(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】メタクリレートコポリマー並びにそれを作製及び使用する方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/22 20060101AFI20241217BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20241217BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20241217BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20241217BHJP
【FI】
C08F220/22 ZNM
C08F220/26
B82Y40/00
B82Y30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528520
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 IB2022060392
(87)【国際公開番号】W WO2023089426
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】アームストロング,ポール ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ハント,ルーカス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】レオン,アマンダ ケー.
(72)【発明者】
【氏名】マホニー,ウェイン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ソニアー,アシュレー アール.
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL03P
4J100AL08R
4J100AL66R
4J100AL75Q
4J100AL82S
4J100BA07R
4J100BA12R
4J100BA15R
4J100BA34R
4J100BA51R
4J100BA55S
4J100BA77R
4J100BB11R
4J100BB13R
4J100BB18R
4J100CA05
4J100CA06
4J100HA53
4J100HC75
4J100HE14
4J100HE22
4J100HE32
4J100HG12
4J100JA43
(57)【要約】
本明細書には、第2の末端オレフィン基を含む(メタ)アクリレートモノマーと、アルキル基が1~4個の炭素原子を含む、アルキルメタクリレートモノマーと、全フッ素化アルキル基、全フッ素化ポリエーテル基、又はシリコーン基低表面エネルギー基を含む、モノ(メタ)アクリレートモノマーと、RAFT剤と、から誘導された、メタクリレートコポリマーが記載される。そのようなコポリマーは、液体組成物を作製するために使用することができ、これは次いで、ナノインプリント又は転写リソグラフィのためのツールを作製するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第2の末端オレフィン基を含む(メタ)アクリレートモノマーと、
(b)アルキル基が1~4個の炭素原子を含む、アルキルメタクリレートモノマーと、
(c)全フッ素化アルキル基、全フッ素化ポリエーテル基、又はシリコーン基を含む低表面エネルギー基を含む、モノ(メタ)アクリレートモノマーと、
(d)可逆的付加開裂(RAFT)剤と、
から誘導された、ポリマー。
【請求項2】
前記第2の末端オレフィン基を含む(メタ)アクリレートモノマーが、式CH
2=CQC(=O)L
1CH=CH2のものであり、式中、QはH又はCH
3であり、L
1は1~9個の炭素原子を含む連結基である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
L
1がCH
2である、請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
前記アルキルメタクリレートモノマーが、式CH
2=C(CH
3)C(=O)OR
1のものであり、式中、R
1はC1~C4アルキル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項5】
R
1が、-CH
3、-CH
2CH
3、-CH(CH
3)CH
3、-CH
2CH
2CH
3、-CH(CH
3)CH
2CH
3、-CH
2CH(CH
3)CH
3、又は-C(CH
3)
3である、請求項4に記載のポリマー。
【請求項6】
前記アルキルメタクリレートモノマーのホモポリマーが、室温より高いガラス転移温度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項7】
前記モノ(メタ)アクリレートモノマーが、以下の式:
CH
2=CQC(=O)OL
2R
2(式中、QはH又はCH
3であり、L
2は、1~9個の炭素原子と、任意選択で鎖状に連結したエーテル基と、を含む連結基であり、R
2は前記シリコーン基を含む)、又は
CH
2=CQC(=O)OL
3R
3(式中、QはH又はCH
3であり、L
3はエーテル、エステル、アミド又はスルホンアミドの少なくとも1つを含む連結基であり、R
3は前記全フッ素化アルキル基、又は前記全フッ素化ポリエーテル基を含む)
のうちの少なくとも1つのものである、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項8】
前記全フッ素化アルキル基が、1~10個の炭素原子を含む、直鎖、分枝鎖、又は環状アルキル基である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項9】
前記全フッ素化ポリエーテル基が、-(CpF2p)-、-(CpF2pO)-、-(CF(Q
1))-、-(CF(Q
1)O)-、-(CF(Q
1)CpF2pO)-、-(CpF2pCF(Q
1)O)-、又は-(CF2CF(Q
1)O)-の群から選択される繰り返し単位を含み、式中、
pは、1~10の整数であり、
Q
1は、フッ素原子、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロエーテル基、窒素含有ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロポリエーテル、又はペルフルオロアルコキシ基である、請求項1~7のいずれか一項に記載のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項10】
前記シリコーン基が、-[Si(CH
3)
2-O]
r-Si(CH
3)
2R
4であり、式中、rは、1~200の整数であり、R
4は、1~8個の炭素原子を含むアルキル基である、請求項1~7のいずれか一項にいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項11】
前記RAFT剤が、式ZC(=S)SRのものであり、式中、Rは、ニトリル又はエステル官能基のうちの少なくとも1つを含み、Zは、-C
6H
5、N-(4-ピリジニル)-N-メチルアミン、又は-SR
5であり、式中、R
5は、1~12個の炭素原子を含むアルキル基である、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項12】
前記ポリマーがランダムポリマーである、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項13】
前記ポリマーが、10,000~100,000ダルトンの数平均分子量を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項14】
前記ポリマーが、5~20質量パーセントの、前記第2の末端オレフィン基を含む(メタ)アクリレートモノマーを含有する、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項15】
前記ポリマーが、50~90質量パーセントの前記アルキルメタクリレートモノマーを含有する、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項16】
前記ポリマーが、5~20質量パーセントの、前記低表面エネルギー基を含む前記モノ(メタ)アクリレートモノマーを含有する、請求項1~15のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項17】
前記ポリマーが、室温より高いガラス転移温度を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項18】
下記式:
【化1】
を含み、式中、
R
1は、1~4個の炭素原子を含むアルキル基であり、
L
1は、1~9個の炭素原子を含む連結基であり、
Yは、-L
2-R
2又は-L
3-R
3から選択される剥離可能化基であり、式中、L
2は、1~9個の炭素原子と、任意選択で少なくとも1つの鎖状に連結したエーテルと、を含む連結基であり、R
2は、シリコーン基を含み、L
3は、エーテル、エステル、アミド又はスルホンアミドのうちの少なくとも1つを含む連結基であり、R
3は、全フッ素化アルキル基又は全フッ素化ポリエーテル基を含み、
各Qは、独立して、H又はCH
3から選択され、
Xは、-C(CH
3)
2CN、-C(CH
3)
2C
6H
5、-CH(CN)C
6H
5、又は-C(CH
3)
2C(=O)OC
2H
5を含み、
Zは、-C
6H
5、-SR
5であり、式中、R
5は、1~12個の炭素原子を含むアルキル基、又は一価ピロールであり、
aは、50~1000の整数であり、
bは、5~200の整数であり、
cは、1~50の整数である、ポリマー。
