(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】食物汚染物質の評価
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20241217BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532938
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2022084923
(87)【国際公開番号】W WO2023104945
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドマン, ティル ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ボブコフ, マキシム
【テーマコード(参考)】
5L050
【Fターム(参考)】
5L050CC01
(57)【要約】
本発明は、食物中の汚染物質の存在に関連するリスクを予測するためのコンピュータ実装方法に関する。本方法は、食物、地理、および汚染物質を定義するクエリを受信することを含むことができる。次いで、本方法は、地理に関連して食物が汚染物質を含有するリスクを判定することができる。方法はまた、判定されたリスクに関連して1つ以上の推奨される管理アクションを含むクエリに対する応答を提供することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物または飼料製品中の汚染物質の存在に関連するリスクを予測し管理するためのコンピュータ実装方法であって、
ユーザークエリからの前記食物または飼料製品中に存在する少なくとも1つの成分と、前記製品の少なくとも1つの販売国とを提供することと、
前記少なくとも1つの成分の地理的原産地を取得することと、
前記食物または飼料製品中に存在する前記成分およびそれらのそれぞれの地理的原産地に関連して、前記食物または飼料が汚染物質を含有するリスクスコアを判定することであって、前記判定することが、
汚染物質のタイプ、食物または飼料のタイプ、地理のタイプからなるリスト内で選択される少なくとも1つのクエリデータと、
汚染物質固有関連性、汚染物質が食物環境で使用または発見される尤度、汚染物質最大残留レベル、汚染物質最大限度ステータス、分析データ、汚染物質由来の特性からなるリスト内で選択される少なくとも1つの入力データと
の組み合わせに基づいている
、判定することと、
前記判定されたリスクスコアに関連して、1つ以上の指定された管理アクションを含む前記クエリに対する応答を提供することであり、
前記リスクスコアが、リスクが識別されていないことに対応する場合、前記管理アクションは、前記食物または飼料製品に前記成分を組み入れる許可に対応し、あるいは
前記リスクスコアが、前記成分を使用しないことを必要とするリスクが識別されたことに対応する場合、前記管理アクションは、
異なる供給業者から前記成分を調達する、
特定の成分バッチ中に識別された前記汚染物質が存在しているかどうかを検証するために、さらなる検出試験を実施する、
識別されたぜnン期汚染物質を排除するために、前記成分および/あるいは食料または飼料製品の生産プロセスを修正する、
前記食物または飼料成分リストから前記成分を除外する、
という選択肢のうちの少なくとも1つのアクションを取るという推奨に対応する、
提供することと、
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記食物または飼料、前記地理、および前記汚染物質のうちの少なくとも1つの特性を記述する1つ以上の特性データをデータストアから取得することをさらに含み、
前記判定することが、前記リスクを判定するために前記1つ以上の特性データを利用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特性データが、食物または飼料の問題のある成分としての前記汚染物質の固有の関連性を記述するデータを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記特性データが、前記食物または飼料、前記地理、および前記汚染物質のうちの1つ以上に関連する分析データの存在を記述するデータを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記特性データが、前記汚染物質の由来の特性を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記特性データが、複数の異なるソースからのデータを含み、前記方法が、マッピングスキームおよび/またはデータターム同義語プロトコルを使用して、第1のソースからのデータを第2のソースからのデータと比較する、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
汚染物質が、食物または飼料内に含まれ得る物質を含み、前記物質が、ヒトまたは動物による前記食物または飼料の消費時に潜在的に有害であり、
たとえば、前記判定することが、前記汚染物質および前記汚染物質に密接に関連にする化合物を考慮することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記推奨される管理アクションが、
前記食物または飼料の発売を阻止する、
前記食物または飼料の発売を許可する、および/あるいは
前記食物または飼料の調達もしくは生産に関連して緩和アクションを実施する
という命令を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記クエリを受信した後に、
データフォーマット変換、
命名処理、
共通項処理、
前記食物または飼料、
前記地理、および前記汚染物質のうちの1つ以上の言語処理、
のうちの1つ以上を実行することをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記データフォーマット変換が、前記クエリを前記判定することに必要な1つ以上のデータフォーマットに適合させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記命名処理が、
同義語処理であり、たとえば、前記食物または飼料、前記地理、および前記汚染物質の同義語を含むように前記クエリを拡張することを含む同義語処理、ならびに/あるいは
密接関連データ処理であり、たとえば、塩、エステル、代謝産物、分解産物、およびその汚染物質についての錯体残留物などの前記汚染物質に密接に関連する化合物の定義を含むように前記クエリを拡張することを含む密接関連データ処理
のうちの1つ以上を含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記特性データが、複数のデータソースからの不均質データを含み、および/または少なくとも100万個のデータポイントを含む、請求項2、またはそれに従属する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の指定された管理アクションのうちの1つ以上のパフォーマンスを検証することをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
食物または飼料中の汚染物質の存在に関連するリスクを予測するためのシステムであって、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されたプログラム可能なコンピュータユニットを備える、システム。
【請求項15】
命令を搬送するコンピュータ可読媒体であって、前記命令は、プログラム可能なコンピュータによって実行されると、前記プログラム可能なコンピュータに、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法を実行させるように前記プログラム可能なコンピュータを構成する、媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野および技術背景】
【0001】
本開示は、食物中の汚染物質の評価のための方法およびシステムに関し、特に、汚染物質が食物関連問題にリンクされるリスクを評価し、このような汚染物質に関連して適切な管理アクションを提案するための方法およびコンピュータベースのシステムに関するが、これらに限定されない。
【0002】
加工食物中の農薬または獣医薬などの汚染物質の存在は、食物産業において周知のリスクである。
【0003】
本開示において、「食物」という用語は、コーデックスアリメンタリウス(Codex Alimentarius)(FAOおよびWHOによる2019年『コーデックス委員会-手続きマニュアル』第27版、ローマ、ISBN 978-92-5-131099-1)による「「食品」とは、加工品、半加工品または非加工品にかかわらず、人間による消費を目的としたあらゆる物質をいう。これには飲料やチューインガムの他、「食品」の製造、調理または処理において使用されたあらゆる物質が含まれるが、化粧品、タバコまたは薬剤としてのみ使用される物質は含まれない。」という定義によれば、加工品、半加工品または非加工品にかかわらず、人間による消費を目的とした任意の単一または複数の材料に対応するものとして理解されるべきである。
【0004】
食物の例には以下のものが含まれる。
a)限定されないが、未加工のまたは加工された果実、野菜、ハーブ、香辛料など、植物起源の食物。植物起源の食物の例として、新鮮なバジル、リンゴピューレ、アナトー由来の食物着色剤E160b、バージンオリーブオイル、天然スモークアロマ、レシチンが挙げられる。
b)限定されないが、肉、卵、乳製品、ハチミツ、乳清粉末、マグロ、卵黄など、動物起源の食物。
c)限定されないが、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム塩など、ミネラルからの食物。
d)限定されないが、食物着色剤E133、人工香味料、酵素、乳酸菌、重曹、ゼリー化特性を高めた加工デンプン、遺伝子組み換えサケなど、化学的、生物学的または現代の技術で生産された食物。
【0005】
したがって、本明細書で論じられる「食物」は、(単一成分の食物であるか複数成分から調製される食物であるかにかかわらず)単体の食物と、食物調製レシピなどに従って複数成分の食物を生産するために組み合わせられることが意図される成分との両方を含む。
【0006】
本開示において、「飼料」とは、コーデックスアリメンタリウス規格(Codex Alimentarius Standard)(CXC 54-2004、適正動物飼養実施規範)の定義によれば、加工品、半加工品または非加工品にかかわらず、動物に直接給餌することを目的とした製品、単一または複数の材料に対応するものとして理解されるべきである。したがって、飼料は、食物に適用可能なものとして本明細書に記載されているすべての技術および/または制約が飼料にも適用され得るという意味で、食物と等価なものとして扱われ得ることが理解されるであろう。
【0007】
本開示において、「汚染物質」という用語は、1人以上の人または1つ以上の当局が望ましくないと見なし得るような、食物または飼料中に見出され得る物質に対応するものとして理解されるべきである。したがって、本明細書で使用される「汚染物質」は、以下を含む。
