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特表2024-546499液晶オンシリコン位相変調器用の画素回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】液晶オンシリコン位相変調器用の画素回路
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20241217BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20241217BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20241217BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 611E
G09G3/20 624B
G09G3/20 680G
G09G3/20 612J
G02F1/133 505
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535954
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-30
(86)【国際出願番号】 US2022081765
(87)【国際公開番号】W WO2023114979
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/290,150
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516046846
【氏名又は名称】オハイオ ステート イノベーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マオ チョンチャン
(72)【発明者】
【氏名】ジ リャンホア
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン クリスティーナ
【テーマコード(参考)】
2H088
2H193
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
2H088EA47
2H088HA01
2H088HA02
2H088HA03
2H088HA08
2H088MA20
2H193ZF45
2H193ZP01
2H193ZP03
2H193ZR20
5C006AA16
5C006BB16
5C006BC06
5C006BC16
5C006BF33
5C006EC12
5C006FA23
5C006FA36
5C080AA10
5C080BB05
5C080DD06
5C080DD28
5C080EE29
5C080FF11
5C080JJ03
5C080JJ04
5C080JJ06
(57)【要約】
本明細書では、フレームバッファ画素回路であって、第1のデータパスゲートトランジスタG1、第1の蓄積キャパシタC1、電圧ブーストラインVb、ソースホロワートランジスタF、プルダウントランジスタP、および第2のデータパスゲートトランジスタG2を有するフレームバッファ画素回路が開示される。プルダウントランジスタPは、トランジスタFのドレインおよびトランジスタG2のソースに接続され、蓄積キャパシタC1は電圧ブーストラインVbに接続される。動作中、データがG1ゲートを介してC1キャパシタに転送されているとき、Vbはゼロボルトに設定される。フレームデータがすべての画素内のC1キャパシタ上に取り込まれた後、Vbはデザインされた電圧に設定され、すべての画素内のG2ゲートが開いて、Clcdキャパシタを充電する。次いで、画素上への次のフレームデータの取り込みを開始する前に、Vbは再びゼロボルトに設定される。このようなプロセスが、液晶オンシリコン(LCOS)動作時間内で繰り返される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶オンシリコンバックプレーン位相変調器の画素電極を制御する回路であって、
2つのデータ転送コントローラーと、
データ記憶ユニットと、
電圧ブースターと、
プルダウンユニットを備えた信号増幅ユニットと、を含み、
アナログデータ信号が最初に、第1のコントローラーを介して転送されて、前記記憶ユニットに記憶され、次いで前記電圧ブースターがゼロボルトから所望の電圧に切り替えられ、次いで前記データが第2のコントローラーを介して前記液晶駆動電極に転送される、回路。
【請求項2】
前記記憶ユニットは、電圧非依存型キャパシタと増幅回路のゲートキャパシタとから構成される、請求項1に記載の回路。
【請求項3】
プルダウントランジスタが前記第2のデータ転送コントローラーの前に配置される、請求項1に記載の回路。
【請求項4】
