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特表2024-546522HFO噴射剤のためのヘアスプレー製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-25
(54)【発明の名称】HFO噴射剤のためのヘアスプレー製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/04 20060101AFI20241218BHJP
   A61K 8/69 20060101ALI20241218BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20241218BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20241218BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20241218BHJP
   C09K 3/30 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
A61K8/04
A61K8/69
A61K8/41
A61K8/81
A61Q5/06
C09K3/30 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534204
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 US2022081676
(87)【国際公開番号】W WO2023114920
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/290,132
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/080,312
(32)【優先日】2022-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】スミス、グレゴリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】アンザローネ、アンソニー エム.
(72)【発明者】
【氏名】セティアワン、バリー
(72)【発明者】
【氏名】ハルス、ライアン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リン、ユー キョン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC541
4C083AC542
4C083AC811
4C083AC812
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD241
4C083BB41
4C083BB49
4C083CC32
4C083DD08
4C083DD23
4C083DD28
4C083DD39
4C083EE01
4C083EE09
4C083FF06
(57)【要約】
本開示は、フルオロオレフィン、アミン中和剤、固定剤ポリマー、及び溶媒を含む製剤を提供する。製剤は、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))であってもよく、アミン中和剤は、トリエタノールアミン(TEA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、又はそれらの混合物であってもよい。製剤は、ヘアスプレーなどのパーソナルケア製品としての使用に好適であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式のフルオロオレフィンであって、
【化1】

式中、Rは、水素又はフッ素であり、
は、水素又はフッ素であり、
は、水素又はフッ素である、フルオロオレフィンと、
溶媒と、
アミン中和剤と、
固定剤ポリマーと、を含む、製剤。
【請求項2】
前記フルオロオレフィンが、二酸化炭素(CO)当量で測定されるとき、10以下のGWPを有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記フルオロオレフィンが、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記溶媒が、エタノールを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記アミン中和剤が、イオン選択性電極によるフッ化物の検出によって決定されるとき、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))に対して非反応性であるアミンを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
前記アミン中和剤が、第三級アミンを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
前記アミン中和剤が、トリエタノールアミン(TEA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
1つ以上の共噴射剤及び1つ以上の共溶媒のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
