(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ムコ多糖症IIIA型の治療のための遺伝子療法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20241219BHJP
C12N 15/56 20060101ALI20241219BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20241219BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20241219BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241219BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20241219BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20241219BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20241219BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241219BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241219BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20241219BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20241219BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20241219BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20241219BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/56 ZNA
C12N7/01
C12N15/113 Z
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
C12N15/861 Z
C12N15/85 Z
C12N5/10
A61K35/76
A61P25/14
A61P25/08
A61K9/10
C12N15/864 Z
A61K48/00
A61K38/46
A61P3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528581
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 US2022079701
(87)【国際公開番号】W WO2023086928
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】502409813
【氏名又は名称】ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オルドー,ジュリエット
(72)【発明者】
【氏名】ウイルソン,ジェームス・エム
(72)【発明者】
【氏名】ラッスーリ-テイラー,レイダ
(72)【発明者】
【氏名】ドー,フン
(72)【発明者】
【氏名】タスケ,スティーブン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
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4C087ZA02
4C087ZA06
4C087ZC21
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、AAVカプシドと、AAVカプシド内にパッケージングされたベクターゲノムと、を含む、組換えAAV(rAAV)であり、ベクターゲノムが、AAV5’逆位末端反復(ITR)、任意選択的に安定化アミノ酸変化を含む機能性hSGSHをコードする操作された核酸配列、標的細胞においてhSGSHの発現を指示する調節配列、及びAAV3’ITRを含む。また提供されるのは、本明細書に記載のrAAVを製剤緩衝液中に含む薬学的組成物、及びMPS IIIAを有すると診断されたヒト対象を治療する方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシド及びベクターゲノムを含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であって、前記ベクターゲノムが、AAV5’逆位末端反復(ITR)、発現カセット、及びAAV3’ITRを含み、前記発現カセットが、機能性ヒトN-スルホグリコサミンスルホヒドロラーゼ(hSGSH)をコードする操作された核酸配列を含み、前記hSGSHコード配列が、シグナルペプチド配列及び成熟hSGSHコード配列を含み、前記成熟hSGSHコードが、配列番号16の配列の核酸配列、又は(a)配列番号23をコードする、配列番号16に対して少なくとも85%同一であるか、若しくは(b)配列番号23をコードする、配列番号16に対して少なくとも99%同一である、核酸配列を有し、前記hSGSHコード配列が、細胞において前記hSGSHの発現を指示する調節性制御配列と操作可能に連結されている、組換えアデノ随伴ウイルス。
【請求項2】
配列番号16に対して99%同一の前記成熟hSGSHコード配列が、配列番号22であり、配列番号23をコードする(hSGSH.A482Y-E488V)、請求項1に記載のrAAV。
【請求項3】
前記成熟hSGSHコード配列が、配列番号16である、請求項1に記載のrAAV。
【請求項4】
前記成熟hSGSHコード配列が、配列番号16の配列の核酸配列、又は配列番号23をコードする、配列番号16に対して85%同一である核酸配列を有する、請求項1に記載のrAAV。
【請求項5】
前記シグナルペプチド配列が、配列番号31の核酸配列を有する天然シグナル配列、又は配列番号32をコードする、配列番号31に対して少なくとも約95%同一の配列である、請求項1に記載のrAAV。
【請求項6】
前記hSGSHコード配列が、前記hSGSHのアミノ末端のコード配列に融合された外因性シグナル配列を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項7】
前記外因性シグナル配列が、配列番号29の核酸配列を有するBiPシグナルペプチド配列、又は配列番号30をコードする、配列番号29に対して少なくとも約95%同一の配列である、請求項6に記載のrAAV。
【請求項8】
前記BiPシグナルペプチドを含む前記hSGSHコード配列が、配列番号18の核酸配列、又は配列番号19をコードする、配列番号18に対して少なくとも約95%同一の配列を有する、請求項6又は7に記載のrAAV。
【請求項9】
前記BiPシグナルペプチドを含む前記hSGSHが、配列番号24の核酸配列、又は配列番号25をコードする、配列番号24に対して少なくとも約95%同一の配列を有する、請求項6又は7に記載のrAAV。
【請求項10】
前記hSGSHコード配列が、前記hSGSHのカルボキシ末端のコード配列に融合されたvIGF2ペプチド配列を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項11】
前記hSGSHコード配列が、5’末端に前記外因性シグナル配列及び3’末端に前記vIGF2を含む、請求項10に記載のrAAV。
【請求項12】
前記BiPシグナル配列及びvIGF2ペプチドを含む前記hSGSHコード配列が、
配列番号20の核酸配列、又は配列番号21をコードする、配列番号20に対して少なくとも約95%同一の配列を有する、請求項11に記載のrAAV。
【請求項13】
前記BiPシグナル配列及びvIGF2ペプチドを含む前記hSGSHコード配列が、配列番号26の核酸配列、又は配列番号27をコードする、配列番号26に対して少なくとも約95%同一の配列を有する、請求項11に記載のrAAV。
【請求項14】
前記調節性制御配列が、CMV IEエンハンサ及びニワトリ-ベータアクチン(CB)プロモータを含むCB7プロモータを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項15】
前記調節性制御配列が、コザック配列、イントロン、エンハンサ、TATAシグナル、及びポリA配列のうちの1つ以上を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項16】
前記調節性制御配列が、ニワトリベータアクチンイントロン、ウサギグロビンポリアデニル化配列のうちの1つ以上を含む、請求項15に記載のrAAV。
【請求項17】
前記調節性制御配列が、変異型WPRE因子を更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項18】
前記rAAVベクターゲノムが、配列番号7の核酸配列(CB7.CI.BiP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.WPRE.rBG)を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項19】
前記ベクターゲノムが、後根神経節(drg)特異的miRNA標的配列の少なくとも1、2、3、4つ以上のタンデム反復を更に含み、前記少なくとも1、2、3、4つ以上のタンデム反復が、少なくとも第1のmiRNA標的配列、少なくとも第2、少なくとも第3、及び/又は少なくとも第4のmiRNA標的配列を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項20】
前記miRNA標的配列が、miR182を標的とする、少なくとも第1のmiRNA標的配列、少なくとも第2、少なくとも第3、及び/又は少なくとも第4のmiRNA標的配列を含む、請求項19に記載のrAAV。
【請求項21】
前記miRNA標的配列が、miR183を標的とする、少なくとも第1のmiRNA標的配列、少なくとも第2、少なくとも第3、及び/又は少なくとも第4のmiRNA標的配列を含む、請求項19に記載のrAAV。
【請求項22】
前記発現カセットmRNA又はDNAプラス鎖の前記少なくとも第1、少なくとも第2、少なくとも第3、及び/又は少なくとも第4のmiRNA標的配列の前記miRNAが、AGTGTGAGTTCTACCATTGCCAAA(miR182、配列番号47)である、請求項19又は20に記載のrAAV。
【請求項23】
前記発現カセットmRNA又はDNAプラス鎖の前記少なくとも第1、少なくとも第2、少なくとも第3、及び/又は少なくとも第4のmiRNA標的配列の前記miRNAが、AGTGAATTCTACCAGTGCCATA(miR183、配列番号28)である、請求項19又は21に記載のrAAV。
【請求項24】
前記ベクターゲノムが、同じであっても異なっていてもよい、少なくとも第1、少なく
とも第2、少なくとも第3、少なくとも第4、少なくとも第5、少なくとも第6、少なくとも第7、及び少なくとも第8のmiRNA標的配列を含む少なくとも8つのタンデム反復を更に含み、miR183又はmiR182を標的とする、請求項1~17又は19~22のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項25】
前記少なくとも8つのタンデム反復が、後根神経節(drg)特異的miRNA182標的配列の少なくとも4つのタンデム反復、及びdrg特異的miRNA183標的配列の少なくとも4つのタンデム反復を含む、請求項24に記載のrAAV。
【請求項26】
前記発現カセットmRNA又はDNAプラス鎖の前記少なくとも第1、少なくとも第2、少なくとも第3、少なくとも第4、少なくとも第5、少なくとも第6、少なくとも第7、及び/又は少なくとも第8のmiRNA標的配列の前記drg特異的miRNA標的配列が、(i)AGTGAATTCTACCAGTGCCATA(miR183、配列番号28)、及び(ii)AGTGTGAGTTCTACCATTGCCAAA(miR182、配列番号47)である、請求項24又は25に記載のrAAV。
【請求項27】
前記発現カセットmRNA又はDNAプラス鎖の前記少なくとも第1、少なくとも第2、少なくとも第3、及び/又は少なくとも第4のmiRNA標的配列の前記drg特異的miRNA標的配列が、AGTGTGAGTTCTACCATTGCCAAA(miR182、配列番号47)であり、前記発現カセットmRNA又はDNAプラス鎖の少なくとも第5、少なくとも第6、少なくとも第7、及び/又は少なくとも第8のmiRNA標的配列が、AGTGAATTCTACCAGTGCCATA(miR183、配列番号28)である、請求項24~26のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項28】
前記miRNA標的配列のうちの2、3、4つ以上、又は前記少なくとも8つが、スペーサによって分離されている、請求項19~25のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項29】
前記スペーサが、独立して、(A)GGAT、(B)CACGTG、(C)GCATGC、(D)gcggccgc、(E)cgat、(F)atcggt、及び/又は(G)tcacのうちの1つ以上から選択される、請求項28に記載のrAAV。
【請求項30】
前記miRNA標的配列間に位置する前記スペーサが、前記第1のmiRNA標的配列の3’及び/又は最後のmiRNA標的配列の5’に位置し得る、請求項29に記載のrAAV。
【請求項31】
後根神経節(drg)特異的miRNA標的配列の前記少なくとも1、2、3、4つ以上、又は前記少なくとも8つのタンデム反復が、前記hSGSHの3’非翻訳領域(UTR)と操作可能に連結されている、請求項19~30のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項32】
後根神経節(drg)特異的miRNA標的配列の前記少なくとも1、2、3、4つ以上、又は前記少なくとも8つのタンデム反復が、前記hSGSHの5’非翻訳領域(UTR)と操作可能に連結されている、請求項19~30のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項33】
前記rAAVベクターゲノムが、配列番号1の核酸配列(CB7.CI.BiP.hSGSHcov1(A482Y-E488V).vIGF2.WPRE.4xmiR183.rBG)を含む、請求項1~17、19~22のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項34】
前記rAAVベクターゲノムが、配列番号4の核酸配列(CB7.CI.BiP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.rBG)を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項35】
前記rAAVベクターゲノムが、配列番号10の核酸配列(AAV.CB7.CI.hSGSHcoV1.rBG)を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項36】
前記rAAVベクターゲノムが、配列番号13の核酸配列(CB7.CI.hSGSHcoV1-4xmiR183.rBG)を含む、請求項1~17又は19~22のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項37】
前記rAAVベクターゲノムが、配列番号40の核酸(CB7.CI.BiP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.WPRE.4xmiR182.rBG)を含む、請求項1~17又は19~22のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項38】
前記rAAVベクターゲノムが、配列番号37の核酸配列(CB7.CI.Bip.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.WPRE.4xmiR182.4xmiR183.rBG)を含む、請求項1~17又は19~30のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項39】
前記AAVカプシドが、クレードF AAVである、請求項1~38のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項40】
前記AAVカプシドが、AAVhu68である、請求項1~38のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項41】
前記AAVカプシドが、AAVrh91である、請求項1~38のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項42】
ムコ多糖症IIIA型(MPS IIIA又はサンフィリッポ症候群A型)の治療における使用のための、及び/又はムコ多糖症IIIA型の治療を必要とする対象における歩行若しくは可動性の改善、振戦の低減、けいれんの低減、姿勢の改善、若しくは視力喪失の進行の低減における使用のためのものである、請求項1~41のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項43】
請求項1~42のいずれか一項に記載のrAAVのストックと、水性懸濁媒体と、を含む、組成物。
【請求項44】
前記懸濁液が、脳室内(ICV)、髄腔内(IT)、大槽内、又は静脈内(IV)注射用に製剤化されている、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
請求項1~42のいずれか一項に記載のrAAVを、製剤緩衝液中に含む、薬学的組成物。
【請求項46】
脳室内(ICV)、髄腔内(IT)、大槽内、又は静脈内(IV)注射を介した送達用に製剤化されている、請求項45に記載の薬学的組成物。
【請求項47】
脳質量1グラム当たり1×10
9GC~脳質量1グラム当たり約1×10
13GCの用量で投与可能である、請求項45又は46に記載の薬学的組成物。
【請求項48】
約7.28~約7.32のpHを有するように製剤化されている、請求項45~47のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項49】
発現カセットを含むベクターであって、前記発現カセットが、hSGSHコード配列を含み、前記hSGSHコード配列が、前記hSGSH発現を指示する調節性制御配列の制御下で、機能性ヒトN-スルホグリコサミンスルホヒドロラーゼ(hSGSH)をコードする核酸配列であり、前記hSGSHコード配列が、シグナルペプチド配列及び成熟hSGSHを含み、前記成熟hSGSHコード配列が、配列番号16、若しくは配列番号16に対して少なくとも約95%同一の配列、又は配列番号22、若しくは配列番号22に対して少なくとも約95%同一の配列から選択される、ベクター。
【請求項50】
前記ベクターが、組換えパルボウイルス、組換えレンチウイルス、組換えレトロウイルス、若しくは組換えアデノウイルスから選択されるウイルスベクター、又は裸のDNA、裸のRNAから選択される非ウイルスベクターである、請求項49に記載のベクター。
【請求項51】
操作された機能性ヒトN-スルホグリコサミンスルホヒドロラーゼ(hSGSH)遺伝子及び調節性制御配列を含む発現カセットを含む、核酸分子であって、前記発現カセットが、5’逆位末端反復(ITR)及び3’ITRに隣接し、前記操作されたhSGSG遺伝子が、機能性hSGSHをコードし、前記hSGSHコード配列が、シグナルペプチド配列及び成熟hSGSHを含み、前記成熟hSGSHコード配列が、配列番号16及び22から選択される、核酸分子。
【請求項52】
前記シグナル配列が、配列番号29及び31から選択される、請求項51に記載の核酸配列。
【請求項53】
前記発現カセットが、配列番号8、2、5、11、及び14から選択される、請求項51に記載の核酸配列。
【請求項54】
請求項51~53のいずれか一項に記載の核酸分子を含む、パッケージング宿主細胞。
【請求項55】
前記パッケージング宿主細胞内でrepタンパク質を発現する配列と操作可能に連結されたAAV repコード配列と、前記パッケージング宿主細胞内でAAVカプシドタンパク質を発現する配列と操作可能に連結されたAAVカプシドコード配列と、前記発現カセット及びITRを前記AAVカプシド内にパッケージングすることを可能にするのに必要なヘルパーウイルス機能と、を更に含む、請求項54に記載のパッケージング宿主細胞。
【請求項56】
前記AAVカプシドが、AAVhu68及びAAVrh91から選択される、請求項54又は55に記載のパッケージング宿主細胞。
【請求項57】
請求項1~31のいずれか一項に記載のrAAVを産生するのに有用なrAAV産生系であって、前記産生系が、
(a)AAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列と、
(b)ベクターゲノムと、
(c)前記AAVカプシド内への前記ベクターゲノムのパッケージングを可能にするのに十分なAAV rep機能及びヘルパー機能と、を含む細胞培養物を含む、rAAV産生系。
【請求項58】
前記AAVカプシドが、AAVhu68及びAAVrh91から選択される、請求項57に記載のrAAV産生系。
【請求項59】
前記ベクターゲノムが、配列番号7、1、4、10、及び13から選択される、請求項57に記載のrAAV産生系。
【請求項60】
MPS IIIAを有すると診断されたヒト対象を治療する、及び/又はMPS IIIAの治療を必要とする対象における歩行若しくは可動性を改善する、振戦を低減させる、けいれんを低減させる、姿勢を改善する、若しくは視力喪失の進行を低減させる方法であって、前記対象に、製剤緩衝液中、脳質量1グラム当たり1×10
9GC~脳質量1グラム当たり約1×10
13GCの用量で、請求項1~42のいずれか一項に記載のrAAVの懸濁液を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ムコ多糖症IIIa型(MPSIIIa、MPSIIIA、又はサンフィリッポ症候群A型)は、グリコサミノグリカン(GAG)へパラン硫酸のリソソーム異化に関与する酵素N-スルホグリコサミン(sulfoglycosamine)スルホヒドロラーゼ(SGSH)の欠乏によって引き起こされる、常染色体劣性遺伝障害である。この欠乏は、中枢神経系における未分解のヘパラン硫酸、並びにガングリオシドGM2及びGM3の細胞内蓄積をもたらし、神経の機能障害及び神経炎症を引き起こす。この疾患は、最初に、3歳頃に認知遅延、続いて異常な多動性及び攻撃的挙動として現れる。次いで、疾患の進行によって、最初の10年間に運動及び神経機能の喪失に至り、15歳の中央値での死亡を伴う。
【0002】
症状を緩和し、生活の質を改善するために、(発作用の抗けいれん剤などの)医薬品が使用される。造血幹細胞移植は、神経心理学的悪化を顕著に緩和しないようである。MPS IIIにおける欠乏に対して組換え酵素が利用可能であるが、酵素は、中枢神経系に入ることが可能ではないので、酵素補充療法(ERT)での治験は、予後の改善に好ましくなかった。例えば、Germaine L Defendi.Genetics of
Mucopolysaccharidosis Type III.Medscape.March 21,2014を参照されたい。食事の変更は、疾患進行を防止することはないが、牛乳、糖分、及び乳製品を制限することは、過剰な粘液を有する一部の人々の助けとなっている。
【0003】
様々な遺伝子療法アプローチは、MPSIIIAの有効な治療の潜在性を有すると記載されている。しかしながら、現在の構築物は、所望のレベルの治療効果を達成しておらず、サンフィリッポ症候群の治療のための標準的な治療又は治癒は存在しない。当該技術分野には、MPS IIIAの効果的な治療のための組成物及び方法に対する継続的なニーズが存在する。
【発明の概要】
【0004】
本明細書で提供されるのは、標的細胞において発現を指示する調節配列である、機能性ヒトN-スルホグリコサミンスルホヒドロラーゼ(hSGSH)をコードする操作された核酸配列を含む、治療用組換え複製欠損性アデノ随伴ウイルス(rAAV)である。一態様では、本明細書で提供されるのは、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシド及びベクターゲノムを含む、rAAVであって、ベクターゲノムが、AAV5’逆位末端反復(ITR)、発現カセット、及びAAV3’ITRを含み、発現カセットが、機能性ヒトN-スルホグリコサミンスルホヒドロラーゼ(hSGSH)をコードする操作された核酸配列を含み、hSGSHコード配列が、シグナルペプチド配列及び成熟hSGSHコード配列を含み、成熟hSGSHコードが、配列番号16の配列の核酸配列、又は(a)配列番号23をコードする、配列番号16に対して少なくとも85%同一であるか、若しくは(b)配列番号23をコードする、配列番号16に対して少なくとも99%同一である、核酸配列を有し、hSGSHコード配列が、細胞においてhSGSHの発現を指示する調節性制御配列と操作可能に連結されている、rAAVである。ある特定の実施形態では、rAAVは、配列番号23をコードする配列番号22の成熟hSGSHコード配列(hSGSH.A482Y-E488V)を含む。ある特定の実施形態では、シグナルペプチド配列は、配列番号31の核酸配列を有する天然シグナル配列、又は配列番号32をコードする、配列番号31に対して少なくとも約95%同一の配列である。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドは、外因性シグナルペプチドであり、外因性シグナルペプチド配列が、配列番号29の核酸配列を有するBiPシグナルペプチド配列、又は配列番号30をコー
ドする、配列番号29に対して少なくとも約95%同一の配列である。ある特定の実施形態では、hSHSHは、配列番号18の核酸配列、又は配列番号19をコードする、配列番号18に対して少なくとも約95%同一の配列を有する。ある特定の実施形態では、hSHSHは、配列番号24の核酸配列、又は配列番号25をコードする、配列番号24に対して少なくとも約95%同一の配列を有する。ある特定の実施形態では、成熟hSGSHのアミノ末端(成熟hSGSHコード配列の5’末端)にBiPシグナル配列と、成熟hSGSHのカルボキシ末端(成熟hSGSHコード配列の3’末端)にvIGF2ペプチドと、を含む、hSGSHコード配列は、及び配列番号20の核酸配列、又は配列番号21をコードする、配列番号20に対して少なくとも約95%同一の配列を有する。ある特定の実施形態では、hSGSHコード配列は、配列番号26の核酸配列、又は配列番号27をコードする、配列番号26に対して少なくとも約95%同一の配列を有する。いくつかの実施形態では、調節配列は、CB7プロモータ、コザック配列、イントロン、エンハンサ、TATAシグナル、及びポリアデニル化(ポリA)シグナル配列のうちの1つ以上を更に含み、任意選択的に、調節配列が、及びWPRE因子を更に含む。
【0005】
ある特定の実施形態では、ベクターゲノムは、核酸配列(i)CB7.CI.BIP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.rBG配列番号3)、(ii)CB7.CI.BIP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.WPRE.rBG配列番号7)、(iii)CB7.CI.hSGSHcoV1.rBG配列番号10)、(iv)CB7.CI.hSGSHcoV1-4xmiR183.rBG配列番号13)、(v)CB7.CI.BIP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.WPRE.4xmiR182.rBG配列番号40)、(vi)CB7.CI.BIP.hSGSHcov1(A482Y-E488V).vIGF2.WPRE.4xmiR183.rBG配列番号1)、又は(vii)CB7.CI.BIP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.WPRE.4xmiR182.4xmiR183.rBG(配列番号14又は配列番号14に対して少なくとも95%同一の配列)を有する。ある特定の実施形態では、カプシドは、AAVhu68カプシド、AAVhu95カプシド、又はAAVrh91カプシドである。
【0006】
更なる態様では、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載のrAAV又はベクターと、水性懸濁媒体と、を含む、組成物及び薬学的組成物である。ある特定の実施形態では、rAAV又はその組成物は、ムコ多糖症III A型(MPS IIIA又はサンフィリッポ症候群A型)の治療における使用のための、及び/又はムコ多糖症III A型の治療を必要とする対象における歩行若しくは可動性の改善、振戦の低減、けいれんの低減、姿勢の改善、若しくは視力喪失の進行の低減における使用のためのものである。
【0007】
別の態様では、MPS IIIAを有する対象を治療するか、又はMPS IIIAの症状を緩和するか、又はMPS IIIAの進行を遅延させる方法が提供される。方法は、有効量の本明細書に記載のrAAV又はベクターを、それを必要とする対象に投与することを含む。ある特定の実施形態では、懸濁液は、静脈内送達、髄腔内投与、大槽内投与、又は脳室内投与用に製剤化されている。ある特定の実施形態では、懸濁液は、脳質量1グラム当たり1×109GC~脳質量1グラム当たり約1×1013GCの用量での投与用に製剤化されている。
【0008】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、配列番号2、5、8、11、及び14から選択される発現カセットを含む、核酸分子である。ある特定の実施形態では、核酸分子は、プラスミドである。ある特定の実施形態では、発現カセット、ベクターゲノム、又はプラスミドを含む、パッケージング細胞が提供される。
【0009】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下の本発明の詳細な記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】野生型(WT)成熟SGSHコード配列を含み、内因性シグナル配列又は結合免疫グロブリンタンパク質(BiP)シグナル配列、リンカー、vIGF2ペプチド(すなわち、CI-MPRに結合するペプチド)、及び/又はリソソーム切断配列のいずれかを更に含む、様々な設計されたhSGSH構築物を示す。
【
図1B】ウェスタンブロットを使用して分析した、トランスフェクション後3日目のHEK293細胞培地中に分泌されたSGSHの発現レベルを示す。
【
図1C】正規化されたSGSH分泌レベルとしてプロットした、定量化されたSGSH発現レベル(ウェスタンブロット分析から;
図1B)を示す。
【
図2A】ウェスタンブロットを使用して分析した、トランスフェクション後4日目のHEK293細胞培地中に分泌されたSGSHの発現レベルを示す。
【
図2B】正規化されたSGSH分泌レベルとしてプロットした、定量化されたSGSH発現レベル(ウェスタンブロット分析から;
図2A)を示す。
【
図2C】BiPシグナル配列及びvIGF2ペプチドを含む構築物での使用のための、更に操作された成熟SGSHコード配列の概略図を示す。
【
図3A】試験の7日目の、AAVhu68.hSGSH(1×10
10GC又は1×10
11GC)を投与したマウスから収集した血清試料からのSGSH酵素活性を示す。
【
図3B】試験の28日目の、AAVhu68.hSGSH(1×10
11GC又は1×10
11GC)を投与したマウスから収集した血清試料からのSGSH酵素活性を示す。
【
図4A】1×10
