IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧 ▶ ローム アンド ハース カンパニーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ガスバリア性積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20241219BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20241219BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20241219BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B32B27/10
C08L29/04 S
C08L33/02
B65D65/42 C
B32B27/28 102
B32B27/30 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532499
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 CN2021136058
(87)【国際公開番号】W WO2023102725
(87)【国際公開日】2023-06-15
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チャンチャン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、シャオメイ
(72)【発明者】
【氏名】ホー、ヤフェイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユ
(72)【発明者】
【氏名】アインスラ、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ドラムライト、レイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シャンイー
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD02
3E086AD05
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA35
3E086BB01
3E086BB05
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA28
3E086DA08
4F100AK25B
4F100AK69B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100DG10A
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ42B
4F100EJ65C
4F100EJ86B
4F100GB15
4F100GB23
4F100JD04B
4F100YY00B
4J002BE03W
4J002BG01X
4J002GF00
4J002GG02
(57)【要約】
ガスバリア性積層体、及びガスバリア性積層体を調製するためのプロセスであって、(i)紙基材を提供することと、(ii)水性ガスバリア組成物を紙基材に塗布することと、(iii)水性ガスバリア組成物を120℃未満の温度で10分未満乾燥させて、ガスバリアコーティングを形成することと、を含み、これによってガスバリア性積層体を得る、ガスバリア性積層体を調製するためのプロセス。水性ガスバリア組成物は、(a)85mol%以上の鹸化度を有するエチレン-ビニルアルコールコポリマー、及び(b)6mol%~18mol%の中和度を有する部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマー、を含む。エチレン-ビニルアルコールコポリマーと部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマーとの重量比は、80:20~50:50の範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア性積層体を調製するためのプロセスであって、
(i)紙基材を提供することと、
(ii)水性ガスバリア組成物を前記紙基材に塗布することであって、前記水性ガスバリア組成物が、
(a)85mol%以上の鹸化度を有するエチレン-ビニルアルコールコポリマー、及び
(b)6mol%~18mol%の中和度を有する部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマー、を含み、
前記エチレン-ビニルアルコールコポリマーと前記部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマーとの重量比が、80:20~50:50の範囲内である、ことと、
(iii)前記水性ガスバリア組成物を120℃未満の温度で10分未満乾燥させて、ガスバリアコーティングを形成することと、を含み、これによって前記ガスバリア性積層体を得る、プロセス。
【請求項2】
前記エチレン-ビニルアルコールコポリマーと前記部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマーとの重量比が、75:25~62:38の範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマーが、10mol%~15mol%の中和度を有する、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記水性ガスバリア組成物を乾燥させることが、60℃~100℃の温度で実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル酸ポリマーが、ポリアクリル酸;ポリメタクリル酸;アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸、並びに任意選択で(メタ)アクリルアミドのコポリマー;又はそれらの混合物から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記プロセスが、120℃以上の温度で前記ガスバリア性積層体を更に熱処理する工程を含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
工程(ii)の前に、前記紙基材がプライマー層でコーティングされ、これにより、前記プライマー層が前記基材と前記ガスバリアコーティングとの間に存在している、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ガスバリアコーティングが、前記紙基材の重量の15%未満の乾燥重量を有している、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ガスバリア性積層体を造形品に折り畳む工程を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記エチレン-ビニルアルコールコポリマーが、10mol%以下のエチレン含量を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
紙基材と、前記紙基材上に存在するガスバリアコーティングと、を含む、ガスバリア性積層体であって、前記ガスバリアコーティングが、水性ガスバリア組成物から形成され、前記水性ガスバリア組成物は、
(a)85mol%以上の鹸化度を有するエチレン-ビニルアルコールコポリマー、及び
