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特表2024-546518熱膨張係数の整合を特徴とするヒートスプレッダ及びそれを用いた熱放散
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-25
(54)【発明の名称】熱膨張係数の整合を特徴とするヒートスプレッダ及びそれを用いた熱放散
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20241218BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20241218BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241218BHJP
   B22F 1/054 20220101ALI20241218BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20241218BHJP
   C22C 26/00 20060101ALI20241218BHJP
   C22C 1/05 20230101ALI20241218BHJP
   C22C 1/10 20230101ALI20241218BHJP
   C22C 1/08 20060101ALI20241218BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241218BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20241218BHJP
   B22F 7/04 20060101ALN20241218BHJP
【FI】
H01L23/36 M
H01L23/36 D
B22F1/00 L
B22F1/054
B22F1/052
C22C26/00 Z
C22C1/05 P
C22C1/10 E
C22C1/08 F
H05K7/20 B
H05K1/02 F
C22C1/05 R
C22C1/05 Z
B22F7/04 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527486
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 US2022080001
(87)【国際公開番号】W WO2023091980
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/280,694
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523457648
【氏名又は名称】クプリオン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ジン、アルフレッド エー.
【テーマコード(参考)】
4K018
4K020
5E322
5E338
5F136
【Fターム(参考)】
4K018AA03
4K018AB01
4K018AB03
4K018AB07
4K018AB08
4K018AC01
4K018BA02
4K018BA09
4K018BB04
4K018BB05
4K018BC29
4K018BD04
4K018CA02
4K018CA33
4K018EA01
4K018JA21
4K018KA22
4K018KA32
4K018KA70
4K020AA04
4K020AA05
4K020AA10
4K020AA12
4K020AA21
4K020AA24
4K020AA27
4K020AC04
4K020BB08
4K020BB29
5E322AA02
5E322AB09
5E322FA04
5E338BB75
5E338CC08
5E338EE02
5F136BC03
5F136BC06
5F136FA04
5F136FA16
5F136FA18
5F136FA22
5F136FA23
5F136FA24
5F136FA25
5F136FA33
5F136FA83
5F136GA31
(57)【要約】
ヒートスプレッダは、電子部品又は電子部品に熱連通する他の発熱部品に熱膨張係数(CTE)が一致するように調整され得る。場合によっては、CTE整合を実現しながら、発熱部品をヒートスプレッダに接合してもよい。銅ナノ粒子を穏やかな条件下でCTE調整剤と圧密化して、熱源及びヒートシンクに接触するように構成されたヒートスプレッダを画定してもよく、ヒートスプレッダの少なくとも一部は、CTE調整剤を含む銅複合材を含む。銅複合材は、ヒートスプレッダを画定する熱伝導体中又はその上のコーティング中に存在してもよい。銅複合材は、プリント回路基板(PCB)内などで、銅複合材と発熱部品との間の効果的な熱伝達及び強固な接合を促進するために発熱部品に接触してもよく、その後にヒートシンク又は他の受熱構造への熱の放散が続く。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートスプレッダであって、
熱源及びヒートシンクに接触するように構成された熱伝導体であり、前記熱伝導体の少なくとも一部又はその上のコーティングは、熱膨張係数(CTE)調整剤を含む銅複合材を含む、熱伝導体を備える、ヒートスプレッダ。
【請求項2】
前記銅複合材が、銅ナノ粒子と、ミクロンサイズ銅粒子及び前記CTE調整剤との圧密化によって形成される、請求項1に記載のヒートスプレッダ。
【請求項3】
前記銅複合材が、約2%~約30%の均一なナノ細孔性を有する、請求項1に記載のヒートスプレッダ。
【請求項4】
前記CTE調整剤が、炭素、W、Mo、ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、酸化銅ナノ粒子、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される粒子又は繊維を含む、請求項1に記載のヒートスプレッダ。
【請求項5】
前記熱伝導体の少なくとも一部から延伸する、又は存在する場合には、その上の前記コーティングから延伸する複数の熱伝導性繊維、
を更に備える、請求項1に記載のヒートスプレッダ。
【請求項6】
前記熱伝導体が、前記CTE調整剤を含む前記銅複合材から全体的に形成される、請求項1に記載のヒートスプレッダ。
【請求項7】
前記CTE調整剤が、前記熱伝導体の全体にわたって分布している、請求項6に記載のヒートスプレッダ。
【請求項8】
前記熱伝導体がテーパ状である、請求項1に記載のヒートスプレッダ。
【請求項9】
前記CTE調整剤が、段階的又は勾配濃度分布で前記銅複合材中に存在する、請求項1に記載のヒートスプレッダ。
【請求項10】
前記銅複合材が約3ppm~約7ppmのCTEを有する、請求項1に記載のヒートスプレッダ。
【請求項11】
プリント回路基板(PCB)であって、
電気絶縁性基板上に配置された、又は電気絶縁性基板内に埋め込まれた発熱部品と、
前記発熱部品と熱連通する少なくとも1つのヒートスプレッダと、を含み、前記少なくとも1つのヒートスプレッダが、
熱伝導体であり、前記熱伝導体の少なくとも一部又はその上のコーティングが、熱膨張係数(CTE)調整剤を含む銅複合材を含む、熱伝導体を含む、プリント回路基板(PCB)。
【請求項12】
前記銅複合材が、銅ナノ粒子と、ミクロンサイズ銅粒子及び前記CTE調整剤との圧密化によって形成される、請求項11に記載のPCB。
【請求項13】
前記銅複合材が、約2%~約30%の均一なナノ細孔性を有する、請求項11に記載のPCB。
【請求項14】
前記少なくとも1つのヒートスプレッダが、前記発熱部品にCTE整合された第2の銅複合材を含む接合層を介して前記発熱部品に接合されている、請求項11に記載のPCB。
【請求項15】
前記接合層の前記第2の銅複合材が、約2%~約30%の均一なナノ細孔性を有する、請求項14に記載のPCB。
【請求項16】
前記CTE調整剤が、炭素、W、Mo、ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、酸化銅ナノ粒子、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される粒子又は繊維を含む、請求項11に記載のPCB。
【請求項17】
前記熱伝導体が、前記CTE調整剤を含む前記銅複合材から全体的に形成される、請求項11に記載のPCB。
【請求項18】
前記CTE調整剤が、前記熱伝導体全体にわたって分布している、請求項17に記載のPCB。
【請求項19】
前記熱伝導体がテーパ状である、請求項11に記載のPCB。
【請求項20】
請求項11に記載のPCBであって、前記発熱部品が、前記電気絶縁性基板の表面上に配置されるか、又は電気絶縁性基板の表面内に埋め込まれ、かつ:
前記少なくとも1つのヒートスプレッダが、前記発熱部品の上面に接合され、
前記少なくとも1つのヒートスプレッダが、前記発熱部品の側面に接合され、
前記少なくとも1つのヒートスプレッダが、前記発熱部品の底面に接合され、前記少なくとも1つのヒートスプレッダが、前記電気絶縁性基板を通って延伸している、
又はそれらの任意の組合せである、PCB。
【請求項21】
前記CTE調整剤が、段階的又は勾配濃度分布で前記銅複合材中に存在する、請求項11に記載のPCB。
【請求項22】
前記銅複合材が約3ppm~約7ppmのCTEを有する、請求項11に記載のPCB。
【請求項23】
放熱システムであって、
熱伝導体を有するヒートスプレッダであり、前記熱伝導体の少なくとも一部又はその上のコーティングは、前記熱伝導体が約3ppm~約7ppmの熱膨張係数(CTE)を有するように、熱膨張係数(CTE)調整剤を含む銅複合材を含む、ヒートスプレッダと、
前記熱伝導体の第1の表面と接触する発熱部品であり、約3ppm~約7ppmのCTEを有する前記発熱部品と、
前記熱伝導体の第2の表面に接触するヒートシンク又はヒートパイプと、を備え、
前記ヒートシンク又は前記ヒートパイプもまた、前記熱膨張係数調整剤を含む前記銅複合材から形成され、約3ppm~約7ppmのCTEを有する、放熱システム。
【請求項24】
前記熱伝導体又はその上の前記コーティングが、接合層を介して前記ヒートシンク又は前記ヒートパイプに冶金的接合される、請求項23に記載の放熱システム。
【請求項25】
前記熱伝導体又はその上の前記コーティングが、前記発熱部品の約20%以内のCTEを有する、請求項23に記載の放熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱源とヒートシンクとの間の非効率的な熱連通は、特に電子デバイス内部で、システムからの過剰な熱の放散を妨げる可能性がある。例えば、高出力LED及び高出力回路などの発熱電子部品は、絶えず小型化し、出力がより高くなりつつあり、それによって、小規模化し続ける空間にますます集中している過剰な熱の負荷を発生させる。システムインパッケージ(SIP)システムにおける集積レベルの増加及び複雑な電子部品梱包もまた、熱放散を困難にすることがある。過剰な熱発生の増加及びその集中により、効果的な熱除去を重要ではあるものの、特に解決を難しくする可能性がある。電子装置からの過剰な熱の除去の失敗の結果として、重大な結果、例えば、過熱、伝導低下、通常よりも高い電力要件、並びに/又は、基板焼損及びホットスポットの存在によるデバイス故障を回避するためのクロックダウン動作の必要性などが生じる可能性がある。故障モードには、接合線の強度を超えて回路の破壊及び/又は短絡につながりかねない、熱膨張係数(CTE)の不整合から生じる横方向変位力が含まれ得る。
【0002】
非効果的な熱伝導は、様々なタイプの回路基板、特にプリント回路基板(PCB)、複合パッケージング、積層基板、及びシステムインパッケージ(SIP)部品においてとりわけ遍在的である可能性がある。PCB及び類似の回路基板は、まさにそれらの構造の性質により断熱材である。具体的には、PCBには、適切な電子回路及び様々な基板部品がその上に配置される断熱基板(例えば、FR4のようなガラス繊維エポキシ複合材、一般的な例は、わずか0.25W/m・Kの熱伝導率値を有するもの)が使用され得る。PCB基板の低い熱伝導率値により、電子装置からの過剰な熱の除去がかなり困難になる可能性がある。リード又は埋め込まれた金属トレースは通常サイズが小さいため、それらを介して除去することができる過剰な熱は極めて少ない。更に、従来の鉛はんだは、特に熱伝導性ではない(例えば、銅などのより熱伝導性の金属の約1/10th以下である)。例えば、5G基地局及び電力変換器に見られるような、GaNデバイス及びSiCデバイス、モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)、フェーズドアレイなどのためのヒートスラグを有するパッケージ基板は、同様の問題をきたしかねない。EMI遮蔽は、関連する問題をきたしかねないが、短絡の発生はない。
【0003】
サーマルビアは、プリント回路基板又は同様の構造に関連する電子部品によって生成される過剰な熱を除去するための1つの手法である。しかしながら、ビアへの高融点金属の直接液体キャスティングは、現在使用されている基板材料と適合性がない(PCB基板として典型的に使用される材料のはるかに低いポリマー融点と比較して、金属処理温度>1000Cである)。こうして、ビアは、多くの場合、ロジン又は同様の充填剤で充填され、次いで、PCB基板を通した電気通信を促進するために、ビア壁(すなわち、ビアバレル)上に形成された厚い金属めっき(例えば、銅)のみで、両端がガルバニックキャッピングされるか、又は開放のままである。この手法は、ゆっくりとした電着によって行われ、PCBを通って延伸する金属プラグ内にギャップを残すことによって準最適な熱連通をもたらしかねない。金属ナノ粒子を使用してビアを充填するための代替的な手法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10616994号明細書に記載されており、これは、ビアホールのより完全な充填を促進し、より高い熱伝導率をもたらし得る。大口径ビアは、そのようなプロセスに適合して、過剰な熱のより効果的な除去を提供し得る。大量の過剰な熱を除去するためには、サーマルビアでさえも不十分な場合がある。
【0004】
サーマルコインは、サーマルビアが提供できるよりも多くの熱伝導が必要なときに使用し得る熱放散のための別の手法である。サーマルコインは、PCB又は同様の基板の平面に押し込まれる直径3~4mmの金属体である。サーマルビアに対して熱伝導が増加する結果として、サイズの不適合が一般的であり得るし、製造中のPCBの厚さ及び予め製造されたサーマルコインの厚さが変化する場合があり、これは、複数のPCB層を一緒に積層するときに組立問題を引き起こしかねない。サーマルコインはまた、通常、限られた範囲の形状で製造され、これは特定のPCBアーキテクチャには適用できない場合がある。
【0005】
