(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-25
(54)【発明の名称】局所的な無電解ニッケルめっきを行うためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
C23C 18/31 20060101AFI20241218BHJP
C23C 18/36 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
C23C18/31 E
C23C18/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535726
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2022025594
(87)【国際公開番号】W WO2023126071
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】102021000033113
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】プランゼッティ,アリス
(72)【発明者】
【氏名】ベラッチ,ミケランジェロ
(72)【発明者】
【氏名】ロマネッリ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】プルチ,ジョバンニ
(72)【発明者】
【氏名】マッラ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ジェノバ,ヴィルジリオ
(72)【発明者】
【氏名】パリア,ローラ
【テーマコード(参考)】
4K022
【Fターム(参考)】
4K022AA02
4K022AA31
4K022AA41
4K022BA14
4K022BA35
4K022DA01
4K022DB17
(57)【要約】
【解決手段】 金属部品(1000)の一部分に無電解ニッケルめっきを行うためのシステム(100)は、金属部品(1000)の一部分とチャンバ(10)とが閉鎖容積部(V)を画定するよう、システム(100)の動作中に金属部品(1000)に固着的に結合されるチャンバ(10)を備える。チャンバ(10)は、容積部(V)内に少なくともめっき流体(52)を供給するための入口(11)と、容積部(V)からめっき流体(52)を排出するための出口(12)と、を有し、金属部品(1000)の当該部分がめっき流体(52)にさらされてめっきされるようになっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部品(1000)の一部分に無電解ニッケルめっきを行うためのシステム(100、200)であって、
-入口(11、21)及び出口(12、22)を有するチャンバ(10、20)であって、前記金属部品(1000)の前記部分と前記チャンバ(10、20)が共に閉鎖容積部(V)を画定するよう、前記金属部品(1000)に固着的に結合されるように構成されている、チャンバ(10、20)、を備え、
前記入口(11、21)は、少なくとも第1の流体(52)を前記容積部(V)に供給するように構成されており、
前記第1の流体はめっき流体(52)であり、前記金属部品(1000)の前記部分はめっきのために前記めっき流体(52)にさらされ、
前記出口(12、22)は、前記容積部(V)からの前記第1の流体(52)を排出するように構成されており、
前記第1の流体(52)は、連続的に供給及び排出される、システム(100、200)。
【請求項2】
前記チャンバ(10)は剛性であり、特にボウル又はジャーの形態をなしている、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記チャンバ(20)は可撓性であり、特にシート又はシェルの形態をなしている、請求項1に記載のシステム(200)。
【請求項4】
前記チャンバ(10)の少なくとも一部分は、ガラス又は金属又は金属合金で作られている、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記チャンバ(20)の少なくとも一部分は、少なくとも80℃の温度、好ましくは85℃~95℃の温度、より好ましくは88℃~92℃の温度に耐えることができるシリコーン又はフルオロエラストマー又はポリマーで作られている、請求項1に記載のシステム(200)。
【請求項6】
前記チャンバ(10、20)の少なくとも一部分は、透明又は半透明の材料で作られている、請求項1に記載のシステム(100、200)。
【請求項7】
