(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】三元触媒用途向けのフミン酸支援金属ナノ粒子合成
(51)【国際特許分類】
B01J 23/46 20060101AFI20241219BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B01J23/46 311A
B01J23/46 311Z
B01D53/94 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508991
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 GB2022053093
(87)【国際公開番号】W WO2023105203
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ハワード、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ルー、チン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チンヘ
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
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4G169BA01A
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4G169CB02
(57)【要約】
触媒物品を製造する方法であって、この方法は、フミン酸又はその誘導体と、PGMとの錯体を提供することと、担体材料を提供することと、上記錯体を上記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、担持済み担体材料を基材上に配置することと、担持済み担体材料を加熱して担体材料上にPGMのナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒物品を製造する方法であって、前記方法が、
フミン酸又はその誘導体と、PGMとの錯体を提供することと、
担体材料を提供することと、
前記錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
前記担持済み担体材料を基材上に配置することと、
前記担持済み担体材料を加熱して、前記担体材料上に前記PGMのナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記PGMが、パラジウム、ロジウム、白金の1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PGMが、ロジウム及び/又は白金、好ましくは、ロジウムを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
フミン酸又はその誘導体と、PGMとの錯体を提供することは、PGMをフミン酸又はその誘導体とフルボ酸との混合物と接触させることを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
フミン酸又はその誘導体と、PGMとの錯体を提供することが、PGMを、CAS番号1415-93-6、68514-28-3及び68131-04-4の1つ以上によって定義される物質と接触させることを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記フミン酸又はその誘導体が、CAS番号1415-93-6によって定義される前記物質を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記錯体が、0.5~5、好ましくは0.8~4、より好ましくは0.9~3、更により好ましくは1~2、なおより好ましくは1.3~1.8のフミン酸対PGM原子質量比を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記担体材料が、酸化物、好ましくはAl
2O
3、SiO
2、TiO
2、CeO
2、ZrO
2、CeO
2-ZrO
2、V
2O
5、La
2O
3及びゼオライトのうちの1つ以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記担体材料が、アルミナ、好ましくはガンマ-アルミナを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記担体材料が、セリア-ジルコニアを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アルミナ及び/又はセリア-ジルコニアが、ドープされている、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルミナ及び/又はセリア-ジルコニアが、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムのうちの1つ以上の酸化物、好ましくはランタン、ネオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上の酸化物でドープされている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ドーパントが、0.001重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%の量で、前記アルミナ及び/又はセリア-ジルコニア中に存在する、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記担体材料が、0.1~25μm、好ましくは0.5~5μmのD90を有する粉末の形態である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
フミン酸又はその誘導体と、PGMとの錯体を提供することが、前記スラリー中で前記錯体をin situで合成することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記スラリーが、
水中でPGM塩と、フミン酸又はその誘導体とを接触させて、水溶液中でフミン酸又はその誘導体とPGMとの錯体を形成することと、
前記担体材料を前記水溶液と接触させることによって、前記錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を、前記水溶液に添加することと、を含む方法によって調製される、請求項16又は請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記スラリーが、
水中でPGM塩と担体材料とを接触させて、担体材料懸濁液を形成することと、
前記担体材料懸濁液をフミン酸又はその誘導体と接触させて、担持済み担体材料を形成することであって、前記担持済み担体材料が、上部に担持された錯体を有する担体材料を含み、前記錯体が、フミン酸又はその誘導体と前記PGMとの錯体を含む、ことと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤の1つ以上を前記担体材料懸濁液に添加することと、を含む方法によって調製される、請求項16又は請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記担持が、ウォッシュコーティングを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記スラリーが、10~40%、好ましくは15~35%の固形物量を有する、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記スラリーが、
酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、
助触媒塩、
結合剤、
酸又は塩基、
増粘剤、及び
還元剤のうちの1つ以上を更に含む、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、アルミナを含み、前記スラリーが、セリア-ジルコニアを更に含む、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、セリア-ジルコニアを含み、前記スラリーが、アルミナを更に含む、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記基材上に更なるスラリーを配置することを更に含み、前記更なるスラリーが、更なる担体材料、酸素貯蔵材料、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を含み、前記更なるスラリーを前記基材上に配置することが、前記担体材料を前記基材上に配置する前に、及び/又は前記担持済み担体材料を加熱して前記担体材料上に前記PGMのナノ粒子を形成した後に行われる、請求項16~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記担持済み担体材料を基材上に配置することが、前記スラリーを前記基材と接触させること、並びに任意選択的に、
