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特表2024-546612患者ラインフィルタを有する腹膜透析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】患者ラインフィルタを有する腹膜透析システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/28 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A61M1/28 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531494
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 US2022080119
(87)【国際公開番号】W WO2023114607
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/291,058
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(71)【出願人】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アシクゴズ, セルハン
(72)【発明者】
【氏名】ベック, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ブリックル, レイナー
(72)【発明者】
【氏名】バック, ラインホルド
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン, ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】スティルビョルン ファルマン, オスカル エリク フローデ
(72)【発明者】
【氏名】フリーグ, ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】クノアー, トルステン
(72)【発明者】
【氏名】クラウゼ, ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ノーマン, ジョン スターリング
(72)【発明者】
【氏名】モリッシー, マイケル パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ワーグナー, ステフェン
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA06
4C077BB01
4C077BB02
4C077CC06
4C077CC08
4C077DD26
4C077EE03
4C077EE04
4C077FF02
4C077GG14
4C077HH02
4C077HH13
4C077LL02
4C077NN15
4C077PP15
4C077PP18
(57)【要約】
腹膜透析(「PD」)システム(10)は、PD機械(20)と、PD機械(20)から延びる患者ライン(50)と、患者ライン(50)と流体連通しているフィルタセット(100)とを含み、フィルタセット(100)は、少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b、例えば細菌低減又は滅菌グレードのフィルタ膜)を含み、少なくとも1つのフィルタ膜は、新鮮なPD流体がフィルタセット(100)を出る前に少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)を通じて流れるように位置決め及び配列され、フィルタセット(100)は、使用済みPD流体を少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)と接触することなく少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)を通過して搬送するように位置決め及び配列される使用済みPD流体チューブ(106u)を更に含む。フィルタセット(100)をプライミングするための方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹膜透析(「PD」)システム(10)であって、
PD機械(20)と、
前記PD機械(20)から延びる患者ライン(50)と、
前記患者ライン(50)と流体連通しているフィルタセット(100)と
を備え、
前記フィルタセット(100)は、少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)を含み、前記少なくとも1つのフィルタ膜は、新鮮なPD流体が前記フィルタセット(100)を出る前に前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)を通じて流れるように位置決め及び配列され、前記フィルタセット(100)は、使用済みPD流体を前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)と接触することなく前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)を通過して搬送するように位置決め及び配列される使用済みPD流体チューブ(106u)を更に含む、PDシステム(10)。
【請求項2】
前記患者ライン(50)は、新鮮PD流体ルーメン(52)及び使用済みPD流体ルーメン(54)を含むデュアルルーメン患者ラインであり、前記使用済みPD流体ルーメン(54)は、前記使用済みPD流体チューブ(106u)と流体連通して配置される、請求項1に記載のPDシステム(10)。
【請求項3】
前記フィルタセット(100)は、前記新鮮PD流体ルーメン(52)と流体連通するための新鮮PD流体ポート(104f)と、前記使用済みPD流体ルーメン(54)と流体連通するための使用済みPD流体ポート(104u)とを含む、請求項2に記載のPDシステム(10)。
【請求項4】
前記使用済みPD流体チューブ(106u)は、前記使用済みPD流体ポート(104u)と流体連通している、請求項3に記載のPDシステム(10)。
【請求項5】
前記フィルタセット(100)は、前記デュアルルーメン患者ライン(50)の端部に位置する患者ラインコネクタ(56)に対して前記新鮮及び使用済みPD流体ポート(104f,104u)をシールするように構成される圧縮性ガスケットを含む、請求項3に記載のPDシステム(10)。
【請求項6】
前記フィルタセット(100)は、第1及び第2のフィルタ膜(120a,120b)を含み、前記第1及び第2のフィルタ膜(120a,120b)は、新鮮なPD流体が前記第1及び第2のフィルタ膜(120a,120b)によって濾過される内側区画室(106i)によって分離され、前記使用済みPD流体チューブ(106u)は、前記内側区画室(106i)を通じて延びる、請求項1に記載のPDシステム(10)。
【請求項7】
前記第1及び第2のフィルタ膜(120a,120b)を支持するために前記内側区画室(106i)内に位置する少なくとも1つのリブ(106r)を含む、請求項6に記載のPDシステム(10)。
【請求項8】
前記フィルタセット(100)は、新鮮なPD流体及び使用済みPD流体が内部で流れる移送セット側ポート(106p)を含み、前記使用済みPD流体チューブ(106u)は、前記移送セット側ポート(106p)内へと延びる、請求項1に記載のPDシステム(10)。
【請求項9】
前記移送セット側ポート(106p)は、チューブ(108)が当接され得る内部ストッパ(106t)を画定し、前記内部ストッパ(106t)は、前記使用済みPD流体チューブ(106u)の端部から離間して前記移送セット側ポート(106p)内へと延在する、請求項8に記載のPDシステム(10)。
【請求項10】
前記フィルタセット(100)は、前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)の上流側を横切って前記新鮮なPD流体を移動させるように寸法付けられる少なくとも1つの外側区画室(106e,106f)を含む、請求項1に記載のPDシステム(10)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)は、平坦シートフィルタ膜である、請求項10に記載のPDシステム(10)。
【請求項12】
前記フィルタセット(100)は、流入する新鮮なPD流体を前記少なくとも1つの外側区画室(106e,106f)に向かって移動させるように位置決め及び配列される偏向壁(106w)を含む、請求項10に記載のPDシステム(10)。
【請求項13】
前記フィルタセット(100)は、前記少なくとも1つの外側区画室(106e,106f)を形成するために前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)と協働する少なくとも1つの蓋(106a,106b)を含む、請求項10に記載のPDシステム(10)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの蓋(106a,106b)は、少なくとも1つの通気開口(106o)と、前記少なくとも1つの通気開口(106o)を密封して覆う少なくとも1つの疎水性膜(122a,122b,122c,122d)とを含む、請求項13に記載のPDシステム(10)。
【請求項15】
前記フィルタセット(100)は、少なくとも1つの側壁(106s)を含み、前記少なくとも1つの蓋(106a,106b)は、前記少なくとも1つの側壁(106s)の外側部分に対してシールされ、前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)は、前記少なくとも1つの側壁(106s)の内側部分に対してシールされる、請求項13に記載のPDシステム(10)。
【請求項16】
前記フィルタセット(100)は、患者の移送セットに直接接続するように構成され、又は前記フィルタセット(100)は、前記患者の移送セットに接続するように構成される可撓性チューブ(108)を含む、請求項1に記載のPDシステム(10)。
【請求項17】
前記PD機械(20)は、患者充填中に前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)の下流側の新鮮なPD流体の圧力を感知するように位置決め及び配列される圧力センサ(28b)を含む、請求項1に記載のPDシステム(10)。
【請求項18】
前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)は、細菌低減フィルタ膜又は滅菌グレードのフィルタ膜である、請求項1に記載のPDシステム(10)。
【請求項19】
腹膜透析(「PD」)システム(10)であって、
PD機械(20)と、
前記PD機械(20)から延びる患者ライン(50)と、
前記患者ライン(50)と流体連通しているフィルタセット(100)と
を備え、
前記フィルタセット(100)は、第1及び第2のフィルタ膜(120a,120b)を含み、前記第1及び第2のフィルタ膜は、新鮮なPD流体が前記第1及び第2のフィルタ膜(120a,120b)によって濾過される内側区画室(106i)によって分離され、前記フィルタセット(100)は、使用済みPD流体が前記内側区画室(106i)を通じて流れるように更に構成される、PDシステム(10)。