【請求項19】
L
1がCH
2である、請求項18に記載のポリマー。
【請求項20】
R
1が、-CH
3、-CH
2CH
3、-CH(CH
3)CH
3、-CH
2CH
2CH
3、CH(CH
3)CH
2CH
3、-CH
2CH(CH
3)CH
3、又は-C(CH
3)
3である、請求項18又は19に記載のポリマー。
【請求項21】
前記全フッ素化アルキル基が、1~10個の炭素原子を含む、直鎖、分枝鎖、又は環状アルキル基である、請求項18~20のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項22】
前記全フッ素化ポリエーテル基が、-(CpF2p)-、-(CpF2pO)-、-(CF(Q
1))-、-(CF(Q
1)O)-、-(CF(Q
1)CpF2pO)-、-(CpF2pCF(Q
1)O)-、又は-(CF2CF(Q
1)O)-の群から選択される繰り返し単位を含み、
式中、
pは、1~10の整数であり、
Q
1は、フッ素原子、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロエーテル基、窒素含有ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロポリエーテル、又はペルフルオロアルコキシ基である、請求項18~20のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項23】
前記シリコーン基が、-[Si(CH
3)
2-O]
r-Si(CH
3)
2R
4であり、式中、rは、1~200の整数であり、R
4は、1~8個の炭素原子を含むアルキル基である、請求項18~20のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項24】
前記ポリマーが、10,000~100,000ダルトンの数平均分子量を有する、請求項18~23のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項25】
前記ポリマーが、室温より高いガラス転移温度を有する、請求項18~24のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項26】
液体組成物であって、
(a)請求項1~25のいずれか一項に記載のポリマー、
(b)架橋剤、
(c)溶媒、並びに
(d)任意選択の光開始剤、及び
(e)任意選択の安定剤、
を含む、液体組成物。
【請求項27】
前記架橋剤が、(メタ)アクリレート、多官能性チオール、(メタ)アクリルアミド、又はこれらの組み合わせを含む、請求項26に記載の液体組成物。
【請求項28】
前記ポリマーが、前記溶媒中に可溶性である、請求項26又は27のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項29】
前記溶媒が、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールプロピルエーテル、又はエチレングリコールブチルエーテルのうちの少なくとも1つを含む、請求項26~28のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項30】
前記安定剤が、2,6,ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、4-メトキシフェノール、ヒドロキノン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-)オキシル(4-ヒドロキシ-TEMPO)、又はフェノチアゼンのうちの少なくとも1つを含む、請求項26~29のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項31】
前記架橋剤が、溶媒を除く前記液体組成物の5~20重量%を構成する、請求項26~30のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項32】
溶媒を除去して乾燥組成物を形成した後、前記乾燥組成物が室温より高いガラス転移温度を有する、請求項26~31のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項33】
請求項1~25のいずれか一項に記載のポリマーを含む層を、パターン化テンプレートと接触させることを含む、パターン化樹脂を作製する方法であって、前記パターン化テンプレートがレリーフ構造を含む、方法。
【請求項34】
前記レリーフ構造が、100マイクロメートル未満の寸法を少なくとも1つ有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記層が、
(a)請求項26~32のいずれか一項に記載の液体組成物を、前記パターン化テンプレート上にコーティングすることと、
(b)前記液体組成物を固化させて複製媒体を形成することと、
(c)前記複製媒体を受容基板に積層することと、
によって作製される、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記複製媒体を化学線に曝露してパターン化樹脂を形成することを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記パターン化樹脂から前記パターン化テンプレートを取り外すことを更に含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記層が、(a)請求項26~32のいずれか一項に記載の液体組成物を平面基板上にコーティングすることと、(b)前記液体組成物を固化させて複製媒体を形成することと、(c)前記レリーフ構造を前記複製媒体に熱エンボス加工又は熱インプリントすることと、によって作製される、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項39】
前記複製媒体を化学線に曝露して前記パターン化樹脂を形成することを更に含む、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
メタクリレートコポリマーについて、可逆的付加開裂重合(RAFT)剤を使用してポリマーを作製する方法と共に論じる。一実施形態では、これらのメタクリレートコポリマーは、インプリントリソグラフィ及び/又は転写リソグラフィに使用することができる。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ技術は、小規模フィーチャの高解像度パターン化のための従来のフォトリソグラフィの代替として広く研究されてきた。インプリント又は転写リソグラフィ技術は、概して、トポグラフィを含むテンプレートを使用して、基板上に表面レリーフを複製する。次いで、これらのテンプレートを使用して、パターン化ロールなどのツールを作製することができ、これは、小規模フィーチャをウェブタイプのフォーマットの汎用樹脂に複製することができ、高スループット及び/又はコスト削減をもたらす。
【発明の概要】
【0003】
小さい(例えばナノメートル)フィーチャの高解像度パターン化を可能にすることができる新規なポリマーを特定することが望まれている。
【0004】
一態様では、ポリマーが記載される。ポリマーは、
(a)第2の末端オレフィン基を含む(メタ)アクリレートモノマーと、
(b)アルキル基が1~4個の炭素原子を含む、アルキルメタクリレートモノマーと、
(c)全フッ素化アルキル基、全フッ素化ポリエーテル基、又はシリコーン基を含む低表面エネルギー基を含む、モノ(メタ)アクリレートモノマーと、
(d)RAFT剤と、から誘導される。
【0005】
別の態様では、以下の式:
【化1】
によるポリマーが記載され、式中、
R
1はC1~C4アルキル基であり、
L
1は1~9個の炭素原子を含む連結基であり、
Yは、-L
2-R
2又は-L
3-R
3から選択される低表面エネルギー基を含み、式中、L
2は、1~9個の炭素原子と、任意選択で少なくとも1つの鎖状に連結したエーテルと、を含む連結基であり、R
2は、シリコーン基を含み、L
3は、エーテル、エステル、アミド、又はスルホンアミドのうちの少なくとも1つを含む連結基であり、R
3は、全フッ素化アルキル基、又は全フッ素化ポリエーテル基を含み、
各Qは、独立して、H又はCH
3から選択され、
Xは、-C(CH
3)
2CN、-C(CH
3)
2C
6H
5、-CH(CN)C
6H
5、又は
-C(CH
3)
2C(=O)OC
2H
5を含み、
Zは、-C
6H
5、-SR
5であり、式中、R
5は、1~12個の炭素原子を含むアルキル基、又は一価ピロールであり、
aは、50~1000の整数であり、
bは、5~200の整数であり、
cは、1~50の整数である。
【0006】
更に別の態様では、上述のメタクリレートコポリマーのうちの少なくとも1つを、架橋剤;溶媒;任意選択の光開始剤;及び任意選択の安定剤と共に含む、液体組成物が記載される。
【0007】
更に別の態様では、樹脂上にパターン化表面構造を作製する方法が記載される。方法は、上述のメタクリレートコポリマーをパターン化テンプレートと接触させることを含み、パターン化テンプレートはレリーフ構造を含む。一実施形態では、メタクリレートコポリマーは、レリーフ構造上にコーティングされ続いて乾燥される液体組成物の一部である。別の実施形態では、メタクリレートコポリマーは乾燥層の一部であり、レリーフ構造は、メタクリレートコポリマーに熱的にエンボス加工又は熱的にインプリントされる。
【0008】
上記の発明の概要では、各実施形態を説明することは意図されていない。本発明の1つ以上の実施形態の詳細はまた、以下の「発明を実施するための形態」にも記載される。その他の特徴、目的、及び利点は、「発明を実施するための形態」及び「特許請求の範囲」から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下の本開示の様々な実施形態の詳細な説明を添付図面と併せて検討することで、本開示をより完全に理解し得る。
