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特表2024-546576部位特異的なタンパク質のグリコシル化の標的化定量を使用した肉腫処置反応の予測
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  • 特表-部位特異的なタンパク質のグリコシル化の標的化定量を使用した肉腫処置反応の予測 図1
  • 特表-部位特異的なタンパク質のグリコシル化の標的化定量を使用した肉腫処置反応の予測 図2A
  • 特表-部位特異的なタンパク質のグリコシル化の標的化定量を使用した肉腫処置反応の予測 図2B
  • 特表-部位特異的なタンパク質のグリコシル化の標的化定量を使用した肉腫処置反応の予測 図3
  • 特表-部位特異的なタンパク質のグリコシル化の標的化定量を使用した肉腫処置反応の予測 図4
  • 特表-部位特異的なタンパク質のグリコシル化の標的化定量を使用した肉腫処置反応の予測 図5
  • 特表-部位特異的なタンパク質のグリコシル化の標的化定量を使用した肉腫処置反応の予測 図6
  • 特表-部位特異的なタンパク質のグリコシル化の標的化定量を使用した肉腫処置反応の予測 図7
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  • 特表-部位特異的なタンパク質のグリコシル化の標的化定量を使用した肉腫処置反応の予測 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】部位特異的なタンパク質のグリコシル化の標的化定量を使用した肉腫処置反応の予測
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20241219BHJP
   G16H 50/00 20180101ALI20241219BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241219BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20241219BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20241219BHJP
   C12N 9/76 20060101ALN20241219BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
G01N33/68
G16H50/00 ZNA
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P43/00 121
G01N27/62 V
C07K14/47
C12N9/76
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527450
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 IB2022061293
(87)【国際公開番号】W WO2023089597
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/282,168
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】521339843
【氏名又は名称】ヴェン バイオサイエンシーズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ペッカリング, チャド イーグル
(72)【発明者】
【氏名】セリー, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シュー, ググ
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
4C085
4H045
5L099
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041FA10
2G041FA12
2G041LA06
2G041LA08
2G045AA24
2G045AA26
2G045CB02
2G045DA36
2G045FA36
2G045JA01
2G045JA03
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG02
4H045AA10
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
5L099AA03
(57)【要約】
肉腫病状と診断された対象の処置を管理するための方法及びシステム。対象から得られた生物試料に対応するペプチド構造データが受信される。処置に対する反応性の可能性を予測する反応スコアは、ペプチド構造セットのペプチド構造データから特定された定量データを使用して計算される。ペプチド構造セットは、表1に記載の複数のペプチド構造から特定される少なくとも1つのペプチド構造を含む。複数のペプチド構造は、肉腫病状の生存に対する相対的重要性に関して表1に記載される。処置反応出力は、反応スコアに基づいて生成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉腫病状と診断された対象の処置を管理する方法であって、前記方法が、
前記対象から得られた生物試料に対応するペプチド構造データを受信すること、
ペプチド構造セットの前記ペプチド構造データから特定される定量データを使用して、前記処置に対する反応性の可能性を予測する反応スコアを計算することであって、
前記ペプチド構造セットが、表1に記載の複数のペプチド構造から特定される少なくとも1つのペプチド構造を含み、
前記複数のペプチド構造が、前記肉腫病状の生存に対する相対的重要性に関して表1に記載される、前記計算すること、及び
前記反応スコアに基づいて処置反応出力を生成すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記処置反応出力を生成することが、
前記反応スコアが選択閾値を上回るかどうかを判定すること、
前記反応スコアが前記選択閾値を上回る場合、前記対象を前記処置に対する見込み奏効者と特定すること、及び
前記反応スコアが前記選択閾値を上回らない場合、前記対象を前記処置に対する見込み非奏効者と特定すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処置反応出力を生成することが、
前記反応スコアが選択閾値を上回るかどうかを判定すること、
前記反応スコアが、前記選択閾値以上である場合、前記対象を前記処置に対する見込み奏効者と特定すること、及び
前記反応スコアが前記選択閾値を下回る場合、前記対象を前記処置に対する見込み非奏効者と特定すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記選択閾値が、一致指数(concordance index)を最大化するカットオフ反応スコアである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記カットオフ反応スコア及び前記一致指数が、複数の試料対象に対して生成された試料反応スコアの分布を使用して計算される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記反応スコアが、生存基準セットに基づいて前記対象が前記処置に反応する確率である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記生存基準セットが、選択期間よりも長い全生存期間を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記生存基準セットが、選択期間よりも長い無増悪生存期間を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記反応スコアを計算することが、
Cox回帰モデル及び前記定量データを使用して、前記反応スコアを計算すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのペプチド構造が、表1に特定されるように、ペプチド配列及び前記ペプチド配列と前記ペプチド配列の連結部位で連結しているグリカン構造により規定される糖ペプチド構造を含み、前記ペプチド配列が、表1に規定される配列番号12~26のうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
さらに、
前記処置反応出力を生成する際に使用する前記反応スコアの選択閾値を決定すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記選択閾値を決定することが、
複数の試料対象の前記ペプチド構造セットに対応する試料データの選択部分、及び前記複数の試料対象の生存情報を使用して、前記肉腫病状と診断された前記複数の試料対象の試料反応スコアの分布を生成すること、ならびに
前記選択閾値として前記試料反応スコアの分布の一致指数を最大化するカットオフ反応スコアを特定すること
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
さらに、
前記複数の試料対象の前記複数のペプチド構造プロファイルにおける各ペプチド構造についてCox回帰分析を実行すること、
前記Cox回帰分析に基づいて、前記肉腫病状の生存可能性に関連しているペプチド構造の初期群を同定すること、及び
特定されたペプチド構造の前記初期群に基づいて、前記試料データの前記選択部分を形成すること
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記Cox回帰分析に基づいて、ペプチド構造の前記初期群を特定することが、
ペプチド構造の前記初期群として、選択された数の、p値に関して最も重要なペプチド構造を特定すること
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記反応スコアを計算することが、
ペプチド構造の前記初期群から選択されるペプチド構造サブセットに対して構築されたモデルを使用して前記反応スコアを計算すること
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ペプチド構造サブセットが、表1のPS-1~PS-5のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ペプチド構造セットのペプチド構造の前記定量データが、存在量、相対存在量、正規化存在量、相対量、調整量、正規化量、相対濃度、調整濃度、または正規化濃度のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ペプチド構造データが、多重反応モニタリング質量分析法(MRM-MS)を使用して生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
さらに、
前記生物試料から試料を作成すること、ならびに
還元、アルキル化、及び酵素消化を使用して前記試料を調製して、ペプチド構造セットを含む調製試料を形成すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
さらに、
多重反応モニタリング質量分析法(MRM-MS)を使用して、前記調製試料から前記ペプチド構造データを生成すること
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記処置反応出力を生成することが、
前記対象が前記肉腫病状の前記処置に対する見込み奏効者であることを示すレポートを作成すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記レポートが、前記対象への前記処置の投与を進めることを示すものを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
さらに、
前記対象が前記処置に対する見込み奏効者であることを示す前記処置反応出力に基づいて、前記処置の治療用量を投与すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記治療用量が、
1500mgのデュルバルマブを静脈内(IV)注入により4週間毎に最大4回投与、
75mgのトレメリムマブをIV注入により4週間毎に最大4回投与、及び
1500mgのデュルバルマブを16週目から開始して4週間毎に最大9回投与
を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
さらに、
前記対象が前記肉腫病状の前記処置に対する見込み非奏効者であることを示すレポートを生成すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記レポートが、前記処置を変更するか、または新しい処置を選択するかを示すものを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記処置が、免疫療法を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記処置が、デュルバルマブ及びトレメリムマブを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
さらに、
前記処置出力をリモートシステムに送信すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
肉腫病状と診断された対象の処置反応性を予測するための最終モデルを構築する方法であって、前記方法が、
前記肉腫病状と診断された複数の試料対象のペプチド構造のパネルに対する試料データを受信することであって、前記試料データが、ペプチド構造の前記パネルの定量データを含む、前記受信すること、
前記複数の試料対象の生存情報を受信すること、
前記試料データ及び前記生存情報に基づいて、前記肉腫病状の生存に関連しているペプチド構造の初期群を特定することであって、ペプチド構造の前記初期群が、表1に特定される複数のペプチド構造の少なくとも3つのペプチド構造を含む、前記特定すること、
ペプチド構造の前記初期群の異なるサブセットを使用して複数のモデルを構築すること、及び
肉腫に対する前記処置の前記処置反応性の予測に使用される前記複数のモデルから前記最終モデルを選択すること
を含む、方法。
【請求項31】
前記最終モデルが、Cox回帰モデルである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記試料データ及び前記生存情報に基づいて、ペプチド構造の前記初期群を特定することが、
前記複数の試料対象の前記複数のペプチド構造プロファイルにおける各ペプチド構造についてCox回帰分析を実行すること、
各ペプチド構造のp値を計算すること、及び
前記Cox回帰分析で、前記p値に基づいて前記肉腫病状に関する生存に関連しているペプチド構造の前記初期群を特定すること
を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記複数のモデルを構築することが、
ペプチド構造の前記初期群からペプチド構造試験サブセットを選択して、モデルを構築すること、及び
前記複数の試料対象の前記ペプチド構造試験サブセットに対応する、前記複数の試料対象の前記モデル、前記生存情報、及び前記試料データの一部を使用して、前記複数の試料対象の試料反応スコアの分布を生成すること、
を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記複数のモデルを構築することが、さらに、
前記分布に基づいて前記モデルの選択閾値を決定すること、ならびに
前記モデルのハザード比及びp値を計算すること
を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記最終モデルを選択することが、
前記複数のモデルに対して計算された複数のp値に基づいて生成された前記複数のモデルから前記最終モデルを選択すること
を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記最終モデルが、表1のPS-1~PS-5のうちの少なくとも1つを含むペプチド構造セットを使用する、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記複数の肉腫病状と診断された前記複数の対象のペプチド構造の前記パネルに対する前記定量データが、存在量、相対存在量、正規化存在量、相対量、調整量、正規化量、相対濃度、調整濃度、または正規化濃度のうちの少なくとも1つを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
患者の肉腫を処置する方法であって、
前記患者から得られた生物試料に対応するペプチド構造データを受信すること、
ペプチド構造セットの前記ペプチド構造データから特定された定量データを使用して、処置への反応性の可能性を予測する反応スコアを計算することであって、前記ペプチド構造セットが、表1に記載の複数のペプチド構造から特定される少なくとも1つのペプチド構造を含み、
前記複数のペプチド構造が、前記肉腫病状の生存に対する相対的重要性に関して表1に記載されている、前記計算すること、
前記対象が、前記反応スコアに基づいて、前記処置に対する見込み奏効者または見込み非奏効者であるかを判定すること、及び
前記対象が前記見込み奏効者であると判定される場合、前記患者に、前記処置の治療用量を投与すること
を含む、方法。
【請求項39】
前記処置を投与することが、
前記患者に免疫療法を投与すること
を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記処置を投与することが、
デュルバルマブ及びトレメリムマブの組み合わせを前記患者に投与すること、
を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記処置を投与することが、
前記デュルバルマブを1500mgの投薬量で静脈内(IV)投与経路により4週間毎に最大4回投与すること
を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記処置を投与することが、
前記デュルバルマブを1500mgの投薬量で静脈内(IV)投与経路により4週間毎に最大13回投与すること
を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記処置を投与することが、
前記デュルバルマブを1500mgの投薬量で静脈内(IV)投与経路により16週目から開始して4週間毎に最大9回投与すること
を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記処置を投与することが、
前記トレメリムマブを75mgの投薬量で静脈内(IV)投与経路により4週間毎で開始して最大4回投与すること
を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記処置を投与することが、
静脈内(IV)投与経路により前記処置を投与すること
を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
前記処置を投与することが、
前記処置の前記治療用量を4週間毎に投与すること
を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
表1に特定されるペプチド構造PS-1~PS-22のうちの少なくとも1つを含む、組成物。
【請求項48】
記載なし。
【請求項49】
ペプチド構造またはプロダクトイオンを含む組成物であって、
