(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】撹拌タンク反応器内でケイ素含有材料を製造するプロセス
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20241219BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241219BHJP
C01B 33/029 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
C01B33/029
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024521279
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2021086900
(87)【国際公開番号】W WO2023117047
(87)【国際公開日】2023-06-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドレーゲル,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,モーリッツ
(72)【発明者】
【氏名】フリッケ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】カリャーキナ,アレーナ
(72)【発明者】
【氏名】クラインライン,クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】クナイスル,セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】スコウ,ゼバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ティルマン,ヤン
【テーマコード(参考)】
4G072
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072FF06
4G072GG03
4G072GG04
4G072HH04
4G072NN13
4G072RR01
4G072RR11
4G072RR17
4G072RR30
4G072UU30
5H050AA07
5H050BA16
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB11
5H050FA13
5H050GA02
5H050GA22
5H050GA29
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA07
5H050HA14
5H050HA15
(57)【要約】
多孔質粒子の存在下でケイ素前駆体の熱分解によってケイ素含有材料を製造するプロセスであって、ケイ素は多孔質粒子の細孔内及び表面に堆積され、ケイ素前駆体の熱分解はガス横断反応器の反応域で行われ、粒子は、加熱領域内の動作する近接クリアランスである撹拌機によって熱分解中に反応域内を循環される、プロセス。撹拌機構は請求項1に定義されたように近接しているプロセス、このプロセスによって得られるケイ素含有材料、該ケイ素含有材料を含むアノード材料、アノード及びリチウムイオン電池。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質粒子の存在下でのケイ素前駆体の熱分解によるケイ素含有材料の製造プロセスであって、ケイ素が多孔質粒子の細孔内及び表面上に堆積され、
前記ケイ素前駆体の熱分解が、ガス横断反応器の反応域内で起こり、前記粒子が、加熱領域内の近接クリアランスである攪拌機によって熱分解中に前記反応域内で循環される、プロセス。
ただし、下記式1において、
【数1】
hの全ての値の半分について、反応域における近接クリアランスW(h)がW(h)>0.9である場合に、撹拌機構は近接クリアランスである(式中、u
R(h)=高さ座標hの断面における撹拌機構の外周、u
B(h)=高さ座標hの断面における反応器の内周)。
【請求項2】
前記反応器の前記反応域が回転対称である、請求項1に記載のプロセス。
ただし、下記式1
【数2】
(式中、
W(h)=2つの回転面の回転軸に垂直な2つの平面状断面の円周の比率として定義される、回転対称反応器内の撹拌機構の近接クリアランス(hは高さ座標を表す)、
u
R(h)=平面断面を通る回転軸に垂直な回転面の複数の任意の点hにおいて、下記式2に従って計算される円形内側断面の内側断面の円周、
u
R(h)=2πr
R(h) (2)
r
R(h)=回転軸から撹拌機構の外側輪郭までの距離(撹拌機構は、それに取り付けられた全ての構成要素を含む)、
u
B(h)=平面断面を通る回転軸に垂直な回転面の各任意の点hにおいて、下記式3に従って計算される円形外側回転面の外側回転面の円周(回転面は、回転軸の周りの反応器の内側輪郭の回転によって形成される)、
u
B(h)=2πr
B(h) (3)
r
B(h)=反応器の内側輪郭の回転軸までの距離)
において、hの全ての値の半分について、反応域における近接クリアランスW(h)がW(h)>0.9でなければならない場合に、撹拌機構は近接クリアランスである。
【請求項3】
前記ケイ素前駆体の堆積の過程で、計量添加が、1時間当たりに使用される前記多孔質粒子の細孔容積1cm
3当たり0.1~2gのSiの割合で行われる、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記堆積の過程で、前記ケイ素前駆体を、1時間当たりの前記反応域における前記反応器の最大流れ断面積1m
2当たり1~700kgのSiの割合で計量投入する、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ケイ素前駆体の熱分解が0.08~5MPaで起こる、請求項1~4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記ケイ素前駆体の熱分解が280~900℃で行われる、請求項1~5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
近接クリアランスの撹拌機を備えた前記反応器の前記反応域における床温度が、100~1000℃の範囲である、請求項1~6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
複数の反応器を含むカスケード反応器システムにおいて実施される、請求項1~7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
以下の少なくとも段階1~3を含む、請求項7に記載のプロセス。
段階1:反応器Aに多孔質粒子を充填し、該粒子を前処理し、続いて前処理した粒子を反応器B又は貯蔵容器に移すか、又は当該材料が反応器Aに残る。
段階2:不活性ガス及び/又はケイ素前駆体を含有する少なくとも1つの反応性成分及び/又は少なくとも1つのケイ素を含まない前駆体からなるガスの流れを反応器Bに通し、
前記反応性成分の熱分解が前記多孔質粒子の表面上及び細孔内で起こる温度に反応器を調整する。反応器B中の粒子床が、粒子床の運動状態が1~10の範囲のフルード数で記述され得るように、近接クリアランスの撹拌機で循環される。気相が反応器Bに供給され、反応器B内の粒子床が、前記反応性成分の平均滞留時間に対する循環時間の比率が1未満になるように、近接クリアランスの撹拌要素によって循環される。ケイ素が前記多孔質粒子の細孔の中及び上に導入された後、ケイ素含有材料が、反応器C又は中間貯蔵のための貯留容器に移送されるか、又は当該材料が反応器B内に残る。
段階3:官能化のためのケイ素含有粒子の後処理及び/又はケイ素含有粒子の表面のコーティング。規定された温度への粒子の冷却及び反応器Cからのケイ素含有材料の回収。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載のプロセスによって製造可能なケイ素含有材料。
【請求項11】
請求項10に記載のケイ素含有材料を含むリチウムイオン電池用アノード材料。
【請求項12】
請求項11に記載のアノード材料でコーティングされた集電体を含むアノード。
【請求項13】
請求項10に記載のケイ素含有材料を含有する少なくとも1つのアノードを含むリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多孔質粒子の存在下でのケイ素前駆体の熱分解によるケイ素含有材料の製造プロセスであって、ケイ素は、多孔質粒子の細孔内及び表面上に、近接クリアランスである撹拌機を備えたガス横断反応器内で堆積されるプロセス、該プロセスによって得ることができるケイ素含有材料、該ケイ素含有材料を含有するアノード材料、アノード及びリチウムイオン電池。
【背景技術】
【0002】
電力の貯蔵媒体として、リチウムイオン電池は、現在、最も高いエネルギー密度を有する最も実用的な電気化学エネルギー貯蔵装置である。リチウムイオン電池は、主に、携帯用電子機器の分野において、ツールに、また、自転車、スクータ、又は自動車等の電気駆動輸送手段に利用される。対応する電池の負極(「アノード」)のための現在広く普及している活物質は、グラファイト状炭素である。しかし、このようなグラファイト状炭素の電気化学容量が比較的低いという欠点がある。これは理論的にグラファイト1グラム当たり最大372mAhであり、したがってリチウム金属で理論的に達成可能な電気化学容量のわずか10分の1程度に相当する。アノードのための代替的な活物質は、例えばEP1730800B1、US10,559,812B2、US10,819,400B2、又はEP3335262B1に記載されるように、ケイ素の添加を使用する。リチウムとともにケイ素は、ケイ素1グラム当たり3579mAhまでの非常に高い電気化学的に達成可能なリチウム含有量を可能にする二元の電気化学的に活性な合金を形成する(M.Obrovac、V.Chevrier Chem.Rev.2014、114、11444)。
【0003】
ケイ素中のリチウムイオンのインターカレーション及びデインターカレーションは、体積の非常に急激な変化を伴うという欠点を伴う。これは、完全なインターカレーションの場合、300%まで到達し得る。このような体積の変化は、ケイ素含有活物質を厳しい機械的負荷にさらし、活物質が最終的に分解してしまう可能性がある。この活物質及び電極構造において、電解研削とも呼ばれるこのプロセスは、電気的接触が失われるため、電極の容量が不可逆的に失われる。
【0004】
さらに、ケイ素含有活物質の表面は、電解質の構成成分と反応して、連続的に不動態化保護層(固体電解質界面相、SEI)を形成する。形成された成分はもはや電気化学的に活性ではない。それら内部のリチウム結合は、もはや系に利用できず、したがって、電池の容量の顕著かつ連続的な損失につながる。電池の充電/放電中のケイ素の体積の極端な変化のため、SEIは規則的に崩壊し、これは、ケイ素含有活物質のまだ占有されていない表面がさらに露出され、次いでさらなるSEI形成を受けることを意味する。有用な容量に対応する完全なセル中の可動性リチウムの量は、カソード材料によって制限されるので、ますます消費され、ほんの数サイクル後の電池の容量は、性能の観点から許容できない程度まで低下する。
【0005】
複数回の充放電サイクルの過程における容量の減少は、フェージング又は連続的容量の損失とも呼ばれ、一般に不可逆的である。
【0006】
リチウムイオン電池のアノード用の活物質として、一連のケイ素-炭素複合粒子が記述されてきたが、ここでケイ素は、ガス又は液体前駆体から出発して多孔質炭素粒子に組み込まれる。
【0007】
多相反応系において、多孔質固体と流体前駆体との良好な接触が必要であることは一般的知識である(F.Schueth Chem.Unserer Zeit 2006、40、92~103)。
【0008】
例えば、US10,147,950B2は、CVD(化学気相成長法)又はPE-CVD(プラズマ強化化学気相成長法)のプロセスによる、好ましくは粒子の撹拌を伴う、300~900℃の高温での回転管状炉又は同等の炉タイプにおける多孔質炭素中のモノシランSiH4からのケイ素の堆積を記述する。このプロセスは、2モル%のモノシランと不活性ガスとしての窒素との混合物を用いる。ガス混合物中のケイ素前駆体の濃度が低い結果として、反応時間は非常に長い。また、回転管状炉内の反応器容積に対する粒子床の比は、通常、非常に好ましくないが、それは、そうでなければガス流による粒子のかなりの排出があるからである。
【0009】
ガス-固体反応を実施する別の方法、したがってケイ素を多孔性出発材料に組み込む操作のための別の方法は、ガス流動床を含む。ガス流動床において、固体粒子の床は緩められ、ガスの上昇流によって広範囲に運ばれ、その結果、固体の床は全体として液体様挙動を示す(VDI-Waermeatlas 11版、L3.2節Flow forms and pressure loss In fluidized beds、pp.1371~182、Springer Verlag、Berlin Heidelberg、2013]。
【0010】
ガス流動床は、一般に流動床とも呼ばれる。流動床を生成するための手順は、流動化(fluidization又はfluidizing)とも呼ばれる。
【0011】
ガス流動床では、固体粒子は非常によく分散している。その結果、固体とガスとの間に非常に大きな接触領域が形成され、これはエネルギー及び物質移動プロセスに理想的に利用することができる。ガス流動床は、一般に、非常に良好な物質移動事象及び熱伝達事象によって、並びに均一な温度分布によって特徴付けられる。物質移動及び熱伝達プロセスの質は、特に流動床中での反応によって得られる生成物の均質性にとって重要であり、流動化状態の均質性と相関し得る。その結果、均質な流動床又は均質な流動状態の形成は、均一な生成物特性を有する生成物の製造のための流動床プロセスの利用に不可欠である。
【0012】
流動化特性は、粒子の粒径及び固体密度の関数として分類することができる。例えば、粒径d50<20μmを有し、粒子とガスとの間の密度差が1000kg/m3より大きい粒子は、GeldartクラスC(凝集性)に分類される[D.Geldart、Types of gas fluidization、Powder Technology 7(1973)258]。GeldartクラスCの粒子は、流動状態に容易に変換できないことを特徴とする。粒径が小さいため、粒子間の引力の効果は、ガス流の結果として一次粒子に作用する力と同程度かそれより大きい。これに対応して、全体としての流動床の上昇及び/又はチャネルの形成などの影響が生じる。チャネルが形成される場合、流動床の代わりに管が粒子床に形成され、流動化ガスはこれらの管を優先的に流れるが、床の大部分は横断流を全く受けない。このため、流動化は均質性を達成しない。ガス速度が床中の一次粒子の最小流動化速度を有意に超えて増加する場合、個々の粒子からなる弱凝集体が経時的に形成され、これは、完全に又は部分的に流動化され得る。典型的な挙動は、異なるサイズの弱凝集体を有する層の形成である。流入基部の真上の最下層では、これらの弱凝集体は非常に大きく、非常にわずかな移動しか示さないか、又は全く移動しない。上の層では、より小さい弱凝集体があり、これは流動化される。最上層において、最小の弱凝集体が存在し、ガス流によって部分的に同伴され、プロセスにおける技術的問題を構成する。このような粒子床の流動化挙動は、大きな気泡の形成及び流動床の低膨張によってさらに特徴付けられる。文献では、この挙動は、「弱凝集体気泡流動化」(ABF)とも呼ばれる(Shabanian,J.、Jafari,R.、Chaouki,J.,Fluidization of Ultrafine Powders、IRECHE.、4巻、N.1,16-50)。
【0013】