【
図1】一実施形態による、構造体の断面図によって示される、パターン化テンプレートからパターン化樹脂を形成するためのプロセスである。
【
図2】一実施形態による、複数のナノフィーチャタイルを含むツール基板の上面図である。
【
図3】走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮影された実施例4の断面画像である。
【
図4】SEMによって撮影された実施例6の断面画像である。
【
図5A】実施例7で使用されるパターン化テンプレートの上面図である。
【
図5B】実施例7で使用されるパターン化テンプレートのSEMによって撮影された断面図である。
【
図6A】実施例7のパターン化樹脂の上面図である。
【
図6B】実施例7のパターン化樹脂のSEMによって撮影された側面図である。
【
図7】実施例9に記載されるパターン化樹脂の4つのタイルの写真である。
【0010】
上記で特定されている図面は、そのいくつかが縮尺通りに描かれておらず、本開示の様々な実施形態を記載するものであるが、「発明を実施するための形態」で注記されるように、他の実施形態もまた企図される。本開示の範囲及び趣旨に含まれる、数多くの他の修正形態及び実施形態を、当業者によって考案することができる点を理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ある特定の用語が、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して使用されており、これらの大部分については周知であるが、何らかの説明が必要とされる場合もある。本明細書で使用する場合、用語
「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は互換的に使用され、1つ以上を意味する。
用語「及び/又は」は、述べられた事柄の一方又は両方が起こり得ることを示すために使用され、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)並びに(A又はB)を含み、
「架橋」は、2つのポリマー鎖を、化学結合又は化学的基を使用して連結することを指し、
「モノマー」は、重合を経てその後ポリマーの基本的構造の一部を形成することができる分子である。
「全フッ素化」は、全ての水素原子がフッ素原子に置き換えられている、炭化水素から誘導された基又は化合物を意味する。しかし、全フッ素化化合物は、酸素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子のような、フッ素原子及び炭素原子以外の原子を更に含有してもよい。
【0012】
更に本明細書では、端点による範囲の記載は、この範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~10は、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などを含む)。
【0013】
更に本明細書では、「少なくとも1」の記載は、1以上の全ての数(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)を含む。
【0014】
本明細書で使用する場合、A、B、及びC「のうちの少なくとも1つを含む」は、単独の要素A、単独の要素B、単独の要素C、A及びB、A及びC、B及びC、並びに3つ全ての組み合わせを指す。
【0015】
本開示において、本明細書に開示されるポリマー(すなわち、メタクリレートコポリマー)は、ナノ構造のパターン化を可能にするために有利に使用され得ることが見出された。
【0016】
ポリマー
【0017】
本開示のポリマーは、少なくとも3つの異なる(メタ)アクリレートモノマー;(a)第2の末端オレフィン基を含む(メタ)アクリレートモノマーと、(b)アルキルメタクリレートモノマーと、及び(c)低表面エネルギー基を含むモノ(メタ)アクリレートモノマーとの共重合から誘導された、メタクリレートコポリマーである。
【0018】
(メタ)アクリレートモノマー(a)は、アクリレート基(CH2=CHC(O)O-)又はメタクリレート基(CH2=C(CH3)C(O)O-)に加えて、追加の(又は第2の)末端オレフィン基を含む。一実施形態では、そのようなモノマーは、式CH2=CQC(=O)L1CH=CH2のものであり、式中、QはH又はCH3であり、L1は、1、2、3、4、5、6、7、8、又は9個の炭素原子を含む連結基である。一実施形態では、L1は、-CH2-、-CH2CH2-、-C(CH3)HCH2-、又は-CH2-である。第2の末端オレフィン基を含む例示的な(メタ)アクリレートモノマーとしては、CH2=CCH3C(=O)OCH2CH=CH2、CH2=CCH3C(=O)OCH=CH2、及びCH2=CHC(=O)OCH=CH2が挙げられる。
【0019】
アルキルメタクリレートモノマー(b)は、1~4個の炭素原子を含むアルキル基を含む。一実施形態では、そのようなモノマーは、式CH2=C(CH3)C(=O)OR1のものであり、式中、R1はアルキル基である。R1のアルキル基は、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。一実施形態では、アルキル基は-CH3、-CH2CH3、-CH(CH3)CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH3)CH2CH3、-CH2CH(CH3)CH3、-CH2CH(CH3)2、-C(CH3)3、及び-CH2CH2CH2CH3である。典型的には、アルキルメタクリレートモノマー(b)は、アルキルメタクリレートモノマーのホモポリマーが室温に近いか又はそれより高い(例えば、23℃、25℃、28℃、30℃、又は更には35℃より高い)ガラス転移温度を有するものであるべきである。
【0020】
モノ(メタ)アクリレートモノマー(c)は、低表面エネルギー基を含む。そのような低表面エネルギー基としては、全フッ素化アルキル基、全フッ素化ポリエーテル基、及び/又はシリコーン基が挙げられる。
【0021】
一実施形態では、モノ(メタ)アクリレートモノマー(c)は、式CH2=CQC(=O)OL2R2(式中、QはH又はCH3であり、L2は、1~9個の炭素原子と、任意選択で少なくとも1つの鎖状に連結したエーテル基と、を含む連結基であり、R2は、シリコーン基を含む)のものである。一実施形態では、シリコーン基は-[Si(CH3)2-O]r-Si(CH3)2R4であり、式中、rは、1~200の整数であり、R4は、1~8個の炭素原子を含むアルキル基である。R4のアルキル基は、直鎖、分枝鎖、又は環状の性質であってもよい。一実施形態では、R4のアルキル基は、-CH3、-CH2CH3、-CH(CH3)CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH3)CH2CH3、-CH2CH(CH3)CH3、-CH2CH(CH3)2、-C(CH3)3、-CH2CH2CH2CH3、及び-(CH2)7CH3である。そのようなモノ(メタ)アクリレートモノマーとしては、CH2=CHC(=O)O(CH2)3Si(CH3)2-[O-Si(CH3)2]nCH2CH2CH2CH3が挙げられ、式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は12である。
【0022】
別の実施形態では、モノ(メタ)アクリレートモノマー(c)は、式CH2=CQC(=O)OL3R3(式中、QはH又はCH3であり、L3は、エーテル、エステル、アミド、又はスルホンアミドのうちの少なくとも1つを含む連結基であり、R3は全フッ素化アルキル基、又は全フッ素化ポリエーテル基を含む)のものである。例示的な連結基としては、-(CH2)rNHC(=O)-が挙げられ、式中、rは、1~4の整数である。R3の全フッ素化アルキル基又は全フッ素化ポリエーテル基は、1~20個の炭素原子を含むことができる。R3の例示的な全フッ素化アルキル基又は全フッ素化ポリエーテル基としては、-(CpF2p)-、-(CpF2pO)-、-(CF(Q1))-、-(CF(Q1)O)-、-(CF(Q1)CpF2pO)-、-(CpF2pCF(Q1)O)-、-(CF2CF(Q1)O)-、又はこれらの組み合わせが挙げられる。これらの繰り返し単位では、pは、典型的には、1~10の整数である。いくつかの実施形態では、pは1~8、1~6、1~4、1~3又は1~2の整数である。Q1基は、フッ素原子、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロエーテル基、窒素含有ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロポリエーテル基又はペルフルオロアルコキシ基であり、それらの全ては、直鎖、分枝鎖、又は環式であり得る。Q1基は、典型的には、12、10、9、4、3、2、又は更には1個以下の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、Q1基は、4、3、2、若しくは更には1個以下の酸素原子を有し得、又は更には酸素原子を有していなくてもよい。これらのペルフルオロポリエーテル構造式において、異なる繰り返し単位は、鎖に沿ってランダムに分布し得る。そのようなモノ(メタ)アクリレートモノマーとしては、CH2=CHC(=O)O(CH2)2NHC(=O)CF(CF3)(OCF2CFCF3)nOC3F7が挙げられる。
【0023】
本開示のメタクリレートコポリマーは、可逆的付加開裂連鎖移動(すなわちRAFT)プロセスを使用して作製される。このような重合技術は当該技術分野において既知であり、重合はRAFT剤によって媒介される。一実施形態では、RAFT剤は、式ZC(=S)SRのものであり、式中、Rは、ニトリル又はエステル官能基のうちの少なくとも1つを含み、Zは、-C
