(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】耐酸性ポリオキシメチレン組成物およびそれで製造された物品
(51)【国際特許分類】
C08L 59/04 20060101AFI20241219BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241219BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20241219BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20241219BHJP
C08K 5/36 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C08L59/04
C08K3/22
C08K5/13
C08K5/17
C08K5/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531266
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 US2022052366
(87)【国際公開番号】W WO2023107679
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】キム,スン・ハイ
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン,ローウェル・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ライト,ロジャー
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CB001
4J002CH022
4J002DE076
4J002EH099
4J002EH139
4J002EJ017
4J002EJ027
4J002EJ037
4J002EJ047
4J002EJ067
4J002EN068
4J002EN078
4J002EN108
4J002EV069
4J002EV099
4J002EV289
4J002FD010
4J002FD022
4J002FD029
4J002FD038
4J002FD039
4J002FD040
4J002FD077
4J002FD090
4J002FD110
4J002FD170
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
燃料耐性、特にディーゼル燃料耐性であり、強酸性溶液に対して耐性である、ポリオキシメチレンポリマー組成物および当該組成物から作製された成形品が開示される。ポリマー組成物は、安定剤の組合せ、例えば少なくとも3種の異なる安定剤の組合せと組み合わせたポリオキシメチレンポリマーを含有する。加えて、ポリマー組成物は、酸中和剤と任意選択で可塑剤を含有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐酸性特性をもつポリマー組成物であって、
ポリオキシメチレンポリマー、
酸中和剤、および
安定剤の組合せを含み、当該安定剤の組合せが
(a)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、
(b)芳香族アミン安定剤、および
(c)チオエステル安定剤
を含む、前記ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリオキシメチレンポリマーが、約0.8mmol/kgより多い量、例えば約0.85mmol/kgより多い量、例えば約0.9mmol/kgより多い量、例えば約0.95mmol/kgより多い量、例えば約1mmol/kgより多い量、そして一般に約4mmol/kg未満の量、例えば約2mmol/kg未満の量でヘミホルマール末端基を含有するポリオキシメチレンコポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、前記組成物中に存在する芳香族アミン安定剤の量よりも多い量で、かつ前記組成物中に存在するチオエステル安定剤の量よりも多い量で前記組成物中に存在する、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、芳香族アミン安定剤に対して約10:1~約1:1、例えば約5:1~約1:1、例えば約3:1~約1.5:1の重量比で存在し、ここで、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、チオエステル安定剤に対して約15:1~約1:1、例えば約8:1~約1.5:1、例えば約5:1~約2:1の重量比で前記組成物中に存在する、請求項1~3のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項5】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、約0.2%~約3.5重量%の量で前記組成物中に存在する、請求項1~4のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項6】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、約1.5重量%未満の量、例えば約1重量%未満の量、例えば約0.8重量%未満の量、そして一般に約0.2重量%より多い量で前記組成物中に存在する、請求項1~5のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項7】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤が、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル-プロピオネート)]を含む、請求項1~6のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項8】
芳香族アミン安定剤が、4-(1-メチル-1-フェニルエチル)N-[4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]アニリンを含む、請求項1~7のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項9】
芳香族アミン安定剤が、約0.05重量%~約1.5重量%の量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
チオエステル安定剤がチオジプロピオン酸ジステアリルを含む、請求項1~9のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項11】
チオエステル安定剤が、約0.03重量%~約1.3重量%の量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項1~10のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項12】
酸中和剤が、約2.5重量%より多い量、例えば約3.5重量%より多い量、例えば約4.5重量%より多い量、例えば約5.5重量%より多い量で前記ポリマー組成物中に存在し、そして一般に約15重量%未満の量、例えば約10重量%未満の量で存在する、請求項1~11のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項13】
酸中和剤が酸化マグネシウムを含む、請求項1~12のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記組成物中に存在する唯一の酸中和剤が酸化マグネシウムである、請求項13に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
酸中和剤が、水酸化マグネシウムを、単独で、または金属酸化物、例えば酸化マグネシウムもしくは酸化亜鉛と併せて含む、請求項1~12のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項16】
可塑剤をさらに含有する、請求項1~15のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項17】
可塑剤がポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコールを含む、請求項16に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
滑剤をさらに含有する、請求項1~17のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項19】
ポリオキシメチレンポリマーが、ISO試験1133に従って190℃および2.16kgの負荷で試験された場合、メルトフローインデックスが約5g/10分より大きく、例えば約10g/10分より大きく、そして約50g/10分未満、例えば約30g/10分未満であり、ポリオキシメチレンポリマーが、約40重量%~約95重量%の量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項1~18のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項20】
