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▶ クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】蛍光ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20241219BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
C03C27/12 D
C03C27/12 N
B32B27/30 102
B32B27/18 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529194
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2022084514
(87)【国際公開番号】W WO2023104766
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】21213672.5
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ケラー
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン マミー
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス ビーア
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
【Fターム(参考)】
4F100AG00
4F100AG00E
4F100AK21B
4F100AK21D
4F100AK21E
4F100AK23
4F100AK23A
4F100AK23C
4F100AK23E
4F100AK42
4F100BA05
4F100BA08
4F100CA07A
4F100CA07C
4F100CA07E
4F100CA13A
4F100CA13C
4F100CA13E
4F100EH46
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ59
4F100EJ86
4F100GB07
4F100GB31A
4F100GB32
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100JB16D
4F100JB16E
4F100JD09A
4F100JD09C
4F100JD09E
4F100JD10A
4F100JD10C
4F100JD10E
4F100JD14A
4F100JD14C
4F100JD14E
4F100JN13
4F100JN13A
4F100JN13C
4F100JN13E
4F100JN18A
4F100JN18C
4F100JN18E
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
4F100YY00E
4G061AA13
4G061AA20
4G061AA25
4G061BA01
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB18
4G061CB19
4G061CD02
4G061CD18
4G061DA10
4G061DA14
(57)【要約】
本発明は、機能化積層体であって、特にその上にディスプレイシステムが投影されるフロントガラスまたは建築用グレージングに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
- ポリビニルアセタールおよび少なくとも1つの機能性添加剤を含むフィルムA1、
- ポリビニルアルコールを含む任意のフィルムC1、
- ポリビニルアセタールおよび少なくとも1つの機能性添加剤を含むフィルムA2、
- ポリビニルアルコールを含む任意のフィルムC2、
- ポリビニルアセタールおよび少なくとも1つの機能性添加剤を含むフィルムA3、
- ポリビニルアルコールを含むフィルムC3
をこの順序で含む、多層熱可塑性中間膜。
【請求項2】
各機能性添加剤が、発光化合物、IR遮断化合物、UV遮断化合物、光拡散化合物、染料および顔料からなるリストから独立して選択される、請求項1記載の多層熱可塑性中間膜。
【請求項3】
各機能性添加剤が、発光化合物、好ましくは蛍光化合物である、請求項1または2記載の多層熱可塑性中間膜。
