(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】補強構造及びそれを操作する方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
E02D17/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576116
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2022081934
(87)【国際公開番号】W WO2023110260
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】102021133157.9
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506329971
【氏名又は名称】ライニシュ-ヴェストフェーリシェ・テヒニシェ・ホーホシューレ・(エルヴェーテーハー)・アーヘン・ケルパーシャフト・デス・エフェントリヒェン・レヒツ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】フェンテス グティエレス ラウル
(72)【発明者】
【氏名】デルクセン ヤン
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの補強要素(1)、好ましくは、特に斜めに交差する複数の補強要素(1)を含む、土壌領域、地面及び特に底土及び土塁構造を強化する補強構造に関する。前記少なくとも1つの補強要素(1)が少なくとも1つのアクチュエーター(2)を含み、当該アクチュエーターにより前記補強要素(1)の特性が変更可能である、特に少なくとも一時的に変更可能である。本発明はさらに、底土、特に土塁構造上の構造体と、補強構造を操作する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの補強要素(1)、好ましくは、特に斜めに交差する複数の補強要素(1)を含む、土壌領域、地面及び特に底土及び土塁構造を強化する補強構造であって、
前記少なくとも1つの補強要素(1)が少なくとも1つのアクチュエーター(2)を含み、当該アクチュエーターにより前記補強要素(1)の特性が変更可能である、特に少なくとも一時的に変更可能である補強構造。
【請求項2】
前記少なくとも1つの補強要素(1)が、部分的に配置される複数のアクチュエーター(4)を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の補強構造。
【請求項3】
複数の交差する補強要素(1)が、複数の格子セル(2)を含む格子を形成し、
少なくとも1つのセルリブ(3)、好ましくは前記格子セル(2)を画定する全ての前記セルリブ(3)のうちの複数のセルリブ(3)が、少なくとも1つのアクチュエーター(4)を含み、
特に前記アクチュエーターにより前記セルリブ(3)の特性が少なくとも一時的に変更可能である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の補強構造。
【請求項4】
前記補強要素(1)が、特にスクリム又は織物として、格子セル(2)を有さずに平坦に設計される、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の補強構造。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアクチュエーター(4)が、
a. 前記少なくとも1つの補強要素(1)に、特にセルリブ(3)に配置され、又は
b. 前記少なくとも1つの補強要素(1)の少なくとも小区域に代えて、特にセルリブ(3)に代えて形成され、特に同じ前記補強要素(1)の隣接する別個の領域が前記アクチュエーター(4)によって接続され、又は
c. 前記少なくとも1つの補強要素(1)の外側にそこに、特にセルリブ(3)に、好ましくはそこから離れて又はそれと接触して、特に前記補強要素(1)の、特に前記セルリブ(3)の伸張方向と平行な作用方向を有して、取り付けられ、又は
d. 隣接する補強要素(1)の間、特にセルリブ(3)の間に配置され、又は
e. 補強要素と、当該補強要素が埋め込まれた環境、特に土塁構造の間に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の補強構造。
【請求項6】
前記少なくとも1つの補強要素(1)の以下の特性のうちの少なくとも1つが、前記少なくとも1つのアクチュエーター(4)により、特に前記アクチュエーター(4)の場所で少なくとも局所的に変更可能である:
