT3又はIL-23受容体などのTh17関連遺伝子の発現の増加を特徴とし得る。Th17経路によって媒介される疾患は、Th17細胞レベルの増加と関連し得る。
【0193】
IL-17は、T細胞活性化を好中球の活性化及び動員に結びつける重要なサイトカインであり、したがって、IL-17は自然免疫において中心的な役割を果たす。しかしながら、好中球活性化におけるその役割に起因して、炎症性腸疾患、乾癬、及び関節リウマチなどの炎症性自己免疫疾患に寄与し得る。本明細書で使用されるIL-17は、IL-17A、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、及びIL-17Fを含む、IL-17ファミリーの任意のメンバーを指し得る。IL-17媒介性疾患及び病態は、IL-17の高発現、及び/又は疾患若しくは病態に罹患した組織におけるIL-17陽性細胞の蓄積若しくは存在を特徴とする。同様に、IL-17媒介性疾患及び病態は、高いIL-17レベル又はIL-17レベルの上昇によって悪化し、低いIL-17レベル又はIL-17レベルの減少によって緩和される疾患及び病態である。IL-17炎症反応は、局所性又は全身性であり得る。
【0194】
Th17経路によって媒介され得る疾患及び病態の例としては、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎など)、多発性硬化症;関節炎(関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、及び若年性特発性関節炎など);視神経脊髄炎(デビック病);強直性脊椎炎;脊椎関節炎;乾癬;全身性エリテマトーデス;セリアック病;喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);慢性閉塞性肺疾患(COPD);癌(乳癌、結腸癌、肺癌又は卵巣癌など);ぶどう膜炎;強膜炎;血管炎;ベーチェット病;アテローム性動脈硬化症;アトピー性皮膚炎;肺気腫;歯周炎;アレルギー性鼻炎;及び同種移植片拒絶が挙げられる(が、これらに限定されない)。したがって、いくつかの態様では、本発明は、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載される組成物を投与することによって、これらの病態又は疾患の1つ以上を処置又は予防する方法を提供する。更に好ましい実施形態では、これらの病態又は疾患は、STAT3シグナル伝達経路によって媒介される。更に好ましい実施形態では、これらの病態又は疾患は、Th17経路を介して媒介される。
【0195】
特定の実施形態では、本発明は、Th17経路によって媒介される疾患又は病態の処置又は予防においてTh17細胞分化を減少させる方法において使用するための本発明の方法組成物を提供する。特定の実施形態では、本発明の組成物は、炎症性又は自己免疫障害を処置又は予防するのに使用するためのものであり、該処置又は予防は、Th17炎症応答の軽減又は上昇の予防によって達成される。特定の実施形態では、本発明の組成物は、炎症性又は自己免疫障害を有する患者を処置するのに使用するためのものであり、患者は、IL-17レベルの上昇若しくはTh17細胞の上昇を有するか、又はTh17炎症反応を示す。特定の実施形態では、患者は、慢性炎症性若しくは自己免疫障害若しくは病態と診断され得、又は本発明の組成物は、炎症性若しくは自己免疫障害若しくは病態が慢性炎症性若しくは自己免疫障害若しくは病態に進行するのを予防するのに使用するためのものであり得る。特定の実施形態では、疾患又は病態は、TNF阻害剤による処置に応答しない場合がある。本発明のこれらの使用は、先の段落に列挙された特定の疾患又は病態のいずれかに適用され得る。
【0196】
Th17経路は、多くの場合、慢性炎症性及び自己免疫障害に関連しており、したがって、本発明の組成物は、上記に列挙された慢性疾患又は病態を処置又は予防するために特に有用であり得る。特定の実施形態では、組成物は、慢性疾患を有する患者における使用のためのものである。特定の実施形態では、組成物は、慢性疾患の発症を予防するのに使用するためのものである。
【0197】
本発明の組成物は、Th17経路によって媒介される疾患及び病態を処置するため、並びにTh17炎症反応に対処するために有用であり得、したがって、本発明の組成物は、慢性疾患を処置若しくは予防するため、他の治療(TNF阻害剤による処置など)に応答しなかった患者における疾患を処置若しくは予防するため、及び/又はTh17細胞に関連する組織損傷及び症状を処置若しくは予防するために特に有用であり得る。例えば、IL-17は、軟骨及び骨組織におけるマトリックス破壊を活性化することが知られており、IL-17は、軟骨細胞及び骨芽細胞におけるマトリックス産生に対して阻害効果を有するので、本発明の組成物は、骨浸食又は軟骨損傷を処置又は予防するのに有用であり得る。
【0198】
特定の実施形態では、本発明の組成物による処置は、IL-17レベル、特にIL-17Aレベルの減少をもたらすか、又は上昇を予防する。特定の実施形態では、本発明の組成物による処置は、IFN-γ又はIL-6レベルの減少をもたらすか、又は上昇を予防する。これらのサイトカインレベルのそのような減少又は上昇の予防は、炎症性及び自己免疫障害及び病態、特にTh17経路によって媒介されるものを処置又は予防するのに有用であり得る。
【0199】
4.5 Th1炎症応答
CD4+T細胞は、炎症性疾患/障害の病因に重要な役割を果たしており、CD4+T細胞の多くのサブセットが慢性腸炎を持続させるドライバーとして同定されている(Imam et all.,2018参照)。例えば、Tヘルパー1型(Th1)細胞は、IBDを有する個体の腸管に蓄積し、疾患に直接関連している。インターフェロン-γ(IFN-γ)は、Th1細胞によって産生される定義サイトカインである。腸炎症の間、IFN-γとTNFは共同して、腸上皮細胞β-カテニンシグナル伝達を駆動し、それらの分化及び増殖を制限することが提唱されている(Imam et al.,2018)。
【0200】
5.治療方法
いくつかの実施形態では、本発明は、対象において炎症性又は自己免疫障害を処置又は予防する方法であって、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載される細菌株を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0201】
好適には、炎症性又は自己免疫障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など);喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);関節炎(関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など);強直性脊椎炎;乾癬;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;血管炎;及び1型糖尿病からなる群から選択される。
【0202】
5.1 炎症性腸疾患(IBD)
実施例は、本発明の組成物が腸管バリア機能に対して有益な回復効果を有し、またそれらが抗炎症特性も有し、したがってIBDの処置に有用であり得ることを実証する。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、炎症性腸疾患を処置又は予防する方法において使用するための、Intestinicoccus属の細菌株を含む、組成物を提供する。本発明者らは、Intestinicoccus株による処置が、マウス疾患モデルにおいて大腸炎の重症度を軽減することを同定した。したがって、本発明の組成物は、炎症性疾患の処置に有用であり得る。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、IBDの処置又は予防に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、本発明は、潰瘍性大腸炎を処置又は予防する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、クローン病を処置又は予防する方法を提供する。特定の実施形態では、本発明は、IBDの処置において、特に大腸炎及び潰瘍性大腸炎の処置において、潰瘍形成及び/又は出血を処置又は予防する方法を提供する。好ましい実施形態では、本発明は、対象においてIBDを処置又は予防する方法であって、I.colisanans種の細菌株を含む組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。更なる好ましい実施形態では、本発明は、対象において大腸炎(特に潰瘍性大腸炎)を処置又は予防する方法であって、I.colisanans種の細菌株を含む組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。更なる好ましい実施形態では、本発明は、潰瘍形成及び/又は出血を含む、大腸炎(特に潰瘍性大腸炎)の少なくとも1つの副作用を軽減する方法を提供する。
【0203】
IBDは、複数の環境因子及び遺伝因子によって引き起こされ得る複雑な疾患である。IBDの発症に寄与する因子としては、食事、微生物叢、腸透過性、及び腸管感染に対する炎症反応の増加に対する遺伝的感受性が挙げられる。炎症性腸疾患の症状としては、腹痛、嘔吐、下痢、直腸出血、骨盤部における重度の内部痙攣/筋痙攣、体重減少及び貧血が挙げられる。特定の実施形態では、組成物は、IBDに関連する1つ以上の症状を軽減するのに使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、IBDの1つ以上の症状の予防に使用するためのものである。
【0204】
IBDは、心血管疾患、神経心理学的障害、及びメタボリックシンドロームなどの他の疾患又は病態を伴うことがある。特定の実施形態では、本発明の組成物は、IBDを伴う1つ以上の疾患又は病態の処置又は予防に使用するためのものである。
【0205】
IBDは一般に、生検又は大腸内視鏡検査によって診断される。便中カルプロテクチンの測定は、IBDの予備診断に有用である。IBDの診断のための他の実験室検査としては、全血球数、赤血球沈降速度、包括的代謝パネル、便潜血検査又はC反応性タンパク質検査が挙げられる。典型的には、実験室検査及び生検/大腸内視鏡検査の組み合わせが、IBDの診断を確認するために使用される。特定の実施形態では、本発明の組成物は、IBDと診断された対象において使用するためのものである。
【0206】
特定の実施形態では、IBDは、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎である。上記に広く記載されるように、STAT3シグナル伝達及びNFκBシグナル伝達経路媒介性サイトカイン(例えば、IL-17、TNF、IL-21、IL-22)を含むがこれらに限定されない、いくつかの炎症性サイトカインが、クローン病及び潰瘍性大腸炎を有する患者の炎症性粘膜において上方制御されることが研究によって示されている。したがって、STAT3シグナル伝達経路を介したサイトカイン活性及び/又はNFκBシグナル伝達経路を介したサイトカインの阻害は、クローン病及び潰瘍性大腸炎の処置に有用であり得る。特定の実施形態では、本発明の組成物は、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎の処置又は予防に使用するためのものである。
【0207】
クローン病及び潰瘍性大腸炎は、遺伝的危険因子、食事、他の生活様式因子、例えば喫煙及びアルコール摂取、並びにマイクロバイオーム組成など、推定原因が多数ある複雑な疾患である。クローン病は、胃腸管に沿ってどこにでも現れる可能性があるが、潰瘍性大腸炎は、典型的には大腸及び結腸によくみられる。
【0208】
IBDの胃腸症状は、軽度から重度の範囲であり、腹痛、下痢、便血、回腸炎、排便亢進、鼓腸の増加、腸狭窄、嘔吐、及び肛門周囲の不快感を含む。本発明の組成物は、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎の1つ以上の胃腸症状の処置又は予防に使用するためのものであり得る。
【0209】
クローン病及び潰瘍性大腸炎の全身症状には、思春期の成長維持不能、食欲減退、発熱及び体重減少などの成長障害が含まれる。クローン病の腸管外の特徴には、ぶどう膜炎、羞明(photobia)、上強膜炎、胆石、血清反応陰性脊椎関節症、関節炎、付着部炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、深部静脈血栓症、肺塞栓症、自己免疫性溶血性貧血、ばち状指及び骨粗鬆症が含まれる。腸管外の特徴は、消化管外に現れるクローン病及び/又は潰瘍性大腸炎に関連する更なる病態である。クローン病を有する対象はまた、発作、脳卒中、ミオパシー、末梢神経障害、頭痛及び抑うつなどの神経学的合併症に対する感受性の増加を示す。特定の実施形態では、本発明の組成物は、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎の1つ以上の全身性症状の処置又は予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明の組成物は、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎の1つ以上の腸管外の特徴の処置又は予防に使用するためのものである。
【0210】
クローン病及び潰瘍性大腸炎の診断には、通常、胃鏡検査及び/又は大腸内視鏡検査、並びに生検、典型的には回腸の生検、放射線検査、全血球数、C反応性タンパク質検査及び赤血球沈降速度などの複数の検査及び外科的処置を実施することが含まれる。特定の実施形態では、本発明の組成物は、クローン病又は潰瘍性大腸炎と診断された対象における使用のためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、クローン病又は潰瘍性大腸炎と診断された対象の処置に使用するためのものである。
【0211】
クローン病及び潰瘍性大腸炎は、罹患した胃腸管領域の範囲に応じて分類される(Gasche et al.,2000)。回腸及び結腸の両方のクローン病は、回結腸クローン病として分類される。いくつかの実施形態では、組成物は、回結腸クローン病の処置又は予防に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、組成物は、回結腸クローン病と診断された対象において使用するためのものであり/クローン回腸炎は、回腸のみが罹患している場合に分類される。クローン大腸炎は、結腸のみが罹患している場合に分類される。特定の実施形態では、組成物は、クローン回腸炎の処置又は予防に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、組成物は、クローン回腸炎と診断された対象における使用のためのものである。特定の実施形態では、組成物は、クローン大腸炎の処置又は予防に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、組成物は、クローン大腸炎と診断された対象における使用のためのものである。
【0212】
クローン病及び潰瘍性大腸炎は、いくつかの治療剤、例えば、コルチコステロイド、例えばプレドニゾン、免疫抑制剤、例えばアザチオプリン、又は生物学的製剤、例えばインフリキシマブ、アダリムマブ及びゴリムマブ、ベドリズマブ及びエトロリズマブで処置され得る。特定の実施形態では、本発明の組成物は、上記に列挙したものを含むがこれらに限定されない追加の治療剤と組み合わせて、クローン病又は潰瘍性大腸炎の処置又は予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、追加の治療剤は、クローン病及び/又は潰瘍性大腸炎の処置又は予防に使用するためのものである。
【0213】
5.2 自己免疫障害
ヒトでは、1型糖尿病(T1D)などの多くの自己免疫障害の臨床的発症前に腸炎症の徴候が検出される(Bosi,2006)。同様に、糖尿病易発性ラットでは、糖尿病抵抗性ラットと比較して、膵島炎発症前に腸管透過性の亢進が見られる(Meddings,1999;Neu,2005)。これらの知見は、腸管バリア完全性の破壊とそれに伴う抗原輸送の増加及び低グレードの腸炎症の発生が、T1Dの発症に先行し、糖尿病誘導性の代謝変化(すなわち、高血糖)に続発するというよりも、その病因に直接関連していることを示している。胃腸バリアは、管腔内容物と人体との接触を回避するための基本的な門番である。バリアは粘液層及び腸上皮バリア(IEB)から構成され、両方とも、共生細菌、病原体、及び食物抗原が管腔から腸管組織及び全身循環へ通過するのを防止するのに重要である。IEBは、タイトジャンクション接着分子(JAM)、トリセルリン、及びアンギュリンから構成される複雑な接合系によって一緒に保持された上皮細胞の単一層であり、それらの間及び細胞内足場タンパク質、すなわち密着帯タンパク質(ZO)との相互作用は、タイトジャンクションの完全性を維持し、傍細胞輸送を制御するための基本である。T1Dの患者及びラットモデルにおいて、IEBの変化が腸管炎症に関連して報告されている(Meddings,1999;Sapone,2006)。更に、抗菌ペプチド及びムチンなどの免疫調節分子を含有する重要な腸管バリアである腸管粘液層の重要性が最近報告されている(Sorini et al.,2019参照)。
【0214】
いくつかの実施形態では、I.colisanans種由来の細菌株は、アレルギー性喘息又は好中球性喘息などの喘息の処置又は予防において治療上の利益を提供し得る。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象において喘息の処置又は予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明は、喘息の処置又は予防に使用するための、I.colisanans種の細菌株を含む、組成物を提供する。
【0215】
いくつかの実施形態では、I.colisanans種由来の細菌株は、GVHDの処置又は予防において治療上の利益を提供し得る。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象においてGVHDの処置又は予防に使用するためのものである。好ましい実施形態では、本発明は、GVHDの処置又は予防に使用するための、I.colisanans種の細菌株を含む、組成物を提供する。
【0216】
いくつかの実施形態では、I.colisanans種由来の細菌株は、関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎などの関節炎の処置又は予防において治療上の利益を提供し得る。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象において関節炎の処置又は予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明は、関節炎の処置又は予防に使用するための、I.colisanans種の細菌株を含む、組成物を提供する。
【0217】
いくつかの実施形態では、I.colisanans種由来の細菌株は、多発性硬化症の処置又は予防において治療上の利益を提供し得る。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象において多発性硬化症の処置又は予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明は、多発性硬化症の処置又は予防に使用するための、I.colisanans種の細菌株を含む、組成物を提供する。
【0218】
いくつかの実施形態では、I.colisanans種由来の細菌株は、乾癬の処置又は予防において治療上の利益を提供し得る。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象において乾癬の処置又は予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明は、乾癬の処置又は予防に使用するための、I.colisanans種の細菌株を含む、組成物を提供する。
【0219】
いくつかの実施形態では、I.colisanans種由来の細菌株は、全身性エリテマトーデス(SLE)の処置又は予防において治療上の利益を提供し得る。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象においてSLEの処置又は予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明は、SLEの処置又は予防に使用するための、I.colisanans種の細菌株を含む、組成物を提供する。
