IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧 ▶ ローム アンド ハース カンパニーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ガスバリアコーティング
(51)【国際特許分類】
   C09D 129/04 20060101AFI20241219BHJP
   C09D 133/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C09D129/04
C09D133/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531614
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 CN2022137308
(87)【国際公開番号】W WO2023104112
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/136058
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チャンチャン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、シャオメイ
(72)【発明者】
【氏名】ホー、ヤフェイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユ
(72)【発明者】
【氏名】アインスラ、ブライアン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ドラムライト、レイ イー.
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シャンイー
(72)【発明者】
【氏名】ボン、シャロン エム.
(72)【発明者】
【氏名】アインスラ、メリンダ エル.
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ、ラーフル
(72)【発明者】
【氏名】セカラン、マネシュ ナドゥッパランビル
(72)【発明者】
【氏名】ラオ、ユエンチャオ
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CE021
4J038MA14
4J038NA08
4J038PB04
4J038PC08
(57)【要約】
ポリビニルアルコール及びポリアクリル酸を含むバリアコーティングであって、バリアフィルムは、100℃以下で形成される、バリアコーティングが開示される。ポリビニルアルコール及びポリアクリル酸を含む、100℃以下で形成されたバリアコーティングを含む積層体もまた開示される。ポリアクリル酸は、2000~400,000g/molの数平均分子量を有するポリ(メタ)アクリル酸を含むことができ、2~50%の中和度を有することができる。ポリビニルアルコールは、少なくとも80%の鹸化度、及び10,000~300,000g/molの分子量を有することができる。開示されたバリアコーティングは、金属化を伴わない良好なOTR性能を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール及びポリアクリル酸を含むバリアコーティングであって、バリアフィルムは、100℃以下で形成される、バリアコーティング。
【請求項2】
前記ポリアクリル酸は、少なくとも1種のポリ(メタ)アクリル酸を含む、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項3】
前記ポリアクリル酸は、2000~400,000g/molの数平均分子量(M)を有する、請求項1又は2に記載のバリアコーティング。
【請求項4】
前記ポリアクリル酸は、20,000~300,000g/molの数平均分子量(M)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のバリアコーティング。
【請求項5】
前記ポリアクリル酸は、40,000~200,000の数平均分子量(M)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のバリアコーティング。
【請求項6】
前記ポリアクリル酸は、部分的に中和されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のバリアコーティング。
【請求項7】
前記ポリアクリル酸は、2~50%の中和度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のバリアコーティング。
【請求項8】
前記ポリビニルアルコールは、少なくとも80%の鹸化度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のバリアコーティング。
【請求項9】
前記ポリビニルアルコールは、少なくとも95%の鹸化度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のバリアコーティング。
【請求項10】
前記ポリビニルアルコールは、10,000~300,000g/molの分子量(M)を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のバリアコーティング。
【請求項11】
