(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】吸熱材料を含有する空隙を画定するシリコーン発泡層を有する積層バリア
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241219BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20241219BHJP
H01M 50/218 20210101ALI20241219BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20241219BHJP
H01M 10/6595 20140101ALI20241219BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241219BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241219BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20241219BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B32B27/00 101
H01M50/204 401F
H01M50/204 401H
H01M50/218
H01M10/658
H01M10/6595
H01M10/613
H01M10/625
B32B5/18
B32B27/18 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533021
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 US2022048922
(87)【国際公開番号】W WO2023113933
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チー-ハオ
(72)【発明者】
【氏名】チュー、ビジョン
(72)【発明者】
【氏名】パーソンズ、トーマス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マットソン、カイラ
(72)【発明者】
【氏名】グロス、クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】スーツマン、ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4F100
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
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5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】
物品は、多層積層体であって、(a)対向する主表面を有する第1の表面層であって、内部に分散した難燃性添加剤を有する架橋ポリシロキサンマトリックスを含む、第1の表面層と、(b)対向する主表面を有する中心層であって、一方の主表面が第1の表面層の主表面に接着され、当該中心層が、内部に分散した難燃性充填剤を有するシリコーン発泡シートである、中心層と、(c)対向する主表面を有する第2の表面層であって、一方の主表面が、第1の表面層に接着された主表面の反対側の中心層の主表面に接着され、当該第2の表面層が、第1の表面層について記載された組成を有するが、第1及び第2の表面層が、同じ組成を有する必要はない、第2の表面層と、を有する、多層積層体を含み、当該物品は、中心層によって画定される空隙を占める吸熱剤を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層積層体を含む物品であって、前記多層積層体が、
(a)対向する主表面を有する第1の表面層であって、第1の表面層重量に基づいて5~95重量パーセントの範囲の濃度で内部に分散した難燃性添加剤を有する架橋ポリシロキサンマトリックスを含む、第1の表面層と、
(b)対向する主表面を有する中心層であって、一方の主表面が前記第1の表面層の主表面に接着され、前記中心層が、シリコーン発泡シートであり、前記シリコーン発泡シートが、シリコーン発泡シート重量に基づいて5~80重量%の範囲の濃度で内部に分散した難燃性充填剤を有するシリコーン発泡マトリックスである、中心層と、
(c)対向する主表面を有する第2の表面層であって、一方の主表面が、前記第1の表面層に接着された前記主表面の反対側の前記中心層の主表面に接着され、前記第2の表面層が、前記第1の表面層について記載された組成を有するが、前記第1及び第2の表面層が、同じ組成を有する必要はない、第2の表面層と、を備え、
前記中心層は、前記中心層内に画定される空隙の総体積が、前記中心層によって画定される体積の5~95体積パーセントの範囲内であるように、1つ又は2つ以上の空隙を画定し、前記物品が、前記中心層内の前記空隙を占有する吸熱剤を含む、物品。
【請求項2】
