(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】がんを治療するための併用療法の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20241219BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20241219BHJP
A61K 31/527 20060101ALI20241219BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241219BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/506
A61K31/527
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K47/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531205
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 US2022081592
(87)【国際公開番号】W WO2023114871
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518346476
【氏名又は名称】リキュリウム アイピー ホールディングス リミテッド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サマター,アフメド アブディ
(72)【発明者】
【氏名】ドネイト,フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジアリ
(72)【発明者】
【氏名】マ,ジアンフィ
(72)【発明者】
【氏名】バンカー,ケビン デュアン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ピーター キンファ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA19
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZC202
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE03
4C086BC50
4C086CB06
4C086CB09
4C086CB40
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
がんの治療のための、ZN-C3又はアゼノセルチブ(azenosertib)としても知られ
るWEE1阻害剤化合物Aと、CDK4/6阻害剤(パルボシクリブなど)又はHER-2阻害剤(トラスツズマブなど)のいずれかとを含む併用療法が、本明細書に開示される。特に、本発明の組み合わせは、トリプルネガティブ乳がん、ER+乳がん、HER2+乳がん、及びHERZ低乳がんなどの乳がんの治療を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患又は状態を治療するための化合物の組み合わせの使用であって、前記組み合わせが、有効量の化合物(A)及び有効量の化合物(B)、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩を含み、
化合物(A)が、
【化1】
又はその薬学的に許容される塩であり、
化合物(B)が、CDK4/6阻害剤、HER-2小分子阻害剤、HER-2抗体、HER-2抗体-薬物コンジュゲート、及びHER2二重特異性抗体、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
前記CDK4/6阻害剤が、パルボシクリブ、アベマシクリブ、リボシクリブ、トリラシクリブ(G1T28)、レロシクリブ(G1T38)、SHR6390、FCN-437、AMG 925、BPI-1178、BPI-16350、ビロシクリブ、BEBT-209、TY-302、TQB-3616、HS-10342、PF-06842874、CS-3002、及びMM-D37K、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
前記HER-2抗体が、トラスツズマブ、トラスツズマブ-dkst、ペルツズマブ、及びZW25、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
前記HER-2抗体-薬物コンジュゲートが、Ado-トラスツズマブエムタンシン(T-DM1)、ARX788、ALT-P7、DS8201a、MEDI4276、MM302、PF-06804103、SYD985、XMT-1522、ZW49、MRG002、GQ1001、A166、RC48-ADC、BDC-1001、及びFS-1502、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
前記HER2二重特異性抗体が、マルゲツキシマブ、エルツマキソマブ、HER2Bi-aATC、MM-111、MCLA-128、BTRC4017A、GBR-1302、及びPRS-343、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
前記HER-2小分子阻害剤が、ツカチニブ、ラパチニブ、及びネラチニブ、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、使用。
【請求項2】
化合物(B)が、CDK4/6阻害剤又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記CDK4/6阻害剤が、パルボシクリブである、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記CDK4/6阻害剤が、アベマシクリブである、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
前記CDK4/6阻害剤が、リボシクリブである、請求項2に記載の使用。
【請求項6】
前記CDK4/6阻害剤が、トリラシクリブである、請求項2に記載の使用。
【請求項7】
化合物(B)が、HER-2抗体又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記HER-2抗体が、トラスツズマブである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
化合物(B)が、HER-2抗体-薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
化合物(B)が、HER2二重特異性抗体又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
前記疾患又は状態が、肺がん、胃がん、胃食道接合部腺がん及び乳がんからなる群から選択されるがんである、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記乳がんが、トリプルネガティブ乳がん、ER+乳がん、HER2陽性(HER2+)乳がん及びHER2低乳がんからなる群から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
ER+乳がんを治療するための薬品の調製における、有効量の化合物(A)又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩の使用であって、化合物(A)が、
【化2】
又はその薬学的に許容される塩である、使用。
【請求項14】
前記乳がんが、いずれの点変異ER変異も含まない、請求項11~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記乳がんが、エストロゲン受容体アルファ(ERα)をコードするエストロゲン受容体1(ESR1)内に少なくとも1つの点変異を有し、前記変異が、K303R、D538G、Y537S、E380Q、Y537C、Y537N、A283V、A546D、A546T、A58T、A593D、A65V、C530L、D411H、E279V、E471D、E471V、E523Q、E542G、F461V、F97L、G145D、G160D、G274R、G344D、G420D、G442R、G557R、H524L、K252N、K481N、K531E、L370F、L453F、L466Q、L497R、L536H、L536P、L536Q、L536R、L540Q、L549P、M388L、M396V、M421V、M437I、M522I、N156T、N532K、N69K、P147Q、P222S、P535H、R233G、R477Q、R503W、R555H、S282C、S329Y、S338G、S432L、S463P、S47T、S576L、V392I、V418E、V478L、V533M、V534E、Y537D及びY537Hからなる群から選択される、請求項11~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記がんが、ER陽性乳がんである、請求項11~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記がんが、ER陽性/HER2陰性乳がんである、請求項11~13のいずれか一項
に記載の使用。
【請求項18】
前記がんが、局所乳がんである、請求項11~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記がんが、転移性乳がんである、請求項11~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記がんが、再発性乳がんである、請求項11~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記がんが、内分泌療法で以前に治療されたことがある、請求項11~20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
治療が、選択的ER調節剤(SERM)によるものであった、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記選択的ER調節剤が、タモキシフェン、ラロキシフェン、オスペミフェン、バゼドキシフェン、トレミフェン、及びラソフォキシフェン、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
治療が、選択的ER分解剤(SERD)によるものであった、請求項21に記載の使用。
【請求項25】
前記選択的ER分解剤が、フルベストラント、(E)-3-[3,5-ジフルオロ-4-[(1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-3-メチル-1,3,4,9-テトラヒドロピリド[3,4-b]インドール-1-イル]フェニル]プロパ-2-エン酸(AZD9496)、(R)-6-(2-(エチル(4-(2-(エチルアミノ)エチル)ベンジル)アミノ)-4-メトキシフェニル)-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-オール(エラセストラント、RAD1901)、(E)-3-(4-((E)-2-(2-クロロ-4-フルオロフェニル)-1-(1H-インダゾール-5-イル)ブタ-1-エン-1-イル)フェニル)アクリル酸(ブリラネストラント、ARN-810、GDC-0810)、(E)-3-(4-((2-(2-(1,1-ジフルオロエチル)-4-フルオロフェニル)-6-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-3-イル)オキシ)フェニル)アクリル酸(LSZ102)、(E)-N,N-ジメチル-4-((2-((5-((Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-1H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エン-1-イル)ピリジン-2-イル)オキシ)エチル)アミノ)ブタ-2-エナミド(H3B-6545)、(E)-3-(4-((2-(4-フルオロ-2,6-ジメチルベンゾイル)-6-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-3-イル)オキシ)フェニル)アクリル酸(リントデストラント、G1T48)、D-0502、SHR9549、ARV-471、3-((1R,3R)-1-(2,6-ジフルオロ-4-((1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル)アミノ)フェニル)-3-メチル-1,3,4,9-テトラヒドロ-2H-ピリド[3,4-b]インドール-2-イル)-2,2-ジフルオロプロパン-1-オール(ギレデストラント、GDC-9545)、(S)-8-(2,4-ジクロロフェニル)-9-(4-((1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)オキシ)フェニル)-6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[7]アヌレン-3-カルボン酸(SAR439859)、N-[1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル]-6-[(6S,8R)-8-メチル-7-(2,2,2-トリフルオロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ピラゾロ[4,3-f]イソキノリン-6-イル]ピリジン-3-アミン(AZD9833)、OP-1250、及びLY3484356、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