【請求項4】
以下:
- ポリビニルアセタールおよび少なくとも1つの機能性添加剤を含むフィルムA1、
- ポリビニルアルコールを含む任意のフィルムC1、
- ポリビニルアセタールおよび少なくとも1つの機能性添加剤を含むフィルムA2、
- ポリビニルアルコールを含む任意のフィルムC2、
- ポリビニルアセタールおよび少なくとも1つの機能性添加剤を含むフィルムA3、
- ポリビニルアルコールを含むフィルムC3、ならびに
- ポリビニルアセタールおよび16質量%以上の可塑剤を含むフィルムB
をこの順序で含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の多層熱可塑性中間膜。
【請求項5】
以下:
- ポリビニルアセタールおよび少なくとも1つの機能性添加剤を含むフィルムA1、
- ポリビニルアルコールを含むフィルムC1、
- ポリビニルアセタールおよび少なくとも1つの機能性添加剤を含むフィルムA2、
- ポリビニルアルコールを含むフィルムC2、
- ポリビニルアセタールおよび少なくとも1つの機能性添加剤を含むフィルムA3、
- ポリビニルアルコールを含むフィルムC3、ならびに
- ポリビニルアセタールおよび16質量%以上の可塑剤を含むフィルムB
をこの順序で含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の多層熱可塑性中間膜。
【請求項6】
フィルムA1、A2およびA3が、ソルベントキャスティング法によって製造される、請求項1から5までのいずれか1項記載の多層熱可塑性中間膜。
【請求項7】
前記フィルムA1、A2およびA3が、5~100μmの厚さを有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の多層熱可塑性中間膜。
【請求項8】
前記フィルムC1、C2および任意のC3が、1~10μmの厚さを有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の多層熱可塑性中間膜。
【請求項9】
各ポリビニルアセタールが、ポリビニルブチラールである、請求項1から8までのいずれか1項記載の多層熱可塑性中間膜。
【請求項10】
前記フィルムA1、A2およびA3がそれぞれ、添加された可塑剤を含まない、請求項1から9までのいずれか1項記載の多層熱可塑性中間膜。
【請求項11】
2枚の板ガラスと、請求項1から10までのいずれか1項記載の多層熱可塑性中間膜とを含む、合わせガラス。
【請求項12】
前記合わせガラスが、2枚の板ガラスと多層熱可塑性中間膜とを含み、前記合わせガラスが、
- 第1の板ガラス、
- ポリビニルアセタールおよび蛍光化合物を含むフィルムA1、
- ポリビニルアルコールを含む任意のフィルムC1、
- ポリビニルアセタールおよび蛍光化合物を含むフィルムA2、
- ポリビニルアルコールを含む任意のフィルムC2、
- ポリビニルアセタールおよび蛍光化合物を含むフィルムA3、
- ポリビニルアルコールを含むフィルムC3、
- ポリビニルアセタールおよび16質量%以上の可塑剤を含むフィルムB、ならびに
- 第2の板ガラス
をこの順序で含む、請求項11記載の合わせガラス。
【請求項13】
前記合わせガラスが、2枚の板ガラスと多層熱可塑性中間膜とを含み、前記合わせガラスが、
- 第1の板ガラス、
- ポリビニルアセタールおよび蛍光化合物を含むフィルムA1、
- ポリビニルアルコールを含むフィルムC1、
- ポリビニルアセタールおよび蛍光化合物を含むフィルムA2、
- ポリビニルアルコールを含むフィルムC2、
- ポリビニルアセタールおよび蛍光化合物を含むフィルムA3、
- ポリビニルアルコールを含むフィルムC3、
- ポリビニルアセタールおよび16質量%以上の可塑剤を含むフィルムB、ならびに
- 第2の板ガラス
をこの順序で含む、請求項11記載の合わせガラス。
【請求項14】
自動車のフロントガラス、サイドウィンドウ、リアウィンドウおよび/もしくは天窓としての;航空機、列車もしくは船舶のグレージングとしての;または店舗の窓、エレベーターもしくはファサードのグレージングとしての、請求項11から13までのいずれか1項記載の合わせガラスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能化積層体であって、特にその上にディスプレイシステムが投影される自動車用、装飾用または建築用グレージングに関する。
【0002】
