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特表2024-546571安定して放出可能な徐放性デリバリー製剤及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】安定して放出可能な徐放性デリバリー製剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/10 20170101AFI20241219BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20241219BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241219BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 31/428 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
A61K47/10
A61K9/06
A61K47/14
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/22
A61K47/20
A61K47/34
A61K31/381
A61K31/428
A61K31/4985
A61K45/00
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525786
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 CN2022138871
(87)【国際公開番号】W WO2023116517
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202111598937.X
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517273294
【氏名又は名称】シチュアン ケルン ファーマシューティカル リサーチ インスティテュート カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】524158597
【氏名又は名称】フーナン ケルン ファーマシューティカル リサーチ カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100227592
【弁理士】
【氏名又は名称】孔 詩麒
(72)【発明者】
【氏名】スー ツェンシン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン イーファン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ チンロン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン シュエユアン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ トン
(72)【発明者】
【氏名】リウ スーチョアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA94
4C076AA95
4C076CC01
4C076DD37
4C076DD45
4C076DD46
4C076DD55
4C076DD60
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE32
4C076EE48
4C076FF31
4C076FF36
4C076FF63
4C076GG01
4C084AA17
4C084NA12
4C084NA13
4C084ZA021
4C084ZA022
4C086AA01
4C086AA02
4C086BB02
4C086BC84
4C086CB09
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA27
4C086NA12
4C086NA13
4C086ZA02
(57)【要約】
安定して放出可能な徐放性デリバリー製剤及びその製造方法。当該製剤は、活性医薬成分と、ゲル担体とを含み、前記ゲル担体は、生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を含む。当該デリバリー製剤は、従来のAtrigel(登録商標)テクノロジーで製造されるin situゲルと比較して、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を少量で添加したことで、in vivo、in vitroでの薬物のバースト放出を遅らせるという効果を有し、かつ血中濃度を安全かつ有効な範囲に1週間以上維持することができる。当該製剤は、製造方法が簡易である。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性医薬成分と、ゲル担体とを含むデリバリー製剤であって、
前記ゲル担体は、生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を含む、デリバリー製剤。
【請求項2】
前記疎水性添加剤は、酢酸エチル、中鎖トリグリセリド、トリアセチン、トリカプリリン、安息香酸ベンジル及びベンジルアルコールから選択される1種以上であり、好ましくは、前記疎水性添加剤は、安息香酸ベンジル、トリアセチン及びトリカプリリンから選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のデリバリー製剤。
【請求項3】
前記疎水性添加剤は、前記ゲル担体の全質量に対して1%~50%であり、好ましくは前記ゲル担体の全質量に対して5%~30%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のデリバリー製剤。
【請求項4】
前記親水性ゲル骨格材料は、ポロキサマー、カルボマー、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される1種以上であり、好ましくは、前記親水性ゲル骨格材料は、ポロキサマー188、カルボマー及びポリビニルピロリドンから選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のデリバリー製剤。
【請求項5】
前記親水性ゲル骨格材料は、存在する場合、前記ゲル担体の全質量に対して0.5%~15%であり、好ましくは前記ゲル担体の全質量に対して1%~5%であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のデリバリー製剤。
【請求項6】
前記生分解性ポリマーは、ポリエステル又はポリエステルコポリマーから選択され、好ましくは、前記生分解性ポリマーはポリラクチド又はラクチド/グリコリドコポリマーから選択され、好ましくは、前記生分解性ポリマーは、ラクチド/グリコリドコポリマーから選択され、より好ましくは、前記ラクチド/グリコリドコポリマーにおけるラクチドとグリコリドとのモル比が50:50~95:5であり、及び/又は、
前記生分解性ポリマーの分子量が5000~70000Daであり、及び/又は、
前記生分解性ポリマーは前記ゲル担体の全質量に対して20%~50%であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のデリバリー製剤。
【請求項7】
前記有機溶媒は、N-メチルピロリドン及び/又はジメチルスルホキシドであり、及び/又は前記有機溶媒と前記疎水性添加剤との質量比は、1:1~9:1であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のデリバリー製剤。
【請求項8】
前記活性医薬成分は、前記デリバリー製剤の全質量に対して0.5%~30%であり、好ましくは、前記デリバリー製剤の全質量に対して3%~20%であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のデリバリー製剤。
【請求項9】
生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を処方量取り、均一に混合し、活性医薬成分を加え、均一に混合してデリバリー製剤を得る工程を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のデリバリー製剤の製造方法。
【請求項10】
前記活性医薬成分は、前記デリバリー製剤の使用直前に添加されることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記活性医薬成分は、前記生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料が均一に混合された直後に添加されることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
