(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】歯科治療計画のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20241217BHJP
G16H 30/00 20180101ALI20241217BHJP
【FI】
G16H20/00
G16H30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024534170
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 SG2022050874
(87)【国際公開番号】W WO2023107001
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】10202113528S
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524214468
【氏名又は名称】キュー アンド エム デンタル グループ シンガポール (リミテッド)
【氏名又は名称原語表記】Q & M DENTAL GROUP SINGAPORE (LTD)
【住所又は居所原語表記】2 Clementi Loop, #04-01 Logis Hub Clementi, Singapore 129809, Singapore
(71)【出願人】
【識別番号】524214479
【氏名又は名称】イーエム2エーアイピーティーイー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EM2AIPTE LTD
【住所又は居所原語表記】2 Clementi Loop, #04-01 Logis Hub Clementi, Singapore 129809, Singapore
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エヌジー ,チン ショウ
(72)【発明者】
【氏名】チョン,カイ チュエン
(72)【発明者】
【氏名】サン,イ レオン
(72)【発明者】
【氏名】リム,シン イ
(72)【発明者】
【氏名】エヌジー,ジエン ミン
(72)【発明者】
【氏名】サントーソ,ナディア ナタニア
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ユー ムン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,ツェン ジエン
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
5L099AA26
(57)【要約】
本発明は、一般的に、個人の口腔状態を分析するために使用できる方法およびシステムに関する。これらの方法およびシステムは、口腔状態または疾患を特定して、個人に合わせた総合的な治療ケアプランを提供するのに使用できる。より具体的には、本発明は、特定された口腔状態または疾患に対する治療プランを生成するために人工知能機能を使用する方法およびシステムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の歯科治療計画を生成するためのコンピュータ実装方法であって、以下のステップ:
患者の歯科画像を含む患者データを受信するステップ;
AIモデルを使用して患者の歯科画像を分析し、患者の歯の検出、番号付け、および歯科の問題に関するAI予測を生成するステップ;
AI予測および1以上のユーザーから受信した入力に基づいて、歯科チャートを投入するステップ;
投入された歯科チャート、患者データ、および1以上のユーザーから受信した入力に基づいて、臨床意思決定支援システム(CDSS)を使用して完成した歯科アンケートを生成するステップ;
完成した歯科アンケートに基づいて、最終的な治療計画を生成するステップ;および
最終的な治療計画を1以上のユーザーに表示するステップ
を含む、前記コンピュータ実装方法。
【請求項2】
AI予測が、以下のコンポーネント:
幅および高さを備えた境界ボックスのx最小値、y最小値座標;
境界ボックス内にオブジェクトが存在する確率;および
境界ボックス内で検出されたオブジェクトのクラス確率
に基づく、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
AIモデルが、サイズが動的なオブジェクトを検出するための第1のディープラーニングCNN、およびサイズが静的なオブジェクトを識別するための第2のディープラーニングCNNを含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
第1のディープラーニングCNNが、サイズが動的なオブジェクトを検出するためのCenterNetモデルを含み、第2のディープラーニングCNNが、サイズが静的なオブジェクトを識別するためのEfficientDetモデルを含む、請求項3に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
CDSSが、ルールベースまたは知識ベースのCDSSである、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
ルールベースのCDSSが、有向グラフの形式のフレームワークを含む、請求項5に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
知識ベースのCDSSが、診断推論を作るための知識記述言語の作成に重点を置いた、ソフトウェアにコード化されたグラフルールの形式のフレームワークを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項8】
請求項1~7に記載の方法を実行するように構成されたプロセッサを含む、コンピュータシステム。
【請求項9】
コンピュータによって実行されると、コンピュータに請求項1~7に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項10】
コンピュータによってプログラムが実行されると、コンピュータに請求項1~7に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項11】
患者の歯科治療計画を生成するシステムであって、以下:
歯科画像を含む患者データを受信する、入力ユニット;
AIモデルを定義する命令を格納するように構成された、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体;
臨床意思決定支援システム(CDSS)を実行する、第1のサーバー;
AIモデルを定義する命令を実行する、第2のサーバー;
ここで、第2のサーバーは、以下:
AIモデルを使用して、患者の歯科画像に基づいて、歯の検出、番号付け、および歯科の問題に関するAI予測を生成すること;および
AI予測および1以上のユーザーから受信した入力に基づいて歯科チャートを投入すること、を含む操作を実行するように構成されており、
ここで、第1のサーバーは、以下:
CDSSを使用して1以上のユーザーから受信した歯科チャートおよび入力に基づいて、完成した歯科アンケートを生成すること;および
CDSSを使用して、完成した歯科アンケートに基づいて最終的な治療計画を生成すること、を含む操作を実行するように構成されており、および
歯科チャート、アンケート、および最終的な治療計画をユーザーに伝えるように構成されている、出力ユニット
を含む、前記システム。
【請求項12】
AIモデルが、入力された歯科画像のオブジェクト検出のための画像認識および位置特定を組み合わせて、歯科の問題に関連する歯の番号付けおよび分類のために歯の位置を検出および識別する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
歯の周囲に境界ボックスを形成することによって、歯の位置特定および歯の番号付けが判定される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
AI予測が、以下のコンポーネント:
境界ボックスのx最小値、y最小値座標、および幅および高さ;
境界ボックス内にオブジェクトが存在する確率;および
境界ボックス内で検出されたオブジェクトのクラス確率
に基づく、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
境界ボックスが、歯科画像に取り込まれた各歯の境界を定義し、検出された各歯に番号を割り当てる、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
AIモデルが、サイズが動的なオブジェクトを検出するための第1のディープラーニングCNN、およびサイズが静的なオブジェクトを識別するための第2のディープラーニングCNNを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
第1のディープラーニングCNNが、サイズが動的なオブジェクトを検出するためのCenterNetモデルを含み、第2のディープラーニングCNNが、サイズが静的なオブジェクトを識別するためのEfficientDetモデルを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
CDSSが、ルールベースまたは知識ベースのCDSSである、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
ルールベースのCDSSが、有向グラフ形式のフレームワークを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
知識ベースのCDSSが、診断推論を作るための知識記述言語の作成に重点を置いた、ソフトウェアにコード化されたグラフルールの形式のフレームワークを含む、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、個人の口腔状態を分析するために使用できる方法およびシステムに関する。これらの方法およびシステムは、口腔状態または疾患を識別して、個人に合わせた総合的な治療ケアプランを提供するのに使用できる。より具体的には、本発明の分野は、識別された口腔状態または疾患に対する治療プランを生成するために人工知能機能を使用する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用レントゲン写真やデジタル画像は、病変の発見や個人の歯の状態の治療の進行状況のモニタリングに歯科医によって広く使用されている。デジタル歯科用レントゲン写真や画像には、即時利用可能、放射線量が低い、画像強調や画像再構成が可能などの利点があり、臨床診断におけるデジタル歯科画像の使用は過去10年間で大幅に増加した。
【0003】
しかし、デジタル歯科画像の普及が急速に進んでいるにもかかわらず、経験豊富な歯科医であってもレントゲン写真の誤診が発生する可能性は高い。さらに、歯科医間の検査者内および検査者間の合意は非常に低い。
【0004】
歯科虫歯、歯周病、欠損歯は、個人の生活の質に影響を与え、重要な健康問題を引き起こす最も一般的な口腔疾患および状態の一部である。口腔状態または疾患の効果的な管理は、リスク要因、治療計画、治療結果、発症率および進行率など、多くの知識を必要とする意思決定の推論に大きく依存している。これらすべては、個人の口腔状態を検査する医療従事者の専門的判断に委ねられている。しかしながら、医療従事者が常に正しい決定を下す能力は、推論能力や記憶能力などの認知機能によって限定される。これらの要因により、異なる医療従事者による決定に相違が生じ、過剰治療または治療不足につながることが多いため、深刻な問題となる。
【0005】
虫歯、歯周病、欠損歯などの口腔の状態や疾患の管理のための臨床意思決定支援システム(CDSS)の開発を通じて、推論の不確実性と歯科医師の意思決定の相違を限定する必要がある。
【0006】
WO201994504A1は、歯科用レントゲン写真の特徴、すなわち歯科病変を分析および検出するための機械学習システムおよび方法を開示している。特に、口腔領域に焦点を合わせた実際の顔の画像に基づいてオブジェクト検出が実行され、口腔領域の周りに境界ボックスが描かれ、その後にUNetセグメンテーションモデルがピクセルごとに歯であるかどうかを判定する。この開示は、歯の番号とその位置の両方を同時に検出するためにX線画像を使用することには基づいていない。
【0007】