10GC及び1×10
11GCを投与したマウスから収集したホモジネート肝臓組織試料からのSGSH酵素活性を示す。
【
図4B】1×10
10GC及び1×10
11GCを投与したマウスから収集したホモジネート脳組織試料からのSGSH酵素活性を示す。
【
図5A】1×10
10GC及び1×10
11GCの用量でAAVhu68.hSGSHを投与したマウスからの肝臓組織ホモジネート試料から分析した、SGSHの発現レベルを示す。
【
図5B】ウェスタンブロット(
図5Aに示される)によって分析した、SGSHの定量化された発現レベルを示す。
【
図6A】WPREを含むAAVhu68.hSGSHの投与後の、皮質におけるSGSHの発現及び定量化を示す。
【
図6B】WPREを含むAAVhu68.hSGSHの投与後の、小脳におけるSGSHの発現及び定量化を示す。
【
図6C】WPREを含むAAVhu68.hSGSHの投与後の、海馬におけるSGSHの発現及び定量化を示す。
【
図6D】WPREを含むAAVhu68.hSGSHの投与後の、脳幹におけるSGSHの発現及び定量化を示す。
【
図7A】1×10
10GC~1×10
11GCの用量でAAVhu68.hSGSHを投与したマウスから収集した肝臓組織試料から分析した、ng/gとしてプロットした、SGSHタンパク質濃度の結果を示す。
【
図7B】高用量のAAVhu68.hSGSH(
図7A、1×10
11GC)を投与したマウスから収集した肝臓試料に対して実施した、SGSH酵素活性(蛍光アッセイを使用して測定される)とシグナルペプチドアッセイとの間の相関を示す。
【
図8A】低用量(1×10
10)のAAVhu68.hSGSHを投与したMPS IIIA SGSH KOマウスにおける免疫蛍光及び組織化学分析を使用したLAMP1定量を介して調べた、リソソーム区画低減のエンドポイント分析を示す。群1(G1)=AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1、G2=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSHcoV1、G3=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSHcoV1-vIGF2、G4=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1、G5=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2、G6=KOマウスPBS対照、G7=WTマウスPBS対照。小脳におけるLAMP1陽性細胞の平均サイズ(μm
2)を示す。
【
図8B】低用量(1×10
10)のAAVhu68.hSGSHを投与したMPS IIIA SGSH KOマウスにおける免疫蛍光及び組織化学分析を使用したLAMP1定量を介して調べた、リソソーム区画低減のエンドポイント分析を示す。群1(G1)=AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1、G2=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSHcoV1、G3=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSHcoV1-vIGF2、G4=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1、G5=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2、G6=KOマウスPBS対照、G7=WTマウスPBS対照。小脳におけるLAMP1面積パーセントを示す。
【
図8C】低用量(1×10
10)のAAVhu68.hSGSHを投与したMPS IIIA SGSH KOマウスにおける免疫蛍光及び組織化学分析を使用したLAMP1定量を介して調べた、リソソーム区画低減のエンドポイント分析を示す。群1(G1)=AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1、G2=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSHcoV1、G3=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSHcoV1-vIGF2、G4=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1、G5=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2、G6=KOマウスPBS対照、G7=WTマウスPBS対照。脳幹におけるLAMP1陽性細胞の平均サイズ(μm
2)を示す。
【
図8D】低用量(1×10
10)のAAVhu68.hSGSHを投与したMPS IIIA SGSH KOマウスにおける免疫蛍光及び組織化学分析を使用したLAMP1定量を介して調べた、リソソーム区画低減のエンドポイント分析を示す。群1(G1)=AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1、G2=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSHcoV1、G3=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSHcoV1-vIGF2、G4=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1、G5=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2、G6=KOマウスPBS対照、G7=WTマウスPBS対照。脳幹におけるLAMP1面積パーセントを示す。
【
図8E】低用量(1×10
10)のAAVhu68.hSGSHを投与したMPS IIIA SGSH KOマウスにおける免疫蛍光及び組織化学分析を使用したLAMP1定量を介して調べた、リソソーム区画低減のエンドポイント分析を示す。群1(G1)=AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1、G2=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSHcoV1、G3=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSHcoV1-vIGF2、G4=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1、G5=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2、G6=KOマウスPBS対照、G7=WTマウスPBS対照。皮質におけるLAMP1陽性細胞の平均サイズ(μm
2)を示す。
【
図8F】低用量(1×10
10)のAAVhu68.hSGSHを投与したMPS IIIA SGSH KOマウスにおける免疫蛍光及び組織化学分析を使用したLAMP1定量を介して調べた、リソソーム区画低減のエンドポイント分析を示す。群1(G1)=AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1、G2=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSHcoV1、G3=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSHcoV1-vIGF2、G4=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1、G5=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2、G6=KOマウスPBS対照、G7=WTマウスPBS対照。皮質におけるLAMP1面積パーセントを示す。
【
図9A】高用量(1×10
11)のAAVhu68.hSGSHを投与したMPS IIIA SGSH KOマウスにおける免疫蛍光及び組織化学分析を使用したLAMP1定量を介して調べた、リソソーム区画低減のエンドポイント分析を示す。
図8と同様のG6及びG7(KO及びWT PBS対照)、G8=AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1、G11=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)、G12=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2。小脳におけるLAMP1陽性細胞の平均サイズ(μm
2)を示す。
【
図9B】高用量(1×10
11)のAAVhu68.hSGSHを投与したMPS IIIA SGSH KOマウスにおける免疫蛍光及び組織化学分析を使用したLAMP1定量を介して調べた、リソソーム区画低減のエンドポイント分析を示す。
図8と同様のG6及びG7(KO及びWT PBS対照)、G8=AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1、G11=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)、G12=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2。小脳におけるLAMP1面積パーセントを示す。
【
図9C】高用量(1×10
11)のAAVhu68.hSGSHを投与したMPS IIIA SGSH KOマウスにおける免疫蛍光及び組織化学分析を使用したLAMP1定量を介して調べた、リソソーム区画低減のエンドポイント分析を示す。
図8と同様のG6及びG7(KO及びWT PBS対照)、G8=AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1、G11=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)、G12=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2。脳幹におけるLAMP1陽性細胞の平均サイズ(μm
2)を示す。
【
図9D】高用量(1×10
11)のAAVhu68.hSGSHを投与したMPS IIIA SGSH KOマウスにおける免疫蛍光及び組織化学分析を使用したLAMP1定量を介して調べた、リソソーム区画低減のエンドポイント分析を示す。
図8と同様のG6及びG7(KO及びWT PBS対照)、G8=AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1、G11=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)、G12=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2。脳幹におけるLAMP1面積パーセントを示す。
【
図9E】高用量(1×10
11)のAAVhu68.hSGSHを投与したMPS IIIA SGSH KOマウスにおける免疫蛍光及び組織化学分析を使用したLAMP1定量を介して調べた、リソソーム区画低減のエンドポイント分析を示す。
図8と同様のG6及びG7(KO及びWT PBS対照)、G8=AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1、G11=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)、G12=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2。皮質におけるLAMP1陽性細胞の平均サイズ(μm
2)を示す。
【
図9F】高用量(1×10
11)のAAVhu68.hSGSHを投与したMPS IIIA SGSH KOマウスにおける免疫蛍光及び組織化学分析を使用したLAMP1定量を介して調べた、リソソーム区画低減のエンドポイント分析を示す。
図8と同様のG6及びG7(KO及びWT PBS対照)、G8=AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1、G11=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)、G12=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2。皮質におけるLAMP1面積パーセントを示す。
【
図9H】マン-ホイットニー試験を使用して1か月目に測定した、2~3か月齢のマウスにおける2×10
10GCの用量での、
図8A~
図8Fに定義されるG1、G2、及びG3の皮質におけるLAMP1面積パーセントを示す。
【
図9I】マン-ホイットニー試験を使用して1か月目に測定した、2~3か月齢のマウスにおける2×10
10GCの用量でのG1、G2、及びG3の小脳におけるLAMP-1面積パーセントを示す。
【
図9J】マン-ホイットニー試験を使用して1か月目に測定した、2~3か月齢のマウスにおける2×10
10GCの用量でのG1、G2、及びG3の海馬におけるLAMP-1面積パーセントを示す。
【
図10A】雄及び雌のマウスの脳におけるSGSH活性及びGAG低減を示す。活性としてプロットした、脳におけるSGSH活性(nmol/mL/時間)を示す。
【
図10B】雄及び雌のマウスの脳におけるSGSH活性及びGAG低減を示す。対数活性としてプロットした、脳におけるSGSH活性を示す。
【
図10C】雄及び雌のマウスの脳におけるSGSH活性及びGAG低減を示す。タンパク質1mg当たりのGAG(HS)ngとしてプロットした、脳におけるGAGレベルを示す。
【
図11A】雄及び雌のマウスの脊髄におけるGAG低減におけるSGSH活性を示す。活性としてプロットした、脊髄におけるSGSH活性(nmol/mL/時間)を示す。
【
図11B】雄及び雌のマウスの脊髄におけるGAG低減におけるSGSH活性を示す。対数活性としてプロットした、脊髄におけるSGSH活性を示す。
【
図11C】雄及び雌のマウスの脊髄におけるGAG低減におけるSGSH活性を示す。タンパク質1mg当たりのGAG(HS)ngとしてプロットした、脊髄におけるGAGレベルを示す。
【
図12A】雄及び雌のマウスの肝臓におけるGAG低減におけるSGSH活性を示す。活性としてプロットした、肝臓おけるSGSH活性(nmol/mL/時間)を示す。
【
図12B】雄及び雌のマウスの肝臓におけるGAG低減におけるSGSH活性を示す。対数活性としてプロットした、肝臓におけるSGSH活性を示す。
【
図12C】雄及び雌のマウスの肝臓におけるGAG低減におけるSGSH活性を示す。タンパク質1mg当たりのGAG(HS)ngとしてプロットした、肝臓におけるGAGレベルを示す。
【
図13A】ICV注射後7日目に測定した、活性としてプロットした、血清におけるSGSH活性(nmol/mL/時間)を示す。
【
図13B】ICV注射後7日目の対数活性としてプロットした、血清におけるSGSH活性(nmol/mL/時間)を示す。
【
図13C】ICV注射後1か月目に測定した活性としてプロットした、血漿におけるSGSHレベル活性(nmol/mL/時間)を示す。
【
図13D】ICV注射後1か月目に測定した対数活性としてプロットした、血漿におけるSGSHレベル活性(nmol/mL/時間)を示す。
【
図14A】タンパク質1mg当たりのpmol GM3としてプロットした、マウス脳における総GM3のレベルを示す。
【
図14B】タンパク質1mg当たりの対数スケールのpmol GM3としてポットした、マウス脳における総GM3のレベルを示す。
【
図15A】髄質、小脳、視床、前頭皮質で測定したnmol/mg/時間としてプロットした、未治療NHP脳切片におけるSGSHベースライン活性のレベルを示す。
【
図15B】脊髄頸部、胸部、腰部、及び後根神経節(DRG)頸部、腰部、及び胸部切片で測定したnmol/mg/時間としてプロットした、未治療NHP脊髄切片におけるSGSHベースライン活性のレベルを示す。
【
図15C】操作されたペプチドを含む、AAVhu68.hSGSH、AAVrh91.hSGSH、又はAAVhu68hSGSHの送達後の軸索変性を示す。後根神経節(DRG)壊死平均を示す。
【
図15D】操作されたペプチドを含む、AAVhu68.hSGSH、AAVrh91.hSGSH、又はAAVhu68hSGSHの送達後の軸索変性を示す。脊髄軸索変性平均を示す。
【
図15E】操作されたペプチドを含む、AAVhu68.hSGSH、AAVrh91.hSGSH、又はAAVhu68hSGSHの送達後の軸索変性を示す。正中神経軸索変性平均を示す。
【
図16】AAVベクターゲノム内にWT SGSH構築物、操作されたSGSH構築物、又はWPRE因子を更に含む操作されたSGSH構築物を含む、AAV.hSGSHで治療した神経球におけるAFU(800/700nm)としてプロットした、様々なMOIでのSGSH導入遺伝子発現レベルを示す。
【
図17A】治療したマウス脳におけるSGSH活性を示す。
【
図17B】脳におけるGAG(HS)レベルを示す。
【
図17C】マウス脳における総GM3を示す。これらの結果は、操作された候補へのWPREの添加が、WT構築物と同様のレベルまで発現を救済し、同等又はより良好な保管クリアランスを可能にすることを示す。
【
図18A】G1(AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1)、G2(AAVrh91.CB7.hSGSHcoV1)、及びG4(AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2.WPRE)のバックグラウンドに対して比較した、治療したNHP小脳脳組織におけるSGSH活性を示す。
【
図18B】G1(AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1)、G2(AAVrh91.CB7.hSGSHcoV1)、及びG4(AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2.WPRE)のバックグラウンドに対して比較した、治療したNHP髄質脳組織におけるSGSH活性を示す。
【
図18C】G1(AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1)、G2(AAVrh91.CB7.hSGSHcoV1)、及びG4(AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2.WPRE)のバックグラウンドに対して比較した、治療したNHP前頭皮質脳組織におけるSGSH活性を示す。
【
図18D】G1(AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1)、G2(AAVrh91.CB7.hSGSHcoV1)、及びG4(AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2.WPRE)のバックグラウンドに対して比較した、治療したNHP視床脳組織におけるSGSH活性を示す。
【
図19A】G1(AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1)、G2(AAVrh91.CB7.hSGSHcoV1)、及びG4(AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2.WPRE)のバックグラウンドに対して比較した、治療したNHP脊髄切片(SC頸部)におけるSGSH活性を示す。
【
図19B】G1(AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1)、G2(AAVrh91.CB7.hSGSHcoV1)、及びG4(AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2.WPRE)のバックグラウンドに対して比較した、治療したNHP脊髄切片(SC胸部)におけるSGSH活性を示す。
【
図19C】G1(AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1)、G2(AAVrh91.CB7.hSGSHcoV1)、及びG4(AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2.WPRE)のバックグラウンドに対して比較した、治療したNHP脊髄切片(SC腰部)におけるSGSH活性を示す。
【
図20A】治療したNHP血漿におけるSGSH活性を示す。
【
図20B】治療したCSFにおけるSGSH活性を示す。
【
図21A】NHP血漿中の総抗hSGSH IgG力価を示す。
【
図21B】CSFにおける総anto-hSGSH力価を示す。
【
図22A】左正中神経におけるNP(Ampでの神経極性)としてプロットした、神経伝導速度(NCV)の結果を示す。
【
図22B】右正中神経におけるNP(Ampでの神経極性)としてプロットした、神経伝導速度(NCV)の結果を示す。
【
図22C】左正中神経における速度としてプロットした、神経伝導速度(NCV)の結果を示す。
【
図22D】右正中神経における速度としてプロットした、神経伝導速度(NCV)の結果を示す。
【
図23】治療したNHP中の血清Nflを示し、血清NfLが、組織病理学的軸索変性の重症度と一致することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で提供されるのは、ムコ多糖症IIIa型(MPS IIIA)の治療に、及び/又はMPS IIIAの症状を緩和するのに有用な、組成物及び組成物の方法である。これらの組成物は、機能性ヒトN-スルホグリコサミンスルホヒドロラーゼ(hSGSH)をコードする核酸配列と、標的細胞において核酸配列の発現を指示する調節配列と、を含み、hSGSHコード配列が、シグナルペプチド配列及び成熟hSGSHコード配列を含み、成熟hSGSHコードが、配列番号16の配列の核酸配列、又は(a)配列番号23をコードする、配列番号16に対して少なくとも85%同一であるか、若しくは(b)配列番号23をコードする、配列番号16に対して少なくとも99%同一である、核酸配列を有する。
【0012】
一実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法は、機能性hSGSHの発現のための、核酸配列、発現カセット、ベクター、組換えウイルス、他の組成物、及び方法を含む。別の実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法は、機能性ヒトSGSHをコードする核酸配列を含む組成物を生成するための、核酸配列、発現カセット、ベクター、組換えウイルス、宿主細胞、他の組成物、及び方法を含む。更に別の実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法は、MPS IIIAの治療のために、対象に機能性hSGSHをコードする核酸配列を送達するための、核酸配列、発現カセット、ベクター、組換えウイルス、他の組成物、及び方法を含む。一実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法は、中枢神経系(CNS)に治療レベルのSGSHを提供するのに有用である。追加的に又は代替的に、本明細書に記載の組成物及び方法は、例えば、血液、肝臓、腎臓、又は末梢神経系などの末梢に治療レベルのSGSHを提供するのに有用である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに基づく方法は、SGSHタンパク質の発現を必要とする対象にそれを提供することによって、SGSHの所望の機能を回復するか、MPS IIIAに関連付けられる症状を緩和するか、MPS
IIIAに関連するバイオマーカを改善するか、又はMPS IIIAに対する他の治療(複数可)を促進するのを助ける、新たな治療選択肢を提供する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「治療レベル」という用語は、健康な対照の少なくとも約5%、約10%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、100%超、約2倍、約3倍、又は約5倍の酵素活性を意味する。SGSH酵素活性を測定するための好適なアッセイは、本明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、かかる治療レベルのSGSHは、MPS III-Aに関連する症状の緩和、MPS IIIAに関連する疾患バイオマーカの改善、又はMPS IIIA、例えば、脳脊髄液(CSF)、血清、尿、及び/若しくは他の生物学的試料中のGAGレベルに対する他の治療(複数可)の促進、神経認知低下の予防、ある特定のMPS IIIAに関連する症状の逆転、並びに/又はMPS IIIAに関連するある特定の症状の進行の予防、又はそれらの任意の組み合わせを生じ得る。
【0014】
本明細書で使用される場合、「健康な対照」は、対象又は対象からの生物学的試料を指し、対象が、MPS IIIA障害を有さない。健康な対照は、1つの対象からのもので
あり得る。一実施形態では、健康な対照は、複数の対象のプールである。
【0015】
本明細書で使用される場合、「生物学的試料」という用語は、任意の細胞、生物学的流体、又は組織を指す。本発明での使用に好適な試料としては、限定されないが、全血、白血球、線維芽細胞、血清、尿、血漿、唾液、骨髄、脳脊髄液、羊水、及び皮膚細胞が挙げられ得る。かかる試料は、生理食塩水、緩衝液、又は生理学的に許容される希釈剤で更に希釈され得る。代替的に、かかる試料は、従来の手段によって濃縮される。
【0016】
本発明の記載に関して、本明細書に記載の組成物の各々は、別の実施形態では、本発明の方法で有用であることが意図される。加えて、方法で有用な本明細書に記載の組成物の各々は、別の実施形態では、それ自体が本発明の実施形態であることも意図される。
【0017】
本明細書で別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって、及び本出願で使用されている多くの用語に対して当業者に一般的な手引きを提供する公開された文書を参照することによって、一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「疾患」、「障害」、及び「状態」は、ムコ多糖症IIIA型(サンフィリッポ症候群A型又はサンフィリッポA型疾患としても知られている、MPSIIIA、MPS IIIA、MPS IIIa)である。
【0019】
本明細書で使用される場合、「MPS IIIAに関連する症状(複数可)」又は「症状(複数可)」という用語は、MPS IIIA患者並びにMPS IIIA動物モデルで見出される症状(複数可)を指す。かかる症状としては、限定されないが、言葉の遅延;社会的相互作用及びコミュニケーションの困難性;睡眠障害;進行性の知的障害及び以前に獲得したスキルの喪失(発達退行);発作及び運動障害;大きな頭部;わずかに肥大した肝臓(軽度の肝腫大);臍(臍ヘルニア)又は下腹部(鼠径ヘルニア)の周りの柔らかい突出;低身長、硬い関節、軽度の多発性異骨症、複数の骨格異常;慢性下痢;再発性上気道感染;再発性中耳炎;聴覚不全;視力障害;非対的性中隔肥大;粗な顔貌;剛毛;頭蓋冠閉鎖(Dense calvaria);多発性異骨症;成長異常;尿中へのヘパラン硫酸排泄;脳脊髄液(CSF)、血清、尿、及び/又は任意の他の生物学的試料におけるGAG蓄積;N-アセチル-アルファ-D-グルコサミニダーゼ(NAGLU)又はN-スルホグリコサミンスルホヒドロラーゼ(IDUA)の異常な発現及び/又は酵素活性;GM2及びGM3の蓄積;リソソーム酵素における活性変化;CNSにおける遊離非エステル化コレステロールの蓄積;CNS及び骨格組織における炎症応答;過剰な発毛(多毛症);多動症;卵形の胸腰部脊椎(Ovoid thoracolumbar vertebrae);脾臓肥大;眉毛癒合;肋骨の腫大;ヘルニア;並びに不安定な歩行が挙げられる。
【0020】
本明細書で使用される「患者」又は「対象」は、臨床研究に使用される男性又は女性のヒト、イヌ、及び動物モデルを意味する。一実施形態では、これらの方法及び組成物の対象は、MPS IIIAを有すると診断されたヒトである。ある特定の実施形態では、これらの方法及び組成物のヒト対象は、出生前児、新生児、乳児、幼児、未就学児、小学生、十代、若年成人、又は成人である。更なる実施形態では、これらの方法及び組成物の対象は、小児MPS IIIA患者である。
【0021】
臨床検査及び尿試験(過剰なムコ多糖が尿中に排泄される)は、MPS疾患の診断における最初のステップである。また、MPS IIIAの決定的な診断を提供するために、血液、皮膚細胞、又は多様な細胞における酵素活性のレベルを測定する酵素アッセイが使用される。MPS IIIAに関連付けられるSGSHの変異を検出する様々な遺伝子試
験が利用可能である。例えば、ncbi.nlm.nih.gov/gtr/conditions/-C0086647/、ncbi.nlm.nih.gov/gtr/all/tests/?term=C0086647[DISCUI]を参照されたい。羊水穿刺及び絨毛試料採取を使用する出生前診断は、胎児が障害に罹患しているかどうかを検証することができる。遺伝カウンセリングは、ムコ多糖症の家族歴を有する親が、障害を引き起こす変異遺伝子を担持しているかどうかを決定するのを助けることができる。例えば、A Guide to Understanding MPS III,National MPS Society,2008,mpssociety.org/learn/diseases/mps-iii/を参照されたい。
【0022】
N-スルホグリコサミンスルホヒドロラーゼ(SGSH)
本明細書で使用される場合、「N-スルホグリコサミンスルホヒドロラーゼ」及び「SGSH」という用語は、ヘパラン-N-スルファターゼ、HNSと互換的に使用される。本発明は、組成物中で又は本明細書で提供される方法によって送達されると、所望の機能を回復するか、症状を緩和するか、MPS IIIAに関連するバイオマーカと関連付けられる症状を改善するか、又はMPS IIIAに対する他の治療(複数可)を促進する、本明細書で提供される核酸配列から発現されるSGSHタンパク質の任意のバリアント、又はその機能的断片を含む。MPSIIIに対する好適なバイオマーカの例としては、参照により本明細書に援用される、WO2017/136533に記載されているバイオマーカが挙げられる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「機能性SGSH」という用語は、完全長野生型(天然)ヒトSGSHのアミノ酸配列(配列番号36及びUniProtKB受託番号:P51688に示される)を有する酵素、それらのバリアント、保存的アミノ酸置き換えを有するそれらの変異体、それらの断片、保存的アミノ酸置き換えを有するバリアントと変異体との任意の組み合わせの完全長又は断片を指し、正常なヒトSGSHの生物学的活性レベルの少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又はほぼ同じか、又は100%超を提供する。完全長野生型(天然)ヒトSGSH(配列番号36)は、天然シグナル(又はリーダー)ペプチド及び成熟hSGSH(配列番号17)を含む。いくつかの実施形態では、機能性SGSHは、配列番号36の配列を有する野生型タンパク質を指す。ある特定の実施形態では、機能性hSGSHは、天然リーダー配列を含む。ある特定の実施形態では、機能性hSGSHは、外因性リーダー配列を含む。ある特定の実施形態では、機能性hSGSHは、外因性ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質BIPリーダー配列(BiP又はBip)である外因性リーダー配列を含む。参照により本明細書に援用される、WO2012/071422 A2及び米国特許第9,279,007号も参照されたい。ある特定の実施形態では、機能性hSGSHは、エンドサイトーシスを可能にするペプチドを更に含み、ペプチドが、CI-MPRに結合する。ある特定の実施形態では、CI-MPRに結合するペプチドは、vIGF2ペプチドである。ある特定の実施形態では、機能性hSGSHは、BIPリーダー配列である外因性リーダーペプチド配列、成熟hSGSH、及びリンカーを介して接続されたvIGF2ペプチドを含む、融合タンパク質である。ある特定の実施形態では、機能性hSGSHは、細胞においてhSGSHの安定性及び/又は発現を増強する(すなわち、アミノ残基の変化を安定させる)少なくとも1つ以上の変異を有する、成熟hSGSHを含む。ある特定の実施形態では、機能性hSGSHは、BIPリーダー配列である外因性リーダーペプチド配列、安定化アミノ酸残基変化A482Y及びE488Vを含む成熟hSGSH、並びにリンカーを介して接続されたvIGF2ペプチドを含む、融合タンパク質である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「保存的アミノ酸置き換え」又は「保存的アミノ酸置換」
