(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】手術用情報を取得するための光学システム
(51)【国際特許分類】
A61F 9/008 20060101AFI20241219BHJP
A61B 3/13 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61F9/008 120D
A61F9/008 120E
A61F9/008 120A
A61B3/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529184
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 IB2022061887
(87)【国際公開番号】W WO2023105442
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】ジョン パーク
(72)【発明者】
【氏名】キン シャン
(72)【発明者】
【氏名】ラビ ドゥルバスラ
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド ティー.スミス
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA02
4C316AA08
4C316AA09
4C316AA11
4C316AA30
4C316AB06
4C316AB07
4C316AB08
4C316AB09
4C316AB16
4C316FC12
4C316FC28
4C316FY05
(57)【要約】
特定の実施形態では、手術用情報を取得するための光学システムは、第1の光ファイバを収容するプローブ、光源、光分析器、並びに、第1の光ファイバ、光源、及び光分析器のそれぞれに光学的に結合された光サーキュレータを含む。光サーキュレータは、光源から生成された光源光を受信するように構成された第1のポートと、光源光を第1のポートから第1の光ファイバに伝送するように構成された第2のポートと、第1の光ファイバ内の戻り光を第2のポートから光分析器に伝送するように構成された第3のポートとを有する。第1の光ファイバは、プローブから第1の光ファイバ内の光源光の少なくとも一部を放射して身体構造に接触し、光源光の一部が身体構造に接触した結果として、身体構造から戻ってくる光を収集するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学システムであって、
第1の光ファイバを収容するプローブと、
光源と、
光分析器と、
前記第1の光ファイバ、前記光源、及び前記光分析器のそれぞれに光学的に結合された光サーキュレータであって、
前記光源から生成された光源光を受け取るように構成された第1のポートと、
前記光源光を前記第1のポートから前記第1の光ファイバに伝送するように構成された第2のポートであって、前記第1の光ファイバは、
前記プローブから前記第1の光ファイバ内の前記光源光の少なくとも一部を放射して身体構造に接触し、
前記光源光の前記一部が前記身体構造に接触した結果として前記身体構造から戻る光を収集する、
ように構成されている、第2のポートと、
前記第1の光ファイバ内の戻り光を前記第2のポートから前記光分析器に伝送するように構成された第3のポートであって、前記光分析器は前記戻り光に基づいて前記身体構造の1つ又は複数のスペクトルパラメータを決定するように構成されている、第3のポートと、
を備える光サーキュレータと、
を備える、光学システム。
【請求項2】
前記光源が、レーザ源、広帯域照明源、ハイパースペクトル照明源、又はマルチスペクトル照明源のうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記1つ又は複数のスペクトルパラメータが、波長、周波数、波数、又は光子エネルギーを含む、請求項1に記載の光学システム。
【請求項4】
前記光分析器が、
前記戻り光を受信するための光検出器と、
前記光検出器で受信された前記戻り光に基づいて前記1つ又は複数のスペクトルパラメータを決定するためのプロセッサと、
を備える、請求項1に記載の光学システム。
【請求項5】
前記戻り光が、反射、散乱、蛍光、自己蛍光、ラマンスペクトル、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の光学システム。
【請求項6】
前記1つ又は複数のスペクトルパラメータが、前記戻り光の光スペクトル、光源光の吸収、又は光源光の散乱のうちの少なくとも1つに基づいて決定される、請求項1に記載の光学システム。
【請求項7】
前記戻り光の光スペクトルは、強度データ、波長データ、偏光データ、位相データ、又は飛行時間データのうちの少なくとも1つを含み、
前記1つ又は複数のスペクトルパラメータは、前記戻り光の前記光スペクトルに基づいて決定される、
請求項6に記載の光学システム。
【請求項8】
前記光源と前記光サーキュレータの前記第1のポートとの間に結合されている第2の光ファイバと、
前記光サーキュレータの前記第3のポートと前記光分析器との間に結合されている第3の光ファイバと、
を更に備える、請求項1に記載の光学システム。
【請求項9】
前記プローブが硝子体カッターを備える、請求項1に記載の光学システム。
【請求項10】
前記光源が照明源を備え、前記光学システムは、
レーザ源と、
前記プローブ内に収容された第2の光ファイバであって、前記レーザ源からのレーザ光が前記第2の光ファイバ内において伝送される、第2の光ファイバと、
を更に備える、請求項1に記載の光学システム。
【請求項11】
前記システムに、
前記戻り光に基づいて前記プローブの遠位端と前記身体構造との間の距離を決定させ、
前記決定された距離が閾値を下回るかどうかの指示を生成させる、
実行可能命令を格納するメモリを更に備える、請求項1に記載の光学システム。
【請求項12】
前記光源はレーザ源であり、前記システムに、
前記身体構造上でレーザ治療を実行させ、
前記身体構造の前記1つ又は複数のスペクトルパラメータに基づいて、前記レーザ治療の出力、パルス持続時間、パルス周波数、又は治療時間のうちの少なくとも1つを調整させる、
実行可能命令を格納するメモリを更に備える、請求項1に記載の光学システム。
【請求項13】
前記システムに、
前記身体構造内の流体の組成を決定させる、
実行可能命令を格納するメモリを更に備える、請求項1に記載の光学システム。