【請求項20】
前記第1及び第2のフィルタ膜(120a,120b)を支持するために前記内側区画室(106i)内に位置する少なくとも1つのリブ(106r)を含み、前記使用済みPD流体は、前記内側区画室(106i)を出る前に前記少なくとも1つのリブ(106r)の周りを流れる、請求項19に記載のPDシステム(10)。
【請求項21】
フィルタセット(100)であって、
本体(106)と、
少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)であって、少なくとも1つのフィルタ膜は、新鮮な腹膜透析(「PD」)流体が前記フィルタセット(100)を出る前に前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)を通じて流れるように前記本体(106)内に位置決め及び配列される、少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)と、
使用済みPD流体を前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)と接触することなく前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)を通過して搬送するように前記本体(106)内に位置決め及び配列される使用済みPD流体チューブ(106u)と
を備える、フィルタセット(100)。
【請求項22】
フィルタセット(100)であって、
本体(106)と、
少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)であって、前記少なくとも1つのフィルタ膜は、新鮮な腹膜透析(「PD」)流体が前記フィルタセット(100)を出る前に前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)を通じて流れるように前記本体(106)内に位置決め及び配列される、少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)と、
少なくとも1つの通気開口(106o)と、前記少なくとも1つの通気開口(106o)に隣接して位置し、動作中に前記少なくとも1つの通気開口(106o)を覆われていない状態に維持する少なくとも1つの保護リブ(106n)とを含む、少なくとも1つの蓋(106a,106b)と
を備える、フィルタセット(100)。
【請求項23】
デュアルルーメン患者ライン(50)に接続されるフィルタセット(100)をプライミングするための方法であって、処置中に、チューブ(108)は、前記フィルタセット(100)と患者の移送セット(58)との間に位置し、前記方法は、
新鮮な腹膜透析(「PD」)流体を前記デュアルルーメン患者ライン(50)の新鮮PD流体ルーメン(52)を通じて前記フィルタセット(100)に送達することと、
前記新鮮なPD流体が前記デュアルルーメン患者ライン(50)の使用済みPD流体ルーメン(54)に向けて空気を移動させるように、前記新鮮なPD流体を前記フィルタセット(100)の少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)に押し通すことと、
前記患者からの使用済みPD流体を、前記患者の移送セット(58)を通じて、前記チューブ(108)を介して、前記フィルタセット(100)の使用済みPD流体部分を通して、前記デュアルルーメン患者ライン(50)の前記使用済みPD流体ルーメン(54)内へと引き込むことと
を含む、方法。
【請求項24】
使用済みPD流体を引き込むことは、初期患者ドレンの一部としてもたらされる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記新鮮なPD流体を前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)に押し通すことと、前記患者からの使用済みPD流体を引き込むこととの間で、前記患者は、前記チューブを前記患者の移送セット(58)に接続するように促される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記新鮮なPD流体を前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)に押し通すことと、前記患者からの使用済みPD流体を引き込むこととの間で、前記患者は、前記患者の移送セット(58)のクランプを開くように促される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記デュアルルーメン患者ライン(50)の前記新鮮PD流体ルーメン(52)を通じて新鮮なPD流体を送達しながら、空気は、前記フィルタセット(100)の少なくとも1つの通気開口(106o)を通じてプライミングされる、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記デュアルルーメン患者ライン(50)の前記新鮮PD流体ルーメン(52)を通じて新鮮なPD流体を送達しながら、新鮮PD流体弁(26a)が開かれ、使用済みPD流体弁(26b)が閉じられる、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記新鮮なPD流体を前記フィルタセット(100)の前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)に押し通している間、使用済みPD流体弁(26b)が開いている、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記患者からの使用済みPD流体を引き込んでいる間、使用済みPD流体弁(26b)が開いている、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記新鮮なPD流体を前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)に押し通すために圧送される量を制御するべく既知の容量ポンプストロークを蓄積することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
(i)前記デュアルルーメン患者ライン(50)の前記新鮮PD流体ルーメン(52)を通じて前記フィルタセット(100)に新鮮なPD流体を送達することから、(ii)前記新鮮なPD流体を前記少なくとも1つのフィルタ膜(120a,120b)に押し通すことへと移行するまでの圧力上昇を感知することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記フィルタセット(100)の前記使用済みPD流体部分は、使用済みPD流体チューブ(106u)を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記患者から引き込まれる前記使用済みPD流体は、前記チューブ(108)をプライミングする目的で残された以前の処理からの残留流出物である、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
前記残留流出物の量は、少なくとも50mlである、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年12月17日に出願された米国仮出願第63/291,058号の優先権及び利益を主張する。
【0002】
本開示は、一般に、医療用流体処置に関し、特に、透析流体処置中の処置流体の濾過に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
様々な原因により、人の腎臓系が機能しなくなる可能性がある。腎不全は、幾つかの生理学的障害を生じる。水とミネラルのバランスをとること、又は毎日の代謝負荷を排出することはもはや不可能である。尿素、クレアチニン、尿酸などの代謝の毒性最終生成物は、患者の血液及び組織に蓄積する可能性がある。
【0004】
腎機能の低下、とりわけ腎不全は、透析によって処置される。透析は、正常に機能する腎臓がそうでなければ除去するであろう排泄物、毒素及び過剰な水を身体から除去する。腎機能の代替のための透析処置は、処置が救命的であるため、多くの人々にとって重要である。
【0005】
腎不全治療の1つのタイプは、一般に拡散を使用して患者の血液から老廃物を除去する血液透析(「HD」)である。拡散勾配が、血液と透析物又は透析流体と呼ばれる電解質溶液との間で半透性透析器を横切って生じ、拡散を引き起こす。
【0006】
血液濾過(「HF」)は、患者の血液からの毒素の対流輸送に依存する代替的な腎代替治療である。HFは、処置中に体外回路に置換流体又は代替流体を加えることによって達成される。処置の間に患者によって蓄積された置換流体及び流体は、HF処置の過程にわたって限外濾過され、中分子及び大分子を除去するのに特に有益な対流輸送機構を提供する。
【0007】
血液透析濾過(「HDF」)は、対流クリアランスと拡散クリアランスとを組み合わせた処置法である。HDFは、標準的な血液透析と同様に透析器を通して流れる透析流体を使用して、拡散クリアランスを提供する。更に、置換溶液が体外回路に直接供給され、対流クリアランスを提供する。
【0008】
ほとんどのHD、HF、及びHDF処置は、センターで行われる。家庭血液透析(「HHD」)への傾向が今日存在するのは、HHDが毎日実施されることができ、一般に週2回又は3回行われるセンター内血液透析処置よりも治療上の利益を提供するためである。研究は、より頻繁な処置が、より頻繁ではないがおそらくより長い処置を受けている患者よりも多くの毒素及び老廃物を除去し、透析間液の過負荷を少なくすることを示している。より頻繁な処置を受けている患者は、処置前に2又は3日分の毒素を蓄積しているセンター内の患者ほど多くのダウンサイクル(体液及び毒素の変動)を経験しない。特定の地域では、最も近い透析センターは、患者の自宅から何マイルも離れている可能性があり、ドアツードアの処置時間が1日の大部分を消費する原因となる。患者の自宅に近いセンターでの処置はまた、患者の1日の大部分を消費し得る。HHDは、患者がリラックスし、仕事をし、又は他の様態で生産的である間に、一晩又は日中に行うことができる。
【0009】
別のタイプの腎不全治療は腹膜透析(「PD」)であり、PDは透析流体又はPD流体とも呼ばれる透析溶液をカテーテルを介して患者の腹膜腔に注入する。PD流体は、患者の腹膜腔内の腹膜と接触する。廃棄物、毒素及び過剰な水は、患者の血流から腹膜膜の毛細管を通り、拡散及び浸透によりPD流体に入る、すなわち、浸透勾配が膜を横切って生じる。PD流体中の浸透圧剤は、浸透圧勾配を提供する。使用済みPD流体を患者から排出し、患者から老廃物、毒素及び過剰な水を除去する。このサイクルは、例えば複数回繰り返される。
【0010】
腹膜透析療法には、連続携行式腹膜透析(「CAPD」)、自動腹膜透析(「APD」)、潮流量透析及び連続流量腹膜透析(「CFPD」)を含む様々なタイプがある。CAPDは、手動透析処置である。ここで、患者は、埋め込まれたカテーテルをドレンに手動で接続して、使用済みPD流体を患者の腹膜腔から排出できるようにする。次いで、患者は、流体連通を切り替えて、患者カテーテルが新鮮なPD流体のバッグと連通して、カテーテルを通して患者に新鮮なPD流体を注入する。患者は、カテーテルを新鮮なPD流体バッグから切り離し、PD流体が患者の腹膜腔内に留まることを可能にし、排泄物、毒素及び過剰な水の移送が行われる。滞留期間の後、患者は、手動透析手順を、例えば1日4回繰り返す。手動腹膜透析は、患者からのかなりの量の時間及び労力を必要とし、改善の余地を十分に残す。