は、当業者によって知られている、同様の生化学的特性(例えば、電荷、疎水性、及びサイズ)を有する異なるアミノ酸へのアミノ酸の変更、置き換え、又は置換を指す。例えば、それらの各々全体が参照により本明細書に援用される、FRENCH et al.What is a conservative substitution? Journal of Molecular Evolution,March 1983,Volume 19,Issue 2,pp 171-175及びYAMPOLSKY et
al.The Exchangeability of Amino Acids in Proteins,Genetics.2005 Aug;170(4):1459-1472も参照されたい。
【0025】
ある特定の実施形態では、機能性SGSHは、野生型におけるアラニン(Ala、A)の代わりに488番目のアミノ酸にチロシン(Tyr、Y)を含む配列番号36のアミノ酸配列からなるA482Y、及び野生型におけるグルタミン酸(Glu、E)の代わりに488番目のアミノ酸にバリン(Val、V)を含む配列番号36のアミノ酸配列からなるE488Vを含む、SGSHバリアントである。SGSHバリアントの追加の例としては、当業者に利用可能なバイオインフォマティクスツールによって予測されるものが挙げられ得る。例えば、その全体が参照により本明細書に援用される、Ugrinov KG
et al.A multiparametric computational algorithm for comprehensive assessment of
genetic mutations in mucopolysaccharidosis type IIIA(Sanfilippo syndrome)PLoS One.2015 Mar 25;10(3):e0121511.doi:10.1371/journal.pone.0121511.eCollection 2015を参照されたい。
【0026】
ある特定の実施形態では、機能性hSGSHは、配列番号19のアミノ酸配列を指し、アミノ酸配列が、外因性リーダーペプチド及び成熟hSGSHコード配列を含む。ある特定の実施形態では、成熟hSGSHは、A482Y及びE488V、例えば、配列番号23での安定化アミノ酸残基の変化及び/又は置換を更に含む。ある特定の実施形態では、機能性hSGSHは、配列番号25のアミノ酸配列を指し、機能性hSGSHが、外因性リーダーペプチド、並びに安定化アミノ酸変化A482Y及びE488Vを含む成熟hSGSHを含む。
【0027】
ある特定の実施形態では、機能性hSGSHは、配列番号21のアミノ酸配列を指し、アミノ酸配列が、外因性リーダーペプチド、成熟hSGSH、及びvIGF2ペプチドを含む。ある特定の実施形態では、機能性hSGSHは、配列番号27のアミノ酸配列を指し、アミノ酸配列が、外因性リーダーペプチド、安定化アミノ酸変化A482Y及びE488Vを含む成熟hSGSH、並びにvIGF2ペプチドを含む。
【0028】
従来の方法による、SGSHの発現及び活性レベルを測定するための多様なアッセイが存在する。例えば、それらの各々全体が参照により本明細書に援用される、ncbi_nlm_nih_gov/gtr/all/tests/?term=C0086647[DISCUI]&filter=method:12;testtype:clinical,Karpova EA et al,A fluorimetric enzyme assay for the diagnosis of Sanfilippo disease type A (MPS IIIA).J Inherit Metab Dis.1996;19(3):278-85、Tardieu M et al,Intracerebral administration of adeno-associated viral vector serotype rh.10 carrying human SGSH and SUMF1 cDNAs in chil
dren with mucopolysaccharidosis type IIIA disease:results of a phase I/II trial.Hum Gene Ther.2014 Jun;25(6):506-16.doi:10.1089/hum.2013.238.Epub 2014 May 5、Whyte LS et al,Variables influencing fluorimetric N-sulfoglucosamine sulfohydrolase(SGSH)activity measurement in brain homogenates.Mol Genet Metab Rep.2015 Oct 22;5:60-62.doi:10.1016/j.ymgmr.2015.10.005.eCollection 2015 Dec、Hopwood JJ et al.Diagnosis of Sanfilippo type A syndrome by
estimation of sulfamidase activity using a radiolabelled tetrasaccharide substrate.Clin Chim Acta.1982 Aug 18;123(3):241-50を参照されたい。
【0029】
核酸
一態様では、機能性SGSHタンパク質をコードする核酸配列が提供される。一実施形態では、核酸配列は、操作されたコード配列であり、機能性hSGSHコード配列が、シグナルペプチド配列及び成熟hSGSHコード配列を含み、成熟hSGSHコード配列が、配列番号16の配列の核酸配列、又は(a)配列番号23をコードする、配列番号16に対して少なくとも85%同一であるか、若しくは(b)配列番号23をコードする、配列番号16に対して少なくとも99%同一である、核酸配列を有する。ある特定の実施形態では、配列番号16に対して99%同一の成熟hSGSHコード配列は、配列番号22であり、配列番号23をコードする(hSGSH.A482Y.E488V)。ある特定の実施形態では、成熟hSGSHコード配列は、配列番号16である。ある特定の実施形態では、成熟hSGSHコード配列は、配列番号16に対して少なくとも約85%同一であり、配列番号23をコードする。
【0030】
一態様では、SGSHコード配列は、操作された配列である。一実施形態では、操作された配列は、対象における産生、転写、発現、又は安全性を改善するのに有用である。別の実施形態では、操作された配列は、生じる治療用組成物又は治療の有効性を増加させるのに有用である。更なる実施形態では、操作された配列は、発現される機能性SGSHタンパク質の有効性を増加させるのに有用であるが、また、機能性タンパク質を送達する治療試薬の用量を下げることを可能にして、安全性を増加させ得る。ある特定の実施形態では、hSGSHコード配列は、安定化アミノ酸変化A482Y及びE488Vを含む機能性SGSHタンパク質を操作し、それらをコードする。
【0031】
ある特定の実施形態では、機能性hSGSHコード配列は、成熟hSGSHコード配列の5’に位置するシグナルペプチド配列を含む。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドは、成熟hSGSHのアミノ末端(N末端)にある。ある特定の実施形態では、機能性hSGSHコード配列は、天然シグナルペプチド配列であるシグナルペプチド配列を含む。ある特定の実施形態では、天然シグナルペプチドは、配列番号31の核酸配列、又は配列番号32のアミノ酸配列をコードする、配列番号31に対して少なくとも約95%同一の配列を含む。
【0032】
ある特定の実施形態では、機能性hSGSHコード配列は、外因性シグナルペプチド配列であるシグナルペプチド配列を含む。ある特定の実施形態では、外因性シグナルペプチドは、BIPシグナルペプチドである。ある特定の実施形態では、BIPペプチドである外因性シグナルペプチドは、配列番号29の核酸配列、又は配列番号30のアミノ酸配列
をコードする、配列番号29に対して少なくとも約95%同一の配列を含む。
【0033】
ある特定の実施形態では、機能性hSGSHコード配列は、リンカーを介して接続されたvIGF2ペプチドを更に含む。ある特定の実施形態では、vIGF2ペプチドは、配列番号33の核酸配列、又は配列番号34をコードする、配列番号33に対して少なくとも約95%同一の配列を含む。ある特定の実施形態では、vIGF2ペプチドは、成熟hSGSHのカルボキシ末端(C末端)でリンカーを介して接続される。ある特定の実施形態では、リンカーを含むvIGF2ペプチドコード配列は、成熟hSGSHコード配列の3’に位置する。
【0034】
一態様では、機能性hSGSHコード配列は、5’から3’へ、シグナルペプチドコード配列及び成熟hSGSHコード配列を含む、操作された配列である。いくつかの実施形態では、機能性hSGSHコード配列は、5’から3’へ、シグナルペプチドコード配列、並びに安定化アミノ酸変化A48Y及びE488Vを含む成熟hSGSHコード配列を含む、操作された配列である。別の態様では、機能性hSGSHコード配列は、5’から3’へ、シグナルペプチドコード配列、成熟hSGSHコード配列、及びリンカーを含むvIGF2コード配列を含む、操作された配列である。いくつかの実施形態では、機能性hSGSHコード配列は、5’から3’へ、シグナルペプチドコード配列、安定化アミノ酸変化A48Y及びE488Vを含む成熟hSGSHコード配列、並びにリンカーを含むvIGF2コード配列を含む、操作された配列である。
【0035】
一実施形態では、提供されるのは、配列番号35の配列を含む操作された核酸配列であり、配列が、天然シグナル配列を含み、機能性hSGSHをコードする(hSGSH;配列番号36)。一実施形態では、本明細書で提供されるのは、配列番号35の操作された核酸配列、又は機能性hSGSHをコードする、配列番号35に対して少なくとも約99%同一の核酸配列である。別の実施形態では、hSGSHコード配列は、配列番号35に対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の同一性であり、配列が、機能性hSGSHをコードする。
【0036】
一実施形態では、提供されるのは、配列番号18の配列を含む操作された核酸配列であり、配列が、BIPシグナル配列を含み、機能性hSGSHをコードする(BIP.hSGSH;配列番号19)。一実施形態では、本明細書で提供されるのは、配列番号18の操作された核酸配列、又は機能性hSGSHをコードする、配列番号18に対して少なくとも約99%同一の核酸配列である。別の実施形態では、SGSHコード配列は、配列番号18に対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の同一性であり、配列が、機能性hSGSHをコードする。
【0037】
一実施形態では、提供されるのは、配列番号20の配列を含む操作された核酸配列であり、配列が、BIPシグナル配列を含み、融合hSGSHである機能性hSGSHをコードする(BIP.hSGSH.vIGF2;配列番号21)。一実施形態では、本明細書で提供されるのは、配列番号20の操作された核酸配列、又は機能性hSGSHをコードする、配列番号20に対して少なくとも約99%同一の核酸配列である。別の実施形態では、SGSHコード配列は、配列番号20に対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の同一性であり、配列が、機能性hSGSHをコードする。
【0038】
一実施形態では、提供されるのは、配列番号24の配列を含む操作された核酸配列であり、配列が、BIPシグナル配列を含み、安定化アミノ酸変化A482Y及びE488Vを含む機能性hSGSHをコードする(BIP.hSGSH.A488Y.E488V;
配列番号25)。一実施形態では、本明細書で提供されるのは、配列番号24の操作された核酸配列、又は機能性hSGSHをコードする、配列番号24に対して少なくとも約99%同一の核酸配列である。別の実施形態では、SGSHコード配列は、配列番号24に対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の同一性であり、配列が、機能性hSGSHをコードする。
【0039】
一実施形態では、提供されるのは、配列番号26の配列を含む操作された核酸配列であり、配列が、BIPシグナル配列を含み、安定化アミノ酸変化A482Y及びE488Vを含み、融合hSGSHである機能性hSGSHをコードする(BIP.hSGSH.A488Y.E488V.vIGF2;配列番号27)。一実施形態では、本明細書で提供されるのは、配列番号26の操作された核酸配列、又は機能性hSGSHをコードする、配列番号26に対して少なくとも約99%同一の核酸配列である。別の実施形態では、SGSHコード配列は、配列番号26に対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の同一性であり、配列が、機能性hSGSHをコードする。
【0040】
本明細書に記載される場合、「核酸」は、RNA、DNA、又はその修飾物であり得、一本鎖又は二本鎖であり得、例えば、目的のタンパク質をコードする核酸、オリゴヌクレオチド、核酸類似体、例えば、ペプチド核酸(PNA)、偽相補性PNA(pc-PNA)、ロック核酸(LNA)などを含む群から選択され得る。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、又はいずれかの種類のヌクレオチドの修飾形態(例えば、ペプチド核酸オリゴマー)を指す。当業者は、これらの核酸分子の機能性バリアントも、本発明の一部であることが意図されることを理解するであろう。機能性バリアントは、標準的な遺伝子コードを使用して直接的に翻訳されて、親核酸分子から翻訳されたものと同一のアミノ酸配列を提供することができる、核酸配列である。かかる核酸配列としては、例えば、限定されないが、例えば、転写リプレッサーとして作用するタンパク質をコードする核酸配列、アンチセンス分子、リボザイム、小さな阻害性核酸配列、例えば、限定されないが、RNAi、shRNAi、siRNA、マイクロRNAi(mRNAi)、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどが挙げられる。
【0041】
ある特定の実施形態では、本発明によって包含され、発現カセット及びベクターゲノムを生成するのに有用である、機能性ヒトSGSH(hSGSH)をコードする核酸分子、及び他の構築物は、酵母細胞、昆虫細胞、又はヒト細胞などの哺乳類細胞における発現のために操作され得る。方法は既知であり、以前に記載されている(例えば、WO96/09378)。野生型配列と比較して少なくとも1つの好ましくないコドンが、より好ましいコドンによって置き換えられる場合、配列は、操作されたものとみなされる。本明細書において、好ましくないコドンは、同じアミノ酸をコードする別のコドンよりも生物において使用される頻度が低いコドンであり、より好ましいコドンは、好ましくないコドンよりも生物において使用される頻度が高いコドンである。特定の生物のコドン使用頻度は、www.kazusa.jp/codonなどのコドン頻度表に見出すことができる。好ましくは、1つより多い好ましくないコドン、好ましくは、大部分又は全ての好ましくないコドンは、より好ましいコドンによって置き換えられる。好ましくは、生物において最も頻繁に使用されるコドンは、操作された配列で使用される。好ましいコドンによる置き換えは、一般に、より高い発現をもたらす。また、遺伝子コードの縮重の結果として、多数の異なる核酸分子が同じポリペプチドをコードすることができることも当業者によって理解されるであろう。また、当業者は、日常的な技術を使用して、ポリペプチドが発現される任意の特定の宿主生物のコドン使用を反映するために、核酸分子によってコードされるアミノ酸配列に影響を及ぼさないヌクレオチド置換を行ってもよいことも理解される。したがって、別途指定されない限り、「アミノ酸配列をコードする核酸配列」は、互いに縮重態様であり、同じアミノ酸配列をコードする、全てのヌクレオチド配列を含む。核酸
配列は、日常的な分子生物学技術を使用してクローニングされ得るか、又はDNA合成によってデノボで生成され得、これらは、DNA合成及び/又は分子クローニングの分野で事業を有するサービス企業(例えば、GeneArt、GenScript、Life Technologies、Eurofins)によって日常的な手順を使用して実施され得る。
【0042】
「操作された」とは、本明細書に記載の機能性SGSHタンパク質をコードする核酸配列が、組み立てられ、任意の好適な遺伝子因子、例えば、裸のDNA、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソームなどに配置され、それらは、例えば、非ウイルス送達系(例えば、RNAに基づく系、裸のDNAなど)を生成するために、又はパッケージング宿主細胞内でウイルスベクターを生成するために、及び/又は対象の宿主細胞への送達のために、その上に担持されるSGSH配列を宿主細胞へと導入することを意味する。一実施形態では、遺伝子因子は、ベクターである。一実施形態では、遺伝子因子は、プラスミドである。かかる操作された構築物を作製するために使用される方法は、核酸操作における当業者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び合成技術を含む。例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照されたい。
【0043】
核酸配列の文脈における「同一性パーセント(%)」、「配列同一性」、「配列同一性パーセント」、又は「同一のパーセント」という用語は、対応するように整列させると同じである2つの配列中の残基を指す。配列同一性の長さの比較は、ゲノムの完全長、遺伝子コード配列の完全長、又は少なくとも約500~5000個のヌクレオチドの断片にわたる場合があり、これが望ましい。しかしながら、例えば、少なくとも約9つのヌクレオチド、通常は少なくとも約20~24個のヌクレオチド、少なくとも約28~32個のヌクレオチド、少なくとも約36個以上のヌクレオチドのより小さい断片間の同一性も望ましい場合がある。
【0044】
同一性パーセントは、タンパク質の完全長ポリペプチド、約32個のアミノ酸、約330個のアミノ酸、若しくはそのペプチド断片にわたるアミノ酸配列、又は配列をコードする対応する核酸配列に対して容易に決定され得る。好適なアミノ酸断片は、少なくとも約8アミノ酸長であり得、最大で約700個であり得る。一般に、2つの異なる配列間の「同一性」、「相同性」、又は「類似性」について言及する場合、「同一性」、「相同性」、又は「類似性」は、「整列させた」配列を参照して決定される。「整列させた」配列又は「整列」とは、複数の核酸配列又はタンパク質(アミノ酸)配列を指し、参照配列と比較して、多くの場合、欠損又は追加の塩基又はアミノ酸についての補正を含有する。
【0045】
整列は、公的又は商業的に利用可能な多様な多重配列整列プログラムのうちのいずれかを使用して実施される。配列整列プログラムは、アミノ酸配列に対して利用可能であり、例えば、「Clustal X」、「Clustal Omega」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BLOCKMAKER」、「MEME」、及び「Match-Box」プログラムが挙げられる。一般に、これらのプログラムのうちのいずれかがデフォルト設定で使用されるが、当業者は、これらの設定を必要に応じて変更することができる。代替的に、当業者は、参照されるアルゴリズム及びプログラムによって提供されるように、少なくとも同一性又は整列のレベルを提供する、別のアルゴリズム又はコンピュータプログラムを利用することができる。例えば、J.D.Thomson et al,Nucl.Acids.Res.,「A comprehensive comparison of multiple sequence alignments」,27(13):2682-2690(1999)を参照されたい。
【0046】
多重配列整列プログラムはまた、核酸配列についても利用可能である。かかるプログラムの例としては、「Clustal W」、「Clustal Omega」、「CAP
Sequence Assembly」、「BLAST」、「MAP」、及び「MEME」が挙げられ、これらは、インターネット上のウェブサーバを通じてアクセス可能である。かかるプログラムの他の供給源は、当業者に既知である。代替的に、Vector NTIユーティリティも使用される。また、上に記載のプログラムに含有されるものを含む、当該技術分野で既知の多くのアルゴリズムが存在し、ヌクレオチド配列同一性を測定するために使用することができる。別の例として、ポリヌクレオチド配列は、GCGバージョン6.1のプログラムであるFasta(商標)を使用して比較され得る。Fasta(商標)は、照会及び検索配列の間の最良の重複領域の整列及び配列同一性パーセントを提供する。例えば、核酸配列間の配列同一性パーセントは、参照により本明細書に援用される、GCGバージョン6.1に提供されるような、そのデフォルトパラメータ(ワードサイズ6及びスコアリングマトリックスのNOPAM因子)を用いるFasta(商標)を使用して決定することができる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「所望される機能」は、健康な対照の少なくとも約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%のSGSH酵素活性を指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、「症状を緩和する」、「症状を改善する」という語句、又はそれらの文法的変形物は、MPS IIIAに関連する症状の逆転、MPS IIIAに関連する症状の進行の決着又は予防を指す。一実施形態では、緩和又は改善は、投与前又は使用前と比較して、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%低減される、記載の組成物(複数可)の投与又は記載の方法の使用後の患者における症状の総数を指す。別の実施形態では、緩和又は改善は、投与前又は使用前と比較して、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%低減される、記載された組成物(複数可)の投与又は記載された方法の使用後の症状の重症度又は進行を指す。
【0049】
本明細書に記載のSGSH機能性タンパク質及びSGSHコード配列における組成物は、本明細書にわたって記載される他の組成物、レジメン、態様、実施形態、及び方法に適用されることが意図されることが理解されるべきである。
【0050】
発現カセット及びベクターゲノム
本明細書では、操作された核酸の発現を指示する調節配列と操作可能に連結されたhSGSHのコード配列を含む操作された核酸配列を含む発現カセットを含む、遺伝子治療ベクターが提供される。ある特定の実施形態では、発現カセットは、含む。
【0051】
本明細書で使用される場合、「発現カセット」とは、生物学的に有用な核酸配列と、核酸配列(例えば、タンパク質、酵素、又は他の有用な遺伝子産物、mRNAなどをコードする遺伝子cDNA)及びその遺伝子産物の転写、翻訳、並びに/若しくは発現を指示又は調節する、それと操作可能に連結された調節配列と、を含む、核酸分子を指す。本明細書で使用される場合、「操作可能に連結された」配列は、核酸配列と連続又は非連続である調節配列、及びシス又はトランスで核酸配列とともに作用する調節配列の両方を含む。かかる調節配列は、典型的には、例えば、プロモータ、エンハンサ、イントロン、コザック配列、ポリアデニル化配列、及びTATAシグナルのうちの1つ以上を含む。発現カセットは、他の因子の中で、遺伝子配列の上流(5’~)の調節配列、例えば、プロモータ、エンハンサ、イントロンなどのうちの1つ以上、及びエンハンサ、又は遺伝子配列の下
流(3’~)の調節配列、例えば、ポリアデニル化部位を含む3’非翻訳領域(3’UTR)のうちの1つ以上を含有し得る。ある特定の実施形態では、調節配列は、遺伝子産物の核酸配列と操作可能に連結され、調節配列が、介在する核酸配列、すなわち、5’非翻訳領域(5’UTR)によって、遺伝子産物の核酸配列から分離されている。ある特定の実施形態では、発現カセットは、1つ以上の遺伝子産物の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、モノシストロン性又はバイシストロン性発現カセットであり得る。他の実施形態では、「導入遺伝子」という用語は、標的細胞に挿入される外因性供給源からの1つ以上のDNA配列を指す。典型的には、ウイルスベクターを生成するためのかかる発現カセットは、ウイルスゲノムのパッケージングシグナルに隣接する本明細書に記載の遺伝子産物のためのコード配列、及び本明細書に記載されるものなどの他の発現制御配列を含有する。ある特定の実施形態では、ベクターゲノムは、2つ以上の発現カセットを含有し得る。
【0052】
核酸配列又はタンパク質を説明するために使用される「外因性」という用語は、核酸又はタンパク質が、染色体又は宿主細胞に存在する位置では、天然に発生しないことを意味する。外因性核酸配列はまた、同じ宿主細胞又は対象に由来し、挿入される配列を指すが、非天然状態、例えば、異なるコピー数、又は異なる調節因子の制御下で存在する。
【0053】
核酸配列又はタンパク質を説明するために使用される「異種」という用語は、核酸又はタンパク質が、それが発現される宿主細胞又は対象とは異なる生物又は同じ生物の異なる種に由来することを意味する。タンパク質、又はプラスミド、発現カセット、若しくはベクターの核酸を参照して使用される場合、「異種」という用語は、タンパク質又は核酸が、問題のタンパク質又は核酸が天然には互いに同じ関係で見出されないタンパク質又は核酸とは別の配列若しくはサブ配列とともに存在することを示す。
【0054】
一実施形態では、調節配列は、プロモータを含む。一実施形態では、プロモータは、ニワトリβ-アクチンプロモータ(CB)である。更なる実施形態では、プロモータは、サイトメガロウイルス最初期(CMV IE)エンハンサとニワトリβ-アクチンプロモータとのハイブリッドである、CB7(CB7プロモータ)である。ある特定の実施形態では、CB7プロモータは、配列番号44の核酸配列を含む。別の実施形態では、好適なプロモータとしては、限定されないが、伸長因子1アルファ(EF1アルファ)プロモータ(例えば、Kim DW et al,Use of the human elongation factor 1 alpha promoter as a versatile and efficient expression system.Gene.1990 Jul 16;91(2):217-23を参照されたい)、シナプシン1プロモータ(例えば、Kuegler S et al,Human synapsin 1 gene promoter confers highly neuron-specific long-term transgene expression from an adenoviral vector in the adult rat brain depending on the transduced area.Gene Ther.2003 Feb;10(4):337-47を参照されたい)、神経特異的エノラーゼ(NSE)プロモータ(例えば、Kim J et al,Involvement of cholesterol-rich lipid rafts in interleukin-6-induced neuroendocrine differentiation of LNCaP prostate cancer cells.Endocrinology.2004 Feb;145(2):613-9.Epub 2003 Oct 16を参照されたい)、又はCB6プロモータ(例えば、Large-Scale Production of Adeno-Associated Viral Vector Serotype-9 Carrying the Human Survival Motor Neuron Gene,M
ol Biotechnol.2016 Jan;58(1):30-6.doi:10.1007/s12033-015-9899-5を参照されたい)が挙げられ得る。
【0055】
ある特定の実施形態では、発現制御配列(調節配列)の一部として、例えば、選択される5’ITR配列とコード配列との間に位置する追加的な又は代替的なプロモータ配列が含まれ得る。構成的プロモータ、調節可能なプロモータ[例えば、WO2011/126808及びWO2013/04943を参照されたい]、組織特異的プロモータ、又は生理学的ヒントに応答するプロモータが、本明細書に記載されるベクターに利用され得る。プロモータ(複数可)は、異なる供給源、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)最初期エンハンサ/プロモータ、SV40初期エンハンサ/プロモータ、JCポリモウイルスプロモータ、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)又は神経膠原線維酸性タンパク質(GFAP)プロモータ、単純ヘルペスウイルス(HSV-1)潜伏関連プロモータ(LAP)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)長末端反復(LTR)プロモータ、ニューロン特異的プロモータ(NSE)、血小板由来成長因子(PDGF)プロモータ、hSYN、メラニン凝集ホルモン(MCH)プロモータ、CBA、マトリックス金属タンパク質プロモータ(MPP)、及びニワトリベータ-アクチンプロモータから選択され得る。
【0056】
一実施形態では、発現カセットは、ヒト対象における発現及び分泌のために設計される。一実施形態では、発現カセットは、脳脊髄液及び脳を含む中枢神経系(CNS)における発現のために設計される。更なる実施形態では、発現カセットは、CNS及び肝臓の両方での発現に有用である。好適なプロモータとしては、限定されないが、構成的プロモータ、組織特異的プロモータ、又は誘導性/調節性プロモータが選択され得る。構成的プロモータの例は、ニワトリベータ-アクチンプロモータである。単独の、又は様々なエンハンサ因子と組み合わせた様々なニワトリベータ-アクチンプロモータが報告されている(例えば、CB7は、サイトメガロウイルスエンハンサ因子を有するニワトリベータ-アクチンプロモータであり;プロモータと、ニワトリベータアクチンの第1のエキソン及び第1のイントロンと、ウサギベータ-グロビン遺伝子のスプライスアクセプタとを含むCAGプロモータ;CBhプロモータ、SJ Gray et al,Hu Gene Ther,2011 Sep;22(9):1143-1153)。肝臓(アルブミン、Miyatake et al.,(1997)J.Virol.,71:5124 32;B型肝炎ウイルスコアプロモータ、Sandig et al.,(1996)Gene