ヒートパイプは、非常に大量の過剰な熱の伝達を促進し得る代替の熱伝達媒体である。銅などの高熱伝導性金属は、数百W/m・Kの範囲の熱伝導率値しか有し得ない一方、ヒートパイプは、約10,000W/m・K~約100,000W/m・Kなど、数千W/m・Kの範囲のはるかに高い有効熱伝導率値を提供することができる。ヒートパイプは、密閉容器内に収容された作動流体への直接的な熱伝達を通じて機能し、伝導は、作動流体の液体-蒸気相転移及びその後の凝縮によって更に補われる。ヒートパイプは、過酷な動作環境における熱の受動的放散が望ましい用途において伝統的に利用されてきた。例としては、衛星及び宇宙船の用途が挙げられる。振動ヒートパイプのような小型化されたヒートパイプは、プリント回路基板及び同様の小型の発熱電子部品から過剰な熱を放散するために最近使用されている。
【0006】
ヒートパイプと同様に、ヒートスプレッダも、それと接触する熱源からの過剰な熱の放散を促進し得る。ヒートスプレッダは、ヒートパイプの作動流体が無い代わりに、熱リザーバへの過剰な熱のより効果的な排除を促進するために、モノリシック熱伝導体を通した熱の横方向拡散を促進し得る。ヒートスプレッダにはテーパを設けて、点状熱源などの限られたサイズを有する熱源から、一般的にはヒートシンクにおける又はヒートシンクに隣接する、より広範囲に広がる放散表面への過剰な熱の放散を促進し得る。
【0007】
ヒートパイプ及びヒートスプレッダの両方に関連する難点は、熱膨張係数(CTE)不整合に起因して、発熱部品とヒートパイプ又はヒートスプレッダの外面との間に非効果的な熱連通が存在しかねないことである。例えば、銅は、ヒートパイプの外側シェルを形成するために、又はヒートスプレッダのモノリシック金属体を形成するために利用されることの多い高熱伝導性金属であるが、この金属は、プリント回路基板の発熱部品内又は過剰な熱を発生する同様の部品内に一般的に存在するセラミック材料とはCTEが大幅に異なる。CTE不整合により、発熱が起こるときにヒートパイプ又はヒートスプレッダからの発熱部品の係合解除につながりかねず、それによって、発熱部品から過剰な熱を放散するヒートパイプ又はヒートスプレッダの能力を著しく打ち消す。ヒートシンク又は他の受熱構造からのヒートスプレッダの係合解除も同様に問題となりかねない。更に、ヒートパイプ又はヒートスプレッダを発熱部品に接合するために使用される材料も同様に、CTE不整合に更に寄与することがある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下の図は、本開示の特定の態様を例示するために含まれており、排他的な実施形態と見るべきではない。開示された主題は、当業者及び本開示の利益の享受者であれば想到するような、形態及び機能において大幅な修正、変更、組合せ、及び均等物が可能である。
図1】表面に界面活性剤コーティングを有する金属ナノ粒子の推定構造の図を示す。
図2】表面に界面活性剤コーティングを有する金属ナノ粒子の推定構造の図を示す。
図3A】本開示のヒートスプレッダの様々な構成の断面図を示す。
図3B】本開示のヒートスプレッダの様々な構成の断面図を示す。
図3C】本開示のヒートスプレッダの様々な構成の断面図を示す。
図3D】本開示のヒートスプレッダの様々な構成の断面図を示す。
図4】複数の伝導性繊維が熱伝導体の一端のコーティングから延伸する例示的なヒートスプレッダの図を示す。
図5】ヒートスプレッダが発熱部品の上面に接合されている図を示す。
図6】ヒートスプレッダが発熱部品の底面に接合されている図を示す。
図7】発熱部品の上面及び底面にヒートスプレッダが接合されている図を示す。
図8】複数のヒートスプレッダが発熱部品の側面に接合されている図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、概して、熱管理に関し、より具体的には、銅クラッド基板(CCB)並びにAlN及びSiNのような新規セラミックを採用する基板などのプリント回路基板(PCB)及び関連する電子装置に使用される発熱部品に整合する改善された熱膨張係数(CTE)を有する外面を少なくとも有するヒートスプレッダに関する。発熱部品には、FR4若しくは他のポリマー基板のような電気絶縁性かつ熱絶縁性の基板を使用してもよく、又は場合によっては、AlNなどの電気絶縁性であるが熱伝導性である基板を使用してもよい。有利なことに、本開示は、ヒートスプレッダの少なくとも外面のCTEを、所与の発熱部品のCTEに整合するように調整することを容易にし得る。ヒートシンク又は同様の受熱構造のCTEに整合するCTEもまた実現され得る。ヒートスプレッダは、モノリシック熱接地面として、又はフィン付きヒートシンクとして、PCBの裏面に直接取り付けられてもよい。直接金属接合は、ヒートスプレッダと発熱部品との間の接合層を使用する一部のシステムアーキテクチャにおいて実現され得、その結果として機械的耐久性が生じる。更に、本開示のヒートスプレッダ及び関連する概念は、たとえより非効果的な熱伝導率という代償を払ってもCTE不整合を緩和するために必要となり得るはずの熱グリース及びゲルパッドの使用を回避又は最小限に抑え得る。CTEの調整は、以下に説明する様々な方法で達成してもよい。
【0010】
上述したように、回路基板及び関連する電子アセンブリの発熱部品からの過剰な熱の除去は、その中に断熱材料が遍在しているために解決が困難となる可能性がある。ヒートスプレッダは、そのようなシステムから大量の過剰な熱を放散させるのに有効であり得るが、ヒートスプレッダの金属部品と、電子部品又は他の発熱構造体の様々な部分との間のCTE不整合は、特に、様々なセラミックなどの非金属部品を含むものでは、重大となりかねない。CTE不整合は、断熱性基板及びAlN及びSiNなどの熱伝導性基板の両方を特徴とする発熱部品において遍在的であり得る。いずれかのタイプのシステムに過度のCTE不整合が存在する場合、ヒートスプレッダは、発熱時に発熱部品から分離しかねず、それによって、過剰な熱を放散するヒートスプレッダの能力を打ち消すか、又は大幅に制限し、その結果として発熱部品の過熱及び焼損が生じる。
【0011】
本開示は、ヒートスプレッダの少なくとも外面と発熱部品との間のより効果的なCTE整合をもたらし得るヒートスプレッダを提供する。より詳細には、本開示は、ヒートスプレッダの少なくとも外面、及び任意選択でヒートスプレッダのより大きな部分又は更には全体を画定し得る、銅複合材などのCTE調整剤を含む金属複合材を提供する。金属複合材は、低度のナノ細孔性を有するバルク金属を形成するために互いに圧密化された銅ナノ粒子などの金属ナノ粒子を使用して形成してもよい。CTE調整の前であっても、融合銅ナノ粒子は、(存在するナノ細孔性の程度に基づいて変化する)わずか約7~11ppmの比較的低いCTEを有し、これは、本明細書に更に記載されるように、少なくとも1種のCTE調整剤を使用して銅複合材において更に調整されてもよい。金属複合材のCTEは、SiC、GaN、AlNなどを含有するものなどの発熱部品中のセラミック材料とのより効果的なCTE整合を促進するために、連続金属マトリックス中のCTE調整剤の添加量を調整することによって容易に変更され得る。金属複合材は、銅ナノ粒子などの金属ナノ粒子を含む組成物から容易に形成され得、これにより、金属複合材及びヒートスプレッダが、溶融金属の融点よりも十分に低い、低温で固相焼結により形成され得る。ヒートシンク又は同様の受熱構造は、金属ナノ粒子及びCTE調整剤をその位置に同様に利用することによって、ヒートスプレッダに同様にCTE整合されてもよい。銅ナノ粒子などの金属ナノ粒子、及びその低温処理を容易にし得る特性に関する更なる詳細は、以下に記載される。
【0012】
適切なCTE調整剤は、銅ナノ粒子から形成されたバルク金属の既に低いCTE(7~11ppm)を、バルク銅に典型的に見られる17ppmの値と比較して、場合によっては室温で3ppmにまで低下させ得る。これらの特徴は、PCBアセンブリ及び他の熱伝達アーキテクチャを大幅に簡略化し、全体的な製品コスト削減をもたらし得る一方で、激しい熱衝撃及び著しい熱サイクルが発生する場所における性能及び信頼性を大幅に向上させる。同様に、CTEは、17ppmに近いCTE値を含む、銅ナノ粒子圧密化の際にバルク銅粉末を含めることによって上方に調整され得る。必要であれば、アルミニウム粒子、フレーク又はワイヤなどの他の金属のミクロンサイズ粒子を含めることによって、更に高いCTE値を実現してもよく、この場合、23ppmに近いCTE値を実現し得る。したがって、本開示の金属複合材は、到達可能なCTE値の範囲を与えるために、銅ナノ粒子及び少なくとも1種のCTE調整剤から、任意選択でバルク銅粉末と更に組み合わせて形成されてもよい。
【0013】
ヒートスプレッダと電子部品又は同様の発熱部品の基板との間の改善されたCTE整合を容易にすることに加えて、金属ナノ粒子組成物はまた、はんだ付け又は金属ペーストの使用によって生成されるものと同様に、接合層によって電子部品とヒートスプレッダとの間の直接接合を促進してもよい。例えば、金属ナノ粒子組成物は、電子部品の表面上に接合層として塗布されてもよく、接合層内の金属ナノ粒子のその後の圧密化により、圧密化された金属ナノ粒子から同様に形成されるヒートスプレッダの外面の少なくとも一部への直接的冶金的接合を促進してもよい。直接的冶金的接合は、発熱部品とヒートスプレッダが相互に係合解除する可能性を大幅に減少させる。更に、ヒートスプレッダ(又はその外側コーティング)と接合層が同様の材料から形成され得るので、CTE不整合が生じる可能性が低くなり、それによって熱機械応力が制限されるか、又は更には排除される。すなわち、接合層は、電子部品とヒートスプレッダの外面との中間のCTEを有する遷移層を画定し得る。大きい電子部品サイズ及び高い動作温度(例えば、約350℃以下)では、たとえ小さいCTE差であっても、高い熱機械応力値をもたらして潜在的な層間剥離及びデバイス故障につながるはずである。ヒートシンク又は同様の受熱構造に対するヒートスプレッダの外面のCTE整合は、ヒートシンク又は同様の受熱構造の少なくとも一部を形成するために、金属ナノ粒子及びCTE調整剤を使用することによって同様に実現してもよく、場合によっては冶金的接合が生じる。
【0014】
本開示のヒートスプレッダは、発熱電子部品が問題となるプリント回路基板及び同様のアーキテクチャと併用してもよい。ヒートスプレッダは、様々な方法でプリント回路基板及び同様のアーキテクチャに接続されてもよい。プリント回路基板の面上に配置された又はプリント回路基板の面内に埋め込まれた発熱部品は、本開示のヒートスプレッダに、PCBの非導電性基板の反対側を向く前面上、発熱電子部品の側面上、及び/又は発熱電子部品の下面上で接続されてもよい。後者の構成では、ヒートスプレッダは、PCBの電気絶縁性基板を通って延伸し、発熱部品に接触してもよい。前述のヒートスプレッダ構成の組合せを使用して、複数の熱伝達経路を提供してもよい。ヒートスプレッダを発熱部品に接続するための前述のヒートスプレッダ構成は、プロセッサ上のSIP及びメモリデバイスなどのデバイス及びシステムの3次元集積化をもたらすために、複数のプリント回路基板層の互いの上への積層を容易にするために利用されてもよい。ヒートスプレッダは、それを通して分流された過剰な熱を排除するための構造、例えば、液体リザーバ、ラジエータ、又はヒートシンクとして機能する同様の構造と熱連通してもよい。ヒートスプレッダは、場合によっては、ヒートパイプと更に熱連通又は物理的接触してもよく、ヒートパイプは、過剰な熱を発熱電子部品から更に遠くに運び去ってもよい。すなわち、ヒートスプレッダとヒートシンクとの間にヒートパイプが介在してもよい。
【0015】
同様に、AlN又はSiNなどの電気絶縁性であるが高熱伝導性の基板を特徴とする発熱部品の場合、本開示のヒートスプレッダは、基板のいずれかの面上に配置されてもよく、又は少なくとも部分的に基板の内部に配置されてもよい。電気絶縁性であるが熱伝導性の基板が使用される場合、ヒートスプレッダは、発熱部品に直接接触するのではなく、熱伝導性の基板を介して発熱部品と熱連通してもよい。場合によっては、AlN又はSiNは、電気絶縁性基板の表面に熱伝導性を付与するためにその表面上に(例えば、厚さが約300ミクロン~約500ミクロンの)薄膜として堆積されてもよい。本開示のヒートスプレッダも、同様に、これらの構成において使用されてもよい。
【0016】
金属ナノ粒子は、ヒートスプレッダ上の少なくとも表面コーティングを、又は任意選択でヒートスプレッダの全体を、形成するのに比類なく適している。少なくとも、ヒートスプレッダは、低いCTEを有する発熱部品に対してより良好にCTE整合され得、接合層が更に利用される場合、接合層は、ヒートスプレッダと発熱部品との間の強固な接合相互作用を提供し得、又は接合層は、発熱部品のCTEとヒートスプレッダのCTEとの中間のCTEを有し得る。低ナノ細孔性を有する金属複合材(例えば、CTE調整剤を含む銅複合材)中にバルク金属(例えば、バルク銅)を形成するための金属ナノ粒子を圧密化するのに適度な処理条件は、接合層及びヒートスプレッダの他の任意選択の構成要素の形成を促進し得る。以下に更に詳細に記載されるように、金属ナノ粒子は、金属自体の融点を大幅に下回るある範囲の穏やかな処理条件下で、対応するバルク金属内に一緒に圧密化(融合)することができる。銅の高い熱伝導率及び比較的低いコストに起因して、銅ナノ粒子は、本開示の様々な実施形態において使用するための特に望ましいタイプの金属ナノ粒子とすることができる。CTE調整剤と組み合わされた金属ナノ粒子から形成されたバルク銅は、金属ナノ粒子圧密化後に、十分に分散した複合体を効果的に形成し得る。適切なCTE調整剤としては、例えば、炭素繊維、ダイヤモンド粒子、窒化ホウ素粒子又は繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、W粒子及び/又はMo粒子、ケイ素粒子、グラファイト粉末、窒化ケイ素粒子又は繊維、窒化アルミニウム粒子又は繊維、酸化銅ナノ粒子、並びにこれらの任意の組合せを挙げ得る。W粒子及び/又はMo粒子はまた、銅に耐酸化性を付与し得る。ヒートスプレッダの表面と発熱部品との間のCTE整合を促進することに加えて、CTE調整剤及び任意選択のミクロンサイズの金属粒子はまた、他の金属ナノ粒子系であれば20%を超え得るはずの、金属ナノ粒子の圧密化の際の収縮を制限し得る。制限された収縮は、ヒートスプレッダの使用中に発生する動作上の高温-低温サイクル中の熱機械的応力を緩和するのに役立ち得る。加えて、金属ナノ粒子圧密化後に得られるナノ細孔性は、熱機械応力に対する更なる耐性を提供し得る更なる可撓性を付与し得る。
【0017】