前記チャンバ(10、20)を前記金属部品(1000)の前記一部分に固着的に結合するように構成された固着部材(15、25)、特に接着剤又は磁石又は重りを更に備える、請求項1に記載のシステム(100、200)。
【請求項8】
前記チャンバ(10、20)に取り付けられ、前記金属部品(1000)の前記一部分を取り囲むように構成された封止部材を更に備える、請求項1に記載のシステム(100、200)。
【請求項9】
前記入口(11)及び前記出口(12)に流体結合され、かつ、少なくとも前記第1の流体(52)を前記容積部(V)から再び前記容積部(V)へと再循環させるように構成された再循環回路(50)を更に備える、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記再循環回路(50)は、
-前記再循環回路(50)内の少なくとも前記めっき流体(52)を圧送するためのポンプ(51)と、
-前記めっき流体(52)を貯蔵するための少なくとも第1のタンク(62)と、を備える、請求項9に記載のシステム(100、200)。
【請求項11】
再循環回路(50)は、少なくとも1つの第2の流体(53、54)を前記容積部(V)から再び前記容積部(V)へと再循環させるように構成されており、
前記少なくとも1つの第2の流体は、アルカリ性流体(53)又は酸性流体(54)であり、
前記チャンバ(10)は、前記少なくとも1つの第2の流体(53、54)に対して耐性がある、請求項9に記載のシステム(100)。
【請求項12】
前記再循環回路(50)は、前記少なくとも1つの第2の流体(53、54)を貯蔵するための少なくとも第2のタンク(63、64)を更に備える、請求項11に記載のシステム(100、200)。
【請求項13】
金属部品(1000)の一部分に無電解ニッケルめっきを行うための方法であって、
B)閉鎖容積部(V)を画定するよう、前記金属部品(1000)の前記部分をチャンバ(10、20)で覆うステップ(320)と、
C)前記チャンバ(10、20)を前記金属部品(1000)に固着するステップ(330)と、
F)前記チャンバ(10、20)の入口を通して前記容積部(V)内にめっき流体(52)を供給するステップ(360)と、
G)前記チャンバ(10、20)の出口を通して前記容積部(V)から前記めっき流体(52)を排出するステップ(370)と、
H)前記金属部品(1000)から前記チャンバ(10、20)を取り外すステップ(380)と、を含み、
前記ステップFと前記ステップGは同時に実行される、方法。
【請求項14】
前記チャンバ(10、20)の入口を通して前記容積部(V)内に洗浄流体(53、54)を供給するステップD(340)と、前記チャンバ(10、20)の出口を通して前記容積部(V)から前記洗浄流体を排出するステップE(350)(53、54)と、を更に含み、
前記ステップD(340)及び前記ステップE(350)は、前記ステップF(360)の前に実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記金属部品(1000)の前記一部分を化学的及び/又は機械的処理で処理するステップA(310)を更に含み、
前記ステップA(310)は、前記ステップB(320)の前に実行され、
前記化学的及び/又は機械的処理は、金属部品(1000)の前記部分の洗浄を実現する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記金属部品(1000)の前記一部分を加熱するステップI(390)を更に含み、
ステップI(390)は、ステップF(360)の前又は間に開始し、ステップG(370)の間又は後に終了し、
ステップI(390)の間、前記金属部品(1000)の前記部分は、少なくとも80℃まで、好ましくは85℃~95℃まで、より好ましくは88℃~92℃まで加熱される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題は、局所的な無電解ニッケルめっきを行うためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、機械構成要素として使用される金属部品の腐食を提供するため及び/又は耐性を改善するために、金属部品はニッケルめっきプロセスにかけられる。一般に、ニッケルめっきプロセスは、金属部品上にニッケルの層を堆積させるプロセスである。
【0003】