真空を前記基材に適用すること、及び/又は
前記基材上の前記スラリーを乾燥させること、を含む、請求項16~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記乾燥が、
60℃~200℃、好ましくは70℃~130℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは15~60分間行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記基材が、コーディエライトを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記基材が、ハニカムモノリス、ウォールフローフィルタ、又はフロースルーフィルタの形態である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記加熱が、
400℃~700℃、好ましくは400℃~600℃、より好ましくは450℃~600℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは35~120分間行われる、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記加熱が、か焼を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ナノ粒子が、0.1nm~10nm、好ましくは0.2~5nm、より好ましくは0.2~4nmのD50を有する、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる触媒物品であって、排出処理システムにおいて使用するためのものである、触媒物品。
【請求項35】
三元触媒作用のための、請求項34に記載の触媒物品。
【請求項36】
1g/in
3~3g/in
3のウォッシュコート担持量を有する、請求項34又は請求項35に記載の触媒物品。
【請求項37】
前記基材が、ウォールフローフィルタ基材を含む、請求項34~36のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項38】
前記基材が、フロースルー基材を含む、請求項34~36のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項39】
ロジウムを上部に有する担体材料の最下層と、パラジウムを上部に有する担体材料の最上層と、を含む、請求項34~38のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項40】
パラジウムを上部に有する担体材料の最下層と、ロジウムを上部に有する担体材料の最上層と、を含む、請求項34~38のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項41】
前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項39又は請求項40に記載の触媒物品。
【請求項42】
2g/ft
3~15g/ft
3のロジウム、好ましくは5g/ft
3~10g/ft
3のロジウムを含む、請求項34~41のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項43】
50g/ft
3~200g/ft
3のパラジウム、好ましくは80g/ft
3~150g/ft
3のパラジウムを含む、請求項34~42のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項44】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されており、前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、アルミナを含み、前記スラリーが、セリア-ジルコニアを更に含む、請求項34~43のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項45】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されており、前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、セリア-ジルコニアを含み、前記スラリーが、アルミナを更に含む、請求項34~43のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項46】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されており、前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む、請求項34~43のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項47】
排出処理システムであって、請求項34~46のいずれか一項に記載の触媒物品を含む、排出処理システム。
【請求項48】
ガソリンエンジンを対象とする、請求項47に記載の排出処理システム。
【請求項49】
前記ガソリンエンジンが、化学量論的条件下で作動する、請求項48に記載の排出処理システム。
【請求項50】
排気ガスを処理する方法であって、前記方法が、
請求項34~請求項46のいずれか一項に記載の触媒物品を提供することと、
前記触媒物品を排気ガスと接触させることと、を含む、方法。
【請求項51】
前記排気ガスが、ガソリンエンジンに由来する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ガソリンエンジンが、化学量論的条件下で作動する、請求項51に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒物品を製造する方法、この方法によって得ることができる触媒物品、排出処理システム、及び排気ガスを処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三元触媒(three-way catalyst、TWC)は、化学量論的空燃比において、ガソリンエンジンの排気からのCO、HC、及びNOxを無害な化合物へと同時に転化(約98%)することを可能にする。具体的には、CO及びHCのCO2及び水蒸気(H2O)への酸化は、主にPdによって触媒され、一方、NOxのN2への還元は、主にRhによって触媒される。現代のTWCは、単層、二層、又は多層状担体上に堆積された担持白金族金属(以下、「platinum group metal、PGM」)触媒(Pd、Rh、Ptなど)を使用し、担体材料は、高比表面積を有する金属酸化物、主に安定化ガンマアルミナ、及びセリア含有酸素貯蔵材料からなる。担持触媒は、セラミックモノリス基材上にウォッシュコートされる。
【0003】
TWCウォッシュコートスラリーの従来の調製は、一般に、無機PGM前駆体、例えば硝酸塩、酢酸塩、又は塩化物塩の溶液を使用して、初期湿潤(incipient wetness)又は湿式含浸によってPGM元素を酸化物担体上に堆積させることを含む。TWC性能を向上させるために、ウォッシュコート配合物に助触媒塩が添加されることも多い。モノリス基材が調製されたままの状態のスラリーでウォッシュコートされると、続いて乾燥工程及びか焼工程が行われて、無機塩を分解し、PGM及び助触媒元素を担体材料上に固定させる。担持金属触媒の性能は、金属ナノ粒子の構造及び組成、並びに担体の性質に依存することが知られている。上記の方法を使用して調製された従来のTWCは、多くの場合、触媒活性種の構造(すなわち、平均PGM粒径及び組成、活性成分の位置、並びに金属-担体相互作用)に対して限定的な制御しか提供しない。これは主として、高温か焼プロセス中の金属移動及び粒子成長が原因である。
【0004】
ますます厳しくなる環境規制に伴い、より高い排出削減効率を有するTWCが必要とされている。一方、PGMコストの増加に伴い、TWC性能を損なうことなく、PGM担持量を低減することが急務とされている。PGMの粒径及び金属-担体相互作用のより良好な制御は、TWC性能を最適化するのに不可欠である。更に、均一化されたPGM粒径分布は、燃費向上のために使用されるエンジン戦略である燃料遮断プロセス中にしばしば生じるような、オストワルド熟成による金属焼結の程度の低減に寄与し得る。
