(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】制御性T細胞のバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20241217BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241217BHJP
C12N 15/115 20100101ALI20241217BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20241217BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20241217BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20241217BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G01N33/53 Y
C07K16/28
C12N15/115 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6876 Z
G01N33/574 A
G01N33/53 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528535
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 IB2022060908
(87)【国際公開番号】W WO2023084474
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524180439
【氏名又は名称】ジェイアールディー サイエンス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,クリスティナ レギョン
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA12
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ41
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
(57)【要約】
本発明は、制御性T細胞のバイオマーカーに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RGS1;F5およびCD27から構成された群より選択されたいずれか1つのタンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体または抗原結合断片で制御性T細胞を確認する方法。
【請求項2】
前記タンパク質は、制御性T細胞の表面に特異的に発現する細胞表面タンパク質である、請求項1に記載の制御性T細胞を確認する方法。
【請求項3】
前記制御性T細胞は、エフェクター制御性T細胞、メモリー制御性T細胞、癌浸潤リンパ球制御性T細胞からなる群より1種以上が含まれる細胞表面タンパク質である、請求項1に記載の制御性T細胞を確認する方法。
【請求項4】
RGS1;F5およびCD27から構成された群より選択されたいずれか1つのタンパク質またはその断片;またはこれを暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する製剤を含む癌疾患の診断用組成物。
【請求項5】
前記タンパク質は、制御性T細胞の表面に特異的に発現する細胞表面タンパク質である、請求項4に記載の診断用組成物。
【請求項6】
前記制御性T細胞は、エフェクター制御性T細胞、メモリー制御性T細胞、癌浸潤リンパ球制御性T細胞からなる群より1種以上が含まれる細胞表面タンパク質である、請求項5に記載の診断用組成物。
【請求項7】
前記タンパク質またはその断片の発現レベルを測定する製剤は、前記タンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体、オリゴペプチド、リガンド、PNA(peptide
nucleic acid)およびアプタマー(aptamer)からなる群より選択された1種以上を含む、請求項4に記載の診断用組成物。
【請求項8】
前記タンパク質またはその断片を暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する製剤は、前記遺伝子に特異的に結合するプライマー、プローブおよびアンチセンスヌクレオチドからなる群より選択された1種以上を含む、請求項4に記載の診断用組成物。
【請求項9】
前記癌は、卵巣癌、大腸癌、膵臓癌、胃癌、肝臓癌、乳癌、子宮頸癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、肺癌、非小細胞性肺癌、前立腺癌、胆嚢癌、胆道癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、血液癌、膀胱癌、腎臓癌、黒色腫、結腸癌、骨癌、皮膚癌、頭部癌、子宮癌、直腸癌、脳腫瘍、肛門付近癌、ラッパ管癌腫、子宮内膜癌腫、膣癌、陰門癌腫、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、輸尿管癌、腎細胞癌腫、腎骨盤癌腫、中枢神経系(CNS central nervoussystem)腫瘍、一次CNSリンパ腫、脊髓腫瘍、脳幹神経膠腫または脳下垂体腺腫である、請求項4~8のいずれか1項に記載の診断用組成物。
【請求項10】
請求項4~9のいずれか1項に記載の診断用組成物を含む癌疾患診断用キット。
【請求項11】
目的とする個体から分離された生物学的試料においてRGS1;F5およびCD27から構成された群より選択されたいずれか1つのタンパク質またはその断片;またはこれを暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する段階を含む癌疾患を診断するための情報提供方法。
【請求項12】
前記タンパク質は、制御性T細胞の表面に特異的に発現する細胞表面タンパク質である
、請求項11に記載の情報提供方法。
【請求項13】
前記制御性T細胞は、エフェクター制御性T細胞、メモリー制御性T細胞、癌浸潤リンパ球制御性T細胞からなる群より1種以上が含まれる細胞表面タンパク質である、請求項12に記載の情報提供方法。
【請求項14】
前記生物学的試料は、全血(whole blood)、白血球(leukocytes)、末梢血液単核細胞(peripheral blood mononuclear
cells)、白血球軟膜(buffy coat)、血漿(plasma)、血清(serum)、痰(sputum)、涙(tears)、粘液(mucus)、洗鼻液(nasal washes)、鼻腔吸引物(nasal aspirate)、呼吸(breath)、尿(urine)、精液(semen)、唾(saliva)、腹腔洗浄液(peritoneal washings)、骨盤液(pelvic fluids)、嚢胞液(cystic fluid)、脳脊髄膜液(meningeal fluid)、羊水(amniotic fluid)、腺液(glandular fluid)、膵臓液(pancreatic fluid)、リンパ液(lymph fluid)、胸水(pleural fluid)、乳頭吸引物(nipple aspirate)、気管支吸引物(bronchial aspirate)、滑液(synovial fluid)、関節吸引物(joint aspirate)、器官分泌物(organ secretions)、細胞(cell)、細胞抽出物(cell extract)または脳脊髄液(cerebrospinal fluid)を含む、請求項13に記載の情報提供方法。
【請求項15】
前記タンパク質またはその断片の発現レベルの測定方法は、タンパク質チップ分析、免疫測定法、リガンドバインディングアッセイ、MALDI-TOF(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、SELDI-TOF(Sulface Enhanced Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、放射線免疫分析、放射免疫拡散法、オクタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、組織免疫染色、補体固定分析法、二次元電気泳動分析、液状クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography-Mass Spectrometry、LC-MS)、LC-MS/MS(liquid chromatography-Mass Spectrometry/Mass Spectrometry)、ウェスタンブロッティングまたはELISA(enzyme linked immunosorbentassay)によって行われる、請求項14に記載の情報提供方法。
【請求項16】
前記タンパク質またはその断片を暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する方法は、逆転写重合酵素反応(RT-PCR)、競争的逆転写重合酵素反応(Competitive RT-PCR)、リアルタイム逆転写重合酵素反応(Real-time RT-PCR)、RNase保護分析法(RPA;RNase protection assay)、ノーザンブロッティング(Northern blotting)またはDNAチップによって行われる、請求項14に記載の情報提供方法。
【請求項17】
前記癌は、卵巣癌、大腸癌、膵臓癌、胃癌、肝臓癌、乳癌、子宮頸癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、肺癌、非小細胞性肺癌、前立腺癌、胆嚢癌、胆道癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、血液癌、膀胱癌、腎臓癌、黒色腫、結腸癌、骨癌、皮膚癌、頭部癌、子宮癌、直腸癌、脳腫瘍、肛門付近癌、ラッパ管癌腫、子宮内膜癌腫、膣癌、陰門癌腫、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、輸尿管癌、腎細胞癌腫、腎骨盤癌腫、中枢神経系(CNS central nervoussystem)腫
瘍、一次CNSリンパ腫、脊髓腫瘍、脳幹神経膠腫または脳下垂体腺腫である、請求項11~16のいずれか1項に記載の情報提供方法。
【請求項18】
RGS1;F5およびCD27から構成された群より選択されたいずれか1つのタンパク質またはその断片;またはこれを暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する製剤を含む免疫関連疾患の診断用組成物。
【請求項19】
前記タンパク質は、制御性T細胞の表面に特異的に発現する細胞表面タンパク質である、請求項18に記載の診断用組成物。
【請求項20】
前記制御性T細胞は、エフェクター制御性T細胞、メモリー制御性T細胞、癌浸潤リンパ球制御性T細胞からなる群より1種以上が含まれる細胞表面タンパク質である、請求項19に記載の診断用組成物。
【請求項21】
前記タンパク質またはその断片の発現レベルを測定する製剤は、前記タンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体、オリゴペプチド、リガンド、PNA(peptide
nucleic acid)およびアプタマー(aptamer)からなる群より選択された1種以上を含む、請求項20に記載の診断用組成物。
【請求項22】
前記タンパク質またはその断片を暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する製剤は、前記遺伝子に特異的に結合するプライマー、プローブおよびアンチセンスヌクレオチドからなる群より選択された1種以上を含む、請求項20に記載の診断用組成物。
【請求項23】
前記免疫関連疾患は、自己免疫疾患;移植片対宿主疾患;臓器移植拒絶反応;喘息;アトピー;または急性または慢性の炎症疾患である、請求項18~22のいずれか1項に記載の診断用組成物。