当業者には、ABFによって流動化された床は、流動床内の不均質性並びに関連する不均質な物質移動及び熱伝達条件のため、均質な特性を有する物質の生成に適さないことが明らかである。
【0014】
この理由から、GB2580110B2は、例えば、1.25体積%のモノシランを含む流動床中で50μmを超えるサイズ(D50)を有する粒子の流動化を行う。しかし、反応終了後、得られた粒子は、20μm未満の必要とされる目標サイズまで粉砕されなければならない。この流動床において、20μm未満の粒子の流動化は、重度の弱凝集の事例及び多孔質炭素粒子の不均質な浸潤につながるであろう。
【0015】
弱凝集体の形態の20μm未満の粒子を主に均質な流動床に変換するために流動化を補助する既知の手段がある。例えば、US7,658,340B2は、流動化ガスによって及ぼされる力に加えて、振動力、磁力、音響力、回転/遠心力、又はそれらの組み合わせ等の付加的な力の成分の入力を通して、流動床内のSiO2ナノ粒子(Geldart クラスC)からなる弱凝集体のサイズが、主として均質な流動床が形成されるようにどのように影響を及ぼされるかを記述する。
【0016】
Cadoretら(Cadoret,L.、Reuge,N.、Pannala,S.、Syamlal,M.、Rossignol,C.、Dexpert-Ghys,J.、Coufort,C.、Caussat,B.、Silicon Chemical Vapor Deposition on macro and submicron powders in a fluidized bed、Powder Technol.、190、185~191、2009)は、モノシランSiH4からのケイ素の、振動する流動床反応器における非多孔質のサブミクロンサイズの酸化チタン粒子上への堆積を記述する。振動の入力は、流動床中の弱凝集体を300~600μmの範囲のサイズに制限することを可能にした。
【0017】
流動化を補助する手段を伴わない流動床プロセスは、20μm未満のサイズの粒子を均質に流動化できないため、多孔質マトリックス粒子にケイ素を組み込む/堆積させるプロセスには不適切である。不均質な流動床のため、均質な生成物を生成することは不可能である。
【0018】
流動化を補助する手段を有する流動床プロセスは、20μm未満の粒子の流動化が大きな技術的複雑さを伴うので、多孔質マトリックス粒子にケイ素を組み込む/堆積させるプロセスにとって不利である。さらなる複雑さは、資本投資及び保守のための大きな支出/費用に関連する。
【0019】
流動化を補助する手段を有する流動床プロセスによるケイ素の組み込みのさらなる欠点は、プロセスの過程で、粒子密度又は表面コンシステンシーなどの一次粒子の特性が変化することである。これらの変化は、弱凝集体の形成に対して未知の影響を有するが、プロセスレジームについては、そのような形成は既知であるべきである。全プロセス運転時間にわたって均質なプロセス条件を保証することは不可能である。
【0020】
流動床技術のさらなる欠点は、一次多孔質粒子からなる弱凝集体の流動化のために、ガス流が必要とされ、一次粒子及び/又は比較的小さい弱凝集体の排出をもたらすことである。
【0021】
流動床技術の基本的な欠点は、均質な流動床を形成するための流動化ガスの流れが流動床中の粒子/弱凝集体のサイズに依存することである。その結果、計量される反応性ガスの量及び反応性ガスと多孔質粒子との接触時間は、粒子床の流動化及び混合の状態に依存する。流動床プロセスでは、例えば、ガス状反応性成分の粒子床との接触時間は、ガス速度を低下させることによってのみ増加させることができる。しかし、ガス速度は、流動化及び混合の状態を保証するための重要な変数である。
【0022】
流動床技術の欠点を解決するための1つの可能性は、粒子床と気相との混合が流れとは無関係であることである。
【0023】
US2020/0240013A1は、撹拌床反応器内でのケイ素含有ガスからのケイ素の、より小さいミリメートル範囲の平均粒径を有する粒子への堆積を記述する。粒径のために、使用される床材料は非常に高い流動性を有すると仮定される。記述された装置によって、ガスと固体との間の交換は、中央撹拌スクリューの使用を通じて行われ、それによって同時に、撹拌床の開口部を通じて反応ガスが供給される。ミリメートル範囲の粒子については、流動床に粒子を持ってくるのに大きな流動化ガスが必要になるので、この特許出願は、特にこの範囲の粒子の処理の利点に向けられる。
【0024】
しかし、US2020/0240013A1で使用される撹拌機は、20μm未満の凝集粒子を循環させるには不適切である。
【0025】
技術文献から、撹拌床中の粒子は、多種多様な異なる撹拌要素を使用して循環させることができることが知られている(M.Mueller、Feststoffmischen(固体混合)、Chemie Ingenieur Technik 2007、79、7)。例えば、近接クリアランスであるヘリカル撹拌機の使用は、反応器内で粒子を横方向に上向きに輸送し、滑り止め材料のために粒子の相対運動を伴う循環流を生成する。反応器壁への粒子の付着が防止される。
【0026】
粒子床の運動状態を記述するパラメータは、回転システムにおける重量力に対する遠心力の比を示すフルード数(Fr)である。
【0027】
【0028】
この式において、rcは、システムに関連する特性半径である。回転する混合ツールを有するシステムの場合、rcは撹拌要素の外径に対応する。回転ドラムを有するシステムの場合、rcは容器の内側半径である。円形周波数ω=2πnは、回転システムの回転速度nに依存する。重力gによる加速度を介して、重量力の影響が考慮される。低いフルード数の場合、重量力成分が支配的であるため、材料の半径方向輸送は低い。粒子床の循環は不適切である。他方、高いフルード数の場合、遠心力成分が支配的であり、材料を容器壁に対して過度に移動させる。ここでも、粒子床の循環は不適切である。
【0029】
気相と撹拌粒子床との間の接触時間を記述するためのパラメータは、反応器内のガス状反応性成分の滞留時間である。平均滞留時間t
Vは、反応器容積と計量気相
【数2】
の体積流量との比率として計算することができる。
【0030】
【0031】
撹拌床反応器における均質な反応条件を評価するためのさらなる重要な尺度は、ケイ素前駆体の滞留時間t
vに対する粒子床循環時間t
uの比t
u/t
vである。粒子床循環時間t
uは、反応器容積V
Rと循環粒子
【数4】
の体積流量との比率として計算される。
【0032】
【0033】
撹拌要素によって循環される粒子の体積流量
【数6】
は、単位時間当たりに撹拌要素によって接線方向に変位される粒子体積として定義され、一般に以下の式によって記述される。
【0034】
【0035】
循環粒子の体積流量は、回転速度nと、撹拌要素の個々の撹拌ユニットiによって接線方向に変位される全ての体積の合計との積である。各個々の撹拌ユニットの幾何学的寸法は、回転軸rR,inner,iに対する撹拌要素の内縁の距離によって、回転軸rR,outer,iに対する撹拌要素の外縁の距離によって、及びそれぞれの撹拌ユニットの上側輪郭ho.i(r)及び下側輪郭hu.i(r)によって記述される。
【0036】
比tu/tvが、1未満の値を採用する場合、粒子循環のプロセスは、ガスによる床の流れの横断よりも速く、ガスと粒子との間に均一な分布を生成する。比tu/tvについて1を超える値では、ガスは、床自体が循環されるよりも速く撹拌床を通って流れる。結果として、撹拌床において、異なる堆積条件を有する区域が形成され、床における不均質な生成物分布がもたらされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】欧州特許第1730800号明細書
【特許文献2】米国特許第10,559,812号明細書
【特許文献3】米国特許第10,819,400号明細書
【特許文献4】欧州特許第3335262号明細書
【特許文献5】米国特許第10,147,950号明細書
【特許文献6】英国特許第2580110号明細書
【特許文献7】米国特許第7,658,340号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2020/0240013号明細書
【非特許文献】
【0038】
【非特許文献1】M.Obrovac、V.Chevrier Chem.Rev.2014、114、11444
【非特許文献2】F.Schueth Chem.Unserer Zeit 2006、40、92~103
【非特許文献3】VDI-Waermeatlas 11版、L3.2節Flow forms and pressure loss In fluidized beds、pp.1371~182、Springer Verlag、Berlin Heidelberg、2013
【非特許文献4】D.Geldart、 Types of gas fluidization、Powder Technology 7(1973)258
【非特許文献5】Shabanian,J.、Jafari,R.、Chaouki,J.,Fluidization of Ultrafine Powders、IRECHE.、4巻、N.1,16-50
【非特許文献6】Cadoret,L.、Reuge,N.、Pannala,S.、Syamlal,M.、Rossignol,C.、Dexpert-Ghys,J.、Coufort,C.、Caussat,B.、Silicon Chemical Vapor Deposition on macro and submicron powders in a fluidized bed、Powder Technol.、190、185~191、2009
【非特許文献7】M.Mueller、Feststoffmischen(固体混合)、Chemie Ingenieur Technik 2007、79、7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
この背景に対して、その目的は、リチウムイオン電池のアノードにおいて活物質として使用される場合、多孔質粒子及びケイ素前駆体から出発して高いサイクル安定性を可能にする、好ましくはリチウムイオンに対して高い貯蔵容量を有するケイ素含有材料を製造するためのプロセスであって、技術的に実施が簡単であり、先行技術の上述の方法、特に粒子の排出、反応時間に関して影響を及ぼす欠点がないプロセス、及びその必要とされる基礎となる設備を提供することであった。
【0040】
特に望まれるのは、撹拌機によって撹拌されない床のデッドスペースを最小限に抑えることである。したがって、シェルの加熱部分における材料は、最大の効率で運動状態に保たれ、エネルギーは、壁からベッドに伝達される。また、これにより、壁における粒子の付着が防止される。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明は、多孔質粒子の存在下でのケイ素前駆体の熱分解によるケイ素含有材料の製造プロセスを提供し、該プロセスにおいて、ケイ素は多孔質粒子の細孔内及び表面上に堆積され、
ケイ素前駆体の熱分解は、ガス横断反応器の反応域内で起こり、粒子は、加熱領域内の近接クリアランスである攪拌機によって熱分解中に反応域内で循環される、プロセス。
ただし、下記式1において、
【数8】
hの全ての値の半分について、反応域における近接クリアランスW(h)がW(h)>0.9である場合に、撹拌機構は近接クリアランスである
(式中、u
R(h)=高さ座標hの断面における撹拌機構の外周、u
B(h)=反応器の内周)。
【発明を実施するための形態】
【0042】
驚くべきことに、本発明における近接クリアランスである撹拌ツールの使用により、非常に小さな粒子、より具体的には20μm未満の粒子が反応器内で循環され、ケイ素を多孔質粒子に導入するプロセスが均質にかつケイ素前駆体の高い転化率で起こると同時に、ガス流とともに反応器からの粒子の放出が最小限であるような持続時間を気相と固体との間の接触時間が有するように、反応性成分のガス流が計量供給されることが見出された。
【0043】
流動化を補助する手段を有する流動床反応器と比較して、ガス横断撹拌反応器又は撹拌床反応器(SBR)は、SBRにおける圧縮及び予熱を必要とするガスの量がより少なく、ガスが流動化に利用されないので、より単純な構成を有する。これは、関連するアセンブリのコストがより低いことを意味する。SBRの場合、流動化を補助する手段の動作のための精巧な制御及び調節技術の必要はない。FBRと比較して、撹拌床が所与の質量に対してより少ない体積を占めるので、SBRはより小さなビルド(build)を有する。具体的な資本投資コストはより低い。
【0044】
GB2580110B2と比較して、本発明のプロセスにおいてさらなる操作工程は必要ない。
【0045】
流動床反応器と比較して、粒子循環は気相の供給とは無関係である。より長い滞留時間が可能であり、このことは反応性成分のより高い転化率をもたらす。
【0046】
本発明のプロセスにおける撹拌は、粒子のみを循環させる。粒子は撹拌機によって巻き上げられない。
【0047】
ガス流は、好ましくは、ガス流による本発明のプロセスにおける粒子の巻き上げが最小限であり、したがって反応器からの粒子の放出が同様に最小限であるように寸法決めされる。同時に、ガス流は、好ましくは、使用される反応性成分の転化率が最大になるように寸法決めされる。
【0048】
無次元フルード数によって表される回転撹拌機速度パラメータの適切な選択のため、及び適切な計量供給速度のため、均質な堆積条件が可能である。
【0049】
US2020/0240013A1に対し、本発明のプロセスは、近接クリアランスである撹拌機の使用によって改善される。
【0050】
回転撹拌機速度は、好ましくは、粒子床循環時間が流体反応性成分、より具体的には多孔質粒子の滞留時間よりも小さくなるように設定される。その結果、流体相と固相との充分に効果的なマクロ混合が生じ、固相中の全ての粒子の均質な処理がもたらされる。
【0051】
このプロセスのさらなる経済的利点は、非発明のプロセスとは対照的に、より高いケイ素収率にある。また、多孔質粒子上及び特に多孔質粒子中のケイ素の堆積は特に均一であり、リチウムイオン電池のアノードにおいて活物質として使用される場合、得られるケイ素含有材料の高い安定性がもたらされ、同時にサイクルにおける低い体積変化がもたらされる。
【0052】
W(h)は、2つの回転面の回転軸に垂直な2つの平面状断面の円周の比率として定義される、2つの回転対称反応器内の撹拌機構の近接クリアランス、(hは高さ座標を表す)、内側回転面は、撹拌機構の完全な1回転によって形成され、回転軸から撹拌機構の外側輪郭までの距離rR(h)によって特徴付けられる。撹拌機構は、それに取り付けられた全ての構成要素を含む。回転軸に垂直な回転面の各任意の点hにおける平面断面は、円形の断面を形成する。内側断面の円周は、以下のように計算される。
uR(h)=2πrR(h)
【0053】
外側回転面は、回転軸の周りの反応器の内側輪郭の回転によって形成される。これは、距離rB(h)によって記述される。反応器の内側輪郭は、それに取り付けられた全ての構成要素を含む。回転軸に垂直な外側の回転面の任意の断面の円周は、以下のように算出される。
uB(h)=2πrB(h)
【0054】
円周を使用して、近接クリアランスは、以下のように定義される。
【数9】
【0055】
一般的に言えば、反応器は、1つ以上の撹拌機構を含み得る。各個々の撹拌機構の輪郭は、完全な回転によって回転面を形成する。これらの回転面は別々に存在してもよい。好ましくは、それらは互いに重ね合わされてもよい。個々の回転面又は重ね合わされた回転面を、回転軸にそれぞれ垂直な任意の点で区分することは、円周が確認され得る図形を生成する。複数の図形が生成される場合、全体の円周は、個々の円周を合計することによって決定される。
【0056】
