(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】キャピラリー型の患者ライン用フィルタを有する腹膜透析システム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/28 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A61M1/28 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531331
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 US2022080121
(87)【国際公開番号】W WO2023114608
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(71)【出願人】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ワーグナー, ステフェン
(72)【発明者】
【氏名】フリーグ, ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】バック, ラインホルド
(72)【発明者】
【氏名】ベック, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ブリックル, レイナー
(72)【発明者】
【氏名】クラウゼ, ベルント
(72)【発明者】
【氏名】クノアー, トルステン
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA06
4C077BB02
4C077JJ02
4C077LL05
(57)【要約】
腹膜透析(PD)システム(10)は、PD装置(20)と、PD装置(20)から延出する、(二重ルーメン患者ラインであり得る)患者ライン(50)と、患者ライン(50)と流体連通するフィルタセット(100)とを含み、フィルタセット(100)は、複数の中空糸膜(120、例えば殺菌グレードの中空糸膜、又は、減菌された中空糸膜)を含み、複数の中空糸膜は、新しいPD液がフィルタセット(100)から出る前に中空糸膜(120)の多孔質壁を通って流れるように位置決め及び配列される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹膜透析(PD)システム(10)であって、
PD装置(20)と、
前記PD装置(20)から延出する患者ライン(50)と、
前記患者ライン(50)と流体連通するフィルタセット(100)と
を備え、
前記フィルタセット(100)が、複数の前記中空糸膜(120)を含み、前記複数の前記中空糸膜(120)が、前記フィルタセット(100)を出る前に新しいPD液が前記中空糸膜(120)の多孔質壁を通って流れるように位置決め及び配列される、PDシステム(10)。
【請求項2】
前記患者ライン(50)が、前記フィルタセット(100)の新しいPD液の通路(112)と流体連通して配置された、新しいPD液用ルーメン(52)を含む、二重ルーメン患者ラインであり、前記二重ルーメン患者ライン(50)が、前記フィルタセット(100)の使用済みPD液の通路(114)と流体連通して配置された、使用済みPD液用ルーメン(54)を更に含む、請求項1に記載のPDシステム(10)。
【請求項3】
前記使用済みPD液の通路(114)が、前記複数の中空糸膜(120)の間に位置する中央領域(124)と流体連通し、前記中央領域(124)が、前記フィルタセット(100)の移送セット側コネクタ(108)から使用済みPD液を受け取る、請求項2に記載のPDシステム(10)。
【請求項4】
前記新しいPD液の通路(112)が、前記フィルタセット(100)の壁部(116)に形成された、複数の入口開口部(118)と流体連通し、前記入口開口部(118)が、前記複数の中空糸膜(120)への、新しいPD液の注入口を形成する、請求項2又は3に記載のPDシステム(10)。
【請求項5】
前記新しいPD液の通路(112)が、少なくとも部分的に新しいPD液用ポート(104a)を介して形成され、前記使用済みPD液の通路(114)が、少なくとも部分的に使用済みPD液用ポート(104b)を介して形成され、前記新しいPD液用ポート及び前記使用済みPD液用ポート(104a、104b)が、前記二重ルーメン患者ライン(50)の患者ラインのコネクタ(56)に接続するように構成された、ルーメン側コネクタ(104)の一部である、請求項2~4のいずれか1項に記載のPDシステム(10)。
【請求項6】
前記ルーメン側コネクタ(104)と前記患者ラインのコネクタ(56)との間で、前記新しいPD液用ポート及び前記使用済みPD液用ポート(104a、104b)の周りを密封するように構成された、圧縮性ガスケットを含む、請求項5に記載のPDシステム(10)。
【請求項7】
前記中空糸膜(120)が、その多孔質壁を通して新しいPD液を通すために、一端部上に閉じられており、前記端部が、個別に閉じられ、又は、共通の構造体を介して前記端部の少なくとも2つが閉じられる、先行する請求項のいずれか1項に記載のPDシステム(10)。
【請求項8】
前記中空糸膜(120)に到達する前に、前記新しいPD液から空気を排出するように位置決めされた、少なくとも1つの疎水性膜(126)を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のPDシステム(10)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの疎水性膜(126)に向かって空気を迂回させるように位置決めされた、少なくとも1つのネット(128)を含む、請求項8に記載のPDシステム(10)。
【請求項10】
前記フィルタセット(100)が、患者の移送セットに直接接続するように構成され、又は、前記フィルタセット(100)が、前記患者の移送セットに接続するように構成された可撓性チューブ(110)を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のPDシステム(10)。
