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特表2024-546517表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-25
(54)【発明の名称】表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20241218BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241218BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/36 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518905
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 CN2022094412
(87)【国際公開番号】W WO2023206673
(87)【国際公開日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】202210473280.2
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522450521
【氏名又は名称】中国有色桂林礦産地質研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】劉文平
(72)【発明者】
【氏名】秦海青
(72)【発明者】
【氏名】雷暁旭
(72)【発明者】
【氏名】盧安軍
(72)【発明者】
【氏名】張振軍
(72)【発明者】
【氏名】莫祖学
(72)【発明者】
【氏名】唐慧杰
(72)【発明者】
【氏名】蒙光海
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA13
5H050BA16
5H050BA17
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA03
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA06
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料及びその製造方法に関し、主に4~10wt.%のメタリン酸アルミニウムと、10wt.%のピッチ分解炭素と、15wt.%の球状ナノシリコン粉末と、71-65wt.%の黒鉛粉末との成分から質量%で製造され、ナノシリコン粉末を脱イオン水に加えて超音波分散させた後に、黒鉛粉末を加えて均一に超音波攪拌し、そして水性アスファルトを加え、均一に攪拌混合し、そして噴霧乾燥し、乾燥した粉末とメタリン酸塩とを複合して機械融合し、最後に真空炉に移して高温炭化することにより得られる。本発明は、炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料を開示し、表面に存在する複合修飾層は、電解液によるナノシリコン材料の腐食を良好に抑制し、体積膨張を緩和し、導電性を向上させ、サイクル寿命を向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料であって、前記負極材料は主に、
メタリン酸アルミニウム4~10wt.%と、ピッチ分解炭素10wt.%と、球状ナノシリコン粉末15wt.%と、黒鉛粉末71-65wt.%との成分から質量%で製造される、ことを特徴とする表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料。
【請求項2】
請求項1に記載の表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料の製造方法であって、
配合に従ってナノシリコン粉末を秤量して脱イオン水に加えて超音波攪拌して分散させ、ナノシリコン粉末分散液を得るステップ1)と、
ステップ1)の懸濁液を高速で攪拌し、まず配合割合に応じて黒鉛粉末を加え、一定時間攪拌混合した後に水性アスファルトを加え、高速で均一に攪拌するとともに、脱イオン水を加えて懸濁液の固形分を10~15wt.%の範囲内に制御するステップ2)と、
ステップ2)の懸濁液を噴霧乾燥機で噴霧乾燥し、乾燥粉末を得るステップ3)と、
配合割合に従ってメタリン酸アルミニウム粉末を秤量し、ステップ3)の乾燥粉末に加え、均一に混合した後に、機械融合機に加えて融合し、表面にアスファルトとメタリン酸アルミニウム修飾層が被覆される前駆体を得るステップ4)と、
ステップ4)における前駆体を真空炉に高温炭化し、そして取り出して破砕してふるいにかけ、表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料を得るステップ5)とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料の製造方法。
【請求項3】
ステップ3)において、噴霧入口温度は200-220℃であり、供給量は20-30kg/hである、ことを特徴とする請求項2に記載の表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料の製造方法。