Ther.,3:1002 9;アルファフェトプロテイン(AFP)、Arbuthnot et al.,(1996)Hum.Gene Ther.,7:1503 14)、ニューロン(ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモータ、Andersen et al.,(1993)Cell.Mol.Neurobiol.,13:503 15;ニューロフィラメント軽鎖遺伝子、Piccioli et al.,(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:5611 5;及びニューロン特異的vgf遺伝子、Piccioli et al.,(1995)Neuron,15:373 84)、並びに他の組織に組織特異的であるプロモータの例が周知である。代替的に、調節可能なプロモータが選択され得る。例えば、WO2011/126808B2を参照されたい(参照により本明細書に援用される)。
【0057】
プロモータに加えて、ベクターは、1つ以上の他の適切な転写開始配列、転写終結配列、エンハンサ配列、スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル、細胞質mRNAを安定化させる配列(例えば、WPRE)、翻訳効率を増強する配列(すなわち、コザックコンセンサス配列)、タンパク質の安定性を増強する配列、及び必要に応じて、コードされた産物の分泌を増強する配列を含有し得る。
【0058】
一実施形態では、調節配列は、エンハンサを更に含む。一実施形態では、調節配列は、
1つのエンハンサを含む。別の実施形態では、調節配列は、2つ以上の発現エンハンサを含有する。これらのエンハンサは、同じであり得るか、又は異なり得る。例えば、エンハンサとしては、アルファmic/bikエンハンサ、又はCMVエンハンサが挙げられ得る。このエンハンサは、互いに隣接して位置する2つのコピー中に存在し得る。代替的に、エンハンサの二重コピーは、1つ以上の配列によって分離され得る。
【0059】
一実施形態では、調節配列は、イントロンを更に含む。更なる実施形態では、イントロンは、ニワトリベータ-アクチンイントロンである。ある特定の実施形態では、ニワトリベータ-アクチンイントロンは、配列番号45の核酸配列を含む。ある特定の実施形態では、イントロンは、ヒトベータ-グロビンスプライスドナー及び免疫グロブリンG(IgG)スプライスアクセプタ因子からなるハイブリッドイントロンである、キメライントロン(CI)である。他の好適なイントロンとしては、例えば、WO2011/126808に記載されるものなどの、当該技術分野で既知のものが挙げられる。他の好適なイントロンとしては、当該技術分野で既知のものが挙げられ、ヒトβ-グロブリンイントロン、及び/又は市販のPromega(登録商標)イントロン、及びWO2011/126808に記載のものであり得る。
【0060】
一実施形態では、調節配列は、ポリアデニル化シグナル(ポリA)を更に含む。好適なポリA配列の例には、例えば、ウサギグロビンポリA、SV40、SV50、ウシ成長ホルモン(bGH)、ヒト成長ホルモン、及び合成ポリAが含まれる。任意選択的に、1つ以上の配列を選択して、mRNAを安定させてもよい。ある特定の実施形態では、ポリAは、ウサギベータグロビンポリA(ウサギグロビンポリa又はrBG)である。例えば、WO2014/151341を参照されたい。ある特定の実施形態では、ウサギベータグロビンポリAは、配列番号46の核酸配列を含む。ある特定の実施形態では、ヒト成長ホルモン(hGH)ポリアデニル化配列、SV40ポリA、又は合成ポリAが、発現カセット内に含まれ得る。
【0061】
ある特定の実施形態では、提供される発現カセットは、ウッドチャック(WPRE)、ヒト(HPRE)、ジリス(GPRE)、若しくはホッキョクジリス(AGSPRE)の肝炎ウイルスからの転写後調節因子などの1つ以上の発現エンハンサ、又は合成転写後調節因子を含み得る。これらの発現増強因子は、3’UTRに配置されると特に有利であり、mRNA安定性及び/又はタンパク質収率を著しく増加させることができる。ある特定の実施形態では、提供される発現カセットは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節因子(WPRE)又はそのバリアントである調節配列を含む。好適なWPRE配列は、本明細書に記載のベクターゲノム内に提供され、当該技術分野で既知である(例えば、参照により援用される、米国特許第6,136,597号、同第6,287,814号、及び同第7,419,829号に記載されるものなど)。ある特定の実施形態では、WPREは、例えば、WHX遺伝子の開始コドンに変異を含む、ウッドチャックB型肝炎ウイルスX(WHX)タンパク質の発現を排除するために変異させたバリアントである。また、それらの両方全体が参照により本明細書に援用される、Kingsman S.M.,Mitrophanous K.,&Olsen J.C.(2005),Potential
Oncogene Activity of the Woodchuck Hepatitis Post-Transcriptional Regulatory Element (Wpre).」Gene Ther.12(1):3-4及びZanta-Boussif M.A.,Charrier S.,Brice-Ouzet A.,Martin S.,Opolon P.,Thrasher A.J.,Hope T.J.,&Galy A.(2009),Validation of a Mutated Pre Sequence Allowing High and Sustained Transgene Expression While Abrogating Whv-X Protein Synthesis:Application t
o the Gene Therapy of Was,Gene Ther.16(5):605-19も参照されたい。他の実施形態では、エンハンサは、非ウイルス供給源から選択される。ある特定の実施形態では、WPRE配列は、存在しない。ある特定の実施形態では、WPREは、配列番号43の核酸配列を含む。
【0062】
ある特定の実施形態では、発現カセットは、hSGSHコード配列を含み、そのための他の調節配列を含み得る。必要な調節配列は、標的細胞内でその転写、翻訳、及び/又は発現を可能にする様式でhSGSHコード配列と操作可能に連結されている。
【0063】
ある特定の実施形態では、標的細胞は、中枢神経系細胞であり得る。ある特定の実施形態では、標的細胞は、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、グリア細胞、皮質細胞、前頭皮質細胞、大脳皮質細胞、脊髄細胞のうちの1つ以上である。ある特定の実施形態では、標的細胞は、末梢神経系(PNS)細胞、例えば、網膜細胞である。単球、Bリンパ球、Tリンパ球、NK細胞、リンパ節細胞、扁桃細胞、骨髄間葉細胞、幹細胞、骨髄幹細胞、心臓細胞、上皮細胞、食道細胞、胃細胞、胎児切断細胞、結腸細胞、直腸細胞、肝臓細胞、腎細胞、肺細胞、唾液腺細胞、甲状腺細胞、副腎細胞、乳房細胞、膵臓細胞、ランゲルハンス島細胞、胆嚢細胞、前立腺細胞、膀胱細胞、皮膚細胞、子宮細胞、子宮頸部細胞、精巣細胞、又はMPSIIIAを有さない対象における機能性SGSH酵素を発現する任意の他の細胞などの、神経系からの細胞以外の他の細胞も、標的細胞として選択され得る。
【0064】
ある特定の実施形態では、発現カセットは、CB7プロモータ-任意選択的にニワトリベータアクチンイントロン配列-hSGSHコード配列-ウサギベータ-グロビンポリAを含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、CB7プロモータ-任意選択的にニワトリベータアクチンイントロン配列-BIP外因性リーダーペプチドを含むhSGSHコード配列-ウサギベータ-グロビンポリAを含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、CB7プロモータ-任意選択的にニワトリベータアクチンイントロン配列-hSGSHコード配列に対して5’にBIP外因性リーダーペプチド及びhSGSHコード配列に対して3’にvIGF2ペプチドを含むhSGSHコード配列-ウサギベータ-グロビンポリAを含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、CB7プロモータ-任意選択的にニワトリベータアクチンイントロン配列-hSGSHコード配列に対して5’にBIP外因性リーダーペプチド及びhSGSHコード配列に対して3’にvIGF2ペプチドを含むhSGSHコード配列-任意選択的にWPRE-ウサギベータ-グロビンポリAを含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、CB7プロモータ-任意選択的にニワトリベータアクチンイントロン配列-hSGSHコード配列に対して5’にBIP外因性リーダーペプチド及びhSGSHコード配列に対して3’にvIGF2ペプチドを含むhSGSHコード配列を含み、任意選択的に、hSGSHが、安定化アミノ酸変化A482Y及びE488V(hSGSH.A482Y-E488V)-任意選択的にWPRE-ウサギベータ-グロビンポリAを含む。
【0065】
ある特定の実施形態では、発現カセットは、CB7プロモータ(配列番号44)-任意選択的にニワトリベータアクチンイントロン配列(配列番号45)-hSGSHコード配列に対して5’にBIP外因性リーダーペプチド及びhSGSHコード配列に対して3’にvIGF2ペプチドを含むhSGSHコード配列-任意選択的にWPRE(配列番号43)-ウサギベータ-グロビンポリA(配列番号46)を含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、CB7プロモータ(配列番号44)-任意選択的にニワトリベータアクチンイントロン配列(配列番号45)-hSGSHコード配列に対して5’にBIP外因性リーダーペプチド及びhSGSHコード配列に対して3’にvIGF2ペプチドを含むhSGSH(任意選択的にhSGSH.A482Y-E488V)コード配列-任意選択的にWPRE(配列番号43)-ウサギベータ-グロビンポリA(配列番号46)を含
む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、配列番号8の核酸配列を含む。
【0066】
ある特定の実施形態では、発現カセットは、配列番号4の核酸配列(CB7.CI.BIP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.rBG)、又は配列番号4に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%~少なくとも100%同一の配列を含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、配列番号11の核酸配列(CB7.CI.hSGSHcoV1.rBG)、又は配列番号11に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%~少なくとも100%同一の配列を含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、配列番号8の核酸配列(CB7.CI.BIP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.WPRE.rBG)、又は配列番号8に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%~少なくとも100%同一の配列を含む。
【0067】
本明細書に記載の発現カセットにおける組成物が、本明細書にわたって記載される他の組成物、レジメン、態様、実施形態及び方法に適用されるように意図されることを理解されたい。
【0068】
miRNA
ある特定の実施形態では、hSGSHコード配列に加えて、別の非AAVコード配列、例えば、目的のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、機能性RNA分子(例えば、miRNA、miRNA阻害剤)、又は他の遺伝子産物が含まれ得る。有用な遺伝子産物としては、miRNAが挙げられ得る。miRNA及び他の小さい干渉核酸は、標的RNA転写産物の切断/分解、又は標的メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳抑制を介して遺伝子発現を調節する。miRNAは、典型的には、最終的な19~25の非翻訳RNA産物として天然に発現される。miRNAは、標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)との配列特異的相互作用を通じてそれらの活性を呈する。これらの内因的に発現されるmiRNAは、ヘアピン前駆体を形成し、これがその後、miRNA二本鎖へと処理され、更に「成熟」一本鎖miRNA分子へと処理される。この成熟miRNAは、多タンパク質複合体miRISCを導き、これが、成熟miRNAに対する相補性に基づいて、標的mRNAの、例えば、3’UTR領域内の標的部位を同定する。
【0069】
本明細書で使用される場合、「miRNA標的配列」は、DNAプラス鎖上に位置する配列(5’から3’へ)であり、miRNAシード配列を含むmiRNA配列に対して少なくとも部分的に相補的である。miRNA標的配列は、コードされた導入遺伝子産物の非翻訳領域に対して外因性であり、導入遺伝子発現の抑制が所望される細胞で、miRNAによって特異的に標的化されるように設計される。「miR183クラスター標的配列」という用語は、miR-183を含むmiR183クラスター(代替的に、ファミリーと称される)及び-182(参照により本明細書に援用される、Dambal,S.et
al.Nucleic Acids Res 43:7173-7188,2015によって記載されている)のうちの1つ以上のメンバーに応答する、標的配列を指す。理論に束縛されることを望むものではないが、(遺伝子産物をコードする)導入遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)は、miRNAを含有する発現カセットが送達される細胞型に存在するので、3’UTR miRNA標的配列へのmiRNAの特異的結合が、mRNAのサイレンシング及び切断を生じ、それによって、miRNAを発現する細胞においてのみ、導入遺伝子の発現が低減又は排除される。
【0070】
典型的には、miRNA標的配列は、少なくとも7ヌクレオチド~約28ヌクレオチド長、少なくとも8ヌクレオチド~約28ヌクレオチド長、7ヌクレオチド~28ヌクレオチド、8ヌクレオチド~18ヌクレオチド長、約12~約28ヌクレオチド長、約20~
約26ヌクレオチド、約22ヌクレオチド、約24ヌクレオチド、又は約26ヌクレオチドであり、miRNAシード配列に相補的である少なくとも1つの連続領域(例えば、7又は8ヌクレオチド)を含有する。ある特定の実施形態では、標的配列は、miRNAシード配列と正確な相補性(100%)を有する配列、又はmiRNAシード配列といくつかのミスマッチを含む部分的な相補性を有する配列を含む。ある特定の実施形態では、標的配列は、miRNAシード配列と100%相補的である少なくとも7~8個のヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、標的配列は、miRNAシード配列と100%相補的である配列からなる。ある特定の実施形態では、標的配列は、シード配列に100%相補的である配列の複数のコピー(例えば、2、3、4つ以上のコピー)を含有する。ある特定の実施形態では、100%相補性の領域は、標的配列の長さの少なくとも30%を含む。ある特定の実施形態では、標的配列の残部は、miRNAに対して少なくとも約80%~約99%の相補性を有する。ある特定の実施形態では、DNAプラス鎖を含有する発現カセットでは、miRNA標的配列は、miRNAの逆相補体である。
【0071】
ある特定の実施形態では、発現カセットmRNA又はDNAプラス鎖の少なくとも第1及び/又は少なくとも第2のmiRNA標的配列のmiRNA標的配列は、(i)AGTGAATTCTACCAGTGCCATA(miR183、配列番号28)、(ii)AGTGTGAGTTCTACCATTGCCAAA(miR182、配列番号47)から選択される。
【0072】
ある特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、miR-183標的配列である少なくとも1つのmiRNA標的配列を含有するある特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、AGTGAATTCTACCAGTGCCATA(配列番号28)を含むmiR-183標的配列を含有する(miR-183シード配列に相補的な配列には、下線が引かれている)。ある特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、miR-183シード配列に100%相補的である配列の2つ以上のコピー(例えば、2又は3つのコピー)を含有する。ある特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、miR-183シード配列に100%相補的である配列の4つのコピーを含有する。ある特定の実施形態では、miR-183標的配列は、約7ヌクレオチド~約28ヌクレオチド長であり、miR-183シード配列に少なくとも100%相補的である少なくとも1つの領域を含む。ある特定の実施形態では、miR-183標的配列は、配列番号28に部分的な相補性を有する配列を含有し、したがって、配列番号28と整列させると、1つ以上のミスマッチが存在する。ある特定の実施形態では、miR-183標的配列は、配列番号28に整列させた場合、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のミスマッチを有する配列を含み、ミスマッチは非連続的であり得る。ある特定の実施形態では、miR-183標的配列は、100%相補的な領域を含み、その領域はまた、miR-183標的配列の長さの少なくとも30%を構成する。ある特定の実施形態では、100%相補的な領域は、miR-183シード配列に対して100%の相補性を有する配列を含む。ある特定の実施形態では、miR-183標的配列の残りは、miR-183に対して少なくとも約80%~約99%の相補性を有する。ある特定の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、切断された配列番号28、すなわち、配列番号28の5’又は3’末端のいずれか又は両方で、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチドを欠く配列を含む、miR-183標的配列を含む。ある特定の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、導入遺伝子及び1つのmiR-183標的配列を含む。更に他の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、少なくとも2、3、又は4つのmiR-183標的配列を含む。
【0073】
ある特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、miR-182標的配列である少なくとも1つのmiRNA標的配列を含有する。ある特定の実施形態では、ベ
クターゲノム又は発現カセットは、AGTGTGAGTTCTACCATTGCCAAA(配列番号47)を含むmiR-182標的配列を含有する。ある特定の実施形態では、ベクターゲノム又は発現カセットは、miR-182シード配列に対して100%相補的である配列の2つ以上のコピー(例えば、2又は3つのコピー)を含有する。ある特定の実施形態では、miR-182標的配列は、約7ヌクレオチド~約28ヌクレオチド長であり、miR-182シード配列に対して少なくとも100%相補的である少なくとも1つの領域を含む。ある特定の実施形態では、miR-182標的配列は、配列番号47に部分的な相補性を有する配列を含有し、したがって、配列番号47と整列させると、1つ以上のミスマッチが存在する。ある特定の実施形態では、miR-183標的配列は、配列番号47に整列させた場合、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のミスマッチを有する配列を含み、ミスマッチは非連続的であり得る。ある特定の実施形態では、miR-182標的配列は、100%相補的な領域を含み、その領域はまた、miR-182標的配列の長さの少なくとも30%を構成する。ある特定の実施形態では、100%相補的な領域は、miR-182シード配列に対して100%の相補性を有する配列を含む。ある特定の実施形態では、miR-182標的配列の残りは、miR-182に対して少なくとも約80%~約99%の相補性を有する。ある特定の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、切断された配列番号47、すなわち、配列番号47の5’又は3’末端のいずれか又は両方で、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチドを欠く配列を含む、miR-182標的配列を含む。ある特定の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、導入遺伝子及び1つのmiR-182標的配列を含む。更に他の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、少なくとも2、3、又は4つのmiR-182標的配列を含む。
【0074】
「タンデム反復」という用語は、2つ以上の連続するmiRNA標的配列の存在を指すために本明細書で使用される。これらのmiRNA標的配列は、連続的であり得、すなわち、一方の3’末端が、介在配列なしで、次の配列の5’末端のすぐ上流にあるように、又はその逆で、互いの後に直接的に位置し得る。別の実施形態では、miRNA標的配列のうちの2つ以上が、短いスペーサ配列によって分離されている。
【0075】
本明細書で使用される場合、「スペーサ」は、2つ以上の連続するmiRNA標的配列の間に位置する、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ヌクレオチド長の任意の選択された核酸配列である。ある特定の実施形態では、スペーサは、1~8ヌクレオチド長、2~7ヌクレオチド長、3~6ヌクレオチド長、4ヌクレオチド長、4~9ヌクレオチド、3~7ヌクレオチド、又はより長い数値である。好適には、スペーサは、非コード配列である。ある特定の実施形態では、スペーサは、4つの(4)ヌクレオチドであり得る。ある特定の実施形態では、スペーサは、GGATである。ある特定の実施形態では、スペーサは、6つの(6)ヌクレオチドである。ある特定の実施形態では、スペーサは、CACGTG又はGCATGCである。ある特定の実施形態では、スペーサは、独立して、(A)GGAT、(B)CACGTG、(C)GCATGC、(D)GCGGCCGC、(E)CGAT、(F)ATCGGT、及び/又は(G)TCACのうちの1つ以上から選択される。
【0076】
ある特定の実施形態では、タンデム反復は、2、3、4つ以上の同じmiRNA標的配列を含有する。ある特定の実施形態では、タンデム反復は、少なくとも2つの異なるmiRNA標的配列、少なくとも3つの異なるmiRNA標的配列、又は少なくとも4つの異なるmiRNA標的配列などを含有する。ある特定の実施形態では、タンデム反復は、2又は3つの同じmiRNA標的配列、及び異なる第4のmiRNA標的配列を含有し得る。
【0077】
ある特定の実施形態では、発現カセットには、少なくとも2つの異なるタンデム反復の
セットが存在し得る。例えば、3’UTRは、導入遺伝子のすぐ下流にタンデム反復、UTR配列、UTRの3’末端のより近くに2つ以上のタンデム反復を含有し得る。別の例では、5’UTRは、1つ、2つ以上のmiRNA標的配列を含有し得る。別の例では、3’は、タンデム反復を含有し得、5’UTRは、少なくとも1つのmiRNA標的配列を含有し得る。
【0078】
ある特定の実施形態では、発現カセットは、導入遺伝子の終止コドンの約0~20ヌクレオチド以内で開始する、2、3、4つ以上のタンデム反復を含有する。ある特定の実施形態では、発現カセットは、導入遺伝子の終止コドンの約0~20ヌクレオチド以内で開始する、2、3、4、5、6、7、8以上のタンデム反復を含有する。他の実施形態では、発現カセットは、導入遺伝子の終止コドンから少なくとも100~約4000ヌクレオチドでmiRNAタンデム反復を含有する。標的miRNA配列は、配列番号28及び/又は配列番号47から選択され得る。
【0079】
ある特定の実施形態では、ベクターゲノムは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は好ましくは少なくとも4つの後根神経節(drg)特異的miRNA標的配列のタンデム反復を更に含む。ある特定の実施形態では、ベクターゲノムは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、又は好ましくは少なくとも8つの後根神経節(drg)特異的miRNA標的配列のタンデム反復を更に含む。例えば、2019年12月20日に出願され、現在WO2020/132455として公表されている、PCT/US19/67872を参照されたい。また、参照により本明細書に援用される、2020年5月12日に出願された米国仮特許出願第63/023,593号、2020年6月12日に出願された米国仮特許出願第63/038,488号、2020年6月24日に出願された米国仮特許出願第63/043,562号、及び2020年6月24日に出願された米国仮特許出願第63/079,299号、2020年9月16日に出願された米国仮特許出願第63/079,299号、及び2021年2月22日に出願された米国仮特許出願第63/152,042号、並びに国際特許出願第PCT/US21/32003を参照されたい。
【0080】
ある特定の実施形態では、発現カセットは、少なくとも8つのmiRNA drg標的解除(de-targeting)配列を含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、少なくとも8つのmiRNA drg標的解除配列を含み、miR182及びmiR183を含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、少なくとも8つのmiRNA
drg標的解除配列を含み、少なくとも第1、少なくとも第2、少なくとも第3、及び少なくとも第4のmiRNAが、miR182配列であり、少なくとも第5、少なくとも第6、少なくとも第7、及び少なくとも第8のmiRNAが、miR183配列である。ある特定の実施形態では、発現カセット又はベクターゲノムは、少なくとも8つのmiRNA drg標的解除配列を含み、少なくとも第1、少なくとも第2、少なくとも第3、及び少なくとも第4のmiRNAが、miR183配列であり、少なくとも第5、少なくとも第6、少なくとも第7、及び少なくとも第8のmiRNAが、miR182配列である。
【0081】
ある特定の実施形態では、本発明は、本明細書に定義されるhSGSHコード配列、4つのmiR182配列、4つのmiR183配列、及びSGSHコード配列と操作可能に連結された他の好適な調節配列を含む、核酸分子を有する発現カセットを提供する。ある特定の実施形態では、オープンリーディングフレーム(ORF)配列(例えば、調節性制御配列と操作可能に連結されたhSGSHコード配列を含む、ORF)、及びDRG標的解除配列を含む、発現カセット。ある特定の実施形態では、DRG標的解除配列は、コード配列に対して5’に位置する。ある特定の実施形態では、DRG標的解除配列は、コード配列に対して3’に位置する。
【0082】
ある特定の実施形態では、調節配列は、CB7プロモータを含む。ある特定の実施形態では、調節配列は、1つ以上のイントロン(複数可)、1つ以上のエンハンサ(複数可)、及びポリAを含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、CB7プロモータ-任意選択的にニワトリベータアクチンイントロン配列-hSGSHコード配列-miRNA182の少なくとも4つのコピー-miR183の少なくとも4つのコピー-ウサギベータ-グロビンポリAを含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、CB7プロモータ-任意選択的にニワトリベータアクチンイントロン配列-BIP外因性リーダーペプチドを含むhSGSHコード配列-miRNA182の少なくとも4つのコピー-miR183の少なくとも4つのコピー-ウサギベータ-グロビンポリAを含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、CB7プロモータ-任意選択的にニワトリベータアクチンイントロン配列-hSGSHコード配列に対して5’にBIP外因性リーダーペプチド及びhSGSHコード配列に対して3’にvIGF2ペプチドを含むhSGSHコード配列-miR182の少なくとも4つのコピー-miR183の少なくとも4つのコピー-ウサギベータ-グロビンポリAを含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、配列番号37の核酸配列を含む。
【0083】
ある特定の実施形態では、発現カセットは、CB7プロモータ-任意選択的にニワトリベータアクチンイントロン配列-野生型コード配列であるhSGSHコード配列-miRNA182の少なくとも4つのコピー-ウサギベータ-グロビンポリAを含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、CB7プロモータ-任意選択的にニワトリベータアクチンイントロン配列-野生型コード配列であるhSGSHコード配列-miR183の少なくとも4つのコピー-ウサギベータ-グロビンポリAを含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、CB7プロモータ-任意選択的にニワトリベータアクチンイントロン配列-野生型コード配列であるhSGSHコード配列-miRNA182の少なくとも4つのコピー-miR183の少なくとも4つのコピー-ウサギベータ-グロビンポリAを含む。ある特定の実施形態では、天然シグナルペプチド及び成熟hSGSHを含む野生型hSGSHコード配列は、配列番号60を含む。
【0084】
ある特定の実施形態では、発現カセットは、配列番号2、38、41の核酸分子を指す。ある特定の実施形態では、発現カセットは、hSGSHをコードし、miRNA183の4つのタンデム反復(miR183、配列番号28)を含む、配列番号2の核酸分子を指す。ある特定の実施形態では、発現カセットは、hSGSHをコードし、miRNA182の4つのタンデム反復(miR182、配列番号48)を含む、配列番号41の核酸分子を指す。ある特定の実施形態では、発現カセットは、hSGSHをコードし、miRNA182の4つのタンデム反復(miR182、配列番号48)及びmiRNA183の4つのタンデム反復(miR183、配列番号28)を含む、配列番号38の核酸分子を指す。
【0085】