【0220】
いくつかの実施形態では、I.colisanans種由来の細菌株は、同種移植片拒絶の処置又は予防において治療上の利益を提供し得る。特定の実施形態では、本発明の組成物は、対象において同種移植片拒絶の処置又は予防に使用するためのものである。特定の実施形態では、本発明は、同種移植片拒絶の処置又は予防に使用するための、I.colisanans種の細菌株を含む、組成物を提供する。
【0221】
6.製剤
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、40未満の異なる細菌株を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、30未満の異なる細菌株を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、20未満の異なる細菌株を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、10未満の異なる細菌株を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、5未満の異なる細菌株を含む。いくつかの好ましい実施形態では、組成物は、3未満の異なる細菌株を含む。いくつかの好ましい実施形態では、組成物は、単一の細菌株を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、Clostidium属の細菌を含まない。
【0222】
本発明の組成物は、細菌(すなわち、生菌及び/又は死滅細菌)を含む。本発明の好ましい実施形態では、組成物は、乾燥形態(例えば、凍結乾燥形態)で製剤化される。本発明の組成物は、本発明の細菌株を含む顆粒又はゼラチンカプセル、例えば硬ゼラチンカプセルを含み得る。好ましくは、本発明の組成物は凍結乾燥細菌を含む。細菌の凍結乾燥は十分に確立された手順であり、関連するガイダンスは、例えば参考文献(Miyamoto-Shinohara,2008;及びDay & Stacey,2007)において得られる。
【0223】
本発明の組成物は、生きた活性細菌培養物を含んでもよい。実施例は、本発明の細菌の培養物が治療的に有効であることを示す。
【0224】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物中の細菌株は不活化されておらず、例えば、熱不活化されていない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物中の細菌株は死滅しておらず、例えば、加熱殺菌されていない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物中の細菌株は弱毒化されておらず、例えば、熱弱毒化されていない。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物中の細菌株は、死滅、不活化及び/又は弱毒化されていない。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物中の細菌株は生きている。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物中の細菌株は生存能力がある。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物中の細菌株は、腸に部分的又は全体的にコロニー形成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物中の細菌株は、生存能力があり、腸に部分的又は全体的にコロニー形成することができる。
【0225】
いくつかの実施形態では、組成物は、生菌株と死滅した細菌株との混合物を含む。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、腸への細菌株の送達を可能にするようにカプセル化される。カプセル化は、例えば、pHの変化によって引き起こされ得る、圧力、酵素活性、又は物理的崩壊などの化学的又は物理的刺激を用いた破壊による、標的位置で送達されるまで組成物を分解から保護する。任意の適切なカプセル化方法を使用することができる。例示的なカプセル化技術には、多孔質マトリックス内への捕捉、固体担体表面への付着又は吸着、軟凝集又は架橋剤による自己凝集、及び微孔性膜又はマイクロカプセルの内側への機械的封じ込めが含まれる。本発明の組成物の調製に有用であり得るカプセル化に関するガイダンスは、当技術分野において広く入手可能である(例えば、Mitropoulou,2013;及びKailasapathy,2002)。
【0226】
組成物は経口投与されてもよく、錠剤、カプセル又は粉末の形態であってもよい。Intestinicoccus属の細菌が偏性嫌気性菌であるため、カプセル化製品が好ましい。
【0227】
本発明の組成物は、治療有効量の本発明の細菌株を含む。治療有効量の細菌株は、患者に有益な効果を発揮するのに十分である。治療有効量の細菌株は、患者の腸への送達及び/又は部分的若しくは全体的なコロニー形成をもたらすのに十分であり得る。
【0228】
細菌の適切な1日用量は、例えば、成人に対して、約1×103~約1×1011コロニー形成単位(CFU);例えば、約1×107~約1×1010CFU;別の例では、約1×106~約1×1010CFU;別の例では、約1×107~約1×1011CFU;別の例では、約1×108~約1×1010CFU;別の例では、約1×108~約1×1011CFUであり得る。
【0229】
特定の実施形態では、細菌の用量は、少なくとも109細胞/日、例えば、少なくとも1010、少なくとも1011、又は少なくとも1012細胞/日である。
【0230】
特定の実施形態では、組成物の用量は、組成物の重量に対して約1×106~約1×1011コロニー形成単位(CFU)/gの量で細菌株を含んでもよい。用量は、成人に適したものであり得る。例えば、組成物は、約1×103~約1×1011CFU/g;例えば、約1×107~約1×1010CFU/g;別の例では、約1×106~約1×1010CFU/g;別の例では、約1×107~約1×1011CFU/g;別の例では、約1×108~約1×1010CFU/g;別の例では、約1×108~約1×1011CFU/g、約1×108~約1×1010CFU/gの細菌株を含んでもよい。例えば、約1×108~約1×1010CFU/gである。用量は、例えば、1g、3g、5g、及び10gまで又はそれを超えてもよい。
【0231】
いくつかの実施形態では、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載される組成物は、組成物の重量に対して1グラムあたり約1×103~約1×1011コロニー形成単位の量の細菌株を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。
【0232】
いくつかの実施形態では、上記及び/又は本明細書の他の箇所に記載される組成物は、500mg~1000mg、600mg~900mg、700mg~800mg、500mg~750mg又は750mg~1000mgの用量で細菌株を含む。特定の実施形態では、本発明は、医薬組成物中の乾燥細菌が、500mg~1000mg、600mg~900mg、700mg~800mg、500mg~750mg、又は750mg~1000mgの用量で投与される、上記医薬組成物を提供する。
【0233】
組成物は、プロバイオティクスとして製剤化されてもよい。プロバイオティクスは、FAO/WHOによって、適切な量で投与された場合に宿主に健康上有益な効果をもたらす生きた微生物として定義される。
【0234】
典型的には、本発明の組成物などのプロバイオティクスは、少なくとも1つの好適なプレバイオティクス化合物と任意選択で組み合わされる。プレバイオティクス化合物は、通常、上部消化管において分解又は吸収されない、難消化性炭水化物、例えばオリゴ糖若しくは多糖、又は糖アルコールである。既知のプレバイオティクスとしては、イヌリン及びトランスガラクトオリゴ糖などの市販製品が挙げられる。
【0235】
他のプレバイオティクス化合物(例えば、ビタミンCなど)が、酸素スカベンジャーとして、並びにインビボでの送達及び/又は部分的若しくは全体的なコロニー形成及び生存を改善するために含まれてもよい。あるいは、本発明のプロバイオティクス組成物は、食品又は栄養製品、例えば乳若しくは乳清ベースの発酵乳製品として、又は医薬製品として経口投与されてもよい。
【0236】
特定の実施形態では、本発明のプロバイオティクス組成物は、プレバイオティクス化合物を、組成物の総重量に対して約1~約30重量%(例えば、5~20重量%)の量で含む。既知のプレバイオティクスとしては、イヌリン及びトランスガラクトオリゴ糖などの市販製品が挙げられる。
【0237】
いくつかの実施形態では、プレバイオティクスは、フルクトオリゴ糖(又はFOS)、短鎖フルクトオリゴ糖、イヌリン、イソマルトオリゴ糖、ペクチン、キシロオリゴ糖(又はXOS)、キトサンオリゴ糖(又はCOS)、β-グルカン、アラビアガム変性及び難消化性デンプン、ポリデキストロース、タガトース、アカシアファイバー、キャロブ、オート麦、及びシトラスファイバーを含むか、又はそれらからなる群から選択される炭水化物である。一態様では、プレバイオティクスは短鎖フラクトオリゴ糖である。短鎖FOSは難消化性炭水化物であり、一般的にビート糖の変換によって得られ、3つのグルコース分子が結合したサッカロース分子を含む。
【0238】
本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤又は担体、例えばHandbook of Pharmaceutical Excipientsに記載されたものを含み得る。治療的使用のための許容される担体又は希釈剤は、医薬分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。好適な担体の例としては、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。好適な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロール及び水が挙げられる。医薬担体、賦形剤又は希釈剤の選択は、意図される投与経路及び標準的な薬学的慣行に関して選択することができる。医薬組成物は、担体、賦形剤又は希釈剤として、又はそれに加えて、1以上の好適な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤、及び/又は可溶化剤を含んでもよい。好適な結合剤の例としては、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えばグルコース、無水ラクトース、フリーフローラクトース、β-ラクトース、トウモロコシ甘味料、天然及び合成ガム、例えばアカシア、トラガカント又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース及びポリエチレングリコールが挙げられる。好適な滑沢剤の例としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。防腐剤、安定剤、色素、及び更に香味剤が医薬組成物中に提供されてもよい。防腐剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、システイン、及び4-ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられ、例えば、いくつかの実施形態では、防腐剤は、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及び4-ヒドロキシ安息香酸のエステルから選択される。抗酸化剤及び懸濁化剤もまた使用され得る。好適な担体の更なる例は、サッカロースである。好適な防腐剤の更なる例はシステインである。
【0239】
本発明の組成物は、食品製品として製剤化されてもよい。例えば、食品製品は、栄養補助剤などにおいて、本発明の治療効果に加えて、栄養学的利益を提供し得る。同様に、食品製品は、本発明の組成物の味を高めるために、又は医薬組成物よりもむしろ一般的な食品物品に類似させることによって組成物を消費するのにより魅力的にするために製剤化され得る。特定の実施形態では、本発明の組成物は、乳ベース製品として製剤化される。「乳ベース製品」という用語は、様々な脂肪含有量を有する任意の液体又は半固体の乳ベース又は乳清ベース製品を意味する。乳ベース製品は、例えば、牛乳、山羊乳、羊乳、脱脂乳、全乳、粉乳及び乳清からいかなる加工もせずに還元された乳、又は加工製品、例えばヨーグルト、凝固乳、凝乳、酸乳、酸全乳、バターミルク及び他の酸乳製品であってもよい。あるいは、乳は、植物性乳、例えば、ソイミルク、オーツミルク、アーモンドミルク、ココナッツミルク、又はマカダミアミルクであってもよい。もう1つの重要な群には、乳飲料、例えば乳清飲料、発酵乳、濃縮乳、乳児又はベビー用ミルク、フレーバーミルク、アイスクリーム、甘味料などのミルク含有食品が含まれる。
【0240】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、Intestinicoccus属の1つ以上の細菌株を含み、他のいかなる種由来の細菌も含まないか、又は別の種由来の細菌を僅少量のみ若しくは生物学的に無関係な量のみ含む。したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、治療に使用するために、他のいかなる種由来の細菌も含まないか、又は別の種由来の細菌を僅少量のみ若しくは生物学的に無関係な量のみ含む、Intestinicoccus属(例えば、Intestinicoccus colisanans)の1つ以上の細菌株を含む、組成物を提供する。
【0241】
いくつかの実施形態では、組成物は、Intestinicoccus属の1つ以上の細菌株を含み、他のいかなる属由来の細菌も含まないか、又は別の属由来の細菌を僅少量のみ若しくは生物学的に無関係な量のみ含む。いくつかの実施形態では、組成物は、Intestinicoccus属(例えば、Intestinicoccus colisanans)の1つ以上の細菌株を含み、他のいかなる属由来の細菌も含まないか、又は別の属由来の細菌を僅少量のみ若しくは生物学的に無関係な量のみ含む。
【0242】
特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、単一の細菌種を含み、他のいかなる細菌種も含まない。特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、単一の細菌株を含み、他のいかなる細菌株も含まない。例えば、本発明の組成物は、I.colisanansの株のみの細菌を含み得る。そのような組成物は、他の細菌株又は種を僅少量のみ又は生物学的に無関係な量のみ含み得る。そのような組成物は、他の生物種を実質的に含まない培養物であり得る。いくつかの実施形態では、そのような組成物は、乾燥形態であってもよく、他の生物種を実質的に含まなくてもよい。
【0243】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療に使用するために、他のいかなる株由来の細菌も含まないか、又は別の株由来の細菌を僅少量のみ若しくは生物学的に無関係な量のみ含む、Intestinicoccus属の単一の細菌株を含む、組成物を提供する。
【0244】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療に使用するために、他のいかなる株由来の細菌も含まないか、又は別の株由来の細菌を僅少量のみ若しくは生物学的に無関係な量のみ含む、Intestinicoccus colisanans種の単一の細菌株(例えば、Intestinicoccus colisanans MH27-1、Intestinicoccus colisanans MH27-2、又はIntestinicoccus colisanans MH27-3)を含む、組成物を提供する。
【0245】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、単一の細菌株又は種を含み、他のいかなる細菌株又は種も含まない。そのような組成物は、他の細菌株又は種を僅少量のみ又は生物学的に無関係な量のみ含み得る。そのような組成物は、他の生物種を実質的に含まない培養物であり得る。
【0246】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16の細菌株又は種からなる。特定の実施形態では、組成物は、1~10、好ましくは1~5の細菌株又は種からなる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、同じ種内からの2つ以上の株(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40又は45を超える株)を含み、任意選択で他のいかなる種由来の細菌も含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、同じ種内からの50未満の株(例えば、45、40、35、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4又は3未満の株)を含み、任意選択で他のいかなる種由来の細菌も含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、同じ種内からの1~40、1~30、1~20、1~19、1~18、1~15、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~50、2~40、2~30、2~20、2~15、2~10、2~5、6~30、6~15、16~25、又は31~50株を含み、任意選択で他のいかなる種由来の細菌も含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、同じ属内からの2つ以上の種(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、23、25、30、35又は40を超える種)を含み、任意選択で他のいかなる属由来の細菌も含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、同じ属内からの50未満の種(例えば、50、45、40、35、30、25、20、15、12、10、8、7、6、5、4又は3未満の種)を含み、任意選択で他のいかなる属由来の細菌も含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、同じ属内からの1~50、1~40、1~30、1~20、1~15、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~50、2~40、2~30、2~20、2~15、2~10、2~5、6~30、6~15、16~25又は31~50種を含み、任意選択で他のいかなる属由来の細菌も含まない。本発明は、上記のいずれかの組み合わせを含む。