(b)6mol%~18mol%の中和度を有する部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマー、を含み、
前記エチレン-ビニルアルコールコポリマーと前記部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマーとの重量比が、80:20~50:50の範囲内である、ガスバリア性積層体。
【請求項12】
請求項11に記載のガスバリア性積層体を含む食品包装。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性積層体及びそれを調製するためのプロセスに関する。
【0002】
序論
金属化フィルム(すなわち、アルミニウム金属の薄層を含有するプラスチック)は、食品包装産業において広く使用されており、必要なガスバリア性を達成することができる。金属化は、包装製造プロセスにおいて消費されるエネルギーの大部分を占めるので、ガスバリア性を損なうことなく金属化フィルムを置き換えるか又は排除することができる拡張可能な解決策が必要である。
【0003】
ポリビニルアルコール(PVOH)、ポリアクリル酸(PAA)、又は部分的に中和されたPAAなどの食品包装用の水溶性ポリマーは、乾燥状態において酸素に対する良好なガスバリア性を有するため、プラスチック基材上にコーティングされる金属層を当該水溶性ポリマーと置き換える努力がなされてきた。しかしながら、PVOH及び/又はPAAフィルムのガスバリア性は、湿度に大きく依存し、高湿度条件下、すなわち、相対湿度(RH)50%以上では著しく劣化する。例えば、単純な製造工程及び穏やかな加工条件を含む加工性を維持しながら、高湿度下でのガスバリア性を改善するための課題が存在する。例えば、十分な量のナノフィラー(例えば、ポリマー重量に対して10重量%超)をPVOHに組み込むことで、高湿度下で所望のガスバリア性に達することができるが、これらのナノフィラーをPVOHマトリックス中に均一に分散させることは困難であり、通常、所望の形状への加工又は折り畳みの間に、重度の凝集、機械的特性の劣化、及び/又は亀裂を引き起こす。別の手法は、ポリオレフィン又はポリエステルフィルム基材上にコーティングされたPVOH及び/又はPAAフィルムの高温(例えば、摂氏150~200度(℃))での熱処理及び/又は二軸延伸であり、これは、加工を複雑にし、エネルギーを消費する。
【0004】
紙基材に基づくガスバリア包装を調製することは、高湿度及び加工下でのガスバリア性の改善に対する制限がより多いため、より困難である。紙包装にとっては、23℃及び50%RHでMOCON Ox-Tran Model 2/21を使用してASTM D3985-05に従って決定した場合に、1.0立方センチメートル/平方メートル・日(cc/m.日)以下の酸素透過率(OTR)を達成することが望ましい。より重要なことに、特に輸送中に酸素に対するガスバリア性などの特性を著しく損なうことなく、包装を所望の形状に形成することを可能にする折り畳み可能性は、食品包装にとって重要な特性である。
【0005】
必要とされる低いOTR並びに良好な折り畳み可能性を達成することができ、一方で容易な加工性で製造することができる、紙基材を含むガスバリア性積層体を発見することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、前述の問題を有しない紙基材を含むガスバリア性積層体を調製するためのプロセスを見出すという問題を解決する。ガスバリア性積層体は、食品包装用途に特に適している。
【0007】
本発明のガスバリア性積層体は、酸素透過率(OTR)が1.0cc/m・日以下であることによって示されるように、酸素に対するガスバリア性に優れている。同時に、ガスバリア性積層体は、折り畳みOTR(すなわち、折り畳み後のOTR)が4.5cc/m.日以下であることによって示されるように、良好な折り畳み可能性を有する。OTR及び折り畳みOTRは、23℃及び50%RHでMOCON Ox-Tran Model 2/21を使用して、ASTM D3985-05に従って測定した(更なる詳細は、以下の実施例の項において提供される)。当該ガスバリア性積層体は、本発明のプロセスによって製造され得、容易かつ迅速な加工性を有すると同時に、上記の優れたガスバリア性及び折り畳み可能性特性も提供している。
【0008】
第1の態様では、本発明は、ガスバリア性積層体を調製するためのプロセスに関する。このプロセスは、
(i)紙基材を提供することと、
(ii)水性ガスバリア組成物を紙基材に塗布することであって、水性ガスバリア組成物が、
(a)85mol%以上の鹸化度を有するエチレン-ビニルアルコールコポリマー、及び
(b)6mol%~18mol%の中和度を有する部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマー、を含み、
エチレン-ビニルアルコールコポリマーと部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマーとの重量比が、80:20~50:50の範囲内である、ことと、
(iii)水性ガスバリア組成物を120℃未満の温度で10分未満乾燥させて、ガスバリアコーティングを形成することと、を含み、それによってガスバリア性積層体を得る。
【0009】
第2の態様では、本発明は、紙基材と、紙基材上に存在するガスバリアコーティングと、を含む、ガスバリア性積層体に関し、ガスバリアコーティングは、水性ガスバリア組成物から形成され、水性ガスバリア組成物は、
(a)85mol%以上の鹸化度を有するエチレン-ビニルアルコールコポリマー、及び
(b)6mol%~18mol%の中和度を有する部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマー、を含み、
エチレン-ビニルアルコールコポリマーと部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマーとの重量比は、80:20~50:50の範囲内である。
【0010】
第3の態様では、本発明は、第2の態様のガスバリア性積層体を含む食品包装に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
試験方法は、日付が試験方法の番号とともに示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含有する。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子が適用される。ASTMは、ASTM国際方法を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、JISは、日本工業規格(Japanese Industrial Standard)を指す。
【0012】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日において、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0013】
「及び/又は」は、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。特に明記しない限り、全ての重量パーセント(重量%)値は、ポリマー重量に対するものである。
【0014】
「(メタ)アクリル)」という語の断片は、「メタクリル」及び「アクリル」の両方を指す。例えば、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸及びアクリル酸の両方を指し、メチル(メタ)アクリレートとは、メチルメタクリレート及びメチルアクリレートの両方を指す。
【0015】