【0011】
APDは、透析処置がドレン、充填及び滞留サイクルを含むという点でCAPDと同様である。しかしながら、APD機械は、通常、患者の睡眠中にサイクルを自動的に実行する。APD機械は、患者が処置サイクルを手動で実行する必要がなく、日中に補給物質を輸送させる必要がない。APD機械は、埋め込まれたカテーテル、新鮮なPD流体の供給源又はバッグ、及び流体ドレンに流体接続する。APD機械は、透析流体供給源からカテーテルを通って患者の腹膜腔に新鮮なPD流体を圧送する。APD機械はまた、PD流体が腔内に滞留し、廃棄物、毒素及び過剰な水の移送が行われることを可能にする。供給源は、幾つかの溶液バッグを含む複数リットルの透析流体を含み得る。
【0012】
APD機械は、患者の腹膜腔からカテーテルを介して使用済みPD流体を圧送して、排出する。手動プロセスと同様に、透析中に幾つかのドレン、充填及び滞留サイクルが起こる。「最後の充填」は、APD処置の終了時に起こり得る。最後の充填流体は、次の処置の開始まで患者の腹膜腔内に残っていてもよく、又は日中のある時点で手動で空にされてもよい。
【0013】
PD流体は、患者の腹膜腔に注入され、したがって薬物と見なされるため、無菌又は非常に無菌に近い必要がある。袋詰めされたPD流体は、一般に、処置のために適切に滅菌されるが、オンラインで作製されたPD流体、又は消毒を使用するPD機械又はサイクラーは、追加の滅菌を必要とする場合がある。
【0014】
したがって、患者に送達される前に新鮮なPD流体に追加の滅菌を行う効果的で低コストの方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
概要
本開示は、患者ラインを通して患者に新鮮なPD流体を圧送し、患者ラインを介して患者から使用済みPD流体を除去するPD機械又はサイクラーを有する腹膜透析(「PD」)システムを提供する。患者ラインは、再使用可能又は使い捨て可能であってもよく、いずれの場合もフィルタセットと共に動作し、フィルタセットと流体連通する。患者ラインが再利用可能である場合、再利用可能な患者ラインは、処置時にフィルタセットに接続される。患者ラインが使い捨てである場合、一実施形態では、フィルタセットは使い捨ての患者ラインに合流される。いずれの構成においても、フィルタセットの遠位端は、患者の留置カテーテルと流体連通する患者の移送セットに接続することができる。
【0016】
PD機械又はサイクラーは、使い捨て構成要素を使用せずにポンプ自体を通してPD流体を圧送する耐久性のあるPD流体ポンプ、又は蠕動ポンプチューブ又は可撓性圧送チャンバなどの使い捨ての流体接触圧送構成要素を作動させるポンプアクチュエータを含む使い捨てタイプのPD流体ポンプを含むことができる。PD機械又はサイクラーはまた、同様に使い捨て構成要素で動作することなくフロースルー及び耐久性があるか、又はチューブセグメント又はカセットベースの弁シートなどの使い捨ての流体接触弁構成要素を作動させる弁アクチュエータを有する使い捨てタイプの弁であり得る複数の弁を含む。
【0017】
ポンプ及び弁は、機械又はサイクラーによって提供される制御ユニットの自動制御下にある。一実施形態では、弁は、PD流体ポンプがデュアルルーメン患者ラインの新鮮PD流体ルーメンを通して患者に新鮮なPD流体を圧送することを可能にするために制御ユニットが開く新鮮PD流体弁を含む。弁はまた、制御ユニットが開いて、PD流体ポンプがデュアルルーメン患者ラインの使用済みPD流体ルーメンを通して患者から使用済みPD流体を圧送することを可能にする使用済みPD流体弁を含む。単一のPD流体ポンプを使用することができるが、専用の新鮮及び使用済みPD流体ポンプを代替的に使用することができることを理解すべきである。また、単一のPD流体ポンプは、より連続的なPD流体の流れのための複数の圧送チャンバを含むことができる。
【0018】
新鮮及び使用済みPD流体ルーメンは、ここでも再使用可能又は使い捨て可能であり得る。新鮮及び使用済みPD流体ルーメンが再使用可能である場合、ルーメンは、フィルタセットのルーメン側コネクタに接続するコネクタで終端し、フィルタセットの本体に対してシールされる(例えば、紫外線(「UV」)硬化接着剤を介して超音波シール、ヒートシール、溶剤接着、レーザ溶接又はシールされる)又はフィルタセットの本体と共に成形することができる。次に、本体は、患者の移送セットの嵌合コネクタ又は本体と患者の移送セットとの間に配置された短チューブの嵌合コネクタに直接接続する移送セット側コネクタに対してシールされる(例えば、UV硬化接着剤を介して超音波シール、熱シール、溶媒結合、レーザ溶接又はシールされる)又は移送セット側コネクタと共に成形される。或いは、移送セット側コネクタは、本体から延びる短チューブの端部に配置されてもよい。ここで、本体は移送セット側ポートを備え(例えば、移送セット側ポートと共に成形され)、ポートへの溶接のために移送セット側ポート内へと又は移送セット側ポート上にわたって短チューブが延在する。本体、ルーメン側コネクタ、及び移送セット側コネクタ又は移送セット側ポートは、本明細書ではフィルタハウジングと呼ばれることがある。
【0019】
ルーメン側コネクタ及び本体は、新鮮PD流体通路及び使用済みPD流体通路を形成する。新鮮PD流体通路は、ルーメン側コネクタ内の新鮮PD流体ポートを通って、フィルタハウジングの本体内に位置する壁に向かって延びる。壁は、新鮮なPD流体を2つの方向で外側に分割させ、第1の外側区画室の新鮮PD流体通路及び第2の外側区画室の新鮮PD流体通路を形成する。第1の外側区画室の新鮮PD流体通路は、壁に沿って、次いで壁を通過して第1の方向に延在し、第1の平坦シートフィルタ膜の外側に存在する第1の外側区画室に直角に曲がるなどしている。第2の外側区画室の新鮮PD流体通路は、壁に沿って、次いで壁を通過して第2の方向に延在し、同様に、第2の平坦シートフィルタ膜の外側に存在する第2の外側区画室に直角に曲がるなどしている。新鮮なPD流体は、第1及び第2の外側区画室内で加圧される。加圧は、新鮮なPD流体を、フィルタ膜を通じて、第1及び第2の平坦シートフィルタ膜の内面によって部分的に境界付けられる本体の内側区画室に押し込む。
【0020】
フィルタ膜は、細菌低減又は滅菌グレードの親水性膜であってもよく、約0.2ミクロンの孔径を有する多孔質壁で形成されてもよく、それを通って新鮮なPD流体が更なる濾過のために流れる。複数の平坦なシート膜を設けることにより、膜、したがってフィルタセットのフィルタハウジングをより短くすることができ、同時にPD処置の複数の患者充填物に必要な必要な濾過表面積を提供することができる。患者は一般に処置中にフィルタセットの近くで眠っているので、より短いフィルタハウジングが患者の快適さのためにより良い。
【0021】
新鮮で更なる濾過済みのPD流体は、一実施形態では、本体の内側区画室から移送セット側ポートを通って、フィルタセットの短チューブを通って、患者の移送セットを通って、患者の腹膜腔に流れる。一実施形態における移送セット側ポートは、短チューブ、例えば可撓性チューブの挿入位置を設定するか、又は短チューブをもはや移送セット側ポートに挿入することができない位置を少なくとも与える内部ストッパを含む。内部ストッパは、一実施形態では、内部使用済みPD流体チューブの端部から所望の距離だけオフセットされる。使用済みPD流体チューブは、本体の一次部分と共に成形されてもよい。使用済みPD流体チューブは、本体の内側区画室を通って、ルーメン側コネクタによって設けられる使用済みPD流体ポートまで延在する。使用済みPD流体ポートは、動作中、デュアルルーメン患者ラインの使用済みPD流体ルーメンと密封流体連通する。
【0022】
使用済みPD流体チューブは、使用済みPD流体を、フィルタ膜のいずれかに接触せず、フィルタ膜を潜在的に目詰まりさせることなく、フィルタハウジングの本体を通じて引き込むことができるようにする。使用済みPD流体チューブはまた、使用済みPD流体のための明確な直線経路を提供し、これはフィルタセットによる圧力損失を緩和するのに役立つ。使用済みPD流体が使用済みPD流体チューブの外側に沿って本体内の内側区画室内に流れることは流体的に可能であるが、負圧は使用済みPD流体チューブの内部からのみ印加されるため、使用済みPD流体チューブの外側に沿って使用済みPD流体が流れることに対するインセンティブはほとんどない。同様に、使用済みPD流体チューブを逆さにして新鮮なPD流体を流すことは流体的に可能であるが、必要とされる方向の変化は、そのような経路を、単に移送セット側ポートを通って患者に流れるよりもはるかに曲がりくねったものにする。また、使用済みPD流体チューブ及びデュアルルーメン患者チューブの使用済みPD流体ルーメンは、患者充填中にPD流体で満たされる可能性が高く、使用済みPD流体ルーメンはPD機械又はサイクラーで閉鎖されるため、使用済みPD流体チューブに新鮮なPD流体が入る余地はほとんど又は全くない。
【0023】
本体の内側区画室には、一実施形態では、負の流体圧力下に配置されたときに第1及び第2の平坦シートフィルタ膜を支持する一連のリブが設けられる。このようにして、フィルタ膜及び内側区画室は、所望の濾過能力を提供するために必要な大きさとすることができる。一実施形態では、一連のリブ及びそれらの支持構造は、使用済みPD流体チューブ及び本体の側壁と共成形される。第1及び第2の平坦シートフィルタ膜は、超音波シール、ヒートシール、溶媒結合、レーザ溶接、又はUV硬化接着剤によるシールを介して本体の側壁の内側部分に適所にシールされる。
【0024】
フィルタハウジングの本体は、フィルタハウジングの本体の残りの部分と同じ材料から形成され得る第1及び第2の蓋を含む。第1及び第2の蓋は、本体の側壁の外側部分にUV硬化接着剤を介して超音波シールされ、熱シールされ、溶媒結合され、レーザ溶接又はシールされてもよい。第1及び第2の蓋と側壁との間に舌部と溝との嵌合を設けて、シールのために蓋を中央に置くことができ、及び/又は蓋を本体にシールするために使用される溶接又は他のプロセスによって溶融した材料のフラッシュトラップとして機能することができる。第1及び第2の蓋はそれぞれ、フィルタ膜を通過する前に新鮮なPD流体が流入する第1及び第2の外側区画室の外側を形成する。
【0025】
第1及び第2の蓋は、1つ以上の通気口を備えて形成されてもよい。各通気口は、疎水性膜で蓋の内側を覆われており、疎水性膜は、蓋の内面及び少なくとも1つの通気開口の周りに、UV硬化接着剤を介して超音波シールされ、熱シールされ、溶媒結合され、レーザ溶接又はシールされてもよい。1つ以上の疎水性膜は、新鮮なPD流体が親水性膜を通して濾過される前に本体の外側区画室内で加圧されるときに空気を大気に排出することを可能にし、これはフィルタセットから空気を除去することに加えて膜の性能を改善することができる。
【0026】