【0247】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、2つ以上の細菌株又は種を含む。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、同じ種内からの2つ以上の株(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40又は45を超える株)を含み、任意選択で他のいかなる種由来の細菌も含まない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、同じ種内からの50未満の株(例えば、45、40、35、30、25、20、15、12、10、9、8、7、6、5、4又は3未満の株)を含み、任意選択で他のいかなる種由来の細菌も含まない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、同じ種内からの1~40、1~30、1~20、1~19、1~18、1~15、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~50、2~40、2~30、2~20、2~15、2~10、2~5、6~30、6~15、16~25、又は31~50の株を含み、任意選択で他のいかなる種由来の細菌も含まない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、同じ属内からの2つ以上の種(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、23、25、30、35又は40を超える種)を含み、任意選択で他のいかなる属由来の細菌も含まない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、同じ属内からの50未満の種(例えば、50、45、40、35、30、25、20、15、12、10、8、7、6、5、4又は3未満の種)を含み、任意選択で他のいかなる属由来の細菌も含まない。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、同じ属内からの1~50、1~40、1~30、1~20、1~15、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、2~50、2~40、2~30、2~20、2~15、2~10、2~5、6~30、6~15、16~25、又は31~50の株を含み、任意選択で他のいかなる属由来の細菌も含まない。本発明は、上記のいずれかの組み合わせを含む。
【0248】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、1~50の別個の細菌株、例えば、1~50、1~40、1~30、1~20、1~19、1~18、1~17、1~16、1~15、1~14、1~13、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3又は2の別個の細菌株を含む。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、1~50の別個の細菌株、例えば、1~50、1~40、1~30、1~20、1~19、1~18、1~17、1~16、1~15、1~14、1~13、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3又は2の別個の細菌株を含む。
【0249】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、受託番号V21/015887及び/又はV21/015888の下でNMI(オーストラリア)に寄託された株と同じ安全性及び治療効力特性を有する細菌株を更に含む。
【0250】
本発明の組成物が2つ以上の細菌株、種又は属を含むいくつかの実施形態では、個々の細菌株、種又は属は、別々に、同時に又は逐次的に投与するためのものであり得る。例えば、組成物は、2つ以上の細菌株、種、若しくは属の全てを含んでもよく、又は細菌株、種、若しくは属は、別々に保存され、別々に、同時に、若しくは逐次的に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、2つ以上の細菌株、種、又は属は、別々に保存されるが、使用前に一緒に混合される。
【0251】
好ましくは、本明細書に開示される組成物は、本発明の細菌株による腸への送達、及び/又は腸の部分的若しくは全体的なコロニー形成を可能にするために、胃腸(GI)管に投与される。言い換えれば、細菌は、胃腸管の一部又は全てにコロニー形成し得、そのようなコロニー形成は、一時的であっても永続的であってもよい。より具体的には、「腸の全体的なコロニー形成」という語句は、細菌が腸の全ての部分(すなわち、小腸、大腸及び直腸)にコロニー形成していることを意味する。それに加えて、又はその代わりに、「全体的なコロニー形成」という用語は、細菌が腸の一部又は全ての部分に永続的に生着することを意味する。
【0252】
同様に、「腸の部分的コロニー形成」という語句は、細菌が腸の全ての部分ではなく一部にコロニー形成していることを意味する。それに加えて、又はその代わりに、「部分的コロニー形成」という用語は、細菌が腸の一部又は全ての部分に一時的に生着することを意味する。
【0253】
細菌の生着の一過性は、投与間隔の終了後に本発明の細菌株の存在量を定期的に(例えば、毎日又は毎週)評価して(例えば、糞便試料中で)、休薬期間、すなわち、投与間隔の終了から本発明の細菌株の検出可能なレベルが存在しなくなるまでの期間を決定することによって決定することができる。いくつかの実施形態では、休薬期間は、14日以下、12日以下、10日以下、7日以下、4日以下、3日以下、2日以下、又は1日以下である。
【0254】
いくつかの実施形態では、上記又は本明細書の他の箇所に記載される細菌は、大腸において一時的に生着する。
【0255】
いくつかの実施形態では、本発明の細菌株は、ヒト成人糞便から得られる。本発明の組成物が2つ以上の細菌株を含むいくつかの実施形態では、細菌株の全ては、ヒト成人糞便から得られるか、又は他の細菌株が存在する場合、それらは僅少量でのみ存在する。細菌は、これらのヒト成人糞便から得られ、本発明の組成物に使用された後に培養され得る。
【0256】
いくつかの実施形態では、1以上のIntestinicoccus細菌株は、本発明の組成物中の唯一の治療活性物質である。いくつかの実施形態では、組成物中の細菌株は、本発明の組成物中の唯一の治療活性物質である。
【0257】
本発明に従って使用するための組成物は、市販の承認を必要とする場合もあれば、必要としない場合もある。
【0258】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、細菌株は乾燥形態である、医薬組成物を提供する。場合によっては、細菌株は、投与前に再構成される。場合によっては、再構成は、本明細書に記載される希釈剤の使用による。特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、細菌株はスプレー乾燥されている、医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、細菌株は凍結乾燥又はスプレー乾燥され、生きている、医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、細菌株は凍結乾燥又はスプレー乾燥され、生存能力がある、医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、細菌株は凍結乾燥又はスプレー乾燥され、腸に部分的又は全体的にコロニー形成することができる、医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、細菌株は乾燥(例えば、凍結乾燥又はスプレー乾燥)され、生存能力があり、腸に部分的又は全体的にコロニー形成することができる、医薬組成物を提供する。同じ実施形態のいくつか及びいくつかの代替的な実施形態では、細菌株は、腸に一過性にコロニー形成する。
【0259】
場合によっては、凍結乾燥又はスプレー乾燥された細菌株は、投与前に再構成される。場合によっては、再構成は、本明細書に記載される希釈剤の使用による。
【0260】
本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体を含むことができる。
【0261】
特定の実施形態では、本発明は、本発明の細菌株と、薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤とを含む医薬組成物であって、該細菌株は、それを必要とする対象に投与された場合に、炎症性又は自己免疫障害を処置又は予防するのに十分な量である、医薬組成物を提供する。いくつかの好ましい実施形態では、炎症性又は自己免疫障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など);喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);関節炎(関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など);強直性脊椎炎;乾癬;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;血管炎;及び1型糖尿病からなる群から選択される。
【0262】
特定の実施形態では、本発明は、本発明の細菌株と、薬学的に許容される賦形剤、担体又は希釈剤とを含む医薬組成物であって、該細菌株は、STAT3シグナル伝達経路によって媒介される炎症性又は自己免疫障害を処置又は予防するのに十分な量である、医薬組成物を提供する。いくつかの好ましい実施形態では、該障害は、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など);喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);関節炎(関節リウマチ、変形性関節炎、乾癬性関節炎、又は若年性特発性関節炎など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など);強直性脊椎炎;乾癬;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;血管炎;及び1型糖尿病からなる群から選択される。
【0263】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、細菌株の量は、組成物の重量に対して1グラムあたり約1×103~約1×1011コロニー形成単位(CFU)である、医薬組成物を提供する。
【0264】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、該組成物が1g、3g、5g又は10gまで又はそれを超える用量で投与される、医薬組成物を提供する。
【0265】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、該組成物が経口、直腸、皮下、経鼻、頬側、及び舌下からなる群から選択される方法によって投与される、医薬組成物を提供する。
【0266】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール及びソルビトールからなる群から選択される担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0267】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、エタノール、グリセロール及び水からなる群から選択される希釈剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0268】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、デンプン、ゼラチン、グルコース、無水ラクトース、フリーフローラクトース、β-ラクトース、トウモロコシ甘味料、アカシア、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び塩化ナトリウムからなる群から選択される賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0269】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、防腐剤、抗酸化剤及び安定剤のうちの少なくとも1つを更に含む、医薬組成物を提供する。
【0270】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及び4-ヒドロキシ安息香酸のエステルからなる群から選択される防腐剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0271】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、細菌株は乾燥形態(例えば、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥など)である、医薬組成物を提供する。
【0272】
特定の実施形態では、本発明は、上記の医薬組成物であって、該組成物が約4℃又は約25℃で密封容器中に保存され、容器が50%の相対湿度を有する雰囲気中に置かれる場合、コロニー形成単位で測定される細菌株の少なくとも80%が、少なくとも約1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、1.5年、2年、2.5年又は3年の期間後に残存する、医薬組成物を提供する。
【0273】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に記載の組成物を含む密封容器で提供される。いくつかの実施形態では、密封容器はサシェ又はボトルである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に記載の組成物を含む注射器で提供される。
【0274】
本発明の組成物は、いくつかの実施形態では、医薬製剤として提供され得る。例えば、組成物は、錠剤又はカプセルとして提供され得る。いくつかの実施形態では、カプセルは、ゼラチンカプセル(「ゲル-キャップ」)である。カプセルは、硬カプセルであっても軟カプセルであってもよい。いくつかの実施形態では、製剤は軟カプセルである。軟カプセルは、カプセルシェル中に存在する軟化剤、例えば、グリセロール、ソルビトール、マルチトール及びポリエチレングリコールの添加により、ある程度の弾性及び柔軟性を有し得るカプセルである。軟カプセルは、例えば、ゼラチン又はデンプンをベースに製造することができる。ゼラチンベースの軟カプセルは、様々な供給業者から市販されている。例えば、経口又は直腸内などの投与方法に応じて、軟カプセルは、様々な形状を有することができ、例えば、円形、楕円形、長円形、又は魚雷型であってもよい。軟カプセルは、例えば、Scherer法、Accogel法又は滴下若しくはブローイング法などの従来の方法によって製造することができる。
【0275】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、経口投与される。経口投与は、化合物が胃腸管に入るように嚥下することを含み得る。
【0276】
経口投与に好適な医薬製剤には、固体プラグ、固体微粒子、半固体及び液体(多相又は分散系を含む)、例えば錠剤;多粒子若しくはナノ粒子、液体(例えば、水溶液)、エマルジョン、又は粉末を含有する軟又は硬カプセル;ロゼンジ(液体入りを含む);咀嚼剤(chews);ゲル;高速分散剤形;フィルム;オブール(ovule);スプレー;及び頬側/粘膜付着性パッチが含まれる。
【0277】
いくつかの実施形態では、医薬製剤は、腸溶性製剤、すなわち、経口投与による本発明の組成物の腸への送達に好適な胃耐性製剤(例えば、胃のpHに耐性である)である。腸溶性製剤は、細菌、又は組成物の別の成分が酸感受性である(例えば、胃の条件下で分解されやすい)場合に特に有用であり得る。
【0278】
いくつかの実施形態では、腸溶性製剤は、腸溶性コーティングを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、腸溶性コーティング剤形である。例えば、製剤は、腸溶性コーティング錠剤又は腸溶性コーティングカプセルなどであってよい。腸溶性コーティングは、従来の腸溶性コーティング、例えば、経口送達用の錠剤、カプセルなどのための従来のコーティングであってよい。製剤は、例えば腸溶性ポリマー(例えば、酸不溶性ポリマー)の薄膜層などのフィルムコーティングを含んでよい。
【0279】
いくつかの実施形態では、腸溶性製剤は、本質的に腸溶性であり、例えば、腸溶性コーティングを必要とせずに胃耐性である。したがって、いくつかの実施形態では、製剤は、腸溶性コーティングを含まない腸溶性製剤である。いくつかの実施形態では、製剤は、熱ゲル化材料から作製されたカプセルである。いくつかの実施形態では、熱ゲル化材料は、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロース系材料である。いくつかの実施形態では、カプセルは、フィルム形成ポリマーを含まないシェルを含む。いくつかの実施形態では、カプセルはシェルを含み、シェルはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、フィルム形成ポリマー(米国特許公開第2016/0067188号に記載のような)を含まない。いくつかの実施形態では、製剤は、本質的に腸溶性のカプセルである(例えば、CapsugelからのVCAPS(登録商標))である。
【0280】
いくつかの実施形態では、組成物は、I.colisanansの細菌株を含むプロバイオティクス又はメディカルフードである。細菌は、例えば、プロバイオティクスとして、カプセル、錠剤、カプレット、丸剤、トローチ、ロゼンジ、粉末、及び/又は顆粒として投与することができる。この株はまた、ニュートラシューティカル、従来の食品、メディカルフード、又は薬物として製剤化され得る。細菌はまた、糞便移植の一部として、又は坐剤を介して投与することもできる。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に更に記載されるように、腸管への送達のために製剤化され、いくつかの実施形態では、プレバイオティクスを更に含む組成物を有した。
【0281】
6.1 追加の薬剤との同時投与
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、第2の薬剤及び/又は処置を(例えば、治療法の一部として)対象に同時投与することを更に含むことができる。併用療法は、使用される場合、特定の適応症に合わせて調整され得る。例えば、炎症性障害(例えば、炎症性腸疾患)を処置するためにI.colisanans種の株を投与する場合、炎症性障害の臨床処置のために承認された当技術分野において公知の抗炎症剤又は治療と組み合わせて投与することができる。他の適応症は、例えば、本明細書に記載のI.colisanans種の株を、当技術分野において公知であるか、又はこれらの適応症の臨床処置のために承認された薬剤と組み合わせて、同様に処置することができる。
【0282】
炎症性腸疾患の処置において使用され得る好適な抗炎症剤は、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群を含むが、必ずしもこれらに限定されない。
【0283】
本発明はまた、抗炎症剤を更に含む、上記の組成物を含む。このような組成物は、任意選択で、単一の組成物の形態であってよく、又はあるいは2つ以上の別々の組成物の形態であってもよい。
【0284】
7.スクリーニング方法
本発明はまた、本発明の方法における使用に好適な細菌株を同定する方法を含む。このような方法は、典型的には、特定の機能的活性を有する細菌株をスクリーニングすることを含む。好適なアッセイには、以下の実施例に記載のものが含まれるが、腸管バリア機能、粘膜治癒、NF-κB活性の調節、又はSTAT3シグナル伝達の調節を測定するための任意のアッセイも同様に適用可能である。
【0285】
いくつかの実施形態では、スクリーニング方法は、Intestinicoccusの細菌株がSTAT3シグナル伝達経路を調節する能力を同定する。例示的な例として、本発明は、標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか又は阻害する方法であって、該標的細胞をIntestinicoccus colisanans種の細菌細胞調製物の少なくとも可溶性成分と接触させて、該標的細胞におけるSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか又は阻害することを含む、方法を提供する。
【0286】
このタイプのいくつかの実施形態では、標的細胞は、機能的レポーター細胞(例えば、HEK細胞)、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、及び内皮細胞について細菌株をスクリーニングすることを含む群から選択される。
【0287】
いくつかの実施形態では、細菌細胞調製物は細菌細胞培養物を含む。好適には、可溶性成分は、細菌細胞培養物の上清を含み得る。このタイプのいくつかの実施形態では、可溶性成分は、細菌細胞を実質的に枯渇している。
【0288】