【請求項14】
マイケルソン干渉計を更に備える、請求項1に記載の光学システム。
【請求項15】
前記光源と前記光サーキュレータとの間に光学的に結合されたファイバスプリッタであって、
前記光源から生成された前記光源光を受信するように構成されている入力と、
前記光源光の第1の部分を前記入力から前記光サーキュレータの前記第1のポートに伝送するように構成されている第1の出力と、
前記光サーキュレータをバイパスして前記光源光の第2の部分を前記入力から伝送するように構成されている第2の出力であって、
前記光源光の前記第2の部分は参照信号に対応し、
前記光源光の前記第2の部分は前記光分析器への伝送のために前記戻り光と結合される、
第2の出力と、
を備えるファイバスプリッタ、
を更に備える、請求項1に記載の光学システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
レーザ及び/又は照明プローブは、多くの様々な医療処置及び手術中に使用され得る。例えば、レーザプローブは、網膜レーザ手術中に網膜裂孔を封じるために使用できる。照明プローブは、手術中に所望の位置に照明を提供するために使用することができ、レーザプローブと組み合わせて使用される場合がある。実際、レーザ及び照明機能は、別個のプローブによって実行され得るか、又は単一の照明付きレーザプローブに統合され得る。いずれの場合にも、レーザ及び/又は照明光は、通常、レーザ及び/又は照明光源から光ファイバを介して伝送される。
【0002】
外科手術は多くの場合、主に術前計画並びに外科医の過去の経験に基づいて行われる。手術中の視覚化とデータ取得は依然としてある程度制限されている。例えば、既存のシステムには、レーザ出力、パルス持続時間、周波数などの治療パラメータのリアルタイム調整を可能にする、組織/構造のスペクトルパラメータ及び/又は治療結果に関連する現場で測定された情報を外科医に提供する機能がない。
【0003】
したがって、当技術分野で必要とされているのは、改良されたレーザ及び/又は照明プローブを含む、処置中に手術用情報を取得するための改良された装置である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、一般に、医療情報を取得するための装置に関し、より具体的には、外科手術用の光学システム及びその使用方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特定の実施形態では、手術用情報を取得するための光学システムが提供される。光学システムは、第1の光ファイバを収容するプローブ、光源、光分析器、並びに、第1の光ファイバ、光源、及び光分析器のそれぞれに光学的に結合された光サーキュレータを含む。光サーキュレータは、光源から生成された光源光を受け取るように構成された第1のポートと、光源光を第1のポートから第1の光ファイバに伝送するように構成された第2のポートと、第3のポートとを有する。第1の光ファイバは、プローブから第1の光ファイバ内の光源光の少なくとも一部を放射して身体構造(例えば、眼、耳、鼻、喉、又は他の身体構造)に接触し、光源光の一部が身体構造に接触した結果として、身体構造から戻ってくる光を収集するように構成される。第3のポートは、第1の光ファイバ内の戻り光を第2のポートから光分析器に伝送するように構成されている。光分析器は、戻り光に基づいて身体構造の1つ又は複数のスペクトルパラメータを決定するように構成されている。
【0006】
上記の本開示の特徴を詳細に理解することができるように、上記の簡潔に要約した本開示のより具体的な説明は、実施形態を参照することによって得ることができ、そのいくつかを添付の図面に示す。しかしながら、添付図面は、例示的実施形態を示すにすぎないため、その範囲を限定するとみなされるべきではなく、他の同様に効果的な実施形態が認められ得ることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、照明光及び/又はレーザ光を手術標的に提供するためのシステムを示す。
【
図2A】
図2Aは、特定の実施形態による、眼科情報を取得するための例示的な光学システムを示す。
【
図2B】
図2Bは、特定の実施形態による、眼科情報を取得するための別の例示的な光学システムを示す。
【
図3】
図3は、特定の実施形態による、硝子体切除術処置中の安全性を向上させるために、
図2Aの光学システムによって取得された測距データを使用するための例示的な方法を示す。
【
図4】
図4は、特定の実施形態による、
図2Aの光学システムによって取得された測距データを使用して外科手術中に一定の表面照度を提供するための、別の例示的な方法を示す。
【
図5】
図5は、特定の実施形態による、眼科情報を取得するための更に別の例示的な光学システムを示す。
【
図6】
図6は、特定の実施形態による、本明細書で使用され得る例示的なプローブを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
理解を容易にすべく、可能であれば同一の参照符号を用いて各図に共通する同一要素を指定する。一実施形態の要素及び特徴が、更に言及することなく他の実施形態に有利に組み込まれる場合も考えられる。
【0009】
本開示は、一般に、医療情報を取得するための装置に関し、より具体的には、外科手術用の光学システム及びその使用方法に関する。
【0010】
本開示の特定の態様は、手術用情報(例えば、患者の眼に関する、治療及び/又は疾患状態に関連する眼組織/構造の眼科パラメータ、眼内の流体組成、異なる波長の眼球の吸収及び散乱を示すハイパースペクトル/マルチスペクトルグラフなど)を取得する際に使用するための光学システムを提供する。他の手術用情報も考慮される(例えば、耳、鼻、喉などの構造のパラメータ)。本明細書で使用される「情報」及び「データ」という用語は、定性的観察及び/又は定量的データを指すために交換可能に使用される場合がある。本明細書に記載の光学システムは、様々な既存のレーザ及び/又は照明プローブと一体化することができ、したがって、既存の外科技術プラットフォーム及び機器から恩恵を受け、拡張することができる。本明細書に記載の光学システムは、プローブ自体を変更することなく様々なプローブのそれぞれと一体化することができ、したがって、既存の手術用装置を活用するための費用対効果の高いアプローチを提供する。更に、本明細書に記載の光学システムは、手術用コンソール、細隙灯、及び他の顕微鏡、並びに他の撮像装置と一体化することができる。
