(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】セキュリティ文書の製造のための特別なプラスチックフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/12 20060101AFI20241217BHJP
B42D 25/24 20140101ALI20241217BHJP
B42D 25/29 20140101ALI20241217BHJP
B42D 25/23 20140101ALI20241217BHJP
G02B 5/32 20060101ALI20241217BHJP
B42D 25/455 20140101ALI20241217BHJP
【FI】
B32B27/12
B42D25/24
B42D25/29
B42D25/23
G02B5/32
B42D25/455
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531587
(86)(22)【出願日】2022-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2022083290
(87)【国際公開番号】W WO2023099349
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ツィオヴァラス,ゲオルギオス
(72)【発明者】
【氏名】プドライナー,ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】コストホルスト,ヘルゲ
【テーマコード(参考)】
2C005
2H249
4F100
【Fターム(参考)】
2C005HA10
2C005HB01
2C005HB02
2C005HB10
2H249CA22
4F100AA37D
4F100AB01D
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK03A
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4F100AL02A
4F100AL02B
4F100AL02C
4F100AL09A
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4F100GB90
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4F100JA04
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4F100JK08
4F100JK12
4F100JL10D
4F100JN01
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
本発明は、第1の外側(AS1)と、第1の外側(AS1)の反対側の第2の外側(AS2)とを有するセキュリティ文書(A)であって、(A1)第1のポリマーフィルム(A1)と、(A2)第2のポリマーフィルム(A2)と、(A3)任意選択的に少なくとも1つのさらなるポリマーフィルム(A3)と、(A4)セキュリティ特徴(A4)と、(A5)任意選択的に繊維、特に構造繊維とを少なくとも含み、第1のポリマーフィルム(A1)、第2のポリマーフィルム(A2)、任意選択的に少なくとも1つのさらなるポリマーフィルム(A3)からなる群から選択されるポリマーフィルムのうち少なくとも1つ、またはこれらのうち少なくとも2つの組み合わせが、熱可塑性エラストマー(TPE)を含むか、または少なくとも1つのTPEからなり、外側(AS1)または(AS2)のうち少なくとも1つを形成する、セキュリティ文書(A)に関する。そのようなセキュリティ文書を製造するための方法およびその使用も開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の外面(AS1)と、前記第1の外面(AS1)の反対側の第2の外面(AS2)とを有するセキュリティ文書(A)であって、
(A1)第1のポリマーフィルム(A1)と、
(A2)第2のポリマーフィルム(A2)と、
(A3)任意選択的に少なくとも1つのさらなるポリマーフィルム(A3)と、
(A4)セキュリティ特徴(A4)と、
(A5)任意選択的に繊維、特に構造繊維と
を少なくとも備え、
前記第1のポリマーフィルム(A1)、前記第2のポリマーフィルム(A2)、任意選択的に前記少なくとも1つのさらなるポリマーフィルム(A3)からなる群から選択されるポリマーフィルムのうち少なくとも1つ、またはこれらのうち少なくとも2つの組み合わせが、熱可塑性エラストマー(TPE)を含むか、または少なくとも1つのTPEからなり、前記外面(AS1)または(AS2)のうち少なくとも1つを形成する、セキュリティ文書(A)。
【請求項2】
前記TPEが、45~95ショアDの範囲の硬度を有する、請求項1に記載のセキュリティ文書(A)。
【請求項3】
前記TPEが、熱可塑性ポリアミドエラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、好ましくはPP/EPDM、熱可塑性スチレンブロックコポリマー(SBS、SEBS、SEPS、SEEPSおよびMBS)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、コポリエステルエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、コポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、またはこれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載のセキュリティ文書(A)。
【請求項4】
前記セキュリティ文書(A)の前記外面(AS1)および(AS2)が、TPUを含むまたはTPUからなるポリマーフィルム(A1)、(A2)または(A3)からなる、請求項1~3のいずれか一項に記載のセキュリティ文書(A)。
【請求項5】
少なくとも全てのポリマーフィルム(A1)、(A2)および(A3)がポリマーのみからなり、好ましくは、前記完全なセキュリティ文書(A)が、前記セキュリティ特徴(A4)および前記繊維(A5)を除いてポリマーからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載のセキュリティ文書(A)。
【請求項6】
前記セキュリティ文書(A)が、少なくとも1つのさらなるポリマーフィルム(A3)を含み、前記少なくとも1つのさらなるポリマーフィルム(A3)が、それぞれの前記ポリマーフィルム(A3)の総重量に基づいて、50~100重量、好ましくは60~90重量、特に好ましくは70~80重量%の範囲の量のTPEを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のセキュリティ文書(A)。
【請求項7】
前記第1のポリマーフィルム(A1)、前記第2のポリマーフィルム(A2)、または両方のポリマーフィルム(A1)および(A2)からなる群から選択される前記ポリマーフィルムの少なくとも1つが、それぞれの前記ポリマーフィルム(A1)または(A2)の総重量に基づいて、50~100重量%、好ましくは60~90重量%、特に好ましくは70~80重量%の範囲の量のTPEを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のセキュリティ文書(A)。
【請求項8】
前記第1のポリマーフィルム(A1)、前記第2のポリマーフィルム(A2)、または両方からなる群から選択される前記ポリマーフィルムの少なくとも1つが、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、コポリエステルまたはこれらの少なくとも2つの混合物、またはTPUとさらなるTPEとの混合物からなる群から選択されるポリマーを、それぞれの前記ポリマーフィルム(A1)または(A2)の総重量に基づいて、50~100重量%、好ましくは60~90重量%、特に好ましくは70~80重量%の範囲の量で含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のセキュリティ文書(A)。
【請求項9】
前記セキュリティ特徴(A4)が、ホログラム、印刷、セキュリティスレッド、蛍光繊維、染料、セキュリティ顔料、カーボンブラック、金属もしくは非金属のマイクロ粒子もしくはナノ粒子、磁性粒子、エンボス加工、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のセキュリティ文書(A)。
【請求項10】
前記セキュリティ文書(A)が、以下の特性:
a.DIN 53363:2003-10に従って決定される50~400N/mmの範囲の引裂伝播抵抗、
b.ISO 527-3:1995に従って決定される20~200MPaの範囲の引張強度、
c.ISO 13468-2:2019に従って決定される0~85%の範囲の光透過率、
d.前記セキュリティ文書(A)の総重量に基づいて0.1~10重量%の範囲のセキュリティ顔料の含有量、
e.DIN 53890/91に従って、120~170°、より好ましくは130~160°、特に好ましくは140~150°の範囲の折り目回復角度、
f.DIN EN ISO 306による60~105℃、特に好ましくは65~85℃のビカット軟化温度、
g.DIN EN ISO 527-1:2012に従って測定して、少なくとも60%、好ましくは60~800%の範囲の公称(nominal)破断伸び
の少なくとも1つを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のセキュリティ文書(A)。
【請求項11】
第1の外面(AS1)と、前記第1の外面(AS1)の反対側の第2の外面(AS2)とを有するセキュリティ文書(A)を製造するプロセスであって、
i)第1のポリマー(A1’)を供給するステップと、
ii)第2のポリマー(A2’)を供給するステップと、
iii)任意選択的にさらなるポリマー(A3’)を供給するステップと、
iv)ステップi)、ii)および任意選択的にiii)からのポリマーを溶融するステップと、
v)ステップiv)からの前記ポリマー溶融物を組み合わせて、前記第1のポリマー(A1’)から第1のポリマーフィルム(A1)を形成し、前記第2のポリマー(A2’)から第2のポリマーフィルム(A2)を形成し、任意選択的に前記第1のポリマー(A1’)からもしくはさらなるポリマー(A3’)から共押出物としてさらなるポリマーフィルム(A3)を形成するステップ、または各場合においてステップiv)の前記溶融物から形成された別個のポリマーフィルム(A1)、(A2)および任意選択的に(A3)から積層体を形成するステップのいずれかと、
vi)ホログラム、印刷、セキュリティスレッド、蛍光繊維、染料、顔料、カーボンブラック、金属もしくは非金属のマイクロ粒子もしくはナノ粒子、磁性粒子、エンボス加工、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されるセキュリティ特徴(A4)を前記ポリマーフィルム(A1)、(A2)または(A3)のうち1つの中または上に導入して、前記セキュリティ文書(A)を得るステップと、
vii)任意選択的に、ポリマー層(A6)を少なくとも1mm
2の面積にわたって前記外層(AS1)または(AS2)の1つに接合、好ましくは超音波溶接、振動溶接またはレーザー溶接するステップと
を含み、
前記外面(AS1)および(AS2)が、各々TPEを含むまたはTPEからなる前記ポリマーフィルム(A1)、(A2)または(A3)のうち1つによって形成される、プロセス。
【請求項12】
前記ポリマー(A1’)、前記ポリマー(A2’)、任意選択的に前記ポリマー(A3’)からなる群から選択される前記ポリマーの少なくとも1つが、熱可塑性ポリアミドエラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、好ましくはPP/EPDM、熱可塑性スチレンブロックコポリマー、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、コポリエステルエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、コポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、またはこれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択されるポリマーであり、好ましくはTPUである、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
さらなる層が前記セキュリティ文書(A)の少なくとも1つの表面(AS1)または(AS2)に適用され、前記さらなる層が、好ましくは紙、繊維複合材、織物、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせである、請求項11または12に記載のプロセス。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項による、または請求項11~13のいずれか一項によるプロセスに従って製造された、紙幣、出生証明書、印紙、納税印紙、パスポートのビザページ、パスポートのデータページ用のヒンジ、パスポートの電磁シールドのキャリア層としての前記セキュリティ文書(A)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つのポリマーフィルム(A1)および(A2)と、任意選択的にさらなるポリマーフィルム(A3)と、セキュリティ特徴(A4)と、任意選択的に繊維(A5)とを含むセキュリティ文書(A)であって、セキュリティ文書の少なくとも2つの外面が、熱可塑性エラストマー(TPE)を含むまたはTPEからなるポリマーによって形成されている、セキュリティ文書に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば紙幣などの有価文書用の印刷基材は、耐久性、効率性、偽造防止性および持続可能性に対する同様に増大する要求を満たすことができるように絶えず開発されている。紙幣だけでなくパスポートなどのセキュリティ文書の耐用年数を延ばすために、紙製のセキュリティ文書、特に紙幣をポリマーフィルム製の紙幣に置き換える傾向が高まっている。プラスチックフィルムをベースとする紙幣は、紙幣または他のセキュリティ文書の耐用年数を2~3倍にし、材料の再利用性を高めることによって、支払い手段の持続可能性に寄与する。この結果、紙幣および他のセキュリティ文書の製造に必要なエネルギー、材料、および天然資源が著しく少なくなる。さらに、紙幣および他のセキュリティ文書の耐用年数が長いほど、大幅なコスト削減を達成することが可能になる。したがって、例えばオーストラリアでは、1988年からポリマーフィルムが印刷基材として機能する紙幣が導入された。
【0003】
今日のポリマーフィルムからの紙幣の製造は、米国特許第5879028号明細書に記載されているように、押出後に二軸配向される(BOPP)ポリオレフィンに基づくフィルムをほぼ独占的に使用する。プロセスの結果として、これらのフィルムは透明フィルムとしてのみ製造することができる。その後、フィルムをコーティングして白色不透明色を得て、フィルムの印刷性を改善する。いくつかの例外では、紙幣の製造は、国際公開第06066431号に記載されているように、フィルムと紙または他の材料、例えば綿繊維との複合材料を使用する。外側紙層は、BOPPフィルムの白色コーティングの代替物を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5879028号明細書
【特許文献2】国際公開第06066431号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
偽造防止性を考慮すると、BOPP製のポリマー紙幣は、セキュリティ紙製の紙幣と比較していくつかの実質的な欠点を有する。紙基材に使用され、消費者によって認識される特徴、例えば、フレッキングファイバー(flecking fibre)(偽造防止用のスタンプにも追加され、UV光下で小さな赤色に光る繊維として見える)、プランシェット(フレッキングファイバーと同様の着色ディスクが組み込まれている。プランシェットはまた、金属製または透明であり得、それらはまた、UV光下で蛍光を発することができ、または色変化を示す虹色材料から作製することができる。運転免許証で使用するための特別なプランシェットは、信号色をブリーディングすることによって操作の試みに反応する)またはBOPP製のポリマー紙幣のセキュリティスレッドを組み込むことは特に不可能であり、理由は、これらがフィルムの縦方向および横方向の延伸後に破壊されるためである。
