(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-24
(54)【発明の名称】フッ素化洗浄流体混合物
(51)【国際特許分類】
C11D 7/30 20060101AFI20241217BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
C11D7/30
C11D7/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538970
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-08-20
(86)【国際出願番号】 IB2022062237
(87)【国際公開番号】W WO2023126735
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】木村 珠美
(72)【発明者】
【氏名】ウン,リピン クラリン
(72)【発明者】
【氏名】安藤 伸明
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003DA12
4H003DA15
4H003DB01
4H003DC02
4H003EB04
4H003ED26
4H003FA04
(57)【要約】
洗浄流体は、少なくとも2つの流体成分を含む。第1の流体成分は、ヒドロフルオロチオエーテル若しくは塩素化ヒドロフルオロオレフィン、又はヒドロクロロフルオロオレフィンの異性体のうちの少なくとも1つであり、第2の流体成分は、1~5個の炭素原子を有するアルコールである。洗浄流体は、フッ素化流体を含む洗浄流体と比較して、向上した微粒子夾雑物除去、改善された粒子再付着低減、又はそれらの組み合わせを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄流体であって、
第1の流体成分であって、構造1のヒドロフルオロチオエーテル:
【化1】
(式中、
R
1は、1~3個の炭素原子を有する非フッ素化アルキル基であり、
R
f
1は、2~6個の炭素原子を含有し、任意に1つ以上の鎖状に連結したヘテロ原子を含む、フッ素化若しくは全フッ素化基である);
構造2の塩素化ヒドロフルオロオレフィン:
【化2】
構造3のヒドロクロロフルオロオレフィンの2つの異性体のうちの少なくとも1つ:
【化3】
構造4のヒドロクロロフルオロオレフィンの2つの異性体のうちの少なくとも1つ:
【化4】
又はそれらの混合物を含む、第1の流体成分と、
第2の流体成分であって、構造5を有する少なくとも1つのアルコール:
【化5】
(式中、R
2は、1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
を含む、第2の流体成分と、を含み、
前記洗浄流体は、フッ素化流体を含む洗浄流体と比較して、向上した微粒子夾雑物除去、改善された粒子再付着低減、又はこれらの組み合わせを提供する、洗浄流体。
【請求項2】
前記第1の流体成分が、構造1のヒドロフルオロチオエーテル:
(式中、
R
1は、1個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R
f
1は、-CR
f
3R
f
4F基であり、R
f
3及びR
f
4は、独立して、1~3個の炭素原子を有する全フッ素化アルキル基である)
を含む、請求項1に記載の洗浄流体。
【請求項3】
R
f
3及びR
f
4が、1個の炭素原子を有する全フッ素化アルキル基である、請求項2に記載の洗浄流体。
【請求項4】
前記第1の流体成分が、洗浄流体の85~99.9重量%を構成する、請求項1に記載の洗浄流体。
【請求項5】
前記第2の流体成分が、R
2が1~4個の炭素原子を有するアルキル基であるアルコールを含む、請求項1に記載の洗浄流体。
【請求項6】
前記第2の流体成分が、R
2が2~3個の炭素原子を有するアルキル基であるアルコールを含む、請求項5に記載の洗浄流体。
【請求項7】
前記第2の流体成分がイソプロパノールを含み、前記洗浄流体が、フッ素化流体を含む洗浄流体と比較して、改善された粒子除去を提供する、請求項6に記載の洗浄流体。
【請求項8】
少なくとも1つの第3の流体成分を更に含み、前記第3の流体成分がアルコールを含む、請求項7に記載の洗浄流体。
【請求項9】
前記第2の流体成分が、R
2が4個の炭素原子を有するアルキル基であるアルコールを含む、請求項1に記載の洗浄流体。
【請求項10】