生分解性ポリマー、活性医薬成分、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を処方量取り、均一に混合してデリバリー製剤を得る工程を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のデリバリー製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の引用]
本開示は、2021年12月24日に出願された中国出願番号が202111598937.X、発明の名称が「安定して放出可能な徐放性デリバリー製剤及びその製造方法」である発明特許出願の優先権を主張し、その開示内容は、参照により本開示に組み込まれる。
【0002】
本開示は、医薬製剤の技術分野に属し、具体的には、安定して放出可能な徐放性デリバリー製剤、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
in situ形成インプラント(In situ forming implant(s)、ISFI)は、生分解性ポリマーの溶液または半固体からなり、注射部位で凝固/ゲル化してリザーバーを形成できる新規な薬物送達システムである。製剤の組成に応じて、ISFIは主に、in situ沈殿、有機ゲルまたはポリマーの架橋などの様々なメカニズムにより形成される。その中で、溶媒拡散によるin situ沈殿に基づくAtrigel(登録商標) systemは、現在市場に流通し、最も広く使用されている技術であり、複数の商品が市販されており、歯周炎(Atridox(登録商標))、進行膵臓がん(Eligard(登録商標))、オピオイド使用障害(Sublocade(登録商標))および統合失調症(Perseris(登録商標))などの治療分野で広く使用されている。
【0004】
Dunnらは、1987年に初めてAtrigel(登録商標)テクノロジーに関する概念を提案した(図1を参照)。この技術は主に、生分解性ポリマー担体(ラクチド/グリコリドコポリマー(poly(lactic-co-glycolic)、PLGA)、ポリラクチド(polylactic acid、PLA))及び有機溶媒(N-メチルピロリドン(N-methyl pyrrolidone、NMP))を混和して担体システムとした後、小分子薬物、ポリペプチド薬物または高分子薬物などを担体システムに溶解または分散させて、注射可能な溶液または懸濁液を形成する。製剤の注射後、溶媒が拡散して相分離が起こり、周囲の細胞外液に浸透し、ポリマーが注射部位で沈殿して半固体ないし固体の薬物リザーバーを形成し、長期にわたって放出するという効果を達成する。製剤の特徴によって、Atrigel(登録商標)in situゲルは、従来の固体インプラントやマイクロスフェアと比較して、調製プロセスが簡単で、注射が便利で、製造・スケールアップが容易であるという利点を有する。
【0005】
製剤形成の原理により、Atrigel(登録商標) in situゲル製剤はバースト放出が大きい傾向にある。in situゲル内の薬物のインビボでの放出は主に、バースト放出段階、拡散段階及びポリマー分解段階という3つの段階に分けることができる(図2を参照)。バースト放出段階とは主に、製剤の注入時に有機溶媒が組織液と接触して相分離が起こって、薬物が迅速に放出されることを指す。多くの研究により、この段階の薬物放出量が8%~95%に達することができると判明した。パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症などの中枢神経系疾患では、治療に使用される薬物は通常治療濃度域が狭く、血中濃度の変動幅を厳しく制御する必要がある。一方、薬物のバースト放出は、生体内の薬物曝露量の迅速な増加、さらには重篤な毒性や副作用の発生につながっている。
【0006】
したがって、Atrigel(登録商標)における薬物のバースト放出を解決し、1週間、1ヶ月、さらにはそれ以上持続して安定に放出できる製剤を製造することは、解決すべき大きな課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
Atrigel(登録商標)in situゲル製剤では、in vivoでのバースト放出段階で放出量が大きいという問題に着目し、本開示は、安定して放出可能な徐放性デリバリー製剤を提供して、従来のin situゲル(Atrigel(登録商標)テクノロジー)の初期バースト放出が大きいという難題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]活性医薬成分と、ゲル担体とを含むデリバリー製剤であって、
前記ゲル担体は、生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を含む、デリバリー製剤。
[2]前記疎水性添加剤は、酢酸エチル、中鎖トリグリセリド、トリアセチン、トリカプリリン、安息香酸ベンジル及びベンジルアルコールから選択される1種以上であり、好ましくは、前記疎水性添加剤は、安息香酸ベンジル、トリアセチン及びトリカプリリンから選択される1種以上であることを特徴とする、[1]に記載のデリバリー製剤。
[3]前記疎水性添加剤は、前記ゲル担体の全質量に対して1%~50%であり、好ましくは前記ゲル担体の全質量に対して5%~30%であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載のデリバリー製剤。
[4]前記親水性ゲル骨格材料は、ポロキサマー、カルボマー、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される1種以上であり、好ましくは、前記親水性ゲル骨格材料は、ポロキサマー188、カルボマー及びポリビニルピロリドンから選択される1種以上であることを特徴とする、[1]~[3]のいずれか1項に記載のデリバリー製剤。
[5]前記親水性ゲル骨格材料は、存在する場合、前記ゲル担体の全質量に対して0.5%~15%であり、好ましくは前記ゲル担体の全質量に対して1%~5%であることを特徴とする、[1]~[4]のいずれか1項に記載のデリバリー製剤。
[6]前記生分解性ポリマーは、ポリエステル又はポリエステルコポリマーから選択され、好ましくは、前記生分解性ポリマーはポリラクチド又はラクチド/グリコリドコポリマーから選択され、好ましくは、前記生分解性ポリマーは、ラクチド/グリコリドコポリマーから選択され、より好ましくは、前記ラクチド/グリコリドコポリマーにおけるラクチドとグリコリドとのモル比が50:50~95:5であり、及び/又は、
前記生分解性ポリマーの分子量が5000~70000Daであり、及び/又は、
前記生分解性ポリマーは前記ゲル担体の全質量に対して20%~50%であることを特徴とする、[1]~[5]のいずれか1項に記載のデリバリー製剤。
[7]前記有機溶媒は、N-メチルピロリドン及び/又はジメチルスルホキシドであり、及び/又は前記有機溶媒と前記疎水性添加剤との質量比は、1:1~9:1であることを特徴とする、[1]~[6]のいずれか1項に記載のデリバリー製剤。
[8]前記活性医薬成分は、前記デリバリー製剤の全質量に対して0.5%~30%であり、好ましくは、前記デリバリー製剤の全質量に対して3%~20%であることを特徴とする、[1]~[7]のいずれか1項に記載のデリバリー製剤。
[9]生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を処方量取り、均一に混合し、活性医薬成分を加え、均一に混合してデリバリー製剤を得る工程を含む、[1]~[8]のいずれか1項に記載のデリバリー製剤の製造方法。
[10]前記活性医薬成分は、前記デリバリー製剤の使用直前に添加されることを特徴とする、[9]に記載の製造方法。
[11]前記活性医薬成分は、前記生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料が均一に混合された直後に添加されることを特徴とする、[9]に記載の製造方法。
[12]生分解性ポリマー、活性医薬成分、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を処方量取り、均一に混合してデリバリー製剤を得る工程を含む、[1]~[8]のいずれか1項に記載のデリバリー製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、安定して放出可能な徐放性デリバリー製剤であって、従来のAtrigel(登録商標)テクノロジーで製造されるin situゲルと比較して、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を少量で添加したことで、in vivo、in vitroでの薬物のバースト放出を緩和させるという明らかな効果を有し、かつ血中濃度を安全かつ有効な範囲に1週間以上維持することができる、安定して放出可能な徐放性デリバリー製剤を提供する。また、上記製剤は、製造方法が簡易であり、大量生産に適している。また、製品であるデリバリー製剤は使用上の利便性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、Atrigel(登録商標)製品の組成を示す概略図である。