【請求項4】
ステップ5)において、高温炭化温度は800-1200℃であり、炭化時間は3-6hである、ことを特徴とする請求項2に記載の表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学電源技術分野に関し、具体的には表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンはリチウムとリチウムシリコン合金を形成する方式でリチウムを吸蔵するが、リチウムを吸蔵する過程で巨大な体積膨張を伴い、脱リチウム脱合金化過程でまた激しい体積収縮を伴い、このような体積変化は300%と大きく、シリコン材料の粉末化を極めて引き起こしやすく、サイクル安定性に深刻な影響を与える。適切な粒度のナノシリコン粉末を製造することで、電気化学サイクルプロセスにおけるシリコン材料の粒子粉末化を効果的に解決することができるが、ナノシリコン材料にリチウムを吸蔵した後に巨大な体積変化効果は依然として存在し、電極が体積膨張と収縮を繰り返すと、粒子は依然として電気接触と粉末化を失い、容量の損失をもたらし、サイクル寿命の減衰を引き起こす。従来の成熟した市販黒鉛系負極材料を基礎骨格としてナノシリコン材料を複合し、シリコン系材料の固有の欠点を補い、比容量とサイクル寿命がリチウムイオン電池負極材料の需要を満たす新型複合負極材料を得ることは、効果的で実行可能な低コスト化方法である。
【0003】
しかしながら、ナノシリコンと黒鉛とが複合すると、両方のリチウムの放出・吸蔵時の膨張収縮率が一致せず、ナノシリコン粒子が電気接触を失い、容量の損失をもたらしやすいとともに、表面に形成されたSEI膜が不安定になり、電解液が絶えず消費され、電池のリチウムイオンの伝送が阻害されることによって、材料サイクル寿命が低下する。さらに、現段階では主にシリコン材料をナノ化し、他の材料と複合することでサイクル寿命を向上させる。しかしながらシリコン材料がナノ化されると、比表面積が大きく、表面が電解液により侵食されやすく、且つシリコン材料がナノ化されてもリチウムを吸蔵する膨張が依然として存在するため、さらなる表面修飾が必要となる。本発明は、簡便な方式で材料表面に炭素被覆とメタリン酸複合修飾を行うことにより、サイクル寿命の長いナノシリコン-黒鉛複合負極材料を得る。
【発明の概要】
【0004】
これに鑑み、本発明の目的は、表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料及びその製造方法を提供することである。
【0005】
上記目的を実現するために、本発明は、以下のような技術案を採用する。
【0006】
表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料であって、前記負極材料は主に、
メタリン酸アルミニウム4~10wt.%と、ピッチ分解炭素10wt.%と、球状ナノシリコン粉末15wt.%と、黒鉛粉末71-65wt.%との成分から質量%で製造される。
【0007】
本発明の別の技術目的は、上記の表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料の製造方法を提供することであり、表面炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層、ナノシリコン-黒鉛複合材料の製造とそれをリチウムイオン電池用のシリコン炭素複合材料として使用する方法及びステップを含み、ここで、本発明に関わる製造方法は以下のとおりである。
【0008】
まずナノシリコン粉末を脱イオン水に加えて超音波分散させ、均一な分散液を得、さらに黒鉛粉末を加えて均一に超音波攪拌し、そして水性アスファルトを加え、均一に攪拌混合し、そして噴霧乾燥し、乾燥した粉末とメタリン酸塩とを複合して機械融合し、最後に真空炉に移して高温炭化し、表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料を得る。
【0009】
具体的には、
配合に従ってナノシリコン粉末を秤量して脱イオン水に加えて超音波攪拌して分散させ、ナノシリコン粉末分散液を得るステップ1)と、
ステップ1)の懸濁液を高速で攪拌し、まず配合割合に応じて黒鉛粉末を加え、一定時間攪拌混合した後に水性アスファルトを加え、高速で均一に攪拌するとともに、脱イオン水を加えて懸濁液の固形分を10~15wt.%の範囲内に制御するステップ2)と、
ステップ2)の懸濁液を噴霧乾燥機で噴霧乾燥し、噴霧入口温度を200-220℃、供給量を20-30kg/hに制御し、乾燥粉末を得るステップ3)と、
配合割合に従ってメタリン酸アルミニウム粉末を秤量し、ステップ3)の乾燥粉末に加え、均一に混合した後に、機械融合機に加えて融合し、表面にアスファルトとメタリン酸アルミニウム修飾層が被覆される前駆体を得るステップ4)と、
ステップ4)における前駆体を真空炉に移して800-1200℃で3-6h高温炭化し、そして取り出して破砕してふるいにかけ、表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料を得るステップ5)とを含む。
【0010】
