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特表2024-546621プラズマ電食反応装置およびその使用方法
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  • 特表-プラズマ電食反応装置およびその使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】プラズマ電食反応装置およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/48 20230101AFI20241219BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C02F1/48 B
G21F9/06 501
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532256
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 IB2022061212
(87)【国際公開番号】W WO2023105330
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】A202107058
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】UA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524202225
【氏名又は名称】“アルファ アトム” エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100081318
【弁理士】
【氏名又は名称】羽切 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100132458
【弁理士】
【氏名又は名称】仲村 圭代
(74)【代理人】
【識別番号】100165146
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 博喜
(72)【発明者】
【氏名】ザブロノフ、 ユーリィ
(72)【発明者】
【氏名】シフィルカ、 セルヒー
(72)【発明者】
【氏名】プハチ、 オレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ニコレンコ、 ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】ピエール、 イゴール
(72)【発明者】
【氏名】ツリンシュク、 イゴール
【テーマコード(参考)】
4D061
【Fターム(参考)】
4D061DA08
4D061DB18
4D061EA13
4D061EB09
4D061EB27
4D061EB28
4D061ED20
4D061FA06
4D061FA16
(57)【要約】
提案された発明は、液体産業廃棄物処理の分野に関するものであり、詳細には、工業廃水および雨水のみならず、原子力発電所の処理水を包括的に処理するプラズマ電食反応装置であって、それらの不活性化および浄化を目的とする、詳細には、セシウム137(137Cs)、ストロンチウム90(90Sr)、アメリシウム(241Am)、コバルト60(60Co)の放射性核種、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)などの重金属の除去を目的とする、プラズマ電食反応装置に関するものであり、また原子力発電所(NPP)の液体廃棄物の処理を含め、その使用方法に関するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応装置の下部に配置されて液体廃棄物を供給する取り込みパイプと;誘電体材料から作られ金属顆粒(ボール)で充填された円筒形または他の曲線形状の放電チャンバであって、前記チャンバの下部および上部に誘電体グリッドがある放電チャンバと;前記反応装置の上部に配置されて、凝固した懸濁物を除去する取り出しパイプと;前記反応装置の内面の金属電極であって、制御ユニットを有する矩形パルスの供給源を接続させた金属電極と、を含んでなる、液体廃棄物を処理するプラズマ電食反応装置であって、金属顆粒(ボール)を充填させた、そして接続パイプによって前記第1のチャンバに接続された、第2の放電チャンバをも含んでなって、前記凝固した懸濁物を前記第1のチャンバから前記第2のチャンバに供給することを特徴とし、一方のチャンバが鉄顆粒で充填され、もう一方のチャンバがアルミニウム顆粒で充填され、前記液体廃棄物を供給する取り入れパイプが前記第1のチャンバに接続され、前記凝固した懸濁物を除去する取り出しパイプが前記第2のチャンバに接続されている、プラズマ電食反応装置。