【請求項11】
前記フィルタセット(100)が、使用済みPD液が前記中空糸膜(120)の外側に沿って、接線方向に流れるように構成される、先行する請求項のいずれか1項に記載のPDシステム(10)。
【請求項12】
前記フィルタセット(100)が、新しいPD液が前記中空糸膜(120)の前記多孔質壁を通って内側から外側に流れるように構成される、先行する請求項のいずれか1項に記載のPDシステム(10)。
【請求項13】
前記PD装置(20)が、患者への充填中に前記中空糸膜(120)の下流にある、新しいPD液の圧力を検知するように位置決めされた圧力センサ(28b)を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のPDシステム(10)。
【請求項14】
前記複数の中空糸膜(120)が、殺菌グレードの中空糸膜、又は減菌された中空糸膜である、先行する請求項のいずれか1項に記載のPDシステム(10)。
【請求項15】
フィルタセット(100)であって、
複数の中空糸膜(120)を保持する本体(106)であって、前記複数の中空糸膜(120)が、新しいPD液が前記本体(106)から出る前に、前記中空糸膜(120)の多孔質壁を通って流れるように位置決め及び配列される、本体(106)と、
患者ラインに接続するように構成されたルーメン側コネクタ(104)であって、前記ルーメン側コネクタ(104)が、新しいPD液を前記本体(106)に導入し、使用済みPD液を前記本体(106)から受け取るように位置決めされる、ルーメン側コネクタ(104)と、
(i)患者の移送セットに接続するように構成された、移送セット側コネクタ(108)、又は(ii)前記患者の移送セットに接続するように構成された可撓性ライン(110)と
を備える、フィルタセット(100)。
【請求項16】
前記本体(106)が、前記本体(106)の壁部(116)に形成された複数の入口開口部(118)と流体連通する、新しいPD液の通路(112)を含み、前記入口開口部(118)が、前記複数の中空糸膜(120)への新しいPD液の注入口を形成する、請求項15に記載のフィルタセット(100)。
【請求項17】
フィルタセット(100)であって、
複数のキャピラリー膜(120)を保持する本体(106)であって、前記複数のキャピラリー膜(120)が、新しいPD液が前記本体(106)から出る前に、前記キャピラリー膜(120)の多孔質壁を通って流れるように位置決め及び配列される、本体(106)と、
患者ラインに接続するように構成されたルーメン側コネクタ(104)であって、前記ルーメン側コネクタ(104)が、新しいPD液を前記本体(106)に導入し、使用済みPD液を本体(106)から受け取るように位置決めされる、ルーメン側コネクタ(104)と、
患者の移送セットに接続するように構成された、移送セット側コネクタ(108)、又は前記患者の移送セットに接続するように構成された可撓性ライン(110)と
を備える、フィルタセット(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権主張)
本出願は、2021年12月17日に出願された米国仮出願第63/291,010号の優先権及びその利益を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に薬液治療に関し、特に、透析液治療中の治療液の濾過に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
様々な原因によって、腎臓系は機能しなくなる。腎不全は、様々な生理的異常を引き起こす。水分とミネラルのバランスをとること、又は、日々の代謝上の負荷を排出することが、もはや不可能となる。尿素、クレアチニン、尿酸といった代謝の有毒な最終生成物が、患者の血液や組織に蓄積するおそれがある。
【0004】
腎機能の低下、とりわけ腎不全は、透析によって治療される。腎臓が正常に機能していれば除去されるはずの老廃物、毒素、過剰な水分が、透析によって体外に排出される。腎臓の代替のための透析治療は、救命につながる治療であるため、多くの人にとって非常に重要なものである。
【0005】
腎不全療法の1つに血液透析(HD:Hemodialysis)があり、通常、拡散を利用して患者の血液から老廃物が除去される。血液と、透析液と呼ばれる電解質溶液、又は拡散を引き起こす透析液との間で、半透過性の透析器を介して、拡散勾配が生じる。
【0006】
血液濾過(HF:Hemofiltration)は、患者の血液から毒素を対流輸送することによる、別の腎臓代替療法である。HFは、処置中に、体外回路に補充液又は置換液を加えることによって実現される。補充液、及び処置中に患者に蓄積された液体は、HF治療の過程で限外濾過され、中分子及び大分子の除去に特に有益な対流輸送メカニズムがもたらされる。
【0007】
血液透析濾過(HDF:Hemodiafiltration)は、対流クリアランスと拡散クリアランスとを組み合わせた治療法である。HDFは、標準的な血液透析と同様に、透析器を流れる透析液を用いて、拡散クリアランスをたらす。更に、補充液を体外回路に直接供給して、対流クリアランスをもたらす。
【0008】
ほとんどのHD、HF、HDF処置は、治療センターで行われる。現在、一部で在宅血液透析(HHD:home hemodialysis)の動きがある。HHDは毎日実施することができ、通常2週間から3週間に1度実施される治療センター内での血液透析よりも、療法上の利点があるためである。研究により、処置回数は少ないが処置時間が長い患者よりも、処置回数が多い患者の方が、より多くの毒素及び老廃物が除去され、透析中の液過多になりにくいことが示されている。より頻繁に治療を受ける患者は、治療前に2日から3日分の毒素を蓄積しているセンター内の患者ほどには、ダウンサイクル(体液と毒素の変動)を経験しない。地域によっては、最も近い透析センターが患者の自宅から何マイルも離れていることもあり、ドアツードアの処置時間に、1日の大部分を費やすことになる。患者の自宅に近いセンターでの処置であっても、患者の1日の大部分を費やすおそれがある。HHDは、夜間又は日中の、患者がリラックスしたり、仕事をしたり、その他の生産的活動をしている間に行われる。
