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特表2024-546597不飽和シロキサン系カップリング剤を用いて製造したジエンゴム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】不飽和シロキサン系カップリング剤を用いて製造したジエンゴム
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/25 20060101AFI20241219BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20241219BHJP
   C08K 3/011 20180101ALI20241219BHJP
【FI】
C08C19/25
C08L9/00
C08K3/011
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529992
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2022084576
(87)【国際公開番号】W WO2023104784
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】21212860.7
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516112462
【氏名又は名称】アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キリアン・ニコラウス・リヒャルト・ヴースト
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AC111
4J002DA046
4J002FD146
4J002GN01
4J100AS01P
4J100AS02P
4J100AS03P
4J100AS04P
4J100CA31
4J100HA53
4J100HC80
4J100HE05
4J100JA29
(57)【要約】
ポリジエンゴムの製造方法であって、(i)好ましくは4~25個の炭素原子を有する少なくとも1つの脂肪族共役ジエンモノマーを重合させて、反応性ポリマー鎖末端を有するポリマーを製造するステップと、(ii)反応性ポリマー鎖末端の少なくとも一部を、2~20個の不飽和シロキサン単位、好ましくは3~15個の不飽和シロキサン単位、より好ましくは3~10個の不飽和シロキサン単位を含むカップリング剤と反応させるステップを含む、製造方法。本方法によって得られるポリジエンゴム、本ポリジエンゴムを含む硬化性組成物、及び硬化ポリジエンゴムを含む組成物も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリジエンゴムの製造方法であって、
(i)少なくとも1種の脂肪族共役ジエンモノマー、好ましくは4~25個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族共役ジエンモノマーを重合して、反応性ポリマー鎖末端を有するポリマーを製造するステップ、及び
(ii)前記反応性ポリマー鎖末端の少なくとも一部を、2~20個の不飽和シロキサン単位、好ましくは3~15個の単位、より好ましくは3~10個の単位を含むカップリング剤と反応させるステップを含み、前記カップリング剤は、少なくとも2つの不飽和シロキサン単位を有する環状構造を含むが、前記カップリング剤は多環式ではない、製造方法。
【請求項2】
前記不飽和シロキサン単位が少なくとも1つのアルケニル基、好ましくはビニル(-CH=CH)、アリル(-CH-CH=CH)、n-ブテニル(-CHCHCH=CH)、イソブテニル(-CH(CH)CH=CH)、n-ペンテニル(-CHCHCHCH=CH)、イソペンテニル(-CH(CH)CHCH=CH、-CHCH(CH)CH=CH)、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアルケニル基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カップリング剤の前記不飽和シロキサン単位が、下記式(1):
【化1】
に対応し、式中、R1はアルケニル、好ましくはビニル(-CH=CH)、アリル(-CH-CH=CH)、n-ブテニル(-CHCHCH=CH)、イソブテニル(-CH(CH)CH=CH)、n-ペンテニル(-CHCHCHCH=CH)、イソペンテニル(-CH(CH)CHCH=CH、-CHCH(CH)CH=CH)からなる群から選択されるアルケニルを表し、それぞれのR2は、独立に、H、OH、又は有機基、好ましくは1~20個の炭素原子を有し、任意選択により、O、N、Si、S、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘテロ原子を有していてもよい有機基を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
それぞれのR2は、独立に、H、OH、2~10個の炭素原子を有するアルケニル、1~10個の炭素原子を有するアルキル(ここで、前記のアルキル鎖又はアルケニル鎖又はその両方は、エーテル酸素原子によって1回又は2回以上中断されていてもよい)、又は最大10個までのケイ素原子を有するシロキサン若しくはポリシロキサン(ここで、前記のシロキサン又はポリシロキサンは、任意選択により、アルキル基又はアルケニル基又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの脂肪族置換基を有する少なくとも1つのケイ素原子を有していてもよい)を表し、好ましくは、少なくとも1つのR2はメチルであり、より好ましくは全てのR2基は、メチル若しくはエチルのいずれか又はそれらの組み合わせである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記カップリング剤の不飽和シロキサン単位が下記式(2):
【化2】
に対応し、式中、それぞれのRは、独立に、H、OH、又は有機基、好ましくは1~20個の炭素原子を有し、且つ任意選択により、O、N、Si、S、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘテロ原子を有していてもよい有機基、を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
Rは、H、OH、2~10個の炭素原子を有するアルケニル、1~10個の炭素原子を有するアルキル(ここで、前記のアルキル鎖又はアルケニル鎖又はその両方は、エーテル酸素原子によって1回又は2回以上中断されていてもよい)、又は最大10個までのケイ素原子を有するシロキサン若しくはポリシロキサン(ここで、前記シロキサン又はポリシロキサンは、任意選択により、アルキル基又はアルケニル基又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの脂肪族置換基を有する少なくとも1つのケイ素原子を有していてもよい)を表し、好ましくは、少なくとも1つのRはメチルであり、より好ましくは全てのR基は、メチル若しくはエチルのいずれか又はそれらの組み合わせである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記カップリング剤が、少なくとも3つの不飽和シロキサン単位を含む環状構造を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記カップリング剤が下記式(3):
【化3】
に対応し、式中、nは、1~5、好ましくは1~3の整数であり、R1及びR2は、請求項3又は4で定義したとおりであり、好ましくはR1はビニルであり、かつそれぞれのR2は、独立に、C-C-アルキル、好ましくはメチルから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記カップリング剤が、5000g/mol未満、好ましくは2000g/mol未満の分子量を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記共役ジエンモノマーが1,3-ブタジエンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(i)が、1つ以上の共重合性ビニル芳香族コモノマー、好ましくはスチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、パラ-tert-ブチルスチレン、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の共重合性ビニル芳香族コモノマー、を共重合させることを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、ステップ(ii)の前、後、又は最中に、少なくとも1つの官能基をポリマーに導入するための少なくとも1つの官能化剤を前記ポリマーと反応させることを含み、前記官能基が、C原子及びH原子に加えて、Si、S、N、O、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
重合反応を停止させるステップ、安定剤及び/又は油を添加するステップ、ポリマーを単離するステップ、前記ポリマーをベール、顆粒、又は粉末に成形するステップの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって得られるポリジエンゴム。
【請求項15】
請求項14に記載のポリジエンゴムを含む硬化性組成物であって、前記ポリジエンゴムを硬化させるための少なくとも1つの加硫剤をさらに含み、好ましくは、ジエンゴム100質量部当たり0.5~10質量部の量の前記加硫剤を含む、硬化性組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の硬化性組成物を硬化させることによって得られる硬化したポリジエンゴムを含む組成物であって、好ましくは物品、好ましくはタイヤ又はタイヤトレッドから選択される物品である、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和シロキサン系カップリング剤を用いて製造したジエンゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
ジエンゴムは、タイヤを製造するための原材料として広く使用されている。ジエンゴムの加工性を改善するためにカップリング剤を使用することができる。カップリング剤は、ゴムのポリマー鎖と互いに連結して、分岐又は星型のポリマー構造を形成する。これによって、ポリマーの分子量分布が広くなり、それらを含有する化合物のムーニー粘度が低下し、それらの加工が容易になる。公知のカップリング反応剤の例としては、四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、四塩化スズ、ジブチルスズジクロリド、テトラアルコキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテルの誘導体、1,2,4-トリス(クロロメチル)ベンゼンが挙げられる。(特許文献1)には、カップリング剤としての置換シルセスキオキサン、多環式置換ポリシロキサンの使用が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0107541A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ジエンゴムをカップリングさせるための代替カップリング剤を提供することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、一つの側面では、ポリジエンゴムの製造方法であって、
(i)少なくとも1種の脂肪族共役ジエンモノマーを重合させて、反応性ポリマー鎖末端を有するポリマーを製造するステップと、
(ii)反応性ポリマー鎖末端の少なくとも一部を、2~20個の不飽和シロキサン単位を含むカップリング剤と反応させるステップとを含み、前記のカップリング剤は、少なくとも2つの不飽和シロキサン単位を有する環状構造を含むが、カップリング剤は多環式ではない、製造方法を提供する。
【0006】
別の一つの側面では、上記の方法によって得られたポリジエンゴムを提供する。
【0007】
さらなる側面では、上記ポリジエンゴムを含み、上記ポリジエンゴムを硬化させるための少なくとも1つの加硫剤をさらに含む硬化性組成物をさらに提供する。
【0008】
さらに別の側面では、上記の硬化性組成物を硬化させることによって得られる硬化したポリジエンゴムを含む組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明において、本開示がさらに説明される。
【0010】