(i)食物または食物生産動物のための飼料に意図的に添加されたものではなく、このような食物または飼料の生産(作物管理、動物管理および獣医学において行われる操作を含む)、製造、加工、調製、処理、梱包、包装、輸送、または貯蔵の結果として、あるいは環境汚染の結果として、このような食物または飼料中に存在する任意の物質。これに関して、「汚染物質は、食物に意図的に添加されたものではなく、このような食物の生産(作物管理、動物管理および獣医学において行われる操作を含む)、製造、加工、調製、処理、梱包、包装、輸送、または貯蔵の結果として、あるいは環境汚染の結果として、このような食物中に存在する任意の物質を意味し得る。この用語は、昆虫の破片、げっ歯類の毛、および他の異物を含まない。」という、」食品および飼料中の汚染物質および毒素に関するコーデックス一般規格(CODEX-General Standard for Contaminants and Toxins in Food and Feed)も関連し得る。
(ii)推奨される慣行に従わないことに起因して、あるいは、食物生産中に発生したインシデント(限定されないが、承認されたビタミンの過剰補給など)に起因して、または生産国と販売国との間の規制の枠組みの不整合(限定されないが、1つの国では認可されているが、それらを含有する食物が最終的に販売される国では禁止されている食物添加物など)に起因して、食物関連問題を依然として引き起こし得る、食物または飼料に意図的かつ合法的に添加された任意の物質。
(iii)限定されないが、偽和剤など、食物または飼料に意図的であるが非合法的に添加された任意の物質。
【0008】
汚染物質の例には以下のものが含まれる。
a)限定されないが、植物保護製品、肥料、獣医薬ならびにそれらの代謝産物および分解産物など、植物由来および動物由来の食物生産を支援するために使用される、またはこのような使用に由来する物質。
b)限定されないが、マイコトキシン、植物毒素、化学元素(限定されないが、重金属など)など、環境中で天然に発生する物質。
c)限定されないが、残留性有機汚染物質、焼却の結果として生じる汚染物質、放射性核種など、人為的活動または技術的大災害の結果として生じる環境中で発生する物質。
d)
・限定されないが、殺生物剤、パレットのカビ汚染、潤滑剤などの生産、輸送、および貯蔵中の任意の汚染された表面または生産設備を用いた、
・限定されないが、麻袋からの鉱物性油、可塑剤、ガスケット中のセミカルバジドなど、包装を用いた、
・または、限定されないが、エチレンオキシドによる食物滅菌など、燻蒸手順による、
直接的または間接的な接触を介して食物または飼料のチェーンに入る物質。
e)限定されないが、メイラード反応生成物、アクリルアミド、カルバメート、フラン、ニトロソアミン、クロロプロパンジオールおよびその脂肪酸エステル、グリシドールおよびその脂肪酸エステルなど、食物または飼料の加工中、特に熱処理、フライ、乾燥または発酵中に生成される物質。
f)限定されないが、食物添加物、食物加工助剤、食物偽和剤などの食物関連問題を引き起こし得る、食物に合法的または非合法的に添加された物質。
g)限定されないが、任意のステップで食物チェーンに侵入し得る、または食物生産中にそれぞれの推奨される慣行に従わない結果として生じる、ウイルスおよび細菌などの微生物。
h)限定されないが、遺伝子組み換え作物、ナノ粒子状態として使用される酸化チタンなど、限定されないが、バイオテクノロジまたはナノテクノロジなどの特定の技術に由来し、従来の対応物とは異なる食物に起源を有する痕跡。
【0009】
よって、このような汚染物質は、食物調製チェーンに沿った多種多様な供給源に起源し得る。実際、その食物調製チェーンを通じて、食物が複数の汚染物質で汚染される可能性がある。さらに、複数の食物が複数成分商品のための成分として使用される場合、それらの成分の各々は、多数のこのような汚染物質を含有し得る。したがって、単一成分の食物と複数成分から調製された食物との両方が、食物が販売される市場において認可される量を超える汚染物質量を最終的に含有する可能性、またはそうでなければ安全な量を超える、またはそうでなければ食物関連問題を引き起こす可能性がある。
【0010】
理解されるように、(単一成分の食物であるか、複数成分から調製された食物であるかにかかわらず)食物は、製造業者と独立した研究所との両方による厳格な品質評価の対象となる。このような評価は、食物が好適な食物品質レベルを満たすことを保証することを目的とする。食物品質は、食物の安全性、食物の味、食物の食感、食物のコンプライアンスなどのうちのいずれか1つ以上に関連し得ることが理解されるであろう。食物中の汚染物質の存在が、任意のこのような食物品質の尺度の低下を引き起こし得る場合、これは、食物関連問題でとして記述される。したがって、このような品質評価は、このような汚染物質が食物の品質に影響を与えないことを保証することを目的とし得る。
【0011】
食物生産チェーン全体にわたる食物品質評価の使用にもかかわらず、食物が消費者に届く時点で、汚染物質が望ましいレベルよりも高いレベルに留まる可能性があり得るというリスクは依然として存在する。これは、たとえば、所与の国における規制の変化、以前は安全であると考えられていた化合物に関連する新たなリスクを明らかにした新たな科学的発見などに起因し得る。
【0012】
したがって、(たとえば、安全性を含む)食物の品質を維持することは、食物産業にとって重大な課題であることが分かる。複雑な食物供給チェーンチャネルの運営は、(食物産業に関わっている企業と食物の消費者との両方にとっての)リスクを最小限に抑え、最終的に、現在世界中で年間数千件のペースで発生する製品リコールを回避するために、複雑な食物品質ソリューションにつながる。欧州連合だけを見ても、2020年に発生した食物リコールは3400件を超えると分かっている。これらのリコールの直接的な結果は、食物産業と消費者との両方に影響を与える食物廃棄および関連するコストを含む。
【0013】
研究所で標的とされる分析ポートフォリオへの組み込みに関して農薬の優先順位を付けることを可能にする、農薬の一般的なランク付けを提供するいくつかの方法およびシステム(EUレファレンス研究所によって提供される「Checkyourscope」システムなど。https://www.eurl-pesticides.eu/docs/public/tmplt_article.asp?LabID=200&CntID=746&Lang=ENを参照)が開発されている。しかしながら、毒物学、作物における残留状況および農業用途に基づく点数の割り当てに基づくこのエクセルベースのシステムは、所与の農薬を研究所の分析ポートフォリオに含めるという推奨しか提供していない。
【概要】
【0014】
本発明は、請求項1および以下に記載の、食物または飼料中に存在する汚染物質のリスクを予測するためのコンピュータ実装方法、システム、および関連する可読媒体に関する。
【0015】
特に、本発明は、食物または飼料製品中の汚染物質の存在に関連するリスクを予測し管理するためのコンピュータ実装方法であって、
i)ユーザークエリからの食物または飼料製品中に存在する少なくとも1つの成分と、製品の少なくとも1つの販売国とを提供することと、
ii)少なくとも1つの成分の地理的原産地を取得することと、
iii)食物または飼料製品中に存在する成分およびそれらのそれぞれの地理的原産地に関連して、食物または飼料が汚染物質を含有するリスクスコアを判定することであって、判定することが、
汚染物質のタイプ、食物または飼料のタイプ、地理のタイプからなるリスト内で選択される少なくとも1つのクエリデータと、
汚染物質固有関連性、汚染物質が食物環境で使用または発見される汚尤度、汚染物質最大残留レベル、汚染物質最大限度ステータス、分析データ、汚染物質由来の特性からなるリスト内で選択される少なくとも1つの入力データと
の組み合わせに基づいている、判定することと、
iv)判定されたリスクに関連して、1つ以上の指定された管理アクションを含むクエリに対する応答を提供することであり、
●スコアが、リスクが識別されていないことに対応する場合、
管理アクションは、食物または飼料製品に成分を組み入れる許可に対応、あるいは
●スコアが、成分を使用しないことを必要とするリスクが識別されたことに対応する場合、
管理アクションは、
a)異なる供給業者から成分を調達する、
b)特定の成分バッチ中に識別された汚染物質が存在しているかどうかを検証するために、さらなる検出試験を実施する、
c)識別された汚染物質を排除するために成分および/あるいは食物または飼料製品の生産プロセスを修正する、
d)食物または飼料成分リストから成分を除外する、
という選択肢のうちの少なくとも1つのアクションを取るという推奨に対応する、
提供することと、
を含む、方法に関する。
【0016】
本開示のアプローチは、食物および/または飼料中の多種多様な汚染物質に関連するリスクを予測し、このような汚染物質に関連して適切な管理アクションを提案することができる方法およびシステムを提供する。このようなアプローチは、所与の食物または飼料の品質評価に影響を及ぼし得る様々なパラメータを考慮に入れ得る。
【0017】
よって、本アプローチは、汚染物質の発生のリスクのインシリコ評価を食物/飼料関連問題にリンクさせ、適切な管理アクションについての提案を出力することを可能にする統合型食物/飼料品質システムソリューションを提供する。よって、汚染物質の存在/リスクについてのインシリコ分析は、食物/飼料の生産の委託、食物/飼料の生産、食物/飼料の収穫、または食物/飼料の輸送などの食物/飼料生産チェーンの段階前または段階中に実施することができ、よって、食物/飼料が販売用に調製される前に、場合によっては食物/飼料が輸送および/または栽培される前に、採用する必要がある任意のリスク管理/緩和アクションを講じることができる。
【0018】
第1の観点から見ると、食物または飼料製品中の汚染物質の存在に関連するリスクを予測するための方法であって、食物または飼料製品、地理、および汚染物質を定義するクエリを受信することと、地理に関連して食物または飼料製品が汚染物質を含有するリスクを判定することと、判定されたリスクに関連して1つ以上の指定された管理アクションを含むクエリに対する応答を提供することと、を含む、方法を提供することができる。
【0019】
別の観点から見ると、食物または飼料製品中の汚染物質の存在に関連するリスクを予測するためのシステムであって、食物または飼料製品、地理および汚染物質を定義するクエリを受信し、地理に関連して食物または飼料製品が汚染物質を含有するリスクを判定し、判定されたリスクに関連して1つ以上の指定された管理アクションを含むクエリに対する応答を提供するように構成されたプログラム可能なコンピュータユニットを備える、システムを提供することができる。
【0020】
本教示は、このような方法を実行するための命令、および/またはコンピュータをこのようなシステムとしてプログラムするための命令を搭載したコンピュータ可読媒体によって提供されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
ここで教示されるアプローチの例示的な実装形態について、以下の図面を参照しつつ説明する。
【
図1】