【0005】
触媒着火は、触媒反応を開始するのに必要な最低温度である。具体的には、着火温度は、転化率が50%に達する温度である。着火温度の低い触媒物品が必要とされている。
【0006】
米国特許出願公開第2012/0077669(A1)号は、自動車用途のための担持金属触媒のポリマー支援合成について記載している。実施例で使用されるポリマーとしては、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、及びポリ(エチレンイミン)が挙げられる。記載された合成手順では、最初に担体(アルミナ粉末)にポリマー含有水溶液を含浸させる。次いで、含浸した担体は、濾過工程及び乾燥工程によって上記溶液から分離される。初期湿潤含浸によって、乾燥された含浸担体にPGM前駆体溶液を更に含浸させる。記載されたプロセスは、特許請求の範囲に記載された担持金属触媒の形成のための複数の工程を含むが、これが商業規模の製造のためのコスト及び困難性を増加させる。米国特許出願公開第2012/0077669(A1)号は、本技術を応用するために、ディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンなどの希薄燃焼エンジンが好ましくは使用されることを示している。
【発明の概要】
【0007】
本開示の一態様は、触媒物品を製造する方法を対象としており、この方法は、フミン酸、又はその誘導体とPGMとの錯体を提供することと、担体材料を提供することと、上記錯体を上記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、担持済み担体材料を基材上に配置することと、担持済み担体材料を加熱して担体材料上にPGMのナノ粒子を形成することと、を含む。
【0008】
本開示の別の態様は、第1の態様における方法によって得られる触媒物品に関する。
【0009】
本発明はまた、第2の態様における触媒物品を含む、内燃機関のための排気システムも包含する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】参照触媒1と触媒1の化学量論的TWC条件での摂動着火性能試験のNO転化結果を示す図である。
【
図1B】参照触媒1と触媒1の化学量論的TWC条件での摂動着火性能試験のCO転化結果を示す図である。
【
図1C】参照触媒1と触媒1の化学量論的TWC条件での摂動着火性能試験のTHC転化結果を示す図である。
【
図2A】参照触媒2.1、参照触媒2.2及び触媒 2の化学量論的TWC条件での摂動着火性能試験のNO転化結果を示す図である。
【
図2B】参照触媒2.1、参照触媒2.2及び触媒 2の化学量論的TWC条件での摂動着火性能試験のCO転化結果を示す図である。
【
図2C】参照触媒2.1、参照触媒2.2及び触媒 2の化学量論的TWC条件での摂動着火性能試験のTHC転化結果を示す図である。
【
図3A】参照触媒3と触媒3の化学量論的TWC条件での摂動着火性能試験のNO転化結果を示す図である。
【
図3B】参照触媒3と触媒3の化学量論的TWC条件での摂動着火性能試験のCO転化結果を示す図である。
【
図3C】参照触媒3と触媒3の化学量論的TWC条件での摂動着火性能試験のTHC転化結果を示す図である。
【
図4】実施例1の新品単一担持Rh触媒と劣化単一担持Rh触媒におけるエタン水素化分解試験中のエタン転化率を示す図である。
【
図5】実施例2の劣化完全配合Rh-TWCのエタン水素化分解試験におけるエタン転化率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、先行技術に関連する問題の少なくともいくつかに取り組むこと、又は少なくとも商業的に許容可能な代替解決策を提供することを目的とする。
【0012】
第1の態様では、本発明は、触媒物品を製造する方法であって、方法は、
フミン酸又はその誘導体(好ましくはフミン酸)とPGMとの錯体を提供することと、
担体材料を提供することと、
上記錯体を上記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
上記担持済み担体材料を基材上に配置することと、
上記担持済み担体材料を加熱して、上記担体材料上に上記PGMのナノ粒子を形成することと、を含む。
【0013】
本明細書において定義される各態様又は実施形態は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様又は実施形態と組み合わされ得る。具体的には、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴と組み合わせ得る。
【0014】
驚くべきことに、排出処理システムにおいて使用される場合、本発明の方法によって製造された触媒物品は、好ましい触媒活性、特に好ましい三元触媒活性を示し得る。例えば、触媒物品は、化学量論的ガソリンエンジンの三元触媒排出削減中に、好ましい着火性能、特にNO、CO、及び全炭化水素の転化を示し得る。そのような好ましい触媒活性及び着火性能は、同じ/同様のPGM種(複数)、担持量(複数)、担体(複数)、及び構成(複数)を有する従来の触媒物品によって示されるものよりも優れている可能性がある。触媒物品は、従来の触媒物品と比較して、より耐久性があり得る。言い換えれば、そのような好ましい触媒活性は、劣化後であっても示され得る。
【0015】
有利なことに、そのような優れた性能は、従来の触媒物品と比較してより低い担持量のPGMを、触媒性能を損なうことなく使用することを容易にすることができる。これは、そのような金属、特にロジウムの高いコストを考慮すると有益であり得る。更に、そのような優れた性能は、触媒性能を損なうことなく、高コストのPGMをより低コストのPGM又は他の遷移金属で部分的/完全に置換することを容易にし得る。
【0016】
理論に束縛されるものではないが、そのような優れた性能は、担体材料上のPGMナノ粒子の好ましい粒径分布によって提供され得ることが仮定される。PGM-フミン酸錯体形成の間、PGMのイオンはアミン及び/又はカルボキシル(レート)官能基と反応することができ、予測可能である同じ量のPGMイオンが各フミン酸構造によって「取り込まれ」、「取り込まれる」PGMの総量は、フミン酸分子構造/サイズ及びPGM-フミン酸配位比によって決定される。次いで、各錯体は、表面官能基(例えば、ヒドロキシル基)又は担体材料上の表面電荷と反応/相互作用して、PGM-フミン酸錯体が担体材料表面上に「しっかり固定する」のを可能にすることができる。「しっかり固定された」PGM-フミン酸錯体は、立体効果及び担体材料の表面官能基/電荷の利用可能な量に起因して分離され得る。錯体と担体材料官能基との間の相互作用により、従来の方法によって調製された触媒と比較して、担体によるPGM取り込みが増加し得る。理論に束縛されるものではないが、そのような均一な分離は、加熱(か焼)時にPGMナノ粒子のより狭い粒径分布(より均一化された粒径)をもたらすことができ、これは更に、熟成及び/又は燃料カット事象中のPGM粒子の過剰な凝集及び/又は焼結の低減をもたらすことも想定される。換言すれば、従来の触媒と比べると、本発明の方法を使用することによって、より耐焼結性の高い触媒物品を得ることができる。
【0017】
米国特許出願公開第2012/0077669(A1)号の方法と比較して、本発明の方法は、より単純でより効率的な「ワンポット」法である。本発明の方法は、担体材料上に錯体(複数)を堆積させるための別個の含浸、濾過、及び乾燥工程を必要としない。本発明の方法を使用することによって、添加された各フミン酸構造が相互作用のために利用されるので、錯体-担体及びPGM-配位子相互作用の収率が増加し得る。対照的に、米国特許出願公開第2012/0077669(A1)号では、限られた量のポリマーのみが濾過及び洗浄工程後に担体上に留まることができる。更に、本発明の方法によって調製された触媒物品は、特に、化学量論的ガソリン排出削減のための三元触媒として使用され得る。対照的に、米国特許出願公開第2012/0077669(A1)号の方法によって製造された触媒物品は、希薄燃焼ディーゼル又はガソリンエンジンにおいて特定の用途を有する。
【0018】
本明細書で使用される「触媒物品」という用語は、触媒がその上又はその中に担持されている物品を包含し得る。物品は、例えば、ハニカムモノリス、又はフィルタ、例えば、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタの形態をとり得る。触媒物品は、排出処理システム、特にガソリンエンジン、好ましくは化学量論的ガソリンエンジンのための排出処理システムでの使用のためのものであり得る。触媒物品は、三元触媒作用での使用のためのものであり得る。