以下の説明において、ある規格(ASTM、DIN、ISOなど)に言及する場合がある。別段の指示がなければ、これらの規格は、2020年3月1日において有効であった版で使用される。その日付で有効であった版がない場合、例えば、その規格が期限切れとなっている場合は、2020年3月1日に最も近い日付において有効であった版が言及される。
【0011】
この説明に記載される全ての文献は、別段の指定がない限り、参照により本明細書に援用される。
【0012】
以下の説明において、組成物又はポリマーの構成成分の量は、「質量パーセント」、「wt.%」、又は「質量%」によって交換可能に示すことができる。「質量パーセント」、「wt.%」、又は「質量%」という用語は、別段の指定がない限り、それぞれ、100%となる組成物又はポリマーの全質量を基準としている。
【0013】
「phr」という用語は、「ゴム100部当たりの部数」を意味し、すなわち、1つ以上のゴムを含む組成物の構成要素の質量パーセント値は、100質量%に設定されるゴムの総量が基準となる。したがって、組成物の全質量は、通常はゴムの量よりも多くなり、100質量%を超えうる。
【0014】
別段の記載がないかぎり、本開示において特定される範囲は、その範囲の端点間の全ての値及びその端点が含まれ、それらが開示されていることを意味する。
【0015】
「含む」という用語は、制限がなく非限定的な意味で使用される。「構成成分A及びBを含む組成物」という語句は、構成成分A及びBを含むことを意味するが、その組成物は別の構成成分を含んでいてもよい。「含む」の使用とは逆に、「のみからなる」という単語は、狭い限定的な意味で使用される。「構成成分A及びBのみからなる組成物」という語句は、別の構成成分がない構成成分A及びBの組成物を表すことを意味する。
【0016】
シロキサン系カップリング剤
本開示によるカップリング剤は、少なくとも2つの不飽和シロキサン単位、好ましくは少なくとも2~20個、より好ましくは3~15個、最も好ましくは4~10個の不飽和シロキサン単位を含む。したがって、本開示によるカップリング剤は、-Si-O-単位に加えて、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、好ましくはビニル基(-CH=CH基)を有する単位を少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも4つ含む。典型的には、これらの単位は、Si-O-単位のケイ素原子に結合する。したがって、これらの単位は、本明細書において「不飽和シロキサン単位」又は「不飽和-Si-O単位」とよばれる。カップリング剤は、線状又は分岐状又は環状であり得るが多環式でなくてよい。好ましくは、これらは環状であり、好ましくはこれらは、少なくとも1つの環状構造を含み、好ましくは環状シロキサン構造を有し、すなわち、前述したとおとおりの少なくとも1つの不飽和-Si-O-単位を有する環状構造を有する。好ましくは、シロキサン系カップリング剤は、環状であり、少なくとも2つの不飽和シロキサン単位、より好ましくは少なくとも3つの不飽和シロキサン単位を有する環状構造を有する。
【0017】
本開示によるカップリング剤は、好ましくはポリジエンゴムをカップリングするため、すなわち、ポリマー鎖を互いに結合させるため、好ましくは分岐、例えばマルチアーム又は星型のポリマー構造を形成するために使用される。ポリマーのカップリングは、例えばGPCによって測定される分子量の増大によって確認することができる。カップリングの程度は、カップリングしたポリマーのクロマトグラムを、その前駆体のポリマーのクロマトグラムと比較することによって決定することができる。カップリングした場合、クロマトグラム中に高分子量画分が現れる。全体の分子量分布の積分に対する、カップリングした画分の積分の比が、カップリング度(カップリングされているポリマーの質量%)である。
【0018】
ポリジエンゴムの製造において本開示によるカップリング剤を使用することの利点は、それによってポリマー構造の微調整が可能になることである。ポリマー鎖に対して、シロキサン系反応剤が、それらの不飽和単位のモル過剰で使用される場合、カップリングしたポリマーは、架橋(加硫)反応に関与できるカップリング剤からの未反応不飽和単位を含むことができる。しかしながら、ポリマー中のカップリング剤由来の不飽和基の存在が望ましくない場合は、(ポリマー鎖に対するカップリング剤の不飽和単位のモル比を基準として)等モル又は等モル未満の量でカップリング剤を使用することによって、それらの存在を回避したり減少させたりすることができる。この場合、カップリング反応剤の全ての不飽和単位が、カップリング反応によって使われていると推測することができる。重合反応中に生成する反応性ポリマー鎖のモル量は、重合反応中に使用される重合開始剤のモル量に等しいと仮定することができる。
【0019】
本開示によるカップリング剤は、一般式(1):
【化1】
に対応する2~20個の不飽和シロキサン単位、好ましくは3~15個の不飽和シロキサン単位、より好ましくは4~10個の不飽和シロキサン単位を含む。
【0020】
式(1)中、それぞれのR1は、独立して、アルケニル基、好ましくはビニル(-CH=CH)、アリル(-CH-CH-CH=CH)、n-プロペニル(-CHCH=CH)、n-ブテニル(-CHCHCH=CH)、イソブテニル(-CH(CH)CH=CH);n-ペンテニル(-CHCHCHCH=CH)、イソペンテニル(-CH(CH)CHCH=CH、-CHCH(CH)CH=CH)からなる群から選択されるアルケニル基を表し、かつ、それぞれのR2は、独立して、H、OH、又は有機基を表し、有機基は好ましくは1~20個の炭素原子を有し、かつ、任意選択により場合によりO、S、Si、N、及びそれらの組み合わせから選択されるさらに1つのヘテロ原子を有していてもよい。その炭化水素基は、非置換であってもよいし、又は置換されていてもよく、その場合は、少なくとも1つの水素原子が置換基で置換されている。適切な置換基としては、シロキサン、ポリシロキサン、シリル、アミノシリル、アミノシロキサン、アルキルアミノ基、ハロゲン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、その炭化水素基は脂肪族である。好ましくは、炭化水素基は、アルケニル、好ましくは2~10個の炭素原子を有するアルケニル、アルキル、好ましくは1~10個の炭素原子を有するアルキルから選択され、ここでアルキル鎖又はアルケニル鎖又はその両方は、エーテル酸素原子によって1回又は2回以上中断されてよく、又はR2は、最大10個までのケイ素原子を有するシロキサン又はポリシロキサンから選択され、そのシロキサン又はポリシロキサンは、任意選択により、アルキル基、アルキレン基、若しくはアルケニル基、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの脂肪族置換基を有する少なくとも1つのケイ素原子を有することができる。好ましくは、少なくとも1つのR2は、メチル、又はエチルを表す。好ましくは、全てのR2が、メチル又はエチル又はそれらの組み合わせを表す。
【0021】
本開示の好ましい一実施形態では、シロキサン系カップリング剤は、一般式(2):
【化2】
に対応する少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つの単位を含み、ここで、Rは、上記の式(1)のR2に対応する。好ましくは、Rは、1~10個の炭素原子を有するアルキルから選択され、かつ、これは任意選択によりさらに1つ以上の酸素エーテル原子を含んでいてもよく、それはアルコキシ又はポリアルコキシ基であってよく、又は任意選択により1つ以上のシラン基、シロキサン基、若しくはポリシロキサン基を含んでいてもよく、ここでポリシロキサン基又はシロキサン基は、1~3個のアルキル基又はアルケニル基をケイ素原子上に含んでいてもよく、ケイ素原子の最大数は、好ましくは10個未満である。好ましくは、Rは、C-C10-アルキル基、より好ましくはC-C-アルキル基であり、最も好ましくはRはメチルである。
【0022】
本開示の別の好ましい一実施形態では、不飽和シロキサンカップリング剤は、環状であり、かつ、式(3):
【化3】
に対応し、ここで、nは、1、2、3、又は4であり、好ましくはnは1又は2であり、それぞれのR1は、式(1)において記載されているものであり、好ましくは少なくとも1つ、より好ましくは全てのR1が、ビニル(-CH=CH)基を表す。それぞれのR2は、上記の式(1)において記載されているものである。好ましくは少なくとも1つのR2はC-C-アルキル基であり、より好ましくは少なくとも1つのR2はメチルである。最も好ましくは全てのR2がメチル基を表す。
【0023】
本開示の一実施形態では、不飽和シロキサンカップリング剤は、下記一般式(4):
【化4】
に対応し、ここで、nは1~20の整数であり、mは1~20の整数であり、それぞれのR基は、互いに独立して選択され、上述した式(2)に関して記載されているものであり、
R3は、H、OH、1~10個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の炭化水素、一価のシロキサン、ポリシロキサン、又はシランであり、又はR3は、R5と結合して環状化合物を形成し、かつ1~10個のケイ素原子を有する二価のシロキサン又はポリシロキサンを表し、ここで、1つ又は少なくとも1つのケイ素原子は、1~10個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基若しくはアルケニル基を有し、あるいはR3及びR5は一緒になって化学結合を形成して、環状化合物を形成し、
R4は、リンカー基(連結基)であって、(i)1つ以上の酸素エーテル基を任意選択により場合によっては含んでいてもよい1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、(ii)1つ若しくは2つ以上のケイ素原子が、1~10個の炭素原子を有する1つ以上の脂肪族の炭化水素基を有することができる、1つ以上のシラン基若しくはシロキサン基若しくはそれらの組み合わせ、又は(i)及び(ii)の組み合わせから選択されるリンカー基であり、
R5は、H、OH、1~10個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和の炭化水素、一価のシロキサン、ポリシロキサン、又はシランであり、又はR5は、R3と結合して環状化合物を形成し、かつ1~10個のケイ素原子を有する二価のシロキサン又はポリシロキサンを表し、ここで1つ又は少なくとも1つのケイ素原子は、1~10個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基若しくはアルケニル基を有し、又はR5は、R3と結合して、環状化合物を形成し、かつ1~10個のケイ素原子を有する二価のシロキサン又はポリシロキサンを表し、ここで1つ又は少なくとも1つのケイ素原子は、1~10個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基若しくはアルケニル基を有し、又はR3及びR5は一緒になって化学結合を形成して、環状化合物を形成する。
【0024】
好ましくは、本開示のカップリング剤は多環式化合物ではない。多環式化合物の一実施形態は、下記式(5):
【化5】
に対応する。
【0025】
式(5)中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、及びRhは、各々同一又は異なるものであり、かつ、互いに独立して、C-C10-アルキル、C-C-アルケニル、-O-Si-(R1’2’3’)から選択され、ここで、R1’、R2’、及びR3’は、互いに独立して、C-C10-アルキル、C-C-アルケニル、例えばビニルから選択され、例えばR1’、R2’、及びR3’の少なくとも1つはビニル単位を含み、又はR1’、R2’、及びR’3の全てがビニル(-CH=CH)である。Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、及びRhの少なくとも1つ、又は少なくとも2つ、又は少なくとも3つは、C-C-アルケニル、例えばビニル(-CH=CH)を含む。式(5)による多環式カップリング剤の一実施形態では、Ra~Rhの少なくとも4つがビニルであるか、又はRa~Rh基の少なくとも1つが-O-Si(ビニル)である。式(5)による化合物の別の一実施形態では、Ra~Rhの全てがビニルである。式(5)による化合物は、多面体オリゴマーシルセスキオキサン又はPOSSとしても知られている。これらの材料は、市販されているし、又は例えば、Quirk,Cheng et al,Macromolecules 2012,45,21,8571-8579に記載されているように調製することもできる。
【0026】
好ましくは、本開示によるカップリング剤は5000g/mol以下の分子量を有する。好ましくは、カップリング剤は2000g/mol未満の分子量を有する。
【0027】
本開示によるカップリング剤の特に好ましい例としては、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン及び1,3,5-トリビニル,1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサンが挙げられる:
【化6】
【0028】
本開示による1つ又はカップリング剤の組み合わせだけでなく、本開示の1つ以上のカップリング剤と1つ以上の別のカップリング剤との組み合わせも使用することができる。
【0029】
ポリマー
本開示の一態様では、(i)少なくとも1つの共役ジエンモノマーを重合させて、反応性鎖末端を有するポリマーを製造するステップ、及び(ii)その反応性ポリマー鎖末端の少なくとも一部を、本開示による少なくとも1つのシロキサン系カップリング剤と反応させるステップを含む方法によって得ることができるポリマーが提供される。共役ジエンモノマーは、好ましくは4~25個、より好ましくは4~20個の炭素原子を有する。
【0030】
上記ポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーであってよく、かつ、少なくとも1つの共役ジエンモノマーから誘導される単位を含む。適切なジエンモノマーとしては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン、ミルセン、オシメン、ファルネセン、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ポリマーは、1,3-ブタジエンから誘導される単位を含むか、又は1,3-ブタジエンから誘導される単位のみからなる。
【0031】
本開示の一実施形態では、ポリマーは、少なくとも2つの共役ジエンを含む重合反応を含む方法によって得られるコポリマーである。別の一実施形態、本開示では、ポリマーは、少なくとも1つの共役ジエンモノマーと、少なくとも1つのビニル芳香族コモノマーとの重合を含む方法によって得られるコポリマーである。適切なビニル芳香族コモノマーの例としては、スチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、パラ-tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。スチレンが特に好ましい。
【0032】
本開示の一実施形態では、ポリマーは、ブタジエンポリマーであり、1,3-ブタジエンのホモポリマー及びコポリマーが含まれる。好ましくは、本開示によるポリマーは、ポリマーの質量を基準にして、少なくとも51質量%、好ましくは少なくとも60質量%の、1,3-ブタジエンから誘導される単位を含む。本開示の一実施形態では、ジエンポリマーは、少なくとも60質量%、又は少なくとも75質量%の1,3-ブタジエンから誘導される単位を含む。
【0033】
本開示の一実施形態では、ジエンポリマーは、ポリマーの全質量を基準にして0~49質量%、又は0質量~40質量%の、1つ以上のコモノマーから誘導される単位を含む。
【0034】
本開示の一実施形態では、ジエンポリマーは、少なくとも60質量%、又は少なくとも70質量%の1,3-ブタジエンから誘導される単位と、0~40質量%、又は0~30質量%の1つ以上のコモノマーから誘導される単位とを含む。
【0035】
一実施形態では、本開示のジエンポリマーは、0~20質量%の、1,3ブタジエン以外の1つ以上の共役ジエンから誘導される単位を含む。
【0036】
一実施形態では、本開示によるジエンポリマーは、最大で49質量%までの1つ以上のビニル芳香族のコモノマーから誘導される単位、好ましくは5質量%~40質量%の1つ以上のビニル芳香族のコモノマーから誘導される単位を含む。好ましくは、本開示のジエンポリマーは、ポリマーの質量を基準にして最大で49質量%、又は0~40質量%の、スチレンから誘導される単位を含む。
【0037】
一実施形態では、本開示によるポリマーは、少なくとも75%又は少なくとも95質量%の、1種又はそれより多い共役ジエンモノマーから誘導される単位を含む。一実施形態では、本開示によるポリマーは、55質量~92質量%の1つ以上の共役ジエンモノマーから誘導される単位と、5.8質量~45質量%のビニル芳香族コモノマーから誘導される単位とを含む。
【0038】
適切な共重合性コモノマーとしては、1つ以上のアルファ-オレフィン、例えば、エテン、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、及びそれらの組み合わせがさらに挙げられる。
【0039】
一実施形態では、本開示によるジエンポリマーは、0~20質量%の、エテン、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン及びそれらの組み合わせから誘導される単位を含む。
【0040】
適切なコモノマーとしては、架橋部位、分岐部位、分岐、又は官能化された基を含む官能基を導入する1つ以上の別の共重合性コモノマーも挙げられるが、これらに限定されない。本開示の一実施形態では、ジエンポリマーは、0質量~10質量%又は0質量~5質量%の、1つ以上のこのような別のコモノマーから誘導される単位を含む。
【0041】
上述したものと同じ化学的種類の1つ以上のコモノマーの組み合わせ、及び異なる化学的種類の1つ以上のコモノマーの組み合わせを使用することができる。
【0042】
本開示によるジエンポリマーは、100℃におけるムーニー粘度ML1+4が10~200ムーニー単位、例えば30~150又は35~85ムーニー単位であってよい。
【0043】
本開示によるジエンポリマーは、数平均分子量(Mn)が10,000g/mol~2,000,000g/mol、又は100,000~1,000,000g/mol、例えば100,000~400,000g/mol、又は200,000~300,000g/molであってよい。本開示の一実施形態では、ポリマーのMnは150kg/mol~320kg/molである。
【0044】
本開示によるジエンポリマーは、1.03~25、例えば1.03~5の分散性(本明細書では分子量分布又はMWDともいう)を有することができる。本開示の一実施形態では、ポリマーは、1.03~3.5又は1.03~2.0のMWDを有する。MWDは、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量Mnに対する比であり、すなわち、MWDはMw/Mnに等しい。
【0045】
本開示によるジエンポリマーは、ゴムであり、典型的には20℃未満のガラス転移温度を有する。これらは、例えば-120℃から20℃未満までのガラス転移温度(Tg)を有することができる。本開示の好ましい一実施形態では、ポリマーは、0℃~-110℃又は-10℃~-80℃のTgを有する。本開示の一実施形態では、ブタジエンポリマーは、約-50~-80℃のガラス転移温度を有する。
【0046】
本開示の一実施形態では、ジエンポリマーは、100,000~1,000,000の数平均分子量、及び30~150単位の100℃におけるムーニー粘度ML1+4、及び-110℃~0℃のガラス転移温度を有する。
【0047】
一実施形態では、本開示によるジエンポリマーは、30~150単位の100℃におけるムーニー粘度ML1+4、100,000~400,000g/モルの数平均分子量、-110℃~0℃のガラス転移温度、及び1.03~20の分子量分布(MWD)を有する。
【0048】
本開示によるジエンポリマーは、さらに官能化されていてもよく、C原子及びH原子に加えて、Si、S、N、O、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む1つ以上の官能基、好ましくは末端基を含むことができる。このようなさらに官能化されたポリマーは、例えば、反応性ポリマー鎖末端と、C原子及びH原子に加えて、Si、S、N、O、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む少なくとも1つの官能化反応剤とを反応させることを含む反応によって得ることができる。ポリマーとカップリング剤との反応の前、最中、又は後、好ましくは後に、少なくとも1つの官能化反応剤をポリマーと反応させることができる。必要であれば、続いてこの官能化反応の反応生成物を処理することによって、少なくとも1つの-OH基、-SH基、又は-COOH基、若しくはそれらの組み合わせ、又は-O基、-S基、-COO基から選択されるそれらのアニオン形態、及びそれらの組み合わせを生成することができる。少なくとも1つの-OH、-SH、若しくは-COOH基、若しくはそれらの組み合わせ、又は-O、-S、-COOから選択されるそれらのアニオン形態を生成するために、このような処理としては、例えばアルコール又は酸を加えることによる加水分解反応を含むことができるか、又は第1の官能化反応剤と反応する少なくとも1つの別の官能化反応剤を用いた処理を行うことを含む。
【0049】
ポリマーの製造方法
本開示のホモポリマー又はコポリマーは、当技術分野において公知の方法によって調製することができる。重合は、ランダムコポリマーともよばれる統計ポリマー、ブロックコポリマー、勾配コポリマー、又はそれらの組み合わせを製造するために行うことができ、当業者に公知の線状及び分岐構造を含むことができる。
【0050】
上記ポリマーは、1つ以上の配位触媒を用いるアニオン重合又は触媒重合を含むプロセスによって得ることができる。これとの関連における配位触媒としては、チーグラー・ナッタ触媒又は単金属触媒システムが挙げられる。好ましい配位触媒は、Ni、Co、Ti、Zr、Nd、V、Gd、Cr、Mo、W、又はFeに基づくものである。好ましくは、重合反応は、アニオン溶液重合を含む。アニオン溶液重合の開始剤としては、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属に基づく有機金属が挙げられる。例としては、メチルリチウム、エチルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、ペンチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、シクロヘキシルリチウム、オクチルリチウム、デシルリチウム、2-(6-リチオ-n-ヘキソキシ)テトラヒドロピラン、3-(tert-ブチルジメチルシロキシ)-1-プロピルリチウム、フェニルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、p-トルイルリチウム、及び第3級N-アリルアミンから誘導されるアリルリチウム化合物、例えば[1-(ジメチルアミノ)-2-プロペニル]リチウム、[1-[ビス(フェニルメチル)アミノ]-2-プロペニル]リチウム、[1-(ジフェニルアミノ)-2-プロペニル]リチウム、[1-(1-ピロリジニル)-2-プロペニル]リチウム、第2級アミンのリチウムアミド、例えば、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウム1-メチルイミダゾリジド、リチウム1-メチルピペラジド、リチウムモルホリド、リチウムジシクロヘキシルアミド、リチウムジベンジルアミド、リチウムジフェニルアミドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記アリルリチウム化合物及び上記リチウムアミドは、有機リチウム化合物と、それぞれの第3級N-アリルアミン又はそれぞれの第2級アミンとを反応させることによってその場で調製することもできる。二官能性及び多官能性有機リチウム化合物、例えば1,4-ジリチオブタン、ジリチウムピペラジドを使用することもできる。好ましくは、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、又はそれらの組み合わせが使用される。開始剤によって、アニオン性反応性モノマーが形成され、反応性カルバニオンモノマーと別のモノマーとの反応によって重合が成長反応をして、反応性カルバニオンポリマー鎖末端が形成される。1つ以上の配位触媒を用いた重合の場合、その触媒によって反応性鎖末端が形成される。
【0051】
ポリマーの構造を制御するため、特に、凝集を回避するため、又は不規則構造を増やすために、当技術分野において公知のランダマイザー(ランダム化剤)及び制御剤を重合中に使用することができる。このような反応剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールジ-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-tert-ブチルエーテル、2-(2-エトキシエトキシ)-2-メチル-プロパン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルテトラヒドロフルフリルエーテル、ヘキシルテトラヒドロフルフリルエーテル、2,2-ビス(2-テトラヒドロフリル)プロパン、ジオキサン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-エチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、1,2-ジピペリジノエタン、1,2-ジピロリジノエタン、1,2-ジモルホリノエタン、カリウム塩及びナトリウム塩であって、アルコール類、フェノール類、カルボン酸類、スルホン酸類のカリウム塩及びナトリウム塩、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。本開示の一実施形態では、ポリマーはランダムポリマーであり、好ましくは、少なくとも1つのランダマイザーが重合反応において使用される。