前述の利点に加えて、金属ナノ粒子は、ヒートスプレッダから熱を放散するために更に向上した構造を有するヒートスプレッダの製造を容易にし得る。例えば、本開示の一部のヒートスプレッダは、ヒートスプレッダの端部(低温端)から延伸する複数の熱伝導性繊維であって、周囲雰囲気、海洋環境(例えば、海、湖、若しくは河川水)、又は宇宙用途のためのラジエータなどのヒートシンクへの過剰な熱の迅速な放散を促進し得る複数の熱伝導性繊維を含んでもよい。伝導性繊維は、上記で簡単に説明し、以下で更に詳細に説明するように、CTE整合を促進する上でも効果的な金属ナノ粒子組成物を使用してヒートスプレッダに接合されてもよい。伝導性繊維の接合は、金属ナノ粒子の圧密化が行われる前に伝導性繊維の端部を適切な金属ナノ粒子組成物に組み込むことによって行われる別個の接合工程なしに、ヒートスプレッダの製造中に達成されてもよい。金属ナノ粒子の圧密化に続いて、伝導性繊維の端部の一方の組は、得られた金属複合材内にしっかりと固定されたままであり、伝導性繊維の端部の他方の組は、ヒートスプレッダから外側に延伸して、ヒートスプレッダからの熱放散を促進する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「金属ナノ粒子(metal nanoparticle)」という用語は、金属粒子の形状に特に言及することなく、サイズが約200nm以下である金属粒子を指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、「ミクロンスケール金属粒子(micron-scale metal particles)」という用語は、少なくとも1つの寸法におけるサイズが約200nm以上である金属粒子を指す。
【0020】
用語「圧密化する(consolidate)」、「圧密化(consolidation)」及びその他の変形は、本明細書において、用語「融合する(fuse)」、「融合(fusion)」及びその他の変形と互換的に使用される。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「部分的に融合された(partially fused)」、「部分的融合(partial fusion)」、並びにその他の派生語及び文法上の等価物は、金属ナノ粒子同士の部分的合着を指す。全体的に融合した金属ナノ粒子は、融合していない元の金属ナノ粒子の最小構造形態のみを保持する(すなわち、それらは、高密度バルク金属に似ているが、低度のナノ細孔性を有する100~500nmの範囲内の内部粒径を示す)のに対して、部分的に融合した金属ナノ粒子は、融合していない元の金属ナノ粒子の構造形態の少なくとも一部、例えば、より高いレベルの空隙率、より小さい平均粒径、及びより多数の粒界を保持する。部分的に融合した金属ナノ粒子の特性は、対応するバルク金属の特性と融合していない元の金属ナノ粒子の特性との中間であることができる。一部の実施形態では、十分に緻密な(非多孔質の)バルク金属は、金属複合材を得るための金属ナノ粒子圧密化後に得ることができる。他の実施形態では、金属複合材は、完全な高密度化を上回る量(すなわち、>0%の空隙率)で、約10%未満の空隙率、又は約20%未満の空隙率、又は約30%未満の空隙率を有してもよい。したがって、特定の実施形態では、金属ナノ粒子及びCTE調整剤から形成される金属複合材は、約2%~約30%、又は約2%~約5%、又は約5%~約10%、又は約10%~約15%、又は約15%~約20%、又は約20%~約25%、又は約25%~約30%の範囲内の空隙率(ナノ細孔性)を有してもよい。
【0022】
本開示のより特定の態様をより詳細に更に説明する前に、金属ナノ粒子及びそれらの処理条件、特に銅ナノ粒子の追加の簡単な説明を最初に提示する。金属ナノ粒子は、対応するバルク金属の特性とは大幅に異なる可能性があるいくつかの特性を示す。本明細書の開示による処理にとって特に重要である可能性がある金属ナノ粒子の1つの特性は、金属ナノ粒子の融解温度で生じるナノ粒子融合(圧密化)である。本明細書で使用される場合、「融解温度(fusion temperature)」という用語は、金属ナノ粒子が液化し、それによって融解の外観を与える温度を指す。本明細書で使用される場合、「融合(fusion)」及び「圧密化(consolidation)」という用語は、同義的に、金属ナノ粒子が互いに合着又は部分的に合着して、ヒートスプレッダの少なくとも外面上に接合界面又は金属複合材などのより大きな塊を形成することを指す。融解温度は、対応するバルク金属の融点よりも80%程下回ってもよい。したがって、融解温度を超えて加熱した後に、金属ナノ粒子間に少なくとも部分的な連結性が存在する。金属ナノ粒子の圧密化後、得られたナノ細孔性は、加熱及び冷却サイクル中に生じる熱応力を受容し得る。理論又は機構に束縛されるものではないが、ナノ細孔性は、熱機械応力の急速な解放から破損を受けるのではなく、ヒートスプレッダの膨張又は収縮から生じる応力を吸収し得ると考えられる。
【0023】
サイズが減少すると、特に球相当径が約20nmを下回ると、金属ナノ粒子が液化する温度は、対応するバルク金属の液化温度から劇的に低下する。1083Cのバルク銅の融点と比較して、例えば、約20nm以下のサイズを有する銅ナノ粒子は、約235C以下、又は約220C以下、又は約200C以下の融解温度を有することができる。したがって、融解温度で起こる金属ナノ粒子の圧密化は、バルク金属自体を出発材料として直接加工する場合よりも著しく低い処理温度でバルク金属を含有する構造体を製造することを可能にすることができる。金属ナノ粒子を圧密化するための処理条件は、典型的には、約375F(190.6℃)、又は更には約450°F(232.2℃)以下、及び275~400psiの通常のPCB製造パラメータ内である、しかし、圧力は、金属ナノ粒子融合が起こるためには必ずしも必要ではない。金属ナノ粒子の圧密化を促進するときに圧力を加えることによって、より高密度のバルク金属を得てもよい。したがって、場合によっては、最大約1500psiもの圧力を金属ナノ粒子に加えて圧密化を促進してもよい。例えば、銅ナノ粒子の場合、融解温度(約220℃以下)は、一般的に使用されるPCB基板が溶融又は変形する温度を下回る。したがって、銅ナノ粒子の融合は、従来のPCB製造プロセスで使用される温度条件と関連して起こり得るが、より激しい圧密化条件が任意選択で使用されてもよい。融合は、金属酸化を防止するために不活性雰囲気下で行われてもよく、又はより大きな表面若しくは物品の場合には、不活性雰囲気が存在しなくても酸化を制限するのに十分なガス放出があってもよい。したがって、銅ナノ粒子などの金属ナノ粒子は、特にPCB製造プロセス内でヒートスプレッダを組み込むときに、ヒートスプレッダの少なくとも一部内に又はヒートスプレッダ上の接合層の少なくとも一部内に金属複合材のバルク金属を形成する上で扱いやすい材料を提供する。
【0024】
目標サイズ範囲内の金属ナノ粒子を大量に製造するための大規模に実現可能なプロセスが多数開発されてきた。最も典型的には、金属ナノ粒子を製造するためのそのようなプロセスは、1種以上の界面活性剤の存在下で金属前駆体を還元することによって行われる。次いで、金属ナノ粒子は、一般的な単離技術によって反応混合物から単離及び精製され、分配に適した配合物に加工することができる。
【0025】
本明細書の開示で使用される金属ナノ粒子を形成するために、任意の適切な技術を使用することができる。特に容易な金属ナノ粒子製造技術は、米国特許第7736414号明細書、同第8105414号明細書、同第8192866号明細書、同第8486305号明細書、同第8834747号明細書、同第9005483号明細書、同第9095898号明細書、及び同第9700940号明細書に記載されており、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。そこに記載されているように、金属ナノ粒子は、1種以上の異なる界面活性剤を含むことができる適切な界面活性剤系の存在下で、溶媒中で金属塩を還元することによって狭いサイズ範囲で製造することができる。二峰性サイズ分布などの金属ナノ粒子の目標サイズ分布は、異なるサイズの金属ナノ粒子を一緒に組み合わせることによって得てもよい。適切な界面活性剤系の更なる説明を以下に示す。いかなる理論又は機構にも束縛されるものではないが、界面活性剤系は、金属ナノ粒子の核形成及び成長を媒介することができ、金属ナノ粒子の表面酸化を制限することができ、及び/又は金属ナノ粒子同士が少なくとも部分的に融合する前に互いに広範囲にわたって凝集するのを阻害することができると考えられる。金属塩を可溶化し、金属ナノ粒子を形成するのに適した有機溶媒としては、例えば、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルプロピレン尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラヒドロフラン、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、プログライム、又はポリグライムを挙げることができる。金属塩を還元し、金属ナノ粒子の形成を促進するのに適した還元剤としては、例えば、好適な触媒の存在下でのアルカリ金属(例えば、リチウムナフタリド、ナトリウムナフタリド、若しくはカリウムナフタリド)又は水素化ホウ素還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、若しくは水素化ホウ素テトラアルキルアンモニウム)を挙げることができる。
【0026】
図1及び図2は、表面に界面活性剤コーティングを有する金属ナノ粒子の推定構造の図を示す。図1に示すように、金属ナノ粒子10は、金属コア12と、金属コア12をオーバーコーティングする界面活性剤層14とを含む。界面活性剤層14は、以下により詳細に記載されるように、界面活性剤の任意の組合せを含有することができる。図2に示される金属ナノ粒子20は、金属コア12が核21の周りに成長していることを除いて、図1に示されるものと同様であり、核21は、金属コア12の金属と同じ金属とすることもでき、又は異なる金属とすることもできる。核21は、金属ナノ粒子20中の金属コア12内に深く埋め込まれており、サイズが非常に小さいので、全体的なナノ粒子特性に著しく影響することはないと考えられる。核21は塩又は金属を含むことができ、この金属は金属コア12と同じであってもよく、異なっていてもよい。一部の実施形態では、ナノ粒子は非晶質形態を有することができる。
【0027】
上述したように、金属ナノ粒子は、その表面上に1種以上の界面活性剤を含有する界面活性剤コーティングを有する。界面活性剤コーティングは、金属ナノ粒子の合成中に金属ナノ粒子上に形成することができる。界面活性剤コーティングは、一般に、融解温度を超えて加熱した際の金属ナノ粒子の圧密化中に失われ、その結果、おそらく均一なナノ細孔性が内部に存在するバルク金属が形成される。金属ナノ粒子の合成中に金属ナノ粒子上に界面活性剤コーティングを形成すると、望ましくは、金属ナノ粒子同士が早期に融合する能力を制限することができ、金属ナノ粒子の凝集を制限することができ、狭いサイズ分布を有する金属ナノ粒子の集団の形成を促進することができる。空隙率値は、圧密化後に約2~30%又は約2~15%の範囲内であってもよく、これは、存在する界面活性剤(複数可)の種類、及び圧密化中にミクロンスケール金属粒子が金属ナノ粒子と接触するか否かを含む、いくつかの要因に基づいて調整されてもよい。約2%~約15%のナノ細孔性では、銅複合材は、約85%~98%の高密度融合銅ナノ粒子を含み得、閉気孔のナノ細孔性は、約50nm~約500nm、又は約100nm~約300nm、又は約150nm~約250nmの範囲内の気孔サイズを有する。
【0028】
本開示の様々な実施形態と併用するのに適した金属ナノ粒子の種類は、特に限定されないと考えられる。適切な金属ナノ粒子としては、限定されないが、スズナノ粒子、銅ナノ粒子、アルミニウムナノ粒子、パラジウムナノ粒子、銀ナノ粒子、金ナノ粒子、鉄ナノ粒子、コバルトナノ粒子、ニッケルナノ粒子、チタンナノ粒子、ジルコニウムナノ粒子、ハフニウムナノ粒子、タンタルナノ粒子、モリブデンナノ粒子、タングステンナノ粒子などを挙げることができる。これらの金属ナノ粒子の組合せもまた使用してもよい。これらの金属のミクロンスケール粒子は、金属ナノ粒子をも含有する金属ナノ粒子ペースト組成物中に存在することができる。銅は、その低コスト、強度、並びに優れた電気伝導率値及び熱伝導率値により、本開示の実施形態において使用するのに特に望ましい金属とすることができる。
【0029】
様々な実施形態において、金属ナノ粒子内に存在する界面活性剤系は、1種以上の界面活性剤を含むことができる。様々な界面活性剤の異なる特性を使用して、金属ナノ粒子の特性を調整することができる。金属ナノ粒子上に含めるための界面活性剤又は界面活性剤の組合せを選択するときに考慮に入れることができる要因としては、例えば、ナノ粒子融合中の金属ナノ粒子からの界面活性剤の散逸の容易さ、金属ナノ粒子の核形成速度及び成長速度、金属ナノ粒子の金属成分などを挙げることができる。
【0030】
一部の実施形態では、アミン界面活性剤又はアミン界面活性剤の組合せ、特に脂肪族アミンが、金属ナノ粒子上に存在することができる。アミン界面活性剤は、銅ナノ粒子と併用するのに特に望ましい可能性がある。一部の実施形態では、2種のアミン界面活性剤を互いに組み合わせて使用することができる。他の実施形態では、3種のアミン界面活性剤を互いに組み合わせて使用することができる。より具体的な実施形態では、第一級アミン、第二級アミン、及びジアミンキレート剤を互いに組み合わせて使用することができる。更により具体的な実施形態では、3種のアミン界面活性剤としては、長鎖第一級アミン、第二級アミン、及び少なくとも1種の第三級アルキル基窒素置換基を有するジアミンを挙げることができる。適切なアミン界面活性剤に関する更なる開示は、以下に続く。
【0031】
一部の実施形態において、界面活性剤系は、第一級アルキルアミンを含むことができる。一部の実施形態において、第一級アルキルアミンは、C~C18アルキルアミンとすることができる。一部の実施形態において、第一級アルキルアミンは、C~C10アルキルアミンとすることができる。他の実施形態では、C~C第一級アルキルアミンも使用することができる。いかなる理論又は機構にも束縛されるものではないが、第一級アルキルアミンの正確なサイズは、合成中に有効な逆ミセル構造を提供するのに十分な長さであることと、易揮発性を有することと、及び/又はナノ粒子圧密化中の取り扱いの容易さとの間でバランスをとることができると考えられる。例えば、18個を超える炭素を有する第一級アルキルアミンもまた、本実施形態における使用に適し得るが、それらのワックス特性のために取り扱いがより困難である可能性がある。特に、C~C10第一級アルキルアミンは、使いやすさのための所望の特性の良好なバランスを代表することができる。
【0032】