前記第2の流体成分がブタノールを含み、前記洗浄流体が、フッ素化流体を含む洗浄流体と比較して、改善された粒子再付着低減を提供する、請求項1に記載の洗浄流体。
【請求項11】
少なくとも1つの第3の流体成分を更に含み、前記第3の流体成分がアルコールを含む、請求項10に記載の洗浄流体。
【請求項12】
前記洗浄流体が不燃性である、請求項1に記載の洗浄流体。
【請求項13】
物品を洗浄する方法であって、
少なくとも1つの夾雑物を有する少なくとも1つの表面を有する洗浄される物品を提供することと、
洗浄流体であって、
第1の流体成分であって、構造1のヒドロフルオロチオエーテル:
【化6】
(式中、
R
1は、1~3個の炭素原子を有する非フッ素化アルキル基であり、
R
f
1は、2~6個の炭素原子を含有し、任意に1つ以上の鎖状に連結したヘテロ原子を含む、フッ素化若しくは全フッ素化基である);
構造2の塩素化ヒドロフルオロオレフィン:
【化7】
構造3のヒドロクロロフルオロオレフィンの2つの異性体のうちの少なくとも1つ:
【化8】
構造4のヒドロクロロフルオロオレフィンの2つの異性体のうちの少なくとも1つ:
【化9】
又はそれらの混合物を含む、第1の流体成分と、
第2の流体成分であって、構造5を有する少なくとも1つのアルコール:
【化10】
(式中、R
2は、1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)
を含む、第2の流体成分と、
を含む、洗浄流体を提供することと、
前記基材表面を前記洗浄流体と接触させることと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記基材表面を前記洗浄流体と接触させることが、ブラッシング、噴霧、又はスピンコーティングによって前記洗浄流体を適用することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記基材表面を前記洗浄流体と接触させることが、前記基材を前記洗浄流体に浸漬することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記洗浄流体を前記基材表面から除去することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記洗浄流体を前記基材表面から除去することが、前記洗浄流体を蒸発させること、又は前記基材を前記洗浄流体への浸漬から取り出すことを含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本明細書では、少なくとも1つのフッ素化流体とアルコールとを含む、フッ素化洗浄流体混合物が開示される。フッ素化洗浄流体混合物を使用する洗浄するための方法も開示される。
【0002】
いくつかの実施形態では、洗浄流体は、ヒドロフルオロチオエーテル若しくは塩素化ヒドロフルオロオレフィン、又はヒドロクロロフルオロオレフィンの異性体のうちの少なくとも1つを含む第1の流体成分と、1~5個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルコールを含む第2の流体成分と、を含む。洗浄流体は、フッ素化流体を含む洗浄流体と比較して、向上した微粒子夾雑物除去、改善された粒子再付着低減、又はそれらの組み合わせを提供する。
【0003】
物品を洗浄するための方法も開示される。いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの夾雑物を有する少なくとも1つの表面を有する洗浄される物品を提供することと、上述の洗浄流体を提供することと、基材表面を洗浄流体と接触させることと、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0004】
洗浄流体は、広範囲の用途で使用されている。炭化水素洗浄流体、例えば、芳香族(例えば、ベンゼン及びトルエン)若しくはアルカン(例えば、ヘキサン及び石油エーテル)、又はガソリンなどの混合物は、有用な洗浄剤であるが、これらの材料は可燃性であり、したがって洗浄剤として使用するには危険である。良好な洗浄性能を提供し不燃性である塩素化溶媒などの他の溶媒が開発されてきたが、これらの材料は欠点を有する。ヒドロフルオロエーテル流体は、少なくとも部分的に、それらの良好な洗浄性能、ゼロのオゾン層破壊係数、低い地球温暖化係数、及び低い毒性により、溶媒精密洗浄用途において広く使用されている。また、ヒドロフルオロエーテル流体は多くの場合不燃性であるので、それらは広範囲の用途において安全に使用することができる。
【0005】