【請求項24】
前記自己免疫疾患は、リウマチ性関節炎、全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、アトピー皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、喘息、クローン病、ベーチェット病、シェーグレン症侯群、ギラン・バレー症侯群、慢性甲状腺炎、多発性硬化症、多発性筋炎、強直性脊椎炎、線維組織炎および結節性多発性動脈炎から構成された群より選択される、請求項23に記載の診断用組成物。
【請求項25】
請求項18~24のいずれか1項に記載の診断用組成物を含む免疫関連疾患診断用キット。
【請求項26】
目的とする個体から分離された生物学的試料においてRGS1;F5およびCD27から構成された群より選択されたいずれか1つのタンパク質またはその断片;またはこれを暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する段階を含む免疫関連疾患を診断するための情報提供方法。
【請求項27】
前記タンパク質は、制御性T細胞の表面に特異的に発現する細胞表面タンパク質である、請求項26に記載の情報提供方法。
【請求項28】
前記制御性T細胞は、エフェクター制御性T細胞、メモリー制御性T細胞、癌浸潤リンパ球制御性T細胞からなる群より1種以上が含まれる細胞表面タンパク質である、請求項27に記載の情報提供方法。
【請求項29】
前記生物学的試料は、全血(whole blood)、白血球(leukocytes)、末梢血液単核細胞(peripheral blood mononuclear
cells)、白血球軟膜(buffy coat)、血漿(plasma)、血清(serum)、痰(sputum)、涙(tears)、粘液(mucus)、洗鼻液(nasal washes)、鼻腔吸引物(nasal aspirate)、呼吸(breath)、尿(urine)、精液(semen)、唾(saliva)、腹腔洗浄液(peritoneal washings)、骨盤液(pelvic fluids)、嚢胞液(cystic fluid)、脳脊髄膜液(meningeal fluid)、羊水(amniotic fluid)、腺液(glandular fluid)、膵臓液(pancreatic fluid)、リンパ液(lymph fluid)、胸水(pleural fluid)、乳頭吸引物(nipple aspirate)、気管支吸引物(bronchial aspirate)、滑液(synovial fluid)、関節吸引物(joint aspirate)、器官分泌物(organ secretions)、細胞(cell)、細胞抽出物(cell extract)または脳脊髄液(cerebrospinal fluid)を含む、請求項28に記載の情報提供方法。
【請求項30】
前記タンパク質またはその断片の発現レベルの測定方法は、タンパク質チップ分析、免疫測定法、リガンドバインディングアッセイ、MALDI-TOF(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、SELDI-TOF(Sulface Enhanced Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、放射線免疫分析、放射免疫拡散法、オクタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、組織免疫染色、補体固定分析法、二次元電気泳動分析、液状クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography-Mass Spectrometry、LC-MS)、LC-MS/MS(liquid chromatography-Mass Spectrometry/Mass Spectrometry)、ウェスタンブロッティングまたはELISA(enzyme linked immunosorbentassay)によって行われる、請求項29に記載の情報提供方法。
【請求項31】
前記タンパク質またはその断片を暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する方法は、逆転写重合酵素反応(RT-PCR)、競争的逆転写重合酵素反応(Competitive RT-PCR)、リアルタイム逆転写重合酵素反応(Real-time RT-PCR)、RNase保護分析法(RPA;RNase protection assay)、ノーザンブロッティング(Northern blotting)またはDNAチップによって行われる、請求項29に記載の情報提供方法。
【請求項32】
前記免疫関連疾患は、自己免疫疾患;移植片対宿主疾患;臓器移植拒絶反応;喘息;アトピー;または急性または慢性の炎症疾患である、請求項26~31のいずれか1項に記載の情報提供方法。
【請求項33】
前記自己免疫疾患は、リウマチ性関節炎、全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、アトピー皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、喘息、クローン病、ベーチェット病、シェーグレン症侯群、ギラン・バレー症侯群、慢性甲状腺炎、多発性硬化症、多発性筋炎、強直性脊椎炎、線維組織炎および結節性多発性動脈炎から構成された群より選択される、請求項32に記載の情報提供方法。
【請求項34】
RGS1;F5およびCD27から構成された群より選択されたいずれか1つのタンパク質またはその断片;またはこれを暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する製剤を含む脳神経系疾患の診断用組成物。
【請求項35】
前記タンパク質は、制御性T細胞の表面に特異的に発現する細胞表面タンパク質である、請求項34に記載の診断用組成物。
【請求項36】
前記制御性T細胞は、エフェクター制御性T細胞、メモリー制御性T細胞、癌浸潤リンパ球制御性T細胞からなる群より1種以上が含まれる細胞表面タンパク質である、請求項35に記載の診断用組成物。
【請求項37】
前記タンパク質またはその断片の発現レベルを測定する製剤は、前記タンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体、オリゴペプチド、リガンド、PNA(peptide
nucleic acid)およびアプタマー(aptamer)からなる群より選択された1種以上を含む、請求項36に記載の診断用組成物。
【請求項38】
前記タンパク質またはその断片を暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する製剤は、前記遺伝子に特異的に結合するプライマー、プローブおよびアンチセンスヌクレオチドからなる群より選択された1種以上を含む、請求項36に記載の診断用組成物。
【請求項39】
前記脳神経系疾患は、神経退行性疾患または神経炎症性疾患である、請求項34~38のいずれか1項に記載の診断用組成物。
【請求項40】
前記神経退行性疾患または神経炎症性疾患は、脳卒中、認知症、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、ニーマン・ピック病(Niemann-Pick disease)、多発性硬化症、プリオン病(prion disease)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、筋委縮性側索硬化症(AlzAmyotrophic lateral sclerosis)、副腎生物症侯群(Paraneoplastic syndrome)、皮質基底退行症、多系統萎縮病、進行性核上性麻痺、神経系自己免疫疾患、脊髄小脳変性症(spinocerebellar ataxia)、炎症性および神経病症性痛み、脳血管疾患、脊髓損傷(spinal cord injury)およびタウオパチー(tauopathy)からなる群より選択される、請求項39に記載の診断用組成物。
【請求項41】
請求項34~40のいずれか1項に記載の診断用組成物を含む脳神経系疾患診断用キット。
【請求項42】
目的とする個体から分離された生物学的試料においてRGS1;F5およびCD27から構成された群より選択されたいずれか1つのタンパク質またはその断片;またはこれを暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する段階を含む脳神経系疾患を診断するための情報提供方法。
【請求項43】
前記タンパク質は、制御性T細胞の表面に特異的に発現する細胞表面タンパク質である、請求項42に記載の情報提供方法。
【請求項44】
前記制御性T細胞は、エフェクター制御性T細胞、メモリー制御性T細胞、癌浸潤リンパ球制御性T細胞からなる群より1種以上が含まれる細胞表面タンパク質である、請求項43に記載の情報提供方法。
【請求項45】
前記生物学的試料は、全血(whole blood)、白血球(leukocytes)、末梢血液単核細胞(peripheral blood mononuclear
cells)、白血球軟膜(buffy coat)、血漿(plasma)、血清(
serum)、痰(sputum)、涙(tears)、粘液(mucus)、洗鼻液(nasal washes)、鼻腔吸引物(nasal aspirate)、呼吸(breath)、尿(urine)、精液(semen)、唾(saliva)、腹腔洗浄液(peritoneal washings)、骨盤液(pelvic fluids)、嚢胞液(cystic fluid)、脳脊髄膜液(meningeal fluid)、羊水(amniotic fluid)、腺液(glandular fluid)、膵臓液(pancreatic fluid)、リンパ液(lymph fluid)、胸水(pleural fluid)、乳頭吸引物(nipple aspirate)、気管支吸引物(bronchial aspirate)、滑液(synovial fluid)、関節吸引物(joint aspirate)、器官分泌物(organ secretions)、細胞(cell)、細胞抽出物(cell extract)または脳脊髄液(cerebrospinal fluid)を含む、請求項44に記載の情報提供方法。
【請求項46】
前記タンパク質またはその断片の発現レベルの測定方法は、タンパク質チップ分析、免疫測定法、リガンドバインディングアッセイ、MALDI-TOF(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、SELDI-TOF(Sulface Enhanced Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、放射線免疫分析、放射免疫拡散法、オクタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、組織免疫染色、補体固定分析法、二次元電気泳動分析、液状クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography-Mass Spectrometry、LC-MS)、LC-MS/MS(liquid chromatography-Mass Spectrometry/Mass Spectrometry)、ウェスタンブロッティングまたはELISA(enzyme linked immunosorbentassay)によって行われる、請求項45に記載の情報提供方法。
【請求項47】
前記タンパク質またはその断片を暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する方法は、逆転写重合酵素反応(RT-PCR)、競争的逆転写重合酵素反応(Competitive RT-PCR)、リアルタイム逆転写重合酵素反応(Real-time RT-PCR)、RNase保護分析法(RPA;RNase protection assay)、ノーザンブロッティング(Northern blotting)またはDNAチップによって行われる、請求項45に記載の情報提供方法。