【0052】
本開示の一実施形態では、ポリマーはランダムポリマーである。一実施形態では、ポリマーはブロックコポリマーである。ブロックコポリマーを生成させるためには、重合は好ましくは1つのモノマーで開始され、続いて、行われるブロックのサイズにより、別の(コ)モノマーが添加される。モノマーを添加する順序は、どの異なるモノマーのブロックの形成が望まれるかによって適合させることができる。本開示の一実施形態では、このようなブロックは、重合の開始時又は終了時又はその両方で形成される。
【0053】
一実施形態では、重合は、少なくとも1つの溶媒の存在下で行われ、好ましくは溶液中で行われる。溶液重合に好ましい溶媒としては、不活性非プロトン性溶媒、例えば脂肪族炭化水素が挙げられる。具体例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、及びシクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,4-ジメチルシクロヘキサン、及びそれらの異性体を含めたそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例としては、アルケン、例えば1-ブテン、又は芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、又はプロピルベンゼン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。これらの溶媒は、個別に使用したり、混合物として使用したりすることができる。好ましい溶媒としては、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、及びn-ヘキサンが挙げられる。適切であれば、これらの溶媒を極性溶媒と混合することもできる。
【0054】
重合は、(コ)モノマー及び溶媒を最初に導入することと、次に開始剤又は触媒を添加することによって重合を開始することとにより行うことができる。重合は、モノマー及び溶媒を添加することによって重合反応器が満たされる供給プロセスにおいて行うこともできる。開始剤又は触媒は、モノマー及び溶媒とともに導入される、又は添加される。反応器中に溶媒を導入し、開始剤又は触媒を添加し、続いてモノマーを添加することなどの変形形態を使用することができる。重合は、連続式又はバッチ式で行うことができる。重合中又は重合終了時にさらなるモノマー及び溶媒を添加することができる。
【0055】
重合は、常圧又は高圧(例えば、1~10bar)又は減圧下で行うことができる。典型的な反応温度としては室温が挙げられるが、コモノマーの性質及び量によっては、反応温度は室温よりも高い場合も、低い場合もある。典型的な範囲としては、例えば、連続断熱プロセスにおいて-12℃~140℃、又はバッチプロセスにおいて50~120℃が挙げられる。
【0056】
重合反応によって、反応性ポリマー鎖末端、好ましくはアニオン性鎖末端が得られる。重合反応の所望の進行度において、例えばポリマーの所望の転化率又は所望の分子量範囲が実現されたときに、反応性ポリマー鎖末端を含む重合混合物又は溶液を、本開示による少なくとも1つのシロキサン系カップリング剤と接触させる。典型的には、重合反応終了時、例えば少なくとも90%、又は少なくとも95%のモノマーが消費された後に、カップリング反応を行うことが望ましい。例えば、モノマー供給の停止又は中断の前又は後に、カップリング剤を添加することができる。カップリング剤は、純物質として、又は溶液又は分散物として添加することができる。好ましくなく必要でもないが、本開示による不飽和シロキサン以外のカップリング剤をさらに使用することができる。典型的には、カップリング剤の添加は20℃~130℃、又は50℃~130℃の反応温度において行われる。
【0057】
ジエンゴムを製造するためにシロキサン系カップリング剤を用いることの別の利点は、それらを用いて得られるポリマーは、さらに官能化されて、さらなる官能基、好ましくは末端基を有するジエンゴムを製造できることである。したがって、本開示による方法は、少なくとも1つの官能基をポリマーに導入するための少なくとも1つの官能化剤とポリマーを反応させるステップをさらに含むことができ、このステップは、ステップ(ii)の前、後、又は最中に行うことができる。典型的には、このような官能化反応剤は、炭素原子及び水素原子に加えて、Si、O、S、及びNから選択されるヘテロ原子、好ましくはSi及びOから選択されるヘテロ原子の組み合わせ、Si、O、及びSから選択される組み合わせ、並びにSi、O、及びNの組み合わせ、又はN及びOの組み合わせを含む脂肪族化合物である。典型的には、これらによって、直接、又は加水分解若しくは別の官能化剤(functional agent)との反応、又はその両方のいずれかで、-OH、-COOH、-SH、又はそれらの塩、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの極性基を有するポリマーが得られる。典型的には、官能化剤は、5,000g/モル未満、又はさらには2,000g/モル未満の分子量を有する。
【0058】
当技術分野において公知の官能化反応剤を使用することができる。官能化剤の例としては、線状又は分岐のアルコキシシラン、並びに米国特許出願公開第2013/0281605A1号明細書、米国特許出願公開第2013/0338300A1号明細書、米国特許出願公開第2013/0280458A1号明細書、米国特許出願公開第2016/0075809A1号明細書、米国特許出願公開第2016/0083495A1号明細書、国際公開第2021/009154A1号パンフレット、米国特許第4,894,409号明細書、及び国際公開第2021/009156号パンフレットに記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
好ましい官能化剤としては、線状又は分岐状のアルコキシシラン、線状又は分岐状のシラン、及び
【化7】
からなる群から選択される反応剤、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0060】
本開示の一実施形態では、官能化反応剤は、線状又は分岐状のシラン又はシロキサンである。本開示の別の一実施形態では、官能化反応剤は環状反応剤である。本開示の一実施形態では、官能化反応剤は、環状であり、4~7員の脂肪族環状の環状環、より好ましくは5又は6員の脂肪族環状環を有し、この環のいずれかは、少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個の炭素原子と、N、O、S、Si、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのヘテロ原子とを有する。本開示の別の一実施形態では、官能化反応剤は、環状であり、3~20員の環状構造を有し、この環は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの-Si(R1R2)-O-単位を有し、ここでR1及びR2は、互いに独立に、H、C-C10飽和炭化水素基であって、任意選択により、O、N、S、Si、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよいC-C10飽和炭化水素基から選択される。好ましくは、R1及びR2は、メチル、エチル、プロピル、及びブチルから選択される。
【0061】
式(6)による官能化反応剤:
式(6)による反応剤としては、シクロシロキサン系官能化反応剤が挙げられる。式(6)中、R及びRは、同じ又は異なり、H、C-C10飽和炭化水素基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、及びブチルに対応し、ここで、C-C10飽和炭化水素基は、任意選択によりO、N、S、Si、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、nは3~10、好ましくは4~6から選択される整数である。式(6)による反応剤の具体例としては、限定するものではないが、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンが挙げられ、例えば米国特許出願公開第2016/0075809A1号明細書に記載されるように、式(6)による反応剤は、直接又は間接的に(例えばそれに続く加水分解によって)、シラノール(-Si(R)(R)-OH)又はシラノレート(-Si(R)(R)-O)基)をもたらすことができる。
【0062】
式(7)による官能化反応剤:
式(7)による反応剤としては、シララクトン系官能化反応剤が挙げられる。式(7)中、R及びRは、同じ又は異なり、それぞれ、H、又は1~20個の炭素原子を有する基から選択され、好ましくはアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アルカリール(alkaryl)、アルカリールオキシ(alkaryloxy)、アラルキル、又はアラルコキシから選択され;
、Rは、同じ又は異なり、それぞれ、H、又は1~20個の炭素原子を有する基、好ましくは、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、又はアラルキルから選択され、
Aは、二価の有機基、好ましくは1~26個の炭素原子を有し、かつ、水素原子に加えて、O、N、S、及びSiから選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい二価の有機基である。
【0063】
好ましくはR、Rは、同じ又は異なり、H、(C-C24)-アルキル、(C-C24)-アルコキシ、(C-C24)-シクロアルキル、(C-C24)-シクロアルコキシ、(C-C24)-アリール、(C-C24)-アリールオキシ、(C-C24)-アルカリール、(C-C24)-アルカリールオキシ、(C-C24)-アラルキル、又は(C-C24)-アラルコキシ基から選択され、これらは、任意選択により、O、N、S又はSiから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0064】
好ましくはR、Rは、同じ又は異なり、それぞれ、H、(C-C24)-アルキル、(C-C24)-シクロアルキル、(C6-24)-アリール、(C-C24)-アルカリール(alkaryl)、又は(C-C24)-アラルキル基から選択され、これらは任意選択により、O、N、S、又はSiから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0065】
本開示の一実施形態では、Aは:
-Xn-(CY1H)m-(CY2Y3)o-(CY1H)p-
で表され、ここで、nは1又は0であり、mは1、2、3、又は4であり、oは0、1、又は2であり、pは0、1、又は2であり、好ましくはn、m、o、及びpの合計は2又は3であり;
Xは、O、S、NRであり、ここで、Rは、H、又はC1-C3アルキルであるか、又はXは、N(Si(アルキル))であり、ここでそれぞれの「アルキル」は、互いに独立に、C1~C6のアルキル、-オキシアルキル、又はアルコキシを表し;
Y1は、H又はC1-C3アルキルであり、Y2は、H又はC1-C3アルキルであり、Y3は、H又はC1-C3アルキルであり、好ましくはY2及びY3の少なくとも1つはHである。
【0066】
Aの具体的で非限定的な例としては:
-CH-;-CHCH-;-CHCHCH-;-C(CH)-CH-;-CH-C(CH)-CH-;-CH(CH)-C(CH)H-;
-CH(CH)-CH-C(CH)H-;-CH-C(CH)H-C(CH)H-;-CH(CH)-C(CH)H-CH-;-O-CH-;
-O-CHCH-;-O-CHCH-CH-;-O-C(CH)H-;-O-CHCH-;-O-C(CH)H-CH-;
-O-CH-C(CH)H-;-O-CH-C(CH)H-CH-;-O-CHCH-C(CH)H-;-O-C(CH)H-CH-CH-;
-S-CH-;-S-CHCH-;-S-CHCH-CH-;-S-C(CH)H-;-S-CHCH-;-S-C(CH)H-CH-;
-S-CH-C(CH)H-;-S-CH-C(CH)H-CH-;-S-CHCH-C(CH)H-;-S-C(CH)H-CH-CH-;
-NH-CH-;-NH-CHCH-;-NH-CHCH-CH-;-NH-C(CH)H-CH-;-NH-CH-C(CH)H-;
-NH-CH-C(CH)H-CH-;-NH-CHCH-C(CH)H-;-NH-C(CH)H-CH-CH-;
-N(CH)-CH-;-N(CH)-CH-;-N(CH)-CHCH-;-N(CH)-CHCH-CH-;
-N(CH)-C(CH)H-CH-;-N(CH)-CH-C(CH)H-;-N(CH)-CH-C(CH)H-CH-;