治療が、アロマターゼ阻害剤によるものであった、請求項21に記載の使用。
【請求項27】
前記アロマターゼ阻害剤が、ステロイド性アロマターゼ阻害剤である、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記ステロイド性アロマターゼ阻害剤が、エキセメスタン及びテストラクトン、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記アロマターゼ阻害剤が、非ステロイド性アロマターゼ阻害剤である、請求項26に記載の使用。
【請求項30】
前記非ステロイド性アロマターゼ阻害剤が、アナスタゾール及びレトラゾール、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記乳がんが、以前に治療されたことがない、請求項11~20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
前記乳がんが、女性に存在する、請求項11~31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記女性が、閉経前の女性である、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記女性が、閉経周辺期の女性である、請求項32に記載の使用。
【請求項35】
前記女性が、閉経期の女性である、請求項32に記載の使用。
【請求項36】
前記乳がんが、閉経後の女性に存在する、請求項32に記載の使用。
【請求項37】
前記乳がんが、男性に存在する、請求項11~31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
前記乳がんが、15pg/mL超~350pg/mLの範囲の血清エストラジオールレベルを有する対象に存在する、請求項11~37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
前記乳がんが、15pg/mL以下の血清エストラジオールレベルを有する対象に存在する、請求項11~37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項40】
前記乳がんが、10pg/mL以下の血清エストラジオールレベルを有する対象に存在する、請求項11~37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項41】
有効量の化合物(A)及び有効量の化合物(B)、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、がんを治療する方法であって、
化合物(A)が、
【化3】
又はその薬学的に許容される塩であり、
化合物(B)が、CDK4/6阻害剤、HER-2小分子阻害剤、HER-2抗体、HER-2抗体-薬物コンジュゲート、及びHER2二重特異性抗体、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
前記CDK4/6阻害剤が、パルボシクリブ、アベマシクリブ、リボシクリブ、トリラシクリブ(G1T28)、レロシクリブ(G1T38)、SHR6390、FCN-437、AMG 925、BPI-1178、BPI-16350、ビロシクリブ、BEBT-209、TY-302、TQB-3616、HS-10342、PF-06842874、CS-3002、及びMM-D37K、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
前記HER-2抗体が、トラスツズマブ、トラスツズマブ-dkst、ペルツズマブ、及びZW25、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
前記HER-2抗体-薬物コンジュゲートが、Ado-トラスツズマブエムタンシン(T-DM1)、ARX788、ALT-P7、DS8201a、MEDI4276、MM302、PF-06804103、SYD985、XMT-1522、ZW49、MRG002、GQ1001、A166、RC48-ADC、BDC-1001、及びFS-1502、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
前記HER2二重特異性抗体が、マルゲツキシマブ、エルツマキソマブ、HER2Bi-aATC、MM-111、MCLA-128、BTRC4017A、GBR-1302、及びPRS-343、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
前記HER-2小分子阻害剤が、ツカチニブ、ラパチニブ、及びネラチニブ、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、方法。
【請求項42】
化合物(B)が、CDK4/6阻害剤又はその薬学的に許容される塩である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記CDK4/6阻害剤が、パルボシクリブである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記CDK4/6阻害剤が、アベマシクリブである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記CDK4/6阻害剤が、リボシクリブである、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記CDK4/6阻害剤が、トリラシクリブである、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
化合物(B)が、HER-2抗体又はその薬学的に許容される塩である、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記HER-2抗体が、トラスツズマブである、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
化合物(B)が、HER-2抗体-薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容される塩である、請求項42に記載の方法。
【請求項50】
化合物(B)が、HER-2抗体-薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容される塩であり、前記HER-2抗体が、トラスツズマブである、請求項42に記載の方法。
【請求項51】
化合物(B)が、fam-トラスツズマブ-デルクステカン-nxki(DS8201a)である、請求項42に記載の方法。
【請求項52】
化合物(B)が、HER2二重特異性抗体又はその薬学的に許容される塩である、請求項42に記載の方法。
【請求項53】
前記がんが、肺がん、胃がん、胃食道接合部腺がん及び乳がんからなる群から選択される、請求項41~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記がんが、トリプルネガティブ乳がん、ER+乳がん、HER2陽性(HER2+)乳がん及びHER2低乳がんからなる群から選択される乳がんである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
有効量の化合物(A)及び有効量の化合物(B)、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、トリプルネガティブ乳がんを治療する方法であって、
化合物(A)が、
【化4】
又はその薬学的に許容される塩であり、
化合物(B)が、fam-トラスツズマブ-デルクステカン-nxki(DS8201a)である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
例えば、本出願とともに提出された出願データシート又は請求において、2021年12月15日に出願された米国仮出願第63/265,441号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を含む、外国又は国内優先権の主張が確認される任意及び全ての出願が、37 CFR 1.57並びに規則4.18及び20.6に基づき、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本出願は、化学、生化学、及び医学の分野に関する。より具体的には、本明細書に開示されるのは、併用療法、並びに、本明細書に記載の併用療法を用いて疾患及び/又は状態を治療する方法である。
【背景技術】
【0003】
がんは、身体の他の部分に浸潤又は拡散する可能性がある異常な細胞増殖を伴う疾患群である。今日のがん治療には、手術、ホルモン療法、放射線、化学療法、免疫療法、標的療法、及びそれらの組み合わせが含まれる。生存率は、がんの種類によって、かつがんが診断されるステージによって変化する。2019年には、米国において約180万人ががんと診断され、推定606,880人ががんで死亡している。したがって、有効ながん治療の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、とりわけ、疾患又は状態(例えば、がん)の治療における使用のための、WEE1阻害剤(例えば、化合物A)と、CDK4/6阻害剤又はHER-2阻害剤とを含む併用療法を提供する。いくつかの実施形態では、HER-2阻害剤は、HER-2小分子阻害剤、HER-2抗体、HER-2抗体-薬物コンジュゲート、及びHER2二重特異性抗体、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩から選択される。いくつかの実施形態では、HER-2阻害剤は、HER-2抗体、HER-2抗体-薬物コンジュゲート、及びHER2二重特異性抗体、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩から選択される。
【0005】
一態様では、いくつかの実施形態は、有効量の化合物(A)及び有効量の化合物(B)、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、がんを治療する方法であって、
化合物(A)が、
【0006】
【化1】
又はその薬学的に許容される塩であり、化合物(B)が、CDK4/6阻害剤、HER-2小分子阻害剤、HER-2抗体、HER-2抗体-薬物コンジュゲート、及びHER
2二重特異性抗体、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、方法を提供する。
【0007】
一態様では、いくつかの実施形態は、有効量の化合物(A)及び有効量の化合物(B)、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、がんを治療する方法であって、
化合物(A)が、
【0008】
【化2】
又はその薬学的に許容される塩であり、化合物(B)が、HER-2小分子阻害剤、HER-2抗体、HER-2抗体-薬物コンジュゲート、及びHER2二重特異性抗体、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、方法を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、化合物(B)は、HER-2小分子阻害剤又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、化合物(B)は、HER-2抗体である。いくつかの実施形態では、化合物(B)は、HER-2抗体-薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、化合物(B)は、HER-2二重特異性抗体又はその薬学的に許容される塩である。
【0010】
一態様では、いくつかの実施形態は、有効量の化合物(A)及び有効量の化合物(B)、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、がんを治療する方法であって、
化合物(A)が、
【0011】
【化3】
又はその薬学的に許容される塩であり、化合物(B)が、CDK4/6阻害剤又はその薬学的に許容される塩である、方法を提供する。
【0012】
一態様では、いくつかの実施形態は、有効量の化合物(A)及び有効量の化合物(B)、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、トリプルネガティブ乳がんを治療する方法であって、
化合物(A)が、
【0013】
【化4】
又はその薬学的に許容される塩であり、