最も単純な形態では、このようなディスプレイシステム用の積層体は、サンドイッチ構造体からなり、該サンドイッチ構造体は、ポリビニルブチラール(PVB)を含むかまたはポリビニルブチラール(PVB)からなる熱可塑性中間膜によって接合されたガラスなどの材料の2枚のシートを含む。
【0003】
自動車産業は、ドライバーに重要な情報を伝えつつドライバーの注意を道路に集中させることができるように、フロントガラスなどの自動車用グレージング部品を通して、またはその上に、より多くのグラフィック情報を表示できるディスプレイ技術の開発に努めてきた。この目的のために、透明な形で作製してフロントガラスに組み込むことができる発光材料の蛍光変換原理を利用した発光投影ディスプレイ(EPD)が開発されている。こうしたディスプレイは、完全に透明なガラス表面に可視光を発生させ、優れた品質の画像を表示することができる。
【0004】
波長選択励起を用いることで、フルカラー発光ディスプレイを実現できる。最高の画質を達成するためには、要求された色の蛍光分子のみをより選択的に励起できるように、特徴的な吸収および発光特性を有する透明なRGB発光フィルムを3層重ねてスクリーンを構成する必要がある。しかし、このような目的で使用される蛍光分子は通常、可塑化PVBなどの中間膜材料全体に移行するため、透明なRGB発光フィルムと標準的な可塑化PVB中間膜との間、および/または異なるRGB発光フィルムの間に分離膜を設ける必要がある。この目的で使用される標準的な材料は、例えば米国特許第8,734,953号明細書で使用されているポリエチレンテレフタレート(PET)製の薄いフィルムである。
【0005】
本発明者らは今般、先行技術で使用されているPVBとPETとの組み合わせが、比較的高いヘイズレベルに反映されるように、透明性の点で悪影響をもたらすことを驚くべきことに発見した。
【0006】
したがって、特にディスプレイ用途の積層体に組み込まれる改良された多層中間膜フィルムに対するニーズが、当業界には依然として存在する。
【0007】
したがって、本発明の目的は、外観が改善され、コストが改善され、かつ/または製造性が改善された合わせガラスを提供することであった。特に、可視光の透明性が改善され、かつ/またはヘイズレベルが改善された合わせガラスを提供することが本発明の目的であった。
【0008】
これらの目的および他の目的は、本発明によって解決された。
【0009】
したがって、本発明の第1の実施形態は、以下:
- ポリビニルアセタールおよび少なくとも1つの機能性添加剤を含むフィルムA1、
- ポリビニルアルコールを含む任意のフィルムC1、
- ポリビニルアセタールおよび少なくとも1つの機能性添加剤を含むフィルムA2、
- ポリビニルアルコールを含む任意のフィルムC2、
- ポリビニルアセタールおよび少なくとも1つの機能性添加剤を含むフィルムA3、
- ポリビニルアルコールを含む任意のフィルムC3
をこの順序で含む、合わせガラス用多層熱可塑性中間膜であって、
任意のフィルムC1、C2およびC3のうちの少なくとも1つが、多層熱可塑性中間膜中に存在する、多層熱可塑性中間膜に関する。
【0010】
したがって、本発明の中間膜は、少なくとも4つのフィルムを含み、そのうち3つのフィルムは何らかの機能性を有し、他の1~3つのフィルムはバリア機能を提供する。バリアフィルムCは総じて、フィルムA1、A2およびA3中に存在する機能性添加剤が、あるフィルムから他のフィルムに移行しないようにするという目的を有する。
【0011】
フィルムA中の機能性添加剤の移行性がかなり低く、フィルムAが、添加された可塑剤を含まない場合には、任意のフィルムC1およびC2は、総じて不要である。しかし、フィルムA1~A3間の望ましくない移行を避けるために、追加のバリアフィルムC1およびC2が存在することが好ましい。別の好ましい実施形態では、フィルムC1のみが存在し、フィルムC2は存在しない。さらに別の好ましい実施形態では、フィルムC2が存在し、フィルムC1は存在しない。疑義を避けるために、「任意のフィルムC1、C2およびC3のうちの少なくとも1つが、多層熱可塑性中間膜中に存在する」という特徴は、少なくとも1つのバリア膜が本発明の多層熱可塑性中間膜中に存在すること、換言すれば、3つの任意のフィルムCが全て同時に存在しないことはないことを示すものとする。
【0012】
任意に、フィルムAとCとの間に追加のフィルムが存在することができる。例えば、三次元効果の改善を提供するために、3つのフィルムAの間のスペーサーとして機能する非機能性フィルムが存在することができる。