-N(CH)-CHCH-C(CH)H-;-N(CH)-C(CH)H-CH-CH-;
N(Si(アルキル))-CH-;-N(Si(アルキル))-CHCH-;N(Si(アルキル))-CHCHCH-;
-N(Si(アルキル))-C(CH)H-;-N(Si(アルキル))-CHCH-;-N(Si(アルキル))-C(CH)H-CH-;
-N(Si(アルキル))-CH-C(CH)H-;-N(Si(アルキル))-CH-C(CH)H-CH-;
-N(Si(アルキル))-CHCH-C(CH)H-;-N(Si(アルキル))-C(CH)H-CH-CH
が挙げられる。
【0067】
式(7)による反応剤の例としては:2,2-ジメチル-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2,4-トリメチル-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2,5-トリメチル-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2,4,5-テトラメチル-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2-ジエチル-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン-8-オン、2,2-ジエトキシ-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2-ジメチル-1,4-ジオキサ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2,5-トリメチル-1,4-ジオキサ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2,3,3-テトラメチル-1,4-ジオキサ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2-ジメチル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2-ジエチル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2-ジフェニル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロネキサン-6-オン、2-メチル-2-エテニル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2,5-トリメチル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2-ジメチル-1-オキサ-4-アザ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2,4-トリメチル-1-オキサ-4-アザ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,4-ジメチル-2-フェニル-1-オキサ-4-アザ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2-ジメチル-4-トリメチルシリル-1-オキサ-4-アザ-2-シラシクロヘキサン-8-オン、2,2-ジエトキシ-4-メチル-1-オキサ-4-アザ-2-シラシクロヘキサン-6-オン、2,2,4,4-テトラメチル-1-オキサ-2,4-ジシラシクロヘキサン-8-オン、3,4-ジヒドロ-3,3-ジメチル-1H-2,3-ベンゾオキサシリン-1-オン、2,2-ジメチル-1-オキサ-2-シラシクロペンタン-5-オン、2,2,3-トリメチル-1-オキサ-2-シラシクロペンテン-5-オン、2,2-ジメチル-4-フェニル-1-オキサ-2-シラシクロペンタン-5-オン、2,24(tert-ブチル)-1-オキサ-2-シラシクロペンタン-5-オン、2-メチル-2-(2-プロペン-1-イル)-1-オキサ-2-シラシクロペンタン-5-オン、1,1-ジメチル-2,1-ベンゾオキサシロール-3(1H)-オン、2,2-ジメチル-1-オキサ-2-シラシクロヘプタン-7-オンが挙げられる。
【0068】
式(7)による反応剤は、米国特許出願公開第2016/0075809号明細書の特に[0034]~[0042]に記載されている。このような反応剤を単独で使用することで、又はこれを別の官能化反応剤、例えば式(6)による反応剤に加えることによって、シラカルボキシレート基、例えば下記一般式:
-Si(R)(R)-C(R)(R)-A-COO
による基を形成することができる。
【0069】
式(8)による官能化反応剤:
式(8)による反応剤としては、オキサ-シラシクロアルカンが挙げられる。式(8)中、R、R、R、R、及びAは、式(7)に記載のものと同じである。
【0070】
式(8)による具体的な反応剤の例としては:2,2-ジメチル-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジエチル-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジプロピル-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン、2-メチル-2-フェニル-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジフェニル-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン、2,2,5,5-テトラメチル-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン、2,2,3-トリメチル-1-オキサ-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジメチル-1-オキサ-2-シラシクロペンタン、2,2,4-トリメチル-1-オキサ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメチル-1,4-ジオキサ-2-シラシクロヘキサン、2,2,5,5-テトラメチル-1,4-ジオキサ-2,5-ジシラシクロヘキサン、2,2,4-トリメチル-1-オキサ-4-アザ-2-シラシクロヘキサン、ベンゾ-2,2-ジメチル-1,4-ジオキサ-2-シラシクロヘキサン、ベンゾ-2,2,4-トリメチル-1-オキサ-4-アザ-2-シラシクロヘキサンが挙げられる。式(8)による反応剤は、例えば米国特許出願公開第2013/0281605A1号明細書に記載されている。式(8)による反応剤を使用することで、式-S(R)(R)-C(R)(R)-A-OHに対応するカルビノール基を得ることができる。
【0071】
式(9)による官能化反応剤:
式(9)による反応剤としては、ビス(トリアルキルシリル)ペルオキシドが挙げられる。R、R、及びRは、同一又は異なっていてよく、O、N、S、及びSi、並びにそれらの組み合わせから選択されるヘテロ原子を任意選択により含んでいてもよい線状又は分岐状又は環状のアルキルから選択される。好ましくは、これらは、C1-C10線状アルキルから選択され、好ましくはこれらは全て同一である。好ましくはR、R、及びRの少なくとも1つはメチルであり、より好ましくは全てがメチルである。
【0072】
式(10)による官能化反応剤:
式(10)による反応剤としては、環状尿素が挙げられる。式(10)中、Rは、1~20個の炭素原子を有し、C及びHに加えて、好ましくは互いに独立してO、N、S、又はSiから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、二価の、飽和又は不飽和、線状又は分岐状の、好ましくは脂肪族の炭化水素基を表す。好ましくはRは一般式(11):
-[CHX-[CHX-[O]-[CHX- (11)
に対応し、式中、zは1又は0であり、o、p、及びqは、独立して0、1及び2から選択され、但し、o、p、及びqの少なくとも1つは0ではない。X、X、及びXは、独立の、H、及び1~12個の炭素原子を有する、線状若しくは分岐状のアルキル基、アルキルアリール基、及びアリール基、並びにアミノアルキル(N-R)基から選択され、Rは、1~12個の炭素原子を有する線状又は分岐状又は環状のアルキル基又はアルキルアリール基であり、X及びXは、炭素-炭素結合を形成して炭素鎖中に不飽和を得るためのそれらの間の化学結合を表すことができる。o、p、q、X、X、及びXは、炭素原子の総数が20以下となるように選択される。
【0073】
本開示の一実施形態では、Rは、置換されたアルキレンから、例えばX、X、及びXの少なくとも1つがHではない式(11)に対応する置換されたアルキレンから選択される。
【0074】
本開示の一実施形態では、Rは、非置換アルキレンから、例えばX、X、及びXの全てがHである式(11)に対応する非置換アルキレンから選択される。好ましい一実施形態では、Rは、-[(CH)-に対応し、ここで、nは、1~5、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2の整数である。
【0075】
本開示の一実施形態では、Rは、不飽和の置換又は非置換アルキレンから選択され、例えば、X及びXが一緒になって炭素-炭素結合を形成している式(IIa)に対応する。不飽和アルキレンの具体例としては、-CH=CH-又は-CH-CH=CH-が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
式(10)中、R及びRは、同一又は異なり、1~20個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の炭化水素基を表し、ここで炭化水素基は、C原子及びH原子に加えて、好ましくはO、N、S、及びSiからなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。例えば、R及びRは、同一又は異なっていてよく、好ましくはO、N、S、又はSiから独立して選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、-(C-C20)-アルキル基、-(C-C20)-シクロアルキル基、-(C-C20)-アリール基、-(C-C20)-アルカリール基、又は-(C-C20)-アラルキル基から選択される。好ましくはR、Rは、互いに独立に、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、アルキル基1つ当たり1~4個の炭素原子のアルキル基を有するトリアルキルシリル、フェニル、及び1つ、2つ、若しくは3つのメチル基、エチル基、プロピル基、及び/又はブチル基で独立して置換されたフェニルから選択される。
【0077】
式(10)による物質の好ましい具体例としては、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-フェニル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジフェニル-2-イミダゾリジノン、1,3,4-トリメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ビス(トリメチルシリル)-2-イミダゾリジノン、1,3-ジヒドロ-1,3-ジメチル-2H-イミダゾール-2-オン、テトラヒドロ-1,3-ジメチル-2(1H)-ピリミジノン、テトラヒドロ-1-メチル-3-フェニル-2(1H)-ピリミジノン、テトラヒドロ-1,3,5-トリメチル-2(1H)-ピリミジノン、テトラヒドロ-3,5-ジメチル-4H-1,3,5-オキサジアジン-4-オン、テトラヒドロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリアジン-2(1H)-オン、ヘキサヒドロ-1,3-ジメチル-2H-1,3-ジアゼピン-2-オンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に好ましい例は、DMIともよばれる1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンであり、すなわち、Rが-CH-CH-である、及び/又はR及びRの両方が-CHである。
【0078】
式(10)による反応剤は、例えば、米国特許第4,894,409号明細書、並びに国際特許出願の国際公開第2021/009154号パンフレット及び国際公開第2021/009156号パンフレットに記載されている。
【0079】
上述した官能化反応剤は、ポリマーの反応性鎖末端と反応することができ、したがって、本明細書では「オメガ官能化反応剤」ともよばれる。オメガ官能化反応剤の添加の代わりに、又はこれに加えて、「アルファ官能化剤」を重合開始時に、例えば官能化開始剤として添加することができる。典型的にはこれによって、アルファ官能化ポリマー、すなわち、鎖のはじまりの部分に極性基を有するポリマーが得られる。アルファ官能化反応剤の例は、欧州特許出願公開第2847264 A1号明細書及び欧州特許出願公開第2847242 A1明細書に記載されている。