【請求項2】
前記顆粒(ボール)のサイズが放電チャンバの内径と相関し、この相関の仕方が以下のように:0,001 D ≦ d ≦ 0,15 Dであって、式中、dがボール(顆粒)の直径、mmであり、Dが前記チャンバの内径、mmであることを特徴とする、請求項1に記載の、液体廃棄物を処理するプラズマ電食反応装置。
【請求項3】
請求項1および2に記載の、液体廃棄物を処理するプラズマ電食反応装置であって、オゾン-空気混合物の供給源と、前記反応装置に液体廃棄物を供給する取り込みパイプに順次接続された混合装置とをさらに含むことを特徴とするプラズマ電食反応装置。
【請求項4】
液体廃棄物を、圧力下で連続的に取り込みパイプを通して前記反応装置に供給し、300Vから800Vの範囲の値を有する電圧振幅の矩形パルスの供給源が、制御ユニットを用いて起動されて、前記放電電極に前記矩形パルスを供給し、充填された顆粒(ボール)どうしの間の体積放電と体積マイクロプラズマとをそれぞれ生成し、これにより、液体がイオン化されて、顆粒が作られる元である前記金属のナノ粒子を形成し、前記溶液からの有機および/または無機汚染物質、詳細には重金属、および/または放射性同位元素の凝固および分離の過程が、前記凝固剤の助けにより前記反応装置内で生じ、この凝固剤が、顆粒が作られる元である前記金属の水酸化物であり、プラズマ化学反応の間に形成され、その結果、汚染物質が可溶性状態から不溶性状態に移行し、次いで、前記浄化過程の間に形成された前記懸濁物が、前記取り出しパイプを通して前記反応装置から除去される、請求項1~3に記載の、液体廃棄物を処理するプラズマ電食反応装置を使用する方法であって、液体廃棄物が、加圧下で前記取り込みパイプを通して、鉄またはアルミニウムの一方の種類の材料から作られた金属顆粒を充填した前記第1の放電チャンバに供給され、前記第1のチャンバ内での凝固過程の終了後、前記懸濁物が、前記接続パイプを通って、アルミニウムまたは鉄のもう一方の種類の材料から作られた金属顆粒を充填した前記第2の放電チャンバに供給され、前記第2のチャンバ内での凝固過程の終了後、得られた前記懸濁物が、前記取り出しパイプに供給されることを特徴とする方法。
【請求項5】
前記プラズマ電食反応装置を前記取り込みパイプに供給する前に、液体廃棄物を収着剤と予め混合することを特徴とする、請求項4に記載の、液体廃棄物を処理するプラズマ電食反応装置を使用する方法。
【請求項6】
請求項4および5に記載の、液体廃棄物を処理するプラズマ電食反応装置を使用する方法であって、前記反応装置の取り込みパイプに接続された前記混合装置内でオゾン-空気混合物により前記液体廃棄物を予め付加的に飽和させることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記電極に印加される前記矩形パルスが双極性である、すなわち後に続く各パルスが、その極性を反対のものに変化させ、50~200Hzの周波数を有することを特徴とする、請求項4~6に記載の、液体廃棄物を処理するプラズマ電食反応装置を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
提案された発明は、液体産業廃棄物処理の分野に関するものであり、詳細には、工業廃水および雨水のみならず、原子力発電所の処理水を包括的に処理するプラズマ電食反応装置であって、それらの不活性化および浄化を目的とする、詳細には、セシウム137(137Cs)、ストロンチウム90(90Sr)、アメリシウム(241Am)、コバルト60(60Co)の放射性核種、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)などの重金属の除去を目的とする、プラズマ電食反応装置に関するものであり、また原子力発電所(NPP)の液体廃棄物の処理を含め、その使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
当業者は、放射性核種および重金属を除去する、汚染された液体の不活性化および処理の方法の一つに、鉄およびアルミニウム化合物系の無機凝固剤を使用する凝固過程があって、こうした化合物が、アルカリ性環境中でアルミニウムおよび鉄の水酸化物を形成して上述の汚染物質を沈殿させることができるということを知っている。この技術の主な欠点は、必要なpH環境を作り出す追加の試薬を使用する必要があり、こうした環境がこの過程の適用を煩雑にし、さらに高価にすることである。