CN109528323Aは、人工知能に基づく歯列矯正方法および装置を開示している。特に、Generative Adversarial Network(GAN)モデルは、個人の歯のセットの3D再構成の作成に役立つ。GANモデルは、歯列矯正の問題による影響を証明する支援をする。CTスキャンは、時間的コンポーネントのないX線とは異なり、口腔の時間的スライスを作成するために使用される。
【0008】
CN105260598Aは、歯科診断および治療の意思決定支援システム、および疾患の診断において最も類似した推奨症例を取得し、意思決定データを自動的に提供する意思決定方法を開示している。特に、スクリーニング速度を高速化するために、診断において最も類似した症例を取得するために3段階のスクリーニング方法が採用されている。意思決定支援システムは、症例研究を活用し、それを数値表現に変換し、症例までのユークリッド距離に基づいて一致を判定し、これは、ルールベースでより判定論的な性質を有する医療指令に基づくものとは対照的である。
【0009】
これらの点では、歯科チャート、口腔状態の分析、および必要に応じて総合的な治療計画を生成できる人工知能機能を採用する自動化システムおよび方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第1の目的は、患者の歯科治療計画を生成するためのコンピュータ実装方法であって、以下のステップ:AIモデルを使用して患者の歯科画像を含む患者データを分析し、患者の歯の検出、番号付け、歯科の問題に関するAI予測を生成するステップ;AI予測および1以上のユーザーから受信した入力に基づいて、歯科チャートを投入するステップ;投入された歯科チャートおよび1以上のユーザーから受信した入力に基づいて、臨床意思決定支援システム(CDSS)を使用して完成した歯科アンケートを生成するステップ;完成した歯科アンケートに基づいて、最終的な治療計画を生成するステップ;および最終的な治療計画を1以上のユーザーに表示するステップ、を含むことができる、前記コンピュータ実装方法を提供することである。
【0011】
別の目的は、本明細書に開示された方法を実行するように構成されたプロセッサを含むコンピュータシステムを提供することである。
【0012】
さらなる目的は、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに本明細書に開示された方法を実行させる命令を含むコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供することである。
【0013】
別の目的は、患者の歯科治療計画を生成するシステムであって、以下:歯科画像を受信する、入力ユニット;AIモデルを定義する命令を格納するように構成された、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体;臨床意思決定支援システム(CDSS)を実行する、第1のサーバー;AIモデルを定義する命令を実行する、第2のサーバー;ここで、第2のサーバーは、以下:AIモデルを使用して、患者の歯科画像に基づいて、歯の検出、番号付け、および歯科の問題に関するAI予測を生成すること;およびAI予測および1以上のユーザーから受信した入力に基づいて歯科チャートを投入すること、を含む操作を実行するように構成されており、ここで、第1のサーバーは、以下: CDSSを使用して1以上のユーザーから受信した歯科チャートおよび入力に基づいて、完成した歯科アンケートを生成すること;およびCDSSを使用して、完成した歯科アンケートに基づいて最終的な治療計画を生成すること、を含む操作を実行するように構成されており、および歯科チャート、アンケート、および最終的な治療計画をユーザーに伝えるように構成されている、出力ユニットを含むことができる、前記システムを提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、説明が進むにつれて明らかになるであろう。
【0015】
上記および関連する目的を達成するために、本発明は、添付の図面に示された形態で実施することができるが、図面は例示に過ぎず、添付の請求項の範囲内で、図示および説明された特定の構成に変更を加えることができることに留意されたい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
定義
本明細書で使用されている用語は、一般に、当該技術分野、開示の文脈、および各用語が使用されている特定の文脈において、通常の意味を有する。開示内容を説明するために使用される特定の用語については、開示の説明に関して実務者に追加のガイダンスを提供するために、以下または本明細書の他の場所で議論する。同じ物が複数の方法で表現できることは理解できるであろう。
【0017】
そのために、ここで議論されている用語の任意の1以上に対して、代替的な言語および同義語が使用される場合がある。また、用語がここで詳しく述べられてまたは議論されているかどうかに特別な意味を置く必要はない。特定の用語の同義語が提供されている。1以上の同義語の記載は、他の同義語の使用を排除するものではない。本明細書のどこででも、ここで議論されている用語の例を含む例の使用は、説明のみを目的としており、開示の範囲および意味、または例示されている用語をさらに限定することを意図したものではない。同様に、開示は、本明細書に記載されているさまざまな実施形態に限定されない。
【0018】
本書で使用される以下の単語および用語は、以下に示す意味を有する。
【0019】
「口腔状態」または「口腔疾患」という用語は、虫歯、歯周病、欠損歯、クラウン、ブリッジ、インプラント、充填、オンレー、インレー、ベニア、修復の失敗または欠陥(充填、クラウン、ブリッジ、ベニア、インレー、オンレー)、根管治療、ポストとコア、埋伏歯、部分的に萌出している歯、萌出していない歯、乳歯、骨折、根尖病変、残存歯根、口腔および顎顔面病変、口腔解剖学的ランドマーク、適用される歯列矯正基準に照らして望ましくない患者の歯の配置、および/またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。歯の配置は、オーバーバイト、交叉咬合、開咬、オーバージェット、アンダーバイトなど、医学的、歯列矯正的、審美的、およびその他の理由で望ましくない場合がある。
「アプリケーションプログラミングインターフェイス」または「API」という用語は、ソフトウェアを構築するためのサブルーチン定義、プロトコル、およびツールのセットを指す。一般的に言えば、さまざまなコンポーネント間の通信方法を明確に定義したセットである。
「クラウド」または「クラウドコンピューティング」という用語は、多くの場合インターネット経由で、最小限の管理労力で迅速にプロビジョニングできる、構成可能なシステムリソースと高レベルサービスの共有プールへのユビキタスアクセスを可能にする情報技術(IT)パラダイムを指す。
【0020】
「畳み込みニューラルネットワーク」(「CNN」)という用語は、当技術分野で従来から使用されている用語で、一般的にはコンピュータビジョンタスク用の強力なツールを指し、ディープラーニングCNNを定式化して、画像などの生データから取得した中レベルおよび高レベルの抽象化を自動的に学習できる。畳み込み層は1以上の畳み込みカーネルを含むことができ、各畳み込みカーネルには入力テンソルがあり、入力テンソルは同じでも、異なるフィルターに対応する異なる係数がある。層内の各畳み込みカーネルは異なる出力マップを生み出すため、出力ニューロンはカーネルごとに異なる。畳み込みネットワークは、1以上の出力マップのニューロングループ出力を結合するローカルまたはグローバルの「プーリング」レイヤーも含む場合がある。出力の結合は、たとえば、「プーリング」レイヤーの出力マップ上の対応する出力について、ニューロングループの出力の最大値または平均値を取得することで構成される。「プーリング」レイヤーにより、ネットワーク内の1つのレイヤーから別のレイヤーへの出力マップのサイズを縮小できると同時に、入力データの小さな変形や変換に対する耐性を高めることでパフォーマンスレベルを向上させることができる。以下に、基本的なCNNの動作を示す擬似コードアルゴリズムの例を示す。
【数1】
【0021】
「機械学習」(「ML」)という用語は、明示的にプログラムしなくても経験から学習して改善する能力をシステムに提供する人工知能(AI)のアプリケーションを指す。機械学習は、データにアクセスしてそれを使用して自ら学習できるコンピュータプログラムの開発に重点を置いている。
【0022】
「ディープラーニング」(「DL」)という用語は、人工ニューラルネットワークと呼ばれる脳の構造と機能にヒントを得たアルゴリズムに関する機械学習のサブフィールドである。ディープラーニングモデルのメリットとしてよく挙げられるのは、生データから自動的に特徴を抽出できることであり、これは特徴学習とも呼ばれる。
【0023】
「モジュール」という用語は、たとえば、電子的コンポーネントと関連する配線のアセンブリ、またはコンピュータソフトウェアの一部など、それ自体が定義されたタスクを実行し、他のそのようなユニットとリンクしてより大きなシステムを形成できる自己完結型のユニットを指す。
【0024】
「サーバー」という用語は、データ、信号、またはその他の情報を処理する適切なハードウェアおよび/またはソフトウェアシステム、メカニズム、またはコンポーネントを含む。サーバーは、汎用中央処理ユニット(CPU)、マルチプロセッシングユニット、特定の機能を実装する専用回路、またはその他のシステムを含む場合がある。プロセスは地理的な場所に限定される必要はなく、時間制限がある必要もない。たとえば、サーバーは「リアルタイム」、「オフライン」、「バッチモード」などで機能を実行できる。処理のいくつかは、別の(または同じ)処理システムによって異なる時間と場所で実行できる。サーバーシステムの例としては、クライアント、エンドユーザーデバイス、ルーター、スイッチ、ネットワークストレージなどがある。コンピュータは、メモリと通信する任意のサーバーである。メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートディスク(SSD)、またはその他の有形媒体など、サーバーによって実行される命令を保存するのに適した、プロセッサが読み取り可能な任意の適切なストレージ媒体である。
【0025】
別途指定がない限り、「含む(comprising)」および「含む(comprise)」という用語、およびその文法上の変形は、「オープン」または「包括的な」言語を表すことを意図しており、列挙された要素を含み、さらに列挙されていない追加の要素を含むことも許可する。
【0026】
本開示全体を通じて、特定の実施形態は範囲形式で開示される場合がある。範囲形式での記述は、単に便宜上および簡潔にするためであり、開示された範囲の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記述は、その範囲内の個々の数値だけでなく、すべての可能なサブ範囲を具体的に開示したものとみなされるべきである。たとえば、1~6の範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6までなどのサブ範囲を具体的に開示したものとみなされるべきであり、また、その範囲内の個々の数値、たとえば1、2、3、4、5、および6も開示されている。これは、範囲の広さに関係なく適用される。
【0027】
本明細書で例示的に説明される発明は、本明細書で具体的に開示されていない要素または限定がない場合でも適切に実施することができる。したがって、例えば、「含む(comprise)」、「含む(include)」、「含有する(containing)」などの用語は、拡張的にかつ限定なく解釈されるものとする。さらに、本明細書で使用されている用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、また、そのような用語および表現の使用において、示され説明されている特徴またはその一部の同等物を排除する意図はないが、請求された発明の範囲内でさまざまな変更が可能であることは認識されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明のその他のさまざまな目的、特徴、および付随する利点は、添付の図面と併せて検討するとよりよく理解され、図面では、同じ参照文字は複数の図を通して同じまたは類似の部品を示し、完全に理解されるであろう。ここで:
【0029】
【
図1】
図1は、本明細書に開示されるシステムおよび方法のさまざまな計算ハードウェアの実施形態を示す図である。