図1は、本アプローチを展開するための例示的なシステムの概略図である。
【
図2】
図2は、本アプローチと共に使用され得るクエリ次元データ定義用のデータ定義構造の概略図である。
【
図3】
図3は、本アプローチのプロセスフローの概略図である。
【
図4】
図4は、本アプローチで使用され得る高レベル決定木の概略図である。
【
図5】
図5は、本アプローチと共に使用され得る出力アクション定義用のデータ定義構造の概略図である。
【
図6】
図6は、管理アクション提案決定チャートの概略図である。
【0022】
本明細書で説明されるアプローチは、様々な修正案および代替形態があり得るが、特定の実施形態が、例として図面で示され、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、図面および「発明を実施するための形態」は、開示される特定の形態に範囲を限定することを意図するものではなく、むしろ、その範囲は、添付の「特許請求の範囲」によって定義される趣旨および範囲内に含まれる、すべての修正案、等価物、および代替案を包含するものであることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本アプローチは、3つ以上の次元のクエリセットに対して1つ以上の大規模かつ不均質(non-homogenous、ノンホモジナス)データセットを分析することに関する。特定の緩和アクションが展開されることを許可する結果についてのこのような分析を容易にするために、データセットが定義され、かつデータの特性に従って特徴付けられ得、クエリおよび/またはデータセットは、クエリ定義と比較してデータセット内のデータの命名法、フォーマット、および/または言語が異なっているにもかかわらず、クエリがデータセットからの関連データに対して評価されるようにするコンテンツ処理を受ける。
【0024】
以下の議論では、食物および飼料という用語は互換的に使用され、よって、別段の記載がない限り、または文脈上でそうでないと示さない限り、食物への言及はすべて飼料への言及に置き換えてもよいことが理解されよう。
【0025】
より具体的には、本アプローチは、汚染物質、汚染物質が出てきそうな懸念のある食物、食物の原産地であり得る地理、および/または食物が使用/消費/加工/販売される(簡潔にするために、これらの使用のすべては、本明細書では、全般的に、使用および/または消費されると称される)ことが意図される地理を指定するクエリの評価を許可する。このようなクエリは、食物が、指定された地理から調達され、および/または指定された地理において使用/消費されるときにこのような汚染物質を含有し得るリスクを判定するために、1つ以上の大規模かつ不均質データセットに対して評価される。このような判定されたリスクから、そのリスクの管理を許可するように、1つ以上の応答アクションを定義することができる。
【0026】
本アプローチを利用することによって、消費者に販売される製品における高レベルの品質および食物の安全性のコンプライアンスを積極的に維持することによって、食品リコールおよび食物危機のリスク(これは、その上または代替的に、尤度と称され得る)を緩和または最小化するために使用され得る、インシリコ(コンピュータベースの)分析を達成することができる。本アプローチを採用することによって、リコール/危機を引き起こし得る汚染物質の存在を予測することに関する従来の限界に対処し得る。本アプローチは、汚染物質の制御のための様々な国/管轄区域にわたる様々な個々のかつ重複する規制の枠組みなど、食物中の汚染物質に関連する既存の複雑かつ異種のデータセットを意味のある形で考慮に入れることによってこのような結果を提供することができ、また、潜在的に未知の食物の原産地も考慮に入れることができ、それによって、どの汚染物質が食物の生産から生じ得るか、および/またはどの汚染物質が特定のタイプおよび/または原産地の食物に存在し得るかに関するまばらなデータまたはデータの完全な欠如から、ならびに/あるいは食物生産監督に利用可能な限定されたリソースから生じ得る食物品質問題を回避し得る。
【0027】
図1に示されているように、システム1は、本アプローチを実装するために展開することができる。このシステムには、コンピュータユニット2が設けられている。本例では、これは、本アプローチの機能性を提供する命令を実行するように構成されたプロセッサおよびメモリを有するコンピュータユニットである。
【0028】
コンピュータユニット2は、ストレージデバイス3を有し、またはそれに接続されている。本例のストレージデバイス3は、磁気ハードディスクまたはソリッドステートドライブなどのローカルストレージデバイスであるが、他の例では、コンピュータユニット2に対してローカルであるか、ネットワークアドレス指定可能ストレージ、ストレージエリアネットワーク、またはクラウドストレージなどのリモートストレージであるかにかかわらず、任意の他のデータストレージデバイスとすることができる。ストレージデバイス3は、以下でさらに説明するように、汚染物質、食物、およびリスクが判定される地理に関するクエリを含む入力クエリデータを記憶するために使用され得る。いくつかの例では、ストレージデバイス3はまた、コンピュータユニット2が動作中に使用するためのプログラム命令を記憶してもよく、および/またはクエリデータの評価において使用される入力データを記憶してもよい。
【0029】
コンピュータユニットは、ネットワーク4にも接続されている。このようなネットワーク4と通信するために、コンピュータユニット2は、1つ以上のネットワーク通信インターフェースを含み得る。ネットワーク4は、リモートデータソースおよび/または入力へのアクセスを提供する。このようなリモートデータソースおよび/または入力は、クエリデータを指定するクエリのソースを含み得る。このようなリモートデータソースは、その上または代替的に、クエリデータを評価するために使用される入力データのソースを含み得る。本例では、ネットワーク4は、コンピュータユニット2によって入力データがそこからアクセスまたは取得され得る1つ以上のデータストアへの接続性を提供し、したがって、ネットワーク4の例は、入力データがデータストアから入力データがそれを介して提供され得るLAN、WAN、インターネットなどを含む。リモートデータストアからデータを取得するために、コンピュータユニット2は、データストアの好適なAPIを呼び出し得る。データストアから取り出されるデータは、既に作成されたデータセットの一部または全部であってもよく、および/または動的に更新されるデータセットからのデータのリアルタイムまたはほぼリアルタイムのフェッチであってもよい。他の例では、ネットワークは、入力データデータストア(単数または複数)を含み、このような例では、ネットワーク4は、ストレージエリアネットワーク、クラウドデータサービスなどとすることができる。加えて、ネットワークを介して受信される入力データは、コンピュータユニット2のメモリ内および/またはストレージデバイス3内に記憶またはキャッシュされ得ることが理解されるであろう。
【0030】
コンピュータユニット2はまた、ユーザーがそれを用いてシステムに入力を提供し得る1つ以上の入力デバイス5を設けられている。例としては、ボタン、キーボード、マウスまたは他のポインティングデバイスなどが挙げられる。他の例としては、物理的なデータ媒体が挿入され得るポートが挙げられる。入力デバイス5を使用して、ユーザーはクエリ評価を開始させ得る。クエリは、既にストレージデバイス3に記憶されていてもよく、入力デバイス5を用いて直接入力されてもよく、あるいは、ネットワーク4を介して受信されてもよい。
【0031】
コンピュータユニット2はまた、システムがそれを用いてユーザーに出力を提供し得る1つ以上の出力デバイス6が設けられている。例としては、ディスプレイ、プリンタ、オーディオ出力デバイスなどが挙げられる。出力デバイス6は、システムの実行、特にクエリの処理の進捗に関するフィードバックをユーザーに提供するために、システムによって使用される。たとえば、ディスプレイは、ユーザーが入力デバイス5を使用して入力を行い、ディスプレイから情報を受け取ることができるグラフィカルユーザーインターフェースを実装するために使用され得る。オーディオ出力デバイスが、ユーザーインターフェースを音声で通信し得、ならびに/あるいは、たとえば、命令に肯定応答するために、および/またはクエリプロセスが完了したことを示すために、可聴アラートを提供し得る。いくつかの例では、任意の管理アクション提案を含むクエリ処理の出力は、出力デバイスを介して表示され得る、ストレージデバイス上に記憶され得る、および/またはネットワークを介して送信され得る、など、データファイルフォーマットで提供され得る。このようなデータファイルは、メタデータフォーマットフラットファイル(SAP SCMソフトウェアまたはSRMソフトウェアなどのシステムと共に使用されるものなど、たとえばXMLファイル)、またはデータベース可読ファイル(SAP HANA、Oracle Database、MySQLなどのデータベースアプリケーションで使用されるものなど)など、ユーザーがクエリ処理の出力を利用することを意図したソフトウェア環境に従ってフォーマットされ得る。
【0032】
加えて、入力デバイス5および/または出力デバイス6は、モバイルデバイスで受信された入力をコンピュータユニットに転送し、コンピュータユニットからの出力をモバイルデバイスで表示/出力するためにモバイルデバイスに転送する、それ自体の入力デバイスおよび出力デバイスを有するモバイルデバイスによって提供されてもよい。このようなモバイルデバイスは、たとえば、PAN技術、LAN技術、WAN技術および/またはアクセスネットワーク技術などのワイヤード接続またはワイヤレス接続を介して、コンピュータユニット2と通信し得る。
【0033】
したがって、使用中、システムは、入力デバイスを介して、解決すべきクエリまたは既存のクエリの選択を受信し、入力データを使用してそのクエリを評価し、リスクおよび/またはこのようなリスクに関連して取られるべき識別されたアクションを出力し得る。出力は、出力デバイスを介して全体的または部分的に提供されてもよく、またはネットワーク4を使用して別のシステムに通信されてもよい。クエリデータおよび入力データは、ストレージデバイス3、ネットワーク4および/または入力デバイス5から様々に提供され得るので、クエリデータおよび入力データは、
図1においてコンピュータユニット2に直結する破線で示されている。
【0034】
よって、明らかなように、この例では、システム1は、単一のネットワーク接続されたコンピュータシステムで実装されている。他の例では、システムは、何らかの形態の端末デバイスによって提供される任意のユーザーインターフェース能力を有する分散コンピューティング環境で実装されてもよく、端末デバイスは、分散コンピューティング環境内のシステムとインターフェースするか、分散コンピューティング環境内のシステムの1つ以上の要素によって提供されるウェブインターフェースにアクセスする、ローカルインターフェースを有する。
【0035】