75%引張応力を維持するのに30サイクルより大きい耐酸性を示し、35%引張応力を維持するのに10サイクルより大きい耐酸性を示し、2500MPaより大きい引張弾性率を示し、54MPaより大きい引張降伏強さを示し、4kJ/m
2より大きい23℃におけるノッチ付きシャルピー衝撃強さを示し、3kJ/m
2より大きい-30℃におけるノッチ付きシャルピー衝撃強さを示し、1.4g/cm
3~1.46g/cm
3の密度を示し、168℃~175℃の溶融温度を示し、90℃より高いDTULを示し、9g/10分~16g/16分のメルトフローレートを示す、請求項1~19のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項21】
車両外装部品を含む、請求項1~20のいずれかに記載のポリマー組成物から作製された成形品。
【請求項22】
車両外装部品が燃料接触部材を含む、請求項21に記載の成形品。
【請求項23】
燃料系路または燃料フランジを含む、請求項21に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、出願日が2021年12月10日である米国仮特許出願第63/288,320号に基づく優先権を主張するものであり、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]ポリアセタールポリマーは、一般的にポリオキシメチレンポリマーと呼ばれ、種々の用途において非常に有用な工業材料として確立されている。ポリオキシメチレンポリマーは、例として、自動車工業や電気工業で使用するための部品などの成形部品の構築に広く使用されている。ポリオキシメチレンポリマーは、例として、優れた機械的特性、耐疲労性、耐摩耗性、耐薬品性、および成形性を有している。
【0003】
[0003]ポリオキシメチレンポリマーは、その優れた機械的性質、耐熱性および耐薬品性のために、これまで自動車およびトラックなどの種々の車両のための構成部品を製造するために使用されてきた。例えば、ポリオキシメチレンポリマーは、燃料と接触したときに著しく分解しないため、ポリオキシメチレンポリマーから作製される成形部品は、燃料系路および車両の燃料と繰り返し接触する他の車両部品を製造するのに使用されてきた。燃料耐性であることに加えて、ポリオキシメチレンポリマー組成物は優れた耐衝撃性特性も有しており、そのポリマーから作製される成形部品を、通常の擦り切れの間の損傷またはクラック形成に対して耐性にする。
【0004】
[0004]しかしながら、ポリオキシメチレン組成物がディーゼル燃料と接触するように設計される場合に特定の問題に直面する。ディーゼル燃料は、例として、硫黄または硫黄含有化合物を含有する場合がある。ディーゼル燃料が長期間にわたって加熱されると、硫黄含有化合物が酸化し、酸性硫黄化合物が生じることがあり、これは多くの異なる合成ポリマーを分解する可能性があり、ポリオキシメチレンポリマーに対していくらかの影響を与え得る。したがって、これまで、ディーゼル燃料から形成され得る腐蝕性物質との接触に対してポリマーをより耐性にするために、ポリオキシメチレンポリマーは、ヒンダードアミン光安定剤または酸化亜鉛などの種々の異なる添加剤と組み合わされてきた。
【0005】
[0005]近年、車両のタイヤに装飾リムを取り付けた自動車およびトラックがますます増えている。多くの場合、装飾リムは、磨かれた金属、クロムなどから作製される。これらの材料をきれいにするために、消費者と商業的な自動車およびトラックの洗浄施設は、通常、強酸性のホイールクリーナーを使用する。例えば、ホイールクリーナーは、3未満のpH、さらには2未満のpHを有する場合もある。これらのホイールクリーナーは、一般的に、ホイールへの適用中に自動車の燃料部品上に噴霧される。これらの強酸性溶液は、燃料部品の急速な老化を引き起こす可能性があり、部品が時間と共に劣化し破損する原因となる。
【0006】
[0006]上記のことを考慮して、当業者は、酸に耐性のあるポリオキシメチレンポリマー組成物を作り出すことを試みた。例えば、どちらも参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,247,665号および米国特許公報第2018/0319980号は、耐酸性が改善されたポリオキシメチレンポリマー組成物を開示している。上記の両方の特許公報は、当技術分野において顕著な改善を示した組成物を開示しているが、耐酸性のさらなる改善が依然として必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007]特に、耐酸性が改善されたポリオキシメチレンポリマー組成物が必要とされている。特に、耐酸性および場合によっては他の特性をさらに改善するために、酸スカベンジャーの能力を高めることができる添加剤を含有するポリオキシメチレンポリマー組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]一般に、本開示は、主としてポリオキシメチレンポリマーを含有するポリマー組成物およびその組成物から作製された成形物を対象とする。本開示のポリマー組成物は、特に耐酸性になるように配合される。より具体的には、本開示のポリマー組成物およびその組成物から成形された物品は、ディーゼル燃料を含む種々の燃料との接触および種々の洗浄剤などの高酸性液との接触に好適である。燃料および酸性溶液と繰り返し接触した後、本開示に従って成形された物品は、著しい劣化に耐性を示す。
【0009】
[0009]本開示のポリマー組成物は、一般にポリオキシメチレンポリマーおよび1種または複数の酸中和剤を含有する。加えて、ポリマー組成物は、他の成分と相乗的に併用して耐酸性および/または耐燃料性を改善することができる安定剤の組合せを含む添加剤パッケージを含有する。安定剤パッケージはまた、離型性などを含む他の特性も改善することができる。
【0010】
[0010]一実施形態では、例として、ポリマー組成物は、少なくとも1種の酸中和剤および任意選択で可塑剤と併せてポリオキシメチレンポリマーを含む。本開示によれば、ポリマー組成物は、安定剤の組合せをさらに含有する。安定剤の組合せには、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、芳香族アミン安定剤、およびチオエステル安定剤が挙げられる。一態様では、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、芳香族アミン安定剤より多い量および/またはチオエステル安定剤より多い量で組成物中に存在し得る。例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と芳香族アミン安定剤との重量比は、約10:1~約1:1、例えば約5:1~約1:1、例えば約3:1~約1.5:1であってもよい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤とチオエステル安定剤との重量比は、約15:1~約1:1、例えば約8:1~約1.5:1、例えば約5:1~約2:1であってもよい。一態様では、フェノール系酸化防止剤は、約0.2重量%~約3.5重量%の量で存在する。特定の一実施形態では、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、約1.5重量%未満の量、例えば約1重量%未満の量、例えば約0.8重量%未満の量、そして一般に約0.2重量%より多い量で組成物中に存在する。
【0011】
[0011]一態様では、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル-プロピオネート)]を含む。芳香族アミン安定剤は、4-(1-メチル-1-フェニルエチル)N-[4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]アニリンを含み得る。芳香族アミン安定剤は、一態様では、約0.05重量%~約1.5重量%の量でポリマー組成物中に存在し得る。チオエステル安定剤は、チオジプロピオン酸ジステアリルを含み得る。チオエステル安定剤は、約0.03重量%~約1.3重量%の量で組成物中に存在し得る。
【0012】
[0012]ポリオキシメチレンポリマーは、ポリオキシメチレンコポリマーを含んでいてもよく、約70重量%より多い量、例えば約80重量%より多い量、例えば約90重量%より多い量でポリマー組成物中に存在していてもよい。一実施形態では、ポリオキシメチレンポリマーは、約96重量%未満の量、例えば約95重量%未満の量でポリマー組成物中に存在する。ポリオキシメチレンポリマーは、ISO試験1133に従って190℃および2.16kgの荷重で測定される場合、メルトフローインデックスが約0.5g/10分より大きく、例えば約5g/10分より大きく、例えば約9g/10分より大きく、例えば約10g/10分より大きく、例えば約11g/10分より大きくてよい。メルトフローインデックスは、一般に、約40g/10分未満、例えば約35g/10分未満、例えば約30g/10分未満である。一実施形態では、メルトフローインデックスは、約10g/10分~約15g/10分である。あるいは、ポリオキシメチレンポリマーは、メルトフローインデックスが比較的低くてよく、約5g/10分未満、例えば約4g/10分未満、例えば約3g/10分未満であり、そして一般に約0.1g/10分より大きい。