前記第1及び第2の表面層の各々が、ASTM D412によって判定される少なくとも100パスカルの10パーセントひずみ弾性率を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記第1及び第2の表面層の各々が、0.1~3.0ミリメートルの範囲の平均厚さを有する、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記中心層が、0.5~50ミリメートルの平均厚さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記第1及び第2の表面層が各々、難燃剤を、それが含まれる層の重量に基づいて50~85重量パーセントの範囲の濃度で含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記吸熱剤が、前記中心層によって画定される前記体積の40~60体積パーセントの範囲の濃度で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記吸熱剤が、水和炭酸マグネシウム鉱物、水和硫酸マグネシウム鉱物、重炭酸ナトリウム、アルミニウム三水和物、及び水酸化マグネシウムからなる群から選択される、1つ又は2つ以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記多層積層体が、前記中心層と、前記第1及び第2の表面層の各々との間に接着剤を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記接着剤が、シリコーン接着剤である、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記物品が、電池セルを更に備え、前記電池セルは、前記多層積層体が前記電池セル間に存在する状態で互いに電気的に接続されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸熱材料を含有する空隙を画定するシリコーン発泡材料の中心層を備える積層物品に関する。この物品は、電気自動車の電池パック用のバリア材料として有用である。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(electric vehicle、EV)技術は、ますます普及しつつある。EV技術は、電池パックを利用して、エネルギーを貯蔵し、車両に電力を供給する。車両のエネルギー需要は、特に、各充電でより長い距離を移動することができるEVに対する要望及び需要が増加するにつれて、高くなっている。EV用の電池パックのエネルギーの制御されない放出は、莫大な熱放出に起因して、大惨事になる可能性がある。したがって、電池パックからのエネルギーの制御されない放出に対する保護を有する電池パックを設計することが望ましい。
【0003】
EV用の電池パックは、典型的には、互いに電気的に連結され、組み立てられて、電池パックを直接形成するか、又はモジュールを形成し、次いで複数のモジュールが積み重ねられて、電池パックを形成する複数の電池セルを含む。EVは、最大で数千個の電池セルを含有し得る。単一のセルが故障すると、隣接するセルを加熱するのに十分なエネルギーが放出されて、熱暴走及び熱伝播につながる、より多くのエネルギーの放出を伴うこれらの隣接するセルの故障をもたらす結果となる可能性がある。したがって、電池パックのセル及びモジュール間に存在することができ、かつセルが故障した場合に、隣接するセルを熱エネルギー放出から断熱することができるバリア材料を特定することが、望ましい。
【0004】
シリコーン発泡シートは、EV用の電池パック内のセル間の断熱層として使用するために考慮される1つの材料である。しかしながら、シリコーン発泡シート単独又は積層されたシリコーン発泡シートであっても、電池パックにおける熱伝播及び熱暴走を阻止するには不十分であることが多い。したがって、難燃性、及び単なるシリコーン発泡シートよりも高い断熱性を提供する物品を特定することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、難燃性、及び単なるシリコーン発泡シートよりも高い断熱性を提供する物品を提供する。本発明は、2つのシリコーン層の間にシリコーン発泡シートを備える多層積層体であって、シリコーン発泡シートが、吸熱剤を含有する空隙を画定する、多層積層体、を発見した結果である。シリコーン層は、難燃性添加剤を含み、断熱性及び難燃性バリア特性を提供する。シリコーン発泡シートは、更なる難燃性及び断熱性を提供する一方、吸熱剤のポケットは、熱を吸収し、少なくともいくつかの場合には、加熱されたガス中の熱を放出して、発熱破損を経験しつつある電池パックの領域から熱を除去することによって、更に高い熱バリア特性を提供する。この要素の組み合わせは、驚くべきことに、電池パックのセル間に存在することができる積層構造に、特に望ましい熱及び火炎バリア特性を提供するように協働する。
【0006】
多層積層体は、本明細書に記載される断熱性試験において、20秒以上、更には25秒以上、更には30秒以上の「厚さ1ミリメートル当たり180℃までの時間」結果を達成することができる。同時に、本明細書に記載される耐燃性試験方法において、少なくとも650℃の温度でホットプレートに対して直接圧縮された場合に炎がないことによって示されるように難燃性の多層積層体。多層積層体は、10ミリメートル(millimeter、mm)以下、更には5mm以下の厚さであっても、これらの特性を達成することができる。したがって、多層積層体は、EV電池パック内で使用するためのバリア材料として機能する所望の特性を達成する。
【0007】
第1の態様では、本発明は、多層積層体を含む物品であって、当該多層積層体が、(a)対向する主表面を有する第1の表面層であって、第1の表面層重量に基づいて5~95重量パーセントの範囲の濃度で内部に分散した難燃性添加剤を有する架橋ポリシロキサンマトリックスを含む、第1の表面層と、(b)対向する主表面を有する中心層であって、一方の主表面が第1の表面層の主表面に接着され、当該中心層が、シリコーン発泡シートであり、当該シリコーン発泡シートが、シリコーン発泡シート重量に基づいて5~80重量%の範囲の濃度で内部に分散した難燃性充填剤を有するシリコーン発泡マトリックスである、中心層と、(c)対向する主表面を有する第2の表面層であって、一方の主表面が、第1の表面層に接着された主表面の反対側の中心層の主表面に接着され、当該第2の表面層が、第1の表面層について記載された組成を有するが、第1及び第2の表面層が、同じ組成を有する必要はない、第2の表面層と、を備え、中心層は、中心層内に画定される空隙の総体積が、中心層によって画定される体積の5~95体積パーセントの範囲内であるように、1つ又は2つ以上の空隙を画定し、当該物品が、中心層内の空隙を占有する吸熱剤を含む、物品である。物品は、電池セルであって、多層積層体が電池セル間に存在する状態で互いに電気的に接続されている、電池セル、を更に含むことができる。