一般的に言えば、反応器は、1つ以上の反応器部分からなってもよく、それらは、好ましくは、それぞれ回転対称であり、相互に接続される。全ての反応器壁の全体が図形を包む。撹拌機構の回転軸に垂直な任意の点でこの図形を区分することにより、結果として得られる図形の円周を決定することができる。近接クリアランスW(h)は、回転対称反応器の場合と同様の方法で計算される。
【0057】
近接クリアランスはhによって変化し得る。撹拌機の構成は、hの全ての値の少なくとも半分について、反応域内の近接クリアランスW(h)がW(h)>0.9である場合に本発明に従い、このために定義されるパラメータはW(h50%)である。1つの好ましい実施形態では、W(h50%)>0.95である。特に好ましい一実施形態では、W(h50%)>0.97である。特に好ましい1つの実施形態では、W(h50%)>0.99である。反応域は、撹拌された粒子床が反応性成分と接触し、反応性成分が分解される反応器内の領域である。プロセスの特定の場合について、1より大きいW(h50%)値も可能である。
【0058】
プロセスは、好ましくは、複数の反応器を含むカスケード反応器システムにおいて実施される。
【0059】
カスケード反応器における実施は、反応器の長い冷却及び加熱段階が低減されるという、1つの反応器のみにおける実施に勝る利点を有する。これは、ただ1つの反応器にわたる時間及びエネルギーの利点を有し、反応器材料の応力の低減につながる。カスケード反応器システムは、また、個々の反応器をその目的のために正確に設計できるという利点を提供する。カスケード反応器システムはまた、より容易に拡張可能であり、異なる数の反応器を互いに組み合わせて個々の段階を形成することを可能にする。
【0060】
1つの好ましい実施形態では、このプロセスは、少なくとも以下の段階1~3を含む。
【0061】
段階1:反応器Aに多孔質粒子を充填し、粒子を前処理し、続いて前処理した粒子を反応器B又は貯蔵容器に移すか、又は材料が反応器Aに残る。
【0062】
段階2:不活性ガス及び/又はケイ素前駆体を含有する少なくとも1つの反応性成分、及び/又は少なくとも1つのケイ素を含まない前駆体からなるガスの流れを反応器Bに通し、
反応性成分の熱分解が多孔質粒子の表面上及び細孔内で起こる温度に反応器を調整する。反応器B中の粒子床は、粒子床の運動状態が1~10の範囲のフルード数で記述され得るように、近接クリアランスである撹拌機で循環される。気相は反応器Bに供給され、反応器B内の粒子床は、反応性成分の平均滞留時間に対する循環時間の比率が1未満になるように、近接クリアランスの撹拌要素によって循環される。反応は、大気圧より低い圧力下及び大気圧より高い圧力下の両方で進行し得る。ケイ素が多孔質粒子の細孔の中及び上に導入された後、ケイ素含有材料は、反応器C、又は中間貯蔵のための貯留容器に移送されるか、又は材料は反応器B内に残る。
【0063】
段階3:官能化のためのケイ素含有粒子の後処理及び/又はケイ素含有粒子の表面のコーティング。規定された温度への粒子の冷却及び反応器Cからのケイ素含有材料の回収、及び好ましくは貯蔵容器への直接移送又は適切な容器への直接分配。
【0064】
段階1では、加熱可能及び/又は真空耐性及び/又は耐圧性反応器Aに多孔質粒子を充填する。この充填は、手動又は自動で行うことができる。
【0065】
反応器Aに多孔質粒子を充填することは、例えば、不活性ガス雰囲気下、又は好ましくは周囲空気下で行うことができる。使用される不活性ガスは、例えば水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素若しくは二酸化炭素、又はそれらの混合物、例えばフォーミングガスを含み得る。アルゴン又はより具体的には窒素が好ましい。
【0066】
自動充填は、例えば、計量スクリュー、スターホイール、振動トラフ、プレート型計量システム、ベルト型計量システム、真空計量システム、ネガティブ計量システム、又は例えば、サイロ、バッグシュート、若しくは別の容器システムからの別の計量システムを使用して達成され得る。
【0067】
反応器Aにおいて段階1で粒子を前処理する目的は、粒子から空気/酸素、水又は分散剤、例えば界面活性剤又はアルコール、及び不純物を除去することである。これは、不活性ガスによる不活性化、1000℃までの温度上昇、0.01mbarまでの圧力の低下、又は個々の操作工程の組み合わせによって達成することができる。使用される不活性ガスは、例えば水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素若しくは二酸化炭素、又はそれらの混合物、例えばフォーミングガスを含み得る。アルゴン又はより具体的には窒素が好ましい。
【0068】
段階1における前処理の目的はまた、さらなる物質を用いて多孔質粒子の化学的表面性を変化させることであってもよい。添加は、乾燥の前又は後に行うことができ、さらなる加熱工程を、材料を反応器Bに移す前に行うことができる。物質は、ガス形態、固体、液体で、又は溶液として反応器に導入されてもよく、その考えられるものとしては、混合物、エマルジョン、懸濁液、エアロゾル又は発泡体が挙げられる。含まれる物質は、例えば、二酸化炭素、水、水酸化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化水素酸、リン酸、硝酸、塩酸、アンモニア、リン酸二水素アンモニウム、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム及びアルコキシドを含み得る。
【0069】
さらなる反応器又は容器への多孔質粒子の移送は、例えば、落下管、連続コンベヤー、フローコンベヤー/吸引又は圧力搬送ユニット(例えば、真空コンベヤー、輸送ブロワー)、機械的コンベヤー(例えば、ドライブ付きローラーコンベヤー、スクリューコンベヤー、円形コンベヤー、循環コンベヤー、バケットユニット、スターホイールロック、チェーンコンベヤー、スクレーパーコンベヤー、ベルトコンベヤー、振動コンベヤー)、重力コンベヤー(例えば、シュート、ローラーベッド、ボールベッド、レールベッド)、及び非連続コンベヤー、床ベース及びレールフリー(例えば、自動化車両、手動フォークリフトトラック、電気フォークリフトトラック)、ドライバーレス輸送システム(DTS)、エアクッション車両、ハンドカート、電気カート、自動車(トラクタ、ワゴン、フォークリフトスタッカ)、移送キャリッジ、移送/リフトキャリッジ、棚アクセス装置(コンバータ有り/無し、湾曲した経路に従うことができる)、床ベースのレールバウンド(rail-bound)(例えば、プラント鉄道、軌道車両)、フロアフリー(floor-free)(例えば、トロリートラック)、クレーン(例えば、ブリッジクレーン、ポータルクレーン、ジブクレーン、タワークレーン)、電気オーバーヘッドトラック、小型容器輸送システム、固定(例えば、エレベータ、サービスリフト及びチェリーピッカー(cherry picker)、段階的コンベヤ)によって達成され得る。
【0070】
段階2では、反応器B内の前処理された材料は、好ましくは100~1000℃、より好ましくは250~600℃、特に好ましくは300~500℃の温度にされる。
【0071】
反応器Bは、温度の変化中、又は温度が達成されるとき、又は温度プロファイルの横断中に、少なくとも1つの不活性ガスからなるガス及び/又は少なくとも1つのケイ素前駆体及び/又は少なくとも1つのケイ素を含まない前駆体からなる少なくとも1つの反応性成分に交互に又は同時に横断される。段階2の間、特定された組成内で、連続して異なるガス組成が可能であるか、又は変更される。細孔容積に対する、少なくとも1つのケイ素前駆体を有する反応性成分含有気相の計量供給速度は、反応器Bに導入される全ての多孔質粒子の絶対細孔容積(cm3)に対する、1時間あたりに供給されるケイ素前駆体に含まれるケイ素の質量(g)として定義される。ケイ素前駆体の堆積の過程にわたり、計量添加は、好ましくは1時間当たりに使用される多孔質粒子の細孔容積1cm3当たり0.1~2g、より好ましくは0.5~1.5gのSiの割合で行われる。
【0072】
代替案は、反応域の最大流れ断面積(m)に対して、1時間当たりに供給されるケイ素前駆体に含まれるケイ素の質量(kg)としての、少なくとも1つのケイ素前駆体を有する反応性成分含有気相の面積ベースの計量供給速度である。空の反応器について断面を測定する。反応域は、撹拌された粒子床が反応性成分と接触し、前駆体が分解される反応器内の領域である。
【0073】
供給される前駆体の計量供給速度は、反応器内の反応性成分の平均滞留時間に対する粒子床循環時間の比が常に1未満であるように計算される。
【0074】
気相は、連続的に又はパルス状に計量することができる。計量供給速度は、反応の操作時間中に変化し得る。
【0075】
回転対称反応器では、ケイ素前駆体は、堆積の過程にわたって、1時間当たりの外側回転面積1m2当たり好ましくは1~700kg、より好ましくは10~300kgのSiの割合で計量投入される。
【0076】
熱分解の全時間にわたって、反応器Bは、好ましくは、多孔質粒子の秤量された量に関して、堆積されるケイ素の量が、生成されるケイ素含有材料の目標容量に充分であるような量のケイ素含有反応性成分によって横断される。
【0077】
段階2における反応器Bの加熱は、例えば、一定の加熱速度で、又は複数の異なる加熱速度で行うことができる。加熱速度は、プロセスの設計に従って、例えば反応器のサイズ、反応器内の多孔質粒子の量、撹拌技術又は計画された反応時間に従って、当業者によって各個別の場合において適合され得る。
【0078】
段階2における反応器Bの加熱は、好ましくは1~100℃/分の加熱速度で、より好ましくは2~50℃/分の加熱速度で行われる。
【0079】
ケイ素前駆体が分解し始める温度は、例えば、使用される多孔質粒子、使用されるケイ素前駆体、及び分解の他の境界条件、例えば、分解時のケイ素前駆体の分圧及び分解反応に影響を及ぼす触媒などの他の反応性成分の存在などに依存し得る。
【0080】
段階2におけるケイ素前駆体の分解の間、温度は一定に保たれてもよいし、又は変更されてもよい。その目的は、使用に適したケイ素含有材料を生成しながら、ガスと撹拌床との接触時間中にケイ素前駆体をほぼ完全に転化させることである。
【0081】
段階2及び3の間の床温度、特に近接クリアランスの撹拌機を備えた反応器の反応域は、好ましくは100~1000℃、より好ましくは250~600℃、最も好ましくは300~500℃の範囲にある。例えば、SiH4の目標温度は、好ましくは300~500℃の間、より好ましくは320~450℃の範囲、非常に好ましくは320~430℃の範囲である。HSiCl3の目標温度は、好ましくは380~1000℃の間、より好ましくは420~600℃の範囲である。H2SiCl2の目標温度は、好ましくは350~800℃の間、より好ましくは380~500℃の範囲である。
【0082】
段階3において、及び/又は段階2の間のケイ素の堆積に加えて炭化水素が使用される場合、ケイ素前駆体を含有しないさらなる反応性成分として、炭化水素が分解し始め、炭素が多孔質粒子の細孔内及び表面上に堆積する目標温度が使用される。この実施形態における目標温度は、好ましくは250~1000℃、より好ましくは350~850℃、最も好ましくは400~650℃の範囲で選択される。
【0083】
段階2では、多孔質粒子からなる床は、好ましくは連続的に循環される。循環は、1つ以上の撹拌要素を介して、若しくは反応器自体の回転運動(例えば、Maschinenfabrik Gustav Eirichからの集中ミキサー)を介して、又はそれらの組み合わせを介して達成される。移動床の運動状態は、1~10の間のフルード数によって特徴付けられる。フルード数は、好ましくは1~6の間、より好ましくは1~4の間である。
【0084】
多孔質粒子の存在下でのケイ素前駆体の熱分解は、好ましくは0.05MPa~5MPa、より好ましくは0.08~0.7MPaで起こる。
【0085】
段階2からの気相は、不活性ガス及び/又はケイ素前駆体を含有する少なくとも1つの反応性成分及び/又はおそらく異なる組成の少なくとも1つのケイ素を含まない前駆体からなる。1つ又は複数のケイ素前駆体は、一般に混合された形態で、若しくは別々に、又は不活性ガス成分との混合物で、又は純粋な物質として反応器Bに導入することができる。反応性成分は、好ましくは、標準条件下(DIN 1343による)の反応性成分の総圧力の一部として、不活性ガス成分の分圧に基づいて0%~99%、より好ましくは最大50%、特に好ましくは最大30%、非常に特に好ましくは最大5%の不活性ガス成分を含有する。
【0086】
ケイ素含有反応性成分は、例えば熱処理などの選択された条件下で反応してケイ素を与えることができる少なくとも1つの前駆体を含有する。前駆体は、好ましくは、ケイ素-水素化合物、例えばモノシランSiH4、ジシランSi2H6、及びより高い直鎖状、分枝状又は環状ホモログ、ネオペンタシランSi5H12、シクロヘキサシランSi6H12、塩素含有シラン、例えばトリクロロシランHSiCl3、ジクロロシランH2SiCl2、クロロシランH3SiCl、テトラクロロシランSiCl4、ヘキサクロロジシランSi2Cl6、及びより高い直鎖状、分枝状又は環状ホモログ、例えば、1,1,2,2-テトラクロロジシランCl2HSi-SiHCl2、塩素化及び部分塩素化オリゴシラン及びポリシラン、メチルクロロシラン、例えば、トリクロロメチルシランMeSiCl3、ジクロロジメチルシランMe2SiCl2、クロロトリメチルシランMe3SiCl、テトラメチルシランMe4Si、ジクロロメチルシランMeHSiCl2、クロロメチルシランMeH2SiCl、メチルシランMeH3Si、クロロジメチルシランMe2HSiCl、ジメチルシランMe2H2Si、トリメチルシランMe3SiH、又は記載されたケイ素化合物の混合物を含む群から選択される。
【0087】
本プロセスの1つの特定の実施形態では、モノシラン又はシランの混合物、例えば、モノシランSiH4、トリクロロシランHSiCl3、ジクロロシランH2SiCl2、モノクロロシランH3SiCl及びテトラクロロシランSiCl4の混合物(各成分は0~99.9重量%で存在し得る)は、反応器内への配置の直前にのみ好適なプロセスによって生成される。一般的に言えば、これらのプロセスは、トリクロロシランHSiCl3から開始し、これは、好適な触媒(例えば、AmberLyst(R)A21DRY)上で転位されて、記載された混合物の他の成分を形成する。得られる混合物の組成は、主として、1つ以上の異なる温度での1つ以上の転位段階後に生じる混合物のワークアップ(work-up)によって決定される。
【0088】
特に好ましい反応性成分は、モノシランSiH4、オリゴマー又はポリマーシラン、特に一般式SinHn+2の直鎖状シラン(nは2~10の範囲の整数を含むことができる)、一般式-[SiH2]n-(式中、nは3~10の範囲の整数を含むことができる)の環状シラン、トリクロロシランHSiCl3、ジクロロシランH2SiCl2、及びクロロシランH3SiClを包含する群から選択され、これらは単独で又は混合物として使用されてもよく、非常に好ましくは、SiH4、HSiCl3、及びH2SiCl2を単独で又は混合物として使用する。
【0089】
反応器への反応性成分の計量供給中に、反応性成分の構成成分は、例えば、ガス状、液体又は昇華性固体形態で存在し得る。
【0090】
反応性成分は、好ましくは、例えば、ガス状、液体、固体、昇華性、又は場合により異なる強凝集状態の物質からなる組成物である。本プロセスの1つの変形形態では、反応性成分は、例えば、下から、又は側面から、又は特別な撹拌機を使用して、反応器内の多孔質粒子の床に直接導入される。
【0091】