図2図2は、Atrigel(登録商標)製品の放出メカニズムを示す概略図である。
図3図3は、本開示のデリバリー製剤の組成を示す概略図である。
図4図4は、実施例5、10、11及び12の、ラットにおけるサンプルの504時間以内の薬物濃度対時間曲線である。
図5図5は、実施例13、14及び15の、ラットにおけるサンプルの240時間以内の薬物濃度対時間曲線である。
図6図6は、実施例28の、ラットにおけるサンプルの312時間以内の薬物濃度対時間曲線である。
図7図7は、実施例1、3、及び5の、ラットにおけるサンプルの504時間以内の薬物濃度対時間曲線である。
図8図8は、実施例10、11及び12の、ラットにおけるサンプルの504時間以内の薬物濃度対時間曲線である。
図9図9は、実施例13及び14の、ラットにおけるサンプルの720時間以内の薬物濃度対時間曲線である。
図10図10は、実施例15、16、29及び30の、ラットにおけるサンプルの720時間以内の薬物濃度対時間曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について説明するが、本開示はこれらの実施形態に限定されるものではない。本開示は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、技術的範囲内で種々の変形が可能であり、異なる実施形態や実施例それぞれに開示されている技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0012】
本開示で使用される技術用語及び科学用語は、特に断りがない限り、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
本開示において、「数値A~数値B」または「数値A‐数値B」で表される数値範囲とは、限界値であるA、Bを含む範囲をいう。
【0013】
本開示において、「できる」とは、ある処理を行うことと、ある処理を行わないことの両方の意味を含む。本明細書において、「所望により」または「任意に」とは、次に説明する事項または状況が、発生してもよく、発生しなくてもよいことを意味し、その説明には、事項が発生する場合と発生しない場合が含まれる。
【0014】
本開示において、用語「一(a)」または「一(an)」または「一(the)」は、「1つ」を指すことがあり、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」および「1つまたは2つ以上」を指すこともある。
【0015】
本開示において、用語「約」は、ある値が、当該値の測定に使用される装置または方法の誤差の標準偏差を含むことを意味することができる。本開示を特定するための数値範囲及びパラメータはいずれも近似値であり、ここで具体的な実施例における関連数値は可能な限り正確に示されている。ただし、どの数値でも、実質的に前述の測定装置や方法に起因する標準偏差を不可避的に含んでいるため、特に断りがない限り、本開示で用いるすべての範囲、数量、数値及び百分率はいずれも「約」によって修飾されていることが理解されるべきである。ここで、「約」は、一般に、実際の数値は特定の数値または範囲の±10%、±5%、±1%または±0.5%以内であることを意味する。
【0016】
本開示において、PLGAのパラメータについて、以下のとおり説明する。PLGA(7525 DLG 2A)を例に挙げると、「7525」はラクチドとグリコリドとのモル比が75:25であることを意味し、「DLG」はラクチド/グリコリドコポリマーを意味し、「DL」であれば、ポリラクチドを意味する。「2」は固有粘度を表す。「1」は固有粘度が0.05~0.15dL/g、1.5は固有粘度が0.10~0.20dL/g、2は固有粘度が0.15~0.25dL/g、2.5は固有粘度が0.20~0.30dL/g、3は固有粘度が0.25~0.35dL/g、3.5は固有粘度が0.30~0.40dL/g、4は固有粘度は0.35~0.45dL/g、4.5は固有粘度が0.40~0.50dL/g、5は固有粘度が0.45~0.55dL/g、6は固有粘度が0.50~0.70dL/g、7は固有粘度が0.60~0.80dL/g、8は固有粘度が0.70~0.90dL/g、9は固有粘度が0.80~1.00dL/gであることを表す。分子量が100000DaのPLGAは、対応する固有粘度が1dL/gである。「A」は末端基が酸であることを意味し、「E」であれば、末端基がエステルであることを意味する。
【0017】
<第1の局面>
第1の局面において、本開示は、生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を含むゲル担体を提供する。
【0018】
[ゲル担体]
本開示において、「ゲル担体」とは、生物活性剤または活性医薬成分を内包、送達及び/又は放出するための1種の物質または複数種の物質の組成物を指す。ゲル担体として、例えば生分解性ポリマーおよび有機溶媒が含むものが挙げられる。
【0019】
いくつかの具体的な実施形態において、本開示のゲル担体は、生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤、及び所望により親水性ゲル骨格材料を含む。いくつかのより具体的な実施形態において、本開示のゲル担体は、生分解性ポリマー、有機溶媒、及び疎水性添加剤を含む。別のいくつかのより具体的な実施形態において、本開示のゲル担体は、生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤、及び親水性ゲル骨格材料を含む。
【0020】
[生分解性ポリマー]
本開示において、「生分解性ポリマー」、「生体吸収性ポリマー」及び「吸収性ポリマー」は互換的に使用され、生理学的環境と相互作用するときに化学的や物理的方法により分解されるポリマーを指し、例えば、被験者の注射部位で、数日、数週間、または数か月などの一定期間以内に浸食され、分解又は溶解するポリマーを指す。生分解性ポリマーは被験者の体内において、薬物などの生物活性剤を送達するなど、一時的な役割を果たす。生分解性ポリマーは断片に分解され、ホストによって代謝または排泄されうる。本開示において、生分解性ポリマーの具体的な種類について特に限定されず、当業者が実際の必要に応じて決定できる。
【0021】
本開示において、生分解性ポリマーはポリエステルであってもよい。ポリエステルとは、全ての繰り返し単位又は実質的に全ての繰り返し単位がエステル基を介して結合したポリマーを指す。ポリエステルは、カルボキシル基とヒドロキシル基を有するモノマーを反応させてエステル基を形成することによって形成することができる。ポリエステルは、環状エステルモノマーの開環重合によって形成することができる。ポリエステルは、グリコリド、ラクチド、ε-カプロラクトン又はp-ジオキサノンなどのモノマーから形成することができる。いくつかの具体的な実施形態において、本開示の生分解性ポリマーはポリラクチドから選択される。
【0022】
本開示において、生分解性ポリマーは、吸収性ポリエステルコポリマー、ターポリマー、テトラポリマーまたはそれらの混合物であってもよい。好適な吸収性ポリエステルコポリマーとしては、ラクチド/グリコリドコポリマー、ε-カプロラクトン/グリコリドコポリマー、ラクチド/トリメチレンカーボネートコポリマー、ラクチド/グリコリド/カプロラクトンターポリマー、ラクチド/グリコリド/トリメチレンカーボネートターポリマー、ラクチド/カプロラクトン/トリメチレンカーボネートターポリマー、グリコリド/カプロラクトン/トリメチレンカーボネートターポリマー、及びラクチド/グリコリド/カプロラクトン/トリメチレンカーボネートテトラポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
いくつかの具体的な実施形態において、本開示の生分解性ポリマーは、ラクチド/グリコリドコポリマー(ポリ乳酸・グリコール酸共重合体)から選択される。いくつかのより具体的な実施形態において、本開示で用いるラクチド/グリコリドコポリマーにおけるラクチドとグリコリドとのモル比が50:50~95:5であり、具体例として、50:50、75:25、85:15または95:5などが挙げられる。
【0024】