【0080】
重合反応が、カップリング反応剤を用いた反応によって、又は上述した1つ以上のオメガ官能化剤を用いた任意選択によって行ってもよい反応によって開始するのではない場合、重合反応は、例えばクエンチングによって停止することができる。当技術分野において公知のクエンチング剤を使用することができる。重合を停止させるための典型的なクエンチング剤としては、アルコール、例えばオクタノールが挙げられる。
【0081】
ポリマーは、当技術分野において知られているように、後処理及び単離を行うことができる。立体障害のあるフェノール類、芳香族アミン、ホスフィット、チオエーテルなどの当技術分野において公知の酸化防止剤を反応混合物に添加することができる。好ましくは、これらは、本開示のポリマーの後処理の前又は最中に添加することができる。TDAE(Treated Distillate Aromatic Extract(処理留出物芳香族抽出物))、MES(Mild Extraction Solvates(軽度抽出溶媒和物))、RAE(Residual Aromatic Extract(残留芳香族抽出物))、TRAE(Treated Residual Aromatic Extract(処理残留芳香族抽出物))、ナフテン系油、及び重質ナフテン系油などのジエンゴムに使用されるエクステンダーオイルを、油展ゴムを得るための後処理の前又は最中に反応混合物に添加することができる。蒸留、蒸気を用いたストリッピングなどの従来方法によって、又は必要であれば高温において、真空若しくは減圧を使用することによって、溶媒を除去することができる。典型的には、溶媒は再利用(リサイクル)される。ポリマークラムは、ミル上でさらなる乾燥がされ、又はミル上で加工され、例えばシートに加工され、又は圧縮して、例えばベールにすることができる。
【0082】
ゴムコンパウンド
本開示によるポリマーは、ゴムコンパウンドの製造に使用することができる。ゴムコンパウンドは、本開示による少なくとも1つのポリマーを少なくとも1つのフィラーと混合することを含むプロセスによって調製することができる。ゴムコンパウンドは、加硫可能であってよく、1つ又は2つ以上の硬化剤をさらに含むことができる。硬化剤は、ジエンポリマーを架橋(硬化)させることができ、本明細書では「架橋剤」又は「加硫剤」ともよばれる。適切な硬化剤としては、硫黄、硫黄系化合物、及び有機若しくは無機の過酸化物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
本開示の好ましい一実施形態では、硬化剤は硫黄を含む。単一の硬化剤の代わりに、1つ以上の硬化剤の組み合わせを使用することができ、又は1つ以上の硬化剤と1つ以上の硬化促進剤又は硬化触媒との組み合わせを使用することができる。硫黄供与体として作用する硫黄含有化合物の例としては、硫黄、ハロゲン化硫黄、ジチオジモルホリン(DTDM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、及びジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。硬化促進剤の例としては、アミン誘導体、グアニジン誘導体、アルデヒドアミン縮合生成物、チアゾール、チウラムスルフィド、ジチオカルバメート、及びチオホスパート(thiophospahte)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
本開示の別の一実施形態では、硬化剤としては、過酸化物が挙げられる。加硫剤として用いられる過酸化物の例としては、ジ-tert-ブチル-ペルオキシド、ジ-(tert-ブチル-ペルオキシ-トリメチル-シクロヘキサン)、ジ-(tert-ブチル-ペルオキシ-イソプロピル)ベンゼン、ジクロロ-ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、tert-ブチル-クミル-ペルオキシド、ジメチル-ジ(tert-ブチル-ペルオキシ)ヘキサン、及びジメチル-ジ(tert-ブチル-ペルオキシ)ヘキシン、及びブチル-ジ(tert-ブチル-ペルオキシ)バレレートが挙げられるが、これらに限定されない。必要に応じて、スルフェンアミド型、グアニジン型、又はチウラム型の加硫促進剤を加硫剤とともに用いることができる。
【0085】
添加する場合、加硫剤は、典型的にはゴム100質量部当たり0.5~10質量部、好ましくは1~6質量部の量で存在する。
【0086】
ゴムコンパウンドは、タイヤ、又はサイドウォール若しくはタイヤトレッドなどのタイヤの構成要素の製造に適している。タイヤ又はタイヤの構成要素は、典型的には加硫形態であるゴムコンパウンドを含む。
【0087】
従来のフィラーを使用することができる。従来のフィラーとしては、シリカ及び炭素系フィラー、例えばカーボンブラックが挙げられる。フィラーは、単独で使用することができ、又は混合物で使用することができる。特に好ましい形態では、ゴム組成物は、シリカフィラーとカーボンブラックとの混合物を含む。シリカフィラーのカーボンブラックに対する質量比は、0.01:1~50:1、好ましくは0.05:1~20:1であってよい。
【0088】
好ましくは、フィラーとしては、好ましくは5~1,000、好ましくは20~400m/gのBET表面積(窒素吸収法)を有するシリカ含有粒子が挙げられる。このようなフィラーは、例えば、シリケートの溶液からの沈殿によって、又はハロゲン化ケイ素の火炎加水分解によって得ることができる。シリカ含有フィラー粒子は、10~400nmの粒径を有することができる。シリカ含有フィラーは、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、又はTiの酸化物を含むこともできる。酸化ケイ素系フィラーの別の例としては、ケイ酸アルミニウム、好ましくは20~400m/gのBET表面積及び10~400nmの一次粒径を有するアルカリ土類金属ケイ酸塩、例えばケイ酸マグネシウム又はケイ酸カルシウム、天然シリケート、例えばカオリン、及び別の天然シリケート、例えばクレイ(層状シリカ)が挙げられる。フィラーのさらなる例としては、ガラス粒子に基づくフィラー、例えばガラスビーズ、微小球、ガラス繊維、及びガラス繊維製品(マット、ストランド)が挙げられる。
【0089】
シリカ含有フィラーなどの極性フィラーは、改質して、それらをより疎水性にすることができる。適切な改質剤としては、シラン又はシラン系化合物が挙げられる。このような改質剤の典型的な例としては、限定するものではないが、下記一般式(7):
(RO)Si-R-X (7)
に対応する化合物が挙げられ、式中、それぞれのR、R、Rは、互いに独立に、アルキル基であり、好ましくはR、R、Rは、全てメチル又は全てエチルであり、Rは、1~20個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族の連結基であり、Xは、硫黄含有官能基であり、-SH、-SCN、-C(=O)S、又はポリスルフィド基から選択される。
【0090】
上述のように改質されたシリカの代わりに、又はこれに加えて、このような改質は、その場で行うことができ、例えば配合中、又はタイヤ若しくはその構成要素の製造プロセス中に、例えば改質剤、好ましくはシラン又はシラン改質剤、例えば式(7)によるものを、ゴムコンパウンドの製造時に添加することによって、行うことができる。
【0091】
酸化ケイ素以外の金属酸化物に基づくフィラーとしては、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。別のフィラーとしては、金属炭酸塩、例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、及びそれらの組み合わせ、金属水酸化物、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びそれらの組み合わせ、3~8個の炭素原子を有するアルファ-ベータ-不飽和脂肪酸及びアクリル酸若しくはメタクリル酸の塩、例えば、アクリル酸亜鉛、亜鉛ジアクリレート、メタクリル酸亜鉛、亜鉛ジメタクリレート、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0092】
ここでの開示の別の実施形態では、ゴムコンパウンドは、炭素に基づく1つ以上のフィラー、例えば1つ以上のカーボンブラックを含む。カーボンブラックは、例えば、ランプブラック法、ファーネスブラック法、又はガスブラック法によって製造することができる。好ましくは、カーボンブラックは、20~200m/gのBET表面積(窒素吸収法)を有する。適切な例としては、SAF、ISAF、HAF、FEF、及びGPFブラックが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
適切なフィラーの別の例としては、炭素-シリカ二重相フィラー、リグニン若しくはリグニン系材料、デンプン若しくはデンプン系材料、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0094】
好ましい一実施形態では、フィラーは、1つ以上の酸化ケイ素、カーボンブラック、又はそれらの組み合わせを含む。
【0095】
フィラーの典型的な量としては、ゴム100部当たり5~200部、例えば、ゴム100質量部に対して10~150質量部、又は10~95質量部が挙げられる。
【0096】
ゴムコンパウンドは、本開示によるジエンゴム以外の1つ以上の追加のゴムと、1つ又は2つ以上のゴム添加剤とをさらに含んでいてもよい。追加のゴムとしては、例えば、天然ゴム及び合成ゴムが挙げられる。存在する場合、これらは、組成物中のゴムの総量を基準にして0.5~95質量%の範囲内、好ましくは10~80質量%の範囲内の量で使用することができる。適切な合成ゴムの例としては、BR(ポリブタジエン)、アクリル酸アルキルエステルコポリマー、IR(ポリイソプレン)、E-SBR(乳化重合によって製造されたスチレン-ブタジエンコポリマー)、S-SBR(溶液重合によって製造されたスチレン-ブタジエンコポリマー)、IIR(イソブチレン-イソプレンコポリマー)、NBR(ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー)、HNBR(部分又は完全水素化NBRゴム)、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー)、及びそれらの混合物が挙げられる。-60℃より高いガラス温度を有する天然ゴム、E-SBR、及びS-SBRと、Ni、Co、T、i、又はNdに基づく触媒を用いて製造された高シス含有量(>90%)のポリブタジエンゴムと、最大80%のビニル含有量を有するポリブタジエンゴムと、それらの混合物とが、自動車用タイヤを製造する場合に特に対象となる。
【0097】
ゴムコンパウンドは、1つ以上のゴム添加剤を含むこともできる。ゴム添加剤は、ゴム組成物の加工特性を改善することができる、ゴム組成物を架橋させる役割を果たすことができる、ゴムから製造された加硫物の物理的性質を改善することができる、ゴムとフィラーとの間の相互作用を改善することができる、又はゴムをフィラーに結合させる役割を果たすことができる構成要素である。ゴム助剤としては、反応促進剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン安定剤、加工助剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ろう、エクステンダー、有機酸、シラン類、遅延剤、金属酸化物、エクステンダーオイルであって、DAE(Distillate Aromatic Extract(留出物芳香族抽出物))、TDAE(Treated Distillate Aromatic Extract(処理留出物芳香族抽出物))、MES(Mild Extraction Solvates(軽度抽出溶媒和物))、RAE(Residual Aromatic Extract(残留芳香族抽出物))、TRAE(Treated Residual Aromatic Extract(処理残留芳香族抽出物))、ナフテン系油、及び重質ナフテン系油などのエクステンダーオイル、並びに活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
ゴム添加剤の総量は、組成物中の全ゴム100質量部を基準にして1~300質量部、好ましくは5~150質量部の範囲であってよい。
【0099】
ゴム組成物は、(加硫性)ゴムコンパウンドの製造及び加工のための従来の加工装置を用いて調製することができ、ローラー、ニーダー、密閉式ミキサー、又は混合押出機を挙げることができる。ゴム組成物は、1段階又は多段階プロセスで製造することができ、2~3の混合段階が好ましい。架橋剤、例えば硫黄、及び促進剤は、別の混合段階で、例えばローラー上で添加することができ、30℃~90℃の範囲内の温度が好ましい。架橋剤、例えば硫黄、及び促進剤は、好ましくは最終混合段階で添加される。
【0100】