6H
5、N-(4-ピリジニル)-N-メチルアミン、又は-SR
5であり、式中、R
5は、1~12個の炭素原子を含むアルキル基である。例示的なRAFT剤としては、
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
及びH
25C
12-S-C(=S)S-C(CH
3)
2C(=O)OHが挙げられる。
【0024】
一実施形態では、モノマー(a)、(b)、及び(c)のRAFT重合から構成されるメタクリレートコポリマーは、ランダムポリマーをもたらす。
【0025】
一実施形態では、メタクリレートコポリマーは、以下の式:
【化6】
のものであり、式中、
R
1はC1~C4アルキル基であり、
L
1は、1~9個の炭素原子を含む連結基であり、
Yは、-L
2-R
2又は-L
3-R
3から選択される低表面エネルギー基を含み、式中、L
2は、1、2、3、4、5、6、7、8、又は9個の炭素原子と、任意選択で少なくとも1つの鎖状に連結したエーテルと、を含む連結基であり、R
2は、シリコーン基を含み、L
3は、エーテル、エステル、アミド、又はスルホンアミドのうちの少なくとも1つを含む連結基であり、R
3は、全フッ素化アルキル基、又は全フッ素化ポリエーテル基を含み、
各Qは、独立して、H又はCH
3から選択され、
Xは、-C(CH
3)
2CN、-C(CH
3)
2C
6H
5、-CH(CN)C
6H
5、又は-C(CH
3)
2C(=O)OC
2H
5を含み、
Zは、-C
6H
5、-SR
5であり、式中、R
5は、1~12個の炭素原子を含むアルキル基、又は一価ピロールであり、
aは、50~1000の整数であり、
bは、5~200の整数であり、
cは、1~50の整数である。
【0026】
一実施形態では、aは、少なくとも50、75、100、150、又は更には200であり、かつ最大1000、900、800、700、600、500、400、300、又は更には250である。一実施形態では、bは、少なくとも5、8、10、20、25又は更には40であり、かつ最大200、150、100、90、80、70、60、50又は更には45である。一実施形態では、cは、少なくとも1、2、3、5、8、10、15又は更には20であり、かつ最大50、40、30、25、又は更には20である。
【0027】
一実施形態では、本開示のメタクリレートコポリマーは、少なくとも10,000、20,000、30,000ダルトン又は更には40,000ダルトン、かつ最大100,000、90,000、80,000、70,000ダルトン又は更には60,000ダルトンの数平均分子量を有する。ポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーなどの当該技術分野において既知の技術を使用して決定することができる。
【0028】
一実施形態では、メタクリレートコポリマーは、0.5~30質量%、5~20質量%、又は更には8~15質量%の、第2の末端オレフィン基を含む(メタ)アクリレートモノマーから誘導される。
【0029】
一実施形態では、メタクリレートコポリマーは、50~90質量%又は更に70~80質量%のアルキルメタクリレートモノマーから誘導される。
【0030】
一実施形態では、メタクリレートコポリマーは、0.5~30質量%、5~20質量%、又は更には8~15質量%の、低表面エネルギー基を含む(メタ)アクリレートモノマーから誘導される。
【0031】
いくつかの実施形態では、メタクリレートコポリマーは、モノマー(a)、(b)及び(c)以外のモノマーから誘導される。
【0032】
一実施形態では、本開示のメタクリレートコポリマーは、少なくとも30、40、50、60、70、80℃、又は更には90℃、かつ最大150、140、130、120、110℃、又は更には100℃のガラス転移温度を有する。ガラス転移温度は、当該技術分野において既知であるように、示差走査熱量測定を使用して決定することができる。
【0033】
液体組成物
【0034】
本開示のメタクリレートコポリマーを溶媒及び架橋剤と混合して、液体組成物を形成することができる。いくつかの実施形態では、そのような液体組成物を複製媒体として使用することができ、これについては後述する。
【0035】
本明細書に開示されるメタクリレートコポリマーは、ペンダント末端オレフィンを介して好適な架橋剤で架橋することができる。架橋剤は、ガラス転移温度を制御する働きをして、低温積層を可能にする。架橋剤はまた、樹脂を更に硬質化させるように反応して、より耐久性のあるパターン化表面を作り出す。一実施形態では、架橋剤は、単官能性若しくは多官能性(メタ)アクリレート、多官能性チオール、又は(メタ)アクリルアミドを含む。そのような架橋剤は、当該技術分野において既知である。例えば、単官能性アクリレートとしては、2-フェノキシエチルアクリレート又はテトラヒドロフルフリルアクリレートが挙げられ、二官能性アクリレートとしては、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、又はトリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ブタン酸、4-オキソ-4-[[3-オキソ-3-[2-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)オキシ]エトキシ]プロピル]チオ]-、2-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)オキシ]エチルエーテル(又はTEDA)、トリメチロールプロパントリアクリレート若しくはエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートなどのトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどのテトラアクリレート、又はジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどのより高官能性アクリレートが挙げられる。多官能性チオールとしては、グリコールジ(3-メルカプトプロピオネート)、トリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトプロピオネート)、及びジペンタエリトリトールヘキサ(3-メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
【0036】
架橋剤は、溶媒を除く液体組成物(例えば、メタクリレートコポリマー、架橋剤、並びに使用される場合、任意選択的に添加される光開始剤、安定剤、及び充填剤)の重量に基づいて、少なくとも5、8%、又は更には10%、かつ最大20、18、15%、又は更には12%の量で添加され得る。
【0037】
概して、溶媒は、メタクリレートコポリマーが溶媒中に可溶性であるように選択される。例示的な溶媒としては、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールプロピルエーテル、及びエチレングリコールブチルエーテルが挙げられる。
【0038】
他の添加剤、例えば、光開始剤、安定剤、界面活性剤、可塑剤などが、液体組成物中に、液体組成物の加工を補助するため、及び/又はその特性を変化させるために含まれ得る。添加剤は、所望の最終特性を得るのに十分な量で添加される。
【0039】
いくつかの実施形態では、光開始剤が、液体組成物に添加される。例示的な光開始剤としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(IGM Resins USA Inc.,St.Charles,ILから商品名OMNIRAD TPOで入手可能)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(IGM Resins USA Inc.,St.Charles,ILから商品名OMNIRAD 819で入手可能)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(IGM Resins USA Inc.,St.Charles,ILから商品名OMNIRAD 403で入手可能)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの重量で25:75の混合物(IGM Resins USA Inc.,St.Charles,ILから商品名OMNIRAD 1700で入手可能)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの重量で1:1の混合物(IGM Resins USA Inc.,St.Charles,ILから商品名OMNIRAD 4265で入手可能)、及びエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート(IGM Resins USA Inc.,St.Charles,ILから商品名OMNIRAD TPO-Lで入手可能)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、安定剤は、組成物の早期硬化を防止し、及び/又はフリーラジカル形成を阻害するために添加される。そのような安定剤としては、当該技術分野において既知のもの(例えば、ヒンダードフェノール、ホスファイト、チオエステル、及びアミン)などの酸化防止剤、並びにブチル化ヒドロキシトルエン、キノン(例えば、ヒドロキノン、ベンゾキノンなど)、ニトロベンゼン、1,3,5-トリニトロベンゼン、硫黄、アニリン、フェノール、クロロアニルなどの硬化阻害剤又は遅延剤が挙げられる。例示的な安定剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、4-メトキシフェノール、ヒドロキノン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4-ヒドロキシ-TEMPO)、及びフェノチアゼンが挙げられる。