シリコン又はポリ塩化ビニル(「PVC」)ゴムガスケットなどのガスケットが、フィルタハウジングのルーメン側コネクタの新鮮及び使用済みPD流体ポートの上及び/又は中に嵌合される。一実施形態では、ガスケットは、嵌合する患者ラインコネクタに対して二重シールを提供する。患者ラインコネクタは、ルーメン側コネクタの新鮮及び使用済みPD流体ポート内に延在する新鮮及び使用済みポートを含む。ガスケットは、患者ラインコネクタ及びルーメン側コネクタの嵌合した新鮮PD流体ポートと使用済みPD流体ポートとの間にポートシールを備える。ポートシール並びに患者ラインコネクタの新鮮ポート及び使用済みポートは、フィルタハウジング内に延びる間に狭くなるようにテーパが付けられてもよい。ポートシールは第1のシールである。患者ラインコネクタはフランジを含み、このフランジは、該フランジの周りに延びる隆起した連続リブを有する。フランジ及びリブは、患者ラインコネクタがルーメン側コネクタに接続されると、ガスケットのフランジ部分に向かって並進する。患者ラインコネクタがルーメン側コネクタに完全に接続されると、隆起リブはガスケットの変形可能なフランジ部分内に延び、ガスケットは隆起リブの周りで圧縮されて第2のシールを形成する。
【0027】
患者の移送セットを通して除去された使用済みPD流体は、負圧下で、使用済みPD流体チューブを介してフィルタセットを通り(したがって、フィルタ膜をバイパスする)、デュアルルーメン患者ラインの使用済みPD流体ルーメンを通って、機械又はサイクラーに戻る。機械又はサイクラーは、使用済みPD流体を陽圧下で圧送して排出する。サイクラーは、その内部チューブの使用済みPD流体側に沿って位置する圧力センサを含み、圧力センサは、患者ドレン中にPD流体ポンプによって使用済みPD流体に加えられる負圧を測定する。その同じ圧力センサを患者充填中に使用して、正のポンプ圧力(フィルタセットの使用済みPD流体チューブ及び患者ラインの使用済みPD流体ルーメンを通って圧力センサに戻される)を測定することができ、これは、測定された圧力がフィルタ膜の下流(濾過後)の新鮮なPD流体のものであるため望ましい。したがって、測定された圧力は、フィルタ膜を横切る任意の圧力降下を考慮に入れ、PD流体が患者に送達される圧力をより正確に反映する。
【0028】
本明細書では、本開示のフィルタセットをプライミングするための複数の方法も記載される。第1の実施形態では、フィルタセットはサイクラーハウジングでクリップ留めされてもよく、短チューブは最初は患者の移送セットに接続されない。ここで、短チューブの端部に設けられたキャップは、プライミングに使用される新鮮なPD流体、したがって空気を、フィルタセットの使用済みPD流体側をドレンに向かってバックアップするように作用する。第2の実施形態では、フィルタセットはサイクラーハウジングでクリップ留めされず、短チューブは最初に患者の移送セットに接続される。ここで、患者の移送セットに設けられたねじれクランプは、プライミングに使用される新鮮なPD流体、したがって空気をフィルタセットの使用済みPD流体側に押し戻すように作用する。次いで、制御ユニットは、PD流体ポンプを介して、新鮮なPD流体を、新鮮PD流体ルーメン、フィルタセットの本体、及び使用済みPD流体ルーメンの一部を通してプライミングさせる。新鮮及び使用済みPD流体弁は、そうするように配列決定される。次に、短チューブ以外をプライミングした状態で、第1の実施形態では、患者は、短チューブを患者の移送セットに接続し、移送セットクランプを開くように促される。第2の実施形態(短チューブが既に接続されている)では、患者は移送セットクランプを開くように促される。いずれの場合も、制御ユニットは、例えば、初期ドレンの一部として、PD流体ポンプに、使用済みPD流体ルーメンを通して負圧を印加させ、使用済みPD流体を患者から引き出して短チューブをプライミングする。
【0029】
本明細書に記載の開示に照らして、決して本開示を限定するものではないが、任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第1の態様において、腹膜透析(「PD」)システムは、PD機械と、PD機械から延びる患者ラインと、患者ラインと流体連通しているフィルタセットとを含み、フィルタセットは、少なくとも1つのフィルタ膜を含み、少なくとも1つのフィルタ膜は、新鮮なPD流体がフィルタセットを出る前に少なくとも1つのフィルタ膜を通じて流れるように位置決め及び配列され、フィルタセットは、使用済みPD流体を少なくとも1つのフィルタ膜と接触することなく少なくとも1つのフィルタ膜を通過して搬送するように位置決め及び配列される使用済みPD流体チューブを更に含む。
【0030】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第2の態様において、患者ラインは、新鮮PD流体ルーメン及び使用済みPD流体ルーメンを含むデュアルルーメン患者ラインであり、使用済みPD流体ルーメンは、使用済みPD流体チューブと流体連通して配置される。
【0031】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第3の態様において、フィルタセットは、新鮮PD流体ルーメンと流体連通するための新鮮PD流体ポートと、使用済みPD流体ルーメンと流体連通するための使用済みPD流体ポートとを含む。
【0032】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第4の態様において、使用済みPD流体チューブは、使用済みPD流体ポートと流体連通している。
【0033】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第5の態様において、フィルタセットは、デュアルルーメン患者ラインの端部に位置する患者ラインコネクタに対して新鮮及び使用済みPD流体ポートをシールするように構成される圧縮性ガスケットを含む。
【0034】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第6の態様において、フィルタセットが第1及び第2のフィルタ膜を含み、第1及び第2のフィルタ膜は、新鮮なPD流体が第1及び第2のフィルタ膜によって濾過される内側区画室によって分離され、使用済みPD流体チューブは、内側区画室を通じて延びる。
【0035】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第7の態様において、PDシステムは、第1及び第2のフィルタ膜を支持するために内側区画室内に位置する少なくとも1つのリブを含む。
【0036】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第8の態様において、フィルタセットは、新鮮なPD流体及び使用済みPD流体が内部で流れる移送セット側ポートを含み、使用済みPD流体チューブは、移送セット側ポート内へと延びる。
【0037】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第9の態様において、移送セット側ポートは、チューブが当接され得る内部ストッパを画定し、内部ストッパは、使用済みPD流体チューブの端部から離間して移送セット側ポート内へと延在する。
【0038】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第10の態様において、フィルタセットは、少なくとも1つのフィルタ膜の上流側を横切って新鮮なPD流体を移動させるように寸法付けられる少なくとも1つの外側区画室を含む。
【0039】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第11の態様において、少なくとも1つのフィルタ膜は、平坦シートフィルタ膜である。
【0040】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第12の態様において、フィルタセットは、流入する新鮮なPD流体を少なくとも1つの外側区画室に向かって移動させるように位置決め及び配列される偏向壁を含む。
【0041】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第13の態様において、フィルタセットは、少なくとも1つの外側区画室を形成するために少なくとも1つのフィルタ膜と協働する少なくとも1つの蓋を含む。
【0042】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第14の態様において、少なくとも1つの蓋は、少なくとも1つの通気開口と、少なくとも1つの通気開口を密封して覆う少なくとも1つの疎水性膜とを含む。
【0043】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第15の態様において、フィルタセットは、少なくとも1つの側壁を含み、少なくとも1つの蓋は、少なくとも1つの側壁の外側部分に対してシールされ、少なくとも1つのフィルタ膜は、少なくとも1つの側壁の内側部分に対してシールされる。
【0044】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第16の態様において、フィルタセットは、患者の移送セットに直接接続するように構成され、又はフィルタセットは、患者の移送セットに接続するように構成される可撓性チューブを含む。
【0045】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第17の態様において、PD機械は、患者充填中に少なくとも1つのフィルタ膜の下流側の新鮮なPD流体の圧力を感知するように位置決め及び配列される圧力センサを含む。
【0046】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第18の態様において、少なくとも1つのフィルタ膜は、細菌低減フィルタ膜又は滅菌グレードのフィルタ膜である。
【0047】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第19の態様において、腹膜透析(「PD」)システムは、PD機械と、PD機械から延びる患者ラインと、患者ラインと流体連通しているフィルタセットとを含み、フィルタセットは、第1及び第2のフィルタ膜を含み、第1及び第2のフィルタ膜は、新鮮なPD流体が第1及び第2のフィルタ膜によって濾過される内側区画室によって分離され、フィルタセットは、使用済みPD流体が内側区画室を通じて流れるように更に構成される。
【0048】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第20の態様において、PDシステムは、第1及び第2のフィルタ膜を支持するために内側区画室内に位置する少なくとも1つのリブを含み、使用済みPD流体は、内側区画室を出る前に少なくとも1つのリブの周りを流れる。
【0049】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第21の態様において、フィルタセットは、本体と、少なくとも1つのフィルタ膜であって、少なくとも1つのフィルタ膜は、新鮮な腹膜透析(「PD」)流体がフィルタセットを出る前に少なくとも1つのフィルタ膜を通じて流れるように本体内に位置決め及び配列される、少なくとも1つのフィルタ膜と、使用済みPD流体を少なくとも1つのフィルタ膜と接触することなく少なくとも1つのフィルタ膜を通過して搬送するように本体内に位置決め及び配列される使用済みPD流体チューブとを含む。