用途
本開示によるゴム組成物は、ゴム加硫物の製造、特にタイヤ、特にタイヤトレッドの製造に使用することができる。
【0101】
ゴム加硫物は、本開示による加硫性組成物を準備することと、それに対して少なくとも1つの硬化反応を行うこととによって得ることができる。加硫性及び/又は加硫後のゴム組成物は、硬化反応の前、最中、又は後に成形を行うことができる。成形は、型成形、押出成形、及びそれらの組み合わせを含むプロセスステップによって行うことができる。
【0102】
本明細書で得られる(加硫性)ゴム組成物は、成形物品の製造、例えばケーブルシース、ホース、駆動ベルト、コンベアベルト、ロールライニング、靴底、シーリングリング、及びダンピング要素の製造にも適している。
【0103】
本開示の別の一態様は、本開示による加硫性ゴム組成物の加硫によって得られる加硫ゴム組成物を含む成形物品、特にタイヤの構成要素、例えばタイヤトレッド、又は完成タイヤに関する。
【0104】
以下の実施例は、本開示をさらに説明するために提供されるが、これらの実施例に記載の実施形態に本開示が限定されることを意図するものではない。
【実施例
【0105】
実施例
方法
35℃においてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(溶媒としてTHF、及びポリスチレン較正)を用いて、ポリマーの数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、分散性D=Mw/Mn(本明細書では分子量分布又はMWDともよばれる)、及びカップリング度を決定した。
【0106】
100℃においてML(1+4)の測定条件でDIN ISO 289-1(2018)に準拠してムーニー粘度を測定した。ASTM D 1646-00に準拠した同じ測定から、ムーニー応力緩和(MSR)を決定した。
【0107】
DIN53513-1990に準拠して、Gabo-Testanlagen GmbH,Ahlden,GermanyのEplexor 500 N上で、10Hzにおいて、-100℃~+100℃の温度範囲、1K/分の加熱速度で、加硫コンパウンドの動的性質を求めた(試料:lt=60mm10mm2mmのストリップ;サンプルホルダー間の自由長30mm)。この方法で以下の特性を決定することができる:tanδ(60℃)、すなわち60℃における損失係数(E”/E’);及びtanδ(0℃)、すなわち0℃における損失係数(E”/E’)。tanδ(60℃)は、運転条件下のタイヤからのヒステリシス損失の尺度となる。tanδ(60℃)が低下すると、タイヤの転がり抵抗が低下する。tanδ(0℃)は、材料のウェットグリップの尺度となる。tanδ(0℃)が増大すると、ウェットグリップが増大する。
【0108】
DIN53513-1990に準拠して弾性特性を決定した。エラストマー試験システム(MTS Systems GmbH,831 Elastomer Test System)を使用した。測定は、二重剪断モードにおいて、剪断方向に静的予備ひずみなし、円筒形試料(2つの試料のそれぞれが20×6mmであり、5mmの厚さにあらかじめ圧縮される)上で約0の振動、及び0.1~40%のひずみ範囲で10Hzの測定周波数で行った。この方法を以下の特性を得るために用いた:
G’(0.5%):0.5%振幅掃引における動的弾性率、G’(15%):15%振幅掃引における動的弾性率、G’(0.5%)-G’(15%):15%の振幅掃引に対する0.5%における動的弾性の差、tanδ(max):60℃における全測定範囲の最大損失係数(G”/G’)。
【0109】
G’(0.5%)-G’(15%)の差は、混合物のペイン効果の指標となる。この値が小さいほど、混合物中のフィラーの分散が良好になり、ゴム-フィラーの相互作用が良好になる。tanδ(max)は、運転条件下のタイヤからのヒステリシス損失の別の尺度となる。tanδ(max)が低下すると、タイヤの転がり抵抗が低下する。
【0110】
DIN 53512に準拠して60℃における反発弾性を決定した。
【0111】
ポリマー
実施例1(比較用)
不活性な20L反応器に、8500gのヘキサン、1500gの1,3-ブタジエン、及び10mmolのn-ブチルリチウム(ヘキサン中の23質量%溶液として)を入れ、70℃で45分間撹拌した。このポリマー溶液を10mmolのn-オクタノールで失活(クエンチ)させ、4.5gのIrganox(登録商標)1520(2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール)で安定化させ、エタノール中で沈殿させ、真空オーブン中65℃において乾燥させた。
【0112】
この参考例は、ジエンポリマーの製造の一般手順を示している。1つ以上の共役ジエンと、スチレンなどの1つ以上のビニル芳香族のモノマーとのコポリマーを同じ方法で製造することができる。
【0113】
実施例1A(比較用)
不活性な20L反応器に、8500gのヘキサン、1500gの1,3-ブタジエン、及び16mmolのn-ブチルリチウム(ヘキサン中の23質量%溶液として)を入れ、70℃において45分間撹拌した。2.56mmolのSiClを添加し、30分間撹拌した。このポリマー溶液を16mmolのn-オクタノールで失活(クエンチ)させ、7.5gのIrganox(登録商標)1520(2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール)で安定化させた。溶媒を水蒸気蒸留によって除去し、ポリマーを真空オーブン中65℃において乾燥させた。ムーニー粘度(100℃におけるML(1+4))を測定すると、83MUであった。
【0114】
実施例2(比較用)
不活性な20L反応器に、8500gのヘキサン、1500gの1,3-ブタジエン及び14.25mmolのn-ブチルリチウム(ヘキサン中の23質量%溶液として)を入れ、70℃において45分間撹拌した。このリビングポリマー溶液に7.125mmolの2.2-ビス(2-テトラヒドロフリル)-プロパンを添加し、5分間撹拌した。1.924mmolのSiClを添加し、5分間撹拌した。8.55mmolのオクタメチルシクロテトラシロキサンを添加し、15分間撹拌した。8.55mmolの2,2-ジメチル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オンを添加した。このポリマー溶液反応混合物の撹拌を20分間続け、14.25mmolのn-オクタノールでクエンチし(失活させ)、7.5gのIrganox(登録商標)1520(2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール)で安定化させた。2phrのステアリン酸を添加し、溶媒を水蒸気蒸留によって除去した。ポリマーを真空オーブン中65℃で乾燥させた。
【0115】
実施例3
16mmolのn-BuLiを使用し、反応物を45分間撹拌した後、8mmolの1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンをポリマー溶液に添加し、ポリマー溶液をさらに20分間撹拌したことを除いて、実施例1を繰り返した。
【0116】
実施例4
不活性な20L反応器に、8500gのヘキサン、1500gの1,3-ブタジエン及び16mmolのn-ブチルリチウム(ヘキサン中の23質量%溶液として)を入れ、70℃において45分間撹拌した。8mmolの1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンを添加し、20分間撹拌した。8mmolの2,2-ジメチル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オンを添加し、反応混合物をさらに20分間撹拌した。このポリマー溶液を16mmolのn-オクタノールで失活(クエンチ)させ、7.5gのIrganox(登録商標)1520(2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール)で安定化させた。溶媒を水蒸気蒸留によって除去し、ポリマーを真空オーブン中65℃で乾燥させた。
【0117】
実施例5
不活性な20L反応器に、8500gのヘキサン、1500gの1,3-ブタジエン及び15.7mmolのn-ブチルリチウム(ヘキサン中の23質量%溶液として)を入れ、70℃において45分間撹拌した。このポリマー溶液に15.7mmolの1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンを添加し、溶液を20分間撹拌した。15.7mmolの2,2,4-トリメチル-1-オキサ-4-アザ-2-シラシクロヘキサンを添加し、反応混合物をさらに20分間撹拌した。このポリマー溶液を16mmolのn-オクタノールで失活(クエンチ)させ、7.5gのIrganox(登録商標)1520(2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール)で安定化させた。実施例1に記載したようにして、ポリマーを単離し乾燥させた。
【0118】
実施例6
不活性な20L反応器に、8500gのヘキサン、1500gの1,3-ブタジエン、及び14.25mmolのn-ブチルリチウム(ヘキサン中の23質量%溶液として)を入れ、70℃において60分間撹拌した。このリビングポリマー溶液に7.125mmolの2,2-ビス(2-テトラヒドロフリル)-プロパンを添加し、5分間撹拌した。14.25mmolの1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンを添加し、15分間撹拌した。14.25mmolの2,2-ジメチル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オンを添加し、反応混合物をさらに20分間撹拌した。このポリマー溶液を14.25mmolのn-オクタノールで失活(クエンチ)させ、7.5gのIrganox(登録商標)1520(2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール)で安定化させた。2phr(樹脂100質量部あたりの質量部数)のステアリン酸を添加した後、溶媒を水蒸気蒸留によって除去し、ポリマーを真空オーブン中65℃で乾燥させた。
【0119】
実施例7(請求項の範囲外)
不活性な20L反応器に、8500gのヘキサン、1500gの1,3-ブタジエン、及び15mmolのn-ブチルリチウム(ヘキサン中の23質量%溶液として)を入れ、70℃において60分間撹拌した。このリビングポリマー溶液に7.5mmol2,2-ビス(2-テトラヒドロフリル)-プロパンを添加し、反応混合物を5分間撹拌した。0.525mmolのオクタビニルオクタシルセスキオキサン(POSS-オクタビニル置換されたもの、Sigma Aldrich製)を添加し、反応混合物を5分間撹拌した。11mmolのオクタメチルシクロテトラシロキサンを添加し、15分間撹拌した。11mmolの2,2-ジメチル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オンを添加し、このポリマー溶液をさらに20分間撹拌した。ポリマー溶液を15mmolのn-オクタノールで失活(クエンチ)させ、7.5gのIrganox(登録商標)1520(2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール)で安定化させた。実施例6のように後処理を行った。
【0120】
実施例8
不活性な20L反応器に、8500gのヘキサン、1500gの1,3-ブタジエン、及び14.25mmolのn-ブチルリチウム(ヘキサン中の23質量%溶液として)を入れ、70℃において60分間撹拌した。このリビングポリマー溶液に7.125mmolの2,2-ビス(2-テトラヒドロフリル)-プロパンを添加し、5分間撹拌した。1.14mmolの1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンを添加し、5分間撹拌した。10.83mmolのオクタメチルシクロテトラシロキサンを添加し、15分間撹拌した。10.83mmolの2,2-ジメチル-1-オキサ-4-チア-2-シラシクロヘキサン-6-オンを添加し、反応混合物をさらに20分間撹拌した。このポリマー溶液を14.25mmolのn-オクタノールで失活(クエンチ)させ、7.5gのIrganox(登録商標)1520(2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール)で安定化させた。2phrのステアリン酸を添加した後、溶媒を水蒸気蒸留によって除去し、ポリマーを真空オーブン中65℃で乾燥させた。
【0121】
【表1】
【0122】
実施例3~8は、カップリングしたポリマーを調製するために、本開示による不飽和シロキサンを使用することができることを示している。カップリング度及び低いMSR値によって実証されているように、ポリマーのカップリングが起こる。本開示による不飽和シロキサンを用いて調製したポリマーは、実施例4~8によって実証されているように様々な官能化反応剤と反応させることもできる。