物品がより複雑になるにつれて、洗浄及び夾雑物除去がより困難になってきている。洗浄及び夾雑物除去は、比較的高い画素密度を有する相補型金属酸化物半導体(CMOS)部品にとって特に困難であり得る。このような部品では、ウェハダイシング、ダイアタッチ、及びアセンブリプロセスから生じる任意の粒子、有機残留物、又は水垢が、出力画像の品質に著しい悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、より良好な洗浄性能並びに改善された粒子除去及び/又は粒子再付着防止効率を提供することができる、改善された洗浄流体配合物が望ましい。したがって、望ましい洗浄特性を有し、不燃性であり、非毒性で環境に優しい洗浄流体が依然として必要とされている。
【0006】
改善された粒子除去、減少した粒子再付着の所望の性能特性を提供し、不燃性であり、また環境に優しく非毒性である流体の混合物である、洗浄流体が、本明細書に開示される。
【0007】
いくつかの実施形態では、洗浄流体は、少なくとも2つの流体成分を含む。第1の流体成分は、ヒドロフルオロチオエーテル、塩素化ヒドロフルオロオレフィン、又はヒドロクロロフルオロオレフィンの1つ以上の異性体を含む。第2の流体成分は、1~5個の炭素原子を含むアルコールを含む。洗浄流体を使用する、基材を洗浄する方法も開示される。
【0008】
本明細書で使用する場合、「フルオロ」(例えば、「フルオロアルキレン」若しくは「フルオロアルキル」若しくは「フルオロカーボン」の場合などの、基若しくは部分に関して)又は「フッ素化」とは、(i)部分的にフッ素化されており、炭素に結合した少なくとも1個の水素原子が存在すること、又は(ii)全フッ素化されていることを意味する。
【0009】
本明細書で使用する場合、「ペルフルオロ」(例えば、「ペルフルオロアルキレン」若しくは「ペルフルオロアルキル」若しくは「ペルフルオロカーボン」の場合などの、基若しくは部分に関して)又は「全フッ素化」とは、完全にフッ素化されており、その結果、別段の指示をされている場合を除き、フッ素で置き換えることが可能な、炭素に結合した水素原子が存在しないことを意味する。
【0010】
本明細書で使用される場合、基「-Rf」は、化学分野における一般的な用法に従って使用され、フルオロアルキル基を指す。基「-Rf-」は、フルオロアルキレン基を指す。
【0011】
用語「室温」と「周囲温度」とは、互換的に使用され、20℃~25℃の範囲の温度を意味する。
【0012】
用語「アルキル」は、飽和炭化水素であるアルカンの基である一価の基を指す。アルキルは、直鎖、分枝鎖、環状又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0013】
「オレフィン」という用語は、化学分野において十分に理解されているとおり本明細書において使用され、オレフィン基、すなわち炭素-炭素二重結合(-C=C-)を有する分子を指し、炭素-炭素二重結合は末端であっても非末端であってもよい。オレフィン基を有する基としては、塩素原子、2個の水素原子、及び結合したフッ素化基を有するオレフィン基である塩素化ヒドロフルオロオレフィン;塩素原子、フッ素原子、水素原子、及び結合したフッ素化基を有するオレフィン基であるヒドロクロロフルオロオレフィン;全ての水素原子がフッ素原子で置き換えられたオレフィン基である全フッ素化オレフィン;並びに少なくとも1個の水素原子に加えてフッ素原子を含有するオレフィン基であるヒドロフルオロオレフィンが挙げられる。
【0014】
本明細書で使用される用語「エーテル」は、Ra-O-Rb型の化合物を指し、式中、Ra及びRbは、アルキル基、又はフッ素化アルキル基である。用語「チオエーテル」は、酸素が硫黄原子で置き換えられているエーテル化合物を指す。本明細書で使用される用語「ヒドロフルオロチオエーテル」は、Ra-S-Rb型のチオエーテルを指し、式中、Raはアルキル基であり、Rbはフッ素化アルキル基、典型的にはペルフルオロアルキル基である。
【0015】
流体成分の混合物を含む、洗浄流体が本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、洗浄流体は、少なくとも2つの流体成分を含む。洗浄流体は、ヒドロフルオロチオエーテル、塩素化ヒドロフルオロオレフィン、又はヒドロクロロフルオロオレフィンの1つ以上の異性体を含む、第1の流体成分を含む。第2の流体成分は、1~5個の炭素原子を含むアルコールを含む。これらの成分の各々を、下記により詳細に記述する。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の流体成分は、構造1のヒドロフルオロチオエーテル:
