(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】離散キュビットの符号化を連続キュビットに変換するためのシステム
(51)【国際特許分類】
G06N 10/00 20220101AFI20241217BHJP
G02F 3/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G06N10/00
G02F3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537543
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2022086469
(87)【国際公開番号】W WO2023117797
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】514144582
【氏名又は名称】エコール・ノルマル・スペリウール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・ローラ
(72)【発明者】
【氏名】トム・ダラス
(72)【発明者】
【氏名】ベアテ・エリザベート・アセンベック
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ・グッチョーネ
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン・カヴァイユ
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA03
2K102AA05
2K102AA09
2K102AA10
2K102BA13
2K102BA31
2K102BB01
2K102BB10
2K102BC01
2K102DA01
2K102DA06
2K102EB20
2K102EB22
(57)【要約】
本発明は、離散変数として符号化されたキュビットの符号化を、連続変数として符号化されたキュビットに変換するためのシステム(1、1’、1’’)に関し、システムは、- それぞれ、単一モードおよび二重モードの圧縮されたブランク状態を生成するように構成された、第1および第2の圧縮されたブランク状態ソース(3、5)と、- それぞれ、第1および第2のソースから光子を受信するように配置された、第1および第2のビームスプリッタ(7、9)と、- それぞれ、第1および第2のソースの調整経路の光子状態と、離散変数として符号化されたキュビットおよび第2のソースの信号経路の光子状態とを混合するように構成された、第3および第4のビームスプリッタ(11、13)と、- それぞれ、第3および第4のビームスプリッタの出力部において配置された、第1および第2の検出器(15)とを備え、第2の検出器は光子カウンタである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離散変数として符号化されたキュビットの符号化を、連続変数として符号化されたキュビットに変換するためのシステム(1、1’、1’’)であって、
- 離散変数として符号化されたキュビットの入力経路(2)と、
- 単一モードスクイーズド真空状態を生成するように構成された第1のスクイーズド真空状態ソース(3)、特に発振しきい値未満の光パラメトリック発振器と、
- 2モードスクイーズド真空状態を生成するように構成された第2のスクイーズド真空状態ソース(5)、特に発振しきい値未満の光パラメトリック発振器と、
- 前記第1のスクイーズド真空状態ソースから光子を受信するように配置された第1のビームスプリッタ(7)であって、前記第1のビームスプリッタの第1の出力光路が、連続変数として符号化されたキュビットの出力経路(8)を構成し、第2の出力光路が、前記第1のスクイーズド真空状態ソースの調整経路を構成する、第1のビームスプリッタ(7)と、
- 前記第2のスクイーズド真空状態ソースから光子を受信するように配置された第2の偏光ビームスプリッタ(9)であって、前記第2のビームスプリッタの第1の出力光路が、前記第2のスクイーズド真空状態ソースの調整経路を構成し、第2の出力光路が、前記第2のスクイーズド真空状態ソースの信号経路を構成する、第2の偏光ビームスプリッタ(9)と、
- 前記第1のスクイーズド真空状態ソースの前記調整経路の光子状態と前記第2のスクイーズド真空状態ソースの前記調整経路の光子状態とを混合するように構成された、前記第1のビームスプリッタの前記第2の出力光路および前記第2のビームスプリッタの前記第1の出力光路の上に配置された第3のビームスプリッタ(11)と、
- 離散変数として符号化された前記キュビットの光子状態と前記第2のスクイーズド真空状態ソースの前記信号経路の光子状態とを混合するように構成された、離散変数として符号化された前記キュビットの光路および前記第2のビームスプリッタの前記第2の出力光路の上に配置された第4のビームスプリッタ(13)と、
- 前記第3のビームスプリッタの第1の出力光路の上に配置された第1の光子検出器(15)と、
- 前記第4のビームスプリッタの第1の出力光路の上に配置された第2の光子検出器(19)とを備え、前記第2の光子検出器が光子カウンタであり、
前記システムが、前記第3のビームスプリッタの第2の出力光路の上の第3の光子検出器(17)と、前記第4のビームスプリッタの第2の出力光路の上に配置された第4の光子検出器(21)とをさらに備える、
システム。
【請求項2】
前記第4の光子検出器が光子カウンタである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2のビームスプリッタと前記第3のビームスプリッタとの間に配置された、変位演算子を適用するように構成されたデバイス(23)を備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
- 2モードスクイーズド真空状態を生成するように構成された第3のスクイーズド真空状態ソース(25)、特に発振しきい値未満の光パラメトリック発振器であって、前記第2のビームスプリッタが、前記第2のスクイーズド真空状態ソースおよび前記第3のスクイーズド真空状態ソースから光子を受信するように配置される、光パラメトリック発振器と、
- 前記第1の光子検出器が第5のビームスプリッタの第1の出力光路の上に配置されるように前記第1の光子検出器(15)と前記第3のビームスプリッタ(11)との間に配置された第5の偏光ビームスプリッタ(27)と、
- 前記第3の光子検出器が第6のビームスプリッタの第1の出力光路の上に配置されるように前記第3の光子検出器(17)と前記第3のビームスプリッタ(11)との間に配置された第6の偏光ビームスプリッタ(29)と、
- 前記第5のビームスプリッタ(27)の第2の出力光路の上に配置された第5の光子検出器(31)、および前記第6のビームスプリッタ(29)の第2の出力光路の上に配置された第6の光子検出器(33)と
をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
- 前記第1のビームスプリッタと前記第3のビームスプリッタとの間に配置された第1の遅延ループ(39)と、
- 前記第2のビームスプリッタと前記第3のビームスプリッタとの間に配置された第2の遅延ループ(41)と、
- 前記第2のビームスプリッタと前記第4のビームスプリッタとの間に配置された第3の遅延ループ(43)と
をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の遅延ループの入力部に接続された真空状態の入力経路(35)と、真空状態の前記入力経路の上に配置され、前記真空状態に変位演算子を適用するように構成された第2の変位デバイス(37)とを備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2の光子検出器(19)が、第7のビームスプリッタ(55)、前記第7のビームスプリッタの第1の出力光路の上に配置されたSNSPD(57)、および前記第7のビームスプリッタの第2の出力光路の上に配置されたホモダイン検出器(59)を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
変換組立体であって、請求項1から7のいずれか一項に記載の変換システムと、離散変数として符号化されたキュビットを作成するためのシステム(100)とを備え、作成システムが、離散変数として符号化されたキュビットをキュビットの前記入力経路(2)を介して前記変換システムへ送信するように構成される、変換組立体。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載のシステムによって実施される、離散変数として符号化されたキュビットの符号化を、連続変数として符号化されたキュビットに変換するための方法であって、
- 離散変数として符号化された入力光子キュビットを提供するステップと、
- 離散モードと連続モードとの間のハイブリッドエンタングルメントを実行するステップと、
- 前記ハイブリッドエンタングルメントの前記離散モードとの前記入力キュビットの混合を実行するステップと、
- 個々の光子を検出することによって前記混合のベル測定を実行するステップと、
- 連続変数として符号化された出力キュビットを前記ハイブリッドエンタングルメントの前記連続モードから取得するステップと
からなるステップを備える、方法。
【請求項10】
前記離散モードと前記連続モードとの間の前記ハイブリッドエンタングルメントを実行する前記ステップが、
- 前記連続モードを構成する、光の単一モード真空状態、および前記離散モードを構成する、光の2モードスクイーズド真空状態を提供するステップと、
- 前記2モードスクイーズド真空状態から発生する離散状態の調整経路と、前記単一モードスクイーズド真空状態から発生する連続状態の調整経路とを混合することによって、ハイブリッドエンタングルメントを実行するステップと
からなるアクションを備える、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子情報の分野に関する。本発明は、より詳細には、異種システム間の量子相互接続を実施することを可能にする、離散量子変数の量子ビットの符号化を連続量子変数に変換するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
量子情報技法は、従来より別々の以下の2つの手法、すなわち、離散変数として符号化される量子ビットすなわちキュビットに基づく手法、および連続変数として符号化されるキュビットに基づく手法を、開発している。
【0003】
離散変数として符号化することは、その固有値が離散値を取り得る可観測量(observable)を使用することに依拠する。
【0004】
離散キュビットは、たとえば、電子のスピン、光子の偏光、粒子の存在もしくは不在、または実際、時間ビンにおいて符号化されてよい。この最後の候補は、異なる長さの2つの光路に沿って通過する可能性を、そうした状態に残すことによって、粒子の重ね合わせ状態を作り出すこと、したがって、粒子の2つの量子状態のコヒーレント重ね合わせを作り出すことからなる。
【0005】
連続変数として符号化することは、その固有値が連続値を取り得る可観測量を使用することに依拠する。
【0006】
連続キュビットは、たとえば、光のコヒーレント状態の重ね合わせによって符号化されてよい。
【0007】
これらの2つのタイプの変数のために開発されたツールおよび概念は、概して異なり互換的に使用され得ない。したがって、離散キュビットを操作するように設計されたデバイスは、一般に、連続キュビットを操作するように設計されたデバイスと互換性がない。
【0008】
例として、離散キュビットは、より容易に量子メモリの中に記憶され得るが、これらのキュビットを操作するためのプロトコルは、今日まで圧倒的に確率論的なままである。連続キュビットは、対照的に、状態の決定論的テレポーテーションなどの決定論的プロトコルを実施することを可能にし、いくつかの量子コンピューティング機能性を容易にし得る。量子コンピュータの様々な実装形態は、実行中のプロセスの中にあり、同じく様々な情報符号化に依拠する。
【0009】
したがって、具体的には、量子情報機器の様々な部材間の互換性を保証するために、離散変数と連続変数との間でキュビットの符号化を変換できることが有用である。このことは、特に、離散キュビットを操作するシステムと連続キュビットを操作するシステムとを備える異種量子ネットワークを実施することを可能にする。
【0010】
出願US2005/254823は、光子の形態で符号化された量子情報を第1の光子状態から第2の光子状態に変換または転写するためのデバイスに関係する。そのデバイスのいくつかの実施形態が開示されている。
【0011】
論文「Entanglement and teleportation between polarization and wave-like encodings of an optical qubit」、Sychevら、Nature Communications 9、3672、2018年は、偏光として符号化された離散キュビットを、コヒーレント状態の重ね合わせに基づいて符号化された連続キュビットにテレポートさせるための、実験的なデバイスを記載している。
【0012】
このデバイスでは、離散キュビットと連続キュビットとの間のハイブリッドエンタングル状態が、真空からの大きい寄与を伴って作り出され、後選択ステップのみによって除去され得る。しかしながら、このとき、どれが無視され得る事象であるのかを決定することが可能でないので、未知の量子状態を転写するためのプロトコルにとって、後選択ステップを実施することは許容できない。
【0013】
論文「Engineering optical hybrid entanglement between discrete- and continuous-variable states」、Huangら、New Journal of Physics 21、083033、2019年は、離散キュビットと連続キュビットとの間のハイブリッドエンタングルメントの理論的な概念を開示する。しかしながら、実際の実装形態は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「Entanglement and teleportation between polarization and wave-like encodings of an optical qubit」、Sychevら、Nature Communications 9、3672、2018年
【非特許文献2】「Engineering optical hybrid entanglement between discrete- and continuous-variable states」、Huangら、New Journal of Physics 21、083033、2019年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、特に後選択ステップに頼ることをなくすことによって、既存のデバイスの性能を改善し、かつ異種量子リンクをもたらすことを可能にする、離散キュビットの符号化を連続キュビットに変換するためのシステムを提案する必要がある。
【0017】