前記ペプチド構造またはプロダクトイオンが、表1のペプチド構造PS-1~PS-22に対応する配列番号12~26のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記プロダクトイオンが、特定されるm/zの範囲内に入るプロダクトイオンを含む、表2で特定されるプロダクトイオンからなる群からの1つとして選択される、組成物。
【請求項50】
表1に特定されるペプチド構造PS-1~PS-22からなる群からの1つとして選択される糖ペプチド構造を含む組成物であって、
前記糖ペプチドの構造が、
前記糖ペプチド構造に対応するものとして表3で特定されるアミノ酸ペプチド配列、及び
前記糖ペプチド構造に対応するものとして表5で特定されるグリカン構造であって、前記グリカン構造が表1で特定される対応する位置で前記アミノ酸ペプチド配列の残基に連結され、前記グリカン構造がグリカン組成を有する、前記グリカン構造、
を含む、組成物。
【請求項51】
前記グリカン組成が、表5に特定される、請求項48に記載の組成物。
【請求項52】
前記糖ペプチド構造が、前記糖ペプチド構造に対応するものとして表2に特定される電荷を有するプリカーサーイオンを有する、請求項48に記載の組成物。
【請求項53】
前記糖ペプチド構造が、前記糖ペプチド構造に対応するものとして表2の前記プリカーサーイオンに対し記載されているm/z比の±1.5以内のm/z比を有するプリカーサーイオンを有する、請求項48に記載の組成物。
【請求項54】
前記糖ペプチド構造が、前記糖ペプチド構造に対応するものとして表2の前記プリカーサーイオンに対し記載されているm/z比の±1.0以内のm/z比を有するプリカーサーイオンを有する、請求項48に記載の組成物。
【請求項55】
前記糖ペプチド構造が、前記糖ペプチド構造に対応するものとして表2の前記プリカーサーイオンに対し記載されているm/z比の±0.5以内のm/z比を有するプリカーサーイオンを有する、請求項44に記載の組成物。
【請求項56】
前記糖ペプチド構造が、前記糖ペプチド構造に対応するものとして表2の前記第1のプロダクトイオンに対し記載されているm/z比の±1.0以内のm/z比を有するプロダクトイオンを有する、請求項48に記載の組成物。
【請求項57】
前記糖ペプチド構造が、前記糖ペプチド構造に対応するものとして表2の前記第1のプロダクトイオンに対し記載されているm/z比の±0.8以内のm/z比を有するプロダクトイオンを有する、請求項48に記載の組成物。
【請求項58】
前記糖ペプチド構造が、前記糖ペプチド構造に対応するものとして表2の前記第1のプロダクトイオンに対し記載されているm/z比の±0.5以内のm/z比を有するプロダクトイオンを有する、請求項48に記載の組成物。
【請求項59】
前記糖ペプチド構造が、前記糖ペプチド構造に対応するものとして表1で特定されるモノアイソトピック質量を有する、請求項48に記載の組成物。
【請求項60】
表1で特定される複数のペプチド構造からの1つとして選択されるペプチド構造を含む組成物であって、
前記ペプチド構造が、表1の前記ペプチド構造に対応するものとして特定されたモノアイソトピック質量を有し、
前記ペプチド構造が、前記ペプチド構造に対応するものとして表1で特定される配列番号12~26のアミノ酸配列を含む、前記組成物。
【請求項61】
前記ペプチド構造が、前記ペプチド構造に対応するものとして表2に特定される電荷を有するプリカーサーイオンを有する、請求項59に記載の組成物。
【請求項62】
前記ペプチド構造が、前記ペプチド構造に対応するものとして表2の前記プリカーサーイオンに対し記載されているm/z比の±1.5以内のm/z比を有するプリカーサーイオンを有する、請求項59に記載の組成物。
【請求項63】
前記ペプチド構造が、前記ペプチド構造に対応するものとして表2の前記プリカーサーイオンに対し記載されているm/z比の±1.0以内のm/z比を有するプリカーサーイオンを有する、請求項59に記載の組成物。
【請求項64】
前記ペプチド構造が、前記ペプチド構造に対応するものとして表2の前記プリカーサーイオンに対し記載されているm/z比の±0.5以内のm/z比を有するプリカーサーイオンを有する、請求項59に記載の組成物。
【請求項65】
前記ペプチド構造が、前記ペプチド構造に対応するものとして表2の前記第1のプロダクトイオンに対し記載されているm/z比の±1.0以内のm/z比を有するプロダクトイオンを有する、請求項59に記載の組成物。
【請求項66】
前記ペプチド構造が、前記ペプチド構造に対応するものとして表2の前記第1のプロダクトイオンに対し記載されているm/z比の±0.8以内のm/z比を有するプロダクトイオンを有する、請求項59に記載の組成物。
【請求項67】
前記ペプチド構造が、前記ペプチド構造に対応するものとして表2の前記第1のプロダクトイオンに対し記載されているm/z比の±0.5以内のm/z比を有するプロダクトイオンを有する、請求項59に記載の組成物。
【請求項68】
請求項1に記載の方法を実行するための、表1で特定される少なくとも1つのペプチド構造を定量するための少なくとも1つの薬剤を含む、キット。
【請求項69】
請求項1に記載の方法を実行するための、糖ペプチド標準、緩衝液、またはペプチド配列セットのうちの少なくとも1つを含むキットであって、前記ペプチド配列セットのペプチド配列が、表1で規定される配列番号12~26のうちの対応する1つにより特定される、キット。
【請求項70】
1つ以上のデータプロセッサー、及び
前記1つ以上のデータプロセッサーで実行されると、前記1つ以上のデータプロセッサーに請求項1の一部または全部を実行させる命令を含有する、非一時的なコンピューター可読記憶媒体
を含む、システム。
【請求項71】
1つ以上のデータプロセッサーに請求項1の一部または全部を実行させるように構成された命令を含む、非一時的な機械可読記憶媒体に実体的に具体化されたコンピュータープログラム製品。
【請求項72】
前記グリカン構造が、表1によるグリカン構造GL番号に対応し、前記グリカン構造が、表1及び表5のグリカン構造GL番号による記号構造を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項73】
前記グリカン構造が、表1によるグリカン構造GL番号に対応し、前記グリカン構造が、表1及び表5のグリカン構造GL番号によるグリカン組成を含む、請求項6に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月22日に出願された米国特許出願第63/282,168号(この内容は、全体が本明細書に組み込まれる)の優先権及び利益を主張する。
【0002】
本開示は、一般に、肉腫の処置を管理するためにペプチド構造を分析するための方法及びシステムに関する。より具体的には、本開示は、処置(例えば、免疫療法)に対する対象の反応性を予測する際に使用される、肉腫と診断された対象から得られた生物試料において検出されるペプチド構造セットの定量データの分析に関する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質のグリコシル化及び他の翻訳後修飾は、人間の生理学のほぼ全ての面において重要な役割を果たす。当然のことながら、タンパク質のグリコシル化の欠陥または変化は、多くの場合、様々な病状を伴う。異常なグリコシル化の特定は、影響を受けた対象の早期発見、介入、処置の機会を提供する。プロテオミクス及びゲノミクスの分野で開発されるような、現在のバイオマーカーの特定方法は、がんなどの特定の疾患の指標を検出するために、及び、特定の種類のがんを他の非がん性疾患から区別するために使用することができる。しかし、糖プロテオミクス分析の使用は、以前に、対象の処置をうまく管理するために使用されたことはなかった。
【0004】
糖タンパク質の分析には、いくつかのレベルで課題が伴う。例えば、糖ペプチド内の単一のグリカン組成は、異なるグリコシド結合、分岐パターン、及び/または同じ質量を有する複数の単糖により、多数の異性体構造を含有し得る。加えて、同じペプチド骨格を共有する複数のグリカンが存在すると、様々なグリコフォームからのアッセイシグナルがもたらされ、アグリコシル化ペプチドと比較して個々の存在量が低下し得る。従って、ペプチドフラグメント上のグリカン構造を特定し得るアルゴリズムの開発は、依然として、困難である。
【0005】
上記を考慮すると、タンパク質のグリコシル化パターンに関する情報を取得するための糖タンパク質の部位特異的分析を含む、改善された分析方法が望まれており、これは、特定の疾患または状態と診断された対象の処置を管理するために使用することができる定量情報を提供し得る。例えば、肉腫と診断された対象が処置に反応する可能性が高いかどうかを判定するために、糖タンパク質の部位特異的分析を使用することが望まれている。従って、上で特定した問題のうちの1つ以上に対処可能な方法及びシステムを有することが望ましいことがある。
【発明の概要】
【0006】
1つ以上の実施形態では、肉腫病状と診断された対象の処置を管理するための方法が提供される。対象から得られた生物試料に対応するペプチド構造データが受信される。処置に対する反応性の可能性を予測する反応スコアは、ペプチド構造セットのペプチド構造データから特定された定量データを使用して予測される。ペプチド構造セットは、表1に記載の複数のペプチド構造から同定される少なくとも1つのペプチド構造を含む。複数のペプチド構造は、肉腫病状の生存に対する相対的重要性に関して表1に記載される。処置反応出力は、反応スコアに基づいて生成される。
【0007】
1つ以上の実施形態では、肉腫病状と診断された対象の処置反応性を予測するための最終モデルを構築するための方法が提供される。肉腫病状と診断された複数の試料対象のペプチド構造のパネルの試料データが受信される。試料データは、ペプチド構造のパネルの定量データを含む。複数の試料対象の生存情報が受信される。試料データ及び生存情報に基づいて、肉腫病状の生存に関連するペプチド構造の初期群が特定される。ペプチド構造の初期群は、表1で特定される複数のペプチド構造のうちの少なくとも3つのペプチド構造を含む。複数のモデルが、ペプチド構造の初期群の異なるサブセットを使用して構築される。最終モデルは、肉腫の処置に対する処置反応性の予測に使用される複数のモデルから選択される。
【0008】
1つ以上の実施形態では、患者の肉腫を処置するための方法が提供される。患者から得られた生物試料に対応するペプチド構造データが受信される。処置に対する反応性の可能性を予測する反応スコアは、ペプチド構造セットのペプチド構造データから特定された定量データを使用して計算される。ペプチド構造セットは、表1に記載の複数のペプチド構造から同定される少なくとも1つのペプチド構造を含む。複数のペプチド構造は、肉腫病状の生存に対する相対的重要性に関して表1に記載される。反応スコアに基づいて、対象が処置に対して見込み奏効者であるか、または見込み非奏効者であるかについての判定が行われる。対象が見込み奏効者であると判定される場合、処置の治療用量が患者に投与される。
【0009】
1つ以上の実施形態では、組成物は、表1に特定されるペプチド構造PS-1~PS-22のうちの少なくとも1つを含む。
【0010】
1つ以上の実施形態では、組成物は、ペプチド構造またはプロダクトイオンを含む。ペプチド構造またはプロダクトイオンは、表1のペプチド構造PS-1~PS-22に対応する配列番号12~26のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。プロダクトイオンは、特定のm/zの範囲内に入るプロダクトイオンを含む、表2で特定されるプロダクトイオンからなる群からの1つとして選択される。
【0011】
1つ以上の実施形態では、組成物は、表1に特定されるペプチド構造PS-1~PS-22からなる群からの1つとして選択される糖ペプチド構造を含む。糖ペプチド構造は、糖ペプチド構造に対応するものとして表3で特定されるアミノ酸ペプチド配列を含む。糖ペプチド構造は、グリカン構造が表1で特定される対応する位置でアミノ酸ペプチド配列の残基に連結されている、糖ペプチド構造に対応するものとして表5で特定されるグリカン構造を含む。グリカン構造は、グリカン組成を有する。
【0012】
1つ以上の実施形態では、組成物は、表1に特定される複数のペプチド構造からの1つとして選択されるペプチド構造を含む。ペプチド構造は、表1のペプチド構造に対応するものとして特定されるモノアイソトピック質量を有する。ペプチド構造は、ペプチド構造に対応するものとして表1で特定される配列番号12~26のアミノ酸配列を含む。
【0013】
1つ以上の実施形態では、キットは、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つ以上の一部または全部を実行するための、表1で特定される少なくとも1つのペプチド構造を定量するための少なくとも1つの薬剤を含む。
【0014】
1つ以上の実施形態では、キットは、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つ以上の一部または全部の方法を実行するための、糖ペプチド標準、緩衝液、及び/またはペプチド配列セットのうちの少なくとも1つを含む。ペプチド配列のセットのペプチド配列は、表1に規定される配列番号12~26のうちの対応する1つにより特定される。
【0015】
1つ以上の実施形態では、システムは、1つ以上のデータプロセッサーと;1つ以上のデータプロセッサー上で実行される時、1つ以上のデータプロセッサーに、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つ以上の一部または全部を実行させる命令を含有する非一時的なコンピューター可読記憶媒体を含む。
【0016】
1つ以上の実施形態では、非一時的な機械可読記憶媒体に実体的に具体化されたコンピュータープログラム製品が提供され、これは、1つ以上のデータプロセッサーに、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つ以上の一部または全部を実行させるように構成された命令を含む。
【0017】
本開示は、添付の図と併せて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】1つ以上の実施形態による、診断及び/または処置に使用される、病状に関連するペプチド構造を検出するための例示的なワークフロー100の概略図である。
図2A】1つ以上の実施形態による調製ワークフローの概略図である。
図2B】1つ以上の実施形態によるデータ取得の概略図である。
図3】1つ以上の実施形態による解析システムのブロック図である。
図4】様々な実施形態によるコンピューターシステムのブロック図である。
図5】1つ以上の実施形態による、肉腫と診断された対象の処置を管理するためのプロセスのフローチャートである。
図6】1つ以上の実施形態による、肉腫病状と診断された対象の処置反応性を予測するモデルを構築するためのプロセスのフローチャートである。
図7】1つ以上の実施形態による、43人の患者コホートの生存情報を説明するグラフである。
図8】1つ以上の実施形態による、上述の最終モデルに対して生成された反応スコアの分布のプロット800である。
図9】1つ以上の実施形態による、時間対生存率のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
I.概要
本明細書に記載される実施形態は、グライコプロテオミクスが、様々な種類の疾患を有する対象の全体的な診断及び/または処置に使用することができる新興分野であることを認識する。グライコプロテオミクスは、所与の試料(例えば、血液試料、細胞、組織など)中のグリカン及びグリコシル化タンパク質の位置、特性、及び量を決定することを目的とする。タンパク質のグリコシル化は、翻訳後のタンパク質修飾の最も一般的且つ最も複雑な形態のうちの1つであり、タンパク質の構造、立体構造、及び機能に影響を与え得る。例えば、糖タンパク質は、重要な生物学的プロセス、例えば、細胞シグナル伝達、宿主-病原体の相互作用、ならびに免疫反応及び疾患において重要な役割を果たし得る。それ故、糖タンパク質は、様々な種類の疾患を診断するために重要であり得る。
【0020】
タンパク質のグリコシル化は、がん及び他の疾患に関する有用な情報を提供するが、現在利用可能な方法論では、グリカンが、通常、タンパク質の出現部位に遡ることができないので、タンパク質のグリコシル化の分析は、困難なことがある。糖タンパク質の分析は、いくつかの理由により、一般に、困難である可能性がある。例えば、ペプチド内の単一のグリカン組成には、異なるグリコシド結合、分岐、及び同じ質量を有する多数の単糖のために、多数の異性体構造を含有し得る。さらに、同じペプチド配列を共有する複数のグリカンが存在すると、質量分析(MS)シグナルが、様々なグリコフォームに分割され得、これは、グリコシル化されていないペプチド(アグリコシル化ペプチド)と比較して個々の存在量を低下させる。
【0021】
様々な病状を理解するために、及び、肉腫などの特定の疾患と診断された対象が処置にどのように反応し得るかをより正確に理解するために、糖タンパク質の分析を実行すること、及びタンパク質内のグリカンだけでなく連結部位(例えば、結合のアミノ酸残基)も特定することが重要であり得る。従って、病状(例えば、肉腫病状)に関する情報を提供することが可能であり得るタンパク質のグリコシル化パターンに関する詳細な情報を得る部位特異的糖タンパク質分析の方法を提供する必要がある。この情報は、対象が処置に反応する可能性が高いか、または処置に反応しない可能性が高いかを予測するために使用することができる。
【0022】
肉腫は、骨及び軟組織を含む結合組織で発生するがん(悪性腫瘍)の一種である。軟部組織肉腫は、筋肉、脂肪、血管、神経、腱、関節の内壁、またはそれらの組み合わせに形成され得る。現在、手術が、ほとんどの肉腫に対する最も一般的な処置形態であるが、他の種類の処置は、化学療法、放射線療法、陽子線療法、及び/または免疫療法を含む。肉腫(または肉腫の病状)を処置するために使用され得る免疫療法の一例は、1つ以上の抗体、例えば、1つ以上のモノクローナル抗体、例えば、デュルバルマブ及びトレメリムマブの組み合わせ(例えば、4サイクルで1500mgのデュルバルマブを静脈内、及び75mgのトレメリムマブを静脈内、続いて、デュルバルマブ単独を4週間毎に最長12ヶ月間)が挙げられる。
【0023】
異なる患者は、異なる処置に対して異なる反応を示し得る。例えば、ある患者は、1種類の処置で大きな成功を収め得るが、他の患者は、同じ処置では限定的な成功または全く成功しないことがある。肉腫が中悪性度であり得るので、対象は、経時的に様々な種類の処置を試す余裕がないことがある。有害イベント(例えば、対象の無増悪生存期間を妨げるイベント)に関連する負担の回避に役立つために、及び、特定の処置に反応する可能性が低い処置対象と関連する費用を回避するために、所与の処置に反応する可能性が高い対象を特定することが重要であり得る。本明細書に記載の実施形態は、処置投与前のベースライン時点での生存率(例えば、全生存期間、無増悪生存期間)に関する処置反応を予測する方法を提供する。
【0024】
対象におけるペプチド構造の発現、特に、糖ペプチド構造の存在量を分析すると、肉腫の処置に反応する対象の予測に役立ち得る。ペプチド構造は、アグリコシル化ペプチド配列(例えば、より大きな親タンパク質のペプチドもしくはペプチドフラグメント)またはグリコシル化ペプチド配列により特徴づけられ得る。グリコシル化ペプチド配列(糖ペプチド構造とも呼ばれる)は、ペプチド配列の連結部位(例えば、アミノ酸残基)に結合しているグリカン構造を有するペプチド配列であってよく、これは、例えば、アミノ酸残基の特定の原子を介して生じ得る)。グリコシル化ペプチドの非限定例としては、N結合型糖ペプチド及びO結合型糖ペプチドが挙げられる。
【0025】