一部の実施形態において、C~C18第一級アルキルアミンは、例えば、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、又はn-デシルアミンとすることができる。これらは全て直鎖状第一級アルキルアミンであるが、他の実施形態では分岐鎖状第一級アルキルアミンも使用することができる。例えば、分岐鎖状第一級アルキルアミン、例えば、7-メチルオクチルアミン、2-メチルオクチルアミン又は7-メチルノニルアミンなどを使用することができる。一部の実施形態において、そのような分岐鎖状第一級アルキルアミンは、それらがアミンの窒素原子に結合している場合、立体障害される可能性がある。このような立体障害された第一級アルキルアミンの非限定的な例としては、例えば、t-オクチルアミン、2-メチルペンタン-2-アミン、2-メチルヘキサン-2-アミン、2-メチルヘプタン-2-アミン、3-エチルオクタン-3-アミン、3-エチルヘプタン-3-アミン、3-エチルヘキサン-3-アミンなどを挙げることができる。追加の分岐も存在することができる。いかなる理論又は機構にも束縛されるものではないが、第一級アルキルアミンは、金属配位圏において配位子として働くことができるが、金属ナノ粒子の圧密化中に金属配位圏から容易に解離することができると考えられる。
【0033】
一部の実施形態において、界面活性剤系は、第二級アミンを含むことができる。金属ナノ粒子を形成するのに適した第二級アミンは、アミンの窒素原子に結合した直鎖、分岐鎖、又は環状C~C12アルキル基を含むことができる。一部の実施形態において、分岐は、アミンの窒素原子に結合した炭素原子上で生じることができ、それによって、窒素原子における著しい立体障害を引き起こす。適切な第二級アミンとしては、ジヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジネオペンチルアミン、ジ-t-ペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。C~C12の範囲外の第二級アミンも使用することができるが、このような第二級アミンは、それらの取り扱いを複雑にする可能性がある低沸点又はワックス状粘稠度などの望ましくない物理的特性を有する可能性がある。
【0034】
一部の実施形態では、界面活性剤系は、キレート剤、特にジアミンキレート剤を含むことができる。一部の実施形態では、ジアミンキレート剤の窒素原子の一方又は両方は、1つ又は2つのアルキル基で置換することができる。2つのアルキル基が同じ窒素原子上に存在する場合、その2つのアルキル基は同一であっても、又は異なっていてもよい。更に、両方の窒素原子が置換されている場合、同じアルキル基が存在しても、又は異なるアルキル基が存在してもよい。一部の実施形態において、アルキル基は、C~Cアルキル基とすることができる。他の実施形態では、アルキル基は、C~Cアルキル基又はC~Cアルキル基とすることができる。一部の実施形態において、C以上のアルキル基は、直鎖状であっても、又は分岐鎖を有してもよい。一部の実施形態では、C以上のアルキル基は環状とすることができる。いかなる理論又は機構にも束縛されるものではないが、ジアミンキレート剤は、ナノ粒子の核形成を促進することによって金属ナノ粒子の形成を促進することができると考えられる。
【0035】
一部の実施形態において、適切なジアミンキレート剤としては、N,N’-ジアルキルエチレンジアミン、特にC~CN,N’-ジアルキルエチレンジアミンを挙げることができる。対応するメチレンジアミン誘導体、プロピレンジアミン誘導体、ブチレンジアミン誘導体、ペンチレンジアミン誘導体又はヘキシレンジアミン誘導体もまた、使用することができる。アルキル基は同一であっても、又は異なっていてもよい。存在することができるC~Cアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基、又はイソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、及びt-ブチル基などの分岐アルキル基を挙げることができる。金属ナノ粒子上に含めるのに適し得る例示的なN,N’-ジアルキルエチレンジアミンとしては、例えば、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミンなどを挙げることができる。
【0036】
一部の実施形態において、適切なジアミンキレート剤としては、N,N,N’,N’-テトラアルキルエチレンジアミン、特にC~CN,N,N’,N’-テトラアルキルエチレンジアミンを挙げることができる。対応するメチレンジアミン誘導体、プロピレンジアミン誘導体、ブチレンジアミン誘導体、ペンチレンジアミン誘導体又はヘキシレンジアミン誘導体もまた、使用することができる。アルキル基は同様に、同じであっても異なっていてもよく、上述のものを挙げることができる。金属ナノ粒子を形成する際に使用するのに適し得る例示的なN,N,N’,N’-テトラアルキルエチレンジアミンとしては、例えば、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミンなどを挙げることができる。
【0037】
脂肪族アミン以外の界面活性剤も界面活性剤系中に存在することができる。これに関して、適切な界面活性剤としては、例えば、ピリジン、芳香族アミン、ホスフィン、チオール、又はこれらの任意の組合せを挙げることができる。これらの界面活性剤は、上記のものなどの脂肪族アミンと組み合わせて使用することができ、又は、脂肪族アミンが存在しない界面活性剤系中で使用することができる。適切なピリジン、芳香族アミン、ホスフィン、及びチオールに関する更なる開示は、以下に続く。
【0038】
適切な芳香族アミンは、ArNRの式を有することができ、式中、Arは置換又は非置換アリール基であり、R及びRは同じであるか又は異なる。R及びRは、H又は1個~約16個の炭素原子を含有するアルキル基若しくはアリール基から独立して選択することができる。金属ナノ粒子を形成する際に使用するのに適し得る例示的な芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、アニシジン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリンなどを挙げることができる。金属ナノ粒子と併用することができる他の芳香族アミンは、当業者により想到され得る。
【0039】
適切なピリジンとしては、ピリジン及びその誘導体の両方を挙げることができる。金属ナノ粒子上に含有させて使用するのに適し得る例示的なピリジンとしては、例えば、ピリジン、2-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、コリジン、ピリダジンなどを挙げることができる。ビピリジルキレート剤などのキレート性ピリジンもまた、使用してもよい。金属ナノ粒子と併用することができる他のピリジンは、当業者により想到され得る。
【0040】
適切なホスフィンは、PRの式を有することができ、式中、Rは、1個~約16個の炭素原子を含有するアルキル基又はアリール基である。リン中心に結合したアルキル基又はアリール基は、同一であっても、又は異なっていてもよい。金属ナノ粒子上に存在することができる例示的なホスフィンとしては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。ホスフィンオキシドも同様に使用することができる。一部の実施形態では、キレート環を形成するように構成された2つ以上のホスフィン基を含有する界面活性剤もまた、使用することができる。例示的なキレート性ホスフィンとしては、例えば、1,2-ビスホスフィン、1,3-ビスホスフィン、及びBINAPなどのビスホスフィンを挙げることができる。金属ナノ粒子と併用することができる他のホスフィンは、当業者により想到され得る。
【0041】
適切なチオールは、RSHの式を有することができ、式中、Rは、約4個~約16個の炭素原子を有するアルキル基又はアリール基である。金属ナノ粒子上に存在することのできる例示的なチオールとしては、例えば、ブタンチオール、2-メチル-2-プロパンチオール、ヘキサンチオール、オクタンチオール、ベンゼンチオールなどが挙げられる。一部の実施形態では、キレート環を形成するように構成された2つ以上のチオール基を含有する界面活性剤もまた、使用することができる。例示的なキレート性チオールとしては、例えば、1,2-ジチオール(例えば、1,2-エタンチオール)及び1,3-ジチオール(例えば、1,3-プロパンチオール)を挙げることができる。金属ナノ粒子と併用することができる他のチオールは、当業者により想到され得る。
【0042】
上述のように、金属ナノ粒子の際立った特徴は、それらの低い融解温度であり、これにより、圧密化を促進して本明細書の開示による金属複合材内にバルク金属を形成し得る。金属ナノ粒子の分配を促進するために、金属ナノ粒子をペースト又は同様の配合物に組み込んでもよい。金属ナノ粒子ペースト組成物及び類似の配合物に関する追加の開示は、以下に続く。
【0043】
金属ナノ粒子ペースト組成物又は同様の配合物は、1種以上の有機溶媒及び様々な他の任意選択の成分を含有する有機マトリックス中に、製造されたままの又は単離されたままの金属ナノ粒子を分散させることによって調製することができる。本明細書中で使用される場合、用語「ナノ粒子ペースト配合物(nanoparticle paste formulation)」、「ナノ粒子ペースト組成物(nanoparticle paste composition)」、「ナノ粒子ペースト(nanoparticle paste)」及びそれらの文法上の等価物は、交換可能に使用され、所望の技術を用いて分配するのに適切な分散金属ナノ粒子を含有する流体組成物を同義的に指す。「ペースト(paste)」という用語の使用は、ペースト単体の接着機能を必ずしも意味しない。有機溶媒(複数可)及び他の添加剤の賢明な選択により、金属ナノ粒子などの添加、金属ナノ粒子の容易な分配及びバルク金属の形成が可能になる。
【0044】
金属ナノ粒子の圧密化中にときどき亀裂が生じる可能性がある。本開示のナノ粒子ペーストが、金属ナノ粒子圧密化後の亀裂発生の程度及び空隙形成の低減を促進することができる1つの方法は、高い固形分含量を維持することによるものである。より詳細には、一部の実施形態では、ペースト組成物は、少なくとも約30重量%の金属ナノ粒子、特にペースト組成物の約30重量%~約98重量%の金属ナノ粒子、又はペースト組成物の約50重量%~約95重量%の金属ナノ粒子、又はペースト組成物の約70重量%~約98重量%の金属ナノ粒子、又はペースト組成物の約85重量%~約98重量%、又はペースト組成物の約88重量%~約99重量%の金属ナノ粒子を含有することができる。更に、一部の実施形態では、金属ナノ粒子のほかに、少量(例えば、ペースト組成物の約0.01重量%~約15重量%又は約35重量%又は約60重量%)のミクロンスケール粒子、特にミクロンスケール金属粒子が存在することができる。ミクロンスケール金属粒子は、微粒子材料、繊維及び/又はフレークのいずれかを包含してもよい。そのようなミクロンスケール金属粒子は、バルク金属の連続塊への金属ナノ粒子の融合を望ましくは促進することができ、亀裂の発生率を更に低減することができる。金属ナノ粒子の場合のように液化されて直接圧密化されるのではなく、ミクロンスケール金属粒子同士は、融解温度を超えて上昇した液化金属ナノ粒子と接触すると、簡単に接合することができる。これらの要因により、金属ナノ粒子同士を融合させた後に生じる空隙率を低減することができる。ミクロンスケール金属粒子は、金属ナノ粒子と同じ又は異なる金属を含有することができ、ミクロンスケール金属粒子に適切な金属としては、例えば、銅、銀、金、アルミニウム、スズ、モリブデン、タングステンなどを挙げることができる。一部の実施形態では、ミクロンスケールのグラファイト粒子も含まれてもよい。一部の実施形態では、カーボンナノチューブ、窒化ホウ素、ダイヤモンド粒子、及び/又はグラフェンが含まれてもよい。一部の実施形態によれば、炭素質添加剤により、金属ナノ粒子の圧密化が行われた後の結果である熱伝導率を増加させてもよい。ミクロンスケール金属粒子又は同様のサイズのミクロンスケール添加剤はまた、CTE調整剤の能力で機能し得る。様々なCTE調整剤の添加により、本明細書の開示によるCTE整合を促進するためにCTEを更に調整してもよい。前述のミクロンスケール粒子のいずれも、クラックデフレクタとして更に機能して使用中の亀裂の伝播を制限することができ、それによって機械的強度を増加させる。
【0045】
金属ナノ粒子圧密化中の亀裂発生及び空隙形成の低減はまた、有機マトリックスを形成する溶媒(複数可)の賢明な選択により促進され得る。有機溶媒の調整された組合せにより、亀裂の発生率及び空隙形成を望ましくは低減させることができる。より具体的には、1種以上の炭化水素(飽和、一価不飽和、多価不飽和(2つ以上の二重結合)又は芳香族)、1種以上のアルコール、1種以上のアミン、及び1種以上の有機酸を含有する有機マトリックスが、この目的に特に有効であり得る。一部の実施形態では、1種以上のエステル及び/又は1種以上の無水物が含まれてもよい。場合によっては、エタノールアミンなどのアルカノールアミンが存在してもよい。いかなる理論又は機構にも束縛されるものではないが、有機溶媒のこの組合せは、金属ナノ粒子同士がより容易に融合することができるように、圧密化中に金属ナノ粒子を取り囲む界面活性剤分子の除去及び封鎖を促進することができると考えられる。より具体的には、炭化水素及びアルコール溶媒は、ブラウン運動によって金属ナノ粒子から遊離した界面活性剤分子を受動的に可溶化し、界面活性剤分子が金属ナノ粒子に再付着する能力を低減することができると考えられる。界面活性剤分子の受動的可溶化と協力して、アミン溶媒及び有機酸溶媒は、界面活性剤分子がもはや金属ナノ粒子との再結合に利用できないように、化学的相互作用を介して界面活性剤分子を能動的に封鎖することができる。
【0046】
界面活性剤除去及び金属ナノ粒子圧密化の際に起こる急激な体積収縮を低減するために、溶媒組成物の更なる調整を実施することができる。具体的には、有機溶媒の各クラスの2つ以上のメンバー(すなわち、炭化水素、アルコール、アミン、及び有機酸)が、任意選択で1種以上のアルカノールアミン、エステル、又は無水物と組み合わされて、有機マトリックス中に存在することができ、各クラスのメンバーは、設定温度だけ互いに離れた沸点を有する。例えば、一部の実施形態において、各クラスの様々なメンバーは、互いに約20C~約50Cだけ離れた沸点を有することができる。このような溶媒混合物を使用することによって、溶媒混合物の様々な成分を広範囲の沸点(例えば、約50C~約200C)にわたって徐々に除去することができるので、金属ナノ粒子の圧密化中に溶媒の急速な損失による急激な体積変化を最小限に抑えることができる。
【0047】
様々な実施形態において、1種以上の有機溶媒の少なくとも一部は、約100C以上の沸点を有することができる。他の様々な実施形態では、1種以上の有機溶媒の少なくとも一部は、約200C以上の沸点を有することができる。一部の実施形態又は他の実施形態では、1種以上の有機溶媒は、約50C~約200C、又は約50C~約250C、又は約50C~約300C、又は約50C~約350C、又は約50C~約365Cの範囲にわたる沸点を有することができる。高沸点有機溶媒の使用は、望ましくは、金属ナノ粒子ペースト組成物のポットライフを増加させることができ、また、そうでなければナノ粒子の圧密化中に亀裂発生及び空隙形成をもたらす可能性がある溶媒の急速な損失を制限することができる。一部の実施形態では、有機溶媒のうちの少なくとも1種は、金属ナノ粒子と会合する界面活性剤(複数可)の沸点(複数可)よりも高い沸点を有することができる。したがって、界面活性剤(複数可)は、有機溶媒(複数可)の除去が行われる前に、蒸発によって金属ナノ粒子から除去することができる。