【0030】
【
図2】
図2は、本明細書に開示される第2のサーバーで使用されるモジュールの構造と、それらのモジュール同士およびコンピュータシステムのハードウェアとの動作関係の実施形態を示す図である。
【0031】
【
図3】
図3は、患者の治療計画を作成するために本明細書に開示された方法に包括される一般的なステップおよびプロセスの代表的なワークフローである。
【0032】
【
図4】
図4は、計算ハードウェア、ソフトウェアコンポーネント、および歯科チャート、歯科アンケート、治療計画オプションに関するユーザーからの入力間のシステムと動作の関係を示す代表的なフローチャートである。
【0033】
【
図5】
図5は、本明細書に開示された深層学習CNNのトレーニングに使用されるモジュールの構造と、それらのモジュール相互およびコンピュータシステムのハードウェアとの動作関係の実施形態を示す図である。
【0034】
【
図6A】
図6Aは、本明細書に開示されたCDSSおよび第1のサーバーの実施形態とそれらの相互の動作関係を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、計算ハードウェア、ソフトウェアコンポーネント、およびユーザーからの入力間のCDSSの動作関係と、それらがCDSSとどのように対話するかを示す代表的なフローチャートである。
【0035】
【
図7A】
図7Aは、出力ユニットを介してユーザーに提供されるダッシュボードの代表的なスクリーンショットであり、アンケートおよび最終的な治療計画の例示的なプレゼンテーションを示している。
【
図7B】
図7Bは、出力ユニットを介してユーザーに提供されるダッシュボードの代表的なスクリーンショットであり、アンケートおよび最終的な治療計画の例示的なプレゼンテーションを示している。
【
図7C】
図7Cは、出力ユニットを介してユーザーに提供されるダッシュボードの代表的なスクリーンショットであり、アンケートおよび最終的な治療計画の例示的なプレゼンテーションを示している。
【
図7D】
図7Dは、出力ユニットを介してユーザーに提供されるダッシュボードの代表的なスクリーンショットであり、アンケートおよび最終的な治療計画の例示的なプレゼンテーションを示している。
【
図7E】
図7Eは、出力ユニットを介してユーザーに提供されるダッシュボードの代表的なスクリーンショットであり、アンケートおよび最終的な治療計画の例示的なプレゼンテーションを示している。
【
図7F】
図7Fは、出力ユニットを介してユーザーに提供されるダッシュボードの代表的なスクリーンショットであり、アンケートおよび最終的な治療計画の例示的なプレゼンテーションを示している。
【0036】
【
図8】
図8は、本明細書に開示された方法およびシステムに入力されるX線画像の例である。
【0037】
【
図9】
図9は、本明細書に開示された方法およびシステムで投入される歯科チャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の説明では、本明細書の一部を構成する添付図面を参照するが、添付図面には、本発明を実施できる特定の例が例示として示されている。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用されてもよく、構造上の変更が行われてもよいことは理解されるはずである。
【0039】
本明細書では、患者の口腔の状態を分析して、当該患者の診断および治療計画の提供を支援するためのコンピュータ実装の方法およびシステムを開示する。本明細書で開示される方法およびシステムは、視覚的に単純な方法で患者に口腔の状態に関する知識を提供し、「未検出」の歯の問題のリスクを軽減して、患者が可能な限り早期に治療を受けられるようにする。理解できるように、歯の問題および口腔状態または疾患の早期検出および治療は、検出が遅れた結果として将来的に費用のかかる治療を防ぐことができる。したがって、生成される診断および治療計画は、歯科専門家(歯科医など)の分析のみに基づくものではなく、その専門家の訓練、能力、および学歴の高さによって大きく異なる可能性がある。
【0040】
本明細書で開示する方法とシステムは、開発され訓練された人工知能機能を使用して患者の口腔の状態に関する洞察を提供することにより、診断および歯科チャート作成から患者の治療ケアの考案に至るまで、エンドツーエンドのソリューションを提供することを目指している。採用されている人工知能機能は、患者の歯科画像を分析して洞察を提供し、歯科専門家の手作業では見逃されていた可能性のある臨床的に重要な情報を推測することができる。
【0041】
患者のための医療用の治療計画オプションを生成するために、人工知能(AI)をCDSSと組み合わせて使用することができる。この点で、患者の口腔状態をAIモデルで分析して口腔状態や疾患を識別し、その出力をCDSSに入力して診断と個人に合わせた治療計画オプションの生成を支援することができる。
【0042】
患者データ(歯科画像など)の分析におけるソフトウェアのみのシステムのパフォーマンスは、正確な結果と誤読防止に必要なレベルに達しないことが多いことは理解できる。したがって、人工知能機能の採用に加えて、本明細書で開示する方法とシステムは、歯科専門家の知識と入力を活用することができる。特に、意思決定プロセスと総合的な治療計画の生成を容易にするために、本明細書に開示される方法およびシステムは、ソフトウェアコンポーネントだけでは実行できない、またはうまく実行できない特定の更新、決定、および選択を実行する際に、歯科専門家(つまり、ユーザー)からの入力を利用できる。この点に関して、本明細書で開示された方法とシステムは、患者の口腔状態を分析する際の共生的な人間と機械のアプローチを表しており、コンピュータと人間のデータ処理のそれぞれの長所を組み合わせながら、必要な人間の関与を最小限に抑えている。そのために、患者に対する診断と治療計画は、人工知能と人間の知能を組み合わせたベースで作成できる。
【0043】
理解されるように、本明細書で説明するシステムおよび方法は、ハードウェアとソフトウェアの両方の組み合わせを使用してコンピュータ上で実装できる。さまざまな側面をプログラム可能なコンピュータ上で実装でき、各コンピュータは、1以上の入力ユニット、データ記憶媒体、ハードウェアプロセッサ、および出力ユニットまたは通信インターフェイスを含む。サーバー、サービス、ユニット、モジュール、インターフェイス、ポータル、プラットフォーム、またはコンピューティングデバイスから構成されるその他のシステムなどの用語の使用は、コンピュータ読み取り可能なストレージ媒体に格納されたソフトウェア命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを備えた1以上のコンピューティングデバイスを表すものとみなされる。たとえば、サーバーは、説明されている役割、責任、または機能を果たす方法でWebサーバー、データベースサーバー、またはその他の種類のコンピュータサーバーとして動作する1以上のコンピュータを含む場合がある。
【0044】
一実施形態では、本明細書に記載のシステムおよび方法は、少なくとも1つの歯科画像を入力するための1以上の入力ユニット、AIモデルおよびCDSSを定義する命令を格納するように構成された1以上のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体、AIモデルおよびCDSSを定義する命令を実行する1以上のサーバー、1以上のデータベース、1以上のクラウドストレージシステム、および1以上の出力ユニットを含むことができる。
【0045】
図1は、本明細書に開示された方法およびシステムで使用できる計算ハードウェアの代表的な実施形態を示している。1つの実施形態では、本明細書に開示された方法およびシステムは、一般的に、ユーザーから歯科画像を受信して第1のサーバーに入力するための入力ユニットを含むことができる。第2のサーバーは、第1のサーバーと通信して、1以上のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体にソフトウェア命令として保存されているAIモデルにアクセスして実行することができる。AIモデルは、第1のサーバーおよび第2のサーバーを介してデータベースとクラウドストレージシステムの両方と通信することができる。第1のサーバーは、CDSSを備えて実行することもできる。第1のサーバーを介してユーザーと通信するように出力ユニットを含めて構成することができる。
【0046】
一実施形態では、ユーザーは、1以上の個人、1以上の患者、1以上の歯科医師または臨床専門家、1以上の医師、およびその他の利害関係者/関係者を含む。
【0047】
一実施形態では、システムの入力ユニットは、1以上のデータベース、クラウドストレージシステム、または画像キャプチャデバイスからの入力を受信できる任意の計算デバイスまたは入力モジュールを含むことができる。一実施形態では、歯科画像は、ユーザーが入力ユニットを介して入力するか、画像キャプチャデバイスをコンピュータシステムに統合することによって入力できる。たとえば、コンピュータシステムをX線装置と統合して、X線写真をコンピュータシステムに読み込むことができる。入力された歯科画像は、出力ユニット(つまり、ユーザーインターフェイス)を介して表示され、確認することができる。
【0048】
一実施形態では、第1のサーバーは、統合歯科管理システム(IDMS)サーバーなどのWebベースのデータベースサーバーであり得る。
【0049】
一実施形態では、第2のサーバーはAIサーバーであり得る。AIサーバーは、投入された歯科画像の推論のためにここに開示されたAIモデルを実行し、歯科チャートを作成するためのAI予測を提供できるCPUパワーを有する、従来使用されている任意の仮想マシンであり得る。
図2は、コンピュータシステムのソフトウェアコンポーネントとハードウェアコンポーネント間の動作関係のためのさまざまな通信リンクを使用してAIモデルを展開する第2のサーバーの構造の代表的な実施形態を示している。特に、第2のサーバーは、第1のサーバー、第1のサーバーを介したデータベース、およびAIモデルを使用して歯科画像を分析するためのクラウドストレージシステムにアクセスしたり通信したりすることができる。1つの実施形態では、第2のサーバーは、AIモデルを展開または実行してAI予測を提供するための前処理モジュール、後処理モジュール、アプリケーションプログラミングインターフェイス(API)エンドポイントモジュールを含むことができる。前処理モジュールは、歯科画像をAIモデルが使用できる適切な形式に変換できる。後処理モジュールは、AIモデルからの生の出力を、第1のサーバーが使用できる適切な形式に変換し、歯に関するすべてのAI予測がどこに属するかを判定する。
【0050】
一実施形態では、データベースはローカルメモリストアとして機能し、永続性のあるメモリキャッシュにすることができる。データベースは、リレーショナル、NoSQL、その他のディスクストレージベースのデータベースにすることもできる。データベースへのデータの入力と出力は、1以上の内部APIによってルーティングできる。データベースに保存されるデータは、AIモデルによって出力されたAI予測、トレーニングされたAIモデルのモデルレジストリ、展開されたAIモデルのモデル展開ログ、個々の歯科画像に対するAI予測の監査ログなどを含むが、これらに限定されない。以下で述べるように、AI予測は境界ボックスデータの形式にすることができる。
【0051】
一実施形態では、クラウドストレージシステムは、WiFi、Bluetooth(登録商標)、Sigfox、Lora、IoT、セルラーなどの通信スペクトルに基づくリンクを介して、第1および第2のサーバーからデータを保存できる。1以上のAPIにより、クラウドストレージシステムと第1および/または第2のサーバー間のデータ転送が可能になる。1以上のAPIは、データおよびリクエストをルーティングするためにクラウドストレージシステムと通信できる。一実施形態では、クラウドストレージシステムに保存されるデータは、生の歯科画像、TF(TensorFlow)レコードファイル、AIモデルの重み、追跡用AIモデルのログファイル、および患者データを含むが、これらに限定されない。この点で、TFレコードファイルとは、境界ボックスデータを示し、Tensorflowフレームワークによる使用のために最適化されたAIモデルによって処理された歯科画像を指す。患者データは、患者の病歴、歯科歴、社会歴、バイオデータ(年齢、性別など)を含む。AIモデルの重みは、AIモデルのトレーニング後にAIモデルの数学的関数で導出された数学的値を参照できる。