この種類のペプチド構造分析は、様々なグリカン構造がどのタンパク質及びどのアミノ酸残基部位に結合するかに関する情報がほとんどまたは全く提供しないグライコミクス解析と比較して、処置反応を正確に予測するのに貢献し得る。どのペプチド構造が所与の処置の投与後の生存に最も有意に関連しているかを分析し、次に、それらの特定の1つ以上のペプチド構造の、対象のペプチド構造プロファイルを分析することにより、対象がその処置にどのように反応するかのより明確な理解が達成され得る。
【0026】
従って、本明細書に記載の実施形態は、対象におけるタンパク質、特に、糖タンパク質、を分析するための様々な方法及びシステムを提供する。1つ以上の実施形態では、肉腫病状と診断された対象の処置管理のための方法及びシステムが提供される。
【0027】
例えば、本明細書に記載される実施形態は、対象から得られた生物試料中の糖タンパク質セットに対応するペプチド構造データを受信し;ペプチド構造セットのペプチド構造データから特定される定量データを使用して、処置に対する反応性の可能性を予測する反応スコアを計算し;反応スコアに基づいて処置反応出力を生成するための、方法及びシステムを提供する。ペプチド構造セットは、表1に記載の複数のペプチド構造から同定される少なくとも1つのペプチド構造を含む。複数のペプチド構造は、肉腫病状の全生存期間に対する相対的重要性に関して表1に記載される。処置反応出力は、対象が処置に反応する可能性が高いか、または処置に反応しない可能性が高いかを示し得る。
【0028】
以下の説明は、肉腫の研究及び/または処置(例えば、処置の設計、計画、投与など)のための本明細書に記載の方法及びシステムの例示的な実施を提供する。本明細書で使用される様々な用語の説明及び例は、以下のセクションIIに記載されている。
【0029】
II.用語の例示的な説明
「ones」という用語は、複数のものを意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「複数」という用語は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上であってよい。
【0031】
本明細書で使用される場合、「のセット」という用語は、1つ以上を意味する。例えば、項目セットは、1つ以上の項目を含む。
【0032】
本明細書で使用される場合、「のうちの少なくとも1つ」という表現は、項目のリストと共に使用される時、記載の項目のうちの1つ以上の異なる組み合わせが使用され得、リスト内の項目のうちの1つのみが必要とされ得ることを意味する。項目は、特定の物体、物、ステップ、操作、プロセス、またはカテゴリーであってよい。言い換えれば、「のうちの少なくとも1つ」は、リストの項目または項目数の任意に組み合わせが使用され得るが、リスト内の全ての項目が必要とされ得るわけではないことを意味する。例えば、限定されないが、「項目A、項目B、または項目Cのうちの少なくとも1つ」は、項目A;項目A及び項目B;項目B;項目A、項目B、及び項目C;項目B及び項目C;または項目A及びCを意味する。いくつかの場合では、「項目A、項目B、または項目Cのうちの少なくとも1つ」は、項目Aを2つ、項目Bを1つ、及び項目Cを10;項目Bを4つ及び項目Cを7つ;または他の何らかの好適な組み合わせを意味するが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書で使用される場合、「実質的に」は、意図された目的のために機能するのに十分であることを意味する。従って、「実質的に」という用語は、当業者により予想されるような、絶対的または完全な状態、寸法、測定値、結果などからのわずかで重要ではない変動を許容するが、これは、全体的な性能には明らかな影響を与えない。数値またはパラメーター、または数値として表現することができる特徴に対して使用される場合、「実質的に」は、10パーセント以内を意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「存在量」は、質量分析法を使用して生成される定量値を指し得る。様々な実施形態では、定量値は、生物試料中に存在する特定のペプチド構造(例えば、バイオマーカー)の量に関連し得る。いくつかの実施形態では、量は、試料中に存在する他の構造に関係し得る(例えば、相対存在量)。いくつかの実施形態では、定量値は、質量分析法を使用して生成されるイオン量を含んでもよい。いくつかの実施形態では、定量値は、m/z値に関連し得る(例えば、x軸に存在量及びy軸にm/z)。
【0035】
本明細書で使用される「アミノ酸」という用語は、一般に、アミノ基(例えば、-NH2)、カルボキシル基(-COOH)、及び特定のアミノ酸に基づいて変動する側鎖基(R)を含む任意の有機化合物を指す。アミノ酸は、ペプチド結合を使用して結合することができる。
【0036】
本明細書で使用される「アルキル化」という用語は、一般に、ある分子から別の分子へのアルキル基の転移を指す。様々な実施形態では、アルキル化は、還元システインと反応させて、還元が行われた後のジスルフィド結合の再形成を防止するために使用される。
【0037】
本明細書で使用される「連結部位」または「グリコシル化部位」という用語は、一般に、グリカンまたはグリカン構造の糖分子が、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のアミノ酸に直接結合(例えば、共有結合)している位置を指す。例えば、連結部位は、アミノ酸残基であってもよく、グリカン構造は、アミノ酸残基の原子を介して連結されてもよい。グリコシル化の種類の非限定例としては、N結合型グリコシル化、O結合型グリコシル化、C結合型グリコシル化、S結合型グリコシル化、及び糖化が挙げられ得る。
【0038】
本明細書で使用される用語「生物試料」、「生物標本」、または「生物検体」は、一般に、標本の供給源を代表するように、通常は、対象から、サンプリングにより採取された標本を指す。生物試料は、生物全体、特定の組織、細胞型、または目的のカテゴリーまたはサブカテゴリーを代表し得る。生物試料は、巨大分子を含み得る。生物試料は、小分子を含み得る。生物試料は、ウイルスを含み得る。生物試料は、細胞または細胞の誘導体を含み得る。生物試料は、細胞小器官を含み得る。生物試料は、細胞核を含み得る。生物試料は、細胞集団からの希少細胞を含み得る。生物試料は、限定されないが、原核細胞、真核細胞、細菌、真菌、植物、哺乳動物、もしくは他の動物細胞型、マイコプラズマ、正常組織細胞、腫瘍細胞、または他の任意の細胞型(単細胞生物または多細胞生物に由来するかどうかに関係なく)を含む任意の種類の細胞を含み得る。生物試料には、細胞の構成要素を含み得る。生物試料は、ヌクレオチド(例えば、ssDNA、dsDNA、RNA)、細胞小器官、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、炭水化物、糖タンパク質、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。生物試料は、細胞、または細胞由来の1つ以上の構成要素(例えば、細胞ビーズ)、例えば、細胞由来のDNA、RNA、細胞小器官、タンパク質、またはそれらの任意の組み合わせを含むマトリックス(例えば、ゲルまたはポリマーマトリックス)を含み得る。生物試料は、対象の組織から得られ得る。生物試料は、硬化細胞を含み得る。そのような硬化細胞は、細胞壁または細胞膜を含んでも含まなくてもよい。生物試料は、細胞の1つ以上の構成要素を含み得るが、細胞の他の構成要素を含まなくてもよい。そのような構成要素の例としては、核または細胞小器官が挙げられ得る。生物試料は、生細胞を含んでもよい。生細胞は、培養可能であり得る。試料は、血漿、血液、または血清試料のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0039】
本明細書で使用される「バイオマーカー」という用語は、一般に、存在が何らかの現象を示す、対象から試料として採取された任意の測定可能な物質を指す。そのような現象の非限定例は、病状、状態、または化合物もしくは環境条件への曝露を含み得る。本明細書に記載の様々な実施形態では、バイオマーカーは、診断目的(例えば、健康状態、病状を診断するため)に使用され得る。「バイオマーカー」という用語は、「マーカー」という用語と互換的に使用することができる。
【0040】
本明細書で使用される「変性」という用語は、一般に、天然の状態で存在する4次構造、3次構造、及び2次構造を失った任意の分子を指す。非限定例としては、外部化合物または環境条件、例えば、酸、塩基、温度、圧力、放射線など、に曝露されるタンパク質または核酸が挙げられる。
【0041】
本明細書で使用される「変性タンパク質」という用語は、一般に、天然の状態で存在する4次構造、3次構造、及び2次構造を失ったタンパク質を指す。
【0042】
本明細書で使用される「消化」または「酵素消化」という用語は、一般に、ポリマーを分解すること(例えば、切断部位でポリペプチドを切断すること)を指す。質量分析用の調製において、トリプシン消化プロトコールを使用してタンパク質が消化され得る。アクセスが切断部位に限定されている場合、質量分析用の調製において、他のプロテアーゼを使用して、タンパク質が消化され得る。
【0043】
本明細書で使用される「病状」という用語は、一般に、生物の構造または機能に影響を与える状態を指す。病状の原因の非限定例としては、病原体、免疫系機能不全、老化により引き起こされる細胞損傷、他の要因により引き起こされる細胞損傷(例えば、外傷及びがん)が挙げられ得る。病状は、症候性または無症候性に関わらず、あらゆる疾患の状態を含み得る。病状は、疾患進行の疾患段階を含み得る。病状は、生物(例えば、対象)の構造または機能に、軽度、中等度、または重度の障害を引き起こし得る。
【0044】
本明細書で使用される「グリカン」または「多糖」という用語は、双方ともに、一般に、グリココンジュゲートの炭水化物残基、例えば、糖ペプチド、糖タンパク質、糖脂質、またはプロテオグリカンの炭水化物部分を指す。グリカンは、単糖を含み得る。
【0045】
本明細書で使用される「糖ペプチド」または「糖ポリペプチド」という用語は、一般に、少なくとも1つのグリカン残基を含むペプチドまたはポリペプチドを指す。様々な実施形態では、糖ペプチドは、アミノ酸残基の側鎖(すなわち、R基)に共有結合している炭水化物部分(例えば、1つ以上のグリカン)を含む。
【0046】
本明細書で使用される「糖タンパク質」という用語は、一般に、少なくとも1つのグリカン残基が結合しているタンパク質を指す。一部の例では、糖タンパク質は、少なくとも1つのオリゴ糖鎖が共有結合しているタンパク質である。糖タンパク質の例としては、アポリポタンパク質C-III(APOC3)、アルファ-1-アンチキモトリプシン(AACT)、アファミン(AFAM)、アルファ-1-酸性糖タンパク質1及び2(AGP12)、アポリポタンパク質B-100(APOB)、アポリポタンパク質D(APOD)、補体C1sサブコンポーネント(C1S)、カルパイン-3(CAN3)、クラスタリン(CLUS)、補体コンポーネントC8A鎖(CO8A)、アルファ-2-HS糖タンパク質(FETUA)、ハプトグロビン(HPT)、免疫グロブリン重鎖定常ガンマ1(IgG1)、免疫グロブリンJ鎖(IgJ)、血漿カリクレイン(KLKB1)、血清パラオキソナーゼ/アリールエステラーゼ1(PON1)、プロトロンビン(THRB)、セロトランスフェリン(TRFE)、タンパク質unc-13ホモログA(UN13A)、及び亜鉛-アルファ-2-糖タンパク質(ZA2G)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される糖ペプチドは、別途反対の記載のない限り、糖タンパク質のフラグメントを指す。
【0047】
本明細書で使用される「液体クロマトグラフィー」という用語は、一般に、試料を部分に分けるために使用される手法を指す。液体クロマトグラフィーは、構成成分の分離、特定、及び定量に使用することができる。
【0048】
本明細書で使用される「質量分析法」という用語は、一般に、分子を特定するために使用される分析手法を指す。本明細書に記載の様々な実施形態では、質量分析法は、タンパク質の特性評価及び配列決定に関与し得る。
【0049】
本明細書で使用される「m/z」または「質量対電荷比」という用語は、一般に、質量分析装置の出力値を指す。様々な実施形態では、m/zは、所与のイオンの質量及びそれが運ぶ素電荷数間の関係を表し得る。m/zの「m」は、質量を表し、「z」は、電荷を表す。いくつかの実施形態では、m/zは、質量スペクトルのx軸上に表示され得る。
【0050】
本明細書で使用される「ペプチド」という用語は、一般に、ペプチド結合により結合されているアミノ酸を指す。ペプチドは、10~50残基のアミノ酸鎖を含み得る。ペプチドは、オリゴペプチド、ジペプチド、トリペプチド、及びテトラペプチドを含む10残基より短いアミノ酸鎖を含み得る。ペプチドは、50残基より長い鎖を含み得、「ポリペプチド」または「タンパク質」と呼ばれることがある。
【0051】
「タンパク質」または「ポリペプチド」または「ペプチド」という用語は、本明細書では互換的に使用され得、一般に、少なくとも3つのアミノ酸残基を含む分子を指す。タンパク質は、ペプチド結合により互いに連結されているアミノ酸配列からなるポリマー鎖を含み得る。質量分析用の調製において、トリプシン消化プロトコールを使用してタンパク質が消化され得る。アクセスが切断部位に限定されている場合、質量分析用の調製において、他のプロテアーゼを使用して、タンパク質が消化され得る。
【0052】
本明細書で使用される「ペプチド構造」という用語は、一般に、ペプチドもしくはその一部、または糖ペプチドもしくはその一部を指す。本明細書に記載の様々な実施形態では、ペプチド構造は、配列中に少なくとも2つのアミノ酸を含む任意の分子を含み得る。
【0053】
本明細書で使用される「還元」という用語は、一般に、物質による電子の獲得を指す。本明細書に記載の様々な実施形態では、糖は、タンパク質に直接結合し、それにより、結合するアミノ酸を還元することができる。そのような還元反応は、グリコシル化において発生し得る。様々な実施形態では、2つのシステイン間のジスルフィド結合を切断するために、還元が使用され得る。
【0054】
本明細書で使用される「試料」という用語は、一般に、目的の対象由来の試料を指し、対象の生物試料を含んでもよい。試料は、細胞試料を含んでもよい。試料は、細胞株または細胞培養試料を含んでもよい。試料は、1つ以上の細胞を含み得る。試料は、1つ以上の微生物を含み得る。試料は、核酸試料またはタンパク質試料を含んでもよい。試料は、炭水化物試料または脂質試料も含んでもよい。試料は、別の試料に由来し得る。試料は、組織試料、例えば、生検、コア生検、針吸引物、または細針吸引物を含んでもよい。試料は、流体試料、例えば、血液試料、尿試料、または唾液試料を含んでもよい。試料は、皮膚試料を含んでもよい。試料は、頬スワブを含んでもよい。試料は、血漿、血液、または血清試料のうちの少なくとも1つを含んでもよい。試料は、無細胞試料または細胞を含まない試料を含んでもよい。無細胞試料は、細胞外ポリヌクレオチドを含んでもよい。試料は、血液、血漿、血清、尿、唾液、粘膜分泌物、喀痰、便、または涙に由来し得る。試料は、赤血球または白血球に由来し得る。試料は、糞便、髄液、CNS液、胃液、羊水、嚢胞液、腹腔液、骨髄、胆汁、他の体液、生検から得られた組織、皮膚、または毛髪に由来し得る。
【0055】
本明細書で使用される「配列」という用語は、一般に、ポリマーを生成するように組み立てることができる1次元モノマーを含む生物学的配列を指す。配列の非限定例としては、ヌクレオチド配列(例えば、ssDNA、dsDNA、及びRNA)、アミノ酸配列(例えば、タンパク質、ペプチド、及びポリペプチド)、ならびに炭水化物(例えば、C(HO)を含む化合物)が挙げられる。
【0056】
本明細書で使用される「対象」という用語は、一般に、動物、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)もしくは鳥類(例えば、トリ)、または他の生物、例えば、植物を指す。例えば、対象は、脊椎動物、哺乳動物、齧歯動物(例えば、マウス)、霊長類、サル、またはヒトを含み得る。動物は、家畜、スポーツ動物、及びペットを含んでもよいが、これらに限定されない。対象は、健常もしくは無症候性個体、疾患(例えば、がん)もしくは疾患の素因を有するか、もしくは有すると疑われる個体、及び/または治療を必要とするか、もしくは治療を必要とすると疑われる個体を含み得る。対象は、患者であり得る。対象は、微生物または病原菌(例えば、細菌、真菌、古細菌、ウイルス)を含み得る。
【0057】
本明細書で使用される場合、「モデル」は、1つ以上のアルゴリズム、1つ以上の数学的手法、1つ以上の機械学習アルゴリズム、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0058】
本明細書で使用される場合、「機械学習」は、データを解析し、そこから学習し、次に、世の中の何らかについて決定または予測を行うためにアルゴリズムを使用する実施法であり得る。機械学習は、ルールベースのプログラミングに依存せずにデータから学習し得るアルゴリズムを使用する。機械学習アルゴリズムは、パラメトリックモデル、ノンパラメトリックモデル、深層学習モデル、ニューラルネットワーク、線形判別分析モデル、2次判別分析モデル、サポートベクターマシン、ランダムフォレストアルゴリズム、最近傍アルゴリズム、結合判別分析モデル、k平均法クラスタリングアルゴリズム、教師ありモデル、教師なしモデル、ロジスティック回帰モデル、多変数回帰モデル、ペナルティ付き多変数回帰モデル、または別の種類のモデルを含んでもよい。
【0059】
本明細書で使用される場合、「標的糖ペプチド分析物」は、質量分析法により測定することができるペプチド構造(例えば、グリコシル化もしくはアグリコシル化/非グリコシル化)、ペプチド構造の一部、ペプチド構造の部分構造(例えば、グリカンもしくはグリコシル化部位)、上に記載の構造及び部分構造のうちの1つ以上の生成物、関連検出分子(例えば、シグナル分子、標識、もしくはタグ)、またはアミノ酸配列を指し得る。
【0060】
本明細書で使用される場合、「ペプチドデータセット」は、「ペプチド構造データ」と互換的に使用され得、得られる質量分析法の実行のペプチドの任意のデータまたはそれに関する任意のデータを指し得る。ペプチドデータセットは、質量分析法を使用して、試料または生物試料から得られたデータを含み得る。ペプチドデータセットは、NGEP外部標準に関するデータ、内部標準に関するデータ、及び試料の標的糖ペプチド分析物に関するデータを含み得る。ペプチドデータセットは、1回の実行による分析から得られ得る。いくつかの実施形態では、ペプチドデータセットは、1つ以上のペプチドの生の存在量及び質量対電荷比を含み得る。
【0061】
本明細書で使用される場合、アグリコシル化ペプチドとも呼ばれ得る「非グリコシル化内因性ペプチド」(「NGEP」)は、グリカン分子を含まないペプチド構造を指し得る。様々な実施形態では、NGEP及び標的糖ペプチド分析物は、同じ対象に由来し得る。様々な実施形態では、NGEPは、質量分析の調製において同位体で標識することができる。様々な実施形態では、NGEP及び標的糖ペプチド分析物は、同じタンパク質配列に由来し得る。いくつかの実施形態では、NGEP及び標的糖ペプチド分析物は、同じペプチド配列に由来しても、それを含んでもよい。様々な実施形態では、NGEPは、質量分析の調製において同位体で標識することができる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「トランジション」は、ペプチド構造を指すか、またはそれを特定し得る。いくつかの実施形態では、トランジションは、プリカーサーイオン及びプロダクトまたはフラグメントイオンに関連するm/z値の特定のペアを指し得る。
【0063】