【0009】
腎不全療法の他の方式は腹膜透析(PD:Peritoneal Dialysis)であり、透析液、又はPD液とも呼ばれる透析液を、カテーテルを介して患者の腹膜腔に注入するものである。PD液は、患者の腹膜腔で腹膜と接触する。老廃物、毒素、及び過剰な水分は、患者の血流から腹膜の毛細血管を通り、拡散及び浸透、すなわち腹膜にわたって起こる浸透圧勾配によって、PD液に流れ込む。PD液中の浸透剤によって、浸透圧勾配がもたらされる。使用済みPD液は患者から排出され、老廃物、毒素、及び過剰な水分が除去される。このサイクルは、例えば複数回繰り返される。
【0010】
腹膜透析療法には、連続携行式腹膜透析(CAPD:Continuous Ambulatory Peritoneal dialysis)、自動腹膜透析(APD:Automated Peritoneal Dialysis)、タイダル腹膜透析、持続注入腹膜透析(CFPD:Continuous Flow Peritoneal Dialysis)など、様々な種類がある。CAPDは、手動式の透析処置である。ここでは、使用済みPD液が腹腔から排出されるように、埋め込みカテーテルを、患者が手動でドレインに接続する。その後、患者のカテーテルが新しいPD液の入ったバッグと連通するように、患者は流体連通を切り替え、新しいPD液がカテーテルを通して患者に注入される。患者は新しいPD液のバッグからカテーテルを取り外し、PD液を患者の腹腔内に滞留させ、そこで老廃物、毒素、過剰な水分の輸送が行われる。滞留時間の後、患者は手動での透析処置を、例えば1日に4回繰り返す。手動式の腹膜透析には、患者の多大な時間と労力が必要であり、改善の余地が十分に残されている。
【0011】
APDは、透析処置に排出、充填、及び滞留サイクルが含まれるという点で、CAPDと類似している。しかしながら、通常、患者が眠っている間に、APD装置によって自動的にこれらのサイクルが実行される。APD装置によって、患者が処置サイクルを手動で行う必要がなくなり、日中に医療品を運ぶことからも解放される。APD装置は、埋め込みカテーテル、新しいPD液の供給源又はバッグ、及び流体ドレインに流体接続される。APD装置によって、透析液供給源からカテーテルを通って、患者の腹膜腔に新しいPD液が圧送される。また、APD装置によって、PD液を腹膜腔内に滞留させ、廃棄物、毒素及び過剰な水分の輸送を行うことができる。この供給源には、幾つかの溶液バッグを含む、数リットルの透析液を含めることができる。
【0012】
APD装置によって、使用済みPD液が圧送され、カテーテルを介して、患者の腹腔から排出される。手動での透析処置と同様に、透析中に、排出、充填、及び滞留のサイクルが数回繰り返される。APD処置の最後に、「最終充填」が行われることがある。最終充填液は、次の処置が始まるまで患者の腹膜腔に残っていてもよいし、日中のある時点で、手動で空にすることもできる。
【0013】
PD液は患者の腹腔内に注入され、それゆえ薬剤とみなされるため、無菌又はそれに近い状態である必要がある。袋詰めされたPD液は、通常、処置のために適切に殺菌されているが、接続中のPD液、又は消毒を採用しているPD装置やサイクラには、更なる殺菌が必要な場合がある。
【0014】
従って、患者に提供される前に、新しいPD液に更なる殺菌を施す、効果的で低コストの方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
(要約)
本開示は、患者ラインを介して患者に新しい腹膜透析液を注入し、患者ラインを介して患者から使用済み腹膜透析液を除去する、腹膜透析装置又はサイクラを有する、腹膜透析(PD)システムを提供する。この患者ラインは、再利用可能又は使い捨てとすることができ、いずれの場合も、フィルタセットとともに作動し、フィルタセットと流体連通する。患者ラインが再利用可能である場合、この患者ラインは、処置時にフィルタセットに接続される。患者ラインが使い捨てである場合、一実施形態では、フィルタセットは使い捨ての患者ラインに統合される。いずれの構成においても、フィルタセットの遠位端を患者の移送セットに接続することができ、更に、この移送セットは患者の留置カテーテルと流体連通する。
【0016】
PD装置又はサイクラは、耐久性のあるPD液ポンプ、又は、使い捨てタイプのPD液ポンプを含むことができる。耐久性のあるPD液ポンプでは、使い捨て部品を使用せずに、それ自体を通じてPD液が圧送される。使い捨てタイプのPD液ポンプは、蠕動ポンプチューブや可撓性ポンプチャンバなどの、使い捨ての流体接触ポンプ部品を作動させる、ポンプアクチュエータを有する。PD装置又はサイクラは、複数のバルブも含む。これらのバルブも同様に、使い捨て部品で作動することなくフロースルー式で耐久性のあるものであってもよいし、あるいは、チューブセグメント又はカセットベースのバルブシートなどの、使い捨ての流体接触バルブ部品を作動させるバルブアクチュエータを有する、使い捨てタイプのバルブであってもよい。
【0017】
これらのポンプ及びバルブは、PD装置又はサイクラによって提供される、制御ユニットの自動制御下にある。一実施形態において、これらのバルブは、二重ルーメン患者ラインの新しいPD液用ルーメンを通って、PD液ポンプによって患者に新しいPD液を注入するために、制御ユニットによって開かれる、新しいPD液用バルブを含む。これらのバルブは、二重ルーメン患者ラインの使用済みPD液用のルーメンを通って、PD液ポンプによって患者から使用済みPD液を圧送するために、制御ユニットによって開かれる、使用済みPD液用バルブも含む。単一のPD液ポンプを使用することができるが、専用の新しいPD液用ポンプと、専用の使用済みPD液用ポンプとを、交互に使用することもできることを理解されたい。また、単一のPD液ポンプは、より連続的にPD液を流すために、複数のポンプチャンバを含み得る。
【0018】