【0052】
一実施形態では、出力ユニットは、最終的な治療計画結果に加えて、本明細書に開示された方法の1つ以上の段階の出力をユーザー端末に伝達または表示することができる。この点で、出力は第1のサーバー、より具体的にはIDMSサーバーを介して表示することができ、これにより、1以上のAPIが要求に応じて第1のサーバーと通信し、出力ユニットを介して出力を表示する。一実施形態では、出力ユニットは、最終的な治療計画結果に加えて、本明細書に開示された方法の1つ以上の段階の出力を表すダッシュボードをユーザーに伝達または表示することができる。
【0053】
一実施形態では、出力ユニットはグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)を含むことができる。一実施形態では、GUIは、患者データ、歯科チャート、歯科アンケート、治療計画オプション、および最終的な治療計画をロードして表示する機能を有することができる。一実施形態では、出力ユニットは、患者データ、歯科チャート、歯科アンケート、および治療計画オプションに関連するシステムからの出力をユーザーが選択的に構成または更新できるようにすることができる。一実施形態では、GUIはダッシュボード表示システムを含むことができ、これによりユーザーはシステムからの出力を選択的に構成または更新できる。ダッシュボードは、メニュー項目のインタラクティブデータベースを含むことができ、ユーザーは、タッチスクリーン技術または作動可能なボタンを使用して、表示する項目を選択し、希望する表示項目と表示項目の外観を選択するために、このデータベースにアクセスできる。
【0054】
本明細書に開示されるコンピュータシステムのアーキテクチャ設計は、ユーザーから得られたデータの作成、アクセス、使用、およびAIモデルとCDSSを介した歯科画像の処理、ならびにAIモデルのトレーニングのためのAPIを提供する。1つの実施形態では、本明細書に開示されたシステムで利用されるAPIは、エンドポイントAPI、オブジェクト検出API、推論API、トレーニングAPI、およびCDSS APIを含む。理解されるように、1以上の追加APIがデータベースとクラウドストレージシステムをリンクして、サーバーとの間でデータを転送できる。
【0055】
さらに、本明細書で開示されるコンピュータシステムは、追加のコンポーネントを含むことができる。たとえば、システムは、システムのコンポーネントを相互接続するバス、コントローラ、ネットワークなどの1以上の通信チャネルまたは相互接続メカニズムを含むことができる。オペレーティングシステムソフトウェアのさまざまな実施形態では、コンピュータシステムで実行されるさまざまなソフトウェアの動作環境を提供し、コンピュータシステムのコンポーネントのさまざまな機能を管理する。通信チャネルは、通信媒体を介してさまざまな他のコンピューティングエンティティと通信することを可能にする。通信媒体は、プログラム命令などの情報、または通信媒体内のその他のデータを提供する。通信媒体は、電気、光、無線周波数、赤外線、音響、マイクロ波、Bluetooth(登録商標)、またはその他の伝送媒体で実装された有線または無線の方法論を含む。
【0056】
一実施形態では、患者の歯科治療計画を生成するためのシステムが提供され、このシステムは、以下:歯科画像を受信するための1以上の入力ユニット;AIモデルおよびCDSSを定義する命令を格納するように構成された1以上のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体;少なくとも1つのAIモデルおよびCDSSを定義する命令を実行するための1以上のサーバー;データベース;クラウドストレージシステム;および結果をユーザーに伝えるように構成された出力ユニット、を含むことができ、ここで、1以上のサーバーは、以下の操作:AIモデルを使用して歯科画像に基づいてAI予測を生成すること;AI予測と1以上のユーザーから受信した入力に基づいて歯科チャートを投入すること;CDSSを使用して歯科チャートと1以上のユーザーから受信した入力に基づいて、CDSSを使用して完成した歯科アンケートを生成すること;CDSSを使用して完成した歯科アンケートに基づいて最終的な治療計画を生成すること;を含む操作を実行するように構成できる。
【0057】
別の実施形態では、患者の歯科治療計画を生成するためのシステムが提供され、このシステムは、以下:歯科画像を受信するための入力ユニット;AIモデルおよびCDSSを定義する命令を格納するように構成されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体;AI予測およびユーザー入力に基づいて歯科チャートを投入し、ユーザー入力に基づいて完成した歯科アンケートおよび最終的な治療計画を生成するためのCDSSを定義する命令を実行する第1のサーバー;AI予測を生成するためのAIモデルを定義する命令を実行する第2のサーバー;データベース;クラウドストレージシステム;結果をユーザーに伝えるように構成された出力ユニット;を含むことができる。
【0058】
図3は、患者の治療計画を生成するために本明細書で開示されたコンピュータシステム上で実行できる方法に関与する代表的なワークフローとステップを示している。
【0059】
患者の口腔状態の分析と治療計画の生成は、ステップ101で始まり、最初に処理する患者の歯科画像を第1のサーバーに入力する。入力された患者の歯科画像は、グラフィカルユーザーインターフェイスなどの出力ユニットを介して第1のサーバーからユーザーに伝えられる。
【0060】
患者の歯科画像は、X線画像などのレントゲン写真であり得る。1つの実施形態では、X線画像は、咬合画像、根尖画像、またはオルソパントグラム/パノラマ画像であり得る。
【0061】
ステップ102では、ユーザーの要求に応じて、第1のサーバーは第2のサーバーにAIモデルを実行して歯科画像を処理してAI予測を生成するように指示できる。AI予測は、AIモデルの結合された出力または推論結果に基づいて、歯の番号、歯科の問題、修復に関する予測を提供できる。たとえば、AI予測は、以下のコンポーネント:1)境界ボックスのx-min、y-min座標、および幅と高さ(x-minおよびy-minは、境界ボックスの左上隅の座標である);2)境界ボックス内にオブジェクトが存在する確率;および、3)境界ボックス内で検出されたオブジェクトのクラス確率;に基づいて行うことができる。ステップ103に送信する前のこのプロセスの例示的な擬似コードを以下に示す。
【数2】
【0062】
ステップ103では、AI予測が第2のサーバーから第1のサーバーに送信される。第1のサーバーは、受信したAI予測に基づいて歯科チャートを投入する。ステップ104では、歯科チャートとそこに表示されている情報をチェックする目的で、投入された歯科チャートをユーザーインターフェイス経由でユーザーに伝えることができる。新しい臨床情報、患者データ、検査結果で歯科チャートを変更または更新する必要がある場合、または矛盾を修正する必要がある場合、ユーザーは歯科チャートを選択的に編集できる。最終的な更新された歯科チャートは、第1のサーバーによるさらなる処理のためにユーザーが確認および検証できる。
【0063】
ユーザーインターフェイスは、生成されたAI予測をユーザーが確認または拒否したり、任意の歯の情報を追加したりするための要素を含むことができる。
【0064】
歯科チャートを表示するユーザーインターフェイスでは、歯科チャート上の視覚要素やラベルで示される歯の問題に加えて、検出された歯を番号で表示できる。視覚要素の位置と寸法は、検出された歯の問題の種類に応じて視覚的に区別できる。たとえば、非病理学的状態は画像上で第1の色でマークされ、病理学的状態は別の色でマークされる。ユーザーインターフェイスは、ユーザーが患者の口腔の物理的な確認と評価に基づいて視覚要素を追加または削除できるようにするユーザーインターフェイス要素を含むことができる。
【0065】
標準的な記号番号付き歯科チャートを表示でき、これは、必要に応じて、成人の歯または乳歯の完全な歯列の典型的な配置を表す複数の歯を含み、歯の位置、数、および検出された歯の問題にマッピングまたは相関付けられる。歯科チャートは、歯の問題の位置(表面または歯のレベルなど)を示すために色分けできる。さらに、標準チャートに表示される歯が検出されない(歯が抜けているなど)歯も黒く表示できる。したがって、歯科チャートに象徴的に描かれた歯は、境界ボックスやその他の視覚要素によって識別される関心領域と相関させることができる。検出されたが、それ以外は歯科上の問題がない歯(つまり、「正常な」歯)は、歯科チャートから省略することも、正常として含めて表示することもできる。
【0066】
一実施形態では、歯科チャートには、各歯のAI予測をリストした表が添付されることがある。
【0067】
ユーザーが入力された歯科チャートとその中の情報を確認し、必要に応じて修正した後、最終的な歯科チャートを投入することができる。
【0068】
ステップ105では、最終的な検証済み歯科チャートに基づいて、第1のサーバーがCDSSに指示して実行し、部分的に完了した歯科アンケートを生成する。この文脈では、「部分的に」とは、1以上の質問に回答がない不完全なアンケートを指す場合がある。アンケートは、クラウドストレージシステムに保存されている患者データと最終的な歯科チャートの両方から回答の一部が自動的に抽出されるため、部分的に完了する場合がある。
【0069】
第1のサーバーは、回答済みの質問と未回答の質問の両方を含む部分的に完了した歯科アンケートをユーザーに送信できる。ステップ106で、ユーザーは回答済みの質問をチェックし、未回答の質問を完了して、第1のサーバーがさらに処理できるように完了した歯科アンケートを提供できる。
【0070】
一実施形態では、質問は、歯科の問題の位置、歯科の問題の症状、患者のバイオデータ、および治療オプションに関連する単一および/または複数の選択肢の質問の形式にすることができる。一実施形態では、質問は、単一および/または複数の選択肢の質問に加えて、「はい」または「いいえ」の質問の形式にすることができる。
【0071】
一実施形態では、アンケートは、患者バイオデータ、歯科チャートに示されている各歯科問題、および治療オプション用の個別のインタラクティブセクション(タブ)とともに、ユーザーインターフェイスまたはダッシュボードを介してユーザーに提示できる。一実施形態では、アンケートは、一般的な患者バイオデータのセクションと各歯科問題用のセクションを含むことができる。これらの各セクションは、ユーザーが回答する歯科問題に応じた一連の事前設定された質問を含むことができる。一般的な患者のバイオデータのセクションは、患者の病歴、歯科歴、社会歴、一般的な歯科リスク要因、および患者が現在呈している症状(例:発熱、口臭、歯茎の出血、全身の痛みなど)に関する質問を含むことができる。各歯科問題のセクションは、その歯科問題に該当する歯の番号、表面レベルまたは歯レベル(例:近心、咬合、遠心、頬側、舌側)での歯科問題の位置、および歯科問題の症状に関連する1以上の質問を示す、投入済みの歯科チャートの表現を含むことができる。
【0072】
一実施形態では、歯科の問題の症状に関連する質問は、連続して1つずつ提示することができ、質問番号2は、質問1の回答が選択された後のみ表示される。したがって、CDSSは、質問が有向グラフの形式で生成されるルールベースのフレームワークにすることができる。
【0073】
ステップ107では、第1のサーバーは、CDSSに指示して、記入済みの歯科アンケートを処理し、1以上の治療計画オプションを使用して患者の口腔状態に関する予備的な診断評価を生成することができる。
【0074】
診断評価と1以上の治療計画オプションは、出力ユニット(ダッシュボードなど)を介してユーザーに通知され、確認される。特に、識別された診断評価ごとに、CDSSは1以上の治療計画、矯正器具、またはそれらの組み合わせを提案できる。診断評価と治療計画は、問題が特定された各歯と口腔全体に対して個別に生成できる。
【0075】
ステップ108では、歯科の問題が識別された各歯について、ユーザーが治療計画オプションを選択する。治療計画オプションの選択は、ユーザーの裁量で行うこともあれば、ユーザーと患者の間で相談して最適な治療計画を決定することもある。この点で、ユーザーは、治療計画オプションを選択する際に、患者の好みや歯科医が指定した好みを考慮することができる。たとえば、患者は、費用、リスクとメリット、副作用、個人の好み、痛み、食事の難しさ、治療の相対的な美観に基づいて、提案された治療と矯正器具の結果をフィルタリングできる。同様に、歯科医は、口腔の状態、健康状態、社会経済的状態、食事と行動、環境状態、治療オプションのリスクと予後など、患者の全体的な状態を理想的に考慮して、提案された治療をフィルタリングできる。