【0019】
フミン酸又はその誘導体とPGMとの錯体を提供することは、典型的には、溶液、例えば、水溶液又はアルコール溶液中で錯体を提供することを含む。フミン酸又はその誘導体とPGMとの錯体を提供することは、典型的には、純粋な形態又は溶液の形態の無機PGM前駆体(複数)とフミン酸又はその誘導体とを水性媒体中で混合すること、例えば、硝酸PGMとフミン酸(CAS番号1415-93-6など)とを水中で混合することを含む。フミン酸又はその誘導体は、アルカリ金属塩などの塩の形態でよい。
【0020】
フミン酸は、重金属イオンに強く結合できることで知られており、廃水から重金属を除去するための放射線技術において使用されている。しかしながら、これは、本発明におけるその使用とは全く異なる分野と用途である。
【0021】
本明細書で使用される「フミン酸」という語句は、当技術分野において既知の語句に相当する。例えば、フミン酸は有機物、特に枯れた植物の分解による褐色の高分子生成物であると説明することができる。このポリマーの組み合わせは、芳香族及び複素環構造、カルボキシ基、窒素を含んでいてもよい。フミン物質の表面電荷と反応性に最も寄与する官能基は、フェノール基とカルボキシル基である。フミン酸を含む分子は、例えば、非共有結合力によって一緒に保持される超分子構造を形成し得る。実験室で従来から製造されているフミン酸は、単一の酸ではない場合がある。むしろそれは、カルボキシル基及びフェノラート基を含有する多くの異なる酸の複合混合物であってもよく、その結果、この混合物は、二塩基酸として、場合によっては、三塩基酸として機能的に挙動する。フミン酸は、例えば、フルボ酸成分を含んでいてもよい。
【0022】
フミン酸の正確な化学構造は十分に定義されていないか、又は十分に理解されていない場合があるが、それは、様々な官能性の多数の類似化合物を含み得るため、その定義は十分に理解されていることが多い。フミン酸は天然資源から得られるため、合成ポリマーを使用する方法よりも環境に優しくなり得る。文献によっては、フミン酸はウルミン酸と呼ばれる場合もある。
【0023】
フミン酸は、国際的に認められたCAS番号1415-93-6によって定義され得る。CAS番号68514-28-3及び68131-04-4もまた、それぞれ公知のフミン酸のカリウム塩及びナトリウム塩である。CAS番号(又は、CAS登録番号)は、特定の物質に対する固有の数値識別子である。この識別番号はChemical Abstract Service(CAS)によって割り当てられ、レジストリはCASによって保守されている。
【0024】
フミン酸はカリウム塩として供給されることもあり、その典型的な組成は、例えば、以下の通りである:
酸化カリウム(K2O)、天然試料に対して12w/w%、
全フミン抽出物、乾燥試料に対して85w/w%超、又は75w/w%超、
フミン酸、乾燥試料に対して82w/w%又は72w/w%、
フルボ酸、乾燥試料に対して3w/w%以上、
有機窒素(N)、天然試料に対して1w/w%、
灰分、天然試料に対して31w/w%、
乾燥物質、85w/w%超、
全炭素、36w/w%。
【0025】
かかる組成物は、pHが8.45±1(1%溶液中)又は8.95±1(10%溶液中)であり、溶解度が250g/Lであり得る。
【0026】
フミン酸はフミン酸カリウムとフルボ酸との混合物として供給されることもあり、その典型的な組成は、例えば、以下の通りである:
酸化カリウム(K2O)、4+/-0.5w/w%、又は4.4+/-0.6w/v%、
全フミン抽出物、15w/w%、又は16.6w/v%超、
フミン酸、12w/w%、又は13.3w/v%、
フルボ酸、3w/w%、又は3.3w/v%、
有機物質、13.1w/w%、又は14.4w/v%。
【0027】
かかる組成物のpHは、10超であり得る。
【0028】
典型的なフミン酸の例は、例えば、以下の構造を有することができる。
【0029】
【0030】
好ましくは、フミン酸又はその誘導体とPGMとの錯体を提供することは、PGMをフミン酸又はその誘導体とフルボ酸との混合物と接触させることを含む。かかる方法では、フルボ酸及びPGMを含む更なる錯体が存在し得る。好ましくは、フミン酸又はその誘導体とPGMとの錯体を提供することは、PGMを、CAS番号1415-93-6、68514-28-3及び68131-04-4の1つ以上によって定義される物質と接触させることを含む。つまり、フミン酸又はその誘導体は、好ましくは、CAS番号1415-93-6、68514-28-3、及び68131-04-4の1つ以上によって定義される物質を含み得る。好ましくは、フミン酸又はその誘導体は、CAS番号1415-93-6によって定義される物質を含む。
【0031】
本明細書で使用されるPGMという語句は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金から選択される1つ以上の白金族金属を包含する。好ましくは、PGMは、パラジウム、ロジウム及び白金の1つ以上、より好ましくは、ロジウム及び/又は白金、更により好ましくは、ロジウムを含む。そのような金属は、三元触媒作用を行うのに特に適し得る。加えて、そのような金属は高価であり、このことは、同じ量の金属に対して同様のレベルの触媒活性を提供できることが有利であることを意味する。更に、本発明の方法におけるそのような金属の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらすことができる。PGMは、合金の形態であり得る。
【0032】
錯体は、0.5~5、好ましくは0.8~4、より好ましくは0.9~3、更により好ましくは1~2、なおより好ましくは1.3~1.8のフミン酸対PGM原子質量比(すなわち、錯体中のフミン酸の質量/PGM原子の質量)を含み得る。PGMがロジウムである場合、PGMに対するフミン酸の質量比は、好ましくは約1.68である。PGMが白金である場合、PGMに対するフミン酸の質量比は、好ましくは約1.4である。かかる質量比は、最終的な触媒物品上で特に望ましいPGMナノ粒子分布を達成することができ、これによって、本発明の方法により製造された触媒物品によって実証される着火と触媒性能の向上に寄与することができる。
【0033】
担体材料は、その上に又はその中に複合体及びナノ粒子を支持することができる任意の材料であってよい。担体材料は、任意の形態をとり得るが、典型的には粉末、より典型的には高表面積粉末の形態である。本発明の方法が、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタなどの触媒化フィルタを調製するために使用される場合、担体材料は、典型的には、TEMを使用して測定して、例えば、0.1~25μm、より典型的には0.5~5μmのD50を有する粉末の形態となる。そのような粒径は、フィルタをコーティングするために使用されるスラリーの望ましいレオロジー特性を容易にし得る。担体材料は、ウォッシュコートとして機能し得る。担体材料は、ウォッシュコートであり得るか、又はウォッシュコートの一部であり得る。
【0034】
担体材料はまた、三元触媒転化を容易にするために、燃料希薄条件及び燃料リッチ条件でそれぞれ酸素を貯蔵及び放出する酸素貯蔵材料としての役割を果たし得る。
【0035】
担体材料への錯体の適用は、典型的には、スラリーを生成するように、溶媒(典型的には水)の存在下で錯体と担体材料とを接触させることを含む。本明細書で使用される「スラリー」という用語は、不溶性材料、例えば、不溶性粒子を含む液体を包含し得る。スラリーは、(1)溶媒、(2)可溶性内容物、例えば、未反応フミン酸、無機PGMと助触媒前駆体(複数)、並びにPGM-フミン酸錯体(担体外)、及び(3)不溶性内容物、例えば、フミン酸及び金属前駆体と相互作用するか又は相互作用しない担体粒子、を含んでもよい。スラリーは、典型的には撹拌され、より典型的には少なくとも10分間、より典型的には少なくとも30分間、更により典型的には少なくとも1時間撹拌される。接触時間及び/又は撹拌時間を増加させることにより、担体材料上に担持される錯体の量を増加させることができる。
【0036】
本明細書で使用される「担持済み担体材料」という用語は、その上に(例えば、高表面積金属酸化物担体材料の表面上に)担持された、及び/又はその中に(例えば、ゼオライト担体材料の細孔内に)担持されたPGM-フミン酸錯体を有する担体材料を包含し得る。錯体は、典型的には、例えば、静電力、水素結合、配位結合、共有結合、及び/又はイオン結合によって担体に固定される。例えば、酸化物の場合、フミン酸中のアミン及び/又はカルボキシル(レート)官能基と担体上の表面ヒドロキシル基とは、静電力又は水素結合形成を通じて相互作用し得る。
【0037】