【0048】
一部の実施形態において、有機マトリックスは、1種以上のアルコールを含有することができ、より特定の実施形態において、1種以上のアルコールは、C~C12、C~C12又はC~C12であってもよい。様々な実施形態において、アルコールとしては、一価アルコール、ジオール、又はトリオールを挙げることができる。特定の実施形態では、1種以上のグリコールエーテル(例えば、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール)、アルカノールアミン(例えば、エタノールアミン、トリエタノールアミンなど)、又はこれらの任意の組合せが存在してもよく、これらは単独で存在してもよく又は他のアルコールと組み合わせて存在してもよい。一部の実施形態では、様々なグライムが1種以上のアルコールと共に存在してもよい。一部の実施形態において、1種以上の炭化水素は、1種以上のアルコールと組み合わせて存在することができる。上述したように、アルコール(及び任意選択的にグライム及びアルカノールアミン)並びに炭化水素溶媒は、界面活性剤がブラウン運動によって金属ナノ粒子から除去される際に界面活性剤の可溶化を受動的に促進し、金属ナノ粒子との界面活性剤の再会合を制限することができると考えられる。更に、炭化水素溶媒及びアルコール溶媒は、金属ナノ粒子に弱く配位しているだけなので、ナノ粒子配位圏中の置換された界面活性剤に単に置き換わるのではない。存在することのできるアルコール溶媒及び炭化水素溶媒の例示的であるが非限定的な例としては、例えば、軽質芳香族石油蒸留物(CAS 64742-95-6)、水素化処理された軽質石油蒸留物(CAS 64742-47-8)、トリプロピレングリコールメチルエーテル、リグロイン(CAS 68551-17-7、C10~C13アルカンの混合物)、ジイソプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、2-プロパノール、2-ブタノール、t-ブタノール、1-ヘキサノール、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール、及びテルピネオールが挙げられる。一部の実施形態では、ポリケトン溶媒を同様に使用することができる。
【0049】
一部の実施形態において、有機マトリックスは、1種以上のアミン及び1種以上の有機酸を含有することができる。一部の実施形態において、1種以上のアミン及び1種以上の有機酸は、1種以上の炭化水素及び1種以上のアルコールをも含む有機マトリックス中に存在することができる。上述したように、アミン及び有機酸は、炭化水素溶媒及びアルコール溶媒によって受動的に可溶化された界面活性剤を能動的に封鎖することができ、それによって金属ナノ粒子との再会合に界面活性剤を利用不可にすると考えられる。したがって、1種以上の炭化水素、1種以上のアルコール、1種以上のアミン、及び1種以上の有機酸の組合せを含有する有機溶媒は、金属ナノ粒子の圧密化を促進するための相乗的利益を提供することができる。存在することのできるアミン溶媒の例示的であるが非限定的な例としては、例えば、タローアミン(CAS 61790-33-8)、アルキル(C~C18)不飽和アミン(CAS 68037-94-5)、ジ(水素化タロー)アミン(CAS 61789-79-5)、ジアルキル(C~C20)アミン(CAS 68526-63-6)、アルキル(C10~C16)ジメチルアミン(CAS 67700-98-5)、アルキル(C14~C18)ジメチルアミン(CAS 68037-93-4)、二水素化タローメチルアミン(CAS 61788-63-4)、及びトリアルキル(C~C12)アミン(CAS 68038-01-7)が挙げられる。ナノ粒子ペースト組成物中に存在することができる有機酸溶媒の例示的であるが非限定的な例としては、例えば、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、オレイン酸、及びリノール酸が挙げられる。
【0050】
一部の実施形態では、有機マトリックスは、2種以上の炭化水素、2種以上のアルコール、任意選択で2種以上のグライム(グリコールエーテル)、2種以上のアミン、及び2種以上の有機酸を含むことができる。例えば、一部の実施形態において、有機溶媒の各クラスは、2つ以上のメンバー、又は3つ以上のメンバー、又は4つ以上のメンバー、又は5つ以上のメンバー、又は6つ以上のメンバー、又は7つ以上のメンバー、又は8つ以上のメンバー、又は9つ以上のメンバー、又は10以上のメンバーを有することができる。更に、有機溶媒の各クラスにおけるメンバーの数は、同じであっても、又は異なっていてもよい。有機溶媒の各クラスの複数のメンバーを使用する特定の利点は、以下に記載される。より高い沸点の有機溶媒により、安全性の利点を提供してもよい。
【0051】
有機溶媒の各クラス内の複数のメンバーを使用する1つの特定の利点としては、金属ナノ粒子ペースト組成物において広範囲にわたる沸点を提供する能力を挙げることができる。広範囲にわたる沸点を提供することによって、温度が上昇するにつれて、有機溶媒を徐々に除去することができる一方で、金属ナノ粒子の圧密化に影響を及ぼし、それによって体積収縮を制限し、亀裂発生に不利に働く。このようにして有機溶媒を徐々に除去することにより、狭い沸点範囲の単一溶媒を使用した場合よりも、遅い溶媒除去に影響を及ぼすのに必要な温度制御がより少なくてもよい。一部の実施形態において、有機溶媒の各クラス内のメンバーは、約50C~約200C、又は約50C~約250C、又は約100C~約200C、又は約100C~約250C、又は約150C~約300C、又は約150C~約350C、又は約150C~約365Cの範囲にわたる沸点のウィンドウを有することができる。より特定の実施形態では、有機溶媒の各クラスの様々なメンバーはそれぞれ、少なくとも約20C、具体的には約20C~約50Cだけ互いに離れた沸点を有することができる。より具体的には、一部の実施形態では、各炭化水素は、有機マトリックス中の他の炭化水素と約20C~約50Cだけ異なる沸点を有することができ、各アルコールは、有機マトリックス中の他のアルコールと約20C~約50Cだけ異なる沸点を有することができ、各アミンは、有機マトリックス中の他のアミンと約20C~約50Cだけ異なる沸点を有することができ、各有機酸は、有機マトリックス中の他の有機酸と約20C~約50Cだけ異なる沸点を有することができる。存在する有機溶媒の各クラスのメンバーが多いほど、沸点間の差はより小さくなる。沸点間の差をより小さくすることによって、溶媒除去をより継続的に行うことができ、それによって各段階で起こる体積収縮の程度を制限することができる。上記範囲内で互いに離れている沸点を各々が有する、有機溶媒の各クラスの4~5以上のメンバーが存在する場合(例えば、4種以上の炭化水素、4種以上のアルコール、4種以上のアミン、及び4種以上の有機酸;又は、5種以上の炭化水素、5種以上のアルコール、5種以上のアミン、5種以上の有機酸)、亀裂発生の程度の低減が生じる可能性がある。
【0052】
様々な実施形態において、金属ナノ粒子ペースト組成物中に使用される金属ナノ粒子は、約20nm以下のサイズとすることができる。他の様々な実施形態では、金属ナノ粒子は、少なくとも1つの寸法において、最大約75nmのサイズであってもよく、又は最大約200nmのサイズでさえあってもよい。上述したように、約20nm未満のサイズ範囲の金属ナノ粒子は、対応するバルク金属の融点よりも著しく低い融解温度を有し得、結果として互いに容易に圧密化される。一部の実施形態では、サイズが約20nm以下である金属ナノ粒子は、約220C以下の融解温度(例えば約140C~約220Cの範囲内の融解温度)又は約200C以下の融解温度を有することができ、これにより上記の利点を提供することができる。一部の実施形態では、金属ナノ粒子の少なくとも一部は、約10nm以下のサイズ、又は約5nm以下のサイズとすることができる。より具体的な実施形態では、金属ナノ粒子の少なくとも一部は、約1nmのサイズ~約20nmのサイズ、又は約1nmのサイズ~約10nmのサイズ、又は約1nmのサイズ~約5nmのサイズ、又は約3nmのサイズ~約7nmのサイズ、又は約5nmのサイズ~約20nmのサイズの範囲内とすることができる。一部の実施形態では、実質的に全ての金属ナノ粒子をこれらのサイズ範囲内に存在させることができる。一部の実施形態では、金属ナノ粒子ペースト組成物において、より大きな金属ナノ粒子を、約20nm以下のサイズの金属ナノ粒子と組み合わせることができる。例えば、一部の実施形態では、サイズが約1nm~約10nmの範囲内の金属ナノ粒子を、サイズが約25nm~約50nmの範囲内の金属ナノ粒子、又はサイズが約25nm~約100nmの範囲内の金属ナノ粒子、又はサイズが約25nm~約150nmの範囲内の金属ナノ粒子、又はサイズが約25nm~約200nmの範囲内の金属ナノ粒子と組み合わせることができる。以下で更に議論されるように、一部の実施形態において、ミクロンスケール金属粒子、他のミクロンスケール粒子、及び/又はナノスケール粒子も、金属ナノ粒子ペースト組成物中に含ませることができる。より大きな金属ナノ粒子及びミクロンスケール金属粒子は、それらのより小さな対応物の低温において液化可能でないかもしれないが、それでもなお、上記で概説したように、融解温度以上で液化されたより小さな金属ナノ粒子と接触すると圧密化されることができる。
【0053】
金属ナノ粒子及び有機溶媒のほかに、他の添加剤もまた、金属ナノ粒子ペースト組成物中に存在することができる。このような追加の添加剤としては、例えば、レオロジー制御助剤、増粘剤、ミクロンスケール伝導性添加剤、ナノスケール伝導性添加剤、及びこれらの任意の組合せを挙げることができる。化学添加剤もまた、存在することができる。以下に説明するように、ミクロンスケール金属粒子などのミクロンスケール伝導性添加剤を含めることは、特に有利であり得る。場合によっては、より効率的な熱伝達を促進し、CTEを調整するために、ナノスケール若しくはミクロンスケールのダイヤモンド又は他の熱伝導性添加剤を含むことが望ましい場合がある。適切なCTE調整剤は、特に明記しない限り、いずれも粒子又は繊維の形態であってもよく、炭素繊維、W粒子、Mo粒子、ダイヤモンド粒子、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化銅ナノ粒子(例えば、CuO及び/又はCuOを含有する約2nm~約200nmのサイズ)、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイトなどを挙げることができるが、これらに限定されない。前述のCTE調整剤のいずれも、少なくとも1つの寸法においてミクロンサイズであってもよい。
【0054】
一部の実施形態では、ペースト組成物は、約0.01重量%~約15重量%のミクロンスケール金属粒子、又は約1重量%~約10重量%のミクロンスケール金属粒子、又は約1重量%~約5重量%のミクロンスケール金属粒子、又は約0.1重量%~約35重量%のミクロンスケール金属粒子、又は約10重量%~約60重量%のミクロンスケール金属粒子、又は約25重量%~約55重量%のミクロンスケール金属粒子を含有することができる。金属ナノ粒子ペースト組成物中にミクロンスケール金属粒子を含めることにより、バルク金属を形成する際に金属ナノ粒子の圧密化中に生じる亀裂の発生率を望ましく低減することができる。いかなる理論又は機構にも束縛されるものではないが、金属ナノ粒子が液化され、ミクロンスケール金属粒子の表面上に一時的な液体コーティングを形成するので、ミクロンスケール金属粒子同士を圧密化することができると考えられる。一部の実施形態では、ミクロンスケール金属粒子は、少なくとも1つの寸法においてサイズが約500nm~約100ミクロン、又は少なくとも1つの寸法においてサイズが約500nm~約10ミクロン、又は少なくとも1つの寸法においてサイズが約100nm~約5ミクロン、又は少なくとも1つの寸法においてサイズが約100nm~約10ミクロン、又は少なくとも1つの寸法においてサイズが約100nm~約1ミクロン、又は少なくとも1つの寸法においてサイズが約1ミクロン~約10ミクロン、又は少なくとも1つの寸法においてサイズが約5ミクロン~約10ミクロン、又は少なくとも1つの寸法においてサイズが約1ミクロン~約100ミクロン、又は少なくとも1つの寸法においてサイズが約1ミクロン~約25ミクロン、又は少なくとも1つの寸法においてサイズが約1ミクロン~約5ミクロン、又は少なくとも1つの寸法においてサイズが約5ミクロン~約15ミクロンの範囲内とすることができる。ミクロンスケール金属粒子は、金属ナノ粒子と同じ金属を含有することができるし、又は異なる金属を含有することもできる。したがって、金属ナノ粒子の金属とは異なる金属を有するペースト組成物中にミクロンスケール金属粒子を含めることによって、金属合金を製造することができる。すなわち、金属複合材は、場合によっては金属合金を含んでもよい。金属合金はまた、異なる種類の金属ナノ粒子を互いに組み合わせることによって形成されてもよい。適切なミクロンスケール金属粒子としては、例えば、Cu粒子、Ni粒子、Al粒子、Fe粒子、Co粒子、Mo粒子、W粒子、Ag粒子、Zn粒子、Sn粒子、Au粒子、Pd粒子、Pt粒子、Ru粒子、Mn粒子、Cr粒子、Ti粒子、V粒子、Mg粒子又はCa粒子を挙げることができる。例えば、Siミクロンスケール粒子及びBミクロンスケール粒子などの非金属粒子を同様に使用することができる。一部の実施形態において、ミクロンスケール金属粒子は、例えば、高アスペクト比の銅フレークなどの金属フレークの形態とすることができる。したがって、一部の実施形態では、本明細書に記載される金属ナノ粒子ペースト組成物は、銅ナノ粒子と高アスペクト比銅フレーク又は別の種類のミクロンスケール銅粒子との混合物を含有することができる。具体的には、一部の実施形態では、金属ナノ粒子ペースト組成物は、約30重量%~約90重量%の銅ナノ粒子及び約0.01重量%~約15重量%又は1重量%~35重量%の高アスペクト比銅フレークを含有することができる。CTE調整剤は更に、金属ナノ粒子ペースト組成物中に存在してもよい。
【0055】
高アスペクト比金属フレークと同等に使用することができる他のミクロンスケール金属粒子としては、例えば、長さが約300ミクロン以下とすることができる、金属ナノワイヤ及び他の高アスペクト比粒子が挙げられる。金属ナノ粒子対金属ナノワイヤの比は、様々な実施形態によれば、約10:1~約40:1の範囲内であってもよい。適切なナノワイヤは、例えば、約5ミクロン~約50ミクロンの長さ、及び約100nm~約200nm又は約100nm~約250nmの直径を有してもよい。
【0056】