このプロセスは、電気めっき技術を使用してもよいし、無電解であってもよい。典型的には、ニッケル電気めっきによれば、金属部品はカソードとして使用され、ニッケルアノードが浸漬された電解質溶液に浸漬される。電気が流れると、ニッケルアノードはニッケルイオンを形成し、ニッケルイオンはアノードから電解質溶液を通って移動し、カソード上、すなわち金属部品上に堆積する。一方、無電解ニッケルめっきは、電気の使用を伴わず、金属部品はめっき浴に浸漬され、ニッケルの堆積が化学反応によって行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、部品を液浴に浸漬することによるいくつかの金属部品のコーティングの修復は特に困難である。例えば、損傷又は摩耗した部分は部品全体のうちの小部分であり得、したがって、部品を液浴に浸漬することは容易でも有利でもない。場合によっては、金属部品、例えばインペラのブレードの損傷部分を分解することが不可能な場合であっても、部品全体を機械から取り外し、分解し、浸漬しなければならない。
【0005】
金属部品全体にニッケルめっきプロセスを施すことなく、金属部品の表面コーティングを局所的に修復できることが望ましい。特に、金属部品を除去又は分解することなく局所的に修復することが望ましい。
【0006】
一態様によれば、本明細書に開示される主題は、金属部品の一部分に無電解ニッケルめっきを行うためのシステムに関するものであり、チャンバは、金属部品の当該一部分とチャンバとが閉鎖容積部を画定するよう、金属部品に固着的に結合されるように、また、めっきが行われるよう少なくともめっき流体を受容、供給及び排出するように構成されている。
【0007】
別の態様によれば、本明細書に開示される主題は、金属部品の一部分に局所的な無電解ニッケルめっきを行うための方法に関するものであり、当該方法は、
-閉鎖容積部を画定するよう、金属部品の一部分をチャンバで覆うステップと、
-チャンバを金属部品に固着するステップと、
-チャンバの入口を通して容積部内にめっき流体を供給するステップと、
-チャンバの出口を通して容積部からめっき流体を排出するステップと、
-金属部品からチャンバを取り外すステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の開示される実施形態、及びそれに付随する利点の多くについて、添付図面に関連して考慮される場合、以下の発明を実施するための形態を参照することによってそれらがより良好に理解されるため、完全な理解が容易に得られるであろう。
【
図1】
図1は、局所的な無電解ニッケルめっきを行うためのシステムの一実施形態の簡略図を示す。
【
図2】
図2は、局所的な無電解ニッケルめっきを行うためのシステムの一実施形態の部分簡略図を示す。
【
図3】
図3は、局所的な無電解ニッケルめっきを行うための方法の一実施形態のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一態様によれば、本明細書に開示される主題は、電気を使用せずに金属部品の一部分にニッケルめっきの層を局所的に堆積させるためのシステムに関する。金属部品の当該一部分は、金属部品全体の表面部分であることが意図される。実際、チャンバは、部品全体又は部品の表面全体を取り囲まない。システムは、例えば接着剤又は磁石又は重りを用いて金属部品に固着することができる入口及び出口を有する、例えばジャー若しくはボウル若しくはシェル若しくは円筒形缶若しくはシートの形態、又は他の容器の形態のチャンバを有する。チャンバが金属部品に固着されると、チャンバは、有利には連続的な方法で、チャンバの入口を通して容積部に供給され、チャンバの出口を通して容積部から排出される1つ又は複数の流体を収容及び供給することができる閉鎖容積部を形成する。チャンバ壁は、一定の厚さ又は可変の厚さを有することができ、チャンバの高さは、金属部品に対して異なる点又はセグメントから変化することができる。容積部に供給される少なくとも第1の流体は、チャンバの下の金属部品の一部分(又は表面部分)と反応し、ニッケルの堆積層、すなわちニッケルめっきを局所的に形成するめっき流体である。少なくとも1つの実施形態では、金属部品及び/又はチャンバ及び/又はめっき流体は、少なくとも80℃まで、好ましくは85℃~95℃まで、より好ましくは88℃~92℃まで加熱される。
【0010】
別の態様によれば、本明細書に開示される主題は、金属部品の一部分にめっき流体を流すことによって、(電気を使用せずに)この部分にニッケルの層を局所的に堆積させる、すなわちニッケルめっきを局所的に形成する方法に関する。好ましくは、この操作に上述のシステムを使用することができる。有利には、操作中、金属部品及び/又はシステムのチャンバ及び/又はめっき流体は、少なくとも80℃まで、好ましくは85℃~95℃まで、より好ましくは88℃~92℃まで加熱される。
【0011】