新しいPD液用ルーメン、及び、使用済みPD液用ルーメンは、再利用可能であっても、使い捨てであってもよい。新しいPD液用ルーメン、及び、使用済みPD液用ルーメンが再利用可能である事例では、これらのルーメンは、フィルタセットのルーメン側コネクタに接続するコネクタで終端する。このコネクタは、フィルタセットの本体に(例えば、超音波溶着、熱融着、溶剤接着で)密封される、あるいは、フィルタセットの本体と一体成形される。更に、この本体は、患者の移送セットの相手側コネクタに直接接続する、又は、本体と患者の移送セットとの間に配置された短いチューブの相手側コネクタに接続する、移送セット側コネクタに(例えば、超音波溶着、熱融着、溶剤接着で)密封される、あるいは、移送セット側コネクタと一体成形される。その代わりに、この移送セット側コネクタは、単に、ポートに溶着するために短いチューブが延在する、ポートであってもよい。本明細書では、本体、ルーメン側コネクタ、及び移送セット側コネクタを、フィルタハウジングと呼ぶことがある。
【0019】
ルーメン側コネクタ及び本体によって、新しいPD液の通路、及び使用済みPD液の通路が形成される。新しいPD液の通路は、複数の膜入口開口部を提供又は画定する、円形壁などの壁部に通じている。膜入口開口部は、任意の所望の数、例えば6から12個、例えば8個設けることができ、等角度刻みで離間した、円形パターンで形成することができる。中空糸又はキャピラリー膜が、例えば、それぞれの入口開口部の内側に密封される。こうした中空糸又はキャピラリー膜は、一実施形態では、殺菌グレードの親水性膜又は減菌された親水性膜であり、約0.2ミクロンの孔径の多孔質壁で形成され、更なる濾過のために、新しいPD液がそこを流れる。
【0020】
新しいPD液は、新しいPD液の通路を通り、かつ、複数の中空糸又はキャピラリー膜のそれぞれの内側を流れる。複数の中空糸又はキャピラリー膜を提供することで半透膜がもたらされ、フィルタセットのハウジングをより短くすることができ、同時に、複数の患者への充填に必要な濾過が実現される。処置中に、患者は通常フィルタセットの近くで眠っているため、ハウジングが短い方が患者の快適性にとって望ましい。中空糸又はキャピラリー膜は、その遠位端で、例えば、圧着、溶着、接着によって覆われ、あるいは、個別のキャップ又は単一のワッシャ型キャップを使用して覆われるため、新しいPD液は膜の細孔に強制的に通され、それによって新しいPD液は最終的に濾過される。
【0021】
最終的に濾過された新しいPD液は、中空糸又はキャピラリー膜から、膜の間に位置する本体中央部に流れ込み、そこから直接又は短い可撓性チューブを介して、移送セット側コネクタから患者の移送セットに流れ込む。膜が新しいPD液で完全に濡れると、中空糸又はキャピラリー膜の親水性によって、膜を横切る空気の移動が防がれ、このことが、二次的な最終段階の空気除去の役割を果たす。しかしながら、必要であれば、中空糸又はキャピラリー膜の前に、例えば新しいPD液の通路に沿って、1つ以上の疎水性膜を設けることも考えられる。1つ以上の疎水性膜によって、新しいPD液が中空糸又はキャピラリー膜に入る前に、空気を環境に排出することができ、フィルタセットから空気を除去することに加えて、膜の性能を向上させることができる。
【0022】
更に、新しいPD液の通路に沿って、例えば中空糸又はキャピラリー膜のすぐ上流に、空気迂回ネットを配置することも考えられる。このネットのメッシュ開口部は、濡れていれば1つ以上の疎水性膜に向かって空気を迂回させるのに十分微細なものであるが、新しいPD液の流れを著しく妨げない程度には開いている。
【0023】
患者の移送セットを通じて除去された使用済みPD液は、移送セット側コネクタを介してフィルタセットのハウジングに入り、本体の中央領域、使用済みPD液の通路、及び使用済みPD液用ルーメンを通って負圧下で流れ、装置又はサイクラに戻る。装置又はサイクラによって、使用済みPD液は正圧下で排出される。使用済みPD液は中空糸又はキャピラリー膜の外側に正に接触するのだが、接線方向に接触するため、患者からの排出物内のフィブリン、タンパク質、及びその他の微粒子が膜に捕捉されたり、膜に引っかかったりしにくい。この膜は、フィルタセットと一緒に廃棄される前に、処置の複数回の充填過程にわたって利用可能なままである。
【0024】
本明細書に記載の開示に照らして、かつ本開示を何ら限定することなく、本開示の第1の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、腹膜透析(PD)システムは、PD装置、PD装置から延出する患者ライン、患者ラインと流体連通するフィルタセットを含み、このフィルタセットは、複数の中空糸膜を含み、複数の中空糸膜は、新しいPD液がフィルタセットを出る前に中空糸膜の多孔質壁を通って流れるように位置決め及び配列される。
【0025】
本開示の第2の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、この患者ラインは、フィルタセットの新しいPD液の通路と流体連通するように配置された、新しいPD液用ルーメンを含む、二重ルーメン患者ラインである。この二重ルーメン患者ラインは、フィルタセットの使用済みPD液の通路と流体連通するように配置された、使用済みPD液用ルーメンを更に含む。
【0026】
本開示の第3の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、使用済みPD液の通路は、複数の中空糸膜の間に位置する中央領域と流体連通しており、この中央領域は、フィルタセットの移送セット側コネクタからの、使用済みPD液を受け取る。
【0027】
本開示の第4の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、新しいPD液の通路は、フィルタセットの壁部に形成された複数の入口開口部と流体連通しており、この入口開口部は、複数の中空糸膜への新しいPD液注入口を形成する。
【0028】