化合物(B)が、fam-トラスツズマブ-デルクステカン-nxki(DS8201a)である、方法を提供する。
【0014】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、有効量の化合物(A)又はその薬学的に許容される塩と、有効量の化合物(B)又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩とを含み得る、化合物の組み合わせに関する。
【0015】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、疾患又は状態を治療するための化合物の組み合わせの使用に関し、組み合わせは、有効量の化合物(A)、又はその薬学的に許容される塩と、有効量の化合物(B)、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩とを含む。本明細書に記載の他の実施形態は、疾患又は状態を治療するための薬品の製造における化合物の組み合わせの使用に関し、組み合わせは、有効量の化合物(A)、又はその薬学的に許容される塩と、有効量の化合物(B)、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩とを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、疾患又は状態は、本明細書に記載のがんであってもよい。
【0017】
一態様では、いくつかの実施形態は、疾患又は状態を治療するための化合物の組み合わせの使用であって、組み合わせが、有効量の化合物(A)及び有効量の化合物(B)、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩を含み、
化合物(A)が、
【0018】
【化5】
又はその薬学的に許容される塩であり、
化合物(B)が、CDK4/6阻害剤、HER-2小分子阻害剤、HER-2抗体、HER-2抗体-薬物コンジュゲート、及びHER2二重特異性抗体、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
CDK4/6阻害剤が、パルボシクリブ、アベマシクリブ、リボシクリブ、トリラシクリブ(G1T28)、レロシクリブ(G1T38)、SHR6390、FCN-437、AMG 925、BPI-1178、BPI-16350、ビロシクリブ(Birociclib)、BEBT-209、TY-302、TQB-3616、HS-10342、PF-06842874、CS-3002、及びMM-D37K、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
HER-2抗体が、トラスツズマブ、トラスツズマブ-dkst、ペルツズマブ、及び
ZW25、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
HER-2抗体-薬物コンジュゲートが、Ado-トラスツズマブエムタンシン(T-DM1)、ARX788、ALT-P7、Enhertu(登録商標)(fam-トラスツズマブ-デルクステカン-nxki、DS8201a)、MEDI4276、MM302、PF-06804103、SYD985、XMT-1522、ZW49、MRG002、GQ1001、A166、RC48-ADC、BDC-1001及びFS-1502、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
HER2二重特異性抗体が、マルゲツキシマブ、エルツマキソマブ(ertumaxomab)、
HER2Bi-aATC、MM-111、MCLA-128、BTRC4017A、GBR-1302、及びPRS-343、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、使用を提供する。
【0019】
例示的なHER-2抗体-薬物コンジュゲートは、Ferraro et al.,Implementing antibody-drug conjugates(ADCs)in HER2-positive breast cancer:state of the art and future directions.Breast Cancer Res(2021)23(1):84に記載されており(https://doi.org/10.1186/s13058-021-01459-y)、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0020】
いくつかの実施形態では、化合物(B)は、HER-2小分子阻害剤又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、化合物(B)は、ツカチニブ、ラパチニブ、及びネラチニブ、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩から選択されるHER-2低分子阻害剤である。いくつかの実施形態では、化合物(B)は、ツカチニブ又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、化合物(B)は、ラパチニブ又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、化合物(B)は、ネラチニブ又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、HER-2小分子阻害剤は、HER-2抗体(例えば、トラスツズマブ)と組み合わせて投与される。
【0021】
いくつかの実施形態では、化合物(B)は、CDK4/6阻害剤又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、化合物(B)は、
図1から選択されるCDK4/6阻害剤又はその薬学的に許容される塩である。
【0022】
いくつかの実施形態では、CDK4/6阻害剤は、パルボシクリブである。
【0023】
いくつかの実施形態では、CDK4/6阻害剤は、アベマシクリブである。
【0024】
いくつかの実施形態では、CDK4/6阻害剤は、リボシクリブである。
【0025】
いくつかの実施形態では、CDK4/6阻害剤は、トリラシクリブである。
【0026】
いくつかの実施形態では、化合物(B)は、HER-2抗体又はその薬学的に許容される塩である。
【0027】
いくつかの実施形態では、HER-2抗体は、トラスツズマブである。
【0028】
いくつかの実施形態では、化合物(B)は、HER-2抗体-薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、化合物(B)は、トラスツズマブ抗体-薬物コンジュゲート又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施
形態では、化合物(B)が、fam-トラスツズマブ-デルクステカン-nxki(DS8201a)である。
【0029】
いくつかの実施形態では、化合物(B)は、HER2二重特異性抗体又はその薬学的に許容される塩である。
【0030】
いくつかの実施形態では、化合物(B)は、
図2から選択される。
【0031】
いくつかの実施形態では、化合物(B)は、HER-2小分子阻害剤又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、化合物(B)は、ツカチニブ、ラパチニブ、及びネラチニブ、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩から選択されるHER-2低分子阻害剤である。いくつかの実施形態では、HER-2小分子阻害剤は、HER-2抗体(例えば、トラスツズマブ)又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与される。
【0032】
いくつかの実施形態では、疾患又は状態は、乳がんである。
【0033】
いくつかの実施形態では、疾患又は状態は、トリプルネガティブ乳がん(triple-negative breast cancer、TNBC)及びエストロゲン受容体陽性(estrogen receptor positive、ER+)乳がんからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、乳がんは、
ER陽性(ER+)乳がんである。いくつかの実施形態では、乳がんは、ER陽性、HER2陰性(ER+/HER2-)乳がんである。いくつかの実施形態では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)である。
【0034】
いくつかの実施形態では、乳がんは、HER2状態によって分類される。いくつかの実施形態では、乳がんは、HER2陽性(HER2+)乳がんである。いくつかの実施形態では、乳がんは、HER2低乳がんである。いくつかの実施形態では、乳がんは、HER2陰性(HER2-)乳がんとして分類される。
【0035】
いくつかの実施形態では、疾患又は状態は、肺がん、胃がん又は胃食道接合部腺がんである。
【0036】
一態様では、いくつかの実施形態は、ER+乳がんを治療するための薬品の調製又は製造における、有効量の化合物(A)又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩の使用であって、化合物(A)が、
【0037】
【化6】
又はその薬学的に許容される塩である、使用を提供する。
【0038】
いくつかの実施形態では、乳がんは、いずれのER点変異も含まない。
【0039】
いくつかの実施形態では、乳がんは、エストロゲン受容体アルファ(Estrogen receptor alpha、ERα)をコードするエストロゲン受容体1(Estrogen Receptor 1、ESR1
)内に少なくとも1つの点変異を有し、変異が、K303R、D538G、Y537S、E380Q、Y537C、Y537N、A283V、A546D、A546T、A58T、A593D、A65V、C530L、D411H、E279V、E471D、E471V、E523Q、E542G、F461V、F97L、G145D、G160D、G274R、G344D、G420D、G442R、G557R、H524L、K252N、K481N、K531E、L370F、L453F、L466Q、L497R、L536H、L536P、L536Q、L536R、L540Q、L549P、M388L、M396V、M421V、M437I、M522I、N156T、N532K、N69K、P147Q、P222S、P535H、R233G、R477Q、R503W、R555H、S282C、S329Y、S338G、S432L、S463P、S47T、S576L、V392I、V418E、V478L、V533M、V534E、Y537D及びY537Hからなる群から選択される。
【0040】
いくつかの実施形態では、乳がんは、ER陽性乳がんである。
【0041】
いくつかの実施形態では、乳がんは、ER陽性/HER2陰性乳がんである。
【0042】
いくつかの実施形態では、乳がんは、局所乳がんである。
【0043】
いくつかの実施形態では、乳がんは、転移性乳がんである。
【0044】
いくつかの実施形態では、乳がんは、再発性乳がんである。
【0045】
いくつかの実施形態では、乳がんは、内分泌療法で以前に治療されたことがある。いくつかの実施形態では、治療は、選択的ER調節剤(selective ER modulator、SERM)によるものであった。いくつかの実施形態では、選択的ER調節剤は、タモキシフェン、ラロキシフェン、オスペミフェン(ospemifene)、バゼドキシフェン、トレミフェン、及びラソフォキシフェン、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0046】
いくつかの実施形態では、以前の治療は、選択的ER分解剤(selective ER degrader
、SERD)によるものであった。いくつかの実施形態では、選択的ER分解剤が、フルベストラント、(E)-3-[3,5-ジフルオロ-4-[(1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-3-メチル-1,3,4,9-テトラヒドロピリド[3,4-b]インドール-1-イル]フェニル]プロパ-2-エン酸(AZD9496)、(R)-6-(2-(エチル(4-(2-(エチルアミノ)エチル)ベンジル)アミノ)-4-メトキシフェニル)-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-オール(エラセストラント(elacestrant)、RAD1901)、(E)-3-(4-((E)-
2-(2-クロロ-4-フルオロフェニル)-1-(1H-インダゾール-5-イル)ブタ-1-エン-1-イル)フェニル)アクリル酸(ブリラネストラント(brilanestrant