【請求項48】
前記脳神経系疾患は、神経退行性疾患または神経炎症性疾患である、請求項42~47のいずれか1項に記載の情報提供方法。
【請求項49】
前記神経退行性疾患または神経炎症性疾患は、脳卒中、認知症、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、ニーマン・ピック病(Niemann-Pick disease)、多発性硬化症、プリオン病(prion disease)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、筋委縮性側索硬化症(AlzAmyotrophic lateral sclerosis)、副腎生物症侯群(Paraneoplastic syndrome)、皮質基底退行症、多系統萎縮病、進行性核上性麻痺、神経系自己免疫疾患、脊髄小脳変性症(spinocerebellar ataxia)、炎症性および神経病症性痛み、脳血管疾患、脊髓損傷(spinal cord injury)およびタウオパチー(tauopathy)からなる群より選択される、請求項48に記載の情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
制御性T細胞のバイオマーカー(Biomarkers for regulatory
T cell)に関する。
【背景技術】
【0002】
制御性T細胞(regulatory T cell、Treg)は、過度の炎症と免疫反応の発生を自然的に防止する重要な役割を果たすが、自己免疫疾患と慢性炎症疾患が発生する場合、制御性T細胞の機能と数字が著しく減少することが報告された。したがって、免疫疾患と炎症疾患がある患者の場合、制御性T細胞が正常な水準に生成されることが重要であり、これは前記疾患の治療法の一つになり得る。
【0003】
癌の場合、制御性T細胞は癌微細環境に多く分布していて、ナチュラルキラー細胞(NK cell)や癌特異的細胞毒性Tリンパ球(cytotoxic T lymphocyte)の癌細胞除去能を阻害するため、免疫チェックポイントであるPD-1、CTLA-4などとともに、癌の免疫回避機序の重要な役割を果たすことが報告された。
【0004】
制御性T細胞は、発生由来および細胞の性質によって、ナイーブ制御性T細胞(未分化Treg;nTreg)、休止期制御性T細胞(resting Treg;rTreg)、エフェクター制御性T細胞(effector Treg;eTreg)およびメモリー制御性T細胞(memory Treg;mTreg)に分けられる。最近、Shimon SakaguchiグループでCD4、CD45RA、Foxp3、CD25の発現量に基づいてnon-Treg、nTreg/rTreg、eTregを区分した(CD4+CD25+CD45RA-Foxp3lo;non-Treg、CD4+CD25+CD45RA+Foxp3lo;nTreg、CD4+CD25+CD45RA-Foxp3hi;eTreg)。前記制御性T細胞の種類のうち、エフェクター制御性T細胞とメモリー制御性T細胞が高い免疫抑制能を有することが知られている。特に、癌浸潤リンパ球(tumor infiltrating lymphocytes;TIL)ではエフェクター制御性T細胞が多く分布しており、免疫チェックポイントであるCTLA-4を高く発現していて、免疫抑制能も高いことが報告された。したがって、制御性T細胞の中でも免疫抑制能が高いエフェクター制御性T細胞、メモリー制御性T細胞、癌浸潤リンパ球内の制御性T細胞を特異的に調節することは、効果的な免疫治療法になり得る。
【0005】
現在まで制御性T細胞に特異的に存在する遺伝子およびタンパク質に関する研究が進められ、CD25、CTLA4、CD62L、CD38、CD103、GITRおよびCD45RBなどの物質が標識物質に相当できることが提示されてきたが、依然として制御性T細胞のみを単独で標的化できる遺伝子およびタンパク質は存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、制御性T細胞に特異的なマーカーまたはその断片に特異的に結合する抗体または抗原結合断片で制御性T細胞を確認する方法を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、制御性T細胞に特異的なマーカーまたはその断片に;またはこれを暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する製剤を含む癌、免疫関連疾患または脳神経系疾患の診断用組成物を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、制御性T細胞に特異的なマーカーまたはその断片に;またはこれを暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する製剤を含む癌、免疫関連疾患または脳神経系疾患の診断用組成物を含む診断用キットを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、目的とする個体から分離された生物学的試料において制御性T細胞に特異的なマーカーまたはその断片;またはこれを暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する段階を含む癌、免疫関連疾患または脳神経系疾患を診断するための情報提供方法を提供することである。
【0010】
しかし、本発明が解決しようとする技術的課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は以下の記載から当業界における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の「制御性T細胞(Regulatory T cell)」または「Treg」は、免疫抑制能が高いエフェクター制御性T細胞、メモリー制御性T細胞、癌浸潤リンパ球制御性T細胞からなる群より選択できるが、これに制限されるものではない。
【0012】
本発明の「核酸分子」は、本発明で提供するポリペプチドのアミノ酸配列を、当業者に知られているように、ポリヌクレオチド配列に翻訳された核酸分子をすべて含む。そのため、ORF(open reading frame)による多様なポリヌクレオチド配列が製造可能であり、これもすべて本発明の核酸分子に含まれる。
【0013】
本発明の「抗体」は、抗原と特異的に結合して抗原-抗体反応を起こす物質を指す。本発明の目的上、抗体は、制御性T細胞特異的タンパク質またはその細胞外ドメインに対して特異的に結合する抗体を意味する。本発明の前記抗体は、多クローン抗体、単クローン抗体および組換え抗体をすべて含む。前記抗体は、当業界で広く公知の技術を用いて容易に製造できる。例えば、多クローン抗体は、前記バイオマーカータンパク質の抗原を動物に注射し、動物から採血して抗体を含む血清を得る過程を含む、当業界で広く公知の方法によって生産できる。このような多クローン抗体は、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、サル、ウマ、ブタ、ウシ、イヌなどの任意の動物から製造できる。また、単クローン抗体は、当業界で広く公知のハイブリドーマ方法(hybridoma method;KohlerおよびMilstein(1976)European Journal of Immunology 6:511-519参照)、またはファージ抗体ライブラリー技術(Clackson et al,Nature,352:624-628,1991;Marks et al,J.Mol.Biol.,222:58,1-597,1991参照)を用いて製造できる。前記方法で製造された抗体は、ゲル電気泳動、透析、塩沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィーなどの方法を用いて分離、精製される。また、本発明の抗体は、2個の全長の軽鎖および2個の全長の重鎖を有する完全な形態のみならず、抗体分子の機能的な断片を含む。抗体分子の機能的な断片とは、少なくとも抗原結合機能を保持している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2およびFvなどがある。
【0014】
本発明において、「免疫グロブリン」は、重鎖および軽鎖を有し、それぞれの重鎖および軽鎖は、不変領域および可変領域を含む。軽鎖および重鎖の可変領域は、相補性決定領域(complementarity determining region、以下、「CDR」という)と呼ばれる3個の多変可能な領域および4個の構造領域(Framework region)を含む。前記CDRは、主に抗原の抗原決定基(Epitope)に結合する役割を果たす。それぞれの鎖のCDRは、典型的にN-末端から順次に、CDR1、CDR2およびCDR3と称し、また、特定のCDRが位置している鎖によっ
て識別される。
【0015】
本発明において、「相補性決定領域(CDR)」は、3個の多変可能な領域および4個の構造領域(framework region)を含む。前記CDRは、主に抗原の抗原決定基(epitope)に結合する役割を果たす。それぞれの鎖のCDRは、典型的にN-末端から順次に、CDR1、CDR2およびCDR3と称し、また、特定のCDRが位置している鎖によって識別される。
【0016】
本発明において、「全長抗体」は、2個の全体長さの軽鎖および2個の全体長さの重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド(Disulfide)結合で連結されており、IgA、IgD、IgE、IgM、およびIgGを含む。前記IgGは、その亜型(subtype)として、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む。
【0017】
本発明において、「抗原結合断片」は、抗原結合機能を保持している断片を意味し、抗原結合断片の例は、(i)軽鎖の可変領域(VL)および重鎖の可変領域(VH)と軽鎖の不変領域(CL)および重鎖の一番目の不変領域(CH1)からなるFab断片;(ii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFv断片;(iv)VHドメインからなるdAb断片;(v)分離されたCDR領域;(vi)2個の連結されたFab断片を含む2価の断片であるF(ab’)2断片;(vii)VHドメインおよびVLドメインが抗原結合部位を形成するように結合させるペプチドリンカーによって結合した単鎖Fv分子(scFv);(viii)二特異的な単鎖Fv二量体および(ix)遺伝子融合によって作製された多価または多特異的な断片であるダイアボディ(diabody)などを含む。前記抗原結合断片は、タンパク質加水分解酵素、例えば、パパインまたはペプシンを用いる場合、FabまたはF(ab’)2の断片を得ることができ、遺伝子組換え技術により作製することができる。
【0018】
本発明において、「単クローン抗体」は、実質的に同一の抗体集団から得られた単一分子組成の抗体分子を称する言葉で、特定の抗原決定基(Epitope)に対して単結合特異性および親和度を示す。
【0019】
本発明において、「結合」または「特異的結合」は、本願抗体または抗体組成物の抗原に対する親和度を示すものである。抗原抗体結合において「特異的結合」は、典型的に解離定数(dissociation constant、Kd)が1×10-5M未満または1×10-6M未満または1×10-7M未満の場合、非特異的な背景結合と区分される。特異的結合は、当業界の公知の方法、例えば、ELISA、SPR(Surface plasmon resonance)、免疫沈殿(immunoprecipitation)、共沈殿(coprecipitation)などの方法で検出可能であり、非特異的結合と特異的結合とを区分できる適切な対照群を含む。
【0020】