本開示の第5の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、新しいPD液の通路は、少なくとも部分的に新しいPD液用ポートを介して形成され、かつ、使用済みPD液の通路は、少なくとも部分的に使用済みPD液用ポートを介して形成される。ここで、新しいPD用液ポート及び使用済みPD液用ポートは、二重ルーメン患者ラインの患者ラインコネクタに接続するように構成された、ルーメン側コネクタの一部である。
【0029】
本開示の第6の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、PDシステムは、ルーメン側コネクタと患者ラインのコネクタとの間の、新しいPD液用ポート及び使用済みPD液用ポートの周囲を密封するように構成された、圧縮性ガスケットを含む。
【0030】
本開示の第7の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、中空糸膜は、その多孔質壁を通して新しいPD液を通すために一端部上に閉じられており、この端部は、個別に閉じられ、又は、共通の構造体を介して端部の少なくとも2つが閉じられる。
【0031】
本開示の第8の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、PDシステムは、中空糸膜に到達する前に新しいPD液から空気を排出するように位置決めされた、少なくとも1つの疎水性膜を含む。
【0032】
本開示の第9の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、PDシステムは、少なくとも1つの疎水性膜に向かって空気を迂回させるように位置決めされた、少なくとも1つのネットを含む。
【0033】
本開示の第10の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、フィルタセットは、患者の移送セットに直接接続するように構成され、又は、フィルタセットは、患者の移送セットに接続するように構成された、可撓性チューブを含む。
【0034】
本開示の第11の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、フィルタセットは、使用済みPD液が中空糸膜の外側に沿って接線方向に流れるように構成される。
【0035】
本開示の第12の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、フィルタセットは、新しいPD液が中空糸膜の多孔質壁を通って内部から外部へ流れるように構成される。
【0036】
本開示の第13の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、PD装置は、患者への充填中に中空糸膜の下流にある新しいPD液の圧力を検知するように位置決めされた、圧力センサを含む。
【0037】
本開示の第14の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、中空糸膜は、殺菌グレードの中空糸膜、又は減菌した中空糸膜である。
【0038】
本開示の第15の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、フィルタセットは、複数の中空糸膜を保持する本体であって、複数の中空糸膜は、新しいPD液が本体を出る前に中空糸膜の多孔質壁を通って流れるように位置決め及び配列される、本体と、患者ラインに接続するように構成されたルーメン側コネクタであって、ルーメン側コネクタは、新しいPD液を本体に導入し、使用済みPD液を本体から受け取るように位置決めされる、ルーメン側コネクタと、(i)患者の移送セットに接続するように構成された移送セット側コネクタ、又は、(ii)患者の移送セットに接続するように構成された可撓性ラインとを含む。
【0039】
本開示の第16の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、本体は、本体の壁部に形成された複数の入口開口部と流体連通する、新しいPD液の通路を含み、この入口開口部は、複数の中空糸膜への新しいPD液注入口を形成する。
【0040】
本開示の第17の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、フィルタセットは、複数のキャピラリー膜を保持する本体であって、複数のキャピラリー膜は、新しいPD液が本体を出る前にキャピラリー膜の多孔質壁を通って流れるように位置決め及び配列される、本体と、患者ラインに接続するように構成されたルーメン側コネクタであって、ルーメン側コネクタは、新しいPD液を本体に導入し、使用済みPD液を本体から受け取るように位置決めされる、ルーメン側コネクタと、患者の移送セットに接続するように構成された、移送セット側コネクタとを含み、又は、フィルタセットは、患者の移送セットに接続するように構成された、可撓性ラインを含む。
【0041】
本開示の第18の態様は、他の態様又はその一部と組み合わせることができる。ここで、
図1から
図6の1つ以上に関連して説明した特徴、機能性、及び代替案のいずれかを、
図1から
図6の他のいずれかに関連して説明した特徴、機能性及び代替案のいずれかと組み合わせることができる。
【0042】
上記の態様及び本明細書の説明に照らし、このように二重ルーメン患者ラインで作動するフィルタセットを提供することが、本開示の利点である。
【0043】
新しいPD液を濾過し、使用済みPD液をクロッギングすることなく通過させるフィルタセットを提供することが、本開示のもう1つの利点である。
【0044】
効率的にフィルタ膜の間隔を空けてサイズを小さくし、患者の快適性の一助となるフィルタセットを提供することが、本開示の更なる利点である。
【0045】