本開示において、生分解性ポリマーの分子量の大きさについて特に限定されないが、当業者が実際の必要に応じて決定することができる。いくつかの具体的な実施形態において、本開示の生分解性ポリマーの分子量は、5000~70000Daであり、好ましくは10000~50000Daである。具体例として、5000Da、10000Da、15000Da、20000Da、25000Da、30000Da、35000Da、40000Da、45000Da、50000Da、55000Da、60000Da、65000Da、70000Da又は上記範囲内のいずれかの数値などが挙げられる。
【0025】
本開示において、生分解性ポリマーの含有量は、必要に応じて一定の範囲内で調整することができる。いくつかの具体的な実施形態において、本開示の生分解性ポリマーの含有量は、質量%で、ゲル担体の全質量に対して20%~50%であり、具体例として、20%、23%、25%、27%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%又は50%などが挙げられる。いくつかのより具体的な実施形態において、本開示の生分解性ポリマーの含有量は、質量%で、ゲル担体の全質量に対して30%~50%である。
【0026】
本開示において、生分解性ポリマーはポリエーテルエステルであってもよい。ポリエーテルエステルとは、全ての繰り返し単位または実質的に全ての繰り返し単位がエステル基またはエーテル基を介して結合したポリマーであって、かつエーテル基とエステル基の両方が連結基として存在するポリマーを指す。生分解性ポリマーは、ポリエーテル/ポリエステルポリマーであってもよい。ポリエーテル/ポリエステルポリマーは、エーテル基を介して結合された1つ以上の繰り返し単位ブロックと、エステル基を介して結合された1つ以上の繰り返し単位ブロックとを含むブロック共重合体構造を有するポリエーテルエステルである。
【0027】
[有機溶媒]
本開示において、「有機溶媒」とは、生体内に拡散し、生体に代謝又は吸収され得る生体適合性有機溶媒を指す。例えば、当業界における、N-メチルピロリドン、酢酸エチル、中鎖トリグリセリド、トリアセチン、トリカプリリン、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、ジメチルスルホキシド、安息香酸エチル、エタノール、グリセルアルデヒド及びグリセロールホルマール等が挙げられる。
【0028】
いくつかの具体的な実施形態において、本開示の有機溶媒は、N-メチルピロリドン及び/又はジメチルスルホキシドである。いくつかの具体的な実施形態において、本開示の有機溶媒はN-メチルピロリドンである。別のいくつかの具体的な実施形態において、本開示の有機溶媒はジメチルスルホキシドである。いくつかの具体的な実施形態において、本開示の有機溶媒は、N-メチルピロリドン及びジメチルスルホキシドである。
【0029】
本開示において、有機溶媒の含有量は、必要に応じて一定の範囲内で調整することができる。いくつかの具体的な実施形態において、本開示の有機溶媒と疎水性添加剤との質量比は1:1~9:1であり、具体例として、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、7:3、8:1又は9:1などが挙げられる。いくつかの具体的な実施形態において、本開示の有機溶媒の含有量は、質量%で、ゲル担体の全質量に対して20%~60%であり、具体例として、20%、25%、30%、35%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%又は60%等が挙げられる。
【0030】
[疎水性添加剤]
本開示において、「疎水性添加剤」は、疎水性を有する薬学的に許容されるもので、かつ疎水性の活性物質や有効成分を除く添加剤であってもよい。例えば、当業界におけるステアリルアルコールなどの脂肪族アルコール、ソルビン酸などの脂肪酸、中鎖トリグリセリドなどの脂肪酸エステル、ジメチルシロキサンなどのシリコーン化合物などが挙げられる。
【0031】
いくつかの具体的な実施形態において、本開示の疎水性添加剤は、酢酸エチル、中鎖トリグリセリド、トリアセチン、トリカプリリン、安息香酸ベンジル及びベンジルアルコールから選択される1種以上である。いくつかの具体的な実施形態において、本開示の疎水性添加剤は、トリアセチン、トリカプリリン及び安息香酸ベンジルから選択される1種以上である。
【0032】
本開示において、疎水性添加剤の含有量は、必要に応じて一定の範囲内で調整することができる。いくつかの具体的な実施形態において、本開示の疎水性添加剤の含有量は、質量%で、ゲル担体の全質量に対して1%~50%であり、具体例として、1%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%又は50%等が挙げられる。いくつかのより具体的な実施形態において、本開示の疎水性添加剤の含有量は、質量%でゲル担体の全質量に対して5%~30%である。
【0033】
[親水性ゲル骨格材料]
本開示において、「親水性ゲル骨格材料」は担体材料の補助材料であり、主に、製剤中の薬物の放出速度と放出量が適切な要件を満たし、薬物が一定の速度で患者部位に送達されかつ体内で一定の濃度を維持し、所望の効果が得られ、毒性や副作用が軽減されるように、薬物放出速度を調節し、徐放及び制御放出の役割を果たすものである。
【0034】
いくつかの具体的な実施形態において、本開示のゲル担体は、親水性ゲル骨格材料を含む。他のいくつかの具体的な実施形態において、本開示のゲル担体は、親水性ゲル骨格材料を含まない。
【0035】
本開示において、親水性ゲル骨格材料は親水性ポリマーであってもよい。例えば、アルギン酸塩、寒天、キサンタンガム、トラガカントなどの天然ガム、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、ヒドロキシプロピル・メチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)などのセルロース誘導体、キチン、キトサン、カルボマーなどの非セルロース多糖類、ポビドン(PVP)、ビニルポリマー、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)などの高分子重合体が挙げられる。
【0036】
いくつかの具体的な実施形態において、本開示の親水性ゲル骨格材料は、ポロキサマー、カルボマー、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される1種以上である。いくつかのより具体的な実施形態において、本開示の親水性ゲル骨格材料は、ポロキサマー188、カルボマー及びポリビニルピロリドンから選択される1種以上である。
【0037】
本開示において、親水性ゲル骨格材料の含有量は、必要に応じて一定の範囲内で調整することができる。いくつかの具体的な実施形態において、本開示の親水性ゲル骨格材料の含有量は、質量%で、ゲル担体の全質量に対して0.5%~15%であり、具体例として、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、7%、10%、12%又は15%等が挙げられる。いくつかのより具体的な実施形態において、本開示の親水性ゲル骨格材料の含有量は、質量%で、ゲル担体の全質量に対して1%~5%である。
【0038】
<第2の局面>
第2の局面において、本開示は、活性医薬成分と、本開示の上記<第1の局面>で提供されるゲル担体とを含むデリバリー製剤を提供する。
【0039】
本局面において使用する用語または出現する用語については、<第1の局面>の欄に開示がある場合、上記欄における開示又は定義と同義である。
【0040】
[デリバリー製剤]
本開示において、「デリバリー製剤」とは、活性医薬成分(API)及びゲル担体を含み(場合によっては、活性医薬成分及びゲル担体のみを含む)、被験者に投与された後、特定の放出挙動(例えば、安定して、ゆっくりと継続的に放出)で活性医薬成分を放出することができる医薬組成物である。
【0041】
いくつかの具体的な実施形態において、本開示のデリバリー製剤は、活性医薬成分と、ゲル担体とを含み、ゲル担体は、生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を含む。いくつかのより具体的な実施形態において、本開示のデリバリー製剤は、活性医薬成分、生分解性ポリマー、有機溶媒及び疎水性添加剤を含む。他のいくつかのより具体的な実施形態において、本開示のデリバリー製剤は、活性医薬成分、生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤及び親水性ゲル骨格材料を含む。
【0042】
[活性医薬成分]