【0008】
本発明の積層体は、電気自動車の電池パックなどの電池パック内の熱及び火炎バリア材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
試験方法は、日付が試験方法の番号とともに示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含有する。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子が適用される。ASTMは、ASTM国際方法を指し、ENDは、European Normを指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、ULは、米国保険業者安全試験所(Underwriters Laboratory)を指す。
【0010】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日において、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0011】
「複数の」は、2つ以上を意味する。「及び/又は」は、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。
【0012】
「シート」は、主表面を画定する長さ又は幅のサイズの1/10未満である厚さによって分離された対向する主表面を有する物品を指す。
【0013】
幅、長さ、及び厚さは、物体の互いに垂直な寸法である。
【0014】
「主表面」は、最大の平面状表面積を有する、物体の表面並びにその表面に対向する表面を指す。平面状表面積は、表面上の輪郭から表面積への寄与を排除するために、平面上に投影された表面積を指す。対向する主表面は、物体の厚さ寸法によって分離される。
【0015】
本発明は、多層積層体を含む物品である。物品は、多層積層体からなることができるか、又は多層積層体に加えて構成要素を含むことができる。例えば、物品は、電池セルであって、電池セル間に存在する多層積層体を有する、電池セル、を備えることができる。
【0016】
多層積層体は、第1の表面層、中心層、及び第2の表面層を、互いに対してこの順序で備える。「積層体」は、層が互いの上に存在し、互いに接着されていることを意味する。典型的には、接着された層の主表面は、互いに接着される。「に接着される」とは、接着された層の間の直接接触で直接取り付けられるか、又は接着された層の間に接着剤が存在する状態で、接着剤を介して取り付けられるか、のいずれかを意味する。接着剤は、接着された表面の全体を覆う層とすることができるか、又は接着された表面の一部のみにわたって存在し得る。
【0017】
第1の表面層及び第2の表面層は、組成及び/又は寸法が同じ又は異なり得るが、各々、同様の組成及び寸法の記述を有する材料から選択される。第1及び第2の表面層は各々、対向する主表面を有し、架橋ポリシロキサンマトリックス及び難燃剤を含む。
【0018】
架橋ポリシロキサンマトリックスは、望ましくは、少なくとも100パスカル(Pascal、Pa)の10パーセントひずみ弾性率を有し、好ましくは、200Pa以上、300Pa以上、400Pa以上、500Pa以上、600Pa以上、700Pa以上、800Pa以上、850Pa以上、900Pa以上、1000Pa以上、2000Pa以上、4000Pa以上、6000Pa以上、8000Pa以上、10キロパスカル(kiloPascal、kPa)以上、100kPa以上、500kPa以上、800kPa以上、更には870kPa以上の10パーセントひずみ弾性率を有する。架橋ポリシロキサンマトリックスの10パーセントひずみ弾性率値に技術的上限はないが、架橋ポリシロキサンマトリックスは、多くの場合、上で言及される下限を有すると同時に、1ギガパスカル(GigaPascal、GPa)以下、0.5GPa以下、100メガパスカル(MegaPascal、MPa)以下、50MPa以下、25MPa以下、15MPa以下、100MPa以下、5MPa以下、1MPa以下、又は更には900kPa以下のその10パーセントひずみ弾性率の上限を有する。10パーセントひずみ弾性率は、ASTM D412に従って判定される、10パーセント伸びにおける材料の引張応力である。望ましくは、架橋ポリシロキサンマトリックスは、可撓性である。
【0019】
架橋ポリシロキサンマトリックスは、架橋液体ポリシロキサンエラストマー又は架橋ポリシロキサンガムとすることができる。「架橋液体ポリシロキサンエラストマー」は、液体ポリシロキサンを架橋することによって作成されるポリシロキサンエラストマーである。架橋液体ポリシロキサンエラストマー及び架橋ガムは、周知であり、任意の既知のプロセスによって作成され得る。望ましくは、架橋液体ポリシロキサンエラストマーは、総シロキサン単位に基づいて、50モルパーセント(モル%)以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上を構成し、RSiO3/2及びR2SiO2/2単位から選択される95モル%以上のポリシロキサン単位を含有することができる。ポリシロキサン単位は、R3SiO1/2(「M」型単位)、R2SiO2/2(「D」型単位)、RSiO3/2(「T」型単位)、及びSiO4/2(「Q」型単位)であり、式中、各Rは、独立して、ヒドロカルビル基及び置換ヒドロカルビル基から選択され、単位中に列挙された酸素原子は、2つの異なるシロキサン単位のケイ素原子に結合した酸素を指し、酸素における下付き文字は、分子中の共有酸素の数を指し、分子を2で除算することによって、酸素原子が別のシロキサン単位と共有されることを示す。ポリシロキサンマトリックスとして使用するのに好適なポリシロキサンエラストマーの例としては、例えば、各々が154~155ミリメートル/100ミリメートルのウィリアムス可塑度(ASTM D926に従ってウィリアムス可塑度を判定する)を有する、架橋ジメチルビニル末端ジメチル、メチルビニルシロキサンガム、及び/又は架橋ジメチルビニル末端ジメチルシロキサンガムが挙げられる。