【0076】
ステップ109では、ユーザーが選択した各識別された歯科問題の治療計画オプションが第1のサーバーに入力される。第1のサーバーは、CDSSに指示して実行し、選択された治療計画オプションを処理して、最終的な治療計画と、その治療の一連の手順を生成する。最終的な治療計画は、出力ユニットを介してユーザーに伝えられる。
【0077】
治療手順の順序は、「緊急段階」、「制御段階」、「再評価段階」、「確定段階」、および「維持段階」を含むがこれらに限定されない1以上の段階の形をとることができる。「緊急段階」は、識別された歯科の問題に対する緊急治療の必要性に関係するが、緊急治療が必要ない場合は、治療計画は「緊急段階」を含まない場合がある。
【0078】
したがって、一実施形態では、患者の歯科治療計画を生成するためのコンピュータ実装方法が提供され、それは以下のステップ:AIモデルを使用して患者の歯科画像を分析してAI予測を生成するステップ;AI予測と1以上のユーザーから受信した入力に基づいて歯科チャートを投入するステップ;投入された歯科チャートと1以上のユーザーから受信した入力に基づいて、CDSSを使用して完成した歯科アンケートを生成するステップ;完成した歯科アンケートに基づいて最終的な治療計画を生成するステップ;最終的な治療計画を1以上のユーザーに表示するステップ;を含むことができる。
【0079】
別の実施形態では、患者の歯科治療計画を生成するためのコンピュータ実装方法が提供される。この方法は、以下のステップ:歯科画像を入力するステップ;歯科画像を第1のサーバーから第2のサーバーに送信し、第2のサーバーにAIモデルを実行してAI予測を生成するよう指示するステップ;AI予測とユーザーからの入力に基づいて歯科チャートを投入するよう第1のサーバーに指示するステップ;検証済み歯科チャートとユーザーからの入力に基づいて、CDSSを実行して完成した歯科アンケートを生成するよう第1のサーバーに指示するステップ;完成した歯科アンケートに基づいて最終的な治療計画を生成するよう第1のサーバーにCDSSを実行するよう指示するステップ;最終的な治療計画をユーザーに表示するステップ;を含むことができる。
【0080】
一実施形態では、コンピュータによって実行されると、本明細書に開示された方法をコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0081】
一実施形態では、本明細書に開示された方法を実行するように構成されたプロセッサを含むコンピュータシステムが提供される。
【0082】
一実施形態では、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに本明細書に開示された方法を実行させる命令を含むコンピュータ読み取り可能な記憶媒体が提供される。
【0083】
図4は、歯科チャートの投入と検証、完成した歯科アンケートの生成、治療計画オプション、それに続く最終的な治療計画に関する、計算ハードウェア、ソフトウェアコンポーネント、およびユーザーからの入力間のシステムと操作関係の代表的なフローチャートである。特に、
図4は、中間ステップを含むことで、
図3で開示された方法をさらに定義する。
【0084】
ステップ201では、患者の歯科画像が第1の処理のために第1のサーバーに入力される。ステップ201aでは、入力された患者の歯科画像は、第1のサーバーによって出力ユニットを介してユーザーに伝えられ、第2のサーバーにも送信される。ステップ201bでは、ユーザーの要求に応じて、第1のサーバーは、AIモデルを介して歯科画像を処理するように第2のサーバーに指示する。
【0085】
ステップ202では、AIモデルが歯科画像を処理し、出力としてAI予測を生成する。
【0086】
ステップ203では、AI予測が第2のサーバーから第1のサーバーに送信される。第1のサーバーは、受信したAI予測に基づいて歯科チャートを投入する。
【0087】
ステップ204では、投入された歯科チャートは、歯科チャートおよびそこに提示された情報を確認およびチェックする目的で、ユーザーインターフェイスを介してユーザーに伝えられる。ステップ204aでは、新しい臨床情報、患者データ、検査結果で歯科チャートを変更または更新する必要がある場合、または矛盾を修正する必要がある場合、ユーザーは歯科チャートを選択的に編集できる。ステップ204bでは、更新された最終的な歯科チャートが第1のサーバーによって受信され、さらに処理される。ステップ204cでは、更新された歯科チャートは、さらに確認およびチェックするために、ユーザーインターフェイスを介してユーザーに伝えられる。更新された歯科チャートにそれ以上の変更や更新が必要ない場合、ユーザーは、第1のサーバーによるさらなる処理のために最終的な歯科チャートを確認し、検証することができる。ステップ204dでは、ユーザーの要求に応じて、第1のサーバーは、最終的な歯科チャートを処理するようにCDSSに指示して実行することができる。
【0088】
ステップ205では、CDSSは部分的に完了した歯科アンケートを生成し、これを第1のサーバーに送信する。ステップ205aでは、部分的に完了した歯科アンケートを第1のサーバーが受信し、確認およびチェックのためにユーザーインターフェイスを介してユーザーに伝えることができる。
【0089】
ステップ206では、ユーザーは回答済みの質問をチェックし、未回答の質問を完了して、完成した歯科アンケートを第1のサーバーに提出し、さらに処理させることができる。ステップ206aでは、ユーザーの要求に応じて、第1のサーバーはCDSSに、完成した歯科アンケートをさらに処理するように指示できる。
【0090】
ステップ207では、CDSSは記入済みの歯科アンケートを処理し、1以上の治療計画オプションを使用して患者の口腔状態に関する予備診断評価を生成する。ステップ207aでは、予備診断評価と治療計画オプションが第1のサーバーによって受信され、確認とチェックのためにユーザーインターフェイスを介してユーザーに伝えられる。
【0091】
ステップ208では、ユーザーは予備診断評価を確認し、治療計画オプションを選択する。ステップ208aでは、ユーザーの要求に応じて、第1のサーバーはCDSSに、選択された治療計画オプションをさらに処理するように指示できる。ステップ208bでは、CDSSは選択された治療計画オプションを処理し、最終的な治療計画と、その治療の一連の手順を生成する。
【0092】
ステップ209では、最終的な治療計画と、その治療の一連の手順が第1のサーバーによって受信され、ユーザーインターフェイスを介してユーザーに伝えられる。ステップ209aでは、ユーザーは、最終的な治療計画と、一連の手順を確認できる。
【0093】
人工知能(AI)モデル
人工知能による画像認識は、オルソパントモグラム画像などの患者の歯科画像を分析して、口腔の状態を判定するために使用できる。本明細書で開示されている人工知能モデルは、画像認識と位置特定を組み合わせてオブジェクトを検出し、分析結果を自動歯チャート作成システムに組み込むことができる。本明細書で開示されているAIモデルの分析結果と出力は、AI予測を提供できる。AI予測は、信頼しきい値を満たすことに基づいて行うことができる。
【0094】
AI予測を生成するために、AIモデルは入力された歯科画像のオブジェクト検出を自動的に実行し、歯科の問題に関連する歯の番号付けと分類のために歯の局所性を検出して識別することができる。1つの実施形態では、AIモデルはキーポイント検出をさらに実行できる。歯の位置と歯の番号は、歯の周囲に境界ボックスを形成することで判定できる。歯の分類は、境界ボックス内のオブジェクト検出に基づいて行うことができる。オブジェクト検出では、AIモデルは主に、境界ボックス領域とその領域にオブジェクトが存在する可能性、およびオブジェクトが歯の問題自体に関係している可能性を検出するのに役立つ特徴の抽出に重点を置いている。
【0095】
AI予測は、以下を含むコンポーネントに基づいて行われる:1)境界ボックスのx最小値、y最小値の座標、および幅と高さ(x最小値とy最小値は境界ボックスの左上隅の座標);2)境界ボックス内にオブジェクトが存在する確率;3)境界ボックス内で検出されたオブジェクトのクラス確率。
【0096】
この点では、境界ボックスは、歯科画像に取り込まれた各歯の境界を定義することができる。その後、検出された各歯に番号を割り当てることができる。番号は、FDI表記、ユニバーサルナンバリングシステム、パーマー表記法、またはその他の適切な歯科表記に従って割り当てることができる。歯の番号付けは成人の歯科チャートに基づいて行うことができるが、若い患者にはプライマリ歯科チャートと適切な表記を使用できることは理解される。
【0097】
歯の周囲に形成される境界ボックスは、たとえば、前歯の周囲に第1の境界ボックス、左奥歯の周囲に第2の境界ボックス、右奥歯の周囲に第3の境界ボックス、すべての歯の周囲に第4の境界ボックスのような、歯科画像内の歯のさまざまな配置を示すことができる。さらに、境界ボックスは、検出されたオブジェクト(歯の問題など)の位置に関するデータ(表面レベルまたは歯レベル(近心、咬合、遠心、頬側、舌側など))を含むことができる。
【0098】
したがって、AIモデルの出力としてのAI予測は、1つ以上の確率であることができる。1つの実施形態では、AIモデルの出力は分類器として機能し、歯科画像内の特定された歯に歯科の問題を検出するための確率を割り当てることができる。各分類および歯科の問題のしきい値および確率値の範囲(つまり、0から1の範囲)は変更でき、適切に設定できる。
【0099】
一実施形態では、分類は、虫歯、歯周病の問題、欠損歯、クラウン、ブリッジ、インプラント、充填、オンレー、インレー、ベニア、修復の失敗または欠陥(充填、クラウン、ブリッジ、ベニア、インレー、オンレー)、根管治療、ポストとコア、埋伏歯、部分的に萌出している歯、萌出していない歯、乳歯、骨折、根尖病変、残存歯根、口腔および顎顔面病変、口腔解剖学的ランドマーク、適用可能な矯正歯科基準に従って望ましくない患者の歯の配置、および/またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない歯科の問題を指すことができる。歯の配置は、オーバーバイト、交叉咬合、開咬、オーバージェット、アンダーバイトなど、医学的、歯科矯正的、審美的、およびその他の理由により望ましくない場合がある。1つの実施形態では、分類は、う蝕、歯周病領域、および修復である。それぞれの歯科の問題は、異なる段階、進行、および/または進行の重症度にある場合がある。
【0100】
したがって、AIモデルは、入力された歯科画像から歯の検出と番号付け、および非病理学的および病理学的歯科問題の検出と分類を実行できる。
【0101】
一実施形態では、AIモデルは、オブジェクト検出用の1以上のディープラーニングCNNを含み、各ディープラーニングCNNは異なる歯の問題を検出するために使用できる。一実施形態では、各ディープラーニングCNNは、サイズが動的(例:欠損歯、虫歯、歯周病、歯の修復または詰め物)またはサイズが静的(例:歯の位置/番号、埋伏歯)なオブジェクトを検出するために使用できる。
【0102】
一実施形態では、AIモデルは、オブジェクト検出用の2以上のディープラーニングCNNを含むことができ、各ディープラーニングCNNは、順番にまたは順番にではなく、並列に動作して同じ入力歯科画像を個別に処理できる。この点で、歯科画像は各ディープラーニングCNNに入力され、同時に処理されて個別の出力予測が提供され、それらを組み合わせて統合されたAI予測を形成できる。たとえば、第1のディープラーニングCNNは歯の位置/番号の検出に使用でき、第2のディープラーニングCNNは虫歯の検出に使用でき、第3のディープラーニングCNNは修復物の検出に使用でき、第4のディープラーニングCNNは乳歯の検出に使用でき、第5のディープラーニングCNNは埋伏歯の検出に使用でき、第NのディープラーニングCNNはその他の歯の問題のいずれかを検出するために使用できる。
【0103】
一実施形態では、機械学習CNNはディープラーニングCNNである。一実施形態では、AIモデルは2以上のディープラーニングCNNを含むことができる。別の実施形態では、AIモデルは2つのディープラーニングCNNを含むことができる。
【0104】
第1のディープラーニングCNNは、サイズが動的であるオブジェクトを検出するために使用できる。第2のディープラーニングCNNは、サイズが静的であるオブジェクトを識別するために使用できる。1つの実施形態では、第1および第2のディープラーニングCNNの両方がオブジェクト検出CNNモデルになる。