a. 少なくとも1つの方向における外側寸法、及び/又は
b. 形状及び粗さ、好ましくは伸長方向、特に湾曲、及び/又は
c. 環境に対する位置、及び/又は
d. 固さ、特に膨張及び圧縮に対する固さ、及び/又は
e. 強度、及び/又は
f. 生成される応力又は力、及び/又は
g. 振動減衰、及び/又は、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の補強構造。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアクチュエーター(4)が、
a. 特に空気圧で又は油圧で作動される、シリンダー-ピストンアセンブリ、又は
b. リニアモーター、又は
c. 圧電素子、又は
d. 磁気要素又は電磁気要素、又は
e. 誘電エラストマー、又は
f. 流体によって、特に気体又は液体によって膨張可能な及び/又は収縮可能な要素
によって形成される、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の補強構造。
【請求項8】
少なくとも1つの制御装置(7)と、前記少なくとも1つの補強要素(1)の状態及び/又はその環境の状態を測定し、検出する少なくとも1つのセンサー(6)を備え、
前記制御装置(7)が検出される状態に応じて前記少なくとも1つのアクチュエーター(4)を駆動するよう構成される、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の補強構造。
【請求項9】
専用のセンサー(6)と、特に専用の制御装置(7)とが、各アクチュエーター(4)に割り当てられる、ことを特徴とする請求項8に記載の補強構造。
【請求項10】
底土、特に土塁構造上の構造体であって、
構造体又はその前記底土が請求項1~9のいずれか一項に記載の補強構造を含む、ことを特徴とする構造体。
【請求項11】
前記補強構造の少なくとも1つの補強要素(1)の特性が、少なくとも1つのアクチュエーター(4)によって、特に少なくとも局所的に、変えられる、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の補強構造を操作する方法。
【請求項12】
前記アクチュエーター(4)が、センサー(6)により測定される、前記少なくとも1つの補強要素(1)の状態及び/又は前記補強構造の環境の状態に依存して駆動される、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌領域、地面及び特に底土・心土(subsoils)及び土塁構造(earthwork structures)を補強する補強構造(reinforcement)であって、少なくとも1つの補強要素、好ましくは、特に斜めに交差する、複数の補強要素を含むものに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はさらに補強構造を操作する方法に関する。
【0003】
補強構造は一般に従来技術において、例えば公開公報の特許文献1から知られている。これらは、例えば土壌領域を強化するために使用され、それにより周囲の土壌と共に機械的性質を改良する。補強構造はさらに、地面、例えば構造体の下にあるものの機械的性質を改良する。地面は、緩く注がれ又は固められてもよく、又は例えば底土の意味の範囲内で固い地面であってもよい。補強構造はさらに、全てのタイプの土塁構造、例えば土手・斜面、支持構造、基礎構造(インフラ)及び車道のために、基礎ベッド、陥没穴保護、浸食保護、垂直耐荷重要素、ダム又は掘削として使用される。本発明に従い設計される補強構造は同様に、前述した補強構造に含まれると考えられる。
【0004】
しばしば、このような補強構造は格子形状設計を有し、特に交差点で一般的に任意の角度で交わる格子セルがセルリブによって取り囲まれている所謂ジオグリッドとして設計される。この目的のため、伸長方向の補強要素は互いに離れ、多数の箇所で異なる伸長方向の補強要素と交差し、それにより格子を形成する。
【0005】
このようなセルリブは、本発明の意味において補強構造の補強要素を又は補強要素の一部を形成する。
【0006】
補強要素の装置に応じて、単軸の又は多軸の、特に二軸の又は三軸の補強構造が形成され得る。補強要素はそれぞれ、例えば、素材の撚り線(ストランド)又は素材の組み合わせとして、例えば繊維集合体として設計され得る。斜めに交差する離間したストランドは前述したタイプの格子を形成し得る。
【0007】