本明細書で使用される場合、「存在量」は、質量分析法を使用して生成される定量値を指し得る。様々な実施形態では、定量値は、特定のペプチド構造の量に関連し得る。いくつかの実施形態では、定量値は、質量分析法を使用して生成されるイオン量を含んでもよい。いくつかの実施形態では、定量値は、m/z値として表され得る。他の実施形態では、定量値は、原子質量単位で表され得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、「相対存在量」は、2つ以上の存在量の比較を指し得る。様々な実施形態では、比較は、1つのペプチド構造を、ペプチド構造の総数と比較することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、比較は、1つのペプチドグリコフォーム(例えば、1つ以上のグリカンが異なる2つの同一のペプチド)をペプチドグリコフォームセットと比較することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、比較は、特定のm/z比を有するイオン数を、検出されたイオン総数と比較することを含んでもよい。様々な実施形態では、相対存在量は、比率として表すことができる。他の実施形態では、相対存在量は、パーセンテージとして表すことができる。相対存在量は、質量スペクトルプロットのy軸で提示することができる。
【0065】
本明細書で使用される場合、「内部標準」は、質量分析を受ける標的糖ペプチド分析物と同じ試料中に含有され得る(例えば、スパイクインされる)ものを指し得る。内部標準は、校正目的で使用することができる。さらに、内部標準は、本明細書に記載のシステム及び方法で使用することができる。いくつかの態様では、内部標準は、類似性m/z及び/または保持時間に基づいて選択することができ、特定の標準が高価すぎるか、または入手できない場合の「代用物」であり得る。内部標準は、重標識または非重標識であり得る。
【0066】
III.例示的なワークフローの概要
図1は、1つ以上の実施形態による、診断及び/または処置に使用される、病状に関連するペプチド構造を検出するための例示的なワークフロー100の概略図である。ワークフロー100は、例えば、試料収集102、試料取り込み104、試料調製及び処理106、データ解析108、ならびに出力生成110を含む様々な操作を含んでもよい。
【0067】
試料収集102は、例えば、対象114などの1以上の対象の生物試料112を取得することを含んでもよい。生物試料112は、1つ以上のサンプリング法により取得された標本の形態をとり得る。生物試料112は、全体として対象114を、あるいは特定の組織、細胞型、または目的の他のカテゴリーもしくはサブカテゴリーを代表し得る。生物試料112は、任意の多数の異なる方法においても入手され得る。様々な実施形態では、生物試料112は、採血により得られた全血試料116を含む。他の実施形態では、生物試料112は、例えば、血清試料、血漿試料、血球(例えば、白血球(WBC)、赤血球(RBC))試料、別の種類の試料、またはそれらの組み合わせを含む分注試料セット118を含む。生物試料112は、ヌクレオチド(例えば、ssDNA、dsDNA、RNA)、細胞小器官、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、炭水化物、糖タンパク質、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0068】
様々な実施形態では、1回の実行は、試料(例えば、ペプチド分析物を含む試料)、外部標準(例えば、血清試料のNGEP)、及び内部標準を分析し得る。従って、外部標準、内部標準、及び標的糖ペプチド分析物の存在量値(例えば、存在量または生の存在量)は、同じ実行中の質量分析により決定することができる。
【0069】
様々な実施形態では、外部標準は、試料の分析前に分析され得る。様々な実施形態では、外部標準は、試料間で独立して実行することができる。いくつかの実施形態では、外部標準は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回またはそれ以上の試験毎に分析することができる。様々な実施形態では、外部標準データは、本明細書に記載の正規化システム及び方法の一部または全部で使用することができる。さらなる実施形態では、カラムの汚れを防ぐために、ブランク試料が処理され得る。
【0070】
試料取り込み104は、例えば、分注、登録、処理、保存、解凍、及び/または他の種類の操作などの1つ以上の様々な操作を含んでもよい。1つ以上の実施形態では、生物試料112が全血試料116を含む場合、試料取り込み104は、全血試料116を分注して、分注試料セットを形成することを含み、その後、試料セット120を形成するように、これを部分分注することができる。
【0071】
試料調製及び処理106は、例えば、ペプチド構造セット122を形成するための1つ以上の操作を含んでもよい。様々な実施形態では、ペプチド構造セット122は、消化を受けているアンフォールドしているタンパク質の様々なフラグメントを含んでもよく、分析の用意ができていることがある。
【0072】
さらに、試料調製及び処理106は、例えば、ペプチド構造セット122に基づくデータ取得124を含んでもよい。例えば、データ取得124は、例えば、限定されないが、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)システムの使用を含んでもよい。
【0073】
データ解析108は、例えば、ペプチド構造分析126を含んでもよい。いくつかの実施形態では、データ解析108は、出力生成110も含む。他の実施形態では、出力生成110は、データ解析108とは別個の操作とみなされ得る。出力生成110は、例えば、ペプチド構造分析126の結果に基づいて最終出力128を生成することを含んでもよい。最終出力128は、研究、診断、及び/または処置を決定するために使用され得る。
【0074】
様々な実施形態では、最終出力128は、1つ以上の出力から構成される。最終出力128は、様々な形式をとり得る。例えば、最終出力128は、例えば、診断出力、処置出力(例えば、処置設計出力、処置計画出力、もしくはそれらの組み合わせ)、分析データ(例えば、相対化及び正規化)、またはそれらの組み合わせを含むレポートであってよい。いくつかの実施形態では、レポートは、NGEP濃度値及び正規化存在量値の関数としての標的糖ペプチド分析物濃度を含み得る。いくつかの実施形態では、最終出力128は、アラート(例えば、視覚的アラート、可聴アラートなど)、通知(例えば、視覚的通知、可聴通知、電子メール通知など)、電子メール出力、またはそれらの組み合わせであってよい。いくつかの実施形態では、最終出力128は、処理のためにリモートシステム130に送信され得る。リモートシステム130は、例えば、コンピューターシステム、サーバ、プロセッサー、クラウドコンピューティングプラットフォーム、クラウドストレージ、ラップトップ、タブレット、スマートフォン、他の何らかの種類のモバイルコンピューティングデバイス、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0075】
他の実施形態では、ワークフロー100は、任意に、本明細書に記載の操作のうちの1つ以上を除外してもよく、及び/または任意に、本明細書に記載のもの以外の1つ以上の他のステップもしくは操作を(例えば、本明細書に記載のものに加えて、及び/またはその代わりに)含んでもよい。例えば、1つ以上の実施形態では、最終出力128は、処理のためのリモートシステム130に送信されないことがある。代わりに、最終出力128が取得(例えば、ダウンロード)可能であることをユーザー(複数可)またはエンティティに通知するために、通知または通信(例えば、電子メール)が、リモートシステム130に送信され得る。それに応じて、ワークフロー100は、病状の研究、診断、及び/または処置に使用される多数の異なる方法のいずれかで実施され得る。
【0076】
IV.ペプチド構造の検出及び定量
図2A及び2Bは、1つ以上の実施形態による試料調製及び処理106のワークフローの概略図である。図2A及び2Bは、図1の参照を続けながら説明される。試料調製及び処理106は、例えば、図2Aに示される調製ワークフロー200及び図2Bに示されるデータ取得124を含んでもよい。
【0077】
IV.A.試料調製及び処理
図2Aは、1つ以上の実施形態による調製ワークフロー200の概略図である。調製ワークフロー200は、データ取得124を介した分析のために、図1の試料セット120の試料などの試料を調製するために使用され得る。例えば、この分析は、質量分析法(例えば、LC-MS)を介して実行され得る。様々な実施形態では、調製ワークフロー200は、変性及び還元202、アルキル化204、及び消化206を含んでもよい。
【0078】
一般に、タンパク質などのポリマーは、天然の形態で、2次、3次、及び/または他の高次構造を含むようにフォールドすることができる。そのような高次構造は、対象におけるタスクを完了する(例えば、酵素活性を可能にする)ためにタンパク質を機能化し得る。さらに、ポリマーのそのような高次構造は、ポリマー内のアミノ酸の側鎖間の様々な相互作用を介して維持され得る。そのような相互作用は、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合、及びシステイン残基間のジスルフィド結合を含み得る。しかし、質量分析法を含む分析システム及び方法を使用する場合、配列情報を得るために、そのようなポリマー(例えば、ペプチド/タンパク質分子)をアンフォールディングすることが望ましいことがある。いくつかの実施形態では、ポリマーをアンフォールディングすることは、ポリマーを変性することを含み得、これは、例えば、ポリマーを線状化することを含んでもよい。
【0079】
1つ以上の実施形態では、変性及び還元202は、試料(例えば、図1の試料セット120のうちの1つ)中の1つ以上のタンパク質(例えば、ポリペプチド及びペプチド)の高次構造(例えば、2次、3次、4次など)を破壊するために使用することができる。変性及び還元202は、例えば、変性手順及び還元手順を含む。いくつかの実施形態では、変性手順は、例えば、熱が変性手段として使用される熱変性を使用して実行され得る。熱変性は、イオン結合、疎水性相互作用、及び/または水素結合を破壊し得る。
【0080】
様々な実施形態では、変性手順は、1つ以上の変性剤、温度(例えば、熱)、またはそれらの組み合わせを使用することを含んでもよい。1つ以上の実施形態では、変性手順は、熱と組み合わせて1つ以上の変性剤を使用することを含んでもよい。これらの1つ以上の変性剤は、例えば、任意数のカオトロピック塩(例えば、尿素、グアニジン)、界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ベータオクチルグルコシド、トリトンX-100)またはそれらの組み合わせを含んでもよいが、これらに限定されない。いくつかの場合では、試料調製ワークフローが、さらに、クリーンアップ手順を含む場合、そのような変性剤は、熱と組み合わせて使用され得る。
【0081】
次に、得られた1つ以上の変性(例えば、アンフォールドされた、線状化された)タンパク質は、分析の調製においてさらなる処理を受け得る。例えば、1つ以上の還元剤が適用される還元手順が実行され得る。様々な実施形態では、還元剤は、アルカリ性のpHを生成し得る。還元剤は、例えば、限定されないが、ジチオスレイトール(DTT)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、または他の何らかの還元剤の形態をとり得る。還元剤は、1つ以上の還元タンパク質を形成するように、1つ以上の変性タンパク質のシステイン残基間のジスルフィド結合を還元(例えば、切断)し得る。
【0082】
様々な実施形態では、変性及び還元202から生じる1つ以上の還元タンパク質は、例えば、1つ以上の還元タンパク質のシステイン残基間のジスルフィド結合の再形成を防止するプロセスを受け得る。このプロセスは、1つ以上のアルキル化タンパク質を形成するために、アルキル化204を使用して実施され得る。例えば、アルキル化204は、各システイン残基上の硫黄にアセトアミド基を付加してジスルフィド結合の再形成を防止するために使用され得る。様々な実施形態では、アセトアミド基は、1つ以上のアルキル化剤を還元タンパク質と反応させることにより付加することができる。1つ以上のアルキル化剤は、例えば、1つ以上のアセトアミド塩を含んでもよい。アルキル化剤は、例えば、ヨードアセトアミド(IAA)、2-クロロアセトアミド、他の何らかの種類のアセトアミド塩、または他の何らかの種類のアルキル化剤の形態をとり得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、アルキル化204は、クエンチング手順を含んでもよい。クエンチング手順は、1つ以上の還元剤(例えば、上記の還元剤のうちの1つ以上)を使用して実行され得る。
【0084】
様々な実施形態では、アルキル化204を介して形成された1つ以上のアルキル化タンパク質は、次に、分析(例えば、質量分析)の調製として消化206を受け得る。タンパク質の消化206は、1つ以上の切断部位(例えば、1つ以上のアミノ酸残基であり得る部位205)またはその付近でタンパク質を切断することを含んでもよい。例えば、限定されないが、アルキル化タンパク質は、リジンまたはアルギニン残基のカルボキシル側で切断され得る。この種類の切断は、タンパク質を、1つ以上のペプチド構造(例えば、グリコシル化またはアグリコシル化)を含む様々なセグメントに分解し得る。
【0085】
様々な実施形態では、消化206は、1つ以上のタンパク質分解触媒を使用して実行される。例えば、酵素を消化206で使用することができる。いくつかの実施形態では、酵素は、トリプシンの形態をとる。他の実施形態では、トリプシンに加えて、またはトリプシンの代わりに、1つ以上の他の種類の酵素(例えば、プロテアーゼ)が使用され得る。これらの1つ以上の他の酵素は、限定されないが、LysC、LysN、AspN、GluC、及びArgCを含む。いくつかの実施形態では、消化206は、トシルフェニルアラニルクロロメチルケトン(TPCK)処理トリプシン、1つ以上の操作された形態のトリプシン、1つ以上の他の製剤のトリプシン、またはそれらの組み合わせを使用して実行され得る。いくつかの実施形態では、消化206は、複数のステップで実行され得、各ステップは、1つ以上の消化剤の使用を伴う。例えば、2次消化、3次消化などが実行され得る。1つ以上の実施形態では、血清試料を消化するために、トリプシンが使用される。1つ以上の実施形態では、トリプシン/LysCカクテルが、血漿試料を消化するために使用される。
【0086】
いくつかの実施形態では、消化206は、さらに、クエンチング手順を含む。クエンチング手順は、試料を(例えば、pH<3に)酸性化することにより実行され得る。いくつかの実施形態では、この酸性化を実行するために、ギ酸が使用され得る。
【0087】
様々な実施形態では、調製ワークフロー200は、さらに、消化後手順207を含む。消化後手順207は、例えば、クリーンアップ手順を含んでもよい。クリーンアップ手順は、例えば、消化206から生じる試料中の不必要な構成成分の除去を含んでもよい。例えば、不必要な構成成分は、無機イオン、界面活性剤などを含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、消化後手順207は、さらに、重標識ペプチド内部標準を添加するための手順を含む。
【0088】
調製ワークフロー200が、血液ベースの生物試料112(例えば、全血試料、血漿試料、血清試料など)から作成または採取された試料に関して記載されているが、試料調製ワークフロー200は、ペプチド構造セット122を生成するために、他の種類の試料(例えば、涙、尿、組織、間質液、痰など)に対し同様に実施され得る。
【0089】
IV.B.ペプチド構造の特定及び定量
図2Bは、1つ以上の実施形態によるデータ取得124の概略図である。様々な実施形態では、データ収集124は、図2Aに記載されている試料調製200の後に開始し得る。様々な実施形態では、データ取得124は、定量208、特性管理210、ならびにピーク積分及び正規化212を含み得る。
【0090】
様々な実施形態では、ペプチド及び糖ペプチドの標的定量208は、液体クロマトグラフィー・質量分析LC/MS機器の使用を組み込み得る。例えば、LC-MS/MS、またはタンデムMSが使用され得る。一般に、LC/MS(例えば、LC-MS/MS)は、液体クロマトグラフ(LC)の物理的分離能力を、質量分析法(MS)の質量分析能力と組み合わせ得る。本明細書に記載のいくつかの実施形態によると、この手法は、界面を介してLCカラムからMSイオン源に供給される消化ペプチドの分離が可能になる。
【0091】
様々な実施形態では、任意のLC/MSデバイスを、本明細書に記載のワークフローに組み込むことができる。様々な実施形態では、特定及び標的定量208に適した機器または機器システムは、例えば、トTriple Quadrupole LC/MS(商標)を含んでもよい。様々な実施形態では、標的定量208は、多重反応モニタリング質量分析法(MRM-MS)を使用して実行される。
【0092】
本明細書に記載の様々な実施形態では、特定のタンパク質またはペプチドの同定及び関連量を評価することができる。本明細書に記載の様々な実施形態では、特定のグリカンの同定及び関連量を評価することができる。本明細書に記載の様々な実施形態では、特定のグリカンをタンパク質またはペプチド上のグリコシル化部位に適合させ、存在量の値を測定することができる。
【0093】
いくつかの場合では、標的定量208は、豊富なプロダクトイオンを一貫して確認するために、適切なフラグメント化に関連する特定の衝突エネルギーを使用することを含む。糖ペプチド構造は、アグリコシル化ペプチド構造よりも衝突エネルギーが低いことがある。糖ペプチド構造を含む試料を分析する場合、一般的なプロテオミクス分析と比較して、電源電圧及びガス温度が下げられ得る。
【0094】
様々な実施形態では、データ品質を最適化するために、特性管理210手順を導入することができる。様々な実施形態では、期待値の外の許容範囲内の誤差のみを許容する手段を導入することができる。様々な実施形態では、統計モデルを用いる(例えば、ウェストガード規則を使用する)ことは、特性管理210を支援し得る。例えば、特性管理210は、例えば、全ての試料または各特性管理試料(例えば、プールされた血清消化物)のいずれかにおいて、(例えば、グリコシル化及び/またはアグリコシル化された)代表的なペプチド構造ならびにスパイクイン内部標準の保持時間及び存在量を評価することを含んでもよい。
【0095】
ピーク積分及び正規化212は、生成されているデータを処理し、データを分析用のフォーマットに変換するために実行され得る。例えば、ピーク積分及び正規化212は、選択ペプチド構造について検出された様々なプロダクトイオンの存在量データを、そのペプチド構造に対する単一の定量メトリクス(例えば、相対量、調整量、正規化量、相対濃度、調整濃度、正規化濃度など)に変換することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ピーク積分及び正規化212は、米国特許公開第2020/0372973A1号及び/または米国特許公開第2020/0240996A1号(これらの開示は、全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている手法のうちの1つ以上を使用して実行され得る。
【0096】
V.ペプチド構造データ解析
V.A.ペプチド構造データ解析用の例示的なシステム
V.A.1.ペプチド構造データ解析及び処置反応予測用の解析システム
図3は、1つ以上の実施形態による解析システム300のブロック図である。解析システム300は、様々な病状に関連している様々なペプチド構造を検出及び分析するために使用することができる。解析システム300は、図1のデータ解析108を実行するために使用され得るシステムの実施の一例である。従って、解析システム300は、図1、2A、及び/または2Bに記載されるワークフロー100を引き続き参照して記載されている。