本発明の「抗体または抗原結合断片」は、単量体の抗原結合能の少なくとも一部を含む二量体、三量体、四量体、五量体などの多量体として存在することができる。このような多量体はまた、同種多量体、または異種多量体を含むものである。抗体多量体は多数の抗原結合部位を含むため、単量体と比較して抗原に対する結合能に優れる。抗体の多量体はさらに、多機能性(bifunctional、trifunctional、tetrafunctional)抗体の作製にも容易である。
【0021】
本発明において、「予防」は、本発明の薬学組成物を用いて疾患の症状を遮断したり、疾患の症状の抑制または遅延させるすべての行為であれば制限なく含むことができる。
【0022】
本発明において、「治療」および「改善」は、本発明の薬学組成物を調べて疾患の症状が好転したり有利になるすべての行為であれば制限なく含むことができる。
【0023】
本発明の「薬学組成物」はこれらに限定されるものではないが、それぞれ通常の方法により、散剤、顆粒剤、カプセル、錠剤、水性懸濁液などの経口型剤形、外用剤、坐剤および滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用できる。本発明の薬学組成物は、薬剤学的に許容可能な担体を含むことができる。薬剤学的に許容される担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合は、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤などを混合して使用可能であり、局所投与用の場合は、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬学組成物の剤形は、上述のような薬剤学的に許容される担体と混合して多様に製造可能である。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル(elixir)、サスペンション、シロップ、ウエハなどの形態に製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプルまたは多数回投薬形態に製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、徐放型製剤などに剤形することができる。一方、製剤化に適した担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートまたは鉱物油などが使用できる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などを追加的に含むことができる。
【0024】
本発明において、薬学組成物に対する「投与経路」はこれらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸が含まれる。経口または非経口投下が好ましい。
【0025】
本発明において、「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、硬膜内、病巣内および頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本発明の薬学組成物はさらに、直腸投与のための坐剤の形態で投与されてもよい。
【0026】
本発明の組成物の「用法および用量」は、使用された特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、規定食、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合および予防または治療される特定の疾患の重症を含んだ様々な要因によって多様に変化可能であり、前記薬学組成物の投与量は、患者の状態、体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適宜選択可能であり、1日0.0001~50mg/kgまたは0.001~50mg/kgで投与することができる。投与は、1日に1回投与してもよく、数回分けて投与してもよい。前記投与量は、いかなる面でも本発明の範囲を限定するものではない。本発明による医薬組成物は、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤に剤形化されてもよい。
【0027】
本発明の「PNA(Peptide Nucleic Acid)」は、人工的に合成された、DNAまたはRNAと類似の重合体を指し、1991年、デンマークのコペンハーゲン大学のNielsen、Egholm、BergとBuchardt教授によって初めて紹介された。DNAはリン酸-リボース糖骨格を有するのに対し、PNAはペプチド結合によって連結された繰り返しのN-(2-アミノエチル)-グリシン骨格を有し、これによってDNAまたはRNAに対する結合力と安定性が大きく増加して、分子生物学、診断分析およびアンチセンス治療法に使用されている。PNAは、文献[Nielsen PE,Egholm M,Berg RH,Buchardt O(Decembe
r1991)。「Sequence-selective recognition of DNA by strand displacement with a thymine-substituted polyamide」。Science254(5037):1497-1500]に詳細に開示されている。
【0028】
本発明の「アプタマー」は、オリゴ核酸またはペプチド分子であり、アプタマーの一般的な内容は、文献[Bock LC et al.,Nature355(6360):5646(1992);Hoppe-Seyler F,Butz K「Peptide
aptamers:powerful new tools for molecular medicine」。J Mol Med.78(8):42630(2000);Cohen BA,Colas P,Brent R.「An artificial
cell-cycle inhibitor isolated from a combinatorial library」。Proc Natl Acad Sci USA.95(24):142727(1998)]に詳細に開示されている。
【0029】
本発明の「プライマー」は、標的遺伝子配列を認知する断片であって、正方向および逆方向のプライマー対を含むが、好ましくは、特異性および敏感性を有する分析結果を提供するプライマー対である。プライマーの核酸配列が試料内に存在する非-標的配列と不一致の配列であるので、相補的なプライマー結合部位を含む標的遺伝子配列のみ増幅し、非特異的増幅を誘発しないプライマーのとき、高い特異性が付与できる。
【0030】
本発明の「プローブ」とは、試料内の検出しようとする標的物質と特異的に結合可能な物質を意味し、前記結合により特異的に試料内の標的物質の存在を確認できる物質を意味する。プローブの種類は、当業界で通常使用される物質として制限はないが、好ましくは、PNA(peptide nucleic acid)、LNA(locked nucleic acid)、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、RNAまたはDNAであってもよいし、最も好ましくは、PNAである。より具体的には、前記プローブは、バイオ物質として、生物に由来するか、これと類似のもの、または生体外で製造されたものを含むもので、例えば、酵素、タンパク質、抗体、微生物、動植物細胞および器官、神経細胞、DNA、およびRNAであってもよいし、DNAは、cDNA、ゲノムDNA、オリゴヌクレオチドを含み、RNAは、ゲノムRNA、mRNA、オリゴヌクレオチドを含み、タンパク質の例としては、抗体、抗原、酵素、ペプチドなどを含むことができる。
【0031】
本発明の「LNA(Locked nucleic acids)」とは、2’-O、4’-Cメチレンブリッジを含む核酸アナログを意味する。LNAヌクレオシドは、DNAとRNAの一般的な核酸塩基を含み、Watson-Crick塩基対の規則に従って塩基対を形成することができる。しかし、メチレンブリッジによる分子の「locking」によって、LNAはWatson-Crick結合において理想的な形状を形成できなくなる。LNAがDNAまたはRNAオリゴヌクレオチドに含まれると、LNAはより早く相補的ヌクレオチド鎖と対をなして、二重螺旋の安定性を高めることができる。
【0032】
本発明の「アンチセンス」は、アンチセンスオリゴマーがワトソン・クリック塩基対の形成によってRNA内の標的配列と混成化されて、標的配列内で典型的にmRNAとRNA:オリゴマーヘテロ二重体の形成を許容する、ヌクレオチド塩基の配列およびサブユニット間のバックボーンを有するオリゴマーを意味する。オリゴマーは、標的配列に対する正確な配列相補性または近似相補性を有することができる。
【0033】
本発明の「キット」は、RT-PCRキット、DNAチップキット、ELISAキット、タンパク質チップキット、ラピッド(rapid)キットまたはMRM(Multiple reaction monitoring)キットであってもよいが、これに制限
されるものではない。前記診断用キットは、分析方法に適した1種類またはそれ以上の他の構成成分組成物、溶液または装置をさらに含むことができる。例えば、逆転写重合酵素反応を行うために必要な必須要素をさらに含むことができる。逆転写重合酵素反応キットは、マーカータンパク質を暗号化する遺伝子に対して特異的なプライマー対を含む。プライマーは、前記遺伝子の核酸配列に特異的な配列を有するヌクレオチドであって、約7bp~50bpの長さ、より好ましくは約10bp~30bpの長さを有することができる。また、対照群遺伝子の核酸配列に特異的なプライマーを含むことができる。その他の逆転写重合酵素反応キットは、テストチューブまたは他の適切な容器、反応緩衝液(pHおよびマグネシウムの濃度は多様)、デオキシヌクレオチド(dNTPs)、Taq-ポリメラーゼおよび逆転写酵素のような酵素、DNase、RNase抑制剤、DEPC-水(DEPC-water)、滅菌水などを含むことができる。前記診断用キットは、DNAチップを行うために必要な必須要素を含むことができる。DNAチップキットは、遺伝子またはその断片に相当するcDNAまたはオリゴヌクレオチド(oligonucleotide)が付着している基板、および蛍光標識プローブを作製するための試薬、製剤、酵素などを含むことができる。また、基板は、対照群遺伝子またはその断片に相当するcDNAまたはオリゴヌクレオチドを含むことができる。前記診断用キットは、ELISAを行うために必要な必須要素を含むことができる。ELISAキットは、前記タンパク質に対して特異的な抗体を含む。抗体は、マーカータンパク質に対する特異性および親和性が高く、他のタンパク質に対する交差反応性がほとんどない抗体で、単クローン抗体、多クローン抗体または組換え抗体である。また、ELISAキットは、対照群タンパク質に特異的な抗体を含むことができる。その他のELISAキットは、結合した抗体を検出できる試薬、例えば、標識された二次抗体、発色団(chromophores)、酵素(例:抗体とコンズゲートされる)およびその基質または抗体と結合可能な他の物質などを含むことができる。
【0034】
本発明の前記「目的とする個体」とは、疾患の発病の有無が不確実な個体で、疾患の発病の可能性が高い個体を意味する。
【0035】
本発明の前記「生物学的試料」は、個体から得られるか、個体に由来する任意の物質、生物学的体液、組織または細胞を意味するもので、例えば、全血(whole blood)、白血球(leukocytes)、末梢血液単核細胞(peripheral blood mononuclear cells)、白血球軟膜(buffy coat)、血漿(plasma)、血清(serum)、痰(sputum)、涙(tears)、粘液(mucus)、洗鼻液(nasal washes)、鼻腔吸引物(nasal aspirate)、呼吸(breath)、尿(urine)、精液(semen)、唾(saliva)、腹腔洗浄液(peritoneal washings)、骨盤液(pelvic fluids)、嚢胞液(cystic fluid)、脳脊髄膜液(meningeal fluid)、羊水(amniotic fluid)、腺液(glandular fluid)、膵臓液(pancreatic fluid)、リンパ液(lymph fluid)、胸水(pleural fluid)、乳頭吸引物(nipple aspirate)、気管支吸引物(bronchial aspirate)、滑液(synovial fluid)、関節吸引物(joint aspirate)、器官分泌物(organ secretions)、細胞(cell)、細胞抽出物(cell extract)または脳脊髄液(cerebrospinal