【0020】
液体シロキサン及び/又はポリシロキサンガムの硬化は、例えば、フリーラジカル、ヒドロシリル化、及び/又は縮合反応によって達成することができる。フリーラジカル重合は、例えば、過酸化物によって触媒することができる。フリーラジカル重合は、例えば、過酸化物によって触媒することができる。ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、1つ以上のビニル含有シロキサンポリマー及び1つ以上の水素化ケイ素官能性シロキサンを含む。ビニル含有シロキサンポリマー及び水素化ケイ素官能性シロキサンのうちの少なくとも1つは、架橋剤として作用するように、特定の官能基のうちの2つ以上を含有する。典型的には、ヒドロシリル化反応を促進するために、白金化合物などのヒドロシリル化触媒が存在する。縮合反応硬化性シリコーン組成物は、アルコキシ、カルボキシ、アミド、エノキシ、アミノ、オキシモ、及びアミオキシ基などのヒドロキシル官能基及び加水分解性官能基から選択される任意の1つ以上などの縮合硬化性官能基を有するシロキサンを含む。縮合反応硬化性シリコーン組成物は、典型的には、加水分解性基を有するシランなどの架橋剤、ビニルトリメトキシシラン及びメチルトリメトキシシランなどの水捕捉剤、並びにチタン及びスズ化合物などの硬化触媒を更に含み、硬化挙動、貯蔵寿命、及び硬化後の他の特性を調整するように配合され得る。縮合反応硬化性シリコーン組成物は、それが硬化する際に大気から利用可能なものに加えて、人工的に加えられた水分を用いて、又は用いずに、室温又は高温で硬化し得る。
【0021】
望ましくは、ポリシロキサンマトリックスは、非多孔質連続シートである。
【0022】
第1及び第2の表面層は、架橋ポリシロキサンマトリックス内に分散した難燃性添加剤を更に含む。好適な難燃性添加剤としては、金属水酸化物、混合金属水酸化物、水和金属塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される任意の1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせが挙げられる。望ましくは、難燃性添加剤は、アルミニウム三水和物、及び水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化炭酸マグネシウム、水酸化炭酸アルミニウム、ベーマイト、水和硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム三水和物、並びに水酸化炭酸マグネシウム四水和物からなる群における、任意の1つの添加剤、又は任意の添加剤の組み合わせ、又は2つ以上の添加剤である。任意選択的に、ポリシロキサン層は、難燃性を更に改善するために、金属水酸化物、混合金属水酸化物、及び/又は水和金属塩と組み合わせて、金属炭酸塩及び重炭酸塩を更に含み得る。金属炭酸塩及び重炭酸塩の例としては、炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウムカルシウム(例えば、ハンタイトとして市販されているもの)、及び重炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0023】
難燃性添加剤は、それらが含まれる表面層の重量に対する難燃性添加剤の重量%で、5重量パーセント(重量%)以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上の濃度で第1及び第2の表面層の各々内に存在し、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、更には80重量%以上の濃度で存在し得る一方、同時に、典型的には、95重量%以下の濃度で存在し、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、更には50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、又は35重量%以下の濃度で存在し得る。
【0024】
第1及び/又は第2の表面層は、任意の1つの追加の添加剤、又は2つ以上の追加の添加剤の任意の組み合わせを含むことができるか、又は含まない場合がある。「追加の添加剤」とは、既に言及された難燃性添加剤に加えて含まれる添加剤である。例えば、ポリシロキサン層は、シリカ、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、粉砕石英、沈降及び粉砕炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、ゼオライト、TiO2、ZnO、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化ホウ素、珪灰石、パーライト、バーミキュライト、マイカ、カオリン、ガラス、ガラスバブル、エアロゲル粒子、珪藻土、ハロイサイト、マグネタイト、ヘマタイト;ベンゾトリアゾール、ポリリン酸アンモニウム、アンモニウム又はアルミニウムアルキルホスフィネート、メラミンポリホスフェート、有機リン酸塩、ハロゲン化有機リン酸塩、酸化アンチモンを含むか又は含まない他のハロゲン含有難燃剤、ジヒドロオキサホスファフェナントレン、スズ酸亜鉛、ヒドロキソスズ酸亜鉛、白金金属及び白金金属組成物、着色剤、例えば、カーボンブラック及び顔料(例えば、群青色顔料、及び/又はイエロー109)、安定剤、例えば、水酸化セリウムなどの他の難燃性添加剤;過酸化物、有機スタネート又はチタネート、白金などの硬化触媒;アミン、アセチレンアルコール、有機ホスフィンなどの硬化反応の促進剤又は減速剤;希釈剤及び増粘剤などのレオロジー調整剤;並びに/又は中空ガラス若しくはセラミック添加剤などの密度低減添加剤からなる群から選択される任意の1つの追加の添加剤、又は2つ以上の追加の添加剤の任意の組み合わせを含むことができる。
