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特表2024-546572生体組織の識別及び治療のための電気外科システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】生体組織の識別及び治療のための電気外科システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/18 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A61B18/18 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024526653
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2022079248
(87)【国際公開番号】W WO2023110195
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】2118160.7
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ホジキンズ,ジョージ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160JK01
(57)【要約】
様々な実施形態は、複数のチャネルのそれぞれに沿って伝達される電磁、EMエネルギーを生成するための電磁信号供給ユニットを備える電気外科用発電機を提供する。複数のチャネルのそれぞれは、異なる周波数で電磁エネルギーを伝達するように配置されている。電気外科用発電機は、複数のチャネルのそれぞれに選択的に接続可能な出力ポートをさらに備える。出力ポートは、電磁エネルギーを生体組織に送達するための電気外科用機器に接続可能であるように構成されている。電気外科用発電機はさらに、(i)複数のチャネルのそれぞれから、出力ポートにおける負荷インピーダンスを示す信号を検出し、(ii)検出された信号から一組の複素インピーダンス値を判定し、一組の複素インピーダンス値は、複数の異なる周波数のそれぞれにおける負荷の複素インピーダンス値を含み、(iii)一組の複素インピーダンス値から組織の種類を識別し、(iv)識別された組織の種類をユーザに伝えるための出力を生成するように構成されたコントローラを備える組織識別ユニットを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科用発電機であって、
複数のチャネルのそれぞれに沿って伝達される電磁、EMエネルギーを発生させるための電磁信号供給ユニットであって、前記複数のチャネルのそれぞれは電磁エネルギーを異なる周波数で伝達するように配置されている、前記電磁信号供給ユニット、
前記複数のチャネルのそれぞれに選択的に接続可能である出力ポートであって、前記電磁エネルギーを生体組織に送達するための電気外科用機器に接続可能に構成される、前記出力ポート、
組織識別ユニットであって、
前記複数のチャネルのそれぞれから、前記出力ポートにおける負荷インピーダンスを示す信号を検出し、
前記検出された信号から一組の複素インピーダンス値を判定し、前記一組の複素インピーダンス値は、複数の異なる周波数のそれぞれにおける前記負荷の複素インピーダンス値を含み、
前記一組の複素インピーダンス値から組織の種類を識別し、
前記識別された組織の種類をユーザに伝えるための出力を生成するように構成されたコントローラを備える前記組織識別ユニット、
を備える、前記電気外科用発電機。
【請求項2】
前記電磁信号供給ユニットは、複数のマイクロ波周波数でマイクロ波EMエネルギーを生成するように構成され、前記複数のチャネルが、マイクロ波EMエネルギーを伝達するよう構成される少なくとも2つのチャネルを含む、請求項1に記載の電気外科用発電機。
【請求項3】
前記複数のマイクロ波周波数は、433MHz、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、24GHz、及び60GHzのいずれかを含む、請求項2に記載の電気外科用発電機。
【請求項4】
前記組織識別ユニットが、前記複数のマイクロ波チャネルのそれぞれに、
前記出力ポートに向かって進むマイクロ波電磁エネルギーを示す順方向信号を検出するように構成される順方向検出器、及び
前記出力ポートから遠ざかるように進むマイクロ波電磁エネルギーを示す反射信号を検出するように構成された逆方向検出器、を備え、
前記組織識別ユニットは、前記複数のマイクロ波チャネルのそれぞれで検出された前記順方向信号及び前記反射信号を、そのマイクロ波チャネルの前記出力ポートにおける負荷インピーダンスを示す前記信号として使用するように配置される、請求項2または3に記載の電気外科用発電機。
【請求項5】
前記組織識別ユニットが、前記複数のマイクロ波チャネルのそれぞれに対して、
前記順方向信号と前記反射信号を入力として受信し、
前記順方向信号及び前記反射信号の前記周波数からオフセットされた周波数を有する基準信号を受信し、
前記順方向信号及び前記反射信号と前記基準信号とをミックスダウンすることによって得られる中間周波数を有する順方向検出信号及び反射検出信号を生成するように構成されたヘテロダイン受信部を備える、請求項4に記載の電気外科用発電機。
【請求項6】
前記コントローラは、前記順方向検出信号及び前記反射検出信号を受信してデジタル化し、前記デジタル化された順方向検出信号及び反射検出信号を使用して複素インピーダンスを計算するように配置され、前記一組の複素インピーダンスは、前記複数のマイクロ波チャネルのそれぞれについて、前記デジタル化された順方向検出信号及び反射検出信号から計算された複素インピーダンスを含む、請求項5に記載の電気外科用発電機。
【請求項7】
前記コントローラは、前記複素インピーダンスを計算するように構成されたフィールドプログラマブルゲートアレイを含む、請求項6に記載の電気外科用発電機。
【請求項8】
前記複数のマイクロ波チャネルのそれぞれに対する前記基準信号は、前記複数のマイクロ波チャネルのそれぞれに対する前記順方向検出信号及び反射検出信号が共通の中間周波数を有するように選択される、請求項5から7のいずれか一項に記載の電気外科用発電機。
【請求項9】
前記共通の中間周波数が100MHz以下である、請求項8に記載の電気外科用発電機。
【請求項10】
前記電磁信号供給ユニットは、高周波、RF、EMエネルギーを生成するように構成され、前記複数のチャネルは、前記RF EMエネルギーを伝達するように構成されたRFチャネルを含む、先行請求項のいずれかに記載の電気外科用発電機。
【請求項11】
前記RF EMエネルギーは、400MHz以下の周波数を有する、請求項10に記載の電気外科用発電機。
【請求項12】
前記RFチャネルが、出力変圧器を介して前記出力ポートに結合され、前記組織識別ユニットが、前記RFチャネルに、
前記出力変圧器の一次コイルの電流を示す信号を判定するように構成される変流器、
前記出力変圧器の前記一次コイルの両端の電圧を示す信号を判定するように構成される分圧器、及び
前記出力変圧器の両端の前記電圧と前記電流との間の位相差を示す信号を判定するように構成された比較器、を備え、
前記組織識別ユニットは、電圧、電流、及び位相差を示す前記信号を、前記RFチャネルの前記出力ポートにおける負荷インピーダンスを示す前記信号として使用するように配置される、請求項10または11に記載の電気外科用発電機。
【請求項13】
前記コントローラは、電圧、電流、及び位相差を示す前記信号を受信してデジタル化し、前記デジタル化された信号を使用して複素インピーダンスを計算するように配置され、前記一組の複素インピーダンスは、前記RFチャネルから取得した前記デジタル化された信号から計算された複素インピーダンスを含む、請求項12に記載の電気外科用発電機。
【請求項14】
前記コントローラは、前記複素インピーダンスを計算するように構成されたフィールドプログラマブルゲートアレイを含む、請求項13に記載の電気外科用発電機。
【請求項15】
前記コントローラは、前記検出された信号から前記一組の複素インピーダンス値を判定するときにキャリブレーション調整を適用するように構成されている、先行請求項のいずれかに記載の電気外科用発電機。
【請求項16】
前記電磁エネルギーを前記電気外科用機器に伝達するために前記出力ポートに接続されたフレキシブル伝送線路、及び
前記フレキシブル伝送線路の遠位端に取り付けられた選択的反射要素、をさらに備え、
前記複数のチャネルは、第1の周波数で電磁エネルギーを伝達するように配置された第1のチャネルと、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数で電磁エネルギーを伝達するように配置された第2のチャネルとを含み、
前記選択的反射要素は、前記第2の周波数で奇数の4分の1波長の倍数、前記第1の周波数で半波長の倍数である電気の長さを有し、
前記コントローラは、前記第2のチャネルで伝達されるエネルギーから位相オフセットを検出し、前記第1のチャネルで前記検出された信号から複素インピーダンス値を判定するときに前記位相オフセットを適用するように構成される、先行請求項のいずれかに記載の電気外科用発電機。
【請求項17】
前記電磁信号供給ユニットは、組織アブレーション用のマイクロ波EMエネルギーを生成し、前記組織識別ユニットから独立した専用チャネルに沿って組織アブレーション用の前記マイクロ波EMエネルギーを前記出力ポートに伝達するように構成されている、先行請求項のいずれかに記載の電気外科用発電機。
【請求項18】
前記コントローラは、異なる周波数における複数の組織の種類の既知の複素インピーダンスを含むルックアップテーブルを記憶するメモリを含み、前記コントローラは、前記一組の複素インピーダンス値を前記既知の複素インピーダンスと比較することによって、組織の種類を識別するように構成されている、先行請求項のいずれかに記載の電気外科用発電機。
【請求項19】
前記コントローラは、前記一組の複素インピーダンス値のうちの2つ以上の複素インピーダンス値と、対応する周波数における既知の複素インピーダンスとの間の一致を判定すると、前記識別された組織の種類を伝えるための出力を生成するように構成されている、請求項18に記載の電気外科用発電機。
【請求項20】
前記識別された組織の種類は、腫瘍組織、空気で満たされた体積部、粘液で満たされた体積部、筋肉、肺、脂肪、肝臓、脳、及びアブレーションされた生体物質のいずれか1つ以上である、先行請求項のいずれかに記載の電気外科用発電機。
【請求項21】
前記コントローラは、2つの異なる組織の種類の間の境界を検出するように構成されている、先行請求項のいずれかに記載の電気外科用発電機。
【請求項22】
前記境界は、