指定されたモノマーの「重合単位」としても知られる「構造単位」は、重合後のモノマーの残部、すなわち、重合したモノマー又は重合した形態のモノマーを指す。例えば、メチルメタクリレートの構造単位は、以下のとおりである:
【0016】
【化1】

(式中、点線は、構造単位のポリマー骨格への結合点を表す)。
【0017】
本発明のガスバリア性積層体は、紙基材と、紙基材上のガスバリアコーティングと、を含む。ガスバリアコーティングは、水性ガスバリア組成物から形成される。ガスバリアコーティングは、乾燥ガスバリア組成物、すなわち、乾燥させた水性ガスバリア組成物の層である。
【0018】
本発明において有用な水性ガスバリア組成物は、1つ以上の部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマーを含む。「(メタ)アクリル酸ポリマー」は、アクリル酸、メタクリル酸、それらの塩、又はそれらの混合物のホモポリマー;アクリル酸、メタクリル酸、それらの塩、又はそれらの混合物と、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの塩以外の1つ以上のコモノマーとのコポリマー;又はそれらの混合物を指す。
【0019】
本発明において有用な(メタ)アクリル酸ポリマーは、典型的には水溶性ポリマーであり、好ましくは水溶液の形態で存在する。(メタ)アクリル酸ポリマーは、メタクリル酸及びアクリル酸などの(メタ)アクリル酸、それらの塩、又はそれらの混合物の構造単位を、(メタ)アクリル酸ポリマーの重量に基づいて、50重量%~100重量%の濃度で含んでもよく、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、又は更には80重量%以上であり得るが、同時に、一般に100重量%以下であり、かつ、99重量%以下、95重量%以下、92重量%以下、90重量%以下、88重量%以下、85重量%以下、又は更には80重量%以下であってもよい。望ましくは、(メタ)アクリル酸ポリマーはポリアクリル酸ホモポリマーである。(メタ)アクリル酸ポリマーは、メタクリル酸の構造単位、及び/又はアクリル酸の構造単位からなっていてもよい。例えば、(メタ)アクリル酸ポリマーは、(メタ)アクリル酸ポリマーの重量に基づいて、30重量%~70重量%のアクリル酸の構造単位、及び70重量%~30重量%のメタクリル酸の構造単位からなる。
【0020】
本発明において有用な(メタ)アクリル酸ポリマーは、(メタ)アクリル酸以外の1つ以上の追加のエチレン性不飽和酸モノマーの構造単位を含んでもよいし、含まなくてもよい。好適な追加のエチレン性不飽和酸の例としては、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、モノメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノブチルフマレート、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、1-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、アルキルアリルスルホコハク酸、スルホエチル(メタ)アクリレート;ホスホエチル(メタ)アクリレート、ホスホプロピル(メタ)アクリレート、及びホスホブチル(メタ)アクリレート等のホスホアルキル(メタ)アクリレート、ホスホアルキルクロトネート、ホスホアルキルマレエート、ホスホアルキルフマレート、ホスホジアルキル(メタ)アクリレート、ホスホジアルキルクロトネート、及びアリルホスフェート;無水物、(メタ)アクリル酸無水物、又は無水マレイン酸などの酸基などを生成するか、又はその後酸基に変換可能な酸形成基を有するモノマー;又はそれらの混合物が挙げられる。(メタ)アクリル酸ポリマーは、追加のエチレン性不飽和酸の構造単位を、(メタ)アクリル酸ポリマーの重量に基づいて、0~50重量%未満の濃度で含んでもよく、0以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、0.8重量%以上、1.0重量%以上、1.2重量%以上、1.5重量%以上、1.8重量%以上、又は更には2重量%以上であり得るが、同時に、一般に50重量%未満であり、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、又は更には5重量%以下であってもよい。
【0021】
本発明において有用な(メタ)アクリル酸ポリマーは、1つ以上のエチレン性不飽和非イオン性モノマーの構造単位を含んでも含まなくてもよい。本明細書における「非イオン性モノマー」は、pH=1~14でイオン電荷を有しないモノマーを指す。好適なエチレン性不飽和非イオン性モノマーの例としては、(メタ)アクリルアミド;ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;スチレン、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのビニル芳香族モノマー;又はこれらの混合物が挙げられる。(メタ)アクリル酸ポリマーは、エチレン性不飽和非イオン性モノマーの構造単位を、(メタ)アクリル酸ポリマーの重量に基づいて、0~50重量%未満の濃度で含んでもよく、0以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、1.5重量%以上、又は更には2重量%以上であり得るが、同時に、一般に50重量%未満であり、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、又は5重量%以下であってもよい。
【0022】
望ましくは、(メタ)アクリル酸ポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メタクリルアミド、アクリルアミド、又はこれらの混合物から選択されるモノマーの構造単位を含む。より好ましくは、(メタ)アクリル酸ポリマーは、ポリアクリル酸;ポリメタクリル酸;アクリル酸とメタクリル酸のコポリマー;(a)(メタ)アクリル酸と、(b)マレイン酸及び/又は無水マレイン酸と、必要に応じて(c)(メタ)アクリルアミドと、のコポリマー;又はそれらの混合物から選択される。好適な市販の(メタ)アクリル酸ポリマーとしては、例えば、いずれもThe Dow Chemical Companyから入手可能なACUSOL(商標)402ポリアクリル酸及びACUMER(商標)1510ポリアクリル酸を挙げることができる(ACUSOL及びACUMERはThe Dow Chemical Companyの商標である)。
【0023】
本発明において有用な(メタ)アクリル酸ポリマーは、1モル当たり1,500グラム(g/mol)以上の重量平均分子量(Mw)有してもよく、1,800g/mol以上、2,000g/mol以上、3,000g/mol以上、4,000g/mol以上、5,000g/mol以上、8,000g/mol以上、10,000g/mol以上、12,000g/mol以上、15,000g/mol以上、18,000g/mol以上、又は更には20,000g/mol以上であり得るが、同時に、一般に400,000g/mol以下であり、300,000g/mol以下、200,000g/mol以下、100,000g/mol以下、90,000g/mol以下、80,000g/mol以下、70,000g/mol以下、60,000g/mol以下、50,000g/mol以下、40,000g/mol以下、30,000g/mol以下、25,000g/mol以下、24,000g/mol以下、23,000g/mol以下、22,000g/mol以下、又は更には21,000g/mol以下であってもよい。(メタ)アクリル酸ポリマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる(更なる詳細は、(メタ)アクリル酸ポリマーについてのGPC分析の下で以下に提供されている)。