【0013】
[0013]上記のように、ポリオキシメチレンポリマーは、少なくとも1種の酸中和剤および任意選択で可塑剤と組み合わせられる。酸中和剤は、一態様では、1種または複数のマグネシウム化合物を含む。いくつかの実施形態では、例として、マグネシウム化合物の使用は、粒子の物理的性質に応じて最適な耐酸性をもたらし得る。マグネシウム化合物は、例として、水酸化物、酸化物、炭酸塩などであってもよい。
【0014】
[0014]一実施形態では、1種または複数の酸中和剤は、約2.5重量%より多い量、例えば約3.5重量%より多い量、例えば約4.5重量%より多い量、例えば約5.5重量%より多い量、そして一般に約15重量%未満の量、例えば約10重量%未満の量で組成物中に存在する。一態様では、酸中和剤は、酸化マグネシウムだけを含む。あるいは、酸中和剤は、水酸化マグネシウムを単独で、または酸化マグネシウムと併せて含んでいてもよい。さらに別の実施形態では、組成物は、酸化亜鉛を酸化マグネシウムおよび/または水酸化マグネシウムと併せて含有する。
【0015】
[0015]上記のように、ポリマー組成物は、可塑剤をさらに任意選択で含有する。可塑剤は、例として、ポリアルキレングリコールを含んでいてもよい。ポリアルキレングリコールは、例として、平均分子量が約2,000g/モルより大きい、例えば約3,000g/モル~約9,000g/モルであってもよい。可塑剤は、一般に、約1重量%より多い量、例えば約1.3重量%より多い量、例えば約1.7重量%より多い量、そして一般に約10重量%未満の量、例えば約5重量%未満の量、例えば約4重量%未満の量、例えば約3.3重量%未満の量、例えば約2.8重量%未満の量でポリマー組成物中に存在していてもよい。
【0016】
[0016]他の実施形態では、可塑剤は、芳香族ポリエステル、脂肪族ジエステル、エポキシド、スルホンアミド、ポリエーテル、ポリブテン、ポリアミド、アセチル化モノグリセリド、クエン酸アルキル、または有機リン酸エステルを含む芳香族エステルを含んでいてもよい。
【0017】
[0017]ポリマー組成物は、ワックスも含有していてもよい。ワックスは、例として、エチレンビス(ステアラミド)であってもよい。ワックスは、約0.05重量%より多い量、例えば約0.1重量%より多い量、例えば約0.15重量%より多い量、例えば約0.18重量%より多い量、そして一般に約2重量%未満の量、例えば約1重量%未満の量、例えば約0.8重量%未満の量、例えば約0.7重量%未満の量でポリマー組成物中に存在していてもよい。
【0018】
[0018]ポリマー組成物は、カルボン酸の塩、例えばヒドロキシカルボン酸の塩も含有していてもよい。一態様では、ポリマー組成物は、ヒドロキシステアリン酸カルシウムを含有する。カルボン酸化合物は、例として、約0.1重量%より多い量、例えば約0.2重量%より多い量、そして一般に約1.5重量%未満の量、例えば約1重量%未満の量、例えば約0.5重量%未満の量でポリマー組成物中に存在していてもよい。
【0019】
[0019]上記のように、ポリマー組成物は、ディーゼル燃料などの燃料と接触することになる成形品を製造するのに好適である。ポリマー組成物は、強酸性溶液にも耐性がある。一実施形態では、例として、ポリマー組成物は、車両外装部品を製造するのに使用してもよい。成形品は、例として、自動車またはトラックの燃料装置の一部を含み得る。一実施形態では、例えば、成形品は、燃料接触部材を含み得る。燃料接触部材は、燃料系路、燃料弁、または燃料フランジを含み得る。
【0020】
[0020]本開示の他の特徴および態様は、以下により詳細に論じる。
[0021]本開示の十分で実施可能な開示は、添付図の参照を含めた本明細書の残りの部分において、より詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示に基づいて作製された燃料系路の一実施形態の側面図である。
【
図2】本開示に基づいて作製された燃料フランジの一実施形態の斜視図である。
【
図3】以下の実施例で得られた結果のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0022]本明細書および図面における参照符号の反復使用は、本発明の同じまたは類似した特徴または要素を表すことを意図したものである。
[0023]本発明の議論は、例示的な実施形態の説明にすぎず、本開示のより広範の態様を限定するものではないことは当業者には理解されよう。
【0023】
[0024]一般に、本開示は、ポリオキシメチレンポリマー組成物およびこの組成物から作製されたポリマー物品を対象とする。ポリマー組成物は、ポリオキシメチレンポリマーを含有し、耐酸および耐燃料特性を有する。特に、本開示のポリマー組成物は、自動車またはトラックなどの車両の燃料装置と接触し得る強酸性溶液または酸性副生成物に耐性がある。強酸性溶液は、例として、ホイールクリーナー、リムクリーナー、クロームクリーナーなどを含んでいてもよい。過去には、ポリオキシメチレンポリマー組成物が、ディーゼル燃料耐性であるように配合された。このような配合物は、しかしながら、燃料装置を構成する部品または物品と誤って接触しているホイールまたはリムクリーナー溶液と接触したときに損傷または劣化を受けやすい可能性がある。この点に関しては、本開示は、少なくとも1種の酸中和剤および安定剤の組合せを含有するポリオキシメチレンポリマー組成物を対象とする。安定剤は、耐酸性を劇的に改善することが判明した量および比率で組成物中に存在する。
【0024】
[0025]本開示のポリマー組成物中に含有されている安定剤の組成物は、一実施形態では、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、芳香族アミン安定剤、およびチオエステル安定剤を含む。組成物に組み込むことができる適当なヒンダードフェノール系酸化防止剤は、以下の一般構造(IV)、(V)および(VI):
【0025】
【0026】
(式中、
a、bおよびcは、それぞれ独立に1~10の範囲、いくつかの実施形態では、2~6の範囲であり;
R8、R9、R10、R11、およびR12は、それぞれ独立に水素、C1~C10アルキル、およびC3~C30分枝状アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、または第三ブチル基から選択され;かつ
R13、R14およびR15は、それぞれ独立に以下の一般構造(VII)および(VIII):
【0027】
【0028】
(式中、
dは、1~10の範囲、いくつかの実施形態では、2~6の範囲であり;
R16、R17、R18、およびR19は、それぞれ独立に水素、C1~C10アルキル、およびC3~C30分枝状アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、または第三ブチル基から選択される)の1つによって表される基から選択される)の1つを有するものを含む。
【0029】
[0026]上述の一般構造を有する適当なヒンダードフェノールの具体例には、例として、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;2,4-ジ-tert-ブチル-フェノール;ペンタエリスリチルテトラキス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシシンナメート)]メタン;ビス-2,2’-メチレン-ビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)テレフタレート;1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン;トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート;1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン;1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン;1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン;1,3,5-トリス[[3,5-ビス-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル];4,4’,4”-[(2,4,6-トリメチル-1,3,5-ベンゼントリイル)トリス-(メチレン)]トリス[2,6-ビス-(1,1-ジメチルエチル)];6-tert-ブチル-3-メチルフェニル;2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール;2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール);4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール);4,4’-ジヒドロキシジフェニル-シクロヘキサン;アルキル化ビスフェノール;スチレン化フェノール;2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル);4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール);ステアリル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン;1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン;テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ステアリル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート;など、ならびにその混合物を挙げることができる。