前記回路内のトランジスタはすべてNMOSトランジスタである、請求項1に記載の回路。
【請求項5】
前記データ記憶キャパシタは、0Vまたは所望のブースト電圧を提供できる電圧ブースタースイッチに接続される、請求項1に記載の回路。
【請求項6】
シリコン位相変調器上の液晶の画素電極を制御するための回路であって、
データラインと、
2つのデータ転送コントローラーと、
2つの記憶ユニットと、
2つの増幅回路と、を含み、
第1のコントローラーが、第1の制御信号によってイネーブルされて、画素データを含む第1のアナログデータ信号を第1の記憶ユニット内に記憶し、
次いで、前記データは第1の増幅回路によって、第2の制御信号によってイネーブルされる第2のコントローラーの入力に結合され、前記増幅回路の出力を第2の記憶ユニットに結合し、それによって、前記第1のアナログデータ信号に比例する第2のアナログデータ信号を、前記第2の記憶ユニット内に記憶し、前記第2の記憶ユニットは第2の増幅回路に直接結合され、前記第2のアナログデータ信号に比例する前記出力電圧は、出力電極において生成され、液晶素子を駆動し、シリコン位相変調器上の液晶内で光学位相変調を実行し、前記第1の増幅回路および第2のコントローラーは、前記第1の記憶ユニットと前記第2の記憶ユニットとの間の絶縁を提供し、
前記第2の増幅回路は、前記第2の記憶ユニットと前記出力電極との間の絶縁を提供する、回路。
【請求項7】
前記第1の記憶ユニットは、電圧非依存型キャパシタと前記第1の増幅回路のゲートキャパシタとから構成される、請求項6に記載の回路。
【請求項8】
前記第2の記憶ユニットは、電圧非依存型キャパシタと前記第2の増幅回路のゲートキャパシタとから構成される、請求項6に記載の回路。
【請求項9】
前記2つの記憶ユニットは、最良の性能を達成するために独立に最適化することができる、請求項6に記載の回路。
【請求項10】
前記第1の増幅回路および前記第2の増幅回路は、PMOSトランジスタまたはNMOSトランジスタのいずれかの異なるMOSトランジスタを、それぞれ使用する、請求項6に記載の回路。
【請求項11】
シリコン位相変調器上の液晶の画素電極を制御するための回路であって、前記回路は、データライン、2つのデータ転送コントローラー、2つの電圧ブースターに接続された2つの記憶ユニット、および2つの増幅回路からなり、データが第1のコントローラーを介して第1の記憶ユニットに転送されているとき、前記第1の電圧ブースターは0Vに設定され、次いで、前記データが前記第2のコントローラーを介して前記第2の記憶ユニットに転送されているとき、前記第1の電圧ブースターは所望の電圧に設定され、前記第2の電圧ブースターは0Vに設定され、次いで、前記第2の電圧ブースターは所望の電圧に設定され、前記第2の増幅器は前記画素出力電極を充電して液晶素子を駆動し、そして、画素内への次のフレームデータの取り込みを開始する前に、前記第1の電圧ブースターは0Vに再び設定される、回路。
【請求項12】
第1の蓄積キャパシタおよび第2の蓄積キャパシタが、前記第1の電圧ブースターおよび前記第2の電圧ブースターに、それぞれ接続される、請求項11に記載の回路。
【請求項13】
前記2つの記憶ユニットは、最良の性能を達成するために独立に最適化することができる、請求項11に記載の回路。
【請求項14】
すべての前記トランジスタはNMOSトランジスタである、請求項11に記載の回路。
【請求項15】
液晶オンシリコンバックプレーン位相変調器の画素電極を制御するためのシステムであって、前記システムは、
第1のデータ転送コントローラーおよび第2のデータ転送コントローラーと、
1つのデータ記憶ユニットと、
電圧ブースターと、
プルダウンユニットを備えた信号増幅ユニットと、を含むシステム。
【請求項16】
アナログデータ信号が最初に、前記第1のデータ転送コントローラーを介して転送され、前記記憶ユニットに記憶され、次いで前記電圧ブースターがゼロボルトから所定の電圧に切り替えられ、次いで前記データが、前記第2のデータ転送コントローラーを介して液晶駆動電極に転送される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記データ記憶ユニットは、電圧非依存型キャパシタと増幅回路のゲートキャパシタとを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記第2のデータ転送コントローラーの前に配置されるプルダウントランジスタをさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記システム内の各トランジスタはNMOSトランジスタである、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