【0011】
本明細書に記載される光学システムは、眼の複数の異なる領域から眼科情報を取得するために使用され得るが、本開示の原理は、耳、鼻、喉などの他の構造にも使用され得ることが理解されるべきである。特定の実施形態では、レーザ及び/又は照明プローブを眼の後眼房に挿入して、眼の奥に関連する情報を取得することができ、それを使用して、網膜疾患及び眼の奥に影響が出る他の状態の診断及び/又は治療を改善することができる。
【0012】
特定の実施形態では、プローブは、眼の前部に関連する情報を取得するために眼の外側で使用されてもよく、その情報は、眼の前部に影響を与える他の症状の中でもとりわけドライアイの診断及び/又は治療を改善するために使用され得る。特定の実施形態では、眼の前部から得られる情報は、白内障の進行を評価するのに役立つ白内障の等級を決定するのに貴重である。有利なことに、眼の外側でプローブを使用すると、臨床現場でもデータ取得を強化できる。
【0013】
一般に、本明細書に記載の光学システム及び/又は方法を使用して得られる情報は、網膜手術、白内障手術、診断処置(例えば、ドライアイ及び緑内障の診断)、及び他の眼科処置などの複数のタイプの処置において、並びに病状(網膜芽腫など)の検出において、価値があり得る。例えば、特定の実施形態では、情報は、レーザ及び/又は照明プローブと眼壁との間の距離を示すことができ、これを使用して、レーザ誘発性の組織損傷又は物理的接触によって引き起こされる組織損傷を防止するのに役立ち、それによってレーザの安全性を向上させることができる。特定の実施形態では、その情報はレーザ滴定に使用され得る。本明細書で設定される方法によるレーザ滴定中、網膜におけるレーザ光の吸収はレーザ光の反射に基づいて推定され、治療用レーザの光出力は、より一貫したレーザ治療を提供するために、レーザプローブと眼壁の間の距離に基づいて調整される。
【0014】
特定の実施形態では、本明細書に記載の光学システム及び/又は方法を使用して取得された情報は、レーザ治療を受けている眼組織/構造の1つ又は複数のパラメータに関連することができ、これは、出力、パルス持続時間、パルス周波数、又はレーザ治療の治療時間を調整するために使用することができ、それによりレーザ治療をカスタマイズしたり、治療結果を改善したりできる。
【0015】
特定の実施形態では、本明細書に記載される光学システム及び/又は方法を使用して得られる情報は、眼内の流体の組成を示すことができ、それは、手術環境に関する追加情報を外科医に提供することができ、及び/又は1つ又は複数の流体パラメータを調整するために使用することができ、それによって外科手術の安全性及び/又は有効性が向上する。
【0016】
ほとんどの網膜の場合、外科医は眼の奥から硝子体を除去するために中心部硝子体切除術を実行する。中心部硝子体切除術中に、平衡塩類溶液(BSS)が眼内の液体充填剤として使用される場合がある。硝子体は透明であるため、硝子体がすべて除去されたかどうかについては、多くの場合不確実性がある。これに対処するために、本明細書に記載される光学システム及び/又は方法を使用して得られた情報を使用して、レーザ及び/又は照明プローブがBSS又は硝子体に配置されているかどうかを判定し、それによって硝子体がすべて除去されているかどうかの指標を提供することができる。
【0017】
特定の実施形態では、本明細書に記載される光学システム及び/又は方法を使用して取得される情報は、疾患の診断及び/又は病期評価に使用される眼の組織/構造の1つ又は複数のパラメータに関連することができ、それによって、診断精度を向上させるための追加のデータポイントを提供することができる。
【0018】
特定の実施形態では、本明細書に記載される光学システム及び/又は方法を使用して取得される情報は、網膜芽腫などの特定の疾患状態に関連する重要なスペクトルシグネチャを検出するために、どの波長の光が吸収され、どの波長が散乱されるかを示すハイパースペクトル/マルチスペクトルグラフを含み得る。
【0019】
上述の例示的な使用例で利用される眼科情報を取得するために、開示された光学システムは、外科手術中に眼の所望の位置/表面に照射されるレーザ及び/又は照明光の結果として、眼の構造から戻る光(「戻り光」又は「復路光」と呼ばれる)を分析するように構成されている。本明細書で使用される「戻り光」という用語には、反射、散乱、蛍光、自己蛍光、ラマンスペクトル、又はそれらの組み合わせが含まれ得る。例えば、
図1に示すように、戻り光には、眼の網膜表面で反射されて光ファイバに集められる光の一部が含まれる。従来のシステムには戻り光を分析する機能がない。したがって、戻り光は単に光源に向かって伝送され、最終的には失われる。戻り光を利用するように構成された光学システム及び/又は方法については、以下でより詳細に説明する。
【0020】
図1は、照明光及び/又はレーザ光を手術標的に提供するためのシステム100を示す。図示のように、システム100は手術システム102とプローブ108とを含む。手術システム102は、眼科処置中に使用され得るレーザ光線及び/又は照明光線を生成するための1つ又は複数の光源(例えば、レーザ及び/又は照明光源)を含むことができる。例えば、光源は、レーザ光線と照明光線とを交互に、順次又は同時に生成することができる。外科医又は外科スタッフメンバーなどのユーザは、硝子体網膜手術などの眼科処置中にレーザ光線及び/又は照明光線を放射するために、(例えば、フットスイッチ、音声コマンドなどを介して)手術システム102を制御することができる。特定の実施形態では、手術システム102は、ポートを含み、レーザ光線及び/又は照明光線は、光源からポートを通して、プローブ108内部に部分的に収容された光ファイバ106内に放射され得る。
【0021】
システム100は、レーザ光線及び/又は照明光線をポートから光ファイバ106を介してプローブ108に送達する。図示のように、プローブ108はハンドピース又はプローブ本体110を含む。プローブ108は、ハンドピース110の遠位端に結合されたプローブ先端140も含む。本明細書では、コンポーネントの遠位端は、患者の身体により近い端部又はレーザ及び/若しくは照明光がプローブから放射されるところを指すことに留意されたい。他方で、コンポーネントの近位端は、患者の身体から離れる方を向くか、又は例えば光源に近接する端部を指す。プローブ先端140は、プローブ先端140の全長に延びるチューブ112を含む。特定の実施形態では、チューブ112は円筒形の中空チューブである。プローブ先端140、したがってチューブ112の遠位端及び近位端が