さらに、段階2及び/又は3の反応性成分は、例えばホウ素、窒素、リン、ヒ素、ゲルマニウム、鉄又はニッケルを含有する化合物に基づくドーパントなどのさらなる反応性構成成分を含んでもよい。ドーパントは、好ましくは、アンモニアNH3、ジボランB2H6、ホスファンPH3、ゲルマンGeH4、アルサンAsH3、鉄ペンタカルボニルFe(CO)4及びニッケルテトラカルボニルNi(CO)4を包含する群から選択される。
【0092】
また気相中に存在し得る反応性構成成分は、水素、又は1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、1~10個の炭素原子を有する不飽和炭化水素、例えば、エテン、アセチレン、プロペン、メチルアセチレン、ブチレン、ブチン(1-ブチン、2-ブチン)、イソプレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン、ビニルアセチレン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、環状不飽和炭化水素、例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン又はノルボルナジエン、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、p-、m-、o-キシレン、スチレン(ビニルベンゼン)、エチルベンゼン、ジフェニルメタン又はナフタレン、他の芳香族炭化水素、例えば、フェノール、o-、m-、p-クレゾール、シメン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ピリジン、アントラセン又はフェナントレンを含む群から選択される炭化水素、ミルセン、ゲラニオール、チオテルピネオール、ノルボルナン、ボルネオール、イソボルネオール、ボルナン、カンファー、リモネン、テルピネン、ピネン、ピナン、カレン、フェノール、アニリン、アニソール、フラン、フルフラール、フルフリルアルコール、ヒドロキシメチルフルフラール、ビスヒドロキシメチルフラン、並びに多数のそのような化合物を含む混合画分、例えば天然ガス凝縮物、原油蒸留物又はコーキングオーブン凝縮物からのもの、流動接触分解装置(FCC)、水蒸気分解装置又はフィッシャー-トロプシュ合成プラントからの生成物流からの混合画分など、又は、非常に一般的には、木材、天然ガス、原油及び石炭の処理からの炭化水素含有物質流を含む。
【0093】
1つの特に好ましい実施形態では、段階2の第1の反応サイクルにおいて、少なくとも1つのケイ素前駆体を含有する反応性成分が処理され、段階2の第2の反応サイクルにおいて、少なくとも1つの炭化水素を含有し、好ましくはケイ素を含まない反応性成分が処理される。これらの2つの工程を繰り返すことによって、例えば、外向きの自由ケイ素表面を有さないケイ素含有材料を得ることが可能である。
【0094】
任意選択で、段階2における上流反応サイクルでは、さらなる炭化水素含有のケイ素を含まない反応性成分が使用される。この手段によって、例えば、多孔質粒子と堆積されたケイ素との間に炭素層を有し、任意選択で外側炭素層を追加的に担持するケイ素含有材料を得ることができ、これは、外向きの自由ケイ素表面が存在しないことを意味する。
【0095】
1つの好ましい実施形態では、反応器Bにおける温度、圧力、圧力変化又は差圧測定値及びガス流測定値は、常套の機器及び測定方法を用いて決定される。慣例的な較正の後、異なる機器による測定は、同じ結果をもたらす。
【0096】
段階2における反応の経過は、好ましくは、反応の終了を認識し、したがって、反応器占有時間を最小限にするために、分析的に監視される。反応の経過を観察するための方法には、例えば、固体反応器内容物構成成分とガス状反応器内容物構成成分との比を変化させることによって反応の経過を決定するための発熱又は吸熱事象を決定するための温度測定、及び反応中のガス空間の組成の変化の観察を可能にするさらなる技術が含まれる。本プロセスの1つの好ましい変形形態では、気相の組成は、ガスクロマトグラフ及び/又は熱伝導率検出器及び/又は赤外線分光計及び/又はラマン分光計及び/又は質量分析計によって決定される。1つの好ましい実施形態では、熱伝導率検出器を使用して水素含有量を決定し、及び/又はガスクロマトグラフ若しくはガス赤外分光計を使用して、存在するあらゆるクロロシランを決定する。本プロセスの別の好ましい変形形態では、水素とシランの分離を可能にする技術的構成要素が使用される。この分離は、例えば、濾過及び/又は膜技術(溶液-拡散モデル及び流体力学モデル)、吸着、化学吸着、吸収若しくは化学吸着又は分子ふるい(例えば、ゼオライト)を介して行われ得る。
【0097】
この成分は、ガス状反応生成物としての水素の場合、ガス循環プロセスを可能にする。その場合、段階2で排出されるガスは洗浄され、及び/又はケイ素含有反応性成分の画分が増加され、その後、所望の量のケイ素が堆積されるまで反応器に戻される。別の実施形態では、ガスはその構成成分に分離され、そのように廃棄される。
【0098】
本プロセスのさらに好ましい変形形態では、反応器B又はガス排出部位は、発生する凝縮性又は再昇華性副生成物を除去するための技術的手段を備える。ここで1つの特に好ましい変形形態では、四塩化ケイ素は凝縮され、ケイ素含有材料から別々に除去される。
【0099】
本プロセスの1つの好ましい実施形態では、段階2における計量手順は複数回繰り返され、この場合、段階2において処理されるそれぞれのケイ素前駆体は、各場合において同じであっても異なっていてもよく、複数のケイ素前駆体の混合物も可能である。同様に、段階2で処理されるケイ素を含まない反応性成分は、各場合において同じであっても異なっていてもよく、又は異なる反応性成分の混合物からなってもよい。段階2における個々の計量手順の複数回の繰り返しの後、反応器Bにおける実施は、ケイ素含有粒子の反応器Cへの移送で終了する。
【0100】
本プロセスの段階3において、反応器C中のケイ素含有粒子は、後処理及び/又は不活性化及び/又はコーティングされ得る。これは、好ましくは、反応器Cを酸素で、より具体的には不活性ガスと酸素との混合物でパージすることによって行われる。このようにして、例えば、ケイ素含有材料の表面を修飾及び/又は官能化及び/又は不活性化することが可能である。例えば、ケイ素含有材料の表面に存在する任意の反応性基の反応を達成することが可能である。この目的のために、好ましくは最大で20体積%、より好ましくは最大で10体積%、特に好ましくは最大で5体積%の酸素、また好ましくは最大で100体積%、より好ましくは最大で10体積%、特に好ましくは最大で1体積%の水を含有する、窒素、酸素並びに任意選択でアルコール及び/又は水の混合物が好ましくは使用される。この工程は、好ましくは最大250℃、より好ましくは最大100℃、特に好ましくは最大50℃の温度で行われる。粒子表面はまた、不活性ガス及びアルコールを含むガス混合物で不活性化されてもよい。ここでは、窒素及びイソプロパノールが好ましく使用される。しかし、メタノール、エタノール、ブタノール、ペンタノール又はより長鎖の及び分岐アルコール及びジオールを使用することも可能である。
【0101】
粒子はまた、液体溶媒又は溶媒混合物中での分散によって不活性化されてもよい。この混合物は、例えば、イソプロパノール又は水溶液を含み得る。
【0102】
段階3における粒子の不活性化は、任意選択でC-、Al-及び/又はB-含有前駆体を200~800℃の温度で使用し、任意選択でその後酸素含有雰囲気で処理するコーティングによって達成することもできる。
【0103】
使用されるアルミニウム含有前駆体は、例えば、トリメチルアルミニウム((CH3)3Al)、アルミニウム2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート(Al(OCC(CH3)3CHCOC(CH3)3)3)、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム(Al(N(CH3)2)3)及びアルミニウムトリイソプロポキシド(C9H21AlO3)であり得る。
【0104】
使用されるホウ素含有前駆体は、例えば、ボラン(BH3)、トリイソプロピルボレート([(CH3)2CHO]3B)、トリフェニルボラン((C6H5)3B)及びトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(C6F5)3Bであり得る。
【0105】
しかし、段階3では、例えば、tert-ブチルリチウム及びトリメチルホスフェートの熱分解を介して固体電解質による粒子の後コーティングを導入することも可能である。
【0106】
本プロセスの段階3では、原則として、ケイ素含有材料は、任意選択で反応器C内に存在する不活性ガス雰囲気を保持しながら、反応器Cから取り出される。これは、例えば、以下の排出方法、すなわち、空気圧(大気圧より高い圧力又は大気圧より低い圧力によって)、機械的に(スターホイールロック、プレート排出、排出スクリュー又は反応器内の撹拌要素、ベルト排出)又は重量測定的に(ダブルフラップ又はダブルボール弁は、任意選択で振動補助を伴う)によって達成することができる。
【0107】
好ましいケイ素を含まない反応性成分は、1つ以上の炭化水素である。炭化水素の熱分解によって、一般に、多孔質粒子の細孔内及び表面に炭素を堆積させることが可能である。炭化水素の例は、1~10個の炭素原子、特に1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、好ましくはメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン及びシクロヘプタン、1~10個の炭素原子を有する不飽和炭化水素、例えば、エテン、アセチレン、プロペン又はブテン、イソプレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン、ビニルアセチレン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、環状不飽和炭化水素、例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン又はノルボルナジエン、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、p-、m-、o-キシレン、スチレン(ビニルベンゼン)、エチルベンゼン、ジフェニルメタン又はナフタレン、他の芳香族炭化水素、例えば、フェノール、o-、m-、p-クレゾール、シメン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ピリジン、アントラセン又はフェナントレン、ミルセン、ゲラニオール、チオテルピネオール、ノルボルナン、ボルネオール、イソボルネオール、ボルナン、カンファー、リモネン、テルピネン、ピネン、ピナン、カレン、フェノール、アニリン、アニソール、フラン、フルフラール、フルフリルアルコール、ヒドロキシメチルフルフラール、ビスヒドロキシメチルフラン、及び多数のそのような化合物を含む混合画分、例えば、天然ガス凝縮物、原油蒸留物又はコーキングオーブン凝縮物からのもの、流動接触分解装置(FCC)、水蒸気分解装置又はフィッシャー・トロプシュ合成プラントからの生成物流からの混合画分、又は非常に一般的には、木材、天然ガス、原油及び石炭の処理から生じる炭化水素含有物質流である。
【0108】
ケイ素を含まない反応性成分、すなわち、1つ以上の炭化水素を含むがケイ素前駆体を含まない反応性成分は、好ましくは、さらなる成分を含まないか、又は1つ以上の不活性ガス及び/又は例えば水素などの1つ以上の反応性構成成分及び/又は1つ以上のドーパントを含む。ドーパントは、例えば、ホウ素、窒素、リン、ヒ素、ゲルマニウム、鉄又はニッケルを含む化合物である。ドーパントは、好ましくは、アンモニアNH3、ジボランB2H6、ホスファンPH3、ゲルマンGeH4、アルサンAsH3及びニッケルテトラカルボニルNi(CO)4を包含する群から選択される。
【0109】
本明細書の目的のための反応器では、レトルトオーブン、管状反応器、撹拌床反応器、撹拌タンク反応器及びオートクレーブを包含する群から選択される反応器タイプが好ましい。特に好ましくは、撹拌反応器及びオートクレーブ、より好ましくは撹拌反応器、非常に好ましくは撹拌タンク反応器を使用することである。
【0110】
本プロセスの1つの特定の変形形態では、反応器A、B及びCは同じ容器である。反応器A、B及びCが同じ容器であることは除外されない。本プロセスの2つの特定の実施形態では、カスケード反応器は、2つの相互に依存した反応器のみからなる。第1の実施形態では、段階1及び2は同じ反応器内で行われる。第2の実施形態では、段階2及び3は、1つの反応器内で行われる。両方の場合において、反応器は、異なる温度域を有し得、それらは、大気圧下で、又は大気圧より低い圧力若しくは大気圧より高い圧力下で操作され得る。
【0111】
反応器は、調整可能、耐圧性及び真空耐性であり得、全ての組み合わせが可能である。しかし、反応器は、上述の特徴のうちの1つのみを満たすこともできる。
【0112】
反応器に対する技術的要件及び本発明の特定の変形形態に対する任意選択の特別な特徴
【0113】
反応器A:
- 反応器は、少なくとも調整可能である。
- 反応器は、真空耐性であってもよい。
- 多孔質粒子を予熱し、乾燥させ、不活性化するためのシステム。
- システムは、多孔質粒子の特定の添加/計量のために接続され得る(技術的記述については、段階1を参照)。
- 乾燥及び/又は多孔質粒子中の不純物の除去のために、凝縮性又は再昇華性物質の除去を可能にするシステムが接続されてもよい。
- 多孔質粒子が反応器Bに移送されることを可能にするシステムが接続されてもよい(技術的記述については、段階1を参照)。
【0114】
反応器B:
- 反応器は、少なくとも調整可能である。
- 本発明に従う撹拌機構を含む
- 反応ガスを計量投入するためのシステム
- 反応ガスを排出するためのシステム
- プロセスの単純化のために、水素分離器(技術的記述については、段階2を参照)が接続されてもよい。
- ガス状反応生成物中の凝縮性又は再昇華性副生成物を除去するために、凝縮又は再昇華による副生成物の除去を可能にする容器を接続することができる。
- 反応器C又は貯蔵容器への材料の移送を可能にするシステムが接続されてもよい(技術的記述については、段階1を参照)。
【0115】
反応器C:
- 反応器は、少なくとも調整可能である。
- 凝縮性又は再昇華性副生成物を除去するためのシステム。
- 凝縮又は再昇華による副生成物の除去を可能にする容器が接続されてもよい。
- 官能化のための反応ガスを計量投入するためのシステム
- 反応ガスを排出するためのシステム
- 貯蔵容器への材料の移送を可能にするシステムが接続されてもよい(技術的記述については、段階3を参照)。
【0116】
調整可能な反応器は、一般に反応器の内部の温度が、例えば-40~1000℃の間の範囲に調整され得るように操作され得る反応器である。より狭い温度範囲が可能である。
【0117】
本明細書の目的のためのカスケード反応器システムは、少なくとも2つの反応器の連結である。反応器の数の上限はない。互いに対する反応器A、B及びCの数、並びにそれらのサイズ、形状、材料及び構成も異なり得る。当業者は、全体としてカスケード反応器システムの出力を可能な限り効率的にするために、反応器の数及びそれらのサイズを互いに調整することができる。反応器は、互いに直接接続されてもよく、又は互いに局所的に分離されてもよく、この場合、充填は、移動可能な貯蔵容器によって行われる。2つ以上の反応器Bを互いに接続し、各反応工程を別個の反応器B内で行うことも考えられる。
【0118】