本発明の狙いは、このニーズを少なくとも部分的に満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
そうするために、本発明は、離散変数として符号化されたキュビットの符号化を、連続変数として符号化されたキュビットに変換するためのシステムに関し、システムは、
- 離散変数として符号化されたキュビットの入力経路と、
- 単一モードスクイーズド真空状態を生成するように構成された第1のスクイーズド真空状態ソース、特に発振しきい値未満で動作させられる光パラメトリック発振器と、
- 2モードスクイーズド真空状態を生成するように構成された第2のスクイーズド真空状態ソース、特に光パラメトリック発振器と、
- 第1のスクイーズド真空状態ソースから光子を受信するように配置された第1のビームスプリッタであって、第1のビームスプリッタの第1の出力光路が、連続変数として符号化されたキュビットの出力経路を構成し、第1のビームスプリッタの第2の出力光路が、第1のスクイーズド真空状態ソースの調整経路を構成する、第1のビームスプリッタと、
- 第2のスクイーズド真空状態ソースから光子を受信するように配置された第2の偏光ビームスプリッタであって、第2のビームスプリッタの第1の出力光路が、第2のスクイーズド真空状態ソースの調整経路を構成し、第2のビームスプリッタの第2の出力光路が、第2のスクイーズド真空状態ソースの信号経路を構成する、第2の偏光ビームスプリッタと、
- 第1のスクイーズド真空状態ソースの調整経路の光子状態と第2のスクイーズド真空状態ソースの調整経路の光子状態とを混合するように構成された、第1のビームスプリッタの第2の出力光路および第2のビームスプリッタの第1の出力光路の上に配置された第3のビームスプリッタと、
- 離散変数として符号化されたキュビットの光子状態と第2のスクイーズド真空状態ソースの信号経路の光子状態とを混合するように構成された、離散変数として符号化されたキュビットの光路および第2のビームスプリッタの第2の出力光路の上に配置された第4のビームスプリッタと、
- 第3のビームスプリッタの第1の出力光路の上に配置された第1の光子検出器と、
- 第4のビームスプリッタの第1の出力光路の上に配置された第2の光子検出器とを備え、第2の光子検出器は光子カウンタである。
【0019】
本発明は、連続変数と離散変数との間のハイブリッドテレポーテーションを実行することを可能にする。このことは、第1および第2のスクイーズド真空状態ソースの相補的なモードを混合することであって、このことがハイブリッドエンタングルメントを作り出すこと、および入力離散キュビットをハイブリッドエンタングルメント状態の離散モードと混合することによって、達成される。光子カウンタによってベル(Bell)測定が実行され、これは変換の成功を予告(herald)する。
【0020】
したがって、本発明は、後選択ステップを必要としない、キュビットの符号化の変換を可能にする。
【0021】
ビームスプリッタは、たとえば、半反射ミラーである。
【0022】
本発明のコンテキストでは、スクイーズド真空状態ソースとは、スクイーズド真空状態、特に単一モードまたは2モードのスクイーズド真空状態を生成することを可能にする非線形特性を有するデバイスである。スクイーズド真空状態ソースは、たとえば、単光路非線形結晶、特に光パラメトリック増幅器(OPA:optical parametric amplifier)、キャビティの中に配置された非線形結晶、特に光パラメトリック発振器(OPO:optical parametric oscillator)、たとえば、カー(Kerr)効果もしくは4波混合を通じて取得される、3次非線形性を有する光ファイバ、または実際、考えられる高温蒸気もしくは原子雲などの、光と物質との相互作用を行う原子系である。
【0023】
好ましい一実施形態によれば、システムは、第4のビームスプリッタの第2の出力光路の上に配置された第4の光子検出器を備える。
【0024】
好ましくは、第4の光子検出器は光子カウンタである。
【0025】
第4の光子検出器は、位相ロックを実行するために、または光子カウンタから構成されるとき、ベル測定を実行するために、使用されてよい。
【0026】
第4の検出器がベル測定を実行するために使用される場合、好ましくは、第4のスプリッタと第3の検出器との間、または第4のスプリッタと第4の検出器との間に、追加のビームスプリッタが配置され、追加のビームスプリッタの出力経路のうちの1つは、位相ロックを実行することを可能にする、フォトダイオードなどの追加の光子検出器に向かって導かれる。
【0027】
有利なことに、システムは、第3のビームスプリッタの第2の出力光路の上に配置された第3の光子検出器を備える。
【0028】
第3の光子検出器は、位相ロックを実行するために、または第1の光子検出器によって準備される状態に対して逆位相を有するハイブリッドエンタングルメント状態を準備するために、使用されてよい。
【0029】
第3の検出器が位相ロックを実行するために使用されない場合、好ましくは、第3のスプリッタと第1の検出器との間、または第3のスプリッタと第3の検出器との間に、追加のビームスプリッタが配置され、追加のビームスプリッタの出力経路のうちの1つは、位相ロックを実行することを可能にする、フォトダイオードなどの追加の光子検出器に向かって導かれる。特定の一実施形態によれば、システムは、第2のビームスプリッタと第3のビームスプリッタとの間に配置された、変位演算子を適用するように構成されたデバイスを備える。
【0030】
一変形形態によれば、システムは、
- 2モードスクイーズド真空状態を生成するように構成された第3のスクイーズド真空状態ソース、特に発振しきい値未満の光パラメトリック発振器であって、第2のビームスプリッタが、第2のスクイーズド真空状態ソースおよび第3のスクイーズド真空状態ソースから光子を受信するように配置される、光パラメトリック発振器と、
- 第1の光子検出器が第5の偏光ビームスプリッタの第1の出力光路の上に配置されるように第1の光子検出器と第3のビームスプリッタとの間に配置された第5の偏光ビームスプリッタと、
- 第3の光子検出器が第6の偏光ビームスプリッタの第1の出力光路の上に配置されるように第3の光子検出器と第3のビームスプリッタとの間に配置された第6の偏光ビームスプリッタと、
- 第5のビームスプリッタの第2の出力光路の上に配置された第5の光子検出器、および第6のビームスプリッタの第2の出力光路の上に配置された第6の光子検出器とをさらに備える。
【0031】
この構成は、有利なことに、偏光として符号化された離散キュビットの符号化を連続キュビットに変換することを可能にする。
【0032】
代替として、システムは、
- 第1のビームスプリッタと第3のビームスプリッタとの間に配置された第1の遅延ループと、
- 第2のビームスプリッタと第3のビームスプリッタとの間に配置された第2の遅延ループと、
- 第2のビームスプリッタと第4のビームスプリッタとの間に配置された第3の遅延ループとをさらに備える。
【0033】
この構成は、有利なことに、時間ビンにおいて符号化された離散キュビットを連続キュビットに変換することを可能にする。
【0034】
好ましくは、システムは、このとき、第1の遅延ループの入力部に接続された真空状態の入力経路と、真空状態の入力経路の上に配置され、真空状態に変位演算子を適用するように構成された第2の変位デバイスとを備える。
【0035】
有利なことに、第2の光子検出器は、第7のビームスプリッタ、第7のビームスプリッタの第1の出力光路の上に配置された超電導ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD:superconducting nanowire single-photon detector)、および第7のビームスプリッタの第2の出力光路の上に配置されたホモダイン検出器を備える。