説明すべきこととして、本発明はナノシリコン-黒鉛複合負極材料の表面の炭素被覆層修飾により、ナノシリコンと黒鉛との結合強度をよく向上させ、シリコン材料の導電性を改善することができ、表面のメタリン酸アルミニウム修飾により、体積膨張をよく緩和し、材料表面に形成されたSEI膜を安定化することができる。本発明は、ナノシリコンと黒鉛とを複合してナノシリコン-黒鉛複合負極材料を製造した上で、表面の炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層により、ナノシリコン粒子の導電性を補強し、SEI膜を安定化し、材料の体積変化を緩和してよりサイクル寿命の高い複合負極材料を得る。
【0011】
従来の技術と比較すると、本発明は、表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料及びその製造方法を開示し、以下のような有益な効果を有する。
【0012】
1)複合修飾層の存在は、従来の炭素被覆の効果、例えばシリコン材料の導電性の向上、電解液によるシリコン材料の侵食の遮断、体積膨張の緩和などを有するだけでなく、被覆層におけるメタリン酸アルミニウムの分散は、被覆層の剥離強度を補強し、材料の体積変化によりよく適応することができる。
【0013】
2)メタリン酸アルミニウムの存在は、材料の表面に安定したSEI膜を形成し、電解液の消費を減少し、より高いサイクル寿命が得られることに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の実施例又は従来の技術における技術案をより明瞭に説明するために、以下は、実施例又は従来の技術記述において使用される必要のある図面を簡単に紹介し、自明なことに、以下の記述における図面は、ただ本発明の実施例、当業者にとって、創造的な労力を払わない前提で、提供された図面から他の図面を得ることもできる。
図1】本発明により製造された表面にメタリン酸アルミニウム修飾を有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料のエネルギースペクトル分析である。
図2】本発明の実施例1、比較例1で製造されたシリコン炭素複合材料を負極板とし、2032ボタン電池に組み立てた後に試験して得られた容量保持率曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下は、明細書図面を結び付けながら、本発明の実施例における技術案を明瞭且つ完全に記述し、明らかに、記述された実施例は、ただ本発明の一部の実施例であり、すべての実施例ではない。本発明における実施例に基づき、当業者が創造的な労力を払わない前提で得られたすべての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0016】
本発明は、表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料の製造方法を開示して保護する。
【0017】
以下では、具体的な実施例を結び付けながら、本発明の技術案をさらに記述するが、本発明の内容は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料の製造方法であって、具体的には、
ナノシリコン粉末450gを秤量して27kgの脱イオン水に加えて超音波攪拌して分散させ、ナノシリコン粉末の懸濁液を得るステップ1)と、
ステップ1)の懸濁液を高速で攪拌しながら、黒鉛粉末1950gを加え、十分に攪拌して均一に混合し、さらに水性アスファルト1200g(固形分50wt.%、真空炭化残炭素量50wt.%)を加え、均一に混合し、固形分10wt.%程度の均一なスラリーを得るステップ2)と、
ステップ2)で得られた均一なスラリーを超音波攪拌しながら噴霧乾燥し、噴霧機入口温度を220℃、供給量を30kg/hに制御し、乾燥粉末を得るステップ3)と、
メタリン酸アルミニウム粉末300gを秤量してステップ3)で得られた乾燥粉末とともに機械融合機に加え、高速で20min押し出して融合し、表面にアスファルトとメタリン酸アルミニウム修飾層が被覆される前駆体を得るステップ4)と、
ステップ4)における前駆体を真空炉に移して800℃の真空条件で3h炭化処理し、ピッチを高温炭化し、表面に10wt.%程度のピッチ分解炭素と10wt.%メタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料を得るステップ5)とを含み、
本実施例で製造されたナノシリコン-黒鉛複合負極材料を負極板として製造し、2032ボタン電池に組み立ててサイクル寿命試験を行い、材料性能データを表1に示し、サイクル寿命曲線を図2に示す。
【0019】
ここで、電池サイクル性能の試験方法として、まず100mA/gの電流密度で0.01vまで放電し、さらに10mA/gの電流で0.005vまで放電し、3min静置し、そして100mA/gの電流密度で1.5vまで充電し、これを1サイクルとしてサイクル性能試験を行う。
【0020】
なお、本発明により製造された表面にメタリン酸アルミニウム修飾を有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料について、具体的に図1のようにエネルギースペクトル分析を行う。エネルギースペクトル図から分かるように、複合材料における黒鉛粒子表面にナノシリコン粒子が分散しており、表面の炭素被覆とメタリン酸アルミニウム修飾層により粒子を一つの全体に結合する。