【0024】
本発明において有用な部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマーは、(メタ)アクリル酸ポリマーのカルボキシル基を1種以上の塩基で部分的に中和することによって得ることができる。好適な塩基の例としては、アンモニア;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、又はそれらの混合物などのアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属化合物;エタノールアミン;ジエチルアミノエチルアミン;又はそれらの混合物が挙げられる。部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマーは、塩基を(メタ)アクリル酸ポリマーの水溶液と混合することによって得ることができる。(メタ)アクリル酸ポリマーの部分中和度は、塩基に対する(メタ)アクリル酸ポリマーの量比を制御することによって達成することができる。
【0025】
本発明において有用な部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマーは、6モルパーセント(mol%)以上の中和度を有してもよく、7mol%以上、8mol%以上、9mol%以上、又は更には10mol%以上であり得るが、同時に、一般に18mol%以下であり、17mol%以下、16mol%以下、15mol%以下、14mol%以下、13mol%以下、12mol%以下、又は更には11mol%以下であってもよい。中和度は、下式(I):
中和度=(1-X/Y)×100%(I)
(式中、Xは部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマー1g中のカルボキシル基の総モル数を表し、Yは部分的に中和される前の(メタ)アクリル酸ポリマー1g中のカルボキシル基の総モル数を表す)によって決定することができる。
【0026】
本発明において有用な水性ガスバリア組成物は、1つ以上のエチレン-ビニルアルコールコポリマーを含む。エチレン-ビニルアルコールコポリマーは、典型的には水溶性ポリマーである。エチレン-ビニルアルコールコポリマーは、通常、エチレン-酢酸ビニルコポリマーを鹸化することによって得られる。エチレン-ビニルアルコールコポリマーは、85mol%以上の鹸化度(「加水分解度」でもある)を有してもよく、88%以上、90mol%以上、92mol%以上、94mol%以上、95mol%以上であってもよく、95mol%超、又は更には96mol%以上であり得るが、同時に、一般に99.9mol%以下の鹸化度を有し、99.7mol%以下、99.5mol%以下、99mol%以下、98.5mol%以下、又は更には98mol%以下であってもよい。鹸化度は、JIS K6726:1994ポリビニルアルコールの試験方法(更なる詳細は後述のEVOHの鹸化度の測定の下で提供される)に準じて測定することができる。
【0027】
本発明において有用なエチレン-ビニルアルコールコポリマーは、1.0mol%以上のエチレン含量を有してもよく、1.5mol%以上、1.8mol%以上、2.0mol%以上、2.1mol%以上、2.2mol%以上、2.4mol%以上、2.5mol%以上、2.8mol%以上、又は更には3.0mol%以上であり得るが、同時に、一般に10mol%以下のエチレン含量を有し、9.0mol%以下、8.0mol%以下、7.0mol%以下、6mol%以下、5mol%以下、4.8mol%以下、4.5mol%以下、4.2mol%以下、4.0mol%以下、3.5mol%以下、3.2mol%以下、又は更には3.0mol%以下であってもよい。エチレン含量は、核磁気共鳴(NMR)分析によって決定することができる。好適な市販のエチレン-ビニルアルコールコポリマーとしては、Kuraray Company(日本)から入手可能なEXCEVALなどの商標のものを挙げることができる。
【0028】
本発明において有用なエチレン-ビニルアルコールコポリマーは、10,000g/mol以上の重量平均分子量を有してもよく、20,000g/mol以上、30,000g/mol以上、40,000g/mol以上、50,000g/mol以上、60,000g/mol以上、又は更には70,000g/mol以上であり得るが、同時に、一般に300,000g/mol以下であり、280,000g/mol以下、250,000g/mol以下、220,000g/mol以下、200,000g/mol以下、180,000g/mol以下、150,000g/mol以下、120,000g/mol以下、100,000g/mol以下、又は更には80,000g/mol以下であってもよい。エチレン-ビニルアルコールコポリマーの分子量は、JIS K6726:1994(更なる詳細は後述のEVOHの分子量の測定の下で提供される)に従って測定することができる。
【0029】
水性ガスバリア組成物のエチレン-ビニルアルコールコポリマーと部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマーとの重量比は、80:20~50:50の範囲であってもよく、78:22以下、75:25以下、72:28以下、70:30以下、68:32以下、65:35以下、62:38以下、又は更には60:40以下であり得るが、同時に、50:50以上、52:48以上、55:45以上、58:42以上、又は更には60:40以上である。望ましくは、エチレン-ビニルアルコールコポリマーと中和された(メタ)アクリル酸ポリマーとの重量比は、75:25~55:45の範囲である。中和された(メタ)アクリル酸ポリマー及び/又はエチレン-ビニルアルコールコポリマーの水性分散液又は溶液が使用される場合、本明細書における重量比は、固形分重量(又は乾燥重量)による重量比を指す。本明細書における固形分重量は、(分散液又は溶液重量)×(分散液又は溶液の固形分)によって計算することができる。
【0030】
本発明において有用な水性ガスバリア組成物は、1種以上の消泡剤を含んでも含まなくてもよい。「消泡剤」は、本明細書では、泡の形成を減少させ、妨げる化学添加剤を指す。消泡剤は、シリコーン系消泡剤、鉱油系消泡剤、エチレンオキシド/プロピレンオキシド系消泡剤、アルキルポリアクリレート、及びそれらの混合物であってもよい。好適な市販の消泡剤として、例えば、いずれもTEGOから入手可能なTEGO Airex901W、TEGO Airex902W、及びTEGO Foamex1488ポリエーテルシロキサンコポリマーエマルジョン、BYKから入手可能なBYK-022及びBYK-024シリコーン消泡剤、及びそれらの混合物が挙げられる。消泡剤は、部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマー及びエチレン-ビニルアルコールコポリマーの総重量に基づいて、0~0.5重量%、0.01重量%~0.4重量%、又は0.02重量%~0.2重量%の濃度で存在し得る。
【0031】
本発明において有用な水性ガスバリア組成物は、1種以上の顔料を含んでも含まなくてもよい。本明細書において「顔料」とは、それが組み込まれる媒体に実質的に不溶性である無機又は有機材料を指す。好適な顔料の例としては、雲母、層状複水酸化物(LDH)、モンモリロナイト、ベントナイト、ラポナイト、カオリナイト、サポナイト、バーミキュライト、ゼオライト、シリケート、タルク、カオリン、粘土、炭酸カルシウム、又はこれらの混合物が挙げられる。顔料は、部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマー及びエチレン-ビニルアルコールコポリマーの総重量に基づいて、0~80重量%の濃度で存在してもよく、0以上、0.1重量%以上、1重量%以上、5重量%以上、又は更には10重量%以下であり得るが、同時に、一般に80重量%以下であり、70%重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、又は更には12重量%以下であってもよい。