【0013】
好ましくは、機能性添加剤は、発光化合物、IR遮断化合物、UV遮断化合物、フォトクロミック化合物、光拡散化合物、染料および顔料からなるリストから独立して選択される。
【0014】
個々の膜A1~A3中の機能性添加剤は、同じタイプであっても異なるタイプであってもよい。
【0015】
より好ましくは、機能性添加剤は同じタイプであり、各機能性添加剤は、発光化合物、好ましくは蛍光化合物である。
【0016】
好ましくは、3つのフィルムA1~A3はそれぞれ、蛍光化合物を含み、該蛍光化合物は、異なる波長、例えばRGBシステムで発光することができ、したがって、三次元の多色ディスプレイとして機能することができる。
【0017】
このような蛍光化合物は、当該技術分野で知られている。
【0018】
好ましくは、蛍光化合物は、500nm未満、より好ましくは1pm~100nm、最も好ましくは10pm~1000pmのサイズを有する。蛍光化合物は、好ましくは、無機蛍光化合物;有機分子および色素;半導体ベースの蛍光化合物;および有機金属分子から選択される。
【0019】
適切な蛍光化合物としては、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属カルコゲナイド(例えば、金属硫化物)、またはそれらのハイブリッド、例えば金属オキソハライド、金属オキソカルコゲナイドが挙げられる。
【0020】
他の適切な蛍光化合物としては、有機分子、蛍光有機ポリマー、半導体蛍光化合物、例えばII-VIまたはIII-V化合物半導体、例えば蛍光量子ドット、金属中心、例えば希土類元素(例えばEu、Tb、Ce、Er、Tm、Pr、Ho)および遷移金属元素、例えばCr、Mn、Zn、Ir、Ru、V、および主族元素、例えばB、Al、Gaを少なくとも含む有機金属分子などが挙げられ、ここで、金属元素は、ホストまたは溶媒からの蛍光の消光を防ぐために有機基と化学的に結合する。
【0021】
他の適切な蛍光化合物としては、Ceをドープした(Y1-m(Al1-n12;ここで、0≦m、n≦1であり;Aは、他の希土類元素を含み、Bは、B、Gaを含む;金属ケイ酸塩、金属ホウ酸塩、金属リン酸塩、および金属アルミン酸塩を含む燐光体;一般的な希土類元素(例えばEu、Tb、Ce、Dy、Er、Pr、Tm)および遷移元素または主族元素(例えばMn、Cr、Ti、Ag、Cu、Zn、Bi、Pb、Sn、TI)を蛍光活性化剤として含む燐光体が挙げられ、これらも、FCディスプレイへの応用において好ましい。最後に、非ドープ材料(例えば、金属(例えばCa、Zn、Cd)タングステン酸塩、金属バナジン酸塩、ZnOなど)も好ましいFCディスプレイ材料である。
【0022】
適切なレーザー色素クラスとしては、以下のものが挙げられる:ピロメテン、クマリン、ローダミン、フルオレセイン、ソルベントイエロー98、2,5-二置換テレフタル酸エステル、アミドまたは塩、他の芳香族炭化水素およびそれらの誘導体。
【0023】
適切な半導体ナノ粒子(例えば量子ドット)としては、LIFディスプレイ材料が挙げられ、直径1nm~1000nm、好ましくは2nm~50nmの無機晶子である。例えば、これは、1つ以上の第1の半導体材料の「コア」を含み、第2の半導体材料の「シェル」に囲まれていてもよい。コアおよび/またはシェルは、半導体材料であってよく、これには、第II族~第VI族(ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTeなど)の材料、および第III族~第V族(GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSbなど)の材料、および第IV族(Ge、Siなど)の材料、ならびにそれらのアロイまたは混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
適切な蛍光有機金属分子には、有機キレート基で保護されたEu、Tb、Er、Tm、Ceなどの希土類元素の金属中心が含まれる。金属中心には、Zn、Mn、Cr、Irなどの遷移元素や、B、Al、Gaなどの主族元素も含まれ得る。このような有機金属分子は、液体または透明な固体ホスト媒体に容易に溶解し、開示される二次元透明ディスプレイ用の透明蛍光スクリーンを最小限の光散乱で形成することができる。このような蛍光有機金属分子の例としては、以下のものが挙げられる:トリス(ジベンゾイルメタン)モノ(フェナントロリン)ユーロピウム(III);トリス(8-ヒドロキシキノリン)エルビウム;トリス(1-フェニル-3-メチル-4-(2,2-ジメチルプロパン-1-オイル)ピラゾリン-5-オン)テルビウム(III);ビス(2-メチル-8-ヒドロキシキノラト)亜鉛;ジフェニルボラン-8-ヒドロキシキノレート。