本明細書で使用される「基材」という用語は、例えば、セラミックハニカム若しくは金属ハニカム、又はフィルタブロック、例えばウォールフローフィルタ若しくはフロースルーフィルタを包含し得る。基材は、セラミックモノリス基材を含み得る。基材は、その材料組成、サイズ及び構成、セルの形状及び密度、並びに壁厚の点で異なり得る。好適な基材は、当該技術分野において既知である。
【0038】
担持済み担体材料を基材上に配置することは、当該技術分野で既知の技術を使用して行うことができる。典型的には、担持済み担体材料は、担持済み担体材料のスラリーを特定の成形ツールを使用して基材の入口に所定の量で注ぐことによって基材上に配置される。以下でより詳細に考察されるように、後続の真空、エアナイフ及び/又は乾燥工程が、配置工程中に使用され得る。担体がフィルタブロックである場合、担持済み担体材料は、フィルタ壁上、フィルタ壁内(多孔性の場合)、又はその両方に配置され得る。
【0039】
担持済み担体材料の加熱は、典型的にはオーブン又は炉、より典型的にはベルト又は静電オーブン(static oven)又は炉中で、典型的には一方向からの特定の流れの熱風中で行われる。加熱は、か焼を含み得る。加熱は、乾燥も含み得る。乾燥及びか焼工程は、連続的又は逐次的であり得る。例えば、基材が既にウォッシュコーティングされ、前のウォッシュコーティングと一緒に乾燥させた後に、別個のウォッシュコーティングが適用され得る。ウォッシュコーティングされた基材はまた、コーティングが完了したら、1つの連続的な加熱プログラムを使用して乾燥及びか焼されることができる。加熱中、錯体は、少なくとも部分的に、実質的に、又は完全に分解し得る。言い換えれば、錯体の配位子、すなわち、フミン酸又はその誘導体は、PGMから少なくとも部分的に、実質的に、又は完全に除去又は分離され、最終触媒物品から除去される。次いで、そのように分離されたPGMの粒子は、金属-金属結合及び金属-酸化物結合を形成し始めることができる。加熱(か焼)の結果として、基材は、典型的には、フミン酸又はその誘導体を実質的に含まず、より典型的には、フミン酸又はその誘導体を全く含まない。
【0040】
本明細書で使用される「ナノ粒子」という用語は、TEMによって測定される0.01nm~100nmの直径を有する粒子を包含し得る。ナノ粒子は、任意の形状、例えば、球形、プレート、立方体、円筒形、六角形、又はロッドであり得るが、典型的には球形である。ナノ粒子の最大寸法(すなわち、ナノ粒子が球状である場合には直径)は、TEMによって測定して、典型的には0.5~10nm、より典型的には1~5nmである。
【0041】
加熱工程の後、基材は、典型的には冷却され、より典型的には室温まで冷却される。冷却は、典型的には、冷却剤/冷却媒体を用いて又は用いずに、典型的には冷却剤を用いずに、空気中で行われる。
【0042】
PGMは、好ましくは、パラジウム、ロジウム及び白金の1つ以上を含むか、本質的にそれらからなるか、あるいはそれらからなり、より好ましくは、ロジウム及び/若しくは白金を含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなり、更により好ましくは、ロジウムを含むか、本質的にそれらからなるか、あるいはそれらからなる。とりわけ、ロジウムは高価なPGMであり、フミン酸又はその誘導体と特に好適な錯体を形成する。とりわけ、白金は高価なPGMであり、フミン酸又はその誘導体と特に好適な錯体を形成する。
【0043】
好ましい実施形態では、PGMは、ロジウム及び白金を含むか、ロジウム及び白金から本質的になるか、又はロジウム及び白金からなる。本発明の方法におけるそのような金属の使用は、特に好ましい摂動着火性能をもたらすことができる。
【0044】
好ましくは、フミン酸又はその誘導体は、フルボ酸も更に含む。場合によっては、かかる混合物としてフミン酸を得ることが一般的である。フルボ酸は、例えば、PGMとの更なる錯体を形成可能であり、最終的な触媒物品の有利な分布特性の達成に寄与し得る。
【0045】
好ましくは、フミン酸又はその誘導体とPGMとの錯体を提供することは、PGMを、CAS番号1415-93-6、68514-28-3及び68131-04-4、より好ましくは、CAS番号1415-93-6の1つ以上によって定義される物質と接触させることを含む。これらの特定の組成物は、本発明の方法において特に良好に機能し得る。
【0046】
担体材料は、好ましくは酸化物、好ましくはAl2O3(酸化アルミニウム又はアルミナ)、SiO2、TiO2、CeO2、ZrO2、V2O5、La2O3及びゼオライトのうちの1つ以上を含む。酸化物は、好ましくは、金属酸化物である。担体材料は、より好ましくは、アルミナ、更により好ましくはガンマ-アルミナを含む。担体材料は、好ましくはセリア-ジルコニアを含む。担体材料は、好ましくはアルミナ及びセリア-ジルコニアを含む。アルミナ及び/又はセリア-ジルコニアは、好ましくはドープされ、より好ましくは、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、又はナトリウムのうちの1つ以上の酸化物でドープされ、更により好ましくは、ランタン、ネオジム、又はイットリウムの酸化物でドープされている。そのようなドープされた酸化物は、担体材料として特に有効である。好ましくは、ドーパントは、0.001重量%~20重量%、及びより好ましくは0.5重量%~10重量%の量でアルミナ及び/又はセリア-ジルコニア中に存在する。
【0047】
担体材料は、好ましくは0.1~25μm、より好ましくは0.5~5μmのD90を有する粉末の形態である。
【0048】
担持済み担体材料は、好ましくはスラリーの形態で基材上に配置される。スラリーは、基材上に材料を配置する際に、特にガスの拡散を最大化し、触媒転化中の圧力降下を最小化するために特に有効である。
【0049】
フミン酸又はその誘導体とPGMとの錯体を提供することは、好ましくは、スラリー中で錯体をin situで合成することを含む。
【0050】
スラリーは、好ましくは、
水中でPGM塩とフミン酸又はその誘導体とを接触させて、水溶液中でフミン酸又はその誘導体とPGMとの錯体を形成することと、
上記担体材料を上記水溶液と接触させることによって、上記錯体を上記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を、上記水溶液に添加することと、を含む方法によって調製される。
【0051】
そのような「ワンポット」調製方法は、従来の方法と比較して簡略化されており、低コストであり得る。この方法はまた、ポリマー/フミン酸の利用を最大化することができる。
【0052】
換言すれば、フミン酸又はその誘導体とPGMとの錯体を提供すること、担体材料を提供することと、錯体を担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成すること、及び担持済み担体材料を基材上に配置することは、
水中でPGM塩とフミン酸又はその誘導体とを接触させて、水溶液中でフミン酸又はその誘導体とPGMとの錯体を形成することと、
担体材料を水溶液に添加して、担持済み担体材料のスラリーを形成することと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を、スラリーに添加することと、
スラリーを基材上に配置することと、を含んでもよい。
【0053】
代替の好ましい実施形態では、スラリーは、
水中でPGM塩と担体材料とを接触させて、担体材料懸濁液を形成することと、
上記担体材料懸濁液をフミン酸又はその誘導体と接触させて、担持済み担体材料を形成することであって、上記担持済み担体材料は、上部に担持された錯体を有する担体材料を含み、上記錯体は、フミン酸又はその誘導体と上記PGMとの錯体を含む、ことと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤の1つ以上を上記担体材料懸濁液に添加することとを含む、方法によって調製される。
【0054】
そのような「ワンポット」調製方法は、従来の方法と比較して簡略化されており、低コストであり得る。この方法はまた、ポリマー/フミン酸の利用を最大化することができる。
【0055】
担持は、ウォッシュコーティングを含んでもよい。
【0056】
スラリーは、好ましくは10~40%、好ましくは15~35%の固形物量を有する。かかる固形物量によって、担持済み担体材料を基材上に配置するのに好適なスラリーレオロジーを実現できる。例えば、基材がハニカムモノリスである場合、そのような固形物量は、基材の内壁上へのウォッシュコートの薄層の堆積を可能にし得る。基材がウォールフローフィルタである場合、そのような固形物量は、スラリーがウォールフローフィルタのチャネルに入ることを可能にし得、スラリーがウォールフローフィルタの壁に入ることを可能にし得る。
【0057】
好ましくは、スラリーは、
酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、
助触媒塩、
結合剤、
酸又は塩基、
増粘剤、及び
還元剤のうちの1つ以上を更に含む。
【0058】
他の助触媒としては、例えば、非PGM遷移金属元素、希土類元素、アルカリ族元素、及び/又は周期表の同じ若しくは異なる族内の上記元素のうちの2つ以上の組み合わせを挙げることができる。助触媒塩は、そのような元素の塩であり得る。
【0059】
結合剤は、例えば、ウォッシュコートスラリー中で個々の不溶性粒子を一緒に結合するための小さな粒径を有する酸化物材料を含み得る。ウォッシュコートにおける結合剤の使用は、当該技術分野において周知である。
【0060】
増粘剤は、例えば、ウォッシュコートスラリー中で不溶性粒子と相互作用する、官能性ヒドロキシル基を有する天然ポリマーを含み得る。増粘剤は、基材上へのウォッシュコートコーティング中のコーティングプロファイルの改善のためにウォッシュコートスラリーを増粘する目的を果たす。増粘剤は、通常は、ウォッシュコートか焼中に焼き取られる。ウォッシュコートのための特定の増粘剤/レオロジー調整剤の例としては、グラクトマナガム(glactomanna gum)、グアーガム、キサンタンガム、カードランシゾフィラン、スクレログルカン、ジウタンゴム、ホイーランゴム、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、及びエチルヒドロキシセルロースが挙げられる。
【0061】
本明細書に記載される「還元剤」という用語は、ウォッシュコート調製中にPGMカチオンをその金属状態の粒子にin situで還元することができる化合物を包含し得る。
【0062】
PGMの還元剤として作用しかつ/又は後の加熱/か焼工程中に還元環境を作り出す有機酸を添加することができる。好適な有機酸の例としては、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、アスコルビン酸、酢酸、ギ酸、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0063】
好ましい実施形態では、PGMはロジウムを含み、担体材料はアルミナを含み、スラリーはセリア-ジルコニアを更に含む。別の好ましい実施形態では、PGMはロジウムを含み、担体材料はセリア-ジルコニアを含み、スラリーはアルミナを更に含む。別の好ましい実施形態では、PGMはロジウムを含み、担体材料はアルミナ及びセリア-ジルコニアを含む。
【0064】
本方法は、好ましくは、更なるスラリーを基材上に配置することを更に含み、更なるスラリーは、更なる担体材料、酸素貯蔵材料、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を含み、上記更なるスラリーを上記基材上に配置することが、上記担体材料を上記基材上に配置する前に、及び/又は上記担持済み担体材料を加熱して上記担体材料上に上記PGMのナノ粒子を形成した後に行われる。これにより、異なるウォッシュコートの複数の層、例えば、とりわけアルミナ上に担持されたロジウムナノ粒子を含有する底部ウォッシュコート、及びとりわけアルミナ上に担持されたロジウムナノ粒子を含有する上部ウォッシュコートを有する触媒物品を得ることができる。そのような複数の層の更なる例については、以下でより詳細に論じられる。
【0065】
担持済み担体材料を基材上に配置することは、好ましくは、スラリーを基材と接触させること(例えば、スラリーを基材の入口に注入すること)、及び任意選択で、
真空を上記基材に適用すること、及び/又は
上記基材上の上記スラリーを乾燥させること、を含む。
【0066】
これにより、基材上の担持済み担体材料の好ましい分布を得ることができる。
【0067】
乾燥は、好ましくは以下のように行われる:
60℃~200℃、好ましくは70℃~130℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは15~60分間行われる。
【0068】
基材は、「ブランク」、すなわち、ウォッシュコーティングされていない基材であり得る。代替的に、基材は、既に上部に担持された1つ又はウォッシュコートを有し得る。そのような状況では、最終触媒物品は、異なるウォッシュコートの複数の層を含み得る。
【0069】
基材は、好ましくは、コーディエライトを含む。コーディエライト基材は、触媒物品における使用に特に適している。
【0070】
基材は、好ましくは、ハニカムモノリス、ウォールフローフィルタ又はフロースルーフィルタの形態である。
【0071】
加熱は、好ましくは以下のように行われる:
400℃~700℃、好ましくは400℃~600℃、より好ましくは450℃~600℃の温度で、及び/又は
10~360分間、好ましくは35~120分間行われる。
【0072】
より低い温度及び/又はより短い加熱時間は、錯体の不十分な分解をもたらす場合がある、かつ/又は、高レベルのフミン酸又はその誘導体が基材中に残る場合がある。より高い温度及び/又はより長い加熱時間は、おそらく焼結に起因して、好ましくない大きな粒径を有するPGMの粒子をもたらす場合がある。より高い温度及びより長い加熱時間はまた、触媒物品への損傷をもたらす場合がある。
【0073】
加熱は、好ましくは、か焼を含む。本明細書で使用される「か焼」という用語は、熱分解を引き起こすための空気又は酸素の非存在下又は限定された供給下での熱処理プロセスを包含し得る。しかしながら、典型的には、本文脈におけるか焼は、オーブン中の空気中での加熱を伴う。
【0074】
ナノ粒子は、好ましくは0.1nm~10nm、より好ましくは0.2~5nm、更により好ましくは0.2~4nmのD50を有する。D50は、TEMによって測定され得る。そのような粒径は、好ましいレベルの触媒活性をもたらすことができる。
【0075】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の方法によって得ることができる触媒物品を提供し、触媒物品は、排出処理システムにおいて使用するためのものである。
【0076】
従来の触媒物品と比較して、本明細書に記載される方法によって得ることができる触媒物品は、有利に小さい粒径及び好ましい粒径分布(例えば、0.2~4nmのD50)を有するPGM粒子を含有することができる。更に、従来の触媒物品と比較して、本明細書に記載の方法によって得ることができる触媒物品は、基材全体にわたってPGM粒子のより均一な分散を示すことができる。
【0077】
排出処理システムにおいて使用される場合、触媒物品は、化学量論的ガソリン排出削減のための三元触媒転化中に、特にNO、CO及び全炭化水素に対して好ましい着火性能を示すことができる。
【0078】
触媒は、好ましくは、三元触媒のためのものである。
【0079】
触媒物品は、1g/in3~3g/in3のウォッシュコート担持量を有し得る。そのような触媒物品は、従来の触媒物品と比較して同様の又はより高い触媒活性を示し得るが、使用されるPGMのレベルがより低いことを考慮すると、より低コストであり得る。
【0080】
基材は、好ましくは、ウォールフローフィルタ基材又はフロースルー基材を含む。
【0081】
好ましい実施形態では、触媒物品は、ロジウムを上部に有する担体材料の最下層と、パラジウムを上部に有する担体材料の最上層とを含む。別の好ましい実施形態では、触媒物品は、パラジウムを上部に有する担体材料の最下層と、ロジウムを上部に有する担体材料の最上層とを含む。本明細書で使用される「底部層」という用語は、基材(すなわち、基材壁)に最も近いか又はそれと接触している層(例えば、ウォッシュコート層)を包含し得る。本明細書で使用される「上部層」という用語は、底部層よりも基材(すなわち、基材壁)からより離れた層(例えば、ウォッシュコート層)を包含し得、底部層の上に位置し得る。
【0082】
そのような好ましい実施形態では、担体材料は、好ましくは、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む。
【0083】
触媒物品は、とりわけ、かかる好ましい実施形態では、好ましくは2g/ft3~15g/ft3のロジウム、より好ましくは、5g/ft3~10g/ft3のロジウムを含む。有利なことに、そのようなロジウムレベルは、従来の触媒物品のレベルよりも低くあり得るが、触媒活性を損なうことはない。
【0084】
触媒物品は、特にそのような好ましい実施形態では、好ましくは50g/ft3~200g/ft3のパラジウム、より好ましくは80g/ft3~150g/ft3のパラジウムを含む。有利なことに、そのようなパラジウムレベルは、従来の触媒物品のレベルよりも低くあり得るが、触媒活性を損なうことはない。
【0085】