その他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図に記載されており、かつ、これらから明らかになるであろう。本明細書に記載された特徴及び利点は、すべてを網羅するものではなく、特に、図及び説明を考慮することで、多くの更なる特徴及び利点が、当業者には明らかなものであろう。また、特定の実施形態は、本明細書に列挙された全ての利点を有する必要はなく、個々の有利な実施形態を、個別に請求することが明示的に企図されている。更に、本明細書で使用される用語は、主として読みやすさと説明のために選択されたものであり、発明主題の範囲を限定するものではないことに、留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、本開示による、中空糸又はキャピラリー型の患者ライン用フィルタセットを有する腹膜透析システムの、一実施形態の概略図である。
【0047】
【
図2】
図2は、本開示による、中空糸又はキャピラリー型の患者ライン用フィルタセットの、一実施形態の斜視図である。
【0048】
【
図3】
図3は、患者への充填中の、
図2の中空糸又はキャピラリー型の患者ライン用フィルタセットの、斜視図である。
【0049】
【
図4】
図4は、
図2の中空糸又はキャピラリー型の患者ライン用フィルタセット内に位置する、壁部の立面図であり、この壁部は、複数の中空糸又はキャピラリー膜に新しいPD液を導入するための、開口部を形成する。
【0050】
【
図5】
図5は、患者からの排出中の、
図2の中空糸又はキャピラリー型の患者ライン用フィルタセットの、斜視図である。
【0051】
【
図6】
図6は、空気を排出するための少なくとも1つの疎水性膜、及び、少なくとも1つの疎水性膜に空気を迂回させるための、少なくとも1つのネットを備えることを示す、断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
(詳細な説明)
ここで図面、特に
図1を参照すると、腹膜透析(PD)システム10が示されている。PDシステム10には、患者ライン50を通じて患者Pに新しいPD液を圧送し、患者ライン50を介して患者Pから使用済みPD液を除去する、PD装置又はサイクラ20が含まれる。患者ライン50は、再利用可能又は使い捨てとすることができ、いずれの場合も、フィルタセット100とともに作動し、フィルタセット100と流体連通する。患者ライン50が再利用可能である場合、この患者ラインは、処置時にフィルタセット100に接続される。そうではなく、患者ライン50が使い捨てである場合、一実施形態では、フィルタセット100は、使い捨ての患者ライン50に統合される。いずれの構成においても、フィルタセット100の遠位端を患者の移送セット58に接続することができ、この移送セットは、患者Pの留置カテーテルと流体連通する。
【0053】
PD装置又はサイクラ20には、耐久性のあるPD液ポンプ24を提供する、ハウジング22を含めることができる。このポンプによって、使い捨て部品を使用せずに、それ自体を通じてPD液が圧送される。PD液ポンプ24に使用することのできる、耐久性のあるポンプには、ピストンポンプ、ギヤポンプ、及び遠心ポンプがある。ピストンポンプなど、特定の耐久性のあるポンプは本質的に正確であるため、装置又はサイクラ20には、容積制御のための部品を追加する必要がない。ギヤポンプ及び遠心ポンプなど、他の耐久性のあるポンプは、それほど正確ではない場合があるため、装置又はサイクラ20には、1つ以上の流量計(図示せず)といった、容積制御装置が備えられる。
【0054】
あるいは、ポンプ24は、蠕動ポンプチューブ又は可撓性ポンプチャンバなどの使い捨ての流体接触ポンプ部品を作動させる、ポンプアクチュエータを含む、使い捨てタイプのPD液ポンプであってもよい。PD液ポンプ24に使用することのできる、使い捨てPD液ポンプには、チューブを作動させる回転式又は線形蠕動ポンプアクチュエータ、カセットシートを作動させる空気圧ポンプアクチュエータ、カセットシートを作動させる電気機械式ポンプアクチュエータ、及び、チューブを作動させるプラテンポンプアクチュエータなどがある。単一のPD液ポンプ24を使用することができるが、その代わりに、専用の新しいPD液用ポンプ及び使用済みPD液用ポンプも使用できることを理解されたい。また、単一のPD液ポンプ24には、より連続的にPD液を流すための、複数のポンピングチャンバを含めることができる。
【0055】
PD装置又はサイクラ20には、複数のバルブ26a、26bが含まれる。これらは同様に、使い捨て部品で動作することなく、フロースルー式であり、かつ耐久性があるか、あるいは、チューブセグメント又はカセットベースのバルブシートといった、使い捨ての流体接触バルブ部品を作動させるバルブアクチュエータを有する、使い捨てタイプのバルブにすることができる。バルブ26a、26bに使用することのできる耐久性のあるバルブには、フロースルー式のソレノイドバルブがある。そのようなバルブは、二方弁又は三方弁とすることができる。バルブ26a、26bに使用することのできる使い捨てバルブには、閉じた可撓性チューブを締め付けるソレノイドピンチバルブ、カセットシートを作動させる空気圧バルブアクチュエータ、及び、カセットシートを作動させる電気機械式バルブアクチュエータがある。
【0056】
装置又はサイクラ20には、多くのバルブ、26aから26nが含まれると考えられる。説明を容易にするために、装置又はサイクラ20は、新しいPD液用バルブ26aを有するものとして示してある。新しいPD液用バルブ26aは、PD液ポンプ24によって、正圧下で二重ルーメン患者ライン50の新しいPD液用ルーメン52を通じて、患者Pに新しいPD液を圧送すべく、開くように制御される。これらのバルブには、使用済みPD液用バルブ26bも含まれる。使用済みPD液用バルブ26bは、PD液ポンプ24によって、負圧下で二重ルーメン患者ライン50の使用済みPD液用ルーメン54を通じて、患者Pから使用済みPD液を引き出すべく、開くように制御される。
【0057】