補強構造はさらに、単一のこのようなストランドのみを有してもよく、特に所謂ジオストリップを形成し得る。
【0008】
このようなストランドは、例えば、本発明に従う補強構造において互いに交差するように配置され得る。しかしながら、補強要素は、補強構造において開口、特に開けた(障害物の無い)連続した開口を取り囲む素材によって形成されてもよく、それ自体ストランド形状でなくてもよい。加えて、補強構造は幾つかの個々のストランドで又は少なくとも1つの平坦な補強要素で、特に格子セルも開口もないもので作られてもよい。本発明はさらに、このような前述した補強構造の可能な実施形態の全てに関し、特に格子を形成する多軸型の補強構造に関する。
【0009】
さらに、このような補強構造が広範囲の材料で作られ得ることが知られている。例えば、補強要素は金属やプラスチック材料で作られてもよく、それら補強要素は同様に複合材料、例えば多層ポリマーや繊維複合体で作られてもよい。本発明はさらにどんな材料でも、特に前述した材料を利用することができる。
【0010】
従来技術によれば、補強構造は必要に応じて選択され、取り付けられる受動的要素であり、最初の要件が非常に正確に判断されなければならない。しばしば、例えば経年劣化を考慮するため又は適切に評価され得ない要件を補強構造によって十分に取り扱うために、これらは意図的に特大に設計される。
【0011】
例えば環境変化の特質が、例えば変形又は負荷の結果として、変わるので、公知のタイプの補強構造が古くなり、その最初の特性・性質を失い得ること、又は補強構造に関する要件が時間を経て変わり得ることが問題だと考えられる。地震の際や激しい雨の際などの、突然の状況変化によっても同様に、静止した受動的補強構造は故障する又はアクティブにすべきある程度の変形を最初に必要とする。従来のタイプの受動的な静的な補強構造は変化する状況に対応できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ゆえに、本発明の目的は、補強構造における及び/又は補強構造が設置された環境における変化にアクティブに対応できる冒頭で述べたタイプの補強構造を創出することである。さらに、補強構造の特性を変えられるように設計することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、この目的は、補強構造の少なくとも1つの補強要素が少なくとも1つのアクチュエーター(作動装置)を有し、当該アクチュエーターにより補強要素の特性が変更可能である、特に少なくとも一時的に変更可能であることで達成される。特性の変化は、特性を示す程度の増加又は減少を生じさせ得る。
【0015】
したがって、本発明によれば、補強構造を操作する方法において少なくとも1つのアクチュエーターにより、補強構造の少なくとも1つの補強要素の特性を、特に少なくとも局所的に、変えることが可能である。
【0016】
したがって、従来技術の受動的な補強構造と比べて、本発明は、補強構造の及び/又は補強構造が取り付けられた環境の変化に対する素早い(アクティブな)反応を可能とする。これはさらに、地震などの突然の出来事に反応することができる可能性を含み、ここで「反応すること」は前記少なくとも1つの補強要素の特性が前記少なくとも1つのアクチュエーターによって変更されることを意味する。
【0017】
好ましくは、前記少なくとも1つの補強要素が、部分的に配置される複数のアクチュエーターを含むことが規定され得る。補強要素では、例えば、アクチュエーターを含む複数のセクションと、アクチュエーターの無い複数のセクションが設けられてもよい。したがって、特性の変化が補強要素において局所的に異なって生じさせられ得る。
【0018】
本発明は好ましくは、複数の交差する補強要素が、複数の格子セルを含む格子を形成し、少なくとも1つのセルリブ好ましくは前記格子セルを少なくとも部分的に画定する全ての前記セルリブのうちの幾つかのセルリブが、少なくとも1つのアクチュエーターを含み、特に前記アクチュエーターにより前記セルリブの特性が少なくとも一時的に変更可能であることを規定する。格子セルが角ばっていない開口を取り囲むとき、セルリブは、例えばそうしたケースではない直線伸長を必ずしも有する必要がない。したがって、格子セルは任意の形状を有する開口、例えば丸みを帯びた及び丸みを帯びていない、特に多角形の、好ましくは三角形の、四角形の、五角形の又は六角形の開口を形成し得る。
【0019】
本発明の意味において、セルリブは、形状にかかわらず、格子セルの開口を少なくとも部分的に画定する、特に取り囲む材料の装置を意味すると理解される。格子セルによって形成される開口は好ましくは、地面材料が開口に入る、特に通過することができるように中空である。