【0030】
[0027]特定の一実施形態では、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル-プロピオネート)]を含む。
【0031】
[0028]ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、一般に、約0.2重量%~約3.5重量%の量でポリマー組成物中に存在していてもよく、その間の0.1重量%の全ての増分を包含する。例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、例として、約0.3重量%より多い量、例えば約0.5重量%より多い量、例えば約0.7重量%より多い量、例えば約0.9重量%より多い量、例えば約1.1重量%より多い量、例えば約1.3重量%より多い量、例えば約1.5重量%より多い量、例えば約1.7重量%より多い量、例えば約1.9重量%より多い量、例えば約2.1重量%より多い量でポリマー組成物中に存在していてもよい。一実施形態では、しかしながら、フェノール系酸化防止剤は、比較的少量で存在していてもよい。例として、フェノール系酸化防止剤は、約1.5重量%未満の量、例えば約1重量%未満の量、例えば約0.8重量%未満の量で存在していてもよい。
【0032】
[0029]上記のように、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、芳香族アミン安定剤およびチオエステル安定剤と組み合わせられる。芳香族アミン安定剤は、任意の適当な窒素含有酸化防止剤、例えば第二アリールアミンを含み得る。芳香族アミン酸化防止剤は、例として、ジフェニルアミンとアセトンの反応生成物であってもよい。芳香族アミン酸化防止剤の特定の例には、4,4’-ビス(1,1’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、p-(p-トルエン-スルホニルアミド)-ジフェニルアミンおよびN,N’-ジフェニル-p-フェニレン-ジアミン、4,4’-ビス(α,α-ターシャリオクチル)ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α-メチルベンズヒドリル)ジフェニルアミン、またはその混合物が挙げられる。
【0033】
[0030]特定の一実施形態では、芳香族アミン安定剤は、4-(1-メチル-1-フェニルエチル)N-[4-[1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]アニリンであってもよい。
【0034】
[0031]芳香族アミン安定剤は、一般に約0.05%~約1.5重量%の量でポリマー組成物中に存在していてもよく、その間の0.05重量%の全ての増分を包含する。例として、芳香族アミン安定剤は、約0.1重量%より多い量、例えば約0.2重量%より多い量、例えば約0.3重量%より多い量で組成物中に存在していてもよい。芳香族アミン安定剤は、一般に約1.3重量%未満の量、例えば約1重量%未満の量、例えば約0.8重量%未満の量、例えば約0.6重量%未満の量、例えば約0.5重量%未満の量で組成物中に存在する。
【0035】
[0032]組成物中に存在するチオエステル安定剤は、チオカルボン酸エステルであってもよい。チオエステル安定剤は、例として、以下の一般構造:
R11-O(O)(CH2)x-S-(CH2)y(O)O-R12
(式中、
xおよびyは、それぞれ独立に1~10、いくつかの実施形態では1~6、いくつかの実施形態では、2~4(例えば、2)であり;
R11およびR12は、それぞれ独立に直鎖状または分枝状、C6~C30アルキル、いくつかの実施形態ではC10~C24アルキル、いくつかの実施形態では、C12~C20アルキル、例えばラウリル、ステアリル、オクチル、ヘキシル、デシル、ドデシル、オレイルなどから選択される)を有していてもよい。
【0036】
[0033]適当なチオカルボン酸エステルの具体例には、例として、チオジプロピオン酸ジステアリル、チオジプロピオン酸ジラウリル、ジ-2-エチルヘキシル-チオジプロピオネート、チオジプロピオン酸ジイソデシルなどを挙げることができる。
【0037】
[0034]一実施形態では、チオエステル安定剤は、ジカルボン酸エステルであってもよい。例として、一態様では、チオエステル安定剤は、チオジプロピオン酸ジステアリルを含んでいてもよい。
【0038】
[0035]チオエステル安定剤は、一般に、約0.03重量%~約1.3重量%の量でポリマー組成物中に存在していてもよく、その間の0.01重量%の全ての増分を包含する。例えば、チオエステル安定剤は、約0.05重量%より多い量、例えば約0.08重量%より多い量、例えば約0.1重量%より多い量、例えば約0.13重量%より多い量、例えば約0.15重量%より多い量、例えば約0.17重量%より多い量でポリマー組成物中に存在していてもよい。チオエステル安定剤は、一般に、約1.1重量%未満の量、例えば約0.9重量%未満の量、例えば約0.7重量%未満の量、例えば約0.5重量%未満の量、例えば約0.3重量%未満の量でポリマー組成物中に存在している。
【0039】
[0036]一実施形態では、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、芳香族アミン安定剤およびチオエステル安定剤より多い量でポリマー組成物中に存在している。芳香族アミン安定剤はまた、チオエステル安定剤より多い量でポリマー組成物中に存在していてもよい。一態様では、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と芳香族アミン安定剤との重量比は、約10:1~約1:1、例えば約5:1~約1:1、例えば約3:1~約1.5:1であってもよい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤対チオエステル安定剤の重量比は、他方では、約15:1~約1:1、例えば約8:1~約1.5:1、例えば約5:1~約2:1であってもよい。
【0040】
[0037]上記のような安定剤の組合せは、本開示のポリマー組成物を配合する際にポリオキシメチレンポリマーと組み合わせられる。特に有利なことには、安定剤の組合せは、耐酸性をもつ物品を製造するための組成物の配合に適していないと過去に教示されているポリオキシメチレンポリマーと組み合わせることができることが発見された。例えば、当業者は、ヘミホルマール末端基含有量が比較的高いポリオキシメチレンポリマーの使用に対して教示している。例えば、米国特許第10,844,191号は、実行可能な耐酸性ポリオキシメチレンポリマー組成物を生成するためには、「ヘミホルマール末端基含有量が0.8mmol/kg以下であることが必須である」と述べている。
【0041】
[0038]それとは反対に、安定剤の組合せは、ヘミホルマール末端基含有量が比較的高いポリオキシメチレンポリマーを含有するポリマー組成物を配合するとき、主張されている任意の耐酸性の低下を相殺し、場合によっては逆転も可能であることが判明している。例として、任意の適当なポリオキシメチレンポリマーは組成物に組み込まれていてもよいが、一態様では、ポリオキシメチレンポリマーは、ヘミホルマール末端基含有量が、0.81mmol/kgより多く、例えば約0.85mmol/kgより多く、例えば約0.9mmol/kgより多く、例えば約0.95mmol/kgより多く、例えば約1mmol/kgより多く、例えば約1.2mmol/kgより多い。ヘミホルマール基含有量は、一般に約3mmol/kg未満、例えば約2mmol/kg未満である。
【0042】