いくつかの代替的な実施形態では、細菌細胞調製物は細菌細胞ペレットを含む。好ましくは、細胞ペレットの細菌細胞は、当技術分野において公知の任意の手段によって溶解される。細胞溶解後、細胞溶解物の可溶性画分が不溶性画分から分離されることが典型的である。細胞溶解物は、スクリーニングアッセイ中に存在する前に更なる処理に供され得る。(例えば、緩衝液中に希釈される)、又は処理試薬に曝露され得る。
【0289】
8.投与様式
好ましくは、本発明の組成物は、本発明の細菌株による腸への送達を可能にするために、胃腸管に投与される。好ましくは、本発明の組成物は、本発明の細菌株による腸への送達を可能にするために、胃腸管に投与されるように製剤化される。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、本発明の細菌株による腸への送達、及び腸の部分的若しくは全体的なコロニー形成を可能にするために、胃腸管に投与されるように製剤化される。
【0290】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、発泡体として、スプレーとして、又はゲルとして投与され得る。
【0291】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、直腸内坐剤などの坐剤として、例えば、テオブロマ油(カカオバター)、合成硬質脂肪(例えば、SUPPOCIRE(登録商標)、WITEPSOL)、グリセロゼラチン、ポリエチレングリコール、又は石鹸グリセリン組成物の形態で投与され得る。
【0292】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、チューブ、例えば、経鼻胃管、経口胃管、胃管、空腸瘻チューブ(Jチューブ)、経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)、又はポート、例えば、胃、空腸及び他の好適なアクセスポートへのアクセスを提供する胸壁ポートを介して胃腸管に投与される。
【0293】
本発明の組成物は、1回投与されてもよく、又は処置レジメンの一部として逐次的に投与されてもよい。特定の実施形態では、本発明の組成物は、毎日(1回又は数回のいずれかで)投与される。特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、少なくとも1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月、又は1年などの長期間にわたって、定期的に、例えば毎日、2日ごと、又は週ごとに投与される。
【0294】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、7日間、14日間、16日間、21日間若しくは28日間、又は7日以下、14日以下、16日以下、21日以下若しくは28日以下にわたって投与される。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、16日間投与される。
【0295】
本発明の特定の実施形態では、本発明による処置は、患者の腸内微生物叢の評価を伴う。本発明の株の送達及び/又は本発明の株による部分的若しくは全体的なコロニー形成が達成されず、その結果、有効性が観察されない場合、処置を繰り返してもよく、あるいは送達及び/又は部分的若しくは全体的なコロニー形成が成功し、有効性が観察される場合、処置を中止してもよい。
【0296】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、妊娠中の動物、例えばヒトなどの哺乳動物に、その子宮内及び/又は出生後のその子供において発症する炎症性又は自己免疫障害(本明細書に開示されるものなど)を予防するために投与され得る。
【0297】
本発明の組成物は、腸管バリア機能の調節異常によって媒介される疾患若しくは病態を有すると診断されている、又は腸管バリア調節異常によって媒介される疾患若しくは病態のリスクがあると同定されている患者、STAT3シグナル伝達経路によって媒介される疾患若しくは状態を有すると診断されている、又はSTAT3シグナル伝達経路によって媒介される疾患若しくは状態のリスクがあると同定されている患者、又は炎症性若しくは自己免疫障害(本明細書に開示されるものなど)を有すると診断されている患者に投与され得る。本組成物はまた、健康な患者においてSTAT3シグナル伝達経路によって媒介される疾患又は病態の発症を予防するための予防的手段として投与されてもよい。
【0298】
本明細書に開示される組成物は、炎症性若しくは自己免疫障害、特に微生物叢-腸管軸によって媒介される炎症性若しくは自己免疫障害と診断されている患者、又は炎症性若しくは自己免疫障害、特に微生物叢-腸管軸によって媒介される炎症性若しくは自己免疫障害のリスクがあると同定されている患者に投与され得る。組成物はまた、健康な患者において、炎症性又は自己免疫障害、特に微生物叢-腸管軸によって媒介される炎症性又は自己免疫障害の発症を予防するための予防的手段として投与され得る。
【0299】
本発明の組成物は、異常な腸内微生物叢を有すると同定されている患者に投与され得る。例えば、患者は、Intestinicoccus属、特にI.colisanansの細菌によるコロニー形成が減少しているか、又は存在していない場合がある。
【0300】
本発明の組成物は、栄養補助剤などの食品製品として投与されてもよい。
【0301】
一般に、本発明の組成物は、ヒト疾患の予防又は処置用であるが、家禽、ブタ、ネコ、イヌ、ウマ又はウサギなどの単胃哺乳動物を含む動物を処置するために使用してもよい。本発明の組成物は、動物の成長及び能力を増強するのに有用であり得る。動物に投与する場合、強制経口投与が使用され得る。
【0302】
いくつかの実施形態では、組成物が投与される対象は成人である。いくつかの実施形態では、組成物が投与される対象は、ヒト乳児である。
【0303】
9.培養方法
本発明に使用するための細菌株は、例えば、McSweeney,2005に教示されているような参考文献に詳述される標準的な微生物学技術を使用して培養され得る。
【0304】
培養に使用される固体又は液体培地は、例えば、TY又はPYG培地から選択することができる。
【0305】
本発明での使用に好適な例示的な培地組成としては、表1に提供されるものが挙げられる。
【表2】
【0306】
本発明を容易に理解し、実際に実施することができるように、以下の非限定的な実験例によって特定の好ましい実施形態を説明する。
【実施例】
【0307】
Intestinicoccus colisanansの健康及び疾患との関連
炎症性腸疾患は、健常腸管と比較した場合に、IBD腸管における選択された腸内細菌の有病率及び存在量の両方が有意に減少するマイクロバイオームの構造-機能変化を特徴とする。いくつかの研究は、これらの細菌がIBDの病因を調節する可能性があることを示している(Mallone et al.,2011;及びSokol et al.,2008)が、新しい治療法を開発するためにこれらの細菌を使用する上での主な障害は、低解像度の16S rRNAベースのプロファイリングでは、低い分類学的レベル(すなわち、属、種、株)で健常株とIBD関連株とを正確に識別するのに十分な解像度が得られないことである。
【0308】
本発明者らは、6,020名の成人の高解像度の糞便腸管メタゲノムデータ及び関連する宿主メタデータを含むMicroba Disease Database(MDD)を使用して、炎症性及び自己免疫疾患におけるI.colisanansの有病率を研究した。メタゲノム配列リードをMicroba Community Profiler(MCP)(Parks et al.,2021)を使用して分析した。
【0309】
I.colisanansは、健常なヒトにおいて優勢であると考えられていたが、炎症性及び自己免疫疾患においてはあまり検出されなかった(
図1A)。最も強い影響は、潰瘍性大腸炎及びクローン病の両方の主要なサブタイプを含むIBDで観察された(
図2A及び表2)。この観察は、以前にHarvardによって公開された独立したIBDコホートにおいて再現された((Franzosa et al.,2018)、
図1B、及び表3)。
【表3】
【表4】
【0310】
I.colisanansの単離及びゲノムスケール分析
I.colisanansが健康及びIBDの病因に果たす役割をよりよく理解するために、本発明者らは、I.colisanans MH27-1及びMH27-2と名付けられた2つの新しい分離株を、限界希釈(dilution-to-extinction)増菌を行い、次いでプレーティングして単一コロニーを得ることによって健康なヒトドナーから単離した。I.colisanans MH27-1及びMH27-2を、TY及びPYGベースの培地上で増殖させ、典型的には、グラム不定に染色された球菌様細胞として観察された(
図2A)。
【0311】
NCBI並びにI.colisanans MH27-1及びMH27-2からの高品質GenBank及びRefSeqゲノムを使用したIntestinicoccus属の系統樹再構築は、これらの分離株がI.colisanansクレード内に高い信頼度で配置され、いくつかの非培養種に近く、Acutalibacter属の姉妹であることを明らかにした(
図2B)。I.colisanans MH27-1及びI.colisanans MH27-2は糖発酵菌であり、広範囲の炭水化物源、特にデンプン、ガラクトース及びマンノースを利用することが予測される。完全な又はほぼ完全な生合成経路が、トリプトファン、グリシン、ヒスチジン、フェニルアラニン及びチロシンを除くほとんどのアミノ酸について同定された。アミノ酸(Arg、Asp、Cys、Met、Glu、Gln、Met、Ser、及びThr)の取り込み及び発酵のためのいくつかの経路も同定されたが、主要なエネルギー源ではない可能性が高い。I.colisanans MH27-1及びI.colisanans MH 27-2分離株の代謝モデリングにより、グルコース及び他のヘキソース糖を供給した場合、発酵の主な副産物は酢酸であることが明らかになった。AntiSmashは、両方の株において2つのRiPPサクチペプチドのBGCを同定したが、公開データベース中のBGCと密接な相同性はなかった。DeepBGCは、同じサクチペプチドRiPPと、更に>1のコーディング領域及び>0.75のdeepBGCスコアを有する7つの推定BGCとを同定した。
【0312】
I.colisanansは腸管バリア機能を増強する
健常腸管におけるI.colisanansの役割を評価するために、ナイーブC57Bl/6 SPFマウスをI.colisanans MH27-1で8日間処置した(
図3A)。この処置期間中、いかなる病的状態も、一般的な外観、行動、姿勢、可動性及び神経学的行動における変化も認められなかった。同様に、I.colisanans MH27-1処置動物では、ビヒクル対照と比較して体重の有意な変化はなく、結腸の長さ及び重量/長さ比も影響を受けなかった(
図3B~D)。I.colisanans MH27-1は、上皮損傷、炎症及び過剰血管新生(hypervascularization)を単独で、又は組み合わされた病理組織学的スコアとして評価することによって決定されるように、ビヒクルと比較して結腸においていかなる有意な組織学的変化ももたらさなかった(
図3E~H)。
【0313】
本発明者らは、ビッグデータアプローチを用いて炎症性腸疾患の新規な候補となる生菌製剤を同定することができるという仮説を立てた。したがって、本発明者らは、上皮損傷及び修復の十分に実証されたモデルであるDSS誘導性マウス大腸炎の急性モデルにおいて、I.colisanans MH27-1の治療効力を試験した(
図4A)。DSS処置は、ビヒクル対照と比較して有意な疾患活動性をもたらした。体重の有意な減少が認められ(
図4B)、これは大腸炎の正確かつ信頼できる指標であることが示されている(Britto,2019)。予想通り、プレドニゾンはDSS誘導性体重減少を悪化させたが(Yamamoto,2013)、DSS誘導性体重減少はI.colisanans MH27-1又はF.prausnitzii A2-165による処置により改善した(
図4B)。内視鏡分析では、全ての処置群において疾患活動性の進行性の増加が明らかとなり、プレドニゾンではなくF.prausnitzii A2-165及びI.colisanans MH27-1が、6日目にビヒクル処置群と比較して低い疾患活動性をもたらした(
図4C)。
【0314】
DSS処置マウスの組織学的分析では、陰窩喪失、上皮びらん及び潰瘍形成を特徴とする顕著な腸管損傷が明らかとなった。特に、I.colisanans MH27-1による処置は、病理組織学的治癒(
図4E)及び上皮損傷(
図4F)の改善によって証明されるように、陰窩再形成及び再上皮化を特徴とする病理の有意な改善をもたらした(
図4D)。予想通り、プレドニゾン及びF.prausnitzii A2-165もまた、疾患病理の有意な改善をもたらした。
【0315】
DSS大腸炎の急性マウスモデルにおけるI.colisanans MH27-2の治療効力を、陽性対照薬として作用するプレドニゾンを用いて調べた。DSS処置は、結腸組織損傷及び炎症の病理組織学的スコアリングによって証明されるように、有意な大腸炎をもたらした。
【0316】
大腸炎の組織学的所見は、I.colisanans MH27-2又は陽性対照薬であるプレドニゾンによる毎日の処置によって改善された。特に、I.colisanans MH27-2で毎日処置したDSS処置マウスの総組織学的スコアは、DSS対照マウスと比較して有意に低かった(
図4G)。この効果は、組織学的サブスコアの各々についても観察され、I.colisanans MH27-2による処置が、DSS処置マウスにおける上皮損傷(
図4H)及び炎症(
図4I)の両方を減少させたことを実証した。
【0317】
DSS大腸炎の急性マウスモデルにおけるI.colisanans MH27-2原薬(DS)の治療効力を、ミノサイクリン及びプレドニゾンを陽性対照として用いて調べた。DSS処置は、インビボでの大腸炎測定(疾患活動性指数、体重、便潜血)及び結腸組織への病理組織学的損傷(組織構造スコア及びサブスコア)の両方によって証明されるように、有意な大腸炎をもたらした。
【0318】
疾患活動性指数は、1日あたり2×10^6細胞の用量でI.colisanans MH27-2 DSによって毎日処置することにより(
図4J)、又は陽性対照ミノサイクリンによって有意に改善された(p<0.05)。特に、体重変化(
図4K)及び便潜血(
図4L)の疾患活動性指数サブスコアは、I.colisanans DS又はミノサイクリンによる毎日の処置によって改善された。総病理組織学的スコアは、1日あたり2×10^8細胞の用量で、ミノサイクリン又はI.colisanans MH27-2 DSのいずれかで毎日処置したDSS処置マウスにおいて有意に改善された(
図4M)。この治療効果は、粘膜構造スコア(
図4N)、びらん/潰瘍形成スコア(
図4O)及び病変スコアパーセント(
図4P)の改善によって特徴付けられた。
【0319】
IL-23-Th17細胞免疫軸は、炎症性腸疾患の病因の中心であり、検証された治療標的である(Friedrich,2019)。マウス大腸炎のDSSモデルはTh1極性免疫に主に基づいているため(Yang,2017)、本発明者らはまた、マウスSKGモデルにおけるI.colisanans MH27-1の治療効力も試験した。SKGマウスは、ZAP-70遺伝子に変異を有し、カードラン処置による発病後、IL-23駆動型クローン病様回腸炎及び自己免疫性炎症性関節炎を発症する(
図5A)(Benham,2014を参照)。ビヒクル処置マウスの組織学的分析では、カードラン処置の7日後に炎症細胞の浸潤及び肉芽腫形成を特徴とする有意な腸管損傷が明らかとなった。予想通り、抗IL-23モノクローナル抗体による処置は、組織学的損傷の有意な減少をもたらした。I.colisanans MH27-1による処置はまた、病理組織学的スコアの改善によって証明されるように、病理の有意な改善をもたらした(
図5B)。同様に、I.colisanans MH27-1による処置はまた、IL-6及びIL-12(IL-12p70)を含む疾患の病因の中心となるサイトカインの産生の有意な減少をもたらした(
図5C、D)。
【0320】
TNBS誘導性大腸炎の急性マウスモデルにおけるI.colisanans MH27-2の治療効力も、陽性対照としてシクロスポリンAを用いて調べた(
図5E)。TNBSモデルは、クローン病と免疫病理を共有するため広く使用されている。TNBS処置は、シクロスポリンA又はI.colisanans MH27-2による処置によって改善された有意な肉眼的損傷をもたらした(
図5F)。特に、I.colisanans MH27-2は、潰瘍/炎症スコアにおいて有意な(p<0.05)改善を示した(
図5G)。TNBS処置は、シクロスポリンA又はI.colisanans MH27-2による処置によって改善された有意な組織学的損傷をもたらした(
図5H)。びまん性粘膜構造異常、潰瘍形成、陰窩拡張、異常陰窩、陰窩喪失、粘膜腺の歪み、杯細胞喪失及び限局性から多病巣性の炎症性細胞浸潤を含む大腸炎病変は、ビヒクル群と比較してI.colisanans MH27-2においてあまり顕著ではなく、病変スコアは、個々の炎症の程度、びらん又は潰瘍形成、上皮再生及び病変スコアパーセントの改善によって反映されるように、処置群において有意に(p<0.05)減少した(
図5I~L)。I.colisanans MH27-2による処置は、ビヒクル処置TNBS対照と比較した場合、IL-6濃度の有意な減少をもたらした(
図5M)。
【0321】
まとめると、これらのデータは、I.colisanans MH27-1がDSS処置マウス又は未処置マウスにおいていかなる有害作用も引き起こさないこと、並びにI.colisanans MH27-1及び2がDSS又はTNBS処置C57Bl/6及びSKGマウスにおいて粘膜治癒を促進することを明らかにした。
【0322】
I.colisanansはSTAT3のIL-6媒介性活性化を抑制する。
炎症誘発性サイトカインIL-6レベルの上昇及びその受容体IL-6Rを介したシグナル伝達は、IBDの病因と関連している。特に、IL-6は、免疫細胞に対するその炎症誘発性及び抗アポトーシス効果に起因して、腸管における慢性炎症に寄与する。これらの効果は、MAPK/ERK及び他の下流キナーゼの活性化と組み合わせてJAKキナーゼ活性化及びSTAT3二量体化を引き起こすIL-6受容体結合によって媒介される。本明細書では、本発明者らは、I.colisanans MH27-1及びMH27-2が、HEK-Blue(商標)IL-6レポーター細胞株を使用して、IL-6の古典的及びトランスシグナル伝達媒介性のSTAT3活性化を抑制できるかどうかを調べた。HEK-Blue(商標)IL-6レポーター細胞株は、ヒトIL-6受容体を構成的に発現し、受容体へのIL-6の結合は、STAT3応答性SEAPレポーターの発現を誘発する。トファシチニブを対照として使用し、予想通り、IL-6及びIL-6/IL-6R媒介性のSTAT3活性化は、トファシチニブによって完全に防止された(
図6)。I.colisanans MH27-1、MH27-2及びMH27-3の生培養上清及びその<3kDaフィルター濾過した画分は、SEAPレポーター活性を有意に抑制し(
図6AC)、I.colisanans MH27-4及びMH27-5の生培養上清もまた、培地と比較してSEAPレポーター活性を抑制した(
図DE)ことが示された。対照的に、R.bromii MCB950の生培養上清及びその<3kDaフィルター濾過した画分は、SEAPレポーター活性を有意に抑制しなかった(
図6F)。更に、I.colisanans MH27-2は、IL-6トランスシグナル伝達媒介性のSTAT3活性化を抑制した(
図6G)。
【0323】
I.colisanansは、ヒト腸上皮細胞の遊走を促進する。
IBDでは腸バリアの損傷がよく生じる。腸上皮細胞の迅速な遊走は、ホメオスタシスを再確立するための創傷治癒プロセスの重要な要素である。I.colisanans MH27-1又はMH27-2が腸上皮細胞の運動性に影響を及ぼし得るかどうかを判定するために、Transwell(登録商標)遊走アッセイを用いた。HCT116細胞をTranswell(登録商標)チャンバーの頂端に播種し、I.colisanans抽出物がチャンバーの基底側へ遊走を促進する能力を評価した。未処理細胞は、膜の基底側への基礎的な遊走レベルを有し、これはTY培地又は腸内細菌Clostridium bolteae BAA-613による処置によって影響を受けなかった(
図7A)。I.colisanans MH27-1及びMH27-2は、基底側へのHCT116細胞の遊走を有意に促進した(