【0050】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第22の態様において、フィルタセットは、本体と、少なくとも1つのフィルタ膜であって、少なくとも1つのフィルタ膜は、新鮮な腹膜透析(「PD」)流体がフィルタセットを出る前に少なくとも1つのフィルタ膜を通じて流れるように本体内に位置決め及び配列される、少なくとも1つのフィルタ膜と、少なくとも1つの通気開口、及び少なくとも1つの通気開口に隣接して位置して、動作中に少なくとも1つの通気開口を覆われていない状態に維持する少なくとも1つの保護リブを含む少なくとも1つの蓋とを含む。
【0051】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第23の態様において、デュアルルーメン患者ラインに接続されるフィルタセットをプライミングするための方法が提供され、処置中に、チューブは、フィルタセットと患者の移送セットとの間に位置し、方法は、(i)新鮮な腹膜透析(「PD」)流体をデュアルルーメン患者ラインの新鮮PD流体ルーメンを通じてフィルタセットに送達することと、(ii)新鮮なPD流体がデュアルルーメン患者ラインの使用済みPD流体ルーメンに向けて空気を移動させるように、新鮮なPD流体をフィルタセットの少なくとも1つのフィルタ膜に押し通すことと、患者からの使用済みPD流体を、患者の移送セットを通じて、チューブを介して、フィルタセットの使用済みPD流体部分を通して、デュアルルーメン患者ラインの使用済みPD流体ルーメン内へと引き込むこととを含む。
【0052】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第24の態様において、使用済みPD流体を引き込むことは、初期患者ドレンの一部としてもたらされる。
【0053】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第25の態様において、新鮮なPD流体を少なくとも1つのフィルタ膜に押し通すことと、患者からの使用済みPD流体を引き込むこととの間で、患者は、チューブを患者の移送セットに接続するように促される。
【0054】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第26の態様において、新鮮なPD流体を少なくとも1つのフィルタ膜に押し通すことと、患者からの使用済みPD流体を引き込むこととの間で、患者は、患者の移送セットのクランプを開くように促される。
【0055】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第27の態様において、デュアルルーメン患者ラインの新鮮PD流体ルーメンを通じて新鮮なPD流体を送達しながら、空気は、フィルタセットの少なくとも1つの通気開口を通じてプライミングされる。
【0056】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第28の態様において、デュアルルーメン患者ラインの新鮮PD流体ルーメンを通じて新鮮なPD流体を送達しながら、新鮮PD流体弁が開かれ、使用済みPD流体弁が閉じられる。
【0057】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第29の態様において、新鮮なPD流体をフィルタセットの少なくとも1つのフィルタ膜に押し通している間、使用済みPD流体弁が開いている。
【0058】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第30の態様において、患者からの使用済みPD流体を引き込んでいる間、使用済みPD流体弁が開いている。
【0059】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第31の態様において、方法は、新鮮なPD流体を少なくとも1つのフィルタ膜に押し通すために圧送される量を制御するべく既知の容量ポンプストロークを蓄積することを含む。
【0060】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第32の態様において、方法は、(i)デュアルルーメン患者ラインの新鮮PD流体ルーメンを通じてフィルタセットに新鮮なPD流体を送達することから、(ii)新鮮なPD流体を少なくとも1つのフィルタ膜に押し通すことへと移行するまでの圧力上昇を感知することを含む。
【0061】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第33の態様において、フィルタセットの使用済みPD流体部分は、使用済みPD流体チューブを含む。
【0062】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第34の態様において、患者から引き込まれる使用済みPD流体は、チューブをプライミングする目的で残された以前の処理からの残留流出物である。
【0063】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第35の態様において、残留流出物の量は、少なくとも50mlである。
【0064】
任意の他の態様又はその一部と組み合わせることができる本開示の第36の態様では、図1図8Bのいずれか1つ以上に関連して説明された特徴、機能、及び代替形態のいずれかが、図1図8Bの他のいずれかに関連して説明した特徴、機能、及び代替例のいずれかと組み合わせることができる。
【0065】
したがって、上記の態様及び本明細書の説明に照らして、デュアルルーメン患者ラインで動作するフィルタセットを提供することが本開示の利点である。
【0066】
本開示の別の利点は、新鮮なPD流体を濾過し、使用済みPD流体がフィルタ膜に限定的に接触して、又はおそらく接触せずに通過できるようにするフィルタセットを提供することである。
【0067】
本開示の更なる利点は、サイズを小さくし、患者の快適さを助けるために、フィルタ膜を効率的にサイズ及び空間にするフィルタセットを提供することである。
【0068】
本開示の更に別の利点は、フィルタセットによって更に濾過される前に新鮮なPD流体から空気を放出するフィルタセットを提供することである。
【0069】
更なる特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面に記載され、それらから明らかになる。本明細書に記載の特徴及び利点は、全てを含むものではなく、特に、多くの更なる特徴及び利点が、図面及び説明を考慮すると当業者には明らかである。また、任意の特定の実施形態は、本明細書にリストアップされた利点の全てを有する必要はなく、個々の有利な実施形態を別々に請求することが明確に企図される。更に、本明細書で使用される言語は、主に読みやすさ及び説明目的のために選択されており、本発明の主題の範囲を限定するものではないことに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1図1は、本開示のフィルタセットを有する腹膜透析システムの一実施形態の概略図である。
【0071】
図2図2は、本開示のフィルタセットの一実施形態の分解斜視図である。
【0072】
図3図3は、本開示のフィルタセットの一実施形態の新鮮PD流体入口経路を強調する断面斜視図である。
【0073】
図4図4は、本開示のフィルタセットの一実施形態の使用済みPD流体出口経路を強調する断面斜視図である。
【0074】
図5図5は、本開示のフィルタセットの一実施形態の使用済みPD流体チューブ及びフィルタ膜支持リブを強調する断面斜視図である。
【0075】
図6図6は、本開示のフィルタセットの一実施形態の外側の新鮮PD流体区画室及び疎水性膜を強調する断面立面図である。
【0076】
図7図7A及び7Bは、本開示のフィルタセットの第2の実施形態の断面斜視図である。
【0077】
図8図8A及び8Bは、リブ付き通気開口蓋を有する本開示のフィルタセット本体の一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
詳細な説明
ここで図面、特に図1を参照すると、腹膜透析(「PD」)システム10が示されている。PDシステム10は、患者ライン50を通して患者Pに新鮮なPD流体を圧送し、患者ライン50を介して患者Pから使用済みPD流体を除去するPD機械又はサイクラー20を含む。患者ライン50は、再使用可能又は使い捨て可能であってもよく、いずれの場合もフィルタセット100と共に動作し、フィルタセットと流体連通する。患者ライン50が再利用可能である場合、再利用可能な患者ラインは、処置時にフィルタセット100に接続される。患者ライン50が代わりに使い捨てである場合、一実施形態では、フィルタセット100は、使い捨ての患者ライン50に合流される又は使い捨ての患者ライン50を伴って形成される。いずれの構成においても、フィルタセット100の遠位端を患者の移送セット58に接続することができ、移送セットは患者Pの留置カテーテルと流体連通する。
【0079】
PD機械又はサイクラー20は、使い捨て部品を使用せずにポンプ自体を通してPD流体を圧送する耐久性のあるPD流体ポンプ24を備えるハウジング22を含むことができる。PD流体ポンプ24に使用することができる耐久性のあるポンプの例としては、ピストンポンプ、ギヤポンプ、及び遠心ポンプが挙げられる。ピストンポンプなどの特定の耐久性のあるポンプは本質的に正確であるため、機械又はサイクラー20は追加の体積制御構成要素を必要としない。ギヤポンプ及び遠心ポンプなどの他の耐久性のあるポンプは、機械又はサイクラー20が1つ以上の流量計(図示せず)などの体積制御デバイスを提供するように、それほど正確ではない場合がある。
【0080】
或いは、ポンプ24は、蠕動ポンプチューブ又は可撓性圧送チャンバなどの使い捨ての流体接触圧送構成要素を作動させるポンプアクチュエータを含む使い捨てタイプのPD流体ポンプであってもよい。PD流体ポンプ24に使用され得る使い捨てPD流体ポンプの例としては、チューブを作動させる回転式又は線形蠕動ポンプアクチュエータ、カセットシートを作動させる空気圧ポンプアクチュエータ、カセットシートを作動させる電気機械式ポンプアクチュエータ、及びチューブを作動させるプラテンポンプアクチュエータが挙げられる。単一のPD流体ポンプ24を使用することができるが、専用の新鮮及び使用済みPD流体ポンプを代替的に使用することができることを理解すべきである。また、単一のPD流体ポンプ24は、より連続的なPD流体の流れのための複数の圧送チャンバを含むことができる。
【0081】
PD機械又はサイクラー20はまた、複数の弁26a、26b、26m、26nを含み、これらは同様に、使い捨て構成要素で動作することなくフロースルー及び耐久性があり得るか、又はチューブセグメント又はカセットベースの弁シートなどの使い捨ての流体接触弁構成要素を作動させる弁アクチュエータを有する使い捨てタイプの弁であり得る。弁26a、26b、26m、26nに使用され得る耐久性のある弁の例には、フロースルーソレノイド弁が含まれる。そのような弁は、二方弁又は三方弁であってもよい。弁26a、26b、26m、26nに使用され得る使い捨て弁の例としては、閉じた可撓性チューブを挟むソレノイドピンチ弁、カセットシートを作動させる空気圧弁アクチュエータ、及びカセットシートを作動させる電気機械式弁アクチュエータが挙げられる。
【0082】