(a)アブレーションされない非がん性の生体組織とアブレーションされない腫瘍組織との間の境界、
(b)アブレーションされない腫瘍組織とアブレーションされる生体組織との間の境界、及び
(c)アブレーションされない非がん性の生体組織とアブレーションされる生体組織との間の境界のいずれか1つ以上である、請求項21に記載の電気外科用発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療部位の生体組織を識別することができる電気外科システムに関する。特に、本発明は、生体組織に接触する電気外科用機器に共通の給電ケーブルに沿って複数の周波数の電磁エネルギーを選択的に供給するための電気外科用発電機に関する。電磁エネルギーは、生体組織の識別または治療のいずれかに適するように制御可能であり得る。生体組織の識別は、給電ケーブルに沿って送達され、給電ケーブルを通して反射される電磁エネルギーの測定を通じて生体組織のインピーダンスを判定することによって達成され得る。給電ケーブルは、最小限侵襲的な方法で生体組織を治療するために、外科用スコープデバイス(例えば、内視鏡または気管支鏡)の機器チャネルを通して導入することが可能であり得る。
【背景技術】
【0002】
電気外科用発電機は、開腹及び腹腔鏡処置で用いるために、病院の手術室に広く普及しており、内視鏡検査室にいっそう存在するようにもなってきている。内視鏡手術では、電気手術用アクセサリは通常、内視鏡内側の管腔から挿入される。腹腔鏡手術に対する同等なアクセスチャネルに対して考えると、このような内腔は穴が比較的狭く、長さがより長い。
【0003】
生体組織を切断するために高周波(RF)エネルギーを用いることが知られている。RFエネルギーを用いて切断する方法は、電流が(細胞及び細胞間電解質のイオン含有に助けられて)組織マトリックスを通ると、組織にわたる電子の流れに対するインピーダンスによって熱が発生するという原理を用いて動作する。組織マトリックスにRF電圧が印加されると、細胞内に十分な熱が発生して組織の含水を蒸発させる。このように乾燥が増加する結果、特に、組織を通る電流経路全体の中で電流密度が最も高い機器のRF放出領域(本明細書ではRFブレードと言う)に隣接して、RFブレードの切断ポールに隣接する組織はブレードとの直接接触を失う。印加電圧は次いで、この空隙のほとんど全体にわたって現れ、結果として空隙はイオン化して、プラズマが形成され、体積抵抗率が組織と比べて非常に高くなる。この相違は重要である。なぜならば、RFブレードの切断ポールと組織との間の電気回路を完成させたプラズマに印加エネルギーを集中させるからである。プラズマに十分ゆっくりと入るいずれかの揮発性材料は蒸発し、そのため、組織切裂きプラズマを知覚する。
【0004】
GB2486343に、生体組織を治療するためにRF及びマイクロ波エネルギーの両方を送達する電気外科装置用の制御システムが開示されている。プローブに送達されたRFエネルギー及びマイクロ波エネルギーの両方のエネルギー送達プロファイルは、プローブに伝達されたRFエネルギーのサンプリングされた電圧及び電流情報と、プローブとの間で伝達されたマイクロ波エネルギーに対するサンプリングされた順方向及び反射電力情報とに基づいて設定される。
【0005】
GB2522533に、生体組織を治療するために高周波(RF)エネルギー及びマイクロ波エネルギーを生成するように配列された電気外科用発電機に対する分離回路が開示されている。分離回路は、マイクロ波チャネルと信号結合器との間の接合部に同調可能な導波管アイソレータを含んでおり、RFエネルギーのカップリングとマイクロ波エネルギーの漏れとを抑制するために、信号結合器の接地導体と導波管アイソレータの伝導性入力セクションとの間に容量構造を含むことができる。
【0006】
WO2021/136717は、複数の異なる周波数においてマイクロ波エネルギーを選択的に送達することができる電気外科用発電機を開示している。異なる周波数を別個または同時に送達して、例えば異なる効果または生体組織を形成し得る。マイクロ波エネルギーの効率的な送達を可能にするために、電気外科用発電機は、複数のマイクロ波チャネルの有効な分離が可能な信号結合器を有しており、その結果他の周波数を伝達するチャネル内への漏れが最小または無視できる状態で各周波数のエネルギーがそのそれぞれのチャネルから出力ポートに向けられるようになる。
【0007】
本発明は、上記の考慮事項に照らして考案された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最も概略的には、本発明は、統合された組織識別機能を有する電気外科用発電機を提供する。発電機のエネルギー伝達チャネルに伝達され、それに沿って反射される信号の特性を検出することにより、エネルギーが送達される材料の誘電特性に関する情報を判定できる。特に、発電機が生体組織にエネルギーを送達するように構成された電気外科用機器に接続されている場合、その組織の複素インピーダンスを判定することができる。様々な種類の組織はその複雑なインピーダンスによって特徴づけられ得るため、これにより発電機は機器と接触している組織の種類を識別できる。本発明は、複数の異なる周波数でそのような特性を検出できる組織識別ユニットを提案する。これは、組織の種類をより正確に確かめることを可能にし得る。組織識別機能は、例えばアブレーション、切除、電気凝固、エレクトロポレーションなどによる組織の治療に適した電磁エネルギーを産生できる電気外科用発電機に有利に組み込むこともできる。実際、電気外科用発電機は、同じ機器を使用して組織の識別及び治療を実行できる可能性があり、これは、外科手術、特に内視鏡などの外科用スコープデバイスを介して治療部位に機器を運ぶものの有効性のために、有利である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、電気外科用発電機であって、複数のチャネルのそれぞれに沿って伝達される電磁、EMエネルギーを発生させるための電磁信号供給ユニットであって、複数のチャネルのそれぞれは電磁エネルギーを異なる周波数で伝達するように配置されている、電磁信号供給ユニット、複数のチャネルのそれぞれに選択的に接続可能である出力ポートであって、電磁エネルギーを生体組織に送達するための電気外科用機器に接続可能に構成される、出力ポート、組織識別ユニットであって、複数のチャネルのそれぞれから、出力ポートにおける負荷インピーダンスを示す信号を検出し、検出された信号から一組の複素インピーダンス値を判定し、一組の複素インピーダンス値は、複数の異なる周波数のそれぞれにおける負荷の複素インピーダンス値を含み、一組の複素インピーダンス値から組織の種類を識別し、識別された組織の種類をユーザに伝えるための出力を生成するように構成されたコントローラを備える組織識別ユニットを備える、電気外科用発電機が提供される。使用時、電気外科用発電機は、出力ポートと電気外科用機器との間に接続された適切な伝送線路(例えば、同軸ケーブル)を介して電気外科用機器に接続され得る。電気外科用機器が治療部位に移動されるとき、電気外科用発電機は組織識別モードで動作して、複数のチャネルのそれぞれを通じて機器に信号を送信することができる。電気外科用発電機は、機器にエネルギーを送達するために複数のチャネルのうちの1つを選択するように動作可能なスイッチを含み得る。一組の複素インピーダンス値は、チャネルを切り替え、各チャネルの出力ポートで負荷インピーダンスを示す信号を検出することによって集められる。このシナリオにおける負荷インピーダンスは、実際には、機器の遠位端、例えば機器と接触している生体組織の負荷である。コントローラは、例えば既知の組織の種類の複素インピーダンスのルックアップテーブルまたはライブラリを参照して、一組の複素インピーダンス値を使用して組織の種類を判定する。出力は、組織の種類を識別する、ユーザインターフェース(例えば、コンピュータ端末、ラップトップ、タブレットなど)に設けられるディスプレイのメッセージまたは他のインジケータであり得る。
【0010】
本発明は、健常な組織をがん性組織から区別するために使用することができ、例えば、機器の先端を治療部位の位置に配置すること、または治療が必要な組織の体積を確認することを支援することができる。特に、組織識別ユニットは、健常な組織とがん性組織との間の境界を検出するように構成され得る。この情報は、治療手順を計画するのに非常に有用であり得る。例えば、治療に大きな腫瘍(例えば、6cm)のアブレーションが含まれる場合、均質な腫瘍、アブレーションされる組織/腫瘍、及び健常な組織の境界を区別できることは、プローブの位置を最適化して、最小限の数のプローブの位置変更を使用して、完全な腫瘍がアブレーションされるのを確実にし得る。例えば、大きな腫瘍のアブレーションは、腫瘍の幾何学的中心または質量中心から離れた2つ以上の位置にプローブを配置して、複数のステップで実行され得る。腫瘍の境界の位置を知ることは、これらの位置の最適な数と位置を判定するのに役立ち、ロボットの制御によって支援される治療計画に特に有用であり得る。
【0011】
特に、本発明の組織識別機能は、腫瘍組織、気道(例えば、空気で満たされた体積部または粘液で満たされた体積部)、健常な組織(例えば、筋肉、肺、脂肪、肝臓、脳などの健常な組織の種類などを区別する能力を含む)、及びアブレーションされた物質(例えば、アブレーションされた健常な組織、またはアブレーションされた腫瘍)のうちの1つ以上を区別することが可能であり得る。この情報を使用して、発電機は、機器と接触している組織の種類をリアルタイムで識別する出力を生成できる可能性がある。
【0012】
さらに、組織識別ユニットは、異なる組織の種類間の1つ以上の境界を検出するように構成され得る。いくつかの例では、電磁信号供給ユニットは、境界の検出に基づいて自動的に制御可能であり、例えばがん性組織と健常な組織との間の境界を検出すると直ちにアブレーション信号をオフにすることができる。加えて、または代わりに、異なる境界の検出は、後続の治療ステップの間にロボットが支援する機器の移動の経路を判定するための予備的(治療前)ステップとして実行され得る。組織識別ユニットは、アブレーションされない健常な組織とアブレーションされる組織との間の境界、アブレーションされない腫瘍とアブレーションされる組織との間の境界、及び健常な(非がん性)組織と(アブレーションされない)腫瘍組織との間の境界のうちの任意の1つ以上を検出するように構成され得る。
【0013】
発電機は、組織の治療に使用されるよりも低い電力で組織識別のためのエネルギーを送達するように構成され得る。組織識別に使用される電力のレベルは、受信機の感度に応じて選択できる。組織識別のための電力レベルは、100μWを超え1W未満、好ましくは0.5mW以上100mW以下、より好ましくは1mW以上20mW以下であり得る。