[0039]ポリオキシメチレンコポリマー中の末端ヘミホルマール基の含有量は、次のように決定される。ポリオキシメチレンコポリマーは、2.9~3.1重量%の濃度で40~50℃の反応温度において無水ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)に溶解される。別々のバイアルにおいて、ピリジンが7.0~8.0重量%の濃度でシリル化剤、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)に加えられ;溶液が反応温度で撹拌される。使用されるBSTFAの量は、ポリオキシメチレンコポリマーに対して大過剰であり、コポリマー溶液の体積の約1.5~2倍である。ポリオキシメチレンコポリマー溶液は、撹拌しているBSTFA混合物に1滴ずつ加えられ、それはすぐに沈殿物で混濁する。反応混合物は、反応温度で30分間撹拌される。次いで混合物は、熱から外され、窒素流を使用して乾燥される。コポリマーは、HFIPに再溶解され、再度乾燥され、このサイクルが合計3回繰り返される。得られたシリル化コポリマーの一部は重水素化HFIP(HFIP-d2)に溶解され、NMR試料管に移される。1H NMRスペクトルは、内部標準として残留溶媒シグナルを使用して37℃で収集される。目的のピークは分析され;適当なパラメーターの一例は、1スペクトル当たり256スキャンを含み、フリップ角30°でBruker Avance III 400 MHz分光計を使用する。ヘミホルマールおよびヒドロキシエトキシ末端基にそれぞれ0.26(C)および0.23ppmで対応する、新しく形成されたテトラメチルシリルエーテル基が観察された。末端ヘミホルマール基(H)の定量化は、ポリオキシメチレンコポリマーのオキシメチレン単位(A)およびコモノマー単位(B)に4.98ppmおよび3.84ppmで対応するピークに関して行われる:
【0043】
【0044】
計算は、ポリマー構造の他の成分を含むように適宜調整することができる。
[0040]ポリオキシメチレンポリマーの調製は、グリコールなどの分子量調節剤の存在下で、トリオキサンまたはトリオキサンとジオキソランなどの環状アセタールとの混合物などのポリオキシメチレン形成モノマーの重合によって実施することができる。ポリマー組成物で使用されるポリオキシメチレンポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーを含んでいてもよい。一実施形態によれば、ポリオキシメチレンは、少なくとも50モル%、例えば少なくとも75モル%、例えば少なくとも90モル%、例えばさらに少なくとも97モル%の-CH2O-繰返し単位を含む、ホモポリマーまたはコポリマーである。
【0045】
[0041]一実施形態では、ポリオキシメチレンコポリマーが使用される。コポリマーは、少なくとも2個の炭素原子を有する飽和もしくはエチレン性不飽和アルキレン基、または鎖中に硫黄原子もしくは酸素原子を有し、アルキルシクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ハロゲンもしくはアルコキシからなる群から選択される1種もしくは複数の置換基を含み得るシクロアルキレン基を含む繰返し単位を約0.1モル%~約20モル%、特に約0.5モル%~約10モル%含有していてもよい。一実施形態では、開環反応によってコポリマーに組み込むことができる環状エーテルまたはアセタールが使用される。
【0046】
[0042]好ましい環状エーテルまたはアセタールは、式:
【0047】
【0048】
(式中、xは0または1であり、R2は、C2~C4-アルキレン基であり、適切な場合、C1~C4-アルキル基、またはC1~C4-アルコキシ基、および/またはハロゲン原子、好ましくは塩素原子である1種または複数の置換基を有する)のものである。単に一例として、酸化エチレン、プロピレン1,2-オキシド、ブチレン1,2-オキシド、ブチレン1,3-オキシド、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、および1,3-ジオキセパンは環状エーテルとして、また直鎖状オリゴホルマールまたはポリホルマール、例えばポリジオキソランまたはポリジオキセパンはコモノマーとして言及することができる。
【0049】
[0043]一実施形態では、ポリマー組成物中に存在するポリオキシメチレンポリマーは、比較的少量のコモノマー、例えばジオキソランを含有するコポリマーである。例えば、ポリオキシメチレンコポリマーは、コモノマー単位を約2重量%未満の量、例えば約1.8重量%未満の量、例えば約1.7重量%未満の量、例えば約1.6重量%未満の量で含有し得る。ポリオキシメチレンコポリマーのコモノマー含有量は、一般に約0.3重量%より多く、例えば約0.5重量%より多い量、例えば約0.7重量%より多い量、例えば約0.9重量%より多い量、例えば約1.1重量%より多い量、例えば約1.3重量%より多い量であってもよい。
【0050】
[0044]重合は、沈殿重合として、または溶融状態で生じ得る。重合パラメーター、例えば重合期間または分子量調節剤の量を適切に選択することによって、得られたポリマーの分子量、したがってMVR値を調整することができる。
【0051】
[0045]一実施形態では、ポリマー組成物に使用されるポリオキシメチレンポリマーは、末端位置に比較的多量の反応性基または官能基を含有している場合がある。反応性基は、例として、-OHまたは-NH2基を含んでいてもよい。
【0052】
[0001]一実施形態では、ポリオキシメチレンポリマーは、任意選択で末端ヒドロキシル基、例えばヒドロキシエチレン基および/またはヒドロキシル側基を、ポリマー上の全ての末端部位の少なくとも約50%より多く有していてもよい。例として、ポリオキシメチレンポリマーは、存在する末端基の合計数に基づいて、その末端基の少なくとも約70%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%がヒドロキシル基であってもよい。存在する末端基の合計数に全ての末端側基が含まれることが理解されたい。ポリオキシメチレンポリマー中のヒドロキシル基含有量の定量化は、参照により本明細書に組み込まれる、JP-A-2001-11143に記載されている方法によって実施することができる。
【0053】
[0046]一実施形態では、ポリオキシメチレンポリマーは、任意選択で末端ヒドロキシル基含有量が少なくとも15mmol/kg、例えば少なくとも18mmol/kg、例えば少なくとも20mmol/kgである。一実施形態では、末端ヒドロキシル基含有量は、18~80mmol/kgの範囲である。代替の実施形態では、ポリオキシメチレンポリマーは、末端ヒドロキシル基を100mmol/kg未満、例えば50mmol/kg未満、例えば20mmol/kg未満、例えば18mmol/kg未満、例えば15mmol/kg未満の量で含有し得る。例として、ポリオキシメチレンポリマーは、末端ヒドロキシル基を約5mmol/kg~約20mmol/kg、例えば約5mmol/kg~約15mmol/kgの量で含有し得る。例えば、末端ヒドロキシル基含有量は低いが、メルトボリュームフローレートは高いポリオキシメチレンポリマーを使用してもよい。
【0054】
[0047]末端ヒドロキシル基に加えて、またはその代わりに、ポリオキシメチレンポリマーもこれらのポリマーによくある他の末端基を有していてもよい。これらの例は、アルコキシ基、上記のヘミホルマール基、アセテート基またはアルデヒド基である。一実施形態によれば、ポリオキシメチレンは、少なくとも50モル%、例えば少なくとも75モル%、例えば少なくとも90モル%、例えばさらに少なくとも95モル%の-CH2O-繰返し単位を含む、ホモポリマーまたはコポリマーである。
【0055】
[0048]一実施形態では、ポリオキシメチレンポリマーは、カチオン重合プロセスとそれに続く溶液加水分解を用いて一部の不安定な末端基を除去することによって生成することができる。カチオン重合の間、エチレングリコールまたはメチラールなどのグリコールは、連鎖停止剤として使用することができる。ヘテロポリ酸、トリフル酸またはホウ素化合物は、触媒として使用してもよい。
【0056】
[0049]ポリオキシメチレンポリマーは、任意の適当な分子量であってもよい。ポリマーの分子量は、例として、1モル当たり約4,000グラム~約20,000g/モルであってもよい。他の実施形態では、しかしながら、分子量は、20,000g/モルをかなり上回っていてもよく、例えば約20,000g/モル~約200,000g/モルであってもよい。
【0057】
[0050]組成物中に存在するポリオキシメチレンポリマーは、一般にメルトフローインデックス(MFI)が、ISO試験1133に従って190℃および2.16kgで決定された約1~約50g/10分、例えば約9g/10分~約27g/10分の範囲であってもよいが、メルトフローインデックスがより高いまたはより低いポリオキシメチレンも本明細書に包含されている。一実施形態では、ポリオキシメチレンポリマーは、メルトフローインデックスが一般に約10g/10分よりも高い。例えば、ポリオキシメチレンポリマーは、メルトフローインデックスが約11g/10分より高く、約12g/10分より高くてもよい。ポリオキシメチレンポリマーのメルトフローインデックスは、約35g/10分未満、例えば約30g/10分未満、例えば約25g/10分未満、例えば約20g/10分未満、例えば約14g/10分未満であってもよい。一実施形態では、ポリオキシメチレンポリマーは、メルトフローインデックスが比較的低く、約5g/10分未満、例えば約4g/10分未満、例えば約3g/10分未満、そして一般に約0.1g/10分より高くてもよい。
【0058】
[0051]ポリオキシメチレンポリマーは、少なくとも50wt.%、例えば少なくとも60wt.%、例えば少なくとも75wt.%、例えば少なくとも80wt.%、例えば少なくとも85wt.%、例えば少なくとも90wt.%、例えば少なくとも93wt.%の量でポリオキシメチレンポリマー組成物中に存在していてもよい。一般に、ポリオキシメチレンポリマーは、約100wt.%未満、例えば約97wt.%未満、例えば約95wt.%未満の量で存在し、ここで、重量はポリオキシメチレンポリマー組成物の全重量に基づく。