前記ポリビニルアルコールは、10,000~100,000g/molの分子量(M)を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のバリアコーティング。
【請求項12】
95:5~5:95のポリビニルアルコール対ポリアクリル酸比を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のバリアコーティング。
【請求項13】
30:70~70:30のポリビニルアルコール対ポリアクリル酸比を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のバリアコーティング。
【請求項14】
前記ポリビニルアルコールは、エチレン変性ポリビニルアルコールを含む、請求項1~13のいずれかに記載のバリアコーティング。
【請求項15】
請求項1に記載のバリアコーティングを含む基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2021年12月7日に出願された国際出願PCT/CN2021/136058号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、バリア分野のコーティングに関する。より具体的には、本開示は、PVOHを含むバリア分野のコーティングに関する。
【0003】
序論
必要なガスバリア性能を達成するための食品包装用途における標準的なアプローチは、金属蒸着フィルムの使用である。製造プロセス及び包装プロセスにおいて使用されるエネルギーのほとんどは、金属化において使用される。処理工程を追加する金属化が使用される場合、下塗りの適用が必要である。これらの追加された材料の量はまた、リサイクル性に負の影響を及ぼす。このように、良好なOTR性能を提供するが、金属化に依拠せず、それ故に、OTR性能を犠牲にすることなく、リサイクル性を改善する大規模に実現可能な解決策の緊急の必要性が存在している。
【発明の概要】
【0004】
ポリビニルアルコール及びポリアクリル酸を含むバリアコーティングであって、バリアフィルムは、100℃以下で形成されるバリアコーティングが、ここで開示される。ポリビニルアルコール及びポリアクリル酸を含む、100℃以下で形成されたバリアコーティングを含む積層体もまた開示される。
【発明を実施するための形態】
【0005】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの派生語は、あらゆる追加の構成成分、工程、又は手順の存在を、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、除外することを意図するものではない。いかなる疑念も避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通して特許請求される全ての組成物は、別段矛盾する記述がない限り、ポリマー性か又は別のものであるかにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる以降の記述の範囲から任意の他の成分、工程、又は手順を排除する。「からなる(consisting of)」という用語は、具体的に描写又は列記されていないあらゆる構成成分、工程、又は手順を排除する。
【0006】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値から上限値までの全ての値(下限値及び上限値を含む)を含む。明示的な値を含有する範囲(例えば1、又は2、又は3~5、又は6、又は7の範囲)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7は、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などを含む)。
【0007】
「組成物」という用語は、当該組成物を構成する材料の混合物、並びに当該組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物を指す。
【0008】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、同じ種類又は異なる種類にかかわらず、モノマーを重合することによって調製された高分子化合物を意味する。したがって、ポリマーという総称は、(1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる)ホモポリマーという用語、及びコポリマー又はインターポリマーという用語を包含する。微量の不純物(例えば、触媒残渣)は、ポリマー中及び/又はポリマー内に組み込まれてもよい。ポリマーは、単一のポリマー、ポリマーブレンド、又は重合中にその場で形成されるポリマーの混合物を含むポリマー混合物であり得る。
【0009】
本明細書で使用される場合、「ポリオレフィン」という用語は、例えば、エチレン又はプロピレンといった(ポリマーの重量に基づき)大半のオレフィンモノマーを重合した形態で含み、任意には1つ以上のコモノマーを含み得るポリマーを意味する。
【0010】