【0032】
本発明において有用な水性ガスバリア組成物は、「レオロジー調整剤」としても知られる、1種以上の増粘剤を含んでも含まなくてもよい。増粘剤としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ウレタン会合型増粘剤(UAT)、ポリエーテル尿素ポリウレタン(PEUPU)、ポリエーテルポリウレタン(PEPU)、又はそれらの混合物を挙げることができる。好適な増粘剤の例としては、ナトリウム又はアンモニウム中和アクリル酸ポリマーなどのアルカリ膨潤性エマルジョン(ASE)、疎水変性アクリル酸コポリマーなどの疎水変性アルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)、疎水性変性エトキシル化ウレタン(HEUR)などの会合性増粘剤、並びにメチルセルロースエーテル、ヒドロキシメチルセルロース(HMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、疎水性変性ヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(SCMC)、カルボキシメチル2-ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、2-ヒドロキシプロピルメチルセルロース、2-ヒドロキシエチルメチルセルロース、2-ヒドロキシブチルメチルセルロース、2-ヒドロキシエチルエチルセルロース、及び2-ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース増粘剤が挙げられる。増粘剤は、部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマー及びエチレン-ビニルアルコールコポリマーの総重量に基づいて、0~1.0重量%の濃度で存在してもよく、0以上、0.05重量%以上、又は更には0.01重量%以上であり得るが、同時に、一般に1.0重量%以下の濃度であり、0.5重量%以下、又は更には0.2重量%以下であってもよい。
【0033】
本発明において有用な水性ガスバリア組成物は、1種以上の架橋剤を含んでも含まなくてもよい。好適な架橋剤としては、例えば、加水分解スチレン-無水マレイン酸(SMA)ポリマー、例えばアンモニア加水分解SMAポリマー、エチレン-無水マレイン酸ポリマー、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、シラン、例えばビニルトリメトキシシラン(VTMS)、グルタルアルデヒド、グリオキサール、イミド、ホウ酸、シンナムアルデヒド(CIN)、又はこれらの混合物を挙げることができる。架橋剤は、エチレン-ビニルアルコールコポリマー及び部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマーの重量に基づいて、0~10重量%の濃度で存在してもよく、0以上、0.1重量%以上、0.5重量%以上、又は更には1.0重量%以上であり得るが、同時に、一般に10重量%以下であり、8重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、又は更には2重量%以下であってもよい。
【0034】
本発明において有用な水性ガスバリア組成物は、以下の追加成分、すなわち、粘着防止剤、湿潤剤、着色剤、蛍光増白剤、分散剤、及び防腐剤のうちのいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを更に含んでも含まなくてもよいこれらの追加成分の総濃度は、部分的に中和された(メタ)アクリル酸ポリマー及びエチレン-ビニルアルコールコポリマーの総重量に基づいて、0~0.5重量%、0.01重量%~0.2重量%、又は0.02重量%~0.15重量%の範囲であり得る。
【0035】
本発明において有用な水性ガスバリア組成物は、水溶液又は水性分散液の形態であり得る。本明細書における「水性」分散液又は溶液は、粒子が水性媒体中に分散又は溶解していることを意味する。本明細書において「水性媒体」とは、水、及び媒体の重量に基づいて0~30重量%の、例えば、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステル、又はそれらの混合物などの水混和性化合物を意味する。そのような水性分散液又は溶液は、水性分散液又は溶液(すなわち、水性ガスバリア組成物)の重量に基づいて、5重量%~50重量%の固形分を有してもよく、5重量%以上、10重量%以上、又は更には15重量%以上であり得るが、同時に、一般に50重量%以下であり、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、又は更には25重量%以下であってもよい。水性ガスバリア組成物の固形分は、室温(摂氏23±2度(℃))でBrookfield Ametek DV2TLVTJ0(LV#3100毎分回転数(RPM))を使用して測定するとき、例えば、200~2,000センチポアズ(cP)の範囲の所望の粘度を与えるように選択され、200cP以上、400cP以上、600cP以上、又は更には1,000cP以上であり得るが、同時に、一般に2,000cP以下であり、1,800cP以下、1,500cP以下、1,200cP以下、又は更には1,000cP以下であってもよい。以下に記載する特定の条件下で乾燥させると、水性ガスバリア組成物はガスバリアコーティングを形成する。概して、ガスバリアコーティングの厚さは、紙基材の重量に応じて変化してもよく、例えば、ガスバリアコーティングは、紙基材の重量の15%未満の乾燥重量を有してもよく、12%以下、又は更に10%以下であってもよい。ガスバリアコーティングの厚さは、1マイクロメートル(μm)~20μmの範囲であってもよく、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、8μm以上、又は更には10μm以上であり得るが、同時に、一般に20μm以下であり、18μm以下、15μm以下、13μm以下、又は更には12μm以下であってよい。
【0036】
本発明のガスバリア性積層体は、対向する主面を含む紙基材を更に含む。「主面」は、物品の任意の表面の最大平面表面積に等しい平面表面積を有する表面である。対向する主面とは、物品の主面及び主面に対向する表面を指し、主面に対向する表面もまた、一般に主面である。平面表面積は、表面の輪郭特徴(例えば、ピーク及び谷)による表面積に対する寄与を無視するように、平面上に投影された表面の面積を指す。ガスバリアコーティングは、紙基材の一方の主面又は両方の主面上に存在し得る。例えば、ガスバリアコーティングは、紙基材の1つの主面と直接、又は任意選択でプライマー層若しくは予備塗装層を介して接触することができる。任意のプライマー層は、プライマー層がガスバリアコーティングと紙基材との間に存在するように、紙基材の1つの主面上に適用されてもよい。
【0037】