【0097】
解析システム300は、コンピューティングプラットフォーム302及びデータストア304を含んでもよい。いくつかの実施形態では、解析システム300は、ディスプレイシステム306も含む。コンピューティングプラットフォーム302は、様々な形態をとり得る。1つ以上の実施形態では、コンピューティングプラットフォーム302は、単一のコンピューター(もしくはコンピューターシステム)または相互に通信する複数のコンピューターを含む。他の例では、コンピューティングプラットフォーム302は、クラウドコンピューティングプラットフォームの形態をとる。
【0098】
データストア304及びディスプレイシステム306は、それぞれ、コンピューティングプラットフォーム302と通信していることがある。いくつかの例では、データストア304、ディスプレイシステム306、またはその両方は、コンピューティングプラットフォーム302の一部とみなされるか、または、別の方法で、それと統合され得る。従って、いくつかの例では、コンピューティングプラットフォーム302、データストア304、及びディスプレイシステム306は、互いに通信する別個の構成要素であり得るが、他の例では、これらの構成要素の何らかの組み合わせが、一緒に統合され得る。これらの異なる構成要素間の通信は、任意数の有線通信リンク、無線通信リンク、光通信リンク、またはそれらの組み合わせを使用して実施され得る。
【0099】
解析システム300は、例えば、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組み合わせを使用して実施され得る処置管理システム308を含む。1つ以上の実施形態では、処置管理システム308は、コンピューティングプラットフォーム302を使用して実施される。
【0100】
処置管理システム308は、肉腫(すなわち、肉腫病状)と診断された対象の処置を管理するために使用され得る。肉腫は、軟部組織肉腫または非軟部組織肉腫であってよい。肉腫は、肺胞軟部肉腫(ASPS);血管肉腫;軟骨肉腫;隆起性皮膚線維肉腫;デスモイド肉腫;ユーイング肉腫;線維肉腫;消化管間質腫瘍(GIST);非子宮平滑筋肉腫;子宮平滑筋肉腫;脂肪肉腫;悪性線維性組織球腫(MFH);悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST);骨肉腫;横紋筋肉腫;または滑膜肉腫を含む任意の種類のものであってよい。対象は、小児対象または成人対象であってもなくてもよい。対象は、例えば、除草剤中の、フェノキシ酢酸、及び/または、例えば、木材防腐剤中の、クロロフェノールに曝露されていることがある。対象は、リー・フラウメニ症候群またはフォンレックリングハウゼン病に罹患していることがある。
【0101】
処置管理システム308は、肉腫病状の処置に対する対象の反応を予測し、予測反応に基づいて処置を投与するかどうかを決定し、予測反応に基づいて処置を修正及び/または変更するかどうかを決定し、及び/または別の方法で、対象の処置を計画するために使用され得る。
【0102】
処置管理システム308は、処理のためにペプチド構造データ310を受信する。ペプチド構造データ310は、多重反応モニタリング質量分析法を使用して生成されていることがある。ペプチド構造データ310は、例えば、図1、2A、及び2Bの試料調製及び処理106から出力されているペプチド構造データであってよい。それに応じて、ペプチド構造データ310は、生物試料112について特定されたペプチド構造セット122に対応し得、それにより、生物試料112に対応し得る。さらに、ペプチド構造セット122は、糖タンパク質セットに対応し(例えば、ペプチド構造セット122の各ペプチド構造は対応する糖タンパク質に由来する)、それ故、ペプチド構造データ310は、糖タンパク質のセットに対応する。いくつかの場合では、2つ以上のペプチド構造は、同じ糖タンパク質に対応し得、これらの2つ以上のペプチド構造は、その同じ糖タンパク質のグリコフォームと呼ばれ得る。
【0103】
ペプチド構造データ310は、処置管理システム308への入力として送信し、データストア304もしくは他の何らかの種類のストレージ(例えば、クラウドストレージ)から取得するか、クラウドストレージからアクセスするか、または他の何らかの方法で取得することができる。いくつかの場合では、ペプチド構造データ310は、入力デバイスを介してユーザーにより入力されたユーザー入力の受信に応じて(例えば、直接的または間接的に基づいて)データストア304から取得され得る。
【0104】
処置管理システム308は、スコアリングシステム312、処置計画システム314、またはその両方を含んでもよい。スコアリングシステム312は、処置に対する対象(例えば、対象114)の反応を予測するために使用され得る。処置計画システム314は、対象に対する予測反応に基づいて、対象を処置するかどうか、及び/またはどのように処置するかを決定するために使用され得る。
【0105】
スコアリングシステム312は、例えば、処理するためのペプチド構造データ310を受信するように構成されているモデル315を含んでもよい。モデル315は、多数の異なる方法のいずれかで実施され得る。モデル315は、任意数のモデル、関数、方程式、アルゴリズム、及び/または他の数学的手法を使用して実施され得る計算モデルシステムであってよい。
【0106】
1つ以上の実施形態では、スコアリングシステム312は、処理のためにペプチド構造データ310を受信し、ペプチド構造セット318に対するペプチド構造データ310から特定された定量データ316をモデル315に入力する。ペプチド構造データ310は、例えば、図1のペプチド構造セット122の各ペプチド構造に対する定量メトリクスセットを含んでもよい。ペプチド構造の定量メトリクスは、相対存在量、正規化存在量、調整存在量、相対量、調整量、正規化量、相対濃度、調整濃度、または正規化濃度のうちの少なくとも1つから構成され得る。従って、定量データ316は、ペプチド構造セット318の各ペプチド構造についての1つ以上の定量メトリクスを含んでもよい。
【0107】
ペプチド構造セット318のペプチド構造は、ペプチド配列及びペプチド配列量の連結部位に結合しているグリカン構造により規定される、グリコシル化ペプチド構造または糖ペプチド構造であってよい。例えば、ペプチド構造は、糖ペプチドまたは糖ペプチドの一部であってよい。あるいは、ペプチド構造セット318のペプチド構造は、ペプチド配列により規定されているアグリコシル化ペプチド構造であってよい。例えば、ペプチド構造は、ペプチドまたはペプチドの一部であってよく、定量ペプチドと呼ばれ得る。
【0108】
ペプチド構造セット318は、モデル315のトレーニングまたはフィッティングに基づいて、対応する処置(複数可)に対する対象の反応を最も予測するもの、またはそれに関連するものとして特定され得る。1つ以上の実施形態では、ペプチド構造セット318は、以下のセクションVI.Aの表1で特定されるペプチド構造のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、または22全てを含む。ペプチド構造セット318に含めるために表1から選択されるペプチド構造の数は、例えば、所望の精度レベル、1つ以上の他の要因、またはそれらの組み合わせに基づき得る。
【0109】
モデル315は、ペプチド構造セット318に対する定量データ316を分析して、肉腫に対して選択された処置に対応する反応スコア320を生成する。選択処置は、例えば、免疫療法であってよい。免疫療法は、デュルバルマブ及びトレメリムマブを含む併用免疫療法である。
【0110】
処置計画システム314は、スコアリングシステム312から反応スコア320を受信する。処置計画システム314は、反応スコア320を使用して処置反応出力322を生成する。処置反応出力322は、図1に関して上述された最終出力128における出力の一例であってよい。処置反応出力322は、例えば、処置に対する対象の反応の特定または分類、対象を処置する治療薬(例えば、免疫療法)の特定、治療薬の設計、治療薬を投与するための処置計画のうちの少なくとも1つ、またはその組み合わせを含んでもよい。様々な実施形態では、処置反応出力322は、対象の処置に使用されるべき各治療薬の治療用量を含む。
【0111】
1つ以上の実施形態では、処置反応出力334は、処置に対する対象の予測反応を示す反応分類を特定する。例えば、反応スコア320は、対象が処置に対して見込み奏効者であるか、または処置に対して見込み非奏効者であるかを予測するために使用され得る。
【0112】
例えば、「見込み非奏効者」という予測は、対象が処置後一定期間(例えば、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年など)以内に障害イベントを有すると予測されることを意味し得る。障害イベントは、対象の生存(例えば、全生存期間または「無増悪生存期間」(PFS))に障害をもたらす任意のイベントであり得る。例えば、障害イベントは、例えば、新たな腫瘍、既存肉腫のサイズの増大、死亡、または他の何らかの種類のイベントのうちの少なくとも1つを含んでもよい。「見込み奏効者」という予測は、対象が処置に対して比較的良好な反応を有すると予測されていることを示し得る。例えば、「見込み奏効者」という予測は、対象が無期限に生存するか、または処置後一定期間(例えば、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年など)障害イベントなしで生存すると予測されていることを意味し得る。
【0113】
1つ以上の実施形態では、反応スコアは、生存基準セットに基づいて対象が処置に反応する確率である。生存基準セットは、例えば、選択期間(例えば、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年、100日、200日、500日など)より長い全生存期間を含んでもよい。生存基準セットは、例えば、選択期間(例えば、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年、100日、200日、500日など)より長い無増悪生存期間を含んでもよい。
【0114】
1つ以上の実施形態では、処置計画システム314は、選択閾値324を使用して、反応スコア320に基づいて処置反応出力322を生成する。1つ以上の実施形態では、選択閾値324は、モデル315の初期トレーニング/フィッティングに基づいて決定される。例えば、処置計画システム314は、選択閾値324を下回る反応スコア320は、対象が処置に対する見込み奏効者であることを示すが、選択閾値324以上の反応スコア320は、対象が処置に対する見込み非奏効者であることを示すことを判定し得る。1つ以上の実施形態では、処置計画システム314は、選択閾値324以下の反応スコア320は、対象が処置に対する見込み奏効者であることを示すが、選択閾値324を上回る反応スコア320は、対象が処置に対する見込み非奏効者であることを示すことを判定し得る。
【0115】
処置反応出力322は、ユーザー(例えば、医療専門家)が、対応する処置が対象に投与されるべきか、または投与されるべきではないかを判定し得るように予測されている反応分類(例えば、「見込み奏効者」(もしくは奏効者)または「見込み非奏効者」(もしくは非奏効者))を含んでもよい。例えば、処置反応出力322が、対象が見込み奏効者であると予想されていることを示す場合、医療専門家は、処置の投与を続行することを判定し得る。別の例では、処置反応出力322が、対象が見込み非奏効者であると予測されていることを示す場合、医療専門家は、異なる処置、より高用量の処置を投与するか、または他の何らかの方法で対象の処置計画を変更することを判定し得る。
【0116】
1つ以上の実施形態では、処置反応出力322は、いくつかの例では、処理のためにリモートシステム130に送信され得る。他の実施形態では、処置反応出力322は、人間のオペレータが調査するためのディスプレイシステム306のグラフィカルユーザーインターフェース326上に表示され得る。人間のオペレータは、対象の肉腫処置を管理するために処置反応出力322を使用し得る。
【0117】
V.A.2.コンピューター実施システム
図4は、様々な実施形態によるコンピューターシステムのブロック図である。コンピューターシステム400は、図3における上述されたコンピューティングプラットフォーム302の一実施形態の一例であってよい。
【0118】
1つ以上の例では、コンピューターシステム400は、バス402または情報を通信するための通信機構、及び情報を処理するためのバス402に接続しているプロセッサー404を含み得る。様々な実施形態では、コンピューターシステム400は、プロセッサー404により実行されるべき命令を決定するためにバス402に接続しているランダムアクセスメモリ(RAM)406または他の動的記憶デバイスであり得るメモリも含み得る。メモリは、プロセッサー404により実行されるべき命令の実行中に、一時変数または他の中間情報を格納するために使用することもできる。様々な実施形態では、コンピューターシステム400は、さらに、プロセッサー404に対する静的情報及び命令を記憶するために、バス402に接続している読み取り専用メモリ(ROM)408または他の静的記憶デバイスを含み得る。磁気ディスクまたは光ディスクなどの記憶デバイス410を提供し、情報及び命令を記憶するためにバス402に接続させることができる。
【0119】
様々な実施形態では、コンピューターシステム400は、コンピューターユーザーに情報を表示するために、バス402を介して、陰極線管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイ412に接続させることができる。英数字キー及び他のキーを含む入力デバイス414は、情報及びコマンド選択をプロセッサー404に伝達するためにバス402に接続させることができる。別の種類のユーザー入力デバイスは、方向情報及びコマンド選択をプロセッサー404に伝達するため、及びディスプレイ412上のカーソルの動きを制御するための、カーソル制御416、例えば、マウス、ジョイスティック、トラックボール、ジェスチャ入力デバイス、視線ベースの入力デバイス、またはカーソル方向キーである。この入力デバイス414は、通常、2つの軸:第1軸(例えば、x)及び第2軸(例えば、y)に2つの自由度を有し、これは、デバイスが平面内の位置を指定することを可能にする。しかし、3次元(例えば、x、y、及びz)のカーソル移動を可能にする入力デバイス414も、本明細書で企図されることが理解されるべきである。
【0120】
本教示の特定の実施形態と一致して、結果は、RAM406に含まれる1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行するプロセッサー404に応答してコンピューターシステム400により提供され得る。そのような命令は、別のコンピューター可読媒体またはコンピューター可読記憶媒体、例えば、記憶デバイス410から、RAM406に読み込むことができる。RAM406に含まれる命令のシーケンスを実行すると、プロセッサー404に、本明細書に記載のプロセスを実行させ得る。あるいは、ハードワイヤード回路は、本教示を実施するために、ソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて使用することができる。従って、本教示の実施は、ハードウェア回路及びソフトウェアの任意の特定の組み合わせに限定されない。
【0121】
本明細書で使用される「コンピューター可読媒体」(例えば、データストア、データストレージ、記憶デバイス、データ記憶デバイスなど)または「コンピューター可読記憶媒体」という用語は、プロセッサー404が実行するための命令の提供に関与する任意の媒体を指す。そのような媒体は、限定されないが、不揮発性媒体、揮発性媒体、及び伝送媒体を含む多くの形式をとり得る。不揮発性媒体の例としては、光ディスク、固体ディスク、磁気ディスク、例えば、記憶デバイス410が挙げられ得るが、これらに限定されない。揮発性媒体の例としては、RAM406などのダイナミックメモリが挙げられ得るが、これに限定されない。伝送媒体の例としては、バス402を含むワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線、及び光ファイバが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0122】
コンピューター可読媒体の一般的な形式は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、または他の任意の磁気媒体、CD-ROM、他の任意の光学媒体、パンチカード、紙テープ、穴のパターンを有する他の任意の物理媒体、RAM、PROM、及びEPROM、FLASH-EPROM、他の任意のメモリーチップもしくはカートリッジ、またはコンピューターが読み取ることができる他の任意の有形媒体を含む。
【0123】
コンピューター可読媒体に加えて、命令またはデータは、コンピューターシステム400のプロセッサー404が実行するための1つ以上の命令のシーケンスを提供するために、通信装置またはシステムに含まれる伝送媒体上の信号として提供することができる。例えば、通信装置は、命令及びデータを示す信号を有するトランシーバを含んでもよい。命令及びデータは、1つ以上のプロセッサーに、本明細書の開示で概説した機能を実施させるように構成される。データ通信伝送接続の代表例としては、電話モデム接続、ワイドエリアネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、赤外線データ接続、NFC接続、光通信接続などが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0124】
本明細書に記載される方法論、フローチャート、図、及び付随する開示は、コンピューターシステム400をスタンドアロンデバイスとして使用して、またはクラウドコンピューティングネットワークなどの共有コンピューター処理リソースの分散ネットワーク上で実施することができることを理解すべきである。
【0125】
本明細書に記載の方法論は、用途に応じて様々な手段により実施され得る。例えば、これらの方法論は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実施され得る。ハードウェアで実施される場合、処理ユニットは、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサー(DSP)、デジタル信号処理デバイス(DSPD)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサー、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサー、電子デバイス、本明細書で説明される機能を実行するように設計された他の電子ユニット、またはそれらの組み合わせ内で実施され得る。
【0126】
様々な実施形態では、本教示の方法は、従来のプログラミング言語、例えば、C、C++、Pythonなどで書かれたファームウェア及び/またはソフトウェアプログラム及びアプリケーションとして実施され得る。ファームウェア及び/またはソフトウェアとして実施される場合、本明細書に記載の実施形態は、非一時的なコンピューター可読媒体上で実施することができ、プログラムが、コンピューターに上記の方法を実行させるために格納される。本明細書に記載の様々なエンジンが、コンピューターシステム400などのコンピューターシステムで提供することができ、それにより、プロセッサー404は、メモリコンポーネントRAM406、ROM408、または記憶デバイス410と、入力デバイス414を介して提供されるユーザー入力のいずれか1つまたはその組み合わせにより提供される命令に従い、これらのエンジンで提供される解析及び決定を実行するであろう。