図1に示されている。本明細書には示されていないが、光ファイバ106は、チューブ112の全長に延びて、レーザ及び/又は照明光をチューブ112の遠位端に伝送する。
【0022】
手術中、外科医は、ハンドピース110を使用して、チューブ112を患者の眼120内に案内する。チューブ112は、チューブ112の近位端が眼120の外側に配置されるように、部分的にのみ眼120に挿入される。手術システム102のレーザ及び/又は照明光源は、光線150を生成し、この光線150は、チューブ112によって、網膜表面122などの眼120の所望の位置/表面に向けられる。特定の実施形態では、プローブ108は、マルチスポットレーザプローブであり、複数のレーザ光線150を同時に提供し、その結果、複数のレーザスポットが得られる。各レーザスポットの出力は、約150ミリワット(mW)~500mWの範囲内であり得、複数のレーザスポットを提供することにより、チューブ112を通過する最小出力は、約1W(ワット)となる。特定の実施形態では、レンズは、眼120の所望の位置にレーザ光線及び/又は照明光線を照射するために、チューブ112内の1つ又は複数の光ファイバの前に配置される。したがって、上述したように、システム100は、外科手術、例えば網膜レーザ治療中に、レーザ光線及び/又は照明光線を眼の所望の位置に照射することができる。
【0023】
図2Aは、特定の実施形態による、眼科情報を取得するための例示的な光学システム200を示す。光学システム200は、一般に、手術システム202と、手術システム202に結合されたプローブ208とを含む。手術システム202は一般に、光源204、光分析器216、及び光サーキュレータ214を含む。
図2Aに示されるように、光サーキュレータ214は、複数の光ファイバ206(206a~c)を介して、光源204、光分析器216、及びプローブ208のそれぞれに光学的に結合される。図示の実施形態では、光ファイバ206aは光源204と光サーキュレータ214との間に結合され、光ファイバ206bは光サーキュレータ214とプローブ208との間に結合され、光ファイバ206cは光分析器216と光サーキュレータ214との間に結合されている。以下により詳細に説明するように、光ファイバ206a~cは共に、光源204からプローブ208へ、及びプローブ208から光分析器216へのレーザ及び/又は照明光の伝送を可能にする。光ファイバ206の特定の部分がケーブル内に配置されてもよいことに留意されたい。例えば、プローブ208の外側に位置する光ファイバ206bの一部は外側スリーブ内に配置され得るが、外側スリーブのないファイバのみがプローブ208の内側に配置される。特定の実施形態では、光学システム200が光ファイバ206a又は206cの一方又は両方なしで動作できるように、光サーキュレータ214は光源204又は光分析器216の一方又は両方に直接結合される。光分析器216を光サーキュレータ214に直接結合すると、戻り光の全体的な損失が減少することによって光検出が改善され得る。
【0024】
光源204は、レーザ源(コヒーレント光源)及び/又は照明源(インコヒーレント光源)であってもよい。特定の実施形態では、光源204はキセノンベース又はLEDベースの照明器である。特定の実施形態では、光源204は広帯域光源又はハイパースペクトル光源である。ハイパースペクトル光には、例えば赤外線や紫外線などの可視スペクトルを超える光が含まれる場合がある。他の光源も考えられる。例えば、広帯域光源の代わりに、狭帯域/離散光源(青、緑、赤などの光)をマルチスペクトルイ撮像に使用することができる。特定の実施形態では、光源204はコンソールと一体化される。いくつかの他の実施形態では、光源204はスタンドアロン光源である。光サーキュレータ214について、
図2Cに関して以下で更に詳細に説明する。光分析器216は光検出器とコントローラを含む。光分析器216について、
図2Dに関して以下で更に詳細に説明する。
【0025】
プローブ208は、
図1に示されるプローブ108と同じ又は類似のものであり得る。例えば、プローブ208は、一般に、ハンドピース210と、ハンドピース210に結合されたプローブ先端240とを含むことができる。特定の実施形態では、プローブ先端240は、上述のように光ファイバを収容するためのチューブ212であるか、又はそれを含む。特定の実施形態では、チューブ212は円筒形の中空チューブである。チューブ212のゲージサイズ及び長さは、用途に応じて変化し得る。特定の実施形態では、ゲージサイズは23ゲージから27ゲージの範囲である。或いは、プローブ208は、
図1と比較して異なる構造及び/又は動作を有してもよい。例えば、プローブ208は光導管プローブに限定されない。特定の実施形態では、プローブ208は、例えば、網膜表面122の画像を光サーキュレータ214に中継することができる屈折率分布型ファイバを含む画像保存プローブである。特定の実施形態では、プローブ208は、プローブ先端240の遠位端にカメラを備えた内視鏡プローブである。いくつかの他の例では、プローブ208は、発光硝子体カッター(
図6に示す)又は別のタイプの発光手術用装置である。特定の実施形態では、光学システム200は、自由空間光学系を利用して光源光と戻り光を伝送する。このような実施形態では、光源光及び戻り光は、光ファイバ206を使用せずに伝送される。特定の実施形態では、プローブ208は、プローブ208の光源光出力とは別個の戻り光検出器を含む。特定の実施形態では、単一のプローブ208の代わりに、光学システム200は、眼120に独立して挿入可能な第1の光源光出力プローブ及び第2の戻り光検出器を含む。
【0026】
図示の実施形態では、光ファイバ206bはプローブ208の内部に配置されている。特定の実施形態では、光ファイバ206bは、プローブ208の全長に延びて、その中を通してレーザ光及び/又は照明光を伝送することができる。光学システム200は、光ファイバ206bが1つの光ファイバのみを含む場合に、本明細書で説明されるように機能することができる。例えば、単一の光ファイバが、レーザ光と照明光の両方を伝送することができる。しかしながら、他のいくつかの実施形態では、プローブ208は、追加の機能を提供するために2本以上の光ファイバを含む。特定の実施形態では、プローブ208に収容された第1の光ファイバは、対応する照明源からの照明光を伝送し、一方、プローブ208に収容された第2の光ファイバは、対応するレーザ源からのレーザ光を伝送する。