本発明のガスバリア性積層体は、ガスバリアコーティングと紙基材との間に存在するプライマー層を更に含んでも含まなくてもよい。プライマー層は、紙基材のバリアコーティング耐性を改善するために使用されてもよく、したがって、得られる積層体のバリア特性を更に改善する。プライマー層は、例えば、水性ガスバリア組成物を乾燥させるための上述の条件下で水性プライマー組成物を乾燥させることによって、水性プライマー組成物から形成されてもよい。水性プライマー組成物は、エチレン-アクリル酸コポリマー、スチレンブタジエンコポリマーなどのアクリル(コ)ポリマー;ポリエチレンなどのポリオレフィン;又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上のエマルジョンポリマーを含んでもよい。「アクリル(コ)ポリマー」は、使用される場合、アクリルモノマーのホモポリマー、アクリルモノマーと、異なるアクリルモノマー又はスチレンなどの他のモノマーとのコポリマー、又はそれらの混合物を含む。「アクリルモノマー」は、使用される場合、例えば、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどのこれらの変性形態を含むことができる。水性プライマー組成物はまた、水性ガスバリア組成物の項で上述したようなもう1種の顔料及び/又は増量剤を含んでもよい。存在する場合、プライマー層は、概して、0.2μm~6μmの範囲の厚さを有してもよく、0.2μm以上、0.5μm以上、又は更には1μm以上であり得るが、同時に、一般に6μm以下であり、5μm以下、4μm以下、又は更には3μm以下であってもよい。
【0038】
本発明のガスバリア性積層体は、1つ以上の機能層を更に含み得る。例えば、多層物品は、機能層がガスバリアコーティングと紙基材との間に存在するか、又はガスバリアコーティングの上に存在するように、機能層を更に含んでもよい。機能層の存在は、紙基材の平滑性及びガスバリア性積層体のバリア性能を更に改善するのに有用であり得る。
【0039】
本発明において有用な紙基材は、任意のタイプの紙、特に食品包装に適したものであり得る。紙基材は、水性ガスバリア組成物を塗布する前に、紙基材の一方又は両方の主面、例えば、下塗りされた表面又は塗装された表面上にプレコーティングされてもよい。好適な紙材料としては、例えば、上質紙(例えば、コーティングされた又はコーティングされていない上質紙)、非段ボール又は段ボール板紙、新聞用紙、クラフト紙、及びパンライナー紙ストック(pan liner paper stock)が挙げられる。紙材料は、様々な坪量を有してよく、ISO536に従って測定したとき、30~100グラム/平方メートル(g/m)の範囲であってよく、40~95g/m、50~90g/m、又は60~80g/mであってよい。紙基材は、典型的には、30~100μmの範囲の厚さを有し、40μm以上、50μm以上、又は更には60μm以上であり得るが、同時に、一般に100μm以下、95μm以下、90μm以下、又は更には85μm以下である。好適な市販の紙材料としては、UPM Companyから入手可能なUPM Brilliant(商標)Pro紙を挙げることができる。
【0040】
本発明はまた、(i)紙基材を提供すること、(ii)水性ガスバリア組成物を紙基材に塗布すること、及び(iii)水性ガスバリア組成物を120℃未満の温度で10分未満乾燥させてガスバリアコーティングを形成すること、を含み、それによってガスバリア性積層体を得る、ガスバリア性積層体を調製するためのプロセスに関する。ガスバリア性積層体を調製するためのプロセスは、ガスバリア性組成物を紙基材に塗布する前に、水性プライマー組成物を紙基材に塗布してプライマー層を形成することを更に含んでもよい。
【0041】
ガスバリア性積層体を調製するためのプロセスにおいて、水性ガスバリア組成物は、任意の既知の方法によって紙基材に塗布することができ、例えば、ブレードコーティング、ロッドコーティング、カーテンコーティング、サイズプレス、グラビア、ブラッシング、浸漬、ローリング、噴霧、及びバーコーティングを含む既存の手段によって紙基材の少なくとも1つの主面に水性ガスバリア組成物をコーティングすることができる。
【0042】
ガスバリア性積層体を調製するためのプロセスにおいて、水性ガスバリア組成物の乾燥は、穏やかな条件下、例えば、120℃未満の温度で、短時間、例えば、10分未満で行うことができる。乾燥温度は、120℃未満であってもよく、115℃以下、110℃以下、105℃以下、100℃以下であってもよく、100℃未満であり得るが、同時に、一般に40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、又は更には95℃以上である。好ましくは、水性ガスバリア組成物の乾燥は、60℃~100℃で実施される。乾燥時間は、10分(min)未満であってよく、9分以下、8分以下、7分以下、6分以下、5分以下、4分以下、3分以下、又は更には2分以下であってもよい。水性ガスバリア組成物を乾燥させることにより、高温下、例えば、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上、160℃以上、170℃以上、180℃以上、190℃以上、又は更には200℃以上での更なる熱処理を必要としないガスバリアコーティングが形成される。
【0043】
ガスバリア性積層体を調製するためのプロセスは、高温(例えば、120℃以上)での熱処理を必要とする既存の方法と比較して、簡便かつ安価なプロセスで行われる。ガスバリア性積層体を調製するためのプロセスは、穏やかな条件下(例えば、水性ガスバリア性組成物の乾燥の項で後述する低温で短時間)で行うことができるだけでなく、上記高温下でガスバリア性積層体を更に熱処理する工程を含まなくてもよく、これにより、優れたガスバリア性及び折り畳み可能性を依然として提供しながら、容易な加工性、迅速な加工、及び省エネルギーを可能にする。
【0044】
ガスバリア性積層体を調製するためのプロセスは、ガスバリア性積層体を、折り畳み、接着、加圧成形、及びねじり等の既知の手段、特に折り畳みによって造形品に形成する工程を更に含んでいてもよい。ガス積層体の良好な折り畳み可能性に起因して、ガスバリア性積層体を造形品に形成することは、ガスバリア性を著しく損なうことなくガスバリア性積層体を様々な形状に折り畳むことを含むことができる。望ましくは、造形品(すなわち、折り畳み後のガスバリア性積層体)は、23℃及び50%相対湿度(RH)でMOCON Ox-Tran Model2/21を使用してASTM D3985-05に従って測定したとき、4.0立方センチメートル/平方メートル・日(cc/m.日)以下、3.9cc/m.日以下、3.8cc/m.日以下、3.7cc/m.日以下、又は更には3.5cc/m.日以下のOTRを提供することができる(更なる詳細は、折り畳み可能性の特性評価の下で提供される)。
【0045】
本発明のガスバリア性積層体又は上記プロセスにより調製されたガスバリア性積層体は、OTRが1.0cc/m2.日以下、好ましくは0.1cc/m.日以下であることによって示されるように、酸素に対するガスバリア性に優れている。23℃及び50%RHでMOCON Ox-Tran Model2/21を使用して、ASTM D3985-05に従ってOTRを決定する(更なる詳細は、OTRの特性評価の下で以下に提供される)。ガスバリア性積層体は、1.0cc/m.日以下のOTRを有してもよく、0.8cc/m.日以下、0.5cc/m.日以下、又は更には0.1cc/m.日以下であってもよい。同時に、ガスバリア性積層体は、23℃及び50%RHでMOCON Ox-Tran Model2/21を使用してASTM D3985-05に従って測定したとき、折り畳みOTRが4.5cc/m.日以下、好ましくは1.1cc/m.日以であることによって示されるように、良好な折り畳み可能性を有する(更なる詳細は、折り畳み可能性の特性評価の下で提供される)。ガスバリア性積層体は、4.5cc/m.日以下の折り畳みOTRを提供することができ、4.0cc/m.日以下、3.7cc/m.日以下、3.5cc/m.日以下、3.0cc/m.日以下、2.5cc/m.