【0036】
この特徴はベル測定を改善する。
【0037】
本発明はまた、本発明による変換システムと、離散変数として符号化されたキュビットを作成するためのシステムとを備える、変換組立体に関係し、作成システムは、離散変数として符号化されたキュビットをキュビットの入力経路を介して変換システムへ送信するように構成される。
【0038】
本発明はまた、特に上記で規定されるような本発明によるシステムによって実施される、離散変数として符号化されたキュビットの符号化を、連続変数として符号化されたキュビットに変換するための方法に関係し、方法は、
- 離散変数として符号化された入力光子キュビットを提供するステップと、
- 離散モードと連続モードとの間のハイブリッドエンタングルメントを実行するステップと、
- ハイブリッドエンタングルメントの離散モードとの入力キュビットの混合を実行するステップと、
- 個々の光子を検出することによって混合のベル測定を実行するステップと、
- 連続変数として符号化された出力キュビットをハイブリッドエンタングルメントの連続モードから取得するステップと
からなるステップを備える。
【0039】
好ましくは、離散モードと連続モードとの間のハイブリッドエンタングルメントを実行するステップは、
- 連続モードを構成する、光の単一モードスクイーズド真空状態、および離散モードを構成する、光の2モードスクイーズド真空状態を提供するステップと、
- 2モードスクイーズド真空状態から発生する離散状態の調整経路と、単一モードスクイーズド真空状態から発生する連続状態の調整経路とを混合することによって、ハイブリッドエンタングルメントを実行するステップと
からなるアクションを備える。
【0040】
スクイーズドモードおよび2モードスクイーズド状態は各々、好ましくは、光パラメトリック発振器、光パラメトリック増幅器、光ファイバ、または原子系などの、スクイーズド真空状態ソースによって生成される。
【0041】
ベル測定は、好ましくは、ビームスプリッタ、ビームスプリッタの第1の出力光路の上に配置されたSNSPD、およびビームスプリッタの第2の出力光路の上に配置されたホモダイン検出器を備える、光子カウンタによって実行される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】フォック(Fock)に基づいて離散変数として符号化されたキュビットを、連続変数として符号化されたキュビットに変換するように構成された、本発明によるシステムを概略的に示す図である。
【
図2】偏光として符号化された離散キュビットを、連続変数として符号化されたキュビットに変換するように構成された、本発明によるシステムを概略的に示す図である。
【
図3】時間ビンにおいて符号化された離散キュビットを、連続変数として符号化されたキュビットに変換するように構成された、本発明によるシステムを概略的に示す図である。
【
図4】
図3のシステムの中で使用されるような遅延ループの詳細図である。
【
図5】フォックに基づいて符号化された離散キュビットを作成するためのシステムに関連する、本発明によるシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、フォック{|0>,|1>}に基づいて符号化された、言い換えれば、単一の光子の存在|1>または不在|0>に対して符号化された離散キュビットを、|cat±>∝|α>±|-α>となるようなコヒーレント状態の重ね合わせ{|cat+>,|cat->}に基づいて符号化された連続キュビットに変換するように構成された、本発明によるシステム1を概略的に示し、ただし、|α>および|-α>は、振幅|α|のコヒーレント状態である。
【0044】
入力キュビットは、フォックに基づいて離散変数(DV:discrete variable)として符号化され、したがって、
【0045】
【0046】
という形式を有し、c0およびc1eiθは、入力キュビットに対して符号化された情報を表す係数である。
【0047】
出力キュビットは、連続変数(CV:continuous variable)として符号化され、
【0048】
【0049】
という形式を取る。したがって、システム1は、離散変数として符号化された入力キュビットによって搬送される情報を、連続変数として符号化された出力キュビットに転写する。その情報は、係数c0およびc1eiθによって表される。
【0050】
[式2]の中の+または-という符号は、テレポーテーションを実行するために使用される検出器に依存する。
【0051】
システム1は、発振しきい値未満で動作させられ、かつ光の単一モードスクイーズド真空状態を生成するように構成された、第1のスクイーズド真空状態ソース3、この例では、光パラメトリック発振器(OPO)、および光の2モードスクイーズド真空状態を生成するように構成された、発振しきい値未満で動作させられる、第2のスクイーズド真空状態ソース5、この例では、光パラメトリック発振器を備える。
【0052】
好ましくは、第1のOPO3によって生成される単一モードスクイーズド真空状態において光子減算が実行される。光子の減算は、スクイーズド真空状態からビームの断片を抽出することによって実行される。抽出されたこの断片は、光子検出器に向かって導かれる。この光子検出器における光子の検出は、光子の減算を用いたスクイーズド真空状態の生成を予告する。
【0053】
光のスクイーズド状態とは、その直交成分のうちのいくつかにとって、コヒーレント状態に対して量子不確実性が低減されたモードである。
【0054】
第1のOPO3によって生成されるスクイーズドモードは、第1のビームスプリッタ7に向かって導かれる。第1のスプリッタ7の第1の出力光路は、連続変数として符号化されたキュビットのための出力経路8を構成する。第1のスプリッタ7の第2の出力光路は、ハイブリッドエンタングルメントの連続モードの調整経路を構成する。
【0055】
rとラベル付けされた、第1のスプリッタの振幅反射係数は、好ましくは、r2が0.1以下、より好ましくは0.05以下、たとえば、0.03に等しいようなものである。したがって、入射ビームの断片(1-r2)が、出力経路を構成する第1のスプリッタ3の出力光路へ送信され、入射ビームの断片r2が、調整経路に向かって、かつ第3のビームスプリッタ11に向かって反射される。
【0056】
第2のOPO5によって生成される2モードスクイーズド真空状態は、第2のビームスプリッタ9に向かって導かれる。
【0057】
2モードスクイーズド真空状態は、特に直交偏光をなしてもつれた光子のペアの低いポンプ動力における、相関するフォック状態の重ね合わせであるものと見なされてよい。それらの垂直偏光または水平偏光による2つのフォック状態に対応する2つの光子を分離するために、スプリッタ9が偏光させている。
【0058】
第3のビームスプリッタ11は、第1のスプリッタ7の第2の出力光路および第2のスプリッタ9の第1の出力光路の上に配置され、離散モードの調整経路を構成する。
【0059】
随意に、第2のビームスプリッタ9と第3のビームスプリッタ11との間に、変位演算子を適用するように構成されたデバイス23が配置される。
【0060】
デバイス23は、変位されるべきモードを、対応する振幅r1|α|を有する減衰したコヒーレント状態と混合するように構成された、部分反射性のビームスプリッタを備える。
【0061】
変位演算子が適用され、すなわち、
【0062】
【0063】
となり、r1は、デバイス23のビームスプリッタの振幅反射係数を表し、|α|は、第1のOPO3によって準備されるモードの振幅であり、
