(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】制限装置
(51)【国際特許分類】
G21D 1/00 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
G21D1/00 L
G21D1/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535389
(86)(22)【出願日】2022-12-28
(85)【翻訳文提出日】2024-08-01
(86)【国際出願番号】 RU2022000401
(87)【国際公開番号】W WO2023128810
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516233088
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー アトムエネルゴプロエクト
【氏名又は名称原語表記】JOINT STOCK COMPANY ATOMENERGOPROEKT
【住所又は居所原語表記】ul. Bakuninskaya,7,str.1 Moscow,105005 Russia
(71)【出願人】
【識別番号】520514768
【氏名又は名称】サイエンス アンド イノヴェーションズ - ニュークリア インダストリー サイエンティフィック デベロップメント,プライベート エンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミチキン,アレクサンドル・グリゴリエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ティシチェンコ,アレクサンドル・ユリエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーナー,アレクサンドル・アレクセーヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァラク,ローマン・アンドレーヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】マゴラ,イーゴリ・アナトリエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】クリコフ,ニコライ・ニコラエヴィッチ
(57)【要約】
制限装置は、壁を通過するパイプラインによって接続されたプロセス機器に対する重大事故の影響を制限するための装置に関するものであり、特に原子力産業で使用することができる。防護壁に設置される制限装置は、水平溝を有するアンカーと、水平歯を有するインサートとの形態で構成されている。アンカーは、防護壁に取り付けられる。インサートは、防護壁の外側でパイプラインに取り付けられる。アンカーとインサートは、ねじり中に水平歯を水平溝にロックできるように構成されている。インサートは、想定破裂部位を備える。この制限装置は、高圧パイプラインの運用の安全性を向上することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防護壁に設置される制限装置であって、
水平溝を有するアンカーと、水平歯を有するインサートとの形態で構成され、
アンカーは、防護壁に取り付けられ、インサートは、防護壁の外側でパイプラインに取り付けられ、
アンカーとインサートは、ねじり中に水平歯を水平溝にロックできるように構成され、
インサートは、想定破裂部位を備える
ことを特徴とする制限装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁を通過するパイプラインによって接続されたプロセス機器に対する重大事故の影響を制限するための装置に関するものであり、特に原子力産業で使用することができる。
【背景技術】
【0002】
主蒸気と給水のパイプラインは、蒸気発生器と主蒸気隔離弁(MSIV)が設置されている原子力アイランドから、原子力発電所(NPP)の職員によって操作される装置がある2つの防護壁の間の空間を通って配置されている。
【0003】
加圧された主蒸気と給水のパイプラインを2つの壁の間に配置する場合の問題は、緊急事態が発生した場合、パイプラインにかかる荷重が非常に大きくなり、しかも非常に短時間で発生することである。10000kNまでの荷重発生時間は、約0.2秒である。
【0004】
パイプライン自体は、熱伝導率の低い柔軟な材料で作られている。なぜなら、人が出入りできる防護壁の間の空間を蒸気室から断熱する必要があるからである。
【0005】
このため、蒸気室を含む原子力アイランドに向かって、またはそこから離れる方向にパイプラインの急激な揺れが引き起こされる可能性があり、その結果、事故時に残留熱除去受動システム(ARPS)が正しく作動するために必要なMSIVの破壊に至り、蒸気発生器から蒸気が漏れて、原子力発電所の一次回路や原子炉における冷却材が沸騰する可能性がある。
【0006】
このような脅威は、原子力発電所の安全性を低下させる。2つの防護壁を貫通する導体や他の貫通部を使用する場合にも、同様の問題が発生する可能性がある。
【0007】
従って、主蒸気と給水のパイプラインが防護壁を貫通する構成では、以下の条件を満たす必要がある。
・通常運転モードでは、温度によるパイプラインの変位を、保護壁を通して水平方向に100mmまで許容する。
・想定対象事故モードでは、タービン室内のMSIVの破壊を伴う急激な変位が防止されるように、貫通部でパイプラインを動かくなくする。
・パイプラインの破裂が避けられない重大事故モードでは、防護壁の外側の空間でパイプラインを確実に破裂させる必要がある。
【0008】