【0020】
格子の実施形態では、補強要素は、補強構造を通って少なくとも部分的に延び、幾つかの異なる格子セルを画定するそのような要素を意味すると理解され得る。よって、セルリブは補強要素の小区域であり得る。
【0021】
本発明によれば、アクチュエーターは補強要素に異なる態様で配置され得る。例えば、アクチュエーターが少なくとも1つの補強要素に、特にセルリブに配置されることが規定され得る。この場合、アクチュエーターは好ましくは、補強要素の材料/セルリブの材料によって少なくとも部分的に、好ましくは完全に取り囲まれ得る。例えば、アクチュエーターは、補強要素/セルリブの断面に中央に一体化され得る。
【0022】
少なくとも1つの補強要素の少なくとも小区域に代えて、特にセルリブに代えて、アクチュエーターが形成されることも可能である。それゆえ、このようなアクチュエーターは補強要素又はセルリブを遮断する。したがって、アクチュエーターは同じ補強要素の隣接する別個の領域を接続する。
【0023】
アクチュエーターが少なくとも1つの補強要素の外側に、特にセルリブの外側に取り付けられる(固定される)ことも規定され得る。アクチュエーターは好ましくは、補強要素に取り付けられた及び補強要素から離間した2つの取り付け位置を含み得る。アクチュエーターは好ましくは、補強要素に対して距離を置いて配置され得る。この場合、アクチュエーター及び補強要素は、取り付け位置を除いて非接触であり得る。しかしながら、アクチュエーターはさらに、補強要素と接触するように、特にその接触位置の間に補強要素に配置され得る。好ましくは、アクチュエーターが補強要素の、特にセルリブの伸長方向と平行な作用方向で配向されることが規定され得る。
【0024】
本発明はさらに、アクチュエーターが2つの補強要素の間、好ましくは2つの隣接する補強要素、特にセルリブの間に配置されることを規定し得る。このようにして、補強構造の特性が補強要素の伸長方向から逸れる方向において特に上手く変えられ得る。
【0025】
アクチュエーターはさらに、一方の側では補強要素に、他方の側では補強要素が埋め込まれた環境に、特に土塁構造に取り付けられ得る。したがって、アクチュエーターは補強要素と環境の間で作用し得る。
【0026】
本発明は好ましくは、少なくとも1つの補強要素の複数の異なる可能な特性が少なくとも1つのアクチュエーターによって、特にアクチュエーターの箇所で少なくとも局所的に変更可能であることを規定し得る。
【0027】
例えば、補強要素の外側寸法が少なくとも1つの方向で、好ましくは幾つかの方向で同時に変更可能であることが規定され得る。変更可能な寸法は例えば、補強要素の小区域の長さ又は厚さ又は一般的に言えば断面であり得る。
【0028】
同様に、形状、好ましくは伸長方向、及び特に曲率がアクチュエーターによって変えられ得る。例えば、補強要素がアクチュエーターによって、少なくとも局所的に、大きめに又は少なめに曲げられ得る。
【0029】
アクチュエーターを用いて、例えば環境に対する補強要素の位置を、特に少なくとも局所的に、変えることも可能である。例えば、補強要素と周りの土壌領域の間の間隔がアクチュエーターによって生成され得る。特に、土壌領域における人工的な隙間形成がもたらされ得、又は土力が生成され得る。したがって、地面振動が例えば、本発明に従う補強構造が使用される環境において土台から少なくとも一時的に切り離され得る。これは例えば突然生じる地震の場合に好都合であり得る。
【0030】
アクチュエーターを用いて、例えば、膨張及び/又は収縮に対する補強要素の及び/又は環境の固さ及び抵抗を変更すること、又はその中で及び/又はそこで生成される張り、応力又は力を変更すること、及び/又は振動減衰を変更することも可能である。
【0031】
適切なアクチュエーターが様々な方法で設計され得る。例えば、本発明は好ましくは、少なくとも1つのアクチュエーターがシリンダー-ピストンアセンブリによって形成されることを規定し得る。これは例えば、空気圧により又は油圧により作動され得る。アクチュエーターはさらにリニアモーターとして、特に電気タイプから設計されてもよい。アクチュエーターはさらに、圧電素子として又は誘電エラストマーとして又は磁力に基づくシステムとして設計され得る。
【0032】
1つの可能な実施形態では、アクチュエーターはさらに、流体、特に気体又は液体により膨張可能な又は収縮可能な要素であってもよい。この要素は好ましくは補強要素に一体化されてもよく、又は補強要素自体が膨張可能な又は収縮可能な要素を形成する。この目的のため、補強要素は中空であるように設計され得る。