したがって、システム1は、クエリを(たとえば、直接ユーザー入力から、ローカルストレージから、リモートストレージから、またはリモートシステムから)受信し、クエリを解決するために使用可能な入力データを(たとえば、直接ユーザー入力から、ローカルストレージから、リモートストレージから、またはリモートシステムから)受信し、そのクエリを処理して、ある汚染物質が存在するリスクおよびこのようなリスクに関連して取られるべき識別されたアクションのうちの1つ以上を含む出力を提供することができる処理能力を含むことが理解されるであろう。クエリ、入力データ、リスクおよび識別されたアクションについては、以下でさらに論じる。
【0036】
図1が示すように、本例のクエリデータは、汚染物質のタイプ、食物のタイプ、および地理のタイプに関する。これらの要素または因子の各々は、クエリの次元と呼ばれ得る。
【0037】
本アプローチがクエリにおいて評価することができる汚染物質は、たとえば、農薬、獣医薬、毒性金属、殺生物剤、マイコトキシン、人為的環境汚染物質、プロセス汚染物質、天然に発生する物質(食物生産地理において発見された鉱物など)、遺伝子組み換え生物(geneticallymodified organism、GMO)などを含む、上記で定義されている任意の1つ以上の汚染物質を含み得る。また上述したように、汚染物質は、活性成分の代謝産物または錯体規制残留物の定義などの派生用語を含み得る。考慮され得る汚染物質のいくつかのさらなる例は、アルジカルブスルホン、バチルス・チューリンゲンシス、1-ナフチルアセトアミドおよび1-ナフチル酢酸(1-ナフチル酢酸として表される、1-ナフチルアセトアミドおよび1-ナフチル酢酸およびその塩の合計)である。上で説明したように、本明細書で考慮されるすべての汚染物質は、有害であり得る、潜在的に有害であり得る、またはそうでなければ食物において望ましくない可能性がある物質である。
【0038】
食物のタイプは、単一成分の食物として直接使用される食物、および/または複数成分の食物の成分として使用される食物、および/または複数成分の食物自体を含む、上記で定義される任意の1つ以上の食物を含み得る。食物のさらなる例としては、(果実、野菜、香辛料、ハーブ、植物油などのような)植物材料、魚、肉、動物性脂肪などのような)動物性材料、または(採掘された鉱物、製造された着色料/香味料などのような)鉱物が挙げられ得る。考慮され得る食物のいくつかの例は、穀類、トウモロコシ、Brix値32の濃縮レモンジュースである。上で説明したように、本明細書で考慮されるすべてのタイプの食物は、食物の成分を形成すること、または食物の成分として使用されることが意図される。
【0039】
本明細書で考慮される地理のタイプは、食用の食物、飲料などの生産、使用、および/または消費に関連する地理的および/または地政学的区分を含む。このような地理的および/または地政学的区分は、大陸、国(たとえば、国家)、国の小領域(たとえば、州、小郡、郡など)、および/または任意の関連サイズの食物生産領域(たとえば、ナイルデルタ、低地諸国(TheLow Countries)、ワイン生産アペラシオン、特定の原産地統制名称に関連する領域など)を含み得る。考慮され得る地理のいくつかの例は、全世界、南ヨーロッパ、およびブラジルである。
【0040】
これらのクエリデータは、特定の汚染物質(または複数の汚染物質)が、所与の地理産の、および/あるいはは所与の地理において使用または消費される(たとえば、販売される)所与のタイプの食物において発生するリスクに関する特定のクエリを作成するために使用される。1つの例示的なクエリは、「ブラジル(地理的次元)原産のレモン(食物次元)に関連するアルジカルブ(汚染物質次元)が、ドイツ(地理的次元)で販売されるときに問題につながり得る可能性はあるか」という質問である。
【0041】
食物生産スキーム(たとえば、オーガニック、動物福祉基準、UTZ持続可能農業基準、ビオスイス認証など)などの追加の要素または因子(次元)がクエリに含まれ得ることに留意されたい。加えて、特定のビジネスまたはマーケットに特有のものなどの要素および/または因子(次元)を考慮に入れてもよい。たとえば、コンプライアンスは、使用分野に応じて変化し得る。たとえば、ヒトの成人向け栄養製品と、ヒトの乳幼児向け栄養製品と、ヒトの高齢者向け栄養製品とに対して異なる制約が存在し得る。また、たとえば、生産動物向けとペットと向けの動物飼料に対して異なる制約が存在し得る。
【0042】
図2を参照すると、本アプローチと共に使用され得るクエリ次元データ定義用の概略的なデータ定義構造が示されている。示されているように、本実施例は、クエリを定義するための最高レベルの入力を必須と見なし、これらの入力は、汚染物質のタイプ、食品のタイプ、地理のタイプを定義するものである。
【0043】
示されているように、定義は、任意選択で、クエリに対する1つ以上のさらなる定義レベルを含み得る。たとえば、汚染物質のタイプにおいて、クエリは、これが農薬であるか、獣医薬であるか、天然に発生する物質であるかを指定され得る。天然に発生する物質の例において、これは、重金属または微生物などとして指定され得る。これらのさらなる定義のうちのいくつかは、クエリデータを入力するユーザーによって提供され得、たとえば、ユーザーは、示されている地理が、クエリにおいて食物生産地理として見なすべきか、食物ユーザー/消費の地理として見なすべきかを指定し得る。さらなる定義のいくつかは、システムにとって既知であり得、たとえば、ユーザーが汚染物質「カドミウム」を指定した場合、システムは、この汚染物質が「天然に存在するもの」であり、「重金属」に属することを指定する様々な既知のレベルをポピュレートすることができる。
【0044】
図1がまた示すように、本例の入力データは、汚染物質固有関連性、汚染物質が食物環境で使用または発見されるリスク、汚染物質最大残留レベル/最大限度ステータス、分析データ、および汚染物質由来の特性に関する。これらの要素または因子は、「意思決定支援要素」と呼ばれ得る。各意思決定支援要素は、以下に示されているように、各意思決定支援要素の特徴付けを可能にするいくつかの特性を含み、またはそれに依存する。
【0045】
本明細書で使用される汚染物質固有関連性は、汚染物質として定義されている物質が1つ以上の食物に本質的に関連する既知のまたは測定されたリスクを指す。いくつかの実装形態では、これは、定義されている物質が、汚染物質を管理するためにアクションを定義する必要があり得るという観点から、実際に汚染物質と見なされるかどうかに関する指標とすることができる。言い換えれば、汚染物質固有関連性は、汚染物質自体の固有の特性と見なされ得るので、クエリの汚染物質次元のレベルで評価することができる。たとえば、植物保護製品の使用の結果として生じるレシチンは、それらが植物油などの特定の食物に既にして天然に発生する物質であることに基づいて、関連性がないと見なすことができる。別の例では、処理された植物に残留物をもたらすことが知られている明確に定義された殺虫剤である物質クロルピリホスは、汚染物質としての固有の関連性を有すると見なされ得る。
【0046】
クエリの汚染物質次元に関連して考慮に入れられることに加えて、汚染物質固有関連性は、クエリ次元のうちの他のものの文脈において、その上または代替的に考慮に入れられ得る。たとえば、汚染物質の固有の関連性を定義するために設定された基準は、国固有(またはそうでなければ地理固有)であり得、またはビジネス/産業などの別のクエリ次元に関連し得る。1つの例は、(たとえば、その使用が許可され、監視が必要とされない)ある食品生産地理においてはおそらく固有関連性を有さないが、(たとえば、食物の消費が意図される)別の地理では同じ微生物がリスクと見なされ得、したがって、汚染物質として固有関連性を有し得る、バイオ農薬として使用される微生物であり得る。GMOが汚染物質と見なされる実装形態では、GMOに対する規制は、現時点では非常に国固有である潜在的汚染物質の一例であるので、この地理次元の関連性は非常に高くなり得る。
【0047】
食物次元に関連する別の例は、ある汚染物が、穀物を利用するベークド商品の生産に本質的に関連すると見なされ得るが、同じ汚染物は、アルコール蒸留工程によって破壊、除去または変性されるので、蒸留アルコールの形態の食物の生産に本質的に関連するとは見なされないことである。さらなるこのような例として、食物を加熱処理することにより、微生物学的汚染物質のリスクが除去され得ること、および/または一部の反栄養素複合汚染物質が分解され得ることである。より具体的な例は、特定の酵素を使用してコーヒーを処理することにより、コーヒー中のアクリルアミド(汚染物質)の存在を減少させることができることである。
【0048】
したがって、汚染物質固有関連性は、たとえば、関連性が適用される食物および/または地理、関連性データの古さ/新鮮度特性などの特性によって特徴付けられ得る。
【0049】
本明細書で使用される、汚染物質発生が食物環境で使用または発見されるリスクとは、このような食物の生産(作物管理、動物管理および獣医学において行われる操作を含む)、製造、加工、調製、処理、梱包、包装、輸送、または貯蔵の結果として、あるいは環境汚染の結果としての、食物および/または地理的原産地に関連する所与の汚染物質を有するリスクを指す。この発生リスク情報は、所与の地理における食物生産での特定の汚染物質の使用の登録などのソースから、および/または所与の場所における物質の存在に関する科学文献もしくは研究から、および/またはその分野に関連する観察/議論から提供することができる。たとえば、リンゴへの使用がスイスで登録されているアセタミプリドは、この汚染物質が食物環境で使用または発見される可能性があることのマーカーとして使用され得る。別の例では、ホンジュラスにおける天然に存在するカドミウムについて報告している科学出版物は、この汚染物質が食物環境で使用または発見される可能性があるリスクのマーカーとして使用され得る。理解されるように、この意思決定支援要素は、おそらく、いくつかの事例では、食物使用または消費地理よりも食物原産地地理にもっと深く結びついているが、クエリの食物次元、地理次元、および汚染物質次元のすべてに関連し得る。したがって、汚染物質発生が食物環境で使用または発見されるリスクは、食物次元、地理次元、データソースの性質、情報の古さ、関連データの量、原産地データの多様性などの様々な特性によって特徴付けられ得る。
【0050】
本明細書で使用される汚染物質最大残留レベル/最大限度ステータスは、汚染物質の最大許容限度および/または残留レベルに関する規制情報を指す。この意思決定支援要素は、このような規制情報が地政学的レベル(国ごとなど)で設定される可能性があるという点で、地理次元に適用可能である。これは、特定の汚染物質の存在に関する規制が、この汚染物質が食物生産環境において使用されていることのマーカーであり得るので、食物生産地理に関連し得る。これは、その上または代替的に、消費用の食物において許容可能な残留物/限度に関する規制が、このような地理内での食物の販売/供給に関連して適用されることが想定され得るので、食物使用/消費地理に関連し得る。加えて、この意思決定支援要素は、規制情報が、汚染物質が規制の観点から懸念されると見なされている特定の食物に関連し得るので、食物次元に適用可能であり得る。しかしながら、本アプローチはまた、食物次元に関連せずに、または食物次元の一般化/抽象化された定義に関連して、この意思決定支援要素を考慮に入れ得る。たとえば、規制がナシ中の残留物に対して存在する場合、意思決定支援要素は、ナシおよびリンゴ、すべての木本果実、すべての果実、すべての植物性食物などのより広い範囲の食物に対して考慮に入れられ得る。たとえば、カナダにおいてカルバリルが7mg/kgの限度で規制されることを規定する規制は、カルバリルがブルーベリー中に発生する可能性があることのマーカーとされ得、考えられ得る追加の考慮事項は、この起こり得る発生がカナダで販売されるブルーベリー、カナダ産のブルーベリー、ブルーベリーを含む低木果実、および/またはすべての果実に当てはまり得ることである。理解されるように、規制限度の欠如は汚染物質の存在のリスクが低いことおよび/または汚染物質の関連性が低いことを示し得るので、規制限度が存在しないことは、この意思決定支援要素に使用可能な特定のデータと見なされ得る。同様に、規制違反に対して指定される是正措置は、汚染物質としての汚染物質の重大性を示し得る。したがって、汚染物質最大残留レベル/最大限度は、規制上の限度が当てはまる地理、規制上の限度が当てはまる食物、限度に違反した場合に必要とされる規制上の罰則、限度に違反した場合に必要とされる規制上の是正措置などの特性に基づいて特徴付けられ得る。