fluid)を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0036】
本発明において、「被検物質」は、任意の物質(substance)、分子(molecule)、元素(element)、化合物(compound)、実在物(entity)、またはこれらの組み合わせを含む。例えば、これらに限定されないが、タンパク質、ポリペプチド、小有機分子(small organic molecule)、
多糖類(polysaccharide)、ポリヌクレオチドなどを含む。また、天然産物(natural product)、合成化合物または2個以上の物質の組み合わせであってもよい。
【0037】
前記タンパク質に結合するファージディスプレイペプチドクローン(phage-displayed peptide clone)の検索、天然物および化学物質ライブラリー(chemical library)などを用いたHTS(high throughput screening)、ドラッグヒットHTS(drug hit HTS)、細胞ベースのスクリーニング(cell-based screening)、またはDNAアレイ(DNA array)を用いたスクリーニング法などを使用することができる。この場合、本発明の組成物は、前記タンパク質以外にも、タンパク質の構造または生理活性を安定して維持させる緩衝液または反応液を含むことができる。また、本発明の組成物は、生体内(in vivo)実験のために、前記タンパク質を発現する細胞、または転写率を調節可能なプロモーター下で前記タンパク質を発現するプラスミドを含む細胞などを含むことができる。本発明のスクリーニング方法において、試験対象物質は、通常の選定方式によって癌転移抑制剤としての可能性を有すると推定されるか、またはランダムに選定された個別的な核酸、タンパク質、その他の抽出物または天然物、化合物などになる。また、本発明のスクリーニング方法により得られた、遺伝子発現を増進させたりタンパク質の機能を増進させる活性を示す試験対象物質および、逆に遺伝子発現を抑制させたりタンパク質の機能を抑制させる活性を示す試験対象物質は、前者の場合、試験対象物質に対する抑制剤を開発することにより免疫抑制剤候補物質になり、後者の場合は、免疫抑制剤候補物質になる。このような免疫抑制剤候補物質は、後の免疫抑制剤の開発過程でリーディング物質(leading compound)として作用し、リーディング物質が前記遺伝子またはそれから発現するタンパク質の機能抑制効果を示すようにその構造を変形させて最適化することにより、新たな免疫抑制剤を開発することができる。
【0038】
本発明の「siRNA(small interfering RNA)」は、短い19-30個の二重リボ核酸鎖(double strand RNA duplex)で細胞内導入すれば、非特異的阻害(non-specific inhibition)なしに特定の遺伝子の発現のみを抑制する効果を示すもので、siRNAの作用機序は、細胞内でRISC(RNA-induced silencing complex)と結合してmRNAに相当する遺伝子のsense strandが切り出され、sense strandに相補的なantisense stand RISCと複合体となり、相補的な塩基配列を有するmRNA、すなわち標的遺伝子のmRNAと結合してこれを分解することにより、遺伝子の発現を阻害することが知られている。
【0039】
本発明の「shRNA(short hairpin RNA)」は、ターゲット遺伝子siRNA塩基配列のsenseと相補的なnonsenseとの間に3~10個の塩
基linkerを連結するオリゴDNAを合成した後、プラスミドベクターにクローニングするか、またはshRNAをレトロウイルスであるレンチウイルス(lentivirus)およびアデノウイルス(adenovirus)に挿入して発現させると、loopのあるヘアピン構造のshRNAが作られ、細胞内のDicerによってsiRNAに転換されてRNAi効果を示すものをいい、shRNAは、比較的長期間RNAi効果を示すようにするという長所がある。本発明のsiRNAは、生体内の核酸分解酵素による早い分解を防ぐために化学的に変形された形態であってもよい。siRNAは二重螺旋構造を有するので、単一螺旋構造のリボ核酸やアンチセンスオリゴ核酸(antisense oligonucleotide)よりは相対的に安定した構造であるが、生体内の核酸分解酵素によって早く分解されるため、化学的変形により分解速度を減少させることができる。siRNAが簡単に分解されないように安定かつ抵抗的にするためのsiRNAの化学的変形方法は当業者によく知られている。siRNAの化学的変形に最も多く使
用される方式は、ボラノホスフェート(boranophosphate)またはホスホロチオエート(phosphorothioate)修飾方法(modification)である。これらの物質は、siRNAのヌクレオシド(nucleoside)間の連結を安定して形成して、結果的に、核酸分解に対する抵抗性を付与する。ボラノホスフェートで修飾されたリボ核酸は、核酸分解がうまく行われない特徴があるが、化学反応によって作られず、in vitro転写反応によってボラノホスフェートがリボ核酸に入る方式でのみ合成される。ボラノホスフェート修飾方法は比較的手軽な方法に属するが、特定の位置に修飾しにくいという短所がある。これに対し、ホスホロチオエート修飾方法は、所望の部分に硫黄(sulfur)元素を導入できるという長所があるが、度合いの激しいホスホチオエーション(phosphothioation)は、効能減少、毒性、非特異的RISC(RNAinduced silencing complex)形成などの問題が現れる。したがって、最近は、前記2つの方法のほか、リボ核酸の終結位置(3’末端超過部位)にのみ化学的変形をして核酸分解酵素に抵抗性を付与する方法がより好まれている。また、リボース環(ribose ring)を化学的に修飾しても核酸分解酵素に対する抵抗性が強くなることが知られているが、特に、本来細胞内に存在するリボース2’-位の変異はsiRNAを安定化させる。しかし、この位置に正確にメチル基が入ってこそ安定性が増加し、過度に多いメチル基は逆にリボ核酸媒介の干渉現象が失われるなどの問題もある。このような化学的変形の理由は、生体内での薬物動態学的(pharmacokinetic)な滞留時間の増大および有効性を高めるための目的もある(Mark et.al.,Molecular Therapy,13:644-670,2006)。化学的修飾方法のほか、siRNAの細胞内伝達効率を高めるためには、安全かつ効率的な伝達システムが要求される。このために、本発明のsiRNAは、核酸伝達体(nucleic acid delivery system)との複合体の形態で癌治療用医薬組成物中に含まれる。
【0040】
本発明において、「癌」は、哺乳類で典型的に調節されない細胞の成長で特徴づけられた生理的状態を示すか、指す。本発明において、予防、改善または治療の対象になる癌は、固形臓器(solid organ)で異常に細胞が成長して発生した塊からなる固形癌(solid tumor)であってもよく、固形臓器の部位によって、胃癌、肝臓癌、肝癌、膠芽腫、卵巣癌、大腸癌、頭頸部癌、膀胱癌、腎細胞癌、乳癌、転移癌、前立腺癌、膵臓癌、黒色腫または肺癌などであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0041】
本発明において、「免疫関連疾患」は、自己免疫疾患、移植片対宿主疾患、臓器移植拒絶反応、喘息、アトピー、および急性または慢性の炎症疾患からなる群より選択される1種以上であってもよいが、これに制限されるものではない。また、前記自己免疫疾患は、リウマチ性関節炎、全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、アトピー皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、喘息、クローン病、ベーチェット病、シェーグレン症侯群、ギラン・バレー症侯群、慢性甲状腺炎、多発性硬化症、多発性筋炎、強直性脊椎炎、線維組織炎および結節性多発性動脈炎から構成された群より選択される1種以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0042】
本発明において、「脳神経系疾患」は、神経退行性疾患または神経炎症性疾患であってもよい。
【0043】
本発明において、前記「神経退行性疾患」は、神経細胞の機能減少または消失によって発生する疾患を意味することができ、前記「神経炎症性疾患」は、神経系の過度の炎症反応によって発生する疾患を意味することができる。
【0044】
本発明において、前記神経退行性疾患または神経炎症性疾患の具体的な例としては、脳卒中、認知症、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキ
ンソン病(Parkinson’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、ニーマン・ピック病(Niemann-Pick disease)、多発性硬化症、プリオン病(prion disease)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、筋委縮性側索硬化症(AlzAmyotrophic
lateral sclerosis)、副腎生物症侯群(Paraneoplastic syndrome)、皮質基底退行症、多系統萎縮病、進行性核上性麻痺、神経系自己免疫疾患、脊髄小脳変性症(spinocerebellar ataxia)、炎症性および神経病症性痛み、脳血管疾患、脊髓損傷(spinal cord injury)およびタウオパチー(tauopathy)からなる群より選択できるが、これに制限されるものではない。
【0045】
本発明において、「制御性T細胞を確認する方法」とは、逆転写重合酵素反応(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction、RT-PCR)により制御性T細胞に存在する特異的なマーカーを増幅させ、フローサイトメトリー(fluorescence activated cell sorting、FACS)などにより制御性T細胞に存在する特異的なマーカーを蛍光により確認して制御性T細胞を確認または分離する方法を意味するが、これに制限されるものではない。
【0046】
本発明において、前記「逆転写重合酵素反応」とは、重合酵素連鎖反応(Polymerase Chain Reaction、PCR)の変形で、増幅過程により多数のDNA配列を作るために分子生物学で一般的に使用する実験手法である。しかし、逆転写重合酵素連鎖反応では、RNAが先に逆転写酵素によって逆転写されてcDNAを作り、作られたcDNAが既存の重合酵素連鎖反応やリアルタイム重合酵素連鎖反応により増幅されるが、これに制限されるものではない。
【0047】
本発明において、前記「フローサイトメトリー(fluorescence activated cell sorting、FACS)」または「FACS」は、細胞によって発現する1つ以上のFACSから選択可能なポリペプチドの存在、不在または水準によって細胞の母集団を1つ以上の下位母集団に分離する方法を意味する。前記FACSは、細胞を下位集団に分類するために、個別細胞の蛍光を含む光学特性に依存する。
【0048】