「ポリエチレンポリマー」、「ポリエチレン系ポリマー」、「PE系ポリマー」、「ポリエチレン」、又は「エチレン系ポリマー」は、エチレンモノマーに由来する単位の大部分(>50モル%、又は>60モル%、又は>70モル%、又は>80モル%、又は>90モル%、又は>95モル%、又は>97モル%)を含むポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマー又はコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。当該技術分野において周知のポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene、LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene、LLDPE)、極低密度ポリエチレン(Ultra Low Density Polyethylene、ULDPE)、超低密度ポリエチレン(Very Low Density Polyethylene、VLDPE)、直鎖状低密度樹脂及び実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含む、シングルサイト触媒による直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(Medium Density Polyethylene、MDPE)、並びに高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene、HDPE)が挙げられるが、これらに限定されない。これらのポリエチレン材料は、一般に、当該技術分野において周知である。しかしながら、以下の記載は、これらの異なるポリエチレン樹脂のうちのいくつかの間の差異を理解するのに役立つ場合がある。
【0011】
「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」、又は「高分岐ポリエチレン」とも称されてもよいが、ポリマーが、過酸化物などの、フリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)を上回る圧力で、オートクレーブ又は管状反応器中で、部分的に又は完全に、ホモ重合又は共重合されることを意味するように定義される(例えば、参照として本明細書に組み込まれる、米国特許第4,599,392号を参照のこと)。LDPE樹脂は、典型的には、0.916~0.935g/cm3の範囲内の密度を有する。
【0012】
「LLDPE」という用語は、伝統的なチーグラー・ナッタ触媒系及びクロム系触媒、並びにビス-メタロセン触媒(「m-LLDPE」と称されることもある)及び拘束幾何触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製される樹脂の両方を含み、直鎖状、実質的に直鎖状、又は不均質なポリエチレンコポリマー又はホモポリマーを含む。LLDPEは、LDPEよりも少ない長鎖分岐を含有し、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第5,582,923号、及び同第5,733,155号に更に定義されている、実質的に直鎖状エチレンポリマー、米国特許第3,645,992号のものなどの、均質に分岐した直鎖状エチレンポリマー組成物、米国特許第4,076,698号に開示されているプロセスに従って調製されるものなどの不均質分岐エチレンポリマー、及び/又はこれらのブレンド(米国特許第3,914,342号又は同第5,854,045号に開示されているものなど)が挙げられる。LLDPEは、当技術分野で既知の任意の種類の反応器又は反応器構成を使用して、気相、溶液相、若しくはスラリー重合、又はこれらの任意の組み合わせを介して作製することができる。
【0013】
「MDPE」という用語は、0.926~0.935g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。「MDPE」は、典型的には、クロム触媒若しくはチーグラー・ナッタ触媒を使用して、又はビス-メタロセン触媒及び拘束幾何触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製され、典型的には、2.5を超える分子量分布(「MWD」)を有する。
【0014】
「HDPE」という用語は、一般にチーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又はビス-メタロセン触媒及び拘束幾何触媒を含むが、これらに限定されないシングルサイト触媒を用いて調製される、約0.935g/cm3超~約0.970g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。
【0015】
「ULDPE」という用語は、一般に、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又はビス-メタロセン触媒及び拘束幾何触媒を含むが、これらに限定されないシングルサイト触媒で調製される、0.880~0.912g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。
【0016】
「ポリプロピレン系ポリマー」、「PP系ポリマー」、又は「ポリピレン系ポリマー」は、ポリピレンモノマーに由来する単位の大部分(>50モル%、又は>60モル%、又は>70モル%、又は>80モル%、又は>90モル%、又は>95モル%)を含むポリマーを意味するものとする。
【0017】
「ポリエチレンテレフタレート系ポリマー」又は「PET系ポリマー」は、過半量(>50重量%、又は>60重量%、又は>70重量%、又は>80重量%、又は>90重量%、又は>95重量%)のエチレンテレフタレートを含むポリマーを意味するものとする。