本開示において、「活性医薬成分」とは、疾患の診断、治療、症状の緩和、処置、または疾患の予防において薬理学的活性又は他の直接作用を有したり、体の機能や構造に影響を与えうる、デリバリー製剤中のいずれか1つの物質または物質の混合物を指す。
【0043】
いくつかの実施形態において、本開示の活性医薬成分は、統合失調症を治療する医薬物又はホルモン剤から選択されるものであってもよい。いくつかの具体的な実施形態において、本開示の活性医薬成分としては、リスペリドン、パリペリドン、ブピバカイン、ロピバカイン、ロイプロリド、トリプトレリン、オクトレオチド、ロチゴチン、プラミペキソール、ルマテペロンまたはそれらの薬学的に許容される塩などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの具体的な実施形態において、本開示の活性医薬成分は、ロチゴチン、プラミペキソール、ルマテペロンまたはそれらの薬学的に許容される塩などから選択される。
【0044】
本開示において、活性医薬成分の含有量は、必要に応じて一定の範囲内で調整することができる。いくつかの具体的な実施形態において、活性医薬成分の含有量はいずれも、その遊離塩基の形として計算される。他のいくつかの具体的な実施形態において、活性医薬成分の含有量はいずれも、その酸付加塩の形として計算される。いくつかの具体的な実施形態において、本開示のデリバリー製剤における活性医薬成分の含有量(例えば、その遊離塩基の形として計算される)は質量%で、0.5%~30%である。具体例として、0.5%、1%、2%、3%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4%、4.1%、 4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、5%、5.1%、5.2%、5.3%、5.4%、5.5%、6%、6.1%、6.2%、6.3%、6.4%、6.5%、6.6%、6.7%、6.8%、6.9%、7%、7.1%、7.2%、7.3%、7.4%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.1%、9.2%、9.3%、9.4%、9.5%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%又は30%等が挙げられる。いくつかのより具体的な実施形態において、本開示のデリバリー製剤における活性医薬成分の含有量(例えば、その遊離塩基の形として計算される)は質量%で、3%~20%である。
【0045】
<第3の局面>
第3の局面において、本開示の上記<第1の局面>で提供されるゲル担体の製造方法を提供する。
【0046】
本局面において使用する用語または出現する用語については、<第1の局面>の欄に開示がある場合、上記欄における開示又は定義と同義である。
【0047】
いくつかの具体的な実施形態において、本開示のゲル担体の製造方法は、生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を処方量取り、均一に混合してゲル担体を得る工程を含むことができる。
【0048】
<第4の局面>
第4の局面において、本開示の上記<第2の局面>で提供されるデリバリー製剤の製造方法を提供する。
【0049】
本局面において使用する用語または出現する用語については、<第1の局面>又は<第2の局面>の欄に開示がある場合、上記欄における開示又は定義と同義である。
【0050】
いくつかの具体的な実施形態において、本開示のデリバリー製剤の製造方法は、生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を処方量取り、均一に混合した後、活性医薬成分(例えば、処方量の活性医薬成分)を加え、均一に混合してデリバリー製剤を得る工程を含むことができる。
【0051】
いくつかの好ましい実施形態において、本開示のデリバリー製剤の製造方法は、生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を処方量取り、均一に混合し、使用直前に活性医薬成分(例えば、処方量の活性医薬成分)を加え、均一に混合してデリバリー製剤を得る工程を含むことができる。本実施形態において、使用直前に活性薬物を添加することは、デリバリー製剤の安定性確保に寄与する。
【0052】
他のいくつかの好ましい実施形態において、本開示のデリバリー製剤の製造方法は、生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を処方量取り、均一に混合し、即時に活性医薬成分(例えば、処方量の活性医薬成分)を加え、均一に混合してデリバリー製剤を得る工程を含むことができる。本実施形態において、使用直前に活性薬物を添加することが不要であり、調製された活性薬物含有デリバリー製剤は、安定して保存することができるとともに、デリバリー製剤の使用時の利便性が向上する。
【0053】
他のいくつかの具体的な実施形態において、本開示のデリバリー製剤の製造方法は、生分解性ポリマー、活性医薬成分、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を処方量取り、均一に混合してデリバリー製剤を得る工程を含むことができる。本実施形態において、ゲル担体成分を予め溶解混合することが不要であり、そのまま活性医薬成分とともに均一に混合することができるため、各成分の溶解順序や活性医薬成分の添加タイミングを考慮する必要がなく、デリバリー製剤の保存中の安定性にマイナスな影響を与えることなく、デリバリー製剤の保存、輸送及び使用時の利便性が大幅に向上する。
【0054】
本開示のデリバリー製剤の組成は図3に示すとおりである。本開示の発明をより明確に説明するために、以下、具体的な実施例を参照しながら説明する。なお、これらの実施例は本開示を限定するものではなく、本開示の一部の実施例に過ぎない。特記がない限り、本開示で使用される機器、試薬、材料、実験動物などはいずれも通常の商業的手段で入手することができる。
【実施例
【0055】
実施例1
PLGA(7525 DLG 2A) 0.490g、PLGA(5050 DLG 4.5A) 0.210gを精密に量り取り、NMP 1.060gを加えて撹拌し溶解させ、澄明なゲル溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.120gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0056】
実施例2
PLGA(7525 DLG 2A) 0.490g、PLGA(5050 DLG 4.5A) 0.210gを精密に量り取り、NMP 0.954g、安息香酸ベンジル0.106gを加えて撹拌し溶解させ、澄明なゲル溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.120gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0057】
実施例3
PLGA(7525 DLG 2A) 0.490g、PLGA(5050 DLG 4.5A) 0.210gを精密に量り取り、NMP 0.848g、安息香酸ベンジル0.212gを加えて撹拌し溶解させ、澄明なゲル溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.120gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0058】
実施例4
PLGA(7525 DLG 2A) 0.490g、PLGA(5050 DLG 4.5A) 0.210gを精密に量り取り、NMP 0.848g、トリカプリリン0.212gを加えて撹拌し溶解させ、澄明なゲル溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.120gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0059】
実施例5
PLGA(7525 DLG 2A) 0.490g、PLGA(5050 DLG 4.5A) 0.210gを精密に量り取り、NMP 0.848g、トリアセチン0.212gを加えて撹拌し溶解させ、澄明なゲル溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.120gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0060】
実施例6
PLGA(5050 DLG 4.5A) 0.572gを精密に量り取り、NMP 0.954g、安息香酸ベンジル 0.106gを加えて撹拌し溶解させ、澄明なゲル溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.120gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0061】