【0003】
また、先行技術[例えば、Shakhova N.B.,Yurmazova T.A.A model of the physical and chemical processes that occur during the dispersion of metals by pulsed electric discharges in water and dilute salt solutions(Model fiziko-khimicheskikh protsessov,protekayushchikh pri dispergirovanii metallov impulsnymi elektricheskimi razryadami v vode i razbavlennykh rastvorakh soley)を見られたい]は、短寿命のアルミニウムイオンと鉄イオンの混合物の形成を伴う金属アルミニウムまたは鉄の顆粒の電食分散(蒸発および凝縮)の間に凝固剤が得られるさいに、凝固過程を使用して放射性核種および重金属を除去する、汚染された液体の不活性化および処理方法について教示しており、こうしたイオンは、セシウム137(137Cs)、アメリシウム241(241Am)、ストロンチウム90(90Sr)、コバルト60(60Со)イオンが存在している間、これらと非常に活発に相互作用し、引き続いてこれらの酸化物および水酸化物を形成し、後者が凝固して、水に不溶性である錯体化合物を形成する。例えば、NPP液体廃棄物の水溶液中に金属アルミニウム顆粒を電食分散させている間、オルトアルミニウム酸(HAlO)とメタアルミニウム酸(MAl)の不溶性塩であるアルミナート類であって、MをCs、Sr、Am、Z、Zn、Pbなどとするアルミナート類が形成される。アルミナート類の特徴的な性質は、その同形性、つまり、類似した化学的性質を有する化学元素が、単純な物質または複雑な物質の分子組成において、混晶を生成する、または互いに置換する能力である。ストロンチウムイオン(90Sr)およびセシウムイオン(137Cs)に対するアルミニウムの酸化物および水酸化物のイオン性錯体および多価錯体の高度に選択的な収着および凝固は、ストロンチウムおよびセシウムが、互いに錯体化合物を容易に形成する高活性のアルカリ金属およびアルカリ土類金属に属するという事実によって説明される。同時に、セシウムが、高い解離能力を有する(Csイオンを非常に容易に分解する)金属であることが注目に値する。一般的に、セシウムの同位体はイオン性である。水酸化セシウムは、極めて反応性であり、極めて高い吸湿性を有し、Al(OH)中の結合水と相互作用すると、非常に強いアルミナート類を形成して沈殿し、液体から容易に分離して浄化することができる。
【0004】
オゾンはほとんどすべての有機化合物を非常に急速に破壊するので、コンプレクソン類に及ぼすオゾンおよびОНラジカルの破壊的効果もまた、先行技術から知られている。コンプレクソン破壊の生成物は、さらなる過程のパラメータを悪化させることはない。同時に、オゾンおよびОНラジカルを用いたコンプレクソンの酸化の間に形成される生成物の毒性レベルは、元の化合物の毒性レベルよりもずっと低い。加えて、溶液処理の間に直接オゾンとОНラジカルが合成されることで、溶液処理する試薬を大量に入手し保管するための別個の行動およびコストが必要でない。よって、コンプレクソン破壊の結果として、放射性金属のイオンは、容易に収着および凝固した形態に移行する。同時に、これは、遷移金属(Fe、Ni、Crなど)の対応する水酸化物や酸化物の固相を形成し、これらは通常、浄化対象である初期溶液中に存在する。コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)などの放射性核種は、これらの水酸化物や酸化物に収着される。同時に、有機複合体の酸化の深さは、これらの放射性核種や他の放射性核種の除去の程度に大きく影響する。
【0005】
鉄水酸化物を用いて重金属や放射性核種を除去することによる水処理が、主にフェライト化法[例えば、特許RU2220110号、同UA95723号を見られたい]を用いて長い間行われてきた。この方法は通常、75℃以上の温度で行われるので、その欠点には、高いエネルギー消費がある。
【0006】