【0105】
第1のディープラーニングCNNは、位置特定と分類のために各オブジェクトの境界ボックスを形成する3つのポイントに基づいてオブジェクトを予測するアーキテクチャを有することができる。3つのポイントは、左上隅、右下隅、および中央で、各オブジェクトの境界ボックスを形成するために使用できる。第1のディープラーニングCNNは、センタープーリングとカスケードコーナープーリングの概念に基づいて機能する。センタープーリングは、特徴マップの水平方向と垂直方向の最大値を指し;カスケードコーナープーリングは、境界最大値、内部最大値、およびこれら2つの値の合計の識別を指す。
【0106】
第2のディープラーニングCNNは、第1のディープラーニングCNNとは異なるアーキテクチャを有することができ、第1のディープラーニングCNNは、オブジェクトを領域またはボックスで予測するのではなく、オブジェクトをポイントとして予測する。第2のディープラーニングCNNは、Faster-RCNNなどの他のCNNアーキテクチャとは異なり、双方向特徴ピラミッドネットワーク(BiFPN)を採用できる。特に、第2のディープラーニングCNNは、より細かい詳細をキャプチャできる十分な幅と、画像自体からより大きなセマンティクスを抽出できる(小さなオブジェクトは大きな画像では大きくなるため)十分な深さのアーキテクチャを有することができる。入力画像のサイズは重要になる可能性があり、そのため、第2のディープラーニングCNN内にヒューリスティックベースのスケーリングメカニズムが存在する可能性がある。これらの要件に対応するために、第2のディープラーニングCNNは複合スケーリングアーキテクチャを有することができる。
【0107】
好ましい実施形態は、ディープラーニングCNNはEfficientDetおよびCenterNetを含む。EfficientDetモデルはサイズが静的なオブジェクトを識別するために使用でき、CenterNetモデルはサイズが動的であるオブジェクトを検出するために使用できる。
【0108】
EfficientDetは、検出の対象となる事前の関心領域を判定するためにアンカーメカニズムに依存しているが、さまざまなサイズに対応するためにアンカーを適切に構成する必要があるため、面倒な場合がある。対照的に、CenterNetはポイントによってオブジェクトを検出するため、調整するハイパーパラメータが少なく、予測のダイナミズムが高まり、これは、モデルがサンプル外予測中にサイズにばらつきがある可能性のあるオブジェクトクラスを認識する場合に有効である。EfficientDetおよびCenterNet以外のCNNを、オブジェクト検出で同じ機能と結果を実行する、本明細書で開示されているAIモデルに採用できることは理解される。
【0109】
本明細書で開示されるディープラーニングCNNは、さまざまな口腔構造と口腔状態(健康または歯の問題)を表す患者情報のデータセットを使用してトレーニングできる。CNNはディープラーニング技術を使用してトレーニングできるため、本明細書で開示されるシステムおよび方法にCNNを適用して、歯の位置とクラス、および歯の問題の症状を示す可能性のあるオブジェクトを正確かつ敏感に識別できる。特に、ディープラーニングCNNは、患者のコホートから得られた大規模なデータセットを使用してトレーニングできる。CNNのトレーニングには、機械学習パッケージまたはプラットフォームを使用できる。データセットは、CNNの分析結果の検証を支援する臨床専門家の検査結果と組み合わせた患者のオルソパントモグラム記録を含むことができる。
【0110】
図5は、ディープラーニングCNNのトレーニングに使用できるモジュールの構造と、それらの相互およびコンピュータシステムの特定のハードウェアとの動作関係の代表的な実施形態を示している。特に、CNNのトレーニングは、前処理拡張モジュール、TFレコード作成モジュール、データチェッカーモジュール、データジェネレーターモジュール、およびTFオブジェクト検出APIの使用を含む。
【0111】
前処理拡張モジュールを使用すると、画像の不要な部分を切り取るなど、オブジェクト検出を向上させるために歯科画像を操作できる。TFレコード作成モジュールを使用すると、歯科画像をprotobufファイル(すべての画像を含む1つのファイル)に変換できる。このファイルは、データの読み込み/処理時にTensorFlowフレームワーク内で最適化される。データチェッカーモジュールは、特定のヒューリスティックチェックを実行することで、品質ラベル(歯番号ラベルなど)を確保するために使用できる。データジェネレーターモジュールを使用すると、XMLファイルのラベルを表形式に変換して、TFレコードセクションや分析での使用を容易にすることができる。オブジェクト検出APIは、Googleなどの検索プラットフォームによるオープンソースライブラリであり、多くの一般的なオブジェクト検出モデルアーキテクチャがコード化されており、使用できる。
【0112】
トレーニングシステムのモジュールとAPIはそれぞれ、双方向リンクを介してデータベースおよびクラウドストレージシステムに接続され、それらの間でデータを送受信できる。1つの実施形態では、トレーニングシステムのモジュールは、コンピュータ読み取り可能なストレージ媒体にソフトウェア命令として保存できる。
【0113】
一実施形態では、ディープラーニングCNNは、継続的にではなく、定期的に再トレーニングまたは最適化できる。したがって、ディープラーニングCNNは、必要に応じてバッチプロセスで更新および再トレーニングできる。
【0114】
ディープラーニングCNNのトレーニング後、出力されたAI予測結果は、ブラインドデータセットでのクロス検証手法で検証されることが望ましい。特に、ディープラーニングCNNは、トレーニングに使用されなかった、トレーニングデータセットとは別の異なる画像データセットである歯科画像の検証セットで処理できる。検証データセットを使用したディープラーニングCNNのパフォーマンスをトレーニングデータセットと比較することで、本明細書で開示されているディープラーニングCNNの精度を判定できる。この点で、使用される各CNNに検証データセットを使用でき、その結果から、歯の問題の検出に使用するのに最適なCNNがわかる。
【0115】
検出された歯の番号と歯の問題に関連してAIモデルから得られた出力は、AI予測を形成する。これらのAI予測は、第2のサーバーから第1のサーバーに送信され、歯科チャートを投入する。1つの実施形態では、AIモデルからの生の出力はテンソル形式にすることができ、その後、JSONに変換されて第1のサーバーに返される。特に、AIモデルの各CNNからの出力結果は、それらの確率と局所性とともに組み合わせられ、最終的な生のAIモデル出力を形成できる。
【0116】
AI予測は、後処理ステップで歯科チャートに自動的に投入するために使用できる。歯科チャートのこの自動入力では、Intersection over Union(IOU)などのメトリックを使用できる。特に、IOUは、2つの境界ボックスの重なり合う領域が、2つのボックスの結合領域の合計領域に対して占める割合を指し、検出された分類(虫歯、修復など)を歯科チャートに表示する各歯に割り当てるアルゴリズムである。
【0117】
臨床意思決定支援システム(CDSS)
臨床意思決定支援システム(CDSS)は、医療知識工学を活用するエキスパートシステム(ES)の一分野である。CDSSは、ES設計原理を使用して、通常は医療専門家が行う診断と治療のプロセスをシミュレートできる。目的は、臨床専門家が複雑な医療問題を解決したり診断を下したりできるように支援することである。
【0118】
意思決定支援システムの従来の構造では、意思決定者またはユーザーは、手元にある情報と問題を解釈し理解することで解決策に到達する。意思決定者が複数いる場合、プロセスは複雑になる可能性があり、利用可能な情報が主観的、客観的、またはその両方の組み合わせである場合は、さらに複雑になる。
【0119】
歯科医院という特定の状況では、問題と解決策は患者に最も適した歯科治療に関係する。意思決定者が下す決定は問題自体に依存し、問題に関連する情報だけでなく意思決定者が採用する基準にも影響する。ほとんどの臨床状況では、患者も意思決定者として行動し、金銭的コストや審美的要求に関する情報が最終的な決定結果に影響を与える可能性がある。歯科医は、考えられるリスク要因や評価の想起や適用など、認知機能に限界があり、それぞれに違いがあるため、歯科医によって、あるいは同じ歯科医であっても異なる時期に下した決定に潜在的な違いが生じる可能性がある。ここに開示されたCDSSは、このような相違を最小限に抑えることができる。具体的には、患者を管理する個々の臨床専門家に基づく主観的な分析や診断ではなく、ここに開示されたCDSSは、教授、歯科専門医、経験豊富な歯科医師からなる歯科専門委員会から収集された専門知識を表している。したがって、治療不足、治療過剰、および/または過失のリスクを軽減することができ、患者に大きな利益をもたらす。
【0120】
従来、CDSSは、履歴データを使用したデータ駆動型アプローチのみに基づいて構築できる。このアプローチは偏りがなく、知識ベースのアプローチのみよりも比較的安価であるが、主な欠点は、データ駆動型アプローチが特定の種類の治療計画に限定されることである。意思決定支援システムの実装を成功させるには、ドメインと技術分野内の知識ベースのデータと情報を考慮することが重要である。
【0121】
したがって、一実施形態では、採用されるCDSSは、ルールベースまたは知識ベースのCDSSである。つまり、本明細書で開示されるCDSSは、データ駆動型のアプローチを採用しておらず、歯科アンケート、診断、および治療計画オプションを生成するための知識ベースのCDSSのみである。
【0122】
本明細書に開示された方法およびシステムで採用されるCDSSは、自動化された診断および治療計画オプションシステムを有利に提供することができ、これにより、ユーザーは患者のニーズに基づいて客観的かつ信頼性の高い治療計画オプションを受け取ることができる。この点に関して、本明細書に開示されるCDSSは、各患者の特定の特性を使用して意思決定プロセスのためのエキスパートシステムを提供するように構成および設計できる。1つの実施形態では、本明細書に開示されるCDSSは、データ処理方法を表すソフトウェアアプリケーションまたはプログラムの形式にすることができる。
【0123】
一実施形態では、CDSSは、有向グラフの形式でルールベースのフレームワークを含む。有向グラフは、基本ユニットとして1以上のノード/頂点、およびノード間のコネクタとして特定の方向を指すエッジを含むことができ、たとえば、A>Bは、AからBに移動できるが、その逆はできないことを意味する。そのため、CDSSとルールベースまたは知識ベースのアプローチは、ソフトウェアにコード化されたグラフルールの形式になる。これらのルールは、前の質問の回答に基づいて、ユーザーに次に表示する質問、つまり診断と治療計画のオプシンを生成するルールを指示する。
【0124】
一実施形態では、CDSSは、有向非巡回グラフの形式のルールベースフレームワークを備えたルールエンジンを含むことができる。ルールベースフレームワークは、ルールをXMLファイルまたはグラフデータベースに保存できるJavaScript(登録商標)フロントエンドフレームワークである。JavaScript(登録商標)フロントエンドは、ロード時にルールを解析し、その後、JavaScript(登録商標)フロントエンドでのユーザーの選択に応じて、JavaScript(登録商標)がグラフを走査し、ルールで示されたロジックに基づいて出力を返す。
【0125】
一実施形態では、本明細書に開示されるCDSSは、ドメイン内の知識ベースデータをシミュレートするグラフデータ構造を使用して構築および開発できる。
【0126】
CDSSのルールベースまたは知識ベースのフレームワークは、教科書やジャーナルなど、業界で認められている医学文献に記載されている情報から導き出すことができる。したがって、この知識ベースのアプローチは、学術研究や調査、臨床の専門知識、および業界のベストプラクティスを組み込むことができ、特定の口腔状態に対して患者に治療を提供するための医療用の手順がある。臨床の専門知識は、著名な教授や専門家から得ることができる。
【0127】
CDSSの知識ベースアプローチは、推論エンジンと組み合わせることで診断推論を行うことができる知識記述言語の作成に重点を置いている。
【0128】