本発明において、前記「FACS選択可能なポリペプチド」は、フローサイトメトリーによって直接または間接的に検出できるポリペプチドである。FACS選択可能なポリペプチドの例としては、フローサイトメトリーによるポリペプチドの間接的な検出のために検出可能な結合パートナー(例えば、蛍光標識された抗体)に結合可能な細胞外ドメイン(例えば、CD52またはCD59)を含むポリペプチドを含み、FACS選択可能なポリペプチドの他の例は、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)およびeGFP、Venus、mCherry、mTomatoを含むこれらの変異体などがあり、これは前記フローサイトメトリーによって直接検出可能である。FACSにより制御性T細胞に存在する特異的なマーカーを確認し、制御性T細胞を分離することができる。
【0049】
本発明の一具体例は、RGS1;F5およびCD27から構成された群より選択されたいずれか1つのタンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体または抗原結合断片で制御性T細胞を確認する方法を提供する。
【0050】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質は、制御性T細胞の表面に特異的に発現
する細胞表面タンパク質である、制御性T細胞を確認する方法を提供する。
【0051】
本発明の他の具体例において、前記制御性T細胞は、エフェクター制御性T細胞、メモリー制御性T細胞、癌浸潤リンパ球制御性T細胞からなる群より1種以上が含まれる細胞表面タンパク質である、制御性T細胞を確認する方法を提供する。
【0052】
本発明の一具体例は、RGS1;F5およびCD27から構成された群より選択されたいずれか1つのタンパク質またはその断片;またはこれを暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する製剤を含む癌疾患の診断用組成物を提供する。
【0053】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質は、制御性T細胞の表面に特異的に発現する細胞表面タンパク質である、診断用組成物を提供する。
【0054】
本発明の他の具体例において、前記制御性T細胞は、エフェクター制御性T細胞、メモリー制御性T細胞、癌浸潤リンパ球制御性T細胞からなる群より1種以上が含まれる細胞表面タンパク質である、診断用組成物を提供する。
【0055】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質またはその断片の発現レベルを測定する製剤は、前記タンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体、オリゴペプチド、リガンド、PNA(peptide nucleic acid)およびアプタマー(aptamer)からなる群より選択された1種以上を含む、診断用組成物を提供する。
【0056】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質またはその断片を暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する製剤は、前記遺伝子に特異的に結合するプライマー、プローブおよびアンチセンスヌクレオチドからなる群より選択された1種以上を含む、診断用組成物を提供する。
【0057】
本発明の他の具体例において、前記癌は、卵巣癌、大腸癌、膵臓癌、胃癌、肝臓癌、乳癌、子宮頸癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、肺癌、非小細胞性肺癌、前立腺癌、胆嚢癌、胆道癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、血液癌、膀胱癌、腎臓癌、黒色腫、結腸癌、骨癌、皮膚癌、頭部癌、子宮癌、直腸癌、脳腫瘍、肛門付近癌、ラッパ管癌腫、子宮内膜癌腫、膣癌、陰門癌腫、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、輸尿管癌、腎細胞癌腫、腎骨盤癌腫、中枢神経系(CNS central nervoussystem)腫瘍、一次CNSリンパ腫、脊髓腫瘍、脳幹神経膠腫または脳下垂体腺腫である、診断用組成物を提供する。
【0058】
本発明の他の具体例は、前記診断用組成物を含む癌疾患診断用キットを提供する。
【0059】
本発明の一具体例は、目的とする個体から分離された生物学的試料においてRGS1;F5およびCD27から構成された群より選択されたいずれか1つのタンパク質またはその断片;またはこれを暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する段階を含む癌疾患を診断するための情報提供方法を提供する。
【0060】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質は、制御性T細胞の表面に特異的に発現する細胞表面タンパク質である、情報提供方法を提供する。
【0061】
本発明の他の具体例において、前記制御性T細胞は、エフェクター制御性T細胞、メモリー制御性T細胞、癌浸潤リンパ球制御性T細胞からなる群より1種以上が含まれる細胞表面タンパク質である、情報提供方法を提供する。
【0062】
本発明の他の具体例において、前記生物学的試料は、全血(whole blood)、白血球(leukocytes)、末梢血液単核細胞(peripheral blood mononuclear cells)、白血球軟膜(buffy coat)、血漿(plasma)、血清(serum)、痰(sputum)、涙(tears)、粘液(mucus)、洗鼻液(nasal washes)、鼻腔吸引物(nasal aspirate)、呼吸(breath)、尿(urine)、精液(semen)、唾(saliva)、腹腔洗浄液(peritoneal washings)、骨盤液(pelvic fluids)、嚢胞液(cystic fluid)、脳脊髄膜液(meningeal fluid)、羊水(amniotic fluid)、腺液(glandular fluid)、膵臓液(pancreatic fluid)、リンパ液(lymph fluid)、胸水(pleural fluid)、乳頭吸引物(nipple aspirate)、気管支吸引物(bronchial aspirate)、滑液(synovial fluid)、関節吸引物(joint aspirate)、器官分泌物(organ secretions)、細胞(cell)、細胞抽出物(cell extract)または脳脊髄液(cerebrospinal fluid)を含む、情報提供方法を提供する。
【0063】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質またはその断片の発現レベルの測定方法は、タンパク質チップ分析、免疫測定法、リガンドバインディングアッセイ、MALDI-TOF(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、SELDI-TOF(Sulface Enhanced Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、放射線免疫分析、放射免疫拡散法、オクタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、組織免疫染色、補体固定分析法、二次元電気泳動分析、液状クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography-Mass Spectrometry、LC-MS)、LC-MS/MS(liquid chromatography-Mass Spectrometry/Mass Spectrometry)、ウェスタンブロッティングまたはELISA(enzyme linked immunosorbentassay)によって行われる、情報提供方法を提供する。
【0064】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質またはその断片を暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する方法は、逆転写重合酵素反応(RT-PCR)、競争的逆転写重合酵素反応(Competitive RT-PCR)、リアルタイム逆転写重合酵素反応(Real-time RT-PCR)、RNase保護分析法(RPA;RNase protection assay)、ノーザンブロッティング(Northern blotting)またはDNAチップによって行われる、情報提供方法を提供する。
【0065】
本発明の他の具体例において、前記癌は、卵巣癌、大腸癌、膵臓癌、胃癌、肝臓癌、乳癌、子宮頸癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、肺癌、非小細胞性肺癌、前立腺癌、胆嚢癌、胆道癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、血液癌、膀胱癌、腎臓癌、黒色腫、結腸癌、骨癌、皮膚癌、頭部癌、子宮癌、直腸癌、脳腫瘍、肛門付近癌、ラッパ管癌腫、子宮内膜癌腫、膣癌、陰門癌腫、食道癌、小腸癌、内分泌腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、輸尿管癌、腎細胞癌腫、腎骨盤癌腫、中枢神経系(CNS central nervoussystem)腫瘍、一次CNSリンパ腫、脊髓腫瘍、脳幹神経膠腫または脳下垂体腺腫である、情報提供方法を提供する。
【0066】
本発明の一具体例は、RGS1;F5およびCD27から構成された群より選択されたいずれか1つのタンパク質またはその断片;またはこれを暗号化する遺伝子の発現レベル
を測定する製剤を含む免疫関連疾患の診断用組成物を提供する。
【0067】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質は、制御性T細胞の表面に特異的に発現する細胞表面タンパク質である、診断用組成物を提供する。
【0068】
本発明の他の具体例において、前記制御性T細胞は、エフェクター制御性T細胞、メモリー制御性T細胞、癌浸潤リンパ球制御性T細胞からなる群より1種以上が含まれる細胞表面タンパク質である、診断用組成物を提供する。
【0069】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質またはその断片の発現レベルを測定する製剤は、前記タンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体、オリゴペプチド、リガンド、PNA(peptide nucleic acid)およびアプタマー(aptamer)からなる群より選択された1種以上を含む、診断用組成物を提供する。
【0070】
本発明の他の具体例は、前記タンパク質またはその断片を暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する製剤は、前記遺伝子に特異的に結合するプライマー、プローブおよびアンチセンスヌクレオチドからなる群より選択された1種以上を含む、診断用組成物を提供する。
【0071】
本発明の他の具体例において、前記免疫関連疾患は、自己免疫疾患;移植片対宿主疾患;臓器移植拒絶反応;喘息;アトピー;または急性または慢性の炎症疾患である、診断用組成物を提供する。
【0072】
本発明の他の具体例において、前記自己免疫疾患は、リウマチ性関節炎、全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、アトピー皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、喘息、クローン病、ベーチェット病、シェーグレン症侯群、ギラン・バレー症侯群、慢性甲状腺炎、多発性硬化症、多発性筋炎、強直性脊椎炎、線維組織炎および結節性多発性動脈炎から構成された群より選択される、診断用組成物を提供する。
【0073】
本発明の他の具体例は、前記診断用組成物を含む免疫関連疾患診断用キットを提供する。
【0074】