【0006】
さらなる欠点は、BOPPが、包装フィルム、透明フィルム、シーリングフィルムなどの日常使用の無数の製品において同様の品質で使用され、したがって潜在的偽造者への模倣に容易に利用可能なポリマーであるという事実である。使用される基材が延伸フィルムであるという事実は、特に、基材が日常使用において容易に起こり得るような高温に曝される場合に不利である。
【0007】
二軸延伸ポリプロピレンは、高温で非常に高い収縮率を示す。したがって、例えば、約100℃を超える温度において、二軸延伸ポリプロピレン製のポリマー紙幣は、その元の長さおよび幅の最大20%の長さおよび幅の収縮を受けることが分かった。これらのポリマー紙幣はまた、長さおよび幅において異なる程度の収縮を受け、したがって紙幣、したがって一般にそれに適用される印刷画像の歪みをもたらす。これまでに知られているポリマー紙幣、特に二軸延伸ポリオレフィンに基づくポリマー紙幣のさらなる欠点は、上述の収縮が不可逆的であることである。熱いストーブの頂部付近またはハロゲンランプの下では、このようなポリマー紙幣は不可逆的に収縮する可能性が非常に高い。
【0008】
特にフィルムの所望の不透明度および印刷インクの吸収を可能にするために必要な表面エネルギーを達成するためには、複雑でコスト集約的な製造プロセスが必要である。引裂伝播抵抗もまた、BOPPフィルムでは特に低い。紙幣の最小限の引裂きが、紙幣の不良に直ちにつながる。
【0009】
ポリオレフィン系フィルムおよび複合フィルムの両方が上記の欠点を示し、したがって、これらの欠点を最小限に抑えるか、またはさらには排除する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、先行技術の欠点が少なくとも部分的に克服されるように、特にセキュリティ文書の偽造防止性を高めるように、例えば紙幣またはパスポートなどのセキュリティ要素の形態で、問題の種類のプロセスおよび問題の種類のポリマー印刷基材を開発することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、耐久性、効率性、特に資源効率性、偽造防止性および持続可能性に関する現在の要求を満たすセキュリティ文書を提供することであり、特に、現在の先行技術の場合、これらの要求のいずれも十分に満たしていない。
【0012】
本発明のさらなる目的は、印刷インクの吸収を可能にするのに十分な表面エネルギーを有するセキュリティ文書を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、列挙した利点を有するセキュリティ文書のための最適化された、特により費用効果の高いプロセスを提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の態様は、第1の外面(AS1)と、第1の外面(AS1)の反対側の第2の外面(AS2)とを有するセキュリティ文書(A)であって、
(A1)第1のポリマーフィルム(A1)と、
(A2)第2のポリマーフィルム(A2)と、
(A3)任意選択的に少なくとも1つのさらなるポリマーフィルム(A3)と、
(A4)セキュリティ特徴(A4)と、
(A5)任意選択的に繊維、特に構造繊維と
を少なくとも備え、
第1のポリマーフィルム(A1)、第2のポリマーフィルム(A2)、任意選択的に少なくとも1つのさらなるポリマーフィルム(A3)からなる群から選択されるポリマーフィルムのうち少なくとも1つ、またはこれらのうち少なくとも2つの組み合わせが、熱可塑性エラストマー(TPE)を含むか、または少なくとも1つのTPEからなり、外面(AS1)または(AS2)のうち少なくとも1つを形成する、セキュリティ文書(A)である。
【0015】
セキュリティ文書は、セキュリティ文書に対して当業者が選択するであろう任意の形状を有し得る。セキュリティ文書が正方形、長方形、円形、楕円形または多面体の形態、特に好ましくは正方形または長方形の形態のシート状範囲を有する場合が好ましい。
【0016】
セキュリティ文書は、好ましくは40~250μmの範囲、より好ましくは50~200μmの範囲、より好ましくは60~150μmの範囲、より好ましくは70~100μmの範囲の厚さを有する。
【0017】
セキュリティ文書の厚さとその面積とのアスペクト比は、好ましくは1:100000~1:1000の範囲、より好ましくは1:50000~1:500の範囲、特に好ましくは1:10000~1:100の範囲である。
【0018】
第1のポリマーフィルム(A1)の厚さは、10~100μmの範囲内であることが好ましく、12~90μmの範囲内であることがより好ましく、15~50μmの範囲内であることがより好ましく、20~40μmの範囲内であることがより好ましい。
【0019】
第2のポリマーフィルム(A2)の厚さは、20~150μmの範囲内であることが好ましく、30~100μmの範囲内であることがより好ましく、40~90μmの範囲内であることがより好ましく、50~80μmの範囲内であることがより好ましい。
【0020】
さらなるポリマーフィルム(A3)の厚さは、10~100μmの範囲内であることが好ましく、12~90μmの範囲内であることがより好ましく、15~50μmの範囲内であることがより好ましく、20~40μmの範囲内であることがより好ましい。
【0021】
第1のポリマーフィルム(A1)、(A2)および(A3)からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーフィルムは、いずれの場合も、好ましくは1~100cmの範囲、より好ましくは2~80cmの範囲、特に好ましくは5~50cmの範囲の長さを有する。
【0022】
第1のポリマーフィルム(A1)、(A2)および(A3)からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーフィルムは、いずれの場合も、好ましくは1~100cmの範囲、より好ましくは2~80cmの範囲、特に好ましくは5~50cmの範囲の幅を有する。
【0023】
ポリマーフィルム(A1)および(A2)、好ましくは(A3)も、それらの面積範囲内で重ね合わされる場合が好ましい。
【0024】
セキュリティ文書(A)は、当業者がセキュリティ特徴の導入に使用する任意のセキュリティ文書であり得る。セキュリティ文書(A)は、好ましくは、紙幣、出生証明書、印紙、納税印紙、パスポートのビザページ、パスポートのデータページ用のヒンジ、パスポートの電磁シールドのキャリア層、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。
【0025】
両方の外面(AS1)および(AS2)は、好ましくはTPEを含む。両方の外面(AS1)および(AS2)は、好ましくはTPEからなる。両方の外面(AS1)、(AS2)は、ポリマーフィルム(A1)から各々形成されることが好ましい。さらに、ポリマーフィルム(A2)が、その外面(AS1)および(AS2)がポリマーフィルム(A1)で各々形成された少なくとも3層のフィルム構造体のコアを形成している場合が好ましい。
【0026】
ポリマーフィルム(A1)、(A2)および任意選択的に(A3)の少なくとも1つ、特に第1のポリマーフィルム(A1)が、それぞれの隣接するポリマーフィルム、すなわち、ポリマーフィルム(A1)、(A2)または(A3)のうち少なくとも1つの破断伸びよりも大きい第2のポリマーフィルム(A2)またはさらなるポリマーフィルム(A3)に対する接着強度を構築するのに適した材料を含む場合が好ましい。接着強度は、ポリマーフィルム(A1)、(A2)または(A3)のうち1つが、それぞれの隣接するポリマーフィルムから残留物を含まずに分離することができない場合、それぞれのポリマーフィルムの破断応力よりも高い。これは、第1のポリマーフィルム(A1)を第2のポリマーフィルム(A2)から分離するとき、または第2のポリマーフィルム(A2)をさらなるポリマーフィルム(A3)から分離するとき、ポリマーフィルム(A1)、(A2)または(A3)のうち少なくとも1つが凝集破壊を被り、接着力がポリマーフィルムの破断応力未満である接着破壊を被らないことを意味すると理解されるべきである。それぞれのフィルム間の接着面でのセキュリティ文書(A)の分離を表し、フィルムの互いからの残留物のない分離を可能にする接着不良とは対照的に、凝集不良は、層の内部で発生し、分離されるそれぞれのフィルム上にポリマー材料の残留物が残る。
【0027】
したがって、この十分に高い接着力は、セキュリティ文書(A)の偽造防止に寄与する。
【0028】
ポリマーフィルム(A1)、(A2)および任意選択的に(A3)が、それぞれ隣接するポリマーフィルムに対して少なくとも2N/cm、より好ましくは少なくとも3N/cm、特に好ましくは少なくとも5N/cmの接着強度を有する場合が好ましい。ポリマーフィルム(A1)、(A2)および任意選択的に(A3)が、ASTM D903-1998に従って180°の引張角度で測定して、2~20N/cm、より好ましくは少なくとも3~15N/cm、特に好ましくは少なくとも5~10N/cmの範囲で、それらのそれぞれの隣接するポリマーフィルムに対する接着強度を有する場合が好ましい。
【0029】
繊維(A5)は、好ましくは構造繊維である。構造繊維は、その構造において、特に脆性および可撓性などの特性において、周囲の材料を強化する繊維である。繊維(A5)の材料が、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、鉱物繊維、麻繊維もしくは竹繊維などの天然繊維、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される場合が好ましい。セキュリティ文書(A)が、セキュリティ文書(A)の総重量に基づいて、0.1~10重量%の範囲、より好ましくは0.2~8重量%の範囲、特に好ましくは0.5~5重量%の範囲の量の繊維(A5)を含む場合が好ましい。第1のポリマーフィルム(A1)または第2のポリマーフィルム(A2)が、互いに独立して、セキュリティ文書(A)の総重量に基づいて、0.1~15重量%の範囲、より好ましくは0.2~10重量%の範囲、特に好ましくは0.5~8重量%の範囲の量で繊維(A5)を含む場合が好ましい。
【0030】
セキュリティ文書(A)がエンボス加工を含む場合が好ましい。エンボス加工は、好ましくはセキュリティ特徴(A4)である。少なくとも1つのセキュリティ特徴(A4)の少なくとも一部がエンボス加工(P)として、TPEを含むかまたはTPEからなるポリマーフィルム(A1)、任意選択的に(A2)または(A3)のうち1つに導入される場合が好ましい。
【0031】
エンボス加工(P)が少なくとも1500dpi、好ましくは1500~2500dpiの範囲の解像度を有する場合が好ましい。エンボス加工(P)の線が、100~1000μm、特に好ましくは110~500μm、非常に特に好ましくは120~200μmの範囲の幅を有する場合が好ましい。エンボス加工(P)の線が、50~500μm、特に好ましくは55~300μm、非常に特に好ましくは60~100μmの範囲の深さを有する場合が好ましい。
【0032】
エンボス加工(P)は、好ましくは、セキュリティ文書(A)の外面(AS1)または(AS2)に導入されて、確実に外部から視認でき、かつ触れることができる。エンボス加工(P)の輪郭は、好ましくは外側に延びる。代替的または追加的に、エンボス加工(P)は、内面、例えばパスポートの内面の1つに導入されてもよい。エンボス加工(P)がセキュリティ特徴の効果を与えるために、エンボス加工(P)は、観察者がセキュリティ文書(A)を検査するときに検出することができ、好ましくはそれを感じることもできるように導入されるべきである。
【0033】
セキュリティ文書(A)の好ましい実施形態では、TPEは、45~95ショアDの範囲、好ましくは50~85ショアDの範囲の硬度を有する。
【0034】
セキュリティ文書(A)の外面(AS1)および(AS2)に配置されたポリマーフィルム(A1)が、45~85ショアD、好ましくは50~80ショアD、非常に特に好ましくは55~70ショアDの範囲の硬度を有するTPEを含むことが好ましい。
【0035】
好ましくはセキュリティ文書(A)のコアに配置され、好ましくは両側が少なくとも1つのポリマーフィルム(A1)によって囲まれた少なくとも1つのポリマーフィルム(A2)が、55~95ショアD、好ましくは65~90ショアD、非常に特に好ましくは70~85ショアDの範囲の硬度を有するTPEを含む場合が好ましい。
【0036】
セキュリティ文書(A)の好ましい実施形態では、TPEは、コポリエステルエラストマー(TPC)、熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPA)、特にポリエーテルブロックアミド(PEBA)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、特にPP/EPDM、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、特にポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、熱可塑性スチレンブロックコポリマー(TPS)、特にスチレン-ブタジエンブロックコポリマー(SBC)、またはこれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。TPEは、室温ではエラストマーの古典的な代表物のように挙動するが、加熱すると変形可能になるエラストマーである。これらは、通常、軟質エラストマー成分と硬質熱可塑性成分からなる共重合体である。
【0037】
以下、単にコポリエステルとも呼ばれる適切なコポリエステルエラストマーTPC(セグメント化ポリエステルエラストマー)は、例えば、エステル結合によって結合された複数の反復短鎖エステル単位および長鎖エステル単位から形成され、短鎖エステル単位は、コポリエステルの約15~80重量%を占め、以下の式(I)に適合し、
【化1】
式中、
Rは、約350g/mol未満の分子量を有するジカルボン酸の二価ラジカルであり、
Dは、約250g/mol未満の分子量を有する有機ジオールの二価ラジカルであり、
長鎖エステル単位は、コポリエステルの約20~85重量%、
好ましくは30~70重量%、特に好ましくは35~60重量%を占め、好ましくは以下の式IIに適合し、
【化2】
式中、
Rは、約350g/mol未満の分子量を有するジカルボン酸の二価ラジカルであり、
Gは、約350~6000g/molの平均分子量を有する長鎖グリコールの二価ラジカルである。
【0038】
使用可能なコポリエステルは、a)1つ以上のジカルボン酸と、b)1つ以上の直鎖長鎖グリコールと、c)1つ以上の低分子量ジオールとを共重合することによって製造され得る。
【0039】
コポリエステルを製造するためのジカルボン酸は、8~16個の炭素原子を有する芳香族酸、特にフタル酸、テレフタル酸およびイソフタル酸などのフェニレンジカルボン酸である。
コポリエステルの短鎖エステル単位を形成する反応のための低分子量ジオールは、非環式、脂環式および芳香族ジヒドロキシ化合物のクラスに属する。好ましいジオールは2~15個の炭素原子を有し、例えばエチレン、プロピレン、テトラメチレン、イソブチレン、ペンタメチレン、2,2-ジメチルトリメチレン、ヘキサメチレンおよびデカメチレングリコール、ジヒドロキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどである。本目的のためのビスフェノールには、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)エタンおよびビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパンが含まれる。
【0040】
コポリエステルのソフトセグメントを製造するために使用される長鎖グリコールは、好ましくは約600~3000g/molの分子量を有する。これらには、アルキレン基が2~9個の炭素原子を有するポリ(アルキレンエーテル)グリコールが含まれる。
【0041】
ポリ(アルキレンオキシド)ジカルボン酸またはポリエステルグリコールのグリコールエステルも、長鎖グリコールとして使用することができる。
【0042】
長鎖グリコールには、ホルムアルデヒドとグリコールとを反応させることによって得られるポリホルマールも含まれる。ポリチオエーテルグリコールも好適である。ポリブタジエングリコールおよびポリイソプレングリコール、それらのコポリマー、ならびにこれらの材料の飽和水素添加生成物は、満足できる長鎖ポリマーグリコールである。