【0027】
図2Aに示されるように、プローブ208は、眼120内の特定の構成要素に向けてレーザ及び/又は照明を放射するために使用される。例えば、プローブ208は、後眼房を標的とするために、部分的に眼120に挿入される。
図2Aの例では、光学システム200は、プローブ208を通してレーザ及び/又は照明光源光を伝送し、プローブ先端240から網膜表面の標的部分などの眼内の組織/構造上に光源光を放射することによって眼科情報を取得し、次いで後続の分析のためにプローブ208の内部で戻り光(例えば、標的組織/構造から反射された光の一部)を収集する。
【0028】
図2Bは、特定の実施形態による、眼科情報を取得するための別の例示的な光学システム200’を示す。
図2Bに示すように、プローブ208’は眼120に挿入されていない。眼120の内側からレーザ光及び/又は照明光を放射する代わりに、プローブ208’は眼120の外側からレーザ光及び/又は照明光を放射する。プローブ208’は、眼120の前面に見える組織/構造を標的とするために使用される。特定の実施形態では、プローブ208’は、水晶体に影響を及ぼす状態(例えば、白内障)を調査するために角膜に向けられる。白内障の例では、一般的な診療では病気の進行に関する定性的な情報しか得られない。プローブ208’によって得られた眼科情報は、以下により詳細に説明するように、戻り光の光スペクトル、光源光の吸収、及び/又は光源光の散乱に基づいて水晶体の不透明度を追跡することによって、臨床現場で白内障の進行を定量化するために使用され得る。特定の実施形態では、撮像装置は、網膜組織の反射率の変化を検出するために、プローブ208’から放射される光の複数の波長にわたるハイパースペクトル画像を生成する。いくつかの実施形態では、撮像装置は、網膜組織の反射率の変化を検出するために、プローブ208’から放射される光のいくつかの離散波長にわたるマルチスペクトル画像を生成する(例えば、狭帯域光源を使用する)。加齢に伴う網膜病理のリスクの増加は白内障の形成に関連しており、これが測定された光スペクトルに影響を与えるため、網膜組織の反射率に基づいて疾患の診断とモニタリングが可能になる。更に、光学システム200’は、疾患の進行の評価を強化するためにシグネチャ照合を使用することができる。
【0029】
図2Aに示されるように、光学システム200は、手術システム202に結合された撮像装置218(例えば、手術用顕微鏡)を含む。図示の実施形態では、手術システム202は撮像装置218から分離されている。いくつかの他の実施形態では、手術システム202は、電気的及び/又は物理的に撮像装置218と一体化されている。一般に、撮像装置218は、処置中に外科医に眼120の二次元又は三次元のビューを提供する。特定の実施形態では、撮像装置218は、表示のためにディスプレイ224に伝送される画像を取り込むためのデジタルカメラを含む。光学システム200を使用した網膜表面122に対する処置中に、外科医は、撮像装置218及びディスプレイ224を使用して、網膜表面122に対するプローブ先端240の位置とともに眼120の後眼房を視覚化することができる。
【0030】
光学システム200の貴重な利点は、撮像装置218を使用して眼の全体的なビューを、以下に詳細に説明するように、レーザ光又は照明光がプローブ208によって捕捉される標的の眼の組織/構造に接触した結果として眼から戻る光によって提供される、より局所的なビューと組み合わせることができることである。換言すれば、撮像装置218は、眼の組織/構造に関する高レベルの、多くの場合定性的な情報のみを提供することができるが、プローブ208は、以下により詳細に説明するように、レーザ及び/又は照明光と標的組織/構造との相互作用に基づいて、特定の標的領域に関連するはるかに高い解像度の定量的な情報を提供することができる。
【0031】
特定の実施形態では、撮像装置218は、網膜表面122の二次元マップを提供することができるハイパースペクトルカメラを含む。特定の実施形態では、二次元マップは、患者が網膜剥離を患っているときに外科医が組織の開存性を決定する際に使用できる網膜組織の酸素化/脱酸素化の程度を示す。特定の実施形態では、ハイパースペクトルカメラの使用により、外科医は血液の透過スペクトルに基づいて網膜出血を見渡すことができ、したがって網膜構造の視覚化が向上する。特定の実施形態では、広帯域白色LEDなどの広帯域光源の使用により、血液中の酸素化/脱酸素レベルの測定が可能になる。特に、約530nm(ナノメートル)から600nmの範囲内の波長で戻り光のスペクトル特性を監視することによって、血中酸素レベルを判定し、糖尿病性網膜症の早期検出などのために、疾患の進行と相関させることができる。いくつかの実施形態では、マルチスペクトルカメラ(又は他の種類のカメラ)を使用して、網膜表面122のマップを提供することができる。
【0032】
図2Aに示されるように、ディスプレイ224は、光分析器216及び撮像装置218に結合される。ディスプレイ224は、プローブ208を使用して取得された眼科情報を含む、光分析器216及び/又は撮像装置218に関連する情報を外科医に表示することができる。図示の実施形態では、ディスプレイ224は撮像装置218から分離されている。いくつかの他の実施形態では、ディスプレイ224は撮像装置218と一体化されている。特定の実施形態では、ディスプレイ224は拡張現実ディスプレイを含む。特定の実施形態では、ディスプレイ224は仮想現実ディスプレイを含む。特定の実施形態では、ディスプレイ224は、外科医に深さ情報を提供するための三次元ディスプレイを含む。
【0033】
図2Cは、特定の実施形態による、光学システム200の例示的な光サーキュレータ214を示す。一般に、光サーキュレータは、光ファイバ内を反対方向に伝わる光信号を分離することができ、それによって単一の光ファイバ上で双方向伝送を実現する。図示されるように、光サーキュレータ214は、一般に、ハウジング226及び3つのポート228(228a~c)を含む。いくつかの他の実施形態では、光サーキュレータ214は4つ以上のポートを含む。特定の実施形態では、光サーキュレータ214は、ハウジング226内に封入され、その中の光透過を制御するための複数のガラスチューブ及び偏光素子を含む。光サーキュレータ214は、コヒーレント光源(例えば、レーザ)とインコヒーレント光源(例えば、キセノンベース及びLEDベースの照明器)の両方の伝送又は結合を可能にする。
【0034】