0Vまたは所定のブースト電圧を提供することができる電圧ブースタースイッチに接続されたデータ記憶キャパシタをさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
シリコン位相変調器上の液晶の画素電極を制御するためのシステムであって、前記システムは、
データラインと、
第1のデータ転送コントローラーおよび第2のデータ転送コントローラーと、
第1の記憶ユニットおよび第2の記憶ユニットと、
第1の増幅回路および第2の増幅回路と、を含み、
前記第1のデータ転送コントローラーは、第1の制御信号によってイネーブルされて、画素データを含む第1のアナログデータ信号を第1の記憶ユニット内に記憶し、
次いで、前記データは前記第1の増幅回路によって、第2の制御信号によってイネーブルされる前記第2のデータ転送コントローラーの入力に結合され、前記増幅回路の出力を前記第2の記憶ユニットに結合し、それによって、前記第1のアナログデータ信号に比例する第2のアナログデータ信号を、前記第2の記憶ユニット内に記憶し、
前記第2の記憶ユニットは第2の増幅回路に直接結合され、
前記第2のアナログデータ信号に比例する前記出力電圧は、出力電極において生成され、液晶素子を駆動し、前記シリコン位相変調器上の前記液晶内の光学位相変調を実行し、
前記第1の増幅回路および第2のデータ転送コントローラーは、前記第1の記憶ユニットと前記第2の記憶ユニットとの間の絶縁を提供し、前記第2の増幅回路は、前記第2の記憶ユニットと出力電極との間の絶縁を提供する、システム。
【請求項22】
前記第1の記憶ユニットは、電圧非依存型キャパシタと前記第1の増幅回路のゲートキャパシタとを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記第2の記憶ユニットは、電圧非依存型キャパシタと前記第2の増幅回路のゲートキャパシタとを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1の記憶ユニットおよび前記第2の記憶ユニットは、最良の性能を達成するために独立に最適化される、請求項21に記載のシステム。
【請求項25】
前記第1の増幅回路および前記第2の増幅回路は、PMOSトランジスタまたはNMOSトランジスタのいずれかの異なるMOSトランジスタを、それぞれ使用する、請求項21に記載のシステム。
【請求項26】
シリコン位相変調器上の液晶の画素電極を制御するためのシステムであって、前記システムは、
データラインと、
第1のデータ転送コントローラーおよび第2のデータ転送コントローラーと、
第1の電圧ブースターおよび第2の電圧ブースターに接続される第1の記憶ユニットおよび第2の記憶ユニットと、
2つの増幅回路と、を含み、
データが第1のデータ転送コントローラーを介して前記第1の記憶ユニットに転送されているとき、前記第1の電圧ブースターは0Vに設定され、次いで、前記データが前記第2のデータ転送コントローラーを介して前記第2の記憶ユニットに転送されているとき、前記第1の電圧ブースターは所定の電圧に設定され、前記第2の電圧ブースターは0Vに設定され、次いで、前記第2の電圧ブースターは所定の電圧に設定され、前記第2の増幅回路は前記画素出力電極を充電して液晶素子を駆動し、そして、画素内への次のフレームデータの取り込みを開始する前に、前記第1の電圧ブースターは0Vに再び設定される、システム。
【請求項27】
前記第1の記憶ユニットおよび前記第2の記憶ユニットは、前記第1の電圧ブースターおよび前記第2の電圧ブースターに、それぞれ接続される、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記2つの記憶ユニットは、最良の性能を達成するために独立に最適化される、請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記システム内のすべての前記トランジスタはNMOSトランジスタである、請求項26に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第63/290、150号(2021年12月16日に出願)、発明の名称「PIXEL CIRCUITS FOR LIQUID CRYSTAL ON SILICON PHASE MODULATOR」に対する優先権を主張する。なおこの文献の開示はその全体において参照により明示的に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
本開示は全般的に、液晶オンシリコン(LCOS)位相変調器デバイス用の画素回路に関し、より詳細には、位相変調器の性能を向上させることができるフレームバッファ画素回路に関する。いくつかの実施形態を、特にその用途を参照して本明細書で説明するが、本開示はこのような使用分野に限定されず、より広い状況において適用可能であり得ることが理解される。
【背景技術】
【0003】