図7A)。
【0324】
IncuCyteスクラッチ創傷アッセイを使用して、I.colisanansの遊走促進効果を更に確認した。スクラッチ創傷の誘導後、HCT116細胞は、培地で処置した対照細胞と比較して、I colisanans MH27-2からの抽出物の存在下で、創傷閉鎖速度の加速を示した(
図7B)。
【0325】
I.colisanans MH27はIL-23媒介性のSTAT3活性化を抑制する。
本発明者らは次に、腸内細菌I.colisanans MH27によって天然に産生される細菌産物が、IL-23媒介性のSTAT3活性化を調節することができるかどうかを調査しようとした。JAK-STAT免疫軸は、抗IL-23抗体(例えば、ウステキヌマブ)及び低分子阻害剤(例えば、トファシチニブ)を含むいくつかの承認されたIBD治療薬が標的とするJAK-STAT経路シグナル伝達(Hu et al.,2021)を伴う、IBD(Salas et al.,2020)及び他の疾患(McLornan et al.,2021)のための認識され、検証された薬物標的である。STAT3抑制は有害な炎症を減少させることができるため、I.colisanans MH27及び/又はその生物活性物質は、IBD及び他の疾患のための新規な免疫調節療法として使用できる可能性がある。したがって、本発明者らは、HEK-Blue(商標)IL-23レポーター細胞株を使用して、I.colisanans MH27が、IL-23媒介性のSTAT3活性化を抑制できるかどうかを調べた。HEK-Blue(商標)IL-23レポーター細胞株は、ヒトIL-23受容体を構成的に発現し、受容体へのIL-23の結合は、STAT3応答性SEAPレポーターの発現を誘発する。薬理学的JAK-STAT阻害剤であるトファシチニブを対照として使用した。
【0326】
予想通り、IL-23媒介性のSTAT3活性化は、トファシチニブによって完全に防止された(
図8)。I.colisanans MH27無細胞培養上清及び<3kDaフィルター濾過した培養上清は、TY培地対照と比較してSEAPレポーター活性を有意に抑制した。対照的に、Ruminococcus bromii MCB950から調製した生の上清も<3kDaフィルター濾過した上清も、MCM培地対照と比較してSEAPレポーター活性を抑制しなかった(
図8、右側のグラフ)。
【0327】
これらのデータは、R.bromii MCB950ではなく、I.colisanans MH27のセクレトームがインビトロでIL-23/STAT3シグナル伝達軸を抑制できることを示している。培養上清の分画に基づくと、STAT3活性化に対する抑制効果は、1以上の分泌された低分子量生物活性物質によって媒介されるようである。
【0328】
I.colisanansは、IFNγ駆動性の腸管バリア完全性の減少を改善する。
I.colisanans MH27培養上清がバリア機能を調節する能力を、T84細胞を用いて調べた。バリア機能を破壊するために、IFNγによる基底側処理を用いた。IFNγをT84細胞に48時間添加した後、バリア透過性の増加を示す耐性の大きな低下があった。I.colisanans MH27からの<3kDaの分画培養上清による処置は、YG/V培地対照と比較して、168時間後に最も顕著にTEERの減少を改善した(
図9、二元配置分散分析によって評価して、168、192、216、240、288、312及び336時間でp<0.05)。
【0329】
I.colisanansは、IL-6駆動性の腸管バリア完全性の減少を改善する。
I.colisanans MH27-2がバリア機能を調節する能力を、既知のバリア破壊因子IL-6によるバリア完全性の喪失の誘導中及び誘導後にT84細胞のTEERをモニタリングすることによって調べた。T84細胞をIL-6で96時間処理し、予想通り、バリア透過性の増加を示すTEERの有意な低下を観察することができた。I.colisanans MH27-2培養上清抽出物による同時処置は、IL-6媒介性のTEER減少を用量依存的に改善した(
図10)。
【0330】
I.colisanansは、IFNγ媒介性のZO1発現減少を改善する。
タイトジャンクション(TJ)は、上皮細胞間の連続的なバリアを形成し、傍細胞透過性を制御するように作用する。ZO1はタイトジャンクションの集合に重要な役割を果たしており、したがって、本発明者らは、I.colisanans MH27上清抽出物がT84細胞においてIFNγ媒介性のZO1発現喪失を軽減する能力を評価した。IFNγによる刺激は、ZO1発現の顕著な減少を引き起こした(
図11)。YG/V抽出物による前処理は、ZO1発現の減少に有意な影響を及ぼさなかった(
図11)。対照的に、I.colisanans MH27-1、MH27-2及びMH27-3上清抽出物による前処理は、IFNγ誘導性のZO1発現減少を改善した(
図11)。
【0331】
I.colisanansは、腸管バリア完全性を調節する代謝産物を産生する。
I.colisanans上清抽出物がZO1発現を調節する能力に基づいて、本発明者らは、次に、I.colisanans MH27-2培養上清のStrata X-100由来画分がZO1発現を調節する能力を調べた。このアプローチによって、本発明者らは、ZO1発現を調節する能力は分画可能であり、15%及び30%の画分に局在化していたことを決定した(
図12A~C)。
【0332】
I.colisanans MH27によって産生される代謝産物は、IFNγ媒介性のZO1発現減少を改善する。
これらのデータに基づいて、本発明者らは、I.colisanansが、腸管上皮細胞における炎症反応及びバリア完全性を調節する代謝産物を産生すると仮定した。30個の代謝産物(レベル1又は2aとして分類される)が無細胞培養上清において同定され、YG/V培地対照と比較して1.5倍以上増加していた(表4)。これらには、炎症、免疫細胞浸潤、酸化ストレス及びバリア機能を調節することが以前に報告された代謝産物(例えば、オルニチン、インドール-3-乳酸、アロプリノール、プロピオニルカルニチン、ピロガロール、3-(2-ヒドロキシエチル)インドール、及びN-アセチル-システインなど)が含まれた。更に、15%画分及び30%画分でそれぞれ29及び48の代謝産物が、YG/V培地対照と比較して1.5倍以上増加した(表4)。これらには、炎症及びバリア完全性を調節することが以前に示された代謝産物(例えば、トリプトホール、インドール-3-乳酸、インドール-3-プロピオン酸、シクロ(-Phe-Pro))が含まれた。免疫調節代謝産物であるインドール-3-アクリル酸も、60%画分において同定された。なお、一部の同定された代謝産物は対照試料中に存在せず、したがって、倍率変化を計算することができなかった。
【0333】
候補となる腸管バリア調節代謝産物を同定したので、本発明者らは、次に、T84細胞におけるIFNγ媒介性のZO1発現喪失を調節する選択された代謝産物の能力を評価した。このために、T84細胞を、オルニチン、インドール-3-アクリル酸(IAyA)、又はインドール-3-プロピオン酸(IPA)で18時間前処理した後、IFNγで48時間刺激した。以前に観察されたように、IFNγによる刺激は、ZO1発現の顕著な減少を引き起こした(
図13A、B)。オルニチン、IAyA及びIPAによる前処理は全て、IFNγ誘導性のZO1発現減少を有意に改善した(
図13A、B)。それとは別に、本発明者らはまた、シクロ(-Phe-Pro)がIL-23媒介性のSTAT3活性化を抑制することも確認した(
図13C)。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【0334】
I.colisanansは抗炎症性IL-10/IL-12サイトカイン比を示す
以前の研究は、細菌がインビトロでPBMCからIL-10及びIL-12の分泌を誘導する能力が、それらのインビボ免疫調節能力と相関することを示している(Foligne et al.,2007;及びSokol et al.,2008)。特に、IL-10:IL-12比は、抗炎症性(高いIL-10:IL-12比)又は炎症誘発性(低いIL-10:IL-12比)を示す株を区別するために広く使用され、5を超える平均IL-10:IL-12比は、TNBS誘導性実験的大腸炎に対する保護と相関する。したがって、PBMCからサイトカイン産生を誘導するI.colisanansの能力を評価した。
【0335】
I.colisanansによる処置では、IL-10:IL-12比が30となり(
図14)、これは、上記データにおいて観察された強い抗炎症活性を更に実証する。
【0336】
I.colisanansはNF-κB抑制活性を示す
NF-κBシグナル伝達軸は、炎症性腸疾患(IBD)の病因において重要な役割を果たし、認識され、検証された治療標的である。本発明者らは、I.colisanans MH27-2、MH27-3及びMH27-5無細胞培養上清及び<3kDaフィルター濾過した培養上清が、培地対照と比較してルシフェラーゼレポーター活性を有意に抑制したことを示す。対照的に、R.bromii MCB950から調製された生の上清は、培地対照と比較してレポーター活性を抑制した(
図15A、D)。
【0337】
材料及び方法
細菌株、培養条件、及び分析。
糞便試料を、胃腸障害の病歴のない健康な成人から採取し、等重量/体積の無菌無酸素グリセロール溶液と混合した(McSweeney et al.,2005)。ドナーは、糞便試料採取前の3ヶ月間、抗生物質を摂取していなかった。全ての試料は、インフォームドコンセント及びBellberry Limitedによって承認された倫理ガイドライン(HREC2018-05-400-A-6)に従って採取した。I.colisanans及びFaecalibacterium prausnitziiを、無酸素雰囲気(85%N2:10%CO2:5%H2)の雰囲気のCoyビニール嫌気性チャンバーで日常的に処理した。I.colisananはTY又はYG/V培地で日常的に培養し(表1)、F.prausnitziiはTY培地で培養した(表1)。全ての分離株を、3mLの活発に増殖している培養物を等量のグリセロール溶液と混合し、-80℃で保存することにより貯蔵した。
【0338】
I.colisanansの単離。
I.colisanansの分離株は、I.colisanansが0.37%の相対存在量で存在するドナー糞便試料をカスタム培地(トレハロース1g/L、アラニン400mg/L、トリプトファン80mg/L、メチオニン200mg/L、フェニルアラニン200mg/L、チロシン200mg/L、酪酸400μL/L、塩2 75ml/L、塩3 75ml/L、重炭酸ナトリウム8g/L、レサズリン1ml/L、塩酸システイン1ml/L、ビタミン溶液1ml/L)に接種し、その後、限界まで段階希釈することにより生成した。限界希釈培養系列を配列決定し、77%のI.colisanans相対存在量の低多様性増菌培養物を同定した。次いで、この増菌培養物を使用して、更なる限界希釈培養系列を確立し、79%を超えるI.colisanansでの低多様性増菌物を同定した。コロニーをPYG寒天上で回収し、続いてPYGブロス中に採取した。このことから、I.colisanans及びRuthenibacterium lactatiformansから構成される二培養物が同定された。純粋な培養物のI.colisanansを産生するために、二培養物をYCFAmodブロスに接種し、次いで、増菌培養物をYCFAmod寒天上に画線した。2つの異なるコロニータイプが数日後に観察され、これらを精製した。このアプローチにより、グラム不定に染色された球菌様分離株を同定し、全ゲノム配列決定後、I.colisanans MH27-1と名付けた。
【0339】
I.colisanans MH27-2の分離株は、I.colisanansが0.38%の相対存在量で存在するドナー糞便試料をカスタム培地(マルトース1g/L、アラニン400mg/L、トリプトファン80mg/L、メチオニン200mg/L、フェニルアラニン200mg/L、チロシン200mg/L、ヒスチジン125mg/L、塩2 75ml/L、塩3 75ml/L、重炭酸ナトリウム8g/L、レサズリン1ml/L、塩酸システイン1ml/L、ビタミン溶液1ml/L)に接種し、その後、限界まで段階希釈することにより生成した。限界希釈培養系列を配列決定し、72.6%のI.colisanans相対存在量の増菌物を同定した。増菌物をPYGプレート上に画線し、球菌様細胞形態を有する分離株を同定した。精製後、グラム不定に染色された球菌様分離株を同定し、全ゲノム配列決定後、I.colisanans MH27-2と名付けた。
【0340】
I.colisanans MH27-3の分離株は、I.colisanansが0.38%の相対存在量で存在するドナー糞便試料をカスタム培地(マルトース1g/L、アラニン400mg/L、トリプトファン80mg/L、メチオニン200mg/L、フェニルアラニン200mg/L、チロシン200mg/L、ヒスチジン125mg/L、塩2 75ml/L、塩3 75ml/L、重炭酸ナトリウム8g/L、レサズリン1ml/L、塩酸システイン1ml/L、ビタミン溶液1ml/L)に接種し、その後、限界まで段階希釈することにより生成した。限界希釈培養系列を配列決定し、14.5%のI.colisanans相対存在量の増菌物を同定した。この増菌物を使用して、同じGDI培地中で第2の限界希釈実験に接種し、新たな28%増菌物のI.colisanansと、他の細菌種が27%未満の相対存在量で得られた。増菌物をYG/V上にプレーティングし、グラム不定に染色された球菌様細胞からなる単一コロニーを同定した。コロニーを採取し、YG/V寒天上に更に2回画線した。全ゲノム配列決定の後、純粋な分離株をI.colisanans MH27-3と名付けた。
【0341】
I.colisanans MH27-4、MH27-5及びMH27-6を、微生物ベースの単一細胞選別アプローチを使用してドナーの糞便試料から産生した。I.colisanans MH27-4については、I.colisanansを相対存在量0.3%で含む約1gの糞便試料を1mLの嫌気性緩衝希釈溶液と混合し、10秒間ボルテックスして、糞便残渣から細菌を分離した。I.colisanans MH27-5については、I.colisanansを相対存在量0.67%で含む約1gの糞便試料を1mLの嫌気性緩衝希釈溶液と混合し、10秒間ボルテックスして、糞便残渣から細菌を分離した。I.colisanans MH27-6については、I.colisanansを相対存在量2.5%で含む約1gの糞便試料を1mLの嫌気性緩衝希釈液と混合し、10秒間ボルテックスして、糞便残渣から細菌を分離した。Ruminococcus bromii MCB950も、微生物ベースの単一細胞選別アプローチを使用してドナーの糞便試料から同様に生成し、比較分析に使用した。R.bromii MCB950については、R.bromiiを相対存在量5.5%で含む約1gの糞便試料を1mLの嫌気性緩衝希釈溶液と混合し、10秒間ボルテックスして、糞便残渣から細菌を分離した。細菌細胞を、100μmノズル及び小粒子検出器を備えたBD FACSAria(商標)Fusion Flow Cytometerを製造業者の指示に従って使用して選別した。システムを20psiで加圧し、0.2μmのフィルターで濾過されたPBSを用いて設定された、ノイズフロアから少しのイベントを許容する閾値で、散乱に基づいてイベントがトリガーされた。細菌細胞をまた、COY嫌気性チャンバー内でCytoFLEX SRT Benchtopセルソーターを使用して選別した。製造業者の指示に従って機器をセットアップし、品質管理した。ドライアイスを嫌気性チャンバー内に入れて、機器を設定温度範囲内に維持した。Fusion及びSRTのシースを窒素ガスで1時間スパージした後、選別した。細菌細胞を選別するために、アリコートを40μmフィルターを通して濾過し、続いて、0.2μmのフィルターで濾過された嫌気性緩衝希釈溶液(すなわち、塩溶液2及び3(McSweeney et al.,2005)を各々38ml/L)を使用して、濾液の10
-3希釈液を調製した。希釈された濾液を流して、1秒あたり500~1200イベントをもたらす希釈を決定した。標的を散乱に基づいてゲーティングし、ダブレットを除外した(
図16)。単一細胞をTY寒天プレート上に置き、37℃で最大3週間インキュベートした。分離株は、TYブロス中で増殖させた後、全ゲノム配列決定によって同定した。このアプローチにより、I.colisanans及びR.bromiiに属する分離株を暫定的に同定した。I.colisanans分離株をYG/V寒天上で単一コロニーを繰り返し画線することによって精製し、R.bromiiをTY寒天上で単一コロニーを繰り返し画線することによって精製した。最終精製分離株をグリセロールストックし、全ゲノム配列決定に供し、このアプローチによりI.colisanans MH27-4及びMH27-5と名付けられた分離株を生成した。
【0342】
I.colisanans MH27-6については、TYブロス中で細胞選別された分離株の増殖後に、10.6%の相対存在量でI.colisanans MH27-6を含有する増菌物を同定した。この増菌物のグリセロールストックから、200μlを使用してYG/V培地に接種し、I.colisanansを71.5%相対存在量まで増菌した。I.colisanansコロニーを生成し、続いてYG/V寒天上に画線することによって精製した。最終精製分離株をグリセロールストックし、全ゲノム配列決定に供し、このアプローチによりI.colisanans MH27-6と名付けられた分離株を生成した。
【0343】
代謝の再構築。
タンパク質コード配列を予測し、enrichM(0.6.2)のアノテート機能を用いてアノテートした。簡単に説明すると、enrichMは、prodigal(バージョン)を-p metaモードで使用してタンパク質コード配列を同定する。次いで、アミノ酸配列を、DIAMOND(バージョン)を使用してUniRef100データベース(バージョン)に対して検索し、E.C.、TCDB及びeggnog分類は、UniRefとともに配布されたidマッピングファイルから引き継がれる。Pfam(リリース33.0)、TIGRFAM(リリース15.0)、及びdbCAN2(2019年9月にダウンロード)に対してHmmer hmmsearches(バージョン3.1b2)を用いて、機能ドメイン、主要代謝マーカー及び糖質活性(CAZy)酵素をそれぞれアノテートした。代謝経路は、手動で定義された代謝経路定義に対してアノテーション及びそれらのゲノム位置を評価するenrichMの分類機能を用いて同定された。経路は、必要とされるタンパク質の80%超をコードし、全ての必要とされるシンテニーチェックにパスする場合、ゲノム中に存在するとみなされる。次いで、これらの自動的に予測された経路を手動で評価した。更に、gutSMASH(バージョン1.0.0)を適用して、腸内マイクロバイオームによって媒介される共通の機能を同定した。
【0344】
系統樹。
GTDB r89の種代表樹におけるクレード23560を、Rライブラリーphytools(v0.7.70)、ape(v5.4)及びggtree(v2.2.4)を用いて可視化した。Intestinococcus属(NCBI r89)及びMH27分離株内の高品質ゲノム(checkM分析により90%以上の汚染 及び5%以下の汚染)から別個のゲノムツリーを構築した。各ゲノムについて、122個の細菌特異的保存マーカー遺伝子のセットを、gtdbtk identifyを使用して各ゲノムから抽出した。これらの遺伝子をプロファイルHMMにアラインメントし、gtdbtk alignで単一アラインメントに連結され、FastTree(v2.1.10)とgtdbtk inferを使用してアラインメントから最尤系統樹を構築した。ノンパラメトリックブートストラップ値を、GenomeTreetk(v0.1.6)を用いて1000回の反復から推定した。
【0345】
動物実験のための細菌株の調製。
I.colisanans株を、PYG又はYG/V中で初期定常期まで増殖させた。F.prausnitziiをTY培地中で増殖させた。個々の培養物の細胞密度を、Helberカウンティングチャンバーを用いて計算した。細菌の強制経口投与溶液を調製するために、個々の培養物を滅菌ミネラルオイル層の下で5000gで10分間遠心分離し、次いで無細胞上清を廃棄した。細胞ペレットを1.5mlの無菌嫌気性緩衝液(塩溶液2及び3(McSweeney et al.,2005)を各々38ml/L、1mL/Lの0.1%(w/v)レサズリン溶液、1g/LのL-システイン)で洗浄した後、再び遠心分離した。最後に、洗浄した細胞ペレットを、半分の含量のグリセロール溶液(無酸素緩衝希釈液中15%v/vグリセロール溶液)中に再懸濁して最終濃度を1×109細胞/mlにし、アリコートに分け、必要になるまで-80℃で凍結した。細胞調製物の生存率は、単一のアリコートを解凍し、寒天プレート上に画線することによって確認した。個々の株調製物の同一性及び純度を、全ゲノム配列決定によって確認した。