【実施例2】
【0021】
表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料の製造方法であって、具体的には、
ナノシリコン粉末450gを秤量して27kgの脱イオン水に加えて超音波攪拌して分散させ、ナノシリコン粉末の懸濁液を得るステップ1)と、
ステップ1)の懸濁液を高速で攪拌しながら、黒鉛粉末2130gを加え、十分に攪拌して均一に混合し、さらに水性アスファルト1200g(固形分50wt.%、真空炭化残炭素量50wt.%)を加え、均一に混合し、固形分10 wt.%程度の均一なスラリーを得るステップ2)と、
ステップ2)で得られた均一なスラリーを超音波攪拌しながら噴霧乾燥し、噴霧機入口温度を200℃、供給量を30kg/hに制御し、乾燥粉末を得るステップ3)と、
メタリン酸アルミニウム粉末120gを秤量してステップ3)で得られた乾燥粉末とともに機械融合機に加え、高速で20min押し出して融合し、表面にアスファルトとメタリン酸アルミニウム修飾層が被覆される前駆体を得るステップ4)と、
ステップ4)における前駆体を真空炉に移して800℃の真空条件で6h炭化処理し、ピッチを高温炭化し、表面に10wt.%程度のピッチ分解炭素と4wt.%メタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料を得るステップ5)とを含む。
【実施例3】
【0022】
表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料の製造方法であって、具体的には、
ナノシリコン粉末450gを秤量して17kgの脱イオン水に加えて超音波攪拌して分散させ、ナノシリコン粉末の懸濁液を得るステップ1)と、
ステップ1)の懸濁液を高速で攪拌しながら、黒鉛粉末1950gを加え、十分に攪拌して均一に混合し、さらに水性アスファルト1200g(固形分50wt.%、真空炭化残炭素量50wt.%)を加え、均一に混合し、固形分15wt.%程度の均一なスラリーを得るステップ2)と、
ステップ2)で得られた均一なスラリーを超音波攪拌しながら噴霧乾燥し、噴霧機入口温度を200℃、供給量を30kg/hに制御し、乾燥粉末を得るステップ3)と、
メタリン酸アルミニウム粉末300gを秤量してステップ3)で得られた乾燥粉末とともに機械融合機に加え、高速で20min押し出して融合し、表面にアスファルトとメタリン酸アルミニウム修飾層が被覆される前駆体を得るステップ4)と、
ステップ4)における前駆体を真空炉に移して1000℃の真空条件で6h炭化処理し、ピッチを高温炭化し、表面に10wt.%程度のピッチ分解炭素と10wt.%メタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料を得るステップ5)とを含む。
【実施例4】
【0023】
表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料の製造方法であって、具体的には、
ナノシリコン粉末450gを秤量して22kgの脱イオン水に加えて超音波攪拌して分散させ、ナノシリコン粉末の懸濁液を得るステップ1)と、
ステップ1)の懸濁液を高速で攪拌しながら、黒鉛粉末2010gを加え、十分に攪拌して均一に混合し、さらに水性アスファルト1200g(固形分50wt.%、真空炭化残炭素量50wt.%)を加え、均一に混合し、固形分12.2wt.%程度の均一なスラリーを得るステップ2)と、
ステップ2)で得られた均一なスラリーを超音波攪拌しながら噴霧乾燥し、噴霧機入口温度を210℃、供給量を30kg/hに制御し、乾燥粉末を得るステップ3)と、
メタリン酸アルミニウム粉末240gを秤量してステップ3)で得られた乾燥粉末とともに機械融合機に加え、高速で20min押し出して融合し、表面にアスファルトとメタリン酸アルミニウム修飾層が被覆される前駆体を得るステップ4)と、
ステップ4)における前駆体を真空炉に移して1200℃の真空条件で3h炭化処理し、ピッチを高温炭化し、表面に10wt.%程度のピッチ分解炭素と8wt.%メタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料を得るステップ5)とを含む。
【実施例5】
【0024】
表面に炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料の製造方法であって、具体的には、
ナノシリコン粉末450gを秤量して27kgの脱イオン水に加えて超音波攪拌して分散させ、ナノシリコン粉末の懸濁液を得るステップ1)と、
ステップ1)の懸濁液を高速で攪拌しながら、黒鉛粉末2070gを加え、十分に攪拌して均一に混合し、さらに水性アスファルト1200g(固形分50wt.%、真空炭化残炭素量50wt.%)を加え、均一に混合し、固形分10.4wt.%程度の均一なスラリーを得るステップ2)と、
ステップ2)で得られた均一なスラリーを超音波攪拌しながら噴霧乾燥し、噴霧機入口温度を220℃、供給量を30kg/hに制御し、乾燥粉末を得るステップ3)と、