【化1】
(式中、R
1は、1~3個の炭素原子を有する非フッ素化アルキル基であり;R
f
1は、2~6個の炭素原子を含有し、任意に1つ以上の鎖状に連結したヘテロ原子を含む、するフッ素化基又は全フッ素化基である)を含む。いくつかの実施形態では、R
1は、1個の炭素原子を有するアルキル基であり;R
f
1は、-CR
f
3R
f
4F基であり、R
f
3及びR
f
4は、独立して、1~3個の炭素原子を有する全フッ素化アルキル基である。いくつかの実施形態では、R
f
3及びR
f
4は、1個の炭素原子を有する全フッ素化アルキル基である。
【0017】
他の実施形態では、第1の流体成分は、構造2の塩素化ヒドロフルオロオレフィンを含む。
【化2】
【0018】
シス命名法が本明細書で使用され、Z命名法と同等である。塩素化ヒドロフルオロオレフィンは、Central Glass Co.,Ltd.Tokyo,JapanからCELEFIN-1233zとして市販されている。シス異性体が構造中に示されているが、いくらかのトランス異性体も流体中に存在し得ることが化学分野において十分に理解されている。
【0019】
他の実施形態では、第1の流体は、ヒドロクロロフルオロオレフィン又は複数のヒドロクロロフルオロオレフィンの混合物を含む。第1の流体は、構造3のヒドロクロロフルオロオレフィンの2つの異性体のうちの少なくとも1つ;
【化3】
構造4のヒドロクロロフルオロオレフィンの2つの異性体のうちの少なくとも1つ;
【化4】
又はその異性体の2つ、3つ若しくは4つ全ての混合物を含む。
【0020】
構造3及び4の異性体の混合物は、(AGC)Asahi Glass Company,Tokyo,JapanからAMOLEA AS-300として市販されている。
【0021】
第1の流体成分は、洗浄流体の主成分である。いくつかの実施形態では、第1の流体成分は、洗浄流体の85~99.9重量%を構成する。
【0022】
洗浄流体はまた、少なくとも第2の流体成分を含む。第2の流体成分は、構造5のアルコール:
【化5】
(式中、R
2は、1~5個の炭素原子を有するアルキル基である)である。
【0023】
広範囲の構造5のアルコールが好適である。いくつかの実施形態では、第2の流体成分は、R2が1~4個の炭素原子を有するアルキル基であるアルコールを含む。アルコールの選択は、洗浄流体の特性に影響を及ぼし得る。洗浄流体組成物の第1のクラスは、フッ素化流体を含む洗浄流体と比較して、粒子除去が改善された洗浄流体である。第2のクラスの洗浄流体は、フッ素化流体を含む洗浄流体と比較して、改善された粒子再付着の低減を有する。
【0024】
第1のクラスの洗浄流体のいくつかの実施形態では、第2の流体成分は、R2が2~3個の炭素原子を有するアルキル基であるアルコールを含む。好適なアルコールの例は、エタノール、n-プロパノール、及びイソプロパノールである。いくつかの実施形態では、第2の流体成分はイソプロパノールを含む。洗浄流体はまた、第3の流体成分、又は別の添加剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第3の流体成分は、アルコール又はヒドロフルオロエーテルを含む。ヒドロフルオロエーテルの例としては、例えば、3M NOVEC 7100 Engineered Fluid及びAGC ASAHIKLIN AE-3000が挙げられる。上述したように、第1のクラスの洗浄流体は、フッ素化流体を含む洗浄流体と比較して、改善された粒子除去を示す。
【0025】
第2のクラスの洗浄流体のいくつかの実施形態では、第2の流体成分は、R2が4個の炭素原子を有するアルキル基であるアルコールを含む。好適なアルコールの例は、ブタノールの異性体:n-ブタノール(1-ブタノール);sec-ブタノール;イソ-ブタノール(2-メチル-1-プロパノール);及びtert-ブタノールである。洗浄流体はまた、第3の流体成分、又は別の添加剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第3の流体成分は、アルコール又はヒドロフルオロエーテルを含む。ヒドロフルオロエーテルの例としては、例えば、3M NOVEC 7100 Engineered Fluid及びAGC ASAHIKLIN AE-3000が挙げられる。上述したように、第2のクラスの洗浄流体は、フッ素化流体を含む洗浄流体と比較して、改善された粒子再付着低減を示す。
【0026】