次に、本開示の実施形態を詳述し、その例が図面に例示される。各例及び図面は、本開示の説明のために提供されたものであり、本開示の限定として解釈されるべきではない。実際には、本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、本開示に様々な修正及び変形を加えることができるということが、当業者には明らかであろう。以下の説明では、同様の参照番号が、同じ又は同様の機能を実行する要素を示すために実施形態の図の説明に使用される。更に、例示を明確にするために、いくつかの参照符号は、全ての図において繰り返されない場合がある。
【0012】
図1には、チャンバ10、例えば剛性チャンバ10を備える、全体として参照番号100で示される局所的な無電解ニッケルめっきを行うためのシステムの一実施形態の図が示されている。しかしながら、チャンバは、例えば
図2に示すように、可撓性チャンバ20であってもよいことに留意されたい。
図2において、局所的な無電解ニッケルめっきを行うためのシステムは、全体として参照番号200で示され、可撓性チャンバ20を備えている。以下から明らかになるように、システム100及び200は、その表面の一部分にニッケルめっきの堆積を行うために、金属部品1000の一部分に結合されるように構成される。
【0013】
図1を非限定的に参照すると、システム100は、入口11及び出口12を有するチャンバ10を備え、チャンバ10は、金属部品1000の一部分、特にチャンバ10の下にある部分とチャンバ10とが閉鎖容積部Vを画定するよう、金属部品1000に固着的に結合されるように構成されている。チャンバ10の容積部Vは、少なくとも第1の流体、いくつかの実施形態では、チャンバ10に次々に供給される異なる流体を収容するように構成されてもよい。
【0014】
入口11は、第1の流体を容積部Vに供給するように構成され、出口12は、容積部Vから第1の流体を排出するように構成される。有利には、入口11はチャンバ10の下側部分に(チャンバが動作状態にあるときは金属部品の当該部分の表面に対して)配置され、出口12はチャンバ10の上側部分に(チャンバが動作状態にあるときは金属部品の当該部分の表面に対して)配置される。以下から明らかになるように、容積部Vに供給される流体のタイプ及び量は変化し得るが、容積部Vには少なくともめっき流体52が供給される。具体的には、めっき浴で既に使用されている既知のめっき流体を使用して、チャンバ10の下の金属部品1000の当該部分にニッケルめっきの層を堆積させることができる。有利には、めっき流体52は、ニッケル及びリンを含有し、その結果、めっき流体52は、ニッケルに対して10~13重量%の範囲のリンの合金を生成し得る。例えば、めっき流体52は、21g/Lの硫酸ニッケル及び24g/Lの次亜リン酸ナトリウムを含有してもよい。有利には、めっき流体52は、4.3~4.6の範囲のpHを有する酸性溶液である。
【0015】
めっき流体52がチャンバ下の金属部品1000の当該部分と接触しているときに、化学反応が容積部V内で行われることに留意されたい。特に、化学反応が起こると、めっき流体52の内部に気泡が放出される。有利には、チャンバ10の少なくとも一部分は、透明又は半透明の材料で作製することができ、その結果、オペレータは、例えばめっき流体52中の気泡の放出を制御することによって、反応の進行をチェックする(特に視覚的に監視する)ことができる。
【0016】
図1に示すように、チャンバ10は、特にボウル又はジャーの形態で剛性であってもよい。本発明の目的のために、「剛性」という用語は、曲げたり形状を強制的に崩したりすることができないチャンバを指すために使用されることに留意されたい。例えば、チャンバ10の少なくとも一部分は、ガラス又は金属又は金属合金で作ることができる。いくつかの実施形態では、チャンバ10の一部分が金属部品自体であってもよいことに留意されたい。例えば、無電解ニッケルめっきが行われる部品がダクトの内部表面である場合、ダクトの端部を閉鎖し、第1の端部に入口を設け、第2の端部に出口を設けることによって、ダクト自体がチャンバとして機能してもよい。
図1を非限定的に参照すると、入口11及び出口12は、チャンバ10の側壁上に配置され、具体的には、ダクトを収容することができる小さな穴であり、ダクトは、好ましくは入口11及び出口12に封止される。
【0017】
先に示したように、チャンバ20は可撓性であってもよく、具体的には、