)、ARN-810、GDC-0810)、(E)-3-(4-((2-(2-(1,1-ジフルオロエチル)-4-フルオロフェニル)-6-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-3-イル)オキシ)フェニル)アクリル酸(LSZ102)、(E)-N,N-ジメチル-4-((2-((5-((Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-1H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エン-1-イル)ピリジン-2-イル)オキシ)エチル)アミノ)ブタ-2-エナミド(H3B-6545)、(E)-3-(4-((2-(4-フルオロ-2,6-ジメチルベンゾイル)-6-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-3-イル)オキシ)フェニル)アクリル酸(リントデストラント(rintodestrant)、G1T48)、D-0502、SHR9549、ARV-47
1、3-((1R,3R)-1-(2,6-ジフルオロ-4-((1-(3-フルオロプ
ロピル)アゼチジン-3-イル)アミノ)フェニル)-3-メチル-1,3,4,9-テトラヒドロ-2H-ピリド[3,4-b]インドール-2-イル)-2,2-ジフルオロプロパン-1-オール(ギレデストラント(giredestrant)、GDC-9545)、(S)-8-(2,4-ジクロロフェニル)-9-(4-((1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)オキシ)フェニル)-6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[7]アヌレン-3-カルボン酸(SAR439859)、N-[1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル]-6-[(6S,8R)-8-メチル-7-(2,2,2-トリフルオロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ピラゾロ[4,3-f]イソキノリン-6-イル]ピリジン-3-アミン(AZD9833)、OP-1250、及びLY3484356、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0047】
いくつかの実施形態では、以前の治療は、アロマターゼ阻害剤によるものであった。いくつかの実施形態では、アロマターゼ阻害剤は、ステロイド性アロマターゼ阻害剤である。
【0048】
いくつかの実施形態では、ステロイド性アロマターゼ阻害剤は、エキセメスタン及びテストラクトン、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0049】
いくつかの実施形態では、アロマターゼ阻害剤は、非ステロイド性アロマターゼ阻害剤である。いくつかの実施形態では、非ステロイド性アロマターゼ阻害剤は、アナスタゾール(anastazole)及びレトラゾール(letrazole)、又は前述のうちのいずれかの薬学的
に許容される塩からなる群から選択される。
【0050】
いくつかの実施形態では、乳がんは、以前に治療されたことがない。
【0051】
いくつかの実施形態では、乳がんは、女性に存在する。いくつかの実施形態では、女性は、閉経前の女性である。いくつかの実施形態では、女性は、閉経周辺期の女性である。いくつかの実施形態では、女性は、閉経期の女性である。いくつかの実施形態では、乳がんは、閉経後の女性に存在する。
【0052】
いくつかの実施形態では、乳がんは、男性に存在する。
【0053】
いくつかの実施形態では、乳がんは、ヒト対象に存在する。いくつかの実施形態では、乳がんは、15pg/mL超~350pg/mLの範囲の血清エストラジオールレベルを有する対象に存在する。
【0054】
いくつかの実施形態では、乳がんは、15pg/mL超~300pg/mL、20pg/mL超~350pg/mL、25pg/mL超~350pg/mL、30pg/mL超~350pg/mL、35pg/mL超~350pg/mL、40pg/mL超~350pg/mL、45pg/mL超~350pg/mL、50pg/mL超~350pg/mL、55pg/mL超~350pg/mL、60pg/mL超~350pg/mL、65pg/mL超~350pg/mL、70pg/mL超~350pg/mL、75pg/mL超~350pg/mL、80pg/mL超~350pg/mL、85pg/mL超~350pg/mL、90pg/mL超~350pg/mL、95pg/mL超~350pg/mL、100pg/mL超~350pg/mL、125pg/mL超~350pg/mL、150pg/mL超~350pg/mL、200pg/mL超~350pg/mL、250pg/mL超~350pg/mL又は300pg/mL超~350pg/mLの範囲の血清エストラジオールレベルを有する対象に存在する。
【0055】
いくつかの実施形態では、乳がんは、15pg/mL以下の血清エストラジオールレベルを有する対象に存在する。いくつかの実施形態では、乳がんは、10pg/mL以下の血清エストラジオールレベルを有する対象に存在する。
【0056】
いくつかの実施形態では、乳がんは、20pg/mL以下、19pg/mL以下、18pg/mL以下、17pg/mL以下、16pg/mL以下、15pg/mL以下、14pg/mL以下、13pg/mL以下、12pg/mL以下、11pg/mL以下又は10pg/mL以下の血清エストラジオールレベルを有する対象に存在する。
【0057】
一態様では、いくつかの実施形態は、有効量の化合物(A)及び有効量の化合物(B)、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、がんを治療する方法であって、
化合物(A)が、
【0058】
【化7】
又はその薬学的に許容される塩であり、
化合物(B)が、CDK4/6阻害剤、HER-2小分子阻害剤、HER-2抗体、HER-2抗体-薬物コンジュゲート、及びHER2二重特異性抗体、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
CDK4/6阻害剤が、パルボシクリブ、アベマシクリブ、リボシクリブ、トリラシクリブ(G1T28)、レロシクリブ(G1T38)、SHR6390、FCN-437、AMG 925、BPI-1178、BPI-16350、ビロシクリブ、BEBT-209、TY-302、TQB-3616、HS-10342、PF-06842874、CS-3002、及びMM-D37K、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
HER-2抗体が、トラスツズマブ、トラスツズマブ-dkst、ペルツズマブ、及びZW25、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
HER-2抗体-薬物コンジュゲートが、Ado-トラスツズマブエムタンシン(T-DM1)、ARX788、ALT-P7、DS8201a、MEDI4276、MM302、PF-06804103、SYD985、XMT-1522、ZW49、MRG002、GQ1001、A166、RC48-ADC、BDC-1001、及びFS-1502、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、
HER2二重特異性抗体が、マルゲツキシマブ、エルツマキソマブ、HER2Bi-aATC、MM-111、MCLA-128、BTRC4017A、GBR-1302、及びPRS-343、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、方法を提供する。
【0059】
いくつかの実施形態では、化合物(B)は、HER-2小分子阻害剤又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、化合物(B)は、ツカチニブ、ラパチニブ、及びネラチニブ、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩から選択されるHER-2低分子阻害剤である。いくつかの実施形態では、HER-2小分子阻害剤は、HER-2抗体(例えば、トラスツズマブ)又はその薬学的に許容される塩と組み合わせ
て投与される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図2】HER-2抗体、HER-2抗体-薬物コンジュゲート、及びHER2二重特異性抗体の例を提供する。
【
図3】MCF-7異種移植モデルにおける化合物(A)又はその薬学的に許容される塩のインビボ研究の結果を示す。
【
図4】ZR-75-1タモキシフェン耐性腫瘍モデルにおける化合物(A)若しくは薬学的に許容されるその塩、又はタモキシフェンのインビボ研究の結果を示す。
【
図5】ヒトHCC1428乳がん異種移植腫瘍における化合物(A)又はその薬学的に許容される塩のインビボ研究の結果を示す。
【
図6】MCF-7異種移植モデルにおける、単剤療法として、又はCDK4/6阻害剤、パルボシクリブと組み合わせた、化合物(A)又はその薬学的に許容される塩のインビボ研究の結果を示す。
【
図7】MCF-7異種移植モデルにおける、単剤療法として、又はCDK4/6阻害剤、パルボシクリブと組み合わせた、化合物(A)又はその薬学的に許容される塩のインビボ研究の結果を示す。
【
図8】ビヒクル、化合物(A)、トラスツズマブ、又は化合物(A)とトラスツズマブとの組み合わせで処置されたマウスにおける腫瘍体積変化を提供する。
【
図9】ビヒクル、化合物(A)、トラスツズマブ、又は化合物(A)とトラスツズマブとの組み合わせで処置されたマウスにおける腫瘍体積変化を提供する。
【
図10A】ビヒクル、化合物(A)、パルボシクリブ、又は化合物(A)とパルボシクリブとの組み合わせで処置されたパルボシクリブ耐性乳がん患者由来の異種移植(patient derived xenograft、PDX)モデル(CTG-1207)マウスにおける、それぞれ腫瘍体積及び体重の変化を提供する。
【
図10B】ビヒクル、化合物(A)、パルボシクリブ、又は化合物(A)とパルボシクリブとの組み合わせで処置されたパルボシクリブ耐性乳がん患者由来の異種移植(patient derived xenograft、PDX)モデル(CTG-1207)マウスにおける、それぞれ腫瘍体積及び体重の変化を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0061】
定義
別段の定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で参照される全ての特許、出願、公開出願及び他の出版物は、特に明記しない限り、参照によりそれらの全体が組み込まれる。本明細書のある用語に対して複数の定義が存在する場合、特に明記しない限り、この節にある定義が優先される。
【0062】
「薬学的に許容される塩」という用語は、それが投与される生物に著しい刺激をもたらさず、かつ化合物の生物活性及び特性を無効にしない化合物の塩を指す。いくつかの実施形態では、塩は、化合物の酸付加塩である。薬学的塩は、化合物を無機酸、例えば、ハロゲン化水素酸(例えば、塩酸又は臭化水素酸)、硫酸、硝酸、及びリン酸(2,3-ジヒドロキシプロピルニ水素ホスファートなど)と反応させることによって得られ得る。薬学的塩はまた、化合物を有機酸、例えば、脂肪族若しくは芳香族カルボン酸若しくはスルホン酸、例えば、ギ酸、酢酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、サリチル酸、2-オキソペンタン二酸、又はナフタレンスルホン酸と反応させることによって得られ得る。薬学的塩はまた、化合物を塩基と反応させて、塩、例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、又
はリチウム塩、アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム又はマグネシウム塩、炭酸塩の塩、重炭酸塩の塩、有機塩基の塩、例えば、ジシクロヘキシルアミン、N-メチル-D-グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、C1~C7アルキルアミン、シクロへキシルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、並びにアルギニン及びリシンなどのアミノ酸を有する塩を形成することによって得ることができる。化合物(A)及び/又は(B)について、当業者は、窒素ベースの基(例えば、NH2)のプロトン化によって塩が形成される場合、窒素ベースの基が正電荷と会合し得(例えば、NH2がNH3
+になり得る)、正電荷が負の電荷を持つ対イオン(Cl-など)によってバランスがとられ得ることを理解する。
【0063】
1つ以上のキラル中心を有する本明細書に記載の任意の化合物において、絶対立体化学が明示的に示されない場合、各中心が独立して、R配置若しくはS配置、又はこれらの混合物であってもよいことが理解される。したがって、本明細書に提供される化合物は、鏡像異性的に純粋な、鏡像異性的富化した、ラセミ混合物、ジアステレオマー的に純粋な化合物、ジアステレオマー的富化した化合物、又は立体異性混合物であってもよい。加えて、E又はZと定義され得る幾何異性体を生成する1つ以上の二重結合を有する、本明細書に記載の任意の化合物において、各二重結合が独立して、E若しくはZ、又はこれらの混合物であってもよいことが理解される。同様に、記載の任意の化合物において、全ての互変異性形態もまた含まれるよう意図されることが理解される。
【0064】