機械又はサイクラー20は、多くの弁26a~26nを含む可能性が高い。説明を容易にするために、機械又はサイクラー20は、PD流体ポンプ24が陽圧下でデュアルルーメン患者ライン50の新鮮PD流体ルーメン52を通して患者Pに新鮮なPD流体を圧送できるようにするべく開くように制御される新鮮PD流体弁26aを有するものとして示されている。弁はまた、開に制御されて、PD流体ポンプ24が陰圧下でデュアルルーメン患者ライン50の使用済みPD流体ルーメン54を通して患者Pから使用済みPD流体を引き出すことができるようにする使用済みPD流体弁26bを含む。弁はまた、新鮮なPD流体を1つ以上の新鮮なPD流体供給源から引き出すことができるようにするべく開くように制御される、1つ以上の供給弁26mを含む。弁は、使用済みPD流体をドレンライン60を介してハウスドレン又はドレン容器に送達できるようにするべく制御されるドレン弁26nを更に含む。
【0083】
図示の実施形態における機械又はサイクラー20はまた、圧力センサ28a、28bなどの圧力センサを含む。圧力センサ28aは、新鮮PD流体弁26aのすぐ下流側に位置し、圧力センサ28bは、使用済みPD流体弁26のすぐ上流側に位置する。したがって、圧力センサ28aは、新鮮PD流体弁26aが閉じている場合でも、デュアルルーメン患者ライン50の新鮮PD流体ルーメン52内の圧力を感知することができ、圧力センサ28bは、使用済みPD流体弁26bが閉じている場合でも、デュアルルーメン患者ライン50の使用済みPD流体ルーメン54内の圧力を感知することができる。更に、圧力センサ28aは、患者充填中に本明細書で論じるフィルタ膜の上流側の新鮮なPD流体の圧力を感知するように位置決めされる。圧力センサ28bは、おそらくより重要なことには、患者充填中に本明細書で論じるフィルタ膜の下流側の新鮮なPD流体の圧力を感知するように位置決めされる。
【0084】
図示の実施形態におけるポンプ24及び弁26a~26nは、システム10の機械又はサイクラー20によって提供される制御ユニット40の自動制御下にあり、圧力センサ28a、28b(及び他のセンサ)は制御ユニット40に出力する。図示の実施形態における制御ユニット40は、1つ以上のプロセッサ42と、1つ以上のメモリ44と、ビデオコントローラ46とを含む。制御ユニット40は、圧力センサ28a、28b、及び機械又はサイクラー20によって提供される他のセンサ、例えば、1つ以上の温度センサ30及び1つ以上の導電率センサ(図示せず)からの信号又は出力を受信、記憶及び処理する。制御ユニット40は、圧力センサ28a、28bのうちの1つ以上からの圧力フィードバックを使用して、PD流体ポンプ24を制御して、透析流体を所望の圧力又は安全な圧力限界(例えば、患者の腹膜腔への陽圧の0.21バール(3psig)以内及び患者の腹膜腔からの負圧の-.10バール(-1.5psig)以内)内で圧送することができる。
【0085】
制御ユニット40は、例えば、インラインヒータなどのヒータ32を制御して、新鮮なPD流体を所望の温度、例えば体温又は37°Cに加熱するために、1つ以上の温度センサ30からの温度フィードバックを使用する。一実施形態では、ヒータ32は、PD流体ポンプ24、弁26a~26n、ヒータ32、及び機械又はサイクラー20内の全ての再使用可能な流体ラインを消毒して、次の処置のために機械又はサイクラーを準備するために、新鮮なPD流体などの消毒流体を加熱するために更に使用される。本明細書で論じる追加の濾過は、PD流体が患者Pへの送達にとって安全であることを保証するために、加熱流体消毒に加えて保護層を提供する。
【0086】
制御ユニット40のビデオコントローラ46は、機械又はサイクラー20のユーザインタフェース48と接続し、ユーザインタフェース48は、タッチスクリーン及び/又は膜スイッチなどの1つ以上の電気機械ボタンで動作する表示画面を含むことができる。ユーザインタフェース48はまた、警報、警告、及び/又は音声ガイダンスコマンドを出力するための1つ以上のスピーカを含み得る。ユーザインタフェース48は、図1に示すように機械又はサイクラー20を備えてもよく、及び/又は制御ユニット40で動作するリモートユーザインタフェースであってもよい。制御ユニット40はまた、医師又は臨床医のコンピュータとインタフェースする医師又は臨床医のサーバに処置データを送信し、医師又は臨床医のサーバから処方命令を受信するために、トランシーバ(図示せず)及びネットワーク、例えばインターネットへの有線又は無線接続を含み得る。
【0087】
図1及び図2を参照すると、デュアルルーメン患者ライン50の新鮮及び使用済みPD流体ルーメン52及び54は、この場合も先と同様に再使用可能又は使い捨て可能であってもよい。デュアルルーメン患者ライン50が再使用可能である例では、ルーメンは、フィルタセット100のルーメン側コネクタ104に接続するコネクタ56で終端し、フィルタセットの本体106に対してシールされる(例えば、紫外線(「UV」)硬化接着剤を介して超音波シール、ヒートシール、溶剤接着、レーザ溶接又はシールされる)又はフィルタセットの本体106と共に成形することができる。図示の実施形態における本体106は、患者の移送セット58の嵌合コネクタに直接接続する移送セット側コネクタ110まで延在する短い、例えば可撓性のチューブ108に接続される。短い、例えば可撓性のチューブ108は、剛性のルーメン側コネクタ104及び本体106を剛性の移送セット側コネクタ110から分離して患者の快適さを助けることを可能にする。移送セット側コネクタ110を含むように本体106を形成するか、又は移送セット側コネクタ110を本体106に取り付け、次いでそれらの剛性構造を患者の剛性移送セット58に接続することは、患者Pに不快につながれる組み合わされた剛性アセンブリをもたらすことができる。チューブ108によって提供される空間は、本体106を移送セット側コネクタ110から分離し、それにより、剛性の移送セット側コネクタのみが患者の移送セット58に機械的に接続される。しかしながら、代替的な実施形態では、移送側コネクタ110は、本体と共に形成されるか、又は本体106に取り付けられてもよい。
【0088】
デュアルルーメン患者ライン50が使い捨てである場合、ルーメン側コネクタ104は、代替的に、ポート、例えば、新鮮及び使用済みPD流体ポート104f及び104uを単に含むことができ、新鮮及び使用済みPD流体ルーメン52及び54はそれぞれ、ポートへのUV硬化接着剤を介した超音波シール、ヒートシール、溶媒結合、レーザ溶接又はシールのためにその上又は中に延在する。図示の実施形態では、新鮮ポート104f及び使用済みのポート104uは、ねじ付きシュラウド104sによって囲まれており、これは、嵌合する患者ラインコネクタ56とのルアー型接続を形成することができる。本明細書で詳細に説明するように、ポート104f及び104uを患者ラインコネクタ56の嵌合ポートにシールするために、圧縮性ガスケット112が設けられている。キャップ114a及び114bは、無菌性を維持するために、例えば照射、蒸気又はエチレンオキシドを介してセットが滅菌された後に、フィルタセット100の両端に設けられる(デュアルルーメン患者ライン50が再使用可能であると仮定する)。フィルタセット100を使用するために、患者又はユーザはキャップ114a及び114bを取り外して廃棄する。
【0089】
ルーメン側コネクタ104及び本体106は、本明細書ではフィルタハウジング102と呼ばれることがある。フィルタハウジング102、移送セット側コネクタ110、キャップ114a及び114b、並びにフィルタセット100に関連する任意の他の剛性又は半剛性ポリマーは、ポリスチレン(「PS」)、ポリカーボネート(「PC」)、ポリカーボネートとアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンとのブレンド(「PC/ABS」)、ポリ塩化ビニル(「PVC」)、ポリエチレン(「PE」)、ポリプロピレン(「PP」)、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)又はポリエステルエラストマーのようなポリエステル、又はポリウレタン(「PU」)などの任意の1つ以上のプラスチックで作ることができる。圧縮性ガスケット112は、シリコンゴム、PVC、又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(「SEBS」)もしくはイソプレンなどの他の同様のエラストマー材料から形成されてもよい。可撓性チューブ108は、可塑化PVC又はポリブタジエン(「PBD」)もしくはPPなどの非PVC材料で作ることができる。
【0090】
図2はまた、蓋106a、106bが、本体106の側壁106sに超音波シールされ、熱シールされ、溶媒結合され、又はUV硬化接着剤を介してレーザ溶接又はシールされて、本体を完成させることを示す。本体106の側壁106sに蓋106a、106bをシールする前に、第1及び第2の平坦シートフィルタ膜120a、120bは、それらの周囲で本体106の側壁106sの内側部分にUV硬化接着剤を介して超音波シールされ、熱シールされ、溶媒結合され、レーザ溶接され、又はシールされる。第1及び第2の平坦シートフィルタ膜120a、120bは、約0.2ミクロンの孔径を有してもよい親水性材料の一実施形態で作製され、それを通って新鮮なPD流体が更なる濾過のために流れる。フィルタ膜120a、120bは、例えば、ポリビニルピロリドンとブレンドされたポリスルホン又はポリエーテルスルホンで作製することができる。一実施形態では、フィルタ膜120a、120bのサイズ及び結果として生じる表面積は、PD機械又はサイクラー20によって提供される予想される動作PD流体圧力及び流量のうちの1つ以上に少なくとも部分的に基づくことができる。
【0091】
図2は、蓋106a、106bに、フィルタ膜120a、120bを通して濾過される前に新鮮なPD流体から空気を排出することを可能にする通気開口106oを設けることができることを更に示す。本体106内の無菌性を維持するために、疎水性膜122a、122b、122c、122dなどは、それらのそれぞれの蓋106a、106bの内面の周囲で、及びそれらのそれぞれの通気開口106oを取り囲むように、UV硬化接着剤を介して超音波シール、熱シール、溶媒結合、レーザ溶接又はシールされる。疎水性膜122a、122b、122c、122dなどは、例えばポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)から作製されてもよい。通気開口106o及び対応する疎水性膜122a、122b、122c、122dの複数のセットは、各蓋106a、106bが設けられているものとして示されているが、(i)通気開口及び対応する疎水性膜の単一のセットのみが各蓋106a、106bを設けられてもよく、又は(ii)通気開口及び対応する疎水性膜の1つ以上のセットが単一の蓋106a、106bのみを設けられてもよい。
【0092】