【0346】
DSS誘導性大腸炎の急性モデル。
予防モデルのために、Animal Resources Centers(Western Australia,Australia)から購入した6週齢のC57BL/6雌マウスを無作為化し、次いで実験の前に7日間共飼育した。疾患を誘導するために、マウスに6日間、飲料水中3.5%のDSSを自由摂取させた。未処置の年齢が一致した対照マウスを処理し、DSSを含まない飲料水を与えた。全ての処置をDSSの提供の1日前に開始し、全てのマウスを最後のDSS処置の2日後に屠殺した。処置のために、マウスをイソフルオランで麻酔し、200μLの細菌調製物又はビヒクル対照を強制経口投与した。プレドニゾン(2mg/kg)を麻酔後に腹腔内注射によって投与した。体重及び便の硬さを毎日記録した。糞便試料を毎日採取した。屠殺後、結腸、肝臓及び脾臓を採取して分析した。心臓穿刺によって血液を採取した。
【0347】
治療モデルのために、10匹又は20匹の雌C57BL/6マウスの群を使用した。健常群以外の全ての動物に、合計6日間(0日目~5日目)、飲料水中2.5%のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を与えた。次いで、DSSを中止し、更に5日間(6日目~10日目)、通常の飲料水で置き換えた。処置のために、マウスに、200μLのI.colisanans MH27-2を1日あたり2×10^8生細胞の用量で、又は滅菌グリセロール及びリン酸緩衝塩溶液からなるビヒクルを1日1回強制経口投与した。陽性対照薬であるプレドニゾンを同様に、1日あたり2mg/kgの用量で強制経口投与した。処置を4日目に開始し、10日目まで7日間連続して与えた。10日目に、最終処置の約4時間後に動物を屠殺した。結腸を採取し、すすぎ、秤量し、写真撮影し、縦方向に切断した。結腸組織を4%のホルマリン中で固定し、Swiss-roll法を使用する病理組織構造を得るために70%エタノール中で維持した。
【0348】
内視鏡的及び組織学的スコアリング。
動物を、-1、2及び6日目に小動物胃腸内視鏡(Karl Storz Endoskope,Tuttlingen,Germany)で検査して、結腸粘膜炎症の程度を評価した(Marks,2015;及びLiu,2019)。簡単に説明すると、マウスをイソフルランで麻酔し、大腸内視鏡を直腸から挿入した。高精細度ビデオによって撮像された画像を盲検法で検査して、疾患病理の存在及び程度を評価した(表5)。組織学的スコアリングを、本質的にMarksら(Marks,2015)によって記載されるように実施した。簡単に説明すると、試料を4%ホルマリン中で固定し、パラフィン包埋し、切片化した。組織切片をヘマトキシリン及びエオシン染色して疾患病理を評価し、アルシアンブルーでムチン産生を評価した。スライドを、Aperioデジタルイメージングシステム(Leica Biosystems,Nuβloch,Germany)を用いてイメージングした。大腸炎の重症度を等級付けするために、組織切片における炎症及び上皮損傷の程度を、確立されたスコアリングシステムを使用して半定量的に等級付けした(表6)。次いで、試料を無作為化し、その後、訓練を受けた胃腸管病理学者によって盲検下でスコアリングした。
【0349】
マウス回腸炎のSKGモデル。
5週齢のSKG雌マウス(n=3匹の雄;n=3匹の雌)を無作為化し、次いで、実験前に3週間共飼育した。疾患を誘導するために、マウスにカードラン(1,3-β-グルカン、マウスあたり3mg)を腹腔内(i.p.)投与した。未処置の年齢が一致した対照マウスを、生理食塩水を腹腔内投与したこと以外は同様に処理した。全ての処置をカードランの投与前に開始し、全てのマウスをカードラン処置の7日後に屠殺した。細菌処置のために、カードラン投与の2日前から200μlの細菌調製物又はビヒクル対照をマウスに強制経口投与した。抗マウスIL-23 p19モノクローナル抗体(Thermo Fisher、30μg/マウス)を、カードラン投与の1日前に腹腔内注射によって投与した。糞便試料を毎日採取した。-2日目、0日目、7日目に体重を測定した。屠殺後、結腸、遠位小腸、腸間膜リンパ節及び脾臓を採取し、分析した。心臓穿刺によって血液を採取した。
【0350】
臨床的及び組織学的スコアリング。
組織学的スコアリングを、本質的にBenham et al.2014によって記載されるように実施した。簡単に説明すると、試料を4%ホルマリン中で固定し、パラフィン包埋し、切片化した。組織切片をヘマトキシリン及びエオシン染色して疾患病理を評価し、アルシアンブルーで杯細胞を評価した。スライドを、Olympus VS120スライドスキャナー(Olympus Corporation,Tokyo,Japan)を用いてイメージングした。回腸炎の重症度を等級付けするために、組織切片における炎症及び上皮損傷の程度を、確立されたスコアリングシステムを使用して半定量的に等級付けした(表7)(Benham et al.,2014)。次いで、試料を無作為化し、その後、独立した訓練を受けた病理学者によって盲検法でスコアリングした。
【0351】
血清中に存在するサイトカインを特性決定するために、マウスをCO2窒息によって安楽死させ、その後、血液を心臓採血により採取し、血清を遠心分離によって単離した。血清試料を-80℃で保存した。その後、これらの血清試料を解凍し、LEGENDplexマウス炎症パネル(13-plex)(BioLegend,Cat.740446)を用いて、サイトカイン産生(IL-23、IL-1α、IFN-γ、TNF、MCP-1、IL-12p70、IL-1β、IL-10、IL-6、IL-27、IL-17A、IFN-β、GM-CSF)に対する効果を決定した。血清試料を2倍に希釈し、次いで、特定の分析物に対する抗体にコンジュゲートした捕捉ビーズとともにインキュベートした。洗浄後、ビオチン化検出抗体混合物を添加して、「捕捉ビーズ-分析物-検出抗体」サンドイッチを作製する。ストレプトアビジン-フィコエリトリン(SA-PE)を添加して、ビオチン化検出抗体に結合させる。最後の洗浄後、混合物をフローサイトメトリーによって分析し、ビーズをサイズ及び内部蛍光強度によって区別する。サイトカイン濃度を、PE蛍光、及びBioLegendのLEGENDplexデータ分析ソフトウェアを使用した既知のサイトカイン濃度の標準曲線との比較によって決定する。ビーズの固有のサイズ及び蛍光特性は、13のサイトカインの同時測定を可能にする。
【0352】
マウス大腸炎のTNBSモデル
5匹又は10匹の雄BALB/cマウスの群を使用した。マウスを一晩(1日目)絶食させた後、2日目に2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸溶液(TNBS)でチャレンジした。TNBS(0.1mLの50%エタノール中1mg)の結腸内注入によって遠位大腸炎を誘導し、その後、動物を30秒間垂直位置に維持して、溶液が結腸内に確実に留まるようにした。処置のために、マウスに、1日目(すなわち、TNBSの1日前)から開始して5日目まで、合計5日間連続して(1~5日目)、200μlのI.colisanans MH27-2を1×10^9細胞/日、又はビヒクル(滅菌グリセロール及びリン酸塩溶液)を強制経口投与した。陽性対照シクロスポリンAは、1日目(すなわち、TNBSの1日前)から4日目まで、合計4日間連続して(1~4日目)、1日1回強制経口投与によって75mg/kg与えた。TNBSチャレンジの日には、ビヒクル、I.colisanans MH27-2及びシクロスポリンAを、TNBSの2時間前に与えた。動物を5日目に屠殺し、全ての動物から心臓穿刺により血液を採取した。結腸組織も採取し、サイトカイン測定のために液体窒素で急速凍結した。5日目に、マウスをCO2窒息により安楽死させた。各結腸を取り出し、すすいだ後、肛門から4cmのところから切断した。組織切片を10%のホルマリン中で固定し、病理組織構造を得るために70%エタノール中で維持した。
【0353】
TNBS大腸炎の肉眼的スコアリング
5日目に、マウスをCO2窒息によって安楽死させ、結腸を秤量し、それらの長さを測定した。更に、結腸切除前に腹腔を開いた際に、結腸と他の器官との間の癒着が認められ、各結腸の切除及び秤量後に結腸潰瘍の存在が認められた。肉眼的スコアリングを行い(表8)、無傷の結腸の写真を撮影した。
【0354】
TNBS大腸炎の病理組織学的スコアリング
各結腸を取り出し、すすぎ、肉眼的にスコアリングし、写真撮影し、秤量し、その長さを測定し、次に肛門から4cmのところから2つの部分に切断した。一方の部分は10%のホルマリン中で固定し、病理組織構造を得るために70%エタノール中で維持し、もう一方の部分はサイトカイン測定(IL-6)のために液体窒素で瞬間凍結した。組織学的分析のために(大腸炎スコアリング;本質的にDieleman LA et al.,1998によって記載されている通りである)、4マイクロメートルの組織切片を切断し、光学顕微鏡(LEICA DM2700 M,USA)下でヘマトキシリン及びエオジン(H&E)で染色した。組織学的基準には、粘膜構造の異常、炎症の程度、びらん又は潰瘍形成、上皮再生、及び疾患プロセスによる病変率(%)が含まれた。スコアリングは、動物ごとに各結腸からの2つの切片を調べることによる観察者の所見に基づいた。大腸炎の総スコア(総大腸炎指数)を加え、組み合わされた組織学的スコアは0~40の範囲となった(表9)。サイトカインは、Millipore ELISAキット並びに製品情報及びマニュアルから適合させたプロトコルを使用して測定した。2つの切片について0~20の間でスコアリングし、合計0~40の範囲のスコアを加算する。
【0355】
細胞遊走分析。
TRANSWELL遊走アッセイを使用して、I.colisanans培養上清抽出物への曝露中のHCT116細胞の遊走を評価した。これらの細菌抽出物は、本質的にColosimoら(Colosimo,2019)によって以前に記載されたように、Amberlite XAD-7樹脂を使用して調製した。簡単に説明すると、単一コロニーを接種し、初期定常期まで増殖させた。この「種培養」ブロスを使用して600mLのTYブロスに接種し、培養物を初期定常期までインキュベートした。培養物を4000gで30分間遠心分離し、次いで製造業者の指示に従って3kDaフィルターに無細胞上清を通す(Sartorius Vivaflow(登録商標)50 Ultrafiltration Unit 3 kDa MWCO PES)ことによって、培養上清を調製した。活性化されたAmberlite XAD-7樹脂を400mLの3kDaフィルター濾過した無細胞上清(10%w/v)に添加し、スラリーを4℃で一晩穏やかに振盪した。樹脂を回収し、400mLの脱イオン水で洗浄し、次いで120mLの100%メタノールと混合した。穏やかに振盪しながら2時間インキュベートした後、メタノール溶出液を回収した。120mLの100%メタノール中での第2の溶出を前述のように行い、2つの溶出液を最終的に合わせ、ロータリーエバポレーターを使用して真空下で乾燥させた。抽出物を100%DMSO中に完全に再懸濁し(以後、1000×と呼ぶ)、-20℃で保存した。
【0356】
ヒトHCT116腸管上皮細胞を、10%FBS及び1%Pen/Strepを添加したMcCoys 5a培地中で維持した。Transwell(登録商標)アッセイを介して細胞遊走を評価するために、3.5×104個のHCT116細胞を、24ウェルプレート(8μm孔径、Corning Costar)中のTC処理ポリカーボネート膜を有する6.5mmインサートの上部区画中の100μLの10%FBS培養培地に播種した。600μlの10%FBS培養培地を下部区画に添加した。細胞を24時間静置した。DPBS洗浄後、100μL及び600μLの0.5%FBS培地を上部区画及び下部区画に各々添加した。次いで、I.colisanansからの0.5倍濃縮抽出物を下部区画に添加した。16時間後、細胞をDPBSで洗浄し、膜の上部に付着した細胞をコットンチップで慎重に取り除いた。次いで、膜の底部の遊走細胞を70%エタノール中で10分間固定し、続いて0.25%クリスタルバイオレット中で5分間染色した。Transwell(登録商標)インサートを水で洗浄し、乾燥させ、膜を50%グリセロール水溶液でスライドガラス上に載せ、直ちにイメージングした。Transwell(登録商標)実験を生物学的及びテクニカルトリプリケートで行い、各レプリケートについて、膜の2つの代表的な画像を10倍の倍率で撮影した。遊走細胞の数を、ImageJを使用して自動的に計数し、平均細胞数を表示した。細胞遊走の程度は、3つの生物学的レプリケート及び3つのテクニカルレプリケートからのウェルあたり2つの顕微鏡視野における遊走細胞の平均数として表した。
【0357】
IncuCyte(登録商標)生細胞イメージングシステム(Essen BioScience)及びトランスウェル遊走アッセイを使用して、I.colisanansからの滅菌培養上清への曝露中のHCT116細胞の遊走を評価した。ヒトHCT116腸管上皮細胞を、10%FBS及び1%Pen/Strepを添加したMcCoys 5a培地中で維持した。IncuCyte(登録商標)スクラッチ創傷アッセイでは、3.5×10
4個のHCT116細胞を、ポリ-L-オルニチンでコーティングされたIncuCyte(登録商標)ImageLock 96ウェルプレート(Essen BioScience)上にプレーティングした。24時間後、IncuCyte(登録商標)WoundMakerツールを使用して、ほぼコンフルエントな細胞単層において均質なスクラッチ創傷を誘導した。細胞をDPBSで2回洗浄し、200μLの0.5%FBS McCoys 5a培地中にて0.3倍のI.colisanas上清抽出物(以下の「細菌上清及び培地抽出物の調製」項において既に記載のようにAmberlite XAD-7樹脂を使用して調製したもの)を添加して処理した。同様に調製した細菌培地抽出物を陰性対照とした。刺激剤を添加した直後に、プレートをIncuCyte(登録商標)システムに移し、72時間にわたって2時間ごとに各ウェルをイメージングすることによって細胞遊走をモニターした。データ解析は、統合解析ソフトウェアを用いて行った。
【表6】
【表7】
【表8】
総組織構造スコアについては、切片1、2及び3からのスコアを加え、病変した断面積を乗じる。
【表9】
【表10】
【0358】
IL-6及びIL-6/IL-6R媒介性STAT3抑制活性の特性評価。
IL-6及びIL-6/IL-6R媒介性STAT3抑制活性を評価するために、3つの独立したコロニーを接種し、初期定常期まで増殖させた。次いで、各種培養ブロスを使用して2つのテクニカルレプリケートに接種し、各々3つの生物学的レプリケートからの6つのテクニカルレプリケートを生成した。テクニカルレプリケートを初期定常期まで増殖させ、次いで無細胞培養上清を以前に記載されているように回収した(Giri et al.,2019)。培養上清を製造業者(Merck Millipore)の指示に従って3kDaのCENTRICON(登録商標)カラムに通すことによってサイズ分画した。
【0359】
IL-6及びIL-6/IL-6R媒介性STAT3活性を、HEK Blue IL-6細胞株(Invivogen)を使用して評価した。簡単に説明すると、1ウェルあたり50,000個の細胞を、アッセイ開始の24時間前に96ウェルプレートにトリプリケートで播種した。細菌上清又は滅菌細菌培地を最終濃度10%v/vで細胞に添加し、60分間前処理した。次いで、組換えヒトIL-6(2ng/mL)又はIL-6/IL-6R複合体(400ng/mL)(R&D systems)を添加し、細胞を37℃で24時間インキュベートした。IL-6又はIL-6/IL-6R媒介性STAT3活性化を抑制する上清の能力を、ヤヌスキナーゼ阻害剤トファシチニブ(10μM)と比較した。24時間後、STAT3調節性SEAPレポーター活性を、製造業者(Invivogen)によって推奨されるようにQuanti Blue溶液を使用して評価した。結果は、3回(IL-6)又は1回(IL-6/IL-6R)の独立した実験の平均である。細胞毒性を、CellTiter-Glo(登録商標)2.0細胞生存率アッセイ(Promega,Australia)を製造業者によって推奨されるように使用して評価した。
【0360】
IL-23媒介性STAT3抑制活性の特性評価。
I.colisanans MH27-3上清試料を、標準プロトコルを使用して調製した。簡単に説明すると、目的の細菌の3つの独立したコロニーを接種し、初期定常期まで増殖させた。次いで、3つの生物学的レプリケートからの各種培養ブロスを使用して2つのテクニカルレプリケートに接種し、それにより6つのテクニカルレプリケートを生成した。テクニカルレプリケートを初期定常期まで増殖させ、次いで生の無細胞培養上清を回収した。培養上清をまた、製造業者(Merck Millipore)の指示に従って、3kDa CENTRICON(登録商標)カラムに通すことによってサイズ分画した。2つの生物学的レプリケートを使用して4つのテクニカルレプリケートを生成したことを除いて、R.bromii MCB950上清試料を同様に調製した。
【0361】
IL-23媒介性STAT3活性を、HEK Blue IL-23細胞株(Invivogen)を使用して評価した。簡単に説明すると、HEK-Blue IL-23レポーター細胞株を、IL23R、STAT3及び分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子で安定的にトランスフェクトする。IL-6による刺激は、SEAPのSTAT3依存性発現をもたらす。SEAPは培地中に分泌され、SEAP発現の程度はQUANTI-Blue溶液を用いて定量化することができる。HEK-Blue IL-23細胞を、製造業者の指示に従って10%FBSを添加したDMEM中で培養した。
【0362】
IL23-STAT3アッセイのために、HEK-Blue(商標)IL-23細胞株の50,000個の細胞を96ウェルプレート中で一晩増殖させた。上清を、5ng/mLの最終濃度のIL-23とともに、10%、25%又は50%v/vの最終濃度で最初に試験した。本明細書で実証された全ての実験及び処理について、上清は25%(v/v)の最終濃度で試験した。IL-23を5ng/mLの最終濃度で試験し、トファシチニブを5μMの最終濃度で試験した。IL-23単独及びトファシチニブを伴うIL-23を、IL-23シグナル伝達の陽性対照及び陰性対照としてアッセイに含めた。処理した細胞を37℃で6時間インキュベートした。
【0363】
SEAP産生をQUANTI-Blue(商標)溶液を用いて定量化し、PHERAstar FSプレートリーダー(BMG Labtech)を用いて630nmでの光学密度(OD)として記録した。細菌上清によるSTAT3シグナル伝達の阻害を、その関連培地対照のSTAT3シグナル伝達活性化と比較した。注目すべきことに、場合によっては、培地対照自体があるレベルのSTAT3シグナル伝達阻害を示したが、関連リードの効果は、多くの場合、その培地よりも強力であった。
【0364】
全ての実験は、少なくともトリプリケートで行った。全てのデータは、少なくとも3つのテクニカルレプリケート及び少なくとも3つの生物学的レプリケートから生成された。GraphPad Prism 9ソフトウェアを使用して、T検定及び分散分析検定を適宜実施した。
【0365】
細菌上清及び培地抽出物の調製。
細菌培養上清を、I.colisanans MH27-2の3つの独立したコロニーを接種し、初期定常期まで培養を増殖させることによって調製した。3つの「種培養物」を使用して、各々160mLのYG/Vブロスにデュプリケートで接種し、培養物を初期定常期まで再びインキュベートした。培養上清を回収し、培養物を4000gで30分間遠心分離し、次いで無細胞上清をAmicon Ultra-15 3kDa遠心フィルターに通すことによって調製した。
【0366】
細菌培養上清抽出物を、Colosimoら(前出)によって以前に記載されたように、Amberlite XAD-7樹脂を使用して調製した。簡単に説明すると、活性化されたAmberlite XAD-7樹脂を150mLの3kDaフィルター濾過した無細胞上清(10%w/v)に添加し、4℃で一晩穏やかに振盪した。樹脂を回収し、150mLの脱イオン水で洗浄し、50mLの100%メタノールと混合した。穏やかに振盪しながら2時間インキュベートした後、メタノール溶出液を回収した。25mLの100%メタノール中での第2の溶出を前述のように実施し、2つの溶出液を合わせ、真空下でロータリーエバポレーターを用いて乾燥させた。乾燥抽出物を100%DMSO中に100倍濃度で再懸濁し、-80℃で保存した。