特定の実施形態では、光サーキュレータ214は、複屈折結晶、ファラデー回転子、及びビームディスプレーサの配置を通じて循環が実現される複屈折結晶ベースのサーキュレータである。特定の実施形態では、複屈折結晶ベースのサーキュレータに出入りする光はコリメートされる。いくつかの他の実施形態では、光サーキュレータ214は、コア及び内部クラッドを有する光ファイバベースのサーキュレータである。光ファイバベースのサーキュレータを第1の方向に通過する光はコアを通過するが、反対方向に通過する光は内部クラッドを通過する。他のタイプの光サーキュレータも、本明細書に開示する光学システムに実装することができる。
【0035】
図2Cに示されるように、光源204から光ファイバ206a内を伝わるレーザ及び/又は照明光(「光源光」又は「前方光」と呼ばれる)は、ポート228aを通って光サーキュレータ214に入る。ポート228aに入る光源光は、ポート228bを通って光サーキュレータ214を出て、次に光ファイバ206bを通ってプローブ208に伝送される。次いで、光源光は、光線150(
図2Aに示す)の形態でプローブ208から出力される。光線150は眼120の網膜表面122に照射され、標的領域にレーザ治療及び/又は照明を提供する。標的の眼組織/構造と接触すると、光線150は、反射、散乱、蛍光、自己蛍光、又はラマンスペクトル成分の1つ又は組み合わせを含み得る戻り光に変換されるか、又は戻り光を形成する。光線150が標的の眼の組織/構造に接触した結果として眼から戻る光の少なくとも一部は、光ファイバ206bに収集される。特定の実施形態では、戻り光は、網膜表面122で反射される光線150の少なくとも一部(「反射光」と呼ばれる)を含む。戻り光は、光ファイバ206b中を光源光とは反対方向に進む。プローブ208から光ファイバ206b内を伝わる戻り光は、ポート228bを通って光サーキュレータ214に入る。ポート228bに入る戻り光は、ポート228cを通って光サーキュレータ214を出て、光ファイバ206cに入る。その後、戻り光は光分析器216に出力される。戻り光に基づいて、光分析器216は、以下で詳細に説明するように、標的の眼組織/構造の1つ又は複数のスペクトルパラメータ、並びに他の情報を決定することができる。特定の実施形態では、1つ又は複数のスペクトルパラメータには、波長、周波数、波数、及び光子エネルギーが含まれる。
【0036】
特定の実施形態では、光サーキュレータ214は、近可視波長範囲(例えば、0.98μm(マイクロメートル)、1.3μm、又は1.55μmの波長)、可視波長範囲(例えば、473nm(青色レーザ)、532nm(緑色レーザ)又は650nm(赤色レーザ))又は広帯域波長範囲(例えば、300nm~700nm)で動作する。光サーキュレータ214は、シングルモード又はマルチモード光ファイバとインタフェース接続することができる。従来の光サーキュレータは、50μmのコアと125μmのクラッド、又は62.5μmのコアと125μmのクラッドを有し得る標準的なマルチモード光ファイバに結合するように構築されている。特定の実施形態では、光ファイバ206a~cは、75μmのコアと90μmのクラッドを有する。光サーキュレータ214の設計は、光ファイバ206a~cの寸法に依存する可能性がある。例えば、光サーキュレータ214内のガラスチューブ及び偏光素子の寸法は、光ファイバ206a~cと光サーキュレータ214との間の光結合を可能にするために、光ファイバ206a~cのコア及びクラッドの寸法に一致するようにカスタマイズされてもよい。
【0037】
図2Dは、特定の実施形態による、光学システム200の例示的な光分析器216を示す。光分析器216は一般に、戻り光信号を受信するための光検出器230と、標的の眼組織/構造の1つ又は複数のスペクトルパラメータ及び他の情報を決定するために戻り光信号を分析するために光検出器230に結合されたシステムコントローラ232とを含む。システムコントローラ232は、図示の実施形態では光分析器216の一部として示されている。しかしながら、他のいくつかの実施形態では、システムコントローラ232と光分析器216は別個のコンポーネントである。
【0038】
光検出器230は、例えば戻り光の波長、偏光、及び位相を含む強度及びスペクトル情報を含む戻り光信号の様々な態様を感知/検出するように動作可能であり得る。特定の実施形態では、光検出器230は、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管(PMT)、又は分光計である。
【0039】
プログラム可能なコンピュータなどのシステムコントローラ232は、光検出器230に結合される。光検出器230で受信された戻り信号に基づいて、システムコントローラ232は、強度、波長、偏光、位相、及びスペクトルシグネチャに関して戻り光スペクトルを特徴付けるように動作可能であり得る。特定の実施形態では、システムコントローラ232は、光検出器230で受信された飛行時間データに基づいて光学距離を判定することができる。更に、システムコントローラ232は、眼内での光源光の吸収及び散乱など、光源光と標的眼組織/構造との相互作用に関するデータを取得するように動作可能であり得る。
【0040】
特定の実施形態では、システムコントローラ232は、光学システム200又はその構成要素を制御するために、光源204、撮像装置218、又はディスプレイ224のうちの1つ又は複数に結合される。例えば、システムコントローラ232は、光源204、撮像装置218、及び/又はディスプレイ224の直接制御を使用して、又は、それに関連する他のコントローラの間接制御を使用して、光学システム200の動作を制御することができる。動作中、システムコントローラ232は、光学システム200の動作を調整するために、それぞれの構成要素からのデータ取得及びフィードバックを可能にすることができる。
【0041】
システムコントローラ232は、メモリ236(例えば、不揮発性メモリ)及びサポート回路238とともに動作可能なプログラム可能な中央処理装置(CPU)234を含む。サポート回路238は、従来のようにCPU234に結合され、キャッシュ、クロック回路、入出力サブシステム、電源など、及び光学システム200の様々な構成要素に結合されたそれらの組み合わせを備える。
【0042】