図3図6を参照すると、蓋106a、106bを除いて単一の構造として成形することができるフィルタハウジング102及びガスケット112のルーメン側コネクタ104及び本体106がより詳細に示されている。ルーメン側コネクタ104及び本体106は、新鮮PD流体通路116及び使用済みPD流体通路118を形成する。図3に示すように、新鮮PD流体通路116は、ルーメン側コネクタ104内の新鮮PD流体ポート104fを通って、フィルタハウジング102の本体106内に位置する偏向壁106wに向かって延在する。偏向壁106wは、新鮮なPD流体を二方向で外側に分割させ、第1の外側区画室の新鮮PD流体通路106c及び第2の外側区画室の新鮮PD流体通路106dを形成する。第1の外側区画室の新鮮PD流体通路106cは、偏向壁106wに沿って、次いで偏向壁106wを通り過ぎて第1の方向に延在し、第1の平坦シートフィルタ膜120aの外側に存在する第1の外側区画室106e(図6)に直角に曲がるなどの方向転換を行う。第2の外側区画室の新鮮PD流体通路106dは、偏向壁106wに沿って、次いで偏向壁106wを通過して第2の方向に延在し、同様に、第2の平坦シートフィルタ膜120bの外側に存在する第2の外側区画室106f(図6)へと直角に曲がるなどの方向転換を行う。外側区画室106e、106fは、膜を通る均一な分配のために、フィルタ膜120a、120bの上流側を横切って新鮮なPD流体を移動させるようなサイズになっている。新鮮なPD流体は、第1及び第2の外側区画室106e、106f内で加圧される。加圧は、新鮮なPD流体をフィルタ膜120a、120bを通して本体106の内側区画室106iに押し込み、本体106の内側区画室106iは第1及び第2の平坦シートフィルタ膜120a、120bの内面によって部分的に境界付けられている。
【0093】
フィルタ膜120a、120bは、細菌低減又は滅菌グレードの親水性膜であってもよく、約0.2ミクロンの孔径を有する多孔質壁で形成されてもよく、それを通って新鮮なPD流体が更なる濾過のために流れる。複数の平坦なシート膜120a、120bを設けることにより、膜、したがってフィルタセットのフィルタハウジング102をより短くすることができ、同時にPD処置の複数の患者充填物にわたって必要とされる必要な濾過表面積を提供することができる。患者P(図1)は、一般に、処置中にフィルタセット100の近くで眠っているので、より短いフィルタハウジング102は、患者の快適さのためにより良い。しかしながら、単一のフィルタ膜120a又は120bが代替的に設けられてもよいことを理解されたい。
【0094】
一実施形態では、新鮮で更に濾過されたPD流体は、本体106の内側区画室106iから、本体の移送セット側ポート106pを通り、フィルタセット100の短い、例えば可撓性のチューブ108を通り、移送セット58を通って、患者Pの腹膜腔に流れる。図3図5に示すように、一実施形態における移送セット側ポート106pは、チューブ108の挿入位置を設定する、又は少なくとも短チューブ108をもはや移送セット側ポート106pに挿入することができない位置を与える内部ストッパ106tを含む。内部ストッパ106tは、一実施形態では、本体106の主要部分と共に成形することができる内部使用済みPD流体チューブ106uの始端又は終端から設定される。使用済みPD流体チューブ106uは、本体106の内側区画室106iを通って、部分的に、ルーメン側コネクタ104によって提供される使用済みPD流体ポート104u内に延びる。使用済みPD流体ポート104uは、動作中、デュアルルーメン患者ライン50の使用済みPD流体ルーメン54と密封流体連通する。
【0095】
使用済みPD流体チューブ106uは、使用済みPD流体を、フィルタ膜120a、120bのいずれにも接触せず、潜在的にフィルタ膜120a、120bを目詰まりさせることなく、フィルタハウジング102の本体106を通じて引き込むことができるようにする。使用済みPD流体チューブ106uはまた、使用済みPD流体(例えば、2ミリメートル(「mm」)~8mm、例えば約3mm又は4mmの内径を有する)のための明確な直線経路を提供し、フィルタセット100による圧力損失を緩和するのに役立つ。使用済みPD流体が使用済みPD流体チューブ106uの外側に沿って本体106の内側区画室106i内に流れることは流体的に可能であるが、負圧は使用済みPD流体チューブ106u内からのみ印加されるため、使用済みPD流体が使用済みPD流体チューブの外側に沿って流れる動機はほとんどない。同様に、新鮮なPD流体が使用済みPD流体チューブ106u内を逆流することは流体的に可能であるが、必要とされる方向の変化は、そのような経路を単純に移送セット側ポート106pを通って患者Pに流れるよりもはるかに曲がりくねったものにする。また、デュアルルーメン患者チューブ50の使用済みPD流体チューブ106u及び使用済みPD流体ルーメン54は、患者充填中にPD流体で満たされている可能性が高く、使用済みPD流体ルーメンはPD機械又はサイクラー20で閉じられているため、使用済みPD流体チューブに新鮮なPD流体が入る余地はほとんど又は全くない。
【0096】
本体106の内側区画室106iには、一実施形態では、負の流体圧力下に配置されたときに第1及び第2の平坦シートフィルタ膜120a、120b(図6)を支持する一連のリブ106rが設けられる。このようにして、フィルタ膜120a、120b及び内側区画室106iは、所望の濾過能力を提供するために必要な大きさとすることができる。一実施形態では、一連のリブ106r及びそれらの支持構造106vは、使用済みPD流体チューブ106u及び本体106の側壁106sと共成形される。図6は、第1及び第2の平坦シートフィルタ膜120a、20bが、超音波シール、ヒートシール、溶媒結合、レーザ溶接、又はUV硬化接着剤によるシールを介して本体106の側壁106sの内側部分に適所にシールされることを示す。
【0097】
図2及び図6は、フィルタハウジング102の本体106が、本体の残りの部分と同じ材料から形成され得る第1及び第2の蓋106a、106bを含むことを示している。第1及び第2の蓋106a、106bは、本体106の側壁106sの外側部分に、UV硬化接着剤を介して超音波シールされ、熱シールされ、溶媒結合され、レーザ溶接され、又はシールされてもよい。例えば、蓋106a、106b及び側壁106sに形成された溝106gで形成された舌部106mを介した舌部と溝の嵌合は、第1及び第2の蓋106a、106bと側壁106sとの間に設けられて、シールのために蓋を中央に置き、及び/又は蓋を本体に対してシールするために使用される溶接又は他のプロセスによって溶融された材料のフラッシュトラップとして機能することができる。第1及び第2の蓋106a、106bはそれぞれ、フィルタ膜120a、120bを通過する前に新鮮なPD流体が流入する第1及び第2の外側区画室106e、106fの外側を形成する。
【0098】
第1及び第2の蓋106a、106bは、1つ以上の通気口106o(図2,8A,8B)が形成されてもよい。図2及び図6は、各通気口106oが、それぞれの蓋106a、106bの内側に疎水性膜122a、122b、122c、122dで覆われていることを示しており、疎水性膜は、それぞれの蓋の内側にUV硬化接着剤を介して超音波シールされ、熱シールされ、溶媒結合され、レーザ溶接され、又はシールされてもよい。1つ以上の疎水性膜122a、122b、122c、122dは、新鮮なPD流体が親水性シート膜120a、120bを通して濾過される前に本体106の外側区画室106e、106f内で加圧されるとき、プライミング中及び処置中のいつでも空気を大気に排出することを可能にし、これはフィルタセット100から空気を除去することに加えて膜の性能を改善することができる。
【0099】
処置のためのフィルタセット100のプライミングに関して、患者ライン50及びフィルタセット100の新鮮PD流体ルーメン52は、短チューブ108が患者の移送セット58に接続される前に新鮮なPD流体でプライミングされてもされなくてもよい。プライミングされている場合、ユーザインタフェース48は、患者ラインコネクタ56及び/又はフィルタセット100を、PD機械又はサイクラー20のハウジング22によって提供されるクリップにクリップ留めするように、患者Pに聴覚的、視覚的又は聴覚的に促すことができる。図2に示すように、短チューブ108には最初にキャップ114bが取り付けられているので、患者ラインコネクタ56又はフィルタセット100がハウジング22にクリップ留めされると、短チューブ108はフィルタセット100から垂れ下がり、キャップ114bを介して環境に対して閉じられる。次に、制御ユニット40は、PD流体ポンプ24に、新鮮PD流体弁26aを開いて使用済みPD流体弁26bを閉じた状態で、新鮮PD流体ルーメン52に新鮮なPD流体をフィルタ膜120a、120bまでプライミングさせる。ここでは、通気開口106oから空気が押し出される。
【0100】
新鮮PD流体ルーメン52が完全にプライミングされると、圧力センサ28a及び28bは、新鮮なPD流体が使用済みPD流体弁26bを閉じたままにする場所がないため、圧力上昇を検知する。圧力上昇を見ると、フィルタ膜120a、120bが今や完全に濡れた状態で、制御ユニット40は、使用済みPD流体弁26bを開き、PD流体ポンプ24が新鮮なPD流体を親水性フィルタ膜120a、120bを通って内側区画室106iに押し込むことを可能にし、これは空気を内側区画室を通って、使用済みPD流体チューブ106u内に、及び使用済みPD流体ルーメン54の一部に押し込む。したがって、空気は、使用済みPD流体ルーメン54をシステムドレンに向かって押し上げられる。ここで、制御ユニット40は、内側区画室106i、使用済みPD流体チューブ106u、及び使用済みPD流体ルーメン54の所望の部分を適切にプライミングするために必要なPD流体ポンプ24の幾つかの既知の体積ストロークを知り、作動させるようにプログラムすることができる。この時点で、フィルタセット100の本体106は完全にプライミングされる。フィルタセット100の本体106の上記のプライミングを実行するために、フィルタセット100をハウジング22にクランプ留めする必要はないが、そうすることは、そのようなプライミング中にデュアルルーメン患者ライン50がよじれるのを防ぐのに役立ち得ることを理解すべきである。
【0101】
次いで、PD機械又はサイクラー20のユーザインタフェース48は、ハウジング22のクリップからフィルタセット100を取り外し、短チューブ108からキャップ114bを取り外し、短チューブ108を患者の移送セット58に接続し、患者の移送セット58のクランプを開くように、患者Pに聴覚的、視覚的又は聴覚的に促す。次に、一実施形態では、制御ユニット40は、使用済みPD流体弁26bが開き、新鮮PD流体弁26aが開いているか閉じている(閉じている可能性がある)状態で、PD流体ポンプ24に、使用済みPD流体を患者から引き出して短チューブ108をプライミングさせ、ここでは、短チューブから空気を引っ張り、使用済みPD流体チューブ106uを通って、デュアルルーメン患者ライン50の使用済みPD流体ルーメン54を上昇させ、PD機械又はサイクラー20のドレンに向かって送る。使用済みPD流体のそのような引き出しは、患者の初期ドレンの一部であり得る。したがって、患者から除去された使用済みPD流体の量は、一実施形態では、処置の初期ドレン量の一部として制御ユニット40で(例えば、PD流体ポンプ24の既知の体積ストロークを累積することによって)カウントされる。
【0102】
代わりに、患者充填が、新鮮PD流体ルーメン52及びフィルタセット100の本体106をプライミングした後に行われるべき最初の動作である場合、制御ユニット40は、最初の患者充填を開始する前に、患者から流出物を引き出して短チューブ108を完全にプライミングしてもしなくてもよい。すなわち、短チューブ108内に存在する少量の空気を患者に押し戻すことを可能にすることが考えられる。しかしながら、制御ユニット40が短チューブ108をプライミングするために患者から初期量の流出物を引き出す場合、制御ユニット40は、その後の初期ドレンの一部として、患者から引き出される流出物の量を(例えば、PD流体ポンプ24の既知の体積ストロークを累積することによって)カウントすることができる。
【0103】