金属ナノ粒子ペースト組成物中に任意選択で存在することもできる追加の物質としては、例えば、難燃剤、UV保護剤、酸化防止剤、カーボンブラック、グラファイト、繊維材料(例えば、チョップド炭素繊維材料)、ダイヤモンドなどが挙げられる。
【0057】
一部のより具体的な実施形態において、適切なナノ粒子ペースト組成物は、ダイヤモンド粒子又はナノダイヤモンド粒子を含んでもよい。ダイヤモンド粒子は、金属ナノ粒子ペースト組成物の分散性が損なわれないように十分に小さいままでありつつも、熱伝達中にフォノンによって横切られる必要がある粒界を制限するために可能な限り大きなサイズであってもよい。
【0058】
更により具体的な実施形態では、金属ナノ粒子ペースト組成物での使用に適したダイヤモンド粒子は、良好な粒子分散及び許容可能なペースト分散性を提供することができる、約1ミクロン~約1000ミクロン、又は約0.5ミクロン~約500ミクロン、又は約1ミクロン~約10ミクロン、又は約2ミクロン~約50ミクロン、又は50ミクロン~約150ミクロンの範囲内のサイズを有してもよい。約200ミクロン~約250ミクロンの範囲内又は約1ミクロン~約10ミクロンの範囲内のサイズを有するダイヤモンド粒子は、効果的な分散を提供することと、フォノン散乱を抑制するための最小化された粒界との間の良好な妥協案を代表することができる。ダイヤモンド粒子の他の適切なサイズ範囲は、約25ミクロン~約150ミクロン、又は約50ミクロン~約250ミクロン、又は約100ミクロン~約250ミクロン、又は約100ミクロン~約200ミクロン、又は約150ミクロン~約250ミクロン、又は約1ミクロン~約100ミクロン、又は約10ミクロン~約50ミクロン、又は約5ミクロン~約25ミクロンの範囲とすることができる。
【0059】
例示的な実施形態では、金属複合材は、モノリシック金属体を形成するために金属ナノ粒子圧密化が行われた後に、約10体積%~約75体積%のダイヤモンド粒子を含むことができる。他の伝導性粒子又はCTE調整剤は、同じ組成範囲で存在してもよい。一部の実施形態では、1種以上のCTE調整剤は、本明細書の開示における金属複合材の35重量%又は約60重量%で存在してもよい。
【0060】
銅ナノ粒子とダイヤモンド粒子の混合は、いくつかの理由で望ましい場合がある。銅は、ほとんどの他の金属と比較して低コストであり、ダイヤモンドと比較的良好にインピーダンス整合し、それ自体で高い熱伝導率を有する。一部の実施形態において、インピーダンス整合は、ダイヤモンド粒子上に金属炭化物の薄層(約10nm以下の厚さの単一原子層又は約50nm以下の厚さの単一原子層)を形成するために炭化物形成添加剤を含めることによって、更に改善することができる。適切な炭化物形成金属としては、例えば、Ti、Zr、Hf、Cr、Mo、W、V、Mn、Fe、及びこれらの任意の組合せを挙げ得る。このように、銅ナノ粒子とダイヤモンド粒子との組合せは、本開示の様々な実施形態において非常に効果的な熱伝達を提供することができる。様々な基板層間の電子通信を確立するために、銅はまた、高い電気伝導性をも提供する。利用される特定の組成物に応じて、例えば非導電性添加剤の量に起因して、電気伝導率は、約30~50%IACS、又は約35~60%IACS、又は約50~75%IACS、又は約55~90%IACS、又は約60~98%IACS(国際軟銅規格)であってもよい。
【0061】
本開示による使用に適したナノ粒子ペースト組成物は、本明細書で上述した金属ナノ粒子ペースト組成物のいずれかを使用して配合することができる。更に、一部の実施形態によれば、複数の金属が金属ナノ粒子ペースト組成物中に存在してもよい。一部の実施形態又は他の実施形態において、適切な金属ナノ粒子ペースト組成物は、金属ナノ粒子、他のナノサイズ粒子(すなわち、約200nm以下の寸法を有する粒子)、及び/又はミクロンスケール金属粒子などのミクロンスケール粒子の混合物を含むことができる。金属ナノ粒子ペースト組成物は、より具体的な実施形態によれば、銅ナノ粒子を含んでもよい。一部の実施形態では、銅ナノ粒子は、金属ナノ粒子ペースト組成物の主成分(>50重量%)であってもよい。
【0062】
様々なヒートスプレッダ及びヒートスプレッダを利用するプリント回路基板は、少なくとも部分的に、銅ナノ粒子及び銅ナノ粒子ペースト組成物から形成されてもよい。特に、銅ナノ粒子又は銅ナノ粒子ペースト組成物は、ヒートスプレッダの少なくとも表面部分を製造するために利用してもよい。例えば、CTE調整剤を含む銅ナノ粒子ペースト組成物を圧密化して、熱伝導体上に少なくとも部分的コーティングを形成してもよく、コーティングは、本明細書に記載される様々な機能を果たしてもよく、又は熱伝導体自体を形成するために、銅ナノ粒子ペースト組成物を圧密化してもよい。発熱部品内の一部のセラミック材料へのCTE整合を促進するための必要に応じて、ヒートスプレッダを画定する伝導体又は伝導体上のコーティングを形成するために、代替の金属ナノ粒子を利用してもよいことを理解されたい。したがって、以下に続く開示において銅又は銅ナノ粒子を利用するいずれかの実施形態は、別段の規定がない限り、用途特有の必要性に応じて代替の金属又は金属ナノ粒子を(任意選択で銅と組み合わせて)利用してもよいことを理解されたい。
【0063】
同様に、銅ナノ粒子ペースト組成物は、発熱部品と、少なくとも表面上に銅複合材を含有するヒートスプレッダとの間の接合層として塗布されてもよい。金属ナノ粒子の圧密化に続いて、得られたバルク金属は、発熱部品と(圧密化金属ナノ粒子からも形成された)ヒートスプレッダの表面との間にCTEが整合した接合界面を提供し得る。接合層は、一部の実施形態において、ヒートスプレッダの少なくとも1つの面上に全面的コーティング又は部分的なコーティングを形成してもよい。接合層は、一部の実施形態では、各層のCTEが異なる多層であってもよい。接合層は、ヒートスプレッダに冶金的接合されてもよいが、必ずしも発熱部品に接合されなくてもよい。いずれにしても、接合層は、発熱部品のCTEとヒートスプレッダのCTEとの中間のCTEを有し得る。同様の接合層が、ヒートスプレッダとヒートシンク又は同様の受熱構造との間に介在してもよく、ヒートスプレッダは、ヒートシンク又は同様の受熱構造に任意選択的に冶金的接合されてもよく、接合層は、ヒートスプレッダのCTEと、ヒートシンク又はヒートパイプなど同様の受熱構造のCTEとの中間にあるCTEを有し得る。
【0064】
本開示のヒートスプレッダは、熱源及びヒートシンクに接触するように構成された熱伝導体を含んでもよく、熱伝導体の少なくとも一部分は、発熱部品にCTE整合されている。特に、熱伝導体の少なくとも一部、熱伝導体上の全面的コーティング若しくは部分的コーティング、又は熱伝導体と発熱部品との間の界面材料(接合層)は、本明細書で更に説明されるように、CTE調整剤を含む銅複合材を含んでもよい。熱伝導体は、金属、金属合金、又は金属複合材を含み得るモノリシックブロックであってもよい。熱伝導体は、テーパが設けられたヒートスプレッダを画定してもよい。ヒートスプレッダのテーパリングは、その低温端部において熱を分散させ、この位置における単位面積当たりの熱負荷を低減し得る。様々なヒートスプレッダ構成が、図面を参照して以下に規定される。
【0065】
様々な実施形態において、銅複合材は、銅ナノ粒子とミクロンサイズ銅粒子及びCTE調整剤との圧密化、又はミクロンスケール銅粒子を含まない、銅ナノ粒子とCTE調整剤との圧密化によって形成されてもよい。銅ナノ粒子、ミクロンサイズ銅粒子(存在する場合)、及びCTE調整剤は、上記でより詳細に明示されているように、銅ナノ粒子ペースト組成物を規定し得る。銅ナノ粒子ペースト組成物を利用してヒートスプレッダの熱伝導体、ヒートスプレッダの熱伝導体上のコーティングを形成してもよく、又は銅ナノ粒子ペースト組成物をヒートスプレッダと発熱部品との間の接合界面材料として利用してもよい。適切な銅ナノ粒子ペースト組成物は、約30重量%~約60重量%の銅ナノ粒子と、約5重量%~約50重量%のミクロンサイズ銅粒子と、特定のCTEを目標とするのに有効な量のCTE調整剤とを含んでもよい。CTE調整剤は、約1重量%~約35重量%の範囲内、又は約4重量%~約8重量%の範囲内、又は約5重量%~約15重量%の範囲内、又は約10重量%~約20重量%の範囲内、又は更には約35重量%若しくは約60重量%の量で存在してもよい。2種、3種、4種、又は5種以上の異なるCTE調整剤など、1種以上のCTE調整剤が存在してもよい。ミクロンサイズ銅粒子は、一部の実施形態において除外されてもよい。
【0066】
適切なCTE調整剤としては、グラファイト/ピッチ系炭素繊維(例えば、10ミクロンの直径を有するもの)、W粒子、Mo粒子、ダイヤモンド粒子、窒化ホウ素粒子又は繊維、窒化アルミニウム粒子又は繊維、窒化ケイ素粒子又は繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト粉末など、及びこれらの任意の組合せが挙げられ得るが、これらに限定されない。特に明記しない限り、CTE調整剤は、粉末、粒子、繊維、フレークなどの1つ以上の形態であってもよい。CTE調整剤の量は、所望の程度のCTE整合を提供するように選択され得る。例えば、炭素系添加剤は、約16体積%で添加された場合、約2~3ppmの熱膨張を達成することができ、又は約9体積%で添加された場合、約7ppmの熱膨張を達成することができ、又は約11体積%で添加された場合、約6ppmの熱膨張を達成することができる。約45体積%のダイヤモンドの添加により、密度(82%)に応じて約5~6ppmの熱膨張を達成することができる。約37体積%の添加量及び93%の密度において、ダイヤモンドによって提供される熱膨張は、約6ppmであり得る。約50体積%を超えるダイヤモンド添加量では、熱膨張は約5ppm未満に低下する。
【0067】
CTE調整剤はまた、場合によっては、熱伝導率を著しく増加させることがある。例えば、カーボンナノチューブは、銅の熱伝導率を、バルク銅単独の場合の400W/m・Kの低値から約600W/m・Kまで増加させることがある。カーボンナノチューブを用いて達成可能な熱伝導率調整の程度は、カーボンナノチューブの長さに依存することがあり、より長いカーボンナノチューブでは、約600W/m・Kの熱伝導率値を超える。
【0068】
圧密化された銅ナノ粒子自体は、プロセス条件及び密度に依存して約7~12ppmの熱膨張を示す。密度が増加すると、熱膨張はバルク銅の熱膨張(17ppm)に近づく。約91%の密度では、熱膨張は約7~8ppmであり、約93%の密度では、熱膨張は約10~11ppmに増加する。約98%の密度では、熱膨張は約12ppmに達する。そのような高密度値であっても、熱膨張は依然としてバルク銅の値を下回り、これは、銅ナノ粒子圧密化後に存在するナノ細孔性に起因すると推定される。
【0069】
金属ナノ粒子(例えば、銅ナノ粒子)へのミクロンスケール金属粒子の添加により、熱膨張が増加して、特定の金属に応じて17ppm以上に達することができる。例えば、約23~24ppmのバルクCTEを有するAl粒子の添加は、得られる複合材のCTEをバルク銅のCTEを超える値に増加させることができる。約55%のミクロンスケール銅粉末の添加は、96%の密度で約14ppmの熱膨張をもたらす。
【0070】
本明細書に開示されるヒートスプレッダの熱伝導体は、金属、金属合金、又は金属複合材のモノリシックブロックを含んでもよい。熱伝導体が金属複合材を含む場合、金属複合材内の追加成分、例えば、CTE調整剤、ダイヤモンド粒子、又は高い熱伝導率を有する他の種類の粒子などは、熱伝導体のいずれの部分も追加成分を欠如しないように、熱伝導体全体にわたって分布させてもよい。すなわち、熱伝導体は、CTE調整剤などの追加成分が熱伝導体の一部内に存在しない組成不連続性を含まない。したがって、CTE調整剤などの追加成分は、熱伝導体内に濃度が均一に分布し得、又は連続勾配様式若しくは段階的勾配様式で濃度が変化し得る。熱伝導体は、発熱部品に接触する「高温」端から、ヒートシンク又は他の熱リザーバ、例えば、周囲大気、海洋環境、若しくは外部空間へのラジエータに熱を放散させるように構成された「低温」端まで、サイズが増加してもよい。追加成分の添加量は、本明細書に開示されるヒートスプレッダ構成において、高温端から低温端にかけて濃度を増加又は減少させてもよい。
【0071】
一部の実施形態では、ヒートスプレッダは、勾配様式又は段階的様式で漸進的なCTE変化を促進する多層界面を含んでもよい。多層界面の各層におけるCTE調整剤の量及び/又はCTE調整剤の組成は、各層間の所望の程度のCTE差を与えるように調整されてもよい。CTEの段階的又は勾配的変化は、発熱部品とヒートスプレッダとの間に、両者間の接合部においてより急激なCTE変化があった場合よりも、より少ない熱応力を提供し得る。2層、3層、4層、5層、6層、7層、8層、9層、又は10層など、任意の数の層が多層構造中に存在してもよい。各層は、厚さが約1ミクロン~約25ミクロン、又は厚さが約5ミクロン~約10ミクロンの範囲内であってもよい。CTEは、各層間で、約1ppm~約2.5ppm、又は約0.8ppm~約1.5ppm、又は約1ppm~約2ppm、又は約1.5ppm~約2.2ppmの範囲内の量で変化してもよい。例えば、CTEは、発熱部品(例えば、SiCを含有する)における4ppmからヒートスプレッダにおける17ppmまで、約6.0ppm、8.2ppm、10.5ppm、12.8ppm、及び15.0ppmの逐次的なCTEを有する5枚の層によって、又は約5ppm、6.1ppm、7.3ppm、8.7ppm、10.1ppm、11.5ppm、12ppm、13.7ppm、14.9ppm、及び16ppmの逐次的なCTEを有する10枚の層による段階的であってもよい。多層界面は、場合によっては、ヒートスプレッダの表面上に接合層として存在してもよい。
【0072】
本明細書に開示されるヒートスプレッダは、任意の指定された形状であってもよい。限定するものではないが、ヒートスプレッダは、円形、プリズム状、卵形、三角形、平坦、扁平型などであってもよい。ヒートスプレッダは、テーパ状であっても非テーパ状であってもよい。テーパ状である場合、ヒートスプレッダは、高温端から低温端に向かってサイズが増大してもよい。テーパリングは連続的であっても不連続的であってもよい。
【0073】
図3A図3Dは、本開示のヒートスプレッダの様々な構成の断面図を示す。図3Aにおいて、ヒートスプレッダ300は、熱伝導体310と、熱伝導体310上に連続的に配置されたコーティング312とを含む。コーティング312の少なくとも一部は、本明細書の開示によるCTE整合に適した金属複合材を含んでもよい。あるいは、熱伝導体は、本明細書の開示によるCTE整合に適した金属複合材を含んでもよいが、別個の金属複合材コーティングが存在しなくともよい。存在する場合、コーティング312は、必ずしも図3Aに示されるような連続コーティングである必要はない。図3Bは、コーティング312が熱伝導体310上で不連続であるヒートスプレッダ301の図を示す。図3Bに示される不連続コーティングを利用して、発熱部品(図示せず)への熱接続及び/又は接合を形成してもよい。不連続コーティングとして配置される場合、不連続コーティングは、発熱部品と熱伝導体302との間の空間の少なくとも一部の間に介在してもよい。金属ナノ粒子ペースト組成物は、発熱部品と熱伝導体302との間の空間に配置され、両者間に接合層を提供してもよい。