【0014】
電磁信号供給ユニットは、複数のマイクロ波周波数でマイクロ波EMエネルギーを生成するように構成することができ、複数のチャネルは、マイクロ波EMエネルギーを伝達するように構成された少なくとも2つのチャネルを含む。例えば、複数のマイクロ波周波数は、433MHz、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、24GHz、及び60GHzのいずれかを含み得る。この列挙でのより高い周波数は、局所化されたインピーダンス測定値を取得するのに特に有用であり得る。
【0015】
組織識別ユニットは、複数のマイクロ波チャネルのそれぞれに、出力ポートに向かって進むマイクロ波EMエネルギーを示す順方向信号を検出するように構成された順方向検出器と、出力ポートから遠ざかるように進むマイクロ波EMエネルギーを示す反射信号を検出するように構成される逆方向検出器とを含み得る。順方向検出器はカプラであり得る。逆方向検出器は、順方向信号から反射エネルギーを分離するように構成されたサーキュレータを使用して実装することができる。組織識別ユニットは、複数のマイクロ波チャネルのそれぞれで検出された順方向信号及び反射信号を、そのマイクロ波チャネルの出力ポートにおける負荷インピーダンスを示す信号として使用するように構成され得る。言い換えれば、負荷インピーダンスは、従来の方法で順方向信号と反射信号を使用して計算できる反射係数から取得できる。負荷インピーダンスの判定を容易にするために、各マイクロ波チャネルは、順方向信号と反射信号を入力として受信し、順方向信号及び反射信号の周波数からオフセットされた周波数を有する基準信号を受信し、順方向信号及び反射信号と基準信号とをミックスダウンすることによって得られる中間周波数を有する順方向検出信号及び反射検出信号を生成するように構成されたヘテロダイン受信部を含む。ミックスダウンされた信号は、コントローラでの処理により適している可能性がある。例えば、コントローラは、順方向検出信号及び反射検出信号を受信してデジタル化し、デジタル化された順方向検出信号及び反射検出信号を使用して複素インピーダンスを計算するように構成され得る。一組の複素インピーダンスは、複数のマイクロ波チャネルのそれぞれについて、デジタル化された順方向検出信号及び反射検出信号から計算された複素インピーダンスを含むことができる。計算は、例えばフィールドプログラマブルゲートアレイによって実行できる。
【0016】
特に有利な例では、複数のマイクロ波チャネルのそれぞれに対する基準信号は、複数のマイクロ波チャネルのそれぞれに対する順方向検出信号と反射検出信号が共通の中間周波数を有するように選択される。言い換えれば、コントローラで受信される順方向検出信号と反射検出信号はすべて同じ周波数を有する可能性がある。これは、各マイクロ波チャネルに同じ計算ロジック(例えばFPGAにおける)を使用できることを意味し得る。共通の中間周波数は、100MHz以下、例えば50MHzであり得る。
【0017】
電磁信号供給ユニットは、高周波、RF、EMエネルギーを生成し、そのRFエネルギーを組織識別に使用するように構成することもできる。したがって、複数のチャネルは、RF EMエネルギーを伝達するように構成されたRFチャネルを含むことができる。RF EMエネルギーの周波数は400MHz以下であり得る。
【0018】
RFチャネルは、電磁信号供給ユニットから任意の電流経路に対して直接出力変圧器を介して出力ポートに結合され得る。組織識別ユニットは、出力変圧器の二次側の回路における負荷インピーダンス(生体組織)に関する情報を確かめるために、出力変圧器の一次コイル側の特性インピーダンスを検出するように構成され得る。例えば、組織識別ユニットは、一次回路の電圧及び電流の状態を検出することによって入力インピーダンス(出力変圧器の一次コイル側)を判定するように構成され得る。
【0019】
一例では、組織識別ユニットは、RFチャネルに、出力変圧器の一次コイルの電流を示す信号を判定するように構成される変流器、出力変圧器の一次コイルの両端の電圧を示す信号を判定するように構成される分圧器、及び出力変圧器の両端の電圧と電流との間の位相差を示す信号を判定するように構成された比較器、を備え、組織識別ユニットは、電圧、電流、及び位相差を示す信号を、RFチャネルの出力ポートにおける負荷インピーダンスを示す信号として使用するように配置される。上述のマイクロ波チャネルと同様に、コントローラは、電圧、電流、及び位相差を示す信号を受信してデジタル化し、これらのデジタル化された信号を使用して複素インピーダンスを計算するように配置され得る。コントローラは、複素インピーダンスを計算するように構成されたフィールドプログラマブルゲートアレイを含むことができる。
【0020】
したがって、一組の複素インピーダンスは、例えば1つ以上のマイクロ波チャネルから計算される複素インピーダンス信号に加えて、RFチャネルから得られるデジタル化された信号から計算される複素インピーダンスを含むことができる。
【0021】
電気外科用発電機は、1つ以上のRFチャネルと1つ以上のマイクロ波チャネルとの任意の組み合わせを備え得る。
【0022】
コントローラは、検出された信号から一組の複素インピーダンス値を判定するときにキャリブレーション調整を適用するように構成され得る。キャリブレーション調整は、出力ポートを複数(例えば3つ以上)のキャリブレーション標準、例えば互いに異なる既知の複素インピーダンスを有する負荷にさらすことによって事前に決定することができる。例えば、キャリブレーション標準は、脱イオン水、無水エタノール、及び脱イオン水と無水エタノールの50:50混合物を含み得る。
【0023】
いくつかの例では、特に電気外科用発電機と機器との間に長い距離がある場合、介在するコンポーネント、例えばエネルギーを伝達するためのフレキシブル伝送線路が、伝達されるエネルギーに位相シフトを導入し得る。例えば機器を新しい場所に移動したことにより、伝送線路の位置が移動した場合、位相シフトが変化する可能性がある。したがって、位相シフトを測定して、その影響が組織識別プロセスに悪影響を及ぼさないようにするようにすることが所望され得る。したがって、電気外科用発電機は、電磁エネルギーを電気外科用機器に伝達するために、出力ポートに接続されたフレキシブル伝送線路と共に使用され得る。フレキシブル伝送線路は、その遠位端に取り付けられた選択的反射要素を含むことができる。複数のチャネルは、第1の周波数で電磁エネルギーを伝達するように構成された第1のチャネルと、第1の周波数とは異なる第2の周波数で電磁エネルギーを伝達するように配置された第2のチャネルとを含み得、選択的反射要素は、第2の周波数で奇数の4分の1波長の倍数、第1の周波数で半波長の倍数である電気の長さを有する。これは、選択的反射要素が第2の周波数のエネルギーを機器に入る前に反射するが、第1の周波数のエネルギーに対しては透過性であり、そのために機器に通過するということを意味する。コントローラは、第2のチャネルの順方向信号と反射信号との間の位相変化を判定することによって、第2のチャネルで伝達されるエネルギーから位相オフセットを検出するように構成され得る。コントローラは、第1のチャネルで検出された信号から複素インピーダンス値を判定するときに位相オフセットを適用し得る。このようにして、電気外科用発電機は、機器への信号経路に沿った位相変動を補償することができる。
【0024】
電磁信号供給ユニットは、組織アブレーション用のマイクロ波EMエネルギーを生成し、組織識別ユニットから独立した専用チャネルに沿って組織アブレーション用のマイクロ波EMエネルギーを出力ポートに伝達するように構成され得る。
【0025】
コントローラは、異なる周波数における複数の組織の種類の既知の複素インピーダンスを含むルックアップテーブルまたはデジタルライブラリを格納するメモリを含むことができる。コントローラは、一組の複素インピーダンス値を既知の複素インピーダンスと比較することによって組織の種類を識別するように構成され得る。例えば、コントローラは、一組の複素インピーダンスと所与の組織の種類に対する既知の複素インピーダンスとの間の「最良の適合」を判定するように構成されたアルゴリズムを含むことができる。アルゴリズムは、一組の複素インピーダンス値が既知の複素インピーダンスとどの程度近いかを示す信頼度スコアを生成するように構成することができる。信頼度スコアは組織の種類と共に伝達され得る。
【0026】
あるいは、またはそれに加えて、コントローラは、一組の複素インピーダンス値の2つ以上の複素インピーダンス値と、対応する周波数における既知の複素インピーダンスとの間の一致を判定すると、識別された組織の種類を伝えるための出力を生成するように構成され得る。
【0027】
前述した電気外科用発電機をプローブに、例えば出力ポートから延びる同軸伝送線路を介して接続してもよい。プローブは、外科用スコープデバイス内の機器チャネルを通した挿入に適した電気外科用機器を含んでいてもよい。電気外科用機器は、本明細書で説明したRF、マイクロ波、及び電気穿孔エネルギーのいずれかを出力するように構成された遠位端アセンブリを含んでいてもよい。一例では、遠位端アセンブリは、内部導体が外部導体の遠位端を越えて突出してプローブの遠位端において露出する同軸構造を含んでいてもよい。この構成により、遠位端アセンブリは、RFエネルギーを送達するための二極性のエネルギー送達構造とマイクロ波エネルギーを放射するためのマイクロ波アンテナとを形成した。
【0028】
本明細書では、「マイクロ波」を広く用いて、周波数範囲400MHz~100GHz、しかし好ましくは範囲400MHz~60GHzを示してもよい。考慮した特定の周波数は、433MHz、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、24GHz、及び60GHzである。デバイスは、これらのマイクロ波周波数のうちの2つ以上においてエネルギーを送達してもよい。用語「高周波」または「RF」を用いて、300kHz~400MHzの周波数を示してもよい。
【0029】
本明細書では、用語「内部」は、機器チャネルの中心(例えば軸)に向かって半径方向に近い方を意味する。用語「外部」は、機器チャネルの中心(軸)から半径方向に遠い方を意味する。
【0030】
用語「伝導性」は、本明細書では、文脈上別の意味が示される場合を除き、電気伝導性を意味するために用いる。
【0031】
本明細書では、用語「近位」及び「遠位」は、治療部位から遠い方のエネルギー伝達構造端部及び治療部位に近い方のエネルギー伝達構造端部を、それぞれ指す。したがって、使用時、近位端の方がマイクロ波エネルギーを供給するための発電機に近く、一方で遠位端の方が治療部位(すなわち、患者)に近い。
【0032】
本発明は、本記載の態様及び好ましい特徴の組み合わせを含むが、かかる組み合わせが、明らかに容認できない場合または明らかに回避される場合を除く。