本明細書に開示される化合物が充填されていない原子価を有する場合、その原子価が、水素又はその同位体、例えば、水素-1(軽水素)及び水素-2(重水素)で充填されることを理解されたい。
【0065】
本明細書に記載の化合物が同位体で標識され得ることが理解される。重水素などの同位体での置換は、例えば、インビボ半減期の増加又は必要投薬量の低減など、より大きい代謝安定性に起因するある特定の治療上の利点をもたらし得る。化合物構造において表される各化学元素は、当該元素の任意の同位体を含み得る。例えば、化合物構造において、水素原子は、化合物中に存在すると明確に開示され得るか、又は理解され得る。水素原子が存在し得る化合物の任意の位置において、水素原子は、水素-1(軽水素)及び水素-2(重水素)を含むが、これらに限定されない、水素の任意の同位体であり得る。したがって、本明細書における化合物に対する言及は、文脈が明確にそうでないと示さない限り、全ての可能な同位体形態を包含する。
【0066】
本明細書に記載の方法及び組み合わせが、結晶形態(多形体としても既知であり、化合物の同じ元素組成の異なる結晶充填配置を含む)、非晶相、塩、溶媒和物、及び水和物を含むことが理解される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、水、エタノールなどの製薬的に許容される溶媒を有する溶媒和形態で存在する。他の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、非溶媒和形態で存在する。溶媒和物は、化学量論量又は非化学量論量のいずれかの溶媒を含有し、水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒での結晶化プロセス中に形成され得る。溶媒が水である場合に水和物が形成されるか、又は溶媒がアルコールである場合にアルコラートが形成される。加えて、本明細書に提供される化合物は、非溶媒和形態並びに溶媒和形態で存在することができる。概して、溶媒和形態は、本明細書に提供される化合物及び方法の目的で、非溶媒和形態と同等であるとみなされる。
【0067】
値の範囲が提供される場合、上限及び下限、並びにその範囲の上限と下限との間に介在する各値が、実施形態内に包含されることが理解される。
【0068】
本出願で使用される用語及び語句並びにこれらの変化形、特に添付の特許請求の範囲に
あるものは、特に明記しない限り、限定的ではなく非限定的であると解釈されるべきである。上記の例として、「含むこと」という用語は、「限定することなく含むこと」、「含むが、これらに限定されないこと」などを意味するよう解釈されるべきである。本明細書で使用される場合、「備えること」という用語は、「含むこと」、「含有すること」、又は「特徴とする」と同義語であり、包括的又は非限定的であり、追加の列挙されていない要素又は方法の工程を除外しない。「有すること」という用語は、「少なくとも有すること」と解釈されるべきである。「含む」という用語は、「含むが、これらに限定されない」と解釈されるべきである。「例」という用語は、考察中の項目の徹底的又は限定的なリストではなく例示的な実例を提供するために使用される。「好ましくは」、「好ましい」、「所望の」又は「望ましい」のような用語、並びに同様の意味の単語の使用は、ある特定の特徴がその構造又は機能にとって重大、本質的又は重要でさえあるということを暗示するものとしてではなく、むしろ単に特定の実施形態で利用される場合又はされない場合がある代替又は追加の特徴を強調することが意図されるものとして理解されるべきである。加えて、「備えること」という用語は、「少なくとも有すること」又は「少なくとも含むこと」という語句の同意語として解釈されるものとする。プロセスの文脈で使用される場合、「備えること」という用語は、プロセスが少なくとも列挙されたステップを含むが、追加のステップを含んでもよいことを意味する。化合物、組成物、又はデバイスの文脈で使用される場合、「備えること」という用語は、化合物、組成物、又はデバイスが少なくとも列挙された特徴又は構成要素を含むが、追加の特徴又は構成要素も含み得ることを意味する。
【0069】
本明細書の実質的にいかなる複数形及び/又は単数形の用語の使用に関しても、当業者は、文脈及び/又は用途に応じて適切に、複数形から単数形、及び/又は単数形から複数形に変換することができる。様々な単数形/複数形の入れ替えは、明確にするために本明細書で明示的に記載され得る。不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。ある特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されるという単なる事実は、利益を得るためにこれらの手段の組み合わせを使用することができないということを示すものではない。請求項中のいかなる参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0070】
化合物
本明細書に開示のいくつかの実施形態は、疾患又は状態を治療するための化合物の組み合わせの使用であって、組み合わせが、有効量の化合物(A)又はその薬学的に許容される塩と、有効量の化合物(B)又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩とを含み得、化合物(A)が、WEE1阻害剤又はその薬学的に許容される塩であり得、化合物(B)が、CDK4/6阻害剤、HER-2抗体、HER-2抗体-薬物コンジュゲート及びHER2二重特異性抗体(前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩を含む)から選択され得る、使用に関する。
【0071】
その薬学的に許容される塩を含む化合物(A)は、その薬学的に許容される塩を含む
【0072】
【化8】
であり得る。いくつかの実施形態では、その薬学的に許容される塩を含む化合物(B)は、パルボシクリブ、アベマシクリブ、リボシクリブ、トリラシクリブ(G1T28)、
レロシクリブ(G1T38)、SHR6390、FCN-437、AMG 925、BPI-1178、BPI-16350、ビロシクリブ、BEBT-209、TY-302、TQB-3616、HS-10342、PF-06842874、CS-3002及びMM-D37K(前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩とともに)から選択されるCDK4/6阻害剤であり得る。他の実施形態では、その薬学的に許容される塩を含む化合物(B)は、ツカチニブ、ラパチニブ、及びネラチニブ、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩から選択されるHER-2低分子阻害剤であり得る。更に他の実施形態では、その薬学的に許容される塩を含む化合物(B)は、トラスツズマブ、トラスツズマブ-dkst、ペルツズマブ及びZW25(前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩とともに)から選択されるHER-2抗体であり得る。なお更に他の実施形態では、その薬学的に許容される塩を含む化合物(B)は、Ado-トラスツズマブエムタンシン(T-DM1)、ARX788、ALT-P7、DS8201a、MEDI4276、MM302、PF-06804103、SYD985、XMT-1522、ZW49、MRG002、GQ1001、A166、RC48-ADC、BDC-1001、FS-1502(前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩とともに)から選択されるHER-2抗体-薬物コンジュゲートであり得る。いくつかの実施形態では、その薬学的に許容される塩を含む化合物(B)は、マルゲツキシマブ、エルツマキソマブ、HER2Bi-aATC、MM-111、MCLA-128、BTRC4017A、GBR-1302及びPRS-343(前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩とともに)から選択されるHER2二重特異性抗体であり得る。
【0073】
前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩を含む、化合物(A)と化合物(B)の組み合わせの実施形態を表1に提供する。表1において、「A」は、化合物(A)(その薬学的に許容される塩を含む)を示し、番号1A~18Aは、
図1に提供される化合物を表し、番号1B~28Bは、
図2に提供される化合物を表し、その薬学的に許容される塩を含む。例えば、表1で、1A:Aによって表される組み合わせは、パルボシクリブと
【0074】
【化9】
(前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩を含む)との組み合わせを表す。
【0075】
【0076】
本明細書に記載の組み合わせにおける化合物の投与の順序は、変化し得る。いくつかの実施形態では、その薬学的に許容される塩を含む化合物(A)は、全ての化合物(B)又はその薬学的に許容される塩の前に投与することができる。他の実施形態では、その薬学的に許容される塩を含む化合物(A)は、少なくとも1つの化合物(B)又はその薬学的に許容される塩の前に投与することができる。更に他の実施形態では、その薬学的に許容される塩を含む化合物(A)は、化合物(B)又はその薬学的に許容される塩と同時に投与することができる。なお更に他の実施形態では、その薬学的に許容される塩を含む化合物(A)は、少なくとも1つの化合物(B)又はその薬学的に許容される塩の投与に続いて投与することができる。いくつかの実施形態では、その薬学的に許容される塩を含む化合物(A)は、全ての化合物(B)又はその薬学的に許容される塩の投与に続いて投与することができる。
【0077】
本明細書に記載の化合物の組み合わせの使用について、いくつかの利点が存在し得る。例えば、複数の経路を同時に攻撃する化合物を組み合わせることは、組み合わせの化合物が単独療法として使用される場合と比較して、本明細書に記載されるものなどのがんの治療においてより有効であり得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される、その薬学的に許容される塩を含む化合物(A)と、化合物(B)、又はその薬学的に許容される塩との組み合わせは、化合物(B)などの本明細書に記載される化合物、又はその薬学的に許容される塩に起因し得る副作用の数及び/又は重症度を減少させることができる。
【0079】
本明細書に記載の化合物の組み合わせを使用すると、相加効果、相乗効果、又は強い相乗効果をもたらすことができる。本明細書に記載の化合物の組み合わせは、拮抗的ではない効果をもたらし得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される、その薬学的に許容される塩を含む化合物(A)と、化合物(B)、又はその薬学的に許容される塩との組み合わせは、相加効果をもたらし得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される、その薬学的に許容
される塩を含む化合物(A)と、化合物(B)、又はその薬学的に許容される塩との組み合わせは、相乗効果をもたらし得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される、その薬学的に許容される塩を含む化合物(A)と、化合物(B)、又はその薬学的に許容される塩との組み合わせは、強い相乗効果をもたらし得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される、その薬学的に許容される塩を含む化合物(A)と、化合物(B)、又はその薬学的に許容される塩との組み合わせは、拮抗的ではない。
【0081】
本明細書で使用される場合、「拮抗的」という用語は、化合物を組み合わせた場合の活性が、各化合物の活性を個々に(すなわち、単一の化合物として)決定する場合のその組み合わせの各化合物の活性の総和と比較してより低いことを意味する。本明細書で使用される場合、「相乗効果」という用語は、化合物を組み合わせた場合の活性が、各化合物の活性を個々に決定する場合のその組み合わせの各化合物の個々の活性の総和より高いことを意味する。本明細書で使用される場合、「相加効果」という用語は、化合物を組み合わせた場合の活性が、各化合物の活性を個々に決定する場合のその組み合わせの各化合物の個々の活性の総和にほぼ等しいことを意味する。
【0082】
本明細書に記載の組み合わせを利用する潜在的な利点は、各化合物が単剤療法として投与される場合と比較して、本明細書に開示される疾患状態を治療するのに有効な化合物の必要量が低減することであり得る。例えば、本明細書に記載の組み合わせで使用される化合物(B)、又はその薬学的に許容される塩の量は、単独療法として投与される場合に疾患マーカー(例えば、腫瘍サイズ)の同じ低減を達成するために必要な化合物(B)、又はその薬学的に許容される塩の量と比較して、より少ない場合がある。本明細書に記載される組み合わせを利用する別の潜在的な利点は、異なる作用機序を有する2つ以上の化合物の使用が、化合物が単剤療法として投与される場合と比較して、耐性の発生に対してより高い障害となり得ることである。本明細書に記載の組み合わせを利用する更なる利点として、本明細書に記載の組み合わせの各化合物間にほとんど又は全く交差耐性がないこと、本明細書に記載の組み合わせの各化合物の排出(elimination)の経路が異なること、