【0074】
本開示のヒートスプレッダは、より効果的な熱拡散を提供するためにテーパ状であってもよい。図3Cでは、ヒートスプレッダ302は、熱伝導体310の少なくとも一部の上に配置されたコーティング312を有する連続的にテーパが設けられた熱伝導体310を含み、図3Dでは、ヒートスプレッダ303は、熱伝導体310の少なくとも一部の上に配置されたコーティング312を有する不連続的にテーパが設けられた熱伝導体310を含む。ここでも、熱伝導体310と発熱部品との間にCTE調整剤を含む金属ナノ粒子ペースト組成物を圧密化させることにより、コーティング312を形成してもよく、こうして両者間に接合層を確立する。ヒートスプレッダ302及び303の両方において、表面314は、熱源(発熱部品)に接触してもよく、表面316は、ヒートシンク又は同様の受熱構造、例えば、ヒートパイプに接触又は熱連通してもよい(図3C及び図3Dには熱源及びヒートシンクは示されていない)。例えば、表面314は、過剰な熱を生成する電子部品に接触してもよい。
【0075】
CTE調整剤を含む金属ナノ粒子ペースト組成物を使用してヒートスプレッダの熱伝導体を形成する場合、金属ナノ粒子ペースト組成物を、適切な型又はダイに添加してもよく、次いで、銅ナノ粒子を圧密化して、CTE調整剤を含むモノリシック金属ブロックを形成してもよい。熱伝導体上にコーティングを形成するために、又は熱伝導性金属本体と発熱部品との間に接合層を形成するために、金属ナノ粒子ペースト組成物を熱伝導性金属本体に塗布してもよく、又は金属ナノ粒子ペースト組成物を熱伝導性金属本体と発熱部品との間に挟んでもよく、この段階で金属ナノ粒子ペースト組成物中の金属ナノ粒子を圧密化して、CTE調整剤を含有する銅複合材などの金属複合材を形成してもよい。金属ナノ粒子ペースト組成物を加工するための適切な条件としては、例えば、射出成形、ホットプレス、又は同様の堆積技術及び圧密化技術が挙げられ得る。金属ナノ粒子の局所加熱は、堆積及び圧密化プロセス中に行われてもよい。金属複合材を形成するための局所的な急速加熱は、例えば、非限定的実施形態では、レーザ又はXeランプを用いて行われてもよい。望ましくは、金属複合材を形成するための金属ナノ粒子融合は、不活性雰囲気の非存在下又は還元雰囲気の非存在下で、特に急速加熱が行われる場合に影響を受け得る。
【0076】
一部の構成では、複数の伝導性繊維がヒートスプレッダの一端から延伸してもよい。図4は、複数の伝導性繊維402が熱伝導体310の一端から延伸している例示的なヒートスプレッダ400の図を示す。そのように構成される場合、伝導性繊維402は、伝導された熱をヒートシンク又は同様の熱リザーバに放散するための大きな表面積を提供し得る。図4に示された構成では、熱伝導体310は、CTE調整剤を含有する金属複合材から形成され、その上に別個のコーティング(例えば、コーティング312)は存在しない。金属複合材は、上記でより詳細に説明したように、金属ナノ粒子の圧密化によって製造される。このように、伝導性繊維402は、熱伝導体310の形成中に、具体的には伝導体310の形状に形成された金属ナノ粒子ペースト組成物に伝導性繊維402を挿入し、次いで金属ナノ粒子を圧密化することによって、熱伝導体310に組み込まれてもよい。別法として、伝導性繊維402は、別個のコーティング(存在する場合)内の金属ナノ粒子の圧密化によってヒートスプレッダ400に接合されてもよいことを理解されたい。熱伝導体310(又はその上のコーティング)から延伸する伝導性繊維402以外は、ヒートスプレッダ400は、ヒートスプレッダ300~303(図3A図3D)と同様であり、それらを参照することによってより良く理解され得る。共通の参照符号を使用して、同様の構造及び機能を有する要素を示す。したがって、ヒートスプレッダ300~303のいずれも、ヒートスプレッダ400に関して説明したのと同様の方法で、伝導性繊維402を同様に組み込んでもよい。
【0077】
伝導性繊維402をヒートスプレッダ400に導入するために、未圧密化金属ナノ粒子ペースト組成物を、最初に熱伝導体310に塗布してもよく(又は熱伝導体310を形成するために使用してもよく)、次いで、伝導性繊維402を、未圧密化銅ナノ粒子ペースト組成物内に配置してもよい。銅ナノ粒子の圧密化に続いて、伝導性繊維402は、銅ナノ粒子ペースト組成物から形成されたバルク銅と分散CTE調整剤とのマトリックス中のヒートスプレッダ400にしっかりと固定されてもよい。
【0078】
適切な伝導性繊維としては、バルク銅の2倍以上の熱伝導率値(例えば、800~1100W/m・K又は550~1200W/m・K)を示し得るグラファイト繊維束を挙げ得るが、これに限定されない。他の適切な伝導性繊維としては、金属繊維(例えば、Al繊維又はCu繊維)、ダイヤモンド繊維、カーボンナノチューブ若しくはカーボンナノチューブ繊維、又はこれらの任意の組合せを挙げ得るが、これらに限定されない。適切な繊維長は、繊維の可撓性に応じて約2~8インチであってもよい。適切な繊維直径は、約5~50ミクロン、又は約5~10ミクロン、又は約5~20ミクロン、又は約30~50ミクロンであってもよい。繊維はまた、熱伝導体(又はその上のコーティング)から延伸する多孔性発泡体の形態であってもよく、その場合、空気又は液体などの冷却流体が、発泡体の細孔を通して、及び/又は繊維の上若しくは繊維の中を通過して過剰な熱を運び去ってもよい。
【0079】
プリント回路基板に関連付けられた発熱部品から熱を放散させるために、本明細書に開示されるヒートスプレッダを利用してもよい。発熱部品は、例えば、Si(CTE=2.6ppm)、SiC(CTE=4.2ppm)、GaN(CTE=5.6ppm)、又はAlN(CTE=4.5ppm)などのセラミックを含んでもよい。非限定的な例では、ヒートスプレッダのCTEは、発熱部品のCTEに約50%以内、又は約25%以内、又は約20%以内、又は約15%以内、又は約10%以内、又は約5%以内、又は約4%以内、又は約3%以内、又は約2%以内、又は約1%以内の公差内で一致してもよい。ヒートスプレッダの熱伝導体又はその上のコーティングは、室温で約2ppm~約6ppm、又は約3ppm~約7ppm、又は約5ppm~約10ppm、又は約10ppm~約15ppm、又は約15ppm~約25ppmの範囲内のCTE値を示してもよい。
【0080】
したがって、一部の実施形態では、本開示は、発熱部品及びヒートシンク又は同様の受熱構造にCTE整合され得るヒートスプレッダを採用する放熱システムを提供する。CTE整合は、非限定的な例では20%であってもよい。放熱システムは、熱伝導体を有するヒートスプレッダであって、熱伝導体の少なくとも一部又はその上のコーティングが、約3ppm~約7ppmの熱膨張係数(CTE)を熱伝導体が有するように、熱膨張係数(CTE)調整剤を含む銅複合材を含む、ヒートスプレッダと、熱伝導体の第1の表面と接触する発熱部品であって、約3ppm~約7ppmのCTEを有する、発熱部品と、熱伝導体の第2の表面と接触するヒートシンク又はヒートパイプと、を含んでもよく、ヒートシンク又はヒートパイプもまた、熱膨張係数調整剤を含む銅複合材から形成され、約3ppm~約7ppmのCTEを有する。任意選択で、ヒートスプレッダの熱伝導体は、前述のCTE整合を達成しながら、ヒートシンク又はヒートパイプに冶金的接合されてもよい。前述の特徴を有する放熱システムは、非限定的な例において、過剰な熱を生成するプリント回路基板及び他の電子部品と併用されてもよい。
【0081】
本開示のプリント回路基板は、電気絶縁性基板上に配置された又は電気絶縁性基板内に埋め込まれた発熱部品と、発熱部品に熱連通する少なくとも1つのヒートスプレッダとを含んでもよく、少なくとも1つのヒートスプレッダは、少なくとも発熱部品にCTE整合されている。少なくとも1つのヒートスプレッダは、発熱部品との直接的又は間接的な物理的接触及び接合を介して発熱部品と熱連通していてもよい。電気絶縁性基板はまた、熱絶縁性、例えば、FR4、又は熱伝導性、例えば、AlN若しくはSiNであってもよい。様々な例において、少なくとも1つのヒートスプレッダは、本開示のヒートスプレッダであり、その少なくとも一部は、金属ナノ粒子及びCTE調整剤から形成された金属複合材(例えば、CTE調整剤を含む銅複合材)を含む。少なくとも1つのヒートスプレッダは、熱伝導体を介して直接的に、熱伝導体上のコーティングを介して間接的に、又は発熱部品及びヒートスプレッダの少なくとも一部にCTE整合された銅複合材を含む接合層を介して間接的に、発熱部品に接合されてもよい。
【0082】
プリント回路基板はまた、本明細書では、SIP及びパッケージ化された電子機器など、同様の熱放散問題を有する代替構造をも同等に指すことを理解されたい。
【0083】
発熱部品は、電気絶縁性基板の上面上に配置されてもよく、又は電気絶縁性基板内の凹部内に埋め込まれてもよい。少なくとも1つのヒートスプレッダは、発熱部品の上面又は発熱部品の底面に接合されてもよく、1つ以上のヒートスプレッダは、発熱部品の側面に接合されてもよく、又はそれらの任意の組合せであってもよい。特定の構成が以下に提供される。
【0084】
図5は、ヒートスプレッダが発熱部品の上面に接合された図を示す。図示されるように、PCB 600は、電気絶縁性基板602と、その上の発熱部品604とを含む。ヒートスプレッダ606は、発熱部品604の上面に接合されている。ヒートスプレッダ606は、場合によっては、集積回路ハウジングに組み込まれてもよく、及び/又は集積回路ハウジングの一部であってもよい。図5には示されていないが、発熱部品604は、電気絶縁性基板602内に埋め込まれてもよく、ヒートスプレッダ606は、電気絶縁性基板602の表面上に載置されていてもよい。
【0085】
図6は、ヒートスプレッダが発熱部品の底面に接合された図を示す。この構成では、ヒートスプレッダ606は、PCB 700の電気絶縁性基板602内に画定されたビアを通って延伸し、発熱部品604の裏面に接触している。ビアは、ヒートスプレッダ606がビアを通って延伸するのに適するサイズであってもよい。ヒートスプレッダ606は、ビアを通過した後に横方向サイズが増大(テーパが増大)してもよい。図6には示されていないが、発熱部品604は、電気絶縁性基板602内に埋め込まれていてもよい。
【0086】
ヒートスプレッダはまた、図7に示されるように、発熱部品の上面及び底面に接合されてもよい。PCB 800において、ヒートスプレッダ606aは、発熱部品604の上面に接合され、ヒートスプレッダ606bは、電気絶縁性基板602を通って延伸し、発熱部品604の底面に接合されている。図7には示されていないが、発熱部品604は、電気絶縁性基板602内に埋め込まれていてもよい。
【0087】
図8は、複数のヒートスプレッダが発熱部品の側面に接合された図を示す。図8には、PCB 900の上面図が示されており、電気絶縁性基板602の上面上の発熱部品604及びヒートスプレッダ606を瞰視している。ヒートスプレッダ606は、発熱部品604の両側面に接合されている。2つのヒートスプレッダ606がPCB 900内の側面接合と共に示されているが、1つ又は3つ以上のヒートスプレッダ606が同様に接合されてもよいことが理解される。ヒートスプレッダ606の側面接合は、複数のPCB層への積層を容易にし得る。図示されていないが、上部ヒートスプレッダ及び下部ヒートスプレッダ(図5図7参照)もまた存在してもよいことを理解されたい。
【0088】
したがって、本開示のヒートスプレッダを組み込んでいるPCBは、様々な実施形態によれば、単層であっても、又は多層であってもよい。多層PCBは、ビア及び他の基板形体を画定するために一緒に積層される個々の層を含むことができる。
【0089】
様々な実施形態において、ヒートスプレッダと発熱部品との間の接合層は、銅を含んでもよく、銅ナノ粒子から形成されてもよく、より具体的には、発熱部品のCTEに一致するようにCTEを調整するのに適した他の添加剤を含有する銅ナノ粒子ペースト組成物から形成されてもよい。CTE調整剤は、炭素繊維、ダイヤモンド粒子、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、酸化銅ナノ粒子などを含んでもよい。分配及び取り扱いを容易にするために、他の添加剤が銅ナノ粒子ペースト組成物中に存在してもよい。接合層は、第2の銅複合材を含んでもよく、更にヒートスプレッダの銅複合材にも同様にCTE整合させてもよい。
【0090】
本明細書に開示される実施形態は、以下を含む。
【0091】
A.ヒートスプレッダ。ヒートスプレッダは、熱源及びヒートシンクに接触するように構成された熱伝導体を含み、熱伝導体の少なくとも一部又はその上のコーティングは、熱膨張係数(CTE)調整剤を含む銅複合材を含む。
【0092】
B.プリント回路基板であって、電気絶縁性基板上に配置された、又は電気絶縁性基板内に埋め込まれた発熱部品と、
発熱部品と熱連通する少なくとも1つのヒートスプレッダと、を含み、少なくとも1つのヒートスプレッダが、
熱伝導体であり、熱伝導体の少なくとも一部又はその上のコーティングが、熱膨張係数(CTE)調整剤を含む銅複合材を含む、熱伝導体を含む、プリント回路基板。
【0093】
C.放熱システム。放熱システムは、熱伝導体を有するヒートスプレッダであって、熱伝導体の少なくとも一部又はその上のコーティングが、約3ppm~約7ppmの熱膨張係数(CTE)を熱伝導体が有するように、熱膨張係数(CTE)調整剤を含む銅複合材を含む、ヒートスプレッダと、熱伝導体の第1の表面と接触する発熱部品であって、約3ppm~約7ppmのCTEを有する、発熱部品と、熱伝導体の第2の表面と接触するヒートシンク又はヒートパイプと、を含んでもよく、ヒートシンク又はヒートパイプもまた、熱膨張係数調整剤を含む銅複合材から形成され、約3ppm~約7ppmのCTEを有する。任意選択で、熱伝導体又はその上のコーティングは、発熱部品のCTEの約20%以内のCTEを有してもよい。任意選択で、熱伝導体又はその上のコーティングは、ヒートシンク又はヒートパイプのCTEの約20以内のCTEを有してもよい。任意選択で、熱伝導体又はその上のコーティングは、接合層を介して発熱部品及び/又はヒートシンク若しくはヒートパイプに冶金的接合されてもよい。
【0094】
実施形態A~Cの各々は、以下の追加要素の1つ以上を任意の組合せで有してもよい。
【0095】
要素1:銅複合材は、銅ナノ粒子とミクロンサイズ銅粒子及びCTE調整剤との圧密化によって形成される。
【0096】
要素1A:銅複合材は、銅ナノ粒子とCTE調整剤との圧密化によって形成される。
【0097】
要素2:銅複合材は、約2%~約30%の均一なナノ細孔性を有する。
【0098】