【0025】
蛍光化合物は、水や有機溶媒などの溶媒に溶解または分散させることができる。得られる混合物をフィルムAの片面または両面にコーティングして、乾燥後に固体のフィルムまたはコーティングを形成することができる。また、蛍光化合物をそのまま、または分散剤を用いてポリビニルアセタール中に分散させることもできる。
【0026】
2枚の板ガラスを結合するために使用される中間膜は総じて、ポリビニルブチラール(PVB)のような可塑化ポリビニルアセタールから製造されるが、本発明によるフィルムAは、好ましくは可塑剤をほとんどまたはさらには全く含まない。したがって、本発明による中間膜中には、好ましくはさらなる可塑化フィルムBが存在する。その場合、機能性粒子がフィルムBに移行するのを避けるために、別のフィルムCも好ましくは中間膜スタックに添加される。
【0027】
したがって、本発明の別の好ましい実施形態は、以下:
- ポリビニルアセタールおよび少なくとも1つの機能性添加剤を含むフィルムA1、
- ポリビニルアルコールを含むフィルムC1、
- ポリビニルアセタールおよび少なくとも1つの機能性添加剤を含むフィルムA2、
- ポリビニルアルコールを含むフィルムC2、
- ポリビニルアセタールおよび少なくとも1つの機能性添加剤を含むフィルムA3、
- ポリビニルアルコールを含むフィルムC3、
- ポリビニルアセタールおよび16質量%以上の可塑剤を含むフィルムB
をこの順序で含む、多層熱可塑性中間膜である。
【0028】
好ましくは、フィルムAは、ポリビニルアセタール、最も好ましくはポリビニルブチラール(PVB)を含む。
【0029】
積層前の出発状態におけるフィルムAの厚さは、好ましくは5~250μm、より好ましくは5~100μm、最も好ましくは20~30μmである。
【0030】
本発明により使用されるフィルムAは、積層前に、好ましくは10質量%未満、より好ましくは5質量%未満、最も好ましくは3質量%未満の可塑剤を含み、特に意図的に添加された可塑剤を含まない。好ましい実施形態では、フィルムAは、0.1~3質量%の可塑剤を含む。
【0031】
フィルムBは、当該技術分野で知られている任意の可塑化PVBフィルムであってよい。
【0032】
出発状態におけるフィルムBの厚さは、380~2500μm、好ましくは600~1000μm、より好ましくは700~900μmである。
【0033】
本発明により使用される可塑剤含有フィルムBは、積層体前の出発状態において、少なくとも22質量%、例えば22.0~45.0質量%、好ましくは25.0~32.0質量%、特に26.0~30.0質量%の可塑剤を含む。
【0034】
フィルムAまたはBは、好ましくは、同一であるかまたは異なって、ポリビニルアセテート基の割合が0.1~20mol%、好ましくは0.5~3mol%、または5~8mol%であるポリビニルアセタールを含む。
【0035】
フィルムAに使用されるポリビニルアセタールのポリビニルアルコール含量は、6~26質量%、8~24質量%、10~22質量%、12~21質量%、14~20質量%、16~19質量%、好ましくは16~21質量%または10~16質量%であってよい。
【0036】
フィルムCは、ポリビニルアルコールを含む。好ましくは、フィルムCは、ポリビニルアルコールからなる。ポリビニルアルコールは総じて、対応するポリ酢酸ビニルの加水分解によって製造され、この用語はまた、ポリマー鎖中に10質量%までのエチレン基を含むポリマーを示すものとする。また好ましくは、フィルムC1、C2および任意のC3は、1~50μm、より好ましくは1~10μmの厚さを有する。
【0037】
好ましくは、フィルムCは、色調補正染料、水、酸化防止剤、密着性調整剤、蛍光増白剤、安定剤、着色剤、加工助剤、高熱法ケイ酸および/または界面活性物質を含む。
【0038】
本発明により使用されるフィルムAおよび/またはBは、可塑剤として、以下の群から選択される1つ以上の化合物を含むことができる:
- 多価脂肪族酸または芳香族酸のエステル、例えばアジピン酸ジアルキル、例えばアジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、およびアジピン酸と脂環式エステルアルコールまたはエーテル化合物を含むエステルアルコールとのエステル、セバシン酸ジアルキル、例えばセバシン酸ジブチル、さらにはセバシン酸と脂環式エステルアルコールまたはエーテル化合物を含むエステルアルコールとのエステル、フタル酸エステル、例えばフタル酸ブチルベンジルまたはフタル酸ビス-2-ブトキシエチル、
- 多価脂肪族もしくは芳香族アルコールのエステルもしくはエーテル、または1つ以上の非分岐状もしくは分岐状脂肪族もしくは芳香族置換基を有するオリゴエーテルグリコールのエステルもしくはエーテル、例えば、グリセロール、ジグリコール、トリグリコールまたはテトラグリコールと、直鎖状もしくは分岐状脂肪族もしくは脂環式カルボン酸とのエステルであり;後者の群の例としては、ジエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルブタノエート)、テトラエチレングリコール-ビス-n-ヘプタノエート、トリエチレングリコール-ビス-n-ヘプタノエート、トリエチレングリコール-ビス-n-ヘキサノエート、テトラエチレングリコールジメチルエーテルおよび/またはジプロピレングリコールベンゾエートが挙げられる、
- 脂肪族または芳香族エステルアルコールのリン酸エステル、例えばリン酸トリス(2-エチルヘキシル)(TOF)、リン酸トリエチル、リン酸ジフェニル-2-エチルヘキシルおよび/またはリン酸トリクレジル、
- クエン酸、コハク酸および/またはフマル酸のエステル。
【0039】
定義上、可塑剤は、高沸点を有する有機液体である。このため、120℃を超える沸点を有するさらなる種類の有機液体も可塑剤として使用することができる。
【0040】
さらに、フィルムAおよびBは、残量の水、酸化防止剤、密着性調整剤、蛍光増白剤、安定剤、着色剤、加工助剤、高熱法ケイ酸および/または界面活性物質などのさらなる添加剤を含むことができる。
【0041】
本発明の別の態様は、2枚の板ガラスと上述の多層熱可塑性中間膜とを含む合わせガラスに関する。
【0042】
好ましくは、合わせガラスは、2枚の板ガラスと、請求項1から9までのいずれか1項記載の多層熱可塑性中間膜とを含み、該合わせガラスは、
- 第1の板ガラス、
- ポリビニルアセタールおよび蛍光化合物を含むフィルムA1、
- ポリビニルアルコールを含むフィルムC1、
- ポリビニルアセタールおよび蛍光化合物を含むフィルムA2、
- ポリビニルアルコールを含むフィルムC2、
- ポリビニルアセタールおよび蛍光化合物を含むフィルムA3、
- ポリビニルアルコールを含むフィルムC3、
- ポリビニルアセタールおよび16質量%以上の可塑剤を含むフィルムB、ならびに
- 第2の板ガラス
をこの順序で含む。
【0043】
本発明はまた、自動車のフロントガラス、サイドウィンドウ、リアウィンドウおよび/もしくは天窓としての、航空機、列車もしくは船舶のグレージングとしての、または店舗の窓、外部もしくは内部の間仕切り壁、手すり、エレベーターもしくはファサードのグレージングとしての、上記の積層体の使用にも関する。
【0044】
合わせガラスを製造するための積層工程は、好ましくは、上述のような中間膜フィルムを2枚の板ガラスの間に配置し、こうして製造された積層体を、昇圧または減圧および昇温下でプレスして積層体を形成するというように実施される。
【0045】
積層体の積層には、当業者に周知の方法を、予備積層体の事前の製造の有無にかかわらず用いることができる。
【0046】
いわゆる「オートクレーブプロセス」は、約10bar~15barの昇圧で、100℃~150℃の昇温で、約2時間かけて行われる。
【0047】
真空ラミネーターも使用可能である。真空ラミネーターは、加熱および排気が可能なチャンバーで構成され、その中で30~60分以内に積層グレージングを積層することができる。0.01~300mbarの減圧および100~200℃、特に130~160℃の温度の真価が実際に発揮されている。
【0048】
その後、ガラスフィルム積層体を、オートクレーブプロセスに供することができる。
【0049】
[測定方法]
ポリビニルアセタールのビニルアルコール含量および酢酸ビニル含量は、DIN ISO 3681(アセテート含量)およびDIN ISO 53240(PVA含量)に準拠して測定される。
【0050】
板ガラスに関する光透過率は、DIN EN 410に準拠して測定される。
【0051】