本明細書で開示されているCDSSは、包括的なステップバイステップのプロトコルまたはルールベースのグラフに基づいて、ユーザー(例:臨床専門家)が患者の個人データと臨床データを直感的かつ体系的に収集および分析し、包括的で個別のケアおよび治療計画を作成できるように支援する。機械学習ツール(例:教師あり学習)よりもCDSSを使用する利点は、他の「ブラックボックス」アルゴリズムとは異なり、各決定ステップが明確に識別されており追跡可能である、臨床解釈可能性である。
【0129】
図6Aは、第1のサーバーに関連して本明細書で開示されるCDSSの代表的な実施形態である。第1のサーバーは、ユーザーが患者の社会的、医療的、および歯科的履歴、バイオデータ、ならびに歯科チャートを表示し、必要に応じて更新するためのユーザーインターフェイスコンポーネントを含むことができる。第1のサーバーユーザーインターフェイスコンポーネントは、IDMS Webページを含むことができる。患者の社会歴、医療歴、歯科歴、バイオデータ、歯科チャートは、データベースモジュールによって管理および抽出できる。データベースモジュールは、MySQL(登録商標)データベースモジュールにすることができる。第1のサーバーにデータモデルを含めることで、データベースモジュールから受信したデータを整理し、それらの相互関係を標準化することができる。
【0130】
CDSSは、ユーザーが生成されたアンケート、治療計画オプション、最終的な治療計画を表示し、その中で情報を入力または選択するためのCDSSユーザーインターフェイスコンポーネントを含むことができる。CDSSユーザーインターフェイスコンポーネントは、HTML Webページを含むことができる。JavaScript(登録商標)フレームワークでルールを使用するルールエンジンを使用できる。さらに、拡張マークアップ言語(XML)でルールを定義できる医療ルールモジュールを含めることができる。
【0131】
APIコントローラは、第1のサーバーとCDSS間のリクエスト、より具体的にはCDSSユーザーインターフェイスと第1のサーバーのデータモデルからのリクエストを処理するために含めることができ、この場合、データモデルは指定されたロジックに基づいてデータ構造を管理するだけである。
【0132】
図6Bは、CDSSの計算コンポーネント間のフローチャートと操作関係、およびユーザーからの入力とそれらがCDSSと対話する方法を示している。
【0133】
ステップ301aでは、患者の社会歴、医療歴、歯科歴、およびバイオデータは、ユーザーが第1のサーバーのユーザーインターフェイスを介して表示および更新できる。同様に、ステップ301bでは、ユーザーが第1のサーバーのユーザーインターフェイスを介して、投入された歯科チャートを更新および確定できる。その後、ユーザーはCDSSにステップ301aおよび301bからの入力を処理するよう要求できる。
【0134】
ステップ302で、CDSSユーザーインターフェイスはステップ301aおよび301bからの入力を受け取る。ステップ303で、CDSSルールエンジンは、医療ルールを医療ルールモジュールから抽出して処理するように要求する。ステップ304で、医療ルールモジュールはルールエンジンからの要求を受け取り、ステップ305でルールをルールエンジンに送信する。
【0135】
ステップ306では、ルールエンジンは、処理されたルールに基づいて、ステップ301aおよび301bで受信した情報を使用して質問に自動的に回答する。ルールエンジンは、ステップ307でCDSSユーザーインターフェイスに送信する質問と回答を含むHTMLコードを生成する。
【0136】
ステップ308では、cdssユーザーインターフェイスにステップ307からの回答が読み込まれ、部分的に完了したアンケートおよび治療計画オプションが生成される。
【0137】
ステップ309では、ユーザーは回答済みの質問をチェックし、未回答の質問に回答して、歯科アンケートを完了して提出することができる。アンケートが完了すると、ユーザーが選択できる治療計画オプションが生成される。
【0138】
ステップ310では、ルールエンジンは、完了したアンケートおよび選択された治療計画オプションを処理して、一連のステップを含む最終的な治療計画を生成する。最終的な治療計画はレンダリングされ、ステップ311でユーザーが確認できるようにCDSSユーザーインターフェイスに送信される。最終的な治療計画は、第1のサーバーユーザーインターフェイスによって受信され、保存される。
【0139】
ユーザーインターフェイス(ダッシュボード)
図7A-Fに示すように、AIモデルおよびCDSSからの情報と出力は、第1のサーバーおよびユーザーインターフェイスまたはダッシュボードを介してユーザーに表示できる。
図6AおよびBに示すように、このユーザーインターフェイスは、第1のサーバーユーザーインターフェイスとCDSSユーザーインターフェイスを含む。
【0140】
特に、ユーザーインターフェイス/ダッシュボードは、患者データ、歯科の問題または状態、および治療計画に関連する個別のカテゴリを通じて情報を表示できる。このダッシュボードは、URLで識別されるWebアクセス可能なページの形式で、またはコンピュータで実行されるアプリケーションとしてユーザーに提供される。ダッシュボードは、部分的に記入されたアンケートを提示し、ユーザーが質問を入力して完了できるようにするために操作できる。
【0141】
図7Aに示すように、「一般」というラベルの付いた機能タブは、患者の症状やリスクの数を選択するオプションや、患者のバイオデータと患者の医療歴、社会歴、歯科歴との関連性を含む患者情報表示領域に関連付けられる。
【0142】
図7B-Eは、AIモデルによって識別され、最終的な歯科チャートに示された歯科の問題に関する専用の質問を含む個別のタブを示している。各タブは、識別された歯科の問題ごとに、事前設定された選択と、ユーザーが完了して確認する歯科の問題の症状に関連する一連の質問とともに提供できる。ユーザーが症状に関連する質問を完了すると、診断と1以上の治療オプションが提供され、ユーザーはその中から1つを選択する。たとえば、
図7Bでは、検出された虫歯のタブが、虫歯が歯番号23に関連していることを示す代表的な歯科チャートとともに表示されており、虫歯は中等度虫歯または根面虫歯として区別でき、続いて虫歯の位置(近心、咬合、遠心、頬側、舌側)が示され、次に、ユーザーは番号付きの質問1と2で虫歯の症状(痛み)を選択し、診断と3つの治療オプションから選択できる。
図7Cおよび7Dには、検出された歯周病のタブが表示されており、この歯周病は、全般的(口腔全体)または局所的(歯1本あたり)に区別でき、それぞれのタブは、歯周病の位置(左、右、上、下)、サイズ(<3mm、>5mm)、症状(潰瘍、腫れ、痛み)に関する1以上の質問を含み、回答することで診断と2つの治療オプションが提供される。
図7Eには、検出された1以上の欠損歯のタブが表示されており、これにより、欠損歯の症状(配列、寸法)に関する質問が提供され、診断と4つの治療オプションが提供される。
【0143】
各歯科の問題に対する治療オプションが選択され、必要な質問にすべて回答すると、記入済みのアンケートはCDSSによってさらに処理され、一連の治療手順を含む最終的な(完全な)治療計画が生成される。治療手順の順序は、「緊急段階」、「制御段階」、「再評価段階」、「確定段階」、および「維持段階」を含むがこれらに限定されない1以上の段階の形式にすることができる。「緊急段階」は、識別された歯科の問題の緊急治療の必要性に関係するが、緊急治療が必要ない場合は、治療計画は「緊急段階」を含まない場合がある。
【0144】
図7Fには、治療手順の順序とともに、例示された最終的な治療計画が示されている。理解されるように、最終的な(完全な)治療計画に含まれる段階は、回答された質問によって異なる。たとえば、
図7Bでは、ユーザーがオプション1ではなくオプション2を選択した場合、最終的な治療計画に再評価段階が表示される。
【0145】
したがって、一実施形態では、治療ステップの順序は、1.緊急段階;2.制御段階;3.再評価段階;4.確定段階;および5.維持段階とすることができる。別の実施形態では、治療ステップの順序は、1.制御段階;2.再評価段階;3.確定段階;および4.維持段階とすることができる。別の実施形態では、治療ステップの順序は、1.緊急段階;2.制御段階;3.確定段階;および4.維持段階とすることができる。
【0146】
緊急段階(UP)は、発熱、腫れ、痛み、出血、または感染症を呈し、緊急に治療が必要な患者に関係する。
【0147】
制御段階(CP)は、a)虫歯や炎症などの活動性疾患を排除する;b)メンテナンスを妨げる状態を除去する;c)疾患の潜在的原因を排除する;d)i)歯肉および歯周感染症の管理、ii)虫歯リスクの管理、iii)虫歯のある歯の管理などの予防歯科活動を開始する;ように計画できる。
【0148】
再評価段階(RP)は、炎症が治まって治癒するまでの待機段階を指す。したがって、この段階では、家庭でのケア習慣が強化され、さらなる治療への意欲が評価され、最終的な治療を開始する前に初期治療と歯髄の反応が再評価される。
【0149】
確定段階(DP)は、特定の歯の問題を矯正し解決する段階を指す。この段階では、歯周外科手術、口腔外科手術、欠損歯の交換が必要になる場合がある。1つの実施形態では、欠損歯の管理はこの確定段階にある。
【0150】
維持段階(MP)は、確認のための定期的なリコール期間、および、a)将来の故障を防ぐための調整の必要性が明らかになる可能性があり、b)在宅ケアを強化する機会を提供する、次の検査を含むことができる。この段階では、識別された歯科問題の進行段階と重症度に応じて、3か月、6か月、または12か月ごとに患者の検査を実施する必要があることが示される。
たとえば、i)患者がステージ3およびステージ4の歯周炎または高虫歯リスクの場合、3か月ごとの検査が指示され、ii)患者が中程度の虫歯リスクおよびステージ1または2の歯周炎の場合、6か月ごとの検査が指示され、iii)患者が低虫歯リスクまたは歯周病が健康な場合、12か月ごとの検査が指示される。
【0151】
治療の推奨に応じて、ユーザーはCDSSとその推奨を自身の判断と経験と組み合わせて決定を下すことができる。さらに、CDSSの出力結果は、視覚的なチェックと標準テスト(ユニットテスト、統合テストなど)を使用して、意思決定マップとの一貫性をチェックおよび検証し、堅牢性を確保できる。さらに、CDSSは専門家グループによって検証されており、生成された診断と推奨治療計画の包括性と正確性をテストしている。
【0152】
実施例
以下の非限定的な例は、現在検討されている代表的な実施形態をより完全に理解しやすくするために、説明目的のみで提供されている。これらの例は、システムのコンポーネントと、本明細書で開示されている方法のステップとを組み合わせることができるすべての可能なコンテキストの単なるサブセットとなることを意図している。したがって、これらの例は、システムのコンポーネントの種類および量、ならびに/またはその方法およびその使用に関するものを含め、本明細書に記載された実施形態のいずれかを限定するものと解釈されるべきではない。
【0153】
歯科医院では、患者が1以上の歯の問題を抱えて来院することがある。歯科医は患者の歯の状態をよりよく理解するために、X線写真(オルソパントモグラム)を要求する。
【0154】
このX線写真とその他の患者データは、ここに開示されたコンピュータシステムに取り込むことができる。この点で、このシステムはクリニックの患者管理システム(PMS)に組み込むことができる。システムは、患者の口腔の問題を示す出力を数秒以内に提供する。患者が痛みを訴えて来院した場合、歯科医はX線写真で痛みのある部分だけを優先し、他の歯の問題を見落としがちである。
【0155】
ここに開示されたシステムのAIモデルにX線画像を入力することで、総合的な分析が実行され、数秒以内に複数の口腔の問題を検出できる可能性がある。その結果、歯科チャートには口腔状態に関するAI予測が自動的に投入され、歯科医はそれを患者とすぐに確認することができる。たとえば、患者は歯痛でクリニックに来るかもしれないが、システムによる分析により、さらに4~5の相互に関連する問題が検出されることがある。
【0156】
検出された歯の問題は、歯科医によるさらなる臨床検査と組み合わされて、ここに開示されたCDSSによってさらに処理される。CDSSは、歯科医が回答するためのアンケートを生成し、歯科医が治療計画オプションを選択して回答する。治療オプションの選択とアンケートの記入が完了すると、検出されたすべての歯の問題に対して、適切な順序で最終的な治療計画が生成される。
【0157】