【0059】
[0052]本開示によれば、ポリオキシメチレンポリマーは、少なくとも1種の酸中和剤および任意選択で可塑剤と組み合わせられる。酸中和剤は、一般に金属化合物および/または水酸化物、酸化物、硫化物または炭酸塩を含む。
【0060】
[0053]一態様では、酸中和剤の少なくとも1つがマグネシウム化合物である。例として、本開示のポリマー組成物は、単一のマグネシウム化合物または複数のマグネシウム化合物を含有し得る。本開示で使用するのに特に好適な化合物は、水酸化マグネシウム単独、酸化マグネシウム単独または水酸化マグネシウムと酸化マグネシウムの組合せを含む。本開示によれば、1種または複数のマグネシウム化合物は、耐酸性をもたらすのに特に好適であることが判明している特定のマグネシウム含有量を達成するように、ポリマー組成物に加えられる。ポリマー組成物のマグネシウム含有量は、例として、約1.8重量%より多く、例えば約2重量%より多く、例えば約2.2重量%より多く、例えば約2.4重量%より多く、例えば約2.6重量%より多く、例えば約2.8重量%より多く、例えば約3重量%より多く、例えば約3.2重量%より多く、例えば約3.4重量%より多く、例えば約3.6重量%より多くてよい。ポリマー組成物のマグネシウム含有量は、一般に約8.5重量%未満、例えば約7重量%未満、例えば約6重量%未満、例えば約5重量%未満である。一実施形態では、ポリマー組成物のマグネシウム含有量は、約4.1重量%未満である。
【0061】
[0054]一実施形態では、ポリマー組成物は、酸化マグネシウムだけを含有する。酸化マグネシウムは、ポリマー組成物のマグネシウム含有量が約2.5重量%~約6.5重量%であるのに十分な量でポリマー組成物中に存在し得る。
【0062】
[0055]代替の実施形態では、ポリマー組成物は、水酸化マグネシウムを単独で、または酸化マグネシウムと併せて含有していてもよい。水酸化マグネシウムは、水酸化マグネシウムがポリマー組成物に対してマグネシウムの重量により約0.6%~約4.5%を占めるようにポリマー組成物中に存在し得る。例として、水酸化マグネシウムは、約0.8重量%より多い、例えば約1.2重量%より多い、例えば約1.5重量%より多い、例えば約1.8重量%より多い、例えば約2重量%より多い、例えば約2.2重量%より多い、例えば約2.5重量%より多い、例えば約2.8重量%より多い、例えば約3重量%より多い、例えば約3.2重量%より多い、例えば約3.5重量%より多い、そして一般に約6.3重量%未満、例えば約5.5重量%未満、例えば約4.1重量%未満のマグネシウム含有量をもたらすように、ポリマー組成物に加えることができる。上記のように、水酸化マグネシウムは、単独で、または酸化マグネシウムと併せて存在していてもよい。酸化マグネシウムが水酸化マグネシウムと併せて存在している場合、酸化マグネシウムも水酸化マグネシウムに関して上記と同じ量のマグネシウム含有量をポリマー組成物に対してもたらすように存在していてもよい。
【0063】
[0056]1種または複数のマグネシウム化合物に加えて、種々の他の酸中和剤もポリマー組成物に加えることができる。例として、使用してもよい他の酸中和剤には、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫化硫黄、炭酸カルシウム、またはその混合物が挙げられる。
【0064】
[0057]一実施形態では、酸中和剤は、比較的小さい粒径と高い表面積を併せ持ち得る。各酸中和剤は、例えば、約25m2/gより大きい、例えば約35m2/gより大きい、例えば約45m2/gより大きい、例えば約55m2/gより大きい、例えば約65m2/gより大きい、例えば約75m2/gより大きい、例えば約85m2/gより大きい、例えば約95m2/gより大きい、例えば約105m2/gより大きい、例えば約115m2/gより大きい、例えば約125m2/gより大きい、例えば約135m2/gより大きい、例えば約145m2/gより大きい、例えば約155m2/gより大きい、例えば約165m2/gより大きい、例えば約175m2/gより大きい、例えば約185m2/gより大きい、例えば約195m2/gより大きい、例えば約205m2/gより大きい、例えば約215m2/gより大きいBET表面積を有していてもよい。BET表面積は、一般に約400m2/g未満である。
【0065】
[0058]一態様では、1種または複数の酸中和剤は、2重量%より多い量、例えば2.5重量%より多い量、例えば約3重量%より多い量、例えば約3.5重量%より多い量、例えば約4重量%より多い量、例えば約4.5重量%より多い量、例えば約5重量%より多い量、例えば約5.2重量%より多い量、例えば約5.5重量%より多い量、例えば約5.7重量%より多い量、例えば約6重量%より多い量、例えば約6.5重量%より多い量、例えば約7重量%より多い量、例えば約8重量%より多い量、例えば約9重量%より多い量、例えば約10重量%より多い量、例えば約11重量%より多い量、例えば約12重量%より多い量でポリマー組成物中に存在する。1種または複数の酸中和剤は、一般に約25重量%未満の量、例えば約22重量%未満の量、例えば約20重量%未満の量、例えば約18重量%未満の量、例えば約15重量%未満の量、例えば約12重量%未満の量、例えば約10重量%未満の量、例えば約8重量%未満の量で組成物中に存在する。
【0066】
[0059]ポリオキシメチレンポリマーおよび酸中和剤に加えて、ポリマー組成物は、可塑剤をさらに含有していてもよい。可塑剤は、ポリアルキレングリコール、エステル、ポリエステル、エポキシド、スルホンアミド、ポリエーテル、ポリアミド、ポリブテン、アセチル化モノグリセリド、クエン酸アルキル、有機リン酸エステル、またはその混合物を含み得る。
【0067】
[0060]例として、一実施形態では、可塑剤は、ポリエチレングリコールを含む。可塑剤の平均分子量は、一般に約1,000g/モルより大きく、例えば約3,000g/モルより大きく、例えば約5,000g/モルより大きくてよい。可塑剤の平均分子量は、一般に約55,000g/モル未満、例えば約30,000g/モル未満、例えば約15,000g/モル未満、例えば約8,000g/モル未満である。
【0068】
[0061]代替の実施形態では、可塑剤は、エステル官能基を有していてもよく、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、マレイン酸エステル、トリメリット酸エステル、安息香酸エステル、またはその混合物を含んでいてもよい。適当なフタル酸エステルの例は、フタル酸ジイソブチル(DIBP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジイソヘプチル(DIHP)、L 79フタレート、L711フタレート、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、L911フタレート、フタル酸ジウンデシル、フタル酸塩ジイソウンデシル、ウンデシルドデシルフタレート、フタル酸ジイソトリデシル(DTDP)およびブチルベンジルフタレート(BBP)である。
【0069】
[0062]アジピン酸エステルの例は、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニルおよびアジピン酸ジイソデシルである。トリメリット酸エステルの例は、トリメリット酸トリオチクルである。リン酸エステルを使用することもできる。適当な例は、トリ-2-エチルヘキシルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェートおよびリン酸トリクレシルである。
【0070】
[0063]セバシン酸エステルおよびアゼライン酸エステルには、ジ-2-エチルヘキシルセバケート(DOS)およびジ-2-エチルヘキシルアゼレート(DOZ)が挙げられる。
【0071】
[0064]ポリエステル可塑剤は、通常、プロパンジオールまたはブタンジオールとアジピン酸または無水フタル酸との縮合物に基づく。次いで、反応化学量論の厳密な制御によって末端キャップされていないポリエステルが生成可能だが、これらのポリエステルの成長ポリマー鎖は、アルコールまたは一塩基酸で末端キャップしてもよい。
【0072】
[0065]さらなる可塑剤は、JAYFLEX(登録商標)MB10、BENZOFLEX(登録商標)2088、BENZOFLEX(登録商標)LA-705、およびBENXOFLEX(登録商標)9-88として市販されている安息香酸エステルである。エポキシド系可塑剤にはエポキシ化植物油が含まれる。
【0073】
[0066]一実施形態では、可塑剤は、芳香族ベンゼンスルホンアミドである。一般式(I):
【0074】
【0075】
(式中、R1は、水素原子、C1~C4アルキル基またはC1~C4アルコキシ基を表し、Xは、直鎖状もしくは分枝状C2~C10アルキレン基、またはアルキル基、またはメチレン基、または脂環式基、または芳香族基を表し、Yは、基H、OHまたは
【0076】
【0077】