【0367】
細菌培養上清の固相抽出画分を、Strata-X 33μMポリマー逆相カラムを使用して調製した。簡単に説明すると、コンディショニング及び平衡化の後、カラムに3kDaフィルター濾過した無細胞上清をロードし、等容量の脱イオン水で4回洗浄し、次いで15、30、60及び100%のアセトニトリルで溶出した。各溶出液を真空下でロータリーエバポレーターで乾燥させ、100%DMSO中に100倍濃度で再懸濁し、-80℃で保存した。
【0368】
LC-MS/MSベースのメタボロミクス分析。
標的化メタボロミクス分析をMS-Omics(Denmark)によって行った。簡単に説明すると、I.colisanans MH27によって産生される代謝産物を評価するために、6つの独立したコロニーを接種し、初期定常期まで増殖させた。次いで、各種培養ブロスを使用してYG/Vの2つのテクニカルレプリケートに接種し、6つの生物学的レプリケートからの12のテクニカルレプリケートを生成した。テクニカルレプリケートを初期定常期まで増殖させ、次いで、無細胞培養上清を回収した後、嫌気性チャンバー内で12,550gで3分間遠心分離した。培養上清をドライアイス上で瞬間凍結し、次いで-80℃で試験まで保存した。
【0369】
Thermo Q Exactive HF MSに連結されたThermo Scientific Vanquish LCを用いて分析を行った。エレクトロスプレーイオン化インターフェースをイオン化源として使用した。分析は、負イオン化モード及び正イオン化モードで行った。UPLCは、Catalinら(UPLC/MS Monitoring of Water-Soluble Vitamin Bs in Cell Culture Media in Minutes,Water Application note 2011,720004042en)によって記載されたプロトコルをわずかに修正したバージョンを使用して実施した。Compound Discoverer 3.1(Thermo Scientific)を使用してピーク面積を抽出した。化合物の同定は4つのレベルで行った。レベル1:保持時間(社内標準物質との比較)、正確な質量(許容偏差3ppm)、及びMS/MSスペクトルによる同定、レベル2a:保持時間(社内標準物質との比較)、正確な質量(許容偏差3ppm)による同定。レベル2b:正確な質量(許容偏差3ppm)及びMS/MSスペクトルによる同定、レベル3:正確な質量のみ(許容偏差3ppm)による同定。
【0370】
非標的メタボローム分析は、Thermo Q Exactive Plus MSに連結されたThermo scientific UltiMate 3000 UHPLCを使用して行った。0.1%ギ酸を含む3~95%アセトニトリルのグラジエントを、0.25μL/分の流速で合計85分間行った。エレクトロスプレーイオン化インターフェースをイオン化源として使用した。MSデータは、データ依存取得モードで35,000の分解能にてm/z100~1500にわたるMS1調査から取得され、1サイクルあたりCID/HCDモードで最大10回のMS2スキャンが35,000の分解能で、正又は負モードにおいて1回のマイクロスキャンが行われた。最大注入時間を100msに設定し、MS2前駆体ウィンドウを1.2m/zに設定した。規格化衝突エネルギーは、ステップエネルギーモードに設定され、20、30及び40%からの規格化衝突エネルギー(NCE)が組み合わされ、デフォルト電荷状態はz=1に設定された。MS2実験は、ピークの頂点での最初の発生の5~10秒以内に自動的にトリガーされるように設定した。動的排除時間を10秒に設定した。割り当てられていない電荷状態及び同位体ピークを有するイオン種は除外された。更なる代謝プロファイル分析及び重要な代謝産物同定を、Aronら(9)によって記載されるようなGNPSプラットフォームを使用して行った。
【0371】
バリア機能の評価。
I.colisanans MH27がバリア完全性の喪失を防止する能力を、T84腸管上皮細胞のコンフルエントな単層にわたる経上皮電気抵抗(TEER)を測定することによって評価した。T84細胞は、CellBank Australiaから購入し、5%ウシ胎児血清及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地栄養混合物12(DMEM/F12;ThermoFisher Scientific,Waltham,MA,USA)において培養した。T84細胞を0.4μm孔径の24ウェルMillicellポリカーボネート細胞培養インサート(PSHT010R5)に400μL培地中60.000細胞/ウェルの密度で播種し、24mlの培地を単一ウェルフィーダートレイに添加した。両方の区画の培地交換を2日ごとに行った。7日間の培養後、細胞培養インサートを有するプレートアセンブリの上部をフィーダートレイから24ウェルレシーバートレイ(PSMW010R5)に移し、各ウェルは800μLの培地を含有した。各ウェルのTEER値を、Millicell ERS-2 Voltohmmeterを使用して毎日測定した。全てのウェル中の細胞が1500Ωを超える安定なTEER読み取り値に達すると、実験を開始した。
【0372】
第1の実験では、T84培地中で10%v/vに希釈した3kDaフィルター濾過した細菌培地(YG/V)又は3kDaフィルター濾過したI.colisanans MH27細菌培養上清を頂端区画に添加し、1時間前処理した。次いで、IFNγ(50ng/ml)を基底区画に添加して、バリア完全性を破壊した。IFNγ処理の48時間後、基底側区画中のIFNγを含む培地を除去し、ウェルを温PBSで2回洗浄し、新しいT84培地を加えた。その後、24時間ごとに下部区画の培地を交換した。同様に、頂端区画におけるYG/V及びI.colisanans MH27-2ベース処理を24時間ごとに新たなものと交換し、TEER値を処置の直前及び直後に測定した。各々デュプリケート測定した2つの生物学的レプリケートからのデータを、対照(未処理T84細胞)と比較したTEER値のパーセンテージ差として提示した。統計的有意性は、対応のないt検定によって決定した。
【0373】
第2の実験では、2倍、1倍及び0.5倍濃度の細菌培地抽出物(YG/V)又はI.colisanans MH27-2細菌抽出物を頂端区画に添加した。次いで、IL-6(10ng/mL)を添加してバリア完全性を破壊し、96時間の処理後に除去した。24時間ごとに、処理及び培地を新しく交換し、TEER値をデュプリケートで測定した。各々デュプリケート測定した2つの生物学的レプリケートからのデータを、対照(未処理T84細胞)と比較したTEER値のパーセンテージ差として提示した。統計的有意性は、対応のないt検定によって決定した。
【0374】
タイトジャンクション関連タンパク質発現の評価。
I.colisanans MH27-1、MH27-2、及びMH27-3がIFNγ-媒介性の閉鎖帯1(ZO1)発現喪失を防止する能力を、免疫蛍光染色及び共焦点顕微鏡によって評価した。T84細胞を上記のように培養し、24ウェルプレート中の顕微鏡スライド上に、800μLの培地中150.000細胞/ウェルの密度で播種した。細胞を3週間増殖させ、培地を2日ごとに交換した。I.colisanansについては、細胞を、培地中で1倍に希釈した3kDaフィルター濾過した抽出物対照(YG/V)又は3kDaフィルター濾過した完全若しくは分画されたI.colisanans MH27細菌抽出物で前処理し、37℃、5%CO2で一晩インキュベートし、その後、100ng/mLのIFNγを選択ウェルに添加した。I.colisanansによって産生された代謝産物について、T84細胞を、1mMのオルニチン、インドール-3-アクリル酸、又はインドール-3-プロピオン酸で18時間前処理した後、IFNγで48時間刺激した。細胞を更に48時間インキュベートし、その後、4%パラホルムアルデヒドで15分間固定し、PBSで3回洗浄し、光から保護して染色した。この目的のために、カバースリップをまず5%BSA/PBS中の0.1%Triton(登録商標) X-100とともに10分間インキュベートした。細胞をPBSで3回洗浄し、5%BSA/PBS中で2時間インキュベートした。次に、それらをPBSで3回洗浄し、5%BSA/PBS中の一次ウサギ抗ヒトZO1抗体(5μg/mL、Invitrogen)とともに2時間インキュベートし、次いで、再びPBSで3回洗浄した。細胞を、5%BSA/PBS中でAlexa Fluor(登録商標)488コンジュゲートヤギ抗ウサギIgG H&L二次抗体(1:2000、ThermoFisher Scientific)及びDAPI(1:1000、ThermoFisher Scientific)とともに1時間インキュベートした。カバースリップをPBSで3回、超純水で1回洗浄し、次いでProLong Gold Antifade Mountant(Invitrogen)を用いてマウントした。画像取得は、60×NA 1.49 Plan Apochromat油浸対物レンズ(Nikon)を備えた倒立完全電動Nikon/Spectral Spinning Disc Confocal顕微鏡(Borealis改良を用いるX-1 Yokogawaスピニングディスク)を使用して実施した。画像は、結合素子(CCD)カメラ(Andow Clara)及びNikon elementsイメージングソフトウェア(Nikon、バージョン4.40)を使用して細胞全体にわたって取得した。各条件について、4つの別々の画像を撮像した。最大投影画像を集め、Fiji ImageJ(バージョン1.53t)を使用して各画像について染色細胞の相対輝度を定量化及び計算し、未刺激対照細胞に対して正規化した。実験生データはAppendices 3~5に見ることができる。統計的有意性は、一元配置分散分析及び多重比較のためのダネット補正によって決定した。
【0375】
PBMC単離及び刺激
PBMCを健康なドナーの末梢血から単離した。細胞を、RPMI 1640(ゲンタマイシン(150μg/mL)、2mMのL-グルタミン及び10%熱不活性化FBSを添加)中で2×106細胞/mLの密度に調整し、24ウェル組織培養プレートに播種した。5%CO2インキュベーター中、37℃で一晩インキュベートした後、50μLの生きたI.colisanans MH27-2株を添加して、1:1の感染多重度を得た。上清を回収し、5%CO2インキュベーター中、37℃で24時間刺激した後、遠心分離によって清澄化した。上清を必要になるまで-80℃で保存した。Ella Automated Immunoassay Systemを製造業者の指示(Protein Simple)に従って使用して、IL-10及びIL-12を定量した。
【0376】
NF-κB調節活性の評価
NF-κB活性は、最小(m)CMVプロモーター及びNF-kB転写応答エレメントのタンデムリピートの制御下でホタルルシフェラーゼを有するNF-κBレポーターレンチウイルスで安定にトランスフェクトされたカスタムLS174T杯細胞様細胞株を用いて評価した。TNFによる刺激は、ルシフェラーゼのNF-κB-p65依存性発現をもたらし、これは、Pierce Firefly Luc One-Step Glowアッセイキット(Thermo Scientific)を用いて定量することができる。LS174T-NF-κB細胞を、10%FBSを添加したDMEM中で培養した。NF-κBアッセイのために、LS174T-NF-κB細胞株の50,000個の細胞を96ウェルプレート中で一晩増殖させた。細胞を、37℃で30分間、25%v/vの開始濃度で細菌上清で前処理した。次いで、TNFを50ng/mlの最終濃度となるように添加した。TNF単独及びTNF+NF-κB阻害剤であるインドール-3-カルビノール(I3C)を5mMの最終濃度で、NF-κBシグナル伝達の陽性及び陰性対照としてアッセイに含めた。処理した細胞を37℃で7時間インキュベートした。Pierce Firefly Luc One-Step Glowアッセイキットを使用してルシフェラーゼ活性を定量化し、PHERAstar FSプレートリーダー(BMG Labtech)を使用して記録した。細菌上清によるNF-κBシグナル伝達の調節を、その関連培地対照のNF-κBシグナル伝達活性化と比較した。
【0377】
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0378】
本明細書における任意の参考文献の引用は、かかる参考文献が本出願に対する「先行技術」として利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0379】
本明細書全体を通して、目的は、本発明をいずれか1つの実施形態又は特徴の特定の集合に限定することなく、本発明の好ましい実施形態を説明することであった。したがって、当業者は、本開示に照らして、本発明の範囲から逸脱することなく、例示された特定の実施形態において様々な修正及び変更を行うことができることを理解するであろう。全てのかかる修正及び変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
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【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号V21/015887若しくはV21/015888の下に寄託されたIntestinicoccus colisanans株又はその派生株の、細胞。
【請求項2】
前記細胞が少なくとも部分的に単離されている、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
受託番号V21/015887若しくはV21/015888の下に寄託されたIntestinicoccus colisanans株又はその派生株の、生物学的に純粋な培養物。
【請求項4】
請求項1若しくは2に記載の細胞又は請求項3に記載の培養物を含む、組成物。
【請求項5】
配列番号1、2若しくは7~10のいずれか1つと少なくとも約99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、若しくは99.9%同一である16S rRNA配列、又は配列番号1、2若しくは7~10のいずれか1つにより示される16S rRNA遺伝子配列を有する、細菌株を含む、組成物。
【請求項6】
薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体を更に含む、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに、Intestinicoccus colisanans種の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である16S rRNA配列を有する
単離された細菌株を含む、医薬組成物。
【請求項8】
薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とともに、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である細菌株を含む、医薬組成物。
【請求項9】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記細菌株が少なくとも部分的に単離されている、請求項5~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記細菌株が、生存能力があるか、又は生存能力がない、請求項4~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が乾燥形態である、請求項4~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、カプセル、錠剤、丸剤、トローチ、ロゼンジ、粉末、又は顆粒に製剤化されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥されている、請求項12又は請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が腸管への送達のために製剤化されている、請求項4~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
プレバイオティクスを更に含む、請求項4~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
1つ以上の追加の細菌株を更に含む、請求項4~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記1つ以上の追加の細菌株が少なくとも部分的に単離されている、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、Clostridium属の細菌を含まない、請求項4~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記細菌株が、細胞におけるシグナル伝達兼転写活性化因子3(STAT3)のシグナル伝達を減弱又は障害する作用物質を産生する、請求項1~19のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項21】
前記作用物質が小分子、ペプチド、又はヌクレオチドである、請求項20に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項22】
前記作用物質が前記細菌によって放出される、請求項20又は請求項21に記載の細胞、培養物又は組成物。
【請求項23】
前記作用物質が、STAT3、JAK2、TYK、又はIL-23のいずれか1つに特異的に結合する、請求項20~22のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項24】
前記細菌株が、シクロ(-Phe-Pro)、インドール-3-乳酸、アロプリノール、プロピオニルカルニチン、ピロガロール、3-(2-ヒドロキシエチル)インドール、N-アセチル-システイン、トリプトホール、インドール-3-プロピオン酸、オルニチン、酢酸及び/又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の代謝産物を産生する、請求項1~23のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項25】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項1~24のいずれか一項に記載の細胞、培養物、又は組成物。
【請求項26】
請求項4~25のいずれか一項に記載の組成物を含む、食品又は飲料製品。
【請求項27】
対象において腸管バリア機能を回復又は改善する方法であって、Intestinicoccus属の細菌株を前記対象に投与し、それによって腸管バリア機能を回復又は改善することを含む、方法。
【請求項28】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項28に記載の
方法。
【請求項30】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
腸管バリア機能の回復又は改善が、(i)ムチンの質及び/又は量の増加;(ii)タイトジャンクションタンパク質の完全性の改善;(iii)管腔内容物の全身循環への移行の減少;又は(iv)腸潰瘍及び/若しくは腸創傷の減少のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記管腔内容物がリポ多糖類(LPS)を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記腸管バリア機能不全の回復又は改善が、前記対象において全身性炎症の減少をもたらす、請求項27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象由来の試料中の炎症性サイトカイン(例えば、IL-1β、IL-8、IL-6、及びTNF)のレベルが所定の閾値を超える場合に、前記対象において全身性炎症が同定される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