操作中、多孔質粒子及び得られるケイ素含有材料は、一般に固定床の形態をとってもよく、又は混合しながら撹拌された形態であってもよい。反応器A、B及びCにおいて多孔質粒子又は得られたケイ素含有材料を撹拌混合することが好ましい。しかし、段階2における反応性成分の熱分解の間、粒子は積極的に混合されなければならない。これは、例えば、全ての多孔質粒子と反応性成分との均質な接触、又は床における均質な温度分布を可能にする。粒子は、例えば、反応器内の内部を撹拌することによって、又は反応器全体を撹拌機の周りで移動させることによって循環させることができる。
【0119】
反応器A、B及びCのための構造のさらに好ましい形態は、循環のための移動撹拌要素を有する固定反応器である。循環の目的は、多孔質固体をガス状反応性成分と可能な限り均一に接触させることである。このために好ましい幾何形状は、円筒形反応器、円錐形反応器、球形、多面体、回転対称反応器、又はそれらの組み合わせである。撹拌要素の移動は、好ましくは回転移動である。他の形態の移動も同様に適切である。撹拌要素は、好ましくは撹拌シャフトを介して駆動され、撹拌シャフト毎に1つの撹拌要素又は複数の撹拌要素が存在してもよい。反応器A、B及びCには、複数の撹拌シャフトが組み込まれてもよく、その各々に1つの撹拌要素又は複数の撹拌要素があってもよい。主反応器軸は、好ましくは水平又は垂直に整列される。さらに好ましい実施形態では、撹拌シャフトは、任意の向きの反応器内に水平又は垂直に設置される。垂直に操作される反応器A、B及びCについて、好ましい構成形態は、例えば、撹拌要素又は複数の撹拌要素が、主撹拌シャフトによる回転運動によって床材料を混合するものである。さらなる可能性は、2つ以上の撹拌シャフトが平行に走る構成の形態である。他の可能性は、2つ以上の撹拌シャフトが互いに平行に動作しない構成の形態である。垂直に操作される反応器A、B又はCのための構造の別の形態は、スクリューコンベヤーの使用によって特徴付けられる。スクリューコンベヤーは、床材料を好ましくは中央に搬送する。本発明によるさらなる設計は、反応器の縁部に沿って回転するスクリューコンベヤー(Nauta(R)ミキサー、Hosokawa)である。構成の別の好ましい形態は、遊星撹拌システム又はスパイラル撹拌システムである。水平に操作される反応器A、B又はCについて、好ましい構成形態は、例えば、撹拌要素又は複数の撹拌要素が、主撹拌シャフトによる回転運動によって床材料を混合するものである。また、2つ以上の撹拌シャフトが平行に走る構成の形態も可能である。さらに好ましいのは、2つ以上の撹拌シャフトが互いに平行に動作しない構成の形態である。垂直に操作される反応器A、B又はCについて、好ましい撹拌要素は、ヘリカル撹拌機、スパイラル撹拌機、アンカー撹拌機を含む群から選択される要素、又は一般に、床材料を軸方向若しくは半径方向に、又は軸方向及び半径方向の両方に運搬し、本発明による近接クリアランスWを示す撹拌要素である。水平に操作される反応器A、B又はCの場合、1つのシャフト上に複数の撹拌要素があることが好ましい。水平に操作される反応器の撹拌要素のための本発明による構成の形態は、例えば、プラウシェア、パドル、ブレード撹拌機、スパイラル撹拌機、又は一般に床材料を軸方向及び半径方向の両方に搬送し、本発明による近接クリアランスWを示す撹拌要素である。近接クリアランスは、撹拌要素上の追加のスクレーパによって低減され得る。移動撹拌要素に加えて、反応器A、B又はCの可能性はまた、バッフルなどの剛性内部を含む。
【0120】
本発明のプロセスを実施するための反応器A、B又はCの構成については、それぞれの操作条件下で必要な機械的強度及び耐薬品性を有する場合、任意の材料が原則として適切である。耐薬品性に関して、反応器A、B又はCは、対応する固体材料、並びに媒体と接触している部品上に特定のコーティング又はめっきを有する耐薬品性でない材料(耐圧性)からなり得る。
【0121】
これらの材料は、本発明に従って、以下を含む群から選択される。
- (DIN CEN ISO/TR 15608による)材料グループ1~11の鋼、グループ31~38のニッケル及びニッケル合金、グループ51~54のチタン及びチタン合金、グループ61及び62のジルコニウム及びジルコニウム合金、並びにグループ71~76の鋳鉄に対応する金属材料、
- 単物質系における酸化物セラミック、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン(キャパシタ材料)、及び多物質系、例えば、チタン酸アルミニウム(酸化アルミニウム及び酸化チタンの混合形態)、ムライト(酸化アルミニウム及び酸化ケイ素の混合形態)、ジルコン酸チタン酸鉛(ピエゾセラミック)、又は酸化ジルコニウムで強化された酸化アルミニウム(ZTA-ジルコニア強化酸化アルミニウム)-Al2O3/ZrO2)などの分散セラミックを含むセラミック材料、
- 非酸化物セラミック、例えば炭化物、例は炭化ケイ素及び炭化ホウ素、窒化物、例は窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素及び窒化チタン、ホウ化物及びケイ化物、並びにこれらの混合物、並びに
- 粒状複合材料の群に属する複合材料、例えば、超硬合金、セラミック複合材、コンクリート及びポリマーコンクリート、繊維複合材料、例えば、ガラス繊維強化ガラス、金属マトリックス複合材(MMC)、繊維セメント、炭素繊維強化炭化ケイ素、自己強化熱可塑性プラスチック、鋼強化コンクリート、繊維強化コンクリート、繊維プラスチック複合材、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GRP)及びアラミド繊維強化プラスチック(ARP)、繊維セラミック複合材(セラミックマトリックス複合材(CMC))、例えば、金属マトリックス複合材(MMC)などの浸透複合材料、分散強化アルミニウム合金又は分散硬化ニッケル-クロム超合金、層状複合材料、例えばバイメタル、チタン-グラファイト複合材料、複合プレート及び複合チューブ、ガラス繊維強化アルミニウム及びサンドイッチ構造、並びに構造用複合材料。
【0122】
本発明のプロセスのための多孔質粒子は、好ましくは、硬質炭素、軟質炭素、メソ炭素、マイクロビーズ、天然グラファイト又は合成グラファイト、単層及び多層カーボンナノチューブ及びグラフェンの形態の非晶質炭素、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、混合ケイ素-アルミニウム酸化物、酸化マグネシウム、酸化鉛及び酸化ジルコニウムなどの酸化物、炭化ケイ素及び炭化ホウ素などの炭化物、窒化ケイ素及び窒化ホウ素などの窒化物、並びに以下の成分式によって記載され得るような他のセラミック材料を含む群から選択される。
少なくとも2つの係数0≦a、b、c、d、e、f、g≦1であり、a~g>0及びa*3+b*3+c*4+d*2+g*4+3*3+f*2であるAlaBbCcMgdNeOfSig。
【0123】
セラミック材料は、例えば、二元化合物、三元化合物、四元化合物、五元化合物、六元化合物又は七元化合物であってもよい。好ましいセラミック材料は、以下の成分式を有するものである。
非化学量論的窒化ホウ素BNz(z=0.2~1)、
非化学量論的炭窒化物CNz(z=0.1~4/3)、
炭窒化ホウ素BxCNz(x=0.1~20及びz=0.1~20)であって、x*3+43z*3、
ホウ素ニトリドオキシドBNzOr(z=0.1~1及びr=0.1~1)であって、33r*2+z*3、
ホウ素カルボニトリドオキシドBxCNzOr(x=0.1~2、z=0.1~1及びr=0.1~1)であって、x*3+43r*2+z*3、
ケイ素カルボキシドSixCOz(x=0.1~2及びz=0.1~2)であって、x*4+43z*2、
炭窒化ケイ素SixCNz(x=0.1~3及びz=0.1~4)であって、x*4+43z*3、
ケイ素ボロカルボニトリドSiwBxCNz(w=0.1~3、x=0.1~2及びz=0.1~4)であって、w*4+x*3+43z*3、
ケイ素ボロカルボキシドSiwBxCOz(w=0.10~3、x=0.1~2及びz=0.1~4)であって、w*4+x*3+43z*2
ケイ素ボロカルボニトリドオキシドSivBwCNxOz(v=0.1~3、w=0.1~2、x=0.1~4及びz=0.1~3)であって、v*4+w*3+43x*3+z*2、及び
アルミニウムボロシリコカルボニトリドオキシドAluBvSixCNwOz(u=0.1~2、v=0.1~2、w=0.1~4、x=0.1~2及びz=0.1~3)であって、u*3+v*3+x*4+43w*3+z*2。
【0124】
多孔質粒子は、ヘリウムピクノメトリーにより測定される密度が0.1~7g/cm3であることが好ましく、0.3~3g/cm3であることがより好ましい。これは、リチウムイオン電池の体積容量(mAh/cm3)を増大させるのに有利である。
【0125】
使用される好ましい多孔質粒子は、非晶質炭素、二酸化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、及び窒化ケイ素、又はこれらの材料に基づく混合材料であり、非晶質炭素、窒化ホウ素、及び二酸化ケイ素の使用が特に好ましい。
【0126】
多孔質粒子は、好ましくは≧0.5μm、より好ましくは≧1.5μm、最も好ましくは≧2μmの直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd50は、好ましくは≦20μm、より好ましくは≦12μm、最も好ましくは≦8μmである。
【0127】
多孔質粒子の体積加重粒径分布は、好ましくは直径パーセンタイルd10≧0.2μm~d90≦20.0μm、より好ましくはd10≧0.4μm~d90≦15.0μm、最も好ましくはd10≧0.6μm~d90≦12.0μmである。
【0128】
多孔質粒子は、好ましくは≦10μm、より好ましくは≦5μm、特に好ましくは≦3μm、最も好ましくは≦2μmの直径パーセンタイルd10を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd10は、好ましくは≧0.2μm、より好ましくは≧0.5、最も好ましくは≧1μmである。
【0129】
多孔質粒子は、好ましくは≧4μm、より好ましくは≧8μmの直径パーセンタイルd90を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd90は、好ましくは≦18μm、より好ましくは≦15、最も好ましくは≦13μmである。
【0130】
多孔質粒子の体積加重粒径分布は、好ましくは≦15.0μm、より好ましくは≦12.0μm、非常に好ましくは≦10.0μm、特に好ましくは≦8.0μm、最も好ましくは≦4.0μmのスパンd90-d10を有する。
【0131】
本発明のプロセスによって製造可能なケイ素含有材料の体積加重粒径分布は、好ましくは≧0.6μm、より好ましくは≧0.8μm、最も好ましくは≧1.0μmのスパンd90-d10を有する。
【0132】
多孔質粒子の体積加重粒径分布は、多孔質粒子の分散媒としてエタノールを用い、測定装置Horiba LA 950を用い、Mieモデルを使用する静的レーザー散乱法によって、ISO 13320に準拠して測定することができる。
【0133】
多孔質粒子は、好ましくは、個片化された粒子の形態で存在する。粒子は、例えば、単離又は弱凝集されてもよい。多孔質粒子は、好ましくは強凝集せず、好ましくは弱凝集しない。強凝集とは、一般に、多孔質粒子の製造の過程で、初めに一次粒子が形成されて融合し、及び/又は一次粒子が、例えば共有結合を介して互いに結合し、このようにして強凝集体を形成することを意味する。一次粒子は、通常、単離された粒子である。強凝集体又は単離された粒子は、弱凝集体を形成し得る。弱凝集体は、例えばファンデルワールス相互作用又は水素結合を介して互いに連結された強凝集体又は一次粒子の緩い凝集体である。弱凝集した強凝集体は、従来の混練及び分散技術によって強凝集体に容易に分割して戻すことができる。強凝集体は、これらの技術によって一次粒子に分解することができないか、又は部分的にのみ分解することができる。強凝集体、弱凝集体又は単離粒子の形態の多孔質粒子の存在は、例えば、従来の走査型電子顕微鏡(SEM)によって可視化することができる。マトリックス粒子の粒径分布又は粒径を決定するための静的光散乱法は、対照的に、強凝集体又は弱凝集体を区別することができない。
【0134】
多孔質粒子は、任意の所望の形態を有してもよく、したがって、例えば、破片状、板状、球状又は針状であってもよく、破片状又は球状粒子が好ましい。形態は、例えば、球形度ψ又は球形度Sによって特徴付けることができる。Wadellによる定義によれば、球形度ψは、物体の実際の表面積に対する等しい体積の球の表面積の比である。球の場合、ψの値は1である。この定義によれば、本発明のプロセスのための多孔質粒子は、好ましくは0.3~1.0、より好ましくは0.5~1.0、最も好ましくは0.65~1.0の球形度ψを有する。
【0135】
球形度Sは、表面上に投影された粒子の投影と同じ面積Aを有する等価円の円周と、この投影の測定された円周Uとの比
【数10】
である。理想的な円形度の粒子の場合、Sの値は1となるであろう。本発明のプロセスのための多孔質粒子について、球形度Sは、数に関する球形度分布のパーセンタイルS
90に対するS
10に基づいて、好ましくは0.5~1.0、より好ましくは0.65~1.0の範囲である。球形度Sは、例えば、個々の粒子の光学顕微鏡写真から、又は好ましくは10μm未満の粒子の場合、走査型電子顕微鏡を用いて、例えばImageJなどの画像解析ソフトウェアによるグラフィック評価によって測定される。
【0136】
多孔質粒子は、好ましくは、≧0.2cm3/g、より好ましくは≧0.6cm3/g、最も好ましくは≧1.0cm3/gのガスアクセス可能な細孔容積を有する。これは、高容量のリチウムイオン電池を得るのに有用である。ガスアクセス可能な細孔容積は、DIN 66134に準拠した窒素によるガス収着測定によって決定した。
【0137】
多孔質粒子は、好ましくは開気孔である。開気孔とは、一般に、細孔が、例えばチャネルを介して粒子の表面につながっており、好ましくは、周囲との物質移動、特にガス状化合物の移動の状態であり得ることを意味する。これは、ガス収着測定値(Brunauer, Emmett and Teller、「BET」による評価)、すなわち比表面積を使用して検証することができる。多孔質粒子は、好ましくは≧50m2/g、より好ましくは≧500m2/g、最も好ましくは≧1000m2/gの比表面積を有する。BET比表面積は、DIN 66131(窒素を用いる)に準拠して決定される。
【0138】
多孔質粒子の細孔は、任意の所望の直径、すなわち、一般に、マクロ細孔(50nm超)、メソ細孔(2~50nm)、及びミクロ細孔(2nm未満)の範囲の直径を有し得る。多孔質粒子は、異なる細孔タイプの任意の所望の混合物中で使用することができる。好ましくは、総細孔容積に基づいて30%未満のマクロ細孔を有する多孔質粒子、より好ましくはマクロ細孔を有さない多孔質粒子、非常に好ましくは5nm未満の平均細孔直径を有する少なくとも50%の細孔を有する多孔質粒子を使用する。非常に特に好ましくは、多孔質粒子は、2nm未満(決定方法:メソ細孔範囲におけるDIN 66134によるBJH(ガス吸着)及びミクロ細孔範囲におけるDIN 66135によるHorvath-Kawazoe(ガス吸着)に従う細孔径分布、マクロ細孔範囲における細孔サイズ分布の評価は、DIN ISO 15901-1に準拠した水銀ポロシメトリーによって行われる)の細孔直径を有する細孔のみを含む。
【0139】
好ましい多孔質粒子は、0.3cm3/g未満、より好ましくは0.15cm3/g未満のガスアクセス不可能な細孔容積を有するものである。このようにしても、リチウムイオン電池の容量を増大させることができる。ガスアクセス不可能な細孔容積は、以下の式によって決定することができる。
ガスアクセス不可能な細孔容積=1/純粋な材料密度-1/骨格密度。
【0140】