液晶オンシリコン(LCOS)デバイスは、他の用途の中でも、光学位相変調器としての使用に対して当該技術分野において知られている。LCOSデバイスは、空間に依存する位相プロファイルを信号に適用することによって、光信号を空間的に操作することができる。これには、ビームステアリング、画像表示、スペクトル補償、および前方波形整形などの多くの用途がある。
【0004】
図1を参照して、従来のLCOSデバイス100を概略的に例示する。LCOSデバイス100は、液晶(LC)材料102が、透明電極Vcom106を有する透明ガラス基板104と、シリコン基板110上に取り付けられた金属ミラー108との間に挟まれている。ミラー108は、個別にアドレス指定可能な画素の2次元(2D)アレイに分割される。各画素は、電圧信号によって個別に駆動可能であり、光信号に局所的な位相変化を提供し、それによって位相操作領域の2次元アレイを提供する。液晶素子は、ガラス基板104およびシリコン基板110の表面上にそれぞれ配置された2つの配向層112a、112bによって予め位置合わせされる。
【0005】
シリコンバックプレーン上の第2の電極は、2Dアレイの画素回路からなる。図2に示すように、一般的なアナログ画素回路200は、CMOSデータ転送ゲートGとデータ記憶キャパシタCとからなる。動作中、ゲートGが開いていると、データがキャパシタ上に転送されて記憶され、液晶素子を駆動する。このような画素回路は単純であるが、駆動電圧範囲が狭い、コントラスト比が低い、画像のちらつきが大きい、用途によっては光出力効率が低いなどのいくつかの欠点がある。
【0006】
上記の画素回路を備えたLCOSは、ホログラフィックディスプレイおよびカラーシーケンシャルディスプレイなどのいくつかの用途には適さない時系列画素アドレス指定アプローチを使用する、このようなディスプレイでは、LCOSパネルがフレームデータを取り込んでいるときに光源をブロックする必要があり、結果的に、光出力効率が低くなり、画像表示品質が低くなる。このような回路を備えたLCOSの別の欠点は、液晶変調器に対する交流(AC)駆動要件により、ガラス基板上の共通電極Vcomを画素出力電圧範囲の中間電位に固定する必要があることである。LC素子に対するAC駆動を実現するために、1つのフレーム電圧プロファイルを、Vcomと比べて一方が正電位電圧を有し他方が負電位電圧を有する2つのプロファイルにデザインする。したがって、LC素子に印加される電圧の最大振幅は、シリコンバックプレーン上の画素によって提供される電圧の半分である。LC駆動電圧振幅が低いと、画像のグレースケールに重大な影響を及ぼす。
【0007】
フレームバッファ画素回路技術は、研究者および業界エンジニアの注目を集めている。Leeらは、LCOSディスプレイデバイスに対して図3に示すようなフレームバッファ画素回路300を開示した。この回路は、CMOSトランジスタM1およびM2からなる第1のデータ通過ゲート、蓄積キャパシタCmem、ソースホロワートランジスタM3、およびトランジスタM4を備えた第2のデータ通過ゲートからなる。動作中、第1のゲートが開くと、データがデータラインからキャパシタCmemに転送される。フレームデータがすべての画素Cmemキャパシタ内に記憶された後、すべての画素における第2のデータ通過ゲートが開いて、データが画素電極(PE)に転送される。
【0008】
一般的なLCOS位相変調器と比較して、このフレームバッファ画素回路300を備えたLCOS位相変調器では、画像コントラスト比を高くし、グレースケールを大きくすることができる。また、このようなフレームバッファ画素回路を備えたLCOS位相変調器を、ホログラフィックディスプレイ、カラーシーケンシャルディスプレイ、および天体観測用の波面補正に対して使用して、光出力効率と画質を大幅に向上させる可能性が高い。このようなフレームバッファ画素の別の利点は、種々の用途に対する要件を満たすようにフリップフロップVcomの電位電圧を調整することによって、LC素子に印加される電圧を容易に設定できることである。これは、偏光無依存型LCOS(PI-LCOS)位相変調器などのLC素子を完全に駆動するために高電圧を必要とするLCOS位相変調器にとって非常に重要である。
【0009】
しかし、出力電圧範囲を最大にするために、従来のフレームバッファ画素回路ではCMOSデータ転送ゲートが使用され、その結果、より多くのドーピングウェルが必要になる。これにより、シリコンバックプレーン製造プロセスが複雑になり、画素サイズが大きくなり、歩留まりが低下し得る。従来のフレームバッファ画素回路の別の欠点は、このようなフレームバッファ画素回路内のPEにおける出力電圧が、電流リークおよび他の影響により急速に減衰し、その結果、LCOS位相変調器の比較的大きな位相フリッカが生じることである。
【発明の概要】
【0010】