【0064】
【0065】
および
【0066】
【0067】
は、それぞれ、光子消滅演算子および光子生成演算子である。
【0068】
第1のOPOから発生するコヒーレント状態の振幅|α|が較正されていないとき、r1は、好ましくは、振幅r1|α|が第1のOPO3の調整経路の中の光の振幅に対応するように調整される。
【0069】
有利なことに、この変位を適用することは、変換プロトコルを改善することを可能にする。具体的には、第2のスプリッタ9の出力部における、離散モードの調整経路上での変位は、第2のOPO5から発生する光子の平均個数を第1のスプリッタ7から発生する光子の平均個数と均衡させることを可能にし、このことは、第3のスプリッタ11における区別不可能性を最大化する。
【0070】
区別不可能性は、r1が第1のビームスプリッタ7の振幅反射係数rに等しいときに最適である。
【0071】
第1の光子検出器15、および随意に第3の光子検出器17は、第3のスプリッタ11の2つの出力光路の上に配置される。
【0072】
したがって、第3のスプリッタ11は、OPO3(連続モード)から発生する光子とOPO5(離散モード)から発生する光子とを混合するように構成される。言い換えれば、2つのOPO3、5の調整経路は、第3のスプリッタにおいて組み合わせられる。
【0073】
好ましくは、第1のOPO3は、ノイズ低減が5dB以下、より好ましくは3dB以下の、スクイーズド真空状態を作り出す。
【0074】
第1の検出器15上での光子の到着は、第3のスプリッタによって実行される混合が原因で互いに区別され得ない2つの状態のうちの1つに対応する。
【0075】
たとえば、第1のOPO3によって生成されるスクイーズド真空状態からの光子減算を用いて真空状態が生成される場合、区別され得ない2つの状態とは、以下のこと、すなわち、検出された光子が第2のOPO5から来ることであって、その場合、出力経路8上の第1のOPO3の出力部においてスクイーズド真空状態が存在しており、第2のOPO5の出力部において単一の光子が存在していたこと、または検出された光子が第1のOPO3から来ることであって、その場合、第2のOPO5の出力において真空状態が存在しており、第1のOPO3の出力経路8上に、光子減算を伴うスクイーズド真空状態が存在していたことの、いずれかである。
【0076】
第1の検出器15上での光子の検出は、|0>|cat+>+|1>|cat->という形式のハイブリッドエンタングルメント状態の生成を予告する。
【0077】
第3の検出器17は、有利なことに、位相ロックを実行するために使用されてよい。
【0078】
第3の検出器17はまた、|0>|cat+>-|1>|cat->という形式の状態と言うべき、第1の検出器15によって予告されたエンタングル状態の位相に対向する位相を有するエンタングル状態の準備を予告してよい。
【0079】
第3の検出器が位相ロックを実行するために使用されない場合、好ましくは、第3のスプリッタ11と第1の検出器15との間、または第3のスプリッタ11と第3の検出器17との間に、追加のビームスプリッタが配置され、追加のビームスプリッタの出力経路のうちの1つは、位相ロックを実行することを可能にする、フォトダイオードなどの追加の光子検出器に向かって導かれる。
【0080】
位相ロックは、たとえば、干渉法によって実行される。干渉パターンの振幅が光子検出器上で測定され、制御ループが、たとえば、圧電アクチュエータの助けをかりて、光路の長さにわたってパターンのピーク上にとどまることを可能にする。
【0081】
システム1はまた、離散変数として符号化されたキュビットのための入力経路2を備える。
【0082】
第2のスプリッタ9の第2の出力光路および入力経路2の光路の上に、第4のビームスプリッタ13が配置される。好ましくは、第4のスプリッタ13および/または第2のスプリッタ9および/または第3のスプリッタ11は、受信された光のうちの50%を送信し、受信された光のうちの50%を反射するスプリッタである。
【0083】
したがって、第4のスプリッタ13は、入力キュビットを第2のOPO5から発生する離散モードと混合することを可能にする。
【0084】
第2の光子検出器19、および随意に第4の光子検出器21は各々、第4のスプリッタ13の2つの出力光路のうちの一方の上に配置される。
【0085】
第2の検出器19は光子カウンタである。
【0086】
光子をカウントすることは、ベル状態測定を個別に実行する。ベル状態測定は、入力キュビットによって搬送された情報を出力キュビットにテレポートさせることを可能にする。
【0087】
したがって、第2の検出器19上での光子の検出は、状態を予告し、すなわち、
【0088】
【0089】
となる。
【0090】
ベル測定は、様々なやり方で実施されてよい。
【0091】
したがって、光子カウンタは、たとえば、超電導ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD)である。SNSPDは、高い量子効率を達成する。しかしながら、SNSPDは、一般に、複数光子成分から単一光子成分を区別することを可能にしない。このことは、テレポーテーションの品質を劣化させることになりやすい。
【0092】
したがって、SNSPDをホモダイン検出と結合することが好ましい。
【0093】
光ホモダイン検出は、信号と基準ビームとの間の干渉を測定し、信号および基準は、それらの間に相対位相を有する。ホモダイン検出は、電界の直交成分を測定することを可能にする。
【0094】
本発明のコンテキストでは、ホモダイン検出はパリティ検出器として使用されてよい。
【0095】
SNSPDをホモダイン検出と組み合わせることによって、単一光子が検出されることを確認することが可能であり、このことは、ベル測定を有利に改善する。この組合せを実行するために、光子カウンタは、r22が0.1以下、より好ましくは0.05以下、たとえば、0.03に等しくなるような、好ましくは、振幅反射係数r2を有する、ビームスプリッタを備える。ビームの反射断片r22に対応する、このスプリッタの第1の光出力は、SNSPDに向かって導かれ、ビームの送信された断片(1-r22)に対応する他の光出力は、ホモダイン検出器に向かって導かれる。
【0096】
そのような光子カウンタ19の一例が
図5に示される。
【0097】
ベル測定を実行するために、光子カウンタにおいて、光子の不在、光子の存在、または2つの光子の存在からなる事象の間を区別することが可能でなければならない。SNSPDによる検出は、光子の不在の場合を除外することを可能にする。ビームの小さい断片をホモダイン検出器へ送信するビームスプリッタを使用すると、SNSPDによる検出は、2つの光子の初期存在の場合には光子がホモダイン検出器に向かって導かれること、または単一の光子の初期存在の場合には光子がホモダイン検出器に向かって導かれないことの、いずれかを意味する。ホモダイン検出器は、光子の存在と不在との間を弁別すること、したがって、単一の光子が光子カウンタに入ったかどうかを決定することを可能にする。
【0098】
代替として、光子カウンタは、光子数識別検出器(PNRD:photon number resolving detector)であってよい。このタイプの検出器は、入射光子の個数を区別することが可能である。
【0099】
図1に示す例では、第2の検出器19および第4の検出器21は両方とも光子カウンタである。
【0100】
第4の光子検出器21上での検出は、第2の検出器19によって予告された状態からのπの値との相対位相差を有する、後続の状態を予告し、すなわち、
【0101】
【0102】
となる。
【0103】