【0033】
前記少なくとも1つのアクチュエーターは、例えば、前記少なくとも1つの補強要素の外側又は前記少なくとも1つの補強要素内を延びるライン(回線)によって、又は非接触で、エネルギー及び/又は制御信号を提供され得る。特に、少なくとも1つの流体伝導の補強要素の中空設計の場合、補強要素自体がさらに供給ラインを形成し得る。補強要素はさらに、エネルギー供給装置の少なくとも1つの極を形成し得る。
【0034】
一般的に言って、本発明は、本発明に従う補強構造が、特にアクチュエーター固有の動作を実行するように、アクチュエーターを駆動させ得る制御装置を含むことを規定し得る。駆動は、電気エネルギー又は電気信号の伝達、又は気体や液体などの流体の移動を包含し得る。各々のアクチュエーターは好ましくは制御装置に接続される。このような接続が各アクチュエーターのために制御装置に対して別個に存在し得、又は特にバス接続の態様の、共有の接続が幾つかのアクチュエーターのために存在し得、それを介して幾つかのアクチュエーターは好ましくは個々にアドレス指定され得る。専用の制御装置を各アクチュエーターに割り当てることも可能である。
【0035】
補強構造は好ましくは、少なくとも1つの制御装置と、前記少なくとも1つの補強要素の状態及び/又はその環境の状態を測定し、検出する少なくとも1つのセンサーを備える。前記制御装置は、検出される状態に応じて前記少なくとも1つのアクチュエーターを駆動するよう構成される。センサーが例えば振動、力、張り、応力、土壌水分、変位、温度などを測定するために設けられ得る。センサーが、アクチュエーターの近傍に、アクチュエーターに又はそこから離れて、配置され得る。
【0036】
制御装置が、補強構造の一体化した技術的構成部品であり得るが、例えば前記少なくとも1つの補強要素が取り付けられる土壌領域の外側に取り付けられ得る。制御装置はさらに、補強構造に、特に補強要素に又は幾つかのアクチュエーターの1つに一体化され得る。
【0037】
例えば、前記少なくとも1つのセンサーは、状態として環境の振動を、例えば地震の際に測定するために使用され得、及びそれに応じて前記少なくとも1つの補強要素の特性が、好ましくは局所的に、特に少なくとも1つのセルリブにおいて、変えられ得る。例えば、状態として水分浸透を測定したり、他の関心のあるどんな状態変数を測定したりすることも可能である。
【0038】
本発明は、前記少なくとも1つのセンサーの測定値に依存して補強構造の少なくとも1つのアクチュエーター、好ましくは複数のアクチュエーターを同時に駆動することを規定し得る。しかしながら、専用のセンサー、及び特に専用の制御装置が各々のアクチュエーターに割り当てられることも規定され得る。このようにして、他のアクチュエーターとは無関係に、その場所で各々のアクチュエーターのために局所的に特性変化を実行することが可能である。
【0039】
本発明は、駆動されるアクチュエーターを用いて補強構造の特性を変化させることを可能とする。このような変化は一般的に手動で始動され得る。対照的に、好ましくは、センサー測定値の自動測定の枠組み内で前記少なくとも1つのアクチュエーターを自動的に駆動することが規定される。
【0040】
例えば、アクチュエーターの駆動によって少なくとも1つの特性を目標値に変えることにより周りの土壌領域の及び/又は補強構造の又は少なくとも1つの補強要素の監視される状態変数を制御するために、制御装置は制御ループに組み込まれてもよい。
【0041】
本発明は、異なる装置において複数のアクチュエーターを備えた補強構造の使用を規定し得る。例えば、少なくとも2つのこのような補強構造が、土壌領域において互いの上部に平行に、離間して、例えばそれぞれの水平な配向で、配置され得る。様々な補強構造はさらに様々なアクチュエーターを使用し得る。このタイプの補強構造はさらに、水平面に対して傾斜して、例えば土手・斜面の浸食保護として使用され得る。
【0042】
以下に本発明の例示の実施形態を図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図2】可能なアクチュエーター4の例を概略的に示す図である。
【
図3】流体によって膨張され得る及び/又は収縮され得るアクチュエーター4.4の使用の例を示す図である。
【
図4】可能なアクチュエーターの使用を示す図である。
【
図5】基礎5の下にある土壌領域を補強する具体的な例示の実例応用を示す図である。
【