従来のフレームバッファ画素回路では、画素回路の出力電圧範囲を最大にするために、CMOSトランジスタが使用される。このような回路構造は、NMOSまたはPMOSトランジスタのみを備えた画素回路と比較して、画素サイズが大きくなり、シリコンバックプレーン製造プロセスが複雑になり、歩留まりが低下するという欠点がある。
【0011】
したがって、本開示のいくつかの実施形態では、単純な画素回路、小さな画素サイズ、大きな出力電圧範囲、および安定した電圧を、異なるフレームバッファ画素回路構造および電圧ブースト技術を使用することによって実現することができる。このような画素回路を備えたLCOS位相変調器には、高解像度、カラーシーケンシャル、ホログラフィックディスプレイなどの特別な用途がある。
【0012】
各画素上での電位電圧の不安定性によって、LCOS位相変調器内に位相変動が生じる。信号のちらつきに対して高度な制限がある用途の場合、従来技術は、LCOS位相変調器(たとえば、通信ネットワーク内で使用される波長選択スイッチ(WSS)用のLCOS位相変調器)では使用できない。
【0013】
したがって、LCOS変調器において安定した位相を生成するための方法を提供する本開示のいくつかの実施形態を提案する。安定した電位電圧によって液晶素子を駆動し続けるように、画素出力PEを充電し続けるために、呼ばれるソースホロワーが加えられる、発明した回路を用いれば、LCOS位相変調器は、位相フリッカを大幅に低減させることができる。
【0014】
本開示の実施形態を、単なる例として、以下の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】LCOS位相変調器の側面図である。
図2】アナログ画素回路の概略図である。
図3】従来技術のフレームバッファ画素回路の概略図である。
図4】フレームバッファ画素回路の第1の実施形態の概略図である。
図5】フレームバッファ画素回路の第1の実施形態の出力電圧範囲のシミュレーション結果を示す図である。
図6】AおよびBはフレームバッファ画素回路の第2の実施形態の概略図である。
図7】フレームバッファ画素回路の第2の実施形態の出力電圧範囲と電圧保持率のシミュレーション結果を示す図である。
図8】フレームバッファ画素回路の第3の実施形態の概略図である。
図9】フレームバッファ画素回路の第3の実施形態の出力電圧範囲と電圧保持率のシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本開示の主題について、本開示の例示的な実施形態が示されている添付図面を参照して、以下でさらに十分に説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、本発明の範囲が当業者に十分に伝わるように提供されるものである。図に関して、類似の数字は全体を通して類似の要素を指す。本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上の任意の及びすべての組み合わせを含む。
【0017】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されるものなどの用語は、関連技術および本開示の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書でそのように明示的に定義されない限り、理想化された意味または過度に形式的な意味で解釈されないことがさらに理解されよう。
【0018】
フレームバッファ画素回路400の第1の実施形態を、図4に示す。この回路は、第1のデータパスゲートトランジスタG1、第1の蓄積キャパシタC1、電圧ブーストラインVb、ソースホロワートランジスタF、プルダウントランジスタP、および第2のデータパスゲートトランジスタG2からなる。図3に示す以前のフレームバッファ画素回路300と比較して、違いには、限定することなく、以下が含まれる。1)プルダウントランジスタPは、ここではトランジスタFのドレインおよびトランジスタG2のソースに接続される。2)蓄積キャパシタC1は、GNDの代わりに電圧ブーストラインVbに接続される。3)すべてのトランジスタはNMOSトランジスタである。
【0019】
トランジスタPをG2の前の位置に配置すると、Clcdおよび寄生ゲートキャパシタに対する電流リークを減らすことができ、その結果、電圧安定性が増す。電圧ブーストVbを使用すると、画素出力電圧範囲を、電圧ブースターを使用しない場合よりもはるかに大きく拡張することができる。動作中、データがG1ゲートを介してC1キャパシタに転送されているとき、Vbはゼロボルトに設定される。フレームデータがすべての画素内のC1キャパシタ上に取り込まれた後、Vbはデザインされた電圧に設定され、すべての画素内のG2ゲートが開いて、Clcdキャパシタを充電する。次いで、画素上への次のフレームデータの取り込みを開始する前に、Vbは再びゼロボルトに設定される。このようなプロセスが、LCOS動作時間内で繰り返される。