この状態は、第2の光子検出器19上での検出によって予告された状態に対する逆位相を有する。言い換えれば、このことは、第2の検出器19によって予告された状態にパウリ(Pauli)演算子σZを適用することになる。
【0104】
しかしながら、同じ位相の状態を体系的に作成するために、この位相差を補償することが可能である。補償は、たとえば、第3の検出器19および第4の検出器21での可能な検出イベントに応じて、出力経路8の上に配置された調整可能な位相遅延板によって実行される。
【0105】
代替として、第4の検出器21は光子カウンタでなく、位相ロックを実行するように構成される。このことは、特に第4の検出器21がフォトダイオードである場合に実行されてよい。
【0106】
第4の検出器が位相ロックを実行するために使用されない場合、好ましくは、第4のスプリッタ13と第3の検出器19との間、または第4のスプリッタ13と第4の検出器21との間に、追加のビームスプリッタが配置され、追加のビームスプリッタの出力経路のうちの1つは、位相ロックを実行することを可能にする、フォトダイオードなどの追加の光子検出器に向かって導かれる。
【0107】
有利なことに、干渉フィルタおよび/またはファブリペロー(Fabry-Perot)キャビティが、光子検出器のうちの1つまたは複数の入力部の前方に、具体的には第1の光子検出器の前方および/または第2の光子検出器の前方に配置される。
【0108】
図2は、{|H>,|V>}に基づいて偏光として符号化された、言い換えれば、光子の水平偏光|H>または垂直偏光|V>に対して符号化された、離散キュビットの符号化を、コヒーレント状態の重ね合わせ{|α>,|-α>}に基づいて符号化された連続キュビットに変換するように構成された、本発明によるシステム1’を概略的に示す。
【0109】
図1の実施形態の要素と同一であり、同じ機能を果たす要素は、同じ参照符号によって識別される。
【0110】
入力キュビットは、離散変数(DV)として符号化され、
【0111】
【0112】
という形式を有し、c0およびc1eiθは、入力キュビットに対して符号化された情報を表す係数である。
【0113】
出力キュビットは、連続変数(CV)として符号化され、
【0114】
【0115】
という形式を取る。したがって、システム1’は、離散変数として符号化された入力キュビットによって搬送される情報を、連続変数として符号化された出力キュビットに転写する。
【0116】
図1に示すシステム1とは異なり、システム1’は、第3の光パラメトリック発振器25を備える。第3のOPO25は、第2のOPO5のように、光の2モードスクイーズド真空状態を生成するように構成される。第3のOPO25によって生成される場(field)は、第2のビームスプリッタ9に向かって導かれる。
【0117】
したがって、第2および第3のOPOの出力部における光子状態は、第2のビームスプリッタ9において混合される。
【0118】
2つのOPO5、25を使用することは、偏光としての符号化の場合には二重検出を必要とする、ハイブリッドエンタングル状態を予告することを可能にする。この例では、ハイブリッドエンタングルメントの離散モードは、偏光として符号化される。
【0119】
第3のビームスプリッタ11の出力部における光子の偏光状態の検出は、偏光ビームスプリッタ27、29の、第3のスプリッタの2つの出力光路の各々における実装を必要とする。偏光スプリッタ27、29の各々は、2つの偏光スプリッタ27、29の出力部において光子を検出するように配置される、それぞれ、2つの検出器15、31および17、33に向かって、それらの偏光状態|H>または|V>に応じて光子を導く。
【0120】
検出器15、17、31、33は、SNSPDなどの光子カウンタである。
【0121】
状態|H>をなす光子がスプリッタ27の出力部において検出され、かつ状態|V>をなす光子がスプリッタ29の出力部において検出されると、または反対に、状態|V>をなす光子がスプリッタ27の出力部において検出され、かつ状態|H>をなす光子がスプリッタ29の出力部において検出されると、ハイブリッドエンタングルメント状態が予告される。
【0122】
検出モードに応じて、予告された状態の間にπの値との相対位相差がある。したがって、予告されるハイブリッドエンタングルメント状態は、第1の事例では|H>|α>+|V>|-α>、また第2の事例では|H>|α>-|V>|-α>という形式を有する。
【0123】
ちょうど
図1の実施形態におけるように、変位デバイス23および第4の光子検出器21は随意である。
【0124】
図3は、{|s>,|l>}に基づいて時間ビンにおいて符号化された離散キュビットの符号化を、コヒーレント状態の重ね合わせ{|α>,|-α>}に基づいて符号化された連続キュビットに変換するように構成された、本発明によるシステム1’’を概略的に示す。図示の例では、離散キュビットは、光子が進行する短距離|s>または長距離|l>に対して符号化される。
【0125】
図1の実施形態の要素と同一であり、同じ機能を実行する要素は、同じ参照符号によって識別される。
【0126】
入力キュビットは、離散変数(DV)として符号化され、
【0127】
【0128】
という形式を有し、c0およびc1eiθは、入力キュビットに対して符号化された情報を表す係数である。
【0129】
出力キュビットは、連続変数(CV)として符号化され、
【0130】
【0131】
という形式を取る。したがって、システム1’’は、離散変数として符号化された入力キュビットによって搬送される情報を、連続変数として符号化された出力キュビットに転写する。
【0132】
図1の実施形態とは異なり、システム1’’はいくつかの遅延ループを備える。遅延ループは、光子の状態|s>および|l>を生成することを可能にする。遅延ループは、好ましくは、第1の光路s、および経路sよりも長い第2の光路lを作成するように配置された、2つのビームスプリッタおよび2つのミラーを備える。
【0133】
遅延ループ45の一例が
図4に示される。遅延ループ45は、ビームスプリッタ47を備え、ビームスプリッタ47の出力光路のうちの一方がビームスプリッタ53に向かって導かれ、ビームスプリッタ47の他方の出力光路が、ミラー49、ミラー51、次いでスプリッタ53に向かって連続的に導かれる。
【0134】
したがって、sと呼ばれる、遅延ループ45の第1の光路は、スプリッタ47からスプリッタ53まで直接通過することからなる。lと呼ばれる、遅延ループの第2の光路は、スプリッタ47からミラー49、51まで、かつ最後にスプリッタ53まで通過することからなる。
【0135】
システム1’’は、第1のビームスプリッタ7と第3のビームスプリッタ11との間に配置された第1の遅延ループ39を備える。
【0136】
システム1’’はまた、第1の遅延ループ39の入力ビームスプリッタに向かって導かれた、真空状態の入力経路35を備える。入力経路35は、CVモードの調整経路を提供する。
【0137】
随意に、真空状態において変位D(rα)を実行するように構成された変位デバイス37が、入力経路35と第1の遅延ループ39との間に置かれ、ただし、rは、デバイス37のビームスプリッタの振幅反射係数を表し、|α|は、特に第1のOPO3によって実行される圧縮に依存する、入力経路35の状態の振幅を表す。変位デバイス37は、スクイーズド真空状態の振幅を、第1のスプリッタ7によって第1のOPO3から抽出された光の断片と均衡させることを可能にすることによって、変換を有利に改善してよく、このことは、遅延線における干渉を最大化することを可能にする。好ましくは、この効果を最大化するために、デバイス37のビームスプリッタの係数rは第1のスプリッタ7の係数rに等しい。
【0138】