図6】格子セルを形成する、交差する補強要素1a,1bを含む格子形状の補強構造を使用して実行される本発明に従う方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、二軸設計の補強構造を示す。そこでは幾つかの補強要素1aが互いに離れて配置され、第1方向に延びており、幾つかの補強要素1bが互いに離れて配置され、第2方向に延びている。2つの方向は好ましくは互いに直交している。
図1の上側領域は平面図を示し、下側領域は側面図を示す。
【0045】
補強要素1a及び1bは各々、選択された素材、例えば金属又はプラスチック又は複合材料で作られた又は繊維集合体として作られたストランドを形成する。
【0046】
補強要素は数回交差し、それにより格子セル2を含む格子を形成する。各格子セル2はセルリブ3によって画定される。各セルリブ3は補強要素1a又は1bの小区域である。
【0047】
不図示の代替案として、補強構造はまた、補強要素1aのみにより形成されてもよく、したがって単軸設計を有するか、平坦な要素として設計され得る。
【0048】
このような補強要素は地中で/土壌内で、例えば基礎・土台の下で又はその環境で又は土壌領域の一般的な強化のために使用され得、例えば土手領域において、耐荷重能力を増加させ又は変形を減少させる。このような補強構造はさらに、他の構造体の下の地面で、例えば基礎・土台に使用され得る。格子状補強構造の場合、心土の材料、特に土壌が格子セルに入り得る又は通り得る。
【0049】
したがって、少なくとも1つの補強要素、ここで図面では幾つかの補強要素1aと、特にセルリブ3を形成するこれら補強要素1aのセクション(部分)が、少なくとも1つのアクチュエーター4を含むように、本発明はここで設計される。補強要素1bもまた、少なくとも1つのアクチュエーターを含み得るが、これはここでは示されていない。
【0050】
このようなアクチュエーターを含む補強要素1a又はセルリブ3の特性が、このアクチュエーター4により変えられ得る。特性の変化は好ましくは方向に基づいて実行され得る。これを実現するために、アクチュエーター4の各々は、ここで図面ではアクチュエーター4内に矢印で示された少なくとも1つ又は複数の明らかな作用方向を有し得る。
【0051】
一例として、幾つかのタイプのアクチュエーター4がここで識別され得る。アクチュエーター4aは、同じ補強要素1a又はセルリブ3の2つの別個の離れた領域の間に挿入され、これら2つの領域を架橋することで接続する。アクチュエーター4aはしたがって、それを使用する場所で補強要素1aの領域に取って代わる。
【0052】
アクチュエーター4bは補強要素1a又はセルリブ3の外側に配置され、ここではそれから離れており、それによりアクチュエーター4bと補強要素1a又はセルリブ3との接触が、離れた取り付け位置でのみ存在する。この方法では、アクチュエーター4bは補強要素1/1a又はセルリブ3の領域に広がる。
【0053】
アクチュエーター4cは同様に、補強要素1/1a又はセルリブ3の外側に配置されるが、それと接触しており、例えばそこに一体に形成される又は部分的にのみ一体化される。この例示の実施形態では、これらアクチュエーター4cは2つの異なる作用方向を有する。
【0054】
アクチュエーター4dは、補強要素1aと環境の間で作用するアクチュエータータイプを象徴する。アクチュエーター4aは、一方の側で補強要素1aに取り付けられ、その他方の側で補強要素の環境に、例えば土塁構造に取り付けられる。
【0055】
補強要素1a又はセルリブ3に完全に一体化されたアクチュエーターが、アクチュエーター4eによって表されている。
【0056】
ここで説明するアクチュエーター4の使用は、
図1における特定の表現に従う補強構造に限定されず、これらタイプのアクチュエーター4は一般的に、本発明に従い可能であるどんな補強構造においても補強要素内に/に設置され得る。
【0057】
アクチュエーター4によって少なくとも局所的に、アクチュエーター4の部位で、及び特にアクチュエーター4の周りの環境においても、例えばその取り付け位置の間のアクチュエーターにより力を補強要素1a又はセルリブ3に加えることで、補強要素1a/セルリブ3の特性が変えられ得ることが明らかである。
【0058】
図2は、可能なアクチュエーター4の例を概略的に示す。例えば、圧電アクチュエーター4.1が使用され得る。これらを用いて、直線運動及び湾曲・曲線が生成され得る。例えば、現在100kNまでの範囲内の力がこのようなアクチュエーターを使用することで可能である。誘電エラストマー4.2もまたアクチュエーターを形成でき、それにより好ましくは湾曲・曲線が実現され得る。例えば現在1.5kNまでの範囲の力を加えるために、例えば電気的設計、磁気的設計、空気圧設計又は油圧設計を有するリニアアクチュエーター4.3が好ましくは使用できる。アクチュエーター4.4は、流体、例えば気体や液体によって膨張され得る及び/又は収縮され得る要素であり、それによりその外側形状及び/又は寸法を変える。アクチュエーター4.5は磁力で及び/又は電磁力で動作するアクチュエーターである。