【0051】
本明細書で使用される分析データは、データの量、データ内の特定の結果の所見の数、データに対する任意の制限(量子化制限など)および関連する統計値など、クエリ次元のうちの1つ以上に関する任意の分析データの存在(または存在しない)および内容、ならびに任意の関連する属性/メタデータを指す。理解されるように、いかなる分析データも存在しないことは、この意思決定支援要素に使用可能な特定のデータと見なされ得る。例としては、カナダからのブルーベリー中のカルバリルについて利用可能な分析データがないというデータが挙げられ得る。グリホサートについては1000件のデータが利用可能であり、トルコからの従来のフレッシュペッパーについて5年間にわたって収集された30件のデータがクロルピリホスに関して0.005mg/kgを上回るなど。これらの例が示すように、分析データは、汚染物質に関連し得、および/または汚染物質の次元に加えて他の次元に関連し得る。一例として、分析データは、分析物の名称、試験対象の食物、濃度、分析年度、ならびに関連する統計値などのいくつかの特性によって特徴付けられ得る。したがって、クエリの評価において分析データを使用するとき、これらの特徴付けの各々が考慮に入れられ得、たとえば、直近のn年間からのデータのみが使用されるべきと指定し、または分析物が関連するためには、一定の最小濃度で検出可能でなければならないと指定する。
【0052】
本明細書で使用される汚染物質由来の特性は、他の意思決定支援要素のいずれかまたはすべてから由来する外部団体または内部団体による特定のリストセットへの汚染物質の割り当てを指す。この場合も、汚染物質由来の特性が存在しないことは、この意思決定支援要素に使用可能な特定のデータと見なされ得る。たとえば、所与の農薬または他の植物保護製品が、所与の地理(たとえば、このような内部または外部団体がカバーしている地政学的領域など)における致命的、急性、または長期の毒性に関連するいずれの汚染物質由来の特性にも含まれていない場合、食物中に発見された場合に問題を引き起こすその汚染物質のリスクは、本質的に低い(または発がん性物質の可能性が識別された農薬など、致命的、急性、または長期毒性があることが知られている、または疑われている農薬よりも低い)と見なされ得る。たとえば、あるリストは、アリカルブがコーヒー用の4C認証基準に従って許容できない農薬であると定義し得る。このような食物規格組織は他にも多く存在し、異なる地理的範囲および/または食物範囲で活動している。したがって、この意思決定支援要素は、汚染物質次元に関連しており、食物次元および地理次元にも関連している場合もしていない場合もあることが理解されるであろう。したがって、汚染物質由来の特性は、汚染物質を列挙した団体の認知度レベル、汚染物質が列挙された食物、リスト作成団体が活動している地理などの特性によって特徴付けられ得る。
【0053】
意思決定支援要素のうちの1つ以上を特徴付けるために使用され得る特定の特性の例示的な例を、以下の表1に示す。
【表1】
【0054】
したがって、本アプローチは、極めて重大な事態に対処するために、意思決定支援要素を構成する潜在的に膨大な量の不均質データ(たとえば、何百万ものデータポイント)に対してクエリを(3つ以上の次元で)評価するように実装され得ることが理解されるであろう。意思決定支援要素の各々は、異なるクエリに対して変動する関連性のものであり得、各個々のクエリは、意思決定支援要素の各々についての利用可能なデータのすべてに対して可能な限り完全かつ正確に評価されるべきである。また、以下でさらに説明するように、クエリのこのような完全かつ正確な評価を提供するために、本アプローチは、様々な異なるデータフォーマット、異なる言語、および異なる名称または用語を使用してクエリ次元の各々における同じまたは同様のエンティティを記述することにおいて、意思決定支援要素データを考慮に入れる必要があり得る。意思決定支援要素の各々の特徴付けは、意思決定支援要素内の非常に異なるタイプのデータを比較可能にすることが可能になるように特徴付けを定義することができるので、クエリ評価プロセスの「ビッグデータ」の性質を支援することもできる。
【0055】
したがって、本アプローチは、汚染物質、汚染物質が出てきそうな懸念のある食物、食物の原産地であり得る地理、および/または食物が使用/消費/加工/販売される(簡潔にするために、これらの使用のすべては、本明細書では、全般的に、使用および/または消費されると称される)ことが意図される地理を指定するクエリの評価を許可する。このようなクエリは、食物が、指定された地理から調達され、および/または指定された地理において使用/消費されるときにこのような汚染物質を含有し得るリスクを判定するために、1つ以上の大規模かつ不均質データセットに対して評価される。このような判定されたリスクから、そのリスクの管理を許可するように、1つ以上の応答アクションを定義することができる。
【0056】
図3は、クエリを評価し、管理提案を提供するために意思決定支援要素を使用する本アプローチの方法を示す。破線で示されるすべてのステップは、少なくともいくつかの実装形態では任意選択と見なされ得る。
【0057】
図3に示されているように、本アプローチの方法は、(ステップS3-1で識別される)これらのクエリデータを使用し、必要であれば、ステップS3-3での処理のためにこれらのクエリデータを準備する。事前準備の例は、データフォーマット変換、(同義語処理および/または密接関連データ処理を含み得る)命名処理、および言語処理を含む。
【0058】
データフォーマット変換は、クエリを評価するために使用される処理ステップと直接的には互換性のないフォーマットでクエリが提供される場合に使用される。1つの例は、クエリがヤードポンド法単位で量的パラメータを表現しているが、クエリの処理にはメートル法/SI単位が必要である場合である。
【0059】
同義語処理は、クエリデータで指定されたパラメータ(汚染物質、食物、および/または地理の名称など)を、クエリの評価に使用される入力データに使用され得るそのデータの考えられ得る同義語にマッピングすることを含み得る。たとえば、クエリデータで指定された食物は、「courgette(コジェット)」とすることができ、同義語処理は、これを「zucchini(ズッキーニ)」、またはこの食物を説明するために使用される任意の他の用語にマッピングする。別の例では、クエリデータで指定された地理は、「The Low Countries(低地諸国)」とすることができ、同義語処理は、これを「ベルギー」、「オランダ」、および「ルクセンブルク」にマッピングすることができる。
【0060】
密接関連データ処理は、指定された定義に密接に関連する項目を含むようにクエリデータ内の定義を拡張することを含み得る。たとえば、汚染物質の定義において、密接関連データ処理は、その汚染物質についての塩、エステル、代謝産物、分解産物、錯体残留物の定義などの他の密接に関連する化合物を追加し得る。これらの追加の汚染物質定義のすべては、クエリにおいて追加定義され得、またはクエリは、すべてのこのような密接に関連する化合物をクエリ評価処理に含める包括的なレベルに適合され得る。このような包括的なレベルは、共通項と呼ばれ得る。1つの特定の例は、クエリにおいて定義されている汚染物質が「グリホサートナトリウム塩」および「グリホサートカリウム塩」であり得るのに対して、クエリを評価するために使用されることになっている入力データにおいて、これらは、「グリホサート」および「アミノメチルホスホン酸」に関連する分析データであり得、汚染物質最大残留レベル/最大限度ステータスに関する入力データは、「代謝産物アミノメチルホスホン酸、N[(アセチルアミノ)メチル]ホスホン酸およびN-アセチル-N-(ホスホノメチル)グリシンを含むN-(ホスホノメチル)グリシン」を指定し得ることである。この例では、共通項は「グリホサート」とすることができる。
【0061】
密接関連データ処理はまた、クエリデータ内の食物および/または地理の定義に対しても実行され得る。たとえば、食物が「ブラッドオレンジ」と定義されている場合には、「セビリアオレンジ」および「温州ミカン(Satsuma)」などの他のオレンジ種を含むように、共通項「オレンジ」または「柑橘類果実」を設定することができ、共通項を「柑橘類果実」と設定する場合には、「レモン」も含むように設定することができる。同様に、地理が特定の比較的小さな地理的エリアなどのエリアに設定される場合、共通項は、周辺エリアを含むように拡張することができる。たとえば、定義されている地理が「英国、ノーフォーク」である場合、共通項は、同様の栽培環境を有する近くの地理を含むように、「英国、イーストアングリア」として設定され得る。
【0062】
言語処理は、複数の言語の同じ定義を含むようにクエリデータ内の定義を拡張することを含み得る。言語処理は、クエリ定義において指定された地理にリンクされてもよく、またはより普遍的に適用されてもよい。たとえば、関心のある食物がグレープフルーツであり、クエリがドイツ語の話者によって作成された場合、クエリは、食物次元として「グレープフルーツ(Grapefruit)」を定義することが想定され得る。この例では、指定された地理が南米からスイスに輸入された果実に関する場合、定義は、この定義された食物を食物供給源地理に関連する言語(スペイン語(pomelo)およびポルトガル語(Toranja)など)に翻訳することを含むように拡張されてもよく、および/またはこの定義された食物を食物使用/消費地理に関連する言語(フランス語(pamplemousse)およびイタリア語(popelmo)など)に翻訳することを含むように拡張されてもよい。さらなる翻訳は、供給源地理において話される他の言語を含み得る(同じ例を続けると、これらは、「ケチュア語(Quechua)」および「グアラニー語(Gaurani)」を含み得る)。その上または代替的に、汚染物質次元を定義するために使用される用語(単数または複数)および/または地理次元を定義するために使用される用語(単数または複数)に対して翻訳が提供されてもよい。クエリ定義で指定された地理に固有の翻訳だけでなく、翻訳は、大量の科学出版物に関連する言語も含み得、たとえば、あらゆる国における食物規制の定義で使用されることが知られているすべての言語を含むまで拡張することができる。言語は、その上または代替的に、クエリが評価される意思決定支援要素を構成するデータセットの範囲によって制限され得、たとえば、すべてのデータが英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、日本語、および中国語である場合、関係する地理がさらなる言語を暗示する可能性がある場合であっても、これらの言語以外に翻訳する必要はない場合がある。