【0043】
このようなコポリエステルを合成するプロセスは、独国特許出願公開第2239271号明細書、独国特許出願公開第2213128号明細書、独国特許出願公開第2449343号明細書および米国特許出願公開第3023192号明細書から公知である。適切なTPCの例としては、DuPont(商標)(ドイツ)製のポリエーテルエラストマーHytrel(登録商標)、およびLG Chemicals(欧州)製のポリエーテルエラストマーKeyflex(登録商標)、好ましくはその代表例が45~95ショアDの範囲の硬度を有するものが挙げられる。
【0044】
熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPA)は、当業者がこの目的のために選択するであろう任意のTPAであってもよい。TPAとしては、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)が好ましい。適切なPEBAは、例えば、式(III)に適合する繰り返し単位から形成されたポリマー鎖からなるものであり、
【化3】
式中、
Aは、カルボキシル末端基を2つ有するポリアミドから後者の損失を介して誘導されたポリアミド鎖であり、
Bは、末端OH基を有するポリオキシアルキレングリコールから後者の損失を介して誘導されるポリオキシアルキレングリコール鎖であり、
nは、ポリマー鎖を形成する単位の数である。ここでの末端基は、重合を終結させる化合物のOH基またはラジカルであることが好ましい。
【0045】
末端カルボキシル基を有するジカルボキシルポリアミドは、公知の方法で、例えば、1つ以上のラクタムおよび/または1つ以上のアミノ酸の重縮合によって、またはジカルボン酸とジアミンとの重縮合によって得られ、各場合において、好ましくは末端カルボキシル基を有する過剰の有機ジカルボン酸が存在する。これらのカルボン酸は、重縮合中にポリアミド鎖の構成成分となり、特にこの鎖の末端に付加を受け、したがってμ-ジカルボン酸官能基を有するポリアミドが得られる。ジカルボン酸は、連鎖停止剤としても作用するため、過剰に使用される。
【0046】
ポリアミドは、4~14個の炭素原子からなる炭化水素鎖を有するラクタムおよび/またはアミノ酸から得ることができ、例えばカプロラクタム、エナントラクタム、ドデカラクタム、ウンデカノラクタム、デカノラクタム、11アミノウンデカン酸または12アミノドデカン酸から得ることができる。
【0047】
ジカルボン酸とジアミンとの重縮合によって形成されるようなポリアミドの例としては、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸および1,12-ドデカン二酸との縮合生成物、ならびにノナメチレンジアミンとアジピン酸との縮合生成物、好ましくはそれらの代表例が45~95ショアDの範囲の硬度を有するものが挙げられる。
【0048】
1つのカルボキシル基をポリアミド鎖の各末端に固定するためおよび連鎖停止剤としての両方に使用される、ポリアミドの合成に適したジカルボン酸としては、4~20個の炭素原子を有するもの、特にアルカン二酸、例えばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸またはドデカン二酸、およびさらに脂環式または芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸またはイソフタル酸またはシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸が挙げられる。
【0049】
末端OH基を有するポリオキシアルキレングリコールは、非分枝状または分枝状であり、少なくとも2個の炭素原子を有するアルキレン基を含む。これらは、好ましくは、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンおよびポリオキシテトラメチレングリコールならびにそれらのコポリマーである。
【0050】
これらのOH末端ポリオキシアルキレングリコールの平均分子量は、広範囲にわたって変化し得、有利には100~6000g/mol、特に200~3000g/molである。
【0051】
ポリオキシアルキレングリコールの重量分率は、PEBAポリマーを製造するために使用されるポリオキシアルキレングリコールおよびジカルボン酸ポリアミドの総重量に基づいて5~85重量%、好ましくは10~50重量%である。
【0052】
そのようなPEBAポリマーを合成するためのプロセスは、仏国特許第7418913号明細書、独国特許第2802989号明細書、独国特許第2837687号明細書、独国特許第2523991号明細書、欧州特許第095893号明細書、独国特許第2712987号明細書および独国特許第2716004号明細書から公知である。
【0053】
上記のものとは対照的に、ランダム構造を有するPEBAポリマーが優先的に適している。これらのポリマーを製造するために、
1.少なくとも10個の炭素原子を有するアミノカルボン酸またはラクタムの群からの1つ以上のポリアミド形成化合物と、
2.α,ω-ジヒドロキシポリオキシアルキレングリコールと、
3.少なくとも1つの有機ジカルボン酸と
の混合物を、
ヒドロキシル基およびカルボニル基が(2+3)中に当量で存在する、30:70~98:2の1:(2+3)重量比で、グループ1のポリアミド形成化合物に基づいて2~30重量%の水の存在下、23~30℃の温度に自己圧力下で加熱し、続いて水を除去した後、酸素の非存在下、標準圧力または減圧下、250~280℃でさらなる処理に供した。
【0054】
TPOは、当業者が本発明によるセキュリティ文書(A)のために選択するであろう任意のTPOであり得る。TPOの例は、LG Chemicals(欧州)製の製品ラインKEYFLEX(登録商標)の熱可塑性オレフィン、例えばKEYFFLEX(登録商標)TP-1045Dである。TPOは、好ましくはPP/EPDMである。これらのTPOの種類の例は、ExxonMobil Chemical Europe(ベルギー)の子会社であるAdvanced Elastomer Systems Ltd.製のSantoprene(商標)、PCW GmbH(ドイツ)製のSaxomer(登録商標)TPE-O、Elastron(トルコ/ドイツ)製のElastron TPOであり、好ましくはこれらの代表は45~95ショアDの範囲の硬度を有する。
【0055】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、当業者が本発明によるセキュリティ文書(A)のために選択するであろう任意のTPUであり得る。
【0056】
熱可塑的に加工可能なポリウレタンポリマーを製造するための好ましいプロセスは、以下の成分を反応させることを含み、
(A)成分(A)の総量が500~5000g/molの範囲の平均分子量を有する、1つ以上の実質的に直鎖のポリオール、
(B)1つ以上の有機ポリイソシアネート、好ましくは有機ジイソシアネート、
(C)62~500g/molの分子量を有する1つ以上の直鎖ジオール、
(D)任意選択的に、1つ以上の触媒の存在下、
(E)任意選択的に、1つ以上の添加剤、補助物質および/または添加物質の存在下、ならびに
(F)任意選択的に、1つ以上の単官能性連鎖停止剤の存在下、
プロセスは、好ましくは、以下のステップを含むか、または以下のステップからなる。
【0057】
1)成分(A)の総量、成分(B)の部分量、ならびに任意選択的に成分(D)、成分(E)および/または成分(F)の部分量または総量で構成される混合物を供給および反応させて、NCO官能性プレポリマーを得るステップであって、プロセスステップ1)において、成分(B)対成分(A)のモル比が1.1:1.0~5.0:1.0の範囲内である、ステップと、
2)任意選択的にさらなる部分量の成分(D)、成分(E)および/または成分(F)の存在下で、プロセスステップ1)からのNCO官能性プレポリマーを成分(C)の総量と反応させて、OH官能性プレポリマーを得るステップと、
3)OH官能性プレポリマーを、残りの量の成分(B)ならびに任意の残りの量の成分(D)、成分(E)および/または成分(F)と反応させて、熱可塑的に加工可能なポリウレタンを得るステップであって、全てのプロセスステップにわたって、成分(A)および成分(C)の合計に対する成分(B)のモル比が0.9:1.0~1.2:1.0の範囲内である、ステップ。
【0058】
好ましいプロセスは、約45~約95ショアDの硬度範囲にわたって良好な加工特性および良好な機械的特性を有する熱可塑性ポリウレタンを製造すること、ならびにTPUの硬質相と軟質相との良好な結合を達成することを可能にし、したがって最適に高い分子量、したがって製造された加工物の非常に良好な機械的特性をもたらす。
【0059】
本発明の文脈において、カウント可能なパラメータに関連する「a」という単語は、(例えば「正確に1」という表現によって)これが明示的に述べられている場合にのみ「1」という数として理解されるべきである。例えば「ポリオール」について以下に言及する場合、「a」という語は、数字「1」ではなく単に不定冠詞を意味すると理解されるべきであり、したがって、これは少なくとも2つのポリオールの混合物を含む実施形態も包含する。
【0060】
この文脈における「実質的に」は、成分A)のポリオールの物質の総量の少なくとも95mol%、好ましくは少なくとも98mol%、特に好ましくは少なくとも99mol%、さらにより好ましくは少なくとも99.5mol%、さらにより好ましくは少なくとも99.8mol%、最も好ましくは100mol%が直鎖ポリオールからなることを意味すると理解されるべきである。
【0061】
熱可塑的に加工可能なポリウレタンの硬度は、成分A)対成分C)のモル比を選択することによって、45ショアDから95ショアDまで調整されてもよい。
【0062】
ステップ1)におけるNCO官能性プレポリマー形成のための反応成分の量は、ステップ1)におけるポリイソシアネート対ポリオールのNCO/OH比が1.1:1~5.0:1であるように選択される。
【0063】
成分を完全に混合し、ステップ1)のNCOプレポリマー反応を好ましくは(ポリオール成分に基づいて)完全に変換させる。
【0064】
これに続いて、少なくとも成分(C)を鎖延長剤として組み込み(ステップ2)、実質的にOH官能性プレポリマーを得る。
【0065】
続いて、ステップ3)において、NCO/OH比を0.9:1~1.2:1に維持しながら成分(B)の残存量を添加する。ステップ3)がステップ1)と同じ成分(B)を使用する場合が好ましい。
【0066】
プロセスステップ2)が1.0未満の成分(C)に対するNCO官能性プレポリマーのモル比で行われる場合が好ましい。したがって、成分(C)はモル過剰で存在する。
【0067】
適切な成分(A)は、当業者に既知であり、かつ500g/molを超える平均分子量を有する、全ての直鎖ポリオールを含む。適切な成分(A)は、特に以下の直鎖ポリオールを含む:a)ポリエステルポリオール、b)ポリエーテルポリオール、c)ポリエーテルエステル、d)ポリカーボネートポリオール、e)ポリエーテルカーボネート、またはポリオールa)~e)の少なくとも2つの混合物。
【0068】
適切なポリエステルジオールa)は、例えば、2~12個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子を有するジカルボン酸および多価アルコールから調製することができる。有用なジカルボン酸の例には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ドデカン二酸、ならびにフタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸が含まれる。ジカルボン酸は、個別にまたは混合物として、例えばコハク酸、グルタル酸およびアジピン酸の混合物の形態で使用され得る。ポリエステルポリオールの調製のために、場合によっては、ジカルボン酸ではなく、対応するジカルボン酸誘導体、例えばアルコール基中に1~4個の炭素原子を有するカルボン酸ジエステル、カルボン酸無水物または塩化カルボニルを使用することが有利であり得る。多価アルコールの例は、2~12個、好ましくは2~6個の炭素原子を有するグリコールであり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、デカン-1,10ジオール、ドデカン-1,12ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。所望の特性に応じて、多価アルコールは、単独で、または場合により互いに混合して使用されてもよい。ヒドロキシカルボン酸の縮合生成物、例えばヒドロキシカプロン酸、およびラクトンの重合生成物、例えば任意に置換されたカプロラクトンも適している。好ましく使用されるポリエステルポリオールは、エタンジオールポリアジペート、ブタン-1,4-ジオールポリアジペート、ヘキサン-1,6-ジオールポリアジペート、エタンジオールブタン-1,4-ジオールポリアジペート、ヘキサン-1,6-ジオールネオペンチルグリコールポリアジペート、ヘキサン-1,6-ジオールブタン-1,4-ジオールポリアジペートおよびポリカプロラクトンである。ポリエステルジオールは、500~5000g/molの範囲、好ましくは600~3500g/molの範囲、特に好ましくは800~3000g/molの範囲の分子量を有する。これらは、単独でまたは互いに混合して使用され得る。
【0069】
適切なポリエーテルジオールb)は、アルキレンラジカル中に2~4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキレンオキシドを、結合形態で2個の活性水素原子を含有する出発分子と反応させることによって調製され得る。アルキレンオキシドの例としては、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、エピクロロヒドリンおよび1,2-ブチレンオキシドおよび2,3-ブチレンオキシドが挙げられる。エチレンオキシド、プロピレンオキシド、および1,2-プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの混合物を使用することが好ましい。アルキレンオキシドは、個別に、あるいは連続して、または混合物として使用され得る。検討される出発分子の例としては、水、アミノアルコール、例えばN-アルキルジエタノールアミン、例えばN-メチルジエタノールアミン、およびジオール、例えばエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ブタン-1,4-ジオールおよびヘキサン-1,6-ジオールが挙げられる。出発分子の混合物を使用することも可能であってもよい。他の適切なポリエーテルジオールは、テトラヒドロフランのヒドロキシル基含有重合生成物である。二官能性ポリエーテルに基づいて0~30%の重量割合であるが、熱可塑的に加工可能な生成物が形成されるような量までの、三官能性ポリエーテルを使用することも可能である。適切なポリエーテルジオールは、500~5000g/mol、好ましくは750~5000g/mol、非常に特に好ましくは900~4200g/molの数平均分子量Mnを有する。これらは、個別に、または互いに混合された形態のいずれかで使用され得る。
【0070】
適切なポリエーテルエステルc)は、例えば短鎖ポリエーテルジオール、例えば250~1000g/molの分子量を有するポリテトラヒドロフランと、有機ジカルボン酸、例えばコハク酸またはアジピン酸との反応によって調製され得る。ポリエーテルエステルジオールは、600~5000g/mol、好ましくは700~4000g/mol、特に好ましくは800~3000g/molの分子量を有する。これらは、単独でまたは互いに混合して使用され得る。
【0071】
適切なポリカーボネートジオールd)は、例えば短鎖ジオール、例えばブタン-1,4-ジオールまたはヘキサン-1,6-ジオールと、ジフェニルカーボネートまたはジメチルカーボネートとの、触媒の助けを借りた反応、およびフェノールまたはメタノールの除去によって調製され得る。ポリカーボネートジオールは、500g/mol~5000g/mol、好ましくは750~5000g/mol、特に好ましくは1000~4500g/molの数平均分子量を有する。
【0072】