それぞれ、第2のビームスプリッタ9と第3のビームスプリッタ11との間、および第2のスプリッタ9と第4のスプリッタ13との間に、第2の遅延ループ41および第3の遅延ループ43が配置される。
【0139】
したがって、遅延ループ39、41、43は、様々なビームにおいてモード|s>または|l>を作成することを可能にする。
【0140】
図1の実施形態におけるように、第1の光子検出器15上での検出は、|s>|α>+|l>|-α>という形式のエンタングルハイブリッド状態の生成を予告する。第3の随意の光子検出器17上での検出は、|s>|α>-|l>|-α>という形式の状態と言うべき、逆位相を有する状態の生成を予告する。
【0141】
第2の光子検出器19および第4の光子検出器21は両方とも光子カウンタであってよい。代替として、第2の検出器19だけが光子カウンタである。第4の随意の検出器21はまた、位相ロックを実行するために使用されるフォトダイオードであってよい。
【0142】
(実施例)
図5は、離散変数として符号化されたキュビットを作成するためのシステム100に関連する、本発明によるシステム1の一実施形態を示す。
【0143】
図1の実施形態の要素と同一であり、同じ機能を実行する要素は、同じ参照符号によって識別される。
【0144】
システム1は、入力経路2を介して入ってくる、フォックに基づいて離散変数として符号化されたキュビットを、出力経路8を介して出ていく、連続変数として符号化されたキュビットに変換するように構成される。
【0145】
離散変数として符号化されたキュビットが、システム100によって生成される。
【0146】
システム100は、光の2モードスクイーズド真空状態を生成するように構成された光パラメトリック発振器102を備える。OPO102は、単一の光子を生成してよい。OPO102の光出力は、偏光ビームスプリッタ104に向かって導かれる。スプリッタ104の第1の出力光路は、変換システム1の入力経路2に向かって導かれ、他の出力光路は、ビームスプリッタ106に向かって導かれる。
【0147】
離散キュビットを生成するために、OPO102によって生成される光子の予告モードに変位が適用され、このことは、光子の予告モードと変位モードとを区別不可能にさせる。キュビットの生成は、SNSPD108上での検出によって予告される。フォトダイオード110は、位相ロックθを制御することを可能にする。
【0148】
生成される離散キュビットは、
【0149】
【0150】
という形式を有する。係数c0およびc1eiθは、OPO102によって生成された光子の予告モードの変位の振幅および位相によって決定される。
【0151】
この例では、第1の光子検出器15はSNSPDであり、第3の光子検出器17は、位相ロックを統制するように構成されたフォトダイオードである。
【0152】
変換システム1の第2の光子検出器19は、ホモダイン検出器と組み合わせられたSNSPDを備える光子カウンタである。
【0153】
したがって、第2の検出器19が、まず第一にビームスプリッタ55を備える。スプリッタ55の第1の出力光路はSNSPD57に向かって導かれ、他の出力光路はホモダイン検出器59に向かって導かれる。
【0154】
ホモダイン検出器59は、ビームスプリッタ61を備える。基準ビームの入力経路63は、スプリッタ61に向かって導かれる。信号と基準ビームとの混合が、デバイス67に接続される2つの光子検出器65、好ましくは、フォトダイオードへ送られ、デバイス67は、ホモダイン測定を実行することを可能にする。デバイス67は、たとえば、2つの光子検出器65によって生成される電流を減算するように構成される。
【0155】
第4の光子検出器21は、位相ロックを実行するように構成されたフォトダイオードである。
【0156】
したがって、ハイブリッドエンタングルメントは、第1のSNSPD15において予告することによりOPO3および5の調整経路を計画することによって準備される。このことは、入力離散キュビットをハイブリッドエンタングルメントの離散モードと混合することを可能にする。
【0157】
第2の検出器19のSNSPD57上での検出と、それに後続するホモダイン検出組立体59上での調整によって、ベル測定が予告される。
【0158】
2つのSNSPD15および57上での同時検出によって、キュビットの変換が予告される。
【0159】
図5の例では、OPO3、5、102は、約50MHzの通過帯域および4.3GHzの自由スペクトル範囲を有するように構成される。ポンプ動力は、発振しきい値を下回る。ポンプ光は、波長が532nmの連続レーザーによって生成される。OPO3、5、102は各々、1064nmの波長におけるシグナル波およびアイドラー波を生成する。
【0160】
第1のOPO3および第2のOPO5は、直線状のセミモノリシックキャビティを備える。入力ミラーは、OPOの結晶の上に直接堆積される。出力ミラーは、38mmの曲率の半径を有する。
【0161】
第1のOPO3は、4.5dBのノイズ圧縮を伴って15mWのポンプ動力を受ける、Raicolによって供給されるようなタイプIの周期分極チタンリン酸カリウム(PPKTP)結晶を備える。光子減算を用いてスクイーズド真空状態を作成するために、生成されたビームのうちの7%が抽出される。第1のOPO3は二重共鳴型であり、二重共鳴は、キャビティの長さおよびPPKTP結晶の温度を調整することによって取得される。
【0162】
第2のOPO5は、3.5mWのポンプ動力を受ける、Raicolによって供給されるようなタイプIIのチタンリン酸カリウム(KTP)結晶を備える。OPO5は三重共鳴型であり、三重共鳴は、キャビティの長さ、結晶の温度、およびポンプレーザーの波長を調整することによって取得される。
【0163】
OPO102は、2mWのポンプ動力を受けるタイプIIのKTP結晶を備える。OPO5および102の同時三重共鳴を取得するために、OPO102の結晶の角度が追加の自由度を構成する。この目的で、OPO102の入力ミラーは、OPO105とは対照的に、自由であり結晶の上に堆積されない。
【0164】
SNSPD15、57、108は、1.3Kという温度において実装される。各SNSPDの入力部の前に、125GHzの通過帯域を有する干渉フィルタ、ならびに330GHzの自由スペクトル範囲および320MHzの通過帯域を有するファブリペローキャビティが、ヘラルド光子(heralding photon)をフィルタ処理するために配置される。
【0165】
連続キュビットへの離散キュビットのテレポーテーションの成功を予告するために、3つのSNSPD15、57、108が各々、同じ時間ビンの中で事象を予告しなければならない。この三重検出を分析するために、ID QuantiqueからのID900タイムコントローラモジュールなどの超高速検出モジュールが使用される。
【0166】
ただし、本発明の範囲から逸脱することなく、他の変形および改善が行われてよい。
【符号の説明】
【0167】
1 システム
1’ システム
1’’ システム
2 入力経路
3 第1のスクイーズド真空状態ソース
5 第2のスクイーズド真空状態ソース
7 第1のビームスプリッタ
8 出力経路
9 第2のビームスプリッタ
11 第3のビームスプリッタ
13 第4のビームスプリッタ
15 第1の光子検出器
17 第3の光子検出器
19 第2の光子検出器
21 第4の光子検出器
23 デバイス
25 第3の光パラメトリック発振器
27 偏光ビームスプリッタ
29 偏光ビームスプリッタ
31 第5の光子検出器
33 第6の光子検出器
35 入力経路
37 変位デバイス
39 第1の遅延ループ
41 第2の遅延ループ
43 第3の遅延ループ
45 遅延ループ
47 ビームスプリッタ
49 ミラー
51 ミラー