日以下、2.0cc/m.日以下、1.8cc/m.日以下、1.5cc/m.日以下、1.2cc/m.日以下、1.1cc/m.日以下、1.0cc/m.日以下、0.90cc/m.日以下、0.80cc/m.日以下、0.50cc/m.日以下、0.30cc/m.日以下、0.28cc/m.日以下、又は更には0.1cc/m.日以下であってもよい。折り畳みOTRは、折り畳み可能性の尺度として有用な特徴である。食品包装用途では、折り畳み可能性は、食品の貯蔵寿命を決定する重要な性能指標であり、輸送中に包装を異なる種類の形状に変形させ、様々な形状が必要とされる異なる食品包装用途に適したものにする。そのような良好なバリア特性を有し、容易に折り畳むことができることによって、ガスバリア性積層体は、食品包装用途に適した任意のサイズ又は形状の造形品を形成するのに特に有用となる。ガスバリア性積層体は、折り畳み、接着、加圧成形等の既知の手段によって、特に折り畳みによって造形品に形成することができる。ガスバリア性積層体は、食品包装、医薬品包装、パーソナルケア包装等の各種用途において使用するのに適している。ガスバリア性積層体は、特に、ファーストフードの箱等の食品容器(food container)、紙皿等の食品容器(food receptacle)、ハンバーガー、サンドイッチ、キャンディー、チョコレート、スナックの包装材等の食品包装用途に好適である。本発明はまた、当該ガスバリア性積層体を含む食品包装体に関する。
【実施例
【0046】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例において説明する。試料を調製する際に使用するための材料、並びに実施例及び特性及び特徴を決定する際に使用するための標準的な分析機器及び方法を、本明細書において以下に記載する。
【0047】
Kuraray Company(Japan)から入手可能なEXCEVAL(商標)RS-2117は、疎水性修飾ポリビニルアルコール粉末であるエチレン変性ポリビニルアルコール(「EVOH」)(加水分解度=98~99mol%、pH=5.0~7.0、Mw=80,000g/mol、エチレン含量=1~4mol%)である。
【0048】
Sinopharm Companyから入手可能なPVA17-99は、ポリビニルアルコール(「PVOH」)粉末(加水分解度=99mol%、pH=5.0~6.5、及びMw=80,000g/mol)である。
【0049】
The Dow Chemical Companyから入手可能なACUMER(商標)1510ポリマーは、ポリアクリル酸ホモポリマー(「PAA」)(固形分=24~26重量%、pH=1~2.1、数平均分子量(Mn)=20,100g/mol、及びMw=66,600g/mol)の水溶液である。
【0050】
水酸化ナトリウム(NaOH)は、Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.から入手可能である。
【0051】
UPM Companyから入手可能なUPM Brilliant(商標)Pro紙基材は、60g/mの坪量及び50~60μmの厚さを有する(ガーレー多孔度=23,000秒、紙のプリントサーフ表面粗さ(PPS)=1.6)。
【0052】
(メタ)アクリル酸ポリマーのGPC分析
試料を、pH=7で20ミリモル(mM)のNaHPO中に1ミリグラム/ミリリットル(mg/mL)の濃度で調製した。ポリマー溶液を、0.2μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルターを使用して濾過してオートサンプラーバイアルに入れた。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分離は、イソクラティックポンプ、脱ガス装置、オートサンプラ、及び40℃で操作される屈折率(RI)検出器からなるPolymer Separations’Alliance2690SECシステムで行った。SEC分離は、pH=7のNaHPO/NaHPO中、GMPWXL及びG2500PWXLと標識された孔径、粒径13及び6μmの2つのTSKgelカラム(それぞれ300×7.8ミリメートルID)上で行った。次いで、100マイクロリットル(mL)の試料溶液をカラムセットに注入した。Mn及びMwは、既知の分子量を有するポリアクリル酸標準に基づくBroad Hamielic較正アプローチを使用して決定した。
【0053】
EVOHの分子量の測定
分子量は、以下の工程(A)及び(B)に従って決定した。
【0054】
(A)EVOHの平均重合度(「P」)の決定。
1.試料の前処理:
(1-a)10グラム(g)の試料を、200mLのメタノールを入れた三角フラスコに添加し、続いて12.5mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)溶液を撹拌しながら添加する。使用したNaOH溶液の添加量は、97%超の鹸化度を有する試料については3mLであり、97%未満の鹸化度を有する試料については10mLであった。
(1-b)撹拌後、試料中の残留アセテート基が完全に溶解するまで、工程(1-a)から得られた混合物を40±2℃で1時間加熱する。
(1-c)フェノールフタレイン溶液を加え、メタノールで洗浄してNaOH及び酢酸ナトリウムを除去し、次いで時計皿に移し、メタノールが残らなくなるまで105±2℃で1時間乾燥させる。
【0055】
2.粘度測定
(2-a)上記工程(1-c)から得られた1gの試料を100mLの水に添加して溶解させ、次いで得られた液体を室温まで冷却し、続いて焼結ガラスフィルター又は濾紙で濾過する。
(2-b)ピペットを使用して、工程(2-a)から得た10mLの液体をオストワルド粘度計に移し、30.0±0.1℃における試験液の相対粘度を、同じ温度における水の粘度と比較して計算する。
【0056】
3.濃度測定
(3-a)予備洗浄した蒸発皿を105℃のオーブンに1時間以上入れた後、デシケータ中で室温まで冷却する。
(3-b)ピペットを使用して、上記工程(2-a)から得た20mLの濾液を蒸発皿に移す。蒸発後、得られたサンプルを105℃のオーブンで4時間以上乾燥させ、デシケータに入れて室温まで冷却する。
【0057】
4.平均重合度の計算
平均重合度Pは、以下の式(II)によって計算される。
LogP=1.613log([η]104/8.29)(II)
式中、[η]=(2.303logηrei)/Cであり;ηrei=t/t、及びC=1000(W-W)/Vであり、
[η]は極限粘度を指し、ηreiは相対粘度を指し、tは試験液の落下時間(秒)を指し、tは水の落下時間(秒)を指し、Cは試験試料の濃度(g/L)を指し、Wは乾燥試料及び蒸発皿の品質(g)を指し、Wは蒸発皿の品質(g)を指し、Vは濾液の体積(mL)を指す。
【0058】
(B)D分子量の測定
分子量は、次式(III):
分子量=42(III)
(式中、Pは、上記式(II)から得られる平均重合度である)に従って計算される。
【0059】
EVOHの鹸化度の測定
EVOHの鹸化度は次のようにして測定した。
(a)表Aに指定された推定鹸化度及びサンプリング量に従って試料を三角フラスコに入れ、1mg単位で秤量する。
(b)100mLの水及び3滴のフェノールフタレイン溶液を添加し、次いで撹拌しながら90℃超に加熱して、試料を完全に溶解させる。
(c)室温まで冷却した後、表Aに従って20mLの0.1mL/L水酸化ナトリウム溶液をビュレットで添加し、十分に撹拌及び混合し、それを室温で2時間超放置する。
(d)ビュレットを使用して、水酸化ナトリウム溶液及び同じ濃度の25mLの硫酸又は塩酸を三角フラスコに加え、十分に振盪する。
(e)表Aに従って、得られた溶液を0.1mol/L又は0.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液で、色が赤みがかった色になるまで滴定する。