【0033】
本発明の原理を示す実施形態及び実験を、ここで添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】既知の種類の電気外科用発電機の概略図である。
図2図1の電気外科用発電機において用いることができる分離回路の概略図である。
図3】複数の周波数においてマイクロ波エネルギーを送達することができる既知の種類の電気外科用発電機の概略図である。
図4】本発明の実施形態である、複数のマイクロ波周波数チャネル及び組織識別機能を有する電気外科用発電機の概略図である。
図5】本発明の実施形態である電気外科用発電機での使用に適した組織識別機能を備えた高周波(RF)チャネルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の態様及び実施形態を、添付の図面を参照してここで説明する。さらなる態様及び実施形態は、当業者には明らかであろう。本文において言及されるすべての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
背景
図1に、例えば、本発明の理解にとって有用なGB2486343に開示された電気外科装置400の概略図を示す。装置はRFチャネルとマイクロ波チャネルとを含む。RFチャネルは、生体組織を治療する(例えば、切断するかまたは乾燥させる)のに適した電力レベルにおいてRF周波数電磁信号を発生させて制御するためのコンポーネントを含む。マイクロ波チャネルは、生体組織を治療する(例えば、凝固させるかまたはアブレーションする)のに適した電力レベルにおいてマイクロ波周波数電磁信号を発生させて制御するためのコンポーネントを含む。
【0037】
マイクロ波チャネルは、マイクロ波周波数供給源402と、それに続いて電力スプリッタ424(例えば3dB電力スプリッタ)(供給源402からの信号を2つの分岐に分割する)とを有する。電力スプリッタ424からの1つの分岐が、マイクロ波チャネルを形成する。マイクロ波チャネルは、制御信号V10を介してコントローラ406によって制御される可変減衰器404と制御信号V11を介してコントローラ406によって制御される信号変調器408とを含む電力制御モジュール、及び治療に適した電力レベルにおいてプローブ420から送達させるための順方向マイクロ波EM放射線を発生させるための駆動増幅器410及び電力増幅器412を含む増幅器モジュールを有する。増幅器モジュールの後、マイクロ波チャネルは、マイクロ波信号カップリングモジュール(マイクロ波信号検出器の一部を構成する)と続く。マイクロ波信号カップリングモジュールは、サーキュレータ416であって、その第1及び第2のポート間の経路に沿ってマイクロ波EMエネルギーを供給源からプローブへ送達するように接続されたサーキュレータ416と、サーキュレータ416の第1のポートにおける順方向カプラ414と、サーキュレータ416の第3のポートにおける反射カプラ418とを含む。反射カプラを通った後、第3のポートからのマイクロ波EMエネルギーは電力ダンプロード422において吸収される。またマイクロ波信号カップリングモジュールは、順方向結合信号または反射結合信号のいずれかを検出用にヘテロダイン受信部に接続するために制御信号V12を介してコントローラ406によって操作されるスイッチ415を含む。
【0038】
電力スプリッタ424からの他の分岐は測定チャネルを形成する。測定チャネルはマイクロ波チャネル上の増幅ラインアップを迂回しており、したがって、プローブから低電力信号を送達するように配列されている。制御信号V13を介してコントローラ406によって制御される一次チャネル選択スイッチ426は、マイクロ波チャネルまたは測定チャネルのいずれかからの信号を選択してプローブへ送達するように動作可能である。高バンドパスフィルタ427が、マイクロ波信号発電機を低周波数RF信号から保護するために、一次チャネル選択スイッチ426とプローブ420との間に接続されている。
【0039】
測定チャネルは、プローブから反射された電力の位相及び大きさを検出するように構成されたコンポーネントを含む。検出によって、材料(例えば、プローブの遠位端に存在する生体組織)についての情報が得られ得る。測定チャネルは、サーキュレータ428であって、その第1及び第2のポート間の経路に沿ってマイクロ波EMエネルギーを供給源402からプローブへ送達するように接続されたサーキュレータ428を含む。プローブから返った反射信号は、サーキュレータ428の第3のポート内に送られる。サーキュレータ428は、正確な測定が容易になるように順方向信号と反射信号との間の分離をもたらすために用いられる。しかし、サーキュレータはその第1及び第3のポート間の完全な分離をもたらさない。すなわち順方向信号の一部が第3のポートへと通り抜けて反射信号と干渉し得る。そのため、キャリアキャンセレーション回路を用いて、(順方向カプラ430からの)順方向信号の一部を、第3のポートから(注入カプラ432を介して)出てくる信号に注入して戻してもよい。キャリアキャンセレーション回路は、注入部分が、第1のポートから第3のポートへと通り抜ける任意の信号と180°位相がずれて信号を相殺することを確実にするために、位相調整器434を含んでいる。またキャリアキャンセレーション回路は、注入部分の大きさが任意の通り抜け信号と同じになることを確実にするために信号減衰器436を含んでいる。
【0040】
順方向信号におけるいかなるドリフトも補償するために、測定チャネル上に順方向カプラ438が設けられている。順方向カプラ438の結合出力とサーキュレータ428の第3のポートからの反射信号とが、スイッチ440の対応する入力端子に接続されている。スイッチ440は、結合された順方向信号または反射信号のいずれかを検出用にヘテロダイン受信部に接続するために、制御信号V14を介してコントローラ406によって操作される。
【0041】
スイッチ440の出力(すなわち、測定チャネルからの出力)とスイッチ415の出力(すなわち、マイクロ波チャネルからの出力)とが、二次チャネル選択スイッチ442のそれぞれの入力端子に接続されており、それは、一次チャネル選択スイッチと共に、制御信号V15を介してコントローラ406によって動作可能であり、測定チャネルがプローブにエネルギーを供給しているときに測定チャネルの出力がヘテロダイン受信部に接続されること、及びマイクロ波チャネルがプローブにエネルギーを供給しているときにマイクロ波チャネルの出力がヘテロダイン受信部に接続されることを確実にする。
【0042】
ヘテロダイン受信部は、二次チャネル選択スイッチ442が出力した信号から位相及び大きさの情報を抽出するために用いられる。このシステムではシングルヘテロダイン受信部を示しているが、信号がコントローラに入る前に供給源周波数を2回ミックスダウンするダブルヘテロダイン受信部(2つの局部発振器及び混合器を含む)を、必要に応じて用いてもよい。ヘテロダイン受信部は、二次チャネル選択スイッチ442が出力した信号をミックスダウンするための局部発振器444及び混合器448を含む。局部発振器信号の周波数は、混合器448からの出力が、コントローラ406において受け取るのに適した中間周波数となるように選択される。バンドパスフィルタ446、450が、局部発振器444及びコントローラ406を高周波マイクロ波信号から保護するために設けられている。
【0043】
コントローラ406は、ヘテロダイン受信部の出力を受信して、そこから、マイクロ波または測定チャネル上の順方向及び/または反射信号の位相及び大きさを示す情報を判定する(例えば、抽出する)。この情報を使用して、マイクロ波チャネル上の高電力マイクロ波EM放射、またはRFチャネル上の高電力RF EM放射の供給を制御することができる。ユーザは、ユーザインターフェース452を介してコントローラ406とインタラクトすることができる。
【0044】
図1に示されているRFチャネルは、制御信号V16を介してコントローラ406によって制御されるゲートドライバ456に接続されたRF周波数供給源454を含む。ゲートドライバ456は、RF増幅器458(ハーフブリッジ配置である)に対する動作信号を供給する。ハーフブリッジ配置のドレイン電圧は、可変DC電源460を介して制御可能である。出力変圧器462は、生成されたRF信号を、プローブ420に送達するためにラインに伝達する。ローパス、バンドパス、バンドストップ、またはノッチフィルタ464が、RF信号発電機を高周波マイクロ波信号から保護するために、そのライン上で接続されている。
【0045】
変流器466が、組織負荷に送達される電流を測定するためにRFチャネル上に接続されている。分圧器468(出力変圧器からタップされ得る)を用いて電圧を測定する。分圧器468及び変流器466からの出力信号(すなわち、電圧及び電流を示す電圧出力)は、対応するバッファ増幅器470、472及び電圧クランピングツェナーダイオード474、476、478、480によってコンディショニングされた後に、コントローラ406に直接接続される(図1では信号B及びCとして示す)。
【0046】
位相情報を得るために、電圧及び電流信号(B及びC)は位相比較器482(例えば、EXORゲート)にも接続される。位相比較器482の出力電圧はRC回路484によって積分されて、電圧波形と電流波形との間の位相差に比例する電圧出力(図1ではAとして示す)を形成する。この電圧出力(信号A)はコントローラ406に直接接続される。
【0047】
マイクロ波/測定チャネル及びRFチャネルは、信号結合器417に接続され、それは、両方の種類の信号を別個にまたは同時に、ケーブルアセンブリ419に沿ってプローブ420に伝達し、そのプローブから、それは患者の生体組織内に送達される(例えば、放射される)。
【0048】
マイクロ波チャネルと信号結合器417との接合部には、導波管アイソレータ(図示せず)が設けられ得る。導波管アイソレータは3つの機能を行うように構成してもよい。(i)非常に高いマイクロ波電力(例えば、10Wよりも大きい)を通過させること、(ii)RF電力の通過をブロックすること、(iii)高耐電圧(例えば、10kVよりも大きい)をもたらすこと。容量構造(DCブレークとしても知られる)を、導波管アイソレータに(例えば、導波管アイソレータ内に)または導波管アイソレータに隣接して、設けてもよい。容量構造の目的は、隔離障壁にわたる容量結合を減らすことである。
【0049】
図2は、やはり本発明の理解にとって有用な、GB2522533に開示された分離回路の概略図である。分離回路は、RF信号発電機218からのRF EM放射とマイクロ波信号発電機220からのマイクロ波放射とをプローブに伝達するための給電構造の一部を構成する。プローブ(図示せず)は、ハウジング226内に設けられた出力ポート228に接続可能である。絶縁スリーブ229がハウジングの出力ポート228に設けられていて、出力ポート228に接続された浮遊コンポーネントにハウジングの接地されたケーシングを接続するための電流経路を防ぐようになっている。