潤滑剤、安定剤、腐食防止剤、香料、デンプン、及び性能調整剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤を更に含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
前記固定剤ポリマーが、アクリレート-オクチルアクリルアミドコポリマー、酢酸ビニル-クロトネート-ビニルネオデカノエートコポリマー、及びオクチルアクリルアミド-アクリレート-ブチルアミノエチル-メタクリレートコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
前記フルオロオレフィンが、前記製剤の総重量に基づいて10重量%~90重量%の量で前記製剤中に存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
前記溶媒が、前記製剤の総重量に基づいて10重量%~90重量%の量で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項13】
前記アミン中和剤が、前記製剤の総重量に基づいて0.2重量%~1.5重量%の量で前記製剤中に存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
前記固定剤ポリマーが、前記製剤の総重量に基づいて1重量%~15重量%の量で前記製剤中に存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項15】
請求項1に記載の製剤を含む、パーソナルケア製剤。
【請求項16】
前記製剤がエアロゾルである、請求項15に記載のパーソナルケア製剤。
【請求項17】
前記製剤がヘアスプレーである、請求項15に記載のパーソナルケア製剤。
【請求項18】
請求項17に記載の製剤を毛髪に適用することを含む、方法。
【請求項19】
前記製剤が、密封容器中で50℃にて3ヶ月間前記製剤を保存した後、イオン選択性電極によって測定したときに300ppm未満のフッ化物を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項20】
請求項1に記載の製剤を調製する方法であって、
前記ポリマーを前記溶媒と接触させることと、
前記アミン中和剤を添加することと、
前記噴射剤を添加することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年12月16日に出願された米国特許仮出願第63/290,132号に対する利益を主張する、2022年12月13日に出願された米国特許出願第18/080,312号に対する優先権を主張するものであり、これらは両方とも、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、特にヘアトリートメント製剤を含む化粧品製剤、及び環境に優しく安定なこのような製剤を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヘアトリートメント製剤、特にヘアスプレーは、現在広く使用されており、通常、毛髪に所望の特性を付与する目的で含まれる1つ以上の予め形成されたポリマー材料(樹脂と呼ばれることもある)を含有する製剤である。例えば、ポリマーは、毛髪に光沢を与え、毛髪をスタイリングし、ヘアスタイルを維持し、毛髪に所望の質感又は感触を与え、毛髪の色を向上させ、毛髪をコンディショニングし、毛髪を乾燥させて素早くセットし、毛髪を真っ直ぐにし又は滑らかにし、毛髪を軟化させ、毛髪を強化し、扱いにくい毛髪を扱いやすくし、光学的特性を向上させ、毛髪に保持力を提供し、縮れを制御し、及び/又は損傷した毛髪を修復するために使用され得る。ポリマーは、毛髪に「保持力」を提供する、すなわち、毛髪を所望のスタイル又は形状に維持するのを助ける働きをする固定成分であり得る。このようなポリマーは、通常、噴射剤などの1つ以上の他の成分と共に製剤中に含まれる。
【0004】
このようなヘアトリートメント製剤中の噴射剤は、ポリマー成分を微細に分散したスプレーで毛髪に適用することを可能にし、毛髪に適用されると、ポリマー成分は毛髪に関連するその意図された機能を果たす。例えば、固定剤を含むヘアスプレーは、毛髪が所望の形状を保持するように、ある程度の剛性を加える傾向がある。
【0005】
これまで、環境に放出されたときに1つ以上の有害な影響を有する噴射剤を使用することが一般的に行われてきた。例えば、以前及び現在使用されている噴射剤の多くは、高い地球温暖化係数(GWP)を有し、揮発性有機化合物(VOC)である。これらの特性を有する化合物が地球の大気及び/又は環境に悪影響を及ぼすことは定着している。その結果、商業的にも政府によっても、噴射剤としての用途を含む多くの用途におけるこのような材料の使用を低減しようとする動きがあった。
【0006】
いくつかの化合物及び化合物のブレンドが、様々な用途における噴射剤としての使用のために提案されてきたが、環境性能を改善するために製剤中に新しい噴射剤を代用することは、ヘアトリートメント製剤の1つ以上の他の特性の低下をもたらし得るので、ヘアトリートメント製剤における使用のための噴射剤の選択は特に複雑である。例えば、特定の種類のヘアトリートメントポリマー及び製剤は、特定の環境的に有利な噴射剤に曝露されると、性能が劣化又は低下し得ることが見出されている。
【0007】