上述したように、本開示の洗浄流体は、広範囲の望ましい特性を有する。洗浄流体は不燃性である。燃焼性に好適な試験は、洗浄流体分野において十分に理解されている。
【0027】
本開示の洗浄流体はまた、環境に優しい。これは、洗浄流体が、環境への影響が低いものであり得ることを意味する。この点に関して、本開示のフッ素化化合物は、500、300、200、100、50、10未満、又は1未満の地球温暖化係数(GWP、100年ITH)を有し得る。本明細書で使用する場合、GWPは、化合物の構造に基づく化合物の地球温暖化係数の相対的尺度である。化合物のGWPは、1990年に気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)によって規定され、2007年に改訂されており、特定の積分期間(integration time horizon、ITH)にわたる、1キログラムのCO
2放出による温暖化に対する、1キログラムの化合物放出による温暖化として計算される。
【数1】
【0028】
この式中、aiは大気中の化合物の単位質量増加当たりの放射強制力(その化合物のIR吸光度に起因する大気を通る放射束の変化)であり、Cは化合物の大気濃度であり、τは化合物の大気寿命であり、tは時間であり、iは対象の化合物である。通例許容されるITHは、短期間の効果(20年間)と長期間の効果(500年間以上)との間の折衷点を表す100年間である。大気中の有機化合物、iの濃度は、擬一次速度論(すなわち、指数関数的減衰)に従うと仮定される。同じ時間間隔のCO2の濃度は、大気からのCO2の交換及び除去に関する、より複雑なモデルを組み込む(Bern炭素循環モデル)。
【0029】
物品を洗浄するための方法もまた、本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、物品を洗浄するための方法は、少なくとも1つの夾雑物を有する少なくとも1つの表面を有する洗浄される物品を提供することと、上述の洗浄流体を提供することと、基材表面を洗浄流体と接触させることと、を含む。洗浄流体は、気体状態又は液体状態のいずれか(又は両方)で使用することができ、基材と「接触させる」ための既知技法のいずれかを用いることができる。例えば、液体洗浄組成物を基材上に噴霧、ブラッシング、若しくはスピンコーティングすることができ、気体洗浄組成物を基材全体に吹き付けることができ、又は基材を気体若しくは液体組成物のいずれかに入れることができる。高温、超音波エネルギー及び/又は撹拌を使用して、洗浄を促進することができる。いくつかの実施形態では、方法は、洗浄流体を蒸発させることによって洗浄流体を基材表面から除去すること、又は基材を洗浄流体への浸漬から取り出すことを更に含む。
【0030】
様々な溶媒洗浄技術が、Barbara and Edward Kanesburg,Handbook of Critical Cleaning:Cleaning Agents and Systems,edited by CRC Press,pages 123-127 and 363-372(2011);及びB.N.Ellis inCleaning and Contamination of Electronics Components and Assemblies,Electrochemical Publications Limited,Ayr,Scotland,pages 182-94(1986)に記載されている。
【0031】
有機基材及び無機基材の両方を本開示の洗浄方法によって洗浄することができる。基材の代表例としては、金属、セラミック、ガラス、半導体、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー、合成不織布材料、天然繊維(及び天然繊維に由来する布地)、例えば、綿、絹、毛皮、スエード、革、リネン及びウール、合成繊維(及び布地)、例えば、ポリエステル、レーヨン、アクリル、ナイロン及びこれらの混紡、天然繊維と合成繊維との混紡を含む布地、並びに先述の材料の複合材が挙げられる。このプロセスは、回路基板、ウェハ及び集積回路チップ(Si、Ge及びSi/Ge半導体に基づくものを含む)、CMOS部品、ディスプレイ部品、光学又は磁気媒体、UV又はEUVフォトマスク(半導体フォトリソグラフィで使用されるものなど)、並びに様々な医療デバイスなどの、光学及び電子部品、サブアセンブリ、又はデバイスの精密洗浄に有用であり得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、本開示の洗浄プロセスは、大部分の夾雑物を基材の表面から溶解又は除去することができる。