適切なポリエーテルカーボネートジオールe)は、例えば、250~1000g/molの分子量を有するポリテトラヒドロフランなどの短鎖ポリエーテルジオールと、ジフェニルまたはジメチルカーボネートとの、触媒の助けを借りた反応、およびフェノールまたはメタノールの除去による反応によって調製することができる。ポリエーテルカーボネートジオールはさらに、適切な触媒、例えば複金属シアニド触媒を用いて、アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドまたはそれらの混合物と、二酸化炭素との共重合によって調製され得る。ポリエーテルカーボネートジオールは、500~8000g/mol、好ましくは750~6000g/mol、より好ましくは1000~4500g/molの数平均分子量を有する。
【0073】
ステップ1)および3)で使用される成分(B)の好ましい有機ポリイソシアネートは、Justus Liebigs Annalen der Chemie,562,p.75-136に記載されているように、脂肪族,脂環式,芳香脂肪族、複素環式および芳香族ポリイソシアネートである。
【0074】
具体例としては、脂肪族ジイソシアネート、例えば1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、例えばイソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネートおよび1-メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、ならびに対応する異性体混合物、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよび2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ならびに対応する異性体混合物、芳香族ジイソシアネート、例えば2,4-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとの混合物、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物、ウレタン変性液4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-1,2-ジフェニルエタンおよび1,5-ナフチレンジイソシアネートが挙げられる。好ましくは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、>96重量%の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート含有量を有するジフェニルメタンジイソシアネート異性体混合物、特に4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,5-ナフチレンジイソシアネートが使用される。これらのジイソシアネートは、単独でまたは互いに混合して使用され得る。それらは、最大15重量%(ジイソシアネートの総量に基づく)のポリイソシアネート、例えばトリフェニルメタン4,4’,4”-トリイソシアネートまたはポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートと一緒に使用されてもよい。
【0075】
使用される成分(B)が、成分(B)の総重量に基づいて96重量%を超える4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート含有量を有するジフェニルメタンジイソシアネート異性体混合物である場合、好ましくは4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートである場合が好ましい。
【0076】
使用される成分(B)は、好ましくは1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0077】
適切な成分(C)(鎖延長剤)としては、当業者に公知であり、かつ62g/mol~500g/molの分子量を有する全ての直鎖ジオールが挙げられる。ジオールおよび/またはそれらの前駆体化合物は、化石源または生物源から得られたものであり得る。好適なジオールは、好ましくは、2~14個の炭素原子を有する脂肪族ジオール、例えばエタンジオール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、オクタン-1,8-ジオール、デカン-1,10ジオール、ドデカン-1,12ジオール、ジエチレングリコールおよびジプロピレングリコールである。しかし、テレフタル酸と2~4個の炭素原子を有するグリコールとのジエステル、例えばテレフタル酸ビス-エチレングリコールまたはテレフタル酸ビス-ブタン-1,4-ジオール、ヒドロキノンのヒドロキシアルキレンエーテル、例えば1,4-ジ(ヒドロキシエチル)ヒドロキノンおよびエトキシル化ビスフェノールも適している。短鎖ジオールとしてエタンジオール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオールおよび1,4-ジ(ヒドロキシエチル)ヒドロキノンを使用することが特に好ましい。上述の鎖延長剤の混合物も使用することができる。少量のジアミンおよび/またはトリオールを添加することも可能である。
【0078】
使用される成分(C)が、エタン-1,2-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、1,4-ジ(β-ヒドロキシエチル)ヒドロキノンまたはこれらの少なくとも2つの混合物、好ましくはエタン-1,2-ジオール、ブタン-1,4-ジオールまたはこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上のジオールである場合が好ましく、特に好ましくはエタン-1,2-ジオールが成分(C)として使用される。
【0079】
使用され得る触媒(D)としては、ポリウレタン化学から公知の慣用的な触媒が挙げられる。適切な触媒としては、それ自体公知の慣用的な第三級アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、2-(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなど、また特に有機金属化合物、例えばチタネートエステル、鉄化合物、ビスマス化合物、スズ化合物、例えば二酢酸スズ、ジオクタン酸スズ、ジラウリン酸スズまたは脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩、例えばジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートなどが挙げられる。好ましい触媒は、有機金属化合物、特にチタネートエステル、鉄化合物またはスズ化合物である。ジブチルスズジラウレート、スズジオクトエートおよびチタネートエステルが非常に特に好ましい。
【0080】
適切なTPUのための製造プロセスのさらなる詳細および好ましい実施形態は、欧州特許第3838961号明細書に見出すことができる。
【0081】
TPEが、TPEの総重量に基づいて10~100重量%の範囲、より好ましくは20~95重量%の範囲、より好ましくは30~90重量%の範囲、特に好ましくは40~85重量%の範囲で、好ましくは上述のプロセスによって製造された熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含む場合が好ましい。
【0082】
ポリマーフィルム(A1)は、好ましくは、45~85ショアDの範囲、好ましくは50~80ショアDの範囲、非常に特に好ましくは55~70ショアDの範囲のショアD硬度を有するTPUを含む。ポリマーフィルム(A1)は、好ましくは上述のプロセスによって製造されたTPUを、ポリマーフィルム(A1)の総重量に基づいて、10~100重量%の範囲、より好ましくは20~95重量%の範囲で含むことが好ましい。
【0083】
ポリマーフィルム(A2)は、好ましくは、55~95ショアDの範囲、好ましくは65~90ショアDの範囲、非常に特に好ましくは70~85ショアDの範囲の硬度を有するTPUを含む。ポリマーフィルム(A2)は、好ましくは上述のプロセスによって製造されたTPUを、ポリマーフィルム(A2)の総重量に基づいて、10~100重量%の範囲、より好ましくは20~95重量%の範囲で含むことが好ましい。
【0084】
ポリマーフィルム(A1)およびポリマーフィルム(A2)に適したTPUタイプの例としては、Lubrizol製のEstane(登録商標)、BASF AG(ドイツ)製のElastollan(登録商標)、Covestro Deutschland AG(ドイツ)製のDesmopan(登録商標)、好ましくは45~95ショアDの硬度を有するものが挙げられる。
【0085】
熱可塑性ポリカーボネート(PC)は、当業者がこの目的のために選択するであろう任意のエラストマーPCであり得る。PCは、好ましくは、国際公開第2018/11436号に記載されているポリカーボネート、特に3頁の最終段落から16頁の第3段落に記載されているようなポリカーボネートブレンドに従って製造される。
【0086】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、当業者が本発明によるセキュリティ文書(A)に使用するであろう任意のPETであり得る。PETは、好ましくはポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、例えばEASTMAN Chemical GmbH(ドイツ)製のEastar(登録商標)である。
【0087】
熱可塑性スチレンブロックコポリマー(TPS)は、当業者が本発明によるセキュリティ文書(A)に使用するであろう任意のスチレンブロックコポリマーであり得る。好ましいTPSは、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEPS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEEPS)およびメチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)である。SBS製品ラインの例としては、BASF AG(ドイツ)製のStyroflex(登録商標)およびKraiburg Holding(ドイツ)製のTHERMOLAST(登録商標)が挙げられる。SBES製品ラインの例としては、PCW GmbH(ドイツ)製のSaxomer(登録商標)TPE-S、好ましくは45~95ショアDの硬度を有するその代表物が挙げられる。
【0088】
TPEは、好ましくは、プラスチックに通例の添加剤を含有する。型的な添加剤の例は、潤滑剤、例えば脂肪酸エステル、その金属石鹸、脂肪酸アミドおよびシリコーン化合物、ブロッキング防止剤、阻害剤、加水分解、光、熱および変色に対する安定剤、難燃剤、染料、顔料、無機または有機充填剤、および強化剤である。列挙された補助物質および添加物質に関するさらなる情報は、専門家の文献、例えばJ.H.Saunders,K.C.Frisch:“High Polymers”,volume XVI,Polyurethane,part 1 and 2,Interscience Publishers 1962 and 1964,R.Gachter,H.Muller(Ed.):Taschenbuch der Kunststoff-Additive,3rd edition,Hanser Verlag,Munich 1989,or DE-A2901774に見出すことができる。
【0089】
セキュリティ文書(A)の好ましい実施形態では、セキュリティ文書(A)の外面(AS1)および(AS2)は、TPUを含むまたはTPUからなるポリマーフィルム(A1)、(A2)または(A3)からなる。
【0090】
第1のポリマーフィルム(A1)が、セキュリティ文書(A)の第1の外面(AS1)を形成し、好ましくは外面(AS2)も形成する場合が好ましい。第2のポリマーフィルム(A2)は、セキュリティ文書(A)のコアを形成することが好ましい。
【0091】
セキュリティ文書(A)の好ましい実施形態では、少なくとも全てのポリマーフィルム(A1)、(A2)および任意選択的に(A3)は、専らポリマーからなる。全てのポリマーフィルム(A1)、(A2)および任意選択的に(A3)が、TPEからなる場合が好ましい。全てのポリマーフィルム(A1)、(A2)および任意選択的に(A3)が、相互に独立して選択されるTPUからなる場合が非常に特に好ましい。完全なセキュリティ文書(A)が、セキュリティ特徴(A4)および繊維(A5)を除いてポリマーからなる場合が好ましい。
【0092】
セキュリティ文書(A)の好ましい実施形態では、第1のポリマーフィルム(A1)、第2のポリマーフィルム(A2)またはその両方からなる群から選択されるポリマーフィルムの少なくとも1つは、それぞれのポリマーフィルム(A1)または(A2)の総重量に基づいて、50~100重量%、好ましくは60~90重量%、特に好ましくは70~80重量%の範囲の量のTPEを含む。ポリマーフィルム(A1)がTPEからなる場合が特に好ましい。ポリマーフィルム(A2)がTPEからなる場合が特に好ましい。
【0093】
セキュリティ文書(A)の好ましい実施形態では、第1のポリマーフィルム(A1)、第2のポリマーフィルム(A2)、または両方のポリマーフィルム(A1)および(A2)からなる群から選択されるポリマーフィルムのうち少なくとも1つは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、コポリエステルまたはこれらの少なくとも2つの混合物、またはTPUとさらなるTPEとの混合物からなる群から選択されるポリマーを、それぞれのポリマーフィルム(A1)または(A2)の総重量に基づいて、50~100重量%、好ましくは60~90重量%、特に好ましくは70~80重量%の範囲の量で含む。
【0094】
セキュリティ文書(A)の好ましい実施形態では、セキュリティ文書(A)は、少なくとも1つのさらなるポリマーフィルム(A3)を含み、少なくとも1つのさらなるポリマーフィルム(A3)は、それぞれのポリマーフィルム(A3)の総重量に基づいて、50~100重量%、好ましくは60~90重量%、特に好ましくは70~80重量%の範囲の量のTPEを含む。少なくとも1つのさらなるポリマーフィルム(A3)がTPEからなる場合が特に好ましい。少なくとも1つのポリマーフィルム(A3)がTPUからなる場合が極めて特に好ましい。
【0095】
少なくとも1つのさらなるポリマーフィルム(A3)が、ポリマーフィルム(A1)または(A2)と同じ組成を有する場合が好ましい。3つ全てのポリマーフィルム(A1)、(A2)および(A3)が、少なくとも50重量%の範囲、好ましくは少なくとも80重量%の範囲、特に好ましくは100重量%の範囲のTPEを含む場合が極めて特に好ましく、TPEは、好ましくは上記のTPEの1つ、特に好ましくは少なくとも1つのTPUである。さらなるポリマーフィルム(A3)が、第1のポリマーフィルム(A1)と同じ組成を有する場合が特に好ましい。
【0096】
セキュリティ文書(A)の好ましい実施形態では、セキュリティ特徴(A4)は、ホログラム、印刷、セキュリティスレッド、蛍光繊維、染料、セキュリティ顔料、カーボンブラック、金属もしくは非金属のマイクロ粒子もしくはナノ粒子、磁性粒子、エンボス加工、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。セキュリティ特徴(A4)が第2のポリマー層(A2)または少なくとも1つのさらなるポリマー層(A3)の中または上に配置される場合が好ましい。セキュリティ特徴(A4)は、セキュリティ文書(A)の外部からアクセスできないように、セキュリティ文書(A)に埋め込まれていることが好ましい。セキュリティ特徴(A4)は、セキュリティ文書(A)の破壊によってのみアクセス可能であるように、セキュリティ文書(A)に埋め込まれていることが好ましい。ホログラムは、当業者に知られている任意のホログラフィック構造であり得る。ホログラムは、ポリマーフィルム(A1)、(A2)または任意選択的に(A3)のうち1つにエンボス加工される場合が好ましい。しかしながら、ホログラムはまた、それぞれがホログラムを含み、かつ製造中にポリマーフィルム(A1)、(A2)または任意選択的に(A3)と混合された、小さなフレークから構成されてもよい。印刷は、当業者に知られている任意の種類の印刷であり得る。ポリマーフィルム(A1)、(A2)または任意選択的に(A3)のうち1つの中または上の印刷が、凸版印刷、例えばフレキソ印刷、平版印刷、例えばオフセット印刷、グラビア印刷およびスクリーン印刷から選択される場合が好ましい。印刷は、好ましくは、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パッド印刷、レーザー印刷、パッド印刷、ブロック印刷、エンボス印刷、歪み印刷およびノンインパクト印刷、例えば直接感熱印刷、熱転写印刷、3D印刷、熱昇華印刷、レーザーマーキングまたはこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される。