上記の改良が望まれている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、次式のフルオロオレフィンであって、
【0009】
【化1】

式中、Rは水素又はフッ素であり、Rは水素又はフッ素であり、Rは水素又はフッ素である、フルオロオレフィンと、溶媒と、アミン中和剤と、固定剤ポリマーと、を含む、製剤を提供する。フルオロオレフィンは、10以下、例えば、10以下、9以下、8以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、又は1以下の、二酸化炭素(CO)当量で測定される地球温暖化係数(GWP)を有してもよい。好適なフルオロオレフィンとしては、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))を挙げることができる。
【0010】
本開示は、本明細書で提供される製剤を含む、ヘアスプレーなどのパーソナルケア製品を更に提供する。本開示はまた、本明細書で提供される製剤を作製する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.定義
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明確に別様に規定されない限り、又は言及される文脈によってそうでないことが明確に示されない限り、複数形を含む。
【0012】
本明細書で使用される「約」という用語は、一般に、指定された値の10パーセントの相対差を示す。本明細書で使用される数値範囲は、特に開示されているか否かにかかわらず、その範囲内に包含されるあらゆる数及び数のサブセットを含むことを意味する。更に、これらの数値範囲は、その範囲内の任意の数又は数のサブセットを対象とする請求項を支持するものとして理解されることが意図されている。
【0013】
本明細書で使用される全ての百分率、部、割合及び比は、特に明記しない限り、示された製剤の合計の重量による。
【0014】
本発明の単数の特徴又は限定への全ての言及は、別段の指定がない限り、又は言及される文脈によってそうでないことが明確に示されない限り、対応する複数の特徴又は限定を含むものとし、逆もまた同様である。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「好ましい」又は「好ましくは」及び変形は、特定の状況下で特定の利益を提供する本発明の実施形態を指す。しかしながら、同じ又は他の状況下では、他の実施形態も好ましい場合がある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものでもない。
【0016】
本明細書中で使用される場合、用語「ホモポリマー」は、本質的に単一のモノマー構造のみから形成されるポリマーを含むことが意図される。
【0017】
本明細書中で使用される場合、用語「コポリマー」は、2つ以上のモノマー構造から形成されるポリマーを含むことが意図され、したがって、3つのモノマー構造から形成されるポリマー(ターポリマーとして知られる)などを含む。
【0018】
2.ヘアスプレー製剤
本開示の製剤は、ヘアスプレーなどのパーソナルケア製品における使用に好適であり得る。これらの製剤は、1つ以上の噴射剤と、1つ以上の固定剤ポリマーと、1つ以上の溶媒と、1つ以上のアミン中和剤と、を含んでもよい。アミン中和剤は、固定剤ポリマーの性能を改善し得る。しかしながら、アミン中和剤は、特に噴射剤がオレフィンを含む場合には、噴射剤と反応することができる。したがって、アミン中和剤と噴射剤との適切な組み合わせの選択は、多くの組み合わせが化学的に不安定であり得るので、困難である場合がある。本開示は、固定剤ポリマーの性能を維持しながら、アミン中和剤がオレフィンと顕著に反応しない安定な製剤を提供する。製剤の各成分を以下に更に詳細に説明する。
【0019】
3.噴射剤
エアロゾル噴射剤は、フルオロカーボン系化合物を含むことが多い。本業界では、代替案を提供し、かつ今日使用されているCFC、HCFC、及びHFCの環境により安全な代替品であると考えられる新たなフルオロカーボン系混合物が絶えず追求されている。オゾン層破壊係数が小さくかつ地球温暖化係数が小さい、ハイドロフルオロカーボン、フルオロオレフィン、ヨウ化物含有化合物、及び他のフッ素化化合物を含む混合物が特に関心がある。
【0020】
本開示は、例えば1,2-ジフルオロエタン(HFC-152a)などのエアロゾル化製剤において現在使用されているものよりも低い地球温暖化係数(GWP)を有する噴射剤を含む製剤を提供する。GWPは、様々な気体の地球温暖化への影響を比較することを可能にするために開発された。具体的には、ある気体の1トンの排出が、二酸化炭素の1トンの排出に対して相対的に、所与の期間にわたってどのくらいのエネルギーを吸収するかの尺度である。GWPが大きいほど、所与の気体は、COと比較して、同じ期間にわたって地球をより一層温めることになる。GWPに使用される期間は、100年である。GWPは、アナリストが異なる気体の放出推定値を合計することを可能にする、一般的な尺度を提供する。1,2-ジフルオロエタン(HFC-152a)は、例えば、138のGWPを有する。
【0021】
比較として、本開示の製剤中に含まれるフルオロオレフィンは、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、又は1以下の、二酸化炭素当量で測定される地球温暖化係数(GWP)を有する。