【0025】
表面層中の難燃性添加剤及び追加の添加剤の組み合わせ濃度は、難燃性添加剤の量が、難燃性添加剤について上で指定された範囲内であることを条件に、表面層の重量に基づいて、95重量%以下であり、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、更には50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、又は35重量%以下であり得る。
【0026】
典型的には、各表面層は、0.1ミリメートル(mm)以上の厚さを有し、典型的には、0.2mm以上、0.3mm以上、0.4mm以上、0.5mm以上、0.6mm以上、0.7mm以上、0.8mm以上、0.9mm以上、1.0mm以上、1.2mm以上、1.2mm以上、1.4mm以上、1.6mm以上、1.8mm以上、更には2.0mm以上の厚さである。ポリシロキサン層をどの程度の厚さにし得るかについての上限に関する技術的な制限は存在しない。しかしながら、典型的には、下限のうちのいずれかとの組み合わせで、ポリシロキサンは、10mm以下、5.0mm以下、3.0mm以下、1.0mm以下、0.8mm以下、0.7mm以下、0.6mm以下の厚さであり、0.5mm以下、0.4mm以下、更には0.2mm以下の厚さであり得る。
【0027】
中心層は、対向する主表面を有し、一方の主表面は、第1の表面層の主表面に接着され、対向する主表面は、第2の表面層の主表面に接着される。中心層は、シリコーン発泡シートである。
【0028】
シリコーン発泡シートは、多数のセルを画定するポリシロキサンマトリックスである。ポリシロキサンマトリックスは、架橋ポリシロキサン及び/又はポリシロキサンハイブリッドを含む。セルは、各々が、シリコーン発泡シート体積の0.5体積パーセント(体積%)未満の体積を有する、空隙空間である。典型的には、シリコーン発泡シート中のセルは、10ミリメートル以下の平均サイズを有し、5mm以下、4mm以下、3mm以下、2mm以下、1mm以下、900マイクロメートル以下、800マイクロメートル以下、700マイクロメートル以下、600マイクロメートル以下、500マイクロメートル以下、400マイクロメートル以下、300マイクロメートル以下、200マイクロメートル以下、100マイクロメートル以下、50マイクロメートル以下、更には10マイクロメートル以下の平均サイズを有することができる一方、同時に、典型的には、5ナノメートル(nanometer、nm)以上、好ましくは、10nm以上、25nm以上、50nm以上、100nm以上、500nm以上、1マイクロメートル以上、50マイクロメートル以上、100マイクロメートル以上、500マイクロメートル以上、又は更には1mm以上の平均サイズを有する。セル構造は、互いに相互接続されたセル空隙空間を有する「連続気泡」、ポリシロキサンマトリックス材料が各セルを取り囲み、各セルの空隙空間を他のセルの空隙空間から分離する「独立気泡」とすることができるか、又は連続気泡と独立気泡との組み合わせとすることができる。
【0029】
シリコーン発泡シートは、そのポリシロキサンマトリックス内に分散した難燃剤化合物を含むことができ、望ましくは、含む。好適な難燃剤の例としては、金属水酸化物、混合金属水酸化物、金属塩、水和金属塩、ハロゲン化ポリマー、有機リン酸塩、ハロゲン化有機リン酸塩、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0030】
シリコーン発泡シートは、一般に、0.05グラム毎立方センチメートル(grams per cubic centimeter、g/cc)以上の平均密度を有し、0.1g/cc以上、0.2g/cc以上、0.3g/cc以上、0.4g/cc以上、0.5g/cc以上、更には0.6g/cc以上の密度を有することができる一方、同時に、典型的には0.9g/cc以下の密度を有し、0.8g/cc以下、又は更には0.7g/cc以下の密度を有することができる。密度は、シリコーン発泡シート内で均一とすることができるか、又は不均一とすることができる。例えば、シリコーン発泡シートは、多孔性が低く、そのコアよりもその表面において高い密度を有することができる。
【0031】
シリコーン発泡シートは、様々な方法のいずれかによって作製することができる。例えば、発泡シートは、発泡剤の存在下、架橋温度で、シロキサンガムを過酸化物で架橋することによって作製することができ、発泡剤は、架橋温度又はその付近でガスを生成するか、又はガスになる。一部のフリーラジカル開始剤は、分解時に窒素ガスを生成し、発泡剤として、及び架橋反応の開始剤として使用することができる。シリコーン発泡体は、発泡剤の存在下で、ヒドロシリル化又は縮合反応を使用してシロキサンガム及び/又は液体を架橋することによって作製することができる。発泡剤を含む代わりに、硬化前又は硬化中に、シロキサンガム及び/又は液体にガスを混合することができる。シリコーン発泡シートは、発泡「セル」を提供する複数の中空フィラー成分を含むシンタクチックフォームであり得る。好適な中空フィラー成分としては、中空ガラス又はセラミック微粒子、例えば球体が挙げられる。