好ましい実施形態では、担持済み担体材料は、スラリーの形態で基材上に配置されており、PGMは、ロジウムを含み、担体材料は、アルミナを含み、スラリーは、セリア-ジルコニアを更に含む。別の好ましい実施形態では、担持済み担体材料は、スラリーの形態で基材上に配置されており、PGMは、ロジウムを含み、担体材料は、セリア-ジルコニアを含み、スラリーは、アルミナを更に含む。別の好ましい実施形態では、担持担体材料は、スラリーの形態で基材上に配置されており、PGMは、ロジウムを含み、担体材料は、アルミナ及びセリア-ジルコニアを含む。
【0086】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の触媒物品を含む排出処理システムを提供する。
【0087】
排出処理システムは、好ましくは、ガソリンエンジンのためのものである。
【0088】
ガソリンエンジンは、好ましくは、化学量論的条件下で作動する。
【0089】
更なる態様では、本発明は、排気ガスを処理する方法を提供し、この方法は、
本明細書に記載される触媒物品を提供することと、
上記触媒物品を排気ガスと接触させることと、を含む、方法。
【0090】
排気ガスは、好ましくは、ガソリンエンジンからの排気ガスである。触媒物品は、そのような排気ガスを処理するのに特に好適である。ガソリンエンジンは、好ましくは、化学量論的条件下で作動する。
【0091】
これから、以下の非限定的な実施例に関連して、本発明を説明する。
【0092】
多数の触媒物品を以下の実施例に従って調製した。
【0093】
実施例1:
単一のアルミナ担体上に担持されたRhを含む2つのウォッシュコート触媒を、それぞれ従来の方法及び本発明に係る方法によって調製した。
【0094】
参照触媒1(0.3%Rh/ガンマアルミナ(硝酸Rhを含有する)ウォッシュコート触媒):
1.硝酸(5g/ft3)を水に添加し、1時間混合して溶解させた。
2.粉砕されたガンマアルミナ(1g/in3)スラリーを添加し、1時間混合させた。
3.脱イオン水を加えて、固形分を約20%に調整した。
4.水中の活性化4重量%増粘剤を添加して、バッチ固形分を30%に調整した。これを、均質なゲルが形成されるまで、VWRボルテックスミキサーで激しく混合した。
5.真空引き下で入口から1.2インチの用量を目指して、1×3インチのコアをコーティングしてから、空気硬化で乾燥させた。
6.次に、レンガを静電オーブン中で500℃で30分間焼成した。
【0095】
触媒1(0.3%Rh/ガンマアルミナ(フミン酸によって変性されたRhを含有する)ウォッシュコート触媒)
1.硝酸(5g/ft3)を水に添加し、1時間混合して溶解させた。
2.次いで、1.7のHA:Rh質量比を目指して、フミン酸酸(HA)を添加し、1時間混合させた。
3.粉砕されたガンマアルミナ(1g/in3)スラリーを添加し、1時間混合させた。
4.脱イオン水を加えて、固形分を約20%に調整した。
5.水中の活性化4重量%増粘剤を添加して、バッチ固形分を30%に調整した。これを、均質なゲルが形成されるまで、VWRボルテックスミキサーで激しく混合した。
6.真空引き下で入口から1.2インチの用量を目指して、1×3インチのコアをコーティングしてから、空気硬化で乾燥させた。
7.次に、レンガを静電オーブン中で500℃で30分間焼成した。
【0096】
次いで、各触媒を1000℃/レドックス下で/40時間、劣化させ、模擬ガソリン排気条件下での摂動着火性能について比較した。NO、CO及びTHC(全炭化水素)転化率に関する結果を
図1で示す。反応条件は、十分な前処理、150-700℃、=0.96~1.04、GHSV=200,000hr
-1とした。参照触媒1と比較して、Rhをフミン酸と錯体化することによって調製された触媒1は、TWC活性において有意な効果を示した。HA修飾による単一アルミナ担持Rh触媒のNO、CO、THCの最大T
50(触媒が対象汚染物質の入口濃度の50%を変換する温度)低減率は、それぞれ34℃、46℃、及び90℃であった。
【0097】
実施例2:
より複雑なウォッシュコート触媒を、それぞれ従来方法及び本発明の方法によって調製した。
【0098】
参照触媒2.1(Rh-TWC(硝酸Rhを含有する)ウォッシュコート触媒)
1.粉砕されたガンマアルミナ担体のスラリーを調製した(0.6g/in3)。
2.硝酸ロジウム溶液(Rh担持量5g/ft3)を添加し、スラリーを均質になるまで混合した。
3.pHが7.0~7.5に達するまでアンモニウムを滴下した。アンモニウムを添加すると、ウォッシュコートは増粘した。
4.ロジウムがウォッシュコート全体にわたって沈殿するように、ウォッシュコートを15~20分間混合した。
5.セリア-ジルコニア担体(0.7g/in3)を添加し、スラリーを均質になるまで30分間混合した。
6.結合剤(0.03g/in3)を添加し、スラリーを均質になるまで30分間混合した。
7.脱イオン水を加えて、固形分を約23%に調整した。
8.約1.0~1.2重量%の水系ウォッシュコートを目指して、増粘剤を添加した。ウォッシュコートを少なくとも6時間混合した。
9.コーディエライト基材を、真空引き下で入口から1.2インチの単回用量ウォッシュコートでコーティングし、空気硬化で乾燥させた。
10.次に、ウォッシュコート処理したレンガを静電オーブン中で500℃で30分間焼成した。
【0099】
参照触媒2.2(Rh-TWC(硝酸Rhを含有する)ウォッシュコート触媒)
別の参照触媒を、参照触媒2.1の方法に従って製造したが、ただし、9g/ft3という、より高いRhローディングを使用した。
【0100】
触媒2(Rh-TWC(フミン酸によって変性されたRhを含有する)ウォッシュコート触媒)
1.硝酸ロジウムのスラリーを調製した(Rh担持量5g/ft3)。
2.次いで、1.68のHA:Rh質量比を目指して、フミン酸酸(HA)を添加し、1時間混合させた。
3.次に、粉砕したガンマアルミナ担体(0.6g/in3)をスラリーに加え、これを1時間混合させた。
4.セリア-ジルコニア担体(0.7g/in3)を添加し、スラリーを均質になるまで30分間混合した。
5.結合剤(0.03g/in3)を添加し、スラリーを均質になるまで30分間混合した。
6.脱イオン水を加えて、固形分を約23%に調整した。
7.約1.0~1.2重量%の水系ウォッシュコートを目標として、増粘剤を添加した。ウォッシュコートを少なくとも6時間混合した。
8.コーディエライト基材を、真空引き下で入口から1.2インチの単回用量ウォッシュコートでコーティングし、空気硬化で乾燥させた。
9.次に、ウォッシュコート処理したレンガを静電オーブン中で500℃で30分間焼成した。
【0101】
次いで、各触媒を1000℃/レドックス下で/40時間、劣化させ、模擬ガソリン排気条件下での摂動着火性能について比較した。反応条件は、十分な前処理、150-700℃、=0.96~1.04、GHSV=200,000hr
-1とした。同様の改善が、より錯化された配合Rh触媒(実施例2)において観察され、結果は、NO、CO、及びTHC転化率に関して
図2に示されている。Rh-HA触媒2は、同じ5g/ft
3というRh担持量で参照触媒2.1よりも著しく良好な性能を示した。NO、CO及びTHCの最大のT50低減は、それぞれ25℃、33℃及び48℃であった。更に、触媒2は、9g/ft
3におけるRh負荷が1.8倍高い参照触媒2.2と同様か、又はより良好なTWC着火性能を示した。
【0102】
実施例3:
二元金属(Rh-Pt)ウォッシュコート触媒を、それぞれ従来方法及び本発明の方法によって調製した。
【0103】
参照触媒3(Rh-Pt二元金属(硝酸Ptを含有する)TWCウォッシュコート触媒)
1.予定水量の少なくとも50%を添加することで、セリア-ジルコニア担体(1.1g/in3)を調製した。
2.硝酸Rh(Rh担持4g/ft3)をセリア-ジルコニアスラリーに添加し、少なくとも15分間混合した。
3.アンモニアでpHを>6に調整して、スラリーを少なくとも1時間混合した。
4.次に、ガンマアルミナ(0.4g/in3)スラリーを添加した後、硝酸白金(Pt担持2g/ft3)を添加した。スラリーを少なくとも15分間混合した。
5.アンモニアでpHを5.8超に調整して、スラリーを少なくとも30分混合した。
6.結合剤(0.03g/in3)を添加し、スラリーを少なくとも30分間混合した。
7.ウォッシュコートを目標固体%(約25%)に調整し、増粘剤を添加した(約0.8~1.0%)。スラリーを一晩混合した。
8.コーディエライト基材を、真空引き下で入口から1.2インチの単回用量ウォッシュコートでコーティングし、空気硬化で乾燥させた。
9.次に、レンガを静電オーブン中で500℃で30分間焼成した。
【0104】
触媒3(Rh-Pt二元金属TWC(フミン酸によって変性されたPtを含有する)ウォッシュコート触媒)
1.予定水量の少なくとも50%を添加することで、セリア-ジルコニア担体(1.1g/in3)を調製した。