【0022】
本開示の製剤は、以下に示す式Iのフルオロオレフィンを含んでよく、
【0023】
【化2】

式中、Rは水素又はフッ素であり、Rは水素又はフッ素であり、Rは水素又はフッ素である。
【0024】
本開示の製剤において使用するための特定のフルオロオレフィンとしては、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))を挙げることができる。
【0025】
フルオロオレフィンは、製剤の総重量に基づいて、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以下、約50重量%以下、約55重量%以下、約60重量%以下、約65重量%以下、約70重量%以下、約75重量%以下、約80重量%以下、約85重量%以下、約90重量%以下、又はこれらの端点を包含する任意の値の量で、製剤中に存在し得る。
【0026】
本開示の製剤は、共噴射剤を更に含んでもよい。好適な共噴射剤としては、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、ジメチルエーテル、炭化水素、例えば、プロパン、イソブタン、及びn-ブタン、並びに圧縮ガス、例えば窒素、空気、及び二酸化炭素等を挙げることができる。
【0027】
4.固定剤ポリマー
本開示の製剤は、製剤の特定の必要性又は標的特性に従って、広範囲にわたって変化し得る。例えば、製剤は、パーソナルケア製剤、例えば、固定剤ポリマーが約4重量%~8重量%の量で存在し得るヘアスプレー、又は固定剤ポリマーが約1重量%~2重量%の量で存在し得るテクスチャリングスプレーにおいて使用され得る。したがって、本開示の製剤は、ヘアトリートメントに好適な固定剤ポリマーを含んでもよい。
【0028】
本開示の製剤における使用に好適な固定剤ポリマーは、コポリマーを含んでもよい。コポリマーは、例えばアクリレート-オクチルアクリルアミドコポリマーなどの2成分コポリマーを含んでもよい。コポリマーは、例えば酢酸ビニル-クロトネート-ビニルネオデカノエートコポリマーなどの3成分コポリマーを含んでもよい。コポリマーは、例えばオクチルアクリルアミド-アクリレート-ブチルアミノエチル-メタクリレートコポリマーなどの4成分コポリマーを含んでもよい。
【0029】
固定剤ポリマーは、その酸価によって説明され得る。ポリマーの酸価は、例えば、ASTM D974に記載されているように、1グラムのポリマーを中和するのに必要な水酸化カリウム(KOH)のミリグラム単位の質量として定義される。本開示の製剤に好適な固定剤ポリマーは、2.05meq/gの酸価を有する。
【0030】
固定剤ポリマーは、製剤の総重量に基づいて、1重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約5重量%以上、約7重量%以上、約10重量%以下、約12重量%以下、約15重量%以下、約17重量%以下、約20重量%以下、又はこれらの端点によって包含される任意の値の量で、製剤中に存在し得る。
【0031】
5.アミン中和剤
上述したように、多くのヘアスプレー製剤は、毛髪上のポリマーに性能属性を付与するためにアミン中和剤を使用する。しかしながら、アミンは、本開示の製剤において使用される低GWP噴射剤であるトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))などのオレフィンと容易に反応し得る。
【0032】
広く使用されている中和剤の1つは、アミノメチルプロパノール(AMP)であり、固定剤ポリマーに良好な性能特性を更に付与する第一級アミンである。しかしながら、以下に更に記載されるように、AMPは、別の広く使用されているアミン中和剤であるモノイソプロパノールアミン(MIPA)と同様に、低GWP噴射剤のトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))と反応することが見出された。
【0033】
アミンとオレフィンとの反応性は、第一級アミンが使用される場合、窒素原子における立体障害の欠如のために、より起こり得る。対照的に、立体的に障害される第三級アミンは、オレフィンとの反応性が低いと予想される。しかしながら、第三級アミンがヘアスプレー用製剤中で使用される場合、毛髪上での固定剤ポリマーの性能はしばしば許容できない。理論に束縛されるものではないが、第三級アミンは、固定剤ポリマーの性能に悪影響を及ぼす可能性があると考えられる。
【0034】
驚くべきことに、2種の第三級アミンであるトリエタノールアミン(TEA)及びトリイソプロパノールアミン(TIPA)は、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンに対する安定性と、固定剤ポリマーに良好な性能を付与する能力の両方に関して良好に機能することが見出された。
【0035】
本開示の製剤は、製剤の総重量に基づいて、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.5重量%以上、約1.0重量%以上、約1.2重量%以下、約1.5重量%以下、約2.0重量%以下、又はこれらの端点によって包含される任意の値の量のアミン中和剤を含み得る。
【0036】