【0032】
シリコーン発泡シートとして使用することができる好適なシリコーン発泡材料の例としては、DOWSIL(商標)3-8235 Silicone Foam、DOWSIL(商標)3-8209 Silicone Foam、Norseal(商標)R10400M、Norseal(商標)R10450、Norseal(商標)R10490、Norseal(商標)R10480Sの商品名で入手可能な材料が、挙げられる。DOWSILは、The Dow Chemical Companyの商標である。Norsealは、Saint-Gobain Performance Plastics Corporationの商標である。
【0033】
中心層は、典型的には、0.5mm以上の平均厚さを有し、1.0mm以上、1.5mm以上、2.0mm以上、2.5mm以上、3.0mm以上、4.0mm以上、5.0mm以上、10mm以上、20mm以上、30mm以上、更には40mm以上の厚さを有することができる一方、同時に、一般に、50mm以下の厚さを有し、40mm以下、30mm以下、20mm以下、10mm以下、5.0mm以下、4mm以下、又は更には3.0mm以下の厚さを有することができる。
【0034】
中心層は、中心層の厚さを通して部分的に又は全体にわたって延在することができる1つ又は2つ以上の空隙を画定する。これらの空隙は、体積がはるかに大きいことにより、シリコーン発泡シート中のセルとは異なる。各空隙は、中心層の総体積の5体積パーセント以上、更には10体積%以上、更には20体積%以上の体積を有することができる。中心層によって画定される空隙空間の総体積は、中心層の総体積の5体積パーセント(体積%)以上であり、10体積%以上、15体積%以上、20体積%以上、25体積%以上、30体積%以上、35体積%以上、40体積%以上、45体積%以上、50体積%以上、55体積%以上、60体積%以上、65体積%以上、70体積%以上、75体積%以上、80体積%以上、85体積%以上、更には90体積%以上であり得る一方、同時に、典型的には95体積%以下であり、90体積%以下、85体積%以下、80体積%以下、75体積%以下、70体積%以下、65体積%以下、60体積%以下、55体積%以下、50体積%以下、47体積%以下、45体積%以下、40体積%以下、35体積%以下、30体積%以下、又は更には25体積%以下であり得る。
【0035】
多層積層体は、中心層によって画定される空隙を占有する吸熱剤を更に含む。吸熱剤は、典型的には粒子状の形態であり、吸熱剤の非常に多くの粒子が、所与の空隙を占有する。吸熱剤は、80℃~550℃の範囲の温度で分解して二酸化炭素及び/又は水を生成する際に熱を吸収する材料である。吸熱剤は、全て同じとすることができるか、又は複数の異なる吸熱剤の組み合わせとすることができる。熱を吸収して分解する際に水を生成する吸熱剤の例としては、金属水酸化物、金属塩、金属塩の水和物、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム(magnesium hydroxide)、水酸化カルシウム、水酸化カルシウム-マグネシウム、ハイドロタルサイト、ベーマイト、タルク、硫酸カルシウム水和物、水酸化マグネシウム(magnesium hydrate)、及びホウ酸亜鉛が挙げられる。具体的な例としては、含水硫酸マグネシウム鉱物(例えば、エプソマイト)、アルミニウム三水和物、及び水酸化マグネシウムが挙げられる。熱を吸収して分解する際に二酸化炭素を生成する吸熱剤の例としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムカルシウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸リチウム、重炭酸カリウム、及び重炭酸マグネシウムが挙げられる。熱を吸収して分解しながら水及び二酸化炭素の両方を放出する吸熱材料の例としては、ハイドロマグネサイトなどの水和炭酸マグネシウム鉱物が挙げられる。吸熱剤は、中心層内に画定された空隙空間を完全に又は部分的に占有することができる。望ましくは、空隙空間及び吸熱剤は、中心層の小部分に集中するのではなく、中心層全体にわたって位置する。吸熱剤の役割は、熱を吸収し、その熱を水蒸気又は二酸化炭素として放出することによって、多層積層体を通る熱伝達を軽減することであり、したがって、吸熱剤を中心層全体に広く分配することが最適である。この点に関して、中心層が、中心層全体にわたって広く分配された空隙を画定し、吸熱剤がこれらの空隙を占有することが、望ましい。
【0036】
吸熱剤は、中心層内に画定された空隙体積を占有し、したがって、中心層によって画定される体積の5~95体積%の範囲内のいずれかを占めることができる。望ましくは、吸熱剤は、中心層によって画定される体積の40体積%以上、好ましくは、45体積%以上、50体積%以上、更には55体積%以上を占め、同時に、典型的には、95体積%以下、90体積%以下、85体積%以下、80体積%以下、75体積%以下、70体積%以下、65体積%以下、60体積%以下、又は更には55体積%以下、50体積%以下、又は更には45体積%以下を占める。
【0037】
中心層における望ましい空隙配向の一例として、空隙空間内の吸熱剤が中心層空間の体積の大部分を連続して占めるように、中心層材料の外周によって画定される1つの大きな空隙空間を有することが挙げられる。望ましい空隙配向の別の例は、中心層全体にわたって吸熱材料の広い分配を効果的に提供するように、中心層全体にわたって画定され、吸熱材料によって占有される複数の空隙空間を有することである。
【0038】
吸熱剤は、典型的には、それらが占有する空隙内に、中心層並びに第1及び第2の表面層によって密封される。
【0039】