及び/又は本明細書に記載の組み合わせの各化合物間の重複毒性(overlapping toxicity)がほとんどないこと、を挙げることができる。
【0083】
医薬組成物
その薬学的に許容される塩を含む化合物(A)は、薬学的組成物中に提供され得る。同様に、その薬学的に許容される塩を含む化合物(B)は、医薬組成物中に提供され得る。
【0084】
「医薬組成物」という用語は、本明細書に開示される1つ以上の化合物及び/又は塩と、希釈剤、担体、及び/又は賦形剤などの他の化学構成成分との混合物を指す。医薬組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。薬学的組成物はまた、化合物を、無機又は有機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、及びサリチル酸と反応させることによって得られ得る。医薬組成物は、一般に、意図される具体的な投与経路に合わせて調整される。
【0085】
本明細書で使用される場合、「担体」は、細胞又は組織への化合物の組み込みを促進する化合物を指す。例えば、限定することなく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)は、対象の細胞又は組織への多くの有機化合物の取り込みを容易にする、一般的に利用される担体である。
【0086】
本明細書で使用される場合、「希釈剤」は、明らかな薬理活性はないが、薬学的に必要又は望ましくあり得る、医薬組成物中の成分を指す。例えば、希釈剤は、製造及び/又は投与には質量が小さ過ぎる、効力のある薬物のかさ増しのために使用され得る。それはまた、注射、摂取、又は吸入によって投与される薬物を溶解させるための液体であり得る。
当該技術分野において一般的な希釈剤の形態は、限定することなく、ヒト血液のpH及び等張性を模したリン酸緩衝生理食塩水などの、緩衝水溶液である。
【0087】
本明細書で使用される場合、「賦形剤」は、限定するものではないが、かさ、稠度、安定性、結合能力、潤滑、崩壊能力などを組成物に提供するために、医薬組成物に添加される、本質的に不活性の物質を指す。例えば、酸化防止剤及び金属キレート剤などの安定剤は、賦形剤である。一実施形態では、医薬組成物は、酸化防止剤及び/又は金属キレート剤を含む。「希釈剤」は、ある種の賦形剤である。
【0088】
いくつかの実施形態では、化合物(B)は、その薬学的に許容される塩とともに、その薬学的に許容される塩を含む化合物(A)を含む医薬組成物中に提供され得る。他の実施形態では、化合物(B)は、その薬学的に許容される塩とともに、その薬学的に許容される塩を含む化合物(A)を含む薬学的組成物とは別の薬学的組成物で投与することができる。
【0089】
本明細書に記載の薬学的組成物は、ヒト患者にそれ自体で、あるいはそれらが、併用療法におけるような他の活性成分、又は担体、希釈剤、賦形剤、若しくはそれらの組み合わせと混合される薬学的組成物において、投与することができる。適切な製剤化は、選択される投与経路に依存する。本明細書に記載の化合物の製剤化及び投与のための技術は、当業者に既知である。
【0090】
本明細書に開示の薬学的組成物は、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、ドラジェ作製、水簸、乳化、封入、捕捉、又は錠剤化プロセスによって、それ自体が既知である様式で製造され得る。追加的に、活性成分が、その意図した目的を達成するために有効な量で含有される。本明細書に開示の薬剤の組み合わせで使用される化合物の多くは、薬学的に適合する対イオンを有する塩として提供されてもよい。
【0091】
筋肉内、皮下、静脈内、髄内注射、くも膜下、直接心室内、腹腔内、鼻腔内、及び眼内注射を含む、経口、直腸、肺内、局所、エアロゾル、注射、注入、及び非経口送達が挙げられるが、これらに限定されない、化合物、塩、及び/又は組成物を投与する複数の技術が当該技術分野において存在する。いくつかの実施形態では、その薬学的に許容される塩を含む化合物(A)は、経口投与することができる。いくつかの実施形態では、その薬学的に許容される塩を含む化合物(A)は、化合物(B)及びその薬学的に許容される塩と同じ投与経路によって、対象に提供され得る。他の実施形態では、その薬学的に許容される塩を含む化合物(A)は、化合物(B)及びその薬学的に許容される塩と異なる投与経路によって、対象に提供され得る。
【0092】
また、全身的な方法ではなく局所的な方法で、例えば、多くの場合、デポー製剤又は持続放出製剤として化合物を患部に直接注射する又は埋め込むことによって化合物、塩、及び/又は組成物を投与してもよい。更に、標的化した薬物送達システムで、例えば、組織特異的抗体でコーティングされたリポソームで化合物を投与することができる。リポソームは、器官に対して標的化され、かつ器官により選択的に取り込まれるであろう。例えば、呼吸器の疾患又は状態を標的とするための鼻腔内又は肺内送達が望ましい場合がある。
【0093】
組成物は、所望される場合、活性成分を含有する1つ以上の単位剤形を含み得る、パック又はディスペンサデバイス中に提供されてもよい。パックは、例えば、ブリスタパックなどの金属又はプラスチック箔を含み得る。パック又はディスペンサデバイスには、投与に関する指示書が添付され得る。パック又はディスペンサはまた、医薬品の製造、使用、又は販売を規制する行政機関によって規定された形式の、容器に関連付けられた注意書きが添付され得るが、その注意書きは、ヒト又は動物投与のための薬物の形態の機関による
承認を反映する。そのような注意書きは、例えば、処方薬に関し米国食品医薬品局によって承認されたラベル、又は承認された製品添付文書であり得る。適合する薬学的担体中で製剤化される本明細書に記載の化合物及び/又は塩を含むことができる組成物はまた、示された状態の治療のために調製され、適切な容器内に配置され、かつラベル付けされてもよい。
【0094】
使用及び治療方法
本明細書で提供されるように、いくつかの実施形態では、有効量の、その薬学的に許容される塩を含む化合物(A)と、有効量の、化合物(B)又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩とを含む化合物の組み合わせを使用して、疾患又は状態を治療することができる。
【0095】
本明細書で使用される場合、「対象」とは、治療、観察、又は実験の対象である動物を指す。「動物」には、冷血及び温血の脊椎動物及び無脊椎動物、例えば、魚、甲殻類、爬虫類、及び特に、哺乳動物が含まれる。「哺乳動物」には、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、霊長類、例えば、サル、チンパンジー、及び類人猿、並びに特に、ヒトが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトであり得る。いくつかの実施形態では、対象は、小児及び/又は乳児、例えば、発熱した小児又は乳児であり得る。他の実施形態では、対象は、成人であり得る。
【0096】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、「治療」、「治療的」、及び「療法」という用語は、必ずしも疾患又は状態の完全な治癒又は消滅を意味するとは限らない。疾患又は状態の任意の所望されない徴候又は症状の任意の程度までの任意の緩和が、治療及び/又は療法とみなされ得る。更に、治療は、対象の健康又は外観についての全体的な感覚を悪化させ得る行為を含み得る。
【0097】
「有効量」という用語は、示される生物学的又は薬学的応答を誘発する、活性化合物又は薬剤の量を示すために使用される。例えば、有効量の化合物、塩又は組成物は、疾患又は状態の症状を予防、緩和、若しくは改善するか、又は治療される対象の生存を延長するために必要な量であってもよい。この応答は、組織、系、動物、又はヒトにおいて生じる場合があり、治療されている疾患又は状態の徴候又は症状の緩和を含む。有効量の決定は、本明細書に提供される本開示を考慮して、十分当業者の能力の範囲内である。用量として必要とされる本明細書に開示される化合物の有効量は、投与経路、治療されているヒトを含む動物の種類、及び考慮中の特定の動物の身体特性によって決まる。用量は、所望の効果を達成するように調整され得るが、体重、食生活、併用投薬及び医療分野の当業者が認識するであろう他の要因などの要因に依存するであろう。
【0098】
例えば、化合物又は放射線の有効量は、(a)がんによって引き起こされる1つ以上の症状の軽減、緩和、若しくは消失、(b)腫瘍サイズの低減、(c)腫瘍の除去、及び/又は(d)腫瘍の長期疾患安定化(増殖停止)、をもたらす量である。
【0099】
いくつかの実施形態では、疾患又は状態は、肺がん、胃がん及び胃食道接合部腺がんから選択され得る。いくつかの実施形態では、疾患又は状態は乳がんであってもよい。様々なタイプの乳がんが知られている。いくつかの実施形態では、乳がんは、ER陽性(ER+)乳がんであり得る。いくつかの実施形態では、乳がんは、ER陽性、HER2陰性(ER+/HER2-)乳がんであり得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、乳がんは、HER2状態によって分類される。いくつかの実施形態では、乳がんは、HER2陽性(HER2+)乳がんである。いくつかの実施形態
では、乳がんは、HER2低乳がんである。
【0101】
いくつかの実施形態では、乳がんは、局所乳がんであり得る(本明細書で使用される場合、「局所」乳がんは、がんが身体の他の領域に広がっていないことを意味する)。他の実施形態では、乳がんは転移性乳がんであってもよい。更に他の実施形態では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がんであり得る。
【0102】
対象は、以前に治療されたことのない乳がんを有してもよい。
【0103】
いくつかの場合では、乳がん治療に続いて、対象は、乳がんが再燃する(relapse)又
はぶり返すことがある。本明細書で使用される場合、「ぶり返す」及び「再発」という用語は、当業者によって理解されるように、それらの通常の意味で使用される。それ故、乳がんは再発性乳がんであってもよい。いくつかの実施形態では、対象は、乳がんの以前の治療後に再燃している。例えば、対象は、本明細書に記載されるものなどのSERM、SERD及び/又はアロマターゼ阻害剤で1つ以上の治療を受けた後に再燃している。
【0104】
ESR1内で、いくつかのアミノ酸変異が特定されている。ESR1の変異は、耐性の役割を果たすときに提案されている。選択的ER調節剤(SERM)、選択的ER分解剤(SERD)、及びアロマターゼ阻害剤を含む、エストロゲン受容体を阻害するためのいくつかの療法が存在する。前述のがん療法から生じ得る1つの問題は、がん療法に対する耐性の発生である。内分泌療法などのがん療法に対する取得耐性は、タモキシフェン及び他の内分泌療法で治療された女性のほぼ3分の1で見つかっている。Alluri et
al.,「Estrogen receptor mutations and their role in breast cancer progression」Breast Cancer Research(2014)16:494を参照されたい。研究者らは、内分泌療法などのがん療法に対する耐性の取得の理由の1つとして、エストロゲン受容体における変異があるとみている。したがって、がんがESR1内に1つ以上の変異を有する乳がんを治療することができる化合物が必要とされている。
【0105】
本明細書に開示のいくつかの実施形態は、乳がんの治療を必要とする対象において、乳がんを治療するための薬品の製造における、化合物(A)及び化合物(B)など(前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩とともに)の本明細書に記載の化合物の組み合わせの使用であって、乳がんが、エストロゲン受容体アルファ(ERα)をコードするエストロゲン受容体1(ESR1)内に少なくとも1つの点変異(1、2、3、4、又は4個超の点変異など)を有する、使用に関する。本明細書に関する他の実施形態は、乳がんの治療を必要とする対象において、乳がんを治療するための、その薬学的に許容される塩とともに、その薬学的に許容される塩を含む有効量の化合物(A)、及び有効量の化合物(B)又はその薬学的に許容される塩を含む、本明細書に記載の化合物の組み合わせの使用であって、乳がんが、エストロゲン受容体アルファ(ERα)をコードするエストロゲン受容体1(ESR1)内に少なくとも1つの点変異を有する、使用に関する。本明細書に開示される更に他の実施形態は、本明細書に記載の化合物(化合物(A)及び化合物(B)など、前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩とともに)の組み合わせを用いて、乳がんの治療を必要とする対象において、乳がんを治療する方法であって、乳がんが、エストロゲン受容体アルファ(ERα)をコードするエストロゲン受容体1(ESR1)内に少なくとも1つの点変異(例えば、1、2、3、4、又は4個超の点変異)を有する、方法に関する。
【0106】
いくつかの実施形態では、変異は、ESR1のリガンド結合ドメイン(ligand binding