図2に示すように、金属部品1000の一部分の上に置かれたシート又はシェルの形態にあってもよい。本発明の目的のために、「可撓性」という用語は、曲げること又は破壊することなく容易に曲げることができるチャンバを指すために使用されることに留意されたい。例えば、チャンバ20の少なくとも一部分は、少なくとも80℃の温度、好ましくは85℃~95℃の温度、より好ましくは88℃~92℃の温度に耐える、シリコーン又はフルオロエラストマー、特に熱硬化性フルオロエラストマー(例えば、Viton(登録商標))、又は他のポリマー(1種又は複数種)で作られる。特に、速効性シリコーンスプレー又はViton(登録商標)ワイヤ又は他のポリマーを使用して、例えば金属部品1000の補修されるべき部分に応じて、チャンバ20の壁を構築することができる。有利なことに、これは、金属部品1000の補修されるべき部分の幾何学的形状に対するチャンバ20の完全な適合性を可能にする。特に、チャンバ20は、典型的にはアクセスするのが困難な縁部、ダクト、及び部分など、金属部品1000の多くの異なる形状、幾何学的形状、及び寸法に適合することができる。
図2を非限定的に参照すると、入口21及び出口22は、チャンバ20の側部に配置され、具体的には、ダクトを収容することができる小さな穴であり、ダクトは、好ましくは、入口21及び出口22に封止される。追加的にあるいは代替的に、入口21及び/又は出口22は、シリンジの針、例えば、プラスチック材料又はイノックス鋼で作られた針を収容してもよい。
【0018】
システム100又は200は、チャンバ10又は20を金属部品1000に固着的に結合するように構成された、例えば接着剤又は磁石又は重りなどの固着部材15又は25を更に備えることができる。チャンバが、例えば、
図1に示されるようなジャーの形態で剛性である場合、金属部品1000に結合されるジャーの開口部は、チャンバ10が金属部品1000に固着的に結合され得るように、縁部に沿って磁気ストリップを有し得る。なお、金属部品1000が平面的である場合、例えば平板の形態をなす場合、チャンバ10は金属部品1000上に載置され、重りによって金属部品1000に固着的に結合されてもよいことに留意されたい。例えば、チャンバが可撓性である場合、特に
図2に示されるようなシートの形態をなす場合、シートの縁部は、接着剤、特にアクリル又はエポキシ又はビニル接着剤を使用することによって金属部品1000に固着的に結合されてもよい。
【0019】
システム100又は200は、チャンバ10又は20に取り付けられ、金属部品1000の一部分を取り囲むように構成された封止部材を更に備えてもよい。
【0020】
既に述べたように、チャンバの容積部Vは、場合によっては次々にチャンバに供給される異なる流体を収容することができる。めっき流体52に加えて、容積部Vは、アルカリ性流体53(NaOH等)及び/又は酸性流体54(希釈HCl等)も受容するように構成されてもよい。有利には、チャンバは、これらの流体53及び/又は54に対して耐性がある。以下から明らかになるように、アルカリ性流体53及び/又は酸性流体54は、無電解ニッケルめっきで処理される金属部品の部分を準備するために、特に、アルカリ性流体53で表面を洗浄し、酸性流体54で表面を活性化するために使用され得る。有利には、容積部Vは、1つの流体と次の流体との間でチャンバを洗浄するために使用することができる水を受容及び排出するように更に構成されることができる。
【0021】
図1を非限定的に参照すると、システム100は、チャンバ10の入口11及び出口12に流体結合され、流体を容積部Vから再び容積部Vへと再循環させるように構成された再循環回路50を更に備えることができる。特に、再循環回路50は、再循環回路50内の流体をポンピングするための少なくとも1つのポンプ51と、流体を貯蔵するためのタンク62、63及び64と、を備える。例えば、再循環回路は、ポンプ51が配置され、入口11に流体結合された共通入口ダクトと、出口12に流体結合された共通出口ダクトと、を有することができる。異なる回路分岐は、異なる流体のタンク62、63、及び64がそれぞれ配置される入口ダクト及び出口ダクトに流体結合されてもよい。有利には、チャンバ10は、ポンプ51がチャンバの出口12から流体を吸引し、それをタンク62、63、及び64に戻すように、わずかな減圧下で動作する。これはまた、特に過圧下での動作と比較して、補修される金属部品1000の部分に対するチャンバ10のより良好な安定性及び接着性を可能にする。また、システム100は、異なる回路分岐に関連付けられ、回路分岐内の流体の通過を可能にする及び/又は可能にしない更なるタップ又は弁(図示せず)を備えてもよいことに留意されたい。換言すれば、各タンク62、63、及び64は、入口11に独立して流体結合され、特定の流体を貯蔵するように構成される。特に、各タンク62、63、64は、異なる流体を貯蔵するように構成される。
【0022】
有利には、再循環回路50は、微粒子フィルタ(図示せず)を更に備えることができる。微粒子フィルタは、プロセス中に流体52、53、54のうちの1つ以上の中に存在し得るか、あるいは生成され得る固体粒子を濾過してもよい。
【0023】
別の態様によれば、本明細書に開示される主題は、金属部品の一部分に無電解ニッケルめっきを行うための方法に関する。
図1~