例えば、軽質炭化水素夾雑物などの物質;鉱油及びグリースなどの高分子量炭化水素夾雑物;ペルフルオロポリエーテル、ブロモトリフルオロエチレンオリゴマー(ジャイロスコープ流体)、及びクロロトリフルオロエチレンオリゴマー(油圧油、潤滑剤)などのフルオロカーボン夾雑物;シリコーン油及びグリース;はんだフラックス;微粒子;並びに、精密、電子、金属、及び医療機器の洗浄で遭遇するその他の夾雑物を除去することができる。いくつかの実施形態では、本プロセスは、炭化水素夾雑物(特に、軽質炭化水素油)、フルオロカーボン夾雑物、並びに有機及び無機微粒子の除去のために使用され得る。
【0033】
上述したように、本発明の洗浄流体は、フッ素化流体を含む洗浄流体と比較して改善された粒子除去、フッ素化流体を含む洗浄流体と比較して改善された粒子再付着の低減、又は特性の組み合わせなどの様々な望ましい特性を示す。
【0034】
物品を洗浄するための方法は、様々な方法で実施することができる。いくつかの実施形態では、洗浄は手動で行われ、他の実施形態では、洗浄は自動化プロセスを使用して行われる。当該技術分野において十分に理解されているように、広範囲の洗浄機を洗浄プロセスで使用することができる。
【実施例】
【0035】
これらの実施例は、単に例示する目的のためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書の実施例及び他の箇所における全ての部、百分率、比などは、別途指示がない限り、重量に基づくものである。
【0036】
【0037】
試験方法
洗浄性能:粒子除去
溶媒混合物を使用して試験を行い、流体の洗浄性能を決定した。洗浄試験は、高い画素密度を含むひどく汚れたCMOS(相補型金属酸化物半導体)センサに対して行われた。これらのセンサは、本質的に粒子夾雑物を含まないように洗浄することが極めて困難であると知られている。
【0038】
精密溶媒洗浄システム(タイのYMPT製のSK-04Y-6008特注洗浄システム)を使用して、以下のプロセス1に概説されるプロセスを使用してCMOSセンサを洗浄した。
【表2】
【0039】
各洗浄流体組成物の洗浄性能は、洗浄プロセスの完了後に洗浄流体によって除去されたCMOS表面上に元々存在する粒子の百分率に基づいて判断された。除去された粒子の百分率は、洗浄前後のCMOSセンサの光学顕微鏡検査によって決定された。
【0040】
最初に、元の(ひどく汚れた)CMOSセンサを、光学顕微鏡を使用して検査し、一連の洗浄前画像を記録した。次に、CMOSセンサを、上述のプロセス及び規定の溶媒/界面活性剤の組合せを用いて精密洗浄システムで洗浄した。洗浄後、CMOSセンサを再び光学顕微鏡で検査し、洗浄後画像を記録して、センサ上に残っている粒子数を決定した。このようにして、CMOSセンサの洗浄後の粒子の除去率(%)を決定した。2つの試料の平均を報告した。洗浄性能は、以下の基準によって特徴付けられる:
【0041】
【0042】
洗浄性能:粒子再付着
理論によれば、粒子洗浄性能は、2つのプロセス:(1)粒子除去、(2)粒子再付着に依存する。プロセス(2)は、全体的な洗浄性能にとって重要であると考えられる。したがって、以下の実験は、流体の粒子再付着性能を測定するように設計された。
【0043】
試験溶液を調製した。次いで、窒化ケイ素粒子(Si3N4、平均粒径は1.5マイクロメートルである)を各試験溶液に混合し(濃度:粒子0.01グラム/流体1リットル)、超音波で1時間撹拌した。次いで、予め洗浄したベアシリコンウェハ(直径4インチ(10センチメートル))を各試験溶液混合物に浸漬して、各ウェハを3秒間浸漬し、続いて完全浸漬で4秒間保持し、各ウェハを取り出し、3秒間乾燥させた。粒子総数(各ウェハ上に付着した粒子の数)を顕微鏡(Keyence製VH-ZST)で測定した。結果を以下の基準に従って報告する。
【0044】
【0045】
実施例:
実施例E1~E5及び比較例CE1~CE2:粒子除去試験
一連の流体及び流体混合物を、上記の粒子除去試験法を用いて試験した。結果を以下の表1に示す。
【0046】
【0047】
実施例E6~E8:粒子再付着試験
一連の流体及び流体混合物を、上記の粒子再付着試験法を用いて試験した。実施例E6は、HFTEに基づく流体であり、結果を以下の表2に示す。実施例E7は、AS-300に基づく流体であり、結果を以下の表3に示す。実施例E8は、7100に基づく流体であり、結果を以下の表4に示す。
【0048】
【0049】
【0050】
【国際調査報告】