【0020】
図5に、異なるブースト電圧を有するフレームバッファ画素の第1の実施形態に対する出力電圧範囲のシミュレーション結果を示す。シミュレーション結果が示すところによれば、Vbがトランジスタ閾値電圧(たとえば、ここでは0.8V)付近にあるときに、最大電圧範囲を達成できる。最大出力電圧範囲は、従来技術のフレームバッファ画素回路の場合と同様に、4Vよりも大きい。CMOSゲートトランジスタを使用する従来技術のフレームバッファ画素と比較して、この回路では、すべてNMOSトランジスタを使用し、回路構造を単純にして、小さいサイズの画素および高解像度LCOS位相変調器のデザインに役立つ。この画素回路を備えたLCOS位相変調器は、大きな視野角および高画質のディスプレイを実現するために小さな画素サイズおよび高解像度が極めて重要であるホログラフィックディスプレイおよびカラーシーケンシャルディスプレイなどのいくつかの特別な用途に対して利点がある。
【0021】
ホログラフィックディスプレイを使用すると、視認者は、オブジェクトの周囲を見回して、異なる視点からそれを見ることができる。これにより、ステレオ3Dディスプレイに伴うすべての複雑さがない、より快適で自然に似せた視聴体験が得られる。近年、デジタルおよびコンピューター生成ホログラフィックディスプレイ技術の開発が研究機関および業界企業において広く行われている。ホログラフィック通信は、第6世代(6G)ネットワークの最も興味深い特徴の1つであり得る。5G/6Gネットワーク展開の進展に従って、ホログラフィックディスプレイは、研究者、エンジニア、投資家、および消費者にとってますます魅力的になるであろう。このようなホログラフィックディスプレイシステムにおけるコアコンポーネントは、位相変調器である。LCOS位相変調器は、高解像度、小さいサイズの画素、および高い画素フィルファクターなど、他と比べて競争力のある利点がある。従来のLCOS位相変調器を備えたホログラフィックディスプレイの場合、高回折次数の光のちらつきを最小限にするために、データを取り込む間は光を遮断する必要がある。フレームバッファ画素回路を備えたLCOS位相変調器は、データ取り込みと表示を並行して実行できるため、一般的なLCOS位相変調器と比べていくつかの利点(たとえば、より高い光学効率、より高い表示品質、より低い高次回折光のちらつき)が得られる、したがって、このような位相変調器は、コンピューター生成ホログラフィックディスプレイにおいて使用される可能性が高い。
【0022】
カラーシーケンシャルディスプレイシステムは、一般的なカラーディスプレイシステムよりもはるかに単純であり、空間光変調器が少なく、光学システムがはるかに単純である。カラーシーケンシャルLCOSディスプレイは、プロジェクションディスプレイ、ウェアラブルディスプレイ(ニアアイディスプレイを含む)、およびスマートウォッチにおいて広く使用されている。カラーシーケンシャルディスプレイの場合、フレームバッファ画素回路を備えたLCOS位相変調器は、一般的なLCOS位相変調器と比べて著しい利点(たとえば、光出力効率がはるかに高い、および表示品質がはるかに高い)がある、従来のLCOS位相変調器を使用した場合、データを取り込む間は光は遮断され、表示期間中にのみ光がオンする。フレームバッファ画素ベースのLCOS位相変調器を使用した場合、データ取り込みと表示を並行して実行できるため、光効率と表示品質を大幅に向上させることができる。
【0023】
波面補正は主に、天体観測に使用され、自由空間光(FSO)通信でも使用される。天体観測および飛行物体追跡では、大気の乱流により、画像解像度低下と強度低下という2つの影響が望遠鏡画像に生じる。波面歪みを動的に補正することによって、画質を大幅に向上させることができ、光の強度を高めることができる。フレームバッファ画素を備えたLCOS位相変調器を使用すると、フレームごとに波面補正を実行できるため、ライン走査LCOS位相変調器を使用した場合と比べて、画質を大幅に改善することができる。
【0024】
図6Aに、フレームバッファ画素回路600の第2の実施形態を示す。第2の実施形態には、データ入力ライン、第1のデータパスゲートトランジスタG1、第1のデータ記憶キャパシタC1、第1のソースホロワートランジスタF1、プルアップトランジスタP1、第2の通過ゲートトランジスタG2、第2のデータ記憶キャパシタC2、第2のソースホロワートランジスタF2、およびプルダウントランジスタP2が含まれる。動作中、信号データが、データラインを介してG1のソース側に送られる。第1のトランジスタゲートG1が開かれると、データはトランジスタのドレインに転送され、第1の蓄積キャパシタC1に記憶される。C1が完全に充電された後、G1ゲートは閉じる。全フレームデータがすべての画素内のC1キャパシタ内に完全に取り込まれると、すべての画素における第2のG2ゲートが同時に開く。全フレームデータが転送されて、すべての画素内のC2キャパシタに記憶される。C2キャパシタが完全に充電されると、G2ゲートは閉じる。次いで、第2のソースホロワーF2がClcdおよび寄生キャパシタを充電し、LC素子を駆動するための電圧PEを提供する。プルアップトランジスタP1は、ゲートトランジスタG2が開かれたときに開き、次いでG2が閉じた後に閉じて、キャパシタC2を完全に充電する。プルダウントランジスタP2を使用して、Clcdが充電される前にPE点における容量をクリーンにする。