【0127】
V.B.ペプチド構造データ解析に基づく肉腫処置の管理に関する例示的な方法論
V.B.1.一般的な方法論
図5は、1つ以上の実施形態による、肉腫と診断された対象の処置を管理するためのプロセスのフローチャートである。プロセス500は、例えば、図1、2A、及び2Bで記載のワークフロー100の少なくとも一部、及び/または図3で記載の解析システム300を使用して実施され得る。プロセス500は、例えば、肉腫(すなわち、肉腫病状)と診断された対象の処置を支援するために、図3の処置反応出力322などの処置反応出力を生成するために使用され得る。
【0128】
ステップ502は、対象から得られた生物試料中の糖タンパク質セットに対応するペプチド構造データを受信することを含む。ペプチド構造データは、例えば、図3のペプチド構造データ310の実施の一例であり得る。ペプチド構造データは、多重反応モニタリング質量分析法を使用して生成され得る。ペプチド構造データは、複数のペプチド構造の各ペプチド構造についての定量データを含んでもよい。定量データは、例えば、複数のペプチド構造の各ペプチド構造についての1つ以上の定量メトリクスを含んでもよい。ペプチド構造の定量メトリクスは、例えば、相対存在量、調整存在量、正規化存在量、相対量、調整量、正規化量、相対濃度、調整濃度、または正規化濃度のうちの少なくとも1つを含み得るが、これらに限定されない。このようにして、所与のペプチド構造の定量データは、生物試料中のペプチド構造の存在量の指示を提供する。
【0129】
ステップ504は、ペプチド構造セットのペプチド構造データから特定される定量データを使用して、処置に対する反応性の可能性を予測する反応スコアを計算すること、を含み、ペプチド構造セットが、表1に記載の複数のペプチド構造から特定される少なくとも1つのペプチド構造を含む。表1の複数のペプチド構造は、肉腫病状の生存に対する相対的重要性に関して記載され得る。ステップ504では、ペプチド構造セットは、例えば、以下の表1に特定される複数のペプチド構造からの少なくとも1つ、2つ、3つ、または他の何らかの数を含み得る。ステップ504では、ペプチド構造セットは、表1に特定されるように、ペプチド配列及びペプチド配列の連結部位に連結されているグリカン構造により規定される、少なくとも1つの糖ペプチド構造を含んでもよい。
【0130】
1つ以上の実施形態では、ペプチド構造セットは、試料集団(例えば、対象の少なくとも一部が、プロセス500で考慮されている処置を使用して処置されている肉腫と診断された対象)の試料データ及び生存情報、ならびに肉腫処置後の生存(例えば、全生存、無増悪生存)に対する各ペプチド構造の重要性を特定する統計アルゴリズムを使用して特定されていることがある。1つ以上の実施形態では、ペプチド構造セットの同定は、図6で後述するプロセス600を使用して実行される。
【0131】
ステップ504で生成された反応スコアは、図3の反応スコア32の実施の一例であり得る。ステップ504は、例えば、図3のモデル315などのモデルを使用して反応スコアを計算することにより実行され得る。モデル315は、例えば、Cox回帰モデルを含んでもよい。Cox回帰モデルは、例えば、Cox比例ハザード(PZ)回帰モデルであってよい。
【0132】
ステップ506は、反応スコアを使用して、対象が処置に対して見込み奏効者であるかまたは見込み非奏効者であるかの予測を示す処置反応出力を生成することを含む。処置反応出力は、図3の処置反応出力322の実施の一例であり得る。1つ以上の実施形態では、ステップ506は、反応スコアが、図3の選択閾値324などの選択閾値を上回るか、またはそれ以上であるかを判定することにより実行され得る。選択閾値を上回る(またはそれ以上である)反応スコアは、対象が処置に対して見込み非奏効者であることを示し得る。選択閾値を下回る(またはそれ以下である)反応スコアは、対象が処置に対して見込み奏効者であることを示し得る。
【0133】
選択閾値は、Cox回帰モデルのトレーニングまたはフィッティングから決定されている可能性がある。例えば、選択閾値は、一致指数(concordance index)(例えば、HarrellのC-index)を最大化するカットオフ反応スコアであってよい。「見込み奏効者」と予測される対象は、処置後に、障害イベントを伴わずに無期限にまたは一定期間生存すると予測されるものであってよい。例えば、対象は、少なくともある日数、月数、または年数の全生存期間または無増悪生存期間を有すると予測され得る。「見込み非奏効者」であると予測される対象は、処置後一定の期間内に障害イベント(例えば、死亡、肉腫の進行)を経験すると予測される対象であり得る。例えば、対象は、少なくともある日数、月数、または年数内に障害イベントを経験すると予測され得る。
【0134】
処置反応結果は、例えば、対象が見込み奏効者であると予測される場合に、処置の投与を続行するための推奨を含んでもよい。あるいは、処置反応結果は、例えば、対象が見込み非奏効者であると予測される場合、処置を投与しないか、または対象の処置もしくは処置計画を修正もしくは別の方法で変更する推奨を含んでもよい。例えば、処置計画を修正するための推奨は、対象に対して異なる処置を選択すること、処置の用量を変更すること(例えば、増加/減少すること)、または処置を少なくとも1つ他の処置と組み合わせること、のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0135】
1つ以上の実施形態では、処置反応出力は、処置の設計または処置の治療用量のうちの少なくとも1つを含む。例えば、対象が処置に良好に反応することを反応スコアが示すいくつかの場合では、処置反応結果は、処置の治療用量を特定し得る。このようにして、リモートシステム(例えば、電話、タブレット、ラップトップなど)で処置反応出力を受信する医療専門家は、対象に対して処置をより迅速に投与することが可能であり得る。
【0136】
1つ以上の実施形態では、プロセス500は、任意に、ステップ508を含んでもよい。ステップ508は、対象に、処置反応出力に基づいた処置の治療用量を投与することを含んでもよい。例えば、処置は、対象が処置に対する見込み奏効者であるという予測に基づいて(例えば、静脈内投与または経口投与により)投与され得る。
【0137】
治療用量は、例えば、30キログラムを超える患者の場合、4週間毎(q4w)に静脈内(IV)注入によるデュルバルマブの固定用量1500mgを最大4回投与/サイクル、及びq4wのIV注入によるトレメリムマブ75mgを最大4回投与/サイクル、ならびにq4wのデュルバルマブの継続的な1500mgを16週目から開始して最大9回投与/サイクルであってよい。
【表1】
【0138】
表1は、特定のペプチドまたは糖ペプチドの参照番号であるペプチド構造識別番号(PS-ID番号)を含む。ペプチド構造名称(PS名称、例えば:HEMO_64_5412)は、タンパク質名(例えば:HEMO)、続いて、タンパク質内のグリカン連結部位の位置(例えば、2つの下線の間にあり、タンパク質HEMO内の連続するアミノ酸の位置を表す番号64)、続いて、グリカン構造GL番号(例えば、下線が前にあり、グリカン組成Hex(5)HexNAc(4)Fuc(1)NeuAc(2)を表す番号5412)の参照コードである。表1のタンパク質配列ID番号は、表4の対応するタンパク質名称とUniprot IDに対応する。表1のペプチド配列ID番号は、表3の対応するペプチド配列に対応する。タンパク質配列内の連結部位位置という用語は、グリカンが結合している対応するタンパク質のアミノ酸の連続位置を指す数である。タンパク質配列内のグリカン連結部位位置では、ペプチド配列のアミノ酸位置は、ペプチド配列に対応するタンパク質のUniprot IDに基づいてアミノ酸の連続番号順で規定される。ペプチド配列内の連結部位位置という用語は、グリカンが結合している対応するペプチドのアミノ酸の連続位置を指す数である。ペプチド配列内のグリカン連結部位の位置では、ペプチド配列のアミノ酸位置は、ペプチド配列のアミノ酸の連続番号順で規定される。グリカン構造GL番号という用語は、表5に示されるグリカンの記号構造及び組成に対応する番号である。
ペプチド構造(PS)の名称のいくつかの場合では、接頭辞の後に、MCという表記で示される番号があり、番号で示されるペプチド配列の位置に誤切断があったことを示す。
【0139】
V.B.2.肉腫処置に対する処置反応性を予測するモデルを構築するための例示的な方法論
図6は、1つ以上の実施形態による、肉腫病状と診断された対象の処置反応性を予測するモデルを構築するためのプロセスのフローチャートである。プロセス600は、例えば、図1、2A、及び2Bで記載のワークフロー100の少なくとも一部、及び/または図3で記載の解析システム300を使用して実施され得る。いくつかの実施形態では、プロセス600は、図5のステップ504の反応スコア及び図5のステップ506で使用される選択閾値を計算する際に使用される、図3のモデル315などのモデルを構築するための方法の実施の一例であり得る。
【0140】
ステップ602は、肉腫病状と診断された複数の試料対象のペプチド構造のパネルの試料データを受信することを含む。複数の試料対象は、免疫療法で処置されていることがある。免疫療法は、例えば、デュルバルマブ及びトレメリムマブの組み合わせであってよい。
【0141】
ステップ603は、複数の試料対象の生存情報を受信することを含む。生存情報は、処置に対する複数の試料対象の反応の特性決定を含む。例えば、生存情報には、全生存情報、無増悪生存情報、またはその両方を含んでもよい。
【0142】
ステップ604は、試料データ及び生存情報に基づいて、肉腫病状の処置後の生存に関連しているペプチド構造の初期群を特定することを含む。例えば、ステップ604は、ペプチド構造のコレクションの異なるペプチド構造毎にCox回帰分析を実行することを含んでもよい。Cox回帰分析は、1次独立変数として機能する生存率を用いて年齢及び性別について調整されるCox PH回帰モデルを使用して実行され得る。この生存変数は、例えば、ベースライン時点と比較した死亡までの時間である全生存期間であってよい。ベースライン時点は、処置の投与直前に、対象の試料が収集される時点であってよい。いくつかの場合では、試料対象が死亡したかどうかが不明なことがあり、その対象の全生存期間は、試料対象と最後に接触した時、または試料対象の最後の臨床評価までの時間である。
【0143】
1つ以上の実施形態では、ステップ604は、選択された数Nの、生存に関して最も重要なペプチド構造を同定することを含む。例えば、N個の最も低いCox PH p値を有するペプチド構造が、ペプチド構造の初期群として識別され得る。選択数Nは、例えば、5、7、8、10、12、15、20、25、または他の何らかの数であってよい。
【0144】
ステップ606は、ペプチド構造の初期群からペプチド構造試験サブセットを選択して、モデルを構築することを含む。例えば、第一反復では、ペプチド構造試験サブセットは、ペプチド構造の初期群の最も重要なペプチド構造であってよい。最も重要なペプチド構造は、例えば、最も低いp値を有するペプチド構造であり得る。
【0145】
ステップ608は、モデルならびにペプチド構造試験サブセットの定量データ及び複数の試料対象の生存情報を含む複数の試料対象の試料データの一部を使用して、複数の試料対象の試料反応スコアの分布を生成することを含む。この分布は、例えば、Cox PH回帰モデルを使用して生成され得る。1つ以上の実施形態では、この分布は、リーブワンアウト交差検証(LOOCV)Cox PH回帰モデルを使用して生成され得る。
【0146】
LOOCV Cox PH回帰モデルでは、試料反応スコアは、複数の試料対象の他の試料対象に対応するデータにフィッティングさせたモデルを使用して、複数の試料対象の各試料対象に対して生成される。例えば、所与の試料対象Sについて、複数の試料対象のうちの残りの(または保留された)試料対象(すなわち、試料対象Sを除く)についての定量データ及び生存情報に基づいて、多変数Cox PH回帰モデルが適合される。次に、この多変数Cox PH回帰モデルは、試料対象Sの反応スコアを生成するために使用される。このプロセスは、試料反応スコアの分布を構築するために、複数の試料対象の各試料対象に対して反復される。
【0147】
ステップ610は、分布に基づいてモデルに対して選択閾値を決定することを含む。選択閾値は、例えば、一致指数を最大化する反応スコア(またはカットオフ反応スコア)であってよい。一致指数は、例えば、HarrellのC-indexであってよい。選択閾値は、見込み奏効者及び見込み非奏効者間の二分化を可能にする。例えば、選択閾値を上回る(またはそれ以上である)反応スコアは、見込み非奏効者を示し得るが、選択閾値を下回る(またはそれ以下である)反応スコアは、見込み奏効者を示し得る。
【0148】
ステップ612は、モデルのハザード比及びp値を計算することを含む。
【0149】
ステップ606~612は、選択回数Xまで繰り返される。例えば、限定されないが、選択数Xは、試料(試料対象)の数を5で除した数に設定される上限であってよい。この上限を設定すると、モデルの過剰適合の回避に役立ち得る。各反復iでは、ステップ604で生成されたp値に基づくi番目の最も重要なマーカー(複数可)が、モデルを構築するために使用され得る。従って、ステップ606~612は、ペプチド構造の初期群の異なるサブセットを使用して複数のモデルを構築するために反復され得る。
【0150】
ステップ606~610が、X個のモデルを生成するためにX回反復された後に、ステップ614が実行される。ステップ614は、肉腫に対する処置の処置反応性を予測する際に使用される最終モデルとして生成されたX個のモデルから1つのモデルを選択することを含む。最終モデルは、モデルのハザード比、p値、またはその両方に基づいて選択され得る。1つ以上の実施形態では、生成される最終モデルは、表1に特定されるペプチド構造PS-1及びPS-2を使用する。他の実施形態では、最終モデルは、表1に特定されるペプチド構造PS-1~PS-3を使用する。さらに他の実施形態では、最終モデルは、表1に特定されるペプチド構造PS-1~PS-4を使用する。いくつかの実施形態では、最終モデルは、ペプチド構造PS-1、PS-2、及びPS-4を使用して構築され得る。
【0151】
VI.ペプチド構造及びプロダクトイオン組成物、キット、ならびに試薬
本開示の態様では、表1に記載のペプチド構造のうちの1つ以上を含む組成物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、表1に記載の複数のペプチド構造を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、表1に記載のペプチド構造のうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19個を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、表1に記載の配列番号12~26のいずれか1つと、少なくとも80%の配列同一性、例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチド構造を含む。
【0152】
本開示の態様は、表2に記載されるように、規定の電荷及び/または規定の質量対電荷(m/z)比を有する1つ以上のプリカーサーイオンを含む組成物を含む。質量分析システムでは、本開示の態様は、規定の質量対電荷(m/z)比を有する1つ以上のプロダクトイオンを含む組成物を含み、このプロダクトイオンは、本明細書に記載のペプチド構造(例えば、表1に列挙されるペプチド構造)を気相イオンに変換することにより生成される。ペプチド構造の気相イオンへの変換は、限定されないが、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)、電子イオン化(EI);エレクトロスプレーイオン化(ESI);大気圧化学イオン化(APCI);及び/または大気圧光イオン化(APPI)を含む様々な手法のいずれかを使用して行うことができる。
【0153】
本開示の態様は、本明細書に記載のペプチド構造(例えば、表1に記載のペプチド構造)のうちの1つ以上から生成される1つ以上のプロダクトイオンを含む組成物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、表1または表2の各ペプチド構造について提供されるリストから選択されるm/z比を有する、表2に記載のプロダクトイオンセットを含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、組成物は、表1に特定されるペプチド構造PS-1~PS-22のうちの少なくとも1つを含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、組成物は、ペプチド構造またはプロダクトイオンを含む。ペプチド構造またはプロダクトイオンは、表1のペプチド構造PS-1~PS-22に対応する、表3に特定されるような配列番号12~26のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、プロダクトイオンは、表2で特定されるプロダクトイオンからなる群からの1つとして選択され、表2で特定されるm/z比の特定のm/z範囲内に入るプロダクトイオンを含み、表2で特定されるm/z比の特定のm/z範囲内のm/z比を有するプリカーサーイオンを有することを特徴とする。プロダクトイオンm/z比の第1の範囲は、±0.5であってよい。プロダクトイオンm/z比の第2の範囲は、±0.8であってよい。プロダクトイオンm/z比の第3の範囲は、±1.0であってよい。プリカーサーイオンのm/z比の第1の範囲は、±1.0であってよく、プリカーサーイオンのm/z比の第2の範囲は、(±1.5)であってよい。従って、組成物は、表2で特定されるプロダクトイオンのm/z比の第1の範囲(±0.5)、第2の範囲(±0.8)、または第3の範囲(±1.0)のうちの少なくとも1つに入るm/z比を有するプロダクトイオンを含んでもよく;表2で特定されるプリカーサーイオンのm/z比の第1の範囲(±0.5)、第2の範囲(±1.0)、または第3の範囲(±1.0)のうちの少なくとも1つに入るm/z比を有するプリカーサーイオンを有することを特徴とする。
表2は、LC及びMRM-MSを使用したペプチド及び糖ペプチドの特定に関連する様々なパラメーターを示す。保持時間(RT)は、ペプチドがクロマトグラフィーカラムから溶出するまでの時間を分単位で表す。衝突エネルギーは、例えば、トリプル四重極MSの2番目の四重極などでフラグメント(すなわち、プロダクトイオン)を作成するためにペプチドに適用されるエネルギーを表す。第1のプリカーサーm/zは、ペプチドまたは糖ペプチドのプリカーサー電荷を有するイオン化形態に関連する比率値を表す。プリカーサーイオンは、衝突により形成されたm/z比を有する第1のプロダクトイオンと関連しており、第2のプリカーサーイオンは、衝突により形成されたm/z比を有する第2のプロダクトイオンと関連している。
【表2】
【0157】
表3は、表1の配列番号12~26のペプチド配列を規定する。表3は、さらに、各ペプチド配列の対応するタンパク質の配列番号を特定する。
【表3】
【0158】
表4は、表1の配列番号1~11のタンパク質を特定する。表4は、配列番号1~11の各タンパク質の対応するタンパク質の略称及びタンパク質名称を特定する。さらに、表4は、タンパク質配列番号1~11のそれぞれに対応するUniprot IDを特定する。
【表4】





【0159】
表5は、表1に含まれるグリカン構造を特定及び規定する。表5は、表1に含まれる構造のグラフ表示及び各グリカン構造の組成のコード化表示を特定する。本表において、4桁のGL番号は、ヘキソースの数、HexNAcの数、フコースの数、及びノイラミン酸の数を表す名称である。
【表5】


【0160】