対象において粘膜治癒を誘導又は増強する方法であって、上皮細胞の遊走及び/又は増殖を誘導するのに十分な量のIntestinicoccus属の細菌株を前記対象に投与し、それによって前記対象において粘膜治癒を誘導することを含む、方法。
【請求項36】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項36に記載の
方法。
【請求項38】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項35~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
粘膜治癒が、1つ以上の糞便又は血清マーカーを使用して測定される、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
1つ以上の糞便マーカーが、カルプロテクチン、ラクトフェリン、メタロプロテイナーゼ(MMP)-9、及びリポカリン-2を含む群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
粘膜治癒が、内視鏡スコアを使用して測定される、請求項35~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
対象において炎症を軽減する方法であって、治療有効量のIntestinicoccus属の細菌株を前記対象に投与し、それによって前記対象において炎症を軽減することを含む、方法。
【請求項43】
前記細菌種が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項43に記載の製品。
【請求項45】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項42~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記炎症が腸管環境に局所的であるか又は全身性炎症である、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記細菌株が、(例えば、NFκBを減少又は阻害することによって)NFκB経路を減弱する、請求項42~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
標的細胞においてSTAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか又は阻害する方法であって、前記標的細胞をIntestinicoccus属の細菌細胞調製物の少なくとも可溶性成分と接触させて、前記標的細胞において前記STAT3シグナル伝達の活性化を遮断するか又は阻害することを含む、方法。
【請求項49】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項49に記載の
方法。
【請求項51】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項48~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記標的細胞が、レポーター細胞(例えば、HEK細胞)、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、及び内皮細胞を含む群から選択される、請求項48~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記細菌細胞調製物が細菌細胞培養物を含む、請求項48~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記可溶性成分が前記細菌細胞培養物の上清を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記可溶性成分が、細菌細胞を実質的に枯渇している、請求項48~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記細菌細胞調製物が細菌細胞ペレットを含む、請求項48~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記可溶性成分が溶解細胞の可溶性画分を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記可溶性画分が、遠心分離によって不溶性細胞画分から実質的に分離される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記方法がインビトロで実施される、請求項48~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
対象の腸管環境においてSTAT3シグナル伝達を遮断するか又は阻害する方法であって、Intestinicoccus属の細菌株を前記対象に投与し、前記対象の腸管環境においてSTAT3シグナル伝達を遮断するか又は阻害することを含む、方法。
【請求項61】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項61に記載の
方法。
【請求項63】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項60~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記細胞が、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、上皮細胞、又は内皮細胞である、請求項60~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記細胞が上皮細胞であり、前記細菌株又は分子が前記対象においてIL-22の産生を増加させる、請求項60~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記細菌株が、STAT3の直接阻害因子又は間接阻害因子である分子を産生する、請求項60~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記細菌株が、IL-23ポリペプチド、JAK2ポリペプチド、TYK2ポリペプチド、又はSTAT3ポリペプチドのうちの少なくとも1つを直接阻害する分子を産生する、請求項60~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記細菌株が、シクロ(-Phe-Pro)、インドール-3-乳酸、アロプリノール、プロピオニルカルニチン、ピロガロール、3-(2-ヒドロキシエチル)インドール、N-アセチル-システイン、トリプトホール、インドール-3-プロピオン酸、オルニチン、酢酸及び/又はそれらの組み合わせから選択される代謝産物を産生する、請求項27~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記細菌株が、I.colisanans種の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか;又は前記細菌株が、I.colisanansの細菌株の16S rRNA遺伝子配列を有する、請求項27~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記細菌株が、配列番号1、2若しくは7~10のいずれか1つと少なくとも約97.5%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は前記細菌株が、配列番号1、2若しくは7~10のいずれか1つによって示される16S rRNA遺伝子配列を有する、請求項27~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記細菌株が、受託番号V21/015887若しくはV21/015888の下に寄託されたI.colisanans株又はその派生株である、請求項27~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記細菌株が少なくとも部分的に単離される、請求項27~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記細菌株が、医薬組成物として製剤化され、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を更に含む、請求項27~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記組成物が乾燥形態である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記乾燥形態が、粒子、顆粒、及び粉末を含む群から選択される、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項74又は請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記医薬組成物が経口投与用に製剤化される、請求項73~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
対象において炎症性又は自己免疫障害を処置又は予防する方法であって、有効量のIntestinicoccus属の細菌株を前記対象に投与し、それによって前記炎症性又は自己免疫障害を処置又は予防することを含む、方法。
【請求項79】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項79に記載の
方法。
【請求項81】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項78~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など);喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など);強直性脊椎炎;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;及び血管炎を含む群から選択される、請求項78~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記炎症性又は自己免疫障害が炎症性腸疾患(IBD)である、請求項78~82に記載の方法。
【請求項84】
対象に投与された場合、前記細菌株が、前記対象の少なくとも細胞においてSTAT3シグナル伝達を遮断するか又は阻害する、請求項78~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記細胞が、上皮細胞、免疫細胞(例えば、Th17免疫細胞)、又は内皮細胞である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記細菌株が、シクロ(-Phe-Pro)、インドール-3-乳酸、アロプリノール、プロピオニルカルニチン、ピロガロール、3-(2-ヒドロキシエチル)インドール、N-アセチル-システイン、トリプトホール、インドール-3-プロピオン酸、オルニチン、酢酸及び/又はそれらの組み合わせを含む群から選択される1つ以上の代謝産物を産生する、請求項78~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記細菌株が、Intestinicoccus属の細菌株の16S rRNA配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%同一である16S rRNA配列を有する、請求項78~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記細菌株が、配列番号1、2若しくは7~10のいずれか1つと少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%同一である16S rRNA配列を有するか、又は前記細菌株が、配列番号1、2若しくは7~10のいずれか1つによって示される16S rRNA遺伝子配列を有する、請求項78~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記細菌株が少なくとも部分的に単離される、請求項78~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記細菌株が、薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤とともに、医薬組成物として製剤化される、請求項78~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記組成物が乾燥形態である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記乾燥形態が、粒子、顆粒、及び粉末を含む群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記組成物が、凍結乾燥、スプレー乾燥、流動層乾燥、真空乾燥、又はそれらの組み合わせによって乾燥される、請求項91又は請求項92に記載の方法。
【請求項94】
抗炎症剤が前記対象に同時投与される、請求項78~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記抗炎症剤が、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群から選択される、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
処置することが、前記組成物を前記対象に投与する前に、前記対象がI.colisanans腸内細菌の欠損を有することを同定することを含む、請求項27~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記対象において前記欠損を同定することが、16S rRNA配列決定及び/又は全ゲノム配列決定による、前記対象の糞便中のI.colisanans細菌の測定を含む、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記細菌株が生きているか又は死んでいる、請求項27~97のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項99】
プレバイオティクスを更に含む、請求項27~98のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項100】
1つ以上の追加の細菌株を更に含む、請求項27~99のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項101】
前記対象が哺乳動物対象である、請求項27~100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記対象がヒト対象である、請求項27~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
治療に使用するためのIntestinicoccus属の細菌株を含む、組成物。
【請求項104】
治療に使用するためのIntestinicoccus colisanansの細菌株を含む、組成物。
【請求項105】
炎症性又は自己免疫障害の処置又は予防に使用するためのIntestinicoccus属の細菌株を含む、組成物。
【請求項106】
炎症性又は自己免疫障害の処置又は予防に使用するためのIntestinicoccus colisanansの細菌株を含む、組成物。
【請求項107】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項103~106のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項108】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項106に記載の製品。
【請求項109】
炎症性又は自己免疫障害を処置するための医薬の製造における、Intestinicoccus属の細菌株の使用。
【請求項110】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項109に記載の使用。
【請求項111】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項110に記載の
使用。
【請求項112】
炎症性又は自己免疫障害を処置するための医薬の製造における、I.colisanansの細菌株の使用。
【請求項113】
前記炎症性又は自己免疫障害が、炎症性腸疾患(クローン病又は潰瘍性大腸炎など)喘息(アレルギー性喘息又は好中球性喘息など);脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など);強直性脊椎炎;全身性エリテマトーデス(SLE);強皮症;シェーグレン症候群;及び血管炎から選択される、請求項103~112のいずれか1項に記載の組成物又は使用。
【請求項114】
前記炎症性又は自己免疫障害が炎症性腸疾患(例えば、クローン病又は潰瘍性大腸炎)である、請求項103~113のいずれか一項に記載の組成物又は使用。
【請求項115】
前記細菌株が、受託番号V21/015887若しくはV21/015888の下に寄託されたI.colisanans株又はその派生株である、請求項103~114のいずれか一項に記載の組成物又は使用。
【請求項116】
炎症性又は自己免疫障害の処置に使用するための組成物であって、Intestinicoccus属の細菌株及び抗炎症剤を含む、組成物。
【請求項117】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項116に記載の組成物。
【請求項118】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項117に記載の組成物。
【請求項119】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項116~118のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項120】
前記抗炎症剤が、5-アミノサリチル酸塩、コルチコステロイド、アザチオプリン、インフリキシマブ、及びアダリムマブを含む群から選択される、請求項116~119のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項121】
炎症性又は自己免疫障害の処置に使用するための組成物であって、Intestinicoccus属の細菌株及び栄養補助剤を含む、組成物。
【請求項122】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項121に記載の組成物。
【請求項123】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項122に記載の製品。
【請求項124】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項121~123のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項125】
対象において健康を改善又は維持する方法であって、I.colisanansの細菌株を含む組成物を前記対象に投与し、それによって前記対象において健康を維持又は改善することを含む、方法。
【請求項126】
前記対象に栄養補助剤を投与することを更に含む、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
Intestinicoccus属の細菌株及び栄養補助剤を含む、食用又は飲料用製品。
【請求項128】
前記細菌株が、I.colisanans及びI.sp002305575のMRCAの系統発生的子孫である、請求項127に記載の製品。
【請求項129】
MRCAが、ゲノム分類学データベース(GTDB)リリース89からのbac120系統樹のノード23596で定義される、請求項128に記載の製品。
【請求項130】
前記細菌株が、I.colisanans種のものである、請求項127~129のいずれか一項に記載の製品。
【請求項131】
前記栄養補助剤がプレバイオティクスである、請求項127~130のいずれか一項に記載の製品。
【国際調査報告】