【0041】
液体組成物は、所望の量のメタクリレートコポリマー、架橋剤、溶媒、及び任意選択で追加の添加剤を従来の加工装置内で混合することによって調製することができる。混合中、固体成分を均一に分布させることが概して望ましい。液体組成物の混合は、典型的には周囲条件で行われる。
【0042】
液体組成物中の溶媒の量は、液体組成物の所望の粘度が得られるように、用途に応じて調整することができる。一実施形態では、液体組成物は、少なくとも70、75、80重量%、又は更には85重量%の溶媒を含む。一実施形態では、液体組成物は、最大95、90重量%、又は更には85重量%の溶媒を含む。
【0043】
使用
【0044】
一実施形態では、本明細書に開示されるメタクリレートコポリマーは、パターン化テンプレートの表面レリーフを複製する際に使用することができる。メタクリレートコポリマーをパターン化するための2つの異なる方法、インプリントリソグラフィ及び転写リソグラフィを以下に考察する。
【0045】
本明細書で使用される転写リソグラフィは、所定のレリーフ構造を有するパターン化テンプレートが溶液でコーティングされ、溶液が表面レリーフを充填し、次いで固化する、方法を指す。インプリントリソグラフィは、メタクリレートコポリマーを含む固体層が、パターン化テンプレートによって熱機械的に変形されて、レリーフ構造を、メタクリレートコポリマーを含む固体層に複製する、方法を指す。
【0046】
これらの技術、インプリントリソグラフィ及び転写リソグラフィは、高スループットでナノ構造の複写(duplication)を可能にする。概して、高解像度マスターモールドが初期パターン化テンプレートとして使用される。これらの高解像度マスターモールドは、典型的には、シリコンウェハ上でリソグラフィ技術を使用して作製される。これらのマスターモールドは、高価で壊れやすく、装置サイズによって制限される小さなパターン化領域を有し、それらを作製するためのパターン作製スループットが制限される傾向がある。したがって、高解像度マスターモールドを元のテンプレートとして使用することができ、次いで、他のより安価な及び/又はより耐久性のある材料を使用して、大面積のパターン化タイル状レプリカを作製し、これを後で使用してツールを作成することができる。
【0047】
図1に示されているのは、パターン化テンプレートから仕上げたナノ構造化製品を作製するための転写プロセスにおいて、本開示のメタクリレートコポリマーを使用する例示的なプロセスである。
図1は、加工中の構造体の断面図を示しており、これは縮尺通りに描かれていない。パターン化テンプレート100は、ナノサイズのフィーチャ、この場合はパターン化樹脂150上にピラー155として再現されるボイド105を含む。パターン化樹脂150は、パターン化テンプレート100のネガ像である。パターン化テンプレート100は、高解像度マスターモールド、又は暫定テンプレートであり得る。このプロセスは、パターン化テンプレートのネガを生成するので、中間テンプレートを使用して、当該技術分野において日常的であるとおり、最終製品の正しいパターンを得ることができる。
【0048】
図1において、本開示の液体組成物は、パターン化テンプレート100の表面上にコーティングされ、ボイド105を充填する。次いで、コーティングを固化させて(例えば、溶媒乾燥プロセス、反応性部分的硬化プロセスなど)、複製媒体120を形成する。固化プロセスは、室温で実質的に固体である(例えば、少なくとも0、5、10℃、又は更には20℃のガラス転移温度を有する)ポリマー樹脂をもたらす。複製媒体の固体層は、パターン化テンプレート100の構造化表面に実質的に適合する。
【0049】
液体組成物は、パターン化テンプレート100上に配置され、テンプレートのネガ像である複製媒体120を形成するためにその上で固化される。複製媒体は、その第1の側に沿って、パターン化表面に適合し、第1の側の反対側にある第2の側に平面表面を形成する。
【0050】
複製媒体120の第2の側は、
図1に示されるように受容基板160上に配置されてもよい。受容基板160は、薄い複製媒体の取り扱いを助けることができる。受容基板160は、可撓性ポリマー基板(ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、環状オレフィンコポリマーなど)、ガラス、石英、シリコンウェハ、研磨金属、剛性ポリマー基板などを含んでもよい。一実施形態では、複製媒体120を受容基板160に接着するために、接着剤が使用されてもよい。
【0051】
典型的には、複製媒体は、依然としてパターン化テンプレートと接触し、受容基板上にその平面表面に沿って配置される。次いで、この構造体を処理して、複製媒体を架橋する(又は更に架橋する)。複製媒体を架橋するための処理は、その組成によって決まる。例えば、化学線が光開始剤と共に使用される。複製媒体の架橋により、パターン化樹脂150を形成する。メタクリレートコポリマー含有複製媒体の架橋は、その機械的特性を向上させ、パターン化テンプレート100からのパターン化樹脂150の分離/剥離を可能にし、特に高アスペクト比を有するナノ構造のためのレリーフ構造を保持する。パターン化テンプレートが取り外されると、テンプレートのネガであるレリーフ表面を含むパターン化樹脂150が受容基板160上に配置される。
【0052】
一実施形態では、パターン化テンプレート100及び複製媒体120を含む多層構造体は、所望のサイズに切断され、複製媒体120の平面表面は、大きな受容基板上に配置される。構造体は、少なくとも部分的に架橋され、次いで、パターン化テンプレート100が取り外されて、受容基板上にパターン化樹脂のタイルを残す。このプロセスを繰り返すことにより、受容基板上に多くのパターン化樹脂をもたらすことができる。
図2に示されているのは、上にパターン化樹脂250の4つのタイルを有する受容基板260を表示する上面図である。
【0053】
図1は、簡略化されたプロセスであり、本開示のメタクリレートコポリマーを含む樹脂のただ1つの転写プロセスを示す。当業者は、正確な成形形態が得られるように、他の成形技術が使用され得ることを認識するであろう。パターン化樹脂からのパターン化テンプレートの分離を容易にするための剥離剤でのコーティング及び/又は金属でのコーティングなどの他の技術が使用されてもよい。そのような技術は、実施例セクションにおいて例示される。
【0054】
インプリント法では、上述の液体組成物を基板上にコーティングし、例えば、揮発性溶媒を除去することによって、固化させて複製媒体を形成することができる。液体組成物からの溶媒除去の方法は、周囲条件での少なくとも部分的な蒸発、又は溶媒蒸発の速度を増加させるための熱、減圧などの適用を含むことができる。次いで、パターン化テンプレートを複製媒体と接触させ、互いに対して熱的にエンボス加工又は熱的にインプリントして、パターン化テンプレートからのネガ像が複製媒体の表面に転写されるようにする。そのようなインプリントの方法は、当該技術分野において知られている。次いで、転写プロセスにおいて、複製媒体を受容基板上に配置し、上述したように架橋することができる。次いで、パターン化テンプレートが取り外され、上記の転写方法について説明したものと同様に、受容基板上に配置されたパターン化樹脂が残る。
【0055】
パターン化テンプレートは、ベース表面から離れて延びるパターン要素の配列を含み、ボイドがパターン要素間に形成された、構造化表面を有する。パターン要素又はそれらの間のボイドは、規則的又はランダムな配置でマイクロスケール及び/又はナノスケールフィーチャを収容する。一実施形態では、パターン化テンプレートは、そのベース表面から離れて延びるパターン要素の配列を含む構造化表面を含む。一実施形態では、パターン要素は、少なくとも1、5、10、20、25nm、又は更には50nmの平均横寸法を有してもよい。一実施形態では、パターン要素は、最大1000、500、250、200、100、50マイクロメートル、又は更には30マイクロメートルの平均横寸法を有してもよい。一実施形態では、パターン要素は、0、0.5、1、1.5、又は更には2超、かつ最大20、10、5の高さ対横寸法のアスペクト比を有してもよい。パターン化テンプレートは、規則的な又はランダムな配置でマイクロスケール及び/又はナノスケールのフィーチャを収容することができる。パターン化テンプレートは、リソグラフィ技術を使用して作製されたシリコンウェハマスターモールドなどの精密に作製された構造であってもよく、又は本明細書で暫定モールドと呼ばれるマスターモールドから作製されたレプリカであってもよい。これらの暫定モールドは、反応性架橋剤で可塑化された反応性熱可塑性ポリマーなどの硬化性ポリマー樹脂を含む複製媒体を使用することが多い。例示的なUV硬化性樹脂は、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ、シリコーン、又はシリコーンアクリレートのうちの少なくとも1つを含む。したがって、本明細書に開示されるメタクリレートコポリマーは、シリコンマスターなどのモールドマスターから、又は以下の実施例に例示されるように、暫定モールドからレプリカを作製するために使用され得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、接着促進剤は、複製媒体中に添加剤として含まれてもよく、又は受容基板(160)と接触する前に複製媒体(120)の平面表面上に提供されてもよく、又は接着促進剤は、複製媒体と接触する前に受容基板(160)上に提供されてもよい。例示的な接着促進剤としては、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,790,396号の実施例7に記載されている3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート又は(3-トリメトキシシリルプロピルカルバモイルオキシ)エチルプロパ-2-エノエートなどのシランカップリング剤が挙げられる。