【0018】
「ポリオレフィンプラストマー」は、ポリエチレンプラストマー又はポリプロピレンプラストマーであり得る。ポリオレフィンプラストマーには、例えば、メタロセン及び拘束幾何触媒などのシングルサイト触媒を使用して作製されたポリマーが含まれる。ポリオレフィンプラストマーは、0.885~0.915g/cmの密度を有する。0.885g/cm~0.915g/cmの全ての個々の値及び下位範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、プラストマーの密度は、0.895、0.900、又は0.905g/cmの下限から0.905、0.910、又は0.915g/cmの上限までであり得る。いくつかの実施形態では、ポリオレフィンエラストマーは、0.890~0.910g/cmの密度を有する。
【0019】
「ポリオレフィンエラストマー」は、ポリエチレンエラストマー又はポリプロピレンエラストマーであり得る。ポリオレフィンエラストマーは、0.857~0.885g/cmの密度を有する。0.857g/cm~0.885g/cmの全ての個々の値及び下位範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、低密度ポリエチレンの密度は、0.857、0.860、0.865、0.870、又は0.875g/cmの下限から0.870、0.875、0.880、又は0.885g/cmの上限までであり得る。いくつかの実施形態では、ポリオレフィンエラストマーは、0.860~0.880g/cmの密度を有する。
【0020】
「ポリエチレン系フィルム」又は「PE系フィルム」は、フィルムの総重量に基づいて、少なくとも90重量パーセントのポリエチレン、少なくとも95重量パーセントのポリエチレン、少なくとも97重量パーセントのポリエチレンを含むフィルムを指す。
【0021】
「ポリプロピレン系フィルム」又は「PP系フィルム」は、フィルムの総重量に基づいて、少なくとも90重量パーセントのポリプロピレン、少なくとも95重量パーセントのポリプロピレン、少なくとも97重量パーセントのポリプロピレンを含むフィルムを指す。
【0022】
「ポリエチレンテレフタレート系フィルム」又は「PET系フィルム」は、フィルムの総重量に基づいて、少なくとも90重量パーセントのポリエチレンテレフタレート、少なくとも95重量パーセントのポリエチレンテレフタレート、少なくとも97重量パーセントのポリエチレンテレフタレートを含むフィルムを指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、酸化防止剤は、ポリマー(複数可)を安定化させるか、又はポリマー(複数可)の酸化分解を防止するためにポリマーフィルム中に含まれる化合物である。酸化防止剤は、当業者によく知られている。
【0024】
本明細書で使用される場合、粘着防止剤は、フィルムの2つの隣接する層の間の粘着(すなわち、接着)を最小限に抑える、又は防止する化合物である。粘着は、例えばフィルムロールの巻き戻し中に問題を引き起こす可能性がある。粘着防止剤の使用は、当業者には周知である。一般的な粘着防止剤の例としては、限定されないが、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
本明細書で使用される場合、滑り剤は、フィルム間及び/又はフィルムと機器との間の摩擦を低減するためにフィルムに添加される化合物である。典型的な滑り剤としては、移行性及び非移行性滑り剤が挙げられ、当業者によく知られている。
【0026】
本明細書で使用される場合、「コポリマー」という用語は、2種以上のモノマーを有する任意のポリマーを意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「ポリビニルアルコール」という用語は、ビニルアルコールのポリマーを意味する。エチレン変性ポリビニルアルコールなどの変性ポリビニルアルコールは、特にこの定義に含まれる。
【0028】
バリアコーティング
バリアフィルムが100℃以下で形成されるバリアコーティングが、ここで開示される。バリアコーティングは、ポリビニルアルコール及びポリアクリル酸を含むことができる。バリアコーティングは、95:5~5:95のポリビニルアルコール対ポリアクリル酸比を含むことができる。バリアコーティングは、30:70~70:30のポリビニルアルコール対ポリアクリル酸比を含むことができる。バリアコーティングは、これらに限定されないが、粘着防止剤、消泡剤、増粘剤、及び湿潤剤などの水性コーティング添加剤を含むことができる。
【0029】
バリアコーティングにおいてコーティングされた基材は、50%以上の相対湿度で0.60cc/m日未満のOTRを有することができる。バリアコーティングにおいてコーティングされた基材は、50%以上の相対湿度で0.60~0.02cc/m日のOTRを有することができる。全ての内部値及び部分範囲が開示される。例えば、バリアコーティングでコーティングされた基材は、0.02~0.1又は0.02~0.03cc/m日のOTRを有することができる。バリアコーティングは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエチレンテレフタレートを含むが、これらに限定されない様々な基材に適用することができる。
【0030】
ポリアクリル酸