反応混合物を室温で異なるパワーの電磁パルス放電にさらすことにより、高温活性化に代えてフェライト化過程のエネルギー効率を高めることが可能である[例えば、特許SU1787950号、同SU861332号、同UA56454号を見られたい]。定電圧と交流電圧の両方を使用する電解槽チャンバ内での水処理方法もまた公知である[例えば、特許UA11271号、同UA2180号、同UA902号、同UA124号を見られたい]。指定された技術の一般的な欠点は、その比較的低い効率のみならず、廃液中に存在する有機物質による電極の不動態化、ひいては破壊の可能性である。
【0007】
特許請求の範囲に記載された発明に近い解決策が、放電技術を使用する反応装置であって、凝固過程を、反応装置に加えられた金属粒子、詳細にはアルミニウムを用いて実行するものであり、電解槽による廃液処理と比較して、凝固過程を大幅に増加させ、加速することができる[Zubenko A.A.,Yuschishena A.N.Studying the properties of electric-discharge aluminum hydroxide(Issledovaniye svoystv elektrorazryadnogo gidroksida alyuminiya)// Elektronnaya obrabotka materialov,2001.No.6,pp.60-65]。これらの方法の欠点は、有機物質と放射性核種を含有する錯体化合物を処理できないことである。
【0008】
特許請求の範囲に記載された発明に近い別の解決策が、国際公開WO2020180277号による技術的解決策であり、この場合には、浄化されることになる水が、金属顆粒を中に入れた反応装置に供給される。電極に印加される電気パルスの影響下で、顆粒の電食の過程が生じ、空気-酸素混合物が付加的に供給されて、それらの粒子が重金属イオンの凝固を引き起こす。この解決策の欠点は、その過程が間欠的な性質であり、限られた量の水しか浄化できないことである。この技術的解決策のもう一つの欠点は、単極性パルスの使用であり、これは反応装置の効率を著しく低下させる。
【0009】
特許請求の範囲に記載された発明に近い別の解決策が、特許UA124651号による技術的解決策であって、これは、内蔵電極と、アルミニウム顆粒が存在する下部の仕切りとを有する、誘電体材料から作られた放電チャンバを提供するものであり、電気パルスの影響下で、それらの顆粒が相互に作用して、アルミニウム水酸化物のみならず、オルトアルミン酸およびメタロアルミン酸の形成を伴う電気浸食の過程を生じ、これらが凝固剤となって原子力発電所の液体廃棄物に対して高い浄化率を示す。上記の技術的解決策の主な欠点は、液体廃棄物中に有機複合体との化合物の形で通常存在する放射性元素の凝固に関して、効率が低いことである。加えて、液体放射性廃棄物は通常、処理過程を著しく複雑にする有機物質を含有しており、単極性パルスの使用は、反応装置の電極の不動態化を招き、その効率を低下させる。
【0010】
特許請求の範囲に記載された発明に最も近い先行技術が、ウクライナ第76821号の実用新案特許に開示された技術的解決策であり、これをプロトタイプとして選択した。この技術的解決策では、チャンバ内部に電極を埋め込んだ反応装置が、汚染された水の浄化に使用される。75~85マイクロ秒のデューティ比、300~800Vの電圧振幅の単極パルスが電極に印加される。反応装置チャンバには、浄化されることになる水が、取り込みパイプを通して満たされる。チャンバ内部には、鉄およびアルミニウム合金から作られた球状顆粒があり、これらはチャンバ体積の約20~25%を占め、水圧と、反応装置の電極に印加される電気パルスの影響との下で互いに相互作用して、接触点で電気スパークを発生させ、これにより顆粒の電食が生じて、オゾンの発生と、局所的な温度上昇と、キャビテーションとを伴って金属イオンが発生し、次いで、凝固剤である鉄とアルミニウムの水酸化物が得られ、これらが重金属や放射性元素と相互作用して複合体を形成し、沈殿する。チャンバ内には、作業体積から顆粒が除去されるのを防止する上下の仕切りがある一方、反応装置の上部には、浄化された水を排出するノズルがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
指定された技術的解決策は、いくつかの欠点を有する。すなわち:
- Fe-Fe、Al-Fe、Al-Al顆粒を用い、鉄とアルミニウムの金属顆粒を同時に使用すると、異なる放電パワーが生じ、電食の効率が低減する。同時に、アルミニウム顆粒は、鉄顆粒よりも早く消耗し、これが、鉄-アルミニウム質量比の損失、放電媒質の不均一性、および凝固過程の効率性低下につながる;
- 凝固剤の濃度が高いと、浄化されることになる水の中に溶解している有機物と鉄イオンが選択的に相互作用し、重金属や放射性元素とは相互作用せず、よって、放射性元素や重金属からの汚染された水の浄化が低減する;