混合物の安定性を加速老化試験によって試験した。製剤を密封容器中、50℃で3ヶ月間保存した。3ヶ月の老化期間の後、製剤を試験し、イオン選択性電極を用いて存在するフッ化物の量を求めた。存在するフッ化物の量が300ppm未満である場合、製剤は安定であるとみなされた。例えば、安定な製剤は、300ppm以下、250ppm以下、225ppm以下、200ppm以下、150ppm以下、100ppm以下、50ppm以下、10ppm以下、又は5ppm以下の量でフッ化物を含んでいた。
【0037】
3ヶ月の待機期間の後、沈殿物の存在の有無を決定するために、製剤も観察した。目視検査で沈殿物が存在しない場合、製剤は安定であるとみなされた。
【0038】
6.溶媒
本開示の製剤は、1つ以上の溶媒を含んでもよい。好適な溶媒としては、水及び低分子量アルコール、例えばエタノール及びイソプロパノール等を挙げることができる。
【0039】
溶媒は、製剤の総重量に基づいて、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上、約50重量%以下、約55重量%以下、約60重量%以下、約65重量%以下、約70重量%以下、約75重量%以下、約80重量%以下、約85重量%以下、約90重量%以下、又はこれらの端点を包含する任意の値の量で、製剤中に存在し得る。
【0040】
本開示の製剤における使用に好適な共溶媒としては、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0041】
共溶媒は、製剤の総重量に基づいて、0重量%以上、約1重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約20重量%以上、約30重量%以上、約40重量%以上、約50重量%以上、約60重量%以上、約70重量%以上、約80重量%以上、約90重量%以上、約95重量%以上、約99重量%以上、又はこれらの端点を包含する任意の値の量で、製剤中に存在し得る。
【0042】
7.添加剤
本開示の製剤は、添加剤を更に含んでもよい。添加剤は、潤滑剤、安定剤、腐食防止剤、香料、デンプン、及び性能調整剤の各々の1つ以上を含んでもよい。好適な性能調整剤としては、例えばシリコーンを挙げることができる。
【0043】
8.製造方法
本開示の製剤は、最初に固定剤ポリマーを室温で撹拌しながら溶媒にゆっくりと添加することによって合成され得る。次いで、混合物を撹拌し続けながら、アミン中和剤及び所望の添加剤などの他の成分を添加する。最後に、噴射剤を添加して製剤を完成させる。
【0044】
9.使用方法
本開示の製剤は、パーソナルケア製品としての使用に好適であり得る。一態様では、パーソナルケア製品はヘアトリートメント製品であってもよい。このように使用される場合、製剤は、スタイリング性、ボリューム、光沢、毛髪の扱いやすさ、スタイルの耐久性、柔軟性、スタイリングの容易さ、縮れ防止、毛髪繊維の整列、優れたウェットコンディショニング、ドライコンディショニング、ウェットコーミング、スタイリング器具での使用の容易さ、又はスタイリング器具からの毛髪保護などの所望の特性を付与するために毛髪に適用され得る。一態様では、本開示の製剤は、ヘアスプレーとして使用され得る。これらの製剤の有効性は、カール保持性、剛性、櫛通り性、感触、及び洗浄性を評価することによって決定することができる。
【0045】
以下の非限定的な実施例は、本開示を例示するのに役立つ。
【実施例
【0046】
実施例1:1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)及びトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))に対するアミンの反応性
4種類の異なるアミン中和剤(2種類の第一級と2種類の第三級)を、5重量%の量のオクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、50重量%の量の溶媒、及び45-x重量%の1234zeとx重量%のアミン中和剤(x=約1)と共に配合した。次にこの製剤を、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))の代わりに、現在の業界標準である1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)を含む製剤と並行して、安定性について試験した。
【0047】
以下の表1に示されるように、安定性及び性能は、噴射剤ごとに、及びアミンごとに著しく変化し得る。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例2:トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))に対するアミンの反応性
8種類の異なる中和剤を、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))に対するそれらの安定性について、イオン選択性電極によるフッ化物の検出及び沈殿物形成の目視観察によって、並びに安定性結果が好ましい場合には毛髪に対するそれらの性能について試験した。結果を以下の表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