実施例7
PLGA(5050 DLG 4.5A) 0.572g、ポロキサマー188 0.088gを精密に量り取り、NMP 0.954g、安息香酸ベンジル0.106gを加えて撹拌し溶解させ、澄明なゲル溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.120gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0062】
実施例8
PLGA(5050 DLG 4.5A) 0.572g、ポリビニルピロリドン 0.088gを精密に量り取り、NMP 0.954g、安息香酸ベンジル0.106gを加えて撹拌し溶解させ、澄明なゲル溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.120gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0063】
実施例9
PLGA(5050 DLG 4.5A) 0.572g、カルボマー 0.018gを精密に量り取り、NMP 0.954g、安息香酸ベンジル0.106gを加えて撹拌し溶解させ、澄明なゲル溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.120gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0064】
実施例10
PLGA(5050 DLG 2E) 0.525gを精密に量り取り、NMP 0.555g、安息香酸ベンジル0.240gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.090gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0065】
実施例11
PLGA(5050 DLG 4.5A) 0.345gを精密に量り取り、NMP 0.555g、安息香酸ベンジル0.240gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.090gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0066】
実施例12
PLGA(7525 DLG 5.5E) 0.345gを精密に量り取り、NMP 0.555g、安息香酸ベンジル0.240gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.090gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0067】
実施例13
PLGA(5050 DLG 4.5A) 0.525gを精密に量り取り、NMP 0.683g、安息香酸ベンジル0.293gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.055gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0068】
実施例14
PLGA(7525 DLG 5.5E)0.525gを精密に量り取り、NMP 0.683g、安息香酸ベンジル0.293gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.055gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0069】
実施例15
PLGA(7525 DLG 2A) 0.675gを精密に量り取り、NMP 0.578g、安息香酸ベンジル0.248gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.055gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0070】
実施例16
PLGA(100 DL 2A) 0.675gを精密に量り取り、NMP 0.578g、安息香酸ベンジル0.248gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.055gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0071】
実施例17
PLGA(7525 DLG 2A)0.245g及びPLGA(5050 DLG 4.5A)0.105gを精密に量り取り、NMP 0.477g及び安息香酸ベンジル0.053gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にプラミペキソール0.090gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0072】
実施例18
PLGA(7525 DLG 2A)0.245g及びPLGA(5050 DLG 4.5A)0.105gを精密に量り取り、NMP 0.477g及びトリアセチン0.053gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にプラミペキソール0.090gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0073】
実施例19
PLGA(5050 DLG 2E)0.540gを精密に量り取り、NMP 0.810gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にプラミペキソールパモ酸塩(API:酸=2:1)0.082gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0074】
実施例20
PLGA(5050 DLG 2E)0.572g、ポロキサマー188 0.088gを精密に量り取り、NMP 0.954g及び安息香酸ベンジル0.106gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にプラミペキソールパモ酸塩(API:酸=2:1)0.108gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0075】
実施例21
PLGA(5050 DLG 2E)0.540gを精密に量り取り、NMP 0.810gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にプラミペキソールパモ酸塩(API:酸=1:1)0.120gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0076】
実施例22
PLGA(5050 DLG 2E)0.572g、ポリビニルピロリドン0.088gを精密に量り取り、NMP 0.954g及び安息香酸ベンジル0.106gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にプラミペキソールパモ酸塩(API:酸=1:1)0.156gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0077】
実施例23
PLGA(5050 DLG 2E)0.540gを精密に量り取り、NMP 0.810gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にプラミペキソールパルミチン酸塩0.096gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0078】
実施例24
PLGA(5050 DLG 2E)0.572g、カルボマー0.018gを精密に量り取り、NMP 0.954g及び安息香酸ベンジル0.106gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にプラミペキソールパルミチン酸塩0.118gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0079】
実施例25
PLGA(5050 DLG 4.5A)0.350gを精密に量り取り、NMP 0.477gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にルマテペロン0.220gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0080】
実施例26
PLGA(5050 DLG 4.5A)0.350gを精密に量り取り、NMP 0.477g、トリアセチン0.053gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にルマテペロン0.220gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0081】