ポリアクリル酸は、少なくとも1種のポリ(メタ)アクリル酸を含むことができる。ポリアクリル酸は、少なくとも2種のポリマーのコポリマーを含むことができる。ポリアクリル酸は、少なくとも2種のモノマーのコポリマーを含むことができる。ポリアクリル酸は、少なくとも2種のポリマーの混合物を含むことができる。
【0031】
ポリアクリル酸は、2000~400,000g/molの数平均分子量(M)を有してもよい。全ての内部値及び部分範囲が含まれる。例えば、ポリアクリル酸は、20,000~300,000又は40,000~200,000g/molの数平均分子量(M)を有することができる。
【0032】
ポリアクリル酸は、部分的に中和することができる。ポリアクリル酸は、2~50%の中和度を有することができる。全ての内部値及び部分範囲が含まれる。例えば、ポリアクリル酸は、5~20%の中和度を有することができる。ポリアクリル酸は、NaOH、KOH、NH・HO、ZnO、及びCaOが挙げられるがこれらに限定されない塩基を使用して、部分的に中和することができる。
【0033】
ポリビニルアルコール
ポリビニルアルコールは、エチレン変性されていてもよい。ポリビニルアルコールは、5%未満のエチレンを含むことができる。ポリビニルアルコールは、少なくとも80%の鹸化度を有することができる。ポリビニルアルコールは、少なくとも95%の鹸化度を有することができる。ポリビニルアルコールは、80~100%の鹸化度を有することができる。全ての内部値及び部分範囲が含まれる。例えば、ポリビニルアルコールは、95~100%の鹸化度を有することができる。
【0034】
ポリビニルアルコールは、10,000~300,000g/molの分子量を有することができる。全ての内部値及び部分範囲が開示される。例えば、ポリビニルアルコールは、10,000~100,000g/molの分子量を有することができる。
【0035】
ポリビニルアルコール樹脂は、少なくとも80%の鹸化度及び10,000~300,000g/molの分子量(M)を有することができる。ポリビニルアルコールは、少なくとも95%の鹸化度及び10,000~100,000g/molの分子量(M)を有することができる。
【0036】
基材
基材は、フィルムを含み得る。フィルムは、ポリエチレンを含む少なくとも1つの層を有し得る。他の層は、PP、ナイロン、又は当業者に知られている他のプラスチックであり得る。1つの層が存在してもよい。あるいは、2つ以上の層が存在してもよい。これらの2つ以上の層を一緒に押出して、フィルムを形成することができる。3つ(又は3つ以上)の層が存在してもよい。3つ(又は3つ以上)の層が存在する場合、外層の層は、シーラント層と呼ばれ、シーラント層と反対側の層は、スキン層と呼ばれ、スキン層とシーラント層との間の1つの層又は複数の層は、1つのコア層又は複数のコア層である。含む層が1つしか存在しない場合、本明細書でスキン層、コア層、又はシーラント層として説明した組成物のいずれかを使用することができる。層が2つしか存在しない場合、スキン層とコア層、スキン層とシーラント層、又はコア層とシーラント層の任意の組み合わせを使用することができる。2つ以上の層が存在する場合、各層は、少なくとも1つの他の層又は接着剤層に直接隣接することができる。フィルムは、シーラント層を含むことができる。フィルムは、スキン層、コア層及びシーラント層を含むことができる。
【0037】
フィルムは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、並びに前述のものの2つ以上の組み合わせを含むことができる。フィルムは、チーグラー・ナッタ触媒、シングルサイト触媒(限定されないが、メタロセンを含む)、又はクロム触媒による直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、オートクレーブ生成又は管状生成低密度ポリエチレン(LDPE)、並びに前述のものの2つ以上の組み合わせを含むことができる。
【0038】
フィルムは、超低密度ポリエチレン、ポリオレフィンプラストマー、ポリオレフィンエラストマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンアクリル酸エチルコポリマー、エチレンビニルアルコール、及び少なくとも50%のエチレンモノマーを含む任意のポリマー、並びにこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを更に含むことができる。
【0039】
スキン層は、ポリプロピレン、ナイロン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、並びに前述のものの2つ以上の組み合わせを含むことができる。このLLDPEは、シングルサイト触媒によるポリエチレン(m-LLDPEなどであるが、これには限定されない)であり得る。スキン層は、例えば、酸化防止剤、紫外線安定剤、熱安定剤、滑り剤、粘着防止剤、顔料又は着色剤、加工助剤、架橋触媒、難燃剤、充填剤及び発泡剤などの添加剤を更に含むことができる。
【0040】
コア層は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、並びに前述のものの2つ以上の組み合わせを含むことができる。
【0041】