多層積層体は、考えられる任意の手段によって作製することができる。例えば、第1の表面層を中心層に接着し、次いで、吸熱剤を中心層によって画定された空隙内に配置し、次に、第2の表面層を中心層上に接着して、中心層及び吸熱剤を第1の表面層と第2の表面層との間に挟むことができる。
【0040】
表面層の一方若しくは両方を、中心層に直接接着することができるか、又はいずれも中心層に直接接着されない場合がある。表面層と中心層との間の直接接着を達成するために、表面層を硬化させて、中心層と接触している間に架橋ポリシロキサンマトリックスを形成することができる。
【0041】
表面層の一方若しくは両方を、接着剤を使用して中心層に接着することができるか、又はいずれも接着されない場合がある。接着剤は、表面層と中心層との間に存在し、2つの層を一緒に接着することができる。接着剤は、2つの層の間にフィルムを形成するように、互いに接着された表面を完全に覆うことができる。代替的に、接着剤は、互いに接着された表面の一部分のみを覆うことができる。接着剤は、フィルム又はビードのように連続的とすることができるか、又は一連のドット、非連結のビード、若しくはビードとドットの組み合わせのように不連続とすることができる。接着剤は、表面層を中心層に接着する任意のパターンとすることができる。
【0042】
接着剤は、使用される場合、シリコーン接着剤とすることができる。接着剤は、一液型又は二液型接着剤とすることができる。接着剤は、望ましくは、難燃性添加剤を含有する。例えば、接着剤は、The Dow Chemical CompanyからDOWSIL(商標)3-8235 Silicone Parts A and Bの名称で市販されているものなどのシリコーン発泡接着剤とすることができる。DOWSILは、The Dow Chemical Companyの商標である。望ましくは、接着剤は、高温用途に好適である。
【0043】
多層積層体は、電気自動車用電池モジュールのセル間の絶縁体として特に有用である。この点に関して、本発明の物品は、電池セル間に存在する多層積層体を有する複数の電池セルを更に含むことができる。物品は、車両内にあり得る電池モジュールとすることができ、電池モジュールは、電池セル間に存在する多層積層体を有する複数の電池セルが存在するハウジングを含む。
【実施例】
【0044】
表1は、以下の実施例において使用するための材料を列挙する。
【0045】
【0046】
【表1-2】
XIAMETER、SILASTIC、及びSYL-OFFは、Dow Corning Corporationの商標である。DOWSILは、The Dow Chemical Companyの商標である。HALTEXは、TOR Minerals Internationalの商標である。ZEROGEN、HYMOD、及びMICRALは、J.M.Huber Corporationの商標である。WOLLASTOCOATは、NYCO Minerals,Inc.の商標である。CAB-O-SILは、Cabot Corporationの商標である。
【0047】
添加剤A2の調製。ASTM D3182に記載されている標準混合手順を使用して、国際公開第2020131985号に記載されているようにA2を調製する。A2は、7重量%のマグネシウムフェライト、23重量%の群青色顔料、23重量%の二酸化チタン、6重量%の酸化クロムグリーン、及び41重量%のG1からなる。
【0048】
ポリシロキサン層の調製。ASTM D3182に記載されている標準混合手順を使用して、国際公開第2020131985号に記載されているようにポリシロキサン層を調製する。ポリシロキサン層は、17.19重量%のB1、13.45重量%のG1、33.52重量%のアルミナ三水和物、20.12重量%の水酸化マグネシウム、0.8重量%のケイ酸マグネシウム、8.05重量%のメタケイ酸カルシウム、2.68重量%のA1、1.07重量%のP1、0.24重量%のF1、及び2.88重量%のA2からなる。2本ロールミルを使用して組成物をカレンダリングすることによって、ポリシロキサン層を0.6mmの厚さに調製する。厚さ0.6mmの30.5センチメートル×30.5センチメートルの金属チェイス上で30トンの圧力下でのホットプレスにおいて、摂氏120度(℃)で15分間シートを硬化させて、寸法30.5センチメートル×30.5センチメートル×0.6mmの試料を形成する。ポリシロキサン層は、ASTM D412に従って測定された0.87メガパスカルの10パーセント弾性率を有する。
【0049】
ポリシロキサン発泡体1の調製。シリコーン接着剤の成分を1:1の重量比で、スピードミキサー中、2000回転毎分で30秒間混合する。3mmの厚さ制御を有するニブローラーを使用して、ポリシロキサン発泡シートを製造する。シートを25℃で24時間硬化させる。ポリシロキサン発泡体1は、0.23グラム毎立方センチメートルの密度を有する。
【0050】
ポリシロキサン発泡体2の調製。以下の成分をスピードミキサー中、2000回転毎分で30秒間一緒に混合し、次いで3mmの厚さ制御を有するニブローラーを使用して、ポリシロキサン発泡シートを製造する。シートを25℃で24時間硬化させる。ポリシロキサン発泡体2を作製するための成分は、0.42部のC1、2.88部のF5、12.64部のF6、2.16部のF2、1.39部のベンジルアルコール、1.09部のブタンジオール、26.91部のアルミナ三水和物2、2.88部のF3、15.48部のアルミナ三水和物3、及び34.17部のF4であり、ここで、部は、重量部である。ポリシロキサン発泡体2は、0.54グラム毎立方センチメートルの密度を有する。
【0051】
試料の特徴付け
以下の断熱性試験及び耐燃性試験を用いて、試料を特徴付ける。
【0052】