(式中、R2は、C1~C4アルキル基または芳香族基を表し、これらの基は、任意選択で、それら自体がOHまたはC1~C4アルキル基によって置換されていてもよい)の1つを表す)によって表されるベンゼンスルホンアミドが好ましい。
【0078】
[0067]式(I)の好ましい芳香族ベンゼンスルホンアミドは、以下のものであり:
R1は、水素原子またはメチルもしくはメトキシ基を表し、Xは、直鎖状もしくは分枝状C2~C10アルキレン基またはフェニル基を表し、Yは、H、OHまたは-O-CO-R2基を表し、R2は、メチルまたはフェニル基を表し、後者は、任意選択で、それ自体がOHまたはメチル基によって置換されていてもよい。
【0079】
[0068]以下に明記するように室温で液体(L)または固体(S)である式(I)の芳香族スルホンアミドのうち、以下の生成物について、それらに割り当てられた略語と共に言及することができる:
N-(2-ヒドロキシエチル)ベンゼンスルホンアミド(L)、
N-(3-ヒドロキシプロピル)ベンゼンスルホンアミド(L)、
N-(2-ヒドロキシエチル)-p-トルエンスルホンアミド(S)、
N-(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド(S)、
N-[(2-ヒドロキシ-1-ヒドロキシメチル-1-メチル)エチル]ベンゼンスルホンアミド(L)、
N-[5-ヒドロキシ-1,5-ジメチルヘキシル]ベンゼンスルホンアミド(S)、
N-(2-アセトキシエチル)ベンゼンスルホンアミド(S)、
N-(5-ヒドロキシペンチル)ベンゼンスルホンアミド(L)、
N-[2-(4-ヒドロキシベンゾイルオキシ)エチル]ベンゼン-スルホンアミド(S)、
N-[2-(4-メチルベンゾイルオキシ)エチル]ベンゼンスルホンアミド(S)、
N-(2-ヒドロキシエチル)-p-メトキシベンゼンスルホンアミド(S)および
N-(2-ヒドロキシプロピル)ベンゼンスルホンアミド(L)。
【0080】
[0069]特定の1つの可塑剤は、スルホンアミド、例えばN-(n-ブチル)ベンゼンスルホンアミドである。
[0070]ポリマー組成物中に存在する可塑剤の量は、存在する酸中和剤の量ならびに種々の他の要因によって決まる可能性がある。一般に、可塑剤は、約0.8重量%より多い量、例えば約1.2重量%より多い量、例えば約1.6重量%より多い量、例えば約1.8重量%より多い量で組成物中に存在する。可塑剤は、一般に約12重量%未満の量、例えば約8重量%未満の量、例えば約6重量%未満の量、例えば約3重量%未満の量で存在する。
【0081】
[0071]ポリオキシメチレンポリマー、安定剤の組合せ、少なくとも1種の酸中和剤、および可塑剤に加えて、1つまたは複数の特性を改善するために種々の他の成分および原料が組成物に含有されていてもよい。例えば、一実施形態では、組成物は、組成物から成形された任意の物品が静電気拡散性(ESD)能を示すように、導電性フィラーを含有していてもよい。導電性フィラーは、導電性粒子、粉末、繊維またはその組合せを含んでいてもよい。例として、導電性フィラーは、金属粉末、金属フレーク、金属繊維(すなわち、ステンレス鋼繊維)、炭素粉末、炭素繊維、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、またはそれらの組合せを含んでいてもよい。
【0082】
[0072]さらに、導電性フィラーは、ポリマー組成物の全重量に基づいて、約1重量%~約30重量%の範囲の量、例えば約1.5重量%~約25重量%の範囲の量、例えば約2重量%~約20重量%の範囲の量で本開示のポリマー組成物中に存在していてもよい。
【0083】
[0073]一実施形態では、コポリアミドは、ホルムアルデヒド放出を減らすためにポリマー組成物中に存在していてもよい。コポリアミドは、一般に、軟化点が約120℃より高く、例えば約130℃より高く、例えば約140℃より高く、例えば約150℃より高く、例えば約160℃より高く、例えば約170℃より高くてもよい。コポリアミドの軟化点は、約210℃未満、例えば約200℃未満、例えば約190℃未満、例えば約185℃未満であってもよい。コポリアミドは、溶融粘度が230℃で、約7Pa sより大きく、例えば約8Pa sより大きく、例えば約9Pa sより大きくてもよい。溶融粘度は、一般に、約15Pa s未満、例えば約14Pa s未満、例えば約13Pa s未満である。一実施形態では、コポリアミドは、エタノール可溶性である。一実施形態では、コポリアミドは、ポリマー性脂肪酸と脂肪族ジアミンとの重縮合物を含んでいてもよい。コポリアミドは、一般に、約0.01重量%より多い量、例えば約0.03重量%より多い量、例えば約0.05重量%より多い量で組成物中に存在していてもよい。コポリアミドは、一般に、約2重量%未満の量、例えば約1.5重量%未満の量、例えば約1重量%未満の量、例えば約0.5重量%未満の量、例えば約0.1重量%未満の量で存在する。
【0084】
[0074]一実施形態では、酸スカベンジャーが存在していてもよい。酸スカベンジャーは、例として、アルカリ土類金属塩を含んでいてもよい。例として、酸スカベンジャーは、カルシウム塩、例えばクエン酸カルシウムまたは炭酸カルシウムを含んでいてもよい。一実施形態では、酸スカベンジャーは、クエン酸三カルシウムを含んでいてもよい。酸スカベンジャーは、少なくとも約0.01wt.%、例えば少なくとも約0.05wt.%、例えば少なくとも約0.09wt.%の量で存在していてもよい。一実施形態では、例えば酸スカベンジャーが炭酸塩である場合、より多くの量の酸スカベンジャーが使用される。例えば、酸スカベンジャーは、約2wt.%より多く、例えば約5wt.%より多く、例えば約7wt.%より多い量で存在していてもよい。酸スカベンジャーは、一般に、約10wt.%未満、例えば約7wt.%未満、例えば約5wt.%未満、例えば約1wt.%未満、例えば約0.75wt.%未満、例えば約0.5wt.%未満の量で存在し、ここで、重量はそれぞれのポリマー組成物の全重量に基づく。
【0085】
[0075]一実施形態では、核剤が存在していてもよい。核剤は、結晶化度を増大させることができ、オキシメチレンターポリマーを含んでいてもよい。特定の一実施形態では、例として、核剤は、ブタンジオールジグリシジルエーテル、酸化エチレン、およびトリオキサンのターポリマーを含んでいてもよい。一実施形態では、ターポリマー核剤は、粒径が比較的小さく、例えば、約1ミクロン未満、例えば約0.8ミクロン未満、例えば約0.6ミクロン未満、例えば約0.4ミクロン未満、そして一般に0.01ミクロンより大きいd50粒径を有していてもよい。使用できる他の核剤には、ポリアミド、窒化ホウ素、またはタルクが挙げられる。ポリアミド核剤は、PA6またはPA12であってもよい。核剤は、少なくとも約0.01wt.%、例えば少なくとも約0.05wt.%、例えば少なくとも約0.1wt.%、および約2wt.%未満、例えば約1.5wt.%未満、例えば約1wt.%未満の量で組成物中に存在していてもよく、ここで、重量はそれぞれのポリマー組成物の全重量に基づく。
【0086】
[0076]一実施形態では、滑剤が存在していてもよい。滑剤は、ポリマーワックス組成物を含んでいてもよい。一実施形態では、脂肪酸アミド、例えばエチレンビス(ステアラミド)が存在していてもよい。代替の実施形態では、滑剤は、可塑剤と比べて比較的低い分子量を有するポリアルキレングリコールを含んでいてもよい。例として、滑剤は、平均分子量が約500~約4,000のポリエチレングリコールを含んでいてもよい。滑剤は、一般に、少なくとも約0.01wt.%、例えば少なくとも約0.05wt.%、例えば少なくとも約0.1wt.%、および約1wt.%未満、例えば約0.75wt.%未満、例えば約0.5wt.%未満の量でポリマー組成物中に存在していてもよく、ここで、重量はそれぞれのポリマー組成物の全重量に基づく。
【0087】
[0077]一実施形態では、着色剤が存在していてもよい。使用できる着色剤には、任意の望ましい無機顔料、例えば二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、コバルトブルー、ならびに他の有機顔料および染料、例えばフタロシアニン、アントラキノンなどが挙げられる。他の着色剤には、カーボンブラックまたは種々の他のポリマー可溶性染料が挙げられる。一実施形態では、着色剤の組合せはポリマー組成物中に含まれていてもよい。例として、ポリマー組成物は、カーボンブラックを含有していてもよい。代替の実施形態では、ポリマー組成物中に存在する着色剤は、少なくとも1種の着色顔料、例えば黄色顔料および緑色顔料と組み合わせて、また任意選択でカーボンブラックとさらに組み合わせて、二酸化チタンを含んでいてもよい。着色剤は、少なくとも約0.01wt.%、例えば少なくとも約0.05wt.%、例えば少なくとも約0.1wt.%、例えば少なくとも約0.5wt.%、および約5wt.%未満、例えば約2.5wt.%未満、例えば約1wt.%未満の量で組成物中に存在していてもよく、ここで、重量はそれぞれのポリマー組成物の全重量に基づく。
【0088】