domain、LBD)にあり得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、A593
、S576、G557、R555、L549、A546、E542、L540、D538
、Y537、L536、P535、V534、V533、N532、K531、C530、H524、E523、M522、R503、L497、K481、V478、R477、E471、S463、F461、S432、G420、V418、D411、L466、S463、L453、G442、M437、M421、M396、V392、M388、E380、G344、S338、L370、S329、K303、A283、S282、E279、G274、K252、R233、P222、G160、N156、P147、G145、F97、N69、A65、A58及びS47から選択されるアミノ酸であり得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、D538、Y537、L536、P535、V534、S463、V392、及びE380から選択されるアミノ酸にあってもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、D538及びY537から選択されるアミノ酸にあってもよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、K303R、D538G、Y537S、E380Q、Y537C、Y537N、A283V、A546D、A546T、A58T、A593D、A65V、C530L、D411H、E279V、E471D、E471V、E523Q、E542G、F461V、F97L、G145D、G160D、G274R、G344D、G420D、G442R、G557R、H524L、K252N、K481N、K531E、L370F、L453F、L466Q、L497R、L536H、L536P、L536Q、L536R、L540Q、L549P、M388L、M396V、M421V、M437I、M522I、N156T、N532K、N69K、P147Q、P222S、P535H、R233G、R477Q、R503W、R555H、S282C、S329Y、S338G、S432L、S463P、S47T、S576L、V392I、V418E、V478L、V533M、V534E、Y537D及びY537Hから選択され得る。
【0108】
本明細書に開示のいくつかの実施形態は、乳がんの治療を必要とする対象において、乳がんを治療するための薬品の製造における、その薬学的に許容される塩を含む有効量の化合物(A)、及び有効量の化合物(B)のうちの1つ以上又はその薬学的に許容される塩を含む、化合物の組み合わせの使用であって、乳がんが、少なくとも1つの点変異(例えば、エストロゲン受容体アルファ(ERα)をコードするエストロゲン受容体1(ESR1)内に点変異)を含まない、使用に関する。本明細書に関する他の実施形態は、乳がんの治療を必要とする対象において、乳がんを治療するための、その薬学的に許容される塩を含む有効量の化合物(A)、及び有効量の化合物(B)のうちの1つ以上(前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩とともに)を含む、化合物の組み合わせの使用であって、乳がんが、エストロゲン受容体アルファ(ERα)をコードするエストロゲン受容体1(ESR1)内の点変異など、少なくとも1つの点変異を含まない、使用に関する。本明細書に開示の更に他の実施形態は、本明細書に記載の化合物の組み合わせ(例えば、化合物(A)及び化合物(B)又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩の組み合わせ)による、乳がんの治療を必要とする対象において、乳がんを治療するための方法であって、乳がんが、エストロゲン受容体アルファ(ERα)をコードするエストロゲン受容体1(ESR1)内に少なくとも1つの点変異(例えば、エストロゲン受容体アルファ(ERα)をコードするエストロゲン受容体1(ESR1)内の点変異)を含まない、方法に関する。
【0109】
本明細書で提供されるように、いくつかの研究は、ER陽性乳がんにおける耐性の潜在的な原因が、内分泌療法によるESR1における取得された変異に起因することを示している。いくつかの実施形態では、対象は、1つ以上の選択的ER調節剤で以前に治療されていた。例えば、対象は、タモキシフェン、ラロキシフェン、オスペミフェン、バゼドキシフェン、トレミフェン、及びラソフォキシフェン、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩から選択される1つ以上の選択されたER調節剤で以前に治療されていた
。いくつかの実施形態では、対象は、フルベストラント、(E)-3-[3,5-ジフルオロ-4-[(1R,3R)-2-(2-フルオロ-2-メチルプロピル)-3-メチル-1,3,4,9-テトラヒドロピリド[3,4-b]インドール-1-イル]フェニル]プロパ-2-エン酸(AZD9496)、(R)-6-(2-(エチル(4-(2-(エチルアミノ)エチル)ベンジル)アミノ)-4-メトキシフェニル)-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-オール(エラセストラント、RAD1901)、(E)-3-(4-((E)-2-(2-クロロ-4-フルオロフェニル)-1-(1H-インダゾール-5-イル)ブタ-1-エン-1-イル)フェニル)アクリル酸(ブリラネストラント、ARN-810、GDC-0810)、(E)-3-(4-((2-(2-(1,1-ジフルオロエチル)-4-フルオロフェニル)-6-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-3-イル)オキシ)フェニル)アクリル酸(LSZ102)、(E)-N,N-ジメチル-4-((2-((5-((Z)-4,4,4-トリフルオロ-1-(3-フルオロ-1H-インダゾール-5-イル)-2-フェニルブタ-1-エン-1-イル)ピリジン-2-イル)オキシ)エチル)アミノ)ブタ-2-エナミド(H3B-6545)、(E)-3-(4-((2-(4-フルオロ-2,6-ジメチルベンゾイル)-6-ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン-3-イル)オキシ)フェニル)アクリル酸(リントデストラント、G1T48)、D-0502、SHR9549、ARV-471、3-((1R,3R)-1-(2,6-ジフルオロ-4-((1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル)アミノ)フェニル)-3-メチル-1,3,4,9-テトラヒドロ-2H-ピリド[3,4-b]インドール-2-イル)-2,2-ジフルオロプロパン-1-オール(ギレデストラント、GDC-9545)、(S)-8-(2,4-ジクロロフェニル)-9-(4-((1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)オキシ)フェニル)-6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[7]アヌレン-3-カルボン酸(SAR439859)、N-[1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル]-6-[(6S,8R)-8-メチル-7-(2,2,2-トリフルオロエチル)-6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ピラゾロ[4,3-f]イソキノリン-6-イル]ピリジン-3-アミン(AZD9833)、OP-1250、及びLY3484356、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩など、1つ以上の選択的ER分解剤で以前に治療されていた。いくつかの実施形態では、対象は、1つ以上のアロマターゼ阻害剤で以前に治療されていた。アロマターゼ阻害剤は、ステロイド性アロマターゼ阻害剤又は非ステロイド性アロマターゼ阻害剤であってもよい。例えば、1つ以上のアロマターゼ阻害剤は、(エキセメスタン(ステロイド性アロマターゼ阻害剤)、テストラクトン(ステロイド性アロマターゼ阻害剤)、アナスタゾール(非ステロイド性アロマターゼ阻害剤)及びレトラゾール(非ステロイド性アロマターゼ阻害剤)(前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩を含む)から選択され得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、対象に乳がんが存在してもよく、対象は女性であってもよい。女性が中年に近づくと、女性は閉経の段階になり得る。いくつかの実施形態では、対象は閉経前の女性であってもよい。他の実施形態では、対象は、閉経周辺期の女性であってもよい。更に他の実施形態では、対象は、閉経期の女性であってもよい。なお更に他の実施形態では、対象は、閉経後の女性であってもよい。他の実施形態では、対象に乳がんが存在してもよく、対象は男性であってもよい。対象の血清エストラジオールレベルは変化してもよい。いくつかの実施形態では、対象の血清エストラジオールレベル(E2)は、15pg/mL超~350pg/mLの範囲内であってもよい。他の実施形態では、対象の血清エストラジオールレベル(E2)は、15pg/mL以下であってもよい。他の実施形態では、対象の血清エストラジオールレベル(E2)は、10pg/mL以下であってもよい。
【0111】
治療で使用するために必要とされる化合物、塩、及び/又は組成物の量は、選択された特定の化合物又は塩だけはなく、投与経路、治療されている疾患又は状態の性質及び/又
は症状、並びに患者の年齢及び状態によっても変化し、最終的に、主治医又は臨床医の判断による。薬学的に許容される塩の投与の場合、投薬量は、遊離塩基として計算され得る。当業者によって理解されるように、ある特定の状況において、特に進行性の疾患又は状態を効果的かつ積極的に治療するために、本明細書に記載の投薬量範囲を超えるか、又ははるかに超えさえする量で、本明細書に開示の化合物を投与することが必要であり得る。
【0112】
当業者には容易に明らかになるように、投与される有用なインビボ投薬量及び特定の投与方法は、年齢、体重、苦痛の重症度、治療される哺乳動物種、用いられる特定の化合物、及びこれらの化合物が用いられる特定の用途に応じて変動するであろう。有効な投薬量レベル、つまり所望の結果を達成するために必要な投薬量レベルの決定は、日常的な方法、例えば、ヒト臨床試験、インビボ研究及びインビトロ研究を使用して、当業者によって達成することができる。例えば、化合物(A)及び/若しくは(B)、又は前述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩の有用な投薬量は、動物モデルにおけるそれらのインビトロ活性及びインビボ活性を比較することによって決定され得る。そのような比較は、シスプラチン及び/又はゲムシタビン)などの確立された薬物との比較によって行われ得る。
【0113】
投薬量及び間隔は、活性部分が調節作用又は最小有効濃度(minimal effective concentration、MEC)を維持するのに十分である血漿レベルを提供するように、個々に調節
されてもよい。MECは、化合物ごとに変化するが、インビボ及び/又はインビトロデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投薬量は、個々の特性及び投与経路に依存するであろう。しかしながら、血漿濃度を決定するためには、HPLCアッセイ又はバイオアッセイを使用することができる。投薬量間隔もまた、MEC値を使用して決定することができる。組成物は、10~90%の期間、好ましくは30~90%の期間及び最も好ましくは50~90%の期間にわたって、MECを超える血漿レベルを維持する計画を使用して投与されるべきである。局所投与又は選択的取り込みの場合、薬物の有効局所濃度は、血漿濃度に関係しない場合がある。
【0114】
毒性又は臓器機能不全により、投与の終了、中断、又は調節の方法及び時期については、主治医が承知しているであろうことに留意されたい。反対に、主治医は、臨床応答が適切ではない(毒性を除外する)場合、治療をより高いレベルに調節することも承知しているであろう。対象となる疾患の管理において投与される用量の大きさは、治療しようとする疾患又は状態の重症度及び投与経路によって変化するであろう。疾患又は状態の重症度は、例えば、ある程度は、標準的な予後評価方法によって評価され得る。更に、用量及び恐らく用量頻度はまた、個々の患者の年齢、体重及び応答によっても変化するであろう。上記で考察されるものと同等のプログラムが、獣医学で使用され得る。
【0115】
本明細書に開示の化合物、塩、及び組成物は、既知の方法を使用して有効性及び毒性に関して評価され得る。例えば、ある特定の化学部分を共有する特定の化合物又は化合物のサブセットについての毒性学は、哺乳動物の細胞株、好ましくはヒトの細胞株などの細胞株に対するインビトロ毒性を決定することによって確立され得る。そのような研究の結果は、多くの場合、哺乳動物、又は特にヒトなどの動物における毒性を予測する。代替的に、マウス、ラット、ウサギ、イヌ又はサルなどの動物モデルにおける特定の化合物の毒性は、既知の方法を使用して決定され得る。特定の化合物の有効性は、インビトロ方法、動物モデル、又はヒト臨床試験などのいくつかの認められている方法を使用して確立され得る。有効性を決定するためのモデルを選択する場合、当業者は、適切なモデル、用量、投与経路及び/又はレジメンを選択するにあたり最先端の技術を指針とすることができる。