メタリン酸アルミニウム粉末180gを秤量してステップ3)で得られた乾燥粉末とともに機械融合機に加え、高速で20min押し出して融合し、表面にアスファルトとメタリン酸アルミニウム修飾層が被覆される前駆体を得るステップ4)と、
ステップ4)における前駆体を真空炉に移して1100℃の真空条件で4h炭化処理し、ピッチを高温炭化し、表面に10wt.%程度のピッチ分解炭素と6wt.%メタリン酸アルミニウム複合修飾層とを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料を得るステップ5)とを含む。
【0025】
以下では、本発明の出願が従来の技術と比較して存在する優れた効果をさらに検証するために、発明者はさらに以下のような比較実験及び性能試験を行い、具体的な内容は以下のとおりである。
【比較例1】
【0026】
1)ナノシリコン粉末450gを秤量して27kgの脱イオン水に加えて超音波攪拌して分散させ、ナノシリコン粉末の懸濁液を得、
2)ステップ1)の懸濁液を高速で攪拌しながら、黒鉛粉末1950gを加え、十分に攪拌して均一に混合し、さらに水性アスファルト1200g(固形分50wt.%、真空炭化残炭素量50wt.%)を加え、均一に混合し、固形分10 wt.%程度の均一なスラリーを得、
3)ステップ2)で得られた均一なスラリーを超音波攪拌しながら噴霧乾燥し、噴霧機入口温度を220℃、供給量を30kg/hに制御し、乾燥粉末を得、
4)ステップ3)における前駆体を真空炉に移して800℃の真空条件で3h炭化処理し、ピッチを高温炭化し、表面に炭素被覆層のみを有し、メタリン酸アルミニウム修飾のないナノシリコン-黒鉛複合負極材料を得、
比較例1における表面修飾のないナノシリコン-黒鉛複合負極材料を取って2032ボタン電池に組み立ててサイクル寿命試験を行い、材料性能データを表1に示し、サイクル寿命曲線を図2に示す。
【比較例2】
【0027】
1)ナノシリコン粉末450gを秤量して27kgの脱イオン水に加えて超音波攪拌して分散させ、ナノシリコン粉末の懸濁液を得、
2)ステップ1)の懸濁液を高速で攪拌しながら、黒鉛粉末1950gを加え、十分に攪拌して均一に混合し、さらに水性アスファルト1200g(固形分50wt.%、真空炭化残炭素量50wt.%)を加え、均一に混合し、固形分10 wt.%程度の均一なスラリーを得、
3)ステップ2)で得られた均一なスラリーを超音波攪拌しながら噴霧乾燥し、噴霧機入口温度を220℃、供給量を30kg/hに制御し、乾燥粉末を得、
4)ステップ3)における前駆体を真空炉に移して800℃の真空条件で3h炭化処理し、ピッチを高温炭化し、表面に炭素被覆層がなく、メタリン酸アルミニウム修飾のみを有するナノシリコン-黒鉛複合負極材料を得、
比較例2における表面修飾のないナノシリコン-黒鉛複合負極材料を取って2032ボタン電池に組み立ててサイクル寿命試験を行い、材料性能データを表1に示す。
【比較例3】
【0028】
1)ナノシリコン粉末450gを秤量して27kgの脱イオン水に加えて超音波攪拌して分散させ、ナノシリコン粉末の懸濁液を得、
2)ステップ1)の懸濁液を高速で攪拌しながら、黒鉛粉末1950gを加え、十分に攪拌して均一に混合し、固形分10 wt.%程度の均一なスラリーを得、
3)ステップ2)で得られた均一なスラリーを超音波攪拌しながら噴霧乾燥し、噴霧機入口温度を220℃、供給量を30kg/hに制御し、乾燥粉末を得、
4)ステップ3)における前駆体を真空炉に移して800℃の真空条件で3h炭化処理し、表面に炭素被覆もメタリン酸アルミニウム修飾もないナノシリコン-黒鉛複合負極材料を得、
比較例3における表面修飾のないナノシリコン-黒鉛複合負極材料を取って2032ボタン電池に組み立ててサイクル寿命試験を行い、材料性能データを表1に示す。
【0029】
表1から分かるように、表面修飾のない比較例3では、300サイクル後の容量保持率は28.4%に過ぎず、炭素被覆層修飾のみを有する比較例1では、300サイクル後の容量保持率は70.7%であり、メタリン酸アルミニウム修飾のみを有する比較例2では、300サイクル後の容量保持率は46.2%であるが、炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾後、材料のサイクル寿命は著しく向上し、実施例1から実施例5までのサンプルは、300サイクル後の容量保持率がそれぞれ103.7%、87.8%、104.3%、102.8%と104.4%である。比較分析により、本発明の設計した炭素被覆とメタリン酸アルミニウム複合修飾層が、ナノシリコン-黒鉛複合負極材料のサイクル寿命を大幅に向上させることができることを発見した。
【0030】
【表1】
【0031】
開示された実施例の上記説明によって、当分野の当業者は本発明を実現又は使用することができる。これらの実施例の様々な修正は、当分野の当業者にとって自明であり、本明細書で定義された一般的な原理は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施例で実現されることができる。そのため、本発明は本明細書に示すこれらの実施例に限定されることはなく、本明細書に開示された原理と新規な特徴に一致する最も広い範囲に適合すべきである。
図1
図2
【国際調査報告】