53 ビームスプリッタ
55 ビームスプリッタ
57 超電導ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD)
59 ホモダイン検出器
61 ビームスプリッタ
63 入力経路
65 光子検出器
67 デバイス
100 システム
102 光パラメトリック発振器
104 偏光ビームスプリッタ
106 ビームスプリッタ
108 超電導ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD)
110 フォトダイオード
【手続補正書】
【提出日】2024-08-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離散変数として符号化されたキュビットの符号化を、連続変数として符号化されたキュビットに変換するためのシステム(1、1’、1’’)であって、
- 離散変数として符号化されたキュビットの入力経路(2)と、
-
単一モードスクイーズド真空状態を生成するように構成された第1のスクイーズド真空状態ソース(3)と、
-
2モードスクイーズド真空状態を生成するように構成された第2のスクイーズド真空状態ソース(5)と、
- 前記第1のスクイーズド真空状態ソースから光子を受信するように配置された第1のビームスプリッタ(7)であって、前記第1のビームスプリッタの第1の出力光路が、連続変数として符号化されたキュビットの出力経路(8)を構成し、第2の出力光路が、前記第1のスクイーズド真空状態ソースの調整経路を構成する、第1のビームスプリッタ(7)と、
- 前記第2のスクイーズド真空状態ソースから光子を受信するように配置された第2の偏光ビームスプリッタ(9)であって、前記第2のビームスプリッタの第1の出力光路が、前記第2のスクイーズド真空状態ソースの調整経路を構成し、第2の出力光路が、前記第2のスクイーズド真空状態ソースの信号経路を構成する、第2の偏光ビームスプリッタ(9)と、
- 前記第1のスクイーズド真空状態ソースの前記調整経路の光子状態と前記第2のスクイーズド真空状態ソースの前記調整経路の光子状態とを混合するように構成された、前記第1のビームスプリッタの前記第2の出力光路および前記第2のビームスプリッタの前記第1の出力光路の上に配置された第3のビームスプリッタ(11)と、
- 離散変数として符号化された前記キュビットの光子状態と前記第2のスクイーズド真空状態ソースの前記信号経路の光子状態とを混合するように構成された、離散変数として符号化された前記キュビットの光路および前記第2のビームスプリッタの前記第2の出力光路の上に配置された第4のビームスプリッタ(13)と、
- 前記第3のビームスプリッタの第1の出力光路の上に配置された第1の光子検出器(15)と、
- 前記第4のビームスプリッタの第1の出力光路の上に配置された第2の光子検出器(19)とを備え、前記第2の光子検出器が光子カウンタであり、
前記システムが、前記第3のビームスプリッタの第2の出力光路の上の第3の光子検出器(17)と、前記第4のビームスプリッタの第2の出力光路の上に配置された第4の光子検出器(21)とをさらに備える、
システム。
【請求項2】
前記第4の光子検出器が光子カウンタである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2のビームスプリッタと前記第3のビームスプリッタとの間に配置された、変位演算子を適用するように構成されたデバイス(23)を備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
-
2モードスクイーズド真空状態を生成するように構成された第3のスクイーズド真空状態ソース(25)であって、前記第2のビームスプリッタが、前記第2のスクイーズド真空状態ソースおよび前記第3のスクイーズド真空状態ソースから光子を受信するように配置される、
第3のスクイーズド真空状態ソース(25)と、
- 前記第1の光子検出器が第5のビームスプリッタの第1の出力光路の上に配置されるように前記第1の光子検出器(15)と前記第3のビームスプリッタ(11)との間に配置された第5の偏光ビームスプリッタ(27)と、
- 前記第3の光子検出器が第6のビームスプリッタの第1の出力光路の上に配置されるように前記第3の光子検出器(17)と前記第3のビームスプリッタ(11)との間に配置された第6の偏光ビームスプリッタ(29)と、
- 前記第5のビームスプリッタ(27)の第2の出力光路の上に配置された第5の光子検出器(31)、および前記第6のビームスプリッタ(29)の第2の出力光路の上に配置された第6の光子検出器(33)と
をさらに備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
- 前記第1のビームスプリッタと前記第3のビームスプリッタとの間に配置された第1の遅延ループ(39)と、
- 前記第2のビームスプリッタと前記第3のビームスプリッタとの間に配置された第2の遅延ループ(41)と、
- 前記第2のビームスプリッタと前記第4のビームスプリッタとの間に配置された第3の遅延ループ(43)と
をさらに備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の遅延ループの入力部に接続された真空状態の入力経路(35)と、真空状態の前記入力経路の上に配置され、前記真空状態に変位演算子を適用するように構成された第2の変位デバイス(37)とを備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2の光子検出器(19)が、第7のビームスプリッタ(55)、前記第7のビームスプリッタの第1の出力光路の上に配置されたSNSPD(57)、および前記第7のビームスプリッタの第2の出力光路の上に配置されたホモダイン検出器(59)を備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
変換組立体であって、
請求項1に記載の変換システムと、離散変数として符号化されたキュビットを作成するためのシステム(100)とを備え、作成システムが、離散変数として符号化されたキュビットをキュビットの前記入力経路(2)を介して前記変換システムへ送信するように構成される、変換組立体。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムによって実施される、離散変数として符号化されたキュビットの符号化を、連続変数として符号化されたキュビットに変換するための方法であって、
- 離散変数として符号化された入力光子キュビットを提供するステップと、
- 離散モードと連続モードとの間のハイブリッドエンタングルメントを実行するステップと、
- 前記ハイブリッドエンタングルメントの前記離散モードとの前記入力キュビットの混合を実行するステップと、
- 個々の光子を検出することによって前記混合のベル測定を実行するステップと、
- 連続変数として符号化された出力キュビットを前記ハイブリッドエンタングルメントの前記連続モードから取得するステップと
を備える、方法。
【請求項10】
前記離散モードと前記連続モードとの間の前記ハイブリッドエンタングルメントを実行する前記ステップが、
- 前記連続モードを構成する、光の単一モード真空状態、および前記離散モードを構成する、光の2モードスクイーズド真空状態を提供するステップと、
- 前記2モードスクイーズド真空状態から発生する離散状態の調整経路と、前記単一モードスクイーズド真空状態から発生する連続状態の調整経路とを混合することによって、ハイブリッドエンタングルメントを実行するステップと
からなるアクションを備える、請求項9に記載の方法。
【国際調査報告】