図3を非限定的に参照すると、本方法は、
B)閉鎖容積部Vを画定するよう、金属部品1000の一部分をチャンバ10で覆うステップ(
図3のブロック320参照)と、
C)金属部品1000にチャンバ10を固着するステップ(
図3のブロック330を参照)と、
F)チャンバ10の入口を通して容積部V内にめっき流体52を供給するステップ(
図3のブロック360参照)と、
G)チャンバ10、20の出口を通して容積部Vからめっき流体52を排出するステップ(
図3のブロック370参照)と、
H)金属部品1000からチャンバ10を取り外すステップ(
図3のブロック380を参照)と、を含む。
【0024】
既に述べたように、金属部品は、例えば、金属部品の形状又は金属部品の被覆されるべき部分の位置に応じて、剛性又は可撓性チャンバで被覆されてもよい。例えば、ステップBが金属部品の角部で行われる場合、好ましくはシート又はシェルの形態をなす可撓性チャンバが使用されてもよい。
好ましくは、ステップCは、チャンバの固着部材、特に接着剤又は磁石又は重りによって行われる。
【0025】
なお、ステップF及びステップGは、1回行ってもよいし、複数回繰り返して行ってもよいことに留意されたい。有利には、ステップFとステップGは同時に実行され、その結果、めっき流体はチャンバの容積部Vに連続的に供給され、チャンバの容積部Vから連続的に排出される。
【0026】
図3を非限定的に参照すると、本方法は、チャンバの入口を通して容積部V内に洗浄流体を供給するステップD(
図3のブロック340を参照)と、チャンバの出口を通して容積部Vから洗浄流体を排出するステップE(
図3のブロック350を参照)と、を更に含むことができる。有利には、ステップD及びステップEは、めっき流体の供給の前に金属部品の当該部分を準備するために、例えば、当該部分の表面を洗浄及び/又は活性化するために、ステップFの前に実行される。
【0027】
なお、ステップD及びステップEは、1回行われてもよいし、複数回繰り返して行われてもよい。有利には、ステップDとステップEは同時に実行され、その結果、洗浄流体はチャンバの容積部Vに連続的に供給され、チャンバの容積部Vから連続的に排出される。また、場合によっては、ステップD及びステップEの繰り返しは、異なる洗浄流体を用いて行われる。例えば、ステップD及びステップEが行われる第1の時間は、アルカリ性流体を用いて行われてもよく、ステップD及びステップEが行われる第2の時間は、水を用いて行われてもよく、ステップD及びステップEが行われる第3の時間は、酸性流体を用いて行われてもよい。
【0028】
更に、ステップD、E、F、及びGは、連続的に、すなわち、チャンバを金属部品から取り外すことなく実行されてもよく、それにより、金属部品のうちの処理される部分は、方法の1つのステップと次のステップとの間で空気にさらされず、したがって、例えば欠陥を生じ得る当該部分の酸化が回避される。
【0029】
図3を非限定的に参照すると、本方法は、金属部品の当該部分を化学的及び/又は機械的処理で処理するステップA(
図3のブロック310を参照)を更に含んでもよい。具体的には、ステップAは、例えば、適切な溶媒又はアルカリ性洗剤を容積部V内に供給することによって、金属部品1000の当該部分の洗浄を実現し、脱脂が得られてもよい。あるいはグリットブラストを行うことによって洗浄を実現してもよい。典型的には、ステップAはステップBの前に実行される。
【0030】
図3を非限定的に参照すると、本方法は、金属部品の当該部分を加熱するステップI(
図3のブロック390を参照)を更に含んでもよい。具体的には、ステップIは、ステップFの前又は間に開始し、ステップGの間又は後に終了し、その結果、少なくともステップF及びGの間に、当該部分は少なくとも80℃まで、好ましくは85℃~95℃まで、より好ましくは88℃~92℃まで加熱される。金属部品の当該部分は、例えば、誘導によって、抵抗を使用して、赤外線ランプを使用して、あるいはオキシアセチレン炎を使用して加熱されてもよいことに留意されたい。特に火炎が使用される場合、熱は好ましくは、めっきされる金属部品の他方の側に加えられる。有利には、タンク62、63、64のうちの1つ以上、及び/又は流体52、53、54のうちの1つ以上、及び/又は再循環回路50も加熱され得る。
【0031】
加熱するステップI(
図3のブロック390を参照)は、概念的に3つのステップ、すなわち、加熱を開始する第1のステップ(
図3のブロック390-1を参照)と、特に金属部品の当該部分を所望の温度に維持するために加熱を維持する第2のステップ(
図3のブロック390-2を参照)と、加熱を停止するステップ(
図3のブロック390-3を参照)と、に分割され得ることにも留意されたい。
【国際調査報告】