【0097】
セキュリティ特徴(A4)は、好ましくはエンボス加工の形態である。セキュリティ文書(A)の好ましい実施形態では、セキュリティ文書(A)は、エンボス加工(P)の形態の少なくとも1つのセキュリティ特徴(A4)と、少なくとも1つのさらなるセキュリティ特徴(A4)とを含む。エンボス加工(P)は、当業者がこの目的のために選択するであろう任意の形態をとってもよい。エンボス加工(P)は、ロゴおよび例えば名前などのスクリプトからなる群から選択される形状を有することが好ましい。エンボス加工(P)は、セキュリティ文書(A)の個別化または個人化に役立つ形状を有することが好ましい。
【0098】
エンボス加工(P)の深さが、50~500μm、特に好ましくは55~300μm、非常に特に好ましくは60~100μmの範囲である場合が好ましい。エンボス加工(P)を操作または破壊から保護するために、エンボス加工(P)が導入された外面(AS1)または(AS2)は、さらなる層によって保護される。
【0099】
セキュリティスレッドは、当業者が文書を守るために使用するであろう任意のスレッドとすることができる。セキュリティスレッドが、ポリマーまたは綿、ウール、麻もしくは同様の天然繊維などの天然原料から好ましくは形成され、UV蛍光材料を含むスレッドである場合が好ましい。セキュリティスレッドは、セキュリティ文書に含まれる他の、特に情報を与えるデータを不明瞭にすることなく、特にUV光下で観察者によって容易に検出可能な構造または色を呈することが好ましい。セキュリティ文書(A)が、セキュリティ文書(A)の総重量に基づいて、0.1~10重量%の範囲、より好ましくは0.2~8重量%の範囲、特に好ましくは0.5~5重量%の範囲の量のセキュリティスレッドを含む場合が好ましい。
【0100】
蛍光繊維は、蛍光染料をドープすることができる任意の繊維であり得る。繊維が、1~10mmの範囲の長さおよび20~80μmの範囲の直径を有するポリマー繊維である場合が好ましい。セキュリティ文書(A)が、セキュリティ文書(A)の総重量に基づいて、0.1~10重量%の範囲、より好ましくは0.2~8重量%の範囲、特に好ましくは0.5~5重量%の範囲の量の蛍光繊維を含む場合が好ましい。そのような繊維の例は、フレッキングファイバーまたはプランシェットである。フレッキングファイバーは、例えば偽造防止のためにスタンプに追加され、UVランプ下で小さな赤色発光繊維として検出可能である。プランシェットは、フレッキングファイバーと同様に、着色ディスクが組み込まれている。プランシェットはまた、金属製または透明であり得、それらはまた、UV光下で蛍光を発することができ、または色変化を示す虹色材料から作製することができる。例えば運転免許証で使用するための特別なプランシェットは、信号色をブリーディングすることによって操作の試みに反応する。
【0101】
染料、特にUV光で蛍光性の染料は、当業者が文書を守るために使用するであろう任意の染料であり得る。染料は、好ましくは、アロフィコシアニン、ベルベリン、ブリリアントスルファフラビン、キニーネ、クマリン、例えば4-メチルウンベリフェロン、1,3,2-ジオキサボリン(ホウ酸誘導体と1,3-ジカルボニル化合物との錯体)フルオレセイン(例えば、5-オクタデカノイルアミノフルオレセイン、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン-N-スクシンイミジルエステル)、蛍光タンパク質(GFP、YFP、RFP)、インドシアニングリーン、ジウリン酸ナトリウム、ナイルブルー/ナイルレッド、N,N-ジアルキルアニリンに基づくポルフィリン(ヘム、クロロフィルなど)四級化合物(二次酸染料)、ローダミン、スチルベン、合成蛍光標識およびマーカー、例えばATTO染料(ATTO-TEC GmbH、ジーゲン)、Alexa Fluor(Molecular Probes,Invitrogen Corp.)およびシアニン(Cy3、Cy5など)、またはこれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。
【0102】
セキュリティ文書(A)が、セキュリティ文書(A)の総重量に基づいて、0.1~10重量%の範囲、より好ましくは0.2~8重量%の範囲、特に好ましくは0.5~5重量%の範囲の量の染料を含む場合が好ましい。適切な染料の例は、マーキング剤、IRまたはUV染料、蛍光染料である。
【0103】
セキュリティ顔料は、当業者が文書を守るために使用するであろう任意のセキュリティ顔料であり得る。単にポリマーフィルム(A1)、(A2)または(A3)のうち1つを着色するために記載される顔料とは対照的に、セキュリティ顔料は、それぞれのポリマー層(A1)、(A2)または(A3)に特徴的に添加される顔料である。したがって、セキュリティ顔料自体が、スキャナなどの特定の機器によって検出される特定の特性を有してもよく、またはセキュリティ顔料は、ポリマーフィルム(A1)、(A2)または(A3)内にこのように添加されてもよい。セキュリティ顔料は、好ましくは、酸硫化ガドリニウム、酸硫化イットリウム、酸硫化ランタン、酸化ガドリニウム、酸化サマリウム、酸化ルテチウム、酸化テルビウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化ユーロピウム、酸化ジスプロシウム、酸化プラセオジム、酸化エルビウム、酸化ホルミウム、酸化セリウム、酸化ネオジム、酸化イッテルビウム、リン含有強磁性顔料、特に実質的に鉄およびコバルトからなる顔料からなる希土類の群から選択される。セキュリティ文書(A)が、セキュリティ文書(A)の総重量に基づいて、0.1~10重量%の範囲、より好ましくは0.2~8重量%の範囲、特に好ましくは0.5~5重量%の範囲の量の顔料を含む場合が好ましい。
【0104】
セキュリティ文書(A)がカーボンブラックを含む場合が好ましい。セキュリティ文書(A)が、セキュリティ文書(A)の総重量に基づいて、0.1~10重量%の範囲、より好ましくは0.2~8重量%の範囲、特に好ましくは0.5~5重量%の範囲の量のカーボンブラックを含む場合が好ましい。セキュリティ文書(A)の一部がその後レーザーで処理される場合、例えば、非破壊的な変更が可能でないカーボンブラック含有量のために、番号などの識別子がセキュリティ文書(A)に焼き付けられる可能性がある。
【0105】
金属または非金属のマイクロ粒子またはナノ粒子は、当業者が文書を守るために使用するであろう任意の種類の金属または非金属のマイクロ粒子またはナノ粒子であり得る。金属または非金属のマイクロ粒子またはナノ粒子が、希土類金属の酸化物または硫化物、Viaviの製品ラインCharmsのマイクロホログラム、Optaglioの製品ラインOVDotsの微結晶からなる群から選択される場合が好ましい。
【0106】
セキュリティ文書(A)が、セキュリティ文書(A)の総重量に基づいて、0.1~10重量%の範囲、より好ましくは0.2~8重量%の範囲、特に好ましくは0.5~5重量%の範囲の量の金属または非金属のマイクロ粒子またはナノ粒子を含む場合が好ましい。
【0107】
磁性粒子は、当業者が文書を守るために使用するであろう任意の種類の磁性粒子であり得る。磁性粒子が、ガドリニウム、テルビウム、イットリウム、ランタン、ユーロピウム、ジスプロシウム、プラセオジム、エルビウム、ホルミウム、ネオジム、イッテルビウムの酸化物からなる群から選択される場合が好ましい。セキュリティ文書(A)が、セキュリティ文書(A)の総重量に基づいて、0.1~10重量%の範囲、より好ましくは0.2~8重量%の範囲、特に好ましくは0.5~5重量%の範囲の量の磁性粒子を含む場合が好ましい。
【0108】
セキュリティ文書(A)の好ましい実施形態では、ポリマーフィルム(A1)、(A2)または任意選択的に(A3)のうち少なくとも1つ、好ましくはセキュリティ文書(A)は、以下の特性の少なくとも1つを有する。
【0109】
a.DIN 53363:2003-10に従って決定される、50~400N/mm、より好ましくは60~350N/mm、特に好ましくは70~300N/mmの範囲の引裂伝播抵抗、
b.ISO 527-3:1995に従って決定される、20~200MPa、より好ましくは25~170MPa、特に好ましくは30~150MPaの範囲の引張強度、
c.ISO 13468-2:2019に従って決定される、0~85%、好ましくは1~50%、特に好ましくは5~30%の範囲の光透過率、
d.セキュリティ文書(A)の総重量に基づいて0.1~10重量%の範囲のセキュリティ顔料の含有量、
e.DIN 53890/91による120~170°、より好ましくは130~160°、特に好ましくは140~150°の範囲の折り目回復角度、
f.DIN EN ISO 306による30~180℃、特に好ましくは40~175℃、特に好ましくは50~170℃のビカット軟化温度、
g.DIN EN ISO 527-1:2012に従って測定して、少なくとも60%、好ましくは60~800%、特に好ましくは100~500%、非常に特に好ましくは130~250%の範囲の公称破断伸び。
【0110】
セキュリティ文書(A)が、以下からなる群から選択される特性または特性の組み合わせを有する場合が好ましい。
【0111】
a.,b.,c.,d.,e.,f.,g.,a.+b.,a.+c.,a+d.,a.+e.,a.+f.,a.+g.,b.+c.,b.+d.,b.+e.,b.+f.,b.+g.,c.+d.,c.+e.,c.+f.,c.+g.,d.+e.,d.+f.,d.+g.,e.+g.,f.+g.,a.+b.+c.,a.+b.+d.,a.+b.+e.,a.+b.+f.,a.+b.+g.,a.+c.+d.,a.+c.+e.,a.+c.+f.,a.+c.+g.,a.+d.+e.,a.+d.+f.,a.+d.+g.,a.+e.+f.,a.+e.+g.,a.+f.+g.,b.+c.+d.,b.+c.+e.,b.+c.+f.,b.+c.+g.,b.+d.+e.,b.+d.+f.,b.+d.+g.,b.+e.+f.,b.+e.+g.,b.+f.+g.,c.+d.+e.,c.+d.+f.,c.+d.+g.,c.+e.+f.,c.+e.+g.,d.+e.+f.,d.+e.+g.,e.+f.+g.,a.+b.+c.+d.,a.+b.+c.+e.,a.+b.+c.+f.,a.+b.+c.+g.,a.+b.+d.+e.,a.+b.+d.+f.,a.+b.+d.+g.,a.+b.+e.+f.,a.+b.+e.+g.,a.+b.+f.+g.,a.+c.+d.+e.,a.+c.+d.+f.,a.+c.+d.+g.,a.+c.+e.+f.,a.+c.+e.+g.,a.+c.+f.+g.,a.+d.+e.+f.,a.+d.+e.+g.,a.+d.+f.+g.,a.+e.+f.+g.,b.+c.+d.+e.,b.+c.+d.+f.,b.+c.+d.+g.,b.+d.+e.+f.,b.+d.+e.+g.,b.+d.+f.+g.,b.+e.+f.+g.,c.+d.+e.+f.,c.+d.+e.+g.,c.+d.+f.+g.,c.+e.+f.+g.,d.+e.+f.+g.,a.+b.+c.+d.+e.,a.+b.+c.+d.+f.,a.+b.+c.+d.+g.,a.+b.+c.+e.+f.,a.+b.+c.+e.+g.,a.+b.+c.+f.+g.,a.+b.+d.+e.+f.,a.+b.+d.+e.+g.,a.+b.+d.+f.+g.,a.+b.+e.+f.+g.+g.,a.+c.+d.+e.+f.,a.+c.+d.+e.+g.,a.+c.+d.+f.+g.,a.+c.+e.+f.+g.,a.+d.+e.+f.+g.,b.+c.+d.+e.+f.,b.+c.+d.+e.+g.,b.+c.+d.+f.+g.,b.+c.+e.+f.+g.,c.+d.+e.+f.,+g.,a.+b.+c.+d.+e.+f.a.+b.+c.+d.+e.+g.,a.+b.+c.+e.+f.+g.,b.+c.+d.+e.+f.+g.,a.+b.+c.+d.+e.+f.+g。セキュリティ文書(A)がa.およびg.の特性を有する場合が特に好ましい。
【0112】
ポリマーフィルム(A1)、(A2)または(A3)が添加剤としてUV安定剤をさらに含む場合が好ましい。ポリマーフィルム(A1)、(A2)または(A3)が、それぞれのポリマーフィルム(A1)、(A2)または(A3)の総重量に基づいて、0.1~15重量%の範囲、より好ましくは1~10重量%の範囲、特に好ましくは2~7重量%の範囲の量でUV安定剤を含む場合が好ましい。
【0113】
本発明のさらなる態様は、第1の外面(AS1)と、第1の外面(AS1)の反対側の第2の外面(AS2)とを有するセキュリティ文書(A)を製造するプロセスであって、
i)第1のポリマー(A1’)を供給するステップと、
ii)第2のポリマー(A2’)を供給するステップと、
iii)任意選択的にさらなるポリマー(A3’)を供給するステップと、
iv)ステップi)、ii)および任意選択的にiii)からのポリマーを溶融するステップと、
v)ステップiv)からのポリマー溶融物を組み合わせて、第1のポリマー(A1’)から第1のポリマーフィルム(A1)を形成し、第2のポリマー(A2’)から第2のポリマーフィルム(A2)を形成し、任意選択的に第1のポリマー(A1’)からもしくはさらなるポリマー(A3’)から共押出物としてさらなるポリマーフィルム(A3)を形成するステップ、または各場合においてステップiv)の溶融物から形成された別個のポリマーフィルム(A1)、(A2)および任意選択的に(A3)から積層体を形成するステップのいずれかと、
vi)ホログラム、印刷、セキュリティスレッド、蛍光繊維、染料、顔料、カーボンブラック、金属もしくは非金属のマイクロ粒子もしくはナノ粒子、磁性粒子、エンボス加工、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されるセキュリティ特徴(A4)をポリマーフィルム(A1)、(A2)または(A3)のうち1つの中または上に導入して、セキュリティ文書(A)を得るステップと、
vii)任意選択的に、ポリマー層(A6)を少なくとも1mm2の面積にわたって外層(AS1)または(AS2)の1つに接合、好ましくは超音波溶接、振動溶接またはレーザー溶接するステップと
を含み、
外面(AS1)および(AS2)が、各々TPEを含むまたはTPEからなるポリマーフィルム(A1)、(A2)または(A3)のうち1つによって形成される、プロセスに関する。
【0114】
ステップi)における第1のポリマー(A1’)、ステップii)における第2のポリマー(A2’)および/または任意選択的にステップiii)におけるさらなるポリマー(A3’)の供給は、当業者に公知の任意の方法で行われ得る。ステップi)、ii)および/またはiii)における供給が、それぞれのポリマーのペレットを押出機またはポリマーがその後溶融され得る別の機器に導入することによって行われる場合が好ましい。
【0115】
ステップiv)は、好ましくは押出機スクリューのスイッチを入れた状態で押出機を加熱することによって、ステップi)、ii)および任意選択的にiii)からのポリマーを溶融することを含む。ステップv)は、ステップiv)からのポリマー溶融物を組み合わせることを含む。これは、好ましくは、それに適したダイによって行われる。あるいは、ステップiv)からの溶融物を基材に連続的に塗布してもよい。
【0116】
ステップv)の溶融物は、好ましくは押出溶融物の形態でダイを介して共押出されるか、または鋳造によって個々のポリマーフィルムとして形成される。溶融物がステップv)で押出される場合が好ましい。
【0117】
溶融物がポリマーフィルム(A1)、(A2)または(A3)に各々別々に形成される場合、それらは好ましくは積層によって接合されて、積層体の形態のセキュリティ文書(A)を得る。ステップv)において溶融物がダイを使用して一緒に押出される場合、これは、溶融物の冷却後に押出フィルムまたは共押出フィルムの形態のセキュリティ文書(A)を形成する。溶融物の粘度は、好ましくは20~2000Pa・sの間、好ましくは50~1000Pa・sの範囲、特に好ましくは75~500Pa・sの範囲の、ポリマー加工、特にフラットフィルム製造に適した範囲である。ポリマー溶融物が規定の融点Tmまたは規定の溶融間隔Tm±ΔTを有するポリマーであるかどうか、または規定の融点を有さないポリマーであるかどうかは重要ではない。押出において、特にダイを出る時点で、ポリマーが融点Tmまたはガラス転移点Tgを十分に上回って加熱されている場合、ポリマーの粘度は、ポリマーフィルムを得るための加工を可能にするのに十分に低下することが好ましい。