図示の実施形態における装置又はサイクラ20には、圧力センサ28a、28bなどの圧力センサも含まれる。圧力センサ28aは、新しいPD液用バルブ26aのすぐ下流に位置し、一方、圧力センサ28bは、使用済みPD液用バルブ26のすぐ上流に位置する。したがって、新しいPD液用バルブ26aが閉じている場合でも、圧力センサ28aによって、二重ルーメン患者ライン50の新しいPD液用ルーメン52内の圧力を検知することができ、一方、使用済みPD液用バルブ26bが閉じている場合でも、圧力センサ28bによって、二重ルーメン患者ライン50の使用済みPD液用ルーメン54内の圧力を検知することができる。更に、圧力センサ28aは、患者への充填中に、本明細書で論じるフィルタ膜の上流にある、新しいPD液の圧力を検知するように位置決めされる。圧力センサ28bは、おそらくより重要なことには、患者のへ充填中に、本明細書で論じるフィルタ膜の下流にある、新しいPD液の圧力を検知するように位置決めされる。
【0058】
図示の実施形態におけるポンプ24及びバルブ26a、26bは、システム10の装置又はサイクラ20によって提供される、制御ユニット40によって自動制御されており、圧力センサ28a、28b(及び他のセンサ)から、制御ユニット40に出力される。図示の実施形態における制御ユニット40には、1つ以上のプロセッサ42、1つ以上のメモリ44、及びビデオコントローラ46が含まれる。圧力センサ28a、28b、及び装置又はサイクラ20によって提供される他のセンサ、例えば、1つ以上の温度センサ30及び1つ以上の導電率センサ(図示せず)からの信号又は出力が、制御ユニット40によって受信され、記憶され、かつ処理される。PD液ポンプ24を制御して、透析流体を所望の圧力又は安全な圧力限界内で圧送するために、制御ユニット40では、圧力センサ28a、28bのうちの1つ以上からの圧力フィードバックを使用することができる。圧力限界とは、例えば、患者の腹膜腔への正圧の0.21バール(3psig)、及び、患者の腹膜腔からの負圧の-0.10バール(-1.5psig)である。
【0059】
制御ユニット40では、例えば、インラインヒータなどのヒータ32を制御して、新しいPD液を所望の温度、例えば体温又は37℃に加熱するために、1つ以上の温度センサ30からの温度フィードバックが使用される。一実施形態では、PD液ポンプ24、バルブ26aから26n、ヒータ32、及び、装置又はサイクラ20内のすべての再利用可能な流体ラインを消毒して、次の処置のために装置又はサイクラを準備するために、新しいPD液などの消毒流体を加熱することに、ヒータ32は更に使用される。本明細書で論じる更なる濾過では、PD液が患者Pへ送出するのに安全であることを保証するために、加熱による流体の消毒に加えて、保護層が提供される。
【0060】
制御ユニット40のビデオコントローラ46は、装置又はサイクラ20のユーザインタフェース48と接続して機能する。ユーザインタフェース48には、タッチスクリーン及び/又は薄膜スイッチなどの1つ以上の電気機械式ボタンで動作する、表示画面を含めることができる。ユーザインタフェース48には、警報、警告、及び/又は音声ガイダンスコマンドを出力するための、1つ以上のスピーカを含めることもできる。ユーザインタフェース48には、
図1に示すように装置又はサイクラ20を備えることができ、かつ/又は、ユーザインタフェース48は、制御ユニット40で動作する、リモートユーザインタフェースであってもよい。制御ユニット40には、医師又は臨床医のコンピュータと接続して機能する、医師又は臨床医のサーバに処置データを送信し、かつ、医師又は臨床医のサーバから処方命令を受信するために、トランシーバ(図示せず)及びネットワーク、例えばインターネットへの有線又は無線接続を含めることもできる。
【0061】
図1及び
図2を参照すると、上述したように、二重ルーメン患者ライン50の、新しいPD液用ルーメン52及び使用済みPD液用ルーメン54は、やはり再利用可能なものにすることができ、又は、使い捨てのものにすることができる。二重ルーメン患者ライン50が再利用可能である事例では、ルーメンは、フィルタセット100のルーメン側コネクタ104に接続するコネクタ56で終端し、フィルタセットの本体106に(例えば、超音波溶着、熱融着、溶剤接着で)密封される、あるいは、フィルタセットの本体106と一体成形される。本体106は、更に、患者の移送セット58の相手側コネクタに直接接続する、又は、移送セット側コネクタ108と患者の移送セット58との間に配置された、短い可撓性チューブ110の相手側コネクタに直接接続する、移送セット側コネクタ108に(例えば、超音波、熱溶着、又は溶媒接着で)密封される、あるいは、それらと一体成形される。
【0062】
更に
図3から
図5を参照すると、移送セット側コネクタ108には、相手側コネクタにルアー型接続するための、ポート108a及びねじ付きシュラウド108bを含めることができる。あるいは、移送セット側コネクタ108は、単にポート(例えば、ポート108a)であってもよく、このポートには、そこに溶接するための短い可撓性チューブ110が延在する。同様に、二重ルーメン患者ライン50が使い捨てである場合、ルーメン側コネクタ104には、その代わりに、ポート、例えば、新しいPD液用ポート104a及び使用済みPD液用ポート104bを単に含めることができ、新しいPD液用ルーメン52及び使用済みPD液用ルーメン54がそれぞれ、ポートへの溶接のためにそこに延在する。図示の実施形態では、ポート104a及び104bは、相手側の患者ラインのコネクタ56とルアー型接続を形成することができる、ねじ付きシュラウド104cに取り囲まれる。圧縮性ガスケット、例えば、図示されていないゴム又はスポンジゴムを、患者ラインのコネクタ56とルーメン側コネクタ104との間で、ポート104a及び104bの周りを密封するように形成することができる。本明細書では、本体106、ルーメン側コネクタ104、及び移送セット側コネクタ108を、フィルタハウジング102と呼ぶことがある。フィルタハウジング102は、ポリスチレン(PS:Polystyrene)、ポリカーボネート(PC:Polycarbonate)、ポリカーボネートとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンとの混合物(PC/ABS:Polycarbonate and Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)、ポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl Chloride)、ポリエチレン(PE:Polyethylene)、ポリプロピレン(PP:Polypropylene)、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene Terephthalate)のようなポリエステル、又はポリウレタン(PU:Polyurethane)といった、任意の1つ以上のプラスチックで作製することができる。