要素3:CTE調整剤は、炭素、W、Mo、ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、酸化銅ナノ粒子、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される粒子又は繊維を含む。
【0099】
要素4:ヒートスプレッダは、熱伝導体の少なくとも一部又はその上のコーティング(存在する場合)から延伸する複数の熱伝導性繊維を更に含む。
【0100】
要素5:熱伝導体は、CTE調整剤を含む銅複合材から全体的に形成される。
【0101】
要素6:CTE調整剤は、熱伝導体全体に分布している。
【0102】
要素7:熱伝導体はテーパ状である。
【0103】
要素8:CTE調整剤は、銅複合材中に段階的濃度分布又は勾配濃度分布で存在する。
【0104】
要素9:少なくとも1つのヒートスプレッダは、発熱部品にCTE整合された銅複合材を含む接合層を介して発熱部品に接合される。任意選択で、発熱部品のCTEと熱伝導体及び/又はその上のコーティングのCTEとは、約20%以下、又は約10%以下、又は5%以下だけ異なる。
【0105】
要素10:接合層の銅複合材は、約2%~約30%の均一なナノ細孔性を有する。
【0106】
要素11:発熱部品は、電気絶縁性基板の表面上に配置されるか、又は電気絶縁性基板の表面内に埋め込まれ、少なくとも1つのヒートスプレッダは、発熱部品の上面に接合され、1つ以上のヒートスプレッダは、発熱部品の側面に接合され、少なくとも1つのヒートスプレッダは、発熱部品の底面に接合され、少なくとも1つのヒートスプレッダは、電気絶縁性基板を通って延伸し、又はそれらの任意の組合せである。
【0107】
非限定的な例として、A~Cに適用可能な例示的な組合せとしては、限定されないが、1又は1A、及び2;1又は1A、及び3;1又は1A、及び4;1又は1A、及び5;1又は1A、及び6;1又は1A、及び7;1又は1A、及び8;2及び3;2及び4;2及び5;2及び6;2及び7;2及び8;3及び4;3及び5;3及び6;3及び7;3及び8;4及び5;4及び6;4及び7;4及び8;5及び6;5及び7;5及び8;6及び7;6及び8;並びに7及び8が挙げられる。B及びCに関して、前述のいずれかは、9、10又は11と更に組み合わせてもよい。B及びCに適用可能な更なる例示的な組合せとしては、9及び10;9及び11;10及び11;並びに9~11が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
本開示の実施形態のより良い理解を容易にするために、好ましい又は代表的な実施形態の以下の実施例が与えられる。決して、以下の実施例は、本発明の範囲を限定又は画定するために読まれるべきではない。
【0109】
実施例
実施例1.高さ11.7mm、幅0.5インチの中実円柱を製造するために、43%(v/v)の市販の乾燥グラファイト粉末、24%(v/v)の市販の乾燥銅粉末、及び33%(v/v)の銅ナノ粒子を含有する2.7mLの5.1g/ccm高密度ペーストを、しっかりと嵌合したグラファイトロッドで両端が閉じられた0.5インチの孔を有する高さ3インチ×幅2インチのグラファイトセルに入れた。次に、セルを油圧プレスに載置した。セルを250℃に加熱しながら、250psiの初期圧力を加えた。100℃で圧力を500psiに上昇させ、200℃で1000psiに上昇させ、250℃で1750psiに上昇させ、次いで、プロセス全体を通してこれを維持した。約15分後に目標ピーク温度に達し、更に75分間維持した。その後、熱を遮断し、セルを室温まで冷却し、部品を押し出した。円柱の重量は12.2gであり、密度は92%であった。
【0110】
実施例2.高さ6.8mm、幅0.5インチの中実円柱を製造するために、33%(v/v)の市販の乾燥BN粉末、33%(v/v)の市販の乾燥銅粉末、及び34%(v/v)の銅ナノ粒子を含有する1.6mLの4.9g/ccm高密度ペーストを、しっかりと嵌合したグラファイトロッドで両端が閉じられた0.5インチの孔を有する高さ3インチ×幅2インチのグラファイトセルに入れた。次に、セルを油圧プレスに載置した。セルを250℃に加熱中に、250psiの初期圧力を加えた。100℃で圧力を500psiに上昇させ、200℃で1000psiに上昇させ、235℃で1750psiに上昇させ、次いで、プロセス全体を通してこれを維持した。約10分後に目標ピーク温度に達し、更に45分間維持した。その後、熱を遮断し、セルを室温まで冷却し、部品を押し出した。円柱の重量は6.9gであり、密度は90%であった。
【0111】
実施例3.高さ15.6mm、幅0.5インチの中実円柱を製造するために、7%(v/v)の市販の乾燥ダイヤモンド粉末、23%(v/v)の市販の乾燥銅粉末、及び70%(v/v)の銅ナノ粒子を含有する2.9mLの4.3g/ccm高密度ペーストを、しっかりと嵌合したグラファイトロッドで両端が閉じられた0.5インチの孔を有する高さ3インチ×幅2インチのグラファイトセルに入れた。次に、セルを油圧プレスに載置した。セルを250℃に加熱中に、250psiの初期圧力を加えた。100℃で圧力を500psiに上昇させ、200℃で1400psiに上昇させ、235℃で1850psiに上昇させ、次いで、プロセス全体を通してこれを維持した。約15分後に目標ピーク温度に達し、更に85分間維持した。その後、熱を遮断し、セルを室温まで冷却し、部品を押し出した。円柱の重量は11.7gであり、密度は92%であった。
【0112】
実施例1~3について上述したのと同様の方法で追加の試料を作製した。金属複合材組成物及び種々の温度で金属複合材組成物から得られたCTE値を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
別段の指示がない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表す全ての数字は、全ての場合において「約(about)」という用語によって修飾されるものとして理解されたい。したがって、特段の記載がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明の実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低でも、そして特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、また通常の丸め技法を適用することによって解釈されることとする。
【0115】
本開示の特徴を組み込んだ1つ以上の例示的な実施形態が本明細書に提示される。明快にするために、本出願では、物理的な実装形態の全ての特徴が説明又は図示されているわけではない。本開示を組み込む物理的な実施形態の開発において、開発者の目標を達成するために、実装形態によりそして随時変動する、システム関連の制約、ビジネス関連の制約、政府関連の制約、及び他の制約の遵守など、多数の実装形態固有の決定がなされなければならないことを理解されたい。開発者の取組は多大な時間を必要とするかもしれないが、それでもなお、そのような取組は、当業者及び本開示の利益の享受者にとって日常的な業務であろう。
【0116】
したがって、本開示は、言及された目的及び利点並びにそれに固有の目的及び利点を達成するようにうまく適合される。本開示は、本明細書の教示の利益を享受する当業者にとって明らかな、異なるが等価な様式で修正及び実施されてもよいのであるから、上記で開示された特定の実施形態は、例示的なものにすぎない。更に、以下の特許請求の範囲に記載される以外に、本明細書に示される構成又は設計の詳細に対する限定は意図されていない。したがって、上記で開示された特定の例示的な実施形態は、変更、組み合わせ、又は修正されてもよく、全てのそのような変形形態は、本発明の範囲及び趣旨内にあると考えられることは明らかである。本明細書の開示は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素及び/又は本明細書に開示されている任意選択の要素がなくても適切に実施され得る。組成物及び方法は、様々な成分又は工程を「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、又は「含む(including)」という用語で記載されているが、組成物及び方法はまた、様々な成分及び工程「から本質的になる(consist essentially of)」又は「からなる(consist of)」こともできる。上記に開示された全ての数及び範囲は、ある程度の量だけ変化してもよい。下限及び上限を用いて数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内に入る任意の数及び含まれる任意範囲は、具体的に開示されている。特に、本明細書に開示される(「約a~約b(from about a to about b)」、又は同等に「およそaからbまで(from approximately a to b)」、又は同等に「およそa~b(from approximately a-b)」の形態の)値の全ての範囲は、値のより広い範囲内に包含される全ての数及び範囲を記載すると理解されたい。また、特許請求の範囲における用語は、特許権者によって明示的かつ明確に定義されない限り、それらの明白な通常の意味を有する。更に、特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」又は「an」は、それが導入する要素の1つ又は2つ以上を意味するものとして本明細書では定義される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートスプレッダであって、
熱源及びヒートシンクに接触するように構成された熱伝導体であり、前記熱伝導体の少なくとも一部又はその上のコーティングは、銅ナノ粒子及び熱膨張係数(CTE)調整剤を含む銅複合材を含む、熱伝導体を備えるヒートスプレッダ。
【請求項2】
前記銅複合材が、前記銅ナノ粒子と、ミクロンサイズ銅粒子及び前記CTE調整剤との圧密化によって形成される、請求項1に記載のヒートスプレッダ。
【請求項3】
前記銅複合材が、約2%~約30%の均一なナノ細孔性を有する、請求項1に記載のヒートスプレッダ。
【請求項4】
前記CTE調整剤が、炭素、W、Mo、ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、酸化銅ナノ粒子、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される粒子又は繊維を含む、請求項1に記載のヒートスプレッダ。
【請求項5】
前記熱伝導体の少なくとも一部から延伸する、又は存在する場合には、その上の前記コーティングから延伸する複数の熱伝導性繊維、
を更に備える、請求項1に記載のヒートスプレッダ。
【請求項6】
前記熱伝導体が、前記CTE調整剤を含む前記銅複合材から全体的に形成される、請求項1に記載のヒートスプレッダ。
【請求項7】
前記CTE調整剤が、前記熱伝導体の全体にわたって分布している、請求項6に記載のヒートスプレッダ。
【請求項8】
前記熱伝導体がテーパ状である、請求項1に記載のヒートスプレッダ。
【請求項9】
前記CTE調整剤が、段階的又は勾配濃度分布で前記銅複合材中に存在する、請求項1に記載のヒートスプレッダ。
【請求項10】
前記銅複合材が約3ppm~約7ppmのCTEを有する、請求項1に記載のヒートスプレッダ。
【請求項11】
プリント回路基板(PCB)であって、
電気絶縁性基板上に配置された、又は電気絶縁性基板内に埋め込まれた発熱部品と、
前記発熱部品と熱連通する少なくとも1つのヒートスプレッダと、を含み、前記少なくとも1つのヒートスプレッダが、
熱伝導体であり、前記熱伝導体の少なくとも一部又はその上のコーティングが、銅ナノ粒子及び熱膨張係数(CTE)調整剤を含む銅複合材を含む、熱伝導体、を含む、プリント回路基板(PCB)。
【請求項12】
前記銅複合材が、前記銅ナノ粒子とミクロンサイズ銅粒子及び前記CTE調整剤との圧密化によって形成される、請求項11に記載のPCB。
【請求項13】
前記銅複合材が、約2%~約30%の均一なナノ細孔性を有する、請求項11に記載のPCB。
【請求項14】
前記少なくとも1つのヒートスプレッダが、前記発熱部品にCTE整合された第2の銅複合材を含む接合層を介して前記発熱部品に接合されている、請求項11に記載のPCB。
【請求項15】
前記接合層の前記第2の銅複合材が、約2%~約30%の均一なナノ細孔性を有する、請求項14に記載のPCB。
【請求項16】
前記CTE調整剤が、炭素、W、Mo、ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、酸化銅ナノ粒子、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される粒子又は繊維を含む、請求項11に記載のPCB。
【請求項17】
前記熱伝導体が、前記CTE調整剤を含む前記銅複合材から全体的に形成される、請求項11に記載のPCB。
【請求項18】
前記CTE調整剤が、前記熱伝導体全体にわたって分布している、請求項17に記載のPCB。
【請求項19】
前記熱伝導体がテーパ状である、請求項11に記載のPCB。
【請求項20】
請求項11に記載のPCBであって、前記発熱部品が、前記電気絶縁性基板の表面上に配置されるか、又は電気絶縁性基板の表面内に埋め込まれ、かつ:
前記少なくとも1つのヒートスプレッダが、前記発熱部品の上面に接合され、
前記少なくとも1つのヒートスプレッダが、前記発熱部品の側面に接合され、
前記少なくとも1つのヒートスプレッダが、前記発熱部品の底面に接合され、前記少なくとも1つのヒートスプレッダが、前記電気絶縁性基板を通って延伸している、
又はそれらの任意の組合せである、PCB。
【請求項21】
前記CTE調整剤が、段階的又は勾配濃度分布で前記銅複合材中に存在する、請求項11に記載のPCB。
【請求項22】
前記銅複合材が約3ppm~約7ppmのCTEを有する、請求項11に記載のPCB。
【請求項23】
放熱システムであって、
熱伝導体を有するヒートスプレッダであり、前記熱伝導体の少なくとも一部又はその上のコーティングは、前記熱伝導体が約3ppm~約7ppmの熱膨張係数(CTE)を有するように、熱膨張係数(CTE)調整剤を含む銅複合材を含む、ヒートスプレッダと、
前記熱伝導体の第1の表面と接触する発熱部品であり、約3ppm~約7ppmのCTEを有する前記発熱部品と、
前記熱伝導体の第2の表面に接触するヒートシンク又はヒートパイプと、を備え、前記ヒートシンク又は前記ヒートパイプもまた、前記熱膨張係数調整剤を含む前記銅複合材から形成され、約3ppm~約7ppmのCTEを有する、放熱システム。
【請求項24】
前記熱伝導体又はその上の前記コーティングが、接合層を介して前記ヒートシンク又は前記ヒートパイプに冶金的接合される、請求項23に記載の放熱システム。
【請求項25】
前記熱伝導体又はその上の前記コーティングが、前記発熱部品の約±20%以内のCTEを有する、請求項23に記載の放熱システム。
【国際調査報告】