本発明の一具体例は、目的とする個体から分離された生物学的試料においてRGS1;F5およびCD27から構成された群より選択されたいずれか1つのタンパク質またはその断片;またはこれを暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する段階を含む癌疾患を診断するための情報提供方法を提供する。
【0075】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質は、制御性T細胞の表面に特異的に発現する細胞表面タンパク質である、情報提供方法を提供する。
【0076】
本発明の他の具体例において、前記制御性T細胞は、エフェクター制御性T細胞、メモリー制御性T細胞、癌浸潤リンパ球制御性T細胞からなる群より1種以上が含まれる細胞表面タンパク質である、情報提供方法を提供する。
【0077】
本発明の他の具体例において、前記生物学的試料は、全血(whole blood)、白血球(leukocytes)、末梢血液単核細胞(peripheral blood mononuclear cells)、白血球軟膜(buffy coat)、血漿(plasma)、血清(serum)、痰(sputum)、涙(tears)、粘液(mucus)、洗鼻液(nasal washes)、鼻腔吸引物(nasal aspirate)、呼吸(breath)、尿(urine)、精液(semen)、
唾(saliva)、腹腔洗浄液(peritoneal washings)、骨盤液(pelvic fluids)、嚢胞液(cystic fluid)、脳脊髄膜液(meningeal fluid)、羊水(amniotic fluid)、腺液(glandular fluid)、膵臓液(pancreatic fluid)、リンパ液(lymph fluid)、胸水(pleural fluid)、乳頭吸引物(nipple aspirate)、気管支吸引物(bronchial aspirate)、滑液(synovial fluid)、関節吸引物(joint aspirate)、器官分泌物(organ secretions)、細胞(cell)、細胞抽出物(cell extract)または脳脊髄液(cerebrospinal fluid)を含む、情報提供方法を提供する。
【0078】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質またはその断片の発現レベルの測定方法は、タンパク質チップ分析、免疫測定法、リガンドバインディングアッセイ、MALDI-TOF(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、SELDI-TOF(Sulface Enhanced Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、放射線免疫分析、放射免疫拡散法、オクタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、組織免疫染色、補体固定分析法、二次元電気泳動分析、液状クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography-Mass Spectrometry、LC-MS)、LC-MS/MS(liquid chromatography-Mass Spectrometry/Mass Spectrometry)、ウェスタンブロッティングまたはELISA(enzyme linked immunosorbentassay)によって行われる、情報提供方法を提供する。
【0079】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質またはその断片を暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する方法は、逆転写重合酵素反応(RT-PCR)、競争的逆転写重合酵素反応(Competitive RT-PCR)、リアルタイム逆転写重合酵素反応(Real-time RT-PCR)、RNase保護分析法(RPA;RNase protection assay)、ノーザンブロッティング(Northern blotting)またはDNAチップによって行われる、情報提供方法を提供する。
【0080】
本発明の他の具体例において、前記免疫関連疾患は、自己免疫疾患;移植片対宿主疾患;臓器移植拒絶反応;喘息;アトピー;または急性または慢性の炎症疾患である、情報提供方法を提供する。
【0081】
本発明の他の具体例において、前記自己免疫疾患は、リウマチ性関節炎、全身性強皮症、全身性エリテマトーデス、アトピー皮膚炎、乾癬、円形脱毛症、喘息、クローン病、ベーチェット病、シェーグレン症侯群、ギラン・バレー症侯群、慢性甲状腺炎、多発性硬化症、多発性筋炎、強直性脊椎炎、線維組織炎および結節性多発性動脈炎から構成された群より選択される、情報提供方法を提供する。
【0082】
本発明の一具体例は、RGS1;F5およびCD27から構成された群より選択されたいずれか1つのタンパク質またはその断片;またはこれを暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する製剤を含む脳神経系疾患の診断用組成物を提供する。
【0083】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質は、制御性T細胞の表面に特異的に発現する細胞表面タンパク質である、診断用組成物を提供する。
【0084】
本発明の他の具体例において、前記制御性T細胞は、エフェクター制御性T細胞、メモリー制御性T細胞、癌浸潤リンパ球制御性T細胞からなる群より1種以上が含まれる細胞表面タンパク質である、診断用組成物を提供する。
【0085】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質またはその断片の発現レベルを測定する製剤は、前記タンパク質またはその断片に特異的に結合する抗体、オリゴペプチド、リガンド、PNA(peptide nucleic acid)およびアプタマー(aptamer)からなる群より選択された1種以上を含む、診断用組成物を提供する。
【0086】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質またはその断片を暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する製剤は、前記遺伝子に特異的に結合するプライマー、プローブおよびアンチセンスヌクレオチドからなる群より選択された1種以上を含む、診断用組成物を提供する。
【0087】
本発明の他の具体例において、前記脳神経系疾患は、神経退行性疾患または神経炎症性疾患である、診断用組成物を提供する。
【0088】
本発明の他の具体例において、前記神経退行性疾患または神経炎症性疾患は、脳卒中、認知症、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、ニーマン・ピック病(Niemann-Pick disease)、多発性硬化症、プリオン病(prion disease)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、筋委縮性側索硬化症(AlzAmyotrophic lateral sclerosis)、副腎生物症侯群(Paraneoplastic syndrome)、皮質基底退行症、多系統萎縮病、進行性核上性麻痺、神経系自己免疫疾患、脊髄小脳変性症(spinocerebellar ataxia)、炎症性および神経病症性痛み、脳血管疾患、脊髓損傷(spinal cord injury)およびタウオパチー(tauopathy)からなる群より選択される、診断用組成物を提供する。
【0089】
本発明の他の具体例は、前記診断用組成物を含む脳神経系疾患診断用キットを提供する。
【0090】
本発明の一具体例は、目的とする個体から分離された生物学的試料においてRGS1;F5およびCD27から構成された群より選択されたいずれか1つのタンパク質またはその断片;またはこれを暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する段階を含む脳神経系疾患を診断するための情報提供方法を提供する。
【0091】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質は、制御性T細胞の表面に特異的に発現する細胞表面タンパク質である、情報提供方法を提供する。
【0092】
本発明の他の具体例において、前記制御性T細胞は、エフェクター制御性T細胞、メモリー制御性T細胞、癌浸潤リンパ球制御性T細胞からなる群より1種以上が含まれる細胞表面タンパク質である、情報提供方法を提供する。
【0093】
本発明の他の具体例において、前記生物学的試料は、全血(whole blood)、白血球(leukocytes)、末梢血液単核細胞(peripheral blood mononuclear cells)、白血球軟膜(buffy coat)、血漿(plasma)、血清(serum)、痰(sputum)、涙(tears)、
粘液(mucus)、洗鼻液(nasal washes)、鼻腔吸引物(nasal aspirate)、呼吸(breath)、尿(urine)、精液(semen)、唾(saliva)、腹腔洗浄液(peritoneal washings)、骨盤液(pelvic fluids)、嚢胞液(cystic fluid)、脳脊髄膜液(meningeal fluid)、羊水(amniotic fluid)、腺液(glandular fluid)、膵臓液(pancreatic fluid)、リンパ液(lymph fluid)、胸水(pleural fluid)、乳頭吸引物(nipple aspirate)、気管支吸引物(bronchial aspirate)、滑液(synovial fluid)、関節吸引物(joint aspirate)、器官分泌物(organ secretions)、細胞(cell)、細胞抽出物(cell extract)または脳脊髄液(cerebrospinal fluid)を含む、情報提供方法を提供する。
【0094】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質またはその断片の発現レベルの測定方法は、タンパク質チップ分析、免疫測定法、リガンドバインディングアッセイ、MALDI-TOF(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、SELDI-TOF(Sulface Enhanced Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、放射線免疫分析、放射免疫拡散法、オクタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、組織免疫染色、補体固定分析法、二次元電気泳動分析、液状クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography-Mass Spectrometry、LC-MS)、LC-MS/MS(liquid chromatography-Mass Spectrometry/Mass Spectrometry)、ウェスタンブロッティングまたはELISA(enzyme linked immunosorbentassay)によって行われる、情報提供方法を提供する。
【0095】
本発明の他の具体例において、前記タンパク質またはその断片を暗号化する遺伝子の発現レベルを測定する方法は、逆転写重合酵素反応(RT-PCR)、競争的逆転写重合酵素反応(Competitive RT-PCR)、リアルタイム逆転写重合酵素反応(Real-time RT-PCR)、RNase保護分析法(RPA;RNase protection assay)、ノーザンブロッティング(Northern blotting)またはDNAチップによって行われる、情報提供方法を提供する。
【0096】
本発明の他の具体例において、前記脳神経系疾患は、神経退行性疾患または神経炎症性疾患である、情報提供方法を提供する。