【0118】
ステップv)における溶融物の押出中、ステップvi)におけるセキュリティ特徴(A4)として、個々の溶融物の間に少なくとも1つのさらなるフィルムを導入することが好ましい。少なくとも1つの供給フィルムは、好ましくは5~35μm、より好ましくは7~25μm、特に好ましくは10~20μmの範囲の厚さを有する。この少なくとも1つのさらなるフィルムは、ステップv)において溶融物の全幅にわたって導入されてもよく、または溶融物の一部のみにわたって導入されてもよい。少なくとも1つのさらなるフィルムが、溶融物の幅の30~100%、より好ましくは40~90%、特に好ましくは50~80%に相当する幅を有する場合が好ましい。少なくとも1つのさらなるフィルムは、好ましくは、セキュリティ特徴(A4)を導入するために使用される。
【0119】
ポリマー(A1’)、(A2’)および任意選択的に(A3’)の溶融物をダイを通してフィルムに押出した後、押出フィルムは好ましくは2つのロール上に導かれる。一方または両方のロールが延性表面を有する場合が好ましい。これにより、押出物の全幅にわたってより均一な圧力分布が可能になる。これは、セキュリティ特徴(A4)として機能するロールニップに供給される薄膜が、材料の不足または過剰に起因してロール上の圧力が変化し得る領域において、20μmまでのカラー層厚さの凹部または印刷記号を有する場合に特に有利であり得る。延性ロールは、この圧力差を補償することができ、したがって、これらの領域においても改善された接着性をもたらす。そのようなロールは、例えば、PTFE被覆またはPTFEシースゴムロールまたはシリコーン被覆ロールである。
【0120】
ステップvi)は、好ましくは、形成されたセキュリティ文書(A)にエンボス加工によってエンボス加工(P)の形態の第1のセキュリティ特徴(A4)を導入することを含む。エンボス加工は、好ましくは、例えば円筒または平らな金属シートの形態の金属エンボスパンチによって行われる。エンボススタンプは、ポリマーフィルム(A1)または(A3)のうち1つにおけるセキュリティ文書(A)の外面(AS1)または(AS2)上でエンボス加工(P)が視認できかつ触れることができるように、15~80℃の範囲の温度で、40~800N/cm2の圧力で、多層フィルムの片面に押圧される。
【0121】
上述したように、セキュリティ特徴(A4)またはセキュリティ特徴(A4)の組み合わせが、結果として得られるセキュリティ文書(A)に組み込まれ得る。例としては、好ましくは、フレッキングファイバー、プランシェット、金属繊維、マーキング剤、IRまたはUV染料、セキュリティ顔料、蛍光染料、効果顔料またはセキュリティスレッドが挙げられ、これらのセキュリティ特徴(A4)は、添加剤としてステップi)のペレット状ポリマー混合物にもしくはステップiv)の溶融物に添加されるか、またはステップv)においてロールニップの近傍での散乱によって導入されるもしくは溶融尾部に吹き付けられるか、またはセキュリティスレッドまたはセキュリティフィルムがロールニップ内に案内される場合である。同様に、薄い供給フィルムにセキュリティ特徴(A4)を設けることが可能である。これにより、ドイツ特許出願公開第69833653号明細書、特に請求項1、または中国特許第704788号明細書7ページに記載されているように、紙の紙幣の分野から既に知られているセキュリティ特徴をさらに変更することなく使用することができる。紙文書から知られているセキュリティ特徴には、セキュリティスレッド、OVD、フレッキングファイバー、セキュリティ顔料、虹色塗布、チップ、特にRFIDチップ、磁気ストリップが含まれる。
【0122】
あるいは、ロールの1つとしてグラビアロールを用いることが好ましい。
【0123】
押出は、好ましくは、反応したポリマーの単純な溶融物に基づいて行われる。あるいは、ポリマーフィルム(A1)、(A2)または任意選択的に(A3)のうち1つを形成するために、出発材料として中国特許第704788号明細書に記載されているようなプレポリマーを使用することが好ましい場合がある。プレポリマーは、好ましくは、ロールニップの前または後に、他のポリマーフィルム(A1)、(A2)または任意選択的に(A3)のうち1つを形成するポリマーのさらなる溶融物に供給される。プレポリマーは、その後、化学的または物理的硬化および/または反応および/またはゲル化に供される。本発明はさらに、上述のプロセスで製造され得るような、または実際に上述のプロセスによって製造されるような多層基材に関する。
【0124】
溶融物の導入直後に、ロール対の間に0~500N/cm、より好ましくは250~450N/cmの範囲の線圧を加えることが好ましい。ロール対は、好ましくは室温より高い温度、好ましくは50~180℃、より好ましくは60~120℃、特に好ましくは70~100℃の範囲に保たれる。ロール温度は、理想的には、得られるポリマーフィルム(A1)、(A2)または任意選択的に(A3)に使用される材料の溶融温度またはガラス転移点を超えてはならない。最も低い融点のポリマーのガラス転移点Tgおよび/または融点Tmのすぐ下のロール温度を採用することが好ましい。ステップv)の溶融物が、反応したポリマーから構成される場合、ロール温度はまた、溶融温度のすぐ上またはガラス転移点の上であってもよい。
【0125】
ステップvi)におけるセキュリティ特徴(A4)の導入は、当業者に知られている任意の方法で行うことができる。ステップvi)におけるセキュリティ特徴(A4)の導入が、セキュリティスレッド、蛍光繊維、染料、顔料、カーボンブラック、金属もしくは非金属のマイクロ粒子もしくはナノ粒子、磁性粒子、エンボス加工、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせを、それぞれのポリマー(A1’)、(A2’)または(A3’)と、好ましくはステップiv)のその溶融物と混合すること、ステップv)からの共押出フィルムまたは積層体にホログラムを導入すること、またはステップv)からの共押出フィルムまたは積層体を、そのような共押出フィルムまたは積層体を印刷するための当業者に公知のプロセスによって印刷すること、からなる群から選択される手段によって行われる場合が好ましい。ステップvi)における印刷は、好ましくは、インクジェット印刷、スクリーン印刷、レーザージェット印刷、レーザーグラビア印刷またはこれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択されるプロセスによって行われ得る。
【0126】
代替的または追加的に、セキュリティ特徴(A4)の導入は、ポリマー層(A1)、(A2)または(A3)のうち1つに、エンボス加工の形態で行われてもよい。
【0127】
繊維(A5)は、溶融物中、溶融物間または溶融物上に導入されてもよい。これらはまた、形成された多層フィルムに別個のプライとして適用されてもよく、またはそれに接合されてもよい。繊維(A5)がポリマー(A1’)または(A3’)の溶融物中に導入されている場合が好ましい。
【0128】
少なくとも1mm2の面積にわたるステップvii)における外層(AS1)または(AS2)のうち1つへのさらなるポリマー層(A6)の任意選択的な接合は、ポリマーフィルムの接合のための当業者に公知の任意の接合方法によって行うことができる。接合は、好ましくは、超音波溶接、振動溶接、レーザー溶接、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせから選択される。ポリマー層(A6)は、例えばパスポートのデータページである。
【0129】
ポリマーフィルム(A1)、(A2)および任意選択的に(A3)の構成は、本発明によるセキュリティ文書(A)に関連して指定されたポリマーフィルムに対応する。特に、組成、厚さ、長さおよび幅、ならびに形状および特性は、ポリマーフィルム(A1)、(A2)および任意選択的に(A3)について先に記載したものと同じである。
【0130】
全てのポリマーフィルム(A1)、(A2)および(A3)がポリマーのみからなる場合が好ましい。セキュリティ特徴(A4)および任意選択的に繊維(A5)を除き、完全なセキュリティ文書(A)がポリマーからなる場合が好ましい。
【0131】
セキュリティ文書(A)を製造するための本発明による方法の1つの利点は、処理されるポリマーを変える点における高い柔軟性である。可能な限り短い時間枠で材料の変更が可能であり、したがって、より小さいバッチサイズの製造も容易になる。さらに、ポリマーペレットは、押出前に、染料、セキュリティ顔料、蛍光染料、効果顔料、干渉顔料、金属顔料、反応性染料などのセキュリティ特徴(A4)の形態のマーキング剤と、さらにUV吸収剤、安定剤、およびさらなる添加剤などのさらなる添加剤、特に本発明によるセキュリティ文書(A)に関連して既に記載されているものと、好ましくは簡単な個別化、環境の影響からの保護、およびセキュリティ文書(A)をさらに守ることを可能にするマスターバッチの形態で、容易に混合され得る。異なるセキュリティ特徴(A4)の選択および量は、本発明によるセキュリティ文書(A)に関して上記から明らかであり、同様に本発明によるプロセスに適用される。
【0132】
本発明によるセキュリティ文書(A)と同様に、そのための好ましい材料は、特に、熱可塑性エラストマー、例えば熱可塑性ポリウレタン、コポリエステル、ポリエーテルブロックアミド、熱可塑性ポリオレフィン、スチレンブロックコポリマーおよび列挙されたポリマーの少なくとも2つの混合物の群からのプラスチックである。それらの化学構造のために、これらは押出、共押出およびブレンドの製造において特に良好な相溶性を示す。したがって、押出、積層またはコーティング中に組み合わせた後、それらは、第1に良好な凝集性に基づき、第2に個々の成分の良好な適合性に基づく、特に密接な結合を示す。本発明によるセキュリティ文書(A)用のポリマー材料のさらなる有利な特性は、酸、塩基、溶媒、漂白剤などに対する高い耐薬品性、高い熱安定性およびUV安定性、高い不透明度、高い曲げ疲労強度および高い軟化温度である。
【0133】
押出積層によって製造されたフィルム積層体は、典型的には、積層される薄膜、例えばポリマー(A1’)からなるフィルム(A1)が粗面化された加熱または冷却された金属ロール上を走行し、スロットダイからの第2のポリマー、例えば(A2’)の溶融物がゴムシース粗面化ロールによって第1の金属ロールに押し付けられ、したがって供給されたフィルム上にポリマー溶融物が押し付けられるように形成される。ロールの粗面化表面のテクスチャは、溶融ポリマーおよび供給されたフィルムに転写されて積層される。温度制御されたロール対をポリマーの固化温度未満に冷却することにより、フィルムがゴムロールに付着することが防止される。ポリマー(A1’)、(A2’)または任意選択的に(A3’)は、供給された薄膜(A1)、(A2)または任意選択的に(A3)と溶融形態で直接接触するので、供給されたフィルムに対する熱の影響は短時間であり、したがってほとんど有害ではない。供給されるポリマーフィルム、例えばポリマーフィルム(A1)は、好ましくは、PCの溶融物が塗布されるTPUを含む。200~250℃の範囲の比較的高い溶融温度で動作することが可能である。これは、溶融物の高温がより低い溶融粘度を達成することを可能にし、したがって、プラスチック層のより良好で迅速な接合をもたらし、セキュリティ文書(A)に必要とされるより密接な結合を可能にするという利点を有する。これは同時に、より速いプロセス速度を可能にする。
【0134】
ロール対が、押出中に押出層複合体にある程度転写される艶消し表面を有する温度制御可能なロールを含む場合が好ましい。1つのゴムロールと1つの金属ロールとからなるロール対の代わりに、2つの金属ロールを使用することも可能である。艶消し表面は、特に、10~30μmの範囲の粗さを有するものを意味すると理解されるべきである。
【0135】
2つの金属ロールを使用する場合、2つの金属ロールの一方が薄肉であり、内部からの油圧下にあることが好ましい。これにより、金属ロールはゴムロールのように機能する。この理由は、厚いカラー層を用いた印刷などの増粘の場合、ゴムロールは局所変形を受ける可能性があるためである。
【0136】
高光沢に研磨された表面を有する金属ロールは、対応して滑らかな表面を有するフィルムを製造する。これらのフィルムは、互いに粘着し、高速で印刷可能であるが非常に困難であるため、セキュリティ印刷には適していない。これらのフィルムは、典型的には、印刷機に供給される前にイオン化圧縮空気で分離される。研磨されたロールに代わるものは、例えば紙幣などのセキュリティ文書(A)の特定の場所に後で見つけることができる、局所的にのみ研磨された領域を有するロールである。
【0137】
例えば、対称構造の少なくとも3つのポリマーフィルム(A1)、(A2)および(A3)と、例えばポリマー(A2’)の内側ポリマーフィルム(A2)ならびにポリマー(A1’)および(A3’)のそれぞれの外側ポリマーフィルム(A1)および(A3)との共押出によるセキュリティ文書(A)の製造において、ポリマー(A1’)および(A3’)は特に好ましくは同一であり、外側ポリマー(A1’)または(A3’)の軟化温度は、内側ポリマー(A2’)の軟化温度よりも低いことが好ましい。あるいは、外側ポリマー(A1’)または(A3’)は、所与の加工条件下で内側ポリマー(A2’)より低い溶融粘度を有する。これにより、外側ポリマーを適切に選択して、得られるセキュリティ文書(A)の印刷性を最適化することが可能になる。内側ポリマーフィルム(A2)については、フィルムの最適化された機械的特性のためにポリマー(A2’)を選択することが好ましい。そのような多層ポリマープライは、好ましくは、大部分が適合性のある、すなわち容易に共押出可能なポリマーで構成され、例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、コポリエステル、ポリエーテルブロックアミド、熱可塑性ポリオレフィン、スチレンブロックコポリマーおよびこれらの少なくとも2つの混合物が挙げられる。
【0138】
セキュリティ文書(A)の製造プロセス中に、ポリマーフィルム(A1)または(A3)と(A2)との間に追加の材料を組み込むことが好ましい。セキュリティ特徴(A4)として、ロールニップにセキュリティスレッドを供給することが好ましく、これにより、個々のプライ間に確実に組み込まれる。スレッドは、セキュリティスレッドには珍しいことではないが、理想的には接着剤が設けられており、したがって、温度制御されたロールを介して外側ポリマーフィルム(A1)または(A3)の一方に接着される。
【0139】
プロセスの好ましい実施形態では、ポリマー(A1’)、ポリマー(A2’)、任意選択的にポリマー(A3’)からなる群から選択されるポリマーの少なくとも1つは、熱可塑性ポリアミドエラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、好ましくはPP/EPDM、熱可塑性スチレンブロックコポリマー(SBS、SEBS、SEPS、SEEPSおよびMBS)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、コポリエステルエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、コポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、またはこれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択されるポリマーであり、好ましくはTPUである。これらの材料の例は、本発明によるセキュリティ文書(A)の説明に既に記載されており、本発明によるプロセスで使用される材料にも同様に適用される。
【0140】
第2のポリマーフィルム(A2)が、TPE、コポリエステル、ポリエーテルブロックアミドまたはこれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択されるポリマーを、ポリマーフィルム(A2)の総重量に基づいて50~100重量%、好ましくは60~90重量%、特に好ましくは70~80重量%の範囲の量で含む場合が好ましい。
【0141】
第1のポリマーフィルム(A1)が、ポリマーフィルム(A1)の総重量に基づいて、50~100重量%、好ましくは60~90重量%、特に好ましくは70~80重量%の範囲の量のTPEを含む場合が好ましい。
【0142】