いくつかの実施形態では、CPU234は、様々な監視システムコンポーネント及びサブプロセッサを制御するために、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)などの産業環境で使用される任意の形式の汎用コンピュータプロセッサの1つである。CPU234に結合されたメモリ236は、通常、揮発性メモリ又は不揮発性メモリを含む、容易に利用可能なメモリのうちの1つ又は複数である。例えば、メモリ236は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、フロッピーディスクドライブ、ハードディスク、又はローカル又はリモートの任意の他の形式のデジタルストレージであってもよい。
【0043】
ここで、メモリ236は、CPU234によって実行されると、光学システム200及び/又は光分析器216の動作を促進する命令を格納している。メモリ236内の命令は、本開示の方法を実装するプログラム(例えば、ミドルウェアアプリケーション、機器ソフトウェアアプリケーションなど)などのプログラム製品の形態である。特定の実施形態では、本明細書に開示される光学システムは、プローブ先端240の遠位端と網膜表面122との間の距離を決定する(「測距」と呼ばれることがある)ことができる。特定の実施形態では、測距は、光源204からのレーザ光及び/又は照明光のパルスを使用して実行される。特定の実施形態では、測距測定は飛行時間(ToF)又はドップラー効果に基づく。
図3は、特定の実施形態による、光学システム200によって取得された測距データを使用して硝子体切除術処置(例えば、中心部硝子体切除術又は硝子体シェービング)中の安全性を向上させる例示的な方法300を示す。本明細書に開示される方法は、提供される光学システムの実施形態のうちの1つ又は複数を使用して実行され得るため、光学システム200は、例示のみを目的として以下の例で説明されることに留意されたい。
【0044】
硝子体切除術の処置では、硝子体切除術用プローブと網膜との間の不注意による物理的接触により、網膜表面に損傷が生じる場合があることが知られている。望ましくない物理的接触は、網膜表面に非常に近接して行われる硝子体シェービング中に特に起こりやすい。本明細書に開示される光学システム及び/又は方法は、以下で詳細に説明するように、プローブ先端240が網膜表面122に近づきすぎるときに外科医に警告することによって、物理的接触及び関連する網膜損傷の発生を低減するように構成されている。硝子体切除術の用途では、プローブ208は、一体化された光ファイバを備えた硝子体切除術プローブを含む(
図6に示す)。
【0045】
動作302では、光学システム200に関連付けられたコントローラ(例えば、システムコントローラ232)に最小操作距離が設定される。最小操作距離は、外科医が硝子体切除術処置を継続するのに安全であると考える、プローブ先端240の遠位端と網膜表面122との間の最小作業距離、又は下限閾値に対応し得る。特定の実施形態では、最小操作距離は、約2mm(ミリメートル)以下、例えば約2mm、又は約1mm以下、例えば約1mmに設定される。特定の実施形態では、レーザプローブ及び照射レーザプローブの場合、最小操作距離は約2mmである。特定の実施形態では、照明された膜ピック又は鉗子の場合、ピック又は鉗子の遠位端と網膜表面との間の最小操作距離は約1mmである。エンドイルミネータなどのいくつかの他の実施形態では、最小操作距離は約15mmである。広角、拡散、又はシャンデリアタイプの照明器などのいくつかの他の実施形態では、最小操作距離は約18mmである。
【0046】
動作304では、
図2Aに示すように、プローブ先端240が眼120に挿入される。この位置では、プローブ先端240の遠位端は、最小操作距離より大きい第1の距離だけ網膜表面122から離間している。
【0047】
動作306では、プローブ先端240が網膜表面122に向かって移動される。動作308では、プローブ先端240の移動中に、光分析器216は、
図2A~
図2Cに関して上述したように、戻り光信号に基づいて、プローブ先端240の遠位端と網膜表面122との間の現在の距離を決定する。光分析器216は、現在の距離をリアルタイムで更新するために継続的に動作する。コントローラを使用して、各現在の距離が最小操作距離と比較される。アラーム条件は、プローブ先端240の遠位端と網膜表面122との間の現在の距離が最小操作距離を下回るときに満たされる。
【0048】
動作310では、光学システム200に関連付けられたコントローラ(例えば、システムコントローラ232)によって警告信号又は他の表示が外科医に送信され、警報条件が満たされていることを外科医に警告する。警告信号に基づいて、外科医は、最小操作距離未満で硝子体切除処置を継続するか、又はプローブ先端240を網膜表面122からより大きな距離だけ移動させるかのいずれかの、情報に基づいた決定を下すことができる。したがって、警告信号の結果として、硝子体切除術の安全性が向上する。
【0049】
図4は、特定の実施形態による、光学システム200によって取得された測距データを使用して外科手術中に一定の表面照度を提供するための、別の例示的な方法400を示す。本明細書で使用する「照度」という用語は、単位面積当たりの光束を指す。
【0050】
402において、
図2Aに示すように、プローブ先端240が眼120に挿入される。この位置では、プローブ先端240の遠位端は、第1の距離だけ網膜表面122から離間している。
【0051】
404において、光源204は、第1の間隔で所望の表面照度をもたらす第1の光源光の強度を提供するように設定される。
【0052】
406において、プローブ先端240は、網膜表面122に向かって/網膜表面122から遠ざかって移動される。プローブ先端240が動かされた後、プローブ先端240の遠位端は、第1の距離より小さい/大きい第2の距離だけ網膜表面122から離間している。この位置では、光源204を調整しないと、表面照度が所望のレベルを超えて増加/下降し、過剰/過少露光により外科医の網膜表面122の視認性が低下する可能性がある。本明細書に開示される特定の実施形態は、以下に説明するように表面照度を一定レベルに維持することによって視認性の低下の問題に対処する。
【0053】
408において、光分析器216は、
図2A~
図2Cに関して上述したように、戻り光信号に基づいて、プローブ先端240の遠位端と網膜表面122との間の現在の距離を決定する。光分析器216は、現在の距離をリアルタイムで更新するために継続的に動作する。
【0054】