ある特定の実施形態では、発現カセットは、配列番号14の核酸配列(CB7.CI.hSGSHcoV1-4xmiR183.rBG)、又は配列番号14に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99~少なくとも100%、及び/又はそれらの間の値で同一の配列を含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、配列番号41の核酸配列(CB7.CI.BIP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.WPRE.4xmiR182.rBG)、又は配列番号41に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%~少なくとも100%、及び/又はそれらの間の値で同一の配列を含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、配列番号2の核酸配列(CB7.CI.BIP.hSGSHcov1(A482Y-E488V).vIGF2.WPRE.4xmiR183.rBG)、又は配列番号2に対して少なくとも95%
、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%~少なくとも100%、及び/又はそれらの間の値で同一の配列を含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、配列番号38の核酸配列(CB7.CI.BIP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.WPRE.4xmiR182.4xmiR183.rBG)、又は配列番号38に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99~少なくとも100%、及び/又はそれらの間の値で同一の配列を含む。
【0086】
ベクター
一態様では、本明細書で提供されるのは、機能性ヒトN-スルホグリコサミンスルホヒドロラーゼ(hSGSH)をコードする操作された核酸配列と、標的細胞において発現を指示する調節配列と、を含む、ベクターであり、hSGSHコード配列が、シグナルペプチド配列及び成熟hSGSHコード配列を含む。一実施形態では、成熟hSGSHコード配列は、配列番号16であり、アミノ酸配列配列番号17をコードする。ある特定の実施形態では、成熟hSGSHコード配列は、配列番号16に対して少なくとも約85%同一の、配列番号17のアミノ酸配列をコードする、配列である。ある特定の実施形態では、成熟hSGSHコード配列は、配列番号16に対して少なくとも約85%同一の、配列番号23のアミノ酸配列をコードする、配列である。更なる実施形態では、成熟hSGSHコード配列は、配列番号16に対して少なくとも99%同一であり、配列番号23のアミノ酸配列をコードする。更に更なる実施形態では、成熟hSGSHコード配列は、配列番号22であるか、又は配列番号23のアミノ酸配列をコードする、配列番号22に対して少なくとも約99%同一の配列である。
【0087】
ある特定の実施形態では、ベクターは、天然リーダーペプチド配列及び成熟hSGSHコード配列を含む、hSGSHコード配列を含み、hSGSH成熟コード配列が、配列番号16、若しくは配列番号16に対して少なくとも95%同一の配列、又は配列番号22、若しくは配列番号22に対して少なくとも約95%同一の配列から選択される。ある特定の実施形態では、ベクターは、外因性リーダーペプチド配列及び成熟hSGSHコード配列を含む、hSGSHコード配列を含み、hSGSH成熟コード配列が、配列番号16、若しくは配列番号16に対して少なくとも95%同一の配列、又は配列番号22、若しくは配列番号22に対して少なくとも約95%同一の配列から選択される。
【0088】
ある特定の実施形態では、ベクターは、天然リーダーペプチド配列及び成熟hSGSHコード配列を含む、hSGSHコード配列を含み、hSGSHコード配列が、配列番号35、又は配列番号35に対して少なくとも95%同一の配列である。ある特定の実施形態では、ベクターは、外因性リーダーペプチド配列及び成熟hSGSHコード配列を含む、hSGSHコード配列を含み、hSGSHコード配列が、配列番号18、又は配列番号18に対して少なくとも95%同一の配列である。ある特定の実施形態では、ベクターは、外因性リーダーペプチド配列、並びに安定化アミノ酸残基変化A482Y及びE488Vを含む成熟hSGSHコード配列を含む、hSGSHコード配列を含み、hSGSHコード配列が、配列番号24、又は配列番号24に対して少なくとも95%同一の配列である。
【0089】
更なる実施形態では、ベクターは、外因性リーダーペプチド配列、成熟hSGSHコード配列、リンカー配列、及びvIGF2ペプチド配列を含む、hSGSHコード配列を含み、hSGSHコード配列が、配列番号20、又は配列番号20に対して少なくとも95%同一の配列である。更なる実施形態では、ベクターは、外因性リーダーペプチド配列、安定化アミノ酸残基変化A482Y及びE488Vを含む成熟hSGSHコード配列、リンカー配列、並びにvIGF2ペプチド配列を含む、hSGSHコード配列を含み、hSGSHコード配列が、配列番号26、又は配列番号26に対して少なくとも95%同一の
配列である。
【0090】
本明細書で使用される「ベクター」は、核酸配列を含む生物学的部分又は化学的部分であり、当該核酸配列の複製又は発現のために、適切な標的細胞に導入され得る。ベクターの例としては、限定されないが、組換えウイルス、プラスミド、リポプレックス、ポリマーソーム、ポリプレックス、デンドリマー、細胞透過性ペプチド(CPP)コンジュゲート、磁性粒子、又はナノ粒子が挙げられる。一実施形態では、ベクターは、機能性SGSHをコードする、外因性若しくは異種核酸、又は操作された核酸を挿入され得、次いで、適切な標的細胞に導入され得る、核酸分子である。かかるベクターは、好ましくは、1つ以上の複製起点と、組換えDNAが挿入され得る1つ以上の部位とを有する。例えば、薬剤耐性遺伝子をコードするベクターは、多くの場合、ベクターを含む細胞を、含まない細胞から選択することができる手段を有する。一般的なベクターとしては、プラスミド、ウイルスゲノム、及び「人工染色体」が挙げられる。ベクターの生成、産生、特徴付け、又は定量化の従来の方法は、当業者に利用可能である。
【0091】
一実施形態では、ベクターは、非ウイルスプラスミドであり、例えば、ミセル、リポソーム、カチオン性脂質-核酸組成物、ポリグリカン組成物、並びに他のポリマー、脂質、及び/又はコレステロール系-核酸コンジュゲート、並びに本明細書に記載のものなどの他の構築物を含む、様々な組成物及びナノ粒子と結合される、その記載の発現カセット、例えば、「裸のDNA」、「裸のプラスミドDNA」、裸のRNA、及びmRNAを含む。例えば、それらの全てが参照により本明細書に援用される、X.Su et al,Mol.Pharmaceutics,2011,8(3),pp 774-787、ウェブ公開:2011年3月21日、WO2013/182683、WO2010/053572、及びWO2012/170930を参照されたい。
【0092】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載のベクターは、合成又は人工ウイルス粒子を指す、「複製欠陥ウイルス」又は「ウイルスベクター」であり、それらの中で、SGSHをコードする核酸配列を含有する発現カセットが、ウイルスカプシド又はエンベロープ内にパッケージングされ、ウイルスカプシド又はエンベロープ内にパッケージングされた任意のウイルスゲノム配列も、複製欠損である、すなわち、後代ビリオンを生成することはできないが、標的細胞に感染する能力を保持している。一実施形態では、ウイルスベクターのゲノムは、複製に必要とされる酵素をコードする遺伝子を含まない(ゲノムは、人工ゲノムの増幅及びパッケージングに必要とされるシグナルに隣接するSGSHをコードする核酸配列のみを含有する「ガットレス(gutless)」であるように操作されることができる)が、これらの遺伝子は、産生中に供給され得る。したがって、後代ビリオンによる複製及び感染は、複製に必要とされるウイルス酵素の存在下以外で生じ得ないので、遺伝子療法における使用に安全であると考えられる。
【0093】
本明細書で使用される場合、組換えウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、ボカウイルス、ハイブリッドAAV/ボカウイルス、単純ヘルペスウイルス、又はレンチウイルスである。
【0094】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、ベクター(例えば、組換えAAV)が産生されるパッケージング細胞株を指し得る。宿主細胞は、任意の手段、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、形質転換、ウイルス感染、トランスフェクション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染、及びプロトプラスト融合によって細胞に導入される外因性又は異種DNAを含有する、原核細胞又は真核細胞(例えば、ヒト、昆虫、又は酵母)であり得る。宿主細胞の例としては、限定されないが、単離された細胞、細胞培養物、Escherichia coli細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳類細
胞、非哺乳類細胞、昆虫細胞、HEK-293細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、中枢神経系の細胞、ニューロン、グリア細胞、又は幹細胞が挙げられ得る。
【0095】
本明細書で使用される場合、「標的細胞」という用語は、機能性SGSHの発現が所望される、任意の標的細胞を指す。ある特定の実施形態では、「標的細胞」という用語は、MPS IIIAを治療されている対象の細胞を指すことが意図される。標的細胞の例としては、限定されないが、肝臓細胞、腎臓細胞、中枢神経系の細胞、ニューロン、グリア細胞、及び幹細胞が挙げられ得る。ある特定の実施形態では、ベクターは、エクスビボで標的細胞に送達される。ある特定の実施形態では、ベクターは、インビボで標的細胞に送達される。
【0096】
本明細書に記載のベクターの組成物は、本明細書にわたって記載される他の組成物、レジメン、態様、実施形態、及び方法に適用されるように意図されることを理解されたい。
【0097】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)
本明細書で提供されるのは、ムコ多糖症III A型(MPS IIIA)を治療するのに有用な組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)である。rAAVは、(a)AAVカプシド、及び(b)(a)のAAVカプシド内にパッケージングされたベクターゲノムを含む。好適には、選択されたAAVカプシドは、治療される細胞を標的とする。ある特定の実施形態では、カプシドは、クレードFからのものである。しかしながら、ある特定の実施形態では、別のAAVカプシド供給源、すなわち、クレードAが選択され得る。ある特定の実施形態では、AAVカプシドは、AAVhu68カプシドである。ある特定の実施形態では、AAVカプシドは、AAVrh91カプシドである。ある特定の実施形態では、AAVカプシドは、AAVhu95カプシドである。ある特定の実施形態では、AAVカプシドは、AAVhu96カプシドである。ベクターゲノムは、AAV5’逆位末端反復(ITR)と、本明細書に記載の機能性hSGSHをコードする操作された核酸配列と、標的細胞内で機能性hSGSHの発現を指示する調節配列と、AAV3’ITRと、を含む。
【0098】
本明細書で使用される場合、「ベクターゲノム」という用語は、ウイルスカプシド、例えば、AAVカプシド内にパッケージングされ、宿主細胞又は患者の細胞に送達することが可能である、核酸分子を指す。ある特定の実施形態では、ベクターゲノムは、5’及び3’最末端に、ベクターゲノムをカプシド内にパッケージングするのに必要な末端反復配列(AAV逆位末端反復配列(ITR)を含み、それらの間に、ベクターゲノムの発現を指示する配列と操作可能に連結された本明細書に記載のMECP2遺伝子を含む発現カセットを含有する。
【0099】
ベクターのAAV配列は、典型的には、シス作用性5’及び3’逆位末端反復(ITR)配列を含む(例えば、B.J.Carter,in「Handbook of Parvoviruses」,ed.,P.Tijsser,CRC Press,pp.155 168(1990)を参照されたい)。ITR配列は、約145塩基対(bp)の長さである。好ましくは、ITRをコードする実質的に完全な配列が分子内で使用されるが、これらの配列のある程度の微小な修飾は許容される。これらのITR配列を修飾する能力は、当該技術分野の範囲内である。(例えば、Sambrook et al,「Molecular Cloning.A Laboratory Manual」,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1989)及びK.Fisher et al.,J.Virol.,70:520 532(1996)を参照されたい)。本発明で用いられるかかる分子の一例は、導入遺伝子を含有する「シス作用性」プラスミドであり、選択された導入遺伝子配列及び関連する調節因子は、5’及び3’AAV ITR配列に隣接している。一実施形態では、
ITRは、カプシドを供給するものとは異なるAAVからのものである。一実施形態では、ITR配列は、AAV2由来である。D配列及び末端解離部位(terminal resolution site)(trs)が欠失している、ΔITRと称される5’ITRの短縮されたバージョンが記載されている。ある特定の実施形態では、(例えば、プラスミドの)ベクターゲノムは、外部A因子が欠失している、130塩基対の短縮されたAAV2 ITRを含む。短縮されたITRは、内部A因子をテンプレートとして使用して、ベクターDNA増幅中に145塩基対の野生型の長さまで戻され得、カプシド内にパッケージングされてウイルス粒子が形成される。他の実施形態では、完全長AAV5’及び3’ITRが使用される。しかしながら、他のAAV供給源からのITRが選択され得る。ITRの供給源がAAV2由来であり、AAVカプシドが別のAAV供給源由来である場合、得られるベクターは、擬似型と称され得る。しかしながら、これらの因子の他の構成が好適な場合がある。
【0100】
一態様では、rAAVは、ムコ多糖症III A型(MPS IIIA)の治療における使用のためのものである。一実施形態では、rAAVは、5’AAV ITR、発現カセット、及び3’AAV ITRを含むベクターゲノムを含み、発現カセットが、機能性hSGSHをコードする操作された核酸配列を含み、機能性hSGSHコード配列が、シグナルペプチド配列及び成熟hSGSHコード配列を含み、成熟hSGSHコード配列が、配列番号16の配列の核酸配列、又は(a)配列番号23をコードする、配列番号16に対して少なくとも85%同一であるか、若しくは(b)配列番号23をコードする、配列番号16に対して少なくとも99%同一である、核酸配列を有し、hSGSHコード配列が、細胞においてhSGSHの発現を指示する調節性制御配列と操作可能に連結されている。ある特定の実施形態では、rAAVは、配列番号22であり、配列番号23をコードする、配列番号16に対して99%同一の成熟hSGSHコード配列を含む発現カセット(hSGSH.A482Y.E488V)を含む。ある特定の実施形態では、成熟hSGSHコード配列は、配列番号16である。ある特定の実施形態では、成熟hSGSHコード配列は、配列番号16に対して少なくとも約85%同一であり、配列番号23をコードする。
【0101】
ある特定の実施形態では、調節配列は、CNS特異的プロモータ、例えば、ヒトシナスピンプロモータ(hSyn)、又は構成的プロモータ、例えば、CB7、CBh、又は調節性プロモータを含む。ある特定の実施形態では、調節因子は、コザック配列、TATAシグナル、イントロン、エンハンサ、及びポリアデニル化配列のうちの1つ以上を含む。
【0102】
ある特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号3の核酸配列(CB7.CI.BIP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.rBG)、又は配列番号3に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%~少なくとも100%同一の配列を含む。ある特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号7の核酸配列(CB7.CI.BIP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.WPRE.rBG)、又は配列番号7に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%~少なくとも100%同一の配列を含む。ある特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号10の核酸配列(CB7.CI.hSGSHcoV1.rBG)、又は配列番号10に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%~少なくとも100%同一の配列を含む。ある特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号13の核酸配列(CB7.CI.hSGSHcoV1-4xmiR183.rBG)、又は配列番号13に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%~少なくとも100%同一の配列を含む。ある特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号40の核酸配列(CB7.CI.BIP.hSGSHcov1-A482Y_E488V
.vIGF2.WPRE.4xmiR182.rBG)、又は配列番号40に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%~少なくとも100%同一の配列を含む。ある特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号1の核酸配列(CB7.CI.BIP.hSGSHcov1(A482Y-E488V).vIGF2.WPRE.4xmiR183.rBG)、又は配列番号1に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%~少なくとも100%同一の配列を含む。ある特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号37の核酸配列(CB7.CI.BIP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.WPRE.4xmiR182.4xmiR183.rBG)、又は配列番号37に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%~少なくとも100%同一の配列を含む。
【0103】
ある特定の実施形態では、クレードF AAVカプシドは、AAVhu68カプシド[例えば、US2020/0056159、PCT/US21/55436、核酸配列については配列番号48及び49、アミノ酸配列については配列番号50を参照されたい]、AAVhu95カプシド[例えば、2021年10月2日に出願された米国仮出願第63/251,599号及び2022年9月30日に出願されたPCT/US2022/077315、配列番号54及び55(hu95核酸配列)、並びに配列番号56(hu95アミノ酸配列)を参照されたい、又はAAVhu96カプシド[例えば、2021年10月2日に出願された米国仮出願第63/251,599号及び2022年9月30日に出願されたPCT/US2022/077315、配列番号57及び58(hu96核酸配列)、並びに配列番号59(hu96アミノ酸配列)を参照されたい、から選択される。ある特定の実施形態では、AAVカプシドは、AAVrh91カプシド(配列番号51及び52の核酸配列;配列番号53のアミノ酸配列)などのクレードAカプシドである。参照により本明細書に援用される、2020年4月29日に出願されたPCT/US20/030266、現在公表されているWO2020/223231、及び参照により本明細書に援用される、2021年8月13日に出願された国際出願第PCT/US21/45945号を参照されたい。
【0104】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法のためのAAVカプシドは、標的細胞に基づいて選択される。ある特定の実施形態では、AAVカプシドは、CNS細胞及び/又はPNS細胞を形質導入する。ある特定の実施形態では、他のAAVカプシドが選択され得る。AAVカプシドは、cy02カプシド、rh43カプシド、AAV8カプシド、rh01カプシド、AAV9カプシド、rh8カプシド、rh10カプシド、bb01カプシド、hu37カプシド、rh02カプシド、rh20カプシド、rh39カプシド、rh64カプシド、AAV6カプシド、AAV1カプシド、hu44カプシド、hu48カプシド、cy05カプシド、hu11カプシド、hu32カプシド、pi2カプシド、又はそれらのバリエーションから選択される。ある特定の実施形態では、AAVカプシドは、AAV9カプシド、AAVhu68カプシド、hu31カプシド、hu32カプシド、又はそれらのバリエーションなどのクレードFカプシドである。例えば、2015年4月14日に公開されたWO2005/033321、WO2018/160582、及びUS2015/0079038を参照されたい(これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に援用される)。ある特定の実施形態では、AAVカプシドは、非クレードFカプシド、例えば、クレードA、B、C、D、又はEカプシドである。ある特定の実施形態では、非クレードFカプシドは、AAV1又はそのバリエーションである。ある特定の実施形態では、AAVカプシドは、神経系細胞以外の標的細胞を形質導入する。ある特定の実施形態では、AAVカプシドは、クレードAカプシド(例えば、AAV1、AAV6、AAVrh91)、クレードBカプシド(例えば、AAV2)、クレードCカプシド(例えば、hu53)、クレードDカプシド(例えば、AAV7)、又はクレード
Eカプシド(例えば、rh10)である。
【0105】
rAAVは、AAVカプシド及びベクターゲノムからなる。AAVカプシドは、vp1タンパク質の異種集団、vp2タンパク質の異種集団、及びvp3タンパク質の異種集団の集合体である。本明細書で使用される場合、vpカプシドタンパク質について言及するために使用される場合、「異種」という用語又はその任意の文法的バリエーションは、例えば、異なる修飾アミノ酸配列を有するvp1、vp2、又はvp3モノマー(タンパク質)を有する、同じではない因子からなる集団を指す。
【0106】
本明細書で使用される場合、vpカプシドタンパク質について言及するために使用される場合、「異種」という用語又はその任意の文法的バリエーションは、例えば、異なる修飾アミノ酸配列を有するvp1、vp2、又はvp3モノマー(タンパク質)を有する、同じではない因子からなる集団を指す。vp1、vp2、及びvp3タンパク質(代替的にアイソフォームと称される)に関連して使用される「異種集団」という用語は、カプシド内のvp1、vp2、及びvp3タンパク質のアミノ酸配列の違いを指す。AAVカプシドは、予測されたアミノ酸残基からの修飾を有する、vp1タンパク質内、vp2タンパク質内、及びvp3タンパク質内の亜集団を含有する。これらの亜集団は、最低限でも、ある特定の脱アミド化アスパラギン(N又はAsn)残基を含む。例えば、ある特定の亜集団は、アスパラギン-グリシン対に少なくとも1、2、3、又は4つの高度に脱アミド化されたアスパラギン(N)位置を含み、任意選択的に、他の脱アミド化アミノ酸を更に含み、脱アミド化が、アミノ酸変化及び他の任意選択的な修飾を生じる。
【0107】
ある特定の実施形態では、複数の高度脱アミド化「NG」位置を含有するAAVカプシドアイソフォーム(すなわち、VP1、VP2、VP3)の異種集団を有するAAVカプシドが提供される。ある特定の実施形態では、高度脱アミド化位置は、予測される完全長VP1アミノ酸配列を参照して、以下に示す位置にある。他の実施形態では、カプシド遺伝子は、参照される「NG」が除去されるように修飾され、変異「NG」は、別の位置に操作される。
【0108】
ある特定の実施形態では、AAVカプシドは、AAVhu68カプシド又はAAVrh91カプシドである。ある特定の実施形態では、AAVhu68カプシドは、配列番号50のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、AAVhu68カプシドは、(i)配列番号50をコードする核酸配列から産生されるAAVhu68 vp1タンパク質、AAVhu68 vp2タンパク質、及びAAVhu68 vp3タンパク質、又は(ii)AAVhu68 vp1、AAVhu68 vp2、及びAAVhu68 vp3タンパク質の異種集団を含み、AAVhu68 vp1、AAVhu68 vp2、及びAAV hu68 vp3タンパク質の亜集団が、配列番号50のアミノ酸と比較して、57、329、452、512位の各々のアスパラギン-グリシン対に少なくとも50%~100%の脱アミド化アスパラギン(N)を含み、質量分析法を使用して決定して、脱アミド化アスパラギンが、アスパラギン酸、イソアスパラギン酸、相互変換アスパラギン酸/イソアスパラギン酸、又はそれらの組み合わせへと脱アミド化される。ある特定の実施形態では、AAVhu68 vp1タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号48、又は配列番号50のアミノ酸配列をコードする、配列番号48に対して少なくとも80%~少なくとも99%同一の配列であり、任意選択的に、核酸配列が、配列番号48に対して少なくとも80%~97%同一である。ある特定の実施形態では、AAVhu68 vp1タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号49、又は配列番号50のアミノ酸配列をコードする、配列番号49に対して少なくとも80%~少なくとも99%同一の配列であり、任意選択的に、核酸配列が、配列番号49に対して少なくとも80%~97%同一である。
【0109】
本明細書で使用される場合、「標的細胞」及び「標的組織」という用語は、対象となるAAVベクターによって形質導入されることが意図される任意の細胞又は組織を指し得る。この用語は、筋肉、肝臓、肺、気道上皮、中枢神経系、ニューロン、眼(視覚細胞)、又は心臓のうちのいずれか1つ以上を指し得る。
【0110】
追加的に、本明細書では、本明細書に記載されるrAAVを産生するために有用なrAAV産生系が提供される。産生系は、(a)AAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列と、(b)ベクターゲノムと、(c)ベクターゲノムをAAVカプシドにパッケージングするのを可能にする十分なAAV rep機能及びヘルパー機能とを含む、細胞培養を含む。ある特定の実施形態では、ベクターゲノムは、配列番号3、7、10、13、40、1、又は37である。ある特定の実施形態では、細胞培養は、ヒト胎児由来腎臓293細胞培養である。ある特定の実施形態では、AAV repは、異なるAAV由来である。ある特定の実施形態では、AAV repは、AAV2由来である。ある特定の実施形態では、AAV repコード配列及びcap遺伝子は、同じ核酸分子上にあり、任意選択的に、rep配列とcap遺伝子との間にスペーサが存在する。
【0111】
AAVウイルスベクター(例えば、組換え(r)AAV)の産生での使用のために、ベクターゲノムは、パッケージング宿主細胞に送達される任意の好適なベクター、例えば、プラスミド上に担持され得る。本発明に有用なプラスミドは、とりわけ、インビトロで原核細胞、昆虫細胞、哺乳類細胞に複製及びパッケージングするのに好適であるように操作され得る。好適なトランスフェクション技術及びパッケージング宿主細胞は、既知であり、かつ/又は当業者によって容易に設計することができる。
【0112】
ある特定の実施形態では、rAAV産生に有用な核酸(例えば、プラスミド)は、5’ITR、CB7プロモータ配列、ニワトリベータアクチンイントロン、コザック配列、BIP.hSGSH.vIGF2コード配列、rBGポリA配列、及び3’ITRを含む、ベクターゲノムを含む。ある特定の実施形態では、rAAV産生に有用な核酸(例えば、プラスミド)は、5’ITR、CB7プロモータ配列、ニワトリベータアクチンイントロン、コザック配列、BIP.hSGSH.A482Y.E488V.vIGF2コード配列、rBGポリA配列、及び3’ITRを含む、ベクターゲノムを含む。ある特定の実施形態では、rAAV産生に有用な核酸(例えば、プラスミド)は、5’ITR、CB7プロモータ配列、ニワトリベータアクチンイントロン、コザック配列、BIP.hSGSH.A482Y.E488V.vIGF2コード配列、少なくとも4つのタンデム反復miR182、rBGポリA配列、及び3’ITRを含む、ベクターゲノムを含む。ある特定の実施形態では、rAAV産生に有用な核酸(例えば、プラスミド)は、5’ITR、CB7プロモータ配列、ニワトリベータアクチンイントロン、コザック配列、BIP.hSGSH.A482Y.E488V.vIGF2コード配列、少なくとも4つのタンデム反復miR183、rBGポリA配列、及び3’ITRを含む、ベクターゲノムを含む。ある特定の実施形態では、rAAV産生に有用な核酸(例えば、プラスミド)は、5’ITR、CB7プロモータ配列、ニワトリベータアクチンイントロン、コザック配列、BIP.hSGSH.A482Y.E488V.vIGF2コード配列、少なくとも4つのタンデム反復miR182、少なくとも4つのタンデム反復miR183、rBGポリA配列、及び3’ITRを含む、ベクターゲノムを含む。
【0113】
ベクターとしての使用に好適なAAVを生成し、単離するための方法は、当該技術分野で既知である。一般に、例えば、それらの各々全体が参照により本明細書に援用される、Grieger&Samulski,2005,Adeno-associated virus as a gene therapy vector:Vector development,production and clinical applications,Adv.Biochem.Engin/Biotechnol.99:11
9-145、Buning et al.,2008,Recent developments in adeno-associated virus vector technology,J.Gene Med.10:717-733、及び以下に引用される参考文献を参照されたい。本明細書で使用される場合、遺伝子療法ベクターは、本明細書に記載のrAAVを指し、患者を治療する際の使用に好適である。遺伝子をビリオンにパッケージングするために、ITRは、遺伝子を含有する核酸分子と同じ構築物において、シスで必要とされる唯一のAAV構成要素である。cap及びrep遺伝子は、トランスで供給され得る。
【0114】
ある特定の実施形態では、rAAVの製造プロセスは、それらの全体が参照により本明細書に援用される、2022年8月16日に出願された米国仮特許出願第63/371,597号及び2022年8月16日に出願された米国仮特許出願第63/371,592号に記載されている方法を含む。
【0115】
一実施形態では、選択される遺伝子因子は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染、及びプロトプラスト融合を含む任意の好適な方法によって、AAVパッケージング細胞に送達され得る。好適なAAVパッケージング細胞も作製され得る。かかる構築物を作製するために使用される方法は、核酸操作における当業者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び合成技術が挙げられる。例えば、Molecular Cloning:A