断熱性試験。ホットプレートの片側から通気された空間に囲まれた液圧内にホットプレートを配置し、通気ポートは、試料に直接隣接する。ホットプレートの上部表面上に多孔質セラミック耐火性絶縁体を置き、ホットプレートを710℃まで加熱する。カプトンテープを使用して4つの熱電対プローブをアルミニウムヒートシンク上に接着させる。試料をアルミニウムヒートシンク上に配置し、カプトンテープを使用してアルミニウムヒートシンクに固定する。カプトンテープを使用して別の熱電対を試料表面上に固定する。ホットプレートの加熱表面から絶縁体を除去し、アルミニウムヒートシンクがホットプレートから試料の反対側にある状態で、試料をホットプレートの加熱表面上に迅速に配置する。355キロパスカルの圧力を急速に加えて、試料をホットプレートに対して圧縮する。ホットプレート表面及び試料の温度を、データロガーを使用して監視する。ホットプレートの反対側の試料側の温度が180℃に到達したら、圧力を解放し、試験を終了する。ホットプレートと反対側の試料側が180℃に到達するのに必要な時間を断熱時間として、秒単位で記録する。断熱時間を試料の厚さで除算して、「ミリメートル当たり180℃までの時間」を秒毎ミリメートル(s/mm)単位で提供する。より長い時間は、より高い断熱性に対応する。
【0053】
耐燃性試験。断熱性試験中、試料を観察して、試料が発火するかどうかを見る。炎が観察された場合、それらが試験時間(180℃に到達するのに必要な時間)内に自己消火するかどうかに留意する。一般的な観察によって、発火する試料は、一般に、ホットプレートと接触した後、最初の5秒以内に発火することを示す。試料が試験時間中に発火する場合、その試料は、耐燃性試験に不合格である。
【0054】
ポリシロキサン発泡体1を有する試料
比較例(Comp Ex)A。Comp Ex Aは、ポリシロキサン発泡体1の10センチメートル(centimeter、cm)×10cmの正方形片である。特性評価結果:試料厚さ:3mm 断熱性試験:厚さ1mm当たり180℃までの時間0.63s/mm。耐燃性試験:炎なし。
【0055】
Comp Ex B。ポリシロキサン層の2つの10cm×10cm正方形片及びポリシロキサン発泡体1の1つの10cm×10cm正方形片を使用して、Comp Ex Bを、積層体として調製する。スタティックミックスチャ(static mixture)を通してシリコーン接着剤のパートA及びパートBを分配し、これらのパートが分配される際にそれらを一緒に混合することによって、ポリシロキサン発泡体1の両方の対向する主表面上に2グラム(g)のシリコーン接着剤を塗布する。シリコーン接着剤をビード(直径約3ミリメートル)として、空隙の周りのポリシロキサン発泡体1の主表面上に塗布する。ポリシロキサン発泡体1の各側にポリシロキサン層シートを接着して、予備積層体を形成する。予備積層体を、25.4cm×25.4cm×4mmであるチャイズ(chaise)に入れ、積層された層の上に10トンの重量を加えて、それらを一緒にプレスする。圧縮された積層体の層を25℃で24時間又は60℃で10分間硬化させて、Comp Ex Bを達成する。Comp Ex Bは、4.5mmの最終厚さを有する。特性評価結果:試料厚さ:4.5mm。断熱性試験:厚さ1mm当たり180℃までの時間19s/mm。耐燃性試験:炎なし。
【0056】
実施例(Ex)1。ポリシロキサン発泡体1の厚さ全体にわたって、ポリシロキサン発泡体1の全体に均一に分配された、2.54cmの直径を有する9つの円形空隙をポリシロキサン発泡体1内に画定することを除いて、Comp Ex Bと同様にEx1を調製する。積層体を形成する前に、3グラムの水和炭酸マグネシウム鉱物を9つの空隙に均等に分配して、ポリシロキサン発泡体1(積層体の中心層)中に44体積%の吸熱剤を提供する。特性評価結果:試料厚さ:4.5mm。断熱性試験:厚さ1mm当たり180℃までの時間26s/mm。耐燃性試験:炎なし。
【0057】
Ex2。ポリシロキサン発泡体1の厚さ全体にわたって、7.62cm×7.62cmの寸法を有する1つの正方形の空隙をポリシロキサン発泡体1の中心に画定することを除いて、Comp Ex Bと同様にEx2を調製する。積層体を形成する前に、5グラムの重炭酸ナトリウムを空隙内に分配し、セラミックシート層(積層体の中心層)中に56体積%の吸熱剤を提供する。特性評価結果:試料厚さ:4.5mm。断熱性試験:厚さ1mm当たり180℃までの時間24s/mm。耐燃性試験:炎なし。
【0058】
Comp Ex A及びB並びにEx1及び2の結果は、中心層単独(Comp Ex A)又は吸熱剤を含まない同様の積層体(Comp Ex B)のいずれかに対する、中心層に吸熱剤を含有する、特許請求されている本発明の積層体の断熱性の有意な増加を例解する。
【0059】
ポリシロキサン発泡体2を有する試料。
Comp Ex C。Comp Ex Cは、ポリシロキサン発泡体2の10センチメートル(cm)×10cmの正方形片である。特性評価結果:試料厚さ:3mm断熱性試験:厚さ1mm当たり180℃までの時間22s/mm。耐燃性試験:炎なし。
【0060】
Comp Ex D。ポリシロキサン発泡体1の代わりに、ポリシロキサン発泡体2を使用することを除いて、Comp Ex Bと同様にComp Ex Dを調製する。特性評価結果:試料厚さ:4.5mm。断熱性試験:厚さ1mm当たり180℃までの時間24s/mm。耐燃性試験:炎なし。
【0061】
Ex3。ポリシロキサン発泡体1の代わりに、ポリシロキサン発泡体2を使用することを除いて、Ex1と同様にEx3を調製する。特性評価結果:試料厚さ:4.5mm。断熱性試験:厚さ1mm当たり180℃までの時間37s/mm。耐燃性試験:炎なし。
【0062】
Comp Ex C及びD並びにEx3の結果は、中心層のみ(Comp Ex C)又は吸熱剤を含まない同様の積層体(Comp Ex D)のいずれかに対する、中心層に吸熱剤を含有する、特許請求されている本発明の積層体の断熱性の有意な増加を例解する。
【国際調査報告】