この問題を解決するために、さまざまな技術的解決策が用いられてきた。
【0009】
特に、事故の発生時にパイプラインの急な揺れを防止するためにパイプラインを防護壁に固定することに関する解決策が知られている。
【0010】
例えば、ロシア連邦の実用新案第204147号(2011年5月11日発行)によれば、溶接シームによって管継手に接続されたパイプラインの破裂制限装置が、パイプラインの溶接シームの上に取り付けられたスリーブを含み、このスリーブは、2つの対称の半割部分で構成されており、2つの半割部分は、ねじ継手によって固定され、長手方向の両端部にフランジが設けられている。
【0011】
スリーブは、可変径を有し、その両端部のフランジにより、パイプラインに溶接された取り付け要素と係合し、さらに、管継手の外面に溶接された取り付け要素と係合する。
【0012】
このようなパイプラインの破裂制限装置を用いると、パイプラインと管継手の溶接部の破裂による悪影響を防ぐことができ、さまざまな経済分野に適用できる。
【0013】
しかし、通常運転モードでは、温度変化による水平方向の変位が許容されず、想定対象事故の場合には、防護壁を通って外側にパイプラインが引き出されることが制限され、原子力アイランドに配置されている機器が破壊されるおそれがある。
【0014】
その問題および機能的目的の点で本発明に最も近いのは、ロシア連邦の実用新案第193982号(2019年11月22日発行)である。
【0015】
この発明では、パイプラインの溶接シームの破裂制限装置は、パイプラインの溶接シームの上に取り付けられる円筒形スリーブを含む。このスリーブは、取り付け要素によってパイプライン表面と接触し、半径方向リブの形態でパイプライン表面に溶接されたストッパと相互作用する端部フランジを備え、スリーブは、2つの半円筒からなり、それぞれの半円筒が長手方向に沿ったフランジを備え、それぞれの半円筒の対応するフランジがネジ接続で締め付けられる。スリーブの取り付け要素は、半円筒の内面に溶接された半径方向リブの形で作られており、スリーブの半円筒の端部フランジは、パイプラインの表面と半径方向ストッパのそれぞれに対して隙間を空けた状態で、パイプラインの表面上に配置されている。
【0016】
このような制限装置は、破裂付近にある機器へのむち打ち破裂の影響を軽減できるが、通常動作中における熱による水平方向の変位を許容しない。また、想定対象事故の場合、防護壁を通って外側にパイプラインが引き出されることが制限され、原子力アイランド内の機器が破壊されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】ロシア連邦実用新案第204147号明細書
【特許文献2】ロシア連邦実用新案第193982号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、原子力発電所の緊急時を含むすべての運転モードにおいて、原子力アイランドの設備への損傷を排除することにより、使用の安全性を向上した制限装置を創出することである。
【0019】
本発明の技術的成果は、原子力発電所の緊急時を含むすべての運転モードにおいて、原子力アイランドの設備の損傷を排除することにより原子力発電所の安全性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この技術的成果は、防護壁に設置される制限装置によって達成される。
【0021】
この制限装置は、水平溝を有するアンカーと、水平歯を有するインサートとの形態で構成され、アンカーは、防護壁に取り付けられ、インサートは、防護壁の外側でパイプラインに取り付けられ、アンカーとインサートは、ねじり中に水平歯を水平溝にロックできるように構成され、インサートは、想定破裂部位を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】主蒸気パイプラインと給水パイプラインのための制限装置の全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
主蒸気パイプラインと給水パイプラインは、原子力発電所の原子力アイランドの蒸気室から2つの防護壁を通って配管されている。
【0024】
制限装置は、各保護壁においてパイプラインが通過するそれぞれの穴に設置され、水平溝3を有し、例えばボルトによってその保護壁に取り付けられるアンカー1と、水平歯4を有し、パイプラインに取り付けられるインサート2とを備え、水平歯4は、水平溝3に水平方向に移動可能に適合する。
【0025】
制限装置の動作は、以下の通りである。
【0026】
通常運転モードでは、防護壁に取り付けられたアンカー1とパイプラインに取り付けられたインサート2とで構成される制限装置が、パイプラインの温度による水平方向の変位を保証する。
【0027】
想定対象事故モードでは、パイプライン6は、防護壁の外側に屈曲部を有するため、必然的に曲げ応力や変形を受けることになる。
【0028】
これにより、パイプラインに取り付けられたインサート2の水平歯4がアンカー1の水平溝3に押し込まれ、パイプラインが防護壁に固定されることに繋がり、蒸気室の機器の破壊を回避することができる。
【0029】
重大事故モードでは、パイプラインにかかる負荷が38.5MNに達する可能性があるので、蒸気室の機器を保護するために、制限装置はさらに、防護壁の外側に位置し、パイプラインが建物の外に引き出されるのを防ぐ想定破裂部位5を備えている。
【0030】
想定破裂部位5は、対応する荷重に達すると破断するように設計された、パイプラインへのインサートの脆弱な部分、例えば環状溝の形態で作ることができる。
【0031】
この制限装置は、高圧パイプラインの運用の安全性を向上することができ、エネルギー産業の使用に適している。
【国際調査報告】