Laboratory Manual,ed.Green and Sambrook,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照されたい。
【0116】
用語「AAV中間体」又は「AAVベクター中間体」は、それにパッケージングされた所望のゲノム配列を欠失している組み立てられたrAAVカプシドを指す。これらはまた、「空の」カプシドと称され得る。かかるカプシドは、発現カセットの検出可能なゲノム配列を全く含有しないか、又は部分的にパッケージングされたのみのゲノム配列を含有する場合があり、これらは、遺伝子産物の発現を達成するには不十分である。これらの空のカプシドは、宿主細胞に目的の遺伝子を導入するには機能的ではない。
【0117】
本明細書に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)は、既知である技術を使用して生成することができる。例えば、WO2003/042397、WO2005/033321、WO2006/110689、US7588772 B2を参照されたい。かかる方法は、AAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列、機能性rep遺伝子、最低限、AAV逆位末端反復(ITR)及び導入遺伝子で構成される発現カセット、並びに発現カセットをAAVカプシドタンパク質にパッケージングするのを可能にするのに十分なヘルパー機能を含有する宿主細胞を培養することを含む。カプシドを生成する方法、そのためのコード配列、及びrAAVウイルスベクターの産生方法が記載されている。例えば、Gao,et al,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100(10),6081-6086(2003)及びUS2013/0045186A1を参照されたい。
【0118】
一実施形態では、AAVhu68、AAVrh91、AAVhu95、又はAAVhu96から選択されるカプシドを有する組換えAAVを産生するのに有用な、産生細胞培養物が提供される。かかる細胞培養物は、宿主細胞内でAAVカプシドタンパク質を発現する核酸(例えば、配列番号48又は配列番号49;AAVhu68カプシド内にパッケージングするのに好適な核酸分子、例えば、AAV ITR、並びに宿主細胞において遺伝子の発現を指示する調節配列と操作可能に連結された遺伝子をコードする非AAV核酸配列;組換えAAVhu68カプシド、又はAAVrh91カプシド(例えば、配列番号5
1又は配列番号52)、AAVhu95カプシド(例えば、配列番号54又は配列番号55)、AAVhu96カプシド(例えば、配列番号57又は配列番号58)へのベクターゲノムのパッケージングを可能にするのに十分なAAV rep機能及びアデノウイルスヘルパー機能を含有する、ベクターゲノムを含有する。一実施形態では、細胞培養物は、哺乳類細胞(例えば、特に、ヒト胚性腎臓293細胞)又は昆虫細胞(例えば、Spodoptera frugiperda(Sf9)細胞)で構成される。ある特定の実施形態では、バキュロウイルスは、組換えAAVhu68、AAVrh91、AAVhu95、又はAAVhu96カプシド内にベクターゲノムをパッケージングするのに必要なヘルパー機能を提供する。
【0119】
任意選択的に、rep機能は、ITRの供給源を補完するように選択されたAAV2以外のAAVによって提供される。
【0120】
一実施形態では、細胞は、好適な細胞培養物(例えば、HEK293又はSf9)又は懸濁液中で製造される。本明細書に記載の遺伝子療法ベクターを製造するための方法としては、遺伝子療法ベクターの産生に使用されるプラスミドDNAの生成、ベクターの生成、及びベクターの精製などの、当該技術分野で周知の方法が挙げられる。いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクターは、AAVベクターであり、産生されたプラスミドは、AAVベクターゲノム及び目的の遺伝子をコードするAAVシス-プラスミド、AAVのrep及びcap遺伝子を含有するAAVトランス-プラスミド、及びアデノウイルスヘルパープラスミドである。ベクター生成プロセスは、細胞培養の開始、細胞の継代、細胞の播種、プラスミドDNAによる細胞のトランスフェクション、トランスフェクション後の無血清培地への培地交換、並びにベクター含有細胞及び培養培地の収集などの方法ステップを含み得る。収集されたベクター含有細胞及び培養培地は、本明細書では、粗細胞採取物と称される。更に別の系では、遺伝子療法ベクターは、バキュロウイルスに基づくベクターによる感染によって、昆虫細胞に導入される。これらの産生系に関する考察については、一般に、例えば、その各々の内容全体が参照により本明細書に援用される、Zhang et al.,2009,Adenovirus-adeno-associated virus hybrid for large-scale recombinant adeno-associated virus production,Human Gene Therapy 20:922-929を参照されたい。これらの及び他のAAV産生系を作製及び使用する方法は、以下の米国特許にも記載されており、各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される:米国特許第5,139,941号、同第5,741,683号、同第6,057,152号、同第6,204,059号、同第6,268,213号、同第6,491,907号、同第6,660,514号、同第6,951,753号、同第7,094,604号、同第7,172,893号、同第7,201,898号、同第7,229,823号、及び同第7,439,065号。
【0121】
粗細胞採取物は、その後、ベクター収集物の濃縮、ベクター収集物の透析濾過、ベクター収集物の顕微溶液化、ベクター収集物のヌクレアーゼ消化、顕微溶液化された中間体の濾過、クロマトグラフィーによる粗精製、超遠心分離による粗精製、タンジェンシャルフロー濾過による緩衝液交換、並びに/又はバルクベクターを調製するための製剤化及び濾過を含む、更なる処理を施され得る。ベクター薬物産生物を精製し、空のカプシドを除去するために、親和性クロマトグラフィー精製、続いてアニオン交換樹脂クロマトグラフィーが使用される。これらの方法は、参照により本明細書に援用される、「Scalable Purification Method for AAV9」と題された、2016年12月9に出願されたWO2017/160360により詳細に記載されている。AAV8については2016年12月9日に出願されたWO2017/100676、及びrh10については、2016年12月9日に出願され、また2015年12月11日に出願された「Scalable Purification Method for A
AVrh10」と題されたWO2017/100704、及びAAV1については2015年12月11日に出願された「Scalable Purification Method for AAV1」に対して2016年12月9日に出願されたWO2017/100674の精製方法が全て、参照により本明細書に援用される。他の好適な方法が選択されてもよい。
【0122】
空の粒子及び完全粒子の含有量を算出するために、選択された試料(例えば、本明細書の実施例では、イオジキサノール勾配により精製された調製物、ゲノムコピー(GC)の数=粒子の数)についてのVP3バンド体積が、ロードされたGC粒子に対してプロットされる。生じた線形方程式(y=mx+c)を使用して、試験物品ピークのバンド体積中の粒子の数を算出する。次いで、充填した20μL当たりの粒子の数(pt)に50を乗算して粒子(pt)/mLを得る。pt/mLをGC/mLで除算することによって、ゲノムコピーに対する粒子の比(pt/GC)を得る。pt/mL-GC/mLによって、空のpt/mLを得る。空のpt/mLをpt/mLで除算し、100を乗算することによって、空の粒子のパーセンテージを得る。
【0123】
一般に、空のカプシド及びパッケージングされたゲノムを含むAAVベクター粒子をアッセイするための方法は、当該技術分野で既知である。例えば、Grimm et al.,Gene Therapy(1999)6:1322-1330、Sommer et al.,Molec.Ther.(2003)7:122-128を参照されたい。変性カプシドについて試験するために、方法は、治療したAAVストックに、3つのカプシドタンパク質を分離することが可能な任意のゲルからなるSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(例えば、緩衝液中に3~8%のトリス酢酸塩を含有する勾配ゲル)を施すことと、次いで、試料材料が分離されるまでゲルを流すことと、ナイロン又はニトロセルロース膜、好ましくはナイロンの上でゲルをブロッティングすることと、を含む。次いで、抗-AAVカプシド抗体は、変性したカプシドタンパク質、好ましくは、抗-AAVカプシドモノクローナル抗体、最も好ましくは、B1抗-AAV-2モノクローナル抗体に結合する主要な抗体として使用される(Wobus et al.,J.Virol.(2000)74:9281-9293)。次いで、一次抗体に結合し、一次抗体、より好ましくは、抗体に共有結合した検出分子を含有する抗IgG抗体、最も好ましくは、西洋ワサビペルオキシダーゼに共有結合したヒツジ抗マウスIgG抗体との結合を検出するための手段を含有する、二次抗体が使用される。一次抗体と二次抗体との間の結合を半定量的に決定するために、結合を検出するための方法、好ましくは、放射性アイソトープ放射、電磁放射、又は比色変化を検出することができる検出方法、最も好ましくは、化学発光検出キットが使用される。例えば、SDS-PAGEでは、カラムフラクションから試料を取り、還元剤(例えば、DTT)を含有するSDS-PAGE充填緩衝液中で加熱することができ、カプシドタンパク質を、プレキャスト勾配ポリアクリルアミドゲル(例えば、Novex)中で分解した。SilverXpress(Invitrogen、CA)を製造業者の指示書に従って使用して、又は他の好適な染色方法、すなわち、SYPROルビー若しくはクマシー染色を使用して、銀染色が実施され得る。一実施形態では、カラムフラクション中のAAVベクターゲノム(vg)の濃度は、定量的リアルタイムPCR(Q-PCR)によって測定することができる。試料を希釈し、DNase I(又は別の好適なヌクレアーゼ)で消化させて、外因性DNAを除去する。ヌクレアーゼの不活性化後、試料を更に希釈し、プライマー及びプライマー間のDNA配列に特異的なTaqMan(商標)蛍光発生プローブを使用して増幅する。規定レベルの蛍光(閾値サイクル、Ct)に到達するのに必要とされるサイクル数は、Applied Biosystems Prism 7700配列検出システム上で各試料について測定される。AAVベクター内に含有されるものと同一の配列を含有するプラスミドDNAを用いて、Q-PCR反応における標準曲線を生成する。試料から得たサイクル閾値(Ct)の値を使用して、プラスミド標準曲線のCt値に対してそれを正規化することによって、ベクターゲノム
力価を決定する。デジタルPCRに基づくエンドポイントアッセイも使用することができる。
【0124】
一態様では、広域スペクトルセリンプロテアーゼ、例えば、プロテアーゼK(例えば、Qiagenから商業的に入手可能なものなど)を利用する最適化q-PCR方法が使用される。より具体的には、最適化qPCRゲノム力価アッセイは、DNase I消化の後に、試料をプロテイナーゼK緩衝液で希釈し、プロテイナーゼKで処理し、続いて熱不活性化することを除いて、標準的なアッセイと同様である。好適には、試料サイズと等しい量のプロテイナーゼK緩衝液で、試料を希釈する。プロテイナーゼK緩衝液は、2倍以上に濃縮されてもよい。典型的に、プロテイナーゼK処理は、約0.2mg/mLであるが、0.1mg/mL~約1mg/mLに変動し得る。処理ステップは、一般に、約55℃で約15分間、実施されるが、より低い温度(例えば、約37℃~約50℃)でより長時間(例えば、約20分間~約30分間)、又はより高い温度(例えば、最高約60℃)でより短時間(例えば、約5~10分間)実施され得る。同様に、熱失活は、一般に、約95℃で約15分間であるが、温度は低下され得(例えば、約70~約90℃)、時間は延長され得る(例えば、約20分間~約30分間)。次いで、試料は希釈され(例えば、1000倍)、標準的なアッセイで記載されるように、TaqMan分析に供される。
【0125】
追加的に又は代替的に、ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)を使用してもよい。例えば、ddPCRによる一本鎖及び自己相補性AAVベクターゲノム力価を決定するための方法が記載されている。例えば、M.Lock et al,Hu Gene Therapy Methods,Hum Gene Ther Methods.2014 Apr;25(2):115-25.doi:10.1089/hgtb.2013.131.Epub 2014 Feb 14を参照されたい。
【0126】
簡潔には、パッケージングされたゲノム配列を有するrAAVhu68(又はAAVrh91、AAVhu95、又はAAVhu96)粒子をゲノム欠損AAVhu68(又はAAVrh91、AAVhu95、又はAAVhu96)中間体から分離するための方法は、組換えAAVhu68(又はAAVrh91)ウイルス粒子及びAAVhu68(又はAAVrh91、又はAVhu95、又はAAVhu96)カプシド中間体を含む懸濁液に高速液体クロマトグラフィーを施すことを含み、AAVhu68(又はAAVrh91、又はAAVhu95、又はAAVhu96)ウイルス粒子及びAAVhu68中間体を、約10.2(又はAAVrh91では約9.8)のpHで平衡化された強アニオン交換樹脂に結合させ、約260ナノメートル(nm)及び約280nmで紫外線吸光度について溶出液を監視しながら、塩勾配を施す。rAAVhu68及びAAVrh91にはあまり最適ではないが、pHは、約10~10.4の範囲であり得る。この方法では、AAV完全カプシドは、A260/A280の比が感染ポイントに到達すると溶出する画分から収集される。一例では、親和性クロマトグラフィーステップでは、透析濾過した生成物を、AAV血清型を効率的に捕捉する親和性樹脂(Life Technologies)に適用してもよい。これらのイオン性条件下では、かなりのパーセンテージの残留細胞DNA及びタンパク質が、カラムを通って流れながら、AAV粒子が、効率的に捕捉される。
【0127】
rAAV.hSGSH(例えば、rAAV.BIP.hSGSH又はrAAV.BIP.hSGSH.vIGF2、又はrAAV.BIP.hSGSH.A482Y.E488V又はrAAV.BIP.hSGSH.A482Y.E488V.vIGF2)は、好適な生理学的に適合する組成物(例えば、緩衝生理食塩水)に懸濁される。この組成物は、保管のために凍結され、後に解凍され、任意選択的に、好適な希釈剤で希釈され得る。代替的に、ベクターは、凍結及び解凍ステップを進めることなく患者への送達に好適な組成物として調製され得る。
【0128】
本明細書で使用される場合、AAVの群に関連する「クレード」という用語は、AAV
vp1アミノ酸配列の整列に基づいて、(少なくとも1000の複製物のうちの)少なくとも75%のブートストラップ値及び0.05以下のポアソン補正距離測定値による隣接結合(Neighbor-Joining)アルゴリズムを使用して決定して、互いに系統的に関連するAAVの群を指す。隣接結合アルゴリズムは、文献に記載されている。例えば、M.Nei and S.Kumar,Molecular Evolution and Phylogenetics(Oxford University Press,New York(2000)を参照されたい。このアルゴリズムを実装するために使用することができるコンピュータプログラムが利用可能である。例えば、MEGA
v2.1プログラムは、修正されたNei-Gojobori法を実装している。これらの技術及びコンピュータプログラム、並びにAAV vp1カプシドタンパク質の配列を使用して、当業者は、選択されたAAVが、本明細書で同定されるクレードのうちの1つに含有されるか、別のクレードに含有されるか、又はこれらのクレード外にあるかを容易に決定することができる。例えば、G Gao,et al,J Virol,2004 Jun;78(10):6381-6388(これは、クレードA、B、C、D、E及びFを同定し、かつ新規AAVの核酸配列、GenBank受託番号AY530553~AY530629を提供する)を参照されたい。また、WO2005/033321も参照されたい。
【0129】
本明細書で使用される場合、「NAb力価」という用語は、その標的化されたエピトープ(例えば、AAV)の生理学的効果を中和する中和抗体(例えば、抗AAV Nab)がどれだけ産生されるかの測定値である。抗AAV NAb力価は、例えば、その全体が参照により本明細書に援用される、Calcedo,R.,et al.,Worldwide Epidemiology of Neutralizing Antibodies to Adeno-Associated Viruses.Journal of Infectious Diseases,2009.199(3):p.381-390に記載されているように、測定され得る。
【0130】
略称「sc」は、自己相補性(self-complementary)を指す。「自己相補性AAV」は、組換えAAV核酸配列によって担持されるコード領域が、分子内二本鎖DNA鋳型を形成するように設計されている構築物を指す。感染の際、第2の鎖の細胞介在性の合成を待つのではなく、scAAVの2つの相補性の半分が会合して、即時の複製及び転写が可能な1つの二本鎖DNA(dsDNA)ユニットを形成する。例えば、D M McCarty et al,「Self-complementary recombinant adeno-associated virus(scAAV)vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis」,Gene Therapy,(August 2001),Vol 8,Number 16,Pages 1248-1254.を参照されたい。自己相補的なAAVは、例えば、それらの各々全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第6,596,535号、同第7,125,717号、及び同第7,456,683号に記載されている。
【0131】
「複製欠損ウイルス」又は「ウイルスベクター」は、合成又は人工ウイルス粒子を指し、目的の遺伝子を含有する発現カセットは、ウイルスカプシド又はエンベロープ中にパッケージングされ、ウイルスカプシド又はエンベロープ内にパッケージングされた任意のウイルスゲノム配列は、複製欠損である、すなわち、それらは、後代ビリオンを産生することができないが、標的細胞に感染する能力を保持することができる。一実施形態では、ウイルスベクターのゲノムは、複製に必要とされる酵素をコードする遺伝子を含まないが(ゲノムは、人工ゲノムの増幅及びパッケージングに必要とされるシグナルに隣接する目的
の遺伝子のみを含有する「ガットレス(gutless)」であるように操作されることができる)、これらの遺伝子は、産生中に供給され得る。したがって、後代ビリオンによる複製及び感染は、複製に必要とされるウイルス酵素の存在下以外で生じ得ないので、遺伝子療法における使用に安全であると考えられる。
【0132】
本明細書で使用される場合、「rAAV」及び「人工AAV」という用語は互換的に使用され、限定されないが、カプシドタンパク質及びそこにパッケージングされるベクターゲノムを含むAAVを意味し、ベクターゲノムは、AAVとは異種の核酸を含む。一実施形態では、カプシドタンパク質は、非天然に存在するプシドである。かかる人工カプシドは、選択されたAAV配列(例えば、vp1カプシドタンパク質の断片)を、同じAAVの非隣接部分である異なる選択されたAAVからか、非AAVウイルス供給源からか、又は非ウイルス供給源から得ることができる異種配列と組み合わせて使用して、任意の好適な技術によって生成され得る。人工AAVは、限定されないが、擬似型AAVカプシド、キメラAAVカプシド、組換えAAVカプシド、又は「ヒト化」AAVカプシドであり得る。1つのAAVのカプシドが異種カプシドタンパク質に置き換えられている擬似型ベクターは、本発明に有用である。一実施形態では、AAV2/5及びAAV2/8は、例示的な擬似型ベクターである。選択される遺伝子因子は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム送達、膜融合技術、高速DNAコーティングペレット、ウイルス感染、及びプロトプラスト融合を含む任意の好適な方法によって送達され得る。かかる構築物を作製するために使用される方法は、核酸操作における当業者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学、及び合成技術が挙げられる。例えば、Green and Sambrook, Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(2012)を参照されたい。
【0133】
多くの場合、rAAV粒子は、DNase耐性として参照される。しかしながら、このエンドヌクレアーゼ(DNase)に加えて、他のエンド-及びエキソ-ヌクレアーゼが、汚染核酸を除去するために本明細書に記載の精製ステップにおいて使用され得る。かかるヌクレアーゼは、一本鎖DNA及び/又は二本鎖DNA、及びRNAを分解するために選択され得る。かかるステップは、単一ヌクレアーゼ、又は異なる標的に指向されたヌクレアーゼの混合物を含有し得、エンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼであり得る。
【0134】
「ヌクレアーゼ耐性」という用語は、AAVカプシドが、宿主細胞に遺伝子を送達するように設計された発現カセットの周りで完全に構築されていることを示し、産生プロセスから存在し得る汚染核酸を除去するように設計されたヌクレアーゼインキュベーションステップの間の分解(消化)から、これらのパッケージングされたゲノム配列を保護する。
【0135】
本明細書で使用される場合、vpカプシドタンパク質について言及するために使用される場合、「異種」という用語又はその任意の文法的バリエーションは、例えば、異なる修飾アミノ酸配列を有するvp1、vp2、又はvp3モノマー(タンパク質)を有する、同じではない因子からなる集団を指す。
【0136】
vp1、vp2、及びvp3タンパク質(代替的にアイソフォームと称される)に関連して使用される「異種」という用語は、カプシド内のvp1、vp2、及びvp3タンパク質のアミノ酸配列の違いを指す。AAVカプシドは、予測されたアミノ酸残基の修飾を有する、vp1タンパク質内、vp2タンパク質内、及びvp3タンパク質内に亜集団を含有する。これらの亜集団は、最低限でも、ある特定の脱アミド化アスパラギン(N又はAsn)残基を含む。例えば、ある特定の亜集団は、アスパラギン-グリシン対に少なくとも1、2、3、又は4つの高度に脱アミド化されたアスパラギン(N)位置を含み、任意選択的に、他の脱アミド化アミノ酸を更に含み、脱アミド化が、アミノ酸変化及び他の
任意選択的な修飾を生じる。
【0137】
本明細書で使用される場合、vpタンパク質の「亜集団」は、別途指定されない限り、少なくとも1つの定義された共通の特徴を有し、少なくとも1つの群メンバーから、参照群の全てのメンバーよりも少ないメンバーからなるvpタンパク質の群を指す。例えば、vp1タンパク質の「亜集団」は、別途指定されない限り、組み立てられたAAVカプシドにおいて、少なくとも1つのvp1タンパク質であり、全てのvp1タンパク質よりも少ない。vp3の「亜集団」は、別途指定されない限り、組み立てられたAAVカプシドにおいて、1つのvp3タンパク質から、全てのvp3タンパク質よりも少なくてもよい。例えば、組み立てられたAAVカプシドにおいて、vp1タンパク質は、vpタンパク質の亜集団であり得、vp2タンパク質は、vpタンパク質の別の亜集団であり得、vp3はなお、vpタンパク質の更なる亜集団である。別の例では、vp1、vp2、及びvp3タンパク質は、例えば、少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つの高度脱アミド化アスパラギン、例えば、アスパラギン-グリシン対で異なる修飾を有する亜集団を含有し得る。
【0138】
薬学的組成物
一態様では、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載のベクターを製剤緩衝液中に含む薬学的組成物である。一実施形態では、提供されるのは、本明細書に記載のrAAVを製剤緩衝液中に含む薬学的組成物である。一実施形態では、rAAVは、約1×109ゲノムコピー(GC)/mL~約1×1014GC/mLで製剤化されている。更なる実施形態では、rAAVは、約3×109GC/mL~約3×1013GC/mLで製剤化されている。更に更なる実施形態では、rAAVは、約1×109GC/mL~約1×1013GC/mLで製剤化されている。一実施形態では、rAAVは、少なくとも約1×1011GC/mLで製剤化されている。
【0139】
また、本明細書に記載のrAAV又はベクターと、水性懸濁媒体とを含む、組成物も本明細書で提供される。ある特定の実施形態では、懸濁液は、静脈内送達、髄腔内投与、又は脳室内投与用に製剤化されている。一態様では、組成物は、少なくとも1つのrAAVストック、及び任意選択的な担体、賦形剤、及び/又は防腐剤を含有する。本明細書で使用される場合、rAAVの「ストック」は、rAAVの集団を指す。脱アミド化に起因するカプシドタンパク質の不均一性にもかかわらず、ストック内のrAAVは、同一のベクターゲノムを共有することが予想される。ストックは、例えば、選択されたAAVカプシドタンパク質及び選択された産生系に特徴的な不均一な脱アミド化パターンを有するカプシドを有するrAAVを含み得る。ストックは、単一の産生系から産生され得るか、又は産生系の複数の実行からプールされ得る。様々な産生系としては、限定されないが、本明細書に記載されるものが挙げられ、選択され得る。
【0140】
本明細書で使用される場合、「担体」は、任意の及び全ての溶媒、分散媒体、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁物、コロイドなどを含む。薬学的活性物質のためのかかる媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。補充的活性成分もまた、組成物中に組み込まれ得る。「薬学的に許容される」という語句は、宿主に投与されると、アレルギー又は同様の有害反応を生じない分子実体及び組成物を指す。本発明の組成物を好適な宿主細胞に導入するために、リポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、小胞などの送達ビヒクルが使用され得る。特に、rAAVベクター送達ベクターゲノムは、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフィア、又はナノ粒子などのいずれかに封入された送達ために製剤化され得る。
【0141】
一実施形態では、組成物は、対象への送達に好適な最終製剤を含み、例えば、生理的に
適合するpH及び塩濃度まで緩衝された水性液体懸濁液である。任意選択的に、1つ以上の界面活性剤が製剤中に存在する。別の実施形態では、組成物は、対象への投与のために希釈される濃縮物として輸送され得る。他の実施形態では、組成物は、凍結乾燥され、投与時に再構築されてもよい。
【0142】
好適な界面活性剤、又は界面活性剤の組み合わせは、非毒性である非イオン性界面活性剤の中から選択されてもよい。一実施形態では、例えば、中性pHを有し、平均分子量8400を有するPoloxamer188としても知られているPluronic(登録商標)F68[BASF]などの、一級ヒドロキシル基末端の二官能ブロックコポリマー界面活性剤が選択される。他の界面活性剤及び他のポロキサマー、すなわち、ポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖に隣接するポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中心疎水性鎖からなる非イオン性トリブロックコポリマー、SOLUTOL HS15(マクロゴール-15ヒドロキシステアラート)、LABRASOL(ポリオキシカプリン酸グリセリド)、ポリオキシ10オレイルエーテル、TWEEN(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、エタノール、及びポリエチレングリコールが選択され得る。一実施形態では、製剤は、ポロキサマーを含有する。これらのコポリマーは、一般的に、文字「P」(ポロキサマーの場合)の後に3桁の数字で命名され、最初の2桁×100は、ポリオキシプロピレンコアのおおよその分子質量を与え、最後の1桁×10は、ポリオキシエチレン含有量のパーセンテージを与える。一実施形態では、ポロキサマー188が選択される。一実施形態では、界面活性剤は、懸濁液の最大約0.0005%~約0.001%(w/w%、重量比に基づく)の量で存在し得る。別の実施形態では、界面活性剤は、懸濁液の最大約0.0005%~約0.001%(v/v%、体積比に基づく)の量で存在し得る。更に別の実施形態では、界面活性剤は、懸濁液の最大約0.0005%~約0.001%の量で存在し、ここで、n%は、懸濁液100mL当たりのnグラムを示す。
【0143】
別の実施形態では、組成物は、担体、希釈剤、賦形剤及び/又はアジュバントを含む。好適な担体は、導入ウイルスが指向される適応症の観点で、当業者によって容易に選択され得る。例えば、1つの好適な担体としては、生理食塩水が挙げられ、様々な緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)とともに製剤化され得る。他の例示的な担体としては、滅菌生理食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油、及び水が挙げられる。緩衝液/担体は、rAAVが注入チューブに粘着するのを防ぐが、インビボでのrAAV結合活性を妨害しない構成要素を含むべきである。好適な界面活性剤、又は界面活性剤の組み合わせは、非毒性である非イオン性界面活性剤の中から選択されてもよい。一実施形態では、例えば、中性pHを有し、平均分子量8400を有するポロキサマー188(商品名Pluronic(登録商標)F68[BASF]、Lutrol(登録商標)F68、Synperonic(登録商標)F68、Kolliphor(登録商標)P188としても知られている)などの、末端が一級ヒドロキシル基の二機能性ブロックコポリマー界面活性剤が選択される。他の界面活性剤及び他のポロキサマー、すなわち、ポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))の2つの親水性鎖に隣接するポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))の中心疎水性鎖からなる非イオン性トリブロックコポリマー、SOLUTOL HS 15(マクロゴール-15ヒドロキシステアラート)、LABRASOL(ポリオキシカプリン酸グリセリド)、ポリオキシ-オレイルエーテル、TWEEN(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)、エタノール、及びポリエチレングリコールが選択され得る。一実施形態では、製剤は、ポロキサマーを含有する。これらのコポリマーは、一般的に、文字「P」(ポロキサマーの場合)の後に3桁の数字で命名され、最初の2桁×100は、ポリオキシプロピレンコアのおおよその分子質量を与え、最後の1桁×10は、ポリオキシエチレン含有量のパーセンテージを与える。一実施形態では、ポロキサマー188が選択される。界面活性剤は、懸濁液の最大約0.0005%~約0.