【0059】
このような補強要素がアクチュエーターを有するとき、ここに示される全てのアクチュエーター4及び示されないアクチュエーターのタイプが、操作によって補強要素の特性変化を生じさせるのに適している。補強要素単体の特性だけが変えられ得る、又は補強要素と環境の協調の観点から特性が変えられ得る。
【0060】
図3は、流体によって膨張され得る及び/又は収縮され得るアクチュエーター4.4の使用の例を示す。このアクチュエーターは好ましくは実質的に全方向に作用する。アクチュエーター4.4はホースによって形成され得、それはまた同時に補強要素1a及び1bを形成する。しかしながら、アクチュエーターはさらに補強要素に挿入されてもよい。流体供給はまた、好ましくはそれぞれの補強要素1a,1bを介して実行され得る。
【0061】
中央では、
図3は、補強要素1a,1bが膨張されていない状態を示す。対照的に、右では、
図3は、補強要素1a,1bの膨張状態を示す。補強要素1a,1bが顕著に大きめの断面を有し、それにより格子セル2のサイズが減少していることが明瞭に明らかである。したがって、補強構造の寸法特性を変えることが可能である。このようにして、例えば周囲の土壌に力を加えることも可能である。
【0062】
図4は可能なアクチュエーターの使用を示し、それにより基本的に補強要素1a,1bの湾曲による形状変化が、格子状補強構造において、例えば誘電エラストマーにより実行され得る。好ましくは、誘電エラストマーを含むアクチュエーター4.2が補強要素1a,1bに、例えばそれぞれのセルリブに一体化され得る。ここで、格子リブの様々な曲線方向が動作電圧の異なる極性によって実現され得る。このようにして、補強要素1a,1bの形状特性もここで変えられ得る。例えば、具体的には、格子セル2の自由断面が増大され得及び減少され得、環境において接地圧又は地面開口(ground opening)が実現され得る。
【0063】
図5は、基礎5の下にある土壌領域を補強する具体的な例示の実例応用を示す。ここで、交差する補強要素1を含む、格子の形態の補強構造が土壌領域の基礎5の下に認識できる。この例は異なるアクチュエーターの使用を示す。複数の補強要素1は図中黒い線で描かれ、アクチュエータータイプはそこに配置された白い記号で示される。両方向矢印が補強要素1に取り付けられたアクチュエーター、例えば圧電アクチュエーター4.1又はリニアアクチュエーター4.3を表す。白い破線は、例えば補強要素1に一体化されたアクチュエーター、例えば誘電エラストマー4.2又は膨張可能な/収縮可能なアクチュエーター4.4を示す。このようにして、異なる方法で補強要素の特性に、特に異なる特性に変化が作られ得る。例えば、建物の基礎5の下の地面は地震の間安定化され得る。
【0064】
図6は、格子セルを形成する、交差する補強要素1a,1bを含む格子形状の補強構造を使用して実行される本発明に従う方法を示す。図示の方法は示された補強構造のタイプに限定されず、一般に本発明に従うどんな補強構造を用いて実行されてもよい。単純化のために、少ない補強要素1a,1bとたった1つのアクチュエーター4だけがここに示されている。本発明にとって本質的なことは、センサー6の使用であり、それにより補強構造の環境から状態変数、例えば地震の際の、例えば振動の大きさが測定され得る。センサー6はさらに、補強要素1a,1bに直接配置され得る。
【0065】
センサー測定値は制御装置7に伝達され、それにより検出され、場合により評価される。好ましくは、少なくともこのアクチュエーター4を含む補強要素において特性の変化を生じさせるために、アクチュエーター4はセンサー6のセンサー測定値に依存して制御装置7によって駆動される。変更される特性とセンサー測定値の間でフィードバックが存在し、特にセンサーが補強要素の特性を測定する場合、例えば補強要素の望ましい特性を目標値に制御するために、制御ループがさらに実施され得る。
【符号の説明】
【0066】
1a,1b 補強要素
2 格子セル
3 セルリブ
4 アクチュエーター
6 センサー
7 制御装置
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの補強要素(1)、好ましくは、特に斜めに交差する複数の補強要素(1)を含む、土壌領域、地面及び特に底土及び土塁構造を強化する補強構造であって、