シーラント層は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリオレフィンエラストマー又はプラストマー、並びに前述のものの2つ以上の組み合わせを含むことができる。シーラント層は、チーグラー・ナッタ触媒、シングルサイト触媒(メタロセンを含む)、又はクロム触媒による直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、オートクレーブ生成又は管状生成低密度ポリエチレン(LDPE)、並びに前述のものの2つ以上の組み合わせを含むことができる。LLDPEは、シングルサイト触媒によるポリエチレン(mLLDPEなど)であり得る。これは、フィルムの外部層であり得る。シーラント層は、粘着防止剤を有利に含んでもよい。例えば、粘着防止剤は、少なくとも約200ppm、少なくとも約1000ppm又は少なくとも約1500ppmの量でシーラント層中に存在してもよい。更に、滑り剤(例えば、エルカ酸アミド)は有益であり得る。例えば、滑り剤は、シーラント層の総重量に基づいて、500ppm未満、又は300ppm未満、又は200ppm未満、100ppm未満、又は0ppmに等しい量でシーラント層中に存在してもよい。
【0042】
フィルムは、吹込フィルム、キャストフィルム、縦方向延伸フィルム、又は二軸延伸フィルムであり得る。フィルムは、吹込、キャスト、水冷、ダブルバブル、又はFilm Processing Advances,Toshitaka Kanai and Gregory A.Campbell(editors),Chapter 7(Biaxial Oriented Film Technology),pp.194-229に記載されているような当業者に公知の他の技術によって製造することができる。製造後、フィルムを縦方向延伸(machine direction orientation、MDO)又は二軸延伸プロセスに供して、それぞれ縦方向延伸フィルム又は二軸延伸フィルムを提供してもよい。
【0043】
フィルムの全体の厚さは、少なくとも10マイクロメートル、少なくとも20マイクロメートル、又は少なくとも30マイクロメートルであり得る。フィルムの総厚は、200マイクロメートル以下、150マイクロメートル以下、120マイクロメートル以下、100マイクロメートル以下、80マイクロメートル以下、70マイクロメートル以下、又は60マイクロメートル以下であり得る。
【0044】
フィルム層中の酸化防止剤の濃度は、フィルムの総重量に基づいて、3000ppm未満、又は2000ppm未満、又は1500ppm未満、又は1300ppm未満である。
【0045】
生成及び使用
PVOH及び様々な塩基の溶液は、当該技術分野で理解されているように得ることができる。部分的に中和されたPAAは、計算された量の塩基溶液をPAA溶液に加えることによって調製することができる。添加される塩基の量は、所望の中和度及び中和される試料中に存在するPAAカルボキシル基のモル数に依存する。次いで、当該技術分野で理解されている方法を使用して、部分的に中和されたPAANaとPVOHとを混合することによって、バリアコーティングを得ることができる。
【0046】
このようにして生成された溶液は、ロールコーティング、グラビアコーティング、フレキソコーティング、及びバーコーティングなどの当該技術分野で公知の様々な手段を使用して、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンテレフタレートなどの様々な基材上に、用途に応じて様々な膜厚でコーティングすることができる。得られるコーティングされた基材は、食品包装並びに酸素不透過性バリアが必要とされる任意の他の用途において有用である。
【0047】
試験方法
蒸気収着
薄いフィルム試料を60℃で24時間乾燥させる。次いで、各試料を基材から剥がし、試験前に秤量する。試験は、相対湿度を10%間隔で0%から80%に上昇させて室温で行う。次いで、各相対湿度での平衡重量を記録し、蒸気収着率を計算することができる。
【0048】
酸素透過率
MOCON Ox-Tran Model 2/21を使用して、ASTM D3985-05に従って23℃及び相対湿度50%でブレンドフィルムの酸素透過率を測定した。
【0049】
分子量測定
ポリマー溶液を、20mM NaHPO/NaHPO中、約1~2mg/mLの濃度でpH7で調製する。試料を、周囲温度で約2時間、機械式シェーカー上で溶解させる。ポリマー溶液を、0.2mmのPVDFフィルタを用いてオートサンプラーバイアルに濾過する。試料は可溶性に見えるはずであり、濾過中に抵抗は観察されないはずである。
【0050】
サイズ排除クロマトグラフィ(Size exclusion chromatography、SEC)分離は、定組成ポンプ脱気装置、オートサンプラー、及び40℃で操作されるRI検出器からなるWaters APCシステムで実施する。Sec分離は、pH7のNaHPO中で、GMPWXL及びG2500PWXL孔径並びに13μm及び7μmの粒径を有する2つのTSKgelカラムで行う。SECシステム/カラムセットは、狭いポリ(アクリル標準)(PAA)で較正される。20mLの試料溶液を、SEC分離のためにカラムセットに注入する。システム制御、データ取得、及びデータ処理は、Empower(登録商標)ソフトウェアのバージョン3.0を使用して実行される。
【実施例
【0051】
本発明の実施例及び比較試料で使用した材料を下記の表1に示す。全てのDOW(商標)の市販試料は、DOW(商標)Chemicalから入手可能である。
【0052】
【表1】
【0053】
PVOHの調製