さらに、ポリマー(A1’)、ポリマー(A2’)またはポリマー(A3’)のうち少なくとも1つは、UV保護、より容易な加工、着色など、様々な目的のためのさらなる添加剤を含む。慣用的な添加剤の例としては、特に、本発明によるセキュリティ文書(A)に関連して記載されているものが挙げられる。
【0143】
1.酸化防止剤
1.1 アルキル化モノフェノール、例えば2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-n-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-i-ブチルフェノール、2,6-ジ-シクロペンチル-4-メチルフェノール、2-(α-メチルシクロヘキシル)-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-オクタデシル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリシクロヘキシルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシメチルフェノール。
【0144】
1.2 アルキル化ヒドロキノン、例えば2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、2,5-ジ-tert-ブチル-ヒドロキノン、2,5-ジ-tert-アミル-ヒドロキノン、2,6-ジフェニル-4-オクタデシルオキシフェニル。
【0145】
1.3 ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、例えば2,2’-チオ-ビス-(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、2,2’-チオ-ビス-(4-オクチルフェノール)、4,4’-チオ-ビス-(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-チオ-ビス-(6-tert-ブチル-2-メチルフェノール)。
【0146】
1.4 アルキリデンビスフェノール、例えば2,2’-メチレン-ビス-(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(6-tert-ブチル-4-エチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6(α-メチルシクロヘキシル)-フェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(6-ノニル-4-メチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデン-ビス-(6-tert-ブチル-4-イソブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-[6-(α-メチルベンジル)-4-ノニルフェノール]、2,2’-メチレン-ビス-[6-(α,α-ジメチルベンジル)-4-ノニルフェノール]、4,4’-メチレン-ビス-(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレン-ビス-(6-tert-ブチル-2-メチルフェノール)、1,1-ビス-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-ブタン、2,6-ジ-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェノール、1,1,3-トリス-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)ブタン、1,1-ビス-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3-n-ドデシルメルカプトブタン、エチレン-グリコール-ビス[3,3-ビス-(3’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)-ブチレート]、ジ-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-ジシクロペンタジエン、ジ-[2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-メチルベンジル)-6-tert-ブチル-4-メチル-フェニル]テレフタレート。
【0147】
1.5 ベンジル化合物、例えば1,3,5-トリ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6トリメチルベンゼン、ジ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-スルフィド、イソオクチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル-メルカプトアセテート、ビス-(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-ジチオールテレフタレート、1,3,5-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス-(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、ジオクタデシル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル-ホスホネート、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸のモノエチルエステルのカルシウム塩。
1.6 アシルアミノフェノール、例えば4-ヒドロキシラウリルアニリド、4-ヒドロキシステアリルアニリド、2,4-ビス-オクチルメルカプト-6-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニリノ)-s-トリアジン、N-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-カルバミン酸オクチル。
【0148】
1.7 一価または多価アルコールとのβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオン酸のエステル、例えばメタノール、オクタデカノール、ヘキサン-1,6-ジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ジ-ヒドロキシエチルオキサルアミド。
【0149】
1.8 一価または多価アルコールとのβ-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロピオン酸のエステル、例えばメタノール、オクタデカノール、ヘキサン-1,6-ジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ジヒドロキシエチルオキサルアミド。
【0150】
1.9 β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオン酸のアミド、例えば、N,N’-ジ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)-ヘキサメチレンジアミン、N,N’-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)-トリメチレンジアミン、N,N’-ジ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)-ヒドラジン。
【0151】
2.UV吸収剤および光安定剤
2.1 2-(2’-ヒドロキシフェニル)-ベンゾトリアゾール、例えば5’-メチル、3’,5’-ジ-tert-ブチル、5’-tert-ブチル、5’-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)、5-クロロ-3’,5’-ジ-tert-ブチル、5-クロロ-3’-tert-ブチル-5’-メチル、3’-sec-ブチル-5’-tert-ブチル、4’-オクトキシ,3’,5’-ジ-tert-アミルおよび3’,5’-ビス-(α,α-ジメチルベンジル)誘導体。
【0152】
2.2 2-ヒドロキシベンゾフェノン、例えば4-ヒドロキシ、4-メトキシ、4-オクトキシ、4-デシルオキシ、4-ドデシルオキシ、4-ベンジルオキシ、4,2’,4’-トリヒドロキシオキシおよび2’-ヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ誘導体。
【0153】
2.3 置換されていてもよい安息香酸のエステル、例えば4-tert-ブチルフェニルサリシレート、フェニルサリシレート、オクチルフェニルサリシレート、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス(4-tert-ブチルベンゾイル)-レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート。
【0154】
2.4 アクリレート、例えば、エチルα-シアノ-β,β-ジフェニルアクリレートまたはイソオクチルα-シアノ-β,β-ジフェニルアクリレート、メチルα-カルボメトキシシンナメート、メチルα-シアノ-β-メチル-p-メトキシシンナメートまたはブチルα-シアノ-β-メチル-p-メトキシシンナメート、メチルα-カルボメトキシ-p-メトキシ-シンナメート、N-(β-カルボメトキシ-β-シアノビニル)-2-メチル-インドリン。
【0155】
2.5 ニッケル化合物、例えば1:1または1:2錯体などの2,2’-チオ-ビス-[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノール]のニッケル錯体、追加の配位子を有してもよい、例えばn-ブチルアミン、トリエタノールアミンまたはN-シクロヘキシルジエタノールアミン、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、モノアルキル4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンジル-ホスホネートのニッケル塩、例えばメチルまたはエチル4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンジル-ホスホネートのニッケル塩、ケトオキシムのニッケル錯体、例えば2-ヒドロキシ-4-メチル-フェニル-ウンデシルケトノキシムのニッケル錯体、追加の配位子を有してもよい1-フェニル-4-ラウロイル-5-ヒドロキシピラゾールのニッケル錯体。
【0156】
2.6 立体障害アミン、例えば、ビス-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス-(1,2,2,6,6ペンタメチルピペリジル)セバケート、n-ブチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル-マロン酸ビス-(1,2,2,6,6ペンタメチルピペリジル)エステル、1-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジンとコハク酸との縮合生成物、N,N’-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ヘキサメチレンジアミンと4-tert-オクチルアミノ-2,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンとの縮合生成物、トリス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ニトロトリアセテート、テトラキス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、1,1’-(1,2-エタンジイル)-ビス-(3,3,5,5-テトラメチルピペラジノン)。
【0157】
2.7 オキサラミド、例えば4,4’-ジ-オクチルオキシ-オキサニリド、2,2’-ジ-オクチルオキシ-5,5’-ジ-tert-ブチル-オキサニリド、2,2’-ジ-ドデシルオキシ-5,5’-ジ-tert-ブチル-オキサニリド、2-エトキシ-2’-エチル-オキサニリド、N,N’-ビス-(3-ジメチルアミノプロピル)-オキサラミド、2-エトキシ-5-tert-ブチル-2’-エチルオキシアニリド、およびそれらと2-エトキシ-2’-エチル-5,4’-ジ-tert-ブチル-オキシアニリドとの混合物、o-およびp-メトキシ-ならびにo-およびp-エトキシ-二置換オキサニリドの混合物。
【0158】
3.金属不活性化剤、例えばN,N’-ジフェニルオキサルアミド、N-サリチラル-N’-サリチロイルヒドラジン、N,N’-ビス-サリチロイルヒドラジン、N,N’-ビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジン、3-サリチロイルアミノ-1,2,4-トリアゾール、ビス-ベンジリデン-オキサリルジヒドラジド。
【0159】
4.ホスファイトおよびホスホナイト、例えばトリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリ-(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、3,9-ビス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ-2,4,8,10テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン。
【0160】
5.過酸化物破壊化合物、例えばβ-チオジプロピオン酸のエステル、例えばラウリル、ステアリル、ミリスチルまたはトリデシルエステル、メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジオクタデシルジスルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス-(β-ドデシルメルカプト)-プロピオネート。
【0161】
6.ポリアミド安定剤、例えばヨウ化物および/またはリン化合物と組み合わせた銅塩および二価マンガンの塩。
【0162】
7.塩基性共安定剤、例えば、メラミン、ポリビニルピロリドン、ジシアンジアミド、トリアリルシアヌレート、尿素誘導体、アミン、ポリアミド、ポリウレタン、高級脂肪酸のアルカリおよびアルカリ土類金属塩、例えば、ステアリン酸Ca、ステアリン酸Zn、ステアリン酸Mg、リシノール酸Na、パルミチン酸K、アンチモンカテコラートまたはスズカテコラート。
【0163】
8.核形成剤、例えば4-tert-ブチル安息香酸、アジピン酸、ジフェニル酢酸。
【0164】
9.充填剤および補強剤、例えば炭酸カルシウム、ケイ酸塩、ガラス繊維、アスベスト、タルク、カオリン、雲母、硫酸バリウム、金属酸化物および水酸化物、カーボンブラック、グラファイト。
【0165】
10.他の添加剤、例えば可塑剤、潤滑剤、乳化剤、顔料、蛍光増白剤、難燃剤、帯電防止剤、発泡剤。
【0166】
ポリマー(A1’)、(A2’)および/または(A3’)は、対応して選択された上述の添加剤をポリマー(A1’)、(A2’)および/または(A3’)の出発材料と混合することによって得られる。ポリマー(A1’)、(A2’)および/または(A3’)が、それぞれのポリマー(A1’)、(A2’)および/または(A3’)の総重量に基づいて、0.01~10重量%、より好ましくは0.05~5重量%、特に好ましくは0.1~3重量%の範囲の量でそれぞれの場合に上述の添加剤の1つ以上を含む場合が好ましい。混合は、公知の技術によって、例えばニーダーまたはスクリュー押出機を介して、任意の様式で行われ得る。さらなる加工は、例えば押出成形または射出成形による熱可塑性加工の既知の技術によって行われる。
【0167】
プロセスの好ましい実施形態では、さらなる層がセキュリティ文書(A)の少なくとも1つの表面(AS1)または(AS2)に適用され、さらなる層は、好ましくは紙、繊維複合材、織物、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせである。これにより、例えばパスポートの「エンドページ」として利用されるセキュリティ文書(A)を提供することができる。エンドページは、パスポートカバーに結合されているさらなるフィルムと共に縫合された最外ページを指す。
【0168】
本発明のさらなる態様は、紙幣、出生証明書、印紙、納税印紙、パスポートのビザページ、パスポートのデータページ用のヒンジ、パスポートの電磁シールドのキャリア層としての、本発明による、または本発明によるプロセスに従って製造された、セキュリティ文書(A)の使用に関する。セキュリティ文書(A)は、紙幣やパスポートのビザページとしての製造に用いられる場合が好ましい。