【実施例】
【0116】
特許請求の範囲を決して限定するものではない、更なる実施形態が、以下の実施例にお
いて更に詳細に開示される。
【0117】
有効性研究手順
化合物(A)の抗腫瘍活性を、MCF-7異種移植モデルを使用して評価した。各マウスに、腫瘍発生のために、血清を含まない200μLのDMEMマトリゲル混合物(1:1比)中の1.5×10
7個のMCF-7腫瘍細胞を、第2の右乳房脂肪パッド上に皮下接種した。加えて、安息香酸エストラジオール注射液を皮下によって送達した(40ug/20uL、週2回)。平均腫瘍サイズが204mm
3に達したとき、動物を2群(10匹の動物/群)に無作為化し、処置を開始した。化合物(A)又はビヒクル対照を、1日1回、強制経口によって投与し、28日間継続した。研究のエンドポイントは、毎日の体重、臨床観察、腫瘍体積を含んだ。
図3は、単剤としての用量レベル80mg/kgの化合物(A)により、腫瘍増殖の堅牢な阻害(132.6%)及び腫瘍退縮が生じたことを示した。
図3において、上の線は、ビヒクルであり、下の線は、化合物(A)(80mg/kg qd×22p.o)である。いずれの用量群においても有害な臨床的観察はなく、平均体重に対する顕著な影響はなかった。
【0118】
単剤としての化合物(A)の有効性を、ZR-75-1タモキシフェン耐性腫瘍モデルにおいて評価した。タモキシフェン耐性ZR-75-1腫瘍細胞(ZR-75-1R)を、5%CO2の雰囲気のインキュベータ中、37℃で、10%ウシ胎児血清及び10μMのタモキシフェンを補充したRPMI1640培地中の単層培養として、インビトロで維持した。次いで、各マウスの右脇腹に、腫瘍発生のために、血清を含まない100μLのRPMI-1640マトリゲル混合物(1:1比)中の1×10
7個のZR-75-1R腫瘍細胞を皮下接種した。加えて、安息香酸エストラジオール注射液を皮下によって送達した(40ug/20uL、週2回)。次いで、平均腫瘍サイズが191mm
3に達したとき、マウスを3つの群に無作為化し、処置を開始した。タモキシフェンを、100mg/kgで週5日、3週間投薬し、化合物(A)を、80mg/kgで毎日、28日間経口投薬した。研究のエンドポイントは、毎日の体重、臨床観察、腫瘍体積を含んだ。
図4において、上の線は、タモキシフェン(100mg/kg)であり、中間の線は、ビヒクルであり、下の線は、化合物(A)(80mg/kg)である。
図4に示されるように、タモキシフェンは、28日間の処置後に-47.9%の腫瘍増殖阻害を誘導し、これがタモキシフェン耐性乳がんモデルであることを示した。80mg/kgの化合物(A)により、69.9%のTGI(腫瘍増殖阻害(tumor growth inhibition))で強い抗腫瘍活性
が生じた。処置期間中、他の肉眼的な臨床的異常は観察されず、動物の体重減少は、動物に投薬休暇を与えることによって管理可能であった。
【0119】
ヒトHCC1428乳がん異種移植腫瘍を保有するマウスにおいて評価された化合物(A)の活性。細胞移植の2日前に、17ベータ-エストラジオール錠剤(0.18mg、90日放出)を皮下移植した、腫瘍発生のためのPBS及びマトリゲルの0.2mL混合物(PBS:マトリゲル=1:1)中のHCC1428腫瘍細胞(1×10
7個)を、各マウスの右脇腹に、皮下接種した。平均腫瘍サイズが約185mm
3に達した腫瘍接種後21日目に処置を開始した。腫瘍体積に基づいて層別無作為化を実施する、エクセルに基づく無作為化ソフトウェアを使用して、動物を2つの群に割り当てた。各群は、10匹の腫瘍を保有するマウスからなった。ビヒクル対照又は80mg/kgの化合物(A)を、マウスに28日間1日1回、強制経口によって投与した。
図5において、上の線はビヒクルであり、下の線は化合物(A)である。
図5に示されるように、単剤としての化合物(A)での処置により、ビヒクル群に対して、HCC1428腫瘍増殖の有意な阻害が生じ、80mg/kgの化合物(A)で96.2%の腫瘍増殖阻害(TGI)が観測された。有害な臨床的観察はなく、化合物(A)が処置された動物において観察された顕著な体重減少はなかった。
【0120】
CDK4/6阻害剤、パルボシクリブと組み合わせた化合物(A)の抗腫瘍活性を、MCF-7異種移植モデルにおいて評価した。各マウスの右脇腹に、腫瘍発生のために、血清を含まない200μLのDMEMマトリゲル混合物(1:1比)中のMCF-7腫瘍細胞(1.5×10
7個)を皮下接種した。加えて、安息香酸エストラジオール注射液を皮下によって送達した(40ug/20uL、週2回)。平均腫瘍サイズが202mm
3に達したとき、マウスを5群(10匹の動物/群)に無作為化し、処置を開始した。動物に、ビヒクル、80/60mg/kgの化合物(A)単独、50mg/kgのパルボシクリブ単独、連続投薬スケジュール(2週間ごとに交互)による50mg/kgのパルボシクリブと組み合わせた80mg/kgの化合物(A)、又は50mg/kgのパルボシクリブと組み合わせた80/60mg/kgの化合物(A)を投薬した。処置期間は、28日間であった。
図6において、上の線(円で示す)は、ビヒクルである。
図6に示されるように、80/60mg/kgの化合物(A)又は50mg/kgのパルボシクリブ単独は、それぞれ約116%及び119%のTGIをもたらした。化合物(A)及びパルボシクリブによる連続処置は、127%のTGIを誘導し、したがって、このデータは、それぞれ化合物(A)又はパルボシクリブのいずれかによる単剤療法よりもより良好な抗腫瘍活性を示す。80/60mg/kgの化合物(A)及び50mg/kgのパルボシクリブの共処置もまた、126.2%のTGIでより深い抗腫瘍活性を誘導した。更に、パルボシクリブと組み合わせた化合物(A)は、約55%の腫瘍退縮を誘導した。比較すると、化合物(A)又はパルボシクリブ単独処置は、それぞれ、32.7%及び39.1%の腫瘍退縮しか誘導しなかった。全体として、パルボシクリブと組み合わせた化合物(A)は、有効性を顕著に改善した。
【0121】
より低用量のCDK4/6阻害剤、パルボシクリブと組み合わせた化合物(A)の抗腫瘍活性を、MCF-7異種移植モデルにおいて評価した。各マウスに、腫瘍発生のために、血清を含まない200μLのDMEMマトリゲル混合物(1:1比)中の1.5×10
7個のMCF-7細胞を、第2の右乳房脂肪パッド上に皮下接種した。加えて、安息香酸エストラジオール注射液を皮下によって送達した(40ug/20uL、週2回)。平均腫瘍サイズが203mm
3に達したとき、処置を開始した。マウスを無作為に4群(群当たり8匹のマウス)に分け、ビヒクル対照、60mg/kgの化合物(A)単独、25mg/kgのパルボシクリブ単独、25mg/kgのパルボシクリブと組み合わせた60mg/kgの化合物(A)で処置した。研究のエンドポイントは、毎日の体重、臨床観察、腫瘍体積を含んだ。
図7に示されるように、60mg/kgの化合物(A)単独(下の線から2番目)及び25mg/kgのパルボシクリブ単独(三角で示された、上の線から2番目)は、それぞれ48.6%のTGI及び14.2%のTGIを誘導し、25mg/kgのパルボシクリブと組み合わせた60mg/kgの化合物(A)(三角で示された、下の線)は、82.7%のTGIをもたらした。したがって、パルボシクリブと組み合わせた化合物(A)は、有効性を顕著に改善した。全ての動物は、処置に対して良好な耐容性であった。
【0122】
パルボシクリブと組み合わせた化合物(A)の抗腫瘍活性を、パルボシクリブ耐性乳がんPDXモデル(CTG-1207)において更に評価した。腫瘍発生のために、血清を含まないDMEMマトリゲル混合物(1:1比)中のパルボシクリブ耐性乳がん細胞をマウスに皮下接種した。腫瘍サイズが約200mm
3に達したら、マウスを無作為に4群(群当たり8匹のマウス)に分け、ビヒクル対照、80mg/kgの化合物(A)単独、50mg/kgのパルボシクリブ単独、又は50mg/kgのパルボシクリブと組み合わせた80mg/kgの化合物(A)で処置した。研究のエンドポイントは、毎日の体重、臨床観察、腫瘍体積を含んだ。
図10Aに示されるように、80mg/kgの化合物(A)単独(三角形で示された、下の線から2番目)は腫瘍増殖を低減させたが、50mg/kgのパルボシクリブ単独(菱形で示された、上の線から2番目)はより低いTGIを示した。50mg/kgのパルボシクリブと組み合わせた80mg/kgの化合物(A)(三
角形で示された、下の線)は、パルボシクリブ耐性PDX乳がんモデルにおいてTGIの増強をもたらした。したがって、パルボシクリブと組み合わせた化合物(A)は、有効性を顕著に改善した。全ての動物は、
図10Bによって示されるように、処置に対して良好な耐容性であった。
【0123】
研究1-パート1
HER2+JIMT-1乳がん細胞株を、腫瘍異種移植接種及びその後の処置に使用した。JIMT-1乳がん細胞株は、HER2に標的化された療法に対して比較的耐性であることが文献に記載されており(JIMT-1細胞株は、トラスツズマブに対して臨床的に耐性であった乳がんを有する62歳の患者の胸膜転移から確立された(Tanner et al.Mol Cancer Ther(2004)3(12):1585-1592)を参照されたい)、それはトラスツズマブの毎週の投与を含む。化合物(A)がHER2に標的化された処置の抗腫瘍効果を改善することができるかどうかを試験するために、NOD/SCIDマウスの右脇腹に、腫瘍発生のために、100μLのDMEMマトリゲル混合物(1:1比)中の95%生存腫瘍細胞(5×106個)の単一細胞懸濁液を皮下接種した。平均腫瘍サイズが204mm3に達したとき、処置を開始した。次いで、マウスを5つの群に無作為化し、表2の研究設計に従って、腫瘍を保有するマウスに処置を施した。
【0124】
【0125】
化合物(A)(60mg/kg)単独又はトラスツズマブ(10mg/kg)単独での処置は、それらのそれぞれのビヒクル対照(それぞれ経口又は腹腔内のいずれかで投与された)と比較して、29日目にそれぞれ68%及び59%の腫瘍増殖阻害(TGI)値をもたらした。
図8において、上の線(丸で示された)は、ビヒクルAであり、下から3番目の線(丸で示された)は、トラスツズマブ(10mg/kg)単独である。化合物(A)とトラスツズマブとの組み合わせは、29日目にいずれかのビヒクル対照と比較して、94%のTGIをもたらした。腫瘍増殖曲線を
図8に要約し、表3に要約する。これらのデータは、化合物(A)とトラスツズマブとの組み合わせが、単剤療法としてのいずれかの処置と比較して、優れた抗腫瘍効果を有することを示した。化合物(A)単独、トラスツズマブ単独、又は化合物(A)とトラスツズマブとの組み合わせを含む全ての処置は、良好な耐容性であった。表3は、
図8に示される実験の結果を要約する。
aTGI=腫瘍増殖阻害であり、TGI=(1-(T
d-T
0)/(C
d-C
0))×100%として計算され、T
d及びC
dは、処置された動物及び対照動物の平均腫瘍体積であり、T
0及びC
0は、実験開始時の処置された動物及び対照動物の平均腫瘍体積である。
b.ダネットT3検定による計算値対ビヒクル対照。
【0126】
【0127】
研究1-パート2
次いで、2つのビヒクル群のマウスを、29日目に無作為化して、表4に従って、ビヒクル、化合物(A)単独、トラスツズマブ単独又は化合物(A)とトラスツズマブとの組み合わせのいずれかで処置した。この時点で、腫瘍は約1000mm3に達しており、したがって、高い初期腫瘍負荷でこれらのマウスの処置を行った。
【0128】
【0129】
研究2
実験の第2部の14日目での化合物(A)(60mg/kg)単独又はトラスツズマブ(10mg/kg)単独での処置は、ビヒクル対照と比較して、それぞれ68.2%及び68.0%のTGI値をもたらした。化合物(A)とトラスツズマブとの組み合わせは、実験の第2部の14日目に、ビヒクル対照と比較して、97%のTGIをもたらした(
図9及び表5)。表5は、
図9に示される実験の結果(腫瘍増殖阻害)を要約する。
aTGI=14日目の腫瘍増殖阻害。実験の第2部の35日目に、化合物(A)とトラスツズマブとの組み合わせは、30.6%の腫瘍退縮をもたらした(
図9及び表6)。表6は、
図9に示される実験の結果(腫瘍退縮)を要約する。
a腫瘍退縮=(1-(T
d/T
0))×100%。
【0130】
【0131】
【0132】
これらのデータは、化合物(A)とトラスツズマブとの組み合わせが、マウスを高い初期腫瘍負荷で処置した場合、単剤療法としてのいずれかの処置と比較して顕著により良好な抗腫瘍効果を示すことを示した。更に、全ての処置レジメンは、良好な耐容性であった。
【0133】
更に、上文は、明確さと理解のために、図及び実施例としてある程度詳細に記述されているが、本開示の趣旨を逸脱することなく数多くの様々な修正がなされ得ることが、当業者によって理解されるであろう。したがって、本明細書に開示の形態は例解的であるにすぎず、本開示の範囲を限定することは意図されていないが、それどころか本発明の真の範囲及び趣旨に沿った全ての修正及び代替形態を包含することも明確に理解するべきである。
【国際調査報告】