[0078]1種または複数の光安定剤も、組成物内に含有されていてもよい。一実施形態では、紫外光安定剤に加えて、光安定剤、例えば立体障害アミンが存在していてもよい。使用できるヒンダードアミン光安定剤には、N-メチル化されたオリゴマーのヒンダードアミン化合物が挙げられる。例として、ヒンダードアミン光安定剤は、高分子量のヒンダードアミン安定剤を含んでいてもよい。光安定剤は、存在する場合、少なくとも約0.01wt.%、例えば少なくとも約0.05wt.%、例えば少なくとも約0.075wt.%、および約1wt.%未満、例えば約0.75wt.%未満、例えば約0.5wt.%未満の量でポリマー組成物中に存在していてもよく、ここで、重量はそれぞれのポリマー組成物の全重量に基づく。
【0089】
[0079]一実施形態では、紫外光安定剤が存在していてもよい。紫外光安定剤は、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、または安息香酸エステルを含んでいてもよい。紫外線吸収剤は、存在する場合、少なくとも約0.01wt.%、例えば少なくとも約0.05wt.%、例えば少なくとも約0.075wt.%、および約1wt.%未満、例えば約0.75wt.%未満、例えば約0.5wt.%未満の量でポリマー組成物中に存在していてもよく、ここで、重量はそれぞれのポリマー組成物の全重量に基づく。
【0090】
[0080]しかしながら、一実施形態では、ポリマー組成物は、いかなる光安定剤も含まない。例として、組成物は、紫外光安定剤またはヒンダードアミン光安定剤を含まなくてもよい。
【0091】
[0081]一態様では、窒素含有ホルムアルデヒド捕捉剤は、任意選択でポリマー組成物中に存在していてもよい。しかしながら、代替の実施形態では、ポリマー組成物は、いかなる窒素含有ホルムアルデヒド捕捉剤もまったく含まないように配合することができる。これらのうち、主として、アミノ置換された炭素原子またはカルボニル基のいずれかに隣接するヘテロ原子として、少なくとも1個の窒素原子を有する複素環式化合物、例えば、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピロリドン、アミノピリジンおよびそれらに由来する化合物である。このような化合物は、トリアミノ-1,3,5-トリアジン(メラミン)およびその誘導体、例えばメラミン-ホルムアルデヒド縮合体およびメチロールメラミンである。他の化合物には、グアナミン化合物が挙げられる。
【0092】
[0082]ポリマー組成物はまた、任意選択で1種または複数の強化材を含有していてもよい。例として、ポリマー組成物は、強化繊維、例えばガラス繊維、炭素繊維などを含有していてもよい。強化繊維は、一般に、約2重量%~約40重量%、例えば約10重量%~約25重量%の量で存在していてもよい。
【0093】
[0083]本開示の組成物は、当技術分野において既知の任意の技術を使用して混ぜ合わせ、ポリマー物品に成形することができる。例として、それぞれの組成物を激しく混合して、実質的に均一なブレンドを形成することができる。ブレンドは、高温、例えばポリマー組成物中に利用されるポリマーの融点より高いが分解温度より低い温度で溶融混練してもよい。あるいは、それぞれの組成物を溶融させ、従来の一軸または二軸スクリュー押出機で一緒に混合してもよい。好ましくは、溶融混合は、100~280℃、例えば120~260℃、例えば140~240℃または180~220℃の範囲の温度で実施される。
【0094】
[0084]押出し後、組成物をペレットに形成することができる。ペレットは、射出成形、熱成形、吹込成形、回転成形などの当技術分野において既知の技術によってポリマー物品に成形することができる。
【0095】
[0085]一実施形態では、ポリマー組成物は、自動車分野のために設計されるポリマー物品を製造するのに使用することができる。ポリマー物品は、例として、車両外装部品になるように設計することができる。一実施形態では、成形品は、燃料接触部材に形成される。燃料接触部材は、例として、自動車またはトラックなどの車両の燃料装置に含有される1種または複数の部品であってもよい。燃料接触部材は、例として、ディーゼル燃料との繰り返しの接触について設計してもよい。
【0096】
[0086]
図1を参照すれば、例として、本開示のポリマー組成物から形成された燃料系路100が示されている。この実施形態では、燃料系路100は、例として、波形の管を含む。
【0097】
[0087]燃料系路に加えて、本開示のポリマー組成物は、燃料タンク、燃料ポンプの構成要素、燃料フィルターの構成要素、燃料レール、インジェクターの構成要素、圧力調節器、およびリターン燃料系路を製造するのに使用することができる。
【0098】
[0088]一実施形態では、ポリマー組成物は、
図2に示されるように燃料フランジ200を製造するのに使用される。燃料フランジ200は、例として、燃料タンク上に設置され、1つまたは複数の燃料系路に接続されるように設計される。例えば、
図2に示されるように、燃料フランジ200は、燃料を燃料タンクに供給するため、また燃料タンクから燃料を分配するための、少なくとも1つの燃料入口または出口202を含んでいてもよい。燃料フランジ200は、車両内に含有される制御器を、燃料タンク中およびその周りに存在し得る種々のセンサーに接続するための電気コネクター204を含んでいてもよい。
【0099】
[0089]ポリマー組成物は、ポリマー組成物を、燃料関連用途での使用に加えて多くの用途に好適であるようにする物理的性質および耐酸性の組合せを有していてもよい。例えば、GM試験GMW18052に従って試験される場合、ポリマー組成物は、75%引張応力を維持するのに30サイクルより大きい耐酸性を示し、35%引張応力を維持するのに10サイクルより大きい耐酸性を示し、2500MPaより大きい引張弾性率を示し、54MPaより大きい引張降伏強さを示し、4kJ/m2より大きい23℃におけるノッチ付きシャルピー衝撃強さを示し、3kJ/m2より大きい-30℃におけるノッチ付きシャルピー衝撃強さを示し、1.4g/cm3~1.46g/cm3の密度を示し、168℃~175℃の溶融温度を示し、90℃より高いDTULを示し、9g/10分~16g/16分のメルトフローレートを示す。例えば、ポリマー組成物は、2800MPaより大きく、例えば3000MPaより大きく、そして一般的に4500MPa未満の引張弾性率を示すことができ、56MPaより大きく、例えば58MPaより大きく、そして一般に70MPa未満の引張降伏強さを示し、約5kJ/m2より大きく、例えば約5.5kJ/m2より大きく、そして一般に約9kJ/m2未満の23℃におけるノッチ付きシャルピー衝撃強さを示し、約5kJ/m2より大きく、例えば約5.4kJ/m2より大きく、そして一般に約8.5kJ/m2未満の-30℃におけるノッチ付きシャルピー衝撃強さを示す。
【0100】
[0090]本開示は、以下の実施例を参照してより良く理解することができる。
【実施例】
【0101】
[0091]以下の実施例は、本発明をさらに例示するために提供されるが、その範囲を限定するものではない。本発明の他の変形は、当業者に容易に明らかであり、添付の特許請求の範囲により包含される。
【0102】
実施例1
[0092]この実施例では、種々のポリマー組成物を配合し、強酸性溶液に対する耐性に関して試験した。ポリマー組成物はまた、種々の物理的性質に関しても試験した。
【0103】
[0093]以下のポリマー組成物を作成した:
【0104】
【0105】
[0094]上記組成物を、引張り試験片に射出成形し、酸性の洗車用液剤に対するそれらの媒体耐性を試験した。Energizer Holdings社製のEagle One(登録商標)Etching Mag Wheel Cleaner(pH2~3)を試験媒体として使用した。試験片を以下のようにそれぞれ3回繰り返して試験した:
1. 各試験片を2%曲げ歪で固定した。使用した固定具は2点曲げ装置であり、%歪みは、2枚のエンドプレート間の距離によって制御した。
2. 1日の始まりに、試験片に媒体を噴霧し、ガーゼで覆って浸した。
3. 試験片を60±3℃のオーブンに4時間入れた。
4. オーブンから取り出した後、試験片に媒体を噴霧し、室温で4時間ガーゼ下に浸しておいた。
5. 4時間後、試験片に媒体を再度噴霧し、室温で終夜ガーゼ下に浸しておいた。
6. 1~4のプロセスを1サイクルと見なし、試験片が完全に破壊されるまでサイクルを繰り返した。
7. 各噴霧の前に、試験片は、虫眼鏡と光を使用して、クラックまたは外見の変化がないか目視検査した。
【0106】
[0095]以下の結果が得られた(
図3にも示した):
【0107】
【0108】
[0096]試料番号1および2は、ポリオキシメチレンポリマーだけを含有する試料番号3と比較して劇的な媒体耐性を示した。試料番号1および2のどちらも優れた結果を示したが、ヘミホルマール末端基含有量がより高いポリオキシメチレンポリマーを含有する試料番号2は、実際に酸に対してより耐性を示した。この結果は、完全に予想外のことである。
【0109】
[0097]本発明へのこれらおよび他の改変および変更は、添付の特許請求の範囲により詳細に記載される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者によって行うことができる。加えて、種々の実施形態の態様は、完全または部分的に置き換え可能であることを理解すべきである。さらに、当業者は、前述の説明は単なる一例であり、添付の特許請求の範囲に記載されるような本発明を限定する意図はないことを理解しているであろう。
【国際調査報告】