代替的な実施形態では、フィルタセット100はハウジング22でクリップ留めされず、短チューブ108は最初に患者の移送セット58に接続される。ユーザインタフェース48は、ここでは、クランプを開くように指示されるまで、患者の移送セット58のクランプを閉じたままにするように、患者Pに聴覚的、視覚的又は聴覚的に助言する。次に、前述の手順が実行され、ここで、患者のトランスファーセットクランプは、上記の例では短チューブ108の端部でキャップ114bの機能を実行している。患者の移送セットクランプを閉じた状態で、制御ユニット40は、前述したように弁26a及び26bを配列決定しながら、PD流体ポンプ24を使用して新鮮PD流体ルーメン52、フィルタセットの本体106、及び使用済みPD流体ルーメン54の一部を通して新鮮なPD流体をプライミングさせる。
【0104】
次いで、一実施形態では、ユーザインタフェース48は、患者の移送セット58のクランプを開き、ユーザインタフェース48の確認ボタンを押すように患者Pに促す。次に、確認ボタンが押されると、制御ユニット40は、弁26a及び26bを作動させ、前述のようにポンプ24を作動させて、使用済みPD流体を患者Pの腹膜腔から引き抜いて、短チューブ108及び使用済みPD流体チューブ106uを患者流出物でプライミングする。短チューブ108の流出物プライミングは、やはり初期患者ドレンの一部であってもよい。
【0105】
短チューブ108をプライミングするために患者から使用済みPD流体を引き出すことは、処置開始時に患者から除去するために使用済みPD流体があると仮定する。これは、以前の処置の最後の充填から、又は真昼の交換からの処置の開始時に患者が使用済みPD流体で満たされている多くの場合に当てはまる。しかしながら、場合によっては、患者は処置開始時に乾燥している。所与の時間に単一の患者に専用とすることができるPD機械又はサイクラー20の制御ユニット40は、患者の処置スケジュールを知っており、したがって患者がPD流体が使用されていないか又はほとんど使用されていない乾燥状態で次の処置をいつ開始するかを知っていると考えられる。ここで、制御ユニット40は、以前の処置の最終ドレンで患者を完全に排出しようと試みる代わりに、処置後に患者の腹膜腔内に残存する流出物の量を生じさせると考えられる。残留量は、例えば、患者の留置型PDカテーテルが残留流出物にアクセスできることを確実にするために、必要に応じて50ミリリットル(「ml」)以上であってもよい。残留量は、少なくともフィルタセット100の接合部の短チューブ108の近位端を介して任意の空気をプライミングするのに十分でなければならない。
【0106】
前述のプライミング手順は、幾つかの理由で有利である。第1に、患者クリップ患者ラインコネクタ56を、PD機械又はサイクラー20のハウジング22によって提供されるクリップに入れるステップを省略することができる。また、患者ラインコネクタ56が通気キャップと嵌合される必要性、及び/又はPD機械もしくはサイクラー20のハウジング22が、新鮮なPD流体が患者ラインコネクタ56に到達したときを検出するためのセンサを有する必要性を排除することができる。両方の節約は、コスト及び複雑さを低減する。第2に、処置後、患者は、患者の移送セット58から移送セット側コネクタ110を切り離し、次いで、例えば患者の接触汚染による腹膜炎を防ぐのを助けるために、ヨウ素などの消毒剤を有するキャップ(図示せず)で移送セット58を密封する。次いで、キャップを取り外し、次の処置の開始時に新しいフィルタセット100の新しい移送セット側コネクタ110と交換する。しかしながら、残留消毒剤、例えば残留ヨウ素は残っている。本明細書に開示されるプライミング方法は、残留消毒剤を患者に送達する代わりに、負圧下でデュアルルーメン患者ライン50の使用済みPD流体ルーメン54に残留消毒剤を運び去る。そうすることで、特に敏感な患者の健康問題を防ぐことができる。
【0107】
ここで、図2図5を参照すると、シリコン又はポリ塩化ビニル(「PVC」)ゴムなどのガスケット112が、フィルタハウジング102のルーメン側コネクタ104の新鮮及び使用済みPD流体ポート104f、104uに嵌合される。一実施形態では、ガスケット112は、嵌合する患者ラインコネクタ56に対して二重シールをもたらす。患者ラインコネクタ56は、ルーメン側コネクタ104の新鮮PD流体ポート104f及び使用済みPD流体ポート104u内にそれぞれ延在する新鮮ポート及び使用済みポート(図示せず)を含む。ガスケット112は、患者ラインコネクタ56の嵌合した新鮮及び使用済みPD流体ポートと、ルーメン側コネクタ104の新鮮及び使用済みポート104f,104uとの間に新鮮及び使用済みポートシール112f、112uを備える。ポートシール112f、112u並びに患者ラインコネクタ56の新鮮ポート及び使用済みポートは、フィルタハウジング102内に延びる間に狭くなるようにテーパが付けられてもよい。ポートシール112f、112uは、患者ラインコネクタ56に第1のシールをもたらす。患者ラインコネクタ56はまた、フランジ(図示せず)の周りに延びる隆起した連続リブを有するフランジを含む。フランジ及びリブは、患者ラインコネクタ56がルーメン側コネクタ104に接続されると、ガスケット112のフランジ部分112lに向かって並進する。患者ラインコネクタ56がルーメン側コネクタ104に完全に接続されると、隆起リブはガスケット112の変形可能なフランジ部分112l内に延在し、これは隆起リブの周りを圧縮してルーメン側コネクタ104と患者ラインコネクタ56との間に第2のシールを形成する。
【0108】
患者の移送セット58を通して除去された使用済みPD流体は、使用済みPD流体チューブ106uを介してフィルタセット100を通って負圧下で移動し(したがって、フィルタ膜120a、120bをバイパスする)、デュアルルーメン患者ライン50の使用済みPD流体ルーメン54を通って、機械又はサイクラー20に戻る。機械又はサイクラー20は、使用済みPD流体を陽圧下で圧送して、ドレンライン60を介して排出する。機械又はサイクラー20は、その内部チューブの使用済みPD流体側に沿って位置する圧力センサ28bを含み、患者ドレン中にPD流体ポンプ24によって使用済みPD流体に加えられる負圧を測定する。その同じ圧力センサ28bを患者充填中に使用して、正のポンプ圧力(フィルタセット102の使用済みPD流体チューブ106u及び患者ライン50の使用済みPD流体ルーメン54を通って圧力センサ28bに戻される)を測定することができ、これは、測定された圧力がフィルタ膜120a、120bの下流(濾過後)の新鮮なPD流体の圧力であるため望ましい。したがって、測定された圧力は、フィルタ膜120a、120bにわたる任意の圧力降下を考慮に入れ、PD流体が患者Pに送達されている圧力をより正確に反映する。
【0109】
ここで、図7A及び図7B図を参照すると、フィルタセット100の代替実施形態が示される。図7A及び図7Bのフィルタセット100は、図2図6のフィルタセット100と同じ特徴の多くを含み、これらは、同じ番号が付されており、これについて前述した全ての構造、機能及び代替形態を含む。図100のフィルタセット図7A及び図7Bは、ねじ付きシュラウド104sによって囲まれた新鮮ポート104f及び使用済みポート104uを有するルーメン側コネクタ104を含む。ルーメン側コネクタ104は、平坦なシートの親水性フィルタ膜120a、120bの外面と共に、それぞれ第1及び第2の外側区画室106e、106fを形成する蓋106a、106bを介してキャップされた本体106に接続されるか、又は成形される。図7Aは、新鮮なPD流体が新鮮PD流体通路116を介して送達され、フィルタ膜120a、120bを通して更に濾過されるように第1及び第2の外側区画室106e、106f内で加圧されることを示す。更に濾過された新鮮なPD流体は、本体106の内側区画室106iに流入し、内側区画室106iから移送セット側ポート106pを通って患者に流れる。図のフィルタセット100との一違いは、図7A及び図7Bは、移送セット側ポート106pが、短チューブ108又は患者の移送セット58のための嵌合コネクタと嵌合するねじ付きシュラウド106zによって囲まれていることである。
【0110】
図7Bは、図7A及び図7Bのフィルタセット100との主な違いを示し、すなわち、使用済みPD流体チューブ106uが設けられておらず、代わりに使用済みPD流体が移送セット側ポート106pから、一連のリブ106rの間及びその周りの内側区画室106i内を流れ、ルーメン側コネクタ104の使用済みPD流体通路118及び使用済みPD流体ポート104uから患者ライン50の使用済みPD流体ルーメン54に出ることを示す。使用済みPD流体は、フィルタ膜120a、120bの内面に接線方向に接触する可能性がある。使用済みPD流体が(患者ドレン中に)新鮮PD流体通路116に入り、新鮮なPD流体が(患者充填中に)使用済みPD流体通路118に入るのを防ぐ主な機構は、(i)新鮮PD流体ルーメン52が、患者ドレン中に機械又はサイクラー20で閉じられるか閉塞され、(ii)使用済みPD流体ルーメン54が、患者充填中に機械又はサイクラー20で閉じられるか閉塞されるという事実である。したがって、たとえ使用済みPD流体が患者ドレン中に膜フィルタ120a、120b及び新鮮PD流体通路116を通って流れようとしても、新鮮PD流体ルーメン52内の圧力が均等化されるので、使用済みPD流体を流す場所はない。また、患者充填中に新鮮なPD流体が使用済みPD流体通路118を通って逆流するように曲がったとしても、使用済みPD流体ルーメン54内の圧力が均一化されるので、新鮮なPD流体が流れる場所はない。
【0111】
図8A及び図8Bは、図2図6又は図7A図7Bのいずれかのフィルタセット100の本体106に対する超音波シール、ヒートシール、溶剤接着、レーザ溶接、又はUV硬化接着剤を介したシールのための適切な蓋106a、106bを示す。ここで、蓋106a、106bによって設けられた通気開口106oの偶発的な閉塞を防止するために、リブ106n又は他の隆起構造などの保護機構が通気開口106oの片側又は両側に沿って設けられ、それにより、患者がフィルタセット100上に横たわっていても、本体106の内部から、例えば疎水性膜122a、122b、122c、122dを介して、通気開口106oを通して空気を通気することができる。この端部への保護リブ106nは、蓋106a、106bと、患者がフィルタセット100上に横たわっているときに蓋が接触している外面との間に空気経路を形成する。
【0112】
本明細書に記載の現在好ましい実施形態に対する様々な変形及び変更が当業者にとって明らかであることを理解すべきである。したがって、そのような変更及び修正のいずれか又は全てが添付の特許請求の範囲によって網羅され得ることが意図されている。例えば、デュアルルーメン患者ライン50は、代替的に、単一ルーメン患者ラインであってもよく、フィルタセット100は、新鮮及び使用済みPD流体をセット内の所望の位置に導くための逆止弁を含む。また、親水性フィルタ膜120a、120bは、一実施形態では約0.2ミクロンの孔径を有するものとして説明されているが、フィルタ膜120a、120bの一方又は両方は、代替的に又は追加的に、エンドトキシン低減のための荷電膜を含む。更に、2つのフィルタ膜120a、120bが示されているが、システム10は、代替的に、単一のフィルタ膜又は3つ以上のフィルタ膜120a~120nを使用してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
【国際調査報告】