方法ヘイズを、ASTM 1003に準拠して測定した。
【実施例
【0052】
(蛍光体を含むPVB溶液の製造)
ポリビニルブチラール(PVB)粉末(Kuraray Europe GmbHから市販されているMowital(登録商標)B60H)をエタノールに溶解させた18.0質量%の溶液を製造した。市販の赤色蛍光体(λmax=328nm)、市販の青色蛍光体(λmax=370nm)、市販の緑色蛍光体(λmax=440nm)をそれぞれフィルムA1~A3に用いた。
【0053】
蛍光体の濃度を下表にまとめた。
【0054】
【表1】
【0055】
(本発明によらない多層熱可塑性中間膜の製造(比較例1~4))
表面が平滑な厚さ23μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(Mitsubishi Polyester Film GmbHから入手可能なグレードHostaphan(登録商標)RN)を全てのフィルムC1、C2およびC3に使用した。
【0056】
PETフィルムに、上記で製造したPVB溶液を以下の方法によりコーティングし、フィルムA1/C1/A2/C2/A3を含む多層中間膜を得た:
PVBフィルムコーティングプロセスには、自動精密フィルムコーティング機(供給元:MTV Messtechnik、エアフトシュタット;形式:CX202)を使用し、コーティング幅180mmの汎用フィルムアプリケータ(この場合にも供給元:MTV Messtechnik)を用いた。コーティング装置のギャップ高さを、400μmに設定した。
【0057】
得られたPVBフィルムを、室温で12時間乾燥させた。得られた乾燥フィルムの厚さを、機械式膜厚計で測定した。フィルムA1~A3のフィルムの厚さは、それぞれ25μm±3μmであった。
【0058】
(合わせガラスの製造)
2.1mmのPlaniclear(登録商標)フロートガラスを2枚使用して、15×15cmの合わせガラスを製造した。
【0059】
厚さ760μmの可塑化PVBフィルム(Trosifol(登録商標)UV Extra Protect、0.76mm、Kuraray Europe GmbHより市販)をフィルムBとして使用した。
【0060】
積層には、真空バッグを使用し、その後にオートクレーブを使用した。真空バッグの温度を、100℃に設定した。オートクレーブの圧力を12barに設定し、温度を140℃に設定した。
【0061】
以下の試料を製造し、最終的なガラス積層体をヘイズの観点で分析した:
【表2】
【0062】
上表の結果は、積層体中に存在するPETフィルムCの数が増加するにつれて、最終的な積層体のヘイズ値が増加することを明確に示している。
【0063】
(本発明による多層熱可塑性中間膜の製造(実施例1~5))
PVBフィルムA1~A3を、上述のように製造した。ただし、PVBフィルムの乾燥後にPETフィルムをPVBフィルムから剥離して、3枚のPVBフィルムA1~A3を自立フィルムとして得た。
【0064】
(ポリビニルアルコール(PVA)溶液の製造およびコーティング)
ポリビニルアルコール(株式会社クラレから市販されているExceval(登録商標)HR30-10)10gを、還流条件下で高速撹拌しながら水90gに溶解させた。この溶液を、循環冷却システムを備えた水浴を用いて室温まで冷却した。
【0065】
こうして得られたPVA溶液を、ギャップ高さ50μmに設定した汎用アプリケーター(コーティング幅:180mm)を用いて、得られたPVBフィルム上にコーティングした。得られたフィルムを、60℃で10分間乾燥させる。得られた(乾燥)PVAフィルムの厚さは5μm±1μmであり、これをそれぞれフィルムC1~C3として使用した。
【0066】
上記の方法で、以下の積層体を製造した:
【表3】
【0067】
上表の結果は、本発明によりバリアフィルムとして使用されたPVAフィルムの存在が、最終的な積層体のヘイズ値の増加を招かないことを示している。
【0068】
比較のために、2つの異なるバリア系(PET対PVA)を比較する別の手段として、フィルムA1~A3に蛍光体を含まないブランク系を用いて、第3の系列を製造した。それ以外は、積層体を上記のように製造した。
【0069】
【表4】
【0070】
この結果は、PET製のバリアの代わりにポリビニルアルコールバリア膜C1~C3を使用することで、バリア膜のない参照系と比較して、バリア膜の悪影響が検出できない程度まで積層体のヘイズ値が実質的に改善されたことを示している。
【国際調査報告】