10部のRS2117を90部の脱イオン水中に90℃で3時間撹拌して、RS2117を溶解する。次いで、このようにして得られた固形分10%の透明なPVOH溶液を室温まで冷却する。
【0054】
NaOH溶液の調製
10部のNaOHを90部の脱イオン水中に15分間撹拌することによって、10%の固形分を有する透明なNaOH溶液を得る。
【0055】
中和されたPAA溶液
表2に示される中和されたPPA溶液は、計算された量の水酸化ナトリウム溶液を、20,000の数平均分子量及び約67,000のMwを有するポリアクリル酸の25重量%溶液に添加することによって調製される。計算された量の水酸化ナトリウム溶液を、PAAカルボキシル基のモル数に関してPAAの水溶液の部分に別々に添加して、それぞれ5%、10%、20%、25%及び50%の中和度(DN)を有する部分中和生成物(PAANa)を得る。
【0056】
【表2】
【0057】
中和されたポリアクリル酸溶液を、フィルム厚を正確に制御するMeyerバー自動フィルムコーティング装置を使用して50μm厚のPET上にバーコーティングする。コーティングされたフィルムを100℃で2分間乾燥させる。乾燥した膜厚を10±2μmに制御した。
【0058】
表3は、様々な分子量及び異なる中和度を有する2つの異なる種類のPAAの酸素バリア性能を示す。PET基材の最も低いOTRは、10μmの厚さで0.07cc/m日で評価される。
【0059】
【表3】
【0060】
10%中和PAANaとPVOHとを混合することによって、全て10%の最終固形分を有する、表4に示す様々な重量比を調製する。フィルム厚を10±2μmに正確に制御するMeyerバー自動フィルムコーティング装置を使用して、全てが10%の最終固形分を有する混合溶液を50μm厚のPET基材上にバーコーティングする。コーティングされたフィルムを100℃で2分間乾燥させる。
【0061】
【表4】
【0062】
PVOH及び10%中和PAANaを7:3の重量比で混合して、10%の最終固形分を有する水性混合溶液を得る。次いで、フィルム厚を5±2μmに正確に制御するMeyerバー自動フィルムコーティング装置を用いて、これらの溶液を25μmのHDPE上にバーコーティングする。次いで、コーティングされたフィルムを40℃で5分間乾燥させる。結果を表5に示す。
【0063】
【表5】
【0064】
表2~表5に示された結果を以下の表6にまとめる。
【0065】
【表6】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール及びポリアクリル酸を含むバリアコーティングであって、バリアフィルムは、100℃以下で形成される、バリアコーティング。
【請求項2】
前記ポリアクリル酸は、少なくとも1種のポリ(メタ)アクリル酸を含む、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項3】
前記ポリアクリル酸は、2000~400,000g/molの数平均分子量(M)を有する、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項4】
前記ポリアクリル酸は、20,000~300,000g/molの数平均分子量(M)を有する、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項5】
前記ポリアクリル酸は、40,000~200,000g/molの数平均分子量(M)を有する、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項6】
前記ポリアクリル酸は、部分的に中和されている、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項7】
前記ポリアクリル酸は、2~50%の中和度を有する、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項8】
前記ポリビニルアルコールは、少なくとも80%の鹸化度を有する、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項9】
前記ポリビニルアルコールは、少なくとも95%の鹸化度を有する、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項10】
前記ポリビニルアルコールは、10,000~300,000g/molの分子量(M)を有する、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項11】
前記ポリビニルアルコールは、10,000~100,000g/molの分子量(M)を有する、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項12】
前記バリアコーティングは、95:5~5:95のポリビニルアルコール対ポリアクリル酸比を有する、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項13】
前記バリアコーティングは、30:70~70:30のポリビニルアルコール対ポリアクリル酸比を有する、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項14】
前記ポリビニルアルコールは、エチレン変性ポリビニルアルコールを含む、請求項1に記載のバリアコーティング。
【請求項15】
請求項1に記載のバリアコーティングを含む基材。
【国際調査報告】