表5は、グリカンGL番号に基づく表1の糖ペプチドに対応する検出されたグリカン部分の記号構造及び組成を示す。記号構造という用語は、炭水化物の幾何学的連結構造を示し、最下部の炭水化物、例えば、N-アセチルグルコサミンが、N結合型グリカンについて所定のアミノ酸に結合しており、最も右の炭水化物、例えば、N-アセチルガラクトサミンが、O-結合型グリカンについて所定のアミノ酸に結合している。参考として、N結合型グリカンは、アミノ酸のアスパラギンに結合しているグリカンを有し、O結合型グリカンは、セリンまたはスレオニンのいずれかに結合しているグリカンを有する。表5のグリカンGL番号1101が、O結合型グリカンを表すことに留意すべきである。5の他の全てのグリカンは、N結合型グリカンを表す。
【0161】
組成という用語は、グリカンを構成する様々なクラスの炭水化物の数を指す。炭水化物の各クラスの量は、炭水化物のクラスに対応する略語の右側に括弧内の数字として示される。これらのクラスの略語は、それぞれ、ヘキソース、N-アセチルヘキソサミン、フコース、及びN-アセチルノイラミン酸に対応するHex、HexNAc、Fuc、及びNeuAcである。ヘキソース糖が、グルコース、ガラクトース、及びマンノース含み;N-アセチルヘキソサミン糖は、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、及びN-アセチルマンノサミンを含むことに注意すべきである。様々な実施形態では、Neu5Ac、NeuAc、及びN-アセチルノイラミン酸という用語は、シアル酸と呼ばれる場合がある。
【0162】
いくつかの場合では、括弧記号は、正確な結合連結がはっきりとはわかっていないが、連結線セグメントが括弧に隣接する複数の隣接炭水化物のうちの1つに結合していることを示すために、記号構造(例えば、7603)の一部として使用される。
【0163】
様々な単糖の特定は、表5の最後にある凡例セクションにより示されている。凡例の略語は、グルコースを表し、黒丸で示されるGlc、ガラクトースを表し、白丸で示されるGal、マンノースを表し、中間灰色の網掛け丸で示されるMan、フコースを表し、黒三角で示されるFuc、N-アセチルノイラミン酸を表し、黒ひし形で示されるNeu5Ac、N-アセチルグルコサミンを表し、黒四角で示されるGlcNAc、N-アセチルガラクトサミンを表し、白四角で示されるGalNAc、N-アセチルマンノサミンを表し、中間灰色の網掛け四角形で示されるManNAcである。
【0164】
本開示の態様は、1つ以上の組成物を含むキットを含み、それぞれは、アッセイ標準として使用することができる本開示の1つ以上のペプチド構造、及び使用説明書を含む。本明細書に記載の1つ以上の実施形態によるキットは、キットの内容物の意図される使用を示すラベルを含んでもよい。キットに関して本明細書で使用される「ラベル」という用語には、キット上もしくはキットと共に提供されるか、または別の方法でキットに付属するあらゆる書込または記録された材料を含む。
【0165】
本明細書に記載のペプチド構造及びそこから生成されるトランジションは、肉腫病状を診断及び処置するのに有用であり得る。トランジションは、プリカーサーイオン及び少なくとも1つのプロダクトイオン群を含む。本明細書で概説されるように、表1のペプチド構造、ならびにそれらの対応するプリカーサーイオン及びプロダクトイオンの群(これらのイオンは規定のm/z比または本明細書で特定されるm/z範囲内に入るm/z比を有する)は、例えば、肉腫などの疾患を診断し、処置を容易にする質量分析ベースの分析に使用することができる。
【0166】
本開示の態様は、本明細書に記載されるように、1つ以上のペプチド構造を分析するための方法を含む。いくつかの実施形態では、方法は、質量分析システム(例えば、反応モニタリング質量分析システム)に入力することができる調製試料を生成するために、患者由来の試料を処理することを含む。特定の実施形態では、試料の処理は、変性手順、還元手順、アルキル化手順、及び消化手順のうちの1つ以上を実行することを含み得る。変性及び還元手順は、例えば、図2の変性及び還元202と同様の方法で実施され得る。アルキル化手順は、例えば、図2のアルキル化手順204と同様の方法で実施され得る。消化手順は、例えば、図2の消化手順206と同様の方法で実施され得る。
【0167】
いくつかの実施形態では、1つ以上のペプチド構造を分析するための方法は、1つ以上のプロダクトイオンが、質量分析システムに入力されている1つ以上のペプチド構造のそれぞれに対応し得る反応モニタリング質量分析システムにより生成されるプロダクトイオンセットを検出することを含む。本明細書に記載されるように、各ペプチド構造は、表2に提示されるように規定されるm/z比、または表2に提示される特定のm/z比内のm/z比を有するプロダクトイオンセットに変換することができる。いくつかの実施形態では、方法は、反応モニタリング質量分析システムを使用して検出される1つ以上のプロダクトイオンの定量(例えば、存在量)データを生成することを含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、方法は、さらに、定量データと、教師ありまたは教師なしの機械学習を使用してトレーニングされているモデルを使用して診断出力を生成することを含む。特定の実施形態では、反応モニタリング質量分析システムは、1つ以上のプロダクトイオンを検出し、定量データを生成するために、多重/選択反応モニタリング質量分析法(MRM/SRM-MS)を含んでもよい。
【0169】
VII.肉腫処置を管理するための例示的な実施形態
本開示は、肉腫の処置の管理に関連するシステム、方法、及び組成物の実施形態に関する。実施形態は、生物試料の分類、生物試料由来の1つ以上の特定のマーカーの測定、生物試料由来の1つ以上の特定のマーカーのアッセイ、生物試料由来の1つ以上の特定のマーカーの存在の判定などに関する。本開示の実施形態は、個体からの試料(複数可)中の1つ以上のマーカーの存在に基づいて、個体が肉腫治療に反応するか否かを正確に特定するモデルを利用する。いくつかの実施形態では、マーカーは、個体の1つ以上の特徴の状態:生物学的性別、試料源、試料収集、喫煙者の状態、または年齢に関わらず正確である。
【0170】
本開示の様々な実施形態では、個体は、抗体などの免疫療法を含むあらゆる種類の肉腫治療に反応するかどうかを特定する必要がある。いくつかの場合では、個体の試料の分析が、処置結果を特定するために利用される唯一の試験であるが、他の場合では、医療提供者が1つ以上の他の試験を利用し得る。
【0171】
任意の生物学的性別、任意の性別、任意の喫煙者の状態、任意の民族性などの任意の人を含む任意の個体は、本開示の方法の対象となり得る。様々な実施形態では、個体は、日常的な予防または健康診断の医療行為の一部として、または肉腫が存在するか、もしくはその存在の疑いがある(例えば、家族歴を有する)ことから、本明細書に包含される任意の方法の対象となる。
【0172】
特定の実施形態では、処置結果を管理するための分析用の試料は、個体由来の血清である。本開示は、個体が処置に反応する可能性を判定するために、1つ以上の循環血中の糖タンパク質、糖ペプチド、または血清中の非グリコシル化ペプチドを測定することを提供する。様々な実施形態では、試料は、表1のペプチドのうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、または22全てについて測定される。
【0173】
特定の実施形態では、本開示は、試料のレベル(複数可)の決定時に、個体に有効量の特定の肉腫治療(1つ以上の抗体を含む)が投与されるように、肉腫治療を必要とする個体由来の試料から表1のPS-1、PS-2、PS-3、PS-4、PS-5、PS-6、PS-7、PS-8、PS-9、PS-10、PS-11、PS-12、PS-13、PS-14、PS-15、PS-16、PS-17、PS-18、PS-19、PS-20、PS-21、及びPS-22のうちの1つ以上のレベルを測定する方法を包含する。特定の実施形態では、本開示は、試料のレベル(複数可)の決定時に、個体に特定の肉腫治療が投与されないように、肉腫治療を必要とする個体由来の試料から表1のPS-1、PS-2、PS-3、PS-4、PS-5、PS-6、PS-7、PS-8、PS-9、PS-10、PS-11、PS-12、PS-13、PS-14、PS-15、PS-16、PS-17、PS-18、PS-19、PS-20、PS-21、及びPS-22のうちの1つ以上のレベルを測定する方法を包含する。特定のケースでは、個体由来の試料から、表1のPS-1、PS-2、PS-3、PS-4、PS-5、PS-6、PS-7、PS-8、PS-9、PS-10、PS-11、PS-12、PS-13、PS-14、PS-15、PS-16、PS-17、PS-18、PS-19、PS-20、PS-21、及びPS-22のうちの1つ以上の、選択閾値を上回る測定値があり、個体に特定の肉腫治療が投与される。特定のケースでは、個体由来の試料から、表1のPS-1、PS-2、PS-3、PS-4、PS-5、PS-6、PS-7、PS-8、PS-9、PS-10、PS-11、PS-12、PS-13、PS-14、PS-15、PS-16、PS-17、PS-18、PS-19、PS-20、PS-21、及びPS-22のうちの1つ以上の、選択閾値を上回る測定値があり、個体に特定の肉腫治療が投与されない。
【0174】
本開示の実施形態は、試料から、本明細書に包含される1つ以上の糖ペプチド及び/または非グリコシル化ペプチドを測定することにより、1つ以上の肉腫処置に対する非奏効者であると疑われる個体、または1つ以上の肉腫処置に対する非奏効者であるリスクがある個体由来の、血清試料を含む試料を分類する方法を含む。方法は、肉腫治療が個体において治療的であるかどうかの判定を包含する。いくつかの場合では、測定は、個体が将来の治療に対して反応を有しないことを特定もしくは予測するか、または、測定は、個体が将来の治療に対して反応を有することを特定もしくは予測する。様々な実施形態では、個体が対照もしくは健常個体と比較して、表1の1つ以上の糖ペプチド及び/もしくは非グリコシル化ペプチド、またはそれらの特定のレベルを有する場合、個体は、治療に対する奏効者であると判定され得る。様々な実施形態では、個体が対照もしくは健常個体と比較して、表1の1つ以上の糖ペプチド及び/もしくは非グリコシル化ペプチドを欠くか、またはそれらの特定のレベルを有する場合、個体は、治療に対する奏効者ではないと判定され得る。
【0175】
測定が、治療に対する奏効者であると個体を特定する実施形態では、個体は、有効量の治療(例えば、免疫療法(1つ以上の抗体を含む)、放射線、化学療法などである治療)を受けることを推奨され得る。測定が治療に対する奏効者であると個体を特定する実施形態では、個体は、有効量の異なる治療を受けることが推奨され得る。
【0176】
VIII.代表的な実験結果
VIII.A.試料集団-コホート
Garvan Instituteから、様々な形態及びトポロジーの肉腫(骨及び軟組織肉腫)と診断された合計43人の患者(試料対象)について、生存情報及び生物試料を収集し、入手した。これらの試料を、処置直前のベースライン時点で収集した。処置は、デュルバルマブ及びトレメリムマブの併用を含んでいた。試料を様々な供給源から収集し、-80℃(摂氏)で保存し、図1、2A、及び2Bに関して記載されているワークフロー100などのワークフローを通じて処理及び分析した。試料を、MRM分析により処理して、589のペプチド構造(519の糖ペプチド構造及び80のアグリコシル化ペプチド構造)のパネルの定量データを得た。
【0177】
図7は、1つ以上の実施形態による、43人の患者コホートの生存情報を説明するグラフである。グラフ700は、全生存期間(OS)センサー、死亡、無増悪生存(PFS)時間、及びPFSセンサーを示す様々なマーカーを含む。OSセンサーマーカーは、対象で死亡が観察されなかったことを示し、ベースライン時点と比較した最後の接触または最後の臨床評価の時点を示す。死亡マーカーは、ベースライン時点と比較した死亡時点を示す。PFS時間マーカーは、ベースライン時点と比較して、非死亡障害イベントが発生した時点を示す。例えば、非死亡障害イベントは、肉腫病状の進行または増悪を証明する任意のイベントであってよい。PFSセンサーマーカーは、例えば、患者がベースライン時点と比較して無増悪であると特徴付けすることができる最後の臨床評価の時点を示し得る。
【0178】
VIII.B.最終モデルのペプチド構造の特定
上記のように、589のペプチド構造からなるパネルを、試料集団について評価した。年齢及び性別を調整したCox回帰分析(具体的には、Cox PH回帰分析)を、主な独立変数として機能する全生存期間(ベースライン時点(例えば、ベースライン採血、免疫療法開始時点など)に対する死亡までの時間)に基づいてペプチド構造毎に実行した。指数の係数(ハザード比、またはHR)を生成し、ペプチド構造発現が1単位増加した場合、死亡リスクの乗法的変化として解釈し、性別及び年齢について調整した。さらに、589のマーカーのそれぞれを同時に比較できるように分析が修正された。P値及び誤検出率(FDR)も計算した。
【0179】
以下の表6は、選択された数の、p値に基づく最も重要なペプチド構造のHR、P値、及びFDRについて記載する。これらのペプチド構造は、上記の表1でも確認される。表6に示されるように、この分析の目的では、任意のPS-2及びPS-3の定量データを、同じマーカーのものとして処理した。PS-15及びPS-16の任意の定量データを、同じマーカーのものとして処理した。PS-19及びPS-20の任意の定量データを、同じマーカーのものとして処理した。
【表6】
【0180】
リッジペナルティのあるLOOCV Cox回帰アルゴリズムを使用して、最終モデルを構築した。LOOCV Cox回帰アルゴリズムは、Cox回帰モデルを他の42人の患者のデータに適合させることにより各患者のモデルを構築することを含む。次に、所与の患者に対して構築されたモデルを使用して、各患者の反応スコアを予測し、反応スコアの分布を生成した。次に、この分布を処理して、HarrellのC-indexを最大化したカットオフ反応スコアを特定し、見込み奏効者及び見込み非奏効者を二分化した。モデルについて、HR及びp値を計算した。モデルの過剰適合を防ぐために、このプロセスを反復して、上限(試料サイズ/5または試料サイズ/4)まで複数のモデルを生成した。各反復iは、表6で特定されたp値に関してi番目に最も重要なペプチド構造を使用して、その反復のモデルを構築した。10の上限(例えば、43を4で除した)に対して、10のモデルを生成した。
【0181】
以下の表7は、生成された8つのモデルのHR及びp値を提示する。累積HR値及びP値が関連しているペプチド構造は、その特定の反復でセットに追加されたペプチド構造である。例えば、表7では、PS-3の累積HR及び累積p値は、PS1~PS-3を使用して構築されたモデルのものである。別の例として、PS-5の累積HR及び累積p値は、PS1~PS-5を使用して構築されたモデルのものである。表7に示されるように、この分析の目的では、PS-2及びPS-3の任意の定量データを、同じマーカーのものとしてとして処理し、それにより、これら2つのペプチド構造を単一マーカーとしてみなした。
【表7】
【0182】
累積HR及びp値に基づいて、最終モデルを選択した。最終モデルは、PS-1~PS-3を使用し、PS-2及びPS-3を単一のマーカーとして考慮した。
【0183】
VIII.C.検証及び結果
図8は、1つ以上の実施形態に従って、上述の最終モデルに対して生成された反応スコアの分布のプロット800である。
【0184】
図9は、1つ以上の実施形態による、時間対生存率のプロット900である。プロット900は、所与の時点に関して選択閾値を上回る反応スコアを有する患者の数として、見込み非奏効者(死亡リスクのあるもの)であると予測される患者の数を示す。プロット900は、また、所与の時点に関して選択閾値を下回る反応スコアを有し、それにより、所与の時点を超えて生存することが予測される患者の数として、見込み奏効者であることが予測される患者の数を示す。
【0185】
例えば、0日で、9人の患者を見込み非奏効者である(従って、死亡リスクがある)と予測し、34人の患者を、見込み奏効者であると予測した。200日で、見込み非奏効者であると予測された患者9人のうち3人は、依然として、生存しており、それにより、死亡のリスクがあるが、見込み奏効者であることが予測された患者34人のうち28人は、200日まで生存しており、依然として、死亡のリスクがある。
【0186】
さらに、プロット900は、二分化された予測反応スコアに関する2つのカプラン・マイヤー(KM)曲線902及び904を含む。曲線902は、見込み奏効者であると予想される患者を表す。曲線904は、見込み非奏効者であると予測される患者を表す。曲線902及び曲線904における全ての逓減(または低下)は、患者の死亡を表し、逓減のサイズが、依然としてその特定の群内で死亡のリスクがある患者数と反比例している。
【0187】
IX.実施形態の詳述
実施形態1:肉腫病状と診断された対象の処置を管理するための方法であって、方法が、対象から得られた生物試料に対応するペプチド構造データを受信すること;ペプチド構造セットのペプチド構造データから特定される定量データを使用して、処置に対する反応性の可能性を予測する反応スコアを計算することであって、ペプチド構造セットが、表1に記載の複数のペプチド構造から特定される少なくとも1つのペプチド構造を含み、複数のペプチド構造が、肉腫病状の生存に対する相対的重要性に関して表1に記載されている、計算すること;反応スコアに基づいて処置反応出力を生成すること、を含む、方法。
【0188】
実施形態2:処置反応出力を生成することが、反応スコアが選択閾値を上回るかどうかを判定すること;反応スコアが選択閾値を上回る場合、対象を処置に対する見込み奏効者と特定すること;及び反応スコアが選択閾値を上回らない場合、対象を処置に対する見込み非奏効者と特定すること、を含む、実施形態1に記載の方法。
【0189】
実施形態3:処置反応出力を生成することが、反応スコアが選択閾値を上回るかどうかを判定すること;反応スコアが選択閾値以上である場合、対象を処置に対する見込み奏効者と特定すること;及び反応スコアが選択閾値を下回る場合、対象を処置に対する見込み非奏効者と特定すること、を含む、実施形態1に記載の方法。
【0190】
実施形態4:選択閾値が、一致指数を最大化するカットオフ反応スコアである、実施形態2または実施形態3に記載の方法。
【0191】
実施形態5:カットオフ反応スコア及び一致指数が、複数の試料対象に対して生成された試料反応スコアの分布を使用して計算される、実施形態4に記載の方法。
【0192】
実施形態6:反応スコアが、生存基準セットに基づいて対象が処置に反応する確率である、実施形態1に記載の方法。
【0193】
実施形態7:生存基準セットが、選択期間よりも長い全生存期間を含む、実施形態6に記載の方法。
【0194】
実施形態8:生存基準セットが、選択期間よりも長い無増悪生存期間を含む、実施形態6に記載の方法。
【0195】
実施形態9:反応スコアを計算することが、Cox回帰モデル及び定量データを使用して反応スコアを計算することを含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0196】
実施形態10:少なくとも1つのペプチド構造が、表1に特定されるように、ペプチド配列及びペプチド配列の連結部位でペプチド配列と連結しているグリカン構造により規定される糖ペプチド構造を含み、ペプチド配列が、表1に規定される配列番号12~26のうちの1つである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0197】
実施形態11:さらに、処置反応出力を生成する際に使用するための反応スコアの選択閾値を決定することを含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0198】