【0123】
コンパウンドの研究
極性官能基で官能化されているジエンゴムによって、タイヤコンパウンド中のフィラーの分散を改善できることが知られている。タイヤコンパウンド中、ゴム及びフィラーは、主成分であり、ゴムマトリックス中のフィラーの分散が良好であると、改善されたタイヤ特性を最終的に得ることができる。官能化ジエンゴムを含むゴムコンパウンドは、典型的には、それらの非官能化対応物よりも加工が困難である。本開示による不飽和シロキサン系カップリング剤を用いて得られるポリマーは、タイヤの構成要素の製造に使用することもでき、改善されたフィラーの相互作用を有するコンパウンドを得ることもできることが分かった。
【0124】
実施例9~16
1.5Lのニーダー中で、表3中に示されている成分を使用し、表2中に示されている混合手順(混合プロトコル)を使用して、実施例1、1A、2、3、6、7、及び8において得たジエンゴムを含むゴム組成物(実施例9~16)を調製した。結果として得られた組成物を160℃において30分間加硫させた。加硫物の性質を表3及び3A中にまとめてある。
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
【0127】
上記の結果は、本発明による不飽和シロキサンを用いて得られたポリマー(実施例11~13)が、参考ポリマー1及び2(比較例9及び10)と比較して、改善されたコンパウンドのムーニー粘度を有していることを示しており、これはより良好な加工性を示している。参考ポリマーと比較して、改善されたペイン効果指数(より小さい[G‘(0.5%)-G‘(15%)])及び改善された転がり抵抗指標(反発60℃、最大tanδ、及び60℃におけるtanδ)によって示されるように、実施例11~13は優れたフィラー分散を示した。ウェットグリップ性能(0℃におけるtanδ)は、参考ポリマーのものと同様であった。
【0128】
【表4】
【0129】
結果は、公知のカップリング剤SiClと比較して、本開示によるシロキサンカップリング剤を用いて改質したポリマーの性質が改善されることを示している。
【0130】
実施例16(比較用)
水分を含まない、窒素でフラッシングした反応器に、ヘキサン、ブタジエン、スチレン、及び22.9mmolのDTHFPを投入した。この反応混合物を33℃に加熱し、BuLiを加えた後70分間重合させた(T Max 72.8℃)。オクタメチルシクロテトラシロキサン及びテトラクロロシランを添加し、70℃において10分間反応させた。2,2-ジメチル-[1,4,2]オキサチアシリナン-6-オンを添加し、30分間反応させた。次に反応を止め、IRGANOX 1520で安定化させた。水蒸気蒸留及び減圧下60℃における乾燥によってポリマーを単離した。
【0131】
実施例17
水分を含まない、窒素でフラッシングした20L反応器に、8500gのヘキサン、165gのスチレン、1335gのブタジエン、及び2.39mmolのDTHFPを投入した。この反応混合物を47.5℃に加熱し、14mmolのBuLiを添加することによって断熱重合を開始し、60分間反応させた(T Max 70℃)。その後、3.5mmolの1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンを添加し、70において10分間反応させる。次のステップでは、14mmolの2,2-ジメチル-[1,4,2]オキサチアシリナン-6-オンを添加し、70℃において10分間反応させる。14mmolの1-オクタノールを添加することによって反応を止め、Irganox 1520で安定化させる。ポリマーセメントの水蒸気蒸留及び減圧下60℃での乾燥によって、ポリマーが得られる。
【0132】
【表5】
【0133】
100phrのカップリングしたポリマーを使用し、かつ、VSL 4526-2HMを使用しなかったことを除いて、表3に記載の成分及び量を使用してコンパウンドを調製した。コンパウンドは、前述のプロトコルにより調製した。
【0134】
【表6】
【0135】
表5中に示されている結果は、本開示によるカップリング剤を用いたカップリングによって、スチレン-ブタジエンコポリマーの特性も改善されることを示している。ムーニー粘度及びG‘(0.5%)-G‘(15%)の値の低下は、加工が容易になり、ゴム-フィラー相互作用が改善されたことを示している(ペイン効果)。転がり抵抗指標も改善された(反発の増加及び60℃にtanδの低下)。ウェットグリップ特性は、0℃におけるtanδの増大によって示されるように、改善された。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリジエンゴムの製造方法であって、
(i)少なくとも1種の脂肪族共役ジエンモノマー、好ましくは4~25個の炭素原子を有する少なくとも1種の脂肪族共役ジエンモノマーを重合して、反応性ポリマー鎖末端を有するポリマーを製造するステップ、及び
(ii)前記反応性ポリマー鎖末端の少なくとも一部を、2~20個の不飽和シロキサン単位、又は3~10個の単位を含むカップリング剤と反応させるステップを含み、前記カップリング剤は、少なくとも2つの不飽和シロキサン単位を有する環状構造を含むが、前記カップリング剤は多環式ではない、製造方法。
【請求項2】
前記不飽和シロキサン単位が少なくとも1つのアルケニル基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不飽和シロキサン単位が、ビニル(-CH=CH)、アリル(-CH-CH=CH)、n-ブテニル(-CHCHCH=CH)、イソブテニル(-CH(CH)CH=CH)、n-ペンテニル(-CHCHCHCH=CH)、イソペンテニル(-CH(CH)CHCH=CH、-CHCH(CH)CH=CH)、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのアルケニル基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カップリング剤の前記不飽和シロキサン単位が、下記式(1):
【化1】
に対応し、式中、R1はアルケニルを表し、それぞれのR2は、独立に、H、OH、又は1~20個の炭素原子を有し、任意選択により、O、N、Si、S、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘテロ原子を有していてもよい有機基を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カップリング剤の前記不飽和シロキサン単位が、下記式(1):
【化2】
に対応し、式中、R1は、ビニル(-CH=CH)、アリル(-CH-CH=CH)、n-ブテニル(-CHCHCH=CH)、イソブテニル(-CH(CH)CH=CH)、n-ペンテニル(-CHCHCHCH=CH)、イソペンテニル(-CH(CH)CHCH=CH、-CHCH(CH)CH=CH)からなる群から選択されるアルケニルを表し、それぞれのR2は、独立に、H、OH、又は1~20個の炭素原子を有し、任意選択により、O、N、Si、S、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘテロ原子を有していてもよい有機基を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
それぞれのR2は、独立に、H、OH、2~10個の炭素原子を有するアルケニル、1~10個の炭素原子を有するアルキル(ここで、前記のアルキル鎖又はアルケニル鎖又はその両方は、エーテル酸素原子によって1回又は2回以上中断されていてもよい)、又は最大10個までのケイ素原子を有するシロキサン若しくはポリシロキサン(ここで、前記のシロキサン又はポリシロキサンは、任意選択により、アルキル基又はアルケニル基又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの脂肪族置換基を有する少なくとも1つのケイ素原子を有していてもよい)を表し、又は、少なくとも1つのR2はメチルであり、又は、全てのR2基は、メチル若しくはエチルのいずれか又はそれらの組み合わせである、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記カップリング剤の不飽和シロキサン単位が下記式(2):
【化3】
に対応し、式中、それぞれのRは、独立に、H、OH、又は1~20個の炭素原子を有し、且つ任意選択により、O、N、Si、S、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘテロ原子を有していてもよい有機基、を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
Rは、H、OH、2~10個の炭素原子を有するアルケニル、1~10個の炭素原子を有するアルキル(ここで、前記のアルキル鎖又はアルケニル鎖又はその両方は、エーテル酸素原子によって1回又は2回以上中断されていてもよい)、又は最大10個までのケイ素原子を有するシロキサン若しくはポリシロキサン(ここで、前記シロキサン又はポリシロキサンは、任意選択により、アルキル基又はアルケニル基又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの脂肪族置換基を有する少なくとも1つのケイ素原子を有していてもよい)を表し、又は、少なくとも1つのRはメチルであり、又は、全てのR基は、メチル若しくはエチルのいずれか又はそれらの組み合わせである、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記カップリング剤が、少なくとも3つの不飽和シロキサン単位を含む環状構造を有する、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記カップリング剤が下記式(3):
【化4】
に対応し、式中、nは、1~5、又は1~3の整数であり、R1はアルケニルを表し、それぞれのR2は、独立に、H、OH、又は1~20個の炭素原子を有し、任意選択により、O、N、Si、S、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘテロ原子を有していてもよい有機基を表すか、又は、R1はビニルであり、かつそれぞれのR2は、独立に、C-C-アルキルから選択される、又はメチルから選択される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記カップリング剤が、5000g/mol未満、又は2000g/mol未満の分子量を有する、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記共役ジエンモノマーが1,3-ブタジエンである、請求項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(i)が、1つ以上の共重合性ビニル芳香族コモノマーを共重合させることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(i)がスチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、パラ-tert-ブチルスチレン、及びそれらの組み合わせから選択される1つ以上の共重合性ビニル芳香族コモノマーを共重合させることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、ステップ(ii)の前、後、又は最中に、少なくとも1つの官能基をポリマーに導入するための少なくとも1つの官能化剤を前記ポリマーと反応させることを含み、前記官能基が、C原子及びH原子に加えて、Si、S、N、O、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する、請求項に記載の方法。
【請求項16】
重合反応を停止させるステップ、安定剤及び/又は油を添加するステップ、ポリマーを単離するステップ、前記ポリマーをベール、顆粒、又は粉末に成形するステップの少なくとも1つをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項17】
請求項に記載の方法によって得られるポリジエンゴム。
【請求項18】
請求項1に記載の方法によって得られるポリジエンゴムを含む硬化性組成物であって、前記ポリジエンゴムを硬化させるための少なくとも1つの加硫剤をさらに含み、好ましくは、ジエンゴム100質量部当たり0.5~10質量部の量の前記加硫剤を含む、硬化性組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の方法によって得られるポリジエンゴムを含む硬化性組成物を硬化させることによって得られる硬化したポリジエンゴムを含む組成物。
【請求項20】
請求項1に記載の方法によって得られるポリジエンゴムを含む硬化性組成物を硬化させることによって得られる硬化したポリジエンゴムを含む組成物であって、組成物がタイヤ又はタイヤトレッドから選択される物品である、組成物。
【国際調査報告】