【0057】
メタクリルコポリマーを含む本開示の液体組成物は、複製媒体(120)に特に有用な前駆体である。メタクリレートコポリマーのガラス転移温度から、本開示のメタクリレートコポリマーを含む液体組成物を少なくとも部分的に固化することができ、次いで、メタクリレートコポリマーを含む複製媒体を架橋して、その耐久性を高め、パターンを損傷することなく、得られたパターン化樹脂をパターン化テンプレートから取り外すことを可能にすることができる。例えば、一実施形態では、本開示の液体組成物を最初に乾燥させて、溶媒を除去して、メタクリレートコポリマー固体を形成し、これを続いて化学線によって架橋することができる。化学線を適用する前に、メタクリレートコポリマーを含む複製媒体は、より低いガラス転移温度を有し、これが、固化したメタクリレートコポリマー組成物の受容基板上への低温での積層を可能にする。一実施形態では、本開示のメタクリレートコポリマーを含む固化した複製媒体の平面側は、80、70、60、50℃、又は更には40℃以下の温度で受容基板に積層することができる。メタクリレートコポリマーを含む複製媒体及び受容基板の積層は、ローラー積層によって、手動積層によって、基板幅の精密ロール積層によって、変形可能な(膜又はコンプライアント)積層デバイスなどによって達成され得る。
【0058】
一実施形態では、パターン化樹脂150の厚さは、パターン化樹脂150のパターン要素の高さを除いた残りの厚さTを有する。残りの厚さTは、ナノ構造化された深さ又は高さのオーダーであってもよく、例えば、10nm~1000マイクロメートルの範囲、又は更には1000マイクロメートルを超える範囲であってもよい。
【0059】
上記のようにパターン化樹脂150を使用して大量のコピーを作製するために、一実施形態では、パターン化樹脂150は「タイル」に切断される。複数のナノフィーチャタイルは、受容支持体上に配置され、パターン複製のための大面積被覆率ナノ構造ツールを作製するために使用され得るツールを形成する。そのような構造体が
図2に示されており、
図2は、4つのナノ構造化タイル250を上に有する受容基板260を表示する上面図である。
図2は2タイル×2タイルアレイを示しているが、任意の妥当な数のタイルを使用することができる。典型的には、各タイルは、例えば、1mm
2~2000000mm
2の平均面積を有する。多くの場合、隣接するタイル間には、例えば、約0mm~100mmの範囲のギャップが存在する。表示した実施形態では、パターンのアレイの各タイルは正方形の形状を有するが、任意の形状(例えば、長方形、円形など)を想定することができる。
【0060】
パターン化樹脂は、例えば、熱曝露、熱積層、UV曝露又は硬化を含む様々な機構を介して受容基板に固定することができる。一実施形態では、追加の接着剤層(光学透明接着剤又はOCAなど)、カップリング剤、表面処理剤、分解剤などを使用して、パターン化樹脂を受容基板に固定するのを助ける。
【0061】
一実施形態では、本明細書に開示されるメタクリレートコポリマーを含む液体組成物は、硬化によって硬質化され得る。放出されたエネルギーがメタクリレートコポリマーを硬化させることができるように、1つ以上のエネルギー源を位置付けることができる。エネルギー源は、エネルギー、例えば、化学線、電子ビーム線、又は熱を放出することが可能であり得る。エネルギー源が放射線を放出する場合、液体組成物及び/又はパターン化テンプレートは、複製媒体の硬化を可能にするために、放射線に対して実質的に透過性であり得る。特性又は特徴に関する用語「実質的に」は、その特性又は特徴が、その特性又は特徴とは反対のものが示される程度よりも高い程度で示されることを意味する。例えば、「実質的に」透過性の基板は、透過しない(例えば、吸収する及び反射する)放射線よりも多くの放射線(例えば、可視光)を透過する基板を指す。したがって、表面上に入射する可視光の50%超を透過する基板は、実質的に透過性であるが、表面上に入射する可視光の50%以下を透過する基板は、実質的に透過性というものではない。
【0062】
化学線の供給源は、化学線が光開始剤及び有機光活性化可能な還元剤前駆体によって吸収される適切な波長のものであるように選択される。例示的な化学線源としては、レーザー(紫外線又は可視光線)、広域フラッシュランプ(例えば、キセノンフラッシュランプ)、並びに低圧、中圧、及び高圧水銀アークランプ 水銀アークランプ、マイクロ波駆動水銀ランプ(例えば、H型、V型、又はD型電球を使用する)、並びに発光ダイオード(LED)を挙げることができる。放射線硬化に関する更なる詳細は、当業者の能力を伴うものである。
【0063】
有利には、本明細書に開示されるメタクリレートコポリマーは、0、5、10、15℃、又は更に20℃を超えるガラス転移温度を有し、複製樹脂が室温で固体であることを可能にすると同時に、固体支持体上に積層される固化した複製媒体の低温積層(例えば、70℃未満)も可能にする。一実施形態では、複製媒体(すなわち、メタクリレートコポリマー及び任意の添加剤)のガラス転移温度は、少なくとも30、35、40℃、又は更には45℃、かつ最大70、65、60、55℃、又は更には50℃である。本開示の例示的な実施形態は、パターン化テンプレート上に形成された、室温で実質的に固体の複製媒体を提供する。本明細書に記載されるプロセスは、例えば、同じ基板上の他のサブ領域のための他のパターン化テンプレート上に複製媒体をコーティング又は転写する間など、中間加工工程中の取り扱い及び保管を容易にすることができる。本開示の実施形態は、基板のサブ領域に接触する平面表面を有する硬化性ポリマー樹脂複製媒体を更に提供する。複製媒体は、平面表面を基板に密接に接触させるために、材料が実質的に流動性になることを可能にするよう、低下したガラス転移温度を有するべきである。本明細書に記載の実施形態は、プロセス温度を低下させ、ひいては、パターン化テンプレート、複製媒体、及び受容基板の熱膨張係数の不一致によるパターン化テンプレートのレリーフ構造の歪みの可能性を低減するので、有利である。
【実施例】
【0064】
別段断りのない限り、実施例及び明細書のその他の部分における、全ての部、百分率、比などは重量によるものであり、実施例で用いた全ての試薬は、EMD Millipore(Burlington,MA)から入手したものであり、受領したままの状態で使用したか、又は総合的化学物質供給元、例えば、VWR,Radnor,PAなどから入手可能なものであり、又は通常の方法によって合成することができる。表1(以下)に、実施例で使用した材料及びそれらの供給元を一覧で示す。
【表1】
【0065】
試験方法
【0066】
走査型電子顕微鏡(SEM)画像を収集するための方法
【0067】
試料をアルミニウム検査スタブ上に取り付け、スパッタリングによってAuPdでコーティングして伝導性を確保した。Desk V Sample Preparation System(Denton Vacuum)を使用して、直流モードを用いて20ミリアンペアの電流で30秒間スパッタリングを行った。Hitachi S4700電界放出式走査型電子顕微鏡(Hitachi,Tokyo,Japan)で検査を行った。
【0068】
調製例1
【0069】
樹脂Aを、PHOTOMER 6210と、SR238と、SR351と、TPOとを60/20/20/0.5の重量比で組み合わせることによって調製した。全ての成分を添加した後、およそ50℃に加熱し、ローラーミキサーで12時間混合することによって、樹脂混合物をブレンドした。混合物を均質に見えるまでブレンドした。
【0070】
調製例2
【0071】
2×3インチ(5.1cm(センチメートル)×7.6cm)のホウケイ酸顕微鏡スライド(Fisher Scientific,Hampton,NH)をアセトン及びイソプロピルアルコールですすぎ、Vectra TX1010クリーンルームワイプ(Texwipe,Kernersville,NC)で拭くことによって、ガラスを調製した。洗浄したガラスを、メチルエチルケトン中に0.5重量%のK90を含有する溶液中でディップコーティングした。コーティングしたスライドを、140℃で15分間焼成し、その後室温に冷却した。
【0072】
調製例3
【0073】
【0074】
撹拌棒を備えた500mL(ミリリットル)丸底フラスコに、TE1(20g、97mmol、1.0当量)、BHT(2.14g、9.70mmol、0.100当量)、及びジクロロメタン(DCM、324mL)を添加した。不均質混合物に、DPTS(1.43g、8.85mmol、0.05当量)及び2-ヒドロキシエチルアクリレート(20.05mL、174.6mmol、1.8当量)を添加した。混合物をrt(室温)で5分間撹拌し、次いでDIC(33.04mL、213.4mmol、2.2当量)を、シリンジを介して添加した。反応物を室温で18時間撹拌し、その後、固形物を濾過し、酢酸エチル(3×10mL)で洗浄し、有機層を収集し、減圧下で部分的に濃縮した。液体のおよそ1/3が残ったとき、不均質混合物(淡黄色の粘性液体中の白色固形物)を濾過し、酢酸エチル(3×3mL)で洗浄した。このプロセスをもう一度繰り返し、次いで、液体上に室内空気を吹き付けることによってヒュームフード内で一晩濃縮した。得られた材料が粘性の黄色油状物であった場合、それを、Biotage Isolara One(Biotage,Uppsala,Sweden)及び適切なBiotage Sfaer Flash精製カラムを使用する自動カラムクロマトグラフィーにより精製した。溶離液は、80/20から20/80容量/容量までのヘキサン/酢酸エチル勾配であった。所望の生成物を回収し、室内空気を一晩吹き付けることによって濃縮して、透明な粘性油状物(37.2g、収率95.3%)を得た。
【0075】