トロメタミン及びNeutrol TEの安定性試験において、沈殿物は形成されなかったが、フッ化物レベルは、発明者らの経験における通常の沈殿物形成より高いレベルであったため、安定性は中間であるとみなされることがわかった。これらの例は両方とも、第一級アミンであるトロメタミンを試験する前に、試験した全ての第一級アミンが明らかに許容できない安定性を有し、逆に、第三級アミンであるNeutrol TEを試験する前に、全ての第三級アミンが明らかに許容できる安定性を有したが、これらの例は両方とも中間の安定性を有するという点で注目すべきである。
【0052】
態様
態様1は、次式のフルオロオレフィンであって、
【0053】
【化3】

式中、Rは水素又はフッ素であり、Rは水素又はフッ素であり、Rは水素又はフッ素である、フルオロオレフィンと、溶媒と、アミン中和剤と、固定剤ポリマーと、を含む、製剤である。
【0054】
態様2は、フルオロオレフィンが、二酸化炭素(CO)当量で測定されるとき、5以下のGWPを有する、態様1に記載の製剤である。
【0055】
態様3は、フルオロオレフィンが、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))を含む、態様1又は態様2のいずれかに記載の製剤である。
【0056】
態様4は、溶媒が、エタノールを含む、態様1~3のいずれか1つに記載の製剤である。
【0057】
態様5は、アミン中和剤が、イオン選択性電極によるフッ化物の検出によって決定されるとき、HFO-1234ze(E)に対して非反応性であるアミンを含む、態様1~4のいずれか1つに記載の製剤である。
【0058】
態様6は、アミン中和剤が、第三級アミンを含む、態様1~5のいずれか1つに記載の製剤である。
【0059】
態様7は、アミン中和剤が、トリエタノールアミン(TEA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、又はこれらの混合物を含む、態様1~6のいずれか1つに記載の製剤である。
【0060】
態様8は、1つ以上の共噴射剤及び1つ以上の共溶媒のうちの少なくとも1つを更に含む、態様1~7のいずれか1つに記載の製剤である。
【0061】
態様9は、潤滑剤、安定剤、腐食防止剤、香料、デンプン、及び性能調整剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤を更に含む、態様1~8のいずれか1つに記載の製剤である。
【0062】
態様10は、固定剤ポリマーが、アクリレート-オクチルアクリルアミドコポリマー、酢酸ビニル-クロトネート-ビニルネオデカノエートコポリマー、及びオクチルアクリルアミド-アクリレート-ブチルアミノエチル-メタクリレートコポリマーからなる群から選択される、態様1~9のいずれか1つに記載の製剤である。
【0063】
態様11は、フルオロオレフィンが、製剤の総重量に基づいて35重量%~45重量%の量で製剤中に存在する、態様1~10のいずれか1つに記載の製剤である。
【0064】
態様12は、溶媒が、製剤の総重量に基づいて45重量%~55重量%の量で存在する、態様1~11のいずれか1つに記載の製剤である。
【0065】
態様13は、アミン中和剤が、製剤の総重量に基づいて0.2重量%~1.5重量%の量で製剤中に存在する、態様1~12のいずれか1つに記載の製剤である。
【0066】
態様14は、固定剤ポリマーが、製剤の総重量に基づいて1重量%~15重量%の量で製剤中に存在する、態様1~13のいずれか1つに記載の製剤である。
【0067】
態様15は、態様1~14のいずれか1つに記載の製剤を含む、パーソナルケア製剤である。
【0068】
態様16は、製剤がエアロゾルである、態様15に記載のパーソナルケア製剤である。
【0069】
態様17は、製剤がヘアスプレーである、態様15又は態様16のいずれかに記載のパーソナルケア製剤である。
【0070】
態様18は、態様17に記載の製剤を毛髪に適用することを含む、方法である。
【0071】
態様19は、製剤が、密封容器中で50℃にて3ヶ月間製剤を保存した後、イオン選択性電極によって測定したときに300ppm未満のフッ化物を含む、態様1~16のいずれか1つに記載の製剤である。
【0072】
態様20は、ポリマーを溶媒と接触させることと、アミン中和剤を添加することと、
噴射剤を添加することと、を含む、態様1~17のいずれか1つに記載の製剤を調製する方法。
【0073】
態様21は、フルオロオレフィンが、製剤の総重量に基づいて10重量%~90重量%の量で製剤中に存在する、態様1~10のいずれか1つに記載の製剤である。
【0074】
態様22は、溶媒が、製剤の総重量に基づいて10重量%~90重量%の量で存在する、態様1~11のいずれか1つに記載の製剤である。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式のフルオロオレフィンであって、
【化1】

式中、Rは、水素又はフッ素であり、
は、水素又はフッ素であり、
は、水素又はフッ素である、フルオロオレフィンと、
溶媒と、
アミン中和剤と、
固定剤ポリマーと、を含む、製剤。
【請求項2】
前記フルオロオレフィンが、二酸化炭素(CO)当量で測定されるとき、10以下のGWPを有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記フルオロオレフィンが、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))を含む、請求項1に記載の製剤。
【国際調査報告】