【0050】
給電構造は、RF EM放射を伝達するためのRF信号経路212、214を有するRFチャネルと、マイクロ波EM放射を伝達するためのマイクロ波信号経路210を有するマイクロ波チャネルとを含む。RF EM放射及びマイクロ波放射に対する信号経路は、互いから物理的に分離している。RF信号発電機は、計器用変圧器216を介してRF信号経路212、214に接続されている。変圧器216の二次コイル(すなわち、配置のプローブ側)は浮遊している。そのため、患者とRF信号発電機218との間に直流経路はない。これは、RF信号経路212、214の信号導体212及び接地導体214が両方とも浮遊していることを意味する。
【0051】
分離回路は導波管アイソレータ600を含んでいる。導波管アイソレータ600の絶縁ギャップは、必要なレベルのDC分離を与えるように構成されている一方で、ギャップにおけるマイクロ波エネルギーの漏れを防ぐように容量性リアクタンスがマイクロ波エネルギーの周波数において十分に低い。ギャップは0.6mm以上、例えば0.75mmであり得る。RFエネルギーはアイソレータの2つの端部の間でカップリングすることはできない。なぜならば、管の直径が、RF周波数においてプローブのそれぞれと直列に非常に大きなインダクタンスを形成するからである。
【0052】
分離回路は、導波管アイソレータ600と一体化された結合回路を有する。RF信号を搬送する信号導体212及び接地導体214が、同軸RFコネクタ602(RFフィード)に接続されている。同軸RFコネクタ602は、導波管アイソレータ600内にRF信号を導入し、それは出力ポート232からプローブに向かって伝達される。
【0053】
分離ギャップ603が、RF信号が入力ポート230内にカップリングして戻るのを防ぐために配列されている。導波管アイソレータ内に内部伝導性ロッドを注意深く配置することによって、マイクロ波エネルギーがRFコネクタ602内にカップリングすることがないようになっている。
【0054】
コンポーネントのラインアップの反射損失を減らすため、チューニングユニットが導波管アイソレータ600内に組み込まれている。チューニングユニットは、空洞の本体内に調整可能に挿入する(例えば、ネジで留める)ことができる3つのスタブ231を含んでいる。
【0055】
加えて、RFチャネルは、発電機と共に用いるケーブルの異なる長さから生じるキャパシタンスの変化に適応する(例えば、補償する)ように制御信号Cの制御下で動作可能である調整可能なリアクタンス217を有する。調整可能なリアクタンス217は、RFチャネルと並列または直列に接続されたスイッチトまたは電子的同調可能キャパシタまたはインダクタのうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0056】
図3は、複数のマイクロ波周波数を供給するように構成された電気外科用発電機200の概略図である。電気外科用発電機200の全体的アーキテクチャは、図1に関して前述したそれと同様であってもよく、RF及びマイクロ波エネルギーの結合に対する図2に関して述べたような分離回路を含んでいてもよい。
【0057】
電気外科用発電機200は、複数のマイクロ波チャネル240、242、244を含んでいるという点で、図1及び2とは異なる。マイクロ波チャネルはそれぞれ、他のマイクロ波チャネルとは異なる特定の周波数を有するマイクロ波エネルギーを発生させるように構成されている。複数のマイクロ波チャネル240、242、244はそれぞれ、別個の(独立した)マイクロ波源を含んでいてもよい。代替的に、各マイクロ波チャネル上の信号を、好適な周波数多重または周波数分割によって単一供給源から得てもよい。
【0058】
複数の各マイクロ波チャネルは独立に動作可能(例えば始動可能)であり得る。こうして、異なる周波数を有するマイクロ波信号を、複数のマイクロ波チャネルから別個にまたは同時に供給することができる。
【0059】
電気外科用発電機200はさらに、複数のマイクロ波チャネルのそれぞれ240、242、244からマイクロ波信号を受け取るように構成された一組の入力ポートを有するマイクロ波信号結合器246を含んでいる。マイクロ波信号結合器246はまた、出力ポートを有する。出力ポートから、マイクロ波チャネル240、242、244からの信号が、共通の伝送線路248に沿って導波管アイソレータ600の入力ポート230へ伝達される。
【0060】
複数のマイクロ波チャネル240、242、244は、任意の好適な周波数においてマイクロ波信号を発生させるように配列してもよい。しかし、発生させた周波数が以下のISMバンドのうちの1つに属することが好ましい場合がある。
・433.05MHz~434.79MHz(中心周波数が433.92MHzで1.74MHzバンド幅)
・902MHz~928MHz(中心周波数が915MHzで26MHzバンド幅)
・2.4GHz~2.5GHz(中心周波数が2.45GHzで100MHzバンド幅)
・5.725GHz~5.875GHz(中心周波数が5.8GHzで150MHzバンド幅)
・24.0GHz~24.25GHz(中心周波数が24.125MHzで250MHzバンド幅)
・61.0GHz~61.5GHz(中心周波数が61.25GHzで500MHzバンド幅)
【0061】
マイクロ波チャネルは、上述のバンドのうちの2つ以上からなる任意の組み合わせから信号を発生させてもよい。
【0062】
複数の周波数での組織の治療と識別
図4は、本発明の実施形態である電気外科用発電機500の概略図である。この例では、電気外科用発電機500は、異なる周波数で動作する3つのマイクロ波チャネルを有する。ただし、本発明はこの構成に限定されないことが理解されよう。例えば、電気外科用発電機500は、追加のマイクロ波チャネルを含んでもよく、及び/または図5を参照して以下に説明するようなRFチャネルを含んでもよい。
【0063】
図5に示される電気外科用発電機500では、3つのマイクロ波チャネルは、周波数fTを有するマイクロ波信号を生成する第1のマイクロ波源502で始まる第1のマイクロ波チャネルと、周波数fを有するマイクロ波信号を生成する第2のマイクロ波源518で始まる第2のマイクロ波チャネルと、周波数fを有するマイクロ波信号を生成する第3のマイクロ波源572から始まる第3のマイクロ波チャネルとを含む。第1、第2、及び第3のマイクロ波源502、518、572のそれぞれは、別個の(独立した)マイクロ波源であり得る。代替的に、各マイクロ波チャネル上の信号を、好適な周波数多重または周波数分割によって単一供給源から得てもよい。
【0064】
第1のマイクロ波チャネルは、組織のアブレーションまたは凝固に適した電力レベルを有するマイクロ波信号を生成するように構成されているという点で、治療専用チャネルとして構成されている。第1のマイクロ波チャネルは、制御信号Sを介してコントローラ560によって制御される可変減衰器504と、制御信号Sを介してコントローラ560によって制御される信号変調器506とを含む電力制御モジュール、及び治療に適した電力レベルで電気外科用機器516から送達させるための順方向マイクロ波EM放射線を発生させるための増幅器モジュール508(例えば、駆動増幅器及び電力増幅器を含む)を有する。増幅器モジュール508の後、マイクロ波チャネルは、その第1及び第2のポート間の経路に沿ってマイクロ波EMエネルギーを供給源からプローブへ送達するように接続されたサーキュレータ510に続く。サーキュレータ510の第2のポートで受け取った後進エネルギーは、電力ダンプ負荷511で吸収されるように第3のポートに進む。
【0065】
第1のマイクロ波チャネルは、スイッチ512で終了し、それは、制御信号Sを介してコントローラ560によって操作され、図3に示すように構成され得る分離回路514及びケーブル515を介してプローブ516に送られるマイクロ波チャネルのうちの1つから信号を選択する。スイッチ512は、PINスイッチ、あるいは同軸スイッチ、あるいは導波管スイッチであり得る。
【0066】
第2及び第3のマイクロ波チャネルは、両方とも、治療と識別の両方が可能なチャネルとして構成されている。
【0067】
第2のマイクロ波チャネルは、制御信号Sを介してコントローラ560によって制御される電力制御モジュール520(例えば、第1のマイクロ波チャネルと同様の可変減衰器及び信号変調器を含む)と、電気外科用機器516から送達するための順方向マイクロ波EM放射を生成するための増幅器モジュール522(例えば、駆動増幅器及び電力増幅器を含む)とを有する。増幅器モジュール522の後、第2のマイクロ波チャネルは、逆伝播エネルギーから増幅器モジュール522を保護するように構成されたアイソレータ524に続く。アイソレータの後、第2のマイクロ波チャネルは順方向カプラ526に続き、それは順方向マイクロ波EM放射を表す信号を生成する。この信号は、検出のためにヘテロダイン受信部に入力される前に、減衰器532によって減衰される。
【0068】
順方向信号と反射信号の減衰器は、異なる減衰係数を有するように構成されている。例えば、順方向信号は-6dB減衰器を通過し、反射信号は-12dB減衰器を通過する場合がある。反射信号は、発電機を機器に接続する伝送線路の2倍の挿入損失で減衰されるため、減衰の低下にさらされる。例えば、伝送線路の挿入損失が6dBで、機器のアンテナの損失が0.5dBの場合、機器の端が完全な短絡/開回路(リターンロス0dB)に接続されている場合でも、反射信号は、受信機で対応する順方向信号より13dB低くなる。順方向信号の電力が10mW(+10dBm)の場合、受信機での信号は+10dBm-13dB=-3dBmになる。一方、電力の99%が組織サンプルに送達されるようなリターンロスまたは整合性があった場合、サンプル負荷でのリターンロスは-20dBとなり、受信機での電力レベルは+10dBm-13dB-20dB=-23dBmになる。
【0069】
一方、第2のマイクロ波は、第1のポートと第2のポートとの間の経路に沿って順方向マイクロ波EMエネルギーを機器516に送達するために接続されたサーキュレータ530に続く。機器516から返った反射信号は、サーキュレータ530の第3のポート内に送られる。サーキュレータ530は、順方向信号と反射信号との間に分離を設けて、正確な測定を促進するために使用される。しかし、サーキュレータはその第1及び第3のポート間の完全な分離が得られない。すなわち順方向信号の一部が第3のポートへと通り抜けて反射信号と干渉し得る。そのため、キャリアキャンセレーション回路を用いて、(順方向カプラ528からの)順方向信号の一部を、第3のポートから(注入カプラ544を介して)出てくる信号に注入して戻してもよい。キャリアキャンセレーション回路は位相調整器542を含み、注入部分が、第1のポートから第3のポートへ通り抜けるいかなる信号とも180°位相がずれ、それを相殺することを確実にする。またキャリアキャンセレーション回路は、注入部分の大きさが任意の通り抜け信号と同じになることを確実にするために信号減衰器540を含んでいる。