001%の量で存在し得る。
【0144】
ある特定の実施形態では、rAAV.hSGSHを含有する組成物は、6.8~8、又は7.2~7.8、又は7.5~8の範囲のpHで送達される。髄腔内送達の場合、pHが、7.5超、例えば、7.5~8、又は7.8が望ましい可能性がある。
【0145】
ある特定の実施形態では、製剤は、重炭酸ナトリウムを含まない緩衝生理食塩水溶液を含有し得る。かかる製剤は、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びそれらの組み合わせのうちの1つ以上を水中に含む緩衝生理食塩水溶液、例えば、ハーバード緩衝液を含有し得る。一実施形態では、緩衝液は、PBSである。別の実施形態では、緩衝液は、人工脳脊髄液(aCSF)、例えば、エリオット製剤緩衝液、又はハーバード装置灌流液(最終イオン濃度(mM単位で):Na150、K3.0、Ca1.4、Mg0.8、P1.0、Cl155を有する人工CSF)である。水溶液は、ポロキサマーであるKolliphor(登録商標)P188を更に含有してもよく、これは、BASFから市販され、以前、Lutrol(登録商標)F68という商品名で販売されていた。水溶液は、7.2のpHを有し得る。
【0146】
別の実施形態では、製剤は、1mMのリン酸ナトリウム(Na3PO4)、150mMの塩化ナトリウム(NaCl)、3mMの塩化カリウム(KCl)、1.4mMの塩化カルシウム(CaCl2)、0.8mMの塩化マグネシウム(MgCl2)、及び0.001%のポロキサマー(Kolliphor(登録商標))188、pH7.2を含む、緩衝生理食塩水溶液を含有し得る。例えば、harvardapparatus.com/harvard-apparatus-perfusion-fluid.htmlを参照されたい。ある特定の実施形態では、ハーバード緩衝液でより良好なpH安定性が観察されることに起因して、ハーバード緩衝液が好ましい。
【0147】
ある特定の実施形態では、製剤緩衝液は、PluronicF68を含む人工CSFである。他の実施形態では、製剤は、1つ以上の浸透促進剤を含有し得る。好適な浸透促進剤の例としては、例えば、マンニトール、グリココール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、又はEDTAが挙げられ得る。
【0148】
任意選択的に、本発明の組成物は、rAAV及び担体(複数可)に加えて、防腐剤又は化学的安定剤などの他の従来の薬学的成分を含有し得る。好適な例示的な防腐剤としては、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、及びパラクロロフェノールが挙げられる。好適な化学的安定剤としては、ゼラチン及びアルブミンが挙げられる。
【0149】
本発明による組成物は、上に定義されるような薬学的に許容される担体を含み得る。好適には、本明細書に記載の組成物は、薬学的に好適な担体に懸濁され、及び/又は注射、浸透ポンプ、髄腔内カテーテルを介して対象に送達するために、又は別のデバイス若しくは経路による送達のために設計された好適な賦形剤と混合された1つ以上のAAVを有効量含む。ある特定の実施形態では、送達のために、ommayaリザーバが使用される。一例では、組成物は、髄腔内送達用に製剤化されている。一実施例では、組成物は、髄腔内(iv)送達用に製剤化されている。
【0150】
一実施形態では、治療有効量の当該ベクターが、薬学的組成物に含まれる。担体の選択は、本発明の制限ではない。防腐剤又は化学的安定剤などの他の従来の薬学的に許容される担体。好適な例示的な防腐剤としては、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソル
ビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、及びパラクロロフェノールが挙げられる。好適な化学的安定剤としては、ゼラチン及びアルブミンが挙げられる。
【0151】
「薬学的に許容される」という語句は、宿主に投与されると、アレルギー又は同様の有害反応を生じない分子実体及び組成物を指す。
【0152】
本明細書で使用される場合、「投薬量」又は「量」という用語は、治療の過程で対象に送達される総投薬量若しくは総量、又は単一単位(又は複数単位若しくは分割投薬量)投与で送達される投薬量若しくは量を指し得る。
【0153】
また、複製欠陥ウイルス組成物は、ヒト患者にとって、範囲内の全ての整数又は分数を含む、(体重70kgの平均対象を治療する)約1.0×109GC~約1.0×1016GCの範囲、好ましくは1.0×1012GC~1.0×1014GCの範囲にある量の複製欠陥ウイルスを含有する投薬量単位で製剤化することができる。一実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×109、2×109、3×109、4×109、5×109、6×109、7×109、8×109、又は9×109GCを含有するように製剤化されている。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、又は9×1010GCを含有するように製剤化されている。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1111、2×1111、3×1111、4×1111、5×1111、6×1011、7×1011、8×1011、又は9×1011GCを含有するように製剤化されている。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1012、2×1012、3×1012、4×1012、5×1012、6×1012、7×1012、8×1012、又は9×1012GCを含有するように製剤化されている。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1313、2×1313、3×1313、4×1313、5×1313、6×1013、7×1013、8×1013、又は9×1013GCを含有するように製剤化されている。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1014、2×1014、3×1014、4×1014、5×1014、6×1014、7×1014、8×1014、又は9×1014GCを含有するように製剤化されている。別の実施形態では、組成物は、範囲内の全ての整数又は小数を含む、用量当たり少なくとも1×1015、2×1015、3×1015、4×1015、5×1015、6×1015、7×1015、8×1015、又は9×1015GCを含有するように製剤化されている。一実施形態では、ヒトへの適用のために、用量は、範囲内の全ての整数又は少数を含む、用量当たり1×1010~約1×1012GCの範囲であり得る。
【0154】
一実施形態では、本明細書に記載のrAAVを含む薬学的組成物は、脳質量1グラム当たり約1×109GC~脳質量1グラム当たり約1×1013GCの用量で投与される。
【0155】
本明細書に記載の薬学的組成物における組成物が、本明細書にわたって記載される他の組成物、レジメン、態様、実施形態、及び方法に適用されるように意図されることが理解されるべきである。
【0156】
使用
一態様では、本明細書で提供される方法は、MPS IIIAを有すると診断されたヒト対象を治療する方法である。現在、MPS IIIの臨床的疑いが存在する場合、第1のステップは、ジメチルメチレンブルー(DMB)を使用する分光光度法を通じて、尿中
のGAGの存在を検出するための定量的試験を要求する。DMB試験は、GAGとジメチルメチレンブルーとの結合、及び分光光度計によるGAG-DMB複合体の定量化に基づく。この試験の感度は100%であり、特異度は75~100%である。疾患の減衰形態を有する一部の患者において、健康な対照とGAG排泄のレベルが重複し得、MPS IIIにおけるヘパラン硫酸の排泄の増加が無視され得るという事実に起因して、尿中のGAGを検出する場合の陰性結果によって、MPS IIIの存在は排除されない。現在の診断のための黄金律の技術は、培養された皮膚線維芽細胞、白血球、血漿、又は血清中の酵素活性の決定である。MPS IIIAの特異的診断は、患者の白血球又は線維芽細胞におけるヘパラン硫酸の分解に関与するSGSH酵素活性のうちの1つの減少又は不在を示すことによって確認され、健康な個体における活性と比較すると、他のスルファターゼが正常でありながら、低減は10%未満であるはずである。複数のスルファターゼの欠乏に起因する疾患はまた、ヘパランN-スルファターゼ、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ、及び他のスルファターゼの活性の低減を示すので、MPS IIIの診断を確認し、したがって、複数のスルファターゼの欠乏を排除するために、少なくとも他のスルファターゼの生化学的分析が必要である。しかしながら、診断方法は、本発明を限定するものではなく、他の好適な方法が選択され得る。
【0157】
方法は、対象に、本明細書に記載のベクターの懸濁液を投与することを含む。一実施形態では、方法は、対象に、脳質量1グラム当たり約1×109GC~脳質量1グラム当たり約1×1014GCの用量で、製剤緩衝液中の本明細書に記載のrAAVが投与される。
【0158】
本明細書で提供される組成物(複数可)及び方法(複数可)は、MPS IIIAの治療を必要とする対象の治療において有効性を達成する。対象における方法の有効性は、(a)SGSH酵素活性の増加、(b)MPS IIIA症状の緩和、(c)MPS IIIAに関連するバイオマーカ、例えば、脳脊髄液(CSF)、血清、尿、及び/若しくは他の生物学的試料中のGAGレベルであるポリアミン(例えば、スペルミン)レベルの改善、又は(e)MPS IIIAの任意の治療(複数可)の促進を評価することによって示すことができる。ある特定の実施形態では、有効性は、認知的改善及び/又は不安の補正、歩行及び/又は可動性の改善、振戦頻度及び/又は重症度の低減、痙縮/痙攣の低減、姿勢の改善、角膜の不透明度の改善を監視することによって決定することができる。追加的に又は代替的に、方法の有効性は、動物モデルに基づいて予測され得る。別の実施形態では、動物モデルにおいて、本明細書に記載のMPSIIIAベクター療法に対する疾患補正及び応答を評価するために、マルチパラメータ等級付けスケールを開発した。振戦、姿勢、毛質、痙縮、角膜曇り、及び歩行/可動性の組み合わせの評価に基づいて、動物にスコアを割り当てる。ある特定の実施形態では、これらの因子のうちの1つ以上の任意の組み合わせは、単独で、又は他の因子と組み合わせて、有効性を示すために使用され得る。例えば、Burkholder et al.Curr Protoc Mouse
Biol.June 2012,2:145-65、Tumpey et al.J Virol.May 1998,3705-10、及びGuyenet et al.J
Vis Exp,May 2010,39;1787)を参照されたい。治療した動物の認知改善及び不安補正は、開放的な場所において運動を評価すること(すなわち、例えば、Tatem et al.J Vis Exp,2014,(91):51785に記載のビーム破断測定)及び(例えば、Walf and Frye,Nat Protoc,2007,2(2):322-328に記載の高架式十字迷路アッセイによって評価する。
【0159】
本明細書で使用される場合、「MPS IIIAのための任意の治療(複数可)の促進」又はその任意の文法的変形は、記載の組成物(複数可)の投与及び記載の方法(複数可)の使用を伴わない標準的な治療のものと比較して、本発明で最初に開示されている組成
物(複数可)又は方法(複数可)以外の、対象におけるMPS IIIAの治療の投薬量の減少又は頻度の低下を指す。本明細書に記載の組成物(複数可)又は方法(複数可)によって促進される好適な治療の例としては、限定されないが、症状(発作及び睡眠障害など)を緩和し、生活の質を改善するために使用される医薬品、骨髄移植又は臍帯血移植などの造血幹細胞移植、静脈内投与又は脳室内注入を介した酵素補充療法(ERT)、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。一実施形態では、記載の方法は、対象における、MPS IIIAに関連するバイオマーカの改善を示すことを生じる。
【0160】
「SGSH酵素活性の増加」は、「所望のSGSH機能の増加」という用語と互換的に使用され、健康な患者のSGSH酵素範囲の少なくとも約5%、10%、15%、20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%のSGSH活性を指す。SGSH酵素活性は、本明細書に記載のアッセイによって測定することができる。一実施形態では、SGSH酵素活性は、血清、血漿、血液、尿、CSF、又は別の生物学的試料中で測定され得る。一実施形態では、本明細書に記載の組成物の投与、又は本明細書に記載の方法の使用は、血清、血漿、唾液、尿、又は他の生物学的試料においてSGSH酵素活性の増加を生じる。代替的に、治療効果を決定するために、CSF GAGレベル及びスペルミンレベルなどの他のCSFバイオマーカが測定され得る。例えば、WO2017/136533を参照されたい。
【0161】
神経認知は、従来の方法によって決定することができる、例えば、WO2017/136500 A1を参照されたい。神経認知低下の予防は、MPS IIIA患者のものと比較して、本明細書に記載の組成物を投与されたか、又は本明細書に記載の方法を受けた対象の神経認知低下の、少なくとも約5%、少なくとも約20%、少なくとも約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%の減速を指す。
【0162】
本明細書で使用される場合、「バイオマーカ」又は「MPS IIIAに関連するバイオマーカ」という用語は、対象の生物学的試料中の生物学的又は化学的分子の存在、濃度、発現レベル、又は活性を指し、陽性又は陰性物質においてMPS IIIAの進行又は発症に相関する。一実施形態では、バイオマーカは、脳脊髄液(CSF)、血清、尿、皮膚線維芽細胞、白血球、血漿、又は任意の他の生物学的試料中のGAGレベルである。別の実施形態では、バイオマーカは、臨床化学を使用して評価される。更に別の実施形態では、バイオマーカは、肝臓体積又は脾臓体積である。一実施形態では、バイオマーカは、ヘパランN-スルファターゼ、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ、及び他のスルファターゼの活性である。別の実施形態では、バイオマーカは、CSF、血清、又は別の生物学的試料中のスペルミンレベルである。更に別の実施形態では、バイオマーカは、血清、CSF、又は別の生物学的試料中のリソソーム酵素活性である。一実施形態では、バイオマーカは、脳の磁気共鳴画像法(MRI)を介して評価される。別の実施形態では、バイオマーカは、神経認知発達試験によって測定される神経認知スコアである。本明細書で使用される「バイオマーカの改善」という語句は、疾患の進行に正に相関するバイオマーカの低減、又は疾患の進行に負に相関するバイオマーカの増加を意味し、低減又は増加が、本明細書に記載の組成物の投与前又は本明細書に記載の方法の使用前と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約20%、少なくとも約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%である。
【0163】
一実施形態では、方法は、本明細書で提供される療法を用いた療法を開始する前に、対象におけるMPS IIIAに関連するバイオマーカを検出又は監視することを更に含む
。ある特定の実施形態では、方法は、対象からの試料中のポリアミン(スペルミンなど)であるバイオマーカの検出を含む(参照により本明細書に援用される、WO/2017/136533を参照されたい)。ある特定の実施形態では、本明細書に記載のベクターを使用するMPSIIIに対する治療の有効性を監視するために、患者試料中のスペルミン濃度レベルが検出される。
【0164】
現在、MPSIIIAを有する患者は、骨髄移植(BMT)、基質合成抑制療法(SRT)、又は酵素補充療法(ERT)の候補とはみなされていない。しかしながら、ある特定の実施形態では、本明細書に記載のSGSHを発現するベクターで治療される遺伝子療法患者は、最低でも、任意のほぼ正常範囲の酵素レベルがERT又はSRTで治療することができるほど十分な酵素発現レベルを有する。かかるERTは、併用療法であり得、併用療法において、ERTの用量が、ベクター投与後数か月又は数年にわたって監視され、調節される。追加的に又は代替的に、SRTは、併用療法であり得、併用療法において、SRTの用量が、ベクター投与後数か月又は数年にわたって監視され、調節される。
【0165】
本明細書で使用される場合、酵素補充療法(ERT)は、特定の酵素が欠乏又は欠如している患者において、酵素を補充することからなる医学的治療である。酵素は、通常、組換えタンパク質として産生され、患者に投与される。一実施形態では、酵素は、機能性SGSHである。別の実施形態では、酵素は、機能性SGSHを含む組換えタンパク質である。全身、髄腔内、脳室内、又は大槽内送達は、ERTを使用して達成することができる。本明細書で使用される場合、基質合成抑制療法(SRT)は、SGSHの非存在下で蓄積する化合物の生合成を部分的に阻害するために小分子薬物を使用する療法を指す。一実施形態では、SRTは、ゲニステインを介した療法である。例えば、Ritva Tikkanen et al,Less Is More:Substrate Reduction Therapy for Lysosomal Storage Disorders.Int J Mol Sci.2016 Jul;17(7):1065.Published online 2016 Jul 4.doi:10.3390/ijms17071065、Delgadillo V et al,Genistein
supplementation in patients affected by
Sanfilippo disease.J Inherit Metab Dis.2011 Oct;34(5):1039-44.doi:10.1007/s10545-011-9342-4.Epub 2011 May 10、及びde Ruijter J et al,Genistein in Sanfilippo disease:a randomized controlled crossover trial.Ann Neurol.2012 Jan;71(1):110-20.doi:10.1002/ana.22643を参照されたい。
【0166】
これらの用量及び濃度の送達のために好適な体積は、当業者によって決定され得る。例えば、約1μL~150mLの体積が選択され得、成人にはより多くの体積が選択され得る。典型的に、新生児には、好適な体積は、約0.5mL~約10mL、数か月齢の乳児には、約0.5mL~約15mLが選択され得る。幼児には、約0.5mL~約20mLの体積が選択され得る。小児には、最大約30mLの体積が選択され得る。10代前半及び10代には、最大約50mLの体積が選択され得る。なお他の実施形態では、患者は、約5mL~約15mLの体積での髄腔内投与を受け得るか、又は約7.5mL~約10mLが選択される。他の好適な体積及び投薬量が、決定される場合がある。投薬量を調整して、任意の副作用に対する治療的利益のバランスをとり、かかる投薬量は、組換えベクターが利用される治療適用に応じて変化し得る。
【0167】
一実施形態では、本明細書に記載のrAAVは、脳質量1グラム当たり約1×109GC~脳質量1グラム当たり約1×1014GCの用量で投与される。ある特定の実施形態
では、rAAVは、体重1kg当たり約1×109GC~体重1kg当たり約1×1013GCの用量で全身に同時投与される。
【0168】
一実施形態では、対象は、治療有効量の本明細書に記載のベクターを送達される。本明細書で使用される場合、「治療有効量」は、有効性を達成するのに十分な酵素の量を標的細胞に送達し、標的細胞で発現させる、hSGSHをコードする核酸配列を含む組成物の量を指す。一実施形態では、ベクターの投薬量は、その範囲内及び終点の全ての整数又は小数の量を含む、脳質量1グラム当たり約1×109GC~脳質量1グラム(g)当たり約1×1013ゲノムコピー(GC)である。別の実施形態では、投薬量は、脳質量1グラム当たり1×1010GC~脳質量1グラム当たり約1×1013GCである。特定の実施形態では、患者に投与されるベクターの用量は、少なくとも約1.0×109GC/g、約1.5×109GC/g、約2.0×109GC/g、約2.5×109GC/g、約3.0×109GC/g、約3.5×109GC/g、約4.0×109GC/g、約4.5×109GC/g、約5.0×109GC/g、約5.5×109GC/g、約6.0×109GC/g、約6.5×109GC/g、約7.0×109GC/g、約7.5×109GC/g、約8.0×109GC/g、約8.5×109GC/g、約9.0×109GC/g、約9.5×109GC/g、約1.0×1010GC/g、約1.5×1010GC/g、約2.0×1010GC/g、約2.5×1010GC/g、約3.0×1010GC/g、約3.5×1010GC/g、約4.0×1010GC/g、約4.5×1010GC/g、約5.0×1010GC/g、約5.5×1010GC/g、約6.0×1010GC/g、約6.5×1010GC/g、約7.0×1010GC/g、約7.5×1010GC/g、約8.0×1010GC/g、約8.5×1010GC/g、約9.0×1010GC/g、約9.5×1010GC/g、約1.0×1011GC/g、約1.5×1011GC/g、約2.0×1011GC/g、約2.5×1011GC/g、約3.0×1011GC/g、約3.5×1011GC/g、約4.0×1011GC/g、約4.5×1011GC/g、約5.0×1011GC/g、約5.5×1011GC/g、約6.0×1011GC/g、約6.5×1011GC/g、約7.0×1011GC/g、約7.5×1011GC/g、約8.0×1011GC/g、約8.5×1011GC/g、約9.0×1011GC/g、約9.5×1011GC/g、約1.0×1012GC/g、約1.5×1012GC/g、約2.0×1012GC/g、約2.5×1012GC/g、約3.0×1012GC/g、約3.5×1012GC/g、約4.0×1012GC/g、約4.5×1012GC/g、約5.0×1012GC/g、約5.5×1012GC/g、約6.0×1012GC/g、約6.5×1012GC/g、約7.0×1012GC/g、約7.5×1012GC/g、約8.0×1012GC/g、約8.5×1012GC/g、約9.0×1012GC/g、約9.5×1012GC/g、約1.0×1013GC/g、約1.5×1013GC/g、約2.0×1013GC/g、約2.5×1013GC/g、約3.0×1013GC/g、約3.5×1013GC/g、約4.0×1013GC/g、約4.5×1013GC/g、約5.0×1013GC/g、約5.5×1013GC/g、約6.0×1013GC/g、約6.5×1013GC/g、約7.0×1013GC/g、約7.5×1013GC/g、約8.0×1013GC/g、約8.5×1013GC/g、約9.0×1013GC/g、約9.5×1013GC/g、又は約1.0×1014GC/脳質量gである。
【0169】
投薬量は、任意の副作用に対する治療効果のバランスをとるように調整され、かかる投薬量は、組換えベクターが用いられる治療用途に応じて変動し得る。ウイルスベクター、好ましくは、ミニ遺伝子を含有するAAVベクターを生じる投薬の頻度を決定するために、導入遺伝子産物の発現のレベルが監視され得る。任意選択的に、本発明の組成物を使用する治療目的で記載されているものと同様の投薬レジメンが、免疫化に利用され得る。
【0170】
一実施形態では、方法は、対象が免疫抑制性併用療法を受けることを更に含む。かかる併用療法のための免疫抑制剤としては、限定されないが、グルココルチコイド、ステロイド、抗代謝剤、T細胞阻害剤、マクロライド(例えば、ラパマイシン又はラパログ)、及び細胞分裂阻害剤(アルキル化剤、抗代謝剤、細胞傷害性抗生物質、抗体、又はイムノフィリンに対して活性な薬剤を含む)が挙げられる。免疫抑制剤には、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、白金化合物、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、フルオロウラシル、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミトラマイシン、IL-2受容体(CD25)特異的抗体又はCD3特異的抗体、抗IL-2抗体、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、IFN-β、IFN-γ、オピオイド、又はTNF-α(腫瘍壊死因子-α)結合剤を含み得る。
【0171】
ある特定の実施形態では、免疫抑制療法は、遺伝子療法投与の0、1、2、7日前、又はそれ以前に開始され得る。かかる療法は、同じ日に2つ以上の薬剤、(例えば、プレドネリゾン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)及び/又はシロリムス(すなわち、ラパマイシン)の同時投与を含み得る。これらの薬物のうちの1つ以上は、遺伝子療法投与後に、同じ用量又は調整された用量で継続され得る。かかる療法は、必要に応じて、約1週間(7日間)、約60日間、又はそれ以上であり得る。ある特定の実施形態では、タクロリムスを含まないレジメンが選択される。
【0172】
ある特定の実施形態では、方法は、血清抗hSGSH抗体の測定を含む。本明細書に記載の抗hSGSH抗体を測定する好適なアッセイが、利用可能である。
【0173】
一実施形態では、本明細書に記載のrAAVは、必要とする対象に1回投与される。別の実施形態では、rAAVは、必要とする対象に2回以上投与される。
【0174】
上述の組換えベクターは、公開された方法に従って宿主細胞に送達され得る。好ましくは生理学的に適合性のある担体に懸濁されたrAAVは、ヒト又は非ヒト哺乳類患者に投与され得る。ある特定の実施形態では、ヒト患者への投与のために、rAAVは、好適には、生理食塩水、界面活性剤、及び生理学的に適合性の塩又は塩の混合物を含有する水溶液に懸濁される。好適には、製剤は、生理学的に許容されるpH、例えば、pH6~9、又はpH6.5~7.5、pH7.0~7.7、又はpH7.2~7.8の範囲に調整される。脳脊髄液のpHは約7.28~約7.32であるので、髄腔内送達のためには、この範囲内のpHが望ましく、静脈内送達のためには、約6.8~約7.2のpHが望ましい可能性がある。しかしながら、他の送達経路では、最も広い範囲内にある他のpH、及びこれらの部分範囲が選択され得る。
【0175】
本明細書で使用される場合、「髄腔内送達」又は「髄腔内投与」という用語は、脊柱管への、より具体的には、脳脊髄液(CSF)に到達するようにクモ膜下腔への注射を介する、薬物の投与経路を指す。髄腔内送達は、腰部穿刺、脳室内(側脳室内(ICV)を含む)、後頭下/槽内、及び/又はC1-2穿刺を含み得る。例えば、クモ膜下腔全体にわたって拡散させるために、腰部穿刺の手段によって、材料が導入され得る。別の例では、大槽内への注射であり得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるrAAV、ベクター、又は組成物は、髄腔内投与を介して必要な対象に投与される。ある特定の実施形態では、髄腔内投与は、参照によりその全体が本明細書に援用される、2019年11月29日に公開された米国特許公開第2018-0339065A1号に記載されるように実施される。
【0176】
本明細書で使用される場合、「大槽内送達」又は「大槽内投与」という用語は、小脳延髄大槽の脳脊髄液への直接的な薬物の投与経路、より具体的には、後頭下穿刺による、若しくは大槽内への直接注射による、又は永続的に配置されたチューブによる、薬物の投与
経路を指す。
【0177】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物の治療は、感覚神経毒性及び無症状性感覚ニューロン病変に関して十分に耐容性である、動物及び/又はヒト患者におけるDRG感覚ニューロンの最小~軽度の無症状変性を有する。
【0178】
本明細書に記載の方法における組成物が、本明細書にわたって記載される他の組成物、レジメン、態様、実施形態、及び方法に適用されるように意図されることを理解されたい。
【0179】
キット
ある特定の実施形態では、(任意選択的に、凍結された)製剤に懸濁された濃縮されたベクター、任意選択的な希釈緩衝液、並びに髄腔内、脳室内、大槽内投与に必要とされるデバイス及び他の構成要素を含む、キットが提供される。別の実施形態では、キットは、追加的な又は代替的に、静脈内送達のための構成要素を含み得る。一実施形態では、注射を可能にするために、キットは、十分な緩衝液を提供する。かかる緩衝液は、濃縮されたベクターの約1:1~1:5希釈、又はそれより以上の希釈を可能にし得る。他の実施形態では、より多量若しくはより少量の緩衝液又は滅菌水が含まれ、治療を行う医師により、用量滴定及び他の調整が可能になる。更に他の実施形態では、キットには、デバイスの1つ以上の構成要素が含まれる。好適な希釈緩衝液、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はグリセロール/PBSが利用可能である。
【0180】
本明細書に記載のキットにおける組成物が、本明細書にわたって記載される他の組成物、レジメン、態様、実施形態、及び方法に適用されるように意図されることを理解されたい。
【0181】
脳脊髄液への薬学的組成物の送達のための装置及び方法
一態様では、本明細書で提供されるrAAV又はその組成物は、このセクションで提供され、かつ参照により本明細書に援用されるWO2017/136500及びWO2018/160582に記載の方法及び/又はデバイスを介して、髄腔内投与され得る。代替的に、他のデバイス及び方法が選択され得る。ある特定の実施形態では、方法は、脊髄針を介する、患者の大槽内へのCT誘導による後頭下注射のステップを含む。本明細書で使用される場合、コンピュータ断層撮影(CT)という用語は、軸に沿って作成された一連の平面断面画像から、コンピュータによって身体構造の三次元画像が構築される放射線撮影を指す。ある特定の実施形態では、本明細書に記載のベクター及び/又はその組成物は、コンピュータ断層撮影(CT)誘導による大槽への(大槽内[ICM])後頭下注射を介して投与される。ある特定の実施形態では、装置は、参照によりその全体が本明細書に援用される、2019年11月29日に公開された米国特許公開第2018-0339065A1号に記載されている。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるベクター、rAAV、又はそれらの組成物は、Ommayaリザーバを使用して投与され得る。
【0182】
本明細書に記載のデバイスにおける組成物が、本明細書にわたって記載される他の組成物、レジメン、態様、実施形態、及び方法に適用されるように意図されることを理解されたい。
【0183】
本明細書で使用される場合、「投与」という用語又はその任意の文法的バリエーションは、対象への、本明細書に記載の組成物の送達を指す。
【0184】
「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含んでいる(comprising)」という単語は、排他的ではなく包括的に解釈されるべきであ
る。「構成する(consist)」、「構成している(consisting)」という語句、及びその変形は、包括的ではなく排他的に解釈されるべきである。本明細書の様々な実施形態は、「含んでいる(comprising)」という言葉を使用して提示されているが、他の状況下では、関連する実施形態は、「からなっている(consisting of)」又は「本質的にからなっている(consisting essentially of)」という言葉を使用して含めること及び記載することも意図される。本明細書及び特許請求の範囲全体を通して使用される場合、「含んでいる(comprising)」、「含有している(containing)」、「含んでいる(including)」という用語、及びその変形は、他の構成要素、因子、整数、ステップなどを含む。逆に、「からなっている(consisting)」という用語及びその変形は、他の構成要素、因子、整数、ステップなどを除外する。
【0185】
「a」又は「an」という用語は、1つ以上を指すことに留意されたい。したがって、「a」(又は「an」)、「1つ以上(one or more)」、及び「少なくとも1つ(at least one)」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0186】
本明細書で使用される場合、別途指定されない限り、「約」又は「~」という用語は、参照整数から±10%の変形及び参照整数間の値を指す。例えば、「約」500μMは、±50(すなわち、それらの間の整数を含む450~550)を含む。他の値では、特に、パーセンテージ(例えば、90%の意味)について言及する場合、「約」という用語は、整数及び小数の両方を含む範囲内の全ての値を含む。
【0187】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、数値を修飾するために使用される場合、別途指定されない限り、所与の参照から±10%(±10%、例えば、±1、±2、±3、±4、±5、±6、±7、±8、±9、±10、又はそれらの間の値)のバリエーションを意味する。
【0188】
ある特定の場合では、「E+#」という用語、又は「e+#」という用語は、冪乗を指すために使用される。例えば、「5E10」又は「5e10」は、5×1010である。これらの用語は、互換的に使用され得る。
【0189】
様々な本明細書の実施形態の記載に関して、別の実施形態では、本明細書に記載の組成物の各々が有用であり、本発明の方法で有用であることが意図される。加えて、方法で有用な本明細書に記載の組成物の各々は、別の実施形態では、それ自体が本発明の実施形態であることも意図される。
【0190】
本明細書で別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって、及び本出願で使用されている多くの用語に対して当業者に一般的な手引きを提供する公開された文書を参照することによって、一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【実施例】
【0191】
以下の実施例は、特許請求される本発明のある特定の態様を例示するために提供される。本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0192】