2.硝酸Rh(Rh担持4g/ft3)をセリア-ジルコニアスラリーに添加し、少なくとも15分間混合した。
3.アンモニアでpHを>6に調整して、スラリーを少なくとも1時間混合した。
4.次に、ガンマアルミナ(0.4g/in3)スラリーを添加した後、硝酸白金(Pt担持2g/ft3)を添加した。スラリーを少なくとも15分間混合した。
5.次に、HA:Ptの質量比が1.4となることを目指して、フミン酸(HA)を添加した。
6.結合剤(0.03g/in3)を添加し、スラリーを少なくとも30分間混合した。
7.ウォッシュコートを目標固体%(約25%)に調整し、増粘剤を添加した(約0.8~1.0%)。スラリーを一晩混合した。
8.コーディエライト基材を、真空引き下で入口から1.2インチの単回用量ウォッシュコートでコーティングし、空気硬化で乾燥させた。
9.次に、レンガを静電オーブン中で500℃で30分間焼成した。
【0105】
次に、各触媒を、1050℃/空気中10%H
2O下で/4時間、劣化させ、模擬ガソリン排気条件下での摂動着火性能について比較した。反応条件は、十分な前処理、150-700℃、=0.96~1.04、GHSV=200,000hr
-1とした。参照触媒3と比較して、PtがHAによって修飾された触媒3についても同様の改善が認められており、NO、CO、及びTHC転化率に関する結果は
図3で示されている。触媒3は、参照触媒3よりも有意に良好な性能を示し、NO、CO、及びTHCについてそれぞれ、34℃、20℃、及び43℃の最大T
90低減を示した。
【0106】
実施例4:
新品単一担持Rh触媒と劣化単一担持Rh触媒(実施例1に従って製造)におけるエタン水素化分解試験中のエタン転化率である。結果を
図4に示す。劣化条件:1000℃/レドックス/40時間。反応条件:脱気前処理あり、0.5%C
2H
6及び2.8%H
2をN
2で均衡させた。結果によってRh活性金属表面積の定性的な比較が可能となり、エタン転化率の上昇は、活性Rh分散/金属表面積の増加を示す。参照触媒1と比較して、HA修飾(触媒1)は、新品触媒及び劣化触媒のRh活性金属表面積の増加、並びに新品触媒対劣化触媒の差の低下の双方をもたらし、関連条件での劣化に対するRh安定性の改善を示した。
【0107】
実施例5:
フミン酸によるRh修飾の有無にかかわらず、劣化完全配合Rh-TWCに対するエタン水素化分解試験中のエタン転化率である(実施例2に従って製造)。結果を
図5に示す。劣化条件:1000℃/レドックス/40時間。反応条件:脱気前処理あり、0.5%C
2H
6及び2.8%H
2をN
2で均衡させた。結果によってRh活性金属表面積の定性的な比較が可能となり、エタン転化率の上昇は、活性Rh分散/金属表面積の増加を示す。参照触媒2.1と比較して、HA修飾(触媒2)は、劣化Rh活性金属表面積の増加をもたらし、TWC転化用にアクセスしやすいRhが得られた。
【0108】
前述の詳細な説明は、説明及び例示の目的で提供されており、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に示される現時点で好ましい実施形態の多くの変形例は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に留まる。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒物品を製造する方法であって、前記方法が、
フミン酸又はその誘導体と、PGMとの錯体を提供することと、
担体材料を提供することと、
前記錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
前記担持済み担体材料を基材上に配置することと、
前記担持済み担体材料を加熱して、前記担体材料上に前記PGMのナノ粒子を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記PGMが、パラジウム、ロジウム、白金の1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PGMが、ロジウム及び/又は白金、好ましくは、ロジウムを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
フミン酸又はその誘導体と、PGMとの錯体を提供することは、PGMをフミン酸又はその誘導体とフルボ酸との混合物と接触させることを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
フミン酸又はその誘導体と、PGMとの錯体を提供することが、PGMを、CAS番号1415-93-6、68514-28-3及び68131-04-4の1つ以上によって定義される物質と接触させることを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記フミン酸又はその誘導体が、CAS番号1415-93-6によって定義される前記物質を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記錯体が、0.5~5、好ましくは0.8~4、より好ましくは0.9~3、更により好ましくは1~2、なおより好ましくは1.3~1.8のフミン酸対PGM原子質量比を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記担体材料が、酸化物、好ましくはAl
2O
3、SiO
2、TiO
2、CeO
2、ZrO
2、CeO
2-ZrO
2、V
2O
5、La
2O
3及びゼオライトのうちの1つ以上を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記担体材料が、アルミナ、好ましくはガンマ-アルミナを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記担体材料が、セリア-ジルコニアを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アルミナ及び/又は前記セリア-ジルコニアが、ドープされている、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アルミナ及び/又はセリア-ジルコニアが、ランタン、ネオジム、イットリウム、ニオブ、プラセオジム、ハフニウム、モリブデン、チタン、バナジウム、亜鉛、カドミウム、マンガン、鉄、銅、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、セシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムのうちの1つ以上の酸化物、好ましくはランタン、ネオジム、及びイットリウムのうちの1つ以上の酸化物でドープされている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記担持済み担体材料が、スラリーの形態で前記基材上に配置されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記スラリーが、
水中でPGM塩と、フミン酸又はその誘導体とを接触させて、水溶液中でフミン酸又はその誘導体とPGMとの錯体を形成することと、
前記担体材料を前記水溶液と接触させることによって、前記錯体を前記担体材料に適用して、担持済み担体材料を形成することと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤のうちの1つ以上を、前記水溶液に添加することと、を含む方法によって調製される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記スラリーが、
水中でPGM塩と担体材料とを接触させて、担体材料懸濁液を形成することと、
前記担体材料懸濁液をフミン酸又はその誘導体と接触させて、担持済み担体材料を形成することであって、前記担持済み担体材料が、上部に担持された錯体を有する担体材料を含み、前記錯体が、フミン酸又はその誘導体と前記PGMとの錯体を含む、ことと、
任意選択的に、酸素貯蔵材料、好ましくはセリア-ジルコニア、助触媒塩、結合剤、酸又は塩基、増粘剤、及び還元剤の1つ以上を前記担体材料懸濁液に添加することと、を含む方法によって調製される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記PGMが、ロジウムを含み、前記担体材料が、アルミナを含み、前記スラリーが、セリア-ジルコニアを更に含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる触媒物品であって、排出処理システムにおいて使用するためのものである、触媒物品。
【国際調査報告】