【0025】
画素回路内に2つのソースホロワーがあるため、LC素子を大きなグレースケールにより駆動するのに十分に大きな出力電圧範囲を回路が提供できるように、デザインを最適化する必要がある。出力電圧範囲を最大にするために、2つのソースホロワーは、図6Aおよび6Bにそれぞれ示すように、PMOSトランジスタを有する一方のホロワー(回路600)と、NMOSトランジスタを有するもう一方(回路602)とを有する。
【0026】
図7に、画素出力電圧範囲と電圧保持率のシミュレーション結果を示す。出力電圧範囲は、3.0Vより大きく、これは一般的に、LC素子を完全に駆動するのに十分に高い値である。回路内では、データ記憶キャパシタC2とLC駆動電極PEとは第2のソースホロワーによって分離されているため、C2は、LC素子、シャント電流リーク、および周囲の画素の干渉の影響を受けない。したがって、電圧保持率は、従来技術のフレームバッファ画素回路と比べて大きく改善される。このような画素回路を備えたLCOS位相変調器は、光通信ネットワークにおいて広く使用されている波長選択スイッチ(WSS)用のLCOS位相変調器など、位相変調のフリッカに対する厳しい要件がある用途に対して、利点を有する可能性がある。
【0027】
フレームバッファ画素回路800の第3の実施形態を、図8に示す。フレームバッファ画素回路600/602の第2の実施形態と比較して、この画素回路800は、すべてNMOSトランジスタを使用するように変更され、データ記憶キャパシタC1およびC2は電圧ブーストラインVb1およびVb2に、それぞれ接続される。動作中、データがG1ゲートを介してC1に転送されているとき、Vb1はゼロボルトに設定される。フレームデータがすべての画素内のC1キャパシタ上に取り込まれた後、Vb1はデザインされた電圧に設定され、すべての画素内のG2ゲートが開いて、C2キャパシタをデザインされた電位電圧に充電する。G2ゲートが閉じた後、Vb2はデザインされた電圧に設定され、PE点での電圧を拡大する。
【0028】
図9に、フレームバッファ画素800のこの第3の実施形態の出力電圧範囲と電圧保持率のシミュレーション結果を示す。シミュレーション結果から、出力電圧範囲は3.0Vより大きく、電圧は非常に安定している。この回路内でNMOSトランジスタのみを使用すると、回路設計が簡素化され、性能が向上する可能性がある。
【0029】
再構成可能なアド/ドロップマルチプレクサ(ROADM)により、高価なアップグレードまたは通信ネットワークへの大きな変更を必要とせずに、新しいサービスの追加が容易になる。ROADMシステムによって、波長のリモートで正確かつ柔軟な選択が可能になるため、多額の費用をかけずにネットワーク容量が大幅に増加される。ROADM市場は、5G/6Gネットワークの導入の進展に続いて、著しい成長を有すると予測される。LCOS位相変調器は、ROADMシステムのコアサブシステムであるWSSシステムにおいて広く使用されている。現在、使用されているすべてのLCOS位相変調器は、偏光依存位相変調のみを実行できる。したがって、光偏光は注意深く操作する必要があり、その結果、光学システムが複雑になる。第2および第3のフレームバッファ画素回路を、偏光無依存型LCOS(PI-LCOS)位相変調器内で使用することができる。PI-LCOS位相変調器を使用すると、WSSシステムは、一般的なLCOS位相変調器を使用するWSSシステムと比較して、はるかに単純な光学システム、より高性能、およびより低コストを有することができる。
【0030】
図面および明細書には、本開示の典型的な実施形態が開示されている。しかし、本開示の原理から実質的に逸脱することなく、これらの実施形態に対して多くの変形および変更を行うことができる。したがって、特定の用語を使用しているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用しており、限定を目的とするものではなく、本開示の範囲は以下の特許請求の範囲によって規定される。
図1
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図7
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【国際調査報告】