【0063】
ステップS3-3に関連して説明したこれらのデータ準備方法のいずれかまたはすべては、代わりにまたは追加的に、クエリを評価するために使用される意思決定支援データを構成する入力データに対して実行されてもよく、および/またはクエリ評価処理の一部として実行されてもよいことに留意されたい。様々な入力データが均質化された意思決定支援データとして機能することを可能にするために、定義された変換および/またはマッピングによって入力データを標準化された言語に適合させることによって、その入力データを意思決定支援データに処理するために、様々なソース(データベース、データファイル(たとえば、Excel)、レポート(たとえば、PDF)など)からのデータ抽出の入力データに対して実行されるプロセスがあり得る。加えて、これらのデータ準備方法のうちの少なくともいくつかは(クエリ、意思決定支援要素データ、またはその両方に適用されるかどうかを問わず)、大量のデータを効率的に最適化するために、トレーニングされたAIアプローチを使用して実行され得ることが予想される。
【0064】
クエリを評価する前にこのようなデータ準備を実行することによって、本方法は、意思決定支援要素を構成する非常に大量の不均質データに対してクエリ定義を比較する困難さを実質的に緩和することができる。言い換えれば、このようなデータ準備ステップなしで、方法特有の実装形態は、意思決定支援要素を構成するはるかに制限されたデータのセットに制限されなければならない場合があり、および/または、意思決定支援要素を構成するデータは、クエリ評価の前にデータをより均質にするために、データのキュレーションやインデックス付けが必要な場合がある。本アプローチは、限定されたデータセットまたはキュレーション/インデックス付け/均質化されたデータセットの使用を排除するものではなく、むしろ、このような例では、データ準備の労力が、クエリ評価の前にデータを前処理するのに必要な労力に置き換えられる。いくつかの実装形態では、データ準備ステップS3-3と、意思決定支援要素を構成するデータの別個の前処理との混合を実装することが適切であり得る。
【0065】
したがって、本アプローチは、汚染物質、汚染物質が出てきそうな懸念のある食物、食物の原産地であり得る地理、および/または食物が使用/消費/加工/販売される(簡潔にするために、これらの使用のすべては、本明細書では、全般的に、使用および/または消費されると称される)ことが意図される地理を指定するクエリの評価を許可する。このようなクエリは、食物が、指定された地理から調達され、および/または指定された地理において使用/消費されるときにこのような汚染物質を含有し得るリスクを判定するために、1つ以上の大規模かつ不均質データセットに対して評価される。このような判定されたリスクから、そのリスクの管理を許可するように、1つ以上の応答アクションを定義することができる。
【0066】
再び
図3を参照すると、ステップS3-5において、クエリ評価処理によってクエリが評価される。クエリを処理するために、クエリデータは、入力データと比較され、入力データに対して評価される。任意の所与のクエリに使用される正確なアルゴリズムは、クエリおよび利用可能な意思決定支援要素データの性質に従って変動する。たとえば、汚染物質が高い固有関連性を有し、汚染物質が生産地理の食物環境で使用または発見されるリスクが非常に高い場合、他の意思決定支援要素は特に影響力がなく、それらの意思決定支援要素のみを考慮に入れた後にリスクが高いという結果が返される可能性がある。しかしながら、このような状況では、他の意思決定支援要素を、たとえば、汚染物質最大残留レベル/最大限度ステータスと見なすことが依然として適切であり得、および/または、汚染物質由来の特性は、そのリスクを管理するためにどのアクションを提案すべきかに関する有用な情報を提供し得る。
【0067】
よって、クエリを評価するためのアプローチは、定義されたアルゴリズムというよりも、文脈に依存した意思決定空間であることが分かる。1つの例は、クエリにおいて指定された汚染物質が、実際にはクエリにおいて検討されている地理で汚染物質とは見なされていない場合、リスクは、他のデータを参照せずに低いと評価され得る。別の例では、処理は、多くのまたはすべての考えられ得る汚染物質の完全なリストから開始し、次いで、クエリおよび様々な意思決定支援要素において指定された異なる次元と比較することによって、それらの汚染物質のうちのいくつかを考慮から除外することができ、これは、汚染物質固有関連性から開始することができる。さらなる例では、処理は、意思決定支援要素の様々な入力データから、特定の次元値に関連するコンテンツのみを次第に作成し得る。異なる次元値には異なるアプローチが適用され得ること、たとえば、特定のレベル2またはレベル3の汚染物質に対して(たとえば、
図2を参照)、すべての汚染物質から開始し、データをレビューしながら汚染物質のいくつかを除外していくことが適切であり得る一方で、他の定義タイプについては、反対が当てはまり得ることが分かる。クエリ(単数または複数)が処理されると、出力は、指定されたクエリ次元に対して、汚染物質次元において指定された1つ以上の汚染物質を潜在的な問題と見なす必要があるという一定のレベルのリスクを示す。このリスクは、バイナリイエス/ノータイプのリスクの存在、または低/中/高などのより段階的なリスク、または数値スケールもしくはパーセンテージなどのさらにより段階的なリスクとして表現され得る。
【0068】
したがって、全体的なレベルでは、汚染物質が食物関連問題にリンクされるリスクならびに潜在的な管理アクションを導出するように、特性の値が組み合わされる。このアプローチは、任意の密接に関連する化合物の使用および/または汚染物質についての共通項が定義されている場合その使用を含めて機能する。
【0069】
一例として、農薬ジクロルボスが、キウイ栽培用にニュージーランドで使用されるように登録されており、ニュージーランドからのキウイで検出されている場合、かつこれらのキウイが、スイスで販売されようとしており、スイスでは、ジクロルボスが認可されておらず、したがって、スイス市場におけるキウイに対するジクロルボスの最大残留レベルが、ニュージーランドで設定されたレベルよりも低い場合、アルゴリズムの1つの考えられ得る結果は、ニュージーランドからのもので、スイスで販売されるキウイに存在するジクロルボスが食物関連問題にリンクされるリスクが高いことであり得、かつ、(方法のその後のステップにおけるような管理アクション推奨を視野に入れると)、提案される管理アクションは、ジクロルボスの分析が食物発売基準として必須であり得る。
【0070】
クエリ評価における誤った処理が誤った結論にどのようにつながり得るかを示す例として、農薬アルジカルブがグレープフルーツ栽培用にメキシコで使用されるように登録されている状況を検討する。メキシコ産のグレープフルーツにおいてその代謝産物アルジカルブ-スルホンのみが検出され、かつこれらのグレープフルーツが、アルジカルブが認可されておらず規制されているスイスにおいて販売される場合、密接に関連する化合物および/またはクエリ評価において使用されるデータの共通項処理を使用する本アプローチは、アルジカルブ(アルジカルブとして表されるアルジカルブ、そのスルホキシドおよびそのスルホンの合計)がこのようなグレープフルーツにおいて発見されるリスクが高く、管理アクションが必要とされる可能性があることに正しく指摘する。対照的に、これらのデータが単独で考慮される仮定シナリオを検討する。これは、農薬自体がグレープフルーツ中で発見されないので、「アルジカルブは使用されているが、残留物は発見されず、アルジカルブは規制されておらず、したがって、食物関連問題に関連していない可能性がある」などの誤った結論が決定されるのを可能にし得る。本アプローチは、データの膨大な量および不均質性にもかかわらず、データについて全体論的見方を取ることによって、たとえば、供給源および供給先の地理に関する規制を別々に検討し、密接に関連する化合物および/または共通項の観点から汚染物質を捉えることによって、このような不正確な結論を回避する。
【0071】
クエリのこの処理はまた、
図4において高レベル決定木として示されている。この図に示されているように、クエリ(汚染物質のタイプ、食物のタイプおよび地理のタイプの3つの次元、ならびにあらゆる任意選択のさらなる次元を含む)は、様々な意思決定支援要素データに対応する決定基準に対して評価される。
【0072】
意思決定支援要素データに対応する決定基準に対してクエリ次元のこの評価を行うことによって、プロセスは、特定の管理アクションおよび管理アクション提案を必要とする(1つ以上のクエリのクエリ次元において指定されるような)汚染物質のショートリストのうちの1つ以上を提供する。
【0073】
図3にさらに示されているように、ステップS3-7において、クエリの評価は、特定の管理アクションを必要とする汚染物質のショートリストを出力することができる。
【0074】
このステップは、たとえば、クエリが複数の汚染物質を指定する状況において、および/またはクエリのバッチが同時にまたは同様の時期に提出される場合に使用され得る。たとえば、クエリは、たとえば、ユーザーが所与の食物についての可能性のある汚染物質に関する知識をほとんど持っていない状況において、汚染物質として「すべての農薬」を指定することができる。
【0075】
このステップはまた、たとえば、クエリが単一の汚染物質を指定しているが、密接に関連する化合物の処理および/または共通項処理の使用が、事実上、クエリ汚染物質をいくつかの汚染物質を含むように拡張する状況において使用され得る。
【0076】
特定の実装形態において使用されるリスク等級付けスキームがどのようなものであっても、何らかの形態のアクションもしくは緩和アクションまたは管理アクションが必要とされ得ることを示すリスクを有する複数の汚染物質が識別される場合、これらは、ステップS3-7においてショートリストとして照合され得る。
【0077】
ステップS3-9を参照すると、ステップS3-7で作成されたショートリストが存在するか否かにかかわらず、方法は、識別されたリスクを緩和または除去するためにユーザーに提供され得る1つ以上の管理アクション提案の判定に進む。本アプローチでは、管理アクションは、汚染物質リスクのみに基づいて、またはクエリ次元および/もしくは意思決定支援要素に関する特性の一部と組み合わせた汚染物質リスクに基づいて判定され得る。
【0078】
たとえば、リスク結果が非常に高いリスクまたは潜在的に致命的なリスクを示す場合、(ステップS3-11に示すように)クエリで指定された食物を使用しない命令が管理アクションとして与えられるべきであると結論付けるために、さらなる特性情報を考慮しなくてもよい。同様に、示されるリスクが0であるまたは約0である場合、管理アクションが必要とされないことを示すのに特性情報を使用しなくてもよい。