式中、純粋な材料密度は、相組成又は純粋な材料の密度(あたかも密閉気孔率を有していないかのような材料の密度)に基づく多孔質粒子の理論上の密度である。純粋な材料密度に関するデータは、例えば、Ceramic Data Portal of the National Institute of Standards(NIST、https://srdata.nist.gov/CeramicDataPortal/scd)において当業者によって見出すことができる。例えば、酸化ケイ素の純粋な材料密度は2.203g/cm3であり、窒化ホウ素の純粋な材料密度は2.25g/cm3であり、窒化ケイ素の純粋な材料密度は3.44g/cm3であり、炭化ケイ素の純粋な材料密度は3.21g/cm3である。骨格密度は、ヘリウムピクノメトリーによって決定される(ガスアクセス可能な)多孔質粒子の実際の密度である。
【0141】
明確にするために、多孔質粒子はケイ素含有材料とは異なることに留意されたい。多孔質粒子は、ケイ素含有材料を製造するための出発材料として作用する。一般に、好ましくは多孔質粒子の細孔内及び多孔質粒子の表面上に位置するケイ素は存在せず、より具体的には、ケイ素前駆体の堆積によって得られるケイ素は存在しない。
【0142】
多孔質粒子の細孔内及び表面へのケイ素の堆積によって本発明のプロセスにより得られるケイ素含有材料は、好ましくは0.5~20μmの範囲の直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒径分布を有する。d50値は好ましくは少なくとも1.5μm、より好ましくは少なくとも2μm以上である。直径パーセンタイルd50は好ましくは最大13μm、より好ましくは最大8μmである。
【0143】
ケイ素含有材料の体積加重粒径分布は、好ましくは直径パーセンタイルd10≧0.2μm~d90≦20.0μmの間、より好ましくはd10≧0.4μm~d90≦15.0μmの間、最も好ましくはd10≧0.6μm~d90≦12.0μmの間にある。
【0144】
ケイ素含有材料は、好ましくは≦10μm、より好ましくは≦5μm、特に好ましくは≦3μm、最も好ましくは≦1μmの直径パーセンタイルd10を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd10は、好ましくは≧0.2μm、より好ましくは≧0.4μm、最も好ましくは≧0.6μmである。
【0145】
ケイ素含有材料は、好ましくは≧5μm、より好ましくは≧10μmの直径パーセンタイルd90を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd90は、好ましくは≦20μm、より好ましくは≦15μm、最も好ましくは≦12μmである。
【0146】
ケイ素含有材料の体積加重粒径分布は、好ましくは≦15.0μm、より好ましくは≦12.0μm、より好ましくは≦10.0μm、特に好ましくは≦8.0μm、最も好ましくは≦4.0μmのスパンd90-d10を有する。ケイ素含有材料の体積加重粒径分布は、好ましくは≧0.6μm、より好ましくは≧0.8μm、最も好ましくは≧1.0μmのスパンd90-d10を有する。
【0147】
ケイ素含有材料の粒子は、好ましくは粒子の形態である。粒子は、単離又は弱凝集されてもよい。ケイ素含有材料は、好ましくは強凝集せず、好ましくは弱凝集しない。単離、弱凝集及び非強凝集という用語は、多孔質粒子に関して先に既に定義されている。強凝集体又は弱凝集体の形態のケイ素含有材料の存在は、例えば、従来の走査型電子顕微鏡(SEM)によって可視化することができる。
【0148】
ケイ素含有材料は、任意の所望の形態を有してもよく、したがって、例えば、破片状、板状、球状又は針状であってもよく、破片状又は球状粒子が好ましい。
【0149】
Wadellの定義によれば、球形度ψは、物体の実際の表面積に対する等しい体積の球の表面積の比である。球の場合、ψの値は1である。この定義によれば、本発明のプロセスによって利用可能なケイ素含有材料は、好ましくは0.3~1.0、より好ましくは0.5~1.0、最も好ましくは0.65~1.0の球形度ψを有する。
【0150】
球形度Sは、表面上に投影された粒子の投影と同じ面積Aを有する等価円の円周と、この投影の測定された円周Uとの比
【数11】
である。理想的な円形度の粒子の場合、Sの値は1となるであろう。本発明のプロセスによって利用可能なケイ素含有材料について、球形度Sは、数に関する球形度分布のパーセンタイルS
10-S
90に基づいて、好ましくは0.5~1.0、より好ましくは0.65~1.0の範囲である。球形度Sは、例えば、個々の粒子、好ましくは10μm未満の粒子について、走査型電子顕微鏡による光学顕微鏡写真から、例えばImageJなどの画像解析ソフトウェアによるグラフィック評価により測定される。
【0151】
リチウムイオン電池のサイクル安定性は、形態、材料組成、特にケイ素含有材料の比表面積又は内部気孔率によってさらに高めることができる。
【0152】
ケイ素含有材料は、ケイ素含有材料の総重量に基づいて、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~80重量%、非常に好ましくは30~60重量%、特に好ましくは40~50重量%の多孔質粒子を含有する。
【0153】
ケイ素含有材料は、ケイ素含有材料の総重量に基づいて、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~80重量%、非常に好ましくは30~60重量%、特に好ましくは40~50重量%の、ケイ素前駆体からの堆積によって得られるケイ素を含有する(好ましくはICP-OESなどの元素分析による決定)。
【0154】
多孔質粒子が二酸化ケイ素の形態でケイ素化合物を含む場合、例えば、ケイ素前駆体からの堆積を介して得られるケイ素の上述の重量%の数値は、元素分析によって確認されたケイ素含有材料中のケイ素質量から、元素分析によって確認された多孔質粒子中のケイ素質量を差し引き、その結果をケイ素含有材料の質量で割ることによって決定することができる。
【0155】
多孔質粒子中に堆積されたケイ素の体積は、ケイ素前駆体からの堆積によって得られたケイ素の質量分率を、ケイ素含有材料の全質量の割合として、ケイ素の密度(2.336g/cm3)で割った結果である。
【0156】
ケイ素含有材料の細孔容積Pは、ガスアクセス可能な細孔容積とガスアクセス不可能な細孔容積の合計の結果である。ケイ素含有材料のGurwitschガスアクセス可能な細孔容積は、DIN 66134に準拠した窒素を用いるガス収着測定によって決定することができる。
【0157】
ケイ素含有材料のガスアクセス不可能な細孔容積は、以下の式を使用して決定することができる。
ガスアクセス不可能な細孔容積=1/骨格密度-1/純粋な材料密度。
【0158】
式中、ケイ素含有材料の純粋な材料密度は、ケイ素含有材料に含まれる成分の理論上の純粋な材料密度の合計に、材料全体におけるそれらのそれぞれの重量ベースの割合を乗じたものから計算することができる理論上の密度である。したがって、例えば、ケイ素が多孔質粒子上に堆積されるケイ素含有材料の場合、
純粋な材料密度=ケイ素の理論上の純粋な材料密度*ケイ素の重量%単位の割合+多孔質粒子の理論上の純粋な材料密度*多孔質粒子の重量%単位の割合である。
【0159】
純粋な材料密度に関するデータは、例えば、Ceramic Data Portal of the National Institute of Standards(NIST、https://srdata.nist.gov/CeramicDataPortal/scd)から当業者によって得ることができる。例えば、酸化ケイ素の純粋な材料密度は2.203g/cm3であり、窒化ホウ素の純粋な材料密度は2.25g/cm3であり、窒化ケイ素の純粋な材料密度は3.44g/cm3であり、炭化ケイ素の純粋な材料密度は3.21g/cm3である。
【0160】
ケイ素含有材料の細孔容積Pは、ケイ素含有材料に含まれ、ケイ素前駆体の堆積から得られるケイ素の体積に基づいて、好ましくは0~400体積%の範囲、より好ましくは100~350体積%の範囲、特に好ましくは200~350体積%の範囲にある。
【0161】
ケイ素含有材料に含まれる孔は、ガスアクセス可能でもガスアクセス不可能でもよい。ケイ素含有材料のガスアクセス不可能な孔に対するガスアクセス可能な孔の体積の比は、一般に、0(ガスアクセス可能な細孔なし)~1(全ての細孔がガスアクセス可能である)の範囲にあり得る。ケイ素含有材料のガスアクセス不可能な孔に対するガスアクセス可能な孔の体積比は、好ましくは0~0.8の範囲、より好ましくは0~0.3の範囲、特に好ましくは0~0.1の範囲にある。
【0162】
ケイ素含有材料の細孔は、例えば、マクロ細孔(>50nm)、メソ細孔(2~50nm)及びミクロ細孔(<2nm)の範囲内にある任意の所望の直径を有し得る。ケイ素含有材料はまた、異なる細孔タイプの任意の所望の混合物を含有してもよい。ケイ素含有材料は、好ましくは、総細孔容積に基づいて最大で30%のマクロ細孔を含有し、特に好ましくは、マクロ細孔を有さないケイ素含有材料であり、非常に特に好ましくは、総細孔容積に基づいて少なくとも50%の細孔が5nm未満の平均細孔直径を有するケイ素含有材料である。より特に好ましくは、ケイ素含有材料は、最大で2nmの直径を有する細孔のみを有する。
【0163】
ケイ素含有材料は、少なくとも1つの寸法において、好ましくは最大で1000nm、より好ましくは100nm未満、非常に好ましくは5nm未満の構造サイズを有するケイ素構造を含む(決定方法:走査電子顕微鏡法(SEM)及び/又は高分解能透過型電子顕微鏡法(HR-TEM))。
【0164】
ケイ素含有材料は、好ましくは1000nm未満、より好ましくは100nm未満、非常に好ましくは5nm未満(決定方法:走査型電子顕微鏡(SEM)及び/又は高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM))の層厚を有するケイ素層を含む。ケイ素含有材料はまた、粒子の形態のケイ素を含んでもよい。ケイ素粒子は、好ましくは最大で1000nm、より好ましくは100nm未満、非常に好ましくは5nm未満(決定方法:走査型電子顕微鏡(SEM)及び/又は高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM))の直径を有する。ここでのケイ素粒子の数値は、好ましくは、顕微鏡画像における粒子の周りの円の直径に基づく。
【0165】
ケイ素含有材料は、好ましくは最大で100m2/g、より好ましくは30m2/g未満、特に好ましくは10m2/g未満の比表面積を有する。BET比表面積は、DIN 66131(窒素を用いる)に準拠して決定される。したがって、ケイ素含有材料をリチウムイオン電池のアノードの活物質として使用する場合、SEI形成を減少させることができ、初期クーロン効率を高めることができる。
【0166】
ケイ素前駆体から堆積されたケイ素含有材料中のケイ素は、例えばLi、Fe、Al、Cu、Ca、K、Na、S、Cl、Zr、Ti、Pt、Ni、Cr、Sn、Mg、Ag、Co、Zn、B、P、Sb、Pb、Ge、Bi、希土類又はこれらの組み合わせを含む群から選択されるドーパントをさらに含んでもよい。ここで、リチウム及び/又はスズが好ましい。ケイ素含有材料中のドーパントの量は、ケイ素含有材料の総重量に基づいて、好ましくは最大で1重量%、より好ましくは最大で100ppmであり、ICP OESによって決定することができる。
【0167】
ケイ素含有材料は、一般に、圧縮荷重及び/又は剪断荷重下で驚くほど高い安定性を有する。ケイ素含有材料の圧力安定性及び剪断安定性は、例えば、圧縮荷重下(例えば、電極圧縮時)及び剪断荷重下(例えば、電極の調製時)でのSEMにおけるケイ素含有材料の多孔質構造の変化の非存在又は実質的な非存在によって明らかにされる。
【0168】
ケイ素含有材料は、炭素などの元素を任意選択でさらに含んでもよい。炭素は、好ましくは、最大で1μm、好ましくは100nm未満、より好ましくは5nm未満、非常に好ましくは1nm未満の層厚を有する薄層の形態で存在する(SEM又はHR TEMによって測定可能)。これらの炭素層は、ケイ素含有材料の細孔内及び表面上の両方に存在し得る。異なる前駆体の交互の計量供給の対応する反復を通じたケイ素含有材料中の異なる層の順序、及びそれらの数もまた任意である。したがって、第1に、多孔質粒子上に、例えば炭素などの多孔質粒子とは異なるさらなる材料の層があり得、その層は、ケイ素層又はケイ素粒子の層を有し得る。また、多孔質粒子とケイ素層又はケイ素粒子からなる層との間に、多孔質粒子の材料とは異なる材料のさらなる層があるか否かにかかわらず、ケイ素層上又はケイ素粒子の層上に、多孔質粒子の材料と異なるか又は同じであり得るさらなる材料の層が存在することも可能である。
【0169】
ケイ素含有材料は、好ましくは≦50重量%、より好ましくは≦40重量%、特に好ましくは≦20重量%の追加の元素を含有する。ケイ素含有材料は、好ましくは≧1重量%、より好ましくは≧3重量%、特に好ましくは≧2重量%の追加の元素を含有する。重量%での数値は、ケイ素含有材料の総重量に基づく。代替の実施形態では、ケイ素含有材料は、追加の元素を含有しない。
【0170】
本発明のさらなる主題は、リチウムイオン電池のアノードのためのアノード材料における活物質としてのケイ素含有材料の使用、及びリチウムイオン電池を製造するためのそのようなアノードの使用である。
【0171】
アノード材料は、好ましくは、本発明のプロセスによって利用可能なケイ素含有材料と、1つ以上のバインダーと、任意選択でさらなる活物質としてのグラファイトと、任意選択で1つ以上のさらなる導電性成分と、任意選択で1つ以上の添加剤とを含む混合物をベースとする。
【0172】
アノード材料におけるさらなる導電性成分の使用により、電極内及び電極と集電体との間の接触抵抗を低減することが可能であり、それにより、本発明のリチウムイオン電池の通電容量が改善される。好ましいさらなる導電性成分の例は、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ又は金属粒子、例えば銅である。
【0173】
アノード材料は、アノード材料の総重量に基づいて、好ましくは0~95重量%、より好ましくは0~40重量%、最も好ましくは0~25重量%の1つ以上のさらなる導電性成分を含む。
【0174】
リチウムイオン電池のアノードでは、ケイ素含有材料は、アノード材料中に存在する全活物質に基づいて、好ましくは5~100重量%、より好ましくは30~100重量%、最も好ましくは60~100重量%で存在し得る。
【0175】
好ましいバインダーは、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、より具体的にはリチウム塩又はナトリウム塩、ポリビニルアルコール、セルロース又はセルロース誘導体、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリイミド、特にポリアミドイミド、又は熱可塑性エラストマー、特にエチレン-プロピレン-ジエンターポリマーである。上記バインダーのアルカリ金属塩、特にリチウム塩又はナトリウム塩も特に好ましい。バインダーの酸基の全て又は好ましくは一部は、塩の形態で存在し得る。バインダーは、好ましくは100000~1000000g/molのモル質量を有する。2つ以上のバインダーの混合物を使用してもよい。
【0176】
グラファイトとしては、一般に天然又は合成グラファイトを使用することができる。グラファイト粒子は、好ましくは、直径パーセンタイルd10>0.2μm~d90<200μmの間の体積加重粒径分布を有する。
【0177】
添加剤の例は、細孔形成剤、分散剤、流動制御剤又はドーパントであり、例えばリチウム元素である。
【0178】