実施例27
PLGA(5050 DLG 4.5A) 0.213g、PLGA(7525 DLG 2A) 0.491gを精密に量り取り、NMP 0.965g、トリアセチン0.104gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にルマテペロン0.438gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0082】
実施例28
PLGA(5050 DLG 4.5A) 0.210g、PLGA(7525 DLG 2A) 0.490gを精密に量り取り、NMP 0.954g、トリアセチン0.106gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にルマテペロン0.142gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0083】
実施例29
PLGA(7525 DLG 2A) 0.675gを精密に量り取り、NMP 0.826gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.055gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0084】
実施例30
PLGA(8515 DLG 2A) 0.675gを精密に量り取り、NMP 0.578g、安息香酸ベンジル0.248gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た。使用直前に、前記調製された溶液にロチゴチン0.055gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0085】
実施例31
PLGA(7525 DLG 2A) 0.675gを精密に量り取り、NMP 0.578g、安息香酸ベンジル0.248gを加えて撹拌し溶解させ、澄明な溶液を得た後、ロチゴチン0.055gを添加し、均一に混合して製剤を得た。
【0086】
実施例32
PLGA(7525 DLG 2A)0.675g、NMP 0.578g、安息香酸ベンジル0.248g、ロチゴチン0.055gを精密に量り取り、撹拌して混合し、均一になるまで溶解させて製剤を得た。
【0087】
上記実施例の処方(組成)は下記表1に示すとおりである。
(表1 実施例の処方(組成)リスト)
【0088】
【表1-1】
【表1-2】
【0089】
実験例1:in situゲル製剤の粘度の考察
「中国薬局方」(四部)の通則(0633)第三法を参照する。測定は、コーン型デジタル粘度計を用いて行う。サンプル溶液500μLを精密に量り取り、#40ローターまたは#52ローターを用い、トルクが25%~75%の範囲になるように回転数を調整し、25℃で測定する。各サンプルについては、並行テストを2回行い、測定された粘度値は下記の表に示すとおりである。
【0090】
【表2】
【0091】
実施例10~15及び29の結果から分かるように、製剤の粘度は主にPLGAの分子量及び濃度に関係しており、PLGAの分子量又は濃度が大きいほど、製剤の粘度が大きくなり、また、疎水性添加剤も製剤の粘度を増加させる。また、放出結果から分かるように、同じ状況において、製剤の粘度が高いほど、薬物のin vitroでの放出が遅くなる。その主な理由は、粘度の増加によってゲル担体がより緻密になり、薬物に対する担体の抵抗が増加するため、外部からの媒体のゲル骨格への侵入が困難になり、PLGAの分解が遅くなり、放出が遅くなるからであると考えられる。製剤の薬物負荷容量が同一又は同様である場合、ゲル粘度及びポリマー中のラクチド/グリコリドの比がいずれも薬物の徐放効果に影響する。
【0092】
実験例2: in situゲル製剤のin vitro放出率の考察
(1)ロチゴチンin situゲル製剤のin vitro放出率の考察
21G針(外径0.8mm)を接続した1mLシリンジを用い、ゲル製剤0.1mLを採取し、重量を精密に量った。サンプルを放出媒体(0.01Mリン酸塩緩衝液(0.02%NaN、0.2%SDS含有、pH 7.40に調整))にゆっくりと注入し、放出媒体の体積をシンク条件に応じて調整し、シリンジの重量を再度精密に量って、重量減少法で注入されたサンプルの量を計算した。サンプル瓶を37±0.5℃の恒温振とう水槽に入れ、50rpmで振とうした。各サンプルは3通で調製した。所定の時点で上清2mLを採取するとともに、同じ温度の放出媒体を2mL追加した。上記試験液を採取し、HPLCにより検出を行い、外部標準法により累積放出量を算出した。
【0093】
(2)プラミペキソールin situゲル製剤のin vitro放出率の考察
21G針(外径0.8mm)を接続した1mLシリンジを用い、ゲル製剤0.1mLを採取し、重量を精密に量った。製剤を放出媒体(0.01Mリン酸塩緩衝液(0.02%NaN、0.2%SDS含有、pH 7.40に調整))にゆっくりと注入し、放出媒体の体積をシンク条件に応じて調整し、シリンジの重量を再度精密に量って、重量減少法で注入されたサンプルの量を計算した。サンプル瓶を37±0.5℃の恒温振とう水槽に入れ、50rpmで振とうした。各サンプルは3通で調製した。所定の時点で上清2mLを採取するとともに、同じ温度の放出媒体を2mL追加した。上記試験液を採取し、HPLCにより検出を行い、外部標準法により累積放出量を算出した。
【0094】
(3)ルマテペロンin situゲル製剤のin vitro放出率の考察
21G針(外径0.8mm)を接続した1mLシリンジを用い、ゲル製剤0.04mLを採取し、重量を精密に量った。製剤を放出媒体(0.01Mリン酸塩緩衝液(0.02%NaN、0.2%SDS含有、pH 7.40に調整))にゆっくりと注入し、放出媒体の体積をシンク条件に応じて調整し、シリンジの重量を再度精密に量って、重量減少法で注入されたサンプルの量を計算した。サンプル瓶を37±0.5℃の恒温振とう水槽に入れ、50rpmで振とうした。各サンプルは3通で調製した。所定の時点で上清2mLを採取するとともに、同じ温度の放出媒体を2mL追加した。上記試験液を採取し、HPLCにより検出を行い、外部標準法により累積放出量を算出した。
【0095】
【表3】
【0096】
実施例1~5のうち、実施例1と比較して、安息香酸ベンジル、トリアセチンまたはトリカプリリンなどの疎水性添加剤を所定の割合で添加した実施例2~5は、製剤の1時間/24時間のバースト放出が大幅に低減した。実施例6~9のうち、実施例6と比較して、親水性ゲル骨格材料を少量で添加した実施例7~9は、1時間のバースト放出が大幅に低減した。実施例10~12において、異なる種類のPLGAによる製剤の放出率への影響をスクリーニングした。その結果、5050 DLG 4.5Aグループの製剤は、24時間のバースト放出が小さかった。放出期間は主にポリマーの分子量に関連し、分子量の増加につれて著しく延長する。5050 DLG 4.5A、7525 DLG 5.5Eグループの製剤は、5050 2Eグループの製剤に比べて、放出期間が有意に長く、そのうち7525 DLG 5.5Eグループ製剤の放出期間が最も長かった。実施例13~16、29及び30は、実施例10~12と比較して、薬物負荷容量を減少させたとともにPLGA濃度を高めて、異なるPLGAの最適な処方の組み合わせをさらにスクリーニングした。その結果、製剤のin vitroでの1時間/24時間のバースト放出は前の実施例よりも増加した。疎水性添加剤はバースト放出を大幅に低減させることができるが、PLGAの種類によってバースト放出に与える影響も異なり、ポリマーの分子量やラクチドとグリコリドの比率がいずれもバースト放出効果に影響を与える。実施例19~24のうち、実施例19、21、23と比べて、疎水性添加剤及び親水性ゲル骨格材料を所定の割合で添加した、対応の実施例20、22、24は、薬物の1時間/24時間のバースト放出が有意に低く、かつ放出期間が長くなり、血中濃度を安全かつ有効な範囲内に1週間以上維持することができた。実施例25~28のうち、実施例25と比べて、疎水性添加剤を所定量で添加した実施例26~28は、1時間/24時間のバースト放出が低減した。
【0097】
実験例3:ラットにおけるin situゲル製剤の放出率の考察
(1)ラットにおけるロチゴチンin situゲル製剤のin vivo放出率の考察
in vivoでの非線形薬物動態(PK)挙動を考察するために、SD雄ラット(N=5)を選定した。投与量10mg/kg(ロチゴチン換算)で、上記の実施例製剤(一部)を皮下注射し、所定の時点で尾静脈から採血した。血漿サンプルをSPE(Solid-Phase Extraction)により処理した後、LC-MS/MS法によりロチゴチン濃度を測定した。実施例5、10~12のサンプルのラットにおける血中濃度の経時変化(504時間以内)の曲線は図4に示すとおりである。実施例1、3、5のサンプルのラットにおける血中濃度の経時変化(504時間以内)の曲線は図7に示すとおりであり、実施例10~12のサンプルのラットにおける血中濃度の経時変化(504時間以内)の曲線は図8に示すとおりである。