【0063】
図3に示すように、ルーメン側コネクタ104のポート104a、104b、及び、本体106のポート106a、106bによって、それぞれ、新しいPD液の通路112及び使用済みPD液の通路114が形成される。新しいPD液の通路は、複数の膜入口開口部118(
図4)を提供する、又は画定する円形壁部といった、壁部116に通じる。膜入口開口部118は、任意の所望の数量、例えば、6から12個、例えば8個設けることができ、円形パターンで形成することができる。この開口部は、
図4に示されるように、等角度刻みで離間される。中空糸又はキャピラリー膜120は、例えば、各入口開口部118の内側に密封される。各中空糸又はキャピラリー膜120は、殺菌グレード又は減菌グレードの親水性膜にすることができる。この親水性膜は、孔径約0.2ミクロンの多孔質壁で形成することができ、それを通って、新しいPD液が更なる濾過のために流れる。中空糸又はキャピラリー膜120は、例えば、ポリビニルピロリドンと混合された、ポリスルホン又はポリエーテルスルホンで作製することができる。
【0064】
新しいPD液は、新しいPD液の通路112、及び複数の中空糸又はキャピラリー膜120のそれぞれの内部を通って流れる。複数の中空糸又はキャピラリー膜120を設けることにより、半透膜、したがってフィルタセット100のハウジング102をより短くすることができ、同時に、複数の患者への充填にわたって必要な濾過が実現される。処置中に、患者は通常フィルタセット100の近くで眠っているため、ハウジング102が短い方が患者の快適性にとって望ましい。中空糸又はキャピラリー膜120は、図示のようにシール122を形成するために、例えば、圧着、溶接、又は接着によってその遠位端で覆われる、あるいは、個々のキャップ又は単一のワッシャ形状のキャップ(図示せず)を使用して覆われる。そのため、
図3の湾曲した矢印によって示されるように、新しいPD液は膜120の孔を通じて強制的に流され、結果として新しいPD液は最終的に濾過される。
【0065】
最終的に濾過された新しいPD液は、中空糸又はキャピラリー膜120から、膜120の間に位置する本体106の中央領域124に流入し、移送セット側コネクタ108のポート108aから直接、又は短い可撓性チューブ110を介して、そこから患者の移送セット58に流入する。中空糸又はキャピラリー膜120の親水性によって、膜が新しいPD液で完全に濡れたときに、空気が膜を横切って移行することが防がれ、したがって、二次的な最終段階の空気除去の役割を果たす。
図6に示すように、必要に応じて、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylene)から作製された1つ以上の疎水性膜126を、(新しいPD液から見て)中空糸又はキャピラリー膜120の前に、例えば新しいPD液の通路112に沿って設けることができる。1つ以上の疎水性膜126は、本明細書で論じる技術のいずれかを介して、所定の位置に溶接することができ、
図6の曲線矢印の空気で示すように、新しいPD液が中空糸又はキャピラリー膜120に入る前に、空気を環境に排出することができる。それにより、フィルタセット100から空気を除去することに加えて、膜120の性能を改善することができる。
【0066】
更に、本明細書で説明する溶接技術のいずれかによって、少なくとも1つの空気迂回ネット128を、新しいPD液の通路112に沿って、例えば、(新しいPD液から見て)中空糸又はキャピラリー膜の上流、及び疎水性膜126の下流に固定して、配置することが考えられる。空気迂回ネット128は、ネットが濡れたときに1つ以上の疎水性膜126に向かって空気を迂回させるのに十分微細なメッシュ開口部を有するが、ネット128のメッシュ開口部は、新しいPD液の流れを著しく妨げない程度には開いている。空気迂回ネット128は、例えば、医学的に安全な金属又は疎水性ポリマで作製することができ、約0.1mmから約0.3mmの範囲の孔径とすることができる。
【0067】
患者の移送セット58を通じて除去された使用済みPD液は、移送セット側コネクタ108を介してフィルタセット100のハウジング102に入り、本体106の中央領域124、使用済みPD液の通路114、及び使用済みPD液用ルーメン54を通って負圧下で流れ、装置又はサイクラ20に戻る。使用済みPD液は、装置又はサイクラ20によって正圧下で圧送され、排出ライン60(例えば、ハウスドレイン又はドレンコンテナ)を介して排水される。使用済みPD液は、キャピラリー膜120の外側に正に接触するのだが、接線方向に接触するため、患者からの排出物内のフィブリン、タンパク質、及びその他の微粒子が膜に捕捉されたり、膜に引っかかったりしにくい。したがって、膜120は、フィルタセット100と一緒に廃棄される前に、処置の複数回の充填過程にわたって利用可能なままである。
【0068】
本明細書に記載の、現在のところ好ましい実施形態に対する様々な変形及び変更は、当業者にとって明らかであることを理解されたい。したがって、そのような変更及び修正のいずれか、又は全てを、添付の特許請求の範囲によって網羅できることが意図されている。例えば、新しいPD液の流れは、中空糸又はキャピラリー膜120を通って内側から外側に移動するものとして上記にて示されているが、新しいPD液は、その代わりに、中空糸又はキャピラリー膜120を通って、外側から内側に流れることが考えられる。この場合、最終的に濾過された新しいPD液は、移送セット側コネクタ108を通って出る前に、中空糸又はキャピラリー膜120の内部を通って、ハウジング102内の共通の収集領域に流れることになる。
【国際調査報告】