【0169】
[実施例]
30% TiO2を含むマスターバッチの製造。
マスターバッチ:高濃度TiO2マスターバッチの配合
ポリマーフィルム(A1)または(A3)を製造するためのマスターバッチの製造は、従来の二軸混合押出機(ZSK 32)を用いて、TPUに通例である190~250℃の処理温度で行った。
【0170】
a)以下の組成を有するマスターバッチa)を配合し、ペレット化した:
・70重量%のCovestro Deutschland AG(ドイツ)製のDesmopan(商標)9365D
・30重量%のKronos Titan GmbH(ドイツ)製のKronos 2260 TiO2
b)以下の組成を有するマスターバッチb)を配合し、ペレット化した:
・70重量%のCovestro Deutschland AG(ドイツ)製のDesmopan(商標)9385D
・30重量%のKronos Titan GmbH(ドイツ)製のKronos(登録商標)2260 TiO2
c)以下の組成を有するマスターバッチc)を配合し、ペレット化した:
・14重量%のCovestro Deutschland AG(ドイツ)製のDesmopan(商標)9365D
・56重量%のEASTMAN Chemical GmbH(ドイツ)製のTritan(登録商標MX710
・30重量%のKronos Titan GmbH(ドイツ)製のKronos 2260 TiO2
【0171】
押出または共押出フィルムの製造に使用される装置は以下を備える。
・(A1’)からなる単層フィルム用の押出機a)、またはポリマー(A1’)および(A2’)の共押出のための2つの押出機a)およびb)であって、押出機が直径60mm(D)および長さ33Dの少なくとも1つのスクリューを含み、スクリューが脱気ゾーンを有する、押出機、
・溶融ポンプ、
・クロスヘッド、
・多層ブロック、
・幅450mmのスロットダイ、
・水平ロール配置を有する3ロール平滑カレンダであって、第3のロールが、水平ロールに対して+/-45°だけ枢動可能である、3ロール平滑カレンダ、
・ロールコンベヤ、
・厚さ測定手段、
・保護フィルムの両面塗布手段、
・引取機、
・巻取りステーション。
【0172】
実施例1)本発明ではない(n.i.)、厚さ80μmの単層TPUフィルムの製造
【0173】
実施例1)からのマスターバッチa)のペレットを、乾燥機から押出機a)の充填ホッパーに搬送した。
【0174】
さらに、Covestro Deutschland AG製のプラスチックDesmopan(商標)9365Dのペレットを、押出機a)の充填ホッパーに搬送した。
【0175】
充填ホッパー中のマスターバッチa)とDesmopan(商標)9365Dとの以下の重量比を確立した:
-50重量%のマスターバッチa)白色;
-50重量%のDesmopan(商標)9365D。
【0176】
可塑化システム、すなわち押出機のバレルおよびスクリューにおいて、マスターバッチa)とDesmopan(商標)9365Dとの混合物を、TPUに通例である190~250℃、特に210~240℃の処理温度、および10~1500バール、好ましくは500バールの圧力で溶融した。得られた溶融物はスクリューからスロットダイに搬送され、次いで平滑カレンダに進む。フィルムの最終的な成形および冷却は、平滑カレンダ(3つのロールからなる)で行った。表面のエンボス加工には、艶消しスチールロールおよび艶消しシリコーンゴムロールを使用した。フィルム表面をテクスチャ加工するために使用されるゴムロールは、Nauta Roll Corporationの米国特許第4368240号明細書に開示されている。その後、フィルムを引取機に通して輸送し、次いでフィルムをロールに巻き取った。
【0177】
実施例2)本発明の白色TPUフィルム、厚さ80μmの製造
押出フィルムの製造
実施例1)からのマスターバッチa)のペレットを、乾燥機から押出機a)の充填ホッパーa)に搬送した。さらに、Covestro Deutschland AG製のプラスチックDesmopan(商標)9365Dのペレットを、押出機a)の充填ホッパーa)に搬送した。
【0178】
実施例1)からのマスターバッチb)のペレットを、乾燥機から押出機b)の充填ホッパーb)に搬送した。
【0179】
充填ホッパーa)中のマスターバッチa)とDesmopan(商標)9365Dとの以下の重量比を確立した:
-50重量%のマスターバッチa)白色;
-50重量%のDesmopan(商標)9365D。
【0180】
また、押出機b)の充填ホッパーb)には、Covestro Deutschland AG製のプラスチックDesmopan(商標)9385Dのペレットも搬送した。
【0181】
充填ホッパーb)中のマスターバッチb)とDesmopan(商標)9385Dとの以下の重量比を確立した:
-50重量%のマスターバッチb)白色;
-50重量%のDesmopan(商標)9385D。
【0182】
押出機のバレル/スクリュー可塑化システムでは、ほとんどのTPE、特にTPUに通例である190~250℃、特に210~240℃の処理温度、および10~1500バール、好ましくは500バールの圧力で材料を溶融し、搬送した。押出機a)および押出機b)からの材料を多層ブロックの形態でスロットダイ内で組み合わせて、押出フィルムの三層構造を形成した。押出機a)からの材料は、いずれも厚さ15μmの2つの外層(第1のポリマーフィルム(A1)およびさらなるポリマーフィルム(A3))を形成し、押出機b)からの溶融物は、厚さ50μmの第2のポリマーフィルム(A2)の形態の中間層を形成した。この目的のために、押出機a)およびb)からの溶融物は、スロットダイを介して平滑カレンダに送られる。フィルムの最終的な成形および冷却は、平滑カレンダ(3つのロールからなる)で行った。表面のエンボス加工には、艶消しスチールロールおよび艶消しシリコーンゴムロールを使用した。フィルム表面をテクスチャ加工するために使用されるゴムロールは、Nauta Roll Corporationの米国特許第4368240号明細書に開示されている。その後、フィルムを引取機に通して輸送し、次いでフィルムをロールに巻き取った。
【0183】
実施例3):TPUコポリエステルブレンドのコア層およびTPU外層を含む、厚さ80μmの本発明の白色TPUフィルムの製造
ペレットを実施例2のように押出機に、以下の量比で充填した:
充填ホッパーa)中のマスターバッチa)とDesmopan(商標)9365Dとの以下の重量比を確立した:
-50重量%のマスターバッチa)白色;
-50重量%のDesmopan(商標)9365D。
【0184】
さらに、以下のペレット混合物c)を押出機b)の充填ホッパーb)に搬送した:
-20重量%のDesmopan(商標)9365D。
-80重量%のTritan(登録商標)MX710。
【0185】
充填ホッパーb)中の混合物c)に対するマスターバッチc)の以下の重量比を確立した:
-50重量%のマスターバッチc)白色
-50重量%のペレット混合物c)
【0186】
続いて、ポリマー混合物の溶融物を製造し、実施例2に記載されているように押出機内でセキュリティ文書に加工した。
【0187】
実施例4)TPUからの厚さ80μmの本発明の無色TPUフィルムの製造
押出フィルムの製造
Desmopan(商標)9365Dペレットを乾燥機から押出機a)の充填ホッパーa)に搬送した。
【0188】
Desmopan(商標)9385Dペレットを押出機b)の充填ホッパーb)に搬送した。
【0189】
続いて、ポリマー混合物の溶融物を製造し、実施例2に記載されているように押出機内でセキュリティ文書に加工した。
【0190】
実施例5):TPUコポリエステルブレンドのコア層を含む、厚さ80μmの本発明の無色TPUフィルムの製造
押出フィルムの製造
Desmopan(商標)9365Dペレットを乾燥機から押出機a)の充填ホッパーa)にポリマー(A1’)として搬送した。以下のペレット混合物b)を押出機b)の充填ホッパーb)にポリマー(A2’)として搬送した:
・20重量%のDesmopan(商標)9365D
・80重量%のTritan(登録商標)MX710
【0191】
続いて、ポリマー混合物の溶融物を製造し、実施例2に記載されているように押出機内でセキュリティ文書に加工した。
【0192】
実施例6):コポリエステルのコア層を含む厚さ80μmの多層無色TPUフィルムの製造
押出フィルムの製造
Desmopan(商標)9365Dペレットを乾燥機から押出機a)の充填ホッパーa)に搬送した。Tritan(商標)MX710ペレットを乾燥機から押出機b)の充填ホッパーb)に搬送した。
【0193】
続いて、ポリマー混合物の溶融物を製造し、実施例2に記載されているように押出機内でセキュリティ文書に加工した。
【0194】
実施例7):コポリエステルのコア層を含み、押出フィルムの外層にUV安定剤および帯電防止剤を含む、厚さ80μmの多層白色TPUフィルムの製造
押出フィルムの製造
マスターバッチa)のペレットを乾燥機から充填ホッパーa)に搬送した。以下の材料を充填ホッパーa)内の材料とさらに混合した:
2重量%のBASF AG(ドイツ)製のUV安定剤Tinuvin(登録商標)P
10重量%のBASF AG(ドイツ)製の帯電防止剤Irgastat(登録商標)P 18
充填ホッパーa)中の混合物を押出機a)に搬送した。
【0195】
材料Tritan(登録商標)MX710およびマスターバッチb)を、押出機b)の充填ホッパーb)に充填した。以下の混合比を確立した:
50重量%のTritan(登録商標)MX710
50重量%のマスターバッチb)
充填ホッパーb)中の混合物を押出機b)に搬送した。
【0196】
続いて、ポリマー混合物の溶融物を製造し、実施例2に記載されているように押出機内でセキュリティ文書に加工した。
【0197】
実施例8):コポリエステルのコア層を含み、押出フィルムの外層にUV蛍光セキュリティ特徴(A4)を含む、厚さ80μmの多層白色TPUフィルムの製造
押出フィルムの製造
以下の材料を押出機a)の充填ホッパーa)に搬送し、実施例1)のマスターバッチa)およびDesmopan(商標)9365Dを乾燥機から搬送した:
45重量%のマスターバッチa)白色
45重量%のCovestro Deutschland AG(ドイツ)製Desmopan(商標)9365D
セキュリティ特徴(A4)として5重量%のBASF AG(ドイツ)製のLumogen(登録商標)UV 560
充填ホッパーa)中の混合物を押出機a)に搬送した。
【0198】
材料Tritan(登録商標)MX710および実施例1)からのマスターバッチd)を、押出機b)の充填ホッパーb)に充填した。以下の混合比を確立した:
50重量%のTritan(登録商標)MX710
50重量%のマスターバッチb)
充填ホッパーb)中の混合物を押出機b)に搬送した。
【0199】
続いて、ポリマー混合物の溶融物を製造し、実施例2に記載されているように押出機内でセキュリティ文書に加工した。
【0200】
実施例9):押出積層による多層フィルムの製造
ロール両側に艶消しのテクスチャを有する温度制御された金属-ゴムロール対において、Covestro Deutschland AG製Desmopan(商標)9365Dで作製された2つのTPUフィルムを、厚さ30μmのポリマーフィルム(A1)および(A3)としてロールニップに供給した。ポリマーフィルム(A1)および(A3)の各々は、厚さ20μmのポリエステルフィルムの形態で塗布されたホログラムストリップの形態の内向きセキュリティ特徴(A4)領域を含んでいた。Covestro Deutschland AG製Desmopan(商標)9385Dの溶融尾部を、標準圧力で220℃のスロットダイを通してセキュリティ特徴(A4)を含むポリマーフィルム(A1)および(A3)の側面上でロール対の間に導入した。フィルム(A1)および(A3)が溶融尾部と接触するように、ロール対を合わせた。溶融尾部の投入量は、ポリマーフィルム(A1)と(A3)との間に厚さ約50μmの層(A2)が形成されるようにした。ロール対の温度は75℃、プロセス速度は15m/分であり、非破壊分離が不可能な三層積層体が得られた。フィルムの表面は艶消しであった。プロセス速度は、積層体の品質を変えることなくフィルム(A2)の厚さを80μmまで可能にする異なる値まで増加させることができた。同様に、積層体の品質を変えることなく、投入量を約40μmまで低減することができた。以前と同様に、セキュリティ特徴が埋め込まれた良質のフィルムが製造された。
【0201】
いくつかのポリマーフィルムの様々な特性についての結果を表1にまとめた。
【0202】
【0203】
本発明によらない紙幣の測定は、英国の5ポンド紙幣で行った。表1から明らかなように、実施例2、4および5から本発明に従って製造されたセキュリティ文書(A)は、折り目付け後の良好な弛緩特性と相まって非常に高い引裂伝播抵抗を示し、1は最大0.1mm、2は0.1~0.2mm、3は0.2~0.3mm、4は0.3~0.4mm、5は0.4~0.5mmだけレベルベースから突出する折り目を表し、良好な表面エネルギーおよび光透過率の可変調整を表す。この点において、BOPP製の本発明ではないフィルムは、コーティングされた形態であっても良好な引裂伝播抵抗を示さず、別個のコーティングステップによってのみ不透明にすることができる。折り目付け挙動も、本発明の実施例ほど良好ではない。実施例1、すなわちTPU製の単層フィルムは、10%の同一の伸びで、本発明の実施例2、4および5よりも著しく低い応力を既に示したため、不十分な寸法安定性を示した。この特に肯定的な特性は、本発明の実施例2、4および5について、本発明ではない実施例よりも4~5倍高い公称破断伸びの測定値にも反映される。
【0204】
図
図1~
図2は、セキュリティ文書(A)およびその製造プロセスの好ましい実施形態を説明しているが、これらは限定的であると見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【
図1】セキュリティ特徴(A4)を伴わない紙幣の形態のセキュリティ文書(A)の図である。
【
図2】本発明によるセキュリティ文書(A)を製造するためのプロセスの概略図である。
【0206】
図1は、4枚の異なる紙幣の写真を示す。左側には、10香港ドル紙幣の形態の従来技術からの印刷された紙幣1がある。その右隣は、未印刷の紙幣2、すなわち紙幣基材であり、3層の押出物から構成され、外側は65Dのショア硬度を有するTPUであり、コアは85Dのショア硬度を有するTPUコポリエステルコアであり、この紙幣基材は実施例5に対応する。紙幣基材2の右側にあるのは、3層からなる押出物で作製された未印刷の紙幣基材3であり、外側は65Dのショア硬度を有するTPUであり、コアは85Dのショア硬度を有するTPUであり、この紙幣基材は実施例4に対応する。一番右にあるのは、3層からなる押出物で作製された未印刷の紙幣基材4であり、外側はTiO
2顔料を用い65Dのショア硬度を有するTPUであり、コアはTiO
2顔料を用い85Dのショア硬度を有するTPUであり、この紙幣基材は実施例2に対応する。全ての紙幣/紙幣基材は、折り目試験に供された。試験は、手で紙幣を折り目付けし、次いでそれを滑らかな表面上に広げることを含んでいた。72時間後に目視評価を行った。紙幣基材2は、折り目が最も少なく、従来技術の紙幣1と同様に挙動することが明らかである。紙幣基材3および4は、多くの微細な折り目を含み、取り扱いを容易にする紙幣に典型的な曲げ特性を依然として示しながら、実施例2よりも魅力的でない手触りを有する。
【0207】
図2は、セキュリティ文書(A)を製造するためのプロセスの概略図である。ステップi)10において、第1のポリマー(A1’)が供給された。ステップii)12において、第2のポリマー(A2’)が供給された。任意選択のステップiii)は、ここには示されていない。ステップiv)14において、ステップi)10およびステップii)12からのポリマーをそれぞれ押出機で溶融した。溶融は、250℃の温度および標準圧力で行った。ステップv)16において、ステップiv)からのポリマー溶融物は、第1のポリマー(A1’)からの第1のポリマーフィルム(A1)およびさらなるポリマーフィルム(A3)、ならびに第2のポリマー(A2’)からの第2のポリマーフィルム(A2)を形成することによって、共押出物として形成された。これは、押出機からの溶融物を、ダイを通って2つの金属ロール上へ通過させることによって行った。ステップvi)18における押出機からの溶融物の流れと並行して、ポリマー(A1’)の溶融物とポリマー(A2’)の溶融物との間にセキュリティスレッドを導入した。
【国際調査報告】