410において、光源204は、現在の距離に基づいて調整され、プローブ先端240が網膜表面122から第2の距離だけ離間しているときに、第1の光源光の強度よりも小さい/大きい第2の光源光の強度を提供し、網膜表面122上で所望の表面照度を維持する。動作410は、光源光の強度の調整がリアルタイムで行われるように、動作406におけるプローブ先端240の移動と同時に行われてもよい。このような実施形態では、光源204に関連付けられたコントローラ及び光学システム200の光分析器216(例えば、システムコントローラ232)を使用した光源204の自動制御は、照明の変化が外科医に気づかれない範囲内に表面照度を維持することができる。或いは、動作410は、動作406におけるプローブ先端240の移動に続いて行われ、その結果プローブ先端240が第2の間隔に達した後に光源204を単純に調整することができる。
【0055】
いくつかの例では、光学システム200によって取得された測距データは、ロボット用途で使用され得る。例えば、ロボットシステムの制御を改善するために、測距データをエンドエフェクタ位置決めデータと組み合わせて使用することができる。
【0056】
図5は、特定の実施形態による、眼科情報を取得するための更に別の例示的な光学システム500を示す。光学システム500は、マイケルソン干渉計の追加を除いて、
図2Aに示す光学システム200と同じである。一般に、マイケルソン干渉計を使用すると、参照ビームと測定ビームの間の干渉パターンの検出が可能になり、距離や変位の非常に小さな変化の測定など、測定対象に関連する追加情報が得られる。
図5において、光学システム500は一般に、ファイバスプリッタ542及びファイバカプラ544を含む。ファイバスプリッタ542は、光源204と光サーキュレータ214との間に光学的に結合される。ファイバカプラ544は、光サーキュレータ214と光分析器216との間に光学的に結合される。
【0057】
ファイバスプリッタ542は、単一の入力と2つの出力を有する。ファイバスプリッタ542の入力は光ファイバ206aに結合される。ファイバスプリッタ542の第1の出力は光ファイバ506dに結合される。ファイバスプリッタ542の第2の出力は光ファイバ506eに結合される。光源204から光ファイバ206a内を進む光源光は、入力を介してファイバスプリッタ542に入る。入力に入る光源光の一部は、各出力を通ってファイバスプリッタ542から出る。ファイバスプリッタ542の入力から第1の出力に通過する光源光の第1の部分は、光ファイバ506dを介して光サーキュレータ214のポート228aに伝送され、その後、上述のようにプローブ208に伝送される。光源光の第1の部分は、「測定ビーム」と呼ばれることがある。
【0058】
ファイバスプリッタ542の入力から第2の出力へ通過する光源光の第2の部分は、光ファイバ506eに入る。光源光の第2の部分は、光サーキュレータ214をバイパスする。光源光の第2の部分は、「参照ビーム」と呼ばれる場合がある。続いて、参照ビームは、以下により詳細に説明するように、光分析器216に結合するために測定ビームの戻り光部分と結合される。実際には、光ファイバ506eは、測定ビームの公称ファイバ経路長に一致する長いファイバを巻き付けるためのコイル546を含み、結合された2つのビーム間に最大の干渉コヒーレンスを提供する。
【0059】
特定の実施形態では、ファイバスプリッタ542は50/50スプリッタであり、これは、光源光の半分が第1の出力を通じて光ファイバ506dに入り、光源光の残りの半分が第2の出力を通じて光ファイバ506eに入ることを意味する。
【0060】
ファイバカプラ544は2つの入力と単一の出力を有する。ファイバカプラ544の第1の入力は光ファイバ206cに結合される。ファイバカプラ544の第2の入力は光ファイバ506eに結合される。ファイバカプラ544の出力は光ファイバ506fに結合される。光ファイバ206bに集められた戻り光は、ポート228bを通って光サーキュレータ214に入り、ポート228cを通って光サーキュレータ214から出る。次いで、戻り光は、光ファイバ206cを介してファイバカプラ544の第1の入力に伝送される。光ファイバ506e内を進む参照ビームは、第2の入力を介してファイバカプラ544に入る。戻り光と参照ビームはファイバカプラ544で結合され、結合された光は光ファイバ506fを介して光分析器216に伝送される。参照ビームと測定ビームの戻り部分との間の干渉パターンを感知して分析することによって、光分析器216は、標的の眼組織/構造に関連する追加情報を提供する。例えば、光分析器216は、プローブ先端140の遠位端と網膜表面122との間の距離を決定し得る。
【0061】
図6は、特定の実施形態による、本明細書で使用され得る例示的な照明付き硝子体切除術用カッター600を示す。硝子体切除術用カッター600は、上述のプローブ208又はプローブ208’の代わりに使用され得る。硝子体切除術用カッター600は、その構成要素を概略的に示すために断面図で示されている。硝子体切除術用カッター600は、一般に、ハウジング610(例えば、ハンドピース又はプローブ先端)、その遠位端に切断ヘッドを有する硝子体切除術用プローブ648、切断ヘッドの近くで局所的に照明するための第1の光ファイバ606(「照明ファイバ」と呼ばれることがある)、及び切断ヘッドの近くでレーザ光を局所的に伝送するためのオプションの第2の光ファイバ606’(「レーザファイバ」と呼ばれることがある)を含む。硝子体切除術用カッター600は、第1の光ファイバ606に収集された戻り光を分析することによって切断プロセスを監視し、最適化するために使用され得る。
【0062】
要約すると、本開示の実施形態は、レーザ及び/又は照明プローブを含む光学システムを使用して、外科手術中に医療情報を取得することを可能にする。特定の実施形態は、網膜手術、白内障手術、診断処置(例えば、ドライアイ及び緑内障の診断)、及び他の外科手術などの複数のタイプの処置、並びに疾患状態(例えば、網膜芽腫)の検出において貴重な情報を提供する。本明細書に記載される光学システム及び/又は方法は、レーザ治療の個人化及び/又は治療結果の改善、外科手術の安全性及び/又は有効性の改善、診断精度を改善するための追加のデータポイントの提供、及び、上記の他の多くの利点の中でも特に、特定の疾患状態に関連している主要なスペクトルシグネチャの検出に特に有利である。
【0063】
上記は、本開示の実施形態に関するが、本開示の他の実施形態及び更なる実施形態も本願の基本的範囲から逸脱せずに考案され得、その範囲は、以下の特許請求の範囲に記載の請求項によって決定される。
【国際調査報告】