実施例1:MMA、AMA、及びMCR-M07のコポリマーの調製
【化8】
【0076】
表2に示す試薬を、1000ミリリットル(mL)の三口丸底フラスコに添加した。撹拌棒を加え、フラスコを窒素マニホールドに接続し、熱電対、冷却器、及びゴム隔膜を取り付けた。隔膜を通して配置した針を介して、窒素ガスを10分間バブリングすることによって、溶液を脱酸素化した。フラスコを油浴に浸し、撹拌しながら加熱して、65~67℃の反応温度を16時間維持した。この時間中、粘度の上昇が観察された。
1H NMRによるアリコートの分析は、MMAモノマーの59%がポリマーに変換されたことを示した。次いで、反応物を冷却し、空気に曝露した。溶液をアセトニトリル(200mL)及びイソプロパノール(60グラム(g))で希釈し、得られた溶液を分液漏斗に移した。ポリマー溶液をヘプタン(360g)で2回洗浄した。次いで、溶液を2リットル(L)丸底フラスコに移し、DOWANOL PM(260g)を添加した。総溶液質量が300gに等しくなるまで、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧下で蒸留した。DOWANOL PM(260g)の第2の部分を添加し、総溶液質量が260.3 gに等しくなるまで、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を減圧下で蒸留した。少量のアリコートを蒸発乾固し(例えば、少量のアリコートを150℃で少なくとも1時間加熱し)、質量の変化を用いて22.8%のポリマー濃度を決定した。これは、59.4gのポリマーの収量を意味する。
【表2】
【0077】
実施例2:MMA、AMA、及びHFPO-MAのコポリマーの調製
【化9】
【0078】
表3に示す試薬を1000mLの三口丸底フラスコに添加した。撹拌棒を溶液に加え、フラスコを窒素マニホールドに接続し、熱電対、冷却器、及びゴム隔膜を取り付けた。隔膜を通して配置した針を介して、窒素ガスを10分間バブリングすることによって、溶液を脱酸素化した。撹拌しながら加熱マントルを使用して溶液を加熱して、72℃の反応温度を5時間維持した。この時間中、粘度の上昇が観察された。
1H NMR(核磁気共鳴)によるアリコートの分析は、MMAモノマーの60%がポリマーに変換されたことを示した。溶液を空気に曝露し、次いで放冷した。次いで、重合溶液を、NOVEC 7100(750g)を収容するビーカーに撹拌しながら注ぎ、ポリマーの沈殿をもたらした。ポリマーを濾過により単離し、NOVEC 7100(200g)で洗浄した。次いで、固体ポリマー+DOWANOL PM(400g)を1000mLの丸底フラスコに移した。ロータリーエバポレーター上でフラスコを回転させることによって、ポリマーを溶解させた。次いで、総溶液質量が250gになるまで、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を蒸留した。少量のアリコートを蒸発乾固させ、質量の変化を用いて23.0%のポリマー濃度を決定した。これは、57.5gのポリマーの収量を意味する。
【表3】
【0079】
実施例3:液体組成物の調製
【0080】
実施例1のコポリマー(10g)、TEDA(250ミリグラム(mg))、TPO(253mgの、DOWANOL PM中10%溶液)、及びDOWANOL PM(14.8g)を混合することによって、液体組成物を調製した。
【0081】
実施例4:実施例1のコポリマーを含むパターン化樹脂の調製
【0082】
樹脂Aパターン化テンプレート
【0083】
樹脂Aを多層フィルムA上にダイコーティングすることによって、ナノフィーチャのテンプレートを調製した。多層フィルムAは、P国際公開第2019/032635(A1)号(Johnsonら)に記載されている方法を使用して調製した。得られた多層フィルムは、43ミクロンのポリエチレンテレフタレート(PET)層、6~7ミクロンの線状B-E-Sトリブロックコポリマー層(「KRATON G1645」)、60重量部のポリプロピレンランダムコポリマー(「PP9074MED」)と40重量部のB-E-Sトリブロックコポリマー(「KRATON G1645」)とのブレンドを含む6~7ミクロンの層、及び15ミクロンのPETGコポリマー層(「EASTAR GN071」)を有していた。コーティングフィルムの樹脂A側を、15.2メートル/分の速度でゴム被覆ローラーを使用して、60℃に制御されたスチールローラーに取り付けられたナノ構造化ニッケル表面にプレスした。ナノ構造化ニッケルツールは、穴フィーチャを有する1つの5cm×7.5cmのパターン化領域からなる。フィーチャは、約25μm×25μmの繰り返し単位正方形を有するランダムアレイ内の直径150nmで高さ450ナノメートル(nm)の円筒であった。多層フィルムA上の樹脂Aのコーティング厚さは、完全に湿潤するのに十分であった。ニッケル表面は、コーティングされたフィルムがナノ構造化されたニッケル表面に対してプレスされるにつれて樹脂のローリングビーズを形成する。樹脂Aコーティングを、ナノ構造化ニッケル表面と接触させながら、Dバルブを取り付けた2つの、両方とも142ワット/センチメートル(142W/cm)で動作するFusion UVランプシステム(Fusion UV Systems,Gaithersburg,MDから商品名「F600」で入手)からの放射線に曝露した。コーティングされたフィルムをナノ構造化ニッケル表面から剥離することにより、樹脂A中にナノ構造化フィーチャが得られた。コーティングされたフィルムのナノ構造化側を再びFusion UVランプシステムからの放射線に曝露して、多層フィルムAの上にナノ構造化フィーチャを有する樹脂Aを含むパターン化テンプレートを形成した。
【0084】
樹脂Aパターン化テンプレートの剥離処理
【0085】
米国特許第6696157号(Davidら)及び同第8664323号(Iyerら)並びに米国特許出願公開第2013/0229378号(Iyerら)に記載されている方法にしたがって組み立てられたシリコン含有剥離フィルム層を、平行板容量結合プラズマリアクター内で上から樹脂Aパターン化テンプレートに適用して、ナノ構造化樹脂Aの上にシリコン含有剥離表面を形成した。このチャンバは、1.7m2(18.3ft2)の表面積を有する中心円筒形通電電極を有する。樹脂Aパターン化テンプレートを通電電極の上に配置した後、リアクターチャンバを1.3パスカル(Pa)(2ミリトル(mTorr))未満のベース圧力までポンプダウンした。O2ガスを、1000毎分標準立法センチメートル(SCCM)の流量でチャンバ内に流した。高周波(RF)電力を13.56メガヘルツ(MHz)の周波数及び2000ワット(W)の印加電力でリアクター内に結合することにより、プラズマ強化CVD法を使用して、処理を実施した。ポリマーナノ構造化テンプレートを、反応区域の中を9.1メートル/分(30フィート/分)の速度で移動させることによって、処理時間を制御したところ、およその曝露時間は10秒であった。堆積の完了後、RF(高周波)電力をオフにし、ガスを反応器から排気した。1回目の処理に続いて、チャンバを大気圧に戻すことなく、同じリアクター内で2回目のプラズマ処理を実施した。HMDSOガスを約1750SCCMでチャンバ内に流して、9mTorrの圧力を達成した。続いて、13.56MHzのRF電力を1000Wの印加電力でリアクターに結合した。次いで、パターン化テンプレートを、反応区域の中を9.1メートル/分(フィート/分)の速度で搬送したところ、およその曝露時間は10秒であり、コーティング厚さは約5~10nmであった。この処理時間の終わりに、RF電力及びガス供給を停止し、チャンバを大気圧に戻した。これにより、剥離処理された樹脂Aパターン化テンプレートを得た。
【0086】
メタクリレートコポリマーを含むパターン化樹脂
【0087】
実施例3の液体組成物を用いて、剥離処理樹脂Aパターン化テンプレート上に液体組成物の層をスピンコーティングした。スピンコーティング条件は、1mLの溶液を静的に適用してナノフィーチャ領域を覆った後、500回転毎分(rpm)で5秒間、及び1000rpmで30秒間とし、パターン化テンプレートをメタクリレートコポリマー樹脂でコーティングした。複製媒体の平面表面を、175°F(79.4℃)の温度で最低速度設定のホットロールラミネータを用いて、処理ガラスに積層した。ニップを60ポンド毎平方インチ(psi)(0.41メガパスカル(MPa))で用いて、複製媒体を処理ガラスに適合させた。Fusion D-バルブ(Fusion Light Hammer 10,Heraeus,Hanau,Germany)を100%強度及び50フィート/分(fpm)(15.2メートル/分)のベルト速度で使用して、得られた構造体を架橋した。次いで、この構造体を剥離して、剥離処理された樹脂Aパターン化テンプレートを、実施例3の液体組成物から作製されたパターン化樹脂から分離させた。走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、本試験方法に従って得られたパターン化樹脂の画像を得て(
図3参照)、これは、元のナノ構造化ニッケルツールに対する良好な忠実性を示す。
【0088】
実施例5:液体組成物の調製
【0089】
液体組成物を、実施例1のポリマー(100g)、PETMP(2.53g)、TPO(2.53gの、DOWANOL PM中10%溶液)、及びDOWANOL PM(148g)を混合することによって調製した。
【0090】
実施例6:実施例5の液体組成物を含むナノフィーチャのパターン化ツールの調製
【0091】
樹脂Aパターン化テンプレート
【0092】
3ミル厚(0.08ミリメートル(mm))×12.0インチ幅(30cm)のPETフィルムを使用したことを除いて、実施例4に記載されるようにナノフィーチャのテンプレートを調製し、PETフィルム上にナノ構造化フィーチャを有する樹脂Aを得た。
【0093】
樹脂Aパターン化テンプレートの剥離処理
【0094】