これは、ポリA配列を含むヒトN-スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ(hSGSHco)の操作されたバージョンを発現するユビキタスプロモータを含む組換えアデノ随伴ウイルス血清型hu68(又は他の汎親和性/神経親和性血清型)を使用して、ムコ多糖症IIIA型(MPSIIIA、又はサンフィリッポA症候群)を治療する方法である。hSGSHのいくつかの操作された配列コードバージョンが網羅される:参照アミノ酸
配列(N-スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼアイソフォーム1前駆体[ホモサピエンス]NCBI参照配列:NP_000190.1)、NP_000190.1:p.Arg456Proをコードする別の頻繁なミスセンス単一ヌクレオチド多型rs7503034、融合タンパク質vIGF2-hSGSHco、融合タンパク質vIGF2-hSGSHco(R456P)。本明細書では、配列に関するより多くの詳細が出願全体を通じて包含される。
【0193】
ベクターは、脳室内(ICV)又は髄腔内(IT)送達を介して投与される。IT送達は、腰部経路及び後頭下大槽の両方を網羅する。その理論的根拠は、MPSIIIA疾患の神経学的症状を補正するために、CNSにおける高いhSGSH発現を駆動することである。
【0194】
加えて、徹底的なコード配列操作最適化及びタンパク質の最適化(代替的なSNPの試験、標的化ペプチドの操作など)は、異なるコード配列操作プロセスを使用するWTタンパク質又は第一世代アプローチを使用する従来のアプローチと比較して、最小有効用量を低下させることを可能にする効率的な遺伝子治療戦略を提供する。
【0195】
実施例1.インビトロでの、WTマウスにおける操作されたSGSHと、操作されたSGSH構築物との比較。
使用したこの研究では、発現(すなわち、定量化)及び活性について、操作されたhSGSHコード配列を比較した。得られた血清試料中のhSGSH活性を、7日目及び28日目にアッセイした。
【0196】
SGSHの活性及び定量化を調べるための様々なSGSHアッセイが利用可能である。1つのSGSHアッセイは、純粋な商業用グレードのSGSH、条件培地、及びマウス組織ホモジネートを使用する、蛍光に基づくSGSH活性アッセイである。別のSGSHアッセイは、更なる最適化を必要とする、HPLCに基づくSGSH活性アッセイである。更に別のSGSHアッセイはまた、更なる最適化を必要とする、質量分析に基づくSGSH活性アッセイである。追加的に、質量分析に基づくシグナルペプチドSGSHタンパク質定量アッセイを使用することができる。
【0197】
まず、インビトロで構築物を調べた。この研究では、HEK293細胞において、様々なhSGSH構築物の発現について試験した(
図1A)。
図1Aは、野生型(WT)成熟SGSHコード配列を含み、内因性シグナル配列又は結合免疫グロブリンタンパク質(BIP)シグナル配列、リンカー、vIGF2ペプチド(すなわち、CI-MPRに結合するペプチド)、及び/又はリソソーム切断配列のいずれかを更に含む、様々な設計されたhSGSH構築物を示す。
図1Aに記載されるように、構築物をコードする核酸配列を含むプラスミドで、HEK293細胞をトランスフェクトした。次いで、トランスフェクションの3日及び4日後に、SGSH構築物の発現及び分泌について、HEK293細胞から収集した培地を分析した。
図1Bは、ウェスタンブロットを使用して分析した、トランスフェクション後3日目のHEK293細胞培地中に分泌されたSGSHの発現レベルを示す。
図1Cは、正規化されたSGSH分泌レベルとしてプロットした、定量化されたSGSH発現レベル(ウェスタンブロット分析から;
図1B)を示す。
図2Aは、ウェスタンブロットを使用して分析した、トランスフェクション後4日目のHEK293細胞培地中に分泌されたSGSHの発現レベルを示す。
図2Bは、正規化されたSGSH分泌レベルとしてプロットした、定量化されたSGSH発現レベル(ウェスタンブロット分析から;
図2A)を示す。更に、BiPシグナル配列及びvIGF2ペプチドを含む構築物での使用のために、成熟SGSHコード配列(
図2C)を操作した。
【0198】
更に、HEK293F細胞において、WT及び操作されたSGSH導入遺伝子を含むA
AVプラスミドのインビトロ発現を調べた。
図16Aは、操作されたSGSH構築物、WPRE因子を有する操作されたSGSH構築物、及びWT SGSH構築物を含む、AAVプラスミドでトランスフェクションした後のHEK293細胞培地に分泌された、ウェスタンブロットを使用して分析したSGSHの発現レベルを示す。
図16Bは、AAVプラスミドによるHEK293F細胞のトランスフェクション後の(WT SGSHに対して正規化した)AAV定量化SGSH発現を示す。これらの結果は、操作されたSGSH発現が、WPRE因子を含めることによっておよそ40%増加したことを示す(n=1)。参照として、
図16C及び
図16Dは、哺乳類発現ベクターを用いて観察された、典型的な発現を示す。
図16Cは、ウェスタンブロット分析を用いて調べた、vIGF2ペプチドを含むSGSH構築物、及び含まないSGSH構築物を含むプラスミドによるトランスフェクション後のSGSH発現レベルを示す。
図16Dは、ウェスタンブロット分析から定量化し、WT SGSH発現レベルに対して正規化したものをプロットした、SGSH発現レベルを示す。これらの結果は、vIGF2を含むSGSH構築物におけるSGSHの発現レベルの増加を示す。
【0199】
次に、WTマウスにおいて、操作された構築物をインビボで調べた。この研究では、マウス(1~2か月齢)に、AAVhu68カプシドを有し、発現が、CB7プロモータによって駆動される、様々なhSGSHコード配列(すなわち、WT及び操作されたもの;AAVhu68.hSGSHとも称される)を含むベクターゲノムを含むrAAVを投与した。
【0200】
研究の0日目に、注射を実施した。研究の7日目及び28日目に、血清試料を収集した。28日目に剖検を実施し、その間に脳及び肝臓組織を収集した。注射後7日目から血清試料を収集し、-80℃で保管した。28日目に剖検を実施し、試料を収集し、-80℃で保管した。より具体的には、注射後28日目に、血漿試料の代わりに血清試料を収集した。保管した試料は、脳(右半分)組織及び肝臓組織を含み、これをhSGSH酵素活性及び発現について分析した(すなわち、ウェスタンブロット)。肝臓の他の半分及び脳(左)組織をホルマリン中で固定し、hSGSH IHCの病理学的コアに移した。直下の表は、研究レイアウトを要約したものである。
【表1】
【0201】
蛍光活性アッセイを使用して、研究の7日目及び28日目に、血清中のSGSH酵素活性を分析した。収集した血清試料を1:50に希釈した。
図3Aは、試験の7日目の、AAVhu68.hSGSH(1×10
10GC又は1×10
11GC)を投与したマウスから収集した血清試料からのSGSH酵素活性を示す。
図3Bは、試験の28日目の、A
AVhu68.hSGSH(1×10
11GC又は1×10
11GC)を投与したマウスから収集した血清試料からのSGSH酵素活性を示す。これらの結果は、治療した血清におけるSGSH濃度と、PBS治療した血清(対照群)におけるSGSH濃度との間に、約2倍の増加が観察されたことを示す。更に。剖検時にマウスから収集した脳及び肝臓組織からのSGSH酵素活性を調べた。
図4Aは、1×10
10GC及び1×10
11GCを投与したマウスから収集したホモジネート肝臓組織試料からのSGSH酵素活性を示す。
図4Bは、1×10
10GC及び1×10
11GCを投与したマウスから収集したホモジネート脳組織試料からのSGSH酵素活性を示す。これらの結果は、肝臓組織ホモジネート試料において著しいSGSH活性が観察されたので、肝臓形質導入を裏付けている。脳組織ホモジネートにおけるSGSH活性は、WTよりも統計的に高くはなかった。更に、ウェスタンブロットによって、肝臓組織ホモジネート試料におけるSGSH発現レベルを調べた。
図5Aは、1×10
10GC及び1×10
11GCの用量でAAVhu68.hSGSHを投与したマウスからの肝臓組織ホモジネート試料から分析した、SGSHの発現レベルを示す。
図5Bは、ウェスタンブロット(
図5Aに示される)によって分析した、SGSHの定量化された発現レベルを示す。脳ホモジネートのウェスタンブロット分析は、肝臓と同じ強度で目視可能なバンド形成を示さなかった。バンドは、高コントラストで群間の特徴に見分けがつかなかった(ブロット図示せず)。1×10
11GCの用量、1×10
10GCの用量の様々な構築物(CoV1、CoV1-R456P、CoV2、CoV3)を含むAAVhu68.hSGSHを投与したか、又はPBSで治療したマウスから収集した肝臓組織の免疫組織化学顕微鏡分析を実施した(データ示さず)。これらの結果は、ウェスタンブロットによって分析されるように、肝臓組織におけるhSGSHの発現を裏付けている。
【0202】
追加的に、肝臓組織試料におけるSGSHに、シグナルペプチドアッセイを実施した。
図7Aは、1×10
10GC~1×10
11GCの用量でAAVhu68.hSGSHを投与したマウスから収集した肝臓組織試料から分析した、ng/gとしてプロットした、SGSHタンパク質濃度の結果を示す。
図7Bは、高用量のAAVhu68.hSGSH(
図7A、1×10
11GC)を投与したマウスから収集した肝臓試料に対して実施した、SGSH酵素活性(蛍光アッセイを使用して測定される)とシグナルペプチドアッセイとの間の相関を示す。
【0203】
追加的に、ベクターゲノムにおけるWPRE因子の効果を調べた。
図6Aは、WPREを含むAAVhu68.hSGSHの投与後の、皮質におけるSGSHの発現及び定量化を示す。
図6Bは、WPREを含むAAVhu68.hSGSHの投与後の、小脳におけるSGSHの発現及び定量化を示す。
図6Cは、WPREを含むAAVhu68.hSGSHの投与後の、海馬におけるSGSHの発現及び定量化を示す。
図6Dは、WPREを含むAAVhu68.hSGSHの投与後の、脳幹におけるSGSHの発現及び定量化を示す。これらの結果は、操作された候補へのWPREの添加が、WT構築物と同様のレベルまで発現を救済することを示す。
【0204】
要約すると、高用量(HD;1×1011GC)で、又は緩い用量(LD;1×1010 GC)でrAAVhu68.hSGSH構築物を投与した場合、いずれの群も、脳の著しい形質導入を示さない。肝臓組織ホモジネート試料の分析は、全ての治療群で著しい形質導入を示す。
【0205】
構築物「SGSH-CoV1」(又はCoV1)は、他のCohSGSH構築物(例えば、CoV1-R456P、CoV2、CoV3)よりも肝臓においてわずかに高い活性を示し、血清中の7日目と28日目の両方で、高用量と低用量との間で統計的に異なるレベルの活性を示した。更に、Arg456Proが良性のバリアントではないことを確認した。ウェスタンブロット分析は、活性アッセイデータを裏付けている。
【0206】
hSGSHを含むrAAVの産生
本明細書の研究では、ヒトSGSHをコードする操作された配列に融合された外因性BIPリーダー及び/又はvIGFペプチドを含む融合タンパク質を生成し、外因性BIPペプチド及びvIGF2ペプチド配列を含まない対応する構築物を用いて、比較研究を実施した。(1)AAV2 repタンパク質及びAAVhu68 VP1 cap遺伝子をコードするシスプラスミド、(2)アデノウイルスE1aを発現するパッケージング細胞株によって提供されないアデノウイルスヘルパー遺伝子を含むシスプラスミド、並びに(3)AAVカプシド内にパッケージングするためのベクターゲノムを含有するトランスプラスミドを利用して、トリプルトランスフェクション技術を使用してrAAVを生成する。例えば、US2020/0056159を参照されたい。外因性リーダーペプチド(BIP)を含むhSGSH、vIGF2ペプチドを含む天然hSGSHリーダーペプチドを有するhSGSH、vIGF2ペプチドを含まない天然hSGSHリーダーペプチドを有するhSGSHを含む、いずれかのベクターゲノムを含有するように、トランスプラスミドを設計する。ベクターゲノムとしては、以下が挙げられる:
(i)CB7.CI.BIP.hSGSHcov1(A482Y-E488V).vIGF2.WPRE.4xmiR183.rBG(配列番号1)、
(ii)CB7.CI.BIP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.rBG(配列番号3)、
(iii)CB7.CI.BIP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.WPRE.rBG(配列番号7)、
(iv)CB7.CI.hSGSHcoV1.rBG(配列番号10)、
(v)CB7.CI.hSGSHcoV1-4xmiR183.rBG(配列番号13)、
(vi)CB7.CI.BIP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.WPRE.4xmiR182.4xmiR183.rBG(配列番号37)、又は
(vii)CB7.CI.BIP.hSGSHcov1-A482Y_E488V.vIGF2.WPRE.4xmiR182.rBG(配列番号40)。
【0207】
ベクターゲノムは、それぞれ、5’及び3’最末端にAAV5’逆位末端反復(ITR)及びAAV3’ITRを含有する。ITRは、hSGSH、hSGSH.A482Y.E488V、BIP-hSGSH、又はBIP-hSGSH.A482Y.E488Vをコードする配列を有する、AAVカプシド内にパッケージングされた発現カセットの配列に隣接し、BIPが、ab外因性シグナルペプチドを指す。発現カセットは、CB7プロモータ、ニワトリベータアクチンイントロン、ウサギベータ-グロビンポリA、及び任意選択的に、変異したWPRE因子であるWPRE因子を含む、融合タンパク質コード配列と操作可能に連結された調節配列を更に含む。また、Kingsman et al.,2005及びZanta-Boussif et al.,2009も参照されたい。
【0208】
実施例2.MPS IIIAベクタースクリーニング研究MPS IIIAマウス
次に、MPSIIIA KOマウスにおけるSGSH構築物の有効性を調べた。この研究では、実施例1で観察された結果(WTマウス発現研究)に基づいて、hSGSH coV1操作構築物を使用した。MPSIIA及びWT(対照)マウス(N-110KOマウス、及びN=10WTマウス)におけるhSGSHcoV1構築物の送達に、AAVhu68カプシドを使用した。片側ICV(直接脳室内)注射を介して、1×10
10(低用量)及び5×10
10(高用量)の用量でAAVhu68.hSGSHを投与した。ICV注射時のマウスは、2~3か月齢であった。研究期間は、1か月である。更に、BiPシグナルペプチド、安定化アミノ酸(AA)変化、及び/又はvIGF2ペプチドを含むものを含む、操作されたhSGSHcoV1構築物の複数のバリエーションを調べた。
使用した研究エンドポイントは、リソソーム区画のサイズ低減(LAMP1免疫蛍光(IF)分析を介して調べた)、保管低減(GAG保管HS及びMSを介して調べた)、及びSGSH発現レベル(酵素活性アッセイ及び免疫組織化学分析を介して調べた)であった。
【表2】
【0209】
コホート1の収集した組織試料は、脳、脊髄、及び肝臓を含む。コホート2の収集した組織試料は、心臓及び脾臓を含む。
【0210】
図8A~
図8Fは、低用量(1×10
10)のAAVhu68.hSGSHを投与したMPS IIIA SGSH KOマウスにおける免疫蛍光及び組織化学分析を使用した
LAMP1定量を介して調べた、リソソーム区画低減のエンドポイント分析を示す。群1(G1)=AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1、G2=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSHcoV1、G3=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSHcoV1-vIGF2、G4=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1、G5=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2、G6=KOマウスPBS対照、G7=WTマウスPBS対照。
図8Aは、小脳におけるLAMP1陽性細胞の平均サイズ(μm
2)を示す。
図8Bは、小脳におけるLAMP1面積パーセントを示す。
図8Cは、脳幹におけるLAMP1陽性細胞の平均サイズ(μm
2)を示す。
図8Dは、脳幹におけるLAMP1面積パーセントを示す。
図8Eは、皮質におけるLAMP1陽性細胞の平均サイズ(μm
2)を示す。
図8Fは、皮質におけるLAMP1面積パーセントを示す。
【0211】
図9A~
図9Jは、高用量(1×10
11)のAAVhu68.hSGSHを投与したMPS IIIA SGSH KOマウスにおける免疫蛍光及び組織化学分析を使用したLAMP1定量を介して調べた、リソソーム区画低減のエンドポイント分析を示す。
図8と同様のG6及びG7(KO及びWT PBS対照)、G8=AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1、G11=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)、G12=AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y
E488V)coV1-vIGF2。
【0212】
図9Aは、小脳におけるLAMP1陽性細胞の平均サイズ(μm
2)を示す。
図9Bは、小脳におけるLAMP1面積パーセントを示す。
図9Cは、脳幹におけるLAMP1陽性細胞の平均サイズ(μm
2)を示す。
図9Dは、脳幹におけるLAMP1面積パーセントを示す。
図9Eは、皮質におけるLAMP1陽性細胞の平均サイズ(μm
2)を示す。
図9Fは、皮質におけるLAMP1面積パーセントを示す。
図9Hは、マン-ホイットニー試験を使用して1か月目に測定した、2~3か月齢のマウスにおける2×10
10GCの用量での、
図8A~
図8Fに定義されるG1、G2、及びG3の皮質におけるLAMP1面積パーセントを示す。
図9Iは、マン-ホイットニー試験を使用して1か月目に測定した、2~3か月齢のマウスにおける2×10
10GCの用量でのG1、G2、及びG3の小脳におけるLAMP-1面積パーセントを示す。
図9Jは、マン-ホイットニー試験を使用して1か月で測定した、2~3か月齢のマウスにおける2×10
10GCの用量でのG1、G2、及びG3の海馬におけるLAMP-1面積パーセントを示す。これらの結果は、注射部位の近くでは、WT(群1)及び操作されたWPRE(群3)の候補の同様の性能が観察され、小脳では、群にかかわらずIHCによってSGSHが検出されず、操作されたWPREの候補のみが、LAMP1陽性物質のクリアランスを示したことを示す。
【0213】
次に、以下のアッセイを更に実施した:SGSH酵素活性、グリコサミノグリカン(GAG)(HS)蓄積/低減、及び抗SGSH抗体力価。2-ナフタレン-GlcNSを使用した1段階反応からの産生物形成のタンデム質量分析(LC-MS/MS)定量化を伴う液体クロマトグラフィーを使用して、SGSH酵素活性を調べた。組織におけるHSのブタノリシスからの二糖分解産生物のLC-MS/MS定量を使用して、GAG(HS)の蓄積/低減を調べた。ELISAを使用して、抗SGSH抗体力価を調べた。
【0214】
図10A~
図10Cは、雄及び雌のマウスの脳におけるSGSH活性及びGAG低減を示す。
図10Aは、活性としてプロットした、脳におけるSGSH活性(nmol/mL/時間)を示す。
図10Bは、対数活性としてプロットした、脳におけるSGSH活性を示す。
図10Cは、タンパク質1mg当たりのGAG(HS)ngとしてプロットした、脳におけるGAGレベルを示す。
【0215】
追加的に、投与後1か月後の治療したマウス脳における、SGSH活性及び基質合成抑制を調べた。簡潔には、2e10(1×10
12vg/kg)の用量の示されているrAAV(hSGSHcoV1、coV1BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2、及びWPREを含むcoV1BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2)を、マウスに投与した。
図17Aは、治療したマウス脳におけるSGSH活性を示す。
図17Bは、脳におけるGAG(HS)レベルを示す。
図17Cは、マウス脳における総GM3を示す。これらの結果は、操作された候補へのWPREの添加が、WT構築物と同様のレベルまで発現を救済し、同等又はより良好な保管クリアランスを可能にすることを示す。
【0216】
図11A~
図11Cは、雄及び雌のマウスの脊髄におけるGAG低減におけるSGSH活性を示す。
図11Aは、活性としてプロットした、脊髄におけるSGSH活性(nmol/mL/時間)を示す。
図11Bは、対数活性としてプロットした、脊髄におけるSGSH活性を示す。
図11Cは、タンパク質1mg当たりのGAG(HS)ngとしてプロットした、脊髄におけるGAGレベルを示す。
【0217】
図12A~
図12Cは、雄及び雌のマウスの肝臓におけるGAG低減におけるSGSH活性を示す。
図12Aは、活性としてプロットした、肝臓おけるSGSH活性(nmol/mL/時間)を示す。
図12Bは、対数活性としてプロットした、肝臓におけるSGSH活性を示す。
図12Cは、タンパク質1mg当たりのGAG(HS)ngとしてプロットした、肝臓におけるGAGレベルを示す。
【0218】
図13Aは、ICV注射後7日目に測定した、活性としてプロットした、血清におけるSGSH活性(nmol/mL/時間)を示す。
図13Bは、ICV注射後7日目の対数活性としてプロットした、血清におけるSGSH活性(nmol/mL/時間)を示す。
図13Cは、ICV注射後1か月目に測定した活性としてプロットした、血漿におけるSGSHレベル活性(nmol/mL/時間)を示す。
図13Dは、ICV注射後1か月目に測定した対数活性としてプロットした、血漿におけるSGSHレベル活性(nmol/mL/時間)を示す。
【0219】
追加的に、マウス脳試料におけるGM3レベルを調べた。
図14Aは、タンパク質1mg当たりのpmol GM3としてプロットした、マウス脳における総GM3のレベルを示す。
図14Bは、タンパク質1mg当たりの対数スケールのpmol GM3としてポットした、マウス脳における総GM3のレベルを示す。これらの結果は、低用量の操作された構築物(BIP安定化AA SGSH-vIGF2)が、他のものよりも優れた性能を有することを示す。
【0220】
要約すると、操作されたhSGSH-coV1構築物を調べ、4つ(4)の他の操作されたSGSH候補と比較した。SGSH活性は、hSGSH-coV1構築物で最も高く観察された。追加的に、coV1BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1及びcoV1BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2の2つ(2)の操作されたバージョンで、GAG低減が等しく低減されたことが観察された。更に、低用量のcoV1BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2では、GM3低減が優れていることが観察された。全ての候補は、高用量でのMPSIIIA KOマウスと比較して、LAMP1染色を低減させた。低用量では、操作された構築物の発現不良に起因して、結果の変動性が観察された。上記の結果を考慮して、更なる研究は、対照として使用するBIP-hSGSH(A482Y_E488Y)coV1-vIGF2及びhSGSHcoV1(操作されていない)に焦点を当てる。
【0221】
実施例3.マウス及び非ヒト霊長類(NHP)におけるMPS IIIAベクター研究。
次に、操作されたSGSHコード配列(BIP-hSGSH(A482Y_E488Y)coV1-vIGF)を含むAAV.hSGSHの有効性を更に調べる。
【0222】
まず、この研究では、AAVのベクターゲノムにWPRE因子を含む操作された構築物(BIP-hSGSH(A482Y_E488Y)coV1-vIGF)における、SGSH発現及び酵素活性を調べる(実施例1も参照されたい)。追加的に、miR標的解除部位の添加の効果を調べ、有効性に対する影響を評価する。4つ以上のmiRNA標的化配列、すなわち、miR182及びmiR183を添加して、miR標的解除を実施する。
【0223】
次に、非ヒト霊長類(NHP)にAAVhu68及びAAVrh91カプシドを使用して投与した場合のAAV.hSGSHの生物学的分布及び形質導入レベルを調べ、比較する。更に、AAVhu68カプシドの場合のAAV.hSGSH.WPREの形質導入レベルを調べ、比較する。追加的に、安全性、有効性を調べ、DRG標的解除miRNA標的配列を更に含むAAV.hSGSHの影響を評価する。直下の表は、NHP研究の要約したレイアウトを示す。簡潔には、合計15匹のNHP(N-3/群)に、ICM(大槽内)を介して、(アカゲザル脳重量(例えば、90g)に基づいて調整した)3×10
13GCの用量でAAVを投与する。研究の主要な読み取り値は、薬理学(SGSH発現レベル)、毒性学、組織病理学である。
【表3】
【0224】
予備研究を実施して、AAV.hSGSHベクター投与前に、未治療のアカゲザル(NHP)におけるベースラインSGSH活性を調べ、測定した。
図15Aは、髄質、小脳、視床、前頭皮質で測定したnmol/mg/時間としてプロットした、未治療NHP脳切片におけるSGSHベースライン活性のレベルを示す。
図15Bは、脊髄頸部、胸部、腰部、及び後根神経節(DRG)頸部、腰部、及び胸部切片で測定したnmol/mg/時間としてプロットした、未治療NHP脊髄切片におけるSGSHベースライン活性のレベルを示す。これらのデータは、DRG切片及び血漿において観察された顕著なSGSH活性を示す。
図15Bは、脊髄頸部、胸部、腰部、及び後根神経節(DRG)頸部、腰部、及び胸部切片で測定したnmol/mg/時間としてプロットした、未治療NHP脊髄切片におけるSGSHベースライン活性のレベルを示す。
図15C~
図15Eを参照されたい。
図23は、治療したNHP中の血清Nflを示し、血清NfLが、組織病理学的軸索変性の重症度と一致することを示す。
【0225】
図18Aは、G1(AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1)、G2(AAVr
h91.CB7.hSGSHcoV1)、及びG4(AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2.WPRE)のバックグラウンドに対して比較した、治療したNHP小脳脳組織におけるSGSH活性を示す。
図18Bは、G1(AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1)、G2(AAVrh91.CB7.hSGSHcoV1)、及びG4(AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2.WPRE)のバックグラウンドに対して比較した、治療したNHP髄質脳組織におけるSGSH活性を示す。
図18Cは、G1(AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1)、G2(AAVrh91.CB7.hSGSHcoV1)、及びG4(AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2.WPRE)のバックグラウンドに対して比較した、治療したNHP前頭皮質脳組織におけるSGSH活性を示す。
図18Dは、G1(AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1)、G2(AAVrh91.CB7.hSGSHcoV1)、及びG4(AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2.WPRE)のバックグラウンドに対して比較した、治療したNHP視床脳組織におけるSGSH活性を示す。
【0226】
図19Aは、G1(AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1)、G2(AAVrh91.CB7.hSGSHcoV1)、及びG4(AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2.WPRE)のバックグラウンドに対して比較した、治療したNHP脊髄切片(SC頸部)におけるSGSH活性を示す。
図19Bは、G1(AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1)、G2(AAVrh91.CB7.hSGSHcoV1)、及びG4(AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2.WPRE)のバックグラウンドに対して比較した、治療したNHP脊髄切片(SC胸部)におけるSGSH活性を示す。
図19Cは、G1(AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1)、G2(AAVrh91.CB7.hSGSHcoV1)、及びG4(AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2.WPRE)のバックグラウンドに対して比較した、治療したNHP脊髄切片(SC腰部)におけるSGSH活性を示す。
【0227】
図20Aは、治療したNHP血漿におけるSGSH活性を示す。
図20Bは、治療したCSFにおけるSGSH活性を示す
【0228】
図21Aは、NHP血漿中の総抗hSGSH IgG力価を示す。
図21Bは、CSFにおける総anto-hSGSH力価を示す。これらの結果は、群2(rAAVrh91.hGSH)構築物が、群1(AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1)又は4(AAVhu68.CB7.BIP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2.WPRE)構築物よりも、CSF及び血漿においてより免疫原性であることを示す。
【0229】
追加的に、G1(AAVhu68.CB7.hSGSHcoV1;表A)及びG4(AAVhu68.CB7.BiP-hSGSH(A482Y E488V)coV1-vIGF2.WPRE;表B)で治療したNHPから得た試料に対して、ELISPOTを実施し、その結果を以下の表に記載する。
【表4】
【表5】
【0230】
図22Aは、左正中神経におけるNP(Ampでの神経極性)としてプロットした、神経伝導速度(NCV)の結果を示す。
図22Bは、右正中神経におけるNP(Ampでの神経極性)としてプロットした、神経伝導速度(NCV)の結果を示す。
図22Cは、左正中神経における速度としてプロットした、神経伝導速度(NCV)の結果を示す。
図22Dは、右正中神経における速度としてプロットした、神経伝導速度(NCV)の結果を示す。これらの結果は、正中神経におけるNP又は速度が、操作されたWPRE候補によって著しい低減を示さなかったことを示す。
【0231】
要約すると、マウスの生物学的分析研究は、全ての候補のSGSH活性が、脳及び肝臓において未治療WTと同等であり、一般に、互いに区別不可能であり、基質合成抑制は、操作されたWPRE候補において最も低減されたことを示した。LAMP-1 IFによる脳リソソーム病理学的補正は、操作されたWPRE候補を用いることによって、注射部位から離れて最も低減された。更に、NHPパイロット安全性/薬理学は、発現がリード操作WPRE候補と同等以上であるように思われることを示した。操作されたhSGSH-WPREは、ELISPOTデータに基づいて、操作されていないものと同様の免疫原性プロファイルを有した。操作されたhSGSH-WPREは、DRG毒性バイオマーカ(NfL)及び組織病理学に基づいて、最良の安全性プロファイルを示した。
【0232】
実施例4.マウス神経球におけるAAV.hSGSH有効性。
この研究では、AAVベクターゲノム内に、WT SGSH構築物、操作されたSGSH構築物、及びWPRE因子を更に含む操作されたSGSH構築物を含む、AAV.hSGSHのSGSH発現レベル及び有効性を調べ、比較する。この研究では、WT神経球(これらはアストロサイト系統へと分化する)を播種した48ウェルプレートを使用し、これをAAV治療後10日間インキュベートして、最大発現を可能にする。800チャネル蛍光(緑色)が、二次抗体(抗SGSH)を介したトランス遺伝子発現を示し、700チャネル蛍光(赤色)が、CellTag(商標)ツールを介した細胞質量を示す、細胞ウェスタン分析(すなわち、プレート画像)に使用した。直下の表は、使用したプレートレイアウト及び実験条件/治療の概略図を示す。
【表6】
【0233】
図16は、AAVベクターゲノム内にWT SGSH構築物、操作されたSGSH構築物、又はWPRE因子を更に含む操作されたSGSH構築物を含む、AAV.hSGSHで治療した神経球におけるAFU(800/700nm)としてプロットした、様々なMOIでのSGSH導入遺伝子発現レベルを示す。変動する細胞質量を考慮するために、データを正規化した。操作されたSGSHウイルスは、野生型よりも少ない導入遺伝子発現をもたらし、これは、上記のインビボデータと並んでいる一方で、HEK細胞におけるプラスミドの一過性トランスフェクションは、操作された発現が野生型よりも高いことを示す。これらの結果は、WPREの添加が、インビボでの操作された構築物の発現を著しく高め得るという点で有望である。
【0234】
本明細書で引用される全ての文書は、参照により本明細書に援用される。本明細書とともに提出された、2022年11月11日に作成された257,646バイトのサイズを有する「UPN-19-9075PCT_20221111.xml」という名称の電子配列表、及び電子配列表の内容(例えば、配列表の配列及びテキスト)の全体は、参照により本明細書に援用される。2021年11月12日に出願された米国仮特許出願第63/278,775号、2021年12月10日に出願された米国仮特許出願第63/288,293号は、参照により援用される。本発明は、特定の実施形態を参照して記載されているが、本発明の趣旨から逸脱することなく修正を行うことができることが理解されるであろう。かかる修正は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】