【0079】
他の例では、特性情報は、1つ以上の指定された管理アクションにおいて考慮に入れられ得る。たとえば、リスク結果が、特定の農薬の存在による中程度のリスクに関連している場合、食物中の農薬の存在を監視する監督計画が、適切な管理アクションであり得る。他の考えられ得る管理アクションは、(ステップS3-13に示されているように)分析ポートフォリオの適合化、所与の供給源または供給業者に対する監査のトリガなどを含み得る。
【0080】
クエリ評価処理によって判定されたリスクに基づくこのような例示的な出力は、本アプローチと共に使用され得る出力アクション定義用の概略的なデータ定義構造を示す
図5にさらに示されている。示されているように、定義は、これらのデータを様々なレベルで考慮することができる。たとえば、管理アクション提案のレベル1出力内で、これらは、第2のレベルにおいて、(ステップS3-11に整合する)食物の発売を完全に阻止することと、(ステップS3-13に整合する)食物を完全に阻止することなく適用され得る様々なリスク緩和管理アクションとの間で分割され得る。さらなる空間およびコネクタによってさらに示されているように、これらは、任意の特定の実装形態に応じて、さらなるレベルでさらに定義され得る。
【0081】
考えられ得る管理アクションのさらなる詳細、およびそれらがクエリ評価処理によって判定されたリスクからどのように決定されるかは、
図6を参照して以下論じられる。
【0082】
図3の最後に示されているステップ(S3-15)において、方法は、管理アクションの成功した実行に関する検証フィードバックを含む。このような検証フィードバックは、指定された管理アクションおよびこれらが導入されたことの検出可能なインジケータのコンピュータベースの追跡を通じて提供され得る。いくつかの例では、これは、管理アクションの行動および/または影響を記述するデータを含む将来の評価のためのさらなる意思決定支援要素データとして含まれ得るデータの形態をとり得る。いくつかの例では、この検証フィードバックは、代替的にまたは追加的に、管理アクションの実行に関する特定のデータキャプチャによって提供されてもよい。このような検証フィードバックを含むことによって、本アプローチは、システムが管理アクションの実施と影響の追跡を容易にすることを可能にする。たとえば、いくつかのクエリを処理し、特定の管理アクションを推奨する過程にわたって、ある管理アクションが、食物リコールイベントなどを防止する上でより高い成功率を有することを学習することが可能であり得、したがって、管理アクション決定は、これらの現在履歴の結果から学習するように経時的に修正され得る。
【0083】
いくつかの実装形態では、アルゴリズム結果に関連して何らかの形態のチェックプロセスを含めることが適切であり得る。たとえば、新しいアルゴリズムアプローチがテストされており、アルゴリズム妥当性検査プロセスとして何らかの形態の結果のダブルチェックが含まれ得る。さらなる例では、このようなダブルチェックは、進行ベースで適用され得る。このようなチェックは、アルゴリズム出力において(たとえば、ステップS3-5とS3-7との間で)直接適用されてもよく、または提案された管理アクションおよび/もしくはそれらの検証に関連して(たとえば、ステップS3-9および/もしくはステップS3-15において、またはその後に)適用されてもよい。
【0084】
1つの例は、アルゴリズム出力を、小規模ながらも代表的なデータセットを使用して判定された結果と比較して、結果が、小規模データセットから予想される結果と全く異なっていないかをチェックすることであろう。この小規模データセットは、サブセットであってもよく、あるいは、異なるデータに対する並列クエリまたはそうでなければ同様のクエリに関連していてもよい。特定の例は、香辛料中の汚染物質に対してクエリが実行されることであり、このクエリは、大量のデータに対する評価に依存する。チェックは、代表的なサブセットとしてただ1つの香辛料を使用して実行されてもよく、次いで、プロセスはスクリプト化され、データ処理の複数の異なる段階でチェックすることができるように中間データファイルの生成を任意選択で含むこともできる。
【0085】
別のアプローチは、管理アクションと、管理アクションが取られた後に行われる検証とを考慮することに関する。アルゴリズムは、たとえば、予想される汚染物質が監視を介して検出されたことを検証が示す場合に、正しいと見なされ得る。このようなアプローチは、アルゴリズムの正確さに対する進行中の監視を実行することによって「ライブ」で使用され得るが、アルゴリズムが管理アクション提案の検証に使用できる管理アクション結果が既に利用可能なデータに対するクエリを評価するために使用される「テスト」モードでも使用され得る。
【0086】
別の可能なアプローチは、所与のクエリに対するアルゴリズムの出力および/または提案された管理アクションを使用して、クエリの主題に関連して規制の変化を予測することである。そして、アルゴリズムの正確さの証拠が、規制の変更から見つかる。再び、このアプローチは、可能性のある将来の規制の変化を探すために「ライブ」で使用され得、または規制変化の事実が意思決定支援データから明確に除外されてから、アルゴリズムが規制変化を予測することができるかどうかを見るために実行される「テスト」モードで使用され得る。
【0087】
次に
図6を参照すると、これは、管理アクション提案決定スキーマの概略図を提供する。これは、適切な管理アクションを選択するように、クエリ次元について判定されたリスクを、クエリを処理するために使用された意思決定支援要素のデータと組み合わせて利用するために取ることができるアプローチを示す。理解されるように、本明細書における「管理」アクションは、ビジネス管理などの意味での管理ではなく、むしろ、消費者リスクおよび製品リコールなどが必要となるリスクを最小限に抑える方法で食物を処理することによって食物の安全性を維持するために実行する予防アクションまたは是正アクションおよびタスクを指す。
【0088】
図6に示されている特定のスキーマの例は、農薬などの植物保護製品に当てはまる。当業者であれば、これらの原理は、手元にある特定のデータに基づいて、本アプローチの任意の所与の実装形態に基づく任意の形態の汚染物質に適用できることを理解するであろう。
【0089】
図6に示されているように、意思決定空間の領域を画定するために様々な形状が互いに重ねてプロットされ、各形状は、意思決定支援要素のうちの1つ以上に発見される、またはそれらを特徴付ける特性に対応する。意思決定空間内のこれらの重なり合う形状によって画定される領域は、次いで、形状が画定する特性の各々の値に応じて、取るべき好適な管理アクションを決定するための境界として使用される。
【0090】
この例では、形状は以下のタイプのデータを表す。
【表2】
【0091】
示されているように、意思決定空間内のこれらの形状のサイズおよび相対的配置は、管理アクションを決定するためのスキーマとなる。上述したように、各形状のサイズ、したがって、それらの重なりによって画定される面積は、重なり合う形状によって作成される組み合わせに該当する事例の数に比例するものではない。この例示的なスキーマの様々なマッピングによって特定される異なる管理アクションは、以下の通りである。
・許容できない状況。発売基準および是正アクションとしての分析が必要である。
・発売のために分析する
・年に1回監視する
・調査分析が必要である
・スクリーニング方法の一部であれば、年に1回分析し、そうでなければアクションを必要としない
・監査/供給業者による、食物チェーンで使用しないという保証
・専門家によるリスク評価
・アクション不要
・発生する可能性が低い、手動評価(たとえば、この領域における判定につながる因子の組み合わせが矛盾している、またはそうでなければ、結果を二重チェックし、必要であればアルゴリズムアプローチをデバッグするのに手動介入が適切である)。
【0092】
これらのマッピングの各々は
図6に示されており、これらはここでは完全に繰り返されない。しかしながら、例として、製品登録ステータスがNot-Registered(未登録)である場合に適用される管理アクションは、固有の関連性を問わず、データポイントが、植物保護製品規制ステータス、分析データ関係データ可用性の閾値、分析データ所見の閾値、および由来の特性の各々の「外側」領域に入る場合、管理アクションは、「アクション不要」である。
【0093】
また、例として、固有の関連性がNot-Relevant(関連していない)である場合、すべての画定された領域は、「専門家によるリスク評価」、「アクション不要」、および「発生する可能性が低い」、「手動評価」のうちの1つをもたらす。同様に、固有の関連性がRelevant(関連している)であり、由来の特性が内側領域にある場合、管理アクションは「許容できない状況。」、「発売基準および是正アクションとしての分析が必要である。」または「年に1回監視する」である。
【0094】
上述したように、このスキーマは例として提供されており、実際には、このスキーマは、実装ごとまたは実装グループごとに判定される必要があり得る。
【0095】
理解されるように、図示のスキーマはこの図では視覚的に表されているが、好適な管理アクションを判定するのに実際のプロットを作成しなくてもよい。むしろ、データは、実際のデータ値がスキーマに従って意思決定空間の視覚的表現上にプロットされた場合に生じたであろう結果を判定するために分析されてもよい。
【0096】
本技術が適用され得る特定の例示的な状況および結果のいくつかの例は、以下を含む。
●最大残留限度未満であっても、レンズマメにおいてグリホサートを発見することは、依然として否定的に認識されており、食物関連問題を生み出し得る。提案される管理アクションは、グリホサートが使用されていない国から原材料を調達し、レンズマメ生産者を監査することであり得る。適切に実行された管理アクションの検証は、レンズマメの原産地の完全なトレーサビリティを提供する文書の取得と、生産者側からの監査に合格したことにあり得る。
●管理アクションの提案として、食品関連問題を回避するための乳製品供給における残留獣医薬管理の最適化を可能にする、様々な原産国の乳製品原材料中の残留獣医薬の発生リスクの決定。これは、供給される乳製品材料についての分析試験の頻度を、特定の産地国に対して変化させること、および特定の場合には、一次生産における獣医薬の使用の調査の必要性を含み得る。代替的に、これは、食物関連問題をもたらし得る原材料のバッチを拒否すること、状況を改善するための生産者による是正アクション、または原材料供給業者からの一次生産者の排除を含み得る。検証は、結果的にアルゴリズムに含まれる、分析試験の提案された頻度で得られた、獣医薬残留発生リスクの精度を向上させる試験結果(データ)、または一次生産における獣医薬の使用の実践に関する情報を要約する監査レポートの取得を活用し得る。
●食物関連問題を回避するための管理アクションの提案につながる、異なる原産国のハチミツにおける鉛および銅の残留物の発生リスクの定義。このような管理アクションは、その原産国に応じてそれらのハチミツ汚染物質についての分析試験の頻度を最適化すること、または食物関連問題につながり得る汚染物質のレベルを有する原材料バッチを拒否することを含み得る。検証は、分析試験の提案された頻度で得られた試験結果(データ)を活用し、結果的にそれらをアルゴリズムに含め、汚染物質発生の判定の精度を改善することができる。