【0097】
本発明の他の具体例において、前記神経退行性疾患または神経炎症性疾患は、脳卒中、認知症、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、ニーマン・ピック病(Niemann-Pick disease)、多発性硬化症、プリオン病(prion disease)、クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症、筋委縮性側索硬化症(AlzAmyotrophic lateral sclerosis)、副腎生物症侯群(Paraneoplastic syndrome)、皮質基底退行症、多系統萎縮病、進行性核上性麻痺、神経系自己免疫疾患、脊髄小脳変性症(spinocerebellar ataxia)、炎症性および神経病症性痛み、脳血管疾患、脊髓損傷(spinal cord injury)およびタウオパチー(tauopathy)からなる群より選択される、情報提供方法を
提供する。
【発明の効果】
【0098】
本発明の制御性T細胞に対する特異的マーカータンパク質またはその断片は、他の免疫細胞と区分できる要素という点で、これを用いて制御性T細胞を選別することができる。また、前記制御性T細胞に対する特異的マーカーを発現する制御性T細胞を確認することにより、前記制御性T細胞が影響を及ぼす、癌;免疫関連疾患;または脳神経系疾患を診断することができる。
【発明を実施するための形態】
【0099】
以下、本発明を下記の実施例によって詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0100】
計3種の癌(大腸癌、肝細胞癌、非小細胞肺癌)患者試料から分析した単一細胞(single cell)mRNA配列分析データを用いて、XGBoost(EXtreme Gradiient Boosting)という意思決定木ベースのアルゴリズムに適用した。この時、XGBoostは、TPM値による意思決定木(Decision-based tree)を用いて、2個セットに系列化するための最適な組み合わせを見つけた。これを用いて、どの遺伝子が系列化(classification)に関連しているか、どの遺伝子が腫瘍Treg特異的に発現しているかを一次的に分類することができた。
【0101】
実施例1.大腸癌(Colorectal cancer:CRC)におけるT制御性細胞のバイオマーカーの選別
患者試料(計12人の患者=男性8人、女性4人)を末梢血液、新鮮な癌組織および採取した癌組織において少なくとも2cm程度近傍の正常組織から採取した:
【0102】
次に、単一細胞分類分析(Single cell sorting)および逆転写増幅および配列分析(reverse transcription、amplification and sequencing)を下記のように行った。
i)収集した各組織から1mm3の片組織を切り出して、RPMI-1640(FBS10%)に入れて、Miltenyl Biotec社のMACS癌分離(MACS tumor Dissociation)キットを用いて、37度のロータで30分間酵素分解反応をさせた。
ii)分解された組織を40μmの細胞-ストレーナに通過させて、400gで10分間遠心分離した。
iii)上澄液を捨てて、RBC溶解緩衝液を用いて2分間赤血球を溶解させた。
iv)PBSで2回洗浄した後、細胞ペレットをPBS/w 1%FBSに再懸濁した。
v)HISTOPAQUE-1077を用いてPBMC分離した。
vi)ヒトCD3、CD4、CD8、CD25抗体で染色して、FACSで単一細胞分類分析を行った。
vii)細胞毒性T細胞、Th細胞、Treg細胞にサブセット分離するために、それぞれ7AAD-CD3+CD8+、7AAD-CD3+CD4+CD25-および7AAD-CD3+CD4+CD25hiで濃縮して、予め4℃に冷却された96ウェルプレートに集めた後、溶解緩衝液に溶解させた。
viii)単一細胞溶解物からSmart-Seq2(Nat Protoc.2014Jan;9(1):171-81)方法を用いて、cDNAを逆転写酵素PCRで合成し、qPCRでmRNAの発現量を測定した。
【0103】
この時、分析に使用されたT細胞サブセットは腫瘍Treg、末梢Treg、Th17、エフェクターメモリーT細胞(effector memory T cell)および未分化(naive)T細胞であった。また、分析に使用した細胞数は11,138個の単一細胞のうち10,805個の細胞(12,525個の遺伝子に対するデータ)を使用した。
【0104】
分析指標は下記の通りである:
TPM(Transcript per million)=Reads/transcript length/kilobase/1,000,000
【0105】
分析を下記の方法で行った。
各サブセットで発現する各遺伝子に対する平均TPM値を算出した:
(1)腫瘍Treg:1,319個の細胞;
(2)末梢Treg:365個の細胞;
(3)Th17:229個の細胞;
(4)Tエフェクターメモリー細胞:204個の細胞;および
(5)未分化T細胞:472個の細胞
【0106】
腫瘍Treg細胞と他の細胞サブセット(末梢Treg、Th17、Tエフェクターメモリー、未分化T細胞)を区分した:
(1)腫瘍Tregクラスター:1,319個の単一細胞;および
(2)非腫瘍Tregクラスター:1,270個の単一細胞;
【0107】
XGBoostを用いて、機械学習過程を下記のように進行させた:
(1)すべての単一細胞に対するTPM値をXGBoostに入力して、腫瘍Tregと他のT細胞サブセットを最も効率的に分けられる条件アルゴリズムを生成した。この時、条件に使用された遺伝子は474個であった。
(2)474個の遺伝子を用いたアルゴリズムは腫瘍Tregと他のT細胞サブセットを97.5%の正確度で区分した。
【0108】
選別された474個の遺伝子から表面マーカーを見つけるために、細胞膜(plasma membrane)の発現程度が4~5になる遺伝子のみを再選別した。最後の段階に、次のような細部戦略に基づいてTreg特異的マーカーを選別した。
(1)シナリオ1:腫瘍Treg細胞のTPM値が未分化T細胞のTPM値より高い遺伝子
(2)シナリオ2:腫瘍Treg細胞のTPM値が末梢Treg細胞のTPM値より高い遺伝子
(3)シナリオ3:末梢Treg細胞のTPM値が未分化T細胞のTPM値より高い遺伝子
(4)シナリオ4:末梢Treg細胞のTPM値がTh17細胞のTPM値より高い遺伝子
【0109】
前記のようなシナリオで下記のようなマーカーを選別した(表1参照):
【0110】
実施例2.肝細胞癌(Hepatocellular carcinoma:HCC)における制御性T細胞のバイオマーカーの選別
患者試料(計12人の患者=男性4人、女性2人)を末梢血液、新鮮な癌組織および採取した癌組織において少なくとも2cm程度近傍の正常組織から採取した:
【0111】
次に、単一細胞分類分析(Single cell sorting)および逆転写増幅および配列分析(reverse transcription、amplification and sequencing)を実施例1と同様に行った。
【0112】
ただし、分析に使用されたT細胞サブセットは腫瘍Treg、末梢Treg、未分化T細胞、細胞毒性CD4および疲弊T細胞(Exhausted T cell)を使用した。
【0113】
分析に使用した細胞数は5,063個の単一細胞(23,389個の遺伝子に対するデータ)である。
【0114】
分析指標と分析方法は実施例1と同様に行った。ただし、各サブセットは下記の細胞として使用した。
(1)腫瘍Treg:582個の細胞;
(2)末梢Treg:261個の細胞;
(3)未分化T細胞:646個の細胞;および
(4)疲弊T細胞(Exhausted T cell):146個の細胞
【0115】
腫瘍Tregランキングと他の細胞サブセット(末梢Treg、疲弊T細胞、細胞毒性CD4、および未分化T細胞)に区分した:
(1)腫瘍Tregクラスター:582個の単一細胞
(2)非-腫瘍Tregクラスター:1,220個の単一細胞
【0116】
XGBoostを用いて、機械学習過程を下記のように進行させた:
(1)すべての単一細胞に対するTPM値をXGBoostに入力して、腫瘍Tregと他のT細胞サブセットを最も効率的に分けられる条件アルゴリズムを生成した。この時、条件に使用された遺伝子は281個であった。
(2)281個の遺伝子を用いたアルゴリズムは腫瘍Tregと他のT細胞サブセットを97.78%の正確度で区分した。
【0117】
選別された遺伝子から表面マーカーを見つけるために、細胞膜(plasma membrane)の発現程度が4~5になる遺伝子のみを再選別した。最後の段階に、次のような細部戦略に基づいてTreg特異的マーカーを選別した。
(1)シナリオ1:腫瘍Treg細胞のTPM値が未分化T細胞のTPM値より高い遺伝子
(2)シナリオ2:末梢Treg細胞のTPM値が未分化T細胞のTPM値より高い遺伝子
(3)シナリオ3:腫瘍Treg細胞のTPM値が末梢Treg細胞のTPM値より高い遺伝子
【0118】
前記のようなシナリオで下記のようなマーカーを選別した(表1参照):
【0119】
実施例3.非小細胞肺癌(Non-Small Cell Lung Carcinoma:NSCLC)における制御性T細胞のバイオマーカーの選別
患者試料(腺癌11人、扁平細胞癌3人)を末梢血液、および新鮮な癌組織から採取した:
【0120】
次に、単一細胞分類分析(Single cell sorting)および逆転写増幅および配列分析(reverse transcription、amplification and sequencing)を実施例1と同様に行った。ただし、分析に
使用されたT細胞サブセットは腫瘍Treg、末梢Treg、未分化T細胞、細胞毒性CD4、疲弊T細胞(Exhausted T cell)、セントラルメモリーT細胞(Central Memory T cell)、エフェクターメモリーT細胞(Effector Memory T cell)を使用した。
【0121】
分析に使用した細胞数は12,346個の単一細胞(12,394個の遺伝子に対するデータ)である。
【0122】
分析指標と分析方法は実施例1と同様に行った。ただし、各サブセットは下記の細胞として使用した。
(1)腫瘍Treg:939個の細胞;
(2)休止期Treg(Resting Treg):428個の細胞;
(3)未分化T細胞:532個の細胞;
(4)疲弊T細胞:343個の細胞;
(5)セントラルメモリーT細胞(Central Memory T cell):666個の細胞;および
(6)エフェクターメモリーT細胞(Effector Memory T cell):434個の細胞
【0123】
腫瘍Tregランキングと他の細胞サブセット(末梢Treg、疲弊T細胞、細胞毒性CD4、および未分化T細胞)に区分した:
(1)腫瘍Tregクラスター:939個の単一細胞
(2)非-腫瘍Tregクラスター:2,398個の単一細胞
【0124】
XGBoostを用いて、機械学習過程を下記のように進行させた:
(1)すべての単一細胞に対するTPM値をXGBoostに入力して、腫瘍Tregと他のT細胞サブセットを最も効率的に分けられる条件アルゴリズムを生成した。この時、条件に使用された遺伝子は548個であった。
(2)548個の遺伝子を用いたアルゴリズムは腫瘍Tregと他のT細胞サブセットを96.71%の正確度で区分した。
【0125】
選別された遺伝子から表面マーカーを見つけるために、細胞膜(plasma membrane)の発現程度が4~5になる遺伝子のみを再選別した。最後の段階に、次のような細部戦略に基づいてTreg特異的マーカーを選別した。
(1)シナリオ1:腫瘍Treg細胞のTPM値が未分化T細胞のTPM値より高い遺伝子
(2)シナリオ2:末梢Treg細胞のTPM値が未分化T細胞のTPM値より高い遺伝子
(3)シナリオ3:腫瘍Treg細胞のTPM値が末梢Treg細胞のTPM値より高い遺伝子
【0126】
前記のようなシナリオで下記のようなマーカーを選別した(下記表1参照)。
【0127】
【国際調査報告】