前記少なくとも1つの補強要素(1)が少なくとも1つのアクチュエーター(
4)を含み、当該アクチュエーターにより前記補強要素(1)の特性が変更可能である、特に少なくとも一時的に変更可能である補強構造。
【請求項2】
前記少なくとも1つの補強要素(1)が、部分的に配置される複数のアクチュエーター(4)を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の補強構造。
【請求項3】
複数の交差する補強要素(1)が、複数の格子セル(2)を含む格子を形成し、
少なくとも1つのセルリブ(3)、好ましくは前記格子セル(2)を画定する全ての前記セルリブ(3)のうちの複数のセルリブ(3)が、少なくとも1つのアクチュエーター(4)を含み、
特に前記アクチュエーターにより前記セルリブ(3)の特性が少なくとも一時的に変更可能である、ことを特徴とする請求項
1に記載の補強構造。
【請求項4】
前記補強要素(1)が、特にスクリム又は織物として、格子セル(2)を有さずに平坦に設計される、ことを特徴とする請求項
1に記載の補強構造。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアクチュエーター(4)が、
a. 前記少なくとも1つの補強要素(1)に、特にセルリブ(3)に配置され、又は
b. 前記少なくとも1つの補強要素(1)の少なくとも小区域に代えて、特にセルリブ(3)に代えて形成され、特に同じ前記補強要素(1)の隣接する別個の領域が前記アクチュエーター(4)によって接続され、又は
c. 前記少なくとも1つの補強要素(1)の外側にそこに、特にセルリブ(3)に、好ましくはそこから離れて又はそれと接触して、特に前記補強要素(1)の、特に前記セルリブ(3)の伸張方向と平行な作用方向を有して、取り付けられ、又は
d. 隣接する補強要素(1)の間、特にセルリブ(3)の間に配置され、又は
e. 補強要素と、当該補強要素が埋め込まれた環境、特に土塁構造の間に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項
1に記載の補強構造。
【請求項6】
前記少なくとも1つの補強要素(1)の以下の特性のうちの少なくとも1つが、前記少なくとも1つのアクチュエーター(4)により、特に前記アクチュエーター(4)の場所で少なくとも局所的に変更可能である:
a. 少なくとも1つの方向における外側寸法、及び/又は
b. 形状及び粗さ、好ましくは伸長方向、特に湾曲、及び/又は
c. 環境に対する位置、及び/又は
d. 固さ、特に膨張及び圧縮に対する固さ、及び/又は
e. 強度、及び/又は
f. 生成される応力又は力、及び/又は
g. 振動減衰、及び/又は、
ことを特徴とする請求項
1に記載の補強構造。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアクチュエーター(4)が、
a. 特に空気圧で又は油圧で作動される、シリンダー-ピストンアセンブリ、又は
b. リニアモーター、又は
c. 圧電素子、又は
d. 磁気要素又は電磁気要素、又は
e. 誘電エラストマー、又は
f. 流体によって、特に気体又は液体によって膨張可能な及び/又は収縮可能な要素
によって形成される、ことを特徴とする請求項
1に記載の補強構造。
【請求項8】
少なくとも1つの制御装置(7)と、前記少なくとも1つの補強要素(1)の状態及び/又はその環境の状態を測定し、検出する少なくとも1つのセンサー(6)を備え、
前記制御装置(7)が検出される状態に応じて前記少なくとも1つのアクチュエーター(4)を駆動するよう構成される、ことを特徴とする請求項
1に記載の補強構造。
【請求項9】
専用のセンサー(6)と、特に専用の制御装置(7)とが、各アクチュエーター(4)に割り当てられる、ことを特徴とする請求項8に記載の補強構造。
【請求項10】
底土、特に土塁構造上の構造体であって、
構造体又はその前記底土が請求項1~9のいずれか一項に記載の補強構造を含む、ことを特徴とする構造体。
【請求項11】
前記補強構造の少なくとも1つの補強要素(1)の特性が、少なくとも1つのアクチュエーター(4)によって、特に少なくとも局所的に、変えられる、ことを特徴とする請求項1~
9のいずれか一項に記載の補強構造を操作する方法。
【請求項12】
前記アクチュエーター(4)が、センサー(6)により測定される、前記少なくとも1つの補強要素(1)の状態及び/又は前記補強構造の環境の状態に依存して駆動される、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【国際調査報告】