実施形態12:選択閾値を決定することが、複数の試料対象のペプチド構造セットに対応する試料データの選択部分、及び複数の試料対象の生存情報を使用して、肉腫病状と診断された複数の試料対象の試料反応スコアの分布を生成すること;ならびに、選択閾値として試料反応スコアの分布の一致指数を最大化するカットオフ反応スコアを特定すること、を含む、実施形態11に記載の方法。
【0199】
実施形態13:さらに、複数の試料対象の複数のペプチド構造プロファイルにおける各ペプチド構造についてCox回帰分析を実行すること;Cox回帰分析に基づいて、肉腫病状の生存可能性に関連しているペプチド構造の初期群を同定すること;及び特定されたペプチド構造の初期群に基づいて、試料データの選択部分を形成すること、を含む、実施形態12に記載の方法。
【0200】
実施形態14:Cox回帰分析に基づいて、ペプチド構造の初期群を特定することが、ペプチド構造の初期群として、p値に関して最も重要なペプチド構造の選択数を特定することを含む、実施形態13に記載の方法。
【0201】
実施形態15:反応スコアを計算することが、ペプチド構造の初期群から選択されるペプチド構造サブセットに対して構築されたモデルを使用して反応スコアを計算することを含む、実施形態13または実施形態14に記載の方法。
【0202】
実施形態16:ペプチド構造サブセットが、表1のPS-1~PS-5のうちの少なくとも1つを含む、実施形態15に記載の方法。
【0203】
実施形態17:ペプチド構造セットのペプチド構造の定量データが、存在量、相対存在量、正規化存在量、相対量、調整量、正規化量、相対濃度、調整濃度、または正規化濃度のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
実施形態18:ペプチド構造データが、多重反応モニタリング質量分析法(MRM-MS)を使用して生成される、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0205】
実施形態19:さらに、生物試料から試料を作成すること、ならびに、還元、アルキル化、及び酵素消化を使用して試料を調製して、ペプチド構造セットを含む調製試料を形成すること、を含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0206】
実施形態20:さらに、多重反応モニタリング質量分析法(MRM-MS)を使用して、調製試料からペプチド構造データを生成することを含む、実施形態19に記載の方法。
【0207】
実施形態21:処置反応出力を生成することが、対象が肉腫病状の処置に対する見込み奏効者であることを示すレポートを作成することを含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0208】
実施形態22:レポートが、対象への処置の投与を進めることを示すものを含む、実施形態21に記載の方法。
【0209】
実施形態23:さらに、対象が処置に対して見込み奏効者となることを示す処置反応出力に基づいて、処置の治療用量を投与することを含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0210】
実施形態24:治療用量が、4週間毎に静脈内(IV)注入によるデュルバルマブ1500mgを最大4回投与;4週間毎にIV注入によるトレメリムマブ75mgを最大4回投与;及び16週目で開始して4週間毎にデュルバルマブ1500mgを最大9回投与、を含む、実施形態23に記載の方法。
【0211】
実施形態25:さらに、対象が肉腫病状の処置に対して見込み非奏効者となることを示すレポートを生成することを含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0212】
実施形態26:レポートが、処置を変更するか、または新しい処置を選択することを示すものを含む、実施形態25に記載の方法。
【0213】
実施形態27:処置が、免疫療法を含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0214】
実施形態28:処置が、デュルバルマブ及びトレメリムマブを含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0215】
実施形態29:さらに、処置出力をリモートシステムに送信することを含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0216】
実施形態30:肉腫病状と診断された対象の処置反応性を予測するための最終モデルを構築する方法であって、方法が、肉腫病状と診断された複数の試料対象のペプチド構造のパネルに対する試料データを受信することであって、試料データが、ペプチド構造のパネルの定量データを含む、受信すること;複数の試料対象の生存情報を受信すること;試料データ及び生存情報に基づいて、肉腫病状の生存に関連しているペプチド構造の初期群を特定することであって、ペプチド構造の初期群が、表1に特定される複数のペプチド構造の少なくとも3つのペプチド構造を含む、特定すること;ペプチド構造の初期群の異なるサブセットを使用して複数のモデルを構築すること;ならびに、肉腫に対する処置に対する処置反応性の予測に使用される複数のモデルから最終モデルを選択すること、を含む、方法。
【0217】
実施形態31:最終モデルが、Cox回帰モデルである、実施形態30に記載の方法。
【0218】
実施形態32:試料データ及び生存情報に基づいて、ペプチド構造の初期群を特定することが、複数の試料対象の複数のペプチド構造プロファイルにおける各ペプチド構造についてCox回帰分析を実行すること;各ペプチド構造のp値を計算すること;及びCox回帰分析で、p値に基づいて肉腫病状に関する生存に関連しているペプチド構造の初期群を特定すること、を含む、実施形態30または実施形態31に記載の方法。
【0219】
実施形態33:複数のモデルを構築することが、ペプチド構造の初期群からペプチド構造試験サブセットを選択して、モデルを構築すること;及び、複数の試料対象のペプチド構造試験サブセットに対応する、複数の試料対象のモデル、生存情報、及び試料データの一部を使用して、複数の試料対象の試料反応スコアの分布を生成すること、を含む、実施形態30~32のいずれか1つに記載の方法。
【0220】
実施形態34:複数のモデルを構築することが、さらに、分布に基づいてモデルの選択閾値を決定すること;ならびに、モデルのハザード比及びp値を計算すること、を含む、実施形態33に記載の方法。
【0221】
実施形態35:最終モデルを選択することが、複数のモデルについて計算された複数のp値に基づいて生成された複数のモデルから最終モデルを選択すること、を含む、実施形態30~34のいずれか1つに記載の方法。
【0222】
実施形態36:最終モデルが、表1のPS-1~PS-5のうちの少なくとも1つを含むペプチド構造セットを使用する、実施形態30~35のいずれか1つに記載の方法。
【0223】
実施形態37:複数の肉腫病状と診断された複数の対象のペプチド構造のパネルに対する定量データが、存在量、相対存在量、正規化存在量、相対量、調整量、正規化量、相対濃度、調整濃度、または正規化濃度のうちの少なくとも1つを含む、実施形態30~36のいずれか1つに記載の方法。
【0224】
実施形態38:患者の肉腫を処置する方法であって、患者から得られた生物試料に対応するペプチド構造データを受信すること;ペプチド構造セットのペプチド構造データから特定された定量データを使用して、処置への反応性の可能性を予測する反応スコアを計算することであって、ペプチド構造セットが、表1に記載の複数のペプチド構造から特定される少なくとも1つのペプチド構造を含み、複数のペプチド構造が、肉腫病状の生存に対する相対的重要性に関して表1に記載されている、計算すること;対象が、反応スコアに基づいて、処置に対する見込み奏効者、または見込み非奏効者であるか判定すること;及び、対象が見込み奏効者であると判定される場合、患者に、処置の治療用量を投与すること、を含む、方法。
【0225】
実施形態39:処置を投与することが、患者に免疫療法を投与すること、を含む、実施形態38に記載の方法。
【0226】
実施形態40:処置を投与することが、デュルバルマブ及びトレメリムマブの組み合わせを患者に投与すること、を含む、実施形態38に記載の方法。
【0227】
実施形態41:処置を投与することが、デュルバルマブを1500mgの用量で静脈内(IV)投与経路により4週間毎に最大4回投与することを含む、実施形態38に記載の方法。
【0228】
実施形態42:処置を投与することが、デュルバルマブを1500mgの用量で静脈内(IV)投与経路により4週間毎に最大13回投与することを含む、実施形態38に記載の方法。
【0229】
実施形態43:処置を投与することが、デュルバルマブを1500mgの用量で静脈内(IV)投与経路により16週目から開始して4週間毎に最大9回投与することを含む、実施形態38に記載の方法。
【0230】
実施形態44:処置を投与することが、トレメリムマブを75mgの用量で静脈内(IV)投与経路により4週間毎に最大4回投与することを含む、実施形態38に記載の方法。
【0231】
実施形態45:処置を投与することが、静脈内(IV)投与経路により処置を投与することを含む、実施形態38に記載の方法。
【0232】
実施形態46:処置を投与することが、4週間毎に処置の治療用量を投与することを含む、実施形態38に記載の方法。
【0233】
実施形態47:表1に特定されるペプチド構造PS-1~PS-22のうちの少なくとも1つを含む、組成物。
【0234】
実施形態48:ペプチド構造またはプロダクトイオンを含む組成物であって、ペプチド構造またはプロダクトイオンが、表1のペプチド構造PS-1~PS-22に対応する配列番号12~26のいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み;プロダクトイオンが、特定のm/zの範囲内に入るプロダクトイオンを含む、表2で特定されるプロダクトイオンからなる群からの1つとして選択される、組成物。
【0235】
実施形態49:表1に特定されるペプチド構造PS-1~PS-22からなる群からの1つとして選択される糖ペプチド構造を含む組成物であって、
糖ペプチドの構造が、糖ペプチド構造に対応するものとして表3で特定されるアミノ酸ペプチド配列と、及びグリカン構造が表1で特定される対応する位置でアミノ酸ペプチド配列の残基に連結されている、糖ペプチド構造に対応するものとして表5で特定されるグリカン構造であって、グリカン構造がグリカン組成を有する、グリカン構造とを含む、組成物。
【0236】
実施形態50:グリカン組成が、表5に特定される、実施形態48に記載の組成物。
【0237】
実施形態51:糖ペプチド構造が、糖ペプチド構造に対応するものとして表2に特定される電荷を有するプリカーサーイオンを有する、実施形態48または実施形態50に記載の組成物。
【0238】
実施形態52:糖ペプチド構造が、糖ペプチド構造に対応するものとして表2のプリカーサーイオンに対し記載されているm/z比の±1.5以内のm/z比を有するプリカーサーイオンを有する、実施形態48~51のいずれか1つに記載の組成物。
【0239】
実施形態53:糖ペプチド構造が、糖ペプチド構造に対応するものとして表2のプリカーサーイオンに対し記載されているm/z比の±1.0以内のm/z比を有するプリカーサーイオンを有する、実施形態48~51のいずれか1つに記載の組成物。
【0240】
実施形態54:糖ペプチド構造が、糖ペプチド構造に対応するものとして表2のプリカーサーイオンに対し記載されているm/z比の±0.5以内のm/z比を有するプリカーサーイオンを有する、実施形態44~51のいずれか1つに記載の組成物。
【0241】
実施形態55:糖ペプチド構造が、糖ペプチド構造に対応するものとして表2の第1のプロダクトイオンに対し記載されているm/z比の±1.0以内のm/z比を有するプロダクトイオンを有する、実施形態48~54のいずれか1つに記載の組成物。
【0242】
実施形態56:糖ペプチド構造が、糖ペプチド構造に対応するものとして表2の第1のプロダクトイオンに対し記載されているm/z比の±0.8以内のm/z比を有するプロダクトイオンを有する、実施形態48~54のいずれか1つに記載の組成物。
【0243】
実施形態57:糖ペプチド構造が、糖ペプチド構造に対応するものとして表2の第1のプロダクトイオンに対し記載されているm/z比の±0.5以内のm/z比を有するプロダクトイオンを有する、実施形態48~54のいずれか1つに記載の組成物。
【0244】
実施形態58:糖ペプチド構造が、糖ペプチド構造に対応するものとして表1に特定されるモノアイソトピック質量を有する、実施形態48~54のいずれか1つに記載の組成物。
【0245】
実施形態59:表1に特定される複数のペプチド構造からの1つとして選択されるペプチド構造を含む組成物であって、ペプチド構造が、表1のペプチド構造に対応する特定されたモノアイソトピック質量を有し;ペプチド構造が、ペプチド構造に対応するものとして表1で特定される配列番号12~26のアミノ酸配列を含む、組成物。
【0246】
実施形態60:ペプチド構造が、ペプチド構造に対応するものとして表2に特定される電荷を有するプリカーサーイオンを有する、実施形態59に記載の組成物。
【0247】
実施形態61:ペプチド構造が、ペプチド構造に対応するものとして表2のプリカーサーイオンについて記載されたm/z比の±1.5以内のm/z比を有するプリカーサーイオンを有する、実施形態59または実施形態60に記載の組成物。
【0248】
実施形態62:ペプチド構造が、ペプチド構造に対応するものとして表2のプリカーサーイオンについて記載されたm/z比の±1.0以内のm/z比を有するプリカーサーイオンを有する、実施形態59または実施形態60に記載の組成物。
【0249】
実施形態63:ペプチド構造が、ペプチド構造に対応するものとして表2のプリカーサーイオンについて記載されたm/z比の±0.5以内のm/z比を有するプリカーサーイオンを有する、実施形態59または実施形態60に記載の組成物。
【0250】
実施形態64:ペプチド構造が、ペプチド構造に対応するものとして表2の第1のプロダクトイオンに対し記載されているm/z比の±1.0以内のm/z比を有するプロダクトイオンを有する、実施形態59~63のいずれか1つに記載の組成物。
【0251】
実施形態65:ペプチド構造が、ペプチド構造に対応するものとして表2の第1のプロダクトイオンに対し記載されているm/z比の±0.8以内のm/z比を有するプロダクトイオンを有する、実施形態59~63のいずれか1つに記載の組成物。
【0252】
実施形態66:ペプチド構造が、ペプチド構造に対応するものとして表2の第1のプロダクトイオンに対し記載されているm/z比の±0.5以内のm/z比を有するプロダクトイオンを有する、実施形態59~63のいずれか1つに記載の組成物。
【0253】
実施形態67:実施形態1~46のいずれか1つに記載の方法を実行するための、表1で特定される少なくとも1つのペプチド構造を定量するための少なくとも1つの薬剤を含む、キット。
【0254】
実施形態68:実施形態1~37のいずれか1つに記載の方法を実行するための、糖ペプチド標準、緩衝液、またはペプチド配列セットのうちの少なくとも1つを含むキットであり、ペプチド配列セットのペプチド配列が、表1で規定される配列番号12~26のうちの対応する1つにより特定される、キット。
【0255】
実施形態69:システムであって、1つ以上のデータプロセッサー;及び1つ以上のデータプロセッサーで実行されると、1つ以上のデータプロセッサーに実施形態1~46のいずれか1つに記載の一部または全部を実行させる命令を含有する、非一時的なコンピューター可読記憶媒体、を含む、システム。
【0256】
実施形態70:1つ以上のデータプロセッサーに実施形態1~46のいずれか1つの一部または全部を実行させるように構成された命令を含む、非一時的な機械可読記憶媒体に実体的に具体化された、コンピュータープログラム製品。
【0257】
実施形態71:グリカン構造が、表1によるグリカン構造GL番号に対応し、グリカン構造が、表1及び表5のグリカン構造GL番号による記号構造を含む、実施形態6に記載の方法。
【0258】
実施形態72:グリカン構造が、表1によるグリカン構造GL番号に対応し、グリカン構造が、表1及び表5のグリカン構造GL番号によるグリカン組成を含む、実施形態6に記載の方法。
【0259】
X.追加の考慮事項
この文書のセクション及びサブセクション間にあるヘッダー及びサブヘッダーは、読みやすさを改善するために単独で含まれ、特徴がセクション及びサブセクションにわたって組み合わせることができることを意味しない。従って、セクション及びサブセクションは、個別の実施形態について記載していない。
【0260】
本教示は様々な実施形態に関連して記載されているが、本教示がそのような実施形態に限定されることが意図されない。逆に、当業者らに理解されるように、本教示は、様々な代替物、修正物、及び均等物を包含する。本説明は、好ましい例示的な実施形態を提供し、本開示の範囲、適用性、または構成を限定することが意図されない。むしろ、好ましい例示的な実施形態の本説明は、当業者らに様々な実施形態を実施するための効果的な説明を提供する。
【0261】
添付の特許請求の範囲に記載の趣旨及び範囲から逸脱することなく、要素の機能及び配置に様々な変更が行われ得ることが理解される。従って、そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲に記載の範囲内にあるとみなされる。さらに、用いられている用語及び表現は、説明の用語として使用され、限定するものではなく、そのような用語及び表現の使用には、示され記載されている機能またはその一部と同等のものを除外する意図はないが、本発明の特許請求の範囲内で様々な変更が可能であることが認識される。
【0262】
様々な実施形態を記載する際に、本明細書は、方法及び/またはプロセスをステップの特定のシーケンスとして提示していることがある。しかし、方法またはプロセスが本明細書に記載のステップの特定の順序に依存しない限り、方法またはプロセスは、記載されるステップの特定のシーケンスに限定されるべきではなく、当業者は、シーケンスが変更されてもよく、依然として、様々な実施形態の趣旨及び範囲内にあることを容易に理解し得る。
【0263】
本開示のいくつかの実施形態は、1つ以上のデータプロセッサーを含むシステムを含む。いくつかの実施形態では、システムは、1つ以上のデータプロセッサー上で実行される場合、1つ以上のデータプロセッサーに、1つ以上の方法の一部もしくは全部及び/または本明細書に開示される1つ以上のプロセスの一部もしくは全部を実行させる命令を含有する非一時的なコンピューター可読記憶媒体を含む。本開示のいくつかの実施形態は、1つ以上のデータプロセッサーに1つ以上の方法の一部もしくは全部、及び/または本明細書に開示の1つ以上のプロセスの一部もしくは全部を実行させるように構成された命令を含む、非一時的な機械可読記憶媒体に実体的に具体化されたコンピュータープログラム製品を含む。
【0264】
実施形態の理解を提供する本説明において、具体的な詳細が与えられる。しかし、これらの具体的な詳細がなくても、実施形態が実行され得ることが理解される。例えば、回路、システム、ネットワーク、プロセス、及び他の構成要素は、不必要な詳細で実施形態を不明瞭にしないようにするために、ブロック図形態の構成要素として示され得る。他の例では、周知の回路、プロセス、アルゴリズム、構造、及び手法は、実施形態を不明瞭にすることを避けるために、不必要な詳細なしに示され得る。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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【国際調査報告】