- 単極性電圧パルスを使用するさいの、有機物による電極の不動態化;
- 生成されるオゾンの量が、汚染物質中に存在する有機物を酸化するには充分ではない。
【0012】
特許請求の範囲に記載された発明の目標は、液体の産業廃棄物、特に有機物起源の汚染物質を含有するものを処理して放射性元素および重金属を除去する、高効率プラズマ電食反応装置およびその使用方法を創出することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、液体廃棄物を処理するプラズマ電食反応装置であって、反応装置の下部に位置して液体廃棄物を供給する取り込みパイプと;液体を安定に通過させること、および「不感(dead)」領域を存在させないことを保証する、金属顆粒(ボール)で充填され誘電体材料から作られた円筒形または他の曲線形状の放電チャンバとを含む反応装置を創出することによって解決される。ここで、反応装置の上下部には、チャンバから液体によって顆粒が除去されるのを制限する誘電体グリッドがあり;反応装置の上部には、凝固した懸濁物を除去する取り出しパイプがあり;反応装置の内面には、金属電極、特に鋼鉄製のものがあり、制御ユニットを備えた矩形パルスの供給源が電極に接続されている。
【0014】
ここで、特許請求の範囲に記載された発明によれば、反応装置はまた、金属顆粒(ボール)で満たされ接続パイプによって第1のチャンバに接続された、第2の放電チャンバをも含んでなり、凝固した懸濁物が第1のチャンバから第2のチャンバに供給される。ここで、一方のチャンバは鉄顆粒で満たされ、もう一方のチャンバはアルミニウム顆粒で満たされている。液体廃棄物を供給する取り込みパイプは第1のチャンバに接続され、凝固した懸濁物を除去する取り出しパイプは第2のチャンバに接続されている。
【0015】
ここで、特許請求の範囲に記載された発明によれば、顆粒(ボール)のサイズは放電チャンバの内径と相関し、この相関は以下のように:
0,001 D ≦ d ≦ 0,15 D
であって、式中、dはボール(顆粒)の直径、mmであり、Dはチャンバの内径、mmである。
【0016】
ここで、特許請求の範囲に記載された発明によれば、反応装置は、オゾン-空気混合物の供給源と、反応装置に液体廃棄物を供給する取り込みパイプに順次接続された混合装置とをさらに含む。
【0017】
課題はまた、プラズマ電食反応装置を使用して液体廃棄物を処理する方法であって、液体廃棄物を、圧力下で取り込みパイプを通して連続的に反応装置に供給する方法を創出することによっても解決される。汚染物質の種類に応じて300Vから800Vの範囲の値を有する電圧振幅の矩形パルスの供給源は、制御ユニットを用いて起動されて、放電電極に矩形パルスを供給して、充填された顆粒(ボール)どうし間の体積放電と体積マイクロプラズマとをそれぞれ生成し、これにより、液体がイオン化されて、顆粒が作られる元である金属のナノ粒子を形成する。同時に、溶液からの有機および/または無機汚染物質、詳細には重金属、および/または放射性同位元素の凝固および分離の過程が、凝固剤の助けにより反応装置内で生じ、この凝固剤は、顆粒が作られる元である金属の水酸化物であり、プラズマ化学反応の間に形成され、結果として汚染物質を可溶性状態から不溶性状態に移行させる。次いで、浄化過程の間に形成された懸濁物は、取り出しパイプを通して反応装置から除去される。さらに、この懸濁物は、例えばメンブレンフィルタに供給されて、固体画分と水とに分離される。
【0018】
ここで、特許請求の範囲に記載された発明によれば、液体廃棄物は、加圧下で取り込みパイプを通して、鉄またはアルミニウムの一方の種類の材料から作られた金属顆粒を充填した第1の放電チャンバに供給され;第1のチャンバ内での凝固過程の終了後、懸濁物は、接続パイプを通って、アルミニウムまたは鉄のもう一方の種類の材料から作られた金属顆粒を充填した第2の放電チャンバに供給され;第2のチャンバ内での凝固過程の終了後、得られた懸濁物は、取り出しパイプに供給される。
【0019】
特許請求の範囲に記載された発明によれば、液体廃棄物は収着剤と予め混合される。
【0020】
特許請求の範囲に記載された発明によれば、液体廃棄物は、反応装置の取り込みパイプに接続された混合装置内でオゾン-空気混合物により予め飽和させる。
【0021】
ここで、特許請求の範囲に記載された発明によれば、電極に印加される矩形パルスは双極性である、すなわち、後に続く各パルスは、その極性を反対のものに変化させ、50~200Hzの周波数を有する。
【発明の効果】
【0022】
特許請求の範囲に記載された発明の技術的成果は以下の通りである:
- この過程は、二つの放電チャンバを用いて実装され、その一方には鉄から作られた顆粒(ボール)が充填され、もう一方にはアルミニウムから作られた顆粒(ボール)が充填されており、汚染された液体は順次、鉄およびアルミニウムの水酸化物と凝固するとともに、300~800Vより大きい電圧振幅と50~200Hzの周波数を有する双極性の矩形パルスが装置の電極に供給されることにより、凝固過程と、液体廃棄物処理の程度とをそれぞれ大幅に強化可能にしている;
- 放電チャンバの内径と、充填されたボール(顆粒)の直径との間にある言明された依存性により、装置の効率と、液体廃棄物処理の程度とがそれぞれ向上可能になっている。ボールが比較的小さいサイズのものである場合には、反応装置電極によって生成された放電のエネルギーは、多数のマイクロ放電に分割され、その結果として、各マイクロ放電のパワーは低くなるが、これは、ナノ粒子を得るには充分ではない。代わりに、紫外放射が発生し、液体が部分的に加熱される。ボールが大きいサイズのものである場合には、マイクロ放電の数が少なくなり、各放電のパワーが高くなって、ボールどうしの間で凝集(固着)過程が生じる。同時に、形成されるナノ粒子の数は、凝固過程の効果的な実現には不充分である。
- パルスの言明された電気的パラメータはまた、過程を効果的に実現する1回のマイクロ放電において最適エネルギーを生成することにも関係づけられる。低パルスパワーの条件下では、放電は不安定であり、ナノ粒子はほとんど発生しない。高パルスパワーの条件では、ボールが溶けて、放電がアーク溶接の特性を獲得し、ナノ粒子はほとんど発生しない;
- 取り出された汚染された液体を第1の放電チャンバに供給する前に、これをオゾン-空気混合物により予め飽和させることで、水酸化鉄(III)を得ることが可能になるが、この水酸化鉄は、装置の運転の間に放電チャンバ内で形成される水酸化鉄(II)よりも著しく強い凝固特性を有している。水酸化鉄(III)によって、有機不純物、重金属を、そして部分的には放射性元素を、高い強度と浄化度で除去することが可能になる;
- 液体廃棄物を収着剤と予め混合することによって、特許請求の範囲に記載された装置を使用した場合には、放射性同位元素からの液体廃棄物浄化の程度を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】提案された発明は、構成要素を以下の参照符号を有するものとする図によって例示される:液体廃棄物を供給する取り込みパイプ(1)、反応装置本体(2)、電極(3);第1の放電チャンバ(4)、第1の放電チャンバの金属顆粒(5)、誘電体グリッド(6)、接続パイプ(7)、第2の放電チャンバ(8)、第2の放電チャンバの金属顆粒(9)、凝固した懸濁物を除去する取り出しパイプ(10)、制御ユニット付き矩形パルス源(11)、オゾン-空気混合物の供給源(12)、および混合装置(13)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
提案された発明は、以下の使用例によって例示される。NPP原子炉の運転の間に発生する液体廃棄物が、処理用に使用される。この液体廃棄物は、カドミウム、クロム、銅、亜鉛、スズ、ニッケル、鉛などの重金属、セシウム、ストロンチウム、アメリシウム、コバルトなどの放射性元素のみならず、有機化合物を、表2に与えられる濃度で含有している。指定された廃棄物は、収着剤と予め混合される。液体廃棄物は、加圧下で混合装置(13)に供給され、この混合装置に、オゾン-空気混合物が供給源(12)から同時に供給される。液体は、混合装置(13)から反応装置(2)の取り込みパイプ(1)を通って、擬似液化混合物を形成する鉄顆粒(ボール)(5)で満たされた第1の放電チャンバ(4)に供給される。矩形パルスの供給源(11)が、制御ユニットを用いて起動される。得られた懸濁物は、第1のチャンバの上部にある誘電体グリッド(6)を通り、接続パイプ(7)を通って、アルミニウム顆粒(9)を有する第2の放電チャンバ(8)に供給され、そこで第1の放電チャンバ(4)内の過程と同様の凝固過程が生じる。得られた懸濁物は、第2の放電チャンバ(8)の上部にある誘電体グリッド(6)を通り、取り出しパイプ(10)を通って、反応装置(2)の外部に供給される。次いで、プレスフィルタまたは他の機器を使用して、浄化された液体から凝固した沈殿物が分離される。
【0025】
モデル液体を処理するこの例によって示されるとおり、表1および表2は、特許請求の範囲に記載された装置の最適な運転モードのみならず、特許請求の範囲に記載された装置を通過する前後の汚染物質の濃度を示している。
【表1】


【表2】
図1
【国際調査報告】