【0070】
サーキュレータ530の第3のポートからの反射信号は、検出のためにヘテロダイン受信部に入力される前に、減衰器546によって減衰される。
【0071】
ヘテロダイン受信部は、順方向カプラ526及びサーキュレータ530の第3のポートから受信した順方向信号及び反射信号から位相及び振幅情報を抽出するために使用される。ヘテロダイン受信部は、第2のマイクロ波源518の周波数fからわずかにオフセットされた周波数f1LOを有する信号を出力する第1の局部発振器550を備える。第1の局部発振器550によって出力される信号は、コントローラ560にも伝達される共通の安定した基準信号から得られる。基準信号は、差動測定が行われるときにノイズを低減するために、例えばコモンモードノイズを除去するために使用できる。
【0072】
第1の局部発振器550からの出力信号は増幅器552に入力され、電力スプリッタ554によって2つの別個の信号に分割される。これらの別個の信号は、順方向信号と、順方向カプラ526及びサーキュレータ530の第3のポートからの反射信号とをミックスダウンするために、それぞれの混合器534、548に入力される。局部発振器信号の周波数は、混合器534、548からの出力が、コントローラ560で、アナログデジタルコンバータ(ADC)562により受信されるのに適した中間周波数になるように選択される。各混合器534、548からのミックスダウン信号は、第1の局部発振器550及びコントローラ560をあらゆる高周波マイクロ波信号から保護するように機能する統合フィルタ増幅器(例えば、バンドパスフィルタ536、556及び増幅器538、558を備える)に入力される。
【0073】
ADC562は、機器516に送られる順方向信号及び機器516から戻される反射信号に対応する出力D1、D2をヘテロダイン受信部から受信するように構成されている。機器516自体は、マイクロ波EMエネルギーを組織内に伝達する目的で生体組織に接触するように構成されている。機器516が組織と接触しているとき、順方向信号及び反射信号を使用して、機器の遠位端における負荷(生体組織)の複素インピーダンスを判定することができる。
【0074】
この例では、コントローラ560は、ヘテロダイン受信部からの入力(複数のマイクロ波チャネルが組織識別信号を設けるように構成されている場合には各ヘテロダイン受信部から)を適切な接続インターフェース566(例えば、シリアル周辺機器インターフェース)を介してユーザインターフェース568に伝達される組織識別出力信号に変換するように構成されたフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)564を含む。組織識別出力信号は、既知の組織の種類を表す場合もあれば、機器が空中にあることを示す場合もあり、または機器に接触する負荷が未知であることを示す場合もある。
【0075】
組織識別出力信号を生成するために、ADC562及びFPGA564は、機器516における負荷の複素インピーダンスを計算するためにヘテロダイン受信部からの受信出力D1、D2を使用して順方向信号及び反射信号の大きさ及び位相の情報を抽出し、次に、計算された複素インピーダンスにキャリブレーション調整を適用し、最後にキャリブレーションされた複素インピーダンスをルックアップテーブル(例えば、メモリ570に記憶されている)と比較するベクトルネットワークアナライザとして構成され得る。ルックアップテーブルは、例えばFoundation for Research on Information Technologies in Society(IT’IS)によって集められた適切なバイオバンクから得られる、複数の既知の組織の種類の誘電特性に関する情報を含み得る。
【0076】
本発明の特別な利点は、例えば組織識別信号に設けるように構成されたマイクロ波チャネルの周波数に対応する、複数の異なる周波数における複数の既知の組織の種類の誘電特性を設けるルックアップテーブルを設けることである。この例では、コントローラは、異なる周波数で測定された同じ負荷の複数の複素インピーダンスのそれぞれを、対応する周波数の複素インピーダンスの値のそれぞれのルックアップテーブルと比較するように構成され得る。キャリブレーションされた複素インピーダンスとテーブルの値が一致すれば、機器において組織の種類の候補を識別できる。この識別を複数の周波数で実行することにより、特に同じ組織の種類が複数の周波数で識別される場合に、検出の精度の信頼性が高まる。
【0077】
ユーザインターフェース568は、キャリブレーションされた複素インピーダンスとルックアップテーブルのエントリとの間の一致を見つけることによって得られた組織の種類を表示するように構成され得る。いくつかの例では、ユーザインターフェース568は、例えば、その組織の種類が識別された周波数の数に基づいて判定される、表示された組織の種類に対する信頼度スコアをもたらすこともできる。
【0078】
キャリブレーションの調整は、機器が既知の複素インピーダンスを有する複数のテスト用負荷に接触したときに出力D1、D2を取得することによって、事前に決定することができる。一例では、スミスチャートの異なる位置での一組の複素インピーダンスを設けるために、3つのテスト用負荷が使用される。3つのテスト用負荷は、脱イオン水(実質的に開回路状態)、無水エタノール、及び脱イオン水と無水エタノールの50:50混合物であり得る。各マイクロ波チャネルが同じ方法でキャリブレーションできる。
【0079】
第3のマイクロ波チャネルは、第2のマイクロ波チャネルと同様に構成されている。第3のマイクロ波チャネルは、制御信号Sを介してコントローラ560によって制御される電力制御モジュール574(例えば、第1のマイクロ波チャネルと同様の可変減衰器及び信号変調器を含む)と、電気外科用機器516から送達するための順方向マイクロ波EM放射を生成するための増幅器モジュール576(例えば、駆動増幅器及び電力増幅器を含む)とを有する。増幅器モジュール576の後、第3のマイクロ波チャネルは、逆伝播エネルギーから増幅器モジュール576を保護するように構成されたアイソレータ578に続く。アイソレータの後、第3のマイクロ波チャネルは順方向カプラ580に続き、それは順方向マイクロ波EM放射を表す信号を生成する。この信号は、検出のためにヘテロダイン受信部に入力される前に、減衰器604によって減衰される。
【0080】
一方、第3のマイクロ波は、第1のポートと第2のポートとの間の経路に沿って順方向マイクロ波EMエネルギーを機器516に送達するために接続されたサーキュレータ584に続く。機器516から返った反射信号は、サーキュレータ584の第3のポート内に送られる。サーキュレータ584は、順方向信号と反射信号との間に分離を設けて、正確な測定を促進するために使用される。しかし、サーキュレータはその第1及び第3のポート間の完全な分離をもたらさない。すなわち順方向信号の一部が第3のポートへと通り抜けて反射信号と干渉し得る。そのため、キャリアキャンセレーション回路を用いて、(順方向カプラ582からの)順方向信号の一部を、第3のポートから(注入カプラ586を介して)出てくる信号に注入して戻してもよい。キャリアキャンセレーション回路は位相調整器598を含み、注入部分が、第1のポートから第3のポートへ通り抜けるいかなる信号とも180°位相がずれ、それを相殺することを確実にする。またキャリアキャンセレーション回路は、注入部分の大きさが任意の通り抜け信号と同じになることを確実にするために信号減衰器596を含んでいる。
【0081】
サーキュレータ584の第3のポートからの反射信号は、検出のためにヘテロダイン受信部に入力される前に、減衰器588によって減衰される。
【0082】
ヘテロダイン受信部は、順方向カプラ580及びサーキュレータ584の第3のポートから受信した順方向信号及び反射信号から位相及び振幅情報を抽出するために使用される。ヘテロダイン受信部は、第3のマイクロ波源572の周波数fからわずかにオフセットされた周波数f2LOを有する信号を出力する第2の局部発振器573を備える。第2の局部発振器573によって出力される信号は、コントローラ560にも伝達される共通の安定した基準信号から得られる。第2の局部発振器573からの出力信号は増幅器575に入力され、電力スプリッタ577によって2つの別個の信号に分割される。これらの別個の信号は、順方向信号と、順方向カプラ580及びサーキュレータ584の第3のポートからの反射信号とをミックスダウンするために、それぞれの混合器581、590に入力される。第2の局部発振器信号の周波数は、混合器581、590からの出力が、コントローラ560で、ADC562により受信されるのに適した中間周波数になるように選択される。以下で説明するように、複数のマイクロ波チャネルが共通の中間周波数で出力を生成することは特に有利である可能性がある。各混合器581、590からのミックスダウン信号は、第2の局部発振器573及びコントローラ560をあらゆる高周波マイクロ波信号から保護するように機能する統合フィルタ増幅器(例えば、バンドパスフィルタ583、592及び増幅器585、594を備える)に入力される。ADC562は、これらのフィルタ増幅器から出力D3、D4を受信するように構成されている。出力D3、D4は、機器516に送られる順方向信号、及び機器516から戻って受信される反射信号に対応する。機器516自体は、マイクロ波EMエネルギーを組織内に伝達する目的で生体組織に接触するように構成されている。機器516が組織と接触しているとき、順方向信号及び反射信号を使用して、機器の遠位端における負荷(生体組織)の複素インピーダンスを判定することができる。
【0083】
第1及び第2のマイクロ波源518、572は、任意の適切な周波数でマイクロ波信号を生成するように構成され得る。しかし、発生させた周波数が以下のISMバンドのうちの1つに属することが好ましい場合がある。
・433.05MHz~434.79MHz(中心周波数が433.92MHzで1.74MHzバンド幅)
・902MHz~928MHz(中心周波数が915MHzで26MHzバンド幅)
・2.4GHz~2.5GHz(中心周波数が2.45GHzで100MHzバンド幅)
・5.725GHz~5.875GHz(中心周波数が5.8GHzで150MHzバンド幅)
・24.0GHz~24.25GHz(中心周波数が24.125MHzで250MHzバンド幅)
・61.0GHz~61.5GHz(中心周波数が61.25GHzで500MHzバンド幅)