治療の成功率は正しい順序によって判定されることもあるため、治療手順の正しい順序は重要である。たとえば、歯肉/骨の問題が最初に解決されていれば、インプラントの成功率は高くなる。歯肉や骨に問題があるなど、口腔衛生状態が悪い状態でインプラントを埋め込んだ場合、インプラントが失敗する可能性が高くなる。したがって、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、歯肉の治療とそれに続くインプラントの配置の続行に関する正しいシーケンスを生成する。
【0158】
AIモデルを使用した患者データ(X線画像)の分析とCDSSを使用した治療計画の生成は、患者の初回診察時に完了する。つまり、患者は潜在的な口腔状態や疾患のために歯科医院を訪れ、患者の歯の状態を解決するための完全な総合的な治療計画が提供される。さらに、総合的な治療計画を通じて、深刻な歯の問題を早期に検出したり、予防したりすることができる。
【0159】
したがって、本明細書で開示されるシステムと方法は、業界全体の歯科診療の水準を向上させることを目的としている。患者は、主な口腔の症状に関する情報やアドバイスだけを受け取るのではなく、口腔状態に関する包括的かつ総合的でありながらも個別の診断と治療計画を受け取ることになる。患者は、個人的な判断や偏見に基づく間違いを避けながら、より正確な診断と最善の治療オプションを確信できる。さらに、歯科疾患の早期検出が可能になる。これにより、患者は治療費を管理しやすくなると同時に、地域社会における良好な歯科医療体制に対する認識と知識が向上する。
【0160】
例1
図8は、患者の口腔状態を分析し、
図3に概説した代表的な方法のステップに従って治療計画を生成するために、本明細書に開示されたシステムおよび方法に入力された例示的なX線画像を示している。
【0161】
当初、患者の検査中に歯科医は口腔全体のX線写真を撮影した。X線写真はシステムにアップロードされ、ユーザーインターフェイスを介して歯科医に表示され、確認された。その後、システムは歯科医の要求に応じてAIモデルを使用してX線画像を分析した。
【0162】
AIモデル分析の結果は、歯の番号と指摘された歯の問題、および追加の関連情報と詳細を記載した歯科チャートを投入するために使用された。歯科チャートはユーザーインターフェイスを介して歯科医に表示され、歯科医は患者のさらなる検査時にその歯科チャートを更新して変更を加えた。
【0163】
最終的に投入された歯科チャートは
図9に示されており、以下の表1に示すように、AI予測によって投入された表が添付されている。
【表1】
【0164】
最終的な歯科チャートに基づいて、部分的に記入された歯科アンケートが生成され、歯科医は各歯と症状に関する質問に答える必要があった。アンケートは、歯科医がアンケートに記入できるユーザーインターフェイスを介して歯科医に表示された。
【0165】
歯科アンケートは、以下の表2に示すように、歯番号46の問題に関する以下の複数選択の質問を含む。理解できるように、問題があると識別された他の歯については、その問題と関連する詳細に応じてアンケートが異なる場合がある。
【表2】
【0166】
アンケートを完了して提出すると、CDSSによって診断評価と1以上の治療計画オプションが生成され、ユーザーインターフェイスを介して歯科医に表示される。以下の表3は、歯番号46と欠損歯26および47に関してユーザーに提供される情報をまとめたものである。
【表3】
【0167】
歯科医が各歯と識別された歯の問題に対する治療計画オプションを選択した後、CDSSは、総合的な治療計画と一連の手順のために、すべての歯で識別された問題を考慮した一連の治療手順を含む最終的な治療計画を生成した。治療手順は段階に分けられ、以下の表4に示すように、緊急段階、制御段階、再評価段階、確定段階、維持段階で構成されている。
【表4】
【0168】
本発明の使用方法および動作方法のさらなる説明については、上記の説明から明らかである。したがって、使用方法および動作方法に関するさらなる説明は行わない。
【0169】
上記の説明に関して、本発明の部品の最適な寸法関係は、サイズ、材料、形状、形態、機能、および操作、組み立て、使用方法のバリエーションを含め、当業者には容易に明らかであると考えられ、また、図面に示され、明細書に記載されているものと同等の関係はすべて、本発明に包括されるものとする。
【0170】
したがって、上記は本発明の原理を例示するものに過ぎないと考えられる。さらに、当業者であれば多数の修正や変更を容易に思いつくため、本発明を図示および説明した正確な構成および動作に限定することは望ましくなく、したがって、本発明の範囲内で、あらゆる適切な修正および同等のものを採用することができる。
【0171】
以上、本発明の原理、実施形態、および動作モードについて説明した。ただし、本発明は、ここで議論した特定の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。上述の実施形態は、限定的なものではなく例示的なものとしてみなされるべきであり、以下の請求項によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によってこれらの実施形態に変更を加えることができることを理解されたい。
【0172】
本発明については、本明細書では広範かつ一般的に説明されている。一般的な開示に含まれるより狭い種および亜属のグループのそれぞれも、本発明の一部を構成している。これは、但し書きまたは否定的な限定を伴う本発明の一般的な説明を含む。
【0173】
その他の実施形態は、以下の請求項および非限定的な例の範囲内にある。さらに、本発明の特徴または側面がマーカッシュグループの観点から説明されている場合、当業者は、本発明がマーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点からも説明されていることを認識できる。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の歯科治療計画を生成するためのコンピュータ実装方法であって、以下のステップ:
患者の歯科画像を含む患者データを受信するステップ;
AIモデルを使用して患者の歯科画像を分析し、患者の歯の検出、番号付け、および歯科の問題に関するAI予測を生成するステップ;
AI予測および1以上のユーザーから受信した入力に基づいて、歯科チャートを投入するステップ;
投入された歯科チャート、患者データ、および1以上のユーザーから受信した入力に基づいて、臨床意思決定支援システム(CDSS)を使用して完成した歯科アンケートを生成するステップ;
完成した歯科アンケートに基づいて、最終的な治療計画を生成するステップ;および
最終的な治療計画を1以上のユーザーに表示するステップ
を含む、前記コンピュータ実装方法。
【請求項2】
AI予測が、以下のコンポーネント:
幅および高さを備えた境界ボックスのx最小値、y最小値座標;
境界ボックス内にオブジェクトが存在する確率;および
境界ボックス内で検出されたオブジェクトのクラス確率
に基づく、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
AIモデルが、サイズが動的なオブジェクトを検出するための第1のディープラーニングCNN、およびサイズが静的なオブジェクトを識別するための第2のディープラーニングCNNを含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
第1のディープラーニングCNNが、サイズが動的なオブジェクトを検出するためのCenterNetモデルを含み、第2のディープラーニングCNNが、サイズが静的なオブジェクトを識別するためのEfficientDetモデルを含む、請求項3に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
CDSSが、ルールベースまたは知識ベースのCDSSである、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
ルールベースのCDSSが、有向グラフの形式のフレームワークを含む、請求項5に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
知識ベースのCDSSが、診断推論を作るための知識記述言語の作成に重点を置いた、ソフトウェアにコード化されたグラフルールの形式のフレームワークを含む、請求項
5に記載の
コンピュータ実装方法。
【請求項8】
請求項1~7
のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されたプロセッサを含む、コンピュータシステム。
【請求項9】
コンピュータによって実行されると、コンピュータに請求項1~7
のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項10】
コンピュータによって
命令が実行されると、コンピュータに請求項1~7
のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項11】
患者の歯科治療計画を生成するシステムであって、以下:
歯科画像を含む患者データを受信する、入力ユニット;
AIモデルを定義する命令を格納するように構成された、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体;
臨床意思決定支援システム(CDSS)を実行する、第1のサーバー;
AIモデルを定義する命令を実行する、第2のサーバー;
ここで、第2のサーバーは、以下:
AIモデルを使用して、患者の歯科画像に基づいて、歯の検出、番号付け、および歯科の問題に関するAI予測を生成すること;および
AI予測および1以上のユーザーから受信した入力に基づいて歯科チャートを投入すること、を含む操作を実行するように構成されており、
ここで、第1のサーバーは、以下:
CDSSを使用して1以上のユーザーから受信した歯科チャートおよび入力に基づいて、完成した歯科アンケートを生成すること;および
CDSSを使用して、完成した歯科アンケートに基づいて最終的な治療計画を生成すること、を含む操作を実行するように構成されており、および
歯科チャート、アンケート、および最終的な治療計画をユーザーに伝えるように構成されている、出力ユニット
を含む、前記システム。
【請求項12】
AIモデルが、入力された歯科画像のオブジェクト検出のための画像認識および位置特定を組み合わせて、歯科の問題に関連する歯の番号付けおよび分類のために歯の位置を検出および識別する、請求項
11に記載のシステム。
【請求項13】
歯の周囲に境界ボックスを形成することによって、歯の位置特定および歯の番号付けが判定される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
AI予測が、以下のコンポーネント:
境界ボックスのx最小値、y最小値座標、および幅および高さ;
境界ボックス内にオブジェクトが存在する確率;および
境界ボックス内で検出されたオブジェクトのクラス確率
に基づく、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
境界ボックスが、歯科画像に取り込まれた各歯の境界を定義し、検出された各歯に番号を割り当てる、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
AIモデルが、サイズが動的なオブジェクトを検出するための第1のディープラーニングCNN、およびサイズが静的なオブジェクトを識別するための第2のディープラーニングCNNを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
第1のディープラーニングCNNが、サイズが動的なオブジェクトを検出するためのCenterNetモデルを含み、第2のディープラーニングCNNが、サイズが静的なオブジェクトを識別するためのEfficientDetモデルを含む請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
CDSSが、ルールベースまたは知識ベースのCDSSである、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
ルールベースのCDSSが、有向グラフ形式のフレームワークを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
知識ベースのCDSSが、診断推論を作るための知識記述言語の作成に重点を置いた、ソフトウェアにコード化されたグラフルールの形式のフレームワークを含む、請求項18に記載のシステム。
【国際調査報告】