【0098】
【表4】
【0099】
(2)ラットにおけるロチゴチンin situゲル製剤の放出率の考察
in vivoでのPK挙動を考察するために、SD雄ラット(N=5)を選定した。投与量5mg/kg(ロチゴチン換算)で、上記の実施例製剤(一部)を皮下注射し、所定の時点で尾静脈から採血した。血漿サンプルをSPE(Solid-Phase Extraction)により処理した後、LC-MS/MS法によりロチゴチン濃度を測定した。実施例13~14のサンプルのラットにおける血中濃度の経時変化(720時間以内)の曲線は図9に示すとおりであり、実施例15~16、29及び30のサンプルのラットにおける血中濃度の経時変化(720時間以内)の曲線は図10に示すとおりである。実施例13~15のサンプルのラットにおける血中濃度の経時変化(240時間以内)の曲線は図5に示すとおりである。
【0100】
【表5】
【0101】
(3)ラットにおけるルマテペロンin situゲル製剤の放出率の考察
in vivoでのPK挙動を考察するために、SD雄ラット(N=5)を選定した。投与剤量10.5mg/kg(ルマテペロン換算)で、上記の実施例製剤(一部)を皮下注射し、所定の時点で尾静脈から採血した。血漿サンプルをSPE(Solid-Phase Extraction)により処理した後、LC-MS/MS法によりルマテペロンの濃度を測定した。実施例28のサンプルのラットにおける血中濃度の経時変化(312時間以内)の曲線は図6に示すとおりである。
【0102】
【表6】
【0103】
従来のAtrigel技術で製造されたin situゲル(有効成分がロチゴチン、プラミペキソール、ルマテペロンなどである)は、in vitroでのバースト放出が大きく、治療濃度域が狭い薬剤には適していない。一部の疎水性添加剤(例えば、安息香酸ベンジル、トリアセチン、トリカプリリン、中鎖トリアセチンなど)及び所望により親水性ゲル骨格材料(例えば、ポロキサマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど)を添加した場合、in vivo及びin vitroでのバースト放出が大幅に低減する効果が発揮され、in vivoでの血中濃度を安全かつ有効な範囲内に1週間以上維持することができた。
【0104】
実験例4:保存中のロチゴチンの関連物質の考察
2~8℃の暗所で所定時間静置した後、サンプル180mgを量り取って、2mLのメスフラスコに入れ、不純物対照品としてのストック液0.4mLを加え、希釈剤で溶解し、目盛線まで希釈し、均一に振とうした後、HPLCによりロチゴチンの関連物質の含有量を測定した。実施例15、実施例31、実施例32のサンプルの0日間保存後及び3ヶ月保存後の関連物質の含有量の測定結果は表7に示すとおりである。
【0105】
【表7】
【0106】
実施例15のサンプルを2~8℃の暗所で3ヶ月保存した結果、ロチゴチンの関連物質の種類及び含有量に大きな変化は見られなかった。実施例31及び32のサンプルは、0日間保存後の不純物が、実施例15のサンプルと同様であった。また、実施例31及び32のサンプルを2~8℃で3ヶ月保存した後、一部の有効成分関連物質(不純物C、E、K)には含有量の若干の増加が見られたが、デリバリー製剤としての品質要求を満たしている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
in situ形成インプラント(In situ forming implant(s)、ISFI)は、生分解性ポリマーの溶液または半固体からなり、注射部位で凝固/ゲル化してリザーバーを形成できる新規な薬物送達システムである。製剤の組成に応じて、ISFIは主に、in situ沈殿、有機ゲルまたはポリマーの架橋などの様々なメカニズムにより形成される。その中で、溶媒拡散によるin situ沈殿に基づくAtrigel(登録商標) systemは、現在市場に流通し、最も広く使用されている技術であり、複数の商品が市販されており、歯周炎(Atridox(登録商標))、進行前立腺がん(Eligard(登録商標))、オピオイド使用障害(Sublocade(登録商標))および統合失調症(Perseris(登録商標))などの治療分野で広く使用されている。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性医薬成分と、ゲル担体とを含むデリバリー製剤であって、
前記ゲル担体は、生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を含む、デリバリー製剤。
【請求項2】
前記疎水性添加剤は、酢酸エチル、中鎖トリグリセリド、トリアセチン、トリカプリリン、安息香酸ベンジル及びベンジルアルコールから選択される1種以上であり、好ましくは、前記疎水性添加剤は、安息香酸ベンジル、トリアセチン及びトリカプリリンから選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のデリバリー製剤。
【請求項3】
前記疎水性添加剤は、前記ゲル担体の全質量に対して1%~50%であり、好ましくは前記ゲル担体の全質量に対して5%~30%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のデリバリー製剤。
【請求項4】
前記親水性ゲル骨格材料は、ポロキサマー、カルボマー、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される1種以上であり、好ましくは、前記親水性ゲル骨格材料は、ポロキサマー188、カルボマー及びポリビニルピロリドンから選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のデリバリー製剤。
【請求項5】
前記親水性ゲル骨格材料は、存在する場合、前記ゲル担体の全質量に対して0.5%~15%であり、好ましくは前記ゲル担体の全質量に対して1%~5%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のデリバリー製剤。
【請求項6】
前記生分解性ポリマーは、ポリエステル又はポリエステルコポリマーから選択され、好ましくは、前記生分解性ポリマーはポリラクチド又はラクチド/グリコリドコポリマーから選択され、好ましくは、前記生分解性ポリマーは、ラクチド/グリコリドコポリマーから選択され、より好ましくは、前記ラクチド/グリコリドコポリマーにおけるラクチドとグリコリドとのモル比が50:50~95:5であり、及び/又は、
前記生分解性ポリマーの分子量が5000~70000Daであり、及び/又は、
前記生分解性ポリマーは前記ゲル担体の全質量に対して20%~50%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のデリバリー製剤。
【請求項7】
前記有機溶媒は、N-メチルピロリドン及び/又はジメチルスルホキシドであり、及び/又は前記有機溶媒と前記疎水性添加剤との質量比は、1:1~9:1であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のデリバリー製剤。
【請求項8】
前記活性医薬成分は、前記デリバリー製剤の全質量に対して0.5%~30%であり、好ましくは、前記デリバリー製剤の全質量に対して3%~20%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のデリバリー製剤。
【請求項9】
生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を処方量取り、均一に混合し、活性医薬成分を加え、均一に混合してデリバリー製剤を得る工程を含む、請求項1又は2に記載のデリバリー製剤の製造方法。
【請求項10】
前記活性医薬成分は、前記デリバリー製剤の使用直前に添加されることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記活性医薬成分は、前記生分解性ポリマー、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料が均一に混合された直後に添加されることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
生分解性ポリマー、活性医薬成分、有機溶媒、疎水性添加剤及び所望により親水性ゲル骨格材料を処方量取り、均一に混合してデリバリー製剤を得る工程を含む、請求項1又は2に記載のデリバリー製剤の製造方法。
【国際調査報告】