【0084】
一例では、第1のマイクロ波源518の周波数fは5.8GHzであり、第1の局部発振器550の周波数f1LOは5.75GHzである。したがって、出力D1、D2の中間周波数は50MHzである。一方、第2のマイクロ波源572の周波数fは2.45GHzであり得、第2の局部発振器573の周波数f2LOは2.4GHzであり得る。この配置では、出力D3、D4の中間周波数がまた50MHzになる。したがって、ADCは、異なる周波数で動作するマイクロ波チャネルから同じ周波数の信号を受信できる。さらに、FPGA564の同じロジックを使用して、すべてのマイクロ波チャネルからの信号を処理することができる。
【0085】
使用中、機器516は、外科用スコープデバイスを通して治療部位に挿入され得、その後、機器の遠位端で組織の種類を識別するために発電機が作動される。これは、スイッチ512を制御して各マイクロ波チャネルを機器に順番に接続することによって行うことができる。接続時、各マイクロ波チャネルは、機器に信号を送信するように配置される。コントローラ560は、順方向及び反射されたエネルギーを検出し、周波数ごとに一組の複素インピーダンス値を集める。一組の複素インピーダンス値がルックアップテーブルと比較され、組織の種類が識別される。その後、機器を新しい位置に移動し、プロセスを繰り返すことができる。
【0086】
機器の位置は、手術用ロボットによって制御され得る。位置(例えば、所定の座標系における)は、識別された組織の種類を治療部位の対応する位置にマッピングできるように、コントローラに通信され得る。したがって、コントローラは、治療部位の組織の種類の位置の、例えば三次元のマップを構築することができる。マップは、治療段階を計画するために、例えばアブレーションを実行するために機器の先端が配置される位置を識別するために使用され得る。
【0087】
別の例では、マイクロ波チャネルには、出力周波数が調整可能なマイクロ波源及び局部発振器が設けられ得る。この例では、単一のマイクロ波チャネルを使用して、複数の周波数でインピーダンス測定値を取得することができる。さらに、マイクロ波源の周波数がその範囲にわたって掃引されるときの反射信号の振幅を監視することによって、例えば最小反射振幅に対応する最適な治療周波数を特定することが可能になり得る。
【0088】
さらに別の例では、ケーブル515によって引き起こされる反射信号の位相シフトを判定するようにマイクロ波チャネルを構成することができる。システムが長い可撓性ケーブルと共に使用される場合、例えば、機器516が内視鏡などの外科用スコープデバイスの機器チャネルを通して挿入可能である場合、治療部位への経路のケーブルの屈曲は、伝達される順方向信号と反射信号に、位相の変化を導入し得る。組織識別プロセスに不正確さを誘導しないように、この位相変化を識別及び補正することが望ましい場合がある。
【0089】
ケーブルによって導入された位相変化を測定するために、機器516は、機器の先端で組織を治療または測定するためのエネルギーの周波数に対して効果的に透過性である一方で、ケーブルによって導入された位相シフトを検出するように構成された1つ以上の周波数に対して反射性(つまり、開回路状態を示す)インピーダンス変換器として構成された選択的反射要素517を含むように構成され得る。
【0090】
選択的反射要素517は、マイクロ波EM放射を伝達するのに適した任意の構造として構成され得る。例えば、選択的反射要素517は、同軸伝送線路、マイクロストリップ伝送線路、または中空導波路であり得る。選択的反射要素517は、例えば433MHz、915MHz、MHz、2.45GHz、または5.8GHzのいずれかの、測定または治療を意図した周波数のマイクロ波エネルギーの半波長の倍数に等しい電気の長さを有する構造を呈するように構成される。この構成により、選択的反射要素517は、マイクロ波EM放射に対して透過性であり、ケーブル515と機器516の間のインピーダンス変換器として機能するように選択されたインピーダンスを有し得る。選択的反射要素517に使用される比誘電率εは、物理的な長さが実用的であることを保証するように選択することができる。位相補償を判定する際に使用されるマイクロ波エネルギーの周波数は、選択的反射要素517が奇数の4分の1波長の倍数に等しい電気の長さを有する構造を呈するように選択され得る。このシナリオでは、選択的反射要素517は、明確に定められた反射が得られる開回路状態を効果的に提示することができる。位相補償は、上述のように構成されたヘテロダイン受信部からの出力を使用して、コントローラ560によって取得され得る。
【0091】
実際には、治療にはより低い周波数を使用することが望ましい場合があるため、ケーブル位相補償を判定するための信号は、治療の信号よりも高い周波数を有する可能性がある。例えば、比誘電率が2.5の導波管では、2.45GHzでの第1の波長λは77.44mm、13.48GHzでの第2の波長λは14.08mmである。これらの波長は次の関係を満たす。
【数1】

これは、選択的反射要素517が2.45GHzで透過性で、13.48GHzで反射するように構成され得ることを意味する。
【0092】
図5は、本発明の実施形態である電気外科用発電機での使用に適した組織識別機能を備えた高周波(RF)チャネル700の概略図である。RFチャネル700は、図4に示される複数のマイクロ波チャネルに加えて、例えば、アイソレータ514への追加入力として、使用され得る。
【0093】
RFチャネルは、図1を参照して上述したように、RF周波数源及びRF増幅器を用いて構成され得るRF信号発電機702を備える。出力変圧器704は、RF発電機702からの生成されたRF信号を、機器に(例えば、アイソレータ514及びケーブル515を介して)送達するためのラインに転送する。
【0094】
組織識別機能は、出力変圧器704の一次コイルの実際の正弦波電圧及び電流を測定するように構成されたコンポーネントによって設けられる。位相を判定するために、測定された電圧と電流の差も測定される。一次コイルの電圧と電流は二次コイルの電圧と電流に関係しており、順次、二次回路の負荷の影響を受ける。機器が組織に接触しているとき、この負荷が組織のインピーダンスになる。一次回路と二次回路の電力が同じであると仮定すると、次のようになる。
【数2】

式中、Vは一次コイルの電圧、Vは二次コイルの電圧、Zinは一次回路の入力インピーダンス、Zは組織インピーダンス(対象の特性)である。
【0095】
>>Nと仮定すると、次のことがわかる。
【数3】

それゆえ、以下となる。
【数4】
【0096】
したがって、Zinを測定すると、Zに関する情報が得られる。入力インピーダンスZinは、一次回路の電流Iと電圧Vを測定することで得られる。実際には、これは、一次電圧Vを示す第1の電圧V、一次電流Iを示す第2の電圧V、及び一次電圧と一次電流との間の位相の差を示す第3の電圧Vを抽出することによって行われる。
【0097】
第1の電圧Vは、分圧器708から得られ、それは、次の関係により一次電圧Vに関連する検出電圧Vを取り出す。
【数5】
【0098】
検出された電圧は、電圧クランプ710及びバッファ増幅器716によって調整され、比較器722に供給され、バッファ増幅器718を介して基準源720から得られる基準電圧と比較され、第1の電圧Vを生成するようにする。
【0099】
これらの電圧の検出回路は差動増幅器として構成されており、出力電圧は非反転入力信号と反転入力信号の差に対応する。この配置は、別の場合には信号を破損する可能性があるいずれかのDC電圧オフセット及びコモンモードノイズを除去するために使用される。この配置には、ADCに入力される信号が同じ振幅になるようにシフトされるという利点もある。基準電圧は+5Vと-5Vの間に設定できる。基準源は、2つの固定の抵抗器と、必要なオフセットに調整する機能を設けるポテンショメータとを有する抵抗器ネットワークを備えて得る。
【0100】
第2の電圧Vが、組織負荷に送達される電流を測定するためにRFチャネル上に接続される変流器706から得られる。変流器706の第2のコイルの電流は、抵抗Rを有する負荷抵抗器を介して接続される。負担抵抗器の両端の電圧Vは、次の関係により、変流器706の一次コイルと二次コイルの一次電流I及び巻数(N、N)に関係する。
【数6】
【0101】
負担抵抗の両端の電圧Vは、電圧クランプ714及びバッファ増幅器728によって調整され、比較器730に供給され、そこでバッファ増幅器727を介して基準源726から得られる基準電圧と比較され、第2の電圧Vを生成するようにする。
【0102】
位相の情報を導出するために、第1の電圧V及び第2の電圧Vはまた、出力が第3の電圧Vである比較器724に接続される。この第3の電圧は、電圧波形と電流波形の間の位相差に比例する。
【0103】
第1、第2、及び第3の電圧は、図4を参照して上述したものと同様の方法で構成されたコントローラ560のADC562に供給される。機器516が組織と接触しているとき、第1、第2、及び第3の電圧を使用して、機器の遠位端における負荷(生体組織)の複素インピーダンスを判定することができる。
【0104】
この例では、コントローラ560は、第1、第2、及び第3の電圧を、適切な接続インターフェース566(例えば、シリアル周辺機器インターフェース)を介してユーザインターフェース568に伝達される組織識別出力信号に変換するように構成されたフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)564を含む。組織識別出力信号は、既知の組織の種類を表す場合もあれば、機器が空中にあることを示す場合もあり、または機器に接触する負荷が未知であることを示す場合もある。
【0105】
組織識別出力信号を生成するために、ADC562及びFPGA564は、第1、第2、及び第3の電圧を使用して機器516における負荷の複素インピーダンスを計算し、次に、計算された複素インピーダンスにキャリブレーション調整を適用し、最後に、キャリブレーションされた複素インピーダンスをルックアップテーブル(例えば、メモリ570に記憶されている)と比較する。前述のように、ルックアップテーブルは、例えばFoundation for Research on Information Technologies in Society(IT’IS)によって集められた適切なバイオバンクから得られる、複数の既知の組織の種類の誘電特性に関する情報を含み得る。
【0106】
RFチャネルの信号調整に使用されるオペアンプは、周波数400kHzの検出信号に利用できる適切な利得マージンがあることを確実にするために、利得帯域幅積が少なくとも10MHzであることが好ましい場合がある。
【0107】