アノード材料のための好ましい配合物は、好ましくは5~95重量%のケイ素含有材料と、0~90重量%のさらなる導電性成分と、0~90重量%のグラファイトと、0~25重量%のバインダーと、0~80重量%の添加剤とを含み、重量%での数値は、アノード材料の総重量に基づき、アノード材料の全ての構成成分の分率は合計で100重量%になる。
【0179】
アノードインク又はアノードペーストを構成するアノード材料の構成成分は、好ましくは溶媒、好ましくは水、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド及びエタノール、及びこれらの溶媒の混合物を含む群から選択される溶媒中で、好ましくはローターステーター機、高エネルギーミル、遊星混練機、撹拌ボールミル、振盪プレート又は超音波装置を使用して処理される。
【0180】
アノードインク又はアノードペーストは、好ましくは2~8.5のpHを有する(例えば、SenTix RJDプローブを備えたWTW pH340i pHメーターを使用して、20℃で測定される)。
【0181】
アノードインク又はアノードペーストは、ドクターブレードによって、例えば銅箔又は別の集電体に塗布することができる。他のコーティング方法、例えば回転コーティング(スピンコーティング)、ローラーコーティング、浸漬又はスロットダイコーティング、塗装又は噴霧もまた、本発明に従って使用され得る。
【0182】
銅箔を本発明のアノード材料でコーティングする前に、銅箔は、例えばポリマー樹脂又はシランをベースとする市販のプライマーで処理されてもよい。プライマーは銅への接着の改善をもたらすことができるが、それ自体は一般に実質的に電気化学的活性を有さない。
【0183】
アノード材料は、通常、一定重量まで乾燥される。乾燥温度は、使用される成分及び使用される溶媒によって導かれる。乾燥温度は、好ましくは20~300℃の間にある。アノードコーティングの乾燥層厚を意味する層厚は、好ましくは2~500μmである。
【0184】
最後に、電極コーティングは、規定された気孔率を設定するためにカレンダー処理されてもよい。このように製造された電極は、好ましくは15~85%の気孔率を有し、これはDIN ISO 15901-1に準拠した水銀ポロシメトリーによって測定することができる。ここで、このようにして求めることができる細孔容積の25~85%は、0.01~2μmの細孔径を有する細孔であることが好ましい。
【0185】
本発明のさらなる主題は、カソードと、エッチングされたケイ素含有材料を含むアノードと、これらの電極に対する2つの導電性接続部と、セパレータと、セパレータ及び2つの電極が含浸される電解質と、上述の構成要素を収容するケーシングとを含むリチウムイオン電池である。
【0186】
本発明の関連において、リチウムイオン電池という用語は、セルも包含する。セルは、一般に、カソード、アノード、セパレータ、及び電解質を含む。1つ以上のセルに加えて、リチウムイオン電池は、好ましくは、電池管理システムをさらに備える。電池管理システムは、一般に、例えば電子回路によって、特に充電状態を認識するため、徹底的な放電から保護するため、又は過充電から保護するために、電池を制御する役割を果たす。
【0187】
本発明に従って使用することができる好ましいカソード材料としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物(ドープ又は非ドープ)、リチウムマンガン酸化物(スピネル)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウム鉄ホスフェート、リチウムコバルトホスフェート、リチウムマンガンホスフェート、リチウムバナジウムホスフェート、又はリチウムバナジウム酸化物が挙げられる。
【0188】
セパレータは、一般に、電気絶縁性のイオン透過性膜であり、好ましくはポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)若しくはポリプロピレン(PP)、又はポリエステル、又は対応する積層体から作製される。あるいは、電池製造において通例であるように、セパレータは、ガラス又はセラミック材料からなっていてもよく、又はガラス又はセラミック材料でコーティングされていてもよい。セパレータは、従来、第1の電極を第2の電極から分離し、それにより電極間の導電性接続(短絡)を防止する。
【0189】
電解質は、好ましくは、非プロトン性溶媒中に1つ以上のリチウム塩(=導電性塩)を含む溶液である。導電性塩は、好ましくは、リチウムヘキサフルオロホスフェート、リチウムヘキサフルオロアルセネート、過塩素酸リチウム、リチウムテトラフルオロボレート、リチウムイミド、リチウムメチド、リチウムトリフルオロメタンスルホネートLiCF3SO3、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)LiN(CF3SO2)2及びリチウムボレートを含む群から選択される。導電性塩の濃度は、溶媒に基づいて、好ましくは0.5mol/l~問題の塩の溶解限度である。前記濃度はより好ましくは0.8~1.2mol/lである。
【0190】
使用される溶媒は、個々に又はそれらの混合物として、好ましくは環状カーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、ジオキソラン、アセトニトリル、炭酸の有機エステル、又はニトリルである。
【0191】
電解質は、好ましくは、例えばビニレンカーボネート又はフルオロエチレンカーボネートなどの膜形成剤を含む。このようにして、本発明のプロセスに従って得られたエッチングされたケイ素含有材料を含むアノードのサイクル安定性の大幅な改善を達成することが可能である。この改善は、主として、活性粒子の表面上の固体電解質界面相の形成に起因する。電解質中の膜形成剤の割合は、好ましくは0.1~20.0重量%の間である。
【0192】
リチウムイオンセルの電極の実際の容量を可能な限り最適に互いに整合させるために、正極及び負極の材料を絶対容量に関して均衡させることが有利である。この関連において特に重要なのは、二次リチウムイオンセルの最初の又は最初の充電/放電サイクル(活性化として知られる)において、被覆層がアノード中の電気化学的に活性な材料の表面上に形成されるという事実である。この被覆層は、固体電解質界面相(SEI)と呼ばれ、一般に、主に電解質分解生成物と、ある特定の量のリチウムとからなり、したがって、さらなる充電/放電反応にはもはや利用できない。SEIの厚さ及び組成は、使用されるアノード材料及び使用される電解質溶液の性質及び品質に依存する。
【0193】
グラファイトの場合、SEIは特に薄い。グラファイト上では、典型的には、第1の充電工程において移動性リチウムの5~35%の損失がある。これに対応して、電池の可逆容量も低下する。
【0194】
本発明のプロセスによって得られるエッチングされたケイ素含有活物質を有するアノードの場合では、第1の充電工程は、好ましくは最大で30%、より好ましくは最大で20%、最も好ましくは最大で10%の移動性リチウムの損失を伴い、これは、例えばUS10,147,950B1において先行技術に記載されている値をはるかに下回る。
【0195】
上記のようなそのようなリチウムイオン電池の製造に利用されるすべての物質及び材料は知られている。そのような電池の部品の製造、及び電池を得るためのそれらの組み立ては、電池製造の分野で知られているプロセスに従って行われる。
【0196】
本発明のプロセスによって得られるケイ素含有材料は、著しく改善された電気化学的特性で顕著であり、高い体積容量及び優れた性能特性を有するリチウムイオン電池をもたらす。本発明のプロセスによって得られるケイ素含有材料は、リチウムイオン及び電子に対して透過性であり、したがって電荷輸送を可能にする。リチウムイオン電池におけるSEIは、本発明のプロセスによって得られるケイ素含有材料によって大幅に低減することができる。さらに、本発明のプロセスによって得られるケイ素含有材料の設計のため、活物質の表面からのSEIの剥離はもはや存在しないか、又は少なくとも大幅に低減される。これらは全て、本発明のプロセスによって得ることができるケイ素含有材料をアノードが含有するそのようなリチウムイオン電池の部品において高いサイクル安定性をもたらす。
【0197】
以下の実施例は、本明細書に記載される本発明のさらなる解明に役立つ。
【0198】
特性決定に使用した分析方法及び機器は以下の通りであった。
【0199】
無機分析/元素分析:
実施例で報告したC含量は、Leco CS230分析器を使用して確認し、O並びに適切な場合にはN及びH含量の決定のために、Leco TCH-600分析器を使用した。他の報告された元素の定性的及び定量的決定は、ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析(Optima 7300 DV、Palkin Elmer製)によって行った。この分析のために、試料をマイクロ波(マイクロ波3000、Anton Paar製)中で酸消化(HF/HNO3)に供した。ICP-OES決定は、酸性水溶液(例えば、飲料水、廃水及び他の水の酸性化サンプル、土壌及び沈殿物の王水抽出物)の分析に使用されるISO 11885(「Water quality - Determination of selected elements by inductively coupled plasma optical emission spectrometry(ICP-OES)(ISO 11885:2007)、独逸語版EN ISO 11885:2009」)によって導かれる。
【0200】
粒径の決定:
本発明の関連において、粒径分布は、ISO 13320に準拠したHoriba LA 950を用いた静的レーザー散乱によって決定した。ここで、試料の調製において、個々の粒子のサイズではなく弱凝集体のサイズを測定しないように、測定溶液中の粒子の分散に特に注意を払わなければならない。測定のため、粒子をエタノールに分散させた。この目的のために、分散体を、測定前に、必要であれば、LS24d5ソノトロードを備えたHielscherモデルUIS250v超音波実験室機器において、250W超音波で4分間処理した。
【0201】
BET比表面積測定:
材料の比表面積を、Sorptomatic 199090機器(Porotec)又はSA-9603MP機器(Horiba)を用いて、BET法(窒素を用いたDIN ISO 9277:2003-05による測定)により、窒素によるガス吸着によって測定した。
【0202】
骨格密度:
骨格密度、すなわち、外部からガスアクセス可能な細孔空間のみの体積に基づく多孔質固体の密度を、DIN 66137-2に準拠したHeピクノメトリーによって決定した。
【0203】
ガスアクセス可能な細孔容積:
Gurwitschガスアクセス可能な細孔容積は、DIN 66134に準拠した窒素によるガス収着測定によって決定した。
【0204】
転化率:
転化率は、使用した出発物質(反応物)のモル量に対する転化された出発物質(反応物)のモル量の比率として計算される。これらの実施例において、転化率は使用したSiH
4分子のいくつがSiに転化されるかを示す。
【数12】
【0205】
収率:
収率は、実際に得られた生成物の質量と理論的に考えられる生成物の最大質量との比率である。収率は、質量比量としてパーセントで表される。
【数13】
【0206】
それは、ガス流によって同伴される粒子の損失の計量である。
【実施例】
【0207】
使用したグレード4.0のSiH4は、Linde GmbHから入手した。
【0208】
実施例の全てにおいて、以下の非晶質炭素を多孔質出発材料として使用した。
- 比表面積=1907m2/g
- 細孔容積=0.96cm2/g
- 平均体積加重粒径D50=2.95μm
- 粒子密度=0.7g/cm2
- 凝集性、Geldart分類:C
【0209】
実験例を実施する際に使用した反応器は以下の通りであった。
【0210】
反応器(本発明):
全ての発明例は、プロセスの特定の変形例内で実施され、反応器A、B及びCは同じ容器である。使用した反応器は、内側半径rB=121.5mm及び高さh=512mmを有する円筒形下部(ビーカー)と、複数の接続部(例えば、ガス供給、ガス排出、温度測定及び圧力測定である)を有する蓋と、平坦な基部とからなっていた。壁の内部は存在しなかった。反応器の容積はVB=24Lであった。反応器内部輪郭を回転軸周りに回転させることにより生じた回転面の任意の断面の円周は763.4mmと算出される。使用した撹拌機は、半径rR=119.5mmを有するマルチフライト(multi-flight)ヘリカル撹拌機であった。ヘリカル撹拌機の完全な回転は、回転面を生成する。この回転面の回転軸線に垂直な任意の断面の円周は750.8mmである。2つの円周から、W=0.98の近接クリアランスが得られる。螺旋の高さは、反応器内部のはっきりした高さの約75%に相当した。撹拌粒子床の高さが螺旋の高さより低くなるように反応器を充填した。したがって、反応域の50%超は、近接クリアランスW=0.98を有する撹拌器の領域にある。ビーカーをジャケットヒーターで電気的に加熱した。温度は、原則としてヒーターと反応器の間で測定した。床の下半分(反応器基部の125mm上方)に、外径d=6mmを有する2つの浸漬管を介してガスを供給し、ガスを撹拌床に直接導入した。
【0211】
流動床反応器(非発明):
非発明の比較例1に使用した流動床反応器は、160mmの外径及び1200mmの高さを有する円筒形部分からなっていた。円筒形部分は、底部チャンバー及び流動床反応器自体から構成された。これら2つの部分は、ガス透過性基部によって互いに分離された。円筒形反応器部分の上部に、断面が円筒形反応器部分と比較してその断面積の2倍に広がる反応器部分が続いた。反応器の上端には、ガスを排出するためのフィルタ要素を有する蓋があった。反応温度は、反応器壁の加熱によって調節し、加熱領域の高さは、ガス透過性基部から始まる円筒長さの80%であった。プロセス温度に利用される計量は、加熱ジャケットと反応器外壁との間の温度であった。加熱は電気によるものであった。したがって、流動床反応器へのガス流の前に、流動化ガスをガスヒーターで予熱した。流動化ガス流を、直接制御された磁気弁を使用してパルス化した。流動床の品質の尺度として、流動化指数を用いた。
【0212】
予備試験では、最小流動化速度を、流動床の圧力損失を測定することによって決定した。
【0213】
流動化指数の定義:流動化指数FIを、流動床にわたって測定された圧力損失Δp
WS,measuredと、理論的に達成可能な最大圧力損失Δp
WS,thとの比として定義し、以下の式1によって計算する。
【数14】
【0214】
床の質量mS、重力による加速度g、及び反応器断面積AWSから、ガス密度を無視して、理論的に達成可能な最大圧力損失を、ΔpWS,th=mS・g/AWSとして計算する。
【0215】
完全流動床の場合、流動化指数は1以下の値を採用する。
【0216】
流動化指数の決定:流動化指数は、理論的に可能な最大圧力損失に対する測定された圧力損失の比である。流動化指数を決定するために、技術的測定によって流動床の圧力損失を捕捉することが必要である。圧力損失の測定は、流動床の下端と上端との間の差圧測定として行われる。差圧計器は、膜上で検出された圧力をデジタル値に変換し、圧力差を表示する。圧力測定ラインは、ガス透過性基部の真上及び流動床の真上に配置されるように構成されなければならない。流動化指数の決定のために、導入された粒子床の重量の正確な捕捉も必要である。[VDI-Waermeatlas、11版、L3.2節 Flow forms and pressure loss in fluidized beds、pp.1371~182、Springer Verlag、Berlin Heidelberg、2013]も参照されたい。
【0217】