●製品が以前に供給されたことがない特定の国を原産地とする牛肉製品における獣医薬残留物および農薬の発生リスクの予測/外挿。これは、調査対象物質に対する制御の頻度を確立するための管理アクションの提案、または食物関連問題につながる可能性がある汚染物質のレベルを有する原材料バッチの拒否につながり得る。検証は、分析試験の提案された頻度で得られた試験結果(データ)を活用すること、結果的にそれらをアルゴリズムに含め、汚染物質発生の判定の精度を改善することを含み得る。
【0097】
したがって、大量の不均質データを分析して、1つ以上のタイプの汚染物質が、特定のタイプの地理からの、および/または特定のタイプの地理のためのあるタイプの食物に存在するリスクを判定することができる様々なアプローチを説明してきた。これらのアプローチにより、リスクおよび汚染物質の評価に使用される特定のデータに基づいて、食物安全性を向上させ、および/または食品リコールが必要となるリスクを軽減するために使用されるべき1つまたは特定の管理アクションを判定するために、大量のデータを効果的に使用することが可能になる。
【0098】
理解されるように、本アプローチがコンピュータ実装(「インシリコ」と称され得る)の文脈で説明されているという点で、プログラム可能コンピュータに本方法を実行させるように実行可能な命令を含むコンピュータプログラム製品が提供され得る。このような命令は、
図1を参照しつつ上述したコンピュータユニット2の動作命令に対応し得る。このようなコンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読媒体によって提供され得る。コンピュータ可読媒体は、記憶媒体および/または伝送媒体とすることができる。コンピュータ可読記憶媒体は、磁気記憶媒体、光学記憶媒体、および/または電子データ記憶媒体を含むことができ、ポータブル(CD、DVD、フロッピーディスク、usbメモリスティック、メモリカードなど)であってもよく、またはコンピュータシステム(ハードディスクドライブ、SSDなど)内にインストールされるように意図されてもよく、一般に「非一時的」コンピュータ可読媒体と呼ばれ得る。伝送媒体は、コンピュータシステムのコンポーネント(バス、ケーブルまたは他の相互接続部など)間、および/または(ワイヤードネットワークまたはワイヤレスネットワーク、アクセスネットワーク、ポイントツーポイントケーブルなどを介してなど)複数の別個のコンピュータシステム間で命令を搬送するために生成されることができ、搬送波、伝送信号などを含むことができる。
【0099】
ある観点から、食物中の汚染物質の存在に関連するリスクを予測するためのシステムおよび方法が説明されてきた。本方法は、食物、地理、および汚染物質を定義するクエリを受信することを含むことができる。次いで、本方法は、地理に関連して食物が汚染物質を含有するリスクを判定することができる。方法はまた、判定されたリスクに関連して1つ以上の推奨される管理アクションを含むクエリに対する応答を提供することを含む。
【0100】
本明細書に記載の本アプローチを実装するための説明された例に対する様々な変更および修正が、当業者にとって明らかになるという点を理解されたい。このような変更および修正は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、ならびに本発明の付随する利点を減らすことなく、なされることができる。よって、このような変更および修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
【0101】
本教示のさらなる実施例および特徴の組み合わせが、以下の番号付けされた条項で提示される。
[条項1]
食物または飼料製品中の汚染物質の存在に関連するリスクを予測するための方法であって、
食物または飼料、地理、および汚染物質を定義するクエリを受信することと、
前記地理に関連して前記食物または飼料が前記汚染物質を含有するリスクを判定することと、
判定された前記リスクに関連して1つ以上の指定された管理アクションを含む前記クエリに対する応答を提供することと、
を含む、方法。
[条項2]
前記応答が、判定された前記リスクをさらに含む、条項1に記載の方法。
[条項3]
前記食物または飼料、前記地理、および前記汚染物質のうちの少なくとも1つの特性を記述する1つ以上の特性データをデータストアから取得することをさらに含み、
前記判定することが、前記リスクを判定するために前記1つ以上の特性データを利用することを含む、条項1または2に記載の方法。
[条項4]
前記特性データが、前記地理を原産地とする食物または飼料中に前記汚染物質が発見される可能性があるリスクを記述するデータを含む、条項3に記載の方法。
[条項5]
前記特性データが、食物または飼料の問題のある成分としての前記汚染物質の固有の関連性を記述するデータを含む、条項3または4に記載の方法。
[条項6]
前記特性データが、前記食物または飼料、前記地理および前記汚染物質のうちの1つ以上に関連する分析データの存在を記述するデータを含む、条項3~5のいずれか一項に記載の方法。
[条項7]
前記特性データが、食物または飼料中の前記汚染物質についての規制限度または閾値を記述するデータを含む、条項3から6のいずれか一項に記載の方法。
[条項8]
前記特性データが、前記汚染物質に由来の特性を含む、条項3~7のいずれか一項に記載の方法。
[条項9]
前記特性データが、複数の異なるソースからのデータを含み、
前記方法が、マッピングスキームおよび/またはデータターム同義語プロトコルを使用して、第1のソースからのデータを第2のソースからのデータと比較する、条項3~8のいずれか一項に記載の方法。
[条項10]
汚染物質が、食物または飼料内に含まれ得る物質を含み、当該物質が、ヒトまたは動物による前記食物または飼料の消費時に潜在的に有害である、条項1~9のいずれか一項に記載の方法。
[条項11]
前記判定することが、前記汚染物質および前記汚染物質に密接に関連する化合物を考慮することを含む、条項10に記載の方法。
[条項12]
地理が、食物または飼料が栽培、収穫、加工および/または製造される地理的および/または地政学的領域である、条項1~11のいずれか一項に記載の方法。
[条項13]
食物または飼料が、食用製品を意図しているおよび/または食用製品の成分として使用される物質である、条項1~12のいずれか一項に記載の方法。
[条項14]
推奨される前記管理アクションが、
前記食物または飼料の発売を阻止する、
前記食物または飼料の発売を許可する、および/あるいは
前記食物または飼料の調達もしくは生産に関連して緩和アクションを実施する
という命令を含む、条項1~13のいずれか一項に記載の方法。
[条項15]
前記クエリを受信した後に、
データフォーマット変換、
命名処理、
共通項処理、
前記食物または飼料、前記地理、および前記汚染物質のうちの1つ以上の言語処理、
のうちの1つ以上を実行することをさらに含む、条項1~14のいずれか一項に記載の方法。
[条項16]
前記データフォーマット変換が、前記クエリを前記判定することに必要な1つ以上のデータフォーマットに適合させることを含む、条項15に記載の方法。
[条項17]
前記命名処理が、同義語処理および/または密接関連データ処理のうちの1つ以上を含む、条項15または16に記載の方法。
[条項18]
前記同義語処理が、食物または飼料、前記地理および前記汚染物質の同義語を含むように前記クエリを拡張することを含む、条項17に記載の方法。
[条項19]
前記密接関連データ処理が、たとえば、塩、エステル、代謝産物、分解産物、およびその汚染物質についての錯体残留物などの前記汚染物質に密接に関連する化合物の定義を含むように前記クエリを拡張することを含む、条項17または18に記載の方法。
[条項20]
前記言語処理が、前記食物または飼料、前記地理および前記汚染物質のうちの少なくとも1つの別の言語への翻訳を含むように前記クエリを拡張することを含む、条項15~19のいずれか一項に記載の方法。
[条項21]
前記特性データが、複数のデータソースからの不均質データを含む、条項3、またはそれに従属する条項のいずれか一項に記載の方法。
[条項22]
前記特性データが、少なくとも100万個のデータポイントを含む、条項3に、またはそれに従属する条項のいずれか一項に記載の方法。
[条項23]
特定の管理アクションを必要とする汚染物質のショートリストを出力することをさらに含む、条項1~22のいずれか一項に記載の方法。
[条項24]
前記1つ以上の指定された管理アクションのうちの1つ以上のパフォーマンスを検証することをさらに含む、条項1~23のいずれか一項に記載の方法。
[条項25]
食物または飼料中の汚染物質の存在に関連するリスクを予測するためのシステムであって、条項1~24のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されたプログラム可能なコンピュータユニットを備える、システム。
[条項26]
命令を搬送するコンピュータ可読媒体であって、前記命令は、プログラム可能なコンピュータによって実行されると、プログラム可能なコンピュータに、条項1~24のいずれか一項に記載の方法を実行させるように前記プログラム可能なコンピュータを構成する媒体。
[条項27]
食物または飼料中の汚染物質の存在に関連するリスクを予測する方法であって、前記方法が、
(i)ローカルまたはネットワーク/インターネットデータベースから入力データのセットを提供するステップであって、前記データが、原材料に関連する汚染物質のタイプ、地理のタイプ、および食物または飼料のタイプを含む、ステップと、
(ii)前記地理のタイプに関連して、前記食物または飼料中の前記汚染物質の存在に関連する前記リスクを評価するステップと、
(iii)前記汚染物質に関連するリスクのレベルを提供するステップと、
(iv)前記リスクに関連して、推奨されるアクションのセットを提供するステップと、
を含む、方法。
[条項28]
前記汚染物質のタイプが、農薬、獣医薬、人工環境汚染物質、または前記環境中に天然に存在する分子を含む、条項27に記載の方法。
[条項29]
農薬が、化学農薬またはバイオベース農薬を含む、条項28に記載の方法。
[条項30]
分子が、ポリ芳香族炭化水素または他の焼却もしくはリサイクル副産物などの人工環境汚染物質である、条項28に記載の方法。
[条項31]
前記環境中に天然に存在する分子が、重金属または微生物を含む、条項28に記載の方法。
[条項32]
前記地理のタイプが、作物生産国および/または食物の販売国を含む、条項27~31のいずれか一項に記載の方法。
[条項33]
前記食物のタイプが、果実、野菜、または動物性成分を含む、条項27~32のいずれか一項に記載の方法。
[条項34]
前記推奨されるアクションのセットが、
前記汚染物質に関連する前記原材料の使用を阻止すること、あるいは、
前記汚染物質を自動監督計画に追加すること、および/または分析ポートフォリオを適合させること、および/または監査をトリガすることによって前記リスクを緩和することのいずれかを含む、条項27~33のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】