上述の説明、もしくは以下の特許請求の範囲、もしくは添付の図面で開示し、その具体的な形態でもしくは開示した機能を行うための手段の形で表した特徴、または開示した結果を得るための方法もしくはプロセスを、必要に応じて、別個に、またはこのような特徴の任意の組み合わせで、本発明をその多様な形態で実現するために利用してもよい。
【0108】
本発明を、上記の例示的な実施形態と併せて説明してきたが、本開示が与えられた場合、多くの均等の修正及び変形が当業者には明らかであろう。したがって、上記の本発明の例示的な実施形態は、例示的であって、限定的ではないと見なされる。記載される実施形態への様々な変更を、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに行ってもよい。
【0109】
誤解を避けるために、本明細書に提供する理論的な説明は、読者の理解を深めることを目的として提供されている。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも拘束されることを望むものではない。
【0110】
本明細書で使用される任意のセクションの見出しは構成の目的のみのためであり、記載される対象物の限定として解釈されるべきではない。
【0111】
以下の請求項を含む本明細書を通して、文脈が他に要求しない限り、「含む(comprise)」及び「含む(include)」という単語、及び変形(「含む(comprises)」、「含む(comprising)」及び「含む(including)」)などは、明示された整数の値もしくはステップ、または整数の値もしくはステップの群を包含するが、他の整数の値もしくはステップ、または整数の値もしくはステップの群を除外しないことを示唆すると理解される。
【0112】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明確にそうでないと示されない限り、複数の指示物を包含することに留意されたい。範囲は、「約」ある特定の値から及び/または「約」別の特定の値までとして、本明細書において表現され得る。かかる範囲が表現されるとき、別の実施形態は、1つの特定の値から及び/または他方の特定の値までを含む。同様に、値が近似として表現される場合に、先行詞「約」の使用によって、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されよう。数値に関連する用語「約」は、任意であり、例えば、±10%を意味する。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科用発電機であって、
複数のチャネルのそれぞれに沿って伝達される複数のマイクロ波周波数のマイクロ波電磁、EMエネルギーを発生させるための電磁信号供給ユニットであって、前記複数のチャネルのそれぞれは電磁エネルギーを異なる周波数で伝達するように配置され、前記複数のチャネルは、マイクロ波EMエネルギーを伝達するように構成される少なくとも2つのマイクロ波チャネルを備える、前記電磁信号供給ユニット、
前記複数のチャネルのそれぞれに選択的に接続可能である出力ポートであって、前記電磁エネルギーを生体組織に送達するための電気外科用機器に接続可能に構成される、前記出力ポート、
組織識別ユニットであって、コントローラ、及び前記マイクロ波チャネルのそれぞれに、
前記出力ポートに向かって進むマイクロ波EMエネルギーを示す順方向信号を検出するように構成される順方向検出器、
前記出力ポートから遠ざかるように進むマイクロ波EMエネルギーを示す反射信号を検出するように構成された逆方向検出器、及び
ヘテロダイン受信機であって、
前記順方向信号と前記反射信号を入力として受信し、
前記順方向信号及び前記反射信号の前記周波数からオフセットされた周波数を有する基準信号を受信し、
前記順方向信号及び前記反射信号と前記基準信号とをミックスダウンすることによって得られる中間周波数を有する順方向検出信号及び反射検出信号を生成するように構成され、前記複数のマイクロ波チャネルのそれぞれに対する前記基準信号は、前記複数のマイクロ波チャネルのそれぞれに対する前記順方向検出信号及び反射検出信号が共通の中間周波数を有するように選択される、前記ヘテロダイン受信機、を備える前記組織識別ユニットを備え、
前記組織識別ユニットは、前記複数のマイクロ波チャネルのそれぞれで検出された前記順方向信号及び前記反射信号を、そのマイクロ波チャネルの前記出力ポートにおける負荷インピーダンスを示す信号として使用するように配置され、
前記コントローラは、
前記複数のチャネルのそれぞれから、前記出力ポートにおける負荷インピーダンスを示す前記信号を検出し、
前記検出された信号から一組の複素インピーダンス値を判定し、前記一組の複素インピーダンス値は、複数の異なる周波数のそれぞれにおける前記負荷の複素インピーダンス値を含み、
前記一組の複素インピーダンス値から組織の種類を識別し、
前記識別された組織の種類をユーザに伝えるための出力を生成するように構成される、
前記電気外科用発電機。
【請求項2】
前記複数のマイクロ波周波数は、433MHz、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、24GHz、及び60GHzのいずれかを含む、請求項1に記載の電気外科用発電機。
【請求項3】
前記コントローラは、前記順方向検出信号及び前記反射検出信号を受信してデジタル化し、前記デジタル化された順方向検出信号及び反射検出信号を使用して複素インピーダンスを計算するように配置され、前記一組の複素インピーダンスは、前記複数のマイクロ波チャネルのそれぞれについて、前記デジタル化された順方向検出信号及び反射検出信号から計算された複素インピーダンスを含む、請求項1または請求項2に記載の電気外科用発電機。
【請求項4】
前記コントローラは、前記複素インピーダンスを計算するように構成されたフィールドプログラマブルゲートアレイを含む、請求項3に記載の電気外科用発電機。
【請求項5】
前記共通の中間周波数が100MHz以下である、先行請求項のいずれかに記載の電気外科用発電機。
【請求項6】
前記電磁信号供給ユニットは、高周波、RF、EMエネルギーを生成するように構成され、前記複数のチャネルは、前記RF EMエネルギーを伝達するように構成されたRFチャネルを含む、先行請求項のいずれかに記載の電気外科用発電機。
【請求項7】
前記RF EMエネルギーは、400MHz以下の周波数を有する、請求項6に記載の電気外科用発電機。
【請求項8】
前記RFチャネルが、出力変圧器を介して前記出力ポートに結合され、前記組織識別ユニットが、前記RFチャネルに、
前記出力変圧器の一次コイルの電流を示す信号を判定するように構成される変流器、
前記出力変圧器の前記一次コイルの両端の電圧を示す信号を判定するように構成される分圧器、及び
前記出力変圧器の両端の前記電圧と前記電流との間の位相差を示す信号を判定するように構成された比較器、を備え、
前記組織識別ユニットは、電圧、電流、及び位相差を示す前記信号を、前記RFチャネルの前記出力ポートにおける負荷インピーダンスを示す前記信号として使用するように配置される、請求項6または7に記載の電気外科用発電機。
【請求項9】
前記コントローラは、電圧、電流、及び位相差を示す前記信号を受信してデジタル化し、前記デジタル化された信号を使用して複素インピーダンスを計算するように配置され、前記一組の複素インピーダンスは、前記RFチャネルから取得した前記デジタル化された信号から計算された複素インピーダンスを含む、請求項8に記載の電気外科用発電機。
【請求項10】
前記コントローラは、前記複素インピーダンスを計算するように構成されたフィールドプログラマブルゲートアレイを含む、請求項9に記載の電気外科用発電機。
【請求項11】
前記コントローラは、前記検出された信号から前記一組の複素インピーダンス値を判定するときにキャリブレーション調整を適用するように構成されている、先行請求項のいずれかに記載の電気外科用発電機。
【請求項12】
前記電磁エネルギーを前記電気外科用機器に伝達するために前記出力ポートに接続されたフレキシブル伝送線路、及び
前記フレキシブル伝送線路の遠位端に取り付けられた選択的反射要素、をさらに備え、
前記複数のチャネルは、第1の周波数で電磁エネルギーを伝達するように配置された第1のチャネルと、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数で電磁エネルギーを伝達するように配置された第2のチャネルとを含み、
前記選択的反射要素は、前記第2の周波数で奇数の4分の1波長の倍数、前記第1の周波数で半波長の倍数である電気の長さを有し、
前記コントローラは、前記第2のチャネルで伝達されるエネルギーから位相オフセットを検出し、前記第1のチャネルで前記検出された信号から複素インピーダンス値を判定するときに前記位相オフセットを適用するように構成される、先行請求項のいずれかに記載の電気外科用発電機。
【請求項13】
前記電磁信号供給ユニットは、組織アブレーション用のマイクロ波EMエネルギーを生成し、前記組織識別ユニットから独立した専用チャネルに沿って組織アブレーション用の前記マイクロ波EMエネルギーを前記出力ポートに伝達するように構成されている、先行請求項のいずれかに記載の電気外科用発電機。
【請求項14】
前記コントローラは、異なる周波数における複数の組織の種類の既知の複素インピーダンスを含むルックアップテーブルを記憶するメモリを含み、前記コントローラは、前記一組の複素インピーダンス値を前記既知の複素インピーダンスと比較することによって、組織の種類を識別するように構成されている、先行請求項のいずれかに記載の電気外科用発電機。
【請求項15】
前記コントローラは、前記一組の複素インピーダンス値のうちの2つ以上の複素インピーダンス値と、対応する周波数における既知の複素インピーダンスとの間の一致を判定すると、前記識別された組織の種類を伝えるための出力を生成するように構成されている、請求項14に記載の電気外科用発電機。
【請求項16】
前記識別された組織の種類は、腫瘍組織、空気で満たされた体積部、粘液で満たされた体積部、筋肉、肺、脂肪、肝臓、脳、及びアブレーションされた生体物質のいずれか1つ以上である、先行請求項のいずれかに記載の電気外科用発電機。
【請求項17】
前記コントローラは、2つの異なる組織の種類の間の境界を検出するように構成されている、先行請求項のいずれかに記載の電気外科用発電機。
【請求項18】
前記境界は、
(a)アブレーションされない非がん性の生体組織とアブレーションされない腫瘍組織との間の境界、
(b)アブレーションされない腫瘍組織とアブレーションされる生体組織との間の境界、及び
(c)アブレーションされない非がん性の生体組織とアブレーションされる生体組織との間の境界のいずれか1つ以上である、請求項17に記載の電気外科用発電機。
【国際調査報告】