(f)ブランク試験として、試料を添加せずに工程(b)~(e)を行う。
【0060】
「H」と示される鹸化度(mol%)は、下式(IV)を用いて計算される。
H=100-X(IV)
ここで、X=[(a-b)0.06005/(SP/100)]100、及びX=44.05/(60.05-0.42)、
式中、X:残留アセテートに相当する酢酸含量(%)、
:残留アセテート(mol%)、
a:水酸化ナトリウム溶液の量(mL)(0.1mol/L又は0.5mol/L)、
b:ブランク試験で使用した水酸化ナトリウム溶液(0.1mol/L又は0.5mol/L)の量(mL)、
f:水酸化ナトリウム標準溶液の係数、
D:所定液の濃度(0.1mol/L又は0.5mol/L)、
S:試料量(g)、
P:試料濃度(%)。
【0061】
【表1】
【0062】
PVOH溶液の調製
10部のPVA17~99を90部の脱イオン(DI)水に、90℃で3時間撹拌することによって溶解させて、10重量%の固形分を有するPVOHの透明な溶液を得、次いでこれを室温に冷却した。
【0063】
EVOH溶液の調製
10部のRS-2117を90部のDI水に、90℃で3時間撹拌することによって溶解させて、10重量%の固形分を有するEVOHの透明な溶液を得、次いでこれを室温に冷却した。
【0064】
NaOH溶液の調製
10部のNaOHを90部のDI水に、室温で15分間撹拌することによって溶解させて、10重量%の固形分を有するNaOHの透明な溶液を得た。
【0065】
中和されたPAA溶液の調製
PAA中のカルボキシル基のモル数に関して上記で調製したNaOH溶液の計算量をPAAの水溶液と混合して、それぞれ5mol%、10mol%、15mol%、20mol%、25mol%、及び50mol%の中和度を有する部分的に中和されたPAA生成物(「PAA(Na)」)を得た。使用した原材料の配合及び得られた中和PAAの特性を表1に示す。
【0066】
【表2】

中和度は、上記式(I)により算出した。
最終固形分(中和されたPAA溶液重量に対する重量%)は、計算に基づいており、例えば、「PAA(Na)-05」の最終固形分は、(500.25+3.460.123/40)/(50+3.46)=23.75%によって計算された。
粘度は、Brookfield Ametek DV2TLVTJ0(LV#3、100RPM)を使用して室温(23±2℃)で測定した。
【0067】
ガスバリア性積層体試料IE1~8及びCE1~9
上記で調製したEVOH溶液を、上記で調製した中和PAA溶液(異なる中和度を有する)と混合して、表2に示す配合に基づいて、10重量%の最終固形分含量を有する水性混合溶液試料を得た。これらの水性混合溶液(「ガスバリア性組成物」ともいう)を、基材としてのUPM Brilliant Pro紙(坪量:62g/m、厚さ:50~55μm)上に、マイヤーバー自動フィルムコーティング装置を用いてバーコーティングした後、100℃で2分間乾燥させ、乾燥フィルム厚を10±2μmに制御した。
【0068】
ガスバリア性積層体試料IE9
上記で調製したEVOH溶液を、10モル%の中和度(すなわち、PAA(Na)-10)を有する中和されたPAA溶液と、固形分重量で60:40のEVOH/中和されたPAAの重量比で混合して、10重量%の最終固形分を有する水性混合溶液試料を得た。この水性混合溶液(「ガスバリア性組成物」ともいう)を、基材としてのUPM Brilliant Pro紙(坪量:62g/m、厚さ:50~55μm)上に、マイヤーバー自動フィルムコーティング装置を用いてバーコーティングした後、60℃で2分間乾燥させ、乾燥フィルム厚を10±2μmに制御した。
【0069】
ガスバリア性積層体試料CE10
上で調製したPVOH溶液を、上で調製したPAA(Na)-10(すなわち、10モル%の中和度を有する中和されたPAA溶液)と、固形分重量で80/20のPVA17-99/PAA(Na)-10比で混合した。得られた混合溶液を、基材としてのUPM Brilliant Pro紙(坪量:62g/m)上に、マイヤーバー自動フィルムコーティング装置を用いてバーコーティングした後、100℃で2分間乾燥させ、乾燥フィルム厚を10±2μmに制御した。
【0070】
上記で得られた積層体試料を、以下に記載される試験方法に従って、紙基材上での酸素透過率及び/又は折り畳み可能性特性について特性評価した。
【0071】
酸素透過率の特性評価
積層体試料の酸素透過率(「OTR」)を、ASTM D3985-05に従って、MOCON Ox-Tran Model2/21を使用して23℃及び50%RHで測定した。
【0072】
折り畳み可能性の特性評価
積層体試料を最初に半分に折り畳み、折り畳まれた試料の上に500gの重りを15分間置いた。次に、重りを取り除き、折り畳まれた試料を最初の折り畳みに対して垂直に更に折り畳んで4つの四分円を作成し、得られた交差折り畳み試料上に500gの重りを更に15分間置いた。
【0073】
次いで、23℃及び50%RHでMOCON Ox-Tran Model2/21(検出上限:100cc/m.日)を使用して、ASTM D3985-05に従って、交差折り畳み試料をOTR(「折り畳みOTR」と表される)について評価した。4.5cc/m.日以下の折り畳みOTRを有する試料は、良好な折り畳み可能性を有する。そうでなければ、4.5cc/m.日を超える折り畳みOTRを有する試料は、折り畳み可能性が不十分である。
【0074】
注目すべきことに、いくつかの試料は、上記の試験条件下で検出することができないほど高すぎるOTR値を有していたので(すなわち、100cc/m.日の検出上限外)、それらは、100cc/m.日超のOTR又は折り畳みOTR値を有するものとして報告される。
【0075】
表2は、上記積層体のいくつかの特性評価結果を示す。表2に示すように、EVOHを含むが中和PAAを含まない試料、中和PAAをそれぞれ80重量%及び100重量%含む試料(CE1、CE9及びCE5)と比較して、中和PAAをそれぞれ10重量%、60重量%、及び70重量%の濃度で含むCE2~CE4積層体試料は、より良好なガスバリア性を示したが、折り畳み可能性が劣っていた(例えば、CE2~CE4の折り畳みOTRは、CE1の折り畳みOTRの50%よりもはるかに高かった)。EVOHと、非中和PAA又は中和度がそれぞれ5モル%及び20モル%である中和PAAとの混合物を含むCE6~8の積層体試料は全て、折り畳み可能性要件を満たすことができなかった。驚くべきことに、IE1~IE8の積層体試料は全て、低いOTRを有する良好なガスバリア性(例えば、23℃及び50%RHで1.0cc/m.日以下)、及び良好な折り畳み可能性(例えば、折り畳みOTRが、CE1又はCE5積層体試料の折り畳みOTRより50%超減少)を示した。特に、IE2~IE6及びIE8の積層体試料は、交差折り畳み後の試料が依然として23℃及び50%RHで1cc/m.日に近いか又はそれよりも低い折り畳みOTRを達成したので、折り畳み可能性が優れていることを実証した。更に、60℃で乾燥させることによって調製されたIE9の積層体試料は、0.072cc/m.日のOTR(23℃、50%RH)を示した。
【0076】
対照的に、ガスバリアコーティング中にPVOH及び中和PAAを含むCE10の積層体サンプルは、0.026cc/m.日の許容可能なOTR(23℃、50%RH)を提供したが、100cc/m.日を超える折り畳みOTR(23℃、50%RH)によって示されるように、不十分な折り畳み可能性を実証した。
【0077】
【表3】

「重量%PAA(Na)」は、EVOH及び部分的に中和されたPAAの混合物の重量に対する、部分的に中和されたPAAの重量百分率を指し、両方とも固形分重量による。
【国際調査報告】