樹脂Aパターン化テンプレートを、実施例4に記載される手順を使用してシリコンで処理した。SEMを使用して、本試験方法にしたがって剥離処理された樹脂Aパターン化テンプレートの画像を得た。
【0095】
メタクリレートコポリマーを含むパターン化樹脂
【0096】
実施例5の液体組成物を、10フィート/分(0.051メートル/秒(m/s))の速度でスロットダイを用いて、上から剥離処理樹脂Aパターン化テンプレート上にロールツーロールプロセスでダイコーティングした。溶液を幅5.0インチ(13cm)、スロット高さ3.0ミル(0.0076cm)でコーティングし、PHD 2000 Syringe Infuse/Withdrawシリンジポンプ(Harvard Apparatus,Holliston,MA)を用いて3.5SCCMの速度でポンプ注入した。コーティングを室温で2分間乾燥させて、パターン化テンプレート上に複製媒体を作製した。LD-K1010-75(Showa Denko Materials Co.LTD,Tokyo,Japan)ライナーを、複製媒体の平面表面に一時的に積層した。受容基板に取り付ける前に、LD-K1010-75を取り外し、複製媒体の平面表面を処理ガラスに移し、試料を455nmの波長によりJL3-シリーズLED(Clearstone Technologies,Hopkins,MN)を用いて100%強度で3分間硬化させたことを除いて、実施例4に記載したように硬化させた。光は、Clearstone Technologies CF 2000標準ベンチトップUV LED電源で制御した。パターン化テンプレートをパターン化樹脂から取り外した。SEMを使用して、本試験方法にしたがって、パターン化樹脂の画像を得て(
図4参照)、これは、元のナノ構造化ニッケルツールに対する良好な忠実性を示した。
【0097】
実施例7:実施例1のメタクリレートコポリマーを含むパターン化樹脂の調製
【0098】
樹脂Aパターン化テンプレート
【0099】
多層フィルムAの代わりに5.0ミル厚(0.13mm)×9.0インチ幅(23cm)のポリカーボネートフィルムを使用し、規則的に間隔を置いて配置された直径200nmの孔の1つのおよそ5cm×5cmのパッチからなるニッケルツールを使用し、これを66℃に保持したことを除いて、実施例4に記載したように樹脂Aのナノ構造化テンプレートを調製した。
【0100】
樹脂Aパターン化テンプレートの剥離処理
【0101】
樹脂Aパターン化テンプレートを、実施例4に記載した手順を使用してシリコンでコーティングした。SEMを使用して、本試験方法にしたがって剥離処理樹脂Aパターン化テンプレートの画像を得た。
図5A及び5Bを参照されたい。
【0102】
メタクリレートコポリマーを含むパターン化テンプレート
【0103】
実施例3の液体組成物を用いて、剥離処理された樹脂Aパターン化テンプレート上に液体の層をスピンコーティングした。スピンコーティング条件は、1mLの液体組成物を静的に適用して、剥離処理樹脂Aパターン化テンプレートのナノフィーチャの領域を覆った後、500回転/分(rpm)で5秒間、及び1000rpmで30秒間とした。次いで、複製媒体をガラス上に移し、実施例4に記載したように硬化させた。SEMを使用して、本試験方法にしたがって実施例3から作製された、得られたパターン化樹脂の画像を得た。
図6A及び6Bを参照されたい。
図5A(上面図)及び
図5B(側面図)に示す剥離処理樹脂Aパターン化テンプレートと、
図6A(上面図)及び
図6B(側面図)に示すメタクリレートコポリマーを含む得られたパターン化樹脂との比較は、良好な忠実性を示す。
【0104】
実施例8:液体組成物の調製
【0105】
液体組成物を、実施例1のポリマー(10g)、TEDA(253mg)、TPO(253mgの、DOWANOL PM中10%溶液)、及びDOWANOL PM(6.4g)を混合することによって調製した。
【0106】
実施例9:2×2タイル状アレイの調製
【0107】
400nmのピッチ、200nmの深さ、及び50パーセントのデューティーサイクルによる、ライングレーディングのレリーフ構造、並びにライングレーディングに平行な方向にテンプレートの長さに及ぶシリコンの縁部から30mmのライングレーディングのない10mm幅の領域を含む、リソグラフィでマスターされた直径100mmのシリコンマスターから、ポリマーパターン化テンプレートを作製した。シリコンマスターを剥離処理した後、ポリマーテンプレートを作製した。シリコンマスターのレリーフ表面は、表面のO2プラズマ活性化の後に、低表面エネルギーフッ素化シランの薄層(例えば、単層)で処理され、剥離を助けた。O2プラズマ活性化を、50WのRF電力で5分間及び1.0Pa(パスカル、75mTorr)の定常状態圧力で行った。
【0108】
剥離処理されたシリコンマスターのレリーフ表面上に0.5mLのMR-UVCur26SFを堆積させることによって、ポリマーパターン化テンプレートを作製し、ST504フィルムをゴムローラーで積層して、レリーフ構造全体にわたってMR-UVCur26SF材料を広げた。MR-UVcur26SFを、385ナノメートル(nm)の波長によるカスタム低電力UV-LEDユニットを用いて、40ボルト(V)、8アンペア(A)で2分間、ST504 PETフィルムを通して硬化させた。ST504 PETフィルム及びMR-UVCur26SF材料をシリコンマスターから剥離して、MR-UVCur26SF材料中の逆レリーフ構造を露出させた。同じシリコンマスターを使用して、これを4回繰り返して、各ポリマーテンプレートを作製した。
【0109】
ポリマーパターン化テンプレートを作製するために使用されたST504 PETは、米国特許第6,696,157号(Davidら)に記載されているように、内製の平行平板容量結合プラズマリアクターを用いたプラズマエッチングを使用することによって、接着性を改善するように修正された。チャンバは、1.7平方メートル(m2、18.3ft2)の表面積を有する中央円筒型の通電電極を有している。フィルムを通電電極の上に配置した後、リアクターチャンバを1.3Pa(2mTorr)未満のベース圧力までポンプダウンした。O2、及びHMDSOガスを、それぞれ20SCCM、及び750SCCMの速度でチャンバに流し入れた。RF電力を13.56MHzの周波数及び7500ワットの印加電力で反応器に結合することにより、反応性イオンエッチング法を使用して処理が実施された。フィルムを、反応区域の中を3メートル/分(10 フィート/分)の速度で移動させることによって、処理時間を制御したところ、およその曝露時間は30秒であった。この処理時間の終わりに、RF電力及びガス供給を停止し、チャンバを大気圧に戻した。
【0110】
国際公開第2020/095258号(Van Lengerichら)に記載されている「剥離処理のための方法」にしたがって組み立てられたシリコン含有剥離層を、ポリマーパターン化テンプレートに適用した。
【0111】
実施例8の液体組成物を、剥離処理されたパターン化テンプレート上にスピンコーティングした。スピンコーティング条件は、6mLの溶液を静的に適用してテンプレートのナノフィーチャ領域を覆った後、500rpmで5秒間、及び1000rpmで60秒間とした。コーティングを60秒間乾燥させて複製媒体を形成した後、特大のLD-K1010-75ライナーを平面表面に適用した。ライナー、複製媒体、及びパターン化テンプレートを、直径85mmの円に切断した。このプロセスを繰り返して、4つの円(又はタイル)を作製した。
【0112】
円を膜積層ユニット内に置き、円のLD-K1010-75表面をユニットの底部と接触させた。膜積層ユニットは、シリコーン膜によって分離された上部及び下部区画を収容していた。真空を各チャンバに別々に適用することができ、圧力を上部に適用することができた。26.7Pa(200mtorr)に達するまで、膜の接触を回避する速度で両方のユニットを真空引きした。次いで、上部を大気に通気し、続いて底部を大気に通気した。LD-K1010-75を円から取り外し、調製したガラスをユニットの底部に置いた。Corning EAGLE XG 200.0×200.0×0.70mmのガラス(Precision Glass & Optics,Santa Ana,CA)を使用したことを除いて、実施例4と同様にガラスを調製した。真空に達するまで、複製媒体の受容基板(又はガラス)への接触を回避する速度で、上部チャンバ及び下部チャンバを真空引きした。次いで、上部チャンバを0.41MPa(60psi)に加圧して、複製媒体と受容基板との接触を可能にした。底部プラテンの内部温度が45℃に達するまで、ユニットをホットプレート上で加熱した。上部チャンバを大気に通気した。まだ真空下の積層ユニット及び底部チャンバ内にある間に、40ボルト(V)、8アンペア(A)で385nmの波長によるカスタム低電力UV-LEDユニットをパターン化テンプレートに方向付け、5分間適用して、複製媒体を硬化させた。次いで、底部チャンバを大気に通気し、ガラス/パターン化樹脂/パターン化テンプレート構造体を取り外した。円(又はタイル)の各々からパターン化テンプレートを取り外して、パターン化樹脂を露出させた。
図7には、本開示によるメタクリレートコポリマー樹脂から作製されたパターン化樹脂の4つのタイルが示されている。
【0113】
本発明の予見可能な改変及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなろう。本発明は、例示目的のために本出願に記載されている実施形態に限定されるものではない。特許証のための上記特許出願において引用された全ての参照文献、特許、特許出願は、一貫した形でそれらの全容が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書の記述と、本明細書に述べられる又は参照により組み込まれた任意の文書中の開示との間に何らかの不一致又は矛盾が存在する場合、本明細書の記述が優先される。
【国際調査報告】