最小流動化速度の決定:最小流動化速度は、流動化ガス速度(空の反応器断面積に基づく)であり、ここで、粒子床は、流れを横断する固定床から流動床に移行する。最小流動化速度は、質量流量計を使用する調節された流動化ガス流と、デジタル差圧計を使用する流動床の圧力損失との同時測定によって決定することができる。反応器の断面積が分かれば、測定された流動化ガス流から流動化ガス速度を計算することができる。流動化ガス速度に対する圧力損失のプロットされたプロファイルは、特徴的な流動床線と呼ばれる。特徴的な流動床線は、高い流動化ガス速度から開始して、この速度の段階的引き下げによって記録されることに留意すべきである。純粋な固定床横断流の場合、圧力損失は直線的に増加する。関連する流動化指数FIは1未満である。完全に形成された流動床の場合、測定された圧力損失は一定である。関連する流動化指数FIは1である。最小流動化の状態は、この2つの範囲の間の遷移にある。空の反応器断面積に基づく関連する流動化ガス速度は、最小流動化速度に等しい。固定床から流動床への移行が範囲によって特徴付けられる場合、外挿された特徴的な固定床線と外挿された特徴的な流動床線との交点は、最小流動化点として定義される。[VDI-Waermeatlas 11版、L3.2節 Flow forms and pressure loss in fluidized beds、pp.1371~1382、Springer Verlag、Berlin Heidelberg、2013]も参照されたい。
【0218】
回転管状炉反応器(非発明):
非発明の比較例2では、間接加熱式の回転管状炉を用いた。この回転管状炉は、石英ガラス製の、その長手方向軸を中心に回転可能な、20cmの直径及び30Lの加熱可能な容積を有する回転管を有していた。石英管の外壁温度を、プロセス温度の計量として利用した。加熱は電気的に行い、3つの区域を通して調節することができた。ケイ素浸透反応の実施のために、回転管は気密封止を有するべきである。
【0219】
[比較例1(流動床、非発明):パルス状流動化ガス流を用いた流動床反応器におけるケイ素含有材料の製造]
【0220】
多孔質出発材料としての非晶質炭素(比表面積=1907m2/g、細孔容積=0.96cm3/g、平均体積加重粒径D50=2.95μm、粒子密度=0.7g/cm3、GeldartクラスC粒子)500gを反応器に導入した。
【0221】
粒子床を窒素からなる流動化ガスで流動化し、ガスの量を予備試験で決定した最小流動化速度の少なくとも3倍に設定した。同時に、磁気弁を用いて、弁の開位置と閉位置との間の周波数を3Hzとして、ガス流を振動させた。次いで、反応器内の温度を430℃の設定温度まで上昇させた。この温度の上昇のために、流動化ガス流を、流動化指数が0.95を超える値を採用するように適合させた。
【0222】
430℃の設定温度に達したら、流動化ガスを、10体積%のSiH4を含有する反応性ガスに置き換えた。弁の開位置と閉位置との間の周波数が3Hzであるガス流の脈動を、流動化ガスの切り替え中及び切り替え後に維持し、加えて、FI=0.98の流動化指数の値だけでなく、ケイ素の堆積中の多孔質出発材料の密度の変化によっても、流動化ガスのガス量を、流動化指標値が常に0.95より大きくなるように調整した。
【0223】
2.6時間の反応時間の後、流動化ガスを窒素のパルス状流に切り替えた。加熱電力を低下させた。50℃の温度に達したとき、流動化ガス流を、窒素中5体積%の酸素からなる流動化ガスに切り替え、60分間維持して、得られた生成物の表面に存在するあらゆる反応性基の制御された反応を可能にした。その後、反応器を室温まで冷却した。
【0224】
操作終了後、黒色固体990gを反応器から排出した。得られたケイ素含有材料を円筒形容器に導入し、ドラムフープ(drum hoop)ミキサーで均質化した。流動床プロセスの結果として形成された弱凝集体は、ふるい分けによって除去することができた。製造のための反応条件及びケイ素-炭素複合粒子の物理的特性を表2にまとめる。
【0225】
[比較例2(回転管状炉、非発明):回転管型反応器における非発明プロセスによるケイ素含有材料の製造]
【0226】
回転管型反応器(内容積30L)に、比較例1と同じ多孔質炭素(比表面積=1907m2/g、細孔容積=0.96cm3/g、平均体積加重粒径D50=2.95μm、粒子密度=0.7g/cm3、GeldartクラスC粒子)0.9kgを充填した。窒素で不活性化した後、反応器を430℃まで加熱した。反応温度に達したら、反応性ガス(N2中の10%SiH4、計量供給速度0.4g Si/(c3m*時))を8.5時間反応器に通し、その間に反応器を毎分約7回転の速度で回転させた。続いて、反応器を不活性ガスでパージした。生成物を反応器から取り出す前に、反応器を不活性ガス下で室温まで冷却した。製造のための反応条件及びケイ素-炭素複合粒子の物理的特性を表2にまとめる。
【0227】
[実施例1~5(本発明):標準圧力(0.1MPa)(パラメータA~Dのそれぞれの値及び実施例番号を表1にまとめる)下でモノシランSiH4をケイ素前駆体として使用する本発明のプロセスによるケイ素含有材料の製造]
【0228】
プロセスの段階1において、2.4kgの比較例1及び2と同じ多孔質炭素(比表面積=1907m2/g、細孔容積=0.96cm3/g、平均体積加重粒径D50=2.95μm、粒子密度=0.7g/cm3、GeldartクラスC粒子)を、撹拌機構(体積24L、直径25cm)備えた本発明の反応器に導入した。続いて、反応器を240分間350℃に調整し、窒素で不活性化した。
【0229】
段階2では、反応器を430℃まで加熱した。この反応温度に達したとき、濃度Amol%及び細孔容積ベースの計量供給速度Bで反応性ガスをC時間反応器に通した。反応器に気相を供給し、反応成分の平均滞留時間に対する循環時間の比がDであり、床の運動状態をフルード数3で表すことができるように、本発明の近接クリアランスの攪拌機構であるヘリカル撹拌機により粒子床を循環させた。
【0230】
段階3では、ケイ素含有材料を120分間かけて70℃の温度まで冷却した。続いて、反応器を窒素で1時間、5体積%の酸素分率を有する希薄空気で1時間、10体積%の酸素分率を有する希薄空気で1時間、15体積%の酸素分率を有する希薄空気で1時間、続いて空気で1時間パージした。最後に、生成物を反応器から取り出した。
【0231】
【0232】
製造のための反応条件及びケイ素-炭素複合粒子の物理的特性を以下の表2にまとめる。
【0233】
【0234】
使用した反応器にかかわらず、等しい物理的特性が得られた。しかし、SiH4転化率、生成物の収率及び反応時間は、流動床及び回転管状炉と比較して、本発明の反応器システムでは改善することができた。
【0235】
<電気化学セルにおけるケイ素複合粒子の評価>
[実施例6:それぞれの材料として、実施例1~5からの本発明のプロセスによって得られたケイ素含有材料と、比較例1及び2からの非発明プロセスによって得られたケイ素含有材料と、本発明のプロセスによって製造されたケイ素含有材料とを含むアノード、及び本発明のリチウムイオン電池における電気化学的試験]
【0236】
29.71gのポリアクリル酸(85℃で一定重量まで乾燥させた、Sigm-Aldrich、Mw約450000g/mol)及び756.60gの脱イオン水を、ポリアクリル酸が完全に溶解するまで、振盪機(290L/分)によって2.5時間撹拌した。溶液を、pHが7.0(WTW pH340i pHメーター及びSenTix RJDプローブを用いて測定した)になるまで水酸化リチウム一水和物(Sigma-Aldrich)と少しずつ混合した。次いで、溶液を振盪機によってさらに4時間混合した。3.87gの中和されたポリアクリル酸溶液及び0.96gのグラファイト(Imerys、KS6L C)を50ml容器に入れ、遊星型ミキサー(SpeedMixer、DAC 150 SP)中で2000rpmで混合した。続いて、実施例1~5の本発明のプロセスによって得られたケイ素含有材料のそれぞれ3.35g、及び比較例1及び2の非発明のプロセスによって得られたケイ素含有材料のそれぞれ3.35gを2000rpmで1分間撹拌した。次いで、導電性カーボンブラックの8パーセント分散液1.21g及び脱イオン水0.8gを添加し、2000rpmで遊星型ミキサーに導入した。これに続いて、3000rpmで30分間、一定の20℃で溶解機中に分散させた。インクを再び遊星型ミキサー内で2500rpmで5分間減圧下で脱気した。
【0237】
次いで、完成した分散液を、0.1mmのスロット高さを有するフィルム描画フレーム(Erichsen、モデル360)を使用して、0.03mmの厚さを有する銅箔(Schlenk Metallfolien、SE-Cu58)に塗布した。次いで、このようにして製造されたアノードコーティングを50℃及び1barの空気圧で60分間乾燥させた。乾燥したアノードコーティングの平均表面重量は3.0mg/cm2であり、コーティング密度は0.8g/cm3であった。
【0238】
2電極配置のボタン電池(CR2032型、宝泉)で電気化学的研究を行った。前記電極コーティングを対電極又は負極として使用した(Dm=15mm)。94.0%の含有率及び15.9mg/cm2の平均坪量を有するリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物6:2:2をベースとするコーティング(SEI社から入手)を、作用電極又は正極として使用した(Dm=15mm)。60μlの電解質を含浸させたガラス繊維濾紙(Whatman、GDタイプD)をセパレータとして用いた(Dm=16mm)。使用した電解質は、フルオロエチレンカーボネート及びジエチルカルボネートの1:4(v/v)混合物中のリチウムヘキサフルオロホスフェートの1.0モル溶液からなっていた。セルをグローブボックス(<1ppmのH2O、O2)で構築し、使用した全ての成分の乾燥質量中の含水量は20ppm未満であった。
【0239】
電気化学的試験を20℃で行った。1サイクル目は5mA/g(C/25に相当)、それ以降のサイクルでは60mA/g(C/2に相当)の定電流でcc/cv(定電流/定電圧)法によりセルを充電し、電圧限界4.2Vに達した後、電流が1.2mA/g(C/100に対応する)又は15mA/g(C/8に対応する)を下回るまで定電圧で充電を行った。1サイクル目は5mA/g(C/25に相当)、それ以降のサイクルでは60mA/g(C/2に相当)の定電流で、2.5Vの電圧限界に達するまでcc(定電流)法により、セルを放電させた。選択された特定の電流は、正極上のコーティングの重量に基づいた。電極は、1:1.2のカソード対アノードの容量比を確立するように選択した。
【0240】
発明例1~5並びに比較例1及び2からのケイ素含有材料を含有するリチウムイオン電池のフルセルの電気化学的試験の結果を表3に示す。
【0241】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0208
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0208】
実施例の全てにおいて、以下の非晶質炭素を多孔質出発材料として使用した。
- 比表面積=1907m2/g
- 細孔容積=0.96cm
3
/g
- 平均体積加重粒径D50=2.95μm
- 粒子密度=0.7g/cm
3
- 凝集性、Geldart分類:C
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質粒子の存在下でのケイ素前駆体の熱分解によるケイ素含有材料の製造プロセスであって、ケイ素が多孔質粒子の細孔内及び表面上に堆積され、
前記ケイ素前駆体の熱分解が、ガス横断反応器の反応域内で起こり、前記粒子が、加熱領域内の近接クリアランスである攪拌機によって熱分解中に前記反応域内で循環される、プロセス。
ただし、下記式1において、
【数1】
hの全ての値の半分について、反応域における近接クリアランスW(h)がW(h)>0.9である場合に、撹拌機構は近接クリアランスである(式中、u
R(h)=高さ座標hの断面における撹拌機構の外周、u
B(h)=高さ座標hの断面における反応器の内周)。
【請求項2】
前記反応器の前記反応域が回転対称である、請求項1に記載のプロセス。
ただし、下記式1
【数2】
(式中、
W(h)=2つの回転面の回転軸に垂直な2つの平面状断面の円周の比率として定義される、回転対称反応器内の撹拌機構の近接クリアランス(hは高さ座標を表す)、
u
R(h)=平面断面を通る回転軸に垂直な回転面の複数の任意の点hにおいて、下記式2に従って計算される円形内側断面
の円周、
u
R(h)=2πr
R(h) (2)
r
R(h)=回転軸から撹拌機構の外側輪郭までの距離(撹拌機構は、それに取り付けられた全ての構成要素を含む)、
u
B(h)=平面断面を通る回転軸に垂直な回転面の各任意の点hにおいて、下記式3に従って計算される円形外側回転面
の円周(回転面は、回転軸の周りの反応器の内側輪郭の回転によって形成される)、
u
B(h)=2πr
B(h) (3)
r
B(h)=反応器の内側輪郭の回転軸までの距離)
において、hの全ての値の半分について、反応域における近接クリアランスW(h)がW(h)>0.9でなければならない場合に、撹拌機構は近接クリアランスである。
【請求項3】
前記ケイ素前駆体の堆積の過程で、計量添加が、1時間当たりに使用される前記多孔質粒子の細孔容積1cm
3当たり0.1~2gのSiの割合で行われる、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記堆積の過程で、前記ケイ素前駆体を、1時間当たりの前記反応域における前記反応器の最大流れ断面積1m
2当たり1~700kgのSiの割合で計量投入する、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ケイ素前駆体の熱分解が0.08~5MPaで起こる、請求項1~4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記ケイ素前駆体の熱分解が280~900℃で行われる、請求項1~5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
近接クリアランスの撹拌機を備えた前記反応器の前記反応域における床温度が、100~1000℃の範囲である、請求項1~6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
複数の反応器を含むカスケード反応器システムにおいて実施される、請求項1~7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
以下の少なくとも段階1~3を含む、請求項7に記載のプロセス。
段階1:反応器Aに多孔質粒子を充填し、該粒子を前処理し、続いて前処理した粒子を反応器B又は貯蔵容器に移すか、又は当該材料が反応器Aに残る。
段階2:不活性ガス及び/又はケイ素前駆体を含有する少なくとも1つの反応性成分及び/又は少なくとも1つのケイ素を含まない前駆体からなるガスの流れを反応器Bに通し、
前記反応性成分の熱分解が前記多孔質粒子の表面上及び細孔内で起こる温度に反応器を調整する。反応器B中の粒子床が、粒子床の運動状態が1~10の範囲のフルード数で記述され得るように、近接クリアランスの撹拌機で循環される。気相が反応器Bに供給され、反応器B内の粒子床が、前記反応性成分の平均滞留時間に対する循環時間の比率が1未満になるように、近接クリアランスの撹拌要素によって循環される。ケイ素が前記多孔質粒子の細孔の中及び上に導入された後、ケイ素含有材料が、反応器C又は中間貯蔵のための貯留容器に移送されるか、又は当該材料が反応器B内に残る。
段階3:官能化のためのケイ素含有粒子の後処理及び/又はケイ素含有粒子の表面のコーティング。規定された温度への粒子の